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日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024(JCCNG2024) 日本集中治療医学会・2025・115 ページ · 集中治療・救急・蘇生
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Vol.32 Supplement 3 September 2025

日集中医誌J  Jpn  Soc  Intensive  Care  Med

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024

The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024
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日集中医誌 2025;32:S3

-1-

※ 委員長※※ 副委員長※※※ 担当理事1 横浜市立大学附属病院集中治療部2 慶應義塾大学医学部救急医学3 神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科4 聖マリアンナ医科大学救急医学5 札幌医科大学医学部集中治療医学6 大阪府立病院機構大阪母子医療センター集中治療科7 長崎大学病院高度救命救急センター8 千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学9 大阪医科薬科大学救急医学教室10 茨城キリスト教大学看護学部看護学科11 広島大学病院12 国立成育医療研究センター集中治療科13 横浜市立大学医学研究科医科学専攻生体制御・麻酔科学14 京都桂病院薬剤科15 武蔵野徳洲会病院循環器内科16 京都大学医学部附属病院救急科17 防衛医科大学校病院救急部18 東京情報大学看護学部成人・高齢者看護領域19 北海道大学病院救命救急センター20 旭川医科大学救急医学講座21 京都桂病院救急科

22 東北大学病院高度救命救急センター23 日立総合病院看護局24 日本赤十字九州国際看護大学看護学部看護学科25 横浜市立大学大学院医学研究科修士課程医科学専攻生体制御・麻

酔科学26 小倉記念病院薬剤部27 東京大学医学部附属病院小児科28 昭和大学医学部集中治療医学講座29 神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野30 静岡県立総合病院集中治療科31 大阪府立病院機構大阪母子医療センター麻酔科32 東京女子医科大学附属足立医療センター外科33 京都大学大学院予防医療学分野34 杏林大学保健学部リハビリテーション学科理学療法学専攻35 前橋赤十字病院高度救命救急センター36 長崎大学生命医科学域保健学系37 岐阜保健大学リハビリテーション学部理学療法学科38 杏林大学医学部付属病院リハビリテーション室39 京都大学医学部附属病院麻酔科40 地域医療振興協会東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科41 藤田医科大学病院食養部42 国立循環器病研究センター集中治療科

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024 The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024

中村 謙介1,※※山元  良2東別府直紀3吉田  稔4巽  博臣5清水 義之6泉野 浩生7大島  拓8畠山 淳司9大内  玲10堤  理恵11壷井 伯彦12山本 夏啓13野﨑  歩14淺見 貞晴15髙谷 悠大16山田 浩平17松石雄二朗18高氏 修平19丹保亜希仁20寺坂 勇亮21佐藤 武揚22岡本 菜子23櫻本 秀明24宮城 朋果25安藝 敬生26太田 英仁27渡辺 太郎28中西 信人29大邉 寛幸22成田 知大30竹下  淳31佐川まさの32恒光 健史33松嶋 真哉34小橋 大輔35柳田 頼英36渡辺 伸一37村田 裕康38田口 聡久39平本 琢也40一丸 智美41小谷 穰治29,※竹内 宗之42,※※※日本版重症患者の栄養療法ガイドライン検討委員会
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1 はじめに

重症患者は疾患と病態のみならず,治療,ICUケア,物理的および精神的な制限など多くの要因により,重大な栄養障害のリスクを抱える1) 。多くの場合患者自身で経口摂取ができないため,医療従事者は栄養療法を設計し提供する必要がある。不適切な栄養療法は栄養障害を助長し患者の予後を悪化させる危険があり2),エビデンスに基づいた急性期栄養療法の提示は臨床現場において必要とされてきた。日本でも2016年に本ガイドラインの前身となる重症患者の栄養療法ガイドラインが作成されている3) 。

国際的にはthe European Society for Clinical Nutrition and Metabolism(ESPEN)およびAmerican Society for Parenteral and Enteral Nutrition (ASPEN)が,臨床プラクティスおよび研究を推進することを目的として,重症患者の栄養療法ガイドラインをそれぞれ発刊している4),5) 。しかしこれらのガイドライン間で推奨が異なるものが複数存在し,また国際的に吟味されたガイドラインが各国の臨床栄養の実状や課題に見合わない場合がある6),7) 。そしてICU患者のheterogeneityは非常に大きく8),ガイドラインの解釈と臨床応用を慎重に行えるよう,作成者と読者双方の配慮が必要である。日本では保険診療の早期栄養

介入管理加算が本ガイドラインに準拠した栄養療法を実施することを求めており,それに見合う推奨を提示できるよう努めて作成する必要があった。

さらに昨今の集中治療において,死亡率や人工呼吸期間のみならず,post intensive care syndrome (PICS)と呼ばれる長期予後や身体障害に目を向けるべきことが提言されている9) 。栄養の目的の1つに身体の恒常性維持があるように,栄養療法のアウトカムとしても身体機能や筋肉量を評価すべきであり10),採用するRCTは増えてきている11) 。本ガイドラインは身体アウトカムを主要アウトカムに添えた点で,これまでになかった最新の要約による推奨を提示する。

また本ガイドラインは,前版3)ではできなかったGrading of Recommendations,Assessment, Development and Evaluation(GRADE)システムを導入した。多職種から成るエキスパートにより,最新のシステマティックレビューとメタアナリシスに基づいて臨床に必要な37のクリニカルクエスチョンに回答を作成した。以上の取り組みは現行の国際ガイドライン4),5)とも差別化することができる。本ガイドラインの目的は,最新の栄養療法のエビデンスを新しい観点から要約し,日常の臨床プラクティスの指針とすることである。

要約:重症患者に対する栄養療法は一定の潮流を形成すると同時に,新たなエビデンスの蓄積により日々進化している。本ガイドラインは日本集中治療医学会が作成し,以前のガイドライン2016から改訂した日本独自で最新の「重症患者の栄養療法ガイドライン2024(Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024, JCCNG2024)」である。本ガイドラインの英語版は,日本語版の内容をもとに作成された。ICUに入室する,または集中治療を必要とする小児および成人の予後改善のために,医療従事者が疾患の種類にかかわらず栄養療法を理解し提供することを目的として作成された。想定ユーザーは,栄養療法に精通していない医療従事者も含め,集中治療に携わるすべての医療従事者である。免疫調整療法,特殊な病態に対する栄養療法,および小児に対する栄養療法を含めて,37のクリニカルクエスチョンと24の推奨を作成した。本ガイドラインは,集中治療科,救急科,外科,内科,小児科,麻酔科を専門とする医師,看護師,管理栄養士,薬剤師,理学療法士など,栄養療法と集中治療に関連する様々な職種の専門家により,Grading of Recommendations,Assessment,Development and Evaluation (GRADE)システムに従って作成された。GRADEに基づく勧告,Good Practice Statements, Future Research Question,Background Questionsに対する回答はすべて,修正デルファイ法を用いたコンセンサスによって最終決定された。成人では48時間以内の早期経腸栄養とプレバイオティクス/シンバイオティクス投与が強い推奨に,栄養プロトコルの使用,経静脈栄養より経腸栄養,標準を超えるタンパク質量投与,幽門後経腸栄養,持続的経腸栄養,ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養,プロバイオティクス投与および間接熱量測定の使用が弱い推奨に挙げられた。また小児では48時間以内の早期経腸栄養,間欠的経腸栄養および高濃度人工乳が弱い推奨となった。栄養アセスメントは成人,小児両者においてGood Practice Statementsとした。JCCNG2024は,日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会を中心に,様々な学会やセミナーでの教育活動により普及される予定である。重症患者の栄養療法に関する研究が世界で継続的に報告されることを考慮し,4〜6年後に改訂する予定である。本ガイドラインが重症患者の臨床や今後の研究に活用されることを期待する。

Key words: 1 ICU,2 nutrition,3 critical illness,4 guideline
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-3-の実施を支援する目的で作成された。

2.1.2 対象とする患者集団と利用者

原疾患によらず,ICUでの治療を必要とする,あるいはそれに準じた集中治療を必要とする小児および成人を本ガイドラインの対象集団とした。ガイドライン利用者は栄養療法に精通していないあらゆる医療従事者を想定した。

2.1.3 既存のガイドラインとの関係

重症患者の栄養療法に関する国際ガイドラインとして,ASPENおよびESPENからガイドラインが公開されているが1),2),それらガイドラインにおいていまだに扱われていない重要臨床疑問は数多い。また,国や地域ごとの医療制度の違いから実行可能性等が異なる栄養療法も存在する。したがって,アジア地域である日本よりGRADEアプローチを用いた栄養療法の国際ガイドラインを発信することは重要であると考えられた。本ガイドラインでは免疫調整療法,特殊病態や小児における栄養療法などもカバーした37の臨床疑問と24の推奨を提示したが,これらは治療方針を制限するものではなく,個々の患者にはそれぞれの状況に応じた治療が提供されるべきと考えられる。

2.1.4 組織構成と役割

本ガイドラインはGRADEシステムに準拠し,クリニカルクエスチョン(clinical question, CQ)の立案,システマティックレビューによるエビデンスの検索・収集・統合とエビデンスの確実性評価,推奨策定の工程を経て作成した。本ガイドライン作成にあたり,統括委員会,ワーキンググループ,システマティックレビューチーム,アカデミック推進班が設置され,栄養療法に関わる多職種の専門家(集中治療科,救急科,外科,内科,小児科,麻酔科など複数診療科の専門医,看護師,管理栄養士,薬剤師,理学療法士など)が参加した。

統括委員会(日本版重症患者の栄養療法ガイドライン検討委員会)は,日本集中治療医学会の承認を受け学会委員会として設立され,スコープ,CQ,推奨の作成および決定を行った。ワーキンググループは公募あるいは指名によって集まった日本集中治療医学会会員および統括委員会委員の兼任によって構成され,CQの作成支援,システマティックレビューの先導,推奨文案の作成を行った。システマティックレビューチームは公募によって集まった日本集中治療医学会会員によって構成され,システマティックレビューを実施した。アカデミック推進班は統括委員会から指名された

文 献

1) Lew CCH, Yandell R, Fraser RJL, et al. Association Between Malnutrition and Clinical Outcomes in the Intensive Care Unit: A Systematic Review. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2017;41:744-58. 2) van Zanten ARH, De Waele E, Wischmeyer PE. Nutrition therapy and critical illness: practical guidance for the ICU, post-ICU, and long-term convalescence phases. Crit Care 2019;23:368. 3) The Committee on Japanese Guidelines for Nutrition Support Therapy  in the Adult and Pediatric Critically Ill Patients, Japanese Society of Intensive Care Medicine. Japanese Guidelines for Nutrition Support Therapy in the Adult and Pediatric Critically Ill Patients. J Jpn Soc Intensive Care Med 2016;23:185-281. 4) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 5) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 6) Yatabe T, Egi M, Sakaguchi M, et al. Influence of Nutritional Management and Rehabilitation on Physical Outcome in Japanese Intensive Care Unit Patients: A Multicenter Observational Study. Ann Nutr Metab 2019;74:35-43. 7) Nakamura K, Liu K, Katsukawa H, et al. Nutrition therapy in the intensive care unit during the COVID-19 pandemic: Findings from the ISIIC point prevalence study. Clin Nutr 2022;41:2947-54. 8) Wischmeyer PE. Tailoring nutrition therapy to illness and recovery. Crit Care 2017;21:316. 9) Needham DM, Davidson J, Cohen H, et al. Improving long-term outcomes after discharge from intensive care unit: report from a stakeholders' conference. Crit Care Med 2012;40:502-9. 10) Davies TW, van Gassel RJJ, van de Poll M, et al. Core

outcome measures for clinical effectiveness trials of nutritional and metabolic interventions in critical illness: an international modified Delphi consensus study evaluation (CONCISE). Crit Care 2022;26:240. 11)  Davies TW, Kelly E, van Gassel RJJ, et al. A systematic

review and meta-analysis of the clinimetric properties of the core outcome measurement instruments for clinical effectiveness trials of nutritional and metabolic interventions in critical illness (CONCISE). Crit Care 2023;27:450.

2 ガイドライン作成の方法

2.1基本理念と概要

2.1.1 名称とガイドライン全体の目的

本ガイドラインの名称は「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024(Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024, JCCNG 2024)」とした。本ガイドラインは,重症患者の死亡率の減少,ICU入室期間の短縮,人工呼吸器使用期間の短縮,合併症の減少,身体機能の改善などを目指した栄養療法の理解を深め,そ
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-4-が,同医学会の意向や利益は反映されていない。また,

作成に関わるメンバーは一切の報酬を受けていない。

2.2 ガイドライン作成の手順

2.2.1 作成の基本方針

「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に則って3),CQごとにシステマティックレビューを行い,その結果に基づいて推奨を決定することを基本方針とした。各CQにおいて,システマティックレビューで得られた益と害のバランスを評価したうえで,患者の希望や状態,医療経済,社会状況等を考慮して推奨の最終判断を行った。

2.2.2 CQの立案と分類

重症患者に対する標準的な栄養療法の実施を支援できるよう,栄養療法の基礎的知識を包括したうえで, CQの立案を行った。CQ立案の原則として(1)質の高いエビデンスがあるかは問わず,臨床上の重要課題をCQとして提示する,(2)公開済みの国際ガイドラインで扱われたCQの中で,新たにエビデンスの検索・収集・統合が必要であると考えられたCQを採用する, (3)CQは質問形式として,フォアグラウンドクエスチョン(foreground question, FQ)であればPICO [patients(対象患者);intervention(評価する介入); control(対照);outcome(評価項目)]として提示することとした。

CQは,情報提示を目的としたバックグラウンドクエスチョン(background question, BQ)と推奨策定を行うFQに分類した(Table 1)。FQにおける推奨は,システマティックレビューを実施して得られたエビデンスを基に推奨を出すGRADE推奨と,介入による有益性がその有害性を上回ることが極めて常識的で,RCTが倫理的に実施不可能であり,かつ強い推奨を出すべきと委員会が判断したグッドプラクティスステートメント(good practice statement, GPS)に分類した。十分なエビデンスが得られなかったFQはフューチャーリサーチクエスチョン(future research question, FRQ)とし,推奨は行わなかった。

CQは4つのワーキンググループ(WG1. 栄養療法の一般的戦略,WG2. 栄養療法における特定の栄養素, WG3. 栄養モニタリングと特定の病態,WG4. 小児の栄養療法)に分類され,それぞれのワーキンググループが原案を作成した後,統括委員会の承認を経て確定した。FQにおいてはPICOも同様の手順で確定した。なお,PICOのoutcome(以下,アウトカム)は原則すべてのFQにおいて統一する方針とし,採用するアウ

医師・看護師により構成され,GRADEアプローチの解説,学術資料の作成などを通して,中立の立場から各班・チームの作業を支援した。

2.1.5 質と透明性の確保

ガイドラインの草案完成後はAGREE IIを用いて外部評価者による査読が実施され,指摘された各種意見には対応を検討し,本ガイドラインに反映した。また,統括委員会委員による相互査読とパブリックコメントの募集を実施し,寄せられた各種意見への対応を検討し,本ガイドラインに反映した。作成の工程はガイドライン作成に関わるメンバーに公開され,統括委員会はすべて公開にて開催された。

2.1.6 ガイドラインの普及と改訂

ガイドラインの普及に関しては,日本版重症患者の栄養療法ガイドライン検討委員会を中心とした各種学術集会やセミナーにおける啓発活動を通して実施し,またガイドラインの内容を包括したアプリの開発・普及を行う方針とした。また,日本版重症患者の栄養療法ガイドライン検討委員会によって,ガイドライン使用率のアンケート調査などを実施し,モニタリングを行う予定としている。

重症患者に対する栄養療法に関する新たな研究が,世界中から継続的に発表されている現状を踏まえ, 4〜6年後に改訂予定としている。改訂前に重要な知見が公表され至急改訂の必要性が生じた場合には,統括委員会にて審議のうえ,改訂を行う。

2.1.7 ガイドライン適用における促進・阻害要因

現在日本では,診療報酬制度において「早期栄養介入管理加算」や「周術期栄養管理実施加算」が導入されており,多くの施設において重症患者の栄養が注目されている。これは,本ガイドラインが臨床現場における適用を促進させる因子であると考えられる。一方,医療機関に勤務する管理栄養士の不足が本ガイドラインの各種推奨の臨床適用阻害につながる可能性もあり,共に栄養管理を行う管理栄養士の全国的な配置も取り組むべき課題である。

2.1.8 利益相反と資金

統括委員会,ワーキンググループ,システマティックレビューチーム,アカデミック推進班のメンバーは,日本医学会COI管理ガイドラインに準拠し,経済的COI と学術的COIの申告を行った。また,本ガイドラインは日本集中治療医学会の資金によって作成された
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トカムとその重要度を統括委員会の総意にて決定した(Table 2)。

BQに分類されたCQに対する回答は,情報提供という形で作成された。公開されている国際ガイドライン,システマティックレビュー,学術団体からの提言などを参考にして,各ワーキンググループが作成した。FQに対するGPSは各ワーキンググループが作成し, GRADE推奨は以下のシステマティックレビューによるエビデンスの検索・収集・統合とエビデンスの確実性の評価を経て作成された。

2.2.3 文献検索

システマティックレビューにおける文献検索は, CENTRAL,PubMed,医学中央雑誌から検索を行った。2023年4月に検索を行い,検索期間は検索日まですべてとした。検索式は,システマティックレビューチームがMedical Subject Headings(MeSH)termsと自由検索語を用いて作成し,ワーキンググループが確認した。対象論文はRCTに限定し,言語は英語か日

本語とし,文献検索式は事前に特定した重要論文を含むことを確認したうえで最終決定した。各データベースの文献検索実施日と検索された論文数を記録し,文献情報を取得した。

検索された文献を重複除去した後,2 名以上のシステマティックレビューチームが一次スクリーニングを実施した。Rayyan(https://rayyan.qcri.org/welcome)を用いたタイトルと抄録から,PICOと合致した文献が選別された。

選別された文献を対象に,2名以上のシステマティックレビューチームが二次スクリーニングを実施した。論文のフルテキストを入手し,研究デザインおよびPICOが合致する論文を対象論文として確定した。意見の不一致がある場合は,3人目のメンバーあるいはワーキンググループメンバーによるレビューと議論が行われた。除外した論文については理由を記録し, PRISMAフローダイアグラムでプロセスをまとめた。

Table 1 Clinical questionの分類

バックグラウンドクエスチョン(background question, BQ)標準的な知識の提示・情報提供を行い,推奨は提示しない。

フォアグラウンドクエスチョン(foreground question, FQ) GRADE推奨GRADE システムに則ってシステマティックレビューを行い,得られたエビデンスをもとに提示された推奨。

グッドプラクティスステートメント(good practice statement, GPS)介入による有益性がその有害性を上回ることが極めて常識的で,RCTが倫理的に実施不可能であり,かつ強い推奨を出すべきと委員会が判断した推奨。フューチャーリサーチクエスチョン(future research question, FRQ)重要課題だが推奨作成に十分なエビデンスがないため,推奨は提示しない。

GRADE, Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation.

Table 2 ガイドラインで採用した基本アウトカム

アウトカム番号アウトカムの内容益か害か重要度O1死亡率益9 O2 ICU滞在期間益8 O3人工呼吸期間益8 O4感染症合併症害8

O5退院時または以降退院後1年までの身体機能評価(ADL,QOL,BI,FIM,筋力,SPPB,6分間歩行距離,SF-36/8,EQ5D5Lなど)益8 O6入院期間中または退院後の筋肉量変化(身体計測法,エコー,CT,体組成計を用いた評価など)益7 O7すべての有害事象害7 ADL, activities of daily living; BI, barthel index; FIM, functional independence measure; SPPB, short physical performance battery; SF-36/8, MOS 36/8-Item Short-Form Health Survey; EQ5D5L, EuroQol-5 dimensions-5 level.
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-6-あるいは害で一致している場合にはアウトカムの中で

最も高いエビデンスの確実性を,一致していない場合にはアウトカムの中で最も低いエビデンスの確実性を採用した。

これらの手順で作成されたGRADE推奨,GPS,BQに対する回答は,統括委員会の合意形成を経て確定した。合意形成には修正Delphi法を用い,委員は各案に対し1〜9点(1点:同意できない,9点:同意できる)を独立して投票した。投票は匿名で実施し,該当するCQに関連するCOIのある委員および該当するCQの推奨文作成に直接関与した委員は投票を棄権した。中央値(median)7点以上かつ見解不一致指数(disagreement index,DI)0.4未満を合意形成基準とし,非合意であった場合は担当ワーキンググループおよび担当の統括委員会委員によりEtDと推奨文の改訂を行った。合意基準を満たすまで,修正と投票を繰り返した。また,合意形成に至ったものの,投票時に委員より推奨に対する重大な意見が提出された場合,統括委員会で議論を行い総意にて修正を行った。CQの微修正は統括委員会の総意のもとで行った。

2.3 用語説明

本ガイドラインでの用語を以下のように定義する。栄養療法(nutrition therapy):病態の治療を目的として,経静脈栄養もしくは経腸栄養を実施し栄養素を投与すること。栄養障害(nutritional disorder):栄養素の必要量と摂取量の不均衡(不足または過剰)により,身体組成の変化および機能低下が引き起こされた状態。低栄養(malnutrition):身体にとって正常な代謝や発育に必要な栄養素が量的ないし質的に不足することにより病的症状が現れる状態。過体重および肥満:脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態。BMI 25以上30 kg/m2未満を過体重(overweight),30以上35 kg/m2未満を肥満(obesity),35 kg/m2以上を高度肥満(severe obesity)と分類する。

2.2.4 データ抽出とバイアスリスクの評価

データ抽出は,標準化したデータ抽出フォームを用いて2名以上のシステマティックレビューチームにより行った。研究ごとに研究デザイン,研究対象者参入基準,除外基準,症例数,介入とコントロール,アウトカムを抽出し,著者への問い合わせは行わなかった。

バイアスリスクの評価は,2名以上のシステマティックレビューチームにより行った。研究・アウトカムごとに,RoB 2.0の手法に則って5つのドメインごとのバイアスリスクを評価した。バイアスの潜在性の程度は,high,low,または unclear と判断し,highと判断された場合はその理由も記載した。バイアスリスクの評価はrisk of bias表にまとめた。

2.2.5 メタアナリシスとエビデンスの確実性の評価

Revman 5を用いて抽出されたアウトカムデータのメタアナリシスを行った。また,各アウトカムにおいて,メタアナリシスの結果を包括したエビデンスの確実性(certainty of evidence, CoE)の評価を,GRADEアプローチに基づいて行った。すなわち,Risk of bias,非直接性,非一貫性,不精確さ,出版バイアス,そのほかの6項目を評価し,CoEをA〜Dで評価した。その結果は,ガイドライン作成ツール(guideline development tool, GDT)オンラインソフト(http://gdt.guidelinedevelopment.org)を用いてエビデンスプロファイルとしてまとめた。CoEは高を基準とし,評価項目に深刻な問題があった場合にダウングレードし,高,中,低,非常に低に分類した(Table 3)。

2.2.6 推奨の策定と合意形成

システマティックレビューによって作成されたエビデンスプロファイルを基に,ワーキンググループがevidence to decision(EtD)テーブルを用いてGRADE推奨を作成した。EtDテーブルでは効果のバランス,エビデンスの確実性,価値観,費用対効果,必要資源量,容認性,実行可能性が評価され,総合的な評価によって推奨,弱い推奨,弱い非推奨,非推奨のいずれかが決定された。推奨文の推奨の強さとエビデンスの確実性はTable 4の通りに表現した。推奨文のエビデンスの確実性は,効果のバランスにおいてアウトカムが益

Table 3 エビデンスの確実性の定義高効果の推定値に強く確信がある中効果の推定値に中程度の確信がある低効果の推定値に対する確信は限定的である非常に低効果の推定値がほとんど確信できないTable 4 推奨文における推奨の強さとエビデンスの確実性

推奨の強さ

1 強い推奨・非推奨

2 弱い推奨・非推奨

エビデンスの確実性

A高B中C低D非常に低
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-7-間欠投与(Intermittent feeding):1日に数回(例えば

2〜4回)に分けてある程度の時間(例えば1〜3時間)をかけて経腸栄養剤を投与する方法。

文 献

1) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 2) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 3) Minds 診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会.

Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0 .公益財団法人日本医療機能評価機構EBM医療情報部.2021. [cited 2021 Mar 22]. Available from: https://minds.jcqhc. or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/ pdf/all_manual_.pdf

3 CQ一覧表と診療フロー

本ガイドラインにおけるCQ一覧表(Table 5)とガイドラインに基づく診療フロー(Fig. 1〜3)を示す。

BMIに関わらず,肥満に起因ないし関連する健康障害を合併している場合を病的肥満(morbid obesity)とする。経腸栄養(enteral nutrition):腸管を通して栄養を投与すること。広義には経口栄養を含む。経管栄養(enteral tube feeding):チューブや瘻孔を介して,口腔より以遠の消化管に栄養を投与する方法。経静脈栄養(parenteral nutrition):静脈内に栄養を投与すること。中心静脈栄養と末梢静脈栄養がある。補足的経静脈栄養(supplemental parenteral nutrition):経腸栄養での栄養投与量が不足している場合に経静脈栄養を併用すること。経胃投与(gastric feeding):経鼻胃管や胃瘻から胃内に投与する経腸栄養。幽門後投与(post-pyloric feeding):経鼻十二指腸チューブ,経鼻空腸チューブ,空腸瘻などから幽門後に投与する経腸栄養。持続投与(continuous feeding):経腸栄養ポンプを用いて,一定速度で24時間かけて経腸栄養剤を投与する方法。

WG1. 栄養療法の一般的戦略

CQ1-1:重症患者において,栄養投与プロトコルを使用した栄養療法を行うべきか?重症患者に対して,栄養投与プロトコルを用いた栄養療法を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実性=中)。

CQ 1-2:重症患者において,経静脈栄養よりも経腸栄養を行うべきか?重症患者において,経静脈栄養よりも経腸栄養を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

CQ1-3:重症患者の治療初期において,エネルギー投与量は消費エネルギー量よりも意図的に少なくすべきか?重症患者の治療初期において,エネルギー投与量は消費エネルギーよりも意図的に少なくしないことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実性=中)。

CQ1-4:重症患者において,標準を超えるタンパク質量(>1.2 g/kg/day)を投与すべきか?重症患者において,標準を超えるタンパク質量(>1.2 g/kg/day)を投与することを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ 1-5:重症患者において,集中治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始すべきか?重症患者において集中治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することを強く推奨する(GRADE 1B:エビデンスの確実性=中)。

CQ1-6:循環動態不安定な重症患者において経腸栄養を行うことは,経腸栄養を行わない,もしくは経静脈栄養を行う場合と比較して有用か?循環動態不安定な重症患者において経腸栄養を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ1-7:経腸栄養での栄養投与量が不足している重症患者に,経静脈栄養を併用すべきか?経腸栄養での栄養投与量が不足している重症患者に経静脈栄養を併用しないことを弱く推奨する(GRADE 2A:エビデンスの確実性=高)。

CQ 1-8:重症患者の経腸栄養において,経胃投与よりも幽門後投与をすべきか?重症患者の経腸栄養において,経胃投与よりも幽門後投与をすることを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ 1-9:重症患者の経胃栄養投与において,間欠投与よりも持続投与を行うべきか?重症患者の経胃栄養投与において,間欠投与よりも持続投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ1-10:経腸栄養が行えない重症患者における経静脈栄養の考え方は?一定期間経腸栄養が行えない重症患者では,唯一の栄養療法の手段となる経静脈栄養を行わないことは予後を悪化させるという考え方がある(BQに対する情報提示)。

Table 5 CQ一覧表
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-8-

WG3. 栄養モニタリングと特定の病態

CQ3-1:重症患者に栄養療法を行う前に栄養評価は必要か?重症患者の栄養療法を行う前に栄養評価を行うことは必要である(GPS)。

CQ3-2:重症患者において消費エネルギー量の推定に間接熱量測定を実施すべきか?消費エネルギー量の推定に間接熱量測定を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実性=中)。

CQ3-3:重症患者における窒素バランスの役割は?窒素バランスは,生体内のタンパク質の増減を反映し,タンパク同化を評価する一つの指標となり得る(BQに対する情報提示)。

CQ3-4:経腸栄養を行っている重症患者に対する腸管不耐の評価方法は?胃残量や胃残渣の性状,腹部理学所見,腹部超音波検査・腹部X線検査などの画像所見,乳酸値などを組み合わせて評価する方法がある(BQに対する情報提示)。

CQ3-5:経腸栄養を行っている重症患者が誤嚥するリスクを下げる方法は?持続投与,チューブ先端の位置を幽門後とする,体位の工夫,薬物療法などがある(BQに対する情報提示)。

CQ3-6:重症患者の下痢,便秘への対策方法は?栄養製剤や投与方法の選択,薬物療法,排便管理システムを用いた方法などがある(BQに対する情報提示)。

CQ3-7:重症患者において,肥満や低体重を認めた場合の栄養療法の考え方は?肥満や低体重を認める重症患者では,現体重,理想体重,調整体重を用いてエネルギーやタンパク質の目標投与量を設定するなど,患者の状態に応じて個別に検討する(BQに対する情報提示)。

CQ3-8:重症患者において,Refeeding症候群に対する栄養療法の考え方は? Refeeding症候群特有のリスク評価を行い,発症リスクや発症後の症状,電解質異常の程度に応じたエネルギー制限,電解質のモニタリングおよび補正を検討する(BQに対する情報提示)。

CQ3-9:体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO),腹臥位呼吸療法(prone position, PP),腹部開放管理(open abdomen management, OAM)など特別な治療を行っている重症患者における栄養療法の考え方は? ECMO,PP,OAMなど特別な治療を行っている重症患者では,病態や病期,消化管の状態などを考慮し,可能であれば早期経腸栄養を行うなど,適切な栄養療法を提供する(BQに対する情報提示)。

WG2. 栄養療法における特定の栄養素

CQ2-1:重症患者において,ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養を行うべきか?重症患者において,ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

CQ2-2:重症患者において,グルタミンを強化した経腸栄養を行うべきか?重症患者において,グルタミンを強化した経腸栄養を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ2-3:重症患者において,半消化態栄養剤または天然濃厚流動食より,消化態栄養剤または成分栄養剤による経腸栄養を行うべきか?重症患者において,窒素源を意図した消化態栄養剤または成分栄養剤による経腸栄養を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ2-4:重症患者において,アルギニンを強化した経腸栄養剤を投与すべきか?経腸栄養を実施している重症患者において,アルギニンを強化した経腸栄養剤を投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ2-5:重症患者において,高脂質/低糖質の経腸栄養剤を投与すべきか?重症患者において,高脂質/低糖質の経腸栄養剤を投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

CQ2-6:経静脈栄養中の重症患者に対して脂肪乳剤の静脈投与を行うか?経静脈栄養中の重症患者に対して脂肪乳剤の静脈投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ2-7-1:重症患者において,プレバイオティクスを投与すべきか?重症患者において,プレバイオティクスを投与することを強く推奨する(GRADE 1B:エビデンスの確実性=中)。

CQ2-7-2:重症患者において,プロバイオティクスを投与すべきか?重症患者において,プロバイオティクスを投与することを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

CQ2-7-3:重症患者において,シンバイオティクスを投与すべきか?重症患者において,シンバイオティクスを投与することを強く推奨する(GRADE 1C:エビデンスの確実性=低)。

CQ2-8:重症患者の栄養療法におけるビタミン・微量元素補充の考え方は?重症患者ではビタミン・微量元素欠乏のリスクが高く,適切に測定・補充を検討する。また,深刻な欠乏が疑われない限り,1日必要量を大きく超えるような積極的補充には注意を要する(BQに対する情報提示)。

Table 5 CQ一覧表(つづき)
p.10
-9-

Table 5 CQ一覧表(つづき)

WG4. 小児の栄養療法

CQ4-1:小児重症患者の栄養アセスメントを行うか?小児重症患者に対して栄養アセスメントを行う(GPS)。

CQ4-2:小児重症患者の治療初期におけるエネルギー投与量の考え方は?小児重症患者の治療初期では,消費エネルギーの60%〜70%程度あるいは消費エネルギー量を超えない投与量を適切とする考え方がある(BQに対する情報提示)。

CQ4-3:小児重症患者において,標準よりも多いタンパク質量(>2.0 g/kg/day)を投与するか?小児重症患者において,標準よりも多いタンパク質量(>2.0 g/kg/day)を投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ4-4:小児重症患者に対して治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始するか?小児重症患者に対して治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ4-5:小児重症患者に対して治療開始後48時間以内に経静脈栄養を開始するか?(FRQ)

CQ4-6:小児重症患者の経腸栄養において,第一選択として経胃投与よりも幽門後投与をすべきか?小児重症患者の経腸栄養において,幽門後投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

CQ4-7:小児重症患者の経胃栄養投与において,持続投与よりも間欠投与を行うべきか?小児重症患者における経胃栄養投与法として,経胃間欠投与をすることを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

CQ4-8:人工乳投与を行う小児重症患者に高濃度人工乳投与を行うか?小児重症患者に対して,0.9〜1.0 kcal/mL程度の高濃度人工乳の投与を弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

GRADE, Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation; CQ, clinical question; BQ, background question; GPS, good practice statement; FRQ, future research question.

Fig. 1 重症成人患者への栄養投与の経路および方法重症成人患者への栄養投与の経路および方法に関するガイドラインでの回答が診療フローで示されている。緑のボックスは推奨される回答,赤のボックスは推奨されない回答,白のボックスはバックグラウンドクエスチョンに対する回答を示している。CQ, clinical question; GPS, good practice statement.

CQ1-1: 栄養投与プロトコルの使用

CQ3-1: 栄養評価(GPS)

CQ1-2: 経腸栄養>経静脈栄養

循環動態不安定CQ1-10: 一定期間経腸栄養が行えない

場合,経静脈栄養を行わないことは

予後を悪化させる可能性がある

CQ1-7: 非推奨:経腸栄養投与量不足時の

経静脈栄養の併用

特定の病態への対応CQ3-4: 経腸栄養時の腸管不耐の評価CQ3-5: 誤嚥のリスク回避CQ3-6: 下痢と便秘の対策

CQ1-6: 非推奨:循環動態不安定な

患者への経腸栄養

CQ1-5: 集中治療開始後48 時間以内の

経腸栄養

CQ1-8: 幽門後投与>経胃投与

CQ1-9: 持続投与>間欠投与

経腸栄養

循環動態安定経静脈栄養
p.11
-10-

Fig. 2 重症成人患者への栄養投与量と特定の栄養素重症成人患者への栄養投与量と特定の栄養素に関するガイドラインでの回答が診療フローで示されている。緑のボックスは推奨される回答,赤のボックスは推奨されない回答,白のボックスはバックグラウンドクエスチョンに対する回答を示している。CQ, clinical question; GPS, good practice statement; ECMO, extracorporeal membrane oxygenation; PP, prone position; OAM, open abdomen management.

CQ3-1: 栄養評価(GPS)

特定の病態への対応CQ3-7: 肥満や低体重を認める患者CQ3-8: refeeding 症候群CQ3-9: ECMO,PP,OAM などを行っている患者

CQ3-2: 間接熱量測定

CQ3-3: 窒素バランスは,タンパク同化の指標と

なるかもしれない

CQ1-3: 非推奨:意図的なエネルギー制限

CQ1-4: 標準を超えるタンパク質量の投与

(>1.2 g/kg/day)

CQ2-7-1: プレバイオティクスの投与CQ2-7-3: シンバイオティクスの投与

CQ2-1: ω-3 系脂肪酸を強化した経腸栄養

CQ2-7-2: プロバイオティクスの投与

CQ2-2: 非推奨:グルタミンを強化した経腸栄養剤CQ2-3: 非推奨:窒素源を意図した消化態栄養剤/ 成分栄養剤

CQ2-4: 非推奨:アルギニンを強化した経腸栄養剤

CQ2-5: 非推奨:高脂質/ 低糖質の経腸栄養剤

CQ2-6: 非推奨:脂肪乳剤の静脈投与

CQ2-8: ビタミン・微量元素の測定と補充を検討する,

1 日必要量を大きく超える積極的補充には注意する
p.12
-11-

Fig. 3 小児重症患者への栄養療法小児重症患者への栄養療法に関するガイドラインでの回答が診療フローで示されている。緑のボックスは推奨される回答,赤のボックスは推奨されない回答,白のボックスはバックグラウンドクエスチョンに対する回答を示している。CQ, clinical question; GPS, good practice statement; FRQ, future research question.

CQ4-1: 栄養評価(GPS)

CQ4-2: 消費エネルギー量の60% ~70%

あるいは消費エネルギー量を超えない

投与量を適切とする考えがある

CQ4-3: 非推奨:標準よりも多い

タンパク質量(>2.0 g/kg/day)

CQ4-4: 治療開始後48 時間以内の

経腸栄養

CQ4-6: 非推奨:幽門後投与

CQ4-7: 間欠投与>持続投与

CQ4-8: 高濃度人工乳の投与

(0.9 ~1.0 kcal/mL) CQ4-5: 治療開始後48 時間以内に経静脈栄養を開始するか?(FRQ)
p.13
-12-介入が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

介入にあたり患者の自己負担はないことから,患者の視点から許容できる。現行の早期栄養介入管理加算の要件に含まれている介入であり,現行の診療体制において許容できると考えられる。また,介入のために新たに必要な医療機器はなく,医療機関の経営者の視点からも許容できる。さらに,プロトコル実施に対する医療従事者の労働負担も大きくないと思われる。

(4)判断の要約(Table 1-1-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン20228),ESPENガイドライン20239)では栄養投与プロトコルの使用に対する推奨はない。

(6)実施に関わる検討事項

重症患者に対する標準的な栄養療法を適切な時期に提供するために,開始・中止基準の設定や栄養設計,合併症管理に関わるすべての医療従者でプロトコルの内容を検討する必要がある。そのためにも多職種で十分な連携を発揮していくことが重要である。

文 献

1) Wang L, Wang Y, Li HX, et al. Optimizing enteral nutrition delivery by implementing volume-based feeding protocol for critically ill patients: an updated metaanalysis and systematic review. Crit Care 2023;27:173. 2) Martin CM, Doig GS, Heyland DK, et al. Multicentre, cluster-randomized clinical trial of algorithms for criticalcare enteral and parenteral therapy (ACCEPT). CMAJ 2004;170:197-204. 3) Doig GS, Simpson F, Finfer S, et al. Nutrition Guidelines Investigators of the ANZICS Clinical Trials Group. Effect of evidence-based feeding guidelines on mortality of critically ill adults: a cluster randomized controlled trial. JAMA 2008;300:2731-41. 4) Heyland DK, Murch L, Cahill N, et al. Enhanced proteinenergy provision via the enteral route feeding protocol in critically ill patients: results of a cluster randomized trial. Crit Care Med 2013;41:2743-53. 5) Chinda P, Poomthong P, Toadithep P, et al. The implementation of a nutrition protocol in a surgical intensive care unit; a randomized controlled trial at a tertiary care hospital. PLoS One 2020;15:e0231777. 6) Yeh DD, Ortiz LA, Lee JM, et al. PEP uP (Enhanced Protein-Energy Provision via the Enteral Route Feeding Protocol) in Surgical Patients-A Multicenter Pilot Randomized Controlled Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:197-204. 7) Ke L, Lin J, Doig GS, et al. Chinese Critcal Care Nutrition

WG1. 栄養療法の一般的戦略

CQ1-1:重症患者において, 栄養投与プロトコルを

使用した栄養療法を行うべきか?

Answer:重症患者に対して, 栄養投与プロトコ

ルを用いた栄養療法を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実性=中)。

(1)背景

重症患者では,エネルギーやタンパク質における目標栄養量達成が困難であり,栄養供給量が少なくなりやすい。そのため,重症患者へ栄養投与を行う際,経腸栄養や経静脈栄養の開始基準,経腸栄養剤の投与法,特定の栄養剤の使用,腸管不耐や合併症への対処等について,事前にまとめた手順(プロトコル)があることが望ましい。栄養投与プロトコルの臨床効果は過去に散見されており,特に目標栄養投与量を改善するというプロトコルが多く開発されている1) 。しかし,このようなプロトコルの実装が患者の転帰改善につながるかどうかは明らかにされておらず,プロトコルを用いた栄養療法の有効性を明確にすることは,重症患者に対する栄養療法を考えるうえで重要である。

(2)効果のバランス(Table 1-1-1)

4件のcluster RCTと2件のindividual RCTを用いたメタアナリシスを行った2)〜7) 。重症患者の栄養療法にエビデンスに基づいたプロトコルを用いることによる望ましい効果として,肺炎発症(2 RCT,n=576)に関する効果推定値はリスク差(risk difference,RD) 1,000人あたり16人少ない(95% CI:65人少ない〜148人多い),人工透析日数(2 RCT,n=2,970)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり29日短い(95% CI:60日短い〜2日長い),経腸栄養開始時間(6 RCT, n=3,854)に関する効果推定値は平均差(mean difference,MD)0.4日短い(95% CI:0.6日短い〜0.1日短い)であった。死亡,ICU滞在日数に関してはわずかな効果を認めた。そのため,望ましい効果は「小さい」と判断した。一方,望ましくない効果として,人工呼吸期間(4 RCT,n=2,173)に関する効果推定値は標準化平均差(standardized mean difference, SMD)0.3長い(95% CI:0.2短い〜0.7長い),有害事象として嘔吐(2 RCT,n=576)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり9人多い(95% CI:18人少ない〜65人多い)であり,望ましくない効果は「わずか」と判断した。以上より,効果のバランスは「おそらく
p.14
-13-

Table 1-1-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照栄養投与プロトコル

死亡2,192 (6 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高227/1,072 (21.2%) 274/1,120 (24.5%) RR 0.96 (0.82〜1.14) 1,000人あたり8人少ない(38人少ない〜30人多い) ICU滞在日数1,092 (5 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻bなし低537 555 − MD 0.41日短い(1.25日短い〜0.43日長い)人工呼吸期間2,173 (4 RCT)深刻a深刻c深刻でない深刻でないなし低1,076 1,097 − SMD 0.27長い(0.17短い〜0.71長い)人工透析日数(/10 patient-days) 2,970 (2 RCT)深刻でない深刻でない深刻d深刻bなし低1,473 1,497 RD –0.29 (–0.60〜0.02) 1,000人日あたり29日短い(60日短い〜2日長い)肺炎

576 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 低25/294 (8.5%) 22/282 (7.8%) RR 0.81 (0.24〜2.74) 1,000人あたり16人少ない(65人少ない〜148人多い)

嘔吐

576 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 低12/294 (4.1%) 14/282 (5.0%) RR 1.22 (0.57〜2.60) 1,000人あたり9人多い(18人少ない〜65人多い)

経腸栄養開始時間(日) 3,854 (6 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻でないなし中1,906 1,948 − MD 0.35日短い(0.58日短い〜0.12日短い) MD, 平均差; RR, リスク比; RD, リスク差; SMD, 標準化平均差。a . バイアスリスクのため1段階ダウングレードした。b . 不精確さのため1段階ダウングレードした(95% CIが広い)。c . 異質性のため1段階ダウングレードした(I2=97%)。d . 代理アウトカムのため1段階ダウングレードした。

Table 1-1-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの

増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない

Trials Group (CCCNTG). Actively implementing an evidence-based feeding guideline for critically ill patients (NEED): a multicenter, cluster-randomized, controlled trial. Crit Care 2022;26:46. 8) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for

the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 9) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89.
p.15
-14-量(20 kcal/kg/day)で経腸栄養を行った研究を除い

た解析5),8)〜41),バイアスリスクがlowまたはsome concernsである研究のみを対象とした解析5),6),12),13),18),20),24),26),27),35)〜37),40),44),2012年以降の研究のみを対象とした解析5),6),19),23)〜25),30),33),36),41)]と3つのサブグループ解析(急性膵炎以外の内科疾患患者5),6),16),22),26),27),31),急性膵炎患者15),17),19),23),24),33),35),37),外傷患者9),10),12)〜14),29),30),34),38),40),44))を実施し参考にした。感度分析の結果,「循環動態不安定な患者に対して通常の投与量(20 kcal/kg/day)で経腸栄養を行った研究を除いた解析」では望ましい効果が望ましくない効果を上回ると考えられ,「バイアスリスクがlowまたはsome concernsである研究のみを対象とした解析」では望ましくない効果が望ましい効果を上回ると考えられ,「2012年以降の研究のみを対象とした解析」では望ましい効果と望ましくない効果は同等と考えられた。またサブグループ解析の結果,「急性膵炎患者」と「外傷患者」では望ましい効果が望ましくない効果を上回ると考えられたが,「急性膵炎以外の内科疾患患者」では望ましくない効果が望ましい効果を上回ると考えられた。

3つの感度分析のうち,2つは本解析と異なる結果であり,本解析の結果の堅牢性は十分ではない可能性が示唆された。しかしながら,本解析と異なる結果となった2つの感度分析はいずれも,望ましい効果と望ましくない効果の差はわずかであり,本解析の堅牢性を大きく損なうものではないと考えた。またサブグループ解析の結果より,経腸栄養の効果は対象とする患者により異質性を有していることが示唆されたが,望ましい効果が望ましくない効果を上回った「急性膵炎患者」と「外傷患者」のエビデンスの確実性の多くは「非常に低」であり,さらに「急性膵炎以外の内科疾患患者」の望ましくない効果と望ましい効果の差はわずかであったことから,経腸栄養もしくは経静脈栄養のいずれかを強く支持する結果ではないと考えた。これらを踏まえ効果のバランスは,「介入も比較対照もいずれも支持しない」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

CALORIES trialで費用対効果が検討されている46) 。1 quality-adjusted life year(QALY)を20,000 £とした場合,経静脈栄養の1年間の純便益は-1,320 £ (95% CI:-3,709 £〜1,069 £)であり,経静脈栄養は経腸栄養より費用対効果は劣っている可能性が高いと結論付けている。ただしCALORIES trialは英国で行われた研究であり,栄養剤の価格や診療報酬が本邦と異なっており,本邦で同様のことが言える

CQ 1-2:重症患者において,経静脈栄養よりも経腸

栄養を行うべきか?

Answer:重症患者において,経静脈栄養よりも

経腸栄養を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

(1)背景

重症患者における経腸栄養は感染性合併症を低減させる可能性があると一般的に考えられている1) 。これは経静脈栄養が感染性合併症と関連する高血糖やoverfeedingを来しやすい一方で2),経腸栄養は腸細胞機能を改善させる可能性があることが要因とされている3),4) 。しかし近年の大規模RCTでは予後改善効果が示されていない5),6) 。むしろ経腸栄養は嘔吐や下痢,腸管虚血などの消化器合併症が増加することが指摘されている6),7) 。栄養投与経路の選択は栄養療法を決定するための重要なプロセスであり,近年行われた研究を含めて,経静脈栄養と経腸栄養のどちらが望ましいかを検討することは意義がある。そのため本CQを重要な臨床課題として取りあげた。

(2)効果のバランス(Table 1-2-1)

36件のRCT(n=6,908)5),6),8)〜41)と,それらRCTの二次解析文献42)〜45)を用いたメタアナリシスを行った。経腸栄養による望ましい効果として,ICU滞在日数(14 RCT,n=5,431)に関する効果推定値がMD 0.9日短い(95% CI:1.8日短い〜0.1日短い),人工呼吸期間(5 RCT,n=268)に関する効果推定値がMD 0.4日短い(95% CI:3.6日短い〜2.7日長い),敗血症(15 RCT,n=5,892)に関する効果推定値がRD 1,000人あたり28人少ない(95% CI:37人少ない〜15人多い),肺炎(18 RCT,n=5,943)に関する効果推定値がRD 1,000人あたり9人少ない(95% CI:32人少ない〜19人多い)であり,望ましい効果は「小さい」と判断した。一方,望ましくない効果として,90日死亡(3 RCT, n=4,800)に関する効果推定値がRD 1,000人あたり20人多い(95% CI:8人少ない〜48人多い),腸管虚血(3 RCT,n=4,861)に関する効果推定値がRD 1,000人あたり7人多い(95% CI:0人多い〜22人多い)であり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。以上より,経腸栄養の望ましい効果と望ましくない効果は拮抗していると考え,効果のバランスは「介入も比較対照もいずれも支持しない」と考えられた。

また効果のバランスを検討するうえで,3つの感度分析[循環動態不安定な患者に対して通常の投与
p.16
-15-されるため,食事療養負担額(1食あたり110円〜490

円)がかかる。一方,経静脈栄養の1日あたりの薬価は1,000〜2,000円程度である。また栄養チューブの挿入に関して,適切に行えば合併症の発生リスクは低い。中心静脈カテーテルの挿入に関して,稀ではあるが重大な合併症が報告されている47) 。さらに経腸栄養で用いられる栄養剤は,経静脈栄養で用いられるものと比べ,含有水分量が少なく,体内の水分バランスの調整は容易になると考えられる。以上を勘案した結果,経腸栄養の容認性はあると考えた。

これら費用対効果や必要資源量,容認性の結果を,効果のバランスに加えて総合的に判断して推奨の決定を行った。

(4)判断の要約(Table 1-2-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

欧州で作成されたESPENガイドライン2023では,早期(48時間以内)の経腸栄養が,早期の経静脈栄養

かは不明である。特に経静脈栄養剤は英国よりも薬価が安いため,上記研究ほどは費用対効果が良い可能性は低い。また経静脈栄養には中心静脈栄養のほかに末梢静脈栄養も含まれるが,経腸栄養を末梢静脈栄養と比較した場合は,さらに費用対効果が落ちる可能性がある。しかしながら,本邦で費用対効果を検討した研究はなく,どの程度費用対効果が異なるかは不明である。そのため,CALORIES trialの結果をもとに,経腸栄養の費用対効果は「おそらくよい」と考えた。

必要資源量に関して,経静脈栄養を実施するには中心静脈カテーテルの挿入やその管理,栄養製剤の選択,血糖管理など様々な負担が生じ,多くの物的・人的資源が必要となる。一方で,経腸栄養の実施には栄養チューブの挿入は必要なものの,そのほかの管理は容易であることが多く,必要資源量は経静脈栄養と比較して少ないと考えられる。以上から経静脈栄養と比較した場合,経腸栄養の資源利用は「中等度の減少」と考えられた。

容認性に関して,経腸栄養の多くは食事として提供

Table 1-2-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)経静脈栄養経腸栄養

90日死亡4,800 (3 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高955/2,399 (39.8%) 999/2,401 (41.6%) RR 1.05 (0.98〜1.12) 1,000人あたり20人多い(8人少ない〜48人多い)敗血症(菌血症を含む) 5,892 (15 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻でないなし中189/2,914 (6.5%) 122/2,978 (4.1%) RR 0.57 (0.43〜0.77) 1,000人あたり28人少ない(37人少ない〜15人多い)肺炎5,943 (18 RCT)深刻b深刻でない深刻でない深刻でないなし中379/2,970 (12.8%) 364/2,973 (12.2%) RR 0.93 (0.75〜1.15) 1,000人あたり9人少ない(32人少ない〜19人多い) ICU滞在日数5,431 (14 RCT)深刻c深刻d深刻でない深刻でないなし低2,722 2,709 − MD 0.94日短い(1.8日短い〜0.07日短い)人工呼吸期間

268 (5 RCT) 深刻e 非常に深刻f 深刻でない 非常に深刻g なし 非常に低 128 140 − MD 0.43日短い (3.6日短い〜2.73日短い)

1年後のEQ-5D 1,335 (1 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高676 659 − MD 0低い(0.03低い〜0.03 高い)腸管虚血4,861 (3 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高13/2,430 (0.5%) 32/2,431 (1.3%) RR 2.34 (1.07〜5.13) 1,000人あたり7人多い(0人多い〜22人多い) MD, 平均差; RR, リスク比; EQ5D5L, EuroQol-5Dimensions. a . 2つのkey論文(Harvey 2014, Reignier 2018, 合わせてWeight 32.9%)はSome concern,そのほかの5%以上のWeightを占める5文献(Borzotta 1994, Lam 2008, Doley 2009, Altintas 2011, Wang 2013, Fan 2016, 合わせてWeight 57%)がHigh risk of biasである。b . 2つのkey論文(Harvey 2014, Reignier 2018, 合わせてWeight 32.8%)はSome concern,そのほかの5%以上のWeightを占める6文献(Adams 1986, Hadley 1986, Borzotta 1994, Lam 2008, Aydogmus 2012, Fan 2016, 合わせてWeight 34%)がHigh risk of biasである。c . Weightが5%以上の7文献のうち3つ(Kalfarentzos 1997, Harvey 2014, Reignier 2018, 合わせてWeight 31.8%)がsome concern, 4つ(Kudsk 1992, Zhang 2005, Wan 2014, Takesue 2015, 合わせてWeight 52.4%)がHigh risk of biasである。d . 点推定値は研究間で異なりその相違がかなり大きい, 各CIの重なりがないとは言えない, 効果の方向が一定ではないとは言えない, ばらつきの割合は大きい(I2=87%), P< 0.00001 。e . バイアスのリスク:5文献中4文献(合わせてWeight 78.4%)がhigh risk of bias, 1文献(Kalfarentzos 1997, Weight 21.6)がsome concernである。f . 点推定値は研究間で異なりその相違がかなり大きい, 各CIの重なりがないとは言えない, 効果の方向が一定ではない, ばらつきの割合は大きい(I2=86%), P<0.00001 。g . 効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐ。
p.17
-16- 2018;6:CD012276. 8) Chen Z, Wang S, Yu B, et al. A comparison study

between early enteral nutrition and parenteral nutrition in severe burn patients. Burns. 2007;33:708-12. 9) Moore FA, Moore EE, Jones TN, et al. TEN versus TPN following major abdominal trauma--reduced septic morbidity. J Trauma 1989;29:916-22; discussion 922-3. 10) Takesue T, Takeuchi H, Ogura M, et al. A Prospective Randomized Trial of Enteral Nutrition After Thoracoscopic Esophagectomy for Esophageal Cancer. Ann Surg Oncol 2015;22 Suppl 3:S802-9. 11) Petrov MS, Kukosh MV, Emelyanov NV, et al. A randomized controlled trial of enteral versus parenteral feeding in patients with predicted severe acute pancreatitis shows a significant reduction in mortality and in infected pancreatic complications with total enteral nutrition. Dig Surg 2006;23:336-44;discussion 344-5. 12) Hadley MN, Grahm TW, Harrington T, et al. Nutritional support and neurotrauma: a critical review of early nutrition in forty-five acute head injury patients. Neurosurgery 1986;19:367-73. 13) Nataloni S, Gentili P, Marini B, et al. Nutritional assessment in head injured patients through the study of rapid turnover visceral proteins. Clin Nutr 1999;18:247-51. 14) Dunham CM, Frankenfield D, Belzberg H, et al. Gut failure--predictor of or contributor to mortality in mechanically ventilated blunt trauma patients? J Trauma 1994;37:30-4. 15) Aydoğmuş MT, Tomak Y, Tekin M, et al. Glutamine supplemented parenteral nutrition to prevent ventilatorassociated pneumonia in the intensive care unit. Balkan Med J 2012;29:414-8. 16) Mandragos C, Moukas M, Amygdalou A, et al. Gastrointestinal hormones and short-term nutritional schedules in critically ill patients. Hepatogastroenterology 2003;50:1442-5. 17) Rapp RP, Young B, Twyman D, et al. The favorable effect of early parenteral feeding on survival in headinjured patients. J Neurosurg 1983;58:906-12. 18) Adams S, Dellinger EP, Wertz MJ, et al. Enteral versus

parenteral nutritional support following laparotomy for trauma: a randomized prospective trial. J Trauma 1986;26:882-91.

と比べ,推奨されている48) 。一方で,米国で作成されたASPENガイドライン2022では,投与エネルギーが同等であれば入院後1週間は経腸栄養と経静脈栄養のどちらも許容されるとしている49) 。

(6)実施に関わる検討事項

循環動態が不安定な人工呼吸患者を対象とした研究において,経腸栄養群で消化器合併症が多く報告されているため,昇圧薬を使用している患者に経腸栄養を行う場合は,消化器合併症に留意する必要がある6) 。

文 献

1) 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン.日集中医誌 2016;23:185-281. 2) Ziegler TR. Parenteral nutrition in the critically ill patient. N Engl J Med 2009;361:1088-97. 3) Padar M, Starkopf J, Starkopf L, et al. Enteral nutrition and dynamics of citrulline and intestinal fatty acidbinding protein in adult ICU patients. Clin Nutr ESPEN 2021;45:322-32. 4) Piton G, Le Gouge A, Brulé N, et al. Impact of the route of nutrition on gut mucosa in ventilated adults with shock: an ancillary of the NUTRIREA-2 trial. Intensive Care Med 2019;45:948-56. 5) Harvey SE, Parrott F, Harrison DA, et al. CALORIES Trial Investigators. Trial of the route of early nutritional support in critically ill adults. N Engl J Med 2014;371:1673-84. 6) Reignier J, Boisramé-Helms J, Brisard L, et al. NUTRIREA-2 Trial Investigators; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) group. Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallelgroup study (NUTRIREA-2). Lancet 2018;391:133-43. 7) Lewis SR, Schofield-Robinson OJ, Alderson P, et al.

Enteral versus parenteral nutrition and enteral versus a combination of enteral and parenteral nutrition for adults in the intensive care unit. Cochrane Database Syst Rev

Table 1-2-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.18
-17- 37) Zhang K, Sun WB, Wang HF, et al. Early enteral and

parenteral nutritional support in patients with cirrhotic portal hypertension after pericardial devascularization. Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2005;4:55-9. 38) Wicks C, Somasundaram S, Bjarnason I, et al. Comparison of enteral feeding and total parenteral nutrition after liver transplantation. Lancet 1994;344:837-40. 39) Hui L, Zang K, Wang M, et al. Comparison of the Preference of Nutritional Support for Patients With Severe Acute Pancreatitis. Gastroenterol Nurs 2019;42:411-6. 40) Moore EE, Jones TN. Benefits of immediate jejunostomy feeding after major abdominal trauma--a prospective, randomized study. J Trauma 1986;26:874-81. 41) Louie BE, Noseworthy T, Hailey D, et al. 2004 MacLean- Mueller prize enteral or parenteral nutrition for severe pancreatitis: a randomized controlled trial and health technology assessment. Can J Surg 2005;48:298-306. 42) Kudsk KA, Minard G, Wojtysiak SL, et al. Visceral protein response to enteral versus parenteral nutrition and sepsis in patients with trauma. Surgery 1994;116:516-23. 43) Sadique Z, Harrison DA, Bear DE, et al. CALORIES trial investigators. Effectiveness and cost-effectiveness of early nutritional support via the parenteral versus the enteral route for critically ill adult patients. J Crit Care 2019;52:237-241. 44) Young B, Ott L, Twyman D, et al. The effect of nutritional support on outcome from severe head injury. J Neurosurg 1987;67:668-76. 45) Jones TN, Moore FA, Moore EE, et al. Gastrointestinal symptoms attributed to jejunostomy feeding after major abdominal trauma--a critical analysis. Crit Care Med 1989;17:1146-50. 46) Harvey SE, Parrott F, Harrison DA, et al. A multicentre, randomised controlled trial comparing the clinical effectiveness and cost-effectiveness of early nutritional support via the parenteral versus the enteral route in critically ill patients (CALORIES). Health Technol Assess 2016;20:1-144. 47) Japan Mediacal Safety Research Organiization. Analysis of Deaths Related to “Insertion/Removal of Central Venous Catheters” -Second report (Revised edition)-. 2023. [cited 2024 Dec 28]. Available from: https://file.medsafe. or.jp/files/teigen17english.pdf 48) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 49) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for

the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41.

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with Parenteral Nutrition Treatment for Severe Traumatic Brain Injury: Effects on Immune Function, Nutritional Status and Outcomes. Chin Med Sci J 2016;31:213-20.
p.19
-18-者の治療初期のエネルギー投与量の目標は異なり2),3),

一定の見解には至っていない。以上のように重症患者の急性期のエネルギー投与量の多寡による有害性を考慮した,適切な投与量の範囲には議論があり,初期の栄養投与量を消費エネルギー量よりも意図的に少なく設定するべきかは重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス(Table 1-3-1)

全体で27件のRCTを用いたメタアナリシスを行った4)〜30) 。エネルギー投与量を消費エネルギー量と同等あるいはそれ以上に設定した場合を比較対照とし,少なく設定した場合を介入としたとき,介入による望ましい効果として,90日死亡(7 RCT,n=10,197)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり6人少ない(95% CI:20人少ない〜10人多い),ICU滞在日数(22 RCT, n=9,339)に関する効果推定値はMD 0.04日短い(95% CI:1.2日短い〜1.2日長い),すべての感染性合併症(10 RCT,n=5,941)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり8人少ない(95% CI:53人少ない〜45人多い),すべての有害事象(3 RCT,n=4,189)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり3人少ない(95% CI:10人少ない〜9人多い),嘔吐(4 RCT,n=5,940)に関す

CQ1-3:重症患者の治療初期において,エネルギー

投与量は消費エネルギー量よりも意図的に少なくすべきか?

Answer:重症患者の治療初期において,エネル

ギー投与量は消費エネルギーよりも意図的に少なくしないことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実性=中)。*ただし,対象とした研究では介入・比較対照群ともに目標投与量よりも総じて少なめに栄養が投与されたものを検討した結果であり,初期から消費エネルギーを目標とした量の栄養投与を推奨するものではない。

(1)背景

重症患者は栄養を自力摂取することが難しく,経腸あるいは経静脈的な栄養投与を必要とする場合が多いが,エネルギー投与量が過剰になった場合はoverfeedingによる害が危惧され,長期的に投与を控えれば累積するエネルギー負債による害も懸念される1) 。重症患者の急性期には異化反応を主体とした複雑な代謝動態を呈することから,転帰を改善するための最適な目標エネルギー投与量については,現在のところ不明な点が多い。各国のガイドラインでも重症患

Table 1-3-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)消費エネルギー量と同等かそれ以上の栄養投与

消費エネルギー量よりも少ない栄養投与

28日死亡7,960 (13 RCT)深刻でない深刻でない深刻a深刻でないなし中781/4,005 (19.5%) 830/3,955 (21.0%) RR 1.07 (0.98〜1.17) 1,000人あたり14人多い(4人少ない〜33人多い) 90日死亡10,197 (7 RCT)深刻でない深刻でない深刻a深刻でないなし中998/5,080 (19.6%) 974/5,117 (19.0%) RR 0.97 (0.90〜1.05) 1,000人あたり6人少ない(20人少ない〜10人多い) ICU滞在日数9,339 (22 RCT)深刻でない深刻b深刻a深刻でないなし低4,532 4,807 − MD 0.04日短い(1.23日短い〜1.15日長い)人工呼吸期間6,306 (13 RCT)深刻でない深刻b深刻a深刻でないなし低3,141 3,165 − MD 0.15日長い(0.67日短い〜0.96日長い)すべての感染性合併症5,941 (10 RCT)深刻でない深刻b深刻a非常に深刻cなし非常に低790/2,969 (26.6%) 705/2,972 (23.7%) RR 0.97 (0.80〜1.17) 1,000人あたり8人少ない(53人少ない〜45人多い)すべての有害事象4,189 (3 RCT)深刻でない深刻でない深刻a深刻でないなし低59/2,088 (2.8%) 54/2,101 (2.6%) RR 0.91 (0.63〜1.31) 1,000人あたり3人少ない(10人少ない〜9人多い)嘔吐5,940 (4 RCT)深刻でない深刻でない深刻a深刻でないなし低314/2,956 (10.6%) 301/2,984 (10.1%) RR 0.95 (0.82〜1.10) 1,000人あたり5人少ない(19人少ない〜11人多い) MD, 平均差; RR, リスク比。a . あらかじめ投与量が設定されて比較が行われた研究と,結果的に栄養投与量の多少が生じた研究が混在している。b . 非一貫性のため1段階グレードダウン。c . 95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐ。
p.20
-19-が高いまたは重度の栄養障害が予測される患者

[nutrition risk in critically ill(NRS)2002≧3またはnutritional risk screening(NUTRIC)score≧5]では,初期の24〜48時間以内に必要エネルギー量の80%以上の充足を目指すことを推奨している31) 。一方で, ASPENガイドライン2022では,初期の7〜10日目までのエネルギー投与量は臨床転帰に影響を与える根拠がないとして,12〜25 kcal/kg/dayの投与を推奨している2) 。ESPENガイドライン2018では,初期の栄養投与は経腸栄養でも経静脈栄養でも100%の投与は推奨せず,3〜7日をかけて充足を目指すことを推奨している3) 。

(6)実施に関わる検討事項

本CQで検討された個々のRCTでは介入群,対照群のいずれでも総じて設定された目標投与量よりも実際の平均栄養投与量は少ない。介入は研究により7〜14日間で実施されており,対照群でも初期から投与量が消費エネルギー量を超えている研究はない。このことから,治療初期の1週間程度にわたり意図的な投与量の減量は推奨されないが,初期から消費エネルギー量を目標とした量の栄養を投与することを推奨するものではない,ということに留意すべきである。

文 献

1) van Zanten ARH, De Waele E, Wischmeyer PE. Nutrition therapy and critical illness: practical guidance for the ICU, post-ICU, and long-term convalescence phases. Crit Care 2019;23:368. 2) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for

the provision of nutrition support therapy in the adult

る効果推定値はRD 1,000人あたり5人少ない(95% CI:19人少ない〜11人多い)であり,望ましい効果は「わずか」と判断した。一方,望ましくない効果としては,28日死亡(13 RCT,n=7,960)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり14人多い(95% CI:4人少ない〜33人多い),人工呼吸期間(13 RCT,n=6,306)に関する効果推定値はMD 0.2日長い(95% CI:0.7日短い〜1.0日長い)であり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。以上より,望ましい効果と望ましくない効果のバランスでは「比較対照が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

費用対効果については2件のRCTで検討されており8),9),消費エネルギー量よりも少ない投与を行った群では同等の栄養投与を目指した群よりも経静脈栄養にかかる医療費が少なくなる(€106±47 vs. €204± 119,P<0.0001)ことを示したものと,消費エネルギー量よりも少ない栄養投与を目指した群で経静脈栄養の開始を控えたことで患者1人あたり€1,110($1,600)の医療費が削減されたことを示したものがある。よって,費用対効果は「介入が優れている」と判断した。

以上より,費用対効果としては介入が優れているが,効果のバランスでは比較対照が優れていることから,総合的には患者アウトカムにつながる効果のバランスを優先して「比較対照が優れている」と判断した。

(4)判断の要約(Table 1-3-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2016では,栄養障害のリスク

Table 1-3-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.21
-20- adequacy and short-term clinical outcomes in critically ill patients using a weight-based equation: Secondary analysis of a cluster-randomized controlled trial. Front Nutr 2022;9:902986. 19) McCowen KC, Friel C, Sternberg J, et al. Hypocaloric

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p.22
-21-からの回復を遅らせ,臨床転帰を悪化させる可能性も

指摘されている4) 。最近のRCTでタンパク質投与量を増やすことにより腎機能障害のある患者では生命予後を悪化させる可能性が示唆された5) 。したがって,重症患者に対して標準を超えるタンパク質量を投与すべきかどうかは重要な臨床課題である。なお,タンパク質投与量は使用する栄養製剤にも規定されやすいなど目標と実際の投与量に乖離が生じることも多いため,本CQではタンパク質投与の目標量による比較を行うこととする。

(2)効果のバランス(Table 1-4-1)

10件のRCTを用いたメタアナリシスを行った5)〜14) 。標準を超えるタンパク質量(>1.2 g/kg/ day)を投与することによる望ましい効果として,ICU滞在日数(9 RCT,n=1921)に関する効果推定値はMD 0.5日短い(95% CI:1.5日短い〜0.5日長い),感染性合併症(3 RCT,n=249)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり37人少ない(95% CI:181人少ない〜165人多い),握力(2 RCT,n=141)に関する効

CQ1-4:重症患者において,標準を超えるタンパク

質量(>1.2 g/kg/day)を投与すべきか?

Answer:重症患者において,標準を超えるタン

パク質量(>1.2 g/kg/day)を投与することを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

(1)背景

多くのガイドラインにおいてICUで治療を行う重症患者では早期から目標を設定したタンパク質投与が推奨されている1),2) 。一般成人における標準的なタンパク質必要量は男性で50 g/day,推奨量として60〜65 g/day,女性で40 g/day,推奨量として50 g/dayとされているが3),重症病態ではより多くのタンパク質量の投与が筋肉量の維持や人工呼吸期間などの機能的転帰の改善,感染性合併症の減少につながることが観察研究などで報告されている一方で,逆に急性期においては標準を超えるタンパク質量の投与が細胞内損傷の修復に必要なオートファジーを抑制し,臓器不全

Table 1-4-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)標準あるいはそれより少ないタンパク質投与

標準を超えるタンパク質投与

短期死亡(≦60日) 1,825 (8 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻aなし中258/916 (28.2%) 271/909 (29.8%) RR 1.06 (0.92〜1.22) 1,000人あたり17人多い(23人少ない〜62人多い) ICU 滞在日数1,921 (9 RCT)深刻b深刻でない深刻でない深刻cなし低963 958 − MD 0.54日短い(1.53日短い〜0.45日長い)人工呼吸期間1,814 (8 RCT)深刻b深刻でない深刻でない深刻でないなし中911 903 − MD 0.01日長い(0.52日短い〜0.53日長い)感染性合併症

249 (3 RCT) 深刻d 深刻e 深刻でない 非常に深刻f なし 非常に低65/122 (53.3%) 59/127 (46.5%) RR 0.93 (0.66〜1.31) 1,000人あたり37人少ない(181人少ない〜165人多い)

握力

141 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻f なし 低 76 65 − MD 1.82 kg高い (1.43 低い〜5.07高い)

筋肉量減少

191 (3 RCT) 深刻d 深刻でない 深刻でない 深刻a なし 低 92 99 − SMD 0.62 低い (0.99 低い〜0.25低い)

下痢

310 (4 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻g 深刻c なし 低77/153 (50.3%) 66/157 (42.0%) RR 0.87 (0.70〜1.08) 1,000人あたり65人少ない(151人少ない〜40人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比; SMD, 標準化平均差。a . Optimal information sizeを満たさず1段階グレードダウン。b . アウトカムの測定におけるバイアスのため1段階グレードダウン。c . 相当な益とnullを含むため1段階グレードダウン。d . アウトカム・データの欠落によるバイアスのため1段階グレードダウン。e . 異質性が高い(I2=60%)ため1段階グレードダウン。f . 効果推定値の95% CIが相当な益と害の両方を含むため2段階グレードダウン。g . 下痢は使用する栄養剤によって変化する可能性があるため,アウトカムの評価に問題がある。そのため1段階グレードダウン。
p.23
-22-ンパク質量の投与を推奨している1) 。またASPENガ

イドライン2022では1.2〜2.0 g/kg/dayのタンパク質量の投与を推奨している2) 。いずれのガイドラインにおいても明確な推奨を示す根拠は乏しい(ESPENガイドライン2023ではGRADE 0,ASPENガイドライン2022ではエビデンスの質は低い)と判断され,重症患者に対してタンパク質投与量をどの程度に設定するかはさらなる RCTが必要であると記載されている。

(6)実施に関わる検討事項

対象となった RCT 5)において,標準を超えるタンパク質量投与群で2日目にはすでに目標投与量に達していた。この早い目標投与量の達成によって腎機能障害がある患者の予後を悪化させた可能性も考えられるため,タンパク質投与量の設定に加えて至適な投与量の達成時期についても考慮する必要がある。なお,本CQでは腎機能障害がある患者のサブグループ解析は行っていない。上記に加えて,重症患者に標準を超えるタンパク質量を投与する際には,投与経路(経静脈,経腸)についても考慮する必要がある。

文 献

1) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 2) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 3) 「日本人の食事摂取基準」策定検討会. 日本人の食事摂取基

準(2020年版). 2019. [cited 2024 August 9]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.

果推定値はMD 1.8 kg高い(95% CI:1.4 kg低い〜5.1 kg高い),筋肉量減少(3 RCT,n=191)に関する効果推定値はSMD 0.6低い(95% CI:1.0低い〜0.3低い),下痢(4 RCT,n=310)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり65人少ない(95% CI:151人少ない〜40人多い)であり,望ましい効果は「中」であると判断した。一方,望ましくない効果として,短期死亡(≦60日)(8 RCT,n=1,825)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり17人多い(95% CI:23人少ない〜62人多い),人工呼吸期間(8 RCT,n=1,814)に関する効果推定値はわずかであり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。以上より,それぞれの相対価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

容認性に関しては,タンパク質投与量の変更にあたり投与する経腸栄養剤の種類の変更,プロテインパウダーの使用,アミノ酸製剤の静脈投与が必要となる場合があり,患者の自己負担はわずかに上昇する可能性はあるものの,栄養剤のみの変更であり,これに関わるコストはわずかである。したがって,栄養剤変更を経済的視点から躊躇する理由は乏しいと考える。またこれらの変更に伴う合併症は考えにくく,患者視点からも許容できるだろう。

(4)判断の要約(Table 1-4-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ESPENガイドライン2023では1.3 g/kg/dayのタ

Table 1-4-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果

がよい様々採用研究なし

必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.24
-23- (1)背景

重症患者に対して早期の経腸栄養は,免疫臓器でもある腸管の構造・機能の維持によりbacterial translocationの予防や全身の免疫能の維持といった感染予防の観点からも様々な栄養ガイドラインで推奨されている。しかし,早期の定義は24〜72時間と様々であり,いずれの定義に関しても病態生理学的な根拠はない。いくつかの研究で,早期経腸栄養と死亡率低下との関連1)が示唆されたが,早期経腸栄養によって消化器合併症が増加し,ICU滞在日数が延長するとの報告2)もあり,一定の見解が得られていない3) 。したがって,集中治療における実行可能性が高い48時間を早期とし,重症患者において,集中治療開始後48時間以内の早期経腸栄養の益と害を評価することは,重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス(Table 1-5-1)

16件のRCTを用いたメタアナリシスを行った2),4)〜18) 。集中治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することによる望ましい効果として,ICU滞在日数(12 RCT,n=729)に関する効果推定値はMD 2.4日短い(95% CI:4.0日短い〜0.9日短い),人工呼吸期間(8 RCT,n=346)に関する効果推定値はMD 1.9日短い(95% CI:3.8日短い〜0.04日短い),感染性合併症(7 RCT,n=366)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり148人少ない(95% CI:231人少ない〜19人少ない),握力(1 RCT:n=100)に関する効果推定値はMD 1.1 kg高い(95% CI:0.2 kg高い〜2.0 kg高い)であり,望ましい効果は「大きい」と判断した。一方,効果推定値が望ましくない効果の方向性にあるものはなかったことから,望ましくない効果は「わずか」と判断した。以上より,効果のバランスは「介入が優れている」とした。

(3)その他の推奨根

一般的に早期の経腸栄養剤開始において,増加する費用はわずかであると考えられる。米国での先行研究において,ICU入室後24時間以内の経腸栄養開始は,急性期病院の総費用を患者1人あたりUS$14,462削減(95% CI:US$5,464〜23,669)させたと報告されている19) 。この報告は24時間以内と開始時期の違いはあるが,早期経腸栄養開始の費用対効果は大きいことが予測される。治療開始後48時間以内の経腸栄養開始は,栄養製剤を開始するタイミングの問題であり,多くの施設において実行可能と思われる。

pdf 4) Van Dyck L, Casaer MP, Gunst J. Autophagy and Its Implications Against Early Full Nutrition Support in Critical Illness. Nutr Clin Pract 2018;33:339-47. 5) Heyland DK, Patel J, Compher C, et al. EFFORT Protein Trial team. The effect of higher protein dosing in critically ill patients with high nutritional risk (EFFORT Protein): an international, multicentre, pragmatic, registry-based randomised trial. Lancet 2023;401:568-76. 6) Arabi YM, Al-Dorzi HM, Tamim H, et al. Saudi Critical Care Trials Group. Replacing protein via enteral nutrition in a stepwise approach in critically ill patients: A pilot randomized controlled trial (REPLENISH pilot trial). Clin Nutr ESPEN 2021;44:166-72. 7) Chapple LS, Summers MJ, Bellomo R, et al. TARGET Investigator Collaborative and the ANZICS Clinical Trials Group. Use of a High-Protein Enteral Nutrition Formula to Increase Protein Delivery to Critically Ill Patients: A Randomized, Blinded, Parallel-Group, Feasibility Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2021;45:699-709. 8) Dresen E, Siepmann L, Weißbrich C, et al. Is the amino acid pattern in medical nutrition therapy crucial for successfully attenuating muscle mass loss in adult ICU patients? Secondary analysis of a RCT. Clin Nutr ESPEN 2022;47:36-44. 9) Ferrie S, Allman-Farinelli M, Daley M, et al. Protein Requirements in the Critically Ill: A Randomized Controlled Trial Using Parenteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2016;40:795-805. 10) Fetterplace K, Deane AM, Tierney A, et al. Targeted Full Energy and Protein Delivery in Critically Ill Patients: A Pilot Randomized Controlled Trial (FEED Trial). JPEN J Parenter Enteral Nutr 2018;42:1252-62. 11) Jakob SM, Bütikofer L, Berger D, et al. A randomized controlled pilot study to evaluate the effect of an enteral formulation designed to improve gastrointestinal tolerance in the critically ill patient-the SPIRIT trial. Crit Care 2017;21:140. 12) Nakamura K, Nakano H, Naraba H, et al. High protein versus medium protein delivery under equal total energy delivery in critical care: A randomized controlled trial. Clin Nutr 2021;40:796-803. 13) van Zanten ARH, Petit L, De Waele J, et al. Very high intact-protein formula successfully provides protein intake according to nutritional recommendations in overweight critically ill patients: a double-blind randomized trial. Crit Care 2018;22:156. 14) Zhang Q, Zhou J, Zhu D, et al. Evaluation of the effect of

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CQ 1-5:重症患者において,集中治療開始後48時

間以内に経腸栄養を開始すべきか?

Answer:重症患者において集中治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することを強く推奨する(GRADE 1B:エビデンスの確実性=中)。*ただし,対象とした研究では,経腸栄養が使用できる患者のみが組み入れられていた。
p.25
-24-期に関するCQはない。ASPEN ガイドライン2016で

は,経口摂取が不可能な場合,経腸栄養を24〜48時間以内に開始することが推奨されている20) 。ESPENガイドライン2023では,経口摂取が不可能な場合,経腸

(4)判断の要約(Table 1-5-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2022では,経腸栄養の開始時

Table 1-5-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照48時間以内の経養開始

死亡(短期死亡)

666 (12 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 低44/327 (13.5%) 31/339 (9.1%) RR 0.74 (0.48〜1.15) 1,000人あたり35人少ない(70人少ない〜20人多い)

ICU滞在日数

729 (12 RCT)非常に深刻c 深刻d 深刻でない 深刻でない なし 非常に低 361 368 − MD 2.44日短い (4.01日短い〜0.87日短い)

人工呼吸期間

346 (8 RCT) 深刻a 深刻d 深刻でない 深刻でない なし 低 172 174 − MD 1.91日短い (3.77日短い〜0.04日短い)

感染性合併症

366 (7 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻e なし 低69/182 (37.9%) 43/184 (23.4%) RR 0.61 (0.39〜0.95) 1,000人あたり148人少ない(231人少ない〜19人少ない)

握力

100 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻f なし 中 50 50 − MD 1.07 kg高い (0.16 kg高い〜1.98 kg高い)

すべての有害事象(下痢)

205 (3 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻g なし 低9/98 (9.2%) 6/107 (5.6%) RR 0.61 (0.23〜1.66) 1,000人あたり36人少ない(71人少ない〜61人多い)

すべての有害事象(胃貯留)

257 (4 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻h なし 低28/123 (22.8%) 24/134 (17.9%) RR 0.81 (0.35〜1.85) 1,000人あたり43人少ない(148人少ない〜193人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比. a . ほとんどの文献のバイアスリスクが中または高である。b . Total sample size=666<800であり,optimal information size(OIS)を満たさない。c . ほとんどの文献のバイアスリスクが高である。d . I2は70%と高い。フォレストプロットの方向性は,含まれる研究間で少し異なっている。e . Total sample size=366<800であり,OISを満たさない。f . Total sample size=100<800であり,OISを満たさない。g . Total sample size=205<800であり,OISを満たさない。h . Total sample size=257<800であり,OISを満たさない。

Table 1-5-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.26
-25- by nasoenteric tubes in patients with perforation peritonitis. World J Surg 2005;29:1023-7;discussion 1027-8. 15) Hong S, Hou K, Huang X, et al. Clinical study of early

enteral nutrition on acute gastrointestinal injury and sequential organ failure. Lat Am J Pharm 2021;40:527-31. 16) Eyer SD, Micon LT, Konstantinides FN, et al. Early enteral feeding does not attenuate metabolic response after blunt trauma. J Trauma 1993;34:639-43; discussion 643-4. 17) Chourdakis M, Kraus MM, Tzellos T, et al. Effect of early compared with delayed enteral nutrition on endocrine function in patients with traumatic brain injury: an openlabeled randomized trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2012;36:108-16. 18) Chiarelli A, Enzi G, Casadei A, et al. Very early nutrition supplementation in burned patients. Am J Clin Nutr 1990;51:1035-9. 19) Doig GS, Chevrou-Séverac H, Simpson F. Early enteral nutrition in critical illness: a full economic analysis using US costs. Clinicoecon Outcomes Res 2013;5:429-36. 20) Taylor BE, McClave SA, Martindale RG, et al. Society of Critical Care Medicine; American Society of Parenteral and Enteral Nutrition. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). Crit Care Med 2016;44:390-438. 21) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89.

CQ1-6:循環動態不安定な重症患者において経腸栄

養を行うことは,経腸栄養を行わない,もしくは経静脈栄養を行う場合と比較して有用か?

Answer:循環動態不安定な重症患者において経

腸栄養を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

(1)背景

腸管使用可能な重症患者において治療開始48時間以内の早期経腸栄養の開始が推奨されている1),2) 。一方で,高用量の昇圧薬の使用,大量輸液が必要な場合など循環動態が不安定な重症患者においては,腸管虚血などの重大な消化器合併症を増加させるという報告もあり,安全性への懸念がある1),2) 。循環動態不安定な重症患者において経腸栄養を行うことの益と害のバランスを明確にすることは重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス(Table 1-6-1)

2件のRCTを用いたメタアナリシスを行った3),4) 。循環動態不安定な重症患者に経腸栄養を行うことによる望ましい効果として,ICU滞在日数(1 RCT,n= 2,410)に関する効果推定値はMD 1.0日短い(95%

栄養を遅らせるよりも,早期(48時間以内)に経腸栄養を開始することが推奨されている21) 。

(6)実施に関わる検討事項

今回の対象研究に組み入れられていた経腸栄養が開始できる患者に限っては,開始による望ましい効果が望ましくない効果を上回る可能性があり,容認性もおそらくあると考えられる。現状の結果を覆す大規模な研究が発表されない限りは,推奨が変更となる可能性は低い。

文 献

1) Tian F, Heighes PT, Allingstrup MJ, et al. Early Enteral Nutrition Provided Within 24 Hours of ICU Admission: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Crit Care Med 2018;46:1049-56. 2) Moses V, Mahendri NV, John G, Peter JV, et al. Early hypocaloric enteral nutritional supplementation in acute organophosphate poisoning--a prospective randomized trial. Clin Toxicol (Phila) 2009;47:419-24. 3) Fuentes Padilla P, Martínez G, Vernooij RW, et al. Early enteral nutrition (within 48 hours) versus delayed enteral nutrition (after 48 hours) with or without supplemental parenteral nutrition in critically ill adults. Cochrane Database Syst Rev 2019;2019:CD012340. 4) Yu A, Xie Y, Zhong M, et al. Comparison of the Initiation Time of Enteral Nutrition for Critically Ill Patients: At Admission vs. 24 to 48 Hours after Admission. Emerg Med Int 2021;2021:3047732. 5) Vicic VK, Radman M, Kovacic V. Early initiation of enteral nutrition improves outcomes in burn disease. Asia Pac J Clin Nutr 2013;22:543-7. 6) Sun JK, Zhang WH, Chen WX, et al. Effects of early enteral nutrition on Th17/Treg cells and IL-23/IL-17 in septic patients. World J Gastroenterol 2019;25:2799-808. 7) Sun JK, Mu XW, Li WQ, et al. Effects of early enteral nutrition on immune function of severe acute pancreatitis patients. World J Gastroenterol 2013;19:917-22. 8) Pupelis G, Selga G, Austrums E, et al. Jejunal feeding, even when instituted late,improves outcomes in patients with severe pancreatitis and peritonitis. Nutrition 2001;17:91-4. 9) Peck MD, Kessler M, Cairns BA, et al. Early enteral nutrition does not decrease hypermetabolism associated with burn injury. J Trauma 2004;57:1143-8; discussion 1148-9. 10) Nguyen NQ, Fraser RJ, Bryant LK, et al. The impact of delaying enteral feeding on gastric emptying, plasma cholecystokinin, and peptide YY concentrations in critically ill patients. Crit Care Med 2008;36:1469-74. 11) Nguyen NQ, Besanko LK, Burgstad C, et al. Delayed enteral feeding impairs intestinal carbohydrate absorption in critically ill patients. Crit Care Med 2012;40:50-4. 12) Kompan L, Vidmar G, Spindler-Vesel A, et al. Is early enteral nutrition a risk factor for gastric intolerance and pneumonia? Clin Nutr 2004;23:527-32. 13) Kompan L, Kremzar B, Gadzijev E, et al. Effects of early enteral nutrition on intestinal permeability and the development of multiple organ failure after multiple injury. Intensive Care Med 1999;25:157-61. 14) Kaur N, Gupta MK, Minocha VR. Early enteral feeding
p.27
-26-定値はRD 1,000人あたり4人少ない(95% CI:24人

少ない〜21人多い),嘔吐(2 RCT,n=2,441)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり31人少ない(95% CI:169人少ない〜581人多い)であり,望ましい効果は「小さい」と判断した。一方,望ましくない効果として,腸管虚血(2 RCT,n=2,441)に関する効果推定値

CI:1.7日短い〜0.3日短い),院内死亡(2 RCT,n= 2,441)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり87人少ない(95% CI:273人少ない〜396人多い),人工呼吸離脱期間(2 RCT,n=2,441)に関する効果推定値はMD 5.3日長い(95% CI:7.7日短い〜18.2日長い),人工呼吸器関連肺炎(2 RCT,n=2,441)に関する効果推

Table 1-6-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照群経腸栄養群

院内死亡2,441 (2 RCT)深刻でない深刻b深刻でない深刻でないなし中485/1,224 (39.6%) 500/1,217 (41.1%) RR 0.78 (0.31〜2.00) 1,000人あたり87人少ない(273人少ない〜396人多い) ICU滞在日数2,410 (1 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻でないなし中1,208 1,202 − MD 1日短い(1.68日短い〜0.32日短い)人工呼吸離脱期間2,441 (2 RCT)深刻a深刻b深刻でない非常に深刻dなし非常に低1,224 1,217 − MD 5.25日長い(7.72日短い〜18.22日長い) ICU関連感染症2,410 (1 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻cなし中194/1,208 (16.1%) 173/1,202 (14.4%) RR 0.90 (0.74〜1.08) 1,000人あたり16人少ない(42人少ない〜13人多い)人工呼吸器関連肺炎2,441 (2 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻cなし中119/1,224 (9.7%) 113/1,217 (9.3%) RR 0.96 (0.75〜1.22) 1,000人あたり4人少ない(24人少ない〜21人多い)腸管虚血2,441 (2 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻eなし低5/1,224 (0.4%) 19/1,217 (1.6%) RR 3.82 (1.43〜10.19) 1,000人あたり12人多い(2人多い〜38人多い)嘔吐2,441 (2 RCT)深刻a深刻b深刻でない深刻cなし非常に低255/1,224 (20.8%) 409/1,217 (33.6%) RR 0.85 (0.19〜3.79) 1,000人あたり31人少ない(169人少ない〜581人多い) MD, 平均差; RR, リスク比。a . バイアスリスクのため1段階ダウングレードした。b . 異質性が高く1段階ダウングレードした。c . 効果推定値の95% CIがnullと相当な益の両方をまたぐため1段階ダウングレードした。d . 効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐため2段階ダウングレードした。e . イベント数がoptimal information size(OIS)を満たさないため1段階ダウングレードした。

Table 1-6-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.28
-27- Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). JPEN J Parenter Enteral Nutr 2016;40:159-211. 2) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 3) Reignier J, Boisramé-Helms J, Brisard L, et al. NUTRIREA-2 Trial Investigators; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) group.Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallelgroup study (NUTRIREA-2). Lancet 2018;391:133-43. 4) Patel JJ, Kozeniecki M, Peppard WJ, et al. Phase 3 Pilot Randomized Controlled Trial Comparing Early Trophic Enteral Nutrition With "No Enteral Nutrition" in Mechanically Ventilated Patients With Septic Shock. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:866-73. 5) Ohbe H, Jo T, Matsui H, et al. Differences in effect of early enteral nutrition on mortality among ventilated adults with shock requiring low-, medium-, and high-dose noradrenaline: A propensity-matched analysis. Clin Nutr 2020;39:460-7. 6) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for

the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41.

CQ 1-7:経腸栄養での栄養投与量が不足している重

症患者に,経静脈栄養を併用すべきか?

Answer:経腸栄養での栄養投与量が不足してい

る重症患者に経静脈栄養を併用しないことを弱く推奨する(GRADE 2A:エビデンスの確実性=高)。*対象となった研究の介入期間は集中治療開始後7〜9日目までであり,それ以降の経静脈栄養併用に関しては本推奨の対象外である。

(1)背景

消化管が使用できるなら経腸栄養を行うことが生理的であるが,経腸栄養のみでは栄養投与量が不足することがしばしばある1),2) 。補足的に経静脈栄養を併用し栄養投与量が充足することで,予後改善が期待される一方で,overfeedingに陥る可能性もあり,感染性合併症の増加,高血糖等を生じる可能性がある3),4) 。そのため,経腸栄養での栄養投与量が不足している重症患者に対して経静脈栄養を併用する益と害を明らかにすることは重要である。

(2)効果のバランス(Table 1-7-1)

11件のRCTを用いたメタアナリシスを行った3)〜13) 。経腸栄養での栄養投与量が不足している重症患者に,

はRD 1,000人あたり12人多い(95% CI:2人多い〜38人多い)であり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。望ましい効果と望ましくない効果はどちらも「小さい」であり,効果のバランスは拮抗している。よって「介入も比較対照もいずれも支持しない」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

これまで循環動態が不安定な患者への経腸栄養は行わないことが推奨されてきた。一方,実臨床においては,循環動態が不安定であっても,患者の病態によっては少量から経腸栄養を行うということも行われている5) 。この理由として医療従事者の価値観の違いや患者の細かい病態の違いによる判断が影響していると考えられる。そのため,循環動態が不安定な患者に対して経腸栄養を行うことの容認性は「様々」になると判断した。

効果のバランスは「介入も比較対照もいずれも支持しない」であることから,介入を推奨できないため,今回の推奨に至った。

(4)判断の要約(Table 1-6-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2016や,ESPENガイドライン2023において循環不安定な場合は経腸栄養の実施を避けるべきとしている1),2) 。ASPENガイドライン2022には類似CQはない6) 。

(6)実施に関わる検討事項

採用した RCTは2つしかなく,大きな比重を占める論文がNUTRIREA-2試験であるので留意すべきである。昇圧薬必要量や経腸栄養剤投与量はそれぞれの研究で異なっていた。また,エビデンスの確実性は非常に低い。いずれの栄養療法を選択するかについては,個々の症例ごとにショックの改善の有無に伴う蘇生輸液量や昇圧薬投与量,血中乳酸値の変化などを考慮して慎重に検討することが一般的に行われているが,それらを明確に支持する臨床データはない。経腸栄養を開始できないと判断した場合の経静脈栄養の開始の是非に関しては,CQ1-10を参照のこと。

文 献

1) McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al. Society of

Critical Care Medicine; American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Guidelines for the Provision and
p.29
-28-害事象(2 RCT,n=4,760)の効果はわずかであったこ

とから,望ましい効果は「わずか」と判断した。一方,望ましくない効果として,ICU滞在日数(9 RCT,n= 6,873)に関する効果推定値はMD 0.5日長い(95%

経静脈栄養を併用することによる望ましい効果として,短期死亡(6 RCT,n=6,731),長期死亡(5 RCT, n=6,333),人工呼吸期間(8 RCT,n=6,874),SF-36 physical functioning domain(3 RCT,n=1,157),有

Table 1-7-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)経腸栄養補足的経静脈栄養

長期死亡(60-/90-day) 6,333 (5 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高475/3,176 (15.0%) 467/3,157 (14.8%) RR 0.99 (0.88〜1.11) 1,000人あたり1人少ない(18人少ない〜16人多い)短期死亡(ICU-/28-day) 6,731 (6 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高314/3,382 (9.3%) 290/3,349 (8.7%) RR 0.93 (0.80〜1.08) 1,000人あたり6人少ない(19人少ない〜7人多い)人工呼吸期間6,874 (8 RCT)深刻でない深刻a深刻でない深刻でないなし中3,454 3,420 − MD 0.08日短い(0.87日短い〜0.72日長い) ICU滞在日数6,873 (9 RCT)深刻でない深刻b深刻でない深刻cなし低3,451 3,422 − MD 0.48日長い(0.73日短い〜1.68日長い)感染性合併症(すべて) 6,655 (6 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高740/3,346 (22.1%) 802/3,309 (24.2%) RR 1.07 (0.95〜1.20) 1,000人あたり15人多い(11人少ない〜44人多い)感染性合併症(血流感染) 6,704 (6 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高192/3,370 (5.7%) 242/3,334 (7.3%) RR 1.26 (1.05〜1.51) 1,000人あたり15人多い(3人多い〜29人多い) SF-36 physical functioning domain 1,157 (3 RCT)深刻d深刻でない深刻でない非常に深刻eなし非常に低578 579 − MD 2.48高い(6.09低い〜11.06高い)有害事象4,760 (2 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高437/2,372 (18.4%) 428/2,388 (17.9%) RR 0.97 (0.86〜1.10) 1,000人あたり6人少ない(26人少ない〜18人多い) MD, 平均差; RR, リスク比; SF-36, MOS 36-Item Short-Form Health Survey 。a . 異質性のため1段階ダウングレードした(I2=97%)。b . 異質性のため1段階ダウングレードした(I2=96%)。c . 不精確さのため1段階ダウングレードした 。d . バイアスリスクのため1段階ダウングレードした。e . 不精確さのため2段階ダウングレードした(効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐ)。

Table 1-7-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.30
-29-文 献

1) 東別府直紀,讃井將満,祖父江和哉,他. 国際栄養調査から見える本邦ICUにおける栄養療法の現状と問題点. 日集中医誌 2014; 21: 243-52. 2) Vallejo KP, Martínez CM, Matos Adames AA, et al. Current clinical nutrition practices in critically ill patients in Latin America: a multinational observational study. Crit Care 2017;21:227. 3) Casaer MP, Mesotten D, Hermans G, et al. Early versus late parenteral nutrition in critically ill adults. N Engl J Med 2011;365:506-17. 4) Doig GS, Simpson F, Sweetman EA, et al. Early PN Investigators of the ANZICS Clinical Trials Group. Early parenteral nutrition in critically ill patients with shortterm relative contraindications to early enteral nutrition: a randomized controlled trial. JAMA 2013;309:2130-8. 5) Abrishami R, Ahmadi A, Abdollahi M, et al. Comparison the inflammatory effects of early supplemental parenteral nutrition plus enteral nutrition versus enteral nutrition alone in critically ill patients. Daru 2010;18:103-6. 6) Allingstrup MJ, Kondrup J, Wiis J, et al. Early goaldirected nutrition versus standard of care in adult intensive care patients: the single-centre, randomised, outcome assessor-blinded EAT-ICU trial. Intensive Care Med 2017;43:1637-47. 7) Bauer P, Charpentier C, Bouchet C, et al. Parenteral with enteral nutrition in the critically ill. Intensive Care Med 2000;26:893-900. 8) Berger MM, Pantet O, Jacquelin-Ravel N, et al. Supplemental parenteral nutrition improves immunity with unchanged carbohydrate and protein metabolism in critically ill patients: The SPN2 randomized tracer study. Clin Nutr 2019;38:2408-16. 9) Heidegger CP, Berger MM, Graf S, et al. Optimisation of energy provision with supplemental parenteral nutrition in critically ill patients: a randomised controlled clinical trial. Lancet 2013;381:385-93. 10) Ridley EJ, Davies AR, Parke R, et al. Supplemental Parenteral Nutrition Clinical Investigators. Supplemental parenteral nutrition versus usual care in critically ill adults: a pilot randomized controlled study. Crit Care 2018;22:12. 11) Wischmeyer PE, Hasselmann M, Kummerlen C, et al. A randomized trial of supplemental parenteral nutrition in underweight and overweight critically ill patients: the TOP-UP pilot trial. Crit Care 2017;21:142. 12) Wu W, Zhong M, Zhu DM, et al. Effect of Early Full-Calorie Nutrition Support Following Esophagectomy: A Randomized Controlled Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2017;41:1146-54. 13) Xu B, Chen H, Zhang Q, et al. Supplemental parenteral nutrition improves patient outcomes after esophageal cancer surgery: A single-center randomized controlled study. Medicine (Baltimore) 2022;101:e31893. 14) Japan Mediacal Safety Research Organiization. Analysis of Deaths Related to “Insertion/Removal of Central Venous Catheters” -Second report (Revised edition)-. 2023. [cited 2024 Dec 28]. Available from: https://file.medsafe. or.jp/files/teigen17english.pdf 15) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 16) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

CI:0.7日短い〜1.7日長い),感染性合併症(血流感染) (6 RCT,n=6,704)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり15人多い(95% CI:3人多い〜29人多い)であり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。なお,感染性合併症(すべて)(6 RCT,n=6,655)を評価しても,効果推定値はRD 1,000人あたり15人多い(95% CI:11人少ない〜44人多い)となり,望ましくない効果は同じく小さかった。経静脈栄養を併用しないことに比べて併用することの望ましい効果は「わずか」で,望ましくない効果は「小さい」ことから,効果のバランスとして「比較対照がおそらく優れている」とした。

(3)その他の推奨根拠

一般的な処置であり,どの病院においても実行可能性は高いと言える。経静脈栄養製剤は通常診療で利用されており,経静脈栄養製剤の1日あたりの薬価は1,000〜2,000円程度であり,集中治療全体のコストに与える影響は少ない。中心静脈カテーテルの挿入に関して,稀ではあるが重大な合併症が報告されており14),経静脈栄養のためだけに挿入する場合はそのリスクを考慮する必要がある。薬価,リスクを総合的に考慮しても,患者・家族の容認性について「おそらく,はい」としたが,効果のバランスで比較対照が優れていることから,今回の推奨に至った。

(4)判断の要約(Table 1-7-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2022では補足的経静脈栄養を早期に行う臨床的に重要な有益性が無いことから, ICUに入室して1週間以内の補足的経静脈栄養は推奨していない15) 。一方ESPENガイドライン2023では, ICUに入室して1週間以内に目標栄養投与量に到達しない場合,個々の病状に応じて,ICUに入室して4〜7日の間に投与されることが提案されている16) 。

(6)実施に関わる検討事項

対象となった研究の介入期間は集中治療開始後7〜9日目までであり,それ以降の経静脈栄養併用に関しては本推奨の対象外である。今回検討した研究では,すべて4日以内に補足的経静脈栄養を開始していた。したがって5日目以降の補足的経静脈栄養開始の是非に関しては不明である。また,重度の栄養障害患者は研究の対象外になっていることにも留意しなければならない。
p.31
-30-一方,望ましくない効果として,ICU入室から経腸栄

養開始までの時間(4 RCT,n=316)に関する効果推定値はMD 9.6時間長い(95% CI:0.5時間短い〜19.7時間長い),下痢(8 RCT,n=743)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり8人多い(95% CI:38人少ない〜72人多い)であり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。それぞれの相対価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

一般的に経胃投与と幽門後投与に用いられるチューブでは,後者の方が高価であり,また,確実な幽門後投与には内視鏡下・放射線透視下で幽門後にチューブを挿入する必要がある。盲目的に挿入することは不可能ではないが成功率は術者の熟練度に影響される。また,挿入補助のためのデバイスも認可されているが,本邦では一般的ではない。いずれの手段を用いても挿入が不可能な場合もある。そのため,すべての施設で常時挿入が可能なわけではなく,日常的に挿入が可能な施設は少ないと予想される。さらに,幽門後にチューブを挿入,管理するための施設的,人員的な制限は多く,条件を満たしている施設ですら常時すべての患者に対する幽門後投与の実行可能性は高いとはいえず,実行可能性は「様々」とした。上記のように効果のバランス,必要資源量,容認性などを総合的に判断して今回の推奨に至った。

(4)判断の要約(Table 1-8-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

SSCG2021,ASPENガイドライン2022には,経胃投与と幽門後投与についての推奨はない21),22) 。ESPENガイドライン2023では,経胃投与に対する不耐性がある場合や,誤嚥のリスクがある場合には幽門後投与も検討できると記載されている23) 。

(6)実施に関わる検討事項

幽門輪以遠にチューブを留置するための人的・資器材的な環境が必要であるため,施設によっては経腸栄養開始の遅れの一因となり得る。また,一般的に持続投与かつ注意深い投与速度が求められる。

国際的な観察研究では経腸栄養が可能な重症患者における幽門後投与の実施率は約9%であり,経胃投与が一般的であった24) 。誤嚥リスクが低い症例群のみを対象とした RCTはなく,そのような症例群では患者の合併症,挿入・モニタリングに関わる資源,およ

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89.

CQ 1-8:重症患者の経腸栄養において,経胃投与よ

りも幽門後投与をすべきか?

Answer:重症患者の経腸栄養において,経胃投

与よりも幽門後投与をすることを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

(1)背景

重症患者の栄養投与では,消化管機能が維持されている場合,消化管を使用した栄養投与が生理的である。しかしながら,重症患者では胃蠕動低下が高い頻度で発生し1),胃内容物の排泄遅延や嘔吐により誤嚥することがある2) 。また,胃蠕動低下に対しては消化管運動促進薬が提案されている3)が,これらの薬剤は重症患者の予後に影響を与えなかったとする報告も存在する2) 。このことから,重症患者に対する消化管を使用した栄養投与の方法として,幽門後からの経腸栄養投与が選択肢となる。幽門後投与では十二指腸以遠の腸管への確実な投与に加え,誤嚥や嘔吐4),5)のリスクが軽減されることが期待される。しかしながら,挿入手技の習熟度や挿入方法により経腸栄養あるいは栄養そのものの開始が遅れる可能性6)や,消化管出血4)や穿孔などの合併症を引き起こすリスクがある。そのため,幽門後からの経腸栄養投与を行うことの益と害を明らかにすることは重要である。

(2)効果のバランス(Table 1-8-1)

17件のRCTを用いたメタアナリシスを行った4)〜20) 。幽門後投与による望ましい効果として,全死亡(13 RCT,n=1,154)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり6人少ない(95% CI:50人少ない〜47人多い), ICU滞在日数(11 RCT,n=941)に関する効果推定値はMD 1.4日短い(95% CI:2.9日短い〜0.2日長い),人工呼吸期間(7 RCT,n=622)に関する効果推定値はMD 2.2日短い(95% CI:3.4日短い〜1.0日短い),肺炎(人工呼吸器関連肺炎または誤嚥性肺炎)(13 RCT,n=1,079)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり113人少ない(95% CI:158人少ない〜51人少ない),嘔吐(8 RCT,n=689)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり90人少ない(95% CI:153人少ない〜39人多い)であり,望ましい効果は「中」と判断した。
p.32
-31-

Table 1-8-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)経胃投与幽門後投与

全死亡1,154 (13 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻aなし中176/594 (29.6%) 169/560 (30.2%) RR 0.98 (0.83〜1.16) 1,000人あたり6人少ない(50人少ない〜47人多い) ICU滞在日数

941 (11 RCT) 深刻b 深刻c 深刻でない 深刻d なし 非常に低 484 457 − MD 1.39日短い (2.92日短い〜0.15日長い)

人工呼吸期間

622 (7 RCT) 深刻b 深刻c 深刻でない 深刻でない なし 低 320 302 − MD 2.2日短い (3.36日短い〜1.04日短い)

肺炎(人工呼吸関連肺炎または誤嚥性肺炎) 1,079 (13 RCT)深刻e深刻f深刻でない深刻aなし非常に低156/554 (28.2%) 83/525 (15.8%) RR 0.60 (0.44〜0.82) 1,000人あたり113人少ない(158人少ない〜51人少ない) ICU入室から経腸栄養開始までの時間

316 (4 RCT) 深刻b 深刻g 深刻でない 深刻h なし 非常に低 163 153 − MD 9.57時間長い (0.52時間短い〜19.66時間長い)

下痢

743 (8 RCT) 深刻b 深刻でない 深刻でない 深刻h なし 低62/380 (16.3%) 63/363 (17.4%) RR 1.05 (0.77〜1.44) 1,000人あたり8人多い(38人少ない〜72人多い)

嘔吐

689 (8 RCT) 深刻b 深刻f 深刻でない 深刻h なし 非常に低75/349 (21.5%) 37/340 (10.9%) RR 0.58 (0.29〜1.18) 1,000人あたり90人少ない(153人少ない〜39人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . Optimal information sizeを満たさないため1段階ダウングレードした。b . 研究の多くがバイアスリスクが高いため1段階ダウングレードした。c . 中等度から高度の異質性のため1段階ダウングレードした。d . 効果推定値の95% CIがnullと相当な益の両方をまたぐため1段階ダウングレードした。e . いくつかの研究においてバイアスリスクがsome concernsのため1段階ダウングレードした。f . 中等度の異質性のため1段階ダウングレードした。g . 高度の異質性のため1段階ダウングレードした。h . 効果推定値の95% CIがnullと相当な害の両方をまたぐため1段階ダウングレードした。

文 献

1) Mutlu GM, Mutlu EA, Factor P. Prevention and treatment of gastrointestinal complications in patients on mechanical ventilation. Am J Respir Med 2003;2:395-411. 2) Booth CM, Heyland DK, Paterson WG. Gastrointestinal

び医療機関の状況を鑑みたうえで総合的に幽門後投与の是非を判断する必要があり,誤嚥リスクが高い症例に対して幽門後投与を検討していくことが現実的と考えられる。Table 1-8-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.33
-32- Crit Care 2018;22:170. 20) Ge W, Wei W, Shuang P, et al. Nasointestinal Tube in

Mechanical Ventilation Patients is More Advantageous. Open Med (Wars) 2019;14:426-30. 21) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med 2021;47:1181-247. 22) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 23) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 24) Bendavid I, Singer P, Theilla M, et al. NutritionDay ICU:

A 7 year worldwide prevalence study of nutrition practice in intensive care. Clin Nutr 2017;36:1122-9.

CQ 1-9:重症患者の経胃栄養投与において,間欠投

与よりも持続投与を行うべきか?

Answer:重症患者の経胃栄養投与において,間

欠投与よりも持続投与を行うことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

(1)背景

重症患者において経腸栄養を行う場合,経胃による経腸栄養は持続投与もしくは間欠投与が行われる。持続投与では1日を通して連続的に栄養投与を行い,間欠投与では1日2〜6回等に分割して栄養投与される。持続投与は注入速度が低く消化器合併症が少ないと考えられているが1),検査やリハビリなどの中断により目標投与量よりも総投与量が少なくなってしまう。一方で,間欠投与は持続栄養と比較して,タンパク質合成および消化ホルモン分泌の改善など,より自然なホルモンおよび代謝反応を促進する可能性があるが,重症患者においては消化器合併症が多いという報告がある2)〜4) 。また間欠投与は夜間の経腸栄養管理をなくすこともできるが,投与ごとの準備に関する看護業務が増えるというデメリットもある。したがって,持続投与と間欠投与の益と害のバランスを明確にすることは臨床的意義が大きく,重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス(Table 1-9-1)

10件のRCTを用いたメタアナリシスを行った1),5)〜13) 。経胃栄養投与において持続投与を行うことによる望ましい効果として,死亡(5 RCT,n=458)

promotility drugs in the critical care setting: a systematic review of the evidence. Crit Care Med 2002;30:1429-35. 3) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2019;38:48-79. 4) Hsu CW, Sun SF, Lin SL, et al. Duodenal versus gastric feeding in medical intensive care unit patients: a prospective, randomized, clinical study. Crit Care Med 2009;37:1866-72. 5) Wan B, Fu H, Yin J. Early jejunal feeding by bedside placement of a nasointestinal tube significantly improves nutritional status and reduces complications in critically ill patients versus enteral nutrition by a nasogastric tube. Asia Pac J Clin Nutr 2015;24:51-7. 6) Montejo JC, Grau T, Acosta J, et al. Nutritional and Metabolic Working Group of the Spanish Society of Intensive Care Medicine and Coronary Units. Multicenter, prospective, randomized, single-blind study comparing the efficacy and gastrointestinal complications of early jejunal feeding with early gastric feeding in critically ill patients. Crit Care Med 2002;30:796-800. 7) Montecalvo MA, Steger KA, Farber HW, et al. Nutritional outcome and pneumonia in critical care patients randomized to gastric versus jejunal tube feedings. The Critical Care Research Team. Crit Care Med 1992;20:1377-87. 8) Kortbeek JB, Haigh PI, Doig C. Duodenal versus gastric feeding in ventilated blunt trauma patients: a randomized controlled trial. J Trauma 1999;46:992-6; discussion 996-8. 9) Kearns PJ, Chin D, Mueller L, et al. The incidence of ventilator-associated pneumonia and success in nutrient delivery with gastric versus small intestinal feeding: a randomized clinical trial. Crit Care Med 2000;28:1742-6. 10) Esparza J, Boivin MA, Hartshorne MF, et al. Equal aspiration rates in gastrically and transpylorically fed critically ill patients. Intensive Care Med 2001;27:660-4. 11) Day L, Stotts NA, Frankfurt A, et al. Gastric versus duodenal feeding in patients with neurological disease: a pilot study. J Neurosci Nurs 2001;33:148-9,155-9. 12) Boivin MA, Levy H. Gastric feeding with erythromycin is equivalent to transpyloric feeding in the critically ill. Crit Care Med 2001;29:1916-9. 13) Neumann DA, DeLegge MH. Gastric versus small-bowel tube feeding in the intensive care unit: a prospective comparison of efficacy. Crit Care Med 2002;30:1436-8. 14) Davies AR, Froomes PR, French CJ, et al. Randomized comparison of nasojejunal and nasogastric feeding in critically ill patients. Crit Care Med 2002;30:586-90. 15) White H, Sosnowski K, Tran K, et al. A randomised controlled comparison of early post-pyloric versus early gastric feeding to meet nutritional targets in ventilated intensive care patients. Crit Care 2009;13:R187. 16) Acosta-Escribano J, Fernández-Vivas M, Grau Carmona T, et al. Gastric versus transpyloric feeding in severe traumatic brain injury: a prospective, randomized trial. Intensive Care Med 2010;36:1532-9. 17) Huang HH, Chang SJ, Hsu CW, et al. Severity of illness influences the efficacy of enteral feeding route on clinical outcomes in patients with critical illness. J Acad Nutr Diet 2012;112(8):1138-46. 18) Friedman G, Flávia Couto CL, Becker M. Randomized study to compare nasojejunal with nasogastric nutrition in critically ill patients without prior evidence of altered gastric emptying. Indian J Crit Care Med 2015;19:71-5. 19) Zhu Y, Yin H, Zhang R, et al. Gastric versus postpyloric

enteral nutrition in elderly patients (age ≥ 75 years) on mechanical ventilation: a single-center randomized trial.
p.34
-33-数,人工呼吸期間等の,より重大なアウトカムが含ま

れており,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

経胃栄養の持続投与に関して,侵襲的処置に比較すると患者や家族についての容認性への懸念は少ない。Ready-to-hang(RTH)製剤を使用した持続投与に比して,間欠投与ではチューブ器材の交換回数が多くなるため,必要資源量は増加する。そのため,持続投与は資器材の交換回数が多回数の間欠投与に比べてコスト並びに人的リソース削減につながると考えられる。なお,推定されるコストの削減額に関しては,明確な金額を示すことは難しい。その理由は,資器材に関しては病院ごとに仕入額の相違があり,また投与法,間欠投与回数に関しては症例ごとの相違があるためである。

に関する効果推定値はRD 1,000人あたり55人少ない(95% CI:110人少ない〜22人多い),ICU滞在日数(3 RCT,n=309)に関する効果推定値はMD 0.8日短い(95% CI:4.2日短い〜2.6日長い),人工呼吸期間(2 RCT,n=161)に関する効果推定値はMD 2.3日短い(95% CI:5.4日短い〜0.9日長い),下痢(6 RCT,n= 385)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり40人少ない(95% CI:94人少ない〜40人多い)であり,望ましい効果は「小さい」と判断した。一方,望ましくない効果として,感染性合併症(2 RCT,n=267)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり235人多い(95% CI: 204人少ない〜1,000人多い),筋肉量低下率(1 RCT, n=121)に関する効果推定値はMD 1.9%高い(95% CI:13.3%低い〜17.1%高い),嘔吐(3 RCT,n=260)に関する効果推定値はRD 1,000人あたり43人多い(95% CI:62人少ない〜391人多い)であり,望ましくない効果は「小さい」と判断した。

望ましい効果と望ましくない効果はどちらも「小さい」ではあるが,望ましい効果には死亡,ICU滞在日

Table 1-9-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)間欠投与持続投与

死亡

458 (5 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻a なし 中63/229 (27.5%) 50/229 (21.8%) RR 0.80 (0.60〜1.08) 1,000人あたり55人少ない(110人少ない〜22人多い)

ICU滞在日数

309 (3 RCT) 深刻b 深刻でない 深刻でない 非常に深刻c なし 非常に低 155 154 − MD 0.8日短い (4.17日短い〜2.56日長い)

人工呼吸期間

161 (2 RCT) 深刻b 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 低 82 79 − MD 2.26日短い (5.39日短い〜0.88日長い)

感染性合併症

267 (2 RCT) 深刻b 非常に深刻e 深刻でない 非常に深刻f なし 非常に低46/135 (34.1%) 59/132 (44.7%) RR 1.69 (0.40〜7.17) 1,000人あたり235人多い(204人少ない〜1,000人多い)

下痢

385 (6 RCT) 深刻b 深刻でない 深刻でない 深刻g なし 低40/191 (20.9%) 29/194 (14.9%) RR 0.81 (0.55〜1.19) 1,000人あたり40人少ない(94人少ない〜40人多い)

筋肉量低下率

121 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻h なし 低 62 59 − MD 1.9%高い (13.3低い〜17.1高い)

嘔吐

260 (3 RCT) 深刻b 深刻でない 深刻でない 非常に深刻i なし 非常に低14/131 (10.7%) 23/129 (17.8%) RR 1.40 (0.42〜4.66) 1,000人あたり43人多い(62人少ない〜391人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 効果推定値の95% CIはnullと相当な害の両方をまたぐため1段階ダウングレードした。b . すべてのRCTが世話人を盲検化していないため1段階ダウングレードした。c . 効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐため2段階ダウングレードした。d . 効果推定値の95% CIがnullと相当な益の両方をまたぐため1段階ダウングレードした。e . 信頼区間の重なり,点推定値の差,異質性により矛盾があるため2段階ダウングレードした。f . 効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐため2段階ダウングレードした。g . 効果推定値の95% CIがnullと相当な益の両方をまたぐため1段階ダウングレードした。h . 効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐため2段階ダウングレードした。i . 効果推定値の95% CIが相当な益と相当な害の両方をまたぐため2段階ダウングレードした。
p.35
-34- 2003;58:9-14. 7) Chen YC, Chou SS, Lin LH, et al. The effect of inter-

mittent nasogastric feeding on preventing aspiration pneumonia in ventilated critically ill patients. J Nurs Res 2006;14:167-80. 8) Maurya I, Pawar M, Garg R, et al. Comparison of respiratory quotient and resting energy expenditure in two regimens of enteral feeding – continuous vs. intermittent in head-injured critically ill patients. Saudi J Anaesth 2011;5:195-201. 9) Shahriari M, Rezaei E, Bakht LA, et al. Comparison of the effects of enteral feeding through the bolus and continuous methods on blood sugar and prealbumin levels in ICU inpatients. J Educ Health Promot 2015;4:95. 10) Mazaherpur S, Khatony A, Abdi A, et al. The Effect of Continuous Enteral Nutrition on Nutrition Indices, Compared to the Intermittent and Combination Enteral Nutrition in Traumatic Brain Injury Patients. J Clin Diagn Res 2016;10:JC01-JC05. 11) Nasiri M, Farsi Z, Ahangari M, et al. Comparison of Intermittent and Bolus Enteral Feeding Methods on Enteral Feeding Intolerance of Patients with Sepsis: A Triple-blind Controlled Trial in Intensive Care Units. Middle East J Dig Dis 2017;9:218-27. 12) McNelly AS, Bear DE, Connolly BA, et al. Effect of Intermittent or Continuous Feed on Muscle Wasting in Critical Illness: A Phase 2 Clinical Trial. Chest 2020;158:183-94. 13) Lee HY, Lee JK, Kim HJ, et al. Continuous versus Intermittent Enteral Tube Feeding for Critically Ill Patients: A Prospective, Randomized Controlled Trial. Nutrients 2022;14:664. 14) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 15) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for

the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41.

(4)判断の要約(Table 1-9-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ESPENガイドライン2023においても間欠投与よりも持続投与を行うことを推奨している14) 。ASPENガイドライン2022において類似したCQはなかった15) 。

(6)実施に関わる検討事項

採用した10文献に関して,間欠投与は1日4回投与が2文献,6回投与が7文献,8回投与が1文献(3〜4時間ごと,夜間休憩が入るものもあり)であり,投与回数が統一されていない。間欠投与の方法に関して,一定の投与量および投与回数での検討が必要と考えられる。

文 献

1) Steevens EC, Lipscomb AF, Poole GV, et al. Comparison of continuous vs. intermittent nasogastric enteral feeding in trauma patients: perceptions and practice. Nutr Clin Pract 2002;17:118-22. 2) Ichimaru S. Methods of Enteral Nutrition Administration in Critically Ill Patients: Continuous, Cyclic, Intermittent, and Bolus Feeding. Nutr Clin Pract 2018;33:790-5. 3) Patel JJ, Rosenthal MD, Heyland DK. Intermittent versus continuous feeding in critically ill adults. Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2018;21:116-20. 4) Cabré E, Gassull MA. Complications of enteral feeding. Nutrition 1993;9:1-9. 5) MacLeod JB, Lefton J, Houghton D, et al. Prospective randomized control trial of intermittent versus continuous gastric feeds for critically ill trauma patients. J Trauma 2007;63:57-61. 6) Serpa LF, Kimura M, Faintuch J, et al. Effects of

continuous versus bolus infusion of enteral nutrition in critical patients. Rev Hosp Clin Fac Med Sao Paulo

Table 1-9-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.36
-35-できない症例において,急性期の栄養療法が行われな

い症例が散見される。

しかしながら,近年のRCTにおいて,ICU入室後24時間もしくは36時間以内に開始した経腸栄養もしくは経静脈栄養による栄養投与が,死亡率や感染性合併症に差を生じさせないことが示され5),6),ASPENガイドライン2022では,経腸栄養と経静脈栄養の間に差はないとの見解が表明されている7) 。加えて,ESPENガイドライン2023では,栄養不良の症例で経腸栄養が禁忌の場合は経静脈栄養を早期に始めることが許容されており,経腸栄養が禁忌であるが栄養不良ではない症例では,ICU入室後3〜7日で経静脈栄養を始めるとされている8) 。

このように,明確な根拠は乏しいものの,本CQに関する推奨は近年の各ガイドラインで変化しつつある。したがって,一定期間経腸栄養が開始できない症例に対して,経静脈栄養による害を懸念して経静脈栄養による栄養投与を行わないことの是非について,情報提供を行う必要がある。

(3)解説

現時点では,一定期間経腸栄養を開始できない症例に対して,経静脈栄養を開始することを推奨できる根拠は十分であるとはいえない。経腸栄養を開始する時期に関する RCTは散見され,晩期に比して早期に経腸栄養を開始することの優位性は明確に示されている。一方で,早期の経静脈栄養の影響を調査したシステマティックレビューでは9),早期に経静脈栄養を開始した群と比較対照群(水分や電解質は投与するが栄養療法は行わない)を比較した RCTは1件のみであり10),その他は経腸栄養と補足的経静脈栄養,または補足的経静脈栄養と標準治療を比較した研究のみであった。なお,臨床的によく見られる,少量の経腸栄養しか投与できない場合に補足的経静脈栄養を追加するかどうかについてのRCTも1件のみである11) 。

以下に各RCTの結果を情報提供する。ICUにおける経静脈栄養に関する RCT(Early PN trial)では,経腸栄養が相対的禁忌の症例において経静脈栄養を早期に開始した群(割り付け後44分)と比較対照群(入室後平均2.8日で経腸栄養もしくは経静脈栄養を開始)を比較し,60日死亡率や感染性合併症の発症率に差はなく,ICU滞在日数や入院期間の大幅な短縮も認められなかった10) 。しかし,早期経静脈栄養群では,人工呼吸期間は0.47日減少(95% CI:0.82日減少〜0.11日減少:P=0.01)し,血液凝固障害日数も減少した。また,早期経静脈栄養群では,筋肉減少量および脂肪減

CQ1-10:経腸栄養が行えない重症患者における経静

脈栄養の考え方は?

Answer:一定期間経腸栄養が行えない重症患者

では,唯一の栄養療法の手段となる経静脈栄養を行わないことは予後を悪化させるという考え方がある(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

経腸栄養が不可能な重症症例に対して,ICU入室後の経静脈栄養投与の有無で比較した研究は乏しい。これまでに,経腸栄養が相対禁忌の患者に対する経静脈栄養投与を検討した RCTは1件のみである。また,経腸栄養の投与量が著しく少ない患者を対象とした経静脈栄養の開始時期に関する RCTも1件あるが,対象患者の重症度は比較的軽度である。そのため,これらを根拠に推奨を作成することは困難である。しかし,上記のRCTの結果から,一定期間経腸栄養が行えない重症患者において栄養療法を行わないことは予後を悪化させる可能性が高いと考えられ,これは生理学的にも妥当性がある。

(2)背景および本CQの重要度

これまでの重症患者における栄養療法ガイドラインでは,2〜3日以内に十分な食事が摂取できない場合には栄養療法を行うことが推奨されており1),感染性合併症のリスク低減や医療費削減を期待して,早期経腸栄養,すなわちICU入室48時間以内に経腸栄養を開始することが推奨されている。しかしながら,早期に経腸栄養を開始できない症例に対する経静脈栄養の開始時期については,十分な検討がなされていない。早期経腸栄養の効果は,栄養投与が行えるという側面だけでなく,免疫機能の維持による感染症の発症リスクの低減などが期待されている。これに対し,循環動態が不安定な時期や炎症が強い時期に経静脈栄養を投与することは,腸管血流の低下を招く可能性や2),同じエネルギー投与量であったとしても経静脈栄養では体内に吸収されるエネルギー量がより多くなり,過剰投与につながる可能性がある3) 。また,メタアナリシスの結果,経静脈栄養は経腸栄養に比して感染症発症率が高いことが示され,ASPENガイドライン2016では栄養障害のリスクが低い患者においてICU入室後1週間の経静脈栄養開始は推奨されていない4) 。本邦でも,これらの生理学的観点,並びに診療ガイドラインの推奨を受け,侵襲後1週間程度は経静脈栄養を開始しないことが推奨されていた経緯があり,経腸栄養を開始
p.37
-36- (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). JPEN J Parenter Enteral Nutr 2016;40:159-211. 5) Harvey SE, Parrott F, Harrison DA, et al. CALORIES Trial

Investigators. Trial of the route of early nutritional support in critically ill adults. N Engl J Med 2014;371:1673-84. 6) Reignier J, Boisramé-Helms J, Brisard L, et al. NUTRIREA-2 Trial Investigators; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) group. Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallelgroup study (NUTRIREA-2). Lancet 2018;391:133-43. 7) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 8) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 9) Sharma SK, Rani R, Thakur K. Effect of Early Versus Delayed Parenteral Nutrition on the Health Outcomes of Critically Ill Adults: A Systematic Review. J Crit Care Med (Targu Mures). 2021;7:160-9. 10) Doig GS, Simpson F, Sweetman EA, et al. Early PN Investigators of the ANZICS Clinical Trials Group. Early parenteral nutrition in critically ill patients with shortterm relative contraindications to early enteral nutrition: a randomized controlled trial. JAMA 2013;309:2130-8. 11) Gao X, Liu Y, Zhang L, et al. Effect of Early vs. Late

Supplemental Parenteral Nutrition in Patients Undergoing Abdominal Surgery: A Randomized Clinical Trial. JAMA Surg 2022;157:384-93.

少量が有意に少なく,上腕周囲径の減少も抑制され,有害事象の増加も認められなかったと報告された10) 。また,予定腹部大手術を受け,かつ経腸栄養の投与量が少ない(投与目標量である女性25 kcal/kg/day,男性30 kcal/kg/dayの30%以下)症例群において,経静脈栄養の開始時期で比較した RCTが1件ある11) 。術後3日目に経静脈栄養を開始された早期群では,術後8日目以降に経静脈栄養を開始した晩期群と比較し,術後3日目から退院時までの院内感染の発生率は低下した[10/115(8.7%)vs. 21/114(18.4%):RD 9.7%, 95% CI:0.9%〜18.5%,P=0.04]11) 。これらのRCTでは,経腸栄養が投与できない症例群に対する経静脈栄養投与は少なくとも有害事象を生じず,利益が認められた。さらに,経腸栄養と経静脈栄養を比較したRCTであるCAROLIES trialおよびNUTRIREA-2 trialにおいて,ICU入室後36時間以内に開始された経腸栄養および経静脈栄養の投与量がほぼ同等であれば,死亡率や感染症発症率に差はないことが示されており5),6),栄養投与を行わないことは患者の予後を悪化させる可能性が高いこと,経腸栄養が行えない場合は,経静脈栄養による栄養療法を行うことで予後の悪化を避け得ることが示唆されている。しかしながら,経腸栄養を行えない状況で,いつから経静脈栄養を開始すべきかという問いに答えをだすことは,介入時期の異なる上記 RCTからはできなかった10),11) 。また,ある程度の日数にわたり経腸栄養がない状況が継続することを含意し,本CQでは一定期間という言葉を用いて「一定期間経腸栄養が行えない重症患者では」と記載することとした。

まとめると,一定期間経腸栄養が行えない症例において,唯一の栄養療法の手段である経静脈栄養を行わないことは予後を悪化させる可能性がある。しかしながらさらなるデータの集積が必要である。

文 献

1) Kreymann KG, Berger MM, Deutz NEP, et al. ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Intensive care. Clin Nutr 2006;25:210-23. 2) Gatt M, MacFie J, Anderson AD, et al. Changes in superior mesenteric artery blood flow after oral, enteral, and parenteral feeding in humans. Crit Care Med 2009;37:171-6. 3) Chapple LS, Kouw IWK, Summers MJ, et al. Muscle Protein Synthesis after Protein Administration in Critical Illness. Am J Respir Crit Care Med 2022;206:740-9. 4) McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al. Society of

Critical Care Medicine; American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine
p.38
-37-筋肉量減少はわずかな効果を認めた。したがって,望ま

しい効果は小さいと判断した。有害事象も含めて望ましくない効果は認められなかった。効果のバランスを総合的に判断し「おそらく介入が優れている」とした(Table 2-1-1)。

ω-3系脂肪酸を企図して強化した経腸栄養実施に関する感度分析では,望ましい効果は小さい,望ましくない効果はわずかであり,効果のバランスを総合的に判断し「おそらく介入が優れている」とした(付録)。

(3)その他の推奨根拠

ω-3系脂肪酸を投与する場合,栄養剤,薬剤の内容の違いであるため道義的・倫理的な問題はなく,望ましくない効果もないことから許容可能であると考えられる。一般に流通している製剤も多く,コスト増加もわずかであり,当該介入は十分に実行可能である。

(4)判断の要約(Table 2-1-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ESPENガイドライン2023では,「栄養投与範囲内のω-3系脂肪酸の強化した経腸栄養剤の投与をしても良い」としている。また,「高用量のω-3系脂肪酸のルーチン投与とボーラス投与はすべきでない」としている44) 。

ARDS診療ガイドライン2021では,「ARDS患者にω-3系脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に弱い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」としている45) 。

ASPENガイドライン2022では,ω-3系脂肪酸を含めた免疫調整栄養に関しては,今回は取り扱わずに将来的に別なガイドラインを作成するという記載となっている46) 。

(6)実施に関わる検討事項

現時点で,ω-3系脂肪酸の至適投与量は不明である46) 。本邦では,単独の経腸栄養剤でのω-3系脂肪酸の高用量の投与は難しく,ω-3系脂肪酸の高用量の投与を目標とする場合,追加の薬剤や食品が必要になる。ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養のボーラス投与に関する感度分析で,今回の主解析や他の介入における感度分析では見られなかった望ましくない効果が人工呼吸器離脱期間[MD 1.5日(短い5.5日短い〜2.4日長い)],全有害事象[1,000人あたり402人多い(347人少ない〜1,000人多い)]で認められた(付録)。そのため,ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養を実施する際,ボーラス投与には注意を要する。

WG2. 栄養療法における特定の栄養素

CQ2-1:重症患者において,ω-3系脂肪酸を強化し

た経腸栄養を行うべきか?

Answer:重症患者において,ω-3系脂肪酸を強

化した経腸栄養を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。*ただし,ω-3系脂肪酸の投与量に関しては検討していない。

(1)背景

エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸に代表されるω-3系脂肪酸は,炎症性サイトカインの産生に関与するアラキドン酸などのω-6系脂肪酸と異なり,炎症性エイコサノイド(プロスタグランジンI2,ロイコトリエンB4等)の産生を抑制し抗炎症作用を示す1) 。さらに,ω-3系脂肪酸は炎症収束作用を有するメディエーター(レゾルビン,プロテクチン,マレシンなど)の産生に関与し,炎症部位における好中球浸潤の抑制やマクロファージによる障害細胞の貪食促進による炎症抑制作用も報告されている2) 。そのため,敗血症やARDSなどのサイトカインや炎症性メディエーターが病態悪化に関与する重症患者ではω-3系脂肪酸の抗炎症作用による予後改善が期待されている1) 。しかし,ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養剤の効果は,一定の効果が示されておらず,当ガイドラインで扱う重要な課題であると判断した。現在,臨床現場には,様々な量のω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養剤があり,食品や薬剤を追加する選択肢もある。一方で,本邦ではω-3系脂肪酸を高い用量で含有した経腸栄養剤は販売中止になっている。そのような現状も考慮し介入を投与量によらずω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養の実施すべてとした。なお,ω-3系脂肪酸を企図して強化した経腸栄養の実施に関しても感度分析を行った。加えて,ω-3系脂肪酸のボーラス投与は有害事象増加と関連すると報告されており3),ω-3系脂肪酸のボーラス投与に関しても感度分析を行った。

(2)効果のバランス(Table 2-1-1)

41件のRCT(n=5,251)を用いたメタアナリシスを行った3)〜43) 。望ましい効果として,ICU滞在日数はMD 2.0日短い(0.8日短い〜3.2日短い),感染性合併症は1,000人あたり42人少ない(111人少ない〜42人多い),人工呼吸期間はMD 1.8日短い(0.4日短い〜3.1日短い)であった。短期死亡・身体機能(health-related-QoL)・
p.39
-38-

Table 2-1-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対象ω-3系強化

短期死亡率4,717 (33 RCT)深刻a深刻でない深刻b深刻でないなし低539/2,342 (23.0%) 522/2,375 (22.0%) RR 0.96 (0.87〜1.07) 1,000人あたり9人少ない(30人少ない〜16人多い) ICU滞在日数3,875 (30 RCT)深刻a深刻c深刻b深刻でないなし非常に低1,938 1,937 − MD 1.98 日短い(0.8日短い〜3.16日短い)感染性合併症2,224 (15 RCT)深刻a深刻c深刻b深刻でないなし非常に低523/1,128 (46.4%) 474/1,096 (43.2%) RR 0.91 (0.76〜1.09) 1,000人あたり42人少ない(111人少ない〜42人多い)人工呼吸期間3,198 (26 RCT)深刻a深刻c深刻b深刻でないなし非常に低1,613 1,585 − MD 1.77日短い(0.41日短い〜3.12日短い)健康関連QOL

216 (2 RCT)非常に深刻d 深刻でない非常に深刻b,e 深刻f なし 非常に低 111 105 − SMD 0.07高い (0.19低い〜0.34高い)

すべての有害事象1,691 (8 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻でないなし中467/838 (55.7%) 476/853 (55.8%) RR 1.00 (0.92〜1.08) 1,000人あたり0人少ない(45人少ない〜45人多い)筋肉量

171 (2 RCT)非常に深刻d 深刻c 深刻b 深刻f なし 非常に低 81 90 − SMD 0.17高い (0.55低い〜0.89高い)

MD, 平均差; RR, リスク比; SMD, 標準化平均差。a . バイアスのリスクが高く,寄与率が40%未満のため1段階ダウングレードした。b . タンパク質強化や高カロリー摂取などのω-3の強化に焦点を当てていない研究もあり,ω-3強化と一部異なる可能性があることから1段階ダウングレードした。c . 研究間で高度の異質性があるが,CIが重なりがあるため1段階ダウングレードした。d . バイアスのリスクが高く,寄与率が40%以上のため2段階ダウングレードした。e . アウトカムの期間が異なるため1段階グレードダウンした。f . Optimal information sizeが満たされていないため,1段階ダウングレードした。

Table 2-1-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない

文 献

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CQ2-2:重症患者において,グルタミンを強化した

経腸栄養を行うべきか?

Answer:重症患者において,グルタミンを強化し

た経腸栄養を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。*ただし,グルタミンの投与量に関しては検討していない。(1)背景

グルタミンは免疫細胞の増殖,サイトカインの産生,マクロファージの貪食能や好中球の殺菌力などに寄与する重要な栄養素であり,“免疫系の燃料”と言われている1) 。観察研究では,血中グルタミン濃度は侵襲により急激に低下し,低いグルタミン濃度が,死亡率・合併症と関連すると報告されている2) 。そのため,健常者では非必須アミノ酸であるが,侵襲下では条件付き必須アミノ酸とも呼ばれている。したがって,重症患者ではグルタミンの投与の有効性に関して多くの研究が行われてきた。しかし,グルタミンの静脈投与によって死亡率が上昇し,特に多臓器不全がある重症患者で死亡と関連したという結果もある3) 。一方で,重症熱傷患者などではグルタミンの経腸投与の臨床効果が示されているものもあり4),2022年には重症熱傷患者に対するグルタミンの経腸投与の大規模研究が報告された5) 。そのため,その有効性を検証する意義は大きく,本ガイドラインにおいて扱うべき重要な臨床課題であると判断した。

(2)効果のバランス(Table 2-2-1)

23件のRCT(n=3,402)を用いたメタアナリシスを行った5)〜27) 。望ましい効果として,感染性合併症は1,000人あたり23人少ない(103人少ない〜75人多い),すべての有害事象は1,000人あたり20人少ない(90人少ない〜78人多い)であった。一方で望ましくない効果として,全死亡は1,000人あたり3人多い(29人少ない〜36人多い),ICU滞在日数はMD 1.8日長い(0.1日短い〜3.7日長い),人工呼吸期間はMD 0.5日長い(0.5日短い〜1.5日長い),下痢は1,000人あたり56人多い(10人多い〜118人多い)であった。望ましい効果と望ましくない効果はともに小さいと判断し,「介入も比較対照もいずれも支持しない」とした。一般的に感染症や有害事象よりも死亡,人工呼吸期間やICU滞在日数の方が相対的価値は高く,総合的に判断し,弱い非推奨とした。

(3)その他の推奨根拠

グルタミンを強化した経腸栄養剤の使用に関して,道義的,倫理的に問題はなく一般的に流通している製剤も多く,コスト増加もわずかであり,実行可能な介入である。一方で,使用に伴い,下痢が増加する可能性があり,容認性を考えるにあたって考慮すべきかもしれない。
p.42
-41-しては取り扱わず,将来的に別なガイドラインを作成

するという記載がなされている28) 。ESPENガイドライン2023 では,「重症熱傷へのグルタミンの経腸投与は推奨する」としている一方で,「重症熱傷/外傷以外

(4)判断の要約(Table 2-2-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2022では,免疫調整栄養に関

Table 2-2-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照群グルタミン群

死亡率(院内, 30日,180日) 3,195 (18 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアスが強く疑われるa中515/1,593 (32.3%) 516/1,602 (32.2%) RR 1.01 (0.91〜1.11) 1,000人あたり3人多い(29人少ない〜36人多い) ICU滞在日数3,034 (17 RCT)深刻b非常に深刻c深刻でない深刻d出版バイアスが強く疑われるa非常に低1,511 1,523 − MD1.82日長い(0.07日短い〜3.7日長い)人工呼吸期間1,990 (11 RCT)深刻b非常に深刻e深刻でない深刻fなし非常に低989 1,001 − MD0.48日長い(0.51日短い〜1.47日長い)感染性合併症1,197 (8 RCT)深刻でない深刻g深刻でない深刻でないなし中277/590 (46.9%) 288/607 (47.4%) RR 0.95 (0.78〜1.16) 1,000人あたり23人少ない(103人少ない〜75人多い)下痢

799 (6 RCT) 深刻h 深刻でない 深刻でない 深刻i なし 低49/402 (12.2%) 65/397 (16.4%) RR 1.46 (1.08〜1.97) 1,000人あたり56人多い(10人多い〜118人多い)

すべての有害事象1,825 (3 RCT)深刻でない深刻j深刻でない非常に深刻kなし非常に低265/913 (29.0%) 270/912 (29.6%) RR 0.93 (0.69〜1.27) 1,000人あたり20人少ない(90人少ない〜78人多い) CI, 信頼区間; MD, 平均差; RR, リスク比; SMD, 標準化平均差。a . ファンネルプロットを視覚的に評価し,出版バイアスの存在が強く疑われたため,1段階ダウングレードした。b . ドメイン2および5にに高いバイアスリスクがあると判断し,バイアスのリスクは「深刻」と判断し1段階ダウングレードした。c . I2=71%であり,かつシステマティックレビューに含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「非常に深刻」と判断し2段階ダウングレードした。d . 総サンプル数が3034と最適情報量(optimal information size, OIS)を満たしているものの,95% CIの幅が広く,「効果なし」と「相当な害」を含むことから,不精密さを「深刻」と判断し,1段階ダウングレードした。e . I2=42%,かつフォレストプロットの視覚的評価により臨床的異質性が軽度存在すると判断されたことから,非一貫性は「深刻」と判断し,1段階ダウングレードした。f . 総サンプルサイズが1,990と最適情報量(OIS)を満たしているものの,95% CIの幅が広く,「効果なし」と「重大な害」を含むことから,不精密さを「深刻」と評価し,1段階ダウングレードした。g . I2=48%であり,かつフォレストプロットの視覚的評価により臨床的異質性が軽度存在すると判断されたことから,非一貫性は「深刻」と判断し,1段階ダウングレードした。h . ドメイン3, 5において高いバイアスリスクがあると判断し,バイアスのリスクは「深刻」と判断し1段階ダウングレードした。i . 総サンプルサイズが799,イベント数が114と,最適情報量(OIS)を満たしておらず,1段階のダウングレードした。j . I2=39%,かつフォレストプロットの視覚的評価により臨床的異質性が軽度存在すると判断されたことから,非一貫性は「深刻」と判断し,1段階ダウングレードした。k . 総サンプルサイズが1,825,イベント数が535と最適情報量(OIS)を満たしているものの95% CIの幅が広く信頼区間は「相当な益」と「相当な害」を含むことから,2段階ダ

ウングレードした。

Table 2-2-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの

増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.43
-42- 31: 2444–9. 13) Falcão de Arruda IS, de Aguilar-Nascimento JE. Benefits

of early enteral nutrition with glutamine and probiotics in brain injury patients. Clin Sci (Lond) 2004;106:287-92. 14) Kieft H, Roos AN, van Drunen JD, et al. Clinical outcome of immunonutrition in a heterogeneous intensive care population. Intensive Care Med 2005;31:524-32. 15) Pearce CB, Sadek SA, Walters AM, et al. A double-blind, randomised, controlled trial to study the effects of an enteral feed supplemented with glutamine, arginine, and omega-3 fatty acid in predicted acute severe pancreatitis. JOP 2006;7:361-71. 16) Spindler-Vesel A, Bengmark S, Vovk I, et al. Synbiotics, prebiotics, glutamine, or peptide in early enteral nutrition: a randomized study in trauma patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2007;31:119-26. 17) Kuhls DA, Rathmacher JA, Musngi MD, et al. Beta-hydroxybeta-methylbutyrate supplementation in critically ill trauma patients. J Trauma 2007;62:125-31;discussion 131-2. 18) Kumar S, Kumar R, Sharma SB, et al. Effect of oral glutamine administration on oxidative stress, morbidity and mortality in critically ill surgical patients. Indian J Gastroenterol 2007;26:70-3. 19) McQuiggan M, Kozar R, Sailors RM, et al. Enteral glutamine during active shock resuscitation is safe and enhances tolerance of enteral feeding. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2008;32:28-35. 20) Beale RJ, Sherry T, Lei K, et al. Early enteral supplementation with key pharmaconutrients improves Sequential Organ Failure Assessment score in critically ill patients with sepsis: outcome of a randomized, controlled, doubleblind trial. Crit Care Med 2008;36:131-44. 21) Schneider A, Markowski A, Momma M, et al. Tolerability and efficacy of a low-volume enteral supplement containing key nutrients in the critically ill. Clin Nutr 2011;30:599-603. 22) van Zanten AR, Sztark F, Kaisers UX, et al. High-protein enteral nutrition enriched with immune-modulating nutrients vs. standard high-protein enteral nutrition and nosocomial infections in the ICU: a randomized clinical trial. JAMA 2014;312:514-24. 23) Mahmoud WH, Mostafa W, Abdel-Khalek AH, et al. Effect of immune-enhancing diets on the outcomes of patients after major burns. Ann Burns Fire Disasters 2014;27:192-6. 24) Singh N, Mishra SK, Sachdev V, et al. Effect of oral glutamine supplementation on gut permeability and endotoxemia in patients with severe acute pancreatitis: a randomized controlled trial. Pancreas 2014;43:867-73. 25) Chávez-Tostado M, Carrillo-Llamas F, Martínez-Gutiérrez PE, et al. Oral glutamine reduces myocardial damage after coronary revascularization under cardiopulmonary bypass. A randomized clinical trial. Nutr Hosp 2017;34:277-83. 26) Arutla M, Raghunath M, Deepika G, et al. Efficacy of enteral glutamine supplementation in patients with severe and predicted severe acute pancreatitis- A randomized controlled trial. Indian J Gastroenterol 2019;38:338-47. 27) Nakamura K, Kihata A, Naraba H, et al. β-Hydroxy-β -methylbutyrate, Arginine, and Glutamine Complex on Muscle Volume Loss in Critically Ill Patients: A Randomized Control Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:205-12. 28) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for

the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral

の重症患者には行うべきでない」としている29) 。

(6)実施に関わる検討事項

重症患者全体においては,グルタミンを強化した栄養剤の使用により,有益性,有害性のいずれかが上回るとはいえない。また,これまでにも多数のRCTが実施されており,今後グルタミン投与による重症患者全体への効果が示される可能性は低いと考えられる。ただし,対象患者を限定した場合にはグルタミンの有益性が示される可能性があり,今後も研究が待たれる。

文 献

1) Cruzat V, Macedo Rogero M, Noel Keane K, et al. Metabolism and Immune Function, Supplementation and Clinical Translation. Nutrients 2018; 10. DOI:10.3390/ nu10111564. 2) Rodas PC, Rooyackers O, Hebert C, et al. Glutamine and glutathione at ICU admission in relation to outcome. Clin Sci(Lond)2012; 122: 591–7. 3) Heyland D, Muscedere J, Wischmeyer PE, et al. A randomized trial of glutamine and antioxidants in critically ill patients. N Engl J Med 2013; 368: 1489–97. 4) van Zanten ARH, Dhaliwal R, Garrel D, et al. Enteral glutamine supplementation in critically ill patients: a systematic review and meta-analysis. Crit Care 2015; 19: 294. 5) Heyland DK, Wibbenmeyer L, Pollack JA, et al. A Randomized Trial of Enteral Glutamine for Treatment of Burn Injuries. N Engl J Med 2022; 387: 1001–10. 6) Kudsk KA, Minard G, Croce MA, et al. A randomized trial of isonitrogenous enteral diets after severe trauma. An immune-enhancing diet reduces septic complications. Ann Surg 1996; 224: 531–40; discussion 540-3. 7) Jones C, Palmer TE, Griffiths RD. Randomized clinical outcome study of critically ill patients given glutaminesupplemented enteral nutrition. Nutrition 1999; 15: 108–15. 8) Houdijk AP, Nijveldt RJ, van Leeuwen PA. Glutamineenriched enteral feeding in trauma patients: reduced infectious morbidity is not related to changes in endocrine and metabolic responses. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1999; 23: S52-8. 9) Conejero R, Bonet A, Grau T, et al. Effect of a glutamineenriched enteral diet on intestinal permeability and infectious morbidity at 28 days in critically ill patients with systemic inflammatory response syndrome: a randomized, single-blind, prospective, multicenter study. Nutrition 2002; 18: 716–21. 10) Hall JC, Dobb G, Hall J, et al. A prospective randomized trial of enteral glutamine in critical illness. Intensive Care Med 2003; 29: 1710–6. 11) Chuntrasakul C, Siltham S, Sarasombath S, et al. Comparison of a immunonutrition formula enriched arginine, glutamine and omega-3 fatty acid, with a currently high-enriched enteral nutrition for trauma patients. J Med Assoc Thai 2003; 86: 552–61. 12) Garrel D, Patenaude J, Nedelec B, et al. Decreased

mortality and infectious morbidity in adult burn patients given enteral glutamine supplements: a prospective, controlled, randomized clinical trial. Crit Care Med 2003;
p.44
-43-たり27人多い(95% CI:54人少ない〜126人多い)で

あった。望ましい効果と望ましくない効果はともに小さく,介入も比較対照もいずれも支持しないと判断した。また,エビデンスの確実性は「非常に弱い」であった。したがって,それらを総合的に判断し,条件付きの弱い非推奨とした。

(3)その他の推奨根拠

特になし。

(4)判断の要約(Table 2-3-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2022および,ESPENガイドライン2023では,消化態栄養剤または成分栄養剤に関する記載はない24),25) 。

(6)実施に関わる検討事項

短腸症候群や膵外分泌機能不全などの吸収不良症候群を指摘されている症例,下痢など腸管不耐等の症例に限定した検討はできていない。そのため,これらの特定の患者を限定した使用に関してはさらなる研究が必要である。

文 献

1) Otani S, Coopersmith CM. Gut integrity in critical illness. J Intensive Care 2019;7:17. 2) Grant JP, Davey-McCrae J, Snyder PJ. Effect of enteral nutrition on human pancreatic secretions. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1987;11:302-4. 3) Petrov MS, Loveday BP, Pylypchuk RD, et al. Systematic review and meta-analysis of enteral nutrition formulations in acute pancreatitis. Br J Surg 2009;96:1243-52. 4) Mowatt-Larssen CA, Brown RO, Wojtysiak SL, et al. Comparison of tolerance and nutritional outcome between a peptide and a standard enteral formula in critically ill, hypoalbuminemic patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1992;16:20-4. 5) Schulman AS, Willcutts KF, Claridge JA, et al. Does the addition of glutamine to enteral feeds affect patient mortality? Crit Care Med 2005;33:2501-6. 6) Spindler-Vesel A, Bengmark S, Vovk I, et al. Synbiotics, prebiotics, glutamine, or peptide in early enteral nutrition: a randomized study in trauma patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2007;31:119-26. 7) Beale RJ, Sherry T, Lei K, et al. Early enteral supplementation with key pharmaconutrients improves Sequential Organ Failure Assessment score in critically ill patients with sepsis: outcome of a randomized, controlled, doubleblind trial. Crit Care Med 2008;36:131-44. 8) de Aguilar-Nascimento JE, Prado Silveira BR, Dock-

Nascimento DB. Early enteral nutrition with whey protein or casein in elderly patients with acute ischemic stroke: a double-blind randomized trial. Nutrition 2011;27:440-4.

and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 29) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89.

CQ2-3:重症患者において,半消化態栄養剤または

天然濃厚流動食より,消化態栄養剤または成分栄養剤による経腸栄養を行うべきか?

Answer:重症患者において,窒素源を意図した

消化態栄養剤または成分栄養剤による経腸栄養を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。*ただし,短腸症候群や膵外分泌機能不全などの吸収不良症候群を指摘されている症例や腸管不耐などの症例に限定した検討はできていない。また天然濃厚流動食や半消化態栄養の有益性を示すものではない。

(1)背景

重症患者は,膵外分泌機能の低下や腸管粘膜障害を起こす可能性がある1) 。そのため,窒素源がタンパク質である天然濃厚流動食,半消化態栄養剤に比し,窒素源がアミノ酸や低分子ペプチド,部分加水分解物からなる消化態栄養剤または成分栄養剤は,理論上は消化吸収時に有利であることが指摘されている2) 。したがって,重症患者の腸管不耐を減らしエネルギーやタンパク質の摂取量や吸収量増加に寄与するなどアウトカムを改善する可能性があるが,その有効性は明らかではない3) 。また,消化態栄養剤または成分栄養剤は,重症患者の下痢を減らす可能性がある。下痢は,重症患者の皮膚障害の原因となり,QOLを損なうだけでなく,医療スタッフの負担にもなる。したがって,重症患者に消化態栄養剤または成分栄養剤を使用することの有効性について検討する意義は大きく,本ガイドラインにおいて扱うべき重要な臨床課題であると判断した。

(2)効果のバランス(Table 2-3-1)

20件のRCTを用いたメタアナリシスを行った4)〜23) 。望ましい効果として,ICU滞在日数はMD 1.2日短い(95% CI:2.4日短い〜0.1日短い),人工呼吸期間はMD 0.6日短い(95% CI:1.4日短い〜0.2日長い),下痢は1,000人あたり6人少ない(95% CI:92人少ない〜108人多い)であった。望ましくない効果として,全死亡は,1,000人あたり0人多い(95% CI: 40人少ない〜53人多い),感染性合併症は,1,000人あ
p.45
-44- 12) Bukhari A, A Taslim N, As'ad S, et al. Comparison of

Different Early Enteral Feeding Formulas on Critically Ill Patients. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) 2020;66:S2-10. 13) Carteron L, Samain E, Winiszewski H, et al. Semi-elemental versus polymeric formula for enteral nutrition in braininjured critically ill patients: a randomized trial. Crit Care 2021;25:31. 14) de Brito-Ashurst I, Klebach M, Tsompanaki E, et al. Gastrointestinal Tolerance and Protein Absorption Markers with a New Peptide Enteral Formula Compared to a Standard Intact Protein Enteral Formula in Critically Ill Patients. Nutrients 2021;13:2362. 15) Nakamura K, Nakano H, Naraba H, et al. High protein

versus medium protein delivery under equal total energy

9) Jakob SM, Bütikofer L, Berger D, et al. A randomized controlled pilot study to evaluate the effect of an enteral formulation designed to improve gastrointestinal tolerance in the critically ill patient-the SPIRIT trial. Crit Care 2017;21:140. 10) Rice TW, Files DC, Morris PE, et al. Dietary Management of Blood Glucose in Medical Critically Ill Overweight and Obese Patients: An Open-Label Randomized Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2019;43:471-80. 11) Yeh DD, Ortiz LA, Lee JM, et al. PEP uP (Enhanced

Protein-Energy Provision via the Enteral Route Feeding Protocol) in Surgical Patients-A Multicenter Pilot Randomized Controlled Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:197-204.

Table 2-3-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI) Polymeric formula Elemental/ Oligomeric

死亡率1,021 (12 RCT)非常に深刻a深刻b深刻でない非常に深刻cなし非常に低92/539 (17.1%) 88/482 (18.3%) RR 1.00 (0.77〜1.31) 1,000人あたり0人多い(40人少ない〜53人多い) ICU滞在日数

669 (9 RCT)非常に深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 非常に低 332 337 − MD 1.24日短い (2.39日短い〜0.08日短い)

人工呼吸期間

486 (5 RCT)非常に深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 非常に低 238 248 − MD 0.62日短い (1.44日短い〜0.2日長い)

感染性合併症

966 (10 RCT)非常に深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 非常に低229/507 (45.2%) 204/459 (44.4%) RR 1.06 (0.88〜1.28) 1,000人あたり27人多い(54人少ない〜126人多い)

下痢

909 (12 RCT)非常に深刻a 深刻e 深刻でない 深刻f なし 非常に低167/481 (34.7%) 136/428 (31.8%) RR 0.98 (0.71〜1.34) 1,000人あたり6人少ない(92人少ない〜108人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 全体的にバイアスのリスクが高いため,2段階ダウングレードした。b . 効果量の方向性が異なり,異質性が高いため,矛盾があるとして1段階ダウングレードした。c . 95% CIに幅があるため,不正確さを理由に2段階ダウングレードした。d . 有害事象を評価するのに十分な規模の研究がなかったため,不正確性を理由に1段階ダウングレードした。e . 重大な矛盾(リスク比は0.66から1.30,I2=57%)により1段階ダウングレードした。f . 有害事象を評価するのに十分な規模の研究がなかったため,不正確性を理由に1段階ダウングレードした。

Table 2-3-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.46
-45- (nitric oxide, NO)の基質であり,免疫機能改善やタン

パク合成の亢進,創傷治癒を促進する1),2) 。消化器外科手術における周術期にアルギニンを強化した栄養剤を投与することは感染合併症減少や予後改善に寄与する可能性がある3),4) 。一方で,敗血症等の重症患者に対する投与は,過剰なNOの産生により,末梢血管の過度な拡張や循環動態への悪影響が危惧されている5) 。そのため,各ガイドラインで疾患ごとに異なる記載がなされている4),5) 。以上から,周術期患者も含む本邦の重症患者では,アルギニンを強化した栄養剤の効果の評価は定まっておらず,再考の余地があり,本CQの重要度は高いと考えられる。

(2)効果のバランス(Table 2-4-1)

23件のRCT(n=2,311)を用いたメタアナリシスを行った6)〜28) 。望ましい効果として,感染性合併症は1,000人あたり8人少ない(141人少ない〜206人多い),人工呼吸期間はMD 0.2日短い(1.6日短い〜1.1日長い),筋肉量低下率はMD 3%低い(7.3%低い〜1.3%高い),有害事象は1,000人あたり36人少ない(156人少ない〜166人多い)であった。一方で望ましくない効果として,全原因死亡は1,000人あたり20人多い(17人少ない〜61人多い),ICU滞在日数はMD 0.5日長い(1.7日短い〜2.7日長い)であった。望ましい効果と望ましくない効果はともに小さく,介入も比較対照もいずれも支持しないと判断した。一般的に死亡に関する相対的価値は高く,総合的に判断し,非推奨とした。

(3)その他の推奨根拠

アルギニンを強化した経腸栄養剤の使用に関して,道義的,倫理的に問題はなく許容可能であると考えられる。また,一般的に流通している製剤も多く,コスト増加もわずかであり,当該介入は十分実行可能である。一方で,使用に伴い死亡が増加する可能性が否定できず,容認性を考えるにあたって考慮すべきかもしれない。

(4)判断の要約(Table 2-4-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2022では,アルギニン自体の記載はないものの,免疫調整栄養全体に関しては,今回取り扱わず将来的に別なガイドラインを作成するという記載がなされている29) 。また,ESPENガイドライン2023には,アルギニンに関する記載はない30) 。

delivery in critical care: A randomized controlled trial. Clin Nutr 2021;40:796-803. 16) Brinson RR, Kolts BE. Diarrhea associated with severe hypoalbuminemia: a comparison of a peptide-based chemically defined diet and standard enteral alimentation. Crit Care Med 1988;16:130-6. 17) Meredith JW, Ditesheim JA, Zaloga GP. Visceral protein levels in trauma patients are greater with peptide diet than with intact protein diet. J Trauma 1990;30:825-8. discussion 828-9. 18) Brown RO, Hunt H, Mowatt-Larssen CA, et al. Comparison of specialized and standard enteral formulas in trauma patients. Pharmacotherapy 1994;14:314-320. 19) Heimburger DC, Geels VJ, Bilbrey J, et al. Effects of small-peptide and whole-protein enteral feedings on serum proteins and diarrhea in critically ill patients: a randomized trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1997;21:162-7. 20) Schneider A, Markowski A, Momma M, et al. Tolerability and efficacy of a low-volume enteral supplement containing key nutrients in the critically ill. Clin Nutr 2011;30:599-603. 21) Seres DS, Ippolito PR. Pilot study evaluating the efficacy, tolerance and safety of a peptide-based enteral formula versus a high protein enteral formula in multiple ICU settings (medical, surgical, cardiothoracic). Clin Nutr 2017;36:706-9. 22) Ohkura Y, Ueno M, Shindoh J, et al. Randomized controlled trial on efficacy of oligomeric formula (HINE E-GEL(R)) versus polymeric formula (MEIN(R)) enteral nutrition after esophagectomy for esophageal cancer with g a s t r i c t u b e r e c o n s t r u c t i o n . D i s E s o p h a g u s 2019;32:doy084. 23) Dietscher JE, Foulks CJ, Smith RW. Nutritional response of patients in an intensive care unit to an elemental formula vs a standard enteral formula. J Am Diet Assoc 1998;98:335–6. 24) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 25) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89.

CQ2-4:重症患者において,アルギニンを強化した

経腸栄養剤を投与すべきか?

Answer:経腸栄養を実施している重症患者にお

いて,アルギニンを強化した経腸栄養剤を投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。*ただし,アルギニンの投与量に関しては検討していない。

(1)背景

アルギニンは微小循環調整に重要な一酸化窒素
p.47
-46-

Table 2-4-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果

がよい様々採用研究なし

必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない

Table 2-4-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照群アルギニン群

死亡率1,965 (15 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高266/953 (27.9%) 305/1,012 (30.1%) RR 1.07 (0.94〜1.22) 1,000人あたり20人多い(17人少ない〜61人多い) ICU滞在日数1,333 (11 RCT)深刻でない非常に深刻a深刻でない非常に深刻bなし非常に低647 686 − MD 0.52日長い(1.65日短い〜2.68日長い)感染症発症率

840 (4 RCT) 深刻c 深刻d 深刻でない 非常に深刻e なし 非常に低158/414 (38.2%) 162/426 (38.0%) RR 0.98 (0.63〜1.54) 1,000人あたり8人少ない(141人少ない〜206人多い)

人工呼吸期間

1,326 (11 RCT)深刻c非常に深刻f深刻でない非常に深刻g出版バイアスが強く疑われるh非常に低641 685 − MD 0.23日短い(1.59日短い〜1.13日長い)身体機能

0 (研究なし) − 0 0 − 研究なし

筋肉量低下率

50 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻i なし 低 24 26 − MD 3%少ない (7.3%少ない〜1.3%多い)

すべての有害事象

86 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻j なし 低14/43 (32.6%) 11/43 (25.6%) RR 0.89 (0.52〜1.51) 1,000人あたり36人少ない(156人少ない〜166人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比; SMD, 標準化平均差。a . I2=85%であり,かつシステマティックレビューに含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「非常に深刻」と判断し2段階ダウングレードした。b . 総サンプル数が1,333と最適情報量(optimal information size, OIS)を満たしているが,95% CIの幅が広くCIは「相当な益」と「相当な害」を含むことから,2段階ダウングレードした。c . 多くの研究でバイアスのリスクが低いとは言えず1段階ダウングレードした。d . I2=73%ではあるものの,システマティックレビューに含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した臨床的異質性は軽度であり,「深刻」と判断し1段階ダウングレードした。e . 総サンプル数が840,イベント数が320と最適情報量(OIS)を満たしているものの,95% CIの幅が広くCIは「相当な益」と「相当な害」を含むことから2段階ダウングレードした。f . I2=77%であり,かつシステマティックレビューに含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「非常に深刻」と判断し2段階ダウングレードした。g . 総サンプル数が1,326と最適情報量(OIS)を満たしているものの,95% CIの幅が広くCIは「相当な益」と「相当な害」を含むと考えられたため,2段階ダウングレードした。h . 各研究における効果のばらつきをファンネルプロットで視覚的に判断した結果,出版バイアスが「強く疑われる」と破断し1段階ダウングレードした。i . 総サンプル数が50と非常に少なく,かつ95% CIの幅が広くCIは「効果なし」と「相当な益」を含んでいることから2段階ダウングレードした。j . 総サンプル数が86と非常に少なく,かつ95% CIの幅が広くCIは「相当な益」と「相当な害」を含んでいることから2段階ダウングレードした。
p.48
-47- currently high-enriched enteral nutrition for trauma patients. J Med Assoc Thai 2003;86:552-61. 13) Conejero R, Bonet A, Grau T, et al. Effect of a glutamine-

enriched enteral diet on intestinal permeability and infectious morbidity at 28 days in critically ill patients with systemic inflammatory response syndrome: a randomized, single-blind, prospective, multicenter study. Nutrition 2002;18:716-21. 14) Galbán C, Montejo JC, Mesejo A, et al. An immuneenhancing enteral diet reduces mortality rate and episodes of bacteremia in septic intensive care unit patients. Crit Care Med 2000;28:643-8. 15) Gottschlich MM, Jenkins M, Warden GD, et al. Differential effects of three enteral dietary regimens on selected outcome variables in burn patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1990;14:225-36. 16) Houdijk AP, Nijveldt RJ, van Leeuwen PA. Glutamineenriched enteral feeding in trauma patients: reduced infectious morbidity is not related to changes in endocrine and metabolic responses. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1999;23:S52-8. 17) Khorana J, Rerkasem K, Apichartpiyakul C, et a. Immunonutrition and cytokine response in patients with head injury. 18) Kieft H, Roos AN, van Drunen JD, et al. Clinical outcome of immunonutrition in a heterogeneous intensive care population. Intensive Care Med 2005;31:524-32. 19) Kudsk KA, Minard G, Croce MA, et al. A randomized trial of isonitrogenous enteral diets after severe trauma. An immune-enhancing diet reduces septic complications. Ann Surg 1996;224:531-40;discussion 540-3. 20) Kuhls DA, Rathmacher JA, Musngi MD, et al. Beta-hydroxybeta-methylbutyrate supplementation in critically ill trauma patients. J Trauma 2007;62:125-31;discussion 131-2. 21) Mendez C, Jurkovich GJ, Garcia I, et al. Effects of an immune-enhancing diet in critically injured patients. J Trauma 1997;42:933-40;discussion 940-1. 22) Nakamura K, Kihata A, Naraba H, et al. β-Hydroxy-β -methylbutyrate, Arginine, and Glutamine Complex on Muscle Volume Loss in Critically Ill Patients: A Randomized Control Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:205-12. 23) Preiser JC, Berré PJ, Van Gossum A, et al. Metabolic effects of arginine addition to the enteral feeding of critically ill patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2001;25:182-7. 24) Pearce CB, Sadek SA, Walters AM, et al. A double-blind, randomised, controlled trial to study the effects of an enteral feed supplemented with glutamine, arginine, and omega-3 fatty acid in predicted acute severe pancreatitis. JOP 2006;7:361-71. 25) Saffle JR, Wiebke G, Jennings K, Morris SE, et al. Randomized trial of immune-enhancing enteral nutrition in burn patients. J Trauma 1997;42:793-800;discussion 800-2. 26) Tsuei BJ, Bernard AC, Barksdale AR, et al. Supplemental enteral arginine is metabolized to ornithine in injured patients. J Surg Res 2005;123:17-24. 27) Weimann A, Bastian L, Bischoff WE, et al. Influence of arginine, omega-3 fatty acids and nucleotide-supplemented enteral support on systemic inflammatory response syndrome and multiple organ failure in patients after severe trauma. Nutrition 1998;14:165-72. 28) Wibbenmeyer LA, Mitchell MA, Newel IM, et al. Effect of

a fish oil and arginine-fortified diet in thermally injured

(6)実施に関わる検討事項

今回の解析では,アルギニンの投与量に関しての検討は行っておらず,至適投与量は不明である。また,重症患者全体に加えて,敗血症,外傷,周術期患者のサブグループ解析においてもアルギニンの効果は示されなかった。ただし,今回の解析に用いた研究のほとんどでアルギニンを含む免疫栄養全体を強化した栄養剤の投与が行われており,アルギニンのみの単独投与を行った場合の効果は不明である。

文 献

1) Bansal V, Ochoa JB. Arginine availability, arginase, and the immune response. Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2003;6:223-8. 2) Morris SM Jr. Arginine Metabolism Revisited. J Nutr 2016;146:2579S-86S. 3) Song GM, Tian X, Liang H, et al. Role of Enteral Immunonutrition in Patients Undergoing Surgery for Gastric Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Medicine (Baltimore) 2015;94:e1311. 4) Mazaki T, Ishii Y, Murai I. Immunoenhancing enteral and parenteral nutrition for gastrointestinal surgery: a multiple-treatments meta-analysis. Ann Surg 2015;261: 662-9. 5) Zhou M, Martindale RG. Immune-modulating enteral formulations: optimum components, appropriate patients, and controversial use of arginine in sepsis. Curr Gastroenterol Rep 20079:329-37. 6) Atkinson S, Sieffert E, Bihari D. A prospective, randomized, double-blind, controlled clinical trial of enteral immunonutrition in the critically ill. Guy's Hospital Intensive Care Group. Crit Care Med 1998;26:1164-72. 7) Beale RJ, Sherry T, Lei K, et al. Early enteral supplementation with key pharmaconutrients improves Sequential Organ Failure Assessment score in critically ill patients with sepsis: outcome of a randomized, controlled, doubleblind trial. Crit Care Med 2008;36:131-44. 8) Bower RH, Cerra FB, Bershadsky B, et al. Early enteral administration of a formula (Impact) supplemented with arginine, nucleotides, and fish oil in intensive care unit patients: results of a multicenter, prospective, randomized, clinical trial. Crit Care Med 1995;23:436-49. 9) Brown RO, Hunt H, Mowatt-Larssen CA, et al. Comparison of specialized and standard enteral formulas in trauma patients. Pharmacotherapy 1994;14:314-20. 10) Caparrós T, Lopez J, Grau T. Early enteral nutrition in critically ill patients with a high-protein diet enriched with arginine, fiber, and antioxidants compared with a standard high-protein diet. The effect on nosocomial infections and outcome. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2001;25:299-308; discussion 308-9. 11) Cerra FB, Lehmann S, Konstantinides N, et al. Improvement in immune function in ICU patients by enteral nutrition supplemented with arginine, RNA, and menhaden oil is independent of nitrogen balance. Nutrition 1991;7:193-9. 12) Chuntrasakul C, Siltham S, Sarasombath S, et al.

Comparison of a immunonutrition formula enriched arginine, glutamine and omega-3 fatty acid, with a
p.49
-48-量の体積比である呼吸商は脂質0.71で糖質1.00と比

較して小さく,脂質がエネルギー産生栄養素(三大栄養素)の中でも呼吸商が最小であるためである。また,高脂質/低糖質の経腸栄養剤は血糖値の急激な変動を抑制し,血糖管理がしやすくなったと報告されている2) 。これまでに高脂質/低糖質の経腸栄養剤を用いた複数のRCTがなされ,感染性合併症や死亡率への効果が検討されている2)〜12) 。しかしながら小規模RCTが複数存在するのみのため高脂質/低糖質の経腸栄養剤の益と害は明らかではなく,当ガイドラインで扱う重要な課題であると判断した。

(2)効果のバランス(Table 2-5-1)

11件のRCTを用いたメタアナリシスを行った2)〜12)。望ましい効果として,ICU滞在日数は0.2日短い(1.9日短い〜1.6日長い),人工呼吸期間は1.7日短い(2.9日短い〜0.5日短い),下痢は1,000人あたり78人少ない(170人少ない〜39人多い),胃残量(GRV>250〜500 mL)は1,000人あたり12人少ない(131人少ない〜155人多い)であった。したがって,望ましい効果は小さいと判断した。望ましくない効果として,30

patients. J Burn Care Res 2006;27:694-702. 29) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 30) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical

and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89.

CQ2-5:重症患者において,高脂質/低糖質の経腸栄

養剤を投与すべきか?

Answer:重症患者において,高脂質/低糖質の

経腸栄養剤を投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

(1)背景

重症患者における高脂質/低糖質の経腸栄養剤はCO2産生を減少させる効果が期待され,主に人工呼吸器装着患者など呼吸不全を伴う患者における研究が報告されてきた1) 。これは酸素消費量に対するCO2排出

Table 2-5-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)あり controlあり HFLC

30日死亡

487 (6 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 低39/207 (18.8%) 62/280 (22.1%) RR 1.14 (0.80〜1.62) 1,000人あたり26人多い(38 人少ない〜117人多い)

ICU滞在日数

299 (3 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 高 122 177 − MD 0.16日短い (1.94日短い〜1.61日長い)

人工呼吸期間

318 (4 RCT) 深刻c 深刻d 深刻でない 深刻でない なし 低 134 184 − MD 1.73日短い (2.94日短い〜0.53日短い)

下痢

149 (3 RCT) 深刻e 深刻でない 深刻でない 深刻f なし 低32/66 (48.5%) 29/83 (34.9%) RR 0.84 (0.65〜1.08) 1,000人あたり78人少ない(170 人少ない〜 39人多い)

胃残量

149 (3 RCT) 深刻g 深刻でない 深刻でない 深刻h なし 低27/66 (40.9%) 30/83 (36.1%) RR 0.97 (0.68〜1.38) 1,000人あたり12人少ない(131人少ない〜155人多い)

HFLC, 高脂肪/低糖質; MD, 平均差; RR, リスク比。a . RCT 6件のうち,2件がランダム化後に不適切に患者を除外し,3件が試験プロトコルを報告していないため,バイアスのリスクで1段階ダウングレードした。b . 標本サイズがN=2,000未満(α=0.05,β=0.2,イベント=20%,相対リスク低減=25%に基づいて計算された最適情報サイズ)であるため,不精確で1段階ダウングレードした。c . RCT 4件のうち,2件がランダム化プロセスを報告せず,1件が意図通りに解析を行わず,2件が試験プロトコルを報告していないため,バイアスのリスクで1段階ダウングレードした。d . 統計的に有意な不一致が観察されるため(I2=72%,P=0.008),非一貫性で1段階ダウングレードした。e . RCT 3件のうち,1件がランダム化後に不適切に患者を除外し,1件が下痢の定義をせず,2件が試験プロトコルを報告していないため,バイアスのリスクで1段階ダウングレードした。f . 標本サイズがN=800未満(α=0.05,β=0.2,イベント=40%,相対リスク低減=25%に基づいて計算された最適情報サイズ)であるため,不精確で1段階ダウングレードした。g . RCT 3件のうち,1件がランダム化後に不適切に患者を除外し,1件が胃残留量の定義をせず,2件が試験プロトコルを報告していないため,バイアスのリスクで1段階ダウングレードした。h . 標本サイズがN=800未満(α=0.05,β=0.2,イベント=40%,相対リスク低減=25%に基づいて計算された最適情報サイズ)であるため,不精確で1段階ダウングレー

ドした。
p.50
-49-ンスリン需要をアウトカムとして検討していない。し

かしながら,高脂質/低糖質の経腸栄養剤が高血糖を伴う症例においてインスリン需要を減らし,血糖値の急激な変動を抑制したと報告する RCT2)もあり,別途検討が必要である。

文 献

1) Radrizzani D, Iapichino G. Nutrition and lung function in the critically ill patient. Clin Nutr 1998;17:7-10. 2) Doola R, Deane AM, Tolcher DM, et al. The effect of a low carbohydrate formula on glycaemia in critically ill enterally-fed adult patients with hyperglycaemia: A blinded randomised feasibility trial. Clin Nutr ESPEN 2019;31:80-7. 3) Abd El Sabour Faramawy M, Abd Allah A, El Batrawy S, et al. Impact of high fat low carbohydrate enteral feeding on weaning from mechanical ventilation. Egyptian Journal of Chest Diseases and Tuberculosis 2014;63:931-8. 4) al-Saady NM, Blackmore CM, Bennett ED. High fat, low carbohydrate, enteral feeding lowers PaCO2 and reduces the period of ventilation in artificially ventilated patients. Intensive Care Med 1989;15:290-5. 5) Höltermann W, Lukasewitz P, Krämer M, et al. What is the effect of enteral nutrition with a raised fat or carbohydrate content on gas exchange and metabolism of critically ill patients with acute respiratory failure? Transfus Med Hemother 1997;24:340-7. 6) Mesejo A, Montejo-González JC, Vaquerizo-Alonso C, et al. Diabetes-specific enteral nutrition formula in hyperglycemic, mechanically ventilated, critically ill patients: a prospective, open-label, blind-randomized, multicenter study. Crit Care 2015;19:390. 7) Nourmohammadi M, Moghadam OM, Lahiji MN, et al. Effect of Fat-based versus Carbohydrate-based Enteral Feeding on Glycemic Control in Critically Ill Patients: A Randomized Clinical Trial. Indian J Crit Care Med 2017;21:500-5. 8) Tappy L, Berger M, Schwarz JM, et al. Hepatic and

peripheral glucose metabolism in intensive care patients

日死亡は1,000人あたり26人多い(38人少ない〜117人多い)であった。したがって,望ましくない効果は小さいと判断した。一般的に死亡に関する相対的価値は高く,それらを総合的に判断し,弱い非推奨とした。

(3)その他の推奨根拠

特になし。

(4)判断の要約(Table 2-5-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

最新版のESPENガイドライン2023,ASPENガイドライン2022では,本CQに対する記載はない13),14) 。ASPENガイドライン2016では,「急性呼吸不全を伴う重症患者に対しての最適な脂質/糖質の比率は?」というCQに対し,「急性呼吸不全を伴う重症患者には,呼吸商を操作してCO2産生を減らすように設計された特殊な高脂質/低糖質の製剤を使用しないことを推奨する。(quality of evidence: very low)」としている15) 。

(6)実施に関わる検討事項

高脂質/低糖質の経腸栄養剤に統一された定義はないが,高脂肪食とは総カロリーの少なくとも35%が脂質から摂取される食事であるとされている16) 。なお,今回採用された研究では,脂質の割合は40%〜55%,糖質の割合は28%〜37%と研究ごとに異なる組成であったことには注意が必要である。また,ガイドラインで定めたアウトカムに則り,望ましい効果と望ましくない効果を評価したため,血糖値の急激な変動やイ

Table 2-5-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.51
-50-検討することがある1) 。脂肪乳剤は主に魚油由来の

ω-3系と大豆油由来のω-6系に分けられるが,日本で使用できる脂肪乳剤はω-6系である。ω-6系脂肪酸は, アラキドン酸を経て炎症性活性の強い偶数系の脂質メディエーターであるプロスタグランジンI2,プラスタグランジンE2,トロンボキサンA2,ロイコトリエンB4などを産生することから炎症増強作用があることが分かっている2) 。そのため,ω-6系脂肪乳剤は,敗血症やARDSなどのサイトカインや炎症性メディエーターが関与する病態では,さらに炎症を増強させる可能性があるため,投与する場合は注意が必要である。一方,ω-3系脂肪酸の代謝産物であるプロスタグランジンI3,プロスタグランジンE3,トロンボキサンA3,ロイコトリエンB5などの奇数系の脂質メディエーターは,炎症性物質に対する拮抗作用や代謝物質による抗炎症作用をもつことから有益性が報告されている3) 。しかしながら,脂肪乳剤の静脈投与による有効性やリスクは不明であり,重症患者において,脂肪乳剤の静脈投与に関して評価することは,実臨床において重要な課題である。

(2)効果のバランス(Table 2-6-1)

8件のRCT(n=372)を用いたメタアナリシスを行った4)〜11) 。望ましい効果として,院内死亡は1,000人あたり22人少ない(110人少ない〜127人多い), ICU滞在日数はMD 0.4日短い(4.8日短い〜4.0日長い),感染性合併症は1,000人あたり33人少ない(191人少ない〜310人多い),有害事象として不整脈は, 1,000人あたり166人少ない(196人少ない〜60人多い)であった。したがって,望ましい効果は中と判断した。一方,人工呼吸期間はMD 5.8日長い(4.6日短い〜16.1日長い)であるため,望ましくない効果は中と判断した。したがって,効果のバランスは総合的に判断し,介入も比較対照もいずれも支持しないとした。また,ω-3系脂肪乳剤とω-6系や中鎖脂肪酸を含む非ω-3系脂肪乳剤に関して感度分析を行ったところ,ω -3系脂肪乳剤では4件のRCT(n=227)で院内死亡が1,000人あたり78人少ない(196人少ない〜175人多い)とICU滞在日数がMD 2.4日短い(6.2日短い〜1.4日長い)であり,どちらも望ましい方向であった(Table 2-6-1)。一方,非ω-3系脂肪乳剤では3件のRCT(n=118)で院内死亡が1,000人あたり41人多い(51人少ない〜244人多い)と2件のRCT(n=97)でICU滞在日数がMD 4.5日長い(8.3日短い〜17.2日長い)であり,どちらも望ましくない方向であった(付録)。

receiving continuous high- or low-carbohydrate enteral nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1999;23:260-7; discussion 267-8. 9) Vahabzadeh D, Valizadeh Hasanloei MA, Vahdat Shariatpanahi Z. Effect of high-fat, low-carbohydrate enteral formula versus standard enteral formula in hyperglycemic critically ill patients: a randomized clinical trial. Int J Diabetes Dev Ctries 2019;39:173-80. 10) van den Berg B, Bogaard JM, Hop WC. High fat, low carbohydrate, enteral feeding in patients weaning from the ventilator. Intensive Care Med 1994;20:470-5. 11) van Steen SC, Rijkenberg S, Sechterberger MK, et al. Glycemic Effects of a Low-Carbohydrate Enteral Formula Compared With an Enteral Formula of Standard Composition in Critically Ill Patients: An Open-Label Randomized Controlled Clinical Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2018;42:1035-45. 12) Wewalka M, Drolz A, Seeland B, et al. Different enteral nutrition formulas have no effect on glucose homeostasis but on diet-induced thermogenesis in critically ill medical patients: a randomized controlled trial. Eur J Clin Nutr 2018;72:496-503. 13) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 14) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 15) McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al. Society of Critical Care Medicine; American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). JPEN J Parenter Enteral Nutr 2016;40:159-211. 16) Krisanits B, Randise JF, Burton CE, et al. Pubertal

mammary development as a "susceptibility window" for breast cancer disparity. Adv Cancer Res 2020;146:57-82.

CQ2-6:経静脈栄養中の重症患者に対して脂肪乳剤

の静脈投与を行うか?

Answer:経静脈栄養中の重症患者に対して脂肪

乳剤の静脈投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。*ただし, 対象論文において脂肪乳剤の静脈投与はICU入室後2週間以内に実施されている。

(1)背景

脂質は糖質やタンパク質と比較してエネルギー量が高いため(1 gあたり9 kcal),重症患者に経静脈栄養を実施する場合,脂肪乳剤は効率良くエネルギーを投与する目的や必須脂肪酸欠乏を予防する目的に投与を
p.52
-51- (4)判断の要約(Table 2-6-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2022 は,経静脈栄養が適応になる重症患者に,ICU入室1週間以内も含めて魚油由来,非魚油由来,どちらの脂肪乳剤の投与も提案している12) 。ESPENガイドライン2023は,脂肪乳剤の投与は通常の経静脈栄養の一部とすべきであるが,1.5 g/ kg/dayを超えるべきではなく,個々の容認性をみて決めるべきであるとしている。また,魚油が豊富な脂肪乳剤(魚油投与量0.1〜0.2 g/kg/day)を提案している13) 。

(3)その他の推奨根拠

脂肪乳剤の静脈投与は,経静脈栄養の追加の有無の違いであるため道義的・倫理的な問題はなく容認される。脂肪乳剤は広く流通しており入手可能であるため,この介入の実行可能性は十分ある。しかし,効果のバランスは介入が優位とはいえず,重症患者で起こり得る血栓症,重篤な肝障害,重篤な血液凝固障害,高脂血症,ケトーシスで禁忌とされていることを加味し,介入をしないことを弱く推奨するとした。

Table 2-6-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)あり controlあり lipid

emulsion

院内死亡

345 (7 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻a なし 低41/168 (24.4%) 41/177 (23.2%) RR 0.91 (0.55〜1.52) 1,000人あたり22人少ない(110人少ない〜127人多い)

ICU滞在日数

324 (6 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻a なし 低 161 163 − MD 0.41日短い (4.83日短い〜4.01日長い)

人工呼吸期間

117 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻a なし 低 57 60 − MD 5.79日長い (4.56日短い〜16.14 日長い)

感染性合併症

180 (3 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 中30/91 (33.0%) 25/89 (28.1%) RR 0.90 (0.42〜1.94) 1,000人あたり33人少ない(191人少ない〜310人多い)

有害事象

60 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻c なし 低6/30 (20.0%) 1/30 (3.3%) RR 0.17 (0.02〜1.30) 1,000人あたり166人少ない(196人少ない〜60人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 症例数が少なく,CIが広いため,2段階ダウングレードした。b . CIが広いため,1段階ダウングレードした。c . 1RCTしかないため,2段階ダウングレードした。

Table 2-6-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.53
-52- of critically ill patients. Cell Mol Biol (Noisy-le-grand) 2020;66:52-6. 9) Khor BS, Liaw SJ, Shih HC, et al. Randomized, double

blind, placebo-controlled trial of fish-oil-based lipid emulsion infusion for treatment of critically ill patients with severe sepsis. Asian J Surg 2011;34:1-10. 10) Hall TC, Bilku DK, Neal CP, et al. The impact of an omega-3 fatty acid rich lipid emulsion on fatty acid profiles in critically ill septic patients. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 2016;112:1-11. 11) McCowen KC, Friel C, Sternberg J, et al. Hypocaloric total parenteral nutrition: effectiveness in prevention of hyperglycemia and infectious complications--a randomized clinical trial. Crit Care Med 2000;28:3606-11. 12) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 13) Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr 2023;42:1671-89. 14) Yasuda H, Horikoshi Y, Kamoshita S, et al. Injectable Lipid Emulsion and Clinical Outcomes in Patients Exclusively Receiving Parenteral Nutrition in an ICU: A Retrospective Cohort Study Using a Japanese Medical Claims Database. Nutrients 2023;15:2797. 15) Bousie E, van Blokland D, Lammers HJ, et al. Relevance

of non-nutritional calories in mechanically ventilated critically ill patients. Eur J Clin Nutr 2016;70:1443-50.

CQ2-7-1:重症患者において,プレバイオティクス

を投与すべきか?

Answer:重症患者において,プレバイオティク

スを投与することを強く推奨する(GRADE 1B:エビデンスの確実性=中)。

(1)背景

プレバイオティクスは,消化できない食物成分であり,選択的に結腸内の単一または限られた数の細菌の成長あるいは活動を刺激することにより宿主に有益な効果を与える物質を指し,非消化性オリゴ糖(フルクトオリゴ糖,キシロオリゴ糖,ガラクトオリゴ糖,ラクトスクロース等),水溶性食物繊維(難消化性デキストリン,ポリデキストロース,イヌリン等)が代表である。プレバイオティクスは多くの腸内細菌にとって重要なエネルギー源であると同時にその代謝産物の一つである短鎖脂肪酸は,腸管上皮のエネルギー源となって腸管蠕動の促進や腸管免疫を介して全身の免疫を調整するなど多彩な作用を持つ1) 。しかし,プレバイオティクスの投与が重症患者に有効かどうかは一定の見解が得られていない。そのため,本ガイドラインにおいて扱うべき重要な課題であると判断した。

(6)実施に関わる検討事項

今回実施した感度分析の結果では,サンプルサイズは少ないが非ω-3系脂肪乳剤において評価できたアウトカムである院内死亡およびICU滞在日数のどちらにおいても望ましくない方向性であった。一方で,本邦の重症患者20,773例を対象にω-6系脂肪乳剤の有効性を検討した観察研究では,院内死亡の調整オッズ比は0.7(95% CI:0.6〜0.7)であった14) 。経静脈栄養が必要となる重症患者において日本で主に使われているω-6系脂肪乳剤を用いた RCT研究は少なく,有効性・有害性共に不明であるため,投与開始時期も含めてさらなる研究が必要である。また,ω-3系脂肪乳剤は,今回の検討では望ましい方向性であり,日本での導入を検討しても良いかもしれないがω-3系も研究が少なくさらなる検討が必要である。今回の検討に含まれた研究ではICU入室14日以内に介入がなされており,必須脂肪酸の欠乏が見込まれる場合には重症患者でも脂肪乳剤の投与を考慮すべきかもしれないが,エビデンスは不足している。なお,重症患者において,鎮静目的に頻用されているプロポフォールの溶媒としてω-6系脂肪乳剤が使われていることにも留意する必要がある15) 。

文 献

1) 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン.日集中医誌 2016;23:185-281. 2) Wanten GJ, Calder PC. Immune modulation by parenteral lipid emulsions Am J Clin Nutr 2007;85:1171-84. 3) Pradelli L, Mayer K, Klek S, et al. ω-3 Fatty-Acid Enriched Parenteral Nutrition in Hospitalized Patients: Systematic Review With Meta-Analysis and Trial Sequential Analysis. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:44-57. 4) Battistella FD, Widergren JT, Anderson JT, et al. A prospective, randomized trial of intravenous fat emulsion administration in trauma victims requiring total parenteral nutrition. J Trauma 1997;43:52-8;discussion 58-60. 5) Hall TC, Bilku DK, Al-Leswas D, et al. A randomized controlled trial investigating the effects of parenteral fish oil on survival outcomes in critically ill patients with sepsis: a pilot study. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2015;39:301-12. 6) Burkhart CS, Dell-Kuster S, Siegemund M, et al. Effect of n-3 fatty acids on markers of brain injury and incidence of sepsis-associated delirium in septic patients. Acta Anaesthesiol Scand 2014;58:689-700. 7) Masclans JR, Iglesia R, Bermejo B, et al. Gas exchange and pulmonary haemodynamic responses to fat emulsions in acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 1998;24:918-23. 8) Ni C, Cao J, Li D, Wu W, et al. Parenteral nutrition effects

of Omega-3 fatty acids on C-reactive protein, high-density lipoprotein, lymphocyte characteristics and the treatment
p.54
-53-ことは可能であり当該介入は十分実行可能である。

(4)判断の要約(Table 2-7-1-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

記載なし。

(6)実施に関わる検討事項

今回の推奨に用いた研究は,可溶性や不溶性など食物繊維の種類や投与量は検討していない。そのため,これらの差によるアウトカムや長期予後は不明である。また,プレバイオティクス投与における費用対効果は不明であり,今後のエビデンス集積により推奨が変更となる可能性はあり得る。

文 献

1) Cummings JH, Rombeau RJ, Sakata T. Physiological and Clinical Aspects of Short-Chain Fatty Acids. Gut. 1996;38:156–7. 2) Spapen H, Diltoer M, Van Malderen C, et al. Soluble fiber

reduces the incidence of diarrhea in septic patients receiving total enteral nutrition: a prospective, doubleblind, randomized, and controlled trial. Clin Nutr 2001;20:301-5.

(2)効果のバランス(Table 2-7-1-1)

17件のRCT(n=1,041)を用いたメタアナリシスを行った2)〜18) 。望ましい効果として,院内死亡はリスク差1,000人あたり129人低い(208人少ない〜3人多い)2)〜5),ICU滞在日数はMD 1.6日短い(3.3日短い〜0.2日長い)2)〜11),人工呼吸期間はMD 3.2日短い(10.8日短い〜4.4日長い)7),10),11),感染性合併症はリスク差1,000人あたり40人少ない(118人少ない〜80人多い)5),7),9)〜13),すべての有害事象(下痢,嘔吐,便秘)はリスク差1,000人あたり149人少ない(243人少ない〜14人少ない)2)〜6),8),9),11),12),14)〜18)であった。したがって望ましい効果は中程度と判断した。有害事象も含めて望ましくない効果は認められなかった。効果のバランスを総合的に判断し介入が優れているとした。

(3)その他の推奨根拠

容認性に関しては,多くの介入が入院時食事療養費に包含された費用の中で行われるものであり,介入によって患者が新たに自己負担する費用はない。また,介入により医療従事者の業務負担と費用負担が増加するが,ICU全体で考えると無視できる増加と考える。プレバイオティクスは,すべての医療機関で使用する

Table 2-7-1-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照群プレバイオ

ティクス

院内死亡率

177 (4 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻a なし 中29/88 (33.0%) 17/89 (19.1%) RR 0.61 (0.37〜1.01) 1,000人あたり129人少ない(208人少ない〜3人多い)

ICU滞在日数

646 (10 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 中 316 330 − MD 1.57日短い (3.32日短い〜0.19日長い)

人工呼吸期間

155 (3 RCT) 深刻c 非常に深刻d 深刻でない 非常に深刻e なし 非常に低 76 79 − MD 3.2日短い (10.79日短い〜4.39日長い)

感染性合併症

479 (7 RCT) 深刻f 深刻でない 深刻g 深刻h なし 非常に低64/239 (26.8%) 58/240 (24.2%) RR 0.85 (0.56〜1.30) 1,000人あたり40人少ない(118人少ない〜80人多い)

有害事象

964 (14 RCT) 深刻i 深刻j 非常に深刻k 深刻l なし 非常に低215/477 (45.1%) 156/487 (32.0%) RR 0.67 (0.46〜0.97) 1,000人あたり149人少ない(243人少ない〜14人少ない)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 相当な益をまたぐため,1段階ダウングレードした。b . サンプル数<800のため,1段階ダウングレードした。c . サンプルサイズの大きい報告のoverallがhigh riskのため,1段階ダウングレードした。d . I2=88%,P=0.0002のため,2段階ダウングレードした。e . 相当な益と害の両方をまたぐため,2段階ダウングレードした。f . High riskバイアスが複数みられるため,1段階ダウングレードした。g . 感染性合併症が人工呼吸器関連肺炎やClostridioides difficile(Clostridium difficile)感染症など一定していないため,1段階ダウングレードした。h . サンプル数<800であるため,1段階ダウングレードした。i . High riskバイアスが複数みられるため,1段階ダウングレードした。j . I2=87%点推定値が概ねFavoursに偏っているため,1段階ダウングレードした。k . 研究によって適用したアウトカム(下痢,便秘,嘔吐など)が様々であるため,2段階ダウングレードした。l . サンプル数<800であるため,1段階ダウングレードした。
p.55
-54- 14) Hart GK, Dobb GJ. Effect of a fecal bulking agent on

diarrhea during enteral feeding in the critically ill. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1988;12:465-8. 15) Rushdi TA, Pichard C, Khater YH. Control of diarrhea by fiber-enriched diet in ICU patients on enteral nutrition: a prospective randomized controlled trial. Clin Nutr 2004;23:1344-52. 16) Majid HA, Cole J, Emery PW, et al. Additional oligofructose/inulin does not increase faecal bifidobacteria in critically ill patients receiving enteral nutrition: a randomised controlled trial. Clin Nutr 2014;33:966-72 17) Yagmurdur H, Leblebici F. Enteral nutrition preference in critical care: fibre-enriched or fibre-free? Asia Pac J Clin Nutr 2016;25:740-6. 18) Tuncay P, Arpaci F, Doganay M, et al. Use of standard

enteral formula versus enteric formula with prebiotic content in nutrition therapy: A randomized controlled study among neuro-critical care patients. Clin Nutr ESPEN 2018;25:26-36.

CQ2-7-2:重症患者において,プロバイオティクス

を投与すべきか?

Answer:重症患者において,プロバイオティク

スを投与することを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

(1)背景

プロバイオティクスとは,十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物と定義されており,乳酸菌属やビフィズス菌属などがその代表である。重症患者では,種々の要因により腸内細菌叢や腸内環境が変化し,短鎖脂肪酸の産生量が低下する1) 。短鎖脂肪酸の低下は腸管上皮の活動低下を来し,腸管バリアである腸管粘膜層の希薄化が生じる。これらの

3) Karakan T, Ergun M, Dogan I, et al. Comparison of early enteral nutrition in severe acute pancreatitis with prebiotic fiber supplementation versus standard enteral solution: a prospective randomized double-blind study. World J Gastroenterol 2007;13:2733-7. 4) Chittawatanarat K, Pokawinpudisnun P, Polbhakdee Y. Mixed fibers diet in surgical ICU septic patients. Asia Pac J Clin Nutr ;19:458-64. 5) de Azevedo RP, Freitas FG, Ferreira EM, et al. Daily laxative therapy reduces organ dysfunction in mechanically ventilated patients: a phase II randomized controlled trial. Crit Care 2015;19:329. 6) Schultz AA, Ashby-Hughes B, Taylor R, et al. Effects of pectin on diarrhea in critically ill tube-fed patients receiving antibiotics. Am J Crit Care 2000;9:403-11. 7) Spindler-Vesel A, Bengmark S, Vovk I, et al. Synbiotics, prebiotics, glutamine, or peptide in early enteral nutrition: a randomized study in trauma patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2007;31:119-26. 8) van der Spoel JI, Oudemans-van Straaten HM, et al. Laxation of critically ill patients with lactulose or polyethylene glycol: a two-center randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Crit Care Med 2007;35:2726-31. 9) Xi F, Xu X, Tan S, et al. Efficacy and safety of pectinsupplemented enteral nutrition in intensive care: a randomized controlled trial. Asia Pac J Clin Nutr 2017;26:798-803. 10) Fazilaty Z, Chenari H, Shariatpanahi ZV. Effect of ß-glucan on serum levels of IL-12, hs-CRP, and clinical outcomes in multiple-trauma patients: a prospective randomized study. Ulus Travma Acil Cerrahi Derg 2018;24:287-93. 11) Akram Kooshki, Zaher Khazaei, Azam Zarghi, et al. Prebiotic prophylaxis of ventilator-associated pneumonia: A randomized clinical trial. Biomedical Research and Therapy 2018;5:2287-95. 12) Dobb GJ, Towler SC. Diarrhoea during enteral feeding in the critically ill: a comparison of feeds with and without fibre. Intensive Care Med 1990;16:252-5. 13) Freedberg DE, Messina M, Lynch E, et al. Impact of

Fiber-Based Enteral Nutrition on the Gut Microbiome of ICU Patients Receiving Broad-Spectrum Antibiotics: A Randomized Pilot Trial. Crit Care Explor 2020;2:e0135.

Table 2-7-1-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.56
-55- ICU滞在日数の短縮や感染性合併症の減少を有意に認

めていることから,効果のバランスを総合的に判断し,おそらく介入が優れているとした。

(3)その他の推奨根拠

容認性に関しては,プロバイオティクスは,菌種や薬剤の相互作用,患者の状態により制限はあるが,介入によって患者が新たに自己負担する費用はなく医療機関の負担は少ない。プロバイオティクスは,すべての医療機関で使用することは可能であり当該介入は十分実行可能である。

(4)判断の要約(Table 2-7-2-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

記載なし。

(6)実施に関する検討事項

今回の推奨に用いた研究は,プロバイオティクスの菌種の違いは検討していない。そのため,プロバイオティクスの菌種差や菌量によるアウトカムは不明である。また,プロバイオティクス投与における費用対効果は不明であり,今後のエビデンス集積により推奨が変更となる可能性はあり得る。

要因から病原性菌の組織内への流入(bacterial translocation)を来し腸管を起点とした全身性炎症反応症候群が引き起こされる。プロバイオティクス投与により宿主に有用な生菌が生着し,短鎖脂肪酸などが産生されることで腸管上皮の活動や免疫が活発になり,健全な腸内環境や腸内細菌叢を取り戻し腸管由来の炎症が軽減されることが期待されているが2),重症患者に有効かどうかは一定の見解が得られていない。そのため,本ガイドラインにおいて扱うべき重要な課題であると判断した。

(2)効果のバランス(Table 2-7-2-1)

16件のRCT(n=4,430)を用いたメタアナリシスを行った3)〜18) 。望ましい効果として,院内死亡はリスク差1,000人あたり10人少ない(39人少ない〜18人多い)3)〜8),ICU滞在日数はMD 2.4日短い(4.2日短い〜0.7日短い)3)〜7),9)〜12),人工呼吸期間はMD 0.8日短い(1.8日短い〜0.2日長い)4),6),7),12)〜15),感染性合併症はリスク差1,000人あたり72人少ない(113人少ない〜14人少ない)4),6)〜10),12)〜18)であった。望ましくない効果として,すべての有害事象はリスク差1,000人あたり12人多い(90人少ない〜143人多い)5),7),9),11),12),17),身体機能はMD 1低い(8.0低い〜6.0高い)であった。望ましい効果と望ましくない効果はともに小さいが,

Table 2-7-2-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照群プロバイオ

ティクス

院内死亡率3,307 (6 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高435/1,664 (26.1%) 411/1,643 (25.0%) RR 0.96 (0.85〜1.07) 1,000あたり10人少ない(39人少ない〜18人多い) ICU滞在日数3,534 (9 RCT)深刻でない深刻a深刻でない深刻でないなし中1,773 1,761 − MD 2.43日短い(4.18日短い〜0.67日短い)人工呼吸期間3,445 (7 RCT)深刻でない深刻b深刻でない深刻でないなし中1,732 1,713 − MD 0.78日短い(1.76日短い〜0.19日長い)感染性合併症4,272 (13 RCT)深刻でない深刻c深刻でない深刻dなし低485/2,142 (22.6%) 429/2,130 (20.1%) RR 0.68 (0.50〜0.94) 1,000人あたり72人少ない(113人少ない〜14人少ない)有害事象3,112 (6 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻eなし中934/1,563 (59.8%) 939/1,549 (60.6%) RR 1.02 (0.85〜1.24) 1,000人あたり12人多い(90人少ない〜143人多い)身体機能評価

207 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 高 103 104 − MD 1低い (7.96低い〜5.96高い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 方向性が論文により異なり,I2:76%と異質性も高いため,1段階ダウングレードした。b . I2:81%,一部の論文で人工呼吸器装着期間が短縮する方向の結果のため,1段階ダウングレードした。c . 方向性が各論文で異なり,I2:65%と異質性も高いため,1段階ダウングレードした。d . RD:−0.07(−0.12〜0.02)のため,1段階ダウングレードした。イベント発生数>800であり変更なし。e . RD:−0.02(−0.09〜0.05)のため,1段階ダウングレードした。イベント発生数>800で変更なし。
p.57
-56- a Probiotic Preparation on Ventilator-Associated Pneumonia in Critically Ill Patients Admitted to the Intensive Care Unit: A Prospective Double-Blind Randomized Controlled Trial. Nutr Clin Pract 2019;34:156-62. 12)Anand Prasoon, Ritu Singh, Ravi Anand, et al. A

Randomized Controlled Trial to Evaluate the Use of Probiotics in Prevention of Ventilator-Associated Pneumonia in Critically Ill ICU Patients. J Card Crit Care 2022;6:108-13. 13)Tamer Habib, Amira B Kassem, Islam Ahmed. Early probiotics in preventing ventilator-associated pneumonia after multiple trauma. Asian J Pharm Clin Res 2020;13:83-5. 14)Behrooz Nazari, Leila Amani, Loghman Ghaderi, et al. Effects of Probiotics on Prevalence of Ventilator- Associated Pneumonia in Multitrauma Patients: A Randomized Clinical Trial. Trauma Mon 2020;25:262-8. 15) Forestier C, Guelon D, Cluytens V, et al. Oral probiotic and prevention of Pseudomonas aeruginosa infections: a randomized, double-blind, placebo-controlled pilot study in intensive care unit patients. Crit Care 2008;12:R69. 16) Tsilika M, Thoma G, Aidoni Z, et al. A four-probiotic preparation for ventilator-associated pneumonia in multitrauma patients: results of a randomized clinical trial. Int J Antimicrob Agents 2022;59:106471. 17) Wang J, Ke H, Liu KX, et al. Effects of exogenous probiotics on the gut microbiota and clinical outcomes in critically ill patients: a randomized controlled trial. Ann Palliat Med 2021;10:1180-90. 18) Tzikos G, Tsalkatidou D, Stavrou G, et al. A Four-Probiotic

Regime to Reduce Surgical Site Infections in Multi-Trauma Patients. Nutrients 2022;14:2620.

文 献

1) Shimizu K, Ogura H, Goto M, et al. Altered gut flora and environment in patients with severe SIRS. J Trauma 2006;60:126-33. 2) Shimizu K, Ogura H, Goto M, et al. Synbiotics decrease the incidence of septic complications in patients with severe SIRS: a preliminary report. Dig Dis Sci 2009;54:1071-8 3) Sharma B, Srivastava S, Singh N, et al. Role of probiotics on gut permeability and endotoxemia in patients with acute pancreatitis: a double-blind randomized controlled trial. J Clin Gastroenterol 2011;45:442-8. 4) Zeng J, Wang CT, Zhang FS, et al. Effect of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia in critically ill patients: a randomized controlled multicenter trial. Intensive Care Med 2016;42:1018-28. 5) Alberda C, Marcushamer S, Hewer T, et al. Feasibility of a Lactobacillus casei Drink in the Intensive Care Unit for Prevention of Antibiotic Associated Diarrhea and Clostridium difficile. Nutrients 2018;10:539. 6) Arpudh Michael Anand Raj, Kishore Kumar Pichamuthu, Samuel George Hansdak, et al. A Randomised Controlled Trial of Lactobacillus in the Prevention of Ventilator Associated Pneumonia. J Clin Diagn Res 2019;13:OC21-4. 7) Johnstone J, Meade M, Lauzier F, et al. Prevention of Severe Pneumonia and Endotracheal Colonization Trial (PROSPECT) Investigators and the Canadian Critical Care Trials Group. Effect of Probiotics on Incident Ventilator-Associated Pneumonia in Critically Ill Patients: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2021;326:1024-1033. 8) Litton E, Anstey M, Broadhurst D, et al. Early and sustained Lactobacillus plantarum probiotic therapy in critical illness: the randomised, placebo-controlled, restoration of gut microflora in critical illness trial (ROCIT). Intensive Care Med 2021;47:307-15. 9) Barraud D, Blard C, Hein F, et al. Probiotics in the critically ill patient: a double blind, randomized, placebocontrolled trial. Intensive Care Med 2010;36:1540-7. 10) Tan M, Zhu JC, Du J, et al. Effects of probiotics on serum levels of Th1/Th2 cytokine and clinical outcomes in severe traumatic brain-injured patients: a prospective randomized pilot study. Crit Care 2011;15:R290. 11) Mahmoodpoor A, Hamishehkar H, Asghari R, et al. Effect of

Table 2-7-2-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.58
-57- (2)効果のバランス(Table 2-7-3-1)

12件のRCT(n=1,001)を用いたメタアナリシスを行った2)〜13) 。院内死亡率はリスク差1,000人あたり10人少ない(66人少ない〜64人多い)2)〜7),ICU滞在日数はMD 0.1日短い(95% CI:0.9日短い〜0.7日長い)2)〜13),人工呼吸期間はMD 1.6日短い(4.4日短い〜1.3日長い)3),7)〜9),13),感染性合併症はリスク差1,000人あたり219人少ない(288人少ない〜118人少ない)2)〜5),8)〜13),すべての有害事象はリスク差1,000人あたり24人少ない(66人少ない〜91人多い)3),7),9)であった。よって望ましい効果は中程度と判断した。有害事象も含めて望ましくない効果は認められなかった。効果のバランスを総合的に判断し介入が優れているとした。

(3)その他の推奨根拠

容認性に関しては,プレバイオティクスによる介入は,入院時食事療養費に包含された費用の中で行われるものであり,介入によって患者が新たに自己負担する費用はない。また,介入により医療従事者の手間と費用負担が増加するが,ICU全体で考えると無視でき

CQ2-7-3:重症患者において, シンバイオティクス

を投与すべきか?

Answer:重症患者において, シンバイオティク

スを投与することを強く推奨する(GRADE 1C:エビデンスの確実性=低)。

(1)背景

プレバイオティクスとプロバイオティクス両者を併用することで一定の効果を期待するのがシンバイオティクスである。シンバイオティクス製剤に期待される効果は,消化管内の細菌叢を改善し,宿主に有益な作用をもたらし得る有用な微生物によるものと,それらの増殖促進物質を摂取,もしくは投与することで,それが消化管内の細菌叢に作用し,細菌叢の健常化を図りながら疾病の予防と改善を行うというものである1) 。しかし,重症患者にシンバイオティクスが有効かどうかは一定の見解が得られてない。以上により,重症患者に対して,シンバイオティクスの介入を行うことの有用性について検討する意義は大きく,本ガイドラインにおいて扱うべき重要な課題であると判断した。

Table 2-7-3-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)対照群シンバイオ

ティクス

院内死亡率

614 (6 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻b なし 低78/307 (25.4%) 75/307 (24.4%) RR 0.96 (0.74〜1.25) 1,000人あたり10人少ない(66人少ない〜64人多い)

ICU滞在日数

988 (12 RCT) 深刻c 深刻d 深刻でない 深刻e なし 非常に低 487 501 − MD 0.07日短い (0.87日短い〜0.73日長い)

人工呼吸期間

500 (5 RCT) 深刻f 深刻g 深刻でない 深刻h なし 非常に低 245 255 − MD 1.56日短い (4.42日短い〜1.31日長い)

感染性合併症

858 (10 RCT)非常に深刻i 深刻j 深刻でない 深刻k なし 非常に低184/421 (43.7%) 110/437 (25.2%) RR 0.50 (0.34〜0.73) 1,000人あたり219人少ない(288人少ない〜118人少ない)

有害事象

416 (3 RCT) 深刻l 深刻m 深刻でない 非常に深刻n なし 非常に低19/207 (9.2%) 15/209 (7.2%) RR 0.74 (0.28〜1.99) 1,000人あたり24人少ない(66人少ない〜91人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . Randomization processやDerivations from intended interventionsでhigh riskのものが複数存在するため,1段階ダウングレードした。b . Optimal infrmation size(OIS)を満たしていないため,1段階ダウングレードした。c . 全体にデータのばらつきがあるため,1段階ダウングレードした。d . I2=57%のため,1段階ダウングレードした。e . CIが0をまたいでいるため,1段階ダウングレードした。f . Derivations from intended interventionsがhigh riskのため,1段階ダウングレードした。g . 人工呼吸期間が短くなるもの,長くなるものが混在し,I2=77%と高いため,1段階ダウングレードした。h . サンプルサイズが小さくOISの基準を満たさないため,1段階ダウングレードした。i . 全体にデータのばらつきがあるため,1段階ダウングレードした。j . I2=82%のため,1段階ダウングレードした。k . CIが0をまたいでいるため,1段階ダウングレードした。l . 全体にデータのばらつきがあるため,1段階ダウングレードした。m . I2=68%のため,1段階ダウングレードした。n . CIが0をまたいでいるため,1段階ダウングレードした。
p.59
-58- pneumonia in critically ill patients: a randomised, doubleblind, placebo-controlled trial. Intensive Care Med 2009;35:854-61. 4) Eguchi S, Takatsuki M, Hidaka M, et al. Perioperative

synbiotic treatment to prevent infectious complications in patients after elective living donor liver transplantation: a prospective randomized study. Am J Surg 2011;201:498-502. 5) Shimizu K, Yamada T, Ogura H, et al. Synbiotics modulate gut microbiota and reduce enteritis and ventilator-associated pneumonia in patients with sepsis: a randomized controlled trial. Crit Care 2018;22:239. 6) Seifi N, Rezvani R, Sedaghat A, et al. The effects of synbiotic supplementation on enteral feeding tolerance, protein homeostasis, and muscle wasting of critically ill adult patients: a randomized controlled trial. Trials 2022;23:846. 7) Dehghani MH, Saghafi F, Bordbari Z, et al. Investigating the effect of oral synbiotic on enteral feeding tolerance in critically ill patients: A double-blinded controlled clinical trial of gut microbiota. Nutr Clin Pract 2023;38:402-10. 8) Kataoka Y, Kano T, Asahara T, et al. Synbiotics reduce infectious complications by improving the intestinal milieu and enhancing the immune function in critically ill emergency surgical patients. Kitasato Med J 2013;43:17-25. 9) Kotzampassi K, Giamarellos-Bourboulis EJ, Voudouris A, et al. Benefits of a synbiotic formula (Synbiotic 2000Forte) in critically Ill trauma patients: early results of a randomized controlled trial. World J Surg 2006;30:1848-55. 10) Mallick S, Kathirvel M, Nair K, et al. A randomized, double-blinded, placebo-controlled trial analyzing the effect of synbiotics on infectious complications following living donor liver transplant-PREPRO trial. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2022;29:1264-73. 11) Rammohan A, Sathyanesan J, Rajendran K, et al. Synbiotics in Surgery for Chronic Pancreatitis: Are They Truly Effective? A Single-blind Prospective Randomized Control Trial. Ann Surg 2015;262:31-7. 12) Rayes N, Seehofer D, Hansen S, et al. Early enteral supply of lactobacillus and fiber versus selective bowel decontamination: a controlled trial in liver transplant recipients. Transplantation 2002;74:123-7. 13) Spindler-Vesel A, Bengmark S, Vovk I, Synbiotics, prebi-

otics, glutamine, or peptide in early enteral nutrition: a

る増加と考える。プロバイオティクスは,菌種や薬剤の相互作用,患者の状態により制限はあるが,介入によって患者が新たに自己負担する費用はなく医療機関の負担は少ない。プロバイオティクス,プレバイオティクスともにすべての医療機関で使用することは可能であり当該介入は十分実行可能である。

(4)判断の要約(Table 2-7-3-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

記載なし。

(6)実施に関わる検討事項

今回の推奨に用いた研究は,プレバイオティクスやプロバイオティクスの種類や投与量は検討していない。そのため,これらの差によるアウトカムや長期予後は不明である。また,シンバイオティクス投与における費用対効果は不明であり,今後のエビデンス集積により推奨が変更となる可能性はあり得る。

文 献

1) Elshaghabee FM, Rokana N. Dietary management by probiotics, prebiotics and synbiotics for the prevention of antimicrobial resistance. Sustainable Agriculture Reviews 2021;49:33-56. 2) Jain PK, McNaught CE, Anderson AD, et al. Influence of synbiotic containing Lactobacillus acidophilus La5, Bifidobacterium lactis Bb 12, Streptococcus thermophilus, Lactobacillus bulgaricus and oligofructose on gut barrier function and sepsis in critically ill patients: a randomised controlled trial. Clin Nutr 2004;23:467-75. 3) Knight DJ, Gardiner D, Banks A, et al. Effect of synbiotic

therapy on the incidence of ventilator associated

Table 2-7-3-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
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-59-

randomized study in trauma patients. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2007;31:119-26.

CQ2-8:重症患者の栄養療法におけるビタミン・微

量元素補充の考え方は?

Answer:重症患者ではビタミン・微量元素欠乏

のリスクが高く,適切に測定・補充を検討する。また,深刻な欠乏が疑われない限り,1日必要量を大きく超えるような積極的補充には注意を要する(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

重症患者は病態や治療によってビタミン,微量元素が欠乏するリスクが高い。そのため,少なくとも1日必要量の補充や,欠乏患者への補充が必要と考えられている。一方で,1日必要量を超える特定のビタミンや微量元素の投与に関する RCTでは,投与量や投与方法(単独または併用),対象患者が様々であり,有害とする報告もあり,補充療法の有効性はいまだに意見が分かれている。さらに,ビタミン,微量元素の評価および補充が必要な患者においても,その評価方法や判断基準については明確になっておらず,適切な投与量や投与方法と併せてさらなる検討が必要である。

(2)背景

ビタミンや微量元素は抗酸化作用や細胞分裂,免疫機能の維持などに関与する生体に不可欠な栄養素であり,両者を併せて微量栄養素と呼ばれる。重症患者では血中のビタミンや微量元素が低下していることが多く,死亡率上昇や免疫機能低下と関連している1),2) 。生体機能を維持するために,病態や治療に応じた微量栄養素の1日必要量を投与することが不可欠であるというコンセンサスは存在する1),2) 。さらに,微量栄養素は,抗酸化作用や抗炎症作用,免疫能調整作用を有するとされており,重症患者において1日必要量を超えた積極的な投与による予後改善が期待されてきた。したがって,本ガイドラインで扱うべき重要な臨床課題と考えられる。しかし,微量栄養素に関する RCTは少なく,複数のRCTやシステマティックレビュー,メタアナリシスが行われている場合でも否定的な報告も多い。本CQではビタミン,微量元素に関するこれまでのRCTやメタアナリシスなどの報告をまとめ,背景疑問として提示することとした。(3)解説

敗血症や重症熱傷など高度の炎症を伴う重症病態では,抗酸化作用をもつ水溶性ビタミン類やビタミンD,セレン,亜鉛などが欠乏することが知られている。また,持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy,CRRT)も,水溶性ビタミン類やセレン,銅などの微量栄養素が欠乏する原因となる。日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016では,通常量のビタミン・微量元素の投与を推奨するが,投与量を決定する十分なデータはないとされていた3) 。ESPEN 微量栄養素ガイドライン2022では,栄養療法を受けるすべての患者に,初期から適切な微量元素およびビタミンを補充することが推奨されている2) 。ESPENガイドライン2018およびESPENガイドライン2023は,欠乏患者への微量元素やビタミンの補充を推奨している1),4) 。微量元素やビタミンは人体に不可欠な栄養素であり,1日必要量の補充や欠乏患者への補充が必要である。一般的なビタミン,微量元素の摂取量については日本人の食事摂取基準(2020年版)5)が参考となるが,重症患者では1日必要量の増加や治療に伴う喪失なども考慮に入れる必要がある。これらの基準などについては(Table 2-8-1〜2-8-4)にまとめた。また,1日必要量を超える特定のビタミンや微量元素の投与に関する RCTでは,対象患者や病態により効果は様々であるため,特に注目されているビタミン,微量元素に関して個々にまとめた。今回行ったビタミンB1や解説文に関係する主なシステマティックレビュー,メタアナリシスの結果は付録に記載した。また,本CQで使用した用語の解説を(Table 2-8-5,2-8-6)に記載した。

本項で示す微量栄養素の濃度における検体(血漿/血清)については,引用したガイドラインの記載通りとした。日本では血清で測定されることが多いが,血漿濃度=血清濃度と読み替えて問題ないとガイドライン作成委員会で判断した。1ビタミン

ビタミンB1(thiamine)は水溶性ビタミンに分類され,糖や脂肪酸の代謝に不可欠な補酵素である。ピルビン酸からアセチルCoAへの変換やクエン酸回路に関係しており,ビタミンB1欠乏によりエネルギー産生障害が生じる。ビタミンB1欠乏により生じる症状には,乳酸アシドーシスや脚気,ウェルニッケ脳症などが知られている。重症患者ではビタミンB1の摂取量低下と必要量増加が生じるため,前述の重篤な合併症回避を目的に投与されることが多い。しかし,重症患者におけるビタミンB1投与は対象となる病態や有
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-60-

効性について,既存のRCTやメタアナリシスなどからはいまだに結論が出ていない6),7) 。したがって,新たに重症患者に対するビタミンB1投与の効果についてシステマティックレビュー,メタアナリシスを行った。

今回行ったシステマティックレビュー,メタアナリシスでは35件のRCTを評価した8)〜42) 。重症患者に対するビタミンB1投与は,ショックをMD 11.4時間短く(20.2時間短い〜2.7時間短い)させ,臓器障害を示すSOFAスコアをMD 1.3ポイント低く(1.9低い〜

0.7低い)する効果を示した。しかし,ICU滞在期間はMD 0.4日長い(0.01日長い〜0.8日長い)とわずかであるが有意に延長した43)(Table 2-8-7)。

ビタミンC(ascorbic acid)は抗酸化作用,抗炎症作用などをもつ水溶性ビタミンである。ビタミンC欠乏では酸化ストレスによる細胞障害やカテコラミン生成低下を来す。重症患者では侵襲による需要の増大などによりビタミンCが欠乏するため補充が有効であると

Table 2-8-1 日本人の食事摂取基準(ビタミン,2020年版)5)

推定平均必要量推奨量耐容上限量男性女性男性女性男性女性

ビタミンB1(mg/day) 1.0~1.2 0.8~0.9 1.2~1.4 0.9~1.1ビタミンC(mg/day) 80~85 80~85 100 100ビタミンD(μg/day) 8.5 8.5 100 100ビタミンA(μgRAE/day) 550~650 450~500 800~900 650~700 2,700 2,700ビタミンE(mg/day) (目安量)6.0~7.0 (目安量)5.0~6.5 750~900 650~700 μgRAE:レチノール活性当量

Table 2-8-2 ESPEN 微量栄養素ガイドライン2022におけるビタミンの投与推奨量2)

食事摂取基準(31~70歳)経腸栄養(必要量増加時※,1,500 kcalあたり)経静脈栄養(必要量増加時※)

ビタミンB1(mg/day) 1.1~1.2 100 100~200ビタミンC(mg/day) 75~90 200 200~500ビタミンD3(μg/day)コレカルシフェロール15~20 30 20~25(800~1,000 IU)ビタミンA(μg/day)レチノール700~900 1,500 1,100ビタミンE(mg/day) αトコフェロール15 40 20 ※必要量の増加は,消化管などからの継続的な喪失,持続的腎代替療法,代謝亢進,経静脈栄養開始前からの消耗,妊娠中の患者で生

じ得る。

Table 2-8-3 日本人の食事摂取基準(微量元素,2020年版)5)

推定平均必要量推奨量耐容上限量男性女性男性女性男性女性

鉄(mg/day) 6.0~6.5 5.0~5.5 (月経あり)

8.5~9.0 7.0~7.5 6.0~6.5 (月経あり)

10.5~11.0 50 40

亜鉛(mg/day) 9 6~7 10~11 8 40~45 30~35銅(mg/day) 0.7 0.6 0.8~0.9 0.7 7 7マンガン(mg/day) (目安量)4.0 (目安量)3.5 11 11ヨウ素(μg/day) 95 95 130 130 3,000 3,000セレン(μg/day) 25 20 30 25 400~450 350クロム(μg/day) (目安量)10 (目安量)10 500 500モリブデン(μg/day) 20~25 20 25~30 25 600 500
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-61-

されていたが,現在でも対象となる病態も含めて議論が続いている。日本版敗血症診療ガイドライン2020 (J-SSCG 2020)では,敗血症患者に対して急性期にビタミンCの投与を行うことが弱く推奨された44) 。その後もビタミンCに関する RCTが次々と報告されたが,2022年にLamontagneらが35施設の敗血症患者(n=872)を対象とした RCT(LOVIT trial)で,ビタミンCの静脈内投与(6時間ごとに50 mg/kg)により

28日死亡および臓器障害の複合アウトカムの発生が有意に増加[リスク比(RR)1.2,95% CI:1.0〜1.4]することを報告した45) 。J-SSCG 2020特別委員会は, LOVIT trialを含む RCT 23件のメタアナリシスによる再検討を行い,「敗血症患者にビタミンC の投与を行わないことを弱く推奨する」と変更した46) 。

Table 2-8-4 ESPEN 微量栄養素ガイドライン2022における微量元素の投与推奨量2)

食事摂取基準(31~70 歳)経腸栄養(必要量増加時※,1,500 kcalあたり)経静脈栄養(必要量増加時※)

鉄(mg/day) 8 (19~50歳女性)18 30 1亜鉛(mg/day) 8~11 20 6~12銅(mg/day) 0.9 1~3 0.5~1.0マンガン(mg/day) 1.8~2.3 2~3 55ヨウ素(μg/day) 150 150~300 130セレン(μg/day) 55 200 150~200クロム(μg/day) 20~35 200 15モリブデン(μg/day) 45 250 19~25 ※必要量の増加は,消化管などからの継続的な喪失,持続的腎代替療法,代謝亢進,経静脈栄養開始前からの消耗,妊娠中の患者で生

じ得る。

Table 2-8-5 微量栄養素の必要量に関する用語2),5)

日本語英語用語の解説推定平均必要量estimated average requirement (EAR)母集団における必要量の平均値の推定値

集団の50%のものが必要量を満たすと推定される量

推奨量recommended dietary allowance (RDA)母集団のほぼ全員(97~98%)が必要量を充足している量耐用上限量tolerable upper intake level (UL)健康障害をもたらすリスクがないとみなされる摂取量の上限量目安量adequate intake (AI) EAR,RDAが設定できない場合に設定一定の栄養状態を維持するのに十分な量食事摂取基準dietary reference intake (DRI)遵守した場合に,摂取不足や過剰摂取の可能性が低いとされる基準量

Table 2-8-6 栄養状態の評価に関する用語の定義2)

状態Status定義適量adequate血中/血漿中濃度が基準範囲内で,臨床症状や兆候がない

欠乏/不足depletion栄養素の客観的な喪失,または摂取量が標準摂取量を下回り,血中/血漿濃度が基準値以下である状態この段階では臨床所見または症状はみられない

欠乏症deficiency栄養素の客観的な喪失,または標準的な摂取量を下回っている状態と証明されている状態かつ欠乏に伴う臨床所見または症状がみられる,または血中/血漿濃度が基準値以下で,欠乏による代謝異常がある状態過剰overdose推奨量を超える量の投与または摂取基準値の上限を超える濃度の検出
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Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021(SSCG 2021)では,「成人の敗血症および敗血症性ショックに対するビタミンCの静脈内投与をしないことを提案する(弱い非推奨)」と同様の推奨となっている47) 。一方,最近報告された敗血症患者に対するビタミンC投与に関する18件のRCT(n=3,364)のメタアナリシスでは, SOFAスコア改善(MD -0.6,95% CI:-1.0〜-0.3)および血管収縮薬使用期間の短縮(MD -15.1,95% CI:-21.6〜-8.6)が示された48) 。しかし短期死亡においては有効性が認められず(OR 0.9,95% CI:0.8〜

1.0),臓器障害や血糖異常などの有害事象はビタミンC投与で有意に多かった(OR 2.0,95% CI:1.1〜3.7)。サブグループ解析では,ビタミンC投与量が25〜100 mg/kg/dayの群において短期死亡の有意な減少がみられた(OR 0.8,95% CI:0.7〜1.0)。重症患者に対するビタミンC単独投与のシステマティックレビューでは,16件のRCT(n=2,130)のメタアナリシスから,ビタミンC投与が重症患者,特に死亡リスクの高い患

Table 2-8-7 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス全体的なエビデンス

の確実性研究のイベント発生率(%)相対効果(95% CI)予想される絶対効果

(95% CI)ビタミンB1

なしビタミンB1

あり

死亡率(院内または退院後最長観察期間) 2,866 (25 RCT)深刻a深刻でない深刻でない深刻bなし低467/1,444 (32.3%) 421/1,422 (29.6%) RR 0.89 (0.75〜1.06) 1,000人あたり36人少ない(81人少ない〜19人多い) ICU滞在日数2,184 (15 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし高1,093 1,091 − MD 0.4日長い(0.01日長い〜0.79日長い)感染発症率

410 (4 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻c なし 低31/205 (15.1%) 23/205 (11.2%) RR 0.70 (0.33〜1.47) 1,000人あたり45人少ない(101人少ない〜71人多い)

人工呼吸器期間

801 (8 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 高 403 398 − MD 0.02日長い (0.13日短い〜0.18日長い)

Short Form Health Survey(SF-36/8)

66 (1 RCT) 深刻d 深刻でない 深刻でない 非常に深刻e なし 非常に低 30 36 − MD 3.8点低い (8.09点低い〜0.49点高い)

SOFAスコア(最終記録時) 1,316 (14 RCT)深刻f深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアスが強く示唆されるg低659 657 − MD 1.29点低い(1.91点低い〜 0.66点低い)せん妄

319 (3 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻i なし 低46/157 (29.3%) 37/162 (22.8%) RR 0.77 (0.55〜1.09) 1,000人あたり67人少ない(132人少ない〜26人多い)

全有害事象(複数ある場合は最も頻度が高いもの) 1,951 (13 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない非常に深刻jなし低27/977 (2.8%) 73/974 (7.5%) RR 2.40 (0.91〜6.34) 1,000人あたり39人多い(2人少ない〜148人多い)血管収縮薬投与期間を含むショックの期間(単位:時間)

906 (10 RCT) 深刻k 深刻でない 深刻でない 深刻でない 出版バイアスが 強く示唆されるg 低 455 451 − MD 11.43時間短い (20.16時間短い〜2.69時間短い)

血中乳酸値(mmol/L)

826 (10 RCT) 深刻l 深刻でない 深刻でない 深刻でない 出版バイアスが 強く示唆されるg 低 414 412 − MD 0.34 mmol/L少ない(0.63 mmol/L少ない〜

0.05 mmol/L少ない)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 2つの研究でHigh riskのバイアスを1つずつ含んでいるが,メタアナリシスでの研究の重みはそれぞれ7.8%および2.3%であったため,1段階ダウングレードした。b . 総サンプルサイズが2,866であり最適情報量を満たさないため,1段階ダウングレードした。c . アウトカムの総イベント数54および総サンプル数410であり最適情報量を満たさず,さらに,統合推定値の95% CIが相当な利益と相当な害を含むため,2段階ダウングレードした。d . 対象となった研究は1件であった。アウトカムデータの欠落によるバイアスがのため(intervention 21/57, control 30/60),1段階ダウングレードした。e . 総サンプルサイズが66でありOISを満たさず,統合推定値の95% CIが相当な利益と効果なしを含むため,2段階ダウンダウングレードした。f . 1つの研究でHigh riskのバイアスを1つ含んでいるが,メタアナリシスでの研究の重みは6.3%であったため,1段階ダウングレードした。g . Funnel plotの形が左右非対称であり,出版バイアスの存在が疑われるため,1段階ダウングレードした。h . 1つの研究でHigh riskのバイアスを1つ含んでいるが,メタアナリシスでの研究の重みは9.5%であったため,1段階ダウングレードした。i . アウトカムの総イベント数83および総サンプル数319であり最適情報量を満たさない。さらに,統合推定値の95% CIが相当な利益と効果なしを含むことため,2段階ダウングレードした。j . アウトカムの総イベント数100および総サンプル数1,951であり最適情報量を満たさない。さらに,統合推定値の95% CIが効果なしと相当な害を含むことから,2段階ダウングレードした。k . 1つの研究でHigh riskのバイアスを1つ含んでいるが,メタアナリシスでの研究の重みは12.8%であったため,1段階ダウングレードした。l . 1つの研究でHigh riskのバイアスを1つ含んでいるが,メタアナリシスでの研究の重みは9.7%であったため, 1段階ダウングレードした。
p.64
-63-

者群で死亡率低下に寄与したことが示された(RR 0.7,95% CI:0.6〜0.9)49) 。現在までに報告されているシステマティックレビューおよびメタアナリシスによると,重症度の高い患者においてビタミンC単独投与が有効である可能性がある。ただし,大規模 RCTでの有害な報告もあることから投与には十分注意する必要がある。今後,適切な投与量やタイミング,投与期間,患者群についての研究が待たれる。

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種でカルシウム・リンの吸収や血中濃度の調整,心筋収縮力の増大および免疫細胞の調節などに作用している。ビタミンDは肝臓で25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]へ代謝され,その後に腎臓で活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDへ代謝される。重症患者では血清25(OH) D濃度が低下することが知られており,敗血症の発症率や死亡率の上昇に関与すると報告されている50) 。ICU患者では紫外線照射による皮膚でのビタミンD3産生が低下するため,補充にはビタミンDを経腸もしくは経静脈で投与する。J-SSCG2020 では,11件のRCTを用いたメタアナリシスから「敗血症患者に対して,ビタミンD投与を行わないことを弱く推奨する」となっているが44),通常の経腸栄養剤などによるビタミンD投与を妨げるものではないと説明されている。なお,SSCG 2021 ではビタミンD投与について言及されていない。一方,重症患者に対するビタミンD投与に関する16件のRCT(n=2,449)のメタアナリシスが2022年に報告された51) 。投与経路(経管,静脈内,筋肉内)や投与量(120,000〜540,000 IU)は様々ではあるが,ビタミンD投与により死亡率の低下(RR 0.8, 95% CI:0.6〜1.0),ICU滞在期間の短縮(MD -3.1日,95% CI:-5.4〜-0.9),人工呼吸期間の短縮(MD -5.1日,95% CI:-7.4〜-2.7)が認められた。今後,適切な投与量,投与経路,患者層を解明する質の高い

研究が必要である。ESPENガイドライン2023でも,ビタミンD投与に関する推奨から,まずはビタミンD不足・欠乏リスクがある患者に対する25(OH)D濃度の評価へと変更された4) 。

重症患者におけるビタミン投与の有効性に関する研究は多いが,上記のように投与量や投与方法(単独または併用)が様々であること,対象患者における補充療法の必要性が証明されていないことなど留意すべき点も多い。ビタミン欠乏に対する補充は必須であるとされるが,適切な投与量や投与方法に関するエビデンスの集積が今後さらに必要である。2微量元素

日本人の食事摂取基準(2020年版)には8種類の微量元素(鉄,亜鉛,銅,マンガン,ヨウ素,セレン,クロム,モリブデン)が挙げられている5) 。微量元素は重症病態では血清濃度が低下することが知られており,適切な補充が考慮される。近年, CRRTによる微量元素の欠乏が注目されている。FahらはCRRTが実施された群では89.8%の患者で1つ以上の微量元素が欠乏しており,CRRT非実施群の61.4%と比較し有意に高かったと報告した(P=0.002)。特に,銅の欠乏の頻度が高く(74.5%),セレン(44.4%),亜鉛(21.4%)と続いていた52) 。重症患者においては病態や治療に応じて,銅,セレン,亜鉛のモニタリングを考慮すべきとされている53) 。また,これらの微量元素は,炎症による影響で血漿中の濃度が変化するため,CRPと同時に測定することが推奨されている2) 。CRP値が20 mg/L(SI単位)(本邦で頻用されている単位では2.0 mg/dL)を超える場合の測定値の解釈には注意が必要である。ここでは生体内に多く存在し重要な役割を果たしている微量元素であり,かつ重症患者で欠乏する

Table 2-8-8 本邦の高カロリー輸液用微量元素製剤の組成とESPEN 微量栄養素

ガイドライン2022における投与推奨量2)

組成経静脈栄養(必要量増加時※)

鉄35μmol 1.95 mg 1 mg/day亜鉛60μmol 3.92 mg 6~12 mg/day銅5μmol 0.32 mg 0.5~1.0 mg/dayマンガン1μmol 54.9μg 55μg/dayヨウ素1μmol 127μg 130μg/dayセレン- - 150~200μg/dayクロム- - 15μg/dayモリブデン- - 19~25μg/day ※必要量の増加は,消化管などからの継続的な喪失,持続的腎代替療法,代謝亢進,経静

脈栄養開始前からの消耗,妊娠中の患者で生じ得る。
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頻度が高いセレン,亜鉛,銅について記載する。

セレンは,抗酸化作用による酸化ストレスの制御や甲状腺ホルモンの合成および代謝調節などに関与している重要な微量元素である。セレンの欠乏は不整脈や心筋症,甲状腺機能障害などの発症と関係することが知られており,欠乏のリスク因子として,熱傷, CRRT,長期の中心静脈栄養や成分栄養剤による経腸栄養,慢性腎不全などがある。また,重症患者においてはセレン欠乏が死亡に関連しているとされる54) 。2023年には24 RCTのメタアナリシスが報告され,セレン投与による全死亡の減少(RR 0.8,95% CI:0.7〜1.0),急性腎障害(acute kidney injury,AKI)の減少(RR 0.7,95% CI:0.5〜1.0)が示された55) 。

本邦の高カロリー輸液用の複合微量元素製剤にはセレンが含まれていないが(Table 2-8-8),2019年より低セレン血症治療にセレン製剤の注射薬が使用できるようになった。日本のセレン欠乏症の診療指針2018では,致死的な合併症を引き起こすセレン欠乏症のリスクは予測できるため,リスクがある患者に関しては血中セレン値のモニタリングを定期的に行うことを提案している56) 。一方,ESPEN微量栄養素ガイドライン2022では,CRP値と血漿セレン濃度は関連することから,CRP値に応じたセレンの補充が推奨されている2),57) 。このことからCRP高値を示すことが多い重症患者へのセレン補充の必要性について,今後さらに検討が必要と考えられる。

亜鉛は免疫機能の維持やDNA合成,タンパク質の合成や立体構造の安定化などに不可欠な微量元素である。AKIを併発した重症患者に対する亜鉛補充の効果について,傾向スコアマッチングにより解析した報告がある58) 。亜鉛の補充は,院内死亡率の低下[ハザード比(HR)0.5,95% CI:0.3〜0.8],30日死亡率の低下(HR 0.5,95% CI:0.3〜0.9)と関連があることが示された。またサブグループ解析では,Stage 1の敗血症性AKIで効果が大きいことが示された。2件のRCT (n=168)を対象としたメタアナリシスでは,亜鉛による死亡率の改善効果は認められていない(RR 0.7, 95% CI:0.4〜1.3)59) 。ESPEN微量栄養素ガイドライン2022 では,炎症による偽低値の可能性があるため,血漿中の亜鉛濃度の評価においてもCRPとアルブミンとの同時測定が推奨されている2) 。亜鉛欠乏症に内服薬による補充が行われるが,2024年には1日1回投与の治療薬が承認された。

銅は,エネルギー産生や鉄代謝,結合組織の成熟,神経伝達物質の産生,活性酸素除去などに関与し,貧血,免疫不全,不整脈,創傷治癒遅延などを引き起こす。これらの症状を予防するために,銅欠乏に対する補充

は重要である。しかし,重症患者に対する銅の効果に関する大規模 RCTはなく,エビデンスは乏しい。重症患者における銅欠乏の原因としてCRRT,消化管手術(特に摂取した栄養が十二指腸を経由しない場合),熱傷などが挙げられており,それらの患者では銅欠乏に注意が必要である60) 。また,亜鉛の過剰摂取も銅欠乏の原因となる。他の微量栄養素と異なり,血漿中の銅濃度は炎症の急性期に上昇する。ESPEN微量栄養素ガイドライン2022では,銅の測定の際にはCRPを同時に測定することが推奨されており,CRP値に応じて補充を考慮すべき銅濃度に関して記載されている2) 。しかし,本邦では銅欠乏に対して銅を単独で補充できる内服薬や静注薬は存在しない問題があり,補充は難しい。

重症患者における微量元素の有効性については,質の高い研究が少なく,現時点のエビデンスでは意見が分かれる部分が多い。しかし,微量元素欠乏は様々な症状を来す可能性があり,欠乏に対する補充は必須と考えられる。観察研究による報告も少なく,炎症や病態により血中の微量元素の濃度も変化するため評価が難しい。診断するための適切な検査方法やそのタイミング,検査値などについての研究も今後必要である。

文 献

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WG3. 栄養モニタリングと特定の病態

CQ3-1:重症患者に栄養療法を行う前に栄養評価は

必要か?

Answer:重症患者の栄養療法を行う前に栄養評

価を行うことは必要である(good practice statement)。

(1)まとめ

本ガイドラインでは,栄養評価を栄養スクリーニングおよび栄養アセスメントを合わせたものと,定義する。栄養評価は,栄養療法の計画と実施のために適切に行うことが必要である。栄養評価は栄養療法の前提になっているため,栄養評価を行う場合とそうでない場合の転帰を比較した RCTは存在せず,本CQにおける栄養評価の必要性を良質なエビデンスで示すことは難しい。栄養評価を行うことは栄養療法をより適切に,個々の病態に応じて提供することにつながる。そのため,栄養評価を行うことは有用であると高い確実性をもって考えられ,正味の利益が大きく,なおかつ疑いの余地のないものであること,CQに対するエビデンスの収集や要約が困難であることについて議論し,委員の全会一致にてgood practice statement(GPS)として可決された。

栄養評価の最適な方法は確立されていないが,栄養スクリーニングでは栄養リスクのある患者の的確な抽出が,栄養アセスメントでは栄養障害の有無を診断し,さらに,身体計測,血液・生化学検査,臨床症状や食事・薬剤の摂取状況など包括的な評価を行い,各施設において一定の栄養評価方法を検討することが望ましい。

(2)背景

重症病態では,病前の栄養状態は良好な症例でも,炎症状態,異化亢進により栄養障害を誘導し得る。そのため,重症病態であることは栄養障害を生じるリスクがあると考えられており,ほぼすべての患者に対して栄養評価を行うことが求められる。ここでは,重症患者に栄養療法を行うにあたり実施する栄養評価について,栄養リスク(栄養障害を有するリスクおよびこれに関連する合併症などを生じるリスク)を抽出する栄養スクリーニングと,栄養障害を診断し,具体的な栄養計画に必要な栄養状態の詳細を把握するための栄養アセスメントを合わせたものを栄養評価と定義することとする。栄養評価は栄養療法を行うために必須のステップであるため,栄養評価を行う場合とそうでな

い場合の転帰の比較は行われていないが,栄養評価の結果と,患者アウトカム(死亡や合併症の発生)が関係するという報告は多い1),2) 。栄養スクリーニングと栄養アセスメントの概念については,いまだ明確に定義されておらず,実臨床や研究において両者は十分に区別されていない。栄養に関連した指標を含んだ予後指数を算出するものや,栄養障害の診断に用いるものがある。そのため,本CQでは栄養スクリーニングと栄養アセスメントの意義や概念について解説する。

(3)解説

1 栄養スクリーニングと栄養アセスメントの概念

栄養評価が栄養アセスメントのみを意味する報告もあるが,先述の通り,本ガイドラインでは栄養スクリーニングと栄養アセスメントを合わせて栄養評価と定義している。一般に栄養療法のプロセスは,スクリーニングを行った後にアセスメントを実施し,これに基づいて立案した計画に沿って,トリートメントを行う。栄養スクリーニングは栄養障害やこれに起因する合併症の発症などのリスクのある患者を抽出する栄養療法の第一段階であり,重症患者においても同様である。ASPENガイドライン2022ではICUに入院したすべての患者の栄養リスクを決定することを推奨している3),4) 。

栄養スクリーニングで抽出された患者に対して行う栄養アセスメントには,栄養障害の有無と重症度の診断(診断のためのアセスメント:primary assessment)と,栄養療法に必要な詳細情報の収集と評価(栄養療法のためのアセスメント:complete assessment)からなり,本ガイドラインではこれらを合わせて「栄養アセスメント」と定義した。これらにより適切な栄養療法計画を立案することができる3),5) 。こうした栄養スクリーニングおよび栄養アセスメントを行うにあたり,統一のツールを推奨する十分なエビデンスはない。一方で,それぞれのICUあるいは病棟においては,一定の評価概念に基づいてできるだけ同じものを使用することが望ましい。栄養アセスメントは一度だけ行うのではなく,栄養状態を含む全身状態が日々変化し得ることを念頭に,繰り返して実施し,随時栄養療法計画に反映させる。

“nutritional assessment”で検索するとスクリーニングツールの有効性についての文献が多く検出され2),3), ASPENやESPENでは栄養スクリーニングは栄養アセスメントの一部であると受け入れられている。すなわち“nutritional assessment”という用語には複数の
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定義が存在し,栄養スクリーニングを含める場合と含めない場合が混在するなど厳密には区別できない。

2 栄養スクリーニングおよびスコアリングの意義

と目的重症患者における栄養スクリーニングの目的は,栄養リスクのある患者を抽出することである。重症患者で考慮すべき側面のひとつは,重症化以前の栄養状態が良好であっても,急速にタンパク異化が亢進することや6),消化吸収能の低下などに伴い7)栄養不良が高い確率で発生することである。これに対して一律の栄養スクリーニングツールを使用することで,栄養状態を客観的に評価し,個々の患者に適した栄養療法が可能になる8) 。スクリーニングツールは重症患者に特異的なものから一般病棟で使用されるものまで幅広く,これまでに重症患者において栄養スクリーニングツールの有効性を比較した報告は多い。一般病棟含め多く用いられているスクリーニングツールにはMalnutrition Screening Tool(MST)9),Malnutrition Universal Screening Tool(MUST)10),Mini Nutritional Assessment Short Form(MNA-SF),急性期に特化したNutritional Risk Screening(NRS) 2002 11),周術期低栄養のスクリーニングであるPerioperative Nutrition Score(PONS)12)などがあり, BMIや直近の体重減少が評価項目となることが多い。これらの評価項目は栄養アセスメントの一部として用いられることも少なくない。

栄養状態に関与する項目をスコアリングし,予後予測や低栄養およびこれに起因する合併症の発症のリスク判定を行う栄養スコアリングは栄養スクリーニングとして用いる場合と,栄養アセスメントの一部として用いる場合がある。本邦でよく用いられている予後推定栄養指数であるPrognostic nutritional index(PNI)は消化器外科手術患者の合併症発生を予測するものとして開発された。また,ICU入室患者の転帰との関連が示唆されるNutritional Risk Index(NRI)13),14),NRIを高齢者向けに改良したGeriatric NRI(GNRI)15),栄養状態や免疫能を反映したControlling Nutrition status (CONUT)16)などがある。ICU入室患者に対する栄養アセスメントには,ASPENガイドライン2022が推奨するNutrition Risk in Critically ill Score(NUTRIC),その修正版であるmodified NUTRIC(mNUTRIC) 1),17)〜19),NRS 2002 20),SCREENIC(Screening of Nutritional Risk in Intensive Care)risk prediction score 21),22)などがある(付録)。本ガイドラインでは,栄養スクリーニング・スコアリングツールについて特定のツールを推奨しないが,栄養スクリーニングが具体的な栄養療法実施計画のための第一段階であると定義

づけることとする。

3 栄養アセスメントの意義と目的

診断のための栄養アセスメントには,Subjective Global Assessment(SGA:主観的グローバル評価)23)やPatient Generated Subjective Global Assessment (P G - S G A),M i n i N u t r i t i o n a l A s s e s s m e n t (MNA)22),24)などがある。低栄養の国際診断基準Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM) criteria25)は,栄養の診断と重症度を判定するための基準で筋肉量を評価することがひとつの特徴であり,診断のためのアセスメントに該当する。重症患者ではまだ十分に評価されていないが,Diazらのシステマティックレビュー,メタアナリシスでは,GLIM基準で抽出したICU低栄養患者は予後に対して感度,特異度ともに高く26),今後はICU患者においても使用が検討される可能性がある。重症病態において個々の患者が有する栄養リスクは刻々と変化するため,栄養アセスメントは繰り返し行う必要がある。

栄養療法のためのアセスメント(complete assessment)の項目には,栄養摂取調査,視診や触診などの診察,体組成などの身体計測,血液・生化学検査,間接熱量計や呼吸機能などの生理機能検査,嚥下機能などの検査などが挙げられる。身体計測においては,細胞外液の影響を受けやすい体重よりも,除脂肪体重が重要な指標になると認識されている27),28) 。血液・生化学検査の項目は個々の病態により様々であるが,共通して考慮すべき項目がある。アルブミンおよびプレアルブミンなどの検査値は炎症の影響を受けるため,急性期における栄養アセスメント項目には含まない。一方,免疫能の指標である総リンパ球数は,栄養アセスメントに用いることが多い29) 。そのほか,カリウムやナトリウムは,病態把握に加えて,経静脈・経腸栄養療法の中で製剤,栄養剤の選択において重要である。また,リンやマグネシウムについてはrefeeding症候群(refeeding syndrome,RFS)のリスクを評価する上で有用な指標となる。体重変化に大きな影響を及ぼす浮腫や腹水,胸水なども栄養アセスメントの対象の一つであり,これらはICU入室前の著明な体重増加やICU入室期間中の体重減少の因子となることが多いため栄養アセスメント項目として用いられる。また,消化管出血による貧血,低栄養状態の遷延に伴う褥瘡,下痢や便秘を含む消化器症状なども把握し,栄養療法において考慮すべき点を包括的に評価する。その他,ICU入室までの食事摂取状況,服薬状況も個々に応じた栄養療法に重要な項目である。
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Post-intensive care syndromeの観点から,今後は身体機能評価(SF-36),フレイル評価(Clinical Fraility Score)を栄養アセスメントの一環とすることも検討すべきかもしれない30)〜32) 。

文 献

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CQ3-2:重症患者において消費エネルギー量の推定

に間接熱量測定を実施すべきか?

Answer:消費エネルギー量の推定に間接熱量測

定を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実性=中)。

(1)背景

重症患者の栄養投与量設計において,消費エネルギー量の推定は重要である。消費エネルギー量の推定方法には,間接熱量測定や各種推算式がある。とくに体重が不正確な状態や著しく代謝動態が変化するような状態では間接熱量測定の方が望ましいとされているが1)〜3),国内で使用できる施設が限られており,測定条件や測定技術,コスト面の問題もある。一方,間接熱量測定を実施できない施設では推算式で求めるしか方法がないのが現状であるが,推算式は健常者を基に算出されたものも多く,推算式や係数の選択は現場の裁量

に委ねられており,測定精度の問題がある。間接熱量測定を導入する価値があるか,推算式を用いた推定でも十分か明らかにすることは重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス

9件のRCT(n=1,178)を用いたメタアナリシスを行った(Table 3-2-1)4)〜12) 。望ましい効果として短期死亡(90日未満または院内死亡)は1,000人あたり36人少なかった(77人少ない〜15人多い)。一方,望ましくない効果としてICU滞在日数,人工呼吸期間,肺炎,腎機能障害を認めたが,いずれもわずかであった。望ましい効果は小さく,望ましくない効果はわずかであったため,相対価値を考慮した効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。

(3)容認性

間接熱量測定は非侵襲的で個々の患者にとっても受け入れられやすいと考えられ,最近の機器では測定に求められる技術も高くない13) 。ただし,間接熱量測定は,人工呼吸器を装着している患者にのみ使用されることが多い。さらに,間接熱量計の導入には数百万円を要するうえ,1患者1回の測定ごとにランニング

Table 3-2-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対指標(95% CI)予測される絶対効果

(95% CI)対照群介入群

短期死亡

988 (7 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻a なし 中128/498 (25.7%) 107/490 (21.8%) RR 0.86 (0.70〜1.06) 1,000人あたり36人少ない(77人少ない〜15人多い

ICU滞在日数1,090 (7 RCT)深刻でない深刻b深刻でない深刻cなし低550 540 − MD 0.86日長い(0.98日短い〜2.7日長い)人工呼吸期間1,068 (7 RCT)深刻でない深刻でない深刻でない深刻cなし中539 529 − MD 0.66日長い(0.39日短い〜1.72日長い)すべての感染症

785 (4 RCT) 深刻でない 非常に深刻d 深刻でない 深刻a なし 非常に低88/399 (22.1%) 90/386 (23.3%) RR 1.06 (0.82〜1.37) 1,000人あたり13人多い(40人少ない〜82人多い)

肺炎(VAP含む)

785 (4 RCT) 深刻でない 深刻b 深刻でない 深刻a なし 低45/399 (11.3%) 44/386 (11.4%) RR 1.02 (0.69〜1.51) 1,000人あたり2人多い(35人少ない〜58人多い)

有害事象(腎臓)

421 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻a なし 中65/209 (31.1%) 68/212 (32.1%) RR 1.03 (0.78〜1.36) 1,000人あたり9人多い(68人少ない〜112人多い)

有害事象(肝臓)

482 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻a なし 中33/241 (13.7%) 33/241 (13.7%) RR 1.00 (0.64〜1.57) 1,000人あたり0人少ない(49人少ない〜78人多い)

MD, 平均差; RR, リスク比; RD, リスク差; SMD, 標準化平均差。a . 総イベント数やサンプルサイズがoptimal information size(OIS)(n=2,000)に満たないため,1段階グレードダウンした。b . 研究間のばらつきの割合(I2)が高く,異質性が高いため,1段階グレードダウンした。c . サンプルサイズがOIS(n=800)に満たないため,1段階グレードダウンした。d . 研究間のばらつきの割合(I2)が非常に高く,異質性が高いため,2段階グレードダウンした。
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Table 3-2-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない

コストがかかり,現時点では検査測定処置に見合った保険収載もないため,減価償却も期待できない。すでに機器を保持している施設では容認性が高いが,間接熱量計の導入・維持に伴うコストや時間的制約のため,重症患者全員を測定することはできない。

(4)判断の要約(Table 3-2-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

ASPENガイドライン2016では,「必要エネルギー量の推定には,使用可能な施設では間接熱量計の使用を提案し,使用できない施設においては予測式や体重を元にした推算式(25〜30 kcal/kg/day)を提案する」という内容が述べられていたが,最新のものでは更新されていない1) 。

一方,ESPENガイドライン2023では,「人工呼吸器装着患者では間接熱量計を用いて消費エネルギー量を推定し,early phaseにおいては消費エネルギーよりも少なめの栄養投与(70%を超えない),その後は消費エネルギー通りの栄養投与を積極的に行っても差し支えない」,「もし推算式を使用する場合,最初の1週間は推定値の70%を超えない栄養投与が好ましい」と,間接熱量測定と推算式の具体的な利用方法についても述べられている2) 。

(6)実施に関わる検討事項

間接熱量測定の方が推算式よりも精確性や個別化医療を目指す観点では優れていると考えられるが,間接熱量計が導入されていない施設にとっては,導入費が高いことや保険収載されていないこともあり,中等度の資源量が必要であることに留意すべきである。また,

機器の精度は上がっているが13),非侵襲的人工呼吸器,extracorporeal membrane oxygenation(ECMO),高い吸入酸素濃度,高度な人工呼吸器設定を要する患者や気胸の患者などでは精度が低下する,もしくは測定困難な可能性がある。

今回行ったメタアナリシスのpost-hoc解析において,推定値と実際の投与量の乖離,測定のタイミングや頻度が RCTによって異なることも課題となった14) 。また,今後,間接熱量測定に関する費用対効果や特定の患者群に対する効果についての研究も望まれる。

文 献

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CQ3-3:重症患者における窒素バランスの役割は?

Answer:窒素バランスは,生体内のタンパク質

の増減を反映し,タンパク同化を評価する一つの指標となり得る(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

重症患者において窒素バランスの改善は予後改善に有効という十分な見解は得られていないが,窒素バランスは生体内のタンパク質の増減を反映し,タンパク同化を評価する指標となる可能性がある。

しかし,重症患者では窒素バランスの変動が大きいため,1回の測定による絶対値は予後と関連がなく,日々の変化や累積を評価する必要がある。また,食事や経腸栄養から摂取する窒素の吸収率,尿以外の窒素喪失の正確な算出が難しいうえ,RCTも不足してお

り,今後さらなる研究が望まれる。

(2)背景

飢餓状態ではエネルギー源として肝臓や筋肉のグリコーゲンが利用され,さらに飢餓状態が続くと脂肪や筋肉が利用される。脂肪を除いた体重が健常時の70%程度まで減少すると,生命を維持できなくなり,死に至る。これをnitrogen death(窒素死)と呼ぶ。そのため除脂肪体重に相当する体タンパク量の変化をモニタリングすることができれば,その意義は大きい。

窒素バランスは,投与したタンパク質に含まれる窒素量から排泄される窒素量(尿,便,皮膚,胸水,腹水,滲出液など)を差し引いたものであり,生体内のタンパク質の増減の指標となる。しかし,尿以外からの窒素排泄量を正確に測定することは難しく,その効果に関する評価も定まっていないため,窒素バランスを評価する意義があるかどうかは重要な臨床課題である。

(3)解説

窒素バランスとは,摂取したタンパク質やアミノ酸に含有される窒素量と排泄される窒素量の差である1) 。摂取したタンパク質はアミノ酸やペプチドの形で吸収され,その一部は遊離アミノ酸として存在する。遊離アミノ酸は一定量アミノ酸プールとして体内で蓄えられ,主にタンパク質の合成に利用される。タンパク質合成と分解が等しく,体の恒常性が保たれた状態においては,摂取した窒素量と尿や便などから排泄される窒素量は等しく窒素平衡の状態である。窒素平衡が崩れ,窒素バランスがプラスまたはマイナスに傾いた状態では同化が優位な状態または異化亢進状態になっていると判断できる。

窒素バランスは,(摂取した窒素量−排泄された窒素量)で求められ,摂取した窒素量(g/day)は,[摂取タンパク質量(g/day)/6.25]で算出できる。一方,排泄される窒素量の算出方法は複数あり,尿中窒素排泄量÷0.8が簡便である2)〜7)(Table 3-3)。ただし,窒素は,尿,便,汗,滲出液などから排泄され,尿中の尿素窒素だけではなく,アンモニアや尿酸としても排泄される。さらに,血中尿素窒素(BUN)の変化にも影響する。

ESPENガイドライン2018,ASPENガイドライン2016では,肥満の重症患者におけるタンパク質投与量を調整するために窒素バランスの使用が推奨されている8),9) 。

2022年のシステマティックレビューでは8件の研
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-73-

Table 3-3 排泄される窒素量の計算式の例

尿中尿素窒素量(g/day)+4 2)尿中尿素窒素量に汗,便などから排泄される窒素量4gを追加する。尿中尿素窒素量(g/day)+2 3)尿中尿素窒素量に汗,便などから排泄される窒素量2gを追加する。尿中尿素窒素量(g/day)÷0.85−2 4)尿中尿素窒素量を0.85で除すことで補正し,2 gを引く。尿中尿素窒素量(g/day)÷0.8 5) 尿中尿素窒素量を0.8で除すことで,尿中の総窒素量を推定できる。しかし,便中や汗に含

まれる窒素は勘案されていない。尿中尿素窒素量(g/day)÷0.85 6)尿中尿素窒素量を0.85で除することで,尿中の総窒素量を推定できる。尿中尿素窒素量(g/day)+2±ΔBUN 7) 尿中尿素窒素量にそれ以外の窒素損失量の2 gを追加し,血中尿素窒素の変化量を考慮する。毎日の血中尿素窒素の増減により喪失した窒素量を評価する。

究を評価した結果,ICU入室時の窒素バランスの絶対値は死亡率と関連がなく,ICU入室後の窒素バランスの改善が死亡率減少に関連したと報告されている10) 。重症患者では,1日ごとの窒素バランスの変動が大きく11),1回の測定で窒素バランスの正確な評価は困難である。

また,重症患者に対して,より多くのタンパク質を投与することで窒素バランスが改善したという後ろ向き観察研究が複数ある12)〜15) 。しかし,現時点ではタンパク質投与が窒素バランスを改善させるというRCTはない。とくに,重症患者では7日目までの早期に急速な筋肉量減少が発生することが示されているが16),7日目以降の窒素バランスとの関係性について検討された報告が少ない。ICU入室2日目〜10日目までの窒素バランスの累積が,入室1日目と10日目の大腿筋肉量の変化と正の相関を示した前向き観察研究があり17),窒素バランスが筋肉量や除脂肪体重の急性期の推移を評価するモニタリングとして使用できる可能性はある18) 。

食事や経腸栄養から摂取する窒素の吸収率に加え,窒素損失には便や汗などの定量化されていない窒素量も考慮する必要があるため,厳密な窒素バランスを評価することは容易ではない。重症患者では,日々の窒素出納量は大きく変動するため11),1回の測定で窒素出納量を正確に評価することは困難である。このような日々の測定誤差を可能な限り補正するためには,その日までの累積量で窒素出納量を考慮に入れる必要がある。また,窒素バランスと重症患者の臨床転帰を検討した RCTも不足しているため,今後さらなる研究が望まれる。文 献

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CQ3-4:経腸栄養を行っている重症患者に対する腸

管不耐の評価方法は?

Answer:胃残量や胃残渣の性状,腹部理学所見,腹部超音波検査・腹部X線検査などの画像所見,乳酸値などを組み合わせて評価する方法がある(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

腸管不耐(enteral feeding intolerance,EFI)の明確な定義は定まっていないが,重症患者における発症率は決して低くなく,発症すると死亡率を上昇,ICU滞在日数を延長,感染性合併症を増加させるという報告もある。

胃残量(gastric residual volume,GRV)の増加はEFIの中で最も頻度の高い徴候であり,GRVのモニタリングはEFIの評価方法として最も一般的である。しかし,GRVのモニタリング単独ではEFIを十分に検出できないことや,投与エネルギーの不足,ケアコスト増加への懸念をふまえ,他の評価指標(消化器症状,胃残渣の性状,腹部理学所見,腹部超音波検査・腹部X線検査などの画像所見,乳酸値など)も組み合わせて多角的に評価することを検討する。(2)背景

重症患者では,経腸栄養が推奨されている一方で,ショックや腸管浮腫,鎮静薬や麻薬性鎮痛薬など,複数の要因によって腸管蠕動低下や消化吸収障害が起こりやすい1)〜3) 。さらに,消化管穿孔や腸管虚血など致死的合併症が起こった場合に可及的早期に対応する必要があるため,経腸栄養開始前および実施中に,EFIを評価することは必須である。一方,国内外でEFIの明確な定義がないことや具体的なモニタリング方法・評価方法が十分に検討されていないことから,EFIをどう評価するかは重要な臨床課題である。

(3)解説

これまでの報告では,EFIの定義としてGRVの増加(large GRVs),嘔気・嘔吐,高度の下痢,腹部膨満(感),腹痛,腹部の不快感などが挙げられてきたが,定義や観察期間,施設間での栄養投与方法の違いもあり,重症患者での発症率は2〜75%とばらつきが大きい4) 。

Blaserらはシステマティックレビューにおいて,重症患者のEFIの定義のパターンを,1消化器症状を伴うGRVの増加,2GRVの増加のみ,3消化器症状のみ,4経腸栄養の増量障害,の4つに分け,全体での発症率38.3%(95% CI:30.7%〜46.2%)と報告している4) 。Yahyapoorらは,2つ以上の消化器症状を伴うGRVの増加(6時間に250 mL以上)をEFIと定義し,重症患者を入院後1週間観察した結果,EFIは第1病日66.1%,第2病日91.8%をピークに以後第7病日の38.8%まで減少する傾向にあったと報告している5) 。また,Gungabissoonらは,GRVの増加,腹部膨満感,嘔吐,下痢,腹部の不快感のいずれかによって経腸栄養の中断を要したものをEFIと定義した研究において,重症患者の30.5%に発生したと報告している6) 。定義の違いはあるが,EFIの発症率は決して低くなく,発症すると死亡率を上昇,ICU滞在日数を延長,感染性合併症を増加させるという報告もある7)〜10) 。

EFIの指標の中で一般的なものはGRVのモニタリングである11) 。GRVの増加は,EFIの中で複数の研究において最も頻度が高いと報告されており4)〜6),定量化できるうえ,患者への侵襲も少ない。そのため, ASPENガイドライン2016やESPENガイドライン2023において経腸栄養の開始・増減や蠕動促進薬を開始する目安になっている12),13) 。しかし,GRVのモニタリングは体位,胃液そのものの産生量,チューブの種類,チューブ先端の位置,測定間隔などによって左右される可能性がある14),15) 。また,GRVのモニタ
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リングを行うことは,嘔吐のリスクを減らす可能性があるものの,死亡率や入院日数,肺炎の発症率との関係性は現時点では示されていない16)〜18) 。2021年に報告されたコクランレビューでは,GRVのモニタリングの必要性,頻度(8時間以内か8時間以上か),閾値,一度吸引した後に胃内に戻すか破棄するか,に分けて検討されているが,有用性を見い出せなかった。それぞれの項目に該当する RCTが1〜2件ずつしかなかったため,今後さらなる研究が必要である18) 。さらに,経腸栄養の中断による投与エネルギー不足およびそれに伴う感染性合併症リスクの上昇,主に看護師の業務量の増加に伴うケアコストの増加も懸念される。その観点もあるが,GRVが極端に多い場合は経腸栄養を中止する理由として考慮されるべきであり,日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016では「GRVが500 mL未満であれば経腸栄養を中止しない」,ESPENガイドライン2023では「GRVが500 mL/6hrを越える場合は経腸栄養の開始を遅らせるべき」と,GRV 500 mLという比較的高い閾値が1つのカットオフとして設定されている13),19) 。しかし,ESPENガイドライン2023では,経腸栄養が確立された後のモニタリングとしてGRVの確認は必須ではないとも述べられている13) 。

GRVのモニタリング単独でEFIを評価するには根拠が不十分であるが,GRVの増加は少なくとも上部消化管の蠕動障害を示唆しており,経腸栄養が増量できなければ幽門後投与など他の投与経路を考慮する必要がある。EFIの評価が重要となる重症患者においては, GRVのモニタリングだけでなく,他の評価指標(消化器症状,胃残渣の性状,腹部理学所見,腹部超音波検査・腹部X線検査などの画像所見,乳酸値など)も組み合わせて多角的に評価することを検討する。

文 献

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委員会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン.日集中医誌 2016;23:185-281.
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CQ3-5:経腸栄養を行っている重症患者が誤嚥する

リスクを下げる方法は?

Answer:持続投与,チューブ先端の位置を幽門

後とする,体位の工夫,薬物療法などがある(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

一般的な誤嚥の予防策は,不必要な薬物投与を減らして消化管,気道に有害な細菌が定着するのを防ぎ,不必要な経鼻胃管留置,経腸栄養を行わず,人工呼吸期間を短縮することである。やむを得ず人工呼吸管理を必要とし,経鼻胃管などを留置して経腸栄養を行う場合には,ventilator associated pneumonia(VAP)予防バンドルに加え,体位の工夫,持続投与や幽門後投与,プロバイオティクスの使用,理学療法などが誤嚥予防に有効な可能性がある。胃残量計測で誤嚥を制御できる根拠はなく,処置時の経腸栄養中断は必須ではない。

(2)背景

重症患者で経腸栄養を行う際に,不適切な増量や腸管不耐の確認不足があると胃食道逆流,嘔吐から誤嚥を来し肺炎のリスクが増すことがある1) 。特にVAPは入院関連肺炎のエピソードの80%を占め,抗菌薬使用量増加,栄養状態悪化,入院日数延長などにつながる2)かもしれず,経腸栄養を受けている重症患者に誤嚥性肺炎のリスクを下げる対策を検討すべきである。

(3)解説

院内肺炎を予防するためのエビデンスに基づく介入は,消化管・気道への有害な細菌の定着を防ぐこと(不必要な抗菌薬や制酸剤使用を避け,選択的消化管内除菌,高リスク例への短期予防的抗菌薬投与を行うなど)と,汚染された分泌物の誤嚥を防ぐこと(適切なICUスタッフの配置,体位を半座位とする,胃膨満を避ける,経口挿管,人工呼吸期間を短縮するなど)などが考えられる3) 。人工呼吸管理中は30〜45°の頭位挙上と肺炎の発生率の低下が相関した4)ため,特に経鼻胃管を用いた経腸栄養中は頭位挙上が推奨されている。

気管チューブにカフがあり消化液の垂れ込みを防いでいるが,隙間からの垂れ込みは完全に予防はできない2) 。そのほかVAP予防バンドルとして手指衛生,適切な吸引処置,カフ上吸引ポート付き気管チューブの使用,加温加湿器の使用,Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)−1〜1までの浅鎮静,クロルヘキシジン

による口腔衛生状態の保持,カフ圧20〜30 mmHg,回路交換を必要以上にしないことなどが推奨される3) 。従来行われていたメチレンブルーなどの色素を用いて誤嚥の有無を確かめる方法は感度が低く,誤嚥ハイリスク症例にとって検査による害が益を上回るため行わないほうが良い5) 。

経腸栄養を行う際の胃残量増加または嘔吐と肺炎の発症は相関があり6),本ガイドラインでは持続投与を行うことを弱く推奨している。各ガイドラインでは間欠投与より持続投与がよいとする推奨が多い7)〜9)(詳細はCQ1-9を参照のこと)。重症患者の胃残量計測について行われたシステマティックレビューでは胃残量を計測しないこととVAPの増加は相関しなかった10) 。誤嚥を防ぐ目的でルーチンに胃残量を計測する意義は乏しいかもしれない11) 。

栄養チューブ先端位置を幽門後に留置することと肺炎の減少が相関した12)ため,本ガイドラインではこれを弱く推奨している。最新のESPENガイドライン2023ではまず経胃投与を行い,誤嚥リスクの高い症例(制酸剤使用,仰臥位,再挿管,気管切開,ARDS,頭部外傷,頭蓋内圧測定,高齢など3))で幽門後投与への切り替えを推奨している6)(幽門後投与については

CQ1-8を参照のこと)。

体位に関する検討では,人工呼吸器装着患者に頭位挙上,右側臥位で経腸栄養を行ったところ仰臥位と比較して胃残量減少と相関がみられた13)が,VAPに関する検討はなかった。重症患者に腹臥位で経腸栄養を行うことのシステマティックレビューでは仰臥位と比較して胃残量に差はなく,VAP発生率は変わらない可能性が示された14) 。不穏状態で安全に経腸栄養を行う体位に関する検討はまだない15) 。経腸栄養中は頭位挙上が推奨される13)ことが多いが,仰臥位との比較は結論がでていない。

処置に伴う経腸栄養の中断に関する検討では,重症熱傷の手術中に仰臥位,持続投与で経腸栄養を継続した群は,中断した群と比較して死亡率や誤嚥性肺炎に差はなく,投与熱量増加と相関がみられた16) 。

薬物治療に関する検討では,オピオイド拮抗薬であるMethylnaltrexoneはオピオイドに起因する便秘や蠕動低下に対する効果が期待されている。オピオイドを使用している人工呼吸器装着患者にMethylnaltrexoneを用いてVAPの抑制効果を見たRCTではいずれも有意差は見られなかった17) 。本ガイドラインでは重症患者にプロバイオティクスを投与することを弱く推奨しており,人工呼吸器装着患者にプロバイオティクス(乳
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酸菌)を14日間使用した RCTではVAPが減少し, ICU滞在日数と入院日数が短縮した18)(詳細は

CQ2-7-2を参照のこと)。

半固形化経腸栄養剤は誤嚥性肺炎や胃食道逆流予防を目的として考案された19)が,内容や投与方法,粘度測定法が統一されていないため RCTがほとんどない。

理学療法に関する検討では,人工呼吸器装着患者に1日2回,15分の腹部マッサージの効果を検討したRCTでは胃残量が減少し,腹部膨満が減少し,便の性状が正常に近づき,便回数が増加し,VAPが減少した20) 。脳神経外科疾患の人工呼吸器装着患者に,鍼治療と蠕動促進薬を用いた薬物療法を比較したRCTでは,鍼治療群で胃残量が減少したがVAPに関する検討はなかった21) 。

文 献

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CQ3-6:重症患者の下痢,便秘への対策方法は?

Answer:栄養製剤や投与方法の選択,薬物療法,排便管理システムを用いた方法などがある(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

下痢は便性状と量で評価することが多いが定義が複数ある。原因は多岐にわたり経腸栄養はその原因の一つである。下痢を来した重症患者の疫学を見たシステマティックレビューで下痢は生存率に影響しなかったが,患者のQOLを損ない,看護師の業務量を増加させ,栄養素の吸収効率が低下する。直腸留置カテーテルによる排便管理システムは下痢が5日以上継続すると使用率が増加している。重症病態の下痢は薬剤性が多く,原因薬剤の中止・変更,シンバイオティクスの使用,
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消化態経腸栄養剤の使用,経腸栄養の持続投与などの対策が有効だとする報告があり,必ずしも経腸栄養を中断する必要はない。下痢は包括的な対処が必要であり,プロトコルを用いた対処が望ましい2) 。

便秘は定義が複数あり,排便がない日数だけでなく,多角的な評価を行い対処する。便秘は様々な病態により起こり,重症患者に予防的下剤を使用したメタアナリシスで,便秘を抑制することで予後を改善する効果はみられなかった。一方で下剤の使用は下痢を来すことがあり注意が必要である。

(2)背景

重症患者の下痢の発生率は3.3〜78%,便秘発生率は20〜83%と報告されている1) 。下痢や便秘は患者のQOLを低下させるだけでなく,循環動態の破綻や内服薬剤,栄養の吸収動態に影響を与え,またICU滞在日数を延長する原因となり得る2) 。さらに経腸栄養によるエネルギー投与目標の達成を妨げる。投与された栄養素の吸収が障害され,有効に利用されないかもしれない。そのため,重症患者において下痢,便秘の対策(薬物治療,栄養剤の種類,投与法など)は重要な課題である。

(3)解説

1 下痢

重症患者では敗血症,低アルブミン血症,経腸栄養,抗菌薬治療などで下痢を認めることが多い。その原因は多岐にわたり,経腸栄養はその原因の一つと考えられている3) 。重症患者の下痢は定義が一定せず,水様便が3回/day以上あるとき,としていることが多い4)が,排便回数は健常時でも3回/dayを超えることがあり,回数が少ない水様便が正常ともかぎらないため,回数ではなくBristol scaleなどを用いて便性状のみで判断する施設も多い5) 。量による下痢の定義は300 mL/day6),200 g/day7),250 mL/day8)などがあるが,重症患者では計測が困難であり,計測のために直腸カテーテルをすべての症例に留置するのは現実的でない。

重症患者の下痢,便秘の疫学をみたシステマティックレビューで,下痢の頻度は3.3%〜78%とされ,下痢は人工呼吸期間,ICU滞在日数,生存率には影響しなかった1) 。一方でICU入室中の下痢患者を対象とした研究においてイレウス,急性腎障害,代謝性アシドーシス,低カルシウム血症,ステロイド使用者の下痢は重症敗血症のひとつの症候であった9) 。下痢により吸収不良,低栄養,電解質異常,脱水,感染,皮膚脱落などがおこる。患者隔離やClostridiodes difficile感染症

を除外するためのコストがかかり,ICU滞在日数が延長する4),8),10),11) 。経腸栄養を行った重症患者を対象とした観察研究で,便重量350 g/day以上を認めた場合, 350 g/day以下の群と比べて627 kcal/dayの吸収不良を来していた12) 。下痢は患者のQOL低下,看護師の業務量増加と相関する13),14) 。

重症患者の下痢は非感染性のことが多い。広域抗菌薬投与時はClostridioides difficile感染症に注意が必要であるが,Clostridioides difficile感染症は1%に過ぎなかったという報告がある8) 。下痢の原因は薬剤性が多く,抗菌薬のほか,緩下剤,蠕動促進剤,制酸剤などが挙げられる15) 。下痢を来した症例の20%以上が直前に刺激性下剤を使用されていた8) 。

重症患者は経腸栄養が下痢の原因となり,その内容,投与法,腸管機能を評価して対処する必要がある4) 。ICUで経腸栄養を行った症例を対象とした観察研究では,下痢に影響する因子として経腸栄養投与日数,投与量,尿素窒素高値,プロバイオティクスの使用,呼吸器疾患が挙げられた16) 。下痢を来した際には経腸栄養剤の浸透圧,投与速度,および微生物汚染に注意が必要である4) 。間欠投与と比較して持続投与により下痢の頻度は抑制された。本ガイドラインで行ったメタアナリシスでは感染症発症率は増加したが,死亡, ICU滞在日数,人工呼吸期間,下痢が改善したため,持続投与することを弱く推奨している(CQ1-9を参照のこと)。重症患者に消化態栄養剤を用いて下痢を抑制した研究がいくつか存在し,消化管不耐を抑制する可能性がある17)〜21) 。本ガイドラインで行ったメタアナリシスではICU滞在日数,人工呼吸期間の短縮,下痢の抑制がみられたが,全死亡,全感染症発症率が増加したため,消化態または成分栄養剤を用いないことを弱く推奨している(詳細はCQ2-3を参照のこと)。

重症患者にシンバイオティクスを用いたシステマティックレビューでは,シンバイオティクスの種類,量,投与法にばらつきがあるが下痢抑制効果を認めた。腸管不耐,予後の改善効果は認められなかった22) 。本ガイドラインで行ったメタアナリシスでは,院内死亡率の減少,ICU滞在日数の短縮,人工呼吸期間の短縮,感染性合併症の減少がみられ,すべての有害事象は減少したため,シンバイオティクスを投与することを強く推奨している(詳細はCQ2-7-3参照のこと)。人工呼吸管理を要する敗血症患者に水溶性食物繊維を用いた RCTでは下痢が抑制された23) 。本ガイドラインで行ったメタアナリシスでは水溶性食物繊維を含むプレバイオティクスを重症患者に投与することを強く推
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奨している(詳細はCQ2-7-1参照のこと)。Eastern Association for the Surgery of Trauma(EAST)によるシステマティックレビューでは,多発外傷患者の非感染性下痢にロペラミド,ジフェノキシラート/アトロピン(日本未承認)は有効であった24) 。

直腸留置カテーテルを用いたfecal management system(FMS)は,ICU外の急性期症例の観察研究で60%以上が下痢に対して使用され,おおむね瘻孔や粘膜壊死などの有害事象を認めなかったが25),FMS使用による潰瘍形成の報告26)があるため注意が必要であろう。ICUにおけるFMS使用状況の観察研究では, FMSは5日以上下痢が続く場合に使用率が増加し,10日以上下痢が続く患者の61%に使用されていた。FMS使用の有無を問わず15日以上下痢が持続する患者の6割以上に肛門周囲皮膚びらんがみられた。FMS使用について看護師の満足度は69%で,15日以上下痢が続いた症例の満足度は82%となった27) 。

下痢の原因は多岐にわたり包括的な対処が必要なため,プロトコルを用いた対処が推奨される4) 。排泄管理プロトコルをCCUで運用した観察研究ではプロトコル実施と下痢頻度減少に相関がみられたが,プロトコル全体の遵守率が2.3%であった。プロトコルの効果は遵守率をあげて再評価が必要である28) 。

2 便秘

便秘は「慢性便秘症診療ガイドライン2017」29)で「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されるが,「連続する3日以上排便がない状態」30)とされることも多く複数の定義がある31),32) 。重症患者は自覚症状を訴えにくいため様々な臨床情報を集めてアセスメントすべきである。

便秘の疫学は単純な腸管の疾患,病態によるものと重症病態に伴うものが含まれ,定義の違いもあるため重症患者の便秘発症率は20〜83%と報告に幅がある33)〜37) 。

重症患者に予防的下剤を使用して予後改善効果をみたメタアナリシス1)では,人工呼吸期間,ICU滞在日数,死亡率に影響を与えなかった。重症患者の最初の排便がICU入室後6日未満と以降を比較した観察研究では,早期から排便が得られた群は高体温が緩和され, CRP値が低下し,SOFAスコアが改善し,ICU滞在日数短縮と関連が認められた33) 。

44施設のICUで行われた観察研究では,便秘対策プロトコルはICUの79.5%で実施され,薬剤としてセンナ(81%),ビサコジル(75.6%)が使用されることが多く,ラクツロース(29.7%)やマグネシウム製剤(13.5%)は一般的ではなかった。プロトコルは主に看護師により運用され(62.8%),24〜96時間排便が見ら

れない(35.1%),麻薬使用(18.9%),ハイリスク症例(13.5%)などが主なプロトコル起動理由であった。アウトカムに対する明確なエビデンスがなく,理想的な便秘のマネジメントは確立していない38) 。呼吸器疾患でICU管理を要した患者に対してプロバイオティクスを使用した RCTでは,死亡率と入院日数に差はないが,発熱期間が短縮し,便秘は減少し,有害事象は見られなかった39) 。本ガイドラインで行われたメタアナリシスでは重症患者にプロバイオティクスを投与することで,便秘の改善を検討してはいないが,院内死亡率の減少,ICU滞在期間の短縮,人工呼吸期間の短縮,感染性合併症の減少を認めたため,投与を弱く推奨している(詳細はCQ2-7-2を参照のこと)。

腸管管理に関するしっかりしたプロトコルを持つICUはまだ少なく,しっかりした大規模研究が少ないため便秘と予後悪化の因果関係は明らかでないが,排泄管理は消化管の通過障害を改善し,重症患者の予後を改善するかもしれない2) 。便秘と下痢は密接に関連し,重症患者に予防的便秘対策としてポリエチレングリコールを使用したところ,便秘の減少,下痢の増加と相関がみられた40) 。下剤使用時は下痢に注意が必要である。

文 献

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CQ3-7:重症患者において,肥満や低体重を認めた

場合の栄養療法の考え方は?

Answer:肥満や低体重を認める重症患者では,現体重,理想体重,調整体重を用いてエネルギーやタンパク質の目標投与量を設定するなど,患者の状態に応じて個別に検討する(BQに対する情報提示)。
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Table 3-7-1 理想体重, 調整体重の算出方法5),6)実体重−

理想体重日本における標準体重および理想体重の例: BMI 22 kg/m2:22×身長(m)2

BMI 25 kg/m2:25×身長(m)2 ESPEN:男性:0.9×[身長(cm)−100]女性:0.9×[身長(cm)−106]

調整体重ESPEN:理想体重+[0.2〜0.25(実体重−理想体重)]

(1)まとめ

理想体重は日本では標準体重と表現することも多いが,海外では理想体重(ideal body weight)と表現するのが一般的であるため,本ガイドラインでは理想体重を用いて議論する(Table 3-7-1)。

肥満や低体重は,いずれの場合も理想体重の患者と同一の栄養療法では容易にunderfeedingやoverfeedingとなり得るため,個別化された栄養介入が必要である。肥満患者では,現体重,理想体重,調整体重を用いて, BMIごとに係数を乗じてエネルギーやタンパク質の投与量を決定する方法がある。低体重患者は, refeeding症候群(refeeding syndrome, RFS)の発症に注意しつつ(CQ3-8を参照のこと),推定エネルギー必要量よりも少ない量から栄養を開始し,過度なエネルギー負債を生じないよう増量する方法がある。また,間接熱量測定(indirect calorimetry, IC)による消費エネルギー量の評価が各ガイドラインで推奨されている。

(2)背景

WHOではBMIに基づき18.5 kg/m2未満を痩せ,30 kg/m2以上を肥満としている1)が,日本の肥満症診療ガイドラインではWHO同様に18.5 kg/m2未満を低体重とする一方,BMI 25 kg/m2以上を肥満と定義している2) 。また肥満,低体重ともに,栄養障害を伴う可能性があり,通常と異なる栄養療法を行うことが多く,

重症病態の肥満や低体重患者の栄養療法に関して議論することは重要な課題と考えた。こうした患者の栄養療法については,ASPENガイドライン2016,ESPENガイドライン2018および2023,日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016にそれぞれに記載がある3)〜6) 。

(3)解説

1 肥満

肥満は,本邦の肥満症診療ガイドライン2022では, BMI 25 kg/m2以上,高度肥満をBMI 35 kg/m2以上と定義している。一方WHOでは,肥満をBMI 30 kg/m2以上,重症または病的肥満をBMI 40 kg/m2以上としており基準に違いがある。これは日本人の肥満に関連する合併症がBMI 25 kg/m2以上で増加すること7)や民族間の体組成の違いが主な要因である。重症患者のうち病的肥満の占める割合は,欧米では約20% 8),9)であるのに対して,本邦では0.6%と少ないが増加傾向にある10) 。一方,非重症肥満患者ではBMI 30 kg/m2以上の患者は,正常範囲のBMIまたは高度肥満の患者よりも死亡リスクが低いことが示唆されており,この現象は肥満パラドックスと呼ばれているが8)重症肥満患者においては一貫した研究結果は得られていない11) 。また,サルコペニア肥満と呼ばれる筋力や筋量の低下

Table 3-7-2 Penn State式とModified Penn State式14)

Penn State式RMR(kcal/day)=MSJ(0.96)+Tmax(167)+VE(31)−6,212 Modified Penn State式RMR(kcal/day)=MSJ(0.71)+Tmax(85)+VE(64)−3,085 MSJ男性:5+10×Weight(kg)+6.25×Height(cm)−5×Age(year) kcal/day女性:−161+10×Weight(kg)+6.25×Height(cm)−5×Age(year) kcal/day MSJ, Mifflin-St Jeor equation; RMR, resting metabolic rate(安静時代謝率); Tmax, Maximum body temperature(至近の24時間の最高体温); VE, Ventilation〔minute volume(L/min)〕.
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-82-

が脂肪量の維持や増加を来している状態では,サルコペニアまたは肥満単体の場合と比較して罹患率や死亡率が上昇する12),13) 。

重症肥満患者のエネルギー必要量の推定方法は,いずれのガイドラインにおいてもコンセンサスが得られておらず,研究も不足しており,間接熱量測定による消費エネルギーの測定が推奨されている3),5),6) 。間接熱量測定が困難な場合は,幅広いBMIの患者を含む重症患者コホートで開発されたPenn State式や60歳以上の患者を対象としたModified Penn State式を用いることで,間接熱量測定による測定結果との差を少なくできるとされている(Table 3-7-2)14)。また,現体重,理想体重,調整体重を用いてBMIごとに係数を乗じてエネルギーの投与量を決定する方法がある。理想体重は,ESPENガイドライン2023および日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016に記載があり,調整体重は,ESPENガイドライン2023のみ記載がある(Table 3-7-1)5),6) 。理想体重をBMI 22 kg/m2とする場合,ここで算出されるエネルギー必要量は,理想体重,調整体重,現体重の順に値は高くなる(間接熱量測定CQ3-2を参照のこと)。

重症肥満患者のタンパク質の投与量は,エネルギーの必要量の推定方法と同様に現体重,理想体重,調整体重を用いてBMIごとに係数を乗じて推算式により算出する方法がある。ESPENガイドライン2023では,窒素バランスによる評価を推奨している5)(窒素バランスの評価については,CQ3-3を参照のこと)。

重症肥満患者では,いずれのガイドラインにおいても理想体重あるいは調整体重など補正体重を用いて,現体重よりも低い体重でエネルギー投与量およびタンパク質投与量を算出することが推奨されている3),5),6) 。BMI 30 kg/m2以上の重症肥満患者には,現体重を用いた必要栄養量の算出ではoverfeedingになり得るため,理想体重や調整体重を用いて目標を設定する方法が考えられる。

2 低体重

低体重は,除脂肪体重の減少と体細胞量の変化につながる栄養素の摂取または取り込み不足によりもたらされ,身体および精神機能の低下,死亡リスクの上昇,入院期間の延長,および入院費用の増加などの臨床転帰の悪化を引き起こす15),16) 。低体重は,低栄養を評価する項目の一つである。

重症低体重患者の必要エネルギー量およびタンパク質量の推定方法は,ASPENガイドライン2016およびESPENガイドライン2018では栄養スクリーニングツールにより重度の低栄養と評価された患者に対する栄養療法として記載されている3),4) 。エネルギー投与

量およびタンパク質投与量の算出に使用する体重については,特別な言及がなく,現体重を用いて算出することを検討する。必要エネルギー量の設定方法については研究が不足しており,間接熱量測定により測定された消費エネルギーを用いる方法が推奨されている。

重症低体重患者には,栄養評価(CQ3-1を参照のこと)およびRFS特有のリスク評価(CQ3-8を参照のこと)を行い,これらの評価でリスクがあると判断された場合は,英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence in England and Wales, NICE)ガイドラインなどを参考に,エネルギー負債が最小限となるようできるだけ速やかに栄養投与を開始する17) 。

文 献

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CQ3-8:重症患者において,Refeeding症候群に対

する栄養療法の考え方は?

Answer:Refeeding症候群特有のリスク評価を

行い,発症リスクや発症後の症状,電解質異常の程度に応じたエネルギー制限,電解質のモニタリングおよび補正を検討する(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

重症患者は侵襲が大きく,異化亢進状態にあるため,栄養不良患者以外にもrefeeding症候群(refeeding syndrome, RFS)のリスクがある。栄養療法の開始前には,全患者にRFS特有のリスク評価を行い,リスクに合わせたエネルギー投与量の設定や電解質等のモニタリングを行う。リスクの評価方法に統一された基準はないものの,英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence in England and Wales, NICE)の基準が使われることが多い。高リスク以上の場合は5〜10 kcal/kg/dayのエネルギー制限を検討するが,過度なエネルギー制限による栄養負債の増加も考慮してエネルギー投与量を増やす傾向にある。ただし,エネルギー投与量が過剰になるとRFS発症リスクが上昇するため,1日複数回の血清リン濃度,血清カリウム濃度,血清マグネシウム濃度の測定と必要に応じて電解質の補充,ビタミンB1やマルチビタミンの投与などを行うことを検討する。(2)背景

RFSは,栄養投与により発症する重篤な代謝合併症の一つである。RFSの病態は未解明な部分も多いが,適切な対応により発症や重症化を予防できる可能性があり,どのような対応を行うべきか本ガイドラインで扱うことは重要と考えられる。また,予防のためにはリスク評価が必要であり,そのリスク因子として低BMIや電解質異常などが報告されている。しかし,リスク因子に使われている閾値は様々であり,重症患者においてRFSのリスク因子は明確になっておらず, RFSのリスク評価に関しても議論すべきである。したがってRFSのリスク評価と対応について本CQで取りあげる。

(3)解説

1 RFSとは

RFSは,低栄養や絶食期間のある患者への栄養投与に伴う電解質および代謝異常とされる。重症患者の場合,侵襲が大きく異化亢進状態にあるため,低栄養以外でも発症する可能性がある1) 。飢餓状態ではエネルギー源として脂質やタンパク質が利用されるが,栄養再開によりエネルギー源が糖質へ切り替わることでインスリン分泌が増加する。インスリンは,リンやカリウム,マグネシウム,水分を細胞内へシフトさせるため,低リン血症,低カリウム血症,低マグネシウム血症が生じる。さらに,異化から同化へ急激に代謝が切り替わり,細胞内に取り込まれた糖質が利用され, ATP産生が促進されるためにリンが消費される。そのため,特に低リン血症が生じやすい。結果として,電解質や糖代謝異常,ビタミン(特にビタミンB1),微量元素の欠乏,体液過剰などが生じる。一連の機序によりほとんど症状がない軽症から浮腫,循環不全,呼吸筋麻痺,意識障害,血液凝固異常など様々な病態を生じ,死に至る場合もある2),3) 。

2 診断基準

これまでに,RFSに関する国際的に統一された診断基準は存在しない。個々の研究で用いられた重症患者のRFSの診断基準は,血清リン濃度を基準とするものが多い。血清リン濃度を用いる場合は,栄養開始から72時間以内に血清リン濃度が0.5 mg/dLを超えて低下し,かつ/または,2.0 mg/dL以下となった場合に診断されることが多い1),3),4) 。そのほか電解質異常やビタミンB1欠乏に起因する臓器障害を組み合わせた診断基準などがある5) 。また,血清リン濃度が基準値から30%を超えて低下,または,1.8 mg/dL未満,または,1)血清リン濃度2.4 mg/dL以下,2)血清マグネ
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シウム濃度1.8 mg/dL以下,3)血清カリウム濃度3.4 mEq/L以下のうち2つ以上該当する場合に診断し,その診断基準を満たした場合,電解質異常のみであればimminent RFS,電解質異常に加えて臨床症状が出現した場合はmanifest RFSと分類するものもある(Table 3-8-1)6) 。

3 リスク評価

RFSのリスク評価は,主に非重症患者に対して作成されており,以前はNICEの基準が世界中で広く使われていた(Table 3-8-2)7),8) 。NICEの基準に基づいてリスクを4つに分類したEvidence-based and consensussupported algorithm(Table 3-8-2)6)やNICEの基準に加え,病態,皮下脂肪や筋肉量の減少をはじめとした身体所見などの追加項目が含まれるASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome 5),後述するThe Management of Really Sick Patients with Anorexia Nervosa(MARSIPAN)がある(Table 3-8-2, 3-8-3)9) 。栄養開始から72時間以内の低リン血症をRFSと定義し,血清リン濃度が0.5 mg/dLを超えて低下し,2.0 mg/dL以下となった場合を低リン血症と定

義した1996年の研究では,重症患者の34%にRFSがみられた。同じ定義を用いた後続の研究では, Simplified Nutrition Assessment Questionnaire (SNAQ)によるリスクのある集団におけるRFSの発生割合は8%であったと報告している10) 。前者とは異なる前向きコホート研究では,NICEの基準でリスクがあると評価された243人のうちRFSの発生割合は2%と報告されたが,ここでは重度の電解質低下(血清カリウム濃度,血清リン濃度,血清マグネシウム濃度),体液過多,臓器機能障害を診断基準としていた11) 。これらのように,診断基準が統一されておらずRFS全体の発生割合は不明である。これら基準でも網羅的とは言えず,リスクの定量化は不可能とされている5) 。

4 RFSを発症した,またはRFSのリスクがある重

症患者に対する栄養療法栄養開始から72時間以内にRFSを発症したICU患者を対象に,エネルギー制限群と通常の栄養療法群でICU退室後の予後を比較した研究では,エネルギー制

Table 3-8-1 重症患者のRFSの診断基準1),3),4)〜 6),15)

文献1),3),4)栄養開始から72時間以内の血清リン濃度が以下のいずれにも該当する場合・2.0 mg/dL以下・以前の測定値から0.5 mg/dLを超えて低下

ESPEN refeeding hypophosphatemia 15)栄養投与後の血清リン濃度が以下のいずれかに該当する場合・2.0 mg/dL以下・0.5 mg/dLを超えて低下

Evidence-based and consensus-supported algorithm 6)・栄養開始から72時間以内に血清リン濃度が基準値から30%を超えて低下,また

は,1.8 mg/dL以下・または,1)〜3)のいずれか2つに当てはまる場合1)血清リン濃度が2.4 mg/dL以下2)血清マグネシウム濃度が1.8 mg/dL以下3)血清カリウム濃度が3.4 mEq/L以下診断・電解質異常のみの場合は,imminent RFS・電解質異常に加えて臨床症状が出現した場合は,manifest RFS

ASPEN Consensus Recommendation for Refeeding Syndrome 5) 1)血清リン濃度,血清カリウム濃度,血清マグネシウム濃度のいずれか1つ以上

の値が10%以上低下した場合2)上記低下が,栄養再開または投与エネルギーを増量後5日以内に発生した場合また,上記の基準に該当する場合に軽症~重症まで分類する軽症・10%~20%低下した場合中等度・20%~30%低下した場合重症・30%以上低下した場合・および/または,これらのいずれかの低下に起因する臓器障害・および/または,ビタミンB1欠乏による症状
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Table 3-8-2 RFSのリスク評価5)〜7),9)

NICEの基準7) Major risk factors 1)BMI 16 kg/m2未満2)過去3〜6か月以内に15%を超える意図しない体重減少3)10日以上の絶食,または,栄養摂取がほとんどない4)栄養摂取前の低カリウム血症,低リン血症,または低マグネシウム血症Minor risk factors 1)BMI 18.5 kg/m2未満2)過去3〜6か月以内に10%を超える意図しない体重減少3)6〜10日の絶食,または,栄養摂取がほとんどない4)アルコール乱用歴,または,インスリン,化学療法,制酸剤,利尿薬使用Evidence-based and consensus-supported algorithm 6)リスクなしMajor risk factorとMinor risk factorのいずれも該当しない低リスクMinor risk factorが1つ該当する高リスクMajor risk factorが1つ,またはMinor risk factorが2つ該当する

超高リスク以下に1項目以上該当する・BMI 14 kg/m2未満・20%を超える体重減少・15日を超える絶食状態ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome 5)

中リスク:下記2つ以上満たす場合高リスク:下記1つ以上を満たす場合

BMI 16〜18.5 kg/m2 16 kg/m2未満体重減少1か月で5%を超える・3か月で7.5%を超える・6か月で10%を超える

エネルギー摂取量(いずれかを満たす)・5〜6日の絶食・内因性, または, 外因性疾患により急

性期に必要エネルギー摂取75%未満が7日を超えて続く・必要エネルギー摂取75%未満が1か月

を超えて続く・7日を超える絶食・内因性, または, 外因性疾患により急

性期に必要エネルギー摂取50%未満が5日を超えて続く・必要エネルギー摂取50%未満が1か月

を超えて続く

栄養開始前の低カリウム血症,低リン血症,低マグネシウム血症(どちらかを満たす)・軽度の低リン血症,低カリウム血症,

低マグネシウム血症・現在正常値だが直近で単回補正を要し

た状態・中等度〜重度の低リン血症,低カリウ

ム血症,低マグネシウム血症・現在正常値だが直近で複数回補正を要

した状態

皮下脂肪喪失軽度〜中等度重度筋肉量低下軽度〜中等度重度高リスク合併症の有無(Table 3-8-3を参照のこと)中等度重度The Management of Really Sick Patients with Anorexia Nervosa 9) 1)BMI 13 kg/m2を下回る2)過去3か月間に15%を超える体重減少3)4日以上の栄養摂取が全く, または, ほとんどない4)栄養開始前に以下内科的合併症がある場合・電解質異常・肺炎, または, そのほか重篤な感染症・心機能低下, または, 心疾患・アルコール依存症などによる肝障害
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限群の生存期間が有意に長かった1) 。加えて,人工呼吸管理を受けた重症患者を対象とした後ろ向きコホート研究では,栄養開始から72時間以内にRFSを発症した群のうち,入室後3日目までのエネルギー制限が6か月生存と関連したとする報告がある4) 。また,高齢で栄養障害のある患者(NICEの基準で中〜高リスク)において,低エネルギーから開始し,ゆっくり目標に到達する群と,高エネルギーから開始し,早く目標に到達する群を比較した研究では,両群で握力, RFSの発症,死亡率に有意差はなく,後者で呼吸困難が多いという結果であった12) 。

RFSのリスクのある患者の電解質のモニタリングと必要時の補充はコンセンサスがあり,また2006年のNICEの基準が広く使われていたがリスクが極端に高い場合(BMI 14 kg/m2未満,または15日を超えて絶食であった場合)やすでに不整脈が出現している場合は,心電図のモニターとビタミンB1の補充が追加で推奨されている7) 。Evidence-based and consensussupported algorithmでは,リスクのない場合を含む全患者に対して,3日目までは毎日電解質を測定すること,水分バランスの評価が提案されている(Table 3-8-4)6) 。

一方で,低栄養でRFSのリスクがある患者に対し,エネルギー投与量を比較したシステマティックレビュー,メタアナリシスでは,4編のRCTと14編の観察研究を組み入れて検討し,研究間の異質性は高いものの800〜1,400 kcal/dayまたは15〜20 kcal/kg/dayの低エネルギー群と比較して1,400〜1,800 kcal/day以上または30 kcal/kg/day以上の高エネルギー群において入院期間が短縮(−3.0日)したと報告してい

る13) 。

以上のごとく,RFSリスク患者に対する投与エネルギー推奨量は近年増加傾向だが,それでも高リスク患者にはエネルギー制限を行う方針は変わっていない。重症患者においては,大規模 RCTや観察研究の結果から明らかな栄養障害がない場合も,RFS発症または低リン血症があればエネルギー投与量を制限することが推奨されている7) 。

5. 各国のガイドライン等の記載事項(Table 3-8-4,

3-8-5)日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016ではRFSリスクの記載にとどまっている14) 。ESPENガイドライン2023では電解質の測定頻度,栄養投与後に低リン血症を発症した患者の介入方法が記載されている15) 。ASPENガイドライン2016では,エネルギー制限を推奨する記載があり,その改訂版であるASPENガイドライン2022ではRFSについては触れられていない16),17) 。

RFSの評価や治療方針は,2006年のNICEの基準7)と,これを遵守したことによりunderfeedingによる死亡した症例の検討を経て,英国精神医学会が作成したMARSIPANに記載がある9) 。2017年にNICEガイドラインが改訂された際は,RFS対策については具体的な記載がなくなっており,栄養管理はMARSIPAN resourceを参照するとの記載へ変更された18) 。その他,Evidence-based and consensus-supported algorithm6),ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome 5)に記載がある。

Table 3-8-3 RFSのリスクに関連する疾患病態5)

・後天性免疫不全症候群・慢性アルコールまたは薬物使用障害・嚥下障害と食道運動障害(好酸球性食道炎,アカラシア,胃運動障害)・摂食障害(神経性やせ症)・食糧危機とホームレス・身体的および性的虐待やネグレクトの被害者(特に子供)・妊娠悪阻または長引く嘔吐・大きなストレスや手術で長期間栄養をとらなかった場合・吸収不良状態(短腸症候群,クローン病,嚢胞性線維症,幽門狭窄,消化不良,膵機能不全)・がん・高度な神経障害または意思疎通困難・肥満手術後・合併症のある術後患者・長時間の断食(ハンガーストライキ,神経性食欲不振症)・難民・タンパク質不足
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Table 3-8-4 RFSの管理と予防6)

リスクなし低リスク高リスク超高リスク

栄養療法前/開始後の予防措置なし5日間は200〜300 mgのビタミンB1,10日間はマルチビタミンの投与

3日目までは毎日電解質を測定すること,水分バランスの評価

エネルギー1〜3日目制限なし15〜25 kcal/kg/day 10〜15 kcal/kg/day 5〜10 kcal/kg/day

4日目30 kcal/kg/day 15〜25 kcal/kg/day 10〜20 kcal/kg/day 5日目制限なし6日目30 kcal/kg/day 7〜9日目制限なし20〜30 kcal/kg/day 10日目以降制限なし

水分制限なし±0を目指す約30〜35 mL/kg/day ±0を目指す1〜3日目:25〜30 mL/kg/day 4日目以降:30〜35 mL/kg/day ±0を目指す1〜3日目:20〜35 mL/kg/day 4〜6日目:25〜30 mL/kg/day 7日目以降:30〜35 mL/kg/dayナトリウム制限なし制限なし1〜7日目:1 mmol/kg/day未満に制限1〜10日目:1 mmol/kg/day未満に制限鉄鉄欠乏の場合も最初の7日間は鉄補充を行わない。

モニタリング・3日目までは毎日電解質を測定し,その後は2〜3日ごとに測定する。・水分バランスの評価を中心とした1日1〜2回の臨床検査を行う。・超高リスクの場合,心拍または心電図を毎日継続してモニタリングする。

文 献

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p.89
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Table 3-8-5 各国のガイドライン記載事項

JCCNG201614)発症リスクのある患者に対して血清カリウム濃度,血清リン濃度,血清マグネシウム濃度を測定する。

ESPEN202315)・血清カリウム濃度,血清リン濃度,血清マグネシウム濃度を最初の1週間は少なくとも毎日

1回測定する。・栄養開始に伴い,症状に関わらず低リン血症を生じた場合は,電解質を1日2〜3回測定し必要に応じて補充する。・栄養開始に伴い,症状に関わらず低リン血症を生じた場合は,エネルギー供給を48時間制

限し,その後徐々に増量する。

ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome 5)栄養開始時:・最初の24時間はブドウ糖100〜150 gまたは10〜20 kcal/kgで開始する。これには経静脈

だけでなく経腸で投与されたブドウ糖も含まれる。・電解質が低下している中等度から高リスクの RFS患者では,電解質の補充および/または正常化するまでは,栄養投与の開始または増量を控えることを考慮すべきである。・血清カリウム濃度,血清リン濃度,血清マグネシウム濃度が著しく低い患者では,補正さ

れるまで栄養投与の開始または増量を遅らせるべきである。水分制限:推奨されないナトリウム制限:推奨されないタンパク制限:推奨されない電解質:・栄養投与の開始前に血清カリウム濃度,血清リン濃度,血清マグネシウム濃度をチェックする。・高リスクの患者では,最初の3日間は12時間ごとにモニタリングする。病態によっては,モニタリングの頻度を増やす。・既存の治療に基づいて低下している電解質を補充する。・栄養開始前の値が正常の場合は,電解質の予防投与は推奨されない。・電解質の補正が困難な場合,または,栄養投与後に電解質が急激に低下した場合は,病態

に基づいて,ブドウ糖の投与量を50%減量し, 1〜2日ごとに目標の約33%増量する。電解質が重度および/または生命を脅かすほど低下している,または急激に低下している場合は,医師の判断で栄養投与の中止を検討する。ビタミンB1とマルチビタミン:・リスクのある患者には,ビタミンB1 100 mgを栄養投与前またはブドウ糖を含む点滴を開始する前に補充する。・重度の飢餓,慢性アルコール依存症,その他欠乏のリスクが高い患者,および/またはビタミンB1欠乏の症状がある患者には,ビタミンB1 100 mg/dayを5〜7日間またはそれ以上補充する。・ビタミンB1の定期的な測定は,有益ではないと考えられている。・マルチビタミン製剤は,禁忌でない限り,経静脈栄養を継続する期間は毎日投与する。経

口/経腸栄養を開始している患者には,病態と治療法に基づいて,総合経口/経腸用マルチビタミンを1日1回,10日間以上追加投与する。モニタリングと長期治療:・リスクのある患者には,栄養投与後24時間は4時間ごとのバイタルサインの評価を推奨する。・不安定な患者,または,重度の欠乏症患者には,確立された標準治療に基づく心肺モニタリングが推奨される。・水分バランスを評価し,毎日の体重を測定する。・患者が安定したと判断されるまで(例えば,2日間は電解質補充の必要なし),最初の数日間

は,栄養療法の短期および長期の目標を毎日評価し,その後は各施設の基準に基づいて評価する。
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Parenter Enteral Nutr 2016;40:159-211. 17) Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:12-41. 18) Eating disorders: recognition and treatment. London:

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CQ3-9:体外式膜型人工肺(extracorporeal

membrane oxygenation, ECMO),腹臥位呼吸療法

(prone position, PP),腹部開放管理(open

abdomen management, OAM)など特別な治療を

行っている重症患者における栄養療法の考え方は?

Answer:ECMO,PP,OAMなど特別な治療を

行っている重症患者では,病態や病期,消化管の状態などを考慮し,可能であれば早期経腸栄養を行うなど,適切な栄養療法を提供する(BQに対する情報提示)。

(1)まとめ

ECMO,PP,OAMなどの特別な治療を行っている重症患者に対しても早期経腸栄養は可能とする報告が多い。経腸栄養を行う際は,ECMOでは消化管機能不全や循環不全,非閉塞性腸間膜虚血(non-occlusive mesenteric ischemia, NOMI),PPでは腹部の圧迫や高用量の鎮静薬・麻薬の使用などによる消化管蠕動の低下,OAMでは消化管の状態やイレウスの徴候などに十分注意する。経腸栄養を投与できない場合は経静脈栄養を考慮する。栄養投与量に関して,ECMO,PP実施時に推奨される投与量は明らかではないが, OAM実施時には腹部滲出液によるタンパク質の損失が報告されているため,十分量のタンパク質とエネルギーの投与を考慮する。

(2)背景

重症患者に対してECMO,PP,OAMなどの特別な治療を行う際,栄養療法,特に経腸栄養との両立に苦慮することがある。

(3)解説

1 ECMO

ECMOは,重症呼吸不全に対して行われるvenovenous ECMO(VV-ECMO)と,急性循環不全に対して行われるveno-arterial ECMO(VA-ECMO)に分け

られる。いずれの対象患者も重症病態であり,タンパク異化やインスリン抵抗性などを呈しているだけでなく,侵襲や鎮静に伴う消化管蠕動低下・胃内容排泄遅延によって嘔吐や誤嚥のリスクが高まるため,経腸栄養投与が難しいこともある1) 。また,長期のICU入室により不適切な栄養投与,iatrogenic malnutrition(医原性の栄養障害)につながることも指摘されているが,このような栄養障害は見逃されることも少なくない2) 。特にVA-ECMOの場合は,不安定な循環動態に対して昇圧薬が投与されていることが多いため,臓器血流低下や腸管虚血のリスクを伴う3) 。ECMO患者に特化した栄養評価ツールはないため,一般の重症患者と同様に栄養評価を行う。ASPENのガイダンスでは,すべてのECMO患者は栄養障害のリスクありと判断することが推奨されている2) 。

エネルギー投与量に関して,German Society for Nutritional Medicine(DGEM)のガイドラインでは, ECMO患者では簡易式(25 kcal/kg/day)を使うことが推奨されている4) 。間接熱量計はCO2産生量とO2消費量からエネルギー消費量を推定しているため,特別な方法を用いなければECMO患者では適応できない5),6) 。ECMOや血液浄化療法がアミノ酸(特にアラニン,アルギニン,システイン,グルタミン,イソロイシン)の喪失に関連することが知られている7) 。ECMO患者では重症患者における一般的な推奨量よりも多くのタンパク質が必要となるかもしれないという報告8)もあるが,エビデンスが少ないため,他の重症患者に準じた投与量に設定する。

ECMO患者においても,適切な管理によって目標とする栄養投与量を達成することはできる。Lukasらの報告では,ECMO実施中の栄養の充足率は平均62%で,VV-ECMOではVA-ECMOに比べて有意に高かった(67% vs. 50%)9) 。Scottらは,ECMO実施中の平均の栄養投与量は目標の80%であったと報告している10) 。また,Ferrieらは,VA-/VV-ECMO患者を対象とした観察研究で,最初の2週間で目標エネルギー量の79.7%,目標タンパク量の73.0%を投与できたと報告し11),VA-ECMO症例に比べてVV-ECMO症例では目標に早く到達したが,これはVV-ECMOの方が循環の不安定性が少ないことが理由として挙げられている。

ECMO患者における栄養の投与経路に関して, DGEMのガイドラインでは,高度の消化管機能不全や循環不全がなければ,ECMO患者ではどの病期においても経腸栄養を行うことを推奨している4) 。ECMO
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-90-

患者の栄養療法のタイミングについて,ESPENのガイドラインでも,ECMO開始または重症病態の発症から24〜48時間以内の早期経腸栄養を推奨している12) 。

ECMO実施中,特にVA-ECMOでは高用量の昇圧薬投与時に非閉塞性腸間膜虚血(non-occlusive mesenteric ischemia, NOMI)などの腸管壊死のリスクがあると考えられている。しかし実際には,高度の腸管機能不全や循環不全が生じることは少なく, Davisらのreviewでは腸管虚血の発症は0.7%と報告されている13) 。また,Luらは,ECMO患者では7日目以内の目標栄養量の80%の達成が良好な予後と関連し,ECMO実施中でも経腸栄養は早期に開始でき,消化管の耐性は良好であったと報告している14) 。早期経腸栄養が院内死亡率や28日死亡率の低下に関連していた15)ことからも,ECMO患者に対する早期経腸栄養は安全かつ有効であるとして,ASPENのガイダンスで推奨されている2) 。Karpasitiのreviewでも, ECMO患者に対する早期経腸栄養は安全かつ実行可能であると述べられている16) 。

ASPENのガイダンスには,ECMO患者では,低灌流による高ビリルビン血症や急性肝虚血のある場合に経静脈栄養投与を躊躇する必要はないと記載されている2) 。ECMO患者に対して経腸栄養を行わない場合は経静脈栄養を投与する。

DGEMのガイドラインでは,ECMO患者に経静脈栄養を行う場合,脂肪乳剤を投与することが推奨されている4) 。トリグリセリド(TG)が1,000 mg/dL以上でECMOの人工肺にTGが析出したと報告されている17),18)ため,TGが400 mg/dL以上になる場合は脂肪乳剤やpropofolの投与量を調整することが推奨されている19) 。

2 PP

重症呼吸不全の治療のひとつとしてPPが行われる。近年は,長時間のPPが有用とする報告も多い20),21) 。腹臥位では平坦な体位,腹部の圧迫による腹圧の上昇,高用量の鎮静薬・麻薬の使用などによって消化管の動きが制限され,嘔吐や誤嚥のリスクが高くなる可能性がある。この懸念から,経腸栄養を腹臥位では中断し,仰臥位でのみ投与すれば,長時間のPP実施に伴って経腸栄養の投与量が制限されることになる。

ESPENガイドラインでは,PPのために経腸栄養を遅らせるべきではないと推奨している12) 。DGEMのガイドラインでも,消化管が機能していれば,PP中でも胃または小腸を介して栄養を投与することを推奨している4) 。その根拠として,PP中の胃内残量や他の

臨床アウトカムについて,腹臥位と仰臥位で胃内残量には差がなかったとの報告があること22),23),1編の論文で,腹臥位で胃残量,嘔吐の頻度,経腸栄養の中断が有意に増加したが肺炎や死亡率には差がなかったと報告があったとしている24) 。

経腸栄養投与量に関して,Reignierらは観察した5日間いずれも仰臥位に比べて腹臥位で有意に少なかった24)と報告しているが,Savioらはエネルギー投与量,タンパク投与量は仰臥位と腹臥位でそれぞれ24.5 kcal/kg/day,1.1 g/kg/dayと23.5 kcal/kg/day,1.1 /kg/dayと差がなかったと報告している25) 。またSavioらは,PP中の経鼻/経口胃管からの経腸栄養は実現可能で耐性も問題なく,エネルギー・タンパク投与量も仰臥位と同等であると報告している25) 。腹臥位での経腸栄養投与方法に関して,Reignierらはbefore-after studyで26),緩徐な栄養投与速度増量, 25°頭部挙上,エリスロマイシン投与というPP中のプロトコル導入によって栄養投与量が有意に増加し,胃内残量の増加や,嘔吐・VAPもみられなかったと報告している。PP中でも経腸栄養投与は可能であるが,嘔吐などのリスクが高くなる可能性があるため,投与量を慎重に増量するなどして消化器症状の発現に十分注意した管理が必要かもしれない。

3 OAM

外傷,腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome, ACS),腹腔内感染症に対する緊急開腹手術において,OAMが行われることがある。OAM中の患者は代謝亢進状態にある。McKibbinらは腹部外傷後の栄養療法に関して検討し,OAM患者では基礎代謝量は40%増加したと推定した27) 。また,OAMに伴う腹部滲出液によって,一日あたり

3.5 g,もしくは1Lあたり1.9gの窒素を損失すること

が報告されている28) 。したがって,窒素バランスを考慮した栄養療法を検討する必要があり,World Society for Emergency Surgery(WSES)のガイドラインでは,正の窒素バランスを維持するには,1.5〜2.5 g/kg/dayのタンパク質と20〜30 kcal/kg/dayの非タンパク質熱量を投与することが推奨されている29) 。

ESPENガイドラインやDGEMのガイドラインでは,OAM中の患者に対して早期経腸栄養を行うことを推奨している4),12) 。WSESのガイドラインでも,消化管の連続性が保たれ,通過障害など消化管の機能的な問題がなく,適切な輸液蘇生と代謝補正が達成されていれば,腹部ダメージコントロール手術に伴うOAMであっても,早期経腸栄養を行うことを推奨し
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ている29) 。OAM患者に対しての早期経腸栄養は,創傷治癒遅延や消化管皮膚瘻形成のリスクにはならず30),創閉鎖率の上昇や消化管皮膚瘻形成の減少などの良好な結果につながり31),また,経腸栄養未実施群に比べて早期経腸栄養群ではVAPの発生減少も報告されている32) 。さらに,OAM中でも早期経腸栄養を最初の4日間15 mL/hrのtrophic feedingとし,目標速度まで問題なく増量できたとされている33) 。以上より,OAM中でも早期経腸栄養は可能であると考えられる。

しかしながら,WSESのガイドラインでは,消化管が吻合されていない患者や,消化管瘻からの腸液の排出が多く,瘻孔の遠位側に栄養ルートを確保できない患者,イレウスの徴候がある患者では,経腸栄養を遅らせるべきであるとしている29) 。また,Bansalらのreviewでは,48時間以内に消化管の問題が改善できない場合は,中心静脈栄養を検討することが推奨されている30) 。さらに,消化管瘻がある場合は窒素喪失が大きく増加するため,できるだけ早期に経静脈栄養を行い,経腸栄養が可能と判断されたらすぐに開始することが推奨されているが,残存腸管が75 cm未満の短腸症候群の場合は経腸栄養は相対的禁忌であるとされている29),34) 。

文 献

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CQ4-1:小児重症患者の栄養アセスメントを行う

か?

Answer:小児重症患者に対して栄養アセスメン

トを行う(good practice statement)。

(1)まとめ

小児重症患者は栄養障害を来しやすく,栄養障害はアウトカム悪化と関連する。栄養障害を防ぐためには,栄養アセスメントが必須である。栄養アセスメントでは,身体所見,消化器症状の有無,病歴の確認が基本となる。小児入院患者に対してそれらを加味した栄養評価ツール(STRONGkids,STAMP,PYMSなど)があるが,小児重症患者における妥当性はまだ確認されていない。

(2)背景

小児重症患者に栄養療法を行う際には,適切な栄養スクリーニングおよび栄養アセスメントによる栄養状態の把握と栄養障害の検出は重要であると考えられる。特に低栄養は合併症の発症やICU滞在日数,入院日数の延長にもつながることから,それらを的確に評価し,迅速に介入することが必要である。

(3)解説

小児患者の栄養障害(特に入院中に新たに発生する栄養障害)を防ぐためには,目の前の患者の低栄養を見出すことが大切であり,そのためには栄養評価(スクリーニングおよびアセスメント)が必要である。小児重症患者に対する栄養アセスメント実施の有無が直接患者の転帰改善につながるのかに関しては良質なエビデンスはない。

病院に入院する小児患者は栄養障害を来しやすく,特に基礎疾患をもつ患者は栄養障害のハイリスク群と言える1),2) 。フランスの三次病院に入院した296例の小児患者の前向き調査では,実に65%の患者で入院経過中に体重減少が見られたと報告されている3) 。成人患者と同様に小児患者でも栄養障害は,入院日数の延長,易感染性,創傷治癒の遅延,入院費の増加などのアウトカム悪化と関連することが知られている4),5) 。例えば,小児重症患者においても,ICUに5日以上入室した患者のうち10.2%の患者でBMIのzスコア(データ群の該当する数値から平均値を引いてSDで割った数値)が1 SD以上,28.8%の患者で0.5 SD以上
p.94
-93-

低下したと報告されており6),ICUに入室した2歳以上の小児患者において栄養障害が人工呼吸期間の延長と関連していたという報告や7),先天性心疾患の手術を受けた患者の術後の体重増加不良が遠隔期の死亡率と強く相関していたという報告がある8) 。また,小児期は,新生児期から学童期まで身体面でも精神面でも特徴が大きく変化する時期であり,栄養管理を行ううえでは成長発達について加味する必要がある。身体面の成長に栄養が必要なことは当然だが,精神面の発達にも栄養は必要であり,急性や慢性の栄養障害が学童期の認知機能の発達の遅れに関連していたという報告もある9),10) 。

一般的に栄養評価指標としては,身体所見,消化器症状の有無,病歴の確認が基本となるが,特に小児においては身体所見の中でも,身体計測による身長と体重は最も身近でありながら大事な指標であり,標準成長曲線との比較を行うことで,年齢相応の成長であるかどうかを確認することは重要である11) 。本邦の2012年度以降の母子健康手帳には,2010年の調査に基づく標準成長曲線が現況値として掲載されている12) 。また,幼児期以降では,年齢身長比(height for age)や身長体重比(weight for height)により栄養障害の判定を行うこともある。年齢身長比は同年齢の児の標準身長に対する患者の身長の比で慢性栄養障害の判定に,また,身長体重比は同身長の児の標準体重に対する患者の体重の比で急性栄養障害の判定に用いられる13) 。1つの目安として,Waterlowが1972年に提唱した年齢身長比と身長体重比による栄養障害分類があるが14),ICUに入室するような小児重症患者においては,体液量の変化で体重が大きく変動するので,その解釈には注意が必要である。米国のSCCM and Society of Critical Care Medicine and ASPENによる重症小児を対象とした栄養ガイドラインにおいては, PICU入室時にBMIのzスコア(2歳未満では身長体重比)を評価すること,身長が正確に測定できない場合には年齢体重比(weight for age)を評価すること,3歳未満では頭囲を測定することが推奨されている15) 。また,欧州のEuropean Society of Pediatric and Neonatal Intensive Care(ESPNIC)による重症小児を対象とした栄養ガイドラインでは,体重,身長,上腕周囲径,頭囲をzスコアで評価することが推奨されている16) 。その他身体所見として,るい痩や肥満,脱水や浮腫,皮膚所見や褥瘡の有無等も確認する。消化器症状に関しては,嘔吐や下痢の有無を確認する。病歴に関しては既往歴や現病歴,食事摂取量等を確認する。これらの情報を組み合わせた小児の栄養評価ツールが複数開発されており,主なものとしては,Simple

Pediatric Nutrition Risk Score(SPNRS,米国,2000年)17),Subjective Global Nutritional Assessment (SGNA,カナダ,2007年)18),Screening Tool for the Assessment of Malnutrition in Paediatrics(STAMP,英国,2008年)19),Paediatric Yorkhill Malnutrition Score(PYMS,英国,2010年)20),STRONGkids(オランダ,2010年)21)などがあるが,成人領域におけるNUTRIC scoreのような重症病態に特化した栄養評価ツールは小児領域では存在しない。これら評価ツールはいずれも定着はしていないが,小児入院患者を対象とした栄養スクリーニングツールに関するシステマティックレビューでは,最終的に49の文献が検討され,STRONGkids,STAMP,PYMSの3つのツールの使用頻度が高く,中でもSTRONGkidsが栄養障害の診断とアウトカム不良の予測においてが最も精度が高かったと報告されている22) 。小児重症患者を対象としたシステマティックレビューも報告されているが,検討された103の文献のうちICU患者に限定したものは6文献のみであり,いずれの栄養スクリーニングツールも重症患者を対象としたものとしては妥当性が確認されていないと結論づけている23) 。血液検査所見においては,アルブミン,プレアルブミン,トランスフェリン,レチノール結合タンパク質などが栄養評価の指標として使用されることがあるが,重症病態では,栄養障害以外の因子による合成能の低下や喪失を来すことがあるため単純に用いることはできないとされている24),25) 。また,近年,小児重症患者においても超音波により筋肉量変化(大腿四頭筋や横隔膜の筋厚)を経時的に評価するといった試みも報告されている26),27) 。

文 献

1) Joosten KF, Hulst JM. Prevalence of malnutrition in pediatric hospital patients. Curr Opin Pediatr 2008;20:590-6. 2) Pawellek I, Dokoupil K, Koletzko B. Prevalence of malnutrition in paediatric hospital patients. Clin Nutr 2008;27:72-6. 3) Sermet-Gaudelus I, Poisson-Salomon AS, Colomb V, et al. Simple pediatric nutritional risk score to identify children at risk of malnutrition. Am J Clin Nutr 2000;72:64-70. 4) Rocha GA, Rocha EJ, Martins CV. The effects of hospitalization on the nutritional status of children. J Pediatr 2006;82:70-4. 5) Gambra-Arzoz M, Alonso-Cadenas JA, Jiménez-Legido M, et al. Nutrition Risk in Hospitalized Pediatric Patients: Higher Complication Rate and Higher Costs Related to Malnutrition. Nutr Clin Pract 2020;35:157-63. 6) Valla FV, Baudin F, Gaillard Le Roux B, et al. Nutritional Status Deterioration Occurs Frequently During Children's ICU Stay. Pediatr Crit Care Med 2019;20:714-21. 7) de Souza Menezes F, Leite HP, Koch Nogueira PC.
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Diaphragm Atrophy in Pediatric Acute Respiratory Failure. Pediatr Crit Care Med 2018;19:406-11

CQ4-2:小児重症患者の治療初期におけるエネルギ

ー投与量の考え方は?

Answer:小児重症患者の治療初期では,消費エ

ネルギーの60%〜70%程度あるいは消費エネルギー量を超えない投与量を適切とする考え方がある(BQ に対する情報提示)。

(1)まとめ

小児重症患者におけるエネルギー投与に関して,「消費エネルギー量より低い目標エネルギー投与量」と「それよりも同等あるいは多い投与量」に分けて,集中治療領域で重要な項目(例:死亡率,人工呼吸期間, ICU滞在期間,新規感染症発症など)を主要アウトカムとして検討したRCTは現時点では存在していない。本CQにおいてはエネルギー投与量におけるこれまでの知見をエネルギー量の計算方法とともに紹介する。

(2)背景および本CQの重要度

成人重症患者の治療初期においては消費エネルギー量と同等,もしくはそれより多いエネルギー量投与による臨床転帰への影響は様々な論議があり一定の見解を得ていない。一方,小児領域においては,研究や知見の蓄積がまだ少なく,消費エネルギー量より少ない投与エネルギー量が,臨床転帰やその後の成長発達に与える影響については不明である。しかし,投与エネルギー量の設定は小児重症患者における栄養管理のうえで行わなければならないことであり, RCT以外の研究であっても,それらの知見の把握および探求は重要と考える。

(3)解説

重症病態あるいは侵襲期において,ストレスホルモンやサイトカインなどにより,タンパク異化や糖新生が誘導され,その結果,相応の内因性エネルギー供給がなされるため,消費エネルギー量と同等あるいはそれ以上のエネルギー量を投与してしまうと,エネルギー量過剰となり,高血糖を含む様々なoverfeeding
p.96
-95-

による合併症を引き起こす可能性が認識されている。しかし,2000年代初頭までは,消費エネルギー量そのもの,あるいはさらに上乗せしたものが,必要エネルギー量,つまり投与すべきエネルギー量としてとらえられていた1) 。2010年代にさしかかるまでは投与すべきエネルギー量に関する研究は乏しく,大規模な観察研究も存在しなかった。2009年のASPENの小児重症患者における栄養投与のガイドラインでは,消費エネルギー量の測定法における推奨はあるものの,エネルギー投与量に関してはexpert opinionすらない状況であった2) 。

そのような状況のなか2012年にMehtaらは,多施設前向き観察研究(n=500)を報告した3) 。その内容は,PICU(8か国31施設)に入室した,1か月〜18歳まで,かつ48時間以上の人工呼吸を必要とした小児において,ICU入室から10日間の栄養投与内容(投与エネルギー量,タンパク質量,経腸栄養,経静脈栄養の有無)を調査し,臨床転帰(人工呼吸期間,ICU滞在日数,60日生存率)との間での関連を検討したものであった。結果としては,目標エネルギー量の33.3%以上を経腸栄養で補えていた患者は,それ以下の患者より死亡率が低く,66.7%以上補えていた患者はさらに死亡率が低いことが示された。一方,経静脈栄養の使用は死亡率の増加と関連していたことも同じく示されている(ただし投与量は示されていない)。

この報告以降,ASPENのガイドライン(2017)では,目標投与エネルギー量に関して「処方設計された

1日のエネルギー必要量の少なくとも3分の2を, PICU入室後1週間以内までに達成することを弱く推奨する」と記載され4),またESPNICのclinical recommendations(2020)では「急性期において,小児重症患者に投与されるエネルギー量は安静時基礎代謝量を超えないようにする」と述べられている5) 。このようにアメリカ,ヨーロッパいずれもMehtaらの報告3)を引用しつつ「急性期での投与エネルギー量に関しては,消費エネルギー量より多くは投与しない」という意味をもたせた記載となっている。この表記にある小児における消費エネルギーは主にSchofieldの式6)やWHOの式7)を基に計算されている。参考までに小児で主に使用されている消費エネルギー量を算出する推定式〔Schofieldの式(Table 4-2-1)6),WHOの式(Table 4-2-2)7)〕を示す。また,実際の臨床の現場では体重あたりの投与エネルギー量を設定しそれを目標エネルギー量としている場合が多いので,2018年のESPENガイドラインから一部改変した経静脈栄養実施時の体重あたりの目標エネルギー量(Table 4-2-3)を示す8) 。表記されているエネルギー量はいわゆるexpert opinionの領域と思われるが,実臨床では使いやすいものとなっている。

近年,最も大規模な前向き観察研究としては2021年にBechardらが行った17か国77のPICUでの報告9)がある。1か月〜18歳の小児のうち,入室から48時間

Table 4-2-1 Schofieldの式(kcal/day)6)

0〜3歳男児消費エネルギー=59.5×体重(kg)−30.4

女児消費エネルギー=58.3×体重(kg)−31.1

3〜10歳男児消費エネルギー=22.7×体重(kg)+504

女児消費エネルギー=20.3×体重(kg)+486

10〜18歳男児消費エネルギー=17.7×体重(kg)+658

女児消費エネルギー=13.4×体重(kg)+693

注:体重は実体重 (1 cal=4.184 Jで計算,有効数字3桁)

Table 4-2-2 WHOの式(kcal/day)7)

0〜3歳男児消費エネルギー=60.9×体重(kg)−54

女児消費エネルギー=61.0×体重(kg)−51

3〜10歳男児消費エネルギー=22.7×体重(kg)+495

女児消費エネルギー=22.5×体重(kg)+499

10〜18歳男児消費エネルギー=17.5×体重(kg)+651

女児消費エネルギー=12.2×体重(kg)+746

注:体重は実体重
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人工呼吸を要し,3日以上在室した患者1,844名において検討した。その内容は,入室してから10日間のエネルギーおよびタンパク質投与量を経腸栄養,経静脈栄養それぞれで観察し,60日死亡率(主要アウトカム),新規感染症発症およびventilator free days(副次アウトカム)との関連を調査したものであった。目標エネルギー量の設定は,752例(41%)においてはSchofieldの式,464例(25%)はWHOの式より導き出される,いわゆる安静時の推定消費エネルギー量として設定された。間接熱量計による実測値からの目標エネルギー量の設定は8例(0.4%)にとどまった。その結果,施設間,年齢,入室状況(緊急,予定),性別, BMIによる栄養評価,重症度,合併症,ICU滞在日数で調整後,入室後3日まで,あるいは4〜7日までに,目標の60%よりも多くのエネルギー量を投与できていた患者はそれより低い患者よりも60日死亡率が低いことが示された。なお,エネルギー充足率は経静脈栄養単独でも,経静脈栄養+経腸栄養の組み合わせでも同様の結果であった。

今後この領域における,RCTの実施が望まれるが,それまではこれら観察研究の結果より,入室1週後までに消費エネルギー量(推定あるいは実測)の60〜70%の投与エネルギー量を達成することを目指す状況が続くものと考えられる。

文 献

1) Long CL, Schaffel N, Geiger JW, et al. Metabolic response to injury and illness: estimation of energy and protein needs from indirect calorimetry and nitrogen balance. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1979;3:452-6. 2) Mehta NM, Compher C; A.S.P.E.N. Board of Directors. A.S.P.E.N. Clinical Guidelines: nutrition support of the critically ill child. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2009;33:260-76. 3) Mehta NM, Bechard LJ, Cahill N, et al. Nutritional practices and their relationship to clinical outcomes in critically ill children--an international multicenter cohort study*. Crit Care Med 2012;40:2204-11. 4) Mehta NM, Skillman HE, Irving SY, et al. Guidelines for

the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Pediatric Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Pediatr Crit Care Med 2017;18:675-715. 5) Tume LN, Valla FV, Joosten K, et al. Nutritional support

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achieve delivery of nutrition targets is associated with clinical outcomes in critically ill children. Am J Clin Nutr 2021;114:1859-67.

CQ4-3:小児重症患者において,標準よりも多いタ

ンパク質量(>2.0 g/kg/day)を投与するか?

Answer:小児重症患者において,標準よりも多

いタンパク質量(>2.0 g/kg/day)を投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)

(1)背景

小児のタンパク質の推奨投与量は年齢によって幅がある。WHOの推奨量1)では生後1か月で1.77 g/kg/ day,1歳で1.14 g/kg/day,5歳で0.85 g/kg/day,10歳で0.91 g/kg/dayとされており,日本人の食事摂取基準(厚生労働省)の推奨量2)では生後0〜5か月で10 g/day,1〜2歳で20 g/day,3〜5歳で25 g/day,10〜11歳で男児45 g/day,女児50 g/dayとされている。それらを受けて本邦のICUに入室する小児重症患者に対しては,タンパク質の標準投与量として1.0〜2.0

Table 4-2-3 体重あたりの目標エネルギー量(経静脈栄養)(kcal/kg/day)8)

(ICU入室後)急性期(ICU入室後)安定期回復期

早産児45〜55 − 90〜120 0〜1歳45〜50 60〜65 75〜85 1〜7歳40〜45 55〜60 65〜75 7〜12歳30〜40 40〜55 55〜65 12〜18歳20〜30 25〜40 30〜55
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-97-

g/kg/dayが広く用いられている。

小児重症患者に対して,タンパク質の投与量を標準よりも多くすることが患者転帰を改善させるのか明らかではない。小児では成長にもタンパク質が必要であり,タンパク質の投与量を標準よりも多くする研究が行われている。成人のデータをそのまま外挿することは難しく,本CQは重要課題である。

(2)効果のバランス(Table 4-3-1)

4件のRCT(n=202)を用いたメタアナリシスを行った3)〜6) 。望ましい効果として,死亡率は1,000人あたり16人少ない(95% CI:97人少ない〜161人多い)(2件のRCT:n=121),人工呼吸期間は1.3日短い(95% CI:4.0日短い〜1.4日長い)(2件のRCT: n=118)であった。一方,望ましくない効果として, ICU滞在日数は1.0日長い(95% CI:1.9日短い〜3.8日長い)(2件のRCT:n=118),下痢は1,000人あたり66人多い(95% CI:71人少ない〜383人多い)(2件のRCT:n=66),感染合併症は1,000人あたり8人多い(95% CI:83人少ない〜278人多い)(2件のRCT:n=66),筋肉量変化(上腕の周囲長)は0.2 cm短い(95% CI:1.2 cm短い〜0.8 cm長い)(1件のRCT:n=38),高タンパク質血症については介入と比

較対象ともに発生がなかった(1件のRCT:n=41)。今回採用したアウトカムでは,望ましい効果が「小さい」,望ましくない効果が「小さい」であり,方向性が一致せず拮抗していた。したがって効果のバランスは「介入も比較対照もいずれも支持しない」とした。

(3)その他の推奨事項

タンパク質投与量の増量に関して,患者や家族の容認性に関するデータはない。タンパク質投与量の変更のみでありコストの負担もわずかなことから,容認性は「はい」とした。また,母乳にタンパク質を付加する強化母乳製剤は,すべての施設で容易に入手できるわけではないが,タンパク質投与量を増やす方法としてミルクの濃度を上げるなどの方法がある。

(4)判断の要約(Table 4-3-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

米国のSCCM and ASPENのガイドライン,および,欧州のESPNICのclinical recommendationsでは,小児重症患者において最低1.5 g/kg/day以上のタンパ

Table 4-3-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対指標(95% CI)

絶対指標(95% CI)対照群介入群

死亡率

121 (2 RCT) 深刻a 非常に深刻b 深刻でない 非常に深刻c なし 非常に低10/61 (16.4%) 9/60 (15.0%) RR 0.90 (0.41〜1.98) 1,000人あたり16人少ない(97人少ない〜161人多い)

ICU滞在日数

118 (2 RCT) 深刻a 深刻d 深刻でない 非常に深刻c なし 非常に低 51 67 − MD 0.95日長い (1.87日短い〜3.77日長い)

人工呼吸期間

118 (2 RCT) 深刻a 深刻d 深刻でない 非常に深刻c なし 非常に低 51 67 − MD 1.3日短い (3.95日短い〜1.35日長い)

下痢

66 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 非常に深刻c なし 非常に低4/23 (17.4%) 14/43 (32.6%) RR 1.38 (0.59〜3.20) 1,000人あたり66人多い(71人少ない〜383人多い)

感染合併症

66 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 非常に深刻c なし 非常に低3/23 (13.0%) 8/43 (18.6%) RR 1.06 (0.36〜3.13) 1,000人あたり8人多い(83人少ない〜278人多い)

筋肉量変化(上腕の周囲長)

38 (1 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻e なし 低 11 27 − MD 0.2cm短い (1.15 cm短い〜0.75 cm長い)

高タンパク質血症

41 (1 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 中0/21 (0.0%) 0/20 (0.0%)推定不可推定不可

MD, 平均差; RR, リスク比。a . バイアスリスクにより1段階ダウングレードした。b . 異質性が非常に高く2段階ダウングレードした。c . 最適情報量よりも対象者数が少なく,95% CIが広いため2段階ダウングレードした。d . 異質性が高く1段階ダウングレードした。e . 95% CIが広いため1段階ダウングレードした
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-98-

ク質量の投与が推奨されている7),8) 。

(6)実施に関わる検討事項

背景に記載の通り,小児のタンパク質の推奨投与量は年齢によって幅がある。本CQで検討した4件のRCTに含まれた患者の月齢の中央値や平均値はいずれも12か月以下であり,より高い年齢層の小児患者は対象となっていないため解釈には注意が必要である。

また,本邦においては,3歳以下の乳幼児に経静脈的にアミノ酸製剤を投与する場合には,一般に小児用製剤が用いられる。

文 献

1) Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation. Protein and amino acid requirements in human nutrition. World Health Organ Tech Rep Ser 2007;1-265,back cover. 2) 「日本人の食事摂取基準」策定検討会.日本人の食事摂取基準

(2020年版).令和元年12月.[cited 2024 May 3]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553. pdf 3) Botrán M, López-Herce J, Mencía S, et al. Enteral nutrition in the critically ill child: comparison of standard and protein-enriched diets. J Pediatr 2011;159:27-32. 4) Geukers VG, Dijsselhof ME, Jansen NJ, et al. The effect of short-term high versus normal protein intake on wholebody protein synthesis and balance in children following cardiac surgery: a randomized double-blind controlled clinical trial. Nutr J 2015;14:72. 5) Yanni GN, Madjid AS, Hendarto A, et al. A randomized controlled trial of high parenteral protein feeding in septic children: the role of tumor necrosis factor-alpha-308 polymorphism. Medical Journal of Indonesia 2020;29:19-25. 6) Zhang J, Cui YQ, Luo Y, et al. Assessment of Energy and

Protein Requirements in Relation to Nitrogen Kinetics, Nutrition, and Clinical Outcomes in Infants Receiving Early Enteral Nutrition Following Cardiopulmonary Bypass. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2021;45:553-66. 7) Mehta NM, Skillman HE, Irving SY, et al. Guidelines for

the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Pediatric Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Pediatr Crit Care Med 2017;18:675-715. 8) Tume LN, Valla FV, Joosten K, et al. Nutritional support

for children during critical illness: European Society of Pediatric and Neonatal Intensive Care (ESPNIC) metabolism, endocrine and nutrition section position statement and clinical recommendations. Intensive Care Med 2020;46:411-25.

CQ4-4:小児重症患者に対して治療開始後48時間以

内に経腸栄養を開始するか?

Answer:小児重症患者に対して治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)

(1)背景

小児期の重症病態の治療時において,経腸栄養を始めることは,エネルギー収支を改善するだけでなく,腸管粘膜への保護作用やそれによる免疫系の維持が期待されるが,その開始タイミングに関しては定まったものはない。できるだけ早期の開始が有利と考えられるが,一方で下痢や便秘,壊死性腸炎などの消化器系合併症や,誤嚥による肺炎などのリスクも指摘されている。このような有効性と安全性のバランスを考慮し,過去に48時間以内を早期として検討した研究が多い

Table 4-3-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.100
-99-

ことから,小児重症患者への治療開始から48時間以内の早期に開始するかそれ以降の開始とするかは重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス(Table 4-4-1)

1件のRCT 1)を用いたメタアナリシスを行った。望ましい効果は,ICU滞在日数で平均2.1日短い(95% CI:4.1日短い〜0.1日短い)(1件のRCT:n=30)であった。一方,望ましくない効果の結果は,すべての有害事象(壊死性腸炎,嘔吐,下痢)で両群ともに0例であった。以上より,望ましい効果は「小さい」と判断したが,望ましくない効果は「わずか」と判断した。効果のバランスは,「おそらく介入が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨事項

一般に経腸栄養剤や人工乳は安価であり,48時間以内に経腸栄養を開始することは,48時間以降に開始する場合に比べて経静脈栄養の開始を避ける,あるいは遅らせることができるため,コストを削減できる可能

性がある。また,本介入は患者・家族の個人の視点から許容できるだろうと考えられ,どの病院においても可能であり,医療者の労力もわずかである。

(4)判断の要約(Table 4-4-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

米国のSCCM and ASPENのガイドラインでは,経腸栄養をいつ始めるべきか?という疑問に対して, PICU入室後24〜48 時間以内の早期の開始が推奨されている(弱い推奨,エビデンスレベル:低)2) 。欧州のESPNICでは,小児重症患者に経腸栄養をいつ始めるべきか?という疑問に対して,禁忌がなければ入院後24時間以内の早期の開始が推奨されている(SIGN recommendation grade D,strong consensus)3) 。

(6)実施に関わる検討事項

該当するRCTは1件のみであり,本CQの推奨は今

Table 4-4-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない

Table 4-4-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対指標(95% CI)

絶対指標(95% CI)対照群介入群

ICU滞在日数

30 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻a 出版バイアスが 強く示唆される 非常に低 15 15 − MD 2.07 日短い (4.07日短い〜0.07日短い)

有害事象

30 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻a 出版バイアスが 強く示唆される 非常に低0/15 (0.0%) 0/15 (0.0%)推定不可推定不可

MD, 平均差; RR, リスク比。a .最適情報量よりも対象者が少なく,該当するRCTも1つであることから2段階ダウングレードした。
p.101
-100-

後のエビデンス集積により変更となる可能性がある。

文 献

1) Kalra R, Vohra R, Negi M, et al. Feasibility of initiating early enteral nutrition after congenital heart surgery in neonates and infants. Clin Nutr ESPEN 2018;25:100-2. 2) Mehta NM, Skillman HE, Irving SY, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Pediatric Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Pediatr Crit Care Med 2017;18:675-715. 3) Tume LN, Valla FV, Joosten K, et al. Nutritional support

for children during critical illness: European Society of Pediatric and Neonatal Intensive Care (ESPNIC) metabolism, endocrine and nutrition section position statement and clinical recommendations. Intensive Care Med 2020;46:411-25.

CQ4-5:小児重症患者に対して治療開始後48時間以

内に経静脈栄養を開始するか?(FRQ)

(1)まとめ

本CQに関連すると思われるRCTは結果に一貫性はなく,これらの研究結果を元に本邦における有用な推奨を導き出すことは困難であると予想された。一方で,小児重症患者における経静脈栄養開始の時期に関する RCTを実施することは可能であり,今後研究が進むことが期待される。よって本CQにおいてはFRQとし,情報提供のみにとどめることとした。

(2)背景および本CQ の重要度

経腸栄養が十分投与できない状況でも,ICU入室後早期に経静脈栄養を開始し,必要な栄養素を補うことは可能である。一方,急性期に経静脈栄養を行うことは,感染リスクの増加,血糖管理不良等を生じる可能性があり,患児の臨床転帰を悪化させる可能性がある。したがって,臨床転帰に与える影響を鑑みて,経静脈栄養投与時期に関する検討は小児重症患者の栄養管理において重要である。

(3)解説

小児重症患者において低栄養は臨床転帰(死亡率,人工呼吸期間)を悪化させるとするいくつかの観察研究は以前より存在し1),2),経腸栄養で必要エネルギー量が補えない場合には経静脈栄養が行われていた。そのような中,2016年のPEPaNIC trial3)が発表された。この多施設 RCTは,PICU入室後24時間以内に経静脈栄養を開始した群(早期経静脈栄養群:n=723)と入室8日以降まで経静脈栄養を開始しなかった群(晩

期経静脈栄養群:n=717)で比較検討され,結果としては晩期経静脈栄養群において,ICU滞在期間も有意に短く,また人工呼吸期間も有意に短いというものであった。

その後行われたvan Puffelenらの横断調査4)(本邦も含めた39か国81のPICU)によると,PEPaNIC trialの結果を認識しているPICUは43施設(53%)あり,そのうち10施設(12%)のPICUは入室後1週間まではすべての入室患児において経静脈栄養を実施しない方針と返答し,また17(21%)のPICUは一部の入室患児を除き経静脈栄養を実施しないと返答している。

一方でMehtaはPEPaNIC trialに対して,早期経静脈栄養群での実際に投与されたエネルギー量がoverfeedingにつながっているという指摘もあるため, PEPaNICの結果の解釈が分かれていることには注意すべきとしている5) 。

そして,この研究において指摘される問題点の中で頻出するのがPEPaNICでは2日目〜6日目の経静脈栄養開始について評価されておらず,複数の観察研究で示された経静脈栄養開始の中央値3日を考慮すると,実際の臨床に沿った研究にはなっていないという点である。BechardらはPEPaNIC trialから3年後に世界17か国,77のPICU(n=1,844)において栄養投与の前向き調査を行い経静脈栄養開始の中央値を入室3日目であると報告した6) 。また先述の横断調査4)においてもアミノ酸投与開始が最も多かったのは入室2〜4日目であったことを示している。このように実際PICUで最も多く行われている経静脈栄養開始時期に焦点をあてて検討がなされていないことは,今後解決すべき問題点と思われる。

PEPaNIC trial以降,小児重症患者における経静脈栄養開始時期とICU管理上で重要なアウトカム(死亡率,ICU滞在日数,人工呼吸期間など)に焦点をあてた報告がなされるようになった。Godayらは多施設の後方視的観察研究(n=2,069)を行い早期経静脈栄養群において有意に高い死亡率を示した7)と報告している。一方,Ariagnoらの前向き観察研究(n=95)では,早期経静脈栄養群においてweight-for-age z-scoreの低下が有意に少なかった,つまり体重減少が有意に抑えられたことを示している8) 。

2023年にSalehらは,単施設のRCTの結果を報告した9) 。十分な経腸栄養が難しいと判断された3日以上ICUに滞在した小児(生後1か月〜16歳)において,早期経静脈栄養群(24時間以内に経静脈栄養開始:n= 71)と晩期経静脈栄養群(入室4日あるいは7日目に経
p.102
-101-

静脈栄養を開始:n=69)で,人工呼吸期間,ICU滞在日数,新規感染症発症率などを比較した結果,早期経静脈栄養群において,有意な人工呼吸期間ならびにICU滞在日数の短縮,新規感染症発症の低下など,早期経静脈栄養群に有利な結果を報告した。ただしこの研究に関しては対照となる患者背景が(早期)経腸栄養が可能と思われる疾患群が多くを占めている(呼吸疾患,神経疾患で全体の6割以上を占める)なかでの結果であることや,両群ともに予測死亡率(PRISM score)よりも高い実死亡率を示している一施設からの報告であることなど,外的妥当性には注意が必要である。

PEPaNIC trial以降,ICU入室後の経静脈栄養開始時期に関して集中治療に関する臨床転帰(死亡率, ICU滞在日数,人工呼吸期間など)を検討した研究が散見されるようになった。現在のところ経静脈栄養開始時期によって与える影響はこれらの研究上,一貫しておらず,この分野での実臨床に即した研究が待たれる。

文 献

1) Pollack MM, Ruttimann UE, Wiley JS. Nutritional depletions in critically ill children: associations with physiologic instability and increased quantity of care. JPEN J Parenter Enteral Nutr 1985;9:309-13. 2) Mehta NM, Bechard LJ, Cahill N, et al. Nutritional practices and their relationship to clinical outcomes in critically ill children--an international multicenter cohort study*. Crit Care Med 2012;40:2204-11. 3) Fivez T, Kerklaan D, Mesotten D, et al. Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Children. N Engl J Med 2016;374:1111-22. 4) van Puffelen E, Jacobs A, Verdoorn CJM, et al. International survey of De-implementation of initiating parenteral nutrition early in Paediatric intensive care units. BMC Health Serv Res 2019;19:379. 5) Mehta NM. Parenteral Nutrition in Critically Ill Children. N Engl J Med 2016;374:1190-2. 6) Bechard LJ, Staffa SJ, Zurakowski D, et al. Time to achieve delivery of nutrition targets is associated with clinical outcomes in critically ill children. Am J Clin Nutr 2021;114:1859-67. 7) Goday PS, Kuhn EM, Mikhailov TA. Early Parenteral Nutrition in Critically Ill Children Not Receiving Early Enteral Nutrition Is Associated With Significantly Higher Mortality. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:1096-103. 8) Ariagno K, Bechard L, Quinn N, et al. Timing of parenteral nutrition is associated with adequacy of nutrient delivery and anthropometry in critically ill children: A single-center study. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:190-6. 9) Saleh NY, Aboelghar HM, Abdelaty NB, et al. Timing of

parenteral nutrition initiation in critically ill children: a randomized clinical trial. Clin Exp Pediatr 2023;66:403-11. CQ4-6:小児重症患者の経腸栄養において,第一選

択として経胃投与よりも幽門後投与をすべきか?

Answer:小児重症患者の経腸栄養において,幽

門後投与を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

(1)背景

小児重症患者においては,胃蠕動障害が高率に存在し,経胃投与では十分な投与量を確保できない可能性,嘔吐や不顕性誤嚥の増加により肺炎を引き起こす可能性がある。幽門後投与によりそれらの問題の改善が期待されるが,一部の栄養素(ビタミンB12,微量元素,等)の吸収不全,また,十二指腸へのカテーテル留置という追加手技に伴う合併症や手技の困難さによる経腸栄養開始の遅延が懸念され,経胃投与に対する優位性は明らかではない。よって幽門後からの経腸栄養投与を行うことの益と害を明らかにすることは重要な臨床課題である。

(2)効果のバランス(Table 4-6-1)

4件のRCT(n=198)を用いたメタアナリシスを行った1)〜4) 。望ましい効果として人工呼吸器関連肺炎は1,000人あたり100人少ない(95% CI:180人少ない〜286人多い) (1件のRCT:n=40)。嘔吐は1,000人あたり145人少ない(95% CI:283人少ない〜723人多い)(2件のRCT:n=102)。一方,望ましくない効果として死亡率は1,000人あたり62人多い(95% CI:33人少ない〜362人多い)(2件のRCT:n= 102)。人工呼吸期間はMD 6日長い(95% CI:0.4日短い〜12.4日長い)(2件のRCT:n=102)。入院日数はMD 2.9日長い(95% CI:5.5日短い〜11.3日長い) (3件のRCT:n=142)。経腸栄養開始までの時間はMD 18日長い(95% CI:15.3日長い〜20.7日長い)(1件のRCT:n=44)。誤嚥は1,000人あたり242人多い(95% CI:219人少ない〜1,000人多い)(2件のRCT: n=106)。今回採用したアウトカムでは,望ましい効果が「小さい」,望ましくない効果も「小さい」とした。方向性が一致せず拮抗しており,効果のバランスは「介入も比較対象もいずれも支持しない」と判断した。

(3)その他の推奨事項

一般的に栄養チューブは安価だが,幽門後に先端を誘導することは人的資源が必要であり,また留置には時間も取られ,時にX線透視を必要とする場合はX線
p.103
-102-

被爆の負担がある。

(4)判断の要約(Table 4-6-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

米国のSCCM and ASPENのガイドラインでは,小児重症患者に対する経腸栄養の至適投与部位について

推奨を行うには既存のデータでは不十分と記載されている5) 。また欧州のESPNICのclinical recommendationsでは,ほとんどの小児重症患者に対する幽門後投与による経腸栄養は,経胃投与と同程度に安全性で劣っていないため,誤嚥のリスクが高い小児重症患者

Table 4-6-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)

絶対指標(95% CI)対照群介入群

死亡率

102 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻d なし 低4/52 (7.7%) 7/50 (14.0%) RR 1.80 (0.57〜5.71) 1,000人あたり62人多い(33人少ない〜362人多い)

入院期間

142 (3 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻e なし 低 72 70 − MD 2.9日長い (5.46日短い〜11.25日長い)

人工呼吸期間

102 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻e なし 中 52 50 − MD 6日長い (0.4日短い〜12.4日長い)

人工呼吸器関連肺炎

40 (1 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻d なし 低4/20 (20.0%) 2/20 (10.0%) RR 0.50 (0.10〜2.43) 1,000人あたり100人少ない(180人少ない〜286人多い)

誤嚥

106 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻c 非常に深刻d なし 非常に低19/59 (32.2%) 22/47 (46.8%) RR 1.75 (0.32〜9.49) 1,000人あたり242人多い(219人少ない〜1,000人多い)

嘔吐

102 (2 RCT) 深刻a 深刻b 深刻でない 非常に深刻d なし 非常に低16/52 (30.8%) 11/50 (22.0%) RR 0.53 (0.08〜3.35) 1,000人あたり145人少ない(283人少ない〜723人多い)

経腸栄養開始

44 (1 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻e なし 低 27 17 − MD 18日長い (15.31日長い〜20.69日長い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . バイアスリスクにより1段階ダウングレードした。b . 異質性が高く1段階ダウングレードした。c . 代替エンドポイントでの報告のため1段階ダウングレードした。d . 最適情報量よりも対象者が少なく,95% CIが益と害に跨がるため2段階ダウングレードした。e . 最適情報量よりも対象者が少なく1段階ダウングレードした。

Table 4-6-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.104
-103-

や手術や処置のために頻繁な絶食が必要な小児に考慮できると記載されている6) 。

(6)実施に関わる検討事項

小児では内視鏡や特殊なデバイスを使用しての留置は一般化されておらず,経鼻胃管と同様にベッドサイドでの留置が多く,成人に比べて比較的容易であり,多くの医療機関で実施可能と考えられる。しかし,小児重症患者を見慣れていない施設においては手技の習熟度の観点から少し抵抗があると思われる。

また,今回検討された論文は,経腸栄養の投与経路の第一選択としての比較であり,経胃投与で開始した際に不耐がある症例においての比較検討ではないことは留意したい。胃食道逆流や胃排泄遅延の症例における幽門後投与の有効性については,さらなる研究が必要である。

本ガイドラインでは成人と小児で推奨の方向性に違いを認めるが,我々がこの検討で集積した論文の多くは幼児以下を対象としており,今後はそれ以降の年齢の小児も含めて,さらなる知見の集積が必要と思われる。

文 献

1) Kamat P, Favaloro-Sabatier J, Rogers K, et al. Use of methylene blue spectrophotometry to detect subclinical aspiration in enterally fed intubated pediatric patients. Pediatr Crit Care Med 2008;9:299-303. 2) Meert KL, Daphtary KM, Metheny NA. Gastric vs. smallbowel feeding in critically ill children receiving mechanical ventilation: a randomized controlled trial. Chest 2004;126:872-8. 3) Parlar-Chun R, Lafferty-Prather M, Gonzalez V, et al. Randomized Trial to Compare Nasoduodenal Tube and Nasogastric Tube Feeding in Infants with Bronchiolitis on High-Flow Nasal Cannula. J Pediatr Intensive Care. 2022. 4) Sönmez Düzkaya D, Yildiz S. Effect of two different feeding methods on preventing ventilator associated pneumonia in the paediatric intensive care unit (PICU): A randomised controlled study. Aust Crit Care 2016;29:139-45. 5) Mehta NM, Skillman HE, Irving SY, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Pediatric Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Pediatr Crit Care Med 2017;18:675-715. 6) Tume LN, Valla FV, Joosten K, et al. Nutritional support

for children during critical illness: European Society of Pediatric and Neonatal Intensive Care (ESPNIC) metabolism, endocrine and nutrition section position statement and clinical recommendations. Intensive Care Med 2020;46:411-25. CQ4-7:小児重症患者の経胃栄養投与において,持

続投与よりも間欠投与を行うべきか?

Answer:小児重症患者における経胃栄養投与法

として,経胃間欠投与をすることを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性=低)。

(1)背景

経胃栄養投与は,小児重症患者においても代表的な栄養投与方法であるが,その投与方法は確立していない。エネルギー貯蔵の少ない小児は,平時から頻回の投与が必要である一方,特に乳児では胃食道逆流が生じやすく1),突発的な啼泣や処置に伴う嘔吐の懸念が大きいことに加え,間欠栄養でのタンパク質合成の促進も報告されている2) 。これらの背景を考慮し,本臨床課題を提示した。

(2)効果のバランス(Table 4-7-1)

4件のRCT 3)〜6)(うち1件の二次解析7)を含む)を用いたメタアナリシスを行った。望ましい効果については,人工呼吸期間は1.0日短い(95% CI:6.0日短い〜4.0日長い)(1件のRCT:n=25),感染性合併症(1件のRCT:n=144)は両群ともにイベントがなく,嘔吐は1,000人あたり5人少ない(95% CI:98少ない〜206人多い)(4件のRCT:n=276),下痢は1,000人あたり23人少ない(95% CI:212人少ない〜323人多い) (2件のRCT:n=105),胃内残液量増加(5 mL/kg以上)は1,000人あたり69人少ない(95% CI:165人少ない〜76人多い)(2件のRCT:n=191)であった。望ましくない効果については,ICU滞在日数は0.6日長い(95% CI:3.2日短い〜4.4日長い)(2件のRCT: n=85),目標エネルギー到達日数は0.4日長い(95% CI:1.1日短い〜1.9日長い)(2件のRCT:n=206)であった。今回採用したアウトカムでは,望ましい効果が「小さい」,望ましくない効果が「わずか」であり,効果のバランスは「おそらく介入が優れている」と判断した。

(3)その他の推奨根拠

経胃間欠投与・経胃持続投与ともに保険診療で実施可能である。必要資源量に関する直接的なエビデンスはないが,経胃間欠投与では,経胃持続投与に対し,シリンジポンプ等の医療機器の必要量が減少する可能性がある。一方で,特に乳児等の頻回投与を要する群においては,看護師の業務負荷やシリンジ等の消耗品の必要量が増加したり,医療従事者と患者の接触頻度
p.105
-104-

が増加し,感染管理上の問題が生じたりする可能性がある。ただし,いずれもICUにおいて問題となる範疇ではないと考えられる。(4)判断の要約(Table 4-7-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

米国のSCCM and ASPENの2017年度ガイドライ

Table 4-7-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない

Table 4-7-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対効果(95% CI)

絶対指標(95% CI)対照群介入群

ICU滞在日数

85 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 非常に深刻f なし 非常に低 44 41 − MD 0.61日長い (3.18日短い〜4.4日長い)

人工呼吸期間

25 (1 RCT) 非常に深刻b 深刻c 深刻でない 非常に深刻f なし 非常に低 14 11 − MD 1.0日短い (6.03日短い〜4.03日長い)

人工呼吸器関連感染症

146 (1 RCT) 非常に深刻b 深刻c 深刻でない 非常に深刻g なし 非常に低0/74 (0.0%) 0/72 (0.0%)推定不可推定不可

嘔吐

276 (4 RCT) 深刻a 深刻d 深刻でない 非常に深刻h なし 非常に低24/140 (17.1%) 20/136 (14.7%) RR 0.97 (0.43〜2.20) 1,000人あたり5人少ない(98人少ない〜206人多い)

下痢

105 (2 RCT) 深刻でない 深刻でない 深刻でない 非常に深刻h なし 低24/52 (46.2%) 23/53 (43.4%) RR 0.95 (0.54〜1.70) 1,000人あたり23人少ない(212人少ない〜323人多い)

胃内残量

191 (2 RCT) 非常に深刻b 深刻でない 深刻でない 非常に深刻h なし 非常に低33/96 (34.4%) 26/95 (27.4%) RR 0.80 (0.52〜1.22) 1,000人あたり69人少ない(165人少ない〜76人多い)

目標栄養到達期間

206 (2 RCT) 深刻a 非常に深刻e 深刻でない 深刻i なし 非常に低 104 102 − MD 0.38日長い (1.14日短い〜1.89日長い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 対象の研究がper protocol解析がされているものがいくつか含まれているため,1段階ダウングレードした。b . 対象の研究がper protocol解析がされたものがほとんどであるため,2段階ダウングレードした。c . 対象のRCTが1つのみであり1段階ダウングレードした。d . 異質性が高く1段階ダウングレードした。e . 異質性がかなり高く2段階ダウングレードした。f . 最適情報量よりも非常に対象者が少なく,95% CIがかなりの害と益を跨ぐことから2段階ダウングレードした。g . 最適情報量よりも対象者が少なく,イベント発生数が両群とも0であり2段階ダウングレードした。h . 最適情報量よりも対象者が少なく,95% CIがかなりの害と益を跨ぐことから2段階ダウングレードした。i . 95% CIがかなりの害と益を跨ぐことから1段階ダウングレードした。
p.106
-105-

ンでは該当する推奨はない8) 。欧州のESPNICのclinical recommendationsでは,経胃間欠投与・経胃持続投与のどちらか一方を推奨する根拠はないと記載されている9) 。

(6)実施に関わる検討事項

本CQで検討した研究の対象症例は呼吸器疾患が多数を占めており,循環器疾患・循環不安定な症例は少なく,そのような症例における優劣は未知である。また,本ガイドラインの成人における推奨(CQ1-9)は,本CQとは逆に,重症患者の経胃栄養投与において,間欠投与よりも持続投与を行うことを弱く推奨している。 RCTの数とNの数を考慮してサブグループ解析はしていないものの,対象となった RCTの中で学童中心(年齢範囲5〜17歳)のRCT 4)の研究では,乳児中心のRCT 5),6)と比較し,ICU滞在期間や4),5),目標エネルギー到達日数について4),6)間欠投与群が優れている傾向があった。乳幼児の占める割合の高いPICUの現状を鑑みれば,本推奨は妥当と考えるが,今後年齢ごとに層別化した検討が望まれる。なお,文献検索日以後に新たに1件のRCT 10)が発表された。それを含めたメタアナリシスでは,死亡率(138人少ない,95% CI:229少ない〜132人多い),人工呼吸期間(2.5日短い,95% CI:6.2日短い〜1.2日長い),胃内残液量増加(1,000人あたり69人少ない,95% CI:165人少ない〜76人多い)のアウトカムに望ましい効果を認め,嘔吐(1,000人あたり54人多い,95% CI:68少ない〜351人多い),下痢(1,000人あたり34人多い,95% CI: 126少ない〜299人多い)のアウトカムに望ましくない効果を認めた。効果のバランスとしては,介入による益の効果は同様で,推奨の方向性は変わらないと判断している。

文 献

1) Nelson SP, Chen EH, Syniar GM, et al. Prevalence of symptoms of gastroesophageal reflux during infancy. A pediatric practice-based survey. Pediatric Practice Research Group. Arch Pediatr Adolesc Med 1997;151:569-72. 2) Davis TA, Fiorotto ML, Suryawan A. Bolus vs. continuous feeding to optimize anabolism in neonates. Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2015;18:102-8. 3) Horn D, Chaboyer W. Gastric feeding in critically ill children: a randomized controlled trial. Am J Crit Care 2003;12:461-8. 4) Fayazi S, Adineh M, Zahraei Fard S, et al. Comparing two methods of enteral nutrition in terms of their complications and the time needed to reach goal calorie in children hospitalized in ICU. Int J Pediatr 2016;4:2119–30. 5) Brown AM, Fisher E, Forbes ML. Bolus vs. Continuous

Nasogastric Feeds in Mechanically Ventilated Pediatric Patients: A Pilot Study. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2019;43:750-8. 6) Brown AM, Irving SY, Pringle C, et al. the NutriNet and

Pediatric Acute Lung Injury and Sepsis Investigators (PALISI) Network. Bolus gastric feeds improve nutrition delivery to mechanically ventilated pediatric medical patients: Results of the COntinuous vs. BOlus multicenter trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2022;46:1011-21. 7) Horn D, Chaboyer W, Schluter PJ. Gastric residual volumes in critically ill paediatric patients: a comparison of feeding regimens. Aust Crit Care 2004;17:98-100, 102-3. 8) Mehta NM, Skillman HE, Irving SY, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Pediatric Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2017;41:706-42. 9) Tume LN, Valla FV, Joosten K, et al. Nutritional support for children during critical illness: European Society of Pediatric and Neonatal Intensive Care (ESPNIC) metabolism, endocrine and nutrition section position statement and clinical recommendations. Intensive Care Med 2020;46:411-25. 10) Kumar V, Sankar J, Jana M, et al. Comparison of Protocol-

Based Continuous and Intermittent Tube Feeding in Mechanically Ventilated Critically Ill Children - An Open Label Randomized Controlled Trial. Indian J Pediatr 2024;91:1001-7.

CQ4-8:人工乳投与を行う小児重症患者に高濃度人

工乳投与を行うか?

Answer:小児重症患者に対して,0.9〜1.0 kcal/

mL程度の高濃度人工乳の投与を弱く推奨する。※今回採用された RCTのほとんどは先天性心疾患の術後の症例を対象としたものである(GRADE 2D:エビデンスの確実性=非常に低い)。

(1)背景

先天性心疾患患児の周術期を始めとする小児重症患者は,心不全やチアノーゼ,呼吸不全を合併し,水分制限が必要なことも多い。また,経静脈的な薬剤投与に必要な希釈液等の水分量のために,栄養投与に割ける水分量がしばしば制限される。一方で,低栄養や成長障害の頻度が高く,栄養管理において特別な配慮が必要なことが多い。特に人工乳を投与される患者においては,水分と栄養投与量が比例するため,水分制限のために十分な栄養投与を断念せざるを得ないことがある。水分制限をしつつ目標とする栄養投与量を達成するために,高濃度の人工乳(0.9〜1.0 kcal/mL程度)を使用するという治療がしばしば行われており,本CQで通常濃度の人工乳(0.67〜0.82 kcal/mL程度)と
p.107
-106-

比較してその有効性と安全性について検討することは重要であると考えられる。

(2)効果のバランス(Table 4-8-1)

7件のRCT(n=528)を用いたメタアナリシスを行った1)〜7) 。望ましい効果としては,人工呼吸期間については,0.2日短い(95% CI:0.6日短い〜0.2日長い)(4件のRCT:n=371)であった。また,筋肉量変化の指標としての治療開始後の体重の年齢に対するzスコアについては,0.61多い(95% CI:0.28多い〜0.94多い)(3件のRCT:n=367)であった。消化管出血については,1,000人あたり45人少ない(95% CI:126人少ない〜130人多い)(2件のRCT:n= 109)であった。zスコアは年齢(月齢)におけるSDを表すものであり,zスコア1の違いは1SDの違いを意味する。今回対象となっている研究の多くを占める先天性心疾患の症例は,多くがもともとzスコア−2前後の成長障害を有する児であり,メタアナリシスにより得られたzスコア+0.61という点推定値は中等度の効果と判断した。望ましくない効果としては,死亡については,1,000人あたり25人多い(95% CI:6人少ない〜109人多い)(4件のRCT:n=417)であった。ICU滞在日数については,0.1日短い(95% CI:0.7日

短い〜0.9日長い)(5件のRCT:n=405)であった。嘔吐と下痢に関してわずかな効果を認めた。

今回採用したアウトカムでは,望ましい効果が「中」,望ましくない効果が「小さい」であり,「おそらく介入が優れている」と判断した。加えて,今回対象となった RCTのうち1件3)は本邦の小児集中治療あるいは先天性心疾患に対する術後成績と比較しても非常に高い死亡率であったため,このRCTを除いた6件のRCT(n=461)で感度分析を行った結果,同様に望ましい効果が望ましくない効果を上回っていた。

(3)その他の推奨根拠

高濃度人工乳の投与に関して,患者や家族の容認性に関するデータはない。通常と異なる濃度で人工乳を作成することは通常濃度と比較して大きな変化とは考えにくい。また,高濃度人工乳を作成するために特別な設備や技術,人員は必要なく,必要資源量の増加は無視できる範囲であると考えられ,かつ,ほとんどすべての医療施設において実行可能であると考えられる。したがって,高濃度人工乳投与の容認性は問題ないと判断した。

Table 4-8-1 エビデンスプロファイル

確実性の評価結果の要約

参加者(研究数)バイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さ出版バイアス確実性患者数相対指標(95% CI)

絶対指標(95% CI)対照群介入群

死亡率

417 (4 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 低5/206 (2.4%) 10/211 (4,7%) RR 2.05 (0.76〜5.50) 1,000人あたり25人多い(6人少ない〜109人多い)

ICU滞在日数

405 (5 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 低 202 203 − MD 0.09日短い (0.70日短い〜0.87日長い)

人工呼吸期間

371 (4 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 低 184 187 − MD 0.2日短い (0.63日短い〜0.23日長い)

嘔吐

469 (6 RCT) 非常に深刻b 深刻でない 深刻でない 非常に深刻e なし 非常に低5/234 (2.1%) 9/235 (3.8%) RR 1.76 (0.66〜4.70) 1,000人あたり6人多い(7人少ない〜79人多い)

下痢

430 (5 RCT) 非常に深刻b 深刻でない 深刻でない 非常に深刻e なし 非常に低6/213 (2.8%) 14/217 (6.5%) RR 1.64 (0.61〜4.40) 1,000人あたり18人多い(11人少ない〜96人多い)

消化管出血

109 (2 RCT) 深刻a 深刻でない 深刻でない 非常に深刻e なし 非常に低11/54 (20.4%) 9/55 (16.4%) RR 0.78 (0.38〜1.64) 1,000人あたり45人少ない(126人少ない〜130人多い)

体重の年齢あたりに対するzスコア

367 (3 RCT) 深刻c 深刻でない 深刻でない 深刻d なし 低 182 185 − MD 0.61多い (0.28多い〜0.94多い)

MD, 平均差; RR, リスク比。a . 報告された結果が意図された介入と選択によるものである懸念があり1段階ダウングレードした。b . 報告された結果が意図された介入,アウトカム測定,選択によるものである懸念があり2段階ダウングレードした。c . 意図された介入の懸念,および欠測値があることから1段階ダウングレードした。d . 95% CIにかなりの益と害を含むことから1段階ダウングレードした。e . 最適情報量よりも対象者数が少なく,また95% CIにかなりの益と害を含むことから2段階ダウングレードした。
p.108
-107-

(4)判断の要約(Table 4-8-2)

(5)関連する他のガイドラインにおける推奨

これまでに海外を含め,同様のCQを取り上げたガイドラインは存在しない。

(6)実施に関わる検討事項

今回検討された7件のRCTのうち,6件は先天性心疾患に対する手術の周術期を対象としたものであり,残りの1件は急性細気管支炎の患児を対象としたものであった。これらの研究で投与されたエネルギーは,高濃度人工乳を投与された群で大半の症例が標準的な投与量を達成した一方で,通常濃度人工乳ではより多くの症例で投与エネルギーが不足していた。

文 献

1) Zhang H,Gu Y,Mi Y,et al. High-energy nutrition in paediatric cardiac critical care patients: a randomized controlled trial. Nurs Crit Care 2019;24:97-102. 2) Aryafar M,Mahdavi M,Shahzadi H,et al. Effect of feeding with standard or higher-density formulas on anthropometric measures in children with congenital heart defects after corrective surgery: a randomized clinical trial. Eur J Clin Nutr 2022;76:1713-8. 3) Scheeffer VA,Ricachinevsky CP,Freitas AT,et al. Tolerability and Effects of the Use of Energy-Enriched Infant Formula After Congenital Heart Surgery: A Randomized Controlled Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2020;44:348-54. 4) Cui Y,Li L,Hu C,Shi H,et al. Effects and Tolerance of Protein and Energy-Enriched Formula in Infants Following Congenital Heart Surgery: A Randomized Controlled Trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2018;42:196-204. 5) van Waardenburg DA,de Betue CT,Goudoever JB,et al. Critically ill infants benefit from early administration of protein and energy-enriched formula: a randomized controlled trial. Clin Nutr 2009;28:249-55. 6) Pillo-Blocka F,Adatia I,Sharieff W,et al. Rapid

advancement to more concentrated formula in infants after surgery for congenital heart disease reduces duration of hospital stay: a randomized clinical trial. J Pediatr 2004;145:761-6. 7) Chen X,Zhang M,Song Y,et al. Early high-energy

feeding in infants following cardiac surgery: a randomized controlled trial. Transl Pediatr 2021;10:2439-48.

Table 4-8-2 判断の要約

判断

問題いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない望ましい効果わずか小さい中大きい様々分からない望ましくない効果大きい中小さいわずか様々分からないエビデンスの確実性非常に弱い弱中強採用研究なし

価値観重要な不確実性またはばらつきあり重要な不確実性またはばらつきの可能性あり重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし重要な不確実性またはばらつきはなし

効果のバランス比較対照が優れている比較対照がおそらく優れている介入も比較対照もいずれも支持しないおそらく介入が優れている介入が優れている様々分からない

費用対効果比較対照の費用対効果がよい比較対照の費用対効果がおそらくよい介入も比較対照もいずれも支持しない介入の費用対効果がおそらくよい介入の費用対効果がよい様々採用研究なし必要資源量大きな増加中等度の増加無視できるほどの増加や減少中等度の減少大きな減少様々分からない

容認性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない実行可能性いいえおそらく,いいえおそらく,はいはい様々分からない
p.109
-108-

委員・担当理事氏名所属経済的COIアカデミックCOI本委員会

の役割その他の担当

A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2学術的COI他GLへの関与

小谷 穣治神戸大学大学院医学研究科

外科系講座災害・救急医学分野無無無無無無無無無無無無無無

日本臨床栄養代謝学会(理事)日本外科代謝栄養学会(理事)侵襲とサイトカイン研究会(代表世話人)エンドトキシン・自然免疫研究会(理事長)日本救命医療学会(理事) International Association for Surgical Nutrition and Metabolism(Secretary General) Asian Association for Surgical Metabolism and Nutrition(Organizing Committee)

日本臨床栄養代謝学会「がん患者の栄養療法ガイドライン(仮称)」(委員長)委員長

中村 謙介横浜市立大学附属病院集中治療部無無無無無無無無無無無無無無日本離床学会(理事)日本在宅救急医学会(理事)

重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023(委員),敗血症ガイドライン2020(WGメンバー)副委員長

東別府直紀神戸市立医療センター中央市民病院無無無無無無無無無無無無無無無

日本臨床栄養代謝学会「がん患者の栄養療法ガイドライン(仮称)」(統括班副班長),日本集中治療医学会敗血症ガイドライン2016/2020(WGメンバー),日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016/2017(委員)

委員WG1班長

泉野 浩生長崎大学病院無無無ネスレ日本

株式会社無無無無無無無無無無無無委員大島  拓千葉大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無日本光電

株式会社無無委員清水 義之大阪母子医療センター無無無無無無無無無無無無無無無日本版重症患者の栄養療法ガイドライン

2016/2017(委員)委員WG4班長

巽  博臣札幌医科大学医学部集中治療医学無無無株式会社

大塚製薬工場無株式会社

大塚製薬工場無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会

(WGメンバー)委員WG3班長畠山 淳司大阪医科薬科大学救急医学教室無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2024

(WGメンバー)委員

吉田  稔聖マリアンナ医科大学救急医学無無無無無無無無無無無無エーザイ

株式会社無無無委員WG2班長大内  玲茨城キリスト教大学看護学部看護学科無無無無無無無無無無無無無無無重症患者リハビリテーション診療ガイドライン

2023(アカデミック班),日本版敗血症診療ガイドライン2024(WGメンバー)委員WGメンバー

堤  理恵広島大学大学院医科学研究科無株式会社

Citlian無日本テレビ

ホールディン

グス無ネスレ日本池田

薬草無無無無無無無日本栄養治療学会(理事)

日本小児栄養研究会(理事)

日本臨床栄養代謝学会「がん患者の栄養療法ガイドライン(仮称)」(SRメンバー),がん栄養療法ガイドライン(日本栄養治療学会)(ガイドライン委員)

委員壷井 伯彦国立成育医療研究センター無無無無無無無無無無無無無無無無委員山本 夏啓横浜市立大学附属病院無無無無無無無無無無無無無無無重症患者におけるリハビリテーション診療ガイド

ライン(WG・SRメンバー)委員WGメンバー野﨑  歩京都桂病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2016

(パネル会議パネリスト)委員

竹内 宗之国立循環器病研究センター集中治療科無無無無無無無無無無無無無無日本集中治療医学会(理事)

日本小児集中治療研究会(理事長) ARDS診療ガイドライン作成統括委員会

(副委員長)担当理事

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024 (氏名・所属・利益相反・作成の役割一覧表)
p.110
-109-

アカデミック班(ACメンバー)氏名所属経済的COIアカデミックCOI本委員会

の役割GL担当領域

◎班長,〇副A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2学術的COI他GLへの関与山元  良慶應義塾大学医学部救急医学無無無無無無無無無無無無無無無日本敗血症診療ガイドライン2024(WGメンバー) AC班班長淺見 貞晴武蔵野徳洲会病院無無無無無無無無無無無無無無無無AC髙谷 悠大京都大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無無無日本血栓止血学会DIC診療ガイドライン2024

(WGメンバー) AC

山田 浩平防衛医科大学校病院救急部無無無無無無無無無無無無無無無

日本版敗血症診療ガイドライン2020(SRメンバー), ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー),日本版敗血症診療ガイドライン2024(WGメンバー),神経集中治療診療ガイドライン(SRメンバー)

AC

松石雄二朗聖路加国際大学無無無無無無無無無無無無無無無日本版重症患者リハビリテーション診療ガイドライ

ン-2023(アカデミック班) AC

ワーキンググループ(WG メンバー)氏名所属経済的COIアカデミックCOI本委員会

の役割GL担当領域

◎班長,〇副A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2学術的COI他GLへの関与高氏 修平北海道大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG1丹保亜希仁旭川医科大学救急医学講座無無無無無無無無無無無無無無無

日本版敗血症診療ガイドライン2020(SRグループ),日本版敗血症診療ガイドライン2024(WGメンバー),日本血栓止血学会播種性血管内凝固(DIC)診療ガイドライン2024(作成支援WG)

WG WG2寺坂 勇亮京都桂病院無無無日本BD無無無無無無無無無無無日本蘇生ガイドライン2020(ALS作業部会員) WG WG1佐藤 武揚東北大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG1, WG3岡本 菜子日立総合病院無無無無無無無無無無無無無無無重症患者におけるリハビリテーション診療ガイドラ

イン(アカデミック班) WG WG1

櫻本 秀明日本赤十字九州国際看護大学無無無無無無無NEW

NURSING

株式会社無無無無無無無重症患者におけるリハビリテーション診療ガイドラ

イン(委員) WG WG2

宮城 朋果横浜市立大学大学院医学研究科修士課

程医科学専攻生体制御・麻酔科学無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG3安藝 敬生小倉記念病院無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG3太田 英仁東京大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG4渡辺 太郎昭和大学医学部集中治療医学講座無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG4中西 信人神戸大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無無無重症患者におけるリハビリテーションガイドライン

(SR班),日本版敗血症診療ガイドライン2024(SRメ

ンバー) WG WG2大邉 寛幸東北大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG2成田 知大静岡県立総合病院無無無無無無無無無無無無無無無

重症患者におけるリハビリテーションガイドライン(WGメンバー),ARDS診療ガイドライン2026(統括委員),日本敗血症診療ガイドライン2020(SRメンバー)

WG WG2

竹下  淳大阪府立病院機構大阪母子医療セン

ター無無無無無無無無無無無無無無無日本敗血症診療ガイドライン2020(SRメンバー),

ARDS診療ガイドライン2021(サポート委員),日本

版敗血症診療ガイドライン2024(WGメンバー) WG WG4

佐川まさの東京女子医科大学附属足立医療セン

ター外科無無無無無無無無無無無無無無無

日本臨床栄養代謝学会「がん患者の栄養療法ガイドライン(仮称)」(SR班),生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔管理の協働に関するガイドライン(SRチーム)

WG WG1
p.111
-110-

システマティックレビュー(SR)メンバー氏名所属経済的COIアカデミックCOI本委員会

の役割GL担当領域

◎班長,〇副A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2学術的COI他GLへの関与井尻 篤宏防衛医科大学校病院無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2024(SRメンバー) SR WG1狩野 謙一京都大学大学院医学研究科社会健康医

学系専攻薬剤疫学分野無無無無無無無無無無無無無無無

熱中症ガイドライン2024(タスクフォース),急性腹症ガイドライン2025(改定委員),日本版敗血症診療ガイドライン2024(アカデミック班・WG),神経集中治療ガイドライン2024(SR班)

SR WG1中野  諭埼玉県立小児医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG4菊地  斉藤沢市民病院無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2024ガイドライン

(SR班) SR WG4對東真帆子広島大学病院無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2024(WGメンバー) SR WG1丸橋 孝昭北里大学医学部救命救急医学無無無無無無無無無無無無無無無ARDSガイドライン2021(SRメンバー),JRCガイド

ライン2020(ALS作業部会員) SR WG1石井 賢造福山市民病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDSガイドライン2021(SRメンバー),JRCガイド

ライン2025(ALS作業部会員) SR WG1立野 淳子小倉記念病院無無無無無無無無無無無無無無無重症患者におけるリハビリテーションガイドライン

(SR班) SR WG2杉本 裕史国立病院機構近畿中央呼吸器センター無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー),成人肺

炎診療ガイドライン2024(SRメンバー),日本版敗

血症診療ガイドライン2024(WGメンバー) SR WG1内藤 宏道岡山大学病院無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2020(SRメンバー),

日本版外傷診療ガイドライン(委員) SR WG1林   実福井県立病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1山内 康太製鉄記念八幡病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2小蔵 要司介護医療院恵寿鳩ケ丘無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2鈴木 隆宏聖路加国際病院無無無無無無無無無無無無無無無多様性に配慮した循環器診療ガイドライン(協力員) SR WG3

ワーキンググループ(WG メンバー)(つづき)氏名所属経済的COIアカデミックCOI本委員会

の役割GL担当領域

◎班長,〇副A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2学術的COI他GLへの関与恒光 健史兵庫県立尼崎総合医療センター無無無無無無無無無無無無

石見拓/ヘルステック研究所/産学共同研究

リツアン, ZOLL Medical Corporation/ Research Grant

無日本敗血症診療ガイドライン2024(SRメンバー) WG WG1

松嶋 真哉杏林大学保健学部リハビリテーション

学科理学療法学専攻無無無無無無無無無無無無無無無重症患者におけるリハビリテーションガイドライン

(SR班) WG WG1柳田 頼英長崎大学生命医科学域(保健学系)無無無無無無無無無無無無無無無気管吸引ガイドライン2023,改訂協力委員(SR班) WG WG1渡辺 伸一岐阜保健大学リハビリテーション学部

理学療法学科無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症ガイドライン(SR班),重症患者におけ

るリハビリテーションガイドライン(SR班) SRWG

(作業班) WG3村田 裕康杏林大学医学部付属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SRWG

(作業班) WG2田口 聡久京都大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SRWG

(作業班) WG1

平本 琢也地域医療振興協会東京ベイ・浦安市川

医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SRWG

(作業班) WG4小橋 大輔前橋赤十字病院無無無無無無無無無無無無無無無無WG WG1
p.112
-111-

氏名所属経済的COIアカデミックCOI本委員会

の役割GL担当領域

◎班長,〇副A-1 A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 A-7 A-8 A-9 B-1 B-2 B-3 C-1 C-2学術的COI他GLへの関与

本田 勝亮社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院

聖隷浜松病院無無無無無無無無無無無無無無無

未熟児動脈管開存症治療ガイドライン(推奨決定会議パネリスト),早産児の慢性肺疾患の予防・治療のための診療ガイドライン(作成担当・SR担当), NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン(作成委員),ARDS診療ガイドライン2026(WGメンバー)

SR WG4村田 真紀国立病院機構京都医療センター無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー) SR WG2岡田 和也東京都立病院機構東京都立墨東病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー) SR WG2喜久山和貴昭和大学病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー) SR WG4藤浪 好寿加古川中央市民病院無無無無無無無無無無無無無無無日本敗血症診療ガイドライン2024(SRメンバー) SR WG2水堂 祐広徳洲会湘南鎌倉総合病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー) SR WG2里  美貴昭和大学臨床薬学講座薬物治療学部門無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG4長尾  工榊原記念財団附属榊原記念病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(SRメンバー) SR WG4阿部 良伸東北医科薬科大学病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2021(作成サポート委員お

よびSR班) SR WG2下山京一郎武蔵野会TMGあさか医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG4山本 大貴弘道会なにわ生野病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG4西田 祥啓金沢医科大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1森 みさ子聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1一丸 智美藤田医科大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2濵井 康貴京都大学大学院予防医療学分野無無無無無無無無無無無無無無無日本版敗血症診療ガイドライン2024(SRメンバー) SR WG1糟谷 豪哲社会医療法人宏潤会大同病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1石川 史明日本赤十字社医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1丹保  彩市立旭川病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG4長友 一樹筑波大学附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2髙橋科那子地域医療機能推進機構札幌北辰病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2藤崎 宣友広島市立病院機構広島市立広島市民病

院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2宮島  功近森会近森病院無無無無無無無無無無無無無無無ARDS診療ガイドライン2026(パネル委員) SR WG3加來 正之国立病院機構熊本医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2井上 貴晃福島県立医科大学附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2橋本 直弥北海道科学大学無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2宮崎 勇輔甲南会甲南医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2松尾 瑞恵北九州総合病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2山田 知輝大阪けいさつ病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1平山 一郎国立病院機構埼玉病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1伊藤 次郎神戸市立医療センター中央市民病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1田中 宏幸横浜市立大学附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1竹前 彰人群馬大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1井上 和茂国立病院機構災害医療センター無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2高山 和之神戸大学医学部附属病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1比留間孝広脳神経疾患研究所附属総合南東北病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1川治 崇泰藤田医科大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG1苛原 隆之愛知医科大学病院無無無無無無無無無無無無無無無無SR WG2

システマティックレビュー(SR)メンバー(つづき)
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【COI表示基準】

COI表示基準

経済的COI A .自己申告者自身の申告事項(策定するCPG内容に関係する企業や営利団体とのCOI状態) A-1企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職の有無と報酬額(1つの企業・団体からの報酬額が年間100万円以上のものを記載)

A-2株の保有と,その株式から得られる利益(最近1年間の本株式による利益) (1つの企業の1年間の利益が100万円以上のもの,あるいは当該株式の

5%以上保有のものを記載) A-3企業や営利を目的とした団体から特許権使用料として支払われた報酬(1つの特許使用料について年間100万円以上のものを記載)

A4企業や営利を目的とした団体より,会議の出席(発表,助言など)に対し,研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当,講演料などの報酬(1つの企業・団体からの講演料について年間50万円以上のものを記載)

A-5企業や営利を目的とした団体が作成するパンフレット,座談会記事などの執筆に対して支払った原稿料(1つの企業・団体からの原稿料について年間50万円以上のものを記載)

A-6企業や営利を目的とした団体が提供する研究費[1つの企業,団体から,医学系研究(共同研究,受託研究,治験など)に対して,申告者が実質的に使途を決定し得る研究契約金で実際に割り当てられた100万円以上のものを記載]

A-7企業や営利を目的とした団体が提供する奨学(奨励)寄附金(1つの企業・団体から,申告者個人または申告者が所属する講座・分野または研究室に対して,申告者が実質的に使途を決定し得る寄附金で実際に割り当てられた100万円以上のものを記載) A-8企業などが提供する寄附講座(実質的に使途を決定し得る寄附金で実際に割り当てられた100万円以上のものを記載) A-9そのほかの報酬(研究とは直接に関係しない旅行,贈答品など)(1つの企業・団体から受けた年間の報酬額が5万円以上のものを記載)

B .申告者の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産的利益を共有する者の申告事項B-1企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職の有無と報酬額(1つの企業・団体からの報酬について年間100万円以上のものを記載)

B-2株の保有と,その株式から得られる利益(最近1年間の本株式による利益) (1つの企業の1年間の利益が100万円以上のもの,あるいは当該株式の

5%以上保有のものを記載) B-3企業や営利を目的とした団体から特許権使用料として支払われた報酬(1つの特許使用料について年間100万円以上のものを記載)

C .申告者の所属する組織・部門(研究機関,病院,学部またはセンターなど)の長に関する申告事項(申告者が組織・部門の長と共同研究者,分担研究者の立場にある場合に該当する) C-1企業や営利を目的とした団体が提供する研究費[1つの企業・団体か契約に基づいて,医学系研究(共同研究,受託研究など)に対して,当該の長が実質的に使途を決定し得る研究契約金で実際に割り当てられた年間1,000万円以上のものを記載]

C-2企業や営利を目的とした団体が提供する奨学(奨励)寄附金(1つの企業・営利団体から申告者の研究に関連して提供され,所属研究機関,病院,学部またはセンター,講座の長が実質的に使途を決定し得る寄附金で実際に割り当てられた年間200万円以上のものを記載)

アカデミック

COI学術的COI学術団体の理事・監事以上の役職

他GLへの関与他のガイドライン作成への関与

COI, Conflicts of Interest; CPG, Clinical Practice Guideline.

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The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024

Kensuke Nakamura*1, Ryo Yamamoto*2, Naoki Higashibeppu*3, Minoru Yoshida*4, Hiroomi Tatsumi*5, Yoshiyuki Shimizu*6, Hiroo Izumino*7, Taku Oshima*8, Junji Hatakeyama*9, Akira Ouchi*10, Rie Tsutsumi*11, Norihiko Tsuboi*12, Natsuhiro Yamamoto*13, Ayumu Nozaki*14, Sadaharu Asami*15, Yudai Takatani*16, Kohei Yamada*17, Yujiro Matsuishi*18, Shuhei Takauji*19, Akihito Tampo*20, Yusuke Terasaka*21, Takeaki Sato*22, Saiko Okamoto*23, Hideaki Sakuramoto*24, Tomoka Miyagi*25, Keisei Aki*26, Hidehito Ota*27, Taro Watanabe*28, Nobuto Nakanishi*29, Hiroyuki Ohbe*22, Chihiro Narita*30, Jun Takeshita*31, Masano Sagawa*32, Takefumi Tsunemitsu*33, Shinya Matsushima*34, Daisuke Kobashi*35,Yorihide Yanagita*36, Shinichi Watanabe*37, Hiroyasu Murata*38, Akihisa Taguchi*39, Takuya Hiramoto*40, Satomi Ichimaru*41,Joji Kotani*29, Muneyuki Takeuchi*42

Committee for Japanese Critical Care Nutrition Guideline

*1 Department of Critical Care Medicine, Yokohama City University Hospital *2 Department of Emergency and Critical Care Medicine, Keio University School of Medicine *3 Department of Anesthesia and Critical Care, Kobe City Medical Center General Hospital, Kobe *4 Department of Emergency and Critical Care Medicine, St.Marianna University School of Medicine *5 Department of Intensive Care Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine *6 Department of Intensive Care Medicine, Osaka Women's and Children's Hospital *7 Acute and Critical Care Center, Nagasaki University Hospital, Nagasaki *8 Department of Emergency and Critical Care Medicine, Chiba University Graduate School of Medicine *9 Department of Emergency and Critical Care Medicine, Osaka Medical and Pharmaceutical University *10 Department of Adult Health Nursing, College of Nursing, Ibaraki Christian University *11 Department of Anesthesiology and Critical Care, Hiroshima University Hospital *12 Department of Critical Care Medicine and Anesthesia, National Center for Child Health and Development *13 Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine, Yokohama City University School of Medicine *14 Department of Pharmacy, Kyoto-Katsura Hospital *15 Department of Cardiology, Musashino Tokushukai Hospital *16 Department of Primary Care and Emergency Medicine, Kyoto University Hospital *17 Department of Traumatology and Critical Care, National Defense Medical College Hospital *18 Adult and elderly nursing, Faculty of nursing, Tokyo University of Information Science *19 Department of Emergency Medicine, Hokkaido University Hospital *20 Department of Emergency Medicine, Asahikawa Medical University *21 Department of Emergency Medicine, Kyoto Katsura Hospital *22 Tohoku University Hospital Emergency Center *23 Department of Nursing, Hitachi General Hospital *24 Department of Acute Care Nursing, Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing *25 Anesthesiology and Critical Care Medicine, Master's Degree Program, Graduate School of Medicine, Yokohama City University *26 Department of Pharmacy, Kokura memorial Hospital *27 Department of Pediatrics, School of Medicine, The University of Tokyo *28 Department of Intensive Care Medicine, Showa University School of Medicine *29 Division of Disaster and Emergency Medicine, Department of Surgery Related, Kobe University Graduate School of Medicine *30 Department of Emergency Medicine, Shizuoka General Hospital *31 Department of Anesthesiology, Osaka Women's and Children's Hospital *32 Department of Surgery, Tokyo Women's Medical University Adachi Medical Center *33 Department of Preventive Services, Graduate School of Medicine, Kyoto University *34 Department of Physical Therapy, Faculty of Health Science, Kyorin University *35 Department of Critical Care and Emergency Medicine, Japanese Red Cross Maebashi Hospital *36 Department of Health Sciences, Institute of Biomedical Sciences, Nagasaki University *37 Department of Physical Therapy, Faculty of Rehabilitation, Gifu University of Health science *38 Department of Rehabilitation Medicine, Kyorin University Hospital *39 Department of Anesthesia, Kyoto University Hospital *40 Department of Internal Medicine, Tokyo Bay Urayasu Ichikawa Medical Center *41 Food and Nutrition Service Department, Fujita Health University Hospital *42 Department of Critical Care Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center

Key words: 1ICU, 2nutrition, 3critical illness, 4guideline

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日本集中治療医学会雑誌

Vol. 32   Supplement 3

2025 年9 月30 日 発行製 作株式会社Gakken〔〒141-8416〕 東京都品川区西五反田2-11-8

TEL.03-6431-1211  FAX.03-6431-1214 E-mail:jjsicm@gakken.co.jp本書の著作権は一切学会が所有しています.したがって,当学会の許諾を得ないで本書を転載刊行することを禁じます.

発行人理事長 黒田 泰弘

発行者一般社団法人 日本集中治療医学会〔〒113-0033〕東京都文京区本郷2-15-13 お茶の水ウイングビル10F

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編集人日本版重症患者の栄養療法ガイドライン検討委員会

日本集中治療医学会機関誌編集・用語委員会委員長 高橋 伸二