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ARDS 診療ガイドライン2021 一般社団法人 日本呼吸療法医学会 一般社団法人 日本呼吸器学会 一般社団法人 日本集中治療医学会ARDS診療ガイドライン2021作成委員会
ARDS 診療ガイドライン2021 一般社団法人 日本呼吸療法医学会 一般社団法人 日本呼吸器学会 一般社団法人 日本集中治療医学会ARDS診療ガイドライン2021作成委員会
成人領域 この度,日本呼吸器学会,日本呼吸療法医学会,日本集中治療医学会の3 学会は『ARDS診療ガイドライン2021』を作成しました. 1999 年に日本呼吸療法医学会によってわが国初の『ARDS に対するClinical Practice Guideline』が刊行され,2004 年には同第2 版が刊行されました.一方,日本呼吸器学会も『ARDS 診療のためのガイドライン』を2005 年に発表し,ついで2010 年には第2 版が刊行されました.その後,日本呼吸器学会のARDS 診療ガイドライン第3 版と日本呼吸療法医学会/日本集中治療医学会合同のガイドラインとの作成時期が重なったこともあり,作成途中から3 学会合同かつ2 委員会合同という形で『ARDS 診療ガイドライン2016』が発表されました.同ガイドラインでは,総論部分に相当するPart 1 を主に日本呼吸器学会ガイドライン作成委員会が担当し,Narrative Review の形式を踏襲して作成しました.一方,Part 2は日本呼吸療法医学会/日本集中治療医学会合同ガイドライン作成委員会が主に担当し,臨床課題(clinical questions:CQ)に対するシステマティックレビュー(systematic review:SR)と推奨という形式で作成されました.Part 1 がARDS の全体像を理解する手引き書として,Part 2 が診療ガイドライン作成の国際標準様式であるGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いたSRと推奨として,いずれも良くできたものでしたが,双方の記載内容に一部齟齬があるなどご批判もいただく結果となりました.今回の改訂ではこの反省を踏まえ,準備段階から3 学会で意思統一を図り,単一の作成委員会を組織しました.SR 担当として,呼吸器内科医,集中治療医,救急医,麻酔科医,さらには,放射線科医,病理医など幅広い専門医集団からご協力をいただきました.また,CQの選定,推奨の決定にあたっては,臨床現場での判断に関わるあらゆるステークホルダーが参画する必要があることから,専門医はもちろんこと,ARDS 診療に従事する総合診療医,看護師,薬剤師,臨床工学技士,理学療法士,さらには患者家族など様々な方々をパネル会議の構成員としてお迎えしました.今回のガイドラインの特色の1 つは,CQ の多さ,幅広さにあります.前版では,成人ARDS 患者の呼吸管理,薬物治療を中心に13 のCQ を扱いましたが,今回は海外のガイドラインでも類を見ない診断・予後予測や理学療法に関するCQ を含め,46 のCQ を成人ARDS に関して設定し,加えて小児に関しても15 のCQ を設定しました.もう1 つの特色は,SRや推奨について新しい手法・パターンを採り入れたことです.非侵襲的呼吸補助のよ 『ARDS 診療ガイドライン2021』の発刊にあたって
うに複数の管理方法が存在するCQ では,ネットワークメタ解析を用いることにより,直接的な比較の結果が存在しなくとも間接比較により推奨を決定することが可能になりました.また,SR に基づく推奨のほかに,正式な文献検索を行わなくとも間接エビデンスによって医療行為の正味の利益が確実である場合は,「Good Practice Statement」(GPS)として推奨することとしました.一方,推奨するにはエビデンスが不十分で,現在の臨床の実践パターンに基づくガイダンスが適切と考えられる場合は「in our practice statement」として,現状の標準的な診療について記述しました.本診療ガイドラインを通して質の高いARDS診療に対する更なる理解と啓発を期待したいと思います.本書はパブリックコメントによる評価を経ていますが,発行後も内容にご意見がある場合はいつでもご連絡いただければ幸いです.最後になりますが,新型コロナウイルス感染症対応などで多忙を極める中,ガイドライン作成に多大なるご協力をいただいた先生方,そして,パネル委員会の皆様,各学会事務局の皆様にこの場をお借りして深謝いたします.本書がARDS の治療成績の向上,そして,わが国発のエビデンス創出のきっかけとなれば,これに勝る喜びはありません. 2022 年8 月 日本呼吸器学会日本呼吸療法医学会/日本集中治療医学会ARDS 診療ガイドライン2021 作成委員会ARDS 診療ガイドライン2021 作成委員会 委員長 田坂 定智委員長 讃井 将満 小児領域 成人に関する本診療ガイドラインの骨子が固まった2018 年の暮れ頃に,両委員長から小児のARDSのガイドラインを一緒に出版しないかとお誘いがありました.海外では,小児の呼吸不全を成人の集中治療医や呼吸内科医が診るというのは一般的ではないかもしれません.しかし,わが国では多くの成人中心の集中治療室で小児のARDS が管理されている現状があります.ですから,成人と一緒に小児のガイドラインを作成し,より多くの臨床医に小児のARDS の治療指針を提示することは,わが国では十分な意味があると判断し,このプロジェクトに加えていただきました.しかし,小児のガイドライン作成にあたって問題になるかもしれないと考えたことが,以下の3 つでした.・ガイドライン作成に関する知識や経験が豊富な人材が少ないのではないか?・作業を行うための十分な人数を集めることができないのではないか?・ SR をしたとしても,十分なエビデンスが存在せず,ほとんどがin our practice state- ment になってしまうのではないか?人材に関する不安に関しては,事務局の方々のサポートなども含み可能な限り組織を成人
と共有し,たとえば,文献検索でも共同で行えるところまでは共同で行うなどにより,効率化することで,対応可能でした.また,共同で作業を行うことにより,成人から多くを学ぶことができました.このような成人班の協力があったからこそ,小児のガイドラインを完成させることができたと思います.両委員長など成人運営委員の皆様や,パネル委員の皆様をはじめ,小児班の作業に協力してくださった,すべての方々に感謝いたします.また,多くの小児科医や小児集中治療医が,このプロジェクトに参画してくださり,多くの時間を費やしていただきました.ありがとうございました.このことは,今後のガイドライン作成時に,有意義な経験になると思います.エビデンスに関しては,実際にSR を行ったところ,重大outcome に対する確実性が中以上だったCQ は,予想どおりというか,残念ながらというか,1 つしかありませんでした.ですので十分なエビデンスに基づく新たな情報発信,という点では不十分な成果かもしれません.それでも,小児のARDS に対して,世界で初めてGRADE アプローチに則った推奨を作成したことは,意義があると思っています.検索式を建て,SR を行い,この分野でのエビデンスが少ないことを示したことで,今後の我々の課題は明確になりました.また,今後の小児のARDSのガイドラインは,本診療ガイドラインを基礎にすればよいということも重要な成果だと思います.多くの人の手により発刊にいたった本診療ガイドラインが,たくさんの臨床医やご家族の,診療や理解の手助けになり,その結果,ARDS の治療成績向上に大きく貢献することを心から願っております. 2022 年8 月 日本呼吸療法医学会/日本集中治療医学会ARDS 診療ガイドライン2021 作成委員会 副委員長/小児運営委員長 竹内 宗之
目 次 『ARDS 診療ガイドライン2021』の発刊にあたって2 CQ—推奨 早見表6 第1 章(総論) 11本診療ガイドラインの基本理念・概念12パブリックコメントおよび回答56本診療ガイドライン作成方法の概略62 第2 章(CQ) 72結 果73成人領域74・領域A 診断・重症度評価・タイプ評価74 CQ1~CQ13・領域B 非侵襲的呼吸補助362 CQ14~CQ18・領域C 侵襲的呼吸補助472 CQ19~CQ30・領域D 呼吸器周辺治療686 CQ31~CQ38・領域E 薬物療法・非薬物療法824 CQ39~CQ46小児のARDS 総論969小児領域972・領域F 小児領域972 PCQ1~PCQ15
成人領域 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価74 CQ1 急性呼吸不全の患者にARDS の診断を行うか? 74推奨 急性呼吸不全の患者に対して,ARDSの診断を行うことを強く推奨する(Good practice statement). CQ2 急性呼吸不全の原因疾患(心原性肺水腫)の鑑別に際して,血中BNP,血中NT—proBNP を用いるか? 84推奨 急性呼吸不全患者に対し,心原性肺水腫の鑑別に際して,血中BNP または血中NT—proBNP を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ3 ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCT を用いるか? 107推奨 ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCT の結果のみで判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ4 ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原検査,喀痰グラム染色を用いるか? 127推奨 ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ5 ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いるか? 150推奨 ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ6 ARDSの原因疾患(マイコプラズマ肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるか? 168推奨 ARDS の原因疾患としてマイコプラズマ肺炎の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるかどうかについて,特定の推奨を下すことはできない.これらの検査は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). CQ7 ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(気管支肺胞洗浄液)を用いるか? 182推奨 ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(気管支肺胞洗浄液)を用いるかどうかについて,特定の推奨を下すことはできない.これらの検査は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). CQ8 ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査(気管支肺胞洗浄液),血液アンチゲネミア法を用いるか? 195推奨 ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査(気管支肺胞洗浄液),血液アンチゲネミア法を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ9 ARDSの原因疾患(ニューモシスチス肺炎)の鑑別に際して,血清β—D—グルカンを用いるか? 225推奨 ARDS の原因疾患(ニューモシスチス肺炎)の鑑別に際して,血清β—D—グルカン検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ10 ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β—D—グルカン,ガラクトマンナン抗原(血中,気管支肺胞洗浄液中)を用いるか? 243推奨 ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β—D—グルカン検査結果のみで判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血中ならびに気管支肺胞洗浄液中 ガラクトマンナン抗原検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ — 推奨 早見表
CQ11 ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT, インターフェロンγ遊離試験を用いるか? 288推奨 ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるかどうかについて,特定の推奨を下すことはできない.胸部単純X 線検査はARDS 診療においてほぼ全例に使用されており,胸部高分解能CT ならびにインターフェロンγ遊離試験は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). CQ12 ARDS 患者の予後予測に際して,解剖学的指標(肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見)を用いるか? 303推奨 ARDS 患者の予後予測に際して,肺生検の病理所見のみ,あるいは胸部CT の画像所見のみでは判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ13 ARDS 患者の予後予測に際して,生理学的指標(PaO2/FIO2比)を用いるか? 340推奨 ARDS 患者の予後予測に際して,PaO2/FIO2比(カットオフ:100,200)の結果のみでは判断しな いことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D).領域B 非侵襲的呼吸補助362 CQ14 ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV,HFNC)を使用するべきか? 362推奨 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較して,非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を行うことを条件付きで推奨する. NPPV(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). HFNC(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B).気管挿管と比較して,非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を行うことを条件付きで推奨する. NPPV(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). HFNC(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ15 ARDS 患者に酸素療法よりもNPPV を使用するべきか? 364推奨 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌 や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してNPPV を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ16 ARDS 患者に酸素療法よりもHFNC を使用するべきか? 393推奨 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ17 ARDS 患者に気管挿管を行う前にNPPV を使用するべきか? 421推奨 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,NPPV を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ18 ARDS 患者に気管挿管を行う前にHFNC を使用するべきか? 448推奨 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,HFNC を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B).領域C 侵襲的呼吸補助472 CQ19 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を制限するべきか? 472推奨 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を4~8 mL/kg に制限することを強く推奨する(強い推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 1B). CQ20 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を使用するべきか? 491推奨 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ21 成人ARDS 患者ではプラトー圧制限を行うべきか? 512推奨 成人ARDS 患者において,人工呼吸器管理を実施する際,プラトー圧制限を行うことを条件付きで 推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D).
CQ22 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,PCV とVCV のどちらが望ましいか? 530推奨 成人ARDS 患者において,換気条件としてPCV もしくはVCV のどちらの換気条件を使用するべき かについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできない(in our practice statement). CQ23 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,APRV を使用するか? 546推奨 成人ARDS 患者において,APRV と通常の人工呼吸器管理(A/C など)のどちらを使用するべきかについて,本SRの結果からは推奨を行うことはできない.自発呼吸を残した人工呼吸器管理を行っている際はAPRV を考慮してもよい(in our practice statement). CQ24 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,SIMV とA/C のどちらが望ましいか? 563推奨 成人ARDS 患者において,SIMV とA/C のどちらの換気モードを使用するべきかについて,本SRの結果からは推奨を行うことはできない(in our practice statement). CQ25 自発呼吸のある成人ARDS 患者で人工呼吸を実施する際,PSV とA/C のどちらが望ましいか? 579推奨 成人のARDS 患者に対して,PSV モードとA/C モードのどちらが望ましいとする推奨はできない.個々の患者の病態および状態に基づいて換気モードを選択することが一般的に行われている(in our practice statement). CQ26 成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際リクルートメント手技を行うか? 591推奨 成人ARDS 患者において,リクルートメント手技を日常的に使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ27 呼吸不全患者の人工呼吸器離脱にプロトコルは有用か? 610推奨 成人ARDS 患者において,プロトコル化された人工呼吸器離脱法を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ28 成人ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用するか? 630推奨 中等症以上の成人ARDS 患者の人工呼吸器管理にHFOV を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/高い確実性のエビデンス:GRADE 2A). CQ29 成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際,駆動圧を指標にするべきか? 650推奨 成人のARDS 患者に対して,駆動圧を指標として人工呼吸器管理を行うべきかの推奨はできない.理想体重に基づいた1 回換気量やプラトー圧を制限する標準的な肺保護換気を確実に行った上で,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡異常の害に注意しながら可能であれば駆動圧を制限することの重要性が増している(in our practice statement). CQ30 成人ARDS 患者において低SpO2(PaO2)を目標とする管理を行うか? 664推奨 成人ARDS 患者において過度な低SpO2(PaO2)を目標とした管理を行わないことを条件付きで 推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D).領域D 呼吸器周辺治療686 CQ31 中等症もしくは重症の成人ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するべきか? 686推奨 中等度または重度の成人ARDS 患者において,早期に筋弛緩薬を投与することを条件付きで推奨する(弱い推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ32 ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧を使用するべきか? 707推奨 ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧をルーティンに用いないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ33 ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を使用するべきか? 725推奨 ARDS 患者のPEEP 設定にEIT(electrical impedance tomography)を日常的に使用することができない(in our practice statement). CQ34 ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するべきか? 736推奨 ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するのは一般的ではない(in our practice statement). CQ35 中等症または重症の成人ARDS 患者に腹臥位を行うべきか? 747推奨 中等症および重症の成人ARDS 患者において,長時間の腹臥位を行うことを条件付きで推奨する (条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D) CQ36 重症の成人ARDS 患者にECMO を行うべきか? 768推奨 重症の成人ARDS 患者においてECMO を実施することを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ37 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか? 787
推奨 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ38 成人ARDS 患者ではルーチンで人工呼吸器関連肺炎予防バンドルを実施するべきか? 808推奨 人工呼吸器を装着した成人ARDS 患者ではルーチンの人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防バンドルを 実施することを推奨する(Good practice statement).領域E 薬物療法・非薬物療法824 CQ39 ARDS 患者にトロンボモジュリン製剤を用いるか? 824推奨 ARDS 患者に対するトロンボモジュリン製剤の投与について推奨を提示することはできない(in our practice statement). CQ40 ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用するか? 835推奨 ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ41 ARDS 患者にシベレスタットを使用するか? 851推奨 ARDS 患者にシベレスタットを使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ42 成人ARDS 患者に副腎皮質ステロイドを使用するか? 867推奨 成人ARDS 患者に高用量副腎皮質ステロイドを使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C).成人ARDS 患者に低用量副腎皮質ステロイドを使用することを強く推奨する(強い推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 1B). CQ43 成人ARDS 患者に早期リハビリテーション介入を行うか? 891推奨 成人ARDS 患者に早期(72 時間以内)リハビリテーションを行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). CQ44 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うか? 910推奨 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). CQ45 成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行うか? 930推奨 成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). CQ46 ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うか? 951推奨 ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/ 非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 小児領域 領域F 小児領域972 PCQ1 小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用するか? 972推奨 小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). PCQ2 小児ARDS 患者は1 回換気量を制限するか? 992推奨 小児ARDS 患者に対する1 回換気量の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS 患者の治療戦略に則り,生理的な1 回換気量を超えないように一般的に実施されている(in our practice statement). PCQ3 中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するか? 1006推奨 中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するかの推奨を提示することはできないが,臨床医の経験や成人ARDS 患者における知見に基づいて高いPEEP の使用が行われている(in our practice statement). PCQ4 小児ARDS 患者にプラトー圧を制限するか? 1020推奨 小児ARDS 患者に対するプラトー圧の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人 ARDS 患者の治療戦略に則り,プラトー圧を制限しての呼吸管理が実行されている(in our practice statement).
PCQ5 小児呼吸不全患者の呼吸器離脱においてプロトコルを使用するか? 1033推奨 24 時間以上の人工呼吸を要した小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において,プロトコルを使用することを条件付きで推奨する(条件付きで推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). PCQ6 中等症以上の小児ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用するか? 1049推奨 小児ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFOV)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). PCQ7 小児ARDS 患者にAPRV を使用するか? 1069推奨 小児ARDS 患者において,換気条件としてAPRV を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). PCQ8 小児ARDS 患者のSpO2の目標値をどのように設定するか? 1088推奨 小児ARDS患者に対する特定のSpO2目標値は推奨を提示できないが,臓器障害を生じるような高酸素血症や低酸素血症を避けられるようにSpO2目標値を設定している(in our practice statement). PCQ9 中等症以上の小児ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するか? 1101推奨 中等症以上の小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示することはできないが,中等症以上の成人ARDS患者の治療戦略に則り,早期に筋弛緩薬が使用されることがある(in our practice statement). PCQ10 中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うか? 1114推奨 中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). PCQ11 小児ARDS 患者に一酸化窒素吸入療法を使用するか? 1131推奨 小児ARDS 患者に対する一酸化窒素吸入療法をルーチンでは実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). PCQ12 小児ARDS 患者にサーファクタントを使用するか? 1147推奨 小児ARDS 患者に対してサーファクタントを使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2 D). PCQ13 小児ARDS 患者にステロイドを使用するか? 1165推奨 小児ARDS 患者にステロイドを使用するかについて,本SR の結果からはその推奨を提示することはできない.ステロイドの投与は患者背景,病態を含めて検討する必要がある(in our practice statement). PCQ14 小児呼吸不全患者の鎮静においてプロトコルを使用するか? 1183推奨 小児呼吸不全患者の鎮静にプロトコルを使用することを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性の中程度のエビデンス:GRADE 2B). PCQ15 小児呼吸不全患者に毎日の鎮静中断(daily sedation interruption:DSI)を行うか? 1200 推奨 小児呼吸不全患者に,毎日の鎮静中断(DSI)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き 推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D).
目 的 本診療ガイドラインは,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の患者の診療において,患者の予後を改善させるためにこれまでに出された利用可能なエビデンスを解釈し,それに基づいて個々の患者の価値観や嗜好を踏まえた上で適切な臨床上の判断を行うために推奨を提供することを目的とするものである. 対 象(本診療ガイドラインの利用者) 本診療ガイドラインの使用者として想定しているのは,ARDS の診療に従事する専門医,非専門医(総合診療医,小児科医,家庭医,一般医,他領域専門医など),看護師,薬剤師,臨床工学技士などの医療従事者である.特に,ARDS の診療において非専門的な医療従事者に焦点を当てて作成された. 利用にあたっての注意 本診療ガイドラインは臨床現場における医療従事者および患者,患者家族の意思決定を支援するために推奨を提供するものであり,提示された推奨に必ず従うよう強要するものではない.実際の判断には,本診療ガイドラインの推奨のみならず,その基となるエビデンスと推奨が決定される理由となる価値観やコストやリソースなどのほかの要因も確認した上で,個々の状況に応じてベストな選択をされたい.本診療ガイドラインの推奨は,それらに従って医療判断を行えば患者の転帰が必ず改善することを保証するものではない.推奨を参考に臨床現場で医療行為に関する判断を行ったことで生じた結果に対して,本診療ガイドライン作成委員会は一切の責任を負うものではない.また,本診療ガイドラインは,医療裁判の証拠として利用されることを想定していない.あくまで臨床現場での一般的な診療についての推奨を提示するものである.実際の診療上での判断は,患者の病状,リソースやマンパワーなど周囲を取り巻く環境,患者の価値観や嗜好などといった個別の状況を勘案した上で下されるべきである.したがって,医療事故が起こった際に,本診療ガイドラインに示す推奨のとおりに診療が行われなかったという理由で過失があったと判断されるのは不適切である.本診療ガイドライン作成委員会は,本診療ガイドラインを裁判の証拠として利用することを認めない.最後に,本診療ガイドラインの推奨を実現するために必要な資源を用意することが望ましいが,個々の医療機関の状況によってそれが困難な場合もあることを明記しておく. 本診療ガイドラインの基本理念・概念
対象となる患者 本診療ガイドラインの扱う患者は,原則的に集中治療室(intensive care unit:ICU)または一般病棟に入院している成人および小児ARDS 患者である. 内 容 本診療ガイドラインは成人および小児ARDS患者に対する人工呼吸管理,薬物療法,理学療法などのエビデンスのシステマティックレビュー(systematic review:SR)を行って推奨を明示している. 取り扱う臨床上の課題 本診療ガイドラインでは成人46,小児15 の臨床疑問(clinical question:CQ)を以下の5 つの領域に分けて推奨を明示した.・ARDS の診断,予後予測はどうするべきか?(領域A)・ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助を使用するべきか?(領域B)・ARDS 患者の侵襲的呼吸補助はどのように行うべきか?(領域C)・ARDS 患者の呼吸器周辺治療は何をどのように行うべきか?(領域D)・ARDS 患者の薬物治療,非薬物治療は何をどのように行うべきか?(領域E)・小児ARDS 患者の治療はどのように行うべきか? 患者の価値観や意向 GRADE アプローチでは,推奨の決定に際して患者の価値観や意向を考慮することが求められている.このため,本診療ガイドラインパネル会議のパネリストとして患者代表に入ってもらい,患者の価値観や意向など患者の立場での意見を表明し,推奨決定に寄与していただいた.なお,本ガイドラインでは,集団の視点ではなく,個人の患者の視点で推奨を明示した. 診療ガイドライン利用促進の工夫 本診療ガイドラインでは,委員会報告,詳細版を作成した.詳細版は各学会サイトとMinds で公開予定である.また,本診療ガイドラインの活用を促進することを目的として,イラストを用いた推奨の要約,および一般の方(患者,患者家族など非医療従事者)を対象とした平易な文章による診療ガイドラインの解説を作成した.また,診療ガイドライン利用促進のための各種講演会や講習会を開催する予定にしている. 推奨の適用モニタリングのための指標 各CQ の推奨がどれくらい適用されているか,また,アウトカム改善が達成されているかのモニタリングのための基準を,各CQ に付した.
診療ガイドライン作成グループの構成 ARDS 診療ガイドライン作成委員会 成人運営委員委員長:田坂 定智 弘前大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学講座讃井 將満 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科 集中治療部副委員長:竹内 宗之 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 集中治療科大下 慎一郎 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学委員:江木 盛時 京都大学大学院 医学研究科 侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野橋本 悟 京都府立医科大学附属病院 集中治療部一門 和哉 済生会 熊本病院 呼吸器内科津島 健司 国際医療福祉大学医学部 呼吸器内科学安田 英人 自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科コンサルタント:南郷 栄秀 社会福祉法人聖母会 聖母病院 総合診療科:成人小児兼任小児運営委員委員長:竹内 宗之 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 集中治療科委員:志馬 伸朗 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学松本 正太朗 国立成育医療研究センター 集中治療科齊藤 修 東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部診療ガイドライン作成SR 運営統括委員SR 統括委員長:大下 慎一郎 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学SR 統括副委員長:安田 英人 自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科委員:岡森 慧 慶應義塾大学医学部 呼吸器内科櫻谷 正明 JA 広島総合病院 救急・集中治療科則末 泰博 東京ベイ・浦安市川医療センター加茂 徹郎 済生会宇都宮病院 救急集中治療科矢田部 智昭 公立西知多総合病院 麻酔科近藤 豊 順天堂大学医学部附属浦安病院 救急診療科福田 龍将 琉球大学大学院 医学研究科 救急医学講座
中島 幹男 都立広尾病院 救命救急センター青木 善孝 浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部飯塚 悠祐 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科林 健一郎 東京大学医学部附属病院 小児科三浦 慎也 The Royal Children’s Hospital Melbourne石原 唯史 順天堂大学医学部附属浦安病院 救急診療科診療ガイドライン作成サポート委員班長:岡田 遥平 京都大学大学院 医学研究科 初期診療救急医学分野委員:阿南 圭祐 済生会 熊本病院 呼吸器内科阿部 良伸 東北医科薬科大学 救急・災害医療学岡野 弘 国立病院機構 横浜医療センター 救急総合診療科真弓 卓也 金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 循環器内科学研究分野岸原 悠貴 武蔵野赤十字病院 救命救急センター成田 知大 静岡県立総合病院 救命救急科/集中治療科岡崎哲ロバート 亀田総合病院 集中治療科窪田 佳史 亀田総合病院 感染症科岩崎 夢大 東北大学大学院 医学系研究科 麻酔科学周術期医学分野川上 大裕 神戸市立医療センター中央市民病院對東 俊介 広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門林 健一郎 東京大学医学部附属病院 小児科竹下 淳 大阪母子医療センター 麻酔科寺山 毅郎 防衛医科大学校 精神科学講座林 拓也 埼玉県立小児医療センター 集中治療科三浦 慎也 The Royal Children’s Hospital Melbourne石原 唯史 順天堂大学医学部附属浦安病院 救急診療科診療ガイドライン作成領域責任委員吉田 拓生 東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座集中治療部岡田 遥平 京都大学大学院 医学研究科 初期診療救急医学分野安藤 浩一 昭和大学医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門増山 智之 自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部西村 哲郎 大阪市立大学 医学研究科 救急医学成田 知大 静岡県立総合病院 救命救急科/集中治療科片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門米倉 寛 藤田医科大学ばんたね病院 麻酔・疼痛制御学對東 俊介 広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門
パネル会議パネリスト(パネル会議メンバー)成人奥田 拓史 帯広第一病院 総合診療科/東北大学 東北メディカル・メガバンク機構三木 誠 仙台赤十字病院 呼吸器内科安藤 幸吉 仙台市立病院 麻酔科新井 奈々 東京大学大学院 医学系研究科 社会医学専攻医療倫理学飯塚 悠祐 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科吉田 健史 大阪大学大学院 医学系研究科 生体統御医学講座 麻酔・集中治療医学教室瀬尾 龍太郎 神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター土肥 智史 徳島大学病院 看護部森實 雅司 済生会 横浜市東部病院 臨床工学部神津 玲 長崎大学病院 リハビリテーション部横山 仁志 聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーションセンター吉川 博 広島大学病院 薬剤部石村 慶子 大阪大学 医学系研究科 公衆衛生学武澤 恵理子 患者家族小児中川 聡 国立成育医療研究センター 集中治療科川崎 達也 静岡県立こども病院 小児集中治療科野坂 俊介 国立成育医療研究センター 放射線診療部榎本 有希 筑波大学 救急・集中治療三浦 慎也 The Royal Children’s Hospital Melbourne新井 奈々 東京大学大学院 医学系研究科 社会医学専攻医療倫理学山谷 明正 国立成育医療研究センター 薬剤部武澤 恵理子 患者家族飯塚 悠祐 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科土肥 智史 徳島大学病院 看護部八木 健輔 東京都立小児総合医療センター 麻酔科 臨床工学技士齊藤 修 東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部石川 順一 大阪市立総合医療センター外部評価委員大田 えりか 聖路加国際大学 看護学研究科国際看護学福岡 敏雄 倉敷中央病院湯浅 秀道 国立病院機構 豊橋医療センター 歯科口腔外科山川 一馬 大阪医科薬科大学 救急医学教室SR 班員青木 信将 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸器・感染症内科阿河 昌治 横浜市立市民病院
浅野 健吾 東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座 集中治療部阿南 圭祐 済生会 熊本病院 呼吸器内科安部 光洋 千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科阿部 良伸 東北医科薬科大学 救急・災害医療学井口 直也 大阪大学大学院 医学系研究科 生体統御医学講座 麻酔・集中治療医学教室池辺 諒 大阪母子医療センター石井 賢二 聖路加国際病院石井 賢造 福山市民病院 麻酔科・集中治療室石川 順一 大阪市立総合医療センター石川 雅巳 呉共済病院 麻酔・救急集中治療部石原 唯史 順天堂大学医学部附属浦安病院 救急診療科石丸 剛 草加市立病院市山 崇史 信州大学医学部附属病院 集中治療部伊藤 健太郎 松阪市民病院 呼吸器センター 呼吸器内科伊藤 博之 亀田総合病院 呼吸器内科伊東 幸恵 大阪母子医療センター 集中治療科井上 明彦 兵庫県災害医療センター 救急部井上 寧 国際医療福祉大学三田病院 呼吸器センター井原 祥一 大阪警察病院今井 亮介 聖路加国際病院今長谷 尚史 東京大学大学院 医学系研究科岩井 英隆 社会医療法人博愛会 開西病院岩崎 夢大 東北大学大学院 医学系研究科 麻酔科学周術期医学分野岩下 義明 島根大学医学部 救急医学講座岩永 航 浦添総合病院 救急集中治療部上地 隆史 大阪医療センター上田 朝美 済生会 横浜市東部病院上野 太輔 川崎医科大学 救急医学宇城 敦司 大阪市立総合医療センター 集中治療部内御堂 亮 東京医科歯科大学病院 集中治療部梅垣 岳志 関西医科大学 麻酔科学講座江口 善友 済生会 熊本病院大木 伸吾 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学大澤 一郎 国立成育医療研究センター大島 良康 医療法人徳洲会 神戸徳洲会病院太田 啓介 静岡県立総合病院 集中治療センター太田 浩平 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学大野 孝則 昭和大学藤が丘病院
大村 拓 千葉大学医学部附属病院 救急科集中治療部岡崎哲ロバート 亀田総合病院 集中治療科岡澤 成祐 富山大学附属病院 第一内科岡田 和也 横須賀市立うわまち病院 集中治療部岡野 弘 国立病院機構 横浜医療センター 救急総合診療科小川 顕太 東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座 集中治療部小倉 崇以 済生会 宇都宮病院 栃木県救命救急センター 救急・集中治療科尾崎 将之 小牧市民病院 救急集中治療科甲斐 慎一 京都大学医学部附属病院貝沼 関志 稲沢市民病院 麻酔・救急・集中治療部門柏浦 正広 自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科春日井 大介 名古屋大学医学部附属病院 救急科数馬 聡 札幌医科大学医学部 集中治療医学勝田 知也 愛媛県立中央病院 呼吸器内科桂田 雅大 兵庫県立丹波医療センター金子 唯 三重大学医学部附属病院 救命救急・総合集中治療センター狩野 謙一 福井県立病院 救命救急センター亀井 純 倉敷中央病院川上 大裕 神戸市立医療センター中央市民病院川﨑 剛 千葉大学大学院 医学研究院 呼吸器内科学河野 圭史 岡山大学病院喜久山 和貴 昭和大学病院 集中治療科岸原 悠貴 武蔵野赤十字病院 救命救急センター木全 俊介 京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻予防医療学分野京 道人 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学楠本 耕平 兵庫県立尼崎総合医療センター 小児救急集中治療科窪田 佳史 亀田総合病院 感染症科栗原 祐太朗 北里大学医学部 救命救急医学小出 俊一 浦添総合病院 救急集中治療部高慶 承史 東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター河野 通彦 堺市立総合医療センター小坂 順子 岡山大学病院 麻酔科蘇生科古田島 太 埼玉医科大学国際医療センター 集中治療科紺田 眞規子 奈良県立医科大学 麻酔科齋藤 俊輔 沖縄県立中部病院酒井 瑞 高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科阪本 仁 島根県立中央病院 呼吸器外科佐藤 新太郎 さいたま赤十字病院 呼吸器内科
佐藤 大三 順天堂大学医学部 麻酔科学ペインクリニック佐藤 哲哉 東北大学病院 高度救命救急センター佐藤 仁信 国立循環器病研究センター 集中治療科佐藤 光則 静岡県立こども病院 小児集中治療科佐藤 隆平 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 先端中核看護科学講座クリティカルケア 看護学分野 澤本 徹 東海大学医学部付属八王子病院柴田 純平 藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座島谷 竜俊 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学清水 一茂 天理よろづ相談所病院 臨床工学部生野 雄二 九州大学病院 救命救急センター水堂 祐広 麻生総合病院 呼吸器内科杉原 潤 柏市立柏病院 呼吸器内科杉村 宗典 姫路獨協大学 医療保健学部臨床工学科杉村 洋子 千葉県こども病院 集中治療科杉本 裕史 甲南医療センター 呼吸器内科関根 秀介 東京医科大学 麻酔科学分野席 望 富山大学附属病院 救急科髙山 千尋 横浜労災病院 集中治療科滝本 浩平 亀田総合病院 集中治療科竹下 淳 大阪母子医療センター 麻酔科竹原 朋宏 慶應義塾大学 呼吸器内科竪 良太 東京ベイ・浦安市川医療センター田中 愛子 大阪大学大学院 医学系研究科 麻酔・集中治療医学教室田中 健之 長崎大学病院 感染制御教育センター田辺 裕子 虎の門病院 臨床腫瘍科谷河 篤 東北大学病院 高度救命救急センター谷口 琢也 地方独立行政法人 市立大津市民病院 循環器内科田畑 恵里奈 神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科田村 高廣 名古屋大学医学部附属病院 麻酔科鉄本 訓史 市立吹田市民病院 呼吸器リウマチ科寺山 毅郎 防衛医科大学校 精神科学講座徳永 健太郎 熊本大学病院 集中治療部土手 尚 聖隷浜松病院富岡 義裕 戸田中央総合病院 麻酔科・ICU富永 直樹 日本医科大学付属病院董 理 京都大学医学部附属病院 麻酔科/京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻医療疫 学分野
内藤 紘一 医療法人相志和診会 岩間循環器内科長尾 工 公益財団法人 日本心臓血圧振興会附属 榊原記念病院中川 夏樹 公立学校共済組合 関東中央病院 呼吸器内科仲川 宏昭 滋賀医科大学 呼吸器内科中島 拓郎 熊本大学病院 集中治療部中瀧 恵実子 徳島県立中央病院中谷 友香 昭和伊南総合病院 内科長門 直 JCHO 東京山手メディカルセンター中野 諭 埼玉県立小児医療センター中野 泰 川崎市立井田病院長嶺 祐介 横浜市立大学附属病院 麻酔科・集中治療部中村 浩士 呉医療センター・中国がんセンター 総合診療科中村 悠太 済生会 熊本病院中村 嘉 日本赤十字社 京都第二赤十字病院 救急科中森 裕毅 三重大学大学院 医学系研究科 分子病態学講座成宮 博理 京都第二赤十字病院 救急科西岡 典宏 京都大学大学院 医学研究科 予防医療学分野西野 智哉 東海大学医学部 総合診療学系救命救急医学丹羽 崇 神奈川県立循環器呼吸器病センター萩原 祥弘 済生会 宇都宮病院橋本 克彦 福島県立医科大学橋本 紘幸 京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 薬剤疫学分野濱口 純 東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター濱本 学 埼玉県立小児医療センター 救急診療科林 実 福井県立病院東 晶子 千葉大学病院東島 潮 長崎大学大学院 麻酔集中治療医学福田 陽佑 昭和大学医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門藤井 遼 栃木県済生会 宇都宮病院 救急・集中治療科藤田 健亮 済生会 宇都宮病院藤田 義人 愛知医科大学 麻酔科・周術期集中治療部藤本 潤一 横浜労災病院 集中治療科藤本 佳久 TMG あさか医療センター古川 拓 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部穂苅 諭 新潟大学医歯学総合病院 呼吸器・感染症内科星 進悦 岩手県釜石保健所星野 晴彦 国際医療福祉大学 成田看護学部本郷 貴識 岡山済生会 総合病院
本藤 憲一 東京医科歯科大学病院 救急科牧 盾 九州大学病院 集中治療部増永 愛子 熊本大学病院 呼吸器内科增永 直久 京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学分野真弓 卓也 金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 循環器内科学研究分野丸橋 孝昭 北里大学医学部 救命救急医学御室 総一郎 浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部宮川 幸子 琉球大学大学院 医学研究科 救急医学講座宮下 徳久 兵庫県立こども病院 小児集中治療科村田 哲平 東京都健康長寿医療センター村田 真紀 京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学専攻医療疫学分野安尾 俊祐 京都桂病院 救急科安福 祐一 慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室山内 康太 製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部山口 嘉一 横浜市立市民病院山下 幸一 日本赤十字社 高知赤十字病院 救命診療部山本 章太 東海大学医学部付属八王子病院 画像診断科山田 浩平 防衛医科大学校病院 救急部山田 淑恵 京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学分野山本 良平 京都大学大学院 社会健康医学専攻医療疫学分野横山 俊樹 公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科/救急部集中治療室吉武 重徳 九州保健福祉大学吉田 拓也 小牧市民病院 救急集中治療科吉田 英樹 聖マリアンナ医科大学吉永 晃一 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部吉廣 尚大 JA 広島総合病院 薬剤部吉村 聡志 京都大学大学院 予防医療学分野和田 宗一郎 手稲渓仁会病院 小児科SR サポート図書館司書神山 貴子 京都府立医科大学 附属図書館日詰 千栄 京都府立医科大学 附属図書館中川 好子 京都府立医科大学 附属図書館鈴木 孝明 奈良県立医科大学 附属図書館■一般の方向け解説作成担当班岡田 遥平 京都大学大学院 医学研究科 初期診療救急医学分野(作成班統括)杉本 裕史 甲南医療センター 呼吸器内科(作成班リーダー)増永 愛子 熊本大学病院 呼吸器内科髙山 千尋 横浜労災病院 集中治療科
杉村 宗典 姫路獨協大学 医療保健学部臨床工学科大島 良康 医療法人徳洲会 神戸徳洲会病院山田 浩平 防衛医科大学校病院 救急部狩野 謙一 福井県立病院 救命救急センター櫻谷 正明 JA 広島総合病院 救急・集中治療科長尾 工 公益財団法人 日本心臓血圧振興会附属榊原記念病院武澤 恵理子 患者家族新谷 薫 イラストレーター(イラスト作成) ■Visual abstract 作成岡田 遥平 京都大学大学院 医学研究科 初期診療救急医学分野石原 唯史 順天堂大学医学部附属浦安病院 救急診療科武澤 恵理子 患者家族 透明性の確保 本診療ガイドライン作成にあたって,診療ガイドライン作成の趣旨を公開しSR 作成委員とパネル会議パネリストを公募した.これにより,診療ガイドライン作成を,診療ガイドライン作成委員会(各学会を代表),SR 作成委員,パネル会議パネリストには一部の重複があるものの,独立してそれぞれの作業を進めることで作成過程の透明性を確保した.また,単に推奨を記述するのみならず,推奨決定の過程を診療ガイドライン本文中に開示することも,透明性を確保する上で重視したことである.さらに,学会ホームページウェブサイトなどを通じてパブリックコメントを求め,さらに外部委員によるレビューを依頼した. 資金および協力組織 本診療ガイドラインは日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会の資金を得て作成した.公募したSR 作成委員,パネル会議パネリストには日当などは支払われず,必要な場合のみ交通費宿泊費を支給した.検索式作成や文献検索についても,図書館司書の方々のボランティア活動によって行われた.なお,完成した診療ガイドラインはPDF 版を各学会サイトおよび日本医療機能評価機構Minds ガイドラインライブラリ1)において無償公開することとしている.さらに,SR の一部をpeer review 英文誌に掲載する予定である.これらすべての資金は上記3 学会で分担した.推奨の作成にあたっては,資金提供者である上記3学会やMindsの意向や利益はその内容に影響していない. 利益相反 本診療ガイドラインの利益相反(COI)開示の方針に関して・ 経済的利益相反(conflict of interest:COI)と学術的COI ならびに各メンバーの役割を巻末ま たは付録に開示する.・ 委員相互の学術的COI の干渉を避けるために,推奨草案に対しての委員の投票は匿名化して行 う.
・ 日本集中治療医学会,日本呼吸器学会,日本呼吸療法医学会などのいずれの学会所属者も日本医 学会の指針に基づく同一基準とし,所属学会の区別なく提出する.・ 作成委員,パネル委員,SR 統括委員,SR 領域責任委員,SR 班員においてもCOI 開示方針に関 して区別を設けないこととする.・ 提出のフォーマットは別紙のCOI 自己申告書を用い回答・集計する.・ COI 開示の基準については以下に準ずる. COI の分類本ガイドラインではCOI を経済的COI および学術的COI に分類し,また,その重要性から, Primary COI,Secondary COI に分類する.Primary COI があるメンバーは推奨に関する議論,投票には参加できない.Secondary COI については開示のみの対応とする.経済的COI および学術的COI の基準については下記を参照. 経済的COI について・ 下記の基準A,B,C に該当する場合は開示を行う.・ 過去3 年間(2018 年1 月から2021 年12 月まで)に遡り開示する.・ 製薬メーカーなどの競争的資金なども,COI の対象とする.・ 主任教授,部門責任者などの立場にある場合,教室(部門)全体に入った資金と見なされる場合 にはCOI として開示する(注:下記のC の項目を参照). 【A.自己申告者自身の申告事項】 経済的COI学術的COI対 応 Primary COI 3 年以内で下記の基準・推奨に引用されている1 次 研究論文の著者・研究資金を獲得しガイドラ インに関連する項目の研究を実施している場合推奨に関する議論,投票などに関与しない Secondary COI 下記の基準を満たすが失効済 みのもの(契約終了済みなど)上記以外の学術的COI開示のみ A—1企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職の有無と報酬額(1 つの企業・団体からの報酬額が年間総額100 万円以上のものを記載) A—2株の保有と,その株式から得られる利益(1 年間の本株式による利益)(1 つの企業の1 年間の利益が100 万円以上のもの,あるいは当該株式の5%以上保有のものを記載)
【B.申告者の配偶者,1 親等内の親族,または収入・財産的利益を共有する者の申告事項】 A—3企業や営利を目的とした団体から特許権使用料として支払われた報酬(有/無)(1 つの特許使用料が年間総額100 万円以上のものを記載) A—4企業や営利を目的とした団体より,会議の出席(発表,助言など)に対し,研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当,講演料などの報酬(1 つの企業・団体からの講演料が年間総額50 万円以上のものを記載) A—5企業や営利を目的とした団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料(1 つの企業・団体からの原稿料が年間総額50 万円以上のものを記載) A—6企業や営利を目的とした団体が契約に基づいて提供する研究費〔1 つの企業・団体から,医学系研究(共同研究,受託研究,治験など)に対して,申告者が実質的に使途を決定し得る研究契約金で実際に割り当てられた年間総額100 万円以上のものを記載〕 A—7企業や営利を目的とした団体が提供する奨学(奨励)寄附金(1 つの企業・団体から,申告者個人または申告者が所属する講座・分野または研究室に対して,申告者が実質的に使途を決定し得る寄附金で,実際に割り当てられた年間総額100 万円以上のものを記載) A—8企業などが提供する寄附講座(企業などからの寄附講座に所属している場合に記載) A—9その他の報酬(研究とは直接に関係しない旅行,贈答品など)(1 つの企業・団体から受けた報酬が年間5 万円以上のものを記載) B—1企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職の有無と報酬額(1 つの企業・団体からの報酬額が年間100 万円以上のものを記載)
【C.申告者の所属する研究機関・部門にかかるCOI 開示事項】(申告者が所属研究機関・部門の長と過去3 年間に共同研究者,分担研究者の関係にあったか,あるいは現在ある場合に有) 学術的COI について・下記の基準A,B,C に該当する場合は開示を行う.・ 過去3 年間(2018 年1 月から2021 年12 月まで)に遡り開示する.・ C‒1 の項目はPrimary COI として扱う.・ C‒3,4 については,獲得した研究資金を基に研究している場合は,研究資金源と研究名いずれ も開示し,Primary COI として扱う.それ以外の競争的研究資金を用いない研究,発表,論文の場合はSecondary COI として扱う. C—1企業や営利を目的とした団体が当該の研究機関・部門に対して提供する研究費〔1 つの企業・団体か契約に基づいて,申告者の医学系研究(助成研究,共同研究,受託研究など)に関連して,当該の長に対して過去3 年以内に実質的に使途を決定し得る研究契約金で実際に割り当てられたもの〕について,1 つの企業・団体からの年間総額が1,000 万円以上のものを記載 C—2企業や営利を目的とした団体が当該の研究機関・部門に対して提供する寄附金〔1 つの企業・営利団体から,申告者の研究に関連して,所属研究機関そのもの,あるいは部門(病院,学部またはセンター,講座)の長に対して提供され,過去3 年以内に実質的に使途を決定し得る寄附金で実際に割り当てられたもの〕について,1 つの企業・団体からの年間総額が200 万円以上のものを記載 C—3その他(申告者が所属する研究機関そのもの,あるいは機関・部門の長が本学会の事業活動に関係する企業などの株式保有,特許使用料,あるいは投資など)(本学会の事業活動において影響を与える可能性が想定される場合に記載) B—2株の保有と,その株式から得られる利益(1 年間の本株式による利益)(1 つの企業の1 年間の利益が100 万円以上のもの,あるいは当該株式の5%以上保有のものを記載) B—3企業や営利を目的とした団体から特許権使用料として支払われた報酬(有/無)(1 つの特許使用料が年間100 万円以上のものを記載)
【A.学術団体における役職】 【B.ガイドラインへの関与】 【C.関連する研究への関与】 2018 年1 月1 日以降2021 年12 月末までに,すべての全国規模以上の学術団体およびそれに準ずるもの(呼吸器,集中治療など以外のすべての領域の学会を含む)の理事,監事以上の役職についている場合,役職,学会名を記載する B—1 2018 年1 月1 日以降2021 年12 月末までに,あらゆる診療ガイドラインおよびそれに準ずるものにメンバーとして関わった場合,または関わる可能性がある場合,関わったガイドライン名,役職を記載する B—2前版の『ARDS 診療ガイドライン2016』の推奨に関与したパネル委員の場合,その旨を記載する C—1推奨形成のためのシステマティックレビューに1 次研究として含まれている論文の著者(共著者)の場合,論文名,雑誌名を公開する(時期については過去3 年間以前も含む) C—2推奨形成のためのシステマティックレビューの出版済み論文の著者(共著者)の場合,論文名,雑誌名を公開する(時期については過去3 年間以前も含む) C—3 2018 年1 月1 日以降2021 年12 月末までに,当ガイドラインの臨床疑問に関連する論文または学会発表の著者または演者(共著者または共同演者を含む)がある場合,論文名,雑誌名または学会発表の演題名,発表学会を開示する C—4 2018 年1 月1 日以降2021 年12 月末までに,当ガイドラインの臨床疑問に関連する研究に関与している場合(研究計画書が作成され倫理委員会で承認されており,研究責任者または共同研究者として研究計画書に記載されている場合),関与している研究名を開示する
利益相反(COI:conflict of interest)一覧*には詳細を下に付記.経済的COI(経済的COI 管理基準A‒1~C‒3 項目詳細については別記参照) 名 前A—1 A—2 A—3 A—4 A—5 A—6 A—7 A—8 A—9 B—1 B—2 B—3 C—1 C—2 C—3田坂 定智無無無無無無無無無無無無無無無讃井 將満無無無無無無無無無無無無無無無大下 慎一郎無無無無無無無無無無無無無無無竹内 宗之無無無無無無無無無無無無無無無一門 和哉無無無有*1 無無無無無無無無無無無江木 盛時無無無無無無無無無無無無無無無志馬 伸朗無無無有*2無無有*3無無無無無無無無津島 健司無無無有*4無無無無無無無無無無無橋本 悟無無無無無無無無無無無無無無無安田 英人無無無無無無無無無無無無無無無齊藤 修無無無無無無無無無無無無無無無松本 正太朗無無無無無無無無無無無無無無無南郷 栄秀無無無無無無無無無無無無無無無青木 善孝無無無無無無無無無無無無無無無飯塚 悠祐無無無無無無無無無無無無無無無石原 唯史無無無無無無無無無無無無無無無岡森 慧無無無無無無無無無無無無無無無加茂 徹郎無無無無無無無無無無無無無無無近藤 豊無無無無無無無無無無無無無無無櫻谷 正明無無無無無無無無無無無無無無無中島 幹男無無無無無無無無無無無無無無無則末 泰博無無無無無無無無無無無無無無無林 健一郎無無無無無無無無無無無無無無無福田 龍将無無無無無無無無無無無無無無無三浦 慎也無無無無無無無無無無無無無無無矢田部 智昭無無無無無無無無無無無無無無無安藤 浩一無無無無無無無無無無無無無無無岡田 遥平無無無無無無無無無無無無無無無尾崎 将之無無無無無無無無無無無無無無無片岡 惇無無無無無無無無無無無無無無無對東 俊介無無無無無無無無無無無無無無無成田 知大無無無無無無無無無無無無無無無西村 哲郎無無無無無無無無無無無無無無無増山 智之無無無無無無無無無無無無無無無吉田 拓生無無無無無無無無無無無無無無無
米倉 寛無無無無無無無無無無無無無無無青木 信将無無無無無無無無無無無無無無無阿河 昌治無無無無無無無無無無無無無無無浅野 健吾無無無無無無無無無無無無無無無阿南 圭祐無無無無無無無無無無無無無無無安部 光洋無無無無無無無無無無無無無無無阿部 良伸無無無無無無無無無無無無無無無井口 直也無無無無無有*5無無無無無無無無無池辺 諒無無無無無無無無無無無無無無無石井 賢二無無無無無無無無無無無無無無無石井 賢造無無無無無無無無無無無無無無無石川 順一無無無無無無無無無無無無無無無石川 雅巳無無無無無無無無無無無無無無無石丸 剛無無無無無無無無無無無無無無無市山 崇史無無無無無無無無無無無無無無無伊藤 健太郎無無無有*6無無無無無無無無無無無伊藤 博之無無無無無無無無無無無無無無無伊東 幸恵無無無無無無無無無無無無無無無井上 明彦無無無無無無無無無無無無無無無井上 寧無無無無無無無無無無無無無無無井原 祥一無無無無無無無無無無無無無無無今井 亮介無無無無無無無無無無無無無無無今長谷 尚史無無無無無無無無無無無無無無無岩井 英隆無無無無無無無無無無無無無無無岩崎 夢大無無無無無無無無無無無無無無無岩下 義明無無無無無無無無無無無無無無無岩永 航無無無無無無無無無無無無無無無上地 隆史無無無無無無無無無無無無無無無上田 朝美無無無無無無無無無無無無無無無上野 太輔無無無無無無無無無無無無無無無宇城 敦司無無無無無無無無無無無無無無無内御堂 亮無無無無無無無無無無無無無無無梅垣 岳志無無無無無無無無無無無無無無無江口 善友無無無無無無無無無無無無無無無大木 伸吾無無無無無無無無無無無無無無無大澤 一郎無無無無無無無無無無無無無無無大島 良康無無無無無無無無無無無無無無無太田 啓介無無無無無無無無無無無無無無無太田 浩平無無無無無無無無無無無無無無無大野 孝則無無無無無無無無無無無無無無無大村 拓無無無無無無無無無無無無無無無
岡崎哲ロバート無無無無無無無無無無無無無無無岡澤 成祐無無無無無無無無無無無無無無無岡田 和也無無無無無無無無無無無無無無無岡野 弘無無無無無無無無無無無無無無無小川 顕太無無無無無無無無無無無無無無無小倉 崇以無無無無無無無無無無無無無無無甲斐 慎一無無無無無無無無無無無無無無無貝沼 関志無無無無無無無無無無無無無無無柏浦 正広無無無無無無無無無無無無無無無春日井 大介無無無無無無無無無無無無無無無数馬 聡無無無無無無無無無無無無無無無勝田 知也無無無無無無無無無無無無無無無桂田 雅大無無無無無無無無無無無無無無無金子 唯無無無無無無無無無無無無無無無狩野 謙一無無無無無無無無無無無無無無無亀井 純無無無無無無無無無無無無無無無川上 大裕無無無無無無無無無無無無無無無川﨑 剛無無無無無無無無無無無無無無無河野 圭史無無無無無無無無無無無無無無無喜久山 和貴無無無無無無無無無無無無無無無岸原 悠貴無無無無無無無無無無無無無無無木全 俊介無無無無無無無無無無無無無無無京 道人無無無無無無無無無無無無無無無楠本 耕平無無無無無無無無無無無無無無無窪田 佳史無無無無無無無無無無無無無無無栗原 祐太朗無無無無無無無無無無無無無無無小出 俊一無無無無無無無無無無無無無無無高慶 承史無無無無無無無無無無無無無無無河野 通彦無無無無無無無無無無無無無無無小坂 順子無無無無無無無無無無無無無無無古田島 太無無無無無無無無無無無無無無無紺田 眞規子無無無無無無無無無無無無無無無齋藤 俊輔無無無無無無無無無無無無無無無酒井 瑞無無無無無無無無無無無無無無無阪本 仁無無無無無無無無無無無無無無無佐藤 新太郎無無無無無無無無無無無無無無無佐藤 大三無無無無無無無無無無無無無無無佐藤 哲哉無無無無無無無無無無無無無無無佐藤 仁信無無無無無無無無無無無無無無無佐藤 光則無無無無無無無無無無無無無無無佐藤 隆平無無無無無無無無無無無無無無無
澤本 徹無無無無無無無無無無無無無無無柴田 純平無無無無無無無無無無無無無無無島谷 竜俊無無無無無無無無無無無無無無無清水 一茂無無無無無無無無無無無無無無無生野 雄二無無無無無無無無無無無無無無無水堂 祐広無無無無無無無無無無無無無無無杉原 潤無無無無無無無無無無無無無無無杉村 宗典無無無無無無無無無無無無無無無杉村 洋子無無無無無無無無無無無無無無無杉本 裕史無無無無無無無無無無無無無無無関根 秀介無無無無無無無無無無無無無無無席 望無無無無無無無無無無無無無無無髙山 千尋無無無無無無無無無無無無無無無滝本 浩平無無無無無無無無無無無無無無無竹下 淳無無無無無無無無無無無無無無無竹原 朋宏無無無無無無無無無無無無無無無竪 良太無無無無無無無無無無無無無無無田中 愛子無無無無無無無無無無無無無無無田中 健之無無無無無無無無無無無無無無無田辺 裕子無無無無無有*7無無無無無無無無無谷河 篤無無無無無無無無無無無無無無無谷口 琢也無無無無無無無無無無無無無無無田畑 恵里奈無無無無無無無無無無無無無無無田村 高廣無無無無無無無無有*8無無無無無無鉄本 訓史無無無無無無無無無無無無無無無寺山 毅郎無無無無無無無無無無無無無無無徳永 健太郎無無無無無無無無無無無無無無無土手 尚無無無無無無無無無無無無無無無富岡 義裕無無無無無無無無無無無無無無無富永 直樹無無無無無無無無無無無無無無無董 理無無無無無無無無無無無無無無無内藤 紘一無無無無無無無無無無無無無無無長尾 工無無無無無無無無無無無無無無無中川 夏樹無無無無無無無無無無無無無無無仲川 宏昭無無無無無無無無無無無無無無無中島 拓郎無無無無無無無無無無無無無無無中瀧 恵実子無無無無無無無無無無無無無無無中谷 友香無無無無無無無無無無無無無無無長門 直無無無無無無無無無無無無無無無中野 諭無無無無無無無無無無無無無無無中野 泰無無無無無無無無無無無無無無無
長嶺 祐介無無無無無無無無無無無無無無無中村 浩士無無無無無無無無無無無無無無無中村 悠太無無無無無無無無無無無無無無無中村 嘉無無無無無無無無無無無無無無無中森 裕毅無無無無無無無無無無無無無無無成宮 博理無無無無無無無無無無無無無無無西岡 典宏無無無無無無無無無無無無無無無西野 智哉無無無無無無無無無無無無無無無丹羽 崇無無無無無無無無無無無無無無無萩原 祥弘無無無無無無無無無無無無無無無橋本 克彦無無無無無無無無無無無無無無無橋本 紘幸無無無無無無無無無無無無無無無濱口 純無無無無無無無無無無無無無無無濱本 学無無無無無無無無無無無無無無無林 実無無無無無無無無無無無無無無無東 晶子無無無無無無無無無無無無無無無東島 潮無無無無無無無無無無無無無無無福田 陽佑無無無無無無無無無無無無無無無藤井 遼無無無無無無無無無無無無無無無藤田 健亮無無無無無無無無無無無無無無無藤田 義人無無無無無無無無無無無無無無無藤本 潤一無無無無無無無無無無無無無無無藤本 佳久無無無無無無無無無無無無無無無古川 拓無無無無無無無無無無無無無無無穂苅 諭無無無無無無無無無無無無無無無星 進悦無無無無無無無無無無無無無無無星野 晴彦無無無無無無無無無無無無無無無本郷 貴識無無無無無無無無無無無無無無無本藤 憲一無無無無無無無無無無無無無無無牧 盾無無無無無無無無無無無無無無無増永 愛子無無無無無無無無無無無無無無無增永 直久無無無無無無無無無無無無無無無真弓 卓也無無無無無無無無無無無無無無無丸橋 孝昭無無無無無無無無無無無無無無無御室 総一郎無無無無無無無無無無無無無無無宮川 幸子無無無無無無無無無無無無無無無宮下 徳久無無無無無無無無無無無無無無無村田 哲平無無無無無無無無無無無無無無無村田 真紀無無無無無無無無無無無無無無無安尾 俊祐無無無無無無無無無無無無無無無安福 祐一無無無無無無無無無無無無無無無
山内 康太無無無無無無無無無無無無無無無山口 嘉一無無無無無無無無無無無無無無無山下 幸一無無無無無無無無無無無無無無無山本 章太無無無無無無無無無無無無無無無山田 浩平無無無無無無無無無無無無無無無山田 淑恵無無無無無無無無無無無無無無無山本 良平無無無無無無無無無無無無無無無横山 俊樹無無無無無無無無無無無無無無無吉武 重徳無無無無無無無無無無無無無無無吉田 拓也無無無無無無無無無無無無無無無吉田 英樹無無無無無無無無*9無無無無無無吉永 晃一無無無無無無無無無無無無無無無吉廣 尚大無無無無無無無無無無無無無無無吉村 聡志無無無無無無無無無無無無無無無和田 宗一郎無無無無無無無無無無無無無無無新井 奈々無無無無無無無無無無無無無無無安藤 幸吉無無無無無無無無無無無無無無無石村 慶子無無無無無無無無無無無無無無無奥田 拓史無無無無無無無無無無無無無無無神津 玲無無無*10 無無無無無無無無無無無瀬尾 龍太郎無無無無無無無無無無無無無無無武澤 恵理子無無無無無無無無無無無無無無無土肥 智史無無無無無無無無無無無無無無無三木 誠無無無無無無無無無無無無無無無森實 雅司無無無無無無無無無無無無無無無横山 仁志無無無無無無無無無無無無無無無吉川 博無無無無無無無無無無無無無無無吉田 健史無無無無無無無無無無無無無無無榎本 有希無無無無無無無無無無無無無無無川崎 達也無無無無無無無無無無無無無無無中川 聡無無無無無無無無無無無無無無無野坂 俊介無無無無無無無無無無無無無無無八木 健輔無無無無無無無無無無無無無無無山谷 明正無無無無無無無無無無無無無無無林 拓也無無無無無無無無無無無無無無無大田 えりか無無無無無無無無無無無無無無無福岡 敏雄無無無無無無無無無無無無無無無山川 一馬無無無無無*11 *12 無無無無無無無無湯浅 秀道無無無無無無無無無無無無無無無
学術的COI 開示事項詳細*1 日本ベーリンガーインゲルハイム:2020 年/190 万円. *2 ファイザー:2017,2019 年,大日本住友製薬:2017 年,MSD:2018,2019 年/いずれも50 万円以上100 万円以下. *3 ファイザー:寄附金,2017,2018 年,旭化成ファーマ:寄附金,2017 年. *4 日本ベーリンガーインゲルハイム:2019 年/210 万円. *5 Baxter Healthcare Corporation:競争的資金,2021 年,38000 USD. *6 日本イーライリリー:2021 年/180 万円,日本ベーリンガーインゲルハイム:2021 年/160 万円, Astra Zeneca,MSD,ファイザー,小野薬品,中外製薬,武田薬品工業:いずれも50 万円以下. *7 大鵬薬品工業:治験,2020 年/1,557,600 円,小野薬品工業:治験,2020 年/5,472,000 円,MSD: 2021 年/100 万円以上1,000 万円未満治験,イーライリリー:2021 年/100 万円以上1,000 万円以下受託研究. *8 ヘモネティクスジャパン合同会社:講演謝礼,2020 年/5 万円. *9 ビオメリュー・ジャパン:日本集中治療医学会ランチョンセミナー講演料,2020 年/7 万円. *10 帝人ファーマ:講演料,2019 年/67 万円. *11 JIMRO:共同研究,2020 年度,400 万円. *12 旭化成ファーマ:2020 年度/200 万円,日本製薬:2020 年度/100 万円.
COI 一覧(学術的COI) *には詳細を下に付記. (COI 管理基準:学術的COI のA‒1~C‒4 項目詳細については別記参照) 名 前A学会,役職,期間B—1診療ガイドライン,役職B—2前版のパネル委員C—1論文名,雑誌C—2:論文名,雑誌名 C—3:演題名,学会C—4関連する研究 讃井 將満日本呼吸療法医学会,理事,2020年10 月ARDS 診療ガイドライン2021,作成委員長有無デクスメデトミジンは本当に最良な鎮静剤なのか? Cons の立場からの考察,第45 回日本集中治療医学会学術集会重症肺胞出血に対してVVECMO を使用した1 例,第45 回日本集中治療医学会学術集会急性呼吸促迫症候群に対する個別化医療,THE LUNG—perspec t i v e s 2 0 1 8; 26:165—8 無 田坂 定智日本呼吸器学会,理事,2018 年4月~現在無無Prognostic val ues of the Berlin definition criteria, blood lactate level, and fibrop roliferative changes on high—resolution computed tomography in ARDS patients, BMC Pulm Med 2019;19:37無無大下 慎一郎無J—SSCG2020,アカデミックGL推進班.日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン,委員.国際蘇生連絡委員会(ILCOR)心肺蘇生ガイドライン,委員有無無無竹内 宗之日本小児集中治療研究会,理事, 2018~2020 年the international Pediatric Acute Lung Injury Con sensus Confer ence update (PALICC 2),作 成委員無無無無
一門 和哉無特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き第3 版,分担執筆者無Prediction of prognosis for acute respiratory distress syn drome with thin— section CT:val idation in 44 cases, Radiology 2 0 0 6;2 3 8: 321—9 Fibroproliferative changes on high—resolution CT in the acute respiratory dis tress syndrome predict mortality and ventilator dependency:a prospective observational cohort study, BMJ Open 2012;2: e000545無無 江木 盛時無J—SSCG2020,委員長.日本医学会連合COVID—19 expert opinion, COVID—19 薬物療法に関するRapid/ Living recommen dations有無無無志馬 伸朗理事:日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会,日本小児集中治療研究会,2018~ 2020 年J—SSCG2020,委員.肺炎診療ガイドライン,委員.深 在性真菌症診療ガイドライン,委員. J—SSCG2020 特別編 COVID—19薬物療法に関するRapid/Living rec ommendations,アドバイザリーボード.JAID/JSC感染症治療ガイドライン,委員無無無無 津島 健司無無無無無橋本 悟日本集中治療医学会,理事,2018年~現在.日本呼吸療法医学会,監事,2018 年~現在.日本ショック学会,理事,2018~ 2021年J—SSCG2020, WG メンバー無無無無
安田 英人日本集中治療教育研究会(JSEP TIC),理事,2019年4 月~2021 年3 月J—SSCG2020,アカデミックGL推進班.JRC蘇生ガイドライン, SR 委員無無無無齊藤 修無無無無無松本 正太朗無無無無無南郷 栄秀日本プライマリ・ケア連合学会,理事,2016 年~.コクランジャパン,監事,2017年~てんかん診療ガイドライン2018,外部委員パーキンソン病診療ガイドライン2018,外部委員リハビリテーション栄養学会診療ガイドライン2018,診療ガイドライン作成協力委員特発性肺線維症の治療ガイドライン2017,協力者腹膜透析ガイドライン2019,外部評価委員無無無無青木 善孝無J—SSCG2020,アカデミックGL推進班 兼 PAD 班WG メンバー無無ARDS診療ガイドライン2021 へ向けて GRADEシステムの課題と展望,第46 回日本集中治療医学会学術集会2019無飯塚 悠祐無無無無無石原 唯史無J—SSCG2020, WG メンバー, COVID—19 薬物療法に関するRapid/ Living recommen dations,CQ 班長無無無無岡森 慧無無無*5—10 参照無加茂 徹郎無無Prognostic val ues of the Berlin definition criteria, blood lactate level, and fibrop roliferative chan ges on high—res olution computed tomography in ARDS patients, BMC Pulm Med 2019;19:37無無
近藤 豊無J—SSCG2020,アカデミックGL 推進班.JRC 蘇生ガイドライン2020,脳神経蘇生作業部会委員.2022 年改訂版非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン,協力委員.熱中症診療ガイドライン,作成委員無無無無櫻谷 正明無J—SSCG2020,アカデミックGL推進班有無*1,2無中島 幹男無ARDS2016,SR委員無無無無則末 泰博無J—SSCG2020, WG メンバー有無無無林 健一郎無無無無無福田 龍将無J—SSCG2020,アカデミックGL 推進班.JRC 蘇生ガイドライン2020, ALS 作業部会無無無無三浦 慎也無J—SSCG2020,アカデミックGL推進班無無無無矢田部 智昭無J—SSCG2020,委員(アカデミックGL推進班班長)無無無無安藤 浩一無動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022 年版,SR委員無無*3—8無岡田 遥平無J—SSCG2020, SR グループメンバー.「新型コロナウイ ルス感染症の流行を踏まえた 熱中症予防に関する提言」,日本救急医学会 熱中症及び低体温症に関する委員会,委員無無*3—8,Early versus delayed mobilization for in—hospital mor tality and health— related quality of life among criti cally ill patients :a systematic review and meta— analysis, J Inten sive care 2019; 7:57無 尾崎 将之無J—SSCG2020, WG メンバー無無無無片岡 惇無無無無無
對東 俊介無理学療法ガイドライン第2 版, SR 班. J—SSCG2020,アカデミックGL 推進班.日本版重症患者リハビリテーションガイドライン2022,委員無無無無成田 知大無J—SSCG2020, SR グループメンバー. J—SSCG2020 特別編COVID—19薬物療法に関するRapid/Living rec ommendations,タスクフォースメンバー無無無無西村 哲郎無J—SSCG2020, WG メンバー無無無無増山 智之無無無*1,2無吉田 拓生ABCD—sonogra phy,理事,2014年5 月~現在無無*3—8無米倉 寛無J—SSCG2020, WG メンバー.周術期禁煙ガイドライン,WG メンバー.術後痛ガイドライン(プラクティカルガイド),WGメンバー.医療情報データベースを用いる研究のためのOut come Definition Repository,タスクフォース委員, WG メンバー無無Early versus late tracheostomy in patients with traumatic brain injury, Intensive Care Med 2020; 46:1286—7無青木 信将無無無無無無阿河 昌治無無無無無無浅野 健吾無無無無無無阿南 圭祐無IPF の治療ガイドライン,協力者.肺がん検診エビデンスレポート作成会議,文献レビュー委員会メンバー無無*4,8無安部 光洋無無無無無無阿部 良伸無無無無無無
井口 直也無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無池辺 諒無無無無無無石井 賢二無無無無無無石井 賢造無無無無無無石川 順一無無無無無無石川 雅巳無J—SSCG2020, SR グループメンバー.JRC蘇生ガイドライン2020, BLS 共同座長無無無無石丸 剛無J—SSCG2020, SR グループメンバー. J—SSCG2020 特別編COVID—19薬物療法に関するRapid/Living rec ommendations,タスクフォースメンバー無無無無市山 崇史無無無無無無伊藤 健太郎無無無無無無伊藤 博之無無無無*3無伊東 幸恵無無無無無無井上 明彦無無無無無無井上 寧無無無無無無井原 祥一無無無無無無今井 亮介無無無無*8無今長谷 尚史無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無岩井 英隆無無無無無無岩崎 夢大無無無無無無岩下 義明無無無無*4無岩永 航無無無無無無上地 隆史無無無無無無上田 朝美無無無無無無上野 太輔無無無無無無宇城 敦司無無無無無無内御堂 亮無無無無無無梅垣 岳志無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無江口 善友無無無無無無大木 伸吾無無無無無無大澤 一郎無無無無無無大島 良康無無無無*4無太田 啓介無無無無無無
太田 浩平無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無大野 孝則無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無大村 拓無無無無無無岡崎哲ロバート無無無無無無岡澤 成祐無無無無無無岡田 和也無無無無無無岡野 弘無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無*1,2無小川 顕太無無無無無無小倉 崇以無無無無*4無甲斐 慎一無無無無無無貝沼 関志無J—SSCG2020, SR グループメンバー.JRC蘇生ガイドライン2020無無無無柏浦 正広無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無春日井 大介無無無無無無数馬 聡無無無無無無勝田 知也無無無無無無桂田 雅大無無無無無無金子 唯無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無狩野 謙一無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無亀井 純無無無無無川上 大裕無無無無無川﨑 剛無結核診療ガイドライン,SR 班無無*6,7無河野 圭史無無無無無無喜久山 和貴無無無無無無岸原 悠貴無無無無無無木全 俊介無無無無*1,2無京 道人無無無無無無楠本 耕平無無無無無無窪田 佳史無無無無無無栗原 祐太朗無無無無無無小出 俊一無無無無無無高慶 承史無無無無無無河野 通彦無無無無無無小坂 順子無無無無無無
古田島 太無無無無無無紺田 眞規子無無無無無無齋藤 俊輔無無無無無無酒井 瑞無無無無無無阪本 仁無無無無無無佐藤 新太郎無無無無無無佐藤 大三無無無無無無佐藤 哲哉無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無佐藤 仁信無無無無無無佐藤 光則無無無無無無佐藤 隆平無無無無無無澤本 徹無無無無無無柴田 純平無無無無無無島谷 竜俊無無無無無無清水 一茂無無無無無無生野 雄二無無無無無無水堂 祐広無無無無*5無杉原 潤無無無無無無杉村 宗典無無無無無無杉村 洋子無無無無無無杉本 裕史無無無無*3無関根 秀介無J—SSCG2020, WG メンバー無無無無席 望無無無無無無髙山 千尋無無無無無無滝本 浩平無無無無無無竹下 淳無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無竹原 朋宏無無無無無無竪 良太無無無無無無田中 愛子無無無無無無田中 健之無無無無*3,Serotonin and vascular per meability(Sero tonin beyond the brain)Analysis of Serotonin in Sep sis and ARDS, APSR 2018 in Taipei,Taiwan急性肺障害患者におけるセロトニンの動態解析田辺 裕子無乳癌診療ガイドライン,病理小委員会委員無無*4無谷河 篤無無無無無谷口 琢也無無無*8無田畑 恵里奈無無無*5無
田村 高廣無大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン,SRグループメンバー無無無無鉄本 訓史無無無無無寺山 毅郎無J—SSCG2020,アカデミックGL推進班無無*8無徳永 健太郎無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無土手 尚無無無無無富岡 義裕無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無富永 直樹無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無董 理無無無無無内藤 紘一無無無無無長尾 工無無無無無中川 夏樹無がん薬物療法に伴う神経障害診療ガイドライン2022年版,SR 委員無無*6,7無仲川 宏昭無無無*5無中島 拓郎無無無無無中瀧 恵実子無無無無無中谷 友香無無無無無長門 直無J—SSCG2020, SR グループメンバー.結核診療ガイドライン,SR班員.脳卒中治療ガイドライン2021, WG 委員.重症患者リハビリテーション診療ガイドライン, WG 委員無無無無中野 諭無無無無無無中野 泰無がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン,WG 員無無無無長嶺 祐介無無無無無無
中村 浩士中性脂肪学会,デジタル担当理事, 2020 年~現在中性脂肪蓄積心筋血管症 成果報告2020 年度版—診断基準2020・分類・鑑別診断—,委員無無情動と痛みの数値化を目的としたストレスセンサの開発とオンライン診療への期待,日本病院総合診療医学会雑誌2021運動と食事による行動変容の観察研究中村 悠太無無無無無無中村 嘉無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無中森 裕毅無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無右室—肺動脈カップリングの視点による循環管理で右室機能不全を併発したARDS 患者を救命する,循環制御2020無成宮 博理無無無無無無西岡 典宏無J—SSCG2020, SR グループメンバー.血管炎・自己免疫疾患診療ガイドライン,SR 委員無無無無西野 智哉無無無無無無丹羽 崇無無無無無無萩原 祥弘無無無無無無橋本 克彦無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無橋本 紘幸無無無無*5無濱口 純無無無無無無濱本 学無無無無無無林 実無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無東 晶子無無無無*4無東島 潮無無無無無無福田 陽佑無無無無*3無藤井 遼無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無藤田 健亮無無無無*4無藤田 義人無無無無無無藤本 潤一無無無無無無藤本 佳久無JRC 蘇生ガイドライン2020 脳神経蘇生領域, SR 委員無無無無古川 拓無無無無無無
穂苅 諭無無無無*1,2無星 進悦無無無無無無星野 晴彦無無無無無無本郷 貴識無無無無無無本藤 憲一無無無無無無牧 盾無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無増永 愛子無無無無無無增永 直久無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無真弓 卓也無J—SSCG2020, SR グループメンバー. COVID—19 リビングガイドライン,タスクフォースメンバー無無無無丸橋 孝昭無JRC 蘇生ガイドライン2020,二次救命処置WG委員無無無無御室 総一郎無無無無無無宮川 幸子無無無無無無宮下 徳久無無無無無無村田 哲平無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無村田 真紀無無無*6,7無安尾 俊祐無無無*6,7無安福 祐一無理学療法ガイドライン第2 版, (間質性肺炎)SR 委員.リハビリテーション栄養ガイドライン,SR 委員無無無無 山内 康太無無無無無無山口 嘉一無無無無無無山下 幸一無無無無無無山本 章太無門脈圧亢進症診療における部分脾動脈塞栓術の手技に関するガイドライン,ガイドライン作成メンバー(SR 担当)無無*5無
山田 浩平無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無The efficacy of albumin with diuretics in the mechanically ventilated pati ents with hypoal buminemia:sys tematic review and meta—analy sis山田 淑恵無無無無*3山本 良平無無無無無横山 俊樹無日本呼吸器学会COPD ガイドライン,SR 委員無無無本邦における急性I型呼吸不全に対する非侵襲的人工呼吸器(NPPV)と高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の多施設ランダム化比較試験(JaN PHi trial)吉武 重徳無無無無*5無吉田 拓也無無無無無無吉田 英樹無無無無無無吉永 晃一無無無無無無吉廣 尚大無J—SSCG2020, SR グループメンバー.重症患者におけるリハビリテーション診療ガイドラインJ—ReCIP 2022,アカデミック班無無無無吉村 聡志無無無無無無和田 宗一郎無無無無無無新井 奈々無無無無無無安藤 幸吉無J—SSCG2020, WG メンバー無無無無石村 慶子無無無無奥田 拓史無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無神津 玲日本呼吸療法医学 会,理事,2018~ 2020年.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会,理事, 2018~2020 年理学療法ガイドライン第2 版(日本理学療法士学会),作成統括委員有無無無 瀬尾 龍太郎無無有無無無武澤 恵理子無無有無無無
土肥 智史無無無無長期間の多職種連携による離床により人工呼吸器からの離脱に成功したacute respira tory distress syn drome(ARDS)の1 症例,四国医学雑誌2019;75: 103—8無三木 誠日本結核・非結核性抗酸菌症学会,理事,2017年~現在日本結核・非結核性抗酸菌症学会 結核診療ガイドライン,作成委員無無無無森實 雅司無無無無無無横山 仁志無無無無無無吉川 博無無無無無無吉田 健史無J—SSCG2020, WG メンバー. the Pleural Pres sure Working Group,Acute Respiratory Fail ure Section of the European Society of Inten sive Care Medi cine,パネリスト無無無無榎本 有希無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無川崎 達也無J—SSCG2020,委員.J—SSCG2020特別編 COVID—19薬物療法に関するRapid/Living rec ommendations,アドバイザリーボード.COVID—19急性呼吸不全への人工呼吸とECMO小児における基本的注意事項,WGメンバー無無無無中川 聡World Federation of Pediatric Intensive and Critical Care Societies, Presi dent, from Decem ber 2020 to pres ent time COVID—19 PICU guidelines:for h i g h— a n d l i m i t e d—r e s o u r c e settings,著者無無無無
野坂 俊介一般社団法人日本救急放射線研究会,理事,2018年4 月~現在胆道閉鎖症診療ガイドライン,ガイドライン作成グループ無無無無八木 健輔無無無無無無山谷 明正無無無無無無林 拓也無J—SSCG2020, SR グループメンバー無無無無大田 えりかコクランジャパン,副理事長, 2018~現在看護ケアのための高齢者の便秘時の大腸便貯留アセスメントに関する診療ガイドライン,作成メンバー.日本歯内療法学会歯内療法ガイドライン(診療ガイドライン作成の専門家),日本緩和医療学会 小児がん疼痛に関するガイドライン(診療ガイドライン作成の専門家),日本糖尿病学会 妊娠糖尿病に関するガイドライン(診療ガイドライン作成の専門家),WHO antenatel care guideline, WHO guideline devel opment group. WHO nutrition and food safety guideline, meth odologist.無無無無福岡 敏雄無JRC BLS/ALS ガイドライン2020,外部評価委員無無無無山川 一馬無J—SSCG2020,委員無無無無湯浅 秀道無顎関節症診療ガイドライン,副委員長.腹膜透析ガイドライン,外部委員.口腔癌診療ガイドライン,アドバイザー無無無無注)J‒SSCG2020:日本版 敗血症診療ガイドライン2020. (J‒SSCG2020 関係...アカデミックGL 推進班:アカデミックガイドライン推進班,WG メンバー: ワーキンググループメンバー,SR グループメンバー:システマティックレビューグループメンバー).
学術的COI 詳細*1 Sakuraya M, Okano H, Masuyama T, et al. Efficacy of non‒invasive and invasive respiratory management strategies in adult patients with acute hypoxaemic respiratory failure:a systematic review and network meta‒analysis. Crit Care 2021;25:414. *2 Okano H, Sakuraya M, Masuyama T, et al. Respiratory support strategy in adults with acute hypoxemic respiratory failure:A systematic review and network meta‒analysis. Under review. *3 Fukuda Y, Sugimoto H, Yamada Y, et al. Safety and feasibility of lung biopsy in diagnosis of acute respiratory distress syndrome:protocol for a systematic review and meta‒analysis. BMJ Open 2021;11:e043600. *4 Anan K, Oshima Y, Ogura T, et al. Safety and harms of bronchoalveolar lavage for acute respiratory failure:A systematic review and meta‒analysis. Respir Investig 2022;60:68‒81. *5 Hashimoto H, Yamamoto S, Nakagawa H, et al. Clinical utility of surgical lung biopsy for patients with acute respiratory distress syndrome:A systematic review and meta‒analysis. Respiration 2022; 101:422‒32. *6 Murata M, Nakagawa N, Kawasaki T, et al. Adverse events during intrahospital transport of critically ill patients:A systematic review and meta‒analysis. Am J Emerg Med 2022;52:13‒9. *7 Kawasaki T, Nakagawa N, Murata M, et al. Diagnostic accuracy of urinary antigen tests for legionellosis:A systematic review and meta‒analysis. Respir Investig 2022;60:205‒14. *8 Terayama T, Taniguchi T, Imai R, et al. Protocol for a systematic review and meta‒analysis of studies on the use of brain natriuretic peptide and N‒terminal brain natriuretic peptide levels in the diagnosis of cardiopulmonary edema in acute respiratory failure. Syst Rev 2021;10:314. 外部評価 本診療ガイドラインはドラフトを作成した時点で公開に先立ち,集中治療専門医および救急医,診療ガイドライン作成方法専門家,およびSR 専門家による外部評価を受けた.外部評価には診療ガイドライン評価の国際標準ツールAGREE II2,3)を用いた.AGREE IIは6 領域23 項目からなる個別項目と,全体評価からなっている.各項目1~7 点で採点し,領域ごとに領域別スコアを算出する.領域別スコアは0~100%の値を取り,該当領域で要求されている内容の充足率を意味する.表1,表2 にその評価結果を示す.また,各学会のサイトを通じてパブリックコメントを募集した.これら外部評価の結果は,可能な限り本診療ガイドラインに反映させた.反映できなかった部分
に関しては,次回の改訂時の検討事項とした.また,公開後も,学会サイトなどを通じて,広くフィードバックを受け,次回改訂時に活かす予定である. 表1 公開後の最終稿に対するAGREE IIによる外部評価の結果の概要 (各項目および各領域の領域別スコアと全体評価)ガイドライン全体の評価および各領域のスコア:4 名の評価者の平均点(7 点満点)で示した. 観 点項 目AGREE—II 得点 (平均)領域別AGREE—II 充足率 ドメイン 1対象と目的1.ガイドライン全体の目的が具体的に記載されている7.0 100% 2.ガイドラインが取り扱う健康上の課題が具体的に記載されている7.0 3.ガイドラインの適用が想定される対象集団(患者,一般市民など)が具体的に記載されて いる7.0 ドメイン 2利害関係者の 参加4.ガイドライン作成グループには,関係するすべての専門家グループの代表者が加わっている6.8 92% 5.対象集団(患者,一般市民など)の考えや意向が考慮されている5.5 6.ガイドラインの利用者が明確に定義されている7.0 ドメイン 3作成の厳格さ7.エビデンスを検索するために系統的な方法が用いられている6.8 92% 8.エビデンスの選択基準が明確に記載されている6.3 9.エビデンス総体(body of evidence)の強固さと限界が明確に記載されている6.8 10.推奨文を作成する方法が明確に記載されている6.8 11.推奨文の作成にあたって,健康上の利益,副作用,リスクが考慮されている6.3 12.推奨文とそれを支持するエビデンスとの対応関係が明確である6.5 13.ガイドラインの公表に先立って,専門家による外部評価がなされている5.5 14.ガイドラインの改訂手続きが示されている7.0 ドメイン 4提示の明確さ15.推奨が具体的であり,曖昧でない6.3 85% 16.患者の状態や健康上の問題に応じて,他の選択肢が明確に示されている6.0 17.どれが重要な推奨か容易にわかる5.5 ドメイン 5適用可能性18.ガイドラインの適用にあたっての促進要因と阻害要因が記載されている5.3 82% 19.どのように推奨を適用するかについての助言・ツールを提供している6.3 20.推奨の適用にあたり,関係するリソースへの影響が考慮されている5.3 21.ガイドラインにモニタリングや監査のための基準が示されている6.3
ドメイン 6編集の独立性22.資金源によりガイドラインの内容が影響されていない6.8 96% 23.ガイドライン作成グループメンバーの利益相反が記載され,適切な対応がなされている6.8 全体評価1. このガイドライン全体の質を評価する6.0 86% 2 このガイドラインの使用を推奨する推奨する:4 名推奨する(条件付き):0 名推奨しない:0 名 表2 外部評価委員からのコメント 以下に外部評価委員からのAGREE II評価に付されたコメントを掲載する. 最終稿において修正可能なものに関しては修正した. 観点項目評価者1評価者2評価者3評価者4 ドメイン 1 対 象 と 目 的1.目的の具体的な記載p.12 に記載されているガイドラインの対象と目的について,詳細に記載されている第1 章に明確に記載されている 2.取り扱う健康問題の具体的な記載p.13 に記載されている第1 章に明確に記載されている3.対象集団(患者,公衆など)の具体的な記載p.13 に記載されている第1 章に明確に記載されている ドメイン 2 利 害 関 係 者 の 参 加4.専門家代表者の作成への参加p.14~22 に記載されている幅広い医療職に加えて,患者の視点の代表者,また,図書館員やイラストレーターなど,多岐にわたったチーム編成であった関連する3 学会合同で作成されている専門分野名/専門内容については記載されていない 5.対象集団(患者,公衆など)の価値観や好みへの考慮p.13 に少し記載があり,患者のご家族がパネリストに含まれていたが,考えや意向がどう考慮されたのかは不明であった.患者家族がパネリストに含まれているが,患者は含まれていないため,次回の改訂の際には,そちらも考慮するとよいと思うパネリストに患者家族が含まれている,第1 章に一部記載が見られる広く価値観や希望に関する収集を行ったかどうかについては記載が見受けられなかったそもそも,ARDSなので,患者の考えが入りにくい分野であり6 としたが,パネリストに患者家族も入っており,評価した6.利用者の明確な定義p.12 に記載されている第1 章に明確に記載されている
ドメイン 3 作 成 の 厳 格 さ7.エビデンスの系統的な検索それぞれのCQ の箇所に記載ありシステマティックレビュー(SR)の作成手順については,詳細に記述されている診断・検査についてもSR が行われ推奨作成につなげており,意欲的な取り組みである.今後のガイドライン作成において,模範となる各CQ ごとに検索式を含め明確に提示されている一方で,全体の分量が多くなり過ぎており見つけやすいとは言い難い 8.エビデンスの選択基準の記載それぞれのCQ に対するPICO の記載はあるが,詳細なクライテリアが不明なCQ がある(例えば,対象を重 症の人工呼吸器患者とした場合,どういった患者を重症とみなしたのかなど)選択手順は詳述されている各C Q ごとにPICO を含め明確に提示されている一方で,全体の分量が多くなり過ぎており見つけやすいとは言い難い 9.Body of evi dence(総体エビデンス)の強さと限界の記載p.65~69 に記載されている詳細に検討されている各CQ ごとにEPを含め明確に提示されている一方で,全体の分量が多くなり過ぎており見つけやすいとは言い難い10.推奨決定方法の記載p.68 で,推奨決定の際の詳細な方法は,「各推奨に記載」などと記載するといいと思った詳細に記述されている第1 章に明確に記載されている11.健康上の利益・副作用・リスクの考慮p.68 に記載はあるが,どう用いられたのかを記載するといいと思う詳細に記述されている各CQ ごとの本文記載において明確に提示されている一方で,全体の分量が多くなり過ぎており見つけやすいとは言い難い12.推奨とエビデンスの明確な対応関係それぞれの推奨の箇所に記載あり各CQ ごとにEP, EtD を含め明確に提示されている一方で,全体の分量が多くなり過ぎており見つけやすいとは言い難い
ドメイン 3 作 成 の 厳 格 さ13.公表前の外部審査p.48 に記載されている公開後にAGREE— IIによる専門家外部評価を行ったパブリックコメントについては公開前に広く受け付けられた 14.改訂手続きの予定p.55 に記載されている第1 章に明確に記載されている5 年後の2026 年に改訂予定 ドメイン 4 提 示 の 明 確 さ15.推奨の具体性それぞれの推奨の箇所に記載あり明確に推奨が示されている人工呼吸設定のPEEP などの推奨について,「高い」PEEP といった記述にとどめている付帯事項や解説を読めば,数値は示されている多くのCQ で明確な推奨が提示されている,付帯事項も適切に提示されているただし,一部のCQではin our prac tice statement という形で臨床上有益とは思えない表現が示されていることは残念である(情報提供でも推 奨でもない) 16.患者の状態や健康問題に応じた選択肢の明示あまり示されていない箇所もあるように思うサブグループの検討事項や実施上の考慮事項などの項において明確に提示されている条件付き推奨とあっても,条件がすべて記載されているのでもないので,点数を下げた「提案する」との文 言でもよかったかなと思うが,このあたり,本当に悩ましい 17.重要な推奨の明確さp.62 で図示された要約があり,明確に推奨が示されている第1 章の図1 は視認性良く,明確に表現されている一方で,1 2 0 0ページを超える分量であるため,CQ推奨一覧の表の提示があるほうがよかったと考える第2 章の冒頭に,結果として以下,成人5 領域および小児領域に分けて,CQ とその推奨と理由を記述するとあるが,もう一つ,推奨文と付帯事項の一覧表みたいなものが欲しかったかなと(見落としならすいません,この場合は, 7 になります)
ドメイン 5 適 用 可 能 性18.推奨を診療に取り入れる方法のアドバイスやツールの提供あまり示されていないように思うECMO などの推奨について,費用についても検討されていた.また,具体的な数値には反映されていないが,入院期間の短縮などの効果を算入することが行われている(例: CQ42,44 など)成人の部分では「費用対効果」とい う記述になっていたが,小児の部分では「医療費」の「軽減」といった記述になっている次回改訂においては,経済分析の視点から記述形式を揃えられるとよいと感じた第1 章の診療ガイドライン利用促進の工夫において一部記載が見られるが十分とは言えないこれも難しい項目で,記載も難しいが,全体として評価した 19.推奨の適用に際する促進や阻害要因それぞれの推奨の箇所に記載あり第1 章に記載されている委員会報告,詳細版,一般向け(患者・家族向け)リーフレットといった複数の媒体を用いて普及に努めているこれも難しい項目で,記載も難しいが,全体として評価した20.推奨適用に伴うリソースの考慮あまり示されていないように思うCQ によっては言及しているものも見られる本領域の特性上,詳細な記載は困難な項目であるこれも難しい項目で,記載も難しいが,全体として評価した.コストも考えて作られているとは思うが,保険点数など具体的記述が少なかったので少し下げた21.モニタリング・監査の存在それぞれの推奨の箇所に記載あり第1 章ならびに各CQ において記載されているが,具体的な内容には乏しい
ドメイン 6 編 集 の 独 立 性22.ガイドライン編集の資金源からの独立性p.22 に記載されている第1 章に明確に記載されている 23.ガイドライン作成グループメンバーの利害関係の記載p.22~48 に記載されている第1 章に明確に記載されているこれ以上は,難しいと思うが,やはり,専門家として,学術的なところがある人は,投票から離れたとかの具体的記述がなかったので,一つ下げた.でも,詳細に検討されているので,素晴らしい 全体評価1.このガイドライン全体の質を評価する全体としてよくまとまっていると思った極めて質が高いガイドラインである.疾患の特性や治療,検査など多様性・複雑さを乗り越えようとしていた.また,多くの結果はSR の形でまとめられており,累積的に今後の改訂にも負担少なく取り組めるプラットフォームが構築されていると見受けられた本ガイドラインの作成の質は極めて高水準であろう.一方で,視認性が低く,ガイドライン利用者が求める情報に容易にアクセスできるかという観点からすると改善の余地は大きいと考えるこれ以上とすると,経済的な指標であるが,日本では,患者さんが高額医療費で安いので(これも高いという方もいるが,世界的には信じられない安価),必要ないといえば必要ない 2.このガイドラインの使用を推奨する疾患の特性,症例の背景,それぞれの治療法や検査方法の特性などを踏まえる必要があるが,そのことも含めて検討されているこの詳細で緻密なガイドラインの内容が実践できるよう,ハンドブックやセミナーなどの実施が期待される強く推奨する
改訂予定 本診療ガイドラインは,新しい臨床試験などの結果を受けて,5 年後の2026 年に改訂予定である.ただし,重要な知見が得られた場合には,必要に応じて改訂時期の前倒しや部分改訂を検討する. 文 献 1) 医療情報サービスMinds.日本医療機能評価機構,http://minds.jcqhc.or.jp/(2022 年6 月閲 覧) 2)AGREE II.http://www.agreetrust.org/(2022 年6 月閲覧) 3) AGREE II.日本語訳.日本医療機能評価機構EBM 医療情報部,https://www.agreetrust.org/ wp-content/uploads/2013/06/AGREE‒II_Japanese.pdf(2022 年6 月閲覧)
パブリックコメントの公募 2021 年6 月11 日(金)~6 月24 日(木)にEtD ドラフト版を公開しパブリックコメントを公募した.5 名の方から以下のパブリックコメントをいただいた.それぞれのコメントについて委員会で吟味し,ドラフト版の修正および追加のパネル会議での審議の材料とした.また,それぞれのコメントについて回答を作成した. パブリックコメントに関するCOI 開示 パブリックコメントをいただいた方の利益相反について開示した.・経済的な利益相反について:2 名の方から開示があった. ■企業からの報酬 1 名. ■講演料 1 名. ・学術的な利益相反について:3 名の方から開示があった. ■関連する学会理事 1 名. ■関連する診療ガイドラインへの関与 2 名. ■SR に含まれる可能性のある研究への関与 1 名. ■関連する臨床疑問に関する論文 1 名. ■関連する臨床疑問に関する研究 1 名. コメントに対する領域別の回答【A 領域】1 件 CQ1:急性呼吸不全の患者にARDS の診断を行うか? 1 2 3 <コメント> ARDS の定義をベルリン定義(急性,肺の両側性陰影,低酸素血症,左心不全の除外)で行えば,ARDS でない急性呼吸不全はわずかでありましょう.他方,病態の定義(血管内皮・肺胞上皮の透過性亢進によって生じる非心原性肺水腫)でARDS の診断を行う場合は,臨床的には検証困難な「透過性亢進」を証明する必要があります.私自身は,現在のARDS の定義は誤っており,RDS と同様に「肺サーファクタント機能不全によって肺胞が広範に虚脱した状態」 パブリックコメントおよび回答
【B 領域】2 件 CQ14:ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV,NHFT)を使用するべきか? <コメント> NHFT という用語は一般的ではありません.現時点ではHFNC が最も広く使われており,日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会で「酸素療法マニュアル」作成時に用語委員会にも検討していただいて,HFNC(高流量鼻カニュラ)に統一した経緯があります.また,NHF(ネーザルハイフロー)はフィッシャー&パイケル社の商標登録名であり,ガイドラインとして不適切と考えます. <回答>コメントいただきましたとおり,現在広く使用されているARDS のベルリン定義は,臨床的現象のみから定義されており,ARDS の疾患本態である「肺胞上皮傷害に伴う血管透過性亢進による非心原性肺水腫」というミクロの観点が含まれていません.この問題点は,多くの臨床医が認識しつつも,ARDS の病態解明・新規治療法確立のための研究を進めていく上で,何らかの客観的定義が必要であるため,ベルリン定義が採用されている現状があります.本診療ガイドラインでは,そのようなベルリン定義の限界があることは理解しつつも,ベルリン定義を用いることで臨床におけるARDS の早期の認知につながり,本診療ガイドラインで推奨する診療につながると考えております.また,ご指摘いただいたとおり,新型コロナウイルスの流行に伴い,ARDS の病態再考・再定義が行われる可能性がありますが,おそらく十分な知見が得られるまではしばらく時間を要すると予測されます.今後も,本診療ガイドラインは定期的に改訂していく予定ですので,ある程度の数の論文が出版されてきましたら,本診療ガイドラインの改訂も行いたいと思います. <回答>ご指摘をありがとうございます.ご指摘いただいたとおり,ハイフロー酸素療法の一般的略称と商標登録上の略称を不適切に使用していたものと考えられます.日本呼吸療法医学会の用語集に準じて診療ガイドラインにおける記述の用語を修正いたしました. であると考えています.COVID‒19 肺炎による急性呼吸不全がその典型ですが,本ガイドラインにはCOVID‒19 に関する記述が一切ありません.COVID‒19 肺炎ではII型肺胞上皮細胞の感染によって急速に肺胞虚脱と低酸素血症が進行することを,この1 年半で多くの臨床医が実感されたはずです.COVID‒19 肺炎を契機にARDS の従来概念や診断治療法を見直す必要に迫られていますが,2019 年現在はこれまでの知見をまとめるには時期尚早です.ガイドラインの発行を来年度以降に延期されることを希望します.
CQ16:ARDS 患者に酸素療法よりもNHFT を使用するべきか? 【C 領域】1 件 CQ20:人工呼吸管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を使用するべきか? 【D 領域】1 件 CQ31:中等度または重度の成人ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するべきか? <コメント>筋弛緩薬投与はROSE study とACURASYS trial とは結果が異なり,筋弛緩薬早期投与の有効性には更なる評価が必要です.また,P‒sili が人においても確かな現象であるかどうか評価が必要となるし,もし,人でも認められるとしても,ICU‒AW やウィニング期間の延長などへの悪影響を評価しなければなりません.早期という時間の曖昧さ,また,筋弛緩薬の必要性を評価するモニター方法は推奨しておらず(経肺圧,EIT,エコーなど),どのように評価するのか示しておらず,条件付きであっても推奨するというガイドラインは危険であると思われま <コメント>このCQ に限ったことではないのですが,弱い推奨の幅が大きいかと思いました.本CQ はほかの弱い推奨に比較して強いに近い弱い推奨のようにEtD からうかがえるかと思います.参考にされる医療従事者は内容まで十分確認してガイドラインを参考にされるかとは思いますが,推奨の程度の評価の基準もどこかに示していただけるとわかりやすいです. <コメント>前述のようにNHFT という用語が一般的でなく,ネーザルハイフローという商標登録名由来の用語で不適切です.HFNC を採用するべきだと思います. <回答>ご指摘をありがとうございます.診療ガイドラインの推奨は,単なるシステマティックレビュー(SR)とメタ解析の論文とは異なり,メタ解析の数値のみではなく,エビデンスの確実性,利益と害のバランス,実臨床における現状(受け入れ,実行可能性)なども加味してEtDと推奨を作成します.推奨の作成過程については本診療ガイドラインの「作成方法」に記載しておりますので参考にしていただけると幸いです. <回答>ご指摘をありがとうございます.CQ14 と同様に,本CQ の記述も日本呼吸療法医学会の用語集に準じて用語を修正いたしました.
【E 領域】4 件 CQ39:ARDS 患者にトロンボモジュリン製剤を用いるか? <コメント> CQ39 からCQ42 まで,個別の薬剤4 つについて「投与を推奨しない」とされていますが, 2016 年のガイドライン(CQ13)では,これ以外の多数の薬剤について「使用しないことを推奨する」とされています.ただし,サーファクタントに関しては,2016 年版では「エビデンスの確信性は非常に低い」となっています.薬剤に対する2016 年の評価が,2021 年版でも踏襲されるのか否かを明らかにするべきだと思います. す.せいぜい,投与を考慮する,または,決められない,ということが現段階では妥当と考えられます. <回答> 2016 年版と2021 年版ガイドラインで,取り扱っている薬剤がやや異なっているのは, 2016 年時点と2021 年時点での臨床現場のニーズが異なってきていることに起因します.また,2021 年版ガイドラインでは,前回の推奨と関係なくSR・メタ解析を行い,推奨を作成しました.2016 年版の評価を踏襲しているわけではございませんのでご留意いただければ幸いです. <回答>ご指摘をありがとうございます.本CQ につきましては,ご指摘のとおりROSE study とACURASYS trial という2 大重要研究が相反する結果を示したことから,議論するべき点が多いCQ だと考えております.このため,SR 班ではICU—AW,人工呼吸日数のほか,多くのアウトカムについて入念にメタ解析を実施しました.しかし,大部分のアウトカムにつきましては,評価をできる研究が存在せず,結果的にEtD にお示しした5 つのアウトカムのみの記載となりました.GRADE アプローチに準じて推奨を作成しましたところ,「弱く推奨する」という結果になりましたため,このような記載とさせていただきました.ご指摘のようにモニター方法や評価法を扱った研究が存在しないため,この点は注意するべきという考え,これらの注意点につきましては,EtD の「付帯事項」「モニタリングと評価」の箇所に記載いたしました.ご確認いただけると幸いです.
CQ42:成人ARDS 患者にステロイドを使用するか? CQ46:ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養剤を使用するか? <コメント>ガイドラインの推奨と本邦の臨床の乖離が生じてしまうことが気がかりです.本CQ はどのガイドラインでもどうしてもω3 系脂肪酸含有栄養剤使用推奨の方向になりますが,対照群によって分けたサブ解析を行うべきです.今現在一般的に使われている,n6 系の脂肪酸が多過ぎない栄養剤と比較するとほぼ差がないと考えられています.サブ解析を行った上でも推奨になるかはかなり疑問です.また,本研究の対象となっていた栄養剤が本邦ではもはや売られていないことから,本邦での臨床に応用可能なガイドラインとするためにはOxepa 対象の研究を外したサブ解析の必要があるかもしれません.その場合おそらくSR 自体が成立しなくなりますけれども. <コメント> GRADE アプローチを用いたガイドラインなので1B になるのかと思いますが,本CQ のように同一のグループからのRCT が複数含まれ,それをもって強い推奨になっているCQ はあるのでしょうか.ブラインドされていれば故意に結果がねじまげられているような状況はないかとは思いますが違和感があります. <回答>貴重なご指摘をありがとうございます.ご指摘のとおりω3 脂肪酸含有率の高い経腸栄養剤は販売終了となり,本邦では現在,流通しておりません.このためパネル会議で再度議論を行い,CQ を「ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うか?」に変更いたしました.また,付帯事項で「現時点ではω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養剤は販売中止となっており,それと同等の含有率の高い経腸栄養を行うためには通常の経腸栄養にω3 脂肪酸製剤の追加が必要となる」と注釈を追加しました.また,実行可能性ではこの点について考慮し推奨を作成いたしました. <回答>同一研究グループから複数の論文が発表されている場合でも,これらの論文は独立した論文としてバイアス評価,メタ解析が行われパネル会議の結果によって推奨が決定されます.同一のグループから出版されたRCT の結果ばかりであったとしても,推奨作成の過程で特別な考慮は一般にされておりません.同一研究グループの論文ばかりを集めて行われた推奨作成に違和感をお感じになる方もおられるかと思いますが,その解釈については読者個人でご判断いただけると幸いです.
【小児領域】1 件 PCQ1:小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/NHFT)を使用するか? 診療ガイドライン全体について <コメント>各CQ へのコメント欄のみなので全体への質問をこちらにさせていただきます.SR の後の推奨文作成,パネル会議,と多くの方のご意見が入っているのだとは思いますし,文献的な後付けもあるのかとは思いますが,解釈によって推奨は結構変わってくるのではないかな,というのが全CQ を見渡しての感想でした.ただ,SR があってのガイドラインですからGRADE やこの表示に惑わされずにEtD や,扱った論文の検討も必要に思いました.ガイドラインの容量は決まっているのかもしれませんが,文献のPMIDなどが示していただけるとありがたいです. <コメント>前述のようにNHFT はネーザルハイフローという商標登録名由来でありガイドラインとして不適切な用語です.HFNC を採用するべきだと考えます. <回答>ご指摘のとおり,ガイドラインの推奨は,単なるメタ解析論文とは異なり,メタ解析の結果,エビデンスの確実性,利益と害のバランス,実臨床における現状(受け入れ,実行可能性など)も加味して作成されています.このためメタ解析結果のみで推奨が作成されているわけではありません.EtD にはメタ解析の結果のみならずエビデンスの確実性,効果のバランス,臨床における受け入れや実行可能性の点についても記載しておりますので,ご参照いただけると幸いです.また,メタ解析に使用された論文は,本診療ガイドライン中にすべて引用元を記載しておりますのでご参照いただけましたら幸いです. <回答>ご指摘をありがとうございます.CQ14 と同様に,本CQ の記述も日本呼吸療法医学会の用語集に準じて用語を修正いたしました.
推奨の作成にあたっては,SR と診療ガイドライン作成の国際標準様式であるGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチ1,2)を採用することを診療ガイドライン作成委員会が提案し,パネル会議パネリストの賛同を得た.GRADE アプローチではCQ についてアウトカムごとにSR を行い,その結果に基づいて推奨を作成するという2 段階の方法を取る(図1). 図1 GRADE アプローチを用いた診療ガイドライン作成の全体像 システマティックレビュー作成 P I C Oアウトカム アウトカムアウトカムアウトカム重大 重要 重大Evidence Profile 全体的なエビデンスの確実性の評価(overall quality of evidence across outcomes)重大(critical) なアウトカムのみを検討原則として,重大なアウトカムに関するエビデンスの確実性の中で最も低いものとする(各アウトカムが同じ方向ならば最も高いもの) A 「高」/B 「中」/C 「低」/D 「非常に低」 RCTは「高」から,観察研究は「低」から開始し,エビデンスの確実性を評価する 1.研究の限界(risk of bias) 2.非一貫性(inconsistency) 3.非直接性(indirectness) 4.不精確さ(imprecision) 5.出版バイアス(publication bias) グレードを下げる5要因グレードを上げる3要因 1.大きな効果(large magnitude) 2.用量反応(dose response gradient) 3.交絡因子(confounders) アウトカムごとに集めた研究の risk of biasを評価 効果推定値の大きさとアウトカムごとのエビデンスの確実性 高(High)/中(Moderate)/低(Low)/非常に低(Very low) 推奨の作成:以下を考慮して判断エビデンスの質利益と害のバランス価値観と好み資源の利用(コスト)パネル会議前に1回目投票パネル会議でディスカッション必要に応じてもう1回投票診療ガイドライン完成 アウトカムごとのエビデンス(body of evidence)の確実性を評価 Risk of bias summary Risk of bias graph 各アウトカムに関する効果推定値と結果の要約=メタアナリシス(Forest plot作成) 推奨度と推奨文の決定推奨:抗凝固療法の適応がない癌患者に対して,非経口的抗凝固療法を行うことを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確実性「中」) Summary of Findings(SoF) 様々な介入に対する推奨を盛り込む 診療ガイドライン作成 Clinical Question(CQ) →Analytic Frameworks →Key Questions SRの結果の評価 1.ランダム割り付け順番の生成2.割り付けの隠蔽化3.研究参加者と治療提供者の盲検化4.アウトカム評価者の盲検化5.不完全なアウトカムデータ6.選択されたアウトカムの報告7.その他のバイアス Evidence-to-Decisionテーブル 診療ガイドラインパネル会議あらゆるステークホルダーが参加する 推奨の方向と強さ・・・することを推奨する(Grade 1)・・・することを提案する(Grade 2)・・・しないことを提案する(Grade 2)・・・しないことを推奨する(Grade 1) 本診療ガイドライン作成方法の概略
重要臨床課題の設定 作成委員会において,前回の診療ガイドラインおよびパブリックコメント(2019 年7~9 月)などを参考に61(成人46,小児15)のCQ を選定した(小児のCQ はpediatric CQ:PCQ とした).CQ は以下の5 つの領域に分け,それぞれに領域担当者を置いた. ・ARDS の診断,予後予測はどうするべきか?(領域A)・ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助を使用するべきか?(領域B)・ARDS 患者の侵襲的呼吸補助はどのように行うべきか?(領域C)・ARDS 患者の呼吸器周辺治療は何をどのように行うべきか?(領域D)・ARDS 患者の薬物治療,非薬物治療は何をどのように行うべきか?(領域E)・小児ARDS 患者の治療はどのように行うべきか? Analytic framework(分析の枠組み) 上記の重要臨床課題においてSR を行うべきCQ の構成要素を抽出,整理するために,臨床のフローに合わせてAnalytic framework を作成し,以下の定義に基づきKey Question(KQ)1~5 を設定した.このAnalytic framework は各SR 領域の統括委員,責任委員を中心に素案が提案され,パネル委員会の承認を得て決定した.この重要臨床課題における各KQ で,それぞれSR を行うCQをPICO 型(またはPECO 型,PICOT 型,それ以外の型)に定式化を行った.診断/予測に関する重要臨床課題KQ1:(包括的疑問)診断/予測は最終的な予後を改善するか? KQ2:診断/予測は誰を対象として行うべきか? KQ3:診断/予測のアウトカムの診断/予測性能はどうか? KQ4:診断/予測における害は何か? KQ5:中間アウトカムと最終アウトカムの関連はあるか?介入に関する重要臨床課題KQ1:(包括的疑問)介入は最終的な予後を改善できるか? KQ2:介入は誰を対象として行うべきか? KQ3:介入のアウトカムへの効果はどうか? KQ4:介入における害は何か? KQ5:中間アウトカムと最終アウトカムの関連はあるか? PICO シートの作成 上記で整理された定式化されたCQにおいて対象患者,対象となる診断/予測,介入,アウトカムなどをPICO シートと呼ばれるシートに整理した.このPICO シートは各SR 領域の統括委員,責任委員を中心に素案が提案され,パネル委員会の承認を得て決定した.本診療ガイドラインの対象はARDS 患者であるため,対象患者は原則,ARDS 患者とした.一部のCQ においてはAnalytic framework に準じて「ARDS が疑われる急性呼吸不全の患者」を対象とした.また,ARDS 患者の
みを対象とした臨床試験の報告が乏しいが,集中治療患者や人工呼吸器装着患者などを対象とした臨床試験の結果がARDS 患者に適応可能である診療領域に関連するCQ では,対象患者を集中治療患者や人工呼吸器装着患者など類似の病態の患者に設定した. アウトカムの相対的重要性 アウトカムは有益なものと害とを列挙し7 個以内にまとめ,GRADE アプローチに則り,1~9 点(1 点:最も重要でない,9 点:最も重要)で相対的に点数化した.点数は各SR 領域の統括委員,責任委員を中心に素案が提案され,パネル委員会の承認を得て決定した. *点数については,そのアウトカムしか発生しないと仮定して,各アウトカムが意思決定に重大である場合に(7~9 点),重要である場合に(4~6 点),重要でない場合に(1~3 点)とした.推奨文については,原則として「重大」と評価されたアウトカムを用いて決定した. SR の方針 各CQ において,SR 班は予備検索を行い,以下の4 つの方針のどれかを選択した.・既存のSR を評価し,その結果を適用する(下記を参照).・新規にSR を行う.・該当文献が非常に乏しいと思われるためSR を行わない.・相対的に臨床的な重要性が低いためSR を行わない. ■ GRADE—Adolopment(既存のSR の評価と適用) 既存のSR を評価し,以下の基準を満たした場合には,その結果を適用した.・CQ が一致している.・網羅的に研究を検索している.・研究の選択や除外のための適格基準が明確に定義されている.・研究のバイアスのリスクについて適切な批判的吟味がなされている. (介入研究ならばCochrane risk of bias tool,観察研究ならばROBINS など)・(適切な場合)効果を推定する定量的統合(メタ解析)を実施している.・AMSTAR2 またはAGREEIIで評価して,SR の質に問題がない.・ 既存SR の出版が検索式作成開始日の2020 年4 月より2 年以上前である場合,同じ検索式で追 加検索することとする.・ 介入のSR に関しては,既存SR の発表後に新規のランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)が実施されている場合,原則として新規にSR を実施する.・既存SR 論文と評価した結果(PICO やAMSTAR2)を方法論班に提示する.・ 方法論班2 名で内容を再検討し,その論文が利用可能かを確認する.その結果を作成委員会へ提 示し,最終決定として承認(もしくは拒否)する.・ 作成委員会の最終決定に従い,既存SRを利用できるかどうか判断する.既存SRが利用できない 場合でも,検索式やrisk of bias を利用することは各班の裁量に任せる.・ RCT のSR 既存論文を利用する場合,アウトカムによっては観察研究を含めることとする.RCT に大規模なものが多く,害について十分な症例数/イベント発症数が確保されていれば,観察研
究は評価しない.一方,害のアウトカムに関して評価がない場合は,観察研究も調べることを基本とする. ■ SR とメタ解析 Step 1:文献検索先行研究,前回のARDS 診療ガイドラインなどから文献検索を行い,CQ に当てはまると考えられる重要論文を抽出し,その重要論文を必ず含むように文献検索式を作成した.文献の検索式作成に当たっては,京都府立医科大学附属医学図書館の監修を受け最終決定した.データベースは原則として,MEDLINE(PubMed),CENTRAL,医学中央雑誌を使用して文献検索を行った.検索期間は原則として制限なしとした.言語は英語または日本語のみとした. Step 2:一次抽出Step 1 で特定されたすべての文献のタイトルと抄録を入手した.文献管理ソフトウエアEnd- Note(Clarivate Analytics,USA)またはMendeley(Mendeley Ltd,UK)の自動重複除去機能を用いて,重複した文献を除去し,手作業で重複した論文を除去した.論文スクリーニング作業は,Web 上のRayyan(https://rayyan.qcri.org/welcome)で行った.独立した2 名の担当者が,文献のタイトルと抄録をレビューし,下記の点で明らかに異なる文献を除外した.介入研究の場合,研究デザイン,対象患者,介入方法,言語で選択した.診断/予測研究の場合,研究デザイン,対象患者,Index test,Reference standard,2×2 表の作成の可否,言語で選択した.2 名の担当者の意見が一致しなかった場合は,3 人目の担当者が評価し,協議を行って判断した. Step 3:二次抽出(フルテキストレビュー)一次抽出の結果を基に本文を取り寄せ,対象となる文献を選択した.介入研究の場合,研究デザイン,対象患者,介入方法で選択した.診断,予測研究の場合,研究デザイン,対象患者,Index test,Reference standard,2×2 表の作成の可否で選択した.2 名の担当者の意見が一致しなかった場合は3 人目の担当者が評価し,協議を行って判断した.一次,二次抽出を通じて文献検索,抽出の過程についてのフローダイアグラムを作成した. Step 4:データの抽出各班で,研究に関する情報の抽出シートをあらかじめ作成し,それに基づき情報を抽出した.データは各CQ で決定したアウトカムごとに分け記載した.データが不足する場合は,必要に応じて著者に問い合わせを行った. Step 5:質的評価,量的統合エビデンスの確実性の評価は,GRADE working group の提唱する方法に従い,各CQ でメタ解析に組み入れる一次研究に関して,Cochrane のrisk of bias tool(ver. 1)(表1),またはQUA- DAS‒2 tool などの標準的なバイアス評価ツールを用いてrisk of bias を評価し,そのほかに非一貫性,非直接性,不精確性,出版バイアスも評価し(表2),最終的にhigh(高),moderate(中), low(低),very low(非常に低)の4 段階にグレーディングした(表3).RCT のみを対象とした
CQ では,エビデンスの確実性はhigh(高)から開始し,グレードを下げる5 要因を評価して,グレードの調整を行った.観察研究を対象としたCQ ではエビデンスの確実性はlow(低)から開始し,グレードを上げる3 要因も評価した(図2). 表1 バイアスのリスク(risk of bias)評価項目要 因説 明 ランダム割り付け順番の生成random sequence generation(選択バイアスselection bias)介入の有無以外のoutcome に影響し得る因子(=交絡因子)を群間で揃えるために行う割り付けの隠蔽化allocation concealment(選択バイアスselection bias)研究に患者などの研究参加者を組み入れる際に,その研究参加者がどちらの群に割り付けられる可能性が高いかを隠しておく研究参加者と治療提供者のマスキングblinding of participants and personnel (施行バイアスperformance bias)介入内容を知っていることによって患者などの研究参加者と治療提供者の行動が変わり,アウトカムの発生に影響を及ぼしてしまうのを防ぐアウトカム評価者のマスキングblinding of outcome assessment(検出バイアスdetection bias)アウトカム評価者についても介入内容を知っていると結果の判定に影響が生じるのを防ぐ不完全なアウトカムデータincomplete outcome data(症例減少バイアスattrition bias)ランダム割り付けされた人が脱落したり,解析の際に除外されたりすると,ランダム割り付けで各群の背景因子が揃ったにもかかわらず,群間に差が出てしまう選択されたアウトカムの報告selective outcome reporting(報告バイアスreporting bias)研究計画で決められたものと異なるアウトカムを報告している場合は,バイアスとなり得るその他のバイアスother sources of biasその他,研究における効果推定値の確実性を揺るがす他のあらゆるバイアスの可能性を検討する 表2 グレードダウン5 要因 要 因説 明 バイアスのリスク(risk of bias)個々の研究の結果を歪めるバイアスが含まれる可能性が研究方法にど のくらい存在し得るか 非一貫性(inconsistency)研究間の治療効果の推定値のばらつき非直接性(indirectness)集められた研究のPICOが推奨を作成するCQの想定しているPICOとどれだけ乖離しているか(外的妥当性)不精確さ(imprecision)研究に含まれる患者数(サンプルサイズ)やイベント数が少ないためにランダム誤差が大きくなって効果推定値の確実性が損なう程度出版バイアス(publication bias)出版されていない研究結果が存在するために効果推定値が正しい値を 示さないこと
また,各アウトカムデータのメタ解析は,Cochrane Review Manager(RevMan5)software ver. 5.4(http://tech.cochrane.org/revman)または,一般的な統計ソフトウエアを用いて,効果の推定値の種類に応じた量的統合を行った.最終的なエビデンスの確実性の決定およびメタ解析を行った後,Summary of findings table (SoF table)とGRADE Evidence Profile(EP)の表を作成した.両表の作成には,GRADEpro GDT(http://gdt.guidelinedevelopment.org/)を用いた.SoF table とEP が各SR 班で作成された後,方法論班を中心に診療ガイドライン作成委員,教育班,サポート班で相互査読を行った.なお,領域B の「ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助を使用するべきか?」に関してはネットワークメタ解析を実施し,エビデンスの確実性の評価はGRADE working group の手法を基に行った(Stata 15.1:StataCorp LLC,College Station,TX,USA).ネットワークメタ解析に組み入れられた研究はすべてRCT であり,直接比較のエビデンスの確実性は,high(高)から開始し,risk of bias,非一貫性,非直接性,出版バイアスを評価し,これを予備的グレードとした3,4).続いて,間接エビデンスの評価において,最も優勢な1 次ループの共通比較との予備的グレードのうち低いほうを採用し,非推移性を評価し,間接比較の予備的グレードを決定した.直接比較および間接比較の最終グレードは,それぞれの予備的グレードに,不精確さの評価を加え決定した.ネットワークエビデンスの最終グレードは,直接比較および間接比較の予備的グレードのうち高いほうを採用し5),さらに,非整合性と不精確さの評価を行い決定した6,7). Step 6:エビデンスの総体の作成各CQ に対する推奨は,エビデンスの確実性と効果と害のバランスに加え,患者の価値観とコス 図2 グレードを下げる/上げる要因とエビデンスの確実性 グレードを下げる5 要因・研究の限界・結果の非一貫性・エビデンスの非直接性・データの不精確さ・出版バイアス 各アウトカム(重要・重大)に関するエビデンスの確実性を評価するランダム化比較試験を「高」,観察研究を「低」としてスタート グレードを上げる3 要因・大きな効果・用量反応勾配・交絡因子のための過小評価エビデンスの 確実性配号文字高++++ A中+++○ B低++○○ C非常に低+○○○ D 表3 エビデンスの確実性の分類 確実性シンボル定 義表 記高い(high) ++++ 効果の推定値が推奨を支持する適切さに強く確信があるA中程度(moderate) +++○効果の推定値が推奨を支持する適切さに中程度の確信があるB低い(low) ++○○効果の推定値が推奨を支持する適切さに対する確信は限定的で あるC 非常に低い(very low)+○○○効果の推定値が推奨を支持する適切さにほとんど確信できないD
トやリソースを検討して決定した(表4).具体的には,EP を基に「Evidence‒to‒Decision(EtD) Framework」と呼ばれる表を作成し推奨文案作成のためにパネル会議に提出した. ■ 推奨の作成 SR を行った,または既存のSR を評価し,その結果を適用する場合SR を行い,または既存のSR を評価し,その結果を適用する場合には,推奨の決定に先立ち,委員会のメンバー(診療ガイドライン作成委員,統括委員SR領域担当,各領域責任委員,方法論班,教育班,サポート班)が協働してEtD テーブルと推奨文の草案を作成した.EtD テーブルと推奨文草案は,方法論班を中心に他の作成委員,サポート班で相互査読を行い,内容について推敲した.推奨文草案の作成については「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル20178)」に準じた.その後,草案を基にエビデンスの確実性・効果のバランス・価値観・受け入れ,実行可能性の4 要因を加味し,以下の手続きによりパネル委員会での合議により推奨を策定した. 信頼に足るエビデンスがない,またはSR を実施していない場合SR を行ったが該当論文がないなど信頼に足るエビデンスがなかった場合や,SR を行わなかった場合は,GRADE アプローチによる推奨の作成とならない(Ungraded)とした.この場合,領域責任委員およびSR統括委員会のメンバー(各領域SR統括委員,方法論班,教育班)が協働して下記の基準を参考に推奨文の草案を作成し,パネル会議で 1 あるいは 2 の方針を決定した. 1 Good practice statement(GPS)として強く推奨する. 2 推奨は示さずに標準的な診療の現状について記述を行った(in our practice statement). Good practice statement正式な文献検索を行わなくとも,間接エビデンスによって当該医療行為の正味利益が確実であることが示される場合,または,当該推奨を支持するリンク付けされた間接エビデンスを収集する作業が膨大かつ非生産的である場合などは,GPS として提示することを検討した9,10).この場合,推奨としては「強い」とし,エビデンスの確実性としては「Ungraded」(Ungraded Recommendation)とした9,10).推奨文にはGPS であることを明記した.GPS については,パネル会議で支持する・しないの2 つの選択肢を示し,パネル委員の90%以上の合意をもってGPS とした.なお,GPS と判断するための基準は以下の7 項目である. 1 記述は明確かつ実行可能か,2 そのメッセージは本当に必要か,3 正味の利益が大きく, 表4 推奨決定の4 要因 要 因説 明 アウトカム全般にわたる全体的なエビデンスの確実性エビデンスの確実性が高いほど,推奨に確信が持てる利益と害のバランス利益が効果を凌駕するならば強く推奨できる患者の価値観や好みのばらつき価値観や好みのばらつきが少ないほど強く推奨できる資源(コストやリソース)必要とするコストが低く,リソースが少ないほど強く推奨できる
なおかつ疑いの余地のないものか,4 その臨床疑問に関するエビデンスは,収集と要約が困難であるか,5 検討するべき具体的問題はあるか,⓺ 根拠を明確に示しているか,7 正式なGRADEアプローチに基づく評価を行ったほうがよいか. In our practice statement推奨にはエビデンスが不十分で,GPS にも当てはまらないが,現在の臨床の実践パターンに基づくガイダンスが適切であると考えられる場合,「in our practice statement」として,現状の標準的な診療について記述した9,10).「in our practice statement」は,現在の診療を記述することを意図したものであり,推奨として解釈されることは想定していない9). パネル委員会での推奨決定 パネル委員会での合意形成は修正Delphi 法を用いた. STEP 1:事前投票各パネル委員は作成された推奨草案に対し1 点から9 点まで点数(1 点:同意できない,9 点:同意できる)をそれぞれ独立して付けた.7 点未満の得点を付けた委員は,判断をした理由も併せて提示した.投票は匿名で,オンラインで実施した.投票に関わっていない独立したメンバー(サポート班もしくは作成委員会事務局)が集計を行い,得点の中央値(median),パーセンタイル範囲(inter‒percentile range:IPR),対象を補正したパーセンタイル範囲(inter‒percentile range adjusted for symmetry:IPRAS),見解不一致指数(disagreement index:DI)を算出した. STEP 2:パネル会議集計結果に基づき下記のようにパネル会議を行い,合意形成を行った. 1 合意を得なかった場合(median<6.5 あるいはDI≧1 の場合)委員会で協議を行った後,EtD と推奨文の修正を行い再投票とした.投票は最大3 回までとした. 2 合意を得た場合(median≧6.5 かつDI<1 の場合)投票の際に委員より提示されたコメントで推奨に対する重大な意見がなかった場合,委員間で投票結果の確認を行い合意形成とした.推奨に対する重大な意見があった場合,委員会で協議を行った後,EtD と推奨文の修正を行い,再投票とした. ■ 推奨の強さについて GRADE アプローチで示される推奨の強さは,1:強い推奨/非推奨・2:弱い推奨/非推奨の4 つのカテゴリーに分類した(表5).なお,「推奨の強さ」の意味するところの表記を表6 に記した.
■ 推奨文作成とパブリックコメント 推奨文,推奨の強さが決定された後,作成委員が解説の文章を執筆した.その後,各学会のホームページで2021 年6 月11 日から6 月24 日までパブリックコメントを募集した.期間中に10 件のコメントがあり,記載の追加などを行った. ■ COVID—19 に関する推奨 COVID‒19 関係については,記載するだけのエビデンスが未だ蓄積しておらず,今回の診療ガイドラインには特に取り上げなかったので,他書を参照していただきたい. 参考文献 1) GRADE working group. http://www.gradeworkinggroup.org/(2022 年9 月1 日閲覧) 2) 相原守夫.診療ガイドラインのためのGRADE システム(第2 版).弘前,凸版メディア,2015. 3) Puhan MA, Schünemann HJ, Murad MH, et al. A GRADE Working Group approach for rating the quality of treatment effect estimates from network meta‒analysis. BMJ 2014;349:g5630. 4) Brignardello‒Petersen R, Bonner A, Alexander PE, et al. Advances in the GRADE approach to rate the certainty in estimates from a network meta‒analysis. J Clin Epidemiol 2018;93:36‒ 44. 5) American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992;20:864‒74. 6) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 6. Rating the quality of evidence‒‒ imprecision. J Clin Epidemiol 2011;64:1283‒93. 表6 推奨の強さのグレード 推奨の強さ表 現数 字定 義説 明強い推奨~する/しないことを推奨する1 介入による望ましい効果(利益) が望ましくない効果(害・負担・ コスト)を上回る,または下回る 確信が強い明確な根拠がない限り,ほとんどの環境でほぼ全員の患者が行うべき治療である弱い推奨~する/しないことを条件付きで推奨する2 介入による望ましい効果(利益) が望ましくない効果(害・負担・ コスト)を上回る,または下回る 確信が弱い推奨の内容に従うことが提案されるが,実際の判断は現場の状況や患者の価値観に応じて決めるべきであり,推奨に反する判断をすることも許容される 表5 推奨文のカテゴリー 推 奨例 文表 記強い推奨「XX(医療行為)を推奨する.」1弱い推奨「XX(医療行為)を条件付きで推奨する.」2強い非推奨「XX(医療行為)をしないことを推奨する.」1弱い非推奨「XX(医療行為)をしないことを条件付きで推奨する.」2
7) Brignardello‒Petersen R, Guyatt GH, Mustafa RA, et al. GRADE guidelines 33:Addressing imprecision in a network meta‒analysis. J Clin Epidemiol 2021;139:49‒56. 8) 日本医療機能評価機構.Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017.https://minds.jcqhc.or.jp/ docs/minds/guideline/pdf/manual_0_2017.pdf(2022 年9 月1 日閲覧) 9) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign international guidelines for the management of septic shock and sepsis‒associated organ dysfunction in children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52‒106. 10) Guyatt GH, Alonso‒Coello P, Schünemann HJ, et al. Guideline panels should seldom make good practice statements:guidance from the GRADE working group. J Clin Epidemiol 2016;80:3‒ 7.
以下,成人5 領域および小児領域に分けて,CQ とその推奨と理由を記述する.なお,イラストを用いた推奨の要約は図1,図2 を,一般の方向け解説については「患者さん,ご家族の方,一般の方向け解説(リーフレット)」を参照していただきたい. 図1 成人患者向け 推奨の要約図2 小児患者向け 推奨の要約 結 果
背景,この問題の優先度 急性呼吸不全の原因となる疾患・病態は多岐にわたる.中でも,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome: ARDS)は,重篤で緊急性を要する病態であり,その診断と治療は極めて重要である. ARDS は,原因となる疾患や傷害に引き続いて発症する,血管内皮・肺胞上皮の透過性亢進によって生じる非心原性肺水腫である.実臨床におけるARDS の診断は,2012 年に提唱されたベルリン定義に基づく.すなわち,1 急性発症,2 胸部画像上の両側性陰影,3 左心不全のみで病態を説明できないこと,4 低酸素血症の4 項目で診断される. ARDS と診断することは,病態の把握,重症度の評価,治療方針に大きな影響を与える.さらに,本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することで,潜在的に予後が改善され ると考えられる. 解 説 PICO 患者(P):急性呼吸不全の患者.介入(I):ARDS の診断を行う.対照(C):ARDS の診断を行わない. エビデンスの要約 急性呼吸不全の原因となる疾患・病態は多岐にわたり,ARDS はその代表的なものの1 つである.急性呼吸不全患者に対し,ARDS の診断を行う,行わない,を比較した臨床研究は存在せず,本CQ についての良質なエビデンスを提示することが難しい.しかし,急性呼吸不全患者にARDSの診断を行うことで,予後の改善が期待される適切な治療(肺保護戦略など)を提 1 2 1 2 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 急性呼吸不全の患者にARDS の診断を行うか? CQ 1 急性呼吸不全の患者に対して,ARDS の診断を行うことを強く推奨する (Good practice statement). ARDS の診断だけでなく,ARDS の原因となった疾患の診断,治療が予後改善に重要である. 推 奨 付帯事項 成人領域
供することにつながる.このためARDSの診断を行うことが有用であると,高い確実性を持って考えられ,1 記述は明確かつ実行可能か, 2 そのメッセージは本当に必要か,3 正味の利益が大きく,なおかつ疑いの余地のないものか,4 その臨床疑問に関するエビデンスは,収集と要約が困難であるか,5 検討するべき具体的問題(例:公平性)はあるか,6 根拠を明確に示しているか,7 正式なGRADE アプローチに基づく評価を行ったほうがよいかについて十分な議論を行い,パネル委員の全会一致に「Good practice statement(GPS)」として可決された.急性呼吸不全の患者を対象として,ARDS か否かの診断を行うことが,診断を行わないことに比べて,直接的に患者アウトカムを改善させるかを比較した臨床研究は存在しない.ARDSと診断された場合は,本診療ガイドラインに提示されているエビデンスに基づいた推奨を行うことで,予後が改善される可能性がある. エビデンスの確実性 高い.GPS の7 項目を満たしている. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 ARDS と診断することで,病態の把握,重症度の評価,治療方針の決定といった重大な臨床的判断を下すことが可能となり,さらには本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することで,予後が改善される可能性がある.したがって,急性呼吸不全患者に対してARDSの診断を行うことの利益は大きい. ARDS の診断は,2012 年に提唱されたベルリン定義に基づく.診断項目に最低限必要となるのは,病歴や身体所見に加えて,胸部画像検査(胸部単純X 線写真,胸部CT)と動脈血液ガス分析であり,患者に対する害や,医療機関に対する追加のコストはおそらく小さいと考え られる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が全員一致で支持された.パネル会議では,推奨文の意図について臨床医が理解しやすいように記載の変更の提案があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 すでに日常臨床で実行されており,コスト,有害性,認容性などを考慮しても,特に問題は生じないと思われる. 関連する他の診療ガイドラインの記載 該当なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでARDSの診断が臨床現場でどのように治療方針の決定に結びつくか,情報収集が必要である. 今後の研究の可能性 ARDS の患者に対しては,適切な治療を行うことで予後が改善することが知られている.しかしながら,急性呼吸不全患者を対象として, ARDS か否かの診断を行うことが,診断を行わないことに比べて,直接的に患者アウトカムを改善させるかを比較した臨床研究は存在しない.かつ,そのような比較介入試験は,倫理上実施が困難と思われる. 3 4 5 3 4 5 6 7
文献検索式と文献選択 該当なし. 本CQ で対象とした研究 該当なし.資料一覧 ・資料CQ1‒1 Evidence‒to‒Decision. 8 9 10 なし. 参考文献
資料CQ1—1 Evidence—to—Decision疑 問 CQ1:急性呼吸不全の患者にARDS の診断を行うか? 集 団:急性呼吸不全の患者介 入: ARDS の診断を行う比較対照: ARDS の診断を行わない主要なアウトカム:退院後の健康関連QOL(quality of life),長期生存・死亡(3 か月よりも長期),短 期生存・死亡〔3 か月以内,院内,集中治療室(intensive care unit:ICU)内〕,重篤な有害事象(死亡,重篤な後遺症) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:急性呼吸不全の原因となる疾患・病態は多岐にわたる.中でも,ARDS は,重篤で 緊急性を要する病態であり,その診断と治療は極めて重要であるARDS は,原因となる疾患や傷害に引き続いて発症する,血管内皮・肺胞上皮の透過性亢進によって生じる非心原性肺水腫である.実臨床におけるARDS の診断は, 2012 年に提唱されたベルリン定義に基づく.すなわち,1 急性発症,2 胸部画像上の両側性陰影,3 左心不全のみで病態を説明できないこと,4 低酸素血症の4 項目で診断されるARDS と診断することは,病態の把握,重症度の評価,治療方針に大きな影響を与える.さらに,本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することで,潜在的に予後が改善されると考えられる 利益相反:なし Good practice statement と判断するための7 つの基準 質 問回 答 (1)記述は明確かつ実行可能かはい,理由:ARDS の診断を行うことは安価で合併症も少な く容易に実行可能である (2)そのメッセージは本当に必要かはい,理由:ARDS と診断することで病態の把握,重症度の 評価,治療方針に大きな影響を与えると考えられ,必要なメッセージである.ARDS を診断し,本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することにより予後が改善される可能性がある (3)正味の利益が大きく,なおかつ疑いの 余地のないものかはい,理由:ARDS と診断することで病態の把握,重症度の 評価,治療方針に大きな影響を与え,潜在的に患者利益に資すると思われる.具体的にはARDS を診断し,本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することにより予後が改善される可能性がある (4)その臨床疑問に関するエビデンスは, 収集と要約が困難であるかはい,理由:ARDS が疑われる急性呼吸不全患者を対象とし て,ARDS の診断を行うか行わないかを比較した臨床研究が存在しない
(5)検討するべき具体的問題(例:公平性) はあるかいいえ,理由:問題はない(6)根拠を明確に示しているかはい,理由:ARDS 患者に対して本診療ガイドラインに提示 されている推奨を実施することにより予後が改善される可能性があるため,ARDS の診断を行うことは重要である (7)正式なGRADE アプローチに基づく評 価を行ったほうがよいかいいえ,理由:エビデンスの要約は困難であり,利益と害の バランスや公平性,コストを検討の必要性はないと思われる 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない急性呼吸不全の原因となる疾患・病態は多岐にわたる.中でも,ARDS は,重篤で緊急性を要する病態であり,その診断と治療は極めて重要であるARDS は,原因となる疾患や傷害に引き続いて発症する,血管内皮・肺胞上皮の透過性亢進によって生じる非心原性肺水腫である.実臨床におけるARDS の診断は,2012 年に提唱されたベルリン定義に基づく.すなわち,1 急性発症,2 胸部画像上の両側性陰影,3 左心不全のみで病態を説明できないこと,4 低酸素血症の4 項目で診断されるARDS と診断することは,病態の把握,重症度の評価,治療方針に大きな影響を与える.さらに,本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することで,潜在的に予後が改善されると考えられるこれらのことから,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度●大きい○一概には言えない○わからない該当のエビデンスはないが,ARDS と診断されれば,本診療ガイドライ ンに提示されている推奨を実施することにより予後が改善につながると考えられ,予想される効果は大きいと考えられる
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからないベルリン定義を用いたARDS の診断は,主に病歴と身体所見,胸部画像 検査(胸部単純X 線写真,胸部CT),動脈血液ガス分析で行われる.これらの検査は一般的に行われている医療行為であり,害はわずかと考えられる エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中●高○研究がない急性呼吸不全の患者を対象として,ARDS か否かの診断を行うことが, 診断を行わないことに比べて,直接的に患者アウトカムを改善させるかどうかを比較した臨床研究は存在しない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確実性や多様性があ る○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はないARDS と診断することで,潜在的に生命予後改善などの患者利益につな がると考えられる.この価値の大きさについて,人によるばらつきは小さいと思われる
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利●介入が有利○一概には言えない○わからない効果と害を比べると,ARDS の診断を行うことの効果は大きいと考えら れる 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない一般的に行われている医療行為であり,たぶん受け入れられる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないすでに日常臨床で実行されているため実行可能と思われる
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ● 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
結 論 推 奨 Recommendation 急性呼吸不全の患者に対して,ARDS の診断を行うことを強く推奨する(Good practice statement). 付帯事項 ARDS の診断だけでなく,ARDS の原因となった疾患の診断,治療が予後改善に重要である. 理 由 Justification 疑 問 急性呼吸不全の患者に対して,ARDS の診断を行うか?患 者 急性呼吸不全の患者.介 入 ARDS の診断を行う.対 照 ARDS の診断を行わない.解 説急性呼吸不全の原因となる疾患・病態は多岐にわたり,ARDSはその代表的なものの1つである.急性呼吸不全患者に対し,ARDS の診断を行う,行わない,を比較した臨床研究は存在せず,本CQについての良質なエビデンスを提示することが難しい.しかし,急性呼吸不全患者にARDS の診断を行うことで,予後の改善が期待される適切な治療(肺保護戦略など)を提供することにつながる.このため,ARDS の診断を行うことが有用であると高い確実性を持って考えられ,(1)記述は明確かつ実行可能か,(2)そのメッセージは本当に必要か,(3)正味の利益が大きく,なおかつ疑いの余地のないものか,(4)その臨床疑問に関するエビデンスは収集と要約が困難であるか,(5)検討するべき具体的問題(例:公平性)はあるか,(6)根拠を明確に示しているか,(7)正式なGRADEアプローチに基づく評価を行ったほうがよいかについて十分な議論を行い,パネル委員の全会一致で「Good practice statement」として可決された.エビデンスの要約急性呼吸不全の患者を対象として,ARDS か否かの診断を行うことが,診断を行わないことに比べて,直接的に患者アウトカムを改善させるかどうかを比較した臨床研究は存在しない.ARDS と診断された場合は,本診療ガイドラインに提示されているエビデンスに基づいた推奨を行うことで,予後が改善される可能性がある.エビデンスの確実性高い.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定ARDS と診断することで,病態の把握,重症度の評価,治療方針の決定といった重大な臨床的判断を下すことが可能となり,さらには本診療ガイドラインに提示されている推奨を実施することで,予後が改善される可能性がある.したがって,急性呼吸不全患者に対してARDS の診断を行うことの利益は大きい. ARDS の診断は,2012 年に提唱されたベルリン定義に基づく.診断項目に最低限必要となるのは,病歴や身体所見に加えて,胸部画像検査(胸部単純X 線写真,胸部CT)と動脈血液ガス分析であり,患者に対する害や医療機関に対する追加のコストは,おそらく小さいと考えられる.
パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が全員一致で支持された.パネル会議では,推奨文の意図について臨床医が理解しやすいように記載の変更の提案があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項ARDS の診断だけでなく,ARDS の原因となった疾患の診断,治療が予後改善に重要である. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations すでに,日常臨床で実行されており,コスト,有害性,認容性などを考慮しても,特に問題は生じないと思われる. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後に,アンケートなどでARDS の診断が臨床現場でどのように治療方針の決定に結びつくか情報収集が必要である. 研究の可能性 Research priorities ARDS の患者に対しては,適切な治療を行うことで予後が改善することが知られている.しかしながら,急性呼吸不全患者を対象として,ARDS か否かの診断を行うことが,診断を行わないことに比べて,直接的に患者アウトカムを改善させるかどうかを比較した臨床研究は存在しない.かつ,そのような比較介入試験は,倫理上実施が困難と思われる.
背景,この問題の優先度 ベルリン定義に基づくARDS診断基準において,「ARDS は心原性肺水腫では説明できない両側の浸潤影を伴う急性の呼吸不全」とされている.したがって,ARDS 診療の過程において,心原性肺水腫の鑑別は重要である.BNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド:brain natriuretic peptide),NT‒proBNP 値(N 末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド:N‒terminal pro‒brain natriuretic peptide)はいずれも血液検査で測定可能であり,心不全診療における補助診断手段として広く浸透している検査である.これらは,心筋(主には心室)に対する伸展ストレスに応じ分泌される.心房からも10%程度分泌されており,心房細動でも軽度上昇するほか,腎機能低下症例でも値が上昇する.急性呼吸不全患者の診療において,心原性肺 水腫の診断が正しく下されれば,適切な利尿薬,血管拡張薬の使用により予後の改善が期待される.正しく除外診断されれば,他の呼吸不全の原因を積極的に検索することとなる.一方,誤診断した場合は,薬剤の適切ではない投与や,他の呼吸不全原因疾患を見逃してしまう可能性が生じ,有害である.よって,血中BNP 検査,血中NT‒proBNP検査の実施は急性呼吸不全患者の診療に大きな影響を与えると考えられ,本問題は臨床上重要と考えられた.これらから「急性呼吸不全の原因疾患(心原性肺水腫)の鑑別に際して,血中BNP,血中NT‒proBNP を用いるか?」という疑問が設定された. 1領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 急性呼吸不全の原因疾患(心原性肺水腫)の鑑別に際して,血中BNP,血中NT—proBNP を用いるか? CQ 2 急性呼吸不全患者に対し,心原性肺水腫の鑑別に際して,血中BNP または 血中NT—proBNP を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常 に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
解 説 PICO 患者(P):急性呼吸不全の患者.検査:血中BNP,血中NT‒proBNP.目 的:救急外来,ICU またはそれに準ずる場所 での心原性肺水腫の鑑別.検 査結果に基づく診療:陽性であれば治療の主 体は心不全管理となり,心機能を加味した前負荷や後負荷の調整が主たる治療となる.陰性であれば心不全特異的な体液管理は行わず,かつ,呼吸不全を呈する他の原因疾患や病態の鑑別をより強く進めていくこととなる. エビデンスの要約 血中BNP(カットオフ値400~500 pg/mL) (3RCT:n=252)の心原性肺水腫に対する統合感度は,0.77(95%CI:0.65~0.85),統合特異度は,0.62(95%CI:0.53~0.70)であった.血中BNP(カットオフ値1,000 pg/mL) (2RCT:n=128)では,心原性肺水腫に対する統合感度は,0.50(95%CI:0.36~0.64),統合特異度は,0.82(95%CI:0.72~0.89)となった.血中NT‒proBNP(カットオフ値4,000 pg/ mL)(1RCT:n=121)では,心原性肺水腫に対する統合感度は,0.71(95%CI:0.53~ 0.85),統合特異度は,0.89(95%CI:0.80~ 0.94)となった. エビデンスの確実性 検査の診断性能に関するエビデンスの確実性は,ほぼすべてで「非常に低い」と判定された.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 急性呼吸不全患者におけるBNP 検査ならびにNT‒proBNP 検査に関して,それら検査実施による望ましい効果,望ましくない効果の両者のバランスを加味すれば,検査実施はおおむね支持される.一方で,検査全般に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」か「低い」である.実行可能性は問題なく,一般に受け入れられている医療行為である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が,中央値7 点,見解不一致指数0.164であった.パネル会議ではBNP またはNT‒ proBNP のどちらかを測定したほうがいいかなどの質問があったが,エビデンスを示してどちらが有用とはいえないと議論があった.また,保険診療上,両方の検査を同時に行うことはできないといった議論があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 BNP 値,NT pro‒BNP 値ともに,心房細動,慢性心不全,腎機能低下症例において上昇する可能性がある.結果解釈に関して検査時の他の状態を併せて考慮する必要がある.上記検査は,保険診療においては同時に実施することはできない点に留意が必要である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 2 1 2 3 5 3 4 5
治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 いずれもエビデンスの確実性は低く,ICU 患者での,より多くの診断精度研究が望まれる.可能であるならば検査実施によって患者の重要なアウトカムが改善するかを評価するランダム化比較試験(randomized controlled trial: RCT)が求められる. 文献検索式と文献選択 「BNP」「NT‒proBNP」「Cardiopulmonary Edema」をキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL およびClinicalTrials. gov で2020 年6 月2 日までの文献を検索したところ1,204 件の研究が同定され,スクリーニングの結果4 件の研究1‒4)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Karmpaliotis 20071), Levitt 20082), Komiya 20113), Monnet 20074). 資料一覧 ・資料CQ2‒1 Search strategy.・資料CQ2‒2 フローダイアグラム.・資料CQ2‒3 Risk of bias.・資料CQ2‒4 Forest plot.・資料CQ2‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ2‒6 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Karmpaliotis D, Kirtane AJ, Ruisi CP, et al. Diagnostic and prognostic utility of brain natriuretic Peptide in subjects admitted to the ICU with hypoxic respiratory failure due to noncardiogenic and cardiogenic pulmonary edema. Chest 2007;131:964‒ 71 2) Levitt JE, Vinayak AG, Gehlbach BK, et al. Diagnostic utility of B‒type natriuretic peptide in critically ill patients with pulmonary edema:a prospective cohort study. Crit Care 2008;12:R3. 3) Komiya K, Ishii H, Teramoto S, et al. Diagnostic utility of C‒reactive protein combined with brain natriuretic peptide in acute pulmonary edema:a cross sectional study. Respir Res 2011;12:83. 4) Monnet X, Anguel N, Osman D, et al. Assessing pulmonary permeability by transpul- monary thermodilution allows differentiation of hydrostatic pulmonary edema from ALI/ARDS. Intensive Care Med 2007;33:448‒53. 参考文献
資料CQ2—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/2) #1 Natriuretic Peptide, Brain[mh] OR BNP OR B type natriuretic peptide OR brain natriuretic peptide #2 Respiratory distress syndrome, adult[mh] OR shock lung OR acute respiratory distress syndrome OR Adult respiratory distress syndrome #3 ARDS OR ALI #4 Respiratory Insufficiency[mh] OR Respiratory Failure OR Respiratory Depression OR Ventilatory Depression OR Depressions, Ventilatory OR acute respiratory failure #5 Acute lung injury[mh] OR Acute lung injuries OR lung injury #6 severe acute respiratory syndrome[mh] OR severe acute respiratory syndrome #7 Pulmonary edema[mh] OR Cardiogenic pulmonary edema #8 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9 #1 AND #8 #10 animals[mh] NOT humans[mh] #11 #9 NOT #10 CENTRAL(Search date:2020/6/2) #1 MeSH descriptor: [Natriuretic Peptide, Brain] explode all trees #2 bnp #3 b type natriuretic peptide #4 natriuretic peptide, brain #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #7 MeSH descriptor: [Respiratory Insufficiency] explode all trees #8 MeSH descriptor: [Severe Acute Respiratory Syndrome] explode all trees #9 MeSH descriptor: [Lung Injury] explode all trees #10 respiratory distress syndrome adult #11 respiratory distress syndrome acute #12 respiratory insufficiency #13 severe acute respiratory syndrome #14 lung injury #15 #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #5 and #15
資料CQ2—2 フローダイアグラム データベース検索で同定された研究n=1,211 MEDLINE(PubMed) 808件Cochrane CENTRAL 73件ClinicalTrials.gov 330件 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=1,211 重複した研究 n=7 重複研究を除外した研究 n=1,204 除外基準に該当した研究 n=1,061 フルテキストで適格性を評価した研究 n=143 系統的レビューに組み入れた研究 n=4 メタ解析に組み入れた研究 BNP n=3メタ解析に組み入れた研究 NT-proBNP n=1除外基準に該当した研究 n=139理由:・ 言語 14件・ 研究デザイン 16件・ 対象患者 100件・ その他 6件・ 2×2表が作成不可 3件
資料CQ2—3 Risk of bias
資料CQ2—4 Forest plot 血中BNP(カットオフ値400~500 pg/mL) 血中BNP(カットオフ値1,000 pg/mL) 血中NT-proBNP(カットオフ値4,000 pg/mL)
資料CQ2—5 エビデンスプロファイル 検査:血中BNP(カットオフ値400~500 pg/mL) 感 度0.77(95% CI:0.65~0.85)特異度0.62(95% CI:0.53~0.70)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(Index test が陽性で,複数の専門家により心不全と診断された患者) 3 研究252 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻で ないb深刻c 非常に 深刻dなし38 (32~ 43) 77 (65~ 85) 153 (130~ 170) +○○○非常に低偽陰性(Index test が陰性で,複数の専門家により心不全と診断された患者) 12 (7~ 18) 23 (15~ 35) 47 (30~ 70) 真陰性(Index test が陰性で,複数の専門家により心不全ではないと診断された患者) 3 研究252 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻で ないb深刻c 深刻で ないeなし590 (504~ 669) 559 (478~ 634) 497 (425~ 563) +○○○非常に低偽陽性(Index test が陽性で,複数の専門家により心不全ではないと診断された患者) 360 (281~ 446) 341 (266~ 422) 303 (237~ 375) 説 明a:QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で1/3 個,インデックス検査(index test)で2/3 個,参照基準で0/3 個,フローとタイミングで2/3 個であった.このように,2 項目以上で,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため,「非常に深刻」と判断した. b:各研究におけるapplicability はすべてlow risk of bias である.以上より「深刻でない」と判断した. c:システマティックレビュー(SR)に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した.3 つの研究において,点推定値と信頼区間(CI)に相違があるが,異質性を説明するためのサブグループ解析や感度解析ができず原因を特定できなかった.したがって,「深刻」と判断した. d:SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e:SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,7 回の真陰性につき1 回の偽陰性 を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陰性と重み付けした偽陰性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体として不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:血中BNP(カットオフ値1,000 pg/mL) 感 度0.50(95% CI:0.36~0.64)特異度0.82(95% CI:0.72~0.89)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(Index test が陽性で,複数の専門家により心不全と診断された患者) 2 研究128 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb深刻c深刻dなし25 (18~ 32) 50 (36~ 64) 100 (71~ 129) +○○○非常に低偽陰性(Index test が陰性で複数の専門家により心不全と診断された患者) 25 (18~ 32) 50 (36~ 64) 100 (71~ 129) 真陰性(Index test が陰性で複数の専門家により心不全ではないと診断された患者) 2 研究128 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb深刻c 深刻で ないeなし780 (689~ 845) 739 (653~ 800) 657 (580~ 711) ++○○ 低偽陽性(Index test が陽性で複数の専門家により心不全ではないと診断された患者) 170 (105~ 261) 161 (100~ 247) 143 (89~ 220) 説 明a:QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で1/2 個,インデックス検査(index test)で1/2 個,参照基準で0/2 個,フローとタイミングで1/2 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b:各研究におけるapplicability はすべてlow risk of bias である.以上より「深刻でない」と判断した. c:SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した.2 つの研究において,点推定値とCI に相違があるが,異質性を説明するためのサブグループ解析や感度解析ができず原因は特定できなかった.したがって,「深刻」と判断した. d:SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,5 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e:SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陰性につき1 回の偽陰 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陰性と重み付けした偽陰性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:血中NT—proBNP(カットオフ値4,000 pg/mL) 感 度0.71(95% CI:0.53~0.85)特異度0.89(95% CI:0.80~0.94)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(Index test が陽性で,複数の専門家により心不全と診断された患者) 1 研究121 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻で ないb深刻で ないc深刻dなし36 (27~ 43) 71 (53~ 85) 142 (106~ 170) +○○○非常に低偽陰性(Index test が陰性で複数の専門家により心不全と診断された患者) 14 (7~ 23) 29 (15~ 47) 58 (30~ 94) 真陰性(Index test が陰性で複数の専門家により心不全ではないと診断された患者) 1 研究121 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻で ないb深刻で ないc深刻eなし845 (760~ 893) 801 (720~ 846) 712 (640~ 752) +○○○非常に低偽陽性(Index test が陽性で複数の専門家により心不全ではないと診断された患者) 105 (57~ 190) 99 (54~ 180) 88 (48~ 160) 説 明a:1 つの研究のみが採用された.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断されたドメインは,患者選択,インデックス検査(index test)であった.ARDS とCPE の両方の要素を満たす患者群を除外され,index test のカットオフ値は事前に設定されていない.したがって,「非常に深刻」と判断した. b:採用された研究におけるapplicability はすべてlow risk of bias である.以上より,「深刻でない」と判断した. c:深刻でないとしているが,研究は1 つしかない. d:SR に組み込まれた患者総数が最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに, 5 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e:SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陰性につき1 回の偽陰 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陰性と重み付けした偽陰性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.
資料CQ2—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ2:急性呼吸不全の原因疾患(心原性肺水腫)の鑑別に際して,血中BNP, 血中NT—proBNP を用いるか? 集 団:急性呼吸不全の患者診断対象:心原性肺水腫検 査:血中BNP,NT— pro BNP検査の目的/役割: ARDS 診療における心原性肺水腫の鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:陽性であれば治療の主体は心不全の管理となり,心機能を加味した前負荷や後負荷 の調整が主たる治療となる.陰性であれば心不全に特異的な体液管理は行わず,かつ,呼吸不全を呈する他の原因疾患や病態の鑑別をより強く進めていくこととなる 視 点:個人背 景:ベルリン定義に基づくARDS 診断基準において,「ARDS は心原性肺水腫では説明で きない両側の浸潤影を伴う急性の呼吸不全」とされている.したがって,ARDS 診療の過程において,心原性肺水腫の鑑別は重要である.BNP 値(脳性ナトリウム利尿ペプチド:brain natriuretic peptide),NT—proBNP 値(N 末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド:N—terminal pro—brain natriuretic peptide)はいずれも血液検査で測定可能であり,心不全診療における補助診断手段として広く浸透している検査である.これらは,心筋(主には心室)に対する伸展ストレスに応じ分泌される.心房からも10%程度分泌されており心房細動でも軽度上昇するほか,腎機能低下症例でも値が上昇する急性呼吸不全患者の診療において,心原性肺水腫の診断が正しく下されれば,適切な利尿剤,血管拡張薬の使用により予後の改善が期待される.正しく除外診断されれば,他の呼吸不全の原因を積極的に検索することとなる.一方,誤診断した場合は,薬剤の適切ではない投与や,他の呼吸不全原因疾患を見逃してしまう可能性が生じ,有害であるよって,血中BNP 検査,血中NT—proBNP 検査の実施は急性呼吸不全患者の診療に大きな影響を与えると考えられ,本問題は臨床上重要と考えられた.これらから「急性呼吸不全の原因疾患(心原性肺水腫)の鑑別に際して,血中BNP,血中NT—proBNPを用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし
評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高 い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない○わからない急性呼吸不全患者の診療において,心原性肺水腫の診断が 正しく下されれば,適切な利尿剤,血管拡張薬の使用により予後の改善が期待される.正しく除外診断されれば,他の呼吸不全の原因を積極的に検索することとなる.一方,誤診断した場合は,薬剤の適切ではない投与や,他の呼吸不全原因疾患を見逃してしまう可能性が生じ,有害であるよって,血中BNP 検査,血中NT—proBNP 検査の実施は急性呼吸不全患者の診療に大きな影響を与えると考えられ,本問題は臨床上重要と考えられた.したがって,この臨床疑問の優先度は高いと考えられた 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確○正確○不正確○非常に不正確●一概には言えない○わからないSR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 検査のカットオフによって検査の精度は異なるため,検査の精度は「一概には言えない」と判断した血中BNP 検査<カットオフ値400~500 pg/mL> (3 RCT:n=252)統合感度:0.77(95% CI:0.65~0.85)統合特異度:0.62(95% CI:0.53~0.70) (bivariate model) BNP 1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性38 (32~ 43) 77 (65~ 85) 153 (130~ 170)非常に低 偽陰性12 (7~ 18) 23 (15~ 35) 47 (30~ 70) 真陰性590 (504~ 669) 559 (478~ 634) 497 (425~ 563)非常に低 偽陽性360 (281~ 446) 341 (266~ 422) 303 (237~ 375)非常に低
血中BNP 検査<カットオフ値1,000 pg/mL> (2 RCT:n=128)統合感度:0.50(95% CI:0.36~0.64)統合特異度:0.82(95% CI:0.72~0.89) (bivariate model) BNP 1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性25 (18~ 32) 50 (36~ 64) 100 (71~ 129)非常に低 偽陰性25 (18~ 32) 50 (36~ 64) 100 (71~ 129) 真陰性780 (689~ 845) 739 (653~ 800) 657 (580~ 711)低 偽陽性170 (105~ 261) 161 (100~ 247) 143 (89~ 220) 血中NT—proBNP <カットオフ値4,000 pg/mL> (1 RCT:n=121)感度:0.71(95% CI:0.53~0.85)特異度:0.89(95% CI:0.80~0.94) NT— proBNP 1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性36 (27~ 43) 71 (53~ 85) 142 (106~ 170)非常に低 偽陰性14 (7~ 23) 29 (15~ 47) 58 (30~ 94) 真陰性845 (760~ 893) 801 (720~ 846) 712 (640~ 752)非常に低 偽陽性105 (57~ 190) 99 (54~ 180) 88 (48~ 160)非常に低
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない検査のカットオフによって好ましい効果として得られる真 陽性の数が異なるため,「一概には言えない」と判断した 1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受ける人数(真陽性の人数)血中BNP 検査 <カットオフ値400~500 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする38 人77 人153 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中BNP 検査 <カットオフ値1,000 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする25 人50 人100 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中NT—proBNP <カットオフ値4,000 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする36 人71 人142 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.1 と 設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受ける人数を検討した結果,望ましくない効果は「わずか」と判断した 血中BNP 検査 <カットオフ値400~500 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする36 人34 人30 人検査結果によらず 全員治療する95 人90 人80 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中BNP 検査 <カットオフ値1,000 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする17 人16 人14 人検査結果によらず 全員治療する95 人90 人80 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中NT—proBNP <カットオフ値4,000 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする10 人10 人9 人検査結果によらず 全員治療する95 人90 人80 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した 全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は,0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した
検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実 性を採用し「非常に低い」と判断した 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に体液管理などの心原性肺水腫の治療は「優れた医療上の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期 待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない
検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに心原性肺水腫の治療が 開始されるため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性やばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある(真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある)
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する●たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない○わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性 と診断され不必要な治療を受ける不利益,および検査の害について正味の利益(net—benefit)を求めた 血中BNP 検査<カットオフ値400~500 pg/mL>正味の利益(net—benefit) (1,000 人に検査を実施した際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする2 人43 人124 人検査結果によらず 全員治療する-45 人10 人120 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重みを0.1 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに治療をしない場合で正味のnet—benefit を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる 血中BNP 検査<カットオフ値1,000 pg/mL>正味の利益(net—benefit) (1,000 人に検査を実施した際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする8 人34 人86 人検査結果によらず 全員治療する-45 人10 人120 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重みを 0.1 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算し た.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した 重大な有害事象が無視できる程度の場合は,0として計算した
検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに治療をしない場合でnet— benefit を比較すると,事前確率5,10%と想定した場合は,検査をすることで正味の利益を得られることが推定される.一方で,事前確率20%と想定した場合は,検査を実施するより,検査を実施せずに全員に治療する場合が正味の利益が得られることが推定される 血中NT—proBNP <カットオフ値4,000 pg/mL>正味の利益(net—benefit) (1,000 人に検査を実施した際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする25 人61 人133 人検査結果によらず 全員治療する-45 人10 人120 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重みを 0.1 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算し た.検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに全員に治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる 以上より,「多分検査実施は支持される.ただし,BNP 検査に関してcutoff 値を1,000 pg/mL とした場合,有病率が20%を超えるような状況であれば,検査をせずに陽性と考え診療を行ったほうが利益を有する可能性がある 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れられる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考●可能○たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,実施可能と考えられ る 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない
検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ● ○
結 論 推 奨 Recommendation 急性呼吸不全患者に対し,心原性肺水腫の鑑別に際して血中BNP または血中NT— proBNP を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 急性呼吸不全の原因疾患(心原性肺水腫)の鑑別に際して,血中BNP,血中NT‒proBNP検査を用いるか?患 者 急性呼吸不全の患者.検 査 血中BNP,血中NT‒proBNP.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準ずる場所での心原性肺水腫の鑑別.検査結果に基づく診療陽性であれば治療の主体は心不全管理となり,心機能を加味した前負荷や後負荷の調整が主たる治療となる.陰性であれば心不全特異的な体液管理は行わず,かつ,呼吸不全を呈する他の原因疾患や病態の鑑別をより強く進めていくこととなる.エビデンスの要約血中BNP<カットオフ値400~500 pg/mL> (3 RCT:n=252),統合感度:0.77(95% CI:0.65~0.85),統合特異度:0.62(95% CI:0.53~0.70).血中BNP<カットオフ値1,000 pg/mL> (2 RCT:n=128),統合感度:0.50(95% CI:0.36~0.64),統合特異度:0.82(95% CI:0.72~0.89).血中NT‒proBNP<カットオフ値4,000 pg/mL> (1 RCT:n=121),統合感度:0.71(95% CI:0.53~0.85),統合特異度:0.89(95% CI:0.80~0.94).エビデンスの確実性検査の診断性能に関するエビデンスの確実性は,ほぼすべてで「非常に低い」と判定された.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定急性呼吸不全患者におけるBNP 検査ならびにNT‒proBNP 検査に関して,それら検査実施による望ましい効果,望ましくない効果の両者のバランスを加味すれば,検査実施はおおむね支持される.一方で,検査全般に関するエビデンス確実性は「非常に低い」か「低い」である.実行可能性は問題なく,一般に受け入れられている医療行為である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が,中央値7 点,見解不一致指数0.164 であった.パネル会議ではBNP またはNT‒proBNP のどちらかを測定したほうがいいかなどの質問があったが,エビデンスを示してどちらが有用とは言えないと議論があった.また,保険診療上,両方の
検査を同時に行うことはできないといった議論があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項事前確率が高くなれば(目安として30%付近),検査結果にかかわらず心不全ありと考えて治療を進めるほうが,検査結果に基づいて治療方針を決めるより利益が勝る可能性がある.また,上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば,効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations BNP 値,NT pro‒BNP 値ともに,心房細動,慢性心不全,腎機能低下症例において上昇する可能性がある.結果解釈に関して,検査時の他の状態を併せて考慮する必要がある.上記検査は,保険診療においては同時に実施することはできない点に留意が必要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities いずれもエビデンスの確実性は低く,ICU 患者での,より多くの診断精度研究が望まれる.可能であるならば,検査実施によって患者の重要なアウトカムが改善するかどうかを評価するRCT が求められる.
背景,この問題の優先度 ARDS の原因疾患のうち,肺炎は最も頻度が高く(約30~60%),また,細菌性肺炎が最も一般的である.細菌性肺炎を早期に認知し抗菌薬投与を開始することは生命予後の改善が期待でき,ARDS の診療の過程において重要である.CRP(C 反応性タンパク),PCT(プロカルシトニン)は炎症反応により産生されるタンパク質およびペプチドである.救急外来,ICU で測定され,高値の場合には細菌性肺炎が疑われ,更なる検査,治療が行われる.検査により早期診断を行うことで適切な治療介入を提供でき,潜在的に患者の生命予後改善に寄与することが期待される一方で,誤診断した場合,不必要な抗菌薬の投与となり,耐性菌の発生や薬剤の副反応などの害につながる可能性がある.また,不適切な抗菌薬の狭域化を招くことで,患者予後を悪くする可能性が考えられる.これら から「ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に,血清CRP,血清PCT を用いるか?」という疑問が設定された. 解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:血清CRP,血清PCT.目的:救急外来,ICU,または,それに準じた 状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療:陽性(細菌性肺炎が疑 われる)であれば,更なる診断検査を行い,適切な抗菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う. 1 2 1 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCTを用いるか? CQ 3 ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCT の 結果のみで判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低 い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 血清CRP(14RCT:n=3,093)の細菌性肺炎に対する統合感度は,0.76(95%CI:0.63~ 0.89),統合特異度は,0.78(固定)であった.血清PCT(21RCT:n=4,721)では,統合感度は,0.64(95%CI:0.56~0.73),統合特異度は,0.83(固定)となった(HSROC モデルを用いた推定,一次研究の特異度の中央値で固定). エビデンスの確実性 バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮し,検査の影響に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 血清CRP 値や血清PCT 値の検査結果に基づいて細菌性肺炎を疑い診療を開始する場合と,それらの検査結果にかかわらず細菌性肺炎があると考えて診療する場合とを比較すると,より多くの臨床状況で利益を得られるのは,後者の場合と考えられる.検査の合併症は臨床の意思決定に関して無視できるほどわずかと考えた.実行可能性はおそらく問題なく,一般に受け入れられている医療行為である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では,推奨文の表現について議論があった.推奨文の日本語表現を一部変更し,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし.実施上の考慮事項 今回,メタ解析ではHSROC モデルによる統合であり,明確なカットオフは定義できていない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析の結果の確実性は「非常に低い」であり,CRP 値やPCT 値の細菌性肺炎の診断性能に関する更なる確実性の高い研究が望まれる. 文献検索式と文献選択 「Pneumonia」「C‒reactive protein」「Procalcitonin」をキーワードとしてPubMed およびCochrane CENTRAL で2020 年7 月10 日までの文献を検索したところ,648 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,22 件の研究1‒22)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Holm 20071), Heining 20162), Ramirez 20083), Legriel 20194), Shokri 20185), Porfyridis 20146), Müller 20077), Self 20178), Titova 20199), Ding 201810), Boussekey 200511), Chen 201812), Bafadhel 201113), Alba 201614), Le Bel 201515), Habib 201616), Dallas 201117), Duflo 200218), Berge 201819), 3 4 5 3 4 5 6 7 8 9
Luyt 200820), Wussler 201921), Adnet 199722). 資料一覧 ・資料CQ3‒1 Search strategy.・資料CQ3‒2 フローダイアグラム. ・資料CQ3‒3 Risk of bias.・資料CQ3‒4 Forest plot.・資料CQ3‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ3‒6 Evidence‒to‒Decision. 10 1) Holm A, Pedersen SS, Nexoe J, et al. Procalcitonin versus C‒reactive protein for pre- dicting pneumonia in adults with lower respiratory tract infection in primary care. Br J Gen Pract 2007;57:555‒60. 2) Heining L, Giesa C, Ewig S. MR‒proANP, MR‒proADM, and PCT in Patients Present- ing with Acute Dyspnea in a Medical Emergency Unit. Lung 2016;194:185‒91. 3) Ramirez P, Garcia MA, Ferrer M, et al. Sequential measurements of procalcitonin lev- els in diagnosing ventilator‒associated pneumonia. Eur Respir J 2008;31:356‒62. 4) Legriel S, Grigoresco B, Martel P, et al. Diagnostic Accuracy of Procalcitonin for Early Aspiration Pneumonia in Critically Ill Patients with Coma:a Prospective Study. Neurocrit Care 2019;30:440‒8. 5) Shokri M, Ghasemian R, Bayani M, et al. Serum and alveolar procalcitonin had a weak diagnostic value for ventilator‒associated pneumonia in patients with pulmonary infection score≥6. Rom J Intern Med 2018;56:9‒14. 6) Porfyridis I, Georgiadis G, Vogazianos P, et al. C‒reactive protein, procalcitonin, clin- ical pulmonary infection score, and pneumonia severity scores in nursing home acquired pneumonia. Respir Care 2014;59:574‒81. 7) Müller B, Harbarth S, Stolz D, et al. Diagnostic and prognostic accuracy of clinical and laboratory parameters in community‒acquired pneumonia. BMC Infect Dis 2007; 7:10. 8) Self WH, Balk RA, Grijalva CG, et al. Procalcitonin as a marker of etiology in adults hospitalized with community‒acquired pneumonia. Clin Infect Dis 2017;65:183‒ 90 9) Titova E, Christensen A, Henriksen AH, et al. Comparison of procalcitonin, C‒reactive protein, white blood cell count and clinical status in diagnosing pneumonia in patients hospitalized with acute exacerbations of COPD:a prospective observational study. Chron Respir Dis 2019 Jan‒Dec;16:1479972318769762. 10) Ding HG, Zhou HF, Diao MY, et al. A novel biomarker of serum Histidine‒Rich Glyco- protein(HRG)for diagnosing and predicting prognosis of ventilator‒associated pneumonia(VAP):a pilot study. Eur Rev Med Pharmacol Sci 2018;22:7920‒7. 11) Boussekey N, Leroy O, Georges H, et al. Diagnostic and prognostic values of admis- sion procalcitonin levels in community‒acquired pneumonia in an intensive care unit. Infection 2005;33:257‒63. 12) Chen C, Yan M, Hu C, et al. Diagnostic efficacy of serum procalcitonin, C‒reactive protein concentration and clinical pulmonary infection score in Ventilator‒Associated Pneumonia. Med Sci(Paris). 2018;34 Focus issue F1:26‒32. 13) Bafadhel M, Clark TW, Reid C, et al. Procalcitonin and C‒reactive protein in hospital- ized adult patients with community‒acquired pneumonia or exacerbation of asthma 参考文献
or COPD. Chest 2011;139:1410‒8. 14) Alba GA, Truong QA, Gaggin HK, et al. Diagnostic and prognostic utility of procalci- tonin in patients presenting to the emergency department with dyspnea. Am J Med 2016;129:96‒104.e7. 15) Le Bel J, Hausfater P, Chenevier‒Gobeaux C, et al. Diagnostic accuracy of C‒reactive protein and procalcitonin in suspected community‒acquired pneumonia adults visiting emergency department and having a systematic thoracic CT scan. Crit Care 2015;19:366. 16) Habib SF, Mukhtar AM, Abdelreheem HM, et al. Diagnostic values of CD64, C‒reac- tive protein and procalcitonin in ventilator‒associated pneumonia in adult trauma patients:a pilot study. Clin Chem Lab Med 2016;54:889‒95. 17) Dallas J, Brown SM, Hock K, et al. Diagnostic utility of plasma procalcitonin for nos- ocomial pneumonia in the intensive care unit setting. Respir Care 2011;56:412‒9. 18) Duflo F, Debon R, Monneret G, et al. Alveolar and serum procalcitonin:diagnostic and prognostic value in ventilator‒associated pneumonia. Anesthesiology 2002; 96:74‒9. 19) Berge K, Lyngbakken MN, Einvik G, et al. Diagnostic and prognostic properties of procalcitonin in patients with acute dyspnea:Data from the ACE2 Study. Clin Biochem 2018;59:62‒8. 20) Luyt CE, Combes A, Reynaud C, et al. Usefulness of procalcitonin for the diagnosis of ventilator‒associated pneumonia. Intensive Care Med 2008;34:1434‒40. 21) Wussler D, Kozhuharov N, Tavares Oliveira M, et al. Clinical Utility of Procalcitonin in the Diagnosis of Pneumonia. Clin Chem 2019;65:1532‒42. 22) Adnet F, Borron SW, Vicaut E, et al. Value of C‒reactive protein in the detection of bacterial contamination at the time of presentation in drug‒induced aspiration pneumonia. Chest 1997;112:466‒71.
資料CQ3—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/10) #1 Pneumonia/diagnosis[Mesh] #2 C-reactive protein[MH] #3 CRP[tiab] #4 Procalcitonin[Mesh] #5 Calcitonin[Mesh] #6 psep[TIAB] #7 presepsin[TIAB] #8 presepsin protein, human [NM] #9 "soluble CD14 subtype"[tiab] #10 sCD14-ST[tiab] #11 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 #12 #1 AND #11 CENTRAL(Search date:2020/6/10) #1 [mh Pneumonia] #2 [mh "C-reactive protein"] #3 CRP:ti,ab #4 [mh Procalcitonin] #5 [mh Calcitonin] #6 psep:ti,ab #7 presepsin:ti,ab #8 presepsin protein, human:kw #9 "soluble CD14 subtype":ti,ab #10 "sCD14-ST":ti,ab #11 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 #12 #1 AND #11
資料CQ3—2 フローダイアグラム 除外基準に該当した研究n=12理由:・ 言語 0件・ 研究デザイン 4件・ 対象患者 7件 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=126,729 MEDLINE(PubMed) 105,166件Cochrane CENTRAL 21,563件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=695 重複した研究 n=47 除外基準に該当した研究 n=612 重複研究を除外した研究 n=648 フルテキストで適格性を評価した研究 n=36 系統的レビューに組み入れた研究 n=24 メタ解析に組み入れた研究 n=22著者に問い合わせるも回答なし n=2
資料CQ3—3 Risk of bias 血清CRP検査血清PCT検査
資料CQ3—4 Forest plot 血清CRP検査 血清PCT検査
資料CQ3—5 エビデンスプロファイル 血清CRP 検査 感 度1 0.76(95% CI:0.63~0.89)特異度1 0.78(固定)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 効果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(細菌性肺炎を持つ患者) 14 研究3,093患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻dなし38 (32~ 44.5) 76 (63~ 89) 152 (126~ 178) +○○○非常に低偽陰性(誤って細菌性肺炎を持っていないと分類された患者) 12 (5.5~ 18) 24 (11~ 37) 48 (22~ 74) 真陰性(細菌性肺炎のない患者) 14 研究3,093患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻cなしeなし741 702 624 +○○○非常に低偽陽性(誤って細菌性肺炎を持つと分類される患者) 209 198 176説 明1.HSROC モデルを用いて算出した.感度算出のために,特異度を一次研究の中央値である0.765 で固定した.このため,特異度ではCI の記載はない. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で9/14 個,インデックス検査で6/14 個,参照基準で1/14 個,フローとタイミングで0/14 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で5/14 個,インデックス検査で2/14 個,参照基準で0/14 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,急性呼吸不全患者あるいは細菌性肺炎(肺炎)として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,1 回の真陽性につき3 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合によって,検査に正味の利益があるかどうかが異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.HSROC モデルを用いて感度の推定を行った際に特異度を固定したため,特異度の不精確性の評価は行わなかっ た.
血清PCT 検査 感 度1 0.64(95% CI:0.56~0.73)特異度1 0.83(固定)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(細菌性肺炎を持つ患者) 21 研究4,721患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻dなし32 (28~ 37) 64 (56~ 73) 128 (112~ 146) +○○○非常に低偽陰性(誤って細菌性肺炎を持っていないと分類された患者) 18 (13~ 22) 36 (27~ 44) 72 (54~ 88) 真陰性(細菌性肺炎のない患者) 21 研究4,721患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻cなしeなし789 747 664 +○○○非常に低偽陽性(誤って細菌性肺炎を持つと分類される患者) 161 153 136説 明1.HSROC モデルを用いて算出した.感度算出のために,特異度を一次研究の中央値である0.78 で固定した.このため,特異度ではCI の記載はない. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で12/21 個,インデックス検査で12/21 個,参照基準で3/21 個,フローとタイミングで0/21 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で9/21 個,インデックス検査で5/21 個,参照基準で4/21 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,急性呼吸不全患者あるいは細菌性肺炎(肺炎)患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,1 回の真陽性につき3 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合によって,検査に正味の利益があるかどうかが異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.HSROC モデルを用いて感度の推定を行った際に特異度を固定したため,特異度の不精確性の評価は行わなかっ た.
資料CQ3—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ3:ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCT を用いるか? 集 団: ARDS の患者または急性呼吸不全患者診断対象:細菌性肺炎検 査:血清CRP,血清PCT検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:陽性(細菌性肺炎が疑われる)であれば,更なる診断検査を行い,適切な抗菌薬選 択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景: ARDS の原因疾患のうち,肺炎は最も頻度が高く(約30~60%),また,細菌性肺炎 が最も一般的である.細菌性肺炎を早期に認知し抗菌薬投与を開始することは生命予後の改善が期待でき,ARDS の診療の過程において重要である.CRP(C 反応性タンパク),PCT(プロカルシトニン)は炎症反応により産生されるタンパク質およびペプチドである.救急外来,ICU で測定され,高値の場合には細菌性肺炎が疑われ,更なる検査,治療が行われる.検査により早期診断を行うことで適切な治療介入を提供でき,潜在的に患者の生命予後改善に寄与することが期待される一方で,誤診断した場合,不必要な抗菌薬の投与となり,耐性菌の発生や薬剤の副反応などの害につながる可能性がある.また,不適切な抗菌薬の狭域化を招くことで,患者予後を悪くする可能性が考えられる.これらから「ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に,血清CRP,血清PCT を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高 い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない細菌性肺炎は急性呼吸不全を引き起こし早期の治療介入が重要である.検査により早期診断を行うことで適切な治療 介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不必要な抗菌薬の投与となり,耐性菌の発生や薬剤の副反応などの害につながる可能性がある.また,不適切な抗菌薬の狭域化を招くことで,患者予後を悪くする可能性が考えられる.これ
○わからないらの検査の利益と害を検証することはARDS診療において 重要課題である.したがって,この臨床疑問の優先度は高いと考えられた 検査の精度Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確●正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからないSR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 検査の精度については「正確」と判断した 血清CRP(14 RCT:n=3,093)感度:0.76(95%CI:0.63~0.89),特異度:0.78(固定) CRP 1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性38 (32~ 44.5) 76 (63~ 89) 152 (126~ 78)非常に低 偽陰性12 (5.5~ 18) 24 (11~ 37) 48 (22~ 74) 真陰性741 702 624非常に低偽陽性209 198 176 血清PCT(21 RCT:n=4,721)感度:0.64(95%CI:0.56~0.73),特異度:0.83(固定) (HSROC モデルを用いた推定,一次研究の特異度の中央値で固定) PCT 1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性32 (28~ 37) 64 (56~ 73) 128 (112~ 146)非常に低 偽陰性18 (13~ 22) 36 (27~ 44) 72 (54~ 88) 真陰性789 747 664非常に低偽陽性161 153 136
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)血清CRP 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする38 人76 人152 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血清PCT 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする32 人64 人128 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.05と設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受 ける人数 血清CRP 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする10 人10 人9 人検査結果によらず全員を治療する48 人45 人40 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人検査を実施した場合,不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人 数)×(臨床的重み付け)で計算した 全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は,0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算
血清PCT 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする8 人8 人7 人検査結果によらず全員を治療する48 人45 人40 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人定した 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実 性を採用し,「非常に低い」と判断した 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中一般に真陽性に対する抗菌薬などの治療は「優れた医療上 の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望まし
○高●研究がない○わからないくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし, 治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに抗菌薬の治療が開始さ れるため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性やばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験が変わればその価値観によって異なる可能性がある(偽陽性の臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変わればその価値観によって異なる可能性がある)
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い●たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない○わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性 と診断され不必要な治療の受ける不利益,および検査の害について正味の利益(net—benefit)を求めた CRP 検査正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする28 人66 人143 人検査結果によらず全員を治療する3 人55 人160 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重みを0.05 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet— benefit を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床的状況は検査前確率が10%以下の限定的な状況と思われた PCT 検査正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする24 人56 人121 人検査結果によらず 全員治療する3 人55 人160 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重みを0.05 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した 重大な有害事象が無視できる程度の場合は,0として計算した
療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet— benefit を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床的状況は検査前確率が10%以下の限定的な状況と思われた.これらから,効果のバランスは「多分検査を支持しない」と判定した 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る.考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,おそらく実施できる と考えられるが,施設によっては気管支肺胞洗浄検査を実施できない可能性がある.考慮されたエビデンスなし 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない
検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん検査を 支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん受け入れ られる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCT の結果のみで判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(細菌性肺炎)の鑑別に際して,血清CRP,血清PCT を用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 血清CRP,血清PCT.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療陽性(細菌性肺炎が疑われる)であれば,更なる診断検査を行い,適切な抗菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う.エビデンスの要約血清CRP(14 RCT:n=3,093),感度:0.76(95% CI:0.63~0.89),特異度:0.78(固定).血清PCT(21 RCT:n=4,721),感度:0.64(95% CI:0.56~0.73),特異度:0.83(固定). (HSROC モデルを用いた推定,一次研究の特異度の中央値で固定.)エビデンスの確実性バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮し検査の影響に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定血清CRP 値や血清PCT 値の検査結果に基づいて細菌性肺炎を疑い診療を開始する場合と,それ
らの検査結果にかかわらず細菌性肺炎があると考えて診療する場合とを比較すると,より多くの臨床状況で利益を得られるのは,後者の場合と考えられる.検査の合併症は臨床の意思決定に関して無視できるほどわずかと考えた.実行可能性はおそらく問題なく,一般に受け入れられている医療行為である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が,中央値8 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では推奨文の表現について議論があった.推奨文の日本語表現を一部変更し,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項事前確率が15~20%以上の場合,検査結果にかかわらず細菌性肺炎の可能性があると考えて治療を決定する.ただし,事前確率が10%以下で細菌性肺炎が積極的には疑われない状況では,血清CRP 値や血清PCT 値に基づいて細菌性肺炎の可能性を考えて診療を行うことは妥当と思われる.また,上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば,効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 今回メタ解析ではHSROC モデルによる統合であり,明確なカットオフは定義できていない. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析の結果の確実性は「非常に低い」であり,CRP 値やPCT 値の細菌性肺炎の診断性能に関する更なる確実性の高い研究が望まれる.
背景,この問題の優先度 肺炎球菌性肺炎は急性呼吸不全を引き起こしARDS の誘因と成り得,早期の医療介入が重要である.肺炎球菌性肺炎の早期診断を行うことで適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不適切な抗菌薬選択などにより,患者予後を悪化させる可能性がある.これらの利益,不利益を考慮し検査の実施の是非を検証することはARDS診療において重要課題である.これらから「ARDSの原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色を用いるか?」という疑問が設定された.解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染 色.目的:救急外来,ICU,またはそれに準じた状 況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療:陽性であれば,特に肺 炎球菌をカバーする抗菌薬を選択し治療を開始する.陰性であれば,他の起炎菌を考慮した抗菌薬が選択され,ARDS を誘発するような他の病態に対する検査や経過観察を行う. エビデンスの要約 本CQ ではグラム染色検査の診断性能に関す 1 2 1 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原検査,喀痰グラム染色を用いるか? CQ 4 ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗 原,喀痰グラム染色を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非 常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
るSR およびメタ解析については,すでに出版公開されているSR およびメタ解析1)の結果を再利用した.尿中肺炎球菌莢膜抗原(23RCT:n=10,900)の統合感度は,0.65(95%CI:0.61~0.68),統合特異度は,0.91(95%CI:0.85~0.95)であった.喀痰グラム染色(11RCT:n=1,794)では,統合感度は,0.69(95%CI:0.56~0.80),統合特異度は,0.91(95%CI:0.83~0.96)となった. エビデンスの確実性 いずれの検査も,診断性能に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」と判定された. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 検査を実施することによる,望ましい効果(適切な治療が迅速に受けることができる)は,望ましくない効果(合併症,偽陽性や偽陰性のデメリット)と比較し,望ましい効果が大きいと考えられる.検査のコストは少なく,実行可能性はおそらく問題なく,一般に受け入れられている医療行為である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値7 点,見解不一致指数0.164 であった.パネル会議では,抗菌薬の決定と狭域化について,感染症・敗血症診療に関する他のガイドラインも参考にしつつ総合的に判断するよう,実施上の考慮事項について記載するべきであるという議論があり追記された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし.実施上の考慮事項 グラム染色に関しては,鏡検,菌種の判定に関して一定の技能,経験のある医療従事者が実施する必要がある.よって,施設,時間帯など臨床状況によっては迅速に結果を得ることが難しい可能性がある.また,検査結果を基に肺炎球菌のみをターゲットに抗菌薬を狭域化する場合は,重症度も勘案して総合的に判断する必要がある.抗菌薬の選択については,日本呼吸器学会による『成人肺炎診療ガイドライン2017』『日本版敗血症診療ガイドライン2020』なども参考にすることが望ましい. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 ARDS 患者に限定した質の高い診断精度研究や,可能であれば,検査によって患者の重要なアウトカムが改善するかを評価するRCT が求められる. 文献検索式と文献選択 グラム染色 本CQ は,既存SR を利用したため,その検索式に基づき,「sputum」「Gram stain」「pneumonia」をキーワードとして,MED- LINE とEmbase で2018 年8 月23 日までの文献を検索したところ800 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当する研究が11 3 4 5 3 4 5 6 7 8 1
件2‒12)該当した. 尿中抗原 「Pneumococcal pneumonia」「urinary antigen」「sputum」をキーワードとしてPubMed およびCochrane CENTRAL で2020年6 月3 日までの文献を検索したところ2,150件の研究が同定され,スクリーニングの結果23 件13‒35)の研究を採用した. 本CQ で対象とした研究 グラム染色 Akter 20142), Butler 20033), Ferré 20114), Fine 19915), Fukuyama 20146), Garcia 20047), Miyashita 20088), Rein 19789), R o s ó n 2 0 0 0 1 0), Ya n g 2 0 0 5 1 1), Z h a n g 198812).尿中抗原 Abdeldaim 200913), Athlin 201714), Briones 200615), Burel 200116), Burgos 201817), Butler 200318), Farina 200219), Fukushima 201520), Genné 200621), Gutiérrez 200322), Ikegame 201723), Ishida 200424), Laijen 201725), Lasocki 200626), Lee 202027), Marcos 200328), Molinos 201529), Murdoch 200130), Sordé 201131), Stra。lin 200432), Tzeng 200633), Weatherall 200834), Zhou 201835). 資料一覧 ・資料CQ4‒1 Search strategy.・資料CQ4‒2 フローダイアグラム.・資料CQ4‒3 Risk of bias.・資料CQ4‒4 Forest plot.・資料CQ4‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ4‒6 Evidence‒to‒Decision. 2 9 1 10 1) Ogawa H, Kitsios GD, Iwata M, et al. Sputum Gram stain for bacterial pathogen diag- nosis in community‒acquired pneumonia:a systematic review and Bayesian meta‒ analysis of diagnostic accuracy and yield. Clin Infect Dis 2020;71:499‒513. 2) Akter S, Shamsuzzaman SM, Jahan F. Community acquired bacterial pneumonia: aetiology, laboratory detection and antibiotic susceptibility pattern. Malays J Pathol 2014;36:97‒103. 3) Butler JC, Bosshardt SC, Phelan M, et al. Classical and latent class analysis evaluation of sputum polymerase chain reaction and urine antigen testing for diagnosis of pneumococcal pneumonia in adults. J Infect Dis 2003;187:1416‒23. 4) Ferré LC, Llopis RF, Jacob J, et al. Is sputum Gram staining useful in the emergency department’s management of pneumonia? Emergencias 2011;23:108‒11. 5) Fine MJ, Orloff JJ, Rihs JD, et al. Evaluation of housestaff physicians’ preparation and interpretation of sputum Gram stains for community‒acquired pneumonia. J Gen Intern Med 1991;6:189‒98. 6) Fukuyama H, Yamashiro S, Kinjo K, et al. Validation of sputum Gram stain for treat- ment of community‒acquired pneumonia and healthcare‒associated pneumonia:a prospective observational study. BMC Infect Dis 2014;14:534. 7) Garcia‒Vazquez E, Marcos MA, Mensa J, et al. Assessment of the usefulness of spu- tum culture for diagnosis of community‒acquired pneumonia using the PORT predictive scoring system. Arch Intern Med 2004;164:1807‒11. 参考文献
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Diagnosis of Pneumococcal Pneumonia. Intern Med 2017;56:1141‒6. 24) Ishida T, Hashimoto T, Arita M, et al. A 3‒year prospective study of a urinary antigen‒ detection test for Streptococcus pneumoniae in community‒acquired pneumonia: utility and clinical impact on the reported etiology. J Infect Chemother 2004;10: 359‒63. 25) Laijen W, Snijders D, Boersma WG. Pneumococcal urinary antigen test:diagnostic yield and impact on antibiotic treatment. Clin Respir J 2017;11:999‒1005. 26) Lasocki S, Scanvic A, Le Turdu F, et al. Evaluation of the Binax NOW Streptococcus pneumoniae urinary antigen assay in intensive care patients hospitalized for pneumonia. Intensive Care Med 2006;32:1766‒72. 27) Lee J, Song JU. Performance of pneumococcal urinary antigen test in patients with community‒onset pneumonia:a propensity score‒matching study. Korean J Intern Med 2020;35:630‒40. 28) Marcos MA, Jiménez de Anta MT, de la Bellacasa JP, et al. Rapid urinary antigen test for diagnosis of pneumococcal community‒acquired pneumonia in adults. Eur Respir J 2003;21:209‒14. 29) Molinos L, Zalacain R, Menéndez R, et al. Sensitivity, specificity, and positivity pre- dictors of the pneumococcal urinary antigen test in community‒acquired pneumonia. Ann Am Thorac Soc 2015;12:1482‒9. 30) Murdoch DR, Laing RT, Mills GD, et al. Evaluation of a rapid immunochromato- graphic test for detection of Streptococcus pneumoniae antigen in urine samples from adults with community‒acquired pneumonia. J Clin Microbiol 2001;39: 3495‒8. 31) Sordé R, Falcó V, Lowak M, et al. Current and potential usefulness of pneumococcal urinary antigen detection in hospitalized patients with community‒acquired pneumonia to guide antimicrobial therapy. Arch Intern Med 2011;171:166‒72. 32) Stra。lin K, Kaltoft MS, Konradsen HB, et al. Comparison of two urinary antigen tests for establishment of pneumococcal etiology of adult community‒acquired pneumonia. J Clin Microbiol 2004;42:3620‒5. 33) Tzeng DH, Lee YL, Lin YH, et al. Diagnostic value of the Binax NOW assay for iden- tifying a pneumococcal etiology in patients with respiratory tract infection. J Microbiol Immunol Infect 2006;39:39‒44. 34) Weatherall C, Paoloni R, Gottlieb T. Point‒of‒care urinary pneumococcal antigen test in the emergency department for community acquired pneumonia. Emerg Med J 2008;25:144‒8. 35) Zhou F, Gu L, Qu JX, et al;CAP‒China network. Evaluating the utility of Binax NOW Streptococcus pneumoniae urinary antigen test in adults with community acquired pneumonia in China. Clin Respir J 2018;12:425‒32.
CQ4 資料本CQ では,グラム染色検査の診断性能に関するSR およびメタ解析については,すでに出版公開されているSR およびメタ解析の結果を再利用した(下記文献を参照). Ogawa H, Kitsios GD, Iwata M, Terasawa T. Sputum Gram Stain for Bacterial Pathogen Diagnosis in Community‒acquired Pneumonia:A Systematic Review and Bayesian Meta‒analysis of Diagnostic Accuracy and Yield. Clin Infect Dis 2020;71(3):499‒513. doi:10.1093/cid/ ciz876 資料CQ4—1 Search strategy 尿中肺炎球菌莢膜抗原検査MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/3) #1 pneumococcal infections[mh] #2 "Pneumonia, Pneumococcal"[mh] #3 streptococcus pneumonia* [tiab] #4 #1 OR #2 OR #3 #5 "Antigens"[Mesh] #6 antigen[tiab] #7 #5 OR #6 #8 urine[mh] #9 urin*[tiab] #10 #8 OR #9 #11 #7 AND #10 #12 "Sputum"[Mesh] #13 "Blood Culture"[Mesh] #14 "Polymerase Chain Reaction"[Mesh] #15 #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #4 AND #15 #17 animals[mh] NOT (animals[mh] AND humans[mh]) #18 #16 NOT #17 CENTRAL(Search date:2020/6/3) #1 [mh “pneumococcal infections”] #2 [mh “Pneumonia, Pneumococcal”] #3 streptococcus pneumonia*:ti,ab #4 penumococcal:ti,ab #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 [mh Antigens] #7 antigen*:ti,ab #8 #6 OR #7 #9 [mh Urine] #10 urin*:ti,ab #11 #9 OR #10 #12 #8 AND #11
喀痰グラム染色検査下記文献のElectronic search strategies(supplemental material)を参照. Ogawa H, Kitsios GD, Iwata M, Terasawa T. Sputum Gram Stain for Bacterial Pathogen Diagnosis in Community‒acquired Pneumonia:A Systematic Review and Bayesian Meta‒analysis of Diagnostic Accuracy and Yield. Clin Infect Dis 2020;71(3):499‒513. doi:10.1093/cid/ ciz876 #13 #5 AND #12 #14 [mh animals] NOT ([mh animals] AND [mh humans]) #15 #13 NOT #14
資料CQ4—2 フローダイアグラム 喀痰グラム染色検査下記文献のFigure 1 を参照. Ogawa H, Kitsios GD, Iwata M, Terasawa T. Sputum Gram Stain for Bacterial Pathogen Diagnosis in Community‒acquired Pneumonia:A Systematic Review and Bayesian Meta‒analysis of Diagnostic Accuracy and Yield. Clin Infect Dis 2020;71(3):499‒513. doi:10.1093/cid/ ciz876 尿中肺炎球菌莢膜抗原検査 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=2,179 MEDLINE(PubMed) 2,152件Cochrane CENTRAL 27件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=2,179 重複した研究 n=29 重複研究を除外した研究 n=2,150 除外基準に該当した研究 n=2,085 フルテキストで適格性を評価した研究 n=65 系統的レビューに組み入れた研究 n=23 メタ解析に組み入れた研究 n=23除外基準に該当した研究 n=42理由:・ 言語・ Publication type・ 研究デザイン・ 対象患者・ Reference testが異なる・ 2×2表が作成不可 0件7件13件8件2件12件
資料CQ4—3 Risk of bias 尿中肺炎球菌莢膜抗原検査喀痰グラム染色検査
資料CQ4—4 Forest plot 喀痰グラム染色検査下記文献のFigure S1 を参照. Ogawa H, Kitsios GD, Iwata M, Terasawa T. Sputum Gram Stain for Bacterial Pathogen Diagnosis in Community‒acquired Pneumonia:A Systematic Review and Bayesian Meta‒analysis of Diagnostic Accuracy and Yield. Clin Infect Dis 2020;71(3):499‒513. doi:10.1093/cid/ ciz876 尿中肺炎球菌莢膜抗原検査
資料CQ4—5 エビデンスプロファイル 検査:尿中肺炎球菌莢膜抗原検査 感 度0.65(95% CI:0.61~0.68)特異度0.91(95% CI:0.85~0.95)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(肺炎球菌性肺炎を持つ患者) 23 研究10,900患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b深刻c 深刻で ないdなし32 (30~ 34) 65 (61~ 68) 129 (121~ 137) +○○○非常に低偽陰性(誤って肺炎球菌性肺炎を持っていないと分類された患者) 18 (16~ 20) 35 (32~ 39) 71 (63~ 79) 真陰性(肺炎球菌性肺炎のない患者) 23 研究10,900患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 深刻で ないc深刻で ないeなし864 (807~ 900) 819 (764~ 853) 728 (679~ 758) ++○○ 低偽陽性(誤って肺炎球菌性肺炎を持つと分類される患者) 86 (50~ 143) 81 (47~ 136) 72 (42~ 121) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で8/23 個,インデックス検査で0/23 個,参照基準で5/23 個,フローとタイミングで17/23 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で23/23 個,インデックス検査で1/23 個,参照基準で5/23 個であった.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,呼吸不全のない市中肺炎患者も含めて文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:喀痰グラム染色検査 感 度0.69(95% CI:0.56~0.80)特異度0.91(95% CI:0.83~0.96)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(肺炎球菌性肺炎を持つ患者) 11 研究1,794患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 非常に 深刻b非常に 深刻c深刻で ないdなし34 (28~ 40) 69 (56~ 80) 138 (112~ 160) +○○○非常に低偽陰性(誤って肺炎球菌性肺炎を持っていないと分類された患者) 16 (10~ 22) 31 (20~ 44) 62 (40~ 88) 真陰性(肺炎球菌性肺炎のない患者) 11 研究1,794患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 非常に 深刻b深刻c 深刻で ないeなし864 (789~ 912) 819 (747~ 864) 728 (664~ 768) +○○○非常に低偽陽性(誤って肺炎球菌性肺炎を持つと分類される患者) 86 (38~ 161) 81 (36~ 153) 72 (32~ 136) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で4/11 個,インデックス検査で2/11 個,参照基準で11/11 個,フローとタイミングで5/11 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/11 個,インデックス検査で6/11 個,参照基準で11/11 個であった.このように,2 項目以上で,高い懸念または不明であった文献の割合が1/2 程度以上であったため,適用可能性が損なわれていると考えた.さらに,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,市中肺炎患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「非常に深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
資料CQ4—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ4:ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢 膜抗原検査,喀痰グラム染色を用いるか? 集 団: ARDS の患者または急性呼吸不全患者診断対象:肺炎球菌性肺炎検 査:尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:陽性であれば,特に肺炎球菌をカバーする抗菌薬を選択し治療を開始する.陰性で あれば,他の起炎菌を考慮した抗菌薬が選択され,ARDS を誘発するような他の病態に対する検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景:肺炎球菌性肺炎は急性呼吸不全を引き起こしARDS の誘因と成り得,早期の医療介 入が重要である.肺炎球菌性肺炎の早期診断を行うことで適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不適切な抗菌薬選択により,患者予後を悪化させる可能性がある.これらの利益,不利益を考慮し検査の実施の是非を検証することはARDS 診療において重要課題である.これらから「ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない○わからない肺炎球菌性肺炎は急性呼吸不全を引き起こしARDSの誘因 と成り得,早期の医療介入が重要である.肺炎球菌性肺炎の早期診断を行うことで適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不適切な抗菌薬選択により,患者予後を悪化させる可能性がある.これらの利益,不利益を考慮し検査の実施の是非を検証することはARDS 診療において重要課題である.したがって,この臨床疑問の優先度は高いと考えられた
検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確●正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからないSR とメタ解析により以下の結果が得られた 検査の精度は,「正確」と判断した 尿中肺炎球菌莢膜抗原(23 RCT:n=10,900)統合感度:0.65(95% CI:0.61~0.68)統合特異度:0.91(95% CI:0.85~0.95) 尿中肺炎球菌莢膜抗原1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性32 (30~ 34) 65 (61~ 68) 129 (121~ 137)非常に低 偽陰性18 (16~ 20) 35 (32~ 39) 71 (63~ 79) 真陰性864 (807~ 900) 819 (764~ 853) 728 (679~ 758)低 偽陽性86 (50~ 143) 81 (47~ 136) 72 (42~ 121) 喀痰グラム染色(11 RCT:n=1,794)統合感度:0.69(95% CI:0.56~0.80)統合特異度:0.91(95% CI:0.83~0.96) 喀痰グラム染色1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性34 (28~ 40) 69 (56~ 80) 138 (112~ 160)非常に低 偽陰性16 (10~ 22) 31 (20~ 44) 62 (40~ 88) 真陰性864 (789~ 912) 819 (747~ 864) 728 (664~ 768)非常に低
偽陽性86 (38~ 161) 81 (36~ 153) 72 (32~ 136)非常に低 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)を検討した結果,望ましい効果は「中程度」と判定した 尿中肺炎球菌莢膜抗原 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする32 人65 人129 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 喀痰グラム染色 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする34 人69 人138 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.2 と 設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受ける人数を検討した結果,望ましくない効果は「わずか」と判定した検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した
尿中肺炎球菌莢膜抗原 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする17 人16 人14 人検査結果によらず全員を治療する190 人180 人160 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人 喀痰グラム染色 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする17 人16 人14 人検査結果によらず全員を治療する190 人180 人160 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人全員治療する場合は偽 陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は,0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮 しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし
検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗菌薬などの治療は「優れた医療上 の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに抗菌薬の治療が開始さ れるため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく
ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはないない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験 が変われば,その価値観によって異なる可能性がある(偽陽性の臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある) 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考●検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない○わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性 と診断され不必要な治療の受ける不利益,および検査の害について正味の利益(net—benefit)を求めた 尿中肺炎球菌莢膜抗原正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする15 人49 人116 人検査結果によらず全員を治療する-140 人-80 人40 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重みを0.2 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた 喀痰グラム染色正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする17 人53 人124 人検査結果によらず 全員治療する-140 人-80 人40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した 重大な有害事象が無視できる程度の場合は,0として計算した
真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重みを0.2 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた 以上より,事前確率5~20%を想定し,正味の利益(net— benefit)を,検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに治療をしない場合で比較すると,いずれの検査も,検査をすることで正味の利益を得られる臨床的状況は多いと思われる.これらから,効果のバランスは「検査を支持する」と判定した ただし,いずれの検査も,有病割合が40%を超えるような条件においては検査を実施せずに全員に治療する場合の利益が,検査を実施して治療する場合の利益を上回る可能性がある 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,実施可能と考えられる.ただし,グラム染色は,鏡検,菌種の判定に関して, いずれかの医療従事者が直接的に実施する必要がある.よって,施設,時間帯によっては迅速に結果を得ることが難しい可能性がある
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない
効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(肺炎球菌性肺炎)の鑑別に際して,尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色を用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 尿中肺炎球菌莢膜抗原,喀痰グラム染色.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,ICU に準ずる状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療陽性であれば,特に肺炎球菌をカバーする抗菌薬を選択し治療を開始する.陰性であれば,他の
起炎菌を考慮した抗菌薬が選択され,ARDS を誘発するような他の病態に対する検査や経過観察を行う.エビデンスの要約尿中肺炎球菌莢膜抗原(23 RCT:n=10,900),統合感度:0.65(95% CI:0.61~0.68),統合特異度:0.91(95% CI:0.85~0.95).喀痰グラム染色(11 RCT:n=1,794),統合感度:0.69(95% CI:0.56~0.80),統合特異度: 0.91(95% CI:0.83~0.96).エビデンスの確実性いずれの検査も,診断性能に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」と判定された.効果のバランス,受け入れ,実現可能性の判定検査を実施することによる,望ましい効果(適切な治療を迅速に受けることができる)は,望ましくない効果(合併症,偽陽性や偽陰性のデメリット)と比較し,望ましい効果が大きいと考えられる.検査のコストは少なく,実行可能性はおそらく問題なく,一般に受け入れられている医療行為である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が,中央値7 点,見解不一致指数0.164 であった.パネル会議では,抗菌薬の決定と狭域化について,感染症・敗血症診療に関する他のガイドラインも参考にしつつ総合的に判断するよう,実施上の考慮事項について記載するべきであるという議論があり追記された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項いずれの検査も,事前確率が40%を超えてくる場合,検査を実施せずに全員に治療する場合の利益が,検査を実施して治療する場合の利益を上回る可能性がある.また,上記の利益と害のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば利益と害のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations グラム染色に関しては,鏡検,菌種の判定に関して一定の技能,経験のある医療従事者が実施する必要がある.よって,施設,時間帯など臨床状況によっては迅速に結果を得ることが難しい可能性がある.また,検査結果を基に肺炎球菌のみをターゲットに抗菌薬を狭域化する場合は,重症度も勘案して総合的に判断する必要がある.抗菌薬の選択については,日本呼吸器学会による『成人肺炎診療ガイドライン2017』,日本集中治療医学会,日本救急医学会による『日本版敗血症診療ガイドライン2020』なども参考にすることが望ましい. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある.
研究の可能性 Research priorities ARDS 患者に限定した質の高い診断精度研究や,可能であれば,検査によって患者の重要なアウトカムが改善するかを評価するRCT が求められる.
背景,この問題の優先度 レジオネラ肺炎は急速な呼吸不全を呈し, ARDS の原疾患として重要である.レジオネラ肺炎に対する適切な治療が行われなかった場合は,致死的な転帰を辿る可能性が高い.一方で,適切な抗菌薬投与によって患者の予後を改善する可能性があるため,レジオネラ肺炎を迅速に診断することは重要である.尿中レジオネラ抗原検査は,救急外来などで広く使用されている検査である.これらから,本問題は臨床上重要と考えられる.そこで,「ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いるか?」という疑問が設定された.解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:尿中レジオネラ抗原検査.目的:救急外来,ICU,または,それに準じた 状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療:陽性であれば,レジオ ネラ肺炎と診断し,適切な抗菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う. エビデンスの要約 尿中レジオネラ抗原検査(21RCT:n=11,724)の統合感度は,0.79(95%CI:0.71~0.85),統合特異度は,1.00(95%CI:0.99~1.00)であった. 1 2 1 2 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いるか? CQ 5 ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原 検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性 のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
エビデンスの確実性 感度・特異度の両方において,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 尿中レジオネラ抗原検査を実施することによる望ましい効果として,レジオネラ肺炎と診断し適切な治療が迅速に行われることが想定される.また,望ましくない効果として,誤診断(偽陽性)により不要な治療を受ける害が考えられる.検査の望ましい効果と害を,検査せずに治療方針を決定した場合と比較した時に,検査の望ましい効果は大きいと考えられる.実行可能性は問題なく,一般に受け入れられている医療行為である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議ではLegionella pneumophila 血清型1 型とそれ以外のレジオネラ属菌も対象にしたキットの診断性能について議論があり,実施上の考慮事項に追記された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 今回のSR で組み入れられた研究では,複数種類の検査キットが用いられていた.Legionella pneumophila 血清型1 型のみを対象としたキットの結果は16 件,それ以外の血清型やLegionella pneumophila 以外のレジオネラ属菌も対象としたキットの結果は20 件だった(同一研究内で複数のキットを扱っているものがあり,それらの重複を含む).実施にあたっ ては,検査キットの種類や対象となるレジオネラ属菌に注意が必要である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 SR に組み入れられた研究の多くは,肺炎患者を対象としたものである.ARDS 患者を対象とした,尿中レジオネラ抗原検査の診断精度研究が求められる.また,Legionella pneumophila 血清型1 型以外の血清型や,Legionella pneumophila 以外のレジオネラ属菌も含めた診断精度に関する研究が求められる. 文献検索式と文献選択 「legionella」「antigen」「Polymerase Chain Reaction」をキーワードとしてPubMed およびCochrane CENTRAL で2020年6 月3 日までの文献を検索したところ1,326件の研究が同定され,スクリーニングの結果21 件の研究1‒21)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Aguero‒Rosenfeld 19881), Athlin 20172), Birtles 19903), Diederen 20094), Diederen 20065), Diederen 20066), Diederen 20077), Domínguez 20018), Gadsby 20169), Helbig 200110), Jørgensen 201511), Kazandjian 199712), Koide 200613), Leland 199114), Peci 4 5 3 4 5 6 7 8 9
201615), Plouffe 199516), Samuel 199017), Sathapatayavongs 198218), Svarrer 201219), Tang 198620), White 198221). 資料一覧 ・資料CQ5‒1 Search strategy.・資料CQ5‒2 フローダイアグラム. ・資料CQ5‒3 Risk of bias.・資料CQ5‒4 Forest plot.・資料CQ5‒5 エビデンスプロファイル. ・資料CQ5‒6 Evidence‒to‒Decision. 10 1) Aguero‒Rosenfeld ME, Edelstein PH. Retrospective evaluation of the Du Pont radio- immunoassay kit for detection of Legionella pneumophila serogroup 1 antigenuria in humans. J Clin Microbiol 1988;26:1775‒8. 2) Athlin S, Iversen A, Özenci V. Comparison of the ImmuView and the BinaxNOW anti- gen tests in detection of Streptococcus pneumoniae and Legionella pneumophila in urine. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2017;36:1933‒8. 3) Birtles RJ, Harrison TG, Samuel D, et al. Evaluation of urinary antigen ELISA for diag- nosing Legionella pneumophila serogroup 1 infection. J Clin Pathol 1990;43:685‒ 90 4) Diederen BM, Bruin JP, Scopes E, et al. Evaluation of the Oxoid Xpect Legionella test kit for detection of Legionella pneumophila serogroup 1 antigen in urine. J Clin Microbiol 2009;47:2272‒4. 5) Diederen BM, Peeters MF. Evaluation of Rapid U Legionella plus test, a new immuno- chromatographic assay for detection of Legionella pneumophila serogroup 1 antigen in urine. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2006;25:733‒5. 6) Diederen BM, Peeters MF. Evaluation of two new immunochromatographic assays (Rapid U Legionella antigen test and SD Bioline Legionella antigen test)for detection of Legionella pneumophila serogroup 1 antigen in urine. J Clin Microbiol 2006; 44:2991‒3. 7) Diederen BM, Peeters MF. Evaluation of the SAS Legionella Test, a new immunochro- matographic assay for the detection of Legionella pneumophila serogroup 1 antigen in urine. Clin Microbiol Infect 2007;13:86‒8. 8) Domínguez J, Galí N, Blanco S, et al. Assessment of a new test to detect Legionella urinary antigen for the diagnosis of Legionnaires’ Disease. Diagn Microbiol Infect Dis 2001;41:199‒203. 9) Gadsby NJ, Helgason KO, Dickson EM, et al;ESCMID Study Group for Molecular Diagnostics;ESCMID Study Group for Legionella Infections, Basel, Switzerland. Molecular diagnosis of Legionella infections‒‒Clinical utility of front‒line screening as part of a pneumonia diagnostic algorithm. J Infect 2016;72:161‒70. 10) Helbig JH, Uldum SA, Lück PC, et al. Detection of Legionella pneumophila antigen in urine samples by the BinaxNOW immunochromatographic assay and comparison with both Binax Legionella Urinary Enzyme Immunoassay(EIA)and Biotest Legionella Urin Antigen EIA. J Med Microbiol 2001;50:509‒16. 11) Jørgensen CS, Uldum SA, Sørensen JF, et al. Evaluation of a new lateral flow test for detection of Streptococcus pneumoniae and Legionella pneumophila urinary antigen. J Microbiol Methods 2015;116:33‒6. 参考文献
12) Kazandjian D, Chiew R, Gilbert GL. Rapid diagnosis of Legionella pneumophila sero- group 1 infection with the Binax enzyme immunoassay urinary antigen test. J Clin Microbiol 1997;35:954‒6. 13) Koide M, Higa F, Tateyama M, et al. Detection of legionella species in clinical sam- ples:comparison of polymerase chain reaction and urinary antigen detection kits. Infection 2006;34:264‒8. 14) Leland DS, Kohler RB. Evaluation of the L‒CLONE Legionella pneumophila Serogroup 1 Urine Antigen Latex Test. J Clin Microbiol 1991;29:2220‒3. 15) Peci A, Winter AL, Gubbay JB. Evaluation and comparison of multiple test methods, including real‒time PCR, for Legionella detection in clinical specimens. Front Public Health 2016;4:175. 16) Plouffe JF, File TM Jr, Breiman RF, et al. Reevaluation of the definition of Legion- naires’ disease:use of the urinary antigen assay. Community Based Pneumonia Incidence Study Group. Clin Infect Dis 1995;20:1286‒91. 17) Samuel D, Harrison TG, Taylor AG. Detection of Legionella pneumophila serogroup 1 urinary antigen using an enhanced chemiluminescence ELISA. J Biolumin Chemilumin 1990;5:183‒5. 18) Sathapatayavongs B, Kohler RB, Wheat LJ, et al. Rapid diagnosis of Legionnaires’ disease by urinary antigen detection. Comparison of ELISA and radioimmunoassay. Am J Med 1982;72:576‒82. 19) Svarrer CW, Lück C, Elverdal PL, et al. Immunochromatic kits Xpect Legionella and BinaxNOW Legionella for detection of Legionella pneumophila urinary antigen have low sensitivities for the diagnosis of Legionnaires’ disease. J Med Microbiol 2012; 61:213‒7. 20) Tang PW, Toma S. Broad‒spectrum enzyme‒linked immunosorbent assay for detec- tion of Legionella soluble antigens. J Clin Microbiol 1986;24:556‒8. 21) White A, Kohler RB, Wheat LJ, et al. Rapid diagnosis of Legionnaires’ disease. Trans Am Clin Climatol Assoc 1982;93:50‒62.
資料CQ5—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/3) #1 legionella [MeSH Terms] #2 legionellosis [MeSH Terms] #3 legionella [Title/Abstract] #4 legionnaire*[tiab] #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 antigens[mh] #7 antigen[tiab] #8 #6 OR #7 #9 urine[mh] #10 urin*[tiab] #11 #9 OR #10 #12 #8 AND #11 #13 "Sputum"[Mesh] #14 "Blood Culture"[Mesh] #15 "Polymerase Chain Reaction"[Mesh] #16 # 12 OR #13 OR #14 OR #15 #17 #5 AND #16 #18 animals[mh] NOT (animals[mh] AND humans[mh]) #19 #17 NOT #18 CENTRAL(Search date:2020/6/3) #1 [mh legionella] #2 [mh legionellosis] #3 legionella:ti,ab #4 legionnaire*:ti,ab #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 [mh antigens] #7 antigen*:ti,ab #8 #6 OR #7 #9 [mh Urine] #10 urin*:ti,ab #11 #9 OR #10 #12 #8 AND #11 #13 [mh Sputum] #14 [mh "Blood Culture"] #15 [mh "Polymerase Chain Reaction"] #16 #12 OR #13 OR #14 OR #15 #17 #5 AND #16 #18 [mh animals] NOT ([mh animals] AND [mh humans]) #19 #17 NOT #18
資料CQ5—2 フローダイアグラム 除外基準に該当した研究 n=1,255 フルテキストで適格性を評価した研究 n=72 系統的レビューに組み入れた研究 n=53 メタ解析に組み入れた研究 n=21 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=1,334 MEDLINE(PubMed) 1,315件Cochrane CENTRAL 21件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=1,334 重複した研究 n=8 重複研究を除外した研究 n=1,326 除外基準に該当した研究n=19理由:・ 言語・ 研究デザイン・ 対象患者・ Index testが異なる・ 2×2表が作成不可0件11件 0件0件8件
資料CQ5—3 Risk of bias Risk of bias and applicability concerns summary:review authors’ judgements about each domain for each included study
資料CQ5—4 Forest plot Study Aguero-Rosenfeld, M. E. 1988 Athlin, S. 2017-1 Athlin, S. 2017-2 Birtles, R. J. 1990 Diederen, B. M. 2006-1-1 Diederen, B. M. 2006 1-2 Diederen, B. M. 2006 1-3 Diederen, B. M. 2006 1-4 Diederen, B. M. 2006 2-1 Diederen, B. M. 2006 2-2 Diederen, B. M. 2006 2-3 Diederen, B. M. 2006 2-4 Diederen, B. M. 2006 2-5 Diederen, B. M. 2006 2-6 Diederen, B. M. 2007-1 Diederen, B. M. 2007-2 Diederen, B. M. 2007-3 Diederen, B. M. 2007-4 Diederen, B. M. 2009-1 Diederen, B. M. 2009-2 Diederen, B. M. 2009-3 Diederen, B. M. 2009-4 Dominguez, J. 2001-1 Dominguez, J. 2001-2 Gadsby, N. J.2016 Helbig, J. H. 2001-1 Helbig, J. H. 2001-2 Helbig, J. H. 2001-3 Jorgensen, C. S. 2015-1 Jorgensen, C. S. 2015-2 Jorgensen, C. S. 2015-3 Jorgensen, C. S. 2015-4 Jorgensen, C. S. 2015-5 Jorgensen, C. S. 2015-6 Kazandjian, D. 1997-1 Kazandjian, D. 1997-2 Koide, M. 2006-1 Koide, M. 2006-2 Koide, M. 2006-3 Leland, D. S. 1991 Peci, A. 2016-1 Peci, A. 2016-2 Plouffe, J. F. 1995 Samuel, D. 1990 Sathapatayavongs, B. 1982 Svarrer, C. W. 2012-1 Svarrer, C. W. 2012-2 Svarrer, C. W. 2012-3 Tang, P. W. 1986 White, A. 1982 TP 13 5 5 93 65 67 65 66 52 59 23 20 67 69 58 68 64 66 69 76 74 80 34 27 23 149 148 156 48 43 30 25 1 6 46 0 15 14 14 76 67 56 38 28 35 72 43 29 25 39 FP 10 0 0 27 6 4 6 5 21 14 50 53 6 4 12 2 6 4 16 9 8 6 8 15 4 38 39 31 7 12 25 25 49 44 13 12 0 1 1 64 10 19 30 3 12 19 48 62 10 8 FN 0 0 0 0 0 0 4 18 3 3 2 7 0 0 1 1 1 0 0 2 0 0 0 0 1 8 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 89 38 16 6 0 0 2 0 3 0 3 TN 346 139 142 80 91 91 87 73 86 86 87 82 89 89 98 98 98 99 86 84 87 87 122 122 343 271 279 279 76 76 76 76 76 76 208 208 40 40 40 252 680 961 630 8 178 92 94 91 251 175 Sensitivity (95% CI) 1.00 [0.75, 1.00] 1.00 [0.48, 1.00] 1.00 [0.48, 1.00] 1.00 [0.96, 1.00] 1.00 [0.94, 1.00] 1.00 [0.95, 1.00] 0.94 [0.86, 0.98] 0.79 [0.68, 0.87] 0.95 [0.85, 0.99] 0.95 [0.87, 0.99] 0.92 [0.74, 0.99] 0.74 [0.54, 0.89] 1.00 [0.95, 1.00] 1.00 [0.95, 1.00] 0.98 [0.91, 1.00] 0.99 [0.92, 1.00] 0.98 [0.92, 1.00] 1.00 [0.95, 1.00] 1.00 [0.95, 1.00] 0.97 [0.91, 1.00] 1.00 [0.95, 1.00] 1.00 [0.95, 1.00] 1.00 [0.90, 1.00] 1.00 [0.87, 1.00] 0.96 [0.79, 1.00] 0.95 [0.90, 0.98] 1.00 [0.98, 1.00] 1.00 [0.98, 1.00] 1.00 [0.93, 1.00] 1.00 [0.92, 1.00] 1.00 [0.88, 1.00] 1.00 [0.86, 1.00] 1.00 [0.03, 1.00] 1.00 [0.54, 1.00] 0.98 [0.89, 1.00] 0.00 [0.00, 0.97] 1.00 [0.78, 1.00] 1.00 [0.77, 1.00] 1.00 [0.77, 1.00] 0.46 [0.38, 0.54] 0.64 [0.54, 0.73] 0.78 [0.66, 0.87] 0.86 [0.73, 0.95] 1.00 [0.88, 1.00] 1.00 [0.90, 1.00] 0.97 [0.91, 1.00] 1.00 [0.92, 1.00] 0.91 [0.75, 0.98] 1.00 [0.86, 1.00] 0.93 [0.81, 0.99] Specificity (95% CI) 0.97 [0.95, 0.99] 1.00 [0.97, 1.00] 1.00 [0.97, 1.00] 0.75 [0.65, 0.83] 0.94 [0.87, 0.98] 0.96 [0.90, 0.99] 0.94 [0.86, 0.98] 0.94 [0.86, 0.98] 0.80 [0.72, 0.87] 0.86 [0.78, 0.92] 0.64 [0.55, 0.72] 0.61 [0.52, 0.69] 0.94 [0.87, 0.98] 0.96 [0.89, 0.99] 0.89 [0.82, 0.94] 0.98 [0.93, 1.00] 0.94 [0.88, 0.98] 0.96 [0.90, 0.99] 0.84 [0.76, 0.91] 0.90 [0.82, 0.95] 0.92 [0.84, 0.96] 0.94 [0.86, 0.98] 0.94 [0.88, 0.97] 0.89 [0.83, 0.94] 0.99 [0.97, 1.00] 0.88 [0.84, 0.91] 0.88 [0.84, 0.91] 0.90 [0.86, 0.93] 0.92 [0.83, 0.97] 0.86 [0.77, 0.93] 0.75 [0.66, 0.83] 0.75 [0.66, 0.83] 0.61 [0.52, 0.69] 0.63 [0.54, 0.72] 0.94 [0.90, 0.97] 0.95 [0.91, 0.97] 1.00 [0.91, 1.00] 0.98 [0.87, 1.00] 0.98 [0.87, 1.00] 0.80 [0.75, 0.84] 0.99 [0.97, 0.99] 0.98 [0.97, 0.99] 0.95 [0.94, 0.97] 0.73 [0.39, 0.94] 0.94 [0.89, 0.97] 0.83 [0.75, 0.89] 0.66 [0.58, 0.74] 0.59 [0.51, 0.67] 0.96 [0.93, 0.98] 0.96 [0.92, 0.98] Sensitivity (95% CI) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Specificity (95% CI) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
資料CQ5—5 エビデンスプロファイル 感 度0.79(95% CI:0.71~0.85)特異度1.00(95% CI:0.99~1.00)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(レジオネラ肺炎を持つ患者) 21 研究11,724患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a非常に 深刻b非常に 深刻c深刻で ないdなし40 (36~ 43) 79 (71~ 85) 158 (142~ 170) +○○○非常に低偽陰性(誤ってレジオネラ肺炎を持っていないと分類された患者) 10 (7~ 14) 21 (15~ 29) 42 (30~ 58) 真陰性(レジオネラ肺炎のない患者) 21 研究11,724患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a非常に 深刻b深刻c 深刻で ないeなし950 (941~ 950) 900 (891~ 900) 800 (792~ 800) +○○○非常に低偽陽性(誤ってレジオネラ肺炎を持つと分類される患者) 0 (0~9) 0 (0~9) 0 (0~8)説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で21/21 個,インデックス検査で21/21 個,参照基準で21/21 個,フローとタイミングで20/21 個であった.このように,2 項目以上で,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため,「非常に深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で17/21 個,インデックス検査で18/21 個,参照基準で0/21 個であった.このように,2 項目以上で,高い懸念または不明であった文献の割合が1/2 程度以上であったため,適用可能性が損なわれていると考えた.さらに,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,肺炎疑い患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「非常に深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
資料CQ5—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ5:ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ 抗原検査を用いるか? 集 団: ARDS の患者または急性呼吸不全患者診断対象:レジオネラ肺炎検 査:尿中レジオネラ抗原検査検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:陽性であれば,レジオネラ肺炎と診断し,適切な抗菌薬選択による治療を開始する. 陰性であれば,不要な抗菌薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景:レジオネラ肺炎は急速な呼吸不全を呈し,ARDS の原疾患として重要である.レジ オネラ肺炎に対する適切な治療が行われなかった場合は,致死的な転帰をたどる可能性が高い.一方で,適切な抗菌薬投与によって患者の予後を改善させられる可能性があるため,レジオネラ肺炎を迅速に診断することは重要である.尿中レジオネラ抗原検査は,救急外来などで広く使用されている検査である.これらから,本問題は臨床上重要と考えられる.これらから「ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない○わからないレジオネラ肺炎は急速な呼吸不全を呈し,ARDS の原疾患として重要である.レジオネラ肺炎に対する適切な治療が 行われなかった場合は,致死的な転帰をたどる可能性が高い.一方で,適切な抗菌薬投与によって患者の予後を改善させられる可能性があるため,レジオネラ肺炎を迅速に診断することは重要である.尿中レジオネラ抗原検査は,救急外来などで広く使用されている検査である.これらから,本問題は臨床上重要と考えられる.したがって,この臨床疑問の優先度は高いと考えられた
検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確●正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからないSR とメタ解析により以下の結果が得られた 検査の精度は,「正確」と判断した 尿中レジオネラ抗原検査(21 RCT:n=11,724)統合感度:0.79(95% CI:0.71~0.85)統合特異度:1.00(95% CI:0.99~1.00) 1,000 人に検査を 実施した場合エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性40 (36~ 43) 79 (71~ 85) 158 (142~ 170)非常に低 偽陰性10 (7~ 14) 21 (15~ 29) 42 (30~ 58) 真陰性950 (941~ 950) 900 (891~ 900) 800 (792~ 800)非常に低 偽陽性0 (0~9) 0 (0~9) 0 (0~8) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)を検討し,望ましい効果は「中程度」と判定した 尿中レジオネラ抗原検査 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする40 人79 人158 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人検査結果によらず全員治療する場合は,(治療 の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.1 と 設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受ける人数を検討し,望ましくない効果は「わずか」と判定した 尿中レジオネラ抗原検査 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする0 人0 人0 人検査結果によらず全員を治療する95 人90 人80 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した 全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は,0 人と考えた 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮 しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし
検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗菌薬などの治療は「優れた医療上 の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに抗菌薬の治療が開始さ れるため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」であるため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は,医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある(偽陽性の臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある) 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考●検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない○わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性 と診断され不必要な治療の受ける不利益,および検査の害について正味の利益(net—benefit)を求めた 尿中レジオネラ抗原検査正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする40 人79 人158 人検査結果によらず全員を治療する-45 人10 人120 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人偽陽性の臨床的重みを0.1 と考え,事前確率5%,10%, 20%でのnet—benefit を計算した.検査の有害事象は無視できる程度と考えられた.検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる.これらから,効果のバランスは「検査を支持する」と判定した正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した 重大な有害事象が無視できる程度の場合は,0として計算した.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した
受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る ○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考●可能○たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,実施可能と考えられ る 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない
検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には言えないわから ない
結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問ARDS の原因疾患(レジオネラ肺炎)の鑑別に際して,尿中レジオネラ抗原検査を用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 尿中レジオネラ抗原検査.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療陽性であれば,レジオネラ肺炎と診断し,適切な抗菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う.エビデンスの要約尿中レジオネラ抗原検査(21 RCT:n=11,724),統合感度:0.79(95% CI:0.71~0.85),統合特異度:1.00(95% CI:0.99~1.00).エビデンスの確実性感度・特異度の両方において,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定尿中レジオネラ抗原検査を実施することによる望ましい効果として,レジオネラ肺炎と診断し適切な治療が迅速に受けられることが想定される.また,望ましくない効果として,誤診断(偽陽性) 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ● ○
により不要な治療を受ける害が考えられる.検査の望ましい効果と害を,検査せずに治療方針を決定した場合と比較した時に,検査の望ましい効果は大きいと考えられる.実行可能性は問題なく,一般に受け入れられている医療行為である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議ではLegionella pneumophila 血清型1 型とそれ以外のレジオネラ属菌も対象にしたキットの診断性能について議論があり,実施上の考慮事項に追記された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば,効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 今回のSR で組み入れられた研究では,複数種類の検査キットが用いられていた.Legionella pneumophila 血清型1 型のみを対象としたキットの結果は16 件,それ以外の血清型やLegionella pneumophila 以外のレジオネラ属菌も対象としたキットの結果は20 件だった(同一研究内で複数のキットを扱っているものがあり,それらの重複を含む).実施にあたっては,検査キットの種類や対象となるレジオネラ属菌に注意が必要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities SR に組み入れられた研究の多くは,肺炎患者を対象としたものである.ARDS 患者を対象とした,尿中レジオネラ抗原検査の診断精度研究が求められる.また,Legionella pneumophila 血清型1 型以外の血清型や,Legionella pneumophila 以外のレジオネラ属菌も含めた診断精度に関する研究が求められる.
背景,この問題の優先度 マイコプラズマ肺炎は市中肺炎として比較的頻度が高く,稀ではあるがARDSに進展し重篤な呼吸不全を呈することがある.マイコプラズマ肺炎の早期診断を行うことで適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不必要な抗菌薬投与による治療の害の可能性が考えられる.マイコプラズマ肺炎の診断には,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査などが一般的に用いられている.これらの検査の実施による利益と害を検証することは,ARDS 診療において重要課題である.以上より,上記CQ が設定された.解 説 PICO 患者(P):ARDS 患者.検査:抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査.目的:救急外来,ICU,または,それに準じた 状況でのARDS 患者の鑑別. エビデンスの要約 該当の研究なし.検査結果が陽性であれば,マイコプラズマ肺炎と診断し,適切な抗菌薬の投与を行う.陰性であれば,マイコプラズマ肺炎を否定し,不要な抗菌薬の投与を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行う,一方で,検査によって誤った診断が下されることで,不要な抗菌薬が投与されるなどの害が生じる可能性がある. 1 2 1 2 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(マイコプラズマ肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭 い液),血清抗体検査を用いるか? CQ 6 ARDS の原因疾患としてマイコプラズマ肺炎の鑑別に際して,抗原検査(咽 頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるかどうかにつ いて,特定の推奨を下すことはできない.これらの検査は,臨床医の経験な どに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). 推 奨
ARDS 患者を対象とした,上記の検査の診断精度の研究は見つからなかった.ARDS 患者を対象としたものではないが,一般的なマイコプラズマ肺炎を対象とした診断精度研究の結果を,間接的なエビデンスとして紹介する.咽頭拭い液抗原検査キットは様々な製品が発表されている.マイコプラズマ肺炎診断におけるリボテスト® マイコプラズマは,市中肺炎の患者を対象として,PCR検査をreference standard とした場合,感度62.5%,特異度90.9%と報告されている1).咽頭拭い液の遺伝子検査としては,外来診療ではLAMP 法が用いられることが多い.小児マイコプラズマ肺炎を対象としたLAMP 法につき,感度96.8%,特異度100%との報告がある2).マイコプラズマの抗体検査としていくつかの検査法があるが,比較的広く用いられているのは,微粒子凝集法(PA),補体結合反応法(CF),酵素抗体法(EIA)などである.急性期には主にIgM 抗体が診断に用いられているが,感度35%~77%,特異度49%~100%と,検体採取時期や検査キットによって診断精度のばらつきが大きい3).検査の診断精度を検討した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビエンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 利益と害のバランスは不明である.受け入れ,実行可能性については日常臨床で行われているため問題ないと思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では,推奨文の日本語表現について議論があり微修正を行った.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されており,特に問題は生じないと思われる. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 今後,この臨床疑問に関する診断精度研究が必要である. 文献検索式と文献選択 「pneumonia, mycoplasma」「diagnosis」「antigen」をキーワードとして,PubMed で2020 年4 月15 日までの文献を検索したところ34 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当する研究はなかった. 3 4 5 3 4 5 6 7 8
本CQ で対象とした研究 なし.資料一覧 ・資料CQ6‒1 Search strategy.・資料CQ6‒2 フローダイアグラム.・資料CQ6‒3 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Miyashita N, Kawai Y, Tanaka T, et al. Diagnostic sensitivity of a rapid antigen test for the detection of Mycoplasma pneumoniae:comparison with real‒time PCR. J Infect Chemother 2015;21:473‒5. 2) Kakuya F, Kinebuchi T, Fujiyasu H, et al. Genetic point‒of‒care diagnosis of Myco- plasma pneumoniae infection using LAMP assay. Pediatr Int 2014;56:547‒52. 3) Beersma MF, Dirven K, van Dam AP, et al. Evaluation of 12 commercial tests and the complement fixation test for Mycoplasma pneumoniae‒specific immunoglobulin G (IgG)and IgM antibodies, with PCR used as the“gold standard”. J Clin Microbiol 2005;43:2277‒85. 参考文献
資料CQ6—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/4/15) #1 acute lung injury[MeSH Terms] #2 acute respiratory distress syndrome[MeSH Terms] #3 ALI[Title/Abstract] #4 ARDS[Title/Abstract] #5 acute lung injur*[Title/Abstract] #6 hypoxemic respiratory failure[Title/Abstract] #7 shock[Title/Abstract] #8 intensive care units[Title/Abstract] #9 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 #10 antigen[Title/Abstract] #11 pcr[Title/Abstract] #12 real time pcr[Title/Abstract] #13 antibody[Title/Abstract] #14 serology[Title/Abstract] #15 diagnosis[Title/Abstract] #16 #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 #17 pneumonia, mycoplasma[MeSH Terms] #18 mycoplasma pneumon*[Title/Abstract] #19 m.pneumon*[Title/Abstract] #20 #17 OR #18 OR #19 #21 #9 AND #16 AND #20
資料CQ6—2 フローダイアグラム 検索で同定された研究 n=34 除外基準に該当した研究 n=34 重複研究を除外した研究 n=34 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究 n=34 MEDLINE(PubMed) 34件
資料CQ6—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ6:ARDS の原因疾患(マイコプラズマ肺炎)の鑑別に際して,抗原検査 (咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるか? 集 団: ARDS 患者診断対象:マイコプラズマ肺炎検 査:抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来,ICU,またはそれに準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重篤な有害事象検査結果に基づく診療:陽性(マイコプラズマ肺炎が疑われる)であれば,更なる診断検査を行い,適切な 抗菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景:マイコプラズマ肺炎は市中肺炎として比較的頻度が高く,稀ではあるがARDS に進 展し重篤な呼吸不全を呈することがある.マイコプラズマ肺炎の早期診断を行うことで適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不必要な抗菌薬投与による治療の害の可能性が考えられる.マイコプラズマ肺炎の診断には,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査などが一般的に用いられている.これらの検査の実施による利益と害を検証することは,ARDS 診療において重要課題である.以上より,「ARDS の原因疾患(マイコプラズマ肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない○わからないマイコプラズマ肺炎は市中肺炎として比較的頻度が高く,稀ではあるが ARDS に進展し重篤な呼吸不全を呈することがある.マイコプラズマ肺炎の早期診断を行うことで適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤診断した場合,不必要な抗菌薬投与による治療の害の可能性が考えられる.これらの検査の利益と害を検証することは,ARDS 診療において重要課題である.したがって,この臨床疑問の優先度は高いと考えられた
検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確○正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない●わからない文献検索では,ARDS 患者を対象とした,マイコプラズマ肺炎の診断に おける,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査抗原検査の診断精度を報告した質の高い研究は,見つけられなかった.したがって,検査の精度がどの程度かは,わからない ARDS 患者を対象としたものではないが,一般的なマイコプラズマ肺炎を対象とした診断精度研究の結果を,間接的なエビデンスとして紹介する咽頭拭い液抗原検査キットは様々な製品が発表されている.マイコプラズマ肺炎診断におけるリボテスト® マイコプラズマは,市中肺炎の患者を対象として,PCR検査をreference standardとした場合,感度62.5%,特異度90.9%と報告されている1)咽頭拭い液遺伝子検査は,外来診療ではLAMP 法が用いられることが多い.小児マイコプラズマ肺炎を対象としたLAMP 法につき,感度96.8%特異度100%との報告がある2)マイコプラズマの抗体検査としていくつかの検査法があるが,比較的広く用いられているのは,微粒子凝集法(PA),補体結合反応法(CF),酵素抗体法(EIA)などである.急性期には主にIgM 抗体が診断に用いられているが,感度35~77%,特異度49~100%と,検体採取時期や検査キットによって診断精度のばらつきが大きい3) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないマイコプラズマ肺炎の早期診断を行うことで,適切な抗菌薬選択による治療介入を提供でき,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待さ れる.しかしながら,その望ましい効果の大きさがどの程度かは,わからない 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずかマイコプラズマ肺炎を誤診断した場合,不必要な抗菌薬投与による治療 の害の可能性が考えられる.しかしながら,その望ましくない効果の大きさがどの程度かは,わからない
○一概には言えない●わからない 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない診断精度のエビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits,adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスはない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗菌薬などの治療は「優れた医療上の慣行」とし て治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない
検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに抗菌薬の治療が開始されるため,結 果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからないエビデンスとして組み入れられた研究はない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性やばらつきがある可 能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましくない効果の価値は,医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観 によって異なる可能性がある
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない●わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性と診断され不 必要な治療の受ける不利益,および検査の害についてのバランスは,エビデンスがないため,どちらが大きいかわからない 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられる 考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない施設によっては院内で測定できない可能性もあるが,一般に行われてい る医療行為であり,たぶん実施可能と考えられる考慮されたエビデンスなし
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない
効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患としてマイコプラズマ肺炎の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるかどうかについて,特定の推奨を下すことはできない.これらの検査は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(マイコプラズマ肺炎)の鑑別に,抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査を用いるか?患 者 ARDS 患者.検 査 抗原検査(咽頭拭い液),遺伝子検査(咽頭拭い液),血清抗体検査.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 患者の鑑別.解 説検査結果が陽性であれば,マイコプラズマ肺炎と診断し,適切な抗菌薬の投与を行う.陰性であれば,マイコプラズマ肺炎を否定し,不要な抗菌薬の投与を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行う,一方で,検査によって誤った診断が下されることで,不要な抗菌薬が投与されるなどの害が生じる可能性がある.
ARDS 患者を対象とした,上記の検査の診断精度の研究は見つからなかった.ARDS 患者を対象としたものではないが,一般的なマイコプラズマ肺炎を対象とした診断精度研究の結果を,間接的なエビデンスとして紹介する.咽頭拭い液抗原検査キットは様々な製品が発表されている.マイコプラズマ肺炎診断におけるリボテスト® マイコプラズマは,市中肺炎の患者を対象として,PCR 検査をreference standard とした場合,感度62.5%,特異度90.9%と報告されている1).咽頭拭い液遺伝子検査は,外来診療ではLAMP 法が用いられることが多い.小児マイコプラズマ肺炎を対象としたLAMP 法につき,感度96.8%,特異度100%との報告がある2).マイコプラズマの抗体検査としていくつかの検査法があるが,比較的広く用いられているのは,微粒子凝集法(PA),補体結合反応法(CF),酵素抗体法(EIA)などである.急性期には主にIgM抗体が診断に用いられているが,感度35~77%,特異度49~100%と,検体採取時期や検査キットによって診断精度のばらつきが大きい3).検査の診断精度を検討した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビエンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定利益と害のバランスは不明である.受け入れ,実行可能性については日常臨床で行われているため問題ないと思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では推奨文の日本語表現について議論があり微修正を行った.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されており,特に問題は生じないと思われる. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今後,この臨床疑問に関する診断精度研究が必要である.
参考文献1) Miyashita N, Kawai Y, Tanaka T, et al. Diagnostic sensitivity of a rapid antigen test for the detection of Mycoplasma pneumoniae:Comparison with real‒time PCR. J Infect Chemother 2015;21:473‒5. 2) Kakuya F, Kinebuchi T, Fujiyasu H, et al. Genetic point‒of‒care diagnosis of Mycoplasma pneumoniae infection using LAMP assay. Pediatr Int 2014;56:547‒52. 3) Beersma MF, Dirven K, van Dam AP, et al. Evaluation of 12 commercial tests and the complement fixation test for Mycoplasma pneumoniae‒specific immunoglobulin G(IgG)and IgM antibodies, with PCR used as the“gold standard”. J Clin Microbiol 2005;43:2277‒ 85.
背景,この問題の優先度 疫学的調査は十分でないが,インフルエンザウイルス肺炎がARDSを引き起こすことが報告されている.インフルエンザウイルス感染症ではノイラミニダーゼ阻害薬投与により,入院,肺炎発症,死亡率が減少することが報告されている1).インフルエンザウイルス感染症の診断においては,咽頭拭い液や鼻腔拭い液を用いた迅速診断キットによる抗原検査が一般的に使用されている.その一方で,新型インフルエンザA(H1N1)肺炎などにおいて,上気道検体による抗原検査では診断できず,気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid:BALF)のPCR 検査で診断に至った症例の報告も散見される.ARDS 患者に対し,これらの検査でインフルエンザウイルス肺炎を診断し,適切な抗ウ イルス薬投与による治療介入を行うことは重要である.以上より,本CQ が設定された. 解 説 PICO 患者(P):ARDS 患者.検査:インフルエンザ抗原検査(咽頭拭い液・ 鼻腔拭い液),PCR 検査(BALF).目的:救急外来,ICU,またはそれに準じた状 況におけるARDS 診療における鑑別診断. エビデンスの要約 該当の研究なし.検査結果が陽性であれば,インフルエンザウイルス肺炎と診断し,適切な抗ウイルス薬の投 1 2 1 2 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液), PCR 検査(気管支肺胞洗浄液)を用いるか? CQ 7 ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検 査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(気管支肺胞洗浄液)を用いるか どうかについて,特定の推奨を下すことはできない.これらの検査は,臨床 医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). 推 奨
与を行う.陰性であれば,インフルエンザウイルス肺炎を否定し,不要な抗ウイルス薬の投与を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行う.一方で,検査によって誤った診断が下されることで,不要な抗ウイルス薬が投与されるなどの害が生じる可能性がある. ARDS 患者やインフルエンザウイルス肺炎を対象とした,上記の検査の診断精度の研究は見つからなかった.一般的なインフルエンザウイルス感染症を対象とした診断精度研究の結果を,間接的なエビデンスとして紹介する. Chartrand らによるSR では,インフルエンザウイルス感染症の診断に対する,抗原検査の感度は62.3%(95%CI:57.9%~66.6%),特異度は98.2%(95%CI:97.5%~98.7%)と報告されている2).また,Huang らは,複数のマルチプレックス遺伝子パネル検査の,インフルエンザウイルス感染に対する診断精度を検討し,感度0.940(95%CI:0.902~0.964),特異度0.987(95%CI:0.979~0.992)と報告した3).検査の診断精度を検討した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビエンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 好ましい効果(利益)と好ましくない効果(害)のバランスは不明である.受け入れ,実行可能性については問題ないと思われる.パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.136 であった.パネル会議では急性呼吸不全やARDSを対象とした研究が見つからなかったと報告された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されており,特に問題は生じないと思われる. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 今後,この臨床疑問に関する診断精度研究が必要である. 文献検索式と文献選択 「pneumonia」「influenza,human」「diagnosis」をキーワードとして,PubMed で2020年7 月10 日までの文献を検索したところ135件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当する研究はなかった. 3 4 3 4 5 6 7 8
本CQ で対象とした研究 なし.資料一覧 ・資料CQ7‒1 Search strategy.・資料CQ7‒2 フローダイアグラム.・資料CQ7‒3 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Doll MK, Winters N, Boikos C, et al. Safety and effectiveness of neuraminidase inhib- itors for influenza treatment, prophylaxis, and outbreak control:a systematic review of systematic reviews and/or meta‒analyses. J Antimicrob Chemother. 2017;72: 2990‒3007. 2) Chartrand C, Leeflang MM, Minion J, et al. Accuracy of rapid influenza diagnostic tests:a meta‒analysis. Ann Intern Med 2012;156:500‒11. 3) Huang HS, Tsai CL, Chang J, et al. Multiplex PCR system for the rapid diagnosis of respiratory virus infection:systematic review and meta‒analysis. Clin Microbiol Infect 2018;24:1055‒63. 参考文献
資料CQ7—1 Search strategy
Antigen MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/10) #1 "pneumonia"[MH] #2 "influenza, human"[MH] #3 "Influenzavirus A"[MH] #4 "Influenzavirus B"[MH] #5 "Influenzavirus C"[MH] #6 #1 AND (#2 OR #3 OR #4 OR #5) #7 "antigens"[MH] OR swab*[TiAb] #8 "diagnosis"[MH] OR "diagnosis"[SH] #9 #7 AND #8 #10 #6 AND #9
PCR MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/10) #1 "pneumonia"[MH] #2 "influenza, human"[MH] #3 "Influenzavirus A"[MH] #4 "Influenzavirus B"[MH] #5 "Influenzavirus C"[MH] #6 #1 AND (#2 OR #3 OR #4 OR #5) #7 "diagnosis"[MH] OR "diagnosis"[SH] #8 "polymerase chain reaction"[MH]) OR ("bronchoalveolar lavage fluid"[MH] #9 #7 AND #8 #10 #6 AND #9
資料CQ7—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 n=135 MEDLINE(PubMed) 69件CENTRAL 66件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=135 重複研究を除外した研究 n=135 除外基準に該当した研究 n=135 メタ解析に組み入れた研究 n=0 系統的レビューに組み入れた研究 n=0
資料CQ7—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ7:ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して, 抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(気管支肺胞洗浄液)を用いるか? 集 団: ARDS 患者診断対象:インフルエンザウイルス肺炎検 査:抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(気管支肺胞洗浄液:BALF)検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来,ICU,またはそれに準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重篤な有害事象検査結果に基づく診療:陽性(インフルエンザウイルス肺炎が疑われる)であれば,更なる診断検査を行い, 適切な抗ウイルス薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗ウイルス薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景:疫学的調査は十分でないが,インフルエンザウイルス肺炎がARDS を引き起こすこ とが報告されている.インフルエンザウイルス感染症ではノイラミニダーゼ阻害薬投与により,入院,肺炎発症,死亡率が減少することが報告されている1).インフルエンザウイルス感染症の診断においては,咽頭拭い液や鼻腔拭い液を用いた迅速診断キットによる抗原検査が一般的に使用されている.その一方で,新型インフルエンザA(H1N1)肺炎などにおいて,上気道検体による抗原検査では診断できず, BALF のPCR 検査で診断に至った症例の報告も散見される.ARDS 患者に対し,これらの検査でインフルエンザウイルス肺炎を診断し,適切な抗ウイルス薬投与による治療介入を行うことは重要である.以上より,「ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(BALF)を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない疫学的調査は十分でないが,インフルエンザウイルス肺炎がARDS を 引き起こすことが報告されている.インフルエンザウイルス感染症ではノイラミニダーゼ阻害薬投与により,入院,肺炎発症,死亡率が減少することが報告されている1).インフルエンザウイルス肺炎を診断し,適切な抗ウイルス薬投与による治療介入を行うことは重要である.したがって,この問題の優先度は高いと考えられた
○一概には言えない○わからない 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確○正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない●わからない文献検索では,ARDS 患者を対象とした,インフルエンザウイルス肺炎 の診断における,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR検査(BALF)の診断精度を報告した質の高い研究は,見つけられなかった.したがって,検査の精度がどの程度かは,わからないARDS 患者を対象としたものではないが,一般的なインフルエンザウイルス感染症を対象とした診断精度研究の結果を,間接的なエビデンスとして紹介するChartrand らによるSR では,インフルエンザウイルス感染症の診断に対する,抗原検査の感度は62.3%(95% CI:57.9%~66.6%),特異度は98.2%(95% CI:97.5%~98.7%)と報告されている2).また,Huangらは,複数のマルチプレックス遺伝子パネル検査の,インフルエンザウイルス感染に対する診断精度を検討し,感度0.940(95% CI:0.940~ 0.964),特異度0.987(95% CI:0.979~0.992)と報告した3) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないインフルエンザウイルス肺炎を正しく診断することができれば(真陽 性),ノイラミニダーゼ阻害薬などの適切な抗ウイルス薬を投与することができ,患者の予後改善につながる可能性がある.しかしながら,その望ましい効果の大きさがどの程度かは,わからない 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないインフルエンザウイルス肺炎を誤診断した場合(偽陽性),本来であれば 不要な抗ウイルス薬の投与が行われてしまい,患者に副作用リスクをもたらすことが懸念される.しかしながら,その望ましくない効果の大きさがどの程度かは,わからない
検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない診断精度のエビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスはない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗ウイルス薬などの治療は「優れた医療上の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性 と判断され不必要な治療を受けると,望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない
検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに抗ウイルス薬の治療が開始されるた め,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからないエビデンスとして組み入れられた研究はない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性やばらつきがある可 能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましくない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験が変わればその価値観に よって異なる可能性がある
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない●わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性と診断され不 必要な治療の受ける不利益,および検査の害についてのバランスは,エビデンスがないためどちらが大きいかわからない 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,受け入れられると考えられる 考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,おそらく実行可能と考えられるが, 施設によっては気管支肺胞洗浄検査を実行できない可能性がある考慮されたエビデンスなし
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない
効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(気管支肺胞洗浄液)を用いるかどうかについて,特定の推奨を下すことはできない.これらの検査は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(インフルエンザウイルス肺炎)の鑑別に際して,抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(BALF)を用いるか?患 者 ARDS 患者.検 査 抗原検査(咽頭拭い液・鼻腔拭い液),PCR 検査(BALF).検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断.解 説検査結果が陽性であれば,インフルエンザウイルス肺炎と診断し,適切な抗ウイルス薬の投与を行う.陰性であれば,インフルエンザウイルス肺炎を否定し,不要な抗ウイルス薬の投与を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行う.一方で,検査によって誤った診断が下されることで,不要な抗ウイルス薬が投与されるなどの害が生じる可能性がある.
ARDS 患者やインフルエンザウイルス肺炎を対象とした,上記の検査の診断精度の研究は見つからなかった.一般的なインフルエンザウイルス感染症を対象とした診断精度研究の結果を,間接的なエビデンスとして紹介する. Chartrand らによるSR では,インフルエンザウイルス感染症の診断に対する,抗原検査の感度は62.3%(95%CI:57.9%~66.6%),特異度は98.2%(95%CI:97.5%~98.7%)と報告されている2).また,Huang らは,複数のマルチプレックス遺伝子パネル検査の,インフルエンザウイルス感染に対する診断精度を検討し,感度0.940(95%CI:0.940~0.964),特異度0.987(95% CI:0.979~0.992)と報告した3).検査の診断精度を検討した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビエンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定好ましい効果(利益)と好ましくない効果(害)のバランスは不明である.受け入れ,実行可能性については問題ないと思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.136 であった.パネル会議では急性呼吸不全やARDS を対象とした研究が見つからなかったと報告された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されており,特に問題は生じないと思われる. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今後,この臨床疑問に関する診断精度研究が必要である.参考文献1) Doll MK, Winters N, Boikos C, et al. Safety and effectiveness of neuraminidase inhibitors for influenza treatment, prophylaxis, and outbreak control:a systematic review of systematic reviews and/or meta‒analyses. J Antimicrob Chemother 2017;72:2990‒3007. 2) Chartrand C, Leeflang MM, Minion J, et al. Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta‒analysis. Ann Intern Med 2012;156:500‒11. 3) Huang HS, Tsai CL, Chang J, et al. Multiplex PCR system for the rapid diagnosis of respiratory virus infection:systematic review and meta‒analysis. Clin Microbiol Infect 2018; 24:1055‒63.
背景,この問題の優先度 ARDS は,肺水腫を伴わない両側の浸潤影を伴う急性の呼吸不全であり,その原因疾患は様々である.サイトメガロウイルス肺炎(cytomegalovirus:CMV 肺炎)は,免疫不全患者のみならず,免疫不全のないARDS患者にも認められ,その診断の遅れは,致死的な経過をとることも稀でないことから,ARDS の原因として重要である.ARDS の患者の原因診療においてCMV 肺炎が正しく診断されれば,最適化した抗ウイルス薬による治療が実施でき,患者予後の改善に寄与すると考えられる.正しく除外診断できれば,不適切な抗ウイルス薬の使用を回避することができ,患者予後の悪化を回避できると思われる.しかし,その一方で,誤診断した場合は,不要な薬剤により治療されてしまう こととなり,患者にとって有害である.CMV血液アンチゲネミア法(CMV 抗原血症検査)および気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid:BALF)のCMV‒PCR 検査は免疫不全患者で問題となるCMV 感染症の早期診断および治療の効果判定に用いる検査であり, CMV 感染症のモニタリング,および抗ウイルス薬の効果判定および中止時期の指標として広く用いられている.これらから,本CQ が設定された. 解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者または急性呼吸不全患 者. 1 2 1 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR検査(気管支肺胞洗浄液),血液アンチゲネミア法を用いるか? CQ 8 ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査 (気管支肺胞洗浄液),血液アンチゲネミア法を用いることを条件付きで推奨 する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
検査:PCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア 法.目的:救急外来またはICUに準じた状況におけ るARDS 症例の原因病態としてのCMV 肺炎の鑑別.検査結果に基づく診療:陽性であれば,CMV 肺炎と診断し,適切な抗ウイルス薬による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗ウイルス薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う. エビデンスの要約 本CQ ではPCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア法の診断性能に関するシステマティックレビュー(SR)およびメタ解析と気管支肺胞洗浄の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析を実施した.そのため複数の検索式,SRの結果が掲載されている. BALF を用いたPCR 検査(5RCT:n=353)の統合感度は,0.94(95%CI:0.86~0.97),統合特異度は,0.84(95%CI:0.52~0.96)であった.血液アンチゲネミア法(3RCT: n=91)では,陽性の定義を陽性細胞が1 個以上/20 万個とした場合,統合感度は,0.67 (95%CI:0.54~0.79),統合特異度は,0.87 (95%CI:0.73~0.95)となった.また,BALF の有害事象の頻度は,死亡0.000%(95%CI:0.000~0.035)であった. エビデンスの確実性 BALFによるPCR検査,血液アンチゲネミア法検査のいずれの検査も,バイアスのリスクなどを考慮しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.BALF の害について,エビデンスの確実性は「中」または「低」であった.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 利益は診断に基づく適切な治療であり,害は誤診断(偽陽性)による不必要な治療と有害事象がある.検査せずに治療方針を決定した場合と比較すると,利益は大きいと考えられる.実行可能な医療行為である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では保険診療上の注意事項について実施上の注意事項に追記することが提案され,修正された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 免疫応答の状況によって推奨が変化する可能性がある. 実施上の考慮事項 気管支肺胞洗浄の施行が困難な症例(コントロール不良な気管支喘息など)や,一部の間質性肺炎などでは,個別に施行可能性を慎重に考慮する必要がある.エビデンスとなったSR には,主に免疫不全患者を対象とした研究が含まれている.保険診療上,「サイトメガロウイルスpp65 抗原定性」は免疫染色法により,臓器移植後もしくは造血幹細胞移植後の患者またはHIV 感染者,または高度細胞性免疫不全の患者に対して行った場合に限り算定できる.ただし,高度細胞性免疫不全の患者については,当該検査が必要であった理由について,診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」と記載されている.また,今回組み入れられた研究においては,BALFや肺組織の顕微鏡的所見がreference standard として設定されていた.CMV 肺炎の確定診断において,これらの検査が用いられる 2 3 5 3 4
ことがある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 気管支肺胞洗浄検査などの有害事象の発生の増加などについて継続して評価が必要である.本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 今回のエビデンスの確実性は「非常に低い」であり,ARDS 患者を対象としたCMV‒PCR (BALF)およびCMV 血液アンチゲネミア法の診断精度を評価するための,更なる質の高い診断精度研究が望まれる. 文献検索式と文献選択 PCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア法の診断性能に関するSR およびメタ解析 「Cytomegalovirus Infections」「antigenaemia」「C7HRP」をキーワードとして, PubMed およびCochrane CENTRAL で2020年5 月26 日までの文献を検索したところ, 2,499 件の研究が同定され,スクリーニングの結果8 件の研究を採用した1‒8).気管支肺胞洗浄の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析 「ARDS」「ALI」「BAL」をキーワードとしてPubMed およびCochrane CENTRAL で2020 年6 月1 日までの文献を検索したところ, 4,193 件の研究が同定され,スクリーニングの結果15 件の研究を採用した9‒23). 本CQ で対象とした研究 PCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア法の診断性能に関するSR およびメタ解析 Angelici 19961), de la Hoz 19982), Eriksson 19933), Hansen 19974), Honda 20015), Liesnard 19946), Moon 20127), Uberti‒ Foppa 19988). 気管支肺胞洗浄の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析 Azoulay 20089), Azoulay 201010), Horowitz 200611), Kim 201812), Panidis 200513), Perkins 200514), Prebil 201415), Rabbat 200816), Ravaglia 201217), Samanta 201818), Schnabel 201519), Sircar 201920), Snyder 199121), Steinberg 199322), Wang 201923). 資料一覧 ・資料CQ8‒1 Search strategy.・資料CQ8‒2 フローダイアグラム.・資料CQ8‒3 Risk of bias.・資料CQ8‒4 Forest plot.・資料CQ8‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ8‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 1 9 1 2 10 1) Angelici E, Contini C, Sebastiani G, et al. Cytomegalovirus in bronchoalveolar lavage specimens from patients with AIDS:comparison with antigenaemia and viraemia. J Med Microbiol 1996;45:149‒52. 参考文献
2) de la Hoz RE, Byrne SK, Hayashi S, et al. Diagnosis of cytomegalovirus infection in HIV‒infected patients with respiratory disease. Clin Diagn Virol 1998;10:1‒7. 3) Eriksson BM, Brytting M, Zweygberg‒Wirgart B, et al. Diagnosis of cytomegalovirus in bronchoalveolar lavage by polymerase chain reaction, in comparison with virus isolation and detection of viral antigen. Scand J Infect Dis 1993;25:421‒7. 4) Hansen KK, Vestbo J, Benfield T, et al. Rapid detection of cytomegalovirus in bron- choalveolar lavage fluid and serum samples by polymerase chain reaction:correlation of virus isolation and clinical outcome for patients with human immunodeficiency virus infection. Clin infect dis:an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 1997;24:878‒83. 5) Honda J, Yonemitsu J, Kitajima H, et al. Clinical utility of capillary polymerase chain reaction for diagnosis of Cytomegalovirus pneumonia. Scand J Infect Dis 2001;33: 702‒5. 6) Liesnard C, De Wit L, Motte S, et al. Rapid diagnosis of cytomegalovirus lung infection by DNA amplification in bronchoalveolar lavages. Mol Cell Probes 1994;8:273‒ 83 7) Moon SM, Sung H, Kim MN, et al. Diagnostic yield of the cytomegalovirus(CMV) antigenemia assay and clinical features in solid organ transplant recipients and hematopoietic stem cell transplant recipients with CMV pneumonia. Transpl Infect Dis:an official journal of the Transplantation Society. 2012;14:192‒7. 8) Uberti‒Foppa C, Lillo F, Terreni MR, et al. Cytomegalovirus pneumonia in AIDS patients:value of cytomegalovirus culture from BAL fluid and correlation with lung disease. Chest 1998;113:919‒23. 9) Azoulay E, Mokart D, Rabbat A, et al. Diagnostic bronchoscopy in hematology and oncology patients with acute respiratory failure:prospective multicenter data. Crit Care Med 2008;36:100‒7. 10) Azoulay E, Mokart D, Lambert J, et al. Diagnostic strategy for hematology and oncol- ogy patients with acute respiratory failure:randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2010;182:1038‒46. 11) Horowitz JC, Cui Z, Moore TA, et al. Constitutive activation of prosurvival signaling in alveolar mesenchymal cells isolated from patients with nonresolving acute respiratory distress syndrome. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2006;290:L415‒25. 12) Kim EJ, Jung CY, Kim KC. Effectiveness and safety of high‒flow nasal cannula oxygen delivery during bronchoalveolar lavage in acute respiratory failure patients. Tuberc Respir Dis(Seoul)2018;81:319‒29. 13) Panidis D, Markantonis SL, Boutzouka E, et al. Penetration of gentamicin into the alveolar lining fluid of critically ill patients with ventilator‒associated pneumonia. Chest 2005;128:545‒52. 14) Perkins GD, Chatterjee S, Giles S, et al. Safety and tolerability of nonbronchoscopic lavage in ARDS. Chest 2005;127:1358‒63. 15) Prebil SE, Andrews J, Cribbs SK, et al. Safety of research bronchoscopy in critically ill patients. J Crit Care 2014;29:961‒4. 16) Rabbat A, Chaoui D, Lefebvre A, et al. Is BAL useful in patients with acute myeloid leukemia admitted in ICU for severe respiratory complications? Leukemia. 2008; 22:1361‒7. 17) Ravaglia C, Gurioli C, Casoni G, et al. Diagnostic role of rapid on‒site cytologic exam-
ination(ROSE)of broncho‒alveolar lavage in ALI/ARDS. Pathologica 2012;104: 65‒9. 18) Samanta S, Poddar B, Azim A, et al. Significance of mini bronchoalveolar lavage fluid amylase level in ventilator‒associated pneumonia:a prospective observational study. Crit Care Med 2018;46:71‒8. 19) Schnabel RM, van der Velden K, Osinski A, et al. Clinical course and complications following diagnostic bronchoalveolar lavage in critically ill mechanically ventilated patients. BMC Pulm Med 2015;15:107. 20) Sircar M, Jha OK, Chabbra GS, et al. Noninvasive ventilation‒assisted bronchoscopy in high‒risk hypoxemic patients. Indian J Crit Care Med:peer‒reviewed, official publication of Indian Society of Critical Care Medicine. 2019;23:363‒7. 21) Snyder LS, Hertz MI, Peterson MS, et al. Acute lung injury. Pathogenesis of intraalve- olar fibrosis. J Clin Invest 1991;88:663‒73. 22) Steinberg KP, Mitchell DR, Maunder RJ, et al. Safety of bronchoalveolar lavage in patients with adult respiratory distress syndrome. Am Rev Respir Dis 1993;148: 556‒61. 23) Wang C, Ye S, Wang X, et al. Clinical efficacy and safety of mechanical ventilation combined with fiberoptic bronchoalveolar lavage in patients with severe pulmonary infection. Med Sci Monit:international medical journal of experimental and clinical research. 2019;25:5401‒7.
資 料本CQ では上記検査の診断性能に関するSR およびメタ解析と気管支肺胞洗浄の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析を実施した.そのため複数の検索式,SR の結果が掲載されている. 資料CQ8—1 Search strategy Antigenemia MEDLINE via PubMed(Search date:2020/5/26) #1 Cytomegalovirus Infections/diagnosis[Mesh] #2 "Pulmonary infection"[tiab] AND "cytomegalovirus"[tiab] #3 "CMV Pneumonia"[tiab] #4 #1 OR #2 OR #3 #5 "CMV pp65"[tiab] #6 antigenaemia[tiab] OR antigenemia[tiab] #7 pp65[tiab] #8 "cytomegalovirus pp65"[tiab] #9 "pp65 antigen*"[tiab] #10 "antigenemia assay"[tiab] #11 "CMV antigenemia"[tiab] #12 "cytomegalovirus antigen*"[tiab] #13 C7HRP[tiab] #14 C10/C11[tiab] #15 #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 "polymerase chain reaction"[MeSH Terms] #17 "Cytomegalovirus/isolation and purification"[Mesh] #18 #15 OR #16 OR #17 #19 #4 AND #18 #20 animals[mh] NOT (animals[mh] AND humans[mh]) #21 #19 NOT #20 CENTRAL(Search date:2020/5/26) #1 [mh "Cytomegalovirus Infections"] #2 "Pulmonary infection":ti,ab AND cytomegalovirus:ti,ab #3 "CMV Pneumonia":ti,ab #4 #1 OR #2 OR #3 #5 "CMV pp65":ti,ab #6 antigenaemia:ti,ab OR antigenemia:ti,ab #7 pp65:ti,ab #8 "cytomegalovirus pp65":ti,ab #9 pp65 NEXT antigen*:ti,ab #10 "antigenemia assay":ti,ab #11 "CMV antigenemia":ti,ab #12 cytomegalovirus NEXT antigen*:ti,ab #13 C7HRP:ti,ab
#14 "C10/C11":ti,ab #15 #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 [mh "polymerase chain reaction"] #17 [mh Cytomegalovirus/IP] #18 #15 OR #16 OR #17 #19 #4 AND #18 #20 [mh animals] NOT ([mh animals] AND [mh humans]) #21 #19 NOT #20 BAL MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/1) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute [tiab] AND (lung injur* [tiab] OR respiratory distress [tiab] OR respiratory failure[tiab]) #5 (Severe [tiab] OR critical*[tiab]) AND (respiratory[tiab] OR hypox* [tiab]) #6 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 #7 Bronchoscopy/ adverse effects [mh] OR Bronchoscopy/ complications [mh] #8 Bronchoscop* [tiab] #9 Bronchoalveolar Lavage/ adverse effects [mh] OR Bronchoalveolar Lavage/ complications [mh] #10 Bronchoalveolar Lavage [tiab] #11 BAL [tiab] OR BALF [tiab] #12 #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 #13 #6 AND #12 #14 Animals [mh] NOT human [mh] #15 #13 NOT #14 CENTRAL(Search date:2020/6/1) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 MeSH descriptor: [Acute Lung Injury] explode all trees #3 (ALI OR ARDS):ti,ab,kw #4 (Acute):ti,ab,kw #5 (lung NEXT injur*):ti,ab,kw #6 (“respiratory distress”):ti,ab,kw #7 (“respiratory failure”):ti,ab,kw #8 #4 AND (#5 OR #6 OR #7) #9 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab) #10 #1 OR #2 OR #3 OR #8 OR #9 #11 MeSH descriptor: [Bronchoscopy] explode all trees #12 (Bronchoscop*):ti,ab,kw #13 MeSH descriptor: [Bronchoalveolar Lavage] explode all trees #14 (“Bronchoalveolar Lavage”):ti,ab,kw #15 (BAL OR BALF):ti,ab,kw
#16 #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 #17 #10 AND #16 #18 ([mh Animals] NOT [mh human]):ti,ab,kw #19 #17 NOT #18
資料CQ8—2 フローダイアグラム 他のリソースから同定された研究 n=0 重複研究を除外した研究 n=2,499重複した研究 n=2 除外基準に該当した研究 n=2,364 フルテキストで適格性を評価した研究 n=135 系統的レビューに組み入れた研究 n=8 メタ解析に組み入れた研究n=8 CMV_PCR n=5 CMV_antigenemia n=3除外基準に該当した研究 n=126理由:・ 言語 15件・ 研究デザイン 16件・ 対象患者 32件・ Index test 48件・ Reference test 10件・ 2×2が作れない 6件 データベース検索で同定された研究n=2,501 MEDLINE(PubMed) 2,479件Cochrane CENTRAL 22件 検索で同定された研究 n=2,501 同定スクリーニング適格性組み入れ 血清アンチゲネミア検査,PCR 法
BAL の有害事象 同定スクリーニング適格性組み入れ除外基準に該当した研究 n=359理由:・ 言語 18件・ 研究デザイン 18件・ 対象患者 30件・ Index test が異なる 6件・ 有害事象のアウトカム なし 285件・ その他 2件 重複した研究 n=155 他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究 n=4,348 MEDLINE(PubMed) 3,929件Cochrane CENTRAL 419件 検索で同定された研究 n=4,348 重複研究を除外した研究 n=4,193 除外基準に該当した研究 n=3,819 フルテキストで適格性を評価した研究 n=374 系統的レビューに組み入れた研究 n=15 メタ解析に組み入れた研究 n=15
資料CQ8—3 Risk of bias 血液アンチゲネミア検査PCR法(BALF) BALの有害事象死亡または重篤な後遺障害
資料CQ8—4 Forest plot 血液アンチゲネミア検査 PCR法(BALF) BALの有害事象死亡または重篤な後遺障害
重篤な有害事象(呼吸器系) 重篤な有害事象(循環器系)
重篤な有害事象(大量出血)
説 明1.組み入れられた研究ではいずれも,陽性細胞が1 個以上/20 万個であった場合に,検査結果が「陽性」と定義していた. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で1/3 個,インデックス検査で1/3 個,参照基準で3/3 個,フローとタイミングで2/3 個であった.このように,2 項目以上で,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため,「非常に深刻」と判断した. b.特異度においては,1 研究において真陰性が0 であったため,2 研究での評価となった.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で1/2 個,インデックス検査で0/2 個,参照基準で2/2 個,フローとタイミングで1/2 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. c.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で1/3 個,インデックス検査で0/3 個,参照基準で0/3 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が,1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象を厳密なARDS 患者ではなく急性呼吸不全患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. d.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で1/2 個,インデックス検査で0/2 個,参照基準で0/2 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象を厳密なARDS 患者ではなく急性呼吸不全患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. e.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. f.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに, 0.7 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは 資料CQ8—5 エビデンスプロファイル 血液アンチゲネミア検査 感 度0.67(95% CI:0.54~0.79)特異度0.87(95% CI:0.73~0.95)事前確率5% 10% 20% アウトカム1研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(サイトメガロウイルス肺炎を持つ患者) 3 研究91 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻c深刻e深刻fなし34 (27~ 39) 67 (54~ 79) 135 (107~ 157) +○○○非常に低偽陰性(誤ってサイトメガロウイルス肺炎を持っていないと分類された患者) 16 (11~ 23) 33 (21~ 46) 65 (43~ 93) 真陰性(サイトメガロウイルス肺炎のない患者) 2 研究55 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻b深刻d 深刻で ないe非常に 深刻gなし828 (691~ 899) 785 (654~ 851) 698 (582~ 757) +○○○非常に低偽陽性(誤ってサイトメガロウイルス肺炎を持つと分類される患者) 122 (51~ 259) 115 (49~ 246) 102 (43~ 218)
統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. g.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さら に,0.7 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した.
PCR 法(BALF) 感 度0.94(95% CI:0.86~0.97)特異度0.84(95% CI:0.52~0.96)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(サイトメガロウイルス肺炎を持つ患者) 5 研究353 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b深刻c深刻dなし47 (43~ 49) 94 (86~ 97) 187 (173~ 194) +○○○非常に低偽陰性(誤ってサイトメガロウイルス肺炎を持っていないと分類された患者) 3 (1~ 7) 6 (3~ 14) 13 (6~ 27) 真陰性(サイトメガロウイルス肺炎のない患者) 5 研究353 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b深刻c 非常に 深刻eなし798 (495~ 914) 756 (469~ 866) 672 (417~ 770) +○○○非常に低偽陽性(誤ってサイトメガロウイルス肺炎を持つと分類される患者) 152 (36~ 455) 144 (34~ 431) 128 (30~ 383) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で3/5 個,インデックス検査で0/5 個,参照基準で0/5 個,フローとタイミングで1/5 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で2/5 個,インデックス検査で0/5 個,参照基準で0/5 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が,1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象を厳密なARDS 患者ではなく急性呼吸不全患者として検索した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.7 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.7 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した.
BAL の害 アウトカム研究数(患者数)研究デザイン結果の要約確実性の評価 確実性頻度95% CI 患者1,000 人に検査を実施した 場合バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス 死亡15 研究1,106患者コホート研究,ランダム化比較試験0.000% (0.000~ 0.035) 0 (0~0) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe深刻で ないg評価なし+++○ 中程度 呼吸器系の追加治療を要する重篤な有害事象a 15 研究1,106患者コホート研究,ランダム化比較試験1.548% (0.000~ 5.053) 15 (0~50) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe,f深刻で ないg評価なし+++○ 中程度 循環器系の追加治療を要する重篤な有害事象b 10 研究7,06 患者コホート研究,ランダム化比較試験0.011% (0.000~ 0.788) 0 (0~8) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe深刻h評価なし++○○ 低い 大出血(重篤な有害) 10 研究747 患者コホート研究,ランダム化比較試験0.000% (0.000~ 0.235) 0 (0~2) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe深刻h評価なし++○○ 低い 説 明a.新たな人工呼吸器装着,気胸. b.新たな昇圧剤の開始,抗不整脈薬の投与. c.Iorio らのツール(Iorio A, et al. BMJ 2015;350:h870)を用いたバイアスリスク評価において,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,対象患者のドメインで6/15 個,フォローアップ期間のドメイン3/15個,アウトカム定義のドメインで8/15 個,重要な予後因子の報告に関するドメインで9/15 個,重要な予後因子での調整のドメインで12/15 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. d.今回のSR において検索対象となった文献群は,理想的に設定するべきSR 疑問と一致しており,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況におおむね適用可能と考えられた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. e.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットでの視覚的な判断,およびI2統計量を基に判断した. f.I2=87%であるが,人工呼吸器を使用していない患者を含む研究を分けてサブグループ解析をすると,異質性は説明可能である.よって「深刻でない」と判断した. g.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.臨床医の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した. h.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.臨床医 の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した.
資料CQ8—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ8:ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査(気管支肺胞洗浄液),血液アンチゲネミア法を用いるか? 集 団: ARDS の患者または急性呼吸不全患者診断対象:サイトメガロウイルス肺炎(cytomegalovirus:CMV 肺炎)検 査: PCR 検査(気管支肺胞洗浄液:BALF),血液アンチゲネミア法検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重篤な有害事象検査結果に基づく診療:陽性(CMV 肺炎と疑われる)であれば,適切な抗ウイルス薬による治療を開始す る.陰性であれば,不要な抗ウイルス薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景: ARDS は,肺水腫を伴わない両側の浸潤影を伴う急性の呼吸不全であり,その原因 疾患は様々である.CMV 肺炎は,免疫不全患者のみならず,免疫応答下のARDS 患者にも認められ,その診断の遅れは,致死的な経過をたどることも稀ではないことから,ARDS の原因として重要である.ARDS の患者の原因診療においてCMV 肺炎が正しく診断されれば,最適化した抗ウイルス薬による治療が実施でき,患者予後の改善に寄与すると考えられる.正しく除外診断できれば,不適切な抗ウイルス薬の使用を回避することができ,患者予後の悪化を回避できると思われる.しかし,その一方で,誤診断した場合は,不要な薬剤により治療されてしまうこととなり,患者にとって有害である.CMV 血液アンチゲネミア法(CMV 抗原血症検査)およびBALF のCMV—PCR 検査は免疫不全患者で問題となるCMV 感染症の早期診断および治療の効果判定に用いる検査であり,CMV 感染症のモニタリング,および抗ウイルス薬の効果判定および中止時期の指標として広く用いられている.これらから,「ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア法を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○優先度は高くない○たぶん優先度は高 くない○たぶん優先度は高 いCMV 肺炎は,免疫不全患者のみならず,免疫応答下の ARDS 患者にも認められ,その診断の遅れは,致死的な経過をたどることも稀ではないことから,ARDS の原因として重要である.ARDS の患者の原因診療においてCMV 肺炎が正しく診断されれば,最適化した抗ウイルス薬による
●優先度は高い○一概には言えない○わからない治療が実施でき,患者予後の改善に寄与すると考えられ る.正しく除外診断できれば,不適切な抗ウイルス薬の使用を回避することができ,患者予後の悪化を回避できると思われる.しかし,その一方で,誤診断した場合は,不要な薬剤により治療されてしまうこととなり,患者にとって有害である.CMV 血液アンチゲネミア法(CMV 抗原血症検査)およびBALF のCMV—PCR 検査は免疫不全患者で問題となるCMV 感染症の早期診断および治療の効果判定に用いる検査であり,CMV 感染症のモニタリング,および抗ウイルス薬の効果判定および中止時期の指標として広く用いられている.これらのことから,本問題の優先順位は高いと考えられる 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確●正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからないSR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 検査の精度については「正確」と判断した 血液アンチゲネミア法(3 RCT:n=91)※統合感度:0.67(95% CI:0.54~0.79),統合特異度: 0.87(95% CI:0.73~0.95)(Bivariate モデル) ※組み入れられた研究ではいずれも,陽性細胞が1 個以 上/20 万個であった場合に,検査結果が「陽性」と定義していた 血液アンチゲネミア法1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性34 (27~ 39) 67 (54~ 79) 135 (107~ 57)非常に低 偽陰性16 (11~ 23) 33 (21~ 46) 65 (43~ 93) 真陰性828 (691~ 899) 785 (654~ 851) 698 (582~ 757)非常に低 偽陽性122 (51~ 259) 115 (49~ 246) 102 (43~ 218)
PCR 検査(BALF) (5 RCT:n=353)統合感度:0.94(95% CI:0.86~0.97),統合特異度: 0.84(95% CI:0.52~0.96)(Bivariate モデル) PCR検査(BALF) 1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性47 (43~ 49) 94 (86~ 97) 187 (173~ 194)非常に低 偽陰性3 (1~ 7) 6 (3~ 14) 13 (6~ 27) 真陰性798 (495~ 914) 756 (469~ 866) 672 (417~ 770)非常に低 偽陽性152 (36~ 455) 144 (34~ 431) 128 (30~ 383) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)について検討し,好ましい効果について「中程度」と判定した 血液アンチゲネミア法 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療を行う34 人67 人135 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 PCR 検査(BALF) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療を行う21 人55 人124 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた
検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.1 と 設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受ける人数を検討した,望ましくない効果については「一概には言えない」と判定した 血液アンチゲネミア法 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療を行う12 人12 人10 人検査結果によらず 全員治療する95 人90 人80 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 PCR 検査(BALF) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療を行う46 人43 人38 人検査結果によらず 全員治療する95 人90 人80 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 気管支肺胞洗浄(BALF)の有害事象の頻度 1,000 人に検査を実施した場合エビデンス の確実性 アウトカム頻度 95% CI患者 1,000 人に検査を実施した場合検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した 全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は,0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した 有害事象については検査を1,000 人に実施した際に想定される有害事象の発生人数を上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した
死 亡0.000% (0.000~ 0.035) 0 人 (0~0)中 呼吸器系の追加治療を要する重篤な有害事象1.548% (0.000~ 5.053) 15 人 (0~50)中 循環器系の追加治療を要する重篤な有害事象0.011% (0.000~ 0.788) 0 人 (0~8)低 大出血(重篤な有害) 0.000% (0.000~ 0.235) 0 人 (0~2)低 1,000 人に検査を実施した場合,重み付けした有害事象発生の人数死亡の有害事象については真陽性に対して相対的に重み付けを1.0 とし,それ以外の重大な有害事象は0.4 とした BALF 有害事象相当する人数 死 亡0 人呼吸器系の追加治療を要する重篤な有害事象6 人循環器系の追加治療を要する重篤な有害事象0 人大出血(重篤な有害) 0 人 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮 しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された
検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い●低○中○高○研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし 気管支肺胞洗浄検査の有害事象に関してエビデンスの確実性は「低い」と判断された 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗ウイルス薬などの治療は「優れた 医療上の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて抗ウイルス薬の治療が開始され るため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み込まれた研究はない
検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は,医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある(偽陽性の臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変わればその価値観によって異なる可能性がある) 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考●検査を支持する○たぶん検査を支持する○どちらも支持しない○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○どちらも支持しな い○一概には言えない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性と診断され不必要な治療の受ける不利益,および検査の害 について正味の利益(net—benefit)を求めた 血液アンチゲネミア法正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする22 人56 人124 人正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人に検査した時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)-(不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した
○わからない検査結果によらず 全員を治療する-45 人10 人120 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.1 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる PCR 検査(BALF)正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする26 人74 人169 人検査結果によらず全員を治療する-45 人10 人120 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重み付けを0.1 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.BALF の重大な有害事象として,BALF の死亡の有害事象については重み付けを1.0 とし,それ以外の重大な有害事象は0.4 とした.検査を実施して治療する場合のnet—benefit は,事前確率5%の状況では検査を実施せずに全員を治療しない場合のnet—benefit を下回るものの,10%および20%の状況では検査を実施しない場合のnet—benefit を上回っていた.以上より,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況はたぶん多いと思われる これらから効果のバランスは「検査を支持する」と判断した重大な有害事象が無視 できる程度の場合は,0として計算した 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る.考慮されたエビデンスなし
○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,おそらく実施できる と考えられるが,施設によってはBALF 検査を実施できない可能性がある.考慮されたエビデンスなし 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない
検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ● ○
結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(サイトメガロウイルス肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査(気管支肺胞洗浄液),血液アンチゲネミア法を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(CMV 肺炎)の鑑別に際して,PCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア法を用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 PCR 検査(BALF),血液アンチゲネミア法.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療陽性であれば,CMV 肺炎と診断し,適切な抗ウイルス薬による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗ウイルス薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う.エビデンスの要約PCR 検査(BALF)(5 RCT:n=353).統合感度:0.94(95% CI:0.86~0.97),統合特異度:0.84(95% CI:0.52~0.96)(Bivariateモデル).血液アンチゲネミア法(3 RCT:n=91)<陽性の定義:陽性細胞が1 個以上/20 万個>.統合感度:0.67(95% CI:0.54~0.79),統合特異度:0.87(95% CI:0.73~0.95)(Bivariateモデル). BALF の有害事象の頻度.死亡 0.000%(95%CI:0.000~0.035).エビデンスの確実性いずれの検査についても,感度・特異度の両方において,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.BALF の害について,エビデンスの確実性は「中」または「低」であった.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定検査を実施することによる望ましい効果として,CMV 肺炎と診断し適切な治療が迅速に開始されることが想定される.また,望ましくない効果として,誤診断(偽陽性)により不要な治療を受ける害と検査の有害事象が考えられる.この検査の望ましい効果と害を,検査せずに治療方針を決定した場合と比較した時に,検査の望ましい効果は大きいと考えられる.おそらく実行可能で,おそらく許容可能な医療行為である.
パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では保険診療上の注意事項について実施上の注意事項に追記することが提案され,修正された.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項ただし,上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば利益と害のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある.また,今回の組み入れとなった一次研究では,対象を免疫抑制状態の患者群に限定した文献が含まれていることに注意を要する.免疫応答下の患者群に適応する場合は,検査の効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 免疫応答の状況によって推奨が変化する可能性がある. 実施上の考慮事項 Implementation considerations BALF の施行が困難な症例(コントロール不良な気管支喘息など)や,一部の間質性肺炎などでは,個別に施行可能性を慎重に考慮する必要がある.エビデンスとなったSR には,主に免疫不全患者を対象とした研究が含まれている.保険診療上,「サイトメガロウイルスpp65 抗原定性は免疫染色法により,臓器移植後若しくは造血幹細胞移植後の患者又はHIV 感染者又は高度細胞性免疫不全の患者に対して行った場合に限り算定できる.ただし,高度細胞性免疫不全の患者については,当該検査が必要であった理由について,診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」と記載されている.また,今回組み入れられた研究においては,BALF や肺組織の顕微鏡的所見がreference standard として設定されていた.CMV 肺炎の確定診断において,これらの検査が用いられることがある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation BALF 検査などの有害事象の発生の増加などについて継続して評価が必要である.本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今回のエビデンスの確実性は「非常に低い」であり,ARDS 患者を対象としたCMV‒PCR(BALF)およびCMV 血液アンチゲネミア法の診断精度を評価するための,更なる質の高い診断精度研究が望まれる.
背景,この問題の優先度 ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)は急性呼吸不全を引き起こし,迅速な診断のもと,適切な薬剤投与が行われなければ致死的な転帰をたどる可能性がある.血清β‒D‒グルカン検査によりPCP の早期診断が可能となれば,適切な薬剤投与が可能となり,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤ってPCP と診断した場合,不必要な薬剤投与が実施され,それらによる副作用が懸念される.また,別に存在するかもしれない原因疾患に対する治療が実施されない可能性が生じ,患者予後を悪くする可能性が考えられる.これらの有害性を考慮し,検査の実施の利益と害を検証することはARDS診療において重要課題である.これらから本CQが設定された.解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:血清β‒D‒グルカン.目的:救急外来またはICU に準じた状況での ARDS 診療における原因病態としてのPCPの鑑別診断.検査結果に基づく診療:陽性はPCP に対する 特異的な治療(ST 合剤やステロイド投与など)を開始する.陰性であれば,PCP を念頭に置いた治療を回避され,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う. エビデンスの要約 本CQ では,血清β‒D‒グルカンの診断性能に関するSR およびメタ解析は,すでに出版公開されているSR およびメタ解析1)を一部再利 1 2 1 2 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(ニューモシスチス肺炎)の鑑別に際して,血清β— D—グルカンを用いるか? CQ 9 ARDS の原因疾患(ニューモシスチス肺炎)の鑑別に際して,血清β—D—グ ルカン検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い 確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
用し,追加検索によるアップデートを行ったものである.血清β‒D‒グルカン(3RCT:n=148)のカットオフ値(80 pg/mL)に設定することで,PCP 診断の統合感度は,0.84(95%CI: 0.66~0.93),統合特異度は0.79(95%CI: 0.69~0.87)であった. エビデンスの確実性 血清β‒D‒グルカンを用いたPCP 検査の診断性能に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」と判定された. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 検査実施による利益,害の両者のバランスにより,検査実施はおおむね支持される.一方で,検査全般に関するエビデンスの確実性は非常に低い.実行可能性は問題なく,一般に受け入れられる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議で喀痰や気管支肺胞洗浄液(BALF)の顕微鏡的所見,PCR 検査の診断性能についての質問があったが,これらは一次研究でReference standard として用いられていたため診断性能は検討されていないと回答があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 今回組み入れられた研究においては,喀痰やBALF の顕微鏡的所見,PCR 検査がreference standard として設定されていた.PCP の確定 診断において,これらの検査が用いられることがある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,さらなる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 いずれもエビデンスの確実性は低く,ICU 患者での,より質の高い診断精度研究が望まれる.可能であるならば,検査実施によって患者の重要なアウトカムが改善するか,を評価するRCT が求められる. 文献検索式と文献選択 本CQ は,既存SR を利用したため,その検索式に基づき,「pneumocystis」「beta‒Glucans」「diagnosis」をキーワードとして, MEDLINE とEmbase で2020 年9 月18 日までの文献を追加検索したところ,2,807 件の研究が同定され,スクリーニングの結果「ニューモシスチス肺炎」に該当する研究が3 件2‒4)該当した. 本CQ で対象とした研究 Engsbro 20192), Lahmer 20173), Passos 20174). 資料一覧 ・資料CQ9‒1 Search strategy.・資料CQ9‒2 フローダイアグラム. 3 4 5 3 4 5 6 7 8 9 10
・資料CQ9‒3 Risk of bias.・資料CQ9‒4 Forest plot.・資料CQ9‒5 エビデンスプロファイル. ・資料CQ9‒6 Evidence‒to‒Decision. 1) White SK, Walker BS, Hanson KE, et al. Diagnostic accuracy of β‒d‒Glucan(fungitell) testing among patients with hematologic malignancies or solid organ tumors:a systematic review and meta‒analysis. Am J Clin Pathol 2019;151:275‒85. 2) Engsbro AL, Najat S, Jørgensen KM, et al. Diagnostic accuracy of the 1,3‒β‒D‒glucan test for pneumocystis pneumonia in a tertiary university hospital in Denmark:a retrospective study. Med Mycol 2019;57:710‒7. 3) Lahmer T, da Costa CP, Held J, et al. Usefulness of 1,3 Beta‒D‒Glucan detection in non‒HIV immunocompromised mechanical ventilated critically ill patients with ARDS and suspected pneumocystis jirovecii pneumonia. Mycopathologia 2017; 182:701‒8. 4) Passos AIM, Dertkigil RP, Ramos MC, et al. Serum markers as an aid in the diagnosis of pulmonary fungal infections in AIDS patients. Braz J Infect Dis 2017;21:606‒ 12. 参考文献
資 料本CQ では血清β‒D‒グルカンの診断性能に関するSR およびメタ解析は,既に出版公開されているSR およびメタ解析を一部再利用し,追加検索によるアップデートを行ったものである. White SK, Walker BS, Hanson KE, Schmidt RL. Diagnostic Accuracy of β‒d‒Glucan(Fungitell)Testing Among Patients With Hematologic Malignancies or Solid Organ Tumors:A Systematic Review and Meta‒Analysis. Am J Clin Pathol. 2019 Feb 4;151(3):275‒285. 資料CQ9—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/9/18) #1 BDG*.tw. #2 Fungitel*.tw. #3 Cape Cod.tw. #4 Fungitec*.tw. #5 Seikagaku.tw. #6 Wake Test.tw. #7 (Wako* OR Waco*).tw. #8 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9 exp beta-Glucans/ #10 Glucans/ #11 D-glucan*.tw. #12 #9 OR #10 OR #11 #13 exp "Sensitivity AND Specificity"/ #14 (sensitivit* OR specificit*).tw. #15 predictive value*.tw. #16 diagnosis.fs. #17 analysis.fs. #18 Reagent Kits, Diagnostic/ #19 #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 #20 #12 AND #19 #21 exp Mycoses/ #22 exp Fungi/ #23 fungal.tw. #24 fungus.tw. #25 mycos*.tw. #26 mycot*.tw. #27 aspergill*.tw. #28 pneumocystis.tw. #29 #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 OR #26 OR #27 OR #28 #30 #12 AND #29 #31 #8 OR #20 OR #30 #32 exp animals/ NOT humans.sh. #33 #31 NOT #32 #34 limit #33 to yr="2017 -Current"
Embase(Search date:2020/9/16) S1 TI,AB(BDG*) S2 TI,AB(Fungitel*) S3 (TI,AB(Cape Cod)) S4 TI,AB(Fungitec*) S5 TI,AB(Seikagaku) S6 (TI,AB("Wake Test")) S7 (TI,AB(Wako* OR Waco*)) S8 (S1 OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6 OR S7) S9 (EMB.EXACT.EXPLODE("beta glucan")) S10 EMB.EXACT("glucan") S11 TI,AB(D-glucan*) S12 (S9 OR S10 OR S11) S13 (EMB.EXACT("sensitivity AND specificity")) S14 (TI,AB(sensitivit* OR specificit*)) S15 (TI,AB(predictive value*)) S16 QU(DI) S17 (EMB.EXACT("diagnostic kit")) S18 (EMB.EXACT.EXPLODE("diagnostic procedure")) S19 (S13 OR S14 OR S15 OR S16 OR S17 OR S18) S20 (S12 AND S19) S21 EMB.EXACT.EXPLODE("mycosis") S22 EMB.EXACT.EXPLODE("fungus") S23 TI,AB(fungal) S24 TI,AB(fungus) S25 TI,AB(mycos*) S26 TI,AB(mycot*) S27 TI,AB(aspergill*) S28 TI,AB(pneumocystis) S29 (S21 OR S22 OR S23 OR S24 OR S25 OR S26 OR S27 OR S28) S30 (S12 AND #29) S31 (S8 OR S20 OR S30) S32 (ANIMAL(YES) NOT HUMAN(YES)) S33 (S31 NOT S32) S34 (S33 AND YR(>=2017))
同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=3,524 MEDLINE(Ovid) 1,088件Embase(ProQuest) 2,436件 既存のSRで対象となる 研究n=3 除外基準に該当した研究n=62理由:・ 言語 2件・ 出版の種類 29件・ 研究デザイン 8件・ 対象患者 4件・ Index testが異なる 3件・ 2×2表が作成不可 13件・ その他 3件 重複した研究 n=717 検索で同定された研究 n=3,524 重複研究を除外した研究 n=2,807 除外基準に該当した研究 n=2,736 フルテキストで適格性を評価した研究 n=71 系統的レビューに組み入れた研究 n=12 メタ解析に組み入れた研究 n=12 侵襲性肺アスペルギルス症 n=9ニューモシスチス肺炎 n=3 資料CQ9—2 フローダイアグラム
資料CQ9—3 Risk of bias
資料CQ9—4 Forest plot Sensitivity Engsbro AL Lahmer T Passos AIM 0.70 [0.48, 0.85] 0.91 [0.62, 0.98] 0.89 [0.69, 0.97] 0.48 0.73 0.98 Specificity Engsbro AL Lahmer T Passos AIM 0.70 [0.49, 0.84] 0.85 [0.70, 0.93] 0.81 [0.65, 0.90] 0.49 0.71 0.93 血清β-D-グルカン検査感度 血清β-D-グルカン検査特異度
資料CQ9—5 エビデンスプロファイル 検査:血清β—D—グルカン検査 感 度0.84(95% CI:0.66~0.93)特異度0.79(95% CI:0.69~0.87)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(PCP を持つ患者) 3 研究148 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻b深刻c 非常に 深刻dなし42 (33~ 47) 84 (66~ 93) 168 (132~ 186) +○○○非常に低偽陰性(誤ってPCPを持っていないと分類された患者) 8 (3~ 17) 16 (7~ 34) 32 (14~ 68) 真陰性(PCP のない患者) 3 研究148 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻b深刻c 深刻で ないeなし751 (656~ 827) 711 (621~ 783) 632 (552~ 696) +○○○非常に低偽陽性(誤ってPCPを持つと分類される患者) 199 (123~ 294) 189 (117~ 279) 168 (104~ 248) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で2/3 個,インデックス検査で1/3 個,参照基準で2/3 個,フローとタイミングで2/3 個であった.このように,2 項目以上で,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため,「非常に深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/3 個,インデックス検査で0/3 個,参照基準で0/3 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が,1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,急性呼吸不全患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.5 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.5 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
資料CQ9—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ9:ARDS の原因疾患(ニューモシスチス肺炎)の鑑別に際して,血清β— D—グルカンを用いるか? 集 団: ARDS の患者または急性呼吸不全患者診断対象:ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)検 査:血清β—D—グルカン検査検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:陽性はPCP に対する特異的な治療(ST 合剤やステロイド投与など)を開始する. 陰性であれば,PCP を念頭に置いた治療を回避され,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景: PCP は急性呼吸不全を引き起こし,迅速な診断のもと,適切な薬剤投与が行われな ければ致死的な転帰をたどる可能性がある.血清β—D—グルカン検査によりPCP の早期診断が可能となれば,適切な薬剤投与が可能となり,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される.一方で,誤ってPCP と診断した場合,不必要な薬剤投与が実施され,それらによる副作用が懸念される.また,別に存在するかもしれない原因疾患に対する治療が実施されない可能性が生じ,患者予後を悪くする可能性が考えられる.これらの有害性を考慮し検査の実施の利益と害を検証することはARDS 診療において重要課題である.これらから「ARDS の原因疾患(PCP)の鑑別に際して,血清β—D—グルカンを用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない○わからないPCP は急性呼吸不全を引き起こし,迅速な診断のもと,適切な薬剤投与が行われなければ致死的な転帰をたどる可能 性がある.血清β—D—グルカン検査によりPCP の早期診断が可能となれば,適切な薬剤投与が可能となり,潜在的に患者の予後改善に寄与することが期待される一方で,誤ってPCP と診断した場合,不必要な薬剤投与が実施され,それらによる副作用が懸念される.また,別に存在するかもしれない原因疾患に対する治療が実施されない可能性が生じ,患者予後を悪くする可能性が考えられる.これらの有害性を考慮し検査の実施の利益と害を検証することは
ARDS 診療において重要課題である.したがって,この臨床疑問の優先度は高いと考えられた 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確●正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからないSR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 検査の精度は「正確」と判断した 血清β—D—グルカン<カットオフ値:80 pg/mL> (3RCT:n=148)統合感度:0.84(95% CI:0.66~0.93)統合特異度:0.79(95% CI:0.69~0.87) β—Dグルカン1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性42 (33~ 47) 84 (66~ 93) 168 (132~ 186)非常に低 偽陰性8 (3~ 17) 16 (7~ 34) 32 (14~ 68) 真陰性751 (656~ 827) 711 (621~ 783) 632 (552~ 696)非常に低 偽陽性199 (123~ 294) 189 (117~ 279) 168 (104~ 248) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受ける人数(真陽性の人数)を検討し,望ましい効果は「大 きい」と判定された 血清β—D—グルカン<カットオフ値:80 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする42 人84 人168 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数
検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人は0 人と考えた 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.3 と 設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受ける人数を検討し,望ましくない効果は「小さい」と判定された 血清β—D—グルカン<カットオフ値:80 pg/mL> 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする60 人57 人50 人検査結果によらず全員を治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮 し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された
検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗菌薬などの治療は「優れた医療上 の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて速やかに抗菌薬の治療が開始さ れるため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない
検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある(偽陽性の臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある) 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する●たぶん検査を支持する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない○わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性と診断され不必要な治療を受ける不利益,および検査の害 について正味の利益(net—benefit)を求めた 血清β—D—グルカン<カットオフ値:80 pg/mL>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療をする-18 人27 人118 人正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した
検査結果によらず全員を治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員を治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する相対的な偽陽性の臨床的重みを0.3 と考え,事前確率5~20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに全員に治療をしない場合で,正味の利益(net—benefit)を比較した 事前確率を5%と想定した場合は,検査によって診断することの正味の利益は,検査をせずに全員治療をしないことの正味の利益を下回ることが推定される.事前確率10, 20%の想定下では,検査によって診断することの正味の利益は,検査をしないことの正味の利益を上回ることが推定される.また,事前確率が60%以上を想定した場合は,検査によって診断することの正味の利益は,検査をせずに全員治療をすることの正味の利益を下回ることが推定される 以上より,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われ,効果のバランスとしては「たぶん検査を支持する」と判定された重大な有害事象が無視 できる程度の場合は,0として計算した 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れられない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考●可能○たぶん可能○たぶん困難一般に行われている医療行為であり,実施可能と考えられ る
○困難○一概には言えない○わからない 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果 Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果 Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性 Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない
価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(ニューモシスチス肺炎)の鑑別に際して,血清β—D—グルカン検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(PCP)の鑑別に際して,血清β‒D‒グルカンを用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 血清β‒D‒グルカン.検査の目的,役割,セッティング救急外来またはICU に準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断. 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ● ○
検査結果に基づく診療陽性はPCP に対する特異的な治療(ST 合剤やステロイド投与など)を開始する.陰性であれば, PCP を念頭に置いた治療を回避され,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う.エビデンスの要約血清β‒D‒グルカン(3RCT:n=148),<カットオフ値:80 pg/mL>.統合感度:0.84(95% CI:0.66~0.93),統合特異度:0.79(95% CI:0.69~0.87).エビデンスの確実性検査の診断性能に関するエビデンスの確実性は「非常に低い」と判定された.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定ARDS 患者における血清β‒D‒グルカン検査に関して,検査実施による望ましい効果,望ましくない効果の両者のバランスを加味すれば,検査実施はおおむね支持される.一方で,検査全般に関するエビデンスの確実性は非常に低い.実行可能性は問題なく,一般に受け入れられている医療行為である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議で喀痰やBALF の顕微鏡的所見,PCR 検査の診断性能についての質問があったが,これらは一次研究でreference standard として用いられていたため診断性能は検討されていないと回答があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項事前確率が60%を上回る場合,検査結果にかかわらずPCP ありと考えて治療を進めるほうが検査結果に基づいて治療方針を決めるより利益が勝る可能性がある.10%を下回る場合,検査を実施しないほうが検査を実施するより利益が上回る可能性がある.また,上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 今回組み入れられた研究においては,喀痰やBALF の顕微鏡的所見,PCR 検査がreference standard として設定されていた. PCP の確定診断において,これらの検査が用いられることがある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities いずれもエビデンスの確実性は低く,ICU 患者での,より質の高い診断精度研究が望まれる.可能であるならば検査実施によって患者の重要なアウトカムが改善するかどうかを評価するRCT が求められる.
背景,この問題の優先度 ARDS の診療においては,原疾患の診断と適切な治療が重要である.侵襲性肺アスペルギルス症は,免疫状態の低下した患者に発症し,急速に進行して呼吸不全を呈する.ARDS の原疾患となる頻度は低いと思われるが,適切な治療が行われなかった場合は,致死的な転帰をたどる可能性が高い.そのため,侵襲性肺アスペルギルス症を迅速かつ的確に診断することは重要である.血清β‒D‒グルカン,血中ガラクトマ ンナン抗原の測定は,アスペルギルス症を疑う患者において広く用いられている検査である.また,近年では気管支肺胞洗浄液(BALF)中のガラクトマンナン抗原測定も注目されている.これらから,「ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β‒D‒グルカン,ガラクトマンナン抗原(血中,気管支肺胞洗浄液中)を用いるか?」という疑問が設定された. 1領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清 β—D—グルカン,ガラクトマンナン抗原(血中,気管支肺胞洗浄液中)を用いるか? CQ 10 ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β— D—グルカン検査結果のみで判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き 推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血中なら びに気管支肺胞洗浄液中ガラクトマンナン抗原検査を用いることを条件付 きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:血清β‒D‒グルカン,血中ガラクトマン ナン抗原,BALF 中ガラクトマンナン抗原.目的:救急外来,ICU,またはそれに準じた状 況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療:陽性であれば,侵襲性 肺アスペルギルス症と診断し,適切な抗真菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗真菌薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う. エビデンスの要約 本CQ では血清β‒D‒グルカン,ガラクトマンナン抗原(血中,BALF 中)の診断性能に関するSR およびメタ解析と気管支肺胞洗浄(BAL)の有害事象の頻度に関するSRおよびメタ解析を実施した.そのため複数の検索式,SRの結果が掲載されている. BALF 中のガラクトマンナン抗原の診断性能については,すでに出版公開されているSR およびメタ解析1)を一部再利用した.また,血清β‒D グルカンの診断性能については,すでに出版公開されているSR およびメタ解析2)を一部再利用し,追加検索によるアップデートを行った.血清β‒D‒グルカン(カットオフ値80 pg/ mL)(9RCT:n=757)の統合感度は,0.70 (95%CI:0.49~0.85),統合特異度は,0.73 (95%CI:0.58~0.84)であった.血中ガラクトマンナン抗原(カットオフ値0.5 ODI) (28RCT:n=518)の統合感度は,0.75(95% CI:0.65~0.83),統合特異度は,0.85(95% CI:0.77~0.90)であった.血中ガラクトマンナン抗原(カットオフ値1.0 ODI)(8RCT: n=145)の統合感度は,0.76(95%CI: 0.60~0.91),統合特異度は,0.88(95%CI: 0.79~0.94)であった.血中ガラクトマンナン抗原(カットオフ値1.5 ODI)(14RCT: n=272)の統合感度は,0.59(95%CI: 0.44~0.72),統合特異度は,0.95(95%CI: 0.90~0.97)であった.BALF 中ガラクトマンナン抗原(カットオフ値0.5 ODI)(12RCT: n=1,123)の統合感度は,0.88(95%CI: 0.75~1.00),統合特異度は,0.81(95%CI: 0.71~0.91)であった.BALF 中ガラクトマンナン抗原(カットオフ値1.0 ODI)(11RCT: n=711)の統合感度は,0.78(95%CI: 0.61~0.95),統合特異度は,0.93(95%CI: 0.87~0.98)であった. BAL の有害事象(死亡)の頻度は,0.000% (95%CI:0.000~0.035)であった. エビデンスの確実性 いずれの検査についても,感度・特異度の両方において,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.BAL の害について,エビデンスの確実性は「中」または「低」であった. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 血清β‒D‒グルカン検査,血中・肺胞洗浄液中ガラクトマンナン抗原検査を実施することによる望ましい効果として,侵襲性肺アスペルギルス症と診断し適切な治療が迅速に受けられることが想定される.また,望ましくない効果として,誤診断(偽陽性)により不要な治療を受ける害と,検査の有害事象が考えられる.この検査の望ましい効果と害を,検査せずに治療方針を決定した場合と比較した.血清β‒D‒グルカン検査は,検査をすることで利益を得られる 2 1 2 3 4
臨床的状況は限定的と考えられた.血中・BALF 中ガラクトマンナン抗原検査は,検査をすることで利益を得られる臨床的状況は多いと考えられた.検査のコストは少なく,実行可能性はおそらく問題なく,一般に受け入れられている医療行為である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議では,EtD の記載方法について修正の指摘があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 今回のSR に組み入れられた研究の多くは,免疫不全患者を対象としていた.そのため,得られた統合感度・特異度の結果を,必ずしもARDS 患者全般に対しては適応できない可能性がある.施設における人的資源,有害事象などの観点から,実臨床ではBALF よりも血液で測定されていることが多いと思われる.また,施設によってはBALF 検査が実行できない可能性がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある.今後の研究の可能性 SRに組み入れられた研究の多くは,ARDS患者を対象としたものではない.ARDS 患者を対象とした診断精度研究が求められる. 文献検索式と文献選択 血清β—D—グルカン診断性能 「aspergill*」「beta‒Glucans」「Fungi」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL およびEmbase で2020 年9 月18日までの文献を検索したところ2,807 件の研究が同定され,スクリーニングの結果9 件の研究3‒11)を採用した. 血中ガラクトマンナン抗原およびBAL 中ガラクトマンナン抗原 本CQ は,既存のSR の結果を一部利用した.元のSR では「Aspergillosis」「galactomannan」「Pneumonia」などをキーワードとして,MEDLINE,Embase,CENTRALで2016年4 月14 日までの文献を検索したところ2,327 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当する研究が血中ガラクトマンナン抗原で28 件12‒39),BAL 中ガラクトマンナン抗原で12 件40‒51)該当した.なお,先行SR の内容に疑義があり,editorial office に問い合わせを行ったところ,内容の誤りが発覚した.統合感度・統合特異度などのデータについてはauthor から提供を受けた修正後のデータを示す.また,先行SR の本文に記載されている該当論文数に相違が見られるが,本診療ガイドラインに記載のものが正しいものである. BAL の有害事象 「ARDS」「ALI」「BAL」をキーワードとしてPubMed およびCochrane CENTRAL で 5 3 4 5 6 7 8 1 2 3
2020 年6 月1 日までの文献を検索したところ4,193 件の研究が同定され,スクリーニングの結果15 件の研究52‒66)を採用した. 本CQ で対象とした研究 血清β—D—グルカン診断性能 Boch 20183), Chang 20204), Dobias 20185), Furfaro 20186), Garnham 20207), Heldt 20188), Bölük 20169), Lahmer 201610), Metan 201311). 血中ガラクトマンナン抗原 Acosta 201212), Allan 200513), Barnes 201314), Bellanger 201515), Bölük 201616), Silva 201017), Florent 200618), Foy 200719), Ghosh 201320), He 201121), Imbert 201622), Kawazu 200423), Ku 201224), Nihtinen 201025), Paholcsek 201526), Park 201027), Shi 200928), Suankratay 200629), Suarez 200830), Sun 200931), Tabarsi 201232), Tanriover 201033), Wang 201434), Weisser 200535), White 201336), Xu 201037), Xu 200938), Yoo 200539). BAL 中ガラクトマンナン抗原 Bergeron 201040), Brownback 201341), Clancy 200742), Mol 201343), Fisher 201444), Hoenigl 201445), Nguyen 201146), Pasqualotto 201047), Penack 200848), Prattes 201449), Prattes 201550), Rose 201451). BAL の有害事象 Azoulay 201052), Azoulay 200853), Horowitz 200654), Kim 201855), Panidis 200556), Perkins 200557), Prebil 201458), Rabbat 200859), Ravaglia 201260), Samanta 201861), Schnabel 201562), Sircar 201963), Snyder 199164), Steinberg 199365), Wang 201966). 資料一覧 ・資料CQ10‒1 Search strategy.・資料CQ10‒2 フローダイアグラム.・資料CQ10‒3 Risk of bias.・資料CQ10‒4 Forest plot.・資料CQ10‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ10‒6 Evidence‒to‒Decision. 9 1 2 4 10 1) Haydour Q, Hage CA, Carmona EM, et al. Diagnosis of fungal infections. A systematic review and meta‒analysis supporting American thoracic society practice guideline. Ann Am Thorac Soc 2019;16:1179‒88. 2) White SK, Walker BS, Hanson KE, et al. Diagnostic accuracy of β‒d‒Glucan(fungitell) testing among patients with hematologic malignancies or solid organ tumors:a systematic review and meta‒analysis. Am J Clin Pathol 2019;151:275‒85. 3) Boch T, Reinwald M, Spiess B, et al. Detection of invasive pulmonary aspergillosis in critically ill patients by combined use of conventional culture, galactomannan, 1‒3‒ beta‒D‒glucan and Aspergillus specific nested polymerase chain reaction in a prospective pilot study. J Crit Care 2018;47:198‒203. 4) Chang E, Kim TS, Kang CK, et al. Limited positive predictive value of β‒d‒Glucan in hematologic patients receiving antimold prophylaxis. Open Forum Infect Dis 2020; 7:ofaa048. 5) Dobias R, Jaworska P, Tomaskova H, et al. Diagnostic value of serum galactomannan, (1,3)‒β‒d‒glucan, and Aspergillus fumigatus‒specific IgA and IgG assays for inva- 参考文献
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資 料本CQでは上記検査の診断性能に関するSRおよびメタ解析とBALの有害事象の頻度に関するSRおよびメタ解析を実施した.そのため,複数の検索式,SR の結果が掲載されている. BALF 中のガラクトマンナン抗原の診断性能については,すでに出版公開されているSR およびメタ解析を一部再利用した(下記文献参照). Haydour Q, Hage CA, Carmona EM, et al. Diagnosis of fungal infection. A systematic review and meta‒analysis suppoting American Thoracic Society Practice Guideline. Ann Am Thorac Soc 2019;16(9):1179‒1188. PMID:31219341また,血清β‒D グルカンの診断性能については,すでに出版公開されているSR およびメタ解析を一部再利用し,追加検索によるアップデートを行った(下記文献参照). White SK, Walker BS, Hanson KE, Schmidt RL. Diagnostic accuracy of β‒d‒Glucan(Fungitell)testing among patients with Hematologic Malignancies or Solid Organ Tumors:a systematic review and meta‒analysis. Am J Clin Pathol 2019;151(3):275‒285. PMID: 30307463 資料CQ10—1 Search strategy 1 血清β—D—グルカン診断性能MEDLINE via PubMed(Search date:2020/9/18) #1 BDG*.tw. #2 Fungitel*.tw. #3 Cape Cod.tw. #4 Fungitec*.tw. #5 Seikagaku.tw. #6 Wake Test.tw. #7 (Wako* OR Waco*).tw. #8 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9 exp beta-Glucans/ #10 Glucans/ #11 D-glucan*.tw. #12 #9 OR #10 OR #11 #13 exp "Sensitivity AND Specificity"/ #14 (sensitivit* OR specificit*).tw. #15 predictive value*.tw. #16 diagnosis.fs. #17 analysis.fs. #18 Reagent Kits, Diagnostic/ #19 #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 #20 #12 AND #19 #21 exp Mycoses/ #22 exp Fungi/ #23 fungal.tw. #24 fungus.tw. #25 mycos*.tw. #26 mycot*.tw.
#27 aspergill*.tw. #28 pneumocystis.tw. #29 #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 OR #26 OR #27 OR #28 #30 #12 AND #29 #31 #8 OR #20 OR #30 #32 exp animals/ NOT humans.sh. #33 #31 NOT #32 #34 limit #33 to yr="2017 -Current"
Embase(Search date:2020/9/16) S1 TI,AB(BDG*) S2 TI,AB(Fungitel*) S3 (TI,AB(Cape Cod)) S4 TI,AB(Fungitec*) S5 TI,AB(Seikagaku) S6 (TI,AB("Wake Test")) S7 (TI,AB(Wako* OR Waco*)) S8 (S1 OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6 OR S7) S9 (EMB.EXACT.EXPLODE("beta glucan")) S10 EMB.EXACT("glucan") S11 TI,AB(D-glucan*) S12 (S9 OR S10 OR S11) S13 (EMB.EXACT("sensitivity AND specificity")) S14 (TI,AB(sensitivit* OR specificit*)) S15 (TI,AB(predictive value*)) S16 QU(DI) S17 (EMB.EXACT("diagnostic kit")) S18 (EMB.EXACT.EXPLODE("diagnostic procedure")) S19 (S13 OR S14 OR S15 OR S16 OR S17 OR S18) S20 (S12 AND S19) S21 EMB.EXACT.EXPLODE("mycosis") S22 EMB.EXACT.EXPLODE("fungus") S23 TI,AB(fungal) S24 TI,AB(fungus) S25 TI,AB(mycos*) S26 TI,AB(mycot*) S27 TI,AB(aspergill*) S28 TI,AB(pneumocystis) S29 (S21 OR S22 OR S23 OR S24 OR S25 OR S26 OR S27 OR S28) S30 (S12 AND #29) S31 (S8 OR S20 OR S30) S32 (ANIMAL(YES) NOT HUMAN(YES)) S33 (S31 NOT S32) S34 (S33 AND YR(>=2017))
2 BAL の有害事象PubMed search strategy(Search date:2020/6/1) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute [tiab] AND (lung injur* [tiab] OR respiratory distress [tiab] OR respiratory failure[tiab]) #5 (Severe [tiab] OR critical*[tiab]) AND (respiratory[tiab] OR hypox* [tiab]) #6 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 #7 Bronchoscopy/ adverse effects [mh] OR Bronchoscopy/ complications [mh] #8 Bronchoscop* [tiab] #9 Bronchoalveolar Lavage/ adverse effects [mh] OR Bronchoalveolar Lavage/ complications [mh] #10 Bronchoalveolar Lavage [tiab] #11 BAL [tiab] OR BALF [tiab] #12 #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 #13 #6 AND #12 #14 Animals [mh] NOT human [mh] #15 #13 NOT #14 CENTRAL search strategy(Search date:2020/6/1) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 MeSH descriptor: [Acute Lung Injury] explode all trees #3 (ALI OR ARDS):ti,ab,kw #4 (Acute):ti,ab,kw #5 (lung NEXT injur*):ti,ab,kw #6 (“respiratory distress”):ti,ab,kw #7 (“respiratory failure”):ti,ab,kw #8 #4 AND (#5 OR #6 OR #7) #9 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab) #10 #1 OR #2 OR #3 OR #8 OR #9 #11 MeSH descriptor: [Bronchoscopy] explode all trees #12 (Bronchoscop*):ti,ab,kw #13 MeSH descriptor: [Bronchoalveolar Lavage] explode all trees #14 (“Bronchoalveolar Lavage”):ti,ab,kw #15 (BAL OR BALF):ti,ab,kw #16 #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 #17 #10 AND #16 #18 ([mh Animals] NOT [mh human]):ti,ab,kw #19 #17 NOT #18
3 血中ガラクトマンナン抗原およびBAL 中ガラクトマンナン抗原下記文献のsearch strategy(supplementary material)参照. Haydour Q, Hage CA, Carmona EM, et al. Diagnosis of fungal infection. A systematic review and meta‒analysis suppoting American Thoracic Society Practice Guideline. Ann Am Thorac Soc 2019;16(9):1179‒1188. PMID 31219341
同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=3,524 MEDLINE(Ovid) 1,088件Embase(ProQuest) 2,436件 既存のSRで対象となる 研究n=3 除外基準に該当した研究n=62理由:・ 言語 2件・ 出版の種類 29件・ 研究デザイン 8件・ 対象患者 4件・ Index testが異なる 3件・ 2×2表が作成不可 13件・ その他 3件 重複した研究 n=717 検索で同定された研究 n=3,524 重複研究を除外した研究 n=2,807 除外基準に該当した研究 n=2,736 フルテキストで適格性を評価した研究 n=71 系統的レビューに組み入れた研究 n=12 メタ解析に組み入れた研究 n=12 侵襲性肺アスペルギルス症 n=9ニューモシスチス肺炎 n=3 血清β-D-グルカン診断性能 資料CQ10—2 フローダイアグラム
同定スクリーニング適格性組み入れ除外基準に該当した研究 n=359理由:・ 言語 18件・ 研究デザイン 18件・ 対象患者 30件・ Index test が異なる 6件・ 有害事象のアウトカムなし 285件・ その他 2件 重複した研究 n=155 他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究 n=4,348 MEDLINE(PubMed) 3,929件Cochrane CENTRAL 419件 検索で同定された研究 n=4,348 重複研究を除外した研究 n=4,193 除外基準に該当した研究 n=3,819 フルテキストで適格性を評価した研究 n=374 系統的レビューに組み入れた研究 n=15 メタ解析に組み入れた研究 n=15 BAL の有害事象 血中ガラクトマンナン抗原およびBAL 中ガラクトマンナン抗原下記文献のFigure 1 参照. Haydour Q, Hage CA, Carmona EM, et al. Diagnosis of fungal infection. A systematic review and meta‒analysis suppoting American Thoracic Society Practice Guideline. Ann Am Thorac Soc 2019;16(9):1179‒1188. PMID 31219341なお,先行SR の内容に疑義があり,editorial office に問い合わせを行ったところ,内容の誤りが発覚した.統合感度・統合特異度などのデータについてはauthor から提供を受けた修正後のデータを示す.また,先行SR の本文に記載されている該当論文数に相違が見られるが,本診療ガイドラインに記載のものが正しいものである.
資料CQ10—3 Risk of bias 死亡または重篤な後遺障害 β-D-グルカンBAL の有害事象(カットオフ値:80 pg/mL)
重篤な有害事象(呼吸器系) 重篤な有害事象(循環器系) 資料CQ10—4 Forest plot
BAL の害 重篤な有害事象(大量出血) ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値0.5)ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値1.0)ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値1.5)ガラクトマンナン抗原(BALF,カットオフ値0.5)ガラクトマンナン抗原(BALF,カットオフ値1.0) 下記文献のFigure E1 参照. Haydour Q, Hage CA, Carmona EM, et al. Diagnosis of fungal infection. A systematic review and meta‒analysis suppoting American Thoracic Society Practice Guideline. Ann Am Thorac Soc 2019;16(9):1179‒1188. PMID 31219341
β-D-グルカン(カットオフ値:80 pg/mL) BALの有害事象死亡または重篤な後遺障害 ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値0.5)ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値1.0)ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値1.5)ガラクトマンナン抗原(BALF,カットオフ値0.5)ガラクトマンナン抗原(BALF,カットオフ値1.0) 下記文献のFigure E1 参照. Haydour Q, Hage CA, Carmona EM, et al. Diagnosis of fungal infection. A systematic review and meta‒analysis suppoting American Thoracic Society Practice Guideline. Ann Am Thorac Soc 2019;16 (9):1179‒1188. PMID 31219341
資料CQ10—5 エビデンスプロファイル 検査:β—D—グルカン(カットオフ値:80 pg/mL) 感 度0.70(95% CI:0.49~0.85)特異度0.73(95% CI:0.58~0.84)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(アスペルギルスを持つ患者) 9 研究757 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c非常に 深刻dなし35 (25~ 43) 70 (49~ 85) 140 (98~ 170) +○○○非常に低偽陰性(誤ってアスペルギルスを持っていないと分類された患者) 15 (7~ 25) 30 (15~ 51) 60 (30~ 102) 真陰性(アスペルギルスのない患者) 9 研究757 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻c 非常に 深刻c深刻eなし694 (551~ 798) 657 (522~ 756) 584 (464~ 672) +○○○非常に低偽陽性(誤ってアスペルギルスを持つと分類される患者) 256 (152~ 399) 243 (144~ 378) 216 (128~ 336) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,対象患者で1/9 個,インデックス検査で0/9 個,参照基準で4/9 個,フローとタイミングで3/9 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/9 個,インデックス検査で0/9 個,参照基準で0/9 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が,1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり対象をARDS 患者に限らず,急性呼吸不全患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した.
検査:ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値0.5) 感 度0.75(95% CI:0.65~0.83)特異度0.85(95% CI:0.77~0.90)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(侵襲性肺アスペルギルス症を持つ患者) 28 研究518 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c非常に 深刻dなし38 (33~ 42) 75 (65~ 83) 150 (130~ 166) +○○○非常に低偽陰性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持っていないと分類された患者) 12 (8~ 17) 25 (17~ 35) 50 (34~ 70) 真陰性(侵襲性肺アスペルギルス症のない患者) 28 研究4,259患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻で ないeなし808 (731~ 855) 765 (693~ 810) 680 (616~ 720) +○○○非常に低偽陽性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持つと分類される患者) 142 (95~ 219) 135 (90~ 207) 120 (80~ 184) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で12/28 個,インデックス検査で10/28 個,参照基準で12/28 個,フローとタイミングで3/28 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で12/28 個,インデックス検査で4/28 個,参照基準で3/28 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,侵襲性肺アスペルギルス症の患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合によって,検査に正味の利益があるかどうかが異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値1.0) 感 度0.76(95% CI:0.60~0.91)特異度0.88(95% CI:0.79~0.94)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(侵襲性肺アスペルギルス症を持つ患者) 8 研究145 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c非常に 深刻dなし38 (28~ 44) 76 (57~ 88) 152 (114~ 176) +○○○非常に低偽陰性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持っていないと分類された患者) 12 (6~ 22) 24 (12~ 43) 48 (24~ 86) 真陰性(侵襲性肺アスペルギルス症のない患者) 8 研究1,237患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻で ないeなし836 (751~ 884) 792 (711~ 837) 704 (632~ 744) +○○○非常に低偽陽性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持つと分類される患者) 114 (66~ 199) 108 (63~ 189) 96 (56~ 168) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で3/8 個,インデックス検査で2/8 個,参照基準で3/8 個,フローとタイミングで4/8 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で1/8 個,インデックス検査で0/8 個,参照基準で3/8 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,侵襲性肺アスペルギルス症の患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:ガラクトマンナン抗原(血清,カットオフ値1.5) 感 度0.59(95% CI:0.44~0.72)特異度0.95(95% CI:0.90~0.97)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(侵襲性肺アスペルギルス症を持つ患者) 14 研究272 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻dなし30 (22~ 36) 59 (44~ 72) 118 (88~ 144) +○○○非常に低偽陰性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持っていないと分類された患者) 20 (14~ 28) 41 (28~ 56) 82 (56~ 112) 真陰性(侵襲性肺アスペルギルス症のない患者) 14 研究2,256患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻で ないeなし903 (855~ 922) 855 (810~ 873) 760 (720~ 776) +○○○非常に低偽陽性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持つと分類される患者) 47 (28~ 95) 45 (27~ 90) 40 (24~ 80) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で9/14 個,インデックス検査で8/14 個,参照基準で9/14 個,フローとタイミングで6/14 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で8/14 個,インデックス検査で2/14 個,参照基準で4/12 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が1/2 程度以上の項目が,1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,侵襲性肺アスペルギルス症の患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:ガラクトマンナン抗原(BALF,カットオフ値0.5) 感 度0.88(95% CI:0.75~1.00)特異度0.81(95% CI:0.71~0.91)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(侵襲性肺アスペルギルス症を持つ患者) 12 研究1,123患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻dなし44 (38~ 50) 88 (75~ 100) 176 (150~ 200) +○○○非常に低偽陰性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持っていないと分類された患者) 6 (0~ 12) 12 (0~ 25) 24 (0~ 50) 真陰性(侵襲性肺アスペルギルス症のない患者) 12 研究1,123患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻で ないeなし770 (675~ 864) 729 (639~ 819) 648 (568~ 728) +○○○非常に低偽陽性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持つと分類される患者) 180 (86~ 275) 171 (81~ 261) 152 (72~ 232) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で7/12 個,インデックス検査で11/12 個,参照基準で11/12 個,フローとタイミングで7/12 個であった.このように,2 項目以上で,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため,「非常に深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/12 個,インデックス検査で0/12 個,参照基準で0/12 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,侵襲性肺アスペルギルス症の患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合によって,検査に正味の利益があるかどうかが異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
検査:ガラクトマンナン抗原(BALF,カットオフ値1.0) 感 度0.78(95% CI:0.61~0.95)特異度0.93(95% CI:0.87~0.98)事前確率5% 10% 20% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率 5%事前確率10%事前確率20% 真陽性(侵襲性肺アスペルギルス症を持つ患者) 11 研究711 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻dなし39 (31~ 48) 78 (61~ 95) 156 (122~ 190) +○○○非常に低偽陰性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持っていないと分類された患者) 11 (2~ 19) 22 (5~ 39) 44 (10~ 78) 真陰性(侵襲性肺アスペルギルス症のない患者) 11 研究711 患者横断(コホートタイプの精度研究)非常に 深刻a深刻b 非常に 深刻c深刻で ないeなし884 (827~ 931) 837 (783~ 882) 744 (696~ 784) +○○○非常に低偽陽性(誤って侵襲性肺アスペルギルス症を持つと分類される患者) 66 (19~ 123) 63 (18~ 117) 56 (16~ 104) 説 明a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で9/11 個,インデックス検査で10/11 個,参照基準で9/11 個,フローとタイミングで9/11 個であった.このように,2 項目以上で,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため,「非常に深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/11 個,インデックス検査で0/11 個,参照基準で0/11 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.しかしながら,今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,侵襲性肺アスペルギルス症の患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に直接的に適用するには限界がある.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.3 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
BAL の害 アウトカム研究数(患者数)研究デザイン結果の要約確実性の評価 確実性頻度95% CI 患者1,000 人に検査を実施した 場合バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス 死 亡15 研究1,106患者コホート研究,ランダム化比較試験0.000% (0.000~ 0.035) 0 (0~0) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe深刻で ないg評価なし+++○ 中程度 呼吸器系の追加治療を要する重篤な有害事象a 15 研究1,106患者コホート研究,ランダム化比較試験1.548% (0.000~ 5.053) 15 (0~50) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe,f深刻で ないg評価なし+++○ 中程度 循環器系の追加治療を要する重篤な有害事象b 10 研究706 患者コホート研究,ランダム化比較試験0.011% (0.000~ 0.788) 0 (0~8) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe深刻h評価なし++○○ 低い 大出血(重篤な有害) 10 研究747 患者コホート研究,ランダム化比較試験0.000% (0.000~ 0.235) 0 (0~2) 深刻c 深刻で ないd深刻で ないe深刻h評価なし++○○ 低い 説 明a.新たな人工呼吸器装着,気胸. b.新たな昇圧剤の開始,抗不整脈薬の投与. c.Iorio らのツール(Iorio A, et al. BMJ 2015;350:h870)を用いたバイアスリスク評価において,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,対象患者のドメインで6/15 個,フォローアップ期間のドメイン3/15個,アウトカム定義のドメインで8/15 個,重要な予後因子の報告に関するドメインで9/15 個,重要な予後因子での調整のドメインで12/15 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. d.今回のSR において検索対象となった文献群は,理想的に設定するべきSR 疑問と一致しており,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況に概ね適用可能と考えられた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. e.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットでの視覚的な判断,およびI2統計量を基に判断した. f.I2=87%であるが,人工呼吸器を使用していない患者を含む研究を分けてサブグループ解析をすると,異質性は説明可能である.よって「深刻でない」と判断した. g.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.臨床医の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した. h.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.臨床医 の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した.
資料CQ10—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ10:ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して, 血清β—D—グルカン,ガラクトマンナン抗原(血中,気管支肺胞洗浄液中)を用いるか? 集 団: ARDS の患者または急性呼吸不全患者診断対象:侵襲性肺アスペルギルス症検 査:血清β—D—グルカン,ガラクトマンナン抗原〔血中,気管支肺胞洗浄液(BALF)中〕検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重篤な有害事象検査結果に基づく診療:陽性であれば,侵襲性肺アスペルギルス症と診断し,適切な抗真菌薬選択による治 療を開始する.陰性であれば,不要な抗真菌薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景: ARDS の診療においては,原疾患の診断と適切な治療が重要である.侵襲性肺アス ペルギルス症は,免疫状態の低下した患者に発症し,急速に進行して呼吸不全を呈する.ARDS の原疾患となる頻度は低いと思われるが,適切な治療が行われなかった場合は,致死的な転帰をたどる可能性が高い.そのため,侵襲性肺アスペルギルス症を迅速かつ的確に診断することは重要である.血清β—D—グルカン,血中ガラクトマンナン抗原の測定は,アスペルギルス症を疑う患者において広く用いられている検査である.また,近年ではBALF 中のガラクトマンナン抗原測定も注目されている.これらから,「ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β—D—グルカン,ガラクトマンナン抗原(血中,BALF 中)を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○優先度は高くない○たぶん優先度は高 くない○たぶん優先度は高 い●優先度は高い○一概には言えない○わからないARDS の診療においては,原疾患の診断と適切な治療が重要である.侵襲性肺アスペルギルス症は,免疫状態の低下 した患者に発症し,急速に進行して呼吸不全を呈する. ARDS の原疾患となる頻度は低いと思われるが,適切な治療が行われなかった場合は,致死的な転帰をたどる可能性が高い.そのため,侵襲性肺アスペルギルス症を迅速かつ的確に診断することは重要である.血清β—D—グルカン,血中ガラクトマンナン抗原の測定は,アスペルギルス症を疑
う患者において広く用いられている検査である.また,近年ではBALF 中のガラクトマンナン抗原測定も注目されている.これらのことから,本問題の優先順位は高いと考えられる 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考血清β—D—グルカン○非常に正確○正確●不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからない ガラクトマンナン抗原(血中・BALF 中) ○非常に正確○正確○不正確○非常に不正確●一概には言えない○わからないSR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 血清β—D—グルカンの検査の精度については,「不正確」と判断した.ガラクトマンナン抗原検査の精度については複数の採取方法,カットオフがあるため「一概には言えない」と判断した 血清β—D—グルカン<カットオフ値:80 pg/mL> (9 RCT:n=757)統合感度:0.70(95% CI:0.49~0.85),統合特異度: 0.73(95% CI:0.58~0.84) (Bivariate モデル) β—D—グルカン1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性35 (25~ 43) 70 (49~ 85) 140 (98~ 170)非常に低 偽陰性15 (7~ 25) 30 (15~ 51) 60 (30~ 102) 真陰性694 (551~ 798) 657 (522~ 756) 584 (464~ 672)非常に低 偽陽性256 (152~ 399) 243 (144~ 378) 216 (128~ 336) 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 optical density index:OD> (28 RCT:n=518)統合感度:0.75(95% CI:0.65~0.83),統合特異度: 0.85(95% CI:0.77~0.90) (Bivariate モデル)
血中ガラクトマンナン抗原1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性38 (33~ 42) 75 (65~ 83) 150 (130~ 166)非常に低 偽陰性12 (8~ 17) 25 (17~ 35) 50 (34~ 70) 真陰性808 (731~ 855) 765 (693~ 810) 680 (616~ 720)非常に低 偽陽性142 (95~ 219) 135 (90~ 207) 120 (80~ 184) <カットオフ値1.0 ODI> (8 RCT:n=145)統合感度:0.76(95% CI:0.60~0.91),統合特異度: 0.88(95% CI:0.79~0.94) (Bivariate モデル) 血中ガラクトマンナン抗原1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性38 (28~ 44) 76 (57~ 88) 152 (114~ 176)非常に低 偽陰性12 (6~ 22) 24 (12~ 43) 48 (24~ 86) 真陰性836 (751~ 884) 792 (711~ 837) 704 (632~ 744)非常に低 偽陽性114 (66~ 199) 108 (63~ 189) 96 (56~ 168) <カットオフ値1.5 ODI> (14 RCT:n=272)統合感度:0.59(95% CI:0.44~0.72),統合特異度: 0.95(95% CI:0.90~0.97)
(Bivariate モデル) 血中ガラクトマンナン抗原1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性30 (22~ 36) 59 (44~ 72) 118 (88~ 144)非常に低 偽陰性20 (14~ 28) 41 (28~ 56) 82 (56~ 112) 真陰性903 (855~ 922) 855 (810~ 873) 760 (720~ 776)非常に低 偽陽性47 (28~ 95) 45 (27~ 90) 40 (24~ 80) BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> (12 RCT:n=1,123)統合感度:0.88(95% CI:0.75~1.00),統合特異度: 0.81(95% CI:0.71~0.91) (Bivariate モデル) 血中ガラクトマンナン抗原1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性44 (38~ 50) 88 (75~ 100) 176 (150~ 200)非常に低 偽陰性6 (0~ 12) 12 (0~ 25) 24 (0~ 50) 真陰性770 (675~ 864) 729 (639~ 819) 648 (568~ 728)非常に低 偽陽性180 (86~ 275) 171 (81~ 261) 152 (72~ 232) <カットオフ値1.0 ODI> (11 RCT:n=711)
統合感度:0.78(95% CI:0.61~0.95),統合特異度: 0.93(95% CI:0.87~0.98) (Bivariate モデル) 血中ガラクトマンナン抗原1,000 人に検査を実施した 場合に該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率5% 10% 20% 真陽性39 (31~ 48) 78 (61~ 95) 156 (122~ 190)非常に低 偽陰性11 (2~ 19) 22 (5~ 39) 44 (10~ 78) 真陰性884 (827~ 931) 837 (783~ 882) 744 (696~ 784)非常に低 偽陽性66 (19~ 123) 63 (18~ 117) 56 (16~ 104) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考血清β—D—グルカン○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない ガラクトマンナン抗原(血中・BALF 中) ○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)を検討した血清β—D—グルカンについては「中程度」,ガラクトマンナン抗原については複数の採取方法とカットオフがあるため「一概には言えない」と判断した 血清β—D—グルカン 検査前確率5% 10% 20%検査をする35 人70 人140 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする38 人75 人150 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた
検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.0 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする38 人76 人152 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.5 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする30 人59 人118 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする44 人88 人176 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.0 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする39 人78 人156 人検査結果によらず 全員治療する50 人100 人200 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考血清β—D—グルカン○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない ガラクトマンナン抗原(血中・BALF 中) ○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.3 と 設定1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受ける人数を検討した血清β—D—グルカンについては「中程度」,ガラクトマンナン抗原については複数の採取方法とカットオフがあるため「一概には言えない」と判断した 血清β—D—グルカン 検査前確率5% 10% 20%検査をする77 人73 人65 人検査結果によらず 全員治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする43 人41 人36 人検査結果によらず 全員治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.0 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする43 人41 人36 人検査結果によらず 全員治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.5 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする14 人14 人12 人検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は,0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した 有害事象については検査を1,000 人に実施した際に想定される有害事象の発生人数を上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した
検査結果によらず 全員治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする54 人51 人46 人検査結果によらず 全員治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.0 ODI> 検査前確率5% 10% 20%検査をする20 人19 人17 人検査結果によらず 全員治療する285 人270 人240 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人 気管支肺胞洗浄の有害事象の頻度 1,000 人に検査を 実施した場合エビデンス の確実性 アウトカム頻度 95% CI患者 1,000 人に検査を実施した場合 死 亡0.000% (0,000~ 0.035) 0 (0~0) 中 呼吸器系の追加治療を要する重篤な有害事象1.548% (0.000~ 5.053) 15 (0~50) 中 循環器系の追加治療を要する重篤な有害事象0.011% (0.000~ 0.788) 0 (0~8) 低 大出血(重篤な有害) 0.000% (0.000~ 0.235) 0 (0~2) 低
1,000 人に検査を実施した場合,重み付けした有害事象発生の人数死亡の有害事象については真陽性に対して相対的に重み付けを1.0 とし,それ以外の重大な有害事象は0.4 としたBALF 有害事象相当する人数死 亡0 人 呼吸器系の追加治療を要する 重篤な有害事象6 人循環器系の追加治療を要する 重篤な有害事象0 人大出血(重篤な有害) 0 人 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮 しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い●低○中○高○研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスなし BAL 検査の有害事象に関するエビデンスの確実性は「低い」と考えられた
検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない一般に真陽性に対する抗真菌薬などの治療は「優れた医療 上の慣行」として治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽性と判断され不必要な治療では望ましくない効果(薬剤の有害事象など)が想定される.しかし,治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関するエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,検査結果に基づいて抗真菌薬の治療が開始されるた め,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み込まれた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく
ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはないない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験 が変われば,その価値観によって異なる可能性がある(偽陽性の臨床的重み付けは医療者や患者の個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある) 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考血清β—D—グルカン○検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い●たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○どちらも支持しな い○一概には言えない○わからない ○検査を支持する●たぶん検査を支持する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持しない○検査を支持しない○どちらも支持しない○一概には言えない○わからない真陽性と診断され適切な治療が実施される利益と,偽陽性 と診断され不必要な治療を受ける不利益,および検査の害について正味の利益(net—benefit)を求めた 血清β—D—グルカン<カットオフ値:80 pg/mL>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療する-42 人-3 人75 人検査結果によらず 全員治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.3 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査を実施して治療する場合,検査を実施せずに全員に治療する場合,検査を実施せずに治療をしない場合で正味の利益(net—benefit)を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は限定的と思われる 血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)-(不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)× (臨床的重み付け)で計算した 重大な有害事象が無視できる程度の場合は,0として計算した
検査結果に基づいて 治療する-5 人35 人114 人検査結果によらず 全員治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重み付けを0.3 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる <カットオフ値1.0 ODI>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療する4 人44 人123 人検査結果によらず 全員治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重み付けを0.3 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる <カットオフ値1.5 ODI>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療する15 人46 人106 人検査結果によらず 全員治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重み付け
を0.3 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療する-16 人31 人124 人検査結果によらず 全員治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重み付けを0.3 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.BAL の死亡の有害事象については臨床的重み付けを1.0 とし,それ以外の重大な有害事象の臨床的重み付けは0.3 とした.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらずに治療をしない場合でnet—benefitを比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる <カットオフ値1.0 ODI>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 検査前確率5% 10% 20%検査結果に基づいて 治療する13 人53 人133 人検査結果によらず 全員治療する-235 人-170 人-40 人検査結果によらず全員治療しない0 人0 人0 人真陽性に対する偽陽性の相対的な偽陽性の臨床的重み付けを0.3 と考え,事前確率5%,10%,20%でのnet—benefit を計算した.BAL の死亡の有害事象については重み付けを1.0 とし,それ以外の重大な有害事象は0.4 とした.検査結果に基づいて治療する場合,検査結果によらずに全員に治療する場合,検査結果によらず治療をしない場合で
net—benefit を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は多いと思われる 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る.考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,おそらく実施できる と考えられるが,施設によってはBALF 検査を実施できない可能性がある.考慮されたエビデンスなし 判断の要約(血清β—D—グルカン検査) 判 断 問 題Problemいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果 Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない 望ましくない効果 Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない
検査の影響に関するエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性 Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には言えないわから ない 判断の要約(血中ならびにBALF 中ガラクトマンナン抗原検査) 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない
望ましい効果 Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果 Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性 Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ(血清β—D—グルカン検査) 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ● ○ ○ ○ 推奨のタイプ(血中ならびにBALF 中ガラクトマンナン抗原検査) 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β—D—グルカン検査結果のみで判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血中ならびに気管支肺胞洗浄液中ガラクトマンナン抗原検査を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない
付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS の原因疾患(侵襲性肺アスペルギルス症)の鑑別に際して,血清β‒D‒グルカン検査,血中・BALF 中ガラクトマンナン抗原検査を用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 血清β‒D‒グルカン,血中ガラクトマンナン抗原,BALF 中ガラクトマンナン抗原.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療陽性であれば,侵襲性肺アスペルギルス症と診断し,適切な抗真菌薬選択による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗真菌薬による治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う.エビデンスの要約血清β‒D‒グルカン<カットオフ値80 pg/mL> (9 RCT:n=757).統合感度:0.70(95% CI:0.49~0.85),統合特異度:0.73(95% CI:0.58~0.84).血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> (28 RCT:n=518).統合感度:0.75(95% CI:0.65~0.83),統合特異度:0.85(95% CI:0.77~0.90).血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.0 ODI> (8 RCT:n=145).統合感度:0.76(95% CI:0.60~0.91),統合特異度:0.88(95% CI:0.79~0.94).血中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.5 ODI> (14 RCT:n=272).統合感度:0.59(95% CI:0.44~0.72),統合特異度:0.95(95% CI:0.90~0.97). BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値0.5 ODI> (12 RCT:n=1,123).統合感度:0.88(95% CI:0.75~1.00),統合特異度:0.81(95% CI:0.71~0.91). BALF 中ガラクトマンナン抗原<カットオフ値1.0 ODI> (11 RCT:n=711).統合感度:0.78(95% CI:0.61~0.95),統合特異度:0.93(95% CI:0.87~0.98). BALF の有害事象の頻度.死亡 0.000%(95% CI:0.000~0.035).エビデンスの確実性いずれの検査についても,感度・特異度の両方において,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.BALF の害について,エビデンスの確実性は「中」または「低」であった.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定血清β‒D‒グルカン検査,血中・BALF 中ガラクトマンナン抗原検査を実施することによる望ましい効果として,侵襲性肺アスペルギルス症と診断し適切な治療が迅速に受けられることが想定される.また,望ましくない効果として,誤診断(偽陽性)により不要な治療を受ける害と,検査の有害事象が考えられる.この検査の望ましい効果と害を,検査せずに治療方針を決定した場合と比較した.血清β‒D‒グルカン検査は,検査をすることで利益を得られる臨床的状況は限定的と考えられた.血中・BALF 中ガラクトマンナン抗原検査は,検査をすることで利益を得られる臨床的状
況は多いと考えられた.検査のコストは少なく,実行可能性はおそらく問題なく,一般に受け入れられている医療行為である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が,中央値9 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議では,EtD の記載方法について修正の指摘があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項ただし,上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 今回のSR に組み入れられた研究の多くは,免疫不全患者を対象としていた.そのため,得られた統合感度・特異度の結果を,必ずしもARDS 患者全般に対しては適応できない可能性がある.施設における人的資源,有害事象などの観点から,実臨床ではBALF よりも血液で測定されていることが多いと思われる.また,施設によってはBALF 検査が実行できない可能性がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities SR に組み入れられた研究の多くは,ARDS 患者を対象としたものではない.ARDS 患者を対象とした診断精度研究が求められる.
背景,この問題の優先度 頻度は稀であるが,粟粒結核がARDSの原因であることがあり,そのような患者群では抗結核薬を使用しなければ致死的経過をたどる.また,肺結核を合併していた場合,空気感染予防策が必要となり,その診断は極めて重要である.結核の確定診断としては塗抹検査および培養検査による結核菌の証明であるが,事前のスクリーニング検査として胸部単純X 線写真(Xp),胸部高分解能CT(high‒resolution computed tomography:HRCT),インターフェロンγ遊離試験(Interferon‒γ release assay:IGRA)などの選択肢が挙げられる.成人のARDS 患者に対し,これらの検査で粟粒結核をスクリーニングし,必要があれば更なる検査を追加して適切な抗結核薬投与による治療介入を行う,あるいは適切な空気感染予防策を取 ることは重要である.以上より,「ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるか?」という疑問が設定された. 解 説 PICO 患者(P):ARDS 患者.検査:胸部Xp,胸部HRCT,IGRA.目的:救急外来,ICU,またはそれに準じた状 況でのARDS 診療における鑑別診断. エビデンスの要約 該当の研究なし.成人のARDS患者で粟粒結核を疑った場合の 1 2 1 2 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるか? CQ 11 ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高 分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるかどうかについて,特定 の推奨を下すことはできない.胸部単純X 線検査はARDS 診療においてほぼ 全例に使用されており,胸部高分解能CT ならびにインターフェロンγ遊離 試験は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). 推 奨
スクリーニング検査としては,まずは胸部Xpが挙げられる.ただし,微細な粒状影については見落とす可能性があり,必要に応じて胸部HRCT が行われる.胸部CT では1~3 mm 程度の結節が,両肺にランダムに分布する所見を認め,粟粒結核を疑う所見となる.IGRA は血液検査のみの簡便な検査であるものの,結果の判明までに数日間の時間を要することもある.これらの検査結果が陽性であれば,粟粒結核を疑い,陰圧個室管理とした上で,喀痰,尿,胃液,気管支鏡,骨髄穿刺,肝生検などで検体を採取し,結核菌が証明されれば確定診断となり抗結核薬での治療を開始する.陰性であれば,粟粒結核を否定し,不要な検査・治療を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行う.一方で,検査によって誤った診断が下されることで,不要な個室陰圧管理,侵襲的検査,抗結核薬が追加されるなどの害が生じる可能性がある. ARDS 患者を対象とした,上記の検査の診断精度の研究は見つからなかった.参考として,活動性結核の診断におけるIGRA の診断精度を検討した研究の結果を紹介する.T‒スポット®.TB は感度87.5%(95%CI:85%~90%)で特異度86.3%(95%CI:81%~90%),クォンティフェロン® TB ゴールドは感度81% (95%CI:78%~83%)で特異度99.2% (95%CI:98%~100%)と報告されている1).検査の診断精度を検討した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 利益と害のバランスは不明である.受け入れ,実行可能性については問題ないと思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では表記の微細な点についてのみ議論があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 IGRA については,細胞性免疫が低下している患者のサブグループでは,偽陰性となる可能性が上がるため,結果の解釈にはより慎重になる必要がある.また,特に高齢患者では活動性結核でなくても過去の感染を反映して偽陽性となることがあるため,結果の解釈は慎重に行う必要がある. 実施上の考慮事項 すでに日常臨床で実行されており,特に問題は生じないと思われる. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 今後,この臨床疑問に関する診断精度研究が 3 5 3 4 5 6 7
必要である. 文献検索式と文献選択 「Tuberculosis, Miliary」「disseminated tuberculosis」「CT, X‒ray」をキーワードとしてPubMed およびCochrane CENTRAL で2020 年7 月9 日までの文献を検索したところ833 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当する研究はなかった.本CQ で対象とした研究 なし. 資料一覧 ・資料CQ11‒1 Search strategy.・資料CQ11‒2 フローダイアグラム.・資料CQ11‒3 Evidence‒to‒Decision. 8 9 10 1) Diel R, Loddenkemper R, Nienhaus A. Evidence‒based comparison of commercial interferon‒gamma release assays for detecting active TB:a metaanalysis. Chest 2010;137:952‒68. 参考文献
資料CQ11—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/9) #1 "Tuberculosis, Miliary"/diagnosis[Mesh] #2 tuberculosi*[tiab] AND miliary[tiab] #3 disseminated tuberculosis[tiab] #4 #1 OR #2 OR #3 #5 “tomography, x-ray computed”[MeSH Terms] #6 “computed”[tiab] AND “tomography”[tiab] #7 “computed tomography”[tiab] #8 #5 OR #6 OR #7 #9 “mass chest x-ray”[MeSH Terms] #10 (“mass”[tiab] AND “chest”[tiab]) AND “x-ray”[tiab] #11 #9 OR #10 #12 "chest*"[tiab] OR "thorax"[tiab] #13 "diagnostic imaging"[tiab] #14 "radiography"[MeSH Terms] #15 "radiograph*"[tiab] #16 #13 OR #14 OR #15 #17 #12 AND #16 #18 "Thorax/diagnostic imaging"[Mesh] #19 #17 OR #18 #20 "Interferon-gamma Release Tests"[Mesh] #21 "interferon-gamma"[tiab] AND "release"[tiab] AND "tests"[tiab] #22 "Interferon-gamma/analysis"[Mesh] #23 "igra"[tiab] #24 "t-spot"[tiab] #25 quantiferon[tiab] #26 qft[tiab] #27 #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 OR #26 #28 #8 OR #11 OR #19 OR #27 #29 #4 AND #28 #30 [mh animals] NOT ([mh animals] AND [mh humans]) #31 #29 NOT #30 CENTRAL(Search date:2020/7/9) #1 [mh "Tuberculosis, Miliary"] #2 tuberculosi*:ti,ab AND miliary:ti,ab #3 "disseminated tuberculosis":ti,ab #4 #1 OR #2 OR #3 #5 [mh "tomography, x-ray computed"] #6 computed:ti,ab AND tomography:ti,ab #7 “computed tomography”:ti,ab #8 #5 OR #6 OR #7
#9 [mh "mass chest x-ray"] #10 (mass:ti,ab AND chest:ti,ab) AND x-ray:ti,ab #11 #9 OR #10 #12 chest*:ti,ab OR thorax:ti,ab #13 "diagnostic imaging":ti,ab #14 [mh radiography] #15 radiograph*:ti,ab #16 #13 OR #14 OR #15 #17 #12 AND #16 #18 [mh Thorax/DG] #19 #17 OR #18 #20 [mh "Interferon-gamma Release Tests"] #21 interferon-gamma:ti,ab AND release:ti,ab AND tests:ti,ab #22 [mh Interferon-gamma] #23 igra:ti,ab #24 t-spot:ti,ab #25 quantiferon:ti,ab #26 qft:ti,ab #27 #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 OR #26 #28 #8 OR #11 OR #19 OR #27 #29 #4 AND #28 #30 [mh animals] NOT ([mh animals] AND [mh humans]) #31 #29 NOT #30
資料CQ11—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 n=833 MEDLINE(PubMed) 826件CENTRAL 7件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=833 重複研究を除外した研究 n=833 除外基準に該当した研究 n=833 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0
資料CQ11—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ11:ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真, 胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるか? 集 団: ARDS 患者診断対象:粟粒結核検 査:胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験検査の目的/役割: ARDS 診療における鑑別診断セッティング:救急外来,ICU,またはそれに準じた状況主要なアウトカム:生命予後,検査による重篤な有害事象検査結果に基づく診療:陽性(粟粒結核が疑われる)であれば,更なる診断検査を行い,適切な抗菌薬選択 による治療を開始する.陰性であれば,不要な抗菌薬治療を回避し,異なる診断対象への追加の検査や経過観察を行う 視 点:個人背 景:頻度は稀であるが,粟粒結核がARDS の原因であることがあり,そのような患者群 では抗結核薬を使用しなければ致死的経過をたどる.また,肺結核を合併していた場合,空気感染予防策が必要となり,その診断は極めて重要である.結核の確定診断としては塗抹検査および培養検査による結核菌の証明であるが,事前のスクリーニング検査として胸部単純X 線写真(Xp),胸部高分解能CT(high—resolution computed tomography:HRCT),インターフェロンγ遊離試験(Interferon—γ release assay:IGRA)などの選択肢が挙げられる.成人のARDS 患者に対し,これらの検査で粟粒結核をスクリーニングし,必要があれば更なる検査を追加して適切な抗結核薬投与による治療介入を行う,あるいは適切な空気感染予防策を取ることは重要である.以上より,「ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるか?」という疑問が設定された 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高 い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない頻度は稀であるが,粟粒結核がARDS の原因であることがあり,そのような患者群では抗結核薬を使用しなければ致死的経過をたどる.また, 肺結核を合併していた場合,空気感染予防策が必要となり,その診断は極めて重要である.したがって,この問題の優先度は高いと考えられた
○一概には言えない○わからない 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確○正確○不正確○非常に不正確○一概には言えない●わからない文献検索では,ARDS 患者を対象とした,粟粒結核の診断における胸部 Xp,胸部HRCT,IGRA の診断精度を報告した質の高い研究は,見つけられなかった.したがって,本問題の推奨を支持する直接的なエビデンスとなる研究はないと判断されたARDS 患者を対象としたものではないが,参考として,活動性結核の診断におけるIGRA の診断精度を検討した研究の結果を紹介する.T—スポット®.TB は感度87.5%(95% CI:85%~90%)で特異度86.3% (95% CI:81%~90%),クォンティフェロン® TB ゴールドは感度81%(95% CI:78%~83%)で特異度99.2%(95% CI:98%~ 100%)と報告されている1) 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからない検査の結果が真陽性で,粟粒結核を正しく疑うことができれば,適切な 感染管理を行った上で,喀痰,尿,胃液,気管支鏡,骨髄穿刺,肝生検などで検体を採取し,結核菌が証明されれば確定診断となり抗結核薬での治療を開始することができる.真陰性であれば,粟粒結核を否定し,不要な検査・治療を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行うことができる.しかしながら,これらの望ましい効果の大きさがどの程度かは,わからない 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからない検査によって誤った診断が下されることで(偽陽性),不要な個室陰圧管 理,侵襲的検査,抗結核薬が追加されるなどの害が生じる可能性が懸念される.しかしながら,その望ましくない効果の大きさがどの程度かは,わからない
検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない診断精度のエビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない直接的な検査の影響について検討したエビデンスはない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない真陽性に対して追加検査をすることで,確定診断につながり,さらには抗結核薬治療による生命予後などの改善効果が期待される.一方,偽陽 性と判断され不必要な検査や治療を受けると,望ましくない効果(検査の有害事象や薬剤の副作用など)が想定される.しかし,追加検査や治療が生命予後などの最終アウトカムに与える影響に関するエビデンスとして,考慮した研究はない
検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない通常,スクリーニング検査結果に基づいて追加検査が行われ,確定診断 された場合は速やかに抗結核薬治療が行われるため,結果と治療の意思決定の関係について確実性は高いと考えてよいと思われるが,エビデンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからないエビデンスとして組み入れられた研究はない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性やばらつきがある可 能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましくない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験が変わればその価値観に よって異なる可能性がある
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査を実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない●わからない真陽性と診断され適切な追加検査,さらには治療が実施される利益と, 偽陽性と診断され不必要な検査や治療を受ける不利益についてのバランスは,エビデンスがないためどちらが大きいかは,わからない 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,受け入れられると考えられる.考 慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能●たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない施設によってはIGRA を院内測定できない可能性があるが,一般に行われている医療行為であり,おそらく実行可能と考えられる.考慮された エビデンスなし
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない
効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部単純X 線写真,胸部高分解能CT,インターフェロンγ遊離試験を用いるかどうかについて,特定の推奨を下すことはできない.胸部単純X 線検査はARDS 診療においてほぼ全例に使用されており,胸部高分解能CT ならびにインターフェロンγ遊離試験は,臨床医の経験などに基づいて用いられているのが現状である(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問ARDS の原因疾患(粟粒結核)の鑑別に際して,胸部Xp,胸部HRCT,IGRA を用いるか?患 者 ARDS 患者.検 査 胸部Xp,胸部HRCT,IGRA.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 診療における鑑別診断.解 説成人のARDS 患者で粟粒結核を疑った場合のスクリーニング検査としては,まずは胸部Xp が挙げられる.ただし,微細な粒状影については見落とす可能性があり,必要に応じて胸部HRCT が行
われる.胸部CT では1~3 mm 程度の結節が,両肺にランダムに分布する所見を認め,粟粒結核を疑う所見となる.IGRA は,血液検査のみの簡便な検査であるものの,結果の判明までに数日間の時間を要することもある.これらの検査結果が陽性であれば,粟粒結核を疑い,陰圧個室管理とした上で,喀痰,尿,胃液,気管支鏡,骨髄穿刺,肝生検などで検体を採取し,結核菌が証明されれば確定診断となり,抗結核薬での治療を開始する.陰性であれば,粟粒結核を否定し,不要な検査・治療を回避し,異なる鑑別診断への追加の検査や経過観察を行う.一方で,検査によって誤った診断が下されることで,不要な個室陰圧管理,侵襲的検査,抗結核薬が追加されるなどの害が生じる可能性がある. ARDS 患者を対象とした,上記の検査の診断精度の研究は見つからなかった.参考として,活動性結核の診断におけるIGRAの診断精度を検討した研究の結果を紹介する.T‒スポット®.TBは感度87.5%(95%CI:85%~90%)で特異度86.3%(95%CI:81%~90%),クォンティフェロン® TB ゴールドは感度81%(95%CI:78%~83%)で特異度99.2%(95%CI:98%~100%)と報告されている1).検査の診断精度を検討した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定利益と害のバランスは不明である.受け入れ,実行可能性については問題ないと思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では表記の微細な点についてのみ議論があった.最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations IGRA については,細胞性免疫が低下している患者のサブグループでは,偽陰性となる可能性が上がるため,結果の解釈にはより慎重になる必要がある.また,特に高齢患者では活動性結核でなくても過去の感染を反映して偽陽性となることがあるため,結果の解釈は慎重に行う必要がある. 実施上の考慮事項 Implementation considerations すでに日常臨床で実行されており,特に問題は生じないと思われる. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今後,この臨床疑問に関する診断精度研究が必要である.
参考文献1) Diel R, Loddenkemper R, Nienhaus A. Evidence‒based comparison of commercial interferon‒gamma release assays for detecting active TB:a metaanalysis. Chest 2010;137: 952‒68.
背景,この問題の優先度 ARDS は致死率の高い病態であり,その予後予測は治療の意思決定に重要である.ARDS は病理学的にはびまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)を呈することが典型的とされているが,臨床診断基準であるベルリン定義は,必ずしも病理学的病態を反映していない.実際に,臨床基準に基づきARDSと診断された患者の剖検肺では,約半数にしかDAD 所見が見られなかったとする報告がある.肺生検検体で病理学的にDAD 所見を有するARDS 患者は,DAD 所見を有さない患者に比べて予後不良とする報告もあり,肺生検がARDS患者の予後予測に有用である可能性が示唆されている.一方で,胸部CT 所見,特に高分解能CT (high‒resolution CT:HRCT)所見は,肺の様々な病理像を反映することが知られている. 胸部CT 所見から,DAD 所見の有無やその病理学的進行度を推測することで,ARDS 患者の予後を予測できる可能性も示唆されている.これらのことから,「ARDS 患者の予後予測に際して,肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見を用いるか?」という疑問は臨床上重要と考えられた. 解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:肺生検の病理所見,胸部CTの画像所見.目的:救急外来,ICU,またはそれに準じた状 況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療:予後予測で陽性(死亡 と予測)の場合は,状況に応じた治療方針に 1 2 1 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS 患者の予後予測に際して,解剖学的指標(肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見)を用いるか? CQ 12 ARDS 患者の予後予測に際して,肺生検の病理所見のみ,あるいは胸部CT の画像所見のみでは判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/ 非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観,検査結果に続く意思決定)が変化すれば効果のバランスが変化し異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
変更する.陰性(生存と予測)の場合は,現行の治療を継続とする. エビデンスの要約 本CQ では解剖学的指標(肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見)の予後予測性能に関するSR およびメタ解析と肺生検,CT 室などへの院内の移動の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析を実施した.そのため複数の検索式,SR の結果が掲載されている.肺生検(11RCT:n=616)の統合感度は, 0.42(95%CI:0.21~0.57),統合特異度は, 0.69(固定)(HSROC モデル)であった.胸部CT(6RCT:n=409)の統合感度は,0.62 (95%CI:0.32~0.91),統合特異度は,0.76 (固定)(HSROC モデル)であった. エビデンスの確実性 肺生検,胸部CT のいずれにおいても,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 検査の結果により適切な治療方針の変更を受ける利益(真陽性の利益)がある一方で,不必要な治療方針の変更によって受ける害(偽陽性の害)が発生する.真陽性の利益と比較した偽陽性の害と相対的重要性を0.2 と考えた.検査の重大な有害事象も含めて正味の利益を考慮すると,検査結果で治療方針を決定することが有用である臨床的状況は,非常に限られていると考えられた.検査の実行可能性については一概に言えないと判断された. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.132 で あった.パネル会議では事前投票の結果をもって合意と判断されたが,のちに検査結果に基づく診療について記載の修正が必要と判断された.該当箇所の日本語表記の修正を行い,再度投票で最終的に合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 検査が実施可能かどうかは,患者や施設の状況によって異なる可能性がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 検査の有害事象などについて継続して評価が必要である.また,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 既存の研究の問題点として,胸部CT や肺生検を実施するタイミングや,予後不良と判断する画像所見・病理所見に,研究ごとのばらつきがあることが挙げられる.これらの条件を統一して研究を実施し,エビデンスを蓄積することが必要である. 文献検索式と文献選択 解剖学的指標(肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見)の予後予測性能に関するSR およびメタ解析 「ARDS」「ALI」「CT」をキーワードとして 2 3 4 3 4 5 6 7 8 1
PubMed,Cochrane CENTRAL およびclinicaltrial.gov で2020 年6 月18 日までの文献を検索したところ2,378 件の研究が同定され,スクリーニングの結果17 件の研究を採用した1‒17). 肺生検の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析 「ARDS」「ALI」「biopsy」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL およびclinicaltrial.gov で2020 年5 月22 日までの文献を検索したところ2,214 件の研究が同定され,スクリーニングの結果13 件の研究を採用した17‒29). CT 室などへの院内の移動の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析 「critical care」「CT」「patient transfer」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL およびclinicaltrial.gov で2020 年6 月3 日までの文献を検索したところ1,515 件の研究が同定され,スクリーニングの結果25件の研究を採用した30‒54). 本CQ で対象とした研究 解剖学的指標(肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見)の予後予測性能に関するSR およびメタ解析 Arrieta 20201), Nishiyama 20202), Cardinal‒Fernandez 20193), Kamo 20194), Lipps 20195), Park 20186), Charbonney 20097), Baumann 20088), Papazian 20079), Ichikado 201210), Chung 201111), Willetts 201112), Canzian 200613), Ichikado 200614), Patel 200415), Rouby 200016), Papazian 199817). 肺生検の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析 Papazian 199817), Soh 200518), Cho 200619), Papazian 200720), Arabi 200721), Lim 200722), Baumann 200823), Charbonney 200924), Dupuydt 201325), Kao 201526), Donaldson 201627), Gerard 201828), Ortiz 201929). CT 室などへの院内の移動の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析 Aliaga 201530), Bercault 200531), Bergman 201732), Brunsveld‒Reinders 201533), Gillman 200634), Gimenez 201735), Harish 201636), Ignatyeva 201837), Jia 201638), Kollef 199739), Kue 201140), Kwack 201841), Lahner 200742), Lin 202043), Marquet 201544), Matsumura 201545), Parmentier‒Decrucq 201346), S c h w e b e l 2 0 1 3 4 7), S o l a n o 2 0 1 7 4 8), Stankiewicz 201949), Stearley 199850), Szem 199551), Veiga 201952), Waddell 197553), Zuchelo 200954). 資料一覧 ・資料CQ12‒1 Search strategy.・資料CQ12‒2 フローダイアグラム.・資料CQ12‒3 Risk of bias.・資料CQ12‒4 Forest plot.・資料CQ12‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ12‒6 Evidence‒to‒Decision. 2 3 9 1 2 3 10
1) Arrieta E, Sangiovanni S, Garcia‒Robledo JE, et al. Video‒assisted thoracoscopic lung biopsy in critically ill patients with hematologic malignancy and acute respiratory distress syndrome:a case series report. J Investig Med High Impact Case Rep 2020;8:2324709620912101. 2) Nishiyama A, Kawata N, Yokota H, et al. A predictive factor for patients with acute respiratory distress syndrome:CT lung volumetry of the well‒aerated region as an automated method. Eur J Radiol 2020;122:108748. 3) Cardinal‒Fernandez P, Ortiz G, Chang CH, et al. Predicting the impact of diffuse alve- olar damage through open lung biopsy in acute respiratory distress syndrome―The PREDATOR Study. J Clin Med 2019;8:829. 4) Kamo T, Tasaka S, Suzuki T, et al. Prognostic values of the Berlin definition criteria, blood lactate level, and fibroproliferative changes on high‒resolution computed tomography in ARDS patients. BMC Pulm Med 2019;19:37. 5) Lipps KM, Bharat A, Walter JM. Lung biopsy in patients with acute respiratory distress syndrome supported on extracorporeal membrane oxygenation:a 2 year experience. ASAIO J 2019;65:e92‒4. 6) Park J, Lee YJ, Lee J, et al. Histopathologic heterogeneity of acute respiratory distress syndrome revealed by surgical lung biopsy and its clinical implications. Korean J Intern Med 2018;33:532‒40. 7) Charbonney E, Robert J, Pache JC, et al. Impact of bedside open lung biopsies on the management of mechanically ventilated immunocompromised patients with acute respiratory distress syndrome of unknown etiology. J Crit Care 2009;24:122‒8. 8) Baumann HJ, Kluge S, Balke L, et al. Yield and safety of bedside open lung biopsy in mechanically ventilated patients with acute lung injury or acute respiratory distress syndrome. Surgery 2008;143:426‒33. 9) Papazian L, Doddoli C, Chetaille B, et al. A contributive result of open‒lung biopsy improves survival in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 2007;35:755‒62. 10) Ichikado K, Muranaka H, Gushima Y, et al. Fibroproliferative changes on high‒reso- lution CT in the acute respiratory distress syndrome predict mortality and ventilator dependency:a prospective observational cohort study. BMJ Open 2012;2: e000545. 11) Chung JH, Kradin RL, Greene RE, et al. CT predictors of mortality in pathology con- firmed ARDS. Eur Radiol 2011;21:730‒7. 12) Willetts L, Parker K, Wesselius LJ, et al. Immunodetection of occult eosinophils in lung tissue biopsies may help predict survival in acute lung injury. Respir Res 2011;12:116. 13) Canzian M, Soeiro AdeM, Taga MF, et al. Correlation between surgical lung biopsy and autopsy findings and clinical data in patients with diffuse pulmonary infiltrates and acute respiratory failure. Clinics(Sao Paulo)2006;61:425‒32. 14) Ichikado K, Suga M, Muranaka H, et al. Prediction of prognosis for acute respiratory distress syndrome with thin‒section CT:validation in 44 cases. Radiology 2006; 238:321‒9. 参考文献
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資 料本CQ では上記検査の予後予測性能に関するSR およびメタ解析と肺生検,CT 室などへの院内の移動の有害事象の頻度に関するSR およびメタ解析を実施した.そのため複数の検索式,SR の結果が掲載されている. 資料CQ12—1 Search strategy CT の害MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/3) #1 respiratory distress syndrome,adult[mh] OR shock lung OR acute respiratory distress syndrome OR adult respiratory distress syndrome #2 acute lung injury[mh] OR acute lung injury[tiab] OR acute lung injuries[tiab] #3 ARDS OR ALI #4 critical care[mh] OR critical illness[mh] #5 critical care[tiab] OR critical illness[tiab] OR critically ill[tiab] #6 tomography,x-ray computed[mh] #7 CT[tiab] OR HRCT[tiab] #8 patient transfer[mh] OR transportation of patients[mh] #9 patient transfer[tiab] OR transportation patient[tiab] OR patients transfer[tiab] OR transportation patients[tiab] OR transport patient[tiab] OR transport patients[tiab] OR intrahospital transport[tiab] #10 mortality[mh] #11 length of stay[mh] OR length of stay[tiab] #12 adverse effect*[tiab] OR adverse event*[tiab] #13 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 #14 #6 OR #7 OR #8 OR #9 #15 #10 OR #11 OR #12 #16 animal[mh] NOT (animal[mh] AND humans[mh]) #17 #13 AND #14 AND #15 #18 #17 NOT #16 CENTRAL(Search date:2020/6/3) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 MeSH descriptor: [Severe Acute Respiratory Syndrome] explode all trees #3 MeSH descriptor: [Lung Injury] explode all trees #4 respiratory distress syndrome adult #5 respiratory distress syndrome acute #6 severe acute respiratory syndrome #7 lung injury:ti,ab #8 lung injur*:ti,ab #9 MeSH descriptor: [Critical Illness] explode all trees #10 critical illness:ti,ab #11 MeSH descriptor: [Critical Care] explode all trees #12 critical care:ti,ab #13 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 MeSH descriptor: [Tomography Scanners, X-Ray Computed] explode all trees
#15 CT:ti,ab OR HRCT:ti,ab #16 computed tomography:ti,ab,kw #17 MeSH descriptor: [Transportation of Patients] explode all trees #18 transportation patient*:ti,ab #19 MeSH descriptor: [Patient Transfer] explode all trees #20 patient* transfer:ti,ab #21 intrahospital transport:ti,ab #22 #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 #23 MeSH descriptor: [Mortality] explode all trees #24 mortality:ti,ab #25 MeSH descriptor: [Length of Stay] explode all trees #26 "length of stay":ti,ab #27 "adverse effect*":ti,ab #28 #23 OR #24 OR #25 OR #26 OR #27 #29 #13 AND #22 AND #28 生検の害MEDLINE via PubMed(Search date:2020/5/22) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute [tiab] AND (lung injur* [tiab] OR respiratory distress [tiab] OR respiratory failure[tiab]) #5 (Severe [tiab] OR critical*[tiab]) AND (respiratory[tiab] OR hypox* [tiab]) #6 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 #7 biopsy[mh] AND lung[mh] #8 (cryosurger*[tiab] OR cryobiopsy[tiab] OR biopsy[tiab]) AND lung[tiab] #9 bronchoscopy[mh] #10 Thoracic Surgery, Video-Assisted[mh] #11 #7 OR #8 OR #9 OR #10 #12 #6 AND #11 #13 animals[mh] NOT human[mh] #14 #12 NOT #13 CENTRAL(Search date:2020/5/22) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] #2 [mh "Acute lung injury"] #3 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #4 Acute:ti,ab #5 lung NEXT injur*:ti,ab #6 "respiratory distress":ti,ab #7 "respiratory failure":ti,ab #8 #4 AND (#5 OR #6 OR #7) #9 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab)
#10 #1 OR #2 OR #3 OR #8 OR #9 #11 [mh biopsy] AND [mh lung] #12 (cryosurger*:ti,ab OR cryobiopsy:ti,ab OR biopsy:ti,ab) AND lung:ti,ab #13 [mh bronchoscopy] #14 [mh "Thoracic Surgery, Video-Assisted"] #15 #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #10 AND #15 #17 [mh animals] NOT [mh human] #18 #16 NOT #17
CT,生検の予後予測性能MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/18) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute lung injur* [tiab] OR Acute respiratory distress [tiab] OR Acute respiratory failure[tiab] #5 "severe respiratory failure"[tiab] #6 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 #7 (High Resolution Computed Tomography[tiab] OR HRCT[tiab] OR high-resolution CT[tiab] OR tomography, x-ray computed[mh]) AND lung[mh] #8 Lung/pathology[mh] OR pulmonary fibrosis/pathology[mh] #9 ("Biopsy/adverse effects"[Mesh] OR "Biopsy/methods"[Mesh])AND Lung[mh] OR "lung biopsy"[tiab] #10 #7 OR #8 OR #9 #11 #6 AND #10 #12 animals[mh] NOT humans[mh] #13 #11 NOT #12
CENTRAL(Search date:2020/6/18) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] #2 [mh "Acute lung injury"] #3 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #4 "Acute lung injury":ti,ab OR "Acute respiratory distress":ti,ab OR "Acute respiratory failure":ti,ab #5 "severe respiratory failure":ti,ab #6 {OR #1-#5} #7 ("High Resolution Computed Tomography":ti,ab OR HRCT:ti,ab OR "high-resolution CT":ti,ab OR [mh "tomography, x-ray computed"]) AND [mh lung] #8 [mh Lung] OR [mh "pulmonary fibrosis"] #9 ([mh "Biopsy"] AND [mh Lung]) OR "lung biopsy":ti,ab #10 {OR #7-#9} #11 #6 AND #10 #12 [mh animals] NOT [mh humans] #13 #11 NOT #12
資料CQ12—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ病理,CT所見の予測性能 データベース検索で同定された研究n=2,398 MEDLINE(PubMed) 2,263件Cochrane CENTRAL 135件他のリソースから同定された研究 Trial registry n=38 Hand search the reference lists n=0 重複した研究 n=58 除外基準に該当した研究 n=2,309 検索で同定された研究 n=2,436 重複研究を除外した研究 n=2,378 フルテキストで適格性を評価した研究 n=79 系統的レビューに組み入れた研究n=21(CT:6研究,病理15研究) メタ解析に組み入れた研究n=17(CT:6研究,病理11研究)除外基準に該当した研究 n=58理由:・ 言語 1件・ 研究デザイン 31件・ 対象患者 8件・ Index testが異なる 3件・ Outcomeが異なる 7件・ 2×2表が作成不可 2件・ 対象患者の重複 6件
同定スクリーニング適格性組み入れCTの害 データベース検索で同定された研究n=1,540 MEDLINE(PubMed) 1,271件Cochrane CENTRAL 269件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=25 除外基準に該当した研究 n=1,479 検索で同定された研究 n=1,540 重複研究を除外した研究 n=1,515 フルテキストで適格性を評価した研究 n=36 系統的レビューに組み入れた研究 n=25 メタ解析に組み入れた研究 n=25除外基準に該当した研究 n=11理由:・ 研究デザイン 5件・ 対象患者 3件・ Exposureが異なる 3件
同定スクリーニング適格性組み入れ生検の害 データベース検索で同定された研究n=2,280 MEDLINE(PubMed) 2,152件Cochrane CENTRAL 128件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=66 除外基準に該当した研究 n=2,145 検索で同定された研究 n=2,280 重複研究を除外した研究 n=2,214 フルテキストで適格性を評価した研究 n=69 系統的レビューに組み入れた研究 n=13 メタ解析に組み入れた研究 n=13除外基準に該当した研究 n=56理由:・ 言語が異なる 2件・ 研究デザインが異なる 29件・ 対象患者が異なる 14件・ Index testが異なる 3件・ 対象患者が重複 4件・ 著者問い合わせで対応不可 4件
資料CQ12—3 Risk of bias 病理,CT所見の予測性能CTの害 生検の害
資料CQ12—4 Forest plot 重症患者における院内移動(CT撮影など)に伴う有害事象の頻度死 亡 重篤な後遺症
一時的な呼吸・循環動態の悪化
生検の害生検に関連した死亡 心合併症
出 血 呼吸不全
気 胸 感染症
その他メジャーな合併症 その他マイナーな合併症
病理,CT所見の予測性能肺生検による病理所見(DAD所見) 胸部CT画像所見
資料CQ12—5 エビデンスプロファイル 肺生検による病理所見(DAD 所見) 感 度0.42(95% CI:0.21~0.57)1特異度0.69(固定)1事前確率25% 50% 75% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率25%事前確率50%事前確率75% 真陽性(30日死亡または院内死亡を持つ患者) 11 研究616 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb非常に 深刻c深刻で ないdなし105 (53~ 143) 210 (105~ 285) 315 (158~ 428) +○○○非常に低偽陰性(誤って30 日死亡または院内死亡を持っていないと分類された患者) 145 (107~ 197) 290 (215~ 395) 435 (322~ 592) 真陰性(30日死亡または院内死亡のない患者) 11 研究616 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb非常に 深刻c ―eなし518 345 173 +○○○非常に低偽陽性(誤って30 日死亡または院内死亡を持つと分類される患者) 232 155 77説 明陽性または陰性所見の定義は,1976 年にKatzenstein らによって提唱された「びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage)」,もしくは「各々の研究で定義された病理所見」を用いた.「びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage)」を用いた研究11 件を対象とした.それ以外の4 件の研究は臨床的な異質性のため統合には用いなかった. 1.HSROC モデルを用いたメタ解析を行った.感度の推定値を算出するために一次研究の特異度の中央値で固定した.そのため特異度のCI はない. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で3/11 個,インデックス検査で12/12 個,参照基準で0/11 個,フローとタイミングで0/11 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/11 個,インデックス検査で0/11 個,参照基準で0/11 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,2 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を25%ないし50%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異なるため,臨床の判断は変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e.HSROC モデルを用いたメタ解析で算出した.感度の推定のために特異度を固定したため特異度の推定の不精確 性は評価しなかった.
胸部CT 画像所見 感 度0.62(95% CI:0.32~0.91)1特異度0.76(固定)1事前確率25% 50% 75% アウトカム研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率25%事前確率50%事前確率75% 真陽性(30日死亡または院内死亡を持つ患者) 6 研究409 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb非常に 深刻c非常に 深刻dなし155 (80~ 228) 310 (160~ 455) 465 (240~ 683) +○○○非常に低偽陰性(誤って30 日死亡または院内死亡を持っていないと分類された患者) 95 (22~ 170) 190 (45~ 340) 285 (67~ 510) 真陰性(30日死亡または院内死亡のない患者) 6 研究409 患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb非常に 深刻c ―eなし570 380 190 +○○○非常に低偽陽性(誤って30 日死亡または院内死亡を持つと分類される患者) 180 120 60説 明陽性または陰性所見の定義は,「各々の研究で定義されたCT 画像所見」を用いた.「diffuse attenuation」を用いた研究が2 件,「lung volumetry」が1 件,「HRCT score」が1 件であった. 1.HSROC モデルを用いてメタ解析を行った.上記の推定値は一次研究の特異度の中央値で固定した場合の感度の推定値である.特異度のCI はない. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で3/6 個,インデックス検査で6/6 個,参照基準で0/6 個,フローとタイミングで1/6 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で0/6 個,インデックス検査で0/6 個,参照基準で0/6 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.さらに,2 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を25%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合感度のCI の上端・下端で異なり,臨床の判断は変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. e.HSROC モデルを用いたメタ解析で感度の推定値を算出するために特異度は固定した.このため不精確性は評価 しなかった.
肺生検の有害事象の頻度 アウトカム研究数(患者数)研究デザイン結果の要約確実性の評価 確実性頻度95% CI 患者1,000 人に検査を実施した 場合バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス 生検に関連した死亡11 研究502 患者コホート研究0% (0~0.21) 0 (0~2)非常に 深刻a深刻で ないc深刻で ないd深刻e評価なし++○○ 低 呼吸不全(重篤な合併症) 5 研究277 患者コホート研究1.3% (0~5.7) 13 (0~57)非常に 深刻a深刻で ないc非常に 深刻d深刻e評価なし+○○○非常に低 心合併症(重篤な合併症) 7 研究414 患者コホート研究1.0% (0~3.7) 10 (0~37)非常に 深刻a深刻で ないc深刻d深刻e評価なし+○○○非常に低 出 血(追加の治療を要する合併症) 10 研究453 患者コホート研究1.5% (0.22~ 3.6) 15 (2~36)非常に 深刻a深刻で ないc深刻で ないd深刻e評価なし++○○ 低 気 胸(追加の治療を要する合併症) 8 研究337 患者コホート研究6.5% (1.9~13) 65 (19~ 130)非常に 深刻a深刻で ないc非常に 深刻d非常に 深刻f評価なし+○○○非常に低 感染症(追加の治療を要する合併症) 3 研究159 患者コホート研究2.7% (0~13) 27 (0~130)非常に 深刻a深刻で ないc非常に 深刻d非常に 深刻f評価なし+○○○非常に低 その他メジャーな合併症(治療期間の延長) 2 研究46 患者コホート研究4.3% (0~13) 43 (0~130)深刻b 深刻で ないc深刻で ないd非常に 深刻f評価なし++○○ 低 その他マイナーな合併症(軽微な合併症) 10 研究511 患者コホート研究16% (10~24) 160 (100~ 240)非常に 深刻a深刻で ないc非常に 深刻d深刻g評価なし+○○○非常に低 説 明a.McMaster Quality Assessment Scale for Harms(McHarm)によるバイアスリスク評価において,1/2 以上が高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が2/3 程度以上であったため(Risk of bias summary 参照),「非常に深刻」と判断した. b.McMaster Quality Assessment Scale for Harms(McHarm)によるバイアスリスク評価において,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため(Risk of bias summary 参照),「深刻」と判断した. c.今回のSR において検索対象となった文献群は,理想的に設定するべきSR 疑問と一致しており,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況におおむね適用可能と考えられた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. d.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットでの視覚的な判断,およびI2統計量を基に判断した. e.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.臨床医の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. f.SR に組み込まれた患者総数が,最適な情報量の閾値を下回るために,結果は不精確である可能性がある.臨床医の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断した. g.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.臨床医の判断は統合された頻度のCI の上 端・下端で変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した.
重症患者における院内移動(CT 撮影など)に伴う有害事象の頻度 アウトカム1研究数(患者 数2)研究デザイン結果の要約確実性の評価 確実性頻度95% CI 患者1,000 人に検査を実施した 場合バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス 死 亡3 13 研究7,658院内移動コホート研究0% (0~0) 0 (0~0)深刻で ないa深刻b 深刻で ないc深刻で ないd評価なし+++○ 中程度 重篤な後遺症3 14 研究7,738院内移動コホート研究1.45% (0.43~ 2.92) 15 (4~29)深刻で ないa深刻b 非常に 深刻c深刻d評価なし+○○○ 非常に低い 一時的な呼吸・循環動態の悪化3 14 研究9,554院内移動コホート研究17.0% (9.74~ 25.6) 170 (97~ 256)深刻で ないa深刻b 非常に 深刻c深刻d評価なし+○○○ 非常に低い 説 明1.治療日数の延長のアウトカムについてはデータの収集ができずメタ解析が不可であった. 2.2 つの文献では院内移動数のデータがなかったため患者人数を採用した. 3.死亡は移動に直接関与していると推察されるものを死亡として扱った.重篤な後遺症および一時的な呼吸・循環動態の悪化は各文献で定義されている有害事象に基づき,SR 班で解釈して算出した.重篤な後遺症については蘇生に成功した心肺停止や明らかに対応を要したと思われるバイタルサインの変化などが主に含まれる. a.Newcastle—Ottawa Scale によるバイアスリスク評価において,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合は下記のとおりであった.死亡:対象患者で0/13 個,アウトカムで1/13 個.重篤な後遺症:対象患者で1/ 14 個,アウトカムで2/14 個.一時的な呼吸・循環動態の悪化:対象患者で1/14 個,アウトカムで1/14 個.このように,3 項目すべてで,高リスクまたはリスク不明であった文献の割合が1/3 程度以下であったため,「深刻でない」と判断した.対象文献の中には移動あり・なしで比較を行っている研究もみられたが,有害事象の頻度をアウトカムとして抽出していることから,比較の妥当性に関するリスク評価は行わなかった. b.今回SR を実施するにあたり,対象をARDS 患者に限らず,急性呼吸不全患者および重症患者として文献検索を実施した.これは理想的に設定するべきSR 疑問とは一定の乖離があり,本診療ガイドライン読者が想定する臨床状況への直接的な適用は慎重に考慮する必要があると考えられた.以上より,全体としての非直接性は「深刻」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.死亡については臨床医の判断は統合された 頻度のCI の上端・下端で変化しないと考えられ,以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.重篤な後遺症,一時的な呼吸・循環動態の悪化については,臨床医の判断は統合された頻度のCI の上端・下端で変化すると考えられ,全体としての不精確さは「深刻」と判断した.
資料CQ12—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ12:ARDS 患者の予後予測に際して,解剖学的指標(肺生検の病理所見, 胸部CT の画像所見)を用いるか? 集 団:成人ARDS の患者予測対象:短期生命予後検 査:肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見検査の目的/役割: ARDS 診療における予後予測セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,健康関連QOL,家族の満足度など,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:予後予測で陽性(死亡と予測)の場合は,状況に応じた治療方針に変更する.陰性 (生存と予測)の場合は,現行の治療を継続とする 視 点:個人背 景: ARDS は致死率の高い病態であり,その予後予測は治療の意思決定に重要である. ARDS は病理学的にはびまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)を呈することが典型的とされているが,臨床診断基準であるベルリン定義は,必ずしも病理学的病態を反映していない.実際に,臨床基準に基づきARDS と診断された患者の剖検肺では,約半数にしかDAD 所見が見られなかったとする報告がある.肺生検検体で病理学的にDAD 所見を有するARDS 患者は,DAD 所見を有さない患者に比べて予後不良とする報告もあり,肺生検がARDS 患者の予後予測に有用である可能性が示唆されている.一方で,胸部CT 所見,特に高分解能CT(HRCT)所見は,肺の様々な病理像を反映することが知られている.胸部CT 所見から,DAD 所見の有無やその病理学的進行度を推測することで,ARDS 患者の予後を予測できる可能性も示唆されている.これらのことから,「ARDS 患者の予後予測に際して,肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見を用いるか?」という疑問は臨床上重要と考えられた 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高 い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない肺生検や胸部CT 所見から,DAD 所見の有無やその病理学 的進行度を推測することで,ARDS 患者の予後を予測できる可能性も示唆されている.一方で,これらの検査には偽陽性の害や有害事象が伴う.これらの有害性を考慮し検査の実施の利益と害を検証することはARDS診療において重要課題である.「ARDS 患者の予後予測に際して,肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見を用いるか?」という疑問
○わからないは臨床上重要と考えられ,優先度は高いと考えられた 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確○正確●不正確○非常に不正確○一概には言えない○わからないSR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 検査の精度は「不正確」と判断した 肺生検(DAD 所見) (11RCT:n=616)統合感度:0.42(95% CI:0.21~0.57)統合特異度:0.69(固定)(HSROC モデル) 肺生検1,000 人に検査を実施した 場合該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率25% 50% 75% 真陽性105 (53~ 143) 210 (105~ 285) 315 (158~ 428)非常に低 偽陰性145 (107~ 197) 290 (215~ 395) 435 (322~ 592) 真陰性518 345 173非常に低偽陽性232 155 77予測対象:30 日死亡または院内死亡陽性または陰性所見の定義:DAD の病理所見 胸部CT (6RCT:n=409)統合感度:0.62(95% CI:0.32~0.91)統合特異度:0.76(固定)(HSROC モデル) CT 所見1,000 人に検査を実施した 場合該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率25% 50% 75% 真陽性155 (80~ 228) 310 (160~ 455) 465 (240~ 683)非常に低 偽陰性95 (22~ 170) 190 (45~ 340) 285 (67~ 510) 真陰性570 380 190非常に低偽陽性180 120 60予測対象:30 日死亡または院内死亡
陽性または陰性所見の定義:各々の研究で定義されたCT画像所見 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)の人数を検討し望ましい効果は「小さい」と判定した 肺生検(DAD 所見) 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する105 人210 人315 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する250 人500 人750 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人 胸部CT 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する155 人310 人465 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する250 人500 人750 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●大きい○中程度○小さい1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受 ける人数を検討し,望ましくない効果は「大きい」と判定した検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人
○わずか○一概には言えない○わからない(真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.2 と設定) 肺生検(DAD 所見) 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する46 人31 人15 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する150 人100 人50 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人 胸部CT 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する36 人24 人12 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する150 人100 人50 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人 肺生検の有害事象の頻度 1,000 人に検査を実施した場合エビデンス の確実性 アウトカム頻度95% CI患者1,000 人に 検査を実施した場合 生検に関連した 死亡0% (0~0.21) 0 (0~2) 低 呼吸不全1.3% (0~5.7) 13 (0~57) 非常に低心合併症1.0% (0~3.7) 10 (0~37) 非常に低数)×(臨床的重み付け) で計算した 全員治療する場合は偽陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した 有害事象については検査を1,000 人に実施した際に想定される有害事象の発生人数を上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した
CT(院内移動)の有害事象の頻度 1,000 人に検査を 実施した場合エビデンス の確実性 アウトカム頻度 95% CI患者 1,000 人に検査を実施した場合 死 亡0% (0~0) 0 (0~0) 中程度 重篤な後遺症1.45% (0.43~ 2.92) 15 (4~29) 非常に低 1,000 人に検査を実施した場合,重み付けした有害事象発生の人数死亡の有害事象については真陽性に対して相対的に重み付けを1.0 とし,それ以外の重大な有害事象は0.8 とした 肺生検 有害事象相当する人数死 亡0 人呼吸不全10 人心合併症8 人 CT 有害事象相当する人数死 亡0 人重篤な後遺症12 人 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された
検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の有害事象についてのエビデンスは「非常に低い」と 判断された 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない治療方針の変更が生命予後,健康関連QOL,家族満足度な どの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない検査結果と治療の意思決定の関係の確実性について,エビ デンスとして組み入れられた研究はない
検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する○たぶん検査を支持する○どちらも支持しな い●たぶん検査を支持 しない○検査を支持しない○一概には言えない○わからない検査の結果により治療方針の変更を受ける利益(真陽性の利益)がある一方で,不必要な治療方針の変更による害(偽 陽性の害)が発生する.これらの差し引きで正味の利益(net—benefit)を計算した 肺生検正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 予後不良の検査前確率25% 50% 75%正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した
検査結果に基づいて治療方針を決定する41 人161 人282 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する100 人400 人700 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人偽陽性の生検臨床的重みを0.2 と考え,事前確率25~ 75%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象として,肺生検に関連した死亡,呼吸不全,心合併症を採用し,その臨床的重み付けをそれぞれ1,0.8 とした.検査結果に基づいて治療方針を決定する場合,検査結果によらず全員に治療方針を変更する場合,または全員に治療方針を継続する場合で正味の利益(net—benefit)を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は非常に限定的と思われ「多分検査を支持しない」と判定した 胸部CT正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する107 人274 人441 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する100 人400 人700 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人偽陽性の臨床的重みを0.2 と考え,事前確率25~75%でのnet—benefit を計算した.検査の重大な有害事象として, CT に関連した死亡および重篤な後遺症を採用し,その重み付けをそれぞれ1,0.8 とした.検査結果に基づいて治療方針を決定する場合,検査結果によらず全員に治療方針を変更する場合,または全員に治療方針を継続する場合で正味の利益(net—benefit)を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は限定的と思われ,「多分検査を支持しない」と判定した有害事象が無視できる 程度の場合は0 として計算した
受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○受け入れられる●たぶん受け入れら れる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられ る.考慮されたエビデンスなし 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○可能○たぶん可能○たぶん困難○困難●一概には言えない○わからない胸部CT は,おそらく多くの施設で実施可能と思われる. 肺生検が実施可能かどうかは,施設の状況によって異なる.このことから,実施可能性は一概には言えないと考えられる.考慮されたエビデンスなし 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない
検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には言えないわから ない
推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者の予後予測に際して,肺生検の病理所見のみ,あるいは胸部CT の画像所見のみでは判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観,検査結果に続く意思決定)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者の予後予測に際して,解剖学的所見(肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見)を用いるか?患 者 成人ARDS の患者.検 査 肺生検の病理所見,胸部CT の画像所見.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 患者の予後予測.検査結果に基づく診療予後予測で陽性(死亡と予測)の場合は,状況に応じた治療方針に変更する.陰性(生存と予測)の場合は,現行の治療を継続とする.エビデンスの要約肺生検(11 RCT,n=616),統合感度:0.42(95% CI:0.21~0.57),統合特異度:0.69(固定)(HSROC モデル).胸部CT(6 RCT,n=409),統合感度:0.62(95% CI:0.32~0.91),統合特異度:0.76(固定)(HSROC モデル).エビデンスの確実性肺生検,胸部CT のいずれにおいても,バイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.
効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定検査の結果により適切な治療方針の変更を受ける利益(真陽性の利益)がある一方で,不必要な治療方針の変更によって受ける害(偽陽性の害)が発生する.真陽性の利益と比較した偽陽性の害と相対的重要性を0.2 と考えた.検査の重大な有害事象も含めて正味の利益を考慮すると,検査結果で治療方針を決定することが有用である臨床的状況は,非常に限られていると考えられた.検査の実行可能性については「一概に言えない」と判断された.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では事前投票の結果をもって合意と判断されたが,のちに検査結果に基づく診療について記載の修正が必要と判断された.該当箇所の日本語表記の修正を行い,再度の投票で最終的に合意に至った.付加的な考慮事項上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 検査が実施可能かどうかは,患者や施設の状況によって異なる可能性がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 検査の有害事象などについて継続して評価が必要である.また,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 既存の研究の問題点として,胸部CT や肺生検を実施するタイミングや,予後不良と判断する画像所見・病理所見に,研究ごとのばらつきがあることが挙げられる.これらの条件を統一して研究を実施し,エビデンスを蓄積することが必要である.
背景,この問題の優先度 ARDS は致死的な病態であり,その予後予測は治療の意思決定に重要である.ベルリン定義ではARDS はPaO2/FIO2比(P/F 比)によって重症度(Severe<100,Moderate:100~200, Mild:200~300)が設定されているが,その予後予測性能については不明である.これらのことから,「ARDS 患者の予後予測に際して,生理学的指標(P/F 比)を用いるか?」という疑問は臨床上重要と考えられた.解 説 PICO 患者(P):ARDS の患者.検査:P/F 比.目的:救急外来,ICU,またはそれに準じた状 況でのARDS 診療における鑑別診断.検査結果に基づく診療:予後予測で陽性(死亡 と予測)の場合は,状況に応じた治療方針に変更する.陰性(生存と予測)の場合は,現行の治療を継続とする. 1 2 1 領域A 診断・重症度評価・タイプ評価 ARDS 患者の予後予測に際して,生理学的指標(PaO2/FIO2比)を用いるか? CQ 13 ARDS 患者の予後予測に際して,PaO2/FIO2比(カットオフ:100,200) の結果のみでは判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常 に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 実臨床において,PaO2/FIO2比は,重症度判定や治療方針の決定の際に1 つの情報として用いられているが,本推奨の内容は,それらにおけるPaO2/FIO2比の使用を否定するものではない.患者の治療方針を決定する際には,PaO2/FIO2比を含めた各種の臨床情報に基づき,総合的に判断されることが望ましい.また,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 P/F 比(カットオフ値100)(19RCT:n= 15,040)の統合感度は,0.43(95%CI: 0.37~0.50),統合特異度は,0.70(95%CI: 0.66~0.74)であった.P/F 比(カットオフ値200)(20RCT:n=15,489)の統合感度は, 0.85(95%CI:0.81~0.88),統合特異度は, 0.24(95%CI:0.21~0.29)であった. エビデンスの確実性 バイアスのリスク,非一貫性,不精確性を考慮し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 検査の結果により適切な治療方針の変更を受ける利益(真陽性の利益)がある一方で,不必要な治療方針の変更によって受ける害(偽陽性の害)が発生する.真陽性の利益と比較した偽陽性の害と相対的重要性を0.2 と考えた.検査の有害事象は意思決定に関与しない程度にわずかと考えられた.正味の利益を考慮すると,検査結果で治療方針を決定することが有用である臨床的状況は,非常に限られていると考えられた. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議では,検査結果に基づく診療について記載の修正が必要と判断された.該当箇所の日本語表記の修正を行い,再度の投票で最終的に合意に至った. サブグループの検討事項 なし.実施上の考慮事項 実臨床において,P/F 比は,重症度判定や治療方針の決定の際に1 つの情報として用いられている.本推奨の内容は,それらにおけるP/F比の使用を否定するものではない.患者の治療方針を決定する際には,P/F 比を含めた各種の臨床情報に基づき,総合的に判断されることが望ましい. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 検査の有害事象などについて継続して評価が必要である.また,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 ARDS 患者の予後を予測する臨床予測スコアなどの予測モデルのSR が必要と思われる. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「ALI」「PaO2/FiO2」をキーワードとして,PubMed,Cochrane CENTRAL およびClinicalTrials. gov で2020 年6 月19 日までの文献を検索したところ3,726 件の研究が同定され,スクリーニングの結果23 件の研究を採用した(PF100 をcut off にしていた19 研究,PF200 をcut off にしていた20 研究,Oxygenation Index のみの報告が1 つ含まれる). 本CQ で対象とした研究 P/F 100 Bellani 20171), Chan 20192), Chen 20153), 3 4 5 3 4 5 6 7 8 9
Chinh 20194), Choi 20145), Cooke 20086), DesPrez 20177), Fujishima 20208), Hernu 20139), Kallet 201710), Kamo 201911), Laffey 201612), Lai 201613), Lazzeri 201614), Neuschwander 201715), Ranieri 201216), Shen 201917), Song 202018), Villar 201319). P/F 200 Bellani 20171), Bhadade 201520), Britos 201121), Chan 20192), Chen 20153), Chinh 20194), Chinh 201922), Choi 20145), DesPrez 20177), Fujishima 20208), Hernu 20139), K a l l e t 2 0 1 7 1 0), K a m o 2 0 1 9 1 1), L a f f e y 201612), Lai 201613), Lazzeri 201614), Neus- chwander 201715), Ranieri 201216), Song 202018), Villar 200723), Villar 201319). 資料一覧 ・資料CQ13‒1 Search strategy.・資料CQ13‒2 フローダイアグラム.・資料CQ13‒3 Risk of bias.・資料CQ13‒4 Forest plot.・資料CQ13‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ13‒6 Evidence‒to‒Decision. 10 1) Bellani G, Laffey JG, Pham T, et al. Noninvasive ventilation of patients with acute respiratory distress syndrome. Insights from the LUNG SAFE study. Am J Respir Crit Care Med 2017;195:67‒77. 2) Chan MC, Chao WC, Liang SJ, et al. First tidal volume greater than 8 mL/kg is asso- ciated with increased mortality in complicated influenza infection with acute respiratory distress syndrome. J Formos Med Assoc 2019;118:378‒85. 3) Chen W, Janz DR, Shaver CM, et al. Clinical characteristics and outcomes are similar in ARDS diagnosed by oxygen saturation/FiO2 ratio compared with PaO2/FiO2 ratio. Chest 2015;148:1477‒83. 4) Chinh LQ, Manabe T, Son DN, et al. Clinical epidemiology and mortality on patients with acute respiratory distress syndrome(ARDS)in Vietnam. PLOS ONE 2019;14: e0221114. 5) Choi WI, Shehu E, Lim SY, et al. Markers of poor outcome in patients with acute hypoxemic respiratory failure. J Crit Care 2014;29:797‒802. 6) Cooke CR, Kahn JM, Caldwell E, et al. Predictors of hospital mortality in a popula- tion‒based cohort of patients with acute lung injury. Crit Care Med 2008;36: 1412‒20. 7) DesPrez K, McNeil JB, Wang C, et al. Oxygenation saturation index predicts clinical outcomes in ARDS. Chest 2017;152:1151‒8. 8) Fujishima S, Gando S, Saitoh D, et al. Demographics, treatments, and outcomes of acute respiratory distress syndrome:the focused outcomes research in emergency care in acute respiratory distress syndrome, sepsis, and trauma(FORECAST)study. Shock 2020;53:544‒9. 9) Hernu R, Wallet F, Thiollière F, et al. An attempt to validate the modification of the American‒European consensus definition of acute lung injury/acute respiratory distress syndrome by the Berlin definition in a university hospital. Intensive Care Med 2013;39:2161‒70. 10) Kallet RH, Zhuo H, Ho K, et al. Lung injury etiology and other factors influencing the relationship between dead‒space fraction and mortality in ARDS. Respir Care 参考文献
2017;62:1241‒8. 11) Kamo T, Tasaka S, Suzuki T, et al. Prognostic values of the Berlin definition criteria, blood lactate level, and fibroproliferative changes on high‒resolution computed tomography in ARDS patients. BMC Pulm Med 2019;19:37. 12) Laffey JG, Bellani G, Pham T, et al. Potentially modifiable factors contributing to out- come from acute respiratory distress syndrome:the LUNG SAFE study. Intensive Care Med 2016;42:1865‒76. 13) Lai CC, Sung MI, Liu HH, et al. The ratio of partial pressure arterial oxygen and frac- tion of inspired oxygen 1 day after acute respiratory distress syndrome onset can predict the outcomes of involving patients. Medicine 2016;95:e3333. 14) Lazzeri C, Bonizzoli M, Cozzolino M, et al. Serial measurements of troponin and echo- cardiography in patients with moderate‒to‒severe acute respiratory distress syndrome. J Crit Care 2016;33:132‒6. 15) Neuschwander A, Lemiale V, Darmon M, et al. Noninvasive ventilation during acute respiratory distress syndrome in patients with cancer:trends in use and outcome. J Crit Care 2017;38:295‒9. 16) ARDS Definition Task Force;Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al. Acute respiratory distress syndrome:the Berlin Definition. JAMA 2012;307:2526‒33. 17) Shen Y, Cai G, Gong S, et al. Interaction between low tidal volume ventilation strategy and severity of acute respiratory distress syndrome:a retrospective cohort study. Crit Care 2019;23:254. 18) Song M, Liu Y, Lu Z, et al. Prognostic factors for ARDS:clinical, physiological and atypical immunodeficiency. BMC Pulm Med 2020;20:102. 19) Villar J, Pérez‒Méndez L, Blanco J, et al. A universal definition of ARDS:the PaO2/ FiO2 ratio under a standard ventilatory setting‒‒a prospective, multicenter validation study. Intensive Care Med 2013;39:583‒92. 20) Bhadade R, de’ Souza R, Harde M, et al. Mortality predictors of ARDS in medical intensive care unit of a tertiary care centre in a tropical country. J Assoc Physicians India 2015;63:16‒22. 21) Britos M, Smoot E, Liu KD, et al. The value of positive end‒expiratory pressure and Fio2 criteria in the definition of the acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 2011;39:2025‒30. 22) Chinh LQ, Manabe T, Son DN, et al. Clinical epidemiology and mortality on patients with acute respiratory distress syndrome(ARDS)in Vietnam. PLOS ONE 2019;14: e0221114. 23) Villar J, Pérez‒Méndez L, López J, et al. An early PEEP/FIO2 trial identifies different degrees of lung injury in patients with acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2007;176:795‒804.
資料CQ13—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute [tiab] AND ("lung injur*" [tiab] OR "respiratory distress" [tiab] OR "respiratory failure"[tiab] OR "distress syndrome"[tiab]) #5 "severe respiratory failure"[tiab] #6 "hypoxic respiratory failure"[tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 "severity of illness index"[MeSH Terms] #9 oxygenation index[tiab] OR OI[tiab] #10 PaO2/FiO2[tiab] OR P/F[tiab] #11 #8 OR #9 OR #10 #12 #7 AND #11 #13 animals[mh] NOT humans[mh] #14 #12 NOT #13
CENTRAL(Search date:2020/6/19) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] #2 [mh "Acute lung injury"] #3 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #4 Acute:ti,ab AND ("lung injury":ti,ab OR "respiratory distress":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "distress syndrome":ti,ab) #5 "severe respiratory failure":ti,ab #6 "hypoxic respiratory failure":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 [mh "severity of illness index"] #9 "oxygenation index":ti,ab OR OI:ti,ab #10 "PaO2/FiO2":ti,ab OR "P/F":ti,ab #11 {OR #8-#10} #12 #7 AND #11 #13 [mh animals] NOT [mh humans] #14 #12 NOT #13
資料CQ13—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 n=4,055 MEDLINE(PubMed) 3,599件Cochrane CENTRAL 456件 検索で同定された研究 n=4,055 重複研究を除外した研究 n=3,726 フルテキストで適格性を評価した研究 n=331 系統的レビューに組み入れた研究 n=28 メタ解析に組み入れた研究 n=23*重複した研究 n=329 除外基準に該当した研究 n=3,395 除外基準に該当した研究n=303理由:・ 言語 1件・ 研究デザインもしくはIndex test が異なる 120件・ 対象患者 5件・ アウトカムが異なる 23件・ 2×2表が作成不可 125件・ N<100 23件・ その他 6件 *PF100をcut offにしていた19研究,PF200をcut offにしていた20研究,oxygenation indexのみの 報告が1つ含まれる.系統的レビューに組み入れた28個の研究のうち1つはoxygenation indexのみの報告で,残り4つの報告はベルリン定義での報告ではないためメタ解析からは除外を行った.
資料CQ13—3 Risk of bias Risk of bias Applicability Concerns
資料CQ13—4 Forest plot PaO2/FIO2 比(カットオフ値 100)
PaO2/FIO2 比(カットオフ値 200)
資料CQ13—5 エビデンスプロファイル PaO2/FIO2比(カットオフ値100) 感 度0.43(95% CI:0.37~0.50)特異度0.70(95% CI:0.66~0.74)事前確率25% 50% 75% アウトカム1研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率25%事前確率50%事前確率75% 真陽性(短期死亡を持つ患者) 19 研究15,040患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb非常に 深刻c深刻dなし108 (93~ 125) 215 (185~ 250) 323 (277~ 375) +○○○非常に低偽陰性(誤って短期死亡を持っていないと分類された患者) 142 (125~ 157) 285 (250~ 315) 427 (375~ 473) 真陰性(短期死亡のない患者) 19 研究15,040患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb深刻c 深刻で ないeなし525 (495~ 555) 350 (330~ 370) 175 (165~ 185) ++○○ 低偽陽性(誤って短期死亡を持つと分類される患者) 225 (195~ 255) 150 (130~ 170) 75 (65~ 85) 説 明1.SR に含まれた各研究において,最も長い観察期間での死亡の有無を,target condition の有無として採用した.含まれた研究数は下記のとおりである.死亡1 件,ICU 死亡2 件,院内死亡9 件,28 日以内の死亡2 件,30 日以内の死亡2 件,60 日以内の死亡1 件,ICU 退室時または退院時または90 日以内の死亡1 件,100 日以内の死亡1 件. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で1/19 個,インデックス検査で3/19 個,参照基準で16/19 個,フローとタイミングで0/19 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で4/19 個,インデックス検査で1/19 個,参照基準で0/19 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を25%ないし50%と設定した場合によって,検査に正味の利益があるかどうかが異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を50%ないし75%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
PaO2/FIO2比(カットオフ値200) 感 度0.85(95% CI:0.81~0.88)特異度0.24(95% CI:0.21~0.29)事前確率25% 50% 75% アウトカム1研究数(患者数)研究デザイン確実性の評価患者1,000 人あたりの 結果 確実性 バイアスのリスク非直接性非一貫性不精確性出版バイアス事前確率25%事前確率50%事前確率75% 真陽性(短期死亡を持つ患者) 20 研究15,489患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb深刻で ないc深刻dなし213 (203~ 220) 425 (405~ 440) 638 (608~ 660) ++○○ 低偽陰性(誤って短期死亡を持っていないと分類された患者) 37 (30~ 47) 75 (60~ 95) 112 (90~ 142) 真陰性(短期死亡のない患者) 20 研究15,489患者横断(コホートタイプの精度研究)深刻a 深刻で ないb深刻c 深刻で ないeなし180 (158~ 217) 120 (105~ 145) 60 (53~ 73) ++○○ 低偽陽性(誤って短期死亡を持つと分類される患者) 570 (533~ 592) 380 (355~ 395) 190 (177~ 197) 説 明1.SR に含まれた各研究において,最も長い観察期間での死亡の有無を,target condition の有無として採用した.含まれた研究数は下記のとおりである.死亡1 件,ICU 死亡4 件,院内死亡7 件,28 日以内の死亡2 件,30 日以内の死亡2 件,60 日以内の死亡1 件,ICU 退室時または退院時または90 日以内の死亡1 件,100 日以内の死亡1 件. a.QUADAS—2 スコアのバイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が,患者選択で1/20 個,インデックス検査で3/20 個,参照基準で17/20 個,フローとタイミングで0/20 個であった.このように,項目によって,高リスクまたはリスク不明と判断された文献がある程度含まれるため,「深刻」と判断した. b.QUADAS—2 スコアの適用可能性に関する懸念において,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,対象患者で4/20 個,インデックス検査で1/20 個,参照基準で0/20 個であった.このように,高い懸念または不明と判断された文献の割合が,1/2 程度以上の項目が1 項目以下であったため,適用可能性は保たれていると考えた.以上より,非直接性は「深刻でない」と判断した. c.SR に含まれる各研究の結果のばらつきを,フォレストプロットで視覚的に判断した. d.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を5%ないし10%と設定した場合によって,検査に正味の利益があるかどうかが異なり,臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断した. e.SR に組み込まれた患者総数は,最適な情報量の閾値を上回っていた.さらに,0.1 回の真陽性につき1 回の偽陽 性を許容できると考えた場合の,検査の正味の利益(真陽性と重み付けした偽陽性の差)を検討した.有病割合を10%ないし20%と設定した場合において,検査に正味の利益があるかどうかは統合特異度のCI の上端・下端で異ならず,臨床の判断は変化しないと考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻でない」と判断した.
資料CQ13—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ13:ARDS 患者の予後予測に際して,生理学的指標(PaO2/FIO2比)を用 いるか? 集 団: ARDS の患者予測対象:生命予後検 査: PaO2/FIO2比検査の目的/役割: ARDS 診療における予後予測セッティング:救急外来またはICU に準じた状況主要なアウトカム:生命予後,健康関連QOL,家族の満足度,検査による重大な有害事象検査結果に基づく診療:予後予測で陽性(死亡と予測)の場合は,状況に応じた治療方針に変更する.陰性 (生存と予測)の場合は,現行の治療を継続とする 視 点:個人背 景: ARDS は致死的な病態であり,その予後予測は治療の意思決定に重要である.ベル リン定義ではARDS はPaO2/FIO2比(P/F 比)によって重症度(severe<100, moderate:100~200,mild:200~300)が設定されているが,その予後予測性能については不明である.これらのことから,「ARDS 患者の予後予測に際して,生理学的指標(P/F 比)を用いるか?」という疑問は臨床上重要と考えられた 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考●優先度は高い○たぶん優先度は高い○たぶん優先度は高 くない○優先度は高くない○一概には言えない○わからないARDS はP/F 比によって重症度(severe<100,moder- ate:100~200,mild:200~300)が設定されているが,その予後予測性能については不明である.これらから,「ARDS 患者の予後予測に際して,P/F 比を用いるか?」という疑問は臨床上重要と考えられ,優先度は高いと考えられた 検査の精度 Test accuracy 予想される検査の精度はどの程度のものか? How accurate is the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に正確○正確○不正確SR とメタ解析の結果,以下のような結果が得られた 検査のカットオフによって検査の精度は異なるため,検査の精度は「一概には言えない」と判断した
○非常に不正確●一概には言えない○わからないP/F 比 <カットオフ値100> (19RCT:n=15,040)感度:0.43(95% CI:0.37~0.50)特異度:0.70(95% CI:0.66~0.74)(Bivariate model) 1,000 人に検査を実施した場合該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率25% 50% 75% 真陽性108 (93~ 125) 215 (185~ 250) 323 (277~ 375)非常に低 偽陰性142 (125~ 157) 285 (250~ 315) 427 (375~ 473) 真陰性525 (495~ 555) 350 (330~ 370) 175 (165~ 185)低 偽陽性225 (195~ 255) 150 (130~ 170) 75 (65~ 85) 予測対象:ICU 内死亡,院内死亡,28~90 日などの死亡P/F 比の測定:ARDS 診断時またはICU 入室から3 日以内 <カットオフ値200>(20RCT:n=15,489)感度:0.85(95% CI:0.81~0.88)特異度:0.24(95% CI:0.21~0.29)(Bivariate model) 1,000 人に検査を実施した場合該当する人数(人)エビデンス の確実性 事前確率25% 50% 75% 真陽性213 (203~ 220) 425 (405~ 440) 638 (608~ 660)低 偽陰性37 (30~ 47) 75 (60~ 95) 112 (90~ 142) 真陰性180 (158~ 217) 120 (105~ 145) 60 (53~ 73)低 偽陽性570 (533~ 592) 380 (355~ 395) 190 (177~ 197) 予測対象:ICU 内死亡,院内死亡,28~90 日などの死亡P/F 比の測定:ARDS 診断時またはICU 入室から3 日以内
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい影響はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に適切な治療の利益を受 ける人数(真陽性の人数)を検討した.カットオフが複数あるため「一概には言えない」と判定された P/F 比<カットオフ値100> 検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する108 人215 人323 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する250 人500 人750 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人 <カットオフ値200> 検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する213 人425 人638 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する250 人500 人750 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人検査結果によらず全員 治療する場合は,(治療の利益を受ける人数)= 1,000×(検査前確率)と考えた 検査結果によらず全員治療しない場合は,治療の利益を受ける人数は0 人と考えた 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない1,000 人の患者を対象とした場合に不必要な治療の害を受 ける人数を検討した(真陽性に対する偽陽性の相対的な臨床的重み付けを0.2と設定)好ましくない効果については複数のカットオフがあるため「一概には言えない」と判断した検査を実施した場合, 不必要な治療の害を受ける人数は(偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)で計算した
P/F 比<カットオフ値100> 検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する45 人30 人15 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する150 人100 人50 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人 <カットオフ値200> 検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する114 人76 人38 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する150 人100 人50 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人全員治療する場合は偽 陽性の人数を(1-検査前確率)×1,000,全員治療しない場合は0 人と考えた.不必要な治療の害を受ける人数は,上記同様これらに臨床的重み付けをかけて算定した 検査精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of test accuracy? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がないバイアスのリスク,非直接性,非一貫性,不精確性を考慮 し,エビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された 検査の影響に関するエビデンスの確実性Certainty of the evidence of test’s effects 重大または重要な直接的な利益,有害事象,検査の負担についてのエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence for any critical or important direct benefits, adverse effects or burden of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低直接的な影響に関するエビデンスとして考慮した研究なし
○中○高●研究がない○わからない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of management’s effect 検査結果によって導かれる治療効果のエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the management that is guided by the test results? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない治療方針の変更が生命予後,健康関連QOL,家族満足度な どの最終アウトカムに与える影響に関してエビデンスとして考慮した研究はない 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性Certainty of evidence of test result/management 検査結果と治療の意思決定との間にはどのような関係があるか? How certain is the link between test results and management decisions? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低い○低○中○高●研究がない○わからない検査結果と治療の意思決定の関係の確実性について,エビ デンスとして組み入れられた研究はない 検査の影響の確実性 Certainty of effects 検査の影響に関するエビデンスの全体的な確実性は何か? What is the overall certainty of the evidence of effects of the test? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低い○低○中○高○研究がない○わからない検査の精度のエビデンスの確実性が「非常に低い」である ため,検査の影響全体のエビデンスの確実性は「非常に低い」となる
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や ばらつきがある●重要な不確実性や ばらつきがある可能性がある○重要な不確実性や ばらつきはおそらくない○重要な不確実性や ばらつきはない真陽性の望ましい効果,偽陽性や有害事象などの望ましく ない効果の価値は,医療者や患者など個々人の価値観や経験が変われば,その価値観によって異なる可能性がある 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,検査実施する,しないのどちらを支持するか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○検査を支持する○たぶん検査を支持 する○どちらも支持しな い○たぶん検査を支持 しない●検査を支持しない○一概には言えない○わからない検査の結果により治療方針の変更を受ける利益(真陽性の 利益)がある一方で,不必要な治療方針の変更による害(偽陽性の害)が発生する.これらの差し引きで正味の利益(net—benefit)を計算した P/F 比<カットオフ値100>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する63 人185 人308 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する100 人400 人700 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人偽陽性の臨床的重みを0.2 と考え,事前確率25~75%でのnet—benefitを計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療方針を決正味の利益(net—bene- fit)は,1,000 人の患者を対象とした時に得られる(適切な治療を受けられる真陽性の人数)- (不必要な治療を受ける偽陽性の人数)×(臨床的重み付け)-(検査の重大な有害事象の人数)で計算した 重大な有害事象が無視できる程度の場合は0として計算した
定する場合,検査結果によらず全員に治療方針を変更する場合,または全員に治療方針を継続する場合で正味の利益(net—benefit)を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は非常に限定的と思われ,効果のバランスは「検査を支持しない」と判定された P/F 比<カットオフ値200>正味の利益(net—benefit) (1,000 人を対象とした際に正味の利益を受ける人数) 予後不良の検査前確率25% 50% 75%検査結果に基づいて治療方針を決定する99 人349 人600 人検査結果によらず全員治療方針を 変更する100 人400 人700 人検査結果によらず全員治療方針を 継続する0 人0 人0 人偽陽性の臨床的重みを0.2 と考え,事前確率25~75%でのnet—benefitを計算した.検査の重大な有害事象は無視できる程度と考えられた.検査結果に基づいて治療方針を決定する場合,検査結果によらず全員に治療方針を変更する場合,または全員に治療方針を継続する場合で正味の利益(net—benefit)を比較すると,検査をすることで正味の利益を得られる臨床状況は非常に限定的と思われ,効果のバランスは「検査を支持しない」と判定された 受け入れ Acceptability 検査は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●受け入れられる○たぶん受け入れられる○たぶん受け入れら れない○受け入れられない○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,許容可能と考えられる 考慮されたエビデンスなし
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考●可能○たぶん可能○たぶん困難○困難○一概には言えない○わからない一般に行われている医療行為であり,実行可能と考えられ る考慮されたエビデンスなし 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果 Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果 Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない 検査の精度のエビデンスの確実性 Certainty of evidence of test accuracy非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響に関するエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査によって導かれる治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of management’s effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない
推奨のタイプ 検査を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the test検査を行わないこ とを条件付きで推奨 Conditional recommendation against the test検査を実施する,し ないかのどちらを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the test or the comparison検査を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the test検査を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the test ○ ● ○ ○ ○ 検査結果/治療効果のエビデンスの確実性 Certainty of the evidence of test result/ management非常に 低い低い中程度高い研究が ない 検査の影響の確実性 Certainty of effects非常に 低い低い中程度高い研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects検査を 支持しないたぶん 検査を支持しないどちらも 支持しないたぶん 検査を支持する検査を 支持する一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptability受け入れ られないたぶん 受け入れられないたぶん 受け入れられる受け入れ られる一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibility困難たぶん 困難たぶん 可能可能一概には 言えないわから ない *「判断の要約」は,シナリオ1),2)ともに同じ結果となったため,1 つの表として提示した.
結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者の予後予測に際して,PaO2/FIO2比(カットオフ:100,200)の結果のみでは判断しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 実臨床において,PaO2/FIO2比は,重症度判定や治療方針の決定の際に1 つの情報として用いられているが,本推奨の内容は,それらにおけるPaO2/FIO2比の使用を否定するものではない.患者の治療方針を決定する際には,PaO2/FIO2比を含めた各種の臨床情報に基づき,総合的に判断されることが望ましい.また,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者の予後予測に際して,P/F 比を用いるか?患 者 ARDS の患者.検 査 P/F 比.検査の目的,役割,セッティング救急外来,ICU,またはそれに準じた状況でのARDS 患者の予後予測.検査結果に基づく診療予後予測で陽性(死亡と予測)の場合は,状況に応じた治療方針に変更する.陰性(生存と予測)の場合は,現行の治療を継続とする.エビデンスの要約P/F 比(カットオフ値100)(19 RCT:n=15,040),統合感度:0.43(95% CI:0.37~0.50),統合特異度:0.70(95% CI:0.66~0.74). P/F 比(カットオフ値200)(20 RCT:n=15,489),統合感度:0.85(95% CI:0.81~0.88),統合特異度:0.24(95% CI:0.21~0.29).エビデンスの確実性バイアスのリスク,非一貫性,不精確性を考慮しエビデンスの確実性は「非常に低い」と判断された.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定検査の結果により適切な治療方針の変更を受ける利益(真陽性の利益)がある一方で,不必要な治療方針の変更によって受ける害(偽陽性の害)が発生する.真陽性の利益と比較した偽陽性の害と相対的重要性を0.2 と考えた.検査の有害事象は意思決定に関与しない程度にわずかと考えられた.正味の利益を考慮すると,検査結果で治療方針を決定することが有用である臨床的状況は,非常に限られていると考えられた.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9 点,見解不一致指数0.192 であった.パネル会議では,検査結果に基づく診療について記載の修正が必要と判断された.該当箇所の
日本語表記の修正を行い,再度投票で最終的に合意に至った.付加的な考慮事項上記の効果のバランスは検査前確率と偽陽性の臨床的重み付け,検査性能に依存している.したがって,臨床状況(対象患者の特性,検査の特性やタイミング,検査前確率,患者や医療者の偽陽性の臨床的重み付けなどの価値観)が変化すれば効果のバランスが変化し,異なる選択肢が推奨される可能性がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 実臨床において,P/F 比は,重症度判定や治療方針の決定の際に1 つの情報として用いられている.本推奨の内容は,それらにおけるP/F 比の使用を否定するものではない.患者の治療方針を決定する際には,P/F 比を含めた各種の臨床情報に基づき,総合的に判断されることが望ましい. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで臨床での使用状況や検査を行う上での問題点について,更なる情報収集とモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities ARDS 患者の予後を予測する臨床予測スコアなどの予測モデルのSR が必要と思われる.
* 本CQ はネットワークメタ解析を用いて検討 しており,詳細はCQ15~18 を参照のこと. 解 説 PICO 患者(P):成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭 素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介入/対照(I/C):非侵襲的呼吸補助(noninva- sive positive pressure ventilation:NPPV), (high flow nasal cannula:HFNC),酸素療法,侵襲的人工呼吸(mechanical ventila- 1 1領域B 非侵襲的呼吸補助 ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用するべきか? CQ 14 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非 侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ, 酸素療法と比較して,非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を行うことを条件 付きで推奨する. NPPV(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). HFNC(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 気管挿管と比較して,非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を行うことを条件 付きで推奨する. NPPV(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). HFNC(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,非侵襲的呼吸補助の開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 推 奨 付帯事項
tion:MV).アウトカム(O):短期死亡,気管挿管,肺炎. ランキング 平均ランキングとして数値化したSUCRA (surface under the cumulative ranking curve)を用いて,短期死亡を横軸に,肺炎を縦軸に,各デバイスのSUCRA 値(最小0 から最大100)をプロットしたクラスターランキングプロットを示す(図).短期死亡と肺炎の効果推定値によるランキングは,好ましい順位から1.HFNC,2.NPPV, 3.MV,4.酸素療法(Oxygen)であった.これらはあくまでも順位であり,臨床的な効果の差ではないことに注意する.また,特にHFNC とNPPV のSUCRA 値は近く,ランキングが不確実である可能性がある.短期死亡についてのSUCRA 値はそれぞれHFNC 72.0,NPPV 66.3,MV 49.9,酸素療法11.7 であり,死亡を減少させる効果においてHFNC,NPPV,MV は比較的近い値を示しており,これらのランキングが不確実である可能性がある.気管挿管についてのSUCRA 値はそれぞれNPPV 87.7,HFNC 56.0,酸素療法 6.3 であり,気管挿管の回避においてはNPPV が優れているかもしれない.一方で,肺炎についてのSUCRA 値はそれぞれHFNC 92.3, NPPV 71.9,酸素療法33.1,MV 2.7 であっ た.MV は肺炎を減少させる効果において,ランキングが低く,HFNC のランキングが最も高い.しかし,NPPV に習熟した施設とそうではない施設では効果が異なり,ランキング結果は異なるかもしれない.臨床に適応する際には,価値観,受け入れ,実行可能性など他の推奨に関わる項目にも配慮が必要である.ランキング結果を考慮すると,非侵襲的呼吸補助のうち,NPPV とHFNC では死亡を減少させる効果にはほとんど差がないかもしれない.一方で,気管挿管を回避する目的ではNPPVが,新規発症の肺炎を減少させる効果ではHFNC が優れているかもしれない. 2 図 クラスターランキングプロット HFNC
背景,この問題の優先度 急性呼吸不全患者に対するNPPV は,気管挿管による合併症を回避するために使用されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.非心原性肺水腫やCOPD の急性増悪に対してNPPV は有効であるが,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である.『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』1)において,ARDS 患者に対する初期の呼吸管理としてNPPV が提案されているが,ARDS 患者はNPPV 失敗のハイリスク患者の1 つである. ARDS に対してNPPV を行うことがあるが, NPPV 失敗は院内死亡を増加させるなど,転帰不良と関連しており,慎重に管理しなければな らない.現時点では,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療とは言えない.したがって,この問題の優先順位はたぶん高い. 解 説 PICO 患者(P):成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭 素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介入(I):NPPV.対照(C):酸素. 1 2 1 領域B 非侵襲的呼吸補助 ARDS 患者に酸素療法よりもNPPV を使用するべきか? CQ 15 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非 侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比 較してNPPV を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確 実性のエビデンス:GRADE 2B). 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,NPPV 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 推 奨 付帯事項
アウトカム(O):短期死亡,気管挿管,肺炎. エビデンスの要約 RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.NPPV と酸素療法を直接比較したRCT は14 件(n=1,495)であった. NPPV と酸素療法の比較において,間接エビデンスはほとんど寄与しておらず,直接エビデンスを採用した.短期死亡(14RCT:n=1,494)に関する効果推定値は,107 人減少╱1,000 人(95%CI: 166 人減少~31 人減少),気管挿管(14RCT: n=1,495)に関する効果推定値は135 人減少╱ 1,000 人(95%CI:188 人減少~69 人減少),肺炎(8RCT:n=804)に関する効果推定値は49 人減少╱1,000 人(95%CI:75 人減少~10人減少)であった.以上より,NPPV による望ましい効果は「中程度」と判断した.害に関する重要なアウトカムである「皮膚障害」について報告したRCT は2 件あり,酸素療法では発生がなかったが,NPPV を行った患者の3.2~25.5%に皮膚障害を認めた.いずれのRCT もn=100 程度で,サンプルサイズは小さかった.以上より,NPPV による望ましくない効果を「わずか」と判断した. エビデンスの確実性 すべての効果のエビデンスの確実性も方向性も一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高い「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.NPPVによる効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.NPPV には専用の装置が必要であり,看護師の負担が増える可能性があるが,す でに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,コスト,有害性などを考慮しても,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した. パネル会議 事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,酸素療法と比較してNPPV を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.13 であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDS と診断することは困難であり,推奨文の対象をARDS から変更することについて議論された.また,効果のバランスやエビデンスの確実性を考慮すると,強く推奨することも議論されたが,NPPV の習熟度など施設ごとに状況が異なる可能性があるという意見もあった.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対して,酸素療法と比較してNPPV を行うことを提案する」が新たに推奨文として提案され,中央値8.0 点,見解不一致指数0.13 で合意に至った. サブグループの検討事項 ヘルメット型インターフェースを用いたNPPV 管理と口鼻マスクを用いたNPPV 管理に分けたSR╱ネットワークメタ解析(NMA)が報告されており,ヘルメット型インターフェースの有効性を示した2).しかし,ヘルメット型インターフェースを用いたRCT 5 件のうち4 件がContinuous positive airway pressure(CPAP)であった.Pressure support ventilation(PSV)では換気量が増大する可能性があり,大きい1回換気量はNPPV失敗のリスクであるため3),今回のSR ではNPPV をこれらのモード別(CPAP とPSV)に分けたサブ解析を行った. 2 3 4 5 3
酸素療法と比較し,CPAP では,短期死亡(5RCT:n=352)に関する効果推定値は,171人減少╱1,000 人(95%CI:254 人減少~27 人減少),気管挿管(5RCT:n=352)に関する効果推定値は198 人減少╱1,000 人(95%CI: 266 人減少~94 人減少),肺炎(2RCT:n= 163)に関する効果推定値は51 人減少╱1,000人(95%CI:91人減少~33人減少)であった.酸素療法と比較し,PSV では,短期死亡(9RCT:n=1,142)に関する効果推定値は, 76 人減少╱1,000 人(95%CI:149 人減少~22人増加),気管挿管(12RCT:n=1,207)に関する効果推定値は99 人減少╱1,000 人(95% CI:185 人減少~16 人減少),肺炎(6RCT:n =641)に関する効果推定値は45 人減少╱ 1,000 人(95%CI:80 人減少~18 人増加)であった.それぞれのアウトカムにおけるランキングはいずれもCPAP のほうがPSV よりも高かった. 実施上の考慮事項 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』1)では,「成人ARDS 患者の初期の呼吸管理としてNPPV を行うことを提案する(GRADE 2C)」と記載されている.また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』4,5)では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されている.欧米の集中治療医学会による『敗血症診療ガイドライン2016』6,7)では,敗血症に起因するARDS においてNPPV に関する推奨はないと記載されており,使用する際には換気量を注意してモニタリングすることが勧められている.欧米の呼吸器学会による『急性呼吸不全に対するNPPV 診療ガイドライン』8)では,慢性呼吸不全の増悪ではない急性呼吸不全患者を対象とするCQ がある.このような集団には肺炎やARDS が含まれているが,PEEP がなく,正確な吸入酸素濃度も不明であり,ARDS かどう か判断するのが難しいとされ,NPPV の効果に関するエビデンスがほとんどなく,推奨を作成するのが困難であると記載されている. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版敗血症診療ガイドライン2020』4,5)では成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV もしくはHFNC を行うことを弱く推奨している.また,『Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021』9,10)では敗血症が原因の呼吸不全患者において,NPPV よりもHFNCを用いることを弱く推奨している. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある. 今後の研究の可能性 NPPV とHFNC を比較したRCT は1 件のみであり,このRCT では,NPPV は口鼻マスクで,PSV モードで行われ,NPPV 専用機を用いておらず,1 日あたりおよそ8 時間しか施行されていなかった.インターフェース,モード,設定方法,NPPV 専用機,NPPV インターバル中の管理方法など,ARDS 患者に対するNPPVの至適な管理方法は不明である.低酸素血症患者にNPPV を行った観察研究では,大きい1 回換気量やHACOR スコア高値も24 時間後のNPPV 失敗と関連していたが,2時間後のΔ食道内圧の改善が最も強い関連を示していた11).NPPV 患者において,食道内圧を含む自発呼吸のモニタリングは今後の研究課題であり,自発呼吸が強過ぎる場合やそれが改善を示さない場合は,自発呼吸による肺傷害を回避するために気管挿管を検討するべきである. 4 5 6 7
文献検索式と文献選択 「acute hypoxemic respiratory failure」「noninvasive positive pressure ventilation」「high flow nasal cannula」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月15 日までの文献を検索したところ6,482 件の研究が同定され,スクリーニングの結果19 件のRCT12—30)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Wysocki 199512), Antonelli 199813), Antonelli 200014), Delclaux 200015), Martin 200016), Hilbert 200117), Ferrer 200318), Cosentini 201019), Squadrone 201020), Wer- mke 201221), Zhan 201222), Brambilla 201423), Bell 201524), Frat 201525), Lemiale 201526), Lemiale 201527), Muncharaz 201728), Azoulay 201829), He 201930). 資料一覧 ・資料CQ15—1 Search strategy.・資料CQ15—2 フローダイアグラム.・資料CQ15—3 Risk of bias.・資料CQ15—4 Forest plot.・資料CQ15—5 エビデンスプロファイル.・資料CQ15—6 Evidence—to—Decision. 8 9 10 1) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 2) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all—cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta—analysis. JAMA 2020;324:1—12. 3) Carteaux G, Millán—Guilarte T, De Prost N, et al. Failure of noninvasive ventilation for de novo acute hypoxemic respiratory failure:role of tidal volume. Crit Care Med 2016;44:282—90. 4) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J—SSCG 2020). Acute Med Surg 2021; 8:e659. 5) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J—SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 6) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43:304—77. 7) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Crit Care Med 2017;45:486—552. 8) Rochwerg B, Brochard L, Elliott MW, et al. Official ERS╱ATS clinical practice guide- lines:noninvasive ventilation for acute respiratory failure. Eur Respir J 2017;50. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Intensive Care Med 2021;47:1181—247. 10) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International 参考文献
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資料CQ15—1 Search strategy
短期死亡・気管挿管MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5 #7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA
#2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 肺 炎MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5
#7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7 #9 "Noninvasive Ventilation/adverse effects"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure/adverse effects"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #10 "Oxygen Inhalation Therapy/adverse effects"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHF- C[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #11 #9 OR #10 #12 harm*[tiab] OR side effect*[tiab] OR adverse[tiab] OR toxicity[tiab] OR infection*[tiab] OR pneumonia*[tiab] OR trauma[tiab] OR barotrauma*[tiab] OR volutrauma*[tiab] OR pneumothorax[tiab] OR ulcer*[tiab] OR discomfort*[tiab] OR breakdown[tiab] OR damage[tiab] OR intoleran*[tiab] OR "Barotrauma/complications"[mh] OR "Pneumonia/complications"[mh] OR "Pressure Ulcer/complications"[mh] OR "Pneumothorax/complications"[mh] OR "Pneumonia, Ventilator-Associated"[mh] #13 #3 AND #11 AND #12 #14 Animals [mh] NOT Humans [mh] #15 #13 NOT #14 #16 #15 NOT #8
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
#8 [mh "Noninvasive Ventilation"/ae] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"/ae] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #9 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"/ae] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #10 #8 OR #9 #11 harm*:ti,ab OR "side effect":ti,ab OR adverse:ti,ab OR toxicity:ti,ab OR infection*:ti,ab OR pneumonia*:ti,ab OR trauma:ti,ab OR barotrauma*:ti,ab OR volutrauma*:ti,ab OR pneumothorax:ti,ab OR ulcer*:ti,ab OR discomfort*:ti,ab OR breakdown:ti,ab OR damage:ti,ab OR intoleran*:ti,ab OR [mh Barotrauma/co] OR [mh Pneumonia/co] OR [mh "Pressure Ulcer"/co] OR [mh Pneumothorax/co] OR [mh "Pneumonia, Ventilator-Associated"] #12 #3 AND #10 AND #11 #13 #12 NOT #7 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA #2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 #25 (( 非侵襲的補助換気/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #26 (( 持続気道陽圧/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA
#27 (( 非侵襲的陽圧呼吸/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #28 (( 酸素吸入療法/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 酸素吸入/TA #29酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #30 #25 OR #26 OR #27 OR #28 OR #29 #31害/TA OR 副作用/TA OR 毒性/TA OR 感染/TA OR 肺炎/TA OR 外傷/TA OR トラウマ/TA OR 気胸/TA OR潰瘍/TA OR 不快感/TA OR 損傷/TA OR 気圧障害/TA OR (( 気圧障害/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 肺炎/ TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 褥瘡性潰瘍/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 気胸/TH) AND (SH= 合併症)) OR人工呼吸器関連肺炎/TH #32 #7 AND #30 AND #31 #33 (#32) AND (PT= 会議録除く) #34 #43 NOT #24
資料CQ15—2 フローダイアグラム 短期死亡・気管挿管 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=7,771 MEDLINE(PubMed) 3,403件Cochrane CENTRAL 3,924件医中誌444件他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=108 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=19 検索で同定された研究 n=7,771 重複研究を除外した研究 n=6,482 除外基準に該当した研究 n=6,374 重複した研究 n=1,289 除外基準に該当した研究n=87理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複4件50件 27件4件1件1件
同定スクリーニング適格性組み入れ肺 炎他のリソースから同定された研究 n=7,771 (短期死亡・気管挿管の検索結果より) データベース検索で同定された研究n=2,630 MEDLINE(PubMed) 1,442件Cochrane CENTRAL 0件医中誌1,188件 検索で同定された研究 n=10,401 重複研究を除外した研究 n=9,104 フルテキストで適格性を評価した研究 n=128 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=10除外基準に該当した研究 n=8,976 重複した研究 n=1,297 除外基準に該当した研究n=107理由:・ 日本語・英語以外・ 学会抄録・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複・ 観察研究4件20件 42件13件1件1件26件
資料CQ15—3 Risk of bias NPPV vs. COT短期死亡気管挿管 肺 炎
資料CQ15—4 Forest plot NPPV vs. COT短期死亡 気管挿管 肺 炎
資料CQ15—5 エビデンスプロファイル NMA 推定値の確実性評価の詳細1.短期死亡 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非一貫性(inconsistency)深刻a深刻a深刻a深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻b深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中低高間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確性(imprecision)深刻ではない深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d 直接エビデンスの最終的グレード中低非常に低低間接エビデンス共通の比較HFNC NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード高高低高中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中低中2 つの比較のうち最低のグレード中中低低中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中低低中不精確性(imprecision)非常に 深刻c深刻でない非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中非常に低非常に低非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中低低低高非整合性(incoherence)深刻でない深刻e NA NA NA深刻e不精確性(imprecision)深刻でない深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d ネットワークエビデンスの最終的グレード中非常に低非常に低非常に低非常に低非常に低最も信用できる推定値直接ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNPPV:noninvasive positive pressure ventilation,非侵襲的呼吸補助.HFNC:high flow nasal cannula,高流量鼻カニュラ.MV:mechanical ventilation,侵襲的人工呼吸.NA:該当なし.
説 明a:I2高値. b:採用したRCT 2 件とも,MV で肺保護換気を行っていない. c:CI に相当の利益または相当な害,の両方が含まれる. d:RCT 1 件のみ. e:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
2.気管挿管 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻でない深刻でない深刻でない非一貫性(inconsistency)深刻a深刻でない深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中高高間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはい不精確性(imprecision)深刻でない非常に 深刻b非常に 深刻c 直接エビデンスの最終的グレード中低低間接エビデンス共通の比較HFNC NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード高高中治療2 vs. 共通比較のグレード高中高2 つの比較のうち最低のグレード高中中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード高中中不精確性(imprecision)非常に 深刻b深刻でない深刻c 間接エビデンスの最終的グレード低中低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう高高高非整合性(incoherence)深刻c深刻でない深刻d不精確性(imprecision)深刻でない非常に 深刻b非常に 深刻b ネットワークエビデンスの最終的グレード中低非常に低最も信用できる推定値直接ネットワークネットワーク説 明a:I2高値. b:CI に相当の利益または相当な害の両方が含まれる. c:CI に効果なしと相当の利益が含まれる. d:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
3.肺 炎 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻a深刻a深刻a深刻a非一貫性(inconsistency)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中中中間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確性(imprecision)深刻でない非常に 深刻b深刻でない非常に 深刻b 直接エビデンスの最終的グレード中非常に低中非常に低間接エビデンス共通の比較NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード中中中中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中中2 つの比較のうち最低のグレード中中中中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中中中不精確性(imprecision)非常に 深刻b深刻でない深刻でない非常に 深刻b 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中中非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中中中中中非整合性(incoherence) NA深刻でないNA NA NA深刻c不精確性(imprecision)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非常に 深刻b ネットワークエビデンスの最終的グレード中中中中中非常に低最も信用できる推定値ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNA:該当なし.説 明a:すべての研究で盲検化されておらず,肺炎の診断定義が不明確な研究を含んでいる. b:CI に相当の利益または相当な害の両方が含まれる. c:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
相対指標と確実性1.短期死亡 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.71 (0.55~0.92) +++○ 中3.82 (0.58~25.05) +○○○非常に低0.71* (0.55~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.79 (0.47~1.32) ++○○ 低0.13 (0.02~0.74) +++○ 中0.68 (0.41~1.12) +○○○非常に低 MV vs. 酸素NA — 0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低NPPV vs. MV 0.92 (0.49~1.75) +○○○非常に低NA — 0.92 (0.40~1.75) +○○○非常に低HFNC vs. MV NA — 0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低NPPV vs. HFNC 2.30 (0.97~5.44) ++○○ 低0.67 (0.34~1.32) ++○○ 低1.07 (0.63~1.83) +○○○非常に低 RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし. *直接エビデンスが間接エビデンスよりもネットワーク推定値に大きく寄与しており,直接エビデンスによ る効果推定を採用した. 2.気管挿管 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.66 (0.52~-0.82) +++○ 中1.42 (0.32~6.33) ++○○ 低0.66* (0.52~0.82) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.88 (0.58~1.32) ++○○ 低0.25 (0.07~0.84) +++○ 中0.77 (0.52~1.32) ++○○ 低 NPPV vs. HFNC 1.33 (0.71~2.48) ++○○ 低0.61 (0.35~1.07) ++○○ 低0.86 (0.57~1.31) +○○○非常に低 RR:リスク比,CI:信頼区間. *直接エビデンスが間接エビデンスよりもネットワーク推定値に大きく寄与しており,直接エビデンスによ る効果推定を採用した.
3.肺 炎 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.61 (0.40~0.92) +++○ 中NA — 0.61 (0.40~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.44 (0.14~1.43) +○○○非常に低0.07 (0.004~1.42) +○○○非常に低0.35 (0.12~1.03) +++○ 中 MV vs. 酸素NA — 3.28 (1.37~7.88) +++○ 中3.28 (1.37~7.88) +++○ 中 NPPV vs. MV 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中NA — 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中 HFNC vs. MV NA — 0.11 (0.03~0.40) +++○ 中0.11 (0.03~0.40) +++○ 中 NPPV vs. HFNC 2.17 (0.69~6.85) +○○○非常に低0.31 (0.01~7.94) +○○○非常に低1.75 (0.59~5.16) +○○○非常に低RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし.
資料CQ15—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV,HFNC)を使用するべきか? CQ15:ARDS 患者に酸素療法よりもNPPV を使用するべきか? NPPV:noninvasive positive pressure ventilation,HFNC:high flow nasal cannula oxygen therapy集 団:成人急性低酸素性呼吸不全 ただし,以下のいずれかの患者が50%以上を占める研究は除外高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,呼吸不全の主な原因が心原性肺水腫またはCOPD の急性増悪,気管支喘息であることが明らか 介 入: NPPV比較対照:酸素療法主要なアウトカム:短期死亡,気管挿管,肺炎セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:急性呼吸不全患者に対するNPPV は,気管挿管による合併症を回避するために使用 されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.非心原性肺水腫やCOPD の急性増悪に対してNPPV は有効であるが,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』において,ARDS 患者に対する初期の呼吸管理としてNPPVが提案されているが,ARDS 患者はNPPV 失敗のハイリスク患者の1 つである.ARDS に対してNPPV を行うことがあるが,NPPV失敗は院内死亡を増加させるなど,転帰不良と関連しており,慎重に管理しなければならない現時点では,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療とは言えない.したがって,この問題の優先順位はたぶん高い
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致した研究は,RCT 19 件と観察研 究6 件が施行されていた.観察研究はバイアスのリスクが非常に深刻であり,メタ解析を行わず,RCT 19 件(n= 2,777)を用いてネットワークメタ解析を行ったNPPV と酸素療法を直接比較したRCT は14 件(n= 1,495)であった.NPPV と酸素療法の比較において,間接エビデンスはほとんど寄与しておらず,直接エビデンスを採用した短期死亡(14 RCT:n=1,494)に関する効果推定値は,酸素療法と比較してNPPV により,1,000 人あたり107 人減少(95% CI:166 人減少~31 人減少),気管挿管(14 RCT:n=1,495)に関する効果推定値は1,000 人あたり135 人減少(95% CI:188 人減少~69 人減少),肺炎(8 RCT:n=804)に関する効果推定値は1,000 人あたり49人減少(95% CI:75 人減少~10 人減少)であった以上より,NPPV による望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからないNPPV では気道の保護ができない可能性があり,今回の SR では肺炎を害に関する重大なアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はNPPV により減少しており,望ましくない効果ではなかった備考欄の記載と合わせて考えると,NPPV による望ましくない効果は「わずか」と判断した害に関する重要なアウ トカムである「皮膚障害」について報告したRCT は2 件あり,酸素療法では発生がなかったが,NPPV を行った患者の3.2~25.5%に皮膚障害を認めた.いずれのRCT も対象患者100 人程度で,サンプルサイズは小さかった エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値
○低●中○高○研究がないアウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 短期死亡重大+++○ 中 気管挿管重大+++○ 中 肺 炎重大+++○ 中 全体的なエビデンスの確実性すべての効果のエビデンスの確実性も方向性も一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないARDS 患者に対する非侵襲的呼吸補助において検討したア ウトカムでは,患者・家族の価値観に関するデータはない一般的に,短期死亡,気管挿管,肺炎について,相対的価値は高く,そのばらつきは少ないことが予想される 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム酸素療法 (対照)* NPPV (介入)*絶対差 (RD) (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 短期死亡227/ 736 (30.8%) 177/ 758 (23.4%) 107 減少/ 1,000 (166 減少~ 31 減少) 0.71 (0.55~ 0.92)
気管挿管299/ 736 (40.6%) 224/ 759 (29.5%) 135 減少/ 1,000 (188 減少~ 69 減少) 0.66 (0.52~ 0.82) 肺 炎52/ 392 (13.3%) 33/ 412 (8.0%) 49 減少/ 1,000 (75 減少~ 10 減少) 0.61 (0.40~ 0.92) *直接比較のイベント数/患者数(%) 望ましい効果と望ましくない効果のエビデンスより, NPPV による効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,NPPV はすでに日 常臨床で実施されており,NPPV による望ましくない効果はほとんどないと考えられるため,受け入れは「たぶんはい」と判断したNPPV は酸素療法よりもコストが増えるかもしれないが,気管挿管を回避できる可能性があり,その場合は必要なコストは少なくなるかもしれない 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,NPPV はほとんど の急性期病院で実施することができると思われるため,実行可能性は「たぶんはい」と判断したNPPV を行うには,NPPV 専用機または人工呼吸器が必要である.また,酸素療法と比較すると,看護師のケアがより必要である 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない
望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してNPPV を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス: GRADE 2B). 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○
付帯事項 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,NPPV 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者に酸素療法よりもNPPV を使用するべきか?患 者 成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介 入 NPPV.対 照 酸素.アウトカム 短期死亡,気管挿管,肺炎.エビデンスの要約RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.NPPV と酸素療法を直接比較したRCT は14 件(n=1,495)であった.NPPV と酸素療法の比較において,間接エビデンスはほとんど寄与しておらず,直接エビデンスを採用した.短期死亡(14 RCT:n=1,494)に関する効果推定値は,1,000 人あたり107 人減少(95% CI: 166 人減少~31 人減少),気管挿管(14 RCT:n=1,495)に関する効果推定値は1,000 人あたり135 人減少(95% CI:188 人減少~69 人減少),肺炎(8 RCT:n=804)に関する効果推定値は1,000 人あたり49 人減少(95% CI:75 人減少~10 人減少)であった.以上より,NPPV による望ましい効果は「中程度」と判断した.害に関する重要なアウトカムである「皮膚障害」について報告したRCT は2 件あり,酸素療法では発生がなかったが,NPPV を行った患者の3.2~25.5%に皮膚障害を認めた.いずれのRCT も対象患者100 人程度で,サンプルサイズは小さかった.以上より,NPPV による望ましくない効果を「わずか」と判断した.エビデンスの確実性すべての効果のエビデンスの確実性も方向性も一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高い「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.NPPV による効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.NPPV には専用の装置が必要であり,看護師の負担が増える可能性があるが,すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,コスト,有害性などを考慮しても,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した.パネル会議事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,酸素療法と比較してNPPV を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.13 であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDS と診断することは困難であり,推奨文の対象をARDS から変更することについて議論された.また,効果のバランスやエビデンスの確実性を考慮すると,強く推奨することも議論されたが,NPPV の習
熟度など施設ごとに状況が異なる可能性があるという意見もあった.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対して,酸素療法と比較してNPPV を行うことを提案する」が新たに推奨文として提案され,中央値8.0 点,見解不一致指数0.13 で合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations ヘルメット型インターフェースを用いたNPPV 管理と口鼻マスクを用いたNPPV 管理に分けたSR╱NMA が報告されており,ヘルメット型インターフェースの有効性を示した1).しかし,ヘルメット型インターフェースを用いたRCT 5 件のうち4 件がcontinuous positive airway pressure (CPAP)であった.Pressure support ventilation(PSV)では換気量が増大する可能性があり,大きい1 回換気量はNPPV 失敗のリスクであるため2),今回のSR ではNPPV をこれらのモード別(CPAP とPSV)に分けたサブ解析を行った.酸素療法と比較し,CPAP では,短期死亡(5 RCT:n=352)に関する効果推定値は1,000 人あたり171 人減少(95% CI:254 人減少~27 人減少),気管挿管(5RCT:n=352)に関する効果推定値は1,000 人あたり198 人減少(95% CI:266 人減少~94 人減少),肺炎(2 RCT:n=163)に関する効果推定値は1,000 人あたり51 人減少(95% CI:91 人減少~33 人減少)であった.酸素療法と比較し,PSV では,短期死亡(9 RCT:n=1,142)に関する効果推定値は1,000 人あたり76 人減少(95% CI:149 人減少~22 人増加),気管挿管(12 RCT:n=1,207)に関する効果推定値は1,000 人あたり99 人減少(95% CI:185 人減少~16 人減少),肺炎(6 RCT:n= 641)に関する効果推定値は1,000 人あたり45 人減少(95% CI:80 人減少~18 人増加)であった.それぞれのアウトカムにおけるランキングはいずれもCPAP のほうがPSV よりも高かった. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』では,「成人ARDS 患者の初期の呼吸管理としてNPPVを行うことを提案する(GRADE 2C)」と記載されている.また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されている.欧米の集中治療医学会による『敗血症診療ガイドライン2016』では,敗血症に起因するARDS においてNPPV に関する推奨はないと記載されており,使用する際には換気量を注意してモニタリングすることが勧められている3,4).欧米の呼吸器学会による『急性呼吸不全に対するNPPV 診療ガイドライン』では,慢性呼吸不全の増悪ではない急性呼吸不全患者を対象とするCQ がある5).このような集団には肺炎やARDS が含まれているが,PEEP がなく,正確な吸入酸素濃度も不明であり,ARDS かどうかを判断するのが難しいとされ,NPPV の効果に関するエビデンスがほとんどなく,推奨を作成するのが困難であると記載されている. NPPV は施設の習熟度で効果に差があるかもしれない.NPPV をARDS が疑われる患者に行う場合は,治療失敗リスクが高いことを認識した上で,必要な気管挿管が遅れることがないよう,気管挿管を行うことができるICU などで管理し,呼吸・循環動態の持続モニタリングを行う必要がある.可能ならば,血液ガス分析による評価を行うほうがよい.そのほかにも,意識レベル,気道の評価,認容性について評価する.バイタルサインと血液ガス分析データからなるHACOR スコアを用いたNPPV 失敗予測は,治療
開始1時間がそれ以降の評価よりもAUCが高く,1時間程度で初期評価を行うほうがよい6).NPPV開始から長時間経過した気管挿管は死亡リスクが増加するため,必要な気管挿管を遅らせないことが重要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかどうか,本診療ガイドライン公表後に実施状況についてモニタリングすることが望まれる. 研究の可能性 Research priorities NPPV とHFNC を比較したRCT は1 件のみであり,このRCT では,NPPV は口鼻マスクで, PSV モードで行われ,NPPV 専用機を用いておらず,1 日あたりおよそ8 時間しか施行されていなかった.インターフェース,モード,設定方法,NPPV 専用機,NPPV インターバル中の管理方法など,ARDS 患者に対するNPPV の至適な管理方法は不明である.低酸素血症患者にNPPV を行った観察研究では,大きい1 回換気量やHACOR スコア高値も24時間後のNPPV 失敗と関連していたが,2 時間後のΔ食道内圧の改善が最も強い関連を示していた7).NPPV 患者において,食道内圧を含む自発呼吸のモニタリングは今後の研究課題であり,自発呼吸が強過ぎる場合やそれが改善を示さない場合は,自発呼吸による肺傷害を回避するために気管挿管を検討するべきである.参考文献1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all—cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta—analysis. JAMA 2020;324:57—67. 2) Carteaux G, Millán—Guilarte T, De Prost N, et al. Failure of noninvasive ventilation for de novo acute hypoxemic respiratory failure:role of tidal volume. Crit Care Med 2016; 44:282—90. 3) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43: 304—77. 4) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Crit Care Med 2017;45:486— 552. 5) Rochwerg B, Brochard L, Elliott MW, et al. Official ERS╱ATS clinical practice guidelines: noninvasive ventilation for acute respiratory failure. Eur Respir J 2017;50. 6) Duan J, Han X, Bai L, et al. Assessment of heart rate, acidosis, consciousness, oxygenation, and respiratory rate to predict noninvasive ventilation failure in hypoxemic patients. Intensive Care Med 2017;43:192—9. 7) Tonelli R, Fantini R, Tabbì L, et al. Early inspiratory effort assessment by esophageal manometry predicts noninvasive ventilation outcome in de novo respiratory failure. A pilot study. Am J Respir Crit Care Med 2020;202:558—67.
背景,この問題の優先度 急性呼吸不全患者に対するHFNC は,気管挿管による合併症を回避するために使用されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.HFNC は,ARDS 患者の呼吸管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である.非侵襲的呼吸補助にはHFNC とNPPV があるが,主に肺炎によるARDSを対象に非侵襲的呼吸補助の有効性を検討した欧州での多施設RCT では, HFNC がNPPV や酸素療法と比較して,気管挿管や短期死亡を減少させた.しかし,その他のRCT やメタ解析ではHFNC の有効性は明らかではない1).このように急性呼吸不全患者に対するHFNC の有効性は一貫しておらず,この 問題の優先順位はたぶん高い. 解 説 PICO 患者(P):成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭 素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介入(I):HFNC.対照(C):酸素.アウトカム(O):短期死亡,気管挿管,肺炎. 1 2 1 領域B 非侵襲的呼吸補助 ARDS 患者に酸素療法よりもHFNC を使用するべきか? CQ 16 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非 侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比 較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確 実性のエビデンス:GRADE 2B). 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,HFNC 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.HFNC と酸素療法を直接比較したRCT は4 件(n=1,176)であった.短期死亡(直接比較2RCT:n=976)に関する効果推定値は,117 人減少/1,000 人(95% CI:215 人減少~44 人増加),気管挿管(直接比較4RCT:n=1,176)に関する効果推定値は89 人減少/1,000 人(95%CI:187 人減少~ 127 人増加),肺炎(直接比較1RCT:n=200)に関する効果推定値は82 人減少/1,000 人(95%CI:110 人減少~4 人増加)であった.以上より,HFNC による望ましい効果は「中程度」と判断した. HFNC 中の誤嚥のリスクはよくわかっておらず,今回のSR では肺炎を害のアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はHFNC により減少しており,望ましくない効果ではなかった.低酸素性呼吸不全を対象としたRCT2)では, HFNC を受けた患者では,酸素療法やNPPVと比較して,快適性が向上していた(100 mm visual analog scale:HFNC 29±26,酸素療法40±29,NPPV 43±29).以上より,HFNCによる望ましくない効果は「わずか」と判断した. エビデンスの確実性 すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.現状のネットワークメタ解析における不精確さの評価はサンプルサイズが加味されていないが,今回採用されたアウトカムのうち,肺炎に対するエビデンスはサンプルサイズが不足している可能性がある.不精確さで1 等級ダウンした場合,効果のエビデンスの全体的な確実性は「低」となる.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.HFNCによる効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.HFNC には専用の装置が必要であり,酸素療法と比較すると大量の酸素が必要であるが,すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した. パネル会議 事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,酸素療法と比較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.13 であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDS と診断することは困難であり,推奨文の対象をARDSから変更することについて議論された.また,NPPV と同様に,効果のバランスやエビデンスの確実性を考慮すると強く推奨することについても議論された.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する」が新たに推奨文として提案され,中央値9.0 点,見解不一致指数0.13 で合意に至った. サブグループの検討事項 HFNC に関するサブグループ解析は行わなかった. 実施上の考慮事項 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』3)では,HFNC に関するCQ はなく今後の研究の可 3 5 3 4
能性に記載されている.『日本版敗血症診療ガイドライン2020』4,5)では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,HFNC を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されているが,欧米の『敗血症診療ガイドライン2016』6,7)ではHFNC に関するCQ はない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版敗血症診療ガイドライン2020』4,5)では成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV もしくはHFNC を行うことを弱く推奨している.また,『Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021』8,9)では敗血症が原因の呼吸不全患者において,NPPV よりもHFNC を用いることを弱く推奨している.そのほか欧州の集中治療医学会による『HFNC に関する診療ガイドライン』では,低酸素性呼吸不全に対して,酸素療法と比較してHFNC を行うことが推奨されている(GRADE 1B)10). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかどうか,本診療ガイドライン公表後に実施状況についてモニタリングすることが望まれる. 今後の研究の可能性 HFNC 導入のタイミング,腹臥位療法との併用,離脱方法やタイミングについては更なる 検討が必要であろう. 文献検索式と文献選択 「acute hypoxemic respiratory failure」「noninvasive positive pressure ventilation」「high flow nasal cannula」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月15 日までの文献を検索したところ6,482 件の研究が同定され,スクリーニングの結果19 件のRCT2,11‒28)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Frat 20152), Wysocki 199511), Antonelli 199812), Antonelli 200013), Delclaux 200014), Martin 200015), Hilbert 200116), Ferrer 200317), Cosentini 201018), Squadrone 201019), Wermke 201220), Zhan 201221), Brambilla 201422), Bell 201523), Lemiale 201524), Lemiale 201525), Muncharaz 201726), Azoulay 201827), He 201928). 資料一覧 ・資料CQ16‒1 Search strategy.・資料CQ16‒2 フローダイアグラム.・資料CQ16‒3 Risk of bias.・資料CQ16‒4 Forest plot.・資料CQ16‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ16‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all‒cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta‒analysis. JAMA 2020;324:1‒12. 2) Frat JP, Thille AW, Mercat A, et al. High‒flow oxygen through nasal cannula in acute hypoxemic respiratory failure. N Engl J Med 2015;372:2185‒96. 3) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- 参考文献
ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 4) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J‒SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 5) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J‒SSCG 2020). Acute Med Surg 2021; 8:e659. 6) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43:304‒77. 7) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Crit Care Med 2017;45:486‒552. 8) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Intensive Care Med 2021 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med 2021; 49:e1063‒143. 10) Rochwerg B, Einav S, Chaudhuri D, et al. The role for high flow nasal cannula as a respiratory support strategy in adults:a clinical practice guideline. Intensive Care Med 2020;46:2226‒37. 11) Wysocki M, Tric L, Wolff MA, et al. Noninvasive pressure support ventilation in patients with acute respiratory failure. A randomized comparison with conventional therapy. Chest 1995;107:761‒8. 12) Antonelli M, Conti G, Rocco M, et al. A comparison of noninvasive positive‒pressure ventilation and conventional mechanical ventilation in patients with acute respiratory failure. N Engl J Med 1998;339:429‒35. 13) Antonelli M, Conti G, Bufi M, et al. Noninvasive ventilation for treatment of acute respiratory failure in patients undergoing solid organ transplantation:a randomized trial. JAMA 2000;283:235‒41. 14) Delclaux C, L’Her E, Alberti C, et al. Treatment of acute hypoxemic nonhypercapnic respiratory insufficiency with continuous positive airway pressure delivered by a face mask:a randomized controlled trial. JAMA 2000;284:2352‒60. 15) Martin TJ, Hovis JD, Costantino JP, et al. A randomized, prospective evaluation of noninvasive ventilation for acute respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med 2000;161:807‒13. 16) Hilbert G, Gruson D, Vargas F, et al. Noninvasive ventilation in immunosuppressed patients with pulmonary infiltrates, fever, and acute respiratory failure. N Engl J Med 2001;344:481‒7. 17) Ferrer M, Esquinas A, Leon M, et al. Noninvasive ventilation in severe hypoxemic respiratory failure:a randomized clinical trial. Am J Respir Crit Care Med 2003; 168:1438‒44. 18) Cosentini R, Brambilla AM, Aliberti S, et al. Helmet continuous positive airway pres- sure vs oxygen therapy to improve oxygenation in community‒acquired pneumonia:a randomized, controlled trial. Chest 2010;138:114‒20.
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資料CQ16—1 Search strategy
短期死亡・気管挿管MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5 #7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA
#2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 肺 炎MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5
#7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7 #9 "Noninvasive Ventilation/adverse effects"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure/adverse effects"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #10 "Oxygen Inhalation Therapy/adverse effects"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHF- C[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #11 #9 OR #10 #12 harm*[tiab] OR side effect*[tiab] OR adverse[tiab] OR toxicity[tiab] OR infection*[tiab] OR pneumonia*[tiab] OR trauma[tiab] OR barotrauma*[tiab] OR volutrauma*[tiab] OR pneumothorax[tiab] OR ulcer*[tiab] OR discomfort*[tiab] OR breakdown[tiab] OR damage[tiab] OR intoleran*[tiab] OR "Barotrauma/complications"[mh] OR "Pneumonia/complications"[mh] OR "Pressure Ulcer/complications"[mh] OR "Pneumothorax/complications"[mh] OR "Pneumonia, Ventilator-Associated"[mh] #13 #3 AND #11 AND #12 #14 Animals [mh] NOT Humans [mh] #15 #13 NOT #14 #16 #15 NOT #8
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
#8 [mh "Noninvasive Ventilation"/ae] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"/ae] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #9 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"/ae] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #10 #8 OR #9 #11 harm*:ti,ab OR "side effect":ti,ab OR adverse:ti,ab OR toxicity:ti,ab OR infection*:ti,ab OR pneumonia*:ti,ab OR trauma:ti,ab OR barotrauma*:ti,ab OR volutrauma*:ti,ab OR pneumothorax:ti,ab OR ulcer*:ti,ab OR discomfort*:ti,ab OR breakdown:ti,ab OR damage:ti,ab OR intoleran*:ti,ab OR [mh Barotrauma/co] OR [mh Pneumonia/co] OR [mh "Pressure Ulcer"/co] OR [mh Pneumothorax/co] OR [mh "Pneumonia, Ventilator-Associated"] #12 #3 AND #10 AND #11 #13 #12 NOT #7 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA #2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 #25 (( 非侵襲的補助換気/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #26 (( 持続気道陽圧/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA
#27 (( 非侵襲的陽圧呼吸/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #28 (( 酸素吸入療法/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 酸素吸入/TA #29酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #30 #25 OR #26 OR #27 OR #28 OR #29 #31害/TA OR 副作用/TA OR 毒性/TA OR 感染/TA OR 肺炎/TA OR 外傷/TA OR トラウマ/TA OR 気胸/TA OR潰瘍/TA OR 不快感/TA OR 損傷/TA OR 気圧障害/TA OR (( 気圧障害/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 肺炎/ TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 褥瘡性潰瘍/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 気胸/TH) AND (SH= 合併症)) OR人工呼吸器関連肺炎/TH #32 #7 AND #30 AND #31 #33 (#32) AND (PT= 会議録除く) #34 #43 NOT #24
資料CQ16—2 フローダイアグラム 短期死亡・気管挿管 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=7,771 MEDLINE(PubMed) 3,403件Cochrane CENTRAL 3,924件医中誌444件他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=108 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=19 検索で同定された研究 n=7,771 重複研究を除外した研究 n=6,482 除外基準に該当した研究 n=6,374 重複した研究 n=1,289 除外基準に該当した研究n=87理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複4件50件 27件4件1件1件
同定スクリーニング適格性組み入れ肺 炎他のリソースから同定された研究 n=7,771 (短期死亡・気管挿管の検索結果より) データベース検索で同定された研究n=2,630 MEDLINE(PubMed) 1,442件Cochrane CENTRAL 0件医中誌1,188件 検索で同定された研究 n=10,401 重複研究を除外した研究 n=9,104 フルテキストで適格性を評価した研究 n=128 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=10除外基準に該当した研究 n=8,976 重複した研究 n=1,297 除外基準に該当した研究n=107理由:・ 日本語・英語以外・ 学会抄録・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複・ 観察研究4件20件 42件13件1件1件26件
資料CQ16—3 Risk of bias HFNC vs. COT短期死亡気管挿管 肺 炎
資料CQ16—4 Forest plot HFNC vs. COT短期死亡 気管挿管 肺 炎
資料CQ16—5 エビデンスプロファイル NMA 推定値の確実性評価の詳細1.短期死亡 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非一貫性(inconsistency)深刻a深刻a深刻a深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻b深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中低高間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確さ(imprecision)深刻ではない深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d 直接エビデンスの最終的グレード中低非常に低低間接エビデンス共通の比較HFNC NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード高高低高中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中低中2 つの比較のうち最低のグレード中中低低中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中低低中不精確さ(imprecision)非常に 深刻c深刻でない非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中非常に低非常に低非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中低低低高非整合性(incoherence)深刻でない深刻e NA NA NA深刻e不精確さ(imprecision)深刻でない深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d ネットワークエビデンスの最終的グレード中非常に低非常に低非常に低非常に低非常に低最も信用できる推定値直接ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNPPV:noninvasive positive pressure ventilation,非侵襲的呼吸補助.HFNC:high flow nasal cannula,高流量鼻カニュラ.MV:mechanical ventilation,侵襲的人工呼吸.NA:該当なし.
説 明a:I2高値. b:採用したRCT 2 件とも,MV で肺保護換気を行っていない. c:CI に相当の利益または相当な害,の両方が含まれる. d:RCT 1 件のみ. e:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
2.気管挿管 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻でない深刻でない深刻でない非一貫性(inconsistency)深刻a深刻でない深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中高高間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはい不精確さ(imprecision)深刻でない非常に 深刻b非常に 深刻c 直接エビデンスの最終的グレード中低低間接エビデンス共通の比較HFNC NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード高高中治療2 vs. 共通比較のグレード高中高2 つの比較のうち最低のグレード高中中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード高中中不精確さ(imprecision)非常に 深刻b深刻でない深刻c 間接エビデンスの最終的グレード低中低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう高高高非整合性(incoherence)深刻c深刻でない深刻d不精確さ(imprecision)深刻でない非常に 深刻b非常に 深刻b ネットワークエビデンスの最終的グレード中低非常に低最も信用できる推定値直接ネットワークネットワーク説 明a:I2高値. b:CI に相当の利益または相当な害の両方が含まれる. c:CI に効果なしと相当の利益が含まれる. d:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
3.肺 炎 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻a深刻a深刻a深刻a非一貫性(inconsistency)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中中中間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確さ(imprecision)深刻でない非常に 深刻b深刻でない非常に 深刻b 直接エビデンスの最終的グレード中非常に低中非常に低間接エビデンス共通の比較NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード中中中中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中中2 つの比較のうち最低のグレード中中中中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中中中不精確さ(imprecision)非常に 深刻b深刻でない深刻でない非常に 深刻b 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中中非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中中中中中非整合性(incoherence) NA深刻でないNA NA NA深刻c不精確さ(imprecision)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非常に 深刻b ネットワークエビデンスの最終的グレード中中中中中非常に低最も信用できる推定値ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNA:該当なし.説 明a:すべての研究で盲検化されておらず,肺炎の診断定義が不明確な研究を含んでいる. b:CI に相当の利益または相当な害の両方が含まれる. c:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
相対指標と確実性1.短期死亡 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.71 (0.55~0.92) +++○ 中3.82 (0.58~25.05) +○○○非常に低0.71* (0.55~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.79 (0.47~1.32) ++○○ 低0.13 (0.02~0.74) +++○ 中0.68 (0.41~1.12) +○○○非常に低 MV vs. 酸素NA — 0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低NPPV vs. MV 0.92 (0.49~1.75) +○○○非常に低NA — 0.92 (0.40~1.75) +○○○非常に低HFNC vs. MV NA — 0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低NPPV vs. HFNC 2.30 (0.97~5.44) ++○○ 低0.67 (0.34~1.32) ++○○ 低1.07 (0.63~1.83) +○○○非常に低 RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし. *直接エビデンスが間接エビデンスよりもネットワーク推定値に大きく寄与しており,直接エビデンスによ る効果推定を採用した. 2.気管挿管 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.66 (0.52~-0.82) +++○ 中1.42 (0.32~6.33) ++○○ 低0.66* (0.52~0.82) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.88 (0.58~1.32) ++○○ 低0.25 (0.07~0.84) +++○ 中0.77 (0.52~1.32) ++○○ 低 NPPV vs. HFNC 1.33 (0.71~2.48) ++○○ 低0.61 (0.35~1.07) ++○○ 低0.86 (0.57~1.31) +○○○非常に低 RR:リスク比,CI:信頼区間. *直接エビデンスが間接エビデンスよりもネットワーク推定値に大きく寄与しており,直接エビデンスによ る効果推定を採用した.
3.肺 炎 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.61 (0.40~0.92) +++○ 中NA — 0.61 (0.40~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.44 (0.14~1.43) +○○○非常に低0.07 (0.004~1.42) +○○○非常に低0.35 (0.12~1.03) +++○ 中 MV vs. 酸素NA — 3.28 (1.37~7.88) +++○ 中3.28 (1.37~7.88) +++○ 中 NPPV vs. MV 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中NA — 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中 HFNC vs. MV NA — 0.11 (0.03~0.40) +++○ 中0.11 (0.03~0.40) +++○ 中 NPPV vs. HFNC 2.17 (0.69~6.85) +○○○非常に低0.31 (0.01~7.94) +○○○非常に低1.75 (0.59~5.16) +○○○非常に低RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし.
資料CQ16—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV,HFNC)を使用するべきか? CQ16:ARDS 患者に酸素療法よりもHFNC を使用するべきか? NPPV:noninvasive positive pressure ventilation,HFNC:high flow nasal cannula oxygen therapy集 団:成人低酸素性呼吸不全 ただし,以下のいずれかの患者が50%以上を占める研究は除外高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全, 呼吸不全の主な原因が心原性肺水腫またはCOPD の急性増悪,気管支喘息である ことが明らか 介 入: HFNC比較対照:酸素療法主要なアウトカム:短期死亡,気管挿管,肺炎セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:急性呼吸不全患者に対するHFNC は,気管挿管による合併症を回避するために使用 されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.HFNC は,ARDS患者の呼吸管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない非侵襲的呼吸補助にはHFNC とNPPV があるが,主に肺 炎によるARDSを対象に非侵襲的呼吸補助の有効性を検討した欧州での多施設RCT では,HFNC がNPPV や酸素療法と比較して,気管挿管や短期死亡を減少させた.しかし,その他のRCT やメタ解析ではHFNC の有効性は明らかではない1)このように急性呼吸不全患者に対するHFNC の有効性は一貫しておらず,この問題の優先順位はたぶん高い
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致した研究は,RCT 19 件と観察研 究6 件が施行されていた.観察研究はバイアスのリスクが非常に深刻であり,メタ解析を行わず,RCT 19 件(n= 2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.HFNC と酸素療法を直接比較したRCT は4 件(n=1,176)であった益のアウトカムとして短期死亡(直接比較2 RCT:n= 976)に関する効果推定値は,酸素療法と比較してHFNCにより,1,000 人あたり117 人減少(95% CI:215 人減少~44 人増加),気管挿管(直接比較4 RCT:n=1,176)に関する効果推定値は1,000 人あたり89 人減少(95% CI:187 人減少~127 人増加),肺炎(直接比較1 RCT: n=200)に関する効果推定値は1,000 人あたり82 人減少(95% CI:110 人減少~4 人増加)であった以上より,HFNC による望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからないHFNC 中の誤嚥のリスクはよくわかっておらず,今回の SR では肺炎を害のアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はHFNC により減少しており,望ましくない効果ではなかった備考欄の記載と合わせて考えると,HFNC による望ましくない効果は「わずか」と判断した低酸素性呼吸不全を対 象としたRCT2)では, HFNC を受けた患者では,酸素療法やNPPVと比較して,快適性が向上していた(100 mm visual analog scale: HFNC 29±26,酸素療法40±29,NPPV 43 ±29) エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性短期死亡重大+○○○ 非常に低
○研究がない気管挿管重大++○○ 低 肺 炎重大+++○ 中 全体的なエビデンスの確実性すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないARDS 患者に対する非侵襲的呼吸補助において検討した アウトカムでは,患者・家族の価値観に関するデータはない一般的に,短期死亡,気管挿管,肺炎について,相対的価値は高く,そのばらつきは少ないことが予想される 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ: アウトカム酸素 療法(対照)* HFNC (介入)*絶対差(RD) (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 短期死亡209/ 482 (43.4%) 195/ 494 (39.5%) 117 人減少/ 1,000 人(215 人減少~ 44 人増加) 0.68 (0.41~ 1.12) 気管挿管217/ 582 (37.3%) 194/ 594 (32.7%) 89 人減少/ 1,000 人(187 人減少~ 127 人増加) 0.77 (0.52~ 1.32)
肺 炎8/94 (8.5%) 4/106 (3.8%) 82 人減少/ 1,000 人(110 人減少~ 4 人増加) 0.35 (0.12~ 1.03) *直接比較のイベント数/患者数(%) 望ましい効果と望ましくない効果のエビデンスより, HFNC による効果のバランスは,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,HFNC はすでに日 常臨床で実行されており,HFNC による望ましくない効果はほとんどなく,受け入れは「たぶんはい」と判断したHFNC は酸素療法よりもコストが増えるかもしれないが,気管挿管を回避できる可能性があり,その場合は必要なコストは少なくなるかもしれない 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,HFNC はほとんど の急性期病院で実施することができると思われるため,実行可能性は「たぶんはい」と判断したHFNC には専用の装置(ブロワー,ブレンダ,ベンチュリー,加熱式加湿器など)が必要であり,酸素使用量も増えるたとえば,酸素マスク(10 L/min)の場合,1 日あたりの酸素使用量は14,400 L であるのに対して,FIO2 0.6 で60 L/min でHFNC を行った場合,酸素の使用量はおよそ3 倍となる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわからな い 結 論 推 奨 Recommendation ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス: GRADE 2B). 付帯事項 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,HFNC 開始後は
気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者に酸素療法よりもHFNC を使用するべきか?患 者 成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介 入 HFNC.対 照 酸素.アウトカム 短期死亡,気管挿管,肺炎.エビデンスの要約RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.HFNC と酸素療法を直接比較したRCT は4 件(n=1,176)であった.短期死亡(直接比較2 RCT:n=976)に関する効果推定値は,1,000 人あたり117 人減少(95% CI:215 人減少~44 人増加),気管挿管(直接比較4 RCT:n=1,176)に関する効果推定値は1,000人あたり89 人減少(95% CI:187 人減少~127 人増加),肺炎(直接比較1 RCT:n=200)に関する効果推定値は1,000 人あたり82 人減少(95% CI:110 人減少~4 人増加)であった.以上より,HFNC による望ましい効果は「中程度」と判断した. HFNC 中の誤嚥のリスクはよくわかっておらず,今回のSR では肺炎を害のアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はHFNC により減少しており,望ましくない効果ではなかった.低酸素性呼吸不全を対象としたRCT2)では,HFNC を受けた患者では,酸素療法やNPPV と比較して,快適性が向上していた(100 mm visual analog scale:HFNC 29±26,酸素療法40±29,NPPV 43±29).以上より,HFNC による望ましくない効果は「わずか」と判断した.エビデンスの確実性すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.現状のネットワークメタ解析における不精確さの評価はサンプルサイズが加味されていないが,今回採用されたアウトカムのうち,肺炎に対するエビデンスはサンプルサイズが不足している可能性がある.不精確さで1 等級ダウンした場合,効果のエビデンスの全体的な確実性は「低」となる.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.HFNC による効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した. HFNC には専用の装置が必要であり,酸素療法と比較すると大量の酸素が必要であるが,すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した.パネル会議事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,酸素療法と比較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.13 であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDS と診断することは困
難であり,推奨文の対象をARDS から変更することについて議論された.また,NPPV と同様に,効果のバランスやエビデンスの確実性を考慮すると強く推奨することについても議論された.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してHFNC を行うことを条件付きで推奨する」が新たに推奨文として提案され,中央値9.0 点,見解不一致指数0.13 で合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations HFNC に関するサブグループ解析は行わなかった. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』では,HFNC に関するCQ はなく今後の研究の可能性に記載されている.『日本版敗血症診療ガイドライン2020』では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,HFNC を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されているが,欧米の『敗血症診療ガイドライン2016』ではHFNC に関するCQ はない3,4).欧州の集中治療医学会による『HFNC に関する診療ガイドライン』では,低酸素性呼吸不全に対して,酸素療法と比較してHFNC を行うことが推奨されている(GRADE 1B)5).しかしながら,強く推奨するか条件付きで推奨するかについて,パネル委員の意見は一致せず,投票により条件付きで推奨することが決定された.条件付き推奨を支持した理由としては,挿管が遅れるリスクがあり,呼吸不全の原因や重症度などにより,集団によって有効性が一貫していないことなどがあった. HFNC をARDS が疑われる患者に行う場合は,治療失敗リスクが高いことを認識した上で,必要な気管挿管が遅れることがないよう,気管挿管を行うことができるICU などで管理し,呼吸・循環動態の持続モニタリングを行う必要がある.可能ならば,血液ガス分析による評価を行うほうがよい.そのほかにも,意識レベル,気道の評価,認容性について評価する.酸素化と呼吸回数を用いたROX index でもHFNC 失敗予測における2 時間後のカットオフ値が示されており,2 時間以内に初期評価を行うほうがよい6).HFNC 開始から長時間経過した気管挿管は死亡リスクが増加するため,必要な気管挿管を遅らせないことが重要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかどうか,本診療ガイドライン公表後に実施状況についてモニタリングすることが望まれる. 研究の可能性 Research priorities HFNC 導入のタイミング,腹臥位療法との併用,離脱方法やタイミングについては更なる検討が必要であろう.参考文献1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all‒cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta‒analysis. JAMA 2020;324:57‒67.
2) Frat JP, Thille AW, Mercat A, et al. High‒flow oxygen through nasal cannula in acute hypoxemic respiratory failure. N Engl J Med 2015;372:2185‒96. 3) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43: 304‒77. 4) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Crit Care Med 2017;45:486‒ 552. 5) Rochwerg B, Einav S, Chaudhuri D, et al. The role for high flow nasal cannula as a respiratory support strategy in adults:a clinical practice guideline. Intensive Care Med 2020;46:2226‒37. 6) Roca O, Caralt B, Messika J, et al. An index combining respiratory rate and oxygenation to predict outcome of nasal high‒flow therapy. Am J Respir Crit Care Med 2019;199: 1368‒76.
背景,この問題の優先度 急性呼吸不全患者に対するNPPV は,気管挿管による合併症を回避するために使用されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.非心原性肺水腫やCOPD の急性増悪に対してNPPV は有効であるが,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である.『日本版ARDS診療ガイドライン2016』において,ARDS 患者に対する初期の呼吸管理としてNPPV が提案されているが,ARDS 患者はNPPV 失敗のハイリスク患者の1 つである. ARDS に対してNPPV を行うことがあるが, NPPV 失敗は院内死亡を増加させるなど,転帰不良と関連しており,慎重に管理しなければな らない.現時点では,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療とはいえない.したがって,この問題の優先順位はたぶん高い. 解 説 PICO 患者(P):成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭 素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介入(I):NPPV.対照(C):気管挿管. 1 2 1 領域B 非侵襲的呼吸補助 ARDS 患者に気管挿管を行う前にNPPV を使用するべきか? CQ 17 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非 侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比 較して,NPPV を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の 確実性のエビデンス:GRADE 2B). 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,NPPV 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 推 奨 付帯事項
アウトカム(O):短期死亡,肺炎. エビデンスの要約 RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.NPPV とMV を直接比較したRCT は2 件(n=129)であり,間接比較を形成するループはなかった.短期死亡(2RCT:n=129)に関する効果推定値は31 人減少╱1,000 人(95%CI:203 人減少~296 人増加)であり,肺炎(2RCT:n= 129)に関する効果推定値は401 人減少╱1,000人(95%CI:450 人減少~295 人減少)であった.以上より,NPPV による望ましい効果は「中程度」と判断した. NPPV では気道の保護ができない可能性があり,今回のSR では肺炎を害に関する重大なアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はNPPVにより減少しており,望ましくない効果ではなかった.害に関する重要なアウトカムである「皮膚障害」について報告したRCT は1 件あり,NPPV ではMV と比較して,皮膚障害が多かった(3╱32[9.4%]vs. 0╱32[0%]).以上より,NPPV による望ましくない効果は「小さい」と判断した. エビデンスの確実性 すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高い「中」と判断した.すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.現状のネットワークメタ解析における不精確さの評価はサンプルサイズが加味されていないが,今回採用されたアウトカムのうち,肺炎に対するエビデンスはサンプルサイズが不足している可能性がある.不精確さで1 等級ダウンした場合,効果のエビデンスの 全体的な確実性は「低」となる. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.NPPVによる効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.NPPV には専用の装置が必要であるが,人工呼吸器と比較して比較的安価である.また,一部の人工呼吸器ではNPPV を行うことができる.すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した. パネル会議 事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管する前にNPPV を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0点,見解不一致指数0.29であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDSと診断することは困難であり,推奨文の対象をARDSから変更することについて議論された.また,ネットワークメタ解析ではあるが,直接比較したRCT は2 件(n=129)であり,間接比較を形成するループはなく,不精確さが深刻ではないかという意見があったが,パネル会議の時点でのGRADE 評価ではサンプルサイズに関する評価方法がなく,エビデンスの確実性は変わらず「中」とした.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,NPPV を行うことを条件付きで推奨する」が新たに推奨文として提案され,中央値8.0 点,見解不一致指数0.22 で合 2 3 4 5
意に至った. サブグループの検討事項 ヘルメット型インターフェースを用いたNPPV 管理と口鼻マスクを用いたNPPV 管理に分けたSR╱NMA が報告されており,ヘルメット型インターフェースの有効性を示した1).しかし,ヘルメット型インターフェースを用いたNPPV のRCT 5 件のうち4 件がcontinuous positive airway pressure(CPAP)であった. pressure support ventilation(PSV)では換気量が増大する可能性があり,大きい1 回換気量はNPPV 失敗のリスクであるため2),今回のSR ではNPPV をこれらのモード別(CPAP とPSV)に分けたサブ解析を行った. MV と比較し,CPAP では,短期死亡(直接比較なし)に関する効果推定値は,150 人減少╱1,000 人(95%CI:296 人減少~206 人増加),肺炎(直接比較なし)に関する効果推定値は463 人減少╱1,000 人(95%CI:487 人減少~322 人減少)であった. MVと比較し,PSVでは,短期死亡(2RCT: n=129)に関する効果推定値は,31 人減少╱ 1,000 人(95%CI:204 人減少~299 人増加),肺炎(2RCT:n=129)に関する効果推定値は382 人減少╱1,000 人(95%CI:491 人減少~ 375 人減少)であった.それぞれのアウトカムにおけるランキングはいずれもCPAP のほうがPSV よりも高かった. 実施上の考慮事項 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』3)では,「成人ARDS 患者の初期の呼吸管理としてNPPV を行うことを提案する(GRADE 2C)」と記載されている.また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』4,5)では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されている.しかしながら,これらの診療ガイドライ ンは酸素療法との比較であり,MV と比較したエビデンスに基づく推奨ではない.欧米の呼吸器学会による急性呼吸不全に対するNPPV 診療ガイドラインでは,慢性呼吸不全の増悪ではない急性呼吸不全患者を対象とするCQ がある6).このような集団には肺炎やARDS が含まれているが,PEEP がなく,正確な吸入酸素濃度も不明であり,ARDS かどうか判断するのが難しいとされている.NPPV は施設の習熟度で効果に差があるかもしれない.NPPV をARDSが疑われる患者に行う場合は,治療失敗リスクが高いことを認識した上で,必要な気管挿管が遅れることがないよう,気管挿管を行うことができるICUなどで管理し,呼吸・循環動態の持続モニタリングを行う必要がある.可能ならば,血液ガス分析による評価を行うほうがよい.そのほかにも,意識レベル,気道の評価,認容性について評価する.バイタルサインと血液ガス分析データからなるHACOR スコアを用いたNPPV 失敗予測は,治療開始1 時間がそれ以降の評価よりもAUC が高く,1 時間程度で初期評価を行うほうがよい7).NPPV 開始から長時間経過した気管挿管は死亡リスクが増加するため,必要な気管挿管を遅らせないことが重要である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版敗血症診療ガイドライン2020』4,5)では成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV もしくはHFNC を行うことを弱く推奨している.また,『Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021』8,9)では敗血症が原因の呼吸不全患者において,NPPV よりもHFNC を用いることを弱く推奨している. 3 4 5
治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかどうか,本診療ガイドライン公表後に実施状況についてモニタリングすることが望まれる. 今後の研究の可能性 ARDS 患者に対するMV は肺保護換気が一般的になっているが,今回採用したRCT 2 件では,肺保護換気がなされていなかった.肺保護換気を行ったMV と比較した研究が望まれる. 文献検索式と文献選択 「acute hypoxemic respiratory failure」「noninvasive positive pressure ventilation」「high flow nasal cannula」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月15 日までの文献を検索したところ6,482 件の研究が同定され,スクリーニ ングの結果19 件のRCT10—28)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Wysocki 199510), Antonelli 199811), Antonelli 200012), Delclaux 200013), Martin 200014), Hilbert 200115), Ferrer 200316), Cosentini 201017), Squadrone 201018), Wermke 201219), Zhan 201220), Brambilla 201421), Bell 201522), Frat 201523), Lemiale 201524), Lemiale 201525), Muncharaz 201726), Azoulay 201827), He 201928). 資料一覧 ・資料CQ17—1 Search strategy.・資料CQ17—2 フローダイアグラム.・資料CQ17—3 Risk of bias.・資料CQ17—4 Forest plot.・資料CQ17—5 エビデンスプロファイル.・資料CQ17—6 Evidence—to—Decision. 6 7 8 9 10 1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all—cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta—analysis. JAMA 2020;324:1—12. 2) Carteaux G, Millán—Guilarte T, De Prost N, et al. Failure of noninvasive ventilation for de novo acute hypoxemic respiratory failure:role of tidal volume. Crit Care Med Feb 2016;44:282—90. 3) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the management of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 4) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J—SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 5) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J—SSCG 2020). Acute Med Surg 2021; 8:e659. 6) Rochwerg B, Brochard L, Elliott MW, et al. Official ERS╱ATS clinical practice guide- lines:noninvasive ventilation for acute respiratory failure. Eur Respir J 2017;50: 1602426. 7) Duan J, Han X, Bai L, Zhou L, et al. Assessment of heart rate, acidosis, consciousness, 参考文献
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資料CQ17—1 Search strategy
短期死亡MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5 #7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA
#2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 肺 炎MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5
#7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7 #9 "Noninvasive Ventilation/adverse effects"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure/adverse effects"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #10 "Oxygen Inhalation Therapy/adverse effects"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHF- C[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #11 #9 OR #10 #12 harm*[tiab] OR side effect*[tiab] OR adverse[tiab] OR toxicity[tiab] OR infection*[tiab] OR pneumonia*[tiab] OR trauma[tiab] OR barotrauma*[tiab] OR volutrauma*[tiab] OR pneumothorax[tiab] OR ulcer*[tiab] OR discomfort*[tiab] OR breakdown[tiab] OR damage[tiab] OR intoleran*[tiab] OR "Barotrauma/complications"[mh] OR "Pneumonia/complications"[mh] OR "Pressure Ulcer/complications"[mh] OR "Pneumothorax/complications"[mh] OR "Pneumonia, Ventilator-Associated"[mh] #13 #3 AND #11 AND #12 #14 Animals [mh] NOT Humans [mh] #15 #13 NOT #14 #16 #15 NOT #8
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
#8 [mh "Noninvasive Ventilation"/ae] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"/ae] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #9 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"/ae] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #10 #8 OR #9 #11 harm*:ti,ab OR "side effect":ti,ab OR adverse:ti,ab OR toxicity:ti,ab OR infection*:ti,ab OR pneumonia*:ti,ab OR trauma:ti,ab OR barotrauma*:ti,ab OR volutrauma*:ti,ab OR pneumothorax:ti,ab OR ulcer*:ti,ab OR discomfort*:ti,ab OR breakdown:ti,ab OR damage:ti,ab OR intoleran*:ti,ab OR [mh Barotrauma/co] OR [mh Pneumonia/co] OR [mh "Pressure Ulcer"/co] OR [mh Pneumothorax/co] OR [mh "Pneumonia, Ventilator-Associated"] #12 #3 AND #10 AND #11 #13 #12 NOT #7 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA #2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 #25 (( 非侵襲的補助換気/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #26 (( 持続気道陽圧/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA
#27 (( 非侵襲的陽圧呼吸/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #28 (( 酸素吸入療法/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 酸素吸入/TA #29酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #30 #25 OR #26 OR #27 OR #28 OR #29 #31害/TA OR 副作用/TA OR 毒性/TA OR 感染/TA OR 肺炎/TA OR 外傷/TA OR トラウマ/TA OR 気胸/TA OR潰瘍/TA OR 不快感/TA OR 損傷/TA OR 気圧障害/TA OR (( 気圧障害/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 肺炎/ TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 褥瘡性潰瘍/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 気胸/TH) AND (SH= 合併症)) OR人工呼吸器関連肺炎/TH #32 #7 AND #30 AND #31 #33 (#32) AND (PT= 会議録除く) #34 #43 NOT #24
資料CQ17—2 フローダイアグラム 短期死亡 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=7,771 MEDLINE(PubMed) 3,403件Cochrane CENTRAL 3,924件医中誌444件他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=108 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=19 検索で同定された研究 n=7,771 重複研究を除外した研究 n=6,482 除外基準に該当した研究 n=6,374 重複した研究 n=1,289 除外基準に該当した研究n=87理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複4件50件 27件4件1件1件
同定スクリーニング適格性組み入れ肺 炎他のリソースから同定された研究 n=7,771 (短期死亡の検索結果より) データベース検索で同定された研究n=2,630 MEDLINE(PubMed) 1,442件Cochrane CENTRAL 0件医中誌1,188件 検索で同定された研究 n=10,401 重複研究を除外した研究 n=9,104 フルテキストで適格性を評価した研究 n=128 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=10除外基準に該当した研究 n=8,976 重複した研究 n=1,297 除外基準に該当した研究n=107理由:・ 日本語・英語以外・ 学会抄録・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複・ 観察研究4件20件 42件13件1件1件26件
資料CQ17—3 Risk of bias NPPV vs. MV短期死亡肺 炎
資料CQ17—4 Forest plot NPPV vs. MV短期死亡 肺 炎
資料CQ17—5 エビデンスプロファイル NMA 推定値の確実性評価の詳細1.短期死亡 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非一貫性(inconsistency)深刻a深刻a深刻a深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻b深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中低高間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確さ(imprecision)深刻でない深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d 直接エビデンスの最終的グレード中低非常に低低間接エビデンス共通の比較HFNC NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード高高低高中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中低中2 つの比較のうち最低のグレード中中低低中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中低低中不精確さ(imprecision)非常に 深刻c深刻でない非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中非常に低非常に低非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中低低低高非整合性(incoherence)深刻でない深刻e NA NA NA深刻e不精確さ(imprecision)深刻でない深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d ネットワークエビデンスの最終的グレード中非常に低非常に低非常に低非常に低非常に低最も信用できる推定値直接ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNPPV:noninvasive positive pressure ventilation,非侵襲的呼吸補助.HFNC:high flow nasal cannula,高流量鼻カニュラ.MV:mechanical ventilation,侵襲的人工呼吸.NA:該当なし.
説 明a:I2高値. b:採用したRCT 2 件とも,MV で肺保護換気を行っていない. c:CI に相当の利益または相当な害,の両方が含まれる. d:RCT 1 件のみ. e:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
2.肺 炎 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻a深刻a深刻a深刻a非一貫性(inconsistency)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中中中間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確さ(imprecision)深刻でない非常に 深刻b深刻でない非常に 深刻b 直接エビデンスの最終的グレード中非常に低中非常に低間接エビデンス共通の比較NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード中中中中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中中2 つの比較のうち最低のグレード中中中中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中中中不精確さ(imprecision)非常に 深刻b深刻でない深刻でない非常に 深刻b 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中中非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中中中中中非整合性(incoherence) NA深刻でないNA NA NA深刻c不精確さ(imprecision)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非常に 深刻b ネットワークエビデンスの最終的グレード中中中中中非常に低最も信用できる推定値ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNA:該当なし.説 明a:すべての研究で盲検化されておらず,肺炎の診断定義が不明確な研究を含んでいる. b:CI に相当の利益または相当な害の両方が含まれる. c:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
相対指標と確実性1.短期死亡 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.71 (0.55~0.92) +++○ 中3.82 (0.58~25.05) +○○○非常に低0.71* (0.55~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.79 (0.47~1.32) ++○○ 低0.13 (0.02~0.74) +++○ 中0.68 (0.41~1.12) +○○○非常に低 MV vs. 酸素NA — 0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低NPPV vs. MV 0.92 (0.49~1.75) +○○○非常に低NA — 0.92 (0.40~1.75) +○○○非常に低HFNC vs. MV NA — 0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低NPPV vs. HFNC 2.30 (0.97~5.44) ++○○ 低0.67 (0.34~1.32) ++○○ 低1.07 (0.63~1.83) +○○○非常に低 RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし. *直接エビデンスが間接エビデンスよりもネットワーク推定値に大きく寄与しており,直接エビデンスに よる効果推定を採用した. 2.肺 炎 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.61 (0.40~0.92) +++○ 中NA — 0.61 (0.40~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.44 (0.14~1.43) +○○○非常に低0.07 (0.004~1.42) +○○○非常に低0.35 (0.12~1.03) +++○ 中 MV vs. 酸素NA — 3.28 (1.37~7.88) +++○ 中3.28 (1.37~7.88) +++○ 中 NPPV vs. MV 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中NA — 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中 HFNC vs. MV NA — 0.11 (0.03~0.40) +++○ 中0.11 (0.03~0.40) +++○ 中 NPPV vs. HFNC 2.17 (0.69~6.85) +○○○非常に低0.31 (0.01~7.94) +○○○非常に低1.75 (0.59~5.16) +○○○非常に低RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし.
資料CQ17—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV,HFNC)を使用するべきか? CQ17:ARDS 患者に気管挿管を行う前にNPPV を使用するべきか? NPPV:noninvasive positive pressure ventilation,HFNC:high flow nasal cannula oxygen therapy集 団:成人低酸素性呼吸不全 ただし,以下のいずれかの患者が50%以上を占める研究は除外 高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,呼吸不全の主な原因が心原性肺水腫またはCOPD の急性増悪,気管支喘息であることが明らか 介 入: NPPV比較対照:侵襲的人工呼吸(mechanical ventilation:MV)主要なアウトカム:短期死亡,肺炎セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:急性呼吸不全患者に対するNPPV は,気管挿管による合併症を回避するために使用 されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.非心原性肺水腫やCOPD の急性増悪に対してNPPV は有効であるが,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』において,ARDS 患者に対する初期の呼吸管理としてNPPVが提案されているが,ARDS 患者はNPPV 失敗のハイリスク患者の1 つである.ARDS に対してNPPV を行うことがあるが,NPPV失敗は院内死亡を増加させるなど,転帰不良と関連しており,慎重に管理しなければならない現時点では,ARDS 患者に対するNPPV は確立した治療とは言えない.したがって,この問題の優先順位はたぶん高い
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致した研究は,RCT 19 件と観察研 究6 件が施行されていた.観察研究はリスクオブバイアスが非常に深刻であり,メタ解析を行わず,RCT 19 件(n= 2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.NPPVとMV を直接比較したRCT は2 件(n=129)であり,間接比較を形成するループはなかった短期死亡(直接比較2 RCT:n=129)に関する効果推定値は,MV と比較してNPPV により,1,000 人あたり31人減少(95% CI:203 人減少~296 人増加)であり,肺炎(直接比較2 RCT:n=129)に関する効果推定値は1,000 人あたり401 人減少(95% CI:450 人減少~295人減少)であった以上より,NPPV による望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからないNPPV では気道の保護ができない可能性があり,今回の SR では肺炎を害に関する重大なアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はNPPV により減少しており,望ましくない効果ではなかった備考欄の記載と合わせて考えると,NPPV による望ましくない効果は「わずか」と判断した害に関する重要なアウ トカムである「皮膚障害」について報告したRCTは1件あり,NPPVではMVと比較して,皮膚障害が多かった(3/ 32[9.4%]vs. 0/32 [0%]) エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性短期死亡重大+○○○ 非常に低 肺炎重大+++○ 中
全体的なエビデンスの確実性すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないARDS 患者に対する非侵襲的呼吸補助において検討したア ウトカムでは,患者家族の価値観に関するデータはない一般的に,短期死亡,肺炎について,相対的価値は高く,そのばらつきは少ないことが予想される 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムMV (対照)* NPPV (介入)*絶対差 (RD) (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 短期死亡25/63 (39.7%) 24/66 (36.4%) 31 人減少/ 1,000 人(203 人減少~ 296 人増加) 0.92 (0.49~ 1.75) 肺炎31/63 (49.2%) 6/66 (9.1%) 401 人減少/ 1,000 人(450 人減少~ 295 人減少) 0.19 (0.09~ 0.40) *直接比較のイベント数/患者数(%) 望ましい効果と望ましくない効果のエビデンスより, NPPV による効果のバランスは,「たぶん介入が有利」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,NPPV はすでに日 常臨床で実行されており,受け入れは「たぶんはい」と判断した. NPPV には専用の装置が必要であるが,人工呼吸器と比較して比較的安価である 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,NPPV はほとんど の急性期病院で実施することができると思われるため,実行可能性は「たぶんはい」と判断したNPPV には専用の装置が必要であるが,一部の人工呼吸器ではNPPV を行うことができる.回路やインターフェースの違いについて,注意が必要である 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果 Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果 Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性 Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランス Balance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわからな い 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,NPPVを行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス: GRADE 2B). 付帯事項 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,NPPV 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者に気管挿管を行う前にNPPV を使用するべきか?患 者成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介 入 NPPV.
対 照 気管挿管.アウトカム 短期死亡,肺炎.エビデンスの要約RCT 19 件(n=2,777 人)を用いてネットワークメタ解析を行った.NPPV とMV を直接比較したRCT は2 件(n=129)であり,間接比較を形成するループはなかった.短期死亡(2 RCT:n=129)に関する効果推定値は1,000 人あたり31 人減少(95% CI:203人減少~296 人増加)であり,肺炎(2 RCT:n=129)に関する効果推定値は1,000 人あたり401人減少(95% CI:450 人減少~295 人減少)であった.以上より,NPPV による望ましい効果は「中程度」と判断した. NPPV では気道の保護ができない可能性があり,今回のSR では肺炎を害に関する重大なアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はNPPV により減少しており,望ましくない効果ではなかった.害に関する重要なアウトカムである「皮膚障害」について報告したRCT は1 件あり,NPPV ではMV と比較して,皮膚障害が多かった(3╱32[9.4%]vs. 0╱32[0%]).以上より,NPPV による望ましくない効果は「小さい」と判断した.エビデンスの確実性すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.現状のネットワークメタ解析における不精確さの評価はサンプルサイズが加味されていないが,今回採用されたアウトカムのうち,肺炎に対するエビデンスはサンプルサイズが不足している可能性がある.不精確さで1 等級ダウンした場合,効果のエビデンスの全体的な確実性は「低」となる.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.NPPV による効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.NPPV には専用の装置が必要であるが,人工呼吸器と比較して比較的安価である.また,一部の人工呼吸器ではNPPV を行うことができる.すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した.パネル会議事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管する前にNPPV を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.29 であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDS と診断することは困難であり,推奨文の対象をARDS から変更することについて議論された.また,ネットワークメタ解析ではあるが,直接比較したRCT は2 件(n=129)であり,間接比較を形成するループはなく,不精確さが深刻ではないかという意見があったが,パネル会議の時点でのGRADE 評価ではサンプルサイズに関する評価方法がなく,エビデンスの確実性は変わらず「中」とした.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,NPPV を行うことを条件付きで推奨する」が新たに推奨文として提案され,中央値8.0 点,見解不一致指数0.22 で合意に至った.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations ヘルメット型インターフェースを用いたNPPV 管理と口鼻マスクを用いたNPPV 管理に分けたSR╱NMA が報告されており,ヘルメット型インターフェースの有効性を示した1).しかし,ヘルメット型インターフェースを用いたNPPV のRCT 5 件のうち4 件がcontinuous positive airway pressure(CPAP)であった. Pressure support ventilation(PSV)では換気量が増大する可能性があり,大きい1 回換気量はNPPV 失敗のリスクであるため2),今回のSR ではNPPV をこれらのモード別(CPAP とPSV)に分けたサブ解析を行った. MV と比較し,CPAP では,短期死亡(直接比較なし)に関する効果推定値は,1,000 人あたり150 人減少(95% CI:296 人減少~206 人増加),肺炎(直接比較なし)に関する効果推定値は1,000 人あたり463 人減少(95% CI:487 人減少~322 人減少)であった. MV と比較し,PSV では,短期死亡(2 RCT:n=129)に関する効果推定値は,1,000 人あたり31 人減少(95% CI:204 人減少~299 人増加),肺炎(2 RCT:n=129)に関する効果推定値は1,000 人あたり382 人減少(95% CI:491 人減少~375 人減少)であった.それぞれのアウトカムにおけるランキングはいずれもCPAP のほうがPSV よりも高かった. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』では,「成人ARDS 患者の初期の呼吸管理としてNPPVを行うことを提案する(GRADE 2C)」と記載されている.また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されている.しかしながら,これらの診療ガイドラインは酸素療法との比較であり,MV と比較したエビデンスに基づく推奨ではない.欧米の呼吸器学会による『急性呼吸不全に対するNPPV 診療ガイドライン』では,慢性呼吸不全の増悪ではない急性呼吸不全患者を対象とするCQ がある3).このような集団には肺炎やARDS が含まれているが,PEEP がなく,正確な吸入酸素濃度も不明であり,ARDS かどうか判断するのが難しいとされている. NPPV は施設の習熟度で効果に差があるかもしれない.NPPV をARDS が疑われる患者に行う場合は,治療失敗リスクが高いことを認識した上で,必要な気管挿管が遅れることがないよう,気管挿管を行うことができるICU などで管理し,呼吸・循環動態の持続モニタリングを行う必要がある.可能ならば,血液ガス分析による評価を行うほうがよい.そのほかにも,意識レベル,気道の評価,認容性について評価する.バイタルサインと血液ガス分析データからなるHACOR スコアを用いたNPPV 失敗予測は,治療開始1時間がそれ以降の評価よりもAUCが高く,1時間程度で初期評価を行うほうがよい4).NPPV開始から長時間経過した気管挿管は死亡リスクが増加するため,必要な気管挿管を遅らせないことが重要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかどうか,本診療ガイドライン公表後に実施状況についてモニタリングすることが望まれる.
研究の可能性 Research priorities ARDS 患者に対するMV は肺保護換気が一般的になっているが,今回採用したRCT 2 件では,肺保護換気がなされていなかった.肺保護換気を行ったMV と比較した研究が望まれる.参考文献1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all—cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta—analysis. JAMA 2020;324:57—67. 2) Carteaux G, Millán—Guilarte T, De Prost N, et al. Failure of noninvasive ventilation for de novo acute hypoxemic respiratory failure:role of tidal volume. Crit Care Med 2016; 44:282—90. 3) Rochwerg B, Brochard L, Elliott MW, et al. Official ERS╱ATS clinical practice guidelines: noninvasive ventilation for acute respiratory failure. Eur Respir J 2017;50. 4) Duan J, Han X, Bai L, et al. Assessment of heart rate, acidosis, consciousness, oxygenation, and respiratory rate to predict noninvasive ventilation failure in hypoxemic patients. Intensive Care Med 2017;43:192—9.
背景,この問題の優先度 急性呼吸不全患者に対するHFNC は,気管挿管による合併症を回避するために使用されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.HFNC は,ARDS 患者の呼吸管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である.非侵襲的呼吸補助にはHFNC とNPPV があるが,主に肺炎によるARDSを対象に非侵襲的呼吸補助の有効性を検討した欧州での多施設RCT では, HFNC がNPPV や酸素療法と比較して,気管挿管や短期死亡を減少させた.しかし,その他のRCT やメタ解析ではHFNC の有効性は明らかではない1).このように急性呼吸不全患者に対するHFNC の有効性は一貫しておらず,この 問題の優先順位はたぶん高い. 解 説 PICO 患者(P):成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭 素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介入(I):HFNC.対照(C):気管挿管.アウトカム(O):短期死亡,肺炎. 1 2 1 領域B 非侵襲的呼吸補助 ARDS 患者に気管挿管を行う前にHFNC を使用するべきか? CQ 18 ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非 侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比 較して,HFNC を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の 確実性のエビデンス:GRADE 2B). 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,HFNC 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.HFNCとMV(mechanical ventilation)を直接比較したRCT はなく,間接エビデンスを用いた.短期死亡に関する効果推定値は56 人減少╱ 1,000 人(95%CI:248 人減少~386 人増加),肺炎に関する効果推定値は440 人減少╱1,000人(95%CI:478 人減少~295 人減少)であった.以上より,HFNC による望ましい効果は「中程度」と判断した. HFNC 中の誤嚥のリスクはよくわかっておらず,今回のSR では肺炎を害のアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はHFNC により減少しており,望ましくない効果ではなかった. HFNC(60 L╱min)による陽圧はおよそ4 cmH2O であり,気管挿管による侵襲的陽圧換気と比較して低く,肺損傷の可能性は低い.以上より,HFNC による望ましくない効果は「わずか」と判断した. エビデンスの確実性 すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高い「中」と判断した.すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.現状のネットワークメタ解析における不精確さの評価はサンプルサイズが加味されていないが,今回採用されたアウトカムのうち,肺炎に対するエビデンスはサンプルサイズが不足している可能性がある.不精確さで1 等級ダウンした場合,効果のエビデンスの全体的な確実性は「低」となる.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.HFNCによる効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.HFNC には専用の装置が必要であるが,人工呼吸器と比較して比較的安価である.また,一部の人工呼吸器ではHFNC を行うことができる.すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した. パネル会議 事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管する前にHFNC を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0点,見解不一致指数0.19であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDSと診断することは困難であり,推奨文の対象をARDSから変更することについて議論された.また,間接比較のみで,ループを形成するRCT のサンプルサイズは小さく,不精確さが深刻ではないかという意見があったが,パネル会議の時点でのGRADE 評価ではサンプルサイズに関する評価方法がなく,エビデンスの確実性は変わらず「中」とした.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,HFNC を行うことを条件付きで推奨する」が新たに推奨文として提案され,中央値8.0 点,見解不一致指数0.22 で合意に至った. サブグループの検討事項 HFNC に関するサブグループ解析は行わな 3 5 3
かった. 実施上の考慮事項 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』2)および欧米の集中治療医学会による『敗血症診療ガイドライン2016』3,4)ではHFNC に関するCQ はない.『日本版敗血症診療ガイドライン2020』5,6)では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,HFNC を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されているが,酸素療法との比較であり,MV と比較したエビデンスに基づく推奨ではない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版敗血症診療ガイドライン2020』5,6)では成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,NPPV もしくはHFNC を行うことを弱く推奨している.また,Surviving Sepsis Campaign Guideline 20217,8)では敗血症が原因の呼吸不全患者において,NPPV よりもHFNC を用いることを弱く推奨している.その他,欧州の集中治療医学会による『HFNC に関する診療ガイドライン』9)では,低酸素性呼吸不全に対して,酸素療法と比較してHFNC を行うことが推奨されている(GRADE 1B). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.今後の研究の可能性 今回行ったNMA では直接エビデンスがなく,間接エビデンスを採用しており,HFNC とMV を直接比較したRCT が望まれる. 文献検索式と文献選択 「acute hypoxemic respiratory failure」「noninvasive positive pressure ventilation」「high flow nasal cannula」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月15 日までの文献を検索したところ6,482 件の研究が同定され,スクリーニングの結果19 件のRCT10—28)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Wysocki 199510), Antonelli 199811), Antonelli 200012), Delclaux 200013), Martin 200014), Hilbert 200115), Ferrer 200316), Cosentini 201017), Squadrone 201018), Wermke 201219), Zhan 201220), Brambilla 201421), Bell 201522), Frat 201523), Lemiale 201524), Lemiale 201525), Muncharaz 201726), Azoulay 201827), He 201928). 資料一覧 ・資料CQ18—1 Search strategy.・資料CQ18—2 フローダイアグラム.・資料CQ18—3 Risk of bias.・資料CQ18—4 Forest plot.・資料CQ18—5 エビデンスプロファイル.・資料CQ18—6 Evidence—to—Decision. 4 5 6 7 8 9 10 1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all—cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta—analysis. JAMA 2020;324:1—12. 2) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- 参考文献
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資料CQ18—1 Search strategy
短期死亡MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5 #7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA
#2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 肺 炎MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/19) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5
#7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7 #9 "Noninvasive Ventilation/adverse effects"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure/adverse effects"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #10 "Oxygen Inhalation Therapy/adverse effects"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHF- C[tiab] OR NHFT[tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #11 #9 OR #10 #12 harm*[tiab] OR side effect*[tiab] OR adverse[tiab] OR toxicity[tiab] OR infection*[tiab] OR pneumonia*[tiab] OR trauma[tiab] OR barotrauma*[tiab] OR volutrauma*[tiab] OR pneumothorax[tiab] OR ulcer*[tiab] OR discomfort*[tiab] OR breakdown[tiab] OR damage[tiab] OR intoleran*[tiab] OR "Barotrauma/complications"[mh] OR "Pneumonia/complications"[mh] OR "Pressure Ulcer/complications"[mh] OR "Pneumothorax/complications"[mh] OR "Pneumonia, Ventilator-Associated"[mh] #13 #3 AND #11 AND #12 #14 Animals [mh] NOT Humans [mh] #15 #13 NOT #14 #16 #15 NOT #8
CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
#8 [mh "Noninvasive Ventilation"/ae] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"/ae] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #9 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"/ae] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #10 #8 OR #9 #11 harm*:ti,ab OR "side effect":ti,ab OR adverse:ti,ab OR toxicity:ti,ab OR infection*:ti,ab OR pneumonia*:ti,ab OR trauma:ti,ab OR barotrauma*:ti,ab OR volutrauma*:ti,ab OR pneumothorax:ti,ab OR ulcer*:ti,ab OR discomfort*:ti,ab OR breakdown:ti,ab OR damage:ti,ab OR intoleran*:ti,ab OR [mh Barotrauma/co] OR [mh Pneumonia/co] OR [mh "Pressure Ulcer"/co] OR [mh Pneumothorax/co] OR [mh "Pneumonia, Ventilator-Associated"] #12 #3 AND #10 AND #11 #13 #12 NOT #7 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/19) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA #2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 #25 (( 非侵襲的補助換気/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #26 (( 持続気道陽圧/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA
#27 (( 非侵襲的陽圧呼吸/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #28 (( 酸素吸入療法/TH) AND (SH= 有害作用)) OR 酸素吸入/TA #29酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #30 #25 OR #26 OR #27 OR #28 OR #29 #31害/TA OR 副作用/TA OR 毒性/TA OR 感染/TA OR 肺炎/TA OR 外傷/TA OR トラウマ/TA OR 気胸/TA OR潰瘍/TA OR 不快感/TA OR 損傷/TA OR 気圧障害/TA OR (( 気圧障害/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 肺炎/ TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 褥瘡性潰瘍/TH) AND (SH= 合併症)) OR (( 気胸/TH) AND (SH= 合併症)) OR人工呼吸器関連肺炎/TH #32 #7 AND #30 AND #31 #33 (#32) AND (PT= 会議録除く) #34 #43 NOT #24
資料PCQ18—2 フローダイアグラム 短期死亡 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究n=7,771 MEDLINE(PubMed) 3,403件Cochrane CENTRAL 3,924件医中誌444件他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=108 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=19 検索で同定された研究 n=7,771 重複研究を除外した研究 n=6,482 除外基準に該当した研究 n=6,374 重複した研究 n=1,289 除外基準に該当した研究n=87理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複4件50件 27件4件1件1件
同定スクリーニング適格性組み入れ肺 炎他のリソースから同定された研究 n=7,771 (短期死亡の検索結果より) データベース検索で同定された研究n=2,630 MEDLINE(PubMed) 1,442件Cochrane CENTRAL 0件医中誌1,188件 検索で同定された研究 n=10,401 重複研究を除外した研究 n=9,104 フルテキストで適格性を評価した研究 n=128 系統的レビューに組み入れた研究 n=21 メタ解析に組み入れた研究 n=10除外基準に該当した研究 n=8,976 重複した研究 n=1,297 除外基準に該当した研究n=107理由:・ 日本語・英語以外・ 学会抄録・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 取得不可・ 重複・ 観察研究4件20件 42件13件1件1件26件
資料CQ18—3 Risk of bias直接比較したRCT がなく,間接エビデンスを使用した. 資料CQ18—4 Forest plot直接比較したRCT がなく,間接エビデンスを使用した. 資料CQ18—5 エビデンスプロファイル NMA 推定値の確実性評価の詳細1.短期死亡 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非一貫性(inconsistency)深刻a深刻a深刻a深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻b深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中低高間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確さ(imprecision)深刻でない深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d 直接エビデンスの最終的グレード中低非常に低低間接エビデンス共通の比較HFNC NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード高高低高中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中低中2 つの比較のうち最低のグレード中中低低中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中低低中不精確さ(imprecision)非常に 深刻c深刻でない非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中非常に低非常に低非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中低低低高非整合性(incoherence)深刻でない深刻e NA NA NA深刻e
不精確さ(imprecision)深刻でない深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に 深刻c非常に深刻c,d ネットワークエビデンスの最終的グレード中非常に低非常に低非常に低非常に低非常に低最も信用できる推定値直接ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNPPV:noninvasive positive pressure ventilation,非侵襲的呼吸補助.HFNC:high flow nasal cannula,高流量鼻カニュラ.MV:mechanical ventilation,侵襲的人工呼吸.NA:該当なし.説 明a:I2高値. b:採用したRCT 2 件とも,MV で肺保護換気を行っていない. c:CI に相当の利益または相当な害,の両方が含まれる. d:RCT 1 件のみ. e:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
2.肺 炎 比 較NPPV vs.酸素HFNC vs.酸素MV vs.酸素NPPV vs. MV HFNC vs. MV NPPV vs. HFNC 直接エビデンスバイアスのリスク(risk of bias)深刻a深刻a深刻a深刻a非一貫性(inconsistency)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非直接性(indirectness)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない出版バイアス(publication bias)検出できない検出できない検出できない検出できない直接エビデンスの予備的グレード中中中中間接エビデンスと同等に寄与しているいいえはいはいはい間接エビデンスの評価の必要性はいはいはいはい不精確さ(imprecision)深刻でない非常に 深刻b深刻でない非常に 深刻b 直接エビデンスの最終的グレード中非常に低中非常に低間接エビデンス共通の比較NPPV NPPV NPPV酸素治療1 vs. 共通比較のグレード中中中中治療2 vs. 共通比較のグレード中中中中2 つの比較のうち最低のグレード中中中中非推移性(intransitivity)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない間接エビデンスの予備的グレード中中中中不精確さ(imprecision)非常に 深刻b深刻でない深刻でない非常に 深刻b 間接エビデンスの最終的グレード非常に低中中非常に低ネットワークエビデンス直接エビデンスと間接エビデンスのうち高いほう中中中中中中非整合性(incoherence) NA深刻でないNA NA NA深刻c不精確さ(imprecision)深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない深刻でない非常に 深刻b ネットワークエビデンスの最終的グレード中中中中中非常に低最も信用できる推定値ネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークネットワークNA:該当なし.説 明a:すべての研究で盲検化されておらず,肺炎の診断定義が不明確な研究を含んでいる. b:CI に相当の利益または相当な害の両方が含まれる. c:直接推定値と間接推定値のCI の重なりがわずか.
相対指標と確実性1.短期死亡 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.71 (0.55~0.92) +++○ 中3.82 (0.58~25.05) +○○○非常に低0.71* (0.55~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.79 (0.47~1.32) ++○○ 低0.13 (0.02~0.74) +++○ 中0.68 (0.41~1.12) +○○○非常に低 MV vs. 酸素NA — 0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低0.79 (0.40~1.57) +○○○非常に低NPPV vs. MV 0.92 (0.49~1.75) +○○○非常に低NA — 0.92 (0.40~1.75) +○○○非常に低HFNC vs. MV NA — 0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低0.86 (0.37~1.97) +○○○非常に低NPPV vs. HFNC 2.30 (0.97~5.44) ++○○ 低0.67 (0.34~1.32) ++○○ 低1.07 (0.63~1.83) +○○○非常に低 RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし. *直接エビデンスが間接エビデンスよりもネットワーク推定値に大きく寄与しており,直接エビデンスに よる効果推定を採用した. 2.肺 炎 比 較直接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性間接推定値の 相対指標(RR 95% CI)確実性ネットワーク推定値の相対指標 (RR 95% CI)確実性 NPPV vs. 酸素0.61 (0.40~0.92) +++○ 中NA — 0.61 (0.40~0.92) +++○ 中 HFNC vs. 酸素0.44 (0.14~1.43) +○○○非常に低0.07 (0.004~1.42) +○○○非常に低0.35 (0.12~1.03) +++○ 中 MV vs. 酸素NA — 3.28 (1.37~7.88) +++○ 中3.28 (1.37~7.88) +++○ 中 NPPV vs. MV 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中NA — 0.19 (0.09~0.40) +++○ 中 HFNC vs. MV NA — 0.11 (0.03~0.40) +++○ 中0.11 (0.03~0.40) +++○ 中 NPPV vs. HFNC 2.17 (0.69~6.85) +○○○非常に低0.31 (0.01~7.94) +○○○非常に低1.75 (0.59~5.16) +○○○非常に低RR:リスク比,CI:信頼区間,NA:該当なし.
資料CQ18—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV,HFNC)を使用するべきか? CQ18:ARDS 患者に気管挿管を行う前にHFNC を使用するべきか? NPPV:noninvasive positive pressure ventilation,HFNC:high flow nasal cannula oxygen therapy集 団:成人低酸素性呼吸不全 ただし,以下のいずれかの患者が50%以上を占める研究は除外高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,呼吸不 全の主な原因が心原性肺水腫またはCOPD の急性増悪,気管支喘息であることが明らか 介 入: HFNC比較対照:侵襲的人工呼吸(mechanical ventilation:MV)主要なアウトカム:短期死亡,肺炎セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:急性呼吸不全患者に対するHFNC は,気管挿管による合併症を回避するために使用 されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡リスクを増加させる.HFNC は,ARDS患者の呼吸管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない非侵襲的呼吸補助にはHFNC とNPPV があるが,主に肺 炎によるARDS を対象に非侵襲的呼吸補助の有効性を検討した欧州での多施設RCT では,HFNC がNPPV や酸素療法と比較して,気管挿管や短期死亡を減少させた.しかし,その他のRCT やメタ解析ではHFNC の有効性は明らかではない1)このように急性呼吸不全患者に対するHFNC の有効性は一貫しておらず,この問題の優先順位はたぶん高い
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致した研究は,RCT 19 件と観察 研究6 件が施行されていた.観察研究はバイアスのリスクが非常に深刻であり,メタ解析を行わず,RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った. HFNC とMV を直接比較したRCT はなく,間接エビデンスを用いた益のアウトカムとして短期死亡に関する効果推定値は, MV と比較してHFNC により,1,000 人あたり56 人減少(95% CI:248 人減少~386 人増加),肺炎に関する効果推定値は1,000 人あたり440 人減少(95% CI:478人減少~295 人減少)であった以上より,HFNC による望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからないHFNC 中の誤嚥のリスクはよくわかっておらず,今回の SR では肺炎を害のアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はHFNC により減少しており,望ましくない効果ではなかった備考欄の記載と合わせて考えると,HFNC による望ましくない効果を「わずか」と判断したHFNC(60 L/min)によ る陽圧はおよそ4 cmH2Oであり2),MV と比較して低く,肺損傷の可能性は低いことが予想される エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性短期死亡重大+○○○ 非常に低 肺 炎重大+++○ 中 全体的なエビデンスの確実性すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体
におけるエビデンスの確実性は,最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないARDS 患者に対する非侵襲的呼吸補助において検討した アウトカムでは,患者・家族の価値観に関するデータはない一般的に,短期死亡,肺炎について,相対的価値は高く,そのばらつきは少ないことが予想される 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムMV (対照) HFNC (介入)絶対差(RD) (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 短期死亡NA NA 56 人減少/ 1,000 人(248 人減少~ 386 人増加) 0.86 (0.37~ 1.97) 肺炎NA NA 440 人減少/ 1,000 人 (478 人減少~ 295 人減少) 0.11 (0.03~ 0.40) NA:該当なし(直接比較のRCT がなく,間接比較に よる効果推定値) 望ましい効果と望ましくない効果のエビデンスより, NPPV による効果のバランスは,「たぶん介入が有利」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,HFNC はすでに 日常臨床で実行されており,HFNC による望ましくない効果はほとんどなく,受け入れは「たぶんはい」と判断した. HFNC には専用の装置(ブロワー,ブレンダ,ベンチュリー,加熱式加湿器など)が必要であるが,人工呼吸器と比較して比較的安価である 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,HFNC はほとん どの急性期病院で実施することができると思われるため,実行可能性は「たぶんはい」と判断したHFNC には専用の装置が必要であるが,一部の人工呼吸器ではHFNC を行うことができる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,HFNCを行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス: GRADE 2B). 付帯事項 必要な気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させる可能性があるため,HFNC 開始後は気管挿管ができる環境で慎重に管理するべきである.非侵襲的呼吸補助の禁忌には,気道の保護ができない,嘔吐のリスクが高い,意識障害,非協力的,不安定な循環動態などがある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者に気管挿管を行う前にHFNC を使用するべきか?患 者成人低酸素性呼吸不全(高二酸化炭素血症,術後呼吸不全,抜管後呼吸不全,外傷後の呼吸不全,心原性肺水腫,COPD の急性増悪,気管支喘息による呼吸不全患者が50%以上含まれる研究は除外).介 入 HFNC.
対 照 気管挿管.アウトカム 短期死亡,肺炎.エビデンスの要約RCT 19 件(n=2,777)を用いてネットワークメタ解析を行った.HFNC とMV を直接比較したRCT はなく,間接エビデンスを用いた.短期死亡に関する効果推定値は1,000 人あたり56 人減少(95% CI:248 人減少~386 人増加),肺炎に関する効果推定値は1,000 人あたり440 人減少(95% CI:478 人減少~295 人減少)であった.以上より,HFNC による望ましい効果は「中程度」と判断した. HFNC 中の誤嚥のリスクはよくわかっておらず,今回のSR では肺炎を害のアウトカムとして考えたが,肺炎の発生はHFNC により減少しており,望ましくない効果ではなかった.HFNC(60 L╱ min)による陽圧はおよそ4 cmH2O であり2),気管挿管による侵襲的陽圧換気と比較して低く,肺損傷の可能性は低い.以上より,HFNC による望ましくない効果は「わずか」と判断した.エビデンスの確実性すべての効果の方向性は一致しており,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.現状のネットワークメタ解析における不精確さの評価はサンプルサイズが加味されていないが,今回採用されたアウトカムのうち,肺炎に対するエビデンスはサンプルサイズが不足している可能性がある.不精確さで1 等級ダウンした場合,効果のエビデンスの全体的な確実性は「低」となる.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定いずれのアウトカムも相対的価値が高く,そのばらつきは少ないことが予想される.HFNC による効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.HFNC には専用の装置が必要であるが,人工呼吸器と比較して比較的安価である.また,一部の人工呼吸器ではHFNC を行うことができる.すでに多くの急性期病院の日常臨床で実行されており,受け入れや実現可能性は「たぶんはい」と判断した.パネル会議事前投票では修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に対して,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管する前にHFNC を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.19 であった.パネル会議では,ARDS 診断基準(ベルリン定義)に基づくと,PEEP がない状態でARDS と診断することは困難であり,推奨文の対象をARDS から変更することについて議論された.また,間接比較のみで,ループを形成するRCT のサンプルサイズは小さく,不精確さが深刻ではないかという意見があったが,パネル会議の時点でのGRADE 評価ではサンプルサイズに関する評価方法がなく,エビデンスの確実性は変わらず「中」とした.その結果,「ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的補助換気の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,気管挿管と比較して,HFNC を行うことを条件付きで推奨する」が新たに推奨文として提案され,中央値8.0 点,見解不一致指数0.22 で合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations HFNC に関するサブグループ解析は行わなかった.
実施上の考慮事項 Implementation considerations 『日本版ARDS 診療ガイドライン2016』および欧米の集中治療医学会による『敗血症診療ガイドライン2016』ではHFNC に関するCQ はない3,4).『日本版敗血症診療ガイドライン2020』では,「成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して,HFNC を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」と記載されているが,酸素療法との比較であり,MV と比較したエビデンスに基づく推奨ではない.欧州の集中治療医学会による『HFNC に関する診療ガイドライン』では,低酸素性呼吸不全に対して,酸素療法と比較してHFNC を行うことが推奨されている(GRADE 1B)5).しかしながら, MV と比較した推奨ではない. HFNC をARDS が疑われる患者に行う場合は,治療失敗リスクが高いことを認識した上で,必要な気管挿管が遅れることがないよう,気管挿管を行うことができるICU などで管理し,呼吸・循環動態の持続モニタリングを行う必要がある.可能ならば,血液ガス分析による評価を行うほうがよい.そのほかにも,意識レベル,気道の評価,認容性について評価する. 酸素化と呼吸回数を用いたROX index でもHFNC 失敗予測における2 時間後のカットオフ値が示されており,2 時間以内に初期評価を行うほうがよい6).HFNC 開始から長時間経過した気管挿管は死亡リスクが増加するため,必要な気管挿管を遅らせないことが重要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として施設間における効果の違いや費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかどうか,本診療ガイドライン公表後に実施状況についてモニタリングすることが望まれる. 研究の可能性 Research priorities 今回行ったNMA では直接エビデンスがなく,間接エビデンスを採用しており,HFNC とMV を直接比較したRCT が望まれる.参考文献1) Ferreyro BL, Angriman F, Munshi L, et al. Association of noninvasive oxygenation strategies with all—cause mortality in adults with acute hypoxemic respiratory failure:a systematic review and meta—analysis. JAMA 2020;324:57—67. 2) Parke RL, Eccleston ML, McGuinness SP. The effects of flow on airway pressure during nasal high—flow oxygen therapy. Respir Care 2011;56:1151—5. 3) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43: 304—77. 4) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Crit Care Med 2017;45:486— 552. 5) Rochwerg B, Einav S, Chaudhuri D, et al. The role for high flow nasal cannula as a respiratory support strategy in adults:a clinical practice guideline. Intensive Care Med
2020;46:2226—37. 6) Roca O, Caralt B, Messika J, et al. An index combining respiratory rate and oxygenation to predict outcome of nasal high—flow therapy. Am J Respir Crit Care Med 2019;199: 1368—76.
背景,この問題の優先度 ARDS がある重症患者が生存するには,機械的人工呼吸器管理が必要になることが多い.機械的人工呼吸は肺がARDSから治癒するための時間を稼ぐが,死亡割合は依然として高い.いくつかの研究では,機械的人工呼吸は肺損傷や出血の原因になるかもしれないことが示唆されている.肺保護戦略は機械的人工呼吸による有害事象を減じるために取られる方法で,1 回換気量制限は肺保護戦略のうちの1 つである.いくつかの大規模RCT で効果が検証されているが効果は一貫していない.1 回換気量制限の効果と安全性を検証するため,系統的レビューとメタ解析が必要である.したがって,この問題の優先度は高い.解 説 PICO 患 者(P):16 歳以上の人工呼吸器管理された 成人ARDS 患者.介 入(I):1回換気量制限あり(4~8 mL/kg).対照(C):1 回換気量制限なし(>8 mL/kg).ア ウトカム(O):短期死亡,長期死亡,人工 呼吸器非使用日数(ventilator free days: VFD),入院日数,圧損傷. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したRCT が13 件施行されており(1 件はECMO を併用したもので除外),これらを用いたメタ解析を施行した. 1 回換気量制限を行うことで,長期死亡(11RCT:n=1,778)は1,000 人あたり75 人減少(95%CI:138 人少ない~24 人少ない), 1 2 1 2 推 奨 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を4~8 mL/kg に制限することを強く推奨する(強い推奨/中程度の確実性のエビデンス: GRADE 1B). 付帯事項 SR に用いた研究の採用基準を換気量制限群は4~8 mL/kg,換気量非制限群では>8 mL/kg の換気量とし今回の結果を得たため,上記推奨とした. 人工呼吸器管理された成人ARDS患者に対して1 回換気量を制限するべきか? CQ 19 領域C 侵襲的呼吸補助
短期死亡(11RCT:n=1,795)で1,000 人あたり85 人減少(95%CI:132 人少ない~9 人少ない),VFD(4RCT:n=1,045)で平均 3.28 日延長(95%CI:0.73 日延長~5.82 日延 長),入院期間(2RCT:n=186)で平均2.51日短縮(95%CI:18.53 日短縮~13.52 日延長),圧損傷(7RCT:n=1,485)で1,000 人あたり13 人減少(95%CI:52 人減少~40 人増加)であった.このことより,予想される望ましい効果は「たぶん大きい」と判断した.一方,害のアウトカムに関しての検討を行ったが,重大といえるアウトカムはなく,予想される害は「わからない」と判断した.以上より,効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した.注)低容量換気:4~8 mL/kg,通常換気: >8 mL/kg と定義した. エビデンスの確実性 アウトカムの方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中程度」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 低1 回換気量を行うことによる患者への負担,コストの増大は小さいと考えられ,実行可能性は高いと判断される. パネル会議 パネル会議において,修正Delphi 法により,「人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を制限することを強く推奨する(強い推奨/中の確実性のエビデンス:GRADE 1B)」が,中央値9.0 点,見解不一致指数 0.1316 で合意に至った.パネル会議では特に 議論はなかった.サブグループの検討事項 感度分析として,上記の低容量換気:4~8 mL/kg,通常換気:>8 mL/kg と定義された換気の比較のみでなく,基準にかかわらず著者の定義で,低1 回換気量と高1 回換気量を比較したものを含む解析を行ったが,主解析と同様の結果であった. 実施上の考慮事項 ARDS に対する低1 回換気量に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』1)では,1 回換気量6~8 mL/kg(予測体重)に設定することを推奨する(GRADE 1B)としている.本推奨とエビデンスの確実性が異なる原因として,採用研究数が6 から13 に増加したことやエビデンスの確実性の評価方法が異なっていることの影響が考慮された.また,ATS/ESICM/ SCCM2017 の『ARDS 診療ガイドライン』でも1 回換気量を4~8 mL/kg に制限することが強く推奨されており,1 回換気量を制限することは十分コンセンサスが得られていることがうかがえる.なお,自発呼吸努力が強く,1 回換気量が目標値に到達されない場合,急性期であれば,筋弛緩薬や鎮静薬の増量などを考慮するべきである(筋弛緩薬についてはCQ31 も参照).また,低1 回換気量による人工呼吸器管理を行う際には高二酸化炭素血症はある程度許容されるが(permissive hypercapnia),循環動態に影響を及ぼすほどの過度の呼吸性アシドーシスをきたさないように分時換気量の調整が必要である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版敗血症診療ガイドライン2020』2)では,成人敗血症患者の人工呼吸器管理の初期において肺保護換気戦略を行うことを弱く推奨し 3 4 5 3 4 5
ている.また,『Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021』3)では,すべてのARDS 患者において1 回換気量を6 mL/kg 以下に制限し,プラトー圧を30 cmH2O 以下で管理することを強く推奨している. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたっては,臨床上の問題として低1 回換気量(4~8 mL/kg)がどの程度順守されているかについて更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 今後の研究の可能性 低1 回換気量による肺保護戦略は現在広く用いられている.今後は,駆動圧や経肺圧を考慮した肺保護戦略との比較が必要かもしれない. 文献検索式と文献選択 「Respiratory distress」「Tidal volume」「Mechanical ventilation」をキーワードとし てPubMed, Cochrane CENTRAL, Embase, CINAHL,および医中誌で2020 年7 月12 日までの文献を検索したところ,20,060 件の研究が同定され,スクリーニングの結果13 件のRCT4‒16)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Agarwal 20134), Amato 19985), ARDSnet 20006), Brochard 19987), Brower 19998), East 19999), Orme 200310), Pereira 202011), Ranieri 199912), Stewart 199813), Sun 200914), Villar 200615), Wu 199816). 資料一覧 ・資料CQ19‒1 Search strategy.・資料CQ19‒2 フローダイアグラム.・資料CQ19‒3 Risk of bias.・資料CQ19‒4 Forest plot.・資料CQ19‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ19‒6 Evidence‒to‒Decision. 参考文献 1) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 2) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J‒SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med 2021;2:1‒67. 4) Agarwal R, Srinivasan A, Aggarwal AN, et al. Adaptive support ventilation for com- plete ventilatory support in acute respiratory distress syndrome:a pilot, randomized controlled trial. Respirology 2013;18:1108‒15. 5) Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al. Effect of a protective‒ventilation strategy on mortality in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 1998;338: 347‒54. 6) Acute Respiratory Distress Syndrome Network, Brower RG, Matthay MA, et al. Venti- lation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute 6 7 8 9 10
lung injury and the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2000;342: 1301‒8. 7) Brochard L, Roudot‒Thoraval F, Roupie E, et al. Tidal volume reduction for preven- tion of ventilator‒induced lung injury in acute respiratory distress syndrome. The Multicenter Trail Group on Tidal Volume reduction in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 1998;158:1831‒8. 8) Brower RG, Shanholtz CB, Fessler HE, et al. Prospective, randomized, controlled clin- ical trial comparing traditional versus reduced tidal volume ventilation in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 1999;27:1492‒8. 9) East TD, Heermann LK, Bradshaw RL, et al. Efficacy of computerized decision support for mechanical ventilation:results of a prospective multi‒center randomized trial. Proc AMIA Symp 1999;251‒5. 10) Orme J Jr, Romney JS, Hopkins RO, et al. Pulmonary function and health‒related quality of life in survivors of acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2003;167:690‒4. 11) Pereira Romano ML, Maia IS, Laranjeira LN, et al. Driving Pressure‒limited Strategy for Patients with Acute Respiratory Distress Syndrome. A Pilot Randomized Clinical Trial. Ann Am Thorac Soc 2020;17:596‒604. 12) Ranieri VM, Suter PM, Tortorella C, et al. Effect of mechanical ventilation on inflam- matory mediators in patients with acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 1999;282:54‒61. 13) Stewart TE, Meade MO, Cook DJ, et al. Evaluation of a ventilation strategy to prevent barotrauma in patients at high risk for acute respiratory distress syndrome. Pressure‒ and Volume‒Limited Ventilation Strategy Group. N Engl J Med 1998;338:355‒61. 14) Sun JJ, Yang MW, Wang CH, et al. Zhongguo Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue 2009; 21:609‒12. 15) Villar J, Kacmarek RM, Pérez‒Méndez L, et al. A high positive end‒expiratory pres- sure, low tidal volume ventilatory strategy improves outcome in persistent acute respiratory distress syndrome:a randomized, controlled trial. Crit Care Med 2006; 34:1311‒8. 16) Wu G, Lu B. The application of low tidal volume pressure‒controlled ventilation in patients with acute respiratory distress syndrome. Hunan Yi Ke Da Xue Xue Bao 1998;23:57‒8.
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/6) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR shock lung[tiab] #2 acute respiratory distress[tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #3 Acute[tiab] AND ((respirat*[tiab] OR ventilat*[tiab] OR pulmon*[tiab]) AND (fail*[tiab] OR depression [tiab])) #4 Lung injury[mh] OR ALI[tiab] OR Acute lung injur*[tiab] OR Ventilator-Induced Lung Injury[tiab] #5 Respiratory insufficiency[mh] OR Respiratory insufficiency[tiab] #6 Acute chest syndrome[mh] OR Acute chest syndrome[tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 "Tidal volume"[mh] OR (tidal[tiab] AND volum*[tiab]) #9 ventilation AND (strateg*[tiab] OR pressure*[tiab] OR limited[tiab] OR low[tiab] OR lower[tiab] OR less [tiab] OR differen*[tiab] OR variab*[tiab] OR varying[tiab]) #10 (lung[tiab] AND protective[tiab] AND ventilat*[tiab] ) OR LPVS[tiab] #11 Respiration,artificial[mh] OR "Artificial respiration"[tiab] OR "Artificial ventilation"[tiab] #12 Ventilators, Mechanical[mh] OR "Mechanical ventilation"[tiab] #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 ((randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] NOT (animals[mh] NOT humans [mh]))) #16 control group*[tiab] #17 #15 OR #16 #18 #14 AND #17
CENTRAL(Search date:2020/7/6) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "shock lung":ti,ab #2 "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #3 Acute:ti,ab AND ((respirat*:ti,ab OR ventilat*:ti,ab OR pulmon*:ti,ab) AND (fail*:ti,ab OR depression:ti,ab)) #4 [mh "Lung injury"] OR ALI:ti,ab OR "Acute lung injury":ti,ab OR " Ventilator-Induced Lung Injury":ti,ab #5 [mh "Respiratory insufficiency"] OR "Respiratory insufficiency":ti,ab #6 [mh "Acute chest syndrome"] OR "Acute chest syndrome":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Tidal volume"] OR (tidal:ti,ab AND volume:ti,ab) #9 ventilation AND (strategy:ti,ab OR pressure:ti,ab OR limited:ti,ab OR low:ti,ab OR lower:ti,ab OR less:ti,ab OR different:ti,ab OR variable:ti,ab OR varying:ti,ab) #10 (lung:ti,ab AND protective:ti,ab AND ventilatory:ti,ab) OR LPVS:ti,ab #11 [mh "Respiration, Artificial"] #12 [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "Mechanical ventilation":ti,ab #13 {OR #8-#12} #14 #7 AND #13 #15 [mh animals] NOT [mh humans] #16 #14 NOT #15資料CQ19–1 Search strategy
Igaku-Chuo-Zasshi(Search date:2020/7/12) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR “acute respiratory distress syndrome”/AL OR ショック肺/AL OR “shock lung”/AL #2肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR “acute lung Injury”/AL OR 人工呼吸器誘発肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #4呼吸抑制/TH OR 呼吸抑制/AL #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 1回換気量/TH OR 1回換気量/AL OR 低容量換気/AL OR “tidal volume”/AL #7 ( 肺/TH OR 肺/AL OR lung/AL) AND ( 保護/AL OR protective/AL) #8制限/AL OR 低/AL OR 保護/AL OR 圧/AL #9戦略/AL OR strategy/AL #10 #7 OR #8 OR #9 #11 #10 AND ([ 換気( 環境)]/TH OR 換気/Al OR ventilation/AL) #12人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL #13 LPVS/AL #14 #6 OR #11 OR #12 OR #13 #15 #5 AND #14 #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 #25 (#24) AND (PT= 会議録除く)
Embase(Search date:2020/6/28) S1 (EMB.EXACT("adult respiratory distress syndrome")) OR (TI,AB(ARDS OR "shock lung")) S2 (TI,AB("acute respiratory" p/0 (distress OR failure*))) S3 (TI,AB(acute n/3 (respirat* OR ventilat* OR pulmon*) n/3 (fail* OR depression))) S4 ((EMB.EXACT("acute lung injury")) OR (EMB.EXACT("hyperoxia-induced lung injury") OR EMB. EXACT("lung injury")) OR (EMB.EXACT("ventilator induced lung injury")) OR (TI,AB(ALI OR ("acute lung" p/0 injur*) OR "ventilator-Induced lung injury"))) S5 ((EMB.EXACT.EXPLODE("respiratory failure")) OR (TI,AB(respiratory p/0 insufficien*))) S6 ((EMB.EXACT("acute chest syndrome")) OR (TI,AB("acute chest syndrome"))) S7 (S1 OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6) S8 (EMB.EXACT("tidal volume") OR TI,AB(tidal n/2 volum*)) S9 (TI,AB(ventilation AND (strateg* OR pressure* OR limited OR low OR lower OR less OR differen* OR variab* OR varying))) S10 (TI,AB(("lung protective" n/2 ventilat*) OR LPVS))
S11 ((EMB.EXACT.EXPLODE("artificial ventilation")) OR (TI,AB(artificial p/0 (respiration* OR ventilation*)) OR (TI,AB(mechanical p/0 ventilation*)))) S12 (S8 OR S9 OR S10 OR S11) S13 (S7 AND S12) S14 ((((EMB.EXACT("controlled clinical trial") OR EMB.EXACT.EXPLODE("clinical trial (topic)") OR EMB. EXACT("randomized controlled trial")) OR (TI,AB(randomized) OR TI,AB(randomly) OR TI(trial) OR TI,AB(control p/0 group*))) NOT (ANIMAL(YES) NOT HUMAN(YES)))) S15 (S13 AND S14) S16 (S15 AND UD(>=2013)) S17 (S15 AND UD(<2013))
CINAHL(Search date:2020/7/12) #1 (MH "Respiratory Distress Syndrome, Adult") OR TI ARDS OR AB ARDS OR TI "shock lung" OR AB "shock lung" #2 TI "acute respiratory distress" OR AB "acute respiratory distress" OR TI "acute respiratory failure" OR AB "acute respiratory failure" #3 TI Acute OR AB Acute AND ((TI respirat* OR AB respirat* OR TI ventilat* OR AB ventilat* OR TI pulmon* OR AB pulmon*) AND (TI fail* OR AB fail* OR TI depression OR AB depression)) #4 (MH "Lung injury+") OR TI ALI OR AB ALI OR TI "Acute lung injur*" OR AB "Acute lung injur*" OR TI "Ventilator-Induced Lung Injury" OR AB "Ventilator-Induced Lung Injury" #5 (MH "Respiratory Failure+") OR TI "Respiratory Failure" OR AB "Respiratory Failure" #6 (MH "Acute chest syndrome") OR TI "Acute chest syndrome" OR AB "Acute chest syndrome" #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (MH "Tidal volume") OR (TI tidal OR AB tidal AND TI volum* OR AB volum*) #9 ventilation AND (TI strateg* OR AB strateg* OR TI pressure* OR AB pressure* OR TI limited OR AB limited OR TI low OR AB low OR TI lower OR AB lower OR TI less OR AB less OR TI differen* OR AB differen* OR TI variab* OR AB variab* OR TI varying OR AB varying) #10 (TI lung OR AB lung AND TI protective OR AB protective AND TI ventilat* OR AB ventilat*) OR TI LPVS OR AB LPVS #11 (MH "Respiration, Artificial+") OR TI "Artificial respiration" OR AB "Artificial respiration" OR TI "Artificial ventilation" OR AB "Artificial ventilation" #12 (MH "Ventilators, Mechanical") OR TI “Mechanical Ventilat*” OR AB “Mechanical Ventilat*” #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13
CQ19 文献検索フローダイアグラム(PRISMA2009 より引用改変) 資料CQ19—2 フローダイアグラム データベース検索で同定された研究n=19,864 MEDLINE(PubMed) 4,607件Embase 6,488件Cochrane CENTRAL 4,370件CINAHL 3,668件医中誌731件他のリソースから同定された研究n=196 ICTRP 54件Clinical Trials.gov 142件 検索で同定された研究 n=20,060 重複研究を除外した研究 n=13,494 フルテキストで適格性を評価した研究 n=75 系統的レビューに組み入れた研究 n=14(1was with ECMO) メタ解析に組み入れた研究n=13(Without ECMO)除外基準に該当した研究 n=13,419 除外基準に該当した研究n=61理由:・ 重複した研究5件・ 研究デザインが異なる31件・ Pが異なる7件・ I/Cが異なる9件[I/Cともに同じ1回換気量 (Vt=6mL/kg)]・ その他1件 ・ 進行中研究7件・ スクリーニング中1件 重複した研究 n=6,566 同定スクリーニング適格性組み入れ
資料CQ19—3 Risk of bias 長期死亡 P/F 比 入院日数 短期死亡 圧損傷 人工呼吸器非使用日数(VFD) ADL/QOL
資料CQ19—4 Forest plot 短期死亡 長期死亡 ADL/QOL P/F 比
入院日数 圧損傷 人工呼吸器非使用日数(VFD)
資料CQ19—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討lower tidal volume (4~8 mL/kg) higher tidal volume (>8 mL/kg)相対指標(95% CI)絶対指標(95%CI) 短期死亡* 11 ランダム 化試験深刻で ない深刻a深刻で ない深刻で ないなし293/911 (32.2%) 359/884 (40.6%) RR 0.79 (0.66~ 0.94) 1,000 人あたり85 人減少(138 人減少~ 24 人減少) +++○ 中重大 長期死亡** 11 ランダム 化試験深刻で ない深刻a深刻で ない深刻で ないなし325/901 (36.1%) 385/877 (43.9%) RR 0.83 (0.70~ 0.98) 1,000 人あたり75 人減少(132 人減少~ 9 人減少) +++○ 中重大 ADL/QOL 1 ランダム 化試験深刻b深刻で ない深刻で ない非常に 深刻cなし37 29 ―平均4.8 点高い(1.03 点低い~ 10.63 点高い) +○○○非常に低重要 P/F 比(1 日目) 5 ランダム 化試験深刻で ない非常に深刻d,e深刻で ない深刻fなし513 522 ―平均17.79 mmHg 高い(22.96 mmHg 低い~58.53 mmHg 高い) +○○○非常に低重要 VFD*** 4 ランダム 化試験深刻で ない深刻g深刻で ない深刻で ないなし526 519 ―平均3.28 日延長(0.73 日延長~ 5.82 日延長) +++○ 中重大 入院日数 2 ランダム 化試験深刻で ない非常に深刻d,e深刻で ない非常に 深刻cなし97 89 ―平均2.51 日短縮(18.53 日短縮~ 13.52 日延長) +○○○非常に低重大 圧損傷 7 ランダム 化試験深刻で ない深刻a深刻で ない非常に 深刻cなし98/752 (13.0%) 105/733 (14.3%) RR 0.91 (0.64~ 1.28) 1,000 人あたり13 人減少(52 人減少~ 40 人増加) +○○○非常に低重大 *最も28 日に近い期間における死亡,**最もフォロー期間の長い死亡,***28 日間の人工呼吸器非使用日数(ventilator free days:VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比.説 明a.効果の方向性が研究間で異なる. b.ほとんどの研究でバイアスのリスクが高い. c.95%CI が臨床判断の閾値をまたぎ,サンプルサイズが最適情報量(optimal information size:OIS)に達しなかった. d.試験における効果の方向性の違い. e.異質性(I2 統計量および異質性検定で有意). f.95%CI が臨床判断の閾値をまたぐ. g.28 日間の人工呼吸器非使用日数の計算方法の不一致.
資料CQ19—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ19:人工呼吸器管理された成人ARDS患者に対して1回換気量を制限する べきか? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者介 入: 1 回換気量制限あり(4~8 mL/kg)比較対照: 1 回換気量制限なし(>8 mL/kg)主要なアウトカム:長期死亡,短期死亡,人工呼吸器非使用日数(ventilator free days:VFD),入院期 間,圧損傷 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS がある重症患者が生存するには,機械的人工呼吸器管理が必要になることが 多い.機械的人工呼吸は肺がARDS から治癒するための時間を稼ぐが,死亡割合は依然として高い.いくつかの研究では,機械的人工呼吸は肺損傷や出血の原因になるかもしれないことが示唆されている.肺保護戦略は機械的人工呼吸による有害事象を減じるために取られる方法で,1 回換気量制限は肺保護戦略のうちの1 つである.いくつかの大規模RCT で効果が検証されているが効果は一貫していない.1 回換気量制限の効果と安全性を検証するため系統的レビューとメタ解析が必要である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS がある重症患者が生存するには,機械的人工呼吸器管理が必要に なることが多い.機械的人工呼吸は肺がARDS から治癒するための時間を稼ぐが,死亡割合は依然として高い.いくつかの研究では,機械的人工呼吸は肺損傷や出血の原因になるかもしれないことが示唆されている.肺保護戦略は機械的人工呼吸による有害事象を減じるために取られる方法で,1 回換気量制限は肺保護戦略のうちの1 つである.いくつかの大規模RCT で効果が検証されているが効果は一貫していない.1 回換気量制限の効果と安全性を検証するため系統的レビューとメタ解析が必要である.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずかSR の結果,PICO に一致したRCT が13 件施行されており(1 件はECMO
○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないを併用したもので除外),これらを用いたメタ解析を施行した 益のアウトカムとして短期死亡(11RCT:n=1,795)に関する効果推定値は,1 回換気量を制限することで1,000 人あたり85 人減少(95%CI: 138 人減少~24 人減少)し,長期死亡(11RCT:n=1,778)に関する効果推定値は,1,000 人あたり75 人減少(95%CI:132 人減少~9 人減少)し,VFD(4RCT:n=1,045)に関する効果推定値は平均差3.28日延長(95%CI:0.73 日延長~5.82 日延長)し,入院日数(2RCT:n =186)に関する効果推定値は平均差2.51 日短縮(95%CI:18.53 日短縮~13.52 日延長)し,圧損傷(7RCT:n=1,485)に関する効果推定値は1,000 人あたり13 人減少(95%CI:52 人減少~40 人増加)した.以上より予想される望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからない害のアウトカムの検討を行ったが採用した研究や他の研究含め,重大と いえるアウトカムは検索されず.予想される望ましくない効果は「わからない」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 短期死亡重大⊕⊕⊕○ 中 長期死亡重大⊕⊕⊕○ 中 VFD重大⊕⊕⊕○ 中 入院日数重大⊕○○○ 非常に低 圧損傷重大⊕○○○非常に低 全体的なエビデンスの確実性:アウトカムの方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデン
スの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない1 回換気量を制限した人工呼吸器管理におけるアウトカムに関する価値 観についてのデータはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきはないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム通常換気 (対照)換気量制限 (介入)絶対差 (95%CI)相対効果 (95%CI) 短期死亡359/ 884 293/911 85 人減少/1,000 人 (138 人減少~24 人 減少) 0.79 (0.66~ 0.94) 長期死亡385/ 877 325/901 75 人減少/1,000 人(132 人減少~9 人 減少) 0.83 (0.70~ 0.98) VFD ― ―平均3.28 日延長(0.73 日延長~5.82 日延長) ― 入院日数― ―平均2.51 日短縮 (18.53 日短縮~ 13.52 日延長) ― 圧損傷105/ 733 98/752 13 人減少/1,000 人 (52 人減少~40 人 増加) 0.91 (0.64~ 1.28) 以上より,効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されてお り,コスト,有害性などを考慮しても十分実行可能と思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない1 回換気量を制限することで分時換気量が低下しやすくなり,高二酸化 炭素血症,呼吸性アシドーシスになりやすいと考えられる.実際,今回のSR に用いた1 件のRCT(n=120)では,高二酸化炭素血症が31/ 60 人(通常換気量群17/60 人)で認められている1).その場合,ある程度の高二酸化炭素血症は許容できると考えられるが(permissive hypercapnia),十分なモニタリングが必要である 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ● 結 論 推 奨 Recommendation 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を4~8 mL/kg に制限することを強く推奨する(強い推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 1B). 付帯事項 SR に用いた研究の採用基準を換気量制限群は4~8 mL/kg,換気量非制限群では>8 mL/kg の換気量とし今回の結果を得たため,上記推奨とした. 理 由 Justification 疑 問 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を制限するべきか?患 者 16 歳以上の人工呼吸器管理された成人ARDS 患者.介 入 1 回換気量制限あり(4~8 mL/kg).対 照 1 回換気量制限なし(>8 mL/kg).アウトカム 短期死亡,長期死亡,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院期間,圧損傷.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が13 件施行されており(1 件はECMO を併用したもので除外),これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,1 回換気量制限を行うことで,短期死亡(11RCT:n=1,795)に関する効果推定値は1,000 人あたり85 人減少(95%CI:138 人減少~24 人減少)し,長期死亡(11RCT:
n=1,778)に関する効果推定値は1,000 人あたり75 人減少(95%CI:132 人減少~9 人減少)し, VFD(4RCT:n=1,045)に関する効果推定値は平均3.28 日延長(95%CI:0.73 日延長~5.82 日延長)し,入院日数(2RCT:n=186)に関する効果推定値は平均2.51 日短縮(95%CI:18.53日短縮~13.52 日延長)し,圧損傷(7RCT:n=1,485)に関する効果推定値は1,000 人あたり13人減少(95%CI:52 人減少~40 人増加)した.このことより予想される望ましい効果は「たぶん大きい」と判断した.一方,害のアウトカムに関しての検討を行ったが,重大といえるアウトカムはなく,予想される害は「わからない」と判断した.以上より効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した.注)低容量換気:4~8 mL/kg,通常換気:>8 mL/kg と定義した.エビデンスの確実性アウトカムの方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定1 回換気量を制限することによる患者への負担,コストの増大は小さいと考えられ,実行可能性は高いと判断される.パネル会議パネル会議において,修正Delphi 法により,「人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1回換気量を制限することを強く推奨する(強い推奨/中の確実性のエビデンス:GRADE 1B)」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.パネル会議では特に議論はなかった.付加的な考慮事項1 回換気量の計算に関しては,実測体重ではなく,身長から計算される予測体重を用いる〔男性: 50+0.91(身長(cm)-152.4),女性:45.5+0.91(身長(cm)-152.4)〕ことが必要である. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 感度分析として,上記の低容量換気:4~8 mL/kg,通常換気:>8 mL/kg と定義された換気の比較のみでなく,その基準にかかわらず著者の定義で,低1 回換気量と高1 回換気量を比較したものを含む解析を行ったが,点推定値における望ましい,望ましくない方向性に変化はなく主解析と同様の結果であった. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ARDS に対する低1 回換気量に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』では,1 回換気量6~ 8 mL/kg(予測体重)に設定することを推奨する(GRADE 1B)と記載されており,今回のものと同様の推奨でとなっている.また,ATS/ESICM/SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』でも1 回換気量を4~8 mL/kg に制限することが強く推奨されており,1 回換気量を制限することは十分コンセンサスが得られていることがうかがえる.なお,自発呼吸努力が強く,1 回換気量が目標値に到達されない場合,急性期であれば,筋弛緩薬や鎮静薬の増量などを考慮するべきである(筋弛緩薬についてはCQ31 も参照).また,低1 回換気量による人工呼吸器管理を行う際には高二酸化炭素血症はある程度許容されるが(permissive hypercapnia),循環動態に影響を及ぼすほどの過度の呼吸性アシドーシスをきたさないように分時換気量の調整が必要である.
モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては,臨床上の問題として低1 回換気量(4~8 mL/kg)がどの程度順守されているかについて,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 低1 回換気量による肺保護戦略は現在広く用いられている.今後は,駆動圧や経肺圧を考慮した肺保護戦略との比較が必要かもしれない.参考文献1) Stewart TE, Meade MO, Cook DJ, et al. Evaluation of a ventilation strategy to prevent barotrauma in patients at high risk for acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 1998;338:355‒61.
背景,この問題の優先度 ARDS は,肺胞を取りまく毛細血管の透過性の亢進,損傷により肺の構造および機能に影響を及ぼす急性かつ重篤な状態である.ARDS の死亡割合は高く,機械的人工呼吸を必要とすることが多いが,人工呼吸器の使用は人工呼吸器関連肺損傷(ventilator—induced lung injury: VILI╱ventilator—associated lung injury: VALI)を引き起こす可能性がある.このため,これらの患者の治療は,肺保護換気戦略に基づいて行われる.高レベルの呼気終末陽圧(positive end—expiratory pressure:PEEP)の使用は,VILI╱VALI を軽減することを目的とした戦略の1 つである.このレビューでは,ALI (acute lung injury,急性肺損傷)およびARDS 患者におけるPEEP の高レベルと低レベルについて,益と害に関する評価のアップデートを目的とする.以上より,この問題の優先度は高いと判断した. 解 説 PICO 患者(P):人工呼吸器管理された成人ARDS 患 者.介入(I):高PEEP を用いた人工呼吸器管理(研究ごとの定義).対照(C):低PEEP を用いた人工呼吸器管理 1 2 1 領域C 侵襲的呼吸補助 人工呼吸器管理された成人ARDS患者に高いPEEP を使用するべきか? CQ 20 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を用いることを条件付き で推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 組み入れた研究では,介入群の1 日目のPEEP 値は10~16.3 cmH2O 程度,対照群では1 日目のPEEP 値は6.5~12.0 cmH2O であった.介入群で行われたPEEP の設定方法はPflex による設定*,ARDSnetwork(ARDSnet)のPEEP テーブルによる設定が多かった(付加的な考慮事項を参照).どのような方法でPEEP 設定法を用いるべきかに関してはCQ32~34 も参照のこと. *圧—容量曲線におけるlower inflection point の示す圧. 推 奨 付帯事項
(研究ごとの定義).アウトカム(O):短期死亡,長期死亡,VFD, 入院期間,圧損傷. エビデンスの要約 高いPEEP を用いることで,短期死亡(15RCT:n=4,108)は1,000 人あたり55 人減少(95%CI:103 人減少~0 人減少),長期死亡(15RCT:n=4,109)は1,000 人あたり52 人減少(95%CI:105 人減少~0 人減少), VFD(11RCT:n=2,988)は平均1.82 日延長(95%CI:0.37 日短縮~4.01 日延長),入院期間(6RCT:n=2,392)は平均0.86 日延長(95%CI:3.08 日短縮~4.8 日延長)した.このことより予想される望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,圧損傷(10RCT:n= 2,861)は1,000 人あたり1 人増加(95%CI: 23 人減少~39 人増加)した.以上より望ましくない効果は「わずか」と判断した.よって介入における効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 高PEEP 設定を行うことによる患者への負担,コストの増大は小さいと考えられることから,コストは利益と比較し「小さい」と判断した. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEPを用いることを提案する(弱い推奨╱非常に低 の確実性のエビデンス:GRADE2D)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では高いPEEP の設定法を一般診療医にもわかりやすいように具体的に記載するべきであるとの議論があった.パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 今回,軽症群(P╱F ratio>200)と中等症,重症群(P╱F ratio≲200)に分けたサブグループ解析を行った.軽症群での短期死亡は1,000人あたり24 人減少(95%CI:56 人減少~12人増加),長期死亡は1,000 人あたり25 人減少(95%CI:58 人減少~15 人増加)となり,中等症,重症群での短期死亡は1,000 人あたり93 人減少(95%CI:181 人減少~23 人増加),長期死亡は1,000 人あたり103 人減少(95% CI:195人減少~16人増加)であった.いずれも有意差はないものの,高PEEP 群で望ましい方向性を示していた.また,点推定値は中等症,重症群でより望ましい方向性を示していた.また,LOVS1),EXPRESS study2)などを含む他のメタ解析3)でも,中等症~重症群での高PEEP 戦略の有用性が示唆されており,P╱F ratio≲200 の症例では,高PEEP 戦略を検討するべきかもしれない.一方,今回の高PEEP と低PEEP を比較した研究のうちのいくつかでは,対照群で低PEEP,高1 回換気量が用いられている.そのことが結果に影響した可能性も考慮されるため,対照群で低PEEP,低1 回換気量が用いられている研究のみを用いた感度分析を行った.結果として,多くのアウトカムで点推定値がゼロに近い値となった.この結果は,他のメタ解析4)でも示されており,高PEEP の有用性は,高PEEP 自体でなく対照群の高1 回換気量の害 2 3 4 5 3
に影響された可能性も否定できない.上記の事項を含め,更なる検証が必要である. 実施上の考慮事項 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨では,「成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEP 値はプラトー圧が30 cmH2O 以下となる範囲内および循環動態に影響を与えない範囲内で設定することを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確信性「中」)」.また,中等症以上のARDS には高めのPEEP を用いることを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確信性「中」)であった.今回,別の介入の結果として両群のPEEP に有意差が出ている文献をinclusion したため,前回を大幅に上回る16 件のRCT が採用されたこと,エビデンスの確実性の評価方法が前回と異なることがエビデンスの確実性に影響を及ぼしたと考えられる. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版敗血症診療ガイドライン2020』5)では成人敗血症患者の人工呼吸器管理の初期において高PEEP 設定を用いないことを弱く推奨している.また,『Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021』6)では中等症および重症ARDS 患者の人工呼吸器管理において高PEEPを用いることを弱く推奨している. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として高PEEP による右心不全などについて更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況につい てモニタリングを行うことが必要である. 今後の研究の可能性 上記,サブグループの検討事項より,中等症~重症ARDS 患者において,低1 回換気量が保たれた状態で,高PEEP 戦略と低PEEP 戦略とを比較する質の高いRCT が必要であると考えられる.また,患者ごとの至適なPEEP 値を決める方法に関してははっきりしておらず,検討課題である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Positive End」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL,Embase, CINAHL,および医中誌で2020 年7 月12 日までの文献を検索したところ6,530 件の研究が同定され,スクリーニングの結果16 件のRCT7—22)を採用した. 本CQ で対象とした研究 A m a t o 1 9 9 8 7), A R T 2 0 1 7 8), B r o w e r 20049), Hodgson 201110), Hodgson 201911), Kacmarek 201612), Li 201713), Long 200614), Meade 200815), Mercat 200816), Nguyen 201917), Ranieri 199918), Salem 202019), Talmor 200820), Villar 200621), Wang 201922). 資料一覧 ・資料CQ20—1 Search strategy.・資料CQ20—2 フローダイアグラム.・資料CQ20—3 Risk of bias.・資料CQ20—4 Forest plot.・資料CQ20—5 エビデンスプロファイル.・資料CQ20—6 Evidence—to—Decision. 4 5 6 7 8 9 10
1) Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al. Lung open ventilation study investigators. Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment maneuvers, and high positive end—expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299:637—45. 2) Mercat A, Richard JC, Vielle B, et al;Expiratory Pressure(Express)Study Group. Positive end—expiratory pressure setting in adults with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299: 646—55. 3) Briel M, Meade M, Mercat A, et al. Higher vs lower positive end—expiratory pressure in patients with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome systematic review and meta—analysis. JAMA 2010;303:865—73, 2010. 4) Walkey A, Sorbo L, Hodgson C, et al. Higher PEEP versus lower PEEP strategies for patients with acute respiratory distress syndrome. A systematic review and meta— analysis. Ann Am Thorac Soc 2017;14:S297—303. 5) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J—SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 6) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Intensive Care Med 2021;47:1181—247. 7) Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al. Effect of a protective—ventilation strategy on mortality in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 1998;338: 347—54. 8) Writing group for the alveolar recruitment for acute respiratory distress syndrome trial(ART)investigators, Cavalcanti AB, Suzumura ÉA, et al. Effect of lung recruitment and titrated positive end—expiratory pressure(PEEP)vs low PEEP on mortality in patients with acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. JAMA 2017;318:1335—45. 9) Brower RG, Lanken PN, MacIntyre N, et al. Higher versus lower positive end—expiratory pressures in patients with the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2004;351:327—36. 10) Hodgson CL, Tuxen DV, Davies AR, et al. A randomised controlled trial of an open lung strategy with staircase recruitment, titrated PEEP and targeted low airway pressures in patients with acute respiratory distress syndrome. Crit Care 2011;15: R133. 11) Hodgson CL, Cooper DJ, Arabi Y, et al. Maximal recruitment open lung ventilation in acute respiratory distress syndrome(PHARLAP). A phase II, multicenter randomized controlled clinical trial. Am J Respir Crit Care Med 2019;200:1363—72. 12) Kacmarek RM, Villar J, Sulemanji D, et al. Open lung approach for the acute respira- tory distress syndrome:a pilot, randomized controlled trial. Crit Care Med 2016; 44:32—42. 13) Li J, Luo Z, Li X, et al. Effect of different transpulmonary pressures guided mechanical ventilation on respiratory and hemodynamics of patients with ARDS:a prospective 参考文献
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資料CQ20—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/8) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR shock lung[tiab] #2 acute respiratory distress[tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #3 Acute[tiab] AND ((respirat*[tiab] OR ventilat*[tiab] OR pulmon*[tiab]) AND (fail*[tiab] OR depression [tiab])) #4 Lung injury[mh] OR ALI[tiab] OR Acute lung injur*[tiab] OR Ventilator-Induced Lung Injury[tiab] #5 Respiratory insufficiency[mh] OR Respiratory insufficiency[tiab] #6 Acute chest syndrome[mh] OR Acute chest syndrome[tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 Positive-Pressure Respiration[mh] OR Positive Pressure Respiration[tiab] OR Positive End-Expiratory Pressure[tiab] OR PEEP[tiab] #9 Continuous Positive Airway Pressure[tiab] OR CPAP[tiab] OR NCPAP[tiab] #10 Airway Pressure Release Ventilation[tiab] OR APRV[tiab] #11 Intermittent Positive-Pressure Breathing[tiab] OR IPPB[tiab] #12 Intermittent Positive-Pressure Ventilation[tiab] OR IPPV[tiab] #13 lung protective ventilatory strateg*[tiab] OR LPVS[tiab] #14 alveolar recruit*[tiab] OR recruitment maneuve*[tiab] #15 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 (randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti]) NOT (animals[mh] NOT humans [mh]) #18 #16 AND #17
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "shock lung":ti,ab #2 "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #3 Acute:ti,ab AND ((respirat*:ti,ab OR ventilat*:ti,ab OR pulmon*:ti,ab) AND (fail*:ti,ab OR depression:ti,ab)) #4 [mh "lung injury"] OR ALI:ti,ab OR "Acute lung injury":ti,ab OR "Ventilator-Induced Lung Injury":ti,ab #5 [mh "Respiratory insufficiency"] OR "Respiratory insufficiency":ti,ab #6 [mh "Acute chest syndrome"] OR "Acute chest syndrome":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Positive Pressure Respiration"] OR "Positive Pressure Respiration":ti,ab OR "Positive End-Expiratory Pressure":ti,ab OR PEEP:ti,ab #9 "Continuous Positive Airway Pressure":ti,ab OR CPAP:ti,ab OR NCPAP:ti,ab #10 "Airway Pressure Release Ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #11 "Intermittent Positive-Pressure Breathing":ti,ab OR IPPB:ti,ab #12 "Intermittent Positive-Pressure Ventilation":ti,ab OR IPPV:ti,ab #13 "lung protective ventilatory strategy":ti,ab OR LPVS:ti,ab #14 "Alveolar recruitment":ti,ab OR "recruitment maneuvers":ti,ab #15 {OR #8-#14} #16 #7 AND #15
#17 [mh animals] NOT [mh humans] #18 #16 NOT #17
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/12) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR ショック肺/AL OR "shock lung"/AL #2肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 人工呼吸器誘発肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #4呼吸抑制/TH OR 呼吸抑制/AL #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6陽圧呼吸/TH OR 陽圧呼吸/AL OR PEEP/AL #7気道圧解除換気法/AL OR CPAP/AL OR APRV/AL #8間欠的陽圧換気/AL OR IPPV/AL OR IPPB/AL #9リクルートメント/AL #10 #6 OR #7 OR #8 OR #9 #11 #5 AND #10 #12ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #13比較試験/AL #14臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #15プラセボ/TH OR プラセボ/AL #16対照/AL #17コントロール/AL #18臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #19 #12 OR #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 #20 #11 AND #19 #21 (#20) AND (PT= 会議録除く)
Embase(Search date:2020/6/28) S1 (EMB.EXACT("adult respiratory distress syndrome")) OR (TI,AB(ARDS OR "shock lung")) S2 (TI,AB("acute respiratory" p/0 (distress OR failure*))) S3 (TI,AB(acute n/3 (respirat* OR ventilat* OR pulmon*) n/3 (fail* OR depression))) S4 (EMB.EXACT("acute lung injury")) OR (EMB.EXACT("hyperoxia-induced lung injury") OR EMB. EXACT("lung injury")) OR (EMB.EXACT("ventilator induced lung injury")) OR (TI,AB(ALI OR ("acute lung" p/0 injur*) OR "ventilator-Induced lung injury")) S5 (EMB.EXACT.EXPLODE("respiratory failure")) OR (TI,AB(respiratory p/0 insufficien*)) S6 (EMB.EXACT("acute chest syndrome")) OR (TI,AB("acute chest syndrome")) S7 (S1 OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6) S8 ((EMB.EXACT("positive end expiratory pressure")) OR (TI,AB("positive pressure respiration" OR "positive end-expiratory pressure" OR PEEP))) S9 (TI,AB("continuous positive airway pressure" OR CPAP OR NCPAP)) S10 (TI,AB("airway pressure release ventilation" OR APRV)) S11 (TI,AB("intermittent positive-pressure breathing" OR IPPB)) S12 (TI,AB("intermittent positive-pressure ventilation" OR IPPV)) S13 (TI,AB(("lung protective" p/0 ventilat* p/0 strateg*) OR LPVS))
S14 (TI,AB((alveolar p/0 recruit*) OR (recruitment p/0 maneuve*))) S15 (S8 OR S9 OR S10 OR S11 OR S12 OR S13 OR S14) S16 (S7 AND S15) S17 (((EMB.EXACT("controlled clinical trial") OR EMB.EXACT.EXPLODE("clinical trial (topic)") OR EMB. EXACT("randomized controlled trial")) OR (TI,AB(randomized) OR TI,AB(randomly) OR TI(trial))) NOT (ANIMAL(YES) NOT HUMAN(YES))) S18 (S16 AND S17)
CINAHL(Search date:2020/7/12) #1 (MH "Respiratory Distress Syndrome, Adult") OR TI ARDS OR AB ARDS OR TI "shock lung" OR AB "shock lung" #2 TI "acute respiratory distress" OR AB "acute respiratory distress" OR TI "acute respiratory failure" OR AB "acute respiratory failure" #3 TI Acute OR AB Acute AND ((TI respirat* OR AB respirat* OR TI ventilat* OR AB ventilat* OR TI pulmon* OR AB pulmon*) AND (TI fail* OR AB fail* OR TI depression OR AB depression)) #4 (MH "Lung injury+") OR TI ALI OR AB ALI OR TI "Acute lung injur*" OR AB "Acute lung injur*" OR TI "Ventilator-Induced Lung Injury" OR AB "Ventilator-Induced Lung Injury" #5 (MH "Respiratory Failure+") OR TI "Respiratory Failure" OR AB "Respiratory Failure" #6 (MH "Acute chest syndrome") OR TI "Acute chest syndrome" OR AB "Acute chest syndrome" #7 S1OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6 #8 (MH "Positive-Pressure Respiration+") OR TI "Positive Pressure Respiration" OR AB "Positive Pressure Respiration" OR TI "Positive End-Expiratory Pressure" OR AB "Positive End-Expiratory Pressure" OR TI PEEP OR AB PEEP #9 TI "Continuous Positive Airway Pressure" OR AB "Continuous Positive Airway Pressure" OR TI CPAP OR AB CPAP OR TI NCPAP OR AB NCPAP #10 TI "Airway Pressure Release Ventilation" OR AB "Airway Pressure Release Ventilation" OR TI APRV OR AB APRV #11 TI "Intermittent Positive-Pressure Breathing" OR AB "Intermittent Positive-Pressure Breathing" OR TI IPPB OR AB IPPB #12 TI "Intermittent Positive-Pressure Ventilation" OR AB "Intermittent Positive-Pressure Ventilation" OR TI IPPV OR AB IPPV #13 TI "lung protective ventilatory strateg*" OR AB "lung protective ventilatory strateg*" OR TI LPVS OR AB LPVS #14 TI "alveolar recruit*" OR AB "alveolar recruit*" OR TI "recruitment maneuve*" OR AB "recruitment maneuve*" #15 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 (MH "Randomized Controlled Trials") #18 TI ( random* OR placebo* OR blind* OR double blind* ) OR AB ( random* OR placebo* OR blind* OR double blind* ) #19 #17 OR #18 #20 #16 AND #19
資料CQ20—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れメタ解析に組み入れた研究 n=16(Without ECMO) 系統的レビューに組み入れた研究 n=17(1was with ECMO) フルテキストで適格性を評価した研究 n=114 重複研究を除外した研究 n=4,376 検索で同定された研究 n=6,530 除外基準に該当した研究 n=4,262 重複した研究 n=2,154 除外基準に該当した研究n=97理由:・ 重複した研究・ 研究デザインが異なる・ Pが異なる・ I/Cが異なる(PEEP測定値が両群とも11)・ その他(2つが中間解析の結果,1つが1999Amatoの報告と同一)・ 進行中研究・ スクリーニング中(1つはPEEPの測定値が不明,1つは研究デザインが不明) 9件43件 8件20件3件 12件2件 データベース検索で同定された研究n=6,233 MEDLINE(PubMed) Embase Cochrane CENTRAL CINAHL医中誌 112件185件ICTRP Clinical Trials.gov 1,366件2,433件1,629件587件218件 他のリソースから同定された研究 n=297 CQ20 文献検索フローダイアグラム(PRISMA2009 より引用改変)
資料CQ20—3 Risk of bias 短期死亡長期死亡 P/F比人工呼吸器非使用日数 入院日数圧損傷
資料CQ20—4 Forest plot 短期死亡 長期死亡 P/F比
人工呼吸器非使用日数 入院日数 圧損傷
資料CQ20—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討higher PEEP lower PEEP for ARDS相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 短期死亡* 15 ランダム 化試験深刻で ない深刻a,b 深刻で ない深刻cなし708/ 2,050 (34.5%) 755/ 2,058 (36.7%) RR 0.85 (0.72~ 1.00) 1,000 人あたり55 人減少(103 人減少~ 0 人減少) ++○○ 低重大 長期死亡** 15 ランダム 化試験深刻で ない深刻a,b 深刻で ない深刻cなし849/ 2,050 (41.4%) 899/ 2,059 (43.7%) RR 0.88 (0.76~ 1.00) 1,000 人あたり52 人減少(105 人減少~ 0 人減少) ++○○ 低重大 P/F 比(1 日目) 14 ランダム 化試験深刻で ない深刻a,b 深刻で ない深刻で ないなし1,976 1,969 —平均48.87 mmHg 高い(31.91 mmHg 高い~ 65.83 mmHg 高い) +++○ 中重要 VFD*** 11 ランダム 化試験深刻で ない非常に深刻b,d深刻で ない深刻cなし1,493 1,495 —平均1.82 日延長(0.37 日短縮~ 4.01 日延長) +○○○非常に低重大 入院日数 6 ランダム 化試験深刻で ない非常に深刻b,d深刻で ない深刻cなし1,175 1,217 —平均0.86 日延長(3.08 日短縮~ 4.8 日延長) +○○○非常に低重大 圧損傷 10 ランダム 化試験深刻で ない非常に深刻b,d深刻で ない非常に深刻c,eなし152/ 1,917 (7.9%) 133/ 1,944 (6.8%) RR 1.02 (0.67~ 1.57) 1,000 人あたり1 人増加(23 人減少~ 39 人増加) +○○○非常に低重大 ADL/QOL 0 — — — — — — — — 推定不可能 — — 重要 *最も28日に近い期間における死亡,**最もフォロー期間の長い死亡,***28日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比. ADL/QOL はアウトカム報告がなかった.説 明a.研究間で効果の方向性が異なる(ヌルと効果あり). b.高い異質性(I2統計量が高く,異質性検定で有意). c.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐ. d.研究間で効果の方向性が大きく異なる. e.最適情報量(OIS)に達していない.
資料CQ20—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ20:人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を使用するべき か? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者介 入:高PEEP を用いた人工呼吸器管理(研究ごとの定義)比較対照:低PEEP を用いた人工呼吸器管理(研究ごとの定義)主要なアウトカム:短期死亡,長期死亡,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院期間,圧損傷セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は,肺胞を取りまく毛細血管の透過性の亢進,損傷により肺の構造および機 能に影響を及ぼす急性かつ重篤な状態である.ARDS の死亡割合は高く,機械的人工呼吸を必要とすることが多いが,人工呼吸器の使用は人工呼吸器関連肺損傷(VILI/VALI)を引き起こす可能性がある.このため,これらの患者の治療は,肺保護換気戦略に基づいて行われる.高レベルの呼気終末陽圧(PEEP)の使用は,VALIを防止することを目的とした戦略の1 つである.このレビューでは,ARDS 患者におけるPEEP の高レベルと低レベルについて,益と害に関する評価のアップデートを目的とする 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS は,肺胞を取りまく毛細血管の透過性の亢進,損傷により肺の構 造および機能に影響を及ぼす急性かつ重篤な状態である.ARDS の死亡割合は高く,機械的人工呼吸を必要とすることが多いが,人工呼吸器の使用はVALI を引き起こす可能性がある.このため,これらの患者の治療は,肺保護換気戦略に基づいて行われる.高レベルのPEEP の使用は, VALI を防止することを目的とした戦略の1 つである.このレビューでは,ARDS 患者におけるPEEP の高レベルと低レベルについて,益と害に関する評価のアップデートを目的とする.以上よりこの問題の優先度は高いと判断した 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずかSR の結果,PICO に一致したRCT が16 件施行されており(1 件はECMO
○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないを用いたもので除外),これらを用いたメタ解析を施行した 益のアウトカムとして,短期死亡(15 RCT:n=4,108)に関する効果推定値は,高PEEP を用いた人工呼吸器管理を行うことで,1,000 人あたり55 人減少(95% CI:103 人減少~0 人減少)し,長期死亡(15 RCT:n=4,109)に関する効果推定値は,1,000 人あたり52 人減少(95% CI:105 人減少~0 人減少)し,VFD(11 RCT:n=2,988)に関する効果推定値は平均差1.82 日延長(95% CI:0.37 日短縮~4.01日延長)し,入院日数(6 RCT:n=2,392)に関する効果推定値は平均差0.86 日延長(95%CI:3.08 日短縮~4.8 日延長)した.以上から介入による望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,圧損傷(10 RCT:n=2,861)に関する効果推 定値は高PEEP を用いた人工呼吸器管理を行うことで,1,000 人あたり1 人増加(95% CI:23 人減少~39 人増加)となり介入による望ましくない効果は「わずか」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 短期死亡重大++○○ 低 長期死亡重大++○○ 低 VFD重大+○○○ 非常に低 入院日数重大+○○○ 非常に低 圧損傷重大+○○○ 非常に低 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はない高いPEEP を用いた人工呼吸器管理におけるアウトカムに関する価値観 についてのデータはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム低PEEP (対照)高PEEP (介入)絶対差 (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 短期死亡755/ 2,058 708/ 2,050 55 人減少/1,000 人 (103 人減少~ 0 人減少) 0.85 (0.72~ 1.00) 長期死亡899/ 2,059 849/ 2,050 52 人減少/1,000 人 (105 人減少~ 0 人減少) 0.88 (0.76~ 1.00) VFD — —平均1.82 日延長 (0.37 日短縮~ 4.01 日延長) — 入院日数— —平均0.86 日延長 (3.08 日短縮~ 4.8 日延長) — 圧損傷133/ 1,944 152/ 1,917 1 人増加/1,000 人(23 人減少~ 39 人増加) 1.02 (0.67~ 1.57) 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,人工呼吸器設定の問題であり, コスト,有害性などを考慮しても十分受け入れられると判断される 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,人工呼吸器の設定における変更 であり,十分実行可能と判断される 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を用いることを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 組み入れた研究では,介入群の1 日目のPEEP 値は10~16.3 cmH2O 程度,対照群では1 日目のPEEP 値は6.5~12.0 cmH2O であった.介入群で行われたPEEP の設定方法はPflex による設定*,ARDSnetwork(ARDSnet)のPEEP テーブルによる設定**が多かった(付加的な考慮事項を参照).どのような方法でPEEP 設定法を用いるべきかに関してはCQ32~34 も参照のこと. *圧—量曲線におけるlower inflection point の示す圧. **http://www.ardsnet.org/files/ventilator_protocol_2008-07.pdf 理 由 Justification 疑 問 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を使用するべきか.患 者 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者.介 入 高PEEP を用いた人工呼吸器管理(研究ごとの定義).対 照 低PEEP を用いた人工呼吸器管理(研究ごとの定義).
アウトカム 短期死亡,長期死亡,VFD,入院期間,圧損傷.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が16 件施行されており(1 件はECMO を用いたもので除外),これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,高いPEEP を用いることで,短期死亡(15 RCT:n=4,108)は1,000人あたり55 人減少(95% CI:103 人減少~0 人減少),長期死亡(15 RCT:n=4,109)は1,000人あたり52 人減少(95% CI:105 人減少~0 人減少),VFD(11 RCT:n=2,988)は平均1.82日延長(95% CI:0.37 日短縮~4.01 日延長),入院期間(6 RCT:n=2,392)は平均0.86 日延長(95% CI:3.08 日短縮~4.8 日延長)した.このことより予想される望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,害のアウトカムとして圧損傷(10 RCT:n=2,861)は1,000 人あたり1 人増加(95% CI:23 人減少~39 人増加)した.よって,望ましくない効果は「わずか」と判断した.以上より,介入における効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低い」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定高いPEEP を用いることによる患者への負担,コストの増大は小さいと考えられることから,コストは利益と比較し「小さい」と判断した.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を用いることを提案する(弱い推奨╱非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値8.0点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では高いPEEP の設定法を一般診療医にもわかりやすいように具体的に記載するべきであるとの議論があった.パネル会議では,再投票なく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項低いPEEP および高いPEEP の決定法として,以下のARDS net から提唱されている表が使用されることが多い.低いPEEP/FIO2の表FIO2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 PEEP(cmH2O) 5 5~8 8~10 10 10~12 12~14 18 18~24 高いPEEP/FIO2の表FIO2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 PEEP(cmH2O)5~14 14~16 16~18 18~20 18~20 20~22 22 22~24 サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回,軽症群(P╱F ratio>200)と中等症,重症群(P╱F ratio≲200)に分けたサブグループ解析を行った.軽症群での短期死亡は1,000 人あたり24 人減少(95% CI:56 人減少~12 人増加),長期死亡は1,000 人あたり25 人減少(95% CI:58 人減少~15 人増加)となり,中等症,重症群での短期死亡は1,000 人あたり93 人減少(95% CI:181 人減少~23 人増加),長期死亡は1,000人あたり103 人減少(95% CI:195 人減少~16 人増加)であった.いずれも有意差はないもの
の,高PEEP 群で望ましい方向性を示していた.また,点推定値は中等症,重症群でより望ましい方向性を示していた.また,LOVS1),EXPRESS study2)などを含む他のメタ解析3)でも,中等症~重症群での高PEEP 戦略の有用性が示唆されており,P╱F ratio≲200 の症例では,高PEEP 戦略を検討するべきかもしれない.一方,今回の高PEEP と低PEEP を比較した研究のうちのいくつかでは,対照群で低PEEP,高1 回換気量が用いられている.そのことが結果に影響した可能性も考慮されるため,対照群で低PEEP,低1 回換気量が用いられている研究のみを用いた感度分析を行った.結果として,多くのアウトカムで点推定値がゼロに近い値となった.この結果は,他のメタ解析4)でも示されており,高PEEP の有用性は,高PEEP 自体でなく対照群の高1 回換気量の害に影響された可能性も否定できない.上記事項を含め,更なる検証が必要である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨では,「成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEP 値はプラトー圧が30 cmH2O 以下となる範囲内および循環動態に影響を与えない範囲内で設定することを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確信性「中」).また,中等症以上のARDS には高めのPEEP を用いることを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確信性「中」)」であった.今回,別の介入の結果として両群のPEEP に有意差が出ている文献をinclusion したため,前回を大幅に上回る16 件のRCT が採用されたこと,エビデンスの確実性の評価方法が前回と異なることがエビデンスの確実性に影響を及ぼしたと考えられる.なお,高PEEP 設定を実施するにあたっては,循環動態への影響を十分モニタリングする必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として高PEEP による右心不全などについて,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 上記,サブグループの検討事項より,中等症~重症ARDS 患者において,低1 回換気量が保たれた状態で,高PEEP 戦略と低PEEP 戦略とを比較する質の高いRCT が必要であると考えられる.また,患者ごとの至適なPEEP 値を決める方法に関してははっきりしておらず,検討課題である.参考文献1) Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al. Lung open ventilation study investigators. Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment maneuvers, and high positive end— expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299:637—45. 2) Mercat A, Richard JC, Vielle B, et al;Expiratory pressure(express)study group. Positive end—expiratory pressure setting in adults with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299:646—55. 3) Briel M, Meade M, Mercat A, et al. Higher vs lower positive end—expiratory pressure in
patients with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:systematic review and meta—analysis. JAMA 2010;303:865—73. 4) Walkey A, Sorbo L, Hodgson C, et al. Higher PEEP versus lower PEEP strategies for patients with acute respiratory distress syndrome. A systematic review and meta—analysis. Ann Am Thorac Soc 2017;14:S297—303.
背景,この問題の優先度 成人ARDS 患者における人工呼吸器管理では,人工呼吸器関連肺損傷(VILI╱VALI)によって人工呼吸器装着日数の延長のみならず死亡率上昇につながることが危惧される.VILI╱ VALI をきたす要因の1 つとして気道内圧上昇が考えられ,プラトー圧を制限することによりVILI╱VALI を抑制することが期待される.その一方で,プラトー圧を制限することは有益性ばかりでなく高二酸化炭素血症(高CO2血症)などの有害事象を招く可能性も考えられる.プラトー圧制限の効果および有害事象を明らかにする検証が必要である.上記の背景から,本CQ の臨床的意義は大きい.解 説 PICO 患者(P):人工呼吸器管理が必要な成人ARDS 患者.介入(I):プラトー圧制限あり.対照(C):プラトー圧制限なし.アウトカム(O):短期死亡(28 日,院内死 亡),長期死亡(90 日,180 日死亡),VFD,圧損傷,高CO2血症による死亡(難治性アシドーシス,難治性アシドーシスによる死亡). エビデンスの要約 プラトー圧を制限群,非制限群を比較した6つのRCT(n=2,882)が見つかった.人工呼吸器管理を行う際にプラトー圧を制限すること 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者ではプラトー圧制限を行うべきか? CQ 21 成人ARDS 患者において,人工呼吸器管理を実施する際,プラトー圧制限を 行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデ ンス:GRADE 2D). 今回の結果からは,望ましい効果が必ずしも望ましくない効果を上回るとは言えず, 1 回換気量や経肺圧を適切に制限する状況下であれば,必ずしも高いプラトー圧が害とは言い切れないかもしれない. 推 奨 付帯事項
で,益のアウトカムとして,短期死亡(4RCT: n=1,897)で1,000 人あたり6 人増加(95% CI:54 人減少~81 人増加),長期死亡(3RCT:n=1,744)で1,000 人あたり4 人減少(95% CI:99 人減少~118 人増加),VFD (3RCT:n=1,723)で平均0.82 日延長(95% CI:4 日短縮~5.65 日延長),圧損傷(5RCT: n=2,779)で1,000 人あたり11 人減少(95% CI:30 人減少~12 人増加)であった.よって,介入による望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムとして,高CO2血症による死亡の報告はなかった.そのため,有害事象として,今回メタ解析で取り扱ったRCT(Meade 2008)を検討し,難治性アシドーシス(42╱508),難治性アシドーシスによる死亡(38╱508)の報告が認められた.よって,介入における望ましくない効果は「わずか」と判断した.以上より,効果と害のバランスは,「わからない」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果におけるアウトカムの方向性が一致しておらず,最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 介入は人工呼吸器管理における設定変更であり,日常臨床に広く取り入れられていることから,受け入れや実現可能性は十分に高いと考えられる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,本推奨は中央値8.0 点,見解不一致指数0.2118 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 プラトー圧を比較した研究を 1 低1 回換気量,高1 回換気量によりプラトー圧に差が生じているものと 2 1 回換気量は同等で,低PEEP設定と高PEEP 設定によりプラトー圧に差が生じているものとに分け,サブグループ解析を行った. 1 のサブグループでは,短期死亡106 人減少╱1,000(95% CI:284 人減少~208 人増加),長期死亡24 人減少╱1,000(95% CI:159人減少~178 人増加),VFD 3 日延長(95% CI:0.3 日延長~5.71 日延長),圧損傷4 人減少╱1,000(95% CI:35 人減少~40 人増加), 2 のサブグループでは,短期死亡37 人増加╱ 1,000(95% CI:6 人減少~84 人増加),長期死亡36 人増加╱1,000(95% CI:29 人減少~ 115 人増加),VFD 4 日短縮(95% CI:5.89 日短縮~2.11 日短縮),圧損傷15 人減少╱1,000 (95% CI:36 人減少~13 人増加)となった. 1 における介入群(低プラトー圧群),2 における対象群(高プラトー圧群)で有意にVFD の延長が認められた.また,他のほとんどのアウトカムで点推定値においては 1 では介入群(低プラトー圧群),2 では対象群(高プラトー圧群)に優位な傾向が認められた. 実施上の考慮事項 日常的に頻用されているため実施に関わる考慮事項はないが,患者因子として,プラトー圧を低くすることで,十分な換気量を維持することができず,二酸化炭素貯留,酸素化低下,呼吸仕事量の増加をきたし,プラトー圧をある程度高くせざるを得ない場合も考慮される.また,一般的なモニタリング(心電図,SpO2モニターなど)に加え,プラトー圧制限による血中二酸化炭素分圧の上昇をきたしやすいことを 3 4 5 3 4
考慮し,呼気二酸化炭素分圧を測定することも検討するべきである. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『ARDS 診療ガイドライン2016』1)では,「成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧は30 cmH2O 以下となるように設定することを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確信性「中」),付帯事項:最適なプラトー圧は不明であり今後の検討を要する」となっており,今回の推奨とほぼ同様の内容である. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたっては,臨床上の問題としてプラトー圧制限による合併症についての更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてのモニタリングが必要である. 今後の研究の可能性 ARDS に対するプラトー圧制限は,2000 年のARMA study2)以後強く推奨されてきた.しかし,プラトー圧を扱った多くの研究は,対象群で高1 回換気量を使用しており,上記のサブグループ解析でも示されたように,そのことが 予後に影響を与えた可能性も考慮される.駆動圧(または1 回換気量)を同等に制限した状況でのプラトー圧を比較(>30 cmH2O vs. ≲30 cmH2O)した大規模RCT が望まれる. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Plateau pressure」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月24 日までの文献を検索したところ2,822 件の研究が同定され,スクリーニングの結果6 件のRCT3—8)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Brochard 19983), Acute Respiratory Distress Syndrome Network 20004), Brower 19995), Meade 20086), Mercat 20087), Villar 20068). 資料一覧 ・資料CQ21—1 Search strategy.・資料CQ21—2 フローダイアグラム.・資料CQ21—3 Risk of bias.・資料CQ21—4 Forest plot.・資料CQ21—5 エビデンスプロファイル.・資料CQ21—6 Evidence—to—Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The Clinical Practice Guideline for the Manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 2) Brower R, Matthay M, Morris A, et al. Ventilation with lower tidal volumes as com- pared with traditional tidal volumes for acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2000;342:1301—8. 3) Brochard L, Roudot—Thoraval F, Roupie E, et al. Tidal volume reduction for preven- tion of ventilator—induced lung injury in acute respiratory distress syndrome. The Multicenter Trail Group on Tidal Volume reduction in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 1998;158:1831—8. 4) Acute Respiratory Distress Syndrome Network, Brower RG, Matthay MA, et al. Venti- 参考文献
lation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2000;342: 1301—8. 5) Brower RG, Shanholtz CB, Fessler HE, et al. Prospective, randomized, controlled clin- ical trial comparing traditional versus reduced tidal volume ventilation in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 1999;27:1492—8. 6) Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al. Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment maneuvers, and high positive end—expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299:637—45. 7) Mercat A, Richard JC, Vielle B, et al. Positive end—expiratory pressure setting in adults with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299:646—55. 8) Villar J, Kacmarek RM, Pérez—Méndez L, et al. A high positive end—expiratory pres- sure, low tidal volume ventilatory strategy improves outcome in persistent acute respiratory distress syndrome:a randomized, controlled trial. Crit Care Med 2006; 34:1311—8.
資料CQ21—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/23) #1 Respiratory distress syndrome, adult[mh] OR adult respiratory distress syndrom*[tiab] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR shock lung[tiab] OR ARDS*[tiab] #2 lung injury[mh] OR lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #3 acute[tiab] AND lung[tiab] AND (fail*[tiab] OR depression[tiab]) #4 ALI[tiab] OR Acute lung injur*[tiab] OR Ventilator-Induced Lung Injury[tiab] #5 Acute [tiab] AND (respirat*[tiab] OR ventilat*[tiab] OR pulmon*[tiab]) AND (fail*[tiab] OR depression[tiab]) #6 Acute chest syndrome[mh] OR (acute[tiab] AND chest[tiab] AND syndrom*[tiab]) #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 Respiration,artificial[mesh: noexp] OR Positive-Pressure Respiration[mh] OR Artificial respiration[tiab] OR Artificial ventilation[tiab] #9 Ventilators, Mechanical[mh] OR Mechanical ventilation[tiab] #10 pressure[tiab] AND (limit*[tiab] OR low[tiab] OR lower[tiab] OR less[tiab]) #11 (#8 OR #9) AND #10 #12 Tidal volume[mh] OR tidal volume*[tiab] #13 plateau pressure*[tiab] #14 LPVS [tiab] OR lung protective* [tiab] OR (protective [tiab] AND ventilat* [tiab]) #15 #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh: noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] #18 animals[mh] NOT humans[mh] #19 #17 NOT #18 #20 #16 AND #19
CENTRAL(Search date:2020/7/24) #1 [mh "Respiratory distress syndrome, adult"] OR "adult respiratory distress syndrome":ti,ab OR "acute respiratory distress syndrome":ti,ab OR "shock lung":ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "lung injury"] OR "lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #3 acute:ti,ab AND lung:ti,ab AND (failure:ti,ab OR depression:ti,ab) #4 ALI:ti,ab OR "Acute lung injury":ti,ab OR "Ventilator-Induced Lung Injury":ti,ab #5 Acute:ti,ab AND (respiratory:ti,ab OR ventilatory:ti,ab OR pulmonary:ti,ab) AND (failure:ti,ab OR depression:ti,ab) #6 [mh "Acute chest syndrome"] OR (acute:ti,ab AND chest:ti,ab AND syndrome:ti,ab) #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Respiration, artificial"] OR "Artificial respiration":ti,ab OR "Artificial ventilation":ti,ab #9 [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "Mechanical ventilation":ti,ab #10 pressure:ti,ab AND (limited:ti,ab OR low:ti,ab OR lower:ti,ab OR less:ti,ab) #11 (#8 OR #9) AND #10 #12 [mh "Tidal volume"] OR "tidal volume":ti,ab #13 "plateau pressure":ti,ab #14 LPVS:ti,ab OR "lung protective":ti,ab OR (protective:ti,ab AND ventilation:ti,ab)
#15 {OR #11-#14} #16 #7 AND #15 #17 [mh animals] NOT [mh humans] #18 #16 NOT #17
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/16) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 成人呼吸窮迫症候群/TA OR 成人型呼吸窮迫症候群/TA OR 成人呼吸促迫症候群/TA OR 成人型呼吸促迫症候群/TA OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR 急性呼吸促迫症候群/TA OR ショック肺/TA OR ARDS/TA #2肺損傷/TH OR 肺損傷/TA OR 肺傷害/TA OR 肺障害/TA #3急性/TA AND 肺/TA AND ( 不全/TA OR 低下/TA OR 抑制/TA) #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA OR 呼吸機能不全/TA OR 換気不全/TA OR 肺機能不全/TA #5急性/TA AND ( 呼吸/TA OR 換気/TA OR 肺機能/TA) AND ( 不全/TA OR 低下/TA OR 抑制/TA) #6急性胸部症候群/TH OR ( 急性/TA AND 胸部/TA AND 症候群/TA) #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8人工呼吸/TH OR 人工呼吸/TA OR 陽圧呼吸/TA OR 人工換気/TA OR 陽圧換気/TA OR 機械的換気/TA #9人工呼吸器/TH OR 人工呼吸器/TA OR レスピレータ/TA OR ベンチレータ/TA #10圧/TA AND ( 制限/TA OR 低/TA OR 減/TA) #11 ( #8 OR #9) AND #10 #12プラトー圧/TA #13肺保護戦略/TA OR 肺保護/TA OR ( 保護/TA AND 換気/TA) #14 #11 OR #12 OR #13 #15ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム/AL AND 化/AL OR 無作為化/AL OR比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセ/AL AND ボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL #16 (CK= 動物) NOT (CK= ヒト) #17 #15 NOT #16 #18 #7 AND #14 AND #17 #19 (#18) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ21—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=26 系統的レビューに組み入れた研究 n=9 メタ解析に組み入れた研究 n=6 検索で同定された研究 n=2,822 重複研究を除外した研究 n=558 除外基準に該当した研究 n=532 重複した研究 n=2,264 除外基準に該当した研究n=17理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ Studyが未完了3件6件 2件5件1件 データベース検索で同定された研究n=2,822 MEDLINE(PubMed) Embase Cochrane CENTRAL医中誌 1,362件0件1,335件125件 短期死亡長期死亡VFD圧損傷4件3件3件5件
資料CQ21—3 Risk of bias 短期死亡長期死亡 人工呼吸器非使用日数人工呼吸器関連肺損傷
資料CQ21—4 Forest plot 短期死亡 長期死亡 人工呼吸器非使用日数
人工呼吸器関連肺損傷
資料CQ21—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討プラトー圧 制限群プラトー圧 高値/制限なし群相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 短期死亡* 4 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻aなし312/966 (32.2%) 278/931 (29.9%) RR 1.02 (0.82~ 1.27) 1,000 人あたり6 人増加(54 人減少~ 81 人増加) +++○ 中重大 長期死亡** 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻b 深刻で ない非常に 深刻cなし312/872 (35.8%) 331/872 (38.0%) RR 0.99 (0.74~ 1.31) 1,000 人あたり4 人減少(99 人減少~ 118 人増加) +○○○非常に低重大 VFD*** 3 ランダム 化試験深刻で ない非常に 深刻d深刻で ない深刻eなし864 859 —平均0.82 日 延長(4 日短縮~ 5.65 日延長) ++○○ 低重大 圧損傷 5 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻fなし122/1,406 (8.7%) 134/1,373 (9.7%) RR 0.89 (0.70~ 1.12) 1,000 人あたり11 人減少(30 人減少~ 12 人増加) +++○ 中重大 高CO2血症による死亡 0 推定不可能 — — 重大 高CO2血症による人工透析導入率 0 推定不可能 — — 重要 *28 日死亡,院内死亡,**60 日死亡,180 日死亡,***28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.総サンプルサイズが1,897 であり,最適情報量(OIS)を満たすが,95% CI の幅が広く,CI の上端・下端で臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. b.I2=86%で統計学的異質性が大きいため,1 段階ダウンとした. c.総サンプルサイズが1,744 であり,OIS を満たすが,95% CI の幅が広く,CI の上端・下端で臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンとした. d.I2=94%と統計学的異質性が極めて大きく,また,2 件の研究は明らかな益,1 件の研究は明らかな害をきたしており,臨床的異質性も大きいと判断し2 段階ダウンとした. e.総サンプルサイズが1,723 であり,OIS を満たすが,CI が4 日減少から5.65 日増加にまたがっており最小重要差(MID)を超えると考えられる.よって,1 段階ダウンとした. f.対照群のイベント発生数が134 であり,OIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広く,CI の上端・下端で臨床の判 断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断し1 段階ダウンとした.
資料CQ21—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ21:成人ARDS 患者ではプラトー圧制限を行うべきか? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者介 入:プラトー圧制限あり比較対照:プラトー圧制限なし主要なアウトカム:短期死亡,長期死亡,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院期間,圧損傷,高二酸化 炭素血症(高CO2血症)による死亡 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:成人ARDS 患者における人工呼吸器管理では,VALI によって人工呼吸器装着日数の 延長のみならず死亡率上昇につながることが危惧される.VALI をきたす要因の1 つとして気道内圧上昇が考えられ,プラトー圧を制限することによりVALI を抑制することが期待される.一方で,プラトー圧を制限することで高CO2血症などの有害事象を招く可能性もある.そのため,プラトー圧制限の効果および有害事象を明らかにする検証が必要である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない成人ARDS 患者における人工呼吸器管理では,VALI によっ て人工呼吸器装着日数の延長のみならず死亡率上昇につながることが危惧される.VALI をきたす要因の1 つとして気道内圧上昇が考えられ,プラトー圧を制限することによりVALI を抑制することが期待される.一方で,プラトー圧を制限することで高CO2血症などの有害事象を招く可能性もある.そのため,プラトー圧制限の効果および有害事象を明らかにする検証が必要である.したがって,CQ 立案に際し臨床的意義が大きいと判断した 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さい○中程度SR の結果,PICO に一致したRCT が6 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行した益のアウトカムとして,短期死亡(4 RCT:n=1,897)に
○大きい○一概には言えない○わからない関する効果推定値は,プラトー圧制限を行うことで1,000 人あたり6 人増加(95% CI:54 人減少~81 人増加)し,長期死亡(4 RCT:n=1,744)に関する効果推定値は1,000人あたり4 人減少(95% CI:99 人減少~118 人増加)し, VFD(3 RCT:n=1,723)に関する効果推定値は平均差 0.82 日延長(95% CI:4 日短縮~5.65 日延長)し,圧損 傷に関する効果推定値(5 RCT:n=2,779)は,リスク差で1,000 人あたり11 人減少(95% CI:30 人減少~12 人増加)した.以上より,介入による望ましい効果は「わずか」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとしての高CO2血症による死亡を検討した が,報告した研究はなかった.よって,備考欄の記載と合わせて考慮し,介入による望ましくない効果は「わずか」と判断した今回SR で取り扱った 文献(Meade 2008)を検討し,有害事象として,難治性アシドーシスが508 例中42 例,難治性アシドーシスによる死亡が508 例中38 例に認められた エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 短期死亡重大+++○ 中 長期死亡重大+○○○ 非常に低 VFD重大++○○ 低 圧損傷重大+++○ 中 高CO2血症に よる死亡重大—高CO2血症による死亡は採用された研究内に報告はなかった
全体的なエビデンスの確実性益のアウトカム内における方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はないプラトー圧制限を行った人工呼吸器管理におけるアウトカ ムに関する価値観についてのデータはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない結果のまとめSummary of Findings アウトカムプラトー圧 制限なし(対照)プラトー圧 制限あり(介入)絶対差 (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 短期死亡278/ 931 312/ 966 6 人増加/ 1,000 人 (54 人減少~ 81 人増加) 1.02 (0.82~ 1.27) 長期死亡331/ 872 312/ 872 4 人減少/ 1,000 人(99 人減少~ 118 人増加) 0.99 (0.74~ 1.31) VFD — —平均0.82 日 延長(4 日短縮~ 5.65 日延長) —
圧損傷134/ 1,373 122/ 1,406 11 人減少/ 1,000 人(30 人減少~ 12 人増加) 0.89 (0.70~ 1.12) 高CO2血症による死亡— —推定不可能—高CO2血症による死亡は採用された研究内に報告はなかった 以上より,介入による効果と害のバランスに関して,「わからない」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでにプラトー圧 の制限自体は,日常臨床で実行されており,コスト,有害性などを考慮しても十分実行可能と思われる.よって,「受け入れられる」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で 実行されているため実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,人工呼吸器管理を実施する際,プラトー圧制限を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 今回の結果からは,望ましい効果が必ずしも望ましくない効果を上回るとは言えず,1 回換気量や経肺圧を適切に制限する状況下であれば,必ずしも高いプラトー圧が害とは言い切れないかもしれない.
理 由 Justification 疑 問 人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対してプラトー圧制限を行うべきか?患 者 人工呼吸器管理が必要な成人ARDS 患者.介 入 プラトー圧制限あり.対 照 プラトー圧制限なし.アウトカム 短期死亡(28 日,院内死亡),長期死亡(90 日,180 日死亡),VFD,圧損傷,高CO2血症による死亡(追加のアウトカムとして難治性アシドーシス,難治性アシドーシスによる死亡).エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が6 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.人工呼吸器管理を行う際にプラトー圧を制限することで,益のアウトカムとして,短期死亡(4 RCT:n=1,897)は1,000 人あたり6 人増加(95% CI:54 人減少~81 人増加)し,長期死亡(3 RCT:n=1,744)は1,000 人あたり4 人減少(95% CI:99 人減少~118 人増加)し,VFD (3 RCT:n=1,723)は平均0.82 日延長(95% CI:4 日短縮~5.65 日延長)し,圧損傷(5 RCT: n=2,779)は1,000 人あたり11 人減少(95% CI:30 人減少~12 人増加)した.よって,介入による望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムとして,高CO2血症による死亡の報告はなく,有害事象として,今回メタ解析で取り扱ったRCT(Meade 2008)を検討し,難治性アシドーシス(42╱508 人),難治性アシドーシスによる死亡(38╱508 人)の報告が認められた.よって,介入における望ましくない効果は「わずか」と判断した.以上より,効果と害のバランスは,「わからない」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果におけるアウトカムの方向性が一致しておらず,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定成人に対してプラトー圧制限を行う場合,介入は人工呼吸器管理における設定変更であり,すでに日常臨床で行われており,受け入れや実現可能性は十分に高いと考えられる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,人工呼吸器を実施する際,プラトー圧制限を行うことを提案する(弱い推奨╱非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2118 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項今回メタ解析に用いた研究は主に2 パターンに分けられる. 1 低1 回換気量と高1 回換気量を比較しプラトー圧に差が生じている研究〔Brochard 1998, Brower 1999,Roy 2000(ARDS Network 2000),Villar 2006〕. 2 1 回換気量は同等で高PEEP によりプラトー圧に差が生じている研究(Meade 2008,Mercat 2008).下記サブグループ解析では,1 群では低プラトー圧群(介入群)で予後改善傾向,2 群では予後増悪傾向が認められている.そのことからも,一概にプラトー圧を制限することが予後の改善にはつながらない可能性が考慮される.プラトー圧はPEEP(positive end expiratory pressure)と駆動圧(driving pressure)から成り立っていることに注意するべきである.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回,プラトー圧を比較した研究を,1 低1 回換気量,高1 回換気量によりプラトー圧に差が生じているものと,2 1 回換気量は同等で,低PEEP 設定と高PEEP 設定によりプラトー圧に差が生じているものとに分けサブグループ解析を行った. 1 のサブグループでは,短期死亡が1,000 人あたり106 人減少(95% CI:284 人減少~208 人増加),長期死亡は1,000 人あたり24 人減少(95% CI:159 人減少~178 人増加),VFD は平均3 日延長(95% CI:0.3 日延長~5.71 日延長),圧損傷は1,000 人あたり4 人減少(95% CI:35人減少~40 人増加),2 のサブグループでは,短期死亡が1,000 人あたり37 人増加(95% CI:6人減少~84 人増加),長期死亡は1,000 人あたり36 人増加(95% CI:29 人減少~115 人増加), VFD は平均4 日短縮(95% CI:5.89 日短縮~2.11 日短縮),圧損傷は1,000 人あたり15 人減少(95% CI:36 人減少~13 人増加)であった. 1 における介入群(低プラトー圧群),2 における対象群(高プラトー圧群)で有意にVFD の延長が認められた.また,他のほとんどのアウトカムで,点推定値においては,1 では介入群(低プラトー圧群),2 では対象群(高プラトー圧群)に優位な傾向が認められた. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 日常的に頻用されているため実施に関わる考慮事項はないが,患者因子として,プラトー圧を低くすることで,十分な換気量を維持することができず,二酸化炭素貯留,酸素化低下,呼吸仕事量の増加をきたし,プラトー圧をある程度高くせざるを得ない場合も考慮される.また,一般的なモニタリング(心電図,SpO2モニターなど)に加え,プラトー圧制限による血中二酸化炭素分圧の上昇をきたしやすいことを考慮し,呼気二酸化炭素分圧を測定することも検討するべきである. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては,臨床上の問題としてプラトー圧制限による合併症についての更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてのモニタリングが必要である. 研究の可能性 Research priorities ARDS に対するプラトー圧制限は,2000 年のARMA study1)以後強く推奨されてきた.しかし,プラトー圧を扱った多くの研究は,対象群で高1 回換気量を使用しており,上記のサブグループ解析でも示されたように,そのことが予後に影響を与えた可能性も考慮される.駆動圧(1 回換気量)を同等に制限した状況でのプラトー圧を比較(>30 cmH2O vs. ≲30 cmH2O)した大規模RCT が望まれる.参考文献1) Brower R, Matthay M, Morris A, et al. Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2000;342:1301—8.
背景,この問題の優先度 人工呼吸の最適な換気条件として何を選択するべきかは未だ明らかではなく,量規定換気(volume control ventilation:VCV)と圧規定換気(pressure control ventilation:PCV)のうち,どちらが有効であるかは定かではない.上記の背景により,この問題の優先度は「おそらく高い」. 解 説 PICO 患者(P):成人のARDS 患者または重症の人工 呼吸器装着患者.介入(I):PCV による人工呼吸器管理.対照(C):VCV による人工呼吸器管理. アウトカム(O):人工呼吸器装着日数,死亡. エビデンスの要約 PICOで設定されたVFDを含む研究が見つからなかったため,VFD のアウトカムを「人工呼吸器装着日数」に変更した.換気条件としてPCV を用いることで,人工呼吸(2RCT:n=41)は平均4.1 日短縮(95%CI:6.84 日短縮~1.37 日短縮),死亡(3RCT:n=136)は1,000 人あたり149 人減少(95%CI:270 人減少~11 人増加)した.以上から,介入による望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,VALI は今回の採用論文では報告されていなかった.そのため,2 つ 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,PCV とVCV のどちらが望ましいか? CQ 22 成人ARDS 患者において,換気条件としてPCV もしくはVCV のどちらの 換気条件を使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことは できない(in our practice statement). VCV はコンプライアンス,気道抵抗の変化に気づきやすいという利点もあり,今回のSR のみで,PCV がVCV に勝るといえるものではなく,VCV の使用に習熟した施設は使用を考慮してもよいと考えられる.パネル会議による投票で,推奨を提示せずにin our practice statement にすることに決定した. 推 奨 付帯事項
のRCT を用いたChacko らのメタ解析1)の結果を引用し,VALI(2RCT:n=1,062)はPCVにより1,000 人あたり23 人増加(95%CI:12人減少~72 人増加)であり,望ましくない効果は「わずか」と判断した.介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん効果が大きい」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 上記メタ解析による引用結果はあるものの, PCV によりVALI の頻度を増加させる可能性は小さいと考えられ,PCV による効果は害に勝ると考えられる.また,PCV はVCV と同様に通常の人工呼吸器で設定可能な換気条件であるため,コストや負担は増加せず,実現可能性も十分あると判断される. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により「成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,PCV を使用することを提案する(非常に弱い推奨GRADE 2D)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2920 で合意であった.しかし,パネル会議では,このSR の結果は現在標準治療としてVCV を用いている施設においてPCV への変更を推奨できる程,推奨度およびエビデンスの確実性が高いわけではないという意見があった.その結果,再投票をすることとし,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,換気条件としてPCV もしくはVCV のどちらの換気条件を使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできないと判断し た(in our practice statement)」が,中央値 8.0 点,見解不一致指数0.1316,で合意に至 り,上記推奨とした. サブグループの検討事項 感度分析としてCOPD 急性増悪患者を扱った研究(Ahmed2016)を除いたメタ解析を施行したところ(付加的な考慮事項を参照),人工呼吸器装着日数(1RCT)で1 日短縮(95% CI:7.08 日短縮~5.08 日延長),死亡(2RCT)で170 人/1,000 減少(95% CI:312 人減少~ 27 人増加)という結果であった.採用研究が1 つと少ないことも影響したためか,本解析で認められた人工呼吸器装着日数短縮における有意差は消失していた.また,自発呼吸のある患者に対してVCV を用いると,患者と人工呼吸器の非同調や,気道内圧が陰圧方向に変化することによる肺傷害が増加する可能性がある一方,自発呼吸がない患者に関しては,VCV とPCV の換気様式の違いによって肺に与える影響の差は大きくない可能性がある.したがって,自発呼吸がある患者とない患者のサブグループごとに比較を行うことが検討される. 実施上の考慮事項 施設や医療従事者の各換気モードに対する慣れや習熟度,そして,患者の気道抵抗などの病態生理によって,より安全な換気条件を選択する必要がある.その場合,PCV を用いる場合は換気量を,VCVを用いる場合はプラトー圧をモニタリングする必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 PCV とVCV のどちらが好ましいかに関して『ARDS 診療ガイドライン2016』2)『ATS/ 3 4 5 3 4 5
ESICM/SCCM2017』3)での記載は認められなかった. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題としてPCV,VCV に加えてPRVC(pressure regulated volume control ventilation)の使用状況に関して,更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況につきモニタリングを行うことが必要である. 今後の研究の可能性 今回はメタ解析の結果とパネル会議による投票に解離が認められたため,推奨を出すには至らなかったが,PCV とVCV のどちらを選択するかというCQ は日常診療では依然として重要である.今後もVCV とPCV を比較した大規模RCT の登場が望まれる.文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Pressure control ventilation」「Volume control ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月29 日までの文献を検索したところ5,933 件の研究が同定され,スクリーニングの結果3 件のRCT4‒6)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Steven 19944), Esteban 20005), Ali 20166). 資料一覧 ・資料CQ22‒1 Search strategy.・資料CQ22‒2 フローダイアグラム.・資料CQ22‒3 Risk of bias.・資料CQ22‒4 Forest plot.・資料CQ22‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ22‒6 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Chacko B, Peter JV, Tharyan P, et al. Pressure‒controlled versus volume‒controlled ventilation for acute respiratory failure due to acute lung injury(ALI)or acute respiratory distress syndrome(ARDS). Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD008807. 2) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the management of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 3) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 4) Rappaport SH, Shpiner R, Yoshihara G, et al. Randomized, prospective trial of pres- sure‒limited versus volume‒controlled ventilation in severe respiratory failure. Crit Care Med 1994;22:22‒32. 5) Esteban A, Alía I, Gordo F, et al. Prospective randomized trial comparing pressure‒ controlled ventilation and volume‒controlled ventilation in ARDS. For the Spanish Lung Failure Collaborative Group. Chest 2000;117:1690‒6. 6) Ali AAE‒R, El Wahsh RAE‒R, Agha MAE‒S, et al. Pressure regulated volume con- trolled ventilation versus synchronized intermittent mandatory ventilation in COPD patients suffering from acute respiratory failure. Egypt J Chest Dis Tuberc 2016; 65:121‒5. 参考文献
資料CQ22—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/8) #1 respiratory distress syndrome, adult[mh] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR respiratory insufficiency[mh] OR acute lung injury[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR acute respiratory failure*[tiab] OR ALI[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Respiration, Artificial[mh] OR artificilal respiration*[tiab] OR Pulmonary Ventilation[mh] OR pulmonary ventilat*[tiab] OR Ventilators, Mechanical[mh] OR mechanical ventilat*[tiab] OR positive-pressure respiration*[tiab] OR positive pressure ventilat*[tiab] #3 pressure control*[tiab] OR PCV[tiab] OR volume control*[tiab] OR VCV[tiab] #4 airway pressure release ventilat*[tiab] OR APRV[tiab] #5 synchronized intermittent mandatory ventilation[tiab] OR intermittent mandatory ventilation[tiab] OR SIMV[tiab] OR IMV[tiab] #6 PSV[tiab] OR pressure support[tiab] #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR clinical trials as topic [mesh: noexp] OR randomly [tiab] OR trial [ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #9 #1 AND #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "respiratory distress syndrome, adult"] OR "acute respiratory distress syndrom":ti,ab OR [mh "respiratory insufficiency"] OR [mh "acute lung injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab OR ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "Respiration, Artificial"] OR "artificilal respiration":ti,ab OR [mh "Pulmonary Ventilation"] OR "pulmonary ventilation":ti,ab OR [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "positive-pressure respiration":ti,ab OR "positive pressure ventilation":ti,ab #3 "pressure control":ti,ab OR PCV:ti,ab OR "volume control":ti,ab OR VCV:ti,ab #4 "airway pressure release ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #5 "synchronized intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR "intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR SIMV:ti,ab OR IMV:ti,ab #6 PSV:ti,ab OR "pressure support":ti,ab #7 {OR #2-#6} #8 #1 AND #7 #9 [mh animals] NOT [mh humans] #10 #8 NOT #9
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/26) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR 急性肺障害/AL OR 急性肺傷害/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #2人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR 人工換気/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械換気/ AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL OR 調節換気/AL OR 陽圧呼吸/AL OR 陽圧換気/ AL #3従圧/AL OR 圧規定/AL OR 従量/AL OR 量規定/AL OR PCV/AL OR VCV/AL #4 APRV/AL OR 気道内圧開放式/AL OR 気道内圧解放式/AL OR "Airway Pressure Release Ventilation"/AL
#5間欠性強制換気/TH OR 同期式間欠的強制/AL OR 間欠的強制/AL OR SIMV/AL OR IMV/AL OR "synchronized intermittent mandatory"/AL OR "intermittent mandatory"/AL #6プレッシャーサポート/AL OR PSV/AL OR "pressure support"/AL OR "pressure-support"/AL #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (((RD= ランダム化比較試験,準ランダム化比較試験,比較研究) OR ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL)) NOT (CK=動物 NOT CK=ヒト)) AND (PT=会議録除く) #9 #1 AND #7 AND #8
資料CQ22—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究(フルテキストを取り寄せ試み n=87) 系統的レビューに組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし) 検索で同定された研究 n=5,933 重複研究を除外した研究 n=4,365 除外基準に該当した研究 n=4,278 重複した研究 n=1,568 除外基準に該当した研究n=76・ 理由:主なもの・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 全文入手不可9件30件 11件18件8件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌2,824件2,559件550件 n=5,933 メタ解析に組み入れた研究 n=11 (CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし)
資料CQ22—3 Risk of bias 人工呼吸器装着日数死 亡
資料CQ22—4 Forest plot 人工呼吸器装着日数 死 亡
資料CQ22—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討PCV VCV相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)人工呼吸器装着日数* 2 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし22 19 —平均4.1 日短縮(6.84 日短縮~ 1.37 日短縮) ++○○ 低重大 死 亡 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻bなし28/68 (41.2%) 39/68 (57.4%) RR 0.74 (0.53~1.02) 1,000 人当たり149 人減少(270 人減少~ 11 人増加) +++○ 中重大 人工呼吸器関連肺損傷 0 — 推定不可能 — 重大 *人工呼吸器非使用日数(VFD)を扱った研究がなく,人工呼吸器装着日数とした. CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.人工呼吸器関連肺損傷はアウトカム報告がなかった.説 明a.含まれている研究の2 つともhIgh risk of bias と評価したため. b.含まれている研究がOIS を満たさないため.
資料CQ22—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ22:成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,PCV とVCV のどちらが 望ましいか? 集 団: ARDS 患者を含む人工呼吸器を要する成人呼吸不全患者介 入: Pressure control ventilation(PCV)による人工呼吸器管理比較対照: Volume control ventilation(VCV)による人工呼吸器管理主要なアウトカム:死亡,人工呼吸器装着日数,人工呼吸器非使用日数(VFD),人工呼吸器関連肺損傷 (VALI) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.一般的 に用いられている人工呼吸器の換気様式は量規定換気(VCV)と圧規定換気(PCV)があるが,患者予後に対してどちらの換気様式が有効であるかは定かではない 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同 様に重要である.一般的に用いられている人工呼吸器の換気様式はVCV とPCV があるが,患者予後に対してどちらの換気様式が有効であるかは定かではない.よって,この問題の優先度はおそらく高いといえる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が3 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行した.なお,アウトカムとして,VFD を扱った研究が見つからなかったため,アウトカムをVFD から人工呼吸器装着日数に変更した益のアウトカムとして,人工呼吸器装着日数(2 RCT:n= 41)に関する効果推定値は,VCV と比較してPCV で平均差4.1 日短縮(95% CI:6.84 日短縮~1.37 日短縮)し,死亡(3 RCT:n=136)に関する効果推定値は1,000 人
あたり149 人減少(95% CI:270 人減少~11 人増加)した.VALI を報告した研究は見つからなかった.以上から介入による望ましい効果を「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,再挿管,気管切開などのアウトカ ムを扱った研究は見つからなかった.よって,備考欄のChacko らのメタ解析1)の結果を考慮し,予想される望ましくない効果は「わずか」と判断した2 つのRCT を用いた Chacko らのメタ解析1)の結果を引用した. V A L I(2 R C T:n= 1,062)に関する効果推定値は,VCV と比較してPCV で1,000 人あたり23人増加(95% CI: 12 人減少~72 人増加)した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低●低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 人工呼吸器 装着日数重大++○○ 低 死 亡重大+++○ 中 VALI重大— VALI は採用された研究内に報告はなかった 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない最適な換気条件におけるアウトカムに関する価値観につい てのデータはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムVCV (対照) PCV (介入)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 人工呼吸器装着日数— —平均4.1 日短縮 (6.84 日短縮~ 1.37 日短縮) — 死亡39/68 28/68 149 人減少/ 1,000 人(270 人減少~ 11 人増加) 0.74 (0.53~ 1.02) VALI — —推定不可能— VALI は採用された研究内に報告がなかった以上より,効果と害のバランスは,「たぶん介入が有利」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないPCV はすでに広く使用されている換気条件であり,施設に より違いはある可能性はあるが,受け入れられると考えられる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないPCV はすでに広く使用されている換気条件であり,おそら く実現可能であると考えられる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,換気条件としてPCV もしくはVCV のどちらの換気条件を使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできない(in our practice statement). 付帯事項 VCV はコンプライアンス,気道抵抗の変化に気づきやすいという利点もあり,今回のSRのみで,PCV がVCV に勝るといえるものではなく,VCV の使用に習熟した施設は使用を考慮してもよいと考えられる.パネル会議による投票で,推奨を提示せずにin our practice statement にすることに決定した. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者においてPCV はVCV と比較して死亡および人工呼吸器装着日数を減らすか?患 者 成人のARDS 患者または重症の人工呼吸器装着患者.介 入 PCV による人工呼吸器管理.対 照 VCV による人工呼吸器管理.アウトカム 人工呼吸器装着日数,死亡.
エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が3 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.なお,アウトカムとして,VFD を扱った研究が見つからなかったため,VFD のアウトカムを人工呼吸器装着日数に変更した.換気条件としてPCV を用いることで,益のアウトカムとして,人工呼吸器装着日数(2 RCT: n=41)に関する効果推定値は平均4.1 日短縮(95% CI:6.84 日短縮~1.37 日短縮)し,死亡(3 RCT:n=136)に関する効果推定値は1,000 人あたり149 人減少(95% CI:270 人減少~11人増加)した.よって,介入による望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,VALI は今回の採用論文では報告されていなかった.そのため,2 つのRCT を用いたChacko らのメタ解析1)の結果を引用した.結果としてVALI(2 RCT:n=1,062)に関する効果推定値はPCV を用いることで1,000 人あたり23 人増加(95% CI:12 人減少~72 人増加)した.よって,望ましくない効果は「わずか」と判断した.以上より介入(PCV)による効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定上記メタ解析によるVALI の引用結果はあるものの,理論的にはPCV がVALI を増加させる可能性は少ないと考えられ,PCV による効果は害に勝ると考えられる.また,PCV はVCV と同様に通常の人工呼吸器で設定可能な換気条件であるため,コストや負担は増加せず,実現可能性も十分あると判断される.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により「成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,PCV を使用することを提案する(非常に弱い推奨GRADE 2D)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2920で合意であった.しかし,パネル会議では,このSR の結果は現在標準治療としてVCV を用いている施設においてPCV への変更を推奨できる程,推奨度およびエビデンスの確実性が高いわけではないという意見があった.その結果,再投票をすることとし,修正Delphi 法により,「成人ARDS患者において,換気条件としてPCV もしくはVCV のどちらの換気条件を使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできないと判断した(in our practice statement)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至り,上記推奨とした.付加的な考慮事項今回のメタ解析で用いた3 研究のうちの1 つ(Ahmed2016)はCOPD 急性増悪患者を対象としたものであった.他の2 研究はARDS 患者を扱ったものであるものの,下記感度分析では人工呼吸器装着日数における有意差はなく,本メタ解析の結果のみでARDS 患者へのPCV の有用性を論ずることは困難であると考えられる. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 感度分析としてCOPD 急性増悪患者を扱った研究(Ahmed2016)を除いたメタ解析を施行した(付加的な考慮事項参照).人工呼吸器装着日数(1 RCT)における効果推定値は平均1 日短縮(95% CI:7.08 日短縮~5.08 日延長)し,死亡(2 RCT)における効果推定値は1,000 人あたり170 人減少(95% CI:312 人減少~27 人増加)したという結果であり,本解析で認められた人工呼吸器
装着日数短縮における有意差は消失していた.また,自発呼吸のある患者に対してVCV を用いると,患者と人工呼吸器の非同調や,気道内圧が陰圧方向に変化することによる肺傷害が増加する可能性がある一方,自発呼吸がない患者に関しては,VCV とPCV の換気様式の違いによって肺に与える影響の差は大きくない可能性がある.したがって,自発呼吸がある患者とない患者のサブグループごとで,比較を行うことが検討される. 実施上の考慮事項 Implementation considerations PCV とVCV のどちらが好ましいかに関して『ARDS 診療ガイドライン2016』,『ATS/ESICM/ SCCM2017』での記載は認められなかった.施設や医療従事者の各換気モードに対する慣れや習熟度,そして患者の気道抵抗などの病態生理によって,より安全な換気条件を選択する必要がある.その場合,PCV を用いる場合は換気量を,VCV を用いる場合はプラトー圧をモニタリングする必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてPCV,VCV に加えてPRVC の使用状況に関して更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況につきモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 今回はメタ解析の結果とパネル会議による投票に解離が認められたため,推奨を出すには至らなかったが,PCV とVCV のどちらを選択するかというCQ は日常診療では依然として重要である.今後もVCV とPCV を比較した大規模RCT の登場が望まれる.参考文献1) Chacko B, Peter JV, Tharyan P, et al. Pressure‒controlled versus volume‒controlled ventilation for acute respiratory failure due to acute lung injury(ALI)or acute respiratory distress syndrome(ARDS). Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD008807.
背景,この問題の優先度 気道圧開放換気(airway pressure release ventilation:APRV)は高気道内圧を維持できるが,VCV やPCV と比較してどちらが有効であるかは定かではない.上記背景により,この問題の優先度はおそらく高い. 解 説 PICO 患者(P):成人のARDS 患者または重症の人工 呼吸器装着患者.介入(I):APRV による人工呼吸器管理.対照(C):通常の人工呼吸器管理(補助調節換 気assist control ventilation:A/C など).アウトカム(O):人工呼吸器非使用日数 (VFD),死亡,圧損傷. エビデンスの要約 1)全 体7 つのRCT でメタ解析を行った.APRV を使用することで,VFD(3RCT:n=248)を平均 3.64 日延長(95%CI:0.02 日短縮~7.3 日延 長),死亡(7RCT:n=409)を1,000 人あたり72 人減少(95% CI:125 人減少~5 人増加),圧損傷(3RCT:n=253)を1,000 人あたり23 人減少(95% CI:41 人減少~42 人増加)させた.以上から,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.一方,明らかな害となるアウトカムは認められず,よって介入に 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,APRV を使用するか? CQ 23 成人ARDS 患者において,APRV と通常の人工呼吸器管理(A/C など)の どちらを使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはで きない.自発呼吸を残した人工呼吸器管理を行っている際はAPRV を考慮し てもよい(in our practice statement). 本SR に含まれる研究にはinverse ratio ventilation(IRV)が含まれており,それを除いたサブグループ解析では,VFD,死亡,圧損傷に関してAPRV 使用群で望ましい方向性が認められた.しかし,受け入れや実行可能性を含め,パネル会議で推奨を提示することに賛同が得られなかったため,in our practice statementにすることとした. 推 奨 付帯事項
よる望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上から,「たぶん効果が大きい」と判断した. 2)「典型的APRV」上記7RCT のうち4 つは,低圧相終了までに呼気フローが0 となるもの(Putensen2002, Varpula2003,Varpula2004,Varpula2009)で,Bi‒level モードによる逆比換気(IRV)ともいえる換気モードであり,一般的に認知されているAPRV とは言い難い.「典型的APRV」は,低圧相時間が短期〔50~75%PEFR(peak expiratory flow rate)〕で終了するものを指す1)と考えられ,低圧相で呼気フローが0 とならないもの(>0%PEFR:ここでは「典型的APRV」とする)のみを扱ったメタ解析も併せて施行した(50~75%PEFR を満たすのはZhou 2017 のみ).「典型的APRV」を使用することで,VFD (2RCT:n=190)を平均5.65 日延長(95% CI:2.8 日延長~8.49 日延長),死亡(3RCT: n=253)を1,000 人あたり84 人減少(95% CI:152 人減少~22 人増加),圧損傷(3RCT: n=253)を1,000 人あたり23 人減少(95% CI:41 人減少~42 人増加)させた.以上から,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.一方,明らかな害となるアウトカムは認められず,よって介入による望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上から,「たぶん効果が大きい」と判断した.「典型的APRV」によるメタ解析で,全体の解析と比較して点推定値や全体の望ましい方向性には変化は認められなかった. エビデンスの確実性 1)全 体望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,「中」と判断した. 2)「典型的APRV」望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 特定の機種の人工呼吸器以外では,典型的なAPRV を行うことは困難であり,そのためのコストを要すること,また,典型的なAPRV を行うために,習熟したスタッフが必要と考えられることから,使用に際しては施設ごとの対応が求められる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,換気条件としてAPRV を使用することを提案する(弱い推奨/非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値7 点,見解不一致指数0.2414 であった.パネル会議では筋弛緩薬との併用が困難なモードであり,同時に推奨することは困難であるという議論があった.その結果,再投票することになり,修正Delphi 法により,「推奨としてin our practice statement を用いる」が,中央値7 点,見解不一致指数0.2188,で合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 APRV モードを使用している場合でも, PEFR に意識が払われずに換気設定が行われている場合,有効性が得られない可能性もある.また,肺のリクルータビリティが乏しい患者においてVALI のリスクが高まる可能性や,高 3 4 5 3 4
い気道内圧により静脈灌流量が低下し,心拍出量および血圧が低下する可能性などを考慮する必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS に対するAPRV の使用に対して,『ARDS 診療ガイドライン2016』2),『ATS/ ESICM/SCCM2017』3)では推奨はなかった. 治療のモニタリングと評価 APRV が実際どの程度の施設で用いられているかに関しての更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外の臨床的問題についてアンケートなどを行い,モニタリングすることが必要である. 今後の研究の可能性 Habashi4)が推奨しているPEFR 設定を利用したRCT は,本メタ解析の中ではZhou2017のみであり,この設定方法の有効性を確認するための,別の大規模RCT が必要である.リクルータビリティの有無,自発呼吸の強さなどによりAPRV の効果が異なる可能性があり,今後の研究課題である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome」「Airway pressure release ventilation」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPub- Med,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月29 日までの文献を検索したところ5,933 件の研究が同定され,スクリーニングの結果7 件のRCT5‒11)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Li 20165), Maxwell 20106), Putensen 20017), Varpula 20038), Varpula 20049), Varpula 200910), Zhou 201711). 資料一覧 ・資料CQ23‒1 Search strategy.・資料CQ23‒2 フローダイアグラム.・資料CQ23‒3 Risk of bias.・資料CQ23‒4 Forest plot.・資料CQ23‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ23‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Carsetti A, Damiani E, Domizi R, et al. Airway pressure release ventilation during acute hypoxemic respiratoryfailure:a systematic review and meta‒analysis of randomized controlled trials. Ann Intensive Care 2019;9:44. 2) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 3) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 4) Habashi NM. Other approaches to open‒lung ventilation:airway pressure release ventilation. Crit Care Med 2005;33:S228‒40. 5) Li JQ, Li N, Han GJ, et al. Clinical research about airway pressure release ventilation for moderate to severe acute respiratory distress syndrome. Eur Rev Med Pharmacol 参考文献
Sci 2016;20:2634‒41. 6) Maxwell RA, Green JM, Waldrop J, et al. A randomized prospective trial of airway pressure release ventilation and low tidal volume ventilation in adult trauma patients with acute respiratory failure. J Trauma 2010;69:501‒11. 7) Putensen C, Zech S, Wrigge H, et al. Long‒term effects of spontaneous breathing during ventilatory support in patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 2001;164:43‒9. 8) Varpula T, Jousela I, Niemi R, et al. Combined effects of prone positioning and airway pressure release ventilation on gas exchange in patients with acute lung injury. Acta Anaesthesiol Scand 2003;47:516‒24. 9) Varpula T, Valta P, Niemi R, et al. Airway pressure release ventilation as a primary ventilatory mode in acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 2004;48:722‒31. 10) Varpula T, Valta P, Markkola A, et al. The effects of ventilatory mode on lung aeration assessed with computer tomography:a randomized controlled study. J Intensive Care Med 2009;24:122‒30. 11) Zhou Y, Jin X, Lv Y, et al. Early application of airway pressure release ventilation may reduce the duration of mechanical ventilation in acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 2017;43:1648‒59.
資料CQ23—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/8) #1 respiratory distress syndrome, adult[mh] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR respiratory insufficiency[mh] OR acute lung injury[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR acute respiratory failure*[tiab] OR ALI[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Respiration, Artificial[mh] OR artificilal respiration*[tiab] OR Pulmonary Ventilation[mh] OR pulmonary ventilat*[tiab] OR Ventilators, Mechanical[mh] OR mechanical ventilat*[tiab] OR positive-pressure respiration*[tiab] OR positive pressure ventilat*[tiab] #3 pressure control*[tiab] OR PCV[tiab] OR volume control*[tiab] OR VCV[tiab] #4 airway pressure release ventilat*[tiab] OR APRV[tiab] #5 synchronized intermittent mandatory ventilation[tiab] OR intermittent mandatory ventilation[tiab] OR SIMV[tiab] OR IMV[tiab] #6 PSV[tiab] OR pressure support[tiab] #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR clinical trials as topic [mesh: noexp] OR randomly [tiab] OR trial [ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #9 #1 AND #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "respiratory distress syndrome, adult"] OR "acute respiratory distress syndrom":ti,ab OR [mh "respiratory insufficiency"] OR [mh "acute lung injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab OR ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "Respiration, Artificial"] OR "artificilal respiration":ti,ab OR [mh "Pulmonary Ventilation"] OR "pulmonary ventilation":ti,ab OR [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "positive-pressure respiration":ti,ab OR "positive pressure ventilation":ti,ab #3 "pressure control":ti,ab OR PCV:ti,ab OR "volume control":ti,ab OR VCV:ti,ab #4 "airway pressure release ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #5 "synchronized intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR "intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR SIMV:ti,ab OR IMV:ti,ab #6 PSV:ti,ab OR "pressure support":ti,ab #7 {OR #2-#6} #8 #1 AND #7 #9 [mh animals] NOT [mh humans] #10 #8 NOT #9
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/26) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR 急性肺障害/AL OR 急性肺傷害/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #2人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR 人工換気/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械換気/ AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL OR 調節換気/AL OR 陽圧呼吸/AL OR 陽圧換気/ AL #3従圧/AL OR 圧規定/AL OR 従量/AL OR 量規定/AL OR PCV/AL OR VCV/AL #4 APRV/AL OR 気道内圧開放式/AL OR 気道内圧解放式/AL OR "Airway Pressure Release Ventilation"/AL
#5間欠性強制換気/TH OR 同期式間欠的強制/AL OR 間欠的強制/AL OR SIMV/AL OR IMV/AL OR "synchronized intermittent mandatory"/AL OR "intermittent mandatory"/AL #6プレッシャーサポート/AL OR PSV/AL OR "pressure support"/AL OR "pressure-support"/AL #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (((RD= ランダム化比較試験,準ランダム化比較試験,比較研究) OR ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL)) NOT (CK=動物 NOT CK=ヒト)) AND (PT=会議録除く) #9 #1 AND #7 AND #8
資料CQ23—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究(フルテキストを取り寄せた試み n=87) 系統的レビューに組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし) 検索で同定された研究 n=5,933 重複研究を除外した研究 n=4,365 除外基準に該当した研究 n=4,278 重複した研究 n=1,568 除外基準に該当した研究n=76理由:主なもの・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 全文入手不可9件30件 11件18件8件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌2,824件2,559件550件 n=5,933 メタ解析に組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし)
資料CQ23—3 Risk of bias 人工呼吸器非使用日数死 亡 圧損傷
資料CQ23—4 Forest plot 人工呼吸器非使用日数 死 亡 圧損傷
資料CQ23—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討APRV VCVもしくは PCV相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) VFD* 3 ランダム 化試験深刻a深刻b 深刻で ない深刻cなし127 121 —平均3.64 日延長(0.02 日短縮~ 7.3 日延長) +○○○非常に低重大 死 亡 7 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻dなし35/210 (16.7%) 48/199 (24.1%) RR 0.70 (0.48~1.02) 1,000 人あたり72 人減少(125 人減少~ 5 人増加) +++○ 中重大 圧損傷 3 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻eなし3/128 (2.3%) 6/125 (4.8%) RR 0.52 (0.15~1.87) 1,000 人あたり23 人減少(41 人減少~ 42 人増加) +○○○非常に低重大 *28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.治療提供者,参加者の盲検ができずバイアスのリスクが高いと考えられ,かつバイアスの評価ができない項目が多数あるため. b.I2=78%であり高度の統計学的異質性があること,かつフォレストプロットを視覚的に判断した結果として臨床的異質性もあることから,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. c.総サンプル数が248 とOIS は満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“効果なし”および最小重要差(MID)をまたいでいると考えられ「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. d.総サンプル数が409,イベント数が83 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“効果なし”と“相当の益”を含んでいる. e.総サンプル数が253,イベント数が9 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“相当な害”と“相当 の益”を含んでおり,「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンとした.
資料CQ23—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ23:成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,APRV を使用するか? 集 団: ARDS 患者を含む人工呼吸器を要する成人呼吸不全患者介 入:気道内圧開放換気(APRV)による人工呼吸器管理比較対照:通常の人工呼吸器管理(補助調節換気:A/C など)主要なアウトカム:人工呼吸器非使用日数(VFD),死亡,圧損傷セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.APRV は高気道内圧を維持できるためARDS にしばしば用いられているが,一般的に用いられている換気条件としてのVCV やPCV と比較して,どちらが有効であるかは明らかではない 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要であ る.APRV は高気道内圧を維持できるためARDS にしばしば用いられているが,一般的に用いられている換気条件としてのVCV やPCV と比較して,どちらが有効であるかは明らかではない.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が7 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した 益のアウトカムとして,VFD(3 RCT:n=248)に関する効果推定値はAPRV を用いることで平均差3.64 日増加(95% CI:0.02 日減少~7.3日増加)し,死亡(7 RCT:n=409)に関する効果推定値は1,000 人あたり72 人減少(95% CI:125 人減少~5 人増加)した.また,当初害のアウトカムとして検討した圧損傷に関しても結果として望ましい方向性となったため益のアウトカムとした.圧損傷(3 RCT:n=253)に関する効果推定値は,1,000 人あたり23 人減少(95% CI:41 人減少~
42 人増加)した.以上から,介入による望ましい効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか●わからない害のアウトカムとして採用した圧損傷については,結果として望ましい 方向性となったため益のアウトカムとした.また,他の重大,重要アウトカムを検討したが明らかな害となるアウトカムは認められず.よって,望ましくない効果は「わからない」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) VFD重大+○○○ 非常に低 死亡重大+++○ 中 圧損傷重大+○○○ 非常に低 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確APRV を用いた管理におけるアウトカムに関する価値観についてのデー タはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる
実性や多様性はな い○重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムA/C (対照) APRV (介入)絶対差 (95% CI)相対効果RR (95% CI) VFD — —平均3.64 日延長 (0.02 日短縮~ 7.3 日延長) — 死 亡48/199 35/210 72 人減少/ 1,000 人(125 人減少~ 5 人増加) 0.70 (0.48~1.02) 圧損傷6/125 3/128 23 人減少/ 1,000 人(41 人減少~ 42 人増加) 0.52 (0.15~1.87) 以上より,効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,APRV 専用モードがある人工呼 吸器がある施設では,使用に習熟したスタッフがいれば,受け入れは可能と考えられる.一方,APRV 専用モードがある人工呼吸器を持たない施設では,Bi—level などのモードを用いてAPRV に類似した動作を行うことになり,患者の呼気に同期することによって呼気時間が延長したり,短時間の低圧相時間が設定できず十分なauto PEEPが保てないことがある.その場合専用の人工呼吸器の使用が望ましく,コストが発生する.よって,受け入れは「一概には言えない」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ検討に使用されたエビデンスはないが人工呼吸器設定の問題であり,
○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからないAPRV モードがある人工呼吸器があり実施可能であると考えられる.た だし,設定にあたっては低圧相の時間は50~75% PEFR を目標にするなど,使用に習熟していることが望ましい.よって,「一概には言えない」と判断した 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,APRV と通常の人工呼吸器管理(A/C など)のどちらを使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできない.自発呼吸を残した人工呼吸器管理を行っている際はAPRV を考慮してもよい(in our practice statement). 付帯事項 本SR に含まれる研究にはinverse ratio ventilation(IRV)が含まれており,それを除いたサブグループ解析では,VFD,死亡,圧損傷に関してAPRV 使用群で望ましい方向性が認められた.しかし,受け入れや実行可能性を含め,パネル会議で推奨を提示することに賛同が得られなかったため,in our practice statement にすることとした. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者においてAPRV は他の換気モードと比較して死亡,VFD を改善するか?患 者 成人のARDS 患者または重症の人工呼吸器装着患者.介 入 APRV による人工呼吸器管理.対 照 通常の人工呼吸器管理(A/C など).アウトカム VFD,死亡,圧損傷.エビデンスの要約1)全体SR の結果,PICO に一致したRCT が7 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した. APRV を用いることで,益のアウトカムとして,VFD(3 RCT:n=248)に関する効果推定値は平均3.64 日延長(95% CI:0.02 日短縮~7.3 日延長)し,死亡(7 RCT:n=409)に関する効果推定値は1,000 人あたり72 人減少(95% CI:125 人減少~5 人増加)し,圧損傷(3 RCT:n= 253)に関する効果推定値は1,000 人あたり23 人減少(95% CI:41 人減少~42 人増加)した.よって,介入による望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,明らかな害となるアウトカムは認められず,望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上より,効果と害のバランスは,「たぶん効果が大きい」と判断した.
2)「典型的APRV」今回採用した7 RCT のうち4 RCT では,低圧相終了までに呼気フローが0 となるもの(Putensen2002,Varpula2003,Varpula2004,Varpula2009)で,逆比換気(IRV)ともいえる換気モードであり,一般的に認知されているAPRV とは言い難い.典型的なAPRV は,低圧相時間が短期(50~75% PEFR)で終了するものを指す2)と考えられ,低圧相で呼気フローが0 とならないもの(>0% PEFR:ここでは「典型的APRV」とする)のみを扱った研究によるサブグループ解析も併せて施行した(50~75% PEFR を満たしたのはZhou 2017 のみであった).「典型的APRV」を使用することで,VFD(2 RCT:n=190)に関する効果推定値は平均5.65 日延長(95% CI:2.8 日延長~8.49 日延長)し,死亡(3 RCT:n=253)に関する効果推定値は1,000 人あたり84 人減少(95% CI:152 人減少~22 人増加)し,圧損傷(3 RCT:n=253)に関する効果推定値は1,000 人あたり23 人減少(95% CI:41 人減少~42 人増加)した.以上から,介入による望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,明らかな害となるアウトカムは認められず,望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上より,効果と害のバランスは,「たぶん効果が大きい」と判断した.「典型的APRV」によるサブグループ解析は,全体の解析と比較して点推定値や全体の望ましい方向性に変化は認められなかった.エビデンスの確実性1)全体望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した. 2)「典型的APRV」望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.エビデンスの確実性も全体の解析とサブグループ解析における変化は認められなかった.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定APRV による人工呼吸器管理はA/C などの通常の人工呼吸器管理と比べて,死亡,VFD,圧損傷のアウトカムを改善する可能性がある.しかし,特定の機種の人工呼吸器以外では,典型的なAPRV を行うことは困難であり,そのためのコストを要すること,また,典型的なAPRV を行うにあたって,習熟したスタッフが必要と考えられ,使用に際しては施設ごとの対応が求められると考えられる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,換気条件としてAPRV を使用することを提案する(弱い推奨/非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値7点,見解不一致指数0.2414 であった.パネル会議では筋弛緩薬との併用が困難なモードであり,同時に推奨することは困難であるという議論があった.その結果,再投票することになり,修正Delphi 法により,「推奨としてIn our practice statement を用いる」が,中央値7 点,見解不一致指数0.2188 で合意に至った.付加的な考慮事項今回の「典型的APRV」群のRCT の中には,低圧相時間を25~75%PEFR と定義したもの(Maxewell 2010),および呼気時間は0.4~0.8 秒と短時間に設定されているもののPEFR に関しての言
及がないもの(Li2016)が含まれている.Habashi の総説1)では,低圧相時間は50~75% PEFRを満たすことが推奨されているが,それを満たすZhou 2017 のみであり,それが今回の結果に影響を及ぼしている可能性も考慮される.また,今回採用した研究の多くがmoderate~severe ARDS を組み入れ基準としており,平均P/ F ratio は100~150 mmHg 程度であった.よって,APRV を使用する場合,中等症以上の症例に使用されることが望ましいと考えられる. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 上記エビデンスの要約,付加的な考慮事項を参照. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ARDS に対するAPRV の使用に対して,『ARDS 診療ガイドライン2016』『ATS/ESICM/ SCCM2017』では推奨はなかった. APRV モードを使用している場合でもPEFR に意識が払われずに換気設定が行われている場合,有効性が得られない可能性もあるため,使用に習熟していない,また,専用の機械を持たない施設での使用には慎重になるべきである.また,使用に際しては,肺のリクルータビリティが乏しい患者においてVALI のリスクが高まる可能性や,高い気道内圧により静脈灌流量が低下し,心拍出量および血圧が低下する可能性などを考慮する必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてAPRV が実際どの程度の施設で用いられているかに関しての更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどを行い,モニタリングすることが必要である. 研究の可能性 Research priorities Habashi1)が推奨しているPEFR 設定を利用したRCT は本メタ解析に用いた研究の中ではZhou 2017 のみであり,この設定方法の有効性を確認するための,別の大規模RCT が必要であると考えられる.また,リクルータビリティの有無,自発呼吸の強さなどによりAPRV の効果が異なる可能性があり,今後の研究課題である.参考文献1) Habashi NM. Other approaches to open‒lung ventilation:airway pressure release ventilation. Crit Care Med 2005;33:S228‒40.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.人工呼吸の最適な換気条件として何を選択するべきかは未だ明らかではなく,特に補助調節換気(assist control ventilation:A/C)と同期式間欠的強制換気(synchronized intermittent mandatory ventilation:SIMV)は通常の人工呼吸器管理に用いられているものの,どちらが有効であるかは定かではない.したがって,この問題の優先度はおそらく高いと考えられる. 解 説 PICO 患者(P):成人のARDS 患者または重症の人工 呼吸器装着患者.介入(I):SIMV による人工呼吸器管理.対照(C):A/C による人工呼吸器管理. アウトカム(O):人工呼吸器装着日数,死亡. エビデンスの要約 SR の結果,PICO で設定されたVFD を含む研究が見つからなかったため,VFD のアウトカムを「人工呼吸器装着日数」に変更した.益のアウトカムとして,SIMV を使用することでA/C と比較して,人工呼吸器装着日数(1RCT:n=40)は0 日減少(95%CI:7.41 日減少~7.41 日増加),死亡(1RCT:n=40)を1,000 人あたり100 人減少(95%CI:272 人減少~308 人増加)であった.このことより予想される望ましい効果は「たぶん大きい」と判断した.一方,害のアウトカムとして,Robinson らによる観察研究1)によると,人工呼吸器との非同調が多く生じた患者群は,有意にSIMV が高い頻度で使用されていた.また, 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,SIMV とA/C のどちらが望ましいか? CQ 24 成人ARDS 患者において,SIMV とA/C のどちらの換気モードを使用する べきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできない(in our practice statement). 非同調の増加や呼吸器離脱までの時間の延長といったリスクを考慮すると,SIMV よりもA/C が使用されることが多い. 推 奨 付帯事項
ARDS 患者に限定しない複数の研究では, SIMV を呼吸器離脱のモードとして用いた場合,他の呼吸器モードと比較して人工呼吸器離脱まで時間が長かったとする報告も認められた2,3).以上より,予想される望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上より,メタ解析における効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と考えられた. エビデンスの確実性 メタ解析に含まれた唯一の単施設RCT のサンプル数は40 と小さく,死亡および人工呼吸器装着日数は二次アウトカムであった.また,サンプル数が小さいため有意差は認められなかったが,A/C 群でミダゾラムの使用量が多い傾向があり,せん妄や非同調などが助長され,人工呼吸器装着日数や死亡に影響を与えている可能性が考慮された.以上より,このメタ解析によるSIMV およびA/C の使用における推奨提示は困難と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 本介入における,望ましい,望ましくない効果はわからないものの,人工呼吸器の換気条件の変更におけるコストは低いものと考えられる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,SIMV もしくはA/C のどちらの換気条件を使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできないと判断した(in our practice statement)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 特になし. 実施上の考慮事項 SIMV を用いるのであれば,人工呼吸器と患者間の非同調をモニターし,著明な非同調が認められる場合は他のモードに変更する必要がある.離脱モードとしてSIMV を使用することは望ましくない4). 関連する他の診療ガイドラインの記載 A/C とSIMV に関して『ARDS 診療ガイドライン2016』5)『ATS/ESICM/SCCM2017』6)では記載は認められなかった. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として, SIMV が現状どの程度使用されているかについて更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングすることが必要である. 今後の研究の可能性 今回はメタ解析に用いた研究のバイアスリスクが高いこと,および日常臨床と結果の乖離から,推奨を出すには至らなかったが,SIMV とA/C のどちらを選択するかというCQ は日常診療では依然として重要である.よって,引き続き,質の高いSIMV とA/C を比較した大規模RCT の登場が望まれる. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Synchronized intermittent mandatory ventilation」「Mechanical ventilation」をキーワードとし 3 4 5 3 4 5 6 7 8
て,PubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月29 日までの文献を検索したところ5,933 件の研究が同定され,スクリーニングの結果1 件のRCT7)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Luo 20157).資料一覧 ・資料CQ24‒1 Search strategy.・資料CQ24‒2 フローダイアグラム.・資料CQ24‒3 Risk of bias.・資料CQ24‒4 Forest plot.・資料CQ24‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ24‒6 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Robinson BR, Blakeman TC, Toth P, et al. Patient‒ventilator asynchrony in a traumat- ically injured population. Respir Care 2013;58:1847‒55. 2) Brochard L, Rauss A, Benito S, et al. Comparison of three methods of gradual with- drawal from ventilatory support during weaning from mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 1994;150:896‒903. 3) Esteban A, Frutos F, Tobin MJ, et al. A comparison of four methods of weaning patients from mechanical ventilation. Spanish Lung Failure Collaborative Group. N Engl J Med 1995;332:345‒50. 4) Kacmarek RM, Branson RD. Should intermittent mandatory ventilation be abolished? Respir Care 2016;61:854‒66. 5) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 6) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 7) Luo J, Wang MY, Liang BM, et al. Initial synchronized intermittent mandatory venti- lation versus assist/control ventilation in treatment of moderate acute respiratory distress syndrome:a prospective randomized controlled trial. J Thorac Dis 2015; 7:2262‒73. 参考文献
資料CQ24—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/8) #1 respiratory distress syndrome, adult[mh] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR respiratory insufficiency[mh] OR acute lung injury[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR acute respiratory failure*[tiab] OR ALI[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Respiration, Artificial[mh] OR artificilal respiration*[tiab] OR Pulmonary Ventilation[mh] OR pulmonary ventilat*[tiab] OR Ventilators, Mechanical[mh] OR mechanical ventilat*[tiab] OR positive-pressure respiration*[tiab] OR positive pressure ventilat*[tiab] #3 pressure control*[tiab] OR PCV[tiab] OR volume control*[tiab] OR VCV[tiab] #4 airway pressure release ventilat*[tiab] OR APRV[tiab] #5 synchronized intermittent mandatory ventilation[tiab] OR intermittent mandatory ventilation[tiab] OR SIMV[tiab] OR IMV[tiab] #6 PSV[tiab] OR pressure support[tiab] #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR clinical trials as topic [mesh: noexp] OR randomly [tiab] OR trial [ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #9 #1 AND #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "respiratory distress syndrome, adult"] OR "acute respiratory distress syndrom":ti,ab OR [mh "respiratory insufficiency"] OR [mh "acute lung injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab OR ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "Respiration, Artificial"] OR "artificilal respiration":ti,ab OR [mh "Pulmonary Ventilation"] OR "pulmonary ventilation":ti,ab OR [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "positive-pressure respiration":ti,ab OR "positive pressure ventilation":ti,ab #3 "pressure control":ti,ab OR PCV:ti,ab OR "volume control":ti,ab OR VCV:ti,ab #4 "airway pressure release ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #5 "synchronized intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR "intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR SIMV:ti,ab OR IMV:ti,ab #6 PSV:ti,ab OR "pressure support":ti,ab #7 {OR #2-#6} #8 #1 AND #7 #9 [mh animals] NOT [mh humans] #10 #8 NOT #9
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/26) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR 急性肺障害/AL OR 急性肺傷害/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #2人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR 人工換気/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械換気/ AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL OR 調節換気/AL OR 陽圧呼吸/AL OR 陽圧換気/ AL #3従圧/AL OR 圧規定/AL OR 従量/AL OR 量規定/AL OR PCV/AL OR VCV/AL #4 APRV/AL OR 気道内圧開放式/AL OR 気道内圧解放式/AL OR "Airway Pressure Release Ventilation"/AL
#5間欠性強制換気/TH OR 同期式間欠的強制/AL OR 間欠的強制/AL OR SIMV/AL OR IMV/AL OR "synchronized intermittent mandatory"/AL OR "intermittent mandatory"/AL #6プレッシャーサポート/AL OR PSV/AL OR "pressure support"/AL OR "pressure-support"/AL #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (((RD= ランダム化比較試験,準ランダム化比較試験,比較研究) OR ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL)) NOT (CK=動物 NOT CK=ヒト)) AND (PT=会議録除く) #9 #1 AND #7 AND #8
資料CQ24—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究(フルテキストを取り寄せた試み n=87) 系統的レビューに組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし) 検索で同定された研究 n=5,933 重複研究を除外した研究 n=4,365 除外基準に該当した研究 n=4,278 重複した研究 n=1,568 除外基準に該当した研究n=76理由:主なもの・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 全文入手不可9件30件 11件18件8件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌2,824件2,559件550件 n=5,933 メタ解析に組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし)
資料CQ24—3 Risk of bias 人工呼吸器非使用日数死 亡
資料CQ24—4 Forest plot 人工呼吸器装着日数 死 亡
資料CQ24—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討同期式間欠的 強制換気(SIMV: VCVもしくはPCV)補助換気(A/C: VCVもしくはPCV)相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 人工呼吸器装着日数 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし20 20 —平均0 日短縮(7.41 日短縮~ 7.41 日延長) ++○○ 低重大 死 亡 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻cなし6/20 (30.0%) 8/20 (40.0%) RR 0.75 (0.32~ 1.77) 1,000 人あたり100 人減少(272 人減少~ 308 人増加) ++○○ 低重大 人工呼吸器関連肺損傷 0 推定不可能 — — 重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.人工呼吸器関連肺損傷はアウトカム報告がなかった.説 明a.含まれている研究がmoderate risk of bias のため. b.含まれている研究がOIS を満たさないため. c.含まれている研究がOIS を満たさないため.また95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため.
資料CQ24—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ24:成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,SIMV とA/C のどちら が望ましいか? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者介 入:同期式間欠的強制換気(SIMV)での人工呼吸器管理比較対照:補助調節換気(A/C)での人工呼吸器管理主要なアウトカム:人工呼吸器装着日数,死亡,人工呼吸器関連肺損傷(VALI)セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.SIMV と A/C は通常の人工呼吸器で設定可能であるものの,どちらが有効であるかは定かではない 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同 様に重要である.SIMV とA/C は通常の人工呼吸器で設定可能であるものの,どちらが有効であるかは定かではない.したがって,この問題の優先度はおそらく高いと考えられる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT は1 件のみであり,こ れを用いたメタ解析を施行した.なお,アウトカムとして人工呼吸器非使用日数(VFD)が扱われておらず,アウトカムをVFD から人工呼吸器装着日数に変更した.益のアウトカムとして,人工呼吸器装着日数(1 RCT:n= 40)に関する効果推定値は,A/C(VCV もしくはPCV)と比較してSIMV で平均差0 日短縮(95% CI:7.41 日短縮~7.41 日延長)し,死亡(1 RCT:n=20)に関する効果推定値は1,000 人あたり100 人減少(95% CI:272 人
減少~308 人増加)した.以上から,介入による望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからない害のアウトカムとして,VALI を検討したが,採用文献の中 に報告された研究はなかった.よって,備考欄の記載も考慮の上,介入により予想される望ましくない効果は「わからない」と判断したSIMV による害として 観察研究を参照した. Robinson らによる観察研究1)によると,人工呼吸器との非同調が多く生じた患者群は,有意にSIMV が高い頻度で使用されていた.また, ARDS 患者に限定しない複数の研究2,3)でも, SIMV を呼吸器離脱のモードとして用いた場合,他の呼吸器モードと比較し人工呼吸器離脱まで時間が長かったとする報告が認められた エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低●低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 人工呼吸器 装着日数重大++○○ 低 死亡重大++○○ 低 VALI重大— VALI は採用された研究内に報告はなかった 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果内での方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない重要な不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムA/C (対照) SIMV (介入)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 人工呼吸器装着日数— —平均0 日短縮 (7.41 日短縮~ 7.41 日延長) — 死 亡8/20 6/20 100 人減少/ 1,000 人(272 人減少~ 308 人増加) 0.75 (0.32~ 1.77) VALI — — —報告なしVALI は採用された研究内に報告はなかった 以上より,介入による効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないSIMV は同調性に問題がある可能性があるとされる1).ま た,ARDS 患者に限定しない複数の研究で,SIMV を呼吸器離脱のモードとして用いた場合,他の呼吸器モードと比較して人工呼吸器離脱まで時間が長かったとする報告があるため2,3),死亡率やVALI 以外の理由からSIMV の使用に慎重になる施設が多い可能性がある 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないほとんどの人工呼吸器にSIMV の設定があるため,可能で あると考えられる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,SIMV とA/C のどちらの換気モードを使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできない(in our practice statement). 付帯事項 非同調の増加や呼吸器離脱までの時間の延長といったリスクを考慮すると,SIMV よりもA/C が使用されることが多い. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者においてSIMV はA/C と比較してアウトカムを改善するか?患 者 成人のARDS 患者または重症の人工呼吸器装着患者.介 入 SIMV による人工呼吸器管理.対 照 A/C による人工呼吸器管理.アウトカム 人工呼吸器装着日数,死亡.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT は1 件のみであり,これを用いたメタ解析を施行した.なお,アウトカムとしてVFDが扱われておらず,アウトカムをVFDから人工呼吸器装着日数に変更した. SIMV を使用することで,益のアウトカムとして人工呼吸器装着日数(1 RCT:n=40)に関す
る効果推定値は0 日減少(95% CI:7.41 日減少~7.41 日増加)し,死亡(1 RCT:n=40)に関する効果推定値は1,000 人あたり100 人減少(95% CI:272 人減少~308 人増加)した.このことより,予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,上記メタ解析に用いた研究にはSIMV を用いることによる害のアウトカムの報告がなかった.害のアウトカムとして観察研究の結果を引用した.Robinson らの観察研究では,人工呼吸器との非同調が多く生じた患者群にSIMVが高い頻度で使用されていた1).また,ARDS 患者に限定しない複数の研究では,SIMV を呼吸器離脱のモードとして用いた場合,他の呼吸器モードと比較して人工呼吸器離脱まで時間が長かった2,3).上記引用結果からは予想される望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上より,効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性メタ解析に含まれた唯一の単施設RCT のサンプル数は40 と小さく,死亡および人工呼吸器装着日数は二次アウトカムであった.また,サンプル数が小さいため有意差は認められなかったが,A/C群でミダゾラム使用量が多い傾向があり,せん妄や非同調などが助長され,人工呼吸器装着日数や死亡に影響を与えている可能性が考慮された.以上より,このメタ解析によるSIMV およびA/C の使用における推奨提示は困難と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定本介入における,望ましい,望ましくない効果はわからないものの,人工呼吸器の換気モードの変更におけるコストは低いものと考えられる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,SIMV もしくはA/C のどちらの換気条件を使用するべきかについて,本SR の結果からは推奨を行うことはできないと判断した(in our practice statement)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項パネル会議中にパネル委員以外の非専門家を含む医師39人を対象に行ったアンケート結果では, 69.23%が人工呼吸器開始モードとしてSIMV を選択することに賛成しなかった.施設の慣れや慣習などによって,SIMV を使用することが妥当な場合はあるが,非同調が多くなること,そして人工呼吸器離脱までの時間が延長するという報告があるため,SIMV の使用には注意を要する4). サブグループの検討事項 Subgroup considerations 特になし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations A/C とSIMV に関して『ARDS 診療ガイドライン2016』『ATS/ESICM/SCCM2017』では記載は認められなかった.SIMV を用いるのであれば,人工呼吸器と患者間の非同調をモニターし,著明な非同調が認められる場合は他のモードに変更する必要がある.離脱モードとしてSIMV を使用することは望ましくない2,3). モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題として,SIMV が現状どの程度使用されているかについて更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイド
ライン公表後にアンケートなどでモニタリングすることが必要である. 研究の可能性 Research priorities 今回はメタ解析に用いた研究のバイアスリスクが高いこと,および日常臨床と結果の乖離から,推奨を出すには至らなかったが,SIMV とA/C のどちらを選択するかというCQ は日常診療では依然として重要である.よって,引き続き,質の高いSIMV とA/C を比較した大規模RCT の登場が望まれる.参考文献1) Robinson BR, Blakeman TC, Toth P, et al. Patient‒ventilator asynchrony in a traumatically injured population. Respir Care 2013;58:1847‒55. 2) Brochard L, Rauss A, Benito S, et al. Comparison of three methods of gradual withdrawal from ventilatory support during weaning from mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 1994;150:896‒903. 3) Esteban A, Frutos F, Tobin MJ, et al. A comparison of four methods of weaning patients from mechanical ventilation. Spanish lung failure collaborative group. N Engl J Med 1995;332:345‒50. 4) Kacmarek RM, Branson RD. Should intermittent mandatory ventilation be abolished? Respir Care 2016;61:854‒66.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.人工呼吸の最適な換気条件として何を選択するべきかは未だ明らかではなく,特に自発呼吸が温存されている状況で一般的に用いられている換気条件であるプレッシャーサポート換気(pressure support ventilation:PSV)と補助換気(assist control ventilation:A/C)のうち,どちらが有効であるかは定かではない.したがって,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):人工呼吸器管理を必要とする成人 ARDS 患者.介入(I):プレッシャーサポート換気(PSV)で人工呼吸器管理を行う. 対照(C):補助換気A/C(PCVもしくはVCV) で人工呼吸器管理を行う. エビデンスの要約 該当の研究なし.機械換気は,ARDS などの重症呼吸不全患者にとって重要な呼吸のサポートとなる.機械換気による酸素化の改善や,患者自身の呼吸努力を軽減する効果がある.しかし,患者と人工呼吸器の間に非同調が起こると,機械換気そのものにより肺損傷をきたしたり,血行動態への悪影響を及ぼし,ひいては患者の死亡率を上昇させることにつながる. PSV は患者の自発呼吸を温存した上で,吸気時にサポートを行う換気モードである.A/Cモードと比較し,患者と人工呼吸器の非同調が起こりにくく,それに伴う肺損傷をきたしにく 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 自発呼吸のある成人ARDS 患者で人工呼吸を実施する際,PSV とA/C のどちらが望ましいか? CQ 25 成人のARDS 患者に対して,PSV モードとA/C モードのどちらが望ましい とする推奨はできない.個々の患者の病態および状態に基づいて換気モード を選択することが一般的に行われている(in our practice statement). 患者の自発呼吸の有無,鎮静薬や筋弛緩薬の使用,ARDS の重症度などに合わせて,患者を個別化した上でどちらのモードを使用するべきか判断するべきである. 推 奨 付帯事項
い可能性がある.また,呼吸の快適性が増すため,鎮静薬の投与量を減量できる可能性がある.しかし,あくまで自発呼吸に依存した換気モードであり,患者自身の自発呼吸努力が強い場合,1 回換気量が増大してしまい肺保護的な人工呼吸器設定を損なう可能性がある.これら換気モードの違いによる効果と害のバランスの比較を検討するための良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 利益と害に関する研究がないため,評価はできない.負担およびコストについては,換気モードの変更のみであり,また,いずれの換気モードも標準的に使用されている人工呼吸器に搭載されている.したがって,それに伴い必要とされるコストやリソースは,たぶん少ないと判断される. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人のARDS患者に対して,PSVモードとA/Cモードの比較に対する推奨はできない.個々の患者の病態および状態に基づいて換気モードを選択することが一般的に行われている(in our practice statement)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1918 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 1 人の患者に両方のモードが用いられることも多いと考えられる.患者の自発呼吸の状態,鎮静薬や筋弛緩薬の使用,ARDS の重症度,患者の状態(急性期であるのか,離脱を検討する時期であるのか)などに合わせて,患者を個別化した上でどちらのモードを使用するべきか判断するべきである. 関連する他の診療ガイドラインの記載 PSV とA/C のどちらが望ましいかに関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』1)『ATS/ ESICM/SCCM2017』2)では記載は認められなかった. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として,実際にどのタイミングでA/C からPSV に切り替えるかについて更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングすることが必要である. 今後の研究の可能性 本CQの分野では参考とするべき研究がない.今後,成人ARDS患者または重症呼吸不全患者に対するPSV モードとA/C モードを比較したRCT が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「pressure support」「Mechanial ventilation」をキーワード 3 4 5 3 4 5 6 7 8
としてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月29 日までの文献を検索したところ5,933 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当するRCTはなかった. 本CQ で対象とした研究 該当なし.資料一覧 ・資料CQ25‒1 Search strategy.・資料CQ25‒2 フローダイアグラム. ・資料CQ25‒3 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 2) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 参考文献
資料CQ25—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/8) #1 respiratory distress syndrome, adult[mh] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR respiratory insufficiency[mh] OR acute lung injury[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR acute respiratory failure*[tiab] OR ALI[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Respiration, Artificial[mh] OR artificilal respiration*[tiab] OR Pulmonary Ventilation[mh] OR pulmonary ventilat*[tiab] OR Ventilators, Mechanical[mh] OR mechanical ventilat*[tiab] OR positive-pressure respiration*[tiab] OR positive pressure ventilat*[tiab] #3 pressure control*[tiab] OR PCV[tiab] OR volume control*[tiab] OR VCV[tiab] #4 airway pressure release ventilat*[tiab] OR APRV[tiab] #5 synchronized intermittent mandatory ventilation[tiab] OR intermittent mandatory ventilation[tiab] OR SIMV[tiab] OR IMV[tiab] #6 PSV[tiab] OR pressure support[tiab] #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR clinical trials as topic [mesh: noexp] OR randomly [tiab] OR trial [ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #9 #1 AND #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "respiratory distress syndrome, adult"] OR "acute respiratory distress syndrom":ti,ab OR [mh "respiratory insufficiency"] OR [mh "acute lung injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab OR ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "Respiration, Artificial"] OR "artificilal respiration":ti,ab OR [mh "Pulmonary Ventilation"] OR "pulmonary ventilation":ti,ab OR [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "positive-pressure respiration":ti,ab OR "positive pressure ventilation":ti,ab #3 "pressure control":ti,ab OR PCV:ti,ab OR "volume control":ti,ab OR VCV:ti,ab #4 "airway pressure release ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #5 "synchronized intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR "intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR SIMV:ti,ab OR IMV:ti,ab #6 PSV:ti,ab OR "pressure support":ti,ab #7 {OR #2-#6} #8 #1 AND #7 #9 [mh animals] NOT [mh humans] #10 #8 NOT #9
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/26) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR 急性肺障害/AL OR 急性肺傷害/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #2人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR 人工換気/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械換気/ AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL OR 調節換気/AL OR 陽圧呼吸/AL OR 陽圧換気/ AL #3従圧/AL OR 圧規定/AL OR 従量/AL OR 量規定/AL OR PCV/AL OR VCV/AL #4 APRV/AL OR 気道内圧開放式/AL OR 気道内圧解放式/AL OR "Airway Pressure Release Ventilation"/AL
#5間欠性強制換気/TH OR 同期式間欠的強制/AL OR 間欠的強制/AL OR SIMV/AL OR IMV/AL OR "synchronized intermittent mandatory"/AL OR "intermittent mandatory"/AL #6プレッシャーサポート/AL OR PSV/AL OR "pressure support"/AL OR "pressure-support"/AL #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (((RD= ランダム化比較試験,準ランダム化比較試験,比較研究) OR ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL)) NOT (CK=動物 NOT CK=ヒト)) AND (PT=会議録除く) #9 #1 AND #7 AND #8
資料CQ25—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究(フルテキストを取り寄せた試み n=87) 系統的レビューに組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし) 検索で同定された研究 n=5,933 重複研究を除外した研究 n=4,365 除外基準に該当した研究 n=4,278 重複した研究 n=1,568 除外基準に該当した研究n=76理由:主なもの・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 全文入手不可9件30件 11件18件8件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌2,824件2,559件550件 n=5,933 メタ解析に組み入れた研究n=11(CQ22:3論文, CQ23:7論文, CQ24:1論文, CQ25:なし)
資料CQ25—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ25:自発呼吸のある成人ARDS 患者で人工呼吸を実施する際,PSV と A/C のどちらが望ましいか? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者介 入:プレッシャーサポート(圧支持)換気(PSV)比較対照:補助調節換気〔A/C(PCV もしくはVCV)〕主要なアウトカム:人工呼吸器非使用日数(VFD),死亡,人工呼吸器関連肺損傷(VALI)セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.自発呼 吸が温存されている状況で一般的に用いられているPSV とA/C のうち,どちらが有効であるかは定かではない 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要であ る.自発呼吸が温存されている状況で一般的に用いられているPSV とA/C のうち,どちらが有効であるかは定かではない.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がない機械換気は,ARDS などの重症呼吸不全患者にとって重要な呼吸のサ ポートとなる.機械換気による酸素化の改善や,患者自身の呼吸努力を軽減する効果がある.しかし,患者と人工呼吸器の間に非同調が起こると,機械換気そのものにより肺損傷をきたしたり,血行動態への悪影響を及ぼし,ひいては患者の死亡率を上昇させることにつながるPSV は患者の自発呼吸を温存した上で,吸気時にサポートを行う換気モードである.A/C モードと比較し,患者と人工呼吸器の非同調が起こりにくく,それに伴う肺損傷をきたしにくい可能性がある.また,呼吸の快適性が増すため,鎮静薬の投与量を減量できる可能性がある.しかし,あくまで自発呼吸に依存した換気モードであり,患者自身の自発呼吸努力が強い場合,1 回換気量が増大してしまい肺保護的な人工呼吸器設定を損なう可能性があるこれら換気モードの違いによる効果と害のバランスの比較を検討するための試験は行われておらず,エビデンスの確信性の記述は行えない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確実性や多様性はな いたぶん重要な不確実性や多様性はない
○重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されてお り,コスト,有害性などを考慮しても実行可能と考える 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されてい るため実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○
結 論 推 奨 Recommendation 成人のARDS 患者に対して,PSV モードとA/C モードのどちらが望ましいとする推奨はできない.個々の患者の病態および状態に基づいて換気モードを選択することが一般的に行われている(in our practice statement). 付帯事項 患者の自発呼吸の有無,鎮静薬や筋弛緩薬の使用,ARDS の重症度などに合わせて,患者を個別化した上でどちらのモードを使用するべきか判断するべきである. 理 由 Justification 疑 問 自発呼吸のある成人ARDS 患者で人工呼吸を実施する際,PSV とA/C のどちらが望ましいか?患 者 人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者.介 入 PSV で人工呼吸器管理を行う.対 照 A/C(PCV もしくはVCV)で人工呼吸器管理を行う.解 説機械換気は,ARDS などの重症呼吸不全患者にとって重要な呼吸のサポートとなる.機械換気による酸素化の改善や,患者自身の呼吸努力を軽減する効果がある.しかし,患者と人工呼吸器の間に非同調が起こると,機械換気そのものにより肺損傷をきたし,血行動態への悪影響を及ぼし,ひいては患者の死亡リスクにつながる.PSV は患者の自発呼吸を温存した上で,吸気時にサポートを行う換気モードである.A/C モードと比較し,患者と人工呼吸器の非同調が起こりにくく,それに伴う肺損傷をきたしにくい可能性がある.また,呼吸の快適性が増すため,鎮静薬の投与量を減量できる可能性がある.しかし,あくまで自発呼吸に依存した換気モードであり,患者自身の自発呼吸努力が強い場合,1回換気量が増大してしまい肺保護的な人工呼吸器設定を損なう可能性がある.これら換気モードの違いによる効果と害のバランスの比較を検討するための良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定利益と害に関する研究がないため評価はできない.負担およびコストについては,換気モードの変更のみであり,また,いずれの換気モードも標準的に使用されている人工呼吸器に搭載されているため,必要とされるコストやリソースは,たぶん少ないと判断される.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人のARDS 患者に対して,PSV モードとA/C モードの比較に対する推奨はできない.個々の患者の病態および状態に基づいて換気モードを選択することが一般的に行われている(in our practice statement)」が,中央値8.0点,見解不一致指数0.1918であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations PSV とA/C のどちらが望ましいかに関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』『ATS/ESICM/ SCCM2017』では記載は認められなかった.また,1 人の患者に両方のモードが用いられることも多いと考えられる.患者の自発呼吸の状態,鎮静薬や筋弛緩薬の使用,ARDS の重症度,患者の状態(急性期であるのか,離脱を検討する時期であるのか)などに合わせて,患者を個別化した上でどちらのモードを使用するべきか判断するべきである. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として実際どのタイミングでA/C からPSV に切り替えるかについて更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングすることが必要である. 研究の可能性 Research priorities 本CQ の分野では参考とするべき研究がない.今後,成人ARDS 患者または重症呼吸不全患者に対するPSV モードとA/C モードを比較したRCT が必要である.
背景,この問題の優先度 リクルートメント手技(recruitment maneuver:RM)はベッドサイドで実施可能な低コストの介入で,酸素化や肺コンプライアンスの改善,VV‒ECMO(veno‒venous extracorporeal membrane oxygenation)などのレスキュー的治療の必要性を減らす可能性が示唆されている.一方,高い圧で陽圧換気を行うため,合併症として循環不全や圧損傷などを生じる可能性も指摘されている.以上の状況から, ARDS に対しRM を行うべきか否かに関し,メタ解析に基づいた推奨決定が必要である.上記の背景から,この問題の優先度は高い.解 説 PICO 患者(P):成人ARDS 患者.介入(I):なんらかのRM を実施.対照(C):RM を非実施.アウトカム(O):VFD,28 日死亡,ICU 滞在 日数,圧損傷,循環不全. エビデンスの要約 RM を行う場合と行わない場合を比較した時,VFD(6RCT:n=2,043)は平均差0.91 日延長(95%CI:1.56 日短縮~3.37 日延長),28日死亡(12RCT:n=3,254)は1,000 人あたり16 人減少(95%CI:61 人減少~41 人増加),ICU 滞在期間(11RCT:n=3,201)は 1.03 日短縮(95%CI:2.58 日短縮~0.53 日延 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際リクルートメント手技を行うか? CQ 26 成人ARDS 患者において,リクルートメント手技を日常的に使用しないこと を条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). リクルートメント手技を行う際は,十分な教育と訓練が行われ,循環をモニタリングし,かつ心停止など危機的状況に対処できる場合にP/F比の改善とレスキュー治療の回避を目的に考慮してもよい. 推 奨 付帯事項
長)した.以上から望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムに関しては,圧損傷(11RCT:n=3,231)で,1,000 人あたり4 人減少(95%CI:27 人減少~35 人増加),循環不全(3RCT:n=354)で1,000 人あたり90 人増加(95% CI:3 人減少~218 人増加)であった.以上より,介入による害は「小さい」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん害が大きい」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果におけるアウトカムの方向性が一致しておらず,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 RM による負担とコストは教育と訓練を行う程度であり,大きくはないと考えられる.利益と害に関しては重大なアウトカムである28 日死亡,VFD,ICU 滞在期間への効果は,わずかな益とわずかな害のどちらの可能性もあり,また,心停止を含む循環不全が増加する傾向があるため,正味の利益は不確かであり,状況に応じて実施するかを判断する必要がある. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,RM を日常的に使用しないことを提案する(弱い非推奨/非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値 9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.そ の結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 RM を行う場合は教育と訓練を受けた者が,循環動態を慎重にモニタリングして行い,循環動態に懸念がある際には手技を中断すること.手技の手順に関して最適な手順はわかっておらず,少なくともART study1)のような死亡割合が増加した研究のプロトコルは避けたほうがよいと考えられる(例:ART study の方法;1 分間25 cmH2O のPEEP,1 分間35 cmH2O のPEEP,2 分間45 cmH2O のPEEP).また,手技実施を導入する際に追加的な評価の実施(たとえば,P/F 比,レスキュー治療,圧損傷,循環不全のモニタリング)により確信性は高まるかもしれない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDSに対するRMの使用に関して,『ARDS診療ガイドライン2016』2)での推奨はなかった.ATS/ESICM/SCCM20173)の『ARDS ガイドライン』では成人ARDS 患者に対するRM の使用を推奨としている.これに関しては,ART study1)発表前のガイドラインであり,ART study など複数の最近の研究でRM による死亡率などの悪化が示唆されたことが影響したと考えられる. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてRM の実施方法について更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 3 4 5 3 4 5 6
今後の研究の可能性 酸素化,レスキュー治療割合を改善し,かつ循環動態の悪化を最小にする最適なRM を探すための研究が必要である.CT ガイド下や超音波ガイド下でのリクルートメント手技の研究も行われており,今後は手技の異質性に考慮したメタ解析が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Recruitment maneuver」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRALおよび医中誌で2020 年6 月11 日までの文献を検索したところ4,089 件の研究が同定され,スクリーニングの結果13件のRCT1,4‒15)を採用した.本CQ で対象とした研究 ART 20171), Kung 20194), Meade 20085), Xiu 20106), Khan 20187), Amato 19988), Chung 20179), Constantin 201010), Hodgson 201111), Kacmarek 201612), Yu 201713), Huh 200914), Hodgson 201915). 資料一覧 ・資料CQ26‒1 Search strategy.・資料CQ26‒2 フローダイアグラム.・資料CQ26‒3 Risk of bias.・資料CQ26‒4 Forest plot.・資料CQ26‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ26‒6 Evidence‒to‒Decision. 7 8 9 10 1) Writing group for the alveolar recruitment for acute respiratory distress syndrome trial(ART)investigators. Effect of lung recruitment and titrated positive end‒expiratory pressure(PEEP)vs low PEEP on mortality in patients with acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. JAMA 2017;318:1335‒45. 2) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 3) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 4) Kung SC, Hung YL, Chen WL, et al. Effects of stepwise lung recruitment maneuvers in patients with early acute respiratory distress syndrome:a prospective, randomized, controlled trial. J Clin Med 2019;8:231. 5) Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al;Lung open ventilation study investigators. Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment maneuvers, and high positive end‒expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2008;299:637‒45. 6) Xiu XM, Jiang L, Zhu B;RM group. Clinical efficacy and safety of recruitment maneuver in patients with acute respiratory distress syndrome using low tidal volume ventilation:a multicenter randomized controlled clinical trial. Chin Med J (Engl)2010;123:3100‒5. 7) Khan NA, Saleen M, Ashfaq A, et al. Is the lung recruitment and titrated positive end expiratory pressure a better strategy as compared to low PEEP on mortality in 参考文献
patients with acute respiratory distress syndrome? Med Forum Monthly 2018;29: 93‒7. 8) Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al. Effect of a protective‒ventilation strategy on mortality in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 1998;338: 347‒54. 9) Chung FT, Lee CS, Lin SM, et al. Alveolar recruitment maneuver attenuates extravas- cular lung water in acute respiratory distress syndrome. Medicine(Baltimore)2017; 96:e7627. 10) Constantin JM, Futier E, Cherprenet AL, et al. A recruitment maneuver increases oxygenation after intubation of hypoxemic intensive care unit patients:a randomized controlled study. Crit Care 2010;14:R76. 11) Hodgson CL, Tuxen DV, Davies AR, et al. A randomised controlled trial of an open lung strategy with staircase recruitment, titrated PEEP and targeted low airway pressures in patients with acute respiratory distress syndrome. Crit Care 2011;15: R133. 12) Kacmarek RM, Villar J, Sulemanji D, et al;Open lung approach network. Open lung approach for the acute respiratory distress syndrome:a pilot, randomized controlled trial. Crit Care Med 2016;44:32‒42. 13) Yu S, Hu TX, Jin J, et al. Effect of protective lung ventilation strategy combined with lung recruitment maneuver in patients with acute respiratory distress syndrome (ARDS). J Acute Dis 2017;6:163. 14) Huh JW, Jung H, Choi HS, et al. Efficacy of positive end‒expiratory pressure titration after the alveolar recruitment manoeuvre in patients with acute respiratory distress syndrome. Crit Care 2009;13:R22. 15) Hodgson CL, Cooper DJ, Arabi Y, et al. Maximal recruitment open lung ventilation in acute respiratory distress syndrome(PHARLAP). A phase II, multicenter randomized controlled clinical trial. Am J Respir Crit Care Med 2019;200:1363‒72.
資料CQ26—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/11) #1 ("respiratory insufficiency"[Mesh] OR "respiratory insufficiency"[tiab]) AND acute[tiab] #2 "acute lung injury"[Mesh] OR "pulmonary atelectasis"[Mesh] OR "hypoxia"[Mesh] OR "acute respiratory failure"[tiab] OR "lung collapse"[tiab] OR "alveoli #3 "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[Mesh] OR "acute respiratory distress"[tiab] OR "acute respiratory distress syndrome"[tiab] #4 ARDS[tiab] OR ALI[tiab] OR RDS[tiab] #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 recruitment[tiab] OR derecruitment[tiab] #7 "positive-pressure respiration"[MeSH] OR "respiration, artificial"[MeSH] OR "Pulmonary reexpansion*"[tiab] OR "open lung"[tiab] OR "incremental peep"[tiab] #8 recruit*[tiab] AND (manoe*[tiab] OR maneuv*[tiab] OR manuev*[tiab]) #9 LRM[tiab] #10 #6 OR #7 OR #8 OR #9 #11 #5 AND #10 #12 randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR #13 #11 AND #12
CENTRAL(Search date:2020/6/11) #1 ([mh "respiratory insufficiency"] OR "respiratory insufficiency":ti,ab,kw) AND acute:ti,ab,kw #2 [mh "acute lung injury"] OR [mh "pulmonary atelectasis"] OR [mh hypoxia] OR "acute respiratory failure":ti,ab,kw OR "lung collapse":ti,ab,kw OR "alveoli collapse":ti,ab,kw OR "respiratory depression":ti,ab,kw OR "ventilatory depression":ti,ab,kw #3 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab,kw OR "acute respiratory distress syndrome":ti,ab,kw #4 ARDS:ti,ab,kw OR ALI:ti,ab,kw OR RDS:ti,ab,kw #5 {OR #1-#4} #6 recruitment:ti,ab,kw OR derecruitment:ti,ab,kw #7 [mh "positive-pressure respiration"] OR [mh "respiration, artificial"] OR "Pulmonary reexpansion*":ti,ab,kw OR "open lung":ti,ab,kw OR "incremental #8 [mh "positive-pressure respiration"] OR [mh "respiration, artificial"] OR "Pulmonary reexpansion*":ti,ab,kw OR "open lung":ti,ab,kw OR "incremental #9 LRM:ti,ab,kw #10 {OR #6-#9} #11 #5 AND #10
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/11) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL OR ARDS/AL OR RDS/AL #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL #4酸素欠乏/TH OR 低酸素症/AL OR hypoxia/AL #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 recruitment/AL OR derecruitment/AL OR リクルートメント/AL
#7オープンラング/AL OR open/AL AND ( 肺/TH OR lung/AL) #8人工呼吸/TH OR LRM/AL #9呼気/AL AND 終末/AL AND 陽圧/AL #10 #6 OR #7 OR #8 OR #9 #11 #5 AND #10 #12ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #13比較試験/AL #14臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #15プラセボ/TH OR プラセボ/AL #16対照/AL #17コントロール/AL #18臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #19 #12 OR #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 #20 #11 AND #19 #21 (#20) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ26—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌2,069件1,604件416件 n=4,089 検索で同定された研究 n=4,089 重複した研究 n=796 重複研究を除外した研究 n=3,293 フルテキストで適格性を評価した研究 n=90除外基準に該当した研究 n=3,203 系統的レビューに組み入れた研究 n=14 メタ解析に組み入れた研究 n=14除外基準に該当した研究 n=76理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ I/Cが異なる11件42件 23件
資料CQ26—3 Risk of bias 人工呼吸器非使用日数28日死亡 ICU滞在日数P/F比
圧損傷循環不全 レスキュー治療の有無
資料CQ26—4 Forest plot 人工呼吸器非使用日数 28日死亡 ICU滞在日数
P/F比 循環不全 圧損傷 レスキュー治療の有無
資料CQ26—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討リクルートメント手技ありリクルートメント手技なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) VFD* 6 ランダム 化試験深刻で ない深刻a 深刻で ない深刻で ないなし1,017 1,026 —平均0.91 日延長(1.56 日短縮~ 3.37 日延長) +++○ 中重大 28 日死亡 12 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし665/ 1,609 (41.3%) 671/ 1,645 (40.8%) RR 0.96 (0.85~ 1.10) 1,000 人あたり16 人減少(61 人減少~ 41 人増加) ++++ 高重大 ICU 滞在日数 11 ランダム 化試験深刻で ない深刻b 深刻で ない深刻で ないなし1,580 1,621 —平均1.03 日短縮(2.58 日短縮~ 0.53 日延長) +++○ 中重大 P/F 比 9 ランダム 化試験深刻で ない深刻c 深刻で ない深刻で ないなし829 867 —平均33.49 mmHg 高い(15.34 mmHg 高い~ 51.64 mmHg 高い) +++○ 中重要 圧損傷 11 ランダム 化試験深刻で ない深刻d 深刻で ない非常に 深刻eなし113/ 1,598 (7.1%) 101/ 1,633 (6.2%) RR 0.94 (0.57~ 1.56) 1,000 人あたり4 人減少(27 人減少~ 35 人増加) +○○○非常に低重大 循環不全 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻fなし64/177 (36.2%) 47/177 (26.6%) RR 1.34 (0.99~ 1.82) 1,000 人あたり90 人増加(3 人減少~ 218 人増加) +++○ 中重大 レスキュー治療の有無 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻gなし37/485 (7.6%) 63/518 (12.2%) RR 0.64 (0.43~ 0.93) 1,000 人あたり44 人減少(69 人減少~ 9 人減少) +++○ 中重要 *28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.CI は一部重なり,I2=92%,P<0.00001 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. b.CI は一部重なり,I2=60%,P=0.005 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. c.CI は一部重なり,I2=94%,P<0.00001 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. d.CI は一部重なり,I2=58%,P=0.02 と中程度の異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. e.(95%)CI の上下の閾値をまたぐほど広いため,2 段階グレードダウンすることにした. f.(95%)CI の上の閾値をまたぐため. g.OIS を満たさない.
評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS を生じた患者の肺では無気肺形成が生じ,含気低下そのものによ る呼吸不全や,share stress などによるVALI の発症につながる.このような無気肺は一定以上の陽圧をかけるRMにより改善する可能性がある. RM はベッドサイドで実施可能な低コストの介入であり,酸素化や肺コンプライアンスの改善,VV—ECMO などのレスキュー的治療の必要性を減らす可能性が示唆されている.一方,高い圧で陽圧換気を行うため,循環不全や圧損傷などを生じる可能性も指摘されている.以上の状況から,ARDS に対しRM を行うべきか否かに関しメタ解析に基づいた推奨決定が必要である.したがって,この問題の優先度は高い 資料CQ26—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ26:成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際,リクルートメント手技を行 うか? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者介 入: ARDS 発症後,何らかのリクルートメント手技(RM)を実施比較対照: RM を非実施主要なアウトカム:人工呼吸器非使用日数(VFD),28 日死亡,ICU 滞在日数,圧損傷(気胸,縦隔気 腫,皮下気腫,ニューマトセルのいずれか),循環不全(心停止もしくは血圧低下) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS を生じた患者の肺では無気肺形成が生じ,含気低下そのものによる呼吸不全 や,share stress などによる人工呼吸器関連肺損傷(VALI)の発症につながる.このような無気肺は一定以上の陽圧をかけるRMにより改善する可能性がある.RMはベッドサイドで実施可能な低コストの介入であり,酸素化や肺コンプライアンスの改善,VV—ECMO などのレスキュー的治療の必要性を減らす可能性が示唆されている.一方,高い圧で陽圧換気を行うため,循環不全や圧損傷などを生じる可能性も指摘されている.以上の状況から,ARDS に対しRM を行うべきか否かに関しメタ解析に基づいた推奨決定が必要である 利益相反:なし
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が14 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した益のアウトカムとして,RMを行うことで,28日時点でのVFD(6 RCT: n=2,043)に関する効果推定値は平均差0.91 日延長(95% CI:1.56 日短縮~3.37 日延長)し,28 日死亡(12 RCT:n=3,254)に関する効果推定値は1,000 人あたり16 人減少(95% CI:61 人減少~41 人増加)し,ICU 滞在期間(11 RCT:n=3,201)に関する効果推定値は平均差1.03 日短縮(95% CI:2.58 日短縮~0.53 日延長)した.以上より,介入による望ましい効果は「わずか」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとしてRM を行うことで,Barotrauma(気胸,縦隔気腫, 皮下気腫,ニューマトセルのいずれか)(11 RCT:n=3,231)に関する効果推定値は1,000 人あたり4 人減少(95% CI:27 人減少~35 人増加)し,循環不全(心停止もしくは血圧低下)(3 RCT:n=354)に関する効果推定値は90 人増加(95% CI:3 人減少~218 人増加)した.よって,介入による望ましくない効果は「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) VFD重大+++○ 中 28 日死亡重大++++ 高 ICU滞在日数重大+++○ 中 圧損傷重大+○○○ 非常に低 循環不全重大+++○ 中
全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性が一致していないため,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用して「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないRM を用いた管理におけるアウトカムに関する価値観についてのデータ はないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムRM なし (対照) RM あり (介入)絶対差 (95% CI)相対効果RR (95% CI) VFD — —平均差0.91 日延長 (1.56 日短縮~ 3.37 日延長) — 28 日死亡671/ 1,645 665/ 1,609 16 人減少/1,000 人(61 人減少~ 41 人増加) RR 0.96 (0.85~1.10) ICU滞在日数— —平均差1.03 日短縮 (2.58 日短縮~ 0.53 日延長) — 圧損傷101/ 1,633 113/ 1,598 4 人減少/1,000 人(27 人減少~ 35 人増加) RR 0.94 (0.57~1.56) 循環不全47/177 64/177 90 人増加/1,000 人 (3 人減少~ 218 人増加) RR 1.34 (0.99~1.82)
以上から効果と害のバランスは,「たぶん害が大きい」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない●わからないRM は教育と訓練を行い,かつ循環モニタリングが行えて,害が生じた場 合の対応ができる施設では行われることがある手技ではあるが,患者や医療者にとって循環不全の害と酸素化改善,レスキュー治療の低下の利益のバランスが定かではなく受け入れられるかはわからない 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない十分な教育と訓練,および循環モニタリングができる施設ではおそらく 実施は可能である 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,RM を日常的に使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 RM を行う際は,十分な教育と訓練が行われ,循環をモニタリングし,かつ心停止など危機的状況に対処できる場合にP/F 比の改善とレスキュー治療の回避を目的に考慮してもよい. 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際,RM を行うか?患 者 成人ARDS 患者.介 入 何らかのRM を実施.対 照 RM を非実施.アウトカム VFD,28 日死亡,ICU 滞在日数,圧損傷,循環不全.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が14 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,RM を行うことで,VFD(6 RCT:n=2,043)に関する効果推定値は平
均差0.91 日延長(95% CI:1.56 日短縮~3.37 日延長)し,28 日死亡(12 RCT:n=3,254)に関する効果推定値は1,000 人あたり16 人減少(95% CI:61 人減少~41 人増加)し,ICU 滞在期間(11 RCT:n=3,201)に関する効果推定値は1.03 日短縮(95% CI:2.58 日短縮~0.53 日延長)した.以上から,介入による望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムに関しては,圧損傷(11 RCT:n=3,231)に関する効果推定値は1,000 人あたり4 人減少(95% CI:27 人減少~35 人増加)し,循環不全(3 RCT:n=354)に関する効果推定値は1,000 人あたり90 人増加(95% CI:3 人減少~218 人増加)した.以上より,介入による害は「小さい」と判断した.以上より,介入による効果と害のバランスは,「たぶん害が大きい」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果におけるアウトカムの方向性が一致しておらず,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定RM による負担とコストは教育と訓練を行う程度であり大きくはないと考えられる.利益と害に関しては重大なアウトカムである28 日死亡,VFD,ICU 滞在期間への効果はわずかな益とわずかな害のどちらの可能性もある.また,心停止を含む循環不全が増加する傾向があるため,状況に応じて実施の可否を判断する必要がある.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,RM を日常的に使用しないことを提案する(弱い非推奨/非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項組み入れられた研究で用いられたRM は,その実施時間,手技中の目標気道内圧,手技後にhigh PEEP やopen lung therapy を組み合わせるか,といった点において研究間で大きく異なっていた. RM の方法によっては良好な結果が得られる可能性も考慮される.また,今回のメタ解析に含まれていた研究の多くが中等症~重症のARDS であり,今回の循環不全などのリスクを考慮すると,軽症への使用は控えるべきであろう. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ARDS に対するRM の使用に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』での推奨はなかった. ATS/ESICM/SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』では成人ARDS 患者に対するRM の使用を推奨としている.これに関しては,ART study1)発表前のガイドラインであり,ART study など複数の最近の研究でRM による死亡率などの悪化が示唆されたことが影響したと考えられる. RM を行う場合は教育と訓練を受けた者が,循環動態を慎重にモニタリングして行い,循環動態に懸念がある際には手技を中断すること.手技の手順に関して最適な手順はわかっておらず,少なくともART study のような死亡割合が増加した研究のプロトコルは避けたほうがよいと考えられる(例:ART study の方法;1 分間25 cmH2O のPEEP,1 分間35 cmH2O のPEEP,2 分間45 cmH2O のPEEP).また,手技実施を導入する際に追加的な評価の実施(たとえば,P/F 比,レス
キュー治療,圧損傷,循環不全のモニタリング)により確信性は高まるかもしれない. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてRM の実施方法について更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 酸素化,レスキュー治療割合を改善し,かつ循環動態の悪化を最小にする最適なRM を探すための研究が必要である.CT ガイド下や,超音波ガイド下でのRM の研究も行われており,今後は手技の異質性に考慮したメタ解析が必要である.参考文献1) Writing group for the alveolar recruitment for acute respiratory distress syndrome trial (ART)investigators. Effect of lung recruitment and titrated positive end‒expiratory pres- sure(PEEP)vs low PEEP on mortality in patients with acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. JAMA 2017;318:1335‒45.
背景,この問題の優先度 人工呼吸器離脱は臨床医の裁量によることが多いが,プロトコルによる離脱が人工呼吸器装着期間を短縮する上で有用とされている1).そこで,プロトコルを使用した離脱で死亡率が軽減するか検証が必要である.上記背景のため,この問題の優先度はおそらく高い. 解 説 PICO 患者(P):24 時間以上人工呼吸器管理を要す る成人患者(対象患者のうち50%以上が気管切開患者の研究は除外).介入(I):人工呼吸器離脱プロトコル使用(Daily SBT,computer driven weaning/ automated‒weaning,Adaptive Support Ventilation はプロトコルとみなす).対照(C):プロトコル化されていない人工呼吸器の離脱方法(医療者の裁量). アウトカム(O):院内死亡,ICU 死亡,人工呼 吸器装着期間(時間),ICU 滞在期間(時間),入院期間(日数),気管切開,再挿管. エビデンスの要約 ARDS 患者のみを対象としたRCT は見つからなかった.このため,24 時間以上人工呼吸器管理をされた患者を対象としたところ, PICO に一致したRCT が13 件あったため,メタ解析を施行した.プロトコルを使用することで,院内死亡(7RCT:n=1,565)は1,000 人あたり10 人多くなり,(95% CI:30 人減少~57 人増加), ICU 死亡(4RCT:n=813)は,1,000 人あたり,47 人少なくなり(95% CI:80 人減少~2人増加),人工呼吸器装着時間(12RCT:n= 2,174)は,平均29.33 時間短くなり(95% CI:47.98 時間短縮~10.69 時間短縮),入院日 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 呼吸不全患者の人工呼吸器離脱にプロトコルは有用か? CQ 27 成人ARDS 患者において,プロトコル化された人工呼吸器離脱法を行うこと を条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). プロトコル導入によって,多職種の医療従事者で新たに呼吸器設定の変更を行う場合,医療従事者の教育が重要であり,患者のモニターにおいて細心の注意が必要である. 推 奨 付帯事項
数(10RCT:n=952)は平均1.19 日短くなり(95% CI:2.92 日短縮~0.55 日延長),ICU 滞在時間(9RCT:n=1,457)は平均17.84 時間短くなり(29.67 時間短縮~6.02 時間短縮),気管切開(6RCT:n=1,224)は1,000 人あたり34 人減少(95% CI:50 人減少~1 人減少)し,再挿管(8RCT:n=1,575)は,1,000 人あたり6 人減少(95% CI:36 人減少~36 人増加)した.このことより,予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,プロトコルを使用することで,害となり得るアウトカムは認められなかった.このことより予想される望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上より,「たぶん効果が大きい」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果内でのアウトカムの方向性は一致しておらず,「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 プロトコル実施と院内死亡との関連は不明であるが,人工呼吸器装着時間,ICU 滞在時間の短縮が見込め,再挿管,気管切開などの有害事象の増加との関連も検出されなかったため,利益が害を上回る可能性がある.特別な人工呼吸器を要する場合を除いて,導入のコストもほとんどかからない一方,プロトコルの作成,人材の育成にコストと時間がかかる可能性が考慮される. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1168 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 付加的な考慮事項で述べた介入の異質性に関するサブグループ解析を行った.1 定期的に自発呼吸試験を行うプロトコル(Chaiwat 2010, Ely 1996, Fan 2015, Krishnan 2004, Namen 2001, Navalesi 2008),2 段階的に人工呼吸器による補助を低下させていくプロトコル(Kollef 1997, Marelich 2000, Roh 2008, Simeone 2002),3 人工呼吸器による自動離脱プロトコルによるものとした.それぞれのサブグループにおいて,院内死亡,ICU 死亡,人工呼吸器装着時間,ICU 滞在時間,入院日数,気管切開は,再挿管の結果に一貫性があるとはいえず,プロトコル方法の明確な優位性は不明であった. 実施上の考慮事項 各施設のマンパワーやスタッフの知識に応じたプロトコルを作成する必要がある.医療従事者の教育が重要であり,患者のモニターにおいて細心の注意が必要である.また,プロトコルの実例として,特定行為の手順書2)が参考になる.なお,本邦では,PEEP 5 cmH2O,PS 5 cmH2Oの人工呼吸器設定で少なくとも30分の経過観察※を行い,抜管することが一般的に行われている. ※ 循環動態の変化(脈拍増加など)や呼吸状態 の変化(呼吸回数の増加,努力様呼吸の出現など)を観察し,抜管後上気道狭窄や再挿管のリスクを評価する. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『ARDS 診療ガイドライン2016』3)では今回と同様に「成人ARDS 患者において,プロトコル化された人工呼吸器離脱を行うことを提案す 3 4 5 3 4 5
る(GRADE2D)」であった.『ATS/ESICM/ SCCM2017』4)では記載は認められなかった. 治療のモニタリングと評価 人工呼吸器装着時間やICU 滞在時間のモニタリングについて更なる情報収集を行う必要がある. 今後の研究の可能性 ARDS 患者を対象とした研究がなく,これらを対象としたRCT が必要である.また,自発呼吸試験プロトコル,段階的な補助の低下するプロトコル,人工呼吸器による自動のプロトコルについて,別々にメタ解析を行うことが望まれる. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Protocol weaning」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および 医中誌で2020 年6 月3 日までの文献を検索したところ4,574 件の研究が同定され,スクリーニングの結果13 件のRCT5‒17)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Chaiwat 20105), Ely 19966), Fan 20157), Kollef 19978), Krishnan 20049), Marelich 200010), Namen 200111), Navalesi 200812), Roh 201213), Rose 200814), Simeone 200215), Strickland 199316), Stahl 200917). 資料一覧 ・資料CQ27‒1 Search strategy.・資料CQ27‒2 フローダイアグラム.・資料CQ27‒3 Risk of bias.・資料CQ27‒4 Forest plot.・資料CQ27‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ27‒6 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Blackwood B, Burns KE, Cardwell CR, et al. Protocolized versus non‒protocolized weaning for reducing the duration of mechanical ventilation in critically ill adult patients. Cochrane Database Syst Rev 2014;11:CD006904. 2) 全日本病院協会.厚生労働省 平成27 年度 看護職員確保対策特別事業「特定行為に係る手 順書例集作成事業」特定行為に係る手順書例集.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000112464.pdf(2022 年5 月13 日閲覧) 3) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the management of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 4) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 5) Chaiwat O, Sarima N, Niyompanitpattana K, et al. Protocol‒directed vs. physician‒ directed weaning from ventilator in intra‒abdominal surgical patients. J Med Assoc Thai 2010;93:930‒6. 6) Ely EW, Baker AM, Dunagan DP, et al. Effect on the duration of mechanical ventila- tion of identifying patients capable of breathing spontaneously. N Engl J Med 1996; 335:1864‒9. 7) Fan L, Su Y, Elmadhoun OA, et al. Protocol‒directed weaning from mechanical venti- 参考文献
lation in neurological patients:a randomised controlled trial and subgroup analyses based on consciousness. Neurol Res 2015;37:1006‒14. 8) Kollef MH, Shapiro SD, Silver P, et al. A randomized, controlled trial of protocol‒ directed versus physician‒directed weaning from mechanical ventilation. Crit Care Med 1997;25:567‒74. 9) Krishnan JA, Moore D, Robeson C, et al. A prospective, controlled trial of a protocol‒ based strategy to discontinue mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 2004;169:673‒8. 10) Marelich GP, Murin S, Battistella F, et al. Protocol weaning of mechanical ventilation in medical and surgical patients by respiratory care practitioners and nurses:effect on weaning time and incidence of ventilator‒associated pneumonia. Chest 2000; 118:459‒67. 11) Namen AM, Ely EW, Tatter SB, et al. Predictors of successful extubation in neurosur- gical patients. Am J Respir Crit Care Med 2001;163:658‒64. 12) Navalesi P, Frigerio P, Moretti MP, et al. Rate of reintubation in mechanically venti- lated neurosurgical and neurologic patients:evaluation of a systematic approach to weaning and extubation. Crit Care Med 2008;36:2986‒92. 13) Roh JH, Synn A, Lim CM, et al. A weaning protocol administered by critical care nurses for the weaning of patients from mechanical ventilation. J Crit Care 2012; 27:549‒55. 14) Rose L, Presneill JJ, Johnston L, et al. A randomised, controlled trial of conventional versus automated weaning from mechanical ventilation using SmartCare/PS. Intensive Care Med 2008;34:1788‒95. 15) Simeone F, Biagioli B, Scolletta S, et al. Optimization of mechanical ventilation sup- port following cardiac surgery. J Cardiovasc Surg(Torino)2002;43:633‒41. 16) Strickland JH Jr, Hasson JH. A computer‒controlled ventilator weaning system. A clinical trial. Chest 1993;103:1220‒6. 17) Stahl C, Dahmen G, Ziegler A, et al. Comparison of automated protocol‒based versus non‒protocol‒based physician‒directed weaning from mechanical ventilation. Intensivmedizin und Notfallmedizin 2009;46, 441‒6.
資料CQ27—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/5/26) #1 "respiration, artificial"[MeSH Terms] OR "artificilal respiration*"[Title/Abstract] OR "Pulmonary Ventilation"[MeSH Terms] OR "pulmonary ventilat*"[Title/Abstract] OR "ventilators, mechanical"[MeSH Terms] OR "mechanical ventilat*"[Title/Abstract] #2 "positive-pressure respiration"[MeSH Terms] OR "positive-pressure respiration"[Title/Abstract] #3 "Negative-Pressure Respirator"[Title/Abstract] OR "negative pressure respirators "[Title/Abstract] OR "Tank Ventilators"[Title/Abstract] OR "Tank Ventilator"[Title/Abstract] #4 "assist ventilation"[Title/Abstract] OR "Adaptive support ventilation"[Title/Abstract] #5 #1 OR #2 OR #3 #6 #4 OR #5 #7 "Ventilator Weaning"[MeSH Terms] OR "Weaning Ventilator"[Title/Abstract] OR "Respirator Weaning"[Title/Abstract] OR "mechanical ventilator weaning "[Title/Abstract] #8 (((("mechanical"[Title/Abstract] AND "ventilat*"[Title/Abstract]) AND "weaning"[Title/Abstract]) AND "protocol weaning"[Title/Abstract]) OR "protocolised weaning"[Title/Abstract]) OR "protocolized weaning"[Title/Abstract] OR "weaning protocol "[Title/Abstract]) #9 "systematic approach"[Title/Abstract] #10 #7 OR #8 OR #9 #11 ((((((("randomized controlled trial"[Publication Type] OR "controlled clinical trial"[Publication Type]) OR "randomized"[Title/Abstract]) OR "randomly"[Title/Abstract]) OR "trial"[Title/Abstract]) OR "groups"[Title/Abstract]) NOT ("animals"[MeSH Terms] NOT "humans"[MeSH Terms]) #12 #6 AND #10 AND #11
CENTRAL(Search date:2020/6/3) #1 [mh "respiration, artificial"] OR artificilal NEXT respiration*:ti,ab OR [mh "Pulmonary Ventilation"] OR pulmonary NEXT ventilat*:ti,ab OR [mh "ventilators, mechanical"] OR mechanical NEXT ventilat*:ti,ab #2 [mh "positive-pressure respiration"] OR "positive-pressure respiration":ti,ab #3 "Negative-Pressure Respirator":ti,ab OR "negative pressure respirators":ti,ab OR "Tank Ventilators":ti,ab OR "Tank Ventilator":ti,ab #4 "assist ventilation":ti,ab OR "Adaptive support ventilation":ti,ab #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 [mh "Ventilator Weaning"] OR "Weaning Ventilator":ti,ab OR "Respirator Weaning":ti,ab OR "mechanical ventilator weaning":ti,ab #7 ((((mechanical:ti,ab AND ventilat*:ti,ab) AND weaning:ti,ab) AND "protocol weaning":ti,ab) OR "protocolised weaning":ti,ab) OR "protocolized weaning":ti,ab OR "weaning protocol":ti,ab #8 "systematic approach":ti,ab #9 #6 OR #7 OR #8 #10 #5 AND #9
資料CQ27—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌2,421件2,056件97件 n=4,574 検索で同定された研究 n=4,574 重複した研究 n=1,273 重複研究を除外した研究 n=3,301 フルテキストで適格性を評価した研究 n=48除外基準に該当した研究 n=3,253 系統的レビューに組み入れた研究 n=13 メタ解析に組み入れた研究 n=13除外基準に該当した研究 n=35理由:・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる12件14件9件
資料CQ27—3 Risk of bias 院内死亡ICU死亡 人工呼吸器装着時間入院日数
ICU滞在時間気管切開 再挿管
資料CQ27—4 Forest plot 院内死亡 人工呼吸器装着時間 ICU死亡 入院日数
ICU滞在時間 気管切開 再挿管
資料CQ27—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討人工呼吸器 離脱プロトコル通常治療相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 院内死亡 7 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a 深刻で ないbなし203/784 (25.9%) 192/781 (24.6%) RR 1.04 (0.88~ 1.23) 1,000 人あたり10 人増加(30 人減少~ 57 人増加) +++○ 中重大 ICU 死亡 4 ランダム 化試験深刻c 深刻で ない深刻a深刻dなし52/416 (12.5%) 69/397 (17.4%) RR 0.73 (0.54~ 1.01) 1,000 人あたり47 人減少(80 人減少~ 2 人増加) +○○○非常に低重大 人工呼吸器装着時間 12 ランダム 化試験深刻e深刻f深刻a 深刻で ないなし1,092 1,082 —平均29.33 時間短縮(47.98 時間短縮~ 10.69 時間短縮) +○○○非常に低重大 入院日数 5 ランダム 化試験深刻g 深刻で ない深刻a深刻hなし474 478 —平均1.19 日短縮(2.92 日短縮~ 0.55 日延長) +○○○非常に低重大 ICU 滞在時間 9 ランダム 化試験深刻i深刻で ない深刻a 深刻で ないなし735 722 —平均17.84 時間短縮(29.67 時間短縮~ 6.02 時間短縮) ++○○ 低重大 気管切開 7 ランダム 化試験深刻j深刻で ない深刻a 深刻で ないkなし56/665 (8.4%) 80/661 (12.1%) RR 0.72 (0.52~ 0.99) 1,000 人あたり34 人減少(58 人減少~ 1 人減少) ++○○ 低重大 再挿管 9 ランダム 化試験深刻l深刻m深刻a 非常に 深刻nなし80/848 (9.4%) 85/829 (10.3%) RR 0.94 (0.65~ 1.35) 1,000 人あたり6 人減少(36 人減少~ 36 人増加) +○○○非常に低重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量,SR:システマティックレビュー.説 明a.研究の対象集団が呼吸不全がない術後患者などが多く含まれ,ARDS 患者と比較し,結果に差が生じる可能性が考慮され確実性のグレードを1 段階下げなければならないと判断した. b.総サンプル数が1,565,イベント数は395 とOIS は満たしていないが,CI の幅は“相当な害”と“相当な利益”を含まずグレードダウンはなしとした. c.バイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が4/4 個であり,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. d.総サンプル数が813,イベント数が121 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“効果なし”と“相当の利益”を含んでいる. e.バイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が12/12 個であり,「深刻」と判 断し1 段階ダウンした.
f.I2=75%であり,SR に含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. g.バイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が5/5 個であり,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. h.総サンプル数が953 とOIS を満たさず,1 段階グレードダウンとした. i.バイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が9/9 個であり,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. j.バイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が7/7 個であり,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. k.総サンプル数が1,224,イベント数が122 とOIS を満たさないが,CI は効果があるで一致しており,グレードダウンはなしとした. l.バイアスリスクにおいて,高リスクまたはリスク不明と判断された文献の割合が9/9 個であり,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. m.I2=35%であるが,組み込まれた研究の点推定値が異なっており(臨床的異質性),「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. n.総サンプル数が1,575,イベント数が154 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“相当な害”と“相 当の利益”を含んでいる.
資料CQ27—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ27:呼吸不全患者の人工呼吸器離脱にプロトコルは有用か? 集 団: 24 時間以上人工呼吸器管理を要した成人患者(対象患者のうち50%以上が気管切 開患者の研究は除外) 介 入:人工呼吸器離脱プロトコル使用(Daily SBT,computer driven weaning/automated— weaning,Adaptive Support Ventilation はプロトコルとみなす) 比較対照:プロトコル化されていない人工呼吸器の離脱方法(医療者の裁量)主要なアウトカム:院内死亡,ICU 死亡,人工呼吸器装着期間(時間),ICU 滞在期間(時間),入院期 間(日数),気管切開,再挿管 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:人工呼吸器管理が長期化すると人工呼吸器関連肺炎などの有害事象が増加し,抜管 が早過ぎると再挿管と死亡率が増加する可能性がある.そのため,人工呼吸器離脱時期を早期にかつ確実に認識することが重要となる.人工呼吸器離脱は臨床医の裁量によることが多いが,プロトコルによる離脱が人工呼吸器装着期間を短縮する上で有用とされている.そこで,プロトコルを使用した離脱で死亡率が軽減するかどうか検証が必要である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器管理が長期化すると人工呼吸器関連肺炎などの有害事象が増加し,抜管が早過ぎると再挿管と死亡率が増加する可能性がある.その ため,人工呼吸器離脱時期を早期にかつ確実に認識することが重要となる.人工呼吸器離脱は臨床医の裁量によることが多いが,プロトコルによる離脱が人工呼吸器装着期間を短縮する上で有用とされている.そこで,プロトコルを使用した離脱で死亡率が軽減するかどうか検証が必要である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度SR の結果,ARDS の診断基準を満たした患者のみを対象としたRCT を 見つけることはできなかった.このため,本CQ では24 時間以上人工呼吸器管理をされた患者を対象としたところ,PICO に一致したRCT が13
○大きい○一概には言えない○わからない件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.なお,前回診 療ガイドラインで組み入れられたPiotto2011 は対照群でもプロトコルを使用していたため除外となり,新しくFan 2015 が組み入れられた益のアウトカムとして,院内死亡(7 RCT:n=1,565)に関する効果推定値は,人工呼吸器離脱プロトコル使用により,1,000 人あたり10 人増加(95% CI:30 人減少~57 人増加)し,ICU 死亡(4 RCT:n=813)に関する効果推定値は,1,000 人あたり47 人減少(95% CI:80 人減少~2 人増加)し,人工呼吸器装着時間(12 RCT:n=2,174)に関する効果推定値は,平均差29.33 時間短縮(95% CI:47.98 時間短縮~ 10.69 時間短縮)し,入院日数(10 RCT:n=52)に関する効果推定値 は平均差1.19 日短縮(95% CI:2.92 日短縮~0.55 日延長)し,ICU滞在時間(9 RCT:n=1,457)に関する効果推定値は平均差17.84 時間短縮(95% CI:29.67 時間短縮~6.02 時間短縮)し,気管切開(6 RCT: n=1,224)に関する効果推定値は1,000 人あたり34 人減少(95% CI: 58 人減少~1 人減少)し,再挿管(8 RCT:n=1,575)に関する効果推定値は,1,000 人あたり6 人減少(95% CI:36 人減少~36 人増加)した.以上から,介入による望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないプロトコルを使用することでの害となり得るアウトカムは認められな かった.よって,望ましくない効果は「わからない」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 院内死亡重大+++○ 中 ICU 死亡重大+○○○ 非常に低 人工呼吸器 装着時間重大+○○○ 非常に低 入院日数重大+○○○ 非常に低
ICU 滞在時間重大++○○ 低 気管切開重大++○○ 低 再挿管重大+○○○ 非常に低 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果内でのアウトカムの方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はない人工呼吸器離脱プロトコルを用いた管理におけるアウトカムに関する価 値観についてのデータはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム担当者の 裁量(対照)プロトコル 使用(介入)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 院内死亡192/ 781 203/784 10 人増加/1,000 人 (30 人減少~ 57 人増加) RR 1.04 (0.88~ 1.23) ICU 死亡69/397 52/416 47 人減少/1,000 人 (80 人減少~ 2 人増加) RR 0.73 (0.54~ 1.01)
人工呼吸器装着時間— —平均29.33 時間短縮 (47.98 時間短縮~ 10.69 時間短縮) — 入院日数— —平均1.19 日短縮 (2.92 日短縮~ 0.55 日延長) — ICU滞在時間— —平均17.84 時間短縮 (29.67 時間短縮~ 6.02 時間短縮) — 気管切開80/661 56/665 34 人減少/1,000 人 (58 人減少~ 1 人減少) RR 0.72 (0.52~ 0.99) 再挿管85/829 80/848 6 人減少/1,000 人 (36 人減少~ 36 人増加) RR 0.94 (0.65~ 1.35) 以上より,効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない導入のコストは小さく,患者にとっての負担や合併症が増加する懸念が 少なく,人工呼吸器装着時間,ICU 滞在時間を減少させることから受け入れられると思われる.一方で,特別な人工呼吸を導入し行うことはコストや訓練を必要とし受け入れられないかもしれない 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない医療者主体で人工呼吸器からの離脱をプロトコル化すること,さらにそ れを教育,実行することは実現可能と思われる.一方で,自動で離脱を行う特別な人工呼吸器を導入し離脱プロトコルを行うことは実施できない施設もあるだろう
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○
結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,プロトコル化された人工呼吸器離脱法を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 プロトコル導入によって,多職種の医療従事者で新たに呼吸器設定の変更を行う場合,医療従事者の教育が重要であり,患者のモニターにおいて細心の注意が必要である. 理 由 Justification 疑 問 呼吸不全患者の人工呼吸器離脱にプロトコルは有用か?患 者 24 時間以上人工呼吸器管理を要する成人患者(対象患者のうち50%以上が気管切開患者の研究は除外).介 入 人工呼吸器離脱プロトコル使用(Daily SBT,computer driven weaning/automated‒ weaning,Adaptive Support Ventilation はプロトコルとみなす).対 照 プロトコル化されていない人工呼吸器の離脱方法(医療者の裁量).アウトカム 院内死亡,ICU 死亡,人工呼吸器装着期間(時間),ICU 滞在期間(時間),入院期間(日数),気管切開,再挿管.エビデンスの要約SR の結果,ARDS の診断基準を満たした患者のみを対象としたRCT を見つけることはできなかった.このため,24 時間以上人工呼吸器管理をされた患者を対象としたところ,PICO に一致したRCT が13 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,プロトコルを使用することで,院内死亡(7 RCT:n=1,565)に関する効果推定値は1,000 人あたり10 人増加(95% CI:30 人減少~57 人増加)し,ICU 死亡(4 RCT: n=813)は,1,000 人あたり47 人減少(95% CI:80 人減少~2 人増加),人工呼吸器装着時間(12 RCT:n=2,174)は,平均29.33 時間短縮(95% CI:47.98 時間短縮~10.69 時間短縮)し,入院日数(10 RCT:n=952)は平均1.19 日短縮(95% CI:2.92 日短縮~0.55 日延長)し,ICU滞在時間(9 RCT:n=1,457)は平均17.84 時間短縮(95% CI:29.67 時間短縮~6.02 時間短縮)し,気管切開(6 RCT:n=1,224)は1,000 人あたり34 人減少(95% CI:58 人減少~1 人減少)し,再挿管(8 RCT:n=1,575)は,1,000 人あたり6 人減少(95% CI:36 人減少~36 人増加)した.このことより,予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,プロトコルを使用することで,害となり得るアウトカムは認められなかった.このことより予想される望ましくない効果は「わからない」と判断した.以上より,介入による効果と害のバランスは「たぶん効果が大きい」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果内でのアウトカムの方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定プロトコル実施と院内死亡との関連は不明であるが,人工呼吸器装着期間,ICU 滞在期間の短縮が見込め,再挿管,気管切開などの有害事象の増加との関連も検出されなかったため,利益が害を
上回る可能性がある.特別な人工呼吸器を要する場合を除いて,導入のコストもほとんどかからない一方,プロトコルの作成,人材の育成にコストと時間がかかる可能性が考慮される.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1168 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項今回のメタ解析には患者および介入の臨床的異質性がある.患者の異質性に関しては,本メタ解析には外科ICU,内科ICU,冠疾患ICU,神経外科ICU 患者が含まれており臨床的異質性がある. Cochrane のメタ解析におけるサブグループ解析では1),人工呼吸器装着期間に関して,ICU の種類で効果の修飾があった(内科ICU,外科ICU,外科・内科ICU でプロトコル化された離脱による効果が大きく,神経ICU では効果は小さかった).もう1 つは介入の異質性である.離脱プロトコルといっても,定期的に行う自発呼吸試験を行うプロトコル,段階的に人工呼吸器による補助を低下させていくプロトコルという介入の異質性,ヒトが行うプロトコルと人工呼吸器による自動的ウィーニングプロトコルという介入の異質性が存在する(下記サブグループ解析も参照). Cochrane のメタ解析におけるサブグループ解析では1),人工呼吸器装着期間において,段階的に人工呼吸器による補助を低下させていくプロトコルと定期的に自発呼吸試験を行うプロトコルの間に効果の修飾は検出されず(交互作用のP=0.12),ヒトが行うプロトコルと人工呼吸器による自動的ウィーニングプロトコルのサブグループ解析でも効果の修飾を検出しなかった(相互作用のP= 0.62).また,自発呼吸試験を行うプロトコル,段階的に補助を低下させていくプロトコル,人工呼吸器による自動ウィーニングプロトコルに関しても,試験それぞれで別のプロトコルが用いられており異質性があることに注意するべきである. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 付加的な考慮事項で述べた介入の異質性に関するサブグループ解析を行った.1定期的に自発呼吸試験を行うプロトコル(Chaiwat2010,Ely1996,Fan2015,Krishnan2004,Namen2001, Navalesi2008),2段階的に人工呼吸器による補助を低下させていくプロトコル(Kollef1997, Marelich2000,Roh2008,Simeone2002),3人工呼吸器による自動離脱プロトコルによるものとした.それぞれのサブグループにおいて,院内死亡に関する効果推定値は,1で1,000 人あたり18 人増加(95% CI:50 人減少~96 人増加),2で1,000 人あたり18 人減少(95% CI:78 人減少~67 人増加),3で1,000 人あたり0 人減少(95% CI:129 人減少~94 人増加),ICU 死亡に関する効果推定値は,1で1,000 人あたり51 人減少(95% CI:87 人減少~2 人減少),3で1,000人あたり38 人増加(95% CI:56 人減少~558 人増加),人工呼吸器装着時間に関する効果推定値は1で21.15 時間短縮(95% CI:44.1 時間短縮~1.79 時間延長),2で42.6 時間短縮(95% CI: 85.78 時間短縮~0.58 時間延長),3で29.64 時間短縮(95% CI:90.33 時間短縮~31.06 時間延 長),ICU 滞在時間に関する効果推定値は1で18.96 時間短縮(95% CI:48.45 時間短縮~10.52時間延長),2で17.7 時間短縮(95% CI:32.27 時間短縮~3.12 時間短縮),3で13.82 時間短縮(95% CI:67.5 時間短縮~39.87 時間延長),入院日数に関する効果推定値は,1で1.91 日延長(95% CI:5.79 日短縮~9.61 日延長),2で1.64 日短縮(95% CI:3.82 日短縮~0.54 日延長),3で1.7 日短縮(95% CI:1.7 日短縮~4.11 日延長),気管切開に関する効果推定値は1で
1,000 人あたり41 人減少(95% CI:74 人減少~11 人増加),2で1,000 人あたり15 人減少(95% CI:61 人減少~94 人増加),3で1,000 人あたり39 人減少(95% CI:113 人減少~158 人増加),再挿管に関する効果推定値は1で1,000 人あたり23 人減少(95% CI:57 人減少~37 人増加), 2で1,000 人あたり27 人増加(95% CI:23 人減少~117 人増加),3で1,000 人あたり17 人増加(95% CI:70 人減少~193 人増加)であった.1のICU 死亡,2のICU 滞在時間に関しては介入による有意な改善が見込まれると考えられたが,結果に一貫性があるとは言えず,プロトコル方法における他のプロトコルに対する明確な優位性は,今回の結果からは不明であった(上記付加的な考慮事項も参照のこと). 実施上の考慮事項 Implementation considerations プロトコル化された人工呼吸器離脱を行うことに関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』では今回と同様に「成人ARDS 患者において,プロトコル化された人工呼吸器離脱を行うことを提案する(GRADE 2D)」であった.『ATS/ESICM/SCCM2017』では記載は認められなかった.プロトコルの作成にあたって,各施設のマンパワーやスタッフの知識に応じたプロトコルを作成する必要がある.特に,プロトコル導入によって多職種で新たに呼吸器設定の変更を行う場合,該当する医療従事者の教育が重要であり,患者のモニターにおいて細心の注意が必要である.また,本邦におけるプロトコルの実例として,「人工呼吸器離脱に関する3 学会合同プロトコル」が参考になる(https://www.jsicm.org/pdf/kokyuki_ridatsu1503b.pdf).なお,本邦では,PEEP 5 cmH2O,PS 5 cmH2O の人工呼吸器設定で少なくとも30 分の経過観察※を行い,抜管することが一般的に行われている. ※ 循環動態の変化(脈拍増加など)や呼吸状態の変化(呼吸回数増加,努力様呼吸の出現など)を 観察し,抜管後上気道狭窄や再挿管のリスクを評価する. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題として追加的な評価の実施(たとえば,人工呼吸器装着期間やICU 滞在期間のモニタリング)について更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities ARDS 患者を対象とした研究がなく,これらを対象としたRCT が必要である.今後のメタ解析においてARDS に近い集団を対象としたメタ解析を行う必要がある.また,自発呼吸試験プロトコル,段階的な補助の低下するプロトコル,人工呼吸器による自動のプロトコルについて,別々にメタ解析を行うことが望まれる.参考文献1) Blackwood B, Burns KE, Cardwell CR, et al. Protocolized versus non‒protocolized weaning for reducing the duration of mechanical ventilation in critically ill adult patients. Cochrane Database Syst Rev 2014;11:CD006904.
背景,この問題の優先度 成人ARDS患者では,人工呼吸器関連肺損傷(ventilator‒induced lung injury:VILI)を予防することが重要である.高頻度振動換気(high frequency oscillatory ventilation: HFOV)は1 回換気量を制限し,リクルートメントが可能な人工呼吸モードであり,肺保護換気の一種と考えられている.従来,HFOV はARDS などに用いることで,VILI を軽減する可能性が考慮されていた.しかし,2013 年に発表された2 つの大規模RCT,OSCAR1)およびOSCILLATE2)試験では,従来の肺保護換気と比較し,生命予後の改善が認められず,以後も成人ARDS患者に対して一般的に用いられていない.ただ,OSCILLATE 試験ではプロトコルに問題を指摘3)されているなど,そのRCT のみで使用するべきでないとまでは言い切れないのかもしれない.しかし,成人ARDS患者に対する人工呼吸器管理方法として一般的でなく,そ のため,今回,前版の診療ガイドライン以後に発表されたエビデンスを加えてSR を行うことで,改めてHFOV の安全性,有効性の確認を行う必要があると判断した.したがって,CQ立案に際し優先順位はおそらく高い. 解 説 PICO 患者(P):16 歳以上の人工呼吸器管理が必要 な成人ARDS 患者.介入(I):HFOV による人工呼吸器管理(>12 時間/日).対照(C):通常の人工呼吸器管理.アウトカム(O):短期死亡,院内死亡,ICU 滞 在日数,VFD,圧損傷. エビデンスの要約 HFOV による人工呼吸器管理を行うことで, 1 2 1 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用するか? CQ 28 中等症以上の成人ARDS 患者の人工呼吸器管理にHFOV を実施しないこと を条件付きで推奨する(条件付き推奨/高い確実性のエビデンス:GRADE 2A). 本推奨は一般的な中等症以上(P/F ratio<200)の成人ARDS 患者に対するHFOV に関してのものである. 推 奨 付帯事項
重要アウトカムとして定義した難治性低酸素血症(refractory hypoxemia)は273 人中38 人から275 人中19 人と減少した.よって,望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムとして,短期死亡は1,000 人あたり27 人増加(5RCT:n=1,612,95%CI:61 人少ない~133 人多い),院内死亡は1,000 人あたり27 人増加(2RCT:n=1,343,95%CI: 47 人減少~215 人増加),ICU 滞在日数は1.5日延長(1RCT:n=795,95%CI 0.71 日短縮~3.71 日延長),VFD は0.5 日短縮(1RCT: n=795,95%CI:1.71 日短縮~0.71 日延長),圧損傷は1,000 人あたり30 人増加(4RCT:n =784,95%CI:15 人減少~96 人増加)した.このことから,望ましくない効果は「小さい」と判断した.以上より,効果のバランスは「たぶん害が大きい」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果におけるアウトカムの方向性が一致しており,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「高」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 成人に対してHFOV を施行する場合,専用の人工呼吸器および習熟したスタッフが必要になると考えられる.設備,人的コストおよび効果のバランスから総合的に判断し,使用に習熟していない施設が新たに導入する利点は少ないと考えられる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「中等症以上の成人ARDS患者の人工呼吸器管理において高頻度振動換気(HFOV)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き弱い推奨/高い確実性のエビデンス:GRADE 2A)」が中 央値8.0 点,見解不一致指数0.2920 であった.パネル会議では付帯事項の「使用に習熟した施設において,より重篤な小児や一部の成人ARDS 患者への使用,もしくはレスキュー治療や肺出血への止血目的の使用を妨げるものではない」という記載が必要かとの議論があり,議論の結果,記載は必要ないとの判断となった.推奨としては再投票はなく,事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 今回採用した研究のうち,Mohamed 2016の対象患者が,熱傷に伴うARDS患者に限定されていた.そのため,感度分析としてMohamed 2016(アウトカムは短期死亡,圧損傷)を除いたメタ解析を行ったが,短期死亡〔26 人増加/1,000(95% CI:75 人減少~153人増加)〕および圧損傷〔28 人増加/1,000 (95% CI:19 人減少~96 人増加)〕で,点推定値を含めた方向性に大きな変化は認められなかった. 実施上の考慮事項 2017 年のMeade らのindividual patient data meta‒analysis4)ではP/F ratio 群では予後改善が示唆されるなど,レスキュー目的の使用や限られた対象に対する使用については更なる検討が必要である.なお,使用にあたってはHFOV では分時換気量・ETCO2・呼吸音などによる換気評価が不可能であり,経皮二酸化炭素モニターなどによる評価も考慮する必要がある.また,使用にあたっては,日本呼吸療法医学会から2015 年に出版されている『成人症例のための高頻度振動換気療法(HFOV)プロトコル』を参考にするとよいかもしれない. 3 4 5 3 4
関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS に対するHFOV の使用に対して,『ARDS 診療ガイドライン2016』5)ではGRADE 2C の非推奨,ATS/ESICM/SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』6)でも中等症~重症ARDS に対するルーチンの使用をしないことを強く推奨している. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてHFOV が実際どの程度使用されているか,もしくは使用可能かについて更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析では,すべてのアウトカムの点推定値でHFOV の使用が望ましくない方向性が認められており,HFOV が通常の中等症以上の成人ARDS 患者に対して効果が得られる可能性は低いと考えられる.一方,対象患者,介入の違いから今回の解析からは除外したDerdak 20027) (腹臥位療法と仰臥位HFOV を交互に行う),Mentzelopoulus 20128) (recruitment maneuver 時にHFOV を使用), Samransamruajkit 20169) (小児へのHFOV) などではHFOV による有効性が示唆されている.実施上の考慮事項で記載したMeade らのメタ解析4)を含め,HFOV が有効となり得る条件(対象患者,使用時間,使用方法など)の検討は必要かもしれない. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「High‒Frequency Oscillation Ventilation」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL および医中誌で2021 年3 月23 日までの文献を検索したところ285 件の研究が同定され,スクリーニングの結果5 件のRCT7,10‒13)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Derdak 20027), Bollen 200510), Young 201311), Ferguson 201312), Mohamed 201613). 資料一覧 ・資料CQ28‒1 Search strategy.・資料CQ28‒2 フローダイアグラム.・資料CQ28‒3 Risk of bias.・資料CQ28‒4 Forest plot.・資料CQ28‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ28‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Young D, Lamb S, Shah S, et al. High‒frequency oscillation for acute respiratory dis- tress syndrome. N Engl J Med 2013;368:806‒13. 2) Ferguson ND, Cook DJ, Guyatt GH, et al. High‒frequency oscillation in early acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:795‒805. 3) Kacmarek RM, Villar J. Management of refractory hypoxemia in ARDS. Minerva Anestesiol 2013;79:1173‒9. 4) Meade MO, Young D, Hanna S, et al. Severity of hypoxemia and effect of high‒fre- quency oscillatory ventilation in acute respiratory distress syndrome. Am J Respir 参考文献
Crit Care Med 2017;196:727‒33. 5) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 6) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical Ventilation in Adult Patients with Acute Respiratory Distress Syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 7) Derdak S, Mehta S, Stewart T, et al. High‒frequency oscillatory ventilation for acute respiratory distress syndrome in adults:a randomized, controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2002;166:801‒8. 8) Mentzelopoulos S, Malachias S, Zintzaras E, et al. Intermittent recruitment with high‒ frequency oscillation/tracheal gas insufflation in acute respiratory distress syndrome. Eur Respir J 2012;39:635‒47. 9) Samransamruajkit R, Rassameehirun C, Pongsanon K, et al. A comparison of clinical efficacy between high frequency oscillatory ventilation and conventional ventilation with lung volume recruitment in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. Indian J Crit Care Med 2016;20:72‒7. 10) Bollen CW, van Well GT, Sherry T, et al. High frequency oscillatory ventilation com- pared with conventional mechanical ventilation in adult respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial(ISRCTN24242669). Crit Care 2005;9: R430‒9. 11) Young D, Lamb SE, Shah S, et al. High‒frequency oscillation for acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:806‒13. 12) Ferguson ND, Cook DJ, Guyatt GH, et al. High‒frequency oscillation in early acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:795‒805. 13) Mohamed SAR, Mohamed NN Efficacy and adverse events of early high‒frequency oscillatory ventilation in adult burn patients with acute respiratory distress syndrome, Egypt J Anaesth 2016;32:3, 421‒9.
資料CQ28—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2021/3/23) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [MH] OR acute respiratory distress syndrome[tiab] OR adult respiratory distress syndrome[tiab] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Acute Lung Injury [MH] OR acute lung injury[tiab] OR acute lung injuries[tiab] OR lung injury[tiab] OR lung injuries[tiab] OR ALI [tiab] OR shock lung[tiab] #3 respiratory insufficiency[MH] OR respiratory insufficiency[tiab] OR acute respiratory failure[tiab] OR respiratory depression[tiab] OR ventilatory depression[tiab] #4 #1 OR #2 OR #3 #5 High frequency ventilation[MH] OR High-Frequency Oscillation Ventilation[tiab] OR High-Frequency Oscillation Ventilations[tiab] OR High-Frequency Positive Pressure Ventilation[tiab] OR High-Frequency Positive Pressure Ventilations[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOV[tiab] #6 Respiration, Artificial[MH] OR Artificial respiration[tiab] OR Mechanical ventilation[tiab] OR Mechanical ventilations[tiab] #7 #5 AND #6 #8 Clinical trial[pt] OR trial[ti] OR randomized controlled trial[pt] OR(controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab]) OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[MH] OR randomly[tiab] #9 Animals[MH] NOT Humans[MH] #10 #8NOT#9 #11 #4 AND #7 AND #10
CENTRAL(Search date:2021/3/23) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 ("acute respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #3 ("adult respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #4 ("respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #5 (ARDS):ti,ab,kw #6 {OR #1-#5} #7 MeSH descriptor: [Acute Lung Injury] explode all trees #8 ("acute lung injury"):ti,ab,kw #9 ("acute lung injuries"):ti,ab,kw #10 (ALI):ti,ab,kw #11 ("shock lung"):ti,ab,kw #12 (" lung injury "):ti,ab,kw #13 (" lung injuries "):ti,ab,kw #14 {OR #7-#13} #15 MeSH descriptor: [Respiratory Insufficiency] explode all trees #16 ("Respiratory Insufficiency"):ti,ab,kw
#17 ("acute respiratory failure"):ti,ab,kw #18 ("respiratory depression"):ti,ab,kw #19 ("ventilatory depression"):ti,ab,kw #20 {OR #15-#20} #21 MeSH descriptor: [High-Frequency Ventilation] explode all trees 196 #22 ("high frequency ventilation"):ti,ab,kw #23 ("high frequency oscillatory ventilation"):ti,ab,kw #24 ("high frequency oscillation"):ti,ab,kw #25 ("high frequency positive pressure ventilation"):ti,ab,kw #26 (HFOV):ti,ab,kw #27 (HFO):ti,ab,kw #28 {OR #21-#27} #29 MeSH descriptor: [Respiration, Artificial] explode all trees #30 ("artificial respiration"):ti,ab,kw #31 ("mechanical ventilation"):ti,ab,kw #32 ("mechanical ventilatory support"):ti,ab,kw #33 ("mechanical ventilations"):ti,ab,kw #34 ({OR #29-#33} #35 #6 OR #14 OR #20 #36 #28 AND #34 #37 #35 AND #36
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2021/3/23) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH #2呼吸促迫症候群/AL #3呼吸窮迫症候群/AL #4急性呼吸窮迫症候群/AL #5成人呼吸窮迫症候群/AL #6 acute respiratory distress syndrome/AL #7 ARDS/AL #8 PT= 会議録除く#9 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 AND #8 #10急性肺損傷/TH #11急性肺損傷/AL #12急性肺障害/AL #13 acute lung injuries/AL #14 acute lung injury/AL #15 PT= 会議録除く#16 #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 AND #15 #17高頻度換気/TH #18高頻度振動換気/AL #19 high frequency oscillatory ventilation #20 HFOV/AL
#21 PT= 会議録除く#22 #17 OR #18 OR #19 OR #20 AND #21 #23 RD= ランダム化比較試験#24 CK= ヒト#25 CK= 動物#26 CK= 成人(19~44),中年(45~64),高齢者(65~) #27 #24 AND #26 NOR #25 #28 #9 OR #16 OR #22 AND #23 AND #27
資料CQ28—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌265件190件30件 n=485 検索で同定された研究 n=485 フルテキストで適格性を評価した研究 n=16除外基準に該当した研究 n=469 系統的レビューに組み入れた研究 n=5 メタ解析に組み入れた研究 n=5除外基準に該当した研究 n=11理由:・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる0件3件8件
資料CQ28—3 Risk of bias 短期死亡院内死亡 ICU滞在日数人工呼吸器非使用日数
圧損傷Refractory hypoxemia
資料CQ28—4 Forest plot 短期死亡 院内死亡 ICU滞在日数
人工呼吸器非使用日数 圧損傷 Refractory hypoxemia
資料CQ28—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討HFOV control相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)短期死亡* 5 ランダム 化試験深刻で ない深刻a 深刻で ない深刻bなし338/815 (41.5%) 303/797 (38.0%) RR 1.07 (0.84~1.35) 1,000 人あたり27 人増加(61 人減少~ 133 人増加) ++○○ 低重大 院内死亡 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻c 深刻で ない深刻dなし325/673 (48.3%) 288/670 (43.0%) RR 1.15 (0.89~1.50) 1,000 人あたり64 人増加(47 人減少~ 215 人増加) ++○○ 低重大 ICU 滞在日数 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻eなし398 397 —平均1.5 日延長(0.71 日短縮~ 3.71 延長) +++○ 中重大 VFD** 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし398 397 —平均0.5 日短縮(1.71 日短縮~ 0.71 日延長) ++++ 高重大 圧損傷 4 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻fなし57/398 (14.3%) 45/386 (11.7%) RR 1.26 (0.87~1.82) 1,000 人あたり30 人増加(15 人減少~ 96 人増加) +++○ 中重大 Refractory hypoxemia 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻gなし19/275 (6.9%) 38/273 (13.9%) RR 0.50 (0.29~0.84) 1,000 人あたり70 人減少(99 人減少~ 22 人減少) +++○ 中重要 *28 日死亡,30 日死亡,ICU 死亡を含む,**28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比,SR:システマティックレビュー,OIS:最適情報量.説 明a.I2=62%であることに加えて,SRに含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. b.総サンプル数が1,502,イベント数が608 とOIS を満たしているが,95% CI の幅が広くCI は“相当な害”と“効果なし”を含んでいる. c.I2=78%であることに加えて,SRに含まれる効果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. d.総サンプル数が1,343,イベント数が613 とOIS を満たしているが,95% CI の幅が広くCI は“相当な害”と“効果なし”を含んでいる. e.総サンプル数が795 とOIS を満たしているが,95% CI の幅が広く最小重要差(MID)を超え“相当な害”と“効果なし”を含んでいると判断し1 段階ダウンとした. f.総サンプル数が704,イベント数が100 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“相当な害”と“効果なし”を含んでいる. g.総サンプル数が548,イベント数が57 とOIS を満たしていない.
資料CQ28—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ28:成人ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用するか? 集 団: 1人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者,2中等症以上の急性呼吸不全で心原性 肺水腫を除く患者 介 入: HFOV による人工呼吸器管理(>12 時間/日)比較対照:通常の人工呼吸器管理主要なアウトカム:短期死亡,院内死亡,ICU 滞在日数,人工呼吸器非使用日数(VFD),圧損傷セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:成人ARDS 患者における人工呼吸器管理方法には様々なものがあるが,人工呼吸器 管理期間の延長や死亡率上昇の原因となる人工呼吸関連肺損傷(VALI)を予防することが重要である.高頻度振動換気(HFOV)は1 回換気量を制限しリクルートメントが可能な人工呼吸モードであり,肺保護換気の一種と考えられている.しかし,成人ARDS 患者に対する人工呼吸器管理方法として一般的でなく,その有効性と安全性について検証する必要がある 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない従来,HFOV はARDS に用いることでVALI を軽減する可能性が考慮さ れていた.しかし,2013 年に発表された2 つの大規模RCT,OSCAR1)およびOSCILLATE2)試験では,従来の肺保護換気と比較し,生命予後の改善が認められず,以後も成人ARDS 患者に対して一般的に用いられていない.ただ,OSCILLATE 試験ではプロトコルに問題を指摘3)されているなど,このRCT のみで使用するべきでないとまでは言い切れない可能性がある.今回,前版の診療ガイドライン以後に発表されたエビデンスを加えてSR を行うことで,改めてHFOV の安全性,有効性の確認を行う必要があると判断した.したがって,CQ 立案に際し優先順位はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さいSR の結果,PICO に一致したRCT が5 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した
○中程度○大きい○一概には言えない○わからない当初益のアウトカムとして想定した死亡,VFD,ICU 滞在日数,圧損傷 は害の方向性であった.ほかに重大なアウトカムから益のアウトカムとなり得るものがなかったため,重要アウトカムであるrefractory hypoxemia を益のアウトカムとして検討した.「対照」で273 人中38 人,「介入」で275 人中19 人と介入による減少を認めた.以上より,介入による望ましい効果は「わずか」であると判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,短期死亡(5 RCT:n=1,612)に関する効果推 定値は,HFOV を用いることで,1,000 人あたり27 人増加(95% CI: 61 人減少~133 人増加)し,院内死亡(2 RCT:n=1,343)に関する効果推定値は1,000 人あたり64 人増加(95% CI:47 人減少~215 人増加)し,ICU 滞在日数(1 RCT:n=795)に関する効果推定値は平均1.5 日延長(95% CI:0.71 日短縮~3.71 日延長)し,VFD(1 RCT: n=795)に関する効果推定値は平均0.5 日短縮(95% CI:1.71 日短縮~0.71 日延長)し,圧損傷(4 RCT:n=784)に関する効果推定値は,1,000 人あたり30 人増加(95% CI:15 人減少~96 人増加)した.以上より,予想される望ましくない効果は「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中●高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 短期死亡重大++○○ 低 院内死亡重大++○○ 低 ICU滞在日数重大+++○ 中 VFD重大++++ 高 圧損傷重大+++○ 中 全体的なエビデンスの確実性益のアウトカム,害のアウトカムにおける効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「高」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないHFOV を用いた管理におけるアウトカムに関する価値観についてのデー タはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム予想される絶対効果 (95% CI)絶対差 (95% CI)相対効果RR (95% CI)通常管理(対照) HFOV (介入) 短期死亡303/797 338/815 27 人増加/1,000 人 (61 人減少~ 133 人増加) 1.07 (0.84~ 1.35) 院内死亡288/670 325/673 64 人増加/1,000 人(47 人減少~ 215 人増加) RR 1.15 (0.89~ 1.50) ICU滞在日数— —平均1.5 日延長(0.71 日短縮~ 3.71 日延長) — VFD — —平均0.5 日短縮(1.71 日短縮~ 0.71 日延長) — 圧損傷45/386 57/398 30 人増加/1,000 人 (15 人減少~ 96 人増加) RR 1.26 (0.87~ 1.82) 上記より介入による効果と害のバランスは「たぶん対照が有利」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,成人に対してHFOV を使用する 場合,専用の人工呼吸器を導入しなければならない可能性が高いことから,施設側の受け入れが困難となることが予想される.また,使用経験がない施設では,適切な使用方法を教育することにおいても労力を要する.よって,総合的に「たぶんいいえ」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,HFOV は人工呼吸のモードであ り,患者への適応は実現可能である.一方,HFOV を施行するためには専用の人工呼吸器および,使用に習熟したスタッフが必要となることから,実現可能かは「一概には言えない」と判断した 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 中等症以上の成人ARDS 患者の人工呼吸器管理にHFOV を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/高い確実性のエビデンス:GRADE 2A). 付帯事項 本推奨は一般的な中等症以上(P/F ratio≦200 mmHg)の成人ARDS 患者に対するHFOV に関してのものである. 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者にHFOV を使用するか?患 者 16 歳以上の人工呼吸器管理が必要な成人ARDS 患者.介 入 HFOV による人工呼吸器管理(>12 時間/日).対 照 通常の人工呼吸器管理.アウトカム 短期死亡,院内死亡,ICU 滞在日数,VFD,圧損傷.エビデンスの要約SR の結果,益のアウトカムとなり得るものは重大アウトカムの中には認められなかった,よって,重要アウトカムとして定義した難治性低酸素血症(refractory hypoxemia)を益のアウトカムとして用いた.益のアウトカムとして,HFOV による人工呼吸器管理を行うことで,refractory hypoxemia は273 人中38 人から275 人中19 人と減少した.よって,望ましい効果は「わずか」
と判断した.一方,害のアウトカムとして,短期死亡(5 RCT:n=1,612)に関する効果推定値は1,000 人あたり27 人増加(95% CI:61 人減少~133 人増加)し,院内死亡(2 RCT:n=1,343)に関する効果推定値は1,000 人あたり64 人増加(95% CI:47 人減少~215 人増加)し,ICU 滞在日数(1 RCT:n=795)に関する効果推定値は1.5 日延長(95% CI:0.71 日短縮~3.71 日延長)し,VFD(1 RCT:n=795)に関する効果推定値は0.5 日短縮(95% CI:1.71 日短縮~0.71日延長)し,圧損傷(4 RCT:n=784)に関する効果推定値は1,000 人あたり30 人増加(95% CI:15 人減少~96 人増加)した.このことから,望ましくない効果は「小さい」と判断した.以上より,効果と害のバランスは「たぶん害が大きい」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果におけるアウトカムの方向性が一致しており,すべてのアウトカムの中で最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「高」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定成人に対してHFOV を施行する場合,専用の人工呼吸器および習熟したスタッフが必要になると考えられる.設備,人的コストおよび効果のバランスから総合的に判断し,使用に習熟していない施設が新たに導入する利点は少ないと考えられる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「中等症以上の成人ARDS 患者の人工呼吸器管理においてHFOV を実施しないことを条件付きで推奨する提案をする(条件付き弱い推奨/高い確実性のエビデンス:GRADE 2A)」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2920 であった.パネル会議では付帯事項の「使用に習熟した施設において,より重篤な小児や一部の成人ARDS 患者への使用,もしくはレスキュー治療や肺出血への止血目的の使用を妨げるものではない」という記載が必要かとの議論があり,議論の結果,記載は必要ないとの判断となった.推奨としては再投票はなく,事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項今回用いた5 つのRCT の組み入れ基準はすべてでP/F ratio<200 となる中等症以上のARDS 患者を対象とした研究であり,上記推奨とした.軽症ARDS 患者に対する研究は認めなかったが,平均気道内圧が高いモードであり,圧損傷が増加する可能性があることを考慮すると,軽症ARDS 患者にも同様に推奨されない. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回採用した研究のうち,Mohamed2016 の対象患者が,熱傷に伴うARDS 患者に限定されていた.そのため感度分析としてMohamed2016(アウトカムは短期死亡,圧損傷)を除いたメタ解析を行ったが,短期死亡〔1,000 人あたり26 人増加(95% CI:75 人減少~153 人増加)〕および圧損傷〔1,000 人あたり28 人増加(95% CI:19 人減少~96 人増加)〕で,点推定値を含めた方向性に大きな変化は認められなかった. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ARDS に対するHFOV の使用に対して,『ARDS 診療ガイドライン2016』ではGRADE 2C の非推奨,ATS/ESICM/SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』でも中等症~重症ARDS に対するルーチンの使用をしないことを強く推奨されている.以上の内容および今回のSR の結果を考慮しても, HFOVの使用は,基本的には推奨されない.しかし,2017年のMeadeらのindividual patient data
meta‒analysis4)ではP/F ratio<100 群では予後改善が示唆されるなど,レスキュー目的の使用や限られた対象に対する使用については更なる検討が必要である.なお,使用にあたってはHFOV では分時換気量・ETCO2・呼吸音などによる換気評価が不可能であり,経皮二酸化炭素モニターなどによる評価も考慮する必要がある.また,使用にあたっては,日本呼吸療法医学会から2015 年に出版されている『成人症例のための高頻度振動換気療法(HFOV)プロトコル』を参考にするとよいかもしれない. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてHFOV が実際どの程度使用されているか,もしくは使用可能かについて更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析では,すべてのアウトカムの点推定値でHFOV の使用が望ましくない方向性が認められており,HFOV が通常の中等症以上の成人ARDS 患者に対して効果が得られる可能性は低いと考えられる.一方,対象患者,介入の違いから今回の解析からは除外したDerdak 20025) (腹臥位療法と仰臥位HFOV を交互に行う),Mentzelopoulos 20126) (recruitment maneuver 時にHFOV を使用),Samransamruajkit 20167) (小児へのHFOV)などではHFOV による有効性が示唆されている.実施上の考慮事項で記載したMeade らのメタ解析4)を含め,HFOV が有効となり得る条件(対象患者,使用時間,使用方法など)の検討は必要かもしれない.参考文献1) Ferguson ND, Cook DJ, Guyatt GH, et al. High‒frequency oscillation in early acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:795‒805. 2) Young D, Lamb S, Shah S, et al. High‒frequency oscillation for acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:806‒13. 3) Kacmarek RM, Villar J. Management of refractory hypoxemia in ARDS. Minerva Anestesiol 2013;79:1173‒9. 4) Meade MO, Young D, Hanna S, et al. Severity of hypoxemia and effect of high‒frequency oscillatory ventilation in acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2017;196:727‒33. 5) Derdak S, Mehta S, Stewart T, et al. High‒frequency oscillatory ventilation for acute respiratory distress syndrome in adults:a randomized, controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2002;166:801‒8. 6) Mentzelopoulos S, Malachias S, Zintzaras E, et al. Intermittent recruitment with high‒frequency oscillation/tracheal gas insufflation in acute respiratory distress syndrome. Eur Respir J 2012;39:635‒47. 7) Samransamruajkit R, Rassameehirun C, Pongsanon K, et al. A comparison of clinical efficacy between high frequency oscillatory ventilation and conventional ventilation with lung volume recruitment in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. Indian J Crit Care Med 2016;20:72‒7.
背景,この問題の優先度 『ARDS診療ガイドライン2016』以降,ARDS患者の人工呼吸器管理を行う際,駆動圧が生存率と関連があるという報告がされている.駆動圧を制限することで,人工呼吸器関連肺損傷(VALI)の軽減が期待される一方,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡の異常などの害が増加する可能性もある.そのため,ARDS 患者に対して駆動圧を指標とした人工呼吸を行うことの有用性を検討する臨床的意義があると考える.したがって,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 疑問:成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する 際,駆動圧を指標にするべきか?患者(P):16 歳以上のARDS 患者.介入(I):駆動圧を制限した人工呼吸器管理(駆動圧≤15 cmH2O). 対照(C):駆動圧を制限しない人工呼吸器管理(駆動圧>15 cmH2O). エビデンスの要約 MEDLINE,CENTRAL,医中誌を2020 年7月14 日までの期間で検索し,13 件の観察研究1‒13)が組入基準を満たした.組入基準を満たすRCT は見つけることができなかった.また,組み入れたすべての観察研究で交絡因子の調整が行われていないか交絡因子の記載そのものがなかったため,バイアスのリスクが高く,量的統合を行わなかった.低い駆動圧は,VALI の軽減が期待される一方で,呼吸数の増加,無気肺,高二酸化炭素血症や呼吸性アシドーシスを引き起こすという害の懸念がある.一方で,これまでいくつかの観察研究において,低い駆動圧は死亡割合の低下と関連していることが示唆されている.低い駆動圧が死亡割合の低下と関 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際,駆動圧を指標にするべきか? CQ 29 成人のARDS 患者に対して,駆動圧を指標として人工呼吸器管理を行うべき かの推奨はできない.理想体重に基づいた1 回換気量やプラトー圧を制限す る標準的な肺保護換気を確実に行った上で,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡 異常の害に注意しながら可能であれば駆動圧を制限することの重要性が増 している(in our practice statement). 推 奨
連する理由として,考えられることの1 つは,低い駆動圧により肺伸展/膨張によるVALI が減少する可能性があるためである14).低い駆動圧は肺伸展/膨張およびVALI の減少,死亡率の低下との関連が示されており,この仮説を支持する根拠となっている15,16).しかしながら,これまでの観察研究では交絡因子の調整はされておらず,低い駆動圧と死亡の関係は相関関係なのか因果関係なのかはまだわかっていない.このため駆動圧は予後を予測する指標ではあるものの,駆動圧を指標として換気設定を行うことで,ARDS 患者の予後が改善するかどうかはわからない.本CQ の系統的レビューでは組み入れられなかったが,ARDS 患者でベースラインの駆動圧が13 cmH2O 以上の患者を対象に,従来の肺保護換気法と比較して駆動圧指標として制限する換気法を行うことが実施可能かを評価したオープンラベルRCT が報告されていた17). ARDS 患者31 人を対象として介入群では予測体重(PBW)の4~8 mL/kg の1 回換気量で,かつ駆動圧10 cmH2O 以下に設定し,対照群では1 回換気量6 mL/kg PBW として,ARDS- Net プロトコルを使用した場合,1 日目から3日目までの駆動圧は,介入群で4.6 cmH2O 低かった(95%CI:6.5~2.8,P<0.001).7 日以内の重篤なアシドーシス(pH<7.10)の発生割合(絶対差-12.1,95%CI:-41.5~-17.3)に統計学的に有意な差は認められなかった.このRCT により,ARDS 患者において,駆動圧を制限した換気を評価する試験が実施可能であることが示唆された.しかし,実臨床で駆動圧を指標として管理することの益と害のバランスはまだわかっておらず,本CQ に対し明確な推奨の提示はできなかった.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 低い駆動圧と高い駆動圧を比較した質の高いエビデンスがないため,利益と害を評価することができなかった.負担およびコストに関しては,駆動圧を測定し,指標としながら人工呼吸器設定を行うのみであり,追加の機器のコストはないため,教育とマンパワーがあれば実施は可能と思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人のARDS患者に対して,駆動圧を指標として人工呼吸器管理を行うべきかの推奨はできない.理想体重に基づいた1 回換気量やプラトー圧を制限する標準的な肺保護換気を確実に行った上で,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡異常の害に注意しながら可能であれば駆動圧を制限することの重要性が増している(in our practice statement)」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.その結果,パネル会議では再投票はなく最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 駆動圧を指標とする人工呼吸器管理に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』18),ATS/ ESICM/SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』19)では記載は認められなかった.なお,自発呼吸がある場合,表面上の駆動圧が低くても,強い自発呼吸努力により経肺圧は高い場合 4 5 3 4
があるので注意するべきである.また,呼吸数の増加,無気肺,高二酸化炭素血症,呼吸性アシドーシス,非同調などの低い駆動圧による害と考えられる状態が生じる場合には益とのバランスを考慮する必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 The Faculty of Intensive Care Medicine and Intensive Care Society Guideline Development Group20),Thoracic Society(ATS)/ European Society of Intensive Care Medicine(ESICM)/Society of Critical Care Medicine(SCCM)の診療ガイドライン19)では,プラトー圧に関する推奨はあるが,駆動圧に関する推奨は提示していない. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたっては臨床上の問題として駆動圧を意識した管理が行われているかに関しての更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行う必要がある. 今後の研究の可能性 これまでの観察研究は低い駆動圧と死亡割合の低下の関連が示唆されている.しかし,これらは仮説生成的な研究であり,また,あくまで駆動圧が予測指標となることを意味しているだけである.すなわち,駆動圧を指標とした換気 戦略の日常的な臨床使用を支持するためのエビデンスは現在のところ不十分である. Romano らのパイロットRCT により,駆動圧を指標とした管理を検証することが実施可能であることが示唆され,大規模なRCT が実施可能となっている.今後は,現在の標準的なケア(すなわち肺保護換気)と比較して,駆動圧を指標とした換気戦略の有効性を評価するための良くデザインされたRCT が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress」「Driving pressure」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月14 日までの文献を検索したところ5,530 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当するRCTはなかった. 本CQ で対象とした研究 Chiumello 20161), Amato 20152), Quinteros 20193), Dessap 20164), Liu 20185), Laffey 20166), Guérin 20167), 森 信洋20198), Junior 2018 9), Villar 2017 10), Parhar 201911), Burrell 201712), Chiu 201713). 資料一覧 ・資料CQ29‒1 Search strategy.・資料CQ29‒2 フローダイアグラム.・資料CQ29‒3 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Chiumello D, Carlesso E, Brioni M, et al. Airway driving pressure and lung stress in ARDS patients. Crit Care 2016;20:276. 2) Amato MB, Meade MO, Slutsky AS, et al. Driving pressure and survival in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2015;372:747‒55. 3) Morales‒Quinteros L, Schultz MJ, Bringué J, et al. Estimated dead space fraction and the ventilatory ratio are associated with mortality in early ARDS. Ann Intensive Care 2019;9:128. 参考文献
4) Mekontso Dessap A, Boissier F, Charron C, et al. Acute cor pulmonale during protec- tive ventilation for acute respiratory distress syndrome:prevalence, predictors, and clinical impact. Intensive Care Med 2016;42:862‒70. 5) Liu L, Yang Y, Gao Z, et al. Practice of diagnosis and management of acute respiratory distress syndrome in mainland China:a cross‒sectional study. J Thorac Dis 2018; 10:5394‒404. 6) Laffey JG, Bellani G, Pham T, et al. Potentially modifiable factors contributing to out- come from acute respiratory distress syndrome:the LUNG SAFE study(published correction appears in Intensive Care Med 2017). Intensive Care Med 2016;42: 1865‒76. 7) Guérin C, Papazian L, Reignier J, et al. Effect of driving pressure on mortality in ARDS patients during lung protective mechanical ventilation in two randomized controlled trials. Crit Care 2016;20:384. 8) 森 信洋.ARDS における人工呼吸器管理データベースを用いたドライビングプレッシャ の分析.医療機器学.2019;89:487‒93. 9) Toufen Junior C, De Santis Santiago RR, Hirota AS, et al. Driving pressure and long‒ term outcomes in moderate/severe acute respiratory distress syndrome. Ann Intensive Care 2018;8:119. 10) Villar J, Martín‒Rodríguez C, Domínguez‒Berrot AM, et al. A quantile analysis of pla- teau and driving pressures:effects on mortality in patients with acute respiratory distress syndrome receiving lung‒protective ventilation. Crit Care Med 2017;45: 843‒50. 11) Parhar KKS, Zjadewicz K, Soo A, et al. Epidemiology, mechanical power, and 3‒Year outcomes in acute respiratory distress syndrome patients using standardized screening. An observational cohort study. Ann Am Thorac Soc 2019;16:1263‒72. 12) Burrell AJC, Lubnow M, Enger TB, et al. The impact of venovenous extracorporeal membrane oxygenation on cytokine levels in patients with severe acute respiratory distress syndrome:a prospective, observational study. Crit Care Resusc 2017;19: 37‒44. 13) Chiu LC, Hu HC, Hung CY, et al. Dynamic driving pressure associated mortality in acute respiratory distress syndrome with extracorporeal membrane oxygenation. Ann Intensive Care 2017;7:12. 14) Tonetti T, Vasques F, Rapetti F, et al. Driving pressure and mechanical power:new targets for VILI prevention. Ann Transl Med 2017;5:286. 15) Amato MB, Meade MO, Slutsky AS, et al. Driving pressure and survival in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2015;372:747‒55. 16) Chiumello D, Carlesso E, Brioni M, et al. Airway driving pressure and lung stress in ARDS patients. Crit Care 2016;20:276. 17) Pereira Romano ML, Maia IS, Laranjeira LN, et al. Driving pressure‒limited strategy for patients with acute respiratory distress syndrome. A pilot randomized clinical trial. Ann Am Thorac Soc 2020:17:596‒604. 18) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 19) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory
distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 20) Griffiths MJD, McAuley DF, Perkins GD, et al. Guidelines on the management of acute respiratory distress syndrome. BMJ Open Respir Res 2019;6:e000420.
資料CQ29—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/14) #1 "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR "Acute Chest Syndrome"[mh] OR "shock lung"[tiab] OR "respiratory distress syndrome"[tiab] OR "lung injur*"[tiab] OR ARDS[tiab] OR ALI[tiab] OR "respiratory insufficiency"[tiab] OR "respiratory failure"[tiab] OR "respiratory depression"[tiab] OR "ventilatory depression"[tiab] OR "acute chest syndrome"[tiab] #2 "driving pressure*"[tiab] OR "inspiratory airway pressure*"[tiab] OR "mechanical power"[tiab] OR "deltaP"[tiab] OR "Lung Compliance"[mh] OR "Tidal Volume"[mh] OR "lung compliance"[tiab] OR "tidal volume*"[tiab] OR "positive end-expiratory pressure*"[tiab] OR PEEP[tiab] #3 "randomized controlled trial"[pt] OR "controlled clinical trial"[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR "drug therapy"[sh] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab] #4 "Observational study"[pt] OR "Comparative study"[pt] OR "Epidemiologic studies"[mh] OR "Observational stud*"[tiab] OR "cohort stud*"[tiab] OR "concurrent study"[tiab] OR "cohort analys*"[tiab] OR "incidence stud*"[tiab] OR "epidemiological stud*"[tiab] OR "epidemiologic stud*"[tiab] #5 #3 OR #4 #6 Animals[mh] NOT Humans[mh] #7 #5 NOT #6 #8 #1 AND #2 AND #7 CENTRAL(Search date:2020/7/14) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR [mh "Acute Lung Injury"] OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR [mh "Acute Chest Syndrome"] OR "shock lung":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR "lung injury":ti,ab OR ARDS:ti,ab OR ALI:ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "respiratory depression":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "acute chest syndrome":ti,ab #2 "driving pressure":ti,ab OR "driving pressures":ti,ab OR "inspiratory airway pressure":ti,ab OR "mechanical power":ti,ab OR deltaP:ti,ab OR [mh "Lung Compliance"] OR [mh "Tidal Volume"] OR "lung compliance":ti,ab OR "tidal volume":ti,ab OR "positive end-expiratory pressure*":ti,ab OR PEEP:ti,ab #3 #1 AND #2 #4 [mh Animals] NOT [mh Humans] #5 #3 NOT #4 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/14) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR "acute lung injury"/AL OR 急性胸部症候群/TH OR急性胸部症候群/AL OR 呼吸障害/TH OR 呼吸障害/AL #2 "driving pressure"/AL OR ドライビングプレッシャー/AL OR メカニカルパワー/AL OR "mechanical power"/AL OR deltaP/AL OR デルタP/AL OR 圧/AL OR 陽圧呼吸/TH OR PEEP/AL OR 肺コンプライアンス/TH OR 肺コンプライアンス/TA OR 一回換気量/TH OR 一回換気量/TA #3 #2 NOT ( 血圧/TH OR 血圧/AL) #4ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL OR 観察研究/ TH OR 観察研究/AL OR 臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究・疫学研究/AL OR コホート研究/TH OR コホート研究/AL OR 比較研究/AL #5 #1 AND #3 AND #4 #6 (#5) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ29—2 フローダイアグラム 他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=84 系統的レビューに組み入れた研究 n=13 検索で同定された研究 n=5,530 重複研究を除外した研究 n=4,015 除外基準に該当した研究 n=3,931 重複した研究 n=1,515 除外基準に該当した研究n=71理由:・ 日本語・英語以外・ RCT/観察研究ではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 重複0件19件 6件43件3件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Embase Cochrane CENTRAL医中誌3,147件0件1,417件966件 n=5,530 メタ解析に組み入れた研究 n=6 同定スクリーニング適格性組み入れメタ解析から除外した研究 n=7 理由:・ データが得られなかった・ 目的とするアウトカムがない5件2件
資料CQ29—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ29:成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際,駆動圧を指標にするべき か? 集 団:人工呼吸器管理を必要とする成人ARDS 患者 介 入:駆動圧を制限した人工呼吸器管理(駆動圧≤15 cmH2O) 比較対照:駆動圧を制限しない人工呼吸器管理(駆動圧>15 cmH2O)主要なアウトカム:短期死亡率(90 日以内で最も長期のものを採用する),人工呼吸器非使用日数 (VFD),圧損傷/人工呼吸器関連肺損傷(VALI) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:『ARDS 診療ガイドライン2016』以降,ARDS 患者の人工呼吸器管理を行う際,駆 動圧が生存と関連があるという報告がされている.駆動圧を制限することで,VALIの軽減が期待される一方,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡の異常などの害が増加する可能性もある.そのため,ARDS 患者に対して駆動圧を指標とした人工呼吸を行うことの有用性を検討する臨床的意義があると考える 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない『ARDS 診療ガイドライン2016』以降,ARDS 患者の人工呼吸器管理を 行う際,駆動圧が生存と関連があるという報告がされている.駆動圧を制限することで,VALI の軽減が期待される一方,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡の異常などの害が増加する可能性もある.そのため,ARDS 患者に対して駆動圧を指標とした人工呼吸を行うことの有用性を検討する臨床的意義があると考える.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がない肺保護換気戦略とopen lung アプローチは,VALI の減少,酸素化の改善, 転帰の改善と関連していることが報告されている.しかし,ARDSnet の予測体重(PBW)に対する目標1 回換気量を用いる換気戦略は,ARDSの重症度によって換気に利用できない肺胞領域に差があることが考慮されていない換気に利用可能な肺胞領域の減少は,肺コンプライアンスの低下として現れる.2 つの肺が同じサイズであるが,片方の肺が低いコンプライアンスを持ち,もう片方が高いコンプライアンスの場合は,PBW に従った1 回換気量を用いて換気することは,低いコンプライアンスの肺でより多くの機械的ストレスを発生させる可能性があるしたがって,1 回換気量をコンプライアンスで除して,肺の「機能的な」大きさを示す指標として比を使用して患者を個別化することで,1 回換気量単独よりもARDS 患者の転帰をよりよく予測できる可能性がある.この比率は駆動圧(ΔP=VT/CRS)と呼ばれ,吸気努力をしていない患者では,プラトー圧から呼気終末陽圧(ΔP=Pplat-PEEP)を差し引いた値としてベッドサイドで計算することができる上記を背景として,低い駆動圧を指標とすることで,肺伸展/膨張を抑制し,VALI を軽減することが期待される.また,これらの人工呼吸の害の抑制により,人工呼吸期間の短縮や死亡割合の低下も期待される.一方で,低い駆動圧に設定することで,呼吸数の増加,無気肺,高二酸化炭素血症や呼吸性アシドーシスといった害の懸念もある駆動圧を指標とする換気戦略は,ARDS 患者の換気戦略の安全性を向上する可能性があるが,本CQ の検索では該当するエビデンスを見つけることができなかった.このため,益と害のバランスはまだわからず,エビデンスの確信性の記述は行えなかった
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないたぶん重要な不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用できるエビデンスはなかったが,観察研究で繰り返し低い駆 動圧が死亡と関連することが示唆されており,日常診療で用いられる予測指標のうちの1 つとして受け入れられていると思われる.コストや有害性を考慮しても駆動圧を指標とすることはおそらく受け入れられると思われる
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用できるエビデンスはなかったが,すでに日常診療で駆動圧を 意識した人工呼吸器管理が行われているものと思われる.しかし,低い駆動圧により害が起きる場合,つまり,呼吸数の増加,無気肺,高二酸化炭素血症や呼吸性アシドーシスや非同調などが起きる場合には益とのバランスを考え,駆動圧を指標とするかどうか判断する必要がある 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん介入が 有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人のARDS 患者に対して,駆動圧を指標として人工呼吸器管理を行うべきかの推奨はできない.理想体重に基づいた1 回換気量やプラトー圧を制限する標準的な肺保護換気を確実に行った上で,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡異常の害に注意しながら可能であれば駆動圧を制限することの重要性が増している(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者に人工呼吸を実施する際,駆動圧を指標にするべきか?患 者 16 歳以上のARDS 患者.介 入 駆動圧を制限した人工呼吸器管理(駆動圧≤15 cmH2O).対 照 駆動圧を制限しない人工呼吸器管理(駆動圧>15 cmH2O).解 説MEDLINE,CENTRAL,医中誌を2020 年7 月14 日までの期間で検索し,13 件の観察研究が組入基準を満たしたが,基準を満たすRCT はなかった.また,組み入れたすべての観察研究で交絡因子の調整が行われていない,もしくは交絡因子の記載そのものがなかったため,バイアスのリスクが高く,量的統合を行わなかった.低い駆動圧は,VALI の軽減が期待される一方で,呼吸数の増加,無気肺,高二酸化炭素血症や呼吸性アシドーシスを引き起こすという害の懸念がある.また,これまでいくつかの観察研究で低い駆動圧は肺伸展/膨張およびVALI の減少,死亡率の低下との関連が示唆されている1‒3).しかしながら,これまでの観察研究では交絡因子の調整はされておらず,低い駆動圧と死亡の関係は相関関係なのか因果関係なのかはまだはっきりしていない.このため,動圧を指標として換気設定を行うことで,ARDS 患者の予後が改善するかに関しては明らかでない.本CQ の系統的レビューでは組み入れられなかったが,ARDS 患者でベースラインの駆動圧が13 cmH2O 以上の患者を対象に,従来の肺保護換気法と比較して駆動圧指標として制限する換気法を行うことが実施可能かを評価したオープンラベルRCT が報告されている4).ARDS 患者31 人を対象として介入群ではPBW の4~8 mL/kg の1 回換気量で,かつ駆動圧10 cmH2O 以下に設定し,対照群では1 回換気量6 mL/kg PBW として,ARDSnet プロトコルを使用した場合,1 日目から3
日目までの駆動圧は,介入群で4.6 cmH2O 低かった(95% CI:6.5~2.8,P<0.001).7 日以内の重篤なアシドーシス(pH<7.10)の発生割合(絶対差-12.1,95% CI:-41.5~-17.3)に統計学的に有意な差は認められなかった.このRCT により,ARDS 患者において,駆動圧を制限した換気を評価する試験が実施可能であることが示唆された.現状,駆動圧を指標として管理することの益と害のバランスは不明であり,本CQ に対し明確な推奨の提示はできなかった.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述とした.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定低い駆動圧と高い駆動圧を比較した質の高いエビデンスがないため,利益と害を評価することができなかった.負担およびコストに関しては,駆動圧を測定し,指標としながら人工呼吸器設定を行うのみであり,追加の機器のコストはないため,教育とマンパワーがあれば実施は可能と思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人のARDS 患者に対して,駆動圧を指標として人工呼吸器管理を行うべきかの推奨はできない.理想体重に基づいた1 回換気量やプラトー圧を制限する標準的な肺保護換気を確実に行った上で,高二酸化炭素血症や酸塩基平衡異常の害に注意しながら可能であれば駆動圧を制限することの重要性が増している(in our practice statement)」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.その結果,パネル会議では再投票はなく最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 駆動圧を指標とする人工呼吸器管理に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』,ATS/ESICM/ SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』では記載は認められなかった.なお,自発呼吸がある場合,表面上の駆動圧が低くても,強い自発呼吸努力により経肺圧は高い場合があるので注意するべきである.また,呼吸数の増加,無気肺,高二酸化炭素血症,呼吸性アシドーシス,非同調などの低い駆動圧による害と考えられる状態が生じる場合には益とのバランスを考慮する必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては臨床上の問題として駆動圧を意識した管理が行われているかに関しての更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities これまでの観察研究は低い駆動圧と死亡割合の低下の関連が示唆されている.しかし,これらは仮説生成的な研究であり,また,あくまで駆動圧が予測指標となることを意味しているだけである.
すなわち,駆動圧を指標とした換気戦略の日常的な臨床使用を支持するためのエビデンスは現在のところ不十分である. Romano らのパイロットRCT により,駆動圧を指標とした管理を検証することが実施可能であることが示唆され,大規模なRCT が実施可能となっている.今後は,現在の標準的なケア(すなわち肺保護換気)と比較して,駆動圧を指標とした換気戦略の有効性を評価するための良くデザインされたRCT が必要である.参考文献1) Tonetti T, Vasques F, Rapetti F, et al. Driving pressure and mechanical power:new targets for VILI prevention. Ann Transl Med 2017;5:286. 2) Amato MB, Meade MO, Slutsky AS, et al. Driving pressure and survival in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2015;372:747‒55. 3) Chiumello D, Carlesso E, Brioni M, et al. Airway driving pressure and lung stress in ARDS patients. Crit Care 2016;20:276. 4) Pereira Romano ML, Maia IS, Laranjeira LN, et al. Driving pressure‒limited strategy for patients with acute respiratory distress syndrome. A pilot randomized clinical trial. Ann Am Thorac Soc 2020;17:596‒604.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者にとって,酸素療法はなくてはならないものであり,治療中のSpO2モニタリングは必須である.近年,RCT で低めのSpO2を目標とした管理を行うことで死亡率を改善させる研究が示された一方,死亡率の増加を示唆するものもあり,効果は一定していない.以上より,ARDS 患者における低SpO2を目標とした管理の利益と害を検証すること,さらには,目標とするSpO2値を定めることが必要である.以上より,CQ 立案に際し臨床的意義が大きいと判断した. 解 説 PICO 患者(P):人工呼吸器を必要とする成人患者(人工呼吸器装着患者を全体の症例数の50%以上含む研究を採用する). 介入(I):低SpO2(PaO2)を目標とする管理(文献ごとの定義).対照(C):より高いSpO2(PaO2)を目標とす る管理(文献ごとの定義).アウトカム(O):長期死亡,VFD,新規不整 脈,腸管虚血,ICU 関連筋力低下(ICU‒ acquired weakness:ICU‒AW). エビデンスの要約 Zhao ら1)のネットワークメタ解析から,本CQ のPICO に合致する研究を収集したところ,成人人工呼吸器装着患者に対して,低SpO2 (PaO2)と高SpO2(PaO2)を目標とする管理の比較を扱ったRCT が6 件(n=2,337)認められた.低SpO2を目標とした管理を行うことによって,益のアウトカムとして,長期死亡(18 人減少/1,000 人,95%CI:77 人減少~51 1 2 1 2 領域C 侵襲的呼吸補助 成人ARDS 患者において低SpO2 (PaO2)を目標とする管理を行う か? CQ 30 成人ARDS 患者において過度な低SpO2(PaO2)を目標とした管理を行わ ないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデ ンス:GRADE 2D). 現段階で至適SpO2(PaO2)は不明である.過度な低酸素および過度な高酸素を避けるような管理をするべきである. 推 奨 付帯事項
人増加),VFD(0.25 日延長,95%CI:1.76 日短縮~2.27 日延長),ICU‒AW(51 人減少/ 1,000 人,95%CI:80 人減少~4 人増加)を認め,「効果は小さい」と判断した.一方,害のアウトカムとして,新規不整脈(26 人増加/ 1,000 人,95%CI:7 人減少~84 人増加),腸管虚血(21 人増加/1,000 人,95%CI:20 人減少~866 人増加)を認め,「効果は小さい」と判断した.以上より,効果のバランスとして「わからない」と判断した. エビデンスの確実性 アウトカムにおける方向性は一致しておらず,エビデンスの確実性はすべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 介入はSpO2の目標値の変更でありコストはないと考えられる.また,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者などを中心に低SpO2を目標とした管理は一般化されておりARDS患者においても十分実行可能と思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により「成人ARDS 患者において過度な低SpO2(PaO2)を目標とした管理を行わないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値8 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では推奨にあたって具体的なSpO2値を提示するべきかという意見が上がったが,示すだけの根拠に乏しいということとなった.その結果,パネル会議では再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 今回のSR 後の2021 年にNEJM から,PICOが合致するR C T が発表された(O l a v 2021)2).2,910 人が組み入れられており,このRCT を含むことで推奨が変わる可能性を考慮し,感度分析としてこの研究を含んだメタ解析を施行した.長期死亡(6RCT:n=5,225)に関する効果推定値はリスク差12 人減少/1,000人(95%CI:60 人減少~40 人増加),腸管虚血(3RCT:n=3,535)に関する効果推定値はリスク差2 人増加/1,000 人(95%CI:12 人減少~37 人増加)であった.CI の幅の縮小は認められたが,効果の方向性には変化は認められず,この研究を含んでも推奨の変化は生じなかった. 実施上の考慮事項 パルスオキシメータを使用しての管理は日常的に行われているため実施は十分可能と考えられる.実施にあたっては,末梢の低灌流,CO‒ Hb高値,高度の貧血,染料などSpO2測定の正確度,精度に影響を与え得るもの,および上記研究で除外されているような高酸素もしくは低酸素により明らかに病態が悪化し得るであろう状態,基礎疾患に関して十分留意するべきである. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS 患者に対する低SpO2を目標とする管理に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』3),ATS/ESICM/SCCM2017 の『ARDSガイドライン』4)では記載は認められなかった. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたっては臨床上の問題として低SpO2および高SpO2の害に関しての更なる情 3 4 5 3 4 5 6
報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 今後の研究の可能性 今回は主にICU における人工呼吸器装着中の患者についての検討であった.引き続き,至適SpO2に関する研究が必要であると考えられる.加えて,疾患によってSpO2の目標が異なるかどうかについての知見も求められるであろう. 文献検索式と文献選択 本CQ は既存のSR1)を利用して検討を行った.このSR ではOvid MEDLINE,Ovid Embase, Web of Science,およびCochrane CENTRALで2020 年4 月17 日までの文献を検索し, 4,948 件の研究が同定され,スクリーニングの結果6 件のRCT5‒10)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Asfar 20175), Barrot 20206), Girardis 20167), Mackle 20208), Panwar 20169), Yang 201910). 資料一覧 ・資料CQ30‒1 Search strategy.・資料CQ30‒2 フローダイアグラム.・資料CQ30‒3 Risk of bias.・資料CQ30‒4 Forest plot.・資料CQ30‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ30‒6 Evidence‒to‒Decision. 7 8 9 10 1) Zhao Xu, Xiao H, Dai F, et al. Classification and effectiveness of different oxygenation goals in mechanically ventilated critically ill patients:network meta‒analysis of randomised controlled trials. Eur Respir J 2021;58:2002928. 2) Schjørring OL, Klitgaard TL, Perner A, et al. Lower or higher oxygenation targets for acute hypoxemic respiratory failure. N Engl J Med 2021;384:1301‒11. 3) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 4) Fan E, Del Sorbo L, Goligher EC, et al. An Official American Thoracic Society/Euro- pean Society of Intensive Care Medicine/Society of Critical Care Medicine Clinical Practice Guideline:Mechanical ventilation in adult patients with acute respiratory distress syndrome(published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1540). Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1253‒63. 5) Asfar P, Schortgen F, Boisramé‒Helms J, et al. Hyperoxia and hypertonic saline in patients with septic shock(HYPERS2S):a two‒by‒two factorial, multicentre, randomised, clinical trial(published correction appears in Lancet Respir Med 2017;5: e28). Lancet Respir Med 2017;5:180‒90. 6) Barrot L, Asfar P, Mauny F, et al. Liberal or conservative oxygen therapy for acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2020;382:999‒1008. 7) Girardis M, Busani S, Damiani E, et al. Effect of conservative vs conventional oxygen therapy on mortality among patients in an intensive care unit:the oxygen‒ICU randomized clinical trial. JAMA 2016;316:1583‒9. 8) ICU‒ROX investigators and the Australian and New Zealand intensive care society clinical trials group, Mackle D, Bellomo R, et al. Conservative oxygen therapy during 参考文献
mechanical ventilation in the ICU. N Engl J Med 2020;382:989‒98. 9) Panwar R, Hardie M, Bellomo R, et al. Conservative versus liberal oxygenation targets for mechanically ventilated patients. A pilot multicenter randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2016;193:43‒51. 10) Yang X, Shang Y, Yuan S. Low versus high pulse oxygen saturation directed oxygen therapy in critically ill patients:a randomized controlled pilot study. J Thorac Dis 2019;11:4234‒40.
資料CQ30—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/4/17) #1 exp Oxygen Inhalation Therapy/ #2 (Oxygen adj3 (therap* OR treatment* OR intervention* OR manage*)).ti,ab,kw. #3 COT.ti,ab. #4 #1 OR #2 OR #3 #5 pulse oxygen saturation*.ti,ab,kw. #6 exp Oximetry/ #7 Oximetr*.ti,ab,kw. #8 arterial blood oxygen saturation.ti,ab,kw. #9 (arterial blood oxygen partial pressure OR arterial blood oxygen partial tension).ti,ab,kw. #10 OR /#5-#9 #11 exp Therapeutics/ #12 (therap* OR treatment* OR intervention* OR manage*).ti,ab,kw. #13 #11 OR #12 #14 #10 AND #13 #15 #4 OR #14 #16 exp Mortality/ #17 (mortalit* OR fatalit* OR die OR died OR death OR survival).ti,ab,kw. #18 #16 OR #17 #19 #15 AND #18 #20 exp Randomized Controlled Trial/ #21 randomized controlled trial.pt. #22 (random* AND (study OR studies OR trial* OR group*)).mp. #23 #20 OR #21 OR #22 #24 #19 AND #23 CENTRAL(Search date:2020/4/17) #1 Oxygen therap* OR oxygen treatment* OR oxygen intervention* OR oxygen manage* #2 pulse oxygen saturation* #3 Oximetr* #4 arterial blood oxygen saturation OR arterial blood oxygen partial pressure OR arterial blood oxygen partial tension #5 #2 OR #3 OR #4 #6 therap* OR treatment* OR intervention* OR manage* #7 #5 AND #6 #8 mortalit* OR fatalit* OR die OR died OR death OR survival #9 #1 AND #7 AND #8 (in trials) Embase(Search date:2020/4/17) S1 exp Oxygen Therapy/ S2 (Oxygen adj3 (therap* OR treatment* OR intervention* OR manage*)).ti,ab,kw. S3 COT.ti,ab.
S4 S1 OR S2 OR S3 S5 pulse oxygen saturation*.ti,ab,kw. S6 exp Oximetry/ S7 Oximetr*.ti,ab,kw. S8 exp oxygen saturation/ S9 exp arterial oxygen tension OR exp arterial oxygen saturation S10 arterial blood oxygen saturation.ti,ab,kw. S11 (arterial blood oxygen partial pressure OR arterial blood oxygen partial tension).ti,ab,kw. S12 OR/S5-S11 S13 exp Therapy S14 (therap* OR treatment* OR intervention* OR manage*).ti,ab,kw. S15 S13 OR S14 S16 S13 OR S14 S17 S4 OR S16 S18 exp Mortality/ S19 (mortalit* OR fatalit* OR die OR died OR death OR survival).ti,ab,kw. S20 S18 OR S19 S21 S17 AND S20 S22 exp Randomized Controlled Trial S23 (random* AND (study OR studies OR trial* OR group*)).mp. S24 limit S21 to randomized controlled trial S25 S22 OR S23 #26 S21 AND S25 #27 S24 OR S26 Web of Science(Search date:2020/4/17) #1 TS = (Oxygen Near/3 (therap* OR treatment* OR intervention* OR manage*)) #2 TS = (COT) #3 #2 OR #1 #4 TS = (pulse oxygen saturation*) #5 TS = (Oximetr*) #6 TS = (arterial blood oxygen saturation OR arterial blood oxygen partial pressure OR arterial blood oxygen partial tension) #7 #6 OR #5 OR #4 #8 TS = (therap* OR treatment* OR intervention* OR manage*) #9 #8 AND #7 #10 #9 OR #3 #11 TS = (mortalit* OR fatalit* OR die OR died OR death OR survival) #12 #11 AND #10 #13 TS = (random* AND (study OR studies OR trial* OR group*)) #14 #13 AND #12
他のリソースから同定された研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した (既存のSR内)研究 n=23 既存のSR(Zhao X 20211))に 組み入れられた研究 n=8 検索で同定された研究 n=6,499 重複研究を除外した研究 n=4,948 除外基準に該当した研究 n=4,925 重複した研究 n=1,551 除外基準に該当した研究n=15理由:・ P, I/C が異なる・ 結果の測定方法が異なる・ RCT ではない・ 他の研究と重複9件 3件2件1件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(Ovid) Embase(Ovid) Cochrane CENTRAL Web of Science 1,149件3,229件978件1,143件 n=6,499 系統的レビューおよびメタ解析に 組み入れた研究 n=6除外基準に該当した研究 n=2 Pが異なる(心停止後患者のみを扱う研究を除外) 2件 同定スクリーニング適格性組み入れ資料CQ30—2 フローダイアグラム
資料CQ30—3 Risk of bias 長期死亡人工呼吸器非使用日数
新規不整脈腸管虚血 腎代替療法ICU-AW
新規感染症
長期死亡 人工呼吸器非使用日数 新規不整脈 腸管虚血 腎代替療法資料CQ30—4 Forest plot
ICU-AW 新規感染症
資料CQ30—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数確実性 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討低SpO2 管理高SpO2 管理相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 長期死亡* 6 ランダム 化試験深刻で ない深刻a 深刻で ないb深刻で ないcなし403/ 1,160 (34.7%) 429/ 1,177 (36.4%) RR 0.95 (0.79~1.14) 1,000 人あたり18 人減少(77 人減少~ 51 人増加) +++○ 中重大 VFD** 3 ランダム 化試験深刻d深刻e 深刻で ないb深刻fなし753 749 —平均0.25 日延長(1.78 日短縮~ 2.27 日延長) +○○○非常に低重大 新規不整脈 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻g深刻hなし24/316 (7.6%) 16/319 (5.0%) RR 1.51 (0.86~2.67) 1,000 人あたり26 人増加(7 人減少~ 84 人増加) ++○○ 低重大 腸管虚血 2 ランダム 化試験深刻i深刻j深刻g深刻kなし9/316 (2.8%) 7/319 (2.2%) RR 1.95 (0.09~40.47) 1,000 人あたり21 人増加(20 人減少~ 866 人増加) +○○○非常に低重大 腎代替療法 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ないb深刻lなし167/693 (24.1%) 185/692 (26.7%) RR 0.91 (0.76~1.08) 1,000 人あたり24 人減少(64 人減少~ 21 人増加) +++○ 中重要 ICU—AW 1 ランダム 化試験非常に 深刻m深刻で ない非常に 深刻n深刻oなし13/217 (6.0%) 24/217 (11.1%) RR 0.54 (0.28~1.04) 1,000 人あたり51 人減少(80 人減少~ 4 人増加) +○○○非常に低重大 新規感染症 3 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻で ないb深刻pなし101/532 (19.0%) 117/537 (21.8%) RR 0.87 (0.69~1.11) 1,000 人あたり28 人減少(68 人減少~ 24 人増加) ++○○ 低重要 *研究で扱っているもののうち最も長い時点の死亡アウトカムを採用した,**28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.I2=57%であり中等度の統計学的異質性があること,かつフォレストプロットを視覚的に判断した結果として臨床的異質性もあることから,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. b.研究の対象集団はARDS に加えて,一般ICU 患者,敗血症患者など,本診療ガイドラインの対象患者と異なる部分もあるが,50%以上が人工呼吸器装着患者の研究を扱っており,非直接性は「深刻でない」と判断した. c.総サンプル数が2,337,イベント数が832 とOIS を満たし,かつCI は“相当な害”と“相当な益”を満たさず,グレードダウンはなしとした. d.複数の項目(治療者の盲検化)でRoB はhigh であり,バイアスのリスクは「深刻」と判断した.
e.I2=59%であり中等度の統計学的異質性があること,かつフォレストプロットを視覚的に判断した結果として臨床的異質性もあることから,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. f.総サンプル数が1,502 と連続変数としてOIS は満たしていると考えられるが,95% CI の幅が広くCI は上下の区間ともに最小重要差(MID)をまたいでいると考えられ「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. g.研究の対象集団の大部分で敗血症患者,かつ研究のデザインが低SpO2を目標にしたものとやや異なることから,非直接性は「深刻」と判断した. h.総サンプル数が335,イベント数が40 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“効果なし”と“相当の害”を含んでいる. i.複数の項目(治療者の盲検化)でRoB はhigh であり,バイアスのリスクは「深刻」と判断した. j.I2=74%であり中等度の統計学的異質性があること,かつフォレストプロットを視覚的に判断した結果として臨床的異質性もあることから,「深刻」と判断し1 段階ダウンとした. k.総サンプル数が635,イベント数が16 とOIS を満たしていない. l.総サンプル数が1,385,イベント数が352 とOIS を満たしていない. m.複数の項目(治療者,評価者の盲検化)でRoB はhigh であり,バイアスのリスクは「非常に深刻」と判断した. n.研究の対象集団が敗血症患者のみに限られており,かつ研究のデザインが低SpO2を目標にしたものとやや異なることから,非直接性は「非常に深刻」と判断した. o.総サンプル数が434,イベント数が37 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“効果なし”と“相当の益”を含んでいる. p.総サンプル数が1,069,イベント数が218 とOIS を満たさず,かつ95% CI の幅が広くCI は“効果なし”と“相 当の益”を含んでいる.
資料CQ30—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ30:成人ARDS 患者において低SpO2(PaO2)を目標とする管理を行う か? 集 団:人工呼吸器を必要とする成人患者(人工呼吸器装着患者を全体の症例数の50%以上 含む研究を採用する) 介 入:低SpO2(PaO2)を目標とする管理(文献ごとの定義)比較対照:より高いSpO2(PaO2)を目標とする管理(文献ごとの定義)主要なアウトカム:長期死亡,人工呼吸器非使用日数(VFD),新規不整脈,腸管虚血,ICU 関連筋力低 下(ICU—AW) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者にとって,酸素療法はなくてはならないものであり,治療中のSpO2モニ タリングは必須である.近年,低めのSpO2を目標とした管理を行うことでアウトカムを改善させたとするRCT が出された一方で,アウトカムの悪化を示唆するRCTも認められ,効果は一定していない.以上より,ARDS 患者における低SpO2を目標とした管理の利益と害を検証すること,さらには目標とするSpO2値を定めることが必要である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS 患者にとって,酸素療法はなくてはならないものであり,治療中 のSpO2モニタリングは必須である.近年,低めのSpO2を目標とした管理を行うことでアウトカムを改善させたとするRCT が出された一方で,アウトカムの悪化を示唆するRCT も認められ,効果は一定していない.以上より,ARDS 患者における低SpO2を目標とした管理の利益と害を検証すること,さらには目標とするSpO2値を定めることが必要である.以上より,CQ 立案に際し臨床的意義が大きいと判断した 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度既存のSR を用いた文献検索の結果,PICO に一致したRCT が6 件施行 されており,これらを用いたメタ解析を施行した長期死亡(6 RCT:n=2,337)に関する効果推定値は,低SpO2(PaO2)
○大きい○一概には言えない○わからないを目標とする管理で1,000 人あたり18 人減少(95% CI:77 人減少~ 51 人増加)し,VFD(3 RCT:n=1,502)に関する効果推定値は平均差0.25 日延長(95% CI:1.78 日短縮~2.27 日延長)し,ICU—AW(1 RCT:n=434)に関する効果推定値は1,000 人あたり51 人減少(95% CI:80 人減少~4 人増加)した.以上より,介入による望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない新規不整脈(2 RCT:n=635)に関する効果推定値は,低SpO2(PaO2) を目標とする管理で1,000 人あたり26 人増加(95% CI:7 人減少~84人増加)し,腸管虚血(2 RCT:n=635)に関する効果推定値は1,000人あたり21 人増加(95% CI:20 人減少~866 人増加)した.以上より,介入による望ましくない効果は,「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 長期死亡*重大+++○ 中 VFD重大+○○○ 非常に低 新規不整脈重大++○○ 低 腸管虚血重大+○○○ 非常に低 ICU—AW重大+○○○ 非常に低 *研究に含まれる中で最も長い期間での死亡(28 日死亡,60 日死亡,90 日死亡,180 日死亡,入院死亡を含む)全体的なエビデンスの確実性益と害のアウトカムにおける方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も低いエビデンスの確実性を採用し,「非常に低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はない低SpO2を用いた管理におけるアウトカムに関する価値観についての データはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない結果のまとめ アウトカム管理方法絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 高SpO2 管理(対照)低SpO2 管理(介入) 長期死亡429/ 1,177 403/ 1,160 18 人減少/1,000 人 (77 人減少~ 51 人増加) 0.95 (0.79~ 1.14) VFD — —平均差0.25 日延長 (1.78 日短縮~ 2.27 日延長) — 新規不整脈16/319 24/316 26 人増加/1,000 人 (7 人減少~ 84 人増加) 1.51 (0.86~ 2.67) 腸管虚血7/319 9/316 21 人増加/1,000 人(20 人減少~ 866 人増加) 1.95 (0.09~ 40.47) ICU—AW 24/217 13/217 51 人減少/1,000 人 (80 人減少~ 4 人増加) 0.54 (0.28~ 1.04) 上記より効果と害のバランスについて「わからない」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,設備,コストなど,ICU の体制 などを考慮しても十分受け入れ可能と判断される 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,低SpO2管理に際して,新たな設 備などは必要ないと考えられること,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者などでは,すでに比較的低SpO2を目標とした管理は一般化されていることからARDS 患者においても十分実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において過度な低SpO2(PaO2)を目標とした管理を行わないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 現段階で至適SpO2(PaO2)は不明である.過度な低酸素および過度な高酸素を避けるような管理をするべきである. 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者において低SpO2(PaO2)を目標とする管理を行うか?患 者 人工呼吸器を必要とする成人患者(人工呼吸器装着患者を全体の症例数の50%以上含む研究を採用する).介 入 低SpO2(PaO2)を目標とする管理(文献ごとの定義).対 照 より高いSpO2(PaO2)を目標とする管理(文献ごとの定義).アウトカム 長期死亡,VFD,新規不整脈,腸管虚血,ICU‒AW.エビデンスの要約Zhao ら1)のネットワークメタ解析から,本CQ のPICO に合致する研究を収集したところ,成人人工呼吸器装着患者に対して,低SpO2(PaO2)と高SpO2(PaO2)を目標とする管理の比較を扱っ
たRCT が6 件(n=2,337)認められた.低SpO2を目標とした管理を行うことによって,益のアウトカムとして,長期死亡は1,000 人あたり18 人減少(95% CI:77 人減少~51 人増加)し,VFDは0.25 日延長(95% CI:1.76 日短縮~2.27 日延長)し,ICU‒AW は1,000 人あたり51 人減少(95% CI:80 人減少~4 人増加)した.このことから,望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,害のアウトカムとして,新規不整脈は1,000 人あたり26 人増加(95% CI:7 人減少~84 人増加)し,腸管虚血は1,000 人あたり21 人増加(95% CI:20 人減少~866 人増加)した.よって,望ましくない効果は「小さい」と判断した.以上より,効果と害のバランスについては,「わからない」と判断した.エビデンスの確実性アウトカムにおける方向性は一致しておらず,エビデンスの確実性はすべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定介入はSpO2の目標値の変更でありコストはないと考えられる.また,COPD 患者などを中心に低SpO2を目標とした管理は一般化されておりARDS 患者においても十分実行可能と思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により「成人ARDS 患者において過度な低SpO2(PaO2)を目標とした管理を行わないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D)」が中央値8 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では推奨にあたって具体的なSpO2値を提示するべきかという意見が上がったが,示すだけの根拠に乏しいということとなった.その結果,パネル会議では再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項今回のSR に組み入れられた研究の多くは,ICU における人工呼吸器装着患者を扱ったものであり,今回の結果が必ずしもARDS 患者全般に対してはあてはまらない可能性があることに注意するべきである(ARDS 患者のみを対象としたBarrot 2020 では低SpO2管理により死亡率上昇を認めている).また,今回組み入れたうちのいくつかの研究では,COPD 患者など,高濃度酸素が害となり得る患者群は除外されていることから,それらの患者に関してこの推奨に含むべきではない.また,今回のSR にも利用したZhao ら1)のネットワークメタ解析では,人工呼吸器管理が必要な集中治療患者の至適SpO2に関しての解析が行われている.それによると,far‒conservative (PaO2:55~70 mmHg,SaO2/SpO2 88~94%),conservative(PaO2:70~90 mmHg,SaO2/ SpO2 94~97%),moderate(PaO2:90~150 mmHg,SpO2 97~100%),liberal(PaO2>150 mmHg)の各群で比較すると,有意差はないものの,moderate,conservative,liberal,far‒conservative の順に予後が良い傾向が認められた.以上,これらの結果のみで至適SpO2を決めることは困難であるが,少なくとも,通常のSpO2管理(SpO2:90~98%程度)の範囲内で予後に明確な差が生じる可能性は高いとは言えない.一方,過度にconservative やliberal なアプローチは予後を増悪させる可能性が考慮される. 次に,今回のメタ解析に用いた研究の患者,サンプルサイズ,SpO2目標と結果および死亡(RR)を示す(本SR に含まれないOlav2021 は参考として記載).
研 究患 者サンプルサイズ人工呼吸器装着患者 割合(%) SpO2目標値 (低SpO2群)実際の酸素化(低SpO2 群) SpO2目標値 (高SpO2群)実際の酸素化(高SpO2 群)目標SpO2 持続時間低SpO2 管理による長期死亡 RR Asfar2017 HYPERS2S敗血症性ショック (MV) 434 100 88~ 95% PaO2平均96 mmHg (SD39) SaO2中央値 97% (IQR 94~ 98) FIO2: 100% PaO2平均227 mmHg (SD124) SaO2中央値 99% (IQR 97~ 100) 24 時間0.87 (0.70~ 1.07) Barrot2020 LOCO2 ARDS (MV) 201 100 88~ 92% SaO2平均89~94%程度>96% SaO2平均94~98%程度7 日or 抜管1.46 (1.01~ 2.11) Giradis2016 Oxygen—ICU ICU 患者478 67 94~ 98% PaO2中央値 87 mmHg (IQR 79~ 97) 97~ 100% PaO2中央値 102 mmHg (IQR 88~ 116) ICU 内0.71 (0.53~ 0.96) Mackle2020 ICU—ROX ICU 患者 (MV) 965 100 91~ 97% PaO2: 80~90 mmHg上限なしPaO2: 90~110 mmHg ICU 内(最大 28 日) 1.03 (0.87~ 1.23) Panwar2016 ICU 患者 (MV) 103 100 88~ 92% SpO2平均 ~93% >96% SpO2平均 ~97% >24 時間1.08 (0.67~ 1.76) Yang2019 ICU 患者214 84 90~ 95% PaO2中央値 84 mmHg (IQR 71~ 99) 96~ 100% PaO2中央値 98 mmHg (IQR 79~ 116) ICU 内(最大 14 日) 0.80 (0.52~ 1.22) Olav20212) HOT—ICU (参考) ICU 患者(O2≧10 L/min) 2,910 59 PaO2: 60 mmHg >50%で PaO2 <70 mmHg >50%でSpO2 <94% PaO2: 90 mmHg >90%で PaO2: 90—120 mmHg >50%でSpO2 >97% ICU 内(最大 90 日) 1.01 (0.93~ 1.10) MV:mechanical ventilation. 対象をARDS 患者に限定した研究はBarrot 2020 のみで,この研究では低SpO2管理によって有意に死亡率の増加を認めている. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回のSR 後の2021 年にNEJM から,PICO が合致するRCT が発表された(Olav 20212)). 2,910 人が組み入れられており,このRCT を含むことで推奨が変わる可能性を考慮し,感度分析としてこの研究を含んだメタ解析を施行した.長期死亡(6 RCT:n=5,225)に関する効果推定値は1,000 人あたり12 人減少(95% CI:60 人減少~40 人増加),腸管虚血(3 RCT:n=3,535)に
関する効果推定値は1,000 人あたり2 人増加(95% CI:12 人減少~37 人増加)であった.CI の幅の縮小は認められたが,効果の方向性には変化は認められず,この研究を含んでも推奨の変化は生じないと考えられた. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ARDS 患者に対する低SpO2を目標とする管理に関して,『ARDS 診療ガイドライン2016』,ATS/ ESICM/SCCM2017 の『ARDS ガイドライン』では記載は認められなかった.パルスオキシメータを使用しての管理は日常的に行われているため実施は十分可能と考えられる.実施にあたっては,末梢の低灌流,CO‒Hb 高値,高度の貧血,染料などSpO2測定の正確度,精度に影響を与え得るもの,および上記研究で除外されているような高酸素もしくは低酸素により明らかに病態が悪化し得るであろう状態,基礎疾患に関して十分留意するべきである. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては臨床上の問題として低SpO2および高SpO2の害に関しての更なる情報収集を行う必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 今回は主にICU における人工呼吸中の患者についての検討であった.引き続き,至適SpO2値に関する研究が必要であると考えられる.加えて,疾患によってSpO2の目標が異なるかどうかについての知見も求められるであろう.参考文献1) Zhao Xu, Xiao H, Dai F, et. al. Classification and effectiveness of different oxygenation goals in mechanically ventilated critically ill patients:network meta‒analysis of randomised controlled trials. Eur Respir J 2021;58:2002928. 2) Schjørring OL, Klitgaard TL, Perner A, et al. Lower or higher oxygenation targets for acute hypoxemic respiratory failure. N Engl J Med 2021;384:1301‒11.
背景,この問題の優先度 背 景 人工呼吸中の自発呼吸の温存は低い気道内圧による肺リクルートメントを促し無気肺の予防,酸素化の改善に寄与する.一方,ARDS 患者では呼吸努力が強くなり,過剰な自発呼吸努力により肺胞領域への過剰なストレスがさらなる肺障害を引き起こすp‒SILI(patient self‒ inflicted lung injury)が生じる可能性がある.中等症または重症成人ARDS患者に対する 筋弛緩薬の使用は,患者と人工呼吸器との同調性の改善,VILI(ventilator induced lung injury)の減少,肺胞領域への過剰なストレスの回避による圧損傷の減少や酸素化の改善が報告され,ARDS 患者の予後を改善することが示唆されている.しかし,不必要に筋弛緩薬が投与されることで早期離床の遅延,ICU‒AW, QOL の低下などの懸念がある.また,筋弛緩薬は深鎮静を必要とし,深鎮静自体が有害であ 1 1領域D 呼吸器周辺治療 中等症もしくは重症の成人ARDS患者の早期に筋弛緩薬を使用するべきか? CQ 31 中等症または重症の成人ARDS 患者において,早期に筋弛緩薬を投与するこ とを条件付きで推奨する(弱い推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). 中等症以上のARDS 患者で,発症早期に投与期間を48 時間以内に限定して使用するべきである.非脱分極性筋弛緩薬はアミノステロイド系(ロクロニウム,ベクロニウム,パンクロニウム)とベンジルイソキノリン系(アトラクリウム,シスアトラクリウム,ミバクリウム)に分類され,海外のRCT で主に使用された薬剤(シスアトラクリウム)は本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する.本邦でのシスアトラクリウムの代替薬としては,アミノステロイド系筋弛緩薬であるロクロニウム,ベクロニウムが挙げられる.アミノステロイド系では肝・腎障害で代謝が遷延することや,筋萎縮作用があることからICU 関連筋力低下のリスクが増す可能性が危惧されるため,使用上の注意が必要である.特に,ステロイドとの併用には留意するべきである. 推 奨 付帯事項
る可能性がある.中等症または重症のARDS患者において,筋弛緩薬を用いて自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理の利益と害について明らかにすることは重要な臨床課題であると考えられる.したがって,この問題の優先度はおそらく高い. この問題の優先度 上記の背景のごとく,中等症または重症のARDS 患者において,筋弛緩薬を用いて自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理の利益と害について明らかにすることは重要な臨床課題であると考えられる.したがって,この問題の優先度はおそらく高い. 解 説 PICO 患者(P):成人ARDS 患者(中等症または重 症).介入(I):筋弛緩薬使用あり(薬剤は問わな い).発症から48 時間以内に使用.対照(C):筋弛緩薬使用なし.アウトカム(O):生存(フォローアップ:最長 観察期間),QOL.人工呼吸器非使用日数(VFD:28 日),P/F 比(24 時間後),圧損傷,気胸,ICU 関連筋力低下. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したRCT が5 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.生存(5RCT:n=1,461)に関する効果推定値は,筋弛緩薬を使用しない場合と比較して筋弛緩薬の使用でリスク差84 人増加/1,000人(95%CI:39 人減少~236 人増加),QOL (EQ‒5D など)(1RCT:n=246)は,平均差 0.02 点減少(95%CI:0.09 点減少~0.05 点増 加),人工呼吸器非使用日数(28 日間) (5RCT:n=1,461)は,平均差0.72 日増加(95%CI:0.52 日短縮~1.95 日増加),圧損傷 (4RCT:n=1,437)は,リスク差31 人減少/ 1,000 人(95%CI:46 人減少~9 人減少)であった.重要アウトカムとして,気胸を検討した.気胸(3RCT:n=1,401)は,リスク差35人減少/1,000 人(95%CI:47 人減少~15 人減少)であった.以上から,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.害のアウトカムとして,ICU‒AW(4RCT:n=747)に関する効果推定値は,筋弛緩薬を使用しない場合と比較して筋弛緩薬の使用では,リスク差25 人増加/1,000人(95%CI:58人減少~125人増加)であった.予想される害は,「小さい」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果内での方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 本邦における代表的な非脱分極性筋弛緩薬はロクロニウムであり,持続投与した場合でも1日あたり数千円以内である.海外のRCT で主に使用された薬剤(シスアトラクリウム)が本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「中等症または重症の成人ARDS患者において,早期に筋弛緩薬を投与することを条件付きで推奨する」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.292,であった.パネル会議では,ARDS 患 2 2 1 2 3 4 5
者における筋弛緩薬使用中の筋弛緩モニタリングの有用性に関する議論があったが,特に推奨文案に関する異議はなかった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 サブグループとして,ベルリン定義におけるARDS の酸素化障害の重症度(軽症・中等症・重症)およびコントロール群における鎮静レベル(light sedation vs. deep sedation)の検討が必要である.ACURASYS Trial1)とROSE Trial2)の両者の試験結果の相違は,コントロール群における鎮静レベルの相違が結果に影響した可能性が考察されている3). 実施上の考慮事項 今回,SR で検討した大部分の研究で,組み入れ基準として,PF 比<150 mmHg を基準としており,AECC 基準,ベルリン定義におけるARDS の酸素化障害の基準とは異なることに注意が必要である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 関連する診療ガイドラインとして,Surviving Sepsis Campaign 2016 のガイドライン4)では,「敗血症でARDSを発症し,PaO2/FIO2比が150 mmHg 未満の成人患者には,筋弛緩薬を48 時間以下で使用することを推奨する(弱い推奨/中等度の確実性のエビデンス)」と推奨されている.2020 年の欧州集中治療医学会からのARDS 患者に対する筋弛緩薬使用のためのRapid Practice Guideline5)では鎮静レベルでのサブグループ解析間に相違が生じており,この結果を踏まえて,「中等症または重症のARDS を有する成人で,肺保護換気促進のために深い鎮静と筋弛緩薬投与を必要とする場合には,筋弛緩薬を48 時間まで使用することを提 案する(弱い推奨/低のエビデンスの確信性)」と推奨されている. 治療のモニタリングと評価 筋弛緩薬を投与する場合,呼吸・循環をモニタリングしながら,Bispectral index(BIS)などの鎮静モニターを指標に患者に十分な鎮静を与え,筋弛緩の程度をモニタリングする必要がある.筋弛緩の程度の測定として,筋弛緩モニター〔四連反応比刺激:Train of four(TOF) stimulation〕が使用できる5). 今後の研究の可能性 筋弛緩薬投与が及ぼす身体機能および認知機能における長期的な転機への影響,他の筋弛緩薬の効果,各投与方法(部分的筋弛緩6,7),間欠的投与,持続的投与)における有効性と安全性の検証が必要である. 文献検索式と文献選択 「respiratory distress syndrome」「neuromuscular blockade」「neuromuscular blocking agents」をキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月3 日までの文献を検索したところ1,885 件の研究が同定され,スクリーニングの結果5件1,2,8‒10)のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Papazian 20101), Moss 20192), Gainnier 20048), Forel 20069), Guervilly 201710). 資料一覧 ・資料CQ31‒1 Search strategy.・資料CQ31‒2 フローダイアグラム.・資料CQ31‒3 Risk of bias.・資料CQ31‒4 Forest plot. 3 4 5 6 7 8 9 10
・資料CQ31‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ31‒6 Evidence‒to‒Decision. 1) Papazian L, Forel JM, Gacouin A, et al. Neuromuscular blockers in early acute respi- ratory distress syndrome. N Engl J Med 2010;363:1107‒16. 2) National heart, lung, and blood institute PETAL clinical trials network, Moss M, Huang DT, Brower RG, et al. Early neuromuscular blockade in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2019;380:1997‒2008. 3) Slutsky AS, Villar J. Early paralytic agents for ARDS? Yes, no, and sometimes. N Engl J Med 2019;380:2061‒3. 4) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43:304‒77. 5) Alhazzani W, Belley‒Cote E, Møller MH, et al. Neuromuscular blockade in patients with ARDS:a rapid practice guideline. Intensive Care Med 2020;46:1977‒86. 6) Hraiech S, Yoshida T, Annane D, et al. Myorelaxants in ARDS patients. Intensive Care Med 2020;46:2357‒72. 7) Doorduin J, Nollet JL, Roesthuis LH, et al. Partial neuromuscular blockade during partial ventilatory support in sedated patients with high tidal volumes. Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1033‒42. 8) Gainnier M, Roch A, Forel JM, et al. Effect of neuromuscular blocking agents on gas exchange in patients presenting with acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 2004;32:113‒9. 9) Forel JM, Roch A, Marin V, et al. Neuromuscular blocking agents decrease inflamma- tory response in patients presenting with acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 2006;34:2749‒57. 10) Guervilly C, Bisbal M, Forel JM, et al. Effects of neuromuscular blockers on transpul- monary pressures in moderate to severe acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 2017;43:408‒18. 参考文献
資料CQ31—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/23) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR Respiratory Insufficiency[mh] OR Severe Acute Respiratory Syndrome[mh] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR respiratory failure[tiab] OR ARDS[tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] #2 neuromuscular blockade[mh] OR neuromuscular blocking agents[mh] OR muscle relaxants, central[mh] OR neuromuscular blocker[tiab] OR neuromuscular blockade[tiab] OR neuromuscular blocking drug*[tiab] OR neuromuscular blocking agent*[tiab] OR muscle relaxant[tiab] OR paralytics[tiab] OR respiratory paralysis[tiab] #3 vecuronium OR pancuronium OR rocuronium OR atracurium OR cisatracurium OR succinylcholine OR curare OR rapacuronium OR mivacurium OR mivacron OR tracrium OR doxacurium OR nuromax OR bex OR norcuron OR zemuron OR pavulon OR tubocurarine OR gallamine OR flaxedil OR pipecuronium OR alcuronium OR toxiferine OR suxamethonium OR raplon #4 #2 OR #3 #5 #6 #1 AND #4 animals[mh] NOT humans[mh] #7 #5 AND #6 CENTRAL(Search date:2020/6/23) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR Respiratory Insufficiency[mh] OR Severe Acute Respiratory Syndrome[mh] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR respiratory failure[tiab] OR ARDS[tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] #2 neuromuscular blockade[mh] OR neuromuscular blocking agents[mh] OR muscle relaxants, central[mh] OR neuromuscular blocker[tiab] OR neuromuscular blockade[tiab] OR neuromuscular blocking drug*[tiab] OR neuromuscular blocking agent*[tiab] OR muscle relaxant[tiab] OR paralytics[tiab] OR respiratory paralysis[tiab] #3 vecuronium OR pancuronium OR rocuronium OR atracurium OR cisatracurium OR succinylcholine OR curare OR rapacuronium OR mivacurium OR mivacron OR tracrium OR doxacurium OR nuromax OR bex OR norcuron OR zemuron OR pavulon OR tubocurarine OR gallamine OR flaxedil OR pipecuronium OR alcuronium OR toxiferine OR suxamethonium OR raplon #4 #2 OR #3 #5 #1 AND #4 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/23) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6神経筋遮断/TH OR 神経筋遮断剤/TH OR 中枢性筋弛緩剤/TH OR 神経筋遮断/TA OR 弛緩/TA
#7 ("Vecuronium Bromide"/TH OR vecuronium/AL) OR (Pancuronium/TH OR pancuronium/AL) OR ("Rocuronium Bromide"/TH OR rocuronium/AL) OR ("Atracurium Besilate"/TH OR atracurium/AL) OR ("Cisatracurium Besilate"/TH OR cisatracurium/AL) OR (Succinylcholine/TH OR succinylcholine/AL) OR (Curare/TH OR curare/AL) OR ("Rapacuronium Bromide"/TH OR rapacuronium/AL) OR ("Mivacurium Chloride"/TH OR mivacurium/AL) OR ("Mivacurium Chloride"/TH OR mivacron/AL) OR ("Atracurium Besilate"/TH OR tracrium/AL) OR ("Doxacurium Chloride"/TH OR doxacurium/AL) OR ("Doxacurium Chloride"/TH OR nuromax/AL) OR bex/AL OR ("Vecuronium Bromide"/TH OR norcuron/AL) OR ("Rocuronium Bromide"/TH OR zemuron/AL) OR (Pancuronium/TH OR pavulon/AL) OR (Tubocurarine/TH OR tubocurarine/AL) OR ("Gallamine Triethiodide"/TH OR gallamine/AL) OR ("Gallamine Triethiodide"/TH OR flaxedil/AL) OR (Pipecuronium/TH OR pipecuronium/AL) OR (Alcuronium/TH OR alcuronium/AL) OR (Toxiferine/TH OR toxiferine/AL) OR (Succinylcholine/TH OR suxamethonium/AL) OR ("Rapacuronium Bromide"/TH OR raplon/AL) #8 #6 OR #7 #9 #5 AND #8 #10 (#9) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ31—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌1,337件171件377件 n=1,885他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=1,885 重複した研究 n=5 重複研究を除外した研究 n=1,880 除外基準に該当した研究 n=1,799 フルテキストで適格性を評価した研究 n=81 系統的レビューに組み入れた研究 n=5除外基準に該当した研究 n=76理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる3件59件13件1件 メタ解析に組み入れた研究 n=5
資料CQ31—3 Risk of bias 生 存QOL 人工呼吸器非使用日数P/F 比
圧損傷 ICU関連筋力低下気 胸
資料CQ31—4 Forest plot QOL 圧損傷 生 存 人工呼吸器非使用日数 P/F 比
気 胸 ICU関連筋力低下
資料CQ31—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討筋弛緩 あり筋弛緩 なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 生存(フォローアップ:最長観察期間) 5 ランダム 化試験深刻で ないa深刻b 深刻で ない深刻cなし445/737 (60.4%) 406/724 (56.1%) RR 1.15 (0.93~1.42) 1,000 人あたり84 人増加(39 人減少~ 236 人増加) ++○○ 低重大 QOL 1 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻で ない深刻eなし127 119 —平均0.02 点低い(0.09 点低い~ 0.05 点高い) ++○○ 低重大 人工呼吸器非使用日数(28 日) 5 ランダム 化試験深刻f 深刻で ない深刻で ない深刻gなし737 724 —平均0.72 日延長(0.52 日短縮~ 1.95 日延長) ++○○ 低重要 P/F 比(24 時間後) 3 ランダム 化試験深刻h 深刻で ない深刻で ない深刻gなし636 595 —平均5.68 mmHg 高い(3.56 mmHg 低い~ 14.91 mmHg 高い) ++○○ 低重要 圧損傷 4 ランダム 化試験深刻i深刻で ない深刻で ない深刻jなし29/724 (4.0%) 51/713 (7.2%) RR 0.56 (0.36~0.87) 1,000 人あたり31 人減少(46 人減少~ 9 人減少) ++○○ 低重要 気 胸 3 ランダム 化試験深刻k 深刻で ない深刻で ない深刻jなし21/706 (3.0%) 45/695 (6.5%) RR 0.46 (0.28~0.77) 1,000 人あたり35 人減少(47 人減少~ 15 人減少) ++○○ 低重要 ICU 関連筋力低下 4 ランダム 化試験深刻i深刻b 深刻で ない深刻cなし180/384 (46.9%) 151/363 (41.6%) RR 1.06 (0.86~1.30) 1,000 人あたり25 人増加(58 人減少~ 125 人増加) +○○○非常に低重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.4 つの試験で盲検化が不十分なため結果に影響が及ぶ可能性があるが,グレードを下げるほどではないと判断した. b.CI の重なりが少なく,異質性が高いため,1 ランクダウンとした. c.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため,1 ランクダウンとした. d.盲検化されておらず,アウトカムが主観的であるため,1 ランクダウンとした. e.95% CI が臨床判断の閾値をまたいでおり,アウトカムの報告割合も低く,OIS を満たさないため,1 ランクダウンとした. f.4 つの試験で盲検化が不十分なため結果に影響が及ぶ可能性があり,医療者の診断によるアウトカムのため,1 ランクダウンとした. g.95% CI が臨床判断の閾値をまたいでいるため,1 ランクダウンとした.
h.2 つの試験で盲検化が不十分なため結果に影響が及ぶ可能性があり,1 つの試験でアウトカム報告割合が低いがグレードを下げるほどではないと判断した. i.3 つの試験で盲検化が不十分なため結果に影響が及ぶ可能性があり,医療者の診断によるアウトカムのため,1 ランクダウンとした. j.OIS を満たさないため,1 ランクダウンとした. k.2 つの試験で盲検化が不十分なため結果に影響が及ぶ可能性があり,医療者の診断によるアウトカムのため,1 ラ ンクダウンとした.
資料CQ31—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ31:中等症もしくは重症の成人ARDS患者の早期に筋弛緩薬を使用するべ きか? 集 団:中等症もしくは重症(PaO2/FIO2比≦200 mmHg)の成人ARDS 患者介 入:筋弛緩薬使用あり(薬剤は問わない).発症から48 時間以内に使用比較対照:筋弛緩薬使用なし主要なアウトカム:生存(最長観察期間),QOL(EQ—5D など),人工呼吸器非使用日数(VFD:28 日), 圧損傷,ICU—AW セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:人工呼吸中の自発呼吸の温存は低い気道内圧による肺リクルートメントを促し無気 肺の予防,酸素化の改善に寄与する.一方,ARDS 患者では呼吸努力が強くなり,過剰な自発呼吸努力により肺胞領域への過剰なストレスが更なる肺障害を引き起こすp—SILI が生じる可能性がある.中等症または重症成人ARDS 患者に対する筋弛緩薬の使用は,患者と人工呼吸器との同調性の改善,ventilator induced lung injury (VILI)の減少,肺胞領域への過剰なストレスを避け,圧損傷の減少や酸素化の改善が報告され,ARDS 患者の予後を改善することが示唆されている.しかし,不必要に筋弛緩薬が投与されることで早期離床の遅延,ICU—AW,QOL の低下などの懸念がある.患者と人工呼吸器の不同調,呼吸作業,肺胞液の蓄積を減少させ,ARDS患者はこれらの成果から恩恵を受けることができる.しかし,神経筋遮断薬の長期投与は,その後の神経筋の衰弱につながる.自発呼吸を減少・消失させた治療を行うことによる合併症も多く報告されている.また,筋弛緩薬は深鎮静を必要とし,深鎮静自体が有害である可能性がある.中等症または重症のARDS 患者において,筋弛緩薬を用いて自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理の利益と害について明らかにすることは重要な臨床課題であると考えられる.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない人工呼吸中の自発呼吸の温存は低い気道内圧による肺リクルートメント を促し無気肺の予防,酸素化の改善に寄与する.一方,ARDS 患者では呼吸努力が強くなり,過剰な自発呼吸努力により肺胞領域への過剰なストレスが更なる肺障害を引き起こすp—SILI が生じる可能性がある1).中等症または重症成人ARDS 患者に対する筋弛緩薬の使用は,患者と人工呼吸器との同調性の改善,VILI の減少,酸素化の改善が報告され2),
ARDS 患者の予後を改善することが示唆されている3).しかし,不必要に筋弛緩薬が投与されることで早期離床の遅延,ICU—AW,QOL の低下などの懸念がある.また,筋弛緩薬は深鎮静を必要とし,深鎮静自体が有害である可能性がある.中等症または重症のARDS 患者において,筋弛緩薬を用いて,自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理の利益と害について明らかにすることは重要な臨床課題であると考えられる.したがって,この問題の優先度はおそらく高い. 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が5 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,生存(5 RCT:n= 1,461)に関する効果推定値は,筋弛緩薬を使用しない場合と比較して筋弛緩薬の使用で1,000 人あたり84 人増加(95% CI:39 人減少~236人増加),QOL(EQ—5D など)(1 RCT:n=246)は,平均差0.02 点減少(95% CI:0.09 点減少~0.05 点増加),VFD(5 RCT:n=1,461)で,平均差0.72 日延長(95% CI:0.52 日短縮~1.95 日延長),圧損傷(4 RCT:n=1,437)は,1,000 人あたり31 人減少(95% CI:46 人減少~9 人減少)であった.以上より,予想される効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,ICU—AW(4 RCT:n=747)に関する効果推定 値は,筋弛緩薬を使用しない場合と比較して筋弛緩薬の使用では,1,000人あたり25 人増加(95% CI:58 人減少~125 人増加)であった.以上より,予想される害は,「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 生存(最長観察期間)重大++○○ 低
QOL(EQ—5D など)重大++○○ 低 VFD (フォローアップ:28 日)重大++○○ 低 圧損傷重大++○○ 低 ICU—AW重大+○○○ 非常に低 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果内での方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないたぶん重要な不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム筋弛緩薬使用なし (対照)筋弛緩薬 使用(介入)絶対差 (95% CI)相対効果(RR) (95% CI) 生存(最長観察 期間) 406/724 (56.1%) 445/737 (60.4%) 84 人増加/1,000 人 (39 人減少~ 236 人増加) 1.15 (0.93~1.42)
QOL (EQ—5D など) — —平均差0.02 点低い (0.09 点低い~ 0.05 点高い) VFD (28 日) — —平均差0.72 日延長 (0.52 日短縮~ 1.95 日延長) 圧損傷51/713 (7.2%) 29/724 (4.0%) 0.56 (0.36~0.87) ICU—AW 151/363 (41.6%) 180/384 (46.9%) 1.06 (0.86~1.30) 以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されてお り,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されてお り,実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 中等症または重症の成人ARDS 患者において,早期に筋弛緩薬を投与することを条件付きで推奨する(弱い推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 中等症以上のARDS 患者で,発症早期に投与期間を48 時間以内に限定して使用するべきである.非脱分極性筋弛緩薬はアミノステロイド系(ロクロニウム,ベクロニウム,パンクロニウム)とベンジルイソキノリン系(アトラクリウム,シスアトラクリウム,ミバクリウ
ム)に分類され,海外のRCT で主に使用された薬剤(シスアトラクリウム)は本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する.本邦でのシスアトラクリウムの代替薬としては,アミノステロイド系筋弛緩薬であるロクロニウム,ベクロニウムが挙げられる.アミノステロイド系では肝・腎障害で代謝が遷延することや,筋萎縮作用があることからICU関連筋力低下のリスクが増す可能性が危惧されるため,使用上の注意が必要である.特に,ステロイドとの併用には留意するべきである. 理 由 Justification 疑 問 中等症または重症の成人ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するべきか?患 者 成人ARDS 患者(中等症または重症).介 入 筋弛緩薬使用あり(薬剤は問わない).発症から48 時間以内に使用.対 照 筋弛緩薬使用なし.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が5 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.生存(5 RCT:n=1,461)に関する効果推定値は,筋弛緩薬を使用しない場合と比較して筋弛緩薬の使用で1,000 人あたり84 人増加(95% CI:39 人減少~236 人増加),QOL(EQ‒5D など)(1 RCT:n=246)は,平均差0.02 点減少(95% CI:0.09 点減少~0.05 点増加),人工呼吸器非使用日数(28 日間)(5 RCT:n=1,461)は,平均差0.72 日増加(95% CI:0.52 日短縮~1.95 日増加),圧損傷(4 RCT:n=1,437)は,1,000 人あたり31 人減少(95% CI:46 人減少~9 人減少)であった.重要アウトカムとして,気胸を検討した.気胸(3 RCT:n=1,401)は,1,000 人あたり35 人減少(95% CI:47 人減少~15 人減少)であった.以上から,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.害のアウトカムとして,ICU‒AW(4 RCT:n=747)に関する効果推定値は,筋弛緩薬を使用しない場合と比較して筋弛緩薬の使用では,1,000 人あたり25 人増加(95% CI:58 人減少~125 人増加)であった.予想される害は,「小さい」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果内での方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定本邦における代表的な非脱分極性筋弛緩薬はロクロニウムであり持続投与した場合でも1 日あたり数千円以内である.筋弛緩薬は入手・使用は容易な薬剤であり,追加の機材の購入や人材確保は必要ないため,コストも最小限であると思われる.海外のRCT で主に使用された薬剤(シスアトラクリウム)が本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する.資源利用に関して,筋弛緩薬投与を行う場合,コストは許容範囲であり,重要度が高く害も最小限であるため利益のほうが勝ると考えられる.医療資源の公平性に関して,検討に使用されたエビデンスはないが,医療資源の分配に懸念はなく,通常診療の範囲内の医療行為である.実行可能性に関しても,検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されており,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる.
パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「中等症または重症の成人ARDS 患者において,早期に筋弛緩薬を投与することを条件付きで推奨する」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では,ARDS 患者における筋弛緩薬使用中の筋弛緩モニタリングの有用性に関する議論があったが,特に推奨文案に関する異議はなかった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.付加的な考慮事項ランドマークトライアルであるPapazian 2010(ACURASYS Trial)3)とThe National Heart, Lung and Blood Institute PETAL Clinical Trials Network 2019(ROSE Trial)4)では,PaO2/FIO2 (P/F 比)150 以下のARDS 患者を対象に,筋弛緩薬(シスアトラクリウム)持続投与を48 時間に限定して使用している.よって,投与期間は48 時間以内に限定して使用するべき,とした. サブグループの検討事項 Subgroup considerations サブグループとして,ベルリン定義におけるARDS の酸素化障害の重症度(軽度・中等症・重症)およびコントロール群における鎮静レベル(light sedation vs. deep sedation)の検討が必要である.ACURASYS Trial3)とROSE Trial4)の両者の試験結果の相違は,コントロール群における鎮静レベルの相違が結果に影響した可能性が考察されている5). 実施上の考慮事項 Implementation considerations 今回,SR で検討した大部分の研究で,組み入れ基準として,PF 比<150 mmHg を基準としており,AECC 基準,ベルリン定義におけるARDS の酸素化障害の基準とは異なることに注意が必要である.非脱分極性筋弛緩薬はアミノステロイド系(ロクロニウム,ベクロニウム,パンクロニウム)とベンジルイソキノリン系(アトラクリウム,シスアトラクリウム,ミバクリウム)に分類される.海外のRCT で主に使用された薬剤(シスアトラクリウム)は本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する.本邦でのシスアトラクリウムの代替薬としては,アミノステロイド系筋弛緩薬であるロクロニウム,ベクロニウムが挙げられる.アミノステロイド系では肝・腎障害で代謝が遷延することや,筋萎縮作用があるため使用上の注意が必要である. 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨6)では,「成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,限定的に筋弛緩薬の使用を提案する(GRADE 2B,弱い推奨/中等度の確実性のエビデンス)」であった.その後,2019 年に発表されたROSE trial4)は,これまでで最大規模となる1,006 人の中等症または重症ARDS 患者(ベルリン定義)が登録され,筋弛緩薬(シスアトラクリウム)の持続投与の有効性が検討された.結果は,死亡率やその他の患者にとって重要な転帰を改善しなかった.本検討では,ROSE 試験の結果を踏まえ2016 年の診療ガイドラインがupdate されている.関連する診療ガイドラインとして,『Surviving Sepsis Campaign 2016』のガイドライン7)では,「敗血症でARDS を発症し,PaO2/FIO2比が150 mmHg 未満の成人患者には,筋弛緩薬を48 時間以下で使用することを推奨する(弱い推奨/中等度の確実性のエビデンス)」と推奨されている. 2020 年の欧州集中治療医学会からのARDS 患者に対する筋弛緩薬使用のための『Rapid Practice Guideline』8)では鎮静レベルでのサブグループ解析間に相違が生じており,この結果を踏まえて,「中等症または重症のARDS を有する成人で,肺保護換気促進のために深い鎮静と筋弛緩薬投与を
必要とする場合には,筋弛緩薬を48 時間まで使用することを提案する(弱い推奨/低のエビデンスの確実性)」と推奨されている. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 高リスク成人ARDS 患者において筋弛緩薬を投与する場合,呼吸・循環をモニタリングしながら,Bispectral index(BIS)などの鎮静モニターを指標に患者に十分な鎮静を与え(鎮静モニター),筋弛緩の程度をモニタリングする必要がある.筋弛緩の程度の測定として,筋弛緩モニター〔四連反応比刺激:Train of four(TOF)stimulation〕が使用できる8).海外の2 つの大規模RCT3,4)では,筋弛緩モニターを使用せず投与量が固定されて筋弛緩薬(シスアトラクリウム)が持続投与されている点に注意が必要である.筋弛緩薬投与にあたっては患者家族への十分な説明・同意が必要である.推奨の実施にあたって臨床上の問題として筋弛緩薬の有害事象について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないか本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングが必要である. 研究の可能性 Research priorities 筋弛緩薬投与が及ぼす身体機能および認知機能における長期的な転機への影響,他の筋弛緩薬の効果,各投与方法(部分的筋弛緩9,10),間欠的投与,持続的投与)における有効性と安全性の検証が必要である.参考文献1) Brochard L, Slutsky A, Pesenti A. Mechanical ventilation to minimize progression of lung injury in acute respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med 2017;195:438‒42. 2) Slutsky AS. Neuromuscular blocking agents in ARDS. N Engl J Med 2010;363:1176‒80. 3) Papazian L, Forel J‒M, Gacouin A, et al. Neuromuscular blockers in early acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2010;363:1107‒16. 4) National Heart, Lung and BIPCTN;Moss M, Huang DT, Brower RG, et al. Early neuromuscular blockade in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2019;380: 1997‒2008. 5) Slutsky AS, Villar J. Early paralytic agents for ARDS? Yes, no, and sometimes. N Engl J Med 2019;380:2061‒3. 6) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the management of ARDS in Japan. J intensive care 2017;5:50. 7) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:International guidelines for management of sepsis and septic shock:2016. Intensive Care Med 2017;43: 304‒77. 8) Alhazzani W, Belley‒Cote E, Møller MH, et al. Neuromuscular blockade in patients with ARDS:a rapid practice guideline. Intensive Care Med 2020;46:1977‒86. 9) Hraiech S, Yoshida T, Annane D, et al. Myorelaxants in ARDS patients. Intensive Care Med 2020;46:2357‒72. 10) Doorduin J, Nollet JL, Roesthuis LH, et al. Partial neuromuscular blockade during partial ventilatory support in sedated patients with high tidal volumes. Am J Respir Crit Care Med 2017;195:1033‒42.
背景,この問題の優先度 背景ARDS 患者では過剰なPEEP はVILI を増強し,循環動態にも悪影響を与える.PEEP が不足すると虚脱肺を増やし,こちらもVILI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.一方で,適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はない.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である. この問題の優先度 ARDS 患者では過剰なPEEP はVILI を増強し,循環動態にも悪影響を与える.低過ぎるPEEP も虚脱肺を増やし,VILI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.一方で,適切 なPEEP 決定に対して定まった手法はない. PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要な臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い. 解 説 PICO 患者(P):18 歳以上の人工呼吸器を要する低 酸素性呼吸不全患者.介入(I):経肺圧を用いたPEEP 決定方法.対照(C):ARDSnet の表に沿ったPEEP 決定, 医師によって決定されたPEEP.アウトカム(O):28 日死亡,長期死亡. 1 1 2 2 1 領域D 呼吸器周辺治療 ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧を使用するべきか? CQ 32 ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧をルーティンに用いないことを条件付きで 推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). SR の結果では有意差を認めなかったが,28 日死亡および,長期死亡を減少させる方向性が認められた.しかし,その測定のための食道内圧バルーンキットは,現状,本邦においては特定の人工呼吸器を導入していない施設では入手できないため,ルーティンでの測定を推奨するのは難しいことを理由に,パネル会議内で意見が一致せず,上記のとおりの推奨となった.なお,食道内圧バルーンキットを使用できる状況下では,その使用を妨げるものではない. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 SRの結果,ARDS患者において経肺圧によるPEEP 設定と,従来のARDSnet の表に沿ったPEEP 決定法を比較検討したRCT が2 件施行されており(EPVent 11)およびEPVent 22)),これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,短期死亡(2RCT:n=261)に関する効果推定値は,“対照”と比較して“介入”でリスク差85 人減少/1,000 人(95%CI:225人減少~247 人増加),長期死亡(2RCT:n= 259)に関する効果推定値は72 人減少/1,000人(95%CI:207 人減少~148 人増加)であった.以上より,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.害については1 つのRCT (EPVent 2 研究)のみでしか検討されておらず,メタ解析での検討は行わなかった.EPVent 2 研究において,“対照”と比較して“介入”で気胸および圧外傷の頻度は増えなかった〔気胸2/98 vs. 3/102 絶対差0.9%(-3.4%~ 5.2%),圧外傷5/98 vs. 6/102 絶対差0.8% (-5.5%~7.1%)〕,介入群において食道内圧バルーン留置に伴う合併症はなかったと報告されている.よって,介入による望ましくない効果は「小さい」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「わからない」と判断した. エビデンスの確実性 アウトカムにおける方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 経肺圧を測定するためには,食道内圧バルーンキットが必要であり,現状本邦においては特定の人工呼吸器を導入していない施設では入手することができず,コストへの懸念があり,施 設によってはその施行が困難である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧をルーチンに使用しないことを提案する」が,中央値8.0点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では,SR の結果が有益な方向であったため,経肺圧を使用することを推奨するか非推奨とするかについての議論があった.その結果,パネル会議で再投票を行い,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2920 の結果となり,最終的に事前投票の結果と同様に非推奨のままにすることで合意に至った. サブグループの検討事項 経肺圧は,人工呼吸器で測定される気道内圧と胸腔内圧(食道内圧バルーンキットで測定される食道内圧から近似される)の差で計算される.通常,気道内圧の上限を超えないよう(吸気終末プラトー圧30 cmH2O 以下)PEEP 設定が行われるが,気道内圧の上限に達しても胸腔内圧が高い患者(高度肥満,腹部コンパートメント症候群など)においては吸気時経肺圧がそれほど高くないことが予想される.経肺圧モニタリングを用いることで,胸腔内圧が高い患者において気道内圧に制限されることなく,より高いPEEP を設定することが可能となる.今回サブグループ解析は施行できなかったが,今後検討される. 実施上の考慮事項 正確に経肺圧を測定するためには,食道内圧バルーンキットを正しく使用する必要がある.特に,食道内圧バルーンの位置,およびバルーンに注入する空気量によって食道内圧の測定値が異なってくる可能性があるため,正しく使用 3 4 5 3 4
するための知識および技術を要する.また,胸腔内圧は胸腔内において一様ではないため,測定する食道内圧で近似される胸腔内圧が胸腔内のどの部位の圧を反映しているかどうかを考慮する必要がある.Yoshida ら3)の報告では,食道内圧により計算された経肺圧は,胸腔の中心からやや背側寄りの経肺圧を反映しているとされている. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧を使用するべきか否かに関する他の診療ガイドラインの記載は存在しない. 治療のモニタリングと評価 特別な医療資器材を要するために,施行できる施設が限定される.コストと施設によっては,その施行が現実的に困難な場合があることを考慮する必要があり,有害事象や費用対効果について更に情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 前述のように,胸腔内圧が高い患者群を対象として経肺圧モニタリングの有用性を検討する研究が期待される.また,PEEP 設定のみならず,食道内圧および経肺圧モニタリングにより 自発呼吸下における吸気努力の強さを観察することができる.こちらのモニタリングの有用性についても今後の研究が期待される. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome」「Acute Lung Injury」「trans pulmonary pressure」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CEN- TRAL および医中誌で2020 年6 月17 日までの文献を検索したところ1,293 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当するRCT はなかった. 本CQ で対象とした研究 Talmor 20081), Beitler 20192), Baedorf Kassis 20164), Bergez 20195), Fumagalli 20196), Yang 20137), Chiumello 20148), Mezidi 20189), Scaramuzzo 202010), Wang 201911). 資料一覧 ・資料CQ32‒1 Search strategy.・資料CQ32‒2 フローダイアグラム.・資料CQ32‒3 Risk of bias.・資料CQ32‒4 Forest plot.・資料CQ32‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ32‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Talmor D, Sarge T, Malhotra A, et al. Mechanical ventilation guided by esophageal pressure in acute lung injury. N Engl J Med 2008;359:2095‒104. 2) Beitler JR, Sarge T, Banner‒Goodspeed VM, et al. Effect of titrating positive end‒expi- ratory pressure(PEEP)with an esophageal pressure‒guided strategy vs an empirical high PEEP‒FiO2 strategy on death and days free from mechanical ventilation among patients with acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. JAMA 2019;321:846‒57. 3) Yoshida T, Amato MBP, Grieco DL, et al. Esophageal manometry and regional 参考文献
transpulmonary pressure in lung injury. Am J Respir Crit Care Med 2018;197: 1018‒26. 4) Baedorf Kassis E, Loring SH, Talmor D. Mortality and pulmonary mechanics in rela- tion to respiratory system and transpulmonary driving pressures in ARDS. Intensive Care Med 2016;42:1206‒13. 5) Bergez M, Fritsch N, Tran‒Van D, et al. PEEP titration in moderate to severe ARDS: plateau versus transpulmonary pressure. Ann Intensive Care 2019;9:81. 6) Fumagalli J, Santiago RRS, Teggia Droghi M, et al. Lung recruitment in obese patients with acute respiratory distress syndrome. Anesthesiology 2019;130:791‒803. 7) Yang Y, Li Y, Liu SQ, et al. Positive end expiratory pressure titrated by transpulmonary pressure improved oxygenation and respiratory mechanics in acute respiratory distress syndrome patients with intra‒abdominal hypertension. Chin Med J(Engl) 2013;126:3234‒9. 8) Chiumello D, Cressoni M, Carlesso E, et al. Bedside selection of positive end‒expira- tory pressure in mild, moderate, and severe acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 2014;42:252‒64. 9) Mezidi M, Parrilla FJ, Yonis H, et al. Effects of positive end‒expiratory pressure strat- egy in supine and prone position on lung and chest wall mechanics in acute respiratory distress syndrome. Ann Intensive Care 2018;8:86. 10) Scaramuzzo G, Spadaro S, Dalla Corte F, et al. Personalized positive end‒expiratory pressure in acute respiratory distress syndrome:comparison between optimal distribution of regional ventilation and positive transpulmonary pressure. Crit Care Med 2020;48:1148‒56. 11) Wang B, Wu B, Ran YN. A clinical study on mechanical ventilation PEEP setting for traumatic ARDS patients guided by esophageal pressure. Technol Health Care 2019;27:37‒47.
資料CQ32—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/4) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute lung injur* [tiab] OR acute respiratory distress [tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #5 (Severe[tiab] OR critical*[tiab]) AND (respiratory[tiab] OR hypox* [tiab]) #6 “shock lung” [tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 “omega 3 fatty acids” [tiab] #9 “n 3 fatty acids” [tiab] #10 "fatty acids, unsaturated"[mesh] #11 "unsaturated fatty acids"[tiab] #12 “linolenic acid” [tiab] #13 “Fish Oils” [mesh] #14 “fish oil” [tiab] #15 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 Controlled clinical trial[Publication Type] #18 randomized[Title/Abstract] #19 placebo[Title/Abstract] #20 randomly [tiab] #21 trial[tiab] #22 groups [tiab] #23 "systematic review"[Publication Type] #24 "meta-analysis"[Publication Type] #25 "review"[Publication Type] #26 #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 #27 #16 AND #26 #28 animals [mh] NOT humans [mh] #29 #27 NOT #28
CENTRAL(Search date:2020/6/4) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] #2 [mh "Acute lung injury"] #3 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #4 (Acute NEXT lung NEXT injur*:ti,ab) OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #5 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab) #6 "shock lung":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 "omega 3 fatty acids":ti,ab #9 "n 3 fatty acids":ti,ab
#10 [mh "fatty acids, unsaturated"] #11 "unsaturated fatty acids":ti,ab #12 "linolenic acid":ti,ab #13 [mh "Fish Oils"] #14 “fish oil”:ti,ab #15 {OR #8-#14} #16 #7 AND #15 #17 [mh animals] NOT [mh humans] #18 #16 NOT #17
資料CQ32—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,293他のリソースから同定された研究 n=0 774件431件88件 検索で同定された研究 n=1,293 重複した研究 n=106 重複研究を除外した研究 n=1,185 除外基準に該当した研究 n=1,155 フルテキストで適格性を評価した研究 n=30 系統的レビューに組み入れた研究 n=10除外基準に該当した研究 n=20理由:・ 日本語・英語以外・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 学会抄録・ 未出版・ 総説4件2件7件5件1件1件 メタ解析に組み入れた研究 n=10
資料CQ32—3 Risk of bias 短期死亡長期死亡 人工呼吸器非使用日数PaO2/FIO2比
肺コンプライアンス
資料CQ32—4 Forest plot 短期死亡 長期死亡 肺コンプライアンス 人工呼吸器非使用日数 PaO2/FIO2比
資料CQ32—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討PES placebo相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)短期死亡 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻a 深刻で ない深刻bなし38/132 (28.8%) 42/129 (32.6%) RR 0.74 (0.31~ 1.76) 1,000 人あたり85 人減少(225 人減少~ 247 人増加) ++○○ 低重大 長期死亡 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻bなし52/130 (40.0%) 58/129 (45.0%) RR 0.84 (0.54~ 1.33) 1,000 人あたり72 人減少(207 人減少~ 148 人増加) +++○ 中重大 VFD* 2 ランダム 化試験深刻c 深刻で ない深刻で ない深刻bなし132 129 —平均1.08 日延長(0.59 日短縮~ 2.76 日延長) ++○○ 低重要 PaO2/FIO2比 4 ランダム 化試験深刻d深刻e深刻f深刻g強い関連性75 74 —平均39.98 高い (7.26 高い~ 72.69 高い) +○○○非常に低重要 肺コンプライアンス 3 ランダム 化試験深刻d深刻e深刻f深刻g強い関連性60 59 —平均7.48 大きい(1.82 小さい~ 16.78 大きい) +○○○非常に低重要 ICU 期間— — — — — — — — —推定不可能— —重要入院日数— — — — — — — — —推定不可能— —重要*28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比. ICU 期間,入院日数はアウトカム報告がなかった.説 明a.I2 値≒71%と異質性が大きく1 段階グレードダウンした. b.95%CI の下限vs. 上限が真実を表している場合に診療行動が異なると考えられるため. c.2 つの研究がブラインドが不十分,また,1 つの研究がブロックランダム化のためバイアスのリスクあり. d.評価者がブラインドされているか不明. e.完全には一致していない. f.1 研究は腹腔内圧上昇患者を対象としている. g.サンプル数が少ない.
資料CQ32—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ32:ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧を用いるべきか? 集 団:低酸素血症(PaO2/FIO2比≤300 mmHg もしくはそれに相当)をきたしている成人 患者(肥満患者を含む) 介 入:経肺圧を用いたPEEP 決定比較対照: ARDSnet の表に沿ったPEEP 決定,医師によって決定されたPEEP主要なアウトカム:短期死亡,長期死亡セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者では過剰なPEEP はVILI を増強し,循環動態にも悪影響を与える.低過 ぎるPEEP も虚脱肺を増やし,VALI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.ARDS 患者では適切なPEEP の設定に関して,定まった手法がない.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者では過剰なPEEP はVILI を増強し,循環動態に も悪影響を与える.低過ぎるPEEP も虚脱肺を増やし, VALI への影響や酸素化の悪化などが報告されている. ARDS 患者では適切なPEEP の設定に関して,定まった手法がない.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要な臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が2 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,短期死亡(2 RCT:n=261)に関する効果推定値は, “対照”と比較して“介入”で1,000 人あたり85 人減少(95% CI:225 人減少~247 人増加),長期死亡(2 RCT: n=259)に関する効果推定値は,1,000 人あたり72 人減少(95% CI:207 人減少~148 人増加)であった.以上より,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害については1 つのRCT(EPVent 2 研究)のみでしか検 討されておらず,メタ解析での検討は行わなかった.よって,備考欄の記載と合わせて考えると,予想される害は「小さい」と判断したEPVent2 研究におい て,“対照”と比較して“介入”で気胸および圧外傷の頻度は増えなかった(気胸2/98 vs. 3/102,圧外傷5/98 vs. 6/102).また,介入群において食道内圧バルーン留置に伴う合併症はなかったと報告されている エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性短期死亡重大++○○ 低 長期死亡重大+++○ 中 全体的なエビデンスの確実性アウトカムにおける方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性があるたぶん重要な不確実性や多様性はないと判断した
●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない結果のまとめ アウトカム通常の 方法* (対照)経肺圧 (介入)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 短期死亡42/129 (32.6%) 38/132 (28.8%) 85 人減少/ 1,000 人(225 人減少~ 247 人増加) 0.74 (0.31~ 1.76) 長期死亡58/129 (45.0%) 52/130 (40.0%) 72 人減少/ 1,000 人(207 人減少~ 148 人増加) 0.84 (0.54~ 1.33) *通常の方法:ARDSnet の表に沿ったPEEP 決定,医師に よって決定されたPEEP以上より,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して「わからない」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない●わからない特別な医療資機材を要するため,主要なステークホルダーへの受け入れに懸念はある
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない特別な医療資機材を要するため,施設によってはその施行 が現実的に困難な場合がある 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん介入が 有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS患者のPEEP設定に経肺圧をルーチンに用いないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 付帯事項 SR の結果では有意差を認めなかったが,28 日死亡および,長期死亡を減少させる方向性が認められた.しかし,経肺圧が測定可能な人工呼吸器の機種が限定されており,ルーチンでの測定を推奨するのは難しいことを理由に,パネル会議内で意見が一致せず,上記の推奨となった.なお,食道内圧バルーンキットを使用できる状況下では,その使用を妨げるものではない. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧を用いるべきか?患 者 18 歳以上の人工呼吸器を要する低酸素性呼吸不全患者.介 入 経肺圧を用いたPEEP 決定方法.対 照 ARDSnet の表に沿ったPEEP 決定,医師によって決定されたPEEP.アウトカム 28 日死亡,長期死亡.エビデンスの要約SR の結果,ARDS 患者において経肺圧によるPEEP 設定と,従来のARDSnet の表に沿ったPEEP決定法を比較検討したRCT が2 件施行されており(EPVent 1 研究1)およびEPVent 2 研究2)),これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,短期死亡(2 RCT:n=261)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり85 人減少(95% CI:225 人減少~ 247 人増加),長期死亡(2 RCT:n=259)に関する効果推定値は1,000 人あたり72 人減少(95% CI:207 人減少~148 人増加)であった.以上より,介入による望ましい効果は「小さい」と判断した.害のアウトカムについては1 つのRCT(EPVent 2 研究)でしか検討されておらず,メタ解析での検討は行わなかった.EPVent 2 研究において,気胸および圧外傷の頻度は増えなかった〔気胸2/98 vs. 3/102 絶対差0.9%(-3.4%~5.2%),圧外傷5/98 vs. 6/102 絶対差0.8%(-5.5%~ 7.1%)〕,介入群において食道内圧バルーン留置に伴う合併症はなかったと報告されている.よって,介入による望ましくない効果は「小さい」と判断した.以上から,介入による効果と害のバラ
ンスについては,「わからない」と判断した.エビデンスの確実性アウトカムにおける方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定経肺圧を測定するためには,食道内圧バルーンキットが必要であり,現状本邦においては特定の人工呼吸器を要するため,コストへの懸念があり,施設によってはその施行が困難である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者のPEEP 設定に経肺圧をルーチンに使用しないことを提案する」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では,SR の結果が有益な方向であったため,経肺圧を使用することを推奨するか非推奨とするかについての議論があった.その結果,パネル会議で再投票を行い,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2920 の結果となり,最終的に事前投票の結果と同様に非推奨のままにすることで合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 経肺圧は,人工呼吸器で測定される気道内圧と胸腔内圧(食道内圧バルーンキットで測定される食道内圧から近似される)の差で計算される.通常気道内圧の上限を超えないよう(吸気終末プラトー圧30 cmH2O 以下)PEEP 設定が行われるが,気道内圧の上限に達しても胸腔内圧が高い患者(高度肥満,腹部コンパートメント症候群など)においては吸気時経肺圧がそれほど高くないことが予想される.経肺圧モニタリングを用いることで,胸腔内圧が高い患者において気道内圧に制限されることなく,より高いPEEP を設定することが可能となる.今回サブグループ解析は施行できなかったが,今後検討される. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 正確に経肺圧を測定するためには,食道内圧バルーンキットを正しく使用する必要がある.特に,食道内圧バルーンの位置,およびバルーンに注入する空気量によって食道内圧の測定値が異なってくる可能性があるため,正しく使用するための知識および技術を要する.また,胸腔内圧は胸腔内において一様ではないため,測定する食道内圧で近似される胸腔内圧が胸腔内のどの部位の圧を反映しているのかを考慮する必要がある.Yoshida ら3)の報告では,食道内圧により計算された経肺圧は,胸腔の中心からやや背側寄りの経肺圧を反映しているとされている. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 特別な医療資器材を要するために,施行できる施設が限定される.コストと施設によってはその施行が現実的に困難な場合があることを考慮する必要があり,推奨の実施にあたって有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 前述のように,胸腔内圧が高い患者群を対象として経肺圧モニタリングの有用性を検討する研究が期待される.また,PEEP 設定のみならず,食道内圧および経肺圧モニタリングにより自発呼吸
下における吸気努力の強さを観察することができる.こちらのモニタリングの有用性についても今後の研究が期待される.参考文献1) Talmor D, Sarge T, Malhotra A, et al. Mechanical ventilation guided by esophageal pressure in acute lung injury. N Engl J Med 2008;359:2095‒104. 2) Beitler JR, Sarge T, Banner‒Goodspeed VM, et al. Effect of titrating positive end‒expiratory pressure(PEEP)with an esophageal pressure‒guided strategy vs an empirical high PEEP‒ FiO2 strategy on death and days free from mechanical ventilation among patients with acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. JAMA 2019;321:846‒ 57. 3) Yoshida T, Amato MBP, Grieco DL, et al. Esophageal manometry and regional transpulmonary pressure in lung injury. Am J Respir Crit Care Med 2018;197:1018‒26.
背景,この問題の優先度 背 景 ARDS 患者では過剰なPEEP はVILI を増強し,循環動態にも悪影響を与える.PEEP が不足すると虚脱肺を増やし,こちらもVILI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.一方で,適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はない.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である. この問題の優先度: ARDS 患者では過剰なPEEP は肺を過膨張させることでVILI を引き起こし,循環動態にも悪影響を与える.低過ぎるPEEP も虚脱肺を増やし,VILI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.一方で,適切なPEEP 決定に対して定まった手法はない.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要な臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく 高い. 解 説 PICO 患者(P):成人ARDS 患者.介入(I):EIT を用いたPEEP 決定.対照(C):ARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿った PEEP 決定.アウトカム(O):死亡,VILI の発生. エビデンスの要約 EIT は,体内のインピーダンスの変化を測定することによって,肺内ガス分布をベッドサイドで可視化する装置である.非侵襲的,連続的にリアルタイムな換気分布を可視化でき,横断画像で肺の部位ごとの換気状況を描出可能である.今回系統的に文献検索を施行したが,EITによるPEEP 決定と,それ以外の方法を重大な 1 1 2 1 2 領域D 呼吸器周辺治療 ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を使用するべきか? CQ 33 ARDS 患者のPEEP 設定にEIT(electrical impedance tomography)を 日常的に使用することができない(in our practice statement). EIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されていない.通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスはないが,EIT が均一に肺が換気される適切なPEEP を設定できる一助となる可能性はある. 推 奨 付帯事項
アウトカムについて比較する研究はなかった. EIT によるPEEP 決定を評価した主なエビデンスを以下に示す.Zhaoら1)の前向き観察研究では,重症ARDS 患者24 名を対象に,EIT によるPEEP 決定方法を検討した.EIT を用いて,高圧からPEEP を徐々に減少させながら,腹側の肺の過膨張領域と背側の虚脱領域の両者に最も均一な換気のあるPEEP を探し,そのPEEPをEIT による設定PEEP とした.この手法によるPEEP 設定は平均17.6 cmH2O(±3.6)と比較的高かったが,明らかな圧外傷は生じなかった.本研究からはEIT によって肺の部位ごとの換気状況を描出可能であり,均一に肺が換気されているPEEP を探すことで適切なPEEPを設定できる可能性がある.しかし,そもそもまだEIT によるPEEP 決定を評価した研究そのものが少なく,EIT によるPEEP 決定と,従来のPEEP 決定方法を直接比較する研究はない.よって,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 EIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されておらず,実験的な装置である.今後発売したとしてもコストは余計にかかることが予測される. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者のPEEP 設定にEIT(electrical impedance tomography)を日常的に使用することができない」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.049 であった.その結果,パネル会 議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって「in our practice statement」として合意に至った サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 EIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されておらず,実験的な装置である.また,EIT そのものは非侵襲的ではあるが,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスがないことから,EIT によるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もある.以上より,一般に実施することそのものが困難である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を使用するべきか否かに関する他の診療ガイドラインの記載は存在しない. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてEIT 使用の費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今後,EIT によるPEEP 決定と,日常的に行われているARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定方法を比較検討するRCT の実行が求められる. 3 4 5 3 4 5 6 7
文献検索式と文献選択 「respiratory distress syndrome」「Acute Lung Injury」「electorical impedance tomography」をキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月19 日までの文献を検索したところ922 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当するRCT はなかった.本CQ で対象とした研究 なし. 資料一覧 ・資料CQ33‒1 Search strategy.・資料CQ33‒2 フローダイアグラム.・資料CQ33‒3 Evidence‒to‒Decision. 8 9 10 1) Zhao Z, Chang MY, Chang MY, et al. Positive end‒expiratory pressure titration with electrical impedance tomography and pressure‒volume curve in severe acute respiratory distress syndrome. Ann Intensive Care 2019;9:7. 参考文献
資料CQ33—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/3/19) #1 (((((((Respiratory Distress Syndrome, Adult[MeSH Terms]) OR Lung Injury[MeSH Terms]) OR Respiration, Artificial[MeSH Terms]) OR ARDS[Title/Abstract]) OR acute respiratory distress syndrome[Title/ Abstract]) OR ALI[Title/Abstract]) OR acute lung injury[Title/Abstract]) OR ventilat*[Title/Abstract] #2 ((Electric Impedance[MeSH Terms]) OR electric impedance tomography[Title/Abstract]) OR EIT[Title/ Abstract] #3 #1 AND #2
資料CQ33—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=48 除外基準に該当した研究 n=869 除外基準に該当した研究n=5理由:・ RCTではない5件 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌669件179件74件 データベース検索で同定された研究 n=922 検索で同定された研究 n=922 重複研究を除外した研究 n=874 フルテキストで適格性を評価した研究 n=5 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0
資料CQ33—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ33:ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を使用するべきか? 集 団:成人ARDS 患者介 入: Electrical impedance tomography:EIT を用いたPEEP 決定比較対照: ARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定主要なアウトカム:死亡,VILI の発生セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者では適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はない.体内のインピー ダンスの変化を測定することで肺内ガス分布を可視化するEIT を用いれば,肺の部位ごとの換気状況を描出可能であり,均一に肺が含気されているPEEP を探すことで適切なPEEP を設定できる可能性がある.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者では適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はない.体内 のインピーダンスの変化を測定することで肺内ガス分布を可視化するEIT を用いれば,肺の部位ごとの換気状況を描出可能であり,均一に肺が含気されているPEEP を探すことで適切なPEEP を設定できる可能性がある.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がないEIT は,体内のインピーダンスの変化を測定することによって,肺内ガス 分布をベッドサイドで可視化する装置である.非侵襲的,連続的にリアルタイムな換気分布を可視化でき,横断画像で肺の部位ごとの換気状況を描出可能である.今回系統的に文献検索を施行したが,EIT によるPEEP 決定と,それ以外の方法を重大なアウトカムについて比較する研究はなかった.EIT によるPEEP 決定を評価した主なエビデンスを以下に示すZhao らの前向き観察研究(Ann Intensive Care 2019)では,重症ARDS患者24 名を対象に,EIT によるPEEP 決定方法を検討した.EIT を用いて,高圧からPEEP を徐々に減少させながら,腹側の肺の過膨張領域と背側の虚脱領域の両者とも最も均一に肺が換気されているPEEPを探し,そのPEEP をEIT による設定PEEP とした.この手法によるPEEP 設定は平均17.6 cmH2O(±3.6)と比較的高かったが,明らかな圧外傷は生じなかった.同施設の以前の重症ARDS 症例と比較すると,高いPEEP,低い駆動圧を達成していた本研究からはEIT によって肺の部位ごとの換気状況を描出可能であり,均一に肺が換気されているPEEP を探すことで適切なPEEP を設定できる可能性がある.しかし,そもそもまだEIT によるPEEP 決定を評価した研究そのものが少なく,EIT によるPEEP 決定と,従来のPEEP 決定方法を重大アウトカムについて直接比較する研究はない.よって,この方法の益と害については評価することができない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性やたぶん重要な不確実性や多様性はない
多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,実験的な手法であり,日常臨床 においては実行不可能と思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考●いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないEIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されておらず,実験的 な装置である.また,EIT そのものは非侵襲的ではあるが,通常のPEEP決定方法と比較したエビデンスがないことから,EIT によるPEEP 決定により過剰なPEEP 設定となる可能性もある.以上より,実現可能性は困難とした
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○
結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を日常的に使用することができない(in our practice statement). 付帯事項 EIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されていない.通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスはないが,EIT によって均一に肺が換気される適切なPEEP を設定できる一助となる可能性はある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を使用するべきか?患 者 成人ARDS 患者.介 入 EIT を用いたPEEP 決定.対 照 ARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定.アウトカム 死亡,VILI の発生.解 説EIT は,体内のインピーダンスの変化を測定することによって,肺内ガス分布をベッドサイドで可視化する装置である.非侵襲的,連続的にリアルタイムな換気分布を可視化でき,横断画像で肺の部位ごとの換気状況を描出可能である.今回系統的に文献検索を施行したが,EIT によるPEEP決定と,それ以外の方法を重大なアウトカムについて比較する研究はなかった.EIT によるPEEP決定を評価した主なエビデンスを以下に示す. Zhao ら1)の前向き観察研究では,重症ARDS 患者24 名を対象に,EIT によるPEEP 決定方法を検討した.EIT を用いて,高圧からPEEP を徐々に減少させながら,腹側の肺の過膨張領域と背側の虚脱領域の両者とも最も均一に肺が換気されるPEEP を探し,そのPEEP をEIT による設定PEEPとした.この手法によるPEEP 設定は平均17.6 cmH2O(±3.6)と比較的高かったが,明らかな圧外傷は生じなかった.本研究からはEIT によって肺の部位ごとの換気状況を描出可能であり,均一に肺が換気されるPEEP を探すことで適切なPEEP を設定できる可能性がある.しかし,そもそもまだEIT によるPEEP 決定を評価した研究そのものが少なく,EIT によるPEEP 決定と,従来のPEEP 決定方法を直接比較する研究はない.よって,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定EIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されておらず,実験的な装置である.今後発売した場合にはコストは余計にかかることが予測される.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者のPEEP 設定にEIT を日常的に使用することができない」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.049 であった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって「in our practice statement」として合意に至った.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations EIT については2021 年2 月現在,本邦では発売されておらず,実験的な装置である.また,EITそのものは非侵襲的ではあるが,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスがないことから,EITによるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もある.以上より,一般に実施することそのものが困難である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてEIT 使用の費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今後EIT によるPEEP 決定と,日常的に行われているARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP決定方法を比較検討するRCT の実行が求められる.参考文献1) Zhao Z, Chang MY, Chang MY, et al. Positive end‒expiratory pressure titration with electrical impedance tomography and pressure‒volume curve in severe acute respiratory distress syndrome. Ann Intensive Care 2019;9:7.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者では過剰なPEEP はVALI を増強し,循環動態にも悪影響を与え得る.低過ぎるPEEP もPEEP が不足すると虚脱肺を増やし,こちらもVALI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.一方で,適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はない.PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い. 解 説 PICO 患者(P):成人ARDS 患者.介入(I):肺エコーを用いたPEEP 決定.対照(C):ARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿った PEEP 決定.アウトカム(O):非換気エリア,VALI,死亡. エビデンスの要約 該当の研究なし. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 エコーについてはARDSを診療する各施設が保持していると考えられ,追加のコストやリソースは必要としないと考えられる. 1 2 1 2 3 4 領域D 呼吸器周辺治療 ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するべきか? CQ 34 ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するのは一般的ではない(in our practice statement). 肺エコーによる肺の非換気エリア評価には技術と修練を要する.また,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスはなく,肺エコーによるPEEP 決定により過剰なPEEP 設定となる可能性もある.一方で,肺エコーによってPEEP 上昇による虚脱肺のリクルートメントを評価でき,非侵襲的で追加のコストも必要としないためPEEP 決定の一助となる可能性はある. 推 奨 付帯事項
パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するのは一般的ではない」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.2920 であった.その結果,パネル会議では再投票はなく最終的に事前投票の結果をもって「in our practice statement」として合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 肺エコーそのものは非侵襲的で追加のコストも必要としないため実現させることは容易であるが,肺エコーによる肺の含気評価には技術と修練を要すると考えられる.また,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスがないことから,肺エコーによるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もあり,一概に実現可能性があるとは言えない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 該当なし. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として異なる検者間での評価の一致率や,検査時間対効果について更なる情報を収集する必要がある. また,それ以外にも実施状況や臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今後肺エコーによるPEEP 決定と,日常的に行われているARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定方法を比較検討する質の高いRCTの実行が求められる. 文献検索式と文献選択 「respiratory distress syndrome」「Acute Lung Injury」「Ultrasonography」「Echocardiography」「ultraso*」「echo*」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年3 月21 日までの文献を検索したところ1,328 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,該当するRCTはなかった. 本CQ で対象とした研究 該当なし. 資料一覧 ・資料CQ34‒1 Search strategy.・資料CQ34‒2 フローダイアグラム.・資料CQ34‒3 Evidence‒to‒Decision. 3 4 5 6 7 8 9 10 なし. 参考文献
資料CQ34—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/ 3/ 21) #1 “Respiratory Distress Syndrome, Adult” [MeSH Terms] OR “Lung Injury” [MeSH Terms] OR ARDS[Title/ Abstract] OR “acute respiratory distress syndrome” [Title/Abstract] OR ALI[Title/Abstract] OR “acute lung injury” [Title/Abstract] #2 Ultrasonography[MeSH Terms] OR Echocardiography[MeSH Terms] OR ultraso*[Title/Abstract]) OR echo*[Title/Abstract] #3 #1 AND #2
資料CQ34—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=214 除外基準に該当した研究 n=3,059 除外基準に該当した研究n=8理由:・ RCTではない8件 検索で同定された研究 n=3,281 重複研究を除外した研究 n=3,067 フルテキストで適格性を評価した研究 n=8 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 データベース検索で同定された研究 n=3,281 2,420件391件470件
資料CQ34—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ34:ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するべきか? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者介 入:肺エコーを用いたPEEP 決定比較対照: ARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定主要なアウトカム:非換気エリア,VALI,死亡セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者では過剰なPEEP はVALI を増強し,循環動態にも悪影響を与え得る. 低過ぎるPEEP も虚脱肺を増やし,こちらもVALI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はなく,PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者では過剰なPEEP はVALI を増強し,循環動態にも悪影響を 与え得る.低過ぎるPEEP も虚脱肺を増やし,こちらもVALI への影響や酸素化の悪化などが報告されている.適切なPEEP 設定に関して,定まった手法はなく,PEEP 設定に有用な方法を明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がないエコーによって肺の非換気エリア(虚脱肺)を確認することができる. PEEP を上昇させた際に非換気エリアの面積を観察し,面積が減少していればPEEP により肺虚脱を改善させた,つまりrecruitment させたことになる.今回系統的に文献検索を施行したが,肺エコーによるPEEP 決定と,それ以外の方法を重大なアウトカムについて比較する研究はなかった.肺エコーによるPEEP 決定を評価した主なエビデンスを以下に示すStefanidis ら1)の前向き観察研究では,ARDS 患者10 名を対象に,肺エコーでPEEP 上昇によるrecruitment の効果を確認できるかを検討した. PEEP を5→10→15 cmH2O と上昇させた際に,非換気エリアの面積減少が肺エコーによって定量可能であった.また,非換気エリアの減少とともに,酸素化の改善も認めたBouhemad ら2)の前向き観察研究では,ARDS 患者40 名を対象に,肺エコーでPEEP 上昇によるrecruitment の効果を確認できるかを検討した. PEEP を0→15 cmH2O と上昇させた際に,recruitment された肺容量をPV カーブで測定し,それと肺エコーで測定されたultrasound aeration score(両側それぞれ6 か所の部位で,PEEP を変化した時の肺の含気を評価し点数化)を比較検討した.結果,PV カーブで測定された肺容量の増加はultrasound aeration score と有意に相関した. Chiumello ら3)の前向き観察研究では,ARDS 患者20 名を対象に,肺エコー評価によるLung Ultrasound score(LUS score) (両側それぞれ6 か所の部位で,0~3 点の点数で肺の含気を評価)とCT による肺の含気評価を比較検討した.結果,PEEP を5 cmH2O もしくは15 cmH2O で検討したところ,いずれもLUS score による評価とCT による肺の含気評価は有意に相関した以上より,肺エコーによってPEEP 上昇による虚脱肺のrecruitment を評価できる可能性がある.しかし,肺エコーによるPEEP 決定と,ARDSnet に沿ったPEEP 決定方法を重大なアウトカムについて比較する研究はなく,この方法の益と害については評価することができない
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないたぶん重要な不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常臨床で実行されてお り,コスト,有害性などを考慮しても実行可能と思われる
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない肺エコーそのものは非侵襲的で追加のコストも必要としないため実現さ せることは容易ではあるが,肺エコーによる肺の含気評価には技術と修練を要す,と考えられる.また,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスがないことから,肺エコーによるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もあり,一概に実現可能性があるとは言えない 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん介入が 有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するのは一般的ではない(in our practice statement). 付帯事項 肺エコーによる肺の非換気エリア評価には技術と修練を要し,また,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスはない.また,肺エコーによるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もある.一方で,肺エコーによってPEEP 上昇による虚脱肺のリクルートメントを評価でき,非侵襲的で追加のコストも必要としないためPEEP 決定の一助となる可能性はある. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するべきか?患 者 成人ARDS 患者.介 入 肺エコーを用いたPEEP 決定.対 照 ARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定.アウトカム 非換気エリア,VALI,死亡.解 説エコーによって肺の非換気エリア(虚脱肺)を確認することができる.PEEP を上昇させた際に非換気エリアの面積を観察し,面積が減少していればPEEP により肺虚脱を改善させた,つまり, recruitment させたことになる.今回系統的に文献検索を施行したが,肺エコーによるPEEP 決定と,それ以外の方法を重大なアウトカムについて比較する研究はなかった.肺エコーによるPEEP決定を評価した主なエビデンスを以下に示す. Stefanidis ら1)の前向き観察研究では,ARDS 患者10 名を対象に,肺エコーでPEEP 上昇によるrecruitment の効果を確認できるかを検討した.PEEP を5→10→15 cmH2O と上昇させた際に,非換気エリアの面積減少が肺エコーによって定量可能であった.また,非換気エリアの減少とともに,酸素化の改善も認められた. Bouhemad ら2)の前向き観察研究では,ARDS 患者40 名を対象に,肺エコーでPEEP 上昇によるrecruitment の効果を確認できるかを検討した.PEEP を0→15 cmH2O と上昇させた際に,
recruitment された肺容量をPV カーブで測定し,それと肺エコーで測定されたultrasound aeration score(両側それぞれ6 か所の部位で,PEEP を変化した時の肺の含気を評価し点数化)を比較検討した.結果,PV カーブで測定された肺容量の増加はultrasound aeration score と有意に相関した. Chiumello ら3)の前向き観察研究では,ARDS 患者20 名を対象に,肺エコー評価によるLung Ultrasound score(LUS score)(両側それぞれ6 か所の部位で,0~3 点の点数で肺の含気を評価)とCT による肺の含気評価を比較検討した.結果,PEEP を5 cmH2O もしくは15 cmH2O で検討したところ,いずれもLUS score による評価とCT による肺の含気評価は有意に相関した.以上より,肺エコーによってPEEP 上昇による虚脱肺のrecruitment を評価できる可能性がある.しかし,肺エコーによるPEEP 決定と,ARDSnet に沿ったPEEP 決定方法を重大なアウトカムについて比較する研究はなく,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定エコーについてはARDS を診療する各施設が保持していると考えられ,追加のコストやリソースは必要としないと考えられる.肺エコーそのものは非侵襲的で追加のコストも必要としないため実現させることは容易ではあるが,肺エコーによる肺の含気評価には技術と修練を要すると考えられる.また,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスがないことから,肺エコーによるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もあり,一概に実現可能性があるとは言えない.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者のPEEP 設定に肺エコーを使用するのは一般的ではない」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.2920 であった.その結果,パネル会議では再投票はなく最終的に事前投票の結果をもって「in our practice statement」として合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 肺エコーそのものは非侵襲的で追加のコストも必要としないため実現させることは容易ではあるが,肺エコーによる肺の含気評価には技術と修練を要すると考えられる.また,通常のPEEP 決定方法と比較したエビデンスがないことから,肺エコーによるPEEP 決定により不適切なPEEP 設定となる可能性もあり,一概に実現可能性があるとは言えない.「理由Justification」の項を参照. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題として異なる検者間での評価の一致率や,検査時間対効果について更に情報収集する必要がある.また,それ以外にも実施状況や臨床での問題がないかについて本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある.
研究の可能性 Research priorities 今後肺エコーによるPEEP 決定と,日常的に行われているARDSnet のFIO2/PEEP 表に沿ったPEEP 決定方法を比較検討する質の高いRCT の実行が求められる.参考文献1) Stefanidis K, Dimopoulos S, Tripodaki ES, et al. Lung sonography and recruitment in patients with early acute respiratory distress syndrome:a pilot study. Crit Care 2011; 15:R185. 2) Bouhemad B, Brisson H, Le‒Guen M, et al. Bedside ultrasound assessment of positive end‒ expiratory pressure‒induced lung recruitment. Am J Respir Crit Care Med 2011;183: 341‒7. 3) Chiumello D, Mongodi S, Algieri I, et al. Assessment of lung aeration and recruitment by CT scan and ultrasound in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 2018;46:1761‒8.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者では,仰臥位から腹臥位に変更することで,肺のストレスとストレインの分布がより均一になる.さらに,換気血流不均衡の改善により酸素化が改善する1).酸素化を改善させることから腹臥位は,ARDS 患者の重度の低酸素血症に対する救済策の1 つとされる.また,人工呼吸器関連肺傷害(ventilator‒associated lung injury:VILI)の発生や進展を予防する効果が示唆されており,ARDS 発症早期から腹臥位を行うことによって,患者の予後を改善させる可能性がある.腹臥位自体は特別な設備を必要としないが,体位変換や長時間の管理に伴って合併症が生じ得る.ARDS 患者に対する腹臥位の利益と害について明らかにすることは,重要な臨床課題であると考えられる.したがって,この問題の優先度はおそらく高い.解 説 PICO 患者(P):成人ARDS 患者.介入(I):腹臥位を行う.対照(C):腹臥位を行わない.アウトカム(O):死亡(28 日,30 日,60 日, 90 日,ICU 死亡,院内死亡),人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数,気管チューブのトラブル(閉塞,気道閉塞),圧迫による皮膚障害・褥瘡. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したランダム化比較試験(RCT)が7 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.VFDのアウトカムを含むRCT が1 つのみであったため,代替として人工呼吸器装着日数を検討した.気管チューブのトラブルは,計画外抜去,閉塞,位 1 2 1 2 領域D 呼吸器周辺治療 中等症または重症の成人ARDS 患者に腹臥位を行うべきか? CQ 35 中等症および重症の成人ARDS 患者において,長時間の腹臥位を行うことを 条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). 実施には腹臥位にある程度習熟した医療機関で行う必要がある.また,腹臥位を行う場合は,施行時間は長時間(12 時間以上)を考慮するべきである. 推 奨 付帯事項
置異常が別々のアウトカムとして報告されており,統合は不可能と判断し,重要性を考慮し気管チューブのトラブル(閉塞,気道閉塞)のアウトカムを検討した.益のアウトカムとして,短期死亡(7RCT: n=2,118)に関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位でリスク差69人減少/1,000 人(95%CI:135 人減少~13 人増加),人工呼吸器装着日数(3RCT:n=871)は,平均差0.48 日短縮(95%CI:1.61 日短縮~0.65 日増加),ICU 滞在日数(3RCT:n= 518)は,平均差1.03 日増加(95%CI:1.70日短縮~3.75 日増加)であり,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.一方,害のアウトカムとして,気管チューブのトラブル(2RCT:n=808)に関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位でリスク差83 人増加/1,000 人(95%CI:30 人増加~ 151 人増加),圧迫による皮膚障害・褥瘡(2RCT:n=344)はリスク差114 人増加/, 1,000人(95%CI:19人増加~237人増加)であり,予想される害は「小さい」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果の結果は介入により死亡を減少,人工呼吸器装着日数を短縮,ICU 滞在日数を増加させた.一方,望ましくない効果の結果は介入により気道や皮膚トラブルを増加させた.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低い」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 仰臥位から腹臥位に体位変換を行うには,通常よりも多くの人手が必要となるが,追加の高価な機材の購入は必要ないため,コストは最小限であると思われる.一方で,腹臥位により気道トラブルや皮膚障害発症の懸念があるが,その害は最小限であると思われる.また,公平性に関して,腹臥位治療は,通常のARDS診療の範囲内の医療行為であると考えられるため, ARDS 管理に習熟した施設であれば可能である.一方,施設の習熟度,マンパワーにより安全性が不公平になる可能性がある.実行可能性に関して,国際疫学調査では重症ARDS患者の33%にのみ腹臥位療法が施行されていた2).本邦でのエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されており,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「中等症および重症の成人ARDS患者において,長時間の腹臥位を行うことを条件付きで推奨する」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では,ランドマーク研究であるPROSEVA 研究3)において腹臥位群・対照群の両群で筋弛緩薬が併用されていたことに関しての議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 サブグループとして,腹臥位時間(12 時間以上),肺保護換気併用(1 回換気量≦8 mL/ PBW),ベルリン定義による酸素化障害(中等症・重症のみ)で解析を行った.腹臥位時間(12 時間以上)(4RCT:n= 984)では,短期死亡に関する効果推定値は, 3 5 3
腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位でリスク差119 人減少/1,000 人(95%CI:185 人減少~35 人減少)であった.肺保護換気併用(1回換気量≦8 mL/PBW)(4RCT:n=888)では,リスク差118 人減少/1,000 人(95%CI: 200 人減少~4 人減少)であった.ベルリン定義による酸素化障害(中等症・重症のみ) (4RCT:n=984)では,リスク差119 人減少/ 1,000人(95%CI:185人減少~35人減少)であった.以上,いずれのサブグループ(長時間の腹臥位,肺保護換気併用,中等症・重症の低酸素血症)でも,腹臥位の施行が死亡を改善する可能性が示唆された.サブグループの有益性に関しては,今後十分に検出力のある研究が必要であるが,現時点では,腹臥位を行う場合は,中等症・重症のARDS 患者に限定し,腹臥位施行時間は長時間(12 時間以上)を考慮するべきである. 実施上の考慮事項 腹臥位はARDS管理や腹臥位にある程度習熟した施設で施行するべきである.施行する際には,複数名のスタッフが必要であり,施設あるいは時間帯によっては施行不可能な場合もあることに留意が必要である.今回,SR で検討した大部分の研究で,組み入れ基準として, PaO2/FIO2比<150 mmHg を基準としており, AECC 基準,ベルリン定義におけるARDS の酸素化障害の基準とは異なることに注意が必要である. 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨4)では,「成人ARDS 患者(特に中等症・重症例)において,腹臥位管理を施行することを提案する(GRADE 2C,弱い推奨/低の確実性のエビデンス)」であった.関連する他の診療ガイドラインの記載 関連する診療ガイドラインとして,『Surviving Sepsis Campaign 2016 のガイドライン』5)では,「敗血症でARDS を発症し,PaO2/FIO2比が150 mmHg 未満の成人患者には,仰臥位よりも腹臥位を用いることを推奨する(強い推奨/中等度の確実性のエビデンス)」と推奨されている. 治療のモニタリングと評価 高リスク成人ARDS患者において腹臥位を実施する場合,呼吸・循環をモニタリングしながら行う必要がある.腹臥位中は,気管チューブの閉塞や位置異常,点滴ラインの閉塞,眼球などの圧迫,体位による神経障害の可能性に注意する必要がある.腹臥位にあたっては患者家族への十分な説明・同意が必要である.推奨の実施にあたって臨床上の問題として,腹臥位の有害事象についての更なる情報収集が必要である.また,それ以外にも実施状況や臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 長期的な予後,他の治療法(ECMO)との併用効果,腹臥位の最適な持続時間の検証が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome」「Acute Lung Injury」「Prone Position」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月5 日までの文献を検索したところ1,362 件の研究が同定され,スクリーニングの結果14 件3,6‒18)のRCT を採用した. 4 5 6 7 8
本CQ で対象とした研究 Guerin 20133), Akatsuka 20206), Chan 20077), Demory 20078), Fernandez 20089), Gattinoni 200110), Gaudry 201711), Guerin 200412), Kim 201913), Mancebo 200614), Mounier 201015), Taccone 200916), Venet 200317), Voggenreiter 200518).資料一覧 ・資料CQ35‒1 Search strategy.・資料CQ35‒2 フローダイアグラム.・資料CQ35‒3 Risk of bias.・資料CQ35‒4 Forest plot.・資料CQ35‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ35‒6 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Guérin C, Albert RK, Beitler J, et al. Prone position in ARDS patients:why, when, how and for whom. Intensive Care Med 2020;46:2385‒96. 2) Guérin C, Beuret P, Constantin JM, et al. A prospective international observational prevalence study on prone positioning of ARDS patients:the APRONET(ARDS Prone Position Network)study. Intensive Care Med 2018;44:22‒37. 3) Guérin C, Reignier J, Richard JC, et al. Prone positioning in severe acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:2159‒68. 4) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 5) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock:2016. Intensive Care Med 2017;43:304‒77. 6) Akatsuka M, Tatsumi H, Yama N, et al. Therapeutic evaluation of computed tomogra- phy findings for efficacy of prone ventilation in acute respiratory distress syndrome patients with abdominal surgery. J Crit Care Med(Targu Mures)2020;6:32‒40. 7) Chan MC, Hsu JY, Liu HH, et al. Effects of prone position on inflammatory markers in patients with ARDS due to community‒acquired pneumonia. J Formos Med Assoc 2007;106:708‒16. 8) Demory D, Michelet P, Arnal JM, et al. High‒frequency oscillatory ventilation following prone positioning prevents a further impairment in oxygenation. Crit Care Med 2007;35:106‒11. 9) Fernandez R, Trenchs X, Klamburg J, et al. Prone positioning in acute respiratory distress syndrome:a multicenter randomized clinical trial. Intensive Care Med 2008;34:1487‒91. 10) Gattinoni L, Tognoni G, Pesenti A, et al. Effect of prone positioning on the survival of patients with acute respiratory failure. N Engl J Med 2001;345:568‒73. 11) Gaudry S, Tuffet S, Lukaszewicz AC, et al. Prone positioning in acute respiratory dis- tress syndrome after abdominal surgery:a multicenter retrospective study:SAPRO- NADONF(Study of Ards and PRONe position After abDOmiNal surgery in France). Ann Intensive Care 2017;7:21. 12) Guerin C, Gaillard S, Lemasson S, et al. Effects of systematic prone positioning in hypoxemic acute respiratory failure:a randomized controlled trial. JAMA 2004; 292:2379‒87. 13) Kim WY, Kang BJ, Chung CR, et al. Prone positioning before extracorporeal mem- 参考文献
brane oxygenation for severe acute respiratory distress syndrome:a retrospective multicenter study. Med Intensiva(Engl Ed)2019;43:402‒9. 14) Mancebo J, Fernández R, Blanch L, et al. A multicenter trial of prolonged prone ven- tilation in severe acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2006;173:1233‒9. 15) Mounier R, Adrie C, Français A, et al. Study of prone positioning to reduce ventilator‒ associated pneumonia in hypoxaemic patients. Eur Respir J 2010;35:795‒804. 16) Taccone P, Pesenti A, Latini R, et al. Prone positioning in patients with moderate and severe acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 2009;302:1977‒84. 17) Venet C, Guyomarc’h S, Pingat J, et al. Prognostic factors in acute respiratory distress syndrome:a retrospective multivariate analysis including prone positioning in management strategy. Intensive Care Med 2003;29:1435‒41. 18) Voggenreiter G, Aufmkolk M, Stiletto RJ, et al. Prone positioning improves oxygen- ation in post‒traumatic lung injury‒‒a prospective randomized trial. J Trauma 2005;59:333‒41.
資料CQ35—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/28) #1 "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[Mesh] OR "Acute Respiratory Distress"[Title/Abstract] OR ARDS[Title/Abstract] OR "Acute Lung Injury"[Mesh] OR Acute Lung Injur*[Title/Abstract] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[Mesh] #3 #1 OR #2 #4 "Prone Position"[Mesh] OR Prone Position*[Title/Abstract] #5 #3 AND #4 CENTRAL(Search date:2020/7/5) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "Acute Respiratory Distress":ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "Acute Lung Injury":ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Prone Position"] OR "Prone Position":ti,ab #5 #3 AND #4 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/28) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3 #1 OR #2 #4腹臥位/TH OR 腹臥位/TA #5 #3 AND #4 #6 (#5) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ35—2 フローダイアグラム MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究 n=1,362 1,008件118件236件 重複した研究 n=32 除外基準に該当した研究 n=1,134 除外基準に該当した研究n=179理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる1件169件8件1件 メタ解析に組み入れた研究n=14 (組み入れたRCTの二次解析 3件) 系統的レビューに組み入れた研究 n=17 検索で同定された研究 n=1,362 重複研究を除外した研究 n=1,330 フルテキストで適格性を評価した研究 n=196
資料CQ35—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器装着日数 ICU滞在日数中心静脈,末梢静脈,動脈ラインのトラブル
人工呼吸器関連肺炎 気管チューブ閉塞,気道閉塞圧迫による皮膚障害,褥瘡
資料CQ35—4 Forest plot 死 亡 人工呼吸器装着日数 ICU滞在日数 中心静脈,末梢静脈,動脈ラインのトラブル 気管チューブ閉塞,気道閉塞
人工呼吸器関連肺炎 圧迫による皮膚障害,褥瘡
資料CQ35—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討腹臥位を 行う腹臥位を行わない相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 死 亡* 7 ランダム 化試験深刻a 深刻で ないb深刻で ない深刻cなし418/ 1,088 (38.4%) 447/ 1,030 (43.4%) RR 0.84 (0.69~1.03) 1,000 人あたり69 人減少(135 人減少~ 13 人増加) ++○○ 低重大 人工呼吸器装着日数 3 ランダム 化試験非常に 深刻d深刻で ない深刻で ない深刻eなし455 416 —平均0.48 日短縮(1.61 日短縮~ 0.65 日延長) +○○○非常に低重大 ICU 滞在日数 3 ランダム 化試験深刻f 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻gなし265 253 —平均1.03 日延長 (1.7 日短縮~ 3.75 日延長) +○○○非常に低重大 中心静脈,末梢静脈,動脈ラインのトラブル** 3 ランダム 化試験深刻h 非常に 深刻i深刻で ない非常に 深刻jなし35/341 (10.3%) 21/345 (6.1%) RR 1.52 (0.22~10.26) 1,000 人あたり32 人増加(47 人減少~ 564 人増加) +○○○非常に低重要 気管チューブ閉塞,気道閉塞 2 ランダム 化試験深刻k 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし96/405 (23.7%) 64/403 (15.9%) RR 1.52 (1.19~1.95) 1,000 人あたり83 人増加(30 人増加~ 151 人増加) +++○ 中重大 圧迫による皮膚障害,褥瘡 2 ランダム 化試験深刻l深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし74/173 (42.8%) 54/171 (31.6%) RR 1.36 (1.06~1.75) 1,000 人あたり114 人増加(19 人増加~ 237 人増加) +++○ 中重大 人工呼吸器関連肺炎 3 ランダム 化試験非常に 深刻m深刻で ない深刻で ない深刻nなし102/510 (20.0%) 101/457 (22.1%) RR 0.90 (0.70~1.15) 1,000 人あたり22 人減少(66 人減少~ 33 人増加) +○○○非常に低重要 *28 日,30 日,60 日,90 日,ICU 死亡,院内死亡を含む,**計画外抜去,閉塞,位置異常を含む. CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.すべての研究にHigh RoB が少なくとも1 項目含まれる. b.I2値がかなり大きい(50~90%:65%)が,非一貫性はサブグループの差異によって説明される. c.α=0.05,β=0.20 と設定した場合のOIS 基準を満たさないが,サンプルサイズはグレードを下げるほどではない.95% CI に効果なしが含まれ,下限信頼限界が閾値をまたぐ. d.寄与率の高い研究にHigh RoB が多く含まれる. e.95% CI に効果なしが含まれ,上限信頼限界が閾値をまたぐ. f.すべての研究にHigh RoB が少なくとも1 項目含まれる. g.サンプルサイズが小さい.95% CI に効果なしが含まれ,下限信頼限界が閾値をまたぐ. h.すべての研究にHigh RoB が少なくとも1 項目含まれる.
i.I2値が非常に大きい(75~100%:91%). j.α=0.05,β=0.20 と設定した場合のOIS 基準を満たさない.95% CI の幅が広く,上限および下限信頼限界が閾値をまたぐ. k.すべての研究にHigh RoB が少なくとも1 項目含まれる. l.すべての研究にHigh RoB が少なくとも1 項目含まれる. m.寄与率の高い研究にHigh RoB が多く含まれる. n.α=0.05,β=0.20 と設定した場合のOIS 基準を満たさない.
資料CQ35—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ35:中等症または重症の成人ARDS 患者に腹臥位を行うべきか? 集 団:成人ARDS 患者介 入:腹臥位を行う比較対照:腹臥位を行わない主要なアウトカム:死亡(28 日,30 日,60 日,90 日,ICU 死亡,院内死亡),人工呼吸器装着日数, ICU 滞在日数,気管チューブのトラブル(計画外抜去,閉塞,位置異常),圧迫による皮膚障害,褥瘡 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者では,仰臥位から腹臥位に変更することで,肺のストレスとストレイン の分布がより均一になる.さらに,換気血流不均衡の改善により酸素化が改善することから重症の低酸素血症に対する救済策の1 つとされる.また,VILI の発生や進展を予防する効果が示唆されており,ARDS 発症早期から腹臥位を行うことによって,患者の予後を改善させる可能性がある.腹臥位自体は特別な設備を必要としないが,体位変換や長時間の管理に伴って合併症が生じ得る 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS 患者では,仰臥位から腹臥位に変更することで,肺のストレスと ストレインの分布がより均一になる.さらに,換気血流不均衡の改善により酸素化が改善する1).腹臥位は,ARDS 患者の酸素化を改善させることから,重症の低酸素血症に対する救済策の1 つとされる.また,VILIの発生や進展を予防する効果が示唆されており1),ARDS 発症早期から腹臥位を行うことによって,患者の予後を改善させる可能性がある.腹臥位自体は特別な設備を必要としないが,体位変換や長時間の管理に伴って合併症が生じ得る.このような背景から,ARDS 患者に対する腹臥位の利益と害について明らかにすることは,重要な臨床課題であると考えられる.したがって,この問題の優先度はおそらく高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずかSR の結果,PICO に一致したRCT が7 件施行されており,これらを用
○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないいたメタ解析を施行した.人工呼吸器非使用日数(VFD)のアウトカム を検討したRCT が1 つのみであったため,代替として人工呼吸器装着日数を検討した.気管チューブのトラブルは,計画外抜去,閉塞,位置異常が別々のアウトカムとして報告されており統合は不可能と判断し,重要性を考慮し気管チューブのトラブル(閉塞,気道閉塞)のアウトカムを検討した益のアウトカムとして,短期死亡(7 RCT:n=2,118)に関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位で1,000 人あたり69人減少(95% CI:135 人減少~13 人増加),人工呼吸器装着日数(3 RCT:n=871)は,平均差0.48 日短縮(95% CI:1.61 日短縮~0.65日増加),ICU 滞在日数(3 RCT:n=518)は,平均差1.03 日増加(95% CI:1.7 日短縮~3.75 日増加)であった.以上から,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,気管チューブのトラブル(2 RCT:n=808)に 関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位で1,000人あたり83 人増加(95% CI:30 人増加~151 人増加),圧迫による皮膚障害・褥瘡(2 RCT:n=344)はリスク差1,000 人あたり114 人増加(95% CI:19 人増加~237 人増加)であった.以上から,介入による望ましくない効果は,「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡*重大++○○ 低 人工呼吸器装着日数重大+○○○ 非常に低 ICU 滞在日数重大+○○○ 非常に低 気管チューブのトラブル (閉塞,気道閉塞)重大+++○ 中 圧迫による皮膚障害・褥瘡重大+++○ 中 *28 日,30 日,60 日,90 日,ICU 死亡,院内死亡を含む
全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないたぶん重要な不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ: アウトカム腹臥位を 行わない(対照)腹臥位 (介入)絶対差 (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 死 亡* 447/ 1,030 (43.4%) 418/ 1,088 (38.4%) 69 人減少/ 1,000 人(135 人減少~ 13 人増加) 0.84 (0.69~ 1.03) 人工呼吸器装着日数— —平均0.48 日短縮 (1.61 日短縮~ 0.65 日延長) ICU 滞在日数— —平均1.03 日延長 (1.7 日短縮~ 3.75 日延長) 気管チューブの トラブル(閉塞,気道閉塞) 64/403 (15.9%) 96/405 (23.7%) 83 人増加/ 1,000 人(30 人増加~ 151 人増加) 1.52 (1.19~ 1.95)
圧迫による皮膚障害・褥瘡54/171 (31.6%) 74/173 (42.8%) 114 人増加/ 1,000 人(19 人増加~ 237 人増加) 1.36 (1.06~ 1.75) *28 日,30 日,60 日,90 日,ICU 死亡,院内死亡を含む 介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されてお り,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されてお り,実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない
エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 中等症および重症の成人ARDS 患者において,長時間の腹臥位を行うことを条件付きで推奨する (条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 実施には腹臥位にある程度習熟した医療機関で行う必要がある.また,腹臥位を行う場合は,施行時間は長時間(12 時間以上)を考慮するべきである. 理 由 Justification 疑 問 中等症または重症の成人ARDS 患者に腹臥位を行うべきか?患 者 成人ARDS 患者.
介 入 腹臥位を行う.対 照 腹臥位を行わない.アウトカム 死亡(28 日,30 日,60 日,90 日,ICU 死亡,院内死亡),人工呼吸器装着日数, ICU 滞在日数,気管チューブのトラブル(閉塞,気道閉塞),圧迫による皮膚障害・褥瘡.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が7 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した. VFD のアウトカムを含むRCT が1 つのみであったため,代替として人工呼吸器装着日数を検討した.気管チューブのトラブルは,計画外抜去,閉塞,位置異常が別々のアウトカムとして報告されており統合は不可能と判断し,重要性を考慮し気管チューブのトラブル(閉塞,気道閉塞)のアウトカムを検討した.益のアウトカムとして,短期死亡(7 RCT:n=2,118)に関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位で1,000 人あたり69 人減少(95% CI:135 人減少~13 人増加),人工呼吸器装着日数(3 RCT:n=871)は,平均差0.48 日短縮(95% CI:1.61 日短縮~0.65 日増加), ICU 滞在日数(3 RCT:n=518)は,平均差1.03 日増加(95% CI:1.7 日短縮~3.75 日増加)であり,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.一方,害のアウトカムとして,気管チューブのトラブル(2 RCT:n=808)に関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位で1,000 人あたり83 人増加(95% CI:30 人増加~151 人増加),圧迫による皮膚障害・褥瘡(2 RCT:n=344)は1,000 人あたり114 人増加(95% CI:19 人増加~237 人増加)であり,予想される害は「小さい」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果の結果は介入により死亡を減少,人工呼吸器装着日数を短縮,ICU 滞在日数を増加させた.一方,望ましくない効果の結果は介入により気道や皮膚トラブルを増加させた.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定仰臥位から腹臥位に体位変換を行うには,通常よりも多くの人手が必要となるが,追加の高価な機材の購入は必要ないため,コストは最小限であると思われる.一方で,腹臥位により気道トラブルや皮膚障害発症の懸念があるが,その害は最小限であると思われる.また,公平性に関して,腹臥位治療は,通常のARDS 診療の範囲内の医療行為であると考えられるため,ARDS 管理に習熟した施設であれば可能である.一方,施設の習熟度,マンパワーにより安全性が不公平になる可能性がある.実行可能性に関して,国際疫学調査では重症ARDS 患者の33%にのみ腹臥位療法が施行されていた2).本邦でのエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されており,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「中等症および重症の成人ARDS 患者において,長時間の腹臥位を行うことを条件付きで推奨する」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.132 であった.パネル会議では,ランドマーク研究であるPROSEVA 研究3)において腹臥位群・対照群の両群で筋弛緩薬が併用されていたことに関しての議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.
付加的な考慮事項実施には腹臥位にある程度習熟した医療機関で行う必要がある.腹臥位を行う場合は,中等症・重症のARDS 患者に限定し,腹臥位施行時間は長時間(12 時間以上)を考慮するべきである.また,ランドマーク研究であるPROSEVA 研究3)において腹臥位群・対照群の両群で筋弛緩薬が併用されていた(腹臥位群91%,対照群82.3%)ことに留意が必要である. サブグループの検討事項 Subgroup considerations サブグループとして,腹臥位時間(12 時間以上),肺保護換気併用(1 回換気量≦8 mL/PBW),ベルリン定義による酸素化障害(中等症・重症のみ)で解析を行った.腹臥位時間(12 時間以上)(4 RCT:n=984)では,短期死亡に関する効果推定値は,腹臥位を行わない場合と比較して腹臥位でリスク差1,000 人あたり119 人減少(95% CI:185 人減少~35人減少)であった.肺保護換気併用(1 回換気量≦8 mL/PBW)(4 RCT:n=888)では,1,000人あたり118 人減少(95% CI:200 人減少~4 人減少)であった.ベルリン定義による酸素化障害(中等症・重症のみ)(4 RCT:n=984)では,1,000 人あたり119 人減少(95% CI:185 人減少~35 人減少)であった.以上,いずれのサブグループ(長時間の腹臥位,肺保護換気併用,中等症・重症の低酸素血症)でも,腹臥位の施行が死亡を改善する可能性が示唆された.サブグループの有益性に関しては,今後十分に検出力のある研究が必要であるが,現時点では,腹臥位を行う場合は,中等症・重症のARDS 患者に限定し,腹臥位施行時間は長時間(12 時間以上)を考慮するべきである. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 腹臥位はARDS 管理や腹臥位にある程度習熟した施設で施行するべきである.施行する際には,複数名のスタッフが必要であり,施設あるいは時間帯によっては施行不可能な場合もあることに留意が必要である.今回,SR で検討した大部分の研究で,組み入れ基準として,PaO2/FIO2比<150 mmHg を基準としており,AECC 基準,ベルリン定義におけるARDS の酸素化障害の基準とは異なることに注意が必要である. 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨4)では,「成人ARDS 患者(特に中等症・重症例)において,腹臥位管理を施行することを提案する(GRADE 2C,弱い推奨/低の確実性のエビデンス)」であった.関連する診療ガイドラインとして,『Surviving Sepsis Campaign 2016 のガイドライン』5)では,「敗血症でARDS を発症し,PaO2/FIO2比が150 mmHg 未満の成人患者には,仰臥位よりも腹臥位を用いることを推奨する(強い推奨/中等度の確実性のエビデンス)」と推奨されている. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 高リスク成人ARDS 患者において腹臥位を実施する場合,呼吸・循環をモニタリングしながら行う必要がある.腹臥位中は,気管チューブの閉塞や位置異常,点滴ラインの閉塞,眼球などの圧迫,体位による神経障害の可能性に注意する必要がある.腹臥位にあたっては患者家族への十分な説明・同意が必要である.推奨の実施にあたって臨床上の問題として腹臥位の有害事象について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある.
研究の可能性 Research priorities 長期的な予後,他の治療法(ECMO)との併用効果,腹臥位の最適な持続時間の検証が必要である.参考文献1) Guérin C, Albert RK, Beitler J, et al. Prone position in ARDS patients:why, when, how and for whom. Intensive Care Med 2020;46:2385‒96. 2) Guérin C, Beuret P, Constantin JM, et al. A prospective international observational prevalence study on prone positioning of ARDS patients:the APRONET(ARDS Prone Position Network)study. Intensive Care Med 2018;44:22‒37. 3) Guérin C, Reignier J, Richard JC, et al. Prone positioning in severe acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2013;368:2159‒68. 4) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the management of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 5) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock:2016. Intensive Care Med 2017;43: 304‒77.
背景,この問題の優先度 重症ARDS 患者にECMO 導入を行うことは,通常の人工呼吸器管理では維持が困難な重症呼吸不全に対するレスキュー効果や,肺損傷を最小限にすることで死亡の軽減が期待されている.しかし,適応やタイミング判断が難しく,また,合併症も多いことからECMO の有効性は確立していない.ECMO 導入と死亡の関係,そして,有害事象について明らかにすることは重要臨床課題である. 解 説 PICO 患者(P):成人ARDS 患者で,通常の人工呼吸 器管理に抵抗性の低酸素血症および高二酸化炭素血症のある患者.介入(I):ECMO(VA‒ECMO およびVV‒ ECMO)導入による治療(ECCO2R は含まない). 対照(C):通常の人工呼吸器管理のみによる治 療.アウトカム(O):60 日死亡,90 日死亡,脳卒 中. エビデンスの要約 SR の結果,重症ARDS 患者においてECMOを使用するか,従来の人工呼吸器管理のみでの治療を行うかを比較検討したRCT は2 つであった(CESAR 研究1)およびEOLIA 研究2)).これらの2 つのRCT の結果をメタ解析した.益のアウトカムとして,60 日死亡(2RCT: n=429)に関する効果推定値は,“対照”と比較して“介入”でリスク差133 人減少/1,000人(95%CI:204 人減少~43 人減少),90 日死亡(2RCT:n=429)に関する効果推定値は,“対照”と比較して“介入”でリスク差127 人減少/1,000 人(95%CI:200 人減少~ 1 2 1 2 領域D 呼吸器周辺治療 重症の成人ARDS 患者にECMO を行うべきか? CQ 36 重症の成人ARDS 患者においてECMO を実施することを条件付きで推奨す る(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 標準的な肺保護換気,および筋弛緩薬投与や腹臥位療法といった補助療法に対して抵抗性の重症の低酸素血症や高二酸化炭素血症がある場合には,ECMO の適応や患者搬送に関して,経験ある施設や専門家に判断を仰ぐことが望ましい. 推 奨 付帯事項
39 人減少)であった.以上より,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.一方,害のアウトカムとして脳卒中を評価した.その結果,E C M O の施行で脳卒中(1RCT:n=249)は40 人減少/1,000 人(95%CI:58 人減少~25 人増加)であった.しかし,介入により25 人多くなる可能性もあるために,結果としては「小さい」と判断した.また,「重要」なアウトカムではあるが出血関連合併症についても評価したところ, ECMO の施行で出血関連合併症(1RCT:n= 249)は179 人増加/1,000 人(95%CI:48 人増加~367 人増加)であった.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果と望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用して「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 ECMO を施行するためには,人工心肺装置および人工肺を含む回路が必要であり,そのコストが懸念される.英国で行われたARDS患者に対するECMO の有用性を検討したCESAR 研究1)では,ECMO にかかる費用を19,252 ポンド/1QALY(日本円で約270 万/1QALY)と試算している.同様のデータは本邦では示されてはいない.また,ECMO の導入および管理には専門的知識および技術を要する多職種のスタッフが複数人必要であり,各施設における人的リソースにも考慮する必要がある.特別な医療資機材を要するため,施設によってはその施行が現実的に困難な場合がある.特に,欧米においてはECMO 治療を集約化し, ECMO を施行できない施設で適応患者が発生した場合に,ECMO センターへ患者を搬送しECMO を施行する方法が行われている.本邦においても,ECMO プロジェクトが開始され, ECMO 治療の集約化が試みられている. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「重症の成人ARDS 患者においてECMO を実施することを条件付きで推奨する」が,中央値8.0点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では,出血関連合併症に対する懸念やECMO 施行のトレーニングや患者選定についての議論があった.その結果,パネル会議では再投票はなく最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 検討するべきサブグループはないが,ECMOを施行するべき抵抗性の重症の低酸素血症や高二酸化炭素血症の定義については決まったものはない.CESAR 研究においてはMurray score <3,または,pH<7.2 の非代償性高二酸化炭素血症を対象としている.また,EOLIA研究においては通常の人工呼吸器管理,および筋弛緩薬や腹臥位といった補助療法を行っても, 1 P/F 比<50 が3 時間以上,2 P/F 比<80 が6 時間以上,3 pH<7.25 およびPaCO2≧60 mmHg が6 時間以上続く,のいずれかの場合をECMO 導入基準としている.これらを参考に各施設において適応を判断する. 実施上の考慮事項 ECMO を施行するためには,人工心肺装置および人工肺を含む回路が必要であり,そのコストが懸念される.英国で行われたARDS患者に対するECMO の有用性を検討したCESAR 研 3 4 5 3 4
究1)では,ECMO にかかる費用を19,252 ポンド/1QALY(日本円で約270 万/1QALY)と試算している.同様のデータは本邦では示されてはいないため,今後検討される必要がある.また,ECMO の導入および管理には専門的知識および技術を要する多職種のスタッフが複数人必要であり,各施設における人的リソースにも考慮する必要がある.人的リソースの維持のためには,ある程度の症例数の曝露と,トラブルシューティングに対するシミュレーショントレーニングが必要と考える.各施設における実現可能性についてはすべての施設での施行というよりも,ECMO センターへの集約化が期待される. ECMO を施行する目的は,重症の低酸素血症または高二酸化炭素血症の患者に対して,人工肺による酸素化と換気の助けを受けて,自己肺での人工呼吸器管理においてlung rest を維持することにある.ECMO施行中の人工呼吸器設定について明確なプロトコルなどはないものの,少なくとも通常の肺保護換気は達成するよう設定を行う.また,ECMO 施行時は回路内凝固を防ぐために抗凝固療法が必須であり,適切な凝固モニタリングの上で出血合併症に注意する必要がある.また,異物挿入が伴うため感染合併症にも注意する.さらには,回路内凝固による突然のECMO 停止や人工肺やポンプ機能の低下等,機械的合併症にも習熟している必要があり,適宜トラブルシューティングに対するシミュレーショントレーニングが必要と考える. 関連する他の診療ガイドラインの記載 該当なし.治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたっての臨床上の問題としてECMO 使用による有害事象や費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 ECMO 中の人工呼吸器設定や凝固モニタリングなどの施行中の適切な管理方法については今後,更なる研究が期待される.また,コストベネフィットについては今後,本邦における検討が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome」「Acute Lung Injury」「Extracorporeal Membrane Oxygenation」をキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年5 月26 日までの文献を検索したところ1,649件の研究が同定され,スクリーニングの結果, 2 件1,2)のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Peek 20091), Combes 20182). 資料一覧 ・資料CQ36‒1 Search strategy.・資料CQ36‒2 フローダイアグラム.・資料CQ36‒3 Risk of bias.・資料CQ36‒4 Forest plot.・資料CQ36‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ36‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Peek GJ, Mugford M, Tiruvoipati R, et al. Efficacy and economic assessment of con- 参考文献
ventional ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure(CESAR):a multicentre randomised controlled trial. Lancet 2009;374:1351‒63. 2) Combes A, Hajage D, Capellier G, et al. Extracorporeal membrane oxygenation for severe acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2018;378:1965‒75.
資料CQ36—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/5/26) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 acute lung injur* [tiab] OR acute respiratory distress [tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 Extracorporeal Membrane Oxygenation[mh] #7 Oxygenators[mh] #8 Extracorporeal Membrane Oxygenation[tiab] #9 Oxygenator*[tiab] #10 extracorporeal lung assist[tiab] #11 extracorporeal life support[tiab] #12 ECMO[tiab] OR ECLA[tiab] OR ECLS[tiab] #13 #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #5 AND #13 #15 Controlled clinical trial[pt] #16 randomized[tiab] #17 placebo[tiab] #18 randomly [tiab] #19 trial[tiab] #20 groups [tiab] #21 systematic review[pt] #22 meta-analysis[pt] #23 review[pt] #24 #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 #25 #14 AND #24 #26 animals[mh] NOT humans[mh] #27 #25 NOT #26 CENTRAL(Search date:2020/5/26) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 acute lung injur* [tiab] OR acute respiratory distress [tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 Extracorporeal Membrane Oxygenation[mh] #7 Oxygenators[mh] #8 Extracorporeal Membrane Oxygenation[tiab] #9 Oxygenator*[tiab] #10 extracorporeal lung assist[tiab] #11 extracorporeal life support[tiab] #12 ECMO[tiab] OR ECLA[tiab] OR ECLS[tiab]
#13 #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #5 AND #13 #15 Controlled clinical trial[pt] #16 randomized[tiab] #17 placebo[tiab] #18 randomly [tiab] #19 trial[tiab] #20 groups [tiab] #21 systematic review[pt] #22 meta-analysis[pt] #23 review[pt] #24 #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 #25 #14 AND #24 #26 animals[mh] NOT humans[mh] #27 #25 NOT #26 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/ 5/ 26) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #4 #1 OR #2 OR #3 #5 ECMO/TH OR ECMO/TA OR 膜型体外循環人工肺/TA
資料CQ36—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,649 734件100件815件 重複した研究 n=19 除外基準に該当した研究 n=1,613 除外基準に該当した研究n=15理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる2件9件1件3件 検索で同定された研究 n=1,649 重複研究を除外した研究 n=1,630 フルテキストで適格性を評価した研究 n=17 系統的レビューに組み入れた研究 n=2 メタ解析に組み入れた研究 n=2
資料CQ36—3 Risk of bias 60 日死亡90 日死亡 入院日数人工呼吸器非使用日数
脳卒中 出血関連合併症SF-36
資料CQ36—4 Forest plot 60 日死亡 90 日死亡 入院日数 人工呼吸器非使用日数
脳卒中 出血関連合併症 SF-36
資料CQ36—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討ECMO CMV相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 60 日死亡 2 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし73/214 (34.1%) 102/215 (47.4%) RR 0.72 (0.57~0.91) 1,000 人あたり133 人減少(204 人減少~ 43 人減少) +++○ 中重大 90 日死亡 2 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし77/214 (36.0%) 105/215 (48.8%) RR 0.74 (0.59~0.92) 1,000 人あたり127 人減少(200 人減少~ 39 人減少) +++○ 中重大 入院日数 2 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし213 215 —平均14.1 日延長(8.22 日延長~ 19.98 日延長) +++○ 中重要 VFD* 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし124 125 —平均8 日延長(0.91 日延長~ 15.09 日延長) ++○○ 低重要 脳卒中 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし3/124 (2.4%) 8/125 (6.4%) RR 0.38 (0.10~1.39) 1,000 人あたり40 人減少(58 人減少~ 25 人増加) ++○○ 低重大 SF—36 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし90 90 —平均4.5 点高い (3 点高い~ 6 点高い) ++○○ 低重要 出血関連合併症 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし57/124 (46.0%) 35/125 (28.0%) RR 1.64 (1.17~2.31) 1,000 人あたり179 人増加(48 人増加~ 367 人増加) ++○○ 低重要 *28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比.説 明a.採用した2 つのRCT のうち1 つは治療途中で35/128 人がクロスオーバーされていること,もう1 つはECMO介入群のうち22/89 人がECMO 導入を行っていない. b.サンプルサイズが小さい.
資料CQ36—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ36:重症の成人ARDS 患者にECMO を行うべきか? 集 団:成人ARDS 患者で,通常の人工呼吸器管理に抵抗性の低酸素血症や高二酸化炭素血 症のある患者 介 入: Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO(VA—ECMO およびVV—ECMO)導 入による治療(ECCO2R は含まない) 比較対照:通常の人工呼吸器管理のみによる治療主要なアウトカム:60 日死亡,90 日死亡,脳卒中セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:重症ARDS 患者にECMO 導入を行うことで,通常の人工呼吸器管理では維持が困 難な重症呼吸不全に対するレスキュー効果や,肺損傷を最小限にすることで死亡の軽減が期待される.しかし,適応やタイミング判断が難しく,また,合併症も多いことからECMO の有効性は確立していない.ECMO 導入と死亡の関係,そして,有害事象について明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない重症ARDS 患者にECMO 導入を行うことで,通常の人工呼吸器管理で は維持が困難な重症呼吸不全に対するレスキュー効果や,肺損傷を最小限にすることで死亡の軽減が期待される.しかし,適応やタイミング判断が難しく,また,合併症も多いことからECMO の有効性は確立していない.ECMO 導入と死亡の関係,そして,有害事象について明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が2 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,60 日死亡(2 RCT:n=429)に関する効果推定値は,“対照”と比較して“介入”で1,000 人あたり133 人減少(95% CI:204 人減少~43 人減少),90 日死亡(2 RCT:n=429)に関する効果推定値は,“対照”と比較して“介入”で1,000 人あたり127 人減
少(95% CI:200 人減少~39 人減少)であった.以上より,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとしては脳卒中を重大なアウトカムとして評価した.そ の結果,ECMO の施行で脳卒中(1 RCT:n=249)は1,000 人あたり40 人減少(95% CI:58 人減少~25 人増加)であった.しかし,介入により25 人多くなる可能性もあるために,結果としては望ましくない効果は「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性死亡(60 日)重大+++○ 中 死亡(90 日)重大+++○ 中 脳卒中重大++○○ 低 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果と望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用して「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある重要な不確実性や多様性はないと判断した
○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム通常の治療 (対照) ECMO に よる治療(介入)絶対差 (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 死亡(60 日)102/215 (47.4%) 73/214 (34.1%) 133 人減少/ 1,000 人(204 人減少~ 43 人減少) 0.72 (0.57~0.91) 死亡(90 日)105/215 (48.8%) 77/214 (36.0%) 127 人減少/ 1,000 人(200 人減少~ 39 人減少) 0.74 (0.59~0.92) 脳卒中8/125 (6.4%) 3/124 (2.4%) 40 人減少/ 1,000 人(58 人減少~ 25 人増加) 0.38 (0.10~1.39) 介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない特別な医療資機材を要するが,本邦においては重症ARDS を診療する施 設では有している場合が多く,選択肢として主要なステークホルダーにはたぶん受け入れられる
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない特別な医療資機材を要するため,施設によってはその施行が現実的に困 難な場合がある.一方で,特に欧米においてはECMO 治療を集約化することで,ECMO を施行できない施設で適応患者が発生した場合に, ECMO センターへ患者を搬送しECMO を施行する方法が行われている.本邦においても,ECMO プロジェクトが開始され,ECMO 治療の集約化が試みられている 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん介入が 有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 重症の成人ARDS 患者においてECMO を実施することを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 付帯事項 標準的な肺保護換気,および筋弛緩薬投与や腹臥位療法といった補助療法に対して抵抗性の重症の低酸素血症や高二酸化炭素血症がある場合には,ECMO の適応や患者搬送に関して,経験ある施設や専門家に判断を仰ぐことが望ましい. 理 由 Justification 疑 問 重症の成人ARDS 患者にECMO を行うべきか?患 者 成人ARDS 患者で,通常の人工呼吸器管理に抵抗性の低酸素血症および高二酸化炭素血症のある患者.介 入 ECMO(VA‒ECMO およびVV‒ECMO)導入による治療(ECCO2R は含まない).対 照 通常の人工呼吸器管理のみによる治療.アウトカム 60 日死亡,90 日死亡,脳卒中.エビデンスの要約SR の結果,重症ARDS 患者においてECMO を使用するか,従来の人工呼吸器管理のみでの治療を行うかを比較検討したRCT は2 つであった(CESAR 研究1)およびEOLIA 研究2)).これらの2つのRCT の結果をメタ解析した.益のアウトカムとして,60 日死亡(2 RCT:n=429)に関する効果推定値は,ECMO の使用で1,000 人あたり133 人減少(95% CI:204 人減少~43 人減少)し,90 日死亡(2 RCT:n=429)に関する効果推定値は,1,000 人あたり127 人減少(95% CI:200 人減少~39 人減少)した.以上より,介入による望ましい効果を「中程度」と判断した.一方,害のアウトカムとして脳卒中を評価した.その結果,ECMO の施行で脳卒中(1 RCT: n=249)は1,000 人あたり40 人減少(95% CI:58 人減少~25 人増加)したが,介入により25人多くなる可能性を考慮し,結果として介入による望ましくない効果は「小さい」と判断した.また,「重要」なアウトカムではあるが出血関連合併症(1 RCT:n=249)に関する効果推定値は1,000 人あたり179 人増加(95% CI:48 人増加~367 人増加)した.
以上から,効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果と望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用して「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定ECMO を施行するためには,人工心肺装置および人工肺を含む回路が必要であり,そのコストが懸念される.英国で行われたARDS 患者に対するECMO の有用性を検討したCESAR 研究1)では, ECMO にかかる費用を19,252 ポンド/1QALY(日本円で約270 万/1QALY)と試算している.同様のデータは本邦では示されてはいない.また,ECMO の導入および管理には専門的知識および技術を要する多職種のスタッフが複数人必要であり,各施設における人的リソースにも考慮する必要がある.特別な医療資機材を要するため,施設によってはその施行が現実的に困難な場合がある.欧米においてはECMO 治療を集約化することで,ECMO を施行できない施設で適応患者が発生した場合に,ECMO センターへ患者を搬送しECMO を施行する方法が行われている.本邦においても, ECMO プロジェクトが開始され,ECMO 治療の集約化が試みられている.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「重症の成人ARDS 患者においてECMO を実施することを条件付きで推奨する」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では,出血関連合併症に対する懸念や,ECMO 施行のトレーニングや患者選定についての議論があった.その結果,パネル会議では再投票はなく最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 検討するべきサブグループはないが,ECMO を施行するべき抵抗性の重症の低酸素血症や高二酸化炭素血症の定義については決まったものはない.CESAR 研究においてはMurray score<3,または,pH<7.2 の非代償性高二酸化炭素血症を対象としている.また,EOLIA 研究においては通常の人工呼吸器管理および,筋弛緩薬や腹臥位といった補助療法を行っても,1 P/F 比<50 が3 時間以上,2 P/F 比<80 が6 時間以上,3 pH<7.25 およびPaCO2≧60 mmHg が6 時間以上続く,のいずれかの場合をECMO 導入基準としている.これらを参考に各施設において適応を判断する. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ECMO を施行するためには,人工心肺装置および人工肺を含む回路が必要であり,そのコストが懸念される.英国で行われたARDS 患者に対するECMO の有用性を検討したCESAR 研究1)では, ECMO にかかる費用を19,252 ポンド/1QALY(日本円で約270 万/1QALY)と試算している.同様のデータは本邦では示されてはいないため,今後検討される必要がある.また,ECMO の導入および管理には専門的知識および技術を要する多職種のスタッフが複数人必要であり,各施設における人的リソースにも考慮する必要がある.人的リソースの維持のためには,ある程度の症例数の曝露と,トラブルシューティングに対するシミュレーショントレーニングが必要と考える.各施設における実現可能性についてはすべての施設での施行というよりもECMO センターへの集約化が期待される. ECMO を施行する目的は,重症の低酸素血症または高二酸化炭素血症の患者に対して,人工肺による酸素化と換気の助けを受けて,lung rest を維持することにある.ECMO 中の人工呼吸器設定
については明確なものはないものの,少なくとも通常の肺保護換気は達成するよう設定を行う.また,ECMO 施行時は回路内凝固を防ぐために抗凝固療法が必須であり,適切な凝固モニタリングの上で出血合併症に注意する必要がある.また,異物挿入が伴うため感染合併症にも注意する.さらには,回路内凝固による突然のECMO 停止や人工肺やポンプ機能の低下など,機械的合併症にも習熟している必要があり,適宜トラブルシューティングに対するシミュレーショントレーニングが必要と考える. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっての臨床上の問題としてECMO 使用による有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities ECMO 中の人工呼吸器設定や凝固モニタリングなどの施行中の適切な管理方法については今後更なる研究が期待される.また,コストベネフィットについては今後本邦における検討が必要である.参考文献1) Peek GJ, Mugford M, Tiruvoipati R, et al. Efficacy and economic assessment of conventional ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure(CESAR):a multicentre randomised controlled trial. Lancet 2009; 374:1351‒63. 2) Combes A, Hajage D, Capellier G, et al. Extracorporeal membrane oxygenation for severe acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2018;378:1965‒75.
背景,この問題の優先度 気管切開は気管挿管に比べて死腔の減少や鎮静鎮痛薬の減量,声帯損傷の回避などの利点がある1,2).しかし,気管切開は侵襲的であり出血や気道狭窄による抜去困難の可能性もある. 14 日以上の気管挿管には気管切開を行うことが一般的であるが,それより早期の気管切開により,気管切開の利点が増大し,人工呼吸器装着日数やVAP が減少し予後が改善する可能性が報告されている3).したがって,人工呼吸器装着が長期にわたる可能性が高いARDS患者において,早期気管切開が患者の予後を改善するかを明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い.なお,現時点では,小児ARDS患者での早 期気管切開を検討した研究は存在しないため,成人ARDS のみを対象とした. 解 説 PICO 患者(P):人工呼吸器管理が必要な成人ARDS 患者.介入(I):早期気管切開(外科的,経皮的を問 わない)実施.対照(C):早期気管切開(外科的,経皮的を問 わない)非実施.アウトカム(O):死亡(短期),人工呼吸器 関連肺炎(VAP),人工呼吸器非使用日数(VFD),気管切開孔の出血,気管切開孔の 1 2 1 領域D 呼吸器周辺治療 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか? CQ 37 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うことを条件付きで推奨する (条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 早期気管切開の明確な定義はなく,多くの研究では人工呼吸開始後48 時間以内から10 日以内と定義されており,全身状態が安定すれば早期気管切開が考慮される.一方,早期気管切開によって,本来気管切開が不要な患者に対して施行してしまう懸念がある.また,高濃度酸素,高い気道内圧あるいは高いPEEP を要しているARDS 患者では,今回のSR で集積された研究の患者群よりも,気管切開そのものの危険性が高い可能性もあり,本推奨の患者への適応には十分な検討が必要である. 推 奨 付帯事項
感染. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したランダム化比較試験(RCT)が14 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,短期死亡(14RCT: n=2,887)に関する効果推定値は,早期気管切開を行わない場合と比較して早期気管切開でリスク差37 人減少/1,000 人(95% CI:70 人減少~0),VAP(8RCT:n=1,527)は,リスク差67 人減少/1,000 人(95% CI:120 人減少~5 人増加),VFD(4RCT:n=1,243)は,平均差1.2 日延長(95% CI:0.57 日延長~ 1.82 日延長)であった.以上から,介入によ る望ましい効果を「小さい」と判断した.一方,害のアウトカムとして,気管切開孔の出血(5RCT:n=1,715)に関する効果推定値は,早期気管切開を行わない場合と比較して早期気管切開でリスク差7 人増加/1,000 人(95% CI:5 人減少~30 人増加),気管切開孔の感染(4RCT:n=816)は,リスク差12 人増加/ 1,000 人(95% CI:6 人減少~54 人増加)であり,予想される害は,「わずか」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 本邦における気管切開術の診療報酬点数は2,570 点(25,700 円)である.気管切開術は通常診療の範囲内の医療行為であり,追加の機 材の購入や人材確保は必要ないため,介入による弊害は少ないと考えられる.一方で,早期気管切開により不必要に気管切開が施行される可能性も考えられる.また,医療資源の公平性に関して,検討に使用されたエビデンスはないが,医療資源の分配に懸念はなく,通常診療の範囲内の医療行為である.実行可能性に関して,検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されており,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うことを提案する」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では,早期気管切開の定義や推奨の方向性に関しての議論があった.今回のSR・メタ解析の結果からは早期気管切開が予後を改善する可能性が示された.一方,エビデンスの確実性は「非常に低」であり,今回の推奨を受けて,ルーチンの早期気管切開が増加することによる弊害(不要な気管切開,関連するコストの増大)が懸念された.その結果,パネル会議で「成人ARDS患者において,早期気管切開を行うことを提案する」について再投票を行い,中央値8.0 点,見解不一致指数0.000 で最終的に合意に至った. サブグループの検討事項 ARDS 患者では,今回検討された長期の人工呼吸器管理が予想される患者(頭部外傷など)よりも一般的に重症度が高く,予後は不良である点に留意が必要である.早期気管切開の明確な定義はなく,研究間において48 時間以内から10 日以内のものまで幅がある.サブグループとして気管切開のタイミングでの検討が必要 2 3 4 5 3
である. 実施上の考慮事項 重症ARDS患者においては,高濃度酸素,高い気道内圧あるいは高いPEEP を要しているため十分な準備を行い,ICU もしくは手術室で呼吸・循環をモニタリングしながら熟練した術者が気管切開を行う必要がある.その施行にあたっては患者家族への十分な説明・同意が必要である. 関連する他の診療ガイドラインの記載 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨4)では,「成人ARDS 患者において,早期気管切開を行わないことを提案する(GRADE 2C,弱い推奨/低の確実性のエビデンス)付帯事項:上気道閉塞の遷延が予想される患者,挿管を維持するために要する鎮静・鎮痛薬による循環動態不安定やリハビリの遅延などが生じている患者など,一部症例では早期気管切開に利がある可能性は捨てきれないが,すべての症例で早期気管切開を行うことは勧められない」であった.前回の診療ガイドライン4)では,検討したアウトカムは死亡,VAP のみであったが,本診療ガイドラインでは短期死亡, VAP,VFD,気管切開孔の出血・感染が検討されており,より多角的な面から早期気管切開の益と害が検討されている.一方で,2015 年のCochrane データベースのSR5)と同様に,エビデンスの確実性が非常に低く,推奨の方向性の決定に苦慮した.これは,研究間の臨床的および方法論的な不均一性が,エビデンスの確実性を低下させていると考えられた.よって,この推奨内容を臨床現場に適応する場合は,症例ごとに十分な検討が必要である.具体的には,重症患者において,気管切開は,明確な臨床適応がある場合に,患者の予後,QOL を考慮して,集学的評価を行った上で行うべきである6). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として早期気管切開に伴う有害事象について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 ARDS 患者を対象とした適切な介入のタイミングを検討する研究が必要である.また,気管切開術の手法(外科的気管切開と経皮的気管切開)を検討した研究も必要である5). 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome」「Tracheostomy」「Tracheotomy」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年5 月26 日までの文献を検索したところ2,408 件の研究が同定され,スクリーニングの結果14 件7‒20)のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Sugerman 19977), Saffle 20028), Bouderka 20049), Rumbak 200410), Blot 200811), Terragni 201012), Trouillet 201113), Koch 201214), Zheng 201215), Young 201316), Diaz‒Prieto 201417), Dunham 201418), Mohamed 201419), Yadav 201720). 資料一覧 ・資料CQ37‒1 Search strategy.・資料CQ37‒2 フローダイアグラム.・資料CQ37‒3 Risk of bias.・資料CQ37‒4 Forest plot.・資料CQ37‒5 エビデンスプロファイル. 4 5 6 7 8 9 10
・資料CQ37‒6 Evidence‒to‒Decision. 1) Cheung NH, Napolitano LM. Tracheostomy:epidemiology, indications, timing, tech- nique, and outcomes. Respir Care 2014;59:895‒915. 2) Freeman BD, Morris PE. Tracheostomy practice in adults with acute respiratory fail- ure. Crit Care Med 2012;40:2890‒6. 3) de Franca SA, Tavares WM, Salinet ASM, et al. Early tracheostomy in severe trau- matic brain injury patients:a meta‒analysis and comparison with late tracheostomy. Crit Care Med 2020;48:e325‒31. 4) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 5) Andriolo BN, Andriolo RB, Saconato H, et al. Early versus late tracheostomy for crit- ically ill patients. Cochrane database Syst Rev 2015;1:CD007271. 6) Aquino Esperanza J, Pelosi P, Blanch L. What’s new in intensive care:tracheostomy‒ what is known and what remains to be determined. Intensive Care Med 2019;45: 1619‒21. 7) Sugerman HJ, Wolfe L, Pasquale MD, et al. Multicenter, randomized, prospective trial of early tracheostomy. J Trauma 1997;43:741‒7. 8) Saffle JR, Morris SE, Edelman L. Early tracheostomy does not improve outcome in burn patients. J Burn Care Rehabil 2002;23:431‒8. 9) Bouderka MA, Fakhir B, Bouaggad A, et al. Early tracheostomy versus prolonged endotracheal intubation in severe head injury. J Trauma 2004;57:251‒4. 10) Rumbak MJ, Newton M, Truncale T, et al. A prospective, randomized, study compar- ing early percutaneous dilational tracheotomy to prolonged translaryngeal intubation (delayed tracheotomy)in critically ill medical patients. Crit Care Med 2004;32: 1689‒94. 11) Blot F, Similowski T, Trouillet JL, et al. Early tracheotomy versus prolonged endotra- cheal intubation in unselected severely ill ICU patients. Intensive Care Med 2008; 34:1779‒87. 12) Terragni PP, Antonelli M, Fumagalli R, et al. Early vs late tracheotomy for prevention of pneumonia in mechanically ventilated adult ICU patients:a randomized controlled trial. JAMA 2010;303:1483‒9. 13) Trouillet JL, Luyt CE, Guiguet M, et al. Early percutaneous tracheotomy versus pro- longed intubation of mechanically ventilated patients after cardiac surgery:a randomized trial. Ann Intern Med 2011;154:373‒83. 14) Koch T, Hecker B, Hecker A, et al. Early tracheostomy decreases ventilation time but has no impact on mortality of intensive care patients:a randomized study. Langenbecks Arch Surg 2012;397:1001‒8. 15) Zheng Y, Sui F, Chen XK, et al. Early versus late percutaneous dilational tracheostomy in critically ill patients anticipated requiring prolonged mechanical ventilation. Chin Med J(Engl)2012;125:1925‒30. 16) Young D, Harrison DA, Cuthbertson BH, et al. Effect of early vs late tracheostomy placement on survival in patients receiving mechanical ventilation:the TracMan randomized trial. JAMA 2013;309:2121‒9. 参考文献
17) Diaz‒Prieto A, Mateu A, Gorriz M, et al. A randomized clinical trial for the timing of tracheotomy in critically ill patients:factors precluding inclusion in a single center study. Crit Care 2014;18:585. 18) Dunham CM, Cutrona AF, Gruber BS, et al. Early tracheostomy in severe traumatic brain injury:evidence for decreased mechanical ventilation and increased hospital mortality. Int J Burns Trauma 2014;4:14‒24. 19) Mohamed KAE, Mousa AY, ElSawy AS, et al. Early versus late percutaneous tracheos- tomy in critically ill adult mechanically ventilated patients. Egypt J Chest Dis Tuberc 2014;63:443‒8. 20) Yadav S, Yadav G, Bharti AK, et al. Effects of early verses late percutaneous dilata- tional tracheostomy on mechanically ventilated ICU patients. Res J Pharm Biol Chem Sci 2017;8:2078‒82.
資料CQ37—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/5/26) #1 Respiration, Artificial[mh] #2 Mechanical Ventilation* [tiab] #3 #1 OR #2 #4 Tracheostomy[mh] #5 Tracheotomy[mh] #6 Tracheostom* [tiab] #7 Tracheotom[tiab] #8 Prone Position[mh] OR prone position*[tiab] #9 #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 #10 #3 AND #9 #11 Controlled clinical trial[pt] #12 Randomized[tiab] #13 Placebo[tiab] #14 Randomly[tiab] #15 Trial[tiab] #16 Groups [tiab] #17 systematic review [pt] #18 meta-analysis [pt] #19 Review [pt] #20 #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #19 #21 #10 AND #20 #22 Animals[mh] NOT humans[mh] #23 #21 NOR #22
CENTRAL(Search date:2020/4/6) #1 [mh”Respiration, Artifical”] #2 Mechanical NEXT Ventilation*:ti,ab #3 #1 OR #2 #4 [mh Tracheostomy] #5 #[mh Tracheotomy] #6 Tracheostom*:ti,ab #7 Tracheotom*:ti,ab #8 [mh”Prone Position”] OR prone NEXT position*:ti,ab #9 {OR #4- #8] #10 #3 AND #9 #11 [mh animals] NOT [mh humans] #12 #10 NOT #11
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/ 6/1) #1人工呼吸/TH OR 人工呼吸/TA OR 機械的換気/TA #2気管開口術/TH OR 気管開口/TA
#3気管切開術/TH OR 気管切開/TA #4 #2 OR #3 #5 #1 AND #4 #6 (#5) AND (PT= 会議録除く) #7ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #8比較試験/AL #9臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #10プラセボ/TH OR プラセボ/AL #11対照/AL #12コントロール/AL #13臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #14 #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 #15 #6 AND #14
資料CQ37—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=2,408 1,718件557件133件 重複した研究 n=268 除外基準に該当した研究 n=2,005 除外基準に該当した研究n=71理由:・ 言語が異なる・ 研究デザインが異なる・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 重複5件56件4件2件4件 検索で同定された研究 n=2,408 重複研究を除外した研究 n=2,140 フルテキストで適格性を評価した研究 n=135 系統的レビューに組み入れた研究 n=64 メタ解析に組み入れた研究 n=14
資料CQ37—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器関連肺炎 人工呼吸器非使用日数看護師が快適と評価した平均日数
気管切開部の出血気管切開部の感染
資料CQ37—4 Forest plot 死 亡 人工呼吸器関連肺炎 人工呼吸器非使用日数
看護師が快適と評価した平均日数 気管切開部の出血 気管切開部の感染
資料CQ37—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討早期気管 切開を行う早期気管 切開を行わない相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 死 亡* 14 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a 深刻で ないなし440/1,462 (30.1%) 476/1,425 (33.4%) RR 0.89 (0.79~1.00) 1,000 人あたり37 人減少(70 人減少~ 0 人減少) +++○ 中重大 人工呼吸器関連肺炎(VAP) 8 ランダム 化試験深刻b深刻c深刻a深刻dなし163/766 (21.3%) 203/761 (26.7%) RR 0.75 (0.55~1.02) 1,000 人あたり67 人減少(120 人減少~ 5 人増加) +○○○非常に低重大 VFD** 4 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻a 深刻で ないなし621 622 —平均1.2 日延長(0.57 日延長~ 1.82 日延長) ++○○ 低重大 看護師が快適と評価した平均日数(1~15 日) 1 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻a深刻eなし109 107 —平均1.4 日延長(0.3 日延長~ 2.5 日延長) +○○○非常に低重要 気管切開部の出血 5 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻a 非常に 深刻fなし22/858 (2.6%) 15/857 (1.8%) RR 1.42 (0.74~2.71) 1,000 人あたり7 人増加(5 人減少~ 30 人増加) +○○○非常に低重大 気管切開部の感染 4 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻a 非常に 深刻fなし16/407 (3.9%) 8/409 (2.0%) RR 1.62 (0.70~3.74) 1,000 人あたり12 人増加(6 人減少~ 54 人増加) +○○○非常に低重大 呼吸仕事量 0 — — — — —— — — — 推定不可能 — — 重要 *28 日死亡,ICU 死亡,院内死亡,呼吸仕事量はアウトカム報告がなかった.**28 日間の人工呼吸器非使用日数(VFD). CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.集団の差異(解析対象集団がARDS 以外も含む)また,介入・比較対照に関する差異(早期気管切開の定義,対照群の設定)のため,1 段階ダウンした. b.リスクオブバイアス(risk of bias)(患者医療者の盲検化が困難,アウトカム評価者の盲検化が不十分)のため, 1 段階ダウンした. c.I2=63%と異質性が高いため,1 段階ダウンした. d.95% CI の幅が広く,CI の下端で臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは「深刻」と判断し1 段階ダウンした. e.総サンプルサイズが216 であり,OIS を満たさない.よって十分な検出力がないと考え,1 段階ダウンした. f.95% CI の幅が広く,CI の上端・下端で臨床の判断が変化すると考えられた.以上より,全体としての不精確さは 「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンした.
資料CQ37—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ37:成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか? 集 団:成人ARDS 患者介 入:早期気管切開(外科的,経皮的を問わない)実施比較対照:早期気管切開(外科的,経皮的を問わない)非実施主要なアウトカム:死亡,人工呼吸器関連肺炎(VAP),人工呼吸器非使用日数(VFD),気管切開部の 出血,気管切開部の感染 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:気管切開は気管挿管に比べて死腔の減少や鎮静鎮痛薬の減量,声帯損傷の回避など の利点がある.しかし,気管切開は侵襲的であり出血や気道狭窄による抜去困難の可能性もある.14 日以上の気管挿管には気管切開を行うことが一般的であるが,それより早期の気管切開により,気管切開の利点が増大し,人工呼吸器装着日数やVAP が減少し予後が改善する可能性が報告されている.したがって,人工呼吸器装着が長期にわたる可能性が高いARDS 患者において,早期気管切開が患者の予後を改善するかを明らかにすることは重要臨床課題である.現時点では,小児ARDS 患者での早期気管切開を検討した研究は存在しないため,成人ARDS のみを対象とした 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない気管切開は気管挿管に比べて死腔の減少や鎮静鎮痛薬の減量,声帯損傷の回避などの利点がある1,2).しかし,気管切開は侵襲的であり出血や気 道狭窄による抜去困難の可能性もある.14 日以上の気管挿管には気管切開を行うことが一般的であるが,それより早期の気管切開により,気管切開の利点が増大し,人工呼吸器装着日数やVAP が減少し予後が改善する可能性が報告されている3).したがって,人工呼吸器装着が長期にわたる可能性が高いARDS 患者において,早期気管切開が患者の予後を改善するかを明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度はおそらく高い.なお,現時点では,小児ARDS 患者での早期気管切開を検討した研究は存在しないため,成人ARDS のみを対象とした.
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が14 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した益のアウトカムとして,短期死亡(14 RCT:n=2,887)に関する効果推定値は,早期気管切開を行わない場合と比較して早期気管切開で1,000 人あたり37 人減少(95% CI:70 人減少~0 人),VAP(8 RCT: n=1,527)は,1,000 人あたり67 人減少(95% CI:120 人減少~5 人増加),VFD(4 RCT:n=1,243)は,平均差1.2 日延長(95% CI: 0.57 日延長~1.82 日延長)であった.以上より,介入による望ましい効 果を「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,気管切開孔の出血(5 RCT:n=1,715)に関す る効果推定値は,早期気管切開を行わない場合と比較して早期気管切開で1,000 人あたり7 人増加(95% CI:5 人減少~30 人増加),気管切開孔の感染(4 RCT:n=816)は,1,000 人あたり12 人増加(95% CI:6 人減少~54 人増加)であり,予想される害は,「わずか」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 死 亡重大+++○ 中 VAP重大+○○○非常に低VFD(28 日)重大++○○ 低 気管切開部の出血重大+○○○ 非常に低 気管切開部の感染重大+○○○ 非常に低
全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない検討に使用されたエビデンスはないが,ばらつきは小さいと思われる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム早期気管 切開を行わない(対照)早期気管 切開を行う(介入)絶対差 (95% CI)相対効果 (RR) (95% CI) 死 亡* 476/1,425 (33.4%) 440/1,462 (30.1%) 37 人減少/1,000 人(70 人減少~0 人) 0.89 (0.79~ 1.00) VAP 203/761 (26.7%) 163/766 (21.3%) 67 人減少/1,000 人 (120 人減少~ 5 人増加) 0.75 (0.55~ 1.02) VFD (28 日) — —平均1.2 日延長 (0.57 日延長~ 1.82 日延長) 気管切開孔の出血15/857 (1.8%) 22/858 (2.6%) 7 人増加/1,000 人 (5 人減少~ 30 人増加) 1.42 (0.74~ 2.71)
気管切開孔の感染8/409 (2.0%) 16/407 (3.9%) 12 人増加/1,000 人 (6 人減少~ 54 人増加) 1.62 (0.70~ 3.74) *死亡:28 日死亡,ICU 死亡,院内死亡 介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されてお り,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されてお り,実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない
エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 早期気管切開の明確な定義はなく,多くの研究では人工呼吸開始後48 時間以内から10日以内と定義されており,全身状態が安定すれば早期気管切開が考慮される.一方,早期気管切開によって,本来気管切開が不要な患者に対して施行してしまう懸念がある.また,高濃度酸素,高い気道内圧あるいは高いPEEP を要しているARDS 患者では,今回のSR で集積された研究の患者群よりも,気管切開そのものの危険性が高い可能性もあり,本推奨の患者への適応には十分な検討が必要である.
理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか?患 者 人工呼吸器管理が必要な成人ARDS 患者.介 入 早期気管切開(外科的,経皮的を問わない)実施.対 照 早期気管切開(外科的,経皮的を問わない)非実施.アウトカム 死亡(短期),VAP,VFD,気管切開孔の出血,気管切開孔の感染.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が14 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,短期死亡(14 RCT:n=2,887)に関する効果推定値は,早期気管切開を行わない場合と比較して早期気管切開で1,000 人あたり37 人減少(95% CI:70 人減少~0 人), VAP(8 RCT:n=1,527)は,1,000 人あたり67 人減少(95% CI:120 人減少~5 人増加),VFD (4 RCT:n=1,243)は,平均差1.2 日延長(95% CI:0.57 日延長~1.82 日延長)であった.以上から,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.一方,害のアウトカムとして,気管切開孔の出血(5 RCT:n=1,715)に関する効果推定値は,早期気管切開を行わない場合と比較して早期気管切開で1,000 人あたり7 人増加(95% CI:5 人減少~30 人増加),気管切開孔の感染(4 RCT:n=816)は,1,000 人あたり12 人増加(95% CI:6 人減少~54 人増加)であり,予想される害は,「わずか」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定本邦における気管切開術の診療報酬点数は2,570 点(25,700 円)である.気管切開術は通常診療の範囲内の医療行為であり,追加の機材の購入や人材確保は必要ないため,介入による弊害は少ないと考えられる.一方で,早期気管切開により不必要に気管切開が施行される可能性も考えられる.また,医療資源の公平性に関して,検討に使用されたエビデンスはないが,医療資源の分配に懸念はなく,通常診療の範囲内の医療行為である.実行可能性に関して,検討に使用されたエビデンスはないが,すでに通常診療で実行されており,コストなどを考慮しても十分実行可能と思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うことを提案する」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.292 であった.パネル会議では,早期気管切開の定義や推奨の方向性に関しての議論があった.今回のSR・メタ解析の結果からは早期気管切開が予後を改善する可能性が示された.一方,エビデンスの確実性は「非常に低」であり,今回の推奨を受けて,ルーチンの早期気管切開が増加することによる弊害(不要な気管切開,関連するコストの増大)が懸念された.その結果,パネル会議で「成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うことを提案する」について再投票を行い,中央値8.0 点,見解不一致指数0.000 で最終的に合意に至った.
付加的な考慮事項ARDS 患者では,今回検討された長期の人工呼吸器管理が予想される患者(頭部外傷など)よりも一般的に重症度が高く,予後は不良である点に留意が必要である. サブグループの検討事項 Subgroup considerations ARDS 患者では,今回検討された長期の人工呼吸器管理が予想される患者(頭部外傷など)よりも一般的に重症度が高く,予後は不良である点に留意が必要である.早期気管切開の明確な定義はなく,研究間において48 時間以内から10 日以内のものまで幅がある.サブグループとして気管切開のタイミングでの検討が必要である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 重症ARDS 患者においては,高濃度酸素,高い気道内圧あるいは高いPEEP を要しているため十分な準備を行い,ICU もしくは手術室で呼吸・循環をモニタリングしながら熟練した術者が気管切開を行う必要がある.その施行にあたっては患者家族への十分な説明・同意が必要である. 2016 年の本邦の『ARDS 診療ガイドライン』の推奨4)では,「成人ARDS 患者において,早期気管切開を行わないことを提案する(GRADE 2C,弱い推奨/低の確実性のエビデンス)付帯事項:上気道閉塞の遷延が予想される患者,挿管を維持するために要する鎮静・鎮痛薬による循環動態不安定やリハビリの遅延などが生じている患者など,一部症例では早期気管切開に利がある可能性は捨てきれないが,すべての症例で早期気管切開を行うことは勧められない」であった.前回の診療ガイドライン4)では,検討したアウトカムは死亡,VAP のみであったが,本診療ガイドラインでは短期死亡,VAP,VFD,気管切開孔の出血・感染が検討されており,より多角的な面から早期気管切開の益と害が検討されている.一方で,2015 年のCochrane データベースのSR5)と同様に,エビデンスの確実性が非常に低く,推奨の方向性の決定に苦慮した.これは,研究間の臨床的および方法論的な不均一性が,エビデンスの確実性を低下させていると考えられた.よって,この推奨内容を臨床現場に適応する場合は,症例ごとに十分な検討が必要である.具体的には,重症患者において,気管切開は,明確な適応がある場合に,患者の予後,QOL を考慮して,総合的評価を行った上で行うべきである6). モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては,早期気管切開に伴う有害事象について更に情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities ARDS 患者を対象とした適切な介入のタイミングを検討する研究が必要である.また,気管切開術の手法(外科的気管切開と経皮的気管切開)の検討も必要である5).参考文献1) Cheung NH, Napolitano LM. Tracheostomy:epidemiology, indications, timing, technique, and outcomes. Respir Care 2014;59:895‒915;discussion 6‒9. 2) Freeman BD, Morris PE. Tracheostomy practice in adults with acute respiratory failure. Crit Care Med 2012;40:2890‒6.
3) de Franca SA, Tavares WM, Salinet ASM, et al. Early tracheostomy in severe traumatic brain injury patients:a meta‒analysis and comparison with late tracheostomy. Crit Care Med 2020;48:e325‒31. 4) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the management of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 5) Andriolo BN, Andriolo RB, Saconato H, et al. Early versus late tracheostomy for critically ill patients. Cochrane database Syst Rev 2015;1:CD007271. 6) Aquino‒Esperanza J, Pelosi P, Blanch L. What’s new in intensive care:tracheostomy‒what is known and what remains to be determined. Intensive Care Med 2019;45:1619‒21.
背景,この問題の優先度 人工呼吸器関連肺炎(ventilator‒associated pneumonia:VAP)は人工呼吸器開始後48 時間以降に新たに発生する細菌性肺炎であり,人工呼吸器離脱後48 時間以内に発生した肺炎もVAP に含まれる.厚生労働省の院内感染サーベイランス(Japan Nosocomial Surveillance: JANIS)の2019 年の報告では,本邦のVAP の発生率は1.3/1,000 患者・日である.また, VAP は人工呼吸器装着患者の10~20%,ICU入室患者の3~4%で発生し,ARDS 患者におけるVAP の発生率は20~40%に上る.また, VAP 発生による標準化死亡比は1.3,重症度調整後の入院日数延長は8~11 日間であった.したがって,VAP は人工呼吸器装着患者における最重要合併症の1 つであり,適切な予防策の実施が重要である.VAP の予防法として一連のケアをセットで行うVAP 予防バンドルが提唱されているが,その効果やエビデンスの確実性 は不明である.したがって,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者.介入(I):ルーチンのVAP 予防バンドル実施.対照(C):ルーチンのVAP 予防バンドル非実 施.アウトカム(O):ICU 内死亡,院内死亡, PICS,VAP,VFD(人工呼吸器非使用日数), ICU 滞在日数,入院日数. エビデンスの要約 VAP は人工呼吸器開始後48 時間以降に新たに発生する細菌性肺炎であり,人工呼吸器離脱後48 時間以内に発生した肺炎もVAP に含まれ 1 2 1 2 領域D 呼吸器周辺治療 成人ARDS 患者ではルーチンで人工呼吸器関連肺炎予防バンドルを実施するべきか? CQ 38 人工呼吸器を装着した成人ARDS 患者ではルーチンの人工呼吸器関連肺炎 (VAP)予防バンドルを実施することを推奨する(Good practice state- ment). バンドルの内容については各施設で検討する(「エビデンスの要約」を参照). 推 奨 付帯事項
る.VAP は人工呼吸器装着患者の10~20%で発生し,ICU 入室患者の3~4%を占める1‒3).また,ARDS 患者の20~40%にVAP が発生する4‒5).本邦のICU 内でのVAP の発生率は1.3/ 1,000 患者・日である6).VAP はICU における院内感染で最も頻度が多く,人工呼吸患者における最重要合併症の1 つであり,適切な予防策の実施が重要である.VAP の予防法として一連のケアをセットで行うVAP 予防バンドルが提唱されている.しかしながら,ARDS 患者を対象としたVAP 予防バンドルのRCT はなく,効果は不明である.本CQ の優先度は高いが, ARDS 患者におけるVAP 予防バンドルについての良質なエビデンスを提示することが難しい. VAP 予防バンドルの実施により予想される望ましい効果は「中程度」と判断した.人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者に対してVAP 予防バンドルを実施するか否かを直接比較したRCT は検索し得なかった.しかし,いくつかの観察研究ではVAP 予防バンドルの実施によりVAP 発生が低下することが報告されている.3,665 人の人工呼吸器装着患者を対象とした前向きの前後比較研究では,VAP 予防バンドルの導入によりVAP の発生率は8.6/ 1,000 患者・日から2.0/1,000 患者・日に減少した(P<0.0001).しかし,この研究ではVAP 予防バンドルは院内死亡率と有意な関連はなかった(調整オッズ比1.13,95% CI: 0.98~1.31)7).また,1,068 人の人工呼吸器装着患者を対象とした前後比較研究では積極的なVAP 予防バンドルの実施によりVAP の発生率は19.2/1,000 患者・日から7.5/1,000 患者・日に有意に減少した(発生率差11.6/1,000 患者・日,95% CI:2.3~21.0/1,000 患者・日).しかし,この研究でもVAP 予防バンドルは院内死亡率と有意な関連はなかった(30% vs. 23%,P=0.06)8).以上から,VAP 予防バンドルによりVAP の発生率は低下すると考え られるが,院内死亡やICU 内死亡,PICS の発生,人工呼吸器非使用日数,ICU 滞在日数,入院日数に対する効果は不明であり,予想される望ましい効果は「中程度」と判断した.また, VAP 予防バンドルの導入により,予測される害として気管チューブの位置異常や閉塞,血圧の変動を設定したが,これらの項目を検討した研究が検索し得ず,予測される害はわずかと判断し,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した. また,VAP 予防バンドルの構成内容は各国や各施設によって異なる項目を採用している.米国医療の質改善研究所(Institute for Healthcare Improvement:IHI)は2005 年に下記の4 項目を含むVAP 予防バンドルを策定した9). 1. ベッドの頭部を挙上. 2 毎日の鎮静中止と人工呼吸器からの離脱 評価. 3. 消化性潰瘍の予防. 4. 深部静脈血栓の予防.多施設共同観察研究では,このバンドルの実施により,VAP の発生率が44.5%減少した3).また,このバンドルを用いた小規模な観察研究では,人工呼吸器装着日数とICU 滞在日数の短縮が報告されている10).その後,2010 年にIHI のVAP 予防バンドルはクロルヘキシジンによる毎日の口腔ケアが追加され5 項目となっている.欧州ではIHI と異なる下記の5 つの項目の組み合わせでバンドルが作成されている11). 1. 呼吸器回路を交換しない. 2. アルコールを用いた確実な手指衛生. 3. スタッフへの適切な教育と訓練. 4 鎮静と呼吸器ウィーニングのためのプロ トコル.
5. クロルヘキシジンによる口腔ケア.一方,本邦では日本集中治療医学会の『人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010 改訂版』がよく知られており,以下の5 項目で構成されている12). 1. 手指衛生を確実に実施する. 2. 人工呼吸器回路を頻回に交換しない. 3 適切な鎮静・鎮痛を図り,特に過鎮静を 避ける. 4 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか を毎日評価する. 5. 人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない.また,上記以外の項目として声門下カフ上部吸引や閉鎖式吸引システムまでバンドルケアに含めた前後比較研究も存在する8).バンドルケアの各項目はすでに一般的に行われている,もしくは質の高いエビデンスが示されているものであるが,上記のように各国,施設ごとでVAP 予防バンドルの内容は異なり,各施設で実施可能なものを検討し策定する必要がある. エビデンスの確実性 GPS の7 項目を満たしている. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 本CQ では主要なアウトカムにICU 内死亡や院内死亡,PICS やVAP の発生を設定しており,いずれも価値の大きさのばらつきはないと判断した.また,予測される害として気管チューブの位置異常や閉塞,血圧の変動を設定したが,これらの項目を検討した研究が検索し得なかった.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.また,VAP 予防バンドルは本邦の医療安全全国共同行動でも取り上げられており全国的に広まっているため主要なステークホルダーに受け 入れられると考えられる.実行可能性はVAP予防バンドルはすでに日常臨床で実施している施設も多く,実行可能であると判断した. パネル会議 本CQ に関して,「VAP 予防バンドルを行うことは,当該介入の望ましい帰結が望ましくない帰結よりもはるかに大きいことが示されている」という推奨文が提案され,1 記述は明確かつ実行可能か,2 そのメッセージは本当に必要か,3 正味の利益が大きく,なおかつ疑いの余地のないものか,4 その臨床疑問に関するエビデンスは,収集と要約が困難であるか, 5 検討するべき具体的問題(例:公平性)はあるか,6 根拠を明確に示しているか,7 正式なGRADE アプローチに基づく評価を行ったほうがよいかについて十分な議論を行い,委員の全会一致に「Good practice statement」として合意に至った.パネル会議では,VAP 予防バンドルの項目について具体的な内容を提示するべきかという議論があった.しかしながら,VAP 予防バンドルの実施自体は広く受け入れられており,すでに実施している施設のプラクティスを変更するだけの良質なエビデンスを提示することが難しく,具体的内容は提示せず,バンドルの内容については各施設で検討すると付帯事項を付けることとした. サブグループの検討事項 重症ARDS のサブグループではVAP 合併による死亡リスクが高いと考えられるため,バンドルを積極的に活用することで利益が高くなる可能性がある4). 実施上の考慮事項 各国で推奨されているVAP 予防バンドルの 3 4 5 3 4
内容を示す.米国IHI では以下の5 項目を推奨している9). 1. ベッドの頭部を挙上. 2 毎日の鎮静中止と人工呼吸器からの離脱 評価. 3. 消化性潰瘍の予防. 4. 深部静脈血栓の予防. 5. クロルヘキシジンによる毎日の口腔ケア.一方,欧州ではIHI と異なる下記の5 つの項目の組み合わせのバンドルを推奨している11). 1. 呼吸器回路を交換しない. 2. アルコールを用いた確実な手指衛生. 3. スタッフへの適切な教育と訓練. 4 鎮静と呼吸器ウィーニングのためのプロ トコル. 5. クロルヘキシジンによる口腔ケア.本邦では日本集中治療医学会の『人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010(改訂版)』がよく知られており,以下の5 項目で構成されている12). 1. 手指衛生を確実に実施する. 2. 人工呼吸器回路を頻回に交換しない. 3 適切な鎮静・鎮痛を図り,特に過鎮静を 避ける. 4 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか を毎日評価する. 5. 人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない.以上のように各国で推奨されているVAP 予防バンドルの内容は異なっており,本邦でも各施設で行っているVAP 予防バンドルは異なる可能性が考えられた.したがって,本邦でのバンドルの各項目の実施率の現状を把握するために日本呼吸器学会・日本呼吸療法医学会・日本集中治療医学会の3 学会の会員に対してweb上でアンケート調査を行った(アンケート実施期間:2020 年8 月7 日~8 月31 日,有効回答数:658).結果は以下のとおりであった.・ 呼吸器回路の定期交換をしない:55.4%.・ 患者を仰臥位で管理しない:68%. ・ 深い鎮静を避ける:56.6%(患者の状態が 不安定な場合),76%(患者の状態が安定している場合).・ 人工呼吸器からの離脱ができるかどうかを 毎日評価する:67%.・ 1 日1 回以上の口腔ケア:95%.・ カフ上部吸引ポート付き気管チューブの使 用:69%.・ 閉鎖式吸引カテーテルキットの使用: 87%.各項目の実施率は55.4%から95%とばらつきがあり,各施設で実施しているVAP 予防の内容が異なることが示唆される. VAP 予防バンドルの各項目はすでに一般的に行われている,もしくは質の高いエビデンスが示されているものであるが,上記のように各国,各施設でVAP 予防バンドルの内容は異なり,各施設で実施可能なものを検討し策定する必要がある.たとえば,海外で使用されているクロルヘキシジンによる口腔ケアは2%クロルヘキシジン製剤であり,アナフィラキシーショックへの懸念から本邦では使用が認められていない.また,バンドルのコンプライアンスに関する検討が十分でないことが指摘されており,医療スタッフへの適切な教育が必要である13). 関連する他の診療ガイドラインの記載 前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』14)ではVAP の疫学,診断,病態生理,診断について記載されているが,VAP 予防バンドルについてのCQ は設定していなかった.また,各国のARDS ガイドラインでもVAP 予防バンドルについての検討はされていない. 5
治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてVAP バンドルケアの有害事象や費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 VAP 予防バンドルによりVAP 発症率が減少することが前後比較研究で報告されている7‒10).しかしながら,先行研究におけるVAP予防バンドルの内容は研究ごとに異なっており,各国で推奨されているVAP 予防バンドルの内容も異なっている9,11,12).さらに,ARDS 患者におけるVAP 予防バンドルを比較検討した介入研究はない.今後,ARDS 患者におけるVAP 予防バンドルの効果を検証するための臨床研究が必要である. 文献検索式と文献選択 該当なし. 本CQ で対象とした研究 該当なし. 資料一覧 ・資料CQ38‒1 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) American Thoracic Society;Infectious Diseases Society of America. Guidelines for the management of adults with hospital‒acquired, ventilator‒associated, and healthcare‒associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2005;171:388‒416. 2) Reignier J, Mercier E, Le Gouge A, et al. Effect of not monitoring residual gastric vol- ume on risk of ventilator‒associated pneumonia in adults receiving mechanical ventilation and early enteral feeding:a randomized controlled trial. JAMA 2013;309: 249‒56. 3) Safdar N, Dezfulian C, Collard HR, et al. Clinical and economic consequences of ven- tilator‒associated pneumonia:a systematic review. Crit Care Med 2005;33:2184‒ 93 4) Forel JM, Voillet F, Pulina D, et al. Ventilator‒associated pneumonia and ICU mortal- ity in severe ARDS patients ventilated according to a lung‒protective strategy. Crit Care 2012;16:R65. 5) Ayzac L, Girard R, Baboi L, et al. Ventilator‒associated pneumonia in ARDS patients: the impact of prone positioning. A secondary analysis of the PROSEVA trial. Intensive Care Med 2016;42:871‒8. 6) 厚生労働省院内感染対策サーベイランス.集中治療室部門2019 年年報.https://janis. mhlw.go.jp/report/open_report/2019/3/3/ICU_Open_Report_201900.pdf(2022 年5 月16 日閲覧) 7) Khan R, Al‒Dorzi HM, Al‒Attas K, et al. The impact of implementing multifaceted interventions on the prevention of ventilator‒associated pneumonia. Am J Infect Control 2016;44:320‒6. 8) Hawe CS, Ellis KS, Cairns CJ, et al. Reduction of ventilator‒associated pneumonia: active versus passive guideline implementation. Intensive Care Med 2009;35: 1180‒6. 参考文献
9) Resar R, Pronovost P, Haraden C, et al. Using a bundle approach to improve ventilator care processes and reduce ventilator‒associated pneumonia. Jt Comm J Qual Patient Saf 2005;31:243‒8. 10) Crunden E, Boyce C, Woodman H, et al. An evaluation of the impact of the ventilator care bundle. Nurs Crit Care 2005;10:242‒6. 11) Contributors TVCB, Rello J, Lode H, Cornaglia G, et al. A European care bundle for prevention of ventilator‒associated pneumonia. Intensive Care Med 2010;36:773‒ 80. 12) 日本集中治療医学会ICU 機能評価委員会.人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010 改訂版. https://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2022 年5 月16 日閲覧) 13) Zilberberg MD, Shorr AF, Kollef MH. Implementing quality improvements in the intensive care unit:ventilator bundle as an example. Crit Care Med 2009;37: 305‒9. 14) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J intensive care 2017;5:50.
資料CQ38‒1 Evidence‒to‒Decision疑 問 CQ38: 成人ARDS患者ではルーチンで人工呼吸器関連肺炎予防バンドルを実 施するべきか? 集 団:人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者介 入:ルーチンの人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防バンドル実施比較対照:ルーチンのVAP 予防バンドル非実施主要なアウトカム:ICU 死亡,院内死亡,集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS), VAP,VFD,ICU 滞在日数,入院日数 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: VAP は人工呼吸器開始後48 時間以降に新たに発症する細菌性肺炎であり,人工呼 吸器離脱後48 時間以内に発症した肺炎もVAP に含まれる.厚生労働省の院内感染サーベイランス(JANIS)の2019 年の報告では,本邦のVAP の発症率は1.3/1,000患者・日である.また,VAP は人工呼吸器装着患者の10~20%,ICU 入室患者の3~4%で発症し,ARDS 患者におけるVAP の発症率は20~40%に上る.また, VAP 発症による標準化死亡比は1.3,重症度調整後の入院日数延長は8~11 日間であった.したがって,VAP は人工呼吸器装着患者における最重要合併症の1 つであり,適切な予防策の実施が重要である.VAP の予防法として一連のケアをセットで行うVAP 予防バンドルが提唱されているが,その効果やエビデンスの確実性は不明である 利益相反:なし Good practice statement と判断するための7 つの基準 質 問回 答 (1)記述は明確かつ実行可能かYes 理由:VAP 予防バンドルを行うことは安価で合併症も少なく容易に実行可能である (2)そのメッセージは本当に必要かYes理由:VAP 予防バンドルを行うことは害が少なく,日常臨床で広く受け入れられており,必要なメッセージである(3)正味の利益が大きく,なおかつ疑いの 余地のないものかYes 理由:VAP 予防バンドルを行うことは害より益のほうが明らかに大きい (4)その臨床疑問に関するエビデンスは, 収集と要約が困難であるかYes理由:VAP 予防バンドルを構成する各項目を評価した介入 研究は多く存在する.しかし,VAP 予防バンドルの実施の有無を比較した臨床研究は存在するものの,ほとんどが観察研究であり,バンドルの内容も異なっており要約が困難である
(5)検討するべき具体的問題(例:公平性) はあるかNo 理由:VAP 予防バンドルを行うことに関する公平性などの問題はない (6)根拠を明確に示しているかYes 理由:VAP 予防バンドルを行うことは医療安全上重要であり,VAP 予防バンドルを行うことで患者の転帰が改善される可能性がある (7)正式なGRADE アプローチに基づく評 価を行ったほうがよいかNo 理由:VAP ケアバンドルについてのエビデンスの要約は困難であり,利益と害のバランスや公平性,コストの検討の必要性はないと思われる 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないVAP は人工呼吸器開始後48 時間以降に新たに発症する細菌性肺炎であ り,人工呼吸器離脱後48 時間以内に発症した肺炎もVAP に含まれる. JANIS の2019 年の報告では,VAP の発症率は1.3/1,000 患者・日である.また,VAP は人工呼吸器装着患者の10~20%,ICU 入室患者の3~ 4%で発症し,ARDS 患者におけるVAP の発症率は20~40%に上る.また,VAP 発症による標準化死亡比は1.3,重症度調整後の入院日数延長は8~11 日間であった.したがって,VAP は人工呼吸器装着患者における最重要合併症の1 つであり,適切な予防策の実施が重要である. VAP の予防法として一連のケアをセットで行うVAP 予防バンドルが提唱されているが,その効果やエビデンスの確実性は不明である.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度○大きい○一概には言えない○わからないVAP 予防バンドルの導入による益のアウトカムとして,ICU 死亡,院内 死亡,PICS,VAP,VFD,ICU 滞在日数,入院日数を設定したが,RCTは認められず,観察研究として,VAP 予防バンドルとVAP の発症率,院内死亡との関連性を評価した研究が認められた3,665 人の人工呼吸器装着患者を対象とした前向きの前後比較研究ではVAP 予防バンドルの導入によりVAP の発症率は8.6/1,000 患者・日から2.0/1,000 患者・日に減少した(P<0.0001).しかし,この研究ではVAP 予防バンドルは院内死亡率と有意な関連はなかった(調整オッズ比1.13,95% CI:0.98~1.31)1) 1,068 人の人工呼吸器装着患者を対象とした前後比較研究では積極的な
VAP 予防バンドルの実施によりVAP の発症率は19.2/1,000 患者・日から7.5/1,000 患者・日に有意に減少した(発症率差11.6/1,000 患者/日,95% CI:2.3~21.0/1,000 患者・日).しかし,この研究でもVAP予防バンドルは院内死亡率と有意な関連はなかった(30%vs. 23%,P= 0.06)2)以上からVAP 予防バンドルによりVAP の発症率は減少すると考えられるが,院内死亡に対する効果は不明である.したがって,予想される効果は「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからないVAP 予防バンドルの導入による害のアウトカムとして,気管チューブの 位置異常や閉塞,血圧の変動を設定したが,これらの項目を検討した研究が検索し得ず,予測される害は「わずか」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中●高○研究がない人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者に対してVAP 予防バンドルを 実施するか否かを直接比較したRCT は検索し得なかったまた,VAP 予防バンドルの構成内容は各国や各施設によって異なる項目を採用している米国医療の質改善研究所(Institute for Healthcare Improvement:IHI)は2005 年に下記の4 項目を含むVAP 予防バンドルを策定した3) 1.ベッドの頭部を挙上2.毎日の鎮静中止と人工呼吸器からの離脱評価3.消化性潰瘍の予防4.深部静脈血栓の予防多施設共同観察研究では,このバンドルの実施により,VAP の発症率が44.5%減少した3).また,このバンドルを用いた小規模な観察研究では,人工呼吸器装着日数とICU 滞在日数の短縮が報告されている4).その後2010 年にIHI のVAP 予防バンドルは,クロルヘキシジンによる毎日の口腔ケアが追加され5 項目となっている 一方,欧州ではIHI と異なる下記の5 つの項目の組み合わせでバンドルが作成されている5) 1.呼吸器回路を交換しない2.アルコールを用いた確実な手指衛生
3.スタッフへの適切な教育と訓練4.鎮静と呼吸器ウィーニングのためのプロトコル5.クロルヘキシジンによる口腔ケア 本邦では日本集中治療医学会の『人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版』がよく知られており,以下の5 項目で構成されている6) 1.手指衛生を確実に実施する2.人工呼吸器回路を頻回に交換しない3.適切な鎮静・鎮痛を図り,特に過鎮静を避ける4.人工呼吸器からの離脱ができるかどうかを毎日評価する5.人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しないまた,上記以外の項目として声門下カフ上部吸引や閉鎖式吸引システムまでバンドルケアに含めた前後比較研究も存在する2) 本邦でのバンドルの各項目の実施率の現状を把握するために日本呼吸器学会・日本呼吸療法医学会・日本集中治療医学会の3 学会の会員に対してweb 上でアンケート調査を行った(アンケート実施期間:2020 年8月7 日~31 日,有効回答数:658).結果は以下のとおりであった・呼吸器回路の定期交換をしない:55.4%・患者を仰臥位で管理しない:68%・深い鎮静を避ける:56.6%(患者の状態が不安定な場合),76%(患 者の状態が安定している場合)・人工呼吸器からの離脱ができるかどうかを毎日評価する:67%・1 日1 回以上の口腔ケア:95%・カフ上部吸引ポート付き気管チューブの使用:69%・閉鎖式吸引カテーテルキットの使用:87%各項目の実施率は55.4%から95%とばらつきがあり,各施設で実施しているVAP 予防策の内容が異なることが示唆された 以上のように,地域ごと,施設ごとで推奨されているバンドルケアの内容が異なっているが,バンドルケアの各項目はすでに一般的に行われている,もしくは質の高いエビデンスが示されているものであり,エビデンスの確実性を「高」とした 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確主要なアウトカムにICU 内死亡や院内死亡,PICS やVAP の発症を設定したが,いずれも価値の大きさのばらつきは「ない」と判断した
実性や多様性はな い●重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない予測される害として気管チューブの位置異常や閉塞,血圧の変動を設定 したが,これらの項目を検討した研究が検索し得ず,予測される害は小さいと判断した.したがって,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないVAP 予防バンドルは本邦の医療安全全国共同行動でも取り上げられてお り,全国的に広まっているため主要なステークホルダーに「受け入れられる」と判断した7). 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないすでに日常臨床で実施している施設も多いため実行可能と思われる.た だし,VAP 予防バンドルの内容については各施設で実施可能なものを検討し策定する必要があるたとえば,海外で使用されているクロルヘキシジンによる口腔ケアは2%クロルヘキシジン製剤であり,アナフィラキシーショックへの懸念から本邦では使用が認められていないまた,バンドルのコンプライアンスに関する検討が十分でないことが指摘されており,医療スタッフへの適切な教育が必要である8)
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ●
結 論 推 奨 Recommendation 人工呼吸器を装着した成人ARDS 患者ではルーチンの人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防バンドルを実施することを推奨する(Good practice statement). 付帯事項 バンドルの内容については各施設で検討する(「エビデンスの要約」を参照). 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者ではルーチンでVAP 予防バンドルを実施するべきか?患 者 人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者.介 入 ルーチンのVAP 予防バンドル実施.対 照 ルーチンのVAP 予防バンドル非実施.アウトカム ICU 内死亡,院内死亡,PICS,VAP,VFD,ICU 滞在日数,入院日数.エビデンスの要約VAP 予防バンドルの実施により予想される望ましい効果は「中程度」と判断した.人工呼吸器管理を要する成人ARDS 患者に対してVAP 予防バンドルを実施するか否かを直接比較したRCT は検索し得なかった.しかし,いくつかの観察研究ではVAP 予防バンドルの実施によりVAP 発症が低下することが報告されている.3,665 人の人工呼吸器装着患者を対象とした前向きの前後比較研究ではVAP 予防バンドルの導入によりVAP の発症率は8.6/1,000 患者・日から2.0/1,000 患者・日に減少した(P<0.0001).しかし,この研究ではVAP 予防バンドルは院内死亡率と有意な関連はなかった(調整オッズ比1.13,95% CI:0.98~1.31)1).また,1,068 人の人工呼吸器装着患者を対象とした前後比較研究では積極的なVAP 予防バンドルの実施によりVAP の発症率は19.2/1,000患者・日から7.5/1,000 患者・日に有意に減少した(発症率差11.6/1,000 患者・日,95% CI: 2.3~21.0/1,000 患者・日).しかし,この研究でもVAP 予防バンドルは院内死亡率と有意な関連はなかった(30%vs. 23%,P=0.06)2).以上から,VAP 予防バンドルによりVAP の発症率は低下すると考えられるが,院内死亡やICU 内死亡,PICS の発症,VFD,ICU 滞在日数,入院日数に対する効果は不明であり,予想される望ましい効果は「中程度」と判断した.また,VAP 予防バンドルの導入により,予測される害として気管チューブの位置異常や閉塞,血圧の変動を設定したが,これらの項目を検討した研究が検索し得ず,予測される害はわずかと判断し,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.また,VAP 予防バンドルの構成内容は各国や各施設によって異なる項目を採用している.米国IHI は2005 年に下記の4 項目を含むVAP 予防バンドルを策定した3). 1.ベッドの頭部を挙上. 2.毎日の鎮静中止と人工呼吸器からの離脱評価. 3.消化性潰瘍の予防. 4.深部静脈血栓の予防.多施設共同観察研究では,このバンドルの実施により,VAP の発症率が44.5%減少した3).また,このバンドルを用いた小規模な観察研究では,人工呼吸器装着日数とICU 滞在日数の短縮が報告されている4).その後,2010 年にIHI のVAP 予防バンドルはクロルヘキシジンによる毎日の口
腔ケアが追加され5 項目となっている.欧州ではIHI と異なる下記の5 つの項目の組み合わせでバンドルが作成されている5). 1.呼吸器回路を交換しない. 2.アルコールを用いた確実な手指衛生. 3.スタッフへの適切な教育と訓練. 4.鎮静と呼吸器ウィーニングのためのプロトコル. 5.クロルヘキシジンによる口腔ケア.一方,本邦では日本集中治療医学会の『人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010 改訂版』がよく知られており,以下の5 項目で構成されている6). 1.手指衛生を確実に実施する. 2.人工呼吸器回路を頻回に交換しない. 3.適切な鎮静・鎮痛を図り,特に過鎮静を避ける. 4.人工呼吸器からの離脱ができるかどうかを毎日評価する. 5.人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない.また,上記以外の項目として声門下カフ上部吸引や閉鎖式吸引システムまでバンドルケアに含めた前後比較研究も存在する2).バンドルケアの各項目はすでに一般的に行われている,もしくは質の高いエビデンスが示されているものであるが,上記のように各国,施設ごとでVAP 予防バンドルの内容は異なり,各施設で実施可能なものを検討し策定する必要がある.エビデンスの確実性 GPS の7 項目を満たしている.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定本CQ では主要なアウトカムにICU 内死亡や院内死亡,PICS やVAP の発症を設定しており,いずれも価値の大きさのばらつきはないと判断した.また,予測される害として気管チューブの位置異常や閉塞,血圧の変動を設定したが,これらの項目を検討した研究が検索し得なかった.以上から,効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.また,VAP 予防バンドルは本邦の医療安全全国共同行動でも取り上げられており,全国的に広まっているため主要なステークホルダーに受け入れられると考えられる.また,VAP 予防バンドルはすでに日常臨床で実施している施設も多く,実行可能であると判断した.パネル会議本CQ に関して,「VAP 予防バンドルを行うことは,当該介入の望ましい帰結が望ましくない帰結よりもはるかに大きいことが示されている」という推奨文が提案され9),1 記述は明確かつ実行可能か10),2 そのメッセージは本当に必要か11),3 正味の利益が大きく,なおかつ疑いの余地のないものか12),4 その臨床疑問に関するエビデンスは,収集と要約が困難であるか13),5 検討するべき具体的問題(例:公平性)はあるか14),6 根拠を明確に示しているか15),7 正式なGRADE アプローチに基づく評価を行ったほうがよいかについて十分な議論を行い,委員の全会一致に「Good practice statement」として合意に至った.パネル会議では,VAP 予防バンドルの項目について具体的な内容を提示するべきかという議論があった.しかしながら,VAP 予防バンドルの実施自体は広く受け入れられており,すでに実施している施設のプラクティスを変更するだけの良質なエビデンスを提示することが難しく,具体的内容は提示せず,バンドルの内容については各施設で検討すると付帯事項を付けることとした.
付加的な考慮事項VAP 予防バンドルを構成する項目の内容については各施設で実施可能なものを検討し策定する必要がある.たとえば,海外で使用されているクロルヘキシジンによる口腔ケアは2%クロルヘキシジン製剤であり,アナフィラキシーショックへの懸念から本邦では使用が認められていない. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 重症ARDS のサブグループではVAP 合併による死亡リスクが高いと考えられるため,バンドルを積極的に活用することで利益が高くなる可能性がある12). 実施上の考慮事項 Implementation considerations 前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』ではVAP の疫学,病態生理,診断について記載されているが,VAP 予防バンドルについてのCQ は設定していなかった.また,各国のARDS ガイドラインでもVAP 予防バンドルについての検討はされていない.上記のように各国で推奨されているVAP予防バンドルの内容は異なっており,本邦でも各施設で行っているVAP 予防バンドルは異なる可能性が考えられた.このため,本邦でのバンドルの各項目の実施率の現状を把握するために日本呼吸器学会・日本呼吸療法医学会・日本集中治療医学会の3学会の会員に対してweb 上でアンケート調査を行った(アンケート実施期間:2020 年8 月7 日~ 31 日,有効回答数:658).結果は以下のとおりであった.・呼吸器回路の定期交換をしない:55.4%.・患者を仰臥位で管理しない:68%.・ 深い鎮静を避ける:56.6%(患者の状態が不安定な場合),76%(患者の状態が安定している場 合).・人工呼吸器からの離脱ができるかどうかを毎日評価する:67%.・1 日1 回以上の口腔ケア:95%.・カフ上部吸引ポート付き気管チューブの使用:69%.・閉鎖式吸引カテーテルキットの使用:87%.各項目の実施率は55.4%から95%とばらつきがあり,各施設で実施しているVAP 予防の内容が異なることが示唆される. VAP 予防バンドルの各項目はすでに一般的に行われている,もしくは,質の高いエビデンスが示されているものであるが,上記のように各国,各施設でVAP 予防バンドルの内容は異なり,各施設で実施可能なものを検討し策定する必要がある.たとえば,海外で使用されているクロルヘキシジンによる口腔ケアは2%クロルヘキシジン製剤であり,アナフィラキシーショックへの懸念から本邦では使用が認められていない.また,バンドルのコンプライアンスに関する検討が十分でないことが指摘されており,医療スタッフへの適切な教育が必要である8). モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたってVAP バンドルケアの有害事象や費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングする必要がある.
研究の可能性 Research priorities VAP 予防バンドルによりVAP 発症率が減少することが前後比較研究で報告されている1‒4).しかしながら,先行研究におけるVAP 予防バンドルの内容は研究ごとに異なっており,各国で推奨されているVAP 予防バンドルの内容も異なっている3,5,6).さらに,ARDS 患者におけるVAP 予防バンドルを比較検討した介入研究はない.今後,ARDS 患者におけるVAP 予防バンドルの効果を検証するための臨床研究が必要である.参考文献1) Khan R, Al‒Dorzi HM, Al‒Attas K, et al. The impact of implementing multifaceted interventions on the prevention of ventilator‒associated pneumonia. Am J Infect Control 2016;44:320‒6. 2) Hawe CS, Ellis KS, Cairns CJ, et al. Reduction of ventilator‒associated pneumonia:active versus passive guideline implementation. Intensive Care Med 2009;35:1180‒6. 3) Resar R, Pronovost P, Haraden C, et al. Using a bundle approach to improve ventilator care processes and reduce ventilator‒associated pneumonia. Jt Comm J Qual Patient Saf 2005;31:243‒8. 4) Crunden E, Boyce C, Woodman HM, et al. An evaluation of the impact of the ventilator care bundle. Nurs Crit Care 2005;10:242‒6. 5) Contributors TVCB, Rello J, Lode H, et al. A European care bundle for prevention of ventilator‒associated pneumonia. Intensive Care Med 2010;36:773‒80. 6) 日本集中治療医学会ICU 機能評価委員会.人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010 改訂版. https://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2022 年5 月16 日閲覧) 7) 医療安全全国共同行動.行動目標5 医療機器の安全な操作と管理.http://kyodokodo.jp/ koudoumokuhyou/gaiyou/mokuhyou5/(2022 年5 月16 日閲覧) 8) Zilberberg MD, Shorr AF, Kollef MH. Implementing quality improvements in the intensive care unit:ventilator bundle as an example. Crit Care Med 2009;37:305‒9. 9) American thoracic society, infectious diseases society of America. Guidelines for the management of adults with hospital‒acquired, ventilator‒associated, and healthcare‒associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2005;171:388‒416. 10) Reignier J, Mercier E, Le Gouge A, et al. Effect of not monitoring residual gastric volume on risk of ventilator‒associated pneumonia in adults receiving mechanical ventilation and early enteral feeding:a randomized controlled trial. JAMA 2013;309:249‒56. 11) Safdar N, Dezfulian C, Collard HR, et al. Clinical and economic consequences of ventilator‒ associated pneumonia & colon;a systematic review. Crit Care Med 2005;33:2184‒93. 12) Forel JM, Voillet F, Pulina D, et al. Ventilator‒associated pneumonia and ICU mortality in severe ARDS patients ventilated according to a lung‒protective strategy. Crit Care 2012;16:R65. 13) Ayzac L, Girard R, Baboi L, et al. Ventilator‒associated pneumonia in ARDS patients:the impact of prone positioning. A secondary analysis of the PROSEVA trial. Intensive Care Med 2016;42:871‒8. 14) 厚生労働省院内感染対策サーベイランス.集中治療室部門2019 年年報.https://janis.mhlw. go.jp/report/open_report/2019/3/3/ICU_Open_Report_201900.pdf(2022年5月16日閲覧) 15) Suka M, Yoshida K, Uno H, et al. Incidence and outcomes of ventilator‒associated pneumonia in Japanese intensive care units:the Japanese nosocomial infection surveillance system. Infect Control Hosp Epidemiol 2007;28:307‒13.
背景,この問題の優先度 ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である1).一方,DIC 治療への適応を有するトロンボモジュリンは,抗凝固作用のみならず抗炎症作用を有する可能性が報告されている2‒4).したがって,ARDS における炎症の抑制にトロンボモジュリンが有効である可能性がある.しかしながら,ARDS のみを対象としたトロンボモジュリンに関する臨床研究は報告されていない.したがって,トロンボモジュリンに関するSR を行うことは重要臨床課題と思われるが,現時点では不可能である. 解 説 PICO 患者(P):ARDS 患者.介入(I):トロンボモジュリン製剤の使用.対照(C):トロンボモジュリン非使用.アウトカム(O):短期死亡,人工呼吸器装着 日数,重大な出血.エビデンスの要約 該当の研究なし. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 該当の研究がないため,効果のバランスについてはわからない.受け入れは,エビデンスがなく,適応外使用であることを考慮すると,「たぶん受け入れられない」と言える.また, ARDS に対しての投与は保険適用外となるため倫理委員会の承認が必要となる.そのため,実行可能性については一概には言えない.トロンボモジュリンは6 日間投与した場合,約24 万円(1 日あたり1 瓶)である.DPC の場合であっても,コーディングによっては患者,支払機関の負担は増加する可能性がある.また,病院の負担も増加する可能性がある. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により, 1 2 1 2 3 4 領域E 薬物療法・非薬物療法 ARDS 患者にトロンボモジュリン製剤を用いるか? CQ 39 ARDS患者に対するトロンボモジュリン製剤の投与について推奨を提示する ことはできない(in our practice statement). 推 奨
「ARDS 患者に対するトロンボモジュリン製剤の投与について推奨を提示することはできない」が,中央値9.0,見解不一致指数0.1316であった.パネル会議では推奨文に含まれていた“保険適用がないこと”について,付加的な事項に加えるよう提案があった.また,受け入れに関しては「たぶん受け入れられない」に修正するよう提案があった. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 ARDS に対しては保険適用外であるため,院内の倫理委員会の承認を得るなど適切な準備の後に実施する必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 本邦の臨床現場においてARDSに対してどの程度,トロンボモジュリンが使用されているか について,本診療ガイドライン公表後にアンケート調査などでモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 ARDS に対するトロンボモジュリンの効果についての臨床試験,RCT が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome,Adult」「acute lung injury」「ARDS」「thrombomodulin」「rTM」などのキーワードを用いて, PubMed/MEDLINE,医中誌Web を検索したが,質の高いRCT は検出されなかった. 本CQ で対象とした研究 なし. 資料一覧 ・資料CQ39‒1 Search strategy.・資料CQ39‒2 フローダイアグラム.・資料CQ39‒3 Evidence‒to‒Decision. 3 4 5 6 7 8 9 10 1) Pelosi P, D’ Onofrio D, Chiumello D, et al. Pulmonary and extrapulmonary acute respiratory distress syndrome are different. Eur Respir J Suppl 2003;42:48s‒56s. 2) Kudo D, Toyama M, Aoyagi T, et al. Involvement of high mobility group box 1 and the therapeutic effect of recombinant thrombomodulin in a mouse model of severe acute respiratory distress syndrome. Clin Exp Immunol 2013;173:276‒87. 3) Suzuki K, Okada H, Takemura G, et al. Recombinant thrombomodulin protects against LPS‒induced acute respiratory distress syndrome via preservation of pulmonary endothelial glycocalyx. Br J Pharmacol 2020;177:4021‒33. 4) Hayakawa S, Matsuzawa Y, Irie T, et al. Efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin for the treatment of acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis:a single arm, non‒randomized prospective clinical trial. Multidiscip Respir Med 2016;11:38. 参考文献
資料CQ39—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/4) #1 "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[Mesh] OR "shock lung"[tiab] OR "acute respiratory distress syndrome"[tiab] OR "adult respiratory distress syndrome"[tiab] #2 Respiratory Distress Syndrome, Newborn[mh] #3 ARDS[tiab] OR ALI[tiab] #4 "Respiratory Insufficiency"[Mesh] OR "Respiratory Failure"[tiab] OR "Respiratory Depression"[tiab] OR "Ventilatory Depression"[tiab] OR "acute respiratory failure"[tiab] #5 "Acute Lung Injury"[Mesh] OR "lung injur*"[tiab] #6 "Severe Acute Respiratory Syndrome"[Mesh] OR "severe acute respiratory syndrome"[tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 "thrombomodulin"[mh] #9 thrombomodulin[tiab] #10 rTM[tiab] #11 ART123 [Supplementary Concept] #12 ART123[tiab] #13 Recomodulin[tiab] #14 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 #15 #7 AND #14 #16 Controlled clinical trial[Publication Type] #17 randomized[Title/Abstract] #18 placebo[Title/Abstract] #19 drug therapy[SH] #20 randomly [tiab] #21 trial[tiab] #22 groups [tiab] #23 "systematic review"[Publication Type] #24 "meta-analysis"[Publication Type] #25 "review"[Publication Type] #26 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 #27 #15 AND #26 #28 animals [mh] NOT humans [mh] #29 #27 NOT #28
CENTRAL(Search date:2020/7/4) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "shock lung":ti,ab OR "acute respiratory distress syndrome":ti,ab OR "adult respiratory distress syndrome":ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 ARDS OR ALI #4 [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "Respiratory Failure":ti,ab OR "Respiratory Depression":ti,ab OR "Ventilatory Depression":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #5 [mh "Acute Lung Injury"] OR "lung injury":ti,ab #6 [mh "Severe Acute Respiratory Syndrome"] OR "severe acute respiratory syndrome":ti,ab #7 {OR #1-#6}
#8 [mh thrombomodulin] #9 thrombomodulin:ti,ab #10 rTM:ti,ab #11 ART123:ti,ab #12 Recomodulin:ti,ab #13 {OR #8-#12} #14 #7 AND #13
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/8) #1呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL #4呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 呼吸窮迫症候群—急性/AL OR ショック肺/AL #5重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/AL #6毛細管漏出症候群/TH OR 毛細管漏出症候群/AL #7硝子膜症/TH OR 硝子膜症/AL #8 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9 Thrombomodulin/TH OR Thrombomodulin/AL OR トロンボモジュリン/AL OR トロンボモデュリン/AL #10 "Thrombomodulin Alfa" /TH OR リコンビナントトロンボモジュリン/AL OR トロンボモジュリンアルファ/AL OR トロンボモデュリンアルファ OR リコモジュリン OR リコンビナント・トロンボモジュリン#11 #9 OR #10 #12 #8 AND #11 #13ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #14比較試験/AL #15臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #16プラセボ/TH OR プラセボ/AL #17対照/AL #18コントロール/AL #19臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #20 #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 #21 #12 AND #20
資料CQ39—2 フローダイアグラム 検索で同定された研究 n=80 重複研究を除外した研究 n=71 フルテキストで適格性を評価した研究 n=0 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=80 49件21件10件 重複した研究 n=9 除外基準に該当した研究 n=71 除外基準に該当した研究n=0理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる0件0件0件0件 メタ解析に組み入れた研究 n=0
資料CQ39—3 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:成人ARDS 患者に使用する特異的な薬剤はあるか? CQ39:ARDS 患者にトロンボモジュリン製剤を用いるか? 集 団:成人低酸素性呼吸不全患者介 入:トロンボモジュリン使用比較対照:トロンボモジュリン非使用主要なアウトカム:短期死亡,人工呼吸器装着日数,重大な出血セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である1).一方,播 種性血管内凝固症候群(DIC)治療への適応を有するトロンボモジュリンは,抗凝固作用のみならず抗炎症作用を有する可能性が報告されている.したがって,ARDSにおける炎症の抑制にトロンボモジュリンが有効である可能性がある.しかしながら,ARDS のみを対象としたトロンボモジュリンに関する臨床研究は報告されていない.したがって,トロンボモジュリンに関するSR を行うことは重要臨床課題と思われるが,現時点では不可能である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態であ る1).一方,DIC 治療への適応を有するトロンボモジュリンは,抗凝固作用のみならず抗炎症作用を有する可能性が報告されている.したがって, ARDS における炎症の抑制にトロンボモジュリンが有効である可能性がある.したがって,トロンボモジュリンに関するCQ を取り上げることは重要臨床課題として優先度は高いと判断した 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がないSR を行ったがPICO に合致するRCT は存在しなかった.マウスARDS モデルにおいて,トロンボモジュリンが炎症を制御することで生存期間やARDSの進行を抑制することが報告されている2).別のLPS(Lipopolysaccharide)により惹起されたマウスARDS モデルにおいてもトロンボモジュリンが炎症を制御することが報告されている3).臨床研究においては特発性間質性肺炎の急性増悪において,トロンボモジュリンとステロイドによる治療が生存率,呼吸機能の改善に寄与する可能性が報告されている4).敗血症性DIC に関しては『日本版敗血症診療ガイドライン2020』において,死亡,DIC 離脱の効果が出血性合併症の害を上回るため,敗血症性DIC 患者に対してトロンボモジュリンを投与することを弱く推奨している 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はないたぶん重要な不確実性や多様性はない
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないエビデンスがなく,適応外使用であることを考慮すると,たぶん受け入 れられないと言える 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない前述のようにARDS に対しての投与は保険適用外となるため倫理委員会の承認が必要となる.そのため,一概には言えない 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者に対するトロンボモジュリン製剤の投与について推奨を提示することはできない(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問 ARDS に対してトロンボモジュリンを用いるか?患 者 成人低酸素性呼吸不全患者.介 入 トロンボモジュリン使用.
対 照 トロンボモジュリン非使用.アウトカム 短期死亡,人工呼吸器装着日数,重大な出血.解 説マウスARDS モデルにおいて,トロンボモジュリンが炎症を制御することで生存期間やARDS の進行を抑制することが報告されている2).別のLPS により惹起されたマウスARDS モデルにおいてもトロンボモジュリンが炎症を制御することが報告されている3).臨床研究においては特発性間質性肺炎の急性増悪において,トロンボモジュリンとステロイドによる治療が生存率,呼吸機能の改善に寄与する可能性が報告されている4).敗血症性DIC に関しては『日本版敗血症診療ガイドライン2020』において,死亡,DIC 離脱の効果が出血性合併症の害を上回るため,敗血症性DIC 患者に対してトロンボモジュリンを投与することを弱く推奨している.しかし,SR を行ったがPICO に合致するRCT は存在しなかった.そのため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定該当の研究がないため,効果のバランスについてはわからない.受け入れは,エビデンスがなく,適応外使用であることを考慮すると,たぶん受け入れられないと言える.また,ARDS に対しての投与は保険適用外となるため倫理委員会の承認が必要となる.そのため,実行可能性については一概には言えない.トロンボモジュリンは6 日間投与した場合,約24 万円である.DPC の場合であっても,コーディングによっては患者,支払機関の負担は増加する可能性はある.また,病院の負担も増加する可能性がある.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者に対するトロンボモジュリン製剤の投与について推奨を提示することはできない」が,中央値9.0,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では推奨文に含まれていた“保険適用がないこと”について,付加的な事項に加えるよう提案があった.また,受け入れに関しては「たぶん受け入れられない」に修正するよう提案があった. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ARDS に対しては保険適用外であるため,院内の倫理委員会の承認を得るなど適切な準備の後に実施する必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本邦の臨床現場においてARDS に対してどの程度,トロンボモジュリンが使用されているかについてガイドライン公表後にアンケート調査などでモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities ARDS に対するトロンボモジュリンの効果についての臨床試験,RCT が必要である.
参考文献1) Pelosi P, D’Onofrio D, Chiumello D, et al. Pulmonary and extrapulmonary acute respiratory distress syndrome are different. Eur Respir J Suppl 2003;42:48s‒56s. 2) Kudo D, Toyama M, Aoyagi T, et al. Involvement of high mobility group box 1 and the therapeutic effect of recombinant thrombomodulin in a mouse model of severe acute respiratory distress syndrome. Clin Exp Immunol 2013;173:276‒87. 3) Suzuki K, Okada H, Takemura G, et al. Recombinant thrombomodulin protects against LPS‒induced acute respiratory distress syndrome via preservation of pulmonary endothelial glycocalyx. Br J Pharmacol 2020;177:4021‒33. 4) Hayakawa S, Matsuzawa Y, Irie T, et al. Efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin for the treatment of acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis:a single arm, non‒randomized prospective clinical trial. Multidiscip Respir Med 2016;11: 38.
背景,この問題の優先度 ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である1).その病態には,肺胞上皮障害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.このため肺血管拡張作用がある一酸化窒素(NO)の吸入が有効である可能性があり,NO 吸入により酸素化が改善した報告がある2).通常の換気設定では酸素化が改善しない場合のレスキューセラピーとしてNO が用いられることがあるが,本邦では適用がない.一方で,NO 吸入によっても人工呼吸器装着日数や死亡率を改善しないとの報告もある3).したがって,NO 吸入に関するSR を行うことは重要臨床課題といえる.解 説 PICO 患者(P):ARDS 患者.介入(I):NO 使用.対照(C):NO 非使用.アウトカム(O):短期死亡,人工呼吸器装着 日数,ICU 滞在日数,入院日数,腎機能障害,メトヘモグロビン血症. エビデンスの要約 NO 吸入を行うことで,人工呼吸器装着日数(2 RCT:n=77)は1.77 日短くなり(95% CI:3.55 日短縮~0.02 日延長),ICU 滞在日数(1 RCT:n=40)は0.7 日短くなる(95%CI: 38.28 日短縮~36.88 日延長).よって,予測 される望ましい効果はわずかながらあると考え,「小さい」と判断した.一方,NO 吸入を行うことで死亡(7 RCT: n=878)に関しては1,000 人あたり40 人多く 1 2 1 2 領域E 薬物療法・非薬物療法 ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用するか? CQ 40 ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用しないことを条件付きで推奨する(条件 付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). すでに一酸化窒素を使用している施設においてレスキューセラピーとしての一酸化窒素使用を妨げるものではない. 推 奨 付帯事項
なり(95%CI:16 人減少~109 人増加),腎機能障害(1 RCT:n=180)は132 人多くなる(95%CI:10 人増加~375 人増加).よって,予測される望ましくない効果は「中程度」と判断した. エビデンスの確実性 介入により害(死亡および腎機能障害)が増え,人工呼吸器装着日数およびICU 滞在日数には効果ありとなった.よって,方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も低い「とても低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 死亡が増加することから,害が効果を上回ると判断した.倫理委員会の承認などを要し,専用設備の必要性から,実施可能な医療機関が限られることが予想される. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が,中央値9.0 点,見解不一致指数0.0497 であった.パネル会議では,前回の診療ガイドラインでは使用しないことを推奨(GRADE 1C)していたが,今回はエビデンスの確実性が「非常に低」であることから「使用しないことを提案する(G R A D E 2 D)」と変更になること, COVID‒19患者に対するNOの臨床試験が進行していることが確認された.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし.実施上の考慮事項 前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』では,「強い非推奨(GRADE 1C)」という判断であったが,本診療ガイドラインでは今回はエビデンスの確実性が「非常に低」であることから「使用しないことを提案する(GRADE 2D)」と変更になった.適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認などを要する. 関連する他の診療ガイドラインの記載 なし. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析において採用したRCT は1998 年から2004 年に実施されたものである.今後,ARDS 患者においてNO 使用を再考するのであれば,質の高いRCT が実施されることが望まれる.また,COVID‒19 ARDS 患者におけるNO 吸入療法(https://clinicaltrials. gov/ct2/show/NCT04306393)の有用性については,RCT の結果を待たなければならない. 文献検索式と文献選択 「respiratory distress syndrome,adult」「ARDS」「acute lung injury」「nitric oxide」などのキーワードを用いて,PubMed/MED- LINE,Cochrane CENTRAL,医中誌Web で 3 4 5 3 4 5 6 7 8
検索を行い,7 研究4‒10)が該当した. 本CQ で対象とした研究 Dellinger 19984), Gerlach 20035), Lundin 19996), Michael 19987), Tayler 20048), Troncy 19989), Cuthbertson 200010).資料一覧 ・資料CQ40‒1 Search strategy.・資料CQ40‒2 フローダイアグラム.・資料CQ40‒3 Risk of bias.・資料CQ40‒4 Forest plot.・資料CQ40‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ40‒6 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Pelosi P, D’ Onofrio D, Chiumello D, et al. Pulmonary and extrapulmonary acute respiratory distress syndrome are different. Eur Respir J suppl 2003;42:48s‒56s. 2) Park KJ, Lee YJ, Oh YJ, et al. Combined effects of inhaled nitric oxide and a recruit- ment maneuver in patients with acute respiratory distress syndrome. Yonsei Med J 2003;44:219‒26. 3) Taylor RW, Zimmerman JL, Dellinger RP, et al. Low‒dose inhaled nitric oxide in patients with acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2004;291: 1603‒9. 4) Dellinger RP, Zimmerman JL, Taylor RW, et al. Effects of inhaled nitric oxide in patients with acute respiratory distress syndrome:results of a randomized phase II trial. Inhaled nitric oxide in ARDS study group. Crit Care Med 1998;26:15‒23. 5) Gerlach H, Keh D, Semmerow A, et al. Dose‒response characteristics during long‒ term inhalation of nitric oxide in patients with severe acute respiratory distress syndrome:a prospective, randomized, controlled study. Am J Respir Crit Care Med 2003;167:1008‒15. 6) Lundin S, Mang H, Smithies M, et al. Inhalation of nitric oxide in acute lung injury: results of a European multicentre study. The European study group of inhaled nitric oxide. Intensive Care Med 1999;25:911‒9. 7) Michael JR, Barton RG, Saffle JR, et al. Inhaled nitric oxide versus conventional therapy:effect on oxygenation in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 1998;157:1372‒ 80. 8) Taylor RW, Zimmerman JL, Dellinger RP, et al. Low‒dose inhaled nitric oxide in patients with acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2004;291: 1603‒9. 9) Troncy E, Collet JP, Shapiro S, et al. Inhaled nitric oxide in acute respiratory distress syndrome:a pilot randomized controlled study. Am J Respir Crit Care Med 1998; 157:1483‒8. 10) Cuthbertson BH, Galley HF, Webster NR. Effect of inhaled nitric oxide on key media- tors of the inflammatory response in patients with acute lung injury. Crit Care Med 2000;28:1736‒41. 参考文献
資料CQ40—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/4) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR Respiratory Distress Syndrome, Newborn[mh] OR ARDS[tiab] OR Acute Lung Injury[tiab] OR Acute Hypoxemic Respiratory Failure[tiab] #2 Nitric oxide[mh] OR Nitric oxide[tiab] #3 #1 AND #2 #4 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR drug therapy [sh] OR randomly [tiab] OR trial [tiab] OR groups [tiab]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #5 #1 AND #2 AND #4
CENTRAL(Search date:2020/7/4) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Newborn] explode all trees #3 (ARDS):ti,ab,kw #4 ("Acute Lung Injury"):ti,ab,kw #5 ("Acute Hypoxemic Respiratory Failure"):ti,ab,kw #6 ("acute respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #7 {OR #1-#6} #8 MeSH descriptor: [Nitric Oxide] explode all trees #9 ("nitric oxide"):ti,ab,kw #10 #8 OR #9 #11 #7 AND #10
Igaku—Chuo—Zasshi (Search date : 2020/6/22) #1呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3 #1 OR #2 #4一酸化窒素/TH OR 一酸化窒素/TA #5 #3 AND #4 #6 (ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試
験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT=会議録除く) #7 #5 AND #6
資料CQ40—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=828 643件170件15件 重複した研究 n=108 除外基準に該当した研究 n=675 除外基準に該当した研究n=36理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる2件25件3件6件 検索で同定された研究 n=828 重複研究を除外した研究 n=720 フルテキストで適格性を評価した研究 n=45 系統的レビューに組み入れた研究 n=9 メタ解析に組み入れた研究 n=7
資料CQ40—3 Risk of bias 短期死亡 腎機能障害 人工呼吸器装着日数 ICU滞在日数
資料CQ40—4 Forest plot 短期死亡 人工呼吸器装着日数 ICU滞在日数
腎機能障害
資料CQ40—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討NO 投与 ありNO 投与 なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 短期死亡* 7 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし140/473 (29.6%) 108/405 (26.7%) RR 1.15 (0.94~1.41) 1,000 人あたり40 人増加(16 人減少~ 109 人増加) ++○○ 低重大 人工呼吸器装着日数 2 ランダム 化試験深刻c 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻dなし35 35 —平均1.77 日短縮(3.55 日短縮~ 0.02 日延長) +○○○非常に低重大 ICU 滞在日数 1 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻dなし20 20 —平均0.7 日短縮(38.28 日短縮~ 36.88 日延長) +○○○非常に低重大 腎機能障害 1 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない深刻fなし23/93 (24.7%) 10/87 (11.5%) RR 2.15 (1.09~4.26) 1,000 人あたり132 人増加(10 人増加~ 375 人増加) ++○○ 低重大 入院日数 0 — — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 メトヘモグロビン血症 0 — — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 *短期死亡:30 日死亡,90 日死亡. CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.入院日数,メトヘモグロビン血症はアウトカム報告がなかった.説 明a.バイアスリスクにおいて,中等度のリスクのため,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. b.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため1 段階ダウンとした. c.バイアスリスクにおいて,全研究のブラインドが高いリスクであり,Troncy らの研究のランダム割付順番の生成と割り付けの隠蔽化のリスクが不明のため1 段階ダウンとした. d.OIS を満たさず,95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため2 段階ダウンとした. e.バイアスリスクにおいて,研究参加者と治療提供者のブラインドが高いリスクであり,1 段階ダウングレードとした. f.OIS を満たさないため,1 段階ダウンとした.
資料CQ40—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:成人ARDS 患者に使用する特異的な薬剤はあるか? CQ40:ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用するか? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者介 入:一酸化窒素(nitric oxide:NO)使用群比較対照: NO 非使用群主要なアウトカム:短期死亡,人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数,入院日数,腎機能障害,メトヘモ グロビン血症 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である1).その病 態には,肺胞上皮障害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.このため,肺血管拡張作用があるNO の吸入が有効である可能性があり,NO 吸入により酸素化が改善した報告がある2).通常の換気設定では酸素化が改善しない場合のレスキューセラピーとしてNO が用いられることがあるが,本邦では適用がない.一方で,NO 吸入によっても人工呼吸器装着日数や死亡を改善しないとの報告もある3).したがって,NO 吸入に関するSR を行うことは重要臨床課題といえる 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態であ る.その病態には,肺胞上皮障害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.このため,肺血管拡張作用があるNO の吸入が有効である可能性があり,NO 吸入により酸素化が改善した報告がある.一方で,NO 吸入によっても人工呼吸器装着日数や死亡を改善しないとの報告もある.したがって,NO 吸入に関する益と害のバランスを明らかにすることは重要臨床課題といえる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずかSR の結果,PICO に一致したRCT が7 件施行されており,これらを用
●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないいたメタ解析を施行した NO 吸入を行うことで,人工呼吸器装着日数(2 RCT:n=77)は1.77日短くなり(95% CI:3.55 日短縮~0.02 日延長),ICU 滞在日数(1 RCT:n=40)は0.7 日短くなる(95% CI:38.28 日短縮~36.88 日延長).このことより,予測される望ましい効果はわずかながらあると考え,「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからないNO 吸入を行うことで死亡(7 RCT:n=878)に関しては1,000 人あた り40 人多くなり(95% CI:16 人減少~109 人増加),腎機能障害(1 RCT:n=180)は132 人多くなる(95% CI:10 人増加~375 人増加).このことより,予測される望ましくない効果は「中程度」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性短期死亡重大++○○ 低 人工呼吸器装着日数重大+○○○ 非常に低 ICU 滞在日数重大+○○○ 非常に低 腎機能障害重大++○○ 低 入院日数重大— — メトヘモグロビン血症重大— — 入院日数,メトヘモグロビン血症は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はないNO 吸入の有無におけるアウトカムに関する,価値観についてのデータ はないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対照介入 (NO)絶対差相対効果 RR (95% CI) 短期死亡108/405 (26.7%) 140/473 (29.6%) 40 人増加/ 1,000 人(16 人減少~ 109 人増加) 1.15 (0.94~1.41) 人工呼吸器装着日数— —平均1.77 日短縮 (3.55 日短縮~ 0.02 日延長) — ICU 滞在日数— —平均0.7 日短縮 (38.28 日短縮~ 36.88 日延長) — 腎機能障害10/87 (11.5%) 23/93 (24.7%) 132 人増加/ 1,000 人(10 人増加~ 375 人増加) 2.15 (1.09~4.26) 入院日数— —推定不可能—メトヘモグロ ビン血症— —推定不可能—
入院日数,メトヘモグロビン血症は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん対照が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考●いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない介入による害が益を上回り,適用外使用になること,コストの増加,専 用の設備の必要性などから,受け入れられないと判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認などを要する.ま た,専用の設備を用意する必要があり,実施可能な医療機関が限られることが予想される 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない
価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 すでに一酸化窒素を使用している施設においてレスキューセラピーとしての一酸化窒素使用を妨げるものではない. 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者にNO 吸入を使用するか?患 者 18 歳以上の低酸素性呼吸不全患者.介 入 NO 吸入を使用.対 照 NO 非使用.アウトカム 死亡,人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数,腎機能障害.
エビデンスの要約NO 吸入を行うことで,人工呼吸器装着日数(2 RCT:n=77)は1.77 日短くなり(95% CI: 3.55 日短縮~0.02 日延長),ICU 滞在日数(1 RCT:n=40)は0.7 日短くなる(95% CI:38.28日短縮~36.88 日延長).このことより,予測される望ましい効果はわずかながらあると考え,「小さい」と判断した.一方,NO 吸入を行うことで死亡(7 RCT:n=878)に関しては1,000 人あたり40 人多くなり(95% CI:16 人減少~109 人増加),腎機能障害(1 RCT:n=180)は132 人多くなる(95% CI: 10 人増加~375 人増加).このことより,予測される望ましくない効果は「中程度」と判断した.エビデンスの確実性死亡および腎機能障害については介入により害が増え,人工呼吸器装着日数およびICU 滞在日数は介入により効果ありとなった.よって,方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定価値観については,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる.効果のバランスについては,本介入は点推定値,信頼区間の上限,下限を加味した場合においても害が効果を上回ると判断した.受け入れについては,介入による害が益を上回り,適用外使用になること,コストの増加,専用の設備の必要性などから,受け入れられないと判断した.また,実行可能性については,適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認などを要し,専用の設備を用意する必要があり,実施可能な医療機関が限られることが予想される.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.0497 であった.パネル会議では,前回の診療ガイドラインでは使用しないことを推奨(GRADE 1C)していたが,今回はエビデンスの確実性が「非常に低」であることから,使用しないことを提案する(GRADE 2D)と変更になること,COVID‒19 患者に対するNO の臨床試験が進行していることが確認された.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 実施していない. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』では,強い非推奨(GRADE 1C)という判断であったが,本診療ガイドラインでは今回はエビデンスの確実性が「非常に低」であることから,使用しないことを提案する(GRADE 2D)と変更になった.適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認などを要する. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある.
研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析において採用したRCT は1998 年から2004 年に実施されたものである.今後, ARDS 患者においてNO 使用を再考するのであれば,質の高いRCT が実施されることが望まれる.また,COVID‒19 ARDS 患者におけるNO 吸入療法(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/ NCT04306393)の有用性については,RCT の結果を待たなければならない.参考文献1) Pelosi P, D’Onofrio D, Chiumello D, et al. Pulmonary and extrapulmonary acute respiratory distress syndrome are different. Eur Respir J Suppl 2003;42:48s‒56s. 2) Park KJ, Lee YJ, Oh YJ, et al. Combined effects of inhaled nitric oxide and a recruitment maneuver in patients with acute respiratory distress syndrome. Yonsei Med J 2003;44: 219‒26. 3) Taylor RW, Zimmerman JL, Dellinger RP, et al. Low‒dose inhaled nitric oxide in patients with acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2004;291:1603‒9.
背景,この問題の優先度 ARDS の本体は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫であり,その発症には好中球エラスターゼが重要なメディエーターの1つであると考えられている1,2).本邦において好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタットは臨床使用可能であり,予後改善効果についてこれまでに検討が行われてきた.死亡に関する改善がないとの報告3)がある一方で,有効性が期待できるとした報告もある4).したがって,本CQ についてSR を行うことは重要な臨床課題であると考えられる. 解 説 PICO 患者(P):18 歳以上のARDS 患者.介入(I):シベレスタット使用.対照(C):シベレスタット非使用.アウトカム(O):短期死亡(できるだけ長期 のもの),人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数.エビデンスの要約 シベレスタットを使用することで,死亡に関して(4 RCT:n=557)は1,000 人あたり5 人少なくなり(95%CI:67 人減少~78 人増加),人工呼吸器装着日数(2 RCT:n=38)は4.74日短くなり(95%CI:13.11日短縮~3.64日短縮),ICU 滞在日数(1 RCT:n=24)は5 日短くなる(95%CI:21.26 日短縮~11.26 日延長).このことより,予測される望ましい効果はわずかながらあると考え,「わずか」と判断した.一方,想定したシベレスタットの害について今回の採用論文では報告されていなかった.しかし,Zeiher らは有害事象で薬剤投与中止になった割合にシベレスタット群と対照群で有意差はなかったと報告している(4.6% vs. 3.7%).また,Kadoi らも投与前後の検査値に両群で差はなかったとしている.先発品であるエラスポールの添付文書において,1~10%未満の副作用として肝機能に関わる検査値の異常があるとしている.このことより,予測される望ましくない効果は「わずか」と考えらえる. エビデンスの確実性 死亡については介入の効果なし,人工呼吸器 1 2 1 2 領域E 薬物療法・非薬物療法 ARDS 患者にシベレスタットを使用するか? CQ 41 ARDS 患者にシベレスタットを使用しないことを条件付きで推奨する(条件 付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 推 奨
装着日数,ICU 滞在日数は介入に効果ありと方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低い」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 価値観については,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる.本介入の予測される望ましくない効果が小さいものの,望ましい効果は信頼区間の上限,下限を加味した場合に方向が変わる可能性がある.つまり,死亡が1,000 人あたり78 人増加する可能性がある.したがって,効果のバランスは「わからない」と判断した.受け入れについては,介入による益が明確ではなく,死亡を増やす可能性がある.さらに,コストがある程度増加する可能性があるため,おそらく受け入れられないと判断した.実行可能性については,シベレスタットの入手は容易であり,どの病院においても実行可能性は高いといえる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者にシベレスタットを使用しないことを条件付きで推奨する」が中央値8 点,見解不一致指数0.1316であった.パネル会議では,害と益のバランスとコストを踏まえた推奨の方向性について議論があった.また,他薬剤との配合変化が多い薬剤であり投与ルートが限定される可能性があるといった意見があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 なし.実施上の考慮事項 『ARDS 診療ガイドライン2016』から推奨の変更はない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS に関連するガイドラインは世界でも少数しか存在しない.フランスの成人ARDSに対するエキスパートオピニオンをまとめたガイドラインでは,シベレスタットの記載はない5).また,『Surviving sepsis campaign guideline 2021』にも同様に,シベレスタットの記載はない6). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として有害事象や費用対効果について更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析において採用した4 つのRCT のうち3 つは対象患者が22~24 名の小規模なものであり,1 つの大きな研究も2004 年に行われたものである.今後,ARDS 患者において大規模RCTが実施されることが望まれる. 文献検索式と文献選択 「Leukocyte elastase」「sivelestat」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CEN- TRAL および医中誌で2020 年6 月4 日までの文献を検索したところ245 件の研究が同定され,スクリーニングの結果5 件のRCT7‒11)を採用した. 4 5 3 4 5 6 7 8
本CQ で対象とした研究 Kadoi 20047), Nakayama 20138), Sato 20089), Zeiher 200410), Ryugo 200611). 資料一覧 ・資料CQ41‒1 Search strategy.・資料CQ41‒2 フローダイアグラム. ・資料CQ41‒3 Risk of bias.・資料CQ41‒4 Forest plot.・資料CQ41‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ41‒6 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Donnelly SC, MacGregor I, Zamani A, et al. Plasma elastase levels and the develop- ment of the adult respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 1995; 151:1428‒33. 2) Moraes TJ, Chow CW, Downey GP. Proteases and lung injury. Crit Care Med 2003; 31:S189‒94. 3) Iwata K, Doi A, Ohji G, et al. Effect of neutrophil elastase inhibitor(sivelestat sodium) in the treatment of acute lung injury(ALI)and acute respiratory distress syndrome (ARDS):a systematic review and meta‒analysis. Intern Med 2010;49:2423‒32. 4) Aikawa N, Kawasaki Y. Clinical utility of the neutrophil elastase inhibitor sivelestat for the treatment of acute respiratory distress syndrome. Ther Clin Risk Manag 2014; 10:621‒9. 5) Papazian L, Aubron C, Brochard L, et al. Formal guidelines:management of acute respiratory distress syndrome. Ann Intensive Care 2019;9:69. 6) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med 2021;47:1181‒247. 7) Kadoi Y, Hinohara H, Kunimoto F, et al. Pilot study of the effects of ONO‒5046 in patients with acute respiratory distress syndrome. Anesth Analg 2004;99:872‒7. 8) Nakayama H, Oshima Y, Watanabe T, et al. NPPV 下のALI/ARDS 症例におけるシベレ スタットナトリウムの有用性の検討.Prog Med 2013;33:2223‒7. 9) Sato N, Suzuki Y, Kojika M, et al. 肺炎に起因するALI/ARDSに対するシベレスタットナトリウム投与の検討.Prog Med 2008;28:437‒9 10) Zeiher BG, Artigas A, Vincent JL, et al. Neutrophil elastase inhibition in acute lung injury:results of the STRIVE study. Crit Care Med 2004;32:1695‒702. 11) Ryugo M, Sawa Y, Takano H, et al. Effect of a polymorphonuclear elastase inhibitor (sivelestat sodium)on acute lung injury after cardiopulmonary bypass:findings of a double‒blind randomized study. Surg Today 2006;36:321‒6. 参考文献
資料CQ41—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/3) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Respiratory Distress Syndrome, Newborn[mh] #3 Acute lung injury [mh] #4 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #5 Acute lung injur* [tiab] OR acute respiratory distress [tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #6 (Severe[tiab] OR critical*[tiab]) AND (respiratory[tiab] OR hypox* [tiab]) #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 Leukocyte elastase[mh] #9 "leukocyte elastase"[tiab] #10 sivelestat [Supplementary Concept] #11 sivelestat [tiab] #12 "Neutrophil elastase"[tiab] #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 animals [mh] NOT humans [mh] #16 #14 NOT #15 #17 Controlled clinical trial[Publication Type] #18 randomized[Title/Abstract] #19 placebo[Title/Abstract] #20 randomly [tiab] #21 trial[tiab] #22 groups [tiab] #23 ” Follow-Up Studies” [Mesh] #24 "systematic review"[Publication Type] #25 "meta-analysis"[Publication Type] #26 "review"[Publication Type] #27 #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 OR #26 #28 #16 AND #27
CENTRAL(Search date:2020/6/4) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 [mh "Acute lung injury"] #4 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #5 (Acute NEXT lung NEXT injur*:ti,ab) OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #6 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab) #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Leukocyte elastase"] #9 "leukocyte elastase":ti,ab #10 sivelestat:ti,ab
#11 "Neutrophil elastase":ti,ab #12 {OR #8-#11} #13 #7 AND #12 #14 [mh animals] NOT [mh humans] #15 #13 NOT #14
Igaku—Chuo—Zasshi (Search date : 2020/6/3) #1呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL #4呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 呼吸窮迫症候群—急性/AL OR ショック肺/AL #5重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/AL #6毛細管漏出症候群/TH OR 毛細管漏出症候群/AL #7硝子膜症/TH OR 硝子膜症/AL #8 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9 Sivelestat/TH OR シベレスタット/AL #10 (好中球/TH OR neutrophil/AL) AND ("Pancreatic elastase" /TH OR elastase/AL) #11 (白血球/TH OR leukocyte/AL) AND ("Pancreatic elastase" /TH OR elastase/AL) #12 #9 OR #10 OR #11 #13 #8 AND #12 #14ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #15比較試験/AL #16臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #17プラセボ/TH OR プラセボ/AL #18対照/AL #19コントロール/AL #20 (臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL) #21 #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 #22 #13 AND #21 #23 (#22) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ41—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=285 158件74件53件 重複した研究 n=40 除外基準に該当した研究 n=231 除外基準に該当した研究 n=5・ RCTではない・ PICが異なる3件2件 検索で同定された研究 n=285 重複研究を除外した研究 n=245 フルテキストで適格性を評価した研究 n=14 系統的レビューに組み入れた研究 n=9 メタ解析に組み入れた研究 n=5
資料CQ41—3 Risk of bias 人工呼吸器装着日数 短期死亡 ICU滞在日数
資料CQ41—4 Forest plot 短期死亡 人工呼吸器装着日数 ICU滞在日数
資料CQ41—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討シベレス タットplacebo相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 死 亡(最長のもの) 4 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし70/279 (25.1%) 72/278 (25.9%) RR 0.98 (0.74~1.30) 1,000 人あたり5 人減少(67 人減少~ 78 人増加) +○○○非常に低重大 人工呼吸器装着日数 2 ランダム 化試験深刻c 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし19 19 —平均4.74 日短縮(13.11 日短縮~ 3.64 日延長) +○○○非常に低重大 ICU 滞在日数 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし12 12 —平均5 日短縮(21.26 日短縮~ 11.26 日延長) ++○○ 低重大 入院日数 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 肝機能障害 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 腎機能障害 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 アレルギー反応 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.入院日数,肝機能障害,腎機能障害,アレルギー反応はアウトカム報告がなかった.説 明a.Moderate およびhigh risk of bias の研究が多いため. b.OIS を満たさず,95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため. c.Weight のほとんどを占める研究がhigh risk of bias の研究のため.
資料CQ41—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ:成人ARDS 患者に使用する特異的な薬剤はあるか? CQ41:ARDS 患者にシベレスタットを使用するか? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者介 入:シベレスタット使用比較対照:シベレスタット非使用主要なアウトカム:短期死亡(できるだけ長期のもの),人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数,入院日 数,肝機能障害,腎機能障害,アレルギー反応 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS の本体は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫であり,その発 症には好中球エラスターゼが重要なメディエーターの1 つであると考えられている1,2).本邦において好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタットは臨床使用可能であり,予後改善効果についてこれまでに検討が行われてきた.死亡に関する改善がないとの報告3)がある一方で,有効性が期待できるとした報告もある4).したがって,本CQ についてSR を行うことは重要な臨床課題であると考えられる 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS の本体は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進 型肺水腫であり,その発症には好中球エラスターゼが重要なメディエーターの1 つであると考えられている.本邦において,好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタットは臨床使用が可能であり,予後改善効果についてこれまでに検討が行われてきた.死亡率を改善しないとの報告がある一方で,有効性が期待できるとした報告もある.したがって,シベレスタットの益と害のバランスを明らかにすることは重要な臨床課題であると考えられる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さいSR の結果,PICO に一致したRCT が4 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行したシベレスタットを使用
○中程度○大きい○一概には言えない○わからないすることで,死亡に関して(4 RCT:n=557)は1,000 人 あたり5 人少なくなり(95% CI:67 人減少~78 人増加),人工呼吸器装着日数(2 RCT:n=38)は4.74 日短くなり(95% CI:13.11 日短縮~3.64 日短縮),ICU 滞在日数(1 RCT:n=24)は5 日短くなる(95% CI:21.26 日短縮~ 11.26 日延長).このことより,予測される望ましい効果は わずかながらあると考え,「わずか」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない想定したシベレスタットの害について,今回の採用論文で は報告されていなかった.よって,備考欄の記載と合わせて考えると,予測される害は「わずか」と判断したZeiher らは有害事象で 薬剤投与中止になった割合にシベレスタット群と対照群で有意差はなかったと報告している(4.6%vs. 3.7%).また,Kadoi らも投与前後の検査値に両群で差はなかったとしている.先発品であるエラスポール® の添付文書において,1~10%未満の副作用として肝機能異常があるとしている エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性短期死亡重大+○○○ 非常に低 人工呼吸器装着日数重大+○○○ 非常に低 ICU 滞在日数重大++○○ 低 入院日数重大— — 肝機能障害重大— —
腎機能障害重大— — アレルギー 反応重大— — 入院日数,肝機能障害,腎機能障害,アレルギー反応は採用された文献内に報告がなかった 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はないシベレスタット投与の有無におけるアウトカムに関する, 価値観についてのデータはないが,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない結果のまとめ アウトカム対照介入 (シベレス タット)絶対差相対効果 RR (95% CI) 短期死亡72/278 (25.9%) 70/279 (25.1%) 5 人減少/ 1,000 人 (67 人減少~ 78 人増加) 0.98 (0.74~ 1.30)
人工呼吸器装着日数— —平均4.74 日 短縮(13.11 日 短縮~ 3.64 日短縮) — ICU滞在日数— —平均5 日短縮 (21.26 日 短縮~ 11.26 日延長) — 入院日数— —推定不可能—肝機能障害— —推定不可能—腎機能障害— —推定不可能—アレルギー反応— —推定不可能—入院日数,肝機能障害,腎機能障害,アレルギー反応は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 以上から,介入による効果と害のバランスは「わからない」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない介入による益が明確ではなく,死亡を増やす可能性があ る.さらに,コストがある程度増加する可能性があるため,おそらく受け入れられないと判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないシベレスタットの入手は容易であり,どの病院においても実行可能性は高いといえる
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○
結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者にシベレスタットを使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者にシベレスタットを使用するか?患 者 18 歳以上のARDS 患者.介 入 シベレスタット使用.対 照 シベレスタット非使用.アウトカム 短期死亡(できるだけ長期のもの),人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数.エビデンスの要約シベレスタットを使用することで,死亡に関して(4 RCT:n=557)は1,000 人あたり5 人少なくなり(95% CI:67 人減少~78 人増加),人工呼吸器装着日数(2 RCT:n=38)は4.74 日短くなり(95% CI:13.11 日短縮~3.64 日短縮),ICU 滞在日数(1 RCT:n=24)は5 日短くなる(95% CI:21.26 日短縮~11.26 日延長).このことより,予測される望ましい効果はわずかながらあると考え,「わずか」と判断した.一方,想定したシベレスタットの害について今回の採用論文では報告されていなかった.しかし,Zeiher らは有害事象で薬剤投与中止になった割合にシベレスタット群と対照群で有意差はなかったと報告している(4.6%vs. 3.7%).また,Kadoi らも投与前後の検査値に両群で差はなかったとしている.先発品であるエラスポールの添付文書において, 1~10%未満の副作用として肝機能に関わる検査値の異常があるとしている.このことより,予測される望ましくない効果は「わずか」と考えられる.エビデンスの確実性死亡については介入の効果なし,人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数は介入に効果ありと方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低い」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定価値観については,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる.本介入の予測される望ましくない効果が小さいものの,望ましい効果は信頼区間の上限,下限を加味した場合に方向が変わる可能性がある.つまり,死亡が1,000 人あたり78 人増加する可能性がある.したがって,効果のバランスは「わからない」と判断した.受け入れについては,介入による益が明確ではなく,死亡を増やす可能性がある.さらに,コストがある程度増加する可能性があるため,おそらく受け入れられないと判断した.実行可能性については,シベレスタットの入手は容易であり,どの病院においても実行可能性は高いといえる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「ARDS 患者にシベレスタットを使用しないことを条件付きで推奨する」が中央値8 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では,害と益のバランスとコストを踏まえた推奨の方向性について議論があった.また,他薬剤との配合変化が多い薬剤であり投与ルートが限定される可能性があるといった意見があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations 実施していない. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 『ARDS 診療ガイドライン2016』から推奨の変更はない. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として有害事象や費用対効果について,更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析において採用した4 つのRCT のうち,3 つは対象患者が22~24 名の小規模なものであり,1 つの大きな研究も2004 年に行われたものである.今後,ARDS 患者において大規模RCT が実施されることが望まれる.参考文献1) Donnelly SC, MacGregor I, Zamani A, et al. Plasma elastase levels and the development of the adult respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 1995;151:1428‒ 33. 2) Moraes TJ, Chow CW, Downey GP. Proteases and lung injury. Crit Care Med 2003;31: S189‒94. 3) Iwata K, Doi A, Ohji G, et al. Effect of neutrophil elastase inhibitor(sivelestat sodium)in the treatment of acute lung injury(ALI)and acute respiratory distress syndrome(ARDS): a systematic review and meta‒analysis. Intern Med 2010;49:2423‒32. 4) Aikawa N, Kawasaki Y. Clinical utility of the neutrophil elastase inhibitor sivelestat for the treatment of acute respiratory distress syndrome. Ther Clin Risk Manag 2014;10:621‒ 9.
背景,この問題の優先度 ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である1).副腎皮質ステロイド(corticosteroid:CS)はARDS の炎症に関与する炎症メディエーターを不活化するため有効と考えられている.しかし,CS は免疫機能を低下させ感染を引き起こす可能性がある.過去のSR では死亡やその他の臨床アウトカムが改善するかどうかは相反する結果が公表されており,未だに議論の余地がある2‒7).したがって,本CQ のSR は重要課題である.解 説 PICO 患者(P):P/F 比200 未満の人工呼吸器管理さ れた成人ARDS 患者.介入(I):CS 投与.対照(C):CS 非投与.アウトカム(O):長期死亡(最長期間),入院 日数,ICU 滞在日数,人工呼吸器非使用日数(VFD),感染症(肺炎,敗血症,その他), P/F 比. エビデンスの要約 P/F 比200 未満の人工呼吸器管理された成人 1 2 1 領域E 薬物療法・非薬物療法 成人ARDS 患者に副腎皮質ステロイドを使用するか? CQ 42 成人ARDS 患者に高用量副腎皮質ステロイドを使用しないことを条件付き で推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). 成人ARDS 患者に低用量副腎皮質ステロイドを使用することを強く推奨す る(強い推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 1B). 副腎皮質ステロイドの種類と投与方法は研究によって様々である.高用量にはメチルプレドニゾロン30 mg/kg,低用量にはメチルプレドニゾロン1~2 mg/kg 程度の研究が含まれている.本委員会のサブグループ解析,過去のメタ解析論文からは早期に低用量副腎皮質ステロイドを開始し,7 日以上継続する投与方法の有用性が示唆されている. 推 奨 付帯事項
ARDS 患者にCS 投与と投与なしで比較した7つのRCT をメタ解析した.このうちBernardらの研究(1987 年)はメチルプレドニゾロン(methylprednisolone)が30 mg/kg と高用量であったため,それ以外の低用量のものと分けて検討を行った.まず,望ましい効果は以下のとおりである. 高用量望ましい効果として,研究内で測定された最長の死亡期間をまとめた長期死亡(1RCT; n=99)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり32 人減少(95%CI:196 人減少~183人増加)を認めた.以上より,「わずか」と判断した. 低用量望ましい効果として,研究内で測定された最長の死亡期間をまとめた長期死亡(5RCT: n=769)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり105 人減少(95%CI:178 人減少~7 人減少),感染症(5RCT:n=769)は1,000 人あたり50 人減少(95%CI:97 人減少~6 人増加)を認めた.また,人工呼吸器非使用日数(5RCT:n=767)の平均値とその信頼区間は 4.75 日増加(95%CI:2.97 日増加~6.54 日増 加),入院日数(2RCT:n=271)は5.04 日減少(95%CI:9.43 日減少~0.65 日減少),ICU滞在日数(2RCT:n=271)は5.23 日減少(95%CI:9.64 日減少~0.82 日減少)を認めた.以上より,「中程度」と判断した.一方,望ましくない効果は以下のとおりである. 高用量望ましくない効果として,感染症(1RCT: n=99)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり58 人増加(95%CI:46 人減少~353 人増加)を認めた.以上より,「小さい」と判断した. 低用量 低用量では望ましくない効果は認めなかった.しかし,高用量で感染症が懸念されており,また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』における敗血症性ショック患者を対象としたCS 療法のメタ解析では,感染症は1,000人あたり8人増加(95%CI:12人減少~ 31 人増加),消化管出血は1,000 人あたり6 人増加(95%CI:13 人減少~32 人増加)であった.そのため,「わずか」と判断した. エビデンスの確実性 高用量望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. 低用量望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 高用量,低用量ともに,価値観についてはばらつきは小さい.また,実行可能性については,CS にはARDS という病態で保険適用がない.しかし,ARDS の原因は多くが敗血症や肺炎である.デキサメタゾンは重症感染症に,メチルプレドニゾロンとハイドロコルチゾンは感染性ショックに保険適用があることから,多くの患者で使用できると思われるため,「たぶんはい」と判断した.効果のバランスと受け入れについては高用量と低用量では異なり,以下のとおりである. 高用量アウトカムの点推定値を考慮した場合, 3 4
1,000 人あたり,長期死亡は32 人減少するものの,感染は58 人増加する.信頼区間を考慮した場合,死亡は183 人,感染は353 人増加する可能性がある.このことから介入において害が益を上回る可能性がある.介入により死亡は減らすものの,感染症が増える可能性がある.介入において害が大きい可能性があり,受け入れられないと思われる. 低用量アウトカムの点推定値を考慮した場合, 1,000 人あたり,長期死亡は105 人減少,感染も50 人減少する.コストについて,統計学的に検討を行ってはいないが,介入により死亡を減らすほか,VFD を増やし,ICU 滞在日数や入院日数を減らすことで,CS を投与することによるコストの増大に見合う,コストを軽減できる可能性があり,介入による益が害を上回る可能性がある.介入により死亡を減らすほか, VFD を増やし,ICU 滞在日数や入院日数を減らすことで,結果的に経済的にも軽減できる可能性があり,受け入れられると思われる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者にCS を使用することを提案する」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議ではCS の低用量と高用量それぞれの効果の違いについての議論があった.また,投与開始時期についても議論があった. 推奨を低用量と高用量に分けて再投票することになり,修正Delphi 法により,「成人ARDS患者に高用量CS を使用しないことを条件付きで推奨する,成人ARDS 患者に低用量CS を使用することを強く推奨する」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1918 で合意に至った. サブグループの検討事項 CS の投与方法は研究によって様々である. Bernard 1987 では,メチルプレドニゾロン30 mg/kg を1 日4 回投与した(高用量メチルプレドニゾロン).Meduri 1998,Meduri 2007, Steinberg 2016では,メチルプレドニゾロンを初回1~2 mg/kg 投与したのち,1~14 日1~ 2 mg/kg/day,15~21 日0.5~1.0 mg/kg/ day,漸減しながら最大で32 日投与した(低用量メチルプレドニゾロン).Villar 2020 はデキサメタゾンを1~5 日目に20 mg/day 1 日1回,6~10 日目に10 mg/day 1 日1 回投与した(デキサメタゾン).Tongyoo 2016 はハイドロコルチゾン50 mg を1 日6 回7 日間投与した(ハイドロコルチゾン).Villar 2020 の研究では,CS はレジメンより前に抜管した時には中止あるいは漸減された.糖質コルチコイド力価と投与期間でサブ解析した点推定値を見ると,低用量(Meduri 1998,Meduri 2007,Steinberg 2016,Villar 2020),長期間(Meduri 1998,Meduri 5 3 Risk deference with CS vs. Control 点推定下限上限 長期死亡(overall) -98 -169 0投与期間7 日未満-20 -122 114投与期間7~14 日-114 -204 20投与期間15 日以上-145 -270 110
2 0 0 7,S t e i n b e r g 2 0 1 6,V i l l a r 2 0 2 0, Tongyoo 2016)投与で利益が増加することが点推定値で示されている. 実施上の考慮事項 CS にはARDS という病態で保険適用がない.しかし,ARDS の原因は多くが敗血症や肺炎である.デキサメタゾンは重症感染症に,メチルプレドニゾロンとハイドロコルチゾンは感染性ショックに保険適用があることから,多くの患者で使用できると思われる.ただし,肺外ARDS では保険適用の理由で使用されない可能性がある.『ARDS 診療ガイドライン2016』では,成人ARDS 患者において,CS(メチルプレドニゾロン1~2 mg/kg/day 相当)の使用を提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」と記載されている).本CQ では2016 年以降に出版された論文を加えて,低用量,高用量に分けて推奨を提示した. 関連する他の診療ガイドラインの記載 ARDS に関連するガイドラインは世界でも少数しか存在しない.フランスの成人ARDSに対するエキスパートオピニオンをまとめたガイドラインでは副腎皮質ステロイドの記載はない8).また,『Surviving sepsis campaign guideline 2021』のARDSに関連した章の部分にも同様に,副腎皮質ステロイドの記載はない9). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公 表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 本研究は制限換気による管理を行った研究で感度分析を行い,点推定値の方向が変わらないことを確認した.しかし,近年は,腹臥位療法をはじめとし,制限換気以外にも臨床アウトカムを改善するARDSの管理方法が報告されている.また,ARDS に対するCS の投与は,その開始時期,投与期間,漸減方法により効果が異なる可能性がある.今後は,これらを統一した上で,CS の効果を研究する必要性がある. 文献検索式と文献選択 「Steroids」「Adrenal cortex hormones」「Methylprednisolone」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月6 日までの文献を検索したところ5,398 件の研究が同定され,スクリーニングの結果7 件のRCT10‒16)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Bernard 198710), Meduri 199811), Steinberg 200612), Meduri 200713), Rezk 201314), Tongyoo 201615), Villar 202016). 資料一覧 ・資料CQ42‒1 Search strategy.・資料CQ42‒2 フローダイアグラム.・資料CQ42‒3 Risk of bias.・資料CQ42‒4 Forest plot.・資料CQ42‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ42‒6 Evidence‒to‒Decision. 4 5 6 7 8 9 10
1) Pelosi P, D’ Onofrio D, Chiumello D, et al. Pulmonary and extrapulmonary acute respiratory distress syndrome are different. Eur Respir J Supple 2003;42:48s‒56s. 2) Meduri GU, Siemieniuk RAC, Ness RA, et al. Prolonged low‒dose methylprednisolone treatment is highly effective in reducing duration of mechanical ventilation and mortality in patients with ARDS. J Intensive Care 2018;6:53. 3) Ruan SY, Lin HH, Huang CT, et al. Exploring the heterogeneity of effects of corticoste- roids on acute respiratory distress syndrome:a systematic review and meta‒analysis. Crit Care 2014;18:R63. 4) Lewis SR, Pritchard MW, Thomas CM, et al. Pharmacological agents for adults with acute respiratory distress syndrome. Cochrane Database Syst Rev 2019;7: CD004477. 5) Hirano Y, Madokoro S, Kondo Y, et al. Corticosteroid treatment for early acute respi- ratory distress syndrome:a systematic review and meta‒analysis of randomized trials. J Intensive Care 2020;8:91. 6) Meduri GU, Marik PE, Chrousos GP, et al. Steroid treatment in ARDS:a critical appraisal of the ARDS network trial and the recent literature. Intensive Care Med 2008;34:61‒9. 7) Meduri GU, Bridges L, Shih MC, et al. Prolonged glucocorticoid treatment is associ- ated with improved ARDS outcomes:analysis of individual patients’ data from four randomized trials and trial‒level meta‒analysis of the updated literature. Intensive Care Med 2016;42:829‒40. 8) Papazian L, Aubron C, Brochard L, et al. Formal guidelines:management of acute respiratory distress syndrome. Ann Intensive Care 2019;9:69. 9) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med 2021;47:1181‒247. 10) Bernard GR, Luce JM, Sprung CL, et al. High‒dose corticosteroids in patients with the adult respiratory distress syndrome. N Engl J Med 1987;317:1565‒70. 11) Meduri GU, Headley AS, Golden E, et al. Effect of prolonged methylprednisolone therapy in unresolving acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 1998;280:159‒65. 12) Steinberg KP, Hudson LD, Goodman RB, et al. Efficacy and safety of corticosteroids for persistent acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2006;354:1671‒ 84 13) Meduri GU, Golden E, Freire AX, et al. Methylprednisolone infusion in early severe ARDS:results of a randomized controlled trial. Chest 2007;131:954‒63. 14) Rezk NA, Ibrahim AM. Effects of methyl prednisolone in early ARDS. Egypt J Chest Dis Tuberc 2013;62:167‒72 15) Tongyoo S, Permpikul C, Mongkolpun W, et al. Hydrocortisone treatment in early sepsis‒associated acute respiratory distress syndrome:results of a randomized controlled trial. Crit Care 2016;20:329. 16) Villar J, Ferrando C, Martínez D, et al. Dexamethasone treatment for the acute respi- ratory distress syndrome:a multicentre, randomised controlled trial. Lancet Respir Med 2020;8:267‒76. 参考文献
資料CQ42—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/26) #1 "respiratory distress syndrome, adult"[MeSH Terms] OR "ARDS"[Title/Abstract] OR "respiratory distress syndrome"[Title/Abstract] OR "acute lung injury"[MeSH Terms] OR "acute lung injur*"[Title/ Abstract] OR "ALI"[Title/Abstract] #2 "respiratory distress syndrome, newborn"[MeSH Terms] #3 #1 OR #2 #4 "steroids"[MeSH Terms] OR "adrenal cortex hormones"[MeSH Terms] #5 "methylprednisolone"[Title/Abstract] OR "hydrocortisone"[Title/Abstract] OR "glucocorticoid*"[Title/ Abstract] OR "dexamethasone"[Title/Abstract] OR "corticosteroid*"[Title/Abstract] OR "cortiso*"[Title/ Abstract] #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6 #8 ((((((("randomized controlled trial"[Publication Type] OR "controlled clinical trial"[Publication Type]) OR "randomized"[Title/Abstract]) OR "placebo"[Title/Abstract]) OR "drug therapy"[MeSH Subheading]) OR "randomly"[Title/Abstract]) OR "trial"[Title/Abstract]) OR "groups"[Title/Abstract]) NOT ("animals"[MeSH Terms] NOT "humans"[MeSH Terms]) #9 #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/6/26) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh Steroids] OR [mh "adrenal cortex hormones"] #5 methyl prednisolone:ti,ab OR hydrocortisone:ti,ab OR glucocorticoid*:ti,ab OR dexamethasone:ti,ab OR corticosteroid*:ti,ab OR cortiso*:ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date : 2020/6/22) #1呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3呼吸窮迫症候群—新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #4 #1 OR #2 OR #3 #5 Steroids/TH OR "Fluorinated Steroids" /TA #6副腎皮質ホルモン/TH OR 副腎皮質ホルモン/TA #7 "Methylprednisolone Succinate" /TH OR "Methylprednisolone Succinate" /TA #8 Hydroxycorticosteroids/TH OR Hydroxycorticosteroids/TA #9 Methylprednisolone/TH OR Methylprednisolone/TA OR メチルプレドニゾロン/TA #10 Hydrocortisone/TH OR Hydrocortisone/TA OR ヒドロコルチゾン/TA OR ハイドロコルチゾン/TA #11 Dexamethasone/TA OR デキサメタゾン/TA #12 Betamethasone/TA OR ベタメタゾン/TA #13 Cortisone/TH OR Cortisone/TA OR コルチゾン/TA #14 Glucocorticoids/TH OR Glucocorticoids/TA OR グルココルチコイド/TA
#15 #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #4 AND #15 #17 (ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試 験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT=会議録除く) #18 #16 AND #17
資料CQ42—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=2,443 1,827件519件97件 重複した研究 n=282 除外基準に該当した研究 n=2,063 理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ プロトコルのみ7件28件53件2件 除外基準に該当した研究 n=90 検索で同定された研究 n=2,443 重複研究を除外した研究 n=2,161 フルテキストで適格性を評価した研究 n=98 系統的レビューに組み入れた研究 n=8 メタ解析に組み入れた研究n=7 2つの論文は1つの研究からの結果
資料CQ42—3 Risk of bias 感染症 高用量副腎皮質ステロイド長期死亡 人工呼吸器非使用日数低用量副腎皮質ステロイド長期死亡
感染症ICU滞在日数 入院日数P/F比
資料CQ42—4 Forest plot 高用量副腎皮質ステロイド長期死亡 感染症 低用量副腎皮質ステロイド長期死亡 人工呼吸器非使用日数 感染症
P/F比 入院日数 ICU滞在日数
資料CQ42—5 エビデンスプロファイル 高用量副腎皮質ステロイド 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討ステロイド 投与ありステロイド 投与なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 長期死亡 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻aなし30/50 (60.0%) 31/49 (63.3%) RR 0.95 (0.69~ 1.29) 1,000 人あたり32 人減少(196 人減少~ 183 人増加) ++○○ 低重大 感染症 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻aなし8/50 (16.0%) 5/49 (10.2%) RR 1.57 (0.55~ 4.46) 1,000 人あたり58 人増加(46 人減少~ 353 人増加) ++○○ 低重大 人工呼吸器非使用日数 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 ICU 滞在日数 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 入院日数 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重大 P/F 比 0 — — — — — — — 推定不可能 — — 重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.人工呼吸器非使用日数,ICU 滞在日数,入院日数,P/F 比はアウトカム報告がなかった.説 明a.OIS 基準を満たさず,95% CI が臨床判断の閾値をまたぐ.
低用量副腎皮質ステロイド 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討ステロイド 投与ありステロイド 投与なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 長期死亡 5 ランダム 化試験深刻a深刻b 深刻で ない深刻で ないなし106/405 (26.2%) 132/364 (36.3%) RR 0.71 (0.51~ 0.98) 1,000 人あたり105 人減少(178 人減少~ 7 人減少) ++○○ 低重大 人工呼吸器非使用日数 5 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし405 362 —平均4.75 日延長(2.97 日延長~ 6.54 日延長) +++○ 中重大 感染症 5 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻cなし109/405 (26.9%) 107/364 (29.4%) RR 0.83 (0.67~ 1.02) 1,000 人あたり50 人減少(97 人減少~ 6 人増加) ++○○ 低重大 ICU 滞在日数 2 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻dなし152 119 —平均5.23 日減少(9.64 日減少~ 0.82 日減少) ++○○ 低重大 入院日数 2 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻dなし152 119 —平均5.04 日減少(9.43 日減少~ 0.65 日減少) ++○○ 低重大 P/F 比 3 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻dなし192 148 —平均72.17 増加(32.51 増加~ 111.82 増加) ++○○ 低重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,MD:平均差,OIS:最適情報量.短期死亡は長期死亡とアウトカム報告が重複することから採用アウトカムから除外した.説 明a.すべての研究がlow またはmoderate RoB である. b.中等度の異質性を認め,点推定値が同じ方向性でないためダウングレードした. c.95% CI が効果なしを含み,CI が相当な益を含むためダウングレードした. d.OIS を満たさないためダウングレードした.
資料CQ42—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ42:成人ARDS 患者に副腎皮質ステロイドを使用するか? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者介 入:副腎皮質ステロイド(corticosteroid:CS)投与(投与薬剤,投与量,投与期間,投 与方法は問わない) 比較対照:CS CS 非投与主要なアウトカム:死亡(最長期間),短期死亡,入院日数,ICU 滞在日数,人工呼吸器非使用日数 (VFD),感染症(肺炎,敗血症,その他),P/F 比 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である1).CS は ARDS の炎症に関与する炎症メディエーターを不活化するため有効と考えられている.しかし,CS は免疫機能を低下させ,感染症を引き起こす可能性がある.過去のSR では死亡やその他の臨床アウトカムが改善するかどうかは相反する結果が公表されており,未だに議論の余地がある2—4).したがって,本CQ のSR は重要課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こし た病態である.CS はARDS の炎症に関与する炎症メディエーターを不活化するため有効と考えられている.しかし,CS は免疫機能を低下させ,感染症を引き起こす可能性がある.過去のSR では死亡やその他の臨床アウトカムが改善するかどうかは相反する結果が公表されており,未だに議論の余地がある.したがって,本CQ の優先順位は比較的高いと思われる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか(高用量) ○小さい●中程度(低用量) P/F 比200 未満の人工呼吸器管理された成人ARDS 患者 にCS 投与と非投与で比較した7 つのRCT をメタ解析した.このうちBernard らの研究はメチルプレドニゾロンが
○大きい○一概には言えない○わからない30 mg/kg と高用量であったため,それ以外の低用量のも のと分けて検討を行った<高用量>望ましい効果として,研究内で測定された最長の死亡期間をまとめた長期死亡(1 RCT:n=99)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり32 人減少(95%CI:196 人減少~183 人増加)を認めた.以上より,「わずか」と判断した<低用量>望ましい効果として,研究内で測定された最長の死亡期間をまとめた長期死亡(5 RCT:n=769)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり105 人減少(95%CI:178 人減少~7 人減少),感染症(5 RCT:n=769)は1,000 人あたり50 人減少(95%CI:97 人減少~6 人増加)を認めた.また,VFD(5 RCT:n=767)の平均値とその信頼区間は4.75 日増加(95%CI:2.97 日増加~6.54 日増加),入院日数(2 RCT:n=271)は5.04 日短縮(95%CI: 9.43 日短縮~0.65 日短縮),ICU 滞在日数(2 RCT:n= 271)は5.23 日短縮(95%CI:9.64 日短縮~0.82 日短縮)を認めた.以上より,「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい(高用量) ●わずか(低用量) ○一概には言えない○わからない<高用量> 望ましくない効果として,感染症(1 RCT:n=99)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり58 人増加(95% CI:46 人減少~353 人増加)を認めた.以上より,「小さい」と判断した<低用量>低用量では望ましくない効果は認めなかった.よって,備考欄の記載と合わせて考えると,「わずか」と判断した高用量で感染症が懸念 されており,また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』における敗血症性ショック患者を対象としたCS 療法のメタ解析では,感染症は1,000 人あたり8人増加(95%CI:12 人減少~31 人増加),消化管出血は1,000 人あたり6 人増加(95% CI:13 人減少~32 人増加)であった
エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低●低(高用量) ●中(低用量) ○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 相対的な重要性エビデンスの 確実性(高用量)エビデンスの 確実性(低用量) 長期死亡重大++○○ ++○○ 低低 人工呼吸器非使用日数(VFD)重大— +++○ —中 入院日数重大— ++○○ —低 ICU 滞在 日数重大— ++○○ —低 感染症重大++○○ ++○○ 低低 全体的なエビデンスの確実性<高用量>望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した<低用量>望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断したCS投与による害として 感染症の発生を増加させる可能性があり,重要なアウトカムと評価していた.E to D 作成にあたって,もともと定義した重大なアウトカムには害のアウトカムがなく,感染症を重大なアウトカムに追加した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性があるばらつきは小さい
○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利(高用量) ○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利(低用量) ○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ <高用量> アウト カム対照介入 (CS)絶対差相対効果 RR (95% CI) 長期死亡31/49 (63.3%) 30/50 (60.0%) 32 人減少/ 1,000 人(196 人減少~ 183 人増加) 0.95 (0.69~ 1.29) 感染症5/49 (10.2%) 8/50 (16.0%) 58 人増加/ 1,000 人(46 人減少~ 353 人増加) 1.57 (0.55~ 4.46) 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん対照が有利」と判断した <低用量> アウト カム対照介入(CS)絶対差相対効果 RR (95% CI) 長期死亡132/ 364 (36.3%) 106/ 405 (26.2%) 105 人減少/ 1,000 人(178 人減少~ 7 人減少) 0.71 (0.51~ 0.98) 人工呼吸器非使用日数— —平均4.75 日増加(2.97 日増加~ 6.54 日増加) — 入院日数— —平均5.04 日短縮 (9.43 日短縮~ 0.65 日短縮) —
ICU滞在日数— —平均5.23 日短縮 (9.64 日短縮~ 0.82 日短縮) — 感染症107/ 364 (29.4%) 109/ 405 (26.9%) 50 人減少/ 1,000 人(97 人減少~ 6 人増加) 0.83 (0.67~ 1.02) 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ(高 用量) ●たぶんはい(低用 量) ○はい○一概には言えない○わからない<高用量> 介入により死亡は減らすものの,感染症が増える可能性がある.介入において害が大きい可能性があり,受け入れられないと思われる<低用量>介入により死亡を減らすほか,VFD を増やし,ICU 滞在日数や入院日数を短縮することで,結果的に経済的にも軽減できる可能性があり,受け入れられると思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないCS にはARDS という病態で保険適用がない.しかし, ARDS の原因は多くが敗血症や肺炎である.デキサメタゾンは重症感染症に,メチルプレドニゾロンとハイドロコルチゾンは感染性ショックに保険適用があることから,多くの患者で使用できると思われる.ただし,肺外ARDS では保険適用の理由で使用されない可能性がある 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか (高用量)小さい中程度(低用量)大きい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● (高用量) ○ ○ ● (低用量) 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さい (高用量)わずか (低用量)一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低 (高用量)中 (低用量)高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利(高用量)介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利(低用量)介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶん いいえ(高用量)たぶん はい(低用量)はい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者に高用量副腎皮質ステロイドを使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). 成人ARDS 患者に低用量副腎皮質ステロイドを使用することを強く推奨する(強い推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 1B).
付帯事項 副腎皮質ステロイドの種類と投与方法は研究によって様々である.高用量にはメチルプレドニゾロン30 mg/kg,低用量にはメチルプレドニゾロン1~2 mg/kg 程度の研究が含まれている.本委員会のサブグループ解析,過去のメタ解析論文からは早期に低用量副腎皮質ステロイドを開始し,7 日以上継続する投与方法の有用性が示唆されている. 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者にCS を使用するか?患 者 P/F 比200 未満の人工呼吸器管理された成人ARDS 患者.介 入 CS 投与.対 照 CS 非投与.アウトカム長期死亡(最長期間),入院日数,ICU 滞在日数,VFD,感染症(肺炎,敗血症,その他), P/F 比.エビデンスの要約P/F 比200 未満の人工呼吸器管理された成人ARDS 患者にCS 投与と投与なしで比較した7 つのRCT をメタ解析した.このうちBernard らの研究はメチルプレドニゾロンが30 mg/kg と高用量であったため,それ以外の低用量のものと分けて検討を行った.まず,望ましい効果は以下のとおりである. <高用量>望ましい効果として,研究内で測定された最長の死亡期間をまとめた長期死亡(1 RCT:n=99)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり32 人減少(95%CI:196 人減少~183 人増加)を認めた.以上より,「わずか」と判断した. <低用量>望ましい効果として,研究内で測定された最長の死亡期間をまとめた長期死亡(5 RCT: n=769)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり105 人減少(95%CI:178 人減少~7 人減少),感染症(5 RCT:n=769)は1,000 人あたり50 人減少(95%CI:97 人減少~6 人増加)を認めた.また,VFD(5 RCT:n=767)の平均値とその信頼区間は4.75 日増加(95%CI:2.97 日増加~6.54 日増加),入院日数(2 RCT:n=271)は5.04 日減少(95%CI:9.43 日減少~0.65 日減少),ICU 滞在日数(2 RCT:n=271)は5.23 日減少(95%CI:9.64 日減少~0.82 日減少)を認めた.以上より,「中程度」と判断した.一方,望ましくない効果は以下のとおりである. <高用量>望ましくない効果として,感染症(1 RCT:n=99)の絶対差とその信頼区間は,1,000 人あたり58 人増加(95%CI:46 人減少~353 人増加)を認めた.以上より,「小さい」と判断した. <低用量>低用量では望ましくない効果は認めなかった.しかし,高用量で感染症が懸念されており,また,『日本版敗血症診療ガイドライン2020』における敗血症性ショック患者を対象としたCS 療法のメタ解析では,感染症は1,000 人あたり8 人増加(95%CI:12 人減少~31 人増加),消化管出血は1,000 人あたり6 人増加(95%CI:13 人減少~32 人増加)であった.そのため,「わずか」と判
断した.エビデンスの確実性<高用量>望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. <低用量>望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定高用量,低用量ともに,価値観についてはばらつきは小さい.また,実行可能性については,CSにはARDS という病態で保険適用がない.しかし,ARDS の原因は多くが敗血症や肺炎である.デキサメタゾンは重症感染症に,メチルプレドニゾロンとハイドロコルチゾンは感染性ショックに保険適用があることから,多くの患者で使用できると思われるため,「たぶんはい」と判断した.効果のバランスと受け入れについては高用量と低用量では異なり,下記のとおりである. <高用量>アウトカムの点推定値を考慮した場合,1,000 人あたり,長期死亡は32 人減少するものの,感染は58 人増加する.信頼区間を考慮した場合,死亡は183 人,感染は353 人増加する可能性がある.このことから,介入において害が益を上回る可能性がある.介入により死亡は減らすものの,感染症が増える可能性がある.介入において害が大きい可能性があり,受け入れられないと思われる. <低用量>アウトカムの点推定値を考慮した場合,1,000 人あたり,長期死亡は105 人減少,感染も50 人減少する.コストについて,統計学的に検討を行ってはいないが,介入により死亡を減らすほか, VFD を増やし,ICU 滞在日数や入院日数を減らすことで,CS を投与することによるコストの増大に見合う,コストを軽減できる可能性があり,介入による益が害を上回る可能性がある.介入により死亡を減らすほか,VFD を増やし,ICU 滞在日数や入院日数を減らすことで,結果的に経済的にも軽減できる可能性があり,受け入れられると思われる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者にCS を使用することを提案する」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議ではCS の低用量と高用量それぞれの効果の違いについての議論があった.また,投与開始時期についても議論があった.推奨を低用量と高用量に分けて再投票することになり,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に高用量CS を使用しないことを条件付きで推奨する,成人ARDS 患者に低用量CS を使用することを強く推奨する」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1918 で合意に至った.付加的な考慮事項CS の種類と投与方法は研究によって様々である.サブ解析では,低用量長期間投与のほうが,正味の利益が優れていることが示されている.また,過去のメタ解析では,早期開始(発症72 時間以内5),14 日以内6,7)),長期間投与(7 日間以上5‒7))が,死亡率減少に有用である可能性が示唆されている.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations CS の投与方法は研究によって様々である.Bernard 1987 では,メチルプレドニゾロン30 mg/ kg を1 日4 回投与した(高用量メチルプレドニゾロン).Meduri 1998,Meduri 2007,Steinberg 2016 では,メチルプレドニゾロンを初回1~2 mg/kg 投与したのち,1~14 日1~2 mg/kg/day, 15~21 日0.5~1.0 mg/kg/day,漸減しながら最大で32 日投与した(低用量メチルプレドニゾロン).Villar 2020 はデキサメタゾンを1~5 日目に20 mg/day 1 日1 回,6~10 日目に10 mg/day 1 日1 回投与した(デキサメタゾン).Tongyoo 2016 はハイドロコルチゾン50 mg を1 日6 回7日間投与した(ハイドロコルチゾン).Villar 2020 の研究では,CS はレジメンより前に抜管した時には中止あるいは漸減された.糖質コルチコイド力価と投与期間でサブ解析した点推定値を見ると,低用量(Meduri 1998, Meduri 2007,Steinberg 2016,Villar 2020),長期間(Meduri 1998,Meduri 2007,Steinberg 2016,Villar 2020,Tongyoo 2016)投与で利益が増加することが点推定値で示されている. Risk deference with CS vs. Control 点推定下限上限 長期死亡(overall) -98 -169 0投与期間7 日未満-20 -122 114投与期間7~14 日-114 -204 20投与期間15 日以上-145 -270 110 実施上の考慮事項 Implementation considerations CS にはARDS という病態で保険適用がない.しかし,ARDS の原因は多くが敗血症や肺炎である.デキサメタゾンは重症感染症に,メチルプレドニゾロンとハイドロコルチゾンは感染性ショックに保険適用があることから,多くの患者で使用できると思われる.ただし,肺外ARDS では保険適用の理由で使用されない可能性がある.『ARDS 診療ガイドライン2016』では,成人ARDS 患者において,CS(メチルプレドニゾロン1~2 mg/kg/day 相当)の使用を提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」と記載されている).本CQ では2016 年以降に出版された論文を加えて,低用量,高用量に分けて推奨を提示した. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として有害事象や費用対効果について,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 本研究は制限換気による管理を行った研究で感度分析を行い,点推定値の方向が変わらないことを確認した.しかし,近年は,腹臥位療法をはじめとし,制限換気以外にも臨床アウトカムを改善するARDS の管理方法が報告されている.また,ARDS に対するCS の投与は,その開始時期,投与期間,漸減方法により効果が異なる可能性がある.今後は,これらを統一した上で,CS の効果を
研究する必要性がある.参考文献1) Pelosi P, D’Onofrio D, Chiumello D, et al. Pulmonary and extrapulmonary acute respiratory distress syndrome are different. Eur Respir J Suppl 2003;42:48s‒56s. 2) Meduri GU, Siemieniuk RAC, Ness RA, et al. Prolonged low‒dose methylprednisolone treatment is highly effective in reducing duration of mechanical ventilation and mortality in patients with ARDS. J Intensive Care 2018;6:53. 3) Ruan SY, Lin HH, Huang CT, et al. Exploring the heterogeneity of effects of corticosteroids on acute respiratory distress syndrome:a systematic review and meta‒analysis. Crit Care 2014;18:R63. 4) Lewis SR, Pritchard MW, Thomas CM, et al. Pharmacological agents for adults with acute respiratory distress syndrome. Cochrane Database Syst Rev 2019;7:CD004477. 5) Hirano Y, Madokoro S, Kondo Y, et al. Corticosteroid treatment for early acute respiratory distress syndrome:a systematic review and meta‒analysis of randomized trials. J Intensive Care 2020;8:91. 6) Meduri GU, Marik PE, Chrousos GP, et al. Steroid treatment in ARDS:a critical appraisal of the ARDS network trial and the recent literature. Intensive Care Med 2008;34:61‒9. 7) Meduri GU, Bridges L, Shih MC, et al. Prolonged glucocorticoid treatment is associated with improved ARDS outcomes:analysis of individual patients’ data from four randomized trials and trial‒level meta‒analysis of the updated literature. Intensive Care Med 2016;42:829‒40.
背景,この問題の優先度 ARDS患者はICUを生存退室した後も長期にわたって身体機能や精神機能の低下を認める1).ARDS をはじめとする重症疾患の患者については集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)が問題となりやすいため,PICS 予防のためにICU 入室中より早期リハビリテーションが提供されている.重症患者や人工呼吸器装着患者に対して早期リハビリテーションは身体機能を改善することが報告されている2,3).一方で,ARDS 患者を含めた呼吸不全患者のみを対象とした早期リハビリテーションの効果は不明であり,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である. 解 説 PICO 患者(P):18 歳以上の人工呼吸器を要する呼 吸不全患者.介入(I):早期リハビリテーション(ICU 入室 後72 時間以内の開始.早期離床を含む).対照(C):標準治療.アウトカム(O):死亡,PICS,在宅復帰率,人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数,入院日 数,有害事象. エビデンスの要約 早期リハビリテーションを行うことで,死亡(6RCT:n=883)は1,000 人あたり2 人少なくなり(95%CI:46 人減少~57 人増加), PICS のICU 獲得性筋力低下(ICU‒AW) (2RCT:n=211)は1,000 人中238 人少なくなり(95%CI:325 人減少~114 人減少),人工呼吸器装着日数(6RCT:n=652)は2.39日短くなり(95%CI:3.73 日短縮~1.06 日短縮),ICU 滞在日数(4RCT:n=268)は1.52日短くなり(95%CI:2.26 日短縮~0.78 日短縮),在院日数(2RCT:n=404)は,0.1 日長くなる(95%CI:1.44 日短縮~1.64 日延長).また,当初,予測される害として考えていた有害事象を経験する人数(2RCT:n=612)は1,000 人あたり20 人少なくなった(95%CI: 42 人減少~23 人増加).このことより,予測される望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,早期リハビリテーションを行うことの害としては,介入群で気管チューブの計画外抜管,動脈カテーテルの事故抜去,電気刺激の 1 2 1 2 領域E 薬物療法・非薬物療法 成人ARDS 患者に早期リハビリテーション介入を行うか? CQ 43 成人ARDS 患者に早期(72 時間以内)リハビリテーションを行うことを条 件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). 推 奨
パッドによるアレルギーが,1 例ずつではあるがRCT の中で報告されていた.このような研究はあらかじめ定められたプロトコルの下で行われており,害が少ない結果が出ている可能性がある.そのため,介入による害が全くないわけではないと考え,「わずか」と判断した. エビデンスの確実性 すべてのアウトカムの確実性が「低」であった. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 価値観については重要な不確実性や多様性はない.本介入の予測される望ましい効果は点推定値で考えた場合,予測される望ましくない効果に比しておそらく優位である.受け入れについては,介入による益が上回り,コストを軽減できる可能性があるため,おそらく受け入れられると判断した.実行可能性については,早期リハビリテーションの実施に慣れた施設,集中治療担当の理学療法士,作業療法士,言語聴覚士が配属された施設,2:1 看護のICU などマンパワーがある環境であれば実行可能性は高いといえる. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に早期(72 時間以内)リハビリテーションを行うことを条件付きで推奨する」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では早期リハビリテーション介入群で害のアウトカムが少なかった点について議論があった.標準化されたプロトコルがあり,マンパワーがあるなど施設要因がある点を追記するべきとの意見があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 今回のメタ解析に採用されたRCT のうち2編は神経筋電気刺激,1 編が自転車エルゴメータ運動のみの介入効果を検討したものである.それぞれにおけるサブ解析の結果を以下に示す.神経筋電気刺激:死亡は1,000 人あたり110人多くなり,人工呼吸器装着日数は5.2 日短くなり,ICU 滞在日数は2.8 日短くなる.自転車エルゴメータ:PICS(ICU‒AW)は1,000 人あたり290 人少なくなり,人工呼吸器装着日数は1.98 日短くなり,ICU 滞在日数は1.37 日短くなる. 実施上の考慮事項 早期リハビリテーションの介入の種類は早期離床,神経筋電気刺激や自転車エルゴメータなど多岐にわたり,どの介入をどの程度行うかについては患者の状態や医療者の熟練度にも影響を受けると考えられる.また,今回,採用となった8 編のRCT ともARDS 患者のみを対象とした研究ではない点も留意する必要がある.中等症から重症ARDS患者においては筋弛緩薬を使用した上での肺保護換気や深鎮静管理下での腹臥位管理が実施されることがあるため,早期リハビリテーションとして実施できる内容は他の介入の影響を受けることがある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版 敗血症診療ガイドライン2020』4)では敗血症患者において,PICS の予防に早期リハビリテーションを行うことを弱く推奨している.また,集中治療における早期リハビリテーションの根拠に基づくエキスパートコンセンサス5)では人工呼吸器管理中の患者における早期リハビリテーションの実施を勧めている. 3 4 5 3 4 5
治療のモニタリングと評価 なし. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析において採用したすべてのRCT がARDS 患者だけを対象としたものではない.エビデンスが不十分であり,今後, ARDS 患者において早期リハビリテーションの介入種類別に大規模RCT が実施されることが望まれる. 文献検索式と文献選択 「Mechanical ventilation」「Rehabilitation」「Mobilization」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月6 日までの文献を検索したとこ ろ5,398 件の研究が同定され,スクリーニングの結果8 件のRCT6‒13)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Abu‒Khaber 20136), Dantas 20127), Dong 20148), Santos 201813), Fossat 20189), Morris 201610), Schweickert 200911), Yu 202012). 資料一覧 ・資料CQ43‒1 Search strategy.・資料CQ43‒2 フローダイアグラム.・資料CQ43‒3 Risk of bias.・資料CQ43‒4 Forest plot.・資料CQ43‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ43‒6 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Herridge MS, Tansey CM, Matté A, et al. Functional disability 5 years after acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2011;364:1293‒304. 2) Tipping CJ, Harrold M, Holland A, et al. The effects of active mobilisation and reha- bilitation in ICU on mortality and function:a systematic review. Intensive Care Med 2017;43:171‒83. 3) Doiron KA, Hoffmann TC, Beller EM. Early intervention(mobilization or active exer- cise)for critically ill adults in the intensive care unit. Cochrane Database Syst Rev 2018;3:CD010754. 4) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J‒SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 5) 高橋哲也,西田 修,宇都宮明美,他.集中治療における早期リハビリテーション~根拠 に基づくエキスパートコンセンサス~.日集中医誌2017;24:255‒303. 6) Abu‒Khaber HA, Abouelela AMZ, Abdelkarim EM. Effect of electrical muscle stimu- lation on prevention of ICU acquired muscle weakness and facilitating weaning from mechanical ventilation. Alexandria J Med 2013;49:309‒15. 7) Dantas CM, Silva PF, Siqueira FH, et al. Influence of early mobilization on respiratory and peripheral muscle strength in critically ill patients. Rev Bras Ter Intensiva 2012;24:173‒8. 8) Dong ZH, Yu BX, Sun YB, et al. Effects of early rehabilitation therapy on patients with mechanical ventilation. World J Emerg Med 2014;5:48‒52. 9) Fossat G, Baudin F, Courtes L, et al. Effect of in‒bed leg cycling and electrical stimu- lation of the quadriceps on global muscle strength in critically ill adults:a randomized clinical trial. JAMA 2018;320:368‒78. 参考文献
10) Morris PE, Berry MJ, Files DC, et al. Standardized rehabilitation and hospital length of stay among patients with acute respiratory failure:a randomized clinical trial. JAMA 2016;315:2694‒702. 11) Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients:a randomised controlled trial. Lancet 2009;373:1874‒82. 12) Yu L, Jiang JX, Zhang Y, et al. Use of in‒bed cycling combined with passive joint activity in acute respiratory failure patients receiving mechanical ventilation. Ann Palliat Med 2020;9:175‒81. 13) Dos Santos FV, Cipriano G Jr, Vieira L, et al. Neuromuscular electrical stimulation combined with exercise decreases duration of mechanical ventilation in ICU patients:a randomized controlled trial. Physiother Theory Pract 2020;36:580‒8. (Epub 2018)
資料CQ43—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/6) #1 "Respiration, Artificial"[mh] OR "mechanical ventilation"[tiab] OR "Noninvasive Ventilation"[mh] OR "non invasive ventilation"[tiab] OR "intermittent mandatory ventilation"[tiab] OR "invasive ventilation"[tiab] OR "mechanically ventilated"[tiab] OR "Tracheostomy"[mh] OR "tracheostomy"[tiab] OR NPPV[tiab] OR IPV[tiab] OR TPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR NIV[tiab] OR IMV[tiab] OR "Intermittent Positive-Pressure Ventilation"[mh] #2 "Early Ambulation"[mh] OR "mobilization"[tiab] OR "Rehabilitation"[mh] OR "rehabilitation"[tiab] OR "exercise therapy"[tiab] OR "physical therapy"[tiab] OR "occupational therapy"[tiab] OR mobilizat*[tiab] OR mobilisat*[tiab] OR mobility[tiab] OR exercis*[tiab] OR training[tiab] OR pregait[tiab] OR pregait[tiab] OR walk*[tiab] OR adl[tiab] OR physiotherap*[tiab] OR ambulation[tiab] #3 ergomet*[tiab] OR Ergometry[mh] OR cycl*[tiab] OR "lower extremit*"[tiab] OR "upper extremit*"[tiab] OR "lower limb"[tiab] OR "upper limb"[tiab]OR "muscle strength*"[tiab] OR endurance[tiab] OR "Range of Motion, Articular"[mh] #4 "Electric Stimulation Therapy"[mh] OR ((muscle* OR muscular OR neuromuscular OR neuro-muscular) AND electric* AND stimulat*[tiab]) OR NMES[tiab] #5 #2 OR #3 OR #4 #6 #1 AND #5 #7 "randomized controlled trial"[pt] OR "controlled clinical trial"[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab] #8 "systematic review"[pt] OR meta-analysis[pt] #9 #7 OR #8 #10 Animals[mh] NOT Humans[mh] #11 #9 NOT #10 #12 #6 AND #11
CENTRAL(Search date:2020/7/6) #1 [mh "Respiration, Artificial"] OR [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR "invasive ventilation":ti,ab OR "mechanically ventilated":ti,ab OR [mh Tracheostomy] OR tracheostomy:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR NIV:ti,ab OR IMV:ti,ab OR IPV:ti,ab OR TPPV:ti,ab OR [mh "Positive-Pressure Respiration"] OR [mh "Intermittent Positive-Pressure Ventilation"] #2 [mh "Early Ambulation"] OR [mh Rehabilitation] OR ambulation:ti,ab OR mobilization:ti,ab OR rehabilitation:ti,ab OR "Exercise Therapy":ti,ab OR "Physical Therapy":ti,ab OR "Occupational Therapy":ti,ab OR mobilization:ti,ab OR mobilisation:ti,ab OR mobility:ti,ab OR exercise:ti,ab OR training:ti,ab OR pregait:ti,ab OR pre-gait:ti,ab OR walk:ti,ab OR adl:ti,ab OR physiotherapy:ti,ab OR ambulation:ti,ab #3 [mh Ergometry] OR ergometry:ti,ab OR cycle:ti,ab OR "lower extremities":ti,ab OR "upper extremities":ti,ab OR [mh "Range of Motion, Articular"] OR "lower limb":ti,ab OR "upper limb":ti,ab OR "muscle strength":ti,ab OR endurance:ti,ab #4 [mh "Electric Stimulation Therapy"] OR NMES:ti,ab #5 muscle:ti,ab OR muscular:ti,ab OR neuromuscular:ti,ab OR neuro-muscular:ti,ab #6 {OR #2-#5} #7 #1 AND #6 #8 [mh Animals] NOT [mh Humans] #9 #7 NOT #8
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date : 2020/6/30) #1呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸困難/TH OR 呼吸困難/AL OR 呼吸窮迫/AL OR 呼吸窮迫症候群/ AL OR 呼吸窮迫症候群—急性/TH OR ARDS/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #2非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/AL OR NPPV/AL OR NIPPV/AL #3 (呼吸/TH OR 呼吸/AL) AND NIV/AL #4人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR 陽圧呼吸/TH OR 陽圧呼吸/AL OR 陽圧換気/AL OR 非侵襲的陽圧/AL #5 ((@ 気管切開術/TH AND @ 陽圧呼吸/TH) OR TPPV/AL) OR (気管切開術/TH OR 気管切開/AL) #6 #2 OR #3 OR #4 OR #5 #7 #1 AND #6 #8リハビリテーション/TH OR リハビリ/AL OR 理学療法/TH OR 理学療法/AL OR 作業療法/TH OR 作業療法/AL OR 早期離床/TH OR 早期離床/AL OR 運動療法/TH OR 運動療法/AL OR 体育とトレーニング/TH OR 訓練/AL OR 日常生活活動/TH OR ADL/AL OR 可動域/AL #9電気刺激/TH OR 電気刺激/AL OR 経皮的電気刺激/TH OR 経皮的電気刺激/AL OR 電気刺激療法/TH OR電気刺激療法/AL OR TENS/AL OR (Transcutaneou/AL AND Electrical/AL AND Nerve/AL AND Stimulation/AL) #10エルゴメトリー/TH OR エルゴメーター/AL OR 運動機器/TH OR ペダリング運動/AL #11筋力増強訓練/TH OR 筋力増強訓練/AL OR 筋機能療法/TH OR 筋機能療法/AL OR 筋力/TH OR 筋力/AL #12 #8 OR #9 OR #10 OR #11 #13 #7 AND #12 #14 (ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL) OR (比較試験/AL) OR (臨床試験/TH OR 臨床試験/AL) OR (プラセボ/TH OR プラセボ/AL) OR (対照/AL) OR (コントロール/AL) OR (臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL) #15 #13 AND #14 #16 (#15) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ43—2 フローダイアグラム 他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 N=5,402 2,234件2,295件773件 重複した研究 n=4 除外基準に該当した研究 n=5,301 除外基準に該当した研究n=89理由:・ 日本語・英語以外・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ 他の研究との重複・ Awaiting for classification 32件3件28件7件19件 同定スクリーニング適格性組み入れ検索で同定された研究 n=5,402 重複研究を除外した研究 n=5,398 フルテキストで適格性を評価した研究 n=97 系統的レビューに組み入れた研究 n=8 メタ解析に組み入れた研究 n=8
資料CQ43—3 Risk of bias 死 亡 人工呼吸器装着日数PICS(ICU-AW) ICU滞在日数
入院日数有害事象
資料CQ43—4 Forest plot 死 亡 PICS(ICU-AW) 人工呼吸器装着日数
ICU滞在日数 入院日数 有害事象
資料CQ43—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討早期リハビリテーション あり早期リハビリテーション なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 死 亡 6 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし78/439 (17.8%) 81/444 (18.2%) RR 0.99 (0.75~ 1.31) 1,000 人あたり2 人減少(46 人減少~ 57 人増加) ++○○ 低重大 PICS(ICU—AW) 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻cなし31/102 (30.4%) 59/109 (54.1%) RR 0.56 (0.40~ 0.79) 1,000 人あたり238 人減少(325 人減少~ 114 人減少) ++○○ 低重大 人工呼吸器装着日数 6 ランダム 化試験深刻で ない深刻d深刻a 深刻で ないなし327 325 —平均2.39 日短縮(3.73 日短縮~ 1.06 日短縮) ++○○ 低重大 ICU 滞在日数 4 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻cなし129 139 —平均1.52 日短縮(2.26 日短縮~ 0.78 日短縮) ++○○ 低重大 入院日数 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし199 205 —平均0.1 日延長(1.44 日延長~ 1.64 日延長) ++○○ 低重大 有害事象 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし14/308 (4.5%) 20/304 (6.6%) RR 0.69 (0.36~ 1.35) 1,000 人あたり20 人減少(42 人減少~ 23 人増加) ++○○ 低重大 在宅復帰率 0 — — —a —— — — — — 推定不可能 — — 重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.在宅復帰率はアウトカムの報告がなかった.説 明a.人工呼吸器を要する呼吸不全患者を対象としている. b.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため. c.OIS を満たさないため. d.I2=78%.
資料CQ43—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ43:成人ARDS 患者に早期リハビリテーション介入を行うか? 集 団:人工呼吸器を要する呼吸不全患者介 入:早期リハビリテーション(ICU 入室後72 時間以内の開始.早期離床を含む)比較対照:通常治療主要なアウトカム:死亡,集中治療後症候群〔PICS(ICU‒AW)〕,在宅復帰率,人工呼吸器装着日数, ICU 滞在日数,入院日数,有害事象 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者はICU を生存退室した後も長期にわたって身体機能や精神機能の低下を 認める1).ARDS をはじめとする重症疾患の患者についてはPICS が問題となりやすいため,PICS 予防のためにICU 入室中より早期リハビリテーションが提供されている.重症患者や人工呼吸器装着患者に対して早期リハビリテーションは身体機能を改善することが報告されている2,3).一方で,ARDS 患者を含めた呼吸不全患者のみを対象とした早期リハビリテーションに関する系統的レビューが現在までに存在せず,その効果やエビデンスの確実性は不明である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS 患者はICU を生存退室した後も長期にわたって身体 機能や精神機能の低下を認める.ARDS をはじめとする重症疾患の患者についてはPICS が問題となりやすいため, PICS 予防のためにICU 入室中より早期リハビリテーションが提供されている.重症患者や人工呼吸器装着患者に対して早期リハビリテーションは身体機能を改善することが報告されている.一方で,ARDS 患者を含めた呼吸不全患者のみを対象とした早期リハビリテーションの効果は不明であり,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さいSR の結果,PICO に一致したRCT が8 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行した
●中程度○大きい○一概には言えない○わからない早期リハビリテーションを行うことで,死亡(6 RCT: n=883)は1,000 人あたり2 人少なくなり(95% CI:46人減少~57 人増加),PICS のICU—AW(2 RCT:n=211)は1,000 人中238 人少なくなり(95% CI:325 人減少~ 114 人減少),人工呼吸器装着日数(6 RCT:n=652)は2.39 日短くなり(95% CI:3.73 日短縮~1.06 日短縮), ICU 滞在日数(4 RCT:n=268)は1.52 日短くなり(95% CI:2.26 日短縮~0.78 日短縮),入院日数(2 RCT: n=404)は,0.1 日長くなる(95% CI:1.44 日短縮~ 1.64 日延長).このことより,予測される望ましい効果は 「中程度」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない当初,予測される害として考えていた有害事象を経験する 人数(2 RCT:n=612)は1,000 人あたり20 人少なくなった(95% CI:42 人減少~23 人増加).よって,備考欄の記載と合わせて考えると,介入による害が全くないわけではないと考え,「わずか」と判断した早期リハビリテーショ ンを行うことの害として他のRCT では,介入群で気管チューブの計画外抜管,動脈カテーテルの事故抜去,電気刺激のパッドによるアレルギーが,1 例ずつではあるが報告されている エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低●低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 死 亡重大++○○ 低 PICS (ICU—AW)重大++○○ 低 人工呼吸器装着日数重大++○○ 低 ICU 滞在日数重大++○○ 低
入院日数重大++○○ 低 有害事象重大++○○ 低 在宅復帰重大— — 在宅復帰は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 全体的なエビデンスの確実性すべてのアウトカムの確実性が「低」であることからアウトカム全体におけるエビデンスの確実性も「低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない重要な不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対照介入(早期リハ ビリテーション)絶対差相対効果 RR (95% CI) 死 亡81/444 (18.2%) 78/439 (17.8%) 2 人減少/ 1,000 人(46 人減少~ 57 人増加) RR 0.99 (0.75~ 1.31)
PICS ICU—AW 59/109 (54.1%) 32/102 (30.4%) 238 人減少/ 1,000 人(325 人減少~ 114 人減少) RR 0.56 (0.40~ 0.79) 人工呼吸器装着日数— —平均2.39 日 短縮(3.73 日短縮~ 1.06 日短縮) — ICU滞在日数— —平均1.52 日 短縮(2.26 日短縮~ 0.78 日短縮) — 入院日数— —平均0.1 日延長 (1.44 日短縮~ 1.64 日延長) — 有害事象20/304 (6.8%) 14/308 (4.5%) 20 人減少/ 1,000 人(42 人減少~ 23 人増加) RR 0.69 (0.36~ 1.35) 在宅復帰— —推定不可能—在宅復帰は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない介入による益が上回り,コストを軽減できる可能性があるため,おそらく受け入れられると判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい早期リハビリテーションの実施に慣れた施設,集中治療担 当の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が配属された施設,2:1 看護のICU などマンパワーがある環境であれば実行可能性は高いといえる
○一概には言えない○わからない 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れAcceptabilityいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○
結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者に早期(72 時間以内)リハビリテーションを行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者に早期リハビリテーション介入を行うか?患 者 18 歳以上の人工呼吸器を要する呼吸不全患者.介 入 早期リハビリテーション(ICU 入室後72 時間以内の開始.早期離床を含む).対 照 標準治療.アウトカム 死亡,PICS(ICU‒AW),在宅復帰,人工呼吸器装着日数,ICU 滞在日数,入院日数,有害事象.エビデンスの要約早期リハビリテーションを行うことで,死亡(6 RCT:n=883)は1,000 人あたり2 人少なくなり(95% CI:46 人減少~57 人増加),PICS のICU‒AW(2 RCT:n=211)は1,000 人中238人少なくなり(95% CI:325 人減少~114 人減少),人工呼吸器装着日数(6 RCT:n=652)は2.39 日短くなり(95% CI:3.73 日短縮~1.06 日短縮),ICU 滞在日数(4 RCT:n=268)は1.52日短くなり(95% CI:2.26 日短縮~0.78 日短縮),入院日数(2 RCT:n=404)は,0.1 日長くなる(95% CI:1.44 日短縮~1.64 日延長).また,当初,予測される害として考えていた有害事象を経験する人数(2 RCT:n=612)は1,000 人あたり20 人少なくなった(95% CI:42 人減少~23 人増加).このことより,予測される望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,早期リハビリテーションを行うことの害としては,介入群で気管チューブの計画外抜管,動脈カテーテルの事故抜去,電気刺激のパッドによるアレルギーが1 例ずつではあるがRCT の中で報告されていた.このような研究はあらかじめ定められたプロトコルの下で行われており,害が少ない結果が出ている可能性がある.そのため,介入による害が全くないわけではないと考え,「わずか」と判断した.エビデンスの確実性すべてのアウトカムの確実性が「低」であることから,アウトカム全体におけるエビデンスの確実性も「低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定価値観については重要な不確実性や多様性はない.本介入の予測される望ましい効果は点推定値で考えた場合,予測される望ましくない効果に比しておそらく優位である.受け入れについては,介入による益が上回り,コストを軽減できる可能性があるため,おそらく受け入れられると判断した.実行可能性については,早期リハビリテーションの実施に慣れた施設,集中治療担当の理学療法士,作業療法士,言語聴覚士が配属された施設,2:1 看護のICU などマンパワーがある環境であれば実行可能性は高いといえる.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者に早期(72 時間以内)リハビリテーションを行うことを条件付きで推奨する」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では早期リハビリテーション介入群で害のアウトカムが少なかった点について議論があった.
標準化されたプロトコルがあり,マンパワーがあるなど施設要因がある点を追記するべきとの意見があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回のメタ解析に採用されたRCT のうち2 編は神経筋電気刺激,1 編が自転車エルゴメータ運動のみの介入効果を検討したものである.それぞれにおけるサブ解析の結果を以下に示す.神経筋電気刺激:死亡は1,000 人あたり110 人多くなり,人工呼吸器装着日数は5.2 日短くなり,ICU 滞在日数は2.8 日短くなる.自転車エルゴメータ:PICS(ICU‒AW)は1,000 人あたり290 人少なくなり,人工呼吸器装着日数は1.98 日短くなり,ICU 滞在日数は1.37 日短くなる. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 早期リハビリテーションの介入の種類は早期離床,神経筋電気刺激や自転車エルゴメータなど多岐にわたり,どの介入をどの程度行うかについては患者の状態や医療者の熟練度にも影響を受けると考えられる.また,今回,採用となった8 編のRCT ともARDS 患者のみを対象とした研究ではない点も留意する必要がある.中等症から重症ARDS 患者においては筋弛緩薬を使用した上での肺保護換気や深鎮静管理下での腹臥位管理が実施されることがあるため,早期リハビリテーションとして実施できる内容は他の介入の影響を受けることがある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては,臨床上の問題として早期リハビリテーションがどの程度順守されているかについて,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかについて,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどでモニタリングを行うことが必要である. 研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析において採用したすべてのRCT がARDS 患者だけを対象としたものではない.エビデンスが不十分であり,今後,ARDS 患者において早期リハビリテーションの介入種類別に大規模RCT が実施されることが望まれる.参考文献1) Herridge MS, Tansey CM, Matté A, et al. Functional disability 5 years after acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2011;364:1293‒304. 2) Tipping CJ, Harrold M, Holland A, et al. The effects of active mobilisation and rehabilitation in ICU on mortality and function:a systematic review. Intensive Care Med 2017; 43:171‒83. 3) Doiron KA, Hoffmann TC, Beller EM. Early intervention(mobilization or active exercise) for critically ill adults in the intensive care unit. Cochrane Database Syst Rev 2018;3: CD010754.
背景,この問題の優先度 人工呼吸器管理のために十分な鎮静が必要になる時があるが,高用量の鎮静薬は人工呼吸器使用期間延長や,せん妄リスクを上昇させるため,無鎮静/浅鎮静による効果や合併症の回避が期待される.無鎮静/浅鎮静はARDS 患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である. 解 説 PICO 患者(P):18 歳以上のARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要する集中治療室(ICU)入室患者. 介入(I):無鎮静あるいは浅鎮静.対照(C):従来の鎮静.アウトカム(O):生存退院,ICU 滞在日数,人 工呼吸器非使用日数(VFD),気管切開の割合,事故抜管,VAP 発生. エビデンスの要約 無鎮静あるいは浅鎮静で管理することで,生存退院(2RCT:n=242)は1,000人あたり28人多くなり(95%CI:90 人減少~172 人増加),ICU 滞在日数(2RCT:n=165)は0.26日短くなり(95%CI:1.02 日短縮~0.51 日延長),VFD(2RCT:n=1,287)は2 日長くなる(95%CI:0.91 日短縮~4.88 日延長).この 1 2 1 2 領域E 薬物療法・非薬物療法 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うか? CQ 44 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことを 条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). 浅鎮静とは刺激に対して反応しないような深鎮静に対して,刺激や呼びかけで覚醒可能な状態での鎮静をいう.本推奨は,深鎮静を必要とする患者を除外して検討された結果であり,実施にあたり留意するべきである.また,ARDS 患者に限った研究はないので,適応には注意が必要である. 推 奨 付帯事項
ことより予測される望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,無鎮静あるいは浅鎮静で管理することで,気管切開となった割合(3RCT:n= 1,416)は1,000 人あたり4 人少なくなり(95%CI:24 人減少~25 人増加),事故抜管(3RCT:n=1,416)は33 人多くなり(95% CI:2 人増加~76 人増加),VAP 発生(2RCT: n=1,287)は3 人多くなる(95%CI:32 人減少~49 人増加).このことより予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した. エビデンスの確実性 アウトカムの方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 価値観については重要な不確実性や多様性はない.本介入の予測される望ましい効果は点推定値で考えた場合,ほぼ同じであり,信頼区間の上限,下限を加味した場合,その方向性は変わる.以上より,利益と害のバランスは不確かであると判断した.しかし,生存退院が最大で1,000 人あたり172 人増える,また,コストを削減できる可能性がある.以上より,おそらく介入による効果が害を上回ると判断した.受け入れについては,事故抜管が増加する可能性があることは看護負担の増加が懸念される可能性があるが,生存退院が最大で1,000 人あたり172 人増え,コストを軽減できる可能性があるため,おそらく受け入れられると判断した.実行可能性については,鎮静管理に慣れた施設, 2:1 看護のICU などマンパワーがある環境であれば実行可能性は高いと判断した.パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1168 であった.パネル会議ではRCT の組み入れ基準や除外基準,益と害のバランスや,アウトカムの重み付けについての議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 今回のメタ解析に採用されたRCT のうち3編は浅鎮静,1 編が無鎮静の介入効果を検討したものである.それぞれにおけるサブ解析の結果を以下に示す.浅鎮静:生存退院は,1,000 人あたり17 人少なくなり,VFD は1 日長くなる.気管切開となった割合は1,000 人あたり4 人少なくなり,事故抜管は34 人多くなり,VAP 発生は5 人多くなる.無鎮静:生存退院は,1,000 人あたり102 人多くなり,VFD は4.2 日長くなる.気管切開となった割合は1,000 人あたり3 人少なくなり,事故抜管は24 人多くなり,VAP 発生は12 人少なくなる. 実施上の考慮事項 無鎮静を介入としたRCT においても必要時にモルヒネによる鎮痛は行われている.鎮痛は行うことが前提であることに注意が必要である.また,今回,採用となった4 編のRCT ともARDS患者のみを対象とした研究ではない点も留意する必要がある.中等症から重症ARDS患者においては筋弛緩薬を使用した上での肺保護換気や深鎮静管理下での腹臥位管理が実施されることがあるため, 3 4 3 4
無鎮静・浅鎮静での管理ができないことも考慮する.関連する他の診療ガイドラインの記載では,『Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU(PADIS ガイドライン)』1)において,重症人工呼吸患者に対して浅鎮静管理を用いることが提案されている. 関連する他の診療ガイドラインの記載 2018 年に発表された『PADIS ガイドライン』1)では人工呼吸器管理中の成人重症患者では深い鎮静に対して浅い鎮静を用いることを条件付きで推奨している. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析において採用したすべてのRCT がARDS 患者だけを対象としたものでは ない.エビデンスが不十分であり,今後, ARDS 患者において大規模RCT が実施されることが望まれる. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「Critical Illness」「Sedation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CEN- TRAL および医中誌で2020 年6 月18 日までの文献を検索したところ1,597 件の研究が同定され,スクリーニングの結果6 件のRCT2‒7)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Miriam 20092), Samuelson 20083), SRLF trial 20184), Strom 20105), Strom 2011_16), Strom 2011_27). 資料一覧 ・資料CQ44‒1 Search strategy.・資料CQ44‒2 フローダイアグラム.・資料CQ44‒3 Risk of bias.・資料CQ44‒4 Forest plot.・資料CQ44‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ44‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med 2018;46:e825‒73. 2) Treggiari MM, Romand JA, Yanez ND, et al. Randomized trial of light versus deep sedation on mental health after critical illness. Crit Care Med 2009;37:2527‒34. 3) Samuelson KA, Lundberg D, Fridlund B. Light vs. heavy sedation during mechanical ventilation after oesophagectomy‒‒a pilot experimental study focusing on memory. Acta Anaesthesiol Scand 2008;52:1116‒23. 4) SRLF Trial Group. Impact of oversedation prevention in ventilated critically ill patients:a randomized trial‒the AWARE study. Ann Intensive Care 2018;8:93. 参考文献
5) Strøm T, Martinussen T, Toft P. A protocol of no sedation for critically ill patients receiving mechanical ventilation:a randomised trial. Lancet 2010;375:475‒80. 6) Strøm T, Stylsvig M, Toft P. Long‒term psychological effects of a no‒sedation protocol in critically ill patients. Crit Care 2011;15:R293. 7) Strøm T, Johansen RR, Prahl JO, et al. Sedation and renal impairment in critically ill patients:a post hoc analysis of a randomized trial. Crit Care 2011;15:R119.
資料CQ44—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/18) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] OR ALI[tiab] #2 Critical Illness[mh] OR Critical Care[mh] OR Intensive Care Units[mh] OR critically ill[tiab] OR critical care[tiab] OR intensive care[tiab] #3 #1 OR #2 #4 Respiration, Artificial[mh] OR ventilators, mechanical[mh] OR ventilator[tiab] OR Ventilators[tiab] OR ventilation[tiab] OR ventilations[tiab] #5 sedation*[tiab] OR deep sedation[mh] OR Conscious Sedation[mh] OR Hypnotics and Sedatives[mh] #6 #3 AND #4 AND #5 #7 (randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #8 #6 AND #7 CENTRAL(Search date:2020/6/18) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab #2 [mh "Critical Illness"] OR [mh "Critical Care"] OR [mh "Intensive Care Units"] OR "critically ill":ti,ab OR "critical care":ti,ab OR "intensive care":ti,ab #3 #1 OR #2 #4 [mh "Respiration, Artificial"] OR [mh "ventilators, mechanical"] OR ventilator:ti,ab OR Ventilators:ti,ab OR ventilation:ti,ab OR ventilations:ti,ab #5 sedation*:ti,ab OR [mh "deep sedation"] OR [mh "Conscious Sedation"] OR [mh "Hypnotics AND Sedatives"] #6 #3 AND #4 AND #5 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date : 2020/6/18) #1呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2クリティカルケア/TH OR クリティカルケア/TA #3 ICU/TH OR ICU/TA #4危篤/TH OR 危篤/TA #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6人工呼吸/TH OR 人工呼吸器/TH OR 人工呼吸/TA #7鎮静度/TH OR 催眠剤と鎮静剤/TH OR 鎮静/TA #8 #5 AND #6 AND #7 #9 (ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試 験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT=会議録除く) #10 #8 AND #9
資料CQ44—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,597 628件926件43件 重複した研究 n=459 除外基準に該当した研究 n=1,105 除外基準に該当した研究n=27理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ I/Cが異なる3件3件21件 検索で同定された研究 n=1,597 重複研究を除外した研究 n=1,138 フルテキストで適格性を評価した研究 n=33 系統的レビューに組み入れた研究 n=6 メタ解析に組み入れた研究 n=6
資料CQ44—3 Risk of bias 生存退院 人工呼吸器非使用日数気管切開 ICU滞在日数
事故抜管人工呼吸器関連肺炎 物理的身体拘束を必要とした患者数・時間
資料CQ44—4 Forest plot 生存退院 人工呼吸器非使用日数 ICU滞在日数
気管切開 事故抜管 人工呼吸器関連肺炎
物理的身体拘束を必要とした患者数・時間
資料CQ44—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討無鎮静/ 浅鎮静それ以外相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 生存退院 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし88/120 (73.3%) 84/122 (68.9%) RR 1.04 (0.87~1.25) 1,000 人あたり28 人増加(90 人減少~ 172 人増加) ++○○ 低重大 ICU 滞在日数 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし83 82 —平均0.26 日短縮(1.02 日短縮~ 0.51 日延長) ++○○ 低重大 人工呼吸器非使用日数 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし639 648 —平均1.99 日延長(0.91 日短縮~ 4.88 日延長) ++○○ 低重大 気管切開の割合 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a 非常に 深刻cなし43/704 (6.1%) 47/712 (6.6%) RR 0.94 (0.64~1.38) 1,000 人あたり4 人減少(24 人減少~ 25 人増加) +○○○非常に低重大 事故抜管 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし79/704 (11.2%) 57/712 (8.0%) RR 1.41 (1.02~1.95) 1,000 人あたり33 人増加(2 人増加~ 76 人増加) ++○○ 低重大 VAP 発生 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻a深刻bなし100/639 (15.6%) 99/648 (15.3%) RR 1.02 (0.79~1.32) 1,000 人あたり3 人増加(32 人減少~ 49 人増加) ++○○ 低重大 物理的身体拘束を必要とした患者数・時間 2 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻a深刻bなし0/120 (0.0%) 0/122 (0.0%)非統合非統合+○○○非常に低重要 退院3 か月後もしくは6 か月後の生存 0 — — —a —— — — — — 推定不可能 — — 重要 身体機能(6 分間歩行,QOL スコア) 0 — — —a —— — — — — 推定不可能 — — 重要 Delirium free days 0 — — —a —— — — — — 推定不可能 — — 重要 精神状態(不安,抑うつ,PTSD スコア) 0 — — —a —— — — — — 推定不可能 — — 重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.精神状態(不安,抑うつ,PTSD スコア),退院3 か月後もしくは6 か月後の生存,身体機能(6 分間歩行,QOL スコア),delirium free days はアウトカム報告がなかった.
説 明a.人工呼吸器装着患者を対象とした研究を組み入れている. b.OIS を満たさないため. c.95% CI が臨床決断の上下の閾値をまたぐため. d.ブラインドと選択されたアウトカムの報告がhigh risk もしくはunclear risk であるため.
資料CQ44—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ44:成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行う か? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患 者 介 入:無鎮静あるいは浅鎮静比較対照:従来の鎮静主要なアウトカム:生存退院,退院3 か月後もしくは6 か月後の生存,身体機能(6 分間歩行,QOL ス コア),精神状態(不安,抑うつ,PTSD スコア),ICU 滞在日数,人工呼吸器非使用日数(VFD),気管切開の割合,事故抜管,VAP 発生,Delirium free days セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:人工呼吸器管理のために十分な鎮静が必要になる時があるが,高用量の鎮静薬は人 工呼吸器使用日数延長や,せん妄リスクを上昇させるため,無鎮静/浅鎮静による効果や合併症の回避が期待される.無鎮静/浅鎮静はARDS患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器管理のために十分な鎮静が必要になる時があるが,高用量の 鎮静薬は人工呼吸器使用期間延長や,せん妄リスクを上昇させるため,無鎮静/浅鎮静による効果や合併症の回避が期待される.無鎮静/浅鎮静はARDS 患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えないSR の結果,PICO に一致したRCT が4 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した無鎮静あるいは浅鎮静で管理することで,生存退院(2 RCT:n=242)は1,000 人あたり28 人多くなり(90 人減少~172 人増加),ICU 滞在日数(2 RCT:n=165)は0.26 日短くなり(1.02 日短縮~0.51 日延
○わからない長),人工呼吸器非使用日数(2 RCT:n=1,287)は2 日長くなる(0.91 日短縮~4.88 日延長).このことより,予測される望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない無鎮静あるいは浅鎮静で管理することで,気管切開となった割合(3 RCT:n=1,416)は1,000 人あたり4 人少なくなり(24 人減少~25 人増加),事故抜管(3 RCT:n=1,416)は33 人多くなり(2 人増加~76人増加),VAP 発生(2 RCT:n=1,287)は3 人多くなる(32 人減少~ 49 人増加).このことより,予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 精神状態(不安,抑うつ,PTSD スコア),退院3 か月後もしくは6 か月後の生存,身体機能(6 分間歩行,QOL スコア),delirium free days は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性生存退院重大++○○ 低 ICU 滞在日数重大++○○ 低 人工呼吸器非使用日数(VFD)重大++○○ 低 気管切開の割合重大+○○○ 非常に低 事故抜管重大++○○ 低 VAP 発生重大++○○ 低
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない重要な不確実性や多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない結果のまとめ アウトカム対照介入 (無鎮静/ 浅鎮静)絶対差相対効果 RR (95% CI) 生存退院84/122 (68.9%) 88/120 (73.3%) 28 人増加/ 1,000 人(90 人減少~ 172 人増加) 1.04 (0.87~ 1.25) ICU 滞在日数— —平均0.26 日短縮 (1.02 日短縮~ 0.51 日延長) — 人工呼吸器非使用日数— —平均1.99 日延長(0.91 日短縮~ 4.88 日延長) — 気管切開の割合47/712 (6.6%) 43/704 (6.1%) 4 人減少/ 1,000 人(24 人減少~ 25 人増加) 0.94 (0.64~ 1.38) 事故抜管57/712 (8.0%) 79/704 (11.2%) 33 人増加/ 1,000 人(2 人増加~ 76 人増加) 1.41 (1.02~ 1.95)
退院3 か月後もしくは6 か月後の生存率,身体機能(6 分間歩行,QOLスコア),精神状態(不安,抑うつ,PTSD スコア),delirium free daysについては今回,採用したRCT では報告がなかった以上から,介入による効果と害のバランスは「わからない」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない介入による益と害のバランスは対照と同等の可能性はある.また,事故 抜管が増加する可能性があることは看護負担の増加が懸念される可能性がある.しかし,生存退院が最大で1,000 人あたり172 人増える,また,コストを軽減できる可能性があるため,おそらく受け入れられると判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない鎮静管理に慣れた施設,2:1 看護のICU などマンパワーがある環境であ れば実行可能性は高いといえる VAP 発生99/648 (15.3%) 100/639 (15.6%) 3 人増加/ 1,000 人(32 人減少~ 49 人増加) 1.02 (0.79~ 1.32) 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない
エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 浅鎮静とは刺激に対して反応しないような深鎮静に対して,刺激や呼びかけで覚醒可能な状態での鎮静をいう.本推奨は,深鎮静を必要とする患者を除外して検討された結果であり,実施にあたり留意するべきである.また,ARDS 患者に限った研究はないので,適応には注意が必要である.
理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うか?患 者 18 歳以上のARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者.介 入 無鎮静あるいは浅鎮静.対 照 従来の鎮静.アウトカム 生存退院,ICU 滞在日数,VFD,気管切開の割合,事故抜管,VAP 発生.エビデンスの要約無鎮静あるいは浅鎮静で管理することで,生存退院(2 RCT:n=242)は1,000 人あたり28 人多くなり(90 人減少~172 人増加),ICU 滞在日数(2 RCT:n=165)は0.26 日短くなり(1.02日短縮~0.51 日延長),VFD(2 RCT:n=1,287)は2 日長くなる(0.91 日短縮~4.88 日延長).このことより,予測される望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,無鎮静あるいは浅鎮静で管理することで,気管切開となった割合(3 RCT:n=1,416)は1,000 人あたり4 人少なくなり(24 人減少~25 人増加),事故抜管(3 RCT:n=1,416)は33 人多くなり(2 人~76 人増加),VAP 発生(2 RCT:n=1,287)は3 人多くなる(32 人減少~49 人増加).このことより,予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した.エビデンスの確実性アウトカムの方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定価値観については重要な不確実性や多様性はない.本介入の予測される望ましい効果は点推定値で考えた場合,ほぼ同じであり,信頼区間の上限,下限を加味した場合,その方向性は変わる.以上より,利益と害のバランスは不確かであると判断した.しかし,生存退院が最大で1,000 人あたり172 人増える,また,コストを削減できる可能性がある.以上より,おそらく介入による効果が害を上回ると判断した.受け入れについては,事故抜管が増加する可能性があることは看護負担の増加が懸念される可能性があるが,生存退院が最大で1,000 人あたり172 人増え,コストを軽減できる可能性があるため,おそらく受け入れられると判断した.実行可能性については,鎮静管理に慣れた施設,2:1 看護のICU などマンパワーがある環境であれば実行可能性は高いと判断した.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことを条件付きで推奨する」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1168 であった.パネル会議ではRCT の組み入れ基準や除外基準,益と害のバランスや,アウトカムの重み付けについての議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回のメタ解析に採用されたRCT のうち3 編は浅鎮静,1 編が無鎮静の介入効果を検討したものである.それぞれにおけるサブ解析の結果を以下に示す.浅鎮静:生存退院は,1,000 人あたり17 人少なくなり,VFD は1 日長くなる.気管切開となった割合は1,000 人あたり4 人少なくなり,事故抜管は34 人多くなり,VAP 発生は5 人多くなる.無鎮静:生存退院は,1,000 人あたり102 人多くなり,VFD は4.2 日長くなる.気管切開となっ
た割合は1,000 人あたり3 人少なくなり,事故抜管は24 人多くなり,VAP 発生は12 人少なくなる. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 無鎮静を介入としたRCT においても必要時にモルヒネによる鎮痛は行われている.鎮痛は行うことが前提であることに注意が必要である.また,今回,採用となった4 編のRCT ともARDS 患者のみを対象とした研究ではない点も留意する必要がある.中等症から重症ARDS患者においては筋弛緩薬を使用した上での肺保護換気や深鎮静管理下での腹臥位管理が実施されることがあるため,無鎮静・浅鎮静での管理ができないことも考慮する.関連する他の診療ガイドラインの記載では,『Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU』1)において,重症人工呼吸器装着患者に対して浅鎮静管理を用いることが提案されている. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題として有害事象や費用対効果について,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析において採用したすべてのRCT がARDS 患者だけを対象としたものではない.エビデンスが不十分であり,今後,ARDS 患者において大規模RCT が実施されることが望まれる.参考文献1) Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med 2018;46:e825‒73.
背景,この問題の優先度 ARDS においては血管内皮障害や血管透過性亢進によって起こる肺水腫が問題となるが,一方でARDSの直接的な死因は低酸素血症ではなく肺以外の臓器不全による1).すなわち,ARDSの体液管理において,臓器灌流障害を招き得る制限的な体液管理によって肺における酸素化の改善を指向するべきかは議論の余地がある2).したがって,成人ARDS 患者の補助療法として,制限的な体液管理を行うかというCQ の優先度は高く,本診療ガイドラインにおける重要臨床課題である. 解 説 PICO 患者(P):18 歳以上のARDS 患者.介入(I):水分を制限した体液管理をする.対照(C):水分を制限した体液管理をしない. アウトカム(O):死亡,人工呼吸器非使用日 数(VFD),血行動態不良(循環動態イベントが発生しなかった日数),腎代替療法. エビデンスの要約 制限的体液管理をすることで,死亡(6RCT:n=1,214)は1,000 人あたり28 人少なくなり(95%CI:74 人減少~23 人増加), VFD(1RCT:n=1,000)は2.5 日長くなる(95%CI:1.12 日延長~3.88 日延長).害として想定していた循環動態イベントが発生しなかった日数(1RCT:n=1,000),透析実施(1RCT:n=1,000)についても制限輸液で管理することで,0.3 日短くなり(95%CI:0.57日短縮~0.03 日短縮),1,000 人あたり41 人少なくなる(95%CI:70 人減少~1 人減少).このことより予測される望ましい効果は「小さ 1 2 1 2 領域E 薬物療法・非薬物療法 成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行うか? CQ 45 成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行うことを条 件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 水分を制限した体液管理の方法は,制限輸液,利尿薬など複数あり,患者の状態に応じて適切な選択を行うことが望まれる. 推 奨 付帯事項
い」と判断した.一方,制限輸液で管理することで,重要アウトカムとはなるが,晩期高次脳機能障害の発生した割合が1,000 人あたり117 人多くなる(1RCT,エビデンスの確実性「低」).しかし,採用した研究はRCT の事後解析であり,もともとのRCT の10%の患者でのみの解析である.重要アウトカムであることも考慮して,予測される望ましくない効果は「わずか」と判断した. エビデンスの確実性 すべてのアウトカムの確実性が同じであり,「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 価値観については,一般的に死亡に対する価値は高く,ばらつきは少ないと考えられる.本介入の予測される望ましい効果は害を上回ると判断した.受け入れに関しては,制限的体液管理の方法によっては判断が分かれる可能性は否定できないため,おそらく受け入れられると判断した.実行可能性については水分を制限した体液管理の方法によるが,フロセミドと輸液制限を中心とした水分を制限した体液管理であれば,どの医療機関でも実施可能である. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議ではエビデンスの確実性や「水分を制限した体液管理」という表現の修正に関して議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.サブグループの検討事項 今回のメタ解析に採用されたRCT のうち2編は腎代替療法を制限的な体液管理の方法として選択している.死亡のアウトカムにのみ,この2 編の研究が含まれている.そこで,この2編のRCT を除いた場合でも,死亡は,1,000 人あたり25 人少なくなる. 実施上の考慮事項 水分を制限した体液管理の方法については患者の状態に応じて適切な選択を行うことが望まれる.関連する他の診療ガイドラインについては,『ARDS 診療ガイドライン2016』3)では「成人ARDS 患者において,水分を制限した管理を行うことを提案する(GRADE 2B)」となっている. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021』4)では輸液蘇生が必要な最初の24 時間以内の制限輸液に関するCQはエビデンスが不十分であり推奨は提示していない. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として有害事象や費用対効果について,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 制限的な体液管理の方法に採用したRCT ごとに差異がある.また,晩期高次脳機能障害に 3 4 5 3 4 5 6 7
与える影響についても示唆される研究もあるため,今後,ARDS 患者において大規模RCT が実施されることが望まれる. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「Fluid management」「Water‒ Electrolyte Balance」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月27 日までの文献を検索したところ4,012 件の研究が同定され,スクリーニングの結果9 件のRCT5‒13)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Han 20155), Jian‒biao 20166), Jolley 20177), Liu 20118), Martin 20029), Martin 200510), Mikkelsen 201211), NCT0062465012), Wiedemann 200613). 資料一覧 ・資料CQ45‒1 Search strategy.・資料CQ45‒2 フローダイアグラム.・資料CQ45‒3 Risk of bias.・資料CQ45‒4 Forest plot.・資料CQ45‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ45‒6 Evidence‒to‒Decision. 8 9 10 1) Ware LB, Matthay MA. The acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2000; 342:1334‒49. 2) Casey JD, Semler MW, Rice TW. Fluid management in acute respiratory distress syn- drome. Semin Respir Crit Care Med 2019;40:57‒65. 3) Hashimoto S, Sanui M, Egi M, et al. The clinical practice guideline for the manage- ment of ARDS in Japan. J Intensive Care 2017;5:50. 4) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med 2021:1‒67. 5) Han F, Sun R, Ni Y, et al. Early initiation of continuous renal replacement therapy improves clinicaloutcomes in patients with acute respiratory distress syndrome. Am J Med Sci 2015;349:199‒205. 6) Meng JB, Lai ZZ, Xu XJ, et al. Effects of early continuous venovenous hemofiltration on e‒selectin, hemodynamic stability, and ventilatory function in patients with septic‒shock‒induced acute respiratory distress syndrome. Biomed Res Int 2016; 2016:7463130. 7) Jolley SE, Hough CL, Clermont G, et al. Relationship between race and the Effect of fluids on long‒term mortality after acute respiratory distress syndrome. Secondary analysis of the national heart, lung, and blood institute fluid and catheter treatment trial. Ann Am Thorac Soc 2017;14:1443‒9. 8) Liu KD, Thompson BT, Ancukiewicz M, et al. Acute kidney injury in patients with acute lung injury:impact of fluid accumulation on classification of acute kidney injury and associated outcomes. Crit Care Med 2011;39:2665‒71 9) Martin GS, Mangialardi RJ, Wheeler AP, et al. Albumin and furosemide therapy in hypoproteinemic patients with acute lung injury. Crit Care Med 2002;30:2175‒82. 10) Martin GS, Moss M, Wheeler AP, et al. A randomized, controlled trial of furosemide 参考文献
with or without albumin in hypoproteinemic patients with acute lung injury. Crit Care Med 2005;33:1681‒7. 11) Mikkelsen ME, Christie JD, Lanken PN, et al. The adult respiratory distress syndrome cognitive outcomes study:long‒term neuropsychological function in survivors of acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 2012;185:1307‒15. 12) Hemodynamics and extravascular lung water in acute lung injury(HEAL). Clinical- Trials. gov. NCT00624650 13) National Heart, Lung, and Blood Institute acute respiratory distress syndrome(ARDS) clinical trials network, Wiedemann HP, Wheeler AP, Bernard GR, et al. Comparison of two fluid‒management strategies in acute lung injury. N Engl J Med 2006;354: 2564‒75.
資料CQ45—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/27) #1 "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[Mesh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 "Acute lung injur*" [tiab] OR "acute respiratory distress" [tiab] OR "acute respiratory failure"[tiab] #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6 “Body Weight” [Mesh] #7 “Body Weight” [tiab] #8 “Central Venous Pressure” [Mesh] #9 “Central Venous Pressure*” [tiab] #10 “Cardiac Output” [Mesh] #11 “Cardiac Output” [tiab] #12 “Stroke Volume” [Mesh] #13 “Stroke Volume*” [tiab] #14 “Catheterization, Swan-Ganz” [Mesh] #15 “Swan Ganz” [tiab] #16 “Pulmonary Wedge Pressure"[Mesh] #17 “Pulmonary Wedge Pressure*” [tiab] #18 “Pulmonary Artery Pressure*” [tiab] #19 “Hemodynamics” [Mesh] #20 “hemodynamic*” [tiab] #21 “Hemodynamic Monitoring” [Mesh] #22 “Ultrasonography” [Mesh] #23 “ultrasono*” [tiab] #24 “ultrasound*” [tiab] #25 "Echocardiography"[Mesh] #26 “Echocardiography” [tiab] #27 “Fluid Therapy” [Mesh] #28 “Fluid Therap*” [tiab] #29 “fluid management” [tiab] #30 “Diuretics” [Mesh] #31 “Diuretics” [tiab] #32 “Furosemide” [Mesh] #33 “Furosemid*” [tiab] #34 “Acetazolamide” [Mesh] #35 “Acetazolamid*” [tiab] #36 “Water-Electrolyte Balance” [Mesh] #37 “Water-Electrolyte Balance” [tiab] #38 #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 OR #26 OR #27 OR #28 OR #29 OR #30 OR #31 OR #32 OR #33 OR #34 OR #35 OR #36 OR #37 #39 #5 AND #38
#40 randomized controlled trial [pt] #41 controlled clinical trial [pt] #42 randomized [tiab] #43 placebo [tiab] #44 drug therapy [sh] #45 randomly [tiab] #46 trial [tiab] #47 groups [tiab] #48 #40 OR #41 OR #42 OR #43 OR #44 OR #45 OR #46 OR #47 #49 animals [mh] NOT humans [mh] #50 #48 NOT #49 #51 #39 AND #50
CENTRAL(Search date:2020/6/26) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 MeSH descriptor: [Acute Lung Injury] explode all trees #3 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #4 Acute NEXT lung NEXT injur*:ti,ab OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #5 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab) #6 {OR #1-#5} #7 [mh "Body Weight"] #8 "Body Weight":ti,ab #9 [mh "Central Venous Pressure"] #10 "Central Venous Pressure":ti,ab #11 [mh "Cardiac Output"] #12 "Cardiac Output":ti,ab #13 [mh "Stroke Volume"] #14 "Stroke Volume":ti,ab #15 [mh "Catheterization, Swan-Ganz"] #16 Swan?Ganz:ti,ab #17 "Swan Ganz":ti,ab #18 [mh "pulmonary Wedge Pressure"] #19 "Pulmonary Wedge Pressure":ti,ab #20 "Pulmonary Artery Pressure":ti,ab #21 [mh Hemodynamics] #22 [mh "Hemodynamic Monitoring"] #23 hemodynamic*:ti,ab #24 [mh Ultrasonography] #25 ultrasound*:ti,ab #26 ultrasono*:ti,ab #27 [mh Echocardiography] #28 Echocardiography:ti,ab
#29 [mh "Fluid Therapy"] #30 "Fluid Therapy":ti,ab #31 "fluid management":ti,ab #32 [mh Diuretics] #33 Diuretics:ti,ab #34 [mh Furosemide] #35 Furosemid*:ti,ab #36 [mh Acetazolamide] #37 Acetazolamid*:ti,ab #38 [mh "Water-Electrolyte Balance"] #39 "Water-Electrolyte Balance":ti,ab #40 {OR #7-#39} #41 #6 AND #40
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date : 2020/6/27) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL #4呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 呼吸窮迫症候群-急性/AL OR ショック肺/AL #5重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/AL #6毛細管漏出症候群/TH OR 毛細管漏出症候群/AL #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8体重/TH OR 体重/AL #9中心静脈圧/TH OR 中心静脈圧/AL OR CVP/TA #10心拍出量/TH OR 心拍出量/AL #11一回拍出量/TH OR 一回拍出量/AL #12 PAP/AL #13肺動脈圧/TH OR 肺動脈圧/AL #14 Swan-Ganz カテーテル法/TH OR Swan-Ganz カテーテル法/TA OR 肺動脈カテーテル/TA #15肺楔入圧/TH OR 肺楔入圧/AL #16血行動態モニタリング/TH OR 血行動態モニタリング/AL #17心エコー図/TH OR 心エコー/AL #18輸液療法/TH OR 輸液/AL #19利尿剤/TH OR 利尿剤/AL OR 利尿薬/AL #20 Furosemide/TH OR フロセミド/AL #21 Acetazolamide/TH OR アセタゾラミド/AL #22バランス/TA #23 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #7 AND #23 #25ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #26比較試験/AL #27臨床試験/TH OR 臨床試験/AL
#28プラセボ/TH OR プラセボ/AL #29対照/AL #30コントロール/AL #31臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #32 #25 OR #26 OR #27 OR #28 OR #29 OR #30 OR #31 #33 #24 AND #32 #34 (#33)AND(PT=会議録除く) #35 (#34)AND(CK=動物) #36 #34 NOT #35
資料CQ45—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=4,012 1,534件2,284件194件 重複した研究 n=449 除外基準に該当した研究 n=3,534 除外基準に該当した研究n=19理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる5件5件3件6件 検索で同定された研究 n=4,012 重複研究を除外した研究 n=3,563 フルテキストで適格性を評価した研究 n=29 系統的レビューに組み入れた研究 n=10 メタ解析に組み入れた研究 n=9
資料CQ45—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器非使用日数 ICU非滞在日数血行動態不良
腎代替療法晩期高次脳機能障害の発生した割合 短期高次脳機能障害が生じなかった日数
資料CQ45—4 Forest plot 死 亡 人工呼吸器装着日数 ICU非滞在日数 血行動態不良 腎代替療法 晩期高次脳機能障害の発生した割合
短期高次脳機能障害が生じなかった日数
資料CQ45—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討制限的輸液管理それ以外相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡 6 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻aなし155/609 (25.5%) 172/605 (28.4%) RR 0.90 (0.74~1.08) 1,000 人あたり28 人減少(74 人減少~ 23 人増加) +++○ 中重大 人工呼吸器非使用日数 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻bなし503 497 —平均2.5 日延長(1.12 日延長~ 3.88 日延長) +++○ 中重大 ICU 非滞在日数 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻b 深刻で ないなし503 497 —平均2.2 日延長(1.09 日延長~ 3.31 日延長) +++○ 中重要 血行動態不良(循環動態イベントが発生しなかった日数) 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻aなし503 497 —平均0.3 日短縮(0.57 日短縮~ 0.03 日短縮) +++○ 中重大 腎代替療法 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻bなし50/503 (9.9%) 70/497 (14.1%) RR 0.71 (0.50~0.99) 1,000 人あたり41 人減少(70 人減少~ 1 人減少) +++○ 中重大 晩期高次脳機能障害の発生した割合 1 ランダム 化試験深刻深刻で ない深刻で ない深刻bなし29/38 (76.3%) 24/37 (64.9%) RR 1.18 (0.88~1.58) 1,000 人あたり117 人増加(78 人減少~ 376 人増加) ++○○ 低重要 短期高次脳機能障害が生じなかった日数 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻bなし503 497 —平均0.5 日延長(0.06 日短縮~ 1.06 日延長) +++○ 中重要 入院日数 0 — — — —— — — — — 推定不可能 — — 重要 死亡:報告されているもののうち最短の期間を採用した. Jolley SE, 2017 は1 年以内の死亡が報告されているが,当研究はWiedemann HP, 2006 のpost hoc 解析であり, Wiedemann HP, 2006 で60 日以内死亡が報告され本EP に含めているため,Jolley SE, 2017 は除外とした. CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.入院日数はアウトカム報告がなかった.説 明a.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐ. b.OIS を満たさないため.
資料CQ45—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ45:成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行う か? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者介 入:水分を制限した体液管理をする比較対照:水分を制限した体液管理をしない主要なアウトカム:死亡,人工呼吸器非使用日数(VFD),血行動態不良,腎代替療法セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS においては血管内皮障害や血管透過性亢進によって生じる肺水腫が問題とな るが,一方で,ARDS の直接的な死因は低酸素血症ではなく肺以外の臓器不全によるとされる1).すなわち,ARDS の体液管理において,臓器灌流障害を招き得る制限的な体液管理によって肺における酸素化の改善を指向するべきかは議論の余地がある2).したがって,成人ARDS 患者の補助療法として,制限的な体液管理を行うかというCQ の優先度は高く,本診療ガイドラインにおける重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないARDS においては血管内皮障害や血管透過性亢進によって 生じる肺水腫が問題となるが,一方で,ARDS の直接的な死因は低酸素血症ではなく肺以外の臓器不全によるとされる.すなわち,ARDS の体液管理において,臓器灌流障害を招き得る制限的な体液管理によって肺における酸素化の改善を指向するべきかは議論の余地がある.したがって,成人ARDS 患者の補助療法として,制限的な体液管理を行うかというCQ の優先度は高く,本診療ガイドラインにおける重要臨床課題である 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度SR の結果,PICO に一致したRCT が8 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行した制限的体液管理をすることで,死亡(6 RCT:n=1,214)
○大きい○一概には言えない○わからないは1,000人あたり28人少なくなり(95% CI:74人減少~ 23 人増加),VFD(1 RCT:n=1,000)は2.5 日長くなる(95% CI:1.12 日延長~3.88 日延長).このことより,予測される望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない制限的体液管理をすることで,害として想定していた循環 動態イベントが発生しなかった日数(1 RCT:n=1,000),腎代替療法(1 RCT:n=1,000)についても制限輸液で管理することで,0.3 日短くなり(95% CI:0.57 日短縮~ 0.03日短縮),1,000人あたり41人少なくなる(95% CI: 70 人減少~1 人減少).よって,備考欄の記載と合わせて考えると,予測される望ましくない効果は「わずか」と判断した重要アウトカムとはな るが,晩期高次脳機能障害の発生した割合が1,000 人あたり117 人多くなる(1 RCT,エビデンスの確実性「低」).しかし,採用した研究はRCT の事後解析であり,もともとのRCT の10%の患者でのみの解析である エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの 確実性 死 亡重大+++○ 中 VFD重大+++○ 中 血行動態不良(循環動態イベントが発生しなかった日数)重大+++○ 中 腎代替療法重大+++○ 中 全体的なエビデンスの確実性すべてのアウトカムの確実性が同じであり,「中」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない体液管理におけるアウトカムの,価値観についてのデータ はないが,一般的に死亡に対する価値は高く,ばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対 照介入 (制限的 管理)絶対差相対効果 RR (95% CI) 死 亡172/ 605 (28.4%) 155/ 609 (25.5%) 28 人減少/ 1,000 人(74 人減少~ 23 人) 0.90 (0.74~ 1.08) VFD — —平均2.5 日 延長(1.12 日 延長~ 3.88 日延長) — 血行動態不良(循環動態イベントが 発生しなかった 日数) — —平均0.3 日 減少(0.57 日 減少~ 0.03 日減少) —
腎代替療法70/ 497 (14.1%) 50/ 503 (9.9%) 41 人減少/ 1,000 人(70 人減少~ 1 人減少) 0.71 (0.50~ 0.99) 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない介入による益と害のバランスは益が上回る可能性はある. しかし,水分を制限した体液管理の方法によっては判断が分かれる可能性は否定できない.以上より,おそらく受け入れられると判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないフロセミドと輸液制限を中心とした制限的な体液管理であ れば,どの医療機関でも実施可能である.しかし,アルブミンや腎代替療法を選択する場合,医療機関によっては実施が難しい場合もある 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性のエビデンス:GRADE 2B). 付帯事項 水分を制限した体液管理の方法は,制限輸液,利尿薬など複数あり,患者の状態に応じて適切な選択を行うことが望まれる. 理 由 Justification 疑 問 成人ARDS 患者の補助療法として,水分を制限した体液管理を行うか?患 者 18 歳以上のARDS 患者.
介 入 水分を制限した体液管理をする.対 照 水分を制限した体液管理をしない.アウトカム 死亡,VFD,血行動態不良(循環動態イベントが発生しなかった日数),腎代替療法.エビデンスの要約制限的体液管理をすることで,死亡(6 RCT:n=1,214)は1,000 人あたり28 人少なくなり(95% CI:74 人減少~23 人増加),VFD(1 RCT:n=1,000)は2.5 日長くなる(95% CI:1.12日延長~3.88 日延長).害として想定していた循環動態イベントが発生しなかった日数(1 RCT: n=1,000),透析実施(1 RCT:n=1,000)についても制限輸液で管理することで,0.3 日短くなり(95% CI:0.57 日短縮~0.03 日短縮),1,000 人あたり41 人少なくなる(95% CI:70 人減少~1 人減少).このことより,予測される望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,制限輸液で管理することで,重要アウトカムとはなるが,晩期高次脳機能障害の発生した割合が1,000 人あたり117 人多くなる(1 RCT,エビデンスの確実性「低」).しかし,採用した研究はRCT の事後解析であり,もともとのRCT の10%の患者でのみの解析である.重要アウトカムであることも考慮して,予測される望ましくない効果は「わずか」と判断した.エビデンスの確実性 すべてのアウトカムの確実性が同じであり,「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定価値観については,一般的に死亡に対する価値は高く,ばらつきは少ないと考えられる.本介入の予測される望ましい効果は害を上回ると判断した.受け入れに関しては,制限的体液管理の方法によっては判断が分かれる可能性は否定できないため,おそらく受け入れられると判断した.実行可能性については水分を制限した体液管理の方法によるが,フロセミドと輸液制限を中心とした水分を制限した体液管理であれば,どの医療機関でも実施可能である.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議ではエビデンスの確実性や「水分を制限した体液管理」という表現の修正に関して議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 今回のメタ解析に採用されたRCT のうち2 編は腎代替療法を制限的な体液管理の方法として選択している.死亡のアウトカムにのみ,この2 編の研究が含まれている.この2 編のRCT を除いた場合でも,死亡は「1,000 人あたり25 人減少」と結果に変化は認められなかった. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 水分を制限した体液管理の方法については患者の状態に応じて適切な選択を行うことが望まれる.関連する他の診療ガイドラインについては,『ARDS 診療ガイドライン2016』では「成人ARDS患者において,水分を制限した管理を行うことを提案する(GRADE 2B)」となっている. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として有害事象や費用対効果について,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある.
研究の可能性 Research priorities 制限的な体液管理の方法に採用したRCT ごとに差異がある.また,晩期高次脳機能障害に与える影響についても示唆される研究もあるため,今後,ARDS 患者において大規模RCT が実施されることが望まれる.参考文献1) Ware LB, Matthay MA. The acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2000; 342:1334‒49. 2) Casey JD, Semler MW, Rice TW. Fluid management in acute respiratory distress syndrome. Semin Respir Crit Care Med 2019;40:57‒65.
背景,この問題の優先度 脂肪酸は炭素鎖に二重結合を有する不飽和脂肪酸と,有さない飽和脂肪酸に大別される.不飽和脂肪酸はさらに最初の二重結合がある位置により,ω3 脂肪酸とω6 脂肪酸に分けられる.敗血症および敗血症性ALI モデル動物での実験では,ω3 脂肪酸の含有率の高い脂肪の投与により肺の血管透過性や肺水腫,肺高血圧を抑制することが示されている.以上より,このような機序による魚油をはじめとしたω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養を行うことによるARDS 患者に対する有効性を明らかにすることは重要臨床課題である. 解 説 PICO 患者(P):18 歳以上のARDS 患者.介入(I):ω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養.対照(C):それ以外の経腸栄養. アウトカム(O):死亡,P/F 比,人工呼吸器非 使用日数(VFD),ICU 滞在日数,消化管不耐症,感染症. エビデンスの要約 ω3 脂肪酸製剤を使用することで,死亡(7RCT:n=672)に関しては1,000 人あたり42 人少なくなり(95%CI:117 人減少~77 人増加),VFD(3RCT:n=419)は0.62 日短くなり(95%CI:3.33 日短縮~2.09 日延長), ICU 滞在日数(2RCT:n=144)は5.12 日短くなり(95%CI:7.36 日短縮~2.88 日短縮), P/F 比(3RCT:n=113)は11.84 高くなる(95%CI:31.2減少~54.88増加).このことより予測される望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,ω3 脂肪酸製剤を使用することで,消化管不耐症(1RCT:n=272)は1,000 人あた 1 2 1 2 領域E 薬物療法・非薬物療法 ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うか? CQ 46 ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うことを条件付きで 推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 2022 年6 月時点ではω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養剤は販売中止となっており,それと同等の含有率の高い経腸栄養を行うためには通常の経腸栄養にω3 脂肪酸製剤の追加が必要となる. 推 奨 付帯事項
り77 人多く(95%CI:21 人減少~228 人増加),感染症(1RCT:n=46)は89 人少なくなる(95%CI:287 人減少~277 人増加).このことより予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した. エビデンスの確実性 消化管不耐症のみ方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる.価値観については,本介入の予測される望ましい効果は点推定値のみならず,信頼区間の上限,下限を加味した場合においても予測される望ましくない効果に比しておそらく有意である.受け入れについては,介入による益が上回り,コストを軽減できる可能性があるが,介入による処置の手間が増大するため,「一概には言えない」と判断した.実行可能性については,経腸栄養自体は一般的な治療であり,一般的な経腸栄養剤の入手も容易であるが,ω3 脂肪酸製剤の採用をしている病院には限りがあることから,「実行可能性は一概には言えない」と判断した. パネル会議 事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 本診療ガイドラインで採用した研究の異質性は高く,対照群で使用している製剤も様々であ る.また,ω3 脂肪酸の含有率が高いと消化管不耐症が増える可能性がある.『日本版重症患者の栄養療法ガイドライン』1)では,ARDS 患者に関してはω3(n‒3 系)脂肪酸,γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用が弱く推奨されている. 関連する他の診療ガイドラインの記載 『日本版重症患者の栄養療法ガイドライン』1)では,ARDS 患者に対してn‒3 系脂肪酸, γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用を弱く推奨している.『日本版敗血症診療ガイドライン2020』2)および『Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021』3)では本テーマを取り上げたCQ はなかった. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として有害事象や費用対効果について更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今回のメタ解析において採用したRCT は7つであり,その総患者数も672 人と小規模なRCT がほとんどである.今後,ARDS 患者において大規模RCTが実施されることが望まれる. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「Omega 3 fatty acid」「Fish Oil」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月27 日 3 4 5 3 4 5 6 7 8
までの文献を検索したところ592 件の研究が同定され,スクリーニングの結果7 件のRCT4‒10)を採用した. 本CQ で対象とした研究 Elamin 20124), Gadek 19995), Parish 20146), Rice 20117), Shirai 20158), Singer 20069), Stapleton 201110).資料一覧 ・資料CQ46‒1 Search strategy.・資料CQ46‒2 フローダイアグラム.・資料CQ46‒3 Risk of bias.・資料CQ46‒4 Forest plot.・資料CQ46‒5 エビデンスプロファイル.・資料CQ46‒6 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) 小谷穣治,江木盛時,海塚安郎,他.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン.日集中医 誌2016;23:2:185‒281. 2) Egi M, Ogura H, Yatabe T, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Man- agement of Sepsis and Septic Shock 2020(J‒SSCG 2020). J Intensive Care 2021; 9:53. 3) Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med 2021;47:1181‒247. 4) Elamin EM, Miller AC, Ziad S. Immune enteral nutrition can improve outcomes in medical‒surgical patients with ARDS:a prospective randomized controlled trial. J Nutr Disord Ther 2012;2:109. 5) Gadek JE, DeMichele SJ, Karlstad MD, et al. Effect of enteral feeding with eicosapen- taenoic acid, gamma‒linolenic acid, and antioxidants in patients with acute respiratory distress syndrome. Enteral nutrition in ARDS study group. Crit Care Med 1999;27:1409‒20. 6) Parish M, Valiyi F, Hamishehkar H, et al. The effect of omega‒3 fatty acids on ARDS: a randomized double‒blind study. Adv Pharm Bull 2014;4:555‒61. 7) Rice TW, Wheeler AP, Thompson BT, et al, NIH NHLBI acute respiratory distress syn- drome network of investigators. Enteral omega‒3 fatty acid, gamma‒linolenic acid, and antioxidantsupplementation in acute lung injury. JAMA 2011;306:1574‒81. 8) Shirai K, Yoshida S, Matsumaru N, et al. Effect of enteral diet enriched with eicos- apentaenoic acid, gamma‒linolenic acid, and antioxidants in patients with sepsis‒ induced acute respiratory distress syndrome. J Intensive Care 2015;3:24. 9) Singer P, Theilla M, Fisher H, et al. Benefit of an enteral diet enriched with eicosapen- taenoic acid and gamma‒linolenic acid in ventilated patients with acute lung injury. Crit Care Med 2006;34:1033‒8. 10) Stapleton RD, Martin TR, Weiss NS, et al. A phase II randomized placebo‒controlled trial of omega‒3 fatty acids for the treatment of acute lung injury. Crit Care Med 2011;39:1655‒62. 参考文献
資料CQ46—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/4) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [mh] #2 Acute lung injury [mh] #3 ALI [tiab] OR ARDS [tiab] #4 Acute lung injur* [tiab] OR acute respiratory distress [tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #5 (Severe[tiab] OR critical*[tiab]) AND (respiratory[tiab] OR hypox* [tiab]) #6 “shock lung” [tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 “omega 3 fatty acids” [tiab] #9 “n 3 fatty acids” [tiab] #10 "fatty acids, unsaturated"[mesh] #11 "unsaturated fatty acids"[tiab] #12 “linolenic acid” [tiab] #13 “Fish Oils” [mesh] #14 “fish oil” [tiab] #15 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 Controlled clinical trial[Publication Type] #18 randomized[Title/Abstract] #19 placebo[Title/Abstract] #20 randomly [tiab] #21 trial[tiab] #22 groups [tiab] #23 "systematic review"[Publication Type] #24 "meta-analysis"[Publication Type] #25 "review"[Publication Type] #26 #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 OR #25 #27 #16 AND #26 #28 animals [mh] NOT humans [mh] #29 #27 NOT #28
CENTRAL(Search date:2020/6/4) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] #2 [mh "Acute lung injury"] #3 ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #4 (Acute NEXT lung NEXT injur*:ti,ab) OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #5 (Severe:ti,ab OR critical*:ti,ab) AND (respiratory:ti,ab OR hypox*:ti,ab) #6 "shock lung":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 "omega 3 fatty acids":ti,ab #9 "n 3 fatty acids":ti,ab
#10 [mh "fatty acids, unsaturated"] #11 "unsaturated fatty acids":ti,ab #12 "linolenic acid":ti,ab #13 [mh "Fish Oils"] #14 “fish oil”:ti,ab #15 {OR #8-#14} #16 #7 AND #15 #17 [mh animals] NOT [mh humans] #18 #16 NOT #17
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date : 2020/6/27) #1呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL #4呼吸窮迫症候群—急性/TH OR 呼吸窮迫症候群—急性/AL OR ショック肺/AL #5重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/AL #6毛細管漏出症候群/TH OR 毛細管漏出症候群/AL #7硝子膜症/TH OR 硝子膜症/AL #8 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 #9オメガ3 脂肪酸/TH OR オメガ3 系脂肪酸/AL OR ω—3 脂肪酸/AL #10 n—3 系脂肪酸/AL #11オメガ3 脂肪酸/TH OR n—3 系多価不飽和脂肪酸/AL #12不飽和脂肪酸/TH OR 不飽和脂肪酸/AL #13 "Eicosapentaenoic Acid"/TH OR エイコサペンタエン酸/AL #14 "Gamma—Linolenic Acid"/TH OR γ—リノレン酸/AL #15魚油/TH OR 魚油/AL #16 #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 OR #15 #17 #8 AND #16 #18ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #19比較試験/AL #20臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #21 (プラセボ/TH OR プラセボ/AL) #22対照/AL #23コントロール/AL #24 (臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL) #25 #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 OR #23 OR #24 #26 #17 AND #25 #27 (#26) AND (PT= 会議録除く)
資料CQ46—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=592 410件138件44件 除外基準に該当した研究n=8理由:・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる4件3件1件 重複した研究 n=72 除外基準に該当した研究 n=501 検索で同定された研究 n=592 重複研究を除外した研究 n=520 フルテキストで適格性を評価した研究 n=19 系統的レビューに組み入れた研究 n=11 メタ解析に組み入れた研究 n=7
資料CQ46—3 Risk of bias 人工呼吸器非使用日数ICU滞在日数 死 亡P/F比
消化管不耐症感染症
資料CQ46—4 Forest plot 死 亡 P/F比 人工呼吸器非使用日数
ICU滞在日数 消化管不耐症 感染症
資料CQ46—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討ω脂肪酸 ありω脂肪酸 なし相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 死 亡 7 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻b深刻cなし76/342 (22.2%) 82/330 (24.8%) RR 0.83 (0.53~1.31) 1,000 人あたり42 人減少(117 人減少~ 77 人増加) +○○○非常に低重大 P/F 比 3 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻b深刻eなし55 58 —平均11.84 高い (31.2 減少~ 54.88 増加) +○○○非常に低重大 VFD 3 ランダム 化試験深刻f 深刻で ない深刻b深刻eなし213 206 —平均0.62 日短縮(3.33 日短縮~ 2.09 日延長) +○○○非常に低重大 ICU 滞在日数 2 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻b深刻cなし74 70 —平均5.12 日短縮(7.36 日短縮~ 2.88 日短縮) ++○○ 低重大 消化管不耐症 1 ランダム 化試験深刻f 深刻で ない深刻b深刻gなし41/143 (28.7%) 27/129 (20.9%) RR 1.37 (0.90~2.09) 1,000 人あたり77 人増加(21 人減少~ 228 人増加) +○○○非常に低重大 感染症 1 ランダム 化試験深刻h 深刻で ない深刻b深刻gなし10/23 (43.5%) 12/23 (52.2%) RR 0.83 (0.45~1.53) 1,000 人あたり89 人減少(287 人減少~ 277 人増加) +○○○非常に低重大 MODS スコア 0 — — — —a —— — — — 推定不可能 — — 重要 心疾患 0 — — — —a —— — — — 推定不可能 — — 重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,VFD:人工呼吸器非使用日数,OIS:最適情報量. MODS スコア,心疾患はアウトカム報告がなかった.説 明a.Weight の大きいSinger らの研究がhigh risk of bias の研究であり,その他の研究もunclear risk の項目が多い. b.ARDS 患者のみではなく重症患者を対象とした研究を組み入れている. c.OIS を満たさないため. d.ブラインドと選択されたアウトカムの報告でhigh risk とunclear risk の評価が多いため. e.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため. f.Unclear risk の項目が多いため. g.95% CI が臨床判断の閾値をまたぐため. h.High risk とunclear risk の項目が多いため.
資料CQ46—6 Evidence—to—Decision疑 問 CQ46:ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うか? 集 団: 18 歳以上のARDS 患者介 入: ω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養比較対照:それ以外の経腸栄養主要なアウトカム:死亡,P/F 比,人工呼吸器非使用日数(VFD),ICU 滞在日数,消化管不耐症,感染 症 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:脂肪酸は炭素鎖に二重結合を有する不飽和脂肪酸と,有さない飽和脂肪酸に大別さ れる.不飽和脂肪酸はさらに最初の二重結合がある位置により,ω3 脂肪酸とω6 脂肪酸に分けられる.敗血症および敗血症性ALI モデル動物での実験では,ω3 脂肪酸の含有率の高い脂肪の投与により肺の血管透過性や肺水腫,肺高血圧を抑制することが示されている.このような機序による魚油をはじめとしたω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養を行うことによるARDS 患者に対する有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない脂肪酸は炭素鎖に二重結合を有する不飽和脂肪酸と,有さない飽和脂肪 酸に大別される.不飽和脂肪酸はさらに最初の二重結合がある位置により,ω3 脂肪酸とω6 脂肪酸に分けられる.敗血症および敗血症性ALI モデル動物での実験では,ω3 脂肪酸の含有率の高い脂肪の投与により肺の血管透過性や肺水腫,肺高血圧を抑制することが示されている.このような機序による魚油をはじめとしたω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養を行うことによるARDS 患者に対する有効性を明らかにすることは重要臨床課題である 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい●中程度SR の結果,PICO に一致したRCT が7 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を実施したω3 脂肪酸製剤を使用することで,死亡(7 RCT:n=672)に関しては
○大きい○一概には言えない○わからない1,000 人あたり42 人少なくなり(95% CI:117 人減少~77 人増加), VFD(3 RCT:n=419)は0.62 日短くなり(95% CI:3.33 日短縮~ 2.09 日延長),ICU 滞在日数(2 RCT:n=144)は5.12 日短くなり (95% CI:7.36 日短縮~2.88 日短縮),P/F 比(3 RCT:n=113)は 11.84 高くなる(95% CI:31.2 減少~54.88 増加).このことより,予 測される望ましい効果は「中程度」と判断した.なお,MODS スコア(益)は採用されたRCT ではアウトカムの報告がなかった 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからないω3 脂肪酸製剤を使用することで,消化管不耐症(1 RCT:n=272)は 1,000 人あたり77 人多く(95% CI:21 人減少~228 人増加),感染症(1 RCT:n=46)は89 人少なくなる(95% CI:287 人減少~277 人増加).このことより,予測される望ましくない効果は「たぶん小さい」と判断したなお,心疾患(害)は採用されたRCT ではアウトカムの報告がなかった エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 死 亡重大+○○○ 非常に低 VFD重大+○○○ 非常に低 ICU 滞在日数重大++○○ 低 P/F 比重大+○○○ 非常に低 消化管不耐症重大+○○○ 非常に低 感染症重大+○○○ 非常に低 心疾患重大— — 心疾患は採用された文献内にアウトカム報告がなかった
全体的なエビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない栄養療法におけるアウトカムに関する,価値観についてのデータはない が,一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対照介入 (脂肪酸)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 死 亡82/330 (24.8%) 76/342 (22.2%) 42 人減少/1,000 人(117 人減少~ 77 人増加) 0.83 (0.53~1.31) VFD — —平均0.62 日短縮 (3.33 日短縮~ 2.09 日延長) — ICU 滞在 日数— —平均5.12 日短縮 (7.36 日短縮~ 2.88 日短縮) — P/F 比— —平均11.84 増加 (31.2 減少~ 54.88 増加) —
消化管不耐症27/129 (20.9%) 41/143 (28.7%) 77 人増加/1,000 人 (21 人減少~ 228 人増加) 1.37 (0.90~2.09) 感染症12/23 (52.2%) 10/23 (43.5%) 89 人減少/1,000 人 (287 人減少~ 277 人増加) 0.83 (0.45~1.53) 心疾患— —推定不可能—心疾患は採用された文献内にアウトカム報告がなかった 以上から,介入による効果と害のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した. 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない介入による益が上回り,コストを軽減できる可能性があるが,ω3 脂肪酸 製剤の追加投与は4 時間ごとにチューブの水フラッシュを伴う投与が必要となるため,実際の管理に関わるステークホルダーの業務量が増加する.よって,受け入れは「一概には言えない」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない経腸栄養自体は一般的な治療である.一般的な経腸栄養剤の入手も容易 であるが,ω3 脂肪酸製剤の採用がない病院においては新規採用をしなければならない.また,ω3 脂肪酸製剤の追加投与の際には1 日に複数回投与する必要があるため,その手間などを考慮すると,実行可能性は「一概には言えない」と判断した 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 2022 年6 月時点ではω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養剤は販売中止となっており,それと同等の含有率の高い経腸栄養を行うためには通常の経腸栄養にω3 脂肪酸製剤の追加が必要となる.
理 由 Justification 疑 問 ARDS 患者にω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養を行うか?患 者 18 歳以上のARDS 患者.介 入 ω3 脂肪酸の含有率が高い経腸栄養.対 照 それ以外の経腸栄養.アウトカム死亡,P/F 比,人工呼吸器非使用日数(VFD),ICU 滞在日数,消化管不耐症,感染症.エビデンスの要約ω3 脂肪酸の含有率が高い経管栄養を行うことで,死亡(7 RCT:n=672)に関しては1,000 人あたり42 人少なくなり(95% CI:117 人減少~77 人増加),VFD(3 RCT:n=419)は0.62 日短くなり(95% CI:3.33 日短縮~2.09 日延長),ICU 滞在日数(2 RCT:n=144)は5.12 日短くなり(95% CI:7.36 日短縮~2.88 日短縮),P/F 比(3 RCT:n=113)は11.84 高くなる(95% CI:31.2 減少~54.88 増加).このことより,予測される望ましい効果は「中程度」と判断した.一方,ω3 脂肪酸の含有率が高い経管栄養を行うことで,消化管不耐症(1 RCT:n=272)は1,000 人あたり77 人多く(95% CI:21 人減少~228 人増加),感染症(1 RCT:n=46)は89 人少なくなる(95% CI:287 人減少~277 人増加).このことより,予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した.エビデンスの確実性消化管不耐症のみ方向性が一致していないため,すべてのアウトカムの中で最も確実性の低い「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定一般的に死亡に対する価値は高く,そのばらつきは少ないと考えられる.価値観については,本介入の予測される望ましい効果は点推定値のみならず,信頼区間の上限,下限を加味した場合においても予測される望ましくない効果に比しておそらく有意である.受け入れについては,介入による益が上回り,コストを軽減できる可能性があるが,介入による処置の手間が増大するため,「一概には言えない」と判断した.実行可能性については,経腸栄養自体は一般的な治療であり,一般的な経腸栄養剤の入手も容易であるが,ω3 脂肪酸製剤の採用をしている病院には限りがあることから,実行可能性は「一概には言えない」と判断した.パネル会議事前投票では,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であった.パネル会議では栄養剤の組成と消化管不耐症の発生リスクについての議論があった.その結果,パネル会議では,再投票はなく,最終的に事前投票の結果をもって合意に至った.しかし,パブリックコメントにおいて,ω3 脂肪酸の含有率の高い経腸栄養剤の販売中止の指摘を受け,再度パネル会議を開催した.実現可能性と受け入れについて「一概には言えない」に変更する必要性があるものの,市販のω3 脂肪酸製剤を追加投与すれば同等の含有率を維持した経腸栄養を実施することは可能であるとの意見を踏まえ再投票したところ,修正Delphi 法により,「推奨文案」が中央値7.0 点,見解不一致指数0 となり推奨の変更はなかった. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 実施していない.
実施上の考慮事項 Implementation considerations 本診療ガイドラインで採用した研究の異質性は高く,対照群で使用している製剤も様々である.また,ω3 脂肪酸の含有率が高いと消化管不耐症が増える可能性がある.『日本版重症患者の栄養療法ガイドライン』では,ARDS 患者に関してはω3(n‒3 系)脂肪酸,γリノレン酸,抗酸化物質を強化した経腸栄養剤使用が弱く推奨されている. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として有害事象や費用対効果について,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床での問題がないかを,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングを行う必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今回のメタ解析において採用したRCT は7 つであり,その総患者数も672 人と小規模なRCT がほとんどである.今後,ARDS 患者において大規模RCT が実施されることが望まれる.
小児のARDS(Pediatric ARDS:PARDS)も,発症の機序は肺毛細血管の透過性亢進による肺水腫であり,成人のARDS と同じである.しかし,その原因,背景疾患,呼吸器系の特徴(生理学的,解剖学的,免疫学的)は成人と異なる1,2).よって,PARDS を成人のARDS と区別して考えることは妥当である.そこで,本診療ガイドライン小児領域では小児独自で15 のCQ(Pediatric CQ:PCQ)を取り上げた.そのうち3CQ は条件付き推奨,6CQ は条件付き非推奨,そして,残り6CQ に関しては,in our practice statement としたが,この中には,成人と方向性が異なる推奨になったCQ があった(図5).これらのPCQ の背景となるPARDS に関する基礎情報を以下に示す. 定 義 PARDS の定義として,2015 年にPediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Criteria (PALICC)定義が提案された2).PALICC 定義のベルリン定義との重要な違いとして,SpO2を診断に利用できる,PaO2/FIO2比でなくOxygenation Index を利用する,胸部画像検査での浸潤影が両側でなくてもよい,at risk としてPARDS に発展する可能性がある患者群を定義している,などが 1 図5 小児と成人の推奨の比較 小児のARDS 総論
ある.小児ではPaO2の測定が容易ではないのでSpO2を利用することは理に適っている.しかし, PALICC 定義の歴史は浅く,多くの論文が成人と同様の定義(ベルリン定義や,それ以前のAmerican‒European Consensus Conference 定義)を使用しているので,本診療ガイドラインでのシステマティックレビューの論文抽出においては,すべての定義をPARDS として扱った.小児と成人を区別する年齢は,医学的に明確な基準は存在しない.PALICC 定義でも,年齢の上限は設定していない.PALICC 定義では下限も設定していないが,新生児のRespiratory Distress Syndrome や胎便吸引症候群などの周産期の異常に伴う新生児の呼吸障害,先天性横隔膜ヘルニアなどの先天性奇形による呼吸障害は,対象外となっている.本診療ガイドラインでも,PALICC 定義同様,小児年齢の上限下限を設定せず,各論文において小児とされているものを抽出したが,先天性の肺疾患や,周産期の異常に伴う肺傷害は除外した. PARDS では,PALICC 定義がベルリン定義より,広く,早く診断できることが示されている3,4).しかし,現時点では,PALICC 定義とベルリン定義のどちらが治療介入に有用で,医療経済的にも効果があるかは十分には証明されていない.よって,小児が成人と混合のICU で管理されている施設では,普段使い慣れているベルリン定義を使用することは問題ないと考える.本診療ガイドラインはPARDS のガイドラインであるが,CQ により対象(=P)を拡大した.文献検索段階でPARDS の情報を含んだ論文であれば,できるだけ多く抽出する方針とした.PALICC定義以外の定義では,ARDS は侵襲的陽圧換気を行わなければ診断できないので,PCQ1 では,急性呼吸不全患者全般を対象としたが,細気管支炎のみを対象とした論文は除外した.PCQ5,14, 15 に関しては,PARDS 患者と非PARDS 患者での差が少ないと判断し,小児の人工呼吸器装着患者すべてを抽出対象とした.それ以外の小児のCQ では,急性呼吸不全の原因の半数以上がPARDS であれば抽出対象とした. 疫 学 2019 年に発表された27 か国145 のPICU の前向き調査によれば,PALICC 定義によるPARDS の発生頻度は,PICU 入室患者の3.2%,人工呼吸器装着患者の6.1%,死亡率は17.1%(重症群では32.7%)と報告されている3).この研究では,PARDS の原因として63%が肺炎または下気道感染, 19%が敗血症であった.また,63%に併存疾患が存在した.死亡原因としては,MOF が43%と最大であり,低酸素血症は34%,中枢神経系が28%と報告されている.死亡率を上昇させる因子として,PALICCの重症度分類で重症に分類されること,敗血症や溺水が原因であること,免疫抑制が併存すること,が挙げられている.逆に,肺炎によるPARDS では,予後が良いことも示されている. 集約化 PICU の年間入室患者数とPARDS 患者の死亡率には関連があると報告されている3).PARDS が発生したすべての施設で,同様な治療が受けられるわけではない.本邦における小児人工呼吸器装着患者を対象とした研究においては,年間の人工呼吸症例数が35 例に満たない施設では,死亡率が高いことが報告されている5).よって,PARDS 患者は,日常的に小児の人工呼吸を行っている施設に集約化するべきだと考えられる.成人のARDSを対象とした研究においては,ECMOセンターに搬送したほうが,そうでない施設で管理するよりも予後が良いという報告がある6).しかし,搬 2 3
送自体にはリスクが存在する.本邦においてPARDS 患者の集約化を安全に促進するためには,適切な搬送基準の設定,搬送システムの構築や搬送スタッフの教育など,今後改善するべき多くの課題がある. 小児特有の研究課題 前述のように,PARDS の発生率は成人と比較して低い.また,年単位の遠隔期死亡率は, PARDS では併存疾患を有する患者が多いため,指標になりにくい.そのため,今後もPARDS の臨床研究において,死亡のみをendpoint にすることは適切でない7).成人では,ARDS 患者のフォローアップにおいて,呼吸機能は比較的維持されていても,身体的・精神的機能や認知機能の低下が起こっていることが知られている8).PARDS 患者でも,身体的・精神的機能や認知機能を評価する必要がある.ただし,今回多くのPCQ でPARDS の発達予後を重要なoutcome として採用しシステマティックレビュー(SR)を行ったが,実際に発達予後を調査した研究が存在したのはPCQ7 とPCQ10 のみであった.今後の研究においては,endpoint として身体的,精神神経的な発達予後,生活の質,家族の満足度などを取り入れることが重要だと考える7). 小児の診療ガイドラインでは小児全体を対象とした推奨を提示したが,患者個々の病態に応じて成人あるいは新生児に準じた診療を否定するものではない.今後は,年齢や病態に応じたPARDS診療に関する研究を進める必要がある. 文 献 1) Sapru A, Flori H, Quasney MW, et al. Pathobiology of acute respiratory distress syndrome. Pedi- atr Crit Care Med 2015;16:S6‒22. 2) Khemani RG, Smith LS, Zimmerman JJ, et al. Pediatric acute respiratory distress syndrome: definition, incidence, and epidemiology:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S23‒40. 3) Khemani RG, Smith L, Lopez‒Fernandez YM, et al. Paediatric acute respiratory distress syndrome incidence and epidemiology(PARDIE):an international, observational study. Lancet Respir Med 2019;7:115‒28. 4) Gupta S, Sankar J, Lodha R, et al. Comparison of prevalence and outcomes of pediatric acute respiratory distress syndrome using Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference criteria and Berlin definition. Front Pediatr 2018;6:93. 5) Sasaki R, Yasunaga H, Matsui H, et al. Hospital volume and mortality in mechanically ventilated children:analysis of a National Inpatient Database in Japan. Pediatr Crit Care Med 2016:17: 1041‒4. 6) Peek GJ, Mugford M, Tiruvoipati R, et al. Efficacy and economic assessment of conventional ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure(CESAR):a multicentre randomised controlled trial. Lancet 2009;374:1351‒63. 7) Yehya N, Thomas NJ. Relevant outcomes in pediatric acute respiratory distress syndrome studies. Front Pediatr 2016;4:51. 8) Herridge MS, Moss M, Hough CL, et al. Recovery and outcomes after the acute respiratory dis- tress syndrome(ARDS)in patients and their family caregivers. Intensive Care Med 2016;42: 725‒38. 4
背景,この問題の優先度 Noninvasive positive pressure ventilation (N P P V)やh i g h f l o w n a s a l c a n n u l a (HFNC)は気管挿管による合併症の回避が期待される.一方,気管挿管の遅れや重症ARDS患者に対する使用は死亡を増加させる可能性がある.非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)は,小児ARDS患者の呼吸管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い.注: 本CQ では対象となる集団をARDS 患者に 限定していない.解 説 PICO 患者(P):低酸素血症(P╱F≤300 もしくはそ れに相当)を認める小児患者(論文の定義に準ずる,記載がない場合は20 歳以下).介入(I):NPPV╱HFNC.対照(C):酸素療法.アウトカム(O):死亡,人工呼吸器非使用日 数(VFD),入院日数,気管挿管率,侵襲的呼吸管理の遅れによる有害事象. エビデンスの要約 益のアウトカムとして,気管挿管率(4RCT:n=276)は1,000 人あたり46 人減少(150 人減少~227 人増加)した.入院日数(2RCT:n=92)は平均0.25 日短縮(3.86 日 1 2 1 2 領域F 小児領域 小児ARDS患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用するか? PCQ 1 小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用しないことを 条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D). ARDS 以外の小児急性呼吸不全初期に対する非侵襲的呼吸補助を否定するものではない. 推 奨 付帯事項 小児領域
短縮~3.37 日延長)した.このことより,予測される望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムとしてとして,介入により死亡(4RCT:n=870)は1,000 人あたり65 人増加(61 人減少~545 人増加),VFD (1RCT:n=42)は平均6 日短縮(13.37 日短縮~1.37 日延長)した.褥瘡に関しては,介入群の11.6%で発生し,非介入群では発生を認めなかった.このことから予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した.臨床的な気管挿管率と死亡の重要性を勘案し,「たぶん対照が有利」とした エビデンスの確実性 望ましい効果と望ましくない効果の方向性が不一致のため,エビデンスの確実性が「非常に低」とした. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 死亡が増加する可能性を重視すると,望ましくない効果が望ましい効果に勝る.受け入れは,小児ではインターフェイスの装着や陽圧を受け入れられない可能性があり「一概には言えない」.実行可能性は,小児集中治療室(PICU)においては高いが,専門的な知識も必要であり「一概には言えない」. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)を使用しないことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い非推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「軽症小児ARDSだけに対象を絞った非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)の研究はない.そのため,軽症群だけに絞った場合に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)を使用するべきか,現在のエビデンスでは不明瞭である」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.パネル会議では,付帯事項において,非侵襲的呼吸補助を使用し得る小児患者群について言及したほうがよいとの意見が出た.そのため,付帯事項を「軽症小児ARDSだけに対象を絞った非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)の研究はない.小児ARDSのリスク状態にある急性呼吸不全の患者に対する非侵襲的呼吸補助を否定するものではない」として,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9.0 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.パネル会議後,SR 統括本部より,付帯事項の「小児ARDSのリスク状態にある急性呼吸不全の患者」という表現が小児急性呼吸不全患者全般を指すものと誤解され得るのではないか,という指摘があった.そのため,推奨文「小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱ HFNC)を使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨╱非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」,付帯事項「ARDS 以外の小児急性呼吸不全初期に対する非侵襲的呼吸補助を否定するものではない」と変更し,再々投票で修正Delphi 法により,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 小児ARDS患者に対する侵襲的呼吸管理の遅れは予後を悪化させる可能性があるため, NPPV によって侵襲的呼吸管理が遅れないように注意する必要がある.また,侵襲的呼吸管理に習熟していない施設では,PICU や救命救急センターなど,侵襲的呼吸管理に習熟した施設への患者搬送を検討する必要がある. 3 4 5 3 4
関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容がCQ14:ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)を使用するべきか? に記載されている.RCT 19 件を用いたネットワークメタ解析手法の結果を根拠に,ARDS が疑われる成人急性呼吸不全患者に対する初期の呼吸管理として,非侵襲的呼吸補助の禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法あるいは気管挿管と比較して,非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)を行うことが条件付きで推奨されている.詳細については,関連する CQ15~18 を参照されたい.Pediatric Acute L u n g I n j u r y C o n s e n s u s C o n f e r e n c e (PALICC)では次のように記載されている1).「NPPV の適応に関して,小児ARDS のリスクがある小児では,病初期にNPPV を検討することを推奨する.ガス交換の改善,呼吸仕事量の減少,侵襲的換気の合併症を回避できる可能性がある.侵襲的な人工呼吸による合併症のリスクが高い免疫不全の小児など,特定の集団の小児には,侵襲的な人工呼吸を避けるために,より早い時期にNPPV を行うとより効果的であることを推奨する」.Pediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEM- VECC)2)は,HFNC またはCPAP は呼吸仕事量を減じるものの,他の介入に対する優位性を示す臨床知見はないとし,コンセンサスとしてARDS を含む拘束性疾患へのHFNC 使用は(強い同意),CPAP は(93%の同意)が得られたとしている.2020 年の小児に対するSurviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)3)では,挿管の明確な適応がなく,初期蘇生に反応した敗血症性小児ARDS(PARDS)の小児において,NPPV を挿管人工呼吸を開始する前にトライアルとして行うことを提案している(弱い推奨度,非常に低い確実性のエビデンス). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてNPPV 使用開始後の評価が適切に行われているか,インターフェイスの使用によるコストの増加について,更なる情報について収集する必要がある.HFNC に関しては,病院の酸素備蓄に影響がないかもモニタリングする必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況をモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 今後の研究課題として初期にNPPV を使用する場合には,軽症のARDS 症例に絞ってHFNC,NPPV の有効性を評価する研究が必要である.また,NPPV を使用するとしてcontinuous positive airway pressure(CPAP)とbiphasic positive airway pressure(BPAP)のどちらの換気モードが有効かも,今後明らかにする必要があるだろう. 文献検索式と文献選択 「Acute respiratory distress syndrome」「Hypoxia」「Non—invasive ventilation」「Oxygen inhalation therapy」「High flow」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月15 日までの文献を検索したところ6,482 件の研究が同定され,スクリーニングの結果5 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Cam 20024), Chisti 20155), McCollum 20196), Peters 20187), Yañez 20088). 5 6 7 8 9
資料一覧 ・資料PCQ1—1 Search strategy.・資料PCQ1—2 フローダイアグラム.・資料PCQ1—3 Risk of bias. ・資料PCQ1—4 Forest plot.・資料PCQ1—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ1—6 Evidence—to—Decision. 10 1) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428—39. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764—80. 3) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis—Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52—106. 4) Cam BV, Tuan DT, Fonsmark L, et al. Randomized comparison of oxygen mask treat- ment vs. nasal continuous positive airway pressure in dengue shock syndrome with acute respiratory failure. J Trop Pediatr 2002;48:335—9. 5) Chisti MJ, Salam MA, Smith JH, et al. Bubble continuous positive airway pressure for children with severe pneumonia and hypoxaemia in Bangladesh:an open, randomised controlled trial. Lancet 2015;386:1057—65. 6) McCollum ED, Mvalo T, Eckerle M, et al. Bubble continuous positive airway pressure for children with high—risk conditions and severe pneumonia in Malawi:an open label, randomised, controlled trial. Lancet Respir Med 2019;7:964—74. 7) Peters MJ, Agbeko R, Davis P, et al. Randomized study of early continuous positive airways pressure in acute respiratory failure in children with impaired immunity (SCARF)ISRCTN82853500. Pediatr Crit Care Med 2018;19:939—48. 8) Yañez LJ, Yunge M, Emilfork M, et al. A prospective, randomized, controlled trial of noninvasive ventilation in pediatric acute respiratory failure. Pediatr Crit Care Med 2008;9:484—9. 参考文献
資料PCQ1—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/15) #1 "Hypoxia"[mh] OR hypox*[tiab] OR "Respiratory Insufficiency"[mh] OR respiratory depression*[tiab] OR respiratory failure*[tiab] OR ventilatory depression*[tiab] OR respiratory insufficienc*[tiab] OR "Dyspnea"[mh] OR dyspnea*[tiab] OR "shortness of breath"[tiab] OR "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[mh] OR acute respiratory distress[tiab] OR adult respiratory distress[tiab] OR respiratory distress syndrome*[tiab] OR RDS[tiab] OR ARDS[tiab] OR "Acute Lung Injury"[mh] OR acute lung injur* [tiab] OR ALI[tiab] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[mh] #3 #1 OR #2 #4 "Noninvasive Ventilation"[mh] OR noninvasive ventilation*[tiab] OR non invasive ventilation*[tiab] OR NIV[tiab] OR NPPV[tiab] OR NIPPV[tiab] OR noninvasive positive pressure ventilation*[tiab] OR noninvasive mechanical ventilation*[tiab] OR noninvasive pressure support ventilation*[tiab] OR "Continuous Positive Airway Pressure"[mh] OR continuous positive airway pressure*[tiab] OR bilevel positive airway pressure*[tiab] OR biphasic positive airway pressure*[tiab] OR BIPAP[tiab] #5 "Oxygen Inhalation Therapy"[mh] OR HFNC[tiab] OR HHFNC[tiab] OR HHHFNC[tiab] OR HFNO[tiab] OR HFNT[tiab] OR HFNOT[tiab] OR HFO[tiab] OR HFOT[tiab] OR NHF[tiab] OR NHFC[tiab] OR NHFT [tiab] OR NHFO[tiab] OR NHFOT[tiab] OR high flow therap*[tiab] OR high flow oxygen[tiab] OR nasal high flow[tiab] #6 #4 OR #5 #7 ("Randomized Controlled Trial"[pt] OR "Controlled Clinical Trial"[pt] OR "Clinical Trials as Topic"[mh] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (Animals [mh] NOT Humans [mh]) #8 #3 AND #6 AND #7
CENTRAL(Search date:2020/6/15) #1 [mh Hypoxia] OR hypox*:ti,ab OR [mh "Respiratory Insufficiency"] OR "respiratory depression":ti,ab OR "respiratory failure":ti,ab OR "ventilatory depression":ti,ab OR "respiratory insufficiency":ti,ab OR [mh Dyspnea] OR dyspnea:ti,ab OR "shortness of breath":ti,ab OR [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR "adult respiratory distress":ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR RDS:ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Noninvasive Ventilation"] OR "noninvasive ventilation":ti,ab OR "non invasive ventilation":ti,ab OR NIV:ti,ab OR NPPV:ti,ab OR NIPPV:ti,ab OR "noninvasive positive pressure ventilation":ti,ab OR "noninvasive mechanical ventilation":ti,ab OR "noninvasive pressure support ventilation":ti,ab OR [mh "Continuous Positive Airway Pressure"] OR "continuous positive airway pressure":ti,ab OR "bilevel positive airway pressure":ti,ab OR "biphasic positive airway pressure":ti,ab OR BIPAP:ti,ab #5 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR HFNC:ti,ab OR HHFNC:ti,ab OR HHHFNC:ti,ab OR HFNO:ti,ab OR HFNT:ti,ab OR HFNOT:ti,ab OR HFO:ti,ab OR HFOT:ti,ab OR NHF:ti,ab OR NHFC:ti,ab OR NHFT:ti,ab OR NHFO:ti,ab OR NHFOT:ti,ab OR "high flow therapy":ti,ab OR "high flow oxygen":ti,ab OR "nasal high flow":ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6 #8 [mh animals] NOT [mh humans] #9 #7 NOT #8
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/15) #1酸素欠乏/TH OR 酸素欠乏/TA OR anoxia/TA OR Hypoxia/TA #2呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #3急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA OR ALI/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5呼吸困難/TH OR 呼吸困難/TA #6呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8非侵襲的補助換気/TH OR 非侵襲的補助換気/TA OR NPPV/TA OR NIPPV/TA #9持続気道陽圧/TH OR 持続気道陽圧/TA OR CPAP/TA #10非侵襲的陽圧呼吸/TH OR 非侵襲的陽圧呼吸/TA OR BIPAP/TA #11酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入/TA #12酸素療法/TA OR ハイフロー/TA OR HFNC/TA OR NHF/TA OR HFO/TA #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 (#14) AND (PT= 会議録除く) #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23
資料PCQ1—2 フローダイアグラム 他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=7,771 3,403件3,924件444件 同定スクリーニング適格性組み入れ除外基準に該当した研究 n=58理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ Oが異なる2件26件27件1件2件 重複した研究 n=1,289 除外基準に該当した研究 n=6,270 対象が除外基準に該当した研究 n=148 除外基準に該当した研究n=1理由:・ Oが異なる1件 検索で同定された研究 n=7,771 重複研究を除外した研究 n=6,482 フルテキストで適格性を評価した研究 n=64 系統的レビューに組み入れた研究 n=6 メタ解析に組み入れた研究 n=5 除外基準を除外した研究 n=212
資料PCQ1—3 Risk of bias 入院日数気管挿管 死 亡人工呼吸器非使用日数
褥 瘡
資料PCQ1—4 Forest plot 入院日数 人工呼吸器非使用日数 死 亡
気管挿管 褥 瘡
資料PCQ1—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討NPPV Placebo相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡a 4 ランダム 化試験深刻b深刻c深刻d 非常に 深刻eなし67/439 (15.3%) 46/431 (10.7%) RR 1.61 (0.43~6.11) 1,000 人あたり65 人増加(61 人減少~ 545 人増加) +○○○非常に低重大 発達予後 0 推定不可 — 重大 人工呼吸器非使用日数 1 ランダム 化試験非常に 深刻f深刻で ない深刻d 非常に 深刻gなし21 21 —平均6 日短縮(13.37 日短縮~ 1.37 日延長) +○○○非常に低重大 入院日数 2 ランダム 化試験非常に 深刻f深刻で ない深刻d 非常に 深刻gなし46 46 —平均0.25 日短縮 (3.86 短縮~ 3.37 日延長) +○○○非常に低重大 気管挿管率 4 ランダム 化試験非常に 深刻f深刻で ない深刻d 非常に 深刻eなし21/143 (14.7%) 29/133 (21.8%) RR 0.79 (0.31~2.04) 1,000 人あたり46 人減少(150 人減少~ 227 人増加) +○○○非常に低重大 侵襲的呼吸管理の遅れによる有害事象 0 推定不可 重大 褥 瘡 2 ランダム 化試験深刻h 深刻で ない深刻d 非常に 深刻iなし5/43 (11.6%) 0/44 (0.0%) RR 11.00 (0.64~ 188.95) 1,000 人あたり112 増加(4 人減少~ 1,000 人増加) +○○○非常に低重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.死亡は30 日死亡,院内死亡,期間の記載のないものを統合したものである. b.複数のRoB 項目(研究参加者と治療提供者のブラインド化,その他のバイアス)で深刻とした. c.文献により効果の方向性が一致せず,95% CI の重なりはわずかであるため,深刻と評価した. d.対象集団にARDS 患者ではないが,ARDS になり得るリスクの高い患者も含まれており,ARDS 患者と比較し,結果に差が生じる可能性が考慮され,確実性のグレードを1 段階下げなければならないと判断した. e.OIS を満たさず,95% CI が利益と害に関する臨床的に意味のある閾値の両方を含んでいる. f.複数のRoB 項目(研究参加者と治療提供者のブラインド化,アウトカム評価者のブラインド化,その他のバイアス)で非常に深刻とした. g.OIS を満たさず,上限信頼限界または下限信頼限界が0.5 SD を超えており,非常に深刻と評価した. h.複数のRob 項目(研究参加者と治療提供者のブラインド化,アウトカム評価者のブラインド化(Yañez 2008),その他のバイアス(Cam 2002))で深刻とした. i.OIS を満たさず,95% CI が利益と害に関する臨床的に意味のある閾値の両方を含んでいる.また,対象群でイベ ントが発生していない. 注)発達予後,侵襲的呼吸管理の遅れによる有害事象のアウトカムは報告した研究がなかった.
資料PCQ1—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ1:小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用するか? 集 団:低酸素血症(P/F≤300 もしくはそれに相当)を認める小児患者(論文の定義に準 ずる,記載がない場合は20 歳以下) 介 入:非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)比較対照:酸素療法主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,気管挿管率,侵襲的呼 吸管理の遅れによる有害事象 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: NPPV やHFNC は気管挿管による合併症を回避することが期待されるが,気管挿管 の遅れはかえって死亡を増加させることが報告されている.また,重症のARDS 患者に対しては死亡を増加させる可能性がある.NPPV/HFNC は,ARDS 患者の呼吸管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題であるなお,本CQ では対象となる集団をARDS 患者に限定していない.理由は近年臨床応用が増しているとはいえ,NPPV/HFNC について小児ARDS を対象としたエビデンスは限定的であると考えられたからである 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない低酸素血症に対するNPPV やHFNC は世界中で広く適用されており,気管挿管による合併症を回避することが期待されるが,気管挿管の遅れはかえって死亡を増加させるこ とが報告されている.また,重症のARDS 患者に対しては死亡を増加させる可能性がある.さらに,小児では認容性の問題もあり,NPPV/HFNC は小児ARDS 患者の呼吸管理において確立した治療ではない.そのため,有効性を明らかにすることは重要臨床課題である.したがって,この問題の優先度は高い
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,5 件のNPPV/HFNC を使用したRCT が採択 された1—5).予定された7 アウトカムのうち2 アウトカム(発達予後,侵襲的呼吸管理の遅れによる有害事象)は報告がなく,下記の5 アウトカムについてメタ解析を行った益のアウトカムとして,気管挿管率(4 RCT:n=276)は1,000 人あたり46 人減少(150 人減少~227 人増加)した.入院日数(2 RCT:n=92)は平均0.25 日短縮(3.86日短縮~3.37 日延長)した.このことより,予測される望ましい効果は「わずか」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,死亡(4 RCT:n=870)は1,000 人あたり65 人増加(61 人減少~545 人増加),VFD(1 RCT:n=42)は平均6 日短縮(13.37 日短縮~1.37 日延長)した.褥瘡に関しては,介入群の11.6%で発生したが,対照群では発生を認めなかった.このことから,予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な 重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡*重大+○○○ 非常に低 発達予後重大報告なし VFD重大+○○○ 非常に低 入院日数重大+○○○ 非常に低 気管挿管重大+○○○ 非常に低
侵襲的呼吸管理の遅れによる有害事象重大報告なし *死亡は30 日死亡,院内死亡,期間の記載のないものを統 合したものである エビデンスの確実性介入により,気管挿管率が低下するという望ましい効果があるが,死亡率が上昇し,VFD が短縮するという望ましくない効果がある.また,入院日数に関しては臨床的に有意な差が認められない.望ましい効果と望ましくない効果の方向性が不一致のため,エビデンスの確実性は「非常に低」とした 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価 値観の重要な不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカムNPPV酸素療法絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 死亡(30日, 院内,記載なしを 統合) 67/439 (15.3%) 46/431 (10.7%) 65 人増加/ 1,000 人(61 人減少~ 545 人増加) RR 1.61 (0.43~ 6.11) Chisti らの論文は,バングラディッシュで行わ れたモニタリングされていない状況でのBubble CPAP,HFNC と酸素療法の比較である1) Cam らの論文はデング熱から呼吸不全をきたし患者を対照として酸
発達予後 VFD平均6日短縮 (13.37 日 短縮~ 1.37 日延長) 入院日数平均0.25 日 短縮(3.86 日 短縮~ 3.37 日延長) 気管挿管21/143 (14.7%) 29/133 (21.8%) 46 人減少/ 1,000 人(150 人 減少~ 227 人増加) RR 0.79 (0.31~ 2.04) 侵襲的呼吸管理の遅れによる有害事象益のアウトカムとして,気管挿管率(4 RCT:n=276)は1,000 人あたり46 人減少(150 人減少~227 人増加)した.入院日数(2 RCT:n=92)は平均0.25 日短縮(3.86日短縮~3.37 日延長).このことより,予測される望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムとして,介入により死亡(4 RCT:n=870)は1,000 人あたり65 人増加(61 人減少~545 人増加),VFD(1 RCT: n=42)は平均6 日短縮(13.37 日短縮~1.37 日延長).褥瘡に関しては,介入群の11.6%で発生し,非介入群では発生を認めなかった.このことから,予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した.臨床的な気管挿管率と死亡の重要性を勘案し,「たぶん対照が有利」とした素療法と経鼻CPAP を 比較している2) Peters らの論文は免疫不全状態の患者で急性呼吸不全あるいは慢性呼吸不全の急性増悪を対象としている3) McCollum らの論文は発展途上国におけるハイリスク患者の肺炎に対する酸素療法とCPAP の比較である4) 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない小児では患者がインターフェイスの装着や陽圧を受け入れられない可能性があり「一概には言えない」
実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからないPICU においては,標準的な治療の1 つとしてNPPV が行 われているため実行可能性は高い.一方で,成人,小児のいずれも収容するICU では,小児のインターフェイスが十分に揃っていない可能性がある.また,インターフェイスの装着方法や適切な陽圧をかけられているかなどのグラフィックモニタリングの知識,スタッフ教育も必要である.そのため,実行可能性は「一概には言えない」 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん対照が 有利介入と対照の どちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV/HFNC)を使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 ARDS 以外の小児急性呼吸不全初期に対する非侵襲的呼吸補助を否定するものではない. 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)を使用するか?患 者 低酸素血症(P╱F≤300 もしくはそれに相当)を認める小児患者(論文の定義に準ずる,記載がない場合は20 歳以下).介 入 NPPV╱HFNC.対 照 酸素療法.アウトカム 死亡,VFD,入院日数,気管挿管率.エビデンスの要約益のアウトカムとして,気管挿管率(4 RCT:n=276)は1,000 人あたり46 人減少(150 人減少~227 人増加)した.入院日数(2 RCT:n=92)は平均0.25 日短縮(3.86 日短縮~3.37 日延長)した.このことより,予測される望ましい効果は「わずか」と判断した.一方,害のアウトカムとして,介入により死亡(4 RCT:n=870)は1,000 人あたり65 人増加(61 人減少~545 人増加),VFD(1 RCT:n=42)は平均6 日短縮(13.37 日短縮~1.37 日延長)した.褥瘡に関しては,介入群の11.6%で発生し,非介入群では発生を認めなかった.このことから,予測される望ましくない効果は「小さい」と判断した.臨床的な気管挿管率と死亡の重要性を勘案し,「たぶん対照が有利」とした.エビデンスの確実性介入により気管挿管率が低下するという望ましい効果があるが,死亡率が上昇しVFD が短縮するという望ましくない効果がある.また,入院日数に関しては臨床的に有意な差が認められない.望ましい効果と望ましくない効果の方向性が不一致のため,エビデンスの確実性は「非常に低」とした.
効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定メタ解析の結果は入院日数,気管挿管率に望ましい効果がある可能性があるが,VFD が短縮し,死亡が増加する可能性があり,褥瘡が発生する可能性がある.全体としてエビデンスの確実性は非常に低いが,死亡が増加する可能性を重視すると,望ましくない効果が望ましい効果に勝ると考えられる.受け入れについて検討されたエビデンスはないが,小児では患者がインターフェイスの装着や陽圧を受け入れられない可能性があり「一概には言えない」.実行可能性について検討されたエビデンスはないが,小児ICU においては,標準的な治療の1 つとしてNPPV が行われているため実行可能性は高い.一方で,インターフェイスの装着方法や適切な陽圧をかけられているかなどのグラフィックモニタリングの知識も必要であり「一概には言えない」.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱ HFNC)を使用しないことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い非推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「軽症小児ARDS だけに対象を絞った非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)の研究はない.そのため,軽症群だけに絞った場合に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)を使用するべきか,現在のエビデンスでは不明瞭である」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.パネル会議では,付帯事項において,NPPV╱HFNC を使用し得る小児患者群について言及したほうがよいとの意見が出た.そのため,付帯事項を「軽症小児ARDS だけに対象を絞った非侵襲的呼吸補助(NPPV╱HFNC)の研究はない.小児ARDS のリスク状態にある急性呼吸不全の患者に対する非侵襲的補助換気を否定するものではない」として,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9.0 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.パネル会議後,SR 統括本部より,付帯事項の「小児ARDS のリスク状態にある急性呼吸不全の患者」という表現がわかりづらく,小児急性呼吸不全患者全般を指すものと誤解され得るのではないか,という指摘があり,付帯事項の見直しを行った.再々投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に非侵襲的呼吸補助(NPPV╱ HFNC)を使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨╱非常に低い確実性のエビデンス: GRADE 2D)」,付帯事項「ARDS 以外の小児急性呼吸不全初期に対する非侵襲的呼吸補助を否定するものではない」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.付加的な考慮事項近年,小児の呼吸不全管理において非侵襲的呼吸管理,特にHFNC の使用は増加しており侵襲的呼吸管理を避けられる症例があることも事実である.そのため,小児急性呼吸不全の初期にNPPV╱ HFNC を否定するものではない.小児ARDS 患者においては,非侵襲的呼吸管理により侵襲的呼吸管理が遅れることで,死亡率が上昇することが懸念される. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 小児ARDS 患者に対する侵襲的呼吸管理の遅れは予後を悪化させる可能性があるため,NPPV によって侵襲的呼吸管理が遅れないように注意する必要がある.また,侵襲的呼吸管理に習熟していない施設では,PICU や救命救急センターなど,侵襲的呼吸管理に習熟した施設への患者搬送を検
討する必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題としてNPPV 使用開始後の評価が適切に行われているか,インターフェイスの使用によるコストの増加について更なる情報について収集する必要がある. HFNC に関しては,病院の酸素備蓄に影響がないかもモニタリングする必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況をモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference(PALICC)では小児ARDS のリスクにある患者に対するNPPV の検討を推奨する一方で,重症の小児ARDS では使用しないことを推奨している.したがって,中等症から重症の小児ARDS 患者に対してNPPV を使用する研究の実現可能性は低いと考える.これは今回のSR に組み入れられている患者が免疫不全患者,デング熱の患者などを含んでおり,PALICC の小児ARDS の定義した患者群ではないことにも関係している.また,介入方法に関しても小児に特有なBubble CPAP を用いた研究が4 件,HFNC を含めた研究が1 件であり,NPPV 専用機を用いた研究やHFNC による研究は少ない.今後の研究課題として初期にNPPV を使用する場合には,軽症のARDS 症例に絞ってHFNC,NPPV の有効性を評価する研究が必要である.また,NPPV を使用するとしたらcontinuous positive airway pressure(CPAP)とbiphasic positive airway pressure(BIPAP)のどちらの換気モードが有効かも今後明らかにする必要があるだろう.また,NPPV は人工呼吸器からの早期離脱のための戦略の一部としても使われている.そのため,小児で起こりやすい気道狭窄への対応,換気・酸素化の補助といった観点から,抜管後のNPPV,HFNC の有用性に関する研究も望まれる.非侵襲的呼吸補助の用語として欧米では陰圧式の呼吸補助を含めたnon—invasive ventilation (NIV),あるいはnon—invasive positive pressure ventilation(NiPPV)という用語が広く使用されている.本ガイド欄では本邦で広く使われているNPPV を用語として使用したが,今後用語を統一していく必要がある.参考文献1) Chisti MJ, Salam MA, Smith JH, et al. Bubble continuous positive airway pressure for children with severe pneumonia and hypoxaemia in Bangladesh:an open, randomised controlled trial. Lancet 2015;386:1057—65. 2) Cam BV, Tuan DT, Fonsmark L, et al. Randomized comparison of oxygen mask treatment vs. nasal continuous positive airway pressure in dengue shock syndrome with acute respiratory failure. J Trop Pediatr 2002;48:335—9. 3) Peters MJ, Agbeko R, Davis P, et al. Randomized study of early continuous positive airways pressure in acute respiratory failure in children with impaired immunity(SCARF) ISRCTN82853500. Pediatr Crit Care Med 2018;19:939—48. 4) McCollum ED, Mvalo T, Eckerle M, et al. Bubble continuous positive airway pressure for children with high—risk conditions and severe pneumonia in Malawi:an open label, randomised, controlled trial. Lancet Respir Med 2019;7:964—74. 5) Yanez LJ, Yunge M, Emilfork M, et al. A prospective, randomized, controlled trial of noninvasive ventilation in pediatric acute respiratory failure. Pediatr Crit Care Med 2008; 9:484—9.
背景,この問題の優先度 重症ARDS患者は,機械的人工呼吸を用いることでARDSから回復するための時間を稼ぐことができるが,依然としてその死亡率は高い.また,いくつかの研究では,機械的人工呼吸そのものが肺損傷の原因になることが示唆されている.こうした状況で機械的人工呼吸による有害事象を減じるための肺保護戦略の1 つとして1 回換気量の制限がある.しかし,成人の大規模RCT においても,その効果は一貫していない.小児ARDS 患者においても,1 回換気量の制限について効果と安全性を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずるが,記載のない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理さ れたARDS 患者(論文の定義に準ずる).介入(I):1 回換気量制限あり(論文の定義に 準ずる).対照(C):1 回換気量制限なし(論文の定義に 準ずる).アウトカム(O):死亡,発達予後,長期の呼 吸機能,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,呼吸性アシドーシスによる血行動態の悪化. エビデンスの要約 該当の研究なし. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の記述は行えない. 1 2 2 3 領域F 小児領域 小児ARDS 患者は1 回換気量を制限するか? PCQ 2 小児ARDS 患者に対する1 回換気量の制限に関して,推奨を提示することは できないが,成人ARDS 患者の治療戦略に則り,生理的な1 回換気量を超え ないように一般的に実施されている(in our practice statement). 体重あたりの1 回換気量として標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかでない.生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある. 推 奨 付帯事項
効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 人工呼吸器関連肺損傷において,ストレインは重要な一因であるとされる.肺胞を過伸展させないように1 回換気量を制限することは,ストレインを減少させ肺損傷を抑制すると考えられる.一方で1 回換気量を制限することは,高二酸化炭素血症などの有害性を伴う.しかし,これらについて直接的に評価した研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.1回換気量の制限の有無に関しては,人工呼吸器の設定変更のみで可能であり,受け入れや実行可能性は十分に高いと考えられる. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に対する1 回換気量の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS患者の治療戦略に則り,生理学的な1 回換気量を超えないように一般的に実施されている」,付帯事項「小児の標準体重を示す一定の見解はないが,2 歳頃まで続く肺胞形成に続き,(長幹骨の)成長が止まるまで肺容量も増加すると考えられるため,標準的な発育曲線を用いて小児ARDS患者の身長より算出するのがよいかもしれない」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であったため,in our practice statement として合意を得た.パネル会議において,付帯事項に生理学的な1 回換気量の参考値を載せたほうがよいとの意見が出た.そのため,付帯事項を「体重あたりの1 回換気量として標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかになっていない.生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある」に変更して再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であったため,in our practice statement として合意を得た.サブグループの検討事項 小児ARDS 患者における1 回換気量の制限に関するRCT は存在せず,サブグループ解析は不可能である. 実施上の考慮事項 1 回換気量の制限に関しては人工呼吸器の設定変更のみであり,コスト,有害性,認容性などを考慮しても,実施する上で問題は生じない.また,体重あたりの1 回換気量として標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかになっていない.生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ19:人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に対して1 回換気量を制限するべきか?」に記載されている.RCT 13 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,1 回換気量を4~8 mL/kg に制限することが強く推奨されている.詳細についてはCQ19 を参照されたい. PALICC1)では次のように記載されている.肺の病状や呼吸器系のコンプライアンスに応じて,年齢/体重に応じた生理的範囲内(例: 5~8 mL/kg,予測体重),もしくはそれ以下の1 回換気量を用いることを弱く推奨している.また,疾患の重症度に応じて個々の患者に合わせた1 回換気量を用いることを弱く推奨している.呼吸器系のコンプライアンスが悪い患者では3~6 mL/kg(予測体重),呼吸器系のコンプライアンスが保たれている患者では生理的範囲(5~8 mL/kg,予測体重)に近い1回換気量で管理することを弱く推奨している. PEMVECC2)では生理的な1 回換気量を目標とすること,1回換気量>10 mL/kg(理想体重) 5 3 4 5
を避けることを強く推奨している. 治療のモニタリングと評価 本CQ に関する実施上の臨床的問題として,死亡やVFD などの益および害についての更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 肺保護戦略は機械的人工呼吸による有害事象を減じるために用いられる換気法で,1 回換気量の制限はそのうちの1 つである.人工呼吸器による肺損傷を減少させることが期待されるが,それが死亡率の改善につながるかどうかは判明していない.また,1 回換気量の制限に関する具体的な数値目標を規定した研究もない.今後,小児ARDS 患者を対象とした1 回換気量の制限の有無や,その数値目標に関する臨床試験,無作為化比較試験(ランダム化比較試験, RCT)が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory distress syndrome」「Tidal volume」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL, Embase,CHINAL および医中誌で2020 年7月13日までの文献を検索したところ13,494件の研究が同定され,スクリーニングの結果,採用されたRCT はなかった. 本CQ で対象とした研究 本CQ において採用した研究はなし. 資料一覧 ・資料PCQ2‒1 Search strategy.・資料PCQ2‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ2‒3 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428‒39. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 参考文献
資料PCQ2—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/7/6) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR shock lung[tiab] #2 acute respiratory distress[tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #3 Acute[tiab] AND ((respirat*[tiab] OR ventilat*[tiab] OR pulmon*[tiab]) AND (fail*[tiab] OR depression [tiab])) #4 Lung injury[mh] OR ALI[tiab] OR Acute lung injur*[tiab] OR Ventilator-Induced Lung Injury[tiab] #5 Respiratory insufficiency[mh] OR Respiratory insufficiency[tiab] #6 Acute chest syndrome[mh] OR Acute chest syndrome[tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 "Tidal volume"[mh] OR (tidal[tiab] AND volum*[tiab]) #9 ventilation AND (strateg*[tiab] OR pressure*[tiab] OR limited[tiab] OR low[tiab] OR lower[tiab] OR less [tiab] OR differen*[tiab] OR variab*[tiab] OR varying[tiab]) #10 (lung[tiab] AND protective[tiab] AND ventilat*[tiab] ) OR LPVS[tiab] #11 Respiration,artificial[mh] OR "Artificial respiration"[tiab] OR "Artificial ventilation"[tiab] #12 Ventilators, Mechanical[mh] OR "Mechanical ventilation"[tiab] #13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 #15 ((randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] NOT (animals[mh] NOT humans [mh]))) #16 control group*[tiab] #17 #15 OR #16 #18 #14 AND #17
CENTRAL(Search date:2020/7/6) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "shock lung":ti,ab #2 "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #3 Acute:ti,ab AND ((respirat*:ti,ab OR ventilat*:ti,ab OR pulmon*:ti,ab) AND (fail*:ti,ab OR depression:ti,ab)) #4 [mh "Lung injury"] OR ALI:ti,ab OR "Acute lung injury":ti,ab OR " Ventilator-Induced Lung Injury":ti,ab #5 [mh "Respiratory insufficiency"] OR "Respiratory insufficiency":ti,ab #6 [mh "Acute chest syndrome"] OR "Acute chest syndrome":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Tidal volume"] OR (tidal:ti,ab AND volume:ti,ab) #9 ventilation AND (strategy:ti,ab OR pressure:ti,ab OR limited:ti,ab OR low:ti,ab OR lower:ti,ab OR less:ti,ab OR different:ti,ab OR variable:ti,ab OR varying:ti,ab) #10 (lung:ti,ab AND protective:ti,ab AND ventilatory:ti,ab) OR LPVS:ti,ab #11 [mh "Respiration, Artificial"] #12 [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "Mechanical ventilation":ti,ab #13 {OR #8-#12} #14 #7 AND #13 #15 [mh animals] NOT [mh humans] #16 #14 NOT #15
Embase(Search date:2020/6/28) S1 (EMB.EXACT("adult respiratory distress syndrome")) OR (TI,AB(ARDS OR "shock lung")) S2 (TI,AB("acute respiratory" p/0 (distress OR failure*))) S3 (TI,AB(acute n/3 (respirat* OR ventilat* OR pulmon*) n/3 (fail* OR depression))) S4 ((EMB.EXACT("acute lung injury")) OR (EMB.EXACT("hyperoxia-induced lung injury") OR EMB. EXACT("lung injury")) OR (EMB.EXACT("ventilator induced lung injury")) OR (TI,AB(ALI OR ("acute lung" p/0 injur*) OR "ventilator-Induced lung injury"))) S5 ((EMB.EXACT.EXPLODE("respiratory failure")) OR (TI,AB(respiratory p/0 insufficien*))) S6 ((EMB.EXACT("acute chest syndrome")) OR (TI,AB("acute chest syndrome"))) S7 (S1 OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6) S8 (EMB.EXACT("tidal volume") OR TI,AB(tidal n/2 volum*)) S9 (TI,AB(ventilation AND (strateg* OR pressure* OR limited OR low OR lower OR less OR differen* OR variab* OR varying))) S10 (TI,AB(("lung protective" n/2 ventilat*) OR LPVS)) S11 ((EMB.EXACT.EXPLODE("artificial ventilation")) OR (TI,AB(artificial p/0 (respiration* OR ventilation*)) OR (TI,AB(mechanical p/0 ventilation*)))) S12 (S8 OR S9 OR S10 OR S11) S13 (S7 AND S12) S14 ((((EMB.EXACT("controlled clinical trial") OR EMB.EXACT.EXPLODE("clinical trial (topic)") OR EMB. EXACT("randomized controlled trial")) OR (TI,AB(randomized) OR TI,AB(randomly) OR TI(trial) OR TI,AB(control p/0 group*))) NOT (ANIMAL(YES) NOT HUMAN(YES)))) S15 (S13 AND S14) S16 (S15 AND UD(>=2013)) S17 (S15 AND UD(<2013))
CHINAL(Search date:2020/7/12) #1 (MH "Respiratory Distress Syndrome, Adult") OR TI ARDS OR AB ARDS OR TI "shock lung" OR AB "shock lung" #2 TI "acute respiratory distress" OR AB "acute respiratory distress" OR TI "acute respiratory failure" OR AB "acute respiratory failure" #3 TI Acute OR AB Acute AND ((TI respirat* OR AB respirat* OR TI ventilat* OR AB ventilat* OR TI pulmon* OR AB pulmon*) AND (TI fail* OR AB fail* OR TI depression OR AB depression)) #4 (MH "Lung injury+") OR TI ALI OR AB ALI OR TI "Acute lung injur*" OR AB "Acute lung injur*" OR TI "Ventilator-Induced Lung Injury" OR AB "Ventilator-Induced Lung Injury" #5 (MH "Respiratory Failure+") OR TI "Respiratory Failure" OR AB "Respiratory Failure" #6 (MH "Acute chest syndrome") OR TI "Acute chest syndrome" OR AB "Acute chest syndrome" #7 S1OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6 #8 (MH "Tidal volume") OR (TI tidal OR AB tidal AND TI volum* OR AB volum*) #9 ventilation AND (TI strateg* OR AB strateg* OR TI pressure* OR AB pressure* OR TI limited OR AB limited OR TI low OR AB low OR TI lower OR AB lower OR TI less OR AB less OR TI differen* OR AB differen* OR TI variab* OR AB variab* OR TI varying OR AB varying) #10 (TI lung OR AB lung AND TI protective OR AB protective AND TI ventilat* OR AB ventilat*) OR TI LPVS OR AB LPVS #11 (MH "Respiration, Artificial+") OR TI "Artificial respiration" OR AB "Artificial respiration" OR TI "Artificial ventilation" OR AB "Artificial ventilation" #12 (MH "Ventilators, Mechanical") OR TI “Mechanical Ventilat*” OR AB “Mechanical Ventilat*”
#13 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #7 AND #13 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/12) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR “acute respiratory distress syndrome”/AL OR ショック肺/AL OR “shock lung”/AL #2肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR “acute lung Injury”/AL OR 人工呼吸器誘発肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #4呼吸抑制/TH OR 呼吸抑制/AL #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6一回換気量/TH OR 一回換気量/AL OR 低容量換気/AL OR “tidal volume”/AL #7 ( 肺/TH OR 肺/AL OR lung/AL) AND ( 保護/AL OR protective/AL) #8制限/AL OR 低/AL OR 保護/AL OR 圧/AL #9戦略/AL OR strategy/AL #10 #7 OR #8 OR #9 #11 #10 AND ([ 換気( 環境)]/TH OR 換気/Al OR ventilation/AL) #12人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL #13 LPVS/AL #14 #6 OR #11 OR #12 OR #13 #15 #5 AND #14 #16ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #17比較試験/AL #18臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #19プラセボ/TH OR プラセボ/AL #20対照/AL #21コントロール/AL #22臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #23 #16 OR #17 OR #18 OR #19 OR #20 OR #21 OR #22 #24 #15 AND #23 #25 (#24) AND (PT= 会議録除く)
資料PCQ2—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=196 ICTRP 54件Clinical Trials.gov 142件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Embase Cochrane CENTRAL CHINAL医中誌 n=19,864 4,607件6,488件4,370件3,668件731件 除外基準に該当した研究n=59理由:・ 日本語・英語以外・ 論文の種類が異なる・ RCTではない・ Pが異なる4件8件11件36件 重複した研究 n=6,566 除外基準に該当した研究 n=13,435 検索で同定された研究 n=20,060 重複研究を除外した研究 n=13,494 フルテキストで適格性を評価した研究 n=59 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0
資料PCQ2—3 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ2:小児ARDS 患者は1 回換気量を制限するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずるが,記載のない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理され たARDS 患者(論文の定義に準ずる) 介 入: 1 回換気量制限あり(論文の定義に準ずる)比較対照: 1 回換気量制限なし(論文の定義に準ずる)主要なアウトカム:死亡,発達予後,長期の呼吸機能,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,呼吸 性アシドーシスによる血行動態の悪化 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:重症ARDS 患者は,機械的人工呼吸を用いることでARDS から回復するための時間 を稼ぐことができるが,依然としてその死亡率は高い.また,いくつかの研究では,機械的人工呼吸そのものが肺損傷の原因になることが示唆されている.こうした状況の中で機械的人工呼吸による有害事象を減じるために肺保護戦略の1 つとして1回換気量の制限が挙げられている.しかし,成人の大規模RCT においても,その効果は一貫していない.1 回換気量の制限について効果と安全性を検証するため系統的レビューとメタ解析が必要である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない重症ARDS 患者は,機械的人工呼吸を用いることでARDS から回復するための時間を稼ぐことができるが,依然としてその死亡率は高い.また, いくつかの研究では,機械的人工呼吸そのものが肺損傷の原因になることが示唆されている.こうした状況の中で機械的人工呼吸による有害事象を減じるために肺保護戦略の1 つとして1 回換気量の制限が挙げられている.しかし,成人の大規模RCT においても,その効果は一貫していない.小児ARDS 患者においても1 回換気量の制限について効果と安全性を検証するため,系統的レビューとメタ解析が必要である.したがって,この問題の優先順位が高いかという判断は「はい」とした
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がない人工呼吸器関連肺損傷においてストレイン※は,重要な一因であるとさ れるが,肺胞を過伸展させないように1 回換気量を制限することは,このストレインを減少させ,肺損傷を抑制すると考えられる1).一方で,1回換気量を制限することは,高二酸化炭素血症のような有害性が考えられる.しかし,人工呼吸器管理を受ける小児ARDS 患者において,該当するRCT がなく,エビデンスの確実性の記述は行えない※ストレイン(歪み):肺安静位から負荷された外的力の結果,どれだけ 肺が構造的に変形するかで定義される 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる
○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器の設定変更のみであり,有害性を考慮しても患者およびその 家族に受け入れられるかという判断は「たぶんはい」とした 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器の設定変更のみであり,介入は実行可能かという判断は「は い」とした
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○
結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者に対する1 回換気量の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS 患者の治療戦略に則り,生理学的な1 回換気量を超えないように一般的に実施されている(in our practice statement). 付帯事項 体重あたりの1 回換気量として標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかになっていない.生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある. 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者は1 回換気量を制限するか?患 者 小児(論文の定義に準ずるが,記載のない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理されたARDS患者(論文の定義に準ずる).介 入 1 回換気量制限あり(論文の定義に準ずる).対 照 1 回換気量制限なし(論文の定義に準ずる).アウトカム 死亡,発達予後,長期の呼吸機能,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,呼吸性アシドーシスによる血行動態の悪化.解 説ARDS における1 回換気量の制限は肺保護戦略の1 つとなっている.成人における本診療ガイドラインにおいても,RCT 7 件のメタ解析では圧損傷については同程度であったが,RCT 11 件で短期・長期死亡の有意な低下と,RCT 4 件でVFD の増加傾向を認め,成人においてその使用は推奨されている(GRADE 1D,推奨の強さ「強い推奨」/エビデンスの確実性「非常に低」).また,本邦の『日本版敗血症診療ガイドライン2020』(J‒SSCG2020)においても,肺保護戦略に内包されて弱く推奨されている(GRADE 2B:エビデンスの確実性「中」).同様に,海外でも『Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference(2015)』において,年齢に合わせた標準体重における生理学的1 回換気量(5~8 mL/kg)を,重症ARDS では3~6 mL/kg とより低い1 回換気量を弱く推奨している2).『Pediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(2017)』でも生理学的1 回換気量を超えない,<10 mL/kg の換気量を強く推奨している3).いずれもbaby lung concept に則り,健常肺への過膨張を避けることを意味するが,発達過程にある小児は解剖学的にも生理学的にも成人と異なることが多い.また,重症度による影響もあると考えられるが,いくつかの観察研究では1 回換気量が大きいことが転帰と相関しないとの報告もある4).このため,成人の換気方法をそのまま用いることには慎重な見方もある.ただし,エビデンスのない小児において本CQ に対する明確な推奨は提示できない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまでも現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.しかし,1 回換気量の制限の有無に関しては,人工呼吸器の設定変更のみであり,負担やコストが増加することはない.
パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に対する1 回換気量の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS 患者の治療戦略に則り,生理学的な1 回換気量を超えないように一般的に実施されている」,付帯事項「小児の標準体重を示す一定の見解はないが,2 歳頃まで続く肺胞形成に続き,(長幹骨の)成長が止まるまで肺容量も増加すると考えられるため,標準的な発育曲線を用いて小児ARDS 患者の身長より算出するのがよいかもしれない」が中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316 であったため,in our practice statement として合意を得た.パネル会議において,付帯事項に生理学的な1 回換気量の参考値を載せたほうがよいとの意見が出た.そのため,付帯事項を「体重あたりの1 回換気量として標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかになっていない.生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある」に変更して再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値8.0 点,見解不一致指数0.1316であったため,in our practice statement として合意を得た.付加的な考慮事項体重あたりの1 回換気量について,標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかになっていない.小児の標準体重を示す一定の見解はないが,2 歳頃まで続く肺胞形成に続き, (長幹骨の)成長が止まるまで肺容量も増加すると考えられるため,標準的な発育曲線を用いて小児ARDS 患者の身長より算出するのがよいかもしれない.Imber ら米国の研究では,Traub‒Johnsonの式やWHO の小児標準発達チャートが用いられている5).生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 小児ARDS 患者における1 回換気量の制限に関するRCT は存在せず,サブグループ解析は不可能である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 1 回換気量の制限に関しては人工呼吸器の設定変更のみであり,コスト,有害性,認容性などを考慮しても,実施する上で問題点は生じない.また,体重あたりの1 回換気量として標準体重か実体重のどちらを用いるべきか,現段階では明らかになっていない.生理学的な1 回換気量の参考値として8 mL/kg 以下がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本CQ に関する実施上の臨床的問題として,死亡やVFD などの益および害についての更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 肺保護戦略は機械的人工呼吸による有害事象を減じるために用いられる換気法で,1 回換気量の制限はそのうちの1 つである.人工呼吸器による肺損傷を減少させることが期待されるが,それが死亡率の改善につながるかどうかは判明していない.また,1 回換気量の制限に関する具体的な数
値目標を規定した研究もない.今後,小児ARDS 患者を対象とした1 回換気量の制限の有無や,その数値目標に関する臨床試験,RCT が必要である.参考文献1) Marini JJ, Rocco PRM, Gattinoni L. Static and dynamic contributors to ventilator‒induced lung injury in clinical practice. pressure, energy, and power. Am J Respir Crit Care Med 2020;201:767‒74. 2) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428‒39. 3) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical ventilation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference (PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 4) de Jager P, Burgerhof JG, van Heerde M, et al. Tidal volume and mortality in mechanically ventilated children:a systematic review and meta‒analysis of observational studies*. Crit Care Med 2014;42:2461‒72. 5) Imber DA, Thomas NJ, Yehya N. Association between tidal volumes adjusted for ideal body weight and outcomes in pediatric acute respiratory distress syndrome. Pediatr Crit Care Med 2019;20:e145‒53.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者では機械的人工呼吸を必要とすることが多いが,人工呼吸器の使用は人工呼吸器関連肺損傷(VILI/VALI)を引き起こす可能性がある.このため,これらの患者の人工呼吸は,肺保護戦略に基づいて行われる.高レベルの呼気終末陽圧(PEEP)の使用は,VILI/ VALI を軽減することを目的とした戦略の1 つである.一方で,高いPEEP は血行動態への悪影響も考えられる.小児ARDS患者において高いPEEP の使用によりVILI/VALI が軽減する可能性があるが,効果と安全性は確立していない.これらを明らかにすることは重要な臨床課題であり,その優先度は高い.解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,記載が ない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理された中等症以上のARDS患者(論文の定義に準ずる).介入(I):高いPEEP(論文の定義に準ずる).対照(C):低いPEEP(論文の定義に準ずる).アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),入院日数,バロトラウマの軽減,酸素化の改善,血行動態の悪化. エビデンスの要約 該当の研究なし. 1 2 1 領域F 小児領域 中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するか? PCQ 3 中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するかの推奨を提示するこ とはできないが,臨床医の経験や成人ARDS 患者における知見に基づいて高 いPEEP の使用が行われている(in our practice statement). 高いPEEP(10 cmH2O 以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを要する.PEEP による酸素化の改善効果は個人で異なり,高いPEEP が必ずしも酸素化を改善するとは限らない. 推 奨 付帯事項
エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.PEEP の変更は人工呼吸器の設定変更のみであり,受け入れや実行可能性に問題はないと考えられる. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するかの推奨を提示することはできないが,臨床医の経験や成人ARDS患者における知見に基づいて高いPEEP の使用が行われている」,付帯事項「高いPEEP(10 cmH2O以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを要する」が中央値8 点,見解不一致指数0.1316,でin our practice statement として合意に至った.パネル会議において,付帯事項に患者によって肺のrecruitability は異なる点を含めたほうがよいという意見が出た.そのため,付帯事項を「高いPEEP(10 cmH2O 以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを要する.PEEP による酸素化の改善効果は個人で異なり,高いPEEP が必ずしも酸素化を改善するとは限らない」に変更して再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316,でin our practice statement として合意に至った.サブグループの検討事項 ショック患者,先天性心疾患(特に単心室,右心バイパス)患者,頭蓋内圧が上昇している患者では,高いPEEP を使用する際に,より注意深いモニタリングが必要な可能性がある. 実施上の考慮事項 高いPEEP の使用によって低血圧などの循環への悪影響が生じる可能性がある.また,高いPEEP への反応性は,肺のrecruitability などにより患者ごとに異なる.高いPEEP の設定後は,循環動態を持続的にモニタリングすると同時に,その効果を評価する必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ20:人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を使用するべきか?」に記載されている.RCT 16 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を用いることが条件付きで推奨されている.詳細については, CQ20 を参照されたい.小児ARDS 患者に対す るPEEP 設定について,PALICC1)では重症の小児ARDS患者では酸素化と血行動態に注意しながら10~15 cmH2O 程度のPEEP が推奨され(弱い合意),プラトー圧に注意しながら15 cmH2O 以上が必要となる可能性について言及されている(強い合意).PEMVECC2)は,特定のPEEP 値は言及していないものの,より重症の小児ARDS患者では,呼気終末肺容量の改善と呼吸器系コンプライアンスの改善を目的として血行動態に注意しながらより高いPEEP が必要である可能性を指摘している.また,敗血症に起因する小児ARDS 患者に対しては,高いPEEP を使用することが推奨されている(弱い 4 5 3 4 5
推奨)3)が,根拠となった論文はすべて観察研究である. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として循環器系や中枢神経系への悪影響がないかを含め,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 高リスクの小児ARDS 患者に高いPEEP が必要かを評価するRCT が必要である.その際, PEEP の最適な設定方法についても確立した方法がないために,一律のPEEP 目標値を設定するのか,より生理学的な評価による個別化されたPEEP 目標値を設定するのか,検討が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome, Adult」「ARDS」「acute respiratory failure」「ALI」 「Positive End‒Expiratory Pressure」「PEEP」「randomized controlled trial」「呼吸窮迫症候群‒急性」「急性呼吸促迫症候群」「急性肺損傷」「PEEP」「ランダム化比較試験」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL, Embase,CHINAL,ICTRP,ClinicalTrials. gov および医中誌で2020 年7 月8 日までの文献を検索したところ4,376 件の研究が同定され,スクリーニングの結果0 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 該当なし. 資料一覧 ・資料PCQ3‒1 Search strategy.・資料PCQ3‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ3‒3 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Rimensberger PC, Cheifetz IM. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16(Suppl 1):s51‒60. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 3) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52‒106. 参考文献
資料PCQ3—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/8) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR shock lung[tiab] #2 acute respiratory distress[tiab] OR acute respiratory failure[tiab] #3 Acute[tiab] AND ((respirat*[tiab] OR ventilat*[tiab] OR pulmon*[tiab]) AND (fail*[tiab] OR depression [tiab])) #4 Lung injury[mh] OR ALI[tiab] OR Acute lung injur*[tiab] OR Ventilator-Induced Lung Injury[tiab] #5 Respiratory insufficiency[mh] OR Respiratory insufficiency[tiab] #6 Acute chest syndrome[mh] OR Acute chest syndrome[tiab] #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 Positive-Pressure Respiration[mh] OR Positive Pressure Respiration[tiab] OR Positive End-Expiratory Pressure[tiab] OR PEEP[tiab] #9 Continuous Positive Airway Pressure[tiab] OR CPAP[tiab] OR NCPAP[tiab] #10 Airway Pressure Release Ventilation[tiab] OR APRV[tiab] #11 Intermittent Positive-Pressure Breathing[tiab] OR IPPB[tiab] #12 Intermittent Positive-Pressure Ventilation[tiab] OR IPPV[tiab] #13 lung protective ventilatory strateg*[tiab] OR LPVS[tiab] #14 alveolar recruit*[tiab] OR recruitment maneuve*[tiab] #15 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 (randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti]) NOT (animals[mh] NOT humans [mh]) #18 #16 AND #17
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "shock lung":ti,ab #2 "acute respiratory distress":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab #3 Acute:ti,ab AND ((respirat*:ti,ab OR ventilat*:ti,ab OR pulmon*:ti,ab) AND (fail*:ti,ab OR depression:ti,ab)) #4 [mh "lung injury"] OR ALI:ti,ab OR "Acute lung injury":ti,ab OR "Ventilator-Induced Lung Injury":ti,ab #5 [mh "Respiratory insufficiency"] OR "Respiratory insufficiency":ti,ab #6 [mh "Acute chest syndrome"] OR "Acute chest syndrome":ti,ab #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Positive Pressure Respiration"] OR "Positive Pressure Respiration":ti,ab OR "Positive End-Expiratory Pressure":ti,ab OR PEEP:ti,ab #9 "Continuous Positive Airway Pressure":ti,ab OR CPAP:ti,ab OR NCPAP:ti,ab #10 "Airway Pressure Release Ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #11 "Intermittent Positive-Pressure Breathing":ti,ab OR IPPB:ti,ab #12 "Intermittent Positive-Pressure Ventilation":ti,ab OR IPPV:ti,ab #13 "lung protective ventilatory strategy":ti,ab OR LPVS:ti,ab #14 "Alveolar recruitment":ti,ab OR "recruitment maneuvers":ti,ab #15 {OR #8-#14} #16 #7 AND #15
#17 [mh animals] NOT [mh humans] #18 #16 NOT #17
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/12) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR ショック肺/AL OR "shock lung"/AL #2肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 人工呼吸器誘発肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #4呼吸抑制/TH OR 呼吸抑制/AL #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6陽圧呼吸/TH OR 陽圧呼吸/AL OR PEEP/AL #7気道圧解除換気法/AL OR CPAP/AL OR APRV/AL #8間欠的陽圧換気/AL OR IPPV/AL OR IPPB/AL #9リクルートメント/AL #10 #6 OR #7 OR #8 OR #9 #11 #5 AND #10 #12ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL #13比較試験/AL #14臨床試験/TH OR 臨床試験/AL #15プラセボ/TH OR プラセボ/AL #16対照/AL #17コントロール/AL #18臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL #19 #12 OR #13 OR #14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18 #20 #11 AND #19 #21 (#20) AND (PT= 会議録除く)
Embase(Search date:2020/6/28) S1 (EMB.EXACT("adult respiratory distress syndrome")) OR (TI,AB(ARDS OR "shock lung")) S2 (TI,AB("acute respiratory" p/0 (distress OR failure*))) S3 (TI,AB(acute n/3 (respirat* OR ventilat* OR pulmon*) n/3 (fail* OR depression))) S4 (EMB.EXACT("acute lung injury")) OR (EMB.EXACT("hyperoxia-induced lung injury") OR EMB. EXACT("lung injury")) OR (EMB.EXACT("ventilator induced lung injury")) OR (TI,AB(ALI OR ("acute lung" p/0 injur*) OR "ventilator-Induced lung injury")) S5 (EMB.EXACT.EXPLODE("respiratory failure")) OR (TI,AB(respiratory p/0 insufficien*)) S6 (EMB.EXACT("acute chest syndrome")) OR (TI,AB("acute chest syndrome")) S7 (S1 OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6) S8 ((EMB.EXACT("positive end expiratory pressure")) OR (TI,AB("positive pressure respiration" OR "positive end-expiratory pressure" OR PEEP))) S9 (TI,AB("continuous positive airway pressure" OR CPAP OR NCPAP)) S10 (TI,AB("airway pressure release ventilation" OR APRV)) S11 (TI,AB("intermittent positive-pressure breathing" OR IPPB)) S12 (TI,AB("intermittent positive-pressure ventilation" OR IPPV)) S13 (TI,AB(("lung protective" p/0 ventilat* p/0 strateg*) OR LPVS))
S14 (TI,AB((alveolar p/0 recruit*) OR (recruitment p/0 maneuve*))) S15 (S8 OR S9 OR S10 OR S11 OR S12 OR S13 OR S14) S16 (S7 AND S15) S17 (((EMB.EXACT("controlled clinical trial") OR EMB.EXACT.EXPLODE("clinical trial (topic)") OR EMB. EXACT("randomized controlled trial")) OR (TI,AB(randomized) OR TI,AB(randomly) OR TI(trial))) NOT (ANIMAL(YES) NOT HUMAN(YES))) S18 (S16 AND S17)
CHINAL(Search date:2020/7/12) #1 (MH "Respiratory Distress Syndrome, Adult") OR TI ARDS OR AB ARDS OR TI "shock lung" OR AB "shock lung" #2 TI "acute respiratory distress" OR AB "acute respiratory distress" OR TI "acute respiratory failure" OR AB "acute respiratory failure" #3 TI Acute OR AB Acute AND ((TI respirat* OR AB respirat* OR TI ventilat* OR AB ventilat* OR TI pulmon* OR AB pulmon*) AND (TI fail* OR AB fail* OR TI depression OR AB depression)) #4 (MH "Lung injury+") OR TI ALI OR AB ALI OR TI "Acute lung injur*" OR AB "Acute lung injur*" OR TI "Ventilator-Induced Lung Injury" OR AB "Ventilator-Induced Lung Injury" #5 (MH "Respiratory Failure+") OR TI "Respiratory Failure" OR AB "Respiratory Failure" #6 (MH "Acute chest syndrome") OR TI "Acute chest syndrome" OR AB "Acute chest syndrome" #7 S1OR S2 OR S3 OR S4 OR S5 OR S6 #8 (MH "Positive-Pressure Respiration+") OR TI "Positive Pressure Respiration" OR AB "Positive Pressure Respiration" OR TI "Positive End-Expiratory Pressure" OR AB "Positive End-Expiratory Pressure" OR TI PEEP OR AB PEEP #9 TI "Continuous Positive Airway Pressure" OR AB "Continuous Positive Airway Pressure" OR TI CPAP OR AB CPAP OR TI NCPAP OR AB NCPAP #10 TI "Airway Pressure Release Ventilation" OR AB "Airway Pressure Release Ventilation" OR TI APRV OR AB APRV #11 TI "Intermittent Positive-Pressure Breathing" OR AB "Intermittent Positive-Pressure Breathing" OR TI IPPB OR AB IPPB #12 TI "Intermittent Positive-Pressure Ventilation" OR AB "Intermittent Positive-Pressure Ventilation" OR TI IPPV OR AB IPPV #13 TI "lung protective ventilatory strateg*" OR AB "lung protective ventilatory strateg*" OR TI LPVS OR AB LPVS #14 TI "alveolar recruit*" OR AB "alveolar recruit*" OR TI "recruitment maneuve*" OR AB "recruitment maneuve*" #15 #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 (MH "Randomized Controlled Trials") #18 TI ( random* OR placebo* OR blind* OR double blind* ) OR AB ( random* OR placebo* OR blind* OR double blind* ) #19 #17 OR #18 #20 #16 AND #19
資料PCQ3—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=297 ICTRP 112件Clinical Trials.gov 185件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Embase Cochrane CENTRAL CHINAL医中誌 n=6,233 1,366件2,433件1,629件587件218件 除外基準に該当した研究n=101理由:・ 日本語・英語以外・ 論文の種類が異なる・ RCTではない・ Pが異なる5件45件4件47件 重複した研究 n=2,154 除外基準に該当した研究 n=4,275 検索で同定された研究 n=6,530 重複研究を除外した研究 n=4,376 フルテキストで適格性を評価した研究 n=101 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0
資料PCQ3—3 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ3:中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,記載がない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理された 中等症以上のARDS 患者(論文の定義に準ずる) 介 入:高いPEEP(論文の定義に準ずる)比較対照:低いPEEP(論文の定義に準ずる)主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,バロトラウマの軽減, 酸素化の改善,血行動態の悪化 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は,肺胞を取りまく毛細血管の透過性の亢進,損傷により肺の構造および機 能に影響を及ぼす急性かつ重篤な状態である.ARDS の死亡割合は高く,機械的人工呼吸を必要とすることが多いが,人工呼吸器の使用は人工呼吸器関連肺損傷(VILI/VALI)を引き起こす可能性がある.このため,これらの患者の治療は,肺保護換気戦略に基づいて行われる.高レベルの呼気終末陽圧(PEEP)の使用は,VILI/ VALI を軽減することを目的とした戦略の1 つである.小児は成人と同様にPEEP における効能が期待できるのか,小児においてもこれによる益と害について検討する必要がある 利益相反:なし 評 価 問題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない高レベルのPEEP の使用は,VILI/VALI を軽減することを目的とした戦略の1 つである.小児ARDS 患者において高いPEEP の使用によりVILI/ VALI が軽減する可能性があるが,効果と安全性は確立していない.した がって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度エビデンスの確実性に統合
○大きい○一概には言えない●わからない 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がないARDS 患者における高いPEEP の使用は,呼気終末時の肺胞虚脱を抑止 し,呼気終末肺容量の増加による酸素化の改善,呼吸器系コンプライアンスの改善やtidal recruitmentの減少などによるVILI/VALIの減少に寄与すると考えられている.一方で,高いPEEP の使用は胸腔内圧の上昇による循環器系への悪影響のような有害性が考えられる.人工呼吸器管理を受ける小児ARDS 患者において,これらの益と害のバランスの比較は行われておらず,エビデンスの確実性の記述は行えない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確実性や多様性があ る○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の「重要 な不確実性や多様性はない」と考えられる
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器の設定変更のみであり,患者およびその家族にはたぶん受け 入れられると思われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器の設定変更のみであり,実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するかの推奨を提示することはできないが,臨床医の経験や成人ARDS 患者における知見に基づいて高いPEEP の使用が行われている(in our practice statement). 付帯事項 高いPEEP(10 cmH2O 以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを
要する.PEEP による酸素化の改善効果は個人で異なり,高いPEEP が必ずしも酸素化を改善するとは限らない. 理 由 Justification 疑 問 中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEP を使用するか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,記載がない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理された中等症以上のARDS 患者(論文の定義に準ずる).介 入 高いPEEP(論文の定義に準ずる).対 照 低いPEEP(論文の定義に準ずる).アウトカム 死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,バロトラウマの軽減,酸素化の改善,血行動態の悪化.解 説成人ARDS 患者では,本診療ガイドラインにおいて16 件のRCT を用いてメタ解析が行われ,短期死亡,長期死亡ともに高PEEP 群で低下傾向,VFD は増加傾向にあり,圧損傷については同程度であったために,人工呼吸器管理された成人ARDS 患者に高いPEEP を使用することが提案されている(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確実性「非常に低」).一方で,小児ARDS 患者を対象としたRCT は存在せず,今回推奨を導くことはできなかった.小児ARDS 患者に対するPEEP 設定について,『Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference(2015)1)』では,成人での研究結果を参考に,重症の小児ARDS 患者では酸素化と血行動態に注意しながら10~15 cmH2O 程度のPEEP が推奨され,プラトー圧に注意しながら15 cmH2O以上が必要となる可能性について言及されている.『Pediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(2017)2)』は,特定のPEEP 値は言及していないものの,より重症の小児ARDS 患者では呼気終末肺容量の改善と呼吸器系コンプライアンスの改善を目的として血行動態に注意しながらより高いPEEPが必要である可能性を指摘している.『Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in Children(2020)3)』では,敗血症に起因する小児ARDS 患者に対して高いPEEP を使用することが推奨されている(弱い推奨,エビデンスの確実性「非常に低」)が,根拠となった論文はすべて観察研究である.小児ARDS 患者にARDSnet のlow PEEP/FIO2 table と同等かそれ以上のPEEP を用いることで多変量解析または傾向スコア法で調整した死亡率が改善したことが報告されている4).しかし,その結果はRCTで検証されておらず,小児に成人で用いられているPEEP/FIO2 tableを用いることの妥当性も明らかでない.また,適切なPEEP を一律に決定するか,生理学的に個々に決定するかも明らかでない.小児ARDS 患者のPEEP 設定は,酸素化の程度・基礎にある病態・血行動態などに注意しながら,成人RCT の知見,施設の管理方針,臨床医の経験により個別に設定されている.近年の観察研究では,10 cmH2O 程度が使用されている5,6).このように,高リスク小児ARDS 患者に対して高いPEEP を使用した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.
効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.PEEP の変更は人工呼吸器の設定変更のみであり,受け入れや実行可能性に問題はないと考えられる.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「中等症以上の小児ARDS 患者に高いPEEPを使用するかの推奨を提示することはできないが,臨床医の経験や成人ARDS 患者における知見に基づいて高いPEEP の使用が行われている」,付帯事項「高いPEEP(10 cmH2O 以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを要する」が中央値8 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った.パネル会議において,付帯事項に患者によって肺のrecruitability は異なる点を含めたほうがよいという意見が出た.そのため,付帯事項を「高いPEEP(10 cmH2O 以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを要する.PEEP による酸素化の改善効果は個人で異なり,高いPEEPが必ずしも酸素化を改善するとは限らない」に変更して再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った.付加的な考慮事項高いPEEP(10 cmH2O 以上)を使用する際には,プラトー圧(最大吸気圧)が過剰とならないように注意する.また,血行動態の悪化などの有害事象の注意深いモニタリングを要する.PEEPによる酸素化の改善効果は個人で異なり,高いPEEP が必ずしも酸素化を改善するとは限らない. サブグループの検討事項 Subgroup considerations ショックを伴う患者,先天性心疾患(特に単心室,右心バイパス)の患者,頭蓋内圧が上昇している患者では,高いPEEP を使用する際により注意深いモニタリングが必要な可能性がある. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 高いPEEP の使用によって低血圧などの循環器系への悪影響が出現する可能性がある.また,高いPEEP への反応性は,肺のrecruitability などにより患者ごとに異なる.高いPEEP の設定後は,循環動態を持続的にモニタリングすると同時に,その効果を評価する必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって,臨床上の問題として循環器系や中枢神経系への悪影響がないかを含め,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 本邦の小児ARDS 患者診療において実際にどの程度のPEEP 値が使用されているか明確なデータはなく,今後研究が必要である.本CQ の分野では参考とするべきRCT が行われておらず,ClinicalTrials.gov とUMIN に登録された現在進行中の研究もない.高リスクの小児ARDS 患者に高いPEEP が必要かを評価するRCT が必要である.その際,PEEP の最適な設定方法についても確立した方法がないために,一律のPEEP 目標値を設定するのか,より生理学的な評価による個別化されたPEEP 目標値を設定するのか,検討が必要である.
参考文献1) Rimensberger PC, Cheifetz IM. Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S51‒60. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical ventilation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference (PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 3) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52‒106. 4) Khemani RG, Parvathaneni K, Yehya N, et al. Positive end‒expiratory pressure lower than the ARDS network protocol is associated with higher pediatric acute respiratory distress syndrome mortality. Am J Respir Crit Care Med 2018;198:77‒89. 5) Yehya N, Keim G, Thomas NJ. Subtypes of pediatric acute respiratory distress syndrome have different predictors of mortality. Intensive Care Med 2018;44:1230‒9. 6) Wong JJM, Lee SW, Tan HL, et al. Lung‒protective mechanical ventilation strategies in pediatric acute respiratory distress syndrome. Pediatr Crit Care Med 2020;21:720‒8.
背景,この問題の優先度 成人ARDS 患者における人工呼吸器管理では,人工呼吸器関連肺損傷(VILI/VALI)によって人工呼吸器期間の延長のみならず死亡増加につながることが危惧される.VILI/VALI をきたす要因の1 つとして気道内圧上昇が考えられ,プラトー圧を制限することによりVILI/ VALI を抑制することが期待される.その一方で,プラトー圧を制限することは有益性ばかりでなく高二酸化炭素血症などの有害事象を招く可能性も考えられる.したがって,小児ARDS患者においてプラトー圧制限の効果および有害事象を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い.解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずるが,記載 のない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理をしているARDS患者(論文の定義に準ずる).介入(I):プラトー圧を制限する.対照(C):プラトー圧を制限しない.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),入院日数,血行動態の悪化. エビデンスの要約 該当の研究なし. 1 2 1 2 領域F 小児領域 小児ARDS 患者にプラトー圧を制限するか? PCQ 4 小児ARDS 患者に対するプラトー圧の制限に関して,推奨を提示することは できないが,成人ARDS 患者の治療戦略に則り,プラトー圧を制限しての呼 吸管理が実行されている(in our practice statement). 28 cmH2O 以下が目安とされている(胸壁コンプライアンスが低下した状態ではそれ以上の圧を必要とすることもある).強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧の制限だけでは十分に肺胞の過伸展を制御できないことに注意する.また,圧規定式換気の場合であっても,プラトー圧と最高気道内圧が異なることに注意する. 推 奨 付帯事項
エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性についての記述は行えない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 ARDS 患者におけるプラトー圧の制限は, VILI/VALI を抑制する可能性があるが,高二酸化炭素血症に伴う血液の酸塩基平衡の変化が,血行動態・組織代謝への悪影響をもたらす可能性も懸念される.しかし,これに該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.しかし,プラトー圧の制限の有無に関しては,人工呼吸器の設定変更のみで実行可能であり,受け入れや実行可能性は十分高いと考えられる. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS患者に対するプラトー圧の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS 患者での治療戦略に則り,プラトー圧を制限しての呼吸管理が実行されている」,付帯事項「28 cmH2O 以下(胸壁エラスタンスが増加した状態では29~32 cmH2O 以下)が目安とされているが,強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧制限だけでは十分に経肺圧を制御できないことに注意する」が,中央値9 点,見解不一致指数0.1316,であったためin our practice statement として合意を得た.パネル会議において,29~32 cmH2O という数値の根拠の強さや経肺圧という表現の本邦における認知度について懸念が示された.そのため,付帯事項を「28 cmH2O 以下が目安とされている(胸壁コンプライアンスが低下した状態ではそれ以上の圧を必要とすることもある).強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧制限だけでは十分に肺胞の過伸展を制御できないこ とに注意を要する」に変更して,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 であったためin our practice statement として合意を得た. サブグループの検討事項 小児ARDS患者におけるプラトー圧の制限に関するRCT は存在せず,サブグループ解析は不可能である. 実施上の考慮事項 プラトー圧の制限は人工呼吸器の設定変更のみで可能であり,コスト,有害性,認容性などの実施上の問題は生じない.人工呼吸器に表示されるプラトー圧は,肺コンプライアンスと胸郭コンプライアンスの影響を受ける.プラトー圧制限の目的は,経肺圧を制限し,過剰な圧による肺損傷を防ぐことだが,経肺圧は,人工呼吸器により生じる肺胞内圧と自発呼吸により生じる胸腔内陰圧により規定される.そのため下記のような注意を要する.強い自発呼吸がある場合には,気道内圧の制限は経肺圧の制限にはつながらない.また,プラトー圧の制限をしても,局所的な肺の過膨張を制限できない.一方で,胸郭コンプライアンスが低い際には,むしろ高いプラトー圧が必要となることもある.また,従圧式強制換気においても,吸気相終末に気流がゼロになっていない場合は,最大吸気圧とプラトー圧は常に一致するわけではない. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ21:成人ARDS 患者ではプラトー圧制限を行うべきか?」に記載されている. RCT 6 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠 4 5 3 4 5
に,成人ARDS患者において,人工呼吸器を実施する際,プラトー圧制限を行うことを条件付きで推奨している.詳細については,関連する CQ21 を参照されたい.また,PALICC1)と PEMVECC2)では,28 cmH2O 以下(胸郭コンプライアンスが低下した状態では29~32 cmH2O 以下)とすることが推奨されている(弱い合意). 治療のモニタリングと評価 本CQ に関する実施上の臨床的問題として, VFD や死亡などの益および害についての更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 プラトー圧を制限することで人工呼吸器管理中の1 回換気量を軽減し,気道内圧の上昇を抑制することが期待されるが,それが死亡率の改善につながるかどうかは判明していない.また,プラトー圧の上限を規定した研究もない. 今後,小児ARDS患者を対象としたプラトー圧の制限の有無に関する臨床試験,RCT が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory distress syndrome」「plateau pressure」「Mechanical ventilation」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CEN- TRAL および医中誌で2020 年7 月25 日までの文献を検索したところ2,264 件の研究が同定され,スクリーニングの結果,採用されたRCTはなかった. 本CQ で対象とした研究 本CQ において採用した研究はなし. 資料一覧 ・資料PCQ4‒1 Search strategy.・資料PCQ4‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ4‒3 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Rimensberger PC, Cheifetz IM, Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the pediatric acute lung injury consensus conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S51‒60. 2) Kneyber MC, de Luca DD, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the paediatric mechanical ventilation consensus conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 参考文献
資料PCQ4—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/7/23) #1 Respiratory distress syndrome, adult[mh] OR adult respiratory distress syndrom*[tiab] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR shock lung[tiab] OR ARDS*[tiab] #2 lung injury[mh] OR lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #3 acute[tiab] AND lung[tiab] AND (fail*[tiab] OR depression[tiab]) #4 ALI[tiab] OR Acute lung injur*[tiab] OR Ventilator-Induced Lung Injury[tiab] #5 Acute [tiab] AND (respirat*[tiab] OR ventilat*[tiab] OR pulmon*[tiab]) AND (fail*[tiab] OR depression [tiab]) #6 Acute chest syndrome[mh] OR (acute[tiab] AND chest[tiab] AND syndrom*[tiab]) #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 Respiration,artificial[mesh: noexp] OR Positive-Pressure Respiration[mh] OR Artificial respiration[tiab] OR Artificial ventilation[tiab] #9 Ventilators, Mechanical[mh] OR Mechanical ventilation[tiab] #10 pressure[tiab] AND (limit*[tiab] OR low[tiab] OR lower[tiab] OR less[tiab]) #11 (#8 OR #9) AND #10 #12 Tidal volume[mh] OR tidal volume*[tiab] #13 plateau pressure*[tiab] #14 LPVS [tiab] OR lung protective* [tiab] OR (protective [tiab] AND ventilat* [tiab]) #15 #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #7 AND #15 #17 randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh: noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] #18 animals[mh] NOT humans[mh] #19 #17 NOT #18 #20 #16 AND #19
CENTRAL(Search date:2020/7/24) #1 [mh "Respiratory distress syndrome, adult"] OR "adult respiratory distress syndrome":ti,ab OR "acute respiratory distress syndrome":ti,ab OR "shock lung":ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "lung injury"] OR "lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #3 acute:ti,ab AND lung:ti,ab AND (failure:ti,ab OR depression:ti,ab) #4 ALI:ti,ab OR "Acute lung injury":ti,ab OR "Ventilator-Induced Lung Injury":ti,ab #5 Acute:ti,ab AND (respiratory:ti,ab OR ventilatory:ti,ab OR pulmonary:ti,ab) AND (failure:ti,ab OR depression:ti,ab) #6 [mh "Acute chest syndrome"] OR (acute:ti,ab AND chest:ti,ab AND syndrome:ti,ab) #7 {OR #1-#6} #8 [mh "Respiration, artificial"] OR "Artificial respiration":ti,ab OR "Artificial ventilation":ti,ab #9 [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "Mechanical ventilation":ti,ab #10 pressure:ti,ab AND (limited:ti,ab OR low:ti,ab OR lower:ti,ab OR less:ti,ab) #11 (#8 OR #9) AND #10 #12 [mh "Tidal volume"] OR "tidal volume":ti,ab #13 "plateau pressure":ti,ab #14 LPVS:ti,ab OR "lung protective":ti,ab OR (protective:ti,ab AND ventilation:ti,ab)
#15 {OR #11-#14} #16 #7 AND #15 #17 [mh animals] NOT [mh humans] #18 #16 NOT #17
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/16) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 成人呼吸窮迫症候群/TA OR 成人型呼吸窮迫症候群/TA OR 成人呼吸促迫症候群/TA OR 成人型呼吸促迫症候群/TA OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR 急性呼吸促迫症候群/TA OR ショック肺/TA OR ARDS/TA #2肺損傷/TH OR 肺損傷/TA OR 肺傷害/TA OR 肺障害/TA #3急性/TA AND 肺/TA AND ( 不全/TA OR 低下/TA OR 抑制/TA) #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA OR 呼吸機能不全/TA OR 換気不全/TA OR 肺機能不全/TA #5急性/TA AND ( 呼吸/TA OR 換気/TA OR 肺機能/TA) AND ( 不全/TA OR 低下/TA OR 抑制/TA) #6急性胸部症候群/TH OR ( 急性/TA AND 胸部/TA AND 症候群/TA) #7 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8人工呼吸/TH OR 人工呼吸/TA OR 陽圧呼吸/TA OR 人工換気/TA OR 陽圧換気/TA OR 機械的換気/TA #9人工呼吸器/TH OR 人工呼吸器/TA OR レスピレータ/TA OR ベンチレータ/TA #10圧/TA AND ( 制限/TA OR 低/TA OR 減/TA) #11 ( #8 OR #9) AND #10 #12プラトー圧/TA #13肺保護戦略/TA OR 肺保護/TA OR ( 保護/TA AND 換気/TA) #14 #11 OR #12 OR #13 #15ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム/AL AND 化/AL OR 無作為化/AL OR比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセ/AL AND ボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL #16 (CK= 動物) NOT (CK= ヒト) #17 #15 NOT #16 #18 #7 AND #14 AND #17 #19 (#18) AND (PT= 会議録除く)
資料PCQ4—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=2,822 1,362件1,335件125件 除外基準に該当した研究n=9理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる0件0件0件9件0件 重複した研究 n=558 除外基準に該当した研究 n=2,238 除外基準に該当した研究 n=17 検索で同定された研究 n=2,822 小児の適格性を評価した研究 n=26 フルテキストで適格性を評価した研究 n=9 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=2,264
資料PCQ4—3 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ4:小児ARDS 患者にプラトー圧を制限するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずるが,記載のない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理をし ているARDS 患者(論文での定義に準ずる) 介 入:プラトー圧を制限する比較対照:プラトー圧を制限しない主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,血行動態の悪化セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:成人ARDS 患者における人工呼吸器管理では,人工呼吸器関連肺損傷(VILI/VALI) によって人工呼吸器装着期間の延長のみならず死亡率上昇がもたらされることが危惧される.VILI/VALI をきたす要因の1 つとして気道内圧上昇が考えられ,プラトー圧を制限することによりVILI/VALI を抑制することが期待される.その一方で,プラトー圧を制限することは有益性ばかりでなく高二酸化炭素血症などの有害事象を招く可能性も考えられる.小児ARDS 患者においてもプラトー圧制限の効果および有害事象を明らかにする検証が必要である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないVILI/VALI をきたす要因として人工呼吸器管理中の1 回換気量の増加と 気道内圧の上昇が考えられ,プラトー圧を制限することによりVILI/VALIを抑制することが期待される.その一方で,プラトー圧を制限することは有益性ばかりでなく高二酸化炭素血症などの有害事象を招く可能性も考えられる.小児ARDS 患者においてプラトー圧制限の効果および有害事象を明らかにする検証が必要であり,その優先順位は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がないARDS 患者におけるプラトー圧の制限は,VILI/VALI を抑制する可能性が ある一方で,高二酸化炭素血症と血液の酸塩基平衡の変化による血行動態・組織代謝への悪影響などの有害性も懸念される.人工呼吸器管理を受ける小児ARDS 患者において,該当するRCT がなく,エビデンスの確実性の記述は行えない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確実性や多様性があ る●たぶん重要な不確 実性や多様性はない○重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利該当の研究なし
○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器の設定変更のみであり,その有害性を考慮しても,患者およ びその家族に受け入れられるかという判断に関して,「たぶんはい」とした 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器の設定変更のみであり,その介入が実行可能かという判断は 「はい」とした 判断の要約 判 断 問 題Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない
価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者に対するプラトー圧の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS 患者での治療戦略に則り,プラトー圧を制限しての呼吸管理が実行されている(in our practice statement). 付帯事項 28 cmH2O 以下が目安とされている(胸壁コンプライアンスが低下した状態ではそれ以上の圧を必要とすることもある).強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧制限だけでは十分に肺胞の過伸展を制御できないことに注意を要する. 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者にプラトー圧を制限するか?患 者 小児(論文の定義に準ずるが,記載のない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理をしているARDS 患者(論文での定義に準ずる).
介 入 プラトー圧を制限する.対 照 プラトー圧を制限しない.アウトカム 死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,血行動態の悪化.解 説一般的に人工呼吸器装着患者におけるVILI/VALIをきたす要因として1回換気量の増加と気道内圧の上昇が挙げられる.プラトー圧を制限することで,その両者を抑制することが期待されるが,小児ARDS 患者における良質なエビデンスがないため,本CQ においては明確な推奨が提示できない.成人ARDS 患者では,本診療ガイドラインにおいて6 件のRCT を用いてメタ解析が行われ,プラトー圧を制限することが提案されている(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確実性「非常に低」).また,『Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:20161)』でもプラトー圧を30 cmH2O 以下に制限することを推奨している(strong recommendation,moderate quality of evidence).小児ARDS 患者に対するプラトー圧制限について,『Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference(2015)2)』と『Pediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(2017)3))』では,成人の研究結果,小児の観察研究4‒7)の結果を参考に28 cmH2O 以下(胸郭コンプライアンスが低下した状態では29~32 cmH2O 以下)とすることが推奨されている(Weak agreement).しかしながら,この推奨の根拠となった小児の研究はいずれも観察研究であり,かつプラトー圧でなく臨床的に測定される⊿P(最大吸気圧-PEEP)と死亡率の関連を調査したものである.さらに,小児ARDS 患者では臨床的に測定される⊿P と死亡率は関連しないという観察研究8)も存在する.プラトー圧制限(あるいは⊿P 制限)が小児ARDS 患者に有益であるかどうかの良質なエビデンスがない現状において,成人ARDS 患者における研究結果と理論的なVILI/VALI 抑制の可能性,ひいては長期的な肺機能へ与える影響を考慮すると,プラトー圧の制限は小児ARDS 患者において参考にできる戦略と思われる.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの質の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.しかし,プラトー圧の制限の有無に関しては,人工呼吸器の設定変更のみであり,受け入れや実行可能性に問題はないと考えられる.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に対するプラトー圧の制限に関して,推奨を提示することはできないが,成人ARDS 患者での治療戦略に則り,プラトー圧を制限しての呼吸管理が実行されている」,付帯事項「28 cmH2O 以下(胸壁エラスタンスが増加した状態では29~32 cmH2O 以下)が目安とされているが,強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧制限だけでは十分に経肺圧を制御できないことに注意する」が,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 であったためin our practice statement として合意を得た.パネル会議において,付帯事項における29~32 cmH2O という数値の根拠の強さや経肺圧という表現の本邦における認知度について懸念が示された.そのため,付帯事項を「28 cmH2O 以下が目安とされている(胸壁コンプライアンスが低下した状態では,それ以上の圧を必要とすることもある).強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧制限だけでは十分に肺胞の過伸展を制御できない
ことに注意を要する」に変更して,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 であったためin our practice statement として合意を得た.付加的な考慮事項プラトー圧は28 cmH2O 以下が目安とされている.しかし,胸郭コンプライアンスが低下した状態では,それよりも高いプラトー圧が必要になることがある.強い自発呼吸のある場合には,プラトー圧制限だけでは圧損傷(肺胞の過伸展)を制御できないことに注意を要する.胸郭コンプライアンスは胸郭の膨らみやすさをいい,コンプライアンスが低い状態では胸郭は膨らみにくいことを意味する.肺胞の内側と外側の圧格差を経肺圧といい,実際に肺胞を進展させる圧になる.「経肺圧=気道内圧-胸腔内圧」の式で算出されるが,食道内圧を測定することで,胸腔内圧を測定することができる. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 小児ARDS 患者におけるプラトー圧の制限に関するRCT は存在せず,サブグループ解析は不可能である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations プラトー圧の制限は人工呼吸器の設定変更のみで可能であり,コスト,有害性,認容性などの実施上の問題は生じない.人工呼吸器に表示されるプラトー圧は,肺コンプライアンスと胸郭コンプライアンスの影響を受ける.プラトー圧制限の目的は,経肺圧を制限し,過剰な圧による肺損傷を防ぐことだが,経肺圧は,人工呼吸器により生じる肺胞内圧と自発呼吸により生じる胸腔内陰圧により規定される.そのため,下記のような注意を要する.強い自発呼吸がある場合には,プラトー圧の制限では十分に経肺圧を制限できない.一方で,胸郭コンプライアンスが低い際には,むしろ高いプラトー圧が必要となることもある.また,従圧式強制換気においても,吸気相終末に気流がゼロになっていない場合は,最大吸気圧とプラトー圧は常に一致するわけではない. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本CQ に関する実施上の臨床的問題として,死亡やVFD などの益および害についての更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities プラトー圧を制限することで人工呼吸器管理中の1 回換気量を軽減し,気道内圧の上昇を抑制することが期待されるが,それが死亡率の改善につながるかどうかは判明していない.また,プラトー圧の上限を規定した研究もない.今後,小児ARDS 患者を対象としたプラトー圧の制限の有無に関する臨床試験,RCT が必要である.参考文献1) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock:2016. Intensive Care Med 2017;43: 304‒77.
2) Rimensberger PC, Cheifetz IM, Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the pediatric acute lung injury consensus conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S51‒60. 3) Kneyber MC, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical ventilation of critically ill children from the paediatric mechanical ventilation concensus conference (PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 4) Flori HR, Gidden DV, Rutherford GW, et al. Pediatric acute lung injury:prospective evaluation of risk factors associated with mortality. Am J Respir Crit Care Med 2005;171: 995‒1001. 5) Erickson S, Schibler A, Numa A, et al. Acute lung injury in pediatric intensive care in Australia and New Zealand:a prospective multicenter, observational study. Pediatr Crit Care Med 2007;8:317‒23. 6) Khemani RG, Conti D, Alonzo TA, et al. Effect of tidal volume in children with acute hypoxemic respiratory failure. Intensive Care Med 2009;35:1428‒37. 7) Panico FF, Troster EJ, Oliveria CS, et al. Risk factors for mortality and outcomes in pediatric acute lung injury/acute respiratory distress syndrome. Pediatr Crit Care Med 2015; 16:e194‒200. 8) Yehya N, Thomas NJ. Disassociating lung mechanics and oxygenation in pediatric acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 2017;45:1232‒9.
背景,この問題の優先度 人工呼吸器管理が長くなると人工呼吸器関連肺炎(VAP)などの有害事象が増加し,抜管が早過ぎると再挿管と死亡が増加する.そのため,人工呼吸器ウィーニング(weaning)時期を早期に,かつ確実に認識することが重要となる.人工呼吸器ウィーニングは臨床医の裁量によることが多いが,プロトコルによるウィーニングが人工呼吸器使用期間を短縮する上で有用とされている.したがって,小児呼吸不全患者においてプロトコルを使用したウィーニングで死亡が減少するか,また,それによる有害事象がないかを明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い.なお,本CQ は,患者の呼吸器病態が改善し,呼吸器離脱を検討する段階のものであるため,対象集団をARDS 患者に限定しなかった. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),24 時間以上人工呼吸器管理を要する患者.ARDS の有無 を問わない.介入(I):プロトコル使用.対照(C):臨床医の裁量.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器装着日数,入院日数,気管切開,再挿管,予定外抜管. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したランダム化比較試験(RCT)が2 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,30 日死亡(1RCT: n=260)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり1 人減少(95%CI:14 人減少~88 人増加),人工呼吸器装着日数(1RCT:n=219)に関する効果推定値は平均2.9 日短縮(95%CI:5.91 日短縮~ 0.11 日延長)した.発達予後,入院日数につ いては報告がなかった.以上から介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.重要度7 点以上の害のアウトカムである気管切開については報告がなかった.その他の重要 1 2 1 2 領域F 小児領域 小児呼吸不全患者の呼吸器離脱においてプロトコルを使用するか? PCQ 5 24 時間以上の人工呼吸を要した小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において, プロトコルを使用することを条件付きで推奨する(条件付きで推奨/非常に 低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 推 奨
度6 点以下の害のアウトカムとして,再挿管(2RCT:n=479)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり2 人減少(95%CI:48 人減少~103 人増加),予定外抜管(1RCT:n=260)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり41 人減少(95%CI:57 人減少~19 人増加)した.この2 つの重要なアウトカムより,望ましくない効果は,「わずか」と判断した.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん介入が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果は,介入により「30 日死亡」で1,000 人あたり1 人減少,「人工呼吸器装着日数」で平均2.9 日短縮した.エビデンスの確実性はともに「非常に低」であった.一方,望ましくない効果については,重大なアウトカムである気管切開の報告はなかった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「とても低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 小児専門でないICU においては,鎮静の評価を含め実行は容易でない可能性があり,一概に言えない. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,「小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において,プロトコルを使用することを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」が中央値8 点,見解不一致指数0.2920 で合意に至った.パネル会議において,当初推奨欄に載せていた下記の付加的な考慮事項は削除したほうがよ いとの意見が出た.そのため,付帯事項は理由欄にのみ収載し,再投票を行った.修正Delphi 法により,「小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において,プロトコルを使用することを条件付きで推奨する(条件付き推奨╱非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が中央値8点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った. サブグループの検討事項 チアノーゼ性心疾患など,ベースラインのSpO2が低い患者でのプロトコル使用は難しい. 実施上の考慮事項 意識レベル,呼吸困難など,小児では評価が難しい. ARDS に限らず,24 時間以上人工呼吸器管理を必要とした小児を対象としている(慢性肺疾患でない限りはウィーニングに大きな差異は生まれないだろうと考えたため).なお,採用されたプロトコルは以下のとおりであるが,各研究により異なっており普遍化できない. Foronda2011:daily evaluation で基準をクリアした患者にspontaneous breathing trial (SBT)(PEEP 5 cmH2O,PS 10 cmH2O,FIO2は変更なし,2 時間)を行い,不耐徴候がなければ抜管する.呼吸数または心拍数の20%以上の増加,呼吸仕事量増加のサイン(呼吸補助筋の使用またはシーソー呼吸),意識レベルの変化,患者の年齢に対する血圧の5 パーセンタイル値を下回る低血圧,SaO2<90%,またはPaCO2>50 mmHg(または慢性肺疾患患者では1 時間で10 mmHg の増加)などの不耐徴候があればSBT を中止とし,24 時間後に再評価とする.SBT をクリアした場合は抜管へ向かう. Schultz 2001:呼吸器条件が一定の基準を満 3 4 5 3 4
たしたら,看護師,理学療法士が1 時間ごとにプロトコルに従って換気条件を変更する.PSを2 cmH2O,PEEP を1 cmH2O ずつ減らしていき,患者に呼吸苦が生じたらウィーニングをいったん止める.PS<5 cmH2O,PEEP<5 cmH2O に達しても安定した呼吸が得られればウィーニングを終了する. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ27 呼吸不全患者の人工呼吸器離脱にプロトコルは有用か?」に記載されている.RCT 13 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,プロトコル化された人工呼吸器離脱法を行うことが条件付きで推奨されている.詳細についてはCQ27 を参照されたい.PALICC1)では呼吸器離脱プロトコルに関する記載はないが,毎日抜管の評価を行うことを強く推奨している.PEMVECC2)では離脱アプローチに関する十分なデータはないとしている(強い合意). 治療のモニタリングと評価 呼吸器離脱がすでにプロトコル化されている施設の割合などを調査する必要がある.この推奨後に,プロトコルを導入する施設において,プロトコル導入後に予後がどう変化す るのか,モニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 呼吸器離脱のプロトコルを比較した研究が期待される. 文献検索式と文献選択 「Ventilator Weaning」「protocol」「randomized controlled trial」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2021 年7 月2 日までの文献を検索したところ3,301 件の研究が同定され,スクリーニングの結果2 件のRCT を採用した. 文献検索式と文献選択 Foronda 20113), Schultz 20014). 資料一覧 ・資料PCQ5—1 Search strategy.・資料PCQ5—2 フローダイアグラム.・資料PCQ5—3 Risk of bias.・資料PCQ5—4 Forest plot.・資料PCQ5—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ5—6 Evidence—to—Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Rimensberger PC, Cheifetz IM. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S51—60. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764—80. 3) Foronda FK, Troster EJ, Farias JA, et al. The impact of daily evaluation and sponta- neous breathing test on the duration of pediatric mechanical ventilation:a randomized controlled trial. Crit Care Med 2011;39:2526—33. 4) Schultz TR, Lin RJ, Watzman HM, et al. Weaning children from mechanical ventila- tion:a prospective randomized trial of protocol—directed versus physician—directed weaning. Respir Care 2001;46:772—82. 参考文献
資料PCQ5—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/7/2) 1 Ventilator Weaning[mh] OR artificial respiration*[tiab] OR Positive-Pressure Respiration[mh] OR positive-pressure respiration[tiab]
2 Pulmonary Ventilation[mh] OR pulmonary ventilat*[tiab]
3 Ventilators, Mechanical[mh] OR mechanical ventilat*[tiab] OR Negative-Pressure Respirator[tiab] OR negative pressure respirators[tiab] 4 #1 OR #2 OR #3
5 Clinical Protocols[mh] OR protocol*[tiab]
6 assist ventilation[tiab] OR adaptive support ventilation[tiab] OR daily screening[tiab]
7 (auto*[tiab] OR system*[tiab]) AND weaning*[tiab]
8 #5 OR #6 OR #7 9 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR drug therapy [sh] OR randomly [tiab] OR trial [tiab] OR groups [tiab]) NOT (Animals[mh] NOT Humans[mh]) 10 #4 AND #8 AND #9
CENTRAL(Search date:2020/7/2) #1 [mh "Ventilator Weaning"] OR "artificial respiration":ti,ab OR [mh "Positive-Pressure Respiration"] OR "positive-pressure respiration":ti,ab #2 [mh "Pulmonary Ventilation"] OR "pulmonary ventilation":ti,ab #3 [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "Negative-Pressure Respirator":ti,ab OR "negative pressure respirators":ti,ab #4 {OR #1-#3} #5 [mh "Clinical Protocols"] OR protocol*:ti,ab #6 "assist ventilation":ti,ab OR "adaptive support ventilation":ti,ab OR "daily screening":ti,ab #7 (auto*:ti,ab OR system*:ti,ab) AND weaning*:ti,ab #8 {OR #5-#7} #9 #4 AND #8 #10 [mh Animals] NOT [mh Humans] #11 #9 NOT #10
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/26) #1人工呼吸器取りはずし/TH OR 人工呼吸/AL OR 陽圧呼吸/TH OR 陽圧呼吸/TA #2肺換気/TH OR 肺換気/AL #3人工呼吸器/TH OR 人工呼吸器/AL #4 #1 OR #2 OR #3 #5臨床プロトコール/TH OR プロトコル/AL OR プロトコール/AL #6インタラクティブ換気補助/TH OR 換気補助/AL #7 #5 OR #6 #8 (((RD= ランダム化比較試験,準ランダム化比較試験,比較研究) OR ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL)) NOT (CK=動物 NOT CK=ヒト)) AND (PT=会議録除く) #9 #4 AND #7 AND #8
資料PCQ5—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=4,564 2,411件2,056件97件 除外基準に該当した研究n=1理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ Oが異なる0件0件0件0件1件 重複した研究 n=1,263 除外基準に該当した研究 n=3,298 検索で同定された研究 n=4,564 重複研究を除外した研究 n=3,301 フルテキストで適格性を評価した研究 n=3 系統的レビューに組み入れた研究 n=2 メタ解析に組み入れた研究 n=2
資料PCQ5—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器装着日数 再挿管予定外抜管
資料PCQ5—4 Forest plot 死 亡 人工呼吸器装着日数 再挿管 予定外抜管
資料PCQ5—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討Weaning protocol Control相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡 1 ランダム 化試験非常に 深刻a深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし2/134 (1.5%) 2/126 (1.6%) RR 0.94 (0.13~6.57) 1,000 人あたり1 人減少(14 人減少~ 88 人増加) +○○○非常に低重大 発達予後 0 重大 人工呼吸器装着日数 1 ランダム 化試験非常に 深刻c深刻で ない深刻で ない深刻dなし104 115 —平均2.9 日短縮(5.91 日短縮~ 0.11 日延長) +○○○非常に低重大 入院日数 0 重大 ICU 滞在日数 0 重要 気管切開 0 重大 再挿管 2 ランダム 化試験非常に 深刻e深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし19/238 (8.0%) 20/241 (8.3%) RR 0.98 (0.42~2.24) 1,000 人あたり2 人減少(48 人減少~ 103 人増加) +○○○非常に低重要 予定外抜管 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし3/134 (2.2%) 8/126 (6.3%) RR 0.35 (0.10~1.30) 1,000 人あたり41 人減少(57 人減少~ 19 人増加) ++○○ 低重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.注)発達予後,入院日数,ICU 滞在日数,気管切開のアウトカムを報告した研究はなかった.説 明a.ランダム割り付け後,ウィーニング前に死亡した34 例が解析から逸脱していることより2 段階ダウンした. b.サンプルサイズが260 であり,OIS を満たさず,95% CI の幅が広く,95% CI が利益と害に関する臨床的に意味のある閾値の両方を含んでおり,「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンした. c.研究参加者と治療提供者がブラインド化されていないこと,介入群の相当数が経過中コントロール群の治療内容に変更されたこと,ベースラインの不均衡により2 段階ダウンした. d.総サンプルサイズが219 であり,OIS を満たさない.よって,十分な検出力がないと考え,1 段階ダウンした. e.2 研究で研究参加者と治療提供者がブラインド化されていなかった.また,1 研究で介入群の相当数が経過中コン トロール群の治療内容に変更された.以上より2 段階ダウンした.
資料PCQ5—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ5:小児呼吸不全患者の呼吸器離脱においてプロトコルを使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),24 時間以上人工 呼吸器管理を要する患者.ARDS の有無を問わない 介 入:プロトコル使用比較対照:臨床医の裁量主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器装着日数,入院日数,気管切開,再挿管,予定外抜管セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:人工呼吸器管理が長くなると人工呼吸器関連肺炎(VAP)などの有害事象が増加し, 抜管が早過ぎると再挿管と死亡が増加する.そのため,人工呼吸器ウィーニング時期を早期に,かつ確実に認識することが重要となる.人工呼吸器ウィーニングは臨床医の裁量によることが多いが,プロトコルによるウィーニングが人工呼吸器使用期間を短縮する上で有用とされている.そこで,プロトコルを使用したウィーニングで死亡が減少するか,また,それによる有害事象がないか検証が必要である.なお,本CQ は,患者の呼吸器病態が改善し,呼吸器離脱を検討する段階のものであるため,対象集団をARDS 患者に限定しなかった 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない人工呼吸器管理が長くなるとVAP などの有害事象が増加し,抜管が早過ぎると再挿管と死亡が増加する.そのため, 人工呼吸器ウィーニング時期を早期に,かつ確実に認識することが重要となる.人工呼吸器ウィーニングは臨床医の裁量によることが多いが,プロトコルによるウィーニングが人工呼吸器使用期間を短縮する上で有用とされている.そこで,プロトコルを使用したウィーニングで死亡が減少するか,また,それによる有害事象がないか検証が必要である.したがって,この問題の優先度は高いと考えられる
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が2 件施行されており, これらを用いたメタ解析を施行した1,2)益のアウトカムとして,30 日死亡(1 RCT:n=260)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」でリスク差1 人減少/1,000 人(95% CI:14 人減少~88 人増加),人工呼吸器装着日数(1 RCT:n=219)に関する効果推定値は平均差2.9 日短縮(95% CI:5.91 日短縮~0.11 日延長)であった.発達予後,入院日数については報告がなかった.以上から,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない重要度7 点以上の害のアウトカムである気管切開について は報告がなかった.よって,備考欄の記載と合わせて考えると,望ましくない効果は,「わずか」と判断したその他の重要度6 点以 下の害のアウトカムとして,再挿管(2 RCT: n=479)に関する効果推定値は,“対照”と比較して“介入”でリスク差2 人減少/1,000 人(95% CI:48 人減少~ 103 人増加),予定外抜管(1 RCT:n=260)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」でリスク差41 人減少/1,000 人(95% CI: 57 人減少~19 人増加)の報告があった
エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性30 日死亡重大+○○○ 非常に低 発達予後重大 人工呼吸器装着日数重大+○○○ 非常に低 入院日数重大 気管切開重大 注)発達予後,入院日数,気管切開については,採択され た文献内にアウトカム報告がなかった エビデンスの確実性望ましい効果は,介入により「30 日死亡」で1,000 人あたり1 人減少,「人工呼吸器装着日数」で2.9 日短縮した.エビデンスの確実性はともに「非常に低」であった.一方,望ましくない効果については,重大なアウトカムである気管切開の報告はなかった.望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確実性や多様性があ る○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価 値観の重要な不確実性や多様性はないと考えられる
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対照 (臨床医の 裁量)介入 (プロト コル)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 30 日死亡2/126 (1.6%) 2/134 (1.5%) 1 人減少/ 1,000 人(14 人減少~ 88 人増加) RR 0.94 (0.13~ 6.57) 発達予後— —推定不可 人工呼吸器装着日数— —平均2.9 日短縮 (5.91 日短縮~ 0.11 日延長) — 入院日数— —推定不可気管切開— —推定不可 以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない日常臨床で実行されており,患者およびその家族には「た ぶん受け入れられる」と判断した. 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない小児専門でないICU においては,鎮静の評価を含め実行は 容易でない可能性があり,一概に言えない
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどちらを行うか条件付 きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○
結 論 推 奨 Recommendation 24 時間以上の人工呼吸を要した小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において,プロト コルを使用することを条件付きで推奨する(条件付きで推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 理 由 Justification 疑 問 小児呼吸不全患者の呼吸器離脱においてプロトコルを使用するか?患 者小児(論文の定義に準じる,明記されていない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理を要した患者,24 時間以上人工呼吸器管理を要する患者.ARDS の有無を問わない.介 入 プロトコル使用.対 照 臨床医の裁量.アウトカム 死亡,発達予後,人工呼吸器装着日数,入院日数,気管切開,再挿管,予定外抜管.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が2 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,30 日死亡(1 RCT:n=260)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり1 人減少(95% CI:14 人減少~88 人増加),人工呼吸器装着日数(1 RCT:n=219)に関する効果推定値は平均差2.9 日短縮(95% CI:5.91 日短縮~0.11 日延長)であった.発達予後,入院日数については報告がなかった.以上から,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.重要度7 点以上の害のアウトカムである気管切開については報告がなかった.その他の重要度6点以下の害のアウトカムとして,再挿管(2 RCT:n=479)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり2 人減少(95% CI:48 人減少~103 人増加),予定外抜管(1 RCT:n=260)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり41 人減少(95% CI:57 人減少~19 人増加)の報告があった.この2 つの重要なアウトカムより,望ましくない効果は,「わずか」と判断した.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果は,介入により「30 日死亡」で1,000 人あたり1 人減少,「人工呼吸器装着日数」で2.9 日短縮した.エビデンスの確実性はともに「非常に低」であった.一方,望ましくない効果については,重大なアウトカムである気管切開の報告はなかった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定小児専門でないICU においては,鎮静の評価を含め実行は容易でない可能性があり,一概に言えない.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,「小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において,プロトコ
ルを使用することを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」が中央値8 点,見解不一致指数0.2920 で合意に至った.パネル会議において,当初推奨欄に載せていた下記の付加的な考慮事項は削除したほうがよいとの意見が出た.そのため,付帯事項は理由欄にのみ収載し,再投票を行った.修正Delphi 法により,「小児呼吸不全患者の呼吸器離脱において,プロトコルを使用することを条件付きで推奨する(条件付き推奨╱非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が,中央値8 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.付加的な考慮事項ARDS に限らず,24 時間以上人工呼吸器管理を必要とした小児を対象としている(慢性肺疾患でない限りはウィーニング過程に大きな差異は生まれないだろうと考えたため).採用されたプロトコルは以下のとおりであるが,各研究により異なっており普遍化できない. Foronda 2011:daily evaluation で基準をクリアした患者にspontaneous breathing trial (SBT)(PEEP 5 cmH2O,PS 10 cmH2O,FIO2は変更なし,2 時間)を行い,不耐徴候がなければ抜管する.呼吸数または心拍数の20%以上の増加,呼吸仕事量増加のサイン(呼吸補助筋の使用またはシーソー呼吸),意識レベルの変化,患者の年齢に対する血圧の5 パーセンタイル値を下回る低血圧,SpO2 90%,またはPaCO2>50 mmHg(または慢性肺疾患患者では1 時間で10 mmHgの増加)などの不耐徴候があればSBT を中止とし,24 時間後に再評価とする.SBT をクリアした場合は抜管へ向かう. Schultz 2001:呼吸器条件が一定の基準を満たしたら,看護師,理学療法士が1 時間ごとにプロトコルに従って換気条件を変更する.PS を2 cmH2O,PEEP を1 cmH2O ずつ減らしていき,患者に呼吸苦が生じたらウィーニングをいったん止める.PS<5 cmH2O,PEEP<5 cmH2O に達しても安定した呼吸が得られればウィーニングを終了する. サブグループの検討事項 Subgroup considerations チアノーゼ性心疾患など,ベースラインのSpO2が低い患者でのプロトコル使用は難しい. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 意識レベル,呼吸困難など,小児では評価が難しい. ARDS に限らず,24 時間以上人工呼吸器管理を必要とした小児を対象としている(慢性肺疾患でない限りはウィーニング過程に大きな差異は生まれないだろうと考えたため). モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 呼吸器離脱がすでにプロトコル化されている施設の割合などを調査する必要がある.この推奨後に,プロトコルを導入する施設において,プロトコル導入後に予後がどう変化するのか,モニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 呼吸器離脱のプロトコルを比較した研究が期待される.
参考文献1) Foronda FK, Troster EJ, Farias JA, et al. The impact of daily evaluation and spontaneous breathing test on the duration of pediatric mechanical ventilation:a randomized controlled trial. Critl Care Med 2011;39:2526—33. 2) Schultz TR, Lin RJ, Watzman HM, et al. Weaning children from mechanical ventilation:a prospective randomized trial of protocol—directed versus physician—directed weaning. Respir care 2001;46:772—82.
背景,この問題の優先度 HFOV(high frequency oscillatory ventilation)は1 回換気量を制限し肺リクルートメントが可能な人工呼吸モードであるが,未だ小児に対する一般的な人工呼吸器管理方法とはいえない状況である.前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』では成人において死亡・人工呼吸器非使用日数(VFD)は通常の人工呼吸器管理と有意差はなく,また,有害事象である圧損傷は増加することが記載されている.一方,新生児領域においては,HFOV は呼吸不全に対する換気モードとして使用されている.したがって,小児ARDS 患者においてHFOV の効果と有害事象を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高いと考えられる.解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),中等症以上のARDS(原疾患は問わない).介入(I):HFOV.対照(C):通常の人工呼吸器管理.アウトカム(O):死亡,発達予後,VFD,入院 日数,血行動態の悪化. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したランダム化比較試験(RCT)が4 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した.益のアウトカムとして,死亡(4RCT,n= 292)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり12 人減少 1 2 1 2 領域F 小児領域 中等症以上の小児ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用するか? PCQ 6 小児ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFOV)を実施しないことを条 件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). すでにHFOV 専用人工呼吸器を有し,その使用に慣れている施設において実施を否定するものではない. 推 奨 付帯事項
(95%CI:108 人減少~116 人増加),VFD (1RCT,n=102)に関する効果推定値は平均0日短縮(95%CI:0.82 日短縮~0.82 日延長)した.発達予後,入院日数については報告がなかった.以上から介入による望ましい効果を「わずか」と判断した.害のアウトカムとして,血行動態の悪化(2RCT,n=76)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり53人増加(95%CI:18 人減少~689 人増加)であり,望ましくない効果は,「小さい」と判断した.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん対照が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果は介入により「死亡」で1,000人あたり12 人減少,「VFD」で平均0 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「非常に低」および「低」であった.一方,望ましくない効果は,介入により「血行動態の悪化」で1,000 人あたり53 人増加した.エビデンスの確実性は「非常に低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も低いエビデンスの確実性を採用し,「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 本介入は害が効果をたぶん上回る.また, HFOV 専用人工呼吸器がなければ実現できず,普段HFOV を使用していない施設で,高額なHFOV専用人工呼吸器を購入して使用方法を教育することは,現場の負担を増やす.パネル会議 パネル会議において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者において,高振動換気(HFOV)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.00 で合意に至った. サブグループの検討事項 年齢(月齢)別のサブグループ解析など,検討の余地はあるかもしれない. 実施上の考慮事項 鎮静薬や筋弛緩薬の使用(増量)を必要とする場合には,これに関連した害についても考慮する必要がある.通常のモニタリングのほかに,カプノグラフィーによる換気の評価が難しいため,定期的に血液ガスを採取して評価する必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ28 成人ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用するか?」に記載されている.RCT 5 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,中等症以上の成人ARDS患者の人工呼吸器管理にHFOV を実施しないことが条件付きで推奨されている.詳細については,CQ28を参照されたい.PALICC1)では次のように記載されている.「プラトー圧が28 cmH2O を超える急性低酸素性呼吸不全で,胸郭コンプライアンス低下が主病態でない時に,HFOV を通常の換気モードの代替選択肢として考慮してもいい.中等症から重症のARDS患者がこの状態に該当する(弱い同意)」.PEVMECC2)では次のように記載されている.「通常の換気モードでは不十分な急性呼吸不全に対して,オープンラ 3 4 3 4 5
ング戦略を用いながらHFOV の使用を考慮してもよい(強い合意).HFOV の使用を推奨する根拠は次の病態では十分でないとしている;閉塞性気道,拘束性障害,混合性障害,心疾患,慢性人工呼吸小児,先天奇形による慢性肺疾患の急性増悪.心疾患のある小児では,重症呼吸不全に対するHFOV の使用は慎重になるべきで,特に右心バイパス症例や右心不全症例ではHFOV の使用には細心の注意を払うのがよい(強い合意).」2020 年の小児に対するSSCG3)では,敗血症に起因するARDS に対するHFOVの使用と非使用で意見が二分され,推奨を提示することはできないと結論している. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として, HFOV 専用人工呼吸器を有していてHFOV を普段から使用しているかどうかについて,更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 メタ解析に組み込まれた研究が少なく,今後の質の高い研究が期待される.その際,どのような患者を対象に(年齢,重症度など),どのタイミングで導入し(腹臥位の後か先か,な ど),他のどの方法(ECMO やAPRV)と比較するのか,などを明確にする必要がある.また,HFOV に関する技術的なレベルを担保する必要がある. 文献検索式と文献選択 「acute respiratory distress syndrome」「High‒Frequency Oscillation Ventilation」「randomized controlled trial」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRALおよび医中誌で2021 年3 月23 日までの文献を検索したところ265 件の研究が同定され,スクリーニングの結果4 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 El‒Nawawy 20174), Arnold 19945), Samransamruajkit 20166), Samransamruajkit 20057). 資料一覧 ・資料PCQ6‒1 Search strategy.・資料PCQ6‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ6‒3 Risk of bias.・資料PCQ6‒4 Forest plot.・資料PCQ6‒5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ6‒6 Evidence‒to‒Decision. 6 7 8 9 10 1) Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015; 16:428‒39. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 3) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52‒106. 4) El‒Nawawy A, Moustafa A, Heshmat H, et al. High frequency oscillatory ventilation 参考文献
versus conventional mechanical ventilation in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled study. Turk J Pediatr 2017;59:130‒43. 5) Arnold JH, Hanson JH, Toro‒Figuero LO, et al. Prospective, randomized comparison of high‒frequency oscillatory ventilation and conventional mechanical ventilation in pediatric respiratory failure. Crit Care Med 1994;22:1530‒9. 6) Samransamruajkit R, Rassameehirun C, Pongsanon K, et al. A comparison of clinical efficacy between high frequency oscillatory ventilation and conventional ventilation with lung volume recruitment in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. Indian J Crit Care Med 2016;20:72‒7. 7) Samransamruajkit R, Prapphal N, Deelodegenavong J, et al. Plasma soluble intercel- lular adhesion molecule‒1(sICAM‒1)in pediatric ARDS during high frequency oscillatory ventilation:a predictor of mortality. Asian Pac J Allergy Immunol 2005;23: 181‒8.
資料PCQ6—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2021/3/23) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult [MH] OR acute respiratory distress syndrome[tiab] OR adult respiratory distress syndrome[tiab] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Acute Lung Injury [MH] OR acute lung injury[tiab] OR acute lung injuries[tiab] OR lung injury[tiab] OR lung injuries[tiab] OR ALI [tiab] OR shock lung[tiab] #3 respiratory insufficiency[MH] OR respiratory insufficiency[tiab] OR acute respiratory failure[tiab] OR respiratory depression[tiab] OR ventilatory depression[tiab] #4 #1 OR #2 OR #3 #5 High frequency ventilation[MH] OR High-Frequency Oscillation Ventilation [tiab] OR High-Frequency Oscillation Ventilations [tiab] OR High-Frequency Positive Pressure Ventilation [tiab] OR High-Frequency Positive Pressure Ventilations [tiab] OR HFO [tiab] OR HFOV [tiab] #6 Respiration, Artificial[MH] OR Artificial respiration[tiab] OR Mechanical ventilation[tiab] OR Mechanical ventilations[tiab] #7 #5 AND #6 #8 Clinical trial[pt] OR trial[ti] OR randomized controlled trial[pt] OR(controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab]) OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[MH] OR randomly[tiab] #9 Animals[MH] NOT Humans[MH] #10 #8NOT#9 #11 #4 AND #7 AND #10
CENTRAL(Search date:2021/3/23) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 ("acute respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #3 ("adult respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #4 ("respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #5 (ARDS):ti,ab,kw #6 {OR #1-#5} #7 MeSH descriptor: [Acute Lung Injury] explode all trees #8 ("acute lung injury"):ti,ab,kw #9 ("acute lung injuries"):ti,ab,kw #10 (ALI):ti,ab,kw #11 ("shock lung"):ti,ab,kw #12 (" lung injury "):ti,ab,kw #13 (" lung injuries "):ti,ab,kw #14 {OR #7-#13} #15 MeSH descriptor: [Respiratory Insufficiency] explode all trees #16 ("Respiratory Insufficiency"):ti,ab,kw #17 ("acute respiratory failure"):ti,ab,kw #18 ("respiratory depression"):ti,ab,kw #19 ("ventilatory depression"):ti,ab,kw #20 {OR #15-#20} #21 MeSH descriptor: [High-Frequency Ventilation] explode all trees #22 ("high frequency ventilation"):ti,ab,kw #23 ("high frequency oscillatory ventilation"):ti,ab,kw #24 ("high frequency oscillation"):ti,ab,kw
#25 ("high frequency positive pressure ventilation"):ti,ab,kw #26 (HFOV):ti,ab,kw #27 (HFO):ti,ab,kw #28 {OR #21-#27} #29 MeSH descriptor: [Respiration, Artificial] explode all trees #30 ("artificial respiration"):ti,ab,kw #31 ("mechanical ventilation"):ti,ab,kw #32 ("mechanical ventilatory support"):ti,ab,kw #33 ("mechanical ventilations"):ti,ab,kw #34 {OR #29-#33} #35 #6 OR #14 OR #20 #36 #28 AND #34 #37 #35 AND #36
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2021/3/23) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH #2呼吸促迫症候群/AL #3呼吸窮迫症候群/AL #4急性呼吸窮迫症候群/AL #5成人呼吸窮迫症候群/AL #6 acute respiratory distress syndrome/AL #7 ARDS/AL #8 PT= 会議録除く#9 #1OR#2OR#3OR#4OR#5OR#6OR#7AND#8 #10急性肺損傷/TH #11急性肺損傷/AL #12急性肺障害/AL #14 acute lung injuries/AL #15 acute lung injury/AL #16 PT= 会議録除く#17 #10OR#11OR#12OR#13OR#14OR#15AND#16 #18高頻度換気/TH #19高頻度振動換気/AL #20 high frequency oscillatory ventilation #21 HFOV/AL #22 PT= 会議録除く#23 #18OR#19OR#20OR#21AND#22 #24 RD= ランダム化比較試験#25 CK= ヒト#26 CK= 動物#27 CK= 成人(19~44),中年(45~64),高齢者(65~) #28 #25AND#27NOT#26 #29 #9OR#17OR#23AND#24AND#28
資料PCQ6—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=491 264件201件26件 除外基準に該当した研究n=6理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ Oが異なる0件4件2件0件0件 重複した研究 n=226 除外基準に該当した研究 n=255 検索で同定された研究 n=491 重複研究を除外した研究 n=265 フルテキストで適格性を評価した研究 n=10 系統的レビューに組み入れた研究 n=4 メタ解析に組み入れた研究 n=4
資料PCQ6—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器非使用日数(VFD) ICU滞在日数圧損傷の軽減
PF比改善OI改善 血行動態の悪化
資料PCQ6—4 Forest plot 死 亡 VFD ICU滞在日数
圧損傷の軽減 PF比改善 OI改善 血行動態の悪化
資料PCQ6—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討HFO CMV相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡(30 日死亡,記載なしを統合) 4 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻b 非常に 深刻cなし58/145 (40.0%) 61/147 (41.5%) RR 0.97 (0.74~1.28) 1,000 人あたり12 人減少(108 人減少~ 116 人増加) +○○○非常に低重大 発達予後 0 重大 VFD 1 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻で ない深刻eなし55 57 —平均0 日短縮(0.82 日短縮~ 0.82 日延長) ++○○ 低重大 入院日数 0 重大 ICU 滞在日数 1 ランダム 化試験深刻f 深刻で ない深刻で ない深刻eなし55 57 —平均0 日短縮(2.48 日短縮~ 2.48 日延長) ++○○ 低重要 バロトラウマの軽減 1 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻gなし8/100 (8.0%) 11/100 (11.0%) RR 0.73 (0.31~1.73) 1,000 人あたり30 人減少(76 人減少~ 80 人増加) ++○○ 低重要 PF 比改善率 1 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻で ない深刻hなし100 100 —平均30%高い(16.41%高い~ 43.59%高い) ++○○ 低重要 OI 改善率 1 ランダム 化試験深刻d 深刻で ない深刻で ない深刻hなし100 100 —平均14.5%高い(9.32%高い~ 19.68%高い) ++○○ 低重要 血行動態の悪化 2 ランダム 化試験深刻i深刻で ない深刻j非常に 深刻kなし3/38 (7.9%) 1/38 (2.6%) RR 3.00 (0.33~27.18) 1,000 人あたり53 人増加(18 人減少~ 689 人増加) +○○○非常に低重大 HFO:high frequency oscillation,CMV:controlled mechanical ventilation,CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.注)発達予後,入院日数のアウトカムを報告した研究はなかった.説 明a.2 件ともクロスオーバーの影響を受ける.1 件において割り付けの隠蔽化が不明確である.1 件においてベースラインの不均衡が見られる. b.1 件において対象集団にARDS ではない気胸患者が含まれる. c.総サンプルサイズが292 であり,OIS を満たさない.また,95% CI の幅が広く,治療を選択する閾値・選択し ない閾値の両方をまたぐ.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンした.
d.ベースラインの不均衡が見られる.クロスオーバーの影響を受ける. e.総サンプルサイズが112 であり,OIS を満たさない.よって十分な検出力がないと考え,1 段階ダウンした. f.治療提供者がブラインドされておらず,ICU 退室基準も明記されていない.ベースラインの不均衡が見られる.クロスオーバーの影響を受ける. g.総サンプルサイズが200 であり,OIS を満たさない.また,95% CI の幅が広く,95% CI が治療を選択する閾値・選択しない閾値の両方をまたぐ.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンした. h.総サンプルサイズが200 であり,OIS を満たさない.よって十分な検出力がないと考え,1 段階ダウンした. i.割り付けの隠蔽化が不明確である. j.対象集団にARDS ではない気胸患者が含まれる. k.総サンプルサイズが76 であり,OIS を満たさない.また,95% CI の幅が広く,95% CI が治療を選択する閾値・選択しない閾値の両方をまたぐ.以上より,全体としての不精確さは「非常に深刻」と判断し,2 段階ダウンした.注)アウトカムとして発達予後,入院日数を設定したが,これらを報告した研究はなかった.
資料PCQ6—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ6:中等症以上の小児ARDS 患者に高頻度振動換気(HFOV)を使用する か? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),中等症以上の ARDS(原疾患は問わない) 介 入: HFOV比較対照:通常の人工呼吸器管理主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,血行動態の悪化セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: HFOVは1回換気量を制限し肺リクルートメントが可能な人工呼吸モードであるが, 未だ小児に対する一般的な人工呼吸器管理方法とはいえない状況である.前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』では,成人において死亡・VFD は通常の人工呼吸器管理と有意差はないことが,有害事象である圧損傷は増加することが記載されている中等症以上の小児ARDS 患者におけるHFOV の予定的な使用の益と害の評価を行うことは重要な臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないHFOV は1 回換気量を制限し肺リクルートメントが可能な人工呼吸モー ドであるが,未だ小児に対する一般的な人工呼吸器管理方法とはいえない状況である.前回の『ARDS 診療ガイドライン2016』では,成人において死亡・VFD は通常の人工呼吸器管理と有意差はなく,有害事象である圧損傷は増加することが記載されており,HFOV は使用されなくなってきている.一方,新生児領域においては,HFOV は呼吸不全に対する換気モードとして使用されている.したがって,この問題の優先度は高いと考えられる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さいSR の結果,PICO に一致したRCT が4 件施行されており,これらを用 いたメタ解析を施行した1—4)
○中程度○大きい○一概には言えない○わからない益のアウトカムとして,死亡(4 RCT:n=292)に関する効果推定値 は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり12 人減少(95% CI: 108 人減少~116 人増加),VFD(1 RCT:n=102)に関する効果推定値は平均差0 日短縮(95% CI:0.82 日短縮~0.82 日延長)であった.発達予後,入院日数については報告がなかった.以上から,介入による望ましい効果を「わずか」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,血行動態の悪化(2 RCT:n=76)に関する効果 推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり53 人増加(95% CI:18 人減少~689 人増加)であり,望ましくない効果は,「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 死亡 (30 日死亡,記載なしを統合)重大+○○○ 非常に低 発達予後重大 VFD重大++○○ 低 入院日数重大 血行動態の悪化重大+○○○ 非常に低 注)発達予後,入院日数については,採択された文献内にアウトカム報 告がなかった エビデンスの確実性望ましい効果は介入により「死亡」で1,000 人あたり12 人減少,「VFD」で0 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「非常に低」および「低」であった.一方,望ましくない効果は,介入により「血行動態の悪化」で
1,000 人あたり53 人増加した.エビデンスの確実性は「非常に低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も低いエビデンスの確実性を採用し,「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム予想される絶対効果 (95% CI)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) Control HFOV 死亡(30 日死亡, 記載なしを 統合) 61/147 (41.5%) 58/145 (40%) 12 人減少/ 1,000 人(108 人減少~ 116 人増加) RR 0.97 (0.74~1.28) 発達予後— —推定不可— VFD — —平均0 日短縮 (0.82 日短縮~ 0.82 日延長) — 入院日数— —推定不可— 血行動態の 悪化1/38 (2.6%) 3/38 (7.9%) 53 人増加/ 1,000 人 (18 人減少~ 689 人増加) RR 3.00 (0.33~27.18)
以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん対照が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない治療上必要であれば患者およびその家族にはたぶん受け入れられると思 われる 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないHFOV 専用人工呼吸器を導入している施設ではHFOV を普段から使用し ていると考えられるので,選択することは可能であるが,そのような施設は多くないと推察される.また,専用人工呼吸器がない施設では施行が困難である 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFOV)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 すでにHFOV 専用人工呼吸器を有し,その使用に慣れている施設において実施を否定するものではない. 理 由 Justification 患 者 小児(論文の定義に準じる,明記されていない場合は20 歳以下),中等症以上のARDS (原疾患は問わない).介 入 HFOV.対 照 通常の人工呼吸器管理.アウトカム 死亡,発達予後,VFD,入院日数,血行動態の悪化.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が4 件施行されており,これらを用いたメタ解析を施行した1‒4).益のアウトカムとして,死亡(4 RCT:n=292)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり12 人減少(95% CI:108 人減少~116 人増加),VFD(1 RCT:n=102)
に関する効果推定値は平均差0 日短縮(95% CI:0.82 日短縮~0.82 日延長)であった.発達予後,入院日数については報告がなかった.以上から,介入による望ましい効果を「わずか」と判断した.害のアウトカムとして,血行動態の悪化(2 RCT:n=76)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり53 人増加(95% CI:18 人減少~689 人増加)であり,望ましくない効果は,「小さい」と判断した.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん対照が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果は介入により「死亡」で1,000 人あたり12 人減少,「VFD」で0 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「非常に低」および「低」であった.一方,望ましくない効果は,介入により「血行動態の悪化」で1,000 人あたり53 人増加した.エビデンスの確実性は「非常に低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も低いエビデンスの確実性を採用し,「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定本介入は害が効果をたぶん上回る.また,HFOV 専用人工呼吸器がなければ実現できず,普段HFOV を使用していない施設で,高額なHFOV 専用人工呼吸器を購入して使用方法を教育することは,現場の負担を増やす.パネル会議パネル会議において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者において,高振動換気(HFOV)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が中央値9.0 点,見解不一致指数0.00 で合意に至った.付加的な考慮事項すでにHFOV 専用人工呼吸器を有し,その使用に慣れている施設において実施を否定するものではない. サブグループの検討事項 Subgroup considerations 年齢(月齢)別のサブグループ解析など,検討の余地はあるかもしれない. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 鎮静薬や筋弛緩薬の使用(増量)を必要とする場合には,これに関連した害についても考慮する必要がある.通常のモニタリングのほかに,カプノグラフィーによる換気の評価が難しいため,定期的に血液ガスを採取して評価する必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題として,HFOV 専用人工呼吸器を有していてHFOV を普段から使用しているかどうかについて,更なる情報を収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある.
研究の可能性 Research priorities メタ解析に組み込まれた研究が少なく,今後の質の高い研究が期待される.その際,どのような患者を対象に(年齢,重症度など),どのタイミングで導入し(腹臥位の後か先かなど),他のどの方法(ECMO やAPRV)と比較するのか,などを明確にする必要がある.また,HFOV に関する技術的なレベルを担保する必要がある.参考文献1) El‒Nawawy A, Moustafa A, Heshmat H, et al. High frequency oscillatory ventilation versus conventional mechanical ventilation in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled study. Turk J Pediatr 2017;59:130‒43. 2) Arnold JH, Hanson JH, Toro‒Figuero LO, et al. Prospective, randomized comparison of high‒frequency oscillatory ventilation and conventional mechanical ventilation in pediatric respiratory failure. Crit Care Med 1994;22:1530‒9. 3) Samransamruajkit R, Rassameehirun C, Pongsanon K, et al. A comparison of clinical efficacy between high frequency oscillatory ventilation and conventional ventilation with lung volume recruitment in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. Indian J Crit Care Med 2016;20:72‒7. 4) Samransamruajkit R, Prapphal N, Deelodegenavong J, et al. Plasma soluble intercellular adhesion molecule‒1(sICAM‒1)in pediatric ARDS during high frequency oscillatory ventilation:a predictor of mortality. Asian Pac J Allergy Immunol 2005;23:181‒8.
背景,この問題の優先度 ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.人工呼吸の最適な換気条件として何を選択するべきか未だ明らかではない.APRV(airway pressure release ventilation)は高気道内圧を維持できるためARDS にしばしば用いられているが,小児患者における有効性は定かではない.小児ARDS患者に対するAPRV の効果と安全性は確立していない.したがって,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,記載が ない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理されたARDS 患者(論文の定義に準ずる).介入(I):APRV による人工呼吸器管理.対照(C):VCV(volume control ventilation)またはPCV(pressure control ventilation) による人工呼吸器管理.アウトカム(O):28 日死亡,発達予後,人工 呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,血行動態の悪化. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したRCT が1 件1) (n=52)施行されていた.益のアウトカムとして,発達予後(180 日後のPCPC)に関する効果推定値は平均0 変化(95% CI:0.4 悪化~ 0.4 改善),VFD は平均4.5 日短縮(95% CI: 10.35 日短縮~1.35 日延長),入院日数は平均 5 日短縮(95% CI:10.73 日短縮~0.73 日延長)であった.28 日死亡は望ましい効果として想定していたが,後述のように死亡が増加したために望ましくない効果として扱った.以上,発達予後,VFD,入院日数を望ましい効果として考慮すると,介入による望ましい効果を 1 2 1 2 領域F 小児領域 小児ARDS 患者にAPRV を使用するか? PCQ 7 小児ARDS 患者において,換気条件としてAPRV を実施しないことを条件 付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). すでにAPRV 専用人工呼吸器を有し,その使用に慣れている施設において実施を否定するものではない. 推 奨 付帯事項
「小さい」と判断した.害のアウトカムとして, 28 日死亡に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」でリスク差269 人増加/1,000人(95% CI:8 人減少~845 人増加),血行動態の悪化はリスク差77 人減少/1,000 人(95% CI:111 人減少~231 人増加)であった.したがって,望ましくない効果は「中程度」と判断した.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん対照が有利」とした. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いアウトカムの確実性を採用し「とても低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 死亡率に悪い影響を与える可能性があり,その他のアウトカムに利益をもたらすとしても,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「対照」がたぶん有利である.このため,「介入」は受け入れられない可能性があり,特定の人工呼吸器を要することから実行可能性も高くないと考えられる. パネル会議 パネル会議において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者において,換気条件としてAPRV を実施しないことを条件付きで推奨する.(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が中央値8.0,見解不一致指数0.2920 で合意に至った. サブグループの検討事項 サブグループとしてリクルートできる肺容量の多い患者では,APRV の効果が異なる可能性がある.一方,ショックを伴う患者,先天性心 疾患(特に,単心室,右心バイパス)の患者,頭蓋内圧が上昇している患者では,より注意深いモニタリングが必要である. 実施上の考慮事項 十分な自発呼吸を残しながら非協力的な小児患者を安全に管理することは鎮痛・鎮静に熟練を要する.小児の高い気道抵抗と高い胸郭コンプライアンスは,年齢により大きく変化し得る内因性PEEP を生じる可能性がある.また,施設によっては,新たな購入コストが発生する可能性がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ23 成人ARDS 患者の人工呼吸器管理において,APRV を使用するか?」に記載されている.RCT7 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,APRV と通常の人工呼吸器管理のどちらを使用するべきかについて,推奨を行うことはできない.自発呼吸を残した人工呼吸器管理を行っている際は,APRV を考慮してもよいと結論づけられている(in our practice statement).詳細については,CQ23 を参照されたい.小児ARDS 患者に対するAPRV の使用について,PALICC2)では,特定の換気様式を使用する推奨はできないとしている(強い合意).PEMVECC3)でも,APRV について言及していないものの,同様に特定の換気様式を推奨することはできないとしている(強い合意). 治療のモニタリングと評価 該当なし. 今後の研究の可能性 対象患者におけるリクルートできる肺容量の 3 4 5 3 4 5 6 7
多寡,強い自発呼吸に対する対応などにより効果が異なる可能性があり得る.今後の研究には十分なデザインと注意深いモニタリングが必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome,Adult」「ARDS」「acute respiratory failure」「ALI」「airway pressure release ventilation」「APRV」「randomized controlled trial」「呼吸窮迫症候群‒急性」「急性呼吸促迫症候群」「急性肺損傷」「気道内圧開放式」「ランダム化比較試験」などをキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月8 日までの文献を検索したところ4,365 件 の研究が同定され,スクリーニングの結果1 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Ganesan 20181). 資料一覧 ・資料PCQ7‒1 Search strategy.・資料PCQ7‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ7‒3 Risk of bias.・資料PCQ7‒4 Forest plot.・資料PCQ7‒5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ7‒6 Evidence‒to‒Decision. 8 9 10 1) Lalgudi Ganesan S, Jayashree M, Chandra Singhi S, et al. Airway pressure release ventilation in pediatric acute respiratory distress syndrome. A randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2018;198:1199‒207. 2) Rimensberger PC, Cheifetz IM. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S51‒60. 3) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 参考文献
資料PCQ7—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/7/8) #1 respiratory distress syndrome, adult[mh] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR respiratory insufficiency[mh] OR acute lung injury[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR acute respiratory failure*[tiab] OR ALI[tiab] OR ARDS[tiab] #2 Respiration, Artificial[mh] OR artificilal respiration*[tiab] OR Pulmonary Ventilation[mh] OR pulmonary ventilat*[tiab] OR Ventilators, Mechanical[mh] OR mechanical ventilat*[tiab] OR positive-pressure respiration*[tiab] OR positive pressure ventilat*[tiab] #3 pressure control*[tiab] OR PCV[tiab] OR volume control*[tiab] OR VCV[tiab] #4 airway pressure release ventilat*[tiab] OR APRV[tiab] #5 synchronized intermittent mandatory ventilation[tiab] OR intermittent mandatory ventilation[tiab] OR SIMV[tiab] OR IMV[tiab] #6 PSV[tiab] OR pressure support[tiab] #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR clinical trials as topic [mesh: noexp] OR randomly [tiab] OR trial [ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #9 #1 AND #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/7/8) #1 [mh "respiratory distress syndrome, adult"] OR "acute respiratory distress syndrom":ti,ab OR [mh "respiratory insufficiency"] OR [mh "acute lung injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR "acute respiratory failure":ti,ab OR ALI:ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "Respiration, Artificial"] OR "artificilal respiration":ti,ab OR [mh "Pulmonary Ventilation"] OR "pulmonary ventilation":ti,ab OR [mh "Ventilators, Mechanical"] OR "mechanical ventilation":ti,ab OR "positive-pressure respiration":ti,ab OR "positive pressure ventilation":ti,ab #3 "pressure control":ti,ab OR PCV:ti,ab OR "volume control":ti,ab OR VCV:ti,ab #4 "airway pressure release ventilation":ti,ab OR APRV:ti,ab #5 "synchronized intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR "intermittent mandatory ventilation":ti,ab OR SIMV:ti,ab OR IMV:ti,ab #6 PSV:ti,ab OR "pressure support":ti,ab #7 {OR #2-#6} #8 #1 AND #7 #9 [mh animals] NOT [mh humans] #10 #8 NOT #9
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/8) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 呼吸促迫症候群/AL OR ARDS/AL OR "acute respiratory distress syndrome"/AL OR 急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL OR 急性肺障害/AL OR 急性肺傷害/AL OR "acute lung Injury"/AL OR 呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL OR 呼吸機能不全/AL #2人工呼吸/TH OR 人工呼吸/AL OR 人工換気/AL OR レスピレータ/AL OR ベンチレータ/AL OR 機械換気/ AL OR 機械的換気/AL OR 人工換気/AL OR 調節呼吸/AL OR 調節換気/AL OR 陽圧呼吸/AL OR 陽圧換気/ AL #3従圧/AL OR 圧規定/AL OR 従量/AL OR 量規定/AL OR PCV/AL OR VCV/AL #4 APRV/AL OR 気道内圧開放式/AL OR 気道内圧解放式/AL OR "Airway Pressure Release Ventilation"/AL
#5間欠性強制換気/TH OR 同期式間欠的強制/AL OR 間欠的強制/AL OR SIMV/AL OR IMV/AL OR "synchronized intermittent mandatory"/AL OR "intermittent mandatory"/AL #6プレッシャーサポート/AL OR PSV/AL OR "pressure support"/AL OR "pressure-support"/AL #7 #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 #8 (((RD= ランダム化比較試験,準ランダム化比較試験,比較研究) OR ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL)) NOT (CK=動物 NOT CK=ヒト)) AND (PT=会議録除く) #9 #1 AND #7 AND #8
資料PCQ7—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=5,933 2,824件2,259件550件 除外基準に該当した研究n=32理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる14件5件0件13件0件 重複した研究 n=1,568 除外基準に該当した研究 n=4,278 除外基準に該当した研究 n=54 検索で同定された研究 n=5,933 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=4,365 小児の適格性を評価した研究 n=87 系統的レビューに組み入れた研究 n=1 メタ解析に組み入れた研究 n=1 フルテキストで適格性を評価した研究 n=33
資料PCQ7—3 Risk of bias 28日死亡発達予後 VFD入院日数
血行動態の悪化圧損傷 酸素化
資料PCQ7—4 Forest plot 28日死亡 発達予後 VFD 入院日数 血行動態の悪化 圧損傷
酸素化
資料PCQ7—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討APRV Conventional相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 28 日死亡 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻bなし14/26 (53.8%) 7/26 (26.9%) RR 2.00 (0.97~ 4.14) 1,000 人あたり269 人増加(8 人減少~ 845 人増加) ++○○ 低重大 発達予後(180 日後のPCPCc) 1 ランダム 化試験深刻a 深刻で ない深刻で ない深刻dなし26 26 — 0 (0.4 減少~ 0.4 増加) ++○○ 低重大 VFD 1 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない深刻dなし26 26 —平均4.5 日短縮 (10.35 日短縮~ 1.35 日延長) ++○○ 低重大 入院日数 1 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない深刻dなし26 26 —平均5 日短縮 (10.73 日短縮~ 0.73 日延長) ++○○ 低重大 血行動態の悪化 1 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻fなし1/26 (3.8%) 3/26 (11.5%) RR 0.33 (0.04~ 3.00) 1,000 人あたり77 人減少(111 人減少~ 231 人増加) +○○○非常に低重大 バロトラウマ 1 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻fなし3/26 (11.5%) 5/26 (19.2%) RR 0.60 (0.16~ 2.26) 1,000 人あたり77 人減少(162 人減少~ 242 人増加) +○○○非常に低重要 酸素化(24 時間後のP/F 比) 1 ランダム 化試験深刻g 深刻で ない深刻で ない深刻dなし26 26 —平均11 減少(44.62 減少~ 22.62 増加) ++○○ 低重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.inclusion された1 つの研究で,high risk of other bias(P/F 比のベースラインが2 群間で大きく異なる)があり, 1 段階グレードダウンとした. b.総サンプルサイズが52 人でOIS を満たさない.アウトカム推定の95% CI が害の治療閾値をまたぐ.したがって,不精確さは深刻と判断し,1 段階グレードダウンとした. c.PCPC:Pediatric Cerebral Performance Category Scale. d.総サンプルサイズが52 人でOIS を満たさず,アウトカム推定効果の95% CI 内で推奨の方向性が異なり得る. したがって,不精確さは深刻と判断し,1 段階グレードダウンとした.
e.Inclusion された1 つの研究で,high risk of other bias(P/F 比のベースラインが2 群間で大きく異なる)であり,参加者と治療提供者の盲検化がhigh risk of bias であるため,1 段階グレードダウンとした. f.総サンプルサイズが52 人でOIS を満たさず,アウトカム推定効果の95% CI が益と害の治療閾値をまたぎ非常に深刻と判断し,2 段階グレートダウンとした. g.Inclusion された1 つの研究で,high risk of other bias(P/F 比のベースラインが2 群間で大きく異なる)があり, 介入後24 時間のP/F 比がアウトカムのために,バイアスのリスクが深刻であると判断し,1 段階グレードダウンとした.
資料PCQ7—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ7:小児ARDS 患者にAPRV を使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理 されたARDS 患者(論文の定義に準ずる) 介 入: APRV で人工呼吸器管理を行う比較対照: VCV もしくはPCV で人工呼吸器管理を行う主要なアウトカム:死亡,発達予後,VFD,入院日数,血行動態の悪化セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要である.人工呼 吸の最適な換気条件として何を選択するべきか未だ明らかではない.APRV は高気道内圧を維持できるためARDS にしばしば用いられているが,小児患者における有効性は定かではない 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS 患者における人工呼吸器管理は,原疾患の治療と同様に重要であ る.人工呼吸の最適な換気モードとして何を選択するべきか明らかでない.APRV は高気道内圧を維持できるためARDS にしばしば用いられているが,小児患者における有効性は定かではない.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が1 件1) (n=52)施行されていた 益のアウトカムとして,発達予後(180 日後のPCPC)に関する効果推定値は平均0 変化(95% CI:0.4 悪化~0.4 改善),入院日数は平均5 日短縮(95% CI:10.73 日短縮~0.73 日延長),VFD は平均4.5 日短縮(95% CI:10.35 日短縮~1.35 日延長)であった.28 日死亡は望ましい効果として想定していたが,後述のように死亡が増加したために望ましくない効果として扱った.以上,発達予後,入院日数,VFD を望ましい効果として考慮すると,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,28 日死亡に関する効果推定値は,「対照」と比 較して「介入」でリスク差269 人増加/1,000 人(95% CI:8 人減少~ 845人増加),血行動態の悪化はリスク差77人減少/1,000人(95% CI: 111 人減少~231 人増加)であった.したがって,望ましくない効果は「中程度」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●とても低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 28 日死亡重大++○○ 低 発達予後重大++○○ 低 VFD重大++○○ 低 入院日数重大++○○ 低 血行動態の悪化重大+○○○ とても低 エビデンスの確実性望ましい効果の結果は,介入により「発達予後(180 日後のPCPC)」で平均0 変化,「入院日数」で平均5 日短縮,「VFD」で平均4.5 日短縮であった.エビデンスの確実性は,ともに「低」であった.一方,望ましくない効果の結果は,介入により「28 日死亡」で269 人増加/1,000 人,「血行動態の悪化」で77 人減少/1,000 人であった.エビデンスの確実性は「低」,「とても低」であった.以上より,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いアウトカムの確実性を採用し「とても低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対照介入 (APRV)絶対差 (95% CI)相対効果 (95% CI) 28 日死亡7/26 (26.9%) 14/26 (53.8%) 269 人増加/ 1,000 人(8 人減少~ 845 人増加) RR 2.00 (0.97~4.14) 発達予後(180 日後の PCPC) — — 0 (0.4 悪化~ 0.4 改善) — VFD — —平均4.5 日短縮 (10.35 日短縮~ 1.35 日延長) — 入院日数— —平均5 日短縮(10.73 日短縮~ 0.73 日延長) — 血行動態の 悪化3/26 (11.5%) 1/26 (3.8%) 77 人減少/ 1,000 人(111 人減少~ 231 人増加) RR 0.33 (0.04~3.00)
以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん対照が有利」とした 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない過剰な自発呼吸による肺損傷の可能性を懸念する医療従事者がいること を考えると,受け入れられない可能性がある 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない特定の人工呼吸器があれば可能であるものの,そうでない場合には実現 可能性は低く,一概には言えない 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidenceとても低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者において,換気条件としてAPRV を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 すでにAPRV 専用人工呼吸器を有し,その使用に慣れている施設において実施を否定するものではない. 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者にAPRV を使用するか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),人工呼吸器管理されたARDS 患者(論文の定義に準ずる).介 入 APRV による人工呼吸器管理.対 照 VCV もしくはPCV による人工呼吸器管理.アウトカム 28 日死亡,発達予後,VFD,入院日数,血行動態の悪化.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が1 件1) (n=52)施行されていた.益のアウトカムとして,発達予後(180 日後のPCPC)に関する効果推定値は平均0 変化(95% CI:0.4 悪化~0.4 改善),VFD は平均4.5 日短縮(95% CI:10.35 日短縮~1.35 日延長),入院
日数は平均5 日短縮(95% CI:10.73 日短縮~0.73 日延長)であった.28 日死亡は望ましい効果として想定していたが,後述のように死亡が増加したために望ましくない効果として扱った.以上,発達予後,VFD,入院日数を望ましい効果として考慮すると,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,28 日死亡に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」でリスク差269 人増加/1,000 人(95% CI:8 人減少~845 人増加),血行動態の悪化はリスク差77 人減少/ 1,000 人(95% CI:111 人減少~231 人増加)であった.したがって,望ましくない効果は「中程度」と判断した.以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスに関して,「たぶん対照が有利」とした.エビデンスの確実性望ましい効果の結果は,介入により「発達予後(180 日後のPCPC)」で平均0 変化,「入院日数」で平均5 日短縮,「VFD」で平均4.5 日短縮であった.エビデンスの確実性は,ともに「低」であった.一方,望ましくない効果の結果は,介入により「28 日死亡」で269 人増加/1,000 人,「血行動態の悪化」で77 人減少/1,000 人であった.エビデンスの確実性は「低」,「とても低」であった.以上より,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いアウトカムの確実性を採用し「とても低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定死亡率に悪い影響を与える可能性があり,その他のアウトカムに利益をもたらすとしても,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「対照」がたぶん有利である.このため,「介入」は受け入れられない可能性があり,特定の人工呼吸器を要することから実行可能性も高くないと考えられる.パネル会議パネル会議において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者において,換気条件としてAPRVを実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D)」が中央値8.0,見解不一致指数0.2920 で合意に至った.付加的な考慮事項すでにAPRV 専用人工呼吸器を有し,その使用に慣れている施設において実施を否定するものではない. サブグループの検討事項 Subgroup considerations サブグループとしてリクルートできる肺容量の多い患者では,APRV の効果がある可能性がある.一方,ショックを伴う患者,先天性心疾患(特に,単心室,右心バイパス)の患者,頭蓋内圧が上昇している患者では,血行動態についてより注意深いモニタリングが必要である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 十分な自発呼吸を残しながら非協力的な小児患者を安全に管理することは鎮痛・鎮静に熟練を要する.小児の高い気道抵抗と高い胸郭コンプライアンスは,年齢により大きく変化し得る内因性PEEP を生じる可能性がある.また,施設によっては,新たな購入コストが発生する可能性がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation なし.
研究の可能性 Research priorities 対象患者におけるリクルートできる肺容量の多寡,強い自発呼吸に対する対応などにより効果が異なる可能性があり得る.今後の研究に際しては十分なデザイン構築と注意深いモニタリングが必要である.参考文献1) Lalgudi Ganesan S, Jayashree M, Chandra Singhi S, et al. Airway pressure release ventilation in pediatric acute respiratory distress syndrome. A randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2018;198:1199‒207.
背景,この問題の優先度 高濃度酸素投与による管理は,肺線維化を助長する有害事象が報告されている.一方で,低SpO2管理は生存率を向上させるのか,有害事象により予後を悪化させるのかは不明である.酸素飽和度の目標値に関して,小児ARDS患者に対する介入研究および系統的レビューは現在までに存在しない.したがって,小児ARDS患者において低SpO2管理の効果や有害事象を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定義に準ずる).介入(I):低SpO2管理.対照(C):通常の管理.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),入院日数,ICU 滞在日数,重篤な低酸素血症.エビデンスの要約 該当の研究なし. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.特定のSpO2を目標とする管理は人工呼吸器の設定変更のみで可能であり,すでに日常臨床で実行されていることから,受け入れや実行可能性に問題はないと考えられる. パネル会議 事前会議において,修正Delphi 法により,「小児ARDS患者に対する特定のSpO2目標値は推奨できないが,高酸素血症と臓器障害を生じるような低酸素血症を避けられるようにSpO2目標値を設定している」が中央値8 点,見解不一致指数0.0000,でin our practice state- 1 2 1 2 3 4 5 領域F 小児領域 小児ARDS 患者のSpO2の目標値をどのように設定するか? PCQ 8 小児ARDS 患者に対する特定のSpO2目標値は推奨を提示できないが,臓器 障害を生じるような高酸素血症や低酸素血症を避けられるようにSpO2目標 値を設定している(in our practice statement). 推 奨
ment として合意に至った.パネル会議において,高酸素血症の意味が曖昧であるという意見が出た.そのため,推奨文を「小児ARDS 患者に対する特定のSpO2目標値は推奨を提示できないが,臓器障害を生じるような高酸素血症や低酸素血症を避けられるようにSpO2目標値を設定している」に変更し,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った. サブグループの検討事項 チアノーゼ性心疾患,肺高血圧,急性期の頭蓋内疾患など,低酸素血症によって大きなリスクが伴う症例では益と害について注意深い検討が必要である. 実施上の考慮事項 検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常診療で実行されている.コストに関しては特に問題は生じないと思われる.低酸素血症の有害性,認容性は患者背景によって異なると考えられるため,症例によって検討する必要がある.SpO2を100%で管理している場合, PaO2の変化を迅速に把握することが困難なことに注意する必要がある.一方で,SpO2が92%未満の時,中心静脈血酸素飽和度や乳酸値など,酸素需給の指標をモニタリングする必要がある.また,低SpO2管理を行う場合には, SpO2が目標値を下回った場合に迅速に介入できる必要がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,類似の内容が「CQ30 成人ARDS 患者において低SpO2(PaO2)を目標とする管理を行うか?」に記載されている.RCT 6 件を用いたメタ解析の結果を根拠に,成人ARDS患者において過度 な低SpO2(PaO2)を目標とした管理を行わないことが条件付きで推奨されている.また, PALICC1)では,「PEEP が10 cm H2O 未満の軽度の小児ARDS では,SpO2を一般的に92~ 97%に維持することを推奨する(弱い合意), PEEP を最適化した後,PEEP が10 cm H2O 以上の小児ARDS に対しては,より低いSpO2レベル(88~92%の範囲)を検討することを推奨する(強い合意)」と記載されている. 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたって臨床上の問題として低酸素血症による臓器障害が増加していないかなど,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 小児ARDS を対象としたpermissive hypoxemia を評価した大規模研究は現在まで行われていない.小児ARDS の研究には,0 歳から18歳まで含まれることがある.しかし,未熟性が問題になる可能性のある患者群と成人同様の体格を持つ患者では,患者間の解剖学的背景が大きく異なる.したがって,まずは小児ARDS の研究では患者の年齢を均一なものとする必要がある.さらに,小児ARDSの患者群で酸素化の目標値によって分けた患者群を比較したRCTが必要である.その上で,permissive hypoxemia について再定義し,ARDS に対する人工呼吸器管理の方法を統一した上で酸素化の目標値を決める必要がある. 文献検索式と文献選択 「Respiratory distress syndrome」「Acute lung injury」「Respiratory insufficiency」 3 4 5 6 7 8
「Oxygen Inhalation Therapy」「Oximetry」「SpO2」「Randomized controlled trial」「急性呼吸促拍症候群」「急性肺損傷」「呼吸不全」「酸素吸入療法」「酸素飽和度」「パルスオキシメータ」「ランダム化比較試験」をキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月2 日までの文献を検索したところ2,016 件の研究が同定され,スクリーニングの結果RCT は0 件だった.本CQ で対象とした研究 該当なし. 資料一覧 ・資料PCQ8‒1 Search strategy.・資料PCQ8‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ8‒3 Evidence‒to‒Decision. 9 10 1) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428‒39. 参考文献
資料PCQ8—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/7/2) #1 Respiratory distress syndrome,adult[mh] OR adult respiratory distress syndrom*[tiab] OR acute respiratory distress syndrom*[tiab] OR ARDS[tiab] #2 acute lung injury[mh] OR acute lung injur*[tiab] OR ALI[tiab] #3 acute lung fail*[tiab] OR acute lung depression[tiab] #4 Critical Illness[mh] OR critically ill*[tiab] OR critical ill*[tiab] #5 Respiratory insufficiency[mh] OR Respiratory insufficiency[tiab] #6 #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 #7 Oxygen Inhalation Therapy[mh] OR oxygen therap*[tiab] #8 Oximetry[mh] OR Oximetr*[tiab] #9 P/F[tiab] OR PaO2/FiO2[tiab] OR Oxygen Saturation[tiab] OR SpO2[tiab] #10 #7 OR #8 OR #9 #11 #6 AND #10 #12 randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR clinical trials as topic [mesh: noexp] OR randomly [tiab] OR trial [ti] #13 #12 NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #14 #11 AND #13
CENTRAL(Search date:2020/7/2) #1 [mh "Respiratory distress syndrome,adult"] OR "adult respiratory distress syndrom":ti,ab OR "acute respiratory distress syndrom":ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "acute lung injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #3 "acute lung failure":ti,ab OR "acute lung depression":ti,ab #4 [mh "Critical Illness"] OR "critically ill":ti,ab OR "critical ill":ti,ab OR "critically illness":ti,ab OR "critical illness":ti,ab #5 [mh "Respiratory insufficiency"] OR "Respiratory insufficiency":ti,ab #6 {OR #1-#5} #7 [mh "Oxygen Inhalation Therapy"] OR "oxygen therapy":ti,ab #8 [mh Oximetry] OR Oximetry:ti,ab #9 "P/F":ti,ab OR "PaO2/FiO2" OR "Oxygen Saturation":ti,ab OR SpO2:ti,ab #10 {OR #7-#9} #11 #6 AND #10 #12 [mh Animals] NOT [mh Humans] #13 #11 NOT #12
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/2) #1呼吸窮迫症候群‐ 急性/TH OR 呼吸窮迫症候群/TA OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA OR RDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA OR 急性肺障害/TA OR 急性肺傷害/TA #3危篤/TH OR 危篤/TA OR 重症/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6酸素吸入療法/TH OR 酸素吸入療法/TA #7酸素飽和度測定/TH OR 動脈血酸素飽和度測定/TH OR 酸素飽和度/TA OR SpO2/TA
#8パルスオキシメーター/TA #9 "P/F"/TA OR "PaO2/FiO2"/TA #10 #6 OR #7 OR #8 OR #9 #11 #5 AND #10 #12 ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT=会議録除く) #13 #11 AND #12
資料PCQ8—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ重複した研究 n=392 除外基準に該当した研究 n=1,987 除外基準に該当した研究 n=24 除外基準に該当した研究n=5理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる1件0件2件2件0件 他のリソースから同定された研究 n=0データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=2,408 1,227件959件222件 検索で同定された研究 n=2,408 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=2,016 小児の適格性を評価した研究 n=29 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=5
資料PCQ8—3 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ8:小児ARDS 患者のSpO2の目標値をどのように設定するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論 文の定義に準ずる) 介 入:低SpO2管理比較対照:通常の管理主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,重篤な低酸素血症セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:高濃度酸素投与による管理は,肺線維化を助長する有害事象が報告されている.一 方で,低SpO2管理は生存率を向上させるのか,有害事象により予後を悪化させるのかは不明である.酸素飽和度の目標値に関して,小児ARDS 患者に対する介入研究および系統的レビューが現在までに存在しない.そのため,低SpO2管理の効果やエビデンスの確実性は不明である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない高濃度酸素投与による管理は,肺線維化を助長する有害事象が報告され ているが,低SpO2管理は生存率向上に寄与するか,また,低SpO2管理による有害事象はないか(許容できるものか)について,小児のARDS患者に対する介入研究および系統的レビューが現在までに存在せず,その効果やエビデンスの確実性は不明である.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度○大きい○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合
望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がない低酸素血症を許容する管理によって,人工呼吸器管理中の高い吸入酸素 濃度を避ける,人工呼吸器関連肺損傷(ventilator associated lung injury:VALI)を減少させるといった益が期待される.一方で,低SpO2管理によって安全域は狭くなり,低酸素血症に起因する臓器障害が増えることも懸念される.通常のSpO2管理と低SpO2管理の比較は行われておらず,エビデンスの確信性の記述は行えない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからないSpO2が通常よりも低いことを受け入れ難い患者,家族,医療従事者もい る可能性があり,「たぶんはい」とした.通常よりも低いSpO2での管理が必要なことを理解し受け入れられるように説明が必要である 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない通常よりも低いSpO2を容認する管理は人工呼吸器の設定のみで可能で ある.また,Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference (PALICC)のconsensus statement で記載されており,すでに日常臨床で実行されている.有害性などを考慮しても実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者に対する特定のSpO2目標値は推奨を提示できないが,臓器障害を生じるような高酸素血症や低酸素血症を避けられるようにSpO2目標値を設定している(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者のSpO2の目標値をどのように設定するか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定
義に準ずる).介 入 低SpO2管理.対 照 通常の管理.アウトカム 死亡,発達予後,VFD,入院日数,ICU 滞在日数,重篤な低酸素血症.解 説ARDS 患者の換気戦略は,組織や臓器への酸素供給を保ちつつ酸素毒性やVALI の発生を抑えることである.低い酸素飽和度を許容するというコンセプトは「permissive hypoxemia」といわれる.小児ARDS の患者に対して,一時的に酸素化を改善させることは長期的な予後を改善させることに関連しない1‒3).また,高濃度酸素の吸入,高酸素血症は活性酸素の産生から,肺胞上皮細胞を含む細胞傷害が懸念される.PALICC では,軽症小児ARDS に対してSpO2の目標値を92~97%とし,PEEP 10 cmH2O 未満とすることを推奨している.PEEP 10 cmH2O 以上を必要とする小児ARDS の患者に対して,SpO2 88~92%を目標とする低SpO2管理を考慮することを推奨しているが,これを支持する根拠がないことも記載されている.また,酸素化と換気の目標は換気補助による益と害を考慮して微調整することも推奨されている.重症の小児ARDS 患者でSpO2 100%を目指す必要はなく,高酸素血症は避けるべきである.Permissive hypoxemia には臓器障害の懸念があるため,SpO2を92%未満で管理する際には,中心静脈血酸素飽和度など酸素需給の指標をモニタリングすることが推奨されている4).2020 年に出版された『SSCG in children』では,敗血症に起因する小児ARDS の患者に対する酸素飽和度の目標値は記載されていない5).低SpO2管理を行う際には併存する疾患を考慮することも重要である.先天性心疾患を伴わない肺高血圧症ではSpO2 92%未満,PaO2<60 mmHg の小児は酸素の投与が妥当だとされている6).また,急性期頭蓋内疾患など低酸素血症の害が大きくなる疾患に関しても注意する必要がある.小児ARDS の患者に対して低SpO2管理と通常の管理を比較した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定該当する研究はなく,効果のバランスに関しては判定不能である.特定のSpO2を目標とする管理は人工呼吸器の設定変更のみで可能であり,すでに日常臨床で実行されていることから,受け入れや実行可能性に問題はないと考えられる.パネル会議事前会議において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者に対する特定のSpO2目標値は推奨できないが,高酸素血症と臓器障害を生じるような低酸素血症を避けられるようにSpO2目標値を設定している」が中央値8 点,見解不一致指数0.0000 でin our practice statement として合意に至った.パネル会議において,高酸素血症の意味が曖昧であるという意見が出た.そのため,推奨文を「小児ARDS 患者に対する特定のSpO2目標値は推奨を提示できないが,臓器障害を生じるような高酸素血症や低酸素血症を避けられるようにSpO2目標値を設定している」に変更し,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った.
付加的な考慮事項 なし. サブグループの検討事項 Subgroup considerations チアノーゼ性心疾患,肺高血圧,急性期の頭蓋内疾患など,低酸素血症によって大きなリスクが伴う症例では益と害について注意深い検討が必要である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 検討に使用されたエビデンスはないが,すでに日常診療で実行されている.コストに関しては特に問題は生じないと思われる.低酸素血症の有害性,認容性は患者背景によって異なると考えられるため,症例によって検討する必要がある.SpO2を100%で管理している場合,PaO2の変化を迅速に把握することが困難なことに注意する必要がある.一方で,SpO2が92%未満の時,中心静脈血酸素飽和度や乳酸値など,酸素需給の指標をモニタリングする必要がある.また,低SpO2管理を行う場合には,SpO2が目標値を下回った場合に迅速に介入できる必要がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって臨床上の問題として低酸素血症による臓器障害が増加していないかなど,更なる情報について収集する必要がある.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 小児を対象に低SpO2を目標とした管理の安全性と妥当性を調査した研究としてOxy‒PICU trialがある7).酸素投与を必要とする患者を対象として,SpO2>94%とSpO2 88~92%の管理を比較することを意図した研究であり,低SpO2を目標に管理をすることが安全であることが示唆されている.しかし,本研究はARDS 患者のみを対象としていない.また,低SpO2管理群の平均SpO2が94%と重症ARDS 患者の目標値を超えており,小児ARDS 患者にあてはめて考えることはできない.すなわち,小児ARDS を対象としたpermissive hypoxemia を評価した大規模研究は現在まで行われていない.小児ARDS の研究には,0 歳から18 歳まで含まれることがある.しかし,未熟性が問題になる可能性のある患者群と成人同様の体格を持つ患者では,患者間の解剖学的背景が大きく異なる.したがって,まずは小児ARDS の研究では患者の年齢を均一なものとする必要がある.さらに,小児ARDS の患者群で酸素化の目標値によって分けた患者群を比較したRCT が必要である.その上で, permissive hypoxemia について再定義し,ARDS に対する人工呼吸器管理の方法を統一した上で酸素化の目標値を決める必要がある.参考文献1) Curley MA, Hibberd PL, Fineman LD, et al. Effect of prone positioning on clinical outcomes in children with acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2005; 294:229‒37. 2) Dobyns EL, Anas NG, Fortenberry JD, et al. Interactive effects of high‒frequency oscillatory ventilation and inhaled nitric oxide in acute hypoxemic respiratory failure in pediatrics. Crit Care Med 2002;30:2425‒9.
3) El‒Nawawy A, Moustafa A, Heshmat H, et al. High frequency oscillatory ventilation versus conventional mechanical ventilation in pediatric acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled study. Turk J Pediatr 2017;59:130‒43. 4) Rimensberger PC, Cheifetz IM. Ventilatory support in children with pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S51‒60. 5) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving sepsis campaign international guidelines for the management of septic shock and sepsis‒associated organ dysfunction in children. Intensive Care Med 2020;46:10‒67. 6) Hansmann G, Koestenberger M, Alastalo T‒P, et al. 2019 updated consensus statement on the diagnosis and treatment of pediatric pulmonary hypertension:The European Pediatric Pulmonary Vascular Disease Network(EPPVDN), endorsed by AEPC, ESPR and ISHLT. J Heart Lung Transplant 2019;38:879‒901. 7) Peters MJ, Jones GAL, Wiley D, et al. Conservative versus liberal oxygenation targets in critically ill children:the randomised multiple‒centre pilot Oxy‒PICU trial. Intensive Care Med 2018;44:1240‒8.
背景,この問題の優先度 成人ARDS 患者に対する筋弛緩薬の使用は,肺胞への過剰なストレスを避け,バロトラウマの軽減や酸素化の改善が報告され,予後を改善することが示唆されている.しかし,自発呼吸を減少・消失させた治療を行うことによる合併症も多く報告されている.筋弛緩薬を用いて,自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理が,小児ARDS患者において有効かどうかを明らかにすることは重要な臨床課題である.したがって,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),中等症以上のARDS患者(論文のARDSの定義に準ずる).介入(I):筋弛緩薬使用あり(診断から48 時 間以内に使用).対照(C):筋弛緩薬使用なし.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),入院日数,人工呼吸器関連肺炎の増加. エビデンスの要約 該当の研究なし. エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの確実性の記述は行えない. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 筋弛緩薬は,人工呼吸器管理を要するARDS患者において,患者‒人工呼吸器非同調の減少,酸素消費量の低下,呼吸器系コンプライアンスおよび機能的残気量の増加,コンプライアンスの保たれた肺領域の過膨張の予防といった利点があると考えられている,一方で,筋弛緩薬にはICU acquired weakness(ICU‒AW)の発症のような有害性が考えられる.しかし,小児ARDS 患者において筋弛緩薬の効果と害のバランスの比較は行われていない.筋弛緩薬自体は日常臨床で使用されており,有害性を考慮しても受け入れ,実行可能性の問題はないと考えら 1 2 1 2 3 4 領域F 小児領域 中等症以上の小児ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するか? PCQ 9 中等症以上の小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示す ることはできないが,中等症以上の成人ARDS 患者の治療戦略に則り,早期 に筋弛緩薬が使用されることがある(in our practice statement). 推 奨
れる. パネル会議 事前投票において,推奨文「中等症以上の小児ARDS患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示することはできないが,中等症または重症の成人ARDS患者の治療戦略に則り,早期に筋弛緩薬が使用されている現状がある」,付帯事項「現時点で成人ARDS におけるRCT で使用されている筋弛緩薬はシスアトラクリウムであるが,本邦では2021 年1 月現在未承認薬であることに留意する」が,修正Delphi 法により,中央値8 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った.パネル会議において,筋弛緩薬の使用頻度を過大評価していること,シスアトラクリウムに言及する必要はないことが指摘された.そのため,推奨文を「中等症以上の小児ARDS患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示することはできないが,中等症または重症の成人ARDS 患者の治療戦略に則り,早期に筋弛緩薬が使用されることがある」,付帯事項なしとして,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った. サブグループの検討事項 サブグループとして,PALICC 定義におけるARDS の酸素化障害の重症度(軽症・中等症・重症)で分類した検討が必要である. 実施上の考慮事項 現時点で成人ARDS におけるRCT で使用されている筋弛緩薬はシスアトラクリウムであるが,本邦では2021 年1 月現在未承認薬であることに留意する.筋弛緩薬を使用した症例では,慎重に呼吸循環動態の変化をモニタリングする.関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ31 中等症もしくは重症の成人ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するべきか?」に記載されている.RCT 5 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,早期に筋弛緩薬を投与することが条件付きで推奨されている.詳細については,CQ31 を参照されたい.PALICCでは次のように記載されている.「鎮静のみでは効果的な人工換気を達成するには不十分な場合に,筋弛緩薬を必要最低限量使用し,効果をモニタリングしながら調整することが推奨されている(強い合意)1)」.PEMVECC では,「高い換気設定を要する最重度の拘束性/閉塞性病変の小児に対して,持続的な鎮静と筋弛緩薬の使用が推奨されている(強い合意)2)」.2020年の小児に対するSSCG では,「敗血症による重症ARDSに対して筋弛緩薬を使用することが提案されている(弱い推奨)3)」. 治療のモニタリングと評価 筋弛緩薬使用時は鎮静レベルが不十分であった場合に起こるPTSD などの発生が増えないか,筋弛緩薬の長期副作用としての神経障害や筋委縮がどの程度生じるのか,それらの重症度と回復期間はどのくらいなのか,などをモニタリングしなくてはならない.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 中等症以上の成人ARDS患者における筋弛緩薬は,複数のRCT により効果が害を上回る可能性が示唆されている.一方,小児領域では良 5 3 4 5 6 7
質なエビデンスはなく,その効果は不明である.未解決の課題として,筋弛緩薬の種類で効果が異なるのか,どの程度の筋弛緩深度が必要か,人工呼吸器誘発性横隔膜萎縮との関連はあるのか,などが挙げられる.また,小児特有の重要課題として発達予後への影響も検討するべきである.中等症以上の小児ARDS患者を対象とする臨床試験,RCT が必要である. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome,Adult」「Neuromuscular blockade」などをキーワードとしてPubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月23 日までの文献を検 索したところ1,880 件の研究が同定され,スクリーニングの結果採用されたRCT は0 件であった. 本CQ で対象とした研究 なし. 資料一覧 ・資料PCQ9‒1 Search strategy.・資料PCQ9‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ9‒3 Evidence‒to‒Decision. 8 9 10 1) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428‒39. 2) Kneyber MCJ, de Luca D, Calderini E, et al. Recommendations for mechanical venti- lation of critically ill children from the Paediatric Mechanical Ventilation Consensus Conference(PEMVECC). Intensive Care Med 2017;43:1764‒80. 3) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52‒106. 参考文献
資料PCQ9—1 Search strategy MEDLINE via PubMed(Search date:2020/6/23) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR Respiratory Insufficiency[mh] OR Severe Acute Respiratory Syndrome[mh] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR respiratory failure[tiab] OR ARDS [tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] #2 neuromuscular blockade[mh] OR neuromuscular blocking agents[mh] OR muscle relaxants, central[mh] OR neuromuscular blocker[tiab] OR neuromuscular blockade[tiab] OR neuromuscular blocking drug*[tiab] OR neuromuscular blocking agent*[tiab] OR muscle relaxant[tiab] OR paralytics[tiab] OR respiratory paralysis[tiab] #3 vecuronium OR pancuronium OR rocuronium OR atracurium OR cisatracurium OR succinylcholine OR curare OR rapacuronium OR mivacurium OR mivacron OR tracrium OR doxacurium OR nuromax OR bex OR norcuron OR zemuron OR pavulon OR tubocurarine OR gallamine OR flaxedil OR pipecuronium OR alcuronium OR toxiferine OR suxamethonium OR raplon #4 #2 OR #3 #5 #1 AND #4 #6 animals[mh] NOT humans[mh] #7 #5 AND #6 CENTRAL(Search date:2020/6/23) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR Respiratory Insufficiency[mh] OR Severe Acute Respiratory Syndrome[mh] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR respiratory failure[tiab] OR ARDS [tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] #2 neuromuscular blockade[mh] OR neuromuscular blocking agents[mh] OR muscle relaxants, central[mh] OR neuromuscular blocker[tiab] OR neuromuscular blockade[tiab] OR neuromuscular blocking drug*[tiab] OR neuromuscular blocking agent*[tiab] OR muscle relaxant[tiab] OR paralytics[tiab] OR respiratory paralysis[tiab] #3 vecuronium OR pancuronium OR rocuronium OR atracurium OR cisatracurium OR succinylcholine OR curare OR rapacuronium OR mivacurium OR mivacron OR tracrium OR doxacurium OR nuromax OR bex OR norcuron OR zemuron OR pavulon OR tubocurarine OR gallamine OR flaxedil OR pipecuronium OR alcuronium OR toxiferine OR suxamethonium OR raplon #4 #2 OR #3 #5 #1 AND #4 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/23) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/TA #4呼吸不全/TH OR 呼吸不全/TA #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6神経筋遮断/TH OR 神経筋遮断剤/TH OR 中枢性筋弛緩剤/TH OR 神経筋遮断/TA OR 弛緩/TA
#7 ("Vecuronium Bromide"/TH OR vecuronium/AL) OR (Pancuronium/TH OR pancuronium/AL) OR ("Rocuronium Bromide"/TH OR rocuronium/AL) OR ("Atracurium Besilate"/TH OR atracurium/AL) OR ("Cisatracurium Besilate"/TH OR cisatracurium/AL) OR (Succinylcholine/TH OR succinylcholine/AL) OR (Curare/TH OR curare/AL) OR ("Rapacuronium Bromide"/TH OR rapacuronium/AL) OR ("Mivacurium Chloride"/TH OR mivacurium/AL) OR ("Mivacurium Chloride"/TH OR mivacron/AL) OR ("Atracurium Besilate"/TH OR tracrium/AL) OR ("Doxacurium Chloride"/TH OR doxacurium/AL) OR ("Doxacurium Chloride"/TH OR nuromax/AL) OR bex/AL OR ("Vecuronium Bromide"/TH OR norcuron/AL) OR ("Rocuronium Bromide"/TH OR zemuron/AL) OR (Pancuronium/TH OR pavulon/AL) OR (Tubocurarine/TH OR tubocurarine/AL) OR ("Gallamine Triethiodide"/TH OR gallamine/AL) OR ("Gallamine Triethiodide"/TH OR flaxedil/AL) OR (Pipecuronium/TH OR pipecuronium/AL) OR (Alcuronium/TH OR alcuronium/AL) OR (Toxiferine/TH OR toxiferine/AL) OR (Succinylcholine/TH OR suxamethonium/AL) OR ("Rapacuronium Bromide"/TH OR raplon/AL) #8 #6 OR #7 #9 #5 AND #8 #10 (#9) AND (PT= 会議録除く)
資料PCQ9—2 フローダイアグラム データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,885 1,337件171件377件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=5 除外基準に該当した研究 n=1,799 除外基準に該当した研究 n=74 除外基準に該当した研究n=7理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる0件0件6件1件0件 検索で同定された研究 n=1,885 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=1,880 小児の適格性を評価した研究 n=81 系統的レビューに組み入れた研究 n=0 メタ解析に組み入れた研究 n=0 フルテキストで適格性を評価した研究 n=7 同定スクリーニング適格性組み入れ
資料PCQ9—3 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ9:中等症以上の小児ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),中等症以上の ARDS 患者(論文のARDS の定義に準ずる) 介 入:筋弛緩薬使用あり(診断から48 時間以内に使用)比較対照:筋弛緩薬使用なし主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,人工呼吸器関連肺炎 (ventilator—associated pneumonia:VAP)の増加 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS 患者に対する筋弛緩薬の使用は,肺胞への過剰なストレスを避け,バロトラ ウマの軽減や酸素化の改善が報告され,予後を改善することが示唆されている.しかし,自発呼吸を減少・消失させた治療を行うことによる合併症も多く報告されている.筋弛緩薬を用いて,自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理が有効かどうかを明らかにすることは重要な臨床課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない成人ARDS 患者に対する筋弛緩薬の使用は,肺胞への過剰なストレスを 避け,バロトラウマの軽減や酸素化の改善が報告され,予後を改善することが示唆されている.しかし,自発呼吸を減少・消失させた治療を行うことによる合併症も多く報告されている.筋弛緩薬を用いて,自発呼吸を減少・消失させる人工呼吸器管理が,小児ARDS 患者において有効かどうかを明らかにすることは重要な臨床課題であるが,小児ARDS 患者に対する介入研究および系統的レビューが現在までに存在せず,その効果やエビデンスの確実性は不明である.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか○小さい○中程度エビデンスの確実性に統合
○大きい○一概には言えない●わからない 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか○一概には言えない●わからないエビデンスの確実性に統合 エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低○中○高●研究がない筋弛緩薬は,人工呼吸器管理を要するARDS 患者において,患者—人工呼 吸器非同調の減少,酸素消費量の低下,呼吸器系コンプライアンスおよび機能的残気量の増加,コンプライアンスの保たれた肺領域の過膨張の予防といった利点があると考えられている.一方で,筋弛緩薬にはICU acquired weakness(ICU‒AW)の発症のような有害性が考えられる.しかし,小児ARDS 患者において筋弛緩薬の効果と害のバランスの比較は行われておらず,エビデンスの確実性の記述は行えない 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確実性や多様性があ る○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる
効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない●わからない該当の研究なし 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない筋弛緩薬の使用については予後を改善させる可能性がある一方で,ICU— AW など長期的な有害事象が起こり得ることを考慮すると,患者およびその家族の受け入れについては「たぶんはい」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないすでに人工呼吸器管理において一般的に使用されている薬剤であり,実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 中等症以上の小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示することはできないが,中等症以上の成人ARDS 患者の治療戦略に則り,早期に筋弛緩薬が使用されることがある(in our practice statement). 理 由 Justification 疑 問 中等症以上の小児ARDS 患者の早期に筋弛緩薬を使用するか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),重篤なARDS 患者(論
文のARDS の定義に準ずる).介 入 筋弛緩薬使用あり(診断から48 時間以内に使用).対 照 筋弛緩薬使用なし.アウトカム 死亡,発達予後,VFD,入院日数,人工呼吸器関連肺炎の増加.解 説成人ARDS 患者では,人工呼吸器関連肺損傷,患者‒人工呼吸器非同調を最小限とし,経肺圧や酸素消費量を低下させることを目的として筋弛緩薬が早期使用され1),複数のランドマークトライアルが施行されている2,3).本診療ガイドラインでは中等症以上の成人ARDS 患者の早期において,筋弛緩薬を投与することを提案している(弱い推奨/非常に低の確実性のエビデンス:GRADE 2D).一方,小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の有効性を検討したRCT はなく,知見の蓄積は十分ではない.現在までに小児ARDS に対する筋弛緩薬の使用に対しては以下の推奨がなされている.2015 年にThe Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference(PALICC)から,鎮静のみでは効果的な人工換気を達成するには不十分な場合に,筋弛緩薬を必要最低限量使用し,効果をモニタリングしながら調整することが,専門家のstrong agreement として推奨された4). 2020 年には,Surviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)から,敗血症による重症ARDS に対して筋弛緩薬を使用することが提案された(weak recommendation,very low quality of evidence)5)が,参照された研究は小児人工呼吸器装着患者を対象とした後方視的研究1 つにとどまる6).小児ARDS に対する筋弛緩薬の使用状況として,診断から72 時間以内に31%の患者で筋弛緩薬が持続投与され,重症群に限定すれば50%の患者で投与されていたと報告されている7).このように,現時点で中等症以上の小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の有無を比較した良質なエビデンスがないため,本CQ に対し明確な推奨の提示はできない.ゆえに,本CQ はエビデンスに基づく推奨ではなく,あくまで現状の診療の記述である.エビデンスの要約 該当の研究なし.エビデンスの確実性 該当の研究がないため,エビデンスの質の評価はできない.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定筋弛緩薬は,人工呼吸器管理を要するARDS 患者において,患者‒人工呼吸器非同調の減少,酸素消費量の低下,呼吸器系コンプライアンスおよび機能的残気量の増加,コンプライアンスの保たれた肺領域の過膨張の予防といった利点があると考えられている,一方で,筋弛緩薬にはICU‒AWの発症のような有害性が考えられる.しかし,小児ARDS 患者において筋弛緩薬の効果と害のバランスの比較は行われておらず,エビデンスの確信性の記述は行えない.筋弛緩薬自体は日常臨床で使用されており,有害性を考慮しても受け入れ,実行可能性の問題はないと考えられる.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「中等症以上の小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示することはできないが,中等症または重症の成人ARDS 患者の治療戦略に則り,早期に筋弛緩薬が使用されている現状がある」,付帯事項「現時点で成人ARDS におけるRCT で使用されている筋弛緩薬はシスアトラクリウムであるが,本邦では2021 年1 月現在未承認薬であることに留意する」が,中央値8 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statementとして合意に至った.パネル会議において,筋弛緩薬が使用されている頻度を過大評価している可能性がある,推奨文内ではシスアトラクリウムに言及する必要はないという意見が出た.そのため,推奨文を「中等症
以上の小児ARDS 患者に対する筋弛緩薬の早期使用の推奨を提示することはできないが,中等症または重症の成人ARDS 患者の治療戦略に則り,早期に筋弛緩薬が使用されることがある」に変更し,付帯事項をなしとして,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 でin our practice statement として合意に至った.付加的な考慮事項 なし. サブグループの検討事項 Subgroup considerations サブグループとして,PALICC 定義におけるARDS の酸素化障害の重症度(軽症・中等症・重症)で分類した検討が必要である. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 現時点で成人ARDS におけるRCT で使用されている筋弛緩薬はシスアトラクリウムであるが,本邦では2021 年1 月現在未承認薬であることに留意する.筋弛緩薬を使用した症例では,慎重に呼吸循環動態の変化をモニタリングする. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 筋弛緩薬使用時は鎮静レベルが不十分であった場合に起こるPTSD などの発生が増えないか,筋弛緩薬の長期副作用としての神経障害や筋委縮がどの程度生じるのか,それらの重症度と回復期間はどのくらいなのか,などをモニタリングしなくてはいけない.また,それ以外にも臨床上の問題がないか,本診療ガイドライン公表後にアンケートなどで実施状況についてモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 中等症以上の成人ARDS 患者における筋弛緩薬は,複数のRCT により効果が害を上回る可能性が示唆されている.一方,小児領域では良質なエビデンスはなく,その効果は不明である.未解決の課題として,筋弛緩薬の種類で効果が異なるのか,どの程度の筋弛緩深度が必要か,人工呼吸器誘発性横隔膜萎縮との関連はあるのか,などが挙げられる.また,小児特有の重要課題として発達予後への影響も検討するべきである.中等症以上の小児ARDS 患者を対象とする臨床試験,RCT が必要である.参考文献1) Rosenberg L, Traube C. Sedation strategies in children with pediatric acute respiratory distress syndrome(PARDS). Ann transl Med 2019;7:509. 2) Papazian L, Forel JM, Gacouin A, et al. Neuromuscular blockers in early acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2010;363:1107‒16. 3) Moss M, Huang DT, Brower RG, et al. Early neuromuscular blockade in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 2019;380:1997‒2008. 4) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428‒39. 5) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in
Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52‒106. 6) Da Silva PS, Neto HM, de Aguiar VE, et al. Impact of sustained neuromuscular blockade on outcome of mechanically ventilated children. Pediatr Int 2010;52:438‒43. 7) Rowan CM, Klein MJ, Hsing DD, et al. Early use of adjunctive therapies for pediatric acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2020;201:1389‒97.
背景,この問題の優先度 腹臥位管理は,病態生理学的には呼吸メカニクス,酸素化,血行動態の改善,また,人工呼吸器関連肺損傷(VILI╱VALI)の防止などの効果が期待され,ARDS に対する治療として有効な可能性がある.しかしながら,過去の研究の結果は一貫していない.したがって,小児ARDS 患者において腹臥位管理の有効性を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),中等症以上のARDS(論文のARDS の定義に準ずる).介入(I):腹臥位を行う.対照(C):腹臥位を行わない.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),気管チューブのトラブル. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に一致したランダム化比較試験(RCT)が1 件施行されていた.挿管されたP╱F ratio<300 の患者が対象〔研究参加時のP╱F ratio 平均値(SD)は仰臥位群105 (48),腹臥位群94(41)〕であった.益のアウトカムとして,28 日死亡(1RCT: n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり2 人減少(95% CI:59 人減少~217 人増加),発達予後不良(1RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり103 人減少(95% CI:174 人減少~75 人増加),VFD(1RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で平均 1 2 1 2 領域F 小児領域 中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うか? PCQ 10 中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うことを条件付きで推奨する (条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 小児の腹臥位管理には施設の習熟を要する.施設ごとに適応を考慮する必要がある.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静/筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある. 推 奨 付帯事項
0.3 日短縮(95% CI:3.63 日短縮~3.03 日延 長)であった.以上から介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,気管チューブトラブル(1RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり22 人減少(95% CI:78 人減少~175 人増加)であり,予想される望ましくない効果は,「わずか」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果の結果は介入により「28 日死亡」で1,000 人あたり2 人,「発達予後不良」で1,000 人あたり103 人減少した.また,「VFD」は0.3 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「低」「低」「非常に低」であった.一方,望ましくない効果の結果は介入により「気管チューブトラブル」で1,000 人あたり22 人減少し,エビデンスの確実性は「低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 腹臥位は,発達予後を改善させる益があり,気管チューブのトラブルを悪化させる害は増加しない.体格の小さい小児において腹臥位への体位変換に必要な人的資源は多くないと考えられるが,安全な管理のためには施設の習熟を要することから,受け入れや実行可能性についてはたぶん可能と判断した.パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「中等症以上の小児ARDS患者に腹臥位を行うことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「成人と異なり,小児の体格は,新生児から成人まで幅が広いため,体位交換を含め腹臥位管理を行うための人的資源は症例ごとに異なる可能性がある.小児体格であれば腹臥位による褥瘡のリスクが成人より低いと考えられるので12~24 時間の腹臥位管理が可能である」が中央値8 点,見解不一致指数0.1639 で合意に至った.パネル会議において,腹臥位管理は習熟度を要する管理法であり適切な鎮静度の達成とそのモニタリングが重要であるという意見,および腹臥位管理時間について根拠の強さに懸念が示された.そのため,付帯事項を「小児の腹臥位管理には施設の習熟を要する.施設ごとに適応を考慮する必要がある.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静╱筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある」に変更し,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値8 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った. サブグループの検討事項 サブグループとして「乳幼児」を設定すると,成人より長時間の腹臥位管理が可能となり,効果が上がる可能性がある. 実施上の考慮事項 今回,検討に使用されたエビデンスにおいて腹臥位は,腹臥位に習熟した米国のPICU で実施されていた.小児の腹臥位管理には施設の習熟を要することに留意する.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静╱筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について 3 4 3 4
検討する余地がある.体格によって,体位交換など腹臥位管理を行うための人的資源に差が出る可能性がある. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ35 中等症または重症の成人ARDS 患者に腹臥位を行うべきか?」に記載されている.RCT 7 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,長時間の腹臥位を行うことが条件付きで推奨されている.詳細については, CQ35 を参照されたい.PALICC1)では次のよう に記載されている.「腹臥位をルーチンに施行することは推奨できないが,重症小児ARDSに対するオプションになり得る(弱い合意)」. 2020 年の小児に対するSSCG2)では,腹臥位による酸素化の改善が期待できることから,敗血症による重症ARDSに対して腹臥位管理を試すことが提案された(弱い推奨).しかし,腹臥位による効果のメカニズムの解明は今後も研究課題であるとしている. 治療のモニタリングと評価 腹臥位を行った場合に,十分な継続時間が確保できていたか,計画外抜管や褥瘡や神経麻痺が起こらなかったか,鎮静薬の投与量は増加しなかったか,人的資源が対象患者に多く投入されることで,周囲に問題が生じなかったか,などを本診療ガイドライン公表後にアンケート調 査などでモニタリングする必要がある. 今後の研究の可能性 本SR で採用された論文は挿管されたP╱F ratio<300 の小児患者が対象となっており,中等症以上の小児ARDS 患者を対象とした多施設RCTが必要である.現在進行中のRCT,PROSpect(NCT03896763)の結果を待ちたい. 文献検索式と文献選択 「Respiratory Distress Syndrome」「Prone position」をキーワードとしてPubMed (2020 年6 月28 日),Cochrane CENTRAL (2020 年6 月22 日)および医中誌(2020 年6月22 日)で文献を検索したところ1,330 件の研究が同定され,スクリーニングの結果1 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Curley 20053). 資料一覧 ・資料PCQ10—1 Search strategy.・資料PCQ10—2 フローダイアグラム.・資料PCQ10—3 Risk of bias.・資料PCQ10—4 Forest plot.・資料PCQ10—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ10—6 Evidence—to—Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428—39. 2) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis—Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52—106. 3) Curley MA, Hibberd PL, Fineman LD, et al. Effect of prone positioning on clinical outcomes in children with acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2005;294:229—37. 参考文献
資料PCQ10—1 Search strategy Medline via PubMed(Search date:2020/6/28) #1 "Respiratory Distress Syndrome, Adult"[Mesh] OR "Acute Respiratory Distress"[Title/Abstract] OR ARDS[Title/Abstract] OR "Acute Lung Injury"[Mesh] OR Acute Lung Injur*[Title/Abstract] #2 "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"[Mesh] #3 #1 OR #2 #4 "Prone Position"[Mesh] OR Prone Position*[Title/Abstract] #5 #3 AND #4 CENTRAL(Search date:2020/6/22) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR "acute respiratory distress":ti,ab OR ARDS:ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh "Prone Position"] OR "prone position":ti,ab #5 #3 AND #4 Trials Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/22) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3 #1 OR #2 #4腹臥位/TH OR 腹臥位/TA #5 #3 AND #4 #6 (#5) AND (PT= 会議録除く)
資料PCQ10—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,362 1,008件118件236件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=32 除外基準に該当した研究 n=1,134 対象が除外基準に該当した研究 n=169 除外基準に該当した研究n=26理由:・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる0件15件9件2件 検索で同定された研究 n=1,362 重複研究を除外した研究 n=1,330 除外基準を除外した研究 n=196 系統的レビューに組み入れた研究 n=1 メタ解析に組み入れた研究 n=1 フルテキストで適格性を評価した研究 n=27
資料PCQ10—3 Risk of bias 死 亡VFD 発達予後気管チューブのトラブル
褥 瘡
資料PCQ10—4 Forest plot 死 亡 VFD 発達予後 気管チューブのトラブル
褥 瘡
資料PCQ10—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討Prone position Placebo相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡a 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし4/51 (7.8%) 4/50 (8.0%) RR 0.98 (0.26~3.71) 1,000 人あたり2 人減少(59 人減少~ 217 人増加) ++○○ 低重大 VFD 1 ランダム 化試験深刻c 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし51 50 —平均0.3 日短縮(3.63 日短縮~ 3.03 日延長) +○○○非常に低重大 発達予後d 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし6/51 (11.8%) 11/50 (22.0%) RR 0.53 (0.21~1.34) 1,000 人あたり103 人減少(174 人減少~ 75 人増加) ++○○ 低重大 気管チューブのトラブル 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし4/51 (7.8%) 5/50 (10.0%) RR 0.78 (0.22~2.75) 1,000 人あたり22 人減少(78 人減少~ 175 人増加) ++○○ 低重大 褥 瘡 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻bなし13/50 (26.0%) 13/51 (25.5%) RR 1.02 (0.53~1.98) 1,000 人あたり5 人増加(120 人減少~ 250 人増加) ++○○ 低重要 CI:信頼区間,RR:リスク比,VFD:人工呼吸器非使用日数,OIS:最適情報量.説 明a.死亡は入院より28 日間の死亡である. b.サンプルサイズは101 であり,OIS を満たさず,95% CI が利益と害に関する臨床的に意味のある閾値の両方を含んでいる. c.1 つのRoB 項目(研究参加者と治療提供者のブラインド化)で深刻と判断された. d.発達予後は,PCPC もしくはPOPC が入院時と比較して退院時に悪化したもの. 注)入院日数,酸素化の改善に関するアウトカムは報告した研究がなかった.
資料PCQ10—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ10:中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),中等症以上の ARDS(論文のARDS の定義に準ずる) 介 入:腹臥位を行う比較対照:腹臥位を行わない主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,気管チューブのトラブ ル(計画外抜管,閉塞,位置異常) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:腹臥位管理は,病態生理学的には呼吸メカニクス,酸素化,血行動態の改善,また, 人工呼吸器関連肺損傷(VILI/VALI)の防止などの効果が期待され,ARDS に対する治療として有効な可能性がある.しかしながら,過去に多くのRCT とそれらのメタ解析が行われてきたが,結果は一貫しておらず,臨床的な効果については議論の余地がある.腹臥位管理は,特別な設備を要さず実施可能な治療法であり,その有効性について検討することは優先度が高いと考えられる 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない腹臥位管理は,病態生理学的には呼吸メカニクス,酸素化,VILI/VALI の 防止などの効果が期待され,ARDS に対する治療として有効な可能性がある.腹臥位管理は,成人領域では有効性が示されているほか,特別な設備を要さず実施可能な治療法である上,小児では比較的容易に行えることから,その有効性を小児において検討することは優先度が高いと考えられる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きいSR の結果,PICO に一致したRCT が1 件1)施行されており,挿管された P/F ratio<300 の患者が対象〔研究参加時のP/F ratio 平均値(SD)は仰臥位群105(48),腹臥位群94(41)〕であった.このRCT を用いたメタ解析を施行した
○一概には言えない○わからない益のアウトカムとして,28 日死亡(1 RCT:n=101)に関する効果推 定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり2 人減少(95% CI:59 人減少~217 人増加),発達予後不良(1 RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり103 人減少(95% CI:174 人減少~75 人増加),VFD(1 RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で平均差0.3 日短縮(95% CI:3.63 日短縮~3.03 日延長)であった.以上から,介入による望ましい効果を「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,気管チューブトラブル(1 RCT:n=101)に関 する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり22 人減少(95% CI:78 人減少~175 人増加)であり,予想される望ましくない効果は,「わずか」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値(the relative importance or values of the main outcomes of interest) アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 28 日死亡重大++○○ 低 発達予後不良重大++○○ 低 VFD重大+○○○非常に低 気管チューブのトラブル(計画外抜去,閉塞,位置異常)重大++○○ 低 エビデンスの確実性望ましい効果の結果は介入により「28 日死亡」で1,000 人あたり2 人減少,「発達予後不良」で1,000 人あたり103 人減少した.また,「VFD」は0.3 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「低」,「低」,「非常に低」であった.一方,望ましくない効果の結果は介入により「気管チューブトラブル」で1,000 人あたり22 人減少し,エビデンスの確実性は「低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の
方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡をはじめとする本CQ のアウトカムに対して重要な不確実性や多様 性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからないアウトカム対 照介 入絶対差相対効果 (RR) (95% CI) 28 日死亡4/50 (8.0%) 4/51 (7.8%) 2 人減少/ 1,000 人(59 人減少~ 217 人増加) 0.98 (0.26~3.71) 発達予後 不良11/50 (22.0%) 6/51 (11.8%) 103 人減少/ 1,000 人 (174 人減少~ 75 人増加) RR 0.53 (0.21~1.34) VFD MD 0.3 日短縮 (3.63 日短縮~ 3.03 日延長) 気管チューブ トラブル(計画外抜去,閉塞,位置異常) 5/50 (10.0%) 4/51 (7.8%) 22 人減少/ 1,000 人 (78 人減少~ 175 人増加) RR 0.78 (0.22~2.75)
判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない 以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない腹臥位は体位変換を実施するのみの治療法である一方,安全に実施する には施設の習熟度を要することから,患者およびその家族の受け入れは「たぶんはい」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない成人に比して体格が小さい小児では腹臥位への体位変換に必要な人的資 源は多くないと考えられるが,小児の腹臥位管理には施設の習熟を要し,施設ごとに適応を考慮する必要がある.また,浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある一方で,深鎮静/筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある.以上より,実行可能性については「たぶんはい」と判断した
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 結 論 推 奨 Recommendation 中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 小児の腹臥位管理には施設の習熟を要する.施設ごとに適応を考慮する必要がある.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静/筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある. 理 由 Justification 疑 問 中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),中等症以上のARDS (論文のARDS の定義に準ずる).介 入 腹臥位.アウトカム 死亡,発達予後,VFD,気管チューブのトラブル.エビデンスの要約SR の結果,PICO に一致したRCT が1 件1)施行されており,挿管されたP╱F ratio<300 の患者が対象〔研究参加時のP╱F ratio 平均値(SD)は仰臥位群105(48),腹臥位群94(41)〕であった.このRCT を用いたメタ解析を施行した.
益のアウトカムとして,28 日死亡(1 RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり2 人減少(95% CI:59 人減少~217 人増加),発達予後不良(1 RCT: n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり103 人減少(95% CI:174 人減少~75 人増加),VFD(1 RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で平均差0.3 日短縮(95% CI:3.63 日短縮~3.03 日延長)であった.以上から介入による望ましい効果を「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,気管チューブトラブル(1 RCT:n=101)に関する効果推定値は,「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり22 人減少(95% CI:78 人減少~175 人増加)であり,予想される望ましくない効果は,「わずか」と判断した.以上から,介入による効果が害よりも大きいかどうかに関して,「たぶん介入が有利」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果の結果は介入により「28 日死亡」で1,000 人あたり2 人,「発達予後不良」で1,000人あたり103 人減少した.また,「VFD」は0.3 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「低」,「低」,「非常に低」であった.一方,望ましくない効果の結果は介入により「気管チューブトラブル」で1,000 人あたり22 人減少し,エビデンスの確実性は「低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定腹臥位は,発達予後を改善させる益があり,気管チューブのトラブルを悪化させる害は増加しない.体格の小さい小児において腹臥位への体位変換に必要な人的資源は多くないと考えられるが,安全な管理のためには施設の習熟を要することから,受け入れや実行可能性についてはたぶん可能と判断した.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「中等症以上の小児ARDS 患者に腹臥位を行うことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「成人と異なり,小児の体格は,新生児から成人まで幅が広いため,体位交換を含め腹臥位管理を行うための人的資源は症例ごとに異なる可能性がある.小児体格であれば腹臥位による褥瘡のリスクが成人より低いと考えられるので12~24 時間の腹臥位管理が可能である」が中央値8 点,見解不一致指数0.1639 で合意に至った.パネル会議において,付帯事項として,腹臥位管理が習熟度を要する管理法であることや適切な鎮静度の達成とそのモニタリングが重要であることについて言及するべきであるという意見が出た.また,12~24 時間の腹臥位管理時間について根拠の強さに懸念が示された.そのため,付帯事項を「小児の腹臥位管理には施設の習熟を要する.施設ごとに適応を考慮する必要がある.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静╱筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある」に変更し,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値8 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.付加的な考慮事項小児の腹臥位管理には施設の習熟を要する.施設ごとに適応を考慮する必要がある.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静╱筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある.
サブグループの検討事項 Subgroup considerations サブグループとして「乳幼児」をとると,成人より長時間の腹臥位管理が可能となり,効果が上がる可能性がある. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 今回検討に使用されたエビデンスにおいて,腹臥位はthe Pediatric Acute Lung Injury and Sepsis Investigators network に参加しているアメリカのPICU で実施されており,小児の腹臥位管理には施設の習熟を要することに留意する.浅鎮静下での実行は危険を伴う場合がある.深鎮静╱筋弛緩薬を使用する際には,これらに関連した害について検討する余地がある.体格によって,体位交換など腹臥位管理を行うための人的資源に差が出る可能性がある. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 腹臥位を行った場合に,十分な継続時間が確保できていたか,計画外抜管や褥瘡や神経麻痺が起こらなかったか,鎮静薬の投与量は増加しなかったか,人的資源が対象患者に多く投入されることで,周囲に問題が生じなかったか,などを本診療ガイドライン公表後にアンケート調査などでモニタリングする必要がある. 研究の可能性 Research priorities 本SR で採用された論文は挿管されたP╱F ratio<300 の小児患者が対象となっており,中等症以上の小児ARDS 患者を対象とした多施設RCT が必要である.現在進行中のRCT,PROSpect (NCT03896763)の結果を待ちたい.参考文献1) Curley MA, Hibberd PL, Fineman LD, et al. Effect of prone positioning on clinical outcomes in children with acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2005; 294:229—37.
背景,この問題の優先度 ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.その病態には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全などの要因が関与している.また,小児ARDSにおいては肺高血圧に伴う右心不全を呈することがあり,一部に心房間シャントを合併しているケースもある.このような病態に対し肺血管拡張作用がある一酸化窒素の吸入が有効である可能性があり,一酸化窒素吸入により酸素化が改善した報告がある.一方で,一酸化窒素吸入によっても人工呼吸器装着日数や死亡率を改善しないとの報告もある.したがって,小児ARDS患者において一酸化窒素吸入に関するSR を行うことは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い.解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定義に準ずる).介入(I):一酸化窒素吸入療法を行う.対照(C):一酸化窒素吸入療法を行わない.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),入院日数,重篤な副作用. エビデンスの要約:採用された3 件のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析の結果,一酸化窒素吸入療法による益のアウトカムとして,死亡(3RCT: n=177)は1,000 人あたり54 人減少(95% CI:237 人減少~409 人増加),28 日VFD 1 2 1 2 領域F 小児領域 小児ARDS 患者に一酸化窒素吸入療法を使用するか? PCQ 11 小児ARDS患者に対する一酸化窒素吸入療法をルーチンでは実施しないこと を条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). ただし,限定的な状況においては治療の実施を容認され得る.具体例として,体外式膜型人工肺導入までの一時的な使用や,ほかに治療法がなく高い死亡率が予想されるような状況が挙げられる.ARDS に対する一酸化窒素吸入療法は保険適用外使用であり,使用する場合は,施設における倫理委員会の承認を得ておくことが望ましい. 推 奨 付帯事項
(2RCT:n=71)は平均4.90 日延長(95% CI:0.78 日延長~9.03 日延長)した.95% CIが広く,短期死亡が1,000人あたり409人増加する可能性もあるが,臨床的に有意義な益の効果が生じる可能性もある.予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,重篤な副作用(3RCT:n=177)は1,000 人あたり10 人減少(95% CI:21 人減少~99 人増加)した.しかし,介入により1,000 人あたり99 人増加する可能性もあるために,予想される望ましくない効果は「わずか」とした. エビデンスの確実性 すべての望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も高いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 メタ解析の結果,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,「たぶん介入(一酸化窒素吸入療法を行う)が有利」と判断した.しかし,予想される正味の効果が不確実であること,および治療の実行可能性は困難な施設も少なくないことを考慮し,ルーチンでは実施しないことを提案する判断に至った. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者に対する一酸化窒素吸入療法をルーチンでは実施しないことを提案する(GRADE 2C,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「低」)」,付帯事項「ただし,限定的な状況においては治療の実施を容認され得る.具体例として,体外式膜型人工肺導入までの時間を稼ぐ状況や,ほかに治療法がなく高い死亡率が予想されるような状況が挙げられる. ARDS に対する一酸化窒素吸入療法は保険外使用であり,使用する場合は,施設における倫理委員会の承認を得ておくことが望ましい」が中央値7.0 点,見解不一致指数0.3738 で合意に至った.パネル会議において,付帯事項内の表現を微修正したため,再投票を行った.修正Delphi法により,中央値7.0点,見解不一致指数0.3738 で合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 もし,一酸化窒素吸入療法を導入する場合は,施行による合併症(腎機能障害,循環動態の悪化,肺出血など)に対応が可能で,体外式膜型人工肺などの小児ARDS のrescue therapy の経験のある環境〔小児集中治療室(PICU)など〕で行うことが望ましい.そのために,重篤小児を移送する病院間搬送医療も必要となる.当介入による合併症としてメトヘモグロビン血症があり,介入にあたり血液ガス分析などによる定期的な評価が望ましい.またARDS に対する当介入は保険適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認を要する. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ40 ARDS 患者に一酸化窒素吸入を使用するか?」に記載されている.RCT 7 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,一酸化窒素吸入を使用しないことが条件付きで推奨されている.詳細については,CQ40 を参照されたい.PALICC1)では,小児ARDS 患者に対する一酸化窒素吸入療法をルーチンでは使用しないことを推奨している(強い合意).一方で, 3 4 5 3 4 5
肺高血圧症や右心不全症例での一酸化窒素吸入の使用や,重症ARDS症において体外式膜型人工肺導入までの一時的な使用においては使用してもよいかもしれないとしている.2020 年の小児に対するSSCG2)では,敗血症状による小児ARDSに対して一酸化窒素吸入療法をルーチンでは使用しないことが推奨されている(強い推奨).一方で,他の酸化を改善させる手段をとった後も,重度の低酸素血症が続く場合にレスキュー手段として使用してみてもよいとしている(弱い推奨). 治療のモニタリングと評価 死亡率に加え,合併症・費用・体外式膜型人工肺の導入率╱回避率・病院間搬送の有無をレジストリーでモニターすることが望ましい.特に,当介入による腎機能障害は採用したRCTでは十分に評価されておらずモニタリングが必要である. 今後の研究の可能性 メタ解析に採用された3 研究のうち2 つは,いわゆる肺保護戦略が標準治療として普及する以前に行われていため,近年のARDS標準治療の中での一酸化窒素吸入療法の効果は検証されていない.また,近年ARDS患者に対して,筋弛緩薬,腹臥位,体外式膜型人工肺などの使用が増加しており,これらの支持療法の中で一酸 化窒素吸入療法の位置づけに関するデータも十分でない.今後,一酸化窒素吸入療法の効果が期待しやすい群(右心不全症例や一酸化窒素吸入療法への反応群)に限定した研究の可能性が示唆されている. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「Nitric Oxide」「Randomized controlled trial」をキーワードとして, Pubmed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月4 日までの文献を検索したところ,720 件の研究が同定され,スクリーニングの結果3 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Ream 19993), Bronicki 20154), Dobyns 19995) (PMID:10190913). 資料一覧 ・資料PCQ11—1 Search strategy.・資料PCQ11—2 フローダイアグラム.・資料PCQ11—3 Risk of bias.・資料PCQ11—4 Forest plot.・資料PCQ11—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ11—6 Evidence—to—Decision. 6 7 8 9 10 1) Tamburro RF, Kneyber MC. Pulmonary specific ancillary treatment for pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S61—72. 2) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis—Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med 2020;21:e52—106. 3) Ream RS, Hauver JF, Lynch RE, et al. Low—dose inhaled nitric oxide improves the oxygenation and ventilation of infants and children with acute, hypoxemic respiratory failure. Crit Care Med 1999;27:989—96. 4) Bronicki RA, Fortenberry J, Schreiber M, et al. Multicenter randomized controlled 参考文献
trial of inhaled nitric oxide for pediatric acute respiratory distress syndrome. J Pediatr 2015;166:365—9.e1. 5) Dobyns EL, Cornfield DN, Anas NG, et al. Multicenter randomized controlled trial of the effects of inhaled nitric oxide therapy on gas exchange in children with acute hypoxemic respiratory failure. J Pediatr 1999;134:406—12.
資料PCQ11—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/4) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR Respiratory Distress Syndrome, Newborn[mh] OR ARDS[tiab] OR Acute Lung Injury[tiab] OR Acute Hypoxemic Respiratory Failure[tiab] #2 Nitric oxide[mh] OR Nitric oxide[tiab] #3 #1 AND #2 #4 (randomized controlled trial [pt] OR controlled clinical trial [pt] OR randomized [tiab] OR placebo [tiab] OR drug therapy [sh] OR randomly [tiab] OR trial [tiab] OR groups [tiab]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #5 #1 AND #2 AND #4
CENTRAL(Search date:2020/7/4) #1 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Adult] explode all trees #2 MeSH descriptor: [Respiratory Distress Syndrome, Newborn] explode all trees #3 (ARDS):ti,ab,kw #4 ("Acute Lung Injury"):ti,ab,kw #5 ("Acute Hypoxemic Respiratory Failure"):ti,ab,kw #6 ("acute respiratory distress syndrome"):ti,ab,kw #7 {OR #1-#6} #8 MeSH descriptor: [Nitric Oxide] explode all trees #9 ("nitric oxide"):ti,ab,kw #10 #8 OR #9 #11 #7 AND #10
Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/7/4) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3 #1 OR #2 #4一酸化窒素/TH OR 一酸化窒素/TA #5 #3 AND #4 #6 ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT= 会議録除く) #7 #5 AND #6
資料PCQ11—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れ重複した研究 n=108 除外基準に該当した研究 n=664 除外基準に該当した研究 n=25 除外基準に該当した研究n=28理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる17件2件0件9件0件 データベース検索で同定された研究MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=828 643件170件15件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=828 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=720 小児の適格性を評価した研究 n=56 系統的レビューに組み入れた研究 n=3 メタ解析に組み入れた研究 n=3 フルテキストで適格性を評価した研究 n=31
資料PCQ11—3 Risk of bias 死 亡VFD 酸素化の改善重篤な副作用
資料PCQ11—4 Forest plot 死 亡 VFD 酸素化の改善 重篤な副作用
資料PCQ11—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者の数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討NO Control相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡a 3 ランダム 化試験深刻b深刻c 深刻で ない深刻dなし27/85 (31.8%) 33/92 (35.9%) RR 0.85 (0.34~2.14) 1,000 人あたり54 人減少(237 人減少~ 409 人増加) +○○○非常に低重大 発達予後 0 — — — — — — — — — — — 重大 VFD(28 日) 2 ランダム 化試験深刻e 深刻で ない深刻で ない深刻fなし34 37 —平均4.90 日延長(0.78 日延長~ 9.03 日延長) ++○○ 低重大 入院日数 0 — — — — — — — — — — — 重大 ICU 滞在日数 0 — — — — — — — — — — — 重要 酸素化の改善(PF 比12 時間後) 1 ランダム 化試験深刻g 深刻で ない深刻で ない深刻hなし53 55 —平均24 高い(3.46 高い~ 44.54 高い) ++○○ 低重要 重篤な副作用 3 ランダム 化試験深刻i深刻で ない深刻で ない深刻dなし1/85 (1.2%) 2/92 (2.2%) RR 0.52 (0.05~5.55) 1,000 人あたり10 人減少(21 人減少~ 99 人増加) ++○○ 低重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,VFD:人工呼吸器非使用日数,OIS:最適情報量.説 明a.死亡は28 日死亡,期間の記載なしの死亡を統合したものである. b.Bronicki 2015 は症例数が多く,研究が途中で中止になっていること,患者背景に有意差はないが,呼吸管理やECMO の決定など,施設間でのばらつきがあることを考慮し,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. c.I2=45%であり,SR に含まれる各研究の結果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. d.総サンプルサイズが177 であり,OIS を満たさない.よって,十分な検出力がないと考えた.また,95% CI が治療閾値をまたいでいるため,「非常に深刻」と判断し,2 段階ダウンした. e.サンプル数が多いBronicki 2015 は,患者背景に有意差はないが,呼吸管理やECMO の決定など,施設間でのばらつきがあるため,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. f.総サンプルサイズが71 であり,OIS を満たさない.よって,十分な検出力がないと考え,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. g.pH のデータが重症度に比して正常範囲内にある一方で,PaCO2のデータは大きく異なっている.SEM で報告しているのに数字が大き過ぎる項目がある.そのため「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. h.総サンプルサイズが108 であり,OIS を満たさない.よって,十分な検出力がないと考え,「深刻」と判断し, 1 段階ダウンした. i.Bronicki 2015 は研究が途中で中止になっているため「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. 注)発達予後,入院日数,ICU 滞在日数のアウトカムは報告した研究がなかった.
資料PCQ11—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ11:小児ARDS 患者に一酸化窒素吸入療法を使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論 文の定義に準ずる) 介 入:一酸化窒素吸入療法を行う比較対照:一酸化窒素吸入療法を行わない主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,重篤な副作用セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.その病態 には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.このため,肺血管拡張作用がある一酸化窒素の吸入が有効である可能性があり,一酸化窒素吸入により酸素化が改善した報告がある.一方で,一酸化窒素吸入によっても人工呼吸器装着日数や死亡率を改善しないとの報告もある.したがって,一酸化窒素吸入に関するSR を行うことは重要臨床課題といえる 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態であ る.その病態には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全などの要因が関与している.また,小児ARDS においては肺高血圧に伴う右心不全を呈することがあり,一部に心房間シャントを合併しているケースもある.このような病態に対し肺血管拡張作用がある一酸化窒素の吸入が有効である可能性があり,一酸化窒素吸入により酸素化が改善した報告がある.一方で,一酸化窒素吸入によっても人工呼吸器装着日数や死亡率を改善しないとの報告もある.したがって,一酸化窒素吸入に関するSR を行うことは重要臨床課題といえる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずかSR の結果,3 件のRCT1—3)が採用され,メタ解析に用いた
●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからない益のアウトカムとして,(短期)死亡(3 RCT1—3):n=177)は1,000 人 あたり54 人減少(95% CI:237 人減少~409 人増加),28 日VFD(2 RCT1—3):n=71)は平均4.90 日延長(95% CI:0.78 日延長~9.03 日延長)した.95% CI が広く,短期死亡が1,000 人あたり409 人増加する可能性もあるが,臨床的に有意義な益の効果が生じる可能性もある.予想される望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,重篤な副作用(3 RCT1—3):n=177)は1,000 人あたり10 人減少(95% CI:21 人減少~99 人増加)した.しかし,介入により1,000 人あたり99 人増加する可能性もあるために予想される望ましくない影響は「わずか」とした エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低●低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡重大+○○○ 非常に低 発達予後重大— VFD(28 日)重大++○○ 低 入院日数重大—重篤な副作用(腎機能障害,循環動態の悪化, 肺出血)重大++○○ 低 エビデンスの確実性望ましい効果の結果は死亡で1,000 人あたり54 人減少,VFD で4.90 日延長した.エビデンスの確実性はそれぞれ「非常に低」「低」であった.一方,望ましくない効果は,重篤な副作用で1,000 人あたり10 人減少し,エビデンスの確実性は「低」であった.以上により,すべての望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も高いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した
価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ: アウトカム対照介入 (一酸化窒素 吸入) Difference (95% CI) Relative effect (RR) (95% CI) 死 亡33/92 (35.9%) 27/85 (31.8%) 54 人減少/ 1,000 人(237 人減少~ 409 人増加) 0.85 (0.34~2.14) 発達予後— — — — VFD — — 4.90 日延長 (0.78 日延長~ 9.03 日延長) — 入院日数— — — — 重篤な副作用2/92 (2.2%) 1/85 (1.2%) 10 人減少/ 1,000 人(21 人減少~ 99 人増加) 0.52 (0.05~5.55) 以上より,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,「たぶん介入(一酸化窒素吸入療法を行う)が有利」と判断した
受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない受け入れについて検討されたエビデンスはないが,当介入に対する患者 および患者家族の受け入れに問題はないと考え,受け入れは「たぶんはい」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない本介入の実施には,吸入のための設備投資が必要であり,全国的には困 難な施設が多いと推測される.PICU においては,他の病態に対して一酸化窒素吸入療法が標準的に使用されているため既存のリソースがあることが多い.また,保険適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認を要する.総合して,実行可能性は「一概には言えない」と判断した 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な不確実性 や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性があるたぶん重要な 不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者に対する一酸化窒素吸入療法をルーチンでは実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/低い確実性のエビデンス:GRADE 2C). 付帯事項 ただし,限定的な状況においては治療の実施を容認され得る.具体例として,体外式膜型人工肺導入までの一時的な使用や,ほかに治療法がなく高い死亡率が予想されるような状況が挙げられる.ARDS に対する一酸化窒素吸入療法は保険適用外使用であり,使用する場合は,施設における倫理委員会の承認を得ておくことが望ましい. 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者に一酸化窒素吸入療法を使用するか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定義に準ずる).介 入 一酸化窒素吸入療法.アウトカム 死亡,VFD,重篤な副作用.エビデンスの要約採用された3 研究1—3)のメタ解析の結果,一酸化窒素吸入療法による益のアウトカムとして,死亡(3 RCT1—3):n=177)は1,000 人あたり54 人減少(95% CI:237 人減少~409 人増加),28 日
VFD(2 RCT1—3):n=71)は平均4.90 日延長(95% CI:0.78 日延長~9.03 日延長)した.95% CI が広く,短期死亡が409 人╱1,000 人増加する可能性もあるが,臨床的に有意義な益の効果が生じる可能性もある.予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,重篤な副作用(3 RCT1—3):n=177)は1,000 人あたり10 人減少(95% CI:21 人減少~99 人増加)した.しかし,介入により99 人╱1,000 人多くなる可能性もあるために,予想される望ましくない効果は「わずか」とした.エビデンスの確実性すべての望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も高いエビデンスの確実性を採用し「低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定メタ解析の結果,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,「たぶん介入(一酸化窒素吸入療法を行う)が有利」と判断した.しかし,予想される正味の効果が不確実であること,および治療の実行可能性は困難な施設も少なくないことを考慮し,ルーチンでは実施しないことを提案する判断に至った.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者に対する一酸化窒素吸入療法をルーチンでは実施しないことを提案する(GRADE 2C,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「低」)」,付帯事項「ただし,限定的な状況においては治療の実施を容認され得る.具体例として,体外式膜型人工肺導入までの時間を稼ぐ状況や,ほかに治療法がなく高い死亡率が予想されるような状況が挙げられる.ARDS に対する一酸化窒素吸入療法は保険外使用であり,使用する場合は,施設における倫理委員会の承認を得ておくことが望ましい」が中央値7.0 点,見解不一致指数 0.3738 で合意に至った.パネル会議において,付帯事項内の表現を微修正したため,再投票を行っ た.修正Delphi 法により,中央値7.0 点,見解不一致指数0.3738 で合意に至った.付加的な考慮事項ただし,限定的な状況においては治療の実施を容認され得る.具体例として,体外式膜型人工肺導入までの一時的な使用や,ほかに治療法がなく高い死亡率が予想されるような状況が挙げられる.ARDS に対する一酸化窒素吸入療法は保険適用外使用であり,使用する場合は,施設における倫理委員会の承認を得ておくことが望ましい. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations もし,一酸化窒素吸入療法を導入する場合は,施行による合併症(腎機能障害,循環動態の悪化,肺出血など)に対応が可能で,体外式膜型人工肺などの小児ARDS のrescue therapy の経験のある環境(PICU など)で行うことが望ましい.そのために,重篤小児を移送する病院間搬送医療も必要となる.当介入による合併症としてメトヘモグロビン血症があり,介入にあたり血液ガス分析などによる定期的な評価が望ましい.また,ARDS に対する当介入は保険適用外使用になるため施設における倫理委員会の承認を要する.
モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 死亡率に加え,合併症・費用・体外式膜型人工肺の導入率╱回避率・病院間搬送の有無をレジストリーでモニターすることが望ましい.特に,当介入による腎機能障害は採用したRCT では十分に評価されておらずモニタリングが必要である. 研究の可能性 Research priorities メタ解析に採用された3 RCT のうち2 つは,いわゆる肺保護戦略が標準治療として普及する以前に行われていため,近年のARDS 標準治療の中での一酸化窒素吸入療法の効果は検証されていない.また,近年ARDS 患者に対して,筋弛緩薬,腹臥位,体外式膜型人工肺などの使用が増加しており,これらの支持療法の中で一酸化窒素吸入療法の位置づけに関するデータも十分ではない.今後,一酸化窒素吸入療法の効果が期待しやすい群(右心不全症例や一酸化窒素吸入療法への反応群)に限定した研究の可能性が示唆されている.参考文献1) Ream RS, Hauver JF, Lynch RE, et al. Low—dose inhaled nitric oxide improves the oxygenation and ventilation of infants and children with acute, hypoxemic respiratory failure. Crit Care Med 1999;27:989—96. 2) Dobyns EL, Cornfield DN, Anas NG, et al. Multicenter randomized controlled trial of the effects of inhaled nitric oxide therapy on gas exchange in children with acute hypoxemic respiratory failure. J Pediatr 1999;134:406—12. 3) Bronicki RA, Fortenberry J, Schreiber M, et al. Multicenter randomized controlled trial of inhaled nitric oxide for pediatric acute respiratory distress syndrome. J Pediatr 2015; 166:365—9.e1.
背景,この問題の優先度 ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.その病態には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.サーファクタント投与により酸素化が改善し,人工呼吸器装着日数を短縮した報告がある.一方で,サーファクタント投与によっても酸素化や人工呼吸器装着日数,死亡率を改善しないとの報告もある.したがって,小児ARDS患者においてサーファクタントの効果および有害事象を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定義に準ずる).介入(I):サーファクタントを使用する.対照(C):サーファクタントを使用しない.アウトカム(O):死亡,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,薬剤副作用. エビデンスの要約 組み入れられた9 件のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析の結果,肺胞サーファクタントの使用による益のアウトカムとして,死亡(9RCT:n=658)は1,000 人あたり64 人減少(95% CI:130 人減少~45 人増加),28 日VFD (2RCT:n=261)は平均0.65 日短縮((95% CI:5.26 日短縮~3.95 日延長),入院日数(2RCT:n=194)は平均1.67 日短縮(95% CI:7.82 日短縮~4.49 日延長)した.以上から予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,薬剤副作用(7RCT:n=589)は1,000 人あたり180 人増加(95% CI:81 人増加~360 人増加)した.薬剤副作用の多くは一過性の低酸素血症や循環動態変化であり,重篤なものは少ないため,望ましくない効果は「小さい」と判断した. エビデンスの確実性 望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も低いエビデンスの確実性 1 2 1 2 3 領域F 小児領域 小児ARDS 患者にサーファクタントを使用するか? PCQ 12 小児ARDS 患者に対してサーファクタントを使用しないことを条件付きで 推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 推 奨
を採用し「非常に低」とした. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 メタ解析の結果,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,「介入と対照のどちらも有利でない」と判断した.コスト面で肺胞サーファクタントは高価な薬剤であることや,介入による有害事象の中に,薬剤投与や人工呼吸器設定の調整などを必要とするケースが含まれており,実施のために必要となるリソースを考えると実行可能性はたぶん困難であることも考慮した.総合して,「使用しないことを条件付きで推奨する」判断に至った. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS患者に対してサーファクタントを用いないことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「肺胞サーファクタントによる予後改善効果は小さい一方で,薬剤に関連した副作用は増加した.加えて,保険外使用の高価な薬剤である.総合して,小児ARDS患者に対してサーファクタントを用いないことを提案する」が中央値9 点,見解不一致指数0.2920 で合意に至った.パネル会議において,推奨欄内の付帯事項は不要との意見が出た.そのため,付帯事項は推奨欄内からは削除し,理由欄のみに収載として再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 当薬剤の投与を検討するほどの重篤なARDS小児には,ARDS に対するrescue therapy(特 殊な人工呼吸様式や体外式膜型人工肺導入など)の経験のある施設〔小児集中治療室(PICU)など〕に患者を移送するべきである.もし,サーファクタントの投与を実施するのであれば,ARDS に対して保険適用外使用となるために,家族への説明方法を含め,施設倫理委員会での審議を経ることが望ましい. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインにおいて,成人ARDS患者に対するサーファクタントの使用は検討されていない.PALICC1)では,小児ARDS 患者に対してサーファクタントをルーチンでは使用しないことを推奨している(強い合意). 治療のモニタリングと評価 もし,サーファクタントの投与を実施するのであれば,治療による益・害・費用を慎重にモニターする必要がある. 今後の研究の可能性 メタ解析に組み入れられた研究の多くで,製薬会社からの資金・薬剤の援助が行われていた.高価な薬剤の研究である特性上避けがたいことである一方,high risk of bias として研究結果の確実性を総じて下げたことも事実である.20 年余りの研究の歴史の中で,試行錯誤が行われたにもかかわらず,確実な治療効果は認められなかった.新たなエビデンスを示す研究は今後も困難であることが予測される. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「Surfactant」「Randomized controlled trial」をキーワードとしてPubMed, Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年7 月3 日までの文献を検索したところ1,905 件 4 5 3 4 5 6 7 8
の研究が同定され,スクリーニングの結果9 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Luchetti 20022), Möller 20033), Willson 19994), Willson 20135), Willson 20056), Thomas 20187), Thomas 20128), Rodríguez— Moya 20179), Rodríguez—Moya 201710).資料一覧 ・資料PCQ12—1 Search strategy.・資料PCQ12—2 フローダイアグラム.・資料PCQ12—3 Risk of bias.・資料PCQ12—4 Forest plot.・資料PCQ12—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ12—6 Evidence—to—Decision. 9 10 1) Tamburro RF, Kneyber MC. Pulmonary specific ancillary treatment for pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S61—72. 2) Luchetti M, Ferrero F, Gallini C, et al. Multicenter, randomized, controlled study of porcine surfactant in severe respiratory syncytial virus—induced respiratory failure. Pediatr Crit Care Med 2002;3:261—8. 3) Möller JC, Schaible T, Roll C, et al. Treatment with bovine surfactant in severe acute respiratory distress syndrome in children:a randomized multicenter study. Intensive Care Med 2003;29:437—46. 4) Willson DF, Zaritsky A, Bauman LA, et al. Instillation of calf lung surfactant extract (calfactant)is beneficial in pediatric acute hypoxemic respiratory failure. Members of the Mid—Atlantic Pediatric Critical Care Network. Crit Care Med 1999;27:188—95. 5) Willson DF, Thomas NJ, Tamburro R, et al. Pediatric calfactant in acute respiratory distress syndrome trial. Pediatr Crit Care Med 2013;14:657—65. 6) Willson DF, Thomas NJ, Markovitz BP, et al. Effect of exogenous surfactant(calfac- tant)in pediatric acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2005; 293:470—6. 7) Thomas NJ, Spear D, Wasserman E, et al. CALIPSO:a randomized controlled trial of calfactant for acute lung injury in pediatric stem cell and oncology patients. Biol Blood Marrow Transplant 2018;24:2479—86. 8) Thomas NJ, Guardia CG, Moya FR, et al. A pilot, randomized, controlled clinical trial of lucinactant, a peptide—containing synthetic surfactant, in infants with acute hypoxemic respiratory failure. Pediatr Crit Care Med 2012;13:646—53. 9) Rodríguez—Moya VS, Gallo—Borrero CM, Santos—Áreas D, et al. Exogenous surfactant and alveolar recruitment in the treatment of the acute respiratory distress syndrome. Clin Respir J 2017;11:1032—9. 10) Rodríguez—Moya VS, Machado—Lubián MDC, Barrese—Pérez Y, et al. Cuban exoge- nous pulmonary surfactant in treatment of pediatric acute respiratory distress syndrome. MEDICC Rev 2017;19:24. 参考文献
資料PCQ12—1 Search strategy
MEDLINE via PubMed(Search date:2020/7/3) #1 "respiratory distress syndrome, adult"[mh] OR "respiratory distress syndrome, newborn"[mh] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR ARDS[tiab] #2 "lung injury"[mh] OR "lung injur*"[tiab] #3 “respiratory failure” [tiab] #4 #1 OR #2 OR #3 #5 "Surface-Active Agents"[mh] OR "Surface Active Agents"[tiab] OR tensides[tiab] OR "amphiphilic agent"[tiab] #6 "Pulmonary surfactants"[mh] OR Surfactant*[tiab] #7 poractant*[tiab] OR curosurf[tiab] OR "poractant alfa" [Supplementary Concept] #8 beractant*[tiab] OR "survanta"[tiab] OR "beractant" [Supplementary Concept] #9 "calfactant*" [tiab] OR "calfactant" [Supplementary Concept] #10 infasurft*[tiab] #11 venticute*[tiab] OR "Venticute" [Supplementary Concept] #12 exosurf[tiab] OR "dipalmitoylphosphatidylcholine, hexadecanol, tyloxapol drug combination" [Supplementary Concept] #13 alec[tiab] OR "artificial lung expanding compound" [Supplementary Concept] #14 #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 #15 #4 AND #14 #16 adult[mh] NOT child[mh] #17 #15 NOT #16 #18 “randomized controlled trial” [pt] OR “controlled clinical trial” [pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab] NOT (animals [mh] NOT humans [mh]) #19 #17 AND #18
CENTRAL(Search date:2020/7/3) #1 [mh "respiratory distress syndrome, adult"] OR [mh "respiratory distress syndrome, newborn"] OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR ARDS:ti,ab #2 [mh "lung injury"] OR "lung injury":ti,ab #3 "respiratory failure":ti,ab #4 {OR #1-#3} #5 [mh "Surface-Active Agents"] OR "Surface Active Agents":ti,ab OR tensides:ti,ab OR "amphiphilic agent":ti,ab #6 [mh "Pulmonary surfactants"] OR Surfactant:ti,ab OR Surfactants:ti,ab #7 poractant:ti,ab OR curosurf:ti,ab #8 beractant*:ti,ab OR survanta:ti,ab #9 calfactant:ti,ab #10 exosurf:ti,ab #11 alec:ti,ab OR "artificial lung expanding compound":ti,ab #12 {OR #5-#11} #13 #4 AND #12 #14 [mh animals] NOT [mh humans] #15 #13 NOT #14
Igaku Chuo Zasshi(Search date:2020/7/3) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/AL OR ARDS/AL OR ショック肺/AL #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/AL #3呼吸不全/TH OR 呼吸不全/AL #4重症急性呼吸器症候群/TH OR SARS/AL #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6界面活性剤/TH OR 界面活性剤/AL OR サーファクタント/AL #7 Pulmonary/AL AND surfactant/AL #8 poractant*/AL OR curosurf/AL OR ポラクタント/AL #9 beractant/AL OR Beractant/TH OR survanta/AL OR ベラクタント/AL #10 Calfactant/TH OR calfactant/AL OR カルファクタント/AL #11 Exosurf/TH OR exosurf/AL #12 Alectinib/TH OR Alectinib/AL OR アレセンサ/AL OR アレクチニブ/AL OR (artificial/AL AND (肺/TH OR lung/AL) AND expanding/AL AND compound/AL) #13 #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 #14 #5 AND #13 #15 (CK= 成人(19~44),中年(45~64),高齢者(65~)) NOT (CK= 新生児,乳児(1~23 ヶ月),幼児(2~5),小児(6~ 12),青年期(13~18)) #16 #14 NOT #15 #17 ( ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL) OR ( 比較試験/AL) OR ( 臨床試験/TH OR臨床試験/AL) OR ( プラセボ/TH OR プラセボ/AL) OR ( 対照/AL) OR ( コントロール/AL) OR ( 臨床研究・疫学研究/TH OR 臨床研究/AL) #18 #16 AND #17
資料PCQ12—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=2,500 1,405件1,052件43件他のリソースから同定された研究 n=0 検索で同定された研究 n=2,500 一次スクリーニングへ進んだ研究 n=1,905 系統的レビューに組み入れた研究 n=9 メタ解析に組み入れた研究 n=9 フルテキストで適格性を評価した研究 n=54重複した研究 n=595 除外基準に該当した研究 n=1,851 除外基準に該当した研究n=45理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる27件3件1件14件0件
資料PCQ12—3 Risk of bias 死 亡VFD 人院日数ICU滞在日数
薬剤副作用
資料PCQ12—4 Forest plot 死 亡 VFD 人院日数 ICU滞在日数 薬剤副作用
資料PCQ12—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討Surfactant Control相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死 亡a 9 ランダム 化試験深刻b深刻c 深刻で ない深刻dなし59/340 (17.4%) 75/318 (23.6%) RR 0.73 (0.45~ 1.19) 1,000 人あたり64 人減少(130 人減少~ 45 人増加) +○○○非常に低重大 発達予後 0 — — — — — — — — — — — 重大 VFD 2 ランダム 化試験深刻e深刻f 深刻で ない非常に 深刻gなし133 128 —平均0.65 日短縮(5.26 日短縮~ 3.95 日延長) +○○○非常に低重大 入院日数 2 ランダム 化試験深刻h 深刻で ない深刻で ない非常に 深刻iなし98 96 —平均1.67 日短縮(7.82 日短縮~ 4.49 日延長) +○○○非常に低重大 ICU 滞在日数 3 ランダム 化試験深刻j深刻k 深刻で ない非常に 深刻lなし118 116 —平均1.30 日短縮(4.03 日短縮~ 1.44 日延長) +○○○非常に低重要 酸素化の改善 0 — — — — — — — — — — — 重要 薬剤副作用 7 ランダム 化試験深刻m 深刻で ない深刻で ない深刻nなし69/306 (22.5%) 12/283 (4.2%) RR 5.25 (2.91~ 9.48) 1,000 人あたり180 人増加(81 人増加~ 360 人増加) ++○○ 低重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,VFD:人工呼吸器非使用日数,OIS:最適情報量.説 明a.死亡は,48 時間死亡,14 日死亡,28 日死亡,30 日死亡,90 日死亡,120 日死亡を統合したものである. b.Thomas 2012 では百日咳が途中からexclusion criteria に加えられた.Surfactant に反応せず,死亡が高いため,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. c.I2=53%であり,SR に含まれる各研究の結果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. d.総サンプルサイズが658 であり,OIS を満たさない.また,95% CI が益の治療閾値をまたぐと考え,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. e.筆頭演者がcalfactant の製薬会社からgrant をもらっているため,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. f.I2=75%であり,SR に含まれる各研究の結果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. g.総サンプルサイズが261 であり,OIS を満たさない.また,95% CI が益と害の治療閾値をまたぐと考え,「非常に深刻」と判断し2 段階ダウンした. h.ブラインド化されていない臨床試験でのブロックランダム化.予定されていない中間解析とサンプルサイズの見直し.以上より「深刻」と判断し1 段階ダウンした. i.総サンプルサイズが194 であり,OIS を満たさない.よって十分な検出力がないと考え,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. j.治療提供者がブラインド化されていないため,「深刻」と判断し1 段階ダウンした.
k.I2=51%であり,SR に含まれる各研究の結果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し,1 段階ダウンした. l.総サンプルサイズが234 であり,OIS を満たさない.よって,十分な検出力がないと考え,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. m.ブラインド化されていない研究が多いため,「深刻」と判断し1 段階ダウンした. n.総サンプルサイズが589 であり,OIS を満たさず,また,95% CI が益と害の治療閾値をまたがないと考え,「深刻」と判断し1 段階ダウンした.注)発達予後,酸素化の改善は報告した研究がなかった.
資料PCQ12—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ12:小児ARDS 患者にサーファクタントを使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論 文の定義に準ずる) 介 入:サーファクタントを使用する比較対照:サーファクタントを使用しない主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,薬剤副作用セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.その病態 には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.サーファクタント投与により酸素化が改善し,人工呼吸器装着日数を短縮した報告がある.一方で,サーファクタント投与によっても酸素化や人工呼吸器装着日数,死亡率を改善しないとの報告もある.したがって,サーファクタント投与に関するSR を行うことは重要臨床課題といえる 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こし た病態である.その病態には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な要因が関与している.サーファクタント投与により酸素化が改善し,人工呼吸器装着日数を短縮した報告がある.一方で,サーファクタント投与によっても酸素化や人工呼吸器装着日数,死亡率を改善しないとの報告もある.したがって,サーファクタント投与に関するSR を行うことは重要臨床課題といえる 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずかSR の結果,9 件のRCT1—9)が組み入れられ,メタ解析に用 いた
●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからない益のアウトカムとして,死亡(9 RCT1—9):n=658)は 1,000 人あたり64 人減少(95% CI:130 人減少~45 人増加),28 日VFD(2 RCT4,6):n=261)は平均0.65 日短縮(95% CI:5.26 日短縮~3.95 日延長),入院日数(2 RCT1,4):n=194)は平均1.67 日短縮(95% CI:7.82 日短縮~4.49 日延長)した.以上から,予想される望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度●小さい○わずか○一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,薬剤副作用(7 RCT1—6,8):n=589) は1,000 人あたり180 人増加(95% CI:81 人増加~360人増加)した.薬剤副作用の多くは一過性の低酸素血症や循環動態変化であり,重篤なものは少ないため,望ましくない効果は「小さい」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な 重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡重大+○○○ 非常に低 発達予後重大— VFD(28 日)重大+○○○非常に低入院日数重大+○○○ 非常に低 薬剤副作用(気管支攣縮,気胸,一過性の低酸素血症,一過性の循環動態の変化など)重大++○○ 低 望ましい効果の結果は死亡で1,000 人あたり64 人減少, VFD で0.65 日短縮,入院日数は1.67 日短縮した.エビデンスの確実性はそれぞれ「非常に低」「非常に低」「非常に低」であった.一方,望ましくない効果は,薬剤副作用で1,000 人あたり180 人増加し,エビデンスの確実性は「低」であった.以上により,望ましい効果,望ましくない
効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」とした. 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価 値観の重要な不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利●介入と対照のどち らも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ: アウトカム対 照介 入 (サーファクタント) Difference (95% CI) Relative effect (RR) (95% CI) 死 亡75/318 (23.6%) 59/340 (17.4%) 64 人減少/ 1,000 人(130 人減少~ 45 人増加) RR 0.73 (0.45~ 1.19) 発達予後— — — — VFD (28 日) — —平均0.65 日 短縮(5.26 日短縮~ 3.95 日延長) — 入院日数— —平均1.67 日 短縮(7.82 日短縮~ 4.49 日延長) —
薬剤副作用12/283 (4.2%) 69/306 (22.5%) 180 人増加/ 1,000 人(81 人増加~ 360 人増加) RR 5.25 (2.91~ 9.48) 以上から,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「介入と対照のどちらも有利でない」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない受け入れについて検討されたエビデンスはないが,望まし い効果と望ましくない効果が拮抗しており,薬剤副作用が増加するため,患者およびその家族の受け入れは「たぶんいいえ」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ●たぶんいいえ○たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない治療後の有害事象の対応に,蘇生薬の使用や人工呼吸器の 調整が必要なケースが報告されていた.サーファクタント使用の経験のあるスタッフやICU の環境が望ましく,この条件を満たす施設は限られるためARDSへの治療の実行はたぶん困難と思われる.また,サーファクタントは高価な薬剤である.当介入はARDS に対して保険適用外使用となるために,使用するのであれば,家族への説明方法を含め,施設倫理委員会での審議を経ることが望ましい肺胞サーファクタント 120 mg 1 バイアルの薬価は76,488.3 円である.新生児呼吸窮迫症候群に対する保険用量は60~120 mg/kg である小児ARDS 研究では約100 mg/kg が使用されていた 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者に対してサーファクタントを使用しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者にサーファクタントを使用するか?患 者 小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定義に準ずる).介 入 サーファクタント.アウトカム 死亡,VFD,入院日数,薬剤副作用.
エビデンスの要約組み入れられた9 RCT1—9)のメタ解析の結果,肺胞サーファクタントの使用による益のアウトカムとして,死亡(9 RCT1—9):n=658)は1,000 人あたり64 人減少(95% CI:130 人減少~45 人増加),28 日VFD(2 RCT4,6):n=261)は平均0.65 日短縮(95% CI:5.26 日短縮~3.95 日延長),入院日数(2 RCT1,4):n=194)は平均1.67 日短縮(95% CI:7.82 日短縮~4.49 日延長)した.以上から,予想される望ましい効果は「小さい」と判断した.害のアウトカムとして,薬剤副作用(7 RCT1—6,8):n=589)は1,000 人あたり180 人増加(95% CI:81 人増加~360 人増加)した.薬剤副作用の多くは一過性の低酸素血症や循環動態変化であり,重篤なものは少ないため,望ましくない効果は「小さい」と判断した.エビデンスの確実性望ましい効果,望ましくない効果の方向性は一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」とした.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定メタ解析の結果,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,「介入と対照のどちらも有利でない」と判断した.コスト面で肺胞サーファクタントは高価な薬剤であることや,介入による有害事象の中に,薬剤投与や人工呼吸器設定の調整などを必要とするケースが含まれており,実施のために必要となるリソースを考えると実行可能性はたぶん困難であることも考慮した.総合して,「使用しないことを条件付きで推奨する」判断に至った.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者に対してサーファクタントを用いないことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「肺胞サーファクタントによる予後改善効果は小さい一方で,薬剤に関連した副作用は増加した.加えて,保険外使用の高価な薬剤である.総合して,小児ARDS 患者に対してサーファクタントを用いないことを提案する」が中央値9 点,見解不一致指数0.2920 で合意に至った.パネル会議において,推奨欄内の付帯事項は不要との意見が出た.そのため,付帯事項は推奨欄内からは削除し,理由欄のみに収載として再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.付加的な考慮事項肺胞サーファクタントによる予後改善効果は小さい一方で,薬剤に関連した副作用は増加した.加えて高価な薬剤である. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 当薬剤の投与を検討するほどの重篤なARDS 小児には,ARDS に対するrescue therapy(特殊な人工呼吸様式や体外式膜型人工肺導入など)の経験のある施設(PICU など)に患者を移送するべきである.もし,サーファクタントの投与を実施するのであれば,ARDS に対して保険適用外使用となるために,家族への説明方法を含め,施設倫理委員会での審議を経ることが望ましい.
モニタリングと評価 Monitoring and evaluation もし,サーファクタントの投与を実施するのであれば,治療による益・害・費用を慎重にモニターする必要がある. 研究の可能性 Research priorities メタ解析に組み入れられた研究の多くで,製薬会社からの資金・薬剤の援助が行われていた.高価な薬剤の研究である特性上避けがたいことである一方,high risk of bias として研究結果の確実性を総じて下げたことも事実である.20 年余りの研究の歴史の中で,試行錯誤が行われたにもかかわらず,確実な治療効果は認められなかった.新たなエビデンスを示す研究は今後も困難であることが予測される.参考文献1) Willson DF, Zaritsky A, Bauman LA, et al. Instillation of calf lung surfactant extract(calfactant)is beneficial in pediatric acute hypoxemic respiratory failure. Members of the Mid— Atlantic Pediatric Critical Care Network. Crit Care Med 1999;27:188—95. 2) Luchetti M, Ferrero F, Gallini C, et al. Multicenter, randomized, controlled study of porcine surfactant in severe respiratory syncytial virus—induced respiratory failure. Pediatr Crit Care Med 2002;3:261—8. 3) Möller JC, Schaible T, Roll C, et al. Treatment with bovine surfactant in severe acute respiratory distress syndrome in children:a randomized multicenter study. Intensive care Med 2003;29:437—46. 4) Willson DF, Thomas NJ, Markovitz BP, et al. Effect of exogenous surfactant(calfactant)in pediatric acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 2005;293:470—6. 5) Thomas NJ, Guardia CG, Moya FR, et al. A pilot, randomized, controlled clinical trial of lucinactant, a peptide—containing synthetic surfactant, in infants with acute hypoxemic respiratory failure. Pediatr Crit Care Med 2012;13:646—53. 6) Willson DF, Thomas NJ, Tamburro R, et al. Pediatric calfactant in acute respiratory distress syndrome trial. Pediatr Crit Care Med 2013;14:657—65. 7) Rodríguez—Moya VS, Gallo—Borrero CM, Santos—Áreas D, et al. Exogenous surfactant and alveolar recruitment in the treatment of the acute respiratory distress syndrome. Clin Respir J 2017;11:1032—9. 8) Thomas NJ, Spear D, Wasserman E, et al. CALIPSO:a randomized controlled trial of calfactant for acute lung injury in pediatric stem cell and oncology patients. Biol Blood Marrow Transplant 2018;24:2479—86. 9) Rodríguez—Moya VS, Machado—Lubián MDC, Barrese—Pérez Y, et al. Cuban exogenous pulmonary surfactant in treatment of pediatric acute respiratory distress syndrome. MEDICC Rev 2017;19:24.
背景,この問題の優先度 ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.ステロイドはARDS の炎症に関与する炎症メディエーターを不活化するため有効と考えられている.しかし,ステロイドは免疫機能を低下させ感染を引き起こす可能性がある.過去のSR では死亡やその他の臨床アウトカムが改善するかどうかは相反する結果が公表されており,未だに議論の余地がある.したがって,小児ARDS患者においてその効果や有害事象を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論文の定義に準ずる). 介入(I):ステロイド全身投与(経口または経 静脈投与を含める,投与薬剤,投与量,投与期間は問わない).対照(C):ステロイド投与なし.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器非使用日数(VFD),入院日数,感染症発症率,高血糖,ミオパチー/ニューロパチー発生率. エビデンスの要約 SR の結果,PICO に該当するランダム化比較試験(RCT)は1 件のパイロット研究のみで,介入群に比較し対照群の重症度スコア(Pediatric Logistic Organ Dysfunction score: PELOD score)は2 倍近く高かった.小児ARDS患者にステロイドを使用することで益のアウトカムとして,死亡率は1,000 人当たり88 人減少(95% CI:110 人減少~344 人 1 2 1 2 領域F 小児領域 小児ARDS 患者にステロイドを使用するか? PCQ 13 小児ARDS 患者にステロイドを使用するかについて,本SR の結果からは その推奨を提示することはできない.ステロイドの投与は患者背景,病態を 含めて検討する必要がある(in our practice statement). あくまで現行の診療の記述であり,今回のRCT の結果を含めステロイドの使用を否定するものではない 推 奨 付帯事項
増加),VFD は1.32 日延長(95% CI:3.32 日短縮~5.96 日延長),入院日数は6.87 日短縮(95% CI:15.32 日短縮~1.58 日延長)した.しかし,検討されたサンプルサイズは極めて小さく,信頼区間の幅も広い.また,場合によっては重大なアウトカムとしての死亡数を344人増やす可能性もあるため,その望ましい効果は「わずか」とした.害のアウトカムとして,感染症発症率は1,000 人当たり219 人減少(95% CI:296 人減少~175 人増加)した.一方で,高血糖は1,000 人あたり142 人増加(95% CI:138 人減少~684 人増加)した.望ましくない効果として,重大な害のアウトカムである発達予後やミオパチー/ニューロパチーの有無に関しては評価されていなかった.以上より,望ましくない効果は「一概に言えない」とした.以上より,介入による望ましい効果と望ましくない効果のバランスについては「一概に言えない」とした. エビデンスの確実性 サンプルサイズが35 と非常に少ないRCT 1件のみで,患者背景もステロイド群/プラセボ群で異なった〔ステロイド群で有意にプラトー圧が高く,プラセボ群の重症度スコア(PELOD score)は2倍近く高かった〕.有意差はないものの,いくつかの望ましい効果がステロイド投与を支持する結果となったが,患者背景の違いが影響している可能性などが考えられた.ステロイド投与による望ましい効果はわずかで,望ましくない効果に関しては評価不十分の可能性を考え,このメタ解析によるステロイド投与の是非に関して推奨を提示するのは困難と考えられた.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 今回の検討では,望ましい効果・望ましくない効果の差を評価することは困難であった.すでに,日常臨床で実行されており,実現可能性には問題がないと考える一方で,ステロイド投与の望ましくない効果に対する受け入れは,ステークホルダーにより異なると考えた. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,「小児ARDS患者へのステロイド投与について,その推奨を提示することはできない.ステロイドの投与は患者背景,病態を含めて検討する必要がある」が中央値8.0 点,見解不一致指数 0.2920 であったためin our practice state- ment として合意を得た.パネル会議において,抽出された1 件のRCT を採用した上でin our practice statement とするか,採用せずにin our practice statement とするかの議論があり,最終的に採用した上でin our practice statement とする方針とした.推奨文の変更はなかったが,議論を踏まえ事前投票から結果が変更される可能性があったため,再投票を行った.修正Delphi法により,中央値9.0 点,見解不一致指数 0.1316 であったため,in our practice state- ment として合意を得た. サブグループの検討事項 サブグループの検討は行われていないが,基礎疾患として高血圧/糖尿病/消化管出血/免疫不全/血栓素因などがある場合は,ステロイドの副作用により注意するべきであると考えられる. 実施上の考慮事項 ステロイドは免疫能の低下による感染性合併 3 5 3 4
症,耐糖能異常,高血圧,消化管出血,血栓形成などの様々な副作用がある.また,特に呼吸管理が長期化する重症ARDSでの筋弛緩薬使用症例では,ミオパチーの合併も懸念されるため,血糖,血圧測定をはじめ,胃液性状,深部静脈血栓に対する理学所見,エコー評価を十分に行いつつ,栄養やリハビリテーションを励行する.補足すると,当該文献でのステロイド投与量は,メチルプレドニゾロン2 mg/kg 静注後,1 mg/kg/day の持続静注(7 日間投与後,1 週間かけて漸減中止)であった. 関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,同様の内容が「CQ42 成人ARDS 患者に副腎皮質ステロイドを使用するか?」に記載されている. RCT 6 件を用いたメタ解析の結果,高用量副腎皮質ステロイドを使用しないことを条件付きで推奨し,一方で,低用量副腎皮質ステロイドを使用することは強く推奨されている.詳細については,CQ42 を参照されたい.Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference (PALICC)では,小児ARDS 患者にルーチンにステロイドを投与することは推奨しないとしている(強い合意)1).一方で,ステロイド投与が有効な患者群の特定や使用方法に関しては今後の研究が必要であるとされる(強い合意). 2020 年の小児に対するSSCG2)では,敗血症に起因するARDSに対してステロイドをルーチンで使用しないことが推奨されている(弱い推奨). 治療のモニタリングと評価 推奨の実施にあたっては,個々の症例に合わせたステロイド使用の可否について,さらに詳細に検討する必要があるかもしれない.投与するとした場合のその適応病態,投与開始時期・ 投与期間などいずれも不明な点が多く,本診療ガイドライン公表後,臨床現場の判断でやむなく投与された場合の状況についてモニタリングが必要である. 今後の研究の可能性 小児ARDSに関するステロイド投与に関しては,ステロイドの種類,投与量,投与期間は,いずれもあきらかになっていない.また, ARDS の原因や年齢を考慮し,患者群を考えた臨床研究が望まれる. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「methylprednisolone」「hydrocortisone」「glucocorticoid」「dexamethasone」「corticosteroid」「adrenal cortex hormones」「Fluorinated Steroids」「Methylprednisolone Succinate」「Hydroxycorticosteroids」「randomized controlled trial」などをキーワードとして,PubMed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月26 日までの文献を検索したところ2,161 件の研究が同定され,スクリーニングの結果1 件のRCT を採用した(二次スクリーニングを通過した文献は2 件であったが,1 件はアウトカムに合致するものがなく除外とした). 本CQ で対象とした研究 Drago 20153). 資料一覧 ・資料PCQ13‒1 Search strategy.・資料PCQ13‒2 フローダイアグラム.・資料PCQ13‒3 Risk of bias.・資料PCQ13‒4 Forest plot.・資料PCQ13‒5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ13‒6 Evidence‒to‒Decision. 5 6 7 8 9 10
1) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428‒39. 2) Weiss SL, Peters MJ, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis‒Associated Organ Dysfunction in Children. Pediatr Crit Care Med. 2020;21:e52‒106. 3) Drago BB, Kimura D, Rovnaghi CR, et al. Double‒blind, placebo‒controlled pilot ran- domized trial of methylprednisolone infusion in pediatric acute respiratory distress syndrome. Pediatr Crit Care Med 2015;16:e74‒81. 参考文献
資料PCQ13—1 Search strategy
MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/6/26) #1 "respiratory distress syndrome, adult"[MeSH Terms] OR "ARDS"[Title/Abstract] OR "respiratory distress syndrome"[Title/Abstract] OR "acute lung injury"[MeSH Terms] OR "acute lung injur*"[Title/ Abstract] OR "ALI"[Title/Abstract] #2 "respiratory distress syndrome, newborn"[MeSH Terms] #3 #1 OR #2 #4 "steroids"[MeSH Terms] OR "adrenal cortex hormones"[MeSH Terms] #5 "methylprednisolone"[Title/Abstract] OR "hydrocortisone"[Title/Abstract] OR "glucocorticoid*"[Title/ Abstract] OR "dexamethasone"[Title/Abstract] OR "corticosteroid*"[Title/Abstract] OR "cortiso*"[Title/ Abstract] #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6 #8 ((((((("randomized controlled trial"[Publication Type] OR "controlled clinical trial"[Publication Type]) OR "randomized"[Title/Abstract]) OR "placebo"[Title/Abstract]) OR "drug therapy"[MeSH Subheading]) OR "randomly"[Title/Abstract]) OR "trial"[Title/Abstract]) OR "groups"[Title/Abstract]) NOT ("animals"[MeSH Terms] NOT "humans"[MeSH Terms]) #9 #7 AND #8
CENTRAL(Search date:2020/6/26) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab OR ALI:ti,ab #2 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Newborn"] #3 #1 OR #2 #4 [mh Steroids] OR [mh "adrenal cortex hormones"] #5 methyl prednisolone:ti,ab OR hydrocortisone:ti,ab OR glucocorticoid*:ti,ab OR dexamethasone:ti,ab OR corticosteroid*:ti,ab OR cortiso*:ti,ab #6 #4 OR #5 #7 #3 AND #6
Igaku Chuo Zasshi(Search date:2020/6/26) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2急性肺損傷/TH OR 急性肺損傷/TA #3呼吸窮迫症候群-新生児/TH OR 新生児呼吸窮迫症候群/TA #4 #1 OR #2 OR #3 #5 Steroids/TH OR "Fluorinated Steroids"/TA #6副腎皮質ホルモン/TH OR 副腎皮質ホルモン/TA #7 "Methylprednisolone Succinate"/TH OR "Methylprednisolone Succinate"/TA #8 Hydroxycorticosteroids/TH OR Hydroxycorticosteroids/TA #9 Methylprednisolone/TH OR Methylprednisolone/TA OR メチルプレドニゾロン/TA #10 Hydrocortisone/TH OR Hydrocortisone/TA OR ヒドロコルチゾン/TA OR ハイドロコルチゾン/TA #11 Dexamethasone/TA OR デキサメタゾン/TA #12 Betamethasone/TA OR ベタメタゾン/TA #13 Cortisone/TH OR Cortisone/TA OR コルチゾン/TA #14 Glucocorticoids/TH OR Glucocorticoids/TA OR グルココルチコイド/TA
#15 #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12 OR #13 OR #14 #16 #4 AND #15 #17 ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT= 会議録除く) #18 #16 AND #17
資料PCQ13—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=2,443 1,827件519件97件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=282 除外基準に該当した研究 n=2,060 除外基準に該当した研究 n=24(重複3件)理由:・ 論文の種類が異なる (プロトコルのみ)・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる・ Oが異なる4件 0件4件13件0件1件 除外基準に該当した研究 n=75 検索で同定された研究 n=2,443 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=2,161 系統的レビューに組み入れた研究 n=1 メタ解析に組み入れた研究 n=1 フルテキストで適格性を評価した研究 n=26 小児の適格性を評価した研究 n=101
資料PCQ13—3 Risk of bias 死 亡VFD 入院日数感染症発症
高血糖
資料PCQ13—4 Forest plot 死 亡 VFD 入院日数 感染症発症率 高血糖
資料PCQ13—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討Steroid Placebo相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI)死亡a 1 ランダム 化試験非常に 深刻b深刻で ない深刻で ない非常に 深刻cなし0/17 (0.0%) 2/18 (11.1%) RR 0.21 (0.01~4.10) 1,000 人あたり88 人減少(110 人減少~ 344 人増加) +○○○非常に低重大 発達予後 重大 VFD 1 ランダム 化試験非常に 深刻b深刻で ない深刻で ない非常に 深刻dなし17 18 —平均1.32 日延長(3.32 日短縮~ 5.96 日延長) +○○○非常に低重大 入院日数 1 ランダム 化試験非常に 深刻b深刻で ない深刻で ない非常に 深刻dなし17 18 平均6.87 日短縮 (15.32 日短縮~ 1.58 日延長) +○○○非常に低重大 感染症発症率 1 ランダム 化試験非常に 深刻b深刻で ない深刻で ない非常に 深刻cなし1/17 (5.9%) 5/18 (27.8%) RR 0.21 (0.03~1.63) 1,000 人あたり219 人減少(296 人減少~ 175 人増加) +○○○非常に低重大 高血糖 1 ランダム 化試験非常に 深刻b深刻で ない深刻で ない非常に 深刻cなし10/17 (58.8%) 8/18 (44.4%) RR 1.32 (0.69~2.54) 1,000 人あたり142 人増加(138 人減少~ 684 人増加) +○○○非常に低重要 ミオパチー/ニューロパチーの増加 重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,VFD:人工呼吸器非使用日数,OIS:最適情報量.説 明a.死亡のフォローアップ期間は不明. b.対象となった文献は1 つで,バイアスリスクが不明と判断されたので「深刻」と判断し1 段階グレードダウンとした. c.総サンプルサイズが35 人で,OIS を満たさず,95% CI が益と害の臨床決断の閾値をまたぐため,2 段階のグレードダウンとした. d.総サンプルサイズが35 人であること,95% CI が臨床的な判断を覆えすほど広いため,2 段階のグレードダウンとした.注)CQ として発達予後,ミオパチーをアウトカムとして設定したが,これらを報告した研究はなかった.
資料PCQ13—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ13:小児ARDS 患者にステロイドを使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者(論 文の定義に準ずる) 介 入:ステロイド全身投与(経口または経静脈投与を含める,投与薬剤,投与量,投与期 間は問わない) 比較対照:ステロイド投与なし主要なアウトカム:死亡,発達予後,人工呼吸器非使用日数(VFD),入院日数,感染性合併症の増加, ミオパチー/ニューロパチーの増加 セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景: ARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.ステロイ ドはARDS の炎症に関与する炎症メディエーターを不活化するため有効と考えられている.しかし,ステロイドは免疫機能を低下させ感染を引き起こす可能性がある.過去のSR では死亡やその他の臨床アウトカムを改善させるかどうかは相反する結果が公表されており,未だに議論の余地がある.したがって,本CQ は重要課題である 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないARDS は様々な原因により肺に波及した炎症が引き起こした病態である.ステロイドはARDS の炎症に関与する炎症メディエーターを不活化 するため有効と考えられている.一方で,免疫機能を低下させ感染を引き起こす可能性がある.過去のSR では死亡やその他の臨床アウトカムが改善するかどうかは相反する結果が公表されており,未だに議論の余地がある.したがって,この問題の優先度は高い 望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●わずか○小さい○中程度○大きいSR の結果,PICO に該当するRCT は1 件のパイロット研究1)のみで介入 群に比較し対照群の重症度スコア(Pediatric Logistic Organ Dysfunction score:PELOD score)は2 倍近く高かった小児ARDS 患者にステロイドを使用することで益のアウトカムとして死
○一概には言えない○わからない亡は1,000 人当たり88 人減少(95% CI:110 人減少~344 人増加), VFD は1.32 日延長(95% CI:3.32 日短縮~5.96 日延長),入院日数は6.87 日短縮(95% CI:15.32 日短縮~1.58 日延長)した.しかし,検討されたサンプルサイズは極めて小さく信頼区間の幅も広い.また,場合によっては重大なアウトカムとしての死亡数を344 人増やす可能性もあるため,その望ましい効果は「わずか」とした 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい○わずか●一概には言えない○わからない害のアウトカムとして,感染症発症率は1,000 人当たり219 人減少 (95% CI:296 人減少~175 人増加)した.一方で,高血糖は1,000 人あたり142 人増加(95% CI:138 人減少~684 人増加)した.望ましくない効果として,重大な害のアウトカムである発達予後やミオパチー/ニューロパチーの有無に関しては評価されていなかった.以上より,望ましくない効果は「一概に言えない」とした エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡重大+○○○ 非常に低 発達予後重大— VFD重大+○○○非常に低入院日数重大+○○○非常に低感染性合併症の増加重大+○○○ 非常に低 ミオパチー/ニューロパチーの増加重大— 注)発達予後,ミオパチー/ニューロパチーの増加については,採択された文献内にアウトカム報告がなかった エビデンスの確実性サンプルサイズが35 と非常に少ないRCT 1 件のみ1)で,患者背景もステロイド群/プラセボ群で異なった(ステロイド群で有意にプラトー圧が
高く,プラセボ群のPELOD score は2 倍近く高かった).有意差はないものの,いくつかの望ましい効果がステロイド投与を支持する結果となったが,患者背景の違いが影響している可能性などが考えられた.ステロイド投与による望ましい効果はわずかで,望ましくない効果に関しては評価不十分の可能性を考え,このメタ解析によるステロイド投与の是非に関して推奨を提示するのは困難と考えられた.PALICC の共同声明2)では,小児ARDS 患者にルーチンにステロイドを投与することは推奨しないとしている 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない死亡は一般的に重大なアウトカムであり,これに対する価値観の重要な 不確実性や多様性はないと考えられる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利●一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対 象介入(ステロイ ド投与)絶対差 (95% CI)相対効果 RR (95% CI) 死 亡2/18 (11.1%) 0/17 (0.0%) 88 人減少/ 1,000 人(110 人減少~ 344 人増加) 0.21 (0.01~ 4.10) 発達予後 VFD — —平均1.32 日延長 (3.32 日短縮~ 5.96 日延長)
入院日数— —平均6.87 日短縮 (15.32 日短縮~ 1.58 日延長) 感染症発症率5/18 (27.8%) 1/17 (5.9%) 219 人減少/ 1,000 人(296 人減少~ 175 人増加) RR 0.21 (0.03~ 1.63) ミオパチー/ニューロパチーの増加介入による望ましい効果はわずかで,望ましくない効果に関しては評価不十分であることから,効果のバランスは「一概に言えない」とした 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない有害性に対する受け止め方がステークホルダーにより異なる可能性があ り,「一概に言えない」とした 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからないすでに日常診療で実行されているため実行可能と思われる 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ○ ○ 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 小児ARDS 患者にステロイドを使用するかについて,本SR の結果からはその推奨を提示することはできない.ステロイドの投与は患者背景,病態を含めて検討する必要がある(in our practice statement). 付帯事項 あくまで現行の診療の記述であり,今回のRCT の結果を含めステロイドの使用を否定するものではない.
理 由 Justification 疑 問 小児ARDS 患者にステロイドを使用するか?患 者 小児ARDS 患者.介 入 ステロイド全身投与(経口または経静脈投与を含める,投与薬剤,投与量,投与期間は問わない).対 照 ステロイド投与なし.アウトカム 死亡,VFD,入院日数,感染症発症率,高血糖.エビデンスの要約SR の結果,PICO に該当するRCT は1 件のパイロット研究1)のみで,介入群に比較し対照群のPELOD score は2 倍近く高かった.小児ARDS 患者にステロイドを使用することで益のアウトカムとして,死亡率は1,000 人当たり88 人減少(95% CI:110 人減少~344 人増加),VFD は1.32 日延長(95% CI:3.32 日短縮~ 5.96 日延長),入院日数は6.87 日短縮(95% CI:15.32 日短縮~1.58 日延長)した.しかし,検 討されたサンプルサイズは極めて小さく,信頼区間の幅も広い.また,場合によっては重大なアウトカムとしての死亡数を344 人増やす可能性もあるため,その望ましい効果は「わずか」とした.害のアウトカムとして,感染症発症率は1,000 人当たり219 人減少(95% CI:296 人減少~175人増加)した.一方で,高血糖は1,000 人あたり142 人増加(95% CI:138 人減少~684 人増加)した.望ましくない効果として,重大な害のアウトカムである発達予後やミオパチー/ニューロパチーの有無に関しては評価されていなかった.以上より,望ましくない効果は「一概に言えない」とした.以上より,介入による望ましい効果と望ましくない効果のバランスについては「一概に言えない」とした.エビデンスの確実性サンプルサイズが35 と非常に少ないRCT 1 件1)のみで,患者背景もステロイド群/プラセボ群で異なった(ステロイド群で有意にプラトー圧が高く,プラセボ群のPELOD score は2 倍近く高かった).有意差はないものの,いくつかの望ましい効果がステロイド投与を支持する結果となったが,患者背景の違いが影響している可能性などが考えられた.ステロイド投与による望ましい効果はわずかで,望ましくない効果に関しては評価不十分の可能性を考え,このメタ解析によるステロイド投与の是非に関して推奨を提示するのは困難と考えられた.PALICC の共同声明2)では,小児ARDS患者にルーチンにステロイドを投与することは推奨しないとしている.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定今回の検討では,望ましい効果・望ましくない効果の差を評価することは困難であった.すでに,日常臨床で実行されており,実現可能性には問題がないと考える一方で,ステロイド投与の望ましくない効果に対する受け入れは,ステークホルダーにより異なると考えた.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,「小児ARDS 患者へのステロイド投与について,その推奨を提示することはできない.ステロイドの投与は患者背景,病態を含めて検討する必要がある」が,中央値8.0 点,見解不一致指数0.2920 であったため,in our practice statement として合意を得た.パネル会議において,抽出された1 件のRCT を採用した上でin our practice statement とする
か,採用せずにin our practice statement とするかの議論があり,最終的に採用した上でin our practice statement とする方針とした.推奨文の変更はなかったが,議論を踏まえ事前投票から結果が変更される可能性があったため,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9.0 点,見解不一致指数0.1316 であったため,in our practice statement として合意を得た.付加的な考慮事項あくまで現行の診療の記述であり,今回のRCT の結果を含めステロイドの使用を否定するものでない. サブグループの検討事項 Subgroup considerations サブグループの検討は行われていないが,基礎疾患として高血圧/糖尿病/消化管出血/免疫不全/血栓素因などがある場合は,ステロイドの副作用により注意するべきであると考えられる. 実施上の考慮事項 Implementation considerations ステロイドは免疫能の低下による感染性合併症,耐糖能異常,高血圧,消化管出血,血栓形成などの様々な副作用がある.また,特に呼吸管理が長期化する重症ARDS での筋弛緩薬使用症例では,ミオパチーの合併も懸念されるため,血糖,血圧測定をはじめ,胃液性状,深部静脈血栓に対する理学所見,エコー評価を十分に行いつつ,栄養やリハビリテーションを励行する.補足すると,当該文献でのステロイド投与量は,メチルプレドニゾロン2 mg/kg 静注後,1 mg/ kg/day の持続静注(7 日間投与後,1 週間かけて漸減中止)であった. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたっては,個々の症例に合わせたステロイド使用の可否について,さらに詳細に検討する必要があるかもしれない.投与するとした場合のその適応病態,投与開始時期・投与期間などいずれも不明な点が多く,本診療ガイドライン公表後,臨床現場の判断でやむなく投与された場合の状況についてモニタリングが必要である. 研究の可能性 Research priorities 小児ARDS に関するステロイド投与に関しては,ステロイドの種類,投与量,投与期間は,いずれも明らかになっていない.また,ARDS の原因や年齢を考慮し,患者群を考えた臨床研究が望まれる.参考文献1) Drago BB, Kimura D, Rovnaghi CR, et al. Double‒blind, placebo‒controlled pilot randomized trial of methylprednisolone infusion in pediatric acute respiratory distress syndrome. Pediatr Crit Care Med 2015;16:e74‒81. 2) Tamburro RF, Kneyber MC. Pulmonary specific ancillary treatment for pediatric acute respiratory distress syndrome:proceedings from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:S61‒72.
背景,この問題の優先度 気管挿管をして行う人工呼吸器管理では日々,人工呼吸器の離脱が可能か評価する必要がある.小児では安静の協力が得られず,高用量の鎮静を要する場合がある.鎮静薬の過剰投与は,人工呼吸器装着日数やせん妄リスク,離脱症状のリスクを上昇させるため,プロトコル化された鎮静による効果や合併症の回避が期待される.プロトコル化された鎮静は小児ARDS患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,有効性を明らかにすることは重要な臨床課題であり,その優先度は高い.なお,鎮静プロトコルは人工呼吸器離脱を前提としており,非ARDS患者でも有用性に差はないと考えられ,対象集団をARDS患者に限定しなかった. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),ARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者(ARDS の診断:AECC 基準,ベルリン定義,PALICC 基準のいずれかの基準を満たした患者).介入(I):プロトコル化された鎮静.対照(C):プロトコルを用いない従来の鎮静.アウトカム(O):死亡,発達予後,人工呼吸 器装着日数,入院日数,計画外抜管や呼吸状態悪化などの有害事象(追加のアウトカムとして離脱症候群). 1 2 1 領域F 小児領域 小児呼吸不全患者の鎮静においてプロトコルを使用するか? PCQ 14 小児呼吸不全患者の鎮静にプロトコルを使用することを条件付きで推奨す る(条件付き推奨/中程度の確実性の中程度のエビデンス:GRADE 2B). 今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象にしている点に注意が必要である.また,RCT で使用された鎮静プロトコルは看護師が鎮静深度,疼痛を,スケールを用いて評価し,定めた目標に向かって鎮痛・鎮静を調整するアルゴリズムに基づくため,実施にあたっては小児を対象とした鎮静・鎮痛スケールを導入する必要がある. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 SR の結果,プロトコル化された鎮静群と通常どおりの診療群で比較したRCT は1 件(n= 2,449)であった.ARDS 患者に限定しておらず,人工呼吸器管理を要した小児を対象としたものであった.プロトコル化された鎮静による重大な益のアウトカムとして,死亡は1,000 人あたり13 人減少(95% CI:25 人減少~4 人増加),人工呼吸器装着日数は平均±0 日(95% CI:0.46 日短縮~0.46 日延長),入院日数は平均2 日短縮(95% CI:3.04 日短縮~0.96 日短縮)を認め,発達予後については報告がなかった.以上より,効果は「小さい」と判断した.一方,重大な害のアウトカムとして計画外抜管や呼吸状態悪化の報告はなかった.そのため,今回取り上げた文献(Curley 2015)1)を検討したところ,重要な害のアウトカムとして離脱症候群(withdrawal syndrome)は1,000 人あたり29 人増加(4 人増加~60 人増加)しており,望ましくない効果は「わずか」と判断した.以上より「弱い推奨」とした. エビデンスの確実性 今回抽出された重大なアウトカムの方向性は一致しており,エビデンスの確実性は「中」と判断した. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 本介入の予測される利益は害を上回る可能性があるが,有意ではなく,効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.日常診療で新たに使用する薬剤や器具は必要なく,入院日数の減少による医療費軽減が期待され,コストの負担はわずかと推測される.一方で,医師・看護師への教育が必要である.特に,小児専門でないICUでは小児を対象とした鎮静・鎮痛スケール導入が大きな負担となり得るため,実行可能性は一概に言えない.受け入れは問題ない と思われる. パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法で,推奨文「小児ARDS 患者の補助療法として,プロトコル化された鎮静を行うことを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「中」)」,付帯事項「今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象にしている点に注意が必要である.また,RCT で使用された鎮静プロトコルは看護師が鎮静深度,疼痛を,スケールを用いて評価し,定めた目標に向かって鎮痛・鎮静を調整するアルゴリズムに基づく」が中央値8 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.本介入にあたり,小児を対象とした鎮静・鎮痛スケールの導入が必要性を強調するため,付帯事項に追記し,再投票を行った結果,中央値9点,見解不一致指数0.1316で合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 鎮静プロトコルはARDS急性期を脱し,人工呼吸器離脱を前提とした介入であり,対象を人工呼吸器管理を要する小児としても大きな問題はないと判断した.計画外抜管や呼吸状態の悪化については報告がなく,注意が必要である.また,鎮静薬の過剰投与回避に加え,呼吸器離脱が可能かどうかを日々検討することも重要である2).さらに,鎮静プロトコルはすべての患者に一律に適応するものではなく,プロトコルの内容や,使用する患者群について個別に検討するべきである. 3 4 5 3 4
関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,類似の内容が「CQ44 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うか?」に記載されている.RCT 4 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,成人ARDS患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことが条件付きで推奨されている.詳細については,CQ44 を参照されたい.PALICC2)では,鎮静薬のモニタリング,調整,離脱については,専門職種同士が協力し,毎日の鎮静目標が設定された目標指向型のプロトコルで管理することを推奨している(強い合意). 治療のモニタリングと評価 鎮静薬の総使用量の変化,過剰な鎮静の見直しによる合併症の軽減の程度(人工呼吸器装着日数,せん妄,離脱症侯群など),医療費の変化の評価が必要である.また,アンケートなどでプロトコル遵守率の評価が必要である. 今後の研究の可能性 今回採用のRCT は1 件のみであり,プロトコルの内容によって結果に影響があるかは検討 するべきである.また,発達予後および有害事象についても検討していく必要がある. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「respiratory failure」「critical care」「ventilation」「sedation」「randomized controlled trial」をキーワードとして, Pubmed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月18 日までの文献を検索し, 1,138 件の研究が同定され,スクリーニングの結果1 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Curley 20151). 資料一覧 ・資料PCQ14—1 Search strategy.・資料PCQ14—2 フローダイアグラム.・資料PCQ14—3 Risk of bias.・資料PCQ14—4 Forest plot.・資料PCQ14—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ14—6 Evidence—to—Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Curley MA, Wypij D, Watson RS, et al. Protocolized sedation vs usual care in pediatric patients mechanically ventilated for acute respiratory failure:a randomized clinical trial. JAMA 2015;313:379—89. 2) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428—39. 参考文献
資料PCQ14—1 Search strategy MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/6/18) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] OR ALI[tiab] #2 Critical Illness[mh] OR Critical Care[mh] OR Intensive Care Units[mh] OR critically ill[tiab] OR critical care[tiab] OR intensive care[tiab] #3 #1 OR #2 #4 Respiration, Artificial[mh] OR ventilators, mechanical[mh] OR ventilator[tiab] OR Ventilators[tiab] OR ventilation[tiab] OR ventilations[tiab] #5 sedation*[tiab] OR deep sedation[mh] OR Conscious Sedation[mh] OR Hypnotics AND Sedatives[mh] #6 #3 AND #4 AND #5 #7 (randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #8 #6 AND #7 CENTRAL(Search date:2020/6/18) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab #2 [mh "Critical Illness"] OR [mh "Critical Care"] OR [mh "Intensive Care Units"] OR "critically ill":ti,ab OR "critical care":ti,ab OR "intensive care":ti,ab #3 #1 OR #2 #4 [mh "Respiration, Artificial"] OR [mh "ventilators, mechanical"] OR ventilator:ti,ab OR Ventilators:ti,ab OR ventilation:ti,ab OR ventilations:ti,ab #5 sedation*:ti,ab OR [mh "deep sedation"] OR [mh "Conscious Sedation"] OR [mh "Hypnotics AND Sedatives"] #6 #3 AND #4 AND #5 Igaku Chuo Zasshi(Search date:2020/6/18) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2クリティカルケア/TH OR クリティカルケア/TA #3 ICU/TH OR ICU/TA #4危篤/TH OR 危篤/TA #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6人工呼吸/TH OR 人工呼吸器/TH OR 人工呼吸/TA #7鎮静度/TH OR 催眠剤と鎮静剤/TH OR 鎮静/TA #8 #5 AND #6 AND #7 #9 ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT= 会議録除く) #10 #8 AND #9
資料PCQ14—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,597 628件926件43件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=459 除外基準に該当した研究 n=1,037 除外基準に該当した研究n=23理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる5件0件7件8件3件 除外基準に該当した研究 n=77 検索で同定された研究 n=1,597 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=1,138 系統的レビューに組み入れた研究 n=1 メタ解析に組み入れた研究 n=1 フルテキストで適格性を評価した研究 n=24 小児の適格性を評価した研究 n=101
資料PCQ14—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器装着日数 入院日数ICU滞在日数
離脱症候群
資料PCQ14—4 Forest plot 死 亡 人工呼吸器装着日数 入院日数 ICU滞在日数 離脱症候群
資料PCQ14—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討Sedation protocol Control相対指標(95% CI)絶対指標(95% CI) 死 亡a 1 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻で ない深刻cなし47/1,225 (3.8%) 63/1,224 (5.1%) RR 0.75 (0.52~ 1.08) 1,000 人あたり13 人減少(25 人減少~ 4 人増加) ++○○ 低重大 発達予後 0 — — — 重大 人工呼吸器装着日数 1 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし1,225 1,224 —平均0 日(0.46 日短縮~ 0.46 日延長) +++○ 中重大 入院日数 1 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし1,225 1,224 —平均2 日短縮(3.04 日短縮~ 0.96 日短縮) +++○ 中重大 ICU 滞在日数 1 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし1,225 1,224 —平均0 日(0.6 日短縮~ 0.6 日延長) +++○ 中重要 離脱症候群 1 ランダム 化試験深刻b 深刻で ない深刻で ない深刻で ないなし149/1,225 (12.2%) 114/1,224 (9.3%) RR 1.31 (1.04~ 1.64) 1,000 人あたり29 人増加(4 人増加~ 60 人増加) +++○ 中重要 有害事象 0 — — — 重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.死亡は28 日死亡. b.対象となる文献が1 つで,バイアスがハイリスクであるため1 段階グレードダウンとした. c.総サンプルサイズ2,449 であり,OIS を満たさず,95% CI が害の治療域を含んでおり,1 段階グレードダウンとした.注)Outcome として発達予後および有害事象を設定していたが,これらについて報告した論文はなかった.
資料PCQ14—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ14:小児呼吸不全患者の鎮静においてプロトコルを使用するか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下)のARDS 患者も しくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者(ARDS の診断:AECC基準,ベルリン定義,PALICC 基準のいずれかの基準を満たした患者) 介 入:プロトコル化された鎮静(spontaneous awakening trial/daily sedation interruption の有無は問わない) 比較対照:プロトコルを用いない従来の鎮静主要なアウトカム:死亡・発達予後・人工呼吸器装着日数・入院日数・有害事象(計画外抜管・呼吸状 態悪化など) セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:人工呼吸器管理のために十分な鎮静が必要になる時があるが,高用量の鎮静薬は, 人工呼吸器装着日数延長やせん妄リスク,離脱症状のリスクを上昇させるため,無鎮静/浅鎮静/プロトコル化された鎮静による効果や合併症の回避が期待される.無鎮静/浅鎮静/プロトコル化された鎮静は小児ARDS 患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題であるなお,鎮静プロトコルは人工呼吸器離脱を前提とした介入であり,ARDS 患者と非ARDS 患者との間で有用性に差はないと考えられたため,対象集団をARDS 患者に限定しなかった 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない気管挿管をして行う人工呼吸器管理では日々,人工呼吸器 の離脱が可能か評価する必要がある.小児の人工呼吸器管理では安静の協力が得られない時に高用量の鎮静を要する場合があり,抜管可能かどうかの評価に支障をきたしたり,鎮静薬の過剰投与が問題になる.高用量の鎮静は人工呼吸器装着日数の延長やせん妄,離脱症状のリスクを上昇させるため,プロトコル化された鎮静による効果や合併症回避が期待される.プロトコル化された鎮静は小児ARDS患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題であり,その優先順位は高い
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致するRCT は1 件1)であった 重大な益のアウトカムとして,28 日死亡(1 RCT1):n= 2,449)に関する効果推定値は「対照」と比較して「介入」で1,000 人あたり13 人減少(95% CI:25 人減少~4 人増加),人工呼吸器装着日数(1 RCT1):n=2,449)に関する効果推定値は変化なし(95% CI:0.46 日短縮~0.46 日延長),入院日数(1 RCT1):n=2,449)に関する効果推定値は平均差2 日短縮(95% CI:3.04 日短縮~0.96 日短縮)であった.発達予後の改善を益のアウトカムとして検討したが,報告した研究はなかった.以上,死亡,人工呼吸期間,入院日数の減少を益のアウトカムとして考慮し,介入による望ましい効果は「小さい」と判断した 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい○中程度○小さい●わずか○一概には言えない○わからない重大な害のアウトカムとして計画外抜管や呼吸状態悪化な どの有害事象を検討したが,発生した実数を報告した研究はなかった.備考欄の記載と合わせて考えると「介入」による望ましくない効果は「わずか」と判断した今回のSR で取り上げ た文献(Curley 2015)1)において,重要な害のアウトカムである離脱症候群(1 RCT:n= 2,449)は「対照」と比較して「介入」で1,000人あたり2 9 人増加(95% CI:4 人増加~ 60 人増加)していた エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○非常に低○低●中○高○研究がないアウトカム相対的な 重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡重大++○○ 低 人工呼吸器装着日数重大+++○ 中
入院日数重大+++○ 中 発達予後重大該当論文なし有害事象(計画外抜管,呼吸状態悪化など)重大該当論文なし エビデンスの確実性今回抽出した重大なアウトカムの方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は最も確実性の高いエビデンスの確実性を採用し「中」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない現状では,小児およびその保護者が,本介入による各アウ トカムに対してどのように相対的重要性をおくかについてのエビデンスは不足している.しかし,今回取り上げている死亡などの重大なアウトカムにおいて重要な不確実性や多様性が生じる可能性はないと思われる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利○たぶん対照が有利○介入と対照のどち らも有利でない●たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからないアウトカム対照介入 (鎮静プロトコル)絶対差 (95% CI)相対効果 (95% CI) 死 亡63/ 1,224 (5.1%) 47/ 1,225 (3.8%) 13 人減少/ 1,000 人 (25 人減少~ 4 人増加) RR 0.75 (0.52~ 1.08) 人工呼吸器装着日数— —平均0 日 (0.46 日短縮~ 0.46 日延長) —
入院日数— —平均2 日短縮 (3.04 日短縮~ 0.96 日短縮) — 発達予後— —推定不可有害事象(計画外抜管,呼吸状態悪化など) — —推定不可 以上より,本介入による効果は害よりも「たぶん介入が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ●たぶんはい○はい○一概には言えない○わからない目立った有害事象もなく,患者および患者家族の受け入れ に大きな問題はないと考えられる.よって,「たぶんはい」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからないプロトコル導入にあたって小児を対象とした鎮静や疼痛の スケールが必要である.PICU ではプロトコル内容の調整や,薬剤投与量の変更の権限に関する問題を解決すれば実行はたぶん可能だが,小児患者が入室する機会の少ないICU ではこれらのスケールを教育・普及する人的負担が大きいことが予想される.よって,本介入の実施が可能かは「一概には言えない」 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶんいいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ○ ○ ● ○ 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な 不確実性や多様性はない 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 小児呼吸不全患者の鎮静にプロトコルを使用することを条件付きで推奨する(条件付き推奨/中程度の確実性の中程度のエビデンス:GRADE 2B). 付帯事項 今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象にしている点に注意が必要である.また,RCT で使用された鎮静プロトコルは看護師が鎮静深度,疼痛を,スケールを用いて評価し,定めた目標に向かって鎮痛・鎮静を調整する
アルゴリズムに基づくため,実施にあたっては小児を対象とした鎮静・鎮痛スケールを導入する必要がある. 理 由 Justification 疑 問 小児呼吸不全患者の鎮静においてプロトコルを使用するか?患 者小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者(ARDS の診断:AECC 基準,ベルリン定義,PALICC基準のいずれかの基準を満たした患者).介 入 プロトコル化された鎮静.対 照 プロトコルを用いない従来の鎮静.アウトカム 死亡,発達予後,人工呼吸器装着日数,入院日数,計画外抜管や呼吸状態悪化などの有害事象(追加のアウトカムとして離脱症候群).エビデンスの要約SR の結果,プロトコル化された鎮静群と通常どおりの診療群で比較したRCT は1 件1) (n= 2,449)であった.ARDS 患者に限定した報告はなく,人工呼吸器管理を必要とした小児を対象としたものであったが,本CQ の検討対象として妥当と判断した.小児の人工呼吸器管理を行う際にプロトコル化された鎮静を行うことによる重大な益のアウトカムとして,死亡は1,000人あたり13人減少,(95% CI:25 人減少~4 人増加),人工呼吸器装着日数は平均差±0 日(95% CI:0.46 日短縮~0.46 日延長),入院日数は平均差2 日短縮(95% CI:3.04 日短縮~0.96 日短縮)を認め,発達予後については報告がなかった.以上より,効果は「小さい」と判断した.一方,重大な害のアウトカムとして計画外抜管や呼吸状態悪化などの有害事象の報告はなかった.そのため,今回のSR で取り上げた文献(Curley 2015)1)を検討したところ,重要な害のアウトカムとして離脱症候群は1,000 人あたり29 人増加(95% CI:4 人増加~60 人増加)しており,望ましくない効果は「わずか」と判断した.以上より,「弱い推奨」とした.エビデンスの確実性今回抽出された重大なアウトカムの方向性は一致しており,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「中」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定本介入の予測される利益は害を上回る可能性があるが,有意とはいえず,効果のバランスは「たぶん介入が有利」と判断した.介入にあたっては,日常診療で新たに使用する薬剤や器具は必要なく,入院日数の減少により医療費そのものが軽減する可能性もあることからコストの負担もわずかなものと推測される.一方で,医師・看護師への教育が必要であり人的リソースは必要である.特に,小児を診療する機会が少ないICU では小児を対象とした鎮静・鎮痛スケール導入が大きな負担となる可能性がある.以上から,実行可能性は「一概に言えない」と判断した.受け入れは問題ないと思われる.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者の補助療法として,プロトコル化された鎮静を行うことを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「中」)」,付帯事項「今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象にしている点に注意が必要である.また,RCT で使用された鎮静プロトコルは看護師
が鎮静深度,疼痛を,スケールを用いて評価し,定めた目標に向かって鎮痛・鎮静を調整するアルゴリズムに基づく」が中央値8 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.パネル会議において,プロトコル化にあたって小児を対象とした鎮静・鎮痛スケールを導入する必要性があることを付帯事項に追記したほうがよいという意見が出た.そのため,付帯事項を「今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象にしている点に注意が必要である.また,RCT で使用された鎮静プロトコルは看護師が鎮静深度,疼痛を,スケールを用いて評価し,定めた目標に向かって鎮痛・鎮静を調整するアルゴリズムに基づくため,実施にあたっては小児を対象とした鎮静・鎮痛スケールを導入する必要がある」に変更し,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.1316 で合意に至った.付加的な考慮事項今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象にしている点に注意が必要である.また,RCT で使用された鎮静プロトコルは看護師が鎮静深度,疼痛を,スケールを用いて評価し,定めた目標に向かって鎮痛・鎮静を調整するアルゴリズムに基づくため,実施にあたっては小児を対象とした鎮静・鎮痛スケールを導入する必要がある. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations 小児ARDS 患者に限定したRCT は今回検索し得た範囲では見つけられなかったが,鎮静プロトコルは人工呼吸器離脱を前提とした介入でありARDS の急性期を脱した状態と推測されるため,対象を人工呼吸器管理を要する小児としても大きな問題はないと判断した.今回,害のアウトカムとして検討した計画外抜管や呼吸状態の悪化については報告がなく,注意が必要である.また,鎮静薬の過剰投与を避けることと合わせて,呼吸器離脱が可能かどうかを日々検討することも重要である2).さらに,鎮静プロトコルはすべての患者に一律に適応するものではなく,プロトコルの内容や,使用する患者群について個別に検討するべきである. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 推奨の実施にあたって鎮静薬の総使用量が減少しているかの評価や,過剰な鎮静の見直しによる合併症の軽減の程度(人工呼吸器装着日数,せん妄,離脱症侯群など)の評価,医療費の増減があるかの評価が必要である.また,それ以外にもアンケートなどでプロトコルをどれだけ遵守できているかのモニタリングが必要である. 研究の可能性 Research priorities 今回採用となったRCT が1 件のみであり,プロトコルの内容によって結果に影響があるのかどうかは検討されていない.今後同様の研究を集積し,改めてメタ解析を行う必要がある.また,アウトカムとして発達予後および有害事象を設定していたが,これらを報告した文献がなく,改めて検討していく必要がある.
参考文献1) Curley MA, Wypij D, Watson RS, et al. Protocolized sedation vs usual care in pediatric patients mechanically ventilated for acute respiratory failure:a randomized clinical trial. JAMA 2015;313:379—89. 2) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428—39.
背景,この問題の優先度 気管挿管をして行う人工呼吸器管理では日々,人工呼吸器の離脱が可能か評価する必要がある.小児では安静の協力が得られず,高用量の鎮静を要する場合がある.鎮静薬の過剰投与は,人工呼吸器装着日数延長やせん妄リスク,離脱症状のリスクを上昇させるため,DSIによる効果や合併症の回避が期待される.成人の人工呼吸器管理ではDSI が早期の人工呼吸器離脱に有用とされるが,小児ではDSI に伴う計画外抜管などのトラブルが予想される.したがって,小児ARDS患者の人工呼吸器管理において,その有効性を明らかにすることは重要な臨床課題であり,この問題の優先度は高い.なお,DSI は人工呼吸器離脱を前提としており,非ARDS患者でも有用性に差はないと考えられ,対象集団をARDS 患者に限定しなかっ た. 解 説 PICO 患者(P):小児(論文の定義に準ずる,明記さ れていない場合は20 歳以下),ARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者(ARDS の診断:AECC 基準,ベルリン定義,PALICC 基準のいずれかの基準を満たした患者).介入(I):DSI.対照(C):DSI を行わない従来の鎮静.アウトカム(O):死亡,人工呼吸器装着日数, 入院日数,発達予後,計画外抜管や呼吸状態悪化などの有害事象. 1 2 1 領域F 小児領域 小児呼吸不全患者に毎日の鎮静中断(daily sedation interruption:DSI)を行うか? PCQ 15 小児呼吸不全患者に,毎日の鎮静中断(DSI)を実施しないことを条件付き で推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象としたものである.現時点で小児ARDS 患者を対象として完全な鎮静中断を推奨するかどうかのエビデンスは不足しているが,日々呼吸器離脱が可能かどうかを評価することは必要である. 推 奨 付帯事項
エビデンスの要約 DSI を含む鎮静管理と含まない鎮静管理を比較したRCT は3 件(n=261)であった.DSIによる益として,人工呼吸器装着日数は平均 1.48 日短縮(95% CI:3.48 日短縮~0.51 日 延長),入院日数は平均3.4 日短縮(95% CI: 8.84 日短縮~2.04 日延長)を認め,発達予後 については報告がなかった.死亡は低下すると想定していたが,介入により増加していた.以上より,望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,害として,死亡は1,000 人あたり166 人増加(95% CI:92 人減少~1,000 人増加),計画外抜管は1,000 人あたり26 人減少(95% CI:41 人減少~39 人増加)を認めた.以上より,望ましくない効果は「中程度」と判断した. DSI 群における死亡の増加は1 つのRCT (Vet 2016)に影響されている.同RCT ではDSI 群で人工呼吸器装着日数,入院日数,再挿管率は低く,DSI と死亡の因果関係の説明が困難なことに留意するべきである.なお,成人を対象としたRCT ではDSI による死亡の有意な増加は認めない1). エビデンスの確実性 各アウトカムの方向性が一致していないため,エビデンスの確実性は「非常に低」. 効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定 小児を対象とした鎮静スケールの導入,およびDSI後の覚醒は,小児専門でないICUにとって負担は大きい.さらに,死亡の増加が懸念され,コストを含めた望ましくない効果がDSI 群で大きいと推測される.また,家族にとってDSI に伴う気管チューブへの不快は受け入れ困難な場合も予想される.以上から,実行可能性については一概に言えない.パネル会議 事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS患者の補助療法として,毎日の鎮静中断(DSI)を実施しないことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象としたもので,ARDS 患者を対象としたエビデンスは不足している.死亡に関わる3 つのRCT のうちサンプルサイズの大きい1 つのRCT(Vet 2016)において,対照群の死亡が0╱63 に対し,介入群で6╱66 という結果であった.メタ解析ではこの結果が大きく影響している.著者らは介入と死亡率上昇の因果関係は不明であったとしている」が中央値8 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.付帯事項で特定のRCT への言及は避けること,呼吸器離脱の可能性を日々評価することについて言及するべきであるとの意見が出た.そのため,付帯事項を上記に変更して,再投票を行った結果,中央値9 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った. サブグループの検討事項 なし. 実施上の考慮事項 DSI に先立って,人工呼吸器の離脱可能性を日々,検討する.今回検討したDSI では,計画外抜管は増えないとされたが,採用されたRCT はすべてPICUにおける研究である.施設によってはリスクが高まる可能性もあり,実施にあたって看護体制などの安全面への配慮を要する.また,小児患者が一時的に気管チューブへの不快を示す可能性について,家族への説明と理解が必要である. 3 4 3 4
関連する他の診療ガイドラインの記載 本診療ガイドラインの成人領域では,類似の内容が「CQ44 成人ARDS 患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うか?」に記載されている.RCT 4 件を用いたメタ解析手法の結果を根拠に,成人ARDS患者の補助療法として,無鎮静もしくは浅鎮静管理を行うことが条件付きで推奨されている.詳細については,CQ44 を参照されたい.PALICC2)では毎日の鎮静中断に焦点を当てた記載はない.鎮静薬のモニタリング,調整,離脱については,専門職種同士が協力し,毎日の鎮静目標が設定された目標指向型のプロトコルで管理することを推奨している(強い合意). 治療のモニタリングと評価 死亡を含めた有害事象について検証する必要がある. 今後の研究の可能性 DSI 群と死亡増加の関連が懸念されるが,死亡はprimary outcome に設定されておらず,増加も有意ではない.DSI による死亡増加につ いてのエビデンスは不足している.今後の研究の集積により推奨の方向性が変わる可能性がある. 文献検索式と文献選択 「ARDS」「ventilation」「sedation」「randomized controlled trial」などをキーワードとして,Pubmed,Cochrane CENTRAL および医中誌で2020 年6 月18 日までの文献を検索し,1,138 件の研究が同定され,スクリーニングの結果3 件のRCT を採用した. 本CQ で対象とした研究 Gupta 20123), Verlaat 20144), Vet 20165). 資料一覧 ・資料PCQ15—1 Search strategy.・資料PCQ15—2 フローダイアグラム.・資料PCQ15—3 Risk of bias.・資料PCQ15—4 Forest plot.・資料PCQ15—5 エビデンスプロファイル.・資料PCQ15—6 Evidence—to—Decision. 5 6 7 8 9 10 1) Burry L, Rose L, McCullagh IJ, et al. Daily sedation interruption versus no daily seda- tion interruption for critically ill adult patients requiring invasive mechanical ventilation. Cochrane Database Syst Rev 2014;2014:CD009176. 2) Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference Group. Pediatric acute respiratory distress syndrome:consensus recommendations from the Pediatric Acute Lung Injury Consensus Conference. Pediatr Crit Care Med 2015;16:428—39. 3) Gupta K, Gupta VK, Jayashree M, et al. Randomized controlled trial of interrupted versus continuous sedative infusions in ventilated children. Pediatr Crit Care Med 2012;13:131—5. 4) Verlaat CW, Heesen GP, Vet NJ, et al. Randomized controlled trial of daily interrup- tion of sedatives in critically ill children. Paediatr Anaesth 2014;24:151—6. 5) Vet NJ, de Wildt SN, Verlaat CW, et al. A randomized controlled trial of daily sedation interruption in critically ill children. Intensive Care Med 2016;42:233—44. 参考文献
資料PCQ15—1 Search strategy MEDLINE via Pubmed(Search date:2020/6/18) #1 Respiratory Distress Syndrome, Adult[mh] OR ARDS[tiab] OR respiratory distress syndrome[tiab] OR Acute Lung Injury[mh] OR acute lung injury[tiab] OR ALI[tiab] #2 Critical Illness[mh] OR Critical Care[mh] OR Intensive Care Units[mh] OR critically ill[tiab] OR critical care[tiab] OR intensive care[tiab] #3 #1 OR #2 #4 Respiration, Artificial[mh] OR ventilators, mechanical[mh] OR ventilator[tiab] OR Ventilators[tiab] OR ventilation[tiab] OR ventilations[tiab] #5 sedation*[tiab] OR deep sedation[mh] OR Conscious Sedation[mh] OR Hypnotics AND Sedatives[mh] #6 #3 AND #4 AND #5 #7 (randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]) #8 #6 AND #7 CENTRAL(Search date:2020/6/18) #1 [mh "Respiratory Distress Syndrome, Adult"] OR ARDS:ti,ab OR "respiratory distress syndrome":ti,ab OR [mh "Acute Lung Injury"] OR "acute lung injury":ti,ab #2 [mh "Critical Illness"] OR [mh "Critical Care"] OR [mh "Intensive Care Units"] OR "critically ill":ti,ab OR "critical care":ti,ab OR "intensive care":ti,ab #3 #1 OR #2 #4 [mh "Respiration, Artificial"] OR [mh "ventilators, mechanical"] OR ventilator:ti,ab OR Ventilators:ti,ab OR ventilation:ti,ab OR ventilations:ti,ab #5 sedation*:ti,ab OR [mh "deep sedation"] OR [mh "Conscious Sedation"] OR [mh "Hypnotics AND Sedatives"] #6 #3 AND #4 AND #5 Igaku—Chuo—Zasshi(Search date:2020/6/18) #1呼吸窮迫症候群-急性/TH OR 急性呼吸窮迫症候群/TA OR ARDS/TA #2クリティカルケア/TH OR クリティカルケア/TA #3 ICU/TH OR ICU/TA #4危篤/TH OR 危篤/TA #5 #1 OR #2 OR #3 OR #4 #6人工呼吸/TH OR 人工呼吸器/TH OR 人工呼吸/TA #7鎮静度/TH OR 催眠剤と鎮静剤/TH OR 鎮静/TA #8 #5 AND #6 AND #7 #9 ( ランダム化比較試験/TH OR 準ランダム化比較試験/TH OR ランダム化/AL OR 無作為化/AL OR 比較試験/AL OR 臨床試験/AL OR プラセボ/AL OR 対照/AL OR コントロール/AL OR 臨床研究/AL) AND (PT= 会議録除く) #10 #8 AND #9
資料PCQ15—2 フローダイアグラム 同定スクリーニング適格性組み入れデータベース検索で同定された研究 MEDLINE(PubMed) Cochrane CENTRAL医中誌 n=1,597 628件926件43件他のリソースから同定された研究 n=0 重複した研究 n=459 除外基準に該当した研究 n=1,037 除外基準に該当した研究 n=77 除外基準に該当した研究n=21理由:・ 論文の種類が異なる・ 日本語・英語以外・ RCTではない・ Pが異なる・ I/Cが異なる5件0件7件8件1件 検索で同定された研究 n=1,597 成人小児合同の一次スクリーニングへ 進んだ研究 n=1,138 系統的レビューに組み入れた研究 n=3 メタ解析に組み入れた研究 n=3 フルテキストで適格性を評価した研究 n=24 小児の適格性を評価した研究 n=101
資料PCQ15—3 Risk of bias 死 亡人工呼吸器装着日数 入院日数ICU滞在日数
離脱症候群計画外抜管
資料PCQ15—4 Forest plot 死 亡 人工呼吸器装着日数 入院日数 ICU滞在日数 離脱症候群 計画外抜管
資料PCQ15—5 エビデンスプロファイル 確実性の評価患者数効 果 確実性重要性 研究数研究デザインバイアスのリスク非一貫性非直接性不精確性その他の検討Daily interrup- tion of sedation Control相対(95% CI)絶対(95% CI) 死 亡 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻aなし18/127 (14.2%) 15/134 (11.2%) RR 2.48 (0.18~ 33.68) 1,000 人あたり166 人増加(92 人減少~ 1,000 人増加) ++○○ 低重大 発達予後 重大 人工呼吸器装着日数 3 ランダム 化試験深刻b深刻c 深刻で ない深刻dなし127 134 —平均1.48 日短縮(3.48 日短縮~ 0.51 日延長) +○○○非常に低重大 入院日数 1 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない深刻eなし66 63 —平均3.4 日短縮(8.84 日短縮~ 2.04 日延長) +++○ 中重大 ICU 滞在日数 3 ランダム 化試験深刻b深刻f 深刻で ない深刻dなし127 134 —平均2.25 日短縮(4.64 日短縮~ 0.14 日延長) +○○○非常に低重要 離脱症候群 1 ランダム 化試験深刻g 深刻で ない深刻で ない深刻hなし32/317 (10.1%) 66/540 (12.2%) RR 0.83 (0.55~ 1.23) 1,000 人あたり21 人減少(55 人減少~ 28 人増加) ++○○ 低重要 計画外抜管 3 ランダム 化試験深刻で ない深刻で ない深刻で ない非常に 深刻iなし2/127 (1.6%) 6/134 (4.5%) RR 0.42 (0.09~ 1.86) 1,000 人あたり26 人減少(41 人減少~ 39 人増加) ++○○ 低重大 CI:信頼区間,RR:リスク比,OIS:最適情報量.説 明a.総サンプルサイズが261 であり,OIS を満たさない.95% CI の幅が広く益と害の治療閾値をまたぐことから,全体としての不精確さは2 段階グレードダウンした. b.高リスクと判断した研究が2/3 であるため,1 段階グレードダウンとした. c.I2=63%であり,SR に含まれる各研究の結果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し1 段階グレードダウンした. d.総サンプルサイズが261 であり,OIS を満たさないため1 段階グレードダウンとした. e.総サンプルサイズが129 であり,OIS を満たさないため1 段階グレードダウンとした. f.I2=57%であり,SR に含まれる各研究の結果のばらつきをフォレストプロットで視覚的に判断した結果,「深刻」と判断し1 段階グレードダウンした. g.対象論文は1 つで7 項目のうち,ハイリスク1,リスク不明1 を含むことから1 段階グレードダウンした. h.総サンプルサイズが857 であり,OIS を満たさない.95% CI の幅が益の治療閾値をまたぐことから,全体としての不精確さは1 段階グレードダウンとした. i.総サンプルサイズが261 であり,OIS を満たさない.95% CI の幅が広く益と害の治療閾値をまたぐことから,全体としての不精確さは2 段階グレードダウンした.注)アウトカムとして発達予後を報告したものはなかった.
資料PCQ15—6 Evidence—to—Decision疑 問 PCQ15:小児呼吸不全患者に毎日の鎮静中断(daily sedation interrup- tion:DSI)を行うか? 集 団:小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下)のARDS 患者も しくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者(ARDS の診断:AECC基準,ベルリン定義,PALICC 基準のいずれかの基準を満たした患者) 介 入:毎日の鎮静中断(daily sedation interruption:DSI)比較対照: DSI を用いない従来の鎮静主要なアウトカム:死亡・人工呼吸器装着日数・入院日数・有害事象(計画外抜管・呼吸状態悪化など)セッティング:救急外来もしくはICU に準ずる状況視 点:個人背 景:人工呼吸器管理のために十分な鎮静が必要になる時があるが,高用量の鎮静薬は, 人工呼吸器装着日数延長やせん妄リスク,離脱症状のリスクを上昇させるため,無鎮静/浅鎮静/プロトコル化された鎮静による効果や合併症の回避が期待される.無鎮静/浅鎮静/プロトコル化された鎮静は小児ARDS 患者の人工呼吸器管理において確立した治療ではなく,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題であるなお,DSI は人工呼吸器離脱を前提とした介入であり,ARDS 患者と非ARDS 患者との間で有用性に差はないと考えられたため,対象集団をARDS 患者に限定しなかった 利益相反:なし 評 価 問 題 Problem その問題は優先順位が高いか? Is the problem a priority? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい●はい○一概には言えない○わからない気管挿管をして行う人工呼吸器管理では日々,人工呼吸器の離脱が可能 か評価する必要がある.小児の人工呼吸器管理では安静の協力が得られない時に高用量の鎮静を要する場合があり,抜管可能かどうかの評価に支障をきたしたり,鎮静薬の過剰投与が問題になる.成人の人工呼吸器管理ではDSI が早期の人工呼吸器離脱に有用とされる.しかし,小児ではDSI により覚醒が進めば計画外抜管などのトラブルも予想され,小児ARDS 患者の人工呼吸器管理において,その有効性を明らかにすることは重要臨床課題であり,その優先順位が高いかに関する判断は「はい」とした
望ましい効果 Desirable effects 予想される望ましい効果はどの程度のものか? How substantial are the desirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○わずか●小さい○中程度○大きい○一概には言えない○わからないSR の結果,PICO に一致したRCT が3 件1—3)施行されており,これらを 用いたメタ解析を施行した益のアウトカムとして,「対照」と比較して「介入」で,人工呼吸器装着日数(3 RCT1—3):n=261)は平均差1.48 日短縮(95% CI:3.48 日短縮~0.51 日延長),入院日数(1 RCT3):n=129)は平均差3.4 日短縮(95% CI:8.84 日短縮~2.04 日延長)であった.益のアウトカムとして死亡の減少を想定していたが,後述のように介入群で増加していた.発達予後の改善を報告した研究はなかった.以上より,人工呼吸器装着日数,入院日数を益のアウトカムとして考慮し,介入による望ましい効果は「小さい」とした 望ましくない効果 Undesirable effects 予想される望ましくない影響はどの程度のものか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 判 断リサーチエビデンス備 考○大きい●中程度○小さい○わずか○一概には言えない○わからない望ましくない効果のアウトカムとして「対照」と比較して「介入」で死 亡(3 RCT1—3):n=261:1 研究は30 日死亡,2 研究は評価時期の記載なし)に関する効果推定値は1,000 人あたり166 人増加(95% CI:92人減少~1,000 人増加),計画外抜管(3 RCT1—3):n=261)は1,000 人あたり26 人減少(95% CI:41 人減少~39 人増加)であった.以上,介入による望ましくない効果は「中程度」と判断した エビデンスの確実性 Certainty of evidence 効果のエビデンスの全体的な確実性は? What is the overall certainty of the evidence of effects? 判 断リサーチエビデンス備 考●非常に低○低○中○高○研究がない関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 アウトカム相対的な 重要性エビデンスの確実性 (GRADE) 死 亡重大++○○ 低 人工呼吸器装着日数重大+○○○ 非常に低 入院日数重大+++○ 中 有害事象(計画外抜管,呼吸状態悪化など)重大++○○ 低 発達予後重大該当論文なし
エビデンスの確実性アウトカムの方向性が一致しておらず,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は,最も確実性の低いエビデンスの確実性を採用し「非常に低」と判断した 価値観 Values 人々が主な成果をどの程度評価しているかについて,重要な不確実性やばらつきがあるか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 判 断リサーチエビデンス備 考○重要な不確実性や 多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性がある○たぶん重要な不確 実性や多様性はない●重要な不確実性や 多様性はない現状では小児およびその保護者が,本介入による各アウトカムに対して どのように相対的重要性を置くかについてのエビデンスは不足している.しかし,今回取り上げている死亡などの重大なアウトカムにおいて「重要な不確実性や多様性が生じる可能性はない」と思われる 効果のバランス Balance of effects 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは,介入と比較のどちらに有利か? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 判 断リサーチエビデンス備 考○対照が有利●たぶん対照が有利○介入と対照のどちらも有利でない○たぶん介入が有利○介入が有利○一概には言えない○わからない結果のまとめ アウトカム対照介入 (DSI)絶対差 (95% CI)相対効果 (95% CI) 死 亡15/134 (11.2%) 18/127 (14.2%) 166 人増加/ 1,000 人 (92 人減少~ 1,000 人増加) RR 2.48 (0.18~ 33.68) 人工呼吸器装着日数— —平均1.48 日短縮 (3.48 日短縮~ 0.51 日延長) — 入院日数— —平均3.4 日短縮 (8.84 日短縮~ 2.04 日延長) — 有害事象(計画外抜管,呼吸状態悪化など) 6/134 (4.5%) 2/127 (1.6%) 26 人減少/ 1,000 人(41 人減少~ 39 人増加) RR 0.42 (0.09~ 1.86) 発達予後— —推定不可
以上より,介入による利益と害のバランスは「たぶん対照が有利」と判断した 受け入れ Acceptability 介入は主要なステークホルダーに受け入れられるか? Is the intervention acceptable to key stakeholders? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからない介入により望ましい効果が期待できる場合は小児患者にとって受け入れ 可能と考えられる.一方,患者家族にとっては気管チューブへの不快を示す場面を見てつらく感じる場合もあるかもしれない.以上から,主要なステークホルダーに受け入れられるかは「一概には言えない」と判断した 実行可能性 Feasibility その介入は実施可能か? Is the intervention feasible to implement? 判 断リサーチエビデンス備 考○いいえ○たぶんいいえ○たぶんはい○はい●一概には言えない○わからないDSI の導入にあたって小児を対象とした鎮静や疼痛のスケールが必要で ある.PICU ではプロトコル内容の調整や,薬剤投与量の変更の権限に関する問題を解決すれば実行はたぶん可能だが,小児患者が入室する機会の少ないICU ではこれらのスケールを教育・普及する人的負担が大きいことが予想される.よって,本介入の実施が可能かは「一概には言えない」 判断の要約 判 断 問 題 Problemいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 望ましい効果Desirable effectsわずか小さい中程度大きい一概には 言えないわから ない 望ましくない効果Undesirable effects大きい中程度小さいわずか一概には 言えないわから ない エビデンスの確実性Certainty of evidence非常に低低中高研究が ない 価値観Values重要な 不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性があるたぶん 重要な不確実性や多様性はない重要な不確実性 や多様性はない
推奨のタイプ 介入を行わないことを強く推奨 Strong recommendation against the intervention介入を行わないこ とを条件付きで推奨Conditional recommendation against the intervention介入と対照のどち らを行うか条件付きで推奨Conditional recommendation for either the intervention or the comparison介入を行うことを 条件付きで推奨 Conditional recommendation for the intervention介入を行うことを 強く推奨 Strong recommendation for the intervention ○ ● ○ ○ ○ 効果のバランスBalance of effects対照が 有利たぶん 対照が有利介入と 対照のどちらも有利でないたぶん 介入が有利介入が 有利一概には 言えないわから ない 受け入れ Acceptabilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 実行可能性 Feasibilityいいえたぶん いいえたぶん はいはい一概には 言えないわから ない 結 論 推 奨 Recommendation 小児呼吸不全患者に,毎日の鎮静中断(DSI)を実施しないことを条件付きで推奨する(条件付き推奨/非常に低い確実性のエビデンス:GRADE 2D). 付帯事項 今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象としたものである.現時点で小児ARDS 患者を対象として完全な鎮静中断を推奨するかどうかのエビデンスは不足しているが,日々呼吸器離脱が可能かどうかを評価することは必要である. 理 由 Justification 疑 問 小児呼吸不全患者に,DSI を行うか?患 者小児(論文の定義に準ずる,明記されていない場合は20 歳以下),ARDS 患者もしくは12 時間以上の人工呼吸器管理を要するICU 入室患者(ARDS の診断:AECC 基準,ベルリン定義,PALICC基準のいずれかの基準を満たした患者).介 入 DSI.対 照 DSI を行わない従来の鎮静.
アウトカム死亡,人工呼吸器装着日数,入院日数,発達予後,計画外抜管や呼吸状態悪化などの有害事象(追加のアウトカムとして離脱症候群).エビデンスの要約SR の結果,DSI を含む鎮静管理と含まない鎮静管理を比較したRCT は3 件1—3) (n=261)であった.小児の人工呼吸器管理を行う際にDSI を含む鎮静管理を行うことによる益のアウトカムとして,人工呼吸器装着日数1.48 日短縮(95% CI:3.48 日短縮~0.51 日延長),入院日数3.4 日短縮(95% CI:8.84 日短縮~2.04 日延長)を認め,発達予後については報告がなかった.死亡は益のアウトカムと想定していたが介入により増加していた.以上より,望ましい効果は「小さい」と判断した.一方,望ましくない効果のアウトカムとして,死亡1,000 人あたり166 人増加(95% CI: 92 人減少~1,000 人増加),計画外抜管1,000 人あたり26 人減少(95% CI:41 人減少~39 人増加)を認めた.以上より,望ましくない効果は「中程度」と判断した.今回のメタ解析における死亡の増加は1 つのRCT(Vet 2016)3)に影響されており,同RCT ではDSI 群の有害事象の増加はなく,人工呼吸器装着日数と入院日数は減少傾向であり,再挿管率は低下しており,死亡の増加をきたす因果関係の説明が困難なことに留意するべきである.なお,成人を対象としたRCT ではDSI による死亡の有意な増加は認めない4).エビデンスの確実性アウトカムの方向性が一致していないために,アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「非常に低」と判断した.効果のバランス,受け入れ,実行可能性の判定薬剤コストの減少は大きくないと予想されるが,小児を対象とした鎮静スケールの導入が必要であり,小児を診る機会が少ないICU では鎮静中断後の観察の負担は大きいと推測される.さらに,有意ではないものの死亡の増加が懸念されることから,コストを含めた効果のバランスとしては望ましくない効果は介入群で大きいと推測される.また,小児患者の家族からすると鎮静中断により気管チューブへの不快を示している状況は受け入れ困難な場合もあることが予想される.以上から,実行可能性については「一概には言えない」と判断した.パネル会議事前投票において,修正Delphi 法により,推奨文「小児ARDS 患者の補助療法として,DSI を実施しないことを提案する.(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」╱エビデンスの確実性「非常に低」)」,付帯事項「今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象としたもので,ARDS 患者を対象としたエビデンスは不足している.死亡に関わる3 つのRCT のうちサンプルサイズの大きい1 つのRCT(Vet 2016)において,対照群の死亡が0╱63 に対し,介入群で6╱66 という結果であった.メタ解析ではこの結果が大きく影響している.著者らは介入と死亡率上昇の因果関係は不明であったとしている」が中央値8 点,見解不一致指数0.0000で合意に至った.パネル会議において,付帯事項について,特定のRCT のみに言及するのは避けたほうがよいこと,日々呼吸器離脱が可能かどうかを評価する必要性について言及したほうがよいとの意見が出た.そのため,付帯事項を「今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象としたものである.現時点で小児ARDS 患者を対象として完全な鎮静中断を推奨するかどうかのエビデンスは不足しているが,日々呼吸器離脱が可能かどうかを評価することは必要である」に変更して,再投票を行った.修正Delphi 法により,中央値9 点,見解不一致指数0.0000 で合意に至った.
付加的な考慮事項今回採用となったRCT はARDS 患者ではなく人工呼吸器管理が必要となった小児を対象としたものである.現時点で小児ARDS 患者を対象として完全な鎮静中断を推奨するかどうかのエビデンスは不足しているが,日々呼吸器離脱が可能かどうかを評価することは必要である. サブグループの検討事項 Subgroup considerations なし. 実施上の考慮事項 Implementation considerations DSI に先立って,日々,人工呼吸器の離脱が可能かどうかの検討をする必要がある.本CQ で検討されたいずれのRCT もDSI は完全な鎮静鎮痛薬の中断である.本CQ における検討では計画外抜管は増えないとされたが,採用されたRCT はすべてPICU における研究であり,施設ごとの診療・看護体制によってはリスクが高まる可能性もある.実施にあたって看護体制などの安全面への配慮が必要である.また,必要な鎮痛が十分に得られているかどうか評価の必要がある.また,一時的に気管チューブへの不快を示す様子が見られる可能性があり,小児患者の家族にも理解が得られるよう説明を行う必要がある.なお,小児ARDS 患者に限定したRCT は今回検索し得た範囲では見つけられなかったが,DSIは人工呼吸器離脱を前提とした介入でありARDS の急性期を脱した状態と推測されるため,対象を人工呼吸器管理を要する小児としても大きな問題はないと判断した. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 本介入を実施する際には,実施後に有害事象および死亡の増加がないか検証する必要がある. 研究の可能性 Research priorities 今回採用された3 つのRCT のうち1 つ(Vet 2016)で対照群の死亡が0╱63 に対して,介入群の死亡が6╱66 と増加がみられた.著者らは成人も含めた同様の研究では死亡が介入で増加したとする報告は過去になく,介入群で死亡が増えた因果関係の説明が困難であったとしている.死亡は今回の3 つのRCT それぞれでprimary outcome ではなく,介入による死亡増加は有意ではない.ゆえに,本介入で小児の死亡が増加するかどうかは結論を出すにはエビデンスが不足した状態である.今後の研究の集積により推奨の方向性が変わる可能性がある.参考文献1) Gupta K, Gupta VK, Jayashree M, et al. Randomized controlled trial of interrupted versus continuous sedative infusions in ventilated children. Pediatr Crit Care Med 2012;13: 131—5. 2) Verlaat CW, Heesen GP, Vet NJ, et al. Randomized controlled trial of daily interruption of sedatives in critically ill children. Paediatr Anaesth 2014;24:151—6. 3) Vet NJ, de Wildt SN, Verlaat CW, et al. A randomized controlled trial of daily sedation interruption in critically ill children. Intensive Care Med 2016;42:233—44. 4) Burry L, Rose L, McCullagh IJ, et al. Daily sedation interruption versus no daily sedation interruption for critically ill adult patients requiring invasive mechanical ventilation. Cochrane Database Syst Rev 2014;2014:CD009176.
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