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肝疾患におけるサルコペニア判定基準 日本肝臓学会・32 ページ · 消化器・肝胆膵 · 老年・精神・薬物療法
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JSH CT男性: 42 cm2/m2女性: 38 cm2/m2 BIA男性: 7.0 kg/m2女性: 5.7 kg/m2握力男性: <28 kg女性: <18 kg

日本肝臓学会が提唱するサルコペニアの判定基準(第2版) BIA:生体電気インピーダンス法

肝疾患患者握力の測定

左記の基準を満たさず

左記の基準を満たす筋肉量の測定(CTまたはBIA)左記の基準を満たさないサルコペニアなしサルコペニアなし

(他疾患の可能性を考慮)サルコペニアあり

左記の基準を満たす

#1 #2左上記のカットオフ値は、今後の検討により変更がありうる。

#3 #1.肝疾患関連のサルコペニアは、肝疾患患者において筋肉量の減少と筋力低下を来した状態と定義する。#2握力測定に関しては、スメドレー式握力計を用いた新体力テストに準ずる。#3. CT面積は第三腰椎(L3)レベルの筋肉量を原則として採用する。今回のデータは筋肉量計測ソフトを用いて導かれたデータを採用した。筋肉量計測ソフトを持たない施設においては簡易法としてL3レベルでの腸腰筋の⻑軸X 短軸の左右合計(カットオフ値:男性6.0 cm2/m2、女性3.4 cm2/m2)やmanual trace法によるPsoas muscle index(カットオフ値:男性6.36 cm2/m2、女性3.92 cm2/m2)を用いてもよい。これらのカットオフ値は今後の検討により変更がありうる。
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日本肝臓学会 肝疾患におけるサルコペニア判定基準(第1版)における握力

カットオフ値の変更について

第1 版ではサルコペニア判定基準における握力のカットオフ値はAsian

Working Group for Sarcopenia (AWGS)の基準を暫定的に採用したが(男性26

kg、女性18 kg)、その際には多施設における多数症例でのカットオフ値の妥当

性を検証することが課題として挙げられていた。

そこで4 施設(岐阜大学、兵庫医科大学、広島大学、三重大学)より集められ

た1,624 人の慢性肝疾患症例について握力のカットオフ値を後方視的に解析し

た1)。Cox proportional hazard models では握力は予後を規定する有意な因子の

ひとつとして抽出された(HR 2.24, 95% CI: 1.23-7.25, P<0.01)。全生存期間

をアウトカムとしたカットオフ値をmaximally selected rank statistics により算

出すると男性27.8 kg、女性18.8 kg であった。このカットオフ値で分けた握力

正常群と低下群のKaplan-Meier 解析による累積生存率は低下群で有意に低か

った(P<0.01)(図1)。さらにpropensity score matching により背景因子を揃

えた握力正常群(544 例)と低下群(544 例)における累積生存率も、低下群
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が有意に低かった(P<0.01)(図2)。なお、握力低下は肝疾患患者の予後予測

因子のひとつであった。

一方、最近AWGS よりサルコペニア診断基準における握力のカットオフ値が

改訂され2)、男性28 kg、女性18 kg と報告された。このカットオフ値は今回多

施設で全生存期間をアウトカムとして算出したカットオフ値と非常に近似して

いるため、肝疾患におけるサルコペニア判定基準における握力カットオフ値を

男性28 kg、女性18 kg に改訂することを提唱する。

文献

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図1

図2
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一般社団法人日本肝臓学会 肝疾患におけるサルコペニア判定基準

(第1 版)

【目次】

1.日本肝臓学会がサルコペニア判定基準(第1 版)を独自に作成する背景と目的2.肝疾患におけるサルコペニアのメカニズム3.肝疾患におけるサルコペニアの疫学と臨床的意義4.諸外国におけるサルコペニアの診断基準5.日本肝臓学会の判定基準作成とその根拠6.おわりに【索引用語】肝疾患、サルコペニア、メカニズム、予後、判定基準

1 日本肝臓学会がサルコペニア判定基準(第1 版)を独自に作成する背景と目的

今回、日本肝臓学会がサルコペニア判定基準案を独自に作成する背景と目的として以下の点を挙げる。1) 代謝の中心臓器である肝臓は、脳、心臓、腎臓、膵臓とともに血液、脂肪組織、筋肉とも

臓器間ネットワークを構築し、糖質代謝、脂質代謝、蛋白質アミノ酸代謝を中心に生体の動的変化に対応している。2) 以前より、肝疾患に起因する骨格筋筋肉量の減少は、肝臓専門医においては周知の事実

であり、また基礎研究および臨床研究も精力的に行われてきた。3) 一方、現在国際的にも日本加齢学会においても採用されているサルコペニア診断基準は、

加齢に伴う筋肉量および機能低下の測定を指標として作成されている。4) 日本肝臓学会は、肝臓疾患に起因する骨格筋量の減少、機能低下を研究する際に使用で

きる診断基準案を作成することとした。特にデータ取得において重要な筋力および筋肉量の測定方法を統一し、カットオフ値を設定することとした。5) 特にこの診断基準案作成においては、

1. 対象が日本人であることを十分に勘案した。

2 既に得られているワーキンググループ内の研究データをもとに、測定方法設定、カッ

トオフ値設定、注意事項の設定を各委員が検討し決定することとした。さらにこれらの検討結果について、日本肝臓学会の現評議委員に対してパブリックコメントを募集することとし、判定基準への反映を試みた。6) 今後この診断基準をもとに、将来的に更なる追加の研究データが獲得される中で、診断

基準の見直しを定期的に本委員会が行うこととする。
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まず、サルコペニアの基礎的および臨床的研究を振り返り、その後諸外国の現状、さらに本ワーキンググループが提唱するサルコペニアの判定基準(第1 版)を提示する。

2 肝疾患におけるサルコペニアとそのメカニズム

人間は一定の年齢に達すると、その後加齢に伴い身体機能が低下していく。老化に伴い、骨格筋における蛋白質の合成と分解のバランスがくずれ、筋力の低下、転倒や歩行障害などが出現し、いずれも高齢者の日常生活に負の影響をもたらすことになる[1, 2]。

筋線維の筋形質膜と基底膜の間に存在する筋衛星細胞が骨格筋の再生を担うが、老化に伴い筋再生能力の低下をきたす[3-6]。Akt シグナル経路による筋肥大の陽性調節作用は年齢とともに低下し、筋委縮を進行させると言われている[3-6]。また老化に伴い骨格筋量は進行性に低下するといわれており、筋肉量の減少は1 年に1%程度、日常生活活動レベルが低い群ではさらに骨格筋量の減少率が高率とされている。つまりこれらの事実は、高齢者では骨格筋蛋白質の合成される量が分解される量より少ない状態に陥っているということを示している[3, 4]。またHanai らは、149 例の肝硬変患者の骨格筋減少量は年率2.2%、Child-Pugh 分類別にはChild-Pugh A で年率1.3%、Child-Pugh B で年率3.5%、Child-Pugh C で年率6.1%であり、肝予備能の増悪に従い、筋肉量の減少がより顕著となると報告した[7]。

一般に高齢化に伴う筋肉量や筋力の減少を一次性サルコペニア、寝たきり状態に伴う廃用性筋委縮、腎疾患や肝疾患、炎症性疾患、悪性腫瘍などの何らかの基礎疾患に伴う筋肉量や筋力の減少、蛋白質やエネルギー等の摂取不足に伴う筋肉量や筋力の減少を二次性サルコペニアと分類している (表1) [8, 9]。肝疾患患者がサルコペニアに陥るメカニズムには以下のごとく様々な要因が挙げられる。1) 蛋白エネルギー低栄養 (Protein energy malnutrition: PEM)

肝臓は、糖質・脂肪・蛋白質及びエネルギー代謝の中心臓器であることから、特に肝硬変患者ではPEM に陥る頻度が高率であり、筋萎縮や筋力低下の原因となる[10]。肝臓におけるグリコーゲン貯蔵量の低下により、骨格筋から分岐鎖アミノ酸(Branched chain amino acid: BCAA)を含むアミノ酸やグリコーゲンが供給され、骨格筋の崩壊が進行するということである[10]。間接熱量計を用いて検討した兵庫医科大学病院での検討では、肝硬変216例中69 例 (31.9%) がPEM 状態であり、非肝硬変症例のPEM 合併率(2.8%、6/216 例)より有意に高率であった (P<0.0001) [11]。

肝疾患では,骨格筋量の維持や増量に重要な役割をはたす血液中のBCAA の減少により,年齢に関係なく筋肉量の減少を起こしやすいとされている[5, 6]。BCAA は、側鎖に分岐をもつ 3 種類のアミノ酸 (バリン、ロイシン、イソロイシン)で構成される[12]。筋肉では、アミノ酸を材料にしてエネルギーを産生するが、その際、上述のごとくBCAA が主な材料として利用される。また血液中および筋肉内でのBCAA 濃度の低下が血中アンモニアクリアランスの低下につながり、肝性脳症の進行とともにサルコペニアの保有率が高率になると報告されている[5, 6, 13]。BCAA 製剤は、肝予備能の改善、発癌抑制効果のみならず、肝疾患に伴う二次性サルコペニアを改善させる可能性がある薬剤として期待されて
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いる[14-16]。2) 蛋白合成と分解

筋蛋白質は,常に合成(同化)と分解(異化)を繰り返し,その均衡を保つことで骨格筋量は維持されている[5, 6]。その均衡に強く関与するのが,運動刺激に反応して,肝臓や筋細胞で合成されるインスリン様成長因子1 (IGF-1) シグナル経路である[17, 18]。またmammalian target of rapamycin (mTOR) も蛋白合成に重要である。mTOR は栄養を感知して蛋白合成を促進するリン酸化シグナルカスケードの中心となるセリン/スレオニンキナーゼである[10]。BCAA は必須アミノ酸の中でも最も蛋白同化作用が強いことが知られている[19, 20]。肝硬変で特にロイシンの欠乏した状態では蛋白同化がうまく機能しなくなる[19-21]。

一方、筋肉量減少の機序として蛋白分解経路に着目すると、ミトコンドリアやリソソーム、ユビキチン-プロテアソーム系(U-P 系)などがある。U-P 系は筋肉内の異常蛋白を分解するだけではなく、正常蛋白分解作用も有する[22]。蛋白分解促進因子としては、重症感染症などに伴う代謝性アシドーシス、インスリン欠乏、飢餓、ホルモン異常(テストステロン、IGF など)などが挙げられる[22]。男性肝硬変症例では骨格筋形成を促進させるテストステロンが減少していることが知られており、筋衛星細胞の活性が低下し、筋萎縮につながるとされている[23]。3) ミオスタチン

ミオスタチンは、1997 年に機能が明らかにされたtransforming growth factor beta 1 (TGFβ1)ファミリーに属するサイトカインである[24]。ミオスタチンは骨格筋形成を強力に抑制する筋肥大の陰性調節因子である。ミオスタチンが欠損したマウスや、ミオスタチン阻害分子を投与されたマウスでは骨格筋量が増大すると報告されている[24]。また肝硬変では、血中のミオスタチン濃度がコントロール群に比して有意に高いと報告されており、骨格筋量の制御に関与しているものと考えられる[25]。血中アンモニア値の上昇が筋肉中のミオスタチンの発現を増強させるという基礎的検討も報告されている[26]。また過度のアルコール摂取は骨格筋の蛋白代謝に悪影響を及ぼし、ミオスタチンの発現を増加させる[27]。4) 活性酸素と炎症性サイトカイン

活性酸素の産生増加や慢性炎症の持続といった現象は加齢のみならず、慢性炎症の終末像である肝硬変でもしばしばみられる[28]。増加した活性酸素は蛋白合成を抑制し、慢性炎症で産生されるインターロイキン-6 (IL-6) や腫瘍壊死因子-α (tumor necrosis factor-α: TNF-α) などの炎症性サイトカインは蛋白分解を促進する。また、筋肉中のTNF-α とユビキチンには強い相関があると報告されている[29]。

肝疾患におけるサルコペニアの発病と進行に関しては、上述のごとくいくつかのメカニズムが存在し、上記以外のメカニズムも複雑に絡み合っているものと考えられる。また肝疾患患者において、肝疾患に起因しない純然たる一次性サルコペニアをきたしている患者も混在しているものと推察される。患者年齢、背景肝疾患の成因、肝線維化の程度、肝疾患以外の
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基礎疾患の存在等の詳細な病状把握が重要である。

3.肝疾患におけるサルコペニアの疫学と臨床的意義

1) 肝疾患におけるサルコペニアの疫学

世界におけるサルコペニアの有病率に関しては、60~70 歳で5~13%、80 歳 を超える高齢者での有病率は11~50%に及ぶと報告されている[30-32]。米国においては肝硬変におけるサルコペニアの頻度は40-70%と報告されており、炎症性腸疾患におけるサルコペニアの頻度 (約20%) より高率とされている[27, 32, 33]。一方、本邦においては肝硬変におけるサルコペニアの頻度は10-70%と報告されている[14, 34-43]。生体インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis: BIA) を用いて筋肉量を評価した兵庫医科大学病院での636例の慢性肝疾患患者の検討結果 (サルコペニアの定義はAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS) の定義に準じた) では、242 例 (38.1%) がサルコペニアであり、高齢化とともにサルコペニアの頻度が増加した。また肝硬変症例は非肝硬変症例と比較して有意にサルコペニアの頻度が高率であった (42.7% (138/323 例) vs. 33.2% (104/313 例)、P=0.01) (図1 および2、未発表データ)。2) 肝疾患におけるサルコペニアの臨床的意義

サルコペニアは肝硬変におけるquality of life (QOL) に影響するため臨床的に重要である[44-47]。またperformance status (PS) として用いられている日常生活の活動度は、肝細胞癌の予後と密接に関連するため、欧米を中心に広くガイドラインで使用されている[48-50]。既に、先述のBCAA 療法や運動療法のサルコペニアに対する有用性がいくつかの施設から報告されている[14, 51, 52]。また骨格筋量は、肝硬変患者における適切な栄養評価の指標であるだけでなく,近年では肝細胞癌の生命予後や術後の合併症と密接に関連することが諸外国および本邦から報告されている。本項では、本邦からの報告を中心にサルコペニアの臨床的意義について概説する。表2 に本邦から報告された肝疾患におけるサルコペニアと予後との関連についての成績を示す。肝細胞癌に対する肝切除例での検討や肝移植に関する報告が多い。肝切除例での検討では、サルコペニア合併例では生命予後が不良であり、術後の再発率も有意に高率であることが示されている[34, 36, 39]。一方肝移植例では、サルコペニア合併例で移植後の予後が不良な原因として、敗血症などの感染症のリスクやその他の術後合併症のリスクが高いことが一因であると報告されている[38, 40, 42]。またFujiwara らは、1257 例の肝細胞癌での検討においてbody mass index (BMI) よりもサルコペニアや筋肉内の脂肪蓄積や内臓脂肪量が肝細胞癌の予後と密接に関連すると報告した[41]。CT を用いた筋肉量の評価法としてはL3 レベルの骨格筋面積 (cm2)/(身長(m))2 (Skeletal muscle mass index: SMI) だけでなく、腸腰筋面積の有用性なども報告されている[38, 42, 53, 54]。

肝移植の盛んな海外においては肝移植に関する報告が多い[53, 55-58]。サルコペニアが
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肝移植待機中の患者の予後規定因子となるといった報告や、Model for End stage Liver Disease (MELD) スコアにサルコペニアの有無を組み合わせたモデルが、肝硬変の予後予測モデルとして優れているといった報告がなされている[57, 58]。移植後の感染症のリスクがサルコペニア合併例で高率であるという報告は本邦からの報告と一致する[55]。

肝疾患におけるサルコペニアの疫学と臨床的意義について概説した。大半の報告が、サルコペニアは肝疾患における予後不良因子であると報告している。しかし現状では、サルコペニアの定義が報告によって異なることや、サルコペニアに対する治療介入の予後改善効果が不明である等、問題点が残されている。4.諸外国におけるサルコペニアの診断基準

サルコペニアの定義や診断基準は、上述のごとくサルコペニアの定義が報告によって異なる、換言すると診断基準には国際的合意がないままであったが、近年いくつかのコンセンサスレポートが報告されている。2010 年、ヨーロッパの4 つの学術団体がワーキンググループ (European Working Group on Sarcopenia in Older People : EWGSOP) を組織し、統一的見解を示した[59]。この基準にはプレサルコペニア、サルコペニア、重症サルコペニアという、概念的なサルコペニアのステージを提案し、筋肉量の低下に加え、筋肉の質の低下、すなわち筋力の低下あるいは身体的機能の低下がみられるものをサルコペニアと定義している。図3 にEWGSOP のアルゴリズムを示す。歩行速度が0.8 m/秒以下であれば筋肉量を測定し、低下を認めれば、サルコペニアと診断する。歩行速度が0.8 m/秒を超えていても、握力が低下していれば筋肉量を測定し、筋肉量が低下していれば同様にサルコペニアとする。握力およびBIA 法と二重エネルギーX 線吸収法(dual energy X-ray absorptiometry : DXA)による筋肉量のカットオフ値が示されている(表3)。2011 年、他のグループ (International Working Group on Sarcopenia: IWGS) からも同様の報告がなされたが [60]、こちらの歩行速度のカットオフ値は1.0 m/秒であり、筋肉量のカットオフ値はEWGSOP のものと大きな違いは認めなかった(表3)。 しかし、これらの診断基準は、欧米人のデータを基に作成されているため、体格の違うアジア人に必ずしも当てはまらない。そこで、日本を含めたアジアの7 つの国と都市の専門家がワーキンググループ (AWGS) を組織し、2014 年にこの地域における診断基準を示した[61]。図4 にAWGS のサルコペニア診断におけるアルゴリズムを示す。各国で定義する60 ないし65 歳以上の高齢者を対象とし、握力と歩行速度を測定し、両方もしくはどちらかの低下が見られれば筋肉量を測定する。筋肉量の低下も認める症例をサルコペニアと診断する。AWGS のアルゴリズムにおける各パラメーターのカットオフ値に関して、歩行速度のカットオフ値はEWGSOP と同様に0.8 m/秒である。筋肉量は若年成人の平均の2 standard deviation (SD) 以下もしくは低い5 分位を用いることを推奨し、DXA 法、BIA 法のカットオフ値を提案している。握力に関しては、現在予後に基づいて算出されたデータが存在しないため、下位20 パーセンタイルを用いることを推奨し、カットオフ値を示している(表3)。

3つのワーキンググループの診断基準を概説したが、いずれの診断基準も、肝疾患で頻用
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され、筋肉量の正確な測定が可能なCT やMRI における明確なカットオフ値は示されていないのが現状である[59-61]。本ワーキンググループではこの点にも留意し、ガイドラインの策定を行うこととなった。

5.日本肝臓学会の判定基準作成とその根拠

サルコペニアは、先述のように、その要因から一次性と二次性に分類される(表1) [1, 8, 9]。今回日本肝臓学会サルコペニア判定基準作成ワーキンググループでの肝疾患におけるサルコペニアの判定基準 (第1 版) は、AWGS が提唱する一次性のサルコペニアの診断基準を参考に作成された[61] (図4)。1) 年齢

肝疾患におけるサルコペニアは、疾患・栄養に関係する二次性のサルコペニアが中心であり、65 歳未満の非高齢者にもサルコペニアの合併が認められる。このため、肝疾患におけるサルコペニアの判定基準 (第1 版) では65 歳未満の非高齢者も対象に含めるべきであると考え、年齢制限を撤廃した。2) 筋力の測定

筋力の指標としてEWGSOP、AWGS の基準では、握力と歩行速度が用いられている(表3)[59, 61]。a) 握力

握力の測定法は、スメドレー式握力計を用いた文部科学省の新体力テスト実施要項に準じる。握力の基準値は、対象者のアウトカムに基づいたデータ (あるいは20 パーセンタイル値)とするとの記載がある[61]。慢性肝疾患患者263 症例 (年齢中央値71 歳、男性:女性=153 例 : 110 例、慢性肝炎:肝硬変=89 例 : 174 例、Child-Pugh 分類 A : B : C=96例 : 57 例 : 21 例、肝癌有り : 肝癌無し=152 例 : 111 例) で検討した岐阜大学病院での結果 (表4、未発表データ) では、20 パーセンタイル値は男性24.5kg (図5、未発表データ)、女性14.2kg (図6、未発表データ)であった。一方、生命予後をアウトカム (観察期間中央値695 日) とし、カットオフ値をreceiver operating characteristic curve (ROC) 解析を用いて算出すると、男性28.9kg (area under the ROC curve (AUC)=0.78, 感度=82%, 特異度=70%)、女性17.6kg (AUC=0.65, 感度=63%, 特異度=67%)であり、サルコペニア合併群と非合併群において生命予後に有意差を認めた (P<0.01) (図7、未発表データ)。またAWGS の握力の基準 (男性26kg、女性18kg)で、生命予後をアウトカムとして検討すると、同様に2 群間に有意な差を認めた (P<0.01) (図8、未発表データ)。今回の肝疾患におけるサルコペニアの判定基準 (第1 版) では、握力のカットオフ値は検討対象群により変わりうるため、岐阜大学の単一施設のデータから導き出された握力の基準値は追記に記載するにとどめ、AWGS の基準を暫定的に採用した。今後多施設における多数例での検討を行い、カットオフ値の妥当性を検証する必要があると思われ
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る。b) 歩行速度

EWGSOP・AWGS の基準では、いずれも歩行速度0.8m/秒であるが(表3)[59, 61]、日本の地域で自立している65 歳以上の在宅高齢者に当てはめた場合に歩行速度が0.8m/秒以下となる集団は3.6% (174/4811 人)と稀であること [62]、測定法 (6, 8, 10, 12m法など)に関して現在十分なコンセンサスが得られてないこと、日常診療で歩行速度を測定することが煩雑であること等の理由により筋力あるいは生活の質の指標として採用しなかった。3) 筋量の測定

AWGS の基準に準拠し、BIA 法を用いた四肢骨格筋量を身長の2 乗で補正した骨格筋指数 (SMI) のカットオフ値を男性7.0 kg/m2、女性5.7 kg/m2とする[61]。肝疾患では日常臨床でCT を撮影することが多いため、その汎用性を考え第3 腰椎 (L3) レベルの筋肉量の合計を身長の2 乗で補正したSMI 値を採用した。岐阜大学と広島大学からの149 例(男性:女性=108 例:41 例)での検討では、筋肉量計測ソフトを用いたSMI とBIA 法によるSMIは良好な相関を示した(図9、未発表データ)。また、BIA 法に相当するCT でのカットオフ値を149 例でROC 解析を用いて算出すると、男性が42 cm2/m2 (AUC=0.83, 感度=89%, 特異度=57%)、女性が38 cm2/m2 (AUC=0.85, 感度=95%, 特異度=96%)であった。一方L3 レベルでの腸腰筋の長軸×短軸の左右合計/身長の2 乗(簡易法)によるSMI は上記の筋肉量計測ソフトを用いたSMI とも比較的よく相関し(図10、岐阜大学、広島大学、未発表データ)、肝移植待機患者の予後を予測しうるという報告[38, 53]も考慮すると、筋量測定には簡易法を用いてもよいと思われる。その際のカットオフ値は男性が6.0 cm2/m2 (AUC=0.71, 感度=57%, 特異度=34%)であり、女性が3.4 cm2/m2 (AUC=0.80, 感度=86%, 特異度=54%)であった。なお、これらのカットオフ値は、今後の検討により変更がありうる。今回の検討では腹水症例を19%含んでいたが、腹水の有無別の検討でBIA 法・CT 法間での筋肉量の相関(一致率)に顕著な差は認められなかったので、腹水の影響は受けにくいと思われる。ただしBIA 法の場合は機器の特性上、多量の腹水、著明な浮腫を伴う症例においては、その解釈に慎重を期すべきである。Iwasa らは、BIA 法における著明な浮腫の影響を回避するために、上肢の骨格筋量を身長で除した値 (arm index)が有用であると報告している[63]。またKaido らは、生体肝移植における健常人ドナー541 例のCT データを用いたL3 レベル腸腰筋面積(cm2)/身長の2 乗(m2) (Psoas muscle index (PMI))の有用性を報告している (腸腰筋面積の計測はmanual trace 法を使用)。[64] 彼らは、BIA 法で得られたSMI がCT でのPMI と強い相関を有し(r=0.737, P<0.001)、さらに肝疾患患者であるレシピエントにおいても強い相関を有すること(r=0.682, P<0.001)を報告し、年代別検討では男女とも50 歳以降において有意にPMI が低下することから、日本人の低骨格筋量基準として50 歳未満の健常人のPMI 平均値-2SD(男性6.36cm2/m2、女性3.92cm2/m2)をカットオフ値とするのが妥当であると提唱した。[64] 筋肉量計測ソフトを用いた筋肉量の測定は、一般病院での実
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臨床において汎用性が高いとは言い難く、また日本人健常人541 例という大規模研究のデータであることから、簡易法と合わせてこれらの基準値を付記することとした。最後に、日本肝臓学会が提唱する肝疾患におけるサルコペニアの判定基準(第1 版)を図11 に呈示し、あわせて付記を示す。

6 おわりに

日本肝臓学会では肝疾患におけるサルコペニアの判定基準を新たに提唱した。この判定基準は、元来二次性のサルコペニアに含まれる肝疾患が対象であるため、AWGSでは対象外とされている65 歳未満の患者もサルコペニアに含めている。このため、65 歳以上と今回の基準で対象に含めた65 歳未満のそれぞれの患者集団の臨床的特徴を今後明らかにすべきである。また、この判定基準は外来診療で簡便に診断できることを重視したため、歩行速度を判定項目から削除している。既に、歩行速度を除外しても正診率にはあまり影響しないという報告も見られるが、肝疾患においても同様の結果が得られるのかについては今後の検証が必要である。また、肝疾患特有の腹水や浮腫を伴う症例に於いて、筋肉量の測定にどの程度の影響がみられるのかについても、今後症例数を増やした検討が必要であろう。この判定基準が肝疾患におけるサルコペニア研究に役立ち、多くの臨床的エビデンスが集積されることを願っている。【文献】

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p.17
一次性サルコペニア

加齢性サルコペニア加齢以外に明らかな原因がないもの

二次性サルコペニア

活動に関連するサルコペニア寝たきり,不活発なスタイル,(生活)失調や無重力状態が原因となり得るもの

疾患に関連するサルコペニア重症臓器不全(心臓,肺,肝臓,腎臓,脳),炎症性疾患,悪性腫瘍や内分泌疾患に付随するもの

栄養に関係するサルコペニア吸収不良,消化管疾患,および食欲不振を起こす薬剤使用などに伴う,摂取エネルギーおよび/またはタンパク質の摂取量不足に起因するもの

表1. サルコペニアの分類

Age Ageing. 2014; 43(6): 748-759. を改変して引用
p.18
著者年症例数診断治療法サルコペニアの

評価方法サルコペニアの

頻度サルコペニアの予後への

影響(P値)

Harimoto, et al. [34] 2016 296 HCC SR CT (L3, SMI) 37.8% OS: P<0.05, DFS: P<0.05 Kamachi, et al. [36] 2016 92 HCC SR or RFA CT (L3, SMI) 66.3% HCC recurrence:

P<0.05

Higashi, et al. [35] 2015 144 HCC SR CT (L3, SMI) 50.0% Post-operative complication:

P<0.05

Hanai, et al. [14] 2015 130 LC BCAA supplementation CT (L3, SMI) 68.0% OS: P<0.05 Iritani, et al. [37] 2015 217 HCC SR, RFA, TACE,

TAI or sorafenib CT (L3, SMI) 11.1% OS: P<0.05

Fujiwara, et al. [41] 2015 1257 HCC Locoregional therapies CT (L3, SMI) 11.1% OS: P<0.05 Masuda, et al. [38] 2014 204 NA LDLT CT (L3, psoas muscle) 47.1% OS: P<0.05, Sepsis after

LDLT: P<0.05

Hamaguchi, et al. [42] 2014 200 HCC, LC and

others LDLT CT (L3, psoas muscle) 44.0% OS: P<0.05

Itoh, et al. [43] 2014 190 HCC SR CT (L3, SMI) 40.5% OS: P<0.05 Harimoto, et al. [39] 2013 186 HCC SR CT (L3, SMI) 40.3% OS: P<0.05, DFS: P<0.05 Kaido, et al. [40] 2013 124 HCC, LC and

others LDLT BIA 37.9% OS: P<0.05

HCC; hepatocellular carcinoma, LC; liver cirrhosis, NA; not available, SR; surgical resection, RFA; radiofrequency ablation, BCAA; branched chain amino acid, TACE; transcatheter arterial chemoembolization, TAI; transcatheter arterial infusion chemotherapy, LDLT; living donor liver transplantation, CT; computed tomography, L3; the third lumber vertebra, SMI; skeletal muscle mass index, BIA; bioimpedance analysis, OS; overall survival, DFS; disease free survival
p.19
基準測定方法EWGSOP [59] IWGS [60] AWGS [61]

筋肉量DXA法男性: 7.26 kg/m2男性: 7.23 kg/m2男性: 7.0 kg/m2女性: 5.5 kg/m2女性: 5.67 kg/m2女性: 5.4 kg/m2

BIA法男性: 8.87 kg/m2男性: 7.0 kg/m2女性: 6.42 kg/m2女性: 5.7 kg/m2

筋力握力男性: < 30 kg男性: < 26 kg女性: < 20 kg女性: < 18 kg身体能力歩行速度≤ 0.8 m/sec ≤ 1.0 m/sec ≤ 0.8 m/sec

表3. 世界のワーキンググループ別のサルコペニア診断における各パラメーターのカットオフ値

EWGSOP: European Working Group on Sarcopenia in Older People IWGS: International Working Group on Sarcopenia AWGS: Asian Working Group for Sarcopenia
p.20
表4. 検討対象の患者背景

年齢(歳)性別(男性:女性)病態(慢性肝炎:肝硬変) Child-Pugh分類(A:B:C)成因(HBV:HCV:Alcohol:others)肝癌有/無Albumin (g/dL) ALT (IU/L) Total bilirubin (mg/dL) Platelet count (x104/μL) PT (%) NH3 (μg/dL)観察期間(日) 71 (19 - 89) 153 : 110 89 : 174 96 : 57 : 21

35 : 159 : 22 : 47 152 : 111 3.4 ± 0.7 43.7 ± 40.0 2.0 ± 8.8 11.6 ± 7.4 81.4 ± 18.3 62.3 ± 40.0 695 (1 - 1603)

N=263 (人)

症例数、中央値(幅)、あるいは平均± 標準偏差にて表記
p.21
0 20

40 60

80 100

> 75 years 65-75 years 50-65 years < 50 years

図1. 年齢別のサルコペニアの頻度(636例の慢性肝疾患症例)

63.9% 53/83 49.0% 100/204

30.0% 68/227 17.2% 21/122

%

サルコペニアの定義はAsian Working Group for Sarcopeniaの定義(BIA法) に基づく
p.22
%

図2. 肝硬変症例と非肝硬変症例におけるサルコペニアの頻度

(636例の慢性肝疾患症例)

0 10

20 30

40 50

CH LC

42.7% 138/323

P=0.01

33.2% 104/313

サルコペニアの定義はAsian Working Group for Sarcopeniaの定義(BIA法) に基づく

CH: 慢性肝炎(非肝硬変)症例LC:肝硬変症例
p.23
図3. EWGSOPの推奨する診断アルゴリズム

高齢者(65歳を超える)+

歩行速度の測定

> 0.8 m/sec

筋肉量の測定

正常低下

サルコペニアサルコペニアなし

≤0.8 m/sec

握力の測定

低下正常

サルコペニアなし

* 個々の併存疾患や状況は考慮されなければならない。+ このアルゴリズムはリスクを有する若年者にも適応してよい。Age Ageing. 2010; 39: 412-423. を改変して引用
p.24
図4. AWGS; Asian Working Group for Sarcopenia

の提唱するサルコペニア診断のアルゴリズム

J Am Med Dir Assoc. 2014; 15: 95-101. を改変して引用

各国で定義される60歳または65歳以上の高齢者DXA: 二重エネルギーX線吸収測定法BIA: 生体電気インピーダンス法

A 握力: 男性<26 kg, 女性<18 kg B 歩行速度: < 0.8 m/sec

A, Bともに該当せず

サルコペニアではないAかB, または両者該当する

筋肉量の測定DXA: 男性<7.0 kg/m2, 女性<5.4 kg/m2 BIA:男性<7.0 kg/m2, 女性<5.7 kg/m2

該当しない該当する

サルコペニアではない(他疾患の可能性を考慮)サルコペニア
p.25
図5. 慢性肝疾患患者の握力(男性)

中央値:33kg平均:32.6±8.9kg 20パーセンタイル: 24.5kg

N=153

全体

中央値:36.7kg平均:35.8±9.7kg 20パーセンタイル: 26.8kg

N=53慢性肝炎

中央値:31.9kg平均:31.4±7.7kg 20パーセンタイル: 24.2kg

N=100肝硬変
p.26
図6. 慢性肝疾患患者の握力(女性)

中央値:19.1kg平均:9.1±4.6kg 20パーセンタイル: 14.2kg

N=110

全体

N=36

中央値:21.0kg平均:1.1±4.7kg 20パーセンタイル: 19.5kg

慢性肝炎

中央値:18.7kg平均:8.2±4.2kg 20パーセンタイル: 13.9kg

N=74

肝硬変
p.27
全体(n=263) Log-rank P<0.01 Log-rank P=0.01肝癌合併患者(n=152)

Log-rank P=0.02

男性: <29 kg女性: <18 kg

図7. カットオフ値で層別化した予後

筋力低下群筋力低下群

筋力低下群

筋力正常群筋力正常群

筋力正常群
p.28
男性: <26 kg女性: <18 kg

図8. AWGSの基準で層別化した予後

全体(n=263)肝癌合併患者(n=152)

Log-rank P<0.01 Log-rank P=0.02

Log-rank P=0.02

筋力低下群筋力低下群

筋力低下群

筋力正常群筋力正常群

筋力正常群
p.29
BIA法より算出した骨格筋指数kg/m2

CTでの第3腰椎レベルの筋肉量より算出した骨格筋指数0 10

20 30

40 50

60 70

80

0 2 4 6 8 10 12

相関係数(R) =0.72, P<0.01

図9. BIA法とCTでの第3腰椎レベルの筋肉量より

算出した骨格筋指数の関係

N=149 (人)

cm2/m2
p.30
0

2

4

6

8 10

12 14

16 18

0 20 40 60 80

CTでの第3腰椎レベルの筋肉量

より算出した骨格筋指数cm2/m2

腸腰筋の長軸×短軸より算出した骨格筋指数

cm2/m2

相関係数(R) =0.57, P<0.01

図10. CTでの第3腰椎レベルの筋肉量と腸腰筋の長軸×短軸

より算出した骨格筋指数の関係

N=149 (人)
p.31
JSH

CT男性: 42 cm2/m2

女性: 38 cm2/m2

BIA男性: 7.0 kg/m2

女性: 5.7 kg/m2

握力男性: <26 kg

女性: <18 kg

図11. 日本肝臓学会が提唱するサルコペニアの判定基準(第1版)肝疾患患者

握力の測定

左記の基準を

満たさない左記の基準を満たす

筋肉量の測定(CTまたはBIA)

左記の基準を

満たさない

サルコペニアなしサルコペニアなし(他疾患の可能性を考慮)サルコペニアあり

BIA:生体電気インピーダンス法肝疾患のサルコペニア判定基準

フローチャート(第1版)左記の基準を

満たす

#1

#2

左上記のカットオフ値は、今後の検討により変更がありうる。#3
p.32
(付記)

#1.肝疾患関連のサルコペニアは、肝疾患患者において筋肉量の減少と筋力低下を来した状態と定義する。その原因として、加齢と肝疾患による二次性の要因が混在する。このため、肝疾患においては65歳未満の非高齢者の筋萎縮もサルコペニアに含めるべきと判断し、年齢制限を撤廃した。しかし、加齢に伴いサルコペニアの頻度が増加するため、後期高齢者以上の高齢者には筋肉量の減少に特に留意が必要である。

#2.握力測定に関しては、スメドレー式握力計を用いた新体力テストに準じる。まず握力計の指針が外側になるように保持し、直立状態で両足を左右に自然な状態に開き、かつ腕を自然な状態に下げる。その状態で握力計を身体や衣服と接触しないよう注意しながらしっかり握りしめて測定する。左右2回ずつ測定を行い、各々の良い方の記録をとり、平均数値を握力の数値とする。カットオフ値については、今回AWGSの基準を採用するが、ワーキングループの予後から算出した握力のカットオフ値は男性29kg、女性18kgであった。肝疾患においては筋力低下が軽度の時期から身体機能障害、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の低下、死のリスクが増加する可能性があり、注意を要する。

#3. CT面積は第三腰椎(L3)レベルの筋肉量の合計を原則として採用する。今回のデータ(男性42cm2/m2、女性38cm2/m2)は筋肉量計測ソフトを用いて導かれたデータ(画像解析ソフトはsliceOmaticを使用)を採用した。Manual trace法による測定では誤差が出る可能性があり、留意すべきである。一方、筋肉量計測ソフトを用いた筋肉量の測定は、一般病院での実臨床において汎用性が高いとは言い難い。筋肉量計測ソフトを持たない施設においては、簡易法として、L3レベルでの腸腰筋の長軸×短軸の左右合計(カットオフ値:男性6.0cm2/m2、女性3.4cm2/m2 )や、manual trace法によるPsoas muscle index (カットオフ値:男性6.36cm2/m2、女性3.92cm2/m2)を用いてもよい。[64] これらのカットオフ値は今後の検討により変更がありうる。また多量の腹水、著明な浮腫を伴う症例においては、BIA法の場合はその解釈に慎重を期すべきである。