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NAFLD/NASH診療ガイドライン2020 Annual Review版(MASLD, 2026)
日本消化器病学会・2020・6 ページ · 消化器・肝胆膵
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CQ6-1 GLP-1 受容体作動薬はMASLD に有用か?推奨草案MASLD に対して,GLP-1 受容体作動薬は有用な選択肢である.なかでも,肝硬変を伴わないMASH で中等度または高度の線維化を有する患者に対しては,セマグルチドの使用を推奨する.エビデンスレベル推奨の強さ:強(合意率100%)エビデンスレベル:A解説 MASLD に対する薬物療法の実用化が進んでいる.とくにグルカゴン様ペプチド-1 受容体作動薬(GLP-1RA)は,有望な治療選択肢として注目されている. GLP-1RA は,視床下部への作用により食欲や摂取エネルギー量を抑制し,膵β 細胞からのインスリン分泌促進を介して血糖コントロールを改善する.また,脂肪組織からの遊離脂肪酸放出を抑制し,異所性脂肪蓄積を軽減する.さらに,体重減少や代謝改善を通じて肝脂肪蓄積・炎症・線維化の進展を抑えるなど,多面的な肝保護作用を示す. GLP-1RA の臨床的有効性については多くの試験で検討されている.リラグルチドはLEAN試験において,MASH が消失した症例が39%と報告され,プラセボに比べ明らかな改善が認められた1).セマグルチドも第II相試験で,プラセボに比べてMASH が消失した症例が有意に増加したことが確認されている2).さらに,検索期間外のエビデンスとして,2025 年に報告された第III相ESSENCE 試験パート1 では,肝線維化ステージ2~3 のMASH 患者(糖尿病の有無を問わず)にセマグルチド2.4 mg を72 週投与した結果が示された.セマグルチド群ではMASHが消失した症例が62.9%,線維化が1 段階以上改善した症例が36.8%であり,プラセボとの差はそれぞれ28.7%および14.4%と有意であった3).これらの結果から,セマグルチドはMASLD治療の標準的治療薬候補としての位置づけを強めている. 2025 年8 月15 日には米国食品医薬品局(FDA)が,線維化を有する非肝硬変(F2~F3)の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を対象としてセマグルチドを迅速承認(accelerated approval)し4),治療選択肢としての臨床的意義がさらに高まった.さらに,本邦においても2026 年6 月19 日にセマグルチド(販売名:ウゴービ®皮下注)が,「肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH).ただし,中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」を効能または効果として承認された.本承認により,本邦においても中等度~高度線維化を有する非肝硬変MASH 患者に対してセマグルチドの使用が可能となった.また,リアルワールドデータでは,GLP-1RA 使用がMASLD 患者の肝硬変進展および死亡リスクを有意に低下させることも示されている5).これらの知見は,早期からの介入の重要性を支持するものである. 治療による利益(肝脂肪減少,MASH 消失,心血管リスク低減)は,悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状といった主な副作用と比較して大きく,多くの場合副作用は軽度から中等度で忍容性も良好である.ただし,長期使用を想定した際には経済的負担が課題となる. 以上より,MASLD 患者に対するGLP-1RA 治療は,肝脂肪減少およびMASH 消失を目的とした有効な選択肢と考えられる.とくに,保険適用となる肥満症や2 型糖尿病を合併した症例では高い効果が期待され,治療選択肢の一つとして検討されうる.ただし,長期予後に関するエビデンスを踏まえ,慎重な適応判断が求められる.
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文献1) Armstrong MJ, et al. Liraglutide safety and efficacy in patients with NASH (LEAN): a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled phase 2 study. Lancet. 2016 Jan 30;387(10019):679-690. (ランダム化比較試験) 2) Newsome PN, et al. A Placebo-Controlled Trial of Subcutaneous Semaglutide in Nonalcoholic Steatohepatitis. N Engl J Med. 2021 Mar 25;384(12):1113-1124. (ランダム化比較試験) 3) Sanyal AJ, et al. Phase 3 Trial of Semaglutide in Metabolic Dysfunction–Associated Steatohepatitis. N Engl J Med. 2025 Jun 5;392(21):2089-2099. (ランダム化比較試験)(検索期間外文献) 4) https://www.fda.gov/drugs/news-events-human-drugs/fda-approves-treatment-seriousliver-disease-known-mash 5) Kanwal F, et al. GLP-1 Receptor Agonists and Risk for Cirrhosis and Related Complications in MASLD. JAMA Intern Med. 2024 Jun 1;184(11):1314-1323. (コホート研究)
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FRQ6-5将来MASLD 治療で期待される薬剤は何か?回答将来のMASLD 治療においては,THR-β アゴニスト,GIP/GLP-1 受容体デュアルアゴニスト,グルカゴン/GLP-1 受容体デュアルアゴニスト,GIP/グルカゴン/GLP-1 受容体トリプルアゴニスト,Pan-PPAR 作動薬,FGF21 アナログといった薬剤が中核的役割を担うと考えられる.さらに,併用療法や遺伝子標的治療の進展により,疾患進行の抑制と個別化医療の実現がいっそう期待される.解説 MASLD の治療はこれまで生活習慣改善が中心であったが,近年の臨床試験の進展により,複数の薬剤が有望な効果を示し,薬物療法の時代が到来しつつある.なかでもとくに注目されているのが,THR-β アゴニスト,GIP/GLP-1 受容体デュアルアゴニスト,グルカゴン/GLP- 1 受容体デュアルアゴニスト,GIP/グルカゴン/GLP-1 受容体トリプルアゴニスト,Pan-PPAR作動薬,そしてFGF21 アナログである. THR-β アゴニストの代表であるレスメチロムは,MAESTRO-NASH 試験(第III相)において,線維化を伴う非肝硬変性の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)(線維化ステージF2~F3)に対し,MASH 消失および線維化改善の双方でプラセボ対照群と比較して統計学的に有意な優越性を示した.これらの結果に基づき,2024 年に線維化ステージF2~F3 のMASH に対する世界初の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認された 1).MAESTRO-NAFLD-1 試験でもMRI-PDFF や肝硬度の改善が報告されており,現在は長期安全性試験や肝硬変を対象とした臨床試験が進行している.THR-β アゴニストは肝臓特異的に脂質代謝を調節する作用を有することから副作用が比較的少ない. GLP-1 受容体作動薬は,体重減少および糖代謝の改善を通じて肝脂肪や炎症を軽減し,さらに心血管疾患や腎機能にも有益な作用をもたらす.セマグルチドは,肝線維化ステージ2~3 のMASH 患者(糖尿病の有無を問わず)を対象としたESSENCE 試験(第III相)パート1 において,MASH 消失および1 段階以上の線維化改善に関してプラセボ対照群より統計学的に有意に優れていた 2).これらの成績に基づき,2025 年8 月15 日に非肝硬変性で線維化を有するMASH (F2~F3 相当)を適応として,FDA より迅速承認(accelerated approval)を受けた.GIP/GLP- 1 デュアル作動薬であるチルゼパチド,GLP-1/グルカゴンデュアル作動薬であるsurvodutideおよびefinopegdutide も,MASH(糖尿病の有無を問わず)を対象とした第II相試験において良好な有効性を示しており,今後のさらなる検証が期待される 2-4). 加えて,GIP/GLP-1/グルカゴンの三重作動薬であるretatrutide は,MRI-PDFF において肝脂肪量を80%以上減少させるとともに,ALT,HbA1c,体重といった多面的指標の改善を示している 5).これらの薬剤は,体重や代謝指標を大きく改善するのみならず,MASLD の病態進展に深く関与する肥満症や代謝異常そのものを包括的に是正しうる潜在力を有している.したがって,今後のMASLD 治療において中核的な役割を担う可能性はきわめて高い. PPAR 作動薬では,Pan-PPAR アゴニストであるラニフィブラノールが,第IIb 相NATIVE試験においてSAF スコアの改善および線維化の改善の双方に有意な効果を示した 6).副作用として軽度の体重増加がみられるものの,忍容性は概して良好であり,現在第III相試験(NATiV3)が進行中である.また,PPARα/γ 作動薬であるサログリタゾールはALT や肝脂肪量の改善効果を示しており,インドではすでに承認されている.PPAR 作動薬は多面的な作用機序を有
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することから,代謝異常を伴うMASLD に対する適応範囲が広く,他の薬剤との併用療法としての可能性も高い. FGF21 アナログでは,efruxifermin がHARMONY 試験において,24 週投与でMASH 解消率76%,線維化改善率48%というきわめて高い有効性を示した 7).また,pegozafermin はENLIVEN 試験において,24 週投与により線維化改善27%,MASH 解消26%を達成しており,いずれも現在第III相試験が進行中である 8).FGF21 は脂肪燃焼促進,インスリン感受性の改善,抗炎症・抗線維化作用など多面的な生物学的効果を有しており,肝外の代謝異常を伴う症例においても高い有用性が期待される. MASLD の複雑な病態に対応するためには,複数の分子経路を同時に標的とする併用療法の重要性が増している.GLP-1RA+FGF21アナログ,ACC+DGAT2阻害薬,Pan-PPAR+SGLT2阻害薬など,多様な併用療法が現在第II/III相で検討されており,単剤療法では十分に得られなかった肝脂肪,炎症,線維化の多層的改善が期待されている.病態に応じた併用設計により治療効果を最大化しつつ,副作用の軽減を図ることも可能とされ,今後の治療戦略の中心となると考えられる. 近年では遺伝子標的治療も注目されている.PNPLA3 I148M 多型はMASLD の最大の遺伝的リスク因子であり,これを標的としたsiRNA(ARO-PNPLA3)は,第I相試験において肝脂肪減少と良好な安全性を示した 9).また,HSD17B13 を標的とするsiRNA やアンチセンスヌクレオチドも第II相段階にあり,今後の個別化医療への展開が期待される. 文献1) Harrison SA, Bedossa P, Guy CD, et al. A phase 3, randomized, controlled trial of resmetirom in NASH with liver fibrosis. N Engl J Med 2024;390:497-509(ランダム) Sanyal AJ, Newsome PN, Kliers I, et al. Phase 3 trial of semaglutide in metabolic dysfunctionassociated steatohepatitis. N Engl J Med 2025;392:2089-2099(ランダム) 2) Loomba R, Hartman ML, Lawitz EJ, et al. Tirzepatide for metabolic dysfunction-associated steatohepatitis with liver fibrosis. N Engl J Med 2024;391:299-310 3) Sanyal AJ, Bedossa P, Fraessdorf M, et al. A phase 2 randomized trial of survodutide in MASH and fibrosis. N Engl J Med 2024;391:311-319(ランダム) 4) Romero-Gómez M, Lawitz E, Shankar RR, et al. A phase IIa active-comparator-controlled study to evaluate the efficacy and safety of efinopegdutide in patients with non-alcoholic fatty liver disease. J Hepatol 2023;79:888-897(ランダム) 5) Sanyal AJ, Kaplan LM, Frias JP, et al. Triple hormone receptor agonist retatrutide for metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:a randomized phase 2a trial. Nat Med 2024;30: 2037-2048(ランダム) 6) Francque SM, Bedossa P, Ratziu V, et al. A randomized, controlled trial of the pan-PPAR agonist lanifibranor in NASH. N Engl J Med 2021;385:1547-1558(ランダム) 7) Harrison SA, Frias JP, Neff G, et al. Safety and efficacy of once-weekly efruxifermin versus placebo in non-alcoholic steatohepatitis (HARMONY):a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2b trial. Lancet Gastroenterol Hepatol 2023;8:1080-1093(ランダム) 8) Loomba R, Sanyal AJ, Kowdley KV, et al. Randomized, controlled trial of the FGF21 analogue
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pegozafermin in NASH. N Engl J Med 2023;389:998-1008(ランダム) 9) Fabbrini E, Rady B, Koshkina A, et al. Phase 1 trials of PNPLA3 siRNA in I148M homozygous patients with MAFLD. N Engl J Med 2024;391:475-476(ランダム)