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負荷心エコー図検査実施のための手引き 日本心エコー図学会・2023・47 ページ · 心エコー・画像・検査
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一般社団法人 日本心エコー図学会負荷心エコー図検査実施のための手引き

執筆者(執筆順)

外部評価者

監修・編集

竹内 正明 産業医科大学 臨床検査・輸血部

瀬尾 由広 名古屋市立大学 循環器内科学

心エコー図学会 ガイドライン作成委員会

委 員  長 泉  知里 国立循環器病研究センター 心不全・移植部門

副委員長 大門 雅夫 国際医療福祉大学三田病院 循環器内科

委  員 岩野 弘幸 手稲渓仁会病院 循環器内科

梅田ひろみ 平成紫川会小倉記念病院 検査技師部

大西 哲存 兵庫県立はりま姫路総合医療センター 循環器内科

大原 貴裕 東北医科薬科大学 老年・地域医療学

田中 秀和 神戸大学医学部 循環器内科

山田 博胤 徳島大学大学院医歯薬学研究部 地域循環器内科学分野

平野  豊

天野 雅史

宇都宮裕人

出雲 昌樹

小保方 優近畿大学医学部 医学教育センター

国立循環器病研究センター 心不全・移植部門心不全科

広島大学大学院医系科学研究科 循環器内科学

聖マリアンナ医科大学循環器内科

群馬大学 医学部附属病院 循環器内科
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目次

I. はじめに......................................................................................................3 II. 総論.................................................................................................................3

1.負荷心エコー図検査に用いる負荷方法 ..................3 2.運動負荷の方法 ........................................................................3 3.運動負荷の生理学 ..................................................................4 4.運動負荷心エコー図検査の目的と対象...................4 5.運動負荷心エコー図検査の安全性の確保 ............5 6.運動負荷心エコー図検査の禁忌....................................5 III. 運動負荷の実際 ....................................................................................5

1.運動負荷前....................................................................................5 2.運動負荷の実施.........................................................................6

1)トレッドミルによる運動負荷 ..................6 2)臥位エルゴメータによる運動負荷 .......7 3)ハンドグリップ負荷.........................................7 4) 6分間歩行負荷....................................................8 5)下肢挙上負荷.........................................................8 3.運動負荷の終了基準  ...........................................................8 IV. 各疾患における運動負荷心エコー図検査..........................9

1.虚血性心疾患...............................................................................9 2.弁膜症............................................................................................12

1) 僧帽弁狭窄症..............................................................12 2) 僧帽弁閉鎖不全症...................................................13 3) 大動脈弁狭窄症.........................................................16 4) 大動脈弁閉鎖不全症..............................................19 3. 肥大型心筋症....................................................................................19 4. HFpEF..................................................................................................20 5. 肺高血圧..............................................................................................23 V. ドブタミン負荷心エコー図検査.............................................25

1. はじめに..........................................................................................25 2. ドブタミン負荷心エコー図検査の目的 ................ 25 3. ドブタミン負荷心エコー図検査の安全対策 ........26 4. ドブタミン負荷心エコー図検査の実際 ..................26 5. 各疾患におけるドブタミン負荷心エコー図検査評価 ......27

1)大動脈弁狭窄症  ................................................27 2)虚血性心疾患.........................................................28

VI. 各心疾患における負荷心エコー図検査の推奨度.......29 VII. 文献..............................................................................................................32 VIII.付録負荷心エコー図検査の説明と同意書...........................................37運動負荷心エコー図検査報告書......................................................39エルゴメータ多段階運動負荷実施経過記録...........................40ドレッドミル(Bruce 法)運動負荷実施経過記録...........41エルゴメータ漸増運動負荷実施経過記録.................................42測定項目............................................................................................................43虚血性心疾患レポート............................................................................44負荷心エコー図壁運動記録紙............................................................45

弁膜症レポート............................................................................................46肺高血圧レポート.......................................................................................47
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−3−だければ幸いである。

II.  総論

1 心エコー図検査中に用いる負荷方法

心エコー図検査中における主な負荷の方法は運動負荷と薬物負荷である。かつては虚血性心疾患の診断を主目的として負荷心エコー図検査が行われていたが、現在では負荷心エコー図検査の適応は拡がり、弁膜症・心不全・心筋症への応用が主目的になり、より生理的負荷である運動負荷が施行される傾向にある。

薬物負荷として、イソプロテレノール、ジピリダモール、アデノシン(ATP) が用いられた時期もあったが、現在は、ドブタミンが専ら使用されている。一方他の負荷方法としてペーシング、過換気、冷水負荷などが特殊な状況で用いられている。

2 運動負荷の方法

運動負荷にはハンドグリップなどの等尺性運動(isometric) とトレッドミル、エルゴメータなどの等張性運動(isotonic) がある ( 表1)。心臓のポンプ機能を評価するためには、末梢組織の酸素消費量を高め、心拍出量を増大させることが必要となる。一方、心筋虚血を誘発させるためには、心筋の酸素需要を増大させることが必要になる。心筋の酸素需要は、心拍出量よりも左室壁にかかる壁応力と心拍数に大きく依存する。つまり、虚血の誘発には運動時の心拍数増加と血圧上昇が極めて重要になる。

I. はじめに

負荷心エコー図検査は虚血性心疾患の診断、予後予測に有用であり、欧米では1980 年代後半より臨床の場に普及するようになった。本邦では2012 年4 月より負荷心エコー図法として保険償還されたが、当時負荷心エコー自体の認知度は低く、実施する施設も極めて限られていた。

負荷心エコー図検査の本邦におけるエビデンスを示すためには、負荷心エコーをより普及させる必要がある。そこで、標準化されたプロトコールや、報告書を提示して、負荷心エコー図検査を実施しやすい環境を整えることにした。2017 年12 月に日本心エコー図学会ガイドライン作成委員会は、特に実施方法に重きをおいた安全かつ効果的な負荷エコー図法のプロトコールと、報告書を含んだ手引きを作成した。その後負荷心エコー図検査の保険点数は2018 年4月に1680 点から2010 点へ増額された。さらには2018 年5月4 日からドブタミン塩酸塩が薬物負荷時に使用可能となり、運動負荷とドブタミン負荷は多くの施設で実施されるようになり、そのエビデンスが年々集積されてきた。

今回、日本心エコー図学会ガイドライン作成委員会から、負荷心エコーの手引きの改訂を依頼された。虚血性心疾患のみならず、弁膜症、HFpEF への診療は日々進化しており、内容の改訂だけでなく、ガイドブックとして利用者の手元において見やすく、利用していただけるような手引き書になるように改訂を試みた。是非、手元において、負荷心エコー図検査実施時に活用していた

表1.負荷法の種類ならびに各々の特徴
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−4−加えて、血管拡張能や骨格筋へ効率よく血液を灌流さ

せる能力に依存している。最高酸素利用能は活動筋が効率よく酸素を取り込む能力に依存する。よって、心不全患者においてPeak VO2 が低下する機序として、1.心拍出量の減少・2. 貧血・3. 血管内皮機能障害による血管拡張低下・4. 運動制限や廃用萎縮による筋肉量の減少・5. 慢性の低灌流状態に起因する骨格筋ミトコンドリアの変化・6. 筋のエネルギー代謝にかかる酸化的リン酸化酵素などの酵素活性の低下などが考えられる。トレッドミルは、特に高齢者では酸素消費量からみた運動負荷量が大きくなることに留意し1、エルゴメータを選択することが望ましい。エルゴメータとトレッドミルを比較すると、最大運動時の心拍数と換気量は両検査でほぼ同じであるが、その時のPeak VO2 は、トレッドミル運動負荷の方が一般的に5 ~11%高い2。つまり、エルゴメータにより求めたPeak VO2 は、トレッドミル運動負荷により求めたPeak VO2 に及ばない。

運動負荷心エコー図検査中のCPET 検査では、Peak VO2 の他に、VE/VCO2 slope(代償的な過換気と関係した指標で、運動中の心拍出量が少ないことで死腔換気量が増えると増加する)・PETCO2(呼気終末二酸化炭素分圧:RC[respiratory compensation point] での値は運動中の肺血流量[ ≒心拍出量] に比例する)・仕事率(Work rate)に対するVO2 の増加(Δ VO2/ Δ WR)を評価する。

4 運動負荷心エコー図検査の目的と対象

1). 弁膜症負荷による症状や肺高血圧の出現、さらに弁膜症の重症度変化・心筋予備能を評価することを目的とする。1僧帽弁逆流(MR):

運動負荷:無症候性重症一次性MR、症候性中等症一次性MR、二次性MR(ハンドグリップ負荷・下肢挙上負荷も考慮する)。2僧帽弁狭窄症(MS):

運動負荷またはドブタミン負荷:無症候性中等症MS、症候性軽症MS。3大動脈弁狭窄症(AS):

運動負荷:無症候性重症AS または症候性中等症AS(奇異性低流量低圧較差AS を含む)。ドブタミン負荷:左室駆出率の低下した低流量低圧較差AS 4大動脈弁逆流(AR):

運動負荷:無症候性重症AR または症候性中等症AR 5僧帽弁・大動脈弁置換術後:

運動負荷またはドブタミン負荷:低流量で人工弁機能不全または人工弁−患者ミスマッチ疑い症例。6僧帽弁形成術後

1) トレッドミル・エルゴメータ・6 分間歩行:等張性運動(isotonic)等張性運動は、運動強度の増加に応じて、肺血流量・心拍出量の増加がもたらされる。運動強度に比例して心拍数と血圧は、直線的に増加する。静脈還流・肺血流量が増加するので、左心系に対する前負荷は増加し心室・心房は拡大する。この静脈還流量の増加は、臥位の方が、立位よりも明瞭である。心臓のポンプ機能を見るには一回拍出量の増加を観察したほうがよいため、大動脈弁狭窄症や僧帽弁逆流症を中心とした弁膜症や拡張不全による心不全(HFpEF)症例の評価に用いられる。肺高血圧症例では、トレッドミルより強度が低いが簡単に酸素飽和度と運動誘発性肺高血圧を評価できる6 分間歩行検査も良い適応となる。

2) ハンドグリップ:等尺性運動(isometric)等尺性運動は、運動強度を増加させたときには、収縮期血圧の増加に比べ、心拍数の増加が少ないという特徴を有している。要は、心拍数を変えずに後負荷(血圧)を上昇させる運動である。等張性負荷よりも血圧上昇が大きいため、後負荷上昇時の逆流の変化を捉える目的で、近年では特に僧帽弁逆流症の重症度評価に使用されることが多い。カテーテル検査中には、トレッドミルやエルゴメータが使用しにくいため好んで使用される負荷である。

3)  下肢挙上負荷:前負荷増大(preload ↑)血圧や脈拍数は変えずに、静脈還流量を増やす目的で行われる。特に、左室駆出率が低下した拡張型心筋症における肺高血圧の有無や機能性僧帽弁逆流症における逆流の重症度評価に有用であり、潜在的な左室拡張障害の検出にも有効かもしれない。受動的な負荷であるため、フレイリティの高い高齢者でも行うことが可能である。一方で、比較的短時間で血行動態がもとに戻る可能性があることを念頭に入れておく必要がある。

3 運動負荷の生理学

運動をすると、その強度に応じて酸素摂取量(VO2)が増加する。症候限界性運動時、目標心拍数に達した時のVO2 を最高酸素摂取量(PeakVO2)という。さらに、運動強度を上げてVO2 がそれ以上増加しないVO2(プラトーに達したVO2)を最大酸素摂取量という。運動負荷心エコー図検査中に、呼気ガス分析による心肺運動負荷検査(CPET)を同時に施行する場合、運動負荷中の生理学を理解することは重要性である。Peak VO2 は運動中の最高酸素輸送能と最高酸素利用能により決定される。最高酸素輸送能は心拍出予備能に
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−5− 6 運動負荷心エコー図検査の禁忌

運動負荷を安全に施行し、診断に有用な結果を得るためには、検査前に負荷が可能な症例かを判断することが重要である。以下の症例では、負荷による心事故発生の可能性が高いため、原則的に負荷検査は禁忌となる。

1 発症48 時間以内の急性冠症候群

2 コントロール不良の心不全・呼吸不全

3 コントロール不良の高血圧

4 症候性重度大動脈弁狭窄症

5.重症閉塞性肥大型心筋症(左室流出路圧較差> 90mmHg)

6 致死性不整脈

7 急性大動脈解離急性期、切迫破裂性大動脈瘤

8 運動不可能例

9 同意が得られない症例

10 その他、主治医が不適と考える症例

III. 運動負荷の実際

1 運動負荷前

一般的注意(図2)としては、

1 負荷検査前に臨床診断名、検査目的、病歴、処

方内容を確認する。

2 負荷の具体的な方法や副作用については、事前

に説明して、必ず同意書を得ておく.

3 検査を理解しているか確認;被験者の検査に対

する不安の除去し、さらに検査手順を説明して理解しているかを確認する。

4 被検者に最近の胸部症状の頻度、および状態を

問診する。

5 検査時の服装は動きやすいトレーニンングウェ

アや運動靴で行うのが望ましい

6 上半身は心エコー図を記録するので検査着を用

意する。

7 バイタルサインの測定;頻脈を呈していたり、血

圧が通常と異なっていたりする場合には、その原因を考察し、検査を実施が妥当かを判断する。

8 心エコー図画像の確認;胸部誘導の心電図電極

が、超音波探触子のビーム投入部位と重ならないことを確認する。

運動負荷:症候性相対的MS 疑い症例

2) 肥大型心筋症左室流出路狭窄誘発・拡張不全による運動誘発性肺高血圧評価・僧帽弁前尖収縮期前方運動(SAM)によるMR・不整脈誘発のいずれかを目的とする。

3) HFpEF主に運動誘発性肺高血圧・左室、左房圧上昇・心拍出量評価を目的とする。エルゴメータ負荷・トレッドミル負荷が困難な場合はハンドグリップ負荷や下肢挙上負荷も考慮する。

4) 肺高血圧:主に運動誘発性肺高血圧評価を目的とする。エルゴメータ負荷・トレッドミル負荷のみならず6 分間歩行も考慮する。

5) 虚血性心疾患冠動脈疾患の診断(特に心電図で虚血の診断困難例)・心臓血管手術およびそれ以外の大手術が行われる前の術前評価・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)等の血行再建術後の残存心筋虚血評価・心筋虚血部位の診断・心筋バイアビリティ(viability)評価を目的とする

5 運動負荷心エコー図検査の安全性の確保

運動負荷心エコー図検査の安全性は確立されている。重症不整脈や心筋梗塞等の重篤合併症の発生率は負荷中0.04%、負荷後0.01%、一連の負荷を通しての合併症発生率は0.2% 以下と報告されている3。しかし、身体的理由により運動が困難な症例では重篤な合併症発生の可能性があるため、検査に際しては十分に安全を確保する必要がある。緊急薬剤や気道確保器具を常備した救急カート、運動負荷監視システム(自動血圧計、12 誘導心電図モニター)、除細動器、酸素を準備し、十分なスペースを確保して施行することが望ましい( 図1)。

図1.運動負荷心エコー図検査室の様子
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(2)評価断面の描出手順よく記録することが重要で、被検者の協力なしに評価可能な画像を収集することは困難である。1負荷後は呼吸が荒くなるが、できる限り呼吸を止めた状態で撮像し、記録画質の向上に努める。2負荷直後数分間は呼吸が非常に荒くなり、心エコー図の画像は呼気時に現れ、吸気には観察できなくなる。そこで、負荷をかける前に被検者にあらかじめ負荷直後は呼気を出来る限り長く、吸気時間を短くする呼吸をするか、あるいは浅く小さな呼吸をするように指導しておくとよい。できる限り被検者に呼気状態を長く保ってもらい、その間に撮像する。良質な画像が描出不可能であれば、被検者に呼吸の中断( 息止め) を指示してもよい。

2 運動負荷の実施   (表2、図3〜図5)

1) トレッドミルによる運動負荷(1)方法1安静時の血圧、脈拍、心エコーを記録する。1 被検者をベルトの上に立たせて、運動負荷を開始する。2 Bruce 法等の負荷方法を用いて段階的に運動負荷量を増大させる。3 負荷中はモニター心電図によりST-T 変化や、不整脈の監視を行ない、1 分毎に心電図、血圧を測定する。4運動負荷終了後は直ちに左側臥位になり、負荷終了後の心エコー図記録を行なう。5負荷終了後2分以内、できれば1 分以内に心エコー図の記録を終了することが望ましい。

図2.運動負荷前の一般的注意事項

図4.トレッドミル運動負荷エコーの実際

図5.トレッドミル運動負荷心エコー検査 検査時の配置(近畿大学病院)

表2.Bruce法 プロトコール

図3.トレッドミル運動負荷心エコー
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3トレッドミル負荷後の撮像時間は限られているため、最も評価すべき指標から画像描出を行う。

2) 臥位エルゴメータによる運動負荷(1)方法1 エコーベッドの傾斜が可能であれば被検者を軽度左側臥位にして、上半身を半坐位まで上昇させる。2 安静時の心電図、血圧および心エコー図を記録する。3 自転車のペダルに足をかけて運動負荷を開始する。ペダルの回転数は50 〜60 回転/ 分を目安にする。4 多段階法;3 分間毎に25W 増加する負荷法が用いられることが多い。5 Ramp 法;下肢筋力が著しく低下した高齢者では10W のウォームアップを3 分間施行後、3 分間毎で10W 漸増する方法を用いることがある。6 負荷中はモニター心電図によりST-T 変化や、不整脈の監視を行ない、1 分毎に心電図、血圧を測定する。図6. エルゴメータ運動負荷心エコー 検査時の配置

図7.運動負荷心エコー法のプロトコール (エルゴメータ運動負荷)

(2)断面描出時の注意1  負荷前の安静状態では良質な画像が描出不可能でも、ペダルに足をかけてフットアップの状態や、運動を開始すると良質な画像が描出される事もある。2  負荷中は負荷前と同断面の画像を描出するように心がける。3  トレッドミルと同様に呼気状態での描出を長くする

ように努める。4  臥位エルゴメータでは負荷中にも画像記録ができる

ので、出来る限り連続的に画像を観察し、良いタイミングで画像を収集するとよい。

3) ハンドグリップ負荷 (図8)

等尺性運動(isometric) であり、主として左室に圧負荷を及ぼし、運動強度を増しても心拍数はあまり増大しないが、収縮期血圧は増大する。最大握力の30 から50% で3分間握り続けるとプロトコールが一般的である4,5。ハンドグリップ試験は、心拍数の上昇が乏しいため、十分な心筋酸素需要の増加がみられない。また、ハンドグリッ
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−8−肺,血液,筋骨格)についての特定の情報は得られない。

6 分間歩行負荷に心エコー図を加えることで運動後の血行動態や心機能、弁機能などを評価することが可能となる。歩行後1 分以内に画像を取得する必要があるので、心エコー、血圧や心電図モニター記録者を予め決めておくのが良い。6 分間歩行負荷は特別な装置を必要とせず、いずれの施設でも可能な検査である。また日常生活に即した運動方法のため、弁膜症や慢性心不全、肺高血圧などの症状診断や血行動態の把握が可能である。

5)下肢挙上負荷

仰臥位で45 度に挙上させた両下肢をベッド上に置いた椅子などにのせて保持する8。これにより心臓の前負荷を増加させることができ、健常者では一回心拍出量が増大する。電動空気ポンプを用いて両下肢に装着したカフに空気を充満させることで下肢を圧迫する下肢陽圧負荷法9 も同様の効果が得られる。

3 運動負荷の終了基準

運動負荷中は心電図、血圧は必ずモニターし、患者の状態を確認しながら実施する。著明な血圧の上昇や低下、重篤な不整脈が出現した場合は直ちに中止して、適切な処置をとる必要がある。以下に安全に負荷を終了するための基準を表3に示す。

プ負荷前後の画像をストレインで評価して心筋虚血の診断に有用であったとする報告がある4。僧帽弁逆流の症例にハンドグリップと運動負荷を実施した報告では、血行動態が違うが、僧帽弁逆流はエルゴメータ運動負荷よりハンドグリップで増加が大きかったと報告されている6。

4)6 分間歩行負荷

6 分間歩行負荷は簡便に運動耐容能を評価でき、また日常生活に即した運動耐容能を評価することが可能である。2002 年に米国胸部医学会がステートメント7 として6 分間歩行負荷のガイドラインを発表しており、平坦な30m の直線コースを使用すること、また被験者には可能な限り長い距離を歩くよう説明することが記載されている。 6 分間歩行負荷試験のみでは全般的な運動機能を評価できるが,運動に関係する個別の機能(心,

図8. ハンドグリップ負荷

表3. 負荷心エコー法の禁忌と中止基準
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−9−能的イメージング検査(SPECT,負荷CMR,あるいは

負荷心エコー) をCAD の診断およびリスク評価を目的に施行することはクラスI とされている。年齢、性別、自覚症状や既往歴、さらには安静時の心電図に心エコー所見、糖尿病、高脂血症の有無による検査前確率の評価を実施してから負荷心エコー検査の選択を検討するのが望ましい。

IV. 各疾患における運動負荷心エコー図検査

1 虚血性心疾患

1) 目的冠動脈疾患の診断に用いられ、目的を表4に示す。2022年JCS ガイドラインフォーカスアッップデート版10 の、安定冠動脈疾患の診断と治療の項目中、CAD 検査前確率 (pre-test probability: PTP) が中等度の症例では,機

表4. 虚血性心疾患への負荷エコーの目的

2) 負荷心エコーの実際1 トレッドミル運動負荷では、負荷直後の画像を出来る限り短時間に撮像開始するためにトレッドミル、ベッド、エコー装置をコンパクトに配置する。2不安定狭心症に実施するのは禁忌である。外来検査予約時に無症候と判断されていても、検査実施までの間に症状が出現することもあるため、検査直前に症状の有無を再確認することが大事である。3 運動負荷心エコー図検査の施行中、画像の描出に集中しすぎるあまり、症状、血圧、心拍数、心電図モニターの確認がおろそかになると、心事故につながる可能性があるので留意する。4 臥位エルゴメータでは,最大運動負荷時に下肢疲労のため急にペダルを漕げなくなることがある。被検者には最大運動負荷の手前で、辛くなってきた頃を教えてもらい、最大運動負荷の少し手前から撮像を開始する。(エルゴメータ運動負荷開始直後から、心エコー図撮像を実施し、変化を確認しつつ、負荷を継続することが実際的である) 5できる限り呼吸を合わせて撮像する。最大運動負荷時に、呼気止めが困難な場合があるが、可能な限り(決して無理はさせない)呼気止めをして撮像する。しかし、最大運動負荷時の画像は描出不良となることがあるので、心拍数が100bpm 程度のsubmaximal においても心エコー図画像を撮像して、最大運動負荷時の代用とする

ことがある。6 心筋虚血が遷延すればニトロクリセリンを使用する。それでも症状が遷延するようであれば、ルート確保、β遮断薬等も準備する。

3) 評価項目(1)  冠動脈血流評価

経胸壁ドプラ心エコーを用いて冠動脈血流シグナルを直接描出して、冠動脈血流速度を計測出来る。左前下行枝血流の検出率は90%以上であるが、右冠動脈や左回旋枝の検出率はやや劣る。冠血流速予備能(coronary flow velocity reserve;CFVR) は最大冠充血時の拡張期平均冠血流速度を安静時の拡張期平均冠血流速度で除したものであり、冠血流速度評価部位より中枢側の機能的冠動脈狭窄を検出するのに優れている。

(2) 定性的壁運動評価心エコー図上の判定は負荷前と負荷時の画像を side by side に並べて評価する。得られた 心エコー図の画質が良好であれば、診断は容易となり診断精度は上昇する。ASE の左室 16 分割モデル11 を用い、各分画における壁運動を半定量的に評価し、スコアリングする( 虚血性心疾患レポート参照) 図9。壁運動は Normokinesis( 正常
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などの細かい段階は使用しない方がよい。収縮)、hypokinesis( 低収縮)、akinesis( 無収縮) のいずれかに分類する。mild hypokinesis, severe hypokinesis

図9.

( 3) 壁運動評価のコツ1 傍胸骨左室短軸断面像は冠動脈3 枝全ての灌流領域を含んでおり、壁運動診断に非常に重要な断面であるが、斜め切りの短軸断面は偽陽性もしくは偽陰性の原因となる。特に壁運動評価は断面で評価するため、斜め切りに注意する。2 分類を細かくすれば、検者間のばらつきが大きくなり、判定の客観性が落ちる。壁運動評価は、単に左心内膜面の移動だけに注目するではなく、壁厚の変化にも注

意して判定する。3 拡張期の壁運動に惑わされないように、収縮期だけを注意して観察するとよい。4 安静時と同じ視野深度で画像保存を行い、モニター上に安静時と負荷時の画像をside by side に描出して壁運動評価を行うことは必須である。4)得られる結果
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表5. 壁運動の定性評価

表6. 各負荷心エコー図の診断精度12

表7. 負荷心エコーの診断と陽性所見

冠動脈疾患の診断について表6に各負荷心エコー図検査の診断精度を記載した12。
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2.弁膜症

1) 僧帽弁狭窄症(MS) (1) 目的安静時心エコー図の重症度と症状が一致しない場合、すなわち中等症MS にも関わらず無症状の場合や、軽症MS にも関わらず息切れなどの心不全症状を認める場合に運動負荷心エコー図の適応を考慮する。

(2) 負荷エコーの実際主に臥位エルゴメータによる症候限界性の運動負荷が行われる. エコーベッドの面に傾斜をかけることが可能であれば被検者を軽度左側臥位にし、上半身を半坐位まで上昇させる。 安静時の心電図、血圧および心エコー図を記録する。

(3)評価・計測項目安静時、負荷中、および負荷後の回復期で各項目を測定する. 安静時にはMS 重症度のパラメータを確認しておく。 重症MS の診断には、僧帽弁口面積 <1.0cm 2、平均圧較差 >10mmHg、拡張期pressure half time >220msec 等の指標が用いられる。18 僧帽弁口面積は断層像(トレース法)、連続の式、またはpressure half time 法により求められる. 平均圧較差および拡張期pressure half time は血行動態の影響を受けるため、参考程度とする。

19 安静時と運動負荷の各ステージにおいて、決められた

測定項目を多心拍で順番通りに記録する。 表8 に取得画像と順序の一例を示す。習熟度に応じて取得画像を絞ってもよい。特に、連続波ドプラ法での僧帽弁通過血流速波形と、TR 血流速波形の記録は必ず行う。 僧帽弁通過血流速波形から平均圧較差を計測する. TR 血流速波形の記録は、心尖部四腔断面、右室流入断面、傍胸骨短軸断面(大動脈弁レベル)などの多断面のうち、最もTR を記録しやすい断面を採用する。安静時と負荷時で記録断面を統一するのが望ましい。負荷時の肺うっ血出現の評価には、肺エコーにおけるB ラインの有無を評価するのが良い。肺エコーは画像取得のしやすさも考慮して、右胸郭の鎖骨中線上第3、4 肋間あたりでプローベを肋間と平行に当て、2 秒程度の画像取得を行う。

(1) 冠動脈血流の直接評価冠動脈有意狭窄例では、安静時には正常例にみられる流速の拡張期優位性は失われ、心周期全体を通じて低速血流が持続する特有な波形をとる17 ATP( アデノシン)負荷によるCFVR≤2.0 の例では、感度87%、特異度96%でCTCA の>50% の狭窄を診断し得たと報告されている4 14。本法の問題点としては、全例で主要3 冠動脈血流速度予備能の測定が可能ではないこと、評価できても記録部より末梢の病変の評価はできないこと等が挙げられる。(2) 壁運動評価正常では、運動負荷により収縮期に壁運動が亢進し左室壁厚増加率は上昇する。運動負荷により壁運動の亢進や壁厚の増加がみられない場合は異常と判定する。Normokinesis、 hypokinesis の分画が1 段階増悪すれば虚血陽性である15(表5)。二次元スペックルトラッキング法によるストレインイメージングが導入されて、虚血領域検出の定量的評価手段として実施している施設もある16。ただし画質の問題及びストレインは正常例でも運動負荷時進行性に上昇せずピーク時にはむしろ低下したり、左室局所のストレン値が異なるので、一様なcutoff値を用いることができないことなどから現時点では運動負荷エコーの壁運動の定量的評価の報告は少なく、現状では日常臨床では使用しにくい。今後、超音波装置の改良や、解析ソフトの更なる進歩が望まれる。

5) 今後の課題1ある一定数の割合で心エコー画像が不良な場合がある

ため、検査の実現性が100% ではない。2診断能が検者の主観や技量により大きく変化する。3観察者間の診断のバラツキ(interobserver’s variability)が大きく、施設間における本法の感度、特異度の違いを生む最大の原因となっている。4画像収集の簡便化のために三次元心エコー法が行われていくであろう。5二次元、三次元スペックルトラッキング法によるストレインイメージングが導入されて、虚血領域の検出や心筋バイアビリティの評価手段として実施されている。しかしドブタミン負荷に応用した報告がほとんどであり、現時点では運動負荷エコーの報告は少なく、現状では日常臨床では使用しにくい。今後は負荷心エコーにストレインレートの適応が重要である。今後の超音波装置や、解析ソフトの更なる進歩が望まれる。
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(4) 得られる結果症状の確認のほか、経弁平均圧較差および肺高血圧の有無の評価を行う。TR 圧較差(=4 × [TR 最大速度]

19 mmHg)と下大静脈径から推定される右房圧の和によっ

て推定肺動脈収縮期圧が求められる。 運動負荷時の僧帽弁口平均圧較差15 mmHg 以上、肺動脈収縮期圧60 mmHg 以上もしくは運動時に90%以上の推定肺動脈収縮期圧増加が心血管イベントの予測因子とされ、これらの所見が認められる場合に負荷陽性と判定し、血行動態

的に有意な重症MS と判断できる ( 表9) 20-22。肺エコーを行うと負荷中に高輝度線状エコーであるB ラインが出現する場合があり,MS に起因する労作時肺うっ血所見として重要である。出現本数やその消失までの時間などの臨床的意義については検証の余地がある。

表8. MS評価における取得画像と順序(一例)

表9. MSに対する負荷心エコー図検査のカットオフ値

3 今後の課題近年の動向として、リウマチ性MS よりも変性・僧帽弁輪石灰化をともなう非リウマチ性MS の頻度が増加している。また、経皮的僧帽弁接合不全修復術(マイトラクリップ術)後のMS に遭遇する機会も増えてくるものと思われる。非リウマチ性MS では弁輪部から進展する弁尖石灰化が特徴的である。マイトラクリップ術後MSでは、平均圧較差の値の割に弁口面積が小さいとの報告がある23。このような病態に負荷心エコー図検査を適用する場合、陽性基準のカットオフ値についての再評価が

必要である。

2) 僧帽弁閉鎖不全症(MR) (1) 目的安静時心エコー図の重症度と症状が一致しない場合、すなわち重症MR にも関わらず無症状の場合や、中等症MR にも関わらず息切れなどの心不全症状を認める場合に運動負荷心エコー図の適応を考慮する。 前者は『無
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18。PISA 法によるEROA は負荷条件の変化に対しての安定性が高く,可能であれば計測が望ましいが,負荷中の計測が困難な場合もある。その場合は定性指標や縮流部幅による評価でも充分である。安静時と運動負荷の各ステージにおいて、決められた測定項目を多心拍で順番通りに記録する。 表10 に取得画像と順序の一例を示す。習熟度に応じて取得画像を絞ってもよい。特に、MR カラードプラの記録、連続波ドプラ法でのMR 血流速波形、TR 血流速波形の記録は必ず行う。 MR カラードプラから縮流部幅とPISA 半径を計測する。 PISA 計測時には逆流ジェットの方向と同じ向きにカラードプラのベースラインをシフト(40 cm/ sec 前後)し、PISA が半球形になるようにする。 三尖弁逆流波形の記録は、心尖部四腔断面、右室流入断面、傍胸骨短軸断面(大動脈弁レベル)などの多断面のうち、最も三尖弁逆流を記録しやすい断面を採用する。 安静時と負荷時で記録断面を統一するのが望ましい。MS 評価と同様に,負荷時の肺うっ血出現の評価には肺エコーにおけるB ラインの有無を観察するのが良い。

症候性重度MR におけるハイリスク群の検出』で、一次性(器質性)MR で遭遇する場合が多い。 後者は『有症候性中等症MR における運動誘発性MR (PH) の検出』で、二次性(機能性)MR で目的となることが多い。

(2) 負荷エコーの実際主に臥位エルゴメータによる症候限界性の運動負荷が行われる。 エコーベッドの面に傾斜をかけることが可能であれば被検者を軽度左側臥位にし、上半身を半坐位まで上昇させる。 安静時の心電図、血圧および心エコー図を記録する。

(3) 評価・計測項目安静時、負荷中、および負荷後の回復期(3 分以内)で各項目を測定する。 MR 評価では血行動態が即時的に変化するので、最大負荷時の前段階から各指標を連続的に撮り続ける方が良い。 安静時ではMR 重症度のパラメータを確認しておく。 重症MR の診断には、縮流部幅 ≥7mm、有効逆流弁口面積(EROA) ≥0.40cm 2、逆流量 ≥60mL、逆流量 ≥50%、等の定量的指標を用いる

表10. MR評価における取得画像と順序(一例)

(4). 得られる結果症状の確認のほか、MR 増強の有無および肺高血圧の有無の評価を行う。TR 圧較差(=4 × [TR 最大速度]

2 mmHg)と下大静脈径から推定される右房圧の和によっ

て推定肺動脈収縮期圧が求められる。推定平均肺動脈圧は、肺動脈収縮期圧× 0.6+2 で推定できる24。表12 にまとめた陽性所見は予後不良の予測因子ないしは運動耐

容能低下の関連因子とされており、これらの所見が認められる場合には血行動態的に有意なMR と判断できる。例えば、無症候性重症一次性MR で左室機能低下や安静時肺高血圧(推定肺動脈収縮期圧>50mmHg)がなくとも、負荷時の推定肺動脈収縮期圧が60mmHg 以上とな
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表11. MRに対する負荷心エコー図検査のカットオフ値

る症例ではクラスIIb 適応で僧帽弁形成術が推奨されるなど、治療適応にも関連する18。(4-1) 一次性MR における陽性所見

1	 MR 重症度の増加Δ EROA(負荷時-安静時)≥ 0.10cm 2、又は、Δ逆流量(負荷時-安静時)≥ 15 mL では、無症候性重症一次性MRにおいてその後早期に症状が出現し手術に至る例が多いことが報告されている25。負荷時のEROA や逆流量を計測困難である場合は,視覚的評価や縮流部径での評価でMR の増悪を判断しても良い。

2	 運動誘発性肺高血圧負荷時の推定肺動脈収縮期圧 >60 mmHg を示す症例では、無症候性重症一次性MR においてその後早期に症状が出現し手術に至る例が多い26。 こうした症例では心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test: CPET)におけるpeak VO2 が低く運動耐容能の低下が見られる27。 原著26 では、下大静脈径からの推定右房圧を安静時・負荷時を通じて10mmHg としているため、代わりに右室- 右房圧較差 >50 mmHg で代用しても良い。

3	 左室収縮予備能低下負荷時の左室駆出率の増加が5% 未満、又は左室global longitudinal strain の増加が2% 未満の症例は左

室収縮予備能が低下しており、予後不良因子の一つとされている28。

4	 右室収縮予備能低下負荷時の三尖弁輪収縮期移動距離が19mm 未満の場合は右室収縮予備能低下があり、無症候性一次性MR においてその後早期に症状が出現し手術に至る例が多い29。

5	 無症候性重症一次性MR における運動耐容能低下

の関連因子慢性一次性MR では病状が緩徐に進行する場合も多く、そのような場合に有症候性かどうかの判断に迷うことがある。 症状出現に先行して運動耐容能低下が生じるとされ、予後不良因子の一つとして重要である30。CPET で測定したpeak VO2(=運動耐容能の指標)低下の関連因子として、心拍リザーブ < 80%、平均肺動脈圧/ 心拍出量スロープ > 4.13 mmHg/L/min、三尖弁輪収縮期移動距離/ 肺動脈収縮期圧スロープ < 0.25 mm/ mmHg、が報告されており、変時性不全や両心室予備能低下が運動耐容能低下に関連しているとされている31。

6	 肺エコーにおける負荷中のB ライン出現運動によるMR 増強、あるいは同時に生じた虚血によ
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ついても期待がもてる。

3). 大動脈弁狭窄症(AS)

(1) 目的AS では運動と低用量ドブタミンの2つの負荷方法が用いられ、運動負荷では主に症状の確認や心血管イベント予測として、ドブタミン負荷では主に左室駆出率の低下した古典的低流量低圧較差AS に対して重症度診断及び大動脈弁置換術の術後予後予測として用いる18。有症候性高度AS に対する運動負荷試験は禁忌であることに注意する18。

(2) 運動負荷エコーの実際運動負荷:安静時及び運動負荷時もしくは負荷直後に心エコー図を評価する。血圧・心拍数・酸素飽和度などバイタルサインを1 分ごとに記録する。症状を把握するためBorg スケールを併用することも有用である。(3) 評価項目症状・血圧・心電図変化平均圧較差肺動脈収縮期圧Flow rate(一回心拍出量/ 駆出時間)左室GLS左室負荷(Zva)運動負荷心エコー図では上記心エコー図指標の他、運動時の呼吸困難や胸痛などの症状、血圧反応、ST 低下などの心電図変化も重要である35。運動心エコー図で優先度の高い平均圧較差や肺動脈圧は心拍出量など血行動態に影響する指標であり、また肺動脈収縮期圧は右房圧を10mmHg と推定しており、それら指標の解釈については日常臨床で注意を要する。最近ではAS 患者の運動時左室機能に関するエビデンスが複数報告されており、運動時のflow rate やGLS、左室負荷の指標であるZva

る負荷誘発性肺うっ血所見として重要である。

(4-2) 二次性MR における陽性所見血行動態(前負荷・後負荷)により重症度が大きく変化する。運動誘発性MR は予後、急性肺水腫、運動耐容能低下などと関連することが知られている。

1	 MR 重症度の増加負荷時EROA >0.20 cm 2、または Δ EROA(負荷時-安静時)>0.13cm 2 は、二次性MR における予後不良予測因子である32,33。負荷時のEROA や逆流量を計測困難である場合は,視覚的評価や縮流部径での評価でMRの増悪を判断しても良い。

2	 運動誘発性肺高血圧負荷時の推定肺動脈収縮期圧 > 60 mmHg を示す運動誘発性肺高血圧は、二次性MR における心血管イベントの予測因子である34。

3	 肺エコーにおける負荷中のB ライン出現運動によるMR 増強、あるいは同時に生じた虚血による負荷誘発性肺うっ血所見として重要である。(5). 今後の課題MR に対する運動負荷で最も重要なポイントは、MRおよびPH の増悪を確実に捉えることである。初めて行う場合は,多くの指標を取得するよりもまずはMR とTR ジェットを確実に捉えられる断面を意識することが大切である(一例として,心尖部長軸断面でMR を観察し,そこからプローブを時計方向回転して逆四腔断面でTR を描出し圧較差計測を行う,など)。

その上で,MR 重症度の増加のみならず左室、左房、肺循環、右心機能も含めた包括的な評価体系の確立が将来的には望まれる。さらに本文内でも少し触れたように、運動負荷心エコー図検査とCPET を同時に施行する検査法(図10)は、運動耐容能低下の要因がどこにあるのかを検討することが可能であり有用である。 将来的には3D 心エコー図と組み合わせた負荷評価法の確立に

表12. 負荷心エコー評価項目とカットオフ値
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図10. 僧帽弁閉鎖不全症に対して運動負荷心エコー図検査を実施した1例

図10. 運動負荷心エコー図検査と心肺運動負荷試験(CPET)の同時施行

55 歳の女性,後尖P2 逸脱による無症候性重度僧帽弁閉鎖不全症に対して臥位エルゴメータを用いた運動負荷心エコー図を施行した(各ステージ3 分,ランプ法10W/ 分)。心尖部長軸断面での観察から,PISA 法によるEROA は安静時0.27cm2 から運動時0.41cm2 へと0.14cm2 増加した(上図;A, 矢頭)。同時に計測した三尖弁逆流速度から求めた推定肺動脈収縮期圧は,安静時28mmHg から運動時70mmHg へ増加し,運動誘発性肺高血圧を認めた(下図;B)。器質性MR では弁尖逸脱による偏向性ジェットを呈する場合が多く,特に本例のような左房壁に沿うような”wall-hugging jet”(上図; A, 黄矢印)ではMR ジェットは過小評価となるので運動によるMR 増悪の判定が難しくなる。その場合はPISA や縮流部径に注目して画像を取得すると良い。
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(収縮期血圧+ 平均圧較差/ 一回心拍出量係数)と心血管イベントの関連性が示されている。

(4) 得られる結果症状:息切れ・胸痛

35 心電図:ST 低下

35 平均圧較差:安静時から運動時に18mmHg 以上の上昇

36 運動誘発性肺高血圧:運動時肺動脈収縮期圧60mmHg

以上

37 Flow rate: 運動時270ml/ 秒以下

38 左室GLS:-17%以上

39 左室負荷(Zva):4.5mmHg/ml/m 2 以上39

(5) 今後の課題

1 高齢者への適応

超高齢者では臥位エルゴメータやドレッドミルによる運動負荷が困難な症例も少なくない。また臥位エルゴメータは日常生活と違う運動様式であり、症状診断はしばしば難しい症例が存在する。これらの負荷器具がない

場合は6分間歩行負荷などの低強度の運動負荷による負荷心エコー図検査も積極的に行うべきである。

2 奇異性低流量低圧較差AS の診断

日常臨床で左室駆出率の保たれたAS で弁口面積と平均圧較差とに重症度が乖離する症例の重症度診断は難しい。左室EF50%以上、一回心拍出量係数35ml/m 2 以下で大動脈弁口面積係数が0.6cm 2/m 2 以下にも関わらず平均圧較差40mmHg 未満の症例を奇異性低流量低圧較差(paradoxical LFLG)高度AS と定義されている。Paradoxical LFLG AS における重症度診断でドブタミン負荷心エコー図のエビデンスは少なく、また求心性左室肥大を呈している症例も多く、ドブタミン負荷時に左室内圧較差上昇を生じ、診断に悩む症例も少なくないため、各国ガイドラインではドブタミン負荷心エコー図の推奨度は低い18。

図11. 大動脈弁狭窄症に対して運動負荷心エコー図検査を実施した1例78 歳の男性、無症候性高度大動脈弁狭窄症に対して臥位エルゴメータを用いて各ステージ3 分、10W の漸増法を用いて運動負荷心エコー図を施行した。平均圧較差は安静時42mmHg から運動時62mmHg へと20mmHg 上昇した(上図;A)。また三尖弁逆流速度から求めた推定肺動脈収縮期圧は安静時30mmHg から運動時60mmHg へと上昇し(下図;B)、運動誘発性肺高血圧を認めた。
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4). 大動脈弁閉鎖不全症(AR)

(1) 目的ARに対する負荷心エコー図のエビデンスは少ないが、運動負荷心エコー図では主に症状の確認、左室機能や形態変化を観察する。AR の重症度評価については運動時に心拍数が上昇、拡張時間が短縮することにより困難となるため重症度評価のために用いることは避けるべきである。(2) 負荷エコーの実際運動負荷:安静時及び運動負荷時もしくは負荷直後に心エコー図を評価する。血圧・心拍数・酸素飽和度などバイタルサインを1 分ごとに記録する。症状を把握するためBorg スケールを併用することも有用である。ARでは運動時収縮期血圧の上昇を認める症例も多く、運動中止理由が血圧高値(収縮期血圧 ≥220mmHg)の場合もあり注意する。

(3) 評価項目症状・心電図左室EF左室収縮末期容積三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)肺動脈収縮期圧

(4) 得られる結果症状:息切れ・胸痛心電図:ST 低下

40 左室EF:変化量が5%未満

41 左室収縮末期容積係数:運動時40ml/m 2 以上42

TAPSE:運動時20mm 以下

43 肺動脈収縮期圧:運動時60mmHg 以上

(5) 今後の課題AR に対する負荷心エコー図のエビデンスは他の左心系弁膜症と比較して少なく、また症例数も少ない。更に予後評価も全死亡や心不全入院などのハードエンドポイ

ントを設定している研究は少なく、大動脈弁置換術や術後左室機能低下などソフトエンドポイントに設定していることにも注意が必要である。そのため多施設・大規模・長期フォローの研究が望まれる。

3 肥大型心筋症(HCM)

(1)目的HCM では左室内狭窄をしばしば認め、予後不良因子の一つである。左室内狭窄は様々な状況により変化しやすく、特に収縮性の増強、前負荷の減少、後負荷の減少は心室の容積を減少させ、僧帽弁を中隔に近づけ、左室内圧較差が増強するように働く。安静時に左室内狭窄を認めていない症例では運動負荷心エコー図を行い、左室内狭窄の有無を確認する必要がある44。左室内圧較差は運動中だけではなく運動終了後に出現することも多く注意が必要である。また左室内狭窄だけではなく、MR の増悪有無や増悪している場合にはSAM などを含めた機序の評価も重要である45。また左室拡張機能や運動時肺動脈圧は運動耐容能と関連しており46、運動時右室機能は心血管イベント、特に不整脈と関連していると報告されている47。また運動時の左室機能はアスリート心との鑑別に有用であると報告されている48。

(2) 負荷エコーの実際運動負荷:安静時及び運動負荷時もしくは負荷直後に心エコー図を評価する。ガイドラインではトレッドミルによる運動負荷が推奨されている。血圧・心拍数・酸素飽和度などバイタルサインを1 分ごとに記録する。症状を把握するためBorg スケールを併用することも有用である。

(3) 評価項目左室内圧較差僧帽弁閉鎖不全症

表13. 負荷心エコー評価項目とカットオフ値
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の関連についての報告はなく、今後の課題である。更に運動時の左室内圧較差の発症部位評価が治療方針に与える影響についても今後の研究に期待したい。

4 HFpEF

(1)目的HFpEF の中には、安静時に心不全の特徴である左室充満圧の上昇が見られず、労作時のみに呼吸困難症状とともに左室充満圧の異常な上昇が起こることがある49。このようなHFpEF 疑い患者に対して、運動負荷中の左室拡張予備能やそれに伴う左室充満圧の変化を評価することで診

左室機能右室機能僧帽弁閉鎖不全症肺動脈収縮期圧

(4) 得られる結果

(5) 今後の課題左室内狭窄がダイナミックに変化し、運動により有意に増悪する左室内圧較差と予後の関連については多くの報告がある。しかしながら運動負荷心エコー図による治療後の効果判定や薬効評価、またそれらの改善と予後と

図12 閉塞性肥大型心筋症に対して運動負荷心エコー図検査を実施した1例。54 歳の男性、非閉塞性肥大型心筋症に対して臥位エルゴメータを用いて各ステージ3 分、25W の漸増法を用いて運動負荷心エコー図を施行した。左室流出路圧較差は安静時には有意な圧較差がなかったが(左図;A)運動終了直後に92mmHg(右図;B)へと上昇し、潜在性左室流出路狭窄を伴う閉塞性肥大型心筋症と診断した。左室内圧較差は様々な要因により変化しやすく、収縮性増強,前負荷や後負荷の減少は,左室の容積を減少させ,また僧帽弁尖や乳頭筋が中隔側に近づくことで左室内圧較差が上昇する。本症例は運動直後には前負荷が減少し、収縮性が増強したことが左室流出路狭窄が増悪した要因と考えられる。

表14. 負荷心エコー評価項目とカットオフ値

左室内圧較差:50mmHg 以上 44左室機能:E/e’14 以上、 GLS -15%以上 45右室機能:TAPSE 24mm 未満、TAPSE/SPAP0.50 未満 46肺動脈収縮期圧:運動時60mmHg 以上 46
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e’ の上昇の減弱として観察できる(図13 上段)。2 HFpEF の対象患者は一般的に高齢者であることがほとんどであるため、僧帽弁血流速度波形は弛緩異常パターンを呈していることが多い。運動中に左房圧が上昇する場合には、典型的にはE 波が増高、A 波が減弱し偽正常化パターンに変化する(図13 中段)。このE 波の増高とe’ の増大の低下によって、E/e’ 比は運動によって上昇する。3 TRV は安静時と同様に運動時の右室- 右房圧較差を反映し52、運動誘発性肺高血圧の推定に役立つ。2016 年のASE/EACVI 拡張能評価のガイドラインでは、TRVのカットオフ値を2.8 m/sec に設定しているが53、運動中には心拍出量の増加にともなって肺動脈圧は健常人であっても上昇するため、安静時と同じカットオフ値が妥当なのかは疑問である。2017 年のASE/EACVI の非虚血性心疾患の運動負荷心エコーの提言では50、運動中のTRV が2.8 m/sec 未満であれば正常であるとし、3.1 m/ sec より大であれば異常を示唆するとしている。4 超音波B ラインは他の心エコー指標に比べて体型や運動による体動の影響を受けにくい長所がある。一方で、超音波B ラインは肺うっ血だけを示すのではなく間質影を反映するため、間質性肺炎などの器質的肺疾患がある場合には評価が困難である。また、運動中の取得部位の数や場所、カットオフ値などについては定まっていない54。5 ASE/EACVI は上記e’、 E/e’、 TRV (>2.8 m/sec) すべての項目を満たした場合に運動中の左室充満圧上昇ありとすることを提言している51。しかし、すべての項目を満たすのは比較的難しいため、本当にHFpEF であったとしてもこのASE/EACVI の基準を満たさない場合がある(感度が低い)ことに注意する必要がある49。反対に、この基準を満たした場合には高い確率でHFpEF であると考えられる(陽性的中率が高い)。ヨーロッパ心不全学会は、安静時心エコー図所見とナトリウムペプチドから検査前確率(HFA-PEFF スコア)を算出して、運動負荷中のE/e‘ とTRV の値から点数を加えて合計点でHFpEF を診断することを推奨している(図14) 55。このヨーロッパ心不全学会の基準はASE/EACVI の基準よりも運動負荷検査の結果を付加的に捉えており、HFpEFを同定する感度が高くなると予想されるが、HFA-PEFFスコアの計算が煩雑であることが短所である。

(5) 今後の課題Diastolic stress echocardiography のエビデンスは乏しく、ASE/EACVI のガイドラインもヨーロッパ心不全学会からのHFA-PEFF アルゴリズムもエキスパートオピニオンに過ぎない。前述したようにASE/EACVI ガイドラインの診断基準はHFpEF を診断する特異度は高

断を確立することがDiastolic stress echocardiographyの目的である。

(2)負荷エコーの実際心不全の症状や兆候があるものの、安静時の心エコーでは左室充満圧の上昇所見がはっきりしない(検査前確率が中等度の)症例がDiastolic stress echocardiography のよい適応である。安静時心エコーで明らかにHFpEF と診断できる症例や、HFpEF をほとんど疑わない症例に実施する有益性は少ない49。HFpEF 診断のための負荷方法には運動負荷(エルゴメータ、トレッドミル、ハンドグリップ)、下肢挙上負荷、生食負荷などがある。薬物負荷に関しては一般的ではない。ASE/EACVI はDiastolic stress echocardiographyの負荷方法として仰臥位エルゴメータを使った運動負荷を推奨している50。仰臥位エルゴメータの詳細については総論を参照されたい。HFpEF では高齢者の割合が特に多いため、初回負荷量を落としたり(10-20W)、ランプ負荷にすることで運動負荷の実施率を担保できることが利点である。

(3) 評価項目E 波、A 波e’ E/e’最大三尖弁逆流速度B ライン心拍出量僧帽弁閉鎖不全

頻脈時に僧帽弁血流速度や僧帽弁輪運動速度波形が融合して、E/e’ が算出できない場合がある。この場合には、心拍数が100-110 bpm で記録することや運動後の回復期に記録することが推奨されている50。また、多くのHFpEF 患者において、左室充満圧は低負荷時で上昇していることから、最大負荷時にE/e’ が算出できない症例では20W のE/e’ で代用できる可能性があることが報告されている51。肺エコーのB ラインは左室充満圧上昇に伴う肺うっ血を可視化し、HFpEF の診断に有用である可能性がある。前述の2017 年ASE/EACVI の提言でも肺エコーのB ラインの取得が記載されている。

(4) 得られる結果1 拡張早期僧帽弁血流速度(e’)は左室弛緩を反映する。健常人であれば左室弛緩は運動により増強するため、e’ は上昇する。一方で、HFpEF では左室弛緩の予備能が低下しているため、運動負荷心エコーでは負荷による
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表15. 負荷心エコー評価項目とカットオフ値

図13. Diastolic stress echocardiographyの一例。

いものの感度が低いことが報告されている49。また、運動負荷心エコーも含めたHFA-PEFF アルゴリズムの診断能を検証した研究はない。今後、データに基づいた診断基準の作成が必要であり、運動負荷右心カテーテルで測定した肺動脈楔入圧をゴールドスタンダードとし、可能であれば多施設共同研究によって検討されるのが望ましい。現時点では、病歴、既往歴、ナトリウムペプチド、胸部レントゲン、安静時心エコーなどの検査と一緒に運

動負荷心エコーの結果を総合的にとらえてHFpEF の診断をするのがよいと考えられる。本邦からこの分野の積極的なデータ創出を期待したい。

本症例は72 歳の男性。労作時呼吸困難の精査目的にDiastolic stress echocardiography を実施した。安静時、血圧137/64 mmHg、心拍数56 bpm。安静時に拡張早期僧帽弁輪組織ドプラ速度(e’) は6.6 cm/sec で軽度低下していたが、僧帽弁血流速度波形は弛緩異常パターンを呈し、E/e’ は10.6 とボーダーラインであった。60W で労作時呼吸困難のため負荷を中止した。負荷時に血圧は131/69 mmHgと上昇せず、心拍数も79 bpmと高度の心拍応答不全が見られた。最大負荷時にe’ は上昇せず、僧帽弁血流速度波形は偽正常化パターンに変化し、E/e’ は15.9 まで上昇した。安静時には最大三尖弁逆流速度は2.4 m/sec と肺高血圧の可能性は低かったが、最大負荷時には3.8 m/sec に上昇した。本症例はASE/EACVI クライテリアをすべて満たした。
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5 肺高血圧

1 肺高血圧の原因

肺高血圧症は様々な原因により肺動脈圧が上昇する病態を指す。その原因疾患の分類は大まかにpost capillary pulmonary hypertension (PH)( 後毛細血管性肺高血圧) とpre capillary PH( 前毛細血管性肺高血圧) に分類される。前者は左房圧上昇、後者は肺血管抵抗上昇の結果肺高血圧を来す。Post capillary PH の原因は、いわゆる「左心不全」であり、弁膜症(MR・MS・AS・AR) や左室心筋疾患、HFpEF 症例で認められる。Pre capillary PH の原因は、「肺」または「肺動脈」に由来し、肺動脈性肺高血圧症や肺疾患、慢性血栓塞栓性肺高血圧症例にて認める。このように「肺高血圧」の機序は大きく二

つの要素に別れるため、まずはpost capillary PH とpre capillary PH に分けて考えることが重要である。

2 運動誘発性肺高血圧が生じるメカニズム

安静時には認めない肺高血圧が運動により生じる状態を運動誘発性肺高血圧と呼ぶ。運動誘発性肺高血圧を評価する上で、そのメカニズムを理解しておく必要がある。一般的に、運動に伴い骨格筋への血流量を増やすべく交感神経が活性化され、心拍数・心拍出量が増加する。結果的に、この骨格筋から血液還流量が増加し心臓への静脈還流量が増え、前負荷が増大することで運動時に肺血流量が増加する。そして、この肺血流量増加に加えて、

図14: ヨーロッパ心不全から提唱されたHFA-PEFFアルゴリズムによるHFpEFの診断アプローチで。

図15

表16. 運動誘発性肺高血圧の定義
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また、肺動脈圧は心拍出量に依存するため、肺動脈圧以外にも運動前後の心拍出量を評価しておくことも重要である。健常人における心拍出量に対する肺動脈圧の上昇( Δ mPAP/ Δ CO) は3.0mmHg/min/L -1 とされており59、2022 年の欧州の肺高血圧ガイドラインでは運動誘発性肺高血圧の定義として安静時と運動時の差を見るΔ mPAP/ Δ CO slope >3.0mmHg/min/L -1 と明確に定義された。

2 左心系疾患に伴う運動誘発性肺高血圧・弁膜症:SPAP ≧60mmHg(右房圧は10mmHg とする)またはTRPG ≧50mmHg・HFpEF:Peak TRV >2.8m/s (TRPG 31mmHg) が必要条件弁膜症における運動負荷はほとんどが心エコー図検査を用いて行われている。運動負荷心エコー図検査における運動誘発性肺高血圧は「SPAP ≧60mmHg」と定義されることが多い。ただし、運動中の右房圧を心エコー図検査で推定することは困難であり、過去の報告でも平均右房圧=10mmHg と定義してSPAP を算出している報告が多いため60,61、左心系弁膜症における運動負荷心エコー図検査において最大負荷時のTRPG 50mmHg もSPAP 60mmHg と同等として良い。一方、HFpEF 症例における運動負荷心エコー図検査に関しては、E/e’ と組み合わせて評価するとされており、運動誘発性肺高血圧に関しては必要条件としての位置付けである。各疾患における運動誘発性肺高血圧を評価した報告を表17 に示す。

3 肺動脈性または肺疾患に伴う運動誘発性肺高血圧・Δ mPAP/ Δ CO slope >3.0mmHg/L/min -1 またはmPAP ≧30mmHg ( 左心系疾患による心内圧上昇が否定できる条件下で評価する、心エコー図検査による推定mPAP =0.6 ×

原疾患(弁膜症・左室心筋症・拡張不全または肺・肺動脈疾患)による左房圧上昇または肺血管抵抗の上昇を認めると安静時には認めない肺高血圧が運動時に顕著になる。このように、運動誘発性肺高血圧症は、「1. 肺血流増加、2. 左房圧上昇、3. 肺血管抵抗上昇」の3 要素から構成される。運動に伴い肺血流量は大きく増加し、さらに左房圧も(例え背景心疾患がなくとも)運動強度に応じて上昇することが知られている。しかし、特に若年者において、正常な肺微小循環の血管コンプライアンスは高く、運動中に小血管が拡張し、結果的に肺血管抵抗が低下するため運動中でも肺高血圧は生じない。一方で、高齢などにより血管コンプライアンスが低下すると、左房圧上昇に伴う血管拡張・肺血管抵抗低下を認めにくくなるため、特に左房圧上昇や肺血管抵抗増加をもたらす背景心疾患が存在すると運動誘発性肺高血圧症が生じやすくなる。また、若年であっても運動により心拍出量が極端に増加するアスリートでは運動誘発性肺高血圧を認める場合がある。運動負荷心エコー図検査を行う場合、運動誘発性肺高血圧の陽性基準に関しては厳密には定まっていない。運動誘発性肺高血圧の定義は疾患毎に異なっている。一方、心エコー図検査を用いて運動誘発性肺高血圧症を評価する際は、平均肺動脈圧(mPAP)ではなく収縮期肺動脈圧(SPAP)を用いることが大半である。一方で、肺動脈性または肺疾患に伴う肺高血圧症を評価する際はmPAP が使用されることが多い。

1 肺高血圧の健常データ・収縮期肺動脈圧の上限:安静時 34mmHg (Peak TRV 2.8m/s)・運動時 43mmHg (Peak TRV 3.1-3.2m/s)・平均肺動脈圧の上限:安静時 20mmHg・Δ mPAP/ Δ CO slope の上限:3.0mmHg/L/min -1安静時・運動時肺高血圧の正常上限に関するデータはいくつか報告されている。高齢になり血管コンプライアンスが低下し、肺血管抵抗が容易に上昇する状態になると、例え弁膜症や心筋症といった背景疾患が存在しなくとも運動による肺血流増加のみで肺高血圧が生じやすくなる。米国から年齢毎に安静時・運動時の肺動脈収縮期圧に関する報告がされており、安静時の正常上限は32mmHg で、運動時は43mmHg 56,57 である ( 図)。この値は、それぞれ三尖弁最高通過血流速度(TRV) に換算すると安静時の正常上限はTRV 2.8m/s、運動時は TRV 3.1-3.2m/s となる。さらに、2022 年に改訂された欧州の肺高血圧ガイドラインでは、安静時平均肺動脈圧の正常上限は20mmHg とされており58、安静時肺高血圧症の定義がmPAP ≧ 25mmHg からmPAP ≧20mmHg に引き下げられた。図16  収縮期肺動脈の安静時と運動時の年齢による変化Echo Res Pract 3; 53-61:2016より改変
p.25
−25−

V. ドブタミン負荷心エコー図検査

1 はじめに

運動により交感神経が活性化し肺血流が増加することで、運動による生理的な負荷を体現できる運動負荷心エコー図検査と異なり、ドブタミンによる薬剤負荷心エコー図検査は「非生理的」な薬物負荷である。虚血性心疾患に対してもカテーテル検査のみならず、CT による狭窄評価や生理的な冠血流評価(冠血流予備能:CFR、部分冠血流予備能:FFR)が発展し、左室壁運動から「間接的に」虚血を評価するドブタミン負荷心エコー図検査の有用性は以前よりは低下している。本ガイドラインは運動負荷心エコー図検査についての記載が中心であるが、ドブタミンを用いた薬物負荷心エコー図検査の臨床的な有用性に関して、参考として本ガイドラインに記載した。

2 ドブタミン負荷心エコー図検査の目的

・低流量低圧較差AS(low-flow low-PG AS:

LFLGAS)の重症度評価・ADL の低下した虚血性心筋症例における心筋

虚血・心筋バイアビリティ・心収縮予備能評価

ドブタミン負荷心エコー図検査は「非生理的」な検査であるため、その目的は「重症度診断」が主である。特に、高齢化により増加傾向であるAS におい

SPAP+2mmHg を使用する)肺動脈性または肺疾患に伴う運動誘発性肺高血圧症に関しては、カテーテル検査にてmPAP、肺動脈楔入圧(PCWP) を評価した報告が多い。Condlifee らの報告65 では、膠原病患者を対象として、運動誘発性肺高血圧をカテーテル検査においてmPAP ≧30mmHg + PCWP ≦15mmHg と定義したところ、運動誘発性肺高血圧症と診断された患者群の14% が3 年以内に死亡した。さらに、Stamm ら66 も同様に、膠原病患者を対象として、運動誘発性肺高血圧をカテーテル検査において「mPAP ≧30mmHg かつmPAP/CO>3mmHg/min/ L -1 かつPCWP<20mmHg」と定義したところ、運動誘発性肺高血圧症と診断された患者群の予後は、安静時から肺高血圧症を示す患者群と同等に悪かったと報告している。一方、mPAP とCO の関係に着目し、負荷法は6分間歩行検査を用いて、「運動負荷心エコー図検査」にて膠原病患者の運動誘発性肺高血圧を評価したデータがKusunose らによって報告された67。それぞれ、mPAPとCO の運動負荷前後の変化率に着目し、「Δ mPAP/ Δ CO slope ≧3.1 mmHg/L/min -1」であれば、将来肺高血圧症が有意に多く発症するとしている。肺動脈性または肺疾患を伴う肺高血圧症に関しては、運動負荷心エコー図検査によるさらなるデータの蓄積が待たれる。

表17. 疾患ごとの運動誘発性肺高血圧陽性所見と根拠
p.26
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を続行する。また、迷走神経反射による徐脈、血圧低下も出現することがあり、会話やハンドグリップなどで改善しなければアトロピンを使用する。また負荷終了後30 分は安静で経過観察することが望ましい

4 ドブタミン負荷心エコー図検査の実際 ( 図17)

・5 μ g/kg/min より投与を開始し、10、20、30、40 μ g/ kg/min と5 分毎に増量する。ドブタミンを40 μ g/kg/ min まで投与しても目標心拍数あるいは中止基準に達しない場合は、50 μ g/kg/min までドブタミンを増量するか、アトロピンを1 分毎に0.25mg ずつ最大2mg まで投与する。また、目標心拍数までわずかである場合はハンドグリップ負荷を追加すると目標心拍数に到達しやすい。・心筋バイアビリティやLFLGAS に対する低用量ドブタミン負荷は5 μ g/kg/min より投与を開始し、10、(15、)20 μ g/kg/min と5 分毎に増量する。・負荷開始前にラインの先までドブタミンを満たしてから開始することが重要である。・中止基準は、以下のとおりである。1目標心拍数である(220- 年齢)× 0.85 ( 拍/ 分) に到達2重度な血圧低下(収縮期血圧80mmHg 以下)あるいは血圧上昇(収縮期血圧220mmHg 以上) 3重篤な頻脈性不整脈の出現4耐えられない胸痛、嘔気、頭痛、尿意などの出現5新たな無収縮様の壁運動低下の出現、冠動脈2 枝以上の支配領域にまたがる壁運動の悪化など広範な心筋虚血の出現6心電図上2 mV 以上のST 低下あるいは上昇

て、心筋梗塞や心筋症により左室駆出率が低下し低流量となるため弁口面積が小さい低流量低圧較差AS (low-flow low-PG AS:LFLGAS)の重症度評価に有用である。AS 症例は他の弁膜症と比較して高齢であり、ADL も低下した症例が多く、さらに背景心筋症のため運動負荷が危険である場合があるため、LFLGAS 症例の重症度判断として未だに第一選択となる検査である。また、心筋虚血評価のみならず、心筋バイアビリティや心収縮予備能の評価も可能であるため、高齢者や整形外科疾患や脳神経疾患の症例など十分な運動負荷が困難である虚血性心筋症例に対しても使用される。

3 ドブタミン負荷心エコー図検査の安全対策

・致死的な合併症を回避するため、LFLGAS 症例

における負荷は低用量で行うことが望ましい。・救急カートを常備した状況で検査を行う。ドブタミン負荷心エコー図検査の主な合併症は、心破裂(0.002%)、心筋梗塞(0.02%)、脳血管障害(0.005%)、冠動脈攣縮(0.14%)、心室細動(0.04%)、心室頻拍(0.15%)、上室性頻拍(1.3%)、心房細動(0.9%)、房室ブロック(0.23%)、血圧低下(1.7%)、血圧上昇(1.3%)と報告されている68,69 。これらの合併症が出現した場合は、速やかに対処できるように検査室には救急カートが常備されていることが望ましい。また、致死的な合併症を回避するため、LFLGAS 症例や心筋バイアビリティ評価における負荷は低用量で行うことが望ましい。動悸、ほてり感、排尿感などは比較的多く出現する症状であるが、これらはドブタミンの中止とともに速やかに消失するので、被検者本人に説明し、耐えられる程度であれば検査

図17. ドブタミン負荷心エコー図検査のプロトコール
p.27
−27−

決定するために施行される。LVEF ≧50% の奇異性低流量低圧較差大動脈弁狭窄 (Paradoxical low-flow low- PG AS)症例に関しては、左室が小さいためにSV が低下している場合が多く、重症度評価に関するドブタミン負荷の有用性に関しては意見が分れるところであり、積極的な適応とは言い難い。LVEF <50% のLFLGAS では真性重度AS と中等度以下のAS にもかかわらず、左室駆出率が低下しているために大動脈弁が開き切れないだけの偽性重度AS を鑑別する必要がある。ドブタミン負荷施行後、最大20 μ g/kg/min(20 γ ) 投与にてSV が20% 以上増加した条件下で、平均圧較差(mPG) ≧40mmHg・大動脈弁通過血流最大速度(AVpV) ≧4.0m/s の場合は真性重度AS と診断できる。一方、mPG <40mmHg・AVpV <4.0m/s

5 各疾患におけるドブタミン負荷

心エコー図検査評価

1) 大動脈弁狭窄症:LFLGAS ( 図18) AS の重症度評価において、一回心拍出量(SV)を体表面積で除したSV index が35ml/m2未満であれば低流量(low flow)、さらに大動脈弁平均圧較差が40mmHg未満の場合に低圧較差(low gradient) と定義される。大動脈弁口面積が重度の診断基準を満たすにもかかわらず、低流量低圧較差重度AS(low-flow low-PG severe AS)の場合、左室駆出率(LVEF)が低下した場合と左室駆出率が正常であっても左室拡張末期容積が小さい場合が想定される。ドブタミン負荷心エコー図検査は、主にLVEF <50% のLFLGAS 症例における真の重症度を

図18.  低流量低圧較差大動脈弁狭窄症におけるドブタミン負荷心エコー図検査の評価手順

表19. ドブタミン負荷心エコー図検査・低流量低圧較差大動脈弁狭窄症評価における一回心拍出量(SV)の変化量に応じた評価基準
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−28−

kg/min の4 点におけるflow rate(ml/sec) とAVA(cm 2)の関係をプロットし、この直線回帰式からflow rate が250ml/sec におけるAVA をprojected AVA として算出する( 図18 )。この値が1.0cm2未満であれば、真性重度AS と診断される。SV のみならず、flow rate も20% 以上の増加を認めない場合は、「左室収縮予備能なし」と判断され、最終的にはCT の石灰化スコアを参考にASの重症度を判断する。左室収縮予備能がない群では、予備能がある群に比し、手術死亡リスクが高く、さらに左室収縮予備能がない群においても、内科的治療に比べ、大動脈弁置換術を施行した方が予後良好であることが報告されている。

かつ大動脈弁口面積(AVA)≧1.0cm 2 の場合は偽性重度AS と診断する50。一方、mPG <40mmHg・AVpV <4.0m/s かつAVA <1.0cm 2 の場合やSV の増加率が20% 未満の場合(左室収縮予備能がなし)は、大動脈弁口を単一時間に通過する血流量(Flow rate)や心臓CT による大動脈弁石灰化スコアを参考に重症度を決定する。そもそも大動脈弁通過血流の最大速度や圧較差は、flow rate に依存する。Flow rate は、SV を駆出時間(Ejection time: ET)で除して求めることができる。このflow rate を利用して、投影大動脈弁口面積(projected AVA)を求める方法がある70。安静時、ドブタミン投与5・10・20 μ g/

図19  ドブタミン負荷心エコー図検査・低流量低圧較差大動脈弁狭窄症評価におけるprojected AVAの算出

2) 虚血性心疾患壁運動: 運動負荷心エコー図検査と同様に壁運動はNormokinesis、 Hypokinesis、 Akinesis、 Dyskinesis のいずれかに分類する。安静時に壁運動異常を有する症例のドブタミン負荷時の反応は以下の4 型に分類される。(1) 持続性改善(improved type):低用量ドブタミン負荷で壁運動は改善し、高用量ではさらに壁運動が改善する。(2) 二相性(biphasic type):低用量ドブタミン負荷で壁運動は一旦改善するが、高用量になると壁運動が再び悪化する。(3) 増悪(worsened type):低用量ドブタミン負荷の段階から壁運動の低下を認め、高用量になるにつれてさらに悪化する。(4) 不変(fixed type):ドブタミン負荷により壁運動異常の程度が変化しない。持続性改善型は心筋バイアビリティが存在し虚血がない場合が多く、二相性、増悪型は心筋バイアビリティが存

在するが虚血ガ出現した場合の反応である。また、低用量から高用量ドブタミン負荷時の壁運動が高度に低下したのままである不変型は心筋バイアビリティなしと評価されるが最終的な心筋バイアビリティ診断のためには心臓MRI による遅延造影の結果の方が優れている。
p.29
−29−

VI.各心疾患における負荷心エコー図検査の推奨度
p.30
−30−
p.31
−31−
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−32− Cardiovasc Imaging 2014;7:641-9.

IV. 各疾患における運動負荷心エコー図検査.

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1. 検査の必要性:負荷心エコー図検査は、安静時心エコー図検査では、検出できない「隠れた異常」を、心臓に負荷を加えることにより、顕在化させ、より詳細な病態を評価するために行います。

2 検査の目的

この検査の目的は、あなたの心臓疾患の種類により異なります。1 冠動脈疾患では、負荷を加えることにより、左室の壁運動の異常が出現するか否かを判断し、冠動脈の心筋への血液供給が十分であるか否かを診断します。2 弁膜症では、その弁膜症が運動負荷を実施した時に悪化するか、さらに心機能がどのように変化するかを診断し、手術の必要性を判断します。3 心筋症では、心臓の予備能や、運動時の血行動態の変化を検出し、使用する薬剤や、治療方法を決めます。4心不全、肺高血圧症、あるいは労作時息切れの精査では、負荷中の心臓内の圧を推定します。

3 方法の種類

運動負荷には、以下のようにさまざまな方法があります。負荷の方法に大きく分けて運動負荷、薬物負荷の2つの方法があります。心エコー図は、負荷前と負荷中あるいは負荷終了後に実施また、検査中は、循環器専門医が見守り、運動中の心電図や血圧反応を監視いたします。検査室には救急器具・薬品が用意されており、不測の事態に対する緊急処置ができる体制を整えています。□ 運動負荷心エコー図検査

□ トレッドミル運動負荷□ 自転車エルゴメータ(坐位、臥位) □ ハンドグリップ□ 6 分間歩行□ マスター階段昇降

□ 薬物( ドブタミン) 負荷心エコー図検査4 方法の解説

1) トレッドミル運動負荷検査トレッドミル運動負荷検査:ベルト・コンベアーの様な通路の上を機械のペースにあわせて歩いていただきます。2-3分おきに、 徐々に登り坂になり、歩く速度も速くなっていきます。検査中は循環器専門の医師が見守り、常に心電図を記録し、血圧も測定します。また、あなたがどのくらいつらくなったかもお聞きします。ある 一定の心拍数まで達したとき、あるいは、息苦しさや、胸苦しさで、あなたがこれ以上歩けなくなったとき、心電図異常が出現したときなどで終了します。負荷の前後で、心エコー図検査を実施します。2) エルゴメータ運動負荷試験坐位あるいは仰臥位(寝たまま)で自転車のペダルを、一定の回転数でこいで頂きます。あなたが転車のペダルをこぐ回数はこちらで指示をいたします。最初はこぐペダルは軽いですが、次第に重くなります。同じペースでこいで下さい。検査中は循環器専門の医師が見守り、常に心電図を記録し、血圧も測定します。また、あなたがどのくらいつらくなったかもお聞きします。ある一定の心拍数まで達したとき、あるいは、息苦しさや、胸苦しさで、あなたがこれ以上歩けなくなったとき、心電図異常が出現したときなどで終了します。負荷前、運動中、あるいは運動負荷後で、心エコー図検査を実施します。3) ハンドグリップハンドグリップを最大握力の50%程度で4—5分間握っていただきます。その間何か症状が出現すればおっしゃってください。また持続して握る事が困難になればその時点で終了します。負荷前、ハンドグリップ運動中、あるいは負荷後で、心エコー図検査を実施します。4) 6 分間歩行決められた道筋を、常に付き添って症状をお聞きしながら、付き添い者とともに6分間、自分のペースで歩行していただきます。息苦しさや、胸苦しさで、がないかお聞きします。負荷前、負荷後で、心エコー図検査を実施します。
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5) マスター階段昇降階段を登ったり降りたりしていただきます。1分30秒間、あるいは3 分間等の方法がありますが、循環器医師が事前に設定します。台の昇降の回数は年齢と性別で決まっています。こちらの指示通りにマスター台を登ったり降りたりしてください。息苦しさや、胸苦しさで、あなたがこれ以上歩けなくなったとき、心電図異常が出現したときに終了します。負荷前、負荷後で、心エコー図検査を実施します。6) 下肢挙上仰臥位になり、次に両下肢を45 度程度になる様にベッド上に置いた椅子などに挙上させて保持をします。負荷前、運動中、あるいは負荷後に心エコー図検査を実施します。7) 薬物( ドブタミン) 負荷心エコー図検査薬物を点滴で注入して心臓に負荷を加えて、心臓の予備能力を診断する検査です。薬物にはドブタミン(強心剤)を使用します。薬物のために動悸、顔面高調などが起こりますが、薬物を中止すれば10 分以内に消失します。5 危険性・合併症・副作用

運動負荷心電図検査に危険性があることは否定できません。具体的には、血圧低下/ 上昇・めまい・ 脈の乱れ・失神・胸部不快感などがあります。診断のために心臓に負荷をかけることで、誘発された 狭心痛が長引き、さらに心筋梗塞や不整脈が生じる可能性もあります。その際には緊急入院(日本心 電図学会によるデータでは、緊急入院:43,000 試験に1回、死亡:264,000試験に1回)を含む緊急 処置が必要になることがあります。この場合の治療費は原則として通常の診療と同様に患者様のご負 担となります。 トレッドミル検査では、転倒、それによる骨折などの合併症が生じる場合もあります。患者様の足が追いつかなくなったときには、転倒などの事故を未然に防ぐために、当方の判断でトレッドミルを緊急停止することがあります。一方、薬物による負荷検査も運動負荷検査と同様な合併症が起きることが報告されています。よって薬物負荷の方がより安全であるというわけではありません。負荷を心臓に加える試験ですので、心臓発作を起こしたり、不整脈が出現する事があります。稀に致死的な合併症が起きることもあります。死亡に至らぬまでも、緊急入院や心筋梗塞などの重篤な合併症が生じるのは0.2%以下とされています。

私は上記検査を受けるに当たって、その内容について説明を受けて、また私の質問にも納得のいく回答が得られましたので、検査の実施に同意します。(同意された場合でも、いつでも撤回する事が出来ます)
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