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心エコー図の診断・計測精度管理の手引き 日本心エコー図学会・2023・19 ページ · 心エコー・画像・検査
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一般社団法人日本心エコー図学会

心エコー図の診断・計測精度管理の手引き

〔第1 版〕

〔執筆・編集〕

日本心エコー図学会 ソノグラファー委員会委員長大門 雅夫国際医療福祉大学三田病院 循環器内科副委員長田中 教雄西宮渡辺心臓脳・血管センター 心血管エコー室委員赤坂 和美釧路孝仁会記念病院 循環器内科梅田 ひろみ小倉記念病院 検査技師部岡庭 裕貴群馬県立心臓血管センター 技術部種村 正仙波内科医院西尾 進徳島大学病院 超音波センター平野 豊近畿大学医学部医学教育センター藤田 雅史みやぎ県南中核病院 検査部水上 尚子慶應義塾大学病院 臨床検査科

〔外部評価〕

日本心エコー図学会 ガイドライン委員会
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1 はじめに

心エコー図の需要や多様化が進む中,心エコー図検査の精度管理が注目を集めている.理由の1 つは,臨床検査室の品質マネジメント国際基準として用いられるInternational Organization for Standardization (ISO)によるISO 15189 基準1)を生理検査室にも求められることが多くなったことである.さらに,がん治療関連心筋障害(CTRCD)や弁膜症をはじめとして,心エコー図計測値によって様々な心疾患の治療方針が決まるために,より精度の高い計測が求められるようになった.こうしたことから,各学会が精度管理に向けて様々な取り組みを行っている.一方で,これまで超音波検査の精度管理は,主に超音波機器や検査室の整備や画像診断の正確性に焦点を当てたものが多く,計測値の精度管理を具体的に示した指針は限られている.そこで,日本心エコー図学会では,ソノグラファー委員会を中心として,心エコー診断のみならず計測精度の向上を図るべく,心エコー図の診断・計測精度管理の手引きを作成することとした.

(大門雅夫)

2 精度管理を適切に行うポイント

精度管理を計画的に,継続していくためのポイントとしては下記の点が挙げられる.

【精度管理を行う権限】

精度管理を行い,結果を評価するには,心エコーに関して,一定のレベル以上のスキルを保持していることが求められる.そのため,権限としてどのような要件が必要なのか明確にしておく必要がある.

【精度管理に関する文書化】

精度管理を行う時期,手法,評価した結果の保管方法まで,文書化することが望ましい.また内部精度管理と外部精度管理に分けて明記すると,実行しやすい.

【是正の方法】

不適切と評価された場合の是正では,不適切と評価された内容と是正の対処方法について,文書で明記し検査室内で周知する必要がある.また,是正を行ったあと,期間をおいて再評価し,適切に是正されているか,確認することが重要である.

【定期的な見直し】

精度管理の内容については,必ず定期的に見直しを行い,計測方法の変化やガイドラインの変更などに追従した内容とする必要がある.変更の有無は別として,1 年1 回位は見直しを行うようにしたい.

(水上尚子,赤坂和美)
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3 心エコー図検査における精度管理の実施方法

1)外部精度管理(コントロールサーベイ)臨床検査のコントロールサーベイは,同一試料を多数の検査施設に配布し,測定値を集計・解析することにより,施設間誤差の実態を調査するものである.また,結果を採点・評価し,各施設の精度・検査技術の向上や分析法の標準化などの指針となっている2).そのほとんどが検体検査を中心としたものであるが,生理検査を含むコントロールサーベイには日本臨床衛生検査技師会,都道府県臨床衛生検査技師会,日本衛生検査所協会,全国労働衛生団体連合会,日本人間ドック学会,日本総合健診医学会などが主催するものがある.超音波検査ではエコー画像をweb 上で閲覧し,その設問に対して正しい選択肢を解答する方法が用いられており,画像コントロールサーベイと呼ばれている.心エコーや血管エコーを含む代表的な画像コントロールサーベイには,日本超音波検査学会,日本臨床衛生検査技師会が主催するものがある.

(1)日本超音波検査学会の画像コントロールサーベイ

日本超音波検査学会では2019 年から腹部,心臓,血管,体表,健診の全5 領域の画像コントロールサーベイを行っている3).その内容は,超音波の基礎,原理,解剖および検査手技への理解を問う設問,計測方法や計測値に関する設問,各領域における専門知識を確認する設問等に,エコー画像を読み解きながら解答するものである.設問数は各領域とも全10問で解答の選択肢は5つ,その中から正答1 つを選択する方式である.会員個人ではなく施設単位(検査室単位)で実施している.解答期間終了後は設問の解答,解説,正答率を確認できるのみでなく,参加施設全体の正答率や度数分布を閲覧することができる.

〔受験の実際〕

1 日本超音波検査学会ホームページの「JSS 画像コントロールサーベイ」をクリックし

てサイトに入る. 2 施設ID およびパスワードでログイン,解答・結果サイトへ進むと,申し込まれた領

域一覧が表示される. 3 設問は,1 領域10 問である. 4 画像の拡大,動画の再生は,サムネイルをクリックすることで別ウィンドウが開き,

大きな画面で閲覧することができる. 5 設問に対して,正解と考える選択肢を施設内で決定して,代表者がチェックを入れる. 6 解答最終確認画面ですべてを確認後,「提出」ボタンを押すことで終了となる. 7 数領域を申し込んでいる場合は,領域ごとに解答を完結するようにする. 8 期間中であれば何度でも解答・提出を行うことができる. 9 解答結果と解説は解答期間終了後,集計が済み次第,閲覧できるようになる. 10 各施設の評価は正答率で次の3 段階評価となる.

⚫ A:80%以上,B:60%以上80%未満,C:60%未満
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11 2 年連続でA 評価またはB 評価を受けることにより,精度認定制度を受審することが

できるようになる.

(2)日本臨床衛生検査技師会の画像コントロールサーベイ

申込みや解答は日本超音波検査学会と同じようにweb 上で行う.超音波検査では日常検査で遭遇する頻度が高い症例の判読,機器管理および解剖学的知識など,日本臨床衛生検査技師会が発行している出版物と各分野の代表的な出版物を基本として出題されている4).超音波検査の設問数は全部で10 問あり,それらのうち,心エコーが3 問,血管エコーが1問出題されている.静止画および動画を閲覧し,5つの選択肢から正答を1つ選択する.画像コントロールサーベイの評価設定は

A:「基準」を満たし,極めて優れている. B:「基準」を満たしているが,改善の余地がある. C:「基準」を満たしておらず改善が必要である. D:「基準」から極めて大きく逸脱し,早急な改善が必要である.となっているが,超音波検査の場合は正解であればA 評価,不正解であればD 評価となる.不適切問題と判断された場合は評価対象外となる.施設認定においては,D 評価(不正解)であった場合は是正報告書を提出する必要がある.

(3)画像コントロールサーベイの効果

受験することによって,自施設の検査手技に対する知識や病態の理解度,画像判読能力などを客観的に評価することができる.また,誤答した設問を分析,共有することで検査手技や検査精度を向上させることができる.自施設で解答する前に,個々のメンバーが実施して答え合わせをすることで,内部精度管理に利用するという使い方もある.

(4)問題点と課題

現在の画像コントロールサーベイは設問に解答するという方法のみであり,検体検査のように資料が配布されて実際に検査を実施しているわけではない.外部精度管理の方法としては,エコー画像を配布して実際に計測し貰って,それらの計測値を集計して評価することが望ましい.また,共通のフォーマットを使った報告書を提出して貰って,その内容を評価することも良い方法だと考えられる.しかし,配布されたダイコム画像を超音波診断装置や画像ファイリングシステムに取り込んで計測することができる施設は限られており,幅広く実施するのは困難である.この点は,心エコーの専門学会である本学会が取り組むべき課題であると考えられる.

(種村 正,平野 豊,田中教雄)
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2)内部精度管理(1)心腔計測

下記計測のポイントを参考に,部員間で計測断面,計測方法の統一化を図るため,年に1 ~2 回,評価項目を選択し,部員間の差について検証する.年度によって評価する項目を変えることなど,なるべくすべての計測項目について網羅できるように工夫する.

【左室径】

⚫ 計測は傍胸骨長軸断面で,拡張末期と収縮末期の時相で行う. ⚫ 計測部位は僧帽弁前尖直下の腱索レベル5)で,中心軸と垂直方向に計測する(図

1).

図1 左室径の計測

左室腔内に腱索や乳頭筋が描出されないように調節した拡張末期の傍胸骨長軸断面にて,僧帽弁腱索レベルの位置で,中心軸と垂直方向に計測する.

⚫ Sigmoid septum や球形を呈した形状の場合は,中部(乳頭筋レベル)の計測も

行う(図2).

図2 左室中部径の計測

拡張型心筋症の症例であるが,左室の形体が球形を呈しているため,基
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部より中部の方が拡大しており,通常の基部での計測では過小評価となるため中部の計測値も記載する.

⚫ 左室径の計測に重要な心内膜の同定は左室壁厚の計測を参照する.

【左室壁厚】

⚫ 計測は傍胸骨長軸断面で,拡張末期の時相で行う. ⚫ 計測部位は左室径同様,僧帽弁前尖直下の腱索レベルで壁厚に対して垂直に計

測する. ⚫ 心室中隔は,右室の構造物を除外して計測する.右室肉柱との境界が不明瞭な

場合は,短軸断面で確認する(図3).

図3 心室中隔と右室肉柱

右室構造物の確認には,左室長軸断面で右室側との境界にある線で判断するが,鑑別に困難な症例では短軸にて下後壁の心外膜(臓側心膜)と連続したライン(右図黄破線)を参考にして,右室構造物(左図矢印)を鑑別する.

⚫ 左室後壁は腱索などを除外して心筋の厚みを計測する.後壁の心内膜の同定が

困難な場合は,短軸にて心室中隔の心内膜と連続する後壁のライン(図4)を確認,描出したまま長軸へと断面をかえて計測する.

図4 左室後壁の心内膜確認

後壁の腱索等で心内膜の同定に迷う症例(左図)では,短軸にて心室中隔
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の心内膜と連続する後壁のライン(右図破線)を確認して,心内膜(中央図矢印)を同定する.

【左室容積】

⚫ 左室容積は拡張末期と収縮末期の時相でdisk summation 法を用いて算出する. ⚫ 心尖部四腔断面と心尖部二腔断面は真の心尖部断面の描出を心がける. ⚫ 心尖部四腔断面と心尖部二腔断面それぞれの僧帽弁輪から対側の僧帽弁輪まで

乳頭筋や腱索,肉柱を除外して心内膜をトレースし,僧帽弁輪と対側の僧帽弁輪は直線で結ぶ5)(図5).

図5 左室容積の計測

図に示す黄破線のように,乳頭筋や腱索,肉柱を除外して心内膜をトレースし,僧帽弁輪と対側の僧帽弁輪は直線で結ぶ.

⚫ 心内膜のトレースは,左室側壁および前壁の僧帽弁弁輪から始め,対側の心室

中隔・下壁の弁輪を終点とする. ⚫ 前壁・側壁は下壁や心室中隔に比べて心内膜の描出画像が不明瞭な場合が多い

ため,前壁・側壁からのトレースを推奨する. ⚫ 心内膜の同定が困難な場合は短軸断面や傍胸骨四腔断面など多断面で確認する. ⚫ 真の心尖部断面が描出されているかの検証には心尖部四腔断面と心尖部二腔断

面の長径の差が10%未満とされているが,可能であれば5mm 以内に収めることが望ましい. ⚫ 同様の方法で収縮末期容積を計測し,計算式に当てはめると左室駆出率が算出

される. LVEF(%)=〔(LVEDV-LVESV)/LVEDV〕×100 (LVEF:左室駆出率,LVEDV:左室拡張末期容積,LVESV:左室収縮末期容積)

【左房容積】

⚫ 左房容積の算出法には,prolate ellipse 法,area-length 法とBiplane ディスク法
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があるが,ASE ガイドライン5)が推奨するBiplane ディスク法を当学会でも推奨する. ⚫ 左房が最大となる収縮末期の時相で,心尖部四腔断面と心尖部二腔断面を描出

(図6)し,左房を拡大画像にして計測する.

図6 左房容積計測における左房軸の確認

心尖部長軸断面で左房の長径を確認(左図)し,その長径を保った状態で心尖部二腔断面(中央図)および心尖部四腔断面(右図)にすると,左房の上部が正しく描出され長径が最大となる.

⚫ 左房壁のトレースは僧帽弁輪から対側の僧帽弁輪まで左心耳や肺静脈の入口部

を除外して行い,弁輪と弁輪は直線で結ぶ5)(図7).

図7 左房容積の計測

外側の僧帽弁輪から,左心耳や肺静脈の入口部を除外しながら対側の僧帽弁輪までトレースし,弁輪と弁輪は直線で結ぶ.

⚫ 左房の最大となる心尖部四腔断面と心尖部二腔断面が描出されているかの検証

は,両者の長径にて行い,その差は5mm 以内5)とされている. ⚫ 同様の方法で拡張末期容積を計測し,計算式に当てはめると総合的左房リザー

バ機能の指標であるLA emptying fraction が算出される.
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LAEF(%)=〔(LAESV-LAEDV)/LAESV〕×100 (LVEF:LA emptying fraction ,LAESV:左房収縮末期容積,LAEDV:左房拡

張末期容積)

【右室径】

⚫ 右室が最大となるRV-focused apical 4ch view(図8)にて,右室基部径と右室中

部径を計測する.計測部位は,基部1/3 の中で最大の横径と乳頭筋レベルで右室中部1/3 の横径(基部計測部位と心尖部との中間)を,拡張末期の時相で計測する5)(図9) .

図8 RV-focused apical 4ch view

RV-focused apical 4ch view はプローブを回転させ右室が最大となるように断面を調節する.左図の1と3の断面を右図に示す.1のように右室が最大となるようにプローブの回転を調整する.

図9 右室径の計測

右室が最大となるように描出したRV-focused apical 4ch view で,肉柱や乳頭筋,調節帯(moderator band)を除き,右室基部径と右室中部径を計測する.
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【右室面積】

⚫ 右室が最大となるRV-focused apical 4ch view にて,外側三尖弁輪から自由壁

を通って心尖部,中隔を経て内側三尖弁輪まで右室心内膜をトレースし,面積を測定する5). ⚫ 肉柱,乳頭筋,調節帯(moderator band)は心腔内に含めてトレースする(図10)5).

図10 右室面積の計測

右室心内膜を,外側三尖弁輪から自由壁を通って,心尖部,心室中隔を経て内側三尖弁輪まで,肉柱,乳頭筋,調節帯(moderator band)を除外してトレースし,弁輪と弁輪は直線で結ぶ.

⚫ 拡張末期,収縮末期,それぞれを測定し,計算式にあてはめて右室面積変化率

を算出する. RVFAC(%)=〔(RVEDA-RVESA)/ RVEDA〕×100 (RVFAC:右室面積変化率,RVEDA:右室拡張末期面積,RVESA:右室収縮末

期面積)

(梅田ひろみ,平野 豊,田中教雄)

(2)左室壁運動評価精度管理をおこなう上で,最もハードルが高いのは壁運動評価ではないだろうか.他の計測指標は数値で表現できることが多いが,壁運動評価は往々にして被検者の主観に委ねられる.つまり,他の検査者との差を推し量る客観的な指標がないのである.しかし,虚血性心疾患や,心サルコイドーシスのような局所壁運動異常を有する二次性心筋症などにおいては,左室壁運動評価は診断に直結する項目であり,その評価は必須である.本項では,この左室壁運動評価における精度管理,施設内,施設外でのバラつきを少なくする方法について概説する.
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【壁運動異常の重症度評価】壁運動評価をおこなう上で最も重要なポイントは,正しい断面が描出できているか否かである.正しい断面が描出できていなければ,pseudo asynergy のように本来なら存在しない壁運動異常をあたかも壁運動異常があるように評価してしまうこともある.基本断面である傍胸骨左室長軸断面,傍胸骨左室短軸断面,心尖部3 断面の正確な描出は必要不可欠である.その上で,壁運動異常の重症化は,壁厚増加率により正常,低収縮,無収縮,奇異性収縮に分類される.また,低収縮はその程度により軽度低下,高度低下のようにさらに細かく分類されることが多い(図11).

図11 壁運動異常の重症度評価

【壁運動異常の範囲】

左室壁運動異常の評価で,その重症度に加えてもう一つ重要なポイントは,壁運動異常の範囲である.壁運動異常の範囲はwall motion score5)をつけると理解しやすい.心尖部3 断面での長軸方向の広がりと短軸3断面での円周方向への広がりが同時に評価できる(図12).

図12 各断面における左室分画のブルズアイ表示(文献5より引用)
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【Wall motion score index】精度管理の目的として,左室壁運動異常の評価にwall motion score index5)を用いるのも効果的である.壁運動異常の重症度とその範囲が客観的に他者と比較できるからである. Wall motion score は,各分画の壁運動を正常(1 点),壁運動低下(2 点),無収縮(3 点),奇異性運動(4 点)として点数を加算する.それを17 分画なら17 で除した値が,wall motion score index である.精度管理の目的で行うのであれば,wall motion score を付けるだけでも十分で,無理にスコア化する必要はない.

【左室壁運動異常評価の精度管理】壁運動評価は,重症度とその範囲により行われる.しかし,壁運動評価は検査者の主観によるところが大きいため,検査者間で目合わせを行うことが重要である.私たちの施設では,週一回の症例カンファレンスを開いているが,その際に参加者全員で動画を供覧し,visual EF の目合わせや,asynergy のある症例では壁運動異常評価の目合わせを行っている.そうすることで,自分と他者(上級者)との目合わせが可能となる.施設内で目合わせが難しい場合は, Visual EF や壁運動異常の目合わせの企画とりいれたセミナーに積極的に参加してみるのも良い. いずれにしても,主観に頼るところが多い左室壁運動評価は視覚的なキャリブレーションをとることが必要不可欠である.また,施設内においては,読影医や循環器内科医との連携をとって同じ判断基準で評価できるようにする取り組みも重要である.左室壁運動評価が標準的な評価(ここでは施設内の上級医や上級技師,またはセミナーなどにおいては大多数の回答)と外れてしまった場合は,自分の固定観念を捨てて,その標準的な評価へ合わせる努力が求められる.いずれにしても,主観に頼るとことが多い壁運動異常の評価は経験を積むしかないが,初級者はtry and error で異なった評価をした際にキャリブレーションをとって標準的な評価に近づけていく必要がある.

(西尾 進,平野 豊,田中教雄)

(3)ドプラ法における精度管理

ドプラ法は,ドプラ効果を効用し,血流速度や僧帽弁輪などの壁の動きを計測する方法である.ドプラ法にはカラードプラ法,パルスドプラ法,連続波ドプラ法,組織ドプラ法などがあり,目的に応じ使い分けられる.ここでは精度管理を行うあたり重要なポイントを示す.

【ドプラ入射角】

ドプラ法において最も重要となるのはドプラ入射角である.超音波で得られる流速は,ドプラ効果によるドプラ偏移に基づき,血流方向と超音波ビームのなす角度(ドプラ入射角)に影響される.ドプラ入射角が大きくなるにつれて血流速度は過小評価されるが,この角度が20 度以内であれば誤差は6%以内であり臨床上問題とはならないが,精度管理上,ドプラ入射角はできるだけ小さくなるよう描出する断面を調整する必要がある6).また,前回と計
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測値が大きく異なる場合には,前回の計測断面と今回とで入射角に乖離がないかの確認も必要でなる.一方,超音波装置には角度補正機能があるが,正確な角度補正は難しく,角度補正が逆に計測誤差の要因になるため,角度補正は使用しない(図13).

図13 ドプラ法の角度依存性

ドプラ法は,血流方向に対するドプラビームのなす角度(入射角)に大きく影響される.このため,心エコー図検査では入射角ができるだけ少なくなるよう,断面を調節する必要がある.一般的には入射角が20 度以内であれば,臨床上問題とはならないが,前回と計測値が大きく異なる場合には,前回の入射角に相違がないかの確認が必要となる.

【サンプルボリューム】

パルスドプラ法の精度管理を行う上で重要となるのは,サンプルボリュームの位置と大きさであり,これは目的とする血流速度により設定が異なる.

1 左室流入血流速度

心尖部長軸断面もしくは四腔断面より,カラードプラ法により血流方向を確認した上で,サンプルボリュームの大きさは2~3mm 程度とし拡張早期の僧帽弁縁部に設置する7).一方,volumetric 法にて,僧帽弁血流量を算出する場合には,拡張早期から中期の僧帽弁輪部に設置する,目的により設置する位置が異なることに注意が必要となる(図14).
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図14 サンプルボリュームの位置と左室流入波形の変化左室流入血流は,サンプルボリュームを置く位置により波形が大きく異なる.左室拡張能を評価する場合には,僧帽弁弁尖部にサンプルボリュームを置く(a).また,Volumetric 法にて僧帽弁通過血流量を計測する場合には,拡張早期の僧帽弁輪部に置く(b).また,サンプルボリュームが左房内にくると波形辺縁が不明瞭な波形となる(c).

2 左室駆出血流

心尖部長軸断面もしくは心尖部五腔断面より,サンプルボリュームを2~3mm に設定し収縮中期の左室流出路の中央に設置する6).サンプルボリュームの置く位置が心室中隔側にずれてしまった場合は,過大評価の原因となるので注意が必要となる(図15).

図15 左室駆出血流波形計測時のサンプルボリュームの位置左室流出路の血流波形をパルスドプラ法にする際,サンプルボリュームは収縮中期の左室流出路の中央の設置する.中隔側では流速が早いことが知られており,中隔側で計測すると過大評価となる.
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3 僧帽弁輪壁運動速度

心周期を通じて目的部位の動きを捉えるようサンプルボリュームは5~10mm に設置し,心尖部四腔断面の側壁側および中隔側に設置する.この場合,目的部位が超音波ビームと平行に動いているように断面を調節する必要がある(図16).

図16 僧帽弁輪移動速度計測の注意点

目的とする領域が超音波ビームと平行に動くように断面を調節することが大切である.a)では,超音波ビームに対し約45 度の方向に心臓が動いており,壁運動速度を過小評価している.この場合探触子の位置を少し調整することで,目的領域が超音波ビームと平行となるように調整するb).

【ドプラフィルタ】

パルスドプラ法や連続波ドプラ法で得られる信号には,血流ばかりではなく弁や心臓壁などの成分(クラッター信号)も含まれている.ドプラフィルタはクラッター信号を除去する目的で設定されるが,設定が高すぎると波形の開始点や終了点がカットされ,逆に設定が低すぎるとクラッターノイズの出現により,波形の開始点や終了点がノイズに埋もれて不明瞭となって,いずれも正確な時相分析が困難となる8).パルスドプラ法では通常200~300Hz程度に設定を行うが,目的とする血流速度に応じて波形を見ながら調節する(図17).
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図 17 ドプラフィルタの設定

設定が高すぎると波形の開始点や終了点がカットされ,逆に設定が低すぎるとクラッターノイズの出現により波形の開始点や終了点がノイズに埋もれて不明瞭となる.

【スイープ速度】波形のスイープ速度は通常100mm/sec 程度に設定されている9)が,必要に応じて変更する.特に時相分析を行う場合には,計測誤差が少なくなるよう100~150cm/sec 以上と高めに設定する.また最近の装置では,フリーズ後でもスイープ速度を変更することもできる.記録時は50cm/sec 程度で心拍による変化を確認しながら記録し,計測はフリーズ後にスイープ速度を変更して計測するといった方法も有用である(図18).

【ドプラゲイン】

ドプラゲインはエンベロープの辺縁がシャープになるようノイズの出る直前に設定する.ドプラゲインが高いと波形全体が不明瞭となり正確な計測が困難となる.しかし,ドプラ信号が弱い場合には,多少ノイズが出現してもやや高めのゲイン設定にすることがある(図19).
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図18 スイープ速度の設定

波形のスイープ速度は通常 50mm/sec 程度に設定されているが,必要に応じて変更する必要がある,特に時相分析を行う場合には,計測誤差が少なくなるよう100〜150mm/sec 以上と高めに設定する.

図19 ドプラゲイン

(岡庭裕貴,平野 豊,田中教雄)
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4,計測精度を向上させるための技師教育について心エコー検査の診断・計測の精度は,正確な画像の描出といった「描出手技」,得られた画像や波形をもとに計測する「計測手技」,画像や計測値を元に正しい評価を行う「知識や判断」といった事が重要である.そこで,それらに関しての技師教育の具体例を以下に記載する.

【描出手技に関して】⚫ 上級技師が傍胸骨左室長軸断面,短軸断面,心尖部3 断面の画像を取得し,超音波

装置もしくは超音波レポートシステムに画像を保存する.次に別の技師が同一被験者にて同一断面を取得し,それぞれの画像を比較し評価,指導を行う. ⚫ ドプラ法においても同様に上級技師と他の技師が同一の被験者を用いて心尖部アプ

ローチから左室流入血流速度,左室駆出血流,僧帽弁輪部壁運動速度を描出し,それぞれのサンプルボリュームの位置や波形を比較し評価,指導を行う.

【計測手技に関して】⚫ 超音波装置に取り込まれてある同一画像を元に,各技師が左室長軸断面では大動脈

弁輪径,左房径,心室中隔厚,左室後壁厚,左室拡張末期径,左室収縮末期径を計測,心尖部断面では左房容積,biplane disk summation 法によるEF を計測する.これらの計測されているラインや数値の検者間差を比較し,評価,指導を行う. ⚫ 実際に検査を行っている画像が外部モニターに出力されている施設においては,実

患者の描出断面のみならず計測部位の指導を行う事ができる.

【知識や判断に関して】⚫ 判断に迷った症例や稀な症例のみならず,代表的な症例などのリストを作成し,定

期的に症例検討会を行い,各技師で知識を共有する.この際,開催された内容の報告書を作成し,欠席者には報告書の確認を行ってもらう. ⚫ 症例検討会においてVisual EF のトレーニングを行うことも可能である.また,施

設の環境が許せば,PC 上のネットワーク共有ホルダ内に施設で標準となるVisual EF の動画を入れておき,簡単に参考となる画像を見て学ぶことができる. ⚫ 心エコー検査を行う前に他のモダリティや検査データを閲覧することで,より正確

な判断ができることがある.特に心筋梗塞患者の心電図所見からどの冠動脈が障害されているかを理解して,その支配領域の壁運動が低下しているかどうかを心エコーで確認できる.

(藤田雅史,平野 豊,田中教雄)
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参考文献

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15189)https://www.jab.or.jp/service/clinical_examination/(2023 年4 月17 日閲覧) 2.鈴木 隆史. 臨床検査における精度管理. 総合健診. 2019;46:226-235 3.一般社団法人日本超音波検査学会 精度認定プロジェクト委員会:JSS 画像コントロー

ルサーベイ実施要項.(オンライン) https://www.jss.org/committee/acpc/doc/CS_implementation_guidelines.pdf(2022 年10 月3日閲覧) 4.社団法人日本臨床衛生検査技師会 精度管理調査評価法検討・試料検討ワーキンググ

ループ:臨床検査精度管理調査フォトサーベイ評価法に関する日臨技指針.(オンライン)http://www.jamt.or.jp/news/asset/pdf/02.pdf〉,(2022 年10 月3 日閲覧) 5.Lang RM, Badano LP, Mor-Avi V, et al.  Recommendations for cardiac chamber quantification

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