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2011 年版 社団法人日本透析医学会 「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの 作製および修復に関するガイドライン」 Guidelines of Vascular Access Construction and Repair for Chronic Hemodialysis
2011 年版 社団法人日本透析医学会 「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの 作製および修復に関するガイドライン」 Guidelines of Vascular Access Construction and Repair for Chronic Hemodialysis
序文 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドラインは,2005 年に大平整爾委員長のもと日本透析医学会より初版が発行された.最近では,種々学会や刊行誌にガイドラインを参考にした発表も数多くみられている.2011 年版は初版を土台としてその後のデータを収集し作成したものである.この間,日本透析医学会では2008 年にバスキュラーアクセス(VA)の実態調査が行われたが,自己血管による内シャント(AVF)は89.7%で次いで人工血管使用の内シャント(AVG)が7.1%,さらに動脈表在化1.8%,そのほか動脈直接穿刺0.1%,長期植え込み型静脈カテーテル0.5%,一時的静脈カテーテル0.5%,単針透析0.2%,その他0.1%であった1).その10 年前である1998 年の調査ではAVF は91.4%で次いでAVG が4.8%,さらに動脈表在化2.5%,外シャント0.2%,その他1.1%であった2)(表1).すなわち長期透析症例の増加や高齢化により自己血管の荒廃した症例が増加し,自己血管による内シャントの減少,さらにAVG を使用する症例が増加していることがうかがわれる.2008 年の調査ではその他が0.1%あったがこの中にはカテーテルが項目とされておらず,その他に組み込まれていたと考えられる. また2005 年版は項目としては主としてVA の種類別としていたが,2011 年版はどちらかというとVA 作製前後のように時系列的に並べ替えた.「いざ鎌倉」でひもとく際に読み取りやすいと考えたためである. 本ガイドラインは初版を土台としており,数年間でガイドラインがすべて根本から覆るわけではなく,また1966 年に発表されたBrescia-Cimino の内シャントが,現在も慢性血液透析では標準内シャントとして最も多く使用されていることを鑑みて論文の引用には年代の制限は設けないこととした.しかし初版の発行が2005 年でありその後の情報を集めるために,2004 年1 月より2010 年10 月までのPUBMED および医学中央雑誌よりVA 関連の文献を検索した.本邦ではVA に関しては,年1 回アクセス研究会,アクセスセミナーやバスキュラーアクセスインターベンション研究会(VAIVT)などが全国規模で開催されており,新しい発表もなされ他の学会と合わせ報告は少なくはない.臨床的にVA は血液透析にとって必須であることから,まず何らかの手段を用いて目の前の症例に対処する必要がある.そのため前向き研究などエビデンスレベルとして高いとされる報告は多くはない.今後エビデンスレベルを上げる報告が期待される. 今回のガイドラインではエビデンスレベルに加えて推奨度をつけ2 本立てで,その項を評価した.これはKidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO) 3)がGrading of Recommendations, Assessment,Development and Evaluation(GRADE)システムを取り入れエビデンスの評価法としたので,日本透析医学会エビデンスレベル評価委員会でも検討し4)それに準じたものである.すなわち,まず形式によってRandomized Controlled Trial(RCT)をhigh,観察研究をlow,それ以外をvery low とする.さらに詳細な内容と質あるいはバイアス等を検討し1 段階ないし2 段階の加点あるいは減点を行って,最終的にA〜D の4 段階に分けるものである(表1).したがってまずはhigh を仮のA としlow をC,very low をD としたうえで加点,減点を行った.またエビデンスのないものについてはexpert opinion として委員会で決定された(O).また推奨度については腎臓領域ではRCT は極端に少ないためエビデンスレベルが低いことが予想され,ほとんどがweak となる可能性がある.そこで推奨度をレベル1:強とレベル2:弱に分けるが,臨床的な重要性がexpert judgment によって認められればエビデンスレベルが弱くても強い推奨を行えることとした.その逆もある.これにより推奨度にエビデンスレベルを併記することとした.例記するとエビ
デンスレベル:低いが推奨度:強は,1C,エビデンスレベル:中等度で推奨度:弱は,2B で提示した(表2).expert judgment は記録にある会合で行った. 本ガイドラインは日本透析医学会学術委員会,平方秀樹委員長,ガイドライン作成小委員会,友雅司委員長のご助言をいただき別記の15 名の委員会メンバーの合意のうえで成り立ったものである.臨床的な道しるべとして捉えていただければ幸いである. 平成23 年6 月 バスキュラーアクセスガイドライン改訂・ワーキンググループ委員会 委員長久木田和丘 文献1) 日本透析医学会統計調査委員会編:わが国の慢性透析療法の現況(2008 年12 月31 日現在).日本透析医学会, 2009 2) 日本透析医学会統計調査委員会編:わが国の慢性透析療法の現況(1998 年12 月31 日現在).日本透析医学会, 1999 3) Uhlig K, Maclead A, Craig J, Lau J, Levey AS, Levin A, Moist L, Steinberg E, Walker R, Wannar C, Lameire N, Eknoyan G:Grading evidence and recommendations for clinical practice guidelines in nephrology. A position statement from Kidney Improving Global outcomes(KDIGO). Kidney Int 70:2058-2065, 2006 4) 深川雅史,塚本雄介,椿原美治,海津嘉蔵,草野英二,中山昌明,久木田和丘,友雅司,平方秀樹,秋澤忠男: エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度について.透析会誌43:347-349,2010 4.8% 91.4% 1998 年 動脈表在化AVG AVF表1わが国のVA の変遷1,2) 1.8% 7.1% 89.7% 2008 年 2.5% 0.1% 1.1% その他 100% 100% 計 ― 単針透析 ― 0.2% 外シャント ― 長期植え込み型静脈カテーテル 0.5% ― 一時的静脈カテーテル 0.2% 0.1% ― 動脈直接 穿刺 0.5% 記述法強度推奨度に関するグレード分類 委員会は¬グレードなしをopinion(O)とする. ...が望ましい弱レベル2 ...を推奨する強レベル1エビデンスの質エビデンスの質に関する等級 低いC 中等度B 最も低いD 高いA 表2条文とエビデンスに関するグレーディング 真の効果が推測する効果に近いと確信できる.高いA 意味エビデンスの質等級 エビデンスの質に関する等級分類の意味 真の効果は推測する効果と結果的に異なる可能性がある.低いC推測する効果は大変不明確で,しばしば真の効果とかけ離れることがある.最も低いD 真の効果が推測する効果に近いと考えるが,結果的に異なる可能性が残る.中等度B
(社)日本透析医学会 バスキュラーアクセスガイドライン改訂・ ワーキンググループ委員会・委員名簿 (敬称略,五十音順) 委員長久木田和丘北楡会札幌北楡病院人工臓器治療センター副委員長大平整爾東桑会札幌北クリニック副委員長天野泉名古屋バスキュラーアクセス天野記念診療所 委員内藤秀宗内藤医学研究所委員東仲宣松圓会東葛クリニック病院委員池田潔池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック委員神應裕神應透析クリニック委員佐藤隆偕行会名港共立クリニック委員酒井信治新潟市社会事業協会信楽園病院委員杉本徳一郎三井記念病院腎臓内科委員武本佳昭大阪市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学委員春口洋昭飯田橋春口クリニック委員水口潤川島会川島病院委員宮田昭熊本赤十字病院心臓血管外科委員室谷典義全国社会保険協会連合会千葉社会保険病院外科・透析科 委員会・中間報告会開催記録 第1 回委員会2009 年1 月9 日第2 回委員会2009 年4 月3 日第3 回委員会2009 年5 月22 日第4 回委員会2010 年1 月23 日第5 回委員会2010 年4 月10 日第6 回委員会2010 年7 月31 日第7 回委員会2011 年1 月29 日第53 回日本透析医学会学術集会透析医学会コンセンサスカンファランス2008 年6 月21 日神戸第54 回日本透析医学会学術集会透析医学会コンセンサスカンファランス2009 年6 月7 日横浜第55 回日本透析医学会学術集会透析医学会コンセンサスカンファランス2010 年6 月18 日神戸
AVG:arteriovenous graft NKF:National Kidney Foundation自己血管使用皮下動静脈瘻 専門家意見 AVF:arteriovenous fistula O:opinion人工血管の材質の一つPEP:Polyolefin-elastomer-polyester IC:informed consent血管内操作による血管形成法IVT:interventional therapyアメリカ腎臓財団による透析患者の治療成績向上のため設立された組織K-DOQI:Kidney Disease Outcomes Quality Initiative抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味で,多くは多剤耐性菌であるMRSA:Methicillin-resistant Staphylococcus aureus 閉塞性動脈硬化症ASO:arteriosclerosis obliterans アメリカ腎臓財団 人工血管使用皮下動静脈瘻 ガイドラインGL:guideline(s)血液透析HD:hemodialysis インフォームド・コンセント(説明に基づく同意) e-GFR:estimated glomerular filtration rate人工血管の材質の一つePTFE:expanded polytetrafluoroethylene出口部感染ESI:exist site infection DSA:digital subtraction angiography 実証(性) E:evidence (左室)駆出率EF:ejection fraction 推算糸球体濾過量 CKD:chronic kidney disease 慢性血液透析療法成績の国際比較 カナダ腎臓学会CSN:Canadian Society of Nephrology DOPPS:Dialysis Outcomes and Practice Pattern Study 心拍出量CO:cardiac output スチール改善方法の一つ クレアチニン・クリアランスCcr:creatinine clearance DRIL:distal revascularization―interval ligation デジタル・サブトラクション血管造影(血管造影の画像から前の画像を差し引いた画像をコンピューターで作成する手法) 上腕動脈―橈側皮静脈間のAVF BCAVF:brachiocephalic AVF CSEP:Clinical Sepsis微生物が排泄するスライムで囲まれた微生物の集合体で黄色ブドウ球菌のそれがカテーテルに付着したものを多くは指す Biofilm 中心静脈カテーテル 慢性(維持)血液透析CHD:chronic hemodialysis CVC:Central venous cathertel 手根管症候群CTS:carpal tunnel syndrome 糖尿病性腎症 心係数CI:cardiac index DMN:diabetic nephropathy慢性腎臓病 気圧ATM:atmosphere 臨床的敗血症 用語の説明と略語一覧表
QB,Qb:quantity of blood flow 人工血管の材質の一つPU:polyurethane 経皮経管的血管形成術PTA:percutaneous transluminal angioplasty 橈骨動脈―尺側皮静脈間のAVF RBAVF:radiobasilic AVF 橈骨動脈―橈側皮静脈間のAVF RCAVF:radiocephalic AVF 血流量 SA:Staphylococcus aureus スチール改善方法の一つRUDI:revision using distal inflow 相対的危険度RR:relative risk TBBAVF:transposed brachial basilic AVFシャント(動脈と静脈とを何らかの方法で短絡させる方法またはその状態,AVF,AVG,外シャントが該当する) Shunt 静脈高血圧症(sore hand syndrome と同義) Sore thumb syndrome 黄色ブドウ球菌 尺側動脈―尺側皮静脈間のAVF UBAVF:ulnobasilic AVF 消毒薬の一つTaurolidine 尺側皮静脈の転位による上腕動脈―尺側皮静脈間のAVF USRDS:United States Renal Data System 尿素除去率URR:urea reduction rate 尺側動脈―橈側皮静脈間のAVF UCAVF:ulnocephalic AVF バスキュラーアクセス(脈管から血液を取り出し,血液浄化器を通過させて再び脈管へ血液を戻す仕組み. Blood access と同義) VA:vascular access
目次 序文アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート857 VA ガイドライン改訂・ワーキンググループ委員会・委員名簿アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート859委員会・中間報告会開催記録アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート859用語の説明と略語一覧表アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート860第1 章バスキュラーアクセスに関わるインフォームド・コンセントアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート863第2 章血液透析導入期におけるバスキュラーアクセス作製の基本と時期アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート865第3 章バスキュラーアクセスの作製と術前・術後管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート868 (1) 作製前の全身・局所・血管の評価(新規作製VA)アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート868 (2) AVF の作製と周術期管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート871 (3) AVG の作製と周術期管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート875 (4) 動脈表在化の作製と周術期管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート878 (5) カテーテル挿入法と周術期管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート881第4 章バスキュラーアクセスの日常管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート884 (1) 穿刺法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート884 (2) 感染予防(AVF,AVG) アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート887 (3) VA 機能のサーベイランス・モニタリングアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート889 (4) 心機能とアクセスアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート894 (5) カテーテルの管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート898 (6) 患者教育アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート904第5 章バスキュラーアクセストラブルの管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート906 (1) 狭窄・閉塞アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート906 (2) 瘤アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート910 (3) 静脈高血圧症アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート912 (4) スチール症候群アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート914 (5) 過剰血流アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート917 (6) 感染アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート921 (7) 血清腫アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート925 (8) アクセス関連疼痛アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート927 (9) カテーテルトラブルアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート929第6 章バスキュラーアクセスの形態と罹病率および死亡率アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート932第7 章補遺バスキュラーアクセスの開存率アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート934結語アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート936
第1 章バスキュラーアクセスに関わるインフォームド・コンセント GL-:透析担当医は血液透析を開始・継続していくうえで必須のVA について,その必要性と作製・修 復法などを患者並びに家族に十分な説明を与えなければならない.この過程において,VA の説明は患者の理解度を確認しつつ進めることが推奨される(O). GL-:この説明は,当該患者が透析医療の開始を受諾するに際して行われるインフォームド・コンセン トという過程に含まれるものと認識されなければならない(O). GL-:透析担当医がVA の作製をアクセス外科医に委ねる場合には,アクセス外科医は改めてVA に関 する詳細を患者と家族に説明する義務がある.その説明に含まれるべき項目は,表1 に列記した諸事項である(O). GL-:患者への説明は(1)∼(7)までを必須事項とするが,その他は患者の理解度を考慮しつつ病初期 には取捨選択し後日心身の状態の安定化を待って行うことを考慮してもよい.ただし,家族の代表者への説明は全項目に及ぶことが推奨される(O). GL-:選択された術式に対しては,その必然性の説明を加えなければならない(O). GL-:長期かつ頻回に使用(穿刺)されるVA の性質上経時的に種々の合併症が発生することは回避で きないものであり,表2 に掲げる諸事項4)も予め説明しておくことが推奨される(O). GL-:できるだけ平易な言葉で患者・家族に説明を行い,質疑応答がなされたうえで理解・納得と同意 を得ることが推奨される.この過程を慎重に踏んだうえで,VA 作製または修復に臨むことが推奨される(O). 解説GL-1,2:担当医は,腎不全患者に必要であると考え られる治療法に対して説明義務を持つ1,2). GL-3:患者への説明には,平易な言葉を選び患者の理 解を容易にするように図表などを適宜用いて行うことが肝要である.療法として血液透析が患者の理解と同意のもとで選択された場合には,その施行に必須のVA に対して十分な説明が必要であることは論を待たない.説明の及ぶべき範囲は表1 に掲げたごとくであるが,患者の病期・病状・理解度などを考慮しつつ臨機応変に行うことが望ましい.ただし,基本的には医療側が必要だと考える範囲に止め おくのではなく,患者(側)が望むこと・望むであろうことを推測して説明を加えることが重要である.また,説明は一度で済ませず,複数回繰り返し行うことが望ましい3,4). GL-4:透析担当医が大まかな説明を行い,実際にVA 作製の任に当たるアクセス外科医が詳細に説明することが求められる.施術の詳細に関して,透析担当医とアクセス作製医との間には,緊密な連携と連絡がなければならない. GL-5:VA の術式が決定された場合,殊に人工血管を 使用する場合には,その必要性と特性を詳しく説明
しておく配慮が必要である5). GL-6:VA の説明には,後日発生する可能性のある 種々の合併症が含まれなければならない.この場合,患者の気力や希望を削がないような説明上の工夫が必要となる. GL-7:説明には,平易な言葉を使う必要がある. 文献1) 大平整爾:インフォームドコンセント〜透析医療にお ける実際.臨牀透析18:835-846,2002 / 2) Moss AH:Shared decision-making in dialysis(RPA/ ASN), Recommendation Summary. Am J Kidney Dis 37:1081-1091, 2001 3) 小松康宏,加曾利良子:透析導入時の治療法選択にお ける説明のありかた〜チーム医療による慢性疾患ケアの観点から〜.日透析医会誌24:244-252,2009 4) 大平整爾,辻寧重,伊丹儀友:血液透析導入期のブ ラッドアクセス〜その作製法・時期の実際とあり方〜.臨牀透析17:927-938,2001 5) 大平整爾:ブラッドアクセスに対するインフォームド コンセント.ブラッドアクセスインターベンション治療の実際(阿岸鉄三,天野泉編).p167-174,秀潤社,東京,1999 (1) 血流量不足/ (2) 狭窄(動脈/静脈の内腔狭小化) (3) 血栓形成(VA の閉塞) (4) 穿刺部の感染症(5) 瘤形成(6) 静脈高血圧(sore thumb or sore hand syndrome) (7) スチール症候群(虚血障害) (8) 血流量過剰(high output cardiac failure) (9) 血液再循環(10) 穿刺困難および穿刺部限局(11) その他 表2 VA に関連する合併症 (1) VA 作製の目的(2) VA の作製法(術式) (3) 麻酔法(4) 手術時間(5) 術後の注意事項(6) 実際のVA 使用法(穿刺の実際) (7) 術者(8) 各種VA の開存率(9) 定期的なVA 機能および形態に対する検査の必要性(10) 予想されるVA 関連の合併症(11) VA 合併症に対する修復処置(12) その他 表1 VA 作製時における患者への説明事項
第2 章血液透析導入期におけるバスキュラーアクセス作製の基本と時期 / / / GL-:患者が臨床経過や1)eGFR<50 mL/min/1.73 m 2,2)蛋白尿0.5 g/gCr 以上,3)蛋白尿と血尿 がともに陽性(+1 以上)などの検査データから慢性腎不全と診断された場合には,予後向上のために腎不全専門医に速やかに紹介されることが推奨される(1-C). GL-:腎不全専門医は末期慢性腎不全の治療法として血液透析が選択された場合には,同療法における VA の役割と重要性とを患者に十分に説明し,当該患者をできるだけ速やかにアクセス外科医に紹介することが推奨される(O). GL-:アクセス外科医には,十分な経験と見識とが求められる(O). GL-:アクセス外科医は,当該患者の前腕の動脈・静脈を視診・触診や超音波検査などで精査して,血管 系の走行を記録しつつVA 作製計画を予め立てておく必要がある.この際,末梢循環および心機能の現状をも,十分に把握しておくことも肝要である(1-C). / / GL-:eGFR が15 mL/min/1.73 m 2以下(CKD 病期4 & 5)と臨床症状を考慮し,VA の作製時期を判 断することが推奨される(O).溢水傾向を示しやすい糖尿病性腎不全ではより高値のeGFR でVA を作製することが望ましい(O). GL-:慢性血液透析用VA は開存性・抗感染性・各種合併症の発生などの観点からみて,AVF ができ得 る限り第一選択とすることが推奨される(1-B). GL-:諸検査値および臨床症状などから血液透析開始時期を予測して,初回穿刺より最低でも2∼4 週 間前にAVF が作製されることが望ましい(O).なお,AVG では,作製後3∼4 週間を経て初回穿刺に供することが望ましい(O). GL- :AVF およびAVG の作製は,心機能障害を惹起する可能性がある(1-B).したがって,心機能が 著しく不良な症例においては,取り敢えず動脈表在化法または血管内カテーテル留置法が選択されることが推奨される(1-C). GL- :血管内カテーテル法によるVA はその適用を慎重に考慮し,その血管内挿入留置は使用直前とす ることが望ましい(1-C).
解説(VA 作製の基本と時期) GL-1:腎機能の総合的な把握にはこれまでCcr が汎 用されてきたが,Ccr の算定には正確な蓄尿が必要である.しかし,蓄尿を正確に行うことは,高齢CKD 患者の増加が顕著な近年実際上煩雑で困難を伴うものである.簡便なeGFR 換算式が得られたことを勘案し,利便性を重視してeGFR を主体的に用いることとした1〜3). 腎機能低下に伴う臨床症状は,当初は通常軽微に経過するために,患者自身の関心も今一つであることが多い.血尿・蛋白尿の出現,血圧の上昇傾向やeGFR<50 などの所見が認められた患者は,速やかに腎不全専門医への紹介が必要である. 紹介を受けた腎不全専門医は,腎機能を精査したうえで長期的な治療方針を患者に示し,その患者が定期的な受診を継続するように動機付けを与えることが肝要である.腎疾患発症初期に専門医に紹介され,腎疾患に対する教育・指導および全身管理を受けていた患者のほうが,透析導入までの期間が延長し,仮に透析へ導入されても,その後の生存率が良好である1).この点に関する各診療科への状況の説明や協力の取り付けも,極めて重要である. GL-2:慢性腎不全患者が腎機能代替療法として血液 透析(HD)を選択した場合には,腎不全専門医はVA の必要性・重要性を患者に説明し,そのうえで速やかにVA 作製医へ対診依頼を行うべきである(図1) 2,3).この時点で当該患者が採血や点滴などを受ける場合に,将来HD 施行時穿刺に供される静脈を使用しないという原則(VA 作製に供される皮下 静脈特に前腕静脈の温存)を医療側に徹底し,患者自身にも十分に説明しておくことが重要である. GL-3:VA の開存性には患者年齢・性別・脈管状態・ 原疾患などのほかに,外科医の技量が明らかに影響するものである4).外科医の技量とは単に血管の剝離・吻合などに関係する技術的側面だけに限定するのではなく,VA 作製部位・術式やVA の将来的展望などを決定し得る能力も含むものである. GL-4:紹介を受けたVA 作製医は鎖骨下静脈へのカ テーテル挿入歴・ペースメーカー装着の有無・心機能の状態・乳癌手術歴などを腎疾患専門医と連携を取りながら十分に把握する必要がある.その上で,当該患者の四肢,特に,前腕の脈管を視診・触診または超音波法などで子細に検査し,VA 作製に先立ち血管系のマッピングを作成しておくことが肝要である.血液造影は脈管の走行・口径・副血行路などを明らかにし,VA 作製に供する脈管の選択に極めて有用である5).しかし,非イオン性造影剤の登場により副作用は減少したとはいえ皆無ではなく,さらに残腎機能を障害する場合もあり造影剤の種類・用量に配慮し,その施行は慎重でなければならない. GL-5,6:VA 作製医は絶えず腎不全専門医と連絡を / /取り合い,eGFR が15 mL/min/1.73 m 2を示した時点でVA 作製を考慮する.このeGFR 値は作製されたAVF が成熟して穿刺可能となる期間を考慮している.糖尿病性腎不全例では,これよりも低値でのVA 作製が通常求められる5〜7).VA 作製時の第一選択は,前腕末梢において自己動・静脈による内 図1 VA 作製に関するフローチャート2)
シャント(AVF)であることが望まれる.ただし,患者の脈管の状態や心機能障害などのために,VAの変法を採用せざるを得ない場合も生ずる. また,初回穿刺時点からみると,最低でも2〜3 週間前に作製されることが望ましい.なお,DOQI(アメリカ)では「初回穿刺の最低でも1 か月,望ましくは3〜4 か月前」,CNS(カナダ)では「Ccr<15〜/ / 20 mL/min またはS. Cr>3〜5 mg/dL」としている. CARI(オーストラリア)には,「VA 作製時期は患者と局所因子に依存する」と記載されている.皮下静脈が肥満などのために著しく深在性の場合を除き,適正に作製された内シャントは2〜3 週間で十分成熟し穿刺可能となると考えられる. GL-7:心機能や脈管の状態が許せば,現時点での AVF がVA の中で最も優れている8,9). GL-8:AVF またはAVG の作製は,心拍出量の増加 などにより心機能を障害する可能性がある.したがって,術前・後に心機能を精査する必要がある10,11).術前の心機能把握に関しては別項をご参照願いたい. GL-9:血管内カテーテル留置法は確かに簡便で有用 性が高いが,報告されている種々の合併症(血管壁の障害,血栓形成,管腔の狭小化など)の面から,その使用をでき得る限り避けるべきである12〜17). 文献1) Stack AG:Impact of timing of nephrology referral and pre-ESRD care on mortality risk among new ESRD patients in the United States. Am J Kidney Dis 41:310-318, 2003 2) 大平整爾,辻寧重,伊丹儀友:血液透析導入期のブ ラッドアクセス〜その作製方法・時期の実態とあり方.臨牀透析17:927-938,2001 3) 日本腎臓学会(編):CKD 診療ガイド2009.東京医学 社,東京,2009 4) Prischl FC, Kirchgatterer A, Brandstatter E, Wallner M, Baldinger C, Roithinger FX, Kramer R:Parameters of prognostic relevance to the patency of vascular access in hemodialysis patients. J Am Soc Nephrol 6: 1613-1618, 1995 5) Brimble KS, Rabbat ChG, Treleavan DJ, Ingram AJ: Utility of ultrasonographic venous assessment prior to forearm arteriovenous fistula creation. Clin Nephrol 58:122-127, 2002 6) Raynaud AC:Venography before angioaccess crea- tion. Dialysis Access〜A multidisciplinary approach〜(ed. by Gray RJ, Sands JJ), Chapter 11, pp67-73, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2002 7) 大平整爾,辻寧重,伊丹儀友:糖尿病透析患者のア ンギオアクセス〜問題点と対策.腎と透析51:714- 720,2001 8) 中本雅彦,合屋忠信:糖尿病性腎不全患者の合併症. 腎と透析42(別冊腎不全外科ʼ97):14-20,1997 9) 大平整爾,今忠正,井村卓:血液透析用ブラッド アクセス〜現況とその開存率の向上をめざして〜.日透析医会誌19:301-310,2004 10) Besarab A, Brouwer D:Improving arteriovenous fistula construction;Fistula first initiative. Hemodial Int 8:199-206, 2004 11) Besarab A, Work J:Clinical practice guideline for vascular access. Am J Kidney Dis 48:s176-247, 2006 12) Iwashima Y, Horio T, Takami Y, Inenaga T, Nishikimi T, Takishita S, Kawano Y:Effects of the creation of arteriovenous fistula for hemodialysis on cardiac function and natriuretic petide levels in CRF. Am J Kidney Dis 40:974-982, 2002 13) White GH, Wilson SE:Planning and patient assess- ment for vascular access surgery. Vascular Access〜Principles and Practice(4 th ed), p7-13, Mosby, USA, 2002 14) Swab SJ:The hemodialysis catheter conundrum: Hate living with them, but canʼt live without them. Kidney Int 56:1-17, 1999 15) Chesser AM, Baker LR:Temporary vascular access for first dialysis common, undesirable and usually avoidable. Clin Nephrol 51:228-232, 1999 16) 相馬泉,木全直樹:透析用血管内カテーテル留置法〜 合併症の処理.臨牀透析19:1008-1014,2003 17) 東仲宣,内野敬:血管内留置カテーテル型バスキュ ラーアクセス―とくに長期型―.臨牀透析25:1177- 1183,2009
第3 章バスキュラーアクセスの作製と術前・術後管理(1) 作製前の全身・局所・血管の評価(新規作製VA) GL-:術前に全身状態と末梢循環を評価した上で,術式や手術の施行時期を決定すべきである(1-D). GL-:術前に理学的検査(視診・触診)による評価を必ず行う(1-C). GL-:動・静脈の視診・触診にてVA の種類や作製部位を決定できない場合は,超音波検査を施行する ことが望ましい(2-B). GL-:中枢静脈の狭窄・閉塞の診断には血管造影が有効であるが,残腎機能や副作用を考慮した上で施 行するのが望ましい(2-D). 解説GL-1:術前には全身の評価が必要である.全身感染 症,著明な低栄養,脱水や溢水,浮腫を有する場合は内科的な治療を行い,それらの症状が改善してから手術するのが望ましい. 全身感染症がある場合は,感染が消失してから手術を行う.著明な浮腫がある場合は,前腕でのAVF 作製が困難であるが,透析により浮腫が改善するとAVF 作製が可能になる場合がある.また脱水や低栄養,低血圧の状態でAVF を作製すると早期に閉塞する危険が高く,なるべく全身状態を安定させてから手術を行うのが望ましい.恒久的アクセスを作製する前にダブルルーメンカテーテルで血液透析を導入し,全身状態が安定してからアクセスを作製することも考慮する.場合によっては,恒久的アクセスを作製する前に,カフ型カテーテルで数か月透析を行う必要が生じる. 著明な溢水がないにもかかわらず,EF が30%以下の著明な心機能低下を認める場合は,AVF やAVG などの「動静脈シャント」以外のVA の作製を考慮する.腎不全末期は,溢水状態で心負荷がかかっていることが多いため,術前の心機能評価は慎重に行う必要があるが,溢水状態が改善しても心機能低下が続く場合は,上腕動脈表在化や長期透析カテーテル留置を考慮する. 糖尿病や,膠原病,著明な動脈硬化などが原因と/なり末梢循環障害がある患者に対しては,AVF/ AVG 作製後のスチール症候群の発生を十分考慮す る必要がある.特に肘部AVF やAVG 作製後はシャント血流量が多くなるため,スチール症候群の危険性が高くなる1).吻合径を小さくしたり,可及的末梢の動脈に吻合するようにすることが重要であ/る.末梢循環障害が高度な患者では,AVF/AVGの作製を避けるのが望ましい. GL-2:AVF 作製前の動静脈の理学的な検査は,AVF の成否を決定する最も重要なものであり,十分時間をかけて行うことが肝要である.前腕だけでなく上腕の観察も必要である.血管の評価を行う前に,上肢全体の観察を行うことが重要である(表1). まず,左右上肢全体の観察をする.皮膚の状態や浮腫や発赤,肘関節の伸展をチェックする.関節の拘縮が著明な場合は,たとえ血管が良好であっても, AVF の作製に望ましくないことがある.鎖骨下静脈から透析カテーテルが留置されていたり,ペースメーカーや乳癌手術の既往がある場合は,その側に/ AVF/AVG を作製すると,術後に静脈高血圧症を呈することがあるため2〜4),十分病歴をチェックして上肢だけでなく前胸部まで評価することが重要である. .腫脹の有無.片麻痺の有無.肘関節の拘縮の有無.皮膚の乾燥状態や発赤,感染の有無 表1上肢の観察ポイント
動脈に関しては触診が主になる,上腕動脈,橈骨動脈,尺骨動脈を触診する.触診にて動脈拍動と壁の硬さ,石灰化の有無を確認する.動脈の拍動は患者の状態により変化するため,臥位で安静にした状態で行うのが望ましい.石灰化が強い場合は,十分な橈骨動脈血流があっても脈拍を触知することが困難であるが,その場合でもAVF を作製することは可能であり,後述する超音波検査が必要となる.動脈拍動の左右差が大きい場合は,血圧が低い側の動脈の狭窄が疑われる. 静脈は,前腕の橈側皮静脈,尺側皮静脈,肘部の肘正中皮静脈,上腕の橈側皮静脈の視診,触診を行う.次に駆血して同様の視診,触診を行う.1 分程度の駆血では,静脈が十分拡張しない症例があるため,静脈が細い患者では,2 分程度駆血してから触診する必要がある.手関節部に太い静脈があっても途中で途絶していることがあるため,静脈の連続性を確認することが大切である. AVG 作製では,深部静脈に吻合することが多いため,触診だけでは不十分で,後述する超音波検査や血管造影を行い,吻合する可能な静脈を同定する必要がある. GL-3:動静脈の評価は,前述したように視診・触診が 最も重要である.超音波診断法は近年血管の客観的な評価法として注目されている5〜8).超音波検査の目的を表2 に示す. 超音波による動脈の評価は,上腕部の上腕動脈から始めて,肘下部で橈骨動脈と尺骨動脈の分岐部を確認し,前腕に向けて橈骨動脈と尺骨動脈を検査する.動脈は壁の性状や厚さや石灰化の有無のチェックが重要である.術前の血管マッピングの重要性が報告されている. RCAVF を成功するために必要な,橈骨動脈径に関してはさまざまな研究があり,橈骨動脈の最小径は1.5 mm から2.0 mm と報告されている5,9〜11).少なくとも橈骨動脈の動脈径1.5 mm 以上必要であり,それ未満では成功率が低く,中枢での作製を考慮すべきである.ただ,動脈径はAVF 成功のための一つの指標にすぎず,壁の厚さや機能も考慮に入れて判断すべきと考える.AVF 成功に必要な動脈 血流量としては,AVF として吻合する橈骨動脈血/流量の必要量が20〜40 mL/min と一定しておらず12,13),現段階では良好な指標はない. 静脈は,駆血前と駆血後でサイズの変化を記録する.駆血後の静脈径として1.6〜2.5 mm が推奨されている5,9,10,14).駆血後の静脈径が2.0 mm あればRCAVF の作製が可能と考えられる.AVF を成功するためには,吻合する部位のサイズだけではなく,中枢の静脈の連続性が重要である.また肥満のある患者では,静脈が深い位置を走行して,たとえAVF が成功しても,穿刺困難が予想されることがある.超音波検査で皮膚から5 mm 以上深くに橈側皮静脈が存在し,穿刺困難が予想される場合は,人工血管移植術も考慮するべきである. 超音波検査は有用であるが,全例で施行するべきか否かに関しては議論がある.Nursal ら15)は,術前に理学的検査でAVF 作製が可能と判断した症例における,超音波検査の有効性をRCT で評価した.超音波検査を施行した群と施行しなかった群で成績に有意差がなく,良好な動・静脈を有する患者では超音波検査は必須ではないと結論している.動・静脈とも十分太く,視診にて静脈の連続性が確認できる場合は,超音波検査は必須ではない. GL-4:中心静脈狭窄が疑われる病態としては表3 の 場合が考えられる. /このような患者に対しては,AVF/AVG を作製する前に血管造影もしくは3DCT で中心静脈の狭窄や閉塞の有無を診断することが望ましい.ただこのような患者に対しても,血管造影を行わず,反対/側にAVF/AVG を作製することができる. また,血管造影や3DCT は,残腎機能や造影剤の副作用を十分考慮した上で施行することが望ましい. 文献1) Redfern AB, Zimmerman NB:Neurologic and ische- mic complications of upper extremity vascular access .浮腫が著明な患者(特に左右差があり,アクセス作製側の浮腫が著明な場合) .上肢の側副血行路が発達している患者.中心静脈からカテーテルや,ペースメーカー留置の既往 がある患者4) .乳癌術後の患者.上肢,頸部の手術既往のある患者 表3中心静脈狭窄が疑われる病態 .触診にて不明瞭な静脈のマッピング.上腕の尺側皮静脈など,深部静脈の情報を得る. .吻合予定部位の血管径の測定.血管壁(特に動脈壁)の厚さ,石灰化の有無の確認.動脈血流量の測定 表2超音波検査の目的
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(2) AVF の作製と周術期管理 GL-:手関節部もしくはタバチェール(Tabatiere-anatomical snuff box)のAVF を第一選択とする が,最終的には患者の背景や全身状態・局所所見を総合的に判断して作製部位を決定することが推奨される(1-B). GL-:前腕でのAVF 作製が困難,不可能と判断した場合,肘窩もしくは上腕でのAVF 作製を考慮する (1-C). GL-:開存率に影響を与える患者背景を考慮して作製することが推奨される(1-A). GL-:吻合法としては,機能的な動脈側―静脈端吻合が望ましい(2-C). GL-:術直後は動脈スパスムを生じやすく,適切な処置を講ずるのが望ましい(O). GL-:術後に適切なモニタリングとアクセス機能の評価を行い,発育不良の症例に対しては,適切な処 置をとることが推奨される(1-B). GL-:プライマリーAVF では術後2 週間以降の穿刺が望ましい(2-C). GL- :術後の抗血小板薬は,症例ごとに必要に応じて投与することが望ましい(2-C). 解説GL-1:多くのガイドラインが橈骨動脈と橈側皮静脈 を用いた前腕末梢(手関節から2-3 横指中枢)でのAVF(radiocephalic AVF:RCAVF)作製を第一選択としている.前腕末梢のRCAVF の利点として,表1 のようなことがあげられる. Anatomical snuff box の動静脈が十分太い場合は,タバチェール内シャントを作製することも可能であるが,その場合でもRCAVF を選択してもよい.畠山ら1)は,AVF 1,560 例の1,3,5 年二次開存率は部位別にそれぞれタバチェール:61,53, 44%;前腕遠位部橈側:70,59,54%;で同等であったと報告している.ただ,二次開存率はタバチェール内シャントが有意に劣るとの報告もあり,一定していない2,3).ランダム化比較研究はなく両者の優 劣はつけがたく,現時点ではどちらを第一選択としてもよいと考える. 橈側に良好な血管を認めない場合は,尺側でのAVF 作製を考慮する.尺側のAVF としては,尺骨動脈と尺側皮静脈を吻合するのが一般的であるが(ulnobasilic AVF:UBAVF),尺骨動脈が細い場合は,尺側皮静脈を長く剝離して,橈骨動脈と吻合す 1将来のAVF 作製に際してより多くの静脈を温存できる. 2合併症が少ない(スチール症候群,血栓性閉塞,感染). 3成功すれば開存率が優れている. 4穿刺できる静脈が長く取れる. 5閉塞した時に中枢で再建術が可能. 表1前腕末梢のRCAVF の利点
ることも可能である.UBAVF はRCAVF と比べて開存率が低いが4),PTA を行うことで,二次開存率はRCAVF と有意差がないとする報告もある5).前腕尺側AVF は肘窩でのAVF 作製やグラフト移植する前のオプションとしては有用であり,尺側皮静脈が太い場合は考慮すべきである. 可能な限り非利き手で作製するが,非利き手でのAVF 作製が困難な場合は,人工血管移植を考慮する前に,利き手でAVF を作製することが推奨される.前腕末梢でAVF の作製が困難な場合は,静脈を中枢に追っていき吻合可能な部位を決めるのがよく,すぐに肘窩部のシャントを選択してはならない.作製部位は最終的には患者の背景や全身状態・局所所見を総合的に判断して決める.作製部位を決定するときに考慮すべき事項を表2 に示す. GL-2:AVF は肘部や上腕でも作製可能である.この 部位は前腕末梢での作製が困難な場合はよい選択部位である.肘窩で作製する場合は,脱血と返血部位を予測して,作製方法や部位を決定する.肘窩で作製した場合は,肘正中皮静脈と上腕橈側皮静脈に穿刺可能となるが,上腕部の橈側皮静脈が深い位置を走行していると,術後穿刺困難となる.そのような症例では,人工血管移植や上腕動脈表在化も考慮する必要がある.深部静脈にシャント血流が流入しないように,深部静脈交通枝を結紮するか,深部静脈交通枝を吻合に用いるようにするのがよい. 肘窩でAVF を作製する場合,術後の過剰血流やスチール症候群を避けるため,可能な限り末梢の動脈に吻合する.分岐後の橈骨動脈吻合が可能であれば,上腕動脈よりも橈骨動脈に吻合するのが望ましい.またシャントの吻合径は4〜5 mm 程度として,過剰血流にならないように気をつける.上腕で作製する場合,橈側皮静脈と上腕動脈の距離がある時は,人工血管で両者をブリッジして内シャントを作製することが可能である. 上腕の橈側皮静脈がAVF 作製に適しないと判断した場合は,上腕で尺側皮静脈を表在化し,肘部で上腕動脈と吻合するtransposed brachial-basilic arteriovenous fistula(TBBAVF)が可能である. TBBAVF を施行する場合は,必ずエコーまたは血 管造影にて尺側皮静脈の走行,サイズ,連続性,上腕静脈との合流部をチェックし,剝離できる長さを評価することが重要である.AVG よりもTBBAVFの開存率が良好であると報告されているが6,7), TBBAVF は穿刺部の狭窄が生じやすく,また閉塞するとこの静脈を今後グラフト移植に使用できなくなるため,AVG と十分に適応を吟味して行うことが望ましい. GL-3:女性,高齢者,糖尿病患者ではプライマリーア クセスの開存率が低いとする報告が多い.高齢者ではAVF の開存率が有意に低い8,9).Woods ら8)は245 例のAVF 不全について検討し,65 歳以上の患者では,そうでない患者と比べて開存率が有意に低いと報告している.高齢者に対するAVF の成績のメタアナリシスでは,12 か月,24 か月において,高齢者では,非高齢者と比べて,RCAVF 不全の割合が有意に多く,高齢がRCAVF の開存に影響することが示されている10).また,女性11,12),糖尿病患者12,13)では開存率が低いとする報告が多い.これらのバックグラウンドは,AVF の作製部位を判断する上で重要であるが,最終的には全身状態,血管の状態を考慮して作製部位を決めるべきである. GL-4:AVF では,動脈側―静脈端の吻合法が一般的 に行われている.Brecia-Cimino の原法である動脈側―静脈側の吻合はsore thumb syndrome を呈することが多く,また過剰血流になる傾向が高い.また,動脈端―静脈端吻合は,スチール症候群や,吻合部瘤が生じにくいとする考え方があるが,プライマリーAVF では,動脈径が小さいために吻合口が規定され,動脈端―静脈端吻合では十分な血流を得ることが難しいと考えられる.久木田ら14)は,端端吻合,側端吻合,側側吻合の血流量を比較したところ,有意差を認めなかったものの,端端吻合で血流量が少ないことを示している14).吻合の容易さ,初期不成功率の低さ,合併症の少なさを考慮すると機能的な側端吻合が推奨される. GL-5:AVF 作製直後より,動脈スパスムを生じる. 特に動脈硬化の軽度な症例で多くみられる.このスパスムは通常60 分以内に解除するが,強いスパスムを生じ,一時的にシャントフローが消失するとその間に血栓を形成して,スパスム解除後にシャントが閉塞する危険がある. そのため,術直後よりシャントスリルをチェックして,スリルが減弱したら,ヘパリンまたは低分子ヘパリンを2,000〜3,000 単位を静注するのが望ま (ア) 動脈の径と壁の石灰化(イ) 静脈の径と連続性(ウ) 動静脈の走行と相互の位置関係(エ) 患者の全身状態,予後(オ) 末梢循環不全の有無(カ) 心機能 表2作製部位を決定するのに考慮する因子
しい.ヘパリンを投与しておけば,一時的にスリルが消失してもほとんどの症例で,30〜60 分でスリルを感じることできる.術中にルーティーンにヘパリン投与する場合は,術後の出血に十分注意する. GL-6:AVF 作製後の発育不良の定義はないが,初回 の透析で必要とする血流が得られない場合は,発育不良を考えてよい.1 か月以内に血液透析に導入とならない場合は,定期的にアクセスの機能評価を行うことが望ましい. 大平ら15)は23 施設にアンケート調査を行い, RCAVF 5,007 例の初期不成功率を計算した.初期不成功率は0.8%から23.6%(平均7.6%)と施設間でかなりの違いが認められたが,その約70%で修復が可能であったと報告している.AVF の初期不成功率はRooijens ら16) のmeta-analysis では15.3%(6〜34%).Allon ら17)の報告ではAVF の初期不成功の割合が2〜53%と報告者の間でもばらつきが大きい. 術後の発育不良の影響に関する最近のシステマティックレビューでは,術前の臨床的な危険因子が21%,術前の血行動態が24%の術後発育不良を説明できるのに対し,術後の血行動態は50%を説明することができることを示している18).すなわち,発育不良を予測するには術後の血行動態を評価することがより効果的となる.機能評価としては理学的検査(シャント音・スリル)を行い,発育不良が疑われる場合は,超音波検査または血管造影を行って原因を精査することが望ましい. 村上ら19)は,AVF 術後1 週間以内にRI(resistive index)を測定し,VA 造設後6 か月の開存率を比較した.RI が0.6 未満の39 例の開存率は92.3%で,0.6 以上の46 例の69.6%よりも有意に高値であり,術後早期にRI 0.6 以上の症例は, AVF の開存率が低く,狭窄の有無を精査することが望ましいと報告している.橈骨動脈の断面積8.5 / mm 2または,静脈流量が425 mL/min 以上あれば,それぞれ95%と97%でそのシャントが発育して使用できることが報告されている20).発育不良の症例に対しては,超音波検査または,血管造影を行って,静脈狭窄の有無を確認し,有意狭窄があればPTAもしくはシャント再建術を施行することが望ましい. 有意狭窄がない場合は,動脈のフローが少ないと考えられ,さらに中枢での再建術,上腕動脈表在化,人工血管移植術を考慮する.また,側副静脈への血流のため,静脈本幹の血流が低下している場合は,側副静脈の結紮術が有効である. GL-7:DOPPS のデータでは,Rayner ら21)は,AVF 作製後43〜84 日後に穿刺したAVF に比べて14 日以前に穿刺した症例では2.27 倍アクセス不全をきたすリスクが増加すると報告している.AVF を作製してから最初に穿刺するまでの平均期間は,日本25 日,イタリア27 日,ドイツ42 日,スペイン80日,フランス86 日,イギリス96 日,アメリカ98 日と各国でばらつきがみられた.諸外国と比べて日本では,早期に穿刺する傾向が強い.初回透析時の/ QB は,日本が160 mL/min,欧州各国は200〜265 / / mL/min,米国は300 mL/min と差があるが,このことは穿刺までの期間の差に関係しているかもしれない.静脈が十分太くシャント血流量が良好で,カテーテル挿入して透析するより,早期穿刺のほうにメリットがあると考えられる場合は,14 日以内の穿刺も可能である. GL-8:AVF 術後の抗血小板薬に関してはいくつかの RCT が行われており,Ticlopidine,Aspirin に関しては,有効であるとする報告がある22〜25). ただし,日本ではRCT の報告はなく,AVF 術後のルーティーンな抗血小板薬の投与は推奨できない.動脈硬化や静脈が細く,術後のシャントフローが少ない患者,血小板機能が亢進している患者に対しては,必要に応じて抗血小板薬を投与することが望ましい. 文献1) 畠山卓弥,氏家一知,古川猛,野中達也,星野正信: ブラッドアクセス23 年1895 例の成績からみた内シャントの術式選択.日血管外会誌17:557-564,2008 2) 森良孝,惣明靖元,成清武文,中本雅彦,江頭通弘, 武田一人:当院におけるsnuffbox 内シャントの開存率の検討.腎と透析63(別冊アクセス2007):239-242, 2007 3) Simoni G, Bonalumi U, Civalleri D, Decian F, Bartoli FG:End-to-end arteriovenous fistula for chronic haemodialysis:11 yearsʼ experience. Cardiovasc Surg 2:63-66, 1994 4) 赤松眞,春口洋昭,唐仁原全,中島一朗,渕之上昌 平:尺側皮静脈を用いた内シャントにおける累積開存率の検討.透析会誌34:1175-1179,2001 5) 宮川尚之,久保田和義,荒瀬勉,井上彰,清水喜 徳,伊藤洋二,草野満夫:尺側内シャントのPTA による管理と治療.透析会誌39:1475-1480,2006 6) Woo K, Doros G, Ng T, Farber A:Comparison of the efficacy of upper arm transposed arteriovenous fistulae and upper arm prosthetic grafts. J Vasc Surg
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(3) AVG の作製と周術期管理 GL-:心機能上シャントの心負荷に耐え末梢循環不全もないが,AVF を作製することができない症例 に作製する(1-B). GL-:植え込み部位は上肢を第一選択とするが,下肢も可能である(1-B). GL-:植え込み形態はストレート型,ループ型が可能である(1-C). GL-:人工血管はePTFE 製,PU 製またはPEP 製がされるが,その特性を把握したうえで使用するべ きである(1-C). GL-:麻酔は局所麻酔(上腕神経ブロックを含む)でも可能である(2-C). GL-:術中へパリンの全身投与は必要とする場合もある(2-C). GL-:予防的抗生剤投与は術前あるいは術中投与が奨められる(O). GL- :一次開存率は術後1 年60%,二次開存率(Assisted patency)は術後1 年80%,3 年60%,5 年 40%を到達目標とする(1-C). 解説GL-1:VA としての開存性および合併症の頻度は AVF が優れている.このためVA の作製はAVFを第一選択とするが適切な皮静脈が認められない場合,AVG を選択する1〜3).AVG は作製後3 週間に/おいて1,000 mL/min 前後のアクセス血流量を有しているため術後早期から心負担がかかるものと考えられる4,5).しかし,この心負担に耐え得る心機能上の限界はいまだ明らかにはされていない.心予備能が十分で,血行再建術の適応となる虚血性心疾患を有していないことなどが望ましいと考えられる.このため術前に胸部X-P,ECG,心エコー検査を行う必要がある.閉塞性動脈硬化症,糖尿病性大血管障害等により末梢循環不全を呈している症例にAVGを作製すると,虚血を増悪させ手指の壊疽に至る可能性があることに注意を要する. GL-2:AVG は動・静脈の径が太い部位(すなわち中 枢側)に植え込むほど血流量が多く開存率がよい6).しかし将来の植え込み可能部位を多く残すために通常は前腕から開始する.肘窩部に適当な太さの静脈がみつけられない場合は,肘上部で尺側皮静脈または上腕静脈に吻合する.麻痺等により上肢の伸展が制約される場合や定期外来受診が困難な場合は,初回から上腕に植え込みを行う.大Òに植え込むと感染や血行障害をきたした場合の障害が上肢より大きいため,上肢でAVG が作製できなくなった症例が適応と考えられる3). GL-3:上肢ではストレート型,ループ型が可能である. 技術的に比較的単純であるストレート型は適応例が少なく,一方,ループグラフトは吻合する血管の選択範囲も穿刺部位も広くとれるため,作られる頻度
が高い7).前腕ストレート型は橈骨動脈が十分太く良好な症例に作る.下肢では大Ò部にループ型で留置することが多い. GL-4:本邦では現在3 種類の人工血管が使用可能で ある8).expanded-polytetrafluoroethylene(ePTFE)グラフトはこれまでの経験によりVA 用人工血管として抗感染性,長期開存性,操作性において他の材質より優れていることが示されている1).しかし,植え込み後穿刺使用まで2〜3 週間の待機期間を要すること,約5%の頻度で血清腫が発生することが問題であった.これに対してpolyurethane (PU)グラフトは早期穿刺が可能であり,早期・中期の開存性もePTFE とほぼ同等であると報告されている9,10).しかし,グラフトが屈曲しやすいことが問題点である11).ePTFE グラフトには動脈側を細くしたtapered あるいはstepped グラフトや静脈側を頭巾状にふくらませたカフ付きグラフトがある.カフ付きグラフトによりグラフトの開存率が向上したとの報告もある12〜14).またヘパリンをコーティングすることにより開存率が上がった報告もある15).最近では本邦で早期使用が可能であり,穿刺がし易く止血性にも優れたpolyolefin-elastomerpolyester(PEP)グラフトが2006 年に発売された.開存率においてはePTFE グラフトやPU グラフトと同等度以上とされている16,17). GL-5:AVG 植え込み手術における麻酔は大部分が局 所麻酔でこと足りる.しかし,腋窩静脈や内頸静脈にアプローチする場合は全身麻酔が必要となる18). GL-6:内シャント作製直後にはシャント血流量は上 昇するが5 分後くらいより血管攣縮により次第に減少し,攣縮が強ければそのまま閉塞する.高血圧や動脈硬化がある場合は血管壁が硬化しているため強く攣縮することはない.攣縮をおこした症例には手術操作終了後ヘパリンを2,000 単位程度,静注すると効果のある場合がある19).開存率向上の目的でジピリダモールとアスピリンの併用を行ったDixonら20)の報告では,1 年一次開存率が28%(コントロール23%:p<0.05)に上昇した.しかし本邦の1 年一次開存率46.3% 17)と比較すると著しく低い. GL-7:AVG 植え込み手術は無菌手術と考えられるの で,予防的抗生剤投与は術中のみでよいとする意見もあるが,術後3 日間程度投与するとの意見も多い. GL-8:AVG の術後1 年目の一次開存率は35.3〜 64.5% 17,21),二次開存率は52〜85.5%と報告されている21〜26).AVG 閉塞の主要な原因は流出路静脈に発生する狭窄であり,狭窄に対するモニタリングを行い,閉塞する前に狭窄を積極的に治療することに より,二次開存率は向上する.したがってAVG の二次開存率術後1 年80%,3 年60%,5 年40%は到達可能な目標であると考えられる. 文献1) 酒井信治:人工血管使用のブラッドアクセス.臨牀透 析12:120-130,1996 2) 大平整爾,阿部憲司,今忠正:ブラッドアクセスの 長期開存性および関連する危険因子.臨牀透析12: 155-165,1996 3) Akoh JA:Prosthetic arteriovenous grafts for hemo- dialysis. J Vasc Access 10:137-147, 2009 4) Hiranaka T:Tapered and straight grafts for hemo- dialysis access:A prospective, randomized comparison study. In ́Vascular access for hemodialysis-VII¶. ed. Henry ML, Chicago:W. L. Gore & Associates and Precept Press, 219-225, 2001 5) 平中俊行,山川智之,金昌雄,寺田隆久:アクセス 血流量によるグラフト内シャント管理.腎と透析53 (別冊アクセス2002):24-27,2002 6) Kheriakian GM, Roedersheimer LR, Arbaugh JJ, Newmark KJ, King LR:Comparison of autogenous fistula versus expanded polytetrafluoroethylene graft fistula for angioaccess in hemodialysis. Am J Surg 152:238-243, 1986 7) 太田和夫:人工血管の適応と移植法.pp15,さらば シャントラ,東京医学社,東京,2003 8) 久木田和丘,川村明夫:人工血管の選択と新素材.透 析患者の合併症とその対策.(社)日本透析医会合併症対策委員会編17:41-47,2008 9) 大坪茂,森典子,長井幸二郎,松尾研,前原陽 子,新田孝作,秋葉隆,二瓶宏:血液透析患者におけるポリウレタン製人工血管(Thoratec®Vascular Access Graft,TVAG)とExpanded Polytetrafluoroethylene Graft(E-PTFEG)の早期開存率の比較.透析会誌35:1125-1129,2002 10) 平中俊行,中村順一:ブラッドアクセスのための人工 血管としてのポリウレタングラフトとePTFE グラフトの比較―prospective randomized study―.腎と透析58:379-381,2005 11) 天野泉,太田和夫,酒井信治,葛原敬八郎,阿部富 弥,内藤秀宗:ポリウレタン製人工血管(Thoratec Vascular Access Graft)の特徴とその臨床使用報告.腎と透析41:263-268,1996 12) Ko PJ, Liu YH, Hung YN, Hsieh HC:Patency rates of cuffed and noncuffed extended polytetrafluoroethylene grafts in dialysis access:a prospective, randomized study. World J Surg 33:846-851, 2009 13) Sorom AJ, Hughes CB, McCarthy JT, Jenson BM, Prieto M, Panneton JM, Sterioff S, Stegall MD, Nyberg SL:Prospective, randomized evaluation of a cuffed
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(4) 動脈表在化の作製と周術期管理 GL-:動脈表在化の適応は,表1 の状態の場合に推奨される(1-C). GL-:動脈表在化の作製部位の第一選択は,上腕動脈がよい.大-動脈は他の部位での作製が困難な時 に選択すべきである(1-C). GL-:動脈表在化の皮膚切開は,表在化動脈から十分な距離をとり切開線が穿刺部と重ならないように すべきである(1-C). GL-:動脈表在化の皮膚からの深さは,深すぎず,また皮膚の壊死が起こらないように浅すぎず,が大 切である.長さは穿刺部分が十分取れる程度の長さが必要である(1-C). 解説動脈表在化は通常の内シャントが何らかの理由で作製できない症例で選択されるVA である.表在化された動脈は脱血側に使用し,通常は皮下に存在する表在静脈の穿刺が毎回必要となる1). GL-1:動脈表在化の適応(表1)としては,大きく四 つに分けられる.第1 に心機能が低下しておりAVF(AVG)を作製すると心不全を呈すると考えられる症例2),第2 に,血管が荒廃しAVF(AVG)の作製が困難な症例3,4),第3 に,AVF(AVG)によるスチール症候群を呈している症例,第4 に頻回にアクセストラブルを発生する患者のバックアップとしてのものである. AVF(AVG)が心機能に影響を与えている2,5)ことは事実である.しかしながら,どの程度の血流量で悪影響を及ぼすのか,心不全の直接原因になって いるのか等のエビデンスは少ない.そこで,シャントが存在し心不全症状のある透析患者33 例に対し,ドライウェイトのコントロールを行い,心不全が改善しなかった26 例と心不全が改善した7 例に分けて心機能について検討した.シャントを閉鎖またはシャントが流れない状況を作り,その前後の心機能を心エコー・スワンガンツカテーテルにて評価した. 26 例はシャント閉鎖と動脈表在化を行い,7 例はシャントを圧迫しその前後の心機能を評価した.シャント閉鎖と動脈表在化を行った26 例中21 例に/心不全の改善がみられた.シャント閉鎖術前/後の/ /心拍出量は,4.45±1.17/3.71±1.11 L/min(p< / 0.01),左室駆出率は30.9±9.40/43.3±13.8(p< 0.01)と改善した.改善のみられなかった5 例は比較的短期に死亡した.シャント閉鎖を行わなかった .内シャントによる心負荷に耐えられないと予想される症例,左室駆出率(EF)が30〜40%以下を動脈表在化作製の目安とする. .表在静脈の荒廃により内シャント手術が困難な症例.吻合する適当な静脈が存在しない症例.AVF でスチール症候群が生ずると考えられる症例,もしくはAVF (AVG)を使用していて,すでにスチール症候群を呈している症例.AVF を作製すると静脈高血圧症をきたすと考えられる症例,またはすでに静脈高血圧症をきたしている症例.頻回にアクセストラブルを発生する患者のバックアップ.透析療法以外でも,長期にわたり血液浄化療法を必要とする,例えば 家族性高脂血症患者などで作製されることがある. 表1動脈表在化の適応
7 例はドライウェイトを下げることで心不全の改善がみられた.これら7 例のシャント圧迫前後の心拍/ /出量は,4.22±1.24/3.72±1.26 L/min(p<0.01),左室駆出率の平均は45.3±17.6 であった. これらのことよりシャントが心機能に悪影響を与えている症例が存在することが明らかになった.シャントが心不全の原因となっている可能性を常に考慮し,シャント閉鎖・動脈表在化という手段も念頭に置くべきである.十分な除水がなされている症例で,EF が30%以下であれば非シャントのVA を作製すべきであるし,EF が30〜40%では非シャントのVA 作製を考慮すべきである. 動脈表在化を施行する症例では,長期留置カテーテルの適応になることが多いが,いずれを選択するかは,1患者の希望とQOL,2返血できる静脈の有無,3末梢循環,4上腕動脈の太さと石灰化の有無などによって,症例ごとに判断すべきである. GL-2:表在可能な動脈は,肘部から上腕にかけての上 腕動脈か大*動脈かのいずれかである4,6).わが国では90%以上が上腕動脈を用いている7).上腕動脈の利点としては,1手術が容易,2合併症が少ない, 3局所麻酔で施行可能などがある.大*動脈の表在化では術後早期にリンパ瘻を起こすことが多い.しかしながら上手くでき上がった大*動脈は長期に使用している割合が高いこの理由としては,表在化する範囲が長いことや,その後のアクセスの作製が困難であり,ある程度瘤を形成しても使用し続ける傾向が高いことがあげられる. GL-3:AVF と異なり,表在化動脈の術後の経時的な 発育は望めない.手上腕動脈表在化の場合,上腕動脈の走行よりやや尺側で皮膚を縦切開し,表在化動脈と皮膚切開線が重ならないように注意する.心機能が低下していない症例では深部静脈または尺側皮静脈を用いてAVF を作製し動静脈ともに表在化するという方法もある.大*動脈表在化では手術範囲が大*部の広い範囲に及ぶため,腰椎麻酔または全身麻酔下に行うことが望ましい.上腕動脈表在化と較べて大*動脈のそれは剝離面が多いため,リンパ液の貯留や皮膚壊死等の合併症が多くみられるので十分な注意が必要である8). GL-4:表在化部分の皮膚が薄すぎると血行障害を起 こし穿刺部が長持ちしない.表在化した動脈の上にわずかに脂肪組織が残る程度が適当である.皮膚切開の長さは穿刺部分が十分に取れるような長さが求められる8).その他の注意:動脈を表在化した直後は血管と周囲組 織の癒着が軽度であり,抜針後に血腫を形成することが多い.そのため術後2 週間以上(できれば3 週間)経過し,創部が完全に治癒してから穿刺することが望ましい8).止血は用手的に行うべきであり,血液が浸み出さない最低の圧がよい.動脈表在化の止血圧は20〜30 mmHg 位がよい. 動脈表在化の大きな問題点は,返血路の確保である.心機能の著しい低下がなければ,何らかの方法で内シャントを作製するかもしくは,グラフトを移植することが可能である.心機能が著しく低下している場合は,長期留置型のカテーテルの留置等を考慮しなければならない. AVF の静脈に較べると,表在化動脈は穿刺部が短いため動脈瘤や狭窄を形成し易い.動脈に生じたこれらの合併症は,その後の治療を非常に困難にするため可能な限り広範囲への穿刺が推奨される.表在化動脈が使用できなくなる理由としては,動脈側の問題として,瘤や狭窄,穿刺困難,血腫などがあげられる.また,表在化した動脈に問題がなくても静脈の荒廃のために使用しなくなる場合があり,静脈の確保は重大な問題である. 動脈表在化の合併症では,感染・動脈瘤・狭窄,閉塞に注意しなければならない8).感染では,感染部を除去してドレナージおよびバイパスを置く必要がある.また感染部を迂回できる場合は人工血管または静脈グラフトでバイパスする.感染部位そのものの動脈修復には人工血管を用いてはいけない.動脈瘤では,急速に増大するものや皮膚に光沢を生じてきたものは早めの手術が必要である.狭窄,閉塞で末梢の虚血症状を生じた場合には,早急にインターベンション治療もしくは外科的治療が必要である.しかしながら,閉塞であっても末梢循環障害を生じなければ経過観察可能である. 文献1) 日本透析医学会:「慢性血液透析用バスキュラーアク セスの作製および修復に関するガイドライン」.透析会誌38:1491-1551,2005 2) 金平泰,高杉昌幸,中本雅彦:ブラッドアクセス設 置による循環動態への影響.臨牀透析9:47-54,2000 3) 松尾賢三,安永親生,中本雅彦,柳田太平,松尾俊哉, 合屋忠信:動脈表在化の成績と合併症.腎と透析別冊アクセス2000:33-35,2001 4) 合屋忠信:動脈表在化.標準ブラッドアクセス,合屋 忠信編,p59-62,診断と治療社,東京,1999 5) 室谷典義:Vascular access と血行動態,透析患者の循
環器疾患に対する最新治療.小坂真一編,p46-54,南江堂,東京,2006 6) NKF-DOQI:Clinical practice guidelines for vascular access. Am J Kidney Dis 30(Suppl 3):s155, 1997 7) 阿岸鉄三,春口洋昭:慢性血液透析患者用ブラッドアクセスの現況―全国透析施設集計例の分析を中心 に―.臨牀透析16:1447-1452,2001 8) 室谷典義,春口洋昭:動脈表在化法:適応・手技・管 理,バスキュラーアクセス―その作製・維持・修復の実際.p49-57,中外医学社,東京,2007
(5) カテーテル挿入法と周術期管理 GL-:非カフ型カテーテルは主に緊急に血液浄化が必要な病態に対して,短期間使用されることが推奨 される(O). GL-:カフ型カテーテルは主に長期的血液浄化目的で概ね3 か月以上の期間,留置使用されることが推 奨される(O). GL-:カフ型カテーテルの適応は,1AVF・AVG 造設不能例,2高度の心不全症例,3四肢拘縮,認 知症などによる穿刺困難例,透析中の事故抜針リスクの高い症例など患者病態から本法が最も適切なVA と考えられる症例,4小児の血液透析例などである(2-C). GL-:非カフ型カテーテル留置は個室やパーテーションを用いた,十分に清潔な環境内でセルジンガー 法を用いて行うことが推奨される(1-C). GL-:カフ型カテーテル留置は手術室に準じた清潔な環境でX 線透視装置を用いて,セルジンガー法に より留置することが推奨される(1-C). アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート GL--:術直後には適切な部位のX 線撮影を行うことが推奨される. GL--:X 線撮影では刺入部から先端までカテーテルが確認されることが推奨される. GL--:X 線撮影ではカテーテル留置手技に伴う合併症の有無が確認されることが推奨される. GL-:周術期には出血性の合併症等に対する準備と対処が重要であり,抗凝固剤・抗血小板剤は適切な 期間,術前より休薬することが望ましい(1-C). アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート GL--:術後出血があれば適切な止血操作を行い,必要な観察が行われることが望ましい. GL--:術後早期の脱血不良・返血圧上昇はカテーテル屈曲が原因の場合があるので,早急な処置が 行われることが推奨される. 解説GL-1:当ガイドライン委員会は血液透析用カテーテ ルを理解し易くし,診療報酬制度との整合性を高めるため名称の検討を行った結果,現行ガイドラインの短期型バスキュラーアクセスカテーテルと長期型バスキュラーアクセスカテーテルの名称を廃止し,非カフ型カテーテルとカフ型カテーテルの2 種類に分類することとした1).血液透析カテーテルの名称は各国でさまざまな名 称が使用され,世界的に標準化されていないが,多くはカテーテルの形状による呼称を用いている2〜4).したがって本ガイドラインでは本邦のカテーテル透析の適応実態に基づいて,使用目的と形状をできるだけ一致させる分類を採用した.「短期型」「長期型」の表現は本ガイドライン第1 版の発表前からすでに広く用いられてきたが,その名称はカテーテルの形状を特定するものでない.医療者はカテーテルの使
用目的によって適切な製品を選択する必要がある. 一方,GL-3 に示したカフ型カテーテルの使用目的と異なり,長期使用以外の血液透析導入から腎臓移植まで,または種々の理由からVA 設置までの間などに,繋ぎ(つなぎ)使用される場合がある.本ガイドラインは非カフ型またはカフ型カテーテル使用の選択を目的によって制限するものではないが,これらの症例ではカテーテル使用のメリットとデメリットを十分に勘案して適応の可否を決定されることが望ましい. 2010 年4 月より診療報酬改定において非カフ型およびカフ型カテーテルの留置手技料が収載された1).これらのカテーテルを治療に用いる医療者にとってさまざまな名称が混在することは今後の用語の混乱を招く可能性があり,当ガイドライン委員会としては本邦の保険診療上の名称とガイドライン上の名称の整合性をできるだけ維持する必要があると判断した. GL-2:非カフ型カテーテルの慢性血液透析患者治療 における役割は,1末期腎不全患者の緊急血液導入時,2他のVA が使用不能となった場合の緊急避難用VA であり,概ね1 か月程度が使用限度である.感染対策を十分に行うことにより長期間維持可能な症例は存在するが,本来可及的速やかに,より安全なVA の設置を模索すべきである5,6). GL-3:カフ型カテーテルの適応は,1四肢の血管荒 廃低血圧などの理由によるAVF・AVG 造設不能例,2高度の心不全7,8),3高度の四肢拘縮や穿刺痛不耐,不意の体動などにより穿刺そのものが危険な症例,透析中事故抜針などの可能性が高いため,本法が最も適切なVA と考えられる場合である. 4本法は小児における適切なVA の一つである9,10).AVF・AVG 造設不能時に動脈表在化と本法のいずれを選択するかは,患者の病態を十分に検討したうえで判断されることが望ましい11). GL-4:非カフ型カテーテルの留置は以下の手順で行 うことが推奨される12,13). 1手技が修練を積んだ術者またはその監督下で行 われること. 2個室またはパーテーションを利用して,できるだ け清潔な環境が確保されること.また,手技はマキシマルプレコーション下で行われること. 3静脈穿刺は超音波装置を用いて行われること. 手技はセルジンガー法を基本とすること. 4術直後に適切な部位のX 線撮影を行い,カテー テル先端位置と手術に関連する合併症のないことが確認されること14,15). 5術後は穿刺部からの出血に関する適切な観察が 行われること. GL-5:カフ型カテーテル留置術は以下の手順を原則 とすることが推奨される12〜15). 1手術が手術室またはそれに準じた清潔度を確保 できる環境と方法で行われること. 2手術がX 線透視装置を用いて,セルジンガー法 で行われること. 3静脈穿刺は超音波装置を用いて安全かつ正確に 行われること.穿刺目標となる静脈の第一選択は右内頸静脈であり,患者の状況により左内頸静脈,右大n静脈,左大n静脈も選択肢となり得る.ただし,腎臓移植が予定されている患者では腸骨静脈狭窄を生じさせないため,大n静脈からのカテーテル挿入は避けることが望ましい. 4カテーテル先端は右房内に浮遊した状態である ことが望ましい.上大静脈内,無名静脈内にカテーテル先端が位置する場合,留置直後は脱血・返血の問題なくとも将来的に脱血・返血に異常をきたす場合がある.また上下大静脈内カテーテル先端を位置させる場合,先端孔は血管壁に当たらないように位置させるよう留意することが望ましい16,17). 5カテーテル先端の位置はカテーテル機能を決定 する重要な要素であり,以下の2 点において技術的熟練を要する場合がある. ) 術者はカテーテル先端位置が首や上肢の動 きにより「ずれ」が生じることを認識しておくことが望ましい. ) 術者はカテーテル先端位置がカテーテルの 挿入部位,カテーテルの有効長,製品の特性により異なる場合があることを認識しておくことが望ましい. GL-5-1:術直後に適切な部位のX 線撮影が行われ, カテーテルの位置と手術に関連する合併症のないことが確認されることが推奨される12). GL-5-2:とりわけ1カテーテル先端が心陰影または 静脈陰影からの逸脱,2カテーテルの一部の折れ曲がりまたは高度の屈曲,3血胸,気胸の所見の項目には注意が払われることが望ましい12). GL-5-3:出血,気胸などをチェックする必要がある. GL-6:周術期には出血に対して適切な処置が行われ, 合併症が生じていないか必要な観察が行われることが推奨される12,16). GL-6-1:術直後の合併症で最も多いものは皮下剝離
部分または静脈穿刺部からの出血である.穿刺部からの出血では頸部が膨隆し,同時に自発痛を訴える場合が多い.清潔な状況で開創し,止血操作を行うことは最も確実な方法であるが,多くの場合は軽い圧迫を維持することで止血する.皮下トンネル部分からの出血は出口部より少量ずつ長時間にわたり続くことが多い.スポンジ等の柔らかい材質の材料を用いて圧迫を持続的に行うことによりほとんどの例は止血する. 中心静脈にカテーテルを留置する場合の重大な合併症は主に穿刺に関係する出血性の合併症であり,その他にカテーテル先端位置異常や(特に内頸静脈穿刺症例における)カテーテル屈曲に関係する脱血不良・返血圧上昇がある.穿刺に関する合併症のうち頸動脈,腕頭動脈など動脈の誤穿刺により出血,頸部または縦隔血腫形成,血胸は緊急の対応が必要な合併症であり,救命目的に緊急の止血術を行う必要がある.カテーテル位置異常の中でもカテーテルの右心室内迷入は不整脈の原因となるため位置是正が推奨される. GL-6-2:カテーテル屈曲に関係する脱血不良・返血圧 上昇は術後のレントゲン写真により判断が可能である.適切な方向でのレントゲン撮影を行い,屈曲の有無を診断する.もし,留置術直後に脱血または返血が突然困難になりレントゲン写真で高度の屈曲が明らかとなった場合は,頸部の皮下の剝離不十分が原因のことが多いため,できるだけ早期に再開創し剝離部分の拡張とカテーテルの屈曲を是正してスムースな弧を示すよう適切な処置が行われることが推奨される. 術後早期の血液透析では低分子へパリンなどの使用が考慮されることが望ましい. 文献1) 医科点数表の解釈.p453-454,平成22 年4 月版,社 会保険研究所2) Perini S, LaBerge JM, Pearl JM, Santiestiban HL, Ives HE, Omachi RS, Graber M, Wilson MW, Marder SR, Don BR, Kerlan RK Jr, Gordon RL:Tesio catheter: radiologically guided placement, mechanical performance, and adequacy of delivered dialysis. Radiology 215:129-137, 2000 3) Davanzo WJ:Efficacy and safety of a retrograde tunneled hemodialysis catheter:6-month clinical Experience with the Cannon Catheter chronic hemodialysis catheter. J Vasc Access 6:38-44, 2005 4) Vascular Access 2006 AJ of Kidney Diseases 48 (Suppl. 1):(July), 2006 5) 江川宏寿,久木田和丘,山田理大,安部美寛,津田一 郎,飯田潤一,小野寺一彦,坂田博美,堀江卓,玉置透,目黒順一,米川元樹,川村明夫:維持透析患者における中心静脈狭窄23 症例(25 病変)の検討.腎不全外科2006腎と透析60(別冊):31-33,2006 6) 佐藤元美,葛谷明彦,堀江勝智,加納康子,露木幹人: 長期留置型バスキュラーカテーテルの臨床成績と今後の展開.腎と透析別冊2008:77-79,2008 7) 宮田昭,小篠揚一,本田理,豊田麻理子,上木原 宗一,早野俊一:長期留置型ブラッドアクセスカテーテルの管理上の課題と適応.腎と透析別冊2004: 47-49,2004 8) 三村維真理,栗田宜明,崔啓子,西隆博,三瀬直 文,多川斉,杉本徳一郎:血液透析導入患者におけるバスキュラーアクセスの選択―背景因子の検討―.透析会誌41:311-315,2008 9) 松本尚子,服部元史,深澤哲,鈴木俊明,大西麻紀 子,浅野貴子,近本裕子,永渕弘之,高橋和浩,渡辺誠司,秋岡祐子,宮川三平,白髪宏司,川口洋,甲能深雪,伊藤克己:小児維持透析における長期留置型ダブルルーメンカテーテルの使用経験―特に,合併症に関する検討―.透析会誌35:29-33,2002 10) Fadel FI, Abdel Mooty HN, Bazaraa HM, Sabry SM: Central venous catheters as a vascular access modality for pediatric hemodialysis. Int Urol Nephrol 40:489-496, 2008 11) 小川智也,原田悦子,金山由紀,星綾子,田山陽資, 朝倉受康,前田忠昭,松田昭彦,松村治,御手洗哲也:長期型バスキュラーカテーテルの適応に関する検討.透析会誌42:245-250,2009 12) 大平整爾,久木田和丘,天野泉,内藤秀宗,編著: バスキュラーアクセスその作製・維持・修復.p42- 48,中外医学社,東京,2007 13) Falk A, Lookstein R, Uribarri J, Shen C, Teodorescu V, Vassalotti JA:Vascular screening prior to placement of tunneled and cuffed hemodialysis catheters. J Vasc Access 3:169-173, 2002 14) Forauer AR, Glockner JF:Importance of US findings in access planning during jugular vein hemodialysis catheter placements. JVIR 11:233-238, 2000 15) Macdonald S, Watt AJ, McNally D, Edwards RD, Moss JG:Comparison of technical success and outocome of tunneled catheters inserted via the jugular and subclavian approaches. JVIR 11:225-231, 2000 16) 久木田和丘,古井秀典,安部美寛,小野寺一彦,米川 元樹,川村明夫:長期バスキュラーアクセスカテーテル先端位置.臨牀透析24:107-111,2008 17) Vesely TM:Central venous catheter tip position:a continuing controversy. J Vasc Interv Radiol 14:527- 534, 2003
第4 章バスキュラーアクセスの日常管理(1) 穿刺法 GL-:穿刺前にはシャント肢を観察することを推奨する(O). GL-:AVF の使用法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート GL--:AVF 作製後,使用までの間に適切な待機期間をおくことが望ましい(O). GL--:AVF の新しい部位を穿刺するときには,穿刺しようとしている血管が拡張した動脈である のか,動脈化した静脈であるのかを確認することを推奨する(O). GL--:AVF の穿刺部位としては,吻合部直近を避け,また透析中にVA のある側の腕を動かして も穿刺針の針先が移動しない場所を選択することが望ましい(O). GL--:血液の再循環を避けるため,動脈側穿刺部位を静脈側穿刺部位よりも吻合部側に選択し,両 者の間はできるだけ離すことが望ましい(O). GL--:毎回穿刺部位を変え,AVF のできるだけ広い範囲にまんべんなく穿刺することが望ましい (2-D). GL--:穿刺痛が強い患者には,リドカインテープの貼付やボタンホール穿刺などを考慮すること が望ましい(O). GL--:AVF の穿刺角度は25°前後であることが望ましい(O). GL-- :抜針・止血の際には,まず穿刺針の固定用テープを剝がし,針の刺入部に滅菌ガーゼを当て 穿刺針を抜去する.抜去後にはただちにガーゼのうえからあるいは止血クランプを用いて圧迫止血を行うことを推奨する(O). GL-:ボタンホール穿刺アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート GL--:ボタンホール穿刺は穿刺痛の強い患者に適応することが望ましい(O). GL--:ボタンホール穿刺にあたっては,固定穿刺ルートの入り口に形成された痂疲を取り除き,専 用の穿刺針を使用して固定穿刺ルートに沿って挿入することを推奨する(O). GL-:AVG の使用法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート GL--:AVG では作製から使用までにAVF より長めの待機期間をおくことが望ましい(2-C). GL--:同一部位での反復穿刺を避けてグラフト血管全体にまんべんなく穿刺することを推奨する (2-C). GL--:AVG はAVF よりも鈍角で穿刺することを推奨する(O). GL--:抜針・止血の際には,まず穿刺針を抜き,穿刺針の先端が皮膚から離れてからグラフト血管 上の穿刺口を皮膚の上から素早く適切な強さで圧迫することを推奨する(O).
GL-:表在化動脈の使用法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート GL--:動脈の表在化によるVA では,AVF の場合よりも作製から使用までに長い待機期間をおく. 皮下組織と動脈が十分に癒着してから穿刺を始めるのが望ましい(2-C). GL--:表在化動脈を穿刺し脱血側とするが,血液の再循環を避けるため表在静脈など返血側の血 管確保が推奨される(O). 解説GL-1:まずは視診によりシャント肢の腫脹,発赤の有 無につき,次に触診によりスリル,拍動,熱感につき観察する.腫脹,発赤,熱感を伴う場合には感染を疑う.VA の拍動を伴う場合には中枢側の狭窄を疑う.またスリルを触れなければVA の閉塞が強く疑われる.最後に聴診器を用いてVA の血流音を聴取する.ハイピッチな血流音が聴取された場合にはVA の狭窄が疑われる. GL-2:AVF の穿刺は術後10 日以上経過してからが 望ましい. VA として長期間,静脈に血液を送り続けた動脈はその径が増大し,長さも伸びて蛇行して皮膚の直下でその凹凸が触れることがある1).このような動脈を発達したVA 血管(動脈化静脈)と誤って穿刺すると,抜針後に筋膜下に血液が漏れ,血腫が形成される.このような事故を防ぐためには,吻合部付近を圧迫することにより一旦VA 血管の血流を止め,穿刺しようとしている血管が拍動しているか否かを調べる.拍動していればその血管は動脈であり,拍動とスリルが消失するようであればVA 血管である. 穿刺を繰り返すうちにVA 血管には狭窄が生じる.このような狭窄が吻合部に近い部位に生じるとVA そのものの寿命がより短縮することになる.また,VA 血管の吻合部に近い部位を穿刺して失敗した場合には,再穿刺部位がなくなることになる.このような理由から,穿刺は吻合部から5 cm 程度以上離れた部位で行うのが望ましい.動脈側の穿刺針の針先から5 cm 以上離れた部位に静脈側の穿刺針の針先がくるように穿刺すれば,体外循環した血液の再循環を防ぐことができる. VA 血管の狭い範囲を繰り返し穿刺すると末梢神経が障害され,穿刺痛を生じなくなる.しかも,狭い範囲内でVA 血管を繰り返し穿刺するとその部の血管が拡張するので穿刺も容易になる.しかし, 長期的にみると仮性動脈瘤や穿刺部位前後の血管の狭窄の原因となる2).したがって,VA 血管のできるだけ広い範囲にまんべんなく穿刺するように心がける.穿刺は前回の穿刺痕から5 mm 程度ずらして行う. リドカインテープは穿刺の1〜2 時間前,遅くとも穿刺の30 分前までには貼付する.ボタンホール穿刺3)では通常の穿刺よりもはるかに穿刺痛が弱い. 穿刺針の刺入角度は血管の状態によって異なる.穿刺しようとする血管が浅いか,あるいは細い場合には穿刺針の刺入角度をより鋭角とし,深いか,あるいは太い場合にはより鈍角とする4).金属針を使用する場合,穿刺針の針先が血管壁を通過したら穿刺針を寝かし,慎重に針先をゆっくりと抵抗のない方向へ押し進める.外套針のときには,血管壁を通過した時点で内針を少し抜いて,外針のプラスチック管を血管内腔に沿って押し込むようにする.穿刺困難な症例に対しては,超音波ガイド下での穿刺が有用な場合がある. 止血困難な場合には抗凝固剤の種類や量,抗血小板剤の使用状況に加え,穿刺部位の選択や静脈高血圧の存在について検討する必要がある. GL-3:VA 血管壁上の同一の穿刺口に毎回先端が鈍で ある専用の穿刺針を挿入するボタンホール穿刺法は,狭い範囲内でVA 血管を繰り返し穿刺する穿刺法とは異なるものである2).専用の穿刺針として,穿刺ルート跡にVA 血管表面近くまでしか到達しない短いスティックを14 日間留置することにより固定穿刺ルートを作製したのち使用するダルAVFニードルと,初回穿刺後から使用可能なペインレスニードルがある. 静脈の荒廃した症例や心機能障害症例に対する, Arterial Access port の穿刺にも応用される5). 固定穿刺ルートの入り口に形成される痂疲は細菌
に汚染されていると考えるべきである.これをVA血管腔内に押し込まないために,穿刺の前に除去しておく必要がある.穿刺針の先端がVA 血管腔内に入っていかないようなら,穿刺針の先端がVA 血管壁に達したところで,穿刺針をおおよそ45°の角度に起こし,その角度でVA 血管壁を押してみる.多くの場合,これで穿刺針の先端はVA 血管腔内に入る.それでも先端が血管腔内に入っていかなければ,その透析時のみ,先端の鋭い通常の穿刺針を固定穿刺ルートに沿って挿入して穿刺を行う6). GL-4:ePTFE を使用したAVG では,グラフト血管 壁に開いた多数の細孔から血清が少しずつ滲み出す結果,VA 作製部には浮腫が生じる.グラフト血管内圧が高いほど,浮腫は高度で長期間続く.穿刺は浮腫が軽減し,グラフト血管が周囲の組織と癒着する2 週間目以降に始める7).一方,PU やPEP を用いたAVG では,浮腫がほとんど出現せず,止血も良好なので作製の翌日から穿刺することも可能である1,8). 同一部位の反復穿刺は仮性瘤の原因となり,グラフト寿命を縮める9). グラフトは壁が厚いため,浅い角度で穿刺すると,穿刺針がグラフトの壁を通過する際の抵抗が大きくなる.一方,グラフト血管は内腔が大きいので,たとえ深い角度で穿刺しても穿刺針の先端がグラフトの裏側の壁を貫く危険は小さい. ePTFE グラフトはPU グラフトよりも止血に要する時間が長い.止血の際には皮膚の穿刺部と血管の針穴の両方を圧迫する.圧迫の強さはグラフト血管を潰して血流を止めてしまわないように,スリルや拍動を指先に感じる程度とする.とくにPU グラフトではグラフト血管壁が軟らかいので,強く穿刺部を押さえると血流が止まってグラフト閉塞の危険が増す10). GL-5:表在化動脈は,抜糸後に浮腫もとれ,皮下組織 と動脈が十分に癒着してから穿刺を始めるのが望ましい.このためには,術後3 週間程度は必要とされている11,12).同一部位の反復穿刺は瘤化や血栓形成による動脈 閉塞のリスクを高める.瘤となった部分を穿刺使用していて出血,閉塞,感染を合併した場合には,シャント肢のみならず生命の危機を招く可能性がある. 文献1) 太田和夫:穿刺の達人になる.透析ケア10:359-365, 2004 2) Krönung G:Plastic deformation of Cimino fistula by repeated puncture. Dial Transplant 13:635-638, 1984 3) Twardowski Z:Different sites versus constant sites of needle insertion into arteriovenous fistulas for treatment by repeated dialysis. Dial Transplant 8: 978-980, 1979 4) 大平整爾:ブラッドアクセスの穿刺接続に関連したト ラブル.ブラッドアクセストラブル社団法人日本透析医会研修委員会監修阿岸鉄三,天野泉,今川章夫,今忠正編集.p57-67,金原出版,東京,1991 5) 當間茂樹:ボタンホール穿刺の現況と今後の展望.腎 と透析別冊アクセス2007:16-24,2008 6) Toma S, Shinzato T, Fukui H, Nakai S, Miwa M, Takai I, Maeda K:A timesaving method to create a fixed puncture route for the buttonhole technique. Nephrol Dial Transplant 18:2118-2121, 2003 7) 福井博義,武藤庸一:III.グラフト内シャント.標準 ブラッドアクセス(合屋忠信編),p39-58,診断と治療社,東京,1999 8) 太田和夫,辻寧重,久木田和丘,佐々木茂,酒井信 治,渕之上昌平,中川芳彦,山田和彦,神應裕,原修,天野泉,内藤秀宗,田中一誠,沼田明,水口潤,中本雅彦,安藤高志:テルモ社製透析用人工血管(TRE-687)の特徴とその臨床使用報告.透析会誌36:1693-1699,2003 9) 酒井信治:グラフト使用時のブラッドアクセス.臨牀 透析12(増刊号):896-906,1996 10) 太田和夫:グラフト側でとくに注意することは.シャ ント使用法と合併症の対策.p72-73,東京医学社,東京,1993 11) 福田豊史,小野利彦:動脈表在化法.臨牀透析12(増 刊号):845-852,1996 12) 福井博義,武藤庸一:IV.動脈表在化.標準ブラッド アクセス(合屋忠信編),p59-62,診断と治療社,東京,1999
(2) 感染予防(AVF,AVG) GL-:術前鼻腔内MRSA 保菌者の同定と除菌をすることが推奨される(1-C). GL-:透析開始前にはVA のある側の腕をよく観察し,発赤,腫脹,疼痛など,感染の徴候がみられる場 合には,その部位を避けて穿刺を行う(O). GL-:穿刺の消毒前にスタッフは手洗いを行い,手袋を着用する.手袋は,1 患者ごとに取り換える. 患者も穿刺の前に石鹸でVA のある側の腕をよく洗う(O). GL-:穿刺前の皮膚消毒には,消毒用アルコール,消毒用ポピドンヨード液などを使用する.いずれの 薬品を使用する場合にも,穿刺予定部位から周辺に向かって清拭する(O). GL-:PTA の施行は,手術室または一般造影室で行われる.術者および患者には,手術室と同様の滅菌 ガウンと滅菌覆布を使用する(O). 解説GL-1:MRSA 保菌者では,バクトロバン軟膏の予防 的塗布を術前に行い作製する.AVG 植え込み手術は無菌手術と考えられるので,予防的抗生剤投与は術中のみでよいとする意見もあるが,術後3 日間程度投与するとの意見も多い1). GL-2:感染の3 徴候を見逃してはならない.AVF に おいては,感染が疑わしい部位を避けて穿刺が可能である.感染の拡大を回避する処置を必要とする. AVG では,感染の疑わしい部位の処置を優先し血流感染とならないように対処する2,3). GL-3:穿刺には常に細菌感染の危険が伴う.細菌は 穿刺針を介して直接血流に入り,あるいは局所に感染巣を形成する.VA の感染はVA の寿命を短縮し,また繰り返す感染は患者の予後を悪化させる.したがって,穿刺に伴う血流中への細菌流入やVA の局所感染を防ぐため,穿刺に先だって十分な感染防止の措置を取らなければならない.とくにAVG では,滅菌手袋の使用を行う施設もある.これは,一旦穿刺部に感染が生じると難治性となり,しばしばグラフトを抜去せざるを得なくなるためである4〜6). GL-4:穿刺部の消毒には,消毒用アルコールのみ,消 毒用ポピドンヨード液のみ使用され,あるいは消毒用アルコールと消毒用ポピドンヨード液のみが併用される.まず消毒用アルコールで皮膚を消毒し,その後10%ポピドンヨード液を塗布して2 ないし3分間放置するのがよいとの報告がある7,8). GL-5:PTA 時に,血管内に挿入されるバルーンカテー テルやガイドワイヤーは,一般的に70 cm 以上あり滅菌ガウンと滅菌覆布を用いる必要がある. 文献1) 谷口弘美:透析サーベーランスInfection control. 162-171,2008 春季増刊,メディカ出版,大阪,2008 2) Valente JH, Forti RJ, Freundlich LF, Zandieh SO, Crain EF:Wound irrigation in children:saline solution or tap water? Ann Emerg Med 41:609-616, 2003 3) Klevens RM, Tokars JI, Andrus M:Electronic reporting of infections associated with hemodialysis. Nephrol News Issues 19:37-38, 2005 4) Tokars JI, Miller ER, Stein G:New national surveil- lance system for hemodialysis-associated infections: Initial results Atlanta, Georgia. Am J Infect Control
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(3) VA 機能のサーベイランス・モニタリング GL-:VA 機能をモニターする確かなプログラムを確立することを推奨する(1-B). GL-:AVF のサーベイランスとしてはVA の血流量の測定を推奨する(2-C). GL-:AVG のサーベイランスとしてはVA の血流量の測定を推奨する(2-C). GL-:AVG のモニタリングとしての静脈圧測定が望ましい(1-C). GL-:AVF・AVG のサーベイランスとしては再循環率の測定が可能である(2-C). GL-:AVF・AVG のサーベイランスとして超音波検査も可能である(2-D). 解説GL-1:VA 機能のモニタリングとは機能不全を検出す るために理学所見の評価を行うことと定義する. VA は日々の治療で使用されるものであり,穿刺や止血の状況によって日々機能が変化すると考えられる.また,CSN のガイドラインにおいてもVA 機能のモニタリングプログラムを確立することが必要であると第一に述べられている1).このことは日常の診療においてVA 機能モニタリングに対する姿勢を規定することであり,最も重要な要素であると考えられる. 具体的なモニタリング方法はシャントスリル,シャント雑音,シャント静脈全体の触診(狭窄部位確認),ピロー状態評価,止血時間の延長,シャント肢の腫脹などであり,毎週観察するべきである2).たとえば,図1 に示すようなフロー図を用いてモニタリングとサーベイランスを行うのも一つの方法である.池田ら3)はVA の機能・形態を客観的に評価するためにシャントトラブルスコアリングを行い非常に良好な成績を得ていると報告している.すなわち,VA 機能・形態不全を早期に発見するために表1,2 のようなシャントトラブルスコアリングの実施がVA の開存率を改善する一つの方法と考えられる.高度な機器を用いたVA のサーベイランスは VA の開存率を改善しないという報告もあり4〜7), VA 機能のモニタリングプログラムの確立が非常に重要である. GL-2:サーベイランスとは定期的に特定の検査法で VA 機能を評価することで,検査結果が異常であればVA の機能不全が疑われるような検査と定義する.超音波希釈法・超音波ドップラー法・クリットライン法・熱希釈法によるVA 血流量の測定は侵襲 図1 VA 機能モニタリング・サーベイランスのフロー図
が少なくVA 機能把握に有用であり,血流量の測定により閉塞のリスクが30%低下したという報告も/ある 8〜11).定期的にVA の血流量を測定し,500 mL/ min 未満またはベースの血流量より20%以上の減少は狭窄病変が発現している可能性がある1). VA の血流量の測定に関してはK-DOQI ガイドラインでは自己静脈を用いたVA については600 / mL/min 未満になれば狭窄を疑って血管造影を行うことを推奨している.CSN ガイドラインでは500 / mL/min 未満またはベースの血流量より20%以上の減少が出現した場合は狭窄を疑うべきと述べてい/る 12).また文献2 では400 mL/min 未満になれば血栓の可能性が高くなると述べている.さらに,ヨーロッパのVascular Access Society はCSN のガイドラインを推奨している.わが国では主にVA の血流量は超音波ドップラー法で測定されている報告が多いが,VA 血流量は機能良好な群で500〜1,000 / mL/min であり13〜25),機能不良群との境界は500 / mL/min 16,21,25)と報告されている.超音波ドップラー法による測定は施行者によるバリアンスが多い ことおよび経時的な変化が重要であると考えられることから,本ガイドラインではVA の血流量とその変化率を用いてVA 機能をモニタリングすることを推奨する. GL-3:超音波希釈法・超音波ドップラー法・クリット ライン法,熱希釈法によるVA 血流量の測定は侵襲が少なくVA 機能把握に有用である.定期的にVA /の血流量を測定し,650 mL/min 未満またはベースの血流量より20%以上の減少は狭窄病変が発現している可能性がある. 北米においてはグラフトを用いたVA が大半を占めており,わが国よりも非常に多くの経験が蓄積されている.Gray らはグラフトを用いたVA の血流量を測定した報告をまとめているが,血栓の発生/ /率が高くなる血流量は300 mL/min〜800 mL/minの広い範囲になり,最低血流量の絶対値を決定することは難しいと考えられた.しかし,継続的な血流量の低下は血栓の発生率を高めると考えられた.一 シャントトラブルスコアリング(S. T. S.)第II版(実地臨床医家向け案) 表2シャントトラブルスコアリング 〈大項目〉【絶対的早期PTA 実施項目】/ ) 血流不全(血流200 ml/min 以下) ) 再循環による透析効率の低下(10%以上)〈小項目〉【2 項目以上でDSA の実施,3 項目以上で早期(7 日以内)DSA 実施】 1狭窄部位の触知(駆血にて触知) 2狭窄音の聴取(高調音の聴取) 3静脈圧の上昇(Graft 留置時と比較して50 mmHg の上昇) 4止血時間の延長5シャント音の低下(Graft 吻合部,AVF run off vein) 6不整脈7ピロー部の圧の低下 (文献3 より引用) ) 透析後半1 時間での血流不全(AVF:2,AVG:3) ) シャント音の低下 2 ) ピロー部の圧の低下 シャントトラブルスコアリング(S. T. S.)第I版(Co-medical staff のために) 1 10) 不整脈 ) 狭窄部位を触知 (AVF:1,AVG:3) *3 点以上でDSA or PTA を検討 ) 静脈圧の上昇160 mmHg 以上 表1シャントトラブルスコアリング 1 ) 狭窄舌を聴取 3 2 (文献3 より引用) 5 ) 止血時間の延長 0 ) 脱血不良(開始時に逆行性に穿刺) 1 ) 異常なし(点数)
/方,K-DOQI ガイドラインでは血流量600 mL/min /未満または血流量1,000 mL/min 未満で4 か月間で25%以上の血流量の低下がある場合は血管造影を施行して狭窄の有無を調べることを推奨している. / CSN のガイドラインでは血流量650 mL/min 未満または20%以上の血流量の低下をさらなる検索の基準としている.Vascular Access Society のガイドラインでは血流量の絶対値を決定することはできないがその経時的な変化を測定することが有用であると述べている.しかし,CARI ガイドラインでは血流量の測定によりAVG の閉塞率を低下させることはできないと結論づけている26).グラフトVA の評価に積極的に超音波による血流量測定を導入している小林ら27)の報告によると,患者一人当たりのグ/ラフトVA 血流量を3.4 回/年・患者測定した平成/ 13 年度と4.1 回/年・患者測定した平成14 年度を比/較するとグラフトVA の閉塞率が0.34 回/年・患者/から0.17 回/年・患者へ低下し,その有用性が認められたとしている. わが国におけるグラフトを用いたVA の頻度は低く最終的なVA である傾向が強いことおよび血栓発生率が自己動静脈を用いたVA の場合よりも高いことを考慮して,本ガイドラインを提案することとした. GL-4:グラフトを用いたVA の場合は,グラフト自体 が血圧程度の圧力によっては変形しないため,流出静脈の吻合部を含めた狭窄が静脈圧に影響を与える.わが国においては一般的に透析中の静脈圧の変化を基準にしてその狭窄を評価する試みがなされている.これはK-DOQI ガイドラインに示されている動的な静脈圧を意味することになる.この動的静脈圧は穿刺針のゲージ・回路の形状および血流量に大きな影響を受けることは当然である.そこで,K- DOQI・CSN・Vascular Access Society のガイドラインでは静的な静脈圧を測定することを推奨している.原理的に述べると透析を開始して回路内が血液に置き換わった時点で血液ポンプを停止する.その際に静脈チャンバーとダイアライザーの間をクランプする.クランプ30 秒後に安定した静脈圧を静的静脈圧として記録する.この操作方法で測定した静的静脈圧の経時的変化は動的な静脈圧よりも流出静脈の狭窄の程度を正確に反映すると考えられる.わが国以外では動脈チャンバーが血液ポンプよりも体に近い側に存在するため,グラフトの場合は動脈圧も測定できることから,動脈圧と静的静脈圧の比から流出静脈の狭窄が判定できることになるが,本ガイドラインでは動的静脈圧よりも静的静脈圧がより 正確に流出静脈の狭窄を診断できることを示し,わが国においても多数の検討がなされることを希望する28,29). GL-5:再循環率は参考として可能であれば測定する. 再循環率の測定は尿素法によらない希釈法または下記に示す尿素希釈法により測定する(表3).3 点法の尿素希釈法は使用してはならない.2 回以上の再循環率の測定で,尿素希釈法を用いた場合は15%以上,尿素法以外の希釈法を用いた場合は5%以上であればその原因を検索する必要がある. K-DOQI ガイドラインでは自己静脈を使用したVA 機能の評価には有用性が劣るとしているが, CSN ガイドラインでは上記のようなガイドラインを推奨している.しかし,再循環率は検出感度がよくなく,わが国においては報告が多くないため, VA 機能モニタリングの参考として使用することが望ましい. GL-6:VA に対する超音波検査の最近の進歩は目覚し く,非常に安価なハンディタイプの機器も発売されているため,多くの施設で施行されるようになってきている.また,前腕から肘部まで自動的に3-D画像を作成できる装置なども発売されてきており,その有用性が報告されるようになってきている.このような状況で従来はヴィジュアル的に評価困難であったVA の形態が非侵襲的に評価可能になってきている.現時点の報告では描出された狭窄を客観的な指標として評価した報告は多くなく,非侵襲的および安価な超音波検査による形態評価は定期的なVA の機能・形態評価の非常に有用な手段であるが,その評価は他の評価法と総合的に判断すべきであると考えられる. また,最近では超音波ドップラーを用いて測定した上腕動脈の血管抵抗指数(R. I.:resistance index)を客観的指標として,VA 不全を検出する試みがなされている.村上ら30)はVA 良好群と不良群でR. I. 血液透析開始後30 分に限外濾過を停止して測定する. a.動脈側(A)と静脈側(V)からサンプルを採血する. / b.採血後すぐに血流量を120 ml/min に低下させる. c.血流を下げた後10 秒後に血液ポンプを停止する. d.動脈側のサンプルポートの下流をクランプする. e.動脈側のサンプルポートより採血する(S). f.クランプをはずし,血液透析を再開する. g.A,V,S の尿素窒素濃度を測定し,再循環率(R)を 計算する. / R=(S−A)/(S−V)*100 表3尿素希釈法による再循環率の測定法
を比較すると,それぞれ0.550±0.097,0.784± 0.089 になり,VA 不良群で有意に高値を示したと 報告している.さらに,VA 良好群のR. I. 値の分布は不良群と比較すると明確に分離できることを示している.彼らはこの結果からR. I.=0.6 をカットオフ値にした場合,感受性100%,特異度69.4%になることを報告している. 文献1) Churchill DN, Blake PG, Goldstein MB, Jindal KK, Toffelmire EB:Clinical practice guidelines of the Canadian Society of Nephrology for treatment of patients with chronic renal failure. J Am Soc Nephrol 10:s287-s321, 1999 2) Richard J Gray, Jeffrey J Sands:Dialysis access-a multidisplinary approach-. p111-118, Lippincott Williams & Wilkins, 2002 3) 池田潔:インターベンション治療―適応範囲と新し い器材・技術の発展―.臨牀透析21:1607-1611,2005 4) Ram SJ, Work J, Caldito GC, Eason JM, Pervez A, Paulson WD:A randomized controlled trial of blood flow and stenosis surveillance of hemodialysis grafts. Kidney Int 64:272-280, 2003 5) Moist LM, Churchill DN, House AA, Millward SF, Elliott JE, Kribs SW, Deyoung WJ, Blythe L, Stitt LW, Lindsay RM:Regular monitoring of access flow compared with monitoring of venous pressure fails to improve graft survival. J Am Soc Nephrol 14:2645- 2653, 2003 6) Polkinghorne KR, Lau KK, Saunder A, Atkins RC, Kerr PG:Does monthly native arteriovenous fistula blood-flow surveillance detect significant stenosis-a randomized controlled trial. Nephrol Dial Transplant 21:2498-2506, 2006 7) Tonelli M, James M, Wiebe N, Jindal K, Hemmelgarn B:Ultrasound monitoring to detect access stenosis in hemodialysis patients:a systematic review. Am J Kidney Dis 51:630-640, 2008 8) Sands JJ, Jabyac PA, Miranda CL, Kapsick BJ: Intervention based on monthly monitoring decreases hemodialysis access thrombosis. ASAIO J 45:147-150, 1999 9) Tessitore N, Lipari G, Poli A, Bedogna V, Baggio E, Loschiavo C, Mansueto G, Lupo A:Can blood flow surveillance and pre-emptive repair of subclinical stenosis prolong the useful life of arteriovenous fistulae? A randomized controlled study. Nephrol Dial Transplant 19:2325-2333, 2004 10) Tessitore N, Mansueto G, Bedogna V, Lipari G, Poli A, Gammaro L, Baggio E, Morana G, Loschiavo C, Laudon A, Oldrizzi L, Maschio G:A prospective controlled trial on effect of percutaneous transluminal angioplas- ty on functioning arteriovenous fistulae survival. J Am Soc Nephrol 14:1623-1627, 2003 11) Tessitore N, Bedogna V, Poli A, Mantovani W, Lipari G, Baggio E, Mansueto G, Lupo A:Adding access blood flow surveillance to clinical monitoring reducesthrombosis rates and costs, and improves fistula patency in the short term:a controlled cohort study. Nephrol Dial Transplant 23:3578-3584, 2008 12) Jindal K, Chan CT, Deziel C, Hirsch D, Soroka SD, Tonelli M, Culleton BF;Canadian Society of Nephrology Committee for Clinical Practice Guidelines: Hemodialysis clinical practice guidelines for the Canadian Society of Nephrology. J Am Soc Nephrol 17:S1-S27, 2006 13) 柳沢良三,井上重彦,板倉宏尚,岸洋一:B モード・ カラードップラー複合法による血液透析用動静脈瘻の評価.透析会誌25:1231-1236,1992 14) 柳沢良三,佐藤俊和,上條利幸,岸洋一:タバチェー ル内シャントの超音波ドップラー法による評価.臨泌49:131-134,1995 15) 堀見博之,長谷川嗣夫,草野英二,浅野泰:透析患 者の内シャント造設における超音波ドプラ検査の有用性.透析会誌26:1521-1524,1993 16) 吉川和暁,北川柾彦,菱本康之,米山高広,澤田善章, 鈴木唯司:超音波パルスドップラー法によるシャント血流測定.臨泌53:993-998,1999 17) 柳沢良三,粕谷豊,長瀬泰,佐藤孝子,福田祐幹: 標準型とタバチェール型内シャントの血流動態比較.透析会誌28:1075-1080,1995 18) 久保田和義:Duplex 超音波診断装置による透析患者 内シャント血流測定.昭医会誌53:138-145,1993 19) 洲村正裕,横木広幸,別府昌子,本多弘,黒田弘之: ブラッドアクセスに対する水浸法を用いた超音波検査の有用性の検討.透析会誌35:1199-1204,2002 20) 尾上篤志,清水健司,大野卓志,吉本忍,今田聰雄: 超音波検査によるブラッドアクセスの検討.大阪透析研究会会誌19:47-50,2001 21) 尾上篤志,大野卓志,高橋計行,吉本忍,今田聰雄: 超音波検査における前腕内シャント機能不全の予測.大阪透析研究会会誌20:65-68,2001 22) 久保田和義,川内章裕,千葉芳久,渡辺敢仁,中嶋 真,帆刈睦男,太田秀男,高場利博,小池正,石井淳一:高周波デュプレックス走査型超音波診断装置による透析患者内シャント血流測定.人工臓器16: 1580-1583,1987 23) 岡本清也,木倉敏彦,根井仁一,寺中正昭:パルスドッ プラー法による血液透析患者ブラッドアクセスの評価―心機能との関連―.透析会誌23:199-205,1990 24) 阿部良悦:透析用ブラッドアクセスを目的とした動静 脈瘻の機能評価―超音波B モード・パルスドップラー複合法の応用―.腎と透析25:755-760,1988 25) 久木田和丘,川村明夫,米川元樹,目黒順一,Henryk Witmanowski,高橋昌宏,上井直樹,武田圭佐,古井
秀典,小野寺一彦,浜田敏克,中山大志:ブラッドアクセスにおける血行動態と血流量の検討.臨牀透析8:661-665,1992 26) Kevan Polkinghorne:Vascular access surveillance. Nephrology 13:S1-S11, 2008 27) 小林大樹,元上七奈,浜田美生,吉本勝美,坪庭直樹, 中村順一,平中俊行:アクセス血流量によるグラフト内シャントのsurveillance.腎と透析57(別冊アクセス2004):118-120,2004 28) 高橋淳子,英理香,新納誠司,中村雅将,土田健司, 林郁郎,水口潤,川島周:人工血管内シャント(AVG)のモニタリングにおける静的静脈圧の有用性. 透析会誌43:171-176,2010 29) Smits JH, van der Linden J, Hagen EC, Modderkolk- Cammeraat EC, Feith GW, Koomans HA, van den Dorpel MA, Blankestijn PJ:Graft surveillance:venous pressure, access flow, or the combination? Kidney Int 59:1551-1558, 2001 30) 村上康一,猪又扶美,奈良起代子,武田稔男,内野順 司,坂井健彦,河野孝史,重松隆:シャント管理における超音波パルスドップラー法の有用性について.腎と透析56(別冊アクセス2003):39-43,2003
(4) 心機能とアクセス GL-:動静脈を短絡するVA(AVF,AVG)は心機能に影響を及ぼす.VA の動静脈短絡量が心機能(心 予備能)に比べて過剰である場合,心不全症状が出現することを認識するべきである(1-B). GL-:AVF,AVG を有する透析患者では,血液透析のたびまたは,心不全の可能性を疑わせる自他覚症 状のある場合は,患者の心機能に比べてVA の血流が相対的に過剰でないと確認することを推奨する(O). GL-:心機能の評価には,臨床症状が最も重要である.検査は心電図,胸部X 線写真を基本とし,心エ コー図,ホルター心電図を併用する(1-C). GL-:心不全症例では,AVF,AVG の閉鎖やバンディングが,循環動態や心エコー図所見を改善させる /ことができる.しかし,すでに心不全が進行している場合,AVF/AVG の閉鎖が心不全を改善しない可能性もある(1-C). 解説GL-1:最も多用されるAVF,次いで多いAVG はい ずれも動静脈短絡を作製する.そのシャント血流は全身循環にかかわらず,末梢に酸素を供給する心臓本来の役割を果たさない.シャントの作製が心機能,心房性利尿ホルモン,心肥大に影響を与えることはすでに知られている1,2).新たにAVF・AVG を作製すると,心拍出量に対する末梢血管抵抗が低下し,心臓が心拍出量を増加させることで血圧を保ち末梢循環を維持する.短絡量が心臓の予備能(最大心拍出量)に比して相対的に大きい場合,シャント血流の増加に心拍出量の適切な増加が困難となり,全身循環が阻害される循環障害型の心不全が発症する3).また,シャント血量が多い状態が持続することで(貧血や甲状腺機能亢進症に認められるような),高心拍出量性心不全を呈する.この心不全も,心予備能が低いほど発症しやすい. AVF やAVG が血行動態に影響していることの証拠として,心不全のない腎移植後の患者や留置型カテーテルに移行後の患者で,シャント閉鎖をすると,3〜6 か月後に血行動態が改善することが確認されている4〜6).短期的なシャントの圧迫閉鎖で,心負荷が軽減し,左室形態が改善し得ることも知られ ている7,8). 心機能は経時的に変化し得る.そこには,可逆的な変化と不可逆的な変化がある.たとえば,腎不全に伴う一時的な溢水に伴う心不全で,溢水時には心エコー上の駆出率(EF)は低下する.除水に伴い心不全が解除されるとエコー上の壁運動は改善しEFも正常化することが多い.しかし,陳旧性心筋梗塞など心筋が不可逆的な線維化を起こしている場合,溢水などの心負荷が軽減されても,壁運動が改善することはない. 多くの透析患者は,心機能低下因子を長期に抱えている.透析開始当初やVA 作製手術時には良好な心機能も,長期透析の経過中に低下し得る.心予備能が減少するのに伴い,前述の相対的なシャント血流量過大が問題になることがある. 心負荷とならない,恒久的VA として次のものがあげられる. 動脈表在化: 上腕動脈,大ð動脈カフ型カテーテル大ð静脈穿刺(長めの弾性留置針) 9)心機能低下の原因病態には次のものがあげられ
る. ■虚血性心疾患:近年高齢化と糖尿病の増加,高脂血
症,喫煙に関連して,発症が増加している.狭心症を伴わない無痛性心筋虚血もあり,無症状に心機能が低下することがある. ■拡張型心筋症(DCM):虚血性心疾患,高血圧性心
疾患,ウィルス感染症,代謝障害,原因の不明な特発性心筋症,など多様な要因により起こる.透析患者は,心筋虚血,高血圧,栄養障害をはじめDCMの原因因子を多く抱えている. ■弁膜症:動脈硬化によるもの,リウマチ熱によるも
の,など多彩である.大動脈弁狭窄:加齢に伴う弁の硬化・石灰化,動脈硬化に伴う弁硬化,先天性の二尖弁,などが要因としてあげられる.心筋に高負担がかかる一方,全身血圧は低下しやすい.時に急速に循環不全が起きることがある.僧帽弁閉鎖不全:僧帽弁弁輪の拡大,乳頭筋不全,乳頭筋断裂などに伴う.心拡大,心筋虚血などが原因となることが多く透析患者には起きやすい弁膜症である. ■肺高血圧症:左心不全,慢性肺血栓塞栓症,原発性
肺高血圧症,膠原病に伴う肺高血圧症,間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患などが要因である. ■収縮性心膜炎:心膜炎(尿毒症,結核,ウィルス性
など)の結果,心外膜が強固癒着し心拡張能が阻害され心拍出量が低下する. ■透析中の血圧低下,過大な除水が心筋の壁運動低下
をきたし,生命予後に悪影響を及ぼすことが知られている10). GL-2:心予備能に対して相対的に過剰なアクセス血
流があるかどうかは,患者の臨床像に注目する必要がある.臨床症状:日常の生活上の活動度,起立歩行,通院,家事,仕事,運動などの活動度を問診・観察する.歩行や階段での息切れ,臥床の時間,電車やバス,タクシーや自家用車,介助者を要するか,透析時の血圧低下,栄養状態(やせの進行がないか),など多面的に観察する.
心機能障害の臨床像は,心拍出量(一回拍出量×心拍数)のほか,末梢での酸素供給能にも依存する.
心機能低下に伴う臨床症状に注目するべきで,アクセス流量過剰があるのではないかと疑って診ることが診断の入り口である.アクセス変更の判断と方法
次のようなときには,VA が心機能に影響し,患者QOL を阻害している可能性を想起するべきであ
る. 1臨床症状:
血圧低下,頻脈,息切れ:日常生活での活動度が低下する.体重減少,ドライウエイトの減少がおきてくる.通院困難:徒歩,電車やバスでの通院が困難となる.自覚症状:
生活上で,歩行,階段昇降,通院,外出における活動度が低下する.易疲労感(すぐに疲れる)心不全症状:平らに寝ると息苦しく,座位になると軽減される(起座呼吸),動悸,発汗などの交感神経亢進症状2他覚所見:
心拍数が多く,心臓の聴診でギャロップリズム(奔馬調調律) {タッタカ・タッタカ,タヵタッ・タヵタッ}を聴取する.肺野の聴診で湿性ラ音を聴取する.
多くの場合は,AVF,AVG の流量が多く,強い雑音を聴取する.血管のスリルが強く触れる.静脈は著しい拡張を示す.低心拍出量状態ではシャント流量が多くなくても心不全が発症する.強い大動脈弁狭窄症や虚血性心疾患,拡張型心筋症の末期などがこれに相当する. GL-3:
3検査所見
シャント血流の評価:推定シャント血流量が心拍出量の20%を超えている時,血流量の過大を疑う. ◎シャント血流量の推定法
●内シャントの圧迫閉塞時と開放時でのCO の比較
AVF,AVG の用手圧迫により一時的にシャント血流を閉塞させておき前後で心拍出量を測定する.圧迫の時間は長いほど循環動態は一定するが,通常30 秒〜1 分の圧迫が実施されている.
熱希釈法(肺動脈カテーテルまたは末梢動脈カテーテル)によるCO 測定5,6).色素希釈法(動脈血または毛細管血の測定)によるCO 測定.心エコーによるCO 測定.
●心拍出量測定には,肺動脈カテーテルによる熱希
釈法が,従来ゴールドスタンダードとされている11,12).中心静脈と末梢動脈のカテーテル法による経肺熱希釈法も同等の正確性があるが一般的で
はない13). ●色素希釈法は熱希釈法との相関性が高くないとさ れている13). ●心エコー図による心拍出量測定は簡便であるが, 再現性,正確性に問題がある.シャント造設や閉鎖前後の心機能の変化を観察するのには適している. ●上腕動脈血流量のドップラーエコーによる測定. 測定された左右の上腕動脈血流の差をシャント血流と想定することが行われている. ●現状では,シャント血流測定には上腕動脈血流の 左右測定の差を得ることができれば,最も簡便と考える.しかし,シャント血流以外に左右上腕の血流に差が生じる要因がある時(非シャント側の血流が上流の狭窄や閉塞により阻害されているなど)など,本法の適応しがたいことも多い. /上腕動脈の血流差が1〜2 リットル/分以上と推定され,心不全症状がある時は,シャント流量が心不全症状増悪に関与していると考えられる. AVG の場合,グラフト内の血流エコーが測定可能ならば,グラフト断面積は正円と仮定して計算してよいので,血流量は比較的正しく測定し得る. GL-4:心不全を呈しているAVF,AVG の患者にシャ ント閉鎖をすることで心不全が改善する14〜18).シャント閉鎖ではVA が失われるが,過剰血流シャントのバンディング19,20)や,シャントを上腕から前腕へと遠位へ移動させることで,シャントを温存し血行動態が改善する21)という方法がある.バンディングの場合,血流減少効果が不十分であれば再手術を要する. 心不全が進行している場合には,シャント閉鎖は心不全改善につながらないことがある7,18).シャント閉鎖にあたっては,予後改善効果を推定するべきである.虚血性心疾患の既往,シャント作製から時間がたっているほど改善しにくい可能性がある18). 文献1) Iwashima Y, Horio T, Takami Y, Inenaga T, Nishikimi T, Takishita S, Kawano Y:Effects of creation of arteriovenous fistula for hemodialysis on cardiac function and natriuretic peptide levels in CRF. Am J Kidney Dis 40:974-982, 2002 2) Ori Y, Katz M, Erman A, Weinstein T, Malachi T, Gafer U:The contribution of an arteriovenous access for hemodialysis to left ventricular hypertrophy. Am J Kidney Dis 40:745-752, 2002 3) 金成泰:AV シャントが循環動態に及ぼす影響.腎と透析50(別冊アクセス2001):53-55,2001 4) van Duijnhoven EC, Cheriex EC, Tordoir JH, Kooman JP, van Hooff JP:Effect of closure of the arteriovenous fistula on left ventricular dimensions in renal transplant patients. Nephrol Dial Transplant 16:368- 372, 2001 5) Unger P, Wissing KM, de Pauw L, Neubauer J, van de Borne P:Reduction of left ventricular diameter and mass after surgical arteriovenous fistula closure in renal transplant recipients. Transplantation 74:73-79, 2002 6) Movilli E, Viola BF, Brunori G, Gaggia P, Camerini C, Zubani R, Berlinghieri N, Cancarini G:Long-term effects of arteriovenous fistula closure on echocardiographic functional and structural findings in hemodialysis patients:a prospective study. Am J Kidney Dis 55:682-689, 2010 7) Timmis AD, McGonigle RJ, Weston MJ, McLeod AA, Jackson G, Jewitt DE, Parsons V:The influence of hemodialysis fistulas on circulatory dynamics and left ventricular function. Int J Artif Organs 5:101-104, 1982 8) Bos WJ, Zietse R, van den Meiracker AH, Schalekamp MA, Weimar W:Hemodynamic consequences of Cimino fistulas studied with finger pressure measurements during fistula compression. Kidney Int 48: 1641-1645, 1995 9) Kaneda H, Saito I, Sano K, Okabe H, Kato N, Nakayama M, Shitomi K, Murata T, Takada K:Long term hemodialysis treatment using femoral vein puncture method(FV-method)as blood access in 12 patients. Nippon Jinzo Gakkai Shi 37:564-572, 1995 10) Burton JO, Jefferies HJ, Selby NM, McIntyre CW: Hemodialysis-induced cardiac injury:determinants and associated outcomes. Clin J Am Soc Nephrol 4: 914-920, 2009 11) Ganz W, Donoso R, Marcus HS, Forrester JS, Swan HJ:A new technique for measurements of cardiac output by thermodilution in man. Am J Cardiol 27: 392-396, 1971 12) Pavec K, Lindquist O, Arfors K-E:Validity of thermodilution method for measurement of cardiac output in pulmonary oedema. Cardiovasc Res 7:419- 422, 1973 13) Sakka GS, Reinhart K, Wegscheider K, Meier-Hell- mann A:Comparison of cardiac output and circulatory blood volumes by transpulmonary thermo-dye dilution and transcutaneous indocyanine green measurement in critically ill patients. Chest 121:559-565, 2002 14) Anderson CB, Codd JR, Graff RA, Groce MA, Harter HR, Newton WT:Cardiac failure and upper extremity arteriovenous dialysis fistulas. Case reports and a
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(5) カテーテルの管理 GL-:非カフ型カテーテルの留置期間の目安は3 週間を超えないようにすることが望ましい.対象は入 院患者にのみ使用する(2-C).カフ型カテーテルは非カフ型に比べ,長期的使用を目的としている(2-D). GL-:カテーテルの先端位置は留置後確認する.右内頸から挿入の場合,非カフ型では右上大静脈内, カフ型では脱血側は右上大静脈内,返血側は右房近傍に位置させることが望ましい(2-C).さらに留置一定期間後,先端位置の再確認も必要である. GL-:非カフ型,カフ型カテーテルのいずれも透析終了時,カテーテル内に内腔容量に見合うヘパリン を充填することが推奨される.また透析開始時はカテーテル内の残存ヘパリン,凝血塊の除去を行う.透析時の血流量,脈圧などをモニターし,閉塞性合併症の早期発見に努めることが推奨される(1-C). GL-:血流不足あるいは返血困難な場合,ウロキナーゼのカテーテル内封入,持続注入が推奨される. 効果がない場合,カテーテル内血栓の場合はガイドワイヤーを用いて同側のカテーテル交換をする.カテーテル外の血栓の場合は別ルートから留置したほうが確実に血流を得ることができる(1-C). GL-:感染予防のため非カフ型,カフ型いずれの透析回路の連結と離脱の場合も2 名の熟練したスタッ フが無菌的に行い(2-C),かつ点滴などのルートとして使用しないことが望ましい(O). GL-:透析日にはカテーテル出口部の観察を行い,感染の有無をチェックする.また感染経路の遮断を 考え,対策を立て,施設ごとの感染のサーベイランスの実施が望まれる(2-C). GL-:カフ型カテーテルは主に長期的血液浄化目的に留置されることが多く,鼻腔MRSA 保菌者は留 置前に除菌しておくことが望ましい(O). GL- :カテーテル感染には出口部,トンネル,カテーテル内感染などがある.軽度の場合は抗生剤で治 癒可能なこともあるが,ドレナージやアンルーフィングで改善しない場合,抗生剤投与に反応しない場合は,早期の抜去が望ましく,安全であり推奨される(1-C). GL- :カフ型カテーテルが挿入されている患者の入浴やシャワー浴は,カテーテル接続部内にお湯や水 が入らないように配慮し,感染防止を心がけることが望ましい(2-C).
解説GL-1:本邦では非カフ型留置カテーテルの留置期間 については明らかな日数制限を設けていないが,前回のガイドラインでは3 週間程度を目安としていた.理由としてはカテーテルの挿入が中心静脈狭窄の原因となるためである1).そのためなるべく短期間の留置が望ましい.一方KDOQI 2)ではその対象は入院患者にのみ使用すべきで,期間は1 週間以内であるべきであるとしている.またカフなし大pカテーテルはベッド上安静患者にのみ用いられるべきであるとされる. 一方カフ型カテーテルでは最近,血液透析導入からVA の確立時までの間の使用(ブリッジ使用)を行っている施設があるが,原則として非カフ型より長期的使用を目的としている.しかし,カテーテルの添付文書によっては使用期間を1 か月と定めているものもあり,留意が必要である.また日本では緊急時ブラッドアクセス用留置カテーテルとして認可された経緯があり,その使用期間については使用者の自己責任に委ねられる.通常はカテーテルが安全に機能する限り使用可能である. GL-2:カテーテルの長さと先端位置は,脱血不良と関 連が深い.平均的体格の人では左内頸静脈からの挿入では右用の長さのカテーテルを挿入すると無名静脈から右上大静脈に入るところでカーブするために,先端位置は右房まで届かないことが多いので19〜22 cm 前後の長いカテーテル3)を用いる.しかし,高齢で体格が小さい女性などでは長すぎる場合もあるので注意が必要である.大p静脈から挿入する場合は再循環率が高いので,カテーテルの先端が下大静脈の中枢側に近い部位にくるような長さのカテーテルを選択する. カテーテル先端の位置決めについてはVeselyら4)はカテーテルの位置を決めるには多くの臨床的因子,カテーテルタイプ,挿入部位,患者の体位,習慣,カテーテルの使用目的に左右されるが,最適な透析をなしとげるにはカテーテルの先端は右房上部の位置が必要であるとする一方,標準的胸部レントゲンだけで先端位置を決めるのはあいまいであるとしている4). 定期的にカテーテルの先端位置の確認を行う.カテーテルが抜けているか,入りすぎているか,カテーテルの先端が最適な位置にあるか,先端がちぎれていないかを単純レントゲン撮影でチェックする.またカテーテル周囲の血栓やカテーテル内血栓の疑いの場合はカテーテル造影検査,CT などを行い,右 房内血栓の疑いがあるケースでは経食道心臓エコーで確認する. カテーテルのへばりつきは流量低下の原因となるだけでなくカテーテルが直接血管壁に接触し血管壁を損傷,血栓形成を促進する.カテーテル先端は常に血管内腔にあり,血管内壁,心臓内壁に接触させないことが大切である.宮田ら5)はカテーテルのへばりつきに対して透析時体位変換をしたり,挿入時,先端をきちんと右房内に入れることが重要であるとしている.先端が右房入り口近くから移動したカテーテルは位置の再設定が必要である4). GL-3:体外循環終了時はカテーテル内にカテーテル 内腔の容量に見合うヘパリンを充填する.透析開始時にはカテーテル内の残存ヘパリン液とカテーテル内に形成された血栓をヘパリン加生食液の入ったシリンジで吸引し上手に取り除く. カテーテルの閉塞・血流低下の原因はカテーテル内の血栓形成とカテーテル周囲の血栓,フィブリンスリーブ,カテーテル先端の血栓形成がある. 閉塞・脱血不良に対しては透析時の血流量,静脈圧などをモニターし早期発見に努める.脱血側の血流不良時,脱血側・送血側の逆接続がたびたび行われるが,この方法は一時的には流量が増加するが,再循環率が増大する可能性がある6).その場合は,カテーテルの造影検査を行い,原因を突き止め,原因に対する治療を行う. カテーテル内への過剰なヘパリン充填についてはAgharazii ら7)がヘパリンが漏出し,出血傾向を呈することがあると指摘している.欧米ではcitrate, citrate-taurolidine をカテーテル内に充填して感染,血栓形成が抑制されるという文献が多くみられるが8),日本においては臨床でまだ報告例がない. カテーテルの血栓を防ぐための抗血小板,抗凝固剤の使用の有効性は定かでない.低容量のワーファリン1 mg も有効でない9)という意見が主流である.一方では著明な血栓イベントの減少はアスピリンの抗凝固能を発揮する量10)や高容量ワーファリンで報告されている11).Ervo ら12)は適応のない患者以外,カテーテルを挿入しているすべての患者に抗凝固療法を提案している.このようなカフ型カテーテル挿入中の抗凝固,抗血小板抑制療法の効果の報告はまちまちであり,確定的な結論を出すにはもう少し時間を要するものと思われる. GL-4:カテーテル閉塞に伴う脱血不良または返血圧 上昇については第5 章VA トラブルの管理(9)カ
テーテルトラブルの項を参照. 脱血不良でたびたびカテーテル内へウロキナーゼの注入を行うケースでは菌血症の発生率が高いと報告されている13). カフ型カテーテルの場合,カテーテル内血栓にはガイドワイヤー・バルーンカテーテルによる血栓除去,カテーテルの先端周囲のフィブリンスリーブに対してはスネアーカテーテルによるストリッピングが行われることがある.米国ではバルーンによる血栓の圧迫挫滅が主流で内腔のブラッシングやフィブリンシースストリッピングは説得あるデータがなくコストや死亡率が増加するという理由で推奨されていない8). カテーテルの血流低下を放置しておくと透析不十分状態となる.カフ型カテーテルの合併症の中で感染,閉塞の次に重要視しなくてはならない問題である.カテーテル内血栓のみによる血流不足で,洗浄,吸引等を行っても効果がない場合には,同側でのカテーテル入れ替えが可能であるが,静脈の狭窄,壁在血栓あるいはカテーテル周囲のフィブリンシースが存在している場合は別ルートからの留置が奨められる14).また機能していないカテーテルは早期に抜去する必要がある. カテーテル挿入中・抜去後の中心静脈の狭窄・閉塞に関してはIVR 手技が用いられる.カテーテル抜去後のアクセス作製については中心静脈の閉塞のためアクセス手術が不成功に終わることもあるのでむやみに中心静脈にカテーテルを挿入すべきでないという意見は多くの論文にみられる14〜17).カフなしカテーテルからカフ付カテーテルへの変更については,オーバーザガイドワイヤーにより同じルートを用いることで,限りある中心静脈を温存できる18). GL-5:カテーテルと回路の着脱は熟練した看護師と そうでない看護師では明らかに熟練した看護師のほうが感染率は低いため,看護師のトレーニングが必要である.最近では臨床工学技士もVA に関わることも多く,同様なトレーニングが必要と考えられる.実際のカテーテルの着脱はトレーニングを行った後,二人のスタッフで行われるのが望ましい.これは機械を操作する上で役割分担をはっきりさせ,感染減少につながる19).二人の無菌手技による接続と取り外しを受けた透析患者に発生した中心静脈カテーテル(CVC)関連感染症の評価:このグループ/の菌血症の発生率は0.70/1000 CVC cath days で他/の文献3/1000 CVC cath days に比べ低い,二人で行う手技の有用性を示唆している20).カテーテル接続部はクローズドシステム(プラネクタ®)を使用し, 月1 回交換,消毒薬はポピドンヨード液を使用している施設が多い21,22). 伊藤ら23)のように施設によりカテーテル全体を0.5%クロルヘキシジンで消毒するところもある. 一方,カテーテルを体外循環のアクセスとしてでなく点滴,中心静脈栄養などのルートとして使用するとその着脱により感染の機会が増えるだけでなく,カテーテル内のバイオフィルム中の細菌に栄養を送り込むことになるので避けるべきである. GL-6:カテーテルの出口部を観察する際は出口部の 血栓など除去し,周囲や局所を清潔に保つ.出口部の保護は局所の状態により各種保護剤を選択する.非カフ型カテーテルの場合,出口部に限局した感染でもカテーテルにカフがないためカテーテルの外側を通って血管内に細菌が流れ込む可能性があり,細心の注意が必要である. 1挿入部位の汚染(カテーテルケアー出口部) 一般的には従来のポピドンヨード液からCDC ガイドラインやK-DOQI 2006 2)にある,クロルヘキシジンアルコール液(米国では2%グルコン酸クロルヘキシジン,日本では0.5%グルコン酸クロルヘキシジン)ないしはグルコン酸クロルヘキシジン水溶液を用いることが主流である.ポピドンヨードを用いなくなったのはシリコン製のカテーテル素材が多くなり,ヨードの使用が禁忌となったためである.一方,出口部を清潔に保つことは重要で,最近の創傷の治癒の考え方からすると,むやみに消毒薬を使用することは避けるべきであるという考えもある. Valente ら24)は小児における傷洗浄を生理食塩水と水道水の使用で傷感染率を比較,傷感染率は生食で2.8%,水道水で2.9%と差がないことを指摘,水道水で出口部の洗浄を行うことは周囲の皮膚を清潔にし,感染を防止する効果があると思われるが,感染が存在していないことが前提条件となる.水道水を洗浄に使用した観察研究は国内で散見されるが25〜27),大規模な比較対象をおいた研究がないので今後さらなる研究が望まれる.ドレッシング剤についてはガーゼあるいは密閉型ドレッシング剤が使用され,カテーテル関連有害事象を減少させるのに役立つとされている.カテーテル接続部はクローズドシステムを使用している施設が多く,消毒薬はポピドンヨードが用いられている. 2汚染薬液の注入に対する対策 ヘパリンは終了時脱血側,送血側に2.5 mL ずつ注入されるが,5 mL バイアルを新規使用し,汚染さ
れた薬液の注入を避ける.ウロキナーゼについても同様である.また頻回なウロキナーゼ投与だけでもリスクファクターになる13).透析用中心静脈カテーテルは透析以外の目的(中心静脈栄養)では,感染がリスク増大し,カテーテル内のバイオフィルム内の細菌に栄養を与えてしまう恐れがあり避ける. サーベイランスはカテーテル挿入施設,管理施設が連携し,感染の発生頻度をモニターし,発生頻度が高い施設では看護師,患者の再教育をし,持続的な業務の質改善活動を進めなければならない(DO- QI 2006).Klevens ら20)はWeb によるサーベイランスシステムにより感染の発生率や他の外来透析センターとの比較が可能になるとしており,日本でも早期にWeb による留置カテーテルのサーベイランスシステムの構築が望まれる. 滲出液の出現,発赤,腫脹,疼痛,かゆみの有無を観察,必要により滅菌手袋で局所を圧迫し滲出液の有無をみる. 感染に関しては,よいカテーテルケアーや日常的な観察以外に予防戦略はないというのがわれわれの基本的認識である.カフなしカテーテルの代わりに最近,ブリッジ使用としてカフ付カテーテルを挿入するケースがみられるが,カフなしカテーテルの代わりにカフ付カテーテルを使用することはカテーテル関連菌血症やその結果起こる感染性心内膜炎を減らすことにつながらない28〜30). 感染リスクに関する研究はJean ら13)によると菌血症のカテーテルは菌血症のないカテーテルとの比較で,糖尿病,動脈硬化,菌血症の既往,SA の保菌者,カテーテルの開存期間が長い,鉄静脈注射が多いなどの因子に比べ,頻繁なウロキナーゼカテーテル内投与,出口部感染がある患者に頻回にみられた.一方,単変量生存解析では菌血症の重要な初期のリスク要因はSA(Staphylococcus aureus)の鼻腔保菌,菌血症の既往,動脈硬化と糖尿病であった13). わが国での血管内留置カテーテル関連血流感染のサーベイランスは森兼31)により開始されている.感染率の報告は東ら17)によると2000 年6 月より2008年12 月末日8.5 年間の長期留置挿入例82 例,延べ90 回で長期留置,カテーテル関連血流感染は8 例/ (9.8%)1,000 カテーテル/day 当たり0.28 であった. GL-7:Jean ら13)は1994〜1998 年間に中心静脈カテー テル(CVC)関連菌血症の発生やリスク要因をサーベイランスし,菌血症の原因菌はSA の関与を示唆した.SA 鼻腔保菌者はカテーテル挿入者の35%の患者にみられたという.単変量生存解析では菌血症 の重要な初期リスクの要因はSA の鼻腔保菌,菌血症の既往,動脈硬化と糖尿病であるという.そのため,重篤な菌血症に陥りやすいMRSA 保菌者では,計画的カフ型カテーテル挿入患者の場合,カテーテル挿入前に除菌しておくことが望ましい. GL-8:カテーテル感染の詳細は第5 章VA トラブル の管理(6)感染の項を参照. カテーテル菌血症時は血液培養の結果を待たずに経静脈的抗生剤の投与を開始する.カテーテル菌血症時はバンコマイシンあるいはシプロキサンなどの抗生剤で治療が可能であるが,非カフ型カテーテルの場合,カテーテルを抜去しないで治癒する率は19%にすぎない32).なおかつ,カテーテルを留置したままでの抗生剤治療は10 日から21 日かかるといわれている33).免疫抑制状態にある透析患者では,早めに抜去して,次回の透析直前に別ルートから留置したほうが安全で推奨される.抜去後も解熱するまで抗生剤の投与は必要である.カフ型カテーテルの場合,カテーテル内バイオフィルム中の細菌を殺菌する目的でカテーテル内に抗生剤をロックする療法が試みられている34)が抗生剤の量,投与方法などに関しまだ標準化されていない.また不必要な抗生剤の投与を避けることは当然のことであり,最近出たLinezolide(ザイボックス®)は最終兵器ともいえる薬剤で,バンコマイシン耐性菌の治療にとっておくべきである.またカテーテル関連感染菌血症に対するカテーテルロック治療をした患者の約2%がCandida による二次感染をおこすことが知られており注意が必要である35). GL-9:カテーテル挿入部およびその周囲をきれいに 保つために,カテーテル挿入部を露出したままシャワー浴する施設25)と挿入部をラパック等でカバーして入浴させている施設がある21).いずれにしても接続部からの異物の混入を防ぐことを考える必要がある.カテーテル出口のシャワー浴の有効性,安全性については本邦での文献のみで,欧米の文献がないため,ガイドラインに記載しなかった.今後海外を含め多くの施設での検証が必要となろう. 最後に留置カテーテル管理における重要なポイントはカテーテルの感染と機能不全を予知することであり,これらの作業にはVA に関わるすべてのメンバーが参加することが望まれる.カテーテル管理は短期間にレベルアップすることは困難であり,チームメンバー全員で持続的質改善運動を粘り強く推し進める必要があるという意見が支持される2).
文献1) 江川宏寿,久木田和丘,山田理大,安部美寛,津田一 郎,飯田潤一,小野寺一彦,坂田博美,堀江卓,玉置透,目黒順一,米川元樹,川村明夫:維持透析患者における中心静脈狭窄23 症例(25 病変)の検討.腎不全外科2006 腎と透析60(別冊):31-33,2006 / 2) K/DOQI Clinical Practice Guidelines and Clinical Practice Recommendations 2006 Updates Hemodialysis adequacy Peritoneal Dialysis Adequacy Vascular Access. Am J Kidney Dis 48(Suppl 1):S1, 2006 3) 久木田和丘,古井秀典,安部美寛,小野寺一彦,米川 元樹,川村明夫:長期型バスキュラーアクセスカテーテルの先端の位置.臨牀透析24:107-111,2008 4) Vesely TM:Central venous catheter tip position:a continuing controversy. J Vasc Interv Radiol 14:527- 534, 2003 5) 宮田昭,小篠揚一,本田理,豊田麻理子,上木原 宗一,早野俊一:長期留置型ブラッドアクセスカテーテルの管理上の課題と適応.腎と透析57(別冊アクセス2004):47-49,2004 6) Oliver MJ:Acute dialysis catheters. Canada Semi- nars in dialysis 14:432-435, 2001 7) Agharazii M, Plamondon I, Lebel M, Douville P, Desmeules S:Estimation of heparin leak into the systemic circulation after central venous catheter heparin lock. Nephrol Dial Transplant 20:1238-1240, 2005 8) Betjes MG, van Agteren M:Prevention of dialysis catheter-related sepsis with a citrate-taurolidinecontaining lock solution. Nephrol Dial Transplant 19: 1546-1551, 2004 9) Mokrzycki MH, Jean-Jerome K, Rush H, Zdunek MP, Rosenberg SO:A randomized trial of minidose warfarin for the prevention of late malfunction in tunneled, cuffed hemodialysis catheters. Kidney Int 59:1935-1942, 2001 10) Pecorari M:Long-term catheters for haemodialysis: malfunction and management. J Vasc Access 1:158- 161, 2000 11) Twardowski ZJ:What is the role of permanent central vein access in hemodialysis patients? Semin Dial 9:394-395, 1996 12) Ervo S, Cavatorta F, Zollo A, Galli S:Implantation of permanent jugular catheters in patients on regular dialysis treatment:ten yearsʼ experience. J Vasc Access 2:68-72, 2001 13) Jean G, Charra B, Chazot C, Vanel T, Terrat JC, Hurot JM, Laurent G:Risk factor analysis for long-term tunneled dialysis catheter-related bacteremias. Nephron 91:399-405, 2002 14) Crain MR, Mewissen MW, Ostrowski GJ, Paz-Fuma- galli R, Beres RA, Wertz RA:Fibrin sleeve stripping for salvage of failing hemodialysis catheters:Techni- que and initial results. Radiology 198:41-44, 1996 15) Agarwal AK, Patel BM, Haddad NJ:Central vein stenosis:A nephrologistʼs perspective. Semin Dial 20: 53-62, 2007 16) Liangos O, Gul A, Nicolaos E, Madias NE, Jaber BL: Long-term management of the tunneled venous catheter. Semin Dial 19:158-164, 2006 17) 東仲宣,内野敬:血管内留置カテーテル型バスキュ ラーアクセス―とくに長期型.臨牀透析25:1177- 1183,2009 18) Falk A, Prabhuram N, Parthasarathy S:Conversion of temporary hemodialysis catheters to permanent hemodialysis catheters:A retrospective study of catheter exchange versus classic de novo placement. Semin Dial 18:425-430, 2005 19) Vanherweghem JL, Dhaene M, Goldman M, Stolear JC, Sabot JP, Waterlot Y, Serruys E, Thayse C: Infections associated with subclavian dialysis catheters:The Key role of nurse training. Nephron 42:116- 119, 1986 20) Klevens RM, Tokars JI, Andrus M:Electronic reporting of infections associated with hemodialysis. Nephrol News Issues 19:37-38, 2005 21) 野口隆司,嶋津真季子,松金隆夫,根本純江,東仲 宣:長期留置カテーテル管理の実際.腎と透析66(別冊):34-38,2009 22) 津留喜美子,山城律子,白石登美代,宮田昭,早野 俊一:長期型バスキュラーアクセスカテーテルの管理の実際.腎と透析66(別冊):39-41,2009 23) 伊藤薫,阿部博,佐々木由紀子,久木田和丘,米 川元樹:長期型留置カテーテルの管理について.腎と透析66(別冊):31-33,2009 24) Valente JH, Forti RJ, Freundlich LF, Zandieh SO, Crain EF:Wound irrigation in children:saline solution or tap water? Ann Emerg Med 41:609-616, 2003 25) 須田春香,斎藤由紀子,鈴木香子,柴原 宏,柴原奈 美,高橋進:長期型バスキュラーカテーテル管理方法―シャワー洗浄について―.腎と透析66(別冊): 43-47,2009 26) 柴原宏,柴原奈美,小松麻衣子,齋藤志津,小尾 学,須田春香,森田美恵子,斎藤由紀子,鈴木香子,高橋進:カフ付き皮下トンネル型カテーテル出口部の新しいケア方法―消毒薬を使わない,水道水によるシャワー洗浄法―.透析会誌43:189-193,2010 27) 簗場道弘,秋山郁恵,幸塚敬,田中ゆかり,小柴洋 美,松下和通:長期留置カテーテル出口部の消毒方法の1 例.腎と透析61 別冊(アクセス2006):120-121, 2006 28) Tokars JI, Miller ER, Stein G:New national surveil- lance system for hemodialysis-associated infections: initial results. Am J Infect Control 30:288-295, 2002 29) Fernández-Cean J, Alvarez A, Burguez S, Baldovinos
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(6) 患者教育 GL-:透析医療は患者・家族および透析スタッフによる相補的な協働作業であることが,患者自身に十 分理解されることを推奨する(O). GL-:透析の開始を理解・納得して受諾した患者であっても,患者は透析導入期のみならずあらゆる時 期でその心理に動揺を示すことを,透析スタッフは理解しなければならない(O).そのうえで,透析スタッフは,寄り添いと支援を心掛けることが推奨される(O). GL-:透析スタッフは患者個々の特性を把握したうえで,患者個々に適合した指導と勇気付けを絶えず 行うことが推奨される(O). GL-:透析スタッフは患者が持つVA についての疑問,不満,苦痛などに絶えず関心を寄せ,誠意を持っ て応じることが推奨される(O). GL-:VA に関わる指導は表1 に掲げた諸事項であり,患者の理解度を確認しつつ,反復して話し合い を持つことが推奨される(O). GL-:血液透析患者が他科または他院を受診して採血・血圧測定・検温を受ける場合には,AVF,AVG などのVA 保有肢で行われないよう患者に指導しておくことが望ましい(O). 解説GL-1:いずれの疾患殊に慢性疾患では,その治療は患 者・家族および医療スタッフの協働作業で進めなければ効果が得られない.この点を患者・家族に十二分に理解してもらうことが,きわめて重要である.それぞれの立場の者の役割分担を明確にしておく必要がある. GL-2:障害の受容段階を上田1)は,1)ショック期,2) 否認期,3)混乱期,4)解決への努力期,5)受容期としている.しかし,この過程は一方交通ではなく,行きつ戻りつするものであろう.透析スタッフは患者心理が揺れ動くことを察知して彼らに接しながら,適正な勇気付けを行うことを心掛けたい. GL-3:患者の生来の性格は疾病のさまざまな影響を 受けて,特有な個性が表出してくる. 協力型・非協力型,楽観型・悲観型,信頼型・不信型,安定型・不安定型,独立型・依存型などいろ いろに区分されることがあるが,多くの患者は一定の型に当てはまるのではなく,多面性を示すもので ) 患者自身が現有のVA 形式を理解できるように助力すること. ) 清潔概念を徹底すること. ) 毎回の血液透析施行時に,得られる血流量や静脈圧を患者に知ってもらうこと. ) 自分のVA を「見る」「触れる」「聴く」ような習慣を持たせること. ) VA 穿刺部位を順繰りに変えていく必要性に理解を得ること. ) VA の保護(圧迫・寒冷・入浴・打撲・掻きむしりなど)に関心を持つように仕向けること. ) 穿刺針抜去後の止血圧迫法や後出血時の処置法を,具体的に知ってもらうこと. ) VA 保有肢の冷感や疼痛が出現・増悪した場合には速やかな報告を求めること. ) 施設外でVA に関する緊急事態(出血・重症感染・血流 途絶など)が発生した場合の連絡先を熟知させること. 表1血液透析患者のVA ケアに関連する指導
あることを理解しなければならない2). GL-4:多くの患者はVA 機能の継続性,穿刺性や穿刺 時疼痛などに不安や不満を持ちがちである3,4).透析スタッフはこれらを察知して,彼らの不安や不満の軽減に努めなければならない. GL-5:現に保有するVA の機能と形態を良好に保持 するためのVA ケアに,患者自身が果たす役割は大きい.表1 に掲げた諸事項について,平易な言葉で具体的に説明することが重要となる. GL-6:VA への穿刺は専ら血液透析施行時に限定する ことが望ましい.不慣れな採血操作がVA 機能を損なう恐れがあるからである.VA 保有肢での血圧測定は吻合部などへの加圧のため望ましくない.また,AVF,AVG 保有肢での検温は非保有肢に比較してやや高めになることに留意する必要がある. 文献1) 上田敏:障害の受容―その本質と諸段階について―. 総合リハ87:205-228,1980 2) 大平整爾:患者心理とその理解.血液透析:安全ガイ ドブック(大平整爾,伊丹儀友編著),p19-25,診断と治療社,東京,2008 3) 大平整爾,室谷典義:バスキュラーアクセスの穿刺お よび合併症に対する患者の不安・心配.バスキュラーアクセス;その作製・維持・修復の実際(大平整爾,久木田和丘,天野泉,内藤秀宗,編著),p65-71,中外医学社,東京,2007 4) 大平整爾,井村卓,今忠正:ブラッドアクセス合 併症が及ぼす精神的諸問題.腎と透析58:452-456, 2005
第5 章バスキュラーアクセストラブルの管理(1) 狭窄・閉塞 GL-:VA 狭窄は血液透析の円滑な実施や透析効率に悪影響を及ぼす可能性があることから,適宜VA 狭窄の正しい診断やその評価を行う必要がある(1-C). GL-:VA 狭窄の治療法としては,インターベンション治療や外科的治療などがあるが,その狭窄部位 や狭窄程度の診断のみならず,過去の治療経過や再狭窄状況なども考慮した上で治療法を決定すべきである.VA 狭窄の治療条件は,狭窄率が50%以上であり,下記の臨床的医学的異常が一つ以上認められること.(1)血流の低下,瘤の形成.(2)静脈圧の上昇.(3)BUN の異常高値,または再循環率の上昇.(4)予測できぬ透析量の低下.(5)異常な身体所見(1-B). GL-:VA 閉塞は血液透析実施に支障がでることのみならず,血栓による合併症拡大を防ぐため,早急 な治療が必要とされる(1-C). GL-:VA 閉塞治療は,インターベンション治療でも外科的治療でも可能である.まずは血栓の確実で 安全な体外排除や血栓溶解などの処置を行うと同時に閉塞の原因に対する治療や対応が必要となる(1-C). GL-:VA 狭窄や閉塞への修復治療に対しては合理的かつ経済的なプランニングの上で行うべきである (O). 解説GL-1:VA 狭窄の部位や形態は,多彩であるが,1動 静脈吻合部の近傍静脈部位,2肘関節屈曲部の周辺静脈や静脈分岐部位,3グラフトではグラフトと静脈吻合部およびその近傍静脈,4上腕橈側皮静脈が鎖骨下静脈に合流するアーチ部位,5頻回穿刺部位,などが好発部位であり,それぞれ浮腫,腫脹などの静脈高血圧症を伴うこともある.【VA 狭窄の診断法の基本】 VA 狭窄の診断や評価は視診,触診,聴診などの簡易的な診断法が基本である1,2). (1) 視診:駆血すると狭窄部が明白に観察できる が,他に皮膚の色や浮腫の有無等も観察すること. (2) 触診:触診では狭窄部を硬く触れることが多 い.駆血により周囲の静脈が拡張すると,狭窄部の部位と程度を触知しやすくなる.狭窄部より中枢側では,スリルを比較的よく感じるが,狭窄部の末梢側ではスリルが触れず,パルス(拍動)状 になることがある. (3) 聴診:狭窄部では高調音,狭窄部より末梢側で は断続音,狭窄部より中枢側では連続音を聴取できる.【VA 狭窄の画像診断】 VA 狭窄の画像診断としては,造影剤や炭酸ガスによる血管造影や超音波エコーなどがあるが,それぞれの長所・短所を熟知する必要がある. (1) エコー:侵襲の少ない方法であり,副作用もな いことから広く普及しつつある.近年画像の鮮明度も向上し,透析VA 向けに画像の質を上げた超音波エコー装置も開発されている3). (2) 血管造影:狭窄の程度や部位の診断およびVA の全体像の把握に最も適した方法である4).診断後ただちにインターベンション治療に移行できることも利点であるが,静脈造影はあくまで投影図であること,およびヨード造影剤アレルギーを有
する患者には禁忌となることを認識しておかねばならない.一方,他に炭酸ガスによる造影も行われるようになってきている. / / (3) 造影剤:240 mg/mL〜350 mg/mL のヨード造 影剤を50%程度に薄めて使用する(O). (4) 狭窄病変の計測:正常血管径については,対象 となる狭窄のなるべく近傍の狭窄を有していない部分の径を計測する.静脈は,軽い駆血下で怒張している状態で計測する.狭窄病変の上流と下流で径が異なる場合は,その平均値を採用する.狭窄径については,最も細い部位の径を計測する.狭窄長については,狭窄の始まりから狭窄の終わりの点までの距離を計測する.【VA 狭窄の臨床所見】 VA 狭窄に伴う主な所見として,血流不全・穿刺困難・静脈圧上昇,あるいは,再循環による透析効率の低下などがあるが,これらが単発あるいは複合的に発現しているかどうかの評価が必要である. 動・静脈(またはグラフト)吻合部狭窄,または吻合部近傍狭窄が生じた場合は,吻合部のスリルが低下するのに伴い,血流不良を呈するので診断は容易となる.一方,穿刺部(V 側穿刺部)より中枢部の静脈に狭窄が生じている場合は,静脈圧の上昇として現れてくる.したがって,V 側穿刺部を再検討する必要が生じることになる.しかし,VA 造設肢が全体的に浮腫状を呈してきたときは,静脈高血圧を考慮する必要がある.いずれにせよ,VA 狭窄の診断は,血管造影法やエコーが確実でかつ絶対的な診断法である. (1) 血流不全:吻合部方向に向かって穿刺し,脱血 /が180 mL/min 以下の状況が複数回生じれば血流不全を疑う. (2) 静脈圧の上昇:静脈圧が上昇傾向を示し,50 mmHg 以上の上昇値がみられた場合や常時150 mmHg 以上の圧が持続した場合.これらの場合は,同時に止血時間の延長もみられることが多い. (3) 再循環による透析効率の低下:10%以上の低下 がみられた場合. GL-2: (1) 治療法の選択:1中枢静脈狭窄:バルーン PTA などのインターベンション治療が第一選択となるが,PTA 不成功時の外科的バックアップ体制が必要とされる.2動静脈吻合部近傍静脈狭窄:ガイドワイヤーが通過すればPTA を優先させる.3動静脈吻合部狭窄:just size バルーンを用いたPTA も可能であるが,静脈荒廃例では外科的再建術を優先させる5〜8)(E).4動脈狭 窄:just size バルーンを用いたPTA を考慮.5グラフト―静脈吻合部狭窄:高圧バルーンカテーテルによるPTA が行われるが,強固な狭窄には超高圧バルーンカテーテルやカッティングバルーンPTA が推奨される9).一方,外科的治療としては,肥厚した内膜弁の切除術,あるいはグラフトバイパス術などが行われる.63 か月以内に狭窄治療としてのPTA を2 回以上必要とされた症例においては,その後の対応策として外科的再建術も選択肢の一つとして考慮されねばならない10〜12).7ステントは,穿刺部位とならない肘部以上の中枢側静脈への適応が考えられるが,原則としてelastic recoil と判断される中心静脈狭窄への適応が好ましい1,6). (2) バルーンPTA の適応:狭窄に対するPTA の 適応については,例を示すと,AVF の場合では, / 1吻合部方向に向かって穿刺し脱血が180 mL/ min 以下の状況,2DSA の施行にて狭窄部(2.5 mm 以下)が吻合部,吻合部近傍,run off vein に存在する.狭窄音,狭窄部の触知,透析後半での脱血不良などがみられる.またAVG の場合では,1グラフト内に2 本の穿刺がある状況で,静脈圧の上昇から再循環が考慮され,かつ再循環率10%以上が認められる.2止血時間の延長,静脈圧の上昇,シャント音の低下などの理由からDSAを実施し,狭窄部(2.5 mm 以下)が存在する13).バルーンカテーテルの選択:シャント径による選択としては,通常型(0.035 インチのガイドワイヤー対応)と特殊型(0.018 インチのガイドワイヤー対応)があるが,拡張対象病変がある程度まっすぐであり,シースからのアプローチ経路に屈曲・蛇行が少ない場合は通常型が望ましく,動静脈吻合部などの屈曲部分を拡張する場合やアプローチ経路に屈曲・蛇行が強い場合は特殊型が望ましい.また,コンプライアンスによる選択としては,non-compliant balloon とsemi-compliant balloon があるが,耐圧が高ければ(15ATM 以上)種類は問わない14).その後,さらに超音圧バルーンカテーテル(27 ATM 以上)が登場してきている. (3) ステント治療の適応:絶対的適応として,1バ ルーンPTA でrecoil をきたすもの,2中心静脈で血管外からの圧排で血流障害があるもの.さらに相対的適応として,1バルーンPTA 後3 か月以内に再狭窄をきたす状態が頻回におこるもの,
2拡張時の損傷で血管外血腫により血管が圧迫され血流が障害されているもの,3最終的に処理しきれない残存血栓により再閉塞の可能性が高いもの,との説もある15).【VA 狭窄の治療条件の解説】 VA 狭窄の日頃のモニタリングは,医師のみならず看護師や臨床工学技士ら,コメディカル用のスコアリングとしても有用である.VA 治療条件としては,GL-2 を参考にさらに詳細な条件を基に作製されたこれらのシャントトラブルスコアリング値を参考にしてもよい16). GL-3:VA 閉塞には,血栓性閉塞と非血栓性閉塞があ るが,血栓形成の最大の理由は狭窄である.ほかに,低血圧,脱水,過凝固能,外科,穿刺部圧迫,感染なども要因となる.狭窄がすでに存在し,その上でこのような二次性要因が加わった時に閉塞が生じやすい.閉塞後は,カテーテル挿入を回避するために,あるいはカテーテル挿入期間を短くするため,48 時間以内にVA 閉塞治療を速やかに行うことが望ましい17,18). GL-4: (1) インターベンション治療:血栓量が少ない場合 は,バルーンPTA のみで再開通が可能な場合もあるが,血栓量がある程度以上あれば,バルーンPTA の前に経皮的な血栓溶解療法,血栓除去法,血栓吸引法などで血栓を処理する必要がある.経皮的薬学的血栓溶解療法としてウロキナーゼやヘパリン化生理食塩水が用いられるが,ウロキナーゼ使用量は可能な限り抑えることが望ましい.一方,経皮的血栓除去療法・経皮的血栓吸引療法は,迅速な処置が可能であるが,排液量(出血量)のモニタリングが必要となる.閉塞血栓のうち,最も上流部分の血栓処理は最後に行うこと. (2) 外科的治療:血栓性閉塞であっても,閉塞後, 長時間経過していれば,インターベンション治療の成功率が落ちる12)ことから,外科的治療の適応となる.手術は血栓除去カテーテルを用いて血栓除去術を施行する.血栓除去術が不充分な場合は動静脈再吻合術,あるいは,グラフトバイパス術などを行う17,19).【非血栓性閉塞の解説】 非血栓性閉塞に対しては,ガイドワイヤーが通過すればインターベンション治療が可能である. 閉塞部をガイドワイヤーが通過すれば,ほとんどの場合,バルーンPTA などの拡張のみで再開通が可能である.ガイドワイヤーが非通過の場合は,外科的再建術が必要となる. GL-5: (1) 狭窄に対しては,アクセスの温存性,および侵 襲度などの理由からバルーンPTA などのインターベンション治療が優先される. (2) 外科的治療は,閉塞後長時間経過している症例, 難治性のアクセス感染例,およびスチール症候群や過剰血流症例などインターベンション治療でも好結果が得られにくい症例に限り,第一選択としてよい.また,インターベンション治療後のモニタリングで,短期間で頻回の狭窄・閉塞を生じる症例にも外科的治療の適応が好ましい. (3) 各施設においては,本学会ガイドラインを参考 に,それぞれの施設の実情を考慮したVA インターベンション治療マニュアルを作成し,インターベンション治療の絶対的適応および相対的適応を決めることが望ましい.さらに,狭窄や閉塞の処置後の開存成績をモニターすべきである. (4) インターベンション治療を行う際は,狭窄の部 位,程度,過去の治療歴などを事前にできる限り把握した上で,治療手順,使用予定のデバイスの種類や数などのプランニングをたてる.その上で,最小限のデバイスを有効に,かつ安全確実に活かせる最終プランを作成すべきである. (5) 治療法の選択については原則的には,その施設 内またはその近隣地域で最もVA 治療に熟達した医師(血管外科医,放射線科医,透析専門医など)の治療や指示を仰ぐことが望ましい. 文献/ 1) National Kidney Foundation:NKF-K/DOQI Clinical practice guideline for vascular access:update 2000. Am J Kidney Dis 37(Suppl 1):S137-S181, 2001 2) 天野泉:ブラッドアクセストラブルにおけるイン ターベンション治療の適応と限界.日透析医会誌15: 84-85,2000 3) 木全直樹,徳本直彦,山下優子,望月剛,戸田房子, 廣谷紗千子,佐藤雄一,春口洋昭,秋葉隆,東間紘,二瓶宏:皮下動静脈瘻診断における3 次元エコー画像の有用性.透析会誌35(Suppl 1):254,2002 4) 後藤順一,久木田和丘,江川宏寿,池田篤,飯田潤 一,坂田博美,堀江卓,玉置透,目黒順一,米川元樹,川村明夫:シャントトラブルにおける当院の治療法の選択.透析会誌38:105-110,2005 5) Turmel-Rodrigues L, Pengloan J, Blanchier D, Abaza M, Birmele B, Haillot O, Blanchard D:Insufficient dialysis shunts:Improved long term patency rates with close hemodynamic monitering, repeated percu-
taneous balloon angioplasty, and stent placement. Radiology 187:273-278, 1993 6) Gmelin E, Winterhoff R, Rinast E:Insufficient hemo- dialysis access fistulas:Late results of treatment with percutaneous balloon angioplasty. Radiology 171:657- 660, 1989 7) Beathard GA:Percutaneous transvenous angioplas- ty in the treatment of vascular access stenosis. Kidney Int 42:1390-1397, 1992 8) Lay JP, Ashleigh RJ, Tranconi L, Ackrill P, A-Khaffaf H:Result of angioplasty of brescia-cimono haemodialysis fistulae:medium-term follow-up. Clin Radiol 53:608-611, 1998 9) 池田潔,吉田鉄彦,小野明子,藤崎毅一郎,葛城 功,近藤英樹,水政透,熊谷晴光:頻回PTA 施行症例に対するPBC(カッティングバルーン)の成績.腎と透析55(別冊アクセス2004):94-96,2004 10) Kovalik EC, Newman GE, Suhocki P, Knelson M, Schwab SJ:Correction of central venous stenosis: Use of angioplasty and vascular wallstents. Kidney Int 45:1177-1181, 1994 11) Bhatia DS, Money SR, Ochsner JL, Crockett DE, Chatman D, Dharamsey SA, Mulingtapang RF, Shaw D, Ramee SR:Comparison of surgical bypass and percutaneous balloon dilatation with primary stent placement in the treatment of central venous obstruction in the dialysis patient:one-year follow-up. Ann Vasc Surg 10:452-455, 1996 12) Poulain F, Raynaud A, Bourquelot P, Knight C, Rovani X, Gaux JC:Local thrombolysis and thromboaspiration in the treatment of acutely thrombosed arteriovenous hemodialysis fistulas. Cardiovasc Intervent Radiol 14:98-101, 1991 13) 池田潔,橋口友貴,前田篤宏,田村恭久,水政透, 二宮利治,安藤高志,熊谷晴光:予防的(早期)PTA施行の有用性の考察.透析会誌36(Suppl 1):891, 2003 14) 後藤靖雄,山田章吾:透析患者のIVR,ブラッドアク セスに対するIVR.日獨医報47:526-538,2002 15) 後藤靖雄,田部周一,石橋忠司:透析シャント不全に 対するステント治療の長期成績.日医放会誌64:564- 569,2004 16) 池田潔:バスキュラーアクセスの進歩と課題―バス キュラーアクセス形態および機能に対するモニタリング.臨牀透析25:1111-1116,2009 17) Beathard GA:Mechanical versus pharmacomechani- cal thrombolysis for the treatment of thrombosed dialysis access grafts. Kidney Int 45:1401-1406, 1994 18) 天野泉:バスキュラーアクセスとIVR.臨床画像 12:1186-1194,2005 19) Trerotola SD, Davidson DD:Preclinical in vivo testing of a rotational mechanical thrombolytic device. SCVIR 7:717-723, 1996
(2) 瘤 GL-:瘤の診断には病歴聴取,理学的検査を行い,必要に応じて超音波検査を行うことが推奨される (O). GL-:切迫破裂,感染を伴った瘤,急速に増大する瘤は,緊急手術を行うことが推奨される(O). GL-:緊急を要さない瘤に対しては,バスキュラーアクセスの種類,瘤のサイズ,位置,石灰化,壁在血 栓の有無,シャント血流量,狭窄の有無などを勘案して手術適応や術式を決定することが望ましい(2-D). GL-:穿刺に伴う瘤形成を予防することが望ましい(2-D). 解説GL-1:AVF・AVG・表在化動脈にはしばしば瘤を形 成する.瘤は血管が局部的に円筒状または紡錘状,あるいは囊状に拡張した状態と定義できる.シャント関連の瘤は,壁構造,部位,成因別に表1 のように分類できる. 詳細に病歴を聴取して,瘤の増大のスピードを確認する.大きな瘤であっても,サイズがほとんど変化がないものであれば,経過観察が可能である,一方,小さい瘤でも急速に生じたり,増大している場合は早期の手術が必要になることがある. 理学的検査で,瘤の位置,穿刺の有無,瘤のサイズや硬さ,皮膚の状態を観察する.急速に生じた瘤は穿刺に伴う仮性瘤であり,感染を伴っていることもある.局所所見だけでなく,発熱の有無もチェックする.瘤の硬さは重要な所見である.硬い瘤の場合は,流入する動脈を圧迫する.サイズが小さくなるものは,流出路の狭窄が原因となっていることが多く,サイズに変化がないものは,壁在血栓を有している可能性がある. 超音波検査では表2 に示すポイントを中心に精査する.特に吻合部の瘤に対しては,流入動脈の位置関係が手術を行うための重要な情報となる.超音波検査で十分な情報が得られない場合は,血管造影や3DCT が有効となる.静脈狭窄が原因で,静脈内圧が上昇して瘤を形成することがあり,超音波検査では,瘤そのものだけでなく,その周囲の血管の精査 が重要である.過剰血流が瘤の一因となっていることがあり,超音波検査を行う場合は,同時に血流量も測定することが必要である. PTFE 人工血管症例では血清腫との鑑別が重要である.中枢の動脈を圧迫して,小さくなるものは瘤である.サイズの変化がないものは,血清腫もしくは,壁在血栓を伴った瘤である.この両者は超音 .壁構造による分類1真性瘤:血管壁の構造を保っている瘤2仮性瘤:血管壁の構造が消失している瘤.アクセスの種類による分類1AVF の瘤2AVG の瘤3表在化動脈の瘤.部位による分類1シャント吻合部瘤2非吻合部瘤.成因による分類 1穿刺関連の瘤→穿刺,止血ミスによる仮性瘤→反復穿刺による瘤2非穿刺瘤 →ジェット流による部分的な内圧上昇吻合部瘤や狭窄後の瘤→内圧上昇狭窄により静脈の内圧が上昇して生じる瘤→血流過剰 静脈全体が拡張している場合が多い. 表1
波検査で鑑別が可能であり,血清腫では内部に血流が認められないことが特徴である. GL-2:瘤の治療でまず優先させることは,緊急手術の 適応の判断である.切迫破裂の危険がある瘤,感染を伴っている瘤は緊急手術の適応となる.全身感染を伴っている場合は,瘤切除とシャント閉鎖術を行う.切迫破裂瘤に対しては,瘤の摘出術が必要になる.切迫破裂の症状としては,1急速に増大する瘤,2皮膚の発赤やびらんを有している瘤,3皮膚に光沢を有する瘤,4感染を伴う瘤,などがある. GL-3:切迫破裂の危険のない時は経過観察とし,時期 をみて手術が必要か否かは症例ごとに判断する.待機手術の適応になる瘤は,1瘤の前後に狭窄があり,シャント閉塞の危険のあるもの,2部分的な血栓形成,3直径3 cm 以上の大きな瘤,4増大傾向にある瘤,などである.破裂や閉塞の危険がなくとも,日常生活で不自由を感じる場合にも手術を考慮する. 瘤の治療戦略は,シャント吻合部瘤と非吻合部瘤で異なり,また,血流過剰を伴っている否かでも異なる.吻合部瘤で過剰血流のあるものに対しては,流入動脈である橈骨動脈のバンディングを行い,血流低下と瘤の内圧低下を図ることが有効である.瘤を切除して中枢で再建することも可能であるが,その場合は,過剰血流にならないよう留意する.過剰血流のない症例で静脈狭窄が原因となって生じた瘤に対しては,狭窄部のPTA が有効であり,必ずしも瘤を切除する必要はない.また,瘤を切除して狭窄部静脈の中枢で再建することも可能である1). 前腕シャントの吻合部瘤を切除する場合は,可能な限り動脈形成術を行い,末梢循環を保つようにするが,他の動脈から十分な末梢循環がある場合は,動脈を結紮してもかまわない.上腕動脈に吻合部がある場合は,動脈結紮は避けるのが望ましい. 吻合部以外の瘤で血流過剰を伴っている場合は,細い人工血管で瘤部を置換するのがよい方法である.血流過剰がない場合でも可能な限り吻合部は残し,瘤のみを治療する.囊状の瘤の場合は,瘤を切除した後に人工血管を使用せずに形成が可能である が,紡錘状の瘤では人工血管バイパス術が必要になることが多い.瘤の形態にあわせて治療方法を変える.巨大な瘤では上腕にターニケットをかけて,一時的に血流を遮断することも考慮する2). 人工血管の穿刺による仮性瘤(人工血管の場合はすべてが仮性瘤になる)は,血管壁がないため,破裂する危険が高い3,4).増大する場合は時期を逸せず手術を行う.手術は健常な人工血管ともに瘤部を切除して,新たな人工血管で置換するのが一般的である. 動脈表在化に生じた瘤に対しては,AVF の瘤と同様,急速に増大したり,感染を伴ったもの,皮膚に光沢を生じるものでは,手術が必要になる. AVF・AVG と異なり,必ず末梢循環血流を確保する必要があり,瘤を切除した後の血行再建術が必要となる.ただし,感染を伴った瘤では,グラフトを用いた再建術は行わないほうがよい. GL-4:穿刺に伴う瘤は,同一部位の反復穿刺により, 壁が薄くなって生じるものと,透析時の抜針後の止血不良で生じる仮性瘤がある.いずれも,防止することが可能である5,6).瘤を形成した部位に穿刺を続けると,さらに瘤が大きくなるため,やむを得ない場合を除き,他の部位に穿刺するのがよい. 文献1) 浅野学,中原徳弥,岡本真智子,岩渕仁,小口健 一:動静脈吻合部瘤に対する手術療法.腎と透析66 (別冊腎不全外科2009):98-100,2009 2) 久木田和丘,山田理大,安部美寛,江川宏寿,津田一 郎,飯田潤一,堀江卓,坂田博美,小野寺一彦,玉置透,目黒順一,米川元樹,川村明夫:タニケットを応用したバスキュラーアクセス瘤の手術.腎と透析60(別冊腎不全外科2006):34-36,2006 3) 古川博史,谷合一陽,森岡茂,前原信直,岩崎孝一 朗,寒川昌信,青野準:ポリウレタン製人工血管多房性仮性瘤に対する一手術例.腎と透析64:285-287, 2008 4) 杉浦清史,山崎健史,杉田省三,吉本充,和田誠次, 稲荷場ひろみ:切迫破裂となった人工血管内シャントのグラフト動脈瘤の経験.透析会誌42:148-150, 2009 5) 塩田潤,室谷典義,佐藤純彦,堀誠司,松田博幸, 嶋田俊恒:シャント瘤手術適応の現況.腎と透析61 (別冊アクセス2006):109-112,2006 6) 村上康一,坂井健彦,正井基之,吉田豊彦:シャント 瘤破裂症例の検討.腎と透析66 (別冊アクセス2009):211-213,2009 .瘤のサイズ.壁在血栓の有無.壁石灰化.流入動脈(吻合部瘤) .瘤前後の狭窄病変.皮膚から瘤血管前壁までの距離 表2超音波検査での瘤の観察ポイント
(3) 静脈高血圧症 GL-:静脈高血圧症は,AVF やAVG 造設肢の局所的または肢全体に生じるシャント血流の静脈還流不 全症状のことであり,症状が,連行性である場合は,速やかに原因精査と治療を行うことが望ましい(O). GL-:静脈高血圧症の診断・評価には,血管造影が望ましい.また,周囲組織の圧迫の診断にはCT が 有効である(2-C). GL-:静脈高血圧症の治療法は,外科的な再建術も可能だが,低侵襲なバルーンPTA やステント留置 などのインターベンション治療が可能である(2-C). GL-:中心静脈狭窄に対する治療は,著明にシャント肢の腫脹があるとか疼痛を訴える場合にのみ行う. 浮腫が軽度な場合や透析に支障がない場合は治療の必要はない(O). GL-:インターベンション治療や外科治療の適応とならないような高度の静脈高血圧症に対しては,そ の肢のVA を閉鎖して対側に新たなVA を作製するのがよい(O). 解説GL-1:シャント肢の腫脹が最大の特徴であり,肩部ま でシャント肢全体の腫脹を呈するものから,肘関節より末梢の前腕部腫脹や手掌部のみの腫脹まで,その形態はさまざまである.症状は狭窄(閉塞)部位の末梢に現れるため,症状で病変部位をある程度予測することができる. GL-2:静脈高血圧症の程度は,シャント血流量とその 中枢の静脈狭窄の程度,分岐静脈,血管透過性などの関係で決まる.基本的には,静脈狭窄がある部位の末梢側に症状が出現する.すなわち,中心静脈の狭窄であれば上肢全体の腫脹が生じ,肘上部の狭窄であれば,前腕のみの腫脹が生じる.また,前腕の側側吻合のAVF で中枢静脈に狭窄もしくは閉塞を生じると,第1,2 指の腫脹がみられ,いわゆるソアサム症候群を呈することがある.中枢静脈の狭窄の原因としては,鎖骨下静脈に透析用カテーテルの留置1〜3)血管合流部における内膜肥厚(乱流がその原因と考えられている),などの血管内狭窄のほかに,血管外からの圧迫による狭窄も報告されている.このような狭窄に対してはCT が有用である.また, 乳がん手術後やペースメーカーを留置している患者も静脈高血圧症を呈しやすい.静脈高血圧症の原因となる可能性が高いため,鎖骨下静脈からのカテーテル留置は避けるべきである4). GL-3・4・5:中心静脈の狭窄による静脈高血圧症では インターベンション治療が第一選択となる5〜10).ただし,インターベンション治療による血管破裂の危険が高いと考えられる症例ではインターベンション治療を避けなければならない.中心静脈が完全に閉塞していて静脈高血圧症が高度な場合は,そのA- V アクセスを閉鎖して対側に新たなアクセスを作製する.完全閉塞例に対しては,同側,対側の内頸静脈,外頸静脈,対側の鎖骨下静脈へバイパスする外科治療もある.前腕のみの静脈高血圧症や,ソアサム症候群に対しては,前腕部の狭窄しているシャント流出静脈のバルーンPTA が最も有効であるが,手背静脈に流出する末梢静脈を結紮する方法もとられている.一般的に側側吻合例に発生しやすいことから側側吻合の末梢側静脈を結紮したり,前腕や上腕の静脈へのバイパスグラフトが有効な場合が
ある.血流過剰な症例に対しては,バンディングが有効な場合があるが,その場合はアクセス閉塞の危険が高いことを銘記しておく.相対的にシャント流量が多く末梢へ逆流している場合は,逆流している末梢の静脈を結紮するだけで症状が改善する場合がある. 文献1) 中川芳彦,太田和夫,佐藤雄一:内シャント静脈高血 圧症23 例の検討.透析会誌26:1777-1782,1993 2) Schwab SJ, Quarles LD, Middleton JP, Cohan RH, Saeed M, Dennis VW:Hemodialysis―associated subclavian vein stenosis. Kidney Int 33:1156-1159, 1988 3) Barrett N, Spencer S, McIvor J, Brown EA:Subclavi- an stenosis:a major complication of subclavian dialysis catheters. Nephrol Dial Transplant 3:423-425, 1988 4) Kairaitis LK, Gottlieb T:Outcome and complications of temporary hemodialysis catheters. Nephrol Dial Transplant 14:1710-1714, 1999 5) Wisselink W, Money SR, Becker MO, Rice KL, Ramee SR, White CJ, Kazmier FJ, Hollier LH:Comparison of operative reconstruction and percutaneous balloon dilatation for central venous obstruction. Am J Surg 166:200-204, 1993 6) Ayarragaray JE:Surgical treatment of hemodialysis- related central venous stenosis or occlusion:another option to maintain vascular access. Vasc Surg 37: 1043-1046, 2003 7) Hoballah JJ, Eid GM, Nazzal MM, Sharp WJ, Corson JD:Contralateral internal jugular vein interposition for salvage of a functioning arteriovenous fistula. Ann Vasc Surg 14:679-682, 2000 8) Kavallieratos N, Kokkinos A, Kalochretis P:Axillary to saphenous vein bypass for treatment of central venous obstruction in patients receiving dialysis. J Vasc Surg 40:640-643, 2004 9) Surowiec SM, Fegley AJ, Tanski WJ, Sivamurthy N, Illig KA, Lee DE, Waldman DL, Green RM, Davies MG:Endovascular management of central venous stenosis in the hemodialysis patient:results of percutaneous therapy. Vasc Endovascular Surg 38: 349-354, 2004 10) Sprouse LR 2nd, Lesar CJ, Meier GH 3rd, Parent FN, Demasi RJ, Gayle RG, Marcinzyck MJ, Glickman MH, Shah RM, Mnroe CS, Fogle MA, Stokes GK, Colonna JO:Percutaneous treatment of symptomatic central venous stenosis. J Vasc Surg 39:578-582, 2004
(4) スチール症候群 GL-:スチール症候群はVA 作製により発症する末梢循環障害であり,その病態・成因について認識す ることを推奨する(1-B). GL-:スチール症候群に対しては,正しい診断と評価を行うことを推奨する(1-C). GL-:スチール症候群に対しては重症度の判定が重要であり,重症度分類としてFontaine 分類を適応 することができる(O). GL-:スチール症候群の客観的評価法としてはアクセス遮断による血流改善,超音波診断,動脈造影, Digital brachial pressure index(DBI:0.6 未満)などが有用である(1-C). GL-:スチール症候群の治療に対しては,その病態・重症度に応じた治療法の選択が推奨される(1-C). 解説GL-1:スチール症候群とはVA 作製後,アクセス静脈 への血流量が増加する(盗血される)ことにより発症する末梢循環障害・虚血症状をいう.高齢者・糖尿病・SLE など末梢循環障害を有する患者や閉塞性動脈硬化症を合併している患者,頻回のアクセス手術により末梢動脈の血流量が低下している症例ではスチール症候群の発症頻度が高い1〜6).発症頻度は1〜9%と報告により差があるが,前腕部アクセスの0.35〜1.8%に対し上腕動脈を使用するアクセスでは4〜9%と高位アクセス作製例で発症頻度が高く,症状も重篤な場合が多い5,7〜9).また前腕部自己血管に対し人工血管例では発症頻度が高くなる. VA 作製前にはスチール症候群の危険因子(動脈硬化ならびに過剰血流)の存在や客観的評価により末梢循環障害の有無を検討した後に作製肢や部位を決定することが重要である.一方,発症の完全な予測は困難であり,発症した場合には早期に対処することが必要となる.また末梢性スチール症候群のみならずVA 造設や過剰血流がきっかけとなり,鎖骨下動脈起始部や椎骨動脈狭窄による椎骨脳底動脈の虚血症状(めまい・頭痛など)が出現する鎖骨下静脈スチール症候群にも留意する10,11). GL-2:スチール症候群はVA 作製後より発症する手 指の虚血症状(疼痛,しびれ感,冷感など)を主訴とするが,正しい診断のためには客観的評価を行い,他の原因による安静時疼痛,尿毒症性・糖尿病性末梢神経障害,手根管症候群,皮膚潰瘍を伴う静脈高血圧などとの鑑別が必要となる.もともと手根管症候群(CTS)を有する患者ではアクセスに起因する神経の血流低下によりCTS の症状が顕在化することがあり,特に長期透析患者で肘部のAVF・AVG造設術後にCTS 症状が出現することが多い12). GL-3:スチール症候群の虚血症状に対してFontaine 分類を適応することにより重症度の評価が可能であり,それぞれの重症度に応じた治療法を選択する必要がある13). Stage I:DBI の低下を伴う手指の冷感・蒼白Stage II:透析や運動時に増強する疼痛Stage III:安静時の手指疼痛Stage IV:皮膚潰瘍や壊死 GL-4:スチール症候群の診断は自覚症状と他覚所見 を統合して行うが,客観的評価としてアクセス血流遮断による血流改善,DBI の低下,超音波検査による末梢血流量の低下,動脈造影(DSA)による逆行
性血流の確認などが参考となる.なかでもVA 作製後のDBI が0.6 未満ではSensitivity 100%, Specificity 76%との報告があり,スチール症候群の診断に有用とされる14,15).また血行動態の把握には動脈造影による血流の観察が必要となるが,AV 吻合部に流入する逆行性血流のみではスチール症候群とは診断できない. 末梢循環障害の客観的評価法: ) Digital brachial pressure index(DBI) ) 超音波検査) レーザードップラー血流計) 血管造影(DSA) ) 指尖容積脈波) サーモグラフィーGL-5:アクセス作製後24 時間以内に発症する運動感 覚神経障害(ischemic monomelic neuropathy:IMN)は症状が不可逆性となる可能性があり,緊急アクセス閉鎖術の適応となる16,17).著明な冷感や痺れなど虚血症状が進行する場合,神経症状がなければ外科的バンディングや薬物療法で経過観察することも可能である(図1).術直後の発症でなければAVF のStage IおよびAVG のStage IIでは症状増悪の有無について経過観察を行う.また過剰血流がなく症状がStage IIまでの症例ではPGE2 などの薬物療法が有効なことがある.AVF のStage II,AVF・AVG のStage III,Stage IVでは客観的評価を行い責任病変(狭窄病変)が中枢動脈か末梢動脈かを明らかにする必要があり,責任病変が中枢動脈の場合にはPTA が有用である(図2a).責任病変が末梢動脈の場合は過剰血流(ラージシャント)の存在を疑い客観的評価を行う.過剰血流が明らかな場合は動静脈吻合部近傍にて流出路静脈の外科的バンディングを行うが,Stage III,IVではアクセス閉鎖術が必要になることが多い18).また肘部・上腕部のアクセスでは上腕動脈末梢の結紮による前腕虚血に対し,DRIL(distal revasculization-interval ligation)が有効とされる(図2b) 19〜21). 図1スチール症候群に対する緊急治療 a.重症度分類に対応した治療方針 b.過剰血流に対する治療方針 図2スチール症候群に対する待機的治療
文献1) 阿岸鉄三,佐藤雄一,佐藤純彦,星野智昭,春口洋昭, 太田和夫:維持透析患者の虚血性末梢循環障害に対するlipo PGE1 argatroban を主体とする薬物療法.腎と透析38:127-132,1995 2) 阿岸鉄三:ブラッドアクセスに関連した虚血性循環障 害―steal 症候群.臨牀透析12:1048-1054,1996 3) 春口洋昭,廣谷紗千子,佐藤雄一,内海謙,村上 透,中島一朗,渕之上昌平,寺岡慧:Steal 症候群とischemic monomelic neuropathy.腎と透析50(別冊アクセス2001):40-47,2001 4) 春口洋昭:バスキュラーアクセスその作製・維持・修 復の実際(大平整爾,久木田和丘,天野泉,内藤秀宗編).p142-147,中外医学社,東京,2007 5) Morsy AH, Kulbaski M, Chen C, Isiklar H, Lumsden AB:Incidence and characteristic of patients with hand ischemia after a hemodialysis access procedure. J Surg Res 74:8-10, 1998 6) Schanzer H, Eisenberg D:Management of steal syndrome resulting from dialysis access. Semin Vasc Surg 17:45-49, 2004 7) Meyer F, Muller JS, Grote R, Halloul Z, Lippert H, Burger T:Fistula banding―Success-promoting approach in peripheral steal syndrome. Zentralbl Chir 127:685-688, 2002 8) Davidson D, Louridas D, Guzman R, Tanner J, Weighell W, Spelay J, Chateau D:Steal syndrome complicating upper extremity hemoaccess procedures:incidence and risk factors. Can J Surg 46:408- 412, 2003 9) Papasavas PK, Reifsnyder T, Birdas TJ, Caushaj PF, Leere S:Prediction of arteriovenous access steal syndrome utilizing digital pressure measurement. Vasc Endovascular Surg 37:179-184, 2003 10) 熊谷文昭,櫛田隆久,佐々木路佳,近藤正道,由良茂 貴,石崎賢一,坂本和也:高血流化した標準内シャントによって鎖骨下動脈スチール症候群を発症した1例.透析会誌42:529-534,2009 11) Bron C, Hirt L, Halabi G, Saucy F, Qanadli SD, Haesler E:Asymptomatic high flow subclavian steal in a patient with hemodialysis access. J Vasc Access 11: 63-65, 2010 12) Zampollo A, Costanzo R, Locatelli F:Arteriovenous fistula and nerve conduction velocity in patients on hemodialysis:statistical and electrographic findings. Ital J Neurol Sci 6:323-327, 1985 13) Valji K, Hye RJ, Roberts AC, Oglevie SB, Ziegler T, Bookstein JJ:Hand ischemia in patients with hemodialysis access grafts:angiographic diagnosis and treatment. Radiology 196:697-701, 1995 14) Goff CD, Sato DT, Bloch PH, DeMasi RJ, Gregory RT, Gayle RG, Parent FN, Meier GH, Wheeler JR:Steal syndrome complicating hemodialysis access procedures:can it be predicted? Ann Vasc Surg 14:138- 144, 2000 15) Schanzer A, Nguyen LL, Owens CD, Schanzer H:Use of digital pressure measurements for the diagnosis of AV access-induced hand ischemia. Vasc Med 11:227- 231, 2006 16) Wilbourn AJ, Furlan AJ, Hulley W, Ruschhaupt W: Ischemic monomelic neuropathy. Neurology 33:447- 451, 1983 17) Rogers NM, Lawton PD:Ischaemic monomelic neu- ropathy in a non-diabetic patient following creation of an upper limb arteriovenous fistula. Nephrol Dial Transplant 22:933-935, 2007 18) Vascular Access Society(Europe):Management of the renal patient:Clinical algorithms on vascular // access for hemodialysis(VAS Guidelines). http:// / www.vascularaccesssociety.com/index.php?option= com_content&view=article&id=7&Itemid=7 19) Berman SS, Gentile AT, Glickman MH, Mills JL, Hurwitz RL, Westerband A, Marek JM, Hunter GC, McEnroe CS, Fogle MA, Stokes GK:Distal revascularization-interval ligation for limb salvage and maintenance of dialysis access in ischemic steal syndrome. J Vasc Surg 26:393-404, 1997 20) Mwipatayi BP, Bowles T, Balakrishnan S, Callaghan J, Haluszkiewicz E, Sieunarine K:Ischemic steal syndrome:a case series and review of current management. Curr Surg 63:130-135, 2006 21) Huber TS, Brown MP, Seeger JM, Lee WA:Midterm outcome after the distal revascularization and interval ligation(DRIL)procedure. J Vasc Surg 48:926-933, 2008
(5) 過剰血流 GL-:VA(AVF,AVG)は血行動態および心機能に影響を与える.過剰血流はさらなる増悪因子とな ることを認識すべきである(1-B). GL-:過剰血流の症状を十分に把握し,正しい評価を行うことが必要である(1-C). GL-:高拍出性心不全はVA 血流の増大により生ずるが,臨床症状の有無が診断する上で重要である (1-B). GL-:過剰血流は末梢スチール症候群の原因あるいは,増悪因子となることを認識すべきである(1-D). GL-:過剰血流により鎖骨下動脈スチール現象(症候群)をひき起こすことがあり,注意と検証が必要 である(2-C). GL-:過剰血流の治療に対しては,その状況に適した治療法を選ぶべきである(1-B). 解説GL-1: (1) VA は血液透析を行うためには必要不可欠なも のであるが,人為的に動静脈短絡を形成する非生理的なものであり,VA 設置が血行動態および心機能に影響を与えることは明確となっている1〜8). VA からの還流血液量が増加し循環動態の許容範囲を超える場合を「過剰血流」という.患者個々の状態や心予備力により,過剰血流となり得る血流量には違いがある.そのため,厳密に過剰血流となり得る血流量を定義づけることは困難であるのが現状である3).しかしながら,心機能障害(虚血性心疾患,拡張型心筋症,肥大型心筋症,弁膜症,心筋炎など)を認める場合は,VA 血流量がさほど多くなくとも過剰血流となり得ることを認識し,評価を行うことが重要である2,4,7〜10). (2) 上腕AVF・AVG では作製後早期から起こりう る10〜12). GL-2: <過剰血流による症状> (1) 過剰血流に伴う症状は表1 に掲げるものであ る.症状は複数存在することも多く13),注意深く聴取し,詳細な観察・触診・聴診を行う必要がある14).特に下記症状を有している場合は,過剰血流の存在を疑い,診察を進めるべきである11).・静脈高血圧症はシャント肢の腫脹が最大の特徴で あり,流出静脈の一部狭窄(閉塞)が原因であることが知られているが,過剰血流が症状を増悪させることがあり9,14,15),過剰血流のみでも生ずることがある. (2) 特に下記にあげる心不全が顕在化している場合 (1) 高拍出性心不全(2) 末梢スチール症候群(3) 鎖骨下動脈スチール症候群(4) 静脈高血圧症(5) 不整脈(発作性心房細動,慢性心房細動, 洞不全症候群等) 表1過剰血流に伴う諸症状
には,過剰血流の対処を考慮すべきである13). 心機能障害により心負荷が過大になる場合1左室駆出率(EF)<50% 2三尖弁閉鎖不全症の圧較差(TR-PG)>30 mmHg 3肺動脈(PA)圧>40 mmHg(中等度肺高血圧以上) 4大動脈弁狭窄症:左室-大動脈圧較差>75 mmHg 5僧帽弁逆流症>III度6洞不全症候群7New York Heart Association 分類Class II以上 <過剰血流の評価> / (1) VA 流量(Flow)が1,500〜2,000 mL/min 以 /上,もしくはFlow/C0 が30〜35%以上で高拍出性心不全を生じることがある3,4,11,13,16).また,上記条件より少ないVA 血流量であっても,患者の状態により相対的に過剰血流となり得ることもある.VA 血流量評価のみならず,臨床症状,BNP,胸部レントゲン,心臓超音波検査等を行い,総合的な評価が必要である. (2) VA 血流量測定方法としては,ドップラー流量 計,電磁流量計(術中),超音波ドップラ法,クリットラインなどがある. (3) 心予備力の評価方法としては,最大酸素消費量 を診る心肺運動負荷試験,ドブタミン負荷試験などがあるが,臨床症状が最も大切である. (4) VA の血流量にかかわらず,臨床症状を有して いる場合は,速やかに治療方針を決定し対処することが必要である. GL-3: (1) 高拍出性心不全の症状には以下があげられ る1〜13).労作時の息切れ,動悸,下肢浮腫,食欲低下,起座呼吸など.・NYHA 分類は簡便であり参考となる. NYHA 分類(New York Heart Association)日常生活の自覚症状からの分類Class I心疾患を有するが症状なし. Class II軽度の身体活動の制限を示す.安静時に症状 はないが,通常の身体活動で症状あり. Class III著しい身体活動の制限を示す.安静時に症状 はないが,通常以下の身体活動で症状あり. Class IV苦痛なしでは身体活動が行えない.安静時も 症状があり,身体活動により症状増悪. (2) 患者が器質的心疾患を有している場合,さらな る注意が望ましい.高拍出性心不全は増悪し,さらに高拍出性心不全が器質的心疾患を増悪させるという負の循環を招く恐れがある.・主な器質的心疾患には以下があげられる. 1虚血性心疾患2心筋症3弁膜症4心筋炎5洞不全症候群GL-4:末梢スチール症候群の原因の一つとして過剰 血流があげられる.また過剰血流がその増悪因子となることを考慮する必要がある17).第5 章-(4)スチール症候群参照. GL-5:鎖骨下動脈スチール現象(症候群)では,過剰 血流により鎖骨下動脈のスチール(盗血)を生じ,椎骨脳底動脈系の虚血症状を呈する.症状としては,一過性の脳虚血症状(めまい・吐き気等)が出現する.鎖骨下動脈の狭窄・閉塞を原因とすることが一般的であるが,過剰血流によりひき起こされることもある18〜20).また軽度でも狭窄があると過剰血流が増悪因子となり21),より症状が顕在化する.診断には頸動脈エコー検査,3DCT,MRA,血管造影が有用である. GL-6: (1) 過剰血流と診断された場合,まず初めにドライ ウエイト(DW),血圧コントロール,中等度の運動,食事療法,薬物療法等を行い,再評価を行う11).内科的治療で改善を認めない場合は,外科的治療法を実施する.外科的治療には血流抑制を図る方法と,シャント閉鎖を行い非シャントアクセスとする方法がある13).治療法は,心機能および過剰血流に伴う臨床症状を総合的に判断し決定しなければならない. (2) 血流抑制を図る外科的治療にはさまざまな方法 がある13).バンディングやグラフトによるインターポジション,流入動脈の結紮(末梢側,中枢側),吻合部隔壁形成術13,22),DRIL(distal revascularization-interval ligation) 23〜26),RUDI(Revision using distal inflow) 27,28),および対側へのVA作製などである.その内,バンディングは過剰血流の再燃が多いとされてきた29).これを解決するため,10 cm にわたり流出静脈をバンディングする方法30),流入動脈をバンディングする方法31,32)などの術式の報告がある.重要なことは患者個々のVA 形態にあった最適の術式を選択すること
である. / (3) VA 血流量は,AVF で400 mL/min 以下, / AVG で600 mL/min 以下ではシャント閉塞や脱血不良を生ずる危険性が高まるとされ33,34),血流抑制には限界がある.血流抑制をしても過剰血流症状(特に高拍出性心不全症状)が改善しない場合,もしくは心機能が著しく低下している場合には,VA を閉鎖して非シャントアクセス(動脈表在化,長期留置カテーテル,A-A ジャンプグラフト,大æ静脈直接穿刺など)を考慮する必要がある3,13). 文献1) Brescia MJ, Cimino JE, Appel K, Hurwich BJ:Chronic hemodialysis using venipuncture and a surgically created arteriovenous fistula. N Engl J Med 275:1089- 1092, 1996 / 2) National Kidney Foundation. K/DOQI Clinical Prac- tice Guidelines for Cardiovascular Disease in Dialysis Patients. Am J Kidney Dis 45:S16-S153, 2005 3) MacRae JM, Pandeya S, Humen DP, Krivitski N, Lindsay RM:Arteriovenous fistula-associated highoutput cardiac failure:a review of mechanisms. Am J Kidney Dis 43:E17-E21, 2004 4) MacRae JM, Levin A, Belenkie I:The cardiovascular effects of arteriovenous fistulas in chronic kidney disease:a cause for concern? Semin Dial 19:349-352, 2006 5) Iwashita Y, Horio T, Takami Y, Inenaga T, Nishikimi T, Takishita S, Kawano Y:Effects of creation of arteriovenous fistula for hemodialysis on cardiac function and natriuretic peptide levels in CRF. Am J Kidney Dis 40:974-982, 2002 6) Ori Y, Katz M, Erman A, Weinstein T, Malachi T, Gafer U:The contribution of an arteriovenous access for hemodialysis to left ventricular hypertrophy. Am J Kidney Dis 40:745-752, 2002 7) 杉本徳一郎,三瀬直文,崔啓子,西隆博,三村維 真理,多川斉:心機能に応じたアクセスの作製と管理.腎と透析61(別冊アクセス2006):7-10,2006 8) 西隆博,崔啓子,三村維真理,三瀬直文,多川 斉,杉本徳一郎:バスキュラーアクセスと心機能.臨牀透析22:85-92,2006 9) Padberg FT Jr, Calligaro KD, Sidawy AN:Complica- tions of arteriovenous hemodialysis access:Recognition and management. J Vasc Surg 48(Suppl):55S- 80S, 2008 10) Engalberts I, Tordoir JH, Boorgu R, Schreij G:High- output cardiac failure due to excessive shunting in a hemodialysis access fistula:an easily overlooked diagnosis. Am J Nephrol 15:323-326, 1995 11) Vascular Access Society guidelines:20, Management / of high flow in A/V fistula and graft. 12) Dikow R, Schwenger V, Zeier M, Ritz E:Do AV fistulas contribute to cardiac mortaltity in hemodialysis patients? Semin Dial 15:14-17, 2002 13) 神應裕,有賀雅和,小林信彦,下田真奈美,長嶋奈 穂美:過剰血流に対する血流調整術の検討.腎と透析69(別冊アクセス2010):284-292,2010 / 14) National Kidney Foundation. K/DOQI Clinical Prac- tice Guidelines for Hemodialysis Adequacy Peritoneal Dialysis Adequacy Vascular Access:Update 2006. Am J Kidney Dis 48(Suppl 1):S177-S247, 2006 15) 橋本幸始,神應裕:画像で見るバスキュラーアクセ ストラブル6 静脈高血圧症.透析ケア15:1020-1023, 983-984,2009 16) Anderson CB, Codd JR, Graff RA, Groce MA, Harter HR, Newton WT:Cardiac failure and upper extremity arteriovenous dialysis fistulas. Case report and a review of the literature. Arch Intern Med 136:292- 297, 1976 17) Mickley V:Steal syndrome-strategies to preserve vascular access and extremity. Nephrol Dial Transplant 23:19-24, 2008 18) Schenk WG:Subclavian steal syndrome from high- output brachiocephalic arteriovenous fistula;A previously undescribed complication of dialysis access. J Vasc Surg 33:883-885, 2000 19) 倉重康彦,大久保洋平,平田經雄,吉戒里香,大坪義 彦,古賀伸彦:維持透析内シャントにより増強された鎖骨下動脈盗血現象.超音波検査技術32 NO. 1(2007)研究20) 熊谷文昭,櫛田隆久,佐々木路佳,近藤正道,由良茂 貴,石崎賢一,坂本和也:高流量化した標準内シャントによって鎖骨下スチール症候群を発症した1 例.透析会誌42:529-534,2009 21) 坂下康雄,古井英介,佐藤重彦,絹谷啓子,山田正仁: 動静脈シャントにより鎖骨下動脈盗血現象をきたした透析患者の一例.神経超音波医学15:76-79,2002 22) 中川芳彦,太田和男,久保和雄:内シャントの過剰血 流量.臨牀透析12:265-271,1996 23) Schanzer H, Schwartz M, Harrington E, Haimov M: Treatment of ischemia due tobstealcby arteriovenous fistula with distal artery ligation and revascularization. J Vas Surg 7:770-773, 1988 24) Berman SS, Gentile AT, Glickman MH, Mills JL, Hurwitz RL, Westerband A, Marek JM, Hunter GC, McEnroe CS, Fogle MA, Stokes GK:Distal revascularization-interval ligation for limb salvage and maintenance of dialysis access in ischemic steal syndrome. J Vasc Surg 26:393-402, 1997 25) Knox RC, Berman SS, Hughes JD, Gentile AT, Mills JL:Distal revascularization-interval ligation:A durable and effective treatment for ischemic steal
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(6) 感染 GL-:局所の感染に注意を払う必要がある(1-C). GL-:全身の感染に注意を払う必要がある(1-C). GL-:感染の広がりと進行度を適切に評価しなければならない(1-C). GL-:AVG の感染は外科的処置を優先させることを推奨する(O). GL-:感染した瘤は破裂の危険性が高く外科的処置を必要とする(O). GL-:カテーテル感染は,1出口部感染,2トンネル感染,3カテーテル内感染,に区別され治療しな ければならない(1-B). 解説GL-1:穿刺部の発赤,熱感,疼痛,排膿,腫脹,皮膚 のびらん,硬結の観察を毎透析時に行う.創部からの培養を必ず実施する.全身の発熱を伴わない皮膚の浅い層での感染は,所見を見落とさないようにする.吻合部近くの感染では,1 日で波及し吻合部破裂の危険性もあり,患者からの聞き取りに加えてシャント肢全体の観察を行う.静脈高血圧症,アレルギー性皮膚炎,血栓に伴う二次的炎症などとの鑑別が必要である.感染部近傍の穿刺を避け,速やかな広域スペクトルの抗生剤の全身投与を行う.排膿があれば培養を行い抗生剤を感受性に応じて変更する.感染が吻合部に近く破裂や出血の危険性があるときは,速やかに外科的処置を行う.浅い局所感染では,切開排膿と部分的グラフト置換術で経路変更可な場合が多い.また,対処方法としてAVF とAVG における穿刺部感染では以下のアルゴリズムによる対処法を参考にされたい1〜13)(図1). GL-2:全身感染では,グラフトの全抜去と一部血管の 切除も必要となる.遺残グラフトについては,遅発性の感染源となり得る.頻度は少なく,感染対策が確立しておればAVF 感染が生じることは,アクセスの中で最も少ない.保存的治療で治るケースがほ とんどだが,皮下膿瘍など切開排膿が必要であったり,吻合部感染で重篤な場合は,閉鎖術を行い反対側への再建術も必要である.抗生剤は少なくとも, 2〜3 週間投与する.重篤化すると心内膜炎が生じ心エコーによる経過観察が必要.また,背部痛は硬膜外膿瘍の併発を示唆しており,抗生剤も6 週間必要となる.発熱,WBC の上昇,CRP 陽性があってVA 感染を伴わないケースとして,尿路感染や糖尿病性壊疽によるものがあるので注意が必要である. 図1 AVG の穿刺部感染対処法
発熱,WBC,CRP の継続的観察と血液培養の実施.人工血管では,ガリウムシンチが有用である1〜13). GL-3:穿刺部感染から敗血症に伴う局所の膿瘍形成 までを評価しなければならない.アルゴリズムに示したように段階をおって評価し処置を行う必要がある. GL-4:グラフト感染は植え込み後30 日以内の早期感 染とそれ以降の晩期感染に分けられる.わが国における早期感染の頻度は明らかではないが,われわれ/の経験では3/362(0.8%)であった.グラフト全使用期間中の感染頻度は,NKF-DOQI ガイドラインでは10%未満が目標とされる.早期感染はグラフト全抜去を行う.晩期感染のうち動・静脈吻合部感染やトンネル感染はグラフト全抜去を要することが多い.局所穿刺部感染であれば,グラフト部分置換術で対処できる.感染の起因菌は表皮常在菌であるが,敗血症となると90%が黄色ブ菌となる,40%がMRSA でありバンコマイシンと広域スペクトラムの抗生剤の併用が望ましい4,7〜9). GL-5:シャント瘤内部は石灰化しており抗生剤の全 身投与が奏効しない例が大多数である.破裂の危険性が高く緊急的外科処置による排膿,瘤除去の処置を要する. GL-6:カテーテル感染は出口部感染とカフ手前まで のトンネル感染,カテーテル内感染に分類される.出口部感染は,(ESI:exist site infection)以下のすべてを満たすこと. (1) 挿入部に膿,発赤または腫脹がある. (2)(1)を理由に患者は入院するか,抗生剤の投与 を受けた(ただし,入院患者の場合は「患者が入院を適応しない」). (3) 透析と関連しない他の部位に明らかな感染がな い.カテーテルトンネル感染カテーテルの皮下トンネル内の感染,狭義ではカフまでの感染で限局していて血流感染に至っていない.もちろんカフを越えて血流感染に波及することもある.出口部感染は静脈内抗生剤投与なしに局所処置,抗生剤内服投与で軽快するが,長期にわたり治療すると真菌感染を起こす.トンネル内感染はカフ近くまでアンルーフィングできるが,カフが露出すると,カテーテルが抜けやすくなり固定が困難となる.軽快したら,カテーテルの出口部を変更する.この段階では,ガイドワイヤーによるカテーテルの入れ替えも可能である14). 皮下トンネル感染は,定期的にドレッシング剤を通して観察することが必要である.カテーテル内感染は,検査確定血流感染LCBI (Laboratory confirmed blood stream infection)判定基準A または判定基準B のいずれかを満たすこと14).判定基準A:以下のすべてを満たすこと. .患者の1 回以上の血液培養から一般の皮膚汚 染菌(類ジフテリア[corynebacterium 属],バシラス属[B. anthracis は除く],Propionibacterium 属,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌[S. epidermidis を含む],viridans 群連鎖球菌, Aerococcus 属,Micrococcus 属)以外の病原体が分離される. .血液から培養された微生物は,血液透析に関 連しない他の部位の感染と関係がない.判定基準B:以下のすべてを満たすこと. .患者は以下の徴候や症状を少なくとも一つ有 している:発熱(38°C),悪寒戦慄,低血圧. .徴候や症状や陽性の検査結果が血液透析に関 連しない他の部位の感染と関係がない. .一般の皮膚汚染菌が別々の機会に採取された 2 回以上の血液培養検体から培養される.臨床的敗血症CSEP(Clinical Sepsis)以下のすべてを満たすこと. .他に確認された原因がなく,以下の臨床的徴 候や症状を少なくとも一つ有している:発熱(> 38°C),悪寒戦慄,低血圧. .血液培養がなされていない,あるいは血中に 微生物は検出されない. .血液透析と関連しない他の部位に明らかな感 染がない. .医師が敗血症の治療を開始する(抗菌薬治療, カテーテル抜去も含む). *臨床的敗血症は米国では1 歳以下の乳児に対しての 判定基準であるが,日本では全例検査をして確定しているケースだけではないので透析カテーテルの判定には加えた.カテーテル以外にも感染源があると,カテーテルに細菌が着床する,その他の異物挿入例(栄養ポート,ペースメーカー)などでも感染源となり得る.一方カテーテルが感染源となり遠隔部位に感染が飛び火することがある15〜19). 抗生剤ロック療法20〜26):カテーテル内のバイオフィルムはカテーテル関連血流感染の大きな原因となるため24),カテーテルを抜去,交換する根拠となる.バイオフィルムに対する抗生剤ロック療法の抗生剤の種類に対する研究やポリウレタン膜のin vitro model of biofilms を使って,1,3,5,10,14 日
間,抗生剤への曝露後,antibiotic lock の有効性を測定したデータが提出されている.バイオフィルムは/ 5 日間のバンコマイシン5 mg/mL で完全に殺菌された.セファゾリン,ゲンタマイシンはどの曝露観察時においても有意なバイオフィルムの根絶には達しなかったとし,バンコマイシンのロック療法を支持している.抗生剤ロックの臨床的成功は病原菌により決まる.臨床研究では比較研究が少ないため,抗生剤ロック療法を併用した群と全身抗生剤単独療法で有意差はない.抗生剤の量,投与方法,などに関し標準化がされていない.経静脈的抗生剤の全身投与は患者の体重,各々の抗生剤の透析性を考慮し,投与量を決定する.そして臨床症状を注意深く観察し効果を判定する.臨床的には経験的にバンコマイシンを初回に投与することもあるが,原因菌が判明したら感受性のある抗生剤に変更する.血栓が2 cm 以下なら6 か月間抗凝固療法を試みて,その後エコーで評価し,カテーテルを除去する.菌血症が存在するなら,カテーテルをまず取り除きその後抗凝固療法を行う.もし血栓は2 cm 以上で,そして感染が加わっている場合外科的に血栓除去をし,抗生剤,抗凝固療法を継続する27〜30). 崔らは,留置型血液透析カテーテル先端右房内の巨大血栓を開心術で除去した2 例の報告で,いずれも開胸手術で除去している31〜33). 中心静脈カテーテルのICU での前向き調査では,敗血症のリスクはカテーテル血栓が存在すると増加することが指摘されている34〜36). しかし一方でカテーテル関連菌血症があったが菌血症と心臓内の血栓との関連は明らかでないという報告もある37).【外国での感染対策状況】 無作為前向き研究:カテーテルは,ヘパリンまたはtaurolidine を含む液でロックされカテーテル内腔 から2 週間おきに血液培養を行った.76 本のカテーテルが58 例の患者に挿入され,2 群間の比較を行った.ヘパリングループではカテーテル関連敗血症は4 例で,citrate-taurolidine カテーテルロック液を使用した群では敗血症はなかった.citratetaurolidine 充填カテーテルは有効でカテーテル血流感染を予防するとしている38). 文献1) Powe NR, Jaar B, Furth SL, Hermann J, Briggs W: Septicemia in dialysis patients:Incidence, risk factors, and prognosis. Kidney Int 55:1081-1090, 1999 2) 浜田弘巳,高田譲二,勝木良雄,辻寧重,大平整爾: ブラッドアクセス感染の治療.腎と透析51(別冊腹膜透析2001):13-16,2001 3) 大平整爾,辻寧重,伊丹儀友:慢性血液透析患者の ブラッドアクセス感染症.日透析医会誌15:221-224, 2000 4) 副島一晃,渡邊紳一郎,町田二郎,白井純宏,岩下 仁,原一正,町田健治,副島秀久:敗血症化したグラフト感染症例の治療成績.腎と透析61(別冊アクセス2006):50-55,2006 5) 水口潤,内藤秀宗,川西秀樹,太田和夫:ハイブリッ ドPTFE グラフト(Atrium)の多施設臨牀使用成績.腎と透析55(別冊アクセス2003):94-98,2003 6) Glickman MM, Stokes GK, Ross JR, Schuman ED, Charles Strernbergh IIIW, Lindberg JS, Money SM, Lorber MI:Multicenter evaluation of a polyurethaneurea vascular access graft as compared with the expanded polytetrafluoroethylene vascular access graft in hemodialysis applications. J Vasc Surg 34: 465-473, 2001 7) 酒井信治:人工血管内シャントの合併症とその対策(感 染症を含める),透析患者の合併症とその対策.日本透析医会誌別冊No. 17,31-40,2008 8) 平中俊行,中村順一,中山祐治:人工血管内シャント の感染と対策.腎と透析別冊アクセス2005:24-26 9) 太田和夫:ブラッドアクセス感染症―外科的対応―. 腎と透析51:235-238,2001 10) Amano I, Ohira S, Goto Y, Hino I, Ikeda K, Kukita K, Haruguchi H:In preparation for a treatment guideline for suitable vascular access repair in Japan. Ther Apher Dial 10:364-371, 2006 11) Prakas T:DʼCunha and Anatole Besarab:Vascular access for hemodialysis:2004 and Beyond. Dial Transplant 13:623-629, 2004 12) Schid AF, Simon S, Prieto J, Raines J, Miami FL: Single-center review of infections associated with 1574 consecutive vascular access procedures. Vasc Endovasc Surg 37:27-31, 2003 図2カテーテル感染の部位別対処方法
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(7) 血清腫 GL-:血清腫はe-PTFE 人工血管に特異的に発生する合併症である.他の代用血管や人工血管には発 生しない(1-B). GL-:血清腫の発生はe-PTFE の構造によると考えられるが,現在のところ実際の発生機序は不明であ る(O). GL-:血清腫の発生頻度は低い(2-C). GL-:血管造影や超音波検査で腫瘤内部に血流がないことを確認すれば診断は容易である(O). GL-:手術は切開ドレナージ,腫瘤摘出,グラフト部分置換または全抜去があるが,グラフト置換を含 めた腫瘤摘出が確実な手術である(2-C). 解説GL-1:血清腫の形成は手術後に人工血管が周囲組織 と良好に癒着しないこと,新生内皮細胞の形成が十分にされないことによって発生する.線維芽細胞成長の抑制作用によると考えられるが,グラフトの取り扱いも原因となると考えられ,人工血管移植術の際に十分注意する必要がある. 血清腫はe-PTFE 人工血管を用いた内シャント作製症例に発生する合併症である1〜6).代用血管やpolyeurethane 人工血管には生じない病態である.血清腫はe-PTFE 人工血管を移植した人工血管壁面から血清成分が持続的に漏出して形成する黄色半透明なゼリー状の腫瘤である. GL-2:e-PTFE 人工血管はテトロンを延伸加工した 多孔質構造をしている.e-PTFE 人工血管は多孔質構造のため含気性である.手術直後は人工血管壁の空気層がair barrier となって血漿成分の漏出が阻止されるが,術後数日経過すると空気が吸収されて血漿成分の漏出が始まる.したがって手術野の周辺は程度の差はあるが浮腫を生じてくる.時間の経過とともに,人工血管内壁は新生内皮細胞が被覆し,血管外壁は器質化と周辺組織との癒着により血漿成分の漏出が止まり浮腫も自然吸収される.新生内皮細胞の被覆に約3 週間を要する.血清腫の発生機序 は人工血管内壁における内皮細胞形成の欠落と外壁の周辺組織との癒着の欠落である. GL-3:e-PTFE 人工血管に部分的な内壁の内皮細胞 形成が欠落するのか,外壁の周辺組織と癒着が生じないのかは不明である.人工血管の多孔質構造の材質,患者側の要因と手術操作による原因が考えられる.患者側の要因としては貧血,低蛋白,フィブリン形成能の低下,血小板数と機能低下の関与が指摘されている.血清腫の発生頻度は1.7%から4.2%の報告がある6〜9). GL-4:血清腫の発生は人工血管移植後の短期間にみ られる.発生部位は人工血管全体に生ずるが,頻度の多いのは人工血管と吻合した動脈側吻合部付近で徐々に増大する腫瘤として認める.腫瘤自体には拍動がないが,人工血管を流れる動脈血の拍動が触知されることがある.血管造影,超音波などで腫瘤内部に血流がないことを確認すれば診断は容易である. 予防対策としては患者自身の要因が考えられる場合はe-PTFE 人工血管の使用を避けてポリウレタン製人工血管など多孔質構造を有しない人工血管を選択する10).手術操作が影響する場合はe-PTFE人工血管の取り扱いを慎重に行い,手術時にair
barrier が損なわれないように扱い,人工血管に内圧を加えること,鉗子で挟むことなどを回避する必要がある. GL-5:血清腫の腫瘤形成があっても増大傾向を認め ないものは処置を必要としない.しかし,次第に増大傾向を示して大きくなって,穿刺の際に邪魔となり,日常生活に不便を生ずるほど大きくなった腫瘤は処置が必要となる.皮膚表面が圧迫壊死を起こすような場合には外科的な治療が必要である.手術は切開ドレナージ,腫瘤摘出,グラフト部分置換または全抜去があるが,グラフト置換を含めた腫瘤摘出が最も確実な手術法である11).生体組織接着剤を用いて血清腫の治療が試みられているが,治療効果にばらつきがみられている5,12).小さくて増大傾向を示さないものは処置の必要はないが,増大傾向を示すものは外科的処置が必要である. 文献1) Bolton W, Cannon JA:Seroma formation associated with PTFE vascular graft used as arteriovenous fisutulae. Dial Transplant 10:60-64, 1981 2) 佐藤雄一,中川芳彦,阿岸鉄三:ブラッドアクセス関 連の主要合併症とその対策(8)血清腫.臨牀透析12: 248-253,1996 3) 太田和夫:連載シャントトラブル対策―私はこうして いる29.血清腫(セローマ).腎と透析51:841-844, 2001 4) Blumenberg RM, Gelfand ML, Dale WA:Perigraft seroma complicating arterial grafts. Surgery 97:194- 204, 1985 5) 中村順一,平中俊行,木村英二,山川智之,金昌雄: ePTFE グラフト内シャントに合併する血清腫.透析会誌36:1207-1210,2003 6) 副島一晃,右田敦,渡邊紳一郎,町田二郎,田尻さ え子,町田健治,副島秀久:血清腫の発生頻度と治療成績.腎と透析55(別冊アクセス2003):135-139, 2003 7) Gargiulo NJ III, Veith FJ, Scher LA, Lipsitz EC, Suggs WD, Benros RM:Experience with covered stents for the management of hemodialysis polytetrafluoroethylene graft seromas. J Vasc Surg 48:216-217, 2008 8) Ahmed E, Sergey L:Acute perigraft seroma simulat- ing anstomotic bleeding of a PTFE graft applied as an arteriovenous shunt for hemo dialysis. Ann Vasc Surg 10:290-291, 1996 9) Danielle MD, Pawel D, Paul G:Incidence and management of seroma after arteriovenous graft placement. J Am Coll Surg 203:506-511, 2006 10) 天野泉,太田和夫,酒井信治,葛原敬八郎,阿部富 弥,内藤秀宗:ポリウレタン製人工血管(Thoratec Vasucular Access Graft)の特徴とその臨床使用報告.腎と透析41:263-268,1996 11) 安永親生:透析療法これは困ったぞ,どうしよう. 4.グラフトから血清腫が生じた.どうしよう? p39-40,中外医学社,東京,2006 12) 坂田博美,久木田和丘,津田一郎,本望聡,安部美 寛,江川宏寿,飯田潤一,堀江卓,玉置透,目黒順一,米川元樹,川村明夫:ビオボンドを使用した人工血管血清腫治療の長期予後.腎不全外科36(別冊): 48-51,2005
(8) アクセス関連疼痛 GL-:透析中に血管痛を呈する場合は,表1 のようなことを考慮すべきである(1-C). GL-:非透析時にも疼痛を呈する場合は,表2 のようなことを考慮すべきである(1-C). GL-:アクセス関連疼痛に類似した疼痛は,表3 のような原因を考慮する必要がある(1-C). 解説アクセス関連疼痛は比較的頻度の高い合併症であり,原因も多岐にわたる.時に症状が激しくその対応に難渋する場合も少なくない1〜4).本ガイドラインではフローチャート5)(図1)に沿って治療および対策ができるように検討した. GL-1:1-1市販のリドカインテープ剤の貼付やボタ ンホール穿刺用ニードルの使用3)または穿刺部位の変更で対処するのがよい.1-2穿刺部位の変更や血流を下げることで対処する.2-1末梢循環改善剤の投与,スチール症候群の治療(詳しくは他の章を参照).2-2ソアサム症候群の治療(詳しくは他の章を参照).3-1,2静脈高血圧症の治療を優先する(詳しくは他の章を参照).3-3穿刺部位の変 更や血流を低下させる.疼痛部位を温める.どうしても疼痛が緩和されないときはアクセスの変更(反対側のアクセス)も考慮する(表1). GL-2:1-1,2スチール症候群,ソアサム症候群の治 療を行う(詳しくは他の章を参照).2-1静脈高血圧症の治療を行う(詳しくは他の章を参照).3 に関しては他の章を参照しそれぞれの病態の治療を行うこと6,7)が大切である(表2). GL-3:1〜5 ともにそれぞれの病態の治療を行うこと に尽きる7)(表3). 文献1) 熊野和雄:第II章患者における副作用,IV血管痛. 図1アクセス関連疼痛のフローチャート
臨牀透析2:1164-1165,1986 2) 中川芳彦:シャントトラブル.腎と透析50:765-769, 2001 3) 岡田宏幸,牧尾健司,宮路計,室秀一,中尾謙一, 佃文榮,梅木千恵子,北てい子,村上加恵子,福島栄子,森優子,濱野光代,尾田実枝,南方茂樹,三軒久義,満田恵子:血液透析時における血管痛の緩和を試みて―リドカインクリームの使用―.臨牀透析20:361-364,2004 4) 久木田和丘,米川元樹:血管痛,バスキュラーアクセ ス―その作製・維持・修復の実際.p 172-176,中外医学社,東京,2007 5) 室谷典義,佐藤純彦:血管痛,改訂第2 版血液透析 施行時のトラブル・マニュアル.p 182-188,日本メディカルセンター,東京,2008 6) 萩原博道:透析時のシャント肢痛に対する半導体レー ザー治療の効果.腎と透析別冊腎不全外科99:45- 47,1999 7) 久木田和丘,古井秀典,土橋誠一郎,津田一郎,飯田 潤一,堀江卓,小野寺一彦,坂田博美,玉置透,目黒順一,米川元樹,川村明夫:内シャント痛を癒着神経剝離で治癒させえた1 症例.腎と透析別冊腎不全外科2010:69-71,2010 .穿刺部痛1穿刺時の疼痛2血管壁や弁の吸引による疼痛.シャントより末梢側の疼痛1シャントからの脱血による疼痛:末梢循環の悪化(スチール症候群等):第5 章(4)参照2ソアサム症候群:第5 章(3)参照.シャントより中枢の疼痛 1中枢側流出静脈の狭窄・閉塞による疼痛(静脈高血圧症):第5 章(3)参照2返血により静脈圧が上昇し神経を圧迫することによる疼痛3脱血により上腕動脈の流速が上がり側枝の血流低下による筋肉痛 表1 .シャントより末梢側の疼痛1スチール症候群:第5 章(4)参照2ソアサム症候群:第5 章(3)参照.シャントより中枢側の疼痛1静脈高血圧症(透析時は悪化):第5 章(3)参照.その他 1シャント閉塞:第5 章(1)参照2シャント瘤:第5 章(2)参照3血清腫:第5 章(7)参照4シャント・グラフトの感染:第5 章(6)参照5シャント手術に関連した疼痛6反射性交感神経萎縮によるもの 表2 .手根管症候群.頸椎症.変形性肩関節症.透析肩.末梢動静脈血栓症 表3
(9) カテーテルトラブル GL-:カテーテルトラブルはカフ型カテーテルに多く,1屈曲,2破断,3回路接続部破損,4カテー テル閉塞などがあり,いずれのトラブルに対しても適切な対処が行われることが推奨される(1- C). GL-:カテーテル屈曲の場合は,手術的に屈曲の解除が行われることが推奨される(1-C). GL-:カテーテル破断の場合は,破断カテーテルの回収と新規のカテーテル留置が行われることが推奨 される(O). GL-:回路接続部破損の場合は,カテーテルを確実に遮断し,接続部の取り替えが行われることが推奨 される(O). GL-:カテーテル閉塞の場合は,ウロキナーゼによる血栓溶解,カテーテルの入れ替えなどが主な解決 法として推奨される(1-C). 解説GL-1:カテーテルトラブルには感染などの合併症と カテーテル自体に起因するトラブルがある.カテーテル自体に伴うトラブルは主に,1屈曲,2破断, 3回路接続部破損,4カテーテル閉塞である.これらのトラブルのいずれに対しても適切な対処が必要である. カテーテルトラブル1〜3はいずれもその材質と使用状況に起因した合併症である.現在多く使用されているカフ型カテーテルはポリウレタンまたはシリコンチューブ,ステンレススチールおよびプラスチックで構成されているが,普段の観察により早期にトラブルの予兆または症状が発見されることが望ましい1,2). GL-2:一般にポリウレタンカテーテルは生体内での 安定性が高い代わりに屈曲をきたし易い.また異なる材質の接合部は外力による屈曲を生じ易く,材質疲労をきたし易い.したがってカフ型カテーテルのカフ-カテーテル移行部分は外力が加わりにくいよう直線的な部位に設置されることが望ましい. カテーテル屈曲はカテーテル挿入手術直後から発生し得るトラブルであるが,長期のカテーテル維持 においても起きる場合がある.このトラブルは周術期においては手術時の皮下部分の剝離不十分やカテーテルの皮下経路が関係することが多く,ほとんどの症例で頸部のループ部分に透視下で強度の屈曲が確認できる.屈曲が生じた場合,脱血が全くできない,または返血圧の異常高値を示す.透視下で患者頸部を動かしながら観察を行えばその診断は容易である.対策は屈曲確認次第に経路変更を手術的に行うことである. カテーテル維持期に本症状を示す場合は,上肢,頭頸部の動きによりカテーテル位置が変化した場合であることが多い.対策は早期の対処と同様であるが,カテーテルの入れ替えも対策として考慮されることが望ましい3). GL-3:カテーテル破断は長期間使用で発生するとは 限らないので注意が必要である. 破断部位の多くは,1)透析回路コネクターとカテーテルの境界部分,2)カフ型カテーテルの場合,カフとカテーテル境界部分,3)サイドホールつきのカテーテルでは,返血カテーテル先端近傍のサイドホール部分である.
これらの部位に破断部が限定される原因は1)2)の場合,異なる材質間に患者姿勢の変化などによる外力が加わり,材料の疲労をきたすからとする意見が多い.この現象は透析回路コネクターとカテーテルの境界部分からの出血,返血回路での空気の引き込み,または破断部位およびその周辺の疼痛と皮下出血の出現により容易に診断できる.対策はカテーテルの交換手術を行う,またはカテーテルの破断部でカテーテルを切断,短縮しコネクターを取り替えることである. 3)の場合は数個あるサイドホールと先端孔が血栓やフィブリンなどで閉塞した際に,返血によるカテーテル内圧上昇が繰り返されることにより,最終的に破断に至るとする意見が多いものの,その原因は完全には特定されていない.また,破断したカテーテルが偶然定期の胸部レントゲン写真によって発見されることもまれではない.対策は破断部分を異物除去カテーテルにより回収し,新規にカテーテル留置を行うことが最も望ましい方法である.大静脈・右心房内でのカテーテル破断が,返血圧上昇例では起こりうる合併症として予め認識しておくことが重要である.カテーテル内腔の血栓除去を試みる場合のガイドワイヤーなどの使用では十分な注意が必要である. カテーテル破断は破断部分の右心室・肺動脈迷入などの重大な合併症につながるので,カテーテル先端付近の内圧などを考慮したカテーテル設計を行い,破断を未然に防ぐ努力が行われることが望ましい. GL-4:回路接続用コネクターの破損は最も発生し易 いカテーテルトラブルの一つである.接続コネクターに用いられているプラスチック部品は部材の性質上,強い外力により亀裂を生じ易いので,回路脱着操作においては過剰な力が加わらないような注意が払われることが望ましい. 亀裂が生じても肉眼では確認しづらい場合があるが,空気の引き込みや出血・液漏れが接続部から生じる場合は同部を詳細に観察することで診断できる.対策はコネクターを確実に遮断し,直ちに新しい接続部品と交換されることが推奨される. GL-5:カテーテル閉塞に伴う脱血不良または返血圧 上昇脱血不良は日々の透析で非常に頭を悩ませるトラブルである.その原因には,1カテーテル内腔の血栓性閉塞,2フィブリンシースの形成,3右心房,静脈内壁への「へばりつき現象」などがある. いずれの症状もほぼ同じく,完全な鑑別は困難なことが多い.したがって,まずウロキナーゼをカ テーテル内に封入,または持続注入することにより症状が改善するか判定し4〜6),ウロキナーゼの効果がなければ,診断と治療目的に画像診断を試みることが望ましい7).適切なガイドワイヤーの使用やウロキナーゼの使用によりカテーテル機能が回復する場合もあるが,一時的な効果にとどまる場合が多いので,新しいカテーテルへ入れ替えることも考慮しつつ上記の治療を試みることが望ましい.カテーテルの交換は感染などの他の異常がオーバーザワイヤー法により行うことが可能である8,9).またワーファリンの投与や,へパリンコーティングしたカテーテルを使用することの有効性については現段階では評価が定まっていない10〜15). 文献1) Bagul A, Brook NR, Kaushik M, Nicholson ML: Tunnelled catheters for the haemodialysis patient. Eur J Vase Endovase Surg 33:105-112, 2007 2) Siegel JB:Tunneled dialysis catheters:pearls and pitfalls. Tech Vasc Interventional Red 11:181-185, 2008 3) Pecorari M:®Long-term ̄catheters for haemodialy- sis:malfunction and management. J Vasc Access 1: 158-161, 2000 4) Twardowski ZJ:High-dose intradialytic urokinase to restore the patency of permanent central vein hemodialysis catheters. Am J Kidney Dis 31:841-847, 1998 5) Vesely TM:Prospective central vein catheter tip position:a continuing controversy. J Vasc Interv Radio 114:527-534, 2003 6) 宮田昭,小篠揚一,本田理,豊田真理子,上木原 宗一,早野俊一:長期留置型ブラッドアクセスカテーテルの管理上の課題と適応.腎と透析57(別冊アクセス2004):47-49,2004(B) 7) Gray RJ, Levitin A, Buck D, Brown LC, Sparling YH, Jablonski KA, Fessahaye A, Gupta AK:Percutaneous fibrin sheath stripping versus transcatheter urokinase infusion for malfunctioning well-positioned tunneled central venous dialysis catheters:a prospective, randomized trial. J Vasc Interv Radiol 11: 1121-1129, 2000 8) Kolbeck KJ, Stavropoulos SW, Trerotola SO:Over- the-wire catheter exchanges:reduction of the risk of air emboli. J Vasc Interv Radiol 19:1222-1226, 2008 9) Atray N, Asif A:New tunneled hemodialysis cathe- ter placement through the old exit site. Semin Dial 21:97-99, 2008 10) Mokrzycki MH, Jean-Jerome K, Rush H, Zdunek MP,
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第6 章バスキュラーアクセスの形態と罹病率および死亡率 GL-:VA 形態の種別(AVF,AVG,動脈表在化,血管内カテーテル留置,外シャントなど)によって, VA の機能異常(狭窄・血栓形成(閉塞)や感染症)の出現頻度に有意な差異が認められる(1-B).つまり,VA の形態によって罹病率や死亡率が異なってくる. GL-:VA の形態は1 年生存に影響を与える(1-B). GL-:血液透析療法が開始されるべき時期に,でき得る限り機能・形態に優れたAVF を予め設置(準 備)しておくことが,極めて重要である(O). 解説GL-1:AVF が狭窄・閉塞・感染など主なVA 関連合 併症に対して,その出現率が最も低く,したがって現時点で最も優れたVA である1〜4).日本では安定期維持血液透析患者の約90%がAVF を保有している5,6).しかしながら,近年,導入患者の高齢化,長期患者の増加さらに基礎疾患としての糖尿病性腎不全の激増などがあって,VA の作製および修復に困難を覚える症例が増加している(表1).このため,VA 合併症はわが国では維持血液透析患者の入院原因の第1 位を占めている.一方,血液透析導入時にAVF を保有しないために,約30%はカテーテル留置法が用いられている7,8).透析医への患者紹介の遅延が主因であるが,このほかにAVF 作製直後の閉塞,血流不足および動脈化静脈の発達不全などもあげられる9).血管内カテーテル留置法は簡便・有用な手技ではあるが,感染症・被留置血管の狭窄・血栓形成などを伴いやすく,§double-edged sword「諸刃の剣」 ̧ 10)であるとの認識も重要である. GL-2:VA の形態別が1 年生存に与える相対的リスク /が各群の(Kt/V)urea および%クレアチニン産生速度を調整した後に算出された結果によれば,AVFを1.000 とすると動脈表在化で1.867,AVG で 1.908 であった4).AVF は統計学的に有意差をもっ て動脈表在化およびAVG に比較して,1 年生存に対するリスクが低かった5)(図1).Xue ら11)は67 歳以上例を分析し,1 年粗死亡率がAVF 24.9%, AVG 28.1%,カテーテル41.5%であるとし,カテーテル例の相対的死亡リスクが最も高かったとしてい る.一方で,カテーテル導入とせざるを得ない合併症がカテーテル導入例の成績を悪くしているとの指摘もある2). GL-3:血液透析導入時に穿刺が容易で所定の血流量 が確保できるAVF を作製しておくことが重要であることは,自明の理である9,12,13).AVF が作製されたとしても動脈化された静脈の発達度(怒張度)には個人差が存在し,しかもAVF には一定の比率で初期期機能不全が生ずるものであるため8),AVF 作製時には全身・局所状態の評価・AVF 作製部位の ) 新規導入患者の高齢化脈管の損傷⇒AVG,カテ心機能低下⇒動脈表在化 PD への移行 ) 透析期間の長期化 ) PTA 関連手技・器材の保 険適用 VA 作製医の育成手技の標準化大規模臨床研究(Evidence) ) 血管アクセス作製医の不足 (種々の職種による作製・修復) 表1血管アクセスの作製,修復を困難にする諸因子 PTA か手術かPTA 回数の制限器材の高価 医師,看護師,技師,患者による協働作業維持管理マニュアル ) 血管アクセスの維持管理過剰血流の是正動脈表在化血管内留置カテーテル ) 心機能障害患者の増加脈管の損傷⇒AVG心機能低下⇒動脈表在化PD の選択
決定・術後管理・穿刺・術後モニタリングに十二分な配慮が必要である9,13). 文献1) Chia KH, Ong HS, Teoh MK, Lim TT, Tan SG: Chronic haemodialysis with PTFE arterio-venous grafts. Singapore Med J 40:685-690, 1999 2) Di Iorio BR, Bellizzi V, Cillo N, Cirillo M, Avella F, Andreucci VE, De Santo NG:Vascular access for hemodialysis;the impact on morbidity and mortality. J Nephrol 17:19-25, 2004 3) 大平整爾,今忠正,猪野毛健男,菊池健次郎,廣田 紀昭,上田峻弘,戸澤修平,久木田和丘:北海道における維持血液透析患者におけるブラッドアクセスに関するアンケート:結果とその分析.日透医誌15:107- 121,2000 4) Pisoni RL, Arrington CJ, Albert CJ, Ethier J, Kimata M, Rayer HC, Saito A, Sands JJ, Saran R, Gillespie B, Wolfe RA, Port FK:Facility hemodialysis vascular access use and mortality in countries participating in DOPPS:an instrumental variable analysis. Am J Kidney Dis 53:475-491, 2009 5) 日本透析医学会統計調査委員会:図説わが国の慢性 透析の現況(2008 年12 月31 日現在).日本透析医学会,2009 6) 阿岸鉄三,春口洋昭:わが国の維持血液透析患者にお けるブラッドアクセスの現状.透析会誌33:1059- 1068,2000 7) 大平整爾,辻寧重,伊丹儀友:慢性血液透析患者の ブラッドアクセス感染症.日透医誌15:221-224, 2000 8) Rayner HC, Pisoni RL, Gillespie BW, Goodkin DA, Akiba T, Akizawa T, Saito A, Young EW, Port FK: Creation, cannulation and survival of arteriovenous fistulae;Data from the Dialysis Outcomes and Practice Pattern Study. Kidney Int 63:323-330, 2003 9) Ohira S, Kon T, Imura T:Evaluation of primary failure in native AV-fistula(early fistula failure). Hemodial Int 10:173-179, 2006 10) Schwab SJ:The hemodialysis catheter conundrum; Hating living with them, but canʼt live without them. Kidney Int 56:1-8, 1999 11) Xue JL, Dahl D, Ebben JP, Collins AJ:The association of initial hemodialysis access type with mortality outcomes in elderly Medicare ESRD patients. Am J Kidney Dis 42:1013-1019, 2003 12) Lorenzo V, Martn M, Rufino M, Hernandez D, Terres A, Ayus JC:Predialysis nephrologic care and functioning arteriovenous fistula at entry are associated with better survival in incident hemodialysis patients;an observational study. Am J Kidney Dis 43: 999-1007, 2004 13) 春口洋昭:ブラッドアクセス.臨牀透析20:43-49, 2004 図1初回透析時アクセスの種類と生命予後(性別,年齢,主な疾患,eGFR で補正)(日本透析医学会,2008 年)
VA の開存率の定義は一定していないが,インターベンション治療も含め,なんら救済処置を行わない状態で開存しているものを一次開存とし,救済処置を含めて開存しているものを二次開存とするのが一般的である.ここではAVF,AVG,動脈表在化それぞれの代表的なデータを示す. AVF の開存率:橈骨動脈-橈側皮静脈の吻合で作製されたAVF の開存率(初回不成功9%を除く)を7 年間追跡調査した大平ら1)の報告によると(図1),若年 群(40〜50 歳)では高齢群(65〜70 歳)に比べて有意に開存率が高かった.男性は女性と比べると,開存率が高い傾向にあるが有意差はなかった.また糖尿病群では,全年齢群において,開存率が低かった. AVG の開存率:酒井2)は180 例のPTFE グラフトを用いたAVG の成績を報告しており,それによると,3年の一次開存率50%以上と良好であった(図2). 第7 章補遺バスキュラーアクセスの開存率 図1前腕末梢部の初回シャントの開存率(大平整爾:糖尿病透析患者のアンギオアクセスの問題点と対策.腎と透析(2001 年臨時増刊号)p714-720,2001) 図2人工血管内シャントの開存率(酒井信治:人工血管内シャントの合併症と対策.日本透析医会・合併症対策委員会編17:31-40,2008)
動脈表在化の開存率:動脈表在化の開存率の定義はないが,静脈が使えている状態での表在化そのものの開存率は,室谷ら3)の報告によると,1 年94%,3 年85%, 5 年78%と良好であった(図3). 文献1) 大平整爾:糖尿病透析患者のアンギオアクセスの問題点と対策.腎と透析(2001 年臨時増刊号):714-720, 2001 2) 酒井信治:人工血管内シャントの合併症と対策.日本 透析医会・合併症対策委員会編17:31-40,2008 3) 室谷典義,春口洋昭:動脈表在化法;適応・手技・管 理.バスキュラーアクセス:その作製・維持・修復の実際(大平整爾,他編著).p49-57,中外医学社,東京,2007 図3動脈表在化の開存率(室谷典義,春口洋昭:動脈表在化法;適応・手技・管理.バスキュラーアクセス:その作製・維持・修復の実際(大平整爾,他編著).p49-57,中外医学社,東京,2007)
結語 日本透析医学会は,2005 年維持血液透析に必要不可欠なバスキュラーアクセス(VA)の作製および修復に関するガイドラインを発表した.今回,久木田和丘委員長を中心としてこのガイドラインの改訂作業がなされ,一応の完成を見たことを喜びたい. VA の作製や修復を困難にする諸因子をこの数年間の透析医療を取り巻く情勢から顧みると,1)既導入患者の透析期間の長期化,2)新規導入患者の高齢化,3)心機能障害患者の増加,4)PTA 関連手技・器材の保険適用制限,5)専門的VA 作製医の不足などが挙げられる.1)2)は脈管損傷や心機能低下を有する症例の増加を意味し,人工血管やカテーテル使用・動脈表在化あるいは腹膜透析への移行などを考慮する事態を生み出している.3)の事態は従来VA は血流量の取得を第一義としてきた姿勢に警告を与えるものであって過剰血流量の回避または是正を要し,カテーテル使用・動脈表在化の選択を余儀なくするかもしれない.4)については,器材の高価なことから保険審査上で一定の制限がなされることはやむを得ない面もあり,効果的な器材使用が望まれる.さらに,修復法についてPTA か手術かについて慎重な検討が求められよう.5)わが国にはVA 作製医を育成する正式のシステムはなかったが,透析医療に関わる各科医師が独自に修練して独り立ちしてきた経緯がある.しかし,既述のように近年のVA 作製・修復は困難度を増してきており,専門的なVA 作製医が必要となってきていることを認識したい. VA の作製について,変化または進歩を模索してみよう.1)VA 作製方法の変化:外シャント時代を経て内シャント時代(AVF)へ移行し,患者背景の変化により動脈表在化・AVG・血管内カテーテル留置法が必要となり,ネックレス型AVG などさまざまな変法も試みられている.種々の方法が存在するために選択肢は増えたといえるが,VA の種類は直接的に生命予後に影響するためその選択に慎重たるべきことを銘記しておきたい.2)VA を必要とする対象患者の変化:周知のごとく,長期血液透析患者の増加・患者の高齢化・心血管合併症を持つ患者の増加・DMN 患者の増加などが顕著であり,既存血管障害患者への対応が急務となる.3)VA 手術・処置に関連する手技・器材・薬剤の進歩:VA の機能不全に関わるPTA およびその変法を行うための器材は日進月歩で著しい進歩を遂げている.グラフトについては種々の素材や薬剤の添加されたものが開発されている.ただし,これらの進歩は必ずしもVA の開存性向上に結びついてはいない.術前血管マッピングや術後のVA 機能モニタリングは従来に較べてより精密に行われ,一定の成果を挙げていると感じている. VA 作製に直接関わる手技については吻合孔の長さ・形状や吻合法(運針)などに工夫は見られるが,革命的な手技は残念ながら未だ出現していない.ただし,このところ,各種VA の穿刺・管理などに看護師および臨床工学技士の積極的な参画が全国的に見られており,VA に関わる全過程がより繊細かつ洗練して行われるようになった印象が強い. この度の改訂VA ガイドラインが臨床の現場で活用されることを期待したいが,一層よい維持血液透析用血管アクセスを得る施策として以下の諸項に意を配りたい. ) 技術の修得,研鑽と向上:外科的技術・アクセス穿刺の技術・日常血液透析の円滑な施行技 術・患者によるVA の自己管理法の指導など. ) 知識:VA 設置の時期,部位・VA のタイプの選択・患者の選択・VA 以外の医療プランなど. ) 日常業務への姿勢:医療者間相互の緊密な意思疎通,協働,切磋琢磨・患者への適切な指導
と助言・患者への責任など. 新たな知見や経験によって,本改訂ガイドラインが将来的に更に充実した指針となることを強く望みたい. 2011 年6 月吉日 バスキュラーアクセスガイドライン改訂・ワーキンググループ委員会 副委員長大平整爾