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維持血液透析ガイドライン:血液透析処方(2013) 日本透析医学会・2013・45 ページ · 腎臓・透析
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一般社団法人日本透析医学会

維持血液透析ガイドライン:血液透析処方

JSDTGuidelines for Maintenance Hemodialysis:

Hemodialysis Prescriptions
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日本の透析患者数は30 万人を超え,しかも血液透析患者の年間粗死亡率は世界でもっとも低いことが観察研究において示されている.これには透析器機・血液浄化器の開発,透析システムの整備,医師,看護師,臨床工学技士やその他の医療従事者,および透析機器メーカの協力関係が大きな役割を果たしてきたと考えられる.特にセントラル透析液供給システムを取り入れたため,一度に安定した透析条件を多くの地域で提供できたことが影響していると思われる.つまり,この良好な生存率はある水準の透析(週3 回4 時間以上,ハイパフォーマンス膜ダイアライザ使用)が多くの地域・施設において広く行われたことが大きな要因であり,さらに本邦の診療報酬制度により透析療法費用が定額となっていることと,公的補助制度により患者自己負担額が最小に抑えられていることも重要な点である.

この度,維持血液透析ガイドライン:血液透析処方を上程したが,ガイドライン作成にあたり留意した点は,エビデンスに基づくことはもちろんであるが,日本の透析の特徴を前提とすることとした.とくに諸外国と比較して長期かつ高齢の血液透析患者が多く,大多数の症例は血液透析を行いつつ人生を全うしている.そのような長期の血液透析が安定して行えることを目標とした.

ガイドラインの本編は,最低限守るべき推奨として本邦においてすでに広く行われている治療,すなわち超純粋透析液を用いて,血流量200 mL/min 以上,透析液流量500 mL/min 以上でハイパフォーマンス膜ダイアライザを用いた週3 回・4 時間以上の血液透析を行えば自ずと達成できる値を示した.さらに長期間透析患者の状態を安定状態に維持すべく望ましい推奨値をオピニオンとして提示した.日本透析医学会統計調査によると,現状ではこの最低限守るべき推奨値すら達成していない施設も少なからず存在する.本ガイドラインを契機にすべての血液透析施設で達成されることを期待する.

本ガイドラインは3 つのパートに分かれている.第1〜4 章はガイドラインの本編として血液透析処方の基本である,溶質除去(小分子,中分子量物質),体液管理,治療効果の評価を提示した.これらの処方の対象となる症例はあくまで安定した外来血液透析患者であり,入院患者や重篤な合併症を有している症例は除いた.さらにエビデンスレベルと推奨度を日本透析医学会の「エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度,透析会誌2010;43:347-9.」にのっとり提示した.

第5 章は発展的血液浄化法とし,まだ十分なエビデンスは存在しないが今後さらなる血液透析患者の予後改善に有効である処方を提示した.そのため第5 章ではあえてエビデンスレベルと推奨度は示さなかった.

第6 章に小児に適応される血液透析ガイドラインを提示したが,これも本邦において血液透析対象小児症例は少なく,十分なエビデンスが存在しない.そのためこの章においてもエビデンスレベルと推奨度は示さなかった.

世界に誇るべき水準である血液透析療法を行っている本邦において,果たして標準化を求めるガイドラインが必要なのであろうかとの論議があることは否定できない.しかしこれはあくまで国際比較での結果であり国内においても生存率に幅があることも事実である.さらに今後,経済情勢,社会情勢の変化によってはこの医療水準が維持されるとの保証もまたない.そのため透析医療が成熟し一定の医療水準を維持できている現在こそガイドラインを提示でき,かつ提示すべき時期であると考えている.緒言
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エビデンスレベルと推奨度

日本透析医学会の「エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度」にのっとり,表現を統一した(表).エビデンスレベルは,まず形式によって無作為比較対照試験(randomized controlled trial: RCT)をhigh,観察研究をlow,それ以外をvery low と分類するが,それだけではなく,さらに詳細な内容と質,バイアス等の検討に応じて,最終的にA:高い(真の効果が推測する効果に近いと確信できる),B:中等度(真の効果が推測する可能性に近いと考えるが,結果的に異なる可能性が残る),C:低い(真の効果は推測する可能性と結果的に異なる可能性がある),D:最も低い(推測する効果は大変不明瞭で,しばしば真の効果とかけ離れることがある)に分類している.

一方,推奨度の表現は,1.強い:推奨する(原則としてほとんどの症例で行う),2.弱い:望ましい(多くの症例で行うが,場合によっては別の選択もある)に分類した.推奨度は,必ずしもエビデンスレベルと機械的に連動させているわけではなく,臨床的な重要度も考慮して決定した.さらに,エビデンスが乏しいが,expert opinion(専門家の意見)として採用したものは,3.グレードなし:妥当である,と表現している.

推奨度1.強い(推奨する),2.弱い(望ましい),3.グレードなし(妥当である)エビデンスレベルA:高い,B:中等度,C:低い,D:最も低い*各ステートメントに,1A,2C 等,推奨度とエビデンスレベルの組み合わせで示す.

表エビデンスレベルと推奨度

文献

*)深川雅史,塚本雄介,椿原美治,海津嘉蔵,草野英二,中山昌明,久木田和丘,友雅司,平方秀樹,秋澤忠男.委員会報告:エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度について.透析会誌2010;43:347-9.
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利益相反情報について

一般社団法人日本透析医学会は,今後,本学会が作成する臨床ガイドラインについては,作成ワーキンググループのメンバーが中立性と公明性をもって作成業務を遂行するために,実際または予想されうる問題となる利益相反状態を避けることに最大限の努力をはらっている*).

すべてのワーキンググループのメンバーは可能性としてまたは実際に生じる利益相反情報の開示を行う書類(署名済み)を提出し,この書類は毎年更新され,情報は状況に応じて適宜変更される.これらのすべての情報は,以下のように「利益相反情報についての開示」に記載し,これを裏付けるすべての情報は日本透析医学会事務局が保管している.

文献*)日本透析医学会:日本透析医学会における医学研究の利益相反(COI)に関する指針. 2011:http://www.jsdt.or.jp/jsdt/1236.html 利益相反情報についての開示

利益相反情報についての開示

秋葉隆ノバルティスファーマ(株)(医薬品の開発・輸入・製造・販売の会社),東レ(株)

(医薬品,医療製品の製造・販売の会社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造・販売の会社),日本たばこ産業(株)(タバコ,医薬,食品,飲料の製造・販売の会社),アステラス製薬(株)(医薬品の製造・販売・輸出入の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売・輸出入の会社),東レ・メディカル(株)(医療機器・医療関連製品・医薬品の製造・販売・輸出入の会社)から研究補助金および講演等の謝礼金を受領している.

伊丹儀友中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売・輸出入の会社)から講演等の謝礼金を受

領している.

川西秀樹中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売・輸出入の会社),バイエル薬品(株)(医

薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造・販売の会社),協和発酵キリン(株) (医療用医薬品の製造・販売の会社),アステラス製薬(株)(医薬品の製造・販売・輸出入の会社),日機装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路セット,人工膵臓などの製造・販売,腹膜透析関連製品販売の会社),日本たばこ産業(株)(タバコ,医薬,食品,飲料の製造・販売の会社)から講演等の謝礼金と治験等の研究費を受領している.

友雅司協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造・販売の会社),中外製薬(株)(医療用医

薬品の製造・販売・輸出入の会社)から講演等の謝礼金を受領している.

平方秀樹協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造・販売の会社),中外製薬(株)(医療用医

薬品の製造・販売・輸出入の会社),日本たばこ産業(株)(タバコ,医薬,食品,飲料の製造・販売の会社),バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造・販売の会社)から講演等の謝礼金を受領している.

政金生人東レ・メディカル(株)(医療機器,医療関連製品,医薬品の製造・販売・輸出入の会

社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造・販売の会社)から講演等の謝礼金を受領している.

水口潤日機装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路セット,人工膵臓など

の製造・販売,腹膜透析関連製品販売の会社),バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造・販売の会社)から講演等の謝礼金を受領して
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いる.

峰島三千男(株)ジェイ・エム・エス(医療機器,医薬品の製造・販売・輸出入の会社)から講

演等の謝礼金を受領している.

山下明泰日機装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路セット,人工膵臓など

の製造・販売,腹膜透析関連製品販売の会社),(株)ジェイ・エム・エス(医療機器,医薬品の製造・販売・輸出入の会社),東レ(株)(医薬品,医療製品の製造・販売の会社)から顧問の報酬および旅費を受領している.

渡邊有三中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売・輸出入の会社),協和発酵キリン(株)

(医療用医薬品の製造・販売の会社)から講演等の謝礼金を受領している.

(五十音順)

(ここにあげられていない委員には利益相反の事項は発生していない.)
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一般社団法人日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」作成に携わった委員リスト

日本透析医学会理事長水口潤川島病院学術委員会委員長友雅司大分大学ガイドライン作成小委員会委員長

政金生人矢吹病院

維持血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ長渡邊有三春日井市民病院血液透析処方ガイドライン作成ワーキンググループ長川西秀樹土谷総合病院ワーキンググループ委員秋葉隆東京女子医科大学伊丹儀友日鋼記念病院小松康宏聖路加国際病院鈴木一之かわせみクリニック武本佳昭大阪市立大学田部井薫自治医科大学附属さいたま医療センター土田健司川島病院中井滋藤田保健衛生大学服部元史東京女子医科大学峰島三千男東京女子医科大学山下明泰法政大学顧問斎藤明湘南東部総合病院内藤秀宗内藤医学研究所オブザーバー前学術委員会委員長平方秀樹福岡赤十字病院

(敬称略)

委員会等開催記録

第1 回会合2010 年8 月20 日第2 回会合2010 年12 月10 日第3 回会合2011 年5 月27 日第4 回会合2011 年8 月5 日第5 回会合2011 年10 月21 日第6 回会合2012 年4 月20 日第7 回会合2012 年9 月28 日第8 回会合2013 年1 月25 日第9 回会合2013 年5 月26 日

カンファレンス開催

2011 年6 月18 日第56 回日本透析医学会学術集会「血液透析導入と透析処方に関するガイドライン作成に向けて」2012 年6 月24 日第57 回日本透析医学会学術集会「透析処方,コンセンサスカンファレンス」

公聴会

2013 年5 月26 日,東京女子医科大学臨床講堂1
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A arterial side動脈側ANZDATA the Australia and New Zealand Dialysis and Transplant

Registryオーストラリア・ニュージーランド

透析移植登録

B blood血液BIA body impedance analysis(bio-impedance analysis ともいう)生体電気インピーダンス法BMI body mass index体格指数BUN blood urea nitrogen血中尿素窒素BW body weight体重CGR creatinine generation rateクレアチニン産生速度CL(K) clearanceクリアランスCRP c-reactive protein C 反応性蛋白CS clear spaceクリアスペースCSR clear space ratioクリアスペース率C concentration of solute溶質濃度D dialysate透析液DEXA dual-energy X-ray absorptometry二重エネルギーX 線吸収測定法DOPPS Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study DW dry weightドライウエイトEBPG European Best Practice Guidelines ECUM extracorporeal ultrafiltration methods体外限外濾過法EPDWG the European Pediatric Dialysis Working Group欧州小児透析研究グループEUTox European Uremic Toxin Work Group欧州尿毒素研究グループEF ejection fraction左室駆出分画eKt/V equilibrated Kt/V ESA erythropoietin stimulating agents赤血球造血刺激因子製剤F filtrate濾液FHN trial Frequent Hemodialysis Network trial GNRI geriatric nutritional risk index H hematocritヘマトクリットHD hemodialysis血液透析HDF hemodiafiltration血液透析濾過:血液濾過透析HEMO study the Hemodialysis Study HF hemofiltration血液濾過HPM high performance membraneハイパフォーマンス膜i inlet入口JSDT the Japanese Society for Dialysis Therapy日本透析医学会KDOQI Kidney Disease Outcomes Quality Initiative Kt/Vurea Kt/V for urea Lag Phenomenon遅延現象LVMI left ventricular mass index左心室重量比MIS malnutrition inflammation score MRI magnetic resonance imaging核磁気共鳴画像法M removal amount of solute除去量NCDS National Cooperative Dialysis Study NKF KDOQI the National Kidney Foundation Kidney Disease Outcomes

Quality Initiative

略語一覧
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o outlet出口PD peritoneal dialysis腹膜透析PHC score physical-health composite score身体健康複合スコアーpost post-treatment治療後pre pre-treatment治療前PCR protein cataboric rate蛋白異化率P pressure圧力QB blood flow rate血流量QD dialysate flow rate透析液流量QOL quality of life生活の質Q flow rate流量RCT randomized controlled trial無作為比較対照試験RR removal ratio(reduction ratio)除去率(変化率) R solute concentration ratio濃度比SF-36 MOS short-form 36-item health survey SGA subjective global assessment主観的包括的栄養評価spKt/V single-pool Kt/V TACBUN time averaged concentration of BUN時間平均濃度(BUN) TF filtration time濾過時間TMP transmembrane pressure膜間圧力差t dialysis time透析時間UFR ultrafiltration coefficient限外濾過率URR urea reduction rate尿素変化率USRDS United States Renal Data System米国腎臓データシステムVB circulating blood volume循環血液量VF filtrate volume濾液量VP circulating plasma volume循環血漿量V venous site静脈側b2-M beta-2 microglobulin b2-ミクログロブリンpP colloid osmotic pressureコロイド浸透圧DV water removal amount除水量
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目次

緒言アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート589「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」作成に携わった委員リストアパートアパートアパートアパート593

委員会等開催記録アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート593略語一覧アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート594

第1 章血液透析量(小分子物質)と透析時間アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート597

第2 章血液透析量とその効果:b2-ミクログロブリン(b2-M) アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート603

第3 章ドライウエイトの設定アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート606

第4 章適切な透析量・治療効果を得るための評価アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート610

第5 章発展的血液浄化法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート614

I.透析膜の選択アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート614 II.濾過型血液浄化療法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート616 III.透析スケジュールアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート620

第6 章小児維持血液透析処方ガイドラインアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート625

I.小児の血液透析量とその効果アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート625 II.適正体液管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート627 III.適切な透析量・治療効果を得るための評価アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート627 IV.付記アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート628

補章透析処方のための血液・透析液サンプリング方法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート630
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第章血液透析量(小分子物質)と透析時間

ステートメント.透析量は,尿素のsingle-pool Kt/Vurea(spKt/V)を用いることを推奨する.(1B) .透析量は,月1 回以上の定期的な測定を推奨する. .実測透析量として,以下の値を採用する.

) 最低確保すべき透析量として,spKt/V 1.2 を推奨する.(1B) ) 目標透析量としては,spKt/V 1.4 以上が望ましい.(2B) .透析時間は,4 時間以上を推奨する.(1B)

補足*本ステートメントは,週3 回,1 回6 時間未満の維持血液透析患者を対象とする.

解説

.透析量(小分子物質)

) 指標物質とその除去の評価

尿毒症で身体に蓄積する尿毒素として,ヨーロッパの専門委員会(European Uremic Toxin Work Group: EUTox)により,90 種類の物質が選定されている1).一方,透析の適正さを評価する際に用いる指標物質には,1腎不全で蓄積する,2透析で除去される,3毒性がある,4その体内動態が,他の尿毒症性物質を代表する,5その濃度が臨床的な転帰と関連する,6測定が簡便であるという6 つの性質を持つことが理想的とされているが2),この1〜6の基準を完全に満たす物質は,前記の90 種類の中にはない.しかし,小分子物質に注目した場合,分子量60 の尿素は,前述の1, 2,5,6を満たしているほか,高濃度では弱い毒性を持ち3),尿毒症で障害されるタンパク質代謝の最終産物でもある.また,可溶性で細胞膜をほぼ自由に通過して拡散する性質があり,体液に一様に分布すると仮定できるので,数学的な動態モデルに適合するという特徴を持つ4).さらに尿素の除去状態と患者の生命予後・合併症予後に関しては,米国で実施されたNational Cooperative Dialysis Study(NCDS)において,タンパク質の代謝産物である尿素の維持レベルと,栄養指標である蛋白異化率(protein catabolic rate:PCR)が,透析患者の合併症や死亡に関連する重要な因子であることが報告されている5).したがって,尿素を(可溶性)小分子物質の指標物質とし,その除去状態を定期的に評価していくことが必須と考えられる.

) 尿素の除去指標

尿素の除去状態の指標としては,時間平均尿素窒素濃度(time averaged concentration of BUN: TACBUN) 5,6),透析前・後のBUN 濃度から求める尿素の除去率(urea reduction ratio:URR) 7,8),そして尿素の透析中および透析間の体内動態を数学的に表したモデル(urea kinetic model)を用いて求める尿素の標準化透析量(Kt/Vurea) 9)などがある.今日,広く用いられているのはKt/Vurea だが,求めるための数学的なモデルは大きく分けると,体液全体を一区画とみなしたsingle-pool model(single-pool Kt/Vurea:spKt/V)と,透析後の尿素濃度にrebound が認められることを考慮して体液を二区画とみなしたdouble-pool modelがある.これまで日本透析医学会は統計調査結果の解析に,新里らによる方法10)で求めたspKt/V を用いてきたが,この計算結果は世界的に用いられているDaugirdas の式11)のspKt/V とよく相関する.一方, double-pool model は,バスキュラーアクセスや心肺の再循環などによる尿素のリバウンド現象の影響を補正して,体内の尿素が平衡状態となった時点の尿素濃度を推定して求めるKt/Vurea であり,equilibrated Kt/Vurea(eKt/V)と呼ばれ,一般的にeKt/V はspKt/V より,0.2 程度小さな値となる18).本ガイドラインでは,わが国の臨床現場で現在最もよく用いられているspKt/V を,尿素の除去指標として用いることを推奨する.また,これらの実測値から求める透析量(実測透析量:delivered Kt/V)は,バスキュラーアク
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セス不全による実血液流量の減少など,予期せぬ要因によって透析量が減少している場合もある13).したがって,日常的に行われている透析前後採血と合わせて,月1 回以上の定期的な透析量測定を推奨する.

) 透析量と生命予後

尿素の管理状態と患者予後の関係を検討した最初の前向き介入試験NCDS の事後解析9)によれば,予後が良好であったグループの患者の透析量は,spKt/V で

0.8 以上であった.一方,その後に行われた欧米の観

察研究では,透析量を経時的に増加させることによる粗死亡率の低下14,15)や,透析量が大きいほど死亡リスクの低下8,16〜18)を認めているが,URR 65%程度(spKt/ V≒1.2) 8)やspKt/V 1.3 程度17)で死亡リスクの低下傾向が鈍化している.これらの結果をふまえ米国(National Kidney Foundation:NKF)のガイドライン〜Kidney Disease Outcome Quality Initiative (KDOQI) 19)ガイドラインでは最低限の実測透析量として,spKt/V 1.2 が推奨された.その後に行われた,透析量に関する第二の大規模な前向き介入研究Hemodialysis Study(HEMO 研究) 20)では,KDOQI ガイドラインで推奨するspKt/V 1.2 よりも透析量を大きくしても,予後の改善は認められなかった.ただし, HEMO 研究での透析処方は短時間高効率で実施されたものであり,本邦の実態とは著しく異なっていることに留意すべきである.

他方,日本透析医学会の統計調査結果の解析によれば,諸外国と同様に透析量が大きいほど死亡リスクが低下する傾向を認め,spKt/V で1.0 以上1.2 未満を基準として,spKt/V 1.8 程度までは,有意な死亡リスクの低下が認められている21,22).また,最近の報告23)では,spKt/V 1.4 以上1.6 未満を基準として,spKt/ V 1.8 以上まで死亡リスクが有意に低下していることに加えて,短時間高効率ではなく,透析時間を延長して透析量を増大することで,死亡リスクが低下する可能性が示唆されている.

) Kt/V の問題点

これまでの観察研究では,spKt/V 1.68 以上24)やURR 71%以上(spKt/V≒1.4) 25)で相対的な死亡リスクの上昇(反転J 字型現象)を認めた報告がある.しかし,本邦の研究21〜23)では,spKt/V 1.8 程度まで,死亡リスクは順次低下しており,同様の現象は認められていない.反転J 字型現象の原因としては,高透析量の弊害の可能性も否定できないものの25),Kt/Vureaが体格の影響を受けるために生じている現象,すなわち体格の小さな患者や痩せた栄養不良の患者などが,

高透析量群に多く含まれている可能性も考えられている24,25).一方,透析量と生命予後の関係を,V(尿素の分布容積≒体液量)で標準化しないKt urea で検討した場合,米国の患者ではKt urea 50.7 L 程度まで26),日本の患者でもKt urea で47.7 L 程度まで23),透析量が大きいほど死亡リスクが低下しており,反転J 字型現象は認められない.以上から,Kt/Vurea の値のみで透析量が過大であることを判断するのは,難しい可能性がある.

) 性別・体格と透析量

これまでの報告によれば,女性は男性に比べて,より高いspKt/V まで死亡リスクの低下が認められている27〜29).この原因として,単に女性の体格が男性より小さいことによるのではなく,女性のほうが単位体液量あたりの尿毒素産生量が多い可能性や,女性のほうが尿毒素への感受性が高い可能性などが考えられている30).このためKt/Vurea で透析量を表した場合,目標とすべき透析量が男女で異なることが示唆される31,32).

一方,体格(BMI,体重,体液量,体表面積など)の大小は,独立した予後規定因子であり,体格の違いによって透析量と生命予後の関係の違いが報告されている33〜35).この理由として,体格の大小により身体構成が異なることが考えられており,体格の小さな患者では尿毒素を産生する内臓のサイズが,体格の大きな患者より相対的に大きいことから,Kt/Vurea で透析量を表した場合,より大きな透析量が必要となる可能性がある36,37).このため透析量を評価するにあたり,尿毒素の産生(代謝),あるいは代謝と関連する指標(体表面積,体重0.67など)で指数化する方法が提案されている38〜41).また,体表面積で補正した透析量と死亡リスクは関連し,かつ反転J 字型現象を認めないとも報告42)されている.

) 推奨される透析量

既存のKDOQI 19)ガイドラインでは,実測透析量の最低値はspKt/V で1.2,目標値はspKt/V で1.4 とし,女性およびV が25 L 以下の小柄な患者では多めの透析量を推奨している.一方,欧州のガイドライン(European Best Practice Guidelines:EBPG) 42)では,実測透析量が処方透析量(prescribed Kt/V)を下回る可能性を考慮,処方透析量としてeKt/V 1.2(≒spKt/ V 1.4)を推奨している.また,女性および合併症の多い患者ではeKt/V で1.4 を推奨している.本邦の
p.12
患者を欧米と比較した場合,観察研究で認められる死亡リスクを最低とするKt/V 値が本邦のほうが大きいこと,本邦の患者の体格が欧米の患者より明らかに小さいことなどを考慮すれば,欧米のガイドラインより大きめの目標,実測透析量spKt/V 1.4 以上が望ましいと考えられる.なお,高い透析条件が設定できない事情のある患者や体格が非常に大きな患者においては,最低値として実測透析量spKt/V 1.2 を推奨する.

.透析時間

) 透析時間と生命予後

尿素の標準化透析量Kt/Vurea を大きくするためには,透析効率(K)か,透析時間(t)のいずれか,あるいはその両者を大きくすることが必要である.これまでの日本透析医学会統計調査結果の解析によれば,週3 回で1 回3〜5 時間の一般的な透析条件において,平均的な1 回4 時間の透析を基準とすると,それより短い透析時間の患者群の死亡リスクは透析時間が短いほど高くなり,逆にそれより長い透析時間の患者群の死亡リスクは,透析時間が長いほど低くなることが認められた21〜23).国際的なDialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS) 44,45)でも,透析時間が4時間半に達するまでは,それが長いほど死亡リスクは低下している.また日欧米で比較すると,長い透析時間による死亡リスク低下が,日本において顕著であることも観察されている44,45).さらに上記以外にも,4時間未満の短時間の透析の予後が不良であることは,数多く報告されている46〜48).また,わが国の報告23)では,4 時間未満の短時間の透析においてKt/Vurea を大きくしても,死亡リスクの低下が期待できない可能性も示唆されている.

) 推奨される透析時間

透析時間は,透析量を決定する一要素ではあるが, Kt/Vurea で群間調整を行った本邦からの報告22,23)で,透析時間が長いほど死亡リスクは低下することが認められている.また,DOPPS 44)ではKt/Vurea で階層に分けて検討し,Kt/Vurea の値によらず透析時間が長いほど死亡リスクは低下している.これらの結果は,透析時間がKt/Vurea とは独立した生命予後の規定因子であることを強く示唆している.さらに,透析時間を延長することによって除水速度が低減されるため透析中の低血圧発生頻度が低くなることや,基礎体重が達成しやすくなるため高血圧管理が容易になることなど,体液量管理の面でも有利と考えられる44,45,49〜51).以上から,週3 回血液透析では,最低限4 時間の治療

が必要である可能性が極めて高く,透析時間は4 時間以上を推奨する.

) 血液流量と透析液流量

尿素のような小分子物質の除去効率を高めるためには,透析時間の延長だけではなく,血流量(QB)や透析液流量(QD)を多くすることも有効と考えられる52,53).しかし,これまでにQBと生命予後の関係をみた報告は少ない.日本透析医学会統計調査結果の解析23,54)では,200 以上220 mL/分未満のQBを基準とした場合,250〜300 mL/分程度まで,より多いQBで死亡リスクが低下する可能性が示唆されている.本邦の透析現場では,QB増加によって循環器系の負荷が増加する懸念があるが,QB 400〜500 mL/分程度では,アクセスの血流量の増加,心機能や血圧の急性の変化は認められていない55〜60).実際,400〜450 mL/分以上のQBを用いるhigh efficiency dialysis でも死亡リスクの増加は認めておらず57,61),またより多いQBで透析を行ったHEMO 研究の高透析量群でも,心臓関連死は増加していない20,62).一方,QDと生命予後の関係をみた報告,特に意図的にQDを増減させて予後を比較した研究はない.しかし,患者の限られた治療時間を有効に活用しつつ,近年の高機能ダイアライザの性能を充分に引き出すために,効果的なQBとQDの比率が1: 2 程度であること53,63,64)も考慮して,適切なQBとQDの設定が望まれる52,53,64〜68).

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p.16
第章血液透析量とその効果:b2-ミクログロブリン(b2-M)

ステートメント.最大間隔の透析治療前血清b2-ミクログロブリン(b2-M)濃度は予後関連因子である.(1B) .最大間隔透析前血清b2-M 濃度が30 mg/L 未満を達成できるように透析条件を設定することを推奨

する.(2C) .最大間隔透析前血清b2-M 濃度25 mg/L を達成できるように透析条件を設定することが望ましい. (オピニオン) .b2-M 以上の物質除去により予後が改善する可能性がある.(オピニオン)

解説

.尿毒症性物質としてのb2-M

透析領域におけるb2-M の意義は,長期透析療法の合併症である透析アミロイド症の主要構成蛋白であり,透析療法で積極的に除去すべき尿毒症性物質である1〜3).透析の長期化に伴い,骨・関節痛,運動障害,神経痛などの症状を訴える患者が多くなり,これらの患者に共通の病態として,骨・滑膜・靭帯などを中心にアミロイドの沈着を認め,透析アミロイド症と呼ばれている4,5).主要構成蛋白として,b2-M がGejyo らにより同定されるに及び6),わが国の透析膜はb2-Mを積極的に除去する方向に進んだ.しかし,血清b2- M 濃度と透析アミロイド症の発症率などは相関関係がないことも知られており7),b2-M がアミロイドに移行するには個人差があり,その発現には他の要因が関与しているのではないかと推察されている.

しかし,近年b2-M は単に除去すべき尿毒症性物質であるという認識のみならず透析患者の予後関連因子であるという報告がみられる8〜10).HEMO 研究や奥野らの報告でもあるように,透析前血清b2-M 濃度が27.5〜34 mg/L 以下でリスクが低下し,積極的なb2- M 領域レベルの尿毒症性物質除去が透析療法では必須である.

わが国の慢性透析療法の現況(2009 年12 月31 日現在)では,透析前血清b2-M 濃度を5 mg/L ごとに分け,25〜30 mg/L を対照としてその濃度から高いか低いかで1 年間の生命予後を報告している(図) 11).性別,年齢,透析歴,および原疾患などの基礎的因子のみによる補正では,透析前血清b2-M 濃度が高ければ高いほど死亡リスクが増大することを示した.この傾向はKt/V による補正を加えてもほとんど変化しな

かったことより,ここで認められた透析前血清b2-M濃度と生命予後との関連は,小分子量に対する透析量とはほとんど無関係であることを示唆している.一方,蛋白異化率,アルブミン濃度,総コレステロール, body mass index,%クレアチニン産生速度などの各種栄養関連指標による補正の結果,25 mg/L 未満の低い血清b2-M 濃度に認められた死亡リスクはさらに減少し,30 mg/L 以上の高い血清b2-M 濃度に認められた高い死亡リスクも減少した.したがって,栄養状態が良好な症例では血清b2-M 濃度をさらに低下させることが生命予後を改善させることを示唆している.

さらに,わが国の慢性透析療法の現況(2010 年12月31 日現在)では,約71%の患者で透析前血清b2-M濃度30 mg/L 未満が達成されており12),透析条件を最適に設定することにより25 mg/L 未満も達成可能な水準と考える.

.透析条件の設定

除去法としてはb2-M は分子量11,800 であり,現在の透析治療においては濾過よりも,拡散による除去が中心となる13).拡散での除去を考えた場合,血液透析条件では血液流量(QB)を増大させることが,最も効率よくb2-M を除去することになる14).さらに,透析膜の膜面積を増大させることは拡散や内部濾過を増やすこととなり,除去性能は上がる14).透析膜の選択においては,b2-M クリアランスが高い透析膜を使用するほうが,b2-M は積極的に除去できることになる14).b2-M の1 回治療あたりの除去率は血流が200 mL/min 以上で,b2-M のクリアランスが50 mL/min以上の高性能透析膜を用いると,60%以上の除去率が
p.17
得られることも報告されている14).また,b2-M 吸着カラムを用いることもひとつの選択肢となる15).さらに,4 時間以上に治療時間を増加させることも有用な方法である16).

血清b2-M 濃度は定期的にモニタすることが重要であり,その測定頻度は3 か月に1 回程度が望ましいと考えられる.またこのような透析条件で治療を行うにあたって最も重要なことは透析液清浄化であり,超純粋透析液は必須条件となる.一方,アルブミン損失を伴うHPM ダイアライザ(第5 章-I参照)もあるため,血清アルブミン濃度も定期的に測定する必要がある.

一方,わが国では血液透析濾過や蛋白漏出型血液透析などが積極的に用いられ,b2-M 以上の分子量物質除去により予後が改善する報告も多いことから13,17〜20),b2-M 以上の分子量物質除去も考慮して透析条件を設定する必要がある.文献

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40≦<記載なし基礎的因子のみによる補正基礎的因子+透析量による補正基礎的因子+透析量+栄養関連因子による補正

表22透析前b2-ミクログロブリン(b2MG)濃度と生命予後透析前b2MG 濃度

(mg/L)死亡リスク

0.843 0.789 0.907 1.000 1.281 1.712 2.326 1.409

<15 15≦<20 20≦<25 25≦<30 30≦<35 35≦<40 <.0001

0.0019 対照 <.0001 <.0001 <.0001 <.0001

(95%信頼区間) (0.711〜1.000) (0.714〜0.872) (0.853〜0.965) (対照) (1.211〜1.355) (1.594〜1.839) (2.148〜2.519) (1.339〜1.482) 1.000 1.268 1.674 2.245 1.283

p 値

0.0503 <.0001 <.0001 <.0001

(95%信頼区間) (0.606〜0.854) (0.668〜0.815) (0.841〜0.951) (対照) (1.199〜1.341) (1.558〜1.798) (2.073〜2.431) (1.217〜1.352)

死亡リスク

0.720 0.738 0.894

1.053

p 値

0.0002 <.0001

0.0004 対照 <.0001 (0.371〜0.525) (0.498〜0.609) (0.761〜0.861) (対照) (1.127〜1.261) (1.271〜1.467) (1.447〜1.700) (0.996〜1.112)

死亡リスク

0.441 0.551 0.809 1.000 1.192 1.366 1.568 p 値

<.0001 <.0001 <.0001対照<.0001 <.0001 <.0001 0.0672

(95%信頼区間)

~15 20 25 30 35 40~ 0.0

0.5 1.0

1.5 2.0

2.5

0.843 0.789*** 0.907* 1.000 1.281*** 1.712*** 2.326***

0.720** 0.738*** 0.894** 1.000 1.268*** 1.674*** 2.245***

0.441*** 0.551*** 0.809*** 1.000 1.192*** 1.366*** 1.568***

透析前β2MG 濃度(mg/L)

マークなし:n.s.

*:p<0.005 **:p<0.0005 ***:p<0.0001

対照

死亡リスク

基礎因子+透析量+栄養因子

図14透析前b2MG 濃度と生命予後

図透析前血清b2-M 濃度と生命予後(日本透析医学会統計調査委員会.図説わが国の慢性透析療法の現況2009 年12 月31 日現在.東京:日本透析医学会,2010;83 より図14,表22 抜粋)
p.18
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p.19
第章ドライウエイトの設定

ステートメント.透析患者の体液管理は重要で,最大透析間隔日の体重増加を6%未満にすることが望ましい.(2B) .平均除水速度は,15 mL/kg/時以下を目指す.(2B) .体重増加の管理には,適正な塩分制限と水分制限を指導する.(1B) .ドライウエイトの適正な設定は,透析患者のQOL と予後を左右する.(2B)

解説

ドライウエイト(dry weight:DW)の定義

DW という言葉は,Thomson が1967 年に提唱した概念1)で,「透析療法によって細胞外液量が是正された時点の体重」とされている.その設定方法として, ) 臨床的に浮腫などの溢水所見がない. ) 透析による除水操作によって最大限に体液量を減

少させた時の体重. ) それ以上の除水を行えば,低血圧,ショックが必

ず起こるような体重.とされ,患者に対して,最大限の除水を行って,ショック状態になるのを確認して,その体重をDW として設定した.これは「真のDW」といえるかもしれない.しかし,現在の透析による除水操作では,体外限外濾過法(extracorporeal ultrafiltration methods:ECUM),血液透析濾過(hemodiafiltration:HDF),長時間透析などさまざまな方法があり,長時間かけて行えば,真のDW の近くまで除水ができるが,4 時間ではショック状態になるということもある.しかし,「透析療法によって細胞外液量が是正された時点の体重」という概念は,現在でも十分に理解できるものである.

本項で用いるDW とは,日本透析医学会の「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」で定義している「体液量が適正であり透析中の過度の血圧低下を生ずることなく,かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」という指標を用いることとした2).

適正な体液管理を行うことは,結果的に血圧の正常化を図り,透析患者のquality of life(QOL)の向上と生命予後の改善につながる重要な問題である.ステートメントの解説

.透析患者の体液管理は重要で,最大透析間隔日の

体重増加を6%未満にすることが望ましい.透析患者の体液の状態は,食塩摂取量,飲水量,尿量,透析による除水量によって規定される.

体液量の管理不良は高血圧をひき起こし,心血管系に悪影響を与えることは周知の事実である3〜6).本邦の成績(日本透析医学会統計調査委員会)によれば,透析間体重増加量が体重の2%以下と6%以上で予後が不良であることを明らかにしている7,8).しかし, 6%が適正であるか否かには異論もある.

United States Renal Data System(USRDS)の成績によれば,4.8%以上の体重増加では予後不良であると報告している9).そのほかの報告でも,5.7%以上では予後不良10),3.5%が妥当11),DW の2.5 から5.7%は死亡率が最も低い12〜14)など,さまざまな報告があるが,これらの研究は,観察研究であり,いわゆる無作為比較対照試験(randomized controlled trial:RCT)を用いたエビデンスはない.本ガイドラインでは,透析患者の予後が最もよいとされている,本邦の成績を重視し,日本透析医学会統計調査委員会報告のデータを基に,体重増加を中2 日では6%未満にすることを推奨することとした.

.平均除水速度は,15 mL/kg/時以下を目指す.

この設定に関しては,必ずしも医学的根拠が十分あるとはいえない.しかし,除水速度が15 mL/kg/時とは,4 時間透析で体重の6%の除水を行うことに相当する.過度の除水が生命予後に影響を与えることは,日本透析医学会の成績でも体重増加量が6%を超えると予後が不良であること8),透析時間が4 時間以内では予後が不良なこと8)と考え合わせると,このような除水計画が示される.
p.20
Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study (DOPPS)の成績を解析した検討では,除水速度が10 mL/kg/時以上では死亡率が上昇する15)とされてはいるが,至適除水速度を求めた論文ではない.比較的信頼のおける論文としては,5 年間の多施設共同の前向き観察研究では,12 mL/kg/時以上の除水速度で死亡率が上昇する14)というものがある.

本ガイドラインでは,ステートメント1 で述べたように,最大透析間隔日の体重増加を6%未満としたことから,体重増加6%を4 時間で除水すると15 mL/ kg/時になるため,このような設定とした.日本透析医学会の除水速度と予後との関係に関する検討でも,同様の結果となっている8).

実際の透析では,透析中の食事,プライミング時の生理的食塩液の負荷,回収時の生理的食塩液が加わるため,その分の除水は体重に反映されない.したがって,この除水速度を順守すれば,4 時間の透析で除水できるのは体重の5%程度となる.

これ以上の体重増加がある場合には,もちろん食塩制限の指導が最も重要であるが,それでも体重管理が行えない症例では,透析時間の延長を最優先に考慮すべきである.近年,透析時間は4 時間よりも5 時間透析のほうが予後がよいという成績が発表され14,16),本邦の透析医学会の調査でも,4 時間透析よりも4.5 時間あるいは5 時間透析のほうが予後がよいことが示されており8),無理な除水をして4 時間で終了するよりも透析時間を延長することを推奨する.

.体重増加の管理には,適正な塩分制限と水分制限

を指導する.透析間の体重増加とは,水分の増加であると同時に食塩の蓄積を意味する.

血清Na 濃度140 mEq/L は食塩水に換算すると

8.2 g/L に相当する.すなわち,8.2 g の食塩が体内

に蓄積すると1 L の水分(体液量=体重)が貯留することになる.

ステートメント1 で述べたように,「最大透析間隔日の体重増加を6%未満」にすることを実現するためには食塩制限が必須である.また,食塩制限をすることにより,血圧は低下し17,18),体液量が正常化し19),口渇が抑えられ飲水行動を改善できる19〜21).

Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(KDO- QI)では1 日食塩摂取量は5 g 以下を推奨している22). 1 日5 g の食塩摂取では透析間体重増加は1.5 kg になる.実際には汗と便を合わせて1 日1 g が排泄されるが,食事には食塩以外のNa 塩も含まれているため,補正は行わない.

医療スタッフにお願いしたいのは,体重増加の多い患者への食塩制限である.食塩制限を行わないで飲水制限を勧めることは厳に慎んでいただきたい.体重増加の多い患者では,まず食塩制限を徹底することが肝要である.

水分制限を勧めるのは,低ナトリウム血症のある患者である.多くの症例では透析前血清Na 値は136〜145 mEq/L に分布しているが,透析前血清Na 値が135 mEq/L 以下の症例では飲水を制限する必要がある.飲水過多の原因には,粥食,お茶,内服時の水などがあげられる.

.DW の設定は,透析患者のQOL と予後を左右す

る. Scribner は,「DW が適正に維持されれば透析患者には降圧薬は不要である」と述べており23),透析患者では適正な水分管理により,多くの症例で血圧を正常化できるといわれている24,25).上述したように,体液量の管理不良は高血圧をひき起こし,心血管系に悪影響を与えることは周知の事実である.したがって,適正なDW の設定により,透析患者の予後改善が期待できる20,22,26〜30).また,透析中の血圧低下は,透析中の筋痙攣や透析後の全身è怠感の原因となり,さらに予後不良の原因となる7,31).逆にドライウエイトの設定が不適切に高いと,心臓に負担が加わり,緊急透析を要する原因ともなる.

補足1:適正食塩摂取量について

本ガイドラインでは,至適食塩摂取量を6 g/日未満を推奨することを検討した.これは,慢性腎臓病に対する食事療法基準2007 年版32),日本高血圧学会33),日本糖尿病学会などでも高血圧のある患者では6 g/日が推奨されているからである.

しかし,あえてステートメントに記さなかったのは,日本人では体格の小さい患者が多いためである.6 g/日の食塩摂取では,中2 日で2.2 kg の体重増加となるが,体重が30 kg の患者では,2.2 kg の体重増加は,透析間体重増加が7.3%となってしまう.

現在,栄養問題ワーキンググループで,透析患者の適正食塩摂取量について検討中であり,後日指針が出される予定である.ただし,過度の食塩制限は透析患者においては栄養障害のリスクであることは,透析医学会の予後調査でも明らかで,透析間体重増加の少ない症例では予後不良である.
p.21
補足2:DW の設定方法について

一般的に採用されているDW 設定の指標としては,以下のような指標が用いられる.

1透析中の著明な血圧低下がない. 2高血圧がない(おおむね週初めの透析開始時で

140/90 mmHg 程度). 3浮腫がない. 4胸部X 線にて肺鬱血がない. 5心胸郭比が50%以下(女性では53%以下).しかし,この指標もそれぞれに問題点を含んでおり,例外を常に意識して使用しなければならない.

1透析中の著明な血圧低下がない:透析中の血圧が

下がるのは,除水による循環血液量低下による以外に,自律神経機能異常,心機能低下,不整脈,酢酸不耐症があり,これらを除外しなければならない. 2高血圧がない(おおむね週初めの透析開始時で

140/90 mmHg 程度).ただし,DW を下げてから血圧が下がるまでにはある程度の時間差(数週間)がある34)こと(Lag Phenomenon)を意識し,血圧管理目的にDW を下げる場合には,1 週間に0.3 kg 程度ずつが望ましい. 3浮腫がない:低アルブミン血症,静脈血栓症など

浮腫を増強する因子を除外しなければならない. 4胸部X 線にて肺鬱血がない:心機能低下,左心不

全では,肺うっ血が持続することがある. 5心胸郭比が50%以下(女性では53%以下):心筋

肥大,弁膜症,心機能低下,心臓横位,シャント血流増加,著明な貧血では心胸郭比が必ずしも循環血液量を反映しているとは限らない.心胸郭比の評価は常に時系列で評価しなければならない.一方,日本透析医学会の「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」で定義した「体液量が適正であり透析中の過度の血圧低下を生ずることなく,かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」2)という指標を用いる場合,

1体液量が適正とは何か. 2透析中の過度の血圧低下を生じないとは何か. 3長期的にも心血管系への負担が少ない体重とは

何か.という問題が生じる.

この方法によるDW 設定法は,日本透析医学会の「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」を参照していただきたい.補足3.DW の記載の問題点

透析前後の体重測定法は,施設により異なることに留意すべきである.着衣の重量を測定して裸体重を記載する施設,一定のパジャマを支給してパジャマを含む体重を記載する施設,着衣のままの体重を記載する施設などがある.それぞれの施設での体重測定の方法を統一することはできないが,記載方法を統一することが望ましいと考え本ガイドラインに体重の記載方法を提案する.

体重測定は着衣のままで構わないが,透析間体重を計算するときに着衣の重量が変化することは望ましくない.また,季節によっても着衣の重量は変わる.さらに,透析施設間での情報伝達では,さらに大きな問題となる.日常臨床では,測定した体重,着衣重量を記し,DW は常に「裸体重」であることをスタッフが共通認識とし持つことをお勧めしたい.他施設への紹介時にもDW が「裸体重」であるのか,着衣のままか,あるいはスリッパを履いたままかなど,体重測定の状況を明記することを推奨する.

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p.23
第章適切な透析量・治療効果を得るための評価

ステートメント.透析治療効果の評価は短期的指標と中長期的指標の両者を用いて定期的に行うことを推奨する. (1B) ) 短期的指標としては,透析中の循環動態と尿毒素除去効果を用いて評価する. ) 中長期的指標としては,尿毒素の維持レベル,栄養状態,生命予後に関連するQOL の指標を用い

て評価する. .治療効果の評価に基づき,必要に応じて透析処方を変更することが望ましい.(オピニオン)

解説

.慢性維持透析治療の目的は,慢性腎不全患者の

quality of life(QOL)の高い長期生存である.そのために透析施設は,透析治療が十分な透析量で患者の尿毒症病態を改善しているかどうか治療効果を定期的に評価する必要がある.治療効果の評価は単回透析治療の安全性・安定性,尿毒素除去効率といった短期的指標と尿毒素の維持レベル,尿毒症症状の改善,栄養状態の維持などの中長期的指標の二本立てで行う.

) 短期的指標による評価

短期的な治療効果の指標は,透析中の循環動態と尿毒素除去効率で行う.十分な透析量を確保するためには,単回の透析治療が安全に安定して繰り返されることが必要であり,この点で日常的に最も問題となるのが透析関連低血圧,いわゆる透析困難症である.透析中の急激な血圧低下や透析後の起立性低血圧は生命予後を悪化させる因子であり1,2),透析関連低血圧の原因には,不適切なドライウエイト設定や急激な除水設定による循環血漿量の減少,心機能低下,自律神経機能障害などがあり,早急に原因を究明して対応する必要がある3).しかしながらそれらの対応を行っても低血圧発作に改善がみられない場合,ダイアライザの変更や血液透析濾過法(hemodiafiltration:HDF)により透析低血圧が改善する場合があり,透析条件の変更を試みることが望ましい.(第5 章参照)

単回透析における尿毒素除去効率,特にKt/Vureaは,さまざまな横断研究あるいはコホート研究において,予後関連因子として認められ,死亡率を低下させるための目標値が設定されてきた4,5).しかし現在広

く使用されているKt/Vurea は,再生セルロース膜が中心で,透析プログラムも4〜5 時間,週3 回と限定された条件下での指標である.現在のわが国ではほとんどの透析施設においてhigh performance membrane (HPM)膜が使用され,治療プログラムも多様化してきており,Kt/Vurea がこのようなわが国の透析治療の治療効果の評価に厳密に適応可能かどうかには課題がある.しかしながら近年の日本透析医学会統計調査の解析結果でも,Kt/Vurea は独立した予後規定因子であり6),本ガイドラインにおいてKt/Vurea の月1回の定期的なモニタリングを推奨する.(第1 章参照)

) 中長期的指標による評価

中長期的指標による治療効果の評価は,透析量と密接な関連を有しておりかつ生命予後と密接な関連が認められている,尿毒素の維持レベル(透析前血清b2-ミクログロブリン(b2-M)値,栄養状態,QOL の指標(うつ,睡眠障害など)で行う.

透析治療の除去目標物質は,透析治療の萌芽期は尿素やリンなどの小分子であったが,近年はb2-M やそれ以上の大きさの低分子量蛋白や蛋白結合尿毒素に移りつつある.これらの物質の中で血清b2-M 7,8),ホモシステイン9),P-cresol 10)などが生命予後あるいは合併症併発のリスク因子として報告されている.しかしこれらの尿毒症毒素のうち臨床的に簡便に測定が可能で,尿毒症病態と密接な関係が証明されているのはb2-M だけである.血清b2-M 値は残存腎機能の影響を受け,残存腎機能の減少に伴い透析前血清b2-M 濃度は上昇する8,11).残存腎機能の維持が腹膜透析患者だけでなく,血液透析患者でも重要であることが報告されており12),血清b2-M 値は残存腎機能を反映して
p.24
予後規定因子となり得る可能性もあるが,大きなコホートの解析で透析前血清b2-M 値は予後規定因子であることが報告されている7,8).以上より,本ガイドラインでは生命予後に関連した指標である透析前血清b2-M レベルの定期的なモニタリングとその目標値を第2 章に定めた.単回のb2-M の除去効率が生命予後に改善させるかどうかについて,現時点では一定の見解がない13,14).しかし透析時間の延長や血液透析濾過治療を行うことで,血清b2-M 値を低下させることが可能であり,透析前血清b2-M 値を参考に透析処方を工夫することが望ましい.

栄養状態は最も重要な予後予測因子であり15),中長期的な適正透析の指標として適切である.とくに, %クレアチニン産生速度(%CGR) 16)で推定される筋肉量は独立した予後規定因子であり17),筋肉量を低下さ

せない透析条件の設定,栄養管理が必要である.栄養状態の評価は自覚的栄養評価,身体計測,体成分分析,血液生化学的所見など複数の指標を用いて総合的に判断するべきである(表1).透析患者の栄養障害には尿毒症毒素の蓄積,透析治療の生体適合性不良などから惹起される微弱炎症反応と栄養摂取不足や透析による栄養素の喪失などさまざまな因子が複雑に絡み合っている18).これまでの報告では,透析患者の約3 割にC反応性蛋白(c-reactive protein:CRP)1.0 mg/dL 以上の炎症状態が認められ,栄養障害の原因の一つになっている18).わが国の報告ではCRP 1.0 mg/dL 以上は全施設透析患者の13%,0.5 mg/dL 以上は23%を占める19).栄養スクリーニング後に治療介入計画を

*1Subjective global assessment(SGA)

SGA は7 項目における自覚的に栄養状態を総合的に評価するシステムであり,外科領域において,術後合併症を予測する方法として考えられた

25).その後透析患者において栄養状態の総合評価に用いられてきた26).

*2Malnutrition Inflammation Score(MIS)

MIS はKalantar-Zadeh により考案された,透析患者に特異的な栄養状態の総合的な評価システムである

27).SGA の7 項目の質問に3 項目にBMI,アルブミン,TIBC を追加,合併症に透析歴を加味したものである. *3Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)

GNRI は高齢者の栄養障害のリスクを,SGA やMIS に比較してより簡便に行うためにBouillanne ら

28)により開発され,以下の式で算出する. GNRI=[1.489×albumin(g/L)]+[41.7×(BW/ideal BW

*)]

*ideal BW はBMI を22 で計算する.透析患者においてGNRI 91.2 未満が栄養障害のリスクが大と報告されている29). *4Dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)

DEXA は2 種類の異なった波長のX 線を全身に照射して,その透過度の差から身体組成を計測する方法であり,本来は骨量を測定する方法であった.しかし現在では体脂肪や筋肉量の測定に汎用され,現在では体成分分析のゴールデンスタンダードに位置づけられている. *5Bio-electronical Impedance Analysis(BIA)

BIA 法は体内に微弱な複数の周波数の電流を流し,その電気抵抗を測定することで身体組織を計測する方法である.簡便で測定機器も比較的安価であることから,現在広く使用されている.しかしながら測定結果は患者の身体状況,溢水の影響などを受けやすい,ペースメーカー植え込み患者には使用できない,組織成分を推定するアルゴリズムが製造者によって異なり比較が困難などの欠点がある. *6%creatinine generation rate(%CGR)

%CGR はShinzato ら

16)により考案された透析患者の筋肉量を推定する指標であり,日本透析医学会のデータでは最も強力な予後予測因子として認められている

17).Cr は筋肉から非酵素的に産生され,その産生速度は筋肉量の多寡を反映すると考えられている.透析前後の血清Cr からCr 産生速度を求め,性別年齢の一致した非糖尿病透析患者のCr 産生速度の百分率で表したのが%CGR である.

1栄養障害スクリーニング検査

●自覚的総合栄養評価(Subjective global assessment:SGA) *1 ●Malnutrition Inflammation Score(MIS) *2 ●Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI) *3 2身体計測●身長,体重,BMI 上腕周囲径,皮下脂肪厚などの身体計測3体成分分析法

●Dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA) *4 ●Bio-electronical Impedance Analysis(BIA) *5 ●%creatinine generation rate(%CGR) *6 4血液生化学的所見など

●血清アルブミン値,プレアルブミン,C 反応性蛋白(CRP)

表1栄養評価指標
p.25
立案するためには,栄養障害の原因を特定しておく必要があり,まず炎症の関与の有無を確認する必要がある.血清CRP は独立した予後規定因子であり20),血清CRP を栄養スクリーニングの際に同時に調べることが望ましい.栄養介入や透析条件変更などにより栄養状態が改善するかどうか,最低6 か月に一度継続的に評価する必要がある.

透析患者のQOL を低下させる尿毒症性精神神経症状のうち,うつ21)や不眠22),掻痒感23)は,単独で生命予後を規定する因子であると報告されている.8 時間週6 回透析では,慢性透析患者のさまざまな不定愁訴が殆ど消褪すると報告されている24).透析患者の愁訴の背景には透析不足が存在している可能性があり,これらの症状が認められた場合は安易に対症療法を行うのではなく,透析処方を工夫することで症状の改善が得られるかどうか試みることが望ましい.

.透析処方の変更

透析治療効果の評価は単回の透析治療の安全性・安定性と治療効率といった短期的指標,栄養状態や尿毒症症状,精神神経症状などの中長期的指標の2 つの時間軸の指標で評価する.評価の結果,現在の透析治療が患者の尿毒症状態を十分に改善させていない.あるいは透析患者の日常生活に悪影響を与えている可能性があると判断した場合,表2 に示すように透析条件を変更してみる.透析処方の変更に際しては必ずしも透析効率を高める方向だけでなく,単位時間あたりの透析効率を下げることも考慮する.高齢者や栄養状態の悪い患者において,単位時間あたりの透析効率を上げることがQOL や生命予後の改善に結びつかないことが報告されている30,31).現時点ではすべての症例に対して等しく有効な透析条件を設定することはできない.また同一の治療方法でも患者によってその治療効

果はさまざまである.そのため立案した治療介入計画が,意図した治療効果をもたらしたかどうか,必ず評価しなければならない.もし効果が得られていないと考えられる場合は再度ほかの治療方法を試みる.透析処方の変更に際しては,透析膜材質や溶質除去効果,発展的血液浄化法に関して臨床工学技士や看護師などコメディカルと十分協議することが望ましい.透析中の血行動態,尿毒症症状などは投薬内容や患者の食事治療や服薬コンプライアンスなどさまざまな因子と深く関連しているため,総合的にアプローチすることが重要である.

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●単位時間あたりの透析効率を上げる(下げる) (第1 章参照) →血流量を上げる(下げる) →透析液流量を上げる(下げる) →ダイアライザ膜面積を上げる(下げる) →ダイアライザの膜種を変更する●透析時間や回数を増やす(減らす)(第5 章-III参照) →長時間透析→頻回透析●特殊な機能の透析膜を使う(第5 章-I参照) →HPM ●濾過型治療を付加する(第5 章-II参照) →オンラインHDF

表2透析処方の変更
p.26
11) McCarthy JT, Williams AW, Johnson WJ. Serum

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p.27
第章発展的血液浄化法

I.透析膜の選択

ステートメントHPM 透析器(High Performance Membrane dialyzer)の使用を推奨する.

解説透析膜の選択についてKidney Disease Outcomes Quality Initiative(KDOQI)ガイドラインでは生体適合性の悪いセルロース膜の使用は推奨しないと述べられている.European Best Practice Guidelines(EBPG)では有病率および死亡率にかかわるアウトカムを改善するためにはポアサイズの大きな生体適合性に優れたハイフラックス膜の使用を推奨しており,補体の強い活性化,白血球の活性化,炎症反応を惹起するような透析膜の使用は避けるべきと述べている.しかし, MacLeod らのメタ解析では合成高分子膜使用の優位性は明確には示されていない1).わが国では諸外国とは異なりHPM 透析器という概念があり,ガイドラインにおける透析膜の選択については他のガイドラインとは異なる事情が存在する.したがって,今回の透析処方のガイドラインの策定にあたっても透析膜の選択においてHPM 透析器について言及することが必須となる.

HPM 透析器の概念について解説する.1970 年代からBabb らの中分子量仮説において提唱されている中分子量尿毒素の本体は何か.また,どのような治療法が効率よく除去することができるかの検討がなされ,血液濾過による中分子量物質の除去が試みられた.しかし,血液濾過では優れた治療効果を示すことができず,1970 年代末には当時の血液濾過で除去できる物質以外に尿毒症で蓄積する物質が存在すること.また,その除去効率が低いことが議論されるようになってきた.そこで,糸球体がアルブミン以下の低分子量蛋白を濾過により排泄していることに注目し,アルブミン以下の分子量の低分子タンパク質を除去できるダイアライザを用いた透析療法を施行した場合,貧血の改善,関節痛の改善などの臨床効果が得られることが明らかになってきた.HPM 透析器は以下のように規定されている. .HPM 透析器の要件

HPM 透析器の要件を考える場合には命名された経緯が非常に重要になってくる.高性能な膜の定義としてhigh flux membrane,high permeable membraneなどの限外濾過率が高いダイアライザの名称が当時からも使用されていたが,限外濾過率(ultrafiltration coefficient:UFR)の高さだけではなく,タンパク質を吸着する膜やUFR は高くなくてもアルブミンが漏出する膜などの新しい付加価値を持った膜としてHPM透析器という名称が用いられた.1985 年に下条らにより透析アミロイド症のアミロイド線維前駆蛋白がb2-ミクログロブリン(b2-M)であると同定されたが,当時は低分子量蛋白を効率よく透析で除去できる膜が少なかったため,吸着による除去や生体適合性向上による炎症性蛋白の産生減少作用なども含めたダイアライザとしてHPM 透析器がとらえられていた.

現在においては多くのダイアライザが効率よく低分子量蛋白を除去できるようになり,HPM 透析器のとらえ方も少しずつ変化してきている.2005 年の日本透析医学会血液浄化器機能分類においてはb2-M クリアランス10 mL/min 以上を示す透析器と定義され2),さらに2013 年の機能分類ではb2-M クリアランスとアルブミン透過性と,吸着性などの特殊性を加味した分類が行われている3).

.臨床効果

HPM 透析器が開発されてきた経緯から期待される臨床効果は透析アミロイド症の改善が最も重要なものであり,日本透析医学会の統計調査においてもHPM透析器がアミロイド症治療に有効であることが示されている4).また,Koda らはHPM 透析器を使用すると透析アミロイド症の一つである手根管症候群の発症のリスクが低下し,さらに死亡率についてもリスクを低
p.28
下させると報告している5).従来型透析器では除去できない物質がHPM 透析器では除去可能であり,生体適合性においても優れていることから生命予後・食欲不振・栄養障害・透析アミロイド症関連症候(関節痛・進展抑止)・腎性貧血・瘙痒症・皮膚色素沈着・皮膚角化症・Restless leg syndrome・イライラ・不眠・急性腎不全の予後改善・残存腎機能保持の臨床効果が期待されている6).さらに,生命予後についてはハイフラックス透析膜とローフラックス透析膜の無作為比較対照試験において糖尿病性腎症患者およびアルブミン値が4.0 g/dL 未満の患者では改善するとの報告もある7).

.除去が期待される尿毒症物質

従来型透析では除去できない比較的分子量の大きな尿毒症物質がHPM 透析のターゲットになると考えられる.現在想定されている尿毒症物質は古典的定義に沿うもののみならず血管病変にかかわる物質,慢性炎症にかかわる物質などが重要になってきている8).これらのうちHPM 透析での除去が期待される物質としては分子量が10,000〜30,000 までのものである.しかし,病態の解明により新たなターゲット物質が出てくる可能性があり現時点で絞り込むことは困難である.

以上のような概念であるHPM 透析器は生命予後を含め透析に関連する合併症を改善する可能性があり,透析療法において選択すべき透析膜と考える.文献

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p.29
II.濾過型血液浄化療法

ステートメント.血液透析濾過療法(hemodiafiltration:HDF)は低分子量蛋白の除去量増加,炎症性サイトカインの

産生減弱,生命予後の向上が期待される. .ハイフラックスダイアライザ,超純粋透析液を用いた血液透析(hemodialysis:HD)にても改善しな

い患者の不定愁訴(掻痒感,関節痛,Ä怠感,食欲不振等),透析低血圧への対策としてHDF は考慮されるべきである.

補足*本邦のHDF の特徴としては低分子量蛋白からアルブミンまでの分子量物質の透過性を保持するヘモダイア

フィルタを用いた大量液置換-前希釈オンラインHDF があげられる.

解説

.本邦の濾過型血液浄化療法

本邦の濾過型血液浄化療法としてはHDF,血液濾過(hemofiltration:HF)がある.従来,本邦ではHDF, HF 治療はオフラインHF/HDF が主に行われてきた.オフラインHF の保険適応は「透析アミロイドーシス,透析困難症,緑内障,心包炎,もしくは心不全を有する患者」とされ,オフラインHDF の保険適応は「血液透析によって対処できない透析アミロイドーシスあるいは透析困難症」とされている.HDF はHD とHFを組み合わせた血液浄化療法であり,従来のHD と比較して小分子量溶質のみならず低分子量蛋白までも効率よく除去することが可能とされる.そのため,小分子量物質の除去に劣るHF よりもHDF が選択される傾向にある.しかしながら,本邦で行われてきたオフライン治療では置換液量に経済的制約があり,低分子量蛋白等の溶質除去において十分効果を得るための置換液量を確保できないという問題点があった.

.オンラインHDF

オンラインHDF とは膜技術により透析液を連続的に精製して置換液を作成し用いる治療法であり,従来のオフラインHDF と比較して,より経済的コストを下げられ,置換液量も大幅に増量することが可能である.2008 年に日本透析医学会にて透析液の清浄化基準が制定され1),2010 年4 月より本邦においてもオンラインHDF に対応した人工透析装置の承認によりオンラインHDF が可能となり,2012 年4 月よりオンラ

インHDF に対する保険点数が認められることとなった.また,オンラインHDF の適応病態等は限定されず,すべての慢性維持透析患者に施行可能となっている.

.HD と比較してのオンラインHDF の効果

オンラインHDF の臨床効果としては以下のようなものが報告されている.

) b2-M の除去と透析アミロイドーシス治療効果:透析アミロイド症の前駆物質として低分子量蛋白b2- M の除去においてオンラインHDF のHD に対しての優位性が報告されている2).オンラインHDF により血清b2-M 濃度を18 mg/dL に維持できたとの報告や3),25 mg/dL 以下に低下できたとの報告もあり4),低分子量蛋白の除去,特にb2-M の除去においてのHDF の有用は高い.

Nakai らは各種血液浄化療法モダリティの透析アミロイド症抑制効果について1998 年から1999 年の間に日本透析医学会の統計調査に参加した1,196 例を対象として検討を行い,ローフラックス膜血液透析(HD using regular membrane)を相対危険度1 とした場合,透析アミロイドーシスの悪化効果において,オンラインHDF 0.013,プッシュプルHDF で0.017 となり, HDF で相対危険度が有意に低く,HDF が透析アミロイド症に有効な治療法であると報告している5).Locatelli らの検討でも,有意に手根管症候群手術時期を延長させる結果が報告されている6).
p.30
) 貧血の改善:後希釈オンラインHDF では赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agents:ESA)抵抗性指数(Epo/Hct 比)がHD に比較して有意に低くESA 抵抗性を改善すること等が報告されている7).しかし,イタリアでの前希釈オンラインHDF での無作為比較対照試験(randomized controlled trial:RCT)21 か月間の観察にて貧血改善効果,ESA 抵抗性の改善はなかったと報告され8),貧血改善・ESA 抵抗性改善については一定の見解は得られていない.

) 炎症改善効果:オンラインHDF においては,HDに比較して炎症反応等の減弱効果についての報告もなされている.オンラインHDF とHD との30 か月における前向き観察研究であるRISCAVID 研究においてオンラインHDF 群はオフラインHDF,HD と比較して炎症性サイトカインであるIL-6 を有意に低下させたと報告されている9).また,Carracedo らは31 人を対象とした交差研究を行い,オンラインHDF はハイフラックスダイアライザを用いたHD と比較して炎症サイトカインを高度に発生する単球細胞(CD14 +CD16+細胞)の発現比率を有意に低下させ,これらの単球を刺激した場合のIL-6,TNF-a 産生もオンラインHDF で有意に低いことを報告している10).オンラインHDF ではハイフラックスHD と比較してEMP(endothelial micro particle),EPC(endothelial progenitor cell)などの増加が有意に少なく血管内皮細胞傷害を軽減する可能性もRamirez らにより報告されている11).これらの効果の理由としては,高生体適合性膜の使用,超純粋透析液,オンラインHDF による,より広領域にわたる尿毒症性物質の除去とそれに伴うサイトカイン産生細胞の減少,サイトカイン産生低下が推測されている.

) 透析低血圧への効果:透析低血圧低減の効果については,Locatelli の発表したItalian Study で示されている.本研究において,前希釈オンラインHDF を行うことで透析低血圧が前希釈オンラインHF と同程度に低減可能であることが報告され,この効果の理由としては高ナトリウム透析と同様にナトリウム負荷量が増えたことなどが推定されている12).

) 生命予後の改善:Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS)のヨーロッパの患者を対象にした解析研究では後希釈オンラインHDF 治療施行症例がローフラックス透析膜を用いてのHD と比較して死亡に対する危険率を35%軽減したと報告して

いる13).

RISCAVID 研究(30 か月の前向き観察研究)において,後希釈オンラインHDF は重炭酸HD(合成高分子膜,ローフラックス膜95%使用)と比較して有意に心血管死亡率を低下させ,オンラインHDF とオフラインHDF は総死亡率を重炭酸HD より低下させたと報告している9).Vilar は後希釈オンラインHDF とハイフラックス透析膜を用いてのHD との長期アウトカムについての比較検討において,オンラインHDFは貧血,骨代謝,栄養,血圧等においてはハイフラック膜HD と有意差はみられなかったものの,生命予後において有用であったと報告している14).オンラインHF とローフラックス透析膜を用いてのHD との比較においてもオンラインHF 群において生命予後の改善がみられたとの報告もある15).

最近,生存率への効果について3 つの無作為比較対照試験の結果が報告された.CONTRAST 16)(後希釈オンラインHDF とローフラックス膜HD の比較)とTurkish study 17),ESHOL study 18)(ともに後希釈オンラインHDF とハイフラックス膜HD の比較)である. CONTRAST では全死亡,心血管疾患死亡とも全体の解析では差が認められなかったが,濾過量>21.95 L群では38%全死亡リスクが減少した16).Turkish study でも同様に全体の解析では差が認められなかったが,置換液量>17.4 L の高置換液群で全死亡46%,心血管疾患死亡71%のリスク低下が認められた17).

それに対しESHOL study ではオンラインHDF で全死亡30%,心血管疾患死亡35%,感染症関連死亡55%の低下が示され,しかも透析低血圧発症頻度も28%の低下を得ていた.さらに上記2 つの研究と同様に濾過量を増加させた>23 L 群と>25L 群ではそれぞれ40%,45%の全死亡低下が得られた18).

これらの研究よりオンラインHDF は,少なくともローフラックス膜HD よりは生命予後の向上が得られ,さらに長期間施行することによりハイフラックス膜HD に対しての優位性も推定される.しかし生命予後改善の確実な証拠は未だ得られていない.

.本邦のオンラインHDF の現状

本邦のオンラインHDF の特徴として,前希釈HDFがあげられる19).本邦ではb2-M の除去性能(クリアランス)が50 mL/min 以上のハイフラックス透析膜,ヘモダイアフィルタが使用されている比率が極めて高く,HD においては90%以上,HDF においても95%
p.31
以上の使用率が報告されている20).

海外でも前希釈オンラインHDF についての除去性能の検討はなされているが,少数例に限定されており,本邦のように1 回の治療あたり60 L 以上の比較的大量の置換液を用いることは少ない21〜24).

アルブミン透過性を有しているヘモダイアフィルタを用いた前希釈オンラインHDF の有用性としては,後希釈オンラインHDF と比較してアルブミン漏出と低分子量蛋白の除去効率の分離に優れている点があげられる25).これらの報告に加え,前希釈オンラインHDF が透析患者の愁訴(掻痒感,骨・関節痛,食欲不振等)を改善するとの報告も多く,その対策としても考慮されるべきである26).

最後に,オンラインHDF に代表される濾過型血液浄化療法であっても本ガイドラインに推奨されている透析処方・条件を充足することが必要であることを付け加える.

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p.33
III.透析スケジュール

ステートメント.長時間血液透析とは1 回あたり6 時間以上の血液透析をいい,頻回血液透析とは週あたり5 回以上の

血液透析をいう. .以下のような症例の場合,透析時間の増加,回数の増加を考慮すべきである.

) 通常の血液透析では管理困難な兆候を有する症例. (1) 心不全兆候を認める,または透析中の血行動態が不安定な症例. (2) 日本透析医学会ガイドラインに従った適切な除水,適切な降圧薬投与,適切な塩分制限を行って

も高血圧状態が持続する症例. (3) 適切な食事管理,日本透析医学会ガイドラインに従った適切なリン管理を行っても,高リン血症

が持続する症例. ) 通常の血液透析により安定している症例で,さらに透析時間・回数を増加することにより,よりよ

い状態に維持できる可能性がある症例.

補足*透析時間・回数を増加する場合には,患者・その家族に利点・欠点を説明し,同意を得ることが必要である. *透析時間・回数を増加する場合には,在宅血液透析が有用である.

解説現状の血液透析治療は間歇的治療であり,多くの症例は週あたり12 時間しか治療されていないため腎機能の代行は不完全である.この標準血液透析(表参照)は生命を維持する最低限の治療であり,そのため透析関連合併症が発生し生命予後が不十分となる.これを解決する最もよい方法は,週あたりの透析時間の増加であり長時間血液透析や頻回血液透析が有用である.また現状の透析治療で安定している症例においても,週あたりの透析時間を増加することにより,内部環境をより健常な腎機能の状態に近づけることが可能となり生命予後の改善が期待される.本邦でも長時間・頻回血液透析が試みられてきているが,2011 年末の統計調査によると,6 時間以上の血液透析症例は0.6%であり,また週5 回以上の頻回血液透析はわずか0.06%で長時間・頻回透析の頻度は非常に少ない.この現状を改善することを目的に本章を提示する.

.定義について(表)

頻回・長時間血液透析の定義に関しては,International Quotidian Dialysis Registry 1)やFrequent Hemodialysis Network(FHN)Trial 2)などに示されているが,研究により若干の違いがある.本ガイドラインではInternational Quotidian Dialysis Registry を参照し

本邦の事情を考慮して,長時間血液透析とは1 回6 時間以上,週3 回の透析とした.上記のRegistry では5時間以上の透析のデータも収集しているが,本邦では診療報酬上の透析時間枠が,すでに5 時間以上と規定されているため,6 時間未満は通常透析に含むこととした.

頻回血液透析は週5 回以上の治療と定義されるが, 1 回1.5〜3 時間の頻回短時間血液透析と,1 回6〜10時間の頻回長時間血液透析(一般的には頻回夜間睡眠中血液透析となる)に分けられる.1 回3〜6 時間の血液透析についてはどちらに含めるかは不確実であり,本ガイドラインではこの時間は頻回標準時間血液透析とした.頻回(frequent)と連日(daily)との用語が混在しており海外では連日(daily)が主に用いられているが同義語であり,本ガイドラインでは頻回との用語を用いた.

なお,隔日血液透析(一日おきの血液透析,7 回/2週)や週4 回血液透析に関しては,その効果は予見されるがエビデンスや症例数が少ないこと,および形態が不確実であるため本ガイドラインでは論じないこととした.
p.34
.適応

) 通常の血液透析では管理困難な兆候を有する症例

1心不全兆候を認める,または血行動態の不安定な

症例2適切な除水,適切な降圧薬管理,適切な塩分摂取

管理を行っても高血圧状態が持続する症例長時間血液透析では,除水速度を小さくかつ総除水量を増加することができ体液コントロールの改善が得られるため3,4),血行動態の安定に有効である5).とくに高齢者など合併症を有する症例では,透析時間の延長は透析低血圧の頻度を減少する6).6〜8 時間の在宅血液透析と3.5〜4.5 時間のセンター血液透析の無作為比較対照試験では,体重や細胞外液量の変化には差がないにもかかわらず長時間血液透析で血圧が良好にコントロールされていた7).さらに,ドライウエイト(DW)を変更しない無作為比較対照試験でも,長時間血液透析で血圧コントロールが良好であることが示されているが8),一般的には透析時間の延長によって目標DW に達することが容易となり,血圧コントロールが良好で降圧剤の減量が得られる3,4).

頻回血液透析は透析間の体重増加が少なく,血行動態の安定に有利である.体重コントロールの不良な症例や合併症のある症例では,透析回数の増加が有用であることが示されており9,10),透析低血圧の減少も報告されている11).また,本邦での臨床研究にても標準血液透析を施設での2 時間・週6 回の頻回血液透析に変更した場合,DW の上昇にもかかわらず有意な血圧低下が得られている12).

左心室肥大は透析患者には一般的であり,予後不良因子であるが,頻回血液透析ではその減少が報告されている13).最近発表された北米での無作為比較対照試験では,施設透析で週6 回1.5〜2.75 時間(平均週あたりの透析時間12.7±2.2 時間)と週3 回2.5〜4.0時間(平均週あたりの透析時間10.4±1.6 時間)の比較を行い,頻回血液透析では左心室重量比(LVMI)の有意の低下が示されている14).これらの効果は体液と血圧の適切な管理によるものと推定される.

メタ解析によると,頻回血液透析や長時間血液透析では有意にLVMI と左室駆出分画(ejection fraction: EF)の改善が示されている15).また,頻回長時間透析では透析低血圧が減少,透析中血圧の良好なコントロール,EF の改善,左心室不全の改善が報告されている16,17).さらに頻回夜間睡眠中血液透析では末梢血管抵抗の減少と,血管作動性反応の増加が示されている18).

このように,長時間血液透析,頻回血液透析とも体液管理が容易となり血圧,心機能の改善が得られている.

3高リン血症が持続する症例血液透析時間延長の効果は,除去効率が拡散に依存する小分子溶質(尿素など)では相対的に少ない.しかしリンは小分子ではあるが,流血中に比して組織内に大量に存在し,さらにその移行速度には酸塩基平衡など多く要因が複雑に絡んでいるため19),リンの除去量を増加させる方法のひとつとして,透析時間の延長は有用である20).リン管理が不良な症例では,透析時間の延長と回数の増加はリン除去量を増加させる最もよい方法である21).しかしリンの体内動態は複雑であり透析条件により除去量と血清値は変化する.たとえば1 回あたりの透析時間の増加は確かにリン除去量を増加させるが20〜22),時間を長くしても除去率はあまり高くならない22).さらに長時間となるとリンの最大プールである骨より流血中への移動も危惧される23).

頻回血液透析で血清リン値の減少やリン吸着薬の減少が得られている24,25).しかし,同時に食事量が増加して,リン摂取量が増加することには注意を要する26).そのためリン除去を増加させるためには頻回血液透析でも時間の延長が必要となる25).北米での大規模比較対照試験では週6 回の頻回血液透析(平均1 回あたり透析時間154 分)で血清リン濃度の有意な低下が得られている14,27).

頻回夜間睡眠中血液透析では,リン摂取量の増加にもかかわらず,血清リン値の低下とリン吸着薬の著明

標準血液透析(intermittent conventional HD):週3 回,3〜6 時間未満長時間血液透析(long intermittent HD):週3 回,6 時間以上頻回血液透析(連日血液透析,daily HD,quotidian HD):週5 回以上

頻回短時間血液透析(連日短時間血液透析,short daily HD):週5 回以上,1.5〜3 時間未満頻回標準時間血液透析:週5 回以上,3〜6 時間未満頻回長時間血液透析(連日長時間血液透析long daily HD,頻回夜間睡眠中血液透析,daily nocturnal HD)

:週5 回以上,6 時間以上

表定義と用語

注)英語表記は参考として記した.
p.35
な減少が示され24,27,28),さらに低リン血症の防止のため透析液にリンの補充を必要としている29).

結論として,リン管理において週あたりの総透析時間が多いほどリン除去量は増加する.週あたり38 時間以上の総透析時間で,リン吸着薬が不用となり血清リン値を5.0 mg/dL 以下に維持することが可能であると報告されている21).

) 通常の血液透析により安定している症例で,さらに透析時間・回数を増加することにより,よりよい状態に維持できる可能性がある症例:生存率,QOL への効果

短時間血液透析は,透析量の多寡とは独立して,死亡のリスクを高めている要因である30,31).日本透析医学会の71,000 以上のデータではKt/Vurea で調整したのち,5 時間以上5.5 時間未満まで,透析時間が長いほど死亡リスクが低下している30).また,長時間のゆっくりとした週3 回8 時間の血液透析で心血管合併症による死亡の減少がみられるのは,主に血圧の良好なコントロールに関連している3,4).

入院率の低下に関しては,週あたりの透析時間の増加効果は明確ではない.The London Daily/Nocturnal Haemodialysis study 32)は非無作為前向き研究であるが,入院率と入院期間と緊急来院頻度には頻回短時間血液透析,頻回夜間睡眠中血液透析と標準血液透析では差が認められていない.

ヨーロッパと米国の限られた施設での後ろ向き観察データ研究では,415 名の頻回短時間血液透析のデータを収集し5 年生存率は68%,10 年生存率は42%が報告されている.これを患者状態をマッチさせた米国透析データ(United States Renal Data System: USRDS)と比較すると,頻回短時間血液透析では標準血液透析より50%生存率は2.5〜10.9 年長く,さらに在宅頻回短時間血液透析では9〜15 年長く北米の死体腎移植症例と同等であることが示されている33).また,カナダでのDaily/Nocturnal Haemodialysis レジストリーデータでは247 名の頻回夜間睡眠中血液透析が登録され,その1 年生存率は95.2%,5 年生存率は80.1%と報告されている34).

しかし,これまでのデータは後ろ向きや観察研究によるものであり,透析時間・回数の効果を明確に示すためには無作為比較対照試験が必須となる.

最近の無作為比較対照試験:北米においてFrequent Hemodialysis Network(FHN)-trial が行われ,その結果が公表された2,14,27,35).これは大きく2 つの研究に分けられている.ともに12 か月後の一次アウトカムは死亡またはMRI によって測定したLVMI 変

化とSF-36 を用いたPhysical-health composite (PHC)score の変化とし,主要な二次アウトカムは透析前血清アルブミン・血清リン値,赤血球造血刺激因子製剤(ESA)使用量,平均収縮期血圧,バスキュラーアクセス不全とされた. Daily trial,in center:頻回短時間血液透析の効果を施設透析で標準血液透析と比較したもので,症例数が多く,かつ施設で行ったため明確な結果を得ることができた13).一次アウトカムのLVMI とPHC score は頻回短時間透析群で有意に改善していた.また二次アウトカムでも血清リン値と収縮期血圧において,有意の低下を得ることができた. Nocturnal trial,in home:頻回夜間睡眠中血液透析の効果を比較したもので,当初標準血液透析は施設で行うこととしていたが,症例選択の過程でともに在宅血液透析での比較となった.在宅血液透析同士での比較のため,標準血液透析群に透析時間が比較的長い症例が含まれたり,逆に頻回夜間睡眠中血液透析群に回数が比較的少ない症例が含まれてしまっている.結果として一次アウトカムには差がなく,二次アウトカムの血清リン値と収縮期血圧しか差を示すことができなかった.これには症例数が少ないことも影響した可能性が考えられる35).

この研究より得られた知見は,頻回血液透析では,週3 回の標準血液透析に比較して心機能とQOL は改善する.しかし,在宅血液透析の条件下では回数と透析時間の異なるスケジュールの比較では差が出ず,在宅血液透析の有効性のみを示す結果となった.オーストラリア・ニュージーランド登録データ(the Australia and New Zealand Dialysis and Transplant Registry:ANZDATA) 36)においても,施設血液透析に比べて在宅血液透析の有効性は示されているが,在宅での標準血液透析と頻回や長時間血液透析とでは死亡率に有意差が認められなかった.

補足*患者・その家族に利点・欠点を説明し,同意を得る

ことが必要である.血液透析時間・回数の増加についての利点についてはすでに述べた.欠点を以下にあげる.

.社会生活の制限

血液透析療法は患者の自由な時間を束縛するという欠点を有している.そのため患者・家族に透析時間・回数の増加を行うことの利点を十分説明し理解させる
p.36
必要がある.ただし頻回血液透析では在宅血液透析を選択することにより,社会生活の制限は減少する.

.長時間血液透析の欠点:一透析あたりの

過大な溶質除去

現在本邦で市販されている透析液で長時間血液透析を行うと,カリウム,リン,カルシウムなどが過剰に除去され,低カリウム血症や,低リン,低カルシウム血症とそれに伴う骨量減少などの合併症の発生が危惧される.そのような場合には血流量,透析液流量を調節するとともに,適切な透析液組成を選択する.とくに頻回夜間睡眠中血液透析では透析液カルシウム濃度とリン濃度を適切に調整することが必要となる27,28).また,微量元素などの喪失にも留意する.さらに,蛋白喪失量も考慮してダイアライザを選択する.

このように市販されている透析液はあくまで週3 回の標準血液透析を前提として組成が決定されており,これを異なった透析条件で用いる場合には安全性を厳格に担保しなければならない.

.頻回血液透析での欠点

) バスキュラーアクセス頻回穿刺による血管荒廃,穿刺痛の増加

無作為比較対照試験であるFHN-trial では頻回血液透析でアクセス不全が多く発生していた14,35,37).しかし,逆に頻回のバスキュラーアクセス観察によって,異常の早期発見が可能となる利点が考えられる.また,自己穿刺技術としてボタンホール法や補助器具が開発されているので,これらを用いた自己穿刺により在宅血液透析が可能となるほか,疼痛の緩和も期待される.

) 透析材料の使用量の増加とそれに伴う医療廃棄物の増加

現在の機器では標準血液透析と同じダイアライザ,血液回路,透析液供給装置などを用いているため,材料使用量の増加は避けることができない.今後,専用装置の開発が必要である.

*透析時間・回数の増加をする場合には,在宅血液透

析が有用である.現行の保険診療システムの下では,血液透析時間・回数を増加させる場合には,在宅血液透析が望ましい.これにより社会生活の制限,医療費増大の問題はある程度解決できる.しかし,在宅血液透析を受容する患

者数は未だ限定されている.

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p.38
第章小児維持血液透析処方ガイドライン

維持血液透析処方ガイドライン作成に際しての小児の実情と特殊性

小児は成人と比べて,1)末期腎不全患者数が少ない, 2)比較的早期に(最近は先行的に)腎移植を実施,3)乳幼児や学童は腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)を選択する(選択せざるを得ない)場合が多いことなどから,維持血液透析(hemodialysis:HD)患者数は圧倒的に少ない.そのため,成人のHEMO study のような大規模研究や無作為比較対照試験(randomized controlled trial:RCT)の実施は困難で,エビデンスに基づいた小児維持HD 患者の透析処方に関するガイドライン作成は極めて難しいのが実情である.

また小児は成人と比べて,体重あたりの蛋白摂取量,水分摂取量が多いため,通常の週3 回,1 回4 時間のHD では,血中尿素窒素,血中リン,除水量のコントロールは困難である.一方,小児の治療目標は,健常児と遜色ない身体発育,精神運動発達,社会性の獲得であり,極端な食事制限,長時間の通院加療,苦痛を伴う処置(穿刺など)はできる限り避ける必要がある.そのため,小児維持HD では,身体発育と栄養摂取のモニタリングは必須,バスキュラーアクセス(内シャ

ントか長期留置型カテーテル)の選択が難しい,ドライウエイトの設定(体重増加が成長によるものかb水かどうかの判断)が難しいなど,小児に特有な事項がある.

本章の作成に際しては,KDOQI(Kidney Disease outcomes Quality Initiative)ガイドライン2006 1), EPDWG(the European Pediatric Dialysis Working Group)からのガイドライン2005 2),最近の教科書3〜5),そして最近の原著論文をできるだけ参考にしたうえで,わが国の実情に即した診断・治療指針を提示できるように心がけた.基本として小児の余命を考え,現行で合併症の生じにくく,予後が良好である最良のHD 療法を行うことを原則とし,本ガイドラインでは日本全国どこでも入手可能な標準的血液透析機器で透析可能な体重20 kg 以上の患児を対象とした.しかし,小児ではエビデンスが少ないためステートメントの多くはオピニオンとなっている.そのため,成人を対象として記述された本ガイドラインの他章についてもよく理解したうえで本章の内容を適用していただきたい.

I.小児の血液透析量とその効果

ステートメント小児の透析量は成人で推奨される透析量以上を目標とする.

解説

.小分子物質と透析時間

前述の理由で,小児について長期にわたる大規模研究はなく,透析量についても成人の報告を参考にした専門家のオピニオンが主となっている.小児では体重あたりの必要蛋白摂取量が成人に比べ多く,それに対応した溶質除去が必要である.また,小児ではできる限り合併症を軽減したうえでの長期生存が期待されている.それゆえ,週3 回4 時間以上のHD を施行することが,経験的に必要と考えられている.KDOQI 1)や

EPDWG 2)では小児に必要な血液透析量は成人で推奨される透析量以上を目標とし,小分子を代表する尿素によるspKt/V 1.2〜1.4 以上を推奨している.Gorman ら6)は12〜18 歳の613 人を検討し,spKt/V 1.2〜

1.4 はspKt/V 1.2 未満に比べ入院の危険率を改善さ

せたが,spKt/V 1.4 以上にしても入院危険率のさらなる改善は認めなかったと報告した.日本透析医学会の成人の統計調査結果の解析では透析量は大きいほど死亡リスクの低下傾向を認め,本邦の成人患者では欧米の患者に比べ体格が小さいことなどを考慮して目標
p.39
透析量spKt/V 1.4 が望ましいとしている(第1 章参照).この透析量が小児にとって適切か否かはまだ不明であるが,小児の余命を考え,現行で合併症の生じにくく,予後が良好である最良のHD 療法を行うことを原則とする本ガイドラインではspKt/V 1.4 を最小の目標として成長や栄養および社会的活動等を考慮し症例ごとに透析量を決めることを推奨する.小児では尿毒症は身体や精神運動発達にも影響を与えるので,入院日数,成長程度および幼稚園や学校への出席状況なども定期的に検討し評価することが重要である.

成長には適切な透析とともに十分な栄養が欠かせない.安定した状態では透析量は蛋白異化率(protein catabolic rate:PCR)とともに評価する.12 例と少数例での検討であるが年齢必要蛋白摂取量の156%を与え,週15 時間で平均spKt/V 2.0 の透析を行い,年+ 0.31SDS の身長増加が得られたとの報告がある7).また,週3 回8 時間病院における夜間透析を行いspKt/ V を1.74 から2.15 に増量した透析を施行したところ,食事・水分制限がなくなり,患者は元気になり(wellbeing),左心室肥大が改善し,さらに学校や仕事の欠席日数が81%減少したとの報告がある8).透析不足や水分過多状態が疑われた場合,週3 回以上の透析を施行し,1 回あたりの透析時間延長を考慮する. EPDWG 2)では適正透析の条件として,1心機能正常で降圧剤なしに血圧をコントロールできること,2尿素ばかりではなく中分子の尿毒症物質を適正に除去すること,3透析回数や透析時間は適正体重(ドライウエイト:DW)になる除水量にも配慮する(過剰な除水量は透析中の低血圧や筋肉のつりをひき起こすため,除水量は時間あたりDW の1.5±0.5%を超えず, 1 回の透析での除水量はDW の5%を超えない),4定期的に食事中蛋白摂取量と熱量を評価することなどをあげ,溶質除去のみならず適正体液管理の重要性を指摘している.Fischbach ら9)は週6 回3 時間1 回spKt/V 1.4 以上の血液濾過透析を平均20.8 か月行い,年間身長の伸びが3.8±1.1 cm から14.3±3.8 cm へ増加し成長の遅れが取り戻せたと報告した.さらに小児でも簡便な在宅HD システムによる頻回透析による良好な効果が報告されている10).近年,尿毒素の産生は代謝と密接に関連することから,尿毒素の除去程度を表す透析量は,Kt/V のごとく体液量で標準化するのではなく,代謝と関連する体表面積で標準

化することが提案されている11).一般に小児の代謝率は成人より高いことから,Kt/V で透析量を考えた場合,小児では成人以上に大きな透析量が必要と考えられる.特に10 歳未満の小児において,望ましいと考えられる体表面積で標準化した透析量を達成するためには,1 回6〜8 時間の透析や週4 回以上の透析が必要とする意見もある12).

今後小児科領域でも,頻回,またはより長時間の透析による透析量を増加させるHD 13)の試みはなされると予想される.その際,透析治療のための時間的制約が子どもの社会性や精神面での発達や家族関係に与える影響も十分考慮して行わなければならない.それらを配慮してHoppe ら8)やFischbach ら9)は病院において夜間および深夜寝ている時間帯で治療を行っていた.まだ少数例での報告であり,精神身体発達の両側面を含めた今後の多数例での研究・検討が必要である.

.b2-ミクログロブリン(b2-M)

透析に関連する特別な症状や合併症を生じさせることなく,生体内環境を可能な限り腎機能が正常な場合に近づけ,かつ死亡率を可能な限り低下させるためには十分な透析量が必要である.小分子物質である尿素を指標とするKt/V などは必要条件であっても十分条件ではない.成人領域では適正透析量の評価として低分子蛋白であるb2-M の血中濃度を指標とした透析量の評価が提唱されている(第2 章参照).小児の血液透析量の評価にあたっても尿素クリアランスだけではなく中分子量物質や低分子蛋白のクリアランスも対象とすべきであろう.しかし,小児血液透析患者を対象にした血清b2-M 値と生命予後や合併症との関連を示したエビデンスは不足している.健常児の血清b2-M値の年齢別基準値についても,生後5,6 日で成人の2倍,1 歳で成人の1.5 倍程度となり,8 歳頃に成人値に近づくことは知られている14)が,小児の成長に伴うb2- M 産生量,分布容量,クリアランスの変化に関しても不明な点が多い.そのため現時点では適正透析量の指標としての具体的目標値を設定することは困難である.
p.40
II.適正体液管理

ステートメントquality of life(QOL)改善,心血管予後ならびに長期生命予後改善には適正な体液管理が重要である.

解説小児末期腎不全患者の8 割が導入時すでに左心室肥大を呈していたとの報告15)がある.透析患者のQOL改善,心血管予後ならびに長期生命予後改善には適正な体液管理が重要である.しかし体重あたりの体液量ならびにエネルギー必要量が多い小児透析患者にあっては,透析間の体重あたりの体重増加が成人患者より多くなるため,適正体重の評価ならびに調整が難しい.小児HD 患者の診療にあたっては成人以上に慎重な対処が必要となる.

.体液量評価

DW を評価する基準としては透析前後の血圧,心胸比,エコーでの下大静脈径,バイオインピーダンスによる体組成測定,透析前ANP などの各種ホルモン測定などが用いられる.小児の血圧や心胸比,体水分量は年齢によって異なるため年齢や体格を考慮して評価する必要がある.小児の体水分量は年齢とともに大きく変化し,出生時は体重のおよそ75%,1 歳時に60%,思春期に男児で60%,女児で50%と成人とほぼ同等となる16).小児の高血圧は年齢,身長,体重を補正した血圧の95 パーセンタイル以上の血圧と定義され,診断にあたっては日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2009 などの基準値を参照しなくてはならな

い17).透析後半や終了後の血圧はDW 評価にあたって参考になるが,小児では不快な症状を訴えなかったりすることや,DW が適正であっても時間除水量過多などのために血圧低下をきたすこともあり,血圧値のみではDW 評価が困難なこともある.

.体液量調整

体重あたりのエネルギー,水分必要量が多い小児では,透析間の体重増加が成人に比し多くならざるをえない.安全に適正な体液量・体重を維持するためには,除水速度の調整,透析液Na 濃度の調整,透析中の血液量変化をクリットライン®等で評価すること,透析時間延長や透析回数の増加などの工夫を行う18〜20).成長期にある小児では週3 回,1 回4 時間の透析療法では除水が困難となることもあるので,必要に応じて体液調整のために週3 回4 時間にとらわれないスケジュール設定が求められる.ただし,小児の健全な心身の発達のためには学校生活の果たす役割は大きいので,透析施設は学校生活や社会的活動に支障がないよう小児および家族,学校関係者などと相談し透析スケジュールを夜間透析も含めて検討するように配慮する.

III.適切な透析量・治療効果を得るための評価

ステートメント.透析量評価は成長と栄養を勘案し,適宜行う. .透析量は蛋白異化率(protein catabolic rate:PCR)とともに評価する. .入院頻度,成長と栄養,幼稚園や学校への出席状況など社会的活動を定期的に検討する. .ドライウエイトを最低月1 回は評価する.
p.41
解説小児は成長する.尿毒症に伴う栄養障害は成長障害として出現することもあるので,体重を含め成長の変化を細かく観察し対処する.成人では低栄養が予後不良因子として知られている.小児透析患者においても低身長や小さい体型指数(body mass index:BMI)などは死亡のリスクが高いことが知られている21).適正な透析量とともに十分な栄養摂取の評価は成長ばかりではなく生命予後の面からも重要である.透析後体重あたりの蛋白異化率を示す標準化蛋白異化率(normalized protein catabolic rate:nPCR)は安定した状態では蛋白摂取量とほぼ等しいとされる21).nPCR は透析量の増加と必ずしも一致しないとの報告22)や栄養障害の指標として血清アルブミン値より鋭敏に反映し,透析量が変化なくとも摂取蛋白量が異なる23)との報告もありnPCR を透析量とともに評価することが

勧められている2).小児HD 患者においてnPCR 1 g/ kg/日以上では体重とBMI の上昇が認められ,nPCR 1 g/kg/日未満では体重とBMI の低下を認めていた21,24).

尿毒症は身体や精神運動発達にも影響を与える.透析導入前に認められた成長障害の改善は血液透析のみでは難しいとされる25).透析量ばかりでなく成長程度や入院頻度や幼稚園や学校への出席状況なども定期的に検討する.成長の程度や社会的活動の低下を認めれば,その原因を検索する.成長程度は身長と体重を定期的に測定し,日本人小児の成長曲線にプロットして標準身長に対する偏差(standard deviation score: SDS)と年間成長率の経時的変化をみる.10 歳以降では身長や体重ばかりではなく二次性徴の発達についても注意を払う.

IV.付記

ステートメント生体適合性のよいハイパフォーマンス膜透析器を選択する.

解説小児において透析膜について長期にわたっての検討はない.しかし,HEMO study の二次解析において,研究前に平均3.7 年透析を受けていた患者群でハイフラックス膜を選択された患者はローフラックス膜を選択された群に比べ32%死亡率が低かったと報告されている26).最近中分子領域の尿毒素物質の悪影響も重要視されている27).合併症なく長期生存を目指す小児HD 患者には,より中分子領域の尿毒症物質除去可能な生体適合性のよいハイパフォーマンス膜透析器を清浄化された透析液下に使用する3).濾過型血液浄化療法28)は小児において経験が少ない.通常は維持HD 期間が長くなると成長障害は進行性に悪化することもあるが29),頻回血液透析濾過(hemodiafiltration:HDF)を施行したところ,成長ホルモンへの反応性が改善しcatch up growth が得られたとの報告9)がある.この結果は,HDF の中分子領域の尿毒素物質除去能を考慮すると小児に希望をもたらす治療方法であり,今後多数例での検討が必要と思われる.文献

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p.43
補章透析処方のための血液・透析液サンプリング方法

I.透析量の評価法

透析量や溶質除去効率を表す指標とそれを算出するためのサンプリング方法について言及する.

A.各種指標.Kt/Vurea

・1 回の透析における尿素除去の程度(透析量)を

表す指標である.今までに以下に示す諸式が提案されてきたが,絶対的なものはない.個々の患者に対して,同じ式を継続して使用することが重要である. ) Gotch の式(Kt/Vurea) 1)

除水や尿素の産生の影響を無視できると仮定した1-compartment model を適用

Kt/V/ln(BUNpre/BUNpost) アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(1)

ここで,BUNpre,BUNpostは治療前後のBUN 値) Shinzato の式2)

除水の影響を無視できると仮定した1-compartment model を適用推算法:例)http://optimal-dialysis.jp/download. html ) Daugirdas の式

・single-pool Kt/Vurea(spKt/V) 3)

除水や尿素の産生の影響を考慮した1-compartment model を適用

spKt/V/,ln(R,0.008t)+(4,3.5R)- bV

BW post

アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(2)

ここで,R はBUN 濃度比(=BUNpost/BUNpre), tは透析時間[hr],DV は1 回のHD における除水量[liter],BWpost:透析後患者体重[kg]である.・equilibrated Kt/Vurea(eKt/V) 4,5)

regional blood flow model を適用eKt/V/spKt/V,0.6 spKt/V

t +0.03アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(3)

.除去率(RR)

・定義:溶質の除去効率を表す指標で,治療前後の

血中溶質濃度(Cpre,Cpost)から以下のように算出する.

RR/1,Cpost

Cpre アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(4)通常,この値に100 をかけて%表示することが多い.・大分子溶質のRR を算出する場合,除水による血

液濃縮の影響を補正する必要がある6). RR/1,VPpostCpost

VPpreCpre /1,VBpost(1,Hpost)Cpost

VBpre(1,Hpre)Cpre

/1,Hpre(1,Hpost)Cpost

Hpost(1,Hpre)Cpre アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(5)ここで,Hpre,Hpostは治療前後のヘマトクリット値.除去量(M)

排液透析液を全量もしくは一部貯液して,それに含まれる溶質量からM を推算する.溶質除去に関する絶対的な指標といえるが,膜にトラップされた分は含まれない.M は基本的に透析前値Cpreに依存し,同じ条件の透析でも,Cpreが高いほどM は高値を示す. .クリアスペース(CS),クリアスペース率(CSR)

・定義:標準化した除去量を意味し,次式で定義さ

れる.

CS/M/Cpreアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(6)

Cpreの影響を排除しており,容積(スペース)の単位を持つ.溶質の患者分布スペース(V)に依存し,CS は一回の治療で除去された分の分布スペースに相当する.患者間の比較の場合はCS/Vで表されるクリアスペース率(CSR)が利用される.

B.サンプリング法.透析前後値のサンプリング

・透析前値のサンプリングは希釈等の影響を回避す

るため,穿刺時回路接続前にサンプリングする.・透析後値のサンプリングはrebound 等の影響を

極力排除するため,slow flow 法7)にてサンプリングする.すなわち透析終了後直ちに透析液の流れを止め(実質的な透析の終了),次いで血流量を50〜100 mL/min まで低下させ,1〜2 分間待ってからA 側ラインのなるべく患者に近いポートから採血する.
p.44
.排液透析液のサンプリング

・以下の測定法を参考に,なるべく正確な値が得ら

れるよう心がける. ) 全量貯液法) 1 時間ごと全量貯液法) 部分貯液法(シリンジ抽出法,除水ライン貯液法)

II.血液浄化器の性能評価法

血液透析器,血液透析濾過器などの血液浄化器の性能指標とそれを算出するためのサンプリング方法について言及する.その内容は,「血液浄化器の性能評価法2012」8)に準拠するものとする.

A.各種性能指標.クリアランス(CL)

血液浄化器の溶質除去能を表す指標で,以下のごとく定義される.

CL/QBiCBi,QBoCBo

CBiアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(7)

ここで,Q:流量,C:溶質濃度で,添字のB:血液, i:入口,o:出口である.

尿素,クレアチニンといった小分子溶質では,(7)式中のQBiに全血液流量を,b2-ミクログロブリンのような中分子溶質では血漿流量を,溶質濃度CBi,CBoについては臨床検査から得られる血漿濃度をそれぞれ代入するものとする.a1-ミクログロブリン,アルブミンなどの大分子溶質については,経時変化が大きいためCL による評価は推奨されない. .限外濾過率(UFR)

血液浄化器の透水性能を表す指標で,以下のように定義される.

UFR/ VF TF・TMP アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(8)ここで,TF:濾過時間[hr],VF:時間TFに貯めた濾液量[mL],TMP:膜間圧力差[mmHg]で通常次式から算出される.

TMP/(PB,PD)av,pP/PBi+PBo

2 ,PDi+PDo

2 ,pP

アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート(9)ここで,P:圧力[mmHg],pP:コロイド浸透圧

B.評価法.クリアランス(CL)

・流量条件等は日本透析医学会「血液浄化器の性能

評価法2012」8)に準ずる.・評価は治療開始後60 min 後とする.治療開始

240 min 後についても,60 min 値に比べ20%以上変化することが予想される場合には,同様に評価することが推奨される.・サンプリングはCDo→CBo→CBi順とし,その行為に

よって流れに影響を及ぼさぬよう十分配慮する.・血流量(QB),透析液流量(QD)については,あら

かじめ検量しておく必要がある.また治療中のQBについては実血流量による評価が推奨される. .限外濾過率(UFR)

・流量条件等は日本透析医学会「血液浄化器の性能

評価法2012」8)に準ずる.

I型,II型血液透析器

UFR[mL/(hr mmHg)] ) 慣用的な表記法

*1)と性能*2)との大まかな関係

high flux super high flux IV型,V型血液透析器

III型血液透析器

super high flux

*3)血液透析濾過器

表high flux,low flux 等の慣用的な表記法と各種分類との関連

super high flux

*3)血液濾過器) 診療報酬上の機能区分との関係

*1)super high flux はわが国固有のもので諸外国では存在しない. *2)膜面積1.5 m 2における性能(血液系) *3)諸外国ではhigh flux が使用される. super high flux

*3)血液濾過器<15

low flux

<15 low flux CL(b2-MG)[mL/min]

50≦ 50≦ super high flux ) JSDT 機能分類2013 との関係

low flux〜super high flux I型血液透析器super high flux II型血液透析器

super high flux

*3)血液透析濾過器

15≦ 15≦ high flux
p.45
・評価は治療終了後,ECUM モードにより測定する.

III.血液浄化器の種類と名称

A.日本透析医学会(JSDT)の機能分類

JSDT では,個々の患者に適した治療法ならびに血液浄化器が選択されることを目的に血液浄化器の機能分類を実施し9〜11),2012 年の学術総会コンセンサスカンファレンスを経てJSDT 機能分類2013 を新たに策定した12). .血液透析器

以下のごとく,I型,II型,S 型の3 種に分類された. I型:(尿素クリアランス)≧125 mL/min

(b2-ミクログロブリンクリアランス) <70 mL/min II型:(尿素クリアランス)≧185 mL/min

(b2-ミクログロブリンクリアランス) ≧70 mL/min S 型:溶質クリアランスだけでは分類しにくい,希

少な特徴を有するもの.具体的には生体適合性に優れる,吸着によって溶質除去できる,抗炎症性(抗酸化性)を有する,などを指す. .血液透析濾過器

分類としては単一であるが,後希釈用,前希釈用のどちらかの性能基準を満たさなければならない.基準を満たしたものは膜を介して濾過・補充を断続的に行う「間歇補充用」にも使用可能である. .血液濾過器

単一分類であり,所定の性能基準を満たさなければならない.

B.診療報酬上の機能区分

2006 年の薬価改定時以降,ダイアライザの実質的な機能区分はb2-ミクログロブリンクリアランス値をもって以下の5 つに分けられており,JSDT 機能分類との間に齟齬が生じている.

I型10 mL/min 未満II型10 mL/min 以上30 mL/min 未満III型30 mL/min 以上50 mL/min 未満IV型50 mL/min 以上70 mL/min 未満V型70 mL/min 以上

C.high flux,low flux 等の慣用的な表記法と各種分

類との関連学術論文や学会等では,しばしば慣用的にlow flux, high flux 血液透析器などと表記される.国内外でそ

の名称の意味するところも若干異なる.またflux そのものも透水性のみに限定した場合と溶質除去を含む場合とがある.

この慣用的な表記法と各種分類との関連を表にまとめた.表中1)の慣用的な表記法と性能との関係は大まかな性能区分で示したものであり,厳密に分かれるものではない.また,super high flux はわが国固有のもので諸外国では存在しない.

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