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一般社団法人日本透析医学会 血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012 Management of Diabetic Patients on Hemodialysis 2012
一般社団法人日本透析医学会 血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012 Management of Diabetic Patients on Hemodialysis 2012
近年,糖尿病を合併する透析患者が著しく増加している.わが国において新規に維持透析に導入となる患者での糖尿病性腎症の比率が1998 年度に第1 位となり,全透析患者数に占める糖尿病性腎症の割合が2011 年末には36.6%となっている.また,糸球体腎炎や腎硬化症などによる腎不全でも糖尿病を合併している透析患者がみられる.さらに維持透析患者のなかで新たに糖尿病を発症する患者も認める. このように,透析医療の現場では糖尿病患者が増加し,しかも維持血液透析を週3 回行うとすれば,1 人の患者が1 か月に12〜14 回は透析施設へ受診して数時間,透析医療従事者により管理される.血糖をはじめとした糖尿病管理は,患者の日常生活と密接に関連する面があるが,透析医療従事者は日常で患者と頻繁にしかも長時間接している.したがって透析医療従事者が糖尿病の透析患者を前にする時,単に透析治療だけを行い糖尿病管理には無関心というわけにはいかない.しかし糖尿病専門医が透析医療の現場に常駐している場合は少ない.また糖尿病の透析患者では,腎不全・透析療法に由来した独特の糖代謝特性を有する.このような状況下において,透析患者の糖尿病治療は糖尿病専門医とも連携の上で透析医療従事者も積極的に担っていくべきであろう.したがって透析医療従事者は糖尿病管理の知識と技術を持つ必要がある. こうした背景のもとに,一般社団法人日本透析医学会ではこのたびこの「血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012」を発表するにいたった.ここには,透析患者の糖尿病治療に関する現時点での見解が集約されている.透析医療の現場に身をおく医師およびその他の医療従事者は,本ガイドとともに日本糖尿病学会より出版されている「糖尿病治療ガイド」にも目を通して糖尿病透析患者の管理にあたっていただければ幸いである. もちろん他のガイドと同様に,本ガイドは個々の医師の診療を規定したり制限したりするためのものではない.個々の診療においては,本ガイドをふまえた上で,患者や社会の状況に鑑みた担当医師の裁量が大いに生かされるべきである. 一般社団法人日本透析医学会 血液透析患者の糖尿病治療ガイド作成ワーキンググループ 委員長中尾俊之 序文
利益相反情報について 一般社団法人日本透析医学会は,本学会が作成する臨床ガイドラインおよびガイドについては,作成ワーキンググループのメンバーが中立性と公明性をもって作成業務を遂行するために,実際または予想されうる問題となる利益相反状態を避けることに最大限の努力をはらっております*). すべてのワーキンググループのメンバーは可能性としてまたは実際に生じる利益相反情報の開示を行う書類(署名済み)を提出し,この書類は毎年更新され,情報は状況に応じて適宜変更されます.これらの全ての情報は,以下のように「利益相反情報についての開示」に記載し,これを裏付ける全ての情報は日本透析医学会事務局が保管しております. 文献// *) 日本透析医学会:日本透析医学会における医学研究の利益相反(COI)に関する指針.2011:http://www. / / jsdt.or.jp/jsdt/1236.html 利益相反情報についての開示 TA委員:協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),中外製薬(株)(医療用 医薬品の製造・販売および輸出入の会社),バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造および販売の会社),アステラス製薬(株)(医薬品の製造・販売および輸出入の会社),富田製薬(株)(医薬品,医薬部外品,化粧品,工業用薬品,食品添加物その他関連製品の製造および販売の会社),バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),塩野義製薬(株) (医薬品,診断薬などの製造・販売の会社),日本ベーリンガーインゲルハイム(株)(医薬品の研究開発,輸入,製造,販売の会社)から研究補助金および講演等の謝礼金を受領している. HH委員:中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),協和発酵キリン(株) (医療用医薬品の製造および販売の会社),日本たばこ産業(株)(タバコ,医薬,食品,飲料の製造および販売の会社)から講演等の謝礼金を受領している. TN委員:(株)創新社(出版印刷物の企画・デザイン・編集の会社),(株)明治(菓子,牛乳・乳 製品,食品,一般医薬品の製造販売等の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社)から研究補助金および顧問の報酬を受領している. MA委員:協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),ノバルティスファーマ (株)(医薬品の開発,輸入,製造,販売の会社),第一三共(株)(医療用医薬品の研究開発・製造および販売の会社)から研究補助金および講演等の謝礼金を受領している. MI委員:協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),中外製薬(株)(医療用 医薬品の製造・販売および輸出入の会社),バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造および販売の会社),武田薬品工業(株)(医薬品,医薬部外品等の製造・販売・輸出入の会社),MSD(株)(医療用医薬品,医療機器の開発・輸入・製造および販売の会社),小野薬品工業(株)(医療用医薬品を主体とする各種医薬品の研究,開発,製造,仕入および販売の会社),旭化成ファーマ(株)(医療用医薬品,診断薬用酵素,診断薬,流動食の製造・販売の会社),帝人ファーマ(株)(医薬品・医療機器の研究開発,製造,販売の会社),サノフィ(株)(医薬品および医療機器の製造販売・輸入等の会社),第一三共(株)(医療用医薬品の研究開発・製造および販売の会社)から研究補助金および講演等の謝礼金を受領している. KS委員:旭化成ファーマ(株)(医療用医薬品,診断薬用酵素,診断薬,流動食の製造・販売の 会社)から旅費を受領している. (ここにあげられていない委員には利益相反の事項は発生していない.)
ガイド作成に係わった役員 秋澤忠男日本透析医学会理事長平方秀樹日本透析医学会学術委員長友雅司日本透析医学会ガイドライン作成小委員会委員長 血液透析患者の糖尿病治療ガイド作成ワーキンググループ委員 中尾俊之(東京医科大学):委員長阿部雅紀(日本大学)稲葉雅章(大阪市立大学)海津嘉蔵(社会保険横浜中央病院):前委員長島健二(川島病院)馬場園哲也(東京女子医科大学) (敬称略) 委員会・コンセンサスカンファレンス開催記録 第1 回委員会2008 年10 月7 日第2 回委員会2009 年3 月15 日第3 回委員会2009 年6 月7 日第4 回委員会2010 年11 月4 日第5 回委員会2011 年3 月3 日第6 回委員会2011 年7 月25 日第7 回委員会2012 年5 月18 日第8 回委員会2012 年8 月2 日第9 回委員会2012 年9 月21 日第54 回日本透析医学会学術集会コンセンサスカンファレンス2009 年6 月7 日横浜第55 回日本透析医学会学術集会コンセンサスカンファレンス2010 年6 月18 日神戸第56 回日本透析医学会学術集会コンセンサスカンファレンス2011 年6 月17 日横浜
ABI:ankle-brachial systolic pressure index足関節-上腕血圧比ACS:aortic calcification score動脈石灰化指数ACTH:adrenocorticotropic hormone副腎皮質刺激ホルモンAGEs:advanced glycation endproduct終末糖化産物AUC:area under the curve (反応)曲線下面積a-GI:a-glucosidase inhibitorアルファ-グルコシダーゼ阻害薬BAP:bone alkaline phosphatase骨型アルカリホスファターゼBEE:basal energy expenditure基礎代謝量CABG:coronary artery bypass graft surgery冠動脈バイパス術CAD:coronary artery disease冠動脈疾患CGM:continuous glucose monitoring持続血糖モニターCKD:chronic kidney disease慢性腎臓病DCCT:Diabes Control and Complication Trial DKA:diabetic ketoacidosis糖尿病性ケトアシドーシスDPP-4:dipeptidyl peptidase-IV ECUM:extracorporeal ultrafiltration method ESA:erythropoiesis stimulating agent赤血球造血刺激因子製剤GA:glycated albuminグリコアルブミンGIP:gastric inhibitory polypeptide GLP-1:glucagon-like peptide-1グルカゴン様ペプチド-1 HbA1c:hemoglobin A1cヘモグロビンA1c HDF:hemodiafiltration血液透析濾過HDL:high-density lipoprotein高比重リポ蛋白IMT:intima-media thickness動脈壁内膜・中膜複合体肥厚度JDS:Japan Diabetes Society日本糖尿病学会JSDT:Japanese Society of Dialysis Therapy日本透析医学会KDOQI:Kidney Disease Outcomes Quality Initiative LDL:low-density lipoprotein低比重リポ蛋白MIA:malnutrition-inflammation-atherosclerosis syndrome NGSP:National Glycohemoglobin Standardization Programグリコヘモグロビン国際標準化プログラムNPH:neutral protamine hagedorn OGTT:oral glucose tolerance test経口ブドウ糖負荷試験PAD:peripheral arterial disease末梢動脈疾患PAL:physical activity level身体活動レベルPD:peritoneal dialysis腹膜透析PMMA:polymethylmethacrylateポリメチルメタクリレートPPARg:peroxisome proliferator activated receptor g PS:polysulfone PTCA:percutaneus transluminal coronary angioplasty経皮的冠動脈形成術PTH:parathyroid hormone副甲状腺ホルモンPWV:pulse wave velocity脈波伝導速度QOL:quality of life生活の質 略語一覧
RCT:randomized controlled trial無作為化比較試験REE:resting energy expenditure安静時エネルギー代謝量SMBG:self-monitoring of blood glucose血糖自己測定SU:sulfonylureaスルホニル尿素TBI:toe brachial pressure index TC:total cholesterol総コレステロールTG:tryglycerideトリグリセリドTRACP:tartrate-resistant acid phosphatase酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ
目次 I.血糖管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート319 (1) 血糖コントロールの意義と指標・目標値アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート319 (2) 血糖値管理指標の測定頻度アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート325 (3) 透析液ブドウ糖濃度アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート327 (4) 血液透析施行中の高血糖,低血糖への対処アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート330 (5) 経口血糖降下薬アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート334 (6) インスリン療法アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート340 (7) インスリン以外の注射薬:GLP-1 受容体作動薬アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート344 II.食事エネルギー量アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート345 III.合併症管理アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート348 (1) 糖尿病網膜症アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート348 (2) 起立性低血圧アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート351 (3) 動脈硬化症アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート352 (4) 骨症アパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパートアパート356
I.血糖管理 (1) 血糖コントロールの意義と指標・目標値 ステートメント.透析開始前の随時血糖値(透析前血糖値)およびグリコアルブミン(glycated albumin:GA)値を血 糖コントロール指標として推奨する. .ヘモグロビンA1c(HbA1c)値は貧血や赤血球造血刺激因子製剤の影響により低下し,透析患者の血 糖コントロール状態を正しく反映しないため参考程度に用いる. / .随時血糖値(透析前血糖値;食後約2 時間血糖値)180∼200 mg/dL 未満,GA 値20.0%未満,また, 心血管イベントの既往歴を有し,低血糖傾向のある対象者にはGA 値24.0%未満を血糖コントロールの暫定的目標値として提案する.しかし,確定値の設定には今後の研究成果を待つ必要がある. .低血糖のリスクを回避しつつ,生命予後の向上を目指して随時血糖値(透析前血糖値),GA 値などを 総合的に判断しながら,血糖コントロールをする必要がある. 解説.一般的な糖尿病患者における血糖コントロー ルの目標値血糖コントロールは細小血管症の発症,進展に関与し1〜3),HbA1c(NGSP *)6.9%未満,食後2 時間血糖/値180 mg/dL 未満を維持することにより細小血管症の発症,進展は抑制されると報告されている2).また,血糖のみでなく脂質,血圧管理も厳格に行うことにより心血管イベントの発症抑制,生命予後の改善を認めたという報告4)や,糖尿病発症初期のある期間に厳格な血糖管理を行うことにより10 年後の心血管イベントの発症抑制,生命予後の改善を認めたという報告5,6)がある.すなわち,糖尿病患者において血糖コントロールは細小血管症のみならず,大血管症の発症や生命予後にも関与していると考えられる.最近の成績7,8)を勘案すると,これに加えて低血糖を回避することも重要である. *NGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値をJDS(Japan Diabetes Society)値に換算するには,NGSP 値5.2%以下ではNGSP 値−0.3%,5.3%〜10.2%ではNGSP 値−0.4%, 10.3〜15.2%ではNGSP 値−0.5%となる9). .透析患者における血糖管理の指標 ) HbA1c HbA1c は糖尿病患者において最も一般的に使われる血糖コントロール指標であり,過去1〜3 か月間の平均血糖値を反映する.HbA1c はヘモグロビンA0の安定糖化産物である.赤血球寿命は約120 日であり, HbA1c に対する血糖の寄与率は1 か月前までの血糖が50%,1〜2 か月前が25%,2〜4 か月前が25%である10). 透析患者では,赤血球寿命の短縮(約60 日)に加え,透析療法による失血や出血,および腎性貧血治療のための赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)投与により幼若赤血球の割合が増えるなどの要因により,HbA1c は低値になる傾向がある.このため透析患者のHbA1c 値は,血糖コントロールを過小評価することになる. ) GA GA は血清アルブミンの糖化産物である.アルブミンの半減期は約17 日であり,GA は過去2〜4 週間の血糖コントロール状態を反映する.GA 値に対する血糖の寄与率は,採血直前の17 日間の血糖が50%,その前の17 日間の血糖が25%,さらにその前の血糖が残り25%である10). 透析患者において,GA は赤血球寿命やESA 投与の影響を受けないため,HbA1c に代わる有用な血糖コントロール指標となることが報告されている11〜15).
日本人における糖尿病血液透析患者(n=538),非糖尿病血液透析患者(n=828),腎機能正常の糖尿病患者(n=365)を対象とした報告では,糖尿病透析患者のHbA1c およびGA はともに過去3 か月間の随時血糖平均値と有意な正相関を認め,糖尿病透析患者の随時血糖平均値とGA 値の関係は腎機能正常の糖尿病患者と同様であったが,HbA1c は糖尿病透析患者で約/ 30%の低下を認めた.GA/HbA1c 比は腎機能正常糖尿病患者において2.93 であったが,糖尿病透析患者では3.81 であった(HbA1c はJDS 値).糖尿病透析患者ではHbA1c 値に対して有意に関連する因子として随時血糖値に加えてESA 投与量があげられ,ESA投与量が多いほどHbA1c 値は低値の傾向を認めた.一方,GA 値に対して有意に関連する因子は随時血糖値のみであり,血清アルブミン値やESA 投与量の影響は認められなかった13). 米国においても同様の報告がなされている.腎症を合併していない糖尿病患者(非透析群n=49),糖尿病血液透析患者(透析群n=258)を対象とした報告では,透析群,非透析群ともに,HbA1c とGA との間に有意な正の相関を認めたが,回帰直線の傾きには両群間で有意な差が存在した.HbA1c 値と随時血糖値との相関においても,回帰直線の傾きには両群間で有意な差が認められ,同じ随時血糖レベルにおいて,透析患者は非透析患者に比しHbA1c 値が低くなることが示された.一方,GA 値と随時血糖値との相関については,透析群と非透析群間で回帰直線の傾きに有意差を認めなかった.また,透析群ではHbA1c 値と血中ヘモグロビン濃度の間に有意な正の相関があり,HbA1c 値とESA 投与量の間に有意な負の相関を認めた.一方,GA 値と血清アルブミン値,血中ヘモグロビン濃度,ESA 投与量の間には有意な相関は認めなかった14). ただし,GA は以下のような病態において血糖値以外の影響を受けるため注意を要する. 1ネフローゼ症候群:血中アルブミンの代謝半減期 が短縮するため,GA は低値となる.なお,顕性/蛋白尿を呈する患者において,尿蛋白量3.5 g/日未満であればGA への影響は少なく,GA を血糖コントロール指標として用いることが可能であると報告されているが16),今後の検討が必要である. 2腹膜透析患者:透析液中へのアルブミンの漏出の ため,GA は低値となる.わが国のある報告では, /腹膜透析患者(n=33)のGA/HbA1c 比は2.3± 0.3,血液透析患者(n=46)のそれは3.2±0.5であり,前者が有意に低値であった(HbA1c は JDS 値,HPLC 法による測定) 17).米国では腹膜透析患者においてもGA の方がHbA1c より血糖をより良く反映するとの報告がある18).しかし,腹膜透析患者にGA を測定して血糖管理を行う有用性については今後の検討が必要である. 3甲状腺機能異常症:甲状腺機能亢進症ではアルブ ミン代謝回転が促進し,GA は低値になる.一方,甲状腺機能低下症では高値となる19). 4肝硬変:肝硬変を合併している糖尿病患者におい ては,脾機能亢進による赤血球寿命の短縮がみられるため,HbA1c は低値を示す.肝硬変患者で/はGA/HbA1c 比が4〜5 となる症例もあり,アルブミン産生低下,代謝の遅延によるGA 上昇も関与している可能性がある20). .糖尿病透析患者の血糖コントロール指標と目 標値糖尿病透析患者の大多数は糖尿病性腎症により末期腎不全に至った患者であり,糖尿病罹病期間は長く,細小血管症,大血管症がすでに進展しているのが一般的である.しかし,これらの患者においても,厳格な血糖コントロールは網膜症,神経障害などの細小血管症の進展抑制に対して有意義であるのみでなく,さらに,大血管症や感染症などの合併症の抑制を介して,生命予後に好影響を及ぼすものと考えられる21,22).勿論,この際も,低血糖を回避することが重要であることは論をまたない. 糖尿病透析患者を対象とした血糖コントロールと生命予後に関する過去の観察研究では,血糖コントロール指標としてHbA1c を用いた場合,HbA1c 値が生命予後に関係xありyとする報告23〜29)とxなしyとする報告30〜37)が半ばし,見解は一致していない.ただ, xなしyとする報告の対象者のHbA1c 値は一般に低値である.また,HbA1c 値が生命予後に関係xありyとする報告では,予後不良のリスクとなるHbA1c 値は10% 24),8.0% 26),7.5% 25),7.3% 29),6.3% 28),5.9% 27)以上と,報告によりさまざまである*.これらの報告では,透析導入直前あるいは導入後の比較的短期間のHbA1c の平均値とその後の生命予後との関係を解析したもので,このHbA1c 値は生存中の全期間のコントロール状態を反映していない.また,前述のように透析患者のHbA1c 値は,血糖コントロールを過小評価し,必ずしも正確な血糖コントロールの指標ではないという問題点がある.このため,透析患者において血糖コントロールの生命予後に及ぼす影響を調べるた
めには,血糖値やGA 値などHbA1c 値とは別の指標を用いて再検討される必要がある.また,これまでの報告の大多数は観察研究であり,介入研究は極めて少ない33). *これらの引用文献の中でJDS 値,NGSP 値の記載が 明らかな論文は文献28 のみでJDS 値である.しかし文献25,26,29 はわが国の論文でありJDS 値,文献24,27 は海外の論文でありNGSP 値と考えられる. ) 血糖コントロール指標としての透析前血糖値の目 標値わが国の単一施設において,245 名の糖尿病新規透析導入患者を11 年間追跡し,死亡あるいは打ち切りまでの全観察期間の透析前血糖値(食後平均約2 時間値)の平均値,HbA1c の平均値と生存予後との関係を/解析した報告によると,透析前血糖値180 mg/dL 以上で生命予後は有意に不良になるが,HbA1c 値はそのような閾値が認められていない21).本報告では,生存中の全期間の平均値を採用している点,これまでの成績と異なり,生命予後と血糖コントロールの関係を比較的正しく評価できるものと考えられる.最近,米国において糖尿病透析患者54,757 名を対象に随時血糖値と生命予後の関係を6 年間追跡した観察研究の結果が報告されている22).それによると,平均随時血糖/ /値150〜175 mg/dL 群を基準に血糖値25 mg/dL 刻み/で群わけして評価すると,200 mg/dL 以上群で生命予後が有意に不良となる.ちなみに,本研究において,平均HbA1c 値7.0〜7.9%群を基準に1.0%刻みの群わけで生命予後を解析して,8.0%以上群で生命予後は不良になっているが,6.9%以下群も不良で,ハザード比分布はV 字状となり,HbA1c 値と生命予後の関係は必ずしも直截的でない. 透析診療の現場においては,空腹時血糖値の測定は通常行われず,透析開始時に採血されるのが一般的である.前述の米国の成績22)も空腹時血糖値ではなく,随時血糖値で解析がなされている.それらの点からして,空腹時血糖値の目標値を設定することは実用的ではなく,透析前血糖値あるいは随時血糖値を血糖コントロール指標として暫定的に採用することが適当と判断した.食後血糖値は摂食後の時間,食事内容によっても変動するという問題点があるが,HbA1c 値やGA値のように血糖コントロールに直接関係しない要因に影響されず,また,大血管症の発症にも病因的関与が指摘されるなど,糖尿病コントロール指標としての利点も有する.これらの成績をもとに,血糖コントロールの暫定的 目標値として,随時血糖値(透析前血糖値)180〜200 / mg/dL 未満を推奨することにした. ) 血糖コントロール指標としてのGA 値の目標値 GA は前述のごとく透析患者において有用な血糖コントロール指標であるが,透析患者においてGA 値と心血管イベントあるいは生命予後との関係について検討した報告は極めて少ない.わが国では糖尿病血液透析患者においてGA 値23%以上で心血管イベントの発症リスクが有意に大きい36).また,透析導入時においてGA 値29%以上で生命予後が有意に不良である35),と報告されている.最近,単一施設において, 170 名の糖尿病透析患者を観察開始時の血糖コントロール指標としてGA 値を用い,4 年間追跡して,血糖コントロールの生命予後に及ぼす影響を検討した成績が報告されている.観察開始時,心血管イベントを既往に有しない症例では有する症例に比し,生命予後が良いこと,さらに,既往歴のないGA 値20.0%未満症例群ではそれ以上群(20.0〜24.5%,24.5%より高値)に比し,有意に生命予後が良好である,という成績である38).ただ,この報告では,観察開始時に心血管イベントの既往歴を有する糖尿病透析患者において,生命予後悪化のGA 値の閾値は見出されていない.また,米国においても,糖尿病透析患者でGA 値と生命予後,入院率との間に有意な関連のあることが報告されている.ちなみに,この研究ではHbA1c 値と生命予後,入院率の間の関連は認められていない39). これらの成績から,心血管イベントの既往歴がない症例では,GA 値20.0%未満を暫定的な目標値として提案する.しかし,心血管イベントの既往歴を有する症例において,GA 値20.0%未満にした場合,低血糖発症増加というマイナス効果を凌駕する生命予後改善のプラス効果は期待できず,したがって,これらの対象にはコントロール基準を緩め,GA 値24.0%未満を提案したい.GA 値の場合も血糖値の場合と同様の理由で,目標値の確定には今後の研究成果の集積を待つ必要がある. ) 血糖コントロール指標としてのHbA1c 値の目標 値前述のごとく,透析患者のHbA1c 値は見かけ上低値となり血糖コントロール状態を正確に反映していない.しかし,臨床現場でのHbA1c 使用の歴史は長く,また,糖尿病透析患者を対象としてHbA1c 値を用いた報告も多い.ただ,前述のような理由で,これらの報告から生命予後不良のリスクとなるHbA1c 値を定めるのは困難である.糖尿病血液透析患者195 名を対
/象に,あえて透析前血糖値180 mg/dL に対応するHbA1c 値を求めると6.6%(NGSP 値)となった.しかし,この値はあくまで参考程度に用いられるべきである. 種々の要因で透析患者では低血糖に陥りやすいため,これを回避するため,きめ細かい血糖値の評価と的確な対応が必要である40).低血糖のリスクを回避しつつ,生命予後の向上を目指して,随時血糖値(透析前血糖値),GA 値などを総合的に判断しながら,血糖コントロールを行う必要がある. 糖尿病透析患者における糖尿病治療のガイドは,海外においてもグレードの高いエビデンスに乏しい状況下で作成されている41).本ガイドは,これまでの報告をもとに血糖コントロール指標,および暫定的目標値を提案した.今後さらなる臨床研究の成果をもとに,今回の提案が補強されることが望まれる. 文献1) The Diabetes Control and Complications Trial Re- search Group:The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of longterm complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 329:977-986, 1993 2) Ohkubo Y, Kishikawa H, Araki E, Miyata T, Isami S, Motoyoshi S, Kojima Y, Furuyoshi N, Shichiri M: Intensive insulin therapy prevents the progression of diabetic microvascular complications in Japanese patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus:a randomized prospective 6-year study. Diabetes Res Clin Pract 28:103-117, 1995 3) UK Prospective Diabetes Study(UKPDS)Group: Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes (UKPDS 33). Lancet 352:837-853, 1998 4) Gaede P, Lund-Andersen H, Parving HH, Pedersen O:Effect of a multifactorial intervention on mortality in type 2 diabetes. N Engl J Med 358:580-591, 2008 / 5) DCCT/EPIC Study Research Group:Intensive dia- betes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes. N Engl J Med 353:2643- 2653, 2005 6) Holman RR, Paul SK, Bethel MA, Matthews DR, Neil AW:10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes. N Engl J Med 359:1577-1589, 2008 7) Bonds DE, Miller ME, Bergenstal RM, Buse JB, Byington RP, Cutler JA, Dudl RJ, Ismail-Beigi F, Kimel AR, Hoogwerf B, Horowitz KR, Savage PJ, Seaquist ER, Simmons DL, Sivitz WI, Speril-Hillen JM, Sweeny ME:The association between symptomatic, severe hypoglycemia and mortality in type 2 diabetes:retrospective epidemiological analysis of the ACCORD study. BMJ 340:b4909, 2010 8) McCoy RG, Van Houten HK, Ziegenfuss JY, Shah ND, Wermers RA, Smith SA:Increased mortality of patients with diabetes reporting severe hypoglycemia. Diabetes Care 35:1897-1901, 2012 9) Kashiwagi A, Kasuga M, Araki E, Oka Y, Hanafusa T, Ito H, Tominaga M, Okikawa S, Noda M, Kawamura T, Sanke T, Namba M, Hashiramoto M, Sasahara T, Nishio Y, Kuwa K, Ueki K, Takei I, Umemoto M, Murakami M, Yamakado M, Yatomi Y, Ohashi H, Committee on the Standardization of Diabetes Mellitus-Related Laboratory Testing of Japan Diabetes Society(JDS). International clinical harmonization of glycated hemoglobin in Japan:From Japan Diabetes Society to National Glycohemoglobin Standardization Program values. Diabetol Int 3:8-10, 2012 10) Tahara Y, Shima K:Kinetics of HbA1c, glycated albumin, and fructosamine and analysis of their weight functions against preceding plasma glucose level. Diabetes Care 18:440-447, 1995 11) Chujo K, Shima K, Tada H, Oohashi T, Minakuchi J, Kawashima S:Indicators for blood glucose control in diabetics with end-stage chronic renal disease:GHb vs. glycated albumin(GA). J Med Invest 53:223-228, 2006 12) Nakao T, Matsumoto H, Okada T, Hidaka H, Yoshino M, Shino T, Yamada C, Nagaoka Y:Influence of erythropoietin treatment on hemoglobin A1c levels in patients with chronic renal failure on hemodialysis. Intern Med 37:826-830, 1998 13) Inaba M, Okuno S, Kumeda Y, Yamada S, Imanishi Y, Tabata T, Okamura M, Okada S, Yamakawa T, Ishimura E, Nishizawa Y:Glycated albumin is a better glycemic indicator than glycated hemoglobin values in hemodialysis patients with diabetes:Effect of anemia and erythropoietin injection. J Am Soc Nephrol 18:896-903, 2007 14) Peacock TP, Shihabi ZK, Bleyer AJ, Dolbare EL, Byers JR, Knovich MA, Calles-Escandon J, Russell GB, Freedman BI:Comparison of glycated albumin and hemoglobin A1c levels in diabetic subjects on hemodialysis. Kidney Int 73:1062-1068, 2008 15) Abe M, Matsumoto K:Glycated hemoglobin or glycated albumin for assessment of glycemic control in dialysis patients with diabetes? Nat Clin Pract Nephrol 4:482-483, 2008 16) Okada T, Nakao T, Matsumoto H, Nagaoka Y, Tomaru R, Iwasawa H, Wada T:Influence of proteinuria on glycated albumin values in diabetic patients with chronic kidney disease. Intern Med 50:23-29, 2011
17) 岡田知也,松本博,韓明基,篠朱美,長岡由女, 竹口文博,外丸良,岩沢秀明,和田憲和,権藤麻子,中尾俊之:維持透析患者における血糖コントロール指標に関する検討―グリコヘモグロビンとグリコアルブミンの関係―.透析会誌38:31-39,2005 18) Freedman BI, Shenoy RN, Planer JA, Clay KD, Shibabi ZK, Burkart JM, Cardona CY, Andries L, Peacock TP, Sabio H, Byers JR, Russell GB, Bleyer AJ:Comparison of glycated albumin and hemoglobin A1c concentrations in diabetic subjects on peritoneal and hemodialysis. Perit Dial Int 30:72-79, 2010 19) Koga M, Murai J, Saito H, Matsumoto S, Kasayama S: Effects of thyroid hormone on serum glycated albumin levels:study on non-diabetic subjects. Diabetes Res Clin Pract 84:1563-1567, 2009 20) Koga M, Kasayama S, Kanehara H, Bando Y:CLD (chronic liver disease)-HbA1c as a suitable indicator for estimation of mean plasma glucose in patients with chronic liver diseases. Diabetes Res Clin Pract 81: 258-262, 2008 21) Shima K, Komatsu M, Kawahara K, Minaguchi J, Kawashima S:Stringent glycemic control prolongs survival in diabetic patients with end-stage renal disease on haemodialysis. Nephrology 15:632-638, 2010 22) Ricks J, Molnar MZ, Kovesdy CP, Shal A, Nissenson AR, Williams M, Kalantar-Zadeh K:Glycemic control and cardiovascular mortality in hemodialysis patients with diabetes, A 6-year cohort study. Diabetes 61: 708-715, 2012 23) Medina RA, Pugh JA, Monterrosa A, Cornell J: Minority advantage in diabetic end-stage renal disease survival on hemodialysis:due to different proportions of diabetic type? Am J Kidney Dis 28: 226-234, 1996 24) Wu MS, Yu CC, Yang CW, Wu CH, Haung JY, Hong JJ, Chiang CY F, Huang CC, Leu ML:Poor pre-dialysis glycaemic control is a predictor of mortality in type II diabetic patients on maintenance haemodialysis. Nephrol Dial Transplant 12:2105-2110, 1997 25) Morioka T, Emoto M, Tabata T, Shoji T, Tahara H, Kishimoto H, Ishimura E, Nishizawa Y:Glycemic control is a predictor of survival for diabetic patients on hemodialysis. Diabetes Care 24:909-913, 2001 26) Oomichi T, Emoto M, Tabata T, Morioka T, Tsujimoto Y, Tahara H, Shoji T, Nishizawa Y:Impact of glycemic control on survival of diabetic patients on chronic regular hemodialysis-A 7-year observational study. Diabetes Care 29:1496-1500, 2006 27) Kalantar-Zadeh K, Kopple JD, Regidor DL, Jing J, Shinaberger CS, Aronovitz J, McAllister CJ, Whelland D, Sharma K:A1c and survival in maintenance hemodialysis patients. Diabetes Care 30:1049-1055, 2007 28) Ishimura E, Okuni S, Kono K, Fujino-Kato Y, Maeno Y, Kagitani S, Tsuboniwa N, Nagasue K, Maekawa K, Yamakawa T, Inaba M, Nishizawa Y:Glycemic control and survival of diabetic hemodialysis patients―importance of lower hemoglobin A1c levels. Diabetes Res Clin Pract 83:320-326, 2009 29) Hayashino Y, Fukuhara S, Akiba T, Akizawa T, Asano Y, Saito A, Bragg-Gresham JL, Ramirez SPB, Port FK, Kurokawa K:Diabetes, glycemic control and mortality risk in patients on hemodialysis:The Japan Dialysis Outcomes and Practice Pattern Study. Diabetologia 50:1170-1177, 2007 30) Suzuki Y, Arakawa M, Gejyo F and Collaborate Study Group:The treatment of the uraemic diabetic. Are we doing enough? A view from Japan. Nephrol Dial Transplant 10(Suppl 7):47-55, 1995 31) Schwedler SB, Metzger T, Schizel R, Wanner C: Advanced glycation end products and mortality in hemodialysis patients. Kidney Int 62:301-310, 2002 32) Okada T, Nakao T, Matsumoto H, Hidaka H, Yoshino M, Shino T, Nagaoka Y, Takeguchi H, Iwasawa H, Tomaru R:Predialysis factors related to prognosis in type 2 diabetic patients on chronic dialysis in Japan. Nephrology 7:250-256, 2002 33) McMurray SD, Johnson G, Davis S, McDougall K: Diabetes education and care management significantly improve patient outcomes in the dialysis unit. Am J Kidney Dis 40:566-575, 2002 34) Williams ME, Lacson E, Jr, Teng M, Ofsthun N, Lazarus JM:Hemodialyzed type 1 and type 2 diabetic patients in the U. S.:Characteristics, glycemic control, and survival. Kidney Int 70:1503-1509, 2006 35) Fukuoka K, Nakao K, Morimoto H, Nakao A, Takatori Y, Arimoto K, Taki M, Wada J, Makino H:Glycated albumin levels predict long-term survival in diabetic patients undergoing haemodialysis. Nephrology 13: 278-283, 2008 36) Okada T, Nakao T, Matsumoto H, Shino T, Nagaoka Y, Tomaru R, Wada T:Association between markers of glycemic control, cardiovascular complications and survival in type 2 diabetic patients with end-stage renal disease. Intern Med 46:807-814, 2007 37) Shurraw S, Majundar SR, Thadhani R, Wiebe N, Tonelli M:Glycemic control and the risk of death in 1484 patients receiving maintenance hemodialysis. Am J Kidney Dis 55:875-884, 2010 38) Inaba M, Maekawa K, Okuno S, Imanishi Y, Hayashino Y, Emoto M, Shoji T, Ishimura Y, Yamakawa T, Nishizawa Y:Impact of atherosclerosis on the relationship of glycemic control and mortality in diabetic patients on hemodialysis. Clin Nephrol 78: 273-280, 2012
39) Freedman BI, Andries L, Shihabi ZK, Rocco MV, Byers JR, Cardona CY, Pickard MA, Henderson DL, Sadler MV, Courchene LM, Jordan JR, Balderston SS, Graham AD, Mauck VL, Russel GB, Bleyer AJ: Glycated albumin and risk of death and hospitalizations in diabetic dialysis patients. Clin J Am Soc Nephrol 6:1635-1643, 2011 40) 島健二,小松まち子:糖尿病透析患者の血糖管理. 透析会誌42:47-57,2009 / 41) National Kidney Foundation:K/DOQI clinical prac- tice guidelines for cardiovascular disease in dialysis patients. Am J Kidney Dis 45(Suppl 3):S1-153, 2005
(2) 血糖値管理指標の測定頻度 ステートメント.インスリン製剤を使用中の場合,透析開始前の随時血糖値(透析前血糖値)と透析後の随時血糖値を 毎回測定することを推奨する. .経口血糖降下薬を使用中の場合,透析前血糖値を週1 回測定することが望ましい. .上記薬物療法を使用せずに血糖が良好にコントロールされている場合においても,透析前血糖値を最 低1 か月に1 回測定することが望ましい. .GA は1 か月に1 回測定することを推奨する. .非糖尿病患者においても,最低12 か月(1 年)に1 回透析前血糖値およびGA を測定することを推奨する. 解説.インスリン使用患者 すべての1 型糖尿病患者とインスリン使用中の2 型糖尿病患者においては血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)が血糖コントロールの維持,改善のために有用である1,2).そのため,病型を問わずインスリン使用患者では,自己血糖測定を行うことを推奨する.また,毎回透析開始時および終了時に血糖値測定を行うことを推奨する. インスリン使用患者において,低血糖を疑った場合や体調の良くないときに血糖値を測定することは重要で,病態の把握に役立つ.特にシックデイではSMBGは治療上欠かすことができない.非透析患者の報告であるが,1 型糖尿病では強化インスリン療法を行う上でSMBG に基づくインスリン注射量の調節は必須であり,血糖コントロールの改善と合併症予防に寄与することが示されている1,2).同様に非透析患者の2 型糖尿病においても,強化インスリン療法を行う上でSMBG は必須であり,血糖コントロールの改善と合併症予防に寄与する2).なお,インスリン非使用者においてもSMBG は有用と思われるが,ある報告では1年後のHbA1c に影響はなく,QOL やコスト面で不利益であったとされており3),その効果は確立されていないと考えられる. .インスリン非使用患者 インスリン非使用患者に対する血糖値の測定頻度に関しては非透析患者を含めて十分なエビデンスがない.しかし通常,血液透析患者は週3 回医療機関へ通院しているため,血糖値を測定する機会は非透析患者に比し多い.この利点を利用することで,血糖コント ロール状態をより正確に把握することが可能になると考えられる.そのため,経口血糖降下薬を使用中の場合,血糖コントロールが安定していれば,透析前血糖値を週1 回測定することが望ましい.血糖降下薬の用量を増減した場合や他の薬剤を追加または変更した場合は,血糖コントロールが安定するまで適宜,透析前血糖値を測定することが望ましい. 薬物療法を行わずに良好な血糖コントロールが得られている糖尿病透析患者においては,透析前血糖値を少なくとも1 か月に1 回測定することが望ましい.高血糖を認めた場合はその患者の血糖コントロール状態を再評価することが望ましい. .GA の測定頻度 GA 値は過去約2〜4 週間の平均血糖値を反映するため,HbA1c に比較し,比較的短期間の血糖値を反映する.GA 値は安定した血糖コントロール状態下では2 週間で大きく変動することはないため,1 か月に1回の測定を推奨する.なお,糖尿病非透析患者において,妊娠中の患者および1 型糖尿病患者もしくは新規に経口血糖降下薬やインスリン治療を開始して6 か月以内の患者では,月に2 回のGA 測定が認められている.透析患者においてもこのような状況下ではGA を月に2 回測定することにより,薬物療法の効果を評価することができる. .持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:CGM)これまで,SMBG は,糖尿病患者がリアルタイムに血糖値の情報を入手できる最善の方法であった.しか
し,血糖変動をポイントで捉えることは可能であるが,連続的にどのように変化しているかはこれまで臨床的に知り得ることは困難であった.しかし,現在,24 時間連続的に血糖値を測定するCGM により連続的な血糖値の変化を知ることが可能である.CGM はセンサーを皮下脂肪組織中に留置し,組織間液中のブドウ糖濃度を測定し,これを血糖値に換算して表示する. CGM は,5 分ごとに24 時間で288 回の血糖値を表示し,一つのセンサーで最大3 日間行うことができる. CGM を用いることにより食後の血糖変動,夜間・深夜帯の血糖値,無自覚性低血糖の有無などを捉えることができる.透析患者においては,透析日と非透析日で血糖の日内変動のパターンが異なることがあるため,特にインスリン療法中の糖尿病透析患者における活用が注目される4,5). .透析患者における糖尿病のスクリーニング, 診断透析導入後に糖尿病を新規に発症する頻度に関する報告はない.米国糖尿病学会では,年齢が45 歳以上か,それ未満であっても肥満者で,運動不足,糖尿病の家族歴,妊娠糖尿病か巨大児出産の既往,高血圧,脂質代謝異常,多囊胞性卵巣症候群,インスリン抵抗性をきたす疾患,心血管疾患や耐糖能異常の既往を併せ持つ場合は,定期的に血糖検査を受けるように勧告している6).末期腎不全はインスリン抵抗性をきたす疾患群であり,インスリン抵抗性は心血管イベントの予測因子であることも報告されている7〜9).このため,非糖尿病透析患者においても,2 型糖尿病のスクリーニングとして,少なくとも年に1 回は随時血糖値とGA を測定することを推奨する. 糖尿病が疑われる場合,日本糖尿病学会の提示する診断手順10)に従い診断を行う.これによると血糖値とHbA1c の同日採血を推奨している.糖尿病型の血糖/値の基準は空腹時血糖値126 mg/dL 以上,75 g 経口/糖負荷試験(OGTT)2 時間値200 mg/dL 以上,随時/血糖値200 mg/dL 以上のいずれかを満たす場合である.HbA1c による糖尿病型の基準はHbA1c(NGSP) 6.5%以上(6.1%(JDS)以上)とされている27).血糖値とHbA1c が同日採血で糖尿病型を示すことが確認されれば,1 回の検査だけで糖尿病と診断される.なお,前述のように,透析患者においてHbA1c 値は偽低値となり血糖コントロール状態を過小評価する.そのため,透析患者では糖尿病と診断されるべき患者において,血糖値は糖尿病型の基準を満たすが,HbA1c (NGSP)6.5%未満の場合があり得る.このため,透析患者においては主に血糖検査(空腹時,随時,また は糖負荷試験)を反復することにより糖尿病診断を行う必要があると考えられる. 文献1) The Diabetes Control and Complications Trial Re- search Group:The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of longterm complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 329:977-986, 1993 2) Ohkubo Y, Kishikawa H, Araki E, Miyata T, Isami S, Motoyoshi S, Kojima Y, Furuyoshi N, Shichiri M: Intensive insulin therapy prevents the progression of diabetic microvascular complications in Japanese patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus:a randomized prospective 6-year study. Diabetes Res Clin Pract 28:103-117, 1995 3) Simon J, Gray A, Clarke P, Diabetes Glycaemic Education and Monitoring Trial Group:Cost effectiveness of self monitoring of blood glucose in patients with non-insulin treated type 2 diabetes:economic evaluation of data from the DiGEM trial. BMJ 336: 1177-1180, 2008 4) Kazempour-Ardebili S, Lecamwasam VL, Dassnyake T, Frankel AH, Tam FWK, Dornhorst A, Frost G, Turner JJO:Assessing glycemic control in maintenance hemodialysis patients with type 2 diabetes. Diabetes Care 32:1137-1142, 2009 5) Riveline JP, Teynie J, Belmouaz S, Franc S, Dardari D, Bauwens M, Caudwell V, Ragot S, Bridoux F, Charpentier G, Marechaud R, Hadjadj S:Glycemic control in type 2 diabetic patients on chronic haemodialysis:use of a continuous glucose monitoring system. Nephrol Dial Transplant 24:2866-2871, 2009 6) American Diabetes Association:Standards of medi- cal care in diabetes-2012. Diabetes Care 35:S11-63, 2012 7) Fliser D, Pacini G, Engelleiter R, Kautzky-Willer A, Prager R, Franek E, Ritz E:Insulin resistance and hyperinsulinemia are already present in patients with incipient renal disease. Kidney Int 53:1343-1347, 1998 8) Shinohara K, Shoji T, Emoto M, Tahara H, Koyama H, Ishimura E, Miki T, Tabata T, Nishizawa Y:Insulin resistance as an independent predictor of cardiovascular mortality in patients with end-stage renal disease. J Am Soc Nephrol 13:1894-1900, 2002 9) Shen Y, Peak PW, Kelly J:Should we quantify insulin resistance in patients with renal disease? Nephrology 10:599-605, 2005 10) 日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイド2012-2013,p18- 21,文光堂,東京,2012
(3) 透析液ブドウ糖濃度 ステートメント.インスリン治療中の糖尿病透析患者では,透析前血糖値が高い場合,血糖値と透析液間のブドウ糖濃 度較差が大きくなり,透析中に血糖が急速にしかも著明に低下する可能性がある. .透析中の血糖値の低下が大きいと,透析終了後に血糖値の上昇が惹起(透析起因性高血糖)されるこ とがあり,透析後の高血糖防止には,透析中の血糖値の変動を少なくするために,比較的高いブドウ糖濃度の透析液を使用するなどの対策が望ましい. 解説.糖尿病透析患者の血糖は,透析の影響を受け, 透析中および透析後に変動する. ) 透析中の血糖の変化 2011 年10 月現在,わが国で市販されている透析液の種類は4 社で約25 種類ある.各々の組成を表1 に示した.透析液に含まれているブドウ糖濃度は4 種類 / (0,100,125,150 mg/dL)である.糖尿病透析患者では,透析前に高血糖になることが多い.一般的には,午前透析患者の透析開始時は,朝8 時30 分〜9 時頃で,朝食後1〜2 時間のため,血糖値は最も高値となる頃である.かかる高血糖状態で,血液透析が開始され/た場合,透析液中のブドウ糖濃度が100〜150 mg/dL 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.5 1.5 Mg 140リンパック®透析剤TA3 /希釈時の濃度(mEq/L)メーカー商品名 140 キンダリー透析剤AF2P 号 2.0 140 リンパック®透析剤3 号 表1わが国のおもな市販透析液組成 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 *pH 調節剤氷酢酸のCH3COO -を含む, **pH 調節剤希塩酸のCl-を含む, ***pH 調節剤を含む. 2.5 136 キンダリー液透析剤AF-1P 号 2.0 2.0 138リンパック®透析剤TA1 2.5 136 扶桑薬品工業 キンダリー液透析剤AF-1 号 2.0 2.5 2.5 2.5 2.75 2.75 2.75 3.0 3.0 3.0 3.5 3.5 Ca AK-ソリタ・FL 2.0 140 日機装 D ドライ透析剤2.5S 2.0 140 D ドライ透析剤3.0S 2.0 138 ニプロ リンパック®透析剤1 号 K Na 3.0 2.5 3.0 2.5 3.0 2.5 2.5 2.5 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 2.5 3.0 3.0 AK-ソリタ・DL 2.0 140 カーボスター・L(9L) 2.0 140 カーボスター・L(6L) 2.0 143 AK-ソリタ・FP 2.0 143 カーボスター・P 2.0 143 ハイソルプ-F 2.0 140 AK-ソリタ・DP 2.0 140 カーボスター・M 2.0 140 キンダリー透析剤AF3P 号 2.0 140 キンダリー透析剤3D 2.0 140 キンダリー透析剤3E 2.0 140 味の素ファルマ ハイソルプ-D 2.0 140 キンダリー透析剤2E 2.0 140 キンダリー透析剤AF4P 号 2.0 140 キンダリー透析剤4D 2.0 140 キンダリー透析剤4E 2.0 140 100 100 100 ― 0 10.2 * 113 / (mg/dL) ブドウ糖 1.0 2.0 140 キンダリー透析剤2D 2.0 140 100 100 150 150 100 150 100 100 150 100 150 150 150 125 125 125 27.5 30.0 30.0 30.0 30 30 bicarbonate 100 25.0 100 100 100 100 100 25.0 27.5 27.5 35.0 35.0 25.0 35.0 25.0 27.5 35.0 25.0 25.0 25.0 25.0 27.5 27.5 8 * 8 * 8 * 8 * 8 * 8 * 8 * acetate 28.0 25.0 28.0 25.0 10 * 10 * 9 9 ― ― 10 ― 10 11 *** ― 12 *** 8 * 8 * 8 ** 8 * 112.25 112.25 112.25 110 110 110 106.5 106.5 Cl 8 * 10.2 * 8 * 110 113.0 112.5 114 *** 114 *** 111 111 113 *** 111 113 *** 112 111 111 114.5 ** 114.5 ** 114.5 ** 110 113
であると,ブドウ糖較差が血液と透析液の間に生じ,血漿グルコースは透析液中に拡散し,血糖値が低下す/る 1,2).ブドウ糖濃度100 mg/dL の透析液で血液透析した時の血糖値の変化は,インスリン治療中の透析前血糖値が高い例ほど,透析中に血糖値の低下が生じる(図1) 1).一方,血糖管理良好群(透析開始前血糖値が低い糖尿病患者)では,血糖値は下がりやすいものの有意ではない.非糖尿病透析患者では,血糖値の変化/は殆どない.ちなみに,ブドウ糖濃度0 mg/dL の透 析液で透析した場合では,血糖値の変化は,さらに,一層,顕著となる.透析液に全くブドウ糖を含まない透析液で透析すると透析前血糖値が高値例は透析後2時間で急速に血糖値が低下し,4 時間後でも有意に低下する.一方,同様に透析前血糖値がやや高値群(インスリン非使用群)でも,また,非糖尿病透析群においても有意な血糖値の低下がみられる.それは,透析 図2糖尿病透析患者における透析日と非透析日の血糖値の日内変動2) mean±SD, *P<0.05, **P<0.01. / /図1ブドウ糖含有(100 mg/dL)透析液と非含有(0 mg/dL)透析液を用いて血液透析を実施した時の血糖値の変化 1) mean±SD, *P<0.05, **P<0.001 vs.透析前, †P<0.05, ‡P<0.001 vs.2 時間.
/液ブドウ糖濃度が0 mg/dL であるため,血糖値と透析液ブドウ糖濃度間の差が大きいからである.透析中の脱血側と返血側での血糖値は,透析開始時・2 時間後・4 時間後でも同様に低下する.しかも,低下の程度は,透析開始時に血糖値が著しく高い例ほど顕著である.この変化は,血糖管理不良群でも良好群でも同様の変化であり,血液透析により,透析前の血糖値に応じて血中のブドウ糖が透析液中に拡散するためである. ) 透析後の血糖変化 糖尿病患者の血糖値は,透析後も透析の影響を受けて変動する1,2).透析中,血糖値が著明に低下した群では,透析終了後〜昼食後の血糖値の上昇の程度が強く,顕著な高血糖が惹起される(図2).同一症例を非透析日の血糖日内変動と比較すれば,明白となり,有意の高血糖といえる.すなわち,高血糖の患者では,非透析日では透析による血糖値の低下がないので,昼食後の血糖値の上昇も顕著にはならない.血糖管理良好糖尿病群では,透析中,血糖値の低下は生じないし,そして透析後も高血糖はおこらない.透析中の血糖値低下に伴う透析後の高血糖を透析起因性高血糖と呼ぶ.生体では,血糖低下が生じたときには,インスリン分泌の減少とともに血糖上昇ホルモンであるcounter-regulatory hormones の分泌増加が生じ,血糖値が維持されるようになっている.グルカゴン等の血糖上昇ホルモンが透析後の高血糖に寄与した可能性があ る. .糖尿病透析患者の血糖値への影響因子は,イ ンスリン,透析前血糖値,透析液ブドウ糖濃度である.インスリン治療中の患者では,透析前に通常すでにインスリンが投与されている.透析中の血糖値の低下にインスリンが関係している可能性は充分考えられる.しかし,一方,血中インスリンは透析中に除去され,インスリン血中濃度は,種々の程度で低下するため,透析中の血糖値の低下に及ぼす影響は,弱くなるとは考えられるものの,透析中の血糖低下の影響因子であることに変わりはない.ブドウ糖の分子量は180 Da であり,通常の血液透析ではどのダイアライザでも拡散によって除去される. 文献1) 海津嘉蔵,瓜生康平,松本紘一,大西禎彦:糖代謝障 害と栄養障害.透析会誌38:1256-1257,2005 2) Abe M, Kaizu K, Matsumoto K:Evaluation of the hemodialysis-induced changes in plasma glucose and insulin concentrations in diabetic patients:Comparison between the hemodialysis and non-dialysis days. Ther Apher Dial 11:288-295, 2007
(4) 血液透析施行中の高血糖,低血糖への対処 ) 血液透析開始時の高血糖 ステートメント/ .透析開始時に500 mg/dL 以上の著明な高血糖を認める場合には,2∼4 単位の超速効型インスリンを /皮下注射することを検討する.その際2 時間後に血糖値を再検し,透析中100∼249 mg/dL の血糖値/を目標とし,インスリン注射による急激あるいは過度の血糖低下(100 mg/dL 未満)を起こさないように注意する. / .600 mg/dL 以上の血糖値を認める場合には,糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis: DKA)の合併を考慮し,血液ガス分析および血清カリウム測定,さらに施設によって可能であれば血中ケトン体の測定を行う.DKA と診断された場合には,緊急入院の上治療を行う. .上記のような高血糖がしばしばみられる場合には,糖尿病治療の見直しが必要である. 解説インスリン使用中の糖尿病患者では,「血糖値管理指標と測定頻度」で述べたように,透析前と透析後の血糖値を毎回測定することを推奨するが,著明な高血糖あるいは低血糖を認めた場合,緊急の対処が必要となる. 現在使用可能な透析液のブドウ糖濃度が0〜150 / mg/dL であることから,透析開始時に高血糖を認める場合でも,血糖値は透析開始後透析液への拡散により自然に低下する.透析開始時にみられる高血糖の対策についての報告は,検索した限り見当たらない.わが国の一施設における,入院中の糖尿病患者を対象とした未発表のデータであるが,透析開始時の血糖値が/概ね500 mg/dL 未満の場合,特に血糖降下薬を使用/しなくても3〜4 時間の血液透析後に300 mg/dL 未満に低下するため(表1),この程度の高血糖であれば,あえてインスリン注射を行う必要はないと思われる. /しかし,まれと思われるが,透析前血糖値が500 mg/ dL 以上と著明な高血糖を認める場合には,少量(2〜4単位)の超速効型インスリンを皮下注射することを提案したい.その場合2 時間後に血糖値を再検し,100〜/ 249 mg/dL の血糖値を目標とする. ただし,インスリン投与に対する血糖値の反応は個々の患者によって異なり,上記のような少量のインスリン注射によっても,透析中過度の血糖低下をきたす場合もあると思われる.また「I.(3)透析液ブドウ糖濃度」の項で上述したように,透析中の血糖低下が大きいと,透析終了後に透析起因性高血糖が惹起されることがある.そのため,急激あるいは過度の血糖低/下(100 mg/dL 未満)をおこさないように注意することが重要である.透析開始時に上記のような高血糖を認め,少量のインスリン注射によっても過度の血糖低下を生じた例では,以後同様の高血糖がみられた場合 140±34 <200 874 透析開始前血糖値 / (mg/dL) 229±24 200〜299 228 300 342±27 300〜399 33 表1糖尿病患者における透析開始前後の血糖値の変化 患者数 /糖濃度100 mg/dL の透析液を使用した血液透析開始前の血糖値により4 カテゴリーに分類,それぞれの透析前および透析後3〜4 時間に透析回路から採血し,小型電極式グルコース分析装置(アントセンスIII®)を用いてベッドサイドで測定した. 200 420 457±27 400〜7 33 132±49 161±46 141±38 124±31 透析開始後血糖値 / (mg/dL) 平均±SDカテゴリー/ (mg/dL) 84 92 55 52 最大 216 244 293 270 506 393 292 199 最小最大最小平均±SD
においても,インスリンの投与を行わずに経過をみることもありうる. 上記のような高血糖がしばしばみられる場合には,糖尿病治療の根本的な見直しが必要であり,糖尿病専門医へのコンサルテーションを強く推奨する. なお,無尿の透析患者が高血糖をきたした場合,浸透圧利尿がおこらないため脱水状態とならず,DKAに至ることはまれと考えられている.ただし,散見される,DKA を合併したわが国からの糖尿病透析症例の報告(表2) 1〜14)では,腎不全のない糖尿病患者にみられるDKA に比べて血糖値がより高く(全例600 / / mg/dL 以上,平均1,336±369 mg/dL),腎不全のみでは説明困難な高度の代謝性アシドーシスおよび高カ リウム血症を呈するようである.参考までに,わが国の一施設における,DKA(酸塩基平衡異常を伴った糖尿病性ケトーシスを含む)51 例における,初診時の血糖値,動脈血pH,および血清K 値はそれぞれ,654± / / 278 mg/dL,7.2±0.1,および4.9±1.0 mEq/L であった15). /そのため,600 mg/dL 以上の高血糖を認めた場合には,DKA の合併に留意し,直ちに血液ガス分析および血清カリウム測定,さらに可能な施設であれば血中ケトン体の測定を行うことを推奨する.DKA と診断された場合には,緊急の入院治療が必要である. 1997 荒木ら 1) 1 年齢(歳)報告年報告者No 2009 浦濱ら 12) 12 62 2010平良ら 13) 13 表2わが国におけるDKA を合併した糖尿病血液透析症例の報告 平均 医学中央雑誌を用いて検索.平均値および標準偏差(SD)は,全14 例中各項目値の記載のあった症例のみを用いて算出した. 32 2001 倉田ら 3) 3 45 58 2012 加藤ら 14) 14 63 2000 藤原ら 2) 2 46 6.81 7.09 不明 6.76 6.97 7.09 動脈血pH 不明 8.3 不明 7.2 不明 6.6 血清K / (mEq/L) 1 1 1 1 糖尿病型 1,336 1,001 838 1,360 1,912 1,270 1,467 血糖値/ (mg/dL) 52 M 58 2008 橋本ら 11) 11 M M M F F M 性別 8.0 6.54 不明 2 2006 小山ら 9) 9 7.5 7.10 1,520 1 M 46 2006佐久田ら 10) 10 9.6 6.84 1,363 1 SD 8.5 7.10 1,365 1 M 40 歳代 2006 今中 8) 8不明6.54 1,686 1 M 35 不明1,645 2 F 71 2004冨永ら 7) 7 1.0 0.20 369 13 不明F 36 2002志賀ら 5) 5不明不明不明不明M 65 2003藤倉ら 6) 6 8.6 不明7.15 609不明F 65 2002山口ら 4) 4不明不明不明
) 血液透析前後の低血糖 ステートメント/ .血液透析開始時に血糖値60 mg/dL 未満,あるいはそれ以上でも明らかな低血糖症状を認める場合に は,緊急の処置を要する. .経口摂取が可能な場合には,5∼10 g のブドウ糖を摂取させる.経口摂取が不可能な場合には,50% グルコース注射液20 mL(10 g ブドウ糖含有)を透析回路静脈側より1 分間程度で注入する. / .以後30 分あるいは1 時間おきに血糖値を測定し,再度血糖値60 mg/dL 未満の場合は上記の処置を 繰り返す. .血液透析終了時に上記低血糖を認めた場合には,同様の処置を行い,血糖値の上昇を確認した上で, 透析回路を離脱する. .上記のような低血糖がしばしばみられる場合には,糖尿病治療の根本的な見直しが必要である. 解説インスリン使用患者で血液透析開始時に血糖値60 / mg/dL 未満,あるいはそれ以上でも明らかな低血糖症状を認める場合には,ステートメントに示したような緊急の処置を要する. 低血糖症状は,より早期にみられる自律神経症状と,それ以降に出現する中枢神経症状とがある.自律神経症状は,低血糖に対する交感神経刺激(カテコールアミン分泌)によるものであり,冷汗,動悸,手指振戦,高度の空腹感などがある.それらの症状があっても適切な処置が行われないか,より高度の低血糖をおこした場合には,中枢神経の糖欠乏症状である,頭痛,異常行動,けいれん,意識レベルの低下から昏睡に至る,などの中枢神経症状がおこる.糖尿病血液透析患者では,自律神経障害を高頻度に合併していることや,グルカゴンなどの糖拮抗ホルモン反応の低下から16),低血糖時に上記自律神経症状を欠き,急激に意識低下に至ることがあるため(無自覚性低血糖),注意を要する. 高血糖同様,低血糖がしばしばみられる場合にも,糖尿病の治療の見直しが必要であり,糖尿病専門医へのコンサルテーションを強く推奨する. 文献1) 荒木英雄,大門正一郎,松田哲久,宮崎良一,藤田幸 雄,紺井一郎:血液透析患者に合併した糖尿病性ケトアシドーシスの1 例.透析会誌30:265-269,1997 2) 藤原崇,中山紳,加藤哲朗,佐久間資子,小林貴 史,木本成昭,山田斎毅,西沢美里,斉藤博:糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症したインシュリン依存性糖尿病(IDDM)の維持透析患者の1 例.透 析会誌33(Suppl 1):858,2000 3) 倉田圭,林宏樹,北川渡,狩野俊和,稲熊大城, 若尾孝明,公文進一:維持透析患者にみられた糖尿病性ケトアシドーシスの1 例.ICU とCCU 25(別冊): S223-S224,2001 4) 山口憲児,中山紳,小原まみ子,木本成昭,石井利 英,岸田修二,鎌田憲子,斉藤博:糖尿病性ケトアシドーシスに脳膿瘍を合併した血液透析患者の一例.透析会誌35(Suppl 1):981,2002 5) 志賀伯弘,小野利夫,種田嘉信,梅村周香:血液透析 が代謝性アシドーシスの改善に有用であった糖尿病性ケトアシドーシスの1 例.糖尿病45:632,2002 6) 藤倉純二,米光新,有安宏之,林達也,中尾一和, 谷口信吉,宇佐美一政:血液透析患者にみられた糖尿病性ケトアシドーシスの1 例.糖尿病46:484,2003 7) 冨永直人,大橋誠治:糖尿病性ケトアシドーシスをき たした維持透析患者の1 例.大阪透析研会誌22:102, 2004 8) 今中俊爾:2 度の糖尿病性ケトアシドーシスを発症し た1 型糖尿病血液透析患者の1 例.腎と透析60:369- 372,2006 9) 小山晶穂,倉田久嗣,澤井喜邦:糖尿病性ケトアシドー シスを発症した1 型糖尿病の維持血液透析患者の一例.透析会誌39(Suppl 1):845,2006 10) 佐久田豊,西銘圭蔵,中村成男,斉藤保,佐藤香, 吉晋一郎:透析患者における糖尿病性ケトアシドーシス発症の要因.沖縄医会誌45:75,2006 11) 橋本哲也,紀田康雄,辻中克昌,長谷川雅昭,上古眞 理,鹿野勉,柏木厚典:意識障害,痙攣,右半身麻痺を呈した1 型糖尿病透析患者のケトアシドーシスの1 例.糖尿病51:560,2008 12) 浦濱善倫,吉岡智輝,鬼無洋,飯田喜康:維持血液 透析患者に合併した糖尿病性ケトアシドーシスの1
例.透析会誌42(Suppl 1):643,2009 13) 平良伸一郎,仲村英昭,中山良朗,久場絵里子,砂川 澄人,宮良あやこ,神谷乗史,伊波多賀子,屋比久浩市,池間朋己,幸喜毅,小宮一郎,益崎裕章:インスリン依存状態の2 型糖尿病維持透析患者に生じたケトアシドーシスの1 例.糖尿病53(Suppl 1):S-144, 2010 14) 加藤麻美,勝木俊,柴田真希,濱野直人,勝馬愛, 南惠理,多田真奈美,日ノ下文彦:維持透析患者に発症した糖尿病性ケトアシドーシスの一例.透析会誌 45(Suppl 1):846,2012 15) 藤巻理沙:糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic Ke- toacidosis;DKA).糖尿病治療マニュアル,III章糖尿病合併症の治療と管理(東京女子医科大学糖尿病センター編),医歯薬出版,東京,2012 16) 朝長修,馬場園哲也,高橋千恵子,寺岡慧,太田 和夫,大森安恵:インスリン依存型糖尿病患者に対する膵移植後の糖拮抗調節.糖尿病38:839-846,1995
(5) 経口血糖降下薬 ステートメント.スルホニル尿素(SU)薬,ビグアナイド薬,チアゾリジン薬,および,速効型インスリン分泌促進薬 のうちナテグリニド,DPP-4 阻害薬のうちシタグリプチンは,透析患者で禁忌である. .透析患者に使用可能な経口血糖降下薬は,速効型インスリン分泌促進薬のうちミチグリニドとレパグ リニド,a-グルコシダーゼ阻害薬のアカルボース,ボグリボース,ミグリトール,DPP-4 阻害薬のうちビルダグリプチン,アログリプチン,リナグリプチン,テネリグリプチン,アナグリプチンである. .経口血糖降下薬の投与量 ) ミチグリニド,レパグリニドは低血糖に注意しながら,少量から開始することが望ましい(慎重投 与). ) a-グルコシダーゼ阻害薬のアカルボース,ボグリボースは常用量まで使用可能.ミグリトールは慎 重投与である. / ) DPP-4 阻害薬のビルダグリプチンは少量(25 mg/日)から開始することが望ましい.アログリプ / /チンは6.25 mg/日,アナグリプチンは100 mg/日で慎重投与である.リナグリプチン,テネリグリプチンは常用量投与可能である. 解説.経口血糖降下薬による治療 一般的に,2 型糖尿病治療の原則は,食事療法,運動療法であるが,良好な血糖コントロールが得られない場合,経口血糖降下薬の適応となる1〜4).薬物の選択は,個々の薬物の作用や副作用を考慮しながら,患者個々の病態に応じて行っていく.急激な血糖コントロールに伴う生体への悪影響や薬物による副作用を最小限に抑えるために,基本的に第一選択薬を単独で少量から開始し,血糖コントロール状態を観察しながら必要に応じて徐々に増量する.インスリンは一部腎臓でも分解されるため,腎機能の廃絶した透析患者においてはインスリンの代謝・排泄が遅延するため,また薬剤の代謝・排泄も遅延するため,容易に低血糖を生じる.そして,経口血糖降下薬の中でもスルホニル尿素(SU)薬の場合,一度低血糖が生じると,遷延する傾向がある(遷延性低血糖)ため,インスリン分泌を促進させるSU 薬は透析患者では使用禁忌となっている5〜8).第一選択薬の単独投与によっても血糖コントロール状態が不良であれば,第一選択薬の増量,または作用機序の異なる血糖降下薬の併用を考慮する.血糖降下薬の併用によっても血糖コントロールが不十分な場合,基礎インスリンの追加投与やインスリン治療への変更を考慮する.血糖コントロールが不十分なまま,漫然と同じ血糖降下薬治療を続けることは避ける べきである. 経口血糖降下薬には表1 に示すように,6 種類のクラスがあり,それぞれの主な作用からインスリン分泌促進系,インスリン抵抗性改善系,食後高血糖改善系に分類できる9).インスリン分泌促進系にはSU 薬,速効型インスリン分泌促進薬,DPP-4 阻害薬があり,インスリン抵抗性改善系にはビグアナイド薬とチアゾリジン薬があり,食後高血糖改善系には速効型インスリン分泌促進薬とa-グルコシダーゼ阻害薬(a-GI)がある9).わが国では,SU 薬,ビグアナイド薬,チアゾリジン薬はいずれも重篤な腎機能障害時には禁忌とされており,a-GI と速効型インスリン分泌促進薬のうち,ミチグリニドとレパグリニド,DPP-4 阻害薬のビルダグリプチン,アログリプチン,リナグリプチン,アナグリプチンが透析患者において使用可能である.そのため,現時点ではこの3 種類の薬剤を単独または併用して使用していくことになる.ただし,どの薬剤が最善かについてのエビデンスはない. ) スルホニル尿素(SU)薬 膵b 細胞膜上のSU 受容体に結合し,インスリン分泌を促進させる薬剤である.SU 薬はいずれも蛋白結合率が高いため,透析では除去されないと考えられる.また,主要消失経路が肝臓であっても,活性代謝物に血糖降下作用があるため,透析患者では活性代謝物の
蓄積により低血糖がおこりやすいと考えられる10).グリクラジドは肝臓で代謝され,排泄は腎60〜70%,糞中10〜20%で,99%以上が代謝物として排泄され,代謝物の活性は非常に弱いためKidney Diseases Outcomes Quality Initiative(KDOQI)ガイドラインでは推奨されているSU 薬であるが,わが国では添付文書上禁忌となっている5,11). ) 速効型インスリン分泌促進薬 SU 薬と同様の機序でインスリン分泌を促進するが,その効果発現はSU 薬に比べて速く,血中のインスリン濃度の上昇も速く,血糖低下作用の持続時間が約3 時間程度と短いことが特徴である.副作用として低血糖がおこりうるが,SU 薬より頻度が少ない12)とされるが,十分なエビデンスはない.ナテグリニドは代謝産物が血糖降下作用を有し,それが腎臓より排泄されるため,透析患者においては低血糖の頻度が高くなるため禁忌となっている13,14).ミチグリニドは代謝産物に血糖降下作用がないため,腎機能障害時でも低血糖の頻度は少ない15).しかし,透析患者を含めた腎機能障害患者において,ミチグリニドの血中半減期は /延長するため,少量(7.5 mg〜15 mg/日)から開始すべきである.日本人透析患者において常用量より少量のミチグリニドで血糖値とGA 値の改善が得られたと報告されている16,17).レパグリニドは胆汁排泄型の薬物で,米国においては以前から使用されていたが,わが国では2011 年5 月から使用可能となっている.レパグリニドも代謝産物に血糖降下作用がなく,腎機能障害患者にも使用可能となっているが18〜20),国内での臨床経験がまだ多くないため,少量から開始し慎重に投与すべきである. ) a-グルコシダーゼ阻害薬(a-GI) 炭水化物である砂糖などの二糖類は消化管において,a-グルコシダーゼという酵素によりブドウ糖などの単糖類に分解されて小腸粘膜より吸収される.この分解酵素の作用を阻害することにより,糖吸収を遅延させ,食後の急激な血糖上昇を抑制する.a-グルコシダーゼ阻害薬(a-GI)のボグリボースは血中に吸収されないため,透析患者でも常用量使用可能となってい 商品名一般名 主要消失経路薬剤名薬効分類 アベマイドクロルプロパミド腎(ラット)デアメリンSグリクロピラミド 表1経口糖尿病薬の排泄経路,透析性,投与量(2012 年11 月現在) 肝ジメリンアセトヘキサミド 肝(腎20%) 腎スイニーアナグリプチン 肝ラスチノントルブタミド スルホニル尿素薬 200-400 250-500 100-500 250-1,000 250-2,000 通常常用量/ (mg/day) テネリグリプチン 100 禁忌 禁忌 禁忌 禁忌 透析至適用量 / (mg/day) リナグリプチン 常用量20-40 15.6%肝(腎21%) − − − − − 透析性 テネリア 肝(腎23%)エクアビルダグリプチン 6.25 25 7.2% 腎 ネシーナ アログリプチン 5 5 − 胆汁 トラゼンタ 150-225 +腎30%セイブルミグリトール禁忌50-100 3.5-13.5%腎79-88% /ジャヌビア/グラクティブシタグリプチン DPP-4 阻害薬慎重投与50-100 3% チアゾリジン薬常用量150-300該当せず糞便グルコバイアカルボースa-グルコシダーゼ阻害薬常用量0.6-0.9該当せず糞便ベイスンボグリボース 慎重投与 メトグルコ 禁忌50-150 +腎84.5%ジベトスブホルミン禁忌15-45 −肝アクトスピオグリタゾン −肝シュアポストレパグリニド 禁忌500-750 +腎80-100%グリコランメトホルミンビグアナイド薬禁忌500-2,250 +腎80-100% 禁忌270-360 −肝(腎5-16%) /スターシス/ファスティックナテグリニド速効型インスリン分泌促進薬慎重投与30 −肝グルファストミチグリニド 慎重投与0.75-3 グリベンクラミド禁忌40-160 −肝グリミクロングリクラジド禁忌0.5-6 −肝アマリールグリメピリド 禁忌1.25-10 −肝/オイグルコン/ダオニール
る5,21).アカルボースは総投与量のわずか2%未満が吸収されるが,その代謝産物の血糖降下作用は非常に弱いため,わが国では透析患者には常用量使用可能となっている.ミグリトールは小腸上部から吸収されるが,吸収されたミグリトールは代謝されずに未変化体のまま腎臓から排泄されるが,血中では血糖降下作用はなく,蛋白結合率は3.9%以下と低く,分子量207 Da であり,透析で除去されるため,わが国では慎重投与となっている5).a-GI は必ず食直前に服用する.食後服用では効果が大きく減弱する.単独投与では低血糖の可能性はほとんどなく,他の経口血糖降下薬やインスリンとの併用が可能であり,その際には低血糖の注意が必要である.副作用として,放屁,腹部膨満感,下痢などの消化器症状がある.開腹手術歴のある例では,腸閉塞をおこすことがあり,注意を要する.また,低血糖の回復には砂糖ではなく,ブドウ糖を摂取することが必要となることにも注意が必要である. ) ビグアナイド薬 肝臓での糖新生の抑制および筋肉を中心とした末梢組織でのインスリン感受性を高める作用を有している.腎機能正常患者において,欧米では大血管症発症抑制の明確なエビデンスがあるため,第一選択薬として用いられている22〜24).しかし,副作用として,重篤な乳酸アシドーシスがおこる危険があるため,透析患者を含めた腎機能障害患者には禁忌である.ビグアナイド薬は体内で代謝されず,尿中未変化体排泄率が高い.血中で蛋白とほとんど結合せず,薬剤の分子量は165〜194 Da であるため,透析により除去可能である.また,ビグアナイド薬による乳酸アシドーシスが発症した場合,血液透析により,薬剤および乳酸の除去と重炭酸イオンの補充が可能となる.そのため,乳酸アシドーシスの治療として,血液透析は有用である25,26). ) チアゾリジン薬 チアゾリジン薬は末梢組織でのインスリンの感受性を高め,肝臓からの糖新生を抑制する.Peroxisome proliferator activated receptor g(PPARg)作動薬としてインスリン抵抗性を改善する効果があり,2 型糖尿病患者(非透析患者)における大血管症発症抑制のエビデンスが示されている27,28).しかし,わが国では透析患者に対しては禁忌である.副作用として体液貯留作用があり,浮腫,貧血,心不全をきたすことがあるため,心不全の既往のある患者にも禁忌となっている31). ) DPP-4 阻害薬 インクレチンとは経口栄養摂取に伴い小腸粘膜に局在する内分泌細胞から分泌され,膵b 細胞からのインスリン分泌を促進する消化管ホルモンの総称であり, glucagon-like peptide-1(GLP-1)とgastric inhibitory polypeptide(GIP)がある.いずれも分泌後,dipeptidyl peptidase-IV(DPP-4)により速やかに分解・不活化される.DPP-4 阻害薬はこのDPP-4 を選択的に阻害し,活性型GLP-1 を増加させ,インスリン分泌を促進し,グルカゴン分泌を抑制する薬剤である32〜35).血糖降下作用は血糖依存性のため,単独投与では低血糖の可能性は少ないと考えられている.また,血糖コントロール改善に際して体重増加をきたしにくいのも特徴の一つである.食事摂取の影響を受けないため,食前投与,食後投与いずれも可能である. 日本では2009 年にシタグリプチン,2010 年にビルダグリプチン,アログリプチン,2011 年にリナグリプチン,2012 年にテネリグリプチン,アナグリプチンが承認された.シタグリプチンは透析患者には使用できないが,アログリプチン,アナグリプチンは減量投与, /ビルダグリプチンは少量(25 mg/日)からの使用が望ましい.シタグリプチンは腎機能の低下に伴い,排泄が遅延し,血中濃度が上昇するため,KDOQI ガイド/ラインでは透析患者においては25 mg/日での減量投与が推奨されているが,わが国では禁忌である11,36).アログリプチンも腎機能障害の程度に応じて減量する/必要があり,透析患者では6.25 mg/日で使用可能である37,38).ビルダグリプチンは加水分解され,血中消失半減期が短時間で,尿中未変化体排泄率が23%と低いことが特徴であり,腎機能障害を有する場合でも使用可能である35,39).日本人透析患者においてビルダグリプチンを6 か月間投与し,透析開始前の食後随時血/ /糖値が186 mg/dL から140 mg/dL まで低下し,GA値は24.5%から20.5%まで低下を認めたと報告されている40).ただし,重度の肝機能障害患者には禁忌である.リナグリプチンは胆汁排泄型のDPP-4 阻害薬で,尿中未変化体排泄率が1%未満である.そのため,透析患者においても投与量の調節は不要とされている35,41).テネリグリプチンは尿中未変化体排泄率が約20%と低く,腎機能障害を有する場合でも使用可能であるが,透析患者に対する十分な使用経験がないため慎重に投与すべきである.アナグリプチンは通常用量1 回100 mg,1 日2 回製剤であるが,透析中の末期不全患者に投与したところ,AUC0−∞は健康成人に比較して3.22 倍増加した.これより減量は必要となるが, Cmax の増加は大きくないことから(1.41 倍),透析患者に対しては1 回100 mg 1 日1 回で使用可能であるが,透析患者に対する十分な使用経験がないため,慎重に投与すべきである.
いずれのDPP-4 阻害薬も,透析患者における合併症に対する長期予後の成績はまだ存在せず,長期投与における安全性は確立されていないため,今後のさらなる臨床データの蓄積が必要である. ) 配合薬 現在4 種類の配合薬が市販されている(表2).しかし,ピオグリタゾン,メトホルミン,グリメピリドは透析患者へは禁忌であるため,メタクト,ソニアス,リオベルは使用できない.グルベス(ミチグリニド(10 / mg)/ボグリボース(0.2 mg))配合錠のみが透析患者への投与が可能である.しかし,配合錠のミチグリニド含有量が1 錠10 mg であるため,低血糖に注意が必要であり,また第一選択薬として用いるべきではない. .高齢者における注意点 一般的に高齢者でも血糖降下薬は高血糖の是正に有用であるとされている42〜44).高齢者で血糖降下薬による低血糖が高頻度であることを明らかにしたRCT はないが,観察研究において血糖降下薬による重症低血糖は高齢者,特に75 歳以上の後期高齢者,多剤(糖尿病治療薬以外)併用者,退院直後,腎不全患者,食事摂取低下例などに発症しやすいとされている45〜47).わが国の透析患者は高齢化が進んでいる.そのため,高齢者では血糖降下薬の投与とその後の経過観察を慎重に行うべきである.さらに,高齢者では低血糖の自覚症状が軽微であることが多く,典型的な低血糖症状以外に,落ち着かない,力が入らない,あるいは非特異的中枢神経症状(認知症様症状,うつ様症状など)が低血糖の症状であることも少なくないので注意を要する48).文献 1) The United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS)Group:Relative efficacy of randomly allocated diet, sulphonylurea, insulin, or metformin in patients with newly diagnosed non-insulin dependent diabetes followed for three years(UKPDS 13). BMJ 310:83-88, 1995 2) Stratton IM, Adler AI, Neil HA, Matthews DR, Manley SE, Cull CA, Hadden D, Turner RC, Holman RR: Association of glycaemia with macrovascular and microvascular complications of type 2 diabetes (UKPDS 35):Prospective observational study. BMJ 321:405-412, 2000 3) Tominaga M, Eguchi H, Manaka H, Igarashi K, Kato T, Sekikawa A:Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose:The Funagata Diabetes Study. Diabetes Care 22:920-924, 1999 4) The United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS)Group:Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk complications in patients with type 2 diabetes(UKPDS 33). Lancet 352:837- 853, 1998 5) Abe M, Okada K, Soma M:Antidiabetic agents in patients with chronic kidney disease and end-stage renal disease on dialysis:Metabolism and clinical practice. Curr Drug Metab 12:57-69, 2011 6) Yale JF:Oral antihyperglycemic agents and renal disease:New agents, new concepts. J Am Soc Nephrol 16:S7-S10, 2005 7) Kovesdy CP, Park JC, Kalantar-Zadeh K:Glycemic control and burnt-out diabetes in ESRD. Semin Dial 23:148-156, 2010 8) Reilly JB, Berns JS:Selection and dosing of medica- 商品名一般名 主要消失経路薬剤名薬効分類 リオベル配合錠LD・HD /アログリプチン/ピオグリタゾン配合剤 / DPP-4 阻害薬/チアゾリジン薬配合薬 表2経口糖尿病薬(配合剤)の排泄経路,透析性,投与量(2012 年5 月現在) ピオグリタゾン肝グリメピリド肝 ソニアス配合錠LD・HD /ピオグリタゾン/グリメピリド /チアゾリジン薬/ SU 薬配合薬 アログリプチン腎ピオグリタゾン肝 ミチグリニド肝ボグリボース糞便グルベス配合錠 /ミチグリニド(10 mg)/ボグリボース(0.2 mg) /速効型インスリン分泌促進薬/ a-GI 配合薬ピオグリタゾン肝メトホルミン腎 メタクト配合錠LD・HD /ピオグリタゾン/メトホルミン /チアゾリジン薬/ビグアナイド薬配合薬 1 回1 錠1 日3 回食直前 1 回1 錠朝食前または朝食後 1 回1 錠朝食前または朝食後 1 回1 錠朝食後 通常常用量/ (mg/day) 慎重投与 禁忌 禁忌 禁忌 透析至適用量 −該当せず − − − − − + 透析性
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(6) インスリン療法 ステートメント.インスリン分泌が廃絶した1 型糖尿病患者では,インスリン注射の絶対的適応であり,1 日3∼4 回の 強化インスリン療法が必要である. .単一あるいは複数の経口血糖降下薬を使用しても十分なコントロールが得られない2 型糖尿病透析患 者に対しても,インスリン注射の適応となる. .2 型糖尿病患者では,インスリン分泌能や実際の血糖値に応じて,インスリンの種類,注射回数,投与 量を決める.実際には,各食前(超)速効型インスリン3 回注射,混合型インスリンの朝夕2 回注射,あるいは1 日1 回の中間型あるいは持続型溶解インスリン注射で維持できる場合が多い. .インスリン治療中の糖尿病透析患者では,透析中に血中インスリン濃度が低下することがある. .透析後の血漿インスリン濃度低下による高血糖を防ぐため,透析後にインスリンの追加投与が必要な ことがある. .インスリン使用患者に対しては,血糖自己測定の実施を強く推奨する. .血糖値と血中インスリン濃度は血液透析によって大きく影響をうけることから,血糖管理を良好にす るためには,透析日と非透析日のインスリンの投与量と投与時間を変更することもある. 解説.インスリン療法の適応 インスリン療法の絶対的適応としては,1 型糖尿病,糖尿病性昏睡,重症感染症の併発,中等度以上の外科手術があげられる.またインスリン療法の相対的適応/として,著明な高血糖(たとえば,空腹時血糖250 mg/ / dL 以上,随時血糖350 mg/dL 以上)を認める場合や,ケトーシス傾向を認める場合があげられる.2 型糖尿病の透析患者において,食事療法の適正化や生活習慣の点検・是正,さらに経口血糖降下薬を用いても良好な血糖コントロールが得られない場合にはインスリン療法の適応となる(透析患者では使用できる経口血糖降下薬が限定されるので注意,「I.(5)経口血糖降下薬」の項参照).また,高血糖による糖毒性を解除する目的でもインスリン療法が行われる.血糖コントロールが不十分な状態で無為に時間を過ごすことは避け,適応となる場合はインスリン療法をなるべく早く導入すべきである1).不良なコントロールにおかれた期間が,その後の合併症の進行に影響するからである2). .インスリン製剤の特徴(表1) インスリン製剤としては,遺伝子組み換えにより生産された抗原性の低いヒトインスリン製剤や,最近ではインスリンアナログ注射薬が広く用いられている.インスリン製剤はその作用時間および作用様式から, 超速効型インスリン製剤(リスプロ,アスパルト,グルリジン),速効型インスリン製剤,中間型インスリン製剤(neutral protamine hagedorn:NPH 製剤)および中間型と速効型インスリンをさまざまな割合で組み合わせた混合型インスリン製剤,さらに持効型溶解インスリン製剤(グラルギン,デテミル)に分類される. リスプロやアスパルト,グルリジンなどの超速効型インスリンは吸収が速く,生理的なインスリン分泌動態により近い効果が期待できる.速効型インスリンに比較して食後血糖がより低下する.また食事の直前あるいは直後に注射できる利点があり,夜間の低血糖の頻度は低くQOL の向上にも有効である3〜6).持効型溶解インスリンであるグラルギンとデテミルは皮下からの吸収が遅く,長時間安定した血中インスリン濃度を保つことができるため,インスリンの基礎分泌を補充する薬剤として使用される. .インスリン療法の実際 1 型糖尿病におけるインスリン療法は,インスリンの生理的分泌パターンをシミュレートした食(直)前の速効型(あるいは超速効型)と就寝前の中間型あるいは持効型溶解インスリンの使用がスタンダードである.2 型糖尿病ではインスリン分泌能が多少残存している場合が多く,各食(直)前の速効型(あるいは超
速効型)もしくは,就寝前中間型ないし持効型溶解インスリン注射や夕食前混合型インスリン注射などから朝・夕食前混合型インスリン注射あるいは各食前速効型+就寝前中間型インスリン注射まで幅広い選択肢がある1). .血液透析での血中インスリン動態と血糖変動 インスリン治療中の糖尿病血液透析患者の血中インスリン濃度は,透析中に低下する7,8).インスリン低下の程度は,ダイアライザによって異なり,ポリスルフォン(polysulfone:PS)膜で低下しやすく,polyesterpolymer alloy(PEPA)膜で低下しにくい8〜10).血中イ 図1血液透析での血中インスリン動態8) mean±SD,IRI,血中インスリン; *P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001. 15 分未満ヒューマログ注® 1〜3 時間 作用発現時間商品名分類名 15 分未満アピドラ注®最大作用発現時間 表1インスリン製剤の種類と特徴 超速効型 ノボラピッド30 ミックス注® 混合型追加分泌を代替する 役割 0.5〜3 時間0.5〜3 時間3〜5 時間 約24 時間ピークなし 3〜5 時間 作用持続時間 10〜20 分ノボラピッド注® 1〜2 時間ランタス注® 追加・基礎両者を代替する 約24 時間1〜4 時間10〜20 分 0.5〜1 時間ヒューマログN 注® 18〜24 時間8〜10 時間1〜3 時間ヒューマリンN 注® 約24 時間3〜14 時間約1 時間レべミル注®持効型溶解基礎分泌を代替する 約24 時間4〜12 時間約1.5 時間ノボリンN 注® 中間型約24 時間4〜12 時間約1.5 時間イノレットN 注® 18〜24 時間2〜6 時間 3〜5 時間 1〜3 時間約30 分ノボリンR 注®速効型約8 時間1〜3 時間約30 分イノレットR 注® 5〜7 時間1〜3 時間0.5〜1 時間ヒューマリンR 注® ヒューマログミックス50 注® 18〜24 時間2〜12 時間0.5〜1 時間/ヒューマリン3/7 注® 約8 時間 約24 時間2〜8 時間約30 分イノレット30R,40R,50R® 18〜24 時間0.5〜6 時間15 分未満ヒューマログミックス25 注® 0.5〜4 時間 ノボラピッド50 ミックス注®ノボラピッド70 ミックス注®約24 時間2〜8 時間約30 分ノボリン30R,40R,50R®
ンスリンが透析で減少する機序はダイアライザへの吸着であると考えられている11).血液透析によるインスリン除去は,インスリン投与患者でも非投与患者でも同様におこるが,透析前インスリン血中濃度が高い例ほど大きい(図1) 8).したがって,インスリン療法を受けている透析患者では,血中インスリン濃度が透析後に低下しやすい. 一方,血糖は透析前の血糖値が高いほど,糖がより多く透析液に除去され低下するので,透析中のインスリン不足による高血糖がおこることは少ない.むしろ,高血糖例ほど,透析による急激な血糖低下が生じる危険の方が強い.急激な血糖低下によって透析後に惹起される高血糖には,透析によるインスリン除去が関係している.透析によってインスリン不足となったことと,急激な血糖低下によって,刺激され分泌されると考えられるグルカゴン,成長ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)などの血糖上昇ホルモンによって,透析後に血糖上昇が生じることが問題となる7,8).インスリン治療中の外来透析患者で午前透析の場合,昼食後には帰宅するので,透析後の血糖上昇をとらえにくい.透析前の随時血糖値が比較的良好なのにHbA1c 値が高くなっている例では,透析後高血糖が関与している可能性がある.これを防ぐためには,透析後のインスリン不足を補うべく,透析後にインスリンを補充投与するか,あるいは透析中の急激な血糖低下を防ぐべく,透析中のブドウ糖補充が必要となる.したがって,良好な血糖コントロールを達成するためには,透析日と非透析日のインスリン投与量と投与時間を変更することもある. .インスリン療法の副作用 インスリン療法の副作用としては,まず低血糖があげられる.強化インスリン療法により血糖コントロールが良好になるのと比例して,重症低血糖が多くなることが報告されている12).これを予防するには,低血糖に対する適切な処置や,血糖自己測定による効果的な予防などの患者教育が必要である.また,強化インスリン療法により急に血糖コントロールを行った際,網膜症増悪や神経障害の悪化を認めることがある13,14).インスリン治療は,糖尿病でインスリンが不足していることに対しそれを補う治療であり,生理的な治療法であるが,内因性のインスリンは膵臓から分泌され,門脈を通ってまず肝臓で作用するのに対し,皮下注射したインスリンは,末梢の毛細血管より全身循環に入っていくので,その点は生理的なインスリン作用とは異なることを理解する必要がある. .インスリン治療患者におけるシックデイ インスリン治療を行っている患者が感染症などで食事が摂れない場合(シックデイ)はインスリン拮抗ホルモンの影響で食事量が少なくてもむしろ血糖値は上昇する場合が多いため,インスリン中断は避け,量を調節しながらの継続が重要である.シックデイ・ルールとして,できるだけ摂取しやすいかたちでエネルギー,炭水化物を補給する1). 文献1) 日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイ ドライン2010,南江堂,東京,2010 / 2) The Diabetes Control and Complication Trial/Epi- demiology of Diabetes Interventions and Complica- / tions(DCCT/EDIC)Study Research Group:Intensive diabetes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes. N Engl J Med 353:2643- 2653, 2005 3) Home PD, Lindholm A, Riis A:The European Insulin Aspart Study Group:Insulin aspart vs. human insulin in the management of long-term blood glucose control in type 1 diabetes mellitus:A randomized controlled trial. Diabet Med 17:762-770, 2000 4) Gale EAM, The U. K. Trial Group:A randomized controlled trial comparing insulin lispro with human soluble insulin in patients with type 1 diabetes on intensified insulin therapy. Diabet Med 17:209-214, 2000 5) à谷健,小坂樹徳,赤沼安夫,繁田幸男,豊田隆謙, 堀田饒,七里元亮,河盛隆造,岩本安彦,大橋靖雄: 1 型および2 型糖尿病患者の頻回注射療法におけるインスリンリスプロと速効型ヒトインスリン製剤の比較―本邦における臨床試験成績―.臨医薬16:1613- 1630,2000 6) 岩本安彦,赤沼安夫,新美仁男,佐々木望,田嶼尚子, 河盛隆造,繁田幸男:Basal-Bolus 療法を実施中の1型糖尿病(IDDM)6 患者におけるインスリンアスパルトと速効型ヒトインスリン製剤の比較―国内第III相試験成績.糖尿病44:799-811,2001 7) 海津嘉蔵,瓜生康平,松本紘一,大西禎彦:糖代謝障 害と栄養障害.透析会誌38:1256-1257,2005 8) Abe M, Kaizu K, Matsumoto K:Evaluation of the hemodialysis-induced changes in plasma glucose and insulin concentrations in diabetic patients:comparison between the hemodialysis and non-hemodialysis days. Ther Apher Dial 11:288-295, 2007 9) Abe M, Kaizu K, Matsumoto K:Plasma insulin is removed by hemodialysis:Evaluation of the relation between plasma insulin and glucose by using a
dialysate with or without glucose. Ther Apher Dial 11:280-287, 2007 10) Abe M, Okada K, Mtsumoto K:Plasma insulin and C- peptide concentrations in diabetic patients undergoing hemodialysis:Comparison with five types of highflux dialyzer membranes. Diabetes Res Clin Pract 82: e17-e19, 2008 11) Abe M, Okada K, Ikeda K, Matsumoto S, Soma M, Matsumoto K:Characterization of insulin adsorption behavior of dialyzer membranes used in hemodialysis. Artif Organs 35:398-403, 2011 12) The Diabetes Control and Complication Trial(DCCT) Research Group:The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of longterm complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 329:977-986, 1993 13) The Diabetes Control and Complication Trial(DCCT) Research Group:The early worsening of diabetic retinopathy in the Diabetes Control and Complication Trial. Arch Ophthalmol 116:874-886, 1998 14) 高橋良当,高山真一郎,伊藤威之,井上幸子,大森安 恵:糖尿病における治療後有痛性神経障害86 例の病態.糖尿病41:165-170,1998
(7) インスリン以外の注射薬:GLP-1 受容体作動薬 ステートメント.リラグルチドは透析患者には慎重に投与すべきである. .エキセナチドは透析患者に禁忌である. 解説注射薬であるが,GLP-1 受容体作動薬のリラグルチドが使用可能で,これはGLP-1 のアナログ製剤で, DPP-4 による分解・不活化作用を受けにくい(表1) 1).リラグルチドは血中でDPP-4 により緩やかに代謝される.肥満,非肥満症例にかかわらず,体重を増加させずに血糖コントロール改善効果が得られる.単独投与では低血糖の危険性は少ない.副作用として消化器症状がしばしば認められる1).リラグルチドは透析患者を含め,腎機能障害患者に対する十分な使用経験がないため慎重に投与すべきである.GLP-1 受容体作動薬はインスリン依存状態(1 型糖尿病)への適応はなく,禁忌である.また,エキセナチドは透析患者に は禁忌である2,3). 文献1) Jacobsen LV, Hindsberger C, Robson R, Zdravkovic M:Effect of renal impairment on the pharmacokinetics of the GLP-1 analogue liraglutide. Br J Clin Pharmacol 68:898-905, 2009 2) Linnebjerg H, Kothare PA, Park S, Mace K, Reddy S, Mitchell M, Lins R:Effect of renal impairment on the pharmacokinetics of exenatide. Br J Clin Pharmacol 64:317-327, 2007 3) Byetta(exenatide injection)Prescribing information. // / / Available at http://pi.lilly.com/us/byetta-pi.pdf ビクトーザ皮下注リラグルチドGLP-1 受容体作動薬 主要消失経路薬剤名薬効分類透析至適用量商品名一般名 表1 GLP-1 受容体作動薬の排泄経路,透析性,投与量(2012 年5 月現在) 透析性 / 10-20 mg/day / 0.3-0.9 mg/day 通常常用量 腎で分解バイエッタ皮下注エキセナチド禁忌 常用量非腎 ― ―
II.食事エネルギー量 ステートメント.食事での推定エネルギー必要量は,性別,年齢,身体活動レベル別に,個々の患者で設定する.大部 / /分の患者では,25∼35 kcal/kg/day の範囲である. .肥満解消を目指す場合にはこれより少なく,るい痩・低栄養の改善をめざす場合にはこれより多くす る必要がある. .摂取エネルギーの処方は,患者の体重変化を観察しながら適正量となっているかを経時的に評価しつ つ調整を加える. 解説.エネルギー必要量の概念 摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスの不均衡は体重変化として現れ,エネルギー摂取の過剰では肥満をきたし,一方摂取不足が続くと,るい痩・低栄養となる.個人の推定エネルギー必要量とは,「エネルギーバランスが0(ゼロ)となる確率がもっとも高くなると推定される,習慣的なエネルギー摂取量の1日当たりの平均」と定義されている1).すなわち,当該個人の推定エネルギー摂取量は,真のエネルギー摂取量より不足する確率が50%,過剰になる確率が50%ということになる. .エネルギー摂取必要量を規定する要因 個体の1 日当たりの総エネルギー消費量は,表1 に示すような項目により構成されている1). ) 基礎代謝量(basal energy expenditure:BEE),安 静時エネルギー代謝量(resting energy expenditure:REE) BEE は,体温維持,心拍動,呼吸運動,筋緊張など生命維持に必要な最小限の活動にだけ使われるエネルギー量であり,年齢,性別,体格などによって異なる. BEE は,10 時間以上の絶食後,早朝空腹時に,正常体 温,快適な室内において安静仰臥位,覚醒状態,身体的にも精神的にも全くストレスのない状態で測定された消費熱量をいう.日本人のBEE を測定した多くの報告にもとづいて,体重1 kg 当たりのBEE の代表値が求められ,これを基礎代謝基準値と呼び,表2 のように示されている1). REE は,BEE より条件設定がゆるく,安静仰臥位の条件は要求されるが,BEE のような厳密な絶食は要求されておらず,BEE との最大の相違点は食事誘発性体熱産生を含んでいることである.また体温や環境温度の影響や身体的・精神的ストレスの影響も含まれている.REE はBEE の20%程度増しが妥当と考えられ臨床領域では利用されている2). ) 身体活動レベル 身体活動レベル(physical activity level:PAL)は,身体活動量の指標であり,身体活動に伴うエネルギー消費は食事誘発性体熱産生の影響も受ける.身体活動レベルは,二重標識法で測定された総エネルギー消費量を基礎代謝量で除した係数にて下記のように表現されている. 身体活動レベル=1 日当たり総エネルギー消費量 ÷1 日当たり基礎代謝量 身体活動レベルの目安は表3 に示すとおりである1). A.総エネルギー消費量.基礎代謝量.身体活動にともなうエネルギー.食事誘発性体熱産生B.組織の増減に相当するエネルギー .成長に必要なエネルギー(小児) .胎児の成長に必要なエネルギー(妊婦) .母乳合成のエネルギー(授乳婦) 表1エネルギー消費量の構成要因 21.5 70 以上 女性男性年齢(歳) 21.5 50〜69 21.7 22.3 30〜49 / /表2基礎代謝基準値(kcal/kg/day) 1) 20.7 22.1 24.0 18〜29 20.7
) 食事誘発性体熱産生 食事誘発性体熱産生とは食物摂取後に数時間にわたって代謝が亢進し,エネルギー消費量が増加する現象をいう. .推定エネルギー必要量の評価・算出法1) エネルギー摂取量の指示として,日本糖尿病学会からは下記の考え方にもとづき,表4 のように提示されている. エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量さらに具体的に推定エネルギー必要量を求めるには,基礎代謝量と身体活動レベルより下記により算出する. /推定エネルギー必要量(kcal/day)=基礎代謝量/ (kcal/day)×身体活動レベル基礎代謝量は実測するのが理想であるが,測定は容 易ではなく,また個人内でも変動することを勘案すると表2 に示した基礎代謝基準値から下記により算出して利用することが臨床上では現実的である. / /基礎代謝量(kcal/day)=基礎代謝基準値(kcal/ / kg/day)×基準体重(kg)こうして算出した標準体重(body mass index=22 / /の体重)を基準とした推定エネルギー必要量(kcal/kg/ day)を年齢,性別,身体活動レベル別に表すと表5 のようになる. .透析患者の推定エネルギー必要量の評価につ いて慢性腎不全・維持透析患者の安静時エネルギー代謝量を検討したこれまでの研究報告では,健常者の安静 1.2 2.0生活の大部分が座位だが,立位・歩行・軽運動が3〜5 時間あり(レベルI) 係数 1.25 寝たきりで自動運動あり 1.5 1.1 表3身体活動レベルと係数 (文献1 より引用改変) 座位の生活,立位・歩行は1 時間程度(レベルI未満) 寝たきりで植物状態(自動運動なし) 車椅子での生活 1.0 立位・歩行4 時間,中強度運動が1 時間(レベルII) 1.75肉体労働者,活発な運動習慣を持つ者(レベルIII) エネルギー摂取量=標準体重注1)×身体活動量注2)注1) 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 /注2) 身体活動量は体を動かす程度によって決まるエネルギー必要量(kcal/kg 標準体重)身体活動量の目安 /軽労作(デスクワークが主な人,主婦など) 25〜30 kcal/kg 標準体重/普通の労作(立仕事が多い職業など) 30〜35 kcal/kg 標準体重/重い労作(力仕事の多い職業など) 35〜kcal/kg 標準体重 表4日本糖尿病学会によるエネルギー摂取量14) 身体活動レベル (厚生労働省策定の日本人の食事摂取基準2)にもとづく) (標準体重当たり) 35 37 26 70 以上(歳) 表5年齢,性別,身体活動レベル別にみた推定エネルギー必要量 注1) 推定エネルギー必要量=標準体重×表中に示す標準体重当たりエネルギー. 標準体重は,身長(m) 2×22 として算出注2) 肥満解消をめざす場合にはこれより少なく,るい痩・低栄養の改善をめざす場合にはこれより多くする必要がある.摂取エネルギーの処方にあたっては,患者の体重変化を観察しながら適正量となっているかを経時的に評価しつつ調整を加える.注3) 脂質摂取のエネルギー比率は,20〜25%とする. 36 38 27 50〜69(歳) II II I未満I 26 32 25 31 I未満I身体活動レベル 女性男性 31 30
時エネルギー代謝量と同等であるとするもの,高値であるとするもの,低値であるとするもの,またさらに合併病態により異なるとするものなどさまざまであり一定していない3〜13).そもそも健常者においてさえエネルギー必要量はかなりの個人差が認められているのである.さらに,慢性腎不全・維持透析患者における身体活動に伴うエネルギー消費量や食事誘発性体熱産生についての研究報告は見当たらない.また総エネルギー摂取量の把握は食事摂取量記録調査でしかできないため,摂取エネルギー量の評価の正確性は管理栄養士の患者の食事内容を的確に把握する技術と患者自身が自分の食事内容を正確に記録する能力とに大きく依存しており,摂取エネルギー量の評価には誤差が生じるケースも多い. これらのことから,臨床現場での対処としては,透析患者の食事エネルギー量は,最初の一歩は健常者で示されている値にもとづいて処方し,食事指導後は患者の体重変化を観察しながら適正量となっているかを経時的に評価しつつ調整を加えることが現実的である. .三大栄養素の配分など 週3 回の血液透析患者では,たんぱく質摂取は糖尿病患者でも非糖尿病の透析患者と同様に標準体重当た/ / / /り0.9〜1.2 g/kg/day(男性60 g/day,女性50 g/dayまで)とし,脂質の摂取はエネルギー比率で20〜25%とすることが推奨される.食塩,水分,カリウム,リンの摂取も非糖尿病の透析患者と同様とする. 文献1) 厚生労働省:日本人の食事摂取基準2010 年版,第一出 版,東京,2009 2) 雨海照祥,金子道夫:エネルギー消費の意義と問題. 細谷憲政編著,今なぜエネルギー代謝か,p13-52,第一出版,東京,2000 3) Monteon FJ, Laidlaw SA, Shaib JK, Kopple JD: Energy expenditure in patients with chronic renal failure. Kidney Int 30:741-747, 1986 4) Schneeweiss B, Graninger W, Stockenhuber F, Druml W, Ferenci P, Eichinger S, Grimm G, Laggner AN, Lenz K:Energy metabolism in acute and chronic renal failure. Am J Clin Nut 52:596-601, 1990 5) Ikizler TA, Wingard RL, Sun M, Harvell J, Parker RA, Hakim RM:Increased energy expenditure in hemodialysis patients. J Am Soc Nephrol 7:2646-2653, 1996 6) Avesani CM, Cuppari L, Silva AC, Sigulem DM, Cendoroglo M, Sesso R, Draibe SA:Resting energy expenditure in pre-dialysis diabetic patients. Nephrol Dial Transplant 16:556-565, 2001 7) OʼSullivan AJ, Lawson JA, Chan M, Kelly JJ:Body composition and energy metabolism in chronic renal insufficiency. Am J Kidney Dis 39:369-375, 2002 8) Avesani CM, Draibe SA, Kamimura MA, Dalboni MA, Colugnati FA, Cuppari L:Decreased resting energy expenditure in non-dialyzed chronic kidney disease patients. Nephrol Dial Transplant 19:3091-3097, 2004 9) Cuppari L, de Carvalho AB, Avesani CM, Kamimura MA, Dos Santos Lobão RR, Draibe SA:Increased resting energy expenditure in hemodialysis patients with severe hyperparathyroidism. J Am Soc Nephrol 15:2933-2939, 2004 10) Bazanelli AP, Kamimura MA, da Silva CB, Avesani CM, Lopes MG, Manfredi SR, Draibe SA, Cuppari L: Resting energy expenditure in peritoneal dialysis patients. Perit Dial Int 26:697-704, 2006 11) Kogirima M, Sakaguchi K, Nishino K, Ichikawa Y, Hiramatsu F, Yamamoto S:Low resting energy expenditure in middle-aged and elderly hemodialysis patients with poor nutritional status. J Med Invest 53:34-41, 2006 12) Kamimura MA, Draibe SA, Avesani CM, Canziani ME, Colugnati FA, Cuppari L:Resting energy expenditure and its determinants in hemodialysis patients. Eur J Clin Nutr 61:362-367, 2007 13) Horácek J, Sulková SD, Fortová M, Lopot F, Kalousová M, Sobotka L, Chaloupka J, Tesar V, Zák A, Zima T: Resting energy expenditure and thermal balance during isothermic and thermoneutral hemodialysisheat production dose not explain increased body temperature during haemodialysis. Nephrol Dial Transplant 22:3553-3560, 2007 14) 日本糖尿病学会:糖尿病治療ガイド2012-2013.文光 堂,東京,2012
III.合併症管理 (1) 糖尿病網膜症 ステートメント.透析導入後も糖尿病網膜症は進行しうるため,定期的な眼科受診を推奨する. .高度の硝子体出血直後,あるいは硝子体手術前後の血液透析の際は,抗凝固薬として通常のヘパリン ではなく,メシル酸ナファモスタットあるいは低分子ヘパリンの使用が望ましい. 解説はじめに 糖尿病の眼合併症には,糖尿病網膜症以外に屈折・調節異常,血管新生緑内障,白内障,黄斑症,外眼筋麻痺,虚血性視神経症などがあるが,糖尿病透析患者で最も問題となるのは網膜症であるため,網膜症に限定したガイドの作成を行った. .糖尿病網膜症の疫学および病期分類 糖尿病性腎症および網膜症はいずれも慢性の高血糖に起因する細小血管症であり,通常平行して進行する.わが国における透析導入患者の原疾患として,糖尿病性腎症が第1 位であるのと同様に,糖尿病網膜症はわが国における中途失明の主要な原因の一つである. 糖尿病網膜症は古典的に非増殖網膜症と増殖網膜症に大別され,非増殖網膜症のうち特に軟性白斑や網膜内細小血管異常などを認める時期を前増殖網膜症として区分されている(改変Davis 分類,表1).この分類は,内科医と眼科医の連携に用いられる糖尿病眼手帳(糖尿病眼学会発行)にも記載されており,患者にも比較的理解しやすい分類といえる. わが国の眼科領域では,広く福田分類(表2)が用いられている1).この分類は,網膜症の重症度に加え,治療経過を付記することで内科医にも理解しやすい分類となっている.良性のA 群と悪性のB 群に大別,それぞれが5 段階に細分化されている.A1,A2 は良性網膜症のうち単純網膜症であり,点状出血,さらには血管透過性亢進による硬性白斑,網膜毛細血管の閉塞に基づく軟性白斑が少数認められる.B1 以降は悪性網膜症であり,B1(増殖前網膜症)では軟性白斑が顕性化する.B2 以降が増殖網膜症であり,B2,B3 では新生血管,B4 は硝子体出血,B5 では硝子体への増 殖組織を伴う所見がみられる.このような新生血管,硝子体出血,増殖組織などが後述の光凝固や硝子体手術によって沈静化したAIIIからAVは,増殖停止網膜症と呼ばれ,良性網膜症に戻る. .糖尿病網膜症の治療 厳格な血糖コントロールが網膜症の発症予防および進展抑制につながることは,これまでの国内外の報告より明らかであり2,3),内科治療としての血糖コントロールは網膜症治療における基本であることはいうまでもない.また慢性腎不全患者における網膜症の増悪危険因子として,高血圧,凝固線溶系異常,低蛋白血症,尿毒症物質の存在,貧血4)などがあげられており,これらに対する内科的治療も重要となる. 網膜症に対する直接的な眼科治療として,光凝固療法および硝子体手術がある.光凝固は網膜毛細血管床閉塞領域や,網膜血管からの血漿成分の漏出による網膜浮腫などに対して行われる.また,硝子体手術は長 正常網膜症なし 眼底所見病態網膜症病期 表1糖尿病網膜症の改変Davis 分類 軟性白斑静脈異常網膜内細小血管異常 血管閉塞増殖前網膜症 網膜・乳頭上新生血管網膜前・硝子体出血線維血管性増殖膜牽引性網膜剝離 血管新生増殖網膜症毛細血管瘤網膜点状・斑状・線状出血硬性白斑・網膜浮腫 血管透過性亢進単純網膜症なし
期にわたって吸収消褪のみられない硝子体出血,増殖膜による牽引性網膜剝離などが適応となる.近年透析導入後の糖尿病患者においても,安全に硝子体手術が行われるようになったが5,6),非腎不全患者との視力予後成績の差についてはこれまで検討されていない. .透析導入時および導入後の糖尿病網膜症 腎症により透析導入に至った糖尿病患者では,網膜症も高度に進行している場合が多い.国内外の報告では,透析導入時に37〜85%の糖尿病患者で増殖網膜症を合併し,また視力0.1 以下の高度視力障害は47〜54%の患者で認めるとされている7〜11).東京女子医科大学糖尿病センターにおいて1978 年から2000 年までの23 年間に血液透析を導入された糖尿病患者652 名,計1,304 眼を対象とした検討12)では,増殖網膜症(福田分類B2〜5)に増殖停止網膜症(福田分類A3〜5)を加えた広義の増殖網膜症の割合は69%であり,過去の報告とほぼ同様の結果であった. なお近年では,透析導入時における増殖網膜症の割合が減少し,それに伴い高度視力障害を伴う患者が減少している.その理由として,透析導入以前に光凝固療法や硝子体手術による眼科治療の介入を行うことが多くなったことが考えられる12). 透析導入後の網膜症の変化について竹田ら9)は,導入後6 か月以降に安定化することを報告,また徳山ら11)は増殖前および増殖網膜症は導入時50%を占めていたが,導入後1 年以内で半数以下になり,経時的に安定化する傾向にあったとしている.市川13)は,黄斑症は導入後数か月で消失し,さらに導入後2 年を経過すると非活動型といわれる燃えつき網膜症が多くなるとしている. 一方,石井ら12)の多数例の観察では,導入後1 年以内に約10%の網膜症で悪化がみられ,3 年以内にさら に約10%が悪化する結果であった.このように,導入後も網膜症が進行する症例が少なくないことから,透析導入後においても眼科医との密接な連携が必要であり,本ガイドでは定期的な眼科受診を強く推奨する. .糖尿病透析患者における網膜症の管理 網膜症の治療において血糖コントロールが基本であることは前述したが,透析導入後の糖尿病患者における,血糖コントロールの影響については,これまでほとんど検討されていない.一施設の報告であるが,増殖網膜症の透析導入後の進展率に対し,血糖コントロールの影響はなかったが,非増殖網膜症では, HbA1c で評価された血糖コントロールが不良の患者で網膜症進展率の有意な増加が認められている14).この結果より,透析導入した症例でも血糖コントロールの必要性が示唆される. 糖尿病透析患者における網膜症の管理において問題となるのは,高度硝子体出血の直後あるいは硝子体手術前後の血液透析における,抗凝固薬の選択である.この時期の抗凝固薬として,ヘパリンと,メシル酸ナファモスタットあるいは低分子ヘパリンを比較した内外の報告は,詳細に検索しても見当たらない.本ガイドでは安全性を考慮し,高度の硝子体出血直後,あるいは硝子体手術前後の血液透析の際の抗凝固薬には,メシル酸ナファモスタットあるいは低分子ヘパリンの使用が望ましいとしたが,今後検証が必要であるため,レベル2 とした. 文献1) 堀貞夫:糖尿病網膜症の病期分類(福田分類の再考) その1.眼紀40:205-213,1989 A1:軽症単純網膜症良性網膜症(A) 眼底所見網膜症病期 網膜内細小血管異常,軟性白斑,網膜浮腫,線上・火焔状出血,静脈拡張B1:増殖前網膜症 陳旧性の硝子体出血A4:重症増殖停止網膜症 悪性網膜症(B) 表2糖尿病網膜症の福田分類 B3:中期増殖網膜症 陳旧性の新生血管A3:軽症増殖停止網膜症 陳旧性の(線維血管性)増殖組織A5:重症増殖停止網膜症 乳頭に直接連絡しない新生血管 しみ状出血,硬性白斑,少数の軟性白斑A2:重症単純網膜症 B2:早期増殖網膜症毛細血管瘤,点状出血 黄斑病変(M),牽引性網膜剝離(D),血管新生緑内障(G),虚血性視神経症(N),光凝固(P),硝子体手術(V)合併症 硝子体の(線維血管性)増殖組織を伴うものB5:末期増殖網膜症 硝子体出血,網膜前出血B4:末期増殖網膜症 乳頭に直接連絡する新生血管
2) The Diabetes Control and Complications Trial Re- search Group:The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of longterm complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 329:977-986, 1993 3) Ohkubo Y, Kishikawa H, Araki E, Miyata T, Isami S, Motoyoshi S, Kojima Y, Furuyoshi N, Shichiri M: Intensive insulin therapy prevents the progression of diabetic microvascular complications in Japanese patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus:a randomized prospective 6-year study. Diabetes Res Clin Pract 28:103-117, 1995 4) Davis MD, Fisher MR, Gangnon RE, Barton F, Aiello LM, Chew EY, Ferris FL 3 rd, Knatterud GL:Risk factors for high-risk proliferative diabetic retinopathy and severe visual loss:Early Treatment Diabetic Retinopathy Study Report #18. Invest Ophthalmol Vis Sci 39:233-252, 1998 5) Nawrocki J, Chrzanowski W, Koch D, Dziegielewski K:Vitreoretinal surgery in diabetic patients on hemodialysis. Eur J Ophthalmol 7:283-287, 1997 6) Hayashi H, Kurata Y, Imanaga Y, Goya K, Oshima K: Vitrectomy for diabetic retinopathy in patients undergoing hemodialysis for associated end-stage renal failure. Retina 18:156-159, 1998 7) El Shahat Y, Rottembourg J, Bellio P, Guimont MC, Rousselie F, Jacobs C:Visual function can be preserved in insulin-dependent diabetic patients treated by maintenance hemodialysis. Proc Eur Dial Transplant Assoc 17:167-172, 1980 8) Diaz-Buxo JA, Burgess WP, Greenman M, Chandler JT, Farmer CD, Walker PJ:Visual function in diabetic patients undergoing dialysis:comparison of peritoneal and hemodialysis. Int J Artif Organs 7:257-262, 1984 9) 竹田宗泰,鬼原彰,相沢芙束,田宮宗久,佐藤義成: 糖尿病網膜症に対する透析療法の影響.眼科31:849- 854,1989 10) 呉雅美,清水芳樹,斎藤喜博:糖尿病性腎症患者で 血液透析が視力,網膜症に与える影響.日眼紀42: 1060-1063,1991 11) 徳山孝展,池田誠宏,石川浩子,他:血液透析症例に おける糖尿病網膜症.あたらしい眼科11:1069-1072, 1994 12) 石井晶子,馬場園哲也,春山賢介,朝長 修,船津英 陽,北野滋彦,岩本安彦:糖尿病透析患者における網膜症の年次的変化.糖尿病45:737-742,2002 13) 市川一夫:糖尿病透析患者の合併症.臨牀透析17:91- 95,2001 14) 石井晶子,馬場園哲也:透析患者の糖尿病糖尿病網 膜症「最新透析医学(西沢良記編)」,医薬ジャーナル, p400-405,医薬ジャーナル社,大阪,2008
(2) 起立性低血圧 ステートメント.糖尿病患者では,血液透析終了直後に重篤な起立性低血圧を呈する場合があるため,起立時眩暈,意 識消失などに注意する. .上記症状が頻発する患者では,血液透析終了後の立位血圧を測定することが望ましい. .対策として,透析終了後臥位からすぐに起立させず,一定時間座位を保った上で起立させることや, ドライウェイトの適切な設定,透析間の体重増加(食塩・水分摂取量)を極力抑える,透析方法の工夫(ECUM の併用あるいはHDF への変更),透析時間の延長などを試みる. .降圧薬使用患者では,透析日の減量あるいは中止,降圧薬種類の変更も検討する. 解説糖尿病網膜症同様,糖尿病性神経障害も,透析導入時の糖尿病患者において高頻度にみられる合併症である.神経障害は多彩な症状を示すが,透析医療において最も問題となるのは起立性低血圧,特に透析終了時の低血圧である. 一方,透析関連低血圧とは,「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン(日本透析医学会)」1)によると,透析患者にみられる低血圧の総称であり,透析中の急激な血圧低下(透析低血圧),起立性低血圧,常時低血圧に分けられている.本ガイドでは,前記ガイドラインとの重複を避け,特に糖尿病透析患者において問題となる起立性低血圧に限定して,上記ステートメントを作成した. 生理的には血液透析による除水によって循環血液量が減少すると,代償性の自律神経反射により血管が収縮し血圧低下を予防する1).糖尿病性自律神経障害のある患者では,このような反射の障害が透析終了時の起立性低血圧の主な病態となる.症状として,必ずしも起立時眩暈(立ちくらみ)などの症状を訴えるとは限らず,急激に意識を消失することもある(失神).ま た起立直後ではなく,数分後に血圧が下がる場合もあり,注意を要する.低血圧症状を認める患者では,血液透析終了後の立位血圧を測定することが望ましい. 糖尿病透析患者における起立性低血圧対策のエビデンスは未だ十分ではない.透析終了後臥位からすぐに起立させず,一定時間座位を保った上で起立させることや,ドライウェイトの適切な設定,透析間の体重増加(食塩・水分摂取量)を極力抑える,透析方法の工夫(ECUM の併用あるいはHDF への変更)や透析時間の延長による緩徐な除水,などを試みる.また降圧薬使用患者では,透析日の減量あるいは中止も検討する.このような対策が,これまで透析医療の現場で経験的に行われており,実際有効であることが多いことから,本ガイドにおいても委員会のオピニオンとして推奨することとした. 文献1) 日本透析医学会:血液透析患者における心血管合併症 の評価と治療に関するガイドライン.透析会誌44: 337-425,2011
(3) 動脈硬化症 ステートメント.糖尿病血液透析では,非糖尿病透析患者に比して,透析導入期より高度の動脈硬化や血管石灰化を認 める場合が多いことに留意する. .動脈硬化の診断は,単純X 線での大血管や末梢血管石灰化の評価,超音波B モード法によるintima- media thickness(IMT)測定,pulse wave velocity(PWV)などで行う. .糖尿病透析患者の末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)の罹患率は,非糖尿病に比し約 4 倍高い.足病変の有無や足背動脈の触診を定期的に最低6 か月に一度は行い,異常所見があれば適切に対処する. .糖尿病透析患者に特化した高血圧症の治療目標値は存在しない.脂質異常症では2 型糖尿病透析患者 に対するスタチンの有用性が示されている.現時点では,2011 年に発表された「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」で示された管理目標値に基づいた管理が望まれる. 解説.疫学 日本人透析患者の透析導入の原因疾患の1 位は糖尿病性腎症である.糖尿病は動脈硬化の古典的危険因子の一つであり,それゆえ,糖尿病透析患者での心血管死亡率は非糖尿病透析患者に比し有意に上昇しており,生命予後は糖尿病患者で有意に短い1).これは,糖尿病性腎症患者では透析導入前にすでに動脈硬化が進展しているためである2,3).したがって糖尿病透析患者では,その透析導入時にすでにchronic kidney disease(CKD) 4,5)と糖尿病の因子が加わり,動脈硬化が高度に進展した患者群として捉えられる.実際,無症候性患者の透析導入時に冠動脈造影検査によって冠動脈の有意狭窄の有無を調べた検討6)でも,糖尿病患者では83.3%に有意狭窄が認められ,非糖尿病患者の33.3%に比し有意に高いことが報告され,別の研究でも同様の結果が報告されている7). 糖尿病罹患の動脈硬化ハイリスク群では,血圧8),脂質異常症9)などの管理目標値に関してローリスク患者より,層別化されたより厳格なコントロールの重要性が腎機能正常患者で提唱されている.しかし,透析患者でもこれら因子に対する介入の重要性は示されているものの,非糖尿病に比し糖尿病透析患者でのより厳格なコントロール目標値の設定が必要か否かについての明確なエビデンスは殆ど存在しない.むしろ低血圧や低脂血症を示す患者ではmalnutrition-inflamma- tion-atherosclerosis(MIA)症候群の要素が生命予後 悪化に,より強く関与するため10),薬剤介入せずに栄養状態の改善に努めるべきと考えられている. 透析患者で顕著にみられる動脈硬化の一亜型として血管石灰化があげられる.その存在と生命予後との関連11〜13)が報告され,糖尿病透析患者では非糖尿病患者と比べ高率にみられる.この原因として高血糖の関与14)に加えて,糖尿病では血清PTH 低下や骨芽細胞機能不全に伴う低回転骨化が起こりやすく15),これに伴って骨での余剰なカルシウム・リン吸着能の低下がおこる16)ことで,血管を含む異所性石灰化が促進される17). .糖尿病透析患者での動脈硬化進展の原因 糖尿病透析患者は動脈硬化リスクであるCKD に加えて,CKD とは独立した糖尿病という固有の動脈硬化リスクを有しており動脈硬化の進展は著明なものとなる.さらに,糖尿病に高頻度に併発する脂質異常症,高血圧症などの血管障害の主要リスク因子となる疾患が動脈硬化進展に関与していると考えられる.糖尿病透析患者での動脈硬化は透析導入の時点で明らかに非糖尿病患者より進展しており,保存期腎不全での動脈硬化の進行が糖尿病透析患者での進展の主因と想定される.実際,保存期の糖尿病性腎症患者を,動脈壁肥厚度の指標である動脈壁内膜中膜肥厚度(intima-media thickness:IMT)や硬化度の指標である脈波伝播速度(pulse wave velocity:PWV)などの非侵襲的手
法を用いて動脈硬化の程度を測定すると,両指標ともに非糖尿病患者より有意な進展が認められ,透析導入時の冠動脈造影検査での有意狭窄の率でも糖尿病患者での有意な上昇が示され,透析導入時の動脈硬化の進展度合いが,その後の透析患者の心血管病変の発生率に決定する主要因子と報告されている18). 透析患者での動脈硬化の危険因子は一般人での動脈硬化の危険因子である高血圧症,脂質異常,糖尿病,喫煙などに加え,透析患者固有の危険因子である貧血,低栄養,ミネラル代謝異常などが関与することが特徴である19).これら透析患者固有の動脈硬化危険因子が糖尿病透析患者では高率に発症することも動脈硬化進展に対するさらなる寄与因子と考えられる. .診断 透析患者での動脈硬化の診断に,非侵襲的な検査である超音波B モード法によるIMT やPWV の有用性が心血管死亡率との関連によって示されている20,21).さらに,単純X 線像での大血管や手などの末梢血管石灰化の有無11,12),X 線CT による大動脈石灰化指数(aortic calcification score:ACS)なども臨床上有用な指標となることが心血管死亡率や心血管事象の出現率との関連で示されている22).さらにankle brachial pressure index(ABI)は下肢動脈の石灰化により加圧で虚脱しにくく上昇する.このため,ABI 低下に加えて極端なABI の上昇はPAD のスクリーニングに有用と報告されている23).ABI>1.3 の場合,toe brachial pressure index(TBI)を測定することで下肢動脈石灰化に伴う血管病変の存在が確認可能で,TBI が 0.6 以下の場合は狭窄などの血管障害を疑う24).これ ら検査を組み合わせて動脈硬化の進展に関する評価を行う. .糖尿病透析患者の動脈硬化およびその危険因 子に対する治療良好な血糖コントロールは糖尿病透析患者の生命予後,特に心血管死亡率の低下と関連することが本邦からの疫学研究で報告25)されていることから,高血糖が動脈硬化リスクを上昇させると考えられる.したがって,治療の第一歩として糖尿病透析患者に対する適切な血糖管理が望まれる.また同時に動脈硬化進展を防止する治療として,糖尿病に合併しやすい動脈硬化リスクである血圧,血清脂質,および骨代謝異常を呈した場合には,それぞれに対して適切な管理を行う.また,末梢動脈疾患の進展に加えて糖尿病神経障害による皮膚血流の低下が原因で下肢潰瘍の罹患率も上昇するため,フットケアに関する教育や足病変の有無につ いて定期的な監視が必要となる. ) 血圧 腎機能正常の糖尿病患者に対する血圧管理に関しては,糖尿病罹患が動脈硬化リスクであるため,より厳格な血圧管理が望まれているものの,糖尿病透析患者ではより厳格な血圧管理が動脈硬化を抑制し死亡率,特に心血管死亡率を低下させるとの報告はない.したがって,現時点では日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」に基づき,安定した慢性維持透析患者における降/圧目標値は週初めの透析前血圧で140/90 mmHg 未満とするのが望ましい19).糖尿病透析患者では介入前に血圧低値の患者が非糖尿病に比し高率であり,これら患者では生命予後が不良である(reverse epidemiology).血圧低値群では栄養不良や重症慢性心不全の関与が予後不良に関連していると考えられており,これらに対する治療が優先される. ) 脂質異常症 日本透析医学会統計調査委員会の報告では,心筋梗塞をエンドポイントにすると,LDL-C 高値,HDL-C低値,トリグリセリド(TG)高値は高リスクの予測因子である26).また,食事摂取に影響されず,摂食後でも評価可能なnon-HDL-C(=TC マイナスHDL-C)高値も,有用な心血管イベントの予測因子であることが報告された19).これまで糖尿病透析患者でのスタチン投与による脂質低下療法が心血管イベント発症リスクを有意に低下させうることを明確に示した介入研究はなかった.2 型糖尿病血液透析患者1,255 名を対象/に,アトルバスタチン20 mg/日の効果をプラセボと比較した4D 試験27)では,心血管死亡,非致死的心筋梗塞,脳血管障害の複合1 次エンドポイントのリスクは8%のみの低下で有意ではなかった.しかし,2 次エンドポイントである虚血性心事故(心臓死,非致死的心筋梗塞,PTCA,CABG,その他の冠動脈疾患に対するインターベンションの合計)のリスクは18%有意に低下させたことから,糖尿病透析患者でのスタチンの介入の有用性が提唱されていた.最近報告された/ 4D 試験のサブ解析28)ではLDL-C 145 mg/dL 以上の/ 2 型糖尿病患者では,アトルバスタチン20 mg/日の投与によって,心血管イベント,心血管死亡率,および全死亡率の改善が有意に明確に示された.現時点では糖尿病と非糖尿病透析患者を差別化した,より厳格なコントロールが有効であるかについての報告はない.したがって,糖尿病透析患者でも非糖尿病同様,日本透析医学会のガイドに基づいて一次予防ではLDL-C
/ / 120 mg/dL 未満あるいはNon-HDL-C 150 mg/dL 未/満,二次予防ではLDL-C 100 mg/dL 未満あるいは/ Non-HDL-C 130 mg/dL 未満を脂質異常症の管理目標値とする19).エビデンスの面から考えて,第一選択薬はスタチンとする. 一方,糖尿病透析患者では,薬剤介入などしない状況での総コレステロール(TC)低値の比率が高く,これら患者では栄養不良の要素が強くかえって総死亡あるいは心血管死亡のリスクが高い(reverse epidemiology)ため,栄養不良に対する治療が第一義的となる. ) PAD CAD はPAD の独立した危険因子であり,さらに,糖尿病透析患者のPAD の罹患率は,非糖尿病に比し約4 倍高い29).症候が乏しく進行も早いことから重症虚血肢となって発見されることが多く,治療抵抗性となりやすい.したがって日常臨床で,足病変の有無や足背動脈の触診を定期的に最低6 か月に一度は行い,異常所見があれば適切に対処することが望まれる.また.わが国の透析患者全体での下肢切断を受ける患者の率が増加30)していることから,最近のPAD 罹患率は上昇していると考えられる.透析患者での下肢切断術後の生命予後が極めて不良であることが特徴である31).診断・治療にあたっては,糖尿病特有の診断・治療法は設定されておらず,現時点では日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」で詳述された指針に基づいて診療を行うのが望ましい19). 文献1) 日本透析医学会統計調査委員会報告(2004 年6 月20 日) 2) Kimoto E, Shoji T, Shinohara K, Hatsuda S, Mori K, Fukumoto S, Koyama H, Emoto M, Okuno Y, Nishizawa Y:Regional arterial stiffness in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease. J Am Soc Nephrol 17:2245-2252, 2006 3) Ishimura E, Shoji T, Emoto M, Motoyama K, Shinohara K, Matsumoto N, Taniwaki H, Inaba M, Nishizawa Y:Renal insufficiency accelerates atherosclerosis in patients with type 2 diabetes mellitus. Am J Kidney Dis 38:S186-190, 2001 4) Sarnak MJ, Levey AS, Schoolwerth AC, Coresh J, Culleton B, Hamm LL, McCullough PA, Kasiske BL, Kelepouris E, Klag MJ, Parfrey P, Pfeffer M, Raij L, Spinosa DJ, Wilson PW;American Heart Association Councils on Kidney in Cardiovascular Disease, High Blood Pressure Research, Clinical Cardiology, and Epidemiology and Prevention:Kidney disease as a risk factor for development of cardiovascular dis- ease:a statement from the American Heart Association Councils on Kidney in Cardiovascular Disease, High Blood Pressure Research, Clinical Cardiology, and Epidemiology and Prevention. Circulation 108: 2154-2169, 2003 5) Go AS, Chertow GM, Fan D, McCulloch CE, Hsu CY: Chronic kidney disease and the risks of death, cardiovascular events, and hospitalization. N Engl J Med 351:1296-1305, 2004 6) Ohtake T, Kobayashi S, Moriya H, Negishi K, Okamoto K, Maesato K, Saito S:High prevalence of occult coronary artery stenosis in patients with chronic kidney disease at the initiation of renal replacement therapy:an angiographic examination. J Am Soc Nephrol 16:1141-1148, 2005 7) Joki N, Hase H, Nakamura R, Yamaguchi T:Onset of coronary artery disease prior to initiation of haemodialysis in patients with end-stage renal disease. Nephrol Dial Transplant 12:718-723, 1997 8) 日本高血圧学会:「高血圧治療ガイドライン2009」.ラ イフサイエンス出版,東京,2009 9) 日本動脈硬化学会:「動脈硬化疾患予防ガイドライン 2007 年版」10) 日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況(2001 年12 月31 日現在).p567-597,622-648,日本透析医学会,東京,2002 11) Okuno S, Ishimura E, Kitatani K, Fujino Y, Kohno K, Maeno Y, Maekawa K, Yamakawa T, Imanishi Y, Inaba M, Nishizawa Y:Presence of abdominal aortic calcification is significantly associated with all-cause and cardiovascular mortality in maintenance hemodialysis patients. Am J Kidney Dis 49:417-425, 2007 12) London GM, Guérin AP, Marchais SJ, Métivier F, Pannier B, Adda H:Arterial media calcification in end-stage renal disease:impact on all-cause and cardiovascular mortality. Nephrol Dial Transplant 18:1731-1740, 2003 13) Blacher J, Guerin AP, Pannier B, Marchais SJ, London GM:Arterial calcifications, arterial stiffness, and cardiovascular risk in end-stage renal disease. Hypertension 38:938-942, 2001 14) Ishimura E, Okuno S, Kitatani K, Kim M, Shoji T, Nakatani T, Inaba M, Nishizawa Y:Different risk factors for peripheral vascular calcification between diabetic and non-diabetic haemodialysis patients-importance of glycaemic control. Diabetologia 45: 1446-1448, 2002 15) Inaba M, Nagasue K, Okuno S, Ueda M, Kumeda Y, Imanishi Y, Shoji T, Ishimura E, Ohta T, Nakatani T, Kim M, Nishizawa Y:Impaired secretion of parathyroid hormone, but not refractoriness of osteoblast, is a major mechanism of low bone turnover in hemodia-
lyzed patients with diabetes mellitus. Am J Kidney Dis 39:1261-1269, 2002 16) Kurz P, Monier-Faugere MC, Bognar B, Werner E, Roth P, Vlachojannis J, Malluche HH:Evidence for abnormal calcium homeostasis in patients with adynamic bone disease. Kidney Int 46:855-861, 1994 17) London GM, Marchais SJ, Guérin AP, Boutouyrie P, Métivier F, de Vernejoul MC:Association of bone activity, calcium load, aortic stiffness, and calcifications in ESRD. J Am Soc Nephrol 19:1827-1835, 2008 18) Hase H, Tsunoda T, Tanaka Y, Takahashi Y, Imamura Y, Ishikawa H, Inishi Y, Joki N:Risk factors for de novo acute cardiac events in patients initiating hemodialysis with no previous cardiac symptom. Kidney Int 70:1142-1148, 2006 19) 日本透析医学会:「血液透析患者における心血管合併 症の評価と治療に関するガイドライン」.透析会誌44:337-425,2011 20) Shoji T, Emoto M, Shinohara K, Kakiya R, Tsujimoto Y, Kishimoto H, Ishimura E, Tabata T, Nishizawa Y: Diabetes mellitus, aortic stiffness, and cardiovascular mortality in end-stage renal disease. J Am Soc Nephrol 12:2117-2124, 2001 21) Nishizawa Y, Shoji T, Maekawa K, Nagasue K, Okuno S, Kim M, Emoto M, Ishimura E, Nakatani T, Miki T, Inaba M:Intima-media thickness of carotid artery predicts cardiovascular mortality in hemodialysis patients. Am J Kidney Dis 41 (3 Suppl 1):S76-79, 2003 22) Nitta K, Akiba T, Suzuki K, Uchida K, Ogawa T, Majima K, Watanabe R, Aoki T, Nihei H:Assessment of coronary artery calcification in hemodialysis patients using multi-detector spiral CT scan. Hypertens Res 7:527-533, 2004 23) Adragao T, Pires A, Branco P, Castro R, Oliveira A, Nogueira C, Bordalo J, Curto JD, Prata MM:Anklebrachial index, vascular calcifications and mortality in dialysis patients. Nephrol Dial Transplant 27:318-325, 2012 24) Ramsey DE, Manke DA, Sumner DS:Toe blood pressure. A valuable adjunct to ankle pressure measurement for assessing peripheral arterial disease. J Cardiovasc Surg 24:43-48, 1983 25) Hayashino Y, Fukuhara S, Akiba T, Akizawa T, Asano Y, Saito A, Bragg-Gresham JL, Ramirez SP, Port FK, Kurokawa K:Diabetes, glycaemic control and mortality risk in patients on haemodialysis:the Japan Dialysis Outcomes and Practice Pattern Study. Diabetologia 50:1170-1177, 2007 26) 日本透析医学会:図説わが国の慢性透析療法の現況 (2004 年12 月31 日現在).p50-55,日本透析医学会,東京,2005 27) Wanner C, Krane V, Marz W, Olschewski M, Mann JF, Ruf G, Ritz E:Atorvastatin in patients with type 2 diabetes mellitus undergoing hemodialysis. N Engl J Med 353:238-248, 2005 28) März W, Genser B, Drechsler C, Krane V, Grammer TB, Ritz E, Stojakovic T, Scharnagl H, Winkler K, Holme I, Holdaas H, Wanner C:German Diabetes and Dialysis Study Investigators. Atorvastatin and lowdensity lipoprotein cholesterol in type 2 diabetes mellitus patients on hemodialysis. Clin J Am Soc Nephrol 6:1316-1325, 2011 29) Lepäntalo M, Fiengo L, Biancari F:Peripheral arterial disease in diabetic patients with renal insufficiency:a review. Diabetes Metab Res Rev 28(Suppl 1):40-45, 2012 30) 日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況(2005 年12 月31 日現在).透析会誌40:1-30,2007 31) Fishbane S, Youn S, Flaster E, Adam G, Maesaka JK: Ankle-arm blood pressure index as a predictor of mortality in hemodialysis patients. Am J Kidney Dis 27:668-672, 1996
(4) 骨症 ステートメント.糖尿病透析患者では非糖尿病患者に比較し,低回転骨や無形成骨,さらには骨折リスクが高いことに 留意する. .骨代謝抑制が高度な患者では,血清カルシウム・リン値の上昇に伴って,血管石灰化を主な病態とし た動脈硬化性変化が促進される危険性がある. .糖尿病透析患者に特化した骨症の治療に関するエビデンスはない.したがって現時点では,2012 年に 発表され,現在改訂中である「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」に基づいた管理が望まれる. 解説.糖尿病に伴う骨・ミネラル代謝異常 糖尿病透析患者では,副甲状腺からの副甲状腺ホルモン(PTH)分泌は非糖尿病患者と比べて低下しており1,2),さらに骨でのPTH 感受性も低下3)していることから骨吸収・形成がともに低下した形の低回転型骨粗鬆症を呈しやすい4).したがって,非糖尿病透析患者と比べて骨代謝回転亢進の程度が弱く,これによって骨量が保持されている患者が多い. .骨折率の上昇 腎機能正常の糖尿病患者でも副甲状腺機能は低下しており,骨代謝回転は緩徐となることが示されている5〜7).これによって骨の微小ダメージの蓄積や二次性石灰化の進展,および酸化ストレス増大の結果産生されるコラーゲン線維間のAGE 架橋増加により骨脆弱性が増し,骨量に依存せず骨質劣化の因子が主たる機序となって骨折率が上昇すると報告されている8).糖尿病透析患者でも同様に,PTH 低下や骨代謝マーカーの低下がみられ,脊椎骨折率の上昇も報告されている9). .低回転骨の血管への影響 血液中でカルシウム・リンが過飽和となった場合,骨でこれらの余剰を吸収することが知られている.しかし,低回転骨の場合には骨でのカルシウム・リン吸着力が減弱していることが示され10),血清リンの上昇や炭酸カルシウム投与により血管などでの異所性石灰化がおこりやすい11).このため,糖尿病透析患者では低回転骨の判定を,腎機能低下で影響を受けない骨マーカーである骨型アルカリホスファターゼ(bone alkaline phosphatase:BAP)や酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(tartrate-resistant acid phosphatase: TRACP)-5b 12,13)で行うか,あるいは検査をせずに低回転骨と考えてカルシウムやリン負荷を避ける必要がある.したがって,糖尿病透析患者の治療としてはカルシウム非含有のリン吸着薬の使用が望ましく,また過剰なビタミンD 投与は避けるように心がけることが望ましい. 文献1) Inaba M, Nagasue K, Okuno S, Ueda M, Kumeda Y, Imanishi Y, Shoji T, Ishimura E, Ohta T, Nakatani T, Kim M, Nishizawa Y:Impaired secretion of parathyroid hormone, but not refractoriness of osteoblast, is a major mechanism of low bone turnover in hemodialyzed patients with diabetes mellitus. Am J Kidney Dis 39:1261-1269, 2002 2) Martinez I, Saracho R, Moina I, Montenegro J, Llach F:Is there a lesser hyperparathyroidism in diabetic patients with chronic renal failure? Nephrol Dial Transplant 12(Suppl 3):S9-S11, 1998 3) Yoshida O, Inaba M, Terada M, Shioi A, Nishizawa Y, Otani S, Morii H:Impaired response of human osteosarcoma(MG-63)cells to human parathyroid hormone induced by sustained exposure to high glucose. Miner Electrolyte Metab 21:201-204, 1995 4) Ishida H, Seino Y, Taminato T, Usami M, Takeshita N, Seino Y, Tsutsumi C, Moriuchi S, Akiyama Y, Hara K, et al.:Circulating levels and bone contents of bonecarboxyglutamic acidcontaining protein are decreased in streptozotocin-induced diabetes:Possible marker of diabetic osteopenia. Diabetes 37:702-706,
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