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タイプ2炎症バイオマーカーの手引き 日本呼吸器学会・2023・121 ページ · 呼吸器・睡眠
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■ 編集タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き作成委員会日本呼吸器学会肺生理専門委員会

■ 「タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き」  編集委員 (五十音順,*委員長)小荒井 晃東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野古藤  洋九州中央病院呼吸器内科白井 敏博静岡県立総合病院呼吸器内科松永 和人*山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学分野講座村木 正人近畿大学奈良病院呼吸器・アレルギー内科山口 正雄帝京大学ちば総合医療センター第三内科(呼吸器)

■ 「タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き」  作成委員 (五十音順)朝子 幹也関西医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科浅野浩一郎東海大学医学部内科学系呼吸器内科学市川 朋宏東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野植木 重治秋田大学大学院医学系研究科総合診療・検査診断学講座大石 景士山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学分野講座金光 禎寛名古屋市立大学医学研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学分野小荒井 晃東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野古藤  洋九州中央病院呼吸器内科權  寧博日本大学医学部附属板橋病院呼吸器内科斎藤 純平福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座白井 敏博静岡県立総合病院呼吸器内科杉浦 久敏東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野鈴川 真穂国立病院機構東京病院喘息・アレルギー・リウマチセンター田中 明彦昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門長瀬 洋之帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学永田  眞埼玉医科大学呼吸器内科/アレルギーセンター平野 綱彦山口大学医学部附属病院呼吸器・感染症内科福永 興壱慶應義塾大学医学部呼吸器内科福山  聡九州大学大学院医学研究院呼吸器内科学分野松永 和人山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学分野講座松本 久子近畿大学内科学教室呼吸器・アレルギー内科村木 正人近畿大学奈良病院呼吸器・アレルギー内科山口 正雄帝京大学ちば総合医療センター第三内科(呼吸器)若原 恵子名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科

■ 「タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き」  査読委員 (五十音順)桑平 一郎東海大学医学部付属東京病院呼吸器内科花岡 正幸信州大学学術研究院医学系医学部内科学第一教室福家  聡KKR 札幌医療センター呼吸器内科
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序  文

気道・肺におけるタイプ2 炎症とは,「抗原,ウイルス,大気汚染物質などの刺激により,主に2 型ヘルパーT 細胞や2 型自然リンパ球が産生するIL‐4,IL‐5,IL‐13 などのタイプ2 サイトカインが好酸球などの炎症細胞や気道構築細胞に作用し,気道・肺に惹起される炎症」 のことです.現在,タイプ2 炎症が脚光を浴びているのは治療と直結しているためです.

日常診療で測定可能な血中好酸球,呼気NO 濃度 (FeNO),血清IgE などの炎症バイオマーカーが,喘息やCOPD の診断や管理において不可欠な臨床指標であることを示すエビデンスが豊富に集積されてきており,国内外のガイドラインが臨床現場での活用を推奨しています.喘息やCOPD では,臨床像が類似していても炎症表現型は多様であることが知られており,バイオマーカーで気道の炎症病態を正確に把握することにより,診断精度の向上,より安全で効果的な治療方針の決定,環境抗原の回避,増悪や呼吸機能低下などの将来リスクの予測と治療介入,が可能となることが実証されてきました.しかしながら,本邦の日常診療ではタイプ2 炎症の評価が定着し,十分に実践されている状況にはいたっておりません.

このような状況のなか,日本呼吸器学会肺生理専門委員会は,気道・肺疾患におけるタイプ2 炎症評価の臨床指針をわかりやすくまとめた手引き書をはじめて刊行することになりました.喘息やCOPD に加え,びまん性肺疾患,アレルギー性気管支肺真菌症,好酸球性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎など広範な気道・肺疾患を対象にしました.また,血液および呼気を試料とする臨床的なバイオマーカーを網羅した,国際的にも類のない包括的な指針となります.

本手引きの目的は,タイプ2 炎症評価の意義や結果の解釈の根拠となる最新エビデンスを示すとともに,実臨床での具体的な状況において簡便に活用できる指針を提供することで炎症評価の普及につなげ,気道・肺疾患のさらなる管理効率の向上を目指していくことです.本書が,呼吸器疾患の診療に携わる多くの皆様に活用いただけることを願っております.

最後に,本書の作成に多大なるご尽力をいただいた作成委員をはじめとする関係者の皆様ならびにコメントをいただきました学会員の先生方に深く感謝いたします.

2023 年3 月

一般社団法人 日本呼吸器学会

タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き作成委員会
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●COI(利益相反)について一般社団法人日本呼吸器学会は,COI (利益相反) 委員会を設置し,内科系学会とともに策定したCOI (利益相反) に関する当学会の指針ならびに細則に基づき,COI 状態を適正に管理している (COI (利益相反) については,学会ホームページに指針・書式等を掲載している).

<利益相反開示項目>  該当する場合は具体的な企業名 (団体名) を記載する.

A.申告者の申告事項1.企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職の有無と報酬額(1 つの企業・団体からの報酬額が年間100 万円以上) 2.株の保有と,その株式から得られる利益(1 つの企業の年間の利益が100 万円以上,あるいは当該株式の5%以上を有する場合) 3.企業や営利を目的とした団体から支払われた特許権使用料(1 つの特許権使用料が年間100 万円以上) 4.企業や営利を目的とした団体から会議の出席(発表)に対し,研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)(1 つの企業・団体からの年間の講演料が合計50 万円以上) 5.企業や営利を目的とした団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料(1 つの企業・団体からの年間の原稿料が合計50 万円以上) 6.企業や営利を目的とした団体が提供する研究費(1 つの企業・団体から医学系研究(治験,共同研究,受託研究など)に対して,申告者が実質的に使途を定めて取得した研究契約金の総額が年間100 万円以上) 7.企業や営利を目的とした団体が提供する奨学(奨励)寄付金(1 つの企業・団体から,申告者個人または申告者が所属する講座・分野または研究室に対して,申告者が実質的に使途を決定し得る寄付金の総額が年間100 万円以上) 8.企業などが提供する寄付講座に申告者が所属している場合(申告者が実質的に使途を決定し得る寄付金の総額が年間100 万円以上) 9.研究とは直接無関係な旅行,贈答品などの提供(1 つの企業・団体から受けた総額が年間5 万円以上) B.申告者の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者の申告事項1.企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職の有無と報酬額(1 つの企業・団体からの報酬額が年間100 万円以上) 2.株の保有と,その株式から得られる利益(1 つの企業の年間の利益が100 万円以上,あるいは当該株式の5%以上を有する場合) 3.企業や営利を目的とした団体から支払われた特許権使用料(1 つの特許権使用料が年間100 万円以上) C.申告者の所属する研究機関・部門の長にかかるinstitutional COI 開示事項

1.企業や営利を目的とした団体が提供する研究費(1 つの企業・団体からの研究費が年間1000 万円以上) 2.企業や営利を目的とした団体が提供する寄附金(1 つの企業・団体からの寄附金が年間200 万円以上) 3.その他(株式保有,特許使用料,あるいは投資など)

氏名A.参加者自身の申告事項

B.配偶者・一親等親族または収入・財産を共有する者についての申告事項C.所属する組織・部門の長に関する申告事項(参加者が組織・部門の長と共同研究の立場にある場合)

A-1顧問A-2

株A-3特許A-4講演料A-5原稿料A-6研究費A-7奨学寄附金-

A-8寄附講座A-9その他B-1顧問B-2

株B-3特許C-1研究費C-2奨学寄附金C-3その他

委員長松永 和人該当なし該当なし該当なしMeijiSeika ファルマ会社,

アストラゼネカ株式会社,杏林製薬株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,中外製薬株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

編集委員小荒井 晃該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

古藤 洋該当なし該当なし該当なしグラクソ・スミスクライン

株式会社,サノフィ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

〈利益相反事項の開示〉
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氏名A.参加者自身の申告事項

B.配偶者・一親等親族または収入・財産を共有する者についての申告事項C.所属する組織・部門の長に関する申告事項(参加者が組織・部門の長と共同研究の立場にある場合)

A-1顧問A-2

株A-3特許A-4講演料A-5原稿料A-6研究費A-7奨学寄附金-

A-8寄附講座A-9その他B-1顧問B-2

株B-3特許C-1研究費C-2奨学寄附金C-3その他

編集委員白井 敏博該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

村木 正人該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

山口 正雄該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

杏林製薬株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

作成委員朝子 幹也該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,大鵬薬品工業株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

浅野 浩一郎該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

グラクソ・スミスクライン株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なしサノフィ株式会社,大鵬薬品工業株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社,フクダライフテック横浜株式会社-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

市川 朋宏該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

植木 重治該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社該当なしアストラゼネカ株式会

社,マルホ株式会社該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

大石 景士該当なし該当なし該当なし日本ベーリンガーインゲル

ハイム株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

金光 禎寛該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

權 寧博該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

杏林製薬株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なしアストラゼネカ株式会

社,グラクソ・スミスクライン株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

斎藤 純平該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

グラクソ・スミスクライン株式会社該当なしシオノギファーマ株式

会社,バイエル薬品株式会社ノバルティスファーマ株式会社-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

杉浦 久敏該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

鈴川 真穂該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社該当なしアストラゼネカ株式会

社,グラクソ・スミスクライン株式会社該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし
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氏名A.参加者自身の申告事項

B.配偶者・一親等親族または収入・財産を共有する者についての申告事項C.所属する組織・部門の長に関する申告事項(参加者が組織・部門の長と共同研究の立場にある場合)

A-1顧問A-2

株A-3特許A-4講演料A-5原稿料A-6研究費A-7奨学寄附金-

A-8寄附講座A-9その他B-1顧問B-2

株B-3特許C-1研究費C-2奨学寄附金C-3その他

作成委員田中 明彦該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

サノフィ株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

長瀬 洋之該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

杏林製薬株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

永田 真該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

杏林製薬株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,鳥居薬品株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

平野 綱彦該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社該当なし該当なし該当なし-該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし福永 興壱該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なし花王株式会社,帝人

ファーマ株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社サノフィ株式会社,大鵬薬品工業株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

福山 聡該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし-該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし松本 久子該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

杏林製薬株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,サノフィ株式会社,ノバルティスファーマ株式会社該当なしノバルティスファーマ

株式会社該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

若原 恵子該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

査読委員桑平 一郎該当なし該当なし該当なしMeijiSeika ファルマ会社,

アストラゼネカ株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

花岡 正幸該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社該当なし該当なしバイエル薬品株式会社-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし

福家 聡該当なし該当なし該当なしアストラゼネカ株式会社,

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティスファーマ株式会社,ファイザー株式会社該当なし該当なし該当なし-

該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし該当なし
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目  次

第1 章 気道・肺疾患におけるタイプ2 炎症評価の臨床指針.......................................1 1.タイプ2 炎症の定義............................................................................................................2 2.タイプ2 炎症バイオマーカーの特徴.......................................................................................2 3.軽症・中等症喘息...............................................................................................................4 4.重症喘息...........................................................................................................................6 5.COPD.................................................................................................................................8 6.びまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患.................................................................................9

第2 章 タイプ2 炎症とバイオマーカー...........................................................................11 A.総論.......................................................................................................................................12 1.タイプ2 炎症の定義............................................................................................................12 2.炎症病態・治療とバイオマーカー..........................................................................................12 B.呼気一酸化窒素濃度 (FeNO)......................................................................................................14 1.分子機序 (喘息病態との関係)................................................................................................14 2.測定方法...........................................................................................................................15 3.安定性・再現性..................................................................................................................16 4.交絡因子...........................................................................................................................16 5.臨床運用の要点..................................................................................................................16 C.血中好酸球..............................................................................................................................20 1.分子機序 (喘息病態との関係)................................................................................................20 2.測定方法...........................................................................................................................21 3.安定性・再現性..................................................................................................................21 4.交絡因子...........................................................................................................................21 5.臨床運用の要点..................................................................................................................22 D.喀痰中好酸球...........................................................................................................................25 1.分子機序 (喘息病態との関連)................................................................................................25 2.測定方法...........................................................................................................................25 3.安定性・再現性..................................................................................................................26 4.交絡因子...........................................................................................................................26 5.臨床運用の要点..................................................................................................................26 E.血清IgE,特異的IgE,プリックテスト..........................................................................................28 1.分子機序 (喘息病態との関連性).............................................................................................28 2.測定方法...........................................................................................................................29 3.安定性・再現性..................................................................................................................29 4.交絡因子...........................................................................................................................30
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5.臨床運用の要点..................................................................................................................30 F.上気道のタイプ2 炎症のバイオマーカー.......................................................................................32 1.FeNO と鼻腔呼気NO .........................................................................................................33 2.鼻汁中好酸球,組織中好酸球................................................................................................34 G.その他のタイプ2 炎症バイオマーカー..........................................................................................35 1.気管支粘膜生検と気管支肺胞洗浄液.......................................................................................35 2.その他の血液バイオマーカー................................................................................................35

第3 章 タイプ2 炎症評価の意義と結果の解釈...............................................................39 1 喘息 (重症喘息を除く)..................................................................................................................40 A.総論.......................................................................................................................................40 1.疫学と病態........................................................................................................................40 2.喘息におけるタイプ2 炎症の病態..........................................................................................41 3.タイプ2 炎症バイオマーカーの種類と意義..............................................................................41 B.診断における意義.....................................................................................................................43 1.FeNO ..............................................................................................................................43 2.血中好酸球数.....................................................................................................................44 3.血清総IgE 値と吸入抗原への特異的IgE 抗体...........................................................................45 C.治療の選択..............................................................................................................................47 1.未治療患者において吸入ステロイド薬反応性予測に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー..................47 2.既治療患者において治療ステップアップ時の治療薬選択に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー.........48 3.既治療患者において治療ステップダウン時の治療薬選択に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー.........49 4.タイプ2 炎症バイオマーカーは治療薬選択に有用か?...............................................................49 D.モニタリング...........................................................................................................................51 1.FeNO ..............................................................................................................................51 2.喀痰中好酸球比率...............................................................................................................53 3.血中好酸球数.....................................................................................................................54 4.FeNO と血中好酸球数の組み合わせ.......................................................................................54 2 重症喘息.......................................................................................................................................56 A.総論.......................................................................................................................................56 1.重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの概要と解釈......................................................56 B.診断における意義.....................................................................................................................59 1.重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーのかかわり.........................................................59 2.重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの診断における意義.............................................60 C.治療の選択..............................................................................................................................63 1.抗IgE 抗体[オマリズマブ (ゾレア®)].................................................................................63 2.抗IL‐5 療法[メポリズマブ (ヌーカラ®),ベンラリズマブ (ファセンラ®)].................................63 3.抗IL‐4 受容体α(IL‐4Rα) 抗体[デュピルマブ (デュピクセント®)] ..........................................64 4.抗TSLP 抗体[テゼペルマブ (テゼスパイア®)] .....................................................................65 5.生物学的製剤の選択におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの位置づけ..........................................65
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D.モニタリング...........................................................................................................................68 1.抗IgE 抗体[オマリズマブ (ゾレア®)].................................................................................69 2.抗IL‐5 抗体 [メポリズマブ (ヌーカラ®)]..............................................................................69 3.抗IL‐5 受容体α(IL‐5Rα) 抗体[ (ベンラリズマブ (ファセンラ®)].............................................70 4.抗IL‐4 受容体α(IL‐4Rα) 抗体 [デュピルマブ (デュピクセント®)]..........................................70 3 COPD .......................................................................................................................................72 A.総論.......................................................................................................................................72 1.喘息とCOPD のオーバーラップ (ACO).................................................................................72 2.治療薬選択におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの意義............................................................74 B.診断における意義.....................................................................................................................75 1.診断基準の変遷..................................................................................................................75 2.ACO の診断基準とバイオマーカー.......................................................................................76 3.COPD におけるタイプ2 炎症................................................................................................77 C.治療の選択とモニタリング.........................................................................................................79 1.COPD と好酸球..................................................................................................................79 2.喀痰中好酸球.....................................................................................................................79 3.血中好酸球........................................................................................................................80 4.FeNO ..............................................................................................................................80 5.血清総IgE と抗原特異的IgE 抗体..........................................................................................80 4 びまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患..........................................................................................84 A.総論.......................................................................................................................................84 1.びまん性肺疾患..................................................................................................................85 2.EGPA,N‐ERD,ABPA/M ...................................................................................................85 3.アレルギー性鼻炎,花粉症,ECRS .......................................................................................85 B.びまん性肺疾患........................................................................................................................88 1.特発性肺線維症 (IPF).........................................................................................................88 2.全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 (SSc‐ILD)...........................................................................89 3.好酸球性肺炎.....................................................................................................................89 4.閉塞性細気管支炎症候群 (BOS).............................................................................................91 C.ABPA/M,EGPA,N-ERD .........................................................................................................93 1.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症 (ABPA/M)......................................................93 2.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA).................................................................................94 3.NSAIDs 過敏喘息 (N‐ERD)...................................................................................................95 D.アレルギー性鼻炎,花粉症,ECRS .............................................................................................98 1.アレルギー性鼻炎,花粉症...................................................................................................98 2.慢性副鼻腔炎,鼻ポリープ...................................................................................................99

索 引.............................................................................................................................................103
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巻頭 手引きサマリー

(1) 喘息の診断におけるバイオマーカーの解釈

喘息診断における呼気NO 濃度(FeNO)の解釈 (未治療の成人患者)

呼気NO 濃度

(FeNO) <22 ppb 22~35 ppb ≧35 ppb

補助診断・タイプ2 気道炎症の可能性は

低い・ICS の有効性は乏しい・喘息である可能性は高くない・タイプ2 気道炎症の可能性が

高い・ICS の効果が期待できる・ICS 未使用で,喘息を疑う症

状があれば喘息の可能性が高い・タイプ2 気道炎症が存在・ICS の効果が期待できる・ICS 未使用で,喘息を疑う症

状があれば喘息診断の目安となる

留意点・喘息以外の疾患を考慮・非タイプ2 喘息は否定できな

い・現喫煙の影響で約30%低下す

る・最終的な喘息の診断は,治療による反応性,治療効果の再現性な

どの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する・アトピーや鼻・副鼻腔炎合併の影響で約20%上昇する

喘息診断における血中好酸球数の解釈(未治療の成人患者)

血中好酸球数<220/μL ≧220/μL

補助診断・タイプ2 気道炎症の可能性は低い・ICS の有効性は乏しい・喘息である可能性は高くない・喘息を疑う症状があり,血中好酸球数≧220/μL または

過去1 年以内に血中好酸球数≧300/μL であればタイプ2気道炎症が存在する可能性が高く,喘息診断を支持する

留意点・喘息以外の疾患を考慮・非タイプ2 喘息は否定できない・女性と中高齢者では低値傾向・最終的な喘息診断は,治療による反応性,治療効果の再現

性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する・膠原病・悪性腫瘍など好酸球増多をきたしうる疾患や薬剤

の影響を考慮

FeNO:fractional exhaled nitric oxide(呼気一酸化窒素濃度),ICS:inhaled corticosteroids(吸入ステロイド薬)
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(2) 喘息の管理におけるバイオマーカーの解釈

喘息管理における呼気NO 濃度(FeNO)の解釈(治療中の成人患者)

呼気NO 濃度

(FeNO) <20 ppb 20~35 ppb ≧35 ppb

喘息症状なし・タイプ2 気道炎症は制御され

ている・抗炎症薬の減量を考慮しうる・アドヒアランス・吸入手技は

良好・抗炎症治療は適切と考えられ

る・アドヒアランス・吸入手技は

良好・アドヒアランス・吸入手技不

良・抗炎症薬の減量で症状悪化・増悪・呼吸機能低下のリスク(特に,血中好酸球数も高値である場合)

喘息症状あり・他疾患の鑑別や合併を考慮・ICS 増量の効果は乏しい・現在のタイプ2 気道炎症は低

レベルと捉えて他の追加治療を検討する(気管支拡張薬,体重減量,マクロライドなど)・持続的な吸入抗原の曝露・アドヒアランス・吸入手技不

良・現在もタイプ2 気道炎症が残存している可能性が高い・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮・持続的な吸入抗原の曝露・アドヒアランス・吸入手技不

良・増悪・呼吸機能低下のリスク(特に,血中好酸球数も高値である場合)・抗炎症治療の強化を考慮・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮

喘息管理における血中好酸球数の解釈 (治療中の成人患者)

血中好酸球数<150/μL 150~300/μL ≧300/μL

喘息症状なし・抗炎症治療は適切と考えられ

る・抗炎症薬の減量を考慮しうる・抗炎症治療は適切と考えられ

る・抗炎症薬の減量で症状悪化・増悪・呼吸機能低下のリスク

(特に,FeNO も高値である場合)

喘息症状あり・他疾患の鑑別や合併を考慮・ICS 増量の効果は乏しい・現在のタイプ2 気道炎症は低

レベルと捉えて他の追加治療を検討する(気管支拡張薬,体重減量,マクロライドなど)・持続的な吸入抗原の曝露・現在もタイプ2 気道炎症が残

存している可能性が高い・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮)・持続的な吸入抗原の曝露・増悪・呼吸機能低下のリスク

(特に,FeNO も高値である場合)・抗炎症治療の強化を考慮・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮

FeNO:fractional exhaled nitric oxide(呼気一酸化窒素濃度),ICS:inhaled corticosteroids(吸入ステロイド薬)
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(3) COPD における吸入ステロイド薬使用の目安

血中好酸球数<100/μL 100~300/μL ≧300/μL

呼気NO 濃度(FeNO) <20 ppb 20~35 ppb ≧35 ppb

喘息合併を疑う病歴•変動性あるいは発作性の呼吸器症状• 40 歳以前の喘息既往△〇〇

COPD 増悪歴•頻回に呼吸器症状の悪化に対する治療を強化(気管支拡張薬,抗菌薬,全身性ステロイド薬,喀痰調整薬など) × △〇

感染症の懸念* •反復する呼吸器感染症•肺結核や肺非結核性抗酸菌症の合併× × △ ◯:吸入ステロイド薬の使用を推奨する△:吸入ステロイド薬の使用を考慮しうる×:吸入ステロイド薬の使用は避ける*:喘息を疑う病歴やCOPD 増悪歴を根拠に吸入ステロイド薬を使用する場合でも,感染症の懸念については慎重に経過観察する.呼吸器感染症を繰り返す場合には吸入ステロイド薬の中止,減量あるいは変更を考慮する.
p.14
xiii

ABPA/M allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycosisアレルギー性気管支肺アスペルギルス症/ 真菌症ACO asthma and COPD overlap ADCC antibody-dependent cellular (mediated) cytotoxicity BAL bronchoalveolar lavage気管支肺胞洗浄BALF bronchoalveolar lavage fluid気管支肺胞洗浄液BAT basophil activation test好塩基球活性化試験BOS bronchiolitis obliterans syndrome閉塞性細気管支炎症候群CANO alveolar concentration of NO呼気中NO 肺胞成分CCR3 C-C chemokine receptor type 3 COPD chronic obstructive pulmonary disease慢性閉塞性肺疾患COX cyclooxygenaseシクロオキシゲナーゼCRSsNP chronic rhinosinusitis without nasal polyp鼻ポリープを伴わない慢性副鼻腔炎CRSwNP chronic rhinosinusitis with nasal polyp鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎CSF colony-stimulating factorコロニー刺激因子CV coefficient of variation変動係数cysLT cysteinyl leukotrieneシスティニルロイコトリエンDLCO diffusing capacity of lung for carbon monoxide肺拡散能DPP-4 dipeptidyl peptidase-4 EBC exhaled breath condensate呼気濃縮液ECP eosinophilic cationic protein ECRS eosinophilic chronic rhinosinusitis好酸球性慢性副鼻腔炎EGPA eosinophilic granulomatosis with polyangiitis好酸球性多発血管炎性肉芽腫症eNOS endothelial nitric oxide synthase血管内皮型NO 合成酵素FeNO fractional exhaled nitric oxide呼気一酸化窒素(NO)濃度FVC forced vital capacity努力肺活量GINA Global Initiative for Asthma GIP gastric inhibitory polypeptide GLP-1 glucagon-like peptide-1 GM-CSF granulocyte macrophage colony-stimulating factor顆粒球マクロファージコロニー刺激因子GVHD graft versus host diseases移植片対宿主病HRT histamine release test好塩基球ヒスタミン遊離試験ICAM intercellular adhesion molecule細胞間接着分子ICS inhaled corticosteroids吸入ステロイド薬IFN interferonインターフェロンIgE immunoglobulin E免疫グロブリンE IL interleukinインターロイキンILC innate lymphoid cell自然リンパ球ILC2 innate lymphoid cell 2 2 型自然リンパ球iNOS inducible nitric oxide synthase誘導型NO 合成酵素IPF idiopathic pulmonary fibrosis特発性肺線維症LAA low attenuation area LABA long-acting β2 agonists長時間作用性吸入β2 刺激薬LAMA long-acting muscarinic antagonist長時間作用性吸入抗コリン薬LT leukotrieneロイコトリエンLTRA leukotriene receptor antagonistロイコトリエン受容体拮抗薬MBP major basic protein MMP matrix metalloproteinase N-ERD non-steroidal anti-inflammatory drugs-exacerbated respiratory disease NSAIDs 過敏喘息NO nitric oxide一酸化窒素NOS nitric oxide synthase一酸化窒素合成酵素PAF platelet-activating factor血小板活性化因子PG prostaglandinプロスタグランジンRANTES regulated on activation, normal T cell expressed and secreted RAST radio-allergosorbent test SSc systemic sclerosis全身性強皮症SSc-ILD systemic sclerosis with interstitial lung disease全身性強皮症に伴う間質性肺疾患STAT signal transducer and activator of transcription TARC thymus and activation-regulated chemokine TGF transforming growth factor形質転換増殖因子Th2 type 2 helper T cells 2 型ヘルパーT 細胞TNF tumor necrosis factor腫瘍壊死因子TSLP thymic stromal lymphopoietin TXA2 thromboxane A2トロンボキサンA2 VCAM vascular cell adhesion molecule血管細胞接着分子

略語一覧
p.15

        
p.16
第1 章

気道・肺疾患におけるタイプ2 炎症評価の臨床指針
p.17
1.タイプ2 炎症の定義

気道・肺におけるタイプ2 炎症は,「抗原,ウイルス,大気汚染物質などの刺激により,主に2 型ヘルパーT細胞 (Th2) や2 型自然リンパ球 (ILC2) が産生するIL‐4,IL‐5,IL‐13 などのタイプ2 サイトカインが種々の炎症細胞や気道構築細胞に作用することで気道や肺に惹起される炎症」 である (図1) 1).

2.タイプ2 炎症バイオマーカーの特徴

○タイプ2 炎症をきたす疾患の病態評価,診断,治療の指標となる生体試料である. ○血中好酸球,喀痰中好酸球,呼気一酸化窒素 (NO) 濃度 (fractional exhaled nitric oxide:FeNO),総

IgE,特異的IgE が気道・肺における代表的な臨床バイオマーカーである. ○主に,獲得免疫系のTh2 細胞や自然免疫系のILC2 などに由来するIL‐4,IL‐5,IL‐13 が各々のサイトカ

気道内腔吸入性感作アレルゲンムチン

産生

上皮傷害ウイルス,真菌,各種の汚染・刺激物質など

気管支上皮細胞

eotaxin RANTES GM-CSF IL-33 IL-25 TSLP IL-8マクロファージ

マスト細胞IgE

LTC4 PGD2 B細胞Th2

IL-4 IL-13 IL-5 IL-3 GM-CSF

IL-4 IL-13 好酸球MBP IL-13

IL-5 LTC4 TGF-β Th17 IL-17

ILC3

エラスターゼ活性酸素種

MMPs

好中球

IL-8 LTB4

TNF-α

血管

VCAM-1

気管支平滑筋ICAM-1

ILC2

IL-13

獲得免疫系

自然免疫系

タイプ2炎症

DC

図1 喘息におけるタイプ2 気道炎症のメカニズム

DC:dendritic cell (樹状細胞),TSLP:thymic stromal lymphopoietin (胸腺間質性リンパ球新生因子, IL:interleukin,RANTES:regulated on activation, normal T cell expressed and secreted,GM- CSF:granulocyte macrophage colony-stimulating factor (顆粒球マクロファージコロニー刺激因子), LT:leukotriene,PG:prostaglandin,TGF:transforming growth factor (形質転換増殖因子),MBP: major basic protein,ILC:innate lymphoid cell (自然リンパ球),TNF:tumor necrosis factor (腫瘍壊死因子),ICAM:intercellular adhesion molecule (細胞間接着分子),VCAM:vascular cell adhesion molecule (血管細胞接着分子),MMP:matrix metalloproteinase (一般社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会 (監修).喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,p.52[図4-2],2021. 1)より許諾を得て転載・一部改変)
p.18
インと関連するタイプ2 炎症バイオマーカーの上昇に関与する. ○タイプ2 炎症バイオマーカーを用いることで,病態や炎症表現型を正確に把握でき,診断精度の向上,

より安全で効果的な治療選択,増悪や呼吸機能の経年低下などの将来のリスクを低減すること,が可能となる. ○タイプ2 炎症の有無を判別するカットオフ値と高低を判別するカットオフ値の2 つの閾値を用いて,正

常域,中間域,高値域の基準範囲に分類して解釈する.正常域か否かは疾患の有無,高値域か否かはリスクの判定などの目安となる (図2) 2). ○好酸球,FeNO

・主に,血中および喀痰中好酸球はIL‐5 に関連するタイプ2 炎症の状態を反映しており,FeNO はIL‐4/

IL‐13 に関連するタイプ2 炎症の状態を反映している (図3).・血中好酸球数とFeNO はいずれもタイプ2 気道炎症の捕捉に有用であり,未治療患者における喘息の

補助診断や吸入ステロイド薬の反応性の予測に使用できる.・治療中の患者に測定することで,現在のタイプ2 炎症の発現レベルの高低を判別することが可能で,

治療選択や増悪・呼吸機能低下のリスク評価に使用できる. ○IgE

・アレルゲン感作の評価は,喘息の補助診断,吸入抗原の回避,重症・難治化の原因検索,アレルゲン

免疫療法や生物学的製剤の適応評価,などに有用である. 1 ・ 気 道 ・ 肺 疾 患 に お け る タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 臨 床 指 針

0.6 0.4

0.2 0.0真陽性率(感度)が高い範囲

除外診断に有用

健常者非重症喘息重症喘息

タイプ2炎症:有無のカットオフタイプ2炎症:高低のカットオフ

中間域高値域正常域

真陰性率(特異度)が高い範囲

確定診断に有用

タイプ2遺伝子発現平均

0 1 2 3 4 5

カーネル密度

図2 タイプ2 炎症バイオマーカーを基準範囲で解釈する意義

タイプ2 炎症は正常域,中間域,高値域の基準範囲に分類して解釈する.正常域か否かは疾患の有無,高値域か否かはリスクの判定などの目安となる.カーネル密度は確率変数の確率密度関数を推定する方法で,本図では健常者,非重症喘息患者,重症喘息患者におけるタイプ2 炎症関連遺伝子発現レベルの推定分布を表す. (Peters MC, et al. J Allergy Clin Immunol 2019; 143: 104-113. 2)を参考に作成)
p.19
3.軽症・中等症喘息

A.診断のポイント (表1,表2)

○FeNO,血中好酸球数,IgE はいずれも喘息の補助診断に有用である. ○血中好酸球数≧220/μL およびFeNO≧22ppb は喀痰中の好酸球増多を推定する際に有用であり,喘息の

補助診断や吸入ステロイド薬の反応性の予測に使用できる3). ○未治療の患者で喘息を疑う症状があり,血中好酸球数やFeNO が基準値以上であれば喘息の診断を支持

する.FeNO の測定値が高値となるほど,その確度は高くなる. B.管理のポイント (表1,表2)

○治療中のタイプ2 炎症は血中好酸球数<150/μL およびFeNO<20ppb では低レベル,血中好酸球

数≧300/μL およびFeNO≧35ppb では高レベルと判定する4~6). ○現在の治療で症状がなく炎症バイオマーカーが低レベルであれば抗炎症治療は適切と考えられ,抗炎症

薬の減量も考慮しうる.逆に症状がなくても炎症が高レベルであれば抗炎症薬の減量で喘息コントロールが悪化する可能性がある.さらに,服薬アドヒアランス・吸入手技の不良や持続的な吸入抗原への曝露の可能性についても考慮する7). ○喘息症状があっても炎症バイオマーカーが低値であれば吸入ステロイド薬増量の効果は乏しいと推定さ

れる.タイプ2 炎症は低レベルと捉えて他の追加治療を検討する (気管支拡張薬,体重の減量,マクロライドなど) 1).逆に現在の治療にもかかわらず症状が持続しており血中好酸球とFeNO がいずれも高値である場合には,将来の増悪や呼吸機能低下のリスクが高いため抗炎症治療の強化を考慮する4, 5).

真菌ウイルスプロテアーゼ

呼気NO濃度抗原

杯細胞過形成

Tezepelumab IL-4

IL-13

IL-5 ILC2

ステロイド抵抗性の獲得Dupilumab

Mepolizumab

Benralizumab

好酸球IL-4

IL-13

IL-5 Th2 細胞Dupilumab

IL-4, IL-13肥満細胞好塩基球

IgE

Omalizumab

B細胞

自然免疫自然型アレルギー獲得免疫

杯細胞過形成

TSLP, IL-33, IL-25 TSLP, IL-33, IL-25

図3 バイオマーカーの分子メカニズムと生物学的製剤の治療標的

主に,血中および喀痰中の好酸球はIL-5 に関連するタイプ2 炎症の状態を反映しており,呼気NO 濃度はIL- 4/IL-13 に関連するタイプ2 炎症の状態を反映している.Omalizumab:オマリズマブ (抗IgE 抗体), Mepolizumab:メポリズマブ (抗IL-5 抗体),Benralizumab:ベンラリズマブ (抗IL-5 受容体抗体), Dupilumab:デュピルマブ (抗IL-4 受容体抗体),Tezepelumab:テゼペルマブ (抗TSLP 抗体)
p.20
C.留意点

○最終的な喘息の診断は治療による反応性や臨床経過などを含めて総合的に判断する. ○膠原病・悪性腫瘍など血中好酸球増多をきたしうる疾患や薬剤の影響を考慮する. ○FeNO は吸入ステロイド薬で低下するため治療効果のモニタリングやアドヒアランス・吸入手技の評価

に有用である.ただし,併存する鼻炎や喫煙による影響を考慮する. 1 ・ 気 道 ・ 肺 疾 患 に お け る タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 臨 床 指 針

表1 喘息の診断と管理における呼気NO 濃度(FeNO)の解釈喘息診断における呼気NO 濃度(FeNO)の解釈 (未治療の成人患者)

呼気NO 濃度

(FeNO) <22 ppb 22~35 ppb ≧35 ppb補助診断・タイプ2 気道炎症の可能性は

低い・ICS の有効性は乏しい・喘息である可能性は高くない・タイプ2 気道炎症の可能性が

高い・ICS の効果が期待できる・ICS 未使用で,喘息を疑う症

状があれば喘息の可能性が高い・タイプ2 気道炎症が存在・ICS の効果が期待できる・ICS 未使用で,喘息を疑う症

状があれば喘息診断の目安となる

留意点・喘息以外の疾患を考慮・非タイプ2 喘息は否定できな

い・現喫煙の影響で約30%低下す

る・最終的な喘息の診断は,治療による反応性,治療効果の再現性な

どの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する・アトピーや鼻・副鼻腔炎合併の影響で約20%上昇する

喘息管理における呼気NO 濃度(FeNO)の解釈(治療中の成人患者)

呼気NO 濃度

(FeNO) <20 ppb 20~35 ppb ≧35 ppb喘息症状なし・タイプ2 気道炎症は制御され

ている・抗炎症薬の減量を考慮しうる・アドヒアランス・吸入手技は

良好・抗炎症治療は適切と考えられ

る・アドヒアランス・吸入手技は

良好・アドヒアランス・吸入手技不

良・抗炎症薬の減量で症状悪化・増悪・呼吸機能低下のリスク(特に,血中好酸球数も高値である場合)

喘息症状あり・他疾患の鑑別や合併を考慮・ICS 増量の効果は乏しい・現在のタイプ2 気道炎症は低

レベルと捉えて他の追加治療を検討する(気管支拡張薬,体重減量,マクロライドなど)・持続的な吸入抗原の曝露・アドヒアランス・吸入手技不

良・現在もタイプ2 気道炎症が残存している可能性が高い・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮・持続的な吸入抗原の曝露・アドヒアランス・吸入手技不

良・増悪・呼吸機能低下のリスク(特に,血中好酸球数も高値である場合)・抗炎症治療の強化を考慮・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮

FeNO:fractional exhaled nitric oxide(呼気一酸化窒素濃度),ICS:inhaled corticosteroids(吸入ステロイド薬)
p.21
4.重症喘息

A.診断のポイント (表1,表2)

○重症喘息とは,そのコントロールを維持するために高用量の吸入ステロイド薬および長時間作用性吸入

β2 刺激薬に加え他の長期管理薬の併用を要するか,これらの治療でもコントロール不良な喘息である1). ○重症喘息では血中好酸球数≧150/μL およびFeNO≧20ppb がタイプ2 炎症の目安とされている4).本邦

では70~90%の重症喘息患者はタイプ2 炎症を有しており,タイプ2 炎症の程度が強いほど増悪頻度が高く,呼吸機能の経年低下速度が大きい. ○タイプ2 炎症バイオマーカーはIL‐4,IL‐5,IL‐13 やIgE を標的にした生物学的製剤の効果が期待される

症例の選択や治療方針の決定に不可欠な検査である (図3). B.管理のポイント

○生物学的製剤は重症喘息に対する重要な治療選択肢である.経口ステロイド薬投与下でもFeNO や血中

好酸球が高値である場合はステロイド抵抗性の存在を示唆する2). ○経口ステロイド薬は短期間の間欠的投与を原則とし,間欠的投与でもコントロールが得られない場合は

生物学的製剤の使用を考慮する1).

表2 喘息の診断と管理における血中好酸球数の解釈喘息診断における血中好酸球数の解釈(未治療の成人患者)

血中好酸球数<220/μL ≧220/μL補助診断・タイプ2 気道炎症の可能性は低い・ICS の有効性は乏しい・喘息である可能性は高くない・喘息を疑う症状があり,血中好酸球数≧220/μL または

過去1 年以内に血中好酸球数≧300/μL であればタイプ2気道炎症が存在する可能性が高く,喘息診断を支持する

留意点・喘息以外の疾患を考慮・非タイプ2 喘息は否定できない・女性と中高齢者では低値傾向・最終的な喘息診断は,治療による反応性,治療効果の再現

性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する・膠原病・悪性腫瘍など好酸球増多をきたしうる疾患や薬剤

の影響を考慮

喘息管理における血中好酸球数の解釈 (治療中の成人患者)

血中好酸球数<150/μL 150~300/μL ≧300/μL喘息症状なし・抗炎症治療は適切と考えられ

る・抗炎症薬の減量を考慮しうる・抗炎症治療は適切と考えられ

る・抗炎症薬の減量で症状悪化・増悪・呼吸機能低下のリスク

(特に,FeNO も高値である場合)

喘息症状あり・他疾患の鑑別や合併を考慮・ICS 増量の効果は乏しい・現在のタイプ2 気道炎症は低

レベルと捉えて他の追加治療を検討する(気管支拡張薬,体重減量,マクロライドなど)・持続的な吸入抗原の曝露・現在もタイプ2 気道炎症が残

存している可能性が高い・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮)・持続的な吸入抗原の曝露・増悪・呼吸機能低下のリスク

(特に,FeNO も高値である場合)・抗炎症治療の強化を考慮・ICS 増量の効果が期待できる・生物学的製剤の使用を考慮

ICS:inhaled corticosteroids(吸入ステロイド薬),FeNO:呼気NO 濃度
p.22
○生物学的製剤はバイオマーカーに加えて,併存症に対する適応を含む各薬剤の特徴,患者の社会経済的

背景などから総合的に判断して選択する (表3) 1). ○血中好酸球数やFeNO は濃度依存的に生物学的製剤の効果と関連しているため,主にこの2 つの指標を

参照し生物学的製剤を選択することが妥当と考えられる (図4). C.留意点

○重症喘息では定期的なモニタリングを行い,治療の継続,変更,中止や経口ステロイド薬などの減量に

ついて検討することが重要である. ○経口ステロイド薬の減量に伴い好酸球性肺炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の発症報告があるため,

肺・神経症状の悪化や血中好酸球数の推移を注意深く観察する. ○タイプ2 炎症が低レベルでも生物学的製剤の一部は選択が可能である (図4). 1 ・ 気 道 ・ 肺 疾 患 に お け る タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 臨 床 指 針

表3 生物学的製剤の効果予測因子としてのタイプ2 炎症バイオマーカーの有用性

オマリズマブメポリズマブベンラリズマブデュピルマブテゼペルマブ

作用機序抗IgE 抗体抗IL-5 抗体抗IL-5Rα抗体抗IL-4Rα抗体抗TSLP 抗体血中好酸球数△ ◯ ◯ ◯ ◯ FeNO △ ×~△ ×~△ ◯ ◯血清総IgE × × × △ ×適応を有する併存症・特発性の慢性蕁麻疹・季節性アレルギー性

鼻炎・好酸球性多発血管炎

性肉芽腫症なし・アトピー性皮膚炎・鼻茸を伴う慢性副鼻

腔炎なし

◯:効果予測における有用性が示されている△:効果予測における有用性について結果が一貫しないか,効果に対する濃度依存性が乏しい×:効果予測における有用性が十分に示されていない

抗IL-4Rα抗体抗IgE抗体(通年性吸入抗原感作時) *1

抗TSLP抗体

抗IgE抗体(通年性吸入抗原感作時) *1

抗TSLP抗体

150抗IL-5抗体/抗IL-5Rα抗体*2

抗IL-4Rα抗体*3抗IgE抗体(通年性吸入抗原感作時) *1

抗TSLP抗体

血中好酸球数(/μL)

25 呼気NO濃度(FeNO)(ppb) B

A C

図4 血中好酸球数とFeNO で分類した生物学的製剤の適応

*1:血清総IgE が低値の場合は,安価に投与できる.重症季節性アレルギー性鼻炎,慢性蕁麻疹に適応を有する. *2:相対的に血中好酸球数高値の場合は,優先的に使用を考慮する.抗IL-5 抗体はEGPA に適応を有する. *3:相対的にFeNO が高値の場合や,鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を有する場合は,優先的に使用を考慮する.アトピー性皮膚炎にも適応を有する.血中好酸球数1,500/μL 以上では,安全性や効果は十分検討されていない. *4:血中好酸球数1,500/μL 以上の場合,血液疾患,寄生虫感染症,その他の好酸球増加症を除外する. (日本アレルギー学会.アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き,2022 を参考に作成)
p.23
5.COPD

A.診断・管理のポイント

○COPD の表現型には多様性があり,タイプ2 炎症バイオマーカーが陽性を示す患者もまれではない.タ

イプ2 炎症バイオマーカーに加えて,症状の変動性や40 歳以前の喘息の既往などの臨床的特徴があれば喘息とCOPD のオーバーラップ (ACO) と診断され,吸入ステロイド薬を中心とする喘息の治療が必要である (表4) 8). ○ACO の診断にいたらなくても,FeNO 高値や喀痰中・血中の好酸球増多があれば喘息様の病態合併を想

定して吸入ステロイド薬投与を考慮する根拠になりうる. ○COPD では吸入ステロイド薬の使用による肺炎リスクの上昇が懸念されている.タイプ2 炎症バイオマー

カーと病歴 (喘息,増悪,感染症) を組み合わせた複合評価が吸入ステロイド薬使用の目安になりうることが提唱されている (表5) 9~12).

表4 Asthma and COPD オーバーラップ(ACO)の診断基準40 歳以上で,気管支拡張薬吸入後の一秒率<70%であり,COPD の特徴と喘息の特徴を有する

基本的事項

40 歳以上,慢性気流閉塞:気管支拡張薬吸入後1 秒率(FEV1/FVC)が70%未満

【COPD の特徴】1,2,3 の1 項目【喘息の特徴】1,2,3 の2 項目あるいは1,2,3 の1 項目と4 の2 項目以上

1.喫煙歴(10 pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染曝露2.胸部CT における気腫性変化を示す低吸収域の存在3.肺拡散能障害(%DLco <80%あるいは%DLco/VA <80%) 1.変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 2.40 歳以前の喘息の既往3.呼気NO 濃度>35 ppb 4- 1)通年性アレルギー性鼻炎の合併-2)気道可逆性(FEV1 >12%かつ>200 mL の変化) -3)末梢血好酸球>5%あるいは>300/μL -4)IgE 高値(総IgE あるいは通年性吸入抗原に対する

特異的IgE 陽性)

(日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,

2018 8) より引用)

表5 タイプ2 炎症バイオマーカーと病歴に基づいた吸入ステロイド薬使用の目安(COPD)血中好酸球数<100/μL 100~300/μL ≧300/μL呼気NO 濃度(FeNO) <20 ppb 20~35 ppb ≧35 ppb喘息合併を疑う病歴•変動性あるいは発作性の呼吸器症状• 40 歳以前の喘息既往△〇〇COPD 増悪歴•頻回に呼吸器症状の悪化に対する治療を強化(気管支拡張薬,抗菌薬,全身性ステロイド薬,喀痰調整薬など) × △〇感染症の懸念* •反復する呼吸器感染症•肺結核や肺非結核性抗酸菌症の合併× × △ ◯:吸入ステロイド薬の使用を推奨する△:吸入ステロイド薬の使用を考慮しうる×:吸入ステロイド薬の使用は避ける*:喘息を疑う病歴やCOPD 増悪歴を根拠に吸入ステロイド薬を使用する場合でも,感染症の懸念については慎重に経過観察する.呼吸器感染症を繰り返す場合には吸入ステロイド薬の中止,減量あるいは変更を考慮する.
p.24
6.びまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患

A.診断・管理のポイント

○好酸球性肺炎ではFeNO が他の間質性肺疾患との鑑別に有用な可能性がある. ○喘息治療において難治性の場合や血中好酸球増多を認める場合には好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) やNSAIDs 過敏喘息 (N‐ERD),アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症 (ABPA/M) の存在を疑う根拠となる. ○ABPA/M ではI型アレルギーを反映する総IgE 値や真菌特異的IgE がその診断や治療効果の判定に有用

である. ○喘息治療において血中好酸球増多やFeNO 高値が遷延する場合にはアレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔

炎の合併を疑う根拠となる.文献

1)一般社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会 (監修).喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021. 2)Peters MC, et al. Refractory airway type 2 inflammation in a large subgroup of asthmatic patients treated with inhaled corti‐ costeroids. J Allergy Clin Immunol 2019; 143: 104‐113. 3)McGrath KW, et al. A large subgroup of mild‐to‐moderate asthma is persistently noneosinophilic. Am J Respir Crit Care Med 2012; 185: 612‐619. 4)Global Initiative for Asthma, Global Strategy for Asthma Management and Prevention. Updated 2021. 5)Matsunaga K, et al. An official JRS statement: the principles of fractional exhaled nitric oxide (FeNO) measurement and interpretation of the results in clinical practice. Respitr Investig 2021; 59: 34‐52. 6)Matsunaga K, et al. Reference ranges for exhaled nitric oxide fraction in healthy Japanese adult population. Allergol Int 2010; 59: 363‐367. 7)Dweik RA, et al. An official ATS clinical practice guideline: interpretation of exhaled nitric oxide levels (FENO) for clinical applications. Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 602‐615. 8)日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,2018. 9)Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of COPD. 2022 Report. 10)日本呼吸器学会COPD ガイドライン第6 版作成委員会 (編).COPD (慢性閉塞性肺疾患) 診断と治療のためのガイドライン2022〔第6 版〕,メディカルレビュー社,2022. 11)Hirano T, Matsunaga K. Measurement of blood eosinophils in asthma and chronic obstructive pulmonary disease. Intern Med 2022, doi: 10.2169/internalmedicine.9339‐22. 12)Yamaji Y, et al. Detection of Type2 biomarkers for response in COPD. J Breath Res 2020; 14: 026007. 1 ・ 気 道 ・ 肺 疾 患 に お け る タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 臨 床 指 針
p.25

        
p.26
第2 章

タイプ2 炎症とバイオマーカー
p.27
A.総論

●IL-4,IL-5,IL-13 などの2 型サイトカインの作用で気道や肺に惹起される炎症には,Th2 リンパ球の他に

も重要なリンパ球 (2 型自然リンパ球,ILC2) が関与することが判明し,包括的な 「タイプ2」 炎症の呼称が生まれた. ●気道・肺疾患におけるタイプ2 炎症のバイオマーカーとして特に重要なのは,呼気NO 濃度 (FeNO),血中

および喀痰中好酸球,血清IgE である. ●生物学的製剤の適応および選択は,タイプ2 炎症バイオマーカーを参考に判断する.

1.タイプ2 炎症の定義

気管支喘息やアレルギー性鼻炎はI型アレルギー機序で生じる疾患であり,疾患成立機序の解析を通じて,数年前まではTh2 リンパ球が中心的に関与し,このリンパ球が産生するTh2 サイトカイン,特にIL‐4,IL‐5, IL‐13 が病態 (Th2 炎症) の中心を形成すると考えられてきた.さらに近年は抗原受容体を持たない自然リンパ球のなかにTh2 と同様のサイトカインを産生するサブセット (2 型自然リンパ球,ILC2) の存在が明らかとなり,これらのリンパ球を合わせてタイプ2 炎症と呼ばれるようになった.喘息のすべての患者がタイプ2 炎症から成り立っているわけではないが,半数以上の患者がタイプ2 炎症を病態の中心あるいは一部に含んでいると考えられる.

2.炎症病態・治療とバイオマーカー

タイプ2 炎症が脚光を浴びているのは,治療薬に結びついているためである.現在重症喘息に対して上市されている生物学的製剤のうち,抗IgE 抗体,抗IL‐5 抗体,抗IL‐5Rα抗体,抗IL‐4Rα抗体は,いずれもタイプ2 炎症とかかわっている.IgE はサイトカインではないが,IL‐4,IL‐13 の作用を受けてB リンパ球がクラススイッチを起こして産生にいたる抗体であるため,タイプ2 炎症を構成する要素のひとつと見なされる.かつては,喘息の炎症表現型を解析しても,治療薬に結びつかないジレンマがあったが,解析手法と治療薬の充実により,喘息の炎症表現型の解析が病態で重要な因子の特定,さらには生物学的製剤の選択に直結するのが当たり前の時代に変化した.これに伴い,タイプ2 炎症のバイオマーカーを測定し,的確な生物学的製剤の選択に結びつけることが,呼吸器専門医のみならず,気道のアレルギー疾患を診療する医師にとって必須の知識となりつつある.患者に対して適切な治療薬を早く選択することは,患者のQOL のためにも,医療資源を大切に活用していくためにも重要である.

タイプ2 炎症バイオマーカーとしては,呼気NO 濃度 (FeNO),血中および喀痰中好酸球,血清IgE などが特に重視されている.表1 にこれらの指標の大まかな位置づけを記す.喘息患者の初診時あるいは病態把握を必要とする際には,まずは簡便な項目,すなわち血中好酸球数や血清総IgE および吸入アレルゲン特異的

ポイント
p.28
IgE を測定しておくことを推奨する.FeNO 測定機器が診療現場に設置されていれば,測定することが望ましい.これらの検査によってタイプ2 炎症バイオマーカーの一般的な簡易検査を網羅したことになる.FeNO は初診患者において喘息と診断する際に有用なバイオマーカーであり,吸入ステロイド薬 (ICS) 開始後に測定値が低下し維持されることでアドヒアランスを確認することも可能である.血中好酸球高値は,喘息でよくみられる所見であるとともに,IL‐5 を標的とする生物学的製剤の選択において必須の情報となる.総IgE および特異的IgE 抗体は,測定後数ヵ月ですぐに変わる性質のものではない.患者の生活指導,アレルゲン免疫療法の適応判断,そして抗IgE 抗体や抗IL‐4R 抗体を選択する際の参考となる.重症喘息患者で,通常の薬剤でコントロールが難しい場合には,これらのバイオマーカーに基づいて生物学的製剤の適応判断,そして薬剤の選択を行うことになる.タイプ2 炎症に関して,さらに詳細なバイオマーカー検査が必要な場面,解釈に困る場面では専門施設に診察・判断を依頼することも必要となりうる.各バイオマーカーの詳細な意義・活用法に関しては,項目毎の解説,後半の疾患各論の内容を参照いただきたい. 2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー

表1 喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの有用性

測定の簡便さ炎症指標としての

意義補助診断における

有用性治療中のモニタリング生物学的製剤などの

選択解析における

注意点

呼気NO 濃度(FeNO)

◎ ◎ ○ ○ (吸入ステロイ

ド薬のアドヒアランス判断に限ると◎) ○ (抗IgE 抗体)

抗IL-4Rα抗体ATS/ERS の標準法に準拠して測定する.現在の喫煙,鼻炎合併などの影響に留意

血中好酸球数

◎ ◎ △ △ ○抗IL-5 抗体抗IL-5Rα抗体抗IL-4Rα抗体本来は喀痰中好酸球の代用であるが,検査が容易なので好酸球に関する重要な指標と位置づけられる

喀痰中好酸球

△ ◎ △ △ (△ 数値基準は定

まっていない) (抗IL-5 抗体) (抗IL-5Rα抗体) (抗IL-4Rα抗体)採取・解析が容易ではない

血清IgE血清総IgE

◎ NA NA NA △抗IgE 抗体(数値が一定範囲内にあることが必要)自然免疫系と関連があり,意義は解析が進められている

特異的IgE 抗体

◎ ○ △ NA ○(吸入アレルゲンに陽性)抗IgE 抗体抗IL-4Rα抗体即時型皮膚反応でも代用可能

他のマーカーペリオスチン呼気凝縮液など研究目的(未確立)(未確立) (未確立) (未確立)補足病歴や臨床経過が重要.検査は補助的な位置づけ併存症も考慮して薬剤選択抗TSLP 抗体ではタイプ2 炎症バイオマーカーは必須条件とはならないNA:Not Available
p.29
B.呼気一酸化窒素濃度 (FeNO)

1.分子機序 (喘息病態との関係)

A.分子産生機序

一酸化窒素 (nitric oxide:NO) はアミノ酸の一種であるL‐アルギニンを基質としてNO 合成酵素 (nitric oxide synthase:NOS) により産生される.NOS には炎症により誘導される誘導型NOS (iNOS),神経細胞などに存在する神経型NOS (nNOS),血管内皮細胞などに存在する内皮型NOS (eNOS) の3 種類がある1).気道ではeNOS, nNOS からのNO 産生がiNOS に比べて非常に少ないため,FeNO は主にiNOS 由来と考えられている1). B.喘息病態との関係

FeNO の産生機序は喘息患者と健常者で異なる.健常者の気道ではIFN‐γからSTAT‐1 を介した経路でiNOSが発現しNO が産生される (図1A) 1~3).一方,喘息気道では,気道炎症によりTh2 リンパ球や2 型自然リンパ球から産生されるIL‐4,IL‐13 により,STAT‐6 を介した経路で,主に気道上皮のiNOS 発現が増強しNO の過剰産生が起こる (図1B) 1~3).また,大気汚染に伴う酸化ストレスでもAP‐1 を介してiNOS の発現が亢進しNOが産生される.さらに,好酸球やマクロファージなどの炎症細胞にもiNOS は発現しており,FeNO 上昇に関与する.したがって,FeNO は喘息における気道のタイプ2 炎症を推定する上で有用な指標と考えられる.

A:健常者

NO NO

NO

NO可溶性メディエーター

iNOS

STAT-1

IFN-γ (恒常性,原因不明)

ステロイド耐性のメカニズム

B:喘息患者

iNOS AP-1

大気汚染(酸化ストレス)アレルゲン曝露

iNOS

STAT-6 Mucus, AHR

ステロイド感受性のメカニズム

IL-4/IL-13 (Th2細胞,肥満細胞,好酸球)

図1 気道におけるFeNO の産生メカニズム

A:健常者,B:喘息患者(Matsunaga K, et al. Respir Investig 2021; 59: 34-52. 3)より引用)
p.30
2.測定方法

A.測定器の種類

据置型測定器と携帯型測定器の2 種類がある.携帯型は据置型に比べて小さく,安価で,簡便に測定できることから,本邦において2013 年に保険収載されたこともあり,日常診療の場に普及した.現在本邦で利用できる保険適用機種はNIOX VERO® (図2A) とNObreath® (図2B) である. B.実際の測定

FeNO 濃度は,1呼出時肺気量,2呼気流速,3口腔内圧の影響を受けるため,測定条件を一定にする必要がある.現在は,米国胸部学会 (ATS) と欧州呼吸器学会 (ERS) が合同で提唱した標準法に準拠して測定することが推奨されている4).具体的には,

1最大吸気を行った全肺気量レベルから呼出する. 2呼出流速を50mL/秒 (許容範囲:45~55mL/秒) に維持して10 秒程度呼出する. 3鼻腔などの上気道から産生されるNO の呼気中への混入を防ぐため,ノーズクリップはせず,呼出時に

5~20cmH2O の口腔内圧をかけ軟口蓋を閉鎖させる.実際のモニタリング波形では,呼出初期に上気道由来のNO が混入したピーク相と,その後のプラトー相を形成する.このプラトー相の値を下気道由来のFeNO 値とする.図2C と図2D にNIOX VERO®およびNObreath®の測定手順を示す.

2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー

A

B C 測定手順最大呼出します

■待機状態■アニメーション開始■呼気流量調節■結果表示

フィルターを通して最大吸気します10 秒 間 呼 出 し ま す約

1 分 後 に 結 果 が 表 示 さ れ ま す

D 測定手順

電源をつけ約1分でメイン画面が表示されます.メイン画面上段の測定モード(成人/小児)を選択してください. <成人モード>対象:12歳以上吹き込み時間:12秒

<小児モード>対象:12歳未満吹き込み時間:10秒

大きく息を吸ってください.ゆっくり息を吹き込んでください.吹き終わりと同時に結果が表示されます.約1分後に再測定ができます

※息の吹き込み方呼気NO濃度は呼気流量・呼気圧に依存するため,測定時にはそれらを一定させる必要があります.フロー内のボールがスリット部分に安定して浮かぶように吹き続けてください. (参考)ATS/ERS 推奨標準測定法では下記条件が望ましいとされています.呼気流量50mL/s,呼気圧5~20 cmH2O

1 2 3 4

1 2 3 4

図2 携帯型FeNO 測定器と測定手順

A,B:NIOX VERO® (https://www.chest-mi.co.jp/product/categories_005/niox-vero.html より許諾を得て転載) C,D:NObreath® (https://dev.medicalonline.jp/catalog_pdf/000/093/919/93919_c.pdf より許諾を得て転載)
p.31
3.安定性・再現性

A.安定性

FeNO 値は呼出流速が減少するほど上昇し,流速が増加するほど低下する.また,口腔内圧が低下すると上気道のNO が混入しFeNO 値が上昇する4).よって,安定したFeNO 値を得るには,上述のような測定条件を一定にすることが重要である. B.再現性

同一条件で測定した場合,再現性の高いFeNO 値が得られる4).なお,携帯型測定器は,実際のサンプリング波形が確認できないため,機種や呼出法により値のばらつきが多少出る5).より正確な値を得るため,可能な限り2~3 回の測定を行い,10%以内の範囲で得られた実測値の平均をFeNO 値とすることが望ましい2~4).また,製造元が異なる測定器は,センサー,吸気法,呼出時間などの違いから,測定値に若干の差を認めることが報告されている5).したがって,異なる機種を用いたFeNO 値の比較には注意する.

4.交絡因子

FeNO 値は,年齢,性別,身長,体重,呼吸機能検査,食品,薬剤,喫煙,アトピー,感染症,鼻副鼻腔炎,日内変動などの様々な因子により影響を受ける可能性が指摘されている (表1) 2~4, 6, 7).なかでも,喫煙,吸入ステロイド薬 (ICS),経口ステロイド薬の使用はFeNO 値を低下させ,アトピーや鼻炎・副鼻腔炎の存在はFeNO 値を上昇させることが多くの研究で示されている.他の因子についてはFeNO 値に影響を与えるか否かについて一定の見解は得られていない.現状では,FeNO 値を比較する際,可能な限り同一の環境・条件で測定することが望ましい.

5.臨床運用の要点

A.喘息

FeNO は気道におけるタイプ2 炎症を捕捉する指標であり,喘息の補助診断や気道炎症のモニタリングに有用である.2011 年のATS ガイドラインでは,FeNO カットオフ値を25ppb,50ppb とし,好酸球性気道炎症およびステロイド反応性に言及した解釈が示されている8).これは,喘息の気道炎症には多様性があり,好酸球のみならず非好酸球性気道炎症も存在するためである.一方,欧米人と体格や生活習慣が異なる本邦でも,成人を対象とした大規模な多施設共同研究が実施されており6, 9),その結果を考慮したカットオフ値と基準範囲が提唱されてきた2, 3).種々の報告があるが,本手引きでは最近の国際動向も踏まえ,ステロイド薬未治療患者では22ppb 未満を低値域,35 ppb 以上を高値域とし,ステロイド薬治療中の患者では20ppb 未満を低値域,35ppb 以上を高値域と判定する基準範囲を提唱する (第1 章 表1 参照). 1) 喘息/咳喘息の補助診断指標

日本における健常成人のFeNO 正常値は15.4 ppb,正常上限値は36.8 ppb (図3A),健常者と喘息患者を鑑別するためのFeNO カットオフ値は22ppb (感度91%,特異度84%) であった (図3B) 6, 9).よって,ステロイド薬未使用患者で喘息を疑う症状があり,FeNO≧22ppb であれば喘息の可能性が高く,FeNO≧35ppb であればほぼ確実に喘息と診断できる2, 3).なお,FeNO 値に影響する患者因子である喫煙とアレルギー性鼻炎を加味した場合のカットオフ値は18~28 ppb と変動がみられる3).しかし,その感度,特異度は80%以上であり,
p.32
2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー

表1 呼気NO 濃度(FeNO)に影響を及ぼす交絡因子とその対策

因子影響対策年齢・性別・小児では成長に伴い気道内腔面積が変化するため,加齢に伴

い上昇するという報告がある.・成人における年齢の影響に関して一定の関連性はない.・性別の影響に対する一定の関連性はない.・小児では年齢を考慮してFeNO 濃度を解

釈する.

身長・体重・BMI・成人での身長,体重,BMI の影響について一定の関連性はない.食品・飲料・硝酸塩含有食品(レタス・サラダ菜・ほうれん草・ごぼうなど)

の摂取で上昇するという報告がある.・アルコールや果糖(フルクトース),脂質過剰摂取で低下する

という報告がある.・測定前1 時間以内は飲食を避けることが望

ましい.

呼吸機能検査・呼吸機能測定にて一過性に低下し,1 時間程度で回復すると

いう報告がある.・FeNO 測定は呼吸機能測定前に行う.

気道径・気道収縮物質(ヒスタミン・高張食塩水)吸入にて気道内腔

が狭小化し低下するという報告がある.・気管支拡張薬の吸入後に上昇するという報告がある.・気管支拡張薬投与の有無を確認,比較する

際は条件を一定にする.

日内変動・日内変動があるという報告と,ないという報告があり,一定

の見解は得られていない.・健常者やコントロール良好喘息に比べてコントロール不良喘

息の日内変動が大きいという報告がある.・同一患者ではできる限り同じ時刻に測定し

たほうがよい.・測定時刻を記載しておくのがよい.

感染症・ウイルスや細菌による気道感染症の急性期で上昇し,回復期

で低下するという報告がある.・感染が終息してから測定することが望まし

い.

喫煙・喫煙で低下する.・能動喫煙のみならず受動喫煙でも低下するという報告がある.・過去の喫煙習慣とFeNO 値の間に一定の関連性はない.・喫煙の有無をチェックする.薬剤・経口・吸入ステロイド薬投与にて低下する.・硝酸薬(ニトログリセリンなど)はFeNO 値の有意な上昇を

示さないという報告がある.・使用している薬剤を記載する.・ステロイド薬が投与されている時の喘息補

助診断の有用性は低くなる.

アトピー素因・アトピー素因があると上昇する(アレルゲンの数の増加に伴

い高値となる).・アトピーの有無を血液検査や皮内テストな

どでチェックする.

鼻・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎で上昇する.・好酸球性副鼻腔炎で上昇する.・鼻炎・副鼻腔炎の有無を確認する. BMI:body mass index

Frequency 20 16

12

8

4

0

A

0 10 20 30 40 50

平均値15.4 ppb

正常上限値

36.8 ppb (Mean+2SD) B

呼気NO濃度(FeNO)(ppb) 300 100

30 10

5 健常者 喘息患者

p<0.001

47ppb 37ppb

22ppb

15ppbカットオフ値(22ppb)感度:91%特異度:84%正常上限値(37ppb)感度:52%特異度:99%

呼気NO濃度(FeNO)(ppb)

図3 健常成人における呼気NO 濃度 (FeNO) の分布 (A) と,喘息患者との差異 (B)

(Matsunaga K, et al. Respir Investig 2021; 59: 34-52. 3)より引用)
p.33
喘息補助診断の指標としては十分と判断する.一方,喘息として治療中であるが治療効果が不十分で診断が不確かである場合には,ステロイド薬を休薬後にFeNO を再測定することが必要な場合もある.FeNO は咳喘息の補助診断にも有用と報告されている (カットオフ値:30ppb 前後).しかし,典型的喘息と比べて感度が低く,低値を示す患者も少なくないことに留意する10).したがって,FeNO は典型的喘息や咳喘息の補助診断に有用だが,病歴,症状,身体所見,呼吸機能検査などと合わせて総合的に判断することが望ましい2, 3, 11). 2) 気道炎症モニタリング

FeNO は喘息治療導入後の気道炎症モニタリングに有用である.FeNO 高値の場合,吸入ステロイド薬や生物学的製剤に対する有効性や2, 3, 8),アドヒアランス不良の指標として期待できる12).一方,吸入ステロイド薬の減量調節に有用かは議論の分かれるところである13).一般に,高用量吸入ステロイド薬治療下でも症状が残存するFeNO 高値例では吸入ステロイド薬で制御できないタイプ2 炎症が疑われる2, 3, 8).一方,吸入ステロイド薬治療下で症状がコントロールされたFeNO 低値例ではタイプ2 炎症は制御されていることが示唆される2, 3, 8).最近,複数のタイプ2 炎症バイオマーカーを組み合わせたモニタリングが吸入ステロイド薬減量に有用と報告された14).現状では,病歴,臨床所見,肺機能検査に基づいた薬剤選択,モニタリング,抗炎症薬調節が不確かな場合,FeNO 測定の追加が推奨される2, 3, 11). 3) 将来のリスク予測

FeNO は喘息重症度との関連は乏しいが15),FeNO 高値例は低値例に比べて増悪リスクが高く16, 17),一秒量の経年低下が大きい16, 18).また,他のタイプ2 炎症バイオマーカーと併用することで,より鋭敏に増悪を予測できることも報告されている19).しかし,FeNO 値には個人差や変動があり,症状コントロールの状態とは乖離することもある7, 15).増悪予測,経年的呼吸機能低下といった将来のリスク予測には,単回ではなく経時的にFeNO を測定することが推奨されている2, 3, 11). B.喘息COPD オーバーラップ (asthma COPD overlap: ACO)

喘息とCOPD の合併病態であるACO は各々単独と比べてコントロール不良,経年的呼吸機能低下,頻回増悪,医療負担増加が指摘されており,正確な診断と適正な治療介入が重要である20).本邦のACO 診断基準にはFeNO>35ppb が盛り込まれている20).また,COPD においてもFeNO 高値例は低値例と比べ吸入ステロイド薬反応性が良好で21),COPD における吸入ステロイド薬投与の目安として期待される (第1 章 表5 参照). C.好酸球性肺炎の診断の補助

FeNO は気道上皮のみならず好酸球などの炎症細胞からも産生される1).急性および慢性好酸球性肺炎では,鑑別を要する他のびまん性肺疾患と比べFeNO 値は上昇し,ステロイド薬治療の効果とも関連することが報告されている22, 23).したがって,好酸球性肺炎の診断およびモニタリングへの臨床応用も期待される.文献

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p.34
7)Matsunaga K, et al. Associated demographics of persistent exhaled nitric oxide elevation in treated asthmatics. Clin Exp Allergy 2012; 42: 775‐781. 8)Dweik RA, et al. An official ATS clinical practice guideline: interpretation of exhaled nitric oxide levels (FENO) for clinical applications. Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 602‐615. 9)Matsunaga K, et al. Reference ranges for exhaled nitric oxide fraction in healthy Japanese adult population. Allergol Int 2010; 59: 363‐367. 10)Song WJ, et al. Diagnostic accuracy of fractional exhaled nitric oxide measurement in predicting cough‐variant asthma and eosinophilic bronchitis in adults with chronic cough: a systematic review and meta‐analysis. J Allergy Clin Immunol 2017; 140: 701‐709. 11)Expert Panel Working Group of the National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI) administered and coordinated National Asthma Education and Prevention Program Coordinating Committee (NAEPPCC). 2020 Focused Updates to the Asthma Management Guidelines: A Report from the National Asthma Education and Prevention Program Coordinating Committee Expert Panel Working Group. J Allergy Clin Immunol 2020; 146: 1217‐1270. 12)McNicholl DM, et al. The utility of fractional exhaled nitric oxide suppression in the identification of nonadherence in diffi‐ cult asthma. Am J Respir Crit Care Med 2012; 186: 1102‐1108. 13)Essat M, et al. Fractional exhaled nitric oxide for the management of asthma in adults: a systematic review. Eur Respir J 2016; 47: 751‐768. 14)Heaney LG, et al. Composite type‐2 biomarker strategy versus a symptom‐risk‐based algorithm to adjust corticosteroid dose in patients with severe asthma: a multicentre, single‐blind, parallel group, randomised controlled trial. Lancet Respir Med 2021; 9: 57‐68. 15)Saito J, et al. Domiciliary diurnal variation of exhaled nitric oxide fraction for asthma control. Eur Respir J 2014; 43: 474‐484. 16)Ulrik CS, et al. Fractional exhaled nitric oxide as a determinant for the clinical course of asthma: a systematic review. Eur Clin Respir J 2021; 8: 1891725. 17)Kimura H, et al. Prospective predictors of exacerbation status in severe asthma over a 3‐year follow‐up. Clin Exp Allergy 2018; 48: 1137‐1146. 18)Matsunaga K, et al. Persistently high exhaled nitric oxide and loss of lung function in controlled asthma. Allergol Int 2016; 65: 266‐271. 19)Kraft M, et al. Patient characteristics, biomarkers, and exacerbation risk in severe, uncontrolled asthma. Eur Respir J 2021; 58: 2100413. 20)日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,2018. 21)Oishi K, et al. Role of type2 inflammatory biomarkers in chronic obstructive pulmonary disease. J Clin Med 2020; 9: 2670. 22)Lee JE, et al. Fraction of exhaled nitric oxide in patients with acute eosinophilic pneumonia. Chest 2012; 141: 1267‐1272. 23)Park JY, et al. Significance of fractional exhaled nitric oxide in chronic eosinophilic pneumonia: a retrospective cohort study. BMC Pulm Med 2014; 14: 81. 2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー
p.35
C.血中好酸球

1.分子機序 (喘息病態との関係)

好酸球は1879 年Ehrlich によって酸性色素で赤染される細胞として認識され,その研究史が幕を開けた.通常2~3 核に分葉した核を持ち顆粒には前骨髄球の段階で出現する原始顆粒,塩基性顆粒蛋白群を貯蔵する特異顆粒,成熟過程の後半から出現しアリルサルファターゼ活性や酸性ホスファターゼ活性を有する小型顆粒が存在する.エフェクター機能が大きいとされるのは特異顆粒である.

好酸球の役割は,1970 年代までは寄生虫免疫などを担うとともに,喘息ではマスト細胞などから放出される炎症性分子を不活化する抑制的細胞とも推測されていた.1980 年代以降,好酸球特異顆粒蛋白が喘息気道の上皮剝離にかかわることが示され,エフェクター細胞として注目された1).好酸球性炎症を抑制する吸入ステロイド薬の普及が喘息死を減少させたのも周知である.しかし2000 年代に入り,抗IL‐5 中和抗体が軽症喘息に効果が不十分であったことから,好酸球の喘息病態への意義に疑問符がついた.その後,抗IL‐5 中和抗体は軽症喘息の気道好酸球浸潤を部分的にしか抑制できないことが判明した.一方で,抗IL‐5 中和抗体あるいは抗IL‐5Rα抗体は重症喘息症例において,残存する好酸球性気道炎症の軽減と,増悪抑制などに効果を発揮することが証明され,エフェクター細胞としての好酸球の意義は臨床レベルで実証されたのである.

血中好酸球数は,成長因子群の作用を基軸とした造血と,組織への流入とのバランスが重要な規定因子となる.好酸球は通常,骨髄内で多能性造血幹細胞を起源とし,骨髄系共通前駆細胞,そして特異的前駆細胞を経て分化する.すなわち造血系のCD34+骨髄系前駆細胞からGM‐CSF,IL‐3,IL‐5 などの成長因子によって分化して生じるが,特にIL‐5 は好酸球の選択的な分化において中心的な役割を果たす.なおCD34+細胞は骨髄中のみならず末梢血中にも認められ,喘息では感作アレルゲンへの曝露などにより気道局所においてCD34+細胞から好酸球へと分化させる機序が指摘されている.CD34+細胞の多くは成熟するとケモカイン受容体であるCCR3 を発現する.

好酸球は末梢血中を循環したのち,標的臓器領域の血管内皮細胞に接着し,血管内皮細胞の間隙を遊走する過程で活性化シグナルが作動し,組織に集積してエフェクター機能を発揮する2).好酸球は末梢血中では6 ~18 時間程度の半減期であるが,組織に移行すると数日以上生存でき,特にタイプ2 炎症病態が存在するとさらに生存が延長しうる.好酸球の生存延長にはGM‐CSF の作用が大きく,組織集積した好酸球自身もGM‐ CSF を産生しautocrine に生存が延長する.先述した軽症喘息の気道における抗IL‐5 抗体の効果の欠落はこの事実に起因する.一方,重症喘息ではステロイド抵抗性を獲得したILC2 などに由来するIL‐5 が,好酸球性炎症の維持に大きく寄与していると推定される.

好酸球の血管から局所への集積にはタイプ2 免疫応答に関連する分子群の寄与が重要である3).好酸球細胞表面のVLA4 (α4β1 インテグリン) と,主にIL‐4/IL‐13 作用により血管内皮に発現する VCAM (vascular cell adhesion molecule)‐1 を介した接着の意義が大きい.その後,血管内皮細胞間を通り抜け炎症局所へと遊走するが,タイプ2 炎症におけるこの過程では細胞表面に発現する受容体のCCR3 が重要である.CCR3 は11 種ものリガンドを持ち,好酸球の炎症局所への遊走反応を誘導できる.主なリガンドはIL‐4 やIL‐13 などの作用により上皮あるいは平滑筋細胞などから産生されるエオタキシンなどのCC ケモカイン群である.ただし好酸球の接着・遊走は,システィニル・ロイコトリエン,ロイコトリエンB4,血小板活性化因子,プロスタグランジンD2 などの脂質メディエーター,活性酸素種などによっても誘導され,これらは非タイプ2 炎症の
p.36
局所においても産生あるいは放出され,好酸球性気道炎症を誘導しうることに注意する必要がある3).

血中好酸球数は吸入アレルゲンへの曝露環境など,タイプ2 炎症が常在する場合はその増加が持続しやすい.一方でタイプ2 炎症が急性に惹起される場合には,好酸球の臓器への流入が一過性に促進されて高値を示さない場合がある.またステロイド薬に代表される薬物によって修飾を受けるが,特にVCAM‐1 の発現あるいはCC‐ケモカイン産生にかかわるIL‐4/IL‐13 を標的とする治療などでは,好酸球の組織への流入が阻害されて血中好酸球数が増加する場合がある.

2.測定方法

血中好酸球数の測定には一般的に自動白血球分析装置が用いられる.必要時には塗抹標本を用いて顕微鏡で観察する目視法で再検される.白血球数と白血球分類の好酸球比率から絶対数を算出するのが通常である.一般に自動白血球分析装置はスクリーニング用であって分析が正常のときはそのデータが報告されるが,異常細胞を検知した場合に目視法で確認されることが多い.

3.安定性・再現性

血中好酸球数は後述する諸因子の影響で容易に増減する.一般的には感作アレルゲンへの曝露などに伴うタイプ2 炎症の増悪期には増加し,全身性ステロイド薬に代表される治療によって減少する.したがって測定値の評価には,測定時期の病勢あるいは維持治療および数週前からの治療変更などに十分に注意する必要がある.このため,過去1 年以内の最高値を確認することもしばしば有用である.

4.交絡因子

血中好酸球数の増多を示す代表的疾患・病態を表1 に示す.特に,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症や好酸球性肺炎などでは喘息の臨床症状が先行あるいは随伴する頻度が高いため注意を要する.急性好酸球性肺炎の急性期には一過性に好酸球数が減少することがある4).抗IL‐4Rα抗体の使用では 血中好酸球数ならびに特異顆粒蛋白eosinophil cationic protein の血中濃度が増加しうるが,通常は一過性である5).好酸球数増加が持2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー

表1 好酸球増多を示す疾患・病態1.アレルギー疾患気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,薬剤アレルギーなど2.免疫関連疾患好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,結節性多発動脈炎,IgG4 関連疾患など3.血液疾患・悪性腫瘍好酸球増多症候群,白血病,悪性リンパ腫,各種固形癌など4.臓器特異的疾患好酸球性肺炎,好酸球性胃腸炎,好酸球性血管性浮腫,木村病など5.感染症寄生虫感染症,真菌感染症,一部のウイルス感染症など6.喘息治療の影響全身性ステロイド薬の減量・中止,二次性副腎機能低下,抗IL-4Rα抗体7.その他アジソン病,放射線治療,血液透析,移植拒絶反応など
p.37
続する例では何らかの好酸球増多性疾患が合併している可能性が示唆される.重症喘息などにおける全身性ステロイド薬の使用では短期間でも血中好酸球数が減少するが,IL‐5 の過剰産生を伴う好酸球型重症喘息では,ステロイド薬減量・中止後に好酸球数増加をきたす場合がある.また,全身性ステロイド薬の使用により医原性の副腎機能低下を招来することがあり,これも血中好酸球数の増加に寄与しうる.

5.臨床運用の要点

血中好酸球数は喀痰中好酸球比率と比較して,臓器特異度は低く,好酸球性気道炎症の検出感度でも劣る.しかし喀痰中好酸球比率の測定は,十分量の喀痰を得ることの不確実性や検体処理の手技などの問題があり,汎用性は高くない.一方で,血中好酸球数は日常的にかつ簡便に測定でき,有用である (表2).

A.好酸球性気道炎症の指標

血中好酸球数から好酸球性気道炎症の存在を推定することが一定程度可能である.喘息患者における各種バイオマーカーの関連性を検討した研究において,喀痰中好酸球比率は,血中ペリオスチン濃度とは相関を示さない一方で,血中好酸球数およびFeNO とは正の相関を示した6).種々の報告があるが,血中好酸球数220/μL をカットオフ値として好酸球性気道炎症 (喀痰中好酸球比率≧3%) を有する症例の検出を試みた検討では,その感度は68~86%,特異度は66~79%であり,FeNO とほぼ同程度の精度であった7).

治療中の重症喘息患者においてタイプ2 炎症が存在する指標として,GINA では喀痰中好酸球比率≧2%あるいは血中好酸球数≧150/μL が提案されている.重症喘息患者での喀痰中好酸球比率≧2%を検出する基準値を検討した報告では,血中好酸球数≧150/μL での感度が77.6%,特異度は53.3%,≧300/μL とすると感度59.7%,特異度84.4%と示されている8).日本人重症喘息患者の検討では,血中好酸球数は喀痰中好酸球比率と有意に相関し,ROC 解析にてAUC は82%,血中好酸球数≧300/μL をカットオフ値とすると喀痰中好酸球比率≧2%を検出できる感度は75%,特異度69%であった9).以上より,血中好酸球数は一定の精度で好酸球性気道炎症のマーカーとなりうる.交絡因子の存在を考慮すると,単回測定では血中好酸球数≧220/μL,または過去1 年以内に≧300/μL が確認されれば,好酸球性気道炎症が存在する可能性が高い.

本手引きでは最近の国際動向を踏まえ,ステロイド薬未治療の喘息患者では血中好酸球数220/μL 以上をタイプ2 気道炎症が存在する可能性が高いカットオフ値とし,ステロイド薬治療中の喘息患者では150/μL 未満を低値域,300/μL 以上を高値域と判定する基準範囲を提唱する (第1 章 表2 参照). B.喘息増悪頻度の予測

血中好酸球数の高値が喘息増悪のリスク因子となることが指摘されている.成人の慢性喘息患者を対象とした観察研究では,血中好酸球数≧400/μL を示す患者群では増悪頻度が約30%高くなった10).主に,プライ

表2 タイプ2 炎症バイオマーカーとしての血中好酸球数の臨床運用の要点1.好酸球性気道炎症の存在・血中好酸球数≧220/μL で可能性が高い・過去1 年以内に血中好酸球数≧300/μL で可能性が高い2.喘息増悪の頻度・血中好酸球数≧400/μL を示す症例で頻度が高い・重症喘息では≧300/μL,加えてFeNO≧25 ppb を示す症例で頻度が高い3.生物学的製剤の有効性・IL-5 を標的とする製剤は≧150/μL,過去1 年以内に≧300/μL で有効の可能性が高い・抗IL-4Rα抗体は血中好酸球数≧150 で有効の可能性が高い
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マリケア医が担当する患者を対象とした大規模観察研究では,血中好酸球数≧400/μL を示す患者では重度増悪のリスクが42%高まった11).米国での Severe Asthma Research Program 研究では重症喘息患者709 人が解析され,血中好酸球数高値は喘息増悪の頻度と関連し,特に年3 回以上の頻回増悪群では血中好酸球≧300/μLの患者が多かった12).日本人重症喘息107 名の解析では,年3 回以上の重度増悪を発症した患者のなかで,血中好酸球数≧300/μL の症例が80%を占めていた9).さらに,血中好酸球数≧300/μL かつFeNO≧25ppbの症例では,年3 回以上の重度増悪をきたす頻度がより高かった9).日本以外の欧米・アジア10 ヵ国での重症喘息患者1,175 名の検討でも,好酸球数≧300/μL かつFeNO≧25ppb で増悪頻度が高いが,血中好酸球数の増加だけでは増悪頻度は高くなかった13).これらの知見から,治療中の喘息患者で血中好酸球数≧400/μLを示す症例,重症喘息では血中好酸球数が≧300/μL で同時にFeNO≧25ppb を示す症例は,増悪を発症するリスクが高いと考えられる.なお経時的に反復測定した血中好酸球数が高度に変動を示す症例では増悪を生じやすいとの報告もある.

COPD においても血中好酸球数は,好酸球性気道炎症を反映しうる.COPD 患者のなかにも血中好酸球数の増多症例が存在し,吸入ステロイド薬の反応性と関連することが報告されている14).ただしCOPD での血中好酸球数と喀痰中好酸球比率の関連は,喘息よりは強くないことに注意を要する15).本手引きでは,タイプ2 炎症バイオマーカー (血中好酸球数およびFeNO) と患者の病歴 (喘息の合併,COPD 増悪,感染症の懸念) を組み合わせた複合評価をCOPD における吸入ステロイド薬使用の目安として参照することを提唱した(第1 章 表5 参照).

重症喘息に対する生物学的製剤の有効性,特に増悪抑制効果について,血中好酸球数との関連が解析されてきた.抗IgE 抗体は,初期の検討で血中好酸球数≧260/μL で増悪抑制効果が大きいと報告されたが16),その後,増悪抑制効果は血中好酸球数のレベルに影響されないことが報告されている17).したがって,現在は血中好酸球数を治療選択の参考とすることは推奨されていない.一方,抗IL‐5 抗体のメポリズマブでは血中好酸球数≧150/μL または過去12 ヵ月間に≧300/μL の症例ではプラセボ群と比較して喘息増悪が51%減少したが,いずれの条件も満たさない症例では約10%の減少であり効果に差が認められた18).またpost hoc 解析では治療介入による増悪抑制率が30%以上を示した血中好酸球数は≧150/μL と報告された.抗IL‐5Rα抗体のベンラリズマブでは,血中好酸球数≧300/μL 症例では増悪が51%減少するが,<300/μL では17%の減少であった19).いずれの薬剤も血中好酸球数が150/μL 未満では有効性に乏しいことを銘記すべきである20).抗IL‐4Rα抗体のデュピルマブでは,血中好酸球数≧300/μL で増悪リスクが67%減少,≧150/μL かつ< 300/μL でも44%減少したが,<150/μL では増悪がむしろ15%増加した5).以上から,現時点ではIL‐4 およびIL‐5 を標的とする生物学的製剤では血中好酸球数≧150/μL を示す症例,さらにメポリズマブやベンラリズマブについては過去1 年以内に≧300/μL を示す症例も,治療効果を得られる可能性が高いと推定される.

生物学的製剤の維持期における血中好酸球数測定の意義は不明確な点が多い.血中好酸球数の変化が気道の好酸球浸潤の変化をどの程度反映しているのかも結論づけられていない.実際,デュピルマブでは開始後に血中好酸球数が病状の変化と乖離して上昇する症例もみられることなどから,血中好酸球数による維持期のモニタリングに関しては更なる検討が必要である.文献

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p.40
D.喀痰中好酸球

1.分子機序 (喘息病態との関連)

肺・気道の炎症細胞浸潤を直接的に評価する方法として,気管支鏡による粘膜生検や気管支肺胞洗浄液があるものの,患者にとっては侵襲性が高い.一方,喀痰は日常臨床で活用でき,反復施行も可能である.喀痰中好酸球は,気道炎症を反映するバイオマーカーとしてこれまで多くの研究で検証されてきており,個別化治療の観点からも様々な利点がある.

生体の局所における好酸球の増減は体内動態の変化をあらわし,産生・集積・停留・寿命などを反映している.IL‐5 は最も好酸球特異的な作用を有するサイトカインであり,分化だけでなく,アポトーシスの抑制,接着や遊走,脱顆粒といった様々な機能を亢進させる1).IL‐5 産生細胞としては,獲得免疫応答においては抗原によって誘導されるTh2 細胞が,自然免疫応答においては2 型自然リンパ球 (ILC2) が重要である.一部の好酸球は生体局所の組織で成熟するが,基本的に好酸球は骨髄で増殖・成熟してから血管内に移行する.通常,好酸球の血中半減期は6~18 時間程度とされる.組織集積の最初のステップでは,血管内の好酸球が血管内皮へ接着し,内皮間隙を通過する.遊走にはCC ケモカインであるエオタキシンと,その受容体CCR3が特に重要な役割を担っている.一部の好酸球は粘膜から気道の内腔にまで遊出することが知られており,喀痰中好酸球はこれを検出している.

2.測定方法

喀痰採取と計測の方法は標準化されていないため,施設のプロトコルを作成して運用することが望ましい.喘息のバイオマーカーに関する米国のワーキンググループのレポート2)や,各施設で確立された手順3)などが参考になる.患者へ検査の意義と採取法を説明し,手順に沿って実施する必要があり,幼児や理解力が低下している患者への実施は容易ではない.

喘息では一般に自発喀痰が採取しにくいため,超音波ネブライザーを用いて高張食塩水を吸入し,喀痰の排出を促す方法が広く行われている.この誘発喀痰は気管支洗浄液より濃縮された気道分泌物であり,健常者を含めほとんど喀痰症状のない患者からでも採取することが可能である.3%の高張食塩水の超音波ネブライザーを用いる方法が一般的であるが,気道の収縮反応を防止するという観点から等張食塩水を用いたり,β2刺激薬を添加したりする場合もある3).食塩水の濃度は細胞分画に影響を与えないとされている4).細胞診として定性的な観察を行うのみであれば,採取した喀痰を塗抹・固定し,染色・観察すればよいが,細胞数や細胞分画を検討するには,喀痰の均一化を行うためのプロセシングが必要になる. A.手順

気管支拡張薬の吸入後,12~15 分間,高張食塩水の吸入を行いながら,なるべく間隔をあけて喀痰を採取する.唾液や鼻汁の混入を最小限にするため,患者はノーズクリップを装着し,上皮細胞の混入を減らすために喀出の前にあらかじめうがいをして唾液を吐き出してもらうとよい.採取した喀痰には粘液溶解剤であるジチオスレイトール (dithiothreitol) 溶液を加えて,恒温槽で撹拌しながら均一化したあと,サイトスピン2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー
p.41
を行ってスライドを作成し,ライトギムザ,Diff‐Quick などの染色を行う.均一化した喀痰は遠心し,得られた上清は種々のバイオマーカーの測定に用いることができる.サイトスピン標本の顕微鏡観察では,口腔由来の扁平上皮細胞以外の有核細胞をカウントして好酸球の出現率を算出する. B.注意点

実施に際しては気道収縮が誘発されることがあるため,中止基準を設定し,あらかじめピークフローや呼吸機能検査を確認しておくことが望ましい.喀痰の採取量が少ない場合や,採取から処理までの時間が長い,扁平上皮が80%以上になる場合など,不適とする検体基準を設定しておくことが望ましい.また,ネブライザーを利用した喀痰採取にはエアロゾルの発生を伴うため検体の取り扱いはCOVID‐19 や結核をはじめとした感染症への注意が必要である.検査担当者のトレーニングと,施設の基準に沿った感染防止策の実施が重要である.

3.安定性・再現性

サンプリングや手順が測定結果に影響しうるため,検査としての精度管理に注意する必要がある.同一プロトコルで行った喘息患者の喀痰中好酸球比率の再現性について,1 週間の間隔での一致性相関係数は0.74 (95%信頼区間0.59~0.84) と報告されている5).

4.交絡因子

健常者では喀痰中に好酸球はほとんど検出されないが,好酸球比率は,0.2%ほど女性のほうが有意に高いことが報告されている6).喘息患者ではアレルゲンを吸入すると時間単位で好酸球比率は変化しうる.喀痰中好酸球には日内変動もあることが示されており,朝に高く夕方に低いため,採取時間には注意が必要である7).喀痰中の好中球比率は年齢とともに上昇することや3),喘息患者の喫煙が好中球・好酸球比率に影響することが報告されている8).また,薬剤の影響を受け,吸入ステロイド薬や全身性ステロイド薬,抗IL‐5 抗体や抗IL‐5 受容体抗体は喀痰中好酸球比率を低下させるが,ロイコトリエン受容体拮抗薬の影響には一定した結果が得られていない.短時間・長時間作用性β2 刺激薬は影響を与えないとされる2).

5.臨床運用の要点

塗抹による喀痰細胞診では細胞分画の情報を得ることは難しいが,好酸球細胞質蛋白のgalectin‐10 が10~ 50μm の針状に結晶化したシャルコー・ライデン結晶 (Charcot‐Leyden crystal),剝離した気道上皮の集塊であるクレオラ体 (Creola body) やクルシュマンらせん体 (Curschmann’s spiral) はプロセシングした喀痰よりも観察しやすい.これらは喘息に特異的ではないが特徴的な気道炎症の傍証として有用で,喘息の補助診断に利用されてきた.

健常者の喀痰中好酸球比率の平均は0.4~0.6%程度である6, 9)ため,好酸球増多のカットオフ値は通常2~ 3%とされる.喘息患者では健常者や喫煙者に比べて喀痰中好酸球比率が増加しており (図1) 10),その増加はタイプ2 気道炎症の判定に重要である.

プロセシングした喀痰上清を用いて,好酸球顆粒蛋白などの液性成分を測定する,または細胞成分を用いて細胞表面マーカーを検討するなど,様々な研究に活用されている.一方で,喀痰の解析では気道組織にと
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どまっている好酸球や,気道内腔で崩壊した好酸球は同定できないことに留意する必要がある.喀痰中で細胞質や核の縮小といった形態学的にアポトーシスをきたしている好酸球は,重症喘息よりも軽症喘息で多くみられる11).また,好酸球の顆粒が形態を保って遊離する細胞死 (cytolysis やETosis と呼ばれる) の存在が知られており12),喀痰中に遊離した好酸性顆粒が多く観察される場合は好酸球性炎症と考えられ,喘息コントロールの悪化に伴って増加することが報告されている13).この好酸球の崩壊が原因となって好酸球性喘息の頻度が少なく見積もられている可能性も指摘されている14).文献

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Sputum eosinophils(%) 100 10

1 0.1 Healthy Asthmatics Smokers

p=0.3 p=0.001 p=0.001

Upper limit 95%CI

図1 喘息における喀痰中好酸球比率の増加

(Hunter CJ, et al. Chest 2002; 121: 1051-1057. 10)より引用)
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E.血清IgE,特異的IgE,プリックテスト

1.分子機序 (喘息病態との関連性)

IgE は免疫グロブリンのサブクラスのひとつであり,その分子量は188 kDa とIgM に次いで大きい.抗原特異的Th2 細胞がB 細胞の形質細胞への分化を促すとともにIgE 産生へのクラススイッチを促進し,分化した形質細胞から抗原特異的IgE が産生される.IgE は他の免疫グロブリンと同様にY 字型の4 本鎖構造 (軽鎖・重鎖の2 つのポリペプチド鎖が2 本ずつ) を持ち,Fab 領域とFc 領域に分けられる (図1) 1).重鎖の定常領域 (Cε) は四つのドメインから構成され,これらは可変領域に近いほうからCε1~4 と呼ばれ,IgE 受容体への結合にはCε3 ドメインが関与する.

IgE は高親和性IgE 受容体 (FcεRI) を介してマスト細胞や好塩基球の細胞表面に結合する.抗原が細胞表面の特異的IgE に架橋すると細胞は速やかに脱顆粒を起こし,あらかじめ貯蔵されていたサイトカインや化学伝達物質が遊離され,これらが気道炎症,平滑筋収縮,血管透過性の亢進,粘液分泌などを引き起こし,喘息の病態形成に関与する.

小児・成人問わずアトピー素因 (抗原感作) は喘息の発症に関与しており2, 3),アトピー素因の存在は,本邦のガイドラインにおいて,喘息診断の目安のひとつとして掲げられている4).喘息患者において陽性率の高い特異的IgE は年齢を問わずダニとスギである5).総IgE レベルに関しては,小児では喘息の重症度に関連性があることが示されているが6),成人では重症度に相関は認められない7, 8).一方,真菌に対する特異的IgE 陽性の患者群では気道過敏性と気道炎症が亢進しており9),真菌感作は喘息の重症化と関連する10).また,抗IgE抗体療法が,従来の喘息治療に抵抗性を示すアトピー型の重症喘息患者に有効であることから,アトピー型喘息の重症化機序にIgE が関与していると考えられる.

N 型糖鎖

IgE

Cε2 Cε3 Cε4 Cε2 Cε3 Cε4 Cε1

Cε1

CL

CL VL

VH VH VL

図1 IgE のドメイン構造

V:可変領域,C:定常領域,L:L 鎖,H:H 鎖,●:N 型糖鎖(Gould HJ, Sutton BJ. Nat Rev Immunol 2008; 8: 205-217. 1)より引用)
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2.測定方法

IgE の発見から8 年後の1974 年,当時のファルマシア社 (現サーモフィッシャーダイアグノスティックス社)によって抗原特異的IgE の測定が実用化された.以降,IgE の測定は長きにわたってRAST (radio‐allergosor‐ bent test) 法で実施されてきた.RAST 法は,濾紙上で固相化されたアレルゲンに結合した特異的IgE を,放射性アイソトープで標識した抗IgE 抗体を用いて測定する方法である.現在では,放射性アイソトープの代わりに酵素活性を用いて測定が行われている.現在も通称としてはRAST と呼ばれることも多いが,実際にはRAST 法ではないことに留意する.

抗原特異的IgE の測定には,各項目を個別に選択する単項目測定法と固定された複数の項目を測定する多項目測定法がある.単項目測定法の代表的なものとしてイムノキャップ,アラスタット3gAllergy (商品名:シーメンス・イムライズ アラスタットIgE II 2000),オリトンIgE ケミファがあり,多項目測定法にはView アレルギー39,MAST36 アレルゲンがある.イムノキャップでは,アレルゲンの固相化されたスポンジ上でアレルゲン–特異的IgE 複合体が形成され,酵素標識抗IgE によって抗原特異的IgE を測定する (蛍光酵素免疫測定法:FEIA 法).アラスタット3gAllergy は,液相にて結合したビオチン化アレルゲンと抗原特異的IgE の複合体をストレプトアビジン結合固相化ビーズに結合させ,化学発光酵素免疫測定法 (CLEIA 法)を用いて測定する方法である.オリトンIgE ケミファでは,ビオチン化アレルゲンと抗原特異的IgE の複合体が,多孔性ガラスフィルターに固相化された抗ビオチン抗体に結合し酵素免疫測定法 (EIA 法) を用いて測定する.View アレルギー39 は固定の39 項目,MAST36 アレルゲンは固定の36 項目の特異的IgE を同時に測定することが可能であるが,半定量であり単項目測定法で得られた測定値とは直接比較はできない.多項目測定法はおもにスクリーニング検査としての有用性が高い.

好塩基球と結合した抗原特異的IgE が血中に存在することを示す検査としては,好塩基球ヒスタミン遊離試験 (histamine release test:HRT) と好塩基球活性化試験 (basophil activation test:BAT) の2 つがある.抗原刺激によって,HRT では遊離したヒスタミンを測定し,BAT では好塩基球表面上の活性化マーカー (CD63およびCD203c) を測定する.これらの検査は,実際のアレルギー反応をより正確にとらえている可能性が高いが,末梢血中の好塩基球と実際に症状を起こしている局所のマスト細胞または好塩基球とでは,そのアレルゲンに対する反応性は異なる可能性があることに留意する.なお,HRT は現在検査受注が停止しており, BAT は保険未収載である.

即時型アレルギー素因を調べる方法として,特異的IgE の測定以外に皮膚テストが存在する.皮膚テストにはプリックテスト,スクラッチテスト,皮内テストがある.プリックテストは,プリック専用針でアレルゲンを少量皮膚に入れ,15~20 分後に出現した膨疹径を測定する.膨疹径が3 mm 以上,または陽性コントロールの膨疹の半分以上の反応を陽性とする.紅斑のみが誘発される場合は,紅斑径によって評価する.スクラッチテストや皮内テストは,臨床症状を有しているがプリックテストが陰性の場合に実施を検討する.皮内テストは,アレルゲン免疫療法導入時における閾値検査目的にも実施される.通常,本邦では特異的IgEの測定が行われているが,諸外国では現在も多くの国で皮膚テストが利用されている.

3.安定性・再現性

国際規格 「ISO 15189 (臨床検査室‐品質と能力に関する特定要求事項)」 に基づき実施された多施設共同研究によって,イムノキャップは施設内再現性 (複数の抗原特異的IgE) について,同一施設で同一サンプルを10回測定したときにバラツキ (変動係数:CV) が少ないこと,および施設間再現性 (同一サンプルを20 回または10 回測定して得られた全25 施設のCV の平均が低いこと) が証明されている11).いずれの結果も,米国臨床2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー
p.45
検査標準委員会が示す,自動分析による血液由来成分結果の上限 (CV=10%) を満たしていた.アラスタットに関しても,喘息の代表的吸入抗原であるヤケヒョウヒダニに対する特異的IgE の高い再現性が確認されている12).イムノキャップとアラスタット3g との相関性について28 種のアレルゲンを用いて検討され,すべてのアレルゲンにおいて相関係数0.7 以上と有意な相関性が示されたが,その相関係数から,一方のキット測定値をもう一方の測定値に読み替えることは困難であることがわかった.多項目測定法のView アレルギー39とMAST36 アレルゲンに関しても単項目測定法と同様にそれぞれに高い再現性が示されているが,View アレルギー39 のほうが再現性および精密性に優れているとの報告もある13).

一方,皮膚テストに関しては,安定性・再現性が高いとはいえない.手技や検査部位による変動があり,皮膚疾患や皮膚の状態によっても結果が異なる可能性もある.機械性蕁麻疹がある場合やプリック専用針を強く刺し過ぎている場合は偽陽性を生じやすい14).抗ヒスタミン薬や全身性ステロイド薬を使用している場合,穿刺からの観察時間が短すぎる場合や長すぎる場合,プリック専用針の刺し方が弱すぎる場合,同じ部位に頻回に検査している場合,検査部位が手首に近すぎる場合,などは偽陰性を生じやすい14).

4.交絡因子

実臨床で交絡因子になりうるものとして,皮膚テストにより判定される抗原感作の場合,喘息以外のアレルギー疾患 (アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎) や家族歴があげられ,特異的IgE により判定される抗原感作の場合は,上記に加え総IgE 値があげられる.

5.臨床運用の要点

喘息診療において,アレルゲン感作を調べる目的として,1喘息の補助診断,2抗原回避の有用性を検討する,3喘息重症化の原因を検討する (アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の診断を目的としたアスペルギルス特異的IgE の測定など),4アレルゲン免疫療法の適応を考える,5抗IgE 抗体療法の適応を考える,などがあげられる.具体的には,単項目測定の場合,表1 の項目を測定することが推奨されている15).

一般臨床において,最も高頻度に実施されるアレルギー検査は抗原特異的IgE の測定である.現在,単項

表1 喘息を疑う患者に対して測定することが望まれるアレルゲン特異的IgE 抗体

タイプ主要アレルゲン追加候補アレルゲンダニヤケヒョウヒダニコナヒョウヒダニ花粉スギカモガヤブタクサヨモギヒノキハンノキギョウギシバオオアワガエリ真菌アスペルギルスアルテルナリアトリコフィトンペニシリウムカンジダ動物*イヌネコウサギげっ歯類その他ゴキブリガユスリカ*:飼育しているペットが最も重要(一般社団法人日本喘息学会.喘息診療実践ガイドライン2022,協和企画,p.11[表3-1],2022.

15) より許諾を得て転載)
p.46
目測定法では約200 種類の抗原に対する特異的IgE の測定が可能であり,保険診療では同時に13 項目まで測定できる.特異的IgE 検査の検査結果は,多くの場合,特異的IgE の抗体価がクラス0~6 といった7 段階で表示される (表2).一般的には,クラス0 を陰性,クラス1 を弱陽性,クラス2 以上を陽性と判定する.クラスが高いほうがIgE の量が多いことを示す.小児の食物アレルギー領域では,特異的 IgE 抗体価と誘発症状発現の “確率” との関係がプロバビリティーカーブとして示されているが,喘息の場合は抗体価やクラスが高いからといって必ずしも喘息症状を伴うわけではない.

抗原特異的IgE とアレルギー症状の関連においては交差反応が生じうる.特異的IgE と反応し,アレルゲン活性を有する蛋白質のことをアレルゲンコンポーネントと呼ぶ.アミノ酸配列の相同性が高く同一ホモログに分類されるアレルゲンコンポーネントが異なる蛋白質に存在し,その両者に特異的IgE が結合することを交差抗原性と呼び,交差抗原性によって生じる反応を交差反応と呼ぶ.交差反応は,喘息診療において特異的IgE を測定し臨床応用する場合に影響を受けることは少ないが,食物アレルギーやアレルギー性皮膚疾患では病態形成において重要な役割を果たしている.文献

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表2 抗原特異的IgE 抗体の抗体価とクラス分類の例

クラス抗体価 (UA/mL)判定

0 0.35 未満 陰性

1 0.35~0.69 弱陽性

2 0.70~3.49

陽性

3 3.50~17.4 4 17.5~49.9 5 50.0~99.9

6 100 以上
p.47
F.上気道のタイプ2 炎症のバイオマーカー

上気道のタイプ2 炎症としては成人発症型の好酸球性重症喘息と合併する頻度が高い好酸球性副鼻腔炎がまず想起される1).タイプ2 炎症においては獲得免疫と自然免疫の双方が病態にかかわるが,好酸球性副鼻腔炎においては自然免疫のかかわりが深いと考えられる.一方,獲得免疫が主体であるアレルギー性鼻炎でも特に感作から発症にかけての自然免疫の関与が示唆されており,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいてもILC2 が関与することが記載されている (図1) 2).いずれの疾患も喘息とのかかわりが深いことが知られ,one airway, one disease と称されることもある3).上気道に特異的な鼻汁中好酸球数や鼻腔呼気NO などが病態の把握に有用であるが,全身性のバイオマーカーを含め,上気道および下気道全体の炎症を意識して管理することが重要である.

抗原上皮細胞

樹状細胞IL-25 IL-33 TSLP

ILC2 (2型自然リンパ球) 2型サイトカイン

IL-4 IL-5 IL-13 IL-31粘膜型マスト細胞

IgE抗体産生抗原LTs TXA2 PGD2

PAF炎症細胞動員

因子放出

炎症細胞浸潤IL-4,IL-5,IL-13 LTs,TXA2,PGD2,PAF eotaxin,TARC,RANTES,ペリオスチン

発症

好酸球好塩基球ナイーブTリンパ球

IL-4 Th2リンパ球

感作Hi即時相反応知覚神経

くしゃみ中枢くしゃみ

腺分泌中枢分泌亢進鼻漏血管

うっ血鼻閉

制御性T細胞

Bリンパ球

線維芽細胞

好塩基球好酸球好中球

リンパ球

起炎性物質

の放出遅発相反応

炎症性粘膜腫脹鼻閉反復曝露

非持異的過敏性*

不可逆的粘膜肥厚

反復発作

図1 アレルギー性鼻炎の症状発現メカニズム

Hi:ヒスタミン,LTs:ロイコトリエン,TXA2:トロンボキサンA2,PGD2:プロスタグランジンD2, PAF:血小板活性化因子,IL:インターロイキン,TARC:thymus and activation-regulated chemokine, RANTES:regulated upon activation normal T expressed, and presumably secreted,TSLP: thymic stromal lymphopoietin *アレルギー反応の結果,起こると推定される. (Licona-Limon P, et al. Nat Immunol 2013; 14: 536-542 などを参照し作成) (日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会.鼻アレルギー診療ガイドライン2020 年版 2)より許諾を得て転載)
p.48
1.FeNO と鼻腔呼気NO

NO は喘息の診断・管理や予後予測のバイオマーカーとして簡便かつ有用な検査である.NO は生理活性を持つガス分子で,喘息で臨床応用されているように気道炎症の重要な指標であるが,一方で気道上皮の保護や恒常性維持の役割についても報告されている4).特に,正常な副鼻腔粘膜は高濃度のNO を産生し,1線毛運動の活性化によるクリアランスの維持,2殺菌作用,抗ウイルス作用,3鼻呼吸により肺に到達し肺血管抵抗を減少,といった気道・肺に対する保護的な役割があると考えられている5, 6).鼻腔呼気NO は肺から呼出した呼気が鼻腔を通過して排泄されるので,鼻呼気NO からFeNO を差し引いて求められる.通常,アレルギー性鼻炎では鼻腔呼気NO が上昇するが,副鼻腔炎では低下することが多い.また治療によりアレルギー性鼻炎では鼻腔呼気NO は低下するが,副鼻腔炎では特に,手術で副鼻腔を広く開放する場合には,鼻からのNO 排泄量が増加するため鼻腔呼気NO は上昇することが報告されている7).好酸球性副鼻腔炎にアレルギー性鼻炎が合併する症例では,鼻腔呼気NO が上昇する側面と鼻茸の充満で低下する側面があり,前述した手術の影響も加わることから,実臨床における鼻腔呼気NO の評価は非常に困難である.

一方でFeNO は喘息だけではなく,好酸球性副鼻腔炎においても有用なバイオマーカーである.FeNO は喘息非合併の好酸球性副鼻腔炎でも上昇し,喘息合併好酸球性副鼻腔炎では非常に高値となる.また,FeNOは副鼻腔CT スコアと有意な相関を示すことが報告されている (図2) 8).実際,FeNO が高値である喘息患者では少なからず副鼻腔炎の合併を認め,喘息が安定しているにもかかわらずFeNO の上昇が持続する症例では鼻・副鼻腔炎の合併を念頭に置く必要がある9).鼻炎や副鼻腔炎を有する患者では,喘息診断の有無にかかわらず下気道にリンパ球や好酸球などの炎症細胞浸潤が認められており,FeNO はこの気道炎症を鋭敏に反映していると考えられる. 2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー

200 150

100 50

0 喘息のみ 喘息 +ECRS ECRSのみ

A

呼気NO濃度(FeNO)(ppb) 200 150

100 50

0

呼気NO濃度(FeNO)(ppb) B

Lund-Mackay scale 0 10 20

** *

図2 呼気NO 濃度 (FeNO) と上下気道の炎症

A:喘息非合併の好酸球性副鼻腔炎でもFeNO は上昇している.好酸球性副鼻腔炎と喘息合併症例ではさらにFeNO が高くなる.ECRS:好酸球性副鼻腔炎 (eosinophilic chronic rhinosinusitis) B:FeNO と副鼻腔CT は相関する.Lund-Mackay scale は副鼻腔炎の画像を数値化したものであり,5つの副鼻腔と中鼻道に開く自然口の閉塞に関して左右別々に評価し (一側について0~12 点),合算する. (B:Kobayashi Y, et al. J Asthma 2015; 52: 1060-1064. 8)より引用)
p.49
2.鼻汁中好酸球,組織中好酸球

喀痰中好酸球数は喘息の気道炎症をよく反映するが,好酸球性副鼻腔炎における鼻汁中好酸球の診断的意義は乏しい.一方で,アレルギー性鼻炎では,鼻汁中好酸球の測定が有用で診断的な意義も大きい.綿棒などで採取した鼻汁をプレパラートに塗布するだけなので簡便かつ非侵襲的な検査である.自施設で好酸球を染色して検鏡すれば短時間での判定も可能である.

好酸球性副鼻腔炎の確定診断には鼻茸や副鼻腔粘膜の組織中好酸球の評価が必須である.好酸球性副鼻腔炎の診断基準であるJESREC スコア10~12)では,表1 に示すようにスクリーニング診断に血中好酸球比率,副鼻腔CT,鼻腔所見が求められている.確定診断には手術などの方法で採取した組織中に好酸球が確認されることが必要で,400 倍視野あたり70 個以上の好酸球浸潤を認めることで診断が確定する.好酸球性副鼻腔炎の指定難病申請を行う際にも必須の所見である.

文献

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表1 JESREC スコア

項目スコア

病側:両側3 点鼻茸あり2 点篩骨洞陰影/ 上顎洞陰影 ≧1 2 点血中好酸球 (%) 2 < ≦5% 5 < ≦10% 10%< 4 点8 点10 点スコアの合計:11 点を好酸球性副鼻腔炎とする.確定診断は,組織中好酸球数:70 個以上.確定診断には組織中の好酸球浸潤の確認が求められる. (藤枝重治ほか.アレルギー 2015; 64: 38-45.

11) より許諾を得て転載)
p.50
G.その他のタイプ2 炎症バイオマーカー

1.気管支粘膜生検と気管支肺胞洗浄液

気管支鏡を用いた気管支粘膜生検や気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage:BAL) は,気道炎症の表現型や気道リモデリングの評価において最も信頼できる方法である.ただし,気道壁にどの程度の好酸球浸潤があれば,好酸球性または,タイプ2 炎症と判定できるのか明確な基準は存在していない.これまでの検討では,好酸球性炎症を伴う喘息患者の気道壁における好酸球数の平均は20/mm2 (四分位数範囲IQR:16~31 好酸球/mm2) と報告されている1).また,喀痰中好酸球数2%以上によって定義された好酸球性喘息患者におけるBAL 液中の好酸球数は2.0% (幾何平均:0.2) であり,気管支粘膜生検における組織中の好酸球数の平均は23/mm2 (四分位範囲距離:29 好酸球/mm2) であったと報告されている2).ただし,気管支粘膜生検やBAL を喘息診療におけるタイプ2 炎症バイオマーカーとして使用することは,侵襲性や医療コストの問題から日常的には行われない.これらの検査には,細胞数や細胞分画以外にも,微生物学的検査や病理検査などが含まれるため,他疾患との鑑別を要する場合には考慮する必要がある.

2.その他の血液バイオマーカー

気管支上皮細胞を用いたゲノムワイド遺伝子発現解析において,気道の遺伝子発現パターンにはタイプ2炎症に合致するT2‐high,およびT2‐low の2 つのサブセットがあることが確認され,T2‐high 群に特徴的な遺伝子はIL‐13 によって誘導される遺伝子であったことが報告されている3).実際,前者のサブセットでは,後者に比べ,組織中のIL‐13 遺伝子の発現レベルが高いが3),両者における血清IL‐13 レベルには違いがみられない4).このことから,T2‐high の気道炎症を示すエンドタイプを同定するため,血清IL‐13 に代わるバイオマーカーが検討されてきた.呼気NO や血清総IgE 値,血清TARC 値などは実臨床で有用なバイオマーカーであるが,その他の血液バイオマーカーについても研究が進められている. A.ペリオスチン (Periostin)

血中ペリオスチンは,タイプ2 炎症バイオマーカーのひとつとして,これまでに多くの検討が行われている.ペリオスチンは,ファシクリンファミリーに属する分子量約9 万の細胞外マトリックス蛋白質である.喘息における気道粘膜下線維化の構成成分のひとつであり,好酸球性炎症や粘液制御においても役割を果たしている5, 6).ペリオスチンは,主に線維芽細胞と気道上皮細胞において産生され,IL‐4,IL‐13,TGF‐βによって産生が亢進する6).気管支粘膜生検組織中の好酸球数が≧22cells/mm2 または喀痰中好酸球≧3%で定義した好酸球性気道炎症を予測するのに,FeNO や血中好酸球,血清IgE と比較しても血中ペリオスチンが優れていたとの報告がある7).しかし,喀痰中好酸球≧3%以上で定義した好酸球性喘息と非好酸球性喘息を区別するのに,FeNO や血中好酸球が有用であったにもかかわらず血中ペリオスチン値は有用でなかったとする報告もあり,気道炎症の質的診断における意義は現時点で定まってない8).

抗IL‐13 中和抗体であるレブリキズマブの第II相試験では,低ペリオスチン群に比べて,高ペリオスチン群でFEV1 の改善に優れた効果を示したが,ACQ‐5 スコアや増悪率には有効性が示されなかった9).その後の2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー
p.51
第IIb 相試験では,レブリキズマブは,ペリオスチン高値群の呼吸機能を改善することに加え,増悪率を低下させたが,第III相試験で,好酸球高値またはペリオスチン高値と定義された患者群において,増悪率の低下がLAVOLTAI試験では示されたものの,LAVOLTAII試験では統計的有意に達しなかった10).別の抗IL‐ 13 抗体であるトラロキヌマブの第IIb 相試験でも,高ペリオスチン群での増悪率ならびにACQ‐6/AQLQ スコアの改善が確認されなかった.このように,血中ペリオスチンはIL‐4/IL‐13 を標的とする治療における効果予測のバイオマーカーとして期待されたが,いまだ実現していない6, 11).現在,血中ペリオスチン値の測定は研究目的に限られており,基準となるcut off 値は定まっていない.なお血中ペリオスチン値は年齢とともに変化し,特に小児では骨の成長と代謝の影響を受ける可能性が指摘されている12). B.Dipeptidyl peptidase-4 (DPP-4)

DPP‐4 は110kDa の糖化蛋白で,アデノシンデアミナーゼ蛋白質複合体としても知られている.セリンエキソペプチダーゼでポリペプチドのN 末端からX‐プロリンジペプチドを切断する.腎臓,肝臓,肺,消化管の上皮および内皮に恒常的に発現しており,グルコース代謝や免疫調節,シグナル伝達,アポトーシスなど多彩な作用が知られている.DDP‐4 はその酵素活性により,インクレチンやグルカゴン様ペプチド‐1 (glucagon‐like peptide‐1:GLP‐1,gastric inhibitory polypeptide:GIP) を不活性化することで,グルコース代謝に関係することが知られている13).喘息やアレルギー性炎症においては,DDP‐4 がIL‐4/IL‐13 により誘導されることが多くの研究モデルで示されている14).喘息患者の気道でのDPP‐4 遺伝子の発現は,IL‐13 遺伝子と相関することが報告されており,また,いくつかの小規模な研究においては喘息患者で血清DPP‐4 濃度が高いことが示されている15).前述の抗IL‐13 抗体であるトラロキヌマブの臨床試験で,DPP‐4 高値はFEV1およびACQ6/AQLQ スコアの改善を予測したことが報告されている.しかし,血中ペリオスチンと同様に,血中DPP‐4 の測定は,現在のところ研究目的に限定される. C.呼気濃縮液 (exhaled breath condensate:EBC)

呼気中には乱流でエアロゾル化される気道被覆液の成分が含まれる.EBC は呼気中の水蒸気や霧状粒子を急速に冷却することで採取される気道由来のサンプルである.EBC には,pH,酸化ストレスのマーカー (過酸化水素など),サイトカイン,ケモカイン,脂質メディエーター,マイクロRNA など,多種類の分子を同時に測定できる長所があるが,検体量が少なく含有物の濃度が低いことや測定の再現性などに課題があり,現在は研究段階にある.臨床応用のためには解析方法の標準化や測定項目の基準値を確立することも必要である.喘息やタイプ2 炎症の評価における有用性については,EBC 中のIL‐4,IL‐5,IL‐13,RANTES,IP‐10,システィニルロイコトリエン,NO やその代謝産物,などで検討が進められている16~18).文献

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2 ・ タ イ プ 2 炎 症 と バ イ オ マ ー カ ー
p.53

        
p.54
第3 章

タイプ2 炎症評価の意義と結果の解釈
p.55
1 喘息 (重症喘息を除く)

A.総論

●FeNO,血中好酸球数,血清IgE はいずれも喘息の補助診断に有用である. ●未治療患者においてFeNO や血中・喀痰中好酸球は吸入ステロイド薬の効果予測に有用であるが,既治療患

者の薬剤用量調節において確実な目安となるマーカーは確立していない. ●特異的IgE の測定はアトピー型/非アトピー型の判定に用いられ,環境整備への配慮やアレルゲン免疫療法の

適応につながる. ●喀痰好酸球のモニタリングとしての有用性は比較的高い.FeNO,血中好酸球数およびそれらの組み合わせ

が増悪や呼吸機能低下の予測に有用であることが示されている.

喘息患者の多くがタイプ2 炎症を有し,種々のタイプ2 炎症バイオマーカーのなかでも,臨床的には血中好酸球数,FeNO,血清IgE が多く用いらている.多くの患者に吸入ステロイド薬を中心とした治療が導入されており,未治療と治療中の患者では参照値を別々に考える必要がある.本項では,軽症から中等症の喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの病態,診断,治療選択,モニタリングにおける役割と意義について解説する.

1.疫学と病態

喘息は慢性気道炎症性疾患であり,3 億~4 億人が罹患し1),小児の慢性疾患のなかでは最も多い疾患である2).本邦における2003 年の厚生労働省保健福祉動向調査 (全国調査) における 「呼吸器のアレルギー様症状」に関する報告では,喘息 (疑い例を含む) の有症率は約7.5%となっている3).中等症までの頻度をみると,オランダの大規模コホート研究では,吸入ステロイド薬を1 回以上処方された患者のうち重症喘息の定義を満たさない軽症から中等症の患者が96.4%を占めていた4).また,日本のKEIFU study では,17 歳以上で年間4回以上の吸入ステロイド薬を含む治療を継続している喘息患者において,軽症および中等症患者の割合は92.2%であったと報告されている5).未治療もしくは治療を継続していない患者を含めると,さらに喘息患者の多くは軽症から中等症に分類され,中用量までの吸入ステロイド薬を含む吸入薬の継続で喘息のコントロールが期待できる.

ポイント
p.56
2.喘息におけるタイプ2 炎症の病態

喘息とそれに伴うタイプ2 炎症は,喘息患者の多くに認められ6),日本人重症喘息では80%以上がタイプ2 炎症を発現している7).タイプ2 炎症には,Th2 細胞を中心に好酸球,B 細胞,肥満細胞などが関連する獲得免疫と2 型自然リンパ球 (ILC2) を中心とした自然免疫が関与する (1 章 図1 参照).Th2 細胞やILC2 は,様々なサイトカインを産生し,IL‐4/IL‐13 は,粘液産生,気道平滑筋の収縮と増殖,上皮バリア機能低下,肺への好酸球流入やIgE 産生などに関与する.また,喘息気道では,2 章図1B に示すようにSTAT‐6 を介し誘導型NO 合成酵素の発現を誘導し,気道上皮からNO が産生される.IL‐5 は,好酸球の分化,成熟,活性化,および生存延長に関与している.また,IgE は,肥満細胞や好塩基球の脱顆粒を促進し,喘息におけるアレルギー反応の発現を惹起する.FeNO,血清IgE,血中および喀痰中の好酸球など,2 型サイトカインの下流にあるバイオマーカーの上昇は,タイプ2 炎症が関与する喘息の病態生理と密接に関連している8).

3.タイプ2 炎症バイオマーカーの種類と意義

血中好酸球数,FeNO,血清IgE は喘息管理における代表的な臨床バイオマーカーである.自発喀痰または高張食塩水を用いた誘発喀痰も有用である.気管支鏡による気道粘膜生検や気管支肺胞洗浄は信頼度が高いが侵襲性もあるため実臨床ではあまり用いられない.

バイオマーカーの測定意義として,診断,病態の評価,治療選択,モニタリング,予後予測などがあげられる (表1).タイプ2 炎症バイオマーカーの評価では,喘息における慢性炎症の複雑な病態に加え,併存するアレルギー疾患 (アレルギー性鼻炎,好酸球性鼻副鼻腔炎,アトピー性皮膚炎など) の影響が関与している点にも留意が必要である.

文献

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表1 軽症から中等症喘息における各種バイオマーカーの有用性

バイオマーカー診断(閾値)吸入ステロイド薬の

効果予測治療薬の調節増悪予測

血中好酸球数*1〇(≧220/μL)〇△ △*4呼気NO 濃度(FeNO)〇(≧22 ppb)〇△ △*4血清総IgE △(成人)〇(小児) NA NA喀痰中好酸球比率*2〇(>2 ~3%)〇△〇アレルゲン特異IgE *3〇(陽性)〇(小児) NA環境曝露で重要*1:血中好酸球数は変動が大きく,薬剤や合併疾患の影響を受ける可能性に注意する*2:喀痰中好酸球比率(≧3%)は血中好酸球数に比べて気道炎症マーカーとして精度が高く,増悪リスクの予測につながる*3:アレルゲン特異IgE の同定は環境整備への配慮や免疫療法の適応につながる*4:血中好酸球数とFeNO がともに高値であれば増悪リスクが高まることが示されているNA:Not Available
p.57
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p.58
B.診断における意義

2 型サイトカインは喘息患者の気道・肺において高濃度で発現しており1),タイプ2 炎症バイオマーカーの測定は喘息の診断補助に有効であるだけではなく,炎症表現型の評価にも有用である.『喘息予防・管理ガイドライン2021』 には喘息診断の目安として6 項目があげられている.このうち,1発作性の呼吸困難,喘鳴,胸苦しさ,咳 (夜間・早朝に出現しやすい) の反復,2変動性・可逆性の気流制限,3気道過敏性の亢進,4他疾患の除外が重要であるが,5気道炎症の存在,特に好酸球性の場合は診断的価値が高く,6アトピー素因の存在は喘息の診断を支持する.したがって,好酸球性気道炎症の存在は喘息診断において重要な情報である.好酸球性気道炎症の存在は,気道局所の粘膜生検や喀痰中好酸球増多で確認することが理想的ではあるが,前者は侵襲性の面から,後者は処理や細胞数計測が繁雑であることから,実臨床では活用しにくい.そのため喀痰中好酸球数の代替指標としてFeNO や血中好酸球数が用いられている.本項では,喀痰中好酸球増多に対するFeNO・血中好酸球数の予測精度・解釈や喘息診断における測定意義を中心に概説する.

1.FeNO

FeNO は,軽症喘息を含む多くの報告で喀痰中好酸球と中等度 (相関係数0.35~0.67) に相関し2),好酸球性気道炎症の有用な指標のひとつである.軽症~中等症喘息を66%含む患者集団において,喀痰中好酸球比率3%以上に対するFeNO の予測精度をROC 曲線で解析した検討では,曲線下面積 (AUC) は0.82 と良好な結果であった.重症度,肥満・アトピー素因・喫煙歴で層別化しても,各群で同等のAUC であったことが報告されている3).FeNO の測定には専用機器が必要であるが,迅速かつ非侵襲的に下気道炎症の情報を得ることができる点で優れている.なお,一定時間の呼出が保てない患者では測定が困難である点や鼻炎合併例で高値,喫煙例で低値となる点に留意する必要がある4).

タイプ2 炎症バイオマーカーのうち,喘息診断における測定意義について最もエビデンスが蓄積されているのはFeNO である.日本人の健常成人と未治療喘息患者 (気道可逆性あり・気道過敏性亢進,かつ喘息治療に反応性ありで定義) を対象とした検討において,ROC 曲線のAUC は0.85 以上とFeNO が喘息の補助診断に有用であることが示された4).閾値を22 ppb とすると感度91%,特異度84%で喘息患者を同定でき, 37ppb とすると感度52%,特異度99%であった.FeNO が高値であるほど喘息診断における確度は高くなる5).喘息様症状を呈する成人を対象とした検討においても,FeNO の閾値を32~40ppb とした場合,最終的に喘息と診断された患者を感度32~74%,特異度73~85%で同定できるとされ2),現在本邦で喘息診断の目安として用いられている35 ppb は妥当な基準と考えられる.なお,米国胸部疾患学会では,FeNO が25~50 ppbと中等度上昇の場合には6 週間以上の喘息様症状に加えて,臨床経過やFeNO の推移の確認を推奨している5).またごく最近,欧州呼吸器学会の成人喘息の診断ガイドラインのタスクフォースから,気道可逆性検査を含めたスパイロメトリによっても喘息診断が確定されない場合は,喘息診断のワークアップのひとつとしてFeNO の測定を推奨するとの報告があった6).

遷延性・慢性咳嗽例において,咳喘息の診断に対するFeNO の至適閾値は29~40ppb で,ROC 曲線のAUC は0.61~0.92 であった7~12).咳喘息・喘息性咳嗽の診断に対するFeNO の上昇は咳喘息を示唆するが,感度が低く偽陰性が少なくないことに注意が必要である. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.59
2.血中好酸球数

喘息患者において,喀痰中好酸球増多に対する血中好酸球数の予測精度については,FeNO と同様AUC が

0.83 と良好であり,重症度,肥満・アトピー素因・喫煙歴による層別化の解析でも維持されていた2).ただし

血中好酸球数はアレルギー性鼻炎,薬剤アレルギー,膠原病,腫瘍などでも上昇するため,その場合は血中好酸球数が下気道炎症を反映しない可能性がある.吸入ステロイド薬未治療例を30%含む喘息患者について,喀痰中好酸球比率高値 (≧3%) と血中好酸球数高値 (≧400/μL) により4 群に分け両指標の一致・乖離を解析した報告では,両指標高値群 (全体の19%) が最も一秒量が低く,気道過敏性が亢進し,可逆性が大きく,血清総IgE 値が高値とコントロール不良喘息の特徴を呈していた13).喀痰中好酸球のみ高い群 (25%) にも同様の特徴がみられたが,血中好酸球のみ高い群 (7%) は,血清総IgE 高値だけを示した.平均FeNO 値は,両指標高値群,喀痰中好酸球のみ高値群,血中好酸球のみ高値群,両指標低値群の順に,各々77,37,32,17ppbであった.

血中好酸球数は測定の負担が少なく,高値例ほど喘息コントロール不良な症例が多く,タイプ2 炎症を標的とした生物製剤の効果が期待できるなど,喘息管理において有用な指標である.喘息診断時にも,FeNO ほどのエビデンスはないものの,血中好酸球数高値は有用な情報となる.FeNO,血中好酸球数を正常・中間・高値の3 層に分け各層の喘息罹患率などを解析14)した米国疫学研究では,いずれの指標も高いほど喘息罹患リスクが上がることが示されている (表1).また喘息患者を4.1%含むオーストリアの一般人口を対象とした疫学研究では,喘息罹患例はオッズ比2.05 (95%信頼区間1.70~2.51) で血中好酸球増多 (75 パーセンタイル値である210/μL 以上) と関連していた (図1) 15).これは他の血中好酸球増多の交絡因子であった6~18 歳,現喫煙,プリックテスト陽性,COPD,メタボリック症候群,男性などと独立して有意であった.本邦のながはま疫学データにおいて,新規に喘息を発症した症例と喘息罹患・既往のない症例 (いずれも問診ベース) を対象に解析すると,血中好酸球数により新規喘息発症例の予測精度をみたROC 曲線のAUC は0.54 と低いものの,至適閾値は240/μL (感度27%,特異度86%) であった.閾値を300/μL とすると,感度は14.6%と低いが (新規喘息発症例100 例中14.6 例),特異度は92.3%と新規喘息発症の可能性が高くなる.また血中好酸球数240/μL 以上に対する喘息新規発症の寄与度は,年齢・性別・BMI・血清総IgE≧150IU/mL で補正後のオッズ比は2.34 (1.60~3.41) と,オーストリアの報告とほぼ同程度であった (表2).いずれの研究においても喘息治療の有無は解析に含まれていないが,吸入ステロイド薬未使用時は,血中好酸球数はより高値となる可能性があるため,喘息様症状を呈した患者での血中好酸球数の増多は喘息の補助診断に有用と考えられる.な

表1 喘息罹患リスクに対する呼気NO 濃度(FeNO),血中好酸球数上昇のオッズ比

呼気NO 濃度(FeNO)血中好酸球数喘息罹患リスク* 25 ppb 未満300/μL 未満1 25 ppb 未満300 以上500/μL 未満1.35 (1.09~1.67) 25 ppb 未満500/μL 以上1.87 (1.34~2.61) 25 以上50 ppb 未満300/μL 未満1.65 (1.26~2.16) 25 以上50 ppb 未満300 以上500/μL 未満2.24 (1.60~3.12) 25 以上50 ppb 未満500/μL 以上2.59 (1.57~4.26) 50 ppb 以上300/μL 未満2.76 (1.66~4.59) 50 ppb 以上300 以上500/μL 未満2.61 (1.71~3.99) 50 ppb 以上500/μL 以上5.86 (4.07~8.44) *年齢,性別,body mass index,喫煙歴,最近の吸入ステロイド薬または経口ステロイド薬使用で調整後オッズ比 (95%信頼区間) を示す. (Malinovschi A, et al. J Allergy Clin Immunol 2013; 132: 821-827.

14) より作成)
p.60
お,吸入ステロイド薬未治療の軽症喘息における血中好酸球数は,150~300/μL の症例が39%,300/μL 以上の症例は33%であった16).

3.血清総IgE 値と吸入抗原への特異的IgE 抗体

血清総IgE 値もその上昇に伴い喘息の有病率は高くなり,高値の場合はアトピー型喘息の診断の助けとなる.ただし,前述のながはま疫学データの解析では総IgE 値100 IU/mL 以上の場合,喘息新規発症の感度は47%,特異度は63%,150IU/mL 以上で,感度37%,特異度73%,300IU/mL 以上で,感度17%,特異度86%であった.喘息新規発症に対するROC 曲線のAUC はいずれも0.51~0.55 にとどまる.

アトピー型喘息は1 つ以上の吸入アレルゲンへの特異的IgE 抗体陽性で定義されることが多い.本邦の20 ~59 歳までの一般人口の血清総IgE・感作率などをみたTanaka らの報告では,血清総IgE の中央値は73IU/mL で,ヤケヒョウヒダニ (DP) への感作 (DP 特異IgE≧0.35 IU/mL) 率は38.3%であった.総IgE 値, DP 感作率とも加齢で低下し,DP 感作率は30 歳代男性で53%,女性で29%,50 歳代男性31%,女性23% 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

オッズ比(95%信頼区間)

2.41[2.01-2.89] 2.05[1.70-2.51] 1.72[1.52-1.96] 1.64[1.50-1.80] 1.56[1.20-2.03] 1.41[1.22-1.64] 1.36[1.24-1.50] 1.16[1.02-1.33] 1.14[0.97-1.33] 1.11[0.93-1.34] 1.10[0.95-1.27] 1.11[0.96-1.27] 1.09[0.88-1.35] 1.02[0.89-1.16] 0.98[0.86-1.11]

6 ~18 歳喘息現喫煙皮膚プリックテスト陽性COPDメタボリック症候群男性肥満18 ~40歳心血管病変高血圧重喫煙糖尿病40 ~60 歳過去喫煙

オッズ比(95%信頼区間)

0 1 2 3

図1 一般住民において血中好酸球増多 (210/μL 以上) に関与する因子

オッズ比と95%信頼区間を示す. (Hartl S, et al. Eur Respir J 2020; 55: 1901874. 15)より作成)

表2 喘息の新規発症に対する血中好酸球数のオッズ比と感度・特異度

好酸球数の閾値150/μL 240/μL 300/μLオッズ比* (95%信頼区間) 1.49 1.06~2.10 2.34 1.60~3.41 1.89 1.18~3.03感度†, % 42.4 27.2 14.6特異度†, % 66.3 86.2 92.3新規喘息発症:1 期調査時 (2008~2010 年) に喘息がなく,2 期調査時 (2013~2015 年)に喘息あり. 好酸球数は2 期採血値* 好酸球増多に対する新規喘息発症のオッズ比:年齢・性別・BMI・血清総IgE ≧150 IU/mL (1期採血) で補正† 新規喘息発症に対する好酸球増多の感度・特異度(ながはま疫学データより作成)
p.61
であった17).ながはま疫学データの非喘息群でも,ダニ感作率は30 歳代男性で55%,女性で43%,50 歳代男性30%,女性22%と,同様の成績であった.喘息新規発症例でのダニ感作率は,非喘息例よりも数値は高いものの統計学的な有意差は認められなかった.

タイプ2 炎症バイオマーカーの喘息補助診断における役割について,現在保険収載されているFeNO や血中好酸球を中心に紹介した.いずれも高値であるほど喘息の診断確度は高くなる.ただし,最終的な喘息の診断は,治療による反応性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動などを含め総合的に判断することが重要である.文献

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p.62
C.治療の選択

喘息の炎症表現型を評価することは個別治療の選択に有用である.軽症および中等症喘息患者の治療において,特異的吸入抗原の検出は環境整備,アレルゲン免疫療法,併存するアレルギー性鼻炎に対するロイコトリエン受容体拮抗薬 (LTRA) 以外の抗アレルギー薬の選択に役立つ.また,喘息増悪のリスクが高く,抗炎症治療によく反応するタイプ2 炎症を発現する疾患を有する患者を特定することは重要である1).逆に,非タイプ2 喘息と推定される場合は,他の原因 (気道感染など) を探索しステロイド薬の用量を漸減するなどの検討が必要である2),体重減量の指導やマクロライド薬の導入も考慮しうる3).

ただし,大半の喘息患者がタイプ2 気道炎症を示し,喘息治療薬の基本である吸入ステロイド薬 (ICS) はタイプ2 炎症を安全かつ効果的に抑制する治療薬であることから,吸入ステロイド薬を主体に長時間作用性吸入β2 刺激薬 (LABA),長時間作用性吸入抗コリン薬 (LAMA),ロイコトリエン受容体拮抗薬の組み合わせで治療に難渋することは多くない.本項では治療,特に吸入ステロイド薬の反応性予測やステップアップ・ステップダウン時のバイオマーカーの有用性について概説する (表1).

1.未治療患者において吸入ステロイド薬反応性予測に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー

軽症~中等症喘息の治療選択において吸入ステロイド薬を使うかどうか迷うという状況はまれであり,また喘息における吸入ステロイド薬の主な作用機序がタイプ2 気道炎症の抑制であるだけに,未治療の軽症~中等症喘息患者において,治療前のタイプ2 炎症バイオマーカーが高ければ吸入ステロイド薬に反応する可能性が高いことは容易に想像できる.ただし,その際のタイプ2 炎症バイオマーカーによるステロイド反応性の予測精度については成人と小児で若干の違いがみられる.

成人喘息患者において治療をいったん中止したあとに吸入ステロイド薬を再開し,症状,呼吸機能,気道過敏性のいずれかひとつ以上の改善を認めた場合を治療効果ありと判定すると,FeNO (>35ppb),喀痰中好3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

表1 吸入ステロイド薬の反応性予測に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー

成人喘息小児・思春期喘息有効無効有効無効

未治療患者喀痰中好酸球比率4, 5, 6, 10

血中好酸球数5, 6, 10 FeNO 4, 5, 10 -喀痰ECP 濃度

8 血中好酸球数

8, 9

FeNO

8 血清IgE 濃度7, 8, 10

アレルゲン感作7, 9, 10喀痰中好酸球比率

10 血中好酸球数

10 FeNO

7, 10

既治療患者のステップアップFeNO

12 血中好酸球数12 - 尿中ロイコトリエンE4 排泄量13 FeNO

13 既治療患者の ステップダウン

喀痰中好酸球比率

16 喀痰ECP 濃度

16 FeNO

19 FeNO 16, 17, 18

血清IgE 濃度

18 アレルゲン感作18 喀痰中好酸球比率

19 FeNO

19, 20 -

FeNO:呼気NO 濃度,ECP:eosinophilic cationic protein
p.63
酸球比率 (>3%),尿中ブロモチロシン (好酸球活性化を反映するとされるバイオマーカー) のいずれも,吸入ステロイド薬の反応性と有意な関連があった (オッズ比6.0~9.2) 4).また,新規発症喘息患者で吸入ステロイド薬導入後の増悪の有無を解析したリアルワールド研究でも,血中好酸球数,喀痰中好酸球比率がいずれも高値であった症例では増悪が有意に抑制されていたと報告されている6).以上のように,成人喘息患者ではFeNO や血中好酸球・喀痰中好酸球がステロイド薬治療の効果予測バイオマーカーとして有用であることが報告されている.

小児喘息患者での無作為割付比較試験では,吸入ステロイド薬を定期吸入した群の喘息コントロールは血清IgE 高値 (>350IU/mL) またはアレルゲン皮膚テスト陽性の場合にプラセボ群より有意に良好であったが, FeNO とは関連がなかった7).一方,小児喘息患者に対する吸入ステロイド薬定期使用,ロイコトリエン受容体拮抗薬内服をクロスオーバー法で比較検討した研究では,ロイコトリエン受容体拮抗薬投与群と吸入ステロイド薬定期使用群の一秒量改善率と相関したのはFeNO と喀痰ECP 濃度であったが,血中好酸球 (> 400/μL) や血清IgE (>200IU/mL) も吸入ステロイド薬の反応性と関連した8).別の研究では小児喘息患者に対する吸入ステロイド薬定期使用,症状時のみ吸入ステロイド薬使用,ロイコトリエン受容体拮抗薬内服の3 つのアプローチをクロスオーバー法で比較検討し,ロイコトリエン受容体拮抗薬投与群と比較して吸入ステロイド薬定期使用群の喘息コントロールが良かったのは吸入アレルゲン感作陽性症例と血中好酸球数増多症例 (>300/μL) であった9).軽症の成人喘息患者と思春期喘息患者を比較したSIENA 試験でも,成人喘息患者では血中好酸球・喀痰中好酸球とFeNO が,思春期喘息患者では血清総IgE 値と吸入アレルゲン感作が喘息コントロールの複合指標と相関した10).このように小児においてはアトピー素因 (血清IgE 値,アレルゲン感作の有無) を反映するバイオマーカーも吸入ステロイド薬の反応性と関連するようである.

2.既治療患者において治療ステップアップ時の治療薬選択に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー

すでに吸入ステロイド薬治療が行われているが喘息のコントロールが不十分であり治療のステップアップを行う場合,より強力な抗炎症効果を期待して吸入ステロイド薬を増量する選択肢と,気管支拡張作用を持つ薬剤 (β2 刺激薬,抗コリン薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬など) を追加する選択肢がある.

成人喘息患者において吸入ステロイド薬の増量と,長時間作用性吸入気管支拡張薬 (β2 刺激薬あるいは抗コリン薬) の追加を比較した論文として代表的なものにTALC 試験がある11).これは中用量の吸入ステロイド薬でコントロール不良な喘息患者に対して,吸入ステロイド薬の2 倍増量,長時間作用性吸入β2 刺激薬の追加,長時間作用性吸入抗コリン薬の追加の3 つのアプローチをクロスオーバー法で比較検討したものである.結果として,長時間作用性吸入気管支拡張薬を追加したほうが喘息のコントロールが改善したと報告されているが,残念ながらこの研究ではバイオマーカーによる効果予測については検討されていない.一方,吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2 刺激薬で治療中にもかかわらずコントロール不十分な喘息患者を対象としたCAPTAIN 試験では,血中好酸球数およびFeNO がより上昇している患者のほうが,吸入ステロイド薬増量による一秒量の改善や増悪抑制効果がともに優れていたことが報告されている12).

既治療小児喘息患者に対して吸入ステロイド薬の増量と長時間作用性吸入気管支拡張薬 (β2 刺激薬あるいは抗コリン薬) の追加を比較した代表的な研究であるBADGER 試験では,バイオマーカーについても検討されている.低用量の吸入ステロイド薬でコントロール不良な小児喘息患者に対して,吸入ステロイド薬の2倍増量,長時間作用性吸入β2 刺激薬の追加,ロイコトリエン受容体拮抗薬の追加の3 つのアプローチをクロスオーバー法で比較検討した結果,長時間作用性吸入β2 刺激薬の追加で喘息のコントロールが改善した患者が最も多かった.この際にFeNO は吸入ステロイド薬増量と他の2 つの治療法とに対する反応性の違いを予測することはできなかった13).その後の追加解析では,尿中ロイコトリエンE4 排泄量と吸入ステロイド薬増量,ロイコトリエン受容体拮抗薬追加による効果と関連し,長時間作用性吸入β2 刺激薬追加による効
p.64
果との関連はなかったと報告されている14).

現状では,タイプ2 炎症バイオマーカーがステップアップ時の治療選択に有用かどうかは十分なエビデンスがあるとはいえず,今後の検討課題である.すでに低用量吸入ステロイド薬が入っている段階でのステロイド薬増量への反応性は,未治療の段階での反応性とは異なるのかもしれない15).

3.既治療患者において治療ステップダウン時の治療薬選択に有用なタイプ2 炎症バイオマーカー

治療をステップダウンする場合にバイオマーカーの臨床的意義が想定される状況には,1低用量の吸入ステロイド薬でコントロール良好な場合に,吸入ステロイド薬中止可能かどうかを予測する,2中~高用量吸入ステロイド薬+他の長期管理薬でコントロール良好な場合に,吸入ステロイド薬を減量するか,他の長期管理薬を中止するかを判断するために使用する,の2 つがある.

成人喘息においては,軽症~中等症喘息患者を対象に吸入ステロイド薬の治療後に吸入ステロイド薬継続,長時間作用性吸入β2 刺激薬へ切り替え,プラセボへ切り替えの3 群を比較したSOCS 試験のpost‐hoc 解析がある16).吸入ステロイド薬からプラセボに切り替えた患者を対象に,タイプ2 炎症バイオマーカー,具体的には中止前,中止2 週後のFeNO,喀痰中好酸球比率,喀痰ECP 濃度,およびそれぞれの中止前後の変化率が喘息増悪を予測できるかが検討された16).FeNO はどの時点のデータあるいは変化率を用いても予測には有用ではなかったが,喀痰中好酸球比率は中止後2 週時の値 (AUROC 0.771) および中止前後2 週の変化率(AUROC 0.825) を用いると喘息増悪が予測可能であった.喀痰中ECP 濃度も同様の傾向がみられた.コントロール良好な喘息患者をガイドラインに沿ってステップダウンしたときの増悪とステップダウン前のFeNOとの関連を検討した研究でも有用性は証明できなかった17).中用量吸入ステロイド薬+長時間作用性吸入β2刺激薬でコントロールできている喘息患者を,治療継続群と,吸入ステロイド薬減量群,長時間作用性吸入β2刺激薬中止群の3 群に無作為割り付けした研究でも,ステップダウン前のFeNO (25ppb 以上あるいは50ppb以上),血清EPO (400ng/mL),特異的IgE (0.35IU/mL) はステップダウン後の喘息コントロール悪化と関連はなかった18).また,ステップダウン後のFeNO も喘息コントロール悪化との関連はみられなかった.一方,吸入ステロイド薬治療中の喘息患者において,喘息症状とFeNO をガイドに吸入ステロイド薬の用量を調整した患者群 (FeNO 群) では喘息症状のみをガイドに吸入ステロイド薬の用量を調整した群 (コントロール群)に比べ喘息増悪の減少は傾向にとどまったものの (増悪減少率 45.6%,p=0.27),吸入ステロイド薬の使用量は有意に減量できたことが報告されている19).現状では,既治療喘息患者の治療ステップダウン時におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの有用性を示すエビデンスは十分とはいえない.

小児喘息においては,喘息児の吸入ステロイド薬を8 週毎に半減していき,増悪せずに中止できるかは減量前のFeNO (AUROC 0.78),喀痰中好酸球比率 (AUROC 0.76) ともに予測が可能とする報告や,低用量吸入ステロイド薬でコントロールされている喘息児で吸入ステロイド薬を中止した4 週後のFeNO が21.8 ppb 以上であった場合,喘息コントロールの悪化 (増悪,呼吸機能の悪化,ACT スコア20 未満のいずれか) をきたすオッズ比は9.0 (AUROC 0.728) との報告があり20, 21),小児喘息患者ではFeNO が吸入ステロイド薬中止後の喘息増悪を予測できる可能性がある.

4.タイプ2 炎症バイオマーカーは治療薬選択に有用か?

上述したようにタイプ2 炎症バイオマーカーは未治療患者における吸入ステロイド薬の反応性予測に有用であり,また,小児・思春期喘息患者においては,血清総IgE 値や吸入アレルゲン感作の有無も重要なバイオマーカーとなりうる.既治療喘息患者におけるステップアップ・ステップダウン時の判断に使用できるバ3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.65
イオマーカーが求められているが,成人喘息患者では喀痰中のバイオマーカー (好酸球数,ECP 濃度) が有用である可能性はあるものの,日常診療で使用するには利便性に難点があり,新たなバイオマーカーの探索が必要である.一方で小児・思春期喘息患者においてはステップダウン時の指標としてFeNO が使用できる可能性があり,今後の追試の結果が期待される.文献

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p.66
D.モニタリング

喘息診療においてバイオマーカーは気道炎症に基づく喘息フェノタイプの評価に用いられるとともに,治療開始後の炎症モニタリングの目的でも測定される.日常臨床でのタイプ2 炎症バイオマーカーとして,主にFeNO と好酸球がモニタリングに用いられる.喘息におけるタイプ2 気道炎症は,症状,気流制限,気道過敏性に先駆けてステロイド薬治療で改善を認めるため1),気道炎症をモニタリングすることは喘息の長期管理において重要である.また,FeNO は吸入ステロイド薬の服薬アドヒアランスの評価においても有用である2).本項では,喘息管理におけるFeNO,好酸球のモニタリングの意義と課題を中心に述べる.

1.FeNO

A.増悪抑制効果の観点からみたFeNO モニタリングの有用性

FeNO は喘息の補助診断や吸入ステロイド薬などの抗炎症治療薬に対する治療反応性の予測と評価に有用なバイオマーカーであるが3),症状とFeNO をガイドにした喘息管理による増悪抑制効果については議論の余地がある.吸入ステロイド薬治療中の喘息患者において,症状とFeNO を目安に吸入ステロイド薬の用量を調節した患者群 (FeNO 群) では症状のみを目安に吸入ステロイド薬の用量を調節した群 (コントロール群)に比べて吸入ステロイド薬の使用量は減少したものの,喘息増悪の有意な減少は得られず (FeNO 群0.49 回/患者/年 vs. コントロール群0.90 回/患者/年,増悪減少率45.6%,p=0.27,図1A),喘息コントロールや呼吸機能の改善,喀痰中好酸球比率の減少にも差を認めなかった4).コントロール不良な未治療喘息患者においても

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

40 35

30 25

20 15

10

5

0

累積増悪回数(回)累積増悪回数(回)

0 0 5 10 15 20 25 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 時間(月) 時間(週)

コントロール群コントロール群

FeNO群

FeNO群

75 50

25

0 コントロール群:喘息症状のみをもとに喘息管理を行った群 FeNO群:喘息症状とFeNOの値をもとに喘息管理を行った群

A B

図1 症状とFeNO をガイドにした長期管理による喘息増悪の抑制効果

A:p=0.27 (Smith AD, et al. N Engl J Med 2005; 352: 2163-2173. 4)より引用) B:p=0.001 (Powell H, et al. Lancet 2011; 378: 983-990. 6)より引用)
p.67
症状とFeNO に基づく喘息管理は症状のみを指標に喘息管理を行った場合と比べて喘息コントロールや呼吸機能の改善に有意差を認めなかった5).一方で,症状のみを指標に吸入ステロイド薬の用量を調節した妊婦喘息患者より症状とFeNO をガイドに吸入ステロイド薬の用量を調節した患者のほうが有意に喘息増悪の発現が低率で (FeNO 群0.288 回/妊婦 vs. コントロール群0.615 回/妊婦,増悪減少率53.2%,p=0.001,図1B), QOL が高く,出生児の入院率も低率であった6).興味深いことに,その後の追跡調査では症状とFeNO をガイドにした妊娠中の喘息管理は出生児の喘息発症率や喘息増悪率を減少させることも報告された7).また,非好酸球性喘息の妊婦においても症状とFeNO に基づく喘息管理は増悪の抑制に有用であった8).新興感染症の流行など呼吸機能検査の実施に制約がある状況などでは喘息症状とFeNO を併用したモニタリングが喘息の長期管理に効果的な役割を果たす可能性が期待されている. B.呼吸機能の経時的変化におけるFeNO モニタリングの有用性

喘息患者は健常者に比べ呼吸機能の経年低下量が大きいことが知られており,特に発症早期 (5 年以内) に呼吸機能が顕著に低下することが報告されている9).吸入ステロイド薬による早期の治療介入は呼吸機能の改善をもたらし,介入1 年後には改善のピークを認める10).未治療喘息患者では治療により6 ヵ月後に有意に呼吸機能が改善することに並行してFeNO も低下し,これらの効果は1 年後にも維持される11).吸入ステロイド薬導入前のFeNO 高値は1 ヵ月後の呼吸機能改善の指標となる3).また,コントロールが良好な喘息患者におけるFeNO と呼吸機能の経年変化量を3 年間観察した前向きコホート研究では,吸入ステロイド薬治療中でもFeNO が高値で持続する症例 (≧40ppb) では,FeNO が低値に維持されている症例に比べて一秒量の経年低下量が大きく,気管支拡張薬に対する可逆性も低下していた (図2) 12).難治性喘息患者においても気流制限のない症例では FeNO 高値が呼吸機能の経年低下のリスク因子であった13).以上より,FeNO のモニタリングは吸入ステロイド薬治療にもかかわらず持続する気道炎症と関連する気流制限進行の予測に有用であり,生物学的製剤などの導入を考慮する際の目安となる可能性がある.

呼吸機能と同様に気道過敏性の経時的変化に対するFeNO のモニタリングの意義も検討されている.症状とFeNO を指標とした喘息管理は症状のみに基づく管理に比べてより早期に気道過敏性の改善が得られたが,

A B

0 -50

-100

-150

-200

-250 1

0 -1

-2

-3

一秒量の変化量(mL) FeNO高値群

時間(年)

0 1 2 3

時間(年)

0 1 2 3

FeNO 高値群:FeNO≧40 ppb,FeNO 低値群:FeNO<40 ppb

気管支拡張薬に対する反応性(%) FeNO高値群

FeNO低値群FeNO低値群

図2 喘息患者におけるFeNO の発現レベルと呼吸機能の経年変化量

A:気管支拡張薬吸入後一秒量.p<0.0005 B:登録時から気管支拡張薬に対する反応性の変化.p<0.01 (Matsunaga K, et al. Allergol Int 2016; 65: 266-271. 12)より引用)
p.68
治療介入9 ヵ月以降は両群間の気道過敏性の程度は同等であった14).吸入ステロイド薬治療で気道炎症がコントロールされている喘息患者でも34%では気道過敏性の残存を認めており15),気道過敏性の寛解例と残存例との間でFeNO や血中好酸球数に有意な差は確認されなかった15).これらの結果には,喘息患者の気道過敏性を規定する因子が極めて複雑である可能性が考えられる. C.喘息症状の変動におけるFeNO モニタリングの有用性

小児ではFeNO は呼吸機能よりも喘息症状 (呼吸困難,活動制限,夜間症状) と相関するといわれているが16),成人喘息患者では喘息症状の変動とFeNO の関連性について不明な点が多い.喘息患者の客観的咳回数を検討した報告によると,喘息患者の咳回数は気道過敏性の亢進と相関を認めたもののFeNO とは関連を認めなかった17).一方,喘息症状を有さない慢性副鼻腔炎患者30 名 (うち鼻茸合併例16 例) における内視鏡下副鼻腔手術後の喘息発症リスクを評価した検討において,術前のFeNO と鼻茸好酸球数が喘息症状の出現を予測できるバイオマーカーとして利用できる可能性が報告された (喘息症状出現,FeNO:カットオフ値36.4 ppb,感度71%,特異度91%,鼻茸好酸球数:カットオフ値70 個/強視野,感度100%,特異度77%) 18).一方,内視鏡下副鼻腔手術によるFeNO の変化量は,喘息症状の出現の有無にかかわらず有意な差を認めず,血中好酸球数や喀痰中好酸球比率でも同様の結果であった18).慢性副鼻腔炎患者 (特に鼻茸合併例) におけるFeNOのモニタリングが将来的な喘息発症を予測できるかについては更なる検討が必要である.

2.喀痰中好酸球比率

症状と喀痰中好酸球比率に基づく喘息管理の有用性が報告されている.ガイドラインに基づいた指標 (症状,呼吸機能,発作治療薬の使用頻度) とともに喀痰中好酸球比率を参照しながら長期管理を行った群 (喀痰中好酸球群) では,ガイドラインに基づいた指標のみを目安に長期管理を行った群 (ガイドライン治療群) に比べて有意に増悪回数を減少させた (図3,喀痰中好酸球群35 回 vs. ガイドライン治療群109 回,p=0.01).また,

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

120 100

80 60

40 20

0 時間(月)喀痰中好酸球比率群

累積増悪回数(回)

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

累積増悪回数ガイドライン治療群喀痰中好酸球比率群0 0 12 1 19 4 26 7 35 12 59 17 75 21 93 30 109 35

ガイドライン治療群:喘息症状,呼吸機能,発作治療薬の使用頻度のみをもとに喘息管理を行った群喀痰中好酸球群:ガイドラインと喀痰中好酸球比率をもとに喘息管理を行った群

ガイドライン治療群

図3 喀痰中好酸球比率をガイドにした長期管理による喘息増悪の抑制効果

p=0.01 (Green RH, et al. Lancet 2002; 360: 1715-1721. 19)より引用)
p.69
吸入ステロイド薬や経口ステロイド薬の使用量を減少させることはできなかったものの,増悪による経口ステロイド薬の使用頻度は減少し (喀痰中好酸球群24 回 vs. ガイドライン治療群73 回,p=0.008),喀痰中好酸球比率とともにFeNO の低下と気道過敏性の改善を認めた19).また,喀痰中好酸球比率の増加は呼吸機能の経年低下のリスク因子としても知られている.ステロイド薬未治療喘息患者では,呼吸機能の経年低下量が大きい群 (一秒量の経年低下量30mL/年以上かつ気道過敏性陽性) では呼吸機能が保たれている他の2 群 (予測一秒量≧90%かつ気道過敏性陰性,一秒量の経年低下量<30mL/年であるが気道過敏性陽性) に比べて喀痰中好酸球比率は高値で,5 年間の呼吸機能の経年低下量と有意な相関が認められた20).同様に,固定性気流制限を有する喘息患者 (短時間作用性β刺激薬吸入後の一秒率<70%) でも喀痰中好酸球比率は5 年間の一秒量の経年低下量と相関を認めた21).

3.血中好酸球数

日常臨床において汎用性が高い血中好酸球数のモニタリングへの応用が検討されている.血中好酸球数は軽症または中等症喘息における気道炎症 (喀痰中好酸球比率≧3%) の存在をよく反映するバイオマーカーであり (カットオフ値:220/μL,感度:72%,特異度:69%),FeNO と同程度の感度・特異度を有する (カットオフ値:20ppb,感度:64%,特異度:73%) 22).英国で行われた血中好酸球数と喘息の臨床指標の関連性を検討した検討では,血中好酸球数高値 (≧400/μL) が遷延した群は,血中好酸球数が400/μL 未満で推移した群に比べて有意に増悪が頻回で喘息コントロールが不良であった23).また,血中好酸球数高値 (≧400/μL) は一秒量の低下と有意な相関を認め,気流制限進行のリスク因子であることも報告されている24).一方,探索的な検討ではあるが,同一被検者における24 時間以内の血中好酸球数の変動率は個人差が大きいことが報告されている25).特に中等症喘息患者でばらつきが大きい傾向がみられたことから,2 型気道炎症のモニタリングにおける血中好酸球数の役割についてはさらなる検証が必要と考えられる.実際,血中好酸球数は喘息による気道炎症を反映するだけでなくアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎 (特に鼻茸合併例) の合併を推定するバイオマーカーとしても有用であり26),モニタリングに用いる際には他疾患の合併や服用中の薬剤の影響を受ける可能性を考慮する必要がある.

4.FeNO と血中好酸球数の組み合わせ

FeNO と血中好酸球数を組み合わせた複合的指標が,喘息治療の反応性や増悪リスクの予測に有用であるか検討されている.中等症および重症喘息患者を対象に実施されたThe LIBERTY ASTHMA QUEST STUDYのpost hoc 解析では,FeNO のカットオフ値を25ppb としたとき,血中好酸球 (≧150/μL) と前年1 年間の増悪回数 (≧2 回/年) を組み合わせることで増悪リスクが高い患者の推定に有用であったことが報告された27). FeNO と血中好酸球数を組み合わせた指標は特にコントロールが不十分な喘息患者のモニタリングや予後予測における有用性が期待されており,活発に臨床研究が進められている28).文献

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p.71
2 重症喘息

A.総論

●重症喘息においてタイプ2 炎症バイオマーカーの測定は炎症表現型の評価と治療方針の選択に不可欠である. ●FeNO,血中好酸球,喀痰中好酸球,血清IgE が高値でタイプ2 炎症が認められる場合に生物学的製剤の適

応がある.タイプ2 炎症が認められない場合にも有効なテゼペルマブが承認された. ●各バイオマーカーの特徴やステロイド薬の影響を理解して実臨床で適切に活用することが重要である.

喘息の確実な診断や吸入手技・アドヒアランスの確認と指導,併存症や増悪因子の管理を徹底することに加えて,高用量吸入ステロイド薬および長時間作用性吸入β2 刺激薬を中心とした治療を導入してもコントロールされない場合に重症喘息の診断が確定する.そのうえでタイプ2 炎症バイオマーカーを測定する意義は,タイプ2 炎症や非タイプ2 炎症など患者個別の炎症表現型を評価することでより適正な治療方針の選択に結びつけていくことにある.表1 にGlobal Initiative for Asthma に記載される治療中の喘息患者におけるタイプ2 炎症の目安を示した1).

1.重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの概要と解釈 (表2)

A.呼気NO 濃度 (FeNO)

主にIL‐4/IL‐13 の作用により産生が亢進するバイオマーカーであるため,抗IL‐4 受容体抗体であるデュピ

ポイント

表1 タイプ2 炎症の目安・血中好酸球≧150/μL

* および/ または・FeNO ≧20 ppb

* および/ または・喀痰中好酸球≧2% および/ または・喘息は臨床的にアレルギー性である および/ または・経口ステロイド薬の定期使用を必要とする* 経口ステロイド薬を定期使用中の場合はできるだけ低用量のもとで3 回まで再検する(Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2021.  https://ginasthma.org/より作成)
p.72
ルマブの治療により低下する.一方,IL‐5 を標的とするメポリズマブやベンラリズマブの影響については一貫した報告がないが,最近はこれらの生物学的製剤でもFeNO が効果予測因子になりうる可能性が報告されている2, 3). B.血中好酸球

好酸球は主にIL‐5 により成熟や活性化が促進されるため,IL‐5 を標的とするメポリズマブやベンラリズマブの治療により低下する.好酸球性重症喘息の診断には複数回の測定が必要である4).FeNO と血中好酸球がともに高値を示す患者では増悪のリスクが高いことが報告されている5).また,全身性ステロイド薬はFeNOに比べて血中好酸球をより大きく低下させる傾向がある6). C.喀痰中好酸球

日常診療で喀痰中好酸球を測定できる施設は少ない.細胞分画を評価する簡便な方法を表2 に示した7).

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

表2 重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの概要と解釈バイオマーカー概要解釈呼気NO 濃度(FeNO) IL-4/IL-13 に関連したタイプ2 気道炎症のバイオマーカー・カットオフ値:20 ppb および35 ppb・血中好酸球,喀痰中好酸球,血清IgE と中等度に相関する・鼻炎や副鼻腔炎でも高値となるが,下気道の炎症状態を反映する・服薬アドヒアランスの指標として有用である・FeNO と血中好酸球がともに高値を示す患者は特に増悪のリスク

が高い・呼吸機能の経年低下の予測因子である・デュピルマブの効果予測因子である・全身性ステロイド薬を定期使用中でも高値な場合はステロイド抵

抗性を示唆する

血中好酸球IL-5 に関連した全身または気道の好酸球性炎症のバイオマーカー・カットオフ値:150/μL および300/μL・好酸球性重症喘息の診断には複数回の測定が必要である・FeNO と乖離することがある・喀痰中好酸球の予測精度はFeNO と同等である・FeNO と血中好酸球がともに高値を示す患者では特に増悪のリス

クが高い・メポリズマブ,ベンラリズマブ,デュピルマブの効果予測因子である・全身性ステロイド薬を定期使用中でも高値な場合にはステロイド抵抗性を示唆する・全身性ステロイド薬はFeNO よりも血中好酸球を低下させる傾向

がある

喀痰中好酸球IL-5 に関連した気道の好酸球性炎症のバイオマーカー・カットオフ値:2%または3%・自然喀痰または誘発喀痰で測定する・処理に時間を要し喀痰採取成功は約半数である(参考)簡便な測定法:合わせガラス法

7)

採取した喀痰に喀痰溶解剤6mL を加えて500 G,5 分間遠心分

離する.沈査量200μL から1 滴(15μL)を1 枚のスライドガラスに載せ,もう1 枚のスライドガラスと3~5 回すり合わせて塗抹固定する.冷風乾燥後ギムザ染色を行い検鏡する

血清IgE IL-4 に関連したアレルギー性炎症のバイオマーカー・カットオフ値:総IgE 173 IU/mL(FEIA 法)・特異的IgE 抗体価0.70 IU/mL,class 2・真菌抗原は喘息の重症化と関連し,経過中に陽転する場合もあり

数年毎に再検することを考慮する
p.73
D.血清IgE

血清特異的IgE は環境指導や抗IgE 抗体であるオマリズマブの適応を検討する際に有用なバイオマーカーである8).オマリズマブの効果予測因子としての血清総IgE,特異的IgE の意義は確立していない.真菌抗原は陽性カットオフ値をクラス1 とする考え方がある.

重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの概要と解釈について述べた.タイプ2 炎症バイオマーカーを用いた重症喘息の病態・病型の評価と診断,生物学的製剤の選択,モニタリングについては以下の各論を参照されたい.文献

1)Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2021.  https://ginasthma.org/ 2)Menzies‐Gow A, et al. Clinical utility of fractional exhaled nitric oxide in severe asthma management. Eur Respir J 2020; 55: 1901633. 3)Khatri SB, et al. Use of Fractional Exhaled Nitric Oxide to Guide the Treatment of Asthma: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med 2021; 204: e97‐e109. 4)Azim A, et al. Clinical evaluation of type 2 disease status in a real‐world population of difficult to manage asthma using his‐ toric electronic healthcare records of blood eosinophil counts. Clin Exp Allergy 2021; 51: 811‐820. 5)Soma T, et al. Implication of fraction of exhaled nitric oxide and blood eosinophil count in severe asthma. Allergol Int 2018; 67S: S3‐S11. 6)Oishi K, et al. A trial of oral corticosteroids for persistent systemic and airway inflammation in severe asthma. Immun Inflamm Dis 2017; 5: 261‐264. 7)Takahashi M, Urabe M. A new cell concentration method for cancer cytology of sputum. Cancer 1963; 16: 199‐204. 8)福冨友馬ほか.吸入アレルゲン回避のための室内環境整備の手法と予防効果.独立行政法人環境再生保全機構,第9 期環境保全調査研究,2013.
p.74
B.診断における意義

主たる喘息病態として2 型ヘルパーT 細胞 (Th2) や2 型自然リンパ球 (ILC2) が産生する2 型サイトカイン(IL‐4,IL‐5,IL‐13 など) が炎症細胞あるいは気道の構成細胞に作用し,いわゆる “タイプ2 炎症” が惹起され,その結果気道炎症が起きる.わが国における重症喘息においてタイプ2 炎症を呈する病態は80%を占めるといわれており1),このタイプ2 炎症を判断するにあたって汎用性の高いバイオマーカーとして代表的なものに喀痰中および血中好酸球,FeNO,血清IgE がある.近年次々と上市されている生物学的製剤はこれらタイプ2 炎症を標的とした薬剤であるが,どのタイプ2 炎症バイオマーカーがそれぞれの薬剤の効果予測に有用であるかは現在様々な検討が行われている.本項では各々のバイオマーカーの特性をタイプ2 気道炎症ならびに生物学的製剤との関連を含めて概説する.

1.重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーのかかわり

抗原 (アレルゲン) が体内侵入後,抗原提示細胞によって抗原特異的な受容体を持つTh2 細胞が誘導され,さらに同じ抗原が侵入するとTh2 細胞からIL‐4,IL‐5,IL‐13 などのタイプ2 サイトカインが産生され,多くの免疫細胞に影響を与え病態が形成される.このような獲得免疫による一連の反応が主たる喘息病態といわれてきた.それぞれのサイトカインの代表的な役割としてIL‐4 はB 細胞からのIgE 抗体の産生を誘導し,アレルゲンと結合したIgE 抗体はマスト細胞や好塩基球からのケミカルメディエーターを放出する.IL‐5 は好酸球性炎症を誘導し,IL‐13 は気道上皮細胞や平滑筋に作用して杯細胞過形成やリモデリングを誘導することが知られている.一方でアレルゲンを介した感作が明らかでない非アトピー型喘息や,ウイルス感染などの非特異的な刺激によって喘息増悪が誘導される機序には不明な点が多かった.しかし,2010 年にILC2 が発見されたことを契機にこれらの疑問点が明らかとなった2).ILC2 は気道上皮細胞由来のサイトカインであるIL‐33,TSLP,IL‐25 によって抗原非特異的に活性化され,大量のIL‐5 やIL‐13 を産生する.ILC2 は非アトピー型喘息やウイルス感染など気道上皮障害時に誘導される自然免疫を介した喘息増悪に大きく寄与する細胞であることがわかった.このように喘息病態,特にタイプ2 気道炎症にはTh2 細胞による獲得免疫を介した炎症,ILC2 による自然免疫を介した炎症の大きく分けた2 つの機序がかかわっている3).また最近では喘息における自然免疫と獲得免疫はタイプ2 サイトカインやプロスタグランジンなどの脂質メディエーターを介してクロストークしながら病態を形成していることも明らかになってきた.さらに重症喘息の病態において問題となるステロイド薬治療への抵抗性あるいは低感受性の原因としてILC2 が関与していることも示された4).ILC2 は上皮系サイトカインIL‐33 およびTSLP 存在下でステロイド抵抗性を獲得し,喘息治療の中心であるステロイド薬の投与によってもILC2 から産生される2 型サイトカイン (IL‐5,IL‐13) は抑制されず病態が進行し,ついては喘息の重症化へと向かう.特に,全身性ステロイド薬を定期使用している重症喘息患者においてFeNO や血中好酸球数が持続的に高値を示す状況は,ステロイド抵抗性あるいは低感受性の炎症の存在を強く示唆している.ステロイド抵抗性を獲得したILC2 に対する有効な治療薬がない現状ではILC2 とそれぞれの炎症性細胞をつなぐタイプ2 サイトカインを抑制する治療,すなわちこれらのサイトカインを標的にした生物学的製剤の適切な選択が重症喘息における重要な治療戦略と考えられている.そしてこれらの生物学的製剤の有効性を予測する手段としてタイプ2 炎症バイオマーカーが重要となってくる (図1). 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.75
2.重症喘息におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの診断における意義

A.喀痰中および血中好酸球

好酸球は喘息病態における中心的なエフェクター細胞のひとつであり,病態を反映する重要なバイオマーカーである.日本アレルギー学会刊行の 『喘息予防・管理ガイドライン2021』 においても喘息の診断の目安のひとつに気道炎症の存在があげられているが,さらに 「好酸球性の場合は診断的価値が高い」 と付記されている.なかでも喀痰中好酸球は気道の好酸球浸潤を反映しており,好酸球性気道炎症を把握するための重要なバイオマーカーとして位置づけられる5).実際,重症喘息患者を対象とした臨床試験では喀痰中好酸球の割合を3%カットオフ値と考えた場合,重症喘息のうち53%が好酸球性喘息であることが示されている6).また英国の研究では吸入ステロイド薬を中心とした喘息治療薬の調節を,ガイドラインと喀痰中好酸球数測定に基づいて行った結果,喀痰中好酸球を用いて検討したほうがより増悪を抑制できることが示されており,喀痰中好酸球は治療反応性の指標としても重要なバイオマーカーであることが示されている7).さらに胸部CT 上で指摘された粘液栓を検討した報告では,粘液栓の所見を多く認める症例ほど喀痰中好酸球数が多く,さらにはそこに発現するIL‐5 発現量も多いこと,気流閉塞の程度と関連性を認めることが示されている8).このように喀痰中好酸球数は好酸球性重症喘息の診断に重要であり,将来の増悪や呼吸機能低下のリスクと関連し,抗炎症治療薬の調節においても有用なバイオマーカーである.安定期の喘息患者では検体採取が困難な場合もあるが,その際には3~5%の高張食塩水による誘発喀痰が有用なことが多い.この手技における合併症のひとつに気道収縮があるため,あらかじめβ2 刺激薬を吸入して検体採取を行うことが推奨されている.

一方,血中好酸球数は低侵襲で簡便に測定できるバイオマーカーである.膠原病や悪性腫瘍などの他疾患や薬剤の影響でも高値を示すことがあるが,実際に喘息の補助診断として用いることができるバイオマーカー

真菌ウイルスプロテアーゼ

呼気NO濃度抗原

杯細胞過形成

Tezepelumab IL-4

IL-13

IL-5 ILC2

ステロイド抵抗性の獲得Dupilumab

Mepolizumab

Benralizumab

好酸球IL-4

IL-13

IL-5 Th2 細胞Dupilumab

IL-4, IL-13肥満細胞好塩基球

IgE

Omalizumab

B細胞

自然免疫自然型アレルギー獲得免疫

杯細胞過形成

TSLP, IL-33, IL-25 TSLP, IL-33, IL-25

図1 バイオマーカーの分子メカニズムと生物学的製剤の治療標的

主に,血中および喀痰中の好酸球はIL-5 に関連するタイプ2 炎症の状態を反映しており,呼気NO 濃度はIL-4/IL-13 に関連するタイプ2 炎症の状態を反映している.Omalizumab:オマリズマブ (抗IgE 抗体),Mepolizumab:メポリズマブ (抗IL-5 抗体),Benralizumab:ベンラリズマブ (抗IL-5 受容体抗体),Dupilumab:デュピルマブ (抗IL-4 受容体抗体),Tezepelumab:テゼペルマブ (抗TSLP 抗体)
p.76
であり,その値が高値であるほど喘息症状や呼吸機能が悪く,喘息増悪に関連することが複数の研究で示されている9, 10).また重症喘息においては,血中好酸球数は好酸球性気道炎症の程度を反映し,血中好酸球が多いほど気流閉塞の重症度が高い11).喀痰中好酸球と血中好酸球の相関について重症喘息を対象とした研究では,喀痰中好酸球2%以上を予測する血中好酸球数の値は300/μL において感度59.7%,特異度84.4%,450/μLで感度49.3%,特異度97.0%と報告されており,血中好酸球数を参照し好酸球性気道炎症の存在を推定することが可能である12).以上より血中好酸球数は簡便でタイプ2 炎症の診断や評価に適したバイオマーカーのひとつである. B.FeNO

NO の生成に重要な誘導型NO 合成酵素はIL‐4,IL‐13 の刺激下で気道上皮での発現が充進することからタイプ2 気道炎症を有する喘息では高値を示すことが知られている13).またFeNO と喀痰中好酸球は相関することが多くの研究で報告されており,タイプ2 気道炎症のバイオマーカーとして重要な指標である.FeNO の優れている点は非侵襲的かつリアルタイムで測定結果が得られる点である.日本人においてアレルギー性疾患がない非喫煙健常成人のFeNO の平均値は15 ppb,上限値は37 ppb である14).喘息診断として考えた場合, FeNO のカットオフ値は22ppb (感度91%,特異度84%) であり,正常上限の37ppb を閾値とした場合は喘息診断に対するFeNO の感度52%,特異度99%であった15).日本呼吸器学会では吸入ステロイド薬未治療で喘息を疑わせる症状に加えFeNO が22 ppb 以上なら喘息である可能性が高く,35 ppb 以上であればほぼ確実に喘息と診断できると提唱している16).一方でアレルギー性鼻炎,レタスなど硝酸塩を含有する食物の摂取などはFeNO の上昇と関連し,喫煙,アルコール摂取,呼吸機能検査で誘発される気道狭窄などはFeNO の低下と関連する交絡因子となりうる点を留意しておく必要がある.

生物学的製剤とFeNO との関連については,FeNO は血中好酸球,血清ペリオスチンとともに抗IgE 抗体(オマリズマブ) 使用時の増悪抑制の予測マーカーである可能性を示した報告がある17).オマリズマブ導入後にFeNO が低下するという報告もある18).また抗IL‐4Rα抗体 (デュピルマブ) は喘息患者に投与するとFeNO を低下させ,増悪の減少や呼吸機能改善などの臨床効果との関連を認めている19).この理由としては,NO 産生にIL‐4/IL‐13 がかかわるためと考えられる.ちなみにデュピルマブは血清総IgE や遊走因子であるケモカインのTARC やエオタキシンも低下させることからタイプ2 炎症を広範に抑制できる可能性が示唆されている.一方で,IL‐5 を標的とした生物学的製剤により全身および気道局所の好酸球性炎症は有意に抑制されるが,FeNO がその効果予測因子として有用であるかについては現時点で一定の見解が得られていない. C.血清IgE

IgE はTh2 細胞から産生されるIL‐4 によりB 細胞がlgE 産生細胞にクラススイッチすることで産生され,好塩基球や肥満細胞の表面にある高親和性受容体 (FcεRI) に結合することでヒスタミンなどの脱顆粒を誘発する.IgE はアトピー型喘息の診断における重要なバイオマーカーであり,特に若年層においては,血清IgEがIL‐4,IL‐5,IL‐13 などのタイプ2 サイトカインと相関を示す報告もある20),抗lgE 抗体であるオマリズマブの使用に際して,その投与量は投与前の血清IgE 濃度,体重を指標に決定され,投与を開始する判断にあたって重要なバイオマーカーである.オマリズマブの導入後,本剤の標的分子である血清遊離lgE 値は速やかに低ドする21).しかし,血清遊離IgE 値は一般検査としては測定することができず,さらにオマリズマブの一部は血清IgE と結合して血中に存在するため臨床現場で測定可能な総IgE 値を用いて治療効果のモニタリングを行うことは難しい.

重症喘息におけるステロイド抵抗性などの病態理解や炎症表現型の評価と診断において喀痰中および血中好酸球,FeNO,血清IgE などのタイプ2 炎症バイオマーカーは重要な役割を果たす.また,現在本邦におい3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.77
て使用できるタイプ2 炎症をターゲットとした4 つの生物学的製剤 (オマリズマブ,メポリズマブ,ベンラリズマブ,デュピルマブ) の選択においてこれらのバイオマーカーはより適切な薬剤を使用していく上で重要な情報をもたらす.文献

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p.78
C.治療の選択

重症喘息は,そのコントロールを維持するために,高用量吸入ステロイド薬および長時間作用性吸入β2 刺激薬に加えてその他の長期管理薬の併用を要するか,これらの治療でもコントロール不良な喘息と定義されている1).治療中の喘息患者の5~10%が重症喘息であり,重症かつコントロール不良である患者は2.5%を占める2).重症喘息の70~88%はタイプ2 炎症を有している3, 4).血中好酸球数やFeNO が高値であるほど増悪頻度は高く5),FeNO は1 秒量の経年低下量と相関することから6),タイプ2 炎症が強いほど喘息が重症化することが示唆されている.

わが国では,生物学的製剤として,抗IgE 抗体,抗IL‐5 抗体,抗IL‐5Rα 抗体,抗IL‐4Rα抗体,抗TSLP抗体が使用可能である.これらの薬剤は,主にタイプ2 炎症を標的としていることから,生物学的製剤は重症喘息に対する重要な治療選択肢である.

生物学的製剤は標的分子に選択的に作用することから,生体内での標的分子のモニタリングが,その効果予測に有用な可能性が想定される.実際,生物学的製剤の効果予測因子として,IL‐4,IL‐13 が産生を制御するFeNO や,IL‐5 の作用を反映する血中好酸球数の有用性が確立しており,選択や適応を考慮する際には,これらの測定の重要性が高い.各薬剤についてタイプ2 炎症バイオマーカーの測定意義と解釈について述べる.

1.抗IgE 抗体[オマリズマブ (ゾレア®)]

オマリズマブは,IgE に結合する抗IgE 抗体である.通年性吸入抗原に対して陽性を示し,体重および初回投与前血清中総IgE 濃度が投与量換算表で定義される基準を満たす場合に本剤を投与する (表1).すなわち,血清総IgE 値が30~1,500IU/mL かつ,ダニなどの通年性吸入抗原に対する特異的IgE が陽性の重症喘息が適応となる.

オマリズマブでは血清総IgE 値によらず増悪抑制効果が認められており,効果における濃度依存性は示されていない7).また,感作アレルゲン数や,通年性や季節性のアレルゲンの種類にかかわらず増悪抑制効果が認められている8).さらに,吸入抗原への感作が証明されない非アトピー型喘息においても (保険適用外),増悪抑制効果が認められており9),肺局所でのIgE 依存型アレルギーに対する効果が推定されている.FeNO や血中好酸球数と増悪抑制効果との関連については,高値群で効果が高いとする報告と10),関連がないとする報告がある11).以上のことから,オマリズマブの効果予測因子として,血清総IgE 値,特異的IgE 抗体, FeNO,血中好酸球数を評価する意義は,明確には確立していない.

2.抗IL-5 療法[メポリズマブ (ヌーカラ®),ベンラリズマブ (ファセンラ®)]

IL‐5 を標的とする生物学的製剤として,わが国では2 剤が使用可能である.メポリズマブ (ヌーカラ®) は抗IL‐5 抗体であり,ベンラリズマブ (ファセンラ®) はIL‐5 が結合するIL‐5Rαに対する抗体である.ベンラリズマブは,IL‐5 のシグナル伝達の阻害に加えて,ADCC (antibody‐dependent cellular mediated cytotoxicity) 活性により好酸球を除去する.メポリズマブとベンラリズマブの一貫した臨床効果の差異は示されておらず, 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.79
メタ解析ではメポリズマブが優れるとする報告と12),同等とする報告13)がある.

メポリズマブとベンラリズマブは,投与前の血中好酸球数が多いほど,増悪抑制効果が大きい14, 15).メポリズマブについては,血中好酸球数が投与開始時に150/μL 以上,または過去12 ヵ月間に300/μL 以上であった患者で,有意な増悪抑制効果が示されている16).ベンラリズマブについての統合解析でも,血中好酸球数が150/μL 以上の患者で,増悪抑制効果が認められている15).一方,メポリズマブ14),ベンラリズマブ15)の双方で,投与開始時に血中好酸球数が150/μL 未満の患者では有意な増悪抑制効果は認められていない.

血清総IgE 値については,抗IL‐5 療法の効果との関連は明確に示されてない17, 18).FeNO はメポリズマブの効果とは関連しないが18),ベンラリズマブではFeNO 高値の場合に効果が高いとする報告があるものの19),結果は分かれており20),さらなる検証が必要である.

このように,抗IL‐5 療法の効果予測因子として,血中好酸球数を測定する意義が確立しており血中好酸球数が150/μL 以上の患者に投与することが望ましい (表1).

3.抗IL-4 受容体α(IL-4Rα)抗体[デュピルマブ (デュピクセント®)]

IL‐4RαはIL‐4 とIL‐13 が共通して結合するサブユニットであり,本剤はIL‐4 およびIL‐13 のシグナル伝達を阻害することによりタイプ2 炎症反応を抑制する.

デュピルマブの効果予測因子としては,FeNO が25 ppb 以上の患者で濃度依存的に増悪抑制効果と1 秒量の改善を認めている21).FeNO 産生に関与する誘導型NO 合成酵素は,デュピルマブの標的分子であるIL‐4やIL‐13 で活性が制御されているため,FeNO が効果予測因子となっていることが示唆されている.

血中好酸球数についても,好酸球数依存的に150/μL 以上で増悪抑制効果を認め,300/μL 以上で1 秒量の改善を認めている21).デュピルマブはIL‐4 の作用を阻害することでTh2 細胞やILC2 など種々の炎症細胞の活性を抑制し,その結果,これらの細胞からのIL‐5 産生が低下する可能性がある.そのため,血中好酸球数

表1 生物学的製剤の投与対象患者すべての生物学的製剤投与の要否の判断にあたっては,以下に該当する患者であることを確認する. □気管支喘息の確定診断がなされている. □高用量のICS とその他の長期管理薬(LABA〔配合剤を含む〕,LAMA,LTRA,テオフィリン徐

放製剤)を併用してもコントロール不良で,かつ全身性ステロイド薬の投与などが必要な喘息増悪を年に1 回以上きたす場合.ただし,デュピルマブとテゼペルマブは中用量のICS 使用下でも選択可能であるが,医師によりICS を高用量に増量することが副作用等により困難であると判断された場合に限る.オマリズマブ(抗IgE 抗体):上記の必須項目に加え,以下の両項目を満たす患者であることが望ましい. □通年性吸入抗原に対して特異的IgE 抗体陽性を示す. □体重および初回投与前の血清総IgE 濃度が投与量換算表で定義される基準を満たす.メポリズマブ(抗IL-5 抗体)とベンラリズマブ(抗IL-5Rα抗体):上記の必須項目に加え,以下の項目を満たす患者であることが望ましい. □血中好酸球数が150/μL 以上,または過去12 ヵ月間に300/μL 以上を認める患者.デュピルマブ(抗IL-4Rα抗体):上記の必須項目に加え,以下の項目いずれかを満たす患者であることが望ましい. □血中好酸球数が150/μL 以上,またはFeNO が25 ppb 以上である患者. □血清総IgE 値が167 IU/mL 以上である患者.テゼペルマブ (抗TSLP 抗体):上記の必須項目を満たす患者. ICS:吸入ステロイド薬,LABA:長時間作用性吸入β2 刺激薬,LAMA:長時間作用性吸入抗コリン薬, LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬(日本呼吸器学会・日本アレルギー学会.成人気管支喘息における生物学的製剤の適正使用ステートメント,

2020 31) より作成)
p.80
がデュピルマブの効果予測因子となっていると考えられる.

FeNO と血中好酸球数を組み合わせた場合,FeNO 25 ppb 以上,かつ血中好酸球数150/μL 以上である双方高値群で増悪抑制効果が最も高かった21).一方,双方低値の患者では増悪抑制効果が認められていないため,デュピルマブは血中好酸球数が150/μL 以上,FeNO が25 ppb 以上のいずれかを満たす患者に投与することが推奨される (表1).

血清総IgE 値とデュピルマブの効果との関連については,濃度依存性が乏しいが,167IU/mL 以上で有意な1 秒量の改善を認め,449IU/mL 以上で有意な増悪抑制を認めている21).したがって,血清総IgE 値が167IU/mL 以上である場合に投与が考慮される (表1).

また,経口ステロイド薬内服中の患者では,血中好酸球やFeNO が高値のほうがステロイド減量効果が高い傾向があるが,これらが低値でも効果は認められており22),使用を考慮しうる.

他の生物学的製剤が十分奏効せず,デュピルマブに変更した場合,FeNO が25 ppb 以上であれば,低値の場合と比較して奏効率が高いことが報告されている23).

4.抗TSLP 抗体[テゼペルマブ (テゼスパイア®)]

TSLP はウイルス感染やアレルゲン曝露後に気道上皮細胞などから放出され,Th2 分化やILC2 のステロイド抵抗性に関与することが示唆されている.抗TSLP 抗体であるテゼペルマブは,喘息増悪を抑制し,1 秒量や喘息症状24),マンニトールに対する気道過敏性を改善した25).血中好酸球数やFeNO が高値のほうが,増悪抑制効果は高い傾向があるが,血中好酸球数が150/μL 未満やFeNO が25 ppb 未満であっても,増悪抑制効果は認められた.タイプ2 炎症が弱い患者へも効果が認められる背景として,TSLP によるIL‐17 産生増強効果や,好中球からのTSLP 産生が,関与している可能性が示唆されている26, 27).

5.生物学的製剤の選択におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの位置づけ (図1)

重症喘息において,約30%は4 種の生物学的製剤すべてに適応を有するため,重複適応患者では薬剤選択の目安が必要となる28).

血中好酸球数やFeNO は濃度依存的に生物学的製剤の効果と関連しているため,現状としてはこの2 つの指標で薬剤選択を検討することが妥当である.

図1 に,血中好酸球数とFeNO で分類した生物学的製剤の適応を示す.FeNO 単独高値群では (A),デュピルマブの適応が考慮される.血中好酸球数とFeNO が双方低値である群 (B) では,抗IL‐5 療法やデュピルマブの効果は限定的である.好酸球高値群では (C),抗IL‐5 療法とデュピルマブの双方が適応として考えられる.後ろ向き検討では,双方の薬剤で同等の増悪抑制効果が認められているが29),相対的に血中好酸球数が高値の場合は抗IL‐5 療法の,FeNO が高値の場合はデュピルマブの効果が高い可能性がある.また,併存症も加味して適応を考える (表2).

一方,オマリズマブについては,血中好酸球数とFeNO がオマリズマブの効果と明確には関連しないことから,いずれの領域でも治療選択肢として考慮されうる.いずれの領域でも約半数の患者が投与適応を満たす30).

テゼペルマブについては,血中好酸球数やFeNO が高値の方が,増悪抑制効果は高い傾向があるが,低値であっても,増悪抑制効果は認められたため24),いずれの領域でも治療選択肢として考慮される. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.81
文献

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表2 生物学的製剤の効果予測因子としてのタイプ2 炎症バイオマーカーの有用性

オマリズマブメポリズマブベンラリズマブデュピルマブテゼペルマブ

作用機序抗IgE 抗体抗IL-5 抗体抗IL-5Rα抗体抗IL-4Rα抗体抗TSLP 抗体血中好酸球数△ ◯ ◯ ◯ ◯ FeNO △ ×~△ ×~△ ◯ ◯血清総IgE × × × △ ×適応を有する併存症・特発性の慢性蕁麻疹・季節性アレルギー性

鼻炎・好酸球性多発血管炎

性肉芽腫症なし・アトピー性皮膚炎・鼻茸を伴う慢性副鼻

腔炎なし

◯:効果予測における有用性が示されている△:効果予測における有用性について結果が一貫しないか,効果に対する濃度依存性が乏しい×:効果予測における有用性が十分に示されていない

抗IL-4Rα抗体抗IgE抗体(通年性吸入抗原感作時) *1

抗TSLP抗体

抗IgE抗体(通年性吸入抗原感作時) *1

抗TSLP抗体

150抗IL-5抗体/抗IL-5Rα抗体*2

抗IL-4Rα抗体*3抗IgE抗体(通年性吸入抗原感作時) *1

抗TSLP抗体

血中好酸球数(/μL)

25 呼気NO濃度(FeNO)(ppb) B

A C

図1 血中好酸球数とFeNO で分類した生物学的製剤の適応

*1:血清総IgE が低値の場合は,安価に投与できる.重症季節性アレルギー性鼻炎,慢性蕁麻疹に適応を有する. *2:相対的に血中好酸球数高値の場合は,優先的に使用を考慮する.抗IL-5 抗体はEGPA に適応を有する. *3:相対的にFeNO が高値の場合や,鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を有する場合は,優先的に使用を考慮する.アトピー性皮膚炎にも適応を有する.血中好酸球数1,500/μL 以上では,安全性や効果は十分検討されていない. *4:血中好酸球数1,500/μL 以上の場合,血液疾患,寄生虫感染症,その他の好酸球増加症を除外する. (日本アレルギー学会.アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き,2022 32)を参考に作成)
p.82
8)Soong W, et al. Omalizumab response in patients with asthma by number and type of allergen. Ann Allergy Asthma Immunol 2021; 127: 223‐231. 9)Campo P, et al. Real‐life study in non‐atopic severe asthma patients achieving disease control by omalizumab treatment. Allergy 2021; 76: 1868‐1872. 10)Hanania NA, et al. Exploring the effects of omalizumab in allergic asthma: an analysis of biomarkers in the EXTRA study. Am J Respir Crit Care Med 2013; 187: 804‐811. 11)Casale TB, et al. Omalizumab effectiveness by biomarker status in patients with asthma: Evidence From PROSPERO, A Prospective Real‐World Study. J Allergy Clin Immunol Pract 2019; 7: 156‐164 e1. 12)Busse W, et al. Anti‐IL‐5 treatments in patients with severe asthma by blood eosinophil thresholds: Indirect treatment com‐ parison. J Allergy Clin Immunol 2019; 143: 190‐200 e20. 13)Bourdin A, et al. Matching‐adjusted indirect comparison of benralizumab versus interleukin‐5 inhibitors for the treatment of severe asthma: a systematic review. Eur Respir J 2018; 52: 1801393. 14)Ortega HG, et al. Severe eosinophilic asthma treated with mepolizumab stratified by baseline eosinophil thresholds: a sec‐ ondary analysis of the DREAM and MENSA studies. Lancet Respir Med 2016; 4: 549‐556. 15)FitzGerald JM, et al. Predictors of enhanced response with benralizumab for patients with severe asthma: pooled analysis of the SIROCCO and CALIMA studies. Lancet Respir Med 2018; 6: 51‐64. 16)Ortega HG, et al. Mepolizumab treatment in patients with severe eosinophilic asthma. N Engl J Med 2014; 371: 1198‐1207. 17)Chipps BE, et al. Benralizumab efficacy by atopy status and serum immunoglobulin E for patients with severe, uncontrolled asthma. Ann Allergy Asthma Immunol 2018; 120: 504‐511 e4. 18)Yancey SW, et al. Biomarkers for severe eosinophilic asthma. J Allergy Clin Immunol 2017; 140: 1509‐1518. 19)Watanabe H, et al. Blood eosinophil count and FeNO to predict benralizumab effectiveness in real‐life severe asthma patients. J Asthma 2022; 59: 1796‐1804. 20)Jackson DJ, et al. Benralizumab effectiveness in severe asthma is independent of previous biologic use. J Allergy Clin Immunol Pract 2022; 10: 1534‐1544 e4. 21)Castro M, et al. Dupilumab efficacy and safety in moderate‐to‐severe uncontrolled asthma. N Engl J Med 2018; 378: 2486‐ 2496. 22)Rabe KF, et al. Efficacy and safety of dupilumab in glucocorticoid‐dependent severe asthma. N Engl J Med 2018; 378: 2475‐ 2485. 23)Mummler C, et al. Dupilumab improves asthma control and lung function in patients with insufficient outcome during pre‐ vious antibody therapy. J Allergy Clin Immunol Pract 2021; 9: 1177‐1185 e4. 24)Menzies‐Gow A, et al. Tezepelumab in adults and adolescents with severe, uncontrolled asthma. N Engl J Med 2021; 384: 1800‐1809. 25)Diver S, et al. Effect of tezepelumab on airway inflammatory cells, remodelling, and hyperresponsiveness in patients with moderate‐to‐severe uncontrolled asthma (CASCADE): a double‐blind, randomised, placebo‐controlled, phase 2 trial. Lancet Respir Med 2021; 9: 1299‐1312. 26)Tanaka J, et al. Human TSLP and TLR3 ligands promote differentiation of Th17 cells with a central memory phenotype under Th2‐polarizing conditions. Clin Exp Allergy 2009; 39: 89‐100. 27)Ying S, et al. Expression and cellular provenance of thymic stromal lymphopoietin and chemokines in patients with severe asthma and chronic obstructive pulmonary disease. J Immunol 2008; 181: 2790‐2798. 28)伊東彩香ほか.重症喘息における生物学的製剤の重複適応の比率と患者背景.アレルギー 2022; 71: 210‐220. 29)Shrimanker R, et al. Prognostic and predictive value of blood eosinophil count, fractional exhaled nitric oxide, and their combination in severe asthma: a post hoc analysis. Am J Respir Crit Care Med 2019; 200: 1308‐1312. 30)Nagase H, et al. The roles of IL‐5 and anti‐IL‐5 treatment in eosinophilic diseases: Asthma, eosinophilic granulomatosis with polyangiitis, and eosinophilic chronic rhinosinusitis. Allergol Int 2020; 69: 178‐186. 31)日本呼吸器学会・日本アレルギー学会.成人気管支喘息における生物学的製剤の適正使用ステートメント,2020. 32)日本アレルギー学会.アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き,2022. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.83
D.モニタリング

高用量の吸入ステロイド薬に長時間作用性吸入β2 刺激薬,長時間作用性抗コリン薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬などの薬剤を加えてもコントロール不良の重症喘息では,タイプ2 炎症が優位であれば生物学的製剤の使用が考慮される.生物学的製剤を選択した場合も,通常の喘息管理と同様に定期的なモニタリングを行い,治療の継続,変更,中止や経口ステロイド薬をはじめとする長期管理薬の減薬を検討することが重要である (図1).添付文書上,抗IgE 抗体 (オマリズマブ) では投与開始後16 週間までの治療効果判定を推奨しているが,他の生物学的製剤については効果判定のタイミングについて記載はみられない.しかし,臨床試験において臨床効果やバイオマーカーなど各種パラメーターの変動が安定する3 ヵ月以降がひとつの目安と考えられ,GINA2021 においては,少なくとも4 ヵ月以内の再評価を推奨している1).

治療効果の判定は,増悪や救急・予定外受診,喘息症状,呼吸機能,経口ステロイド薬の必要量,合併症(アトピー性皮膚炎,慢性好酸球性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎) の状態を中心に,副作用や患者の満足度などを加えて総合的に行う.コントロール不良の場合には,吸入手技や服薬アドヒアランスの確認,鑑別診断,慢性好酸球性副鼻腔炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの合併症や増悪因子などの確認が必要となる2).生物学的製剤使用中のモニタリングにおけるタイプ2 炎症バイオマーカーの意義は十分には確立していないが,治療効果予測,治療中止後の経過 (予後) の予測になりうる可能性が示されている.また,治療変更に際しても参考にできるが,現在あるいは直前まで使用していた生物学的製剤や経口ステロイド薬の影響に注意を払う必要がある.本項では,現在本邦で使用可能な4 つの生物学的製剤によりタイプ2 炎症バイオマーカーがどのような変動を示すのかを概説する.表1 に,生物学的製剤使用によるタイプ2 炎症バイオマーカー変動のまとめを示す.

タイプ2炎症 生物学的製剤・抗IgE 抗体*1・抗IL-5 抗体/ 抗IL-5Rα抗体・抗IL-4Rα抗体(気管支熱形成術)

非タイプ2炎症マクロライド系抗菌薬*2気管支熱形成術

*1:抗IgE抗体については投与開始後16 週までの治療効果判定が推奨されている*2:本邦での保険適用はない副作用確認吸入手技・服薬アドヒアランス確認合併症評価

治療効果判定(3~6ヵ月毎)

治療継続・変更あるいは中止治療(薬)追加あるいは減薬

図1 重症喘息に対する治療選択と治療効果判定
p.84
1.抗IgE 抗体[オマリズマブ (ゾレア®)]

オマリズマブは血中遊離IgE のCε3 に結合し,肥満細胞や好塩基球に発現する高親和性IgE 受容体(FcεRI) とIgE の結合を阻害する.結果として,IgE の消失半減期が延長し血清総IgE 濃度は上昇することとなり,本剤投与中止後1 年までは血清総IgE 濃度上昇が持続する可能性があることが添付文書上に示されている.一方で,研究レベルではあるが,血清遊離IgE 値はオマリズマブ投与により速やかに減少するとされている.しかし,臨床効果との関連については報告によりばらつきがみられる3, 4).

FeNO や血中好酸球数の推移については,報告により研究デザインや結果が様々であり,一定の見解を見出すことは困難である.たとえば,コントロール不良の重症喘息患者に対するオマリズマブの追加効果を検討したランダム化比較試験においては増悪やAQLQ スコアの改善とともに,FeNO の低下が報告されているが5),オマリズマブ長期使用後の中止可能性をみた多施設ランダム化比較試験 (XPORT 試験) においては,52週までの観察でプラセボ (オマリズマブ中止) 群とオマリズマブ継続群でFeNO の値に差は認められなかった6).一方で,XPORT 試験ではオマリズマブ中止12 週間後のFeNO の上昇と増悪発現に関連が認められ,中止後のFeNO 上昇は増悪の予測因子となる可能性が示された.

5 つのランダム化比較試験のプール解析では,血中好酸球数はオマリズマブ群で18.8%,コントロール群で2.1%低下しており,血中好酸球数の減少は,血清遊離IgE 値と相関していた7).一方で,XPORT 試験においてはオマリズマブ中止群と継続群で観察期間中の血中好酸球数に差異や変動は認めなかった6).しかし,オマリズマブ中止群では,増悪群で非増悪群と比較して中止時の血中好酸球数が有意に高値であるという結果が示された.オマリズマブによる血中好酸球数の減少は,後述する抗IL‐5 抗体や抗IL‐5Rα抗体と比較して緩やかであり,臨床的意義については明らかではないが,オマリズマブ中止に際しては,血中好酸球数が予後予測マーカーとなる可能性がある.また,オマリズマブの市販後調査では,経過中の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の発症報告がある.その多くが経口ステロイド薬の減量・中止に伴うものとされているが,発疹,肺症状の悪化,心臓合併症やニューロパチーなど血管炎と関連しうる症状の出現に加え,血中好酸球数の推移を観察するよう,注意喚起がなされている.喀痰中好酸球数については,減少するとの報告がみられる8).

2.抗IL-5 抗体[メポリズマブ (ヌーカラ®)]

メポリズマブは,好酸球の成熟・活性化に重要なサイトカインであるIL‐5 と特異的に結合し,IL‐5 の機能を阻害する.結果として重症喘息患者の血中好酸球数9~11),喀痰中好酸球数9)を低下させる.国際第III相共同試験であるMENSA 試験において,血中好酸球数はメポリズマブ投与4 週後より低下し,12 週後に最下点3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

表1 生物学的製剤使用によるタイプ2 炎症バイオマーカーの変動

呼気NO 濃度(FeNO)血中好酸球喀痰中好酸球血清総IgE 値

抗IgE 抗体オマリズマブ報告によりばらつきあり報告によりばらつきあり減少増加血清遊離 IgE 値は減少抗IL-5 抗体メポリズマブ基本的には減少しないが低下するとの報告もあり減少減少減少しない抗IL-5R α抗体ベンラリズマブ基本的には減少しないが低下するとの報告もあり減少減少不明抗IL-4R α抗体デュピルマブ低下一過性に増加後ベースラインよりやや減少不明減少
p.85
に達することが示された10).またその効果は増悪抑制効果とともに長期に持続し,投与開始後228 週時点においても持続することが報告されている11).投与前の血中好酸球数が多いほど増悪抑制効果が大きい傾向が認められているが,投与後の血中好酸球数と臨床効果との関連を示したデータはみられない.メポリズマブでは,投与後も血中好酸球は完全には消失しない症例が多い.メポリズマブを1 年間使用後に中止した場合,中止後3 ヵ月から血中,喀痰中好酸球は増加し,6 ヵ月までには増悪発現を含めてベースラインの状態に戻るとの報告がある12).なお,FeNO 9)および血清総IgE 値についてはメポリズマブ投与による低下はみられていない13).

3.抗IL-5 受容体α(IL-5Rα)抗体[ベンラリズマブ (ファセンラ®)]

ベンラリズマブはIL‐5 受容体α (IL‐5Rα) サブユニットに特異的かつ高親和性で結合するヒト化モノクローナル抗体であるが,Fc ドメインのフコース欠損によりADCC 活性が増強され,IL‐5Rαを発現する好酸球のアポトーシスを誘導することが知られている.本剤による血中好酸球数の低下は速やかで,海外第II相試験おいては,血中好酸球数300/μL 以上のコントロール不良の喘息症例において,ベンラリズマブ2 mg,20mgあるいは100mg 投与で (現在本邦で承認されている投与量は1 回30mg),6 日後には血中好酸球数が平均46 ~56/μL まで低下し,7 回投与後中止するとその26 週後にベースラインへ戻ることが示されている14).その後の国際第III相共同試験においては,4 週時点で血中好酸球数は中央値で0/μL を示し15),5 年までの解析でも中央値は0/μL に近い値で推移していた16).添付文書上では,国際第III相共同試験において本剤の承認用法・用量で投与を受けた患者の14.9%に抗ベンラリズマブ抗体が,12.0%に中和抗体が認められ,抗ベンラリズマブ抗体陽性となった患者の一部では減少した血中好酸球数の再増加が認められたことが報告されている.喀痰中好酸球については,経口ステロイド薬の減量効果を検討したZONDA 試験において12 週目での有意な低下が確認されている17).海外第II相試験おいてはベンラリズマブ投与によるFeNO の低下はみられていない14)が,後方視的研究において投与開始前にFeNO 75ppb 以上の群では1 年後にFeNO の低下がみられたとの報告もある18).

4.抗IL-4 受容体α(IL-4Rα)抗体[デュピルマブ (デュピクセント®)]

デュピルマブはIL‐4 およびIL‐13 の共役受容体を構成するIL‐4 受容体α (IL‐4Rα) に結合することにより, IL‐4 およびIL‐13 のシグナル伝達を阻害する.国際第III相共同試験であるQUEST 試験において,FeNO,血清中総IgE 値,ペリオスチン,エオタキシン3,TARC が低下することが確認されている19).また,第II相試験において,FeNO は薬剤投与後4 週で著明に低下を認め,12 週時点での1 秒量の改善とFeNO の低下が関連していたと報告されている.また,血清総IgE 値は,4 週時点でベースラインより低下を認め,12 週後にはさらに低下することが報告されている20).

血中好酸球数は,デュピルマブの投与後に一過性に上昇しその後52 週間でベースライン付近まで低下することが報告されている19).IL‐4Rαの阻害により末梢血から気道組織への好酸球の移行が阻害されるためであると考えられているが,好酸球性肺炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の発症報告もあり,適正使用ガイドではデュピルマブの投与中には好酸球数の推移と血管炎と関連しうる皮疹,肺症状の悪化,心臓合併症およびニューロパチーなどの臨床症状の発現に注意するよう記載されている.
p.86
文献

1)2021 GINA Report, Global Strategy for Asthma Management and Prevention. https://ginasthma.org/wp‐content/uploads/2021/05/GINA‐Main‐Report‐2021‐V2‐WMS.pdf (2021 年10 月29 日閲覧) 2)一般社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会 (監修).喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021. 3)Korn S, et al. Monitoring free serum IgE in severe asthma patients treated with omalizumab. Respir Med 2012; 106: 1494‐ 1500. 4)Tajiri T, et al. Utility of serum periostin and free IgE levels in evaluating responsiveness to omalizumab in patients with severe asthma. Allergy 2016; 71: 1472‐1479. 5)Hanania NA, et al. Omalizumab in severe allergic asthma inadequately controlled with standard therapy: a randomized trial. Ann Intern Med 2011; 154: 573‐582. 6)Ledford D, et al. A randomized multicenter study evaluating Xolair persistence of response after long‐term therapy, J Aller‐ gy Clin Immunol 2017; 140: 162‐169. 7)Massanari M, et al. Effect of omalizumab on peripheral blood eosinophilia in allergic asthma. Respir Med 2010; 104: 188‐ 196. 8)Djukanovic R, et al. Effects of treatment with anti‐immunoglobulin E antibody omalizumab on airway inflammation in allergic asthma. Am J Respir Crit Care Med 2004; 170: 583‐593. 9)Pavord ID, et al. Mepolizumab for severe eosinophilic asthma (DREAM): a multicentre, double‐blind, placebo‐controlled trial. Lancet 2012; 380: 651‐659. 10)Ortega HG, et al. Mepolizumab treatment in patients with severe eosinophilic asthma. N Engl J Med 2014; 371: 1198‐1207. 11)Khatri S, et al. Assessment of the long‐term safety of mepolizumab and durability of clinical response in patients with severe eosinophilic asthma. J Allergy Clin Immunol 2019; 143: 1742‐1751. 12)Haldar P, et al. Outcomes after cessation of mepolizumab therapy in severe eosinophilic asthma: a 12‐month follow‐up analysis. J Allergy Clin Immunol 2014; 133: 921‐923. 13)Efficacy and safety study or mepolizumab adjunctive therapy in subjects with severe uncontrolled refractory asthma.〈GSK‐ Efficacy and safety study of mepolizumab adjunctive therapy in subjects with severe uncontrolled refractory asth‐ ma (gsk‐studyregister.com)〉(2021 年10 月29 日閲覧) 14)Castro M, et al. Benralizumab, an anti‐interleukin 5 receptorα monoclonal antibody, versus placebo for uncontrolled eosinophilic asthma: a phase 2b randomized dose‐ranging study, Lancet Respir Med 2014; 2: 879‐890. 15)Bleecker ER, et al. Efficacy and safety of benralizumab for patients with severe asthma uncontrolled with high‐dosage inhaled corticosteroids and long‐actingβ2‐antagonists (SIROCCO): a randomized, multicentre, placebo‐controlled phase 3 trial. Lancet 2016; 388: 2115‐2127. 16)Korn S, et al. Integrated safety and efficacy among patients receiving benralizumab for up to 5 years. J Allergy Clin Immunol Pract 2021; 9: 4381‐4392.e4. 17)Nair P, et al. Oral glucocorticoid‐sparing effect of benralizumab in severe asthma. N Engl J Med 2017; 376: 2448‐2458. 18)Hearn AP, et al. The relationship between FENO and effectiveness of mepolizumab and benralizumab in severe eosinophilic asthma, J Allergy Clin Immunol Pract 2021; 9: 2093‐2096. 19)Castro M, et al. Dupilumab efficacy and safety in moderate‐to‐severe uncontrolled asthma. N Engl J Med 2018; 378: 2486‐ 2496. 20)Wenzel S, et al. Dupilumab in persistent asthma with elevated eosinophil levels. N Engl J Med 2013; 368: 2455‐2466.

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.87
3 COPD

A.総論

●COPD の表現型には多様性があり,タイプ2 炎症バイオマーカーが陽性を示す患者も決してまれではない. ●タイプ2 炎症バイオマーカーに加えて症状の変動性や40 歳以前の喘息の既往などの臨床的特徴があれば喘

息・COPD オーバーラップ (ACO) と判断され,吸入ステロイド薬 (ICS) 投与を中心とする喘息の治療が必要である. ●ACO の診断にいたらなくても,FeNO の上昇や喀痰・血中好酸球の増多があれば喘息様の病態合併を想定

して吸入ステロイド薬投与を考慮する根拠になりうる. ●タイプ2 炎症の存在は抗炎症治療の介入に対する反応性を予測する “Treatable traits” と捉えるべきである.

1.喘息とCOPD のオーバーラップ (ACO)

慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive pulmonary disease:COPD) はタバコ煙をはじめとする有害物質の長期にわたる吸入によって起こる疾患であり,気管支喘息とは異なる疾患概念である.しかし,COPD は臨床像の多様性を特徴とし,喀痰中の好酸球高値やタイプ2 炎症関連の遺伝子発現増強など,喘息病態の合併を示唆する検査所見が得られることがまれではない.疫学調査によるとCOPD と喘息はそれぞれの有病率から予想されるより高頻度に合併し,相互の影響ないし共通の発生病理が推測されている1).Global Initiative for Asthma (GINA) は2014 年にAsthma and COPD Overlap Syndrome (ACOS) という概念を提唱し (のちにsyndrome という表現は不適切としてACO と改名,図1),本邦では2018 年に 『喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018』 が作成された2).こうした合併例で診断を喘息あるいはCOPD のいずれかに限定してしまえば,治療目標の設定や薬剤選択が不適切になる危険性がある.たとえば,診断をCOPD のみと考えていれば,合併した喘息病態に吸入ステロイド薬が投与されないままになるリスクが生じる.逆に喘息患者でCOPD の合併が考慮されなければ,肺合併症や全身併存症のチェックやリハビリテーションが十分に行われないまま,いたずらに高用量の吸入ステロイド薬に晒されることになるかもしれない.ACO を独立した疾患と考えるべきか否かには議論もあるが,臨床的な意義は大きい.日本呼吸器学会のACO の手引きに記載された診断基準は,わが国の恵まれた医療環境を反映して適度に検査所見を取り入れたものである.ただし使用にあたっては,限界を理解し杓子定規に適用しない姿勢が求められる.図2 の診断手順は喘息とCOPD の要素がどの程度あるかを確認するためのもので,鑑別診断を目的としたものではない.

ポイント
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3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

ACO COPD喘息

喘息の特徴とCOPDの特徴を併せ持つ病態を,喘息とCOPDのオーバーラップ(asthma and COPD overlap:ACO)と呼称する

ACOの概念図

図1 ACO の概念図

ACO:asthma and COPD overlap (日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap: ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会 (編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社, 2018. 2)より引用)

ACO

気管支拡張薬投与後一秒率70 %未満

40歳以上で咳,痰,息切れなどの呼吸器症状あるいは一秒率70 %未満

胸部単純X線などによる他疾患除外

【喘息の特徴】

以下の1,2,3の2項目あるいは1,2,3のいずれか1項目と4 の2項目以上あてはまる. 1. 変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 2. 40歳以前の喘息の既往3. 呼気一酸化窒素(FeNO)>35 ppb 4-1) 通年性アレルギー性鼻炎の合併-2) 気道可逆性(FEV1>12 %かつ>200mLの変化) -3) 末梢血好酸球数>5%あるいは>300/μL -4) IgE高値(総IgEあるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE)

【COPDの特徴】

以下の1,2,3の1項目があてはまる. 1. 喫煙歴(10pack/year以上)あるいは同程度の大気汚染曝露2. 胸部CTにおける気腫性変化を示す低吸収領域の存在3. 肺拡散能障害(DLco<80%あるいはDLco/VA<80%)

鑑別すべき疾患を否定したうえで,気管支拡張薬投与後の一秒率<70%の場合には, COPDの特徴と喘息の特徴をチェックする

ACOの診断手順(初診の患者)

図2 初診時のACO の診断手順

(日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会 (編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap: ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,2018. 2)より引用)
p.89
2.治療薬選択におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの意義

COPD では吸入ステロイド薬に伴う肺炎リスクが懸念されるため投与には指針が必要であり,タイプ2 炎症バイオマーカーが陽性の場合には吸入ステロイド薬の効果が期待できる.したがって,ACO と診断するか否かにかかわらず,治療方針決定のために少なくとも一度はタイプ2 炎症バイオマーカーを評価するべきであり,増悪を繰り返す場合には再評価も考慮したい.喀痰中の好酸球は気道局所の炎症病態を反映する直接的な指標であるが,実施できる施設は限られる.血中好酸球は喀痰中好酸球とある程度相関を示し,測定も容易であるため近年注目されている.ただし血中好酸球数は健康者と喘息,COPD 患者との間にかなりのオーバーラップがあり特異度が低く3),個人差も大きい.あらかじめ各個人の安定期の状態を把握しておき症状悪化時に比較できるようにしたい.呼気NO 濃度 (FeNO) は特異度がより高いが専用の測定機器が必要で,アレルギー性鼻炎や喫煙,吸入ステロイド薬などの治療薬による影響に注意が必要である.COPD 患者においてFeNO は換気障害の程度も影響しうるとの報告もあり,血中好酸球数との相関は高くない4).気道炎症の把握には複数の指標の評価が必要で,IgE で評価されるアトピー素因も診断時には評価しておきたい.COPD単独でもタイプ2 炎症を示すことがあるのか,タイプ2 炎症を示唆する検査所見があれば相応の病歴や変動性の大きい症状がなくてもACO とみなすのかは,疾患単位をどう捉えるかという,やや恣意的な問題ともいえる.将来,病態に本質的にかかわる因子の解明が進めば対応するバイオマーカーが決定されて疾患分類が変更される可能性もある.当面は疾患名にこだわらず,治療薬選択の参考とするtreatable traits と考えておくべきであろう5).文献

1)日本呼吸器学会COPD ガイドライン第6 版作成委員会 (編).COPD (慢性閉塞性肺疾患) 診断と治療のためのガイドライン2022〔第6 版〕,メディカルレビュー社,2022. 2)日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,2018. 3)Benson VS, et al. Blood eosinophil counts in the general population and airways disease: a comprehensive review and meta‐ analysis. Eur Respir Dis 2022; 59: 2004590. 4)Liu X, et al. Fractional exhaled nitric oxide is associated with the severity of stable COPD. COPD 2020; 17: 121‐127. 5)David B, et al. Eosinophilic inflammation in COPD: from an inflammatory marker to a treatable trait. Thorax 2021; 76: 188‐ 195.
p.90
B.診断における意義

1.診断基準の変遷

前述したようにACO は2014 年のGINA で新たな疾患概念として提唱されたが,診断法として症候学的診断が重視された.すなわち,発症年齢,症状のパターン,呼吸機能,非増悪時の呼吸機能,既往歴・家族歴,臨床経過および胸部X 線の診断項目からなり,喘息とCOPD の特徴を同時に有し,スパイロメトリーにより,閉塞性換気障害を認める場合にACO と診断する,というものであった1).一方,Sin らのラウンドテーブル・ディスカッションによる診断基準では,スパイロメトリーによる閉塞性換気障害,喫煙歴,40 歳以下での喘息の診断歴もしくは気管支拡張薬による400 mL 以上の気道可逆性 (大基準) のすべてを満たし,かつ,アトピーの既往もしくはアレルギー性鼻炎の合併,200mL 以上かつ12%以上の気道可逆性を2 回以上認める,血中好酸球数が300/μL 以上,の3 つの小基準うち少なくとも1 つを満たした場合にACO と診断するとしている2).いずれの診断基準も,喘息とCOPD の特徴を勘案した優れた診断基準であったが,客観的指標が少ない点が短所である.正確にACO を診断するためには,CT やFeNO などの指標を加味したほうが好ましく,またわが国の高い医療水準からCT 検査やFeNO は比較的容易に行いうる,との立場から,表1 に示す診断基準が『喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018』で採用され,現在にいたっている3).日常臨床において初診時にACO を診断する際の手順を示す3) (前項図2 参照).

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

表1 Asthma and COPD オーバーラップ(ACO)の診断基準40 歳以上で,気管支拡張薬吸入後の一秒率<70%であり,COPD の特徴と喘息の特徴を有する

基本的事項

40 歳以上,慢性気流閉塞:気管支拡張薬吸入後1 秒率(FEV1/FVC)が70%未満

【COPD の特徴】1,2,3 の1 項目【喘息の特徴】1,2,3 の2 項目あるいは1,2,3 の1 項目と4 の2 項目以上

1.喫煙歴(10 pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染曝露2.胸部CT における気腫性変化を示す低吸収域の存在3.肺拡散能障害(%DLco <80%あるいは%DLco/VA <80%) 1.変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 2.40 歳以前の喘息の既往3.呼気NO 濃度>35 ppb 4- 1)通年性アレルギー性鼻炎の合併-2)気道可逆性(FEV1 >12%かつ>200 mL の変化) -3)末梢血好酸球>5%あるいは>300/μL -4)IgE 高値(総IgE あるいは通年性吸入抗原に対する

特異的IgE 陽性)

(日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,

2018 8) より引用)
p.91
2.ACO の診断基準とバイオマーカー

ACO を診断する際は,表1 に示す診断項目を念頭に問診や呼吸機能検査を行うことで診断する.基本的事項として40 歳以上で慢性の気流閉塞を認めることを確認し,COPD の特徴として,表1 に示す1~3 項目中のうち1 項目,喘息の特徴として1~3 項目のうち2 項目あるいは1~3 のいずれか1 項目と4 の2 項目以上を認める際にACO と診断する.次に各診断項目について解説する. A.COPD の特徴

1) 喫煙歴あるいは同程度の大気汚染曝露

COPD 発症の最も重要な危険因子であり,前述したGINA の症候学的診断やSin らの基準でも採用され,世界的にも広く認められている. 2) 胸部CT における気腫性変化

本邦では広く普及している画像検査であり,CT 上,low attenuation area (LAA) の存在は,気腫性変化の存在を示唆する.他国の診断基準では採用されておらず,わが国の高い医療水準を反映した診断項目である. 3) 肺拡散能障害

COPD においては,肺胞壁破壊により拡散面積が減少し,それに伴い肺毛細血管床も減少するため肺拡散能が低下する.先のGINA のステートメントにおいてもCOPD の指標として用いられている. B.喘息の特徴

1) 変動性あるいは発作性の呼吸器症状『喘息予防・管理ガイドライン2021』 においても喘息診断の目安として含まれており,とりわけ喘息特有の変動性を持った呼吸器症状は診断に重要である.『喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Over‐ lap:ACO) 診断と治療の手引き2018』 では,咳,痰,呼吸困難が重視されている3). 2) 40 歳以前の喘息の既往

本項目は,スペインのACO の診断基準4)やSin らの基準2),ECLIPSE 研究におけるACO の基準5)でも用いられている.以前の報告では,COPD 患者のなかで40 歳以前の喘息の既往がある患者では,気道可逆性を有する患者が多い,血中好酸球数が高値,といった喘息の病像に近い所見が得られている6).また,前述したECLIPSE 研究の解析でも,40 歳以前の喘息の既往がある患者ではより喘息の特徴を有する割合が高いことが報告されている3, 5). 3) FeNO 測定値が35ppb 以上の高値

NO はIL‐4,IL‐13 の刺激により誘導される誘導型NO 合成酵素 (iNOS) から産生されるガス状分子で喘息患者の気道で高値であり,COPD 患者では上昇しないことが以前より知られている7).またFeNO は気道の好酸球性炎症とも関連することが報告されている8).本邦における成人健常者のFeNO の正常上限値が37 ppbであることから35ppb 以上を喘息病態ありと考え,臨床運用することは妥当と考えられる3, 9).現在,全国2,000 施設以上でFeNO の測定が可能である.FeNO は侵襲性が低く,高再現性かつ短時間で測定可能な利点を有し,優れたタイプ2 炎症バイオマーカーである. 4) 通年性アレルギー性鼻炎の合併

喘息患者の約60%にアレルギー性鼻炎が合併することはよく知られており,前述したGINA のステートメントやSin らの基準でも用いられている. 5) 気道可逆性『喘息予防・管理ガイドライン2021』 における喘息診断の目安のひとつであり,前述したGINA のステートメントやSin らの基準でも用いられている.
p.92
6) 血中好酸球増多

喘息患者において血中好酸球増多はよくみられる所見である.またCOPD 患者において血中好酸球増多は気道の好酸球性炎症の程度と相関することが報告されている10).さらに血中好酸球数高値のCOPD 患者において吸入ステロイド薬を含む気管支拡張薬配合剤の有効性が高いことは数多くの研究で明らかになっている3).本邦の手引きにおける好酸球数のカットオフ値としては吸入ステロイド薬を含む配合剤の有効性を検討した多くの後ろ向き研究の結果から,>5%あるいは>300/μL が用いられている3). 7) IgE 高値『喘息予防・管理ガイドライン2021』 における喘息診断の目安のひとつであり,代表的なタイプ2 炎症のバイオマーカーである.IgE 高値は喘息の有病率や気道過敏性と関連することは以前からよく知られている3).

3.COPD におけるタイプ2 炎症

COPD 患者の気道においてタイプ2 炎症が生じる機序は完全には解明されていない.近年の疫学研究ではCOPD の発症要因として肺の低成長の関与が提唱され11),小児期の喘息が肺の低成長を招き,将来のCOPD発症リスクになることが示された12).COPD におけるタイプ2 炎症の存在は,このようなCOPD 発症の多様性に起因するのかもしれない.最近,ACO 患者の気道ではニトロ化ストレスが存在し,呼吸機能の経年低下や増悪頻度と関連することが報告された13).臨床的にCOPD が疑われる症例においても治療方針を決定する際には少なくとも一度はタイプ2 炎症バイオマーカーを評価することが有用と考えられる.さらに近年では,喘息,COPD,ACO はいずれも多様な表現型を有する疾患であることから,診断名にとらわれず,病態にかかわる分子学的特徴を指標として治療すべきであるという “Treatable traits” の概念が提唱されている.今後,この観点から病像を理解することが重要になると考えられ,本邦においてもTreatable traits を明らかにする大規模コホート研究が開始されている14).文献

1)Global Initiative for Asthma. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Diagnosis of Diseases of Chronic Air‐ flow Limitation.: Asthma, COPD, and Asthma‐COPD Overlap Syndrome (ACOS). 2015. http://goldcopd.org/asthma‐copd‐overlap‐syndrome/(2015 年閲覧) 2)Sin DD, et al. What is asthma‐COPD overlap syndrome? towards a consensus definition from a round table discussion. Eur Respir J 2016; 48: 664‐673. 3)日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,2018: p.1‐104. 4)Soler‐Cataluña JJ, et al. Consensus document on the overlap phenotype COPD‐asthma in COPD. Arch Bronconeumol 2012; 48: 331‐337. 5)Wurst KE, et al. A comparison of COPD patients with and without ACOS in the ECLIPSE study. Eur Respir J 2016; 47: 1559‐ 1562. 6)Barrecheguren M, et al. Is a previous diagnosis of asthma a reliable criterion for asthma‐COPD overlap syndrome in a patient with COPD? Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2015; 10: 1745‐1752. 7)Ichinose M, et al. Increase in reactive nitrogen species production in chronic obstructive pulmonary disease airways. Am J Respir Crit Care Med 2000; 162 (2 Pt 1): 701‐706. 8)呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック作成委員会,日本呼吸器学会肺生理専門委員会 (編).呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック,日本呼吸器学会,メディカルレビュー社,2018: p.1‐66. 9)Matsunaga K, et al. Reference ranges for exhaled nitric oxide fraction in healthy Japanese adult population. Allergol Int 2010; 59: 363‐367. 10)Eltboli O, et al. Relationship between blood and bronchial submucosal eosinophilia and reticular basement membrane thickening in chronic obstructive pulmonary disease. Respirology 2015; 20: 667‐670. 11)Lange P, et al. Lung‐function trajectories leading to chronic obstructive pulmonary disease. N Engl J Med 2015; 373: 111‐ 122. 12)McGeachie MJ, et al. Patterns of growth and decline in lung function in persistent childhood asthma. N Engl J Med 2016; 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
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p.94
C.治療の選択とモニタリング

COPD におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの測定は喘息ほど一般的ではない.しかし,喘息とCOPD のオーバーラップ (ACO) が提唱されて以来,COPD の日常診療においてもタイプ2 気道炎症を評価することの意義が多くの研究で確認されてきた.臨床的にCOPD と診断されている場合でも,血中好酸球数,呼気NO濃度 (FeNO),血清IgE の測定はACO の診断確定にはいたらずとも喘息病態の評価に有用である.したがって,COPD と診断した場合でも,経過中に少なくとも一度はこれらのバイオマーカーを測定する意義がある.気管支拡張薬による治療を開始したあとでも症状や増悪が持続する場合,吸入ステロイド薬の併用を判断するためにもタイプ2 炎症バイオマーカーの測定を含む喘息病態の評価は重要である.COPD における好酸球, FeNO,IgE の測定意義と結果の解釈について概説する.

1.COPD と好酸球

好酸球は喘息の慢性気道炎症において中心的な役割を担っているが,COPD においても好酸球測定はステロイド反応性の予測に極めて有用と考えられる.副腎皮質ステロイド薬は好酸球のアポトーシスを誘導するため,喀痰や血液中の好酸球が増加しているCOPD 患者では,ステロイド反応性が良好である.実際,COPD単独と比較してACO では吸入ステロイド薬の反応性が良好であることが示されている1).ACO の予後は喘息やCOPD よりも不良であることが注目されてきたが2),ACO に対しても吸入ステロイド薬を含む治療を適切に行えば,必ずしも予後は悪くないという報告が相次いでいる3).北海道COPD コホート研究の結果では, COPD 患者のなかでも気道可逆性,血中好酸球数増多,アトピー素因のうち,いずれかの喘息病態を合併する症例では一秒量の経年低下量が少なく,10 年後の生存率が良好であることが報告されている4).したがって, COPD における好酸球の測定は喘息病態の評価やACO の診断ならびに治療薬の選択に極めて重要である (1 章の表1・図2 参照) 5).

2.喀痰中好酸球

喀痰中好酸球比率は自然喀出痰もしくは3~5%の高張食塩水による誘発喀痰で採取した検体の細胞成分で評価する.ACO ではないCOPD 患者でも,喀痰中好酸球比率が健常者よりも高く,喘息と同様に3%を超える症例が20~40%程度存在する6).喀痰中好酸球比率と呼吸機能との関連については必ずしも一貫した報告がない.しかしながら,喀痰中好酸球はステロイド反応性の予測に有用であり,喀痰中好酸球比率が3%以上の場合にはステロイド薬の効果が高いことが報告されている6).また,喀痰中好酸球比率が3%以上の場合は,吸入ステロイド薬を中止することにより増悪の発症率が高くなるために注意を要する. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.95
3.血中好酸球

喘息のみならず,COPD 患者においても血中好酸球と喀痰中好酸球には関連があることが報告されており,血中好酸球比率3%は喀痰中好酸球比率2%に相当する7).血中好酸球比率が2%以上のCOPD 患者は半数以上存在し,複数回の検査で常に2%以上の患者も約40%存在することが報告されている8).さらにCOPD 患者において,血中好酸球数は気道粘膜下好酸球数や基底膜肥厚と有意な相関があり,血中好酸球数が多いほどステロイド薬への反応性が良好であり,増悪リスクは高くなることが報告されている9).

COPD 治療薬の介入試験において,吸入ステロイド薬 (ICS)/長時間作用性吸入β2 刺激薬 (LABA) とLABA 単剤との比較では,3 つの試験を統合した解析において,血中好酸球数が多いほどICS の気管支拡張効果および増悪抑制効果が高かった10).ICS/LABA+長時間作用性吸入抗コリン薬 (LAMA) 吸入中のCOPD患者において,ICS を減量中止しても増悪頻度の増加は認めなかったが,ICS 中止群で呼吸機能の低下が観察された11).さらに,本研究の後解析において血中好酸球数が400/μL 以上の患者集団では,ICS 継続群のほうがより増悪頻度が少なかったことが報告されている12).近年, ICS/LABA/LAMA の3 剤配合剤が本邦でも使用されているが,その効果を検証した大規模臨床試験では, ICS/LABA/LAMA 群のほうが ICS/LABA 群やLAMA/LABA 群と比較して症状や気流制限の改善ならびに増悪抑制効果に優れることが示され,特に血中好酸球数が多いほどその効果が顕著になることが報告されている13, 14).ただし,これらの試験では現在の喘息合併は登録基準から除外してあるものの,ACO の要素である気道可逆性や血中好酸球数の増多を有する症例が含まれていることから結果の解釈には注意を要する.

4.FeNO

FeNO はタイプ2 気道炎症を捕捉する非侵襲的なバイオバーカーである.安定期COPD 患者におけるFeNOは健常者と明らかな差異を示さない15).むしろ,COPD と臨床診断されている患者でFeNO が上昇している場合には喘息病態を合併している可能性が高い.持続的にFeNO が高値であるCOPD 患者では増悪のリスクが高くなることが報告されており16),吸入ステロイド薬による呼吸機能や症状の改善,増悪抑制などの効果が期待される根拠となる.

気管支拡張薬による治療にもかかわらず息切れなどの呼吸器症状が持続する日本人COPD 患者を対象とした前向き介入試験において,吸入ステロイド薬追加投与による呼吸器症状 (CAT スコア) や一秒量の有意な改善を予測する指標としてFeNO (35ppb 以上) が同定された.一方で,FeNO 低値 (20ppb 以下) は吸入ステロイド薬の追加効果が乏しいことの目安になりうることが示された17).本邦の 『喘息とCOPD のオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018』 には,FeNO と血中好酸球,血清IgE が喘息病態を特徴づけるタイプ2 炎症バイオマーカーとして採用されている5).前述の介入試験ではFeNO に加え,血中好酸球数>300/μL および吸入抗原に対する特異的IgE 陽性が吸入ステロイド薬の追加効果を予測する指標として有用であることが報告されている (図1) 18).これらの日本人COPD 患者のデータは臨床的に重要で,治療選択の参考になりうる.

5.血清総IgE と抗原特異的IgE 抗体

血清総IgE 高値は小児喘息やアトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患の既往や合併を,また,種々の抗原に対する特異的IgE 抗体の存在はアトピー素因を示しており,咳嗽や喀痰,喘鳴,呼
p.96
吸困難などの呼吸器症状を呈する場合には喘息の可能性を示唆している.したがって,COPD におけるアトピー素因の存在は喘息合併を疑う特徴のひとつと考えられ,血清IgE の測定は治療選択や,アレルゲン回避の指導にも有用である.

血清総IgE 値は加齢とともに低下し,年齢以外にも性差や季節,生活環境など種々の因子の影響を受ける.特に,喫煙では血清総Ig 値が上昇することが知られており19),COPD 患者での評価に注意を要する.COPDやACO 診断を血清IgE だけで判定することは困難であるが,高い血清総IgE 値は喘息の合併を示唆する特徴であり,好酸球やFeNO など,他のタイプ2 炎症バイオマーカーと併せて総合的に評価する必要がある.環境抗原に対する特異的IgE 抗体の存在はアトピー素因の指標であり,北海道COPD コホート研究においても特異的IgE が喘息病態の指標に採用されている4).日本人COPD 患者を対象とした疫学調査では,IgE が高値を示す症例が35.7%,FeNO が高値を示す症例が16.3%,IgE とFeNO の双方が高値を示した症例が7.8%であったと報告されている20). 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

一秒量の変化量(平均,95%信頼区間)呼気NO濃度

<35ppb ≧35ppb (mL)

(point)

400 300

200 100

0 -100 p<0.001

40 265血中好酸球数

<300/μL ≧300/μL

p<0.05

60 150アトピー(特異的IgE)

陰性陽性

呼気NO濃度<35ppb ≧35ppb血中好酸球数

<300/μL ≧300/μLアトピー(特異的IgE)

陰性陽性

p<0.001 40 204

p<0.001

1

0 -1

-2

-3

-4

-5

-6 p=0.07 p<0.05

-0.8 -0.5

-4.4 -2.3 -0.6 -3.2

40 265 60 150 40 204

-0.8 -0.5

-4.4 -2.3 -0.6 -3.2

CATスコアの変化量(平均,95%信頼区間)

図1 COPD 患者におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの発現レベルと吸入ステロイ

ド薬追加投与による一秒量および症状 (CAT スコア) の変化量との関連性(Matsunaga K, et al. J Clin Med 2020; 9: 3078. 18)より作成)
p.97
COPD におけるタイプ2 炎症バイオマーカーの測定は喘息病態の評価,あるいは喘息を合併しているACO患者の診断に極めて重要であり,吸入ステロイド薬を選択する根拠となりうる.また,近年の臨床試験では, COPD に対する吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2 刺激薬/長時間作用性吸入抗コリン薬3 剤配合剤の有用性が示されており,安全かつ効果的に吸入ステロイド薬を使用するためにもバイオマーカー測定の重要性がさらに高まると考えられる.なお,COPD では吸入ステロイド薬の使用 (特に高用量) により肺炎リスクが上昇することが知られており,欧米人よりも高齢でBMI が低い傾向にある日本人COPD 患者では反復する呼吸器感染症や肺結核,肺非結核性抗酸菌症の合併に注意を払う必要がある.

本手引きでは,タイプ2 炎症バイオマーカー (血中好酸球数およびFeNO) と患者の病歴 (喘息の合併, COPD 増悪,感染症の懸念) を組み合わせた複合的な評価をCOPD 患者における吸入ステロイド薬使用の目安として参照することを提唱する (表1).バイオマーカーを解釈する際には測定値に影響しうる患者個別の因子(表2) を考慮することも重要である.文献

1)Kitaguchi Y, et al. Sputum eosinophilia can predict responsiveness to inhaled corticosteroid treatment in patients with over‐ lap syndrome of COPD and asthma. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2012; 7: 283‐289. 2)Silva GE, et al. Asthma as a risk factor for COPD in a longitudinal study. Chest 2004; 126: 59‐65. 3)Cosio BG, et al. Defining the asthma‐COPD overlap syndrome in a COPD cohort. Chest 2016; 49: 45‐52. 4)Suzuki M, et al. Asthma‐like features and clinical course of chronic obstructive pulmonary disease: an analysis from the Hokkaido COPD cohort study. Am J Respir Crit Care Med 2016; 194: 1358‐1365. 5)日本呼吸器学会 喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018 作成委員会

表1 タイプ 2 炎症バイオマーカーと病歴に基づいた吸入ステロイド薬使用の目安(COPD)血中好酸球数<100/μL 100~300/μL ≧300/μL呼気NO 濃度(FeNO) <20 ppb 20~35 ppb ≧35 ppb喘息合併を疑う病歴•変動性あるいは発作性の呼吸器症状• 40 歳以前の喘息既往△〇〇COPD 増悪歴•頻回に呼吸器症状の悪化に対する治療を強化(気管支拡張薬,抗菌薬,全身性ステロイド薬,喀痰調整薬など) × △〇感染症の懸念* •反復する呼吸器感染症•肺結核や肺非結核性抗酸菌症の合併× × △ ◯:吸入ステロイド薬の使用を推奨する△:吸入ステロイド薬の使用を考慮しうる×:吸入ステロイド薬の使用は避ける*:喘息を疑う病歴やCOPD 増悪歴を根拠に吸入ステロイド薬を使用する場合でも,感染症の懸念については慎重に経過観察する.呼吸器感染症を繰り返す場合には吸入ステロイド薬の中止,減量あるいは変更を考慮する.

表2 各バイオマーカーに影響する因子

喀痰中好酸球比率血中好酸球数呼気NO 濃度

(FeNO) IgE

基準値2~3% 300/μL 35 ppb施設基準値喫煙による影響一定せず不変低下上昇全身性ステロイド低下低下低下低下吸入ステロイド薬不変~低下不変低下不変
p.98
(編).喘息とCOPD のオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) 診断と治療の手引き2018,メディカルレビュー社,2018. 6)Leigh R, et al. Stable COPD: predicting benefit from high‐dose inhaled corticosteroid treatment. Eur Respir J 2006; 27: 964‐ 971. 7)Bafadhel M, et al. Acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: identification of biologic clusters and their biomarkers. Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 662‐671. 8)Singh D, et al. Eosinophilic inflammation in COPD: prevalence and clinical characteristics. Eur Respir J 2014; 44: 1697‐1700. 9)Hirano T, Matsunaga K. Measurement of blood eosinophils in asthma and chronic obstructive pulmonary disease. Intern Med 2022 Apr 16. doi: 10.2169/internalmedicine.9339‐22. Online ahead of print. 10)Bafadhel M, et al. Predictors of exacerbation risk and response to budesonide in patients with chronic obstructive pul‐ monary disease: a post‐hoc analysis of three randomised trials. Lancet Respir Med 2018; 6: 117‐126. 11)Magnussen H, et al. Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD. N Engl J Med 2014; 371: 1285‐1294. 12)Watz H, et al. Blood eosinophil count and exacerbations in severe chronic obstructive pulmonary disease after withdrawal of inhaled corticosteroids: a post‐hoc analysis of the WISDOM trial. Lancet Respir Med 2016; 4: 390‐398. 13)Pascoe S, et al. Blood eosinophils and treatment response with triple and dual combination therapy in chronic obstructive pulmonary disease: analysis of the IMPACTtrial. Lancet Respir Med 2019; 7: 745‐756. 14)Ferguson GT, et al. Triple therapy with budesonide/glycopyrrolate/formoterol fumarate with co‐suspension delivery tech‐ nology versus dual therapies in chronic obstructive pulmonary disease (KRONOS): a double‐blind, parallel‐group, multi‐ centre, phase 3 randomised controlled trial. Lancet Respir Med 2018; 6: 747‐758. 15)Ichinose M, et al. Increase in reactive nitrogen species production in chronic obstructive pulmonary disease airways. Am J Respir Crit Care Med 2000; 162 (2 Pt 1): 701‐706. 16)Alcázar‐Navarrete B, et al. Persistently elevated exhaled nitric oxide fraction is associated with increased risk of exacerba‐ tion in COPD. Eur Respir J 2018; 51: 1701457. 17)Yamaji Y, et al. Detection of type2 biomarkers for response in COPD. J Breath Res 2020; 14: 026007. 18)Matsunaga K, et al. Comorbid conditions in chronic obstructive pulmonary disease: potential therapeutic targets for unmet needs. J Clin Med 2020; 9: 3078. 19)Omenaas E, et al. Total and specific serum IgE levels in adults: relationship to sex, age and environmental factors. Clin Exp Allergy 1994; 24: 530‐539. 20)Tamada T, et al. Biomarker‐based detection of asthma‐COPD overlap syndrome in COPD populations. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2015; 10: 2169‐2176.

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.99
4 びまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患

A.総論

●好酸球性肺炎ではFeNO が他の間質性肺疾患との鑑別に有用な可能性が示されている. ●好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA),NSAIDs 過敏喘息 (N-ERD),アレルギー性気管支肺アスペルギル

ス症/真菌症 (ABPA/M) は喘息診療において難治性の場合や血中好酸球増多を認める場合には念頭に置くべき疾患である. ●ABPA/M ではI型アレルギーを反映する血清総IgE や真菌特異的IgE 抗体がその診断や治療効果の判定に

有用である. ●FeNO の高値や血中好酸球増多が持続する喘息患者では,アレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎の合併を考

慮する.

喘息やCOPD 以外の好酸球浸潤を伴う炎症性肺疾患およびアレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎などにおいてもタイプ2 炎症バイオマーカーの測定は有用である.主に診断および治療反応性の指標として用いられるが,エビデンスは小規模で横断的検討によるものが多い.現状におけるびまん性肺疾患とその他の気道・肺疾患における主なタイプ2 炎症バイオマーカーを表1 に示す1).

ポイント

表1 各疾患におけるタイプ2 炎症バイオマーカー発現の比較

末梢血好酸球IgE FeNO CANO鼻腔NO尿中ロイコトリエン

特発性肺線維症(IPF) N.A. N.A. ↑ or ↓ ↑ N.A. N.A.強皮症に伴う間質性肺疾患N.A. N.A. ↑ or ↓ ↑ N.A. N.A.好酸球性肺炎↑↑↑ N.A. ↑ ↑↑ N.A. N.A.閉塞性細気管支炎症候群(BOS) → or ↑ N.A. → or ↑ N.A. N.A. N.A.アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM) ↑↑↑ ↑↑ ↑ N.A. N.A. N.A.好酸球性多発血管性肉芽腫症(EGPA) ↑↑↑ → or ↑ ↑ N.A. N.A. ↑↑ NSAIDs 過敏喘息(N-ERD) ↑ → or ↑ ↑ N.A. N.A. ↑↑↑アレルギー性鼻炎→ or ↑ ↑↑ → or ↑ N.A. ↑ N.A.好酸球性慢性副鼻腔炎(ECRS) ↑ ↑ ↑ N.A. ↑ or ↓ ↑ FeNO:呼気一酸化窒素,CANO:呼気中NO 肺胞成分
p.100
1.びまん性肺疾患

びまん性の間質性肺疾患では主に特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis:IPF) や全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 (systemic sclerosis with interstitial lung disease:SSc‐ILD),好酸球性肺炎において呼気NO濃度 (FeNO) および呼気中NO 肺胞成分 (alveolar concentration of NO:CANO) に関する検討がある2). FeNO は好酸球性肺炎で増加するが,IPF やSSc‐ILD では結果が一貫していない.CANO は各間質性肺疾患で増加し,その疾患活動性を反映する可能性がある.好酸球性肺炎ではIPF や過敏性肺臓炎などよりもFeNOやCANO が高く,他のびまん性肺疾患との鑑別における有用性が示されている3, 4).肺移植や骨髄移植などの移植医療に伴う移植片対宿主病 (graft versus host diseases:GVHD) の一病型である閉塞性細気管支炎症候群(bronchiolitis obliterans syndrome:BOS) の病態にもタイプ2 炎症の関与が示唆されている.血中好酸球やFeNO の上昇がBOS の発症や病態進行と関連する報告があり,移植後のモニタリング指標としての有用性が期待されている.

2.EGPA,N-ERD,ABPA/M

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症 (allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycosis: ABPA/M) や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA), NSAIDs 過敏喘息 (non‐steroidal anti‐inflammatory drugs‐exacerbated respiratory disease:N‐ERD) は喘息患者において難治性の場合や血中好酸球増多を認める場合には念頭に置く必要がある.各疾患でFeNO の増加が示され,ABPA/M ではI型アレルギーを反映する総IgE や真菌特異的IgE がその診断や治療効果の判定に有用である.EGPA では血中好酸球の著明な増加を特徴とし,診断基準に血清総IgE とともに含まれる. N‐ERD ではアラキドン酸代謝産物の炎症性メディエーターと抗炎症性メディエーターの不均衡を反映したシスティニルロイコトリエン (cysLT) が尿中で増加し,生物学的製剤などによる治療反応性を反映することが報告されている5).

3.アレルギー性鼻炎,花粉症,ECRS

アレルギー性鼻炎や好酸球性慢性副鼻腔炎 (eosinophilic chronic rhinosinusitis:ECRS) などのタイプ2 炎症を伴う上気道疾患は,鼻腔呼気NO の上昇だけではなく,下気道のタイプ2 炎症の指標であるFeNO にも影響を及ぼすことが知られている.鼻炎や副鼻腔炎の患者では喘息の有無にかかわらず,下気道にCD4+リンパ球や好酸球などの炎症細胞浸潤が認められ,FeNO の上昇はこの気道炎症を鋭敏に反映していると考えられる2).

喘息管理中にFeNO が高値で持続する場合にはアレルギー性鼻炎やECRS の合併を疑うべきであり,逆に,上気道疾患患者でFeNO が上昇している場合には喘息などのタイプ2 炎症を特徴とする下気道疾患の存在に注意を払う必要がある.なお,鼻腔呼気NO は鼻閉が強い場合には鼻腔内のNO が排泄されず低値を示すため,常に上気道の炎症状態を反映するわけではない.血中好酸球数は上気道疾患においてもタイプ2 炎症を伴う場合に上昇することが多く,ECRS ではその診断基準に含まれる6).また,鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎では血中好酸球数が高値である症例においてIL‐5 に対する生物学的製剤の有効性が報告されており7, 8),血中好酸球数が治療効果の予測指標となる可能性がある. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.101
付記

1) 呼気中NO 肺胞成分 (alveolar concentration of NO:CANO) 2)

呼気中NO 肺胞成分 (CANO) は複数の呼気流速 (100mL/秒,150mL/秒,200mL/秒など) のもとで測定された呼気NO 値からモデル式を用いて算出される.主なモデルとして時間あたりに呼出されるNO の量は末梢にやや広がりのある筒状を呈する気道由来のNO と,容量可変性のある末梢気道・肺胞領域由来のNO からなると仮定するtwo compartment model が提唱されている.最も代表的な算出モデルとしてTsoukuas らのモデルがあり (図1) 9, 10),単位時間あたりに呼出されるNO 量 (q・,nL/秒) は呼気NO 値×呼気流速 (V・,mL/秒) で示されるが,two compartment model に基づくとq・は気道壁由来のNO (J’awNO,nL/秒) と肺胞領域で産生されるNO 量の和である.J’awNO は呼気流速が100 mL/秒以上の場合,その最大値であるJ’awNO で平衡に達する.また肺胞領域で単位時間あたりに産生されるNO 量はCANO とV・の積であるため,高い呼気流速のもとでは,

q・=J’awNO+CANO×V・の式が成り立つ.CANO は100mL/秒以上の複数の流速下で呼気NO 値を測定し,V・をX 軸に,q・をY 軸にとってプロットし,近似直線を求めれば算出できる.直線の傾きがCANO で,その切片がJ’awNO に相当する.50 mL/秒の流速で測定したFeNO の50%以上は中枢気道壁由来のNO を反映し,J’awNO と強い相関がある.

その他,two compartment model には気道壁と気腔由来のNO の濃度勾配を加味した非線形回帰式を用いたSilkoff らのモデルなどが提唱されている.また,two compartment model はシンプルで理解しやすいが,末梢気道領域のトランペット構造や長軸方向の拡散であるback diffusion が考慮されていない欠点があるため,トランペット型拡散モデルが提唱された (図2) 11).Weibel の第14~16 次気道以遠でのガス運搬は対流よりも拡散による運搬が優位になるため,気道壁由来のNO の一部は口側に向かわず,拡散により末梢気腔に運搬されうるため,two compartment model で求めたCANO には気道壁由来のNO が混入し,見かけ上高く算出されている可能性を考慮している.

気道壁から産生されるNO量/秒J’awNO = J’awNO(nL/秒),高呼気流速時

肺胞領域から産生されるNO量/秒CANO × V呼出NO量/秒=FeNO × V (nL/秒)

q(呼出NO量)

q =J’awNO +CANO × V

(高呼気流速時)

呼気流速(V) 0 0.2 0.4 0.6(L/秒)

J’awNO・・

・

・・

・

図1 Two compartment model とCANO 算出法

CANO:呼気中NO 肺胞成分,FeNO:50 mL/秒の呼気流速で測定された呼気NO 濃度,J’awNO:気道壁由来のNO (呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック作成委員会,日本呼吸器学会肺生理専門委員会 (編).呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック,日本呼吸器学会,メディカルレビュー社,2018: p.56. 2)より引用)
p.102
なお,据え置き型NO 測定機器では抵抗を変えることで複数の呼気流速下で測定し,CANO を算出することができるが,携帯測定機器であるNIOX VERO,NO breath では50mL/秒の呼気流速に限定されるためCANO の算出はできない.文献

1)Asano K, et al. Adult‐onset eosinophilic airway diseases. Allergy 2020; 75: 3087‐3099. 2)呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック作成委員会,日本呼吸器学会肺生理専門委員会 (編).呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック,日本呼吸器学会,メディカルレビュー社,2018. 3)Furukawa K, et al. Increase of nitrosative stress in patients with eosinophilic pneumonia. Respir Res 2011; 12: 81. 4)Oishi K, et al. Exhaled nitric oxide measurements in patients with acute‐onset interstitial lung disease. J Breath Res 2017; 11: 036001. 5)Hayashi H, et al. Omalizumab for aspirin hypersensitivity and leukotriene overproduction in aspirin‐exacerbated respirato‐ ry disease: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2020; 201: 1488‐1498. 6)藤枝重治ほか.好酸球性副鼻腔炎 (JESREC Study).アレルギー 2015; 64: 38‐45. 7)Bachert C, et al. Efficacy and safety of benralizumab in chronic rhinosinusitis with nasal polyps: a randomized, placebo‐con‐ trolled trial. J Allergy Clin Immunol 2022; 149: 1309‐1317.e12. 8)Han JK, et al. Mepolizumab for chronic rhinosinusitis with nasal polyps (SYNAPSE): a randomised, double‐blind, placebo‐ controlled, phase 3 trial. Lancet Respir Med 2021; 9: 1141‐1153. 9)Tsoukias NM, et al. A single‐breath technique with variable flow rate to characterize nitric oxide exchange dynamics in the lungs. J Appl Physiol (1985) 2001; 91: 477‐487. 10)Silkoff PE, et al. Airway nitric oxide diffusion in asthma: role in pulmonary function and bronchial responsiveness. Am J Respir Crit Care Med 2000; 161 (4 Pt 1): 1218‐1228. 11)Condorelli P, et al. A simple technique to characterize proximal and peripheral nitric oxide exchange using constant flow exhalations and an axial diffusion model. J Appl Physiol (1985) 2007; 102: 417‐425. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

respiratory bronchiole

第17次気道

small conductive airways (第14~16次気道)

J’awNO

CANO×V

= FeNO × V

axial back diffusion

・CANO×V・・

図2 トランペット型拡散モデル

CANO:FeNO 肺胞成分,FeNO:50 mL/秒の呼気流速で測定された呼気NO 濃度,J’awNO:気道壁由来のNO,q:呼出NO 量,V:呼気流速(呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック作成委員会,日本呼吸器学会肺生理専門委員会 (編).呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック,日本呼吸器学会,メディカルレビュー社,2018: p.56. 2)より引用)
p.103
B.びまん性肺疾患

びまん性肺疾患とは,両側肺野に病変が広がる様々な肺疾患の総称で,病因や病態は多岐にわたる.また,主に肺の間質を炎症や線維化病変の場とする疾患を間質性肺炎と呼び,間質性肺炎には膠原病に合併する間質性肺炎,過敏性肺臓炎,薬剤性肺炎,じん肺といった原因が明らかな二次性の間質性肺炎と,特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis:IPF) をはじめとする原因不明の特発性間質性肺炎に分類される.

びまん性肺疾患を対象としたタイプ2 炎症バイオマーカーの研究には,IPF,強皮症に伴う間質性肺疾患,好酸球性肺炎,閉塞性細気管支炎症候群においてFeNO や呼気中NO 肺胞成分 (alveolar concentration of NO:CANO) と,診断,病勢モニタリング,予後との関連を検討した報告がある.

1.特発性肺線維症 (IPF)

特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の原因は不明であるが,種々の外的,あるいは内的刺激により肺胞上皮または基底膜が傷害され,その修復過程における線維芽細胞,筋線維芽細胞の増殖,細胞外基質の過剰産生により肺構造が破壊され,線維化が進行することにより機能障害が引き起こされる.IPF では肺胞マクロファージなどの炎症細胞や肺胞上皮細胞において誘導型NO 合成酵素 (inducible nitric oxide synthase:iNOS) の発現増加が認められる.iNOS 由来のNO は炎症の場で産生されたスーパーオキサイド(O2 -) と反応し,より反応性の高い活性窒素種であるパーオキシナイト (ONOO-) を生成するが,その生成を反映する3‐ニトロチロシン (3‐nitrotyrosine:3‐NT) の発現がIPF では増加しており,オキシダントによる組織障害の関与が報告されている.Saleh らは肺移植や病理診断のための開胸肺生検で摘出されたIPF 患者の肺を用いて,iNOS,血管内皮型NO 合成酵素 (endothelial nitric oxide synthase:eNOS),3‐NT の発現を比較検討している1).対照となる健常者肺では,iNOS,eNOS,3‐NT の発現がほとんど認められなかったのに対し,初期から中期のIPF 肺では炎症細胞と肺胞上皮細胞で発現が増強していた.終末期のIPF 肺ではいずれの発現も減弱していた.以上より,IPF では活動性や病期に応じてNO およびONOO-の産生が増加しており,IPF の細胞障害やリモデリングなどの病態に活性窒素種が関与している可能性が示されている.

しかしながら,IPF 患者におけるFeNO を検討した研究では,健常者と比較して高値であったという結果や低値であったという結果が混在しており,一定の見解は得られてない.一方,CANO に関しては健常者と比較してIPF 患者では有意に高値になるという報告が多い2~5).さらに,CANO の値は努力肺活量 (forced vital capacity:FVC) や肺拡散能 (diffusing capacity of lung for carbon monoxide:DLCO) と逆相関が認められたという複数の報告や2, 3, 5),6 分間歩行距離や酸素飽和度の回復時間と相関を認めたという報告がある5).また,CANO が高値のIPF 患者では,呼吸機能の悪化や死亡率が高いという報告もある2, 3, 6).これらのことから, IPF においてCANO が疾患進行のモニタリング指標として活用できる可能性があり,今後もさらなる研究が望まれる.
p.104
2.全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 (SSc-ILD)

全身性強皮症 (systemic sclerosis:SSc) は皮膚や内臓諸臓器の線維化,循環障害,自己抗体産生などの免疫異常を併せ持つ膠原病である.間質性肺疾患はSSc 患者の約60%に認め,SSc 関連死の35%を占める重要な合併症である.全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 (systemic sclerosis with interstitial lung disease:SSc‐ILD)の病因としてNO が重要な役割を果たしていることが近年明らかになりつつある.SSc マウスモデルでは肺線維化の前段階で肺胞マクロファージにおけるiNOS と3‐NT の発現が亢進していることが報告され7),NOがSSC‐ILD の発症に重要な役割を果たしていることが示唆されている.

これらの知見をもとにSSc‐ILD 患者でFeNO に関する研究が行われたが,患者背景や肺高血圧症などの併存疾患の影響もあってか一貫した結果は得られていない.一方,SSc‐ILD 患者におけるCANO については健常者や肺病変のないSSC 患者に比べて有意に高いことが複数の研究で報告されている8, 9).また,CANO はDLCO と逆相関するという報告や8),CANO が高値であった場合は将来の呼吸機能低下や死亡率と関連していたという結果も報告されている10).さらに,CANO 高値のSSc‐ILD 患者ではシクロホスファミドへの治療反応性が良好だったことも報告されている11).以上より,CANO はSSc‐ILD の重症度や予後予測,治療反応バイオマーカーとして有用である可能性が期待されている.

3.好酸球性肺炎

好酸球性肺炎の定義は,肺浸潤影をきたし気管支肺胞洗浄液や組織検査で肺への好酸球浸潤増加が証明されることであり,血中好酸球増加を伴う場合も伴わない場合もある.本項では,原因が明らかなものを除いた好酸球性肺疾患を狭義の好酸球性肺炎とし,発症形式により急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎とに分類する.気管支肺胞洗浄液 (bronchoalveolar lavage fluid:BALF) では炎症細胞の細胞分画で25%から40%以上の好酸球増多を認めることが必要とされるが,実臨床ではBALF 中での好酸球比率が少ない場合もしばしば経験し,その場合には肺生検による組織への好酸球浸潤の証明が診断に必要となる.また,発症早期に血中好酸球の上昇を認めない症例や呼吸不全のために気管支鏡検査による気道・肺局所の好酸球増加を証明することが困難な症例も存在する.そのため,気道や肺胞におけるタイプ2 炎症を捕捉するFeNO やCANOが好酸球性肺炎の補助診断として有用かどうかについてこれまで複数の研究が行われてきた.

大石らは,4 週間未満の経過でびまん性陰影を認めた急性発症の間質性肺疾患 40 例においてFeNO を測定したところ,急性好酸球性肺炎群のFeNO 中央値は48.1 ppb と他疾患 (特発性器質化肺炎,サルコイドーシス,過敏性肺臓炎) よりも有意に高値であることを報告した12).また,好酸球性肺炎を特定するためのFeNOのカットオフ値は23.4ppb (感度94%,特異度73%,AUC 0.90) であった.また,血中好酸球数低値の好酸球性肺炎でも他疾患と比較してFeNO は有意に高く,鑑別に有用であった (図1).FeNO は血中好酸球数にかかわらず急性発症間質性肺疾患のなかで好酸球性肺炎を鑑別する際の一助となりうる.

古川らは,喘息の既往のない慢性好酸球性肺炎13 例のFeNO は35.0 ppb であり,健常者 (17.8 ppb) やIPF患者 (20.8ppb) と比較して有意に高値であったことを報告した (図2) 13).また,CANO に関しても,慢性好酸球性肺炎では13.3ppb と,IPF (5.3ppb),健常者 (4.5 ppb) に比べ有意に増加していた.また,FeNO とCANO は,BALF 中細胞のiNOS や3‐NT 陽性細胞数との間に強い正の相関があることも報告している.中治らも慢性好酸球性肺炎の肺組織において好酸球性顆粒蛋白質であるmajor basic protein を貪食した肺胞マクロファージや好酸球がiNOS や3‐NT を発現する細胞であることを報告している14).また,CANO を評価できた症例では10.1ppb と健常者22 例での平均値 (3.7 ppb) に比べ高値であった.以上より,CANO は末梢気道・肺胞領域での好酸球性炎症を反映し,慢性好酸球性肺炎における窒素化ストレスの指標としての応用が3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.105
呼気NO濃度(FeNO)(ppb) 150 120

90 60

30

0 p<0.0001

p<0.005 p<0.05

Non-EP <5×102cells/μL ≧5×102cells/μL

EP(blood eosinophil status)

図1 急性好酸球性肺炎患者とその他の急性発症間質性肺疾患患者の

呼気NO 濃度 (FeNO) EP:好酸球性肺炎,Non-EP:非好酸球性肺炎(Oishi K, et al. J Breath Res 2017; 11: 036001. 12)より引用)

80 60

40 20

0

呼気NO濃度(FeNO)(ppb)

HS IPF EP

p<0.01 N.S. p<0.01

図2 健常者とIPF 患者,慢性好酸球性肺炎患者の呼気NO 濃度 (FeNO)

HS:健常者,IPF:特発性肺線維症,EP:好酸球性肺炎(Furukawa K, et al. Respir Res 2011; 12: 81. 13)より引用)
p.106
期待されている.

4.閉塞性細気管支炎症候群 (BOS)

閉塞性細気管支炎症候群 (bronchiolitis obliterans syndrome:BOS)は,細気管支領域における包囲性狭窄や細気管支内腔の閉塞をきたす疾患であり,特発性や呼吸器感染症,膠原病,薬剤・食品といった様々な原因によって発症する.近年では,肺移植や骨髄移植などの移植医療に伴う移植片対宿主病 (graft versus host diseases:GVHD) の一病型としてBOS の発症が多く報告されている.診断に重要な組織診断が困難であるため,主に呼吸機能検査を中心とした診断基準が設けられている.

BOS 発症の詳細なメカニズムに関してはいまだ不明な点が多いが,BOS 患者の気管支上皮でiNOS の発現が亢進していることが報告されている15).また,BOS 患者のBALF でinterleukin‐13 (IL‐13) が上昇していることや,BOS のマウスモデルにおいてIL‐13 とIL‐13 受容体の発現が亢進しておりIL‐13 経路を阻害することでBOS 発症を抑制するという知見が得られている16).以上より,BOS の病態進行においてタイプ2 サイトカインのひとつであるIL‐13 が中心的な役割を担っている可能性がある.

タイプ2 炎症バイオマーカーがBOS の発症予測やモニタリングに有用であるという報告も複数存在する.肺移植後患者のコホート研究において,BOS の発症とFeNO との関連を検討したところ,FeNO 上昇はBOSの発症や進行リスクと関連することが報告されている17).別の研究では,経過中の10 ppb 以上のFeNO の上昇が肺移植後の感染症やBOS の発症予測に有効であったことが報告されている18).同種造血幹細胞移植後の患者を対象とした研究では,BOS を発症した患者群において無発症の患者群と比べCANO が有意に高値 (BOS発症群10.6ppb,無発症群5.5ppb,p<0.01) であり,三次元CT で解析した気道壁面積とCANO との間に正の相関を認めたことが報告されている19).一方,BALF 中および血中好酸球に関する報告もあり,BALF 中および血中好酸球増多 (BALF 中≧2%,血中≧8%) は,肺移植後患者における死亡率や慢性肺移植片機能不全(BOS および拘束性移植片症候群) の発症に関連していた20, 21).以上より,移植後GVHD によるBOS 発症のメカニズムにはタイプ2 炎症がかかわっている可能性があり,BOS を疑った場合の鑑別診断や移植後のモニタリング指標として血中好酸球やFeNO の有用性が期待されている.文献

1)Saleh D, et al. Increased production of the potent oxidant peroxynitrite in the lungs of patients with idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med 1997; 155: 1763‐1769. 2)Cameli P, et al. Alveolar nitric oxide is related to periostin levels in idiopathic pulmonary fibrosis. Minerva Med 2020; 111: 324‐329. 3)Cameli P, et al. Alveolar concentration of nitric oxide as a prognostic biomarker in idiopathic pulmonary fibrosis. Nitric Oxide 2019; 89: 41‐45. 4)Cameli P, et al. Exhaled nitric oxide is not increased in pulmonary sarcoidosis. Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis 2016; 33: 39‐40. 5)Cameli P, et al. Exhaled nitric oxide in interstitial lung diseases. Respir Physiol Neurobiol 2014; 197: 46‐52. 6)Kotecha J, et al. Plasma vascular endothelial growth factor concentration and alveolar nitric oxide as potential predictors of disease progression and mortality in idiopathic pulmonary fibrosis. J Clin Med 2016; 5: 80. 7)Hua‐Huy T, et al. Increased exhaled nitric oxide precedes lung fibrosis in two murine models of systemic sclerosis. J Breath Res 2015; 9: 036007. 8)Girgis RE, et al. Partitioning of alveolar and conducting airway nitric oxide in scleroderma lung disease. Am J Respir Crit Care Med 2002; 165: 1587‐1591. 9)Tiev KP, et al. Severity of scleroderma lung disease is related to alveolar concentration of nitric oxide. Eur Respir J 2007; 30: 26‐30. 10)Tiev KP, et al. Alveolar concentration of nitric oxide predicts pulmonary function deterioration in scleroderma. Thorax 2012; 67: 157‐163. 11)Tiev KP, et al. Exhaled NO predicts cyclophosphamide response in scleroderma‐related lung disease. Nitric Oxide 2014; 40: 17‐21. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.107
12)Oishi K, et al. Exhaled nitric oxide measurements in patients with acute‐onset interstitial lung disease. J Breath Res 2017; 11: 036001. 13)Furukawa K, et al. Increase of nitrosative stress in patients with eosinophilic pneumonia. Respir Res 2011; 12: 81. 14)Nakaji H, et al. Eosinophils and macrophages are involved in nitrosative stress in chronic eosinophilic pneumonia. Nitric Oxide 2011; 24: 173‐175. 15)Gabbay E, et al. Post‐lung transplant bronchiolitis obliterans syndrome (BOS) is characterized by increased exhaled nitric oxide levels and epithelial inducible nitric oxide synthase. Am J Respir Crit Care Med 2000; 162: 2182‐2187. 16)Keane MP, et al. IL‐13 is pivotal in the fibro‐obliterative process of bronchiolitis obliterans syndrome. J Immunol 2007; 178: 511‐519. 17)Neurohr C, et al. Usefulness of exhaled nitric oxide to guide risk stratification for bronchiolitis obliterans syndrome after lung transplantation. Am J Transplant 2011; 11: 129‐137. 18)Gashouta MA, et al. Serial monitoring of exhaled nitric oxide in lung transplant recipients. J Heart Lung Transplant 2015; 34: 557‐562. 19)Kajimura Y, et al. Significance of alveolar nitric oxide concentration in the airway of patients with organizing pneumonia after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. Ann Hematol 2022; 101: 1803‐1813. 20)Verleden SE, et al. Elevated bronchoalveolar lavage eosinophilia correlates with poor outcome after lung transplantation. Transplantation 2014; 97: 83‐89. 21)Kaes J, et al. Peripheral blood eosinophilia is associated with poor outcome post‐lung transplantation. Cells 2020; 9: 2516.
p.108
C.ABPA/M,EGPA,N-ERD

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症 (allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycosis:ABPA/M)や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA),NSAIDs 過敏喘息(non‐steroidal anti‐inflammatory drugs‐exacerbated respiratory disease:N‐ERD) は喘息診療において難治性の場合や血中好酸球増多を認める場合に念頭に置くべき重要な疾患である.これらの疾患の診療においてもFeNO や血中好酸球,血清総IgE/アレルゲン特異的IgE を測定することは診断に有用であり,その治療効果の判定にも用いられる.

1.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症 (ABPA/M)

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycosis:ABPA) は気管支炎,好酸球増多,気管支拡張,粘液栓,そしてAspergillus fumigatus (A. fumigatus) の存在を認める疾患として1952 年に報告されたアレルギー性気道疾患である1).ABPA は,気道内で繁殖した糸状真菌に対するIgEによるI型,IgG によるIII型過敏反応によって生じる.原因真菌としてはA. fumigatus 以外にも,A. flavus, A. niger,Penicilium やSchizophyllum commune などの糸状真菌が同様の病態を形成し,まとめてアレルギー性気管支肺真菌症 (ABPM) と呼称される2).

ABPA は50 歳以上で発症する場合が多く,重症喘息患者や囊胞性線維症 (CF) 患者に認められることが多い.喘息患者の0.7~3.5%にABPA が存在することが報告されており3),低肺機能で高用量吸入ステロイド薬を使用している患者において,真菌に対する新規感作をきたしやすいことが指摘されている4).ABPM の原因真菌は,肺の深部まで到達してアレルギー反応を引き起こす.腐生した真菌と生体側の反応により好酸球を多く含む粘液栓が形成され,粘液栓によって気道壁が圧排されて中枢気管支が拡張し,真菌やその産生物の影響で肺末梢の病変が形成される.ABPA/M におけるI型アレルギー反応は,IgE 感作と好酸球を中心としたタイプ2 炎症で特徴づけられるが,FeNO に関するエビデンスは限られている.アレルギー性鼻炎患者では真菌に感作されているとFeNO が高値で喘息の合併が多く5),CF 患者ではABPA 合併の場合,FeNO が有意に上昇することが示されている6).しかし,重症喘息患者では真菌感作の有無でFeNO のレベルには差がなく,喘息患者におけるABPA の診断マーカーとしての有用性は現時点でエビデンスに乏しい7).

他のタイプ2 炎症バイオマーカーである血中好酸球数や血清総IgE はABPA/M で著明に増加することが知られており,ABPM 研究班により作成された新診断基準 (表1) にも含まれている2).一方で,血中好酸球数は変動が大きく,ステロイド薬などの治療薬の影響により低下し偽陰性を呈することもあり,過去の測定値を参照する必要がある場合も少なくない.血清総IgE はABPM の疾患活動性の評価に有用であり,25~50%の低下が治療効果判定の目安とされる8).主な原因真菌であるA. fumigatus に対する特異的IgE 抗体のABPA 診断における有用性が示され9),本邦においてもAspf1が2021 年6 月に保険収載されたが10),他の真菌に関するエビデンスは十分ではない. 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.109
2.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA)

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA) は,1951 年にJacob Churg とLotte Strauss により,喘息,心不全,糸球体腎炎,末梢神経炎を特徴とするアレルギー性肉芽腫性血管炎としてはじめて報告された11).EGPA は,血中好酸球が著明に増加し,非アトピー性好酸球性喘息,全身性血管炎を伴い,30 歳から70 歳で発症する.好酸球性の鼻副鼻腔炎,肺炎,気管支炎を合併することも多く,血清総IgE 値は高値を示す一方でアレルゲン感作は少ない12, 13).主要な病理所見として,組織中の好酸球浸潤,フィブリノイド壊死性血管炎,および血管外の肉芽腫を認める.EGPA の病態ではT 細胞がIL‐ 4,IL‐5,IL‐13 を大量に産生することで好酸球性炎症を惹起し,活性化されたB 細胞からIgE,IgG4 が産生される.また,近年ではTh17 細胞およびILC2 の関与も示唆されている14).好酸球の活性化因子であるIL‐5に対する抗体製剤 (メポリズマブ) がEGPA に対する治療薬として有効であることからも好酸球がその病態の中心的役割を果たすことが推察されている15).

EGPA ではタイプ2 炎症バイオマーカーである血中好酸球数の著明な上昇 (≧1,500/μL) を認め,血清総IgE高値とともに本邦におけるEGPA の診断基準に含まれている (表2) 16).また,血中好酸球数はEGPA 寛解後の再燃の病勢指標としても用いられる.FeNO に関してはEGPA における喘息のコントロール状況により差がなかったと報告されている17).しかし,活動期のEGPA 患者では血清中のIgG4 増加がその病勢を反映する可能性が示唆されており18),血清IgG4 が上昇している喘息患者ではFeNO が高値を示すことから19),FeNOがEGPA 患者の気道病変の活動性を反映する可能性がある.実際,EGPA 患者の呼吸器症状スコアとFeNOには有意な相関が認められていることから17),治療中にFeNO の上昇が認められる場合は,血中好酸球などの全身性炎症マーカーが落ち着いていても,呼吸器症状の悪化に注意すべきである.その他にEGPA の病勢を反映する指標としては尿中ロイコトリエンE4 がある.尿中ロイコトリエンE4 は喘息,特にNSAIDs 過敏喘息の指標とされるが,好酸球性炎症の有無によらず血管炎症候群全般で上昇することが報告されている20).

表1 アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の臨床診断基準1)喘息の既往あるいは喘息様症状あり2)末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/mm 3 3)血清総IgE 値(ピーク時)≧417 IU/mL 4)糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE 陽性5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG 陽性6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性7)粘液栓内の糸状菌染色陽性8)CT で中枢性気管支拡張9)粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり10)CT で粘液栓の濃度上昇(HAM) 6 項目以上を満たす場合に,ABPM と診断する.・項目4),5),6)は同じ属の糸状菌についての陽性の項目のみ合算できる(例:アスペルギルス・フミガータスに対するIgE と沈降抗体が陽性だが,培養ではペニシリウム属が検出された場合は2 項目陽性と判定する).・項目7)の粘液栓検体が得られず5 項目を満たしている場合には,気管

支鏡検査などで粘液栓を採取するように試みる.困難な場合は「ABPM疑い」と判定する. (日本アレルギー学会/ 日本呼吸器学会 (監修),「アレルギー性気管支肺真菌症」研究班 (編).アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き,医学書院,2019. 2)より引用)
p.110
3.NSAIDs 過敏喘息 (N-ERD)

NSAIDs 過敏喘息 (nonsteroidal anti‐inflammatory drug (NSAID)‐exacerbated respiratory disease:N‐ ERD) は,中等症~重症喘息,慢性好酸球性副鼻腔炎,cyclooxygenase (COX)‐1 (COX‐1) 阻害薬過敏を三徴とし,典型的には嗅覚の低下,鼻ポリープと気道症状で始まり,その数年内に,30~40 歳前後でNSAID 過敏症を発症することが多い21, 22).N‐ERD は成人喘息患者の7.1%,重症喘息患者の14.9%を占めるとされ,タイプ2 炎症バイオマーカーである血中好酸球の増加と血清総IgE 高値を示す.これまでアトピー素因を伴わない場合が多いとされていたが,近年の報告では以前よりも高く,その頻度は30~70%とばらつきがある22). N‐ERD においては,アラキドン酸代謝産物の炎症性メディエーターと抗炎症性メディエーターの不均衡が存在する.NSAIDs によるCOX‐1 の阻害,およびCOX‐2 とプロスタグランジン (PG) E2 レセプターの一種であるEP2 受容体の機能障害によりPGE2 産生が低下し,システィニルロイコトリエン (cysLT) およびPGD2 の産生が優位となる.cysLT は気管支収縮や血漿漏出,気道粘液分泌を引き起こし,また,気道粘膜のILC2 や肥満細胞,好酸球を活性化することで,タイプ2 気道炎症を惹起し,その病態の中心的な役割を果たす.cysLTの最終産物であるロイコトリエンE4 が尿中バイオマーカーとして有用であり23),ヒト化抗IgE モノクローナル抗体 (オマリズマブ) 投与により血中好酸球数とともに尿中ロイコトリエンが低下することが報告されている24). 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

表2 1998 年の厚生省(現厚生労働省)によるアレルギー性肉芽腫性血管炎(現EGPA)の分類基準1.主要臨床所見1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎2)好酸球増加3)血管炎による症状:発熱(38°C以上,2 週間以上)体重減少(6 ヵ月以内に6 kg 以上)多発性単神経炎消化管出血紫斑多関節痛(炎)筋肉痛(筋力低下) 2.臨床経過の特徴主要臨床所見の1),2)が先行し,3)が発症する. 3.主要組織所見1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在2)血管外肉芽腫の存在4.診断のカテゴリー1)確実(Definite) (a)1.の主要臨床所見のうち,1),2)および3)のそれぞれ1 つ以上を示し3.の主要組織所見の1 項目を満たす場合(b)1.の主要臨床所見の3 項目を満たし,2.の臨床経過の特徴を示した場合2)疑い(Probable) (a)1.の主要臨床所見の1 項目および3.の主要組織所見の1 項目を満たす場合(b)1.の主要臨床所見の3 項目を満たすが,2.の臨床経過の特徴を示さない場合5.参考となる所見1)白血球増加(≧10,000/μL) 2)血小板増加(≧400,000/μL) 3)血清IgE 増加(≧600 U/mL) 4)MPO-ANCA 陽性5)リウマトイド因子陽性6)肺浸潤陰影(厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班難治性血管炎分科会.平成10 年度研究報告書,1999. 16) より引用)
p.111
FeNO はN‐ERD では健常者に比べ増加するが,そのレベルはNSAIDs 過敏がない喘息患者と差がない.しかし,N‐ERD ではアスピリン吸入曝露後に喀痰中好酸球数と同時にFeNO が上昇するため補助診断マーカーとなる可能性がある (図1) 25).血中好酸球数に関してはN‐ERD では増加が認められるが,その程度は併存する副鼻腔炎の重症度と関連がある.副鼻腔炎における検討ではNSAIDs 過敏の有無による血中好酸球数に差異はなかった26).アトピー素因の合併頻度は30~70%とばらつきがある.血清総IgE 値は様々であり,その値は血中好酸球数とは異なり副鼻腔炎の重症度との関連は報告されてない27).文献

1)Hinson KF, et al. Broncho‐pulmonary aspergillosis; a review and a report of eight new cases. Thorax 1952; 7: 317‐333. 2)日本アレルギー学会/日本呼吸器学会 (監修),「アレルギー性気管支肺真菌症」研究班 (編).アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き,医学書院,2019. 3)Denning DW, et al. Global burden of allergic bronchopulmonary aspergillosis with asthma and its complication chronic pulmonary aspergillosis in adults. Med Mycol 2013; 51: 361‐370. 4)Fraczek MG, et al. Corticosteroid treatment is associated with increased filamentous fungal burden in allergic fungal dis‐ ease. J Allergy Clin Immunol 2018; 142: 407‐414. 5)Kołodziejczyk K, Bozek A. Clinical distinctness of allergic rhinitis in patients with allergy to molds. Biomed Res Int 2016; 2016: 3171594. 6)Keown K, et al. An investigation into biomarkers for the diagnosis of ABPA and aspergillus disease in cystic fibrosis. Pedi‐ atr Pulmonol 2019; 54: 1787‐1793. 7)Masaki K, et al. Characteristics of severe asthma with fungal sensitization. Ann Allergy Asthma Immunol 2017; 119: 253‐ 257. 8)Agarwal R, et al. Allergic bronchopulmonary aspergillosis: review of literature and proposal of new diagnostic and classifi‐ cation criteria. Clin Exp Allergy 2013; 43: 850‐873. 9)Agarwal R, et al. Cut‐off values of serum IgE (total and A. fumigatus‐specific) and eosinophil count in differentiating aller‐ gic bronchopulmonary aspergillosis from asthma. Mycoses 2014; 57: 659‐663. 10)Fukutomi Y, et al. Serological diagnosis of allergic bronchopulmonary mycosis: progress and challenges. Allergol Int 2016; 65: 30‐36. 11)Churg J, Strauss L. Allergic granulomatosis, allergic angiitis, and periarteritis nodosa. Am J Pathol 1951; 27: 277‐301. 12)Cottin V, et al. Respiratory manifestations of eosinophilic granulomatosis with polyangiitis (Churg‐Strauss). Eur Respir J 2016; 48: 1429‐1441.

Time(hr)

Bas 0.5 1 2 4 6 24

50 40

30 20

呼気NO濃度(FeNO)(ppb) ***

*** ***

図1 NSAIDs 過敏喘息患者におけるアスピリン吸入曝

露後の呼気NO 濃度 (FeNO) の推移○:プラセボ吸入,●:アスピリン (lysine-aspirin) 吸入Bas:基準*** p<0.001 基準値との比較(Rolla G, et al. Allergy 2004; 59: 827-832. 25)より作成)
p.112
13)Berti A, et al. Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: clinical predictors of long‐term asthma severity. Chest 2020; 157: 1086‐1099. 14)Kotas ME, et al. A role for IL‐33‐activated ILC2s in eosinophilic vasculitis. JCI Insight 2021; 6: e143366. 15)Wechsler ME, et al. Mepolizumab or placebo for eosinophilic granulomatosis with polyangiitis. N Engl J Med 2017; 376: 1921‐1932. 16)厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班難治性血管炎分科会.平成10 年度研究報告書,1999. 17)Latorre M, et al. Asthma control and airway inflammation in patients with eosinophilic granulomatosis with polyangiitis. J Allergy Clin Immunol Pract 2016; 4: 512‐519. 18)Vaglio A, et al. IgG4 immune response in Churg‐Strauss syndrome. Ann Rheum Dis 2012; 71: 390‐393. 19)Flament T, et al. What are the characteristics of asthma patients with elevated serum IgG4 levels? Respir Med 2016; 112: 39‐ 44. 20)Higashi N, et al. Urinary eicosanoid and tyrosine derivative concentrations in patients with vasculitides. J Allergy Clin Immunol 2004; 114: 1353‐1358. 21)Samter M, Beers RF Jr. Intolerance to aspirin: clinical studies and consideration of its pathogenesis. Ann Intern Med 1968; 68: 975‐983. 22)Kowalski ML, et al. Diagnosis and management of NSAID‐Exacerbated Respiratory Disease (N‐ERD)‐a EAACI position paper. Allergy 2019; 74: 28‐39. 23)Bochenek G, et al. Diagnostic Accuracy of urinary LTE4 measurement to predict aspirin‐exacerbated respiratory disease in patients with asthma. J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 6: 528‐535. 24)Hayashi H, et al. Omalizumab for aspirin hypersensitivity and leukotriene overproduction in aspirin‐exacerbated respirato‐ ry disease: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2020; 201: 1488‐1498. 25)Rolla G, et al. Effect of inhalation aspirin challenge on exhaled nitric oxide in patients with aspirin‐inducible asthma. Aller‐ gy 2004; 59: 827‐832. 26)Fountain CR, et al. Characterization and treatment of patients with chronic rhinosinusitis and nasal polyps. Ann Allergy Asthma Immunol 2013; 111: 337‐341. 27)Poznanovic SA, Kingdom TT. Total IgE levels and peripheral eosinophilia: correlation with mucosal disease based on com‐ puted tomographic imaging of the paranasal sinus. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 2007; 133: 701‐704.

3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈
p.113
D.アレルギー性鼻炎,花粉症,ECRS

アレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎などの上気道疾患では獲得免疫と自然免疫が関与するタイプ2 炎症がその主要な病態であり,喘息の合併疾患として重要である.上気道と下気道の疾患は互いの病態に影響し,その重症化やタイプ2 炎症バイオマーカーの発現にも影響を及ぼすため1),バイオマーカーの動態を理解しながら解釈することが上気道と下気道の疾患を診療する際の合併疾患の評価や生物学的製剤の効果予測に有用である.

1.アレルギー性鼻炎,花粉症A.アレルギー性鼻炎の病態および喘息合併の割合2)

アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のI型アレルギー疾患で,感作抗原の曝露直後に生じる発作性や反復性のくしゃみ,水様性鼻漏,鼻閉を三徴とする.また,遅発性には好酸球やリンパ球などの炎症細胞浸潤が鼻粘膜に認められ,重症化に寄与する.アレルギー性鼻炎は通年性と季節性に分けられ,前者の大半はヒョウヒダニが原因抗原であり,他には真菌,ペットの毛などがある.後者の多くは,花粉が原因抗原となるが,花粉は大別すると樹木と草木由来に分けられる.前者はスギ,ヒノキ,シラカバなど,後者はカモガヤ,ヨモギ,ブタクサなどがある.アレルギー性鼻炎は喘息発症の独立した危険因子であり,小児喘息では70%以上,成人喘息でも40%以上に合併が認められている.また,喘息増悪とも深く関連する. B.タイプ2 炎症バイオマーカーとの関連

上気道由来の鼻腔呼気NO はアレルギー性鼻炎において健常者より高値で,喘息の合併でさらに上昇する.また,鼻炎治療で低下することが報告されている3).鼻腔呼気NO はアレルギー性鼻炎の上気道炎症を反映すると考えられるが,臨床応用にはいたってない4).FeNO は下気道におけるタイプ2 炎症のバイオマーカーであり,標準測定法を遵守すれば鼻腔に存在する高濃度のNO が混入することはない.FeNO は鼻腔呼気NOと相関が認められず3),また,点鼻ステロイド薬の投与がFeNO に影響を与えないとの報告もある5).

一方,アレルギー性鼻炎患者では喘息合併の有無にかかわらず健常者に比べ,誘発喀痰中の好酸球数やFeNO が高く6),鼻閉を伴う上気道炎症が強い症例ではFeNO が上昇することが報告されている3).鼻炎が下気道炎症に影響を及ぼす機序としては,鼻閉による上気道のフィルター機能の低下,上気道から下気道への炎症物質の流入,神経反射,上気道で産生された炎症性メディエーターの全身循環を介した下気道への影響,などが推定されている7).実際,本邦における観察研究では,健常者と喘息患者のいずれにおいてもアレルギー性鼻炎が存在すればFeNO が有意に高値となることや (図1) 8),鼻炎の重症度が高くなるのに従い,喘息患者のFeNO は上昇することが報告されている9).治療中の喘息患者においてFeNO が高値で持続する場合は鼻炎合併の可能性を疑い,鼻症状を有する症例には鼻炎に対する治療介入を考慮することが重要である10).また,FeNO はアレルギー性鼻炎患者における喘息発症リスクの予測因子となる可能性がある.ダニ感作がある鼻炎患者を1 年間追跡調査した報告では,ベースラインのFeNO>28ppb が喘息発症の予測因子となることが示され11),FeNO>25ppb の鼻炎患者の追跡調査では,FeNO>50ppb 以上で,喘息発症のリスクが有意に高くなることが報告されている12).
p.114
アレルギー性鼻炎では鼻汁中の好酸球数の増加が認められる.血中好酸球数はアレルギー性鼻炎では正常もしくは軽度の増加にとどまるが,重症例では増加する13).喘息合併例では血中好酸球が増加することが示されているが14),重症度との相関は鼻汁中の好酸球数のほうが強い14).また,鼻炎の重症度と血中および鼻汁中好酸球数の関連も報告されているが,アレルギー性鼻炎の活動性評価における好酸球測定の意義は確立していない.

近年,アレルギー性鼻炎に対しても抗IgE 抗体 (オマリズマブ) が保険適用となったが,血中総IgE 値はその効果予測因子にはならないことが報告されている15).

2.慢性副鼻腔炎,鼻ポリープ

A.慢性副鼻腔炎の病態および難治性喘息との関連

慢性副鼻腔炎の有病率は一般人口の11~15%を占め,鼻ポリープ合併の有無で大きく2 つの病型に分けられる.鼻閉,鼻漏,嗅覚障害,顔面痛のうち2 つ以上の症状を有し,鼻副鼻腔内視鏡にて膿性または粘稠な鼻汁や鼻ポリープを認めれば確定診断となる.慢性副鼻腔炎の80%が鼻ポリープを伴わない慢性副鼻腔炎(choronic rhinosinusitis without nasal polyp:CRSsNP) で,その病態は好中球優位の炎症が主体と考えられてきたが,CRSsNP でも半数がタイプ 2 免疫応答を有することが報告されている.一方,鼻ポリープを伴うCRS (chronic rhinosinusitis with nasal polyp:CRSwNP) では,鼻粘膜への好酸球や肥満細胞の浸潤がみられ,80%以上の症例がタイプ2 炎症を示す16).CRSwNP は慢性副鼻腔炎の約20%を占め,血中や鼻ポリープ内でeosinophilic cationic protein (ECP) やIL‐4,IL‐5,IL‐13 の発現がみられ,2 型自然リンパ球 (ILC2) の集簇も認めらていれる.さらに,内視鏡下鼻副鼻腔手術後もすぐに鼻ポリープが再発し,病理組織で好酸球浸潤を強く認める好酸球性慢性副鼻腔炎 (eosinophilic chronic rhinosinusitis:ECRS) と呼ばれる難治性の副鼻腔炎が存在する16). 3 ・ タ イ プ 2 炎 症 評 価 の 意 義 と 結 果 の 解 釈

呼気NO濃度(FeNO)(ppb) 300 100

30 10

5 52.7 36.7

17.9 14.4 p<0.01

p<0.01 p<0.01 p<0.01

鼻炎なし健常者鼻炎あり

健常者鼻炎なし喘息患者鼻炎あり喘息患者

図1 アレルギー性鼻炎の有無により層別化した健常者と喘息

患者のFeNO (Matsunaga K, et al. Allergol Int 2011; 60: 331-337. 8)より作成)
p.115
慢性副鼻腔炎は喘息の難治化因子として重要で,未治療の喘息患者の50~70%に副鼻腔画像上で何らかの異常所見を認める.一般的な副鼻腔炎でみられる膿性鼻汁は好中球性であるが,好酸球が主体のECRS 患者では喘息やNSAIDs 過敏症の合併が多く,特に難治性の喘息で併発することが多い.したがって喘息患者に慢性副鼻腔炎の合併を認めた場合は,ECRS の可能性を考慮することが重要である.膿性鼻汁が好中球性か好酸球性かを判別し,JESREC (Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosi‐ nusitis Study) スコアで11 点以上,鼻茸・副鼻腔組織中に400 倍視野で70 個以上の好酸球浸潤を認めた場合にECRS の確定診断となり,重症度を分類する17).主な臨床症状は嗅覚障害であるが,これは嗅裂が鼻ポリープで完全に閉鎖するためと考えられる.また,好酸球浸潤が中耳にまで波及した場合には好酸球性中耳炎を併発することもある. B.タイプ2 炎症バイオマーカーとの関連

慢性副鼻腔炎においてもアレルギー性鼻炎と同様に上気道と下気道の炎症の間には強い関連が示されている (図2).副鼻腔炎,特にECRS では鼻腔呼気NO が上昇する場合と鼻茸の充満により低下する場合がある.手術後には副鼻腔が広く開放され鼻腔呼気NO が上昇することがある18, 19).慢性副鼻腔炎の存在はFeNO 高値の独立した規定因子であるが,鼻ポリープ合併例では非合併例よりさらに上昇することが報告されている20).また,CRSwNP の20~60%に喘息の合併が認められるが20),鼻ポリープを合併する喘息では非合併例よりFeNO が高値であり21),そのなかには喘息のコントロールが良好でもFeNO が高値を示す症例も含まれる22).このような鼻ポリープ合併喘息におけるFeNO の上昇は手術によるポリープ除去により低下することが報告されている23, 24).喘息患者においてFeNO が高値で持続する場合はCRSwNP,特にECRS の合併を疑うべきであり,副鼻腔炎患者でFeNO の上昇を認める場合には喘息の合併に注意する必要がある.

FeNO

nNO

AR

IgE

BA

CRSwNP

ECRS

図2 上気道疾患が呼気NO 濃度 (FeNO) に与える影響

アレルギー性鼻炎 (AR) における上気道炎症は主に鼻腔呼気NO (nNO) を増加させ,特に重症例では下気道炎症に影響を及ぼし,喘息 (BA) 合併の際のFeNO を増加させる.ポリープ合併慢性副鼻腔炎 (CRSwNP) や好酸球性副鼻腔炎 (ECRS) は喘息の重症化に関連し,下気道炎症にも影響を与え,FeNO を増加させる.なお,CRSwNP やECRS では鼻ポリープにより副鼻腔が充満することでNO の呼出が妨げられ,nNO が低下する場合がある. AR:アレルギー性鼻炎,BA:気管支喘息,CRSwNP:ポリープ合併慢性副鼻腔炎,ECRS:好酸球性副鼻腔炎,nNO:鼻腔呼気NO,FeNO:呼気NO
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血中好酸球数は慢性副鼻腔炎においてもタイプ2 炎症を伴う場合に上昇することが多い.ECRS では診断基準に血中好酸球増多が含まれており,血中好酸球が5%以上あればECRS 合併を考慮する目安となる17).また,CRSwNP 合併喘息例ではCT 画像上の副鼻腔炎の範囲や鼻粘膜組織への好酸球浸潤の程度と血中好酸球数が相関し25),ロイコトリエン受容体拮抗薬26)や外科治療により血中好酸球数が低下することが報告されている23, 24).

近年,IL‐5 やIL‐4/IL‐13 を標的とした生物学的製剤のCRSwNP に対する有効性が臨床試験で報告されている27, 28).これらの試験では喘息合併例を含めて解析が行われているが,鼻ポリープの縮小効果は,喘息合併例や血中好酸球数の高値症例でより顕著であることが報告されている27).血中好酸球数はCRSwNP,特にECRSの病勢を反映し,ECRS ではその診断基準に含まれることから,喘息におけるECRS 合併を示唆する有用なマーカーと考えられる.また,生物学的製剤の効果予測因子となることが期待されている.文献

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p.117
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p.118
索  引

欧文

A ABPA/M (allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycosis) 85, 93 ACO (asthma and COPD overlap) 72, 75 B BAL (bronchoalveolar lavage) 35 BOS (bronchiolitis obliterans syndrome) 85, 90

C CANO (alveolar concentration of NO) 85, 86 COPD (chronic obstructive pulmonary disease) 72 CRSsNP (chronic rhinosinusitis without nasal polyp) 99 CRSwNP (chronic rhinosinusitis with nasal polyp) 99 cysLT 85

D DPP‐4 (Dipeptidyl peptidase‐4) 36

E EBC (exhaled breath condensate) 36 ECRS (eosinophilic chronic rhinosinusitis) 85, 98 EGPA (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis) 85,

94

F FeNO (fractional exhaled nitric oxide) 3, 14, 33, 43, 51, 61, 80 G GVHD (graft versus host diseases) 85 I ICS (inhaled corticosteroids) 47 IgE (immunoglobulin E) 3, 28 ILC2 (innate lymphoid cell 2) 2, 12 iNOS 14 IPF (idiopathic pulmonary fibrosis) 85, 88

J JESREC スコア 34 N

nNOS 14 NOS (nitric oxide synthase) 14 NSAIDs 過敏喘息 (non‐steroidal anti‐inflammatory drugs‐ exacerbated respiratory disease:N‐ERD) 85, 95

P Periostin 35 S SSc‐ILD (systemic sclerosis with interstitial lung disease) 85, 89 T Th2 (type 2 helper T cells) 2, 12 two compartment model 86

和文

あアレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症 85, 93アレルギー性鼻炎 32, 85, 98

い移植片対宿主病 85おオマリズマブ 63, 69か喀痰中好酸球 25, 53, 79花粉症 85, 98

き気管支粘膜生検 35気管支肺胞洗浄液 35気道炎症モニタリング 18吸入ステロイド薬 47

け血清IgE 28, 45, 61, 80血中好酸球 20, 44, 54, 80
p.119
こ抗IgE 抗体 63, 69抗IL‐4 受容体α(IL‐4Rα)抗体 64, 70抗IL‐5 抗体 63, 69抗IL‐5 受容体α(IL‐5Rα)抗体 63, 70抗TSLP 抗体 65好酸球 3, 79好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 85, 94好酸球性肺炎 89好酸球性慢性副鼻腔炎 85, 98呼気一酸化窒素濃度 14呼気濃縮液 36呼気中NO 肺胞成分 85, 86し重症喘息 56上気道タイプ2 炎症 32

すスティニルロイコトリエン 85

せ全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 85, 89喘息 40喘息・COPD オーバーラップ 72

そ組織中好酸球 34

たタイプ2 炎症 2, 12

てテゼペルマブ 65デュピルマブ 64, 70

と特異的IgE 28, 45, 80特発性肺線維症 85, 88に2 型自然リンパ球 2, 12 2 型ヘルパーT 細胞 2

は鼻ポリープ 98

ひ鼻腔呼気NO 33鼻汁中好酸球 34びまん性肺疾患 85, 88

ふプリックテスト 28

へ閉塞性細気管支炎症候群 85, 90ペリオスチン 35ベンラリズマブ 63, 70

ま慢性副鼻腔炎 98

めメポリズマブ 63, 69

もモニタリング 51, 68, 79
p.120
2023 年4 月20日 発行

タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き

編集者 タイプ2 炎症バイオマーカーの手引き作成委員会,日本呼吸器学会肺生理専門委員会発行者 小立健太発行所 株式会社 南 江 堂113─8410 東京都文京区本郷三丁目42 番6 号(出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239ホームページ https://www.nankodo.co.jp/

印刷・製本 日経印刷

装丁 渡邊真介

定価は表紙に表示してあります.落丁・乱丁の場合はお取り替えいたします.ご意見・お問い合わせはホームページまでお寄せください. Printed and Bound in Japan

ISBN978─4─524─23372─4

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Guidance for Type 2 Inflammatory Biomarkers © The Japanese Respiratory Society, 2023

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