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難治性びまん性肺疾患診療の手引き 日本呼吸器学会・2017・112 ページ · 呼吸器・睡眠
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1.手引き発行の母体

日本呼吸器学会厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班

2.監修・編集■監修日本呼吸器学会■編集

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班難治性びまん性肺疾患 診療の手引き作成委員会

3.作成委員会■委員長本間   栄       東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) ■委員(五十音順)

海老名 雅仁       東北医科薬科大学医学部呼吸器内科桑野  和善       東京慈恵会医科大学内科学講座呼吸器内科後東  久嗣       徳島大学大学院医歯薬学研究部呼吸器・膠原病内科学分野酒井  文和       埼玉医科大学国際医療センター画像診断科坂本   晋       東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森)上甲   剛       公立学校共済組合近畿中央病院放射線診断科杉野  圭史     東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森)立花  暉夫       愛染橋病院内科寺﨑泰弘       日本医科大学大学院解析人体病理学西岡  安彦       徳島大学大学院医歯薬学研究部呼吸器・膠原病内科学分野萩原  弘一       自治医科大学呼吸器内科学講座部門橋本  直純       名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学分野長谷川 好規       名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学分野蛇澤   晶       国立病院機構東京病院臨床検査センター

4.外部評価委員(五十音順)

工藤  翔二       公益財団法人結核予防会杉山 幸比古       公益財団法人地域医療振興協会練馬光が丘病院貫和  敏博       東北大学名誉教授

5.協力者(症例提示)(五十音順)

芦澤  洋喜       静岡市立清水病院呼吸器内科安藤   啓       名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学分野石垣  宏仁       滋賀医科大学病理学講座疾患制御病理学部門一門  和哉       済生会熊本病院呼吸器センター呼吸器内科伊波  奈穂       静岡市立清水病院呼吸器内科井上  幸治       大阪府結核予防会大阪病院内科江本  範子       東京山手メディカルセンター呼吸器内科小笠原 一誠       滋賀医科大学病理学講座疾患制御病理学部門岡森   慧       慶應義塾大学医学部呼吸器内科
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小倉  髙志       神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科表   紀仁       名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学分野片平  雄之       九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設木島  貴志       兵庫医科大学内科学講座呼吸器科玄山  宗到       大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学坂田  能彦       済生会熊本病院呼吸器センター呼吸器内科坂本  憲穂       長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学佐藤   俊       福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座須田  隆文       浜松医科大学呼吸器内科田口  善夫       天理よろづ相談所病院呼吸器内科谷野  功典       福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座土屋  智義       とも内科・呼吸器内科徳田   均       東京山手メディカルセンター呼吸器内科富井  啓介       神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科中川   淳       神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科中島  章太       長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学中野  恭幸       滋賀医科大学内科学講座呼吸器内科二階堂 雄文       福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座西原  智恵       国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所心身医学研究部野上  裕子       国立病院機構福岡病院呼吸器科橋本  成修       天理よろづ相談所病院呼吸器内科馬場  智尚       神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科福永 健太郎       滋賀医科大学内科学講座呼吸器内科古橋  一樹       浜松医科大学呼吸器内科穂苅   諭       新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野増田  昌文       静岡市立清水病院呼吸器内科迎    寛       長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学棟方   充       福島県立医科大学会津医療センター附属病院吉富   淳       静岡市立清水病院呼吸器内科和佐本  諭       佐久医療センター呼吸器内科

■COI(利益相反)について一般社団法人日本呼吸器学会は,COI(利益相反)委員会を設置し,内科系学会とともに策定したCOI(利益相反)に関する共通指針ならびに細則に基づき,COI 状態を適正に管理している(COI(利益相反)については,学会ホームページに指針・書式等を掲載している).以下に,「難治性びまん性肺疾患診療の手引き」作成委員のCOI 関連事項を示す. 1)研究助成金等に関する受入状況(企業・団体名)アステラス製薬(株),エーザイ(株),(株)LSI メディエンス,小野薬品工業(株),(公財)喫煙科学研究財団,グラクソ・スミスクライン(株),積水メディカル(株),大正富山医薬品(株),大日本住友製薬(株),大鵬薬品工業(株),中外製薬(株),帝人ファーマ(株),東芝メディカルシステムズ(株),日本イーライリリー(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),バイエル薬品(株),ファイザー製薬(株) 2)講演料・原稿料等の受入状況(企業・団体名)アストラゼネカ(株),小野薬品工業(株),第一三共(株),大鵬薬品工業(株),中外製薬(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),ファイザー(株)

3)作成委員の個人的収入に関する受け入れ状況本学会の定めた開示基準に該当するものはない.
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序

本書は,平成26〜28 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班(研究代表者:本間 栄)における難治性びまん性肺疾患の研究成果に基づき,その疫学,診断と治療に関して日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会と合同の手引き作成委員会を立ち上げ,実際的な手引き書としてまとめた.

本書で扱う1肺胞微石症,2閉塞性細気管支炎,3Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎は,稀少・難治性のびまん性肺疾患群(23は平成27 年に新たに国の指定難病に認定)であるため,これまで十分な疫学調査が行われず,診断基準や重症度評価の策定も進まなかったが,今回それらの内容について日本初の調査・研究結果として提示する.また,各疾患とも治療指針ならびに実際の症例を提示することにより,今後の治療法の確立に向けた一助とする.

本書により,呼吸器を専門とする臨床医が臨床現場でこれらの疾患群に対応できるようになること,また今後の研究・診療がいっそう進むことを目的として作成した.

なお,日進月歩の医療の進歩に即して,今後適切に改訂していくことが重要である.本手引きが多くの呼吸器科医の日常の臨床の助けになることを祈るとともに作成委員の多大なるご尽力ならびに迅速な文献検索を担当していただいた東邦大学医学メディアセンターのスタッフの方々,出版に際しご協力いただいた(株)南江堂の方々にあらためて深謝する.

2017 年9 月

平成26〜28 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班 代表研究者

難治性びまん性肺疾患診療の手引き作成委員会 委員長

本間 栄
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1.肺胞微石症

肺胞微石症(pulmonary alveolar microlithiasis:PAM)は,リン酸カルシウムを主成分とする層状,年輪状の特徴的な微石が肺胞内に出現する常染色体劣性遺伝性疾患である.

1868 年の最初の症例の記述以降,1900 年代に入って症例報告が散見されるようになり,日本においても1954年に最初の報告がなされている.しかしながら本疾患は,最近の報告においても世界で約1,000 例の疾患頻度であり,臨床実態には不明な点も多い.日本においては,1960 年代に立花らにより全国調査が行われ,51 症例について疫学的,臨床的検討が報告されている.立花らは,その後100 例以上の症例の集積を行っているものの,全国的な調査については1960 年代以降行われていなかった.

このようななか,平成26 年より始まった厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班(研究代表者:本間 栄,本間班)において,稀少難治性びまん性肺疾患分科会と難治性気道疾患分科会が組織された.それぞれ,前者においては,1Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎,2肺胞蛋白症,3肺胞微石症の3 疾患,後者においては,1難治性びまん性汎細気管支炎,2閉塞性細気管支炎,3線毛機能不全症候群の3 疾患について部会が置かれ,アプローチが開始されることとなった.これら稀少疾患の現在における実態を明らかにし,診断基準および重症度分類などを作成することにより,ひいてはこれら稀少難治性びまん性肺疾患の難病指定を目指すことが目標とされた.このような活動目標に従って,肺胞微石症部会は,会長が西岡安彦,副会長が萩原弘一の体制で取り組むこととなった.まず平成26 年度に全国アンケート調査を開始した.実際のアンケート調査は,徳島大学呼吸器・膠原病内科の後東久嗣,西岡を中心に,徳島大学病院の臨床研究倫理審査委員会での承認を受け,平成26 年12 月から開始された.200 床以上の病床を有する病院に協力いただき,641 施設から情報が集められた.アンケートにご協力いただいたご施設ならびに代表の先生方にはあらためてこの場をお借りして御礼を申し上げたい.

また,診断基準の作成については,肺胞微石症の臨床に詳しい立花暉夫先生,遺伝子解析に詳しい萩原弘一先生,そして画像所見に詳しい上甲 剛先生からご意見をいただいた.加えて,症例を提示いただいた先生方にも心より御礼申し上げたい.

少ない臨床情報を整理し,徐々に診断基準の作成が進んでいた平成28 年度夏,本間班長より,1肺胞微石症,2閉塞性細気管支炎,3Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎の3 疾患についての臨床情報をまとめ,手引きとして出版する案が示され,急遽全情報をまとめることになった.あらためて考えてみると,このような稀少びまん性肺疾患について詳細な記載をまとめた書物はなく,少しでも読者の先生方の日常診療に役立つことを願い,収集した情報をまとめた次第である.しかしながら,希薄な記述にとどまった箇所も多く,お世辞にも豊富な内容とは言い難いが,稀少疾患であることに免じてご容赦願いたい. 2.閉塞性細気管支炎

閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)は,造血幹細胞移植や肺移植患者のQOL を悪化させ,長期予後に影響を与える重要な合併症である.しかし,移植患者ばかりでなく,原因の特定できない特発症例から,各種自己免疫疾患に合併した閉塞性細気管支炎症例の報告など少なからず存在することが明らかになった.これまで,厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班は, 2003 年に日本での閉塞性細気管支炎に関する第1 回全国調査研究(班長:貫和敏博,貫和班)を,続いて2011年に第2 回全国調査研究(班長:杉山幸比古,杉山班)を実施した.2003 年以前の症例として287 例(病理診断105 例,臨床診断182 例)が第1 回全国調査研究で報告された.2004〜2011 年までの症例として477 例(病理診断93 例,臨床診断384 例)が第2 回全国調査研究で報告された.杉山班〜本間班では,第2 回全国調査研究に基づき,病理診断93 例のうち二次調査の協力が得られた症例について,呼吸器内科医,胸部画像診断医,肺病理を専門とする病理医が集合し,臨床情報,画像情報,病理情報を集積し,日本医科大学もしくは名古屋大学を会場に症例検討会を4 回実施した.

手引き作成までの経緯
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過去2 回の全国調査結果からもわかるように,本疾患は稀少疾患である.診断が困難であり,有効な治療法も存在しない.治療に関するエビデンスが乏しく,まとまった症例集も存在しない.このような背景から,本間班では「難治性びまん性肺疾患診療の手引き」作成にあたり,第2 回全国調査研究二次調査症例検討会において閉塞性細気管支炎と確定診断した症例を,手引きのなかに集約することになった.今後,日本において移植医療の増加が予測され,いっそう閉塞性細気管支炎の診断と治療が重要な課題となるであろう.本手引きにより,閉塞性細気管支炎という疾患を再認識していただくとともに,日常診療の一助となれば幸いである.これまで調査研究にご協力いただいた全国の医療機関,ならびに関係者各位,症例検討会に参加いただいた皆さんのご厚意に敬意を表するとともに心より御礼申し上げたい. 3.Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎

Hermansky-Pudlak 症候群(Hermansky-Pudlak syndrome:HPS)は,眼および皮膚の色素脱出症に血小板機能低下に基づく出血傾向を示す常染色体劣性の先天性疾患1)だが,成人になってから難治性の間質性肺炎・肺線維症をきたすことがあり,臨床上大きな問題となっている2, 3).平成26 年度からの厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業として新たに開始された「びまん性肺疾患に関する調査研究」班では,これまでに日本で疫学調査を含めて,組織的・体系的に研究が進められてこなかった稀少難治性びまん性肺疾患として,日本におけるHermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎の診断および治療の策定を目指すことになった.

ちなみに「難病の患者に対する医療等に関する法律」の指定難病となっている「眼皮膚白皮症」の診断基準(p.77)が定められて施行されたのは,この疫学調査後の平成27 年7 月1 日であり,そのなかでHermansky- Pudlak 症候群は「全身症状を合併する症候型」とされ,肺線維症の合併もまた医療補助の対象となる重症度を満たす要件に掲げられている.まず日本ではじめての疫学調査のデータを把握した次の段階として,本疾患の病態理解につとめ,稀少な疾患として症例報告されたものを提示し,その診断と治療の手引きを策定することにした.

a.病名に関する理解

Hermansky-Pudlak 症候群などのように遺伝子異常に基づく間質性肺炎は,「家族性間質性肺炎」あるいは「家族性肺線維症」4)と総称される.原因が特定され得ない間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」5)と総称し,リンパ球などの炎症細胞浸潤が乏しく,免疫抑制薬による治療効果が期待されずに難治性の線維化が進行する代表的な病態が「特発性肺線維症」6)である.「家族性間質性肺炎」は,その遺伝子変異によって病態は異なるものの,子孫に遺伝子変異が継続されることにより,成人になって様々な重症度で発症する4).しかし,その多くは特発性肺線維症と同様に難治性で慢性進行性の臨床経過をたどることから「間質性肺炎」ではなく「肺線維症」と呼ばれている4).

この点から本症は「Hermansky-Pudlak 症候群(関連)肺線維症」と呼称すべきであろうが,臨床現場においては,必ずしもHPS 遺伝子変異を確定したうえでその肺病変の発症を診断するわけではない.現在,Hermansky-Pudlak 症候群発症に関連するおおよそ10 個の遺伝子変異3)があるが,肺病変との関連が深いことで知られているHPS-1,HPS-2 とHPS-4 のどの遺伝子変異もみつからない例もある(p.92「第3 章-D-症例4」参照).関連遺伝子が確定されたとしても,その遺伝子変異と間質性肺炎/肺線維症発症機序が肺組織で示されるわけではなく,出血傾向を伴うことが多いことから,外科的肺生検ばかりか気管支鏡検査も避けるべきであるという意見もある3).

また,多くのHermansky-Pudlak 症候群患者に伴う間質性肺炎も発症段階では自覚症状がなく,呼吸機能も正常であることを考えれば,臨床的には「Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎」の呼称が適しているのかもしれない.Hermansky-Pudlak 症候群に合併している間質性肺炎が難治性の慢性進行性肺線維症の段階にいたれば,むしろ「Hermansky-Pudlak 症候群合併肺線維症」の呼称がふさわしいが,その線引きにエビデンスのない現状では言い分ける意義はないであろう.
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b.治療についての見通し

特発性肺線維症よりもやや若い30〜40 歳代での発症もあってか,その後の臨床経過も多様で,10 年近くの長期経過をたどる症例でもある(p.83「第3 章-F-症例1」,p.92「第3 章-F-症例4」,p.94「第3 章-F-症例5」参照).現在までのところ有効な内科的薬物療法は実証されていないが,原因遺伝子の制御が困難な現状においては特発性肺線維症で有効性が示されている抗線維化療法に期待するしかないだろう.実際,最近では特発性肺線維症自体が複合的な遺伝子による疾患とする考え方もある7).Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎に対する治療の有効性は今後の実証の成果が待たれるが,現段階では理論的な可能性を持つ抗線維化薬を投与するしかないように思われる.

■文献1)Hermansky F, Pudlak P. Albinism associated with hemorrhagic diathesis and unusual pigmented reticular cells in the bone marrow: report of two cases with histochemical studies. Blood 1959; 14: 162-169 2)Carter BW. Hermansky-Pudlak syndrome complicated by pulmonary fibrosis. Proc (Bayl Univ Med Cent) 2012; 25: 76-77 3)Vicary GW, Vergne Y, Santiago-Cornier A, et al. Pulmonary fibrosis in Hermansky-Pudlak syndrome. Ann Am Thorac Soc 2016; 13: 1839-1846 4)Seibold MA, Wise AL, Speer MC, et al. A common MUC5B promoter polymorphism and pulmonary fibrosis. N Engl J Med 2011; 364: 1503-1512 5)Travis WD, Costabel U, Hansell DM, et al. An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement: update of the international multidisciplinary classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 2013; 188: 733-748 6)Raghu G, Collard HR, Egan JJ, et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 788-824 7)Schwartz DA. Idiopathic pulmonary fibrosis is a complex genetic disorder. Trans Am Clin Climatol Assoc 2016; 127: 34-45
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目 次

第1 章 肺胞微石症.......................................................................................1

A.疫学(全国疫学調査結果から) ......................................................................................................2 B.臨床像.......................................................................................................................................4 C.診断基準および重症度..................................................................................................................8 D.症例提示....................................................................................................................................9

症例1:診断後約40 年無受診で救急外来を受診した肺胞微石症の一例................................................9症例2:診断後約30 年の経過で呼吸不全を呈した肺胞微石症の一例................................................12

第2 章 閉塞性細気管支炎..............................................................................17

A.臨床像.......................................................................................................................................18 B.画像所見....................................................................................................................................21 C.病理所見....................................................................................................................................23 D.症例提示....................................................................................................................................25

症例1:前駆B リンパ芽球性白血病/リンパ腫に対する臓器移植(骨髄)に伴う閉塞性細気管支炎の一例...25症例2:急性リンパ球性白血病に対する臓器移植(末梢血幹細胞)に伴う閉塞性細気管支炎の一例............29症例3:臓器移植(末梢血幹細胞)に伴う閉塞性細気管支炎の一例......................................................32症例4:関節リウマチ発症早期に閉塞性細気管支炎が併発した一例...................................................35症例5:関節リウマチ発症13 年後に閉塞性細気管支炎が発症した一例.............................................38症例6:繰り返す気道感染を伴った関節リウマチに合併した閉塞性細気管支炎の一例...........................41症例7:労作時呼吸困難で受診した関節リウマチを基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例..................44症例8:長期生存が得られたSjögren 症候群を基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例........................47症例9:Sjögren 症候群を基礎疾患とする薬物治療抵抗性の閉塞性細気管支炎の一例...........................50症例10:扁平苔癬を基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例............................................................53症例11:悪性血液疾患(リンパ腫)を基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例.......................................56症例12:抗菌薬内服に起因すると考えられた閉塞性細気管支炎の一例................................................59症例13:母子で摂取したアマメシバによる閉塞性細気管支炎の一例(母親).......................................62症例14:母子で摂取したアマメシバによる閉塞性細気管支炎の一例(娘)..........................................65症例15:アマメシバ摂取に起因すると考えられた閉塞性細気管支炎の一例..........................................68
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第3 章 Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎..........................................71

A.病因と発症機序...........................................................................................................................72 B.全国疫学調査..............................................................................................................................75 C.Hermansky-Pudlak 症候群を含む「眼皮膚白皮症」の診断基準と重症度判定基準.................................77 D.診断の要点.................................................................................................................................80 E.治療と管理.................................................................................................................................82 F.症例提示....................................................................................................................................83

症例1:HPS-1 遺伝子変異を持つ2 年間の治療歴のある難治症例......................................................83症例2:骨髄と肺にセロイド様物質を含むマクロファージが確認された急性増悪症例...........................85症例3:血小板異常を確認されながらもHPS-1/4 遺伝子変異が検出されなかった難治症例.....................90症例4:血小板異常と剖検で典型的な組織が確認されたがHPS-1〜-6 遺伝子変異が検出されなかった肺癌

合併症例.....................................................................................................................92症例5:HPS-1 遺伝子変異を持つ5 年間の治療歴のある難治症例......................................................94症例6:HPS-4 遺伝子変異が確認されて3 年近い治療歴のある急性増悪症例.......................................96

索引................................................................................................................................................99
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略語一覧

ADL activities of daily living日常生活動作Alb albuminアルブミンANA anti-nuclear antibody抗核抗体AP-3 adaptor protein-3 ASV adaptive servo ventilation BAL bronchoalveolar lavage気管支肺胞洗浄BE base excess BLOC biogenesis of lysosome-related organelle complexリソソーム関連蛋白複合体BNP brain natriuretic peptide脳性ナトリウム利尿ペプチドBO bronchiolitis obliterans閉塞性細気管支炎BOOP bronchiolitis obliterans organizing pneumonia器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎BOS bronchiolitis obliterans syndrome閉塞性細気管支炎症候群CDB cellular destructive bronchiolitis COP cryptogenic organizing pneumonia特発性器質化肺炎COPD chronic obstructive pulmonary disease慢性閉塞性肺疾患CRNN creatinineクレアチニンDLCO diff using capacity of the lung carbon monoxide一酸化炭素肺拡散能DMARDs disease modifi ed anti-rheumatic-drugs疾患修飾性抗リウマチ薬DPB diff use panbronchiolitisびまん性汎細気管支炎DSA donor-specifi c antibody EBO endobronchiolitis obliterans EPAP expiratory positive airway pressure呼気気道陽圧FEV1 forced expiratory volume in 1 second 1 秒量FVC forced vital capacity努力肺活量GVHD graft versus host disease移植片対宿主病Hb hemoglobinヘモグロビンHCO3

hydrogencarbonate炭酸水素イオンHPS Hermansky-Pudlak syndrome Hermansky-Pudlak 症候群HRCT high-resolution CT高分解能CT Ht hematocritヘマトクリットIIPs idiopathic interstitial pneumonias特発性間質性肺炎IP interstitial pneumonia間質性肺炎IPAP inspiratory positive airway pressure吸気気道陽圧IPF idiopathic pulmonary fi brosis特発性肺線維症LABA long-acting β2 agonist長時間作用性β2 刺激薬LAMA long-acting muscarinic antagonist長時間作用性抗コリン薬LDH lactate dehydrogenase乳酸脱水素酵素LROs lysosome-related organellesリソソーム関連細胞内小器官MCH mean corpuscular hemoglobin平均赤血球ヘモグロビン量MCHC mean corpuscular hemoglobin concentration平均赤血球ヘモグロビン濃度MCP-1 monocyte chemotactic protein-1 MCV mean corpuscular volume平均赤血球容積NAC N-acetyl cysteine N- アセチルシステインNPPV noninvasive positive airway pressure ventilation非侵襲的陽圧換気PaCO2 arterial blood partial pressure of carbon dioxide動脈血二酸化炭素分圧PAM pulmonary alveolar microlithiasis肺胞微石症PaO2 arterial blood partial pressure of oxygen動脈血酸素分圧PLT platelet count血小板数RBC red blood cell count赤血球数RV residual volume残気量SaO2 arterial blood oxygen saturation動脈血酸素飽和度SP surfactant proteinサーファクタント蛋白質SP-A surfactant protein-Aサーファクタント蛋白質A SP-D surfactant protein-Dサーファクタント蛋白質D SpO2 percutaneous arterial oxygen saturation経皮的動脈血酸素飽和度TIPPV tracheal intermittent positive pressure ventilation TLC total lung capacity全肺気量TV tidal volume 1 回換気量UA uric acid尿酸UIP usual interstitial pneumonia UPR unfolded protein response VA alveolar ventilation肺胞換気量VATS video-assisted thoracic surgery VC vital capacity肺活量WBC white blood cell count白血球数
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第1 章肺胞微石症
p.13
肺胞微石症(pulmonary alveolar microlithiasis:PAM) (OMIM265100)は,リン酸カルシウムを主成分とする肺胞内,層状,年輪状の特徴的な微石の出現を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患であり,同胞発生,両親の血族結婚が高頻度である1).微石は極めて緩徐に成長し,最終的には多くの肺胞を埋め尽くす.同時に肺胞壁には慢性炎症と線維化が生じる.小児期から青年期にかけて,健康診断などで撮影された胸部X 線写真にて発見される症例が多い.初期は無症状であるが,疾患は緩徐に進行し,患者は中年期以降に慢性呼吸不全や肺性心にて死亡する.世界では1,000 例以上報告があり,日本からも100 例を超える報告がある.疾患原因はII型肺胞上皮細胞に特異的に発現しているIIb 型ナトリウム依存性リン運搬蛋白質の機能欠損と考えられている.患者では同蛋白質をコードするSLC34A2 遺伝子に異常があり,正常蛋白質が合成されなくなっている. 1.世界での検討

本疾患の世界最初の記述は1686 年のMalpighi による報告とされている2).1918 年にHarbitz が2 例目を報告している3).最近,Castellana らにより世界65 箇国, 1,022 例のPAM 症例のまとめが報告された4).これによると,PAM は世界各国に発生しているものの,大陸間で頻度に差があり,アジアからの報告が最も多く(56.3%),次いでヨーロッパに多かった(27.8%).アジアのなかではトルコからの報告が最も多く(139 例),次いで中国(133 例),日本(119 例)となっている.これらの国々が本症の好発地域であることについては,血族結婚の頻度の高さが影響していると考えられる.性差については若干の地域差はあるものの,男女差はほぼない.発見年齢としては学童期から青年期(20〜30 歳代)が最も多く,高齢者での発見はまれである.家族内発生は1,022 例中381例(37.2%)に認められており,家族内発生のほぼすべてが水平伝播である.血族結婚家系への集積,男女同一の発生頻度,高率な水平伝播はすべて常染色体劣性遺伝疾患に合致した所見である. 2.日本での検討

日本では1954 年に高橋義直が最初の症例を報告した5).立花暉夫らは1963 年に本症の全国調査を行い,51 症例についての疫学的,臨床的検討を行っている6).この報告によると,やはり発生に性差はなく,61%(51 例中31

例)の症例が同胞発生例であり,1 家系同胞2 人発生が11家系,同胞3 人発生が3 家系であった.患者両親の血族結婚は32.7%に認められた.これらの結果より,当時より本症発生が常染色体劣性遺伝形式によるものと結論づけられている.また,その後の追跡調査により,計76 症例の本症発見の年次推移を検討したところ,1950〜1960年代にかけては年間平均4.3 人の報告があったものの, 1970 年代では年間平均1.0 人となっており,本症の報告例数の減少傾向も指摘されている7). 3.全国疫学調査(2014〜2016 年)

前述の立花らによる全国調査以降,最近の日本における本症の疫学の実態が十分に把握されていない現状を受け,今回,厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患調査研究」班(本間班)では,PAMの実態解明と治療指針の作成を目的に全国アンケート調査を行った.

全国の200 床以上を有する病院,計1,824 施設に,現在または過去に,病理学的もしくは臨床的に診断されたPAM 症例の経験数,SLC34A2 遺伝子検査の有無についてアンケート用紙を郵送したところ,641 施設より回答が得られた(回収率:35.14%).結果,22 施設において25 症例のPAM が現在もしくは過去に経験されていることが判明した.このうち1 症例は外国人症例であったため除外し,計24 症例を解析した(表1).24 症例中,現在通院中の症例は7 例(29.2%)となっており,本症の有病率は人口100 万人あたり0.06 人となる.病理学的に診断された症例は全24 例中16 例(66.7%)であり,今昔を問わず日本の呼吸器科医のびまん性肺疾患に対する病理診断の意識の高さが伺える結果であった.SLC34A2 遺伝

疫学(全国疫学調査結果から)

A

表1 全国アンケート調査によるPAM 症例の内訳症例経験時期現在7/24(29.2%)

過去17/24(70.8%)

診断方法病理学的診断16/24(66.7%)

臨床診断8/24(33.3%)

遺伝子検査済8/24(33.3%)

未13/24(54.2%)不明3/24(12.5%)
p.14
1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

子検査の施行率は33.3%(24 例中8 例)であったが,萩原らのグループを含めた2 つの研究グループよりSLC34A2の不活化変異が本症の原因と同定されたのが2006 年であることを考慮すると,妥当な数字であると考えられる.実際,遺伝子検査が実施された8 例のうち,5 例は現在の症例であった.SLC34A2 遺伝子の変異が日本の研究グループにより同定されたことも遺伝子検査施行率の高さに寄与していると考えられる.症例の地理的分布については,既報どおりほぼ人口分布に沿っており(図1),本症発生における地域間格差はないと考えられた. 4.総括

今回の全国調査結果とこれまでの調査を比較検討すると,疫学的には日本におけるPAM の報告例数は減少傾向にあると予想される.この理由としては血族結婚率の減少が考えられる.しかし,現代の日本社会のおいても,いとこ婚が1.6%,血族婚が3.9%あると報告されており8),低頻度ながら今後も本症の発生は続くと思われる.常染色体劣性遺伝であり,同胞発生が約50%にみられることを考慮して,本症が疑われた場合は家族の診察を行うことが望ましい. ■文献

1)Tachibana T, Hagiwara K, Johkoh T. Pulmonary alveolar microlithiasis: review and management. Curr Opin Pul Med 2009; 15: 486-490 2)Anzalone A, Marcello M. I suoi scritti sugli organi del respire, Tamari, Bologna, 1966: p259-262 3)Harbitz F. Extensive calcification of the lungs as a distinct disease. Arch Intern Med 1918; 21: 139-146 4)Castellana G, Castellana G, Gentile M, et al. Pulmonary alveolar microlithiasis: review of the 1022 cases reported worldwide. Eur Respir Rev 2015; 24: 607-620 5)高橋義直.粟粒結核症を疑われた汎発性肺胞微石症の一例.日本臨牀1954; 12: 89-94 6)立花暉夫.肺胞微石症.呼吸1993; 12: 300-306 7)立花暉夫.日本における肺胞微石症.びまん性肺疾患,宮本 忍,三枝正裕,金上晴夫,大国真彦ほか(編),克誠堂出版,東京,1981: p19-33 8)Imaizumi Y. A recent survey of consanguineous marriages in Japan. Clin Genet 1986; 30: 230-233

:現在の症例:過去の症例

図1 全国疫学調査(2014〜2016 年)による最近の肺胞微石症症例分布
p.15
1.病因

肺胞微石症の原因は,IIb 型ナトリウム依存性リン運搬蛋白質SLC34A2(NPT2b,NPTIIb,NAPI-IIb と記載される場合もある)の機能欠損と考えられる.これは,以下より裏づけられる.

1SLC34A2 の検索が行われた肺胞微石症患者では,ほ

ぼすべてにSLC34A2 遺伝子変異がホモ接合で見い出されていること1〜3). 2肺胞特異的にSLC34A2 を欠損させたモデルマウスで

は,肺胞腔内に微石が出現し胞膈炎が認められるなど,肺胞微石症と類似の病理像を示すこと4).すなわち,肺胞微石症は常染色体劣性遺伝疾患の遺伝様式を示す単一遺伝子疾患である.家系解析より,浸透率は1 に近いと考えられる.つまり,異常遺伝子をホモ接合で保有する個人は,ほぼ必ず肺胞微石症を発症する.

正常状態では,SLC34A2 はII型肺胞上皮細胞の肺胞腔側に発現している5, 6).肺胞腔表面を覆う表面活性物質は主としてII型肺胞上皮細胞から放出され,多量のリン脂質を含んでいる.表面活性物質は,肺胞マクロファージに貪食,分解されることが知られている.肺胞マクロファージは長く肺胞腔内にとどまることが知られているため,分解産物は肺胞腔内に放出すると想定される.この際に放出される無機リンは,II型肺胞上皮細胞上のSLC34A2 によりII型肺胞上皮細胞内に吸収されることで,リンの代謝循環が成立していると考えられる7, 8). SLC34A2 の機能欠損はこのリンの代謝循環を遮断するため,肺胞腔内に過剰に残存したリンがカルシウムと結合し,微石を生じると推定される.しかしながら,明確な微石生成機構に関しては解明されていない部分が多い.モデルマウスを用いた病態解明が期待される4).

なお,SLC34A2 の機能欠損性遺伝子変異はヒトでは肺胞微石症の原因となるが,マウスでは胎性致死であり新生児が生まれてこない9).SLC34A2 は肺以外にも乳腺や腸管などでも発現しているが,ヒトでは他の遺伝子がSLC34A2 機能を補足している結果,肺のみに異常が発生するものと思われる10).他臓器にも異常がみられたとする報告が散見されるが,これらの症例では機能補足が十分に行われず他臓器にも症状が出た可能性がある2). 2.病理

肺胞微石症生検肺,剖検肺の特徴的な病理組織像を日本症例で検討した結果,本疾患の特徴は以下のとおりで

ある11〜15).

1肺胞内の年輪状,層状の微細な結石,微石形成であ

り(図1a),多くの肺胞内に認める(図1b).鑑別診断すべき転移性肺石灰化症では,肺胞壁に限局した微石形成を認めるが,肺胞微石症では認めない. 2初期には肺胞内の特徴的な微石のみであるが,末期,

剖検肺では,気管支血管束,小葉間隔壁に沿って(図1c),あるいは胸膜下に著明な微石形成を認め,胸膜下の線維化も認める(図1d).さらに,肺胞内微石形成とともに石灰化,骨化,骨形成を認める症例がある(図1e). 3微石形成は肺のみに限られ,他臓器には認めない(日

本の13 剖検例での検討)14). 4肺胞内微石の透過型および走査型電子顕微鏡像は11, 15),

肺胞内を充満する微石像,割面像では特徴的な年輪状,層状の構造を認める(図2)15). 3.臨床症状,臨床検査11〜15)

無症状で主として集団検診,家族検診でびまん性肺陰影を発見されることが多い.日本の症例111 例中85.6%が無症状検診発見である.年齢的には小児期発見が多い.日本の症例111 例中15 歳以下での発見は52.9%である.

呼吸機能は,著明なびまん性肺陰影を示しても,無症状で,初期には%肺活量の軽度低下,%DLCO の軽度低下を示すのみで,長期経過後は呼吸不全を示す.

気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)検査では,微石発見例があるが多くは正常である.

骨シンチグラフィ,ガリウムシンチグラフィでは肺病変部位にのみ集積を認める.

血清SP-D,SP-A が上昇し,呼吸機能悪化との相関があるとする報告がある.しかし,検血,検尿,肝腎機能,血清カルシウムなどは正常範囲である. 4.画像

胸部X 線写真では,両側肺にびまん性粒状影がみられる.中下肺野優位であり,肺底背側では特にX 線吸収値が増加し,心陰影や横隔膜がシルエットサイン陽性となり不鮮明となる(図3).小葉辺縁である胸膜下の囊胞形成を反映して肺と胸壁の間に黒いライン(black pleural line)が形成されることもある12).

臨床像

B
p.16
胸部CT では微小結石は空間分解能を下回るため,その重畳像がびまん性すりガラス影として捉えられる.高度の微石蓄積と肺胞隔壁肥厚を反映してコンソリデーション(図4a)を示すこともある.小葉細葉辺縁の肺胞隔壁の肥厚像を反映して,小葉内網状影や気管支血管束および小葉間隔壁の不整な肥厚,胸膜面の不整といった小葉・細葉辺縁性陰影も特徴的である(図4b).こういった陰影に石灰化が同定されることが本症診断の鍵であることも異論のないところであろう.進行例では小葉辺縁

である胸膜下,小葉間隔壁や気管支肺動脈周囲に囊胞がみられ,ときに粗大なブラとして捉えられることもある(図4c)16, 17). 5.治療と予後11〜15)

肺胞内微石を除去する有効な治療薬はなく,肺胞微石症の臨床経過,予後は不良である.発見時の年齢別,経1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

a b

c d

e

図1 病理所見

a:肺胞内の年輪状,層状の微細な結石,微石形成(HE 染色,200 倍). b:肺胞腔内の多数の微石形成(HE 染色,40 倍). c:気管支血管束に沿った肺胞内微石(HE 染色,10 倍). d:胸膜下の著明な微石形成と胸膜下の線維化(HE 染色,10 倍). e:肺胞内微石と石灰化,骨化(HE 染色,40 倍).
p.17
過追跡年数別に呼吸不全死亡を検討した日本での成績がある11, 12).2009 年の報告では12),発見時15 歳以下の症例では,その後の10〜19 年間に呼吸不全死亡例はない(0/28 例)が,20〜49 年の経過でみると45%(9/20 例)の症例が呼吸不全死亡している.つまり,小児期発見例でも長期経過は決して良好ではない.一方,発見時15 歳以上の症例では,10〜19 年間に12%(3/25 例)が呼吸不

全死亡し,20〜49 年の経過では40%(6/15 例)が呼吸不全死亡した.全症例では,10〜19 年の経過で5.7%(3/53例)が呼吸不全死亡し,20〜49 年の経過で42.9%(15/35例)が呼吸不全死亡した.

日本の肺胞微石症剖検例13 例についての検討14)では,発見時年齢15 歳以下の5 例は37〜56 年経過後に死亡し,死亡剖検時年齢は40 歳代2 例,50〜60 歳代3 例であった.発見時年齢16 歳以上の8 例では,合併症死亡2 例を除外して,10〜32 年経過後に死亡し,死亡剖検時年齢は30 歳代1 例,50 歳代2 例,60〜70 歳代3 例である.

諸外国では肺移植症例の報告があるが,日本では実施症例はない12, 13).

■文献1)Huqun, Izumi S, Miyazawa H, et al. Mutations in the SLC34A2 gene are associated with pulmonary alveolar microlithiasis. Am J Respir Crit Care Med 2007; 175: 263-268 2)Corut A, Senyigit A, Ugur SA, et al. Mutations in SLC34A2 cause pulmonary alveolar microlithiasis and are possibly associated with testicular microlithiasis. Am J Hum Genet 2006; 79: 650-656 3)Ishihara Y, Hagiwara K, Zen K, et al. A case of pulmonary alveolar microlithiasis with an intragenetic deletion in SLC34A2 detected by a genome-wide SNP study. Thorax 2009; 64: 365-367 4)Saito A, Nikolaidis NM, Amlal H, et al. Modeling pulmonary alveolar microlithiasis by epithelial deletion of the Npt2b sodium phosphate cotransporter reveals putative biomarkers and strategies for treatment. Sci

図2 年輪状,層状の肺胞内微石割面電顕像

図3 胸部X 線写真両側肺にびまん性粒状影がみられる.心陰影や横隔膜がシルエットサイン陽性のため不鮮明である.肺と胸壁の間に黒いライン(black pleural line) (➜)がみられる.
p.18
1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

Transl Med 2015; 7: 313ra181 5)Traebert M, Hattenhauer O, Murer H, et al. Expression of type II Na-Picotransporter in alveolar type II cells. Am J Physiol 1999; 277: L868-L873 6)Hashimoto M, Wang DY, Kamo T, et al. Isolation and localization of type IIb Na/Pi cotransporter in the developing rat lung. Am J Pathol 2000; 157: 21-27 7)Veldhuizen R, Possmayer F. Phospholipid metabolism in lung surfactant. Subcell Biochem 2004; 37: 359-388 8)Goss V, Hunt AN, Postle AD. Regulation of lung surfactant phospholipid synthesis and metabolism. Biochim Biophys Acta 2013; 1831: 448-458 9)Shibasaki Y, Etoh N, Hayasaka M, et al. Targeted deletion of the tybe IIb Na+-dependent Pi-co-transporter, NaPi-IIb, results in early embryonic lethality. Biochem Biophys Res Commun 2009; 381: 482-486 10)Segawa H, Shiozaki Y, Kaneko I, et al. The role of sodi-

um-dependent phosphate transporter in phosphate homeostasis. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) 2015; 61: S119-S121 11)立花暉夫.肺胞微石症.呼吸1993; 12: 300-306 12)Tachibana T, Hagiwara K, Johkoh T. Pulmonary alveo-

lar microlithiasis: review and management. Curr Opin Pul Med 2009; 15: 486-490 13)立花暉夫.肺胞微石症.呼吸器科2004; 5: 99-105 14)立花暉夫,萩原弘一.肺胞微石症.びまん性肺疾患の臨床,第4 版,びまん性肺疾患研究所(編),金芳堂,京都,2013: p329-332 15)立花暉夫.肺胞微石症.内科症例図説,杉山恒明,小俣政男(総編),朝倉書店,東京,2009: p186-187 16)Gasparetto EL, Tazoniero P, Escuissato DL, et al. Pulmonary alveolar microlithiasis presenting with crazypaving pattern on high resolution CT. Br J Radiol 2004; 77: 974-976 17)Sumikawa H, Johkoh T, Tomiyama N, et al. Pulmonary alveolar microlithiasis: CT and pathologic findings in 10 patients. Monaldi Arch Chest Dis 2005; 63: 59-64

a b

c

図4 胸部CT

a:びまん性すりガラス影,広義間質の不整な肥厚を認める.高度の微石蓄積と肺胞隔壁肥厚を反映してコンソリデーションも伴っている.

b:びまん性すりガラス影,広義間質の不整な肥厚を認める. c:びまん性すりガラス影,広義間質の不整な肥厚を認める.胸膜下に小囊胞形成も伴っている.
p.19
1.診断基準

1 を満足し,かつ下記2,3,4 項目中の1 つ以上を満たす.

1.典型的な胸部X 線写真,または胸部CT 像を呈する. 2.肺生検により肺胞内に層状,年輪状の微石形成を確認する.

または,気管支肺胞洗浄液中に微石そのものを確認する. 3.同胞発生を確認する.両親や直系の先祖の血族結婚を確認する. 4.SLC34A2 遺伝子異常を確認する. 2.除外すべき病態

下記の病態がないことを確認する

1.悪性腫瘍に伴い肺胞壁に微石形成を示す転移性肺石灰化症2.腎不全に伴い,高カルシウム血症を伴う,異所性肺石灰化症3.びまん性肺陰影を示す転移性肺腫瘍

(注)典型的な画像所見

診断基準における典型的な画像所見とは,以下のような所見である.

a.胸部X 線写真での両肺野びまん性に密に分布する微細粒状の微石陰影b.胸部CT での気管支血管束,小葉間隔壁に密な石灰化.末期には肺底部背側,胸膜下に濃厚な融合性石灰化3.重症度分類

疾患としての重症度分類は存在しない.慢性呼吸不全を呈した場合,呼吸機能障害に準じた重症度分類を流用して重症度が決定されている.診断基準および重症度

C
p.20
1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

⿟症 例:67 歳,女性. ⿟主 訴:呼吸困難,全身の浮腫. ⿟既往歴:特記すべきことなし. ⿟喫煙歴:なし. ⿟家族歴:呼吸器疾患の家族歴はなし.両親は血族結婚.

⿟現病歴:2013 年11 月から両下肢の浮腫を認めていた.2014 年4 月より呼吸困難の出現があり,徐々に増強するために近医を受診.胸部CT で両肺びまん性にすりガラス影を認め,精査加療目的で当院へ救急搬送となった.

⿟身体所見:身長150cm,体重55kg,血圧200/120 mmHg,脈拍100 回/min,SpO2 62%(リザーバーマスク12L/min).意識は清明.眼瞼結膜は蒼白ではない,眼球結膜に黄染なし.口唇および手指,足指にチアノーゼあり.ばち指を認める.座位にて頸静脈の怒張あり.両肺びまん性にfine crackles を聴取.心音整,心雑音なし.腹部は平坦,軟.圧痛なし.腸蠕動音は正常.両下

肢にpitting edema を認める.

⿟検査所見血液検査:慢性の低酸素血症を反映して,Hb 18.0g/dL,Ht 56.3%と多血症を認めた.LDH 504U/L, KL-6 1,966U/L,SP-D 458U/L と上昇を認めた.BNP 1,617.6pg/mL と著明に高値であった.リザーバーマスク15L/min で採取した血液ガスは,PaO2 が33.2 Torr, PaCO2 が34.3Torr と高度の低酸素血症を呈していた.

画像検査:胸部X 線写真では,両肺びまん性に線状影および透過性の低下を認めた(図1a).胸部CT では,肺野条件(図2a)にて両肺びまん性に小葉内網状影,小葉間隔壁の肥厚を認め,石灰化を伴い,一部に牽引性気管支拡張を認めた.また縦隔条件(図2b)では,両側下葉背側優位に石灰化を認め,右房および右室が著明に拡張し,右房内および右室内に血栓を認めた.

⿟臨床経過:肺胞微石症に伴う肺高血圧による右心不

症例提示

D

症例1診断後約40 年無受診で救急外来を受診した肺胞微石症の一例

a b

図1 胸部X 線写真

a:初診時. b:2014 年退院前.
p.21
全と診断した.呼吸苦は認めなかったが,リザーバーマスク15L/min でもSpO2 が80%程度の高度の低酸素血症をきたし,noninvasive positive airway pressure ventilation(NPPV)での呼吸管理を行った.右心不全に対しては,フロセミドの投与および水分出納の調整を行った.また,右房内および右室内血栓に関しては,抗凝固薬を開始した.右心不全の改善とともに呼吸状態は改善したが,NPPV は装着中の呼吸困難があったためにadaptive servo ventilation(ASV)に変更した.日中はリザーバーマスク12 L/min,夜間はASV(O2 12L/min,呼気終末圧4cmH2O,最大サポート圧10cmH2O,最小サポート圧2cmH2O)で呼吸管理を行った.胸部X 線写真で両肺びまん性にすりガラス影,線状影は残るものの透過性の改善を認め(図1b),安静時SpO2 は90%台を保てるようになった.リハビリテーションを行い,労作時はリザーバーマスク12 L でSpO2 が70%台に低下するものの,30 m 程度歩行が可能となった.近医に往診を依頼し,同年6 月に自宅退院となった.

2015 年4 月に近医より呼吸状態が悪化したために紹介受診となり,胸部X 線写真で右気胸を認めた.入院にて安静で経過をみていたが,入院第5 病日にトイレで排便

された際に心室細動を発症し永眠された.死亡後家族の承諾を得て剖検を施行した.

⿟剖検所見:剖検肺は,右910g,左860g,と重量の増加を認めた.図3a に固定後の肉眼的所見を示す.両肺は灰褐色調で,含気はなく,弾性硬で,紙やすり様の断面であった.図3b に組織所見を示す.両肺のほとんどの肺胞腔内には同心円状の層状構造を示す微石を認め,肺胞壁や周囲間質に線維化を認めた.心臓は,右室の拡張および心室中隔の直線化を認めたことから,肺高血圧に伴う肺性心と考えられた.

⿟解説肺胞微石症は,常染色体劣性遺伝疾患1)とされており,日本の検討でも,近親婚家系への集積,高度な水平伝播など常染色体劣性遺伝に合った所見が報告されている2).本症例は両親が血族結婚であったが,本症例の子には疾患の発症を認めていない.

本症例は,20 歳代前半に肺胞微石症と診断され,当院受診時には約40 年経過し,肺性心から右心不全をきたし

a

b

図2 初診時胸部CT

a:肺野条件.両肺びまん性に小葉内網状影,小葉間隔壁の肥厚,石灰化を認める. b:縦隔条件.両肺背側優位に石灰化を認める.右房が著明に拡張し,右房内に血栓を認める.
p.22
1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

ていた.立花らは,本症の病期を,1初期:全肺野の陰影は淡く,特徴的な陰影が明瞭ではない,2進展期:特徴的な陰影が明瞭となるが,経過が緩慢.機能の低下は軽度で,日常生活をほぼ通常どおり行える,3末期:塊状陰影や気腫性囊胞,線維化などが出現し,呼吸機能が低下し,自覚症状を認める,の3 期に分類している3).本症例は,受診時に画像所見で全肺野びまん性に線維化を認め,呼吸困難,肺性心を呈していたことから末期に該当し,病勢が緩徐に進行して呼吸不全に陥ったものと思われる.

利尿薬などの投与を行い,右心不全および呼吸状態は改善した.しかしながら,経過の血液ガスでは,II型呼吸不全を呈し,睡眠時にNPPV が必要と考え試みた.しかし,吸気圧の調整を行っても装着睡眠時の呼吸困難感が軽減しなかった.ASV は,患者の呼吸の変化に応じて,自動的に圧を調整して,気流の供給が可能な装置とされ, Cheyne-Stokes 呼吸を伴う心不全の治療に有用とされる4).本症例では,ASV に変更したところ,睡眠時の呼吸困難感が軽減し,睡眠時の呼吸管理をしっかりと行うことが

できた.

肺胞微石症としては,末期の状態であったが,呼吸管理の進歩により,気胸発症までの約1 年間,在宅での生活が可能であった.

■文献1)Sosman MC, Dodd GD, Jones DW. The familial occurrence of pulmonary alveolar microlithiasis. Am J Roentgenol 1957; 77: 947-1012 2)萩原弘一,立花暉夫,上甲 剛.肺胞微石症.日本臨牀2008; 12: 492-501 3)立花暉夫.日本における肺胞微石症.肺と心1979; 26: 10-16 4)Teschler H, Döhring J, Wang YM, et al. Adaptive pressure support servo-ventilation: a novel treatment for Cheyne-Stokes respiration in heart failure. Am J Respir Crit Care Med 2001; 164: 614-619

a b

図3 剖検所見

a:肉眼的所見.灰褐色調で,両肺に含気を認めず,表面は紙やすり様であった. b:組織所見.肺胞腔内に同心円状の層状構造を成す微石を認める.また,周囲間質の線維化を認めた.
p.23
⿟症 例:54 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟既往歴:46 歳時 副鼻腔炎. ⿟喫煙歴:なし. ⿟飲酒歴:機会飲酒. ⿟家族歴:父親が肝臓癌で死亡. ⿟粉塵曝露歴:なし. ⿟現病歴:小学校4 年生ごろ胸部X 線写真で異常を指摘された(詳細不明).

24 歳時に人間ドックにて胸部X 線写真で肺のびまん性陰影を指摘されており,某総合病院で肺胞微石症と診断された.以後は特に医療機関受診歴なし.

45 歳時に労作時呼吸困難を主訴に当院を初診.Hugh- Jones 分類II度程度の息切れを認めたが,室内気でのSpO2 は97%で,安静時の動脈血ガス分析はPaCO2 39.7Torr,PaO2 81.5Torr と良好であった.胸部X 線写真では両肺にびまん性で下肺野優位の微細粒状陰影を認め,呼吸機能検査では拘束性障害を認めた.以後,外来通院にて経過を観察した.

しばらくは自覚症状も変化なく経過したが,51 歳ころからSpO2 が90%台前半に低下傾向を認めHugh-Jones分類III度の呼吸困難を認めた.胸部X 線写真では肺野の縮小傾向を認めた.52 歳時より在宅酸素療法を導入した(3L/min).その後,うっ血性心不全を併発し,利尿薬を追加し治療していたが,54 歳時より労作時呼吸困難と下肢の浮腫が増強し,低酸素血症の悪化(2.5L/min 吸入下にてSpO2 76%),精査加療目的に入院となった.

⿟身体所見:身長152cm,体重32kg,体温36.0°C,血圧107/55mmHg,脈拍102/min,呼吸数30 回/min.眼瞼結膜に貧血を認める.眼球結膜に黄染なし.胸部は中央部が陥没しており,漏斗胸様.ラ音や心雑音は聴取しない.肝・脾を触知せず.下肢に軽度の浮腫を認める.

⿟検査所見血液検査:WBC 8,400/μL,RBC 511 万/μL,Hb 9.8 g/dL,MCV 71.6 fL,MCH 19.2pg,MCHC 26.8g/dL, PLT 35.5 万/μL,Alb 3.8g/dL,LDH 244IU/L,UA 9.2 mg/dL,CRNN 0.6 mg/dL,CRP<0.3mg/dL,血液ガス所見(酸素鼻カニューラ3L/min):pH 7.465,PaCO2 50.1 Torr,PaO2 55.4Torr,HCO3 -35.2mmol/L,BE +9.7 mmol/L,SaO2 90.1%.

呼吸機能検査所見(表1):胸部単純X 線:両肺野にびまん性の微細な粒状陰影を認め,特に下肺野では陰影が強く心陰影や横隔膜陰影が不鮮明となっている.両肺,特に左肺に収縮傾向を認め

る(図1).

胸部CT:両側肺野にびまん性の微細粒状陰影(図2a),石灰化陰影(図2b)を認める.

心電図:II,III,aVF 誘導で肺性P 波を認め,V1 のR波が増高しており,肺性心の所見を認める(図3).

⿟臨床経過:肺性心の悪化が主因と考え利尿薬の投与で経過をみた.下肢の浮腫はやや改善したが,SpO2 が低値のまま70%台であり,noninvasive positive airway

症例2診断後約30 年の経過で呼吸不全を呈した肺胞微石症の一例

図1 胸部X 線写真

両肺野にびまん性の微細な粒状陰影を認め,特に下肺野では陰影が強く心陰影や横隔膜陰影が不鮮明となっている.両肺、特に左肺に収縮傾向を認める.

表1 呼吸機能検査所見

45 歳時51 歳時

VC 1.51L 0.89L %VC 57.40% 35.10% TV 0.42L 0.39L FVC 1.52L 0.85L %FVC 57.50% 33.50% FEV1 1.40L 0.80L FEV1% 92.10% 94.10% V

・50 3.46L/sec 1.09L/sec V

・25 1.17L/sec 0.46L/sec V

・25/Ht 0.769L/sec/m 0.30L/sec/m
p.24
1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

pressure ventilation(NPPV)を導入した.本人の呼吸困難感が強いため,IPAP 6cmH2O,EPAP 4cmH2O しかかけられなかったが,一時的に酸素化は改善した.しかしその後,胸部X 線写真では著変ないものの,SpO2 は徐々に低下し,PaCO2 は70〜80mmHg 台となった.両下肢の浮腫も持続し,利尿薬の投与にもかかわらず臨床所見の改善は乏しかった.呼吸不全は徐々に進行し,9 月下旬にはSpO2 は80%以下の状態で推移し,呼吸不全の悪化により永眠された.

家族の承諾を得て病理解剖を行った. ⿟剖検所見:剖検所見では両肺の外見は著変ないが,触るとやや硬く,摘出してもあまり虚脱しなかった.左肺620 g,右肺980g と両肺とも重量を増していた.肺の割面では砂粒状の物質が肉眼で確認され,紙やすりを触るような感触があった.心臓は右心が肥大しており,肺

性心が考えられた.組織像ではほぼ全肺胞内に類円形層状の石灰化物質(微石)を認め,一部には骨化も観察された(図4).肺胞壁はびまん性に線維化をきたし,既存の肺胞構造を破壊していた.線維化は比較的胸膜直下に強くみられ,特に肺尖部に強かった.肺胞内には石灰化物質のほか,多数のマクロファージが観察された.うっ血浮腫も一部で強くみられた.

⿟解説本症例も症例1と同様,20 歳代で肺胞微石症と診断され,30 年の経過で呼吸不全,右心不全に至った症例である.これまで微石の生成機序は不明とされていたが,その疾患責任遺伝子について近年,萩原らによりSLC34A2

a b

図2 胸部CT

a:肺野条件.両側肺野にびまん性の微細粒状陰影および浸潤陰影を認める. b:縦隔条件.両肺背側優位に石灰化を認める.
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図3 心電図所見

II,III,aVF で肺性P 波を認め,V1 のR 波が増高しており,肺性心の所見を認める.

a b

c

図4 剖検肺組織所見

a:HE 染色(20 倍). b:HE 染色(100 倍). c:HE 染色(200 倍).全肺胞内に類円形層状の石灰化物質を認めた.
p.26
1 ⿟ 肺 胞 微 石 症

遺伝子が同定された1).現時点においては肺移植以外に有効な治療法がなく,本症例もNPPV 導入で一時的な呼吸状態の改善をみたものの,徐々に進行する病態に対し有効な治療法は見い出せなかった.今後は病態遺伝子に対する遺伝子治療の開発などが期待される. ■文献

1)Huqun, Izumi S, Miyazawa H, et al. Mutations in the SLC34A2 gene are associated with pulmonary alveolar microlithiasis. Am J Respir Crit Care Med 2007; 175: 263-268
p.27
第2 章閉塞性細気管支炎
p.28
1.背景

閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)とは,特発性もしくは様々な原因により,小気管支から膜性細気管支の内腔が肉芽組織や線維組織によって著しい狭窄・閉塞が起こった状態である.細気管支の閉塞性変化は非可逆的であり,臨床的に呼吸不全を伴うなどBO の予後はいまだ極めて不良である1, 2).骨髄移植や心肺移植などの移植医療の進歩に伴いBO の合併が報告されるようになった.そうしたなか,BO の病態を深く理解してBO という疾患への広い認識をBO の診療にかかわる医師へ促すために,2003〜2004 年に厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班において,日本初のアンケート全国調査がなされた.その基礎情報をもとに,呼吸器領域を専門とする臨床医・放射線画像診断医・病理医からなる多専門的チーム(multidisciplinary team)が構成されて,病理診断がなされたBO 症例に対して詳細な症例解析を実施することになった.病理診断が行えた症例集積のために二次アンケート調査が行われた.アンケート送付病院1,815 病院からアンケート回答が得られた595 部門から,病理確定のBO 症例数が93 症例あるという回答が得られた.臨床診断に基づくBO 症例が384 症例であったことからもBOに対する組織生検の困難さがうかがえた.そのなかで,臨床・画像・病理による集学的・多専門的アプローチ(multidisciplinary approach)を実施して,BO の診断と特徴に関する評価が行えた15 例を「第2 章-D.症例提示」に提示することができた. 2.臨床症状

BO をきたす代表的な関連疾患を表1 にあげる.発症の機序は多様であることが考えられている3〜9).「第2 章-D.症例提示」のなかでは,健康食品摂取(Sauropus androgynus),関節リウマチ,Sjögren 症候群,扁平苔癬,Stevens-Johnson 症候群,悪性リンパ腫,骨髄移植,肺移植を基礎疾患とするBO が提示された. BO を発症する可能性が示された上記の原疾患を考えると,自己免疫異常を起因とする機序が推察されるが原因は特定できていない.本疾患の発症初期は無症状であることが多いため疾患の合併を念頭に置き下記の検査を用いて評価することがなければ診断は困難である.進行するに従って,息切れ,乾性咳嗽,労作時呼吸困難が出現する.提示されている症例でも,その多くは労作時の呼

吸困難を主訴に精査が開始されていることが多い.これは後述されるconstrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見に伴う気流制限が原因と考えられる10).さらに病期が進行すると,細気管支閉塞部位より中枢の気管支拡張や繰り返す気道感染,胸腔内圧上昇による気胸・縦隔気腫などを合併することがある.原因疾患の発症からBO の発症までの期間は様々であるため,BO を発症する可能性が示された上記の原疾患を有する症例を診療する場合に,原因が特定できない進行する呼吸器症状を呈した場合にはBO を鑑別疾患にあげることが重要と考えられた.提示された症例での症状発現から転帰までの観察期間は,中央値64.7 ヵ月(range:4.0〜206.7 ヵ月)であった. 3.診断

本疾患は細気管支内腔の狭窄あるいは閉塞により,air trap が生じて,肺の過膨張が引き起こされるため,発症時には呼吸機能検査上,1 秒率の低下,残気量の増加ならびに末梢気道障害を反映して,V

.

50/V .

25 の上昇,最大

中間呼気速度の低下などの閉塞性換気障害を認める.また,BO の画像診断では,高分解能CT の吸気・呼気相撮影が有用であるとされている.これは,狭窄・閉塞している細気管支領域でのair trap を反映してモザイク様となり,呼気時に増強する.しかし,このモザイクパターンは,BO に特異的な所見ではなく,気管支喘息,肺血栓塞栓症,その他の細気管支病変による気道狭窄をきたす疾患でもみられる.BO の確定診断には,外科的肺生検が大変重要であるが,患者の全身状態ならびに低肺機能のため

臨床像

A

表1 BO をきたす代表的な原因特発性(原因の特定できないもの)感染症(アデノウイルス,RS ウイルス,マイコプラズマ)吸入ガス・粉じん(二酸化窒素,二酸化硫黄,アスベスト,硅素)健康食品(Sauropus androgynus)膠原病(関節リウマチ,Sjögren 症候群)リンパ腫(臓器移植を伴わない)臓器移植(骨髄,肺,心肺)薬剤反応(ペニシラミン)皮膚疾患(Stevens-Johnson 症候群,扁平苔癬)びまん性細気管支神経内分泌細胞過形成
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に手術が不可能であることが少なくない.そこで国際心肺移植学会は,肺移植後のBO の早期診断に対して閉塞性細気管支炎症候群(bronchiolitis obliterans syndrome: BOS)の概念を提唱し,主に呼吸機能検査による診断基準(FEV1,FEF 25〜75%のベースラインからの変化率)を設け,早期の診断・治療を試みている12, 13).またHasegawa らは,肺血流・換気シンチグラフィがBO の早期診断に有用であると報告している3).これは病変部において肺換気および血流シンチグラフィで多発性陰影欠損を認めるというもので,実施可能な症例においては,有用な検査のひとつと考えられる. 4.治療

BO という疾患はまれな疾患であり,また,概念が十分浸透していなかった背景から,BO の治療薬で保険収載薬はないが,BO の病態上治療効果が期待されうる処方例,ならびに研究レベルで報告されている治療について以下に記載する.

BO の治療法としては,過剰の免疫応答を抑制する目的で,ステロイド,カルシニューリン阻害薬,アザチオプリン,mTOR 阻害薬(シロリムス),抗胸腺細胞グロブリン療法などが行われてきたが,20%未満の奏効率で,約70%の患者が3 年以内に死亡する13, 14).また,これら薬剤の副作用も大きな問題である.近年,より副作用の少ない少量マクロライド療法15),ロイコトリエン受容体拮抗薬16),N-アセチルシステイン薬(N-acetyl cysteine: NAC)17),吸入ステロイド18),ステロイドとアドレナリンβ 刺激薬の吸入配合薬(ブデソニド/ホルモテロール)19),吸入コリン薬(チオトロピウム)20)など自覚症状,呼吸機能の安定化あるいは改善をもたらすといった報告がされてきた.さらに,早期BO に対して,吸入シクロスポリン,アジスロマイシンの有用性が報告されており,治療後の1 秒量あるいは予後の改善が得られている21, 22).最近では,造血幹細胞移植後のBO に対して,吸入ステロイド(フルチカゾン),アジスロマイシンならびにロイコトリエン受容体拮抗薬や,吸入配合薬(ブデソニド/ホルモテロール),ロイコトリエン受容体拮抗薬ならびにNACによる3 剤併用療法が自覚症状,呼吸機能の改善をもたらしたとする報告もみられる23, 24).動物実験モデルにおけるピルフェニドンやタクロリムスなどの有用性を示す報告もみられるが,ヒトでの有効性は定かではない25, 26).さらに,ヒトの気道平滑筋細胞を用いたin vitro の実験では,NAC がBO 形成に深く関与するIL-17 誘導のIL-8を抑制することが報告されている27).

一方,リモデリング期における細気管支の閉塞性変化は非可逆的であり,これら内科的薬物治療に限界がみられるなか,重症例では肺移植の適応となる.日本では脳死ドナーの数が少なく,生体肺移植のほうが多く実施されている.日本の肺移植適応疾患として最も多いのが,

特発性肺動脈性肺高血圧症であり,次いでリンパ脈管筋腫症,特発性間質性肺炎,4 番目に多いのがBO である.しかしながら,肺移植後の最も頻度の高い死亡原因として移植後6 ヵ月以降に起こりやすい慢性移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)に伴うBO があり,いまだ解決できない大きな問題となっている28).

したがって,BO の治療法は,確立されたものはなく,移植後のBO 患者を中心に早期治療介入ならびに予防が重要である.肺移植が不可能な患者においては,慢性閉塞性肺疾患(COPD)に準じた治療が選択されているのが現状である.

a.薬物療法

1)急性発症時メチルプレドニゾロン1 回500〜1,000mg 1 日1 回静脈注射,3 日間投与する.その後,ステロイド内服1 回1mg/kg 1 日1 回で開始し漸減する.

2)症状安定期COPD の治療の基本薬剤である長時間作用性吸入気管支拡張薬(長時間作用性抗コリン薬:LAMA,あるいは長時間作用性β 2 刺激薬:LABA)を吸入させる.

3)症状増悪時1呼吸困難感が強い場合や増悪を繰り返す場合:吸入

ステロイド,ステロイド内服のいずれか,あるいは併用する. 2喀痰症状が強い場合や感染を繰り返す場合:少量マ

クロライド療法と去痰薬を併用する. 3細菌感染の合併が疑われる場合:軽症例では経口抗

菌薬内服,重症例では合併症のリスクを鑑みて点滴抗菌薬の投与を行う.いずれにおいても,抗菌薬投与前に喀痰検査や血液培養などの菌検索を行う.

b.酸素療法

慢性呼吸不全に対する保険適用に準じて在宅酸素療法を行う.その他,患者の状況に応じて,非侵襲的酸素療法(noninvasive positve pressure ventilation:NPPV)や気管切開下に陽圧換気を行う侵襲的換気療法(tracheal intermittent positive pressure ventilation:TIPPV)を導入する.

■文献1)Barker AF, Bergeron A, Rom WN, et al. Obliterative bronchiolitis. N Engl J Med 2014; 370: 1820-1828 2)Verleden SE, Sacreas A, Vos R, et al. Advances in understanding bronchiolitis obliterans after lung transplantation. Chest 2016; 150: 219-225 3)Hasegawa Y, Shimokata K, Ichiyama S, et al. Constric- 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎
p.30
tive bronchiolitis obliterans and paraneoplastic pemphigus. Eur Respir J 1999; 13: 934-937 4)Oonakahara K, Matsuyama W, Higashimoto I, et al. Outbreak of Bronchiolitis obliterans associated with consumption of Sauropus androgynus in Japan--alert of food-associated pulmonary disorders from Japan. Respiration 2005; 72: 221 5)Homma S, Sakamoto S, Kawabata M, et al. Comparative clinicopathology of obliterative bronchiolitis and diffuse panbronchiolitis. Respiration 2006; 73: 481-487 6)van Rooy FG, Rooyackers JM, Prokop M, et al. Bronchiolitis obliterans syndrome in chemical workers producing diacetyl for food flavorings. Am J Respir Crit Care Med 2007; 176: 498-504 7)西原智恵,片平雄之,野上裕子,ほか.悪性リンパ腫の化学療法後に呼吸不全が進行し,閉塞性細気管支炎と診断された1 例.日呼吸会誌2014; 3: 281-286 8)Sugino K, Hebisawa A, Uekusa T, et al. Histopathological bronchial reconstruction of human bronchiolitis obliterans. Pathol Int 2011; 61: 192-201 9)Sugino K, Hebisawa A, Uekusa T, et al. Bronchiolitis obliterans associated with Stevens-Johnson Syndrome: histopathological bronchial reconstruction of the whole lung and immunohistochemical study. Diagn Pathol 2013; 8: 134 10)Travis WD. Non-Neoplastic Disorders of the Lower Respiratory Tract (Atlas of Nontumor Pathology). American Registry of Pathology, Wanshington DC, 2002 11)Estenne M, Maurer JR, Boehler A, et al. Bronchiolitis obliterans syndrome 2001: an update of the diagnostic criteria. J Heart Lung Transplant 2002; 21: 297-310 12)Stewart S, Fishbein MC, Snell GI, et al. Revision of the 1996 working formulation for the standardization of nomenclature in the diagnosis of lung rejection. J Heart Lung Transplant 2007; 26: 1229-1242 13)Chien JW, Duncan S, Williams KM, et al. Bronchiolitis obliterans syndrome after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation-an increasingly recognized manifestation of chronic graft-versus-host disease. Biol Blood Marrow Transplant 2010; 16: S106-S114 14)Barker AF, Bergeron A, Rom WN, et al. Obliterative bronchiolitis. N Engl J Med 2014; 370: 1820-1828 15)Benden C, Boehler A. Long-term clarithromycin therapy in the management of lung transplant recipients. Transplantation 2009; 87: 1538-1540 16)Verleden GM, Verleden SE, Vos R, et al. Montelukast for bronchiolitis obliterans syndrome after lung transplantation: a pilot study. Transpl Int 2011; 24: 651-656 17)Shohrati M, Aslani J, Eshraghi M, et al. Therapeutics effect of N-acetyl cysteine on mustard gas exposed patients: evaluating clinical aspect in patients with impaired pulmonary function test. Respir Med 2008; 102: 443-448 18)Bashoura L, Gupta S, Jain A, et al. Inhaled corticosteroids stabilize constrictive bronchiolitis after hematopoietic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant 208; 41: 63-67 19)Bergeron A, Chevret S, Chagnon K, et al. Budesonide/Formoterol for bronchiolitis obliterans after hematopoietic stem cell transplantation. Am J Respir Crit Care Med 2015; 191: 1242-1249 20)松山 航,山元滋樹,町田健太朗,ほか.チオトロピウムが著効した臨床的に診断した閉塞性細気管支炎の1 例.日呼吸会誌2006; 44: 404-409 21)Iacono AT, Johnson BA, Grgurich WF, et al. A randomized trial of inhaled cyclosporine in lung-transplant recipients. N Engl J Med 2006; 354: 141-150 22)Vanaudenaerde BM, Meyts I, Vos R, et al. A dichotomy in bronchiolitis obliterans syndrome after lung transplantation revealed by azithromycin therapy. Eur Respir J 2008; 32: 832-843 23)Williams Kirsten, Cheng GS, Pusic I, et al. Fluticasone, azithromycin, and montelukast treatment for new-onset bronchiolitis obliterans synddrom after hematopoietic cell transplantation. Biol Blood Marrow Transplat. 2015; 22; 710-716 24)Kim SW, Rhee CK, Kim YJ, et al. Therapeutic effect of budesonide/formoterol, montelkast and N-acetylcysteine for bronchiolitis obliterans syndrome after hematopoietic stem cell transplantation. Respir Res 2016; 17: 63

25)McKane BW, Fernandez F, Narayanan K, et al. Pirfenidone inhibits obliterative airway disease in a murine heterotopic tracheal transplant model. Transplantation 2004; 77: 664-669 26)Hollmen M, Tikkanen JM, Nykanen AI, et al. Tacrolimus treatment effectively inhibits progression of obliterative airway disease even at later stages of disease development. J Heart Lung Transplant 2008; 27: 856-864 27)Wuyts WA, Vanaudenaerde BM, Dupont LJ, et al. Nacetylcysteine inhibits interleukin-17-induced interleukin-8 production from human airway smooth muscle cells: a possible role for anti-oxidative treatment in chronic lung rejection? J Heart Lung Transplant 2004; 23: 122-127 28)伊達洋至.肺移植と閉塞性細気管支炎.医学のあゆみ2010; 232: 253-256
p.31
閉塞性細気管支炎は,種々の原因によって生じる呼吸細気管支から膜性細気管支壁の破壊性病変あるいは気道壁の線維化により高度の呼吸機能障害を呈する進行性の予後不良性疾患である.最近の蛇沢らの検討によれば関節リウマチでは,閉塞性細気管支炎の一型としてcellular destructive bronchiolitis(CDB)がみられ,constricitve bronchiolitis とは異なった病理像を呈する1).その他の疾患でみられる閉塞性細気管支炎との画像的相違は十分明らかになっていない.本症例シリーズにはCDB の例は含まれなかった.

閉塞性細気管支炎は,気道壁の線維化がみられ,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)などの細胞浸潤を主体とする細気管支炎とは異なる形態を示す.画像所見も細胞性細気管支炎とは異なった形態的特徴を示す. 1.胸部X 線写真

胸部X 線写真では,肺の含気増加による肺容積の増加と透過性亢進がその所見の主体になり,細気管支炎による肺の異常陰影は目立たないのが普通である.すなわち比較的細胞浸潤に乏しい細気管支炎自体は異常陰影を示さず,その結果生じたair trap による肺の含気増加が前面に出てくることになる.肺の透過性亢進は,肺の異常陰影をさらに目立たなくする.肺の含気増加は,横隔膜の低位平坦化,側面像における胸骨後部retrosternal areaの著明化と透過性亢進などの所見として示される(「第2章-D-症例6」図2,「第2 章-D-症例10」図3 参照). 2.胸部CT

胸部CT でも,細気管支炎自体の所見である小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影はDPB などの細胞性細気管支炎に比べて目立たない.しかし,細気管支レベルの閉塞性病変に肺の吸収値の低下,air trap によるモザイク様所見(「第2 章-D-症例3」図1 参照),中層部から中枢部気管支の壁肥厚を伴う拡張などがその所見の主体となる(「第2 章-D-症例7」図2,図4 参照)2〜6).もちろん感染などを合併するとコンソリデーションやすりガラス影を示す.

a.モザイク様所見とair trap

細気管支病変によりair trap が生じると病変のある細気管支の支配域(主に小葉単位)の肺実質の吸収値が低下して(黒く)みえる.正常または正常に近い肺と混在して

白い部分と黒い部分が混在してみえる.これをmosaic appearance(モザイク様所見)と称する.透過性の亢進した領域内部では,肺血管陰影が狭小化してみえる.モザイク様所見を解析する場合には,考慮すべきことが2 つある.ひとつは,モザイク様所見は,気道病変のみならず肺高血圧症などの血管病変でも認められる点である.気道病変が存在し,その領域での換気が減少すればその領域の血管に攣縮がみられ,血管病変が存在し血流が低下すれば気道に攣縮がみられ換気も低下する.これは肺の換気血流不均等を減少させる一種の生体防護機構のひとつであり,換気と血流は相互に関連していることに注意すべきである.また,モザイク様所見にみえても小葉単位で肺病変に強弱がある場合,透過性のより高い小葉が病変がより強く,病変の軽度は小葉がより透過性が低下していない場合もありうる点に注意が必要である.このような場合,透過性の低い細気管支病変によるair trapの存在を証明する方法として,呼気CT があげられる.気道病変が存在すれば,呼気CT で,正常に近い肺(小葉)の透過性は低下し(白く)みえるのに対して,気道病変の存在する部分では肺(小葉)の含気はあまり変わりがなくモザイク様所見がより強調された画像になる.また,透過性の変化しない部位(小葉)の容積は変化が少ないので相対的に他の部位に比べて容積が大きくみえる.air trap の程度は,病変の進行度合いと相関する7〜9).呼気CT による肺野CT 値の変化を定量的に扱うことにより病変の評価が可能になる10).病変を定量的に扱うのに,非放射性Xe の吸入下の有用性も報告されている11).病変の早期発見には呼吸機能検査のほうがCT より優れている12).呼気CT のair trap を評価する場合に重要なのは,喫煙者や大気汚染地区の居住者では,肺底部S10 などに軽度のair trap がみられることはまれではなくair trap があってもその意味づけには慎重な態度が要求される.

b.中層部から中枢部気管支の拡張と壁肥厚

本疾患では,主に進行期に末梢細気管支病変の閉塞性病変の結果,それより中枢の中層部から中枢部気道壁の肥厚と拡張性変化がみられる.末梢細気管支炎自体を直接に反映する画像所見が乏しくむしろ中層部から中枢部気道壁の拡張と壁肥厚が前景に立つ例が多い.気管支拡張の判断基準としては,一般的にNaidich らによる診断2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

画像所見

B
p.32
基準13)が用いられることが多い.これは気管支の内腔が並走する肺動脈径よりも太い場合に気管支拡張があると判断するものであるが,あくまで並走する血管径との比較であり血管病変の有無にも影響を受けるので必ずしも満足できる診断基準ではないとされる.中層部から中枢部気道病変の形成には,併存する感染症も関連している可能性がある.

c.air leakage syndrome 14)

BO ないし組織所見で確認を得られていないbronchiolitis obliterans syndrome(BOS)で,骨髄移植後に気胸や縦隔気腫が発生するair leakage syndrome が記載されている.

■文献1)Sugino K, Hebisawa A, Uekusa T, et al. Histopathological bronchial reconstruction of human bronchiolitis obliterans. Pathol Int 2011; 61: 192-201 2)Ng YL, Paul N, Patsios D, et al. Imaging of lung transplantation: review. AJR Am J Roentgenol. 2009; 192 (3 Suppl): S1-S13 3)Gunn ML, Godwin JD, Kanne JP, et al. High-resolution CT findings of bronchiolitis obliterans syndrome after hematopoietic stem cell transplantation. J Thorac Imaging 2008; 23: 244-250 4)Waitches GM, Stern EJ. High-resolution CT of peripheral airways diseases. Radiol Clin North Am 2002; 40: 21- 29 5)Worthy SA, Müller NL. Small airway diseases. Radiol Clin North Am 1998; 36: 163-173 6)Aquino SL, Webb WR, Golden J. Bronchiolitis obliterans associated with rheumatoid arthritis: findings on HRCT and dynamic expiratory CT. J Comput Assist Tomogr 1994; 18: 555-558 7)Choi YW, Rossi SE, Palmer SM, et al. Bronchiolitis obliterans syndrome in lung transplant recipients: correlation of computed tomography findings with bronchiolitis obliterans syndrome stage. J Thorac Imaging 2003; 18: 72-79 8)Miller WT Jr, Kotloff RM, Blumenthal NP, et al. Utility of high resolution computed tomography in predicting bronchiolitis obliterans syndrome following lung transplantation: preliminary findings. J Thorac Imaging 2001; 16: 76-80 9)Ng CS, Desai SR, Rubens MB, et al. Visual quantitation and observer variation of signs of small airways disease at inspiratory and expiratory CT. J Thorac Imaging 1999; 14: 279-285 10)Kim HG, Shin HJ, Kim YH, et al. Quantitative computed tomography assessment of graft-versus-host diseaserelated bronchiolitis obliterans in children: a pilot feasibility study. Eur Radiol 2015; 25: 2931-2936 11)Goo HW, Yang DH, Hong SJ, et al. Xenon ventilation CT using dual-source and dual-energy technique in children with bronchiolitis obliterans: correlation of xenon and CT density values with pulmonary function test results. Pediatr Radiol 2010; 40: 1490-1497 12)Konen E, Gutierrez C, Chaparro C, et al. Bronchiolitis obliterans syndrome in lung transplant recipients: can thin-section CT findings predict disease before its clinical appearance? Radiology 2004; 231: 467-473 13)McGuinness G, Naidich DP, Leitman BS, et al. Bronchiectasis: CT evaluation. AJR Am J Roentgenol 1993; 160: 253-259 14)Franquet T, Rodríguez S, Hernández JM, et al. Air-leak syndromes in hematopoietic stem cell transplant recipi-

ents with chronic GVHD: high-resolution CT findings. J Thorac Imaging 2007; 22: 335-340
p.33
閉塞性細気管支炎は両肺びまん性に,主として小気管支から細気管支(まれに中枢気管支)をおかし,気道閉塞を引き起こす疾患である.帰属する肺胞領域の変化はわずかである. 1.閉塞性細気管支炎の表記

閉塞性細気管支炎の英語表記には,臨床や病理表記が混在し,オリジナルの定義は微妙に違う部分があるが, bronchiolitis obliterans,obliterative bronchiolitis,constrictive bronchiolitis,constrictive bronchiolitis obliterans,small airway disease などがある1〜3).このうちbronchiolitis obliterans(BO)は日本では広く用いられてきた用語である. 2.病理学的特徴

BO の病理所見はconstrictive type:constrictive bronchiolitis として記載されている1〜3).持続性の気道上皮傷害による慢性反応によるもので,自己免疫疾患4)や移植関連病変5, 6)などでよくみられる.気道粘膜上皮が壊死もしくは剝離し,気道壁から內腔に向かってフィブリン・炎症細胞の滲出,泡沫状組織球の集簇が認められるほか,時間を追うに従って肉芽組織や線維化が形成される.小円形細胞浸潤は,症例によって高度な症例もあるが,線維化に至った状況では軽度な浸潤がみられるのみである.これら病変によって気道內腔が狭窄・閉塞される.気道周囲の肺胞への炎症波及は通常は軽微である.

constrictive bronchiolitis は両肺びまん性に病変が形成されるが,巣状・散在性であり,病変間に著変のない気道が介在する.さらには前述のとおり,気道壁・周囲の炎症が軽いため,HE 染色のみでは閉塞性病変を見逃す危険性が高い.特に,線維瘢痕化により完全に閉塞した細気管支は,単に微小な線維化巣と見誤られる可能性がある.そのため診断には,弾性線維染色(Elastica Masson Goldner 染色またはElastica van Gieson 染色)で肺動脈に伴走する気道を確認し気道腔の病変を詳細に検討すべきである(「第2 章-D-症例10」図6 参照).

BO には,ウイルス感染や化学物質吸入7, 8)での気管支傷害後に早期にみられるproliferative type としての別の病理分類も以前にはみられた2, 8).これは気道の上皮や基底膜傷害の炎症滲出後の器質化で,気道内腔をほぼ占拠するポリープ状の肉芽組織で,細気管支の一過性の傷害からの活動性治癒過程の場合である.しかし,prolifera-

tive type の器質化病変は呼吸細気管支内腔から肺胞腔にまで連続するため,器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia:BOOP)・特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia: COP)と異同の問題もあり,現在では臨床・病理学的なBO の分類として使用されない傾向にある. 3.endobronchiolitis obliterans とcellular destructive bronchiolitis

BO の確定には病理組織学的診断が決定的な役割を果たすが,経気管支肺生検で有意な所見が得られる頻度は低く,外科的肺生検が必要となることが多い.臨床的には高度な閉塞性障害がみられても,検体に含まれる細気管支のうち,病変は一部であったりするし,一方で重度の喫煙者などでは,ある程度の気管支上皮下の線維化が普通にみられるので注意が必要である5).

近年,杉野,蛇沢らは,9 例のBO のconstrictive bronchiolitis の病理像検討で,気道壁の弾性線維や平滑筋は保たれ破壊所見が乏しく病変の主座が気道粘膜・内腔を主体とするendobronchiolitis obliterans(EBO)病変6 例と気道の炎症・破壊が強く平滑筋や弾性線維の消失傾向のcellular destructive bronchiolitis(CDB)3 例の2タイプに分ける報告をしている.EBO 病変は前述のconstrictive bronchiolitis とほぼ一致した病型であり,膜性細気管支主体の病変分布が断続的で,末梢の呼吸細気管支への炎症波及は乏しい.他方,CDB では気道炎症は気道全層から周囲肺胞領域に及びやすく,膜性細気管支主体の狭窄病変分布が連続的で末梢の気道まで波及すると記載している9).

以下に閉塞性細気管支炎の病因リストを示すが,「第2章-D.症例提示」で取りあげた15 例をそれぞれ臨床背景から推定される関連病因部位に追記した.

<閉塞性細気管支炎の病因>

1:移植関連 transplantation(rejection,graft-

versus-host disease)肺移植,骨髄移植5, 6)<症例1><症例2><症例3> 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

病理所見

C
p.34
2:結合組織病 systemic connective tissue dis-

ease 4) rheumatoid arthritis 4)<症例4><症例5><症例6><症例7>,Sjögren syndrome<症例8><症例9>,systemic lupus erythematosus,eosinophilic fasciitis,scleroderma,ankylosing spondylitis, lichen planus<症例10> 3:paraneoplastic syndromes

paraneoplastic pemphigus 10)(malignant lymphomas<症例11>,Castleman disease,lichen planus<症例10>) 4:炎症性腸疾患 inflammatory bowel disease 5:薬剤性 drugs

penicillamine<症例4>,cocaine,gold,chemotherapeutic agents(lomustine,5-fluorouracil) 6:Stevens-Johnson syndrome 11)<症例12> 7:Sauropus androgynus ingestion 12)<症例

13><症例14><症例15> 8:感染性器質化 organizing infectious exudates

adenoviruses,respiratory syncytial virus,influenza virus,measles virus,Mycoplasma 7),酸化窒素nitrogen dioxide(silo-filler’s disease サイロ病)13) 9:化学ヒューム吸入 chemical fume inhalation

ジアセチルdiacetyl(popcorn lung)14),塩化チオニルthionyl chloride(リチウム電池製造)15),ホスゲン・硫黄マスタードphosgene・sulphur mustard (戦争ガス)16),fire fumes 10:idiopathic(含むdiffuse idiopathic neuroen-

docrine cell hyperplasia)

■文献1)Gosink BB, Friedman PJ, Liebow AA. Bronchiolitis obliterans. Roentgenologic-pathologic correlation. Am J Roentgenol Radium Ther Nucl Med 1973; 117: 816-832 2)Colby TV. Bronchiolitis. Pathologic considerations. Am J Clin Pathol 1998; 109: 101-109 3)Wright JL, Cagle P, Churg A, et al. Diseases of the small airways. Am Rev Respir Dis 1992; 146: 240-262 4)Geddes DM, Corrin B, Brewerton DA. Progressive airway obliteration in adults and its association with rheumatoid disease. Q J Med 1977; 46: 427-444 5)Grossman EJ, Shilling RA. Bronchiolitis obliterans in lung transplantation: the good, the bad, and the future. Transl Res 2009; 153: 153-165 6)Sato M, Keshavjee S. Bronchiolitis obliterans syndrome: alloimmune-dependent and -independent injury with aberrant tissue remodeling. Semin Thorac Cardiovasc Surg 2008; 20: 173-182 7)Becroft DM. Bronchiolitis obliterans, bronchiectasis, and other sequelae of adenovirus type 21 infection in young children. J Clin Pathol 1971; 24: 72-82 8)Epler GR, Colby TV. The spectrum of bronchiolitis obliterans. Chest 1983; 83: 161-162 9)Sugino K, Hebisawa A, Uekusa T, et al. Histopathological bronchial reconstruction of human bronchiolitis obliterans. Pathol Int 2011; 61: 192-201 10)Chin AC, Stich D, White FV, et al. Paraneoplastic pemphigus and bronchiolitis obliterans associated with a mediastinal mass: a rare case of Castleman’s disease with respiratory failure requiring lung transplantation. J Pediatr Surg 2001; 36: E22 11)Shah AP, Xu H, Sime PJ, et al. Severe airflow obstruction and eosinophilic lung disease after Stevens-Johnson syndrome. Eur Respir J 2006; 28: 1276-1279 12)Lai RS, Chiang AA, Wu MT, et al. Outbreak of bronchiolitis obliterans associated with consumption of Sauropus androgynus in Taiwan. Lancet 1996; 348: 83-85 13)Fleetham JA, Munt PW, Tunnicliffe BW. Silo-filler’s disease. Can Med Assoc J 1978; 119: 482-484 14)Galbraith D, Weill D. Popcorn lung and bronchiolitis

obliterans: a critical appraisal. Int Arch Occup Environ Health 2009; 82: 407-416 15)Konichezky S, Schattner A, Ezri T, et al. Thionyl-chloride-induced lung injury and bronchiolitis obliterans. Chest 1993; 104: 971-973 16)Dompeling E, Jobsis Q, Vandevijver NM, et al. Chronic bronchiolitis in a 5-yr-old child after exposure to sul-

phur mustard gas. Eur Respir J 2004; 23: 343-346
p.35
⿟症 例:19 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:10 歳時に前駆B リンパ芽球性白血病/リンパ腫と診断され,化学療法後,同種骨髄移植を実施した. 1 年後リンパ腫が再発したため,化学療法後同種骨髄移植を再度実施.2 回目の骨髄移植後1 年経過時点で,肺移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)を発症し,当院コンサルトとなった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.26L,%VC 39.9%,FEV1 0.57L,%FEV1 24.2%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.356,PaCO2 49.6Torr,PaO2 73.4Torr.

⿟臨床経過:肺GVHD に対して免疫抑制薬による治療を行った.肺GVHD 発症6 ヵ月後にリンパ腫を再発し,化学療法を実施.再発6 ヵ月後に労作時呼吸困難が増強し,臨床的に移植後BO と診断された.呼吸不全に対し吸入気管支拡張薬と在宅酸素療法を導入した.BO 診断2年9 ヵ月後に両側生体部分肺移植(右:父右下葉,左:母左下葉)を施行した.経口ステロイドおよび免疫抑制薬による治療を行っていたが,肺移植後17 ヵ月後に上咽頭malignant lymphoma extranodal marginal zone B-cell lymphoma of MALT type を発症した.化学療法を施行するも14 ヵ月後永眠された.最初の骨髄移植から8 年,肺移植後2 年6 ヵ月後であった.

BO の転帰は死亡で,BO 発現日から転帰までの日数は1,940 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. ⿟病理所見:図3〜5.

⿟考察本症例は,骨髄移植に伴うBO の一例である.移植後GVHD に対する治療の経過中に労作時呼吸困難が出現した.自家(autologous)造血幹細胞移植と比較して,同種(allogeneic)造血幹細胞移植はBO の発症リスクであることが報告されている1).本症例においても,胸部CT において呼気時の撮影を加えることによってair trap の所見が増強していることが認められる.著明な混合性障害を呼

吸機能検査で認め,この時点でBOS と診断.本症例は,両肺移植がなされた.切除肺では,BO に特徴的なconstrictive bronchiolitis 所見を認めた.本疾患では,肺移植後のBO の発症は確認されていない.

■文献1)Soubani AO, Uberti JP. Bronchiolitis obliterans following haematopoietic stem cell transplantation. Eur Respir J 2007; 29: 1007-1019 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例提示

D

症例1前駆B リンパ芽球性白血病/リンパ腫に対する臓器移植(骨髄)に伴う閉塞性細気管支炎の一例

図1 胸部X 線写真

両側肺門は挙上.右肺下肺野に浸潤影を認める.
p.36
a b

c d

図2 胸部CT a・c:吸気,b・d:呼気.肺野は過膨張を示しているが,両側胸水を伴っている.右下葉には浸潤影を認め,肺炎併発を疑う(➜).
p.37
2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

★ ★

図3 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 中拡大.細気管支壁の内腔側が,一部肥厚している所見(➜)がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).気管支上皮下に炎症細胞浸潤が乏しい肥厚した線維化所見(★)がみられる.上皮の剝離は目立たない.

a b

★

★

★

図4 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 弱拡大.弾性線維,平滑筋の位置(➜)からは,肺動脈(★)と比べやや拡張傾向もある気管支の内腔の半分(★)は線維性に閉塞している. b:HE 染色 中拡大(a の黒枠部位).平滑筋(➜)で囲まれた気管支内腔は炎症細胞浸潤を伴い線維性に閉塞している.より内腔側の気管支の線維化部は幼若な傾向(★)がみられる.
p.38
a b

★

★

★

図5 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 中拡大.図4a の赤枠部位.弾性線維(➜)で囲まれた気管支壁の内腔が線維化をきたし,閉塞(★)している.気管支壁の平滑筋(▶)は極一部にしか残存が確認できない. b:HE 染色 強拡大.気管支は泡沫状組織球(▶),リンパ球などの浸潤を伴って線維性に内腔が閉塞している(★).平滑筋(▶).
p.39
⿟症 例:16 歳,男性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:14 歳時に急性リンパ球性白血病と診断され,化学療法後自家末梢血幹細胞移植を実施(ドナー:兄).移植1 ヵ月後,皮膚・消化管において移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)が発症した.移植13 ヵ月後に労作時呼吸困難を自覚して,当院呼吸器科紹介となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.84L,%VC 46.2%,FEV1 0.4L,%FEV1 24.7%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.377,PaCO2 51.8Torr,PaO2 76.8Torr.

⿟臨床経過:臨床的にBO が疑われ,呼吸不全を認めて在宅酸素療法を行った.移植登録を行って待機期間中に非結核性抗酸菌症(Mycobacterium intracellulare)の合併があり治療を要した.呼吸困難発症2 年後に脳死両肺移植が行われた.経口ステロイド薬および免疫抑制薬の治療を併用して肺移植3 ヵ月後の時点でPaO2 73.9Torr を2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例2急性リンパ球性白血病に対する臓器移植(末梢血幹細胞)に伴う

閉塞性細気管支炎の一例

図1 胸部X 線写真

肺門は挙上しており,上葉の容積減少が疑われる.残りの肺野では,末梢の血管は疎となっており,過膨張傾向と思われる.

a b

c d

図2 胸部CT

吸気CT(a・c)ではモザイク様所見を示す部分が呼気CT(b・d)ではair trap であることがわかる(➜).
p.40
維持していた.在宅酸素療法は必要とせず,肺移植後約5 年経過時点で通院継続している.

BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は2,495 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. ⿟病理所見:図3〜6. ⿟考察

本症例は,末梢血幹細胞移植に伴うBO の一例である.移植後GVHD に対する治療の経過中に労作時呼吸困難が出現した.胸部CT において呼気時の撮影を加えることによってair trap の所見が増強していることが観察できる(図2).著明な混合性障害を呼吸機能検査で認め,この時点でBOS と診断された.The International Bone Mar-

a b

細気管支

気管支肺動脈

図3 閉塞性細気管支炎(いずれもHE 染色)

細気管支内腔は,硝子性線維化により完全に閉塞しており,線維化内にはリンパ管および毛細血管が壁から侵入している.細気管支の平滑筋は残存している(b:➜).気管支は著変がない.

図4 閉塞性細気管支炎(HE 染色)

膜性細気管支粘膜にmyxoid change を示す肉芽組織が形成され,泡沫状組織球が内腔に滲出している.図3 の病変に比して新しい病変であり,新旧の病変が混在していることがわかる. ➜は細気管支壁の平滑筋を示す.細気管支

間質性肺炎肺動脈図5 閉塞性細気管支(➜)と間質性肺炎(HE 染色)

移植関連としても矛盾しない間質性肺炎が合併している.
p.41
row Transplantation Registry(IBMTR)の報告では, 6,275 例のHLA 同種幹細胞移植のなかで,組織診断のあるBO の発症頻度は移植後2 年時に1.7%であり,末梢血幹細胞移植は骨髄移植と比較して約3 倍のBO 発症リスクであったとされている1, 2).本症例は,両肺移植を行った.切除肺では,BO の所見とともに間質性肺炎の所見を認めた.また,同一スライド内の気管支では活動性のある所見がみられないこともBO の発症部位が細気管支領域であることを示唆している. ■文献

1)Santo Tomas LH, Loberiza FR Jr, Klein JP, et al. Risk factors for bronchiolitis obliterans in allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation for leukemia. Chest 2005; 128: 153-161 2)Soubani AO, Uberti JP. Bronchiolitis obliterans following haematopoietic stem cell transplantation. Eur Respir J 2007; 29: 1007-1019 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

図6 閉塞性細気管支炎と間質性肺炎(いずれもHE 染色)

a:閉塞性細気管支炎の強拡大. b:間質性肺炎気道粘膜の線維化とともに,内腔に向かってポリープ状に突出する線維化(a:➜)も認められる.間質性肺炎は,壁在性および肺胞腔の器質化病変と胞隔炎から成っている.
p.42
⿟症 例:41 歳,女性. ⿟主 訴:咳嗽. ⿟現病歴:急性骨髄性白血病に対して,同胞間末梢血幹細胞移植を施行.移植後約9 ヵ月で呼吸困難が出現した.呼吸困難が悪化したため,当院受診となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 2.22L,%VC 76.0%,FEV1 1.43L,%FEV1 51.0%と,呼吸不全が進行し,閉塞性障害が認められた.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.39,PaCO2 50.1Torr,PaO2 75.1Torr.

HRCT 上モザイク様所見(図1〜4)が観察されたため,移植後のBO の臨床診断がなされた.

⿟臨床経過:吸入気管支拡張薬およびステロイド治療を開始したが症状の改善がなく,骨髄移植後約4 年で生体肺移植を施行.摘出肺にて病理学的にもBO の所見を認めた.移植片肺は移植幹細胞と同一ドナーからの提供であったことから,肺移植後の経過は良好であり,肺移植後7 年経過時点で身体状態は維持されている.

BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は4,073 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. ⿟病理所見:図3〜5.

症例3臓器移植(末梢血幹細胞)に伴う閉塞性細気管支炎の一例

a b

図1 閉塞性細気管支炎発症時HRCT

a:上肺のCT では,中層部気管支の拡張,壁肥厚,モザイク様所見を認める.小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影は目立たない.

b:下肺レベルのCT では,モザイク様所見がより明瞭である.

a b

図2 閉塞性細気管支炎発症時呼気HRCT

a:図1a とほぼ同一レベルであるが,吸気時CT と大きな差がない. b:図1b と同一レベルの呼気時CT であるが,モザイク様所見がより明瞭となっておりair trap が存在していることを示唆する.
p.43
2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b c

★

図3 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 弱拡大.肺動脈(★)の隣の細気管支の内腔に一部閉塞所見(青枠部位)がみられる. b:Elastica van Gieson 染色 強拡大(a の青枠部位).平滑筋(▶)所見より,細気管支内腔に線維化を伴う閉塞性病変がみられる. c:HE 染色 強拡大(b の赤枠部位).気管支平滑筋(▶)所見より,細気管支内腔に線維化を伴う閉塞性病変がみられる.細気管支上皮の被覆(➜)がある気道の腔はわずかである.細胞浸潤は乏しい.

a b

★

★

図4 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大(図3a の黒枠部位).平滑筋(▶)所見より,肺動脈(★)の隣の細気管支の内腔に弾性線維の増生(★)を伴う線維化による閉塞性病変がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の青枠部位).気管支上皮の被覆(➜)および気管支平滑筋(▶)所見より,細気管支内腔に線維化を伴う閉塞性病変がみられる.細胞浸潤は乏しい.
p.44
⿟考察本症例は,末梢血幹細胞移植に伴うBO の一例である.本症例では,労作時呼吸困難を伴ったが呼吸器症状以外には明らかな移植後GVHD を示唆する所見は観察されなかった.胸部CT 画像の呼気時の撮影によってair trap の増強が観察された.著明な混合性障害を肺機能検査で認めていて,この時点でBOS と診断された.本症例は,生体肺移植がなされた.切除肺では,BO の所見が観察された.本症例は,移植片肺は移植幹細胞と同一ドナーからの提供であり,生着およびその後の肺機能の維持が得られていることが興味深い.移植後GVHD の発症において,レシピエントが持っているドナー抗原に対する抗体

(donor-specific antibody:DSA)の出現後の経過がBOSの発症に関連する可能性が示唆されている1).今後のさらなる研究が期待される.

■文献1)Hachem RR, Yusen RD, Meyers BF, et al. Anti-human leukocyte antigen antibodies and preemptive antibodydirected therapy after lung transplantation. J Heart Lung Transplant 2010; 29: 973-980

a b

★

★

図5 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.平滑筋(▶)所見より,軟骨(★)を伴う気管支の内腔にも線維化を伴う閉塞性病変がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の青枠部位).軟骨(★)および平滑筋(▶)所見より,気管支内腔に線維化を伴う閉塞性病変がみられる.細胞浸潤は強くない.
p.45
⿟症 例:32 歳,女性. ⿟主 訴:咳嗽と呼吸困難. ⿟現病歴:32 歳時点で関節リウマチと診断,診断6 ヵ月後にd-ペニシラミンの内服を開始.内服開始3 ヵ月後より湿性咳嗽と呼吸困難を訴え当院受診となった.

⿟検査所見呼吸機能検査ではVC 1.5L,%VC 49.20%,FEV1 0.48L,%FEV1 30.2%と,高度の混合性障害があり,BOが疑われた.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.398,PaCO2 61.1Torr,PaO2 47.9Torr.胸部CT 上肺野の透過性亢進を認めた.

受診より1 ヵ月後,外科的肺生検にて確定診断に至った.

⿟臨床経過:ステロイドパルス療法およびステロイドとシクロホスファミドの内服加療を行い,閉塞性障害の進行が緩やかとなったことを確認した.しかしながら,確定診断2 ヵ月後より在宅酸素療法を導入.その後,維持療法としてステロイド,クラリスロマイシンが投与された.徐々にII型呼吸不全の進行を認めたが,その都度ステロイドパルス療法により酸素化の改善および二酸化炭素の貯留の軽快が得られた.また,両側の自然気胸を反復して合併するが,ドレナージ治療で制御できていた.診断後14 年を経て,日常生活動作(activities of daily living:ADL)は比較的良好に保たれており長期生存例と考えられた.

BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は4,675 日であった.

⿟画像所見:図1〜4. ⿟病理所見:図5〜8.

⿟考察本症例は,関節リウマチを基礎疾患とするBO の一例である.関節リウマチ発症早期に咳嗽と呼吸困難の臨床症状を示した.胸部CT ではair trap の所見が観察されるが呼吸機能検査で認める著明な混合性障害を説明できる肺実質病変が乏しいため,BO が鑑別にあがり外科的肺生2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例4関節リウマチ発症早期に閉塞性細気管支炎が併発した一例

図1 初診時胸部CT

両肺の透過性亢進と,透過性が相対的に亢進した(黒い領域)と正常に近い領域が混在するモザイク様所見がみられる.両肺に瘢痕様の結節性病変を認める.

図2 8 年後胸部CT

右肺は容積減少が進行し,胸膜下に斑状のコンソリデーションがみられる.気管支壁の肥厚を認めるが,気管支拡張の進行を認めない.右肺の感染による修飾が加わっている可能性を疑う.左肺の容積増加は進行しモザイク様所見を認める.図3 8 年後胸部CT

右肺の容積減少と胸膜に接する多発コンソリデーションを認める.中層部気管支壁の肥厚を認める.左肺の容積増加は進行しモザイク様所見を認める.
p.46
検を施行した.病理標本のルーペ像で示されるように,閉塞性・狭窄性病変を伴う細気管支を認めるが,高度な肺気腫などは認められない.病理所見では,BO に特徴的な所見(constrictive bronchiolitis)が同定されている.関節リウマチが基礎疾患にあり,胸部CT の軽微な異常では説明しがたい呼吸機能検査上の混合性障害を呈した症

例で,原因精査目的で外科的生検を行った.病理学的にconstrictive bronchiolitis を伴うBO と診断された貴重な症例と考えられる.

図4 8 年後胸部CT

両肺下葉で,気管支拡張の進行を認める.気管支壁肥厚も軽度にみられる.左肺下葉の瘢痕様結節は縮小傾向である.囊胞囊胞

図5 ルーペ像(Elastica van Gieson 染色)

小葉・細葉中心部に少数の囊胞を伴う.細気管支が濃染している(➜).

a b

図6 閉塞性細気管支炎(図5 の拡大像)

a:Elastica van Gieson 染色. b:HE 染色.膜性細気管支の粘膜が線維性に肥厚しているほか,myxoid change を示す肉芽組織が内腔に向かって突出している.気道壁の構造は保たれている(a).肉芽組織や気道壁に泡沫状組織球が集簇している(b:➜).
p.47
2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

図7 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色. b:HE 染色.膜性細気管支内腔に泡沫状組織球を伴う肉芽組織・線維化が突出している.リンパ球浸潤が一部に目立つ.

a b

囊胞

図8 閉塞性細気管支炎と囊胞

a:Elastica van Gieson 染色. b:HE 染色.閉塞性細気管支炎(➜)におかされた膜性気管支の末梢気道が囊胞に開口している(a:➜).
p.48
⿟症 例:63 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:関節リウマチと診断されて,メトトレキサート+プレドニゾロンで加療していた.診断および治療から13 年経過したころより,労作時呼吸困難が出現.当初,乾性咳嗽があったがすぐに消失.安静時は特に症状がない状態が続いた.前医にて労作時呼吸困難の悪化と閉塞性換気障害を指摘されて気管支拡張薬による治療を開始するも症状の改善を認めなかった.症状出現から8 ヵ月後に当院紹介となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.99L,%VC 75.1%,FEV1 0.86L,%FEV1 42.6%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.402,PaCO2 45.9Torr,PaO2 72.5Torr.

外科的肺生検にて病理学的にBO の診断となった. ⿟臨床経過:プレドニゾロンの増量および免疫抑制薬治療に加えてLAMA およびLABA の併用治療を開始した.自覚症状や閉塞性障害の改善は得られなかったもの

症例5関節リウマチ発症13 年後に閉塞性細気管支炎が発症した一例

図1 胸部X 線写真

末梢の血管は疎となっており,肺野は過膨張傾向と思われる.

a b

c d

図2 胸部CT

吸気CT(a・c)ではモザイク様所見を示す部分が呼気CT(b・d)ではその状態が変わらずair trap が存在していることがわかる(➜).気管支壁の肥厚像もみられる(➡).
p.49
39 の,治療の継続により閉塞性障害の進行を抑制できてお

り,診断および治療開始から2 年の経過で通院継続できている. BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は

880 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

★

図3 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.細気管支の内腔が一部肥厚している所見(➜)がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).気管支上皮は剝離傾向(➜)で,気管支上皮下には炎症細胞浸潤が乏しい偏心性に肥厚した線維化所見(★)がみられる.

a b

★

図4 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.平滑筋(➜),弾性線維で囲まれた細気管支の内腔が高度に狭窄している所見がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).一部炎症細胞浸潤を伴う線維化で気管支内腔が狭小化し,剝離傾向の上皮が被覆した気道腔(★)がわずかにみられる.
p.50
⿟病理所見:図3〜5.

⿟考察本症例は,関節リウマチを基礎疾患とするBO の一例である.関節リウマチに対する種々の免疫抑制薬を用いた長期の治療経過のなかで,労作時呼吸困難が出現してきた.関節リウマチの罹患期間やその治療内容がBO の発症とどのように関連するのかは今回の症例検討のなかでも明らかにはならなかった1).労作時呼吸困難の臨床症状と閉塞性障害があるにもかかわらず,胸部CT 画像でair trap の所見のほかには明らかな肺実質病変が乏しい点

は,その他のBO 症例と共通する点である.病理所見では,constrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見が同定されている.

■文献1)Devouassoux G, Cottin V, Liote H, et al. Characterisation of severe obliterative bronchiolitis in rheumatoid arthritis. Eur Respir J 2009; 33: 1053-1061

a b

★

★

図5 病理所見

a:HE 染色 中拡大.肺動脈(★)と伴走する細気管支構造が明らかではない. b:Elastica van Gieson 染色 中拡大.弾性線維(➜)で囲まれた細気管支の内腔が閉塞してしまっている陳旧化した線維化所見がみられる.
p.51
⿟症 例:51 歳,女性. ⿟主 訴:咳嗽,労作時呼吸困難. ⿟現病歴:約20 年前から湿性咳嗽と喘息発作様の症状が出現し,6 年前から黄色・粘稠の喀痰量の増加,4 年前から労作時呼吸困難が出現した.受診2 ヵ月前から感染を契機に呼吸困難が増悪した.近医にて加療するも呼吸困難が改善しないため,当院受診となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.46L,%VC 57.7%,FEV1 0.74 L,%FEV1 60.2%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.405,PaCO2 50.1Torr,PaO2 45.8Torr と,混合性換気障害を伴うII型

2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例6繰り返す気道感染を伴った関節リウマチに合併した閉塞性細気管支炎の一例

図1 初診時の胸部X 線写真

施設への初診時胸部X 線写真では,左横隔膜が低位平坦化している.また右肺優位に両側下肺野に網状陰影や気管支壁肥厚を認める.図2 初診後4 年時点での胸部X 線写真

初診後4 年時点での胸部X 線写真では,以前の胸部X 線写真に比べて肺野の透過性が亢進し,肺の容積増加のために横隔膜の低位平坦化が進行している.

図3 初診後4 年時点でのHRCT

初診後4 年時点での胸部CT では,上肺CT において中層部の気管支拡張,気管支壁肥厚の進行とモザイク様所見がみられる.図4 初診後9 年時点でのHRCT

初診後9 年時点での胸部CT では,上肺CT において中層部気管支拡張の進行,肺野の透過性亢進がみられる.
p.52
呼吸不全を認めた.

胸部CT では気管支周囲の浸潤影・結節影・気管支拡張所見を認めた.

a b

★

★ ★ ★ ★

★

★

図5 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 弱拡大.肺動脈(★)の隣に,軟骨(➜)のある気管支壁所見に連続するように,線毛上皮(▶)で被覆される気管支壁構造がみられるが,内腔側が線維化をきたし狭窄(★)している. b:HE 染色 中拡大(a の黒枠部位).軟骨(➜)が確認できる気管支壁所見に連続するように,平滑筋(➜)を伴い線毛上皮(▶)で被覆される気管支壁構造がみられるが,内腔側はリンパ球浸潤を伴う線維化(★:右下赤枠)をきたし,狭窄(★)している.

a b

★

★ ★

★

★

★

★

図6 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大(図5a の緑枠部位).軟骨(➜)のある気管支壁所見の内腔側に,平滑筋(➜)を伴い線毛上皮(▶)で被覆される別の腔所見(★)がみられる線維化所見で狭窄(★)傾向である. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).軟骨(➜)のある気管支の内腔側に平滑筋(➜)を伴った線毛上皮(▶)で被覆される別の腔所見(★)がみられ,周囲に肉芽性変化(★)をきたしている.
p.53
⿟臨床経過:少量エリスロマイシン投与を開始した. 1 年後より関節痛とリウマチ因子の上昇が出現して,関節リウマチと診断.シクロスポリン,メトトレキサート,ミゾリビンなどの投与により関節リウマチの症状は安定したが,繰り返す気道感染とともに呼吸不全は徐々に進行して,当院初診9 年後に永眠された.剖検が施行されてBO の所見を認めた.

BO の転帰は死亡で,BO 発現日から転帰までの日数は3,240 日であった.

⿟画像所見:図1〜4. ⿟病理所見:図5〜7.

⿟考察本症例は,関節リウマチを基礎疾患とするBO の一例である.関節リウマチに対する種々の免疫抑制薬による

長期の治療経過のなかで,労作時呼吸困難が出現してきた症例である.関節リウマチに気道病変や間質性肺炎の所見を合併することは広く認識されている1).本症例も初診時には多様な気管支拡張像・小葉中心性粒状陰影を認め,関節リウマチの多様な肺病変を呈していた.そのため,どの時点でBO に伴うconstrictive bronchiolitis が臨床経過に影響を与えたかを判断するのは難しい.剖検を実施することで病理学的にconstrictive bronchiolitis を伴うBO を発症していたことが確認できた.

■文献1)Shaw M, Collins BF, Ho LA, et al. Rheumatoid arthritis-

associated lung disease. Eur Respir Rev 2015; 24: 1-16 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

★

★ ★

★ ★

図7 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.末梢の細気管支は,内腔に炎症細胞が充満しびらんをきたして内腔の拡張がみられる(★).周囲の肺胞領域にも炎症細胞浸潤を伴う線維化所見(★)がある. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).細気管支の内腔は炎症細胞(★:右上赤枠部位)が充満し,びらんをきたし(▶),周囲の肺胞領域にも炎症細胞浸潤を伴う線維化所見(★)がある.
p.54
⿟症 例:72 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:71 歳時の1 月に手のこわばりが出現して,当院膠原病内科で関節リウマチと診断された.ブシラミン内服で治療を開始し,関節痛は軽快した.72 歳時6 月に労作時息切れを自覚するようになり,7 月に呼吸器内

科紹介受診となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.56L,%VC 72.6%,FEV1

症例7労作時呼吸困難で受診した関節リウマチを基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例

図1 胸部X 線写真

72 歳時胸部X 線写真では,横隔膜ドームは正常のカーブを描いている.肺野の透過性亢進も認めない.

図2 HRCT

72 歳時上肺のHRCT では,中層部気管支の拡張と壁の軽度肥厚を認める.肺野の透過性亢進がみられ,透過性亢進部位とそれより透過性の低い部分が混在している(モザイク様所見)小葉中心性の粒状陰影や分岐状陰影はほとんどみられない.図3 胸部X 線写真

74 歳時胸部X 線写真では,下肺の含気増加,横隔膜の低位平坦化を認め,肺容積の増加が考えられる.

図4 HRCT

76 歳時上肺HRCT では,中層部気管支壁肥厚,気管支拡張が進行し,モザイク様所見も進行している.
p.55
0.59L,%FEV1 40.1%と,閉塞性障害を認めて,BO が疑われた.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.447,PaCO2 37.2 Torr,PaO262.0Torr.

8 月に胸腔鏡下肺生検術が施行されて,組織学的にBOと診断された.

⿟臨床経過:LABA および抗コリン薬の吸入に加えて,プレドニゾロン(PSL)30mg 内服を開始した.その後, PSL 10mg 内服まで減量した.73 歳時3 月に慢性呼吸不

全のため在宅酸素療法を導入.気道感染による入院を繰り返したが,77 歳時点で外来経過観察中である.

BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は1,825 日であった.

⿟画像所見:図1〜4. ⿟病理所見:図5〜8. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

図5 ルーペ像(Elastica van Gieson 染色)

膜性細気管支に閉塞が認められる(➜).周囲の肺胞領域の変化は軽微である.図6 閉塞性細気管支炎(Elastica van Gieson 染色)

閉塞性病変は膜性細気管支のみに認められ,呼吸細気管支の内腔は開存している(➜).膜性細気管支壁の弾性線維は保たれており,周囲肺胞領域の病変は軽微である.

a b

図7 閉塞性細気管支炎(a)および呼吸細気管支(b) (図6 の拡大,いずれもHE 染色)

膜性細気管支内腔は軽度の小円形細胞浸潤を伴う肉芽組織により高度の狭窄に陥っているが,既存の平滑筋は保たれている(➜).呼吸細気管支には軽度に小円形細胞が浸潤しているが,閉塞病変は見当たらない.
p.56
⿟考察本症例は,関節リウマチを基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例である.関節リウマチに対して疾患修飾性抗リウマチ薬(disease modified anti-rheumatic-drugs: DMARDs)で約1 年間治療経過中に,労作時呼吸困難が出現してきた症例である.本書のなかで紹介されるその他の関節リウマチを基礎疾患とするBO 症例と併せて考

えても,関節リウマチに対する治療修飾とその期間がBO発症に直接的な影響を与えるとは必ずしもいえない.本症例は外科的生検が実施されたことで病理学的にconstrictive bronchiolitis を伴うBO と診断された.

a b

図8 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色.リンパ濾胞の形成とともに膜性細気管支の弾性線維消失を示す部(➜)も認められるが,このような破壊性病変はわずかである.
p.57
⿟症 例:56 歳,女性. ⿟主 訴:咳嗽. ⿟現病歴:2003 年8 月より多発関節痛が出現して,前医にて関節リウマチの診断となる.プレドニゾロン(PSL) (2003 年12 月まで)・ミゾリビン(2005 年4 月まで)で加療.2005 年3 月より咳嗽が出現し,当院受診となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 2.9L,%VC 112.30%,FEV1 0.9L,%FEV1 40.0%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.423,PaCO2 36.5Torr,PaO2 72.3Torr.

喘鳴を認めて,喘息に準じて治療を行ったが改善乏しく,胸部CT でair trap の所見が顕著であったためBO が鑑別にあがった.

経過中抗核抗体(ANA)高値・SS-A(+)/SS-B(+)が認められた.

サクソンテスト・シルマーテストが実施されてSjögren症候群の診断に至った.

Sjögren 症候群に伴うBO が疑われ,外科的肺生検が施行された.病理学的評価からBO と診断された.

⿟臨床経過:2005 年6 月24 日よりPSL+シクロスポリン(CyA)にて治療を開始.その後,CyA の治療効果がはっきりしないため,2005 年10 月でCyA は中止となり,PSL 少量維持療法が継続された.その後,状態安定したため2006 年2 月にPSL 内服中止,以後著変なく経過している.

BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は4,186 日であった.

⿟画像所見:図1〜4. ⿟病理所見:図5〜8. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例8長期生存が得られたSjögren 症候群を基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例

図1 施設受診時のHRCT

大動脈弓部レベルでのHRCT では肺野の透過性亢進がみられ,透過性の高い部位と通常の透過性を示す領域が混在するモザイク様所見がみられる.小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影はほとんどみられない.

図2 HRCT

気管分岐部よりやや尾側のレベルのHRCT であるが,図1 と同様の所見を認める.これに加えて区域気管支などの比較的中枢部から中間領域の気管支壁に肥厚を認める.図3 冠状断再構成画像

冠状断再構成像では,モザイク様所見は,上肺から下肺にほぼびまん性に分布していることがわかる.
p.58
⿟考察本症例は,Sjögren 症候群を基礎疾患とするBO の一例である.喘息と類似する臨床症状を呈する一方で,喘息に準じた治療に反応が乏しく高分解能CT(high resolution CT:HRCT)でair trap の所見が顕著であったため, BO が鑑別にあがり外科的肺生検が施行された.病理所見では,constrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見が同定されている.BO の診断において重要と考えられる,1呼吸機能検査で著明な閉塞性障害を呈する, 2閉塞性障害に対する初期治療に抵抗性を示す,3

HRCT の異常(air trap)以外に肺実質病変がみられないことが多い,4BO を生じうるSjögren 症候群の基礎疾患が存在する,5外科的生検によって病理学的にconstrictive bronchiolitis 同定される,というポイントが確認でき,非移植症例でみられるBO 症例として示唆に富む.本症例は比較的安定した経過をたどっている.どの要因によって疾患活動性に相違が生じるのかは明らかではない

図5 ルーペ像(Elastica van Gieson 染色)

小葉・細葉中心性肺気腫を示す肺である.細気管支が濃染している(➜).

図4 呼気薄層CT

吸気CT に比べてモザイク様所見がより目立ち細気管支病変によるair trap がその原因と考えられる.

a b

図6 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色細気管支粘膜が弾性線維の密な増加を伴う線維化で肥厚しており(➜),下方に向かって正常化している.周囲の肺胞領域には炎症所見がみられない.
p.59
2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

図7 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色線維化により,ほぼ完全な内腔閉塞を示す細気管支である.線維化部には弾性線維が増加し,炭粉の沈着も目立つ.

a b

図8 膜性細気管支炎から呼吸細気管支

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色膜性細気管支には壁の線維化が認められるが,呼吸細気管支(➜)には変化が乏しい.小葉・細葉中心性肺気腫がみられる.
p.60
⿟症 例:57 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:他院にてSjögren 症候群と診断され,プレドニゾロン5mg/day にて治療を開始したが,労作時呼吸困難を自覚,感染を契機に呼吸困難の悪化(Hugh- Jones 分類にてI度)と呼吸機能上で閉塞性障害を認め,他院にて入院加療となった.ステロイド投与後も自覚症状の改善を認めず,閉塞性障害が残存するため精査目的

にて当院紹介受診となった.

⿟検査所見胸部X 線写真では明らかな異常所見を認めなかった.呼吸機能検査では,VC 1.86L,%VC 74.7%,FEV1 0.76L,%FEV1 36.7%と,呼吸機能上は著明な閉塞性障害(FEV1 36.7%)を認めた.

症例9 Sjögren 症候群を基礎疾患とする薬物治療抵抗性の閉塞性細気管支炎の一例

図1 初診時の胸部X 線写真

軽度の横隔膜の低位平坦化を認め,肺野の透過性は亢進している.図2 HRCT

気管分岐部レベルのHRCT であるが,中層部までの気管支の拡張を認める.肺野の含気は増加し透過性が亢進しているが,肺野末梢での小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影はほとんど認められない.

図3 HRCT

下肺でのHRCT であるが,上肺同様に,中層部までの気管支の拡張と軽度の壁肥厚を認め,肺野の透過性亢進を認めるが,肺野末梢の小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影を認めない.図4 冠状断再構成CT

中層部気管支の拡張は,下肺に優位である.小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影はほとんど認められない.
p.61
動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.442,PaCO2 42.2 Torr,PaO2 70.9Torr.

胸腔鏡下肺生検にてBO と診断された. ⿟臨床経過:プレドニゾロン0.5mg/kg/day+シクロ

スポリンにて治療を開始した.その後,当院外来にてLABA/LAMA 配合剤を追加し加療継続しているが,労2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

★ ★

★

図5 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.細気管支上皮と上皮下間質の内腔側へのひだ状の増生で,細気管支内腔自身がやや狭小傾向(★)である. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).細気管支上皮下はリンパ球などの炎症細胞浸潤を伴い肥厚し,気管支内腔側にひだ状の増生がみられ(★),気管支内腔自身がやや狭小傾向(★)である.

a b

★ ★

★ ★

図6 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.細気管支上皮下の膠原線維増生による線維性肥厚(★)で細気管支内腔が狭小化している(★). b:HE 染色 中拡大.炎症細胞浸潤を伴った細気管支上皮下の線維性肥厚(★)と細気管支内腔の狭小化(★)があるが,細気管支上皮の剝離所見は目立たない.
p.62
作時呼吸困難と閉塞性障害の経年的な悪化を認めている. BO の転帰は生存で,BO 発現日から転帰までの日数は510 日であった.

⿟画像所見:図1〜4. ⿟病理所見:図5〜7.

⿟考察本症例は,Sjögren 症候群を基礎疾患とするBO の一例である.Sjögren 症候群も様々な肺病変を伴うことが知られている1).そのなかでも,constrictive bronchiolitis の病理学的所見を伴うSjögren 症候群は比較的まれである.閉塞性障害を伴う労作時呼吸困難を自覚しステロイド

治療を行ったが,臨床症状の改善に至らなかった.外科的肺生検によってconstrictive bronchiolitis を確認していることと合わせて,ステロイド治療での病勢コントロールが困難なことが示唆された症例であった.

■文献1)Flament T, Bigot A, Chaigne B, et al. Pulmonary manifestations of Sjogren’s syndrome. Eur Respir Rev 2016; 25: 110-123

a b

★

★

図7 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 中拡大.ポリープ状の線維性隆起性増生で細気管支内腔が狭窄している所見(★)がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).ポリープ状の線維性隆起性病変と周囲の細気管支壁にはリンパ球など炎症細胞浸潤がみられる(★).一部細気管支上皮の剝離所見がある.
p.63
⿟症 例:60 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:受診8 ヵ月前より口内炎・体幹部皮疹出現し,扁平苔癬と診断され,ステロイド内服による治療を

開始.内服治療7 ヵ月の経過後,1 ヵ月続く労作時呼吸困難を自覚して当院呼吸器内科受診となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.25L,%VC 51.2%,FEV1 0.56L,%FEV1 28.3%と,著明な混合性換気障害と残気率の上昇を認めた.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.464,PaCO2 38.1Torr,PaO2 69.8Torr.

胸部CT では過膨張を伴う全肺野均一の濃度低下と中枢領域でのびまん性気管支拡張所見を認めて(図2),臨床的に扁平苔癬に伴うBO と診断した.

⿟臨床経過:吸入気管支拡張薬およびステロイドの全身投与に加えてタクロリムス,ピルフェニドンも併用したが改善なく,徐々に呼吸状態が悪化し治療開始後約3 ヵ月で永眠された.家族の承諾が得られ,病理解剖を施行した.

BO の転帰は死亡で,BO 発現日から転帰までの日数は120 日であった.

⿟画像所見:図1〜3. ⿟病理所見:図4〜6. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例10扁平苔癬を基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例

図1 初診時の胸部X 線写真

初診時の胸部X 線写真では,横隔膜は低位をとり肺野の含気の増加を示唆する.

図2 初診時のHRCT

初診時のHRCT では,区域気管支から中層部の気管支壁肥厚,気管支拡張を認める.細気管支レベルの気道閉塞のためにそれより中枢部の気管支の拡張をきたしている.肺野は透過性の高い部位と低い部位が混在するモザイク様所見を呈する.小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影は目立たないが,これは細気管支炎部分への細胞浸潤が乏しいのと肺野の含気が増加しているためである.図3 受診3 ヵ月後時点の胸部X 線写真

3 ヵ月後の胸部X 線写真では,肺野の含気は増加して横隔膜はさらに低位平坦化し肺野の透過性が亢進している.
p.64
54 ⿟考察

本症例は,扁平苔癬を基礎疾患とするBO の一例である.呼吸困難の臨床症状を呈するとともに,胸部CT 画像でair trap の所見と呼吸機能検査で認める著明な混合

性換気障害と残気率の上昇を観察し,BO と臨床的診断がなされた.治療抵抗性の呼吸不全を認めたため,病理解

a b

★ ★

★

図4 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 中拡大.細気管支壁が一部肥厚している所見(➜)がみられる.その末梢レベルの細気管支(★)は併走する動脈に比べ拡張している. b:HE 染色 強拡大(a の➜部分の強拡大).細気管支上皮は剝離傾向で(➜),細気管支上皮下から細気管支壁外側まで泡沫状組織球,リンパ球などが集簇し肥厚した所見(★)がみられる.

a b

★

★

図5 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 弱拡大.軟骨がある気管支壁の肥厚,内腔の狭窄(➜)があり,末梢の細気管支がほぼ閉塞している(★).さらに末梢の細気管支は拡張している(★). b:Elastica Masson Goldner 染色(a の黒枠部位の中拡大).平滑筋(➜)で囲まれた細気管支壁は肥厚し内腔が狭小化し,上皮の被覆が不連続になった所見(▶)がみられる.
p.65
剖を行った.病理所見では,constrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見を同定している.扁平苔癬の病態は明らかではないが1),扁平苔癬発症経過後に呼吸機能異常を伴う労作時呼吸困難を生じており,BO 症例では呼吸機能低下のため外科的生検が実施できない場合をよく経験する.剖検を実施することで病理学的にcon- strictive bronchiolitis を伴うBO と診断できた貴重な症例

と考えられる.

■文献1)Le Cleach L, Chosidow O. Clinical practice. Lichen planus. N Engl J Med 2012; 366: 723-732 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

★

図6 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 中拡大(図5a の★).平滑筋,弾性線維(➜)で囲まれた細気管支内腔は線維性に肥厚して,ほぼ閉塞し,極一部に残存した上皮の被覆(▶)がみられる. b:HE 染色 強拡大.細気管支は泡沫状組織球,リンパ球などが集簇し,ほぼ閉塞し(★),極一部に残存した上皮の被覆(▶)がみられる.
p.66
⿟症 例:63 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:非ホジキンリンパ腫に対し化学療法(R- CHOP 療法)を受け部分寛解に至ったため経過観察となった.本疾患に対して幹細胞移植術は施行されていなかった.経過観察3 年後,呼吸困難と閉塞性換気障害の進行を認めたため,当院呼吸器内科コンサルトとなった1).

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.4L,%VC 51.1%,FEV1 0.47L,%FEV1 22.5%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.417,PaCO2 43.0Torr,PaO2 68.8Torr.

高分解能CT(high-resolution CT:HRCT)でモザイク像を呈していた.

胸腔鏡下肺生検(video-assisted thoracic surgery: VATS)が施行された.線維化による細気管支の閉塞像を認めて,進行したBO と病理診断がなされた.

⿟臨床経過:経口ステロイドおよび吸入ステロイド/

症例11悪性血液疾患(リンパ腫)を基礎疾患とする閉塞性細気管支炎の一例

図1 胸部X 線写真

末梢の血管は疎となっており,肺野は過膨張傾向と思われる.

a b

c d

図2 HRCT

吸気CT(a・c)ではモザイク様所見を示す部分が呼気CT(b・d)ではair trap であることがわかる(➜).気管支壁の肥厚像もみられる(➡).
p.67
57 LABA 配合剤およびLAMA の併用療法による治療を行

い,呼吸不全管理として陽圧換気下に経過観察を行ったが,発症約2 年後呼吸不全にて永眠された. BO の転帰は死亡で,閉塞性細気管支炎発現日から転帰

までの日数は700 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b c

★ ★

図3 病理所見(HE 染色)

a:弱拡大.肺動脈(★)の隣の細気管支の内腔側が,一部肥厚している(▶). b:a の青枠部位の拡大.近傍の細気管支は拡張傾向である.細気管支の平滑筋(▶). c:強拡大(a の黒枠部位).細気管支上皮下に線維性肥厚所見(★)がみられる.気管支上皮は剝離傾向である(➜).細気管支の平滑筋(▶).

a b

★ ★

★

図4 病理所見

a:Alcian Blue PAS 染色 弱拡大.肺動脈(★)の隣の細気管支の内腔側が,一部肥厚している所見(★)がみられる.細気管支の平滑筋(▶). b:HE 染色 中拡大(a の黒枠部位).細気管支上皮下に線維化に肥厚した所見(★)がみられる.気管支上皮は剝離傾向である(➜).細気管支の平滑筋(▶).
p.68
⿟病理所見:図3〜5.

⿟考察本症例は,悪性血液疾患(リンパ腫)を基礎疾患とするBO の一例である1, 2).悪性血液疾患に対する幹細胞移植が施行された症例のなかに,閉塞性細気管支炎症候群(bronchiolitis obliterans syndrome:BOS)およびBO を発症する場合があることは認識されてきている.本症例では幹細胞移植は実施されていなかった.BO は自己免疫異常を起因とする機序が推察されるが原因は特定できていない.幹細胞移植のない悪性血液疾患(悪性リンパ腫)の治療経過中に,細気管支領域においてconstrictive

bronchiolitis が形成されてBO を発症していることが確認された点が大変興味深い.

■文献1)西原智恵,片平雄之,野上裕子,ほか.悪性リンパ腫の化学療法後に呼吸不全が進行し,閉塞性細気管支炎と診断された1 例. 日呼吸会誌2014; 3: 281-286 2)Nishihara T, Nakano H, Nogami H, et al. A 63-year-old woman with progressive dyspnea after remission of lymphoma. Chest 2017; 151: e57-e62

a b

★

図5 図4b の青枠拡大a:Alcian Blue PAS 染色 強拡大.細気管支上皮下の線維性肥厚部位に細気管支上皮で被覆された小腔がみられる(▶).平滑筋(▶). b:HE 染色 強拡大.細気管支の上皮は剝離傾向(➜)で泡沫状組織球(▶),リンパ球などの浸潤を伴って細気管支上皮下は線維性に肥厚している(★).平滑筋(▶).
p.69
⿟症 例:27 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:10 歳時に上気道炎の治療目的で内服したアモキシシリンによると考えられたStevens-Johnson 症候群を発症した.ステロイドパルス療法が施行されたが,発症2 ヵ月後より進行性に労作時呼吸困難を生じたため当院紹介となった1).

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.07L,%VC 52.9%,FEV1 0.45L,%FEV1 36.3%と,高度の混合性換気障害を呈した.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.396,PaCO2 36.7Torr,PaO2 72.0Torr.

胸部X 線写真で肺過膨張所見を認めた(図1). ⿟臨床所見:発症10 年目に在宅酸素療法を導入.両側の気胸を繰り返すため,発症11 年目に左囊胞切除術が施行された.安静時呼吸困難を自覚.臨床経過からBO と診断された.発症15 年目にII型呼吸不全を生じ人工呼吸器管理を行った.抗菌薬治療,栄養管理などが継続され2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例12抗菌薬内服に起因すると考えられた閉塞性細気管支炎の一例

図1 胸部X 線写真

両側肺は過膨張を示すが,右下葉は容積減少を示し,浸潤影を伴う.

a b

c

図2 胸部CT

吸気のみであるが,肺野は過膨張を示す(➜).中葉,右下葉,左肺舌区には収縮を伴う浸潤影をみる.
p.70
たが,感染のコントロールに難渋した.発症17 年目に呼吸不全のために永眠された.本症例では剖検が施行された.剖検肺は,肉眼的に上下葉に多数の閉塞した気管支を認めた.区域気管支で認められた気道閉塞部位の遠位側に気管支拡張像を認めた.

BO の転帰は死亡で,BO 発現日から転帰までの日数は6,200 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. ⿟病理所見:図3〜6.

⿟考察本症例は,抗菌薬内服を契機に発症したStevens-Johnson 症候群に続発したBO の一例である1).Stevens-Johnson 症候群は,薬剤や病原体に対する免疫反応の異常を契機に発症する自己免疫の過剰応答と考えられているが,細気管支領域が標的となりBO が続発した本症例の臨床経過は大変興味深い.労作時呼吸困難の臨床症状と閉塞

性障害があるにもかかわらず,胸部画像では肺過膨張所見以外には明らかな肺実質病変が乏しい点は,その他のBO 症例と共通する点である.本症例は病理解剖が施行されて病理所見ではconstrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見が同定されている. ■文献

1)Sugino K, Hebisawa A, Uekusa T, et al. Bronchiolitis obliterans associated with Stevens-Johnson Syndrome:

histopathological bronchial reconstruction of the whole lung and immunohistochemical study. Diagn Pathol 2013; 8: 134

a肺動脈

図3 ルーペ像(HE 染色)

肺動脈に伴走する膜性細気管支が閉塞している(➜).HE 染色のみでは,単なる線維化巣として誤認されやすい所見である.

a b

図4 閉塞細気管支炎(図3 の拡大像)

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色膜性細気管支の内腔は,弾性線維の高度な増加を伴う線維化によって閉塞している.線維化には膜性細気管支壁から毛細血管・小血管が入り込んでいるが,膜性細気管支壁の弾性線維や平滑筋(➜)は保たれている.細気管支周囲の胞隔には軽度の線維化がみられるのみであり,炎症細胞浸潤も軽度である.
p.71
2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a

図5 軽度の病変を伴う膜性細気管支(➜) (Elastica

van Gieson 染色)この所見も図3 と同様,HE 染色のみでは見逃しやすい所見である.

a b

図6 軽度の病変を伴う膜性細気管支(図5 の拡大像)

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色線維化巣が巣状の隆起性病変を形成している.細気管支壁の弾性線維・平滑筋は保たれている.
p.72
⿟症 例:55 歳,女性. ⿟主 訴:咳嗽と労作時呼吸困難. ⿟現病歴:アマメシバを摂取開始から約3 ヵ月後に咳嗽と呼吸困難が出現した.摂取から8 ヵ月後(計1,440g摂取)に当院受診となった1). ⿟検査所見

呼吸機能検査では,VC 1.5L,%VC 61.0%,FEV1 0.62L,%FEV1 31.3%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.448,PaCO2 36.2Torr,PaO2 55.0Torr であり,高度の閉塞性障害を認めて,当初気管支喘息として治療を行ったが治療反応性

症例13母子で摂取したアマメシバによる閉塞性細気管支炎の一例(母親)

a b

図1 施設初診時HRCT

a:吸気.大動脈弓部上縁レベルのCT であるが,肺野の透過性亢進の混在によるモザイク様所見を認める.区域枝から亜区域枝レベルの気管支壁の軽度肥厚と拡張を認める.

b:呼気.呼気CT でも吸気とほぼ同様の所見で,十分な呼気状態が取れていないものと考えられる.

a b

図2 初診15 ヵ月後HRCT

a:吸気.病変は初診7 ヵ月後に比べてさらに進行し,区域枝から亜区域枝レベルの気管支拡張が進行,モザイク様所見もより明瞭となっている.

b:呼気.a に比べてモザイク様所見がより明瞭となっている.
p.73
が不良であった.

その後,母子でアマメシバの摂取歴があることが判明し,アマメシバによるBO の臨床診断となった.

⿟臨床経過:初診から4 ヵ月後にプレドニゾロン内服治療を行ったが治療反応性が不良であったため,漸減中止となった.経過中,肺アスペルギルス症および非結核性抗酸菌症の合併を伴った.徐々に高炭酸ガス血症を認めて,初診から1 年4 ヵ月後に非侵襲的陽圧換気療法を要した.

初診から約2 年で呼吸不全の進行にて永眠された.剖検が施行されてBO の所見を認めた.

BO の転帰は死亡で,閉塞性細気管支炎発現日から転帰までの日数は908 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. ⿟病理所見:図3〜6.

⿟考察本症例は,アマメシバという加工食品を摂取したことに起因すると考えられたBO の一例である.アマメシバの学名はSauropus androgynus であり,減肥効果があると宣伝されてアマメシバ含有加工食品が販売された.その一方で,重篤な健康被害のひとつとしてBO が報告された1).咳嗽と呼吸困難の臨床症状を呈する一方で,呼吸機能

検査で認める著明な閉塞性障害を示唆する肺実質病変は観察されなかった.喘息の治療に反応が乏しく,BO が鑑別にあがり外科的肺生検によってBO 診断となった.病理所見ではconstrictive bronchiolitis というBO に特徴的な所見が同定されている.詳細な問診聴取により,アマメシバの大量摂取という貴重な診療情報が得られている. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

図3 閉塞性細気管支炎

Elastica van Gieson 染色.細気管支内腔の狭窄が巣状に認められる(➜).

a b

図4 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色狭窄部では,泡沫状組織球の集簇を伴う肉芽組織・線維組織が細気管支粘膜に形成されているほか,細気管支内腔を横断するような索状線維化も認められる(➜).
p.74
病理学的にconstrictive bronchiolitis が確認でき,母子で摂取したアマメシバにより発症したBO の母親の症例であり,貴重である. ■文献

1)林 美保,田川暁大,小倉高志,ほか.アマメシバ摂取による閉塞性細気管支炎が疑われた母娘例.日呼吸会誌2007; 45: 81-86

a b

図5 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色軟骨(➜)を有する小気管支の内腔が,弾性線維の増加を伴う線維化で閉塞している.図4 の病変に比べて長い時間経過をうかがわせる病変であり,本症例に新旧の病変が混在していることを示している.

a b

図6 閉塞性細気管支炎

a:Elastica van Gieson 染色b:HE 染色小気管支粘膜の一部に硝子性線維化が認められる(➜).気道壁の平滑筋・弾性線維は保たれている.
p.75
⿟症 例:29 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:アマメシバを摂取開始から約6 ヵ月後に呼吸困難が出現してきた.摂取から9 ヵ月後(計1,200g 摂取)に当院を受診となった1).

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.95L,%VC 66.3%,FEV1 1.0L,%FEV1 34.8%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.415,PaCO2 35.5Torr,PaO2 68.1Torr.

⿟臨床経過:呼吸機能検査上,高度の閉塞性障害を認めて,気管支喘息として治療を行ったが治療反応性が不良であった.母子でアマメシバの摂取歴があることが判

明し,アマメシバによるBO の臨床的診断がなされた.初診から3 ヵ月後にLABA とプレドニゾロン(PSL) 30mg 内服治療を行ったが,PSL 内服から2 ヵ月後にはアスペルギルス症を合併した.2 年間の挿管人工呼吸器管理を経て,初診から約3 年で永眠された.剖検にてBOの所見を認めた.

BO の転帰は死亡で,BO 発現日から転帰までの日数は1,133 日であった.

⿟画像所見:図1〜3. ⿟病理所見:図4〜6. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

症例14母子で摂取したアマメシバによる閉塞性細気管支炎の一例(娘)

a b

図1 アスペルギルス感染時薄層CT

区域枝から中層部気管支の拡張と壁肥厚,モザイク様所見を認めるが,細気管支炎と思われる小葉中心性粒状陰影や分岐状陰影はほとんどみられない.左上葉や下葉に壁の厚い空洞病変とその周囲の気道散布性粒状陰影がみられ,アスペルギルス感染症を疑う所見であった.

図2 1 年後薄層CT

区域気管支から中層部気管支の拡張や壁肥厚は進行している.左上葉の空洞,壁は菲薄化し内腔は平滑となっていた.図3 2 年後薄層CT

区域気管支から中層部気管支の拡張はさらに進行し,モザイク様所見が明瞭となっている.左上葉,下葉に多発性にコンソリデーションがみられた.
p.76
⿟考察本症例は,アマメシバという加工食品を摂取したことに起因すると考えられたBO の一例である.詳細な問診聴取によってアマメシバ摂取の病歴が得られたことがBOを鑑別にあげる一因になったと考えられる1).本症例は病

理解剖が施行され,病理所見ではconstrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見が同定されている.本症例のように臨床経過中に様々な呼吸器感染症の合併が

a

b c

★ ★ ★

図4 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 弱拡大,b:強拡大(a の赤枠部分).肺動脈(★)隣の気管支の内腔に一部閉塞所見(★)がみられる.気管支上皮の被覆(➜)と平滑筋(▶)所見より,気管支壁周囲から内腔に泡沫細胞集簇を伴う線維化などによる気管支内腔の一部閉塞がみられる. c:HE 染色 強拡大(a の赤枠部分).気管支上皮の被覆(➜)と気管支平滑筋(▶)所見より,気管支壁周囲から内腔に泡沫細胞集簇を伴う線維化などによる気管支内腔の一部閉塞がみられる.

a

b c

★

★ ★

★ ★ ★

図5 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 弱拡大.肺動脈の隣の気管支の内腔に狭窄(★)や閉塞(★)所見がみられる. b:HE 染色 強拡大(a の赤枠部位).気管支壁周囲に泡沫細胞の集簇(★),気管支内腔に弾性線維の増生(★)を伴う線維化部位があり気管支上皮の被覆はない.気管支の平滑筋(▶). c:Elastica van Gieson 染色 強拡大(a の青枠部位).細気管支の平滑筋(▶)と弾性線維(➜)の所見より,内腔は弾性線維増生(★)を伴う線維化変化でほとんど閉塞し,気管支上皮の被覆(▶)がある気道腔はわずかである.
p.77
原疾患の予後に影響を与えうる. ■文献

1)林 美保,田川暁大,小倉高志,ほか.アマメシバ摂取による閉塞性細気管支炎が疑われた母娘例.日呼吸会誌2007; 45: 81-86 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b c ★

★ ★ ★

★

★

★ ★

図6 病理所見

a:Elastica van Gieson 染色 弱拡大.気管支壁の肥厚(★)がみられる. b:HE 染色 中拡大(a の青枠部位).気管支壁周囲に泡沫細胞の集簇(★),気管支内腔に線維性肥厚(★)がある.気管支の平滑筋(▶). c:HE 染色 強拡大(b の黒枠部位).気管支壁周囲に泡沫細胞の集簇(★),気管支内腔に線維性肥厚(★)がある.気管支上皮の被覆(➜)がわずかにみられる.気管支の平滑筋(▶).
p.78
⿟症 例:72 歳,女性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟現病歴:受診3 ヵ月より労作時呼吸困難を自覚し,当院呼吸器内科受診となった1).呼吸困難に対し,気管支拡張薬・吸入ステロイド,および抗アレルギー薬を処方するも自覚症状の改善はなかった.初診より4 ヵ月後労作時呼吸困難が増悪したため精査目的で入院となった.

⿟検査所見呼吸機能検査では,VC 1.12L,%VC 51.1%,FEV1 0.45L,%FEV1 29.0%.動脈血ガス分析(室内気)では,pH 7.43,PaCO2 46.3Torr,PaO2 76.6Torr.

HRCT にてモザイク状の濃度不均一所見および気管支拡張像を認めた.

換気血流シンチグラフィでも部分的な集積低下を認めたため,臨床的にBO の診断となった.

同時期に口腔内乾燥症状と種々の検査から,Sjögren 症候群と診断した.

症例15アマメシバ摂取に起因すると考えられた閉塞性細気管支炎の一例

図1 胸部X 線写真

末梢の血管は疎となっており,肺野は過膨張傾向と思われる.

a b

c d

図2 胸部CT

吸気CT(a・c)ではモザイク様所見を示す部分が呼気CT(b・d)ではair trap であることがわかる(➜).気管支壁の肥厚像もみられる(➜).
p.79
⿟臨床経過:吸入ステロイドおよび気管支拡張薬吸入での経過観察となった.初診より1 年後,健康食品であるアマメシバを摂取していた患者娘も同様の呼吸不全を認めたため問診を行ったところ,患者自身もアマメシバ摂取が判明し,アマメシバ関連BO の臨床診断となった.

同時期に在宅酸素療法を導入し,5 年後に徐々に消耗傾向となり永眠された.家人承諾が得られたため病理解剖を施行. 2 ⿟ 閉 塞 性 細 気 管 支 炎

a b

★ ★

図3 病理所見

a:HE 染色 弱拡大.軟骨がある気管支壁の肥厚,気管支内腔の狭窄(➜)があり,末梢の細気管支は狭窄閉塞傾向である(➜). b:HE 染色(a の黒枠部位の中拡大).平滑筋(➜)で囲まれた細気管支内腔は線維性に肥厚し狭小化している.リンパ球などが集簇(青枠部位の中拡大★)し,基底膜肥厚(▶)がみられる.

a

b

★ ★

★

図4 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 中拡大(図3a の青枠部位).太い弾性線維(➜)で囲まれた細気管支内腔は弾性線維増生(▶)を伴って線維性に肥厚,閉塞傾向で,一部に残存した気腔(★)がみられる.

b:HE 染色(a の赤枠部位の強拡大).細気管支内腔は泡沫状組織球の集簇を伴い狭窄(★)がみられる.
p.80
BO の転帰は死亡で,BO 発現日から転帰までの日数は4,186 日であった.

⿟画像所見:図1〜2. ⿟病理所見:図3〜5.

⿟考察本症例は,アマメシバという加工食品を摂取したことに起因すると考えられたBO の一例である1).経過中にSjögren 症候群の診断基準に合致する症状を呈していた.アマメシバ摂取がSjögren 症候群の発症に与える影響は不明である.また,Sjögren 症候群の診断が臨床経過に与える影響も不明である.本症例は病理解剖を施行し,病理所見ではconstrictive bronchiolitis というBO に特徴的な病理所見を同定している.詳細な問診聴取の重要性を

再認識できる.近年の国民の健康意識の高まりにより,それに応える形で市場には多種多様な健康補助食品(サプリメント)が提供されているのが現状である.どのようなサプリメントの摂取により,どの程度の頻度で健康被害が出ているのか,また,その因果関係がどの程度示唆されているのか,など不明確な部分が多数あることも事実である.

■文献1)長谷川好規.閉塞性細気管支炎の病態と治療.日内会誌

2011; 100: 772-776

a b

★

★

★

c

図5 病理所見

a:Elastica Masson Goldner 染色 中拡大.細気管支壁内腔の一部肥厚(➜)がみられる.その末梢レベル細気管支壁は炭粉沈着(▶)を伴い肥厚している. b:a の赤枠部位 強拡大(Elastica Masson Goldner 染色)・c:a の赤枠部位の強拡大(HE 染色).平滑筋,弾性線維(➜)で囲まれた細気管支内腔が弾性線維増生(★)を伴って線維性に肥厚している.細胞浸潤は乏しく(➜),炭粉沈着がある.上皮は剝離傾向で,泡沫状細胞(▶)が一部気腔にみられる.
p.81
第3 章

Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎
p.82
肺線維症は,環境因子と遺伝因子がその発生にかかわっており,肺線維芽細胞の集簇と細胞外基質の蓄積が特徴である.肺線維症にかかわる遺伝疾患のなかで,高率に肺線維化をきたす疾患が,Hermansky-Pudlak 症候群(Hermansky-Pudlak syndrome:HPS)である.HPSは,1959 年にチェコスロバキアの医師であるDr. Frantisek Hermansky とDr. Paulus Pudlak によって眼と皮膚の白皮症および出血傾向を呈する2 症例がはじめて報告された1).眼,皮膚,毛髪のチロシナーゼ陽性メラニン色素脱失症,血小板機能低下による出血傾向と組織網内系細胞におけるセロイド様物質の沈着を三大特徴とする,常染色体劣性遺伝疾患であり,約70〜80%に肺線維症を合併する.世界的な発症頻度は50 万〜100 万人に1 人とまれであるが,プエルトリコでは,人口1,800 人に1 人と発症頻度が高く,21 人に1 人がキャリアである.HSP-1とHSP-3 が主なサブタイプである2). 1.臨床と病理

1976 年にDavies とTuddenham がHPS と間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)との関連性をはじめて報告している3).HPS のなかで重症の間質性肺炎を呈するのはHPS-1,HPS-2 とHPS-4 である4).特にHPS-1 では約80%にIP が発症する5).IP はHPS の約半数の死亡原因であり,予後を規定する重要なリスクである.特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)が通常50歳以上で発症するのに対して,HPS-IP は若く30〜40 歳代に発症する.女性のほうが多く,男性の約2 倍である6). IPF,HPS-IP ともに治療抵抗性である.IPF は約3 年で半数が死亡するのに対して,HPS-IP の多くは診断から約10 年間生存するため,予後はほぼ同等とされる4).呼吸機能上,拘束性障害を呈するが,閉塞性障害を呈することもある.胸部X 線写真では,IPF と異なり,上肺野,下肺野,胸膜直下,内側に比較的均等に網状影を呈する.胸部CT でもびまん性にすりガラス影,網状影,牽引性気管支拡張,蜂巣肺を認める.気腫性変化や囊胞状変化も混在する7).病理所見は,usual interstitial pneumonia (UIP)の組織所見と類似しているが,肺胞マクロファージ主体の胞隔炎,セロイド様物質のマクロファージ内の沈着,ラメラ小体(giant lamellar body degeneration)を含む泡沫状に腫大・変性したII型肺胞上皮細胞を特徴とする8). 2.病因と病態

肺線維症の病態は,IPF を中心に解明が進んできた.肺線維症の病態は,侵襲による慢性炎症が継続するために線維化するという炎症中心の考えから,侵襲が損傷を引き起こし,遺伝因子が関連する異常な免疫や炎症のために不十分な修復が繰り返されることによって線維化が進展するという,損傷と修復の異常が病態の中心と考えられるようになった9).損傷のトリガーは,ウイルス感染,喫煙,粉塵吸入,微量誤嚥,酸化ストレスなどの環境因子であるが,環境因子の曝露は非特異的であり,損傷を生じるか否かは個々の感受性による.環境と生体との相互作用において,ゲノム,エピゲノム(DNA メチル化,ヒストン修飾,noncoding RNA),および加齢に伴う様々な細胞機能低下の結果,表現型が決定する10).

線維化の過程では,まずはじめに,損傷に対する感受性の高い細胞が,恒常性維持機構の破綻によって,細胞死に誘導される.IPF のII型上皮細胞には小胞体ストレスに特異的な蛋白の発現が認められ,caspase をはじめとするアポトーシスシグナル伝達因子の発現亢進および活性化が認められる11〜13).活性酸素は,肺上皮細胞損傷・アポトーシスをはじめとして,上皮細胞や線維芽細胞の活性化,上皮細胞の細胞死や細胞老化に関与する.IPFと異なり,HPS-IP は,単一の遺伝子変異が原因で起こる肺線維症である.HPS 自然発症マウスモデルを用いて病態解析が進み,IPF と類似した機序が関与するとともに, IPF の病態解明にも寄与している.

a.HPS 遺伝子

HPS は10 タイプ(HPS-1〜-10)あり,それぞれ独自の遺伝子変異を有する.HPS-1 が最も多く,HPS-2,HPS- 4 とともに,他のタイプより重症である4).日本人の報告もHPS-1 の報告がほとんどである.HPS 遺伝子がコードするHPS 蛋白は,その多くがリソソーム関連蛋白複合体(biogenesis of lysosome-related organelle complex: BLOC)の構成蛋白である.BLOC は,リソソーム関連細胞内小器官(lysosome-related organelles:LROs,メラノソーム,血小板濃染顆粒,アズール顆粒,II型肺胞上皮細胞に含まれるラメラ小体,サーファクタント蛋白(surfactant protein:SP)など)において,small GTPasesを活性化し,膜蛋白輸送に関与している14).HPS-2 は,

病因と発症機序

A
p.83
adaptor protein-3(AP-3)のβ-subunit をコードしており, AP3 はエンドゾームからリソソーム膜蛋白質の細胞質領域に結合している15).したがって,HPS における遺伝子変異は,リソソームやLROs の形成・機能障害や細胞内蛋白輸送の障害をきたす.メラノサイトにおいては,メラノソームへの蛋白輸送が障害され,メラニン色素の合成,貯蔵障害が発生し,眼,皮膚色素脱出症をきたす.血小板においては,血小板濃染顆粒へのセロトニンやADP,ATP の輸送低下が生じ,血小板放出異常症による出血傾向をきたす.また,全身臓器,特に,骨髄,肝臓,脾臓などの網内系細胞にセロイド様物質が沈着し,肉芽腫性大腸炎や間質性腎炎,心筋症などをきたす16).

b.肺胞マクロファージの活性化

HPS-1 患者において,気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)液中の細胞数や肺胞マクロファージ数は増加し,活性化した肺胞マクロファージからのサイトカイン産生(MCP-1,MIP-1,GM-CSF,M-CSF)も増加しており,HSP-IP ではさらに増加する17).活性化した上皮細胞からも産生されるMCP-1 が肺胞マクロファージを集簇させ,肺胞マクロファージより産生されるTGF-β が肺上皮細胞のアポトーシスを誘導し,線維芽細胞の増殖と筋線維芽細胞への分化を促し,線維化を亢進すると考えられる.HPS-IP における線維化の機序のひとつとして,リソソーム活性の異常や細胞内蛋白輸送の障害によって,肺胞マクロファージに蓄積したセロイド様物質やII型肺胞上皮細胞内のサーファクタント分泌異常が局所での炎症の引き金を引き,持続的な肺胞マクロファージの活性化とサイトカイン産生,および線維芽細胞の集簇に至ると考えられる18, 19).

HPS-1 やHPS-2 のマウスモデル(それぞれpale ear, pearl mice)では,II型肺胞上皮細胞より産生されるSnitrosylated SP-D やMCP-1 によって集簇した肺胞マクロファージによる胞隔炎を呈するが,加齢とともに肺気腫は生じるものの,肺線維化は生じない20〜22).これに対して,HSP1/2 double mutant mice では,産生が増加したS-nitrosylated SP-D やMCP-1 によって肺胞マクロファージが集簇し,胞隔炎はより高度となる.加齢に伴い肺胞マクロファージ優位の胞隔炎は,II型肺胞上皮細胞のアポトーシスと線維芽細胞の集簇を伴って肺線維症に至る23).細胞内蛋白輸送の障害によって,リソソーム機能異常をきたした肺胞上皮細胞由来のサイトカインによって肺胞マクロファージは活性化され,線維化の感受性が亢進した状態にあると考えられる.

c.II型肺胞上皮細胞における小胞体ストレスとリソソー

ムストレスIPF において小胞体ストレスによるアポトーシスが注目されたのは,家族性肺線維症の8〜15%程度に,サー

ファクタント関連遺伝子であるSFTPC,SFTPA2 の変異が認められたことがきっかけである24).異常なサーファクタント蛋白がII型肺胞上皮細胞に蓄積することによって小胞体ストレスが惹起され,細胞はunfolded protein response(UPR)と呼ばれる反応を起こす.サーファクタント遺伝子変異のないIPF でも小胞体ストレスが認められる25).ストレスが解消されなければ,細胞は慢性のストレスを受けアポトーシス感受性が増す.

HPS-IP 患者のBAL 液中の肺胞マクロファージやII型肺胞上皮細胞内には巨大なラメラ小体が含有されており,細胞内蛋白輸送の障害に伴うリソソーム機能異常によって,異常蛋白が蓄積し,小胞体ストレスやリソソームストレスによってII型肺胞上皮細胞のアポトーシスが惹起され,肺線維化に関与すると考えられる.細胞内小胞輸送にかかわるRab38 が機能しなくなると,SP-B がリソソーム関連細胞内小器官であり,ラメラ小体中に増加し,分泌障害を生じることが報告されている26).リソソームストレスによるアポトーシスにはcathepsin D が関与し,小胞体ストレスによるアポトーシスにはATF4,CHOP が関与するが,これらの発現がII型肺胞上皮細胞に認められる.

マウス肺上皮細胞への変異型SP-C 遺伝子導入により変異型蛋白が蓄積し,小胞体ストレスを介するアポトーシスが惹起されるが,それだけでは線維化には至らない.ウイルス感染やブレオマイシン投与による“セカンドヒット”によって過剰なアポトーシスと肺線維化が生じる27).同様に,pale ear,pearl mice では,II型肺胞上皮細胞へのリン脂質貯留と,肺胞マクロファージによる胞隔炎を呈するが,肺気腫は生じるものの,肺線維化は生じない.しかし,シリカやブレオマイシン投与によってTGF-β の産生亢進,II型肺胞上皮細胞のアポトーシスを伴って肺線維症を生じる.これらのマウスでは,BAL 液中のSP- B やSP-C が減少しており,SP の分泌低下が認められる. SP-B やSP-C は,細胞内のラメラ小体に分泌されずに蓄積されている20, 21).これらのマウスでは,pro-SP-C の発現する細胞にcleaved caspase-3 やTUNEL 陽性細胞が認められる.また,HPS-1/2 double knockout mice のII型肺胞上皮細胞においては小胞体ストレスやリソソームストレスとII型肺胞上皮細胞のアポトーシスや線維化との関連性が認められている23).

肺線維症の病態には,凝固能亢進や自然免疫,インフラマソーム,胎生期に活性化するWnt-β-catenin やsonic hedgehog シグナル,線維芽細胞の起源など,まだまだ解明すべき課題が残されている.最近,肺線維症の病態における細胞老化やオートファジーの役割が注目されている.これらの機構は,小胞体ストレスと同様に,細胞内の恒常性維持機構である.最近の報告であるが,HPS-IP のマウ3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎
p.84
スモデルにおいてオートファジーを亢進させることによって肺線維化が抑制されることが報告されている28).線維化にかかわるsiRNA も報告されており,エピゲノムの解析をはじめとして今後の研究成果が待たれる.

■文献1)Hermansky F, Pudlak P. Albinism associated with hemorrhagic diathesis and unusual pigmented reticular cells in the bone marrow: report of two cases with histochemical studies. Blood 1959; 14: 162-169 2)Hurford MT, Sebastiano C. Hermansky-pudlak syndrome: report of a case and review of the literature. Int J Clin Exp Pathol 2008; 1: 550-554 3)Davies BH, Tuddenham EG. Familial pulmonary fibrosis associated with oculocutaneous albinism and platelet function defect: a new syndrome. Q J Med 1976; 45: 219-232 4)Vicary GW, Vergne Y, Santiago-Cornier A, et al. Pulmonary fibrosis in Hermansky-Pudlak syndrome. Ann Am Thorac Soc 2016; 13: 1839-1846 5)田村尚亮.ヘルマンスキー・パドラック症候群.呼吸2010; 29: 412-416 6)中谷行雄,山中正二,唐 小燕,ほか.Hermansky- Pudlak 症候群の肺病理と病態.病理と臨床2006; 24: 913-920 7)近藤光子.Hermansky-Pudlak 症候群.呼吸器科2009; 15: 429-433 8)Nakatani Y, Nakamura N, Sano J, et al. Interstitial pneumonia in Hermansky-Pudlak syndrome: significance of florid foamy swelling/degeneration (giant lamellar body degeneration) of type-2 pneumocytes. Virchows Arch 2000; 437: 304-313 9)Gross TJ, Hunninghake GW. Idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med 2001; 345: 517-525 10)Yang IV. Epigenomics of idiopathic pulmonary fibrosis. Epigenomics 2012; 4: 195-203 11)Tanjore H, Blackwell TS, Lawson WE. Emerging evidence for endoplasmic reticulum stress in the pathogen-

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Pudlak syndrome 1 (HPS1) and HPS4 proteins are components of two complexes, BLOC-3 and BLOC-4, involved in the biogenesis of lysosome-related organelles. J Biol Chem 2003; 278: 20332-20337 15)Huizing M, Scher CD, Strovel E, et al. Nonsense muta- tions in ADTB3A cause complete deficiency of the beta3A subunit of adaptor complex-3 and severe Hermansky-Pudlak syndrome type 2. Pediatr Res 2002; 51: 150-158 16)杉野圭史,本間 栄.Hermansky-Pudlak 症候群と間質性肺炎.呼吸2011; 30: 371-378 17)Rouhani FN, Brantly ML, Markello TC, et al. Alveolar macrophage dysregulation in Hermansky-Pudlak syndrome type 1. Am J Respir Crit Care Med 2009; 180: 1114-1121 18)Nguyen T, Wei ML. Hermansky-Pudlak HPS1/pale ear gene regulates epidermal and dermal melanocyte development. J Invest Dermatol 2007; 127: 421-428 19)Guttentag SH, Akhtar A, Tao JQ, et al. Defective surfactant secretion in a mouse model of Hermansky-Pudlak syndrome. Am J Respir Cell Mol Biol 2005; 33: 14-21 20)Young LR, Pasula R, Gulleman PM, et al. Susceptibility of Hermansky-Pudlak mice to bleomycin-induced type II cell apoptosis and fibrosis. Am J Respir Cell Mol Biol 2007; 37: 67-74 21)Yoshioka Y, Kumasaka T, Ishidoh K, et al. Inflammatory response and cathepsins in silica-exposed Hermansky- Pudlak syndrome model pale ear mice. Pathol Int 2004; 54: 322-331 22)Atochina-Vasserman EN, Bates SR, Zhang P, et al. Early alveolar epithelial dysfunction promotes lung inflammation in a mouse model of Hermansky-Pudlak syndrome. Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 449-458 23)Mahavadi P, Korfei M, Henneke I, et al. Epithelial stress and apoptosis underlie Hermansky-Pudlak syndromeassociated interstitial pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2010; 182: 207-219

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p.85
平成26 年度からの厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策克服研究事業として開始された「びまん性肺疾患に関する調査研究」班の稀少難治性びまん性肺疾患分科会において,日本におけるはじめてのHermansky-Pudlak 症候群(Hermansky-Pudlak syndrome:HPS)合併間質性肺炎に関する大規模な疫学調査に着手し,その結果を踏まえてHPS 合併間質性肺炎の診断および治療を検討することが計画された.ちなみに難病法の施行の指定難病となっている「眼皮膚白皮症」(「第3 章-C.Hermansky- Pudlak 症候群を含む「眼皮膚白皮症」の診断基準と重症度判定基準」参照)が施行されたのは,この疫学調査後の平成27 年7 月1 日からであり,HPS の診断基準や重症度判定の情報の得られていない時期であった. 1.アンケートの実際

平成26 年9 月に日本呼吸器学会707 認定施設の呼吸器内科代表者に向けてアンケートを送付し,同年12 月までにその結果をまとめた.アンケート内容としては稀少疾患であることを考慮し,おおよそ20 年間における診療実

態を調査する内容とした.実際のアンケート内容を表1に示す. 2.全国疫学調査の結果

HPS 合併間質性肺炎に関する疫学調査に関するアンケートの結果,日本呼吸器学会認定施設707 施設のうち471 施設(66.6%)から返答があり,そのうち61 施設(13.0%)において過去20 年間に71 症例,うち重複と思われる5 症例を除くと実際には66 症例の診療例があることがわかった1).そのうち,初診時の記載がないものが6例,20 年以上前との記載しかないものが5 例,計11 症例を除いた55 症例を初診時の年別にグラフにしたものを図1 に示す.この結果から年に平均約2.5 人のHPS 合併間質性肺炎患者が日本呼吸器学会認定施設を受診していることが示される.これらの患者が外来や治療を受ける期間はそれぞれであることが推定されるが,現在診療を継続しているのは8 施設の8 症例である.これまでの3

⿟ H P S合併間質性肺炎

全国疫学調査

B

表1 Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎に関する疫学調査に関するアンケートまず,ご記入いただきました先生のお名前と御施設名をご記入お願いいたします.お名前:御施設名: 1.貴施設におきまして現在HPS 合併間質性肺炎の患者様をご診療されていますか. (1 はい 2 いいえ) 2.1 で1「はい」とお答えの先生方へおうかがいします.ご診療されているおおよその期間(平成XX- 年)と患者様の数, 治療の有無につきまして教えてくだ

さい. 3.貴施設におきまして最近20 年間程度の間にHPS 合併間質性肺炎の患者様を診療されたことがおあ

りですか? (1 はい 2 いいえ)

4.3 で1「はい」とお答えの先生方へおうかがいします

ご診療されていた患者様の数とそのおおよその診療期間(平成XX- 年), 治療の有無につきまして教

えてください. 5.1 および3 でどちらも2「いいえ」とお答えにあった先生方におうかがいします.現在の御施設以外で,HPS 合併間質性肺炎の患者様をご診療されたことはおありですか? (1 はい 2 いいえ) 6.5 で1「はい」とお答えの先生方へおうかがいします.ご診療されていた患者様の数とそのおおよその診療期間(平成XX- 年), 治療の有無につきまして教

えてください.差支えなければその医療機関を教えていただけませんか.
p.86
HPS 合併間質性肺炎患者にステロイドやピルフェニドン,シクロスポリンなどで積極的な治療をしたと記載があったのは,16 施設(26.2%)の計19 症例(28.8%).6 施設(26.2%)の計19 症例(28.8%).現在も診療を継続しているのは8 施設の8 症例だが,積極的な治療の記載はこのうち2 施設(25%)2 症例(25%)のみであった. 3.結果を踏まえての考察

一次調査の結果から示されたことは,HPS 合併間質性肺炎が日本呼吸器学会認定施設などの専門施設に紹介されてきた場合,HPS であることの診断はすでに確定していることが多い反面,実際にHPS 自体による間質性肺炎を確定することが困難であることがあげられる.さらにその確定ができたとしても保険適用が認められている有効な治療法が確立していないこともあって,無治療で経過観察をされている症例が多いことが確認された1).

今後はHPS 合併間質性肺炎症例経験回答をよせた認定施設を対象に,さらに詳細な臨床情報を各施設の倫理委員会の承認を得たうえで検討する.そのうえで今後のHPS 合併間質性肺炎の診断法の確立のために,現在の特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias: IIPs)診断に則した画像診断・組織診断の応用や血清バイオマーカーの有効性,診断基準にはなっていないHPS 関連遺伝子診断の必要性や有効性の検討,さらに新しい診断法として皮膚線維芽細胞中Galectin-3 などの異常蓄積などの可能性などを検討する必要がある.2002 年にHPS合併間質性肺炎患者に対する肺線維化抑制効果が示され

たピルフェニドン2)に関しても,その後同じグループから早い段階から用いられた患者群でやや改善傾向を示し得たのみという報告がなされた3).これは現在までに,いわゆる進行性肺線維症である特発性肺線維症や家族性肺線維症などと同様,HPS 合併間質性肺炎に対する有効な治療指針は世界的にもまだ示されていないことと同じである.

現在のIIPs に則した治療の有効性の評価に加えて,変異遺伝子を持つ肺胞上皮・線維芽細胞や疾患モデルを用いた基礎データの集積,さらに幹細胞移植・骨髄移植の可能性など新しい治療の試みはありうるか検討を加えていく必要がある1).

■文献1)海老名雅仁,桑野和善.稀少難治性びまん性肺疾患部会報告Hermansky-Pudlak 症候群関連間質性肺炎に関する疫学調査(一次調査).厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究平成26 年度報告書,2015: p53-56 2)Gahl WA, Brantly M, Troendle J, et al. Effect of pirfenidone on the pulmonary fibrosis of Hermansky-Pudlak syndrome. Mol Genet Metab 2002; 76: 234-242 3)O’Brien K, Troendle J, Gochuico BR, et al. Pirfenidone for the treatment of Hermansky-Pudlak syndrome pulmonary fibrosis. Mol Genet Metab 2011; 103: 128-134

0

1

2

3

4

5

20 年以上前記載なしH3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26

図1 一次調査で示されたHPS 合併間質性肺炎患者の年別初診数

(海老名雅仁,桑野和善.稀少難治性びまん性肺疾患部会報告 Hermansky-Pudlak 症候群関連間質性肺炎に関する疫学調査(一次調査).厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究平成26 年度報告書,2015: p53-56 1)より引用)
p.87
164 眼皮膚白皮症

○ 概要1.概要

出生時より皮膚,毛髪,眼のメラニン合成が低下ないし消失することにより,全身の皮膚が白色調,青から灰色調の虹彩,視力障害,白から茶褐色あるいは銀色の頭髪を呈する.

2.原因

メラニン合成にかかわる遺伝子変異によって発症する常染色体劣性遺伝性疾患である.非症候型の眼皮膚白皮症は7型,症候型のHermansky-Pudlak 症候群は9 型,Chediak-Higashi 症候群,Griscelli 症候群は3 型まで原因遺伝子が同定されている.今後さらなる新規遺伝子の同定がなされると予想される.

3.症状

非症候型・症候型とも全身の皮膚が白色調,青から灰色調の虹彩,矯正不能な視力障害や眼振などの眼症状,そして白から茶褐色あるいは銀色の頭髪を呈する.さらに症候型はそれぞれの疾患に随伴する全身症状(出血傾向,免疫不全,神経症状など)があり,さらに中高年に高率に間質性肺炎や肉芽腫性大腸炎を合併する.

4.治療法

紫外線を遮光したり,サングラスを使用などの生活指導により症状の悪化を予防したり遅らせたりということは行うものの,確立された治療法は全くない.また,症候型ではそれぞれの随伴する症状に対する対症療法を行う.

5.予後

白色調の皮膚は光発癌を誘発しやすい.また,いくつかの遺伝子多型は悪性黒色腫(非露光部を含む.)の疾患関連遺伝子である.眼症状は網膜の障害により弱視に至りうる.症候型はそれぞれの疾患に随伴する全身症状(出血傾向,免疫不全,神経症状など)があり,それらにより予後が規定される.

○要件の判定に必要な事項1.患者数

約5,000 人(2,800〜11,200 人)

2.発病の機構

不明(遺伝子異常によるものとされている.)

3.効果的な治療方法

未確立(確立された治療法は全くない.)

4.長期の療養

必要(発症後,生涯にわたって持続する.) 3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎

Hermansky-Pudlak 症候群を含む「眼皮膚白皮症」の

診断基準と重症度判定基準

C

(厚生労働省平成27 年1 月1 日施行指定難病概要・診断基準等より引用)
p.88
5.診断基準

あり(研究班作成の診断基準あり)

6.重症度分類

研究班作成の重症度分類を用いて,A.あるいはB.を満たす場合を重症とし,対象とする.

○情報提供元「稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班」研究代表者慶應義塾大学医学部皮膚科教授天谷雅行

<診断基準>

Definite,Probable を対象とする. I.眼皮膚白皮症の診断基準A.症状(皮膚症状) 1.皮膚が色白であり,日焼け(tanning)をしない. 2.生下時より毛髪の色調が白色,淡黄色,黄色,淡い茶色,銀灰色のいずれかである. (眼症状) 3.虹彩低色素が観察される. 4.眼振が観察される.

B.検査所見

1.眼底検査にて,眼底低色素や黄斑低形成が観察される. 2.視力検査にて,矯正不可能な低視力がある.

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する.まだら症,脱色素性母斑,尋常性白斑,炎症後脱色素斑

D.遺伝学的検査

1.TYRP, TYRP1, SLC45A2, SLC24A5, C10orf11, HPS-1, AP3B1, HPS-3, HPS-4, HPS-5, HPS-6, DTNBP1, BLOC1S3,

PLDN, LYST, MYO5A, RAB27A, MLPH 遺伝子の変異

<診断のカテゴリー>

Definite:A-1,-2 とB-1 をすべて満たし,さらにA-3,-4,B-2 のいずれか1 つ以上を満たし,C の鑑別すべき疾患

を除外し,D を満たすもの. Probable:A-1,-2 とB-1 をすべて満たし,さらにA-3,-4,B-2 のいずれか1 つ以上を満たし,C の鑑別すべき疾患

を除外したもの. Possible:A-1,-2 とB-1 を満たすもの.

II.病型診断(眼皮膚白皮症のうちどの病型であるか)の診断基準

A.眼皮膚白皮症の診断基準で,Definite か,Probable であることB.出血傾向がある場合

1.血液検査により血小板機能異常を認める.
p.89
C.毛髪の色が銀灰色(silver-gray)の特異な光沢をしめす場合

1.白血球内部の巨大顆粒を認める. 2.皮膚病理組織で色素細胞に巨大メラノソームを認める. D.遺伝子診断により以下のいずれかの遺伝子に病的変異が明らかであること

非症候型:TYR, P, TYRP1, SLC45A2, SLC24A5, C10orf11症候型ヘルマンスキー・パドラック症候群:HPS-1, AP3B1, HPS-3, HPS-4, HPS-5, HPS-6, DTNBP1, BLOC1S3, PLDNチェディアック・東症候群:LYSTグリセリ症候群:MYO5A, RAB27A, MLPH診断:A を満たし,さらに下記を満たす場合,病型を診断できる. 1.B-1 を認める場合,あるいはD を満たす場合,ヘルマンスキー・パドラック症候群と診断する. 2.毛髪の色が銀灰色(silver-gray)の特異な光沢をしめし,C-1,-2 をともに認める場合,あるいはD を満たす場合,

チェディアック・東症候群と診断する. 3.毛髪の色が銀灰色(silver-gray)の特異な光沢をしめし,C-1,-2 をいずれも認めない場合,あるいはD を満たす場

合,グリセリ症候群と診断する. 4.B とC をともに認めない場合,あるいはD を満たす場合,非症候型の眼皮膚白皮症と診断する.

なお,眼皮膚白皮症は以下のように分類される.非症候型(メラニン減少に伴う症状のみを呈するタイプ):眼皮膚白皮症(狭義)症候型(全身症状を合併するタイプ):ヘルマンスキー・パドラック症候群,チェディアック・東症候群,グリセリ症

候群

<重症度分類>

A.症候型の眼皮膚白皮症(ヘルマンスキー・パドラック症候群,チェディアック・東症候群,グリセリ症候群)と診

断され,以下の症状のうち少なくとも1 つを満たす場合. 1.ヘルマンスキー・パドラック症候群

矯正不能な視力障害(良好な方の眼の矯正視力が0.3 未満),血小板機能障害による出血,汎血球減少,炎症性腸疾患,肺線維症2.チェディアック・東症候群

急性増悪状態(発熱と黄疸を伴い,肝脾腫,全身のリンパ節腫脹,汎血球減少,出血傾向をきたした病態),繰り返す全身感染症,神経症状(歩行困難,振戦,末梢神経障害) 3.グリセリ症候群

てんかん,筋緊張低下,末梢神経障害,精神発達遅滞,汎血球減少,繰り返す全身感染症B.非症候型の眼皮膚白皮症と診断され,さらに良好な方の眼の矯正視力が0.3 未満である.判定:A.あるいはB.を満たす場合,重症とし,対象とする.

※診断基準および重症度分類の適応における留意事項

1.病名診断に用いる臨床症状,検査所見などに関して,診断基準上に特段の規定がない場合には,いずれの時期の

ものを用いても差し支えない(ただし,当該疾病の経過を示す臨床症状などであって,確認可能なものに限る). 2.治療開始後における重症度分類については,適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で,直近6 ヵ月間

で最も悪い状態を医師が判断することとする. 3.なお,症状の程度が上記の重症度分類などで一定以上に該当しない者であるが,高額な医療を継続することが必

要な者については,医療費助成の対象とする. 3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎
p.90
1.HPS の診断基準を満たすこと

これは特定疾患の「眼皮膚白皮症」の診断基準に基づく.

2.遺伝子診断の必要性について

Hermansky-Pudlak 症候群(Hermansky-Pudlak syndrome:HPS)に関与する遺伝子変異には,その多くが遺伝子変異動物モデルでも確かめられているように,HPSといえども臨床症状が異なるサブタイプを形成することが知られている1).現在までのところ,HPS 合併間質性肺炎を引き起こす遺伝子変異は,HPS-1,HPS-2,HPS-4に限定されているものの,今後さらに明らかになる変異もありうる.当然ながら早期の段階で間質性肺炎発症の可能性を情報としてもっておくことは,間質性肺炎の進展をコントロールして重症化を避けるための予防的な治療を期待させる.しかし現在はHPS 合併間質性肺炎が疑われた段階で,様々な環境や要件を満たされた場合に限り,遺伝子変異の証明が研究的になされているのにとどまっている2).世界的にも遺伝性疾患共通の大きな問題点であるが,日本でもまた逼迫の問題点である. 3.間質性肺炎の診断

原因が特定され得ないものを「特発性間質性肺炎」と総称し,膠原病関連などの「二次性間質性肺炎」はその病理や画像による分類に準じて診断されている.HPS 合併間質性肺炎も特定の遺伝子変異によるものと考えれば二次性として同じように取り扱われるべきかもしれない.しかし,稀少とはいえ,いままでに国内外から報告された症例の多くは,特発性肺線維症と臨床経過が類似した難治性の慢性進行性肺線維症の経過をたどることが知られていることや,HPS 患者の特徴ともされる血小板機能異常による易出血性を考慮すれば,外科的肺生検に基づく病理診断や,気管支鏡検査による情報も必須なものではなく,むしろ避けるべきという意見もある3).

HPS 合併間質性肺炎を疑う場合にはやはり早期の段階でHPS-1,HPS-2,HPS-4 の遺伝子異常を確認することが勧められる4).

HPS 合併間質性肺炎の臨床経過は特発性肺線維症とよく似ているが,発症年齢は特発性肺線維症が50 歳以降である5)のに比べ,より若い30〜40 歳代であり経過も10年近くと長い6).

間質性肺炎の発症初期の段階で,咳嗽や労作時呼吸困難などの自覚症状がない場合には,胸部X 線写真やHRCT による画像診断に加えて,肺活量や拡散能の低下傾向や,間質性肺炎の血清マーカーとして保険適用となっているKL-6 やSP-D が次第に上昇傾向を示すことなどが,間質性肺炎の発症を疑う根拠となる. 4.間質性肺炎の経過a.労作時呼吸困難の評価

一般的に慢性進行性肺線維症の経過としては,歩行中や階段の昇降中に息切れ(労作時呼吸困難)を,次第に強く自覚するようになる.この評価法としては「6 分間歩行試験」を行い,歩行中の飽和酸素濃度の低下度(ただし歩行試験中飽和酸素濃度が90%未満になる場合には中止して休ませる)や,その間の歩行距離を計測する.

b.安静時の低酸素濃度

間質性肺炎が進行すると安静時の動脈血液中の酸素濃度も低下するので在宅酸素吸入療法を考慮する.

c.呼吸機能検査

上述したように肺活量や拡散能の低下傾向が次第に顕著となるが,呼吸機能の低下のために検査自体が困難になる.

d.HRCT の画像所見

稀少な症例であり,多くの臨床報告は進行して自覚症状が顕著になったものが多いことから,その画像所見の情報は進行例に偏っている可能性があるが,末梢病変から次第に中心性に広がっていくこと,特発性肺線維症よりもすりガラス影が広範な症例であっても,線維化の進行に伴って牽引性気管支拡張像や胸膜直下の蜂巣病変が顕著となるが,やはり進行例でも典型的な特発性肺線維症よりもすりガラス影や胸膜肥厚などが目立つなどの点で異なることが報告されている7〜11).

■文献1)Li W, Rusiniak ME, Chintala S, et al. Murine Hermansky-Pudlak syndrome genes: regulators of lysosomerelated organelles. BioEssays 2004; 26: 616-628

診断の要点

D
p.91
2)Chakradhar S. Insurance companies are slow to cover next-generation sequencing. Nat Med 2015; 21: 204-205 3)Vicary GW, Vergne Y, Santiago-Cornier A, et al. Pulmonary Fibrosis in Hermansky-Pudlak Syndrome. Ann Am Thorac Soc 2016; 13: 1839-1846 4)Seward SL Jr, Gahl WA. Hermansky-Pudlak syndrome: health care throughout life. Pediatrics 2013; 132: 153-160 5)Raghu G, Collard HR, Egan JJ, et al; ATS/ERS/JRS/ ALAT Committee on Idiopathic Pulmonary Fibrosis. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidencebased guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 788-824 6)Gahl WA, Brantly M, Troendle J, et al. Effect of pirfenidone on the pulmonary fibrosis of Hermansky- Pudlak syndrome. Mol Genet Metab 2002; 76: 234-242 7)Kelil T, Shen J, O’Neill AC, et al. Hermansky-Pudlak syndrome complicated by pulmonary fibrosis: radiolog- ic-pathologic correlation and review of pulmonary complications. J Clin Imaging Sci 2014; 4: 59 8)Carter BW. Hermansky-Pudlak syndrome complicated by pulmonary fibrosis. Proc (Bayl Univ Med Cent) 2012; 25: 76-77 9)Avila NA, Brantly M, Premkumar A, et al. Hermansky- Pudlak syndrome: radiography and CT of the chest compared with pulmonary function tests and genetic studies. AJR Am J Roentgenol 2002; 179: 887-892 10)Brantly M, Avila NA, Shotelersuk V, et al. Pulmonary function and high-resolution CT findings in patients with an inherited form of pulmonary fibrosis, Hermansky-Pudlak syndrome, due to mutations in HPS-1. Chest 2000; 117: 129-136 11)Leitman BS, Balthazar EJ, Garay SM, et al. The Hermansky-Pudlak syndrome: radiographic features. Can Assoc Radiol J 1986; 37: 42-45

3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎
p.92
現時点ではHermansky-Pudlak 症候群(Hermansky- Pudlak syndrome:HPS)合併間質性肺炎に特異的な治療法は確立されていないが,特発性肺線維症との類似性からステロイド治療は避けて,抗線維化療法と肺移植が現実的な対応であろう1〜3).しかしその稀少性もあって,特発性肺線維症に対して現在処方可能なピルフェニドンやニンテダニブについてまだその治療効果のエビデンスは不十分であるが,当然線維化を抑制して肺線維症の病態進行を遅らせることが期待され,今後の検証が求められている.

呼吸不全に対して,禁煙はもちろんのこと,在宅酸素療法や呼吸リハビリテーション,感染症対策としてのインフルエンザウイルスや肺炎球菌に対するワクチン接種も数少ない現実的な対応であろう.

HPS 患者として一般に血小板機能に影響するアスピリンなどの抗炎症薬や抗凝固薬は避けなければならないこ

とも,臨床管理上十分留意すべきである.

■文献1)Hurford MT, Sebastiano C. Hermansky-Pudlak syndrome: report of a case and review of the literature. Int J Clin Exp Pathol 2008; 1: 550-554 2)Avila NA, Brantly M, Premkumar A, et al. Hermansky- Pudlak syndrome: radiography and CT of the chest compared with pulmonary function tests and genetic studies. AJR Am J Roentgenol 2002; 179: 887-892 3)Lederer DJ, Kawut SM, Sonett JR, et al. Successful bilateral lung transplantation for pulmonary fibrosis associated with the Hermansky Hermansky-Pudlak syndrome. J Heart Lung Transplant 2005; 24: 1697-1699

治療と管理

E
p.93
⿟症 例:54 歳,男性. ⿟主 訴:咳嗽. ⿟既往歴・家族歴:幼少時より白皮症と弱視が指摘されていた.20 歳のころ止血困難な鼻出血を,また,抜歯後にも止血が困難であった.近親婚である両親はともに白皮症と弱視を指摘されていなかった.

⿟喫煙歴・職業歴:喫煙歴もペット飼育歴もない.30年間クリーニング店に勤務.

⿟現病歴:48 歳のころから乾性咳嗽があり,近医で間質性肺炎の疑いを指摘された.1 年後に血清KL-6 は949U/mL で,気管支鏡下肺生検の病理所見で,異型を伴うII型肺胞上皮細胞の再生像と線維増殖を指摘された.しかし,リンパ球などの炎症細胞を認めなかったことから無治療のまま5 年間経過観察となっていた.検診時に間質性肺炎を再指摘され,当院を紹介受診となった.

⿟身体所見:身長168cm,体重58.6kg.体温36.5°C.脈拍77/min.血圧129/73mmHg.皮膚が白色傾向で日に当たるところがピンク色で四肢に点状出血巣が散見さ

れる.髪は茶褐色.聴診上,心音異常なく不整脈なし.呼吸音は呼気に捻髪音(fine crackles)を聴取.腹部に異常所見なし.

⿟検査所見間質性肺炎マーカーである血清KL-6 3,773U/mL,SP- D 593ng/mL,SP-A 158ng/mL はいずれも高値.酸素飽和濃度も安静時97%で日常生活でも労作時呼吸困難はない.

初診時の胸部X 線写真と胸部CT を図1 に示す.胸部CT 所見としては両側の胸膜直下に網状影やすりガラス影が広がっており,牽引性気管支拡張像や肺底部には小葉間隔壁の肥厚も認められた.特発性肺線維症に特徴的な蜂巣病変は目立たない.

⿟HPS 合併間質性肺炎診断の根拠:他院皮膚科にHPS 遺伝子の解析を依頼した結果,HPS-1 のIVS5+ 5G>A(homozygous pattern)が指摘された.ちなみに母3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎

症例提示

F

症例1 HPS-1 遺伝子変異を持つ2 年間の治療歴のある難治症例

a

b

図1 54 歳(初診)時の胸部X 線写真と胸部CT

間質性肺炎マーカーのKL-6 3,737U/mL,SP-D 593ng/mL,SP-A 158ng/mL といずれも異常高値であった.
p.94
と兄にはheterozygous pattern が示され,Hermansky- Pudlak 症候群と診断された.

⿟臨床経過:外来にてプレドニゾロン10mg/day の服用を開始して2 年間の間に,KL-6 は2,290U/mL に, SP-D は418ng/mL に低下したが,咳嗽や労作時呼吸困難などの自覚症状は次第に悪化傾向を示した.2 年経過後の突然特発性肺線維症における急性増悪類似の症状を呈し,緊急入院となった.このときKL-6 は3,320U/mLに上昇し,動脈血ガス分析は室内気でPaO2 62.9Torr, PaCO2 37.2Torr と低酸素血症を認めた.ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/day,3 日間点滴静注)に加え,好中球エラスターゼ阻害薬(シベレスタット)を14 日間持続点滴後KL-6 は2,290U/mL まで低下し,在宅酸素吸入療法が導入されて退院となった.

外来通院を再開し,処方が可能になったピルフェニドンを最大量1,200 mg/day まで投与したが,食欲不振から600 mg/day に減量.退院後9 ヵ月で再度急性増悪類似の症状を呈して緊急入院.その後は前回入院時の治療法に加えてポリミキシンカラム療法(PMX-DHP)を2 回行ってプレドニゾロン内服を25mg/day に漸減した.再入院後10 日までに一時的に酸素化の改善をみたものの,難治性の縦隔気腫を併発して寝たきりの状態となり,最終的にプレドニゾロン内服を20mg/day とピルフェニドン600mg/day で訪問看護となって退院した.退院時の胸部

X 線写真と胸部CT を図2 に示す.KL-6 が2,740U/mL, SP-D が599ng/mL と依然として高値であり,胸部X 線写真でも両側の肺野の縮小が顕著で,胸部CT でも線維化が亢進しているのがわかる.その後,長期療養型施設に入院となり,退院して1 年後の58 歳で永眠された.

⿟考察本症例は1990 年ころの48 歳に乾性咳嗽から間質性肺炎が明らかになったものの,眼皮膚白皮症の確定診断はなされておらず,亡くなる4 年前にHPS-1 の遺伝子変異が確認された,いわばこの当時の典型的な症例である.難治性慢性進行性肺線維症としての臨床経過としても典型的である.ピルフェニドンの効果の有効性が示唆された海外の報告を受け,さらに幸いにも日本で処方が可能となった時期にその効果を期待したが,実際に病態の進行を遅らせたかどうかの判定は極めて困難である.しかし今後も,この困難さを解消するような治療試験が果たして様々な遺伝子変異からなるこの稀少疾患に可能である確証はないようにも思える.それでも少しでも効果が期待されるのであれば,決定的なHPS 合併間質性肺炎病態の治療薬が得られるまでは,特発性肺線維症に対する抗線維化薬は投与されるべきだと考える.

a

b

図2 プレドニゾロンとピルフェニドンによる治療後の57 歳時の胸部X 線写真と胸部CT

KL-6 が2,740U/mL,SP-D 599ng/mL と依然として高値であり,胸部X 線でも両側の肺野の縮小が顕著で,胸部CT でも線維化が亢進しているのがわかる.
p.95
⿟症 例:30 歳,男性. ⿟主 訴:労作時呼吸困難. ⿟既往歴・家族歴:特記すべきことなし. ⿟喫煙歴:50 本/day×17 年間. ⿟粉塵曝露歴・アレルギー歴:なし⿟現病歴:生来,白皮症,弱視,日光過敏症を認める.幼少時より鼻出血を繰り返し,止血困難であった.25 歳のときの検診にて胸部異常陰影を指摘されたが,そのまま放置していた.その4 年後より咳嗽,労作時呼吸困難が出現し,30 歳になって呼吸困難が増悪したため精査・加療目的で当院呼吸器内科に入院.

⿟身体所見:身長172cm,体重56kg,血圧120/70 mmHg,脈拍80/min・整,体温36.4°C.毛髪および体毛は茶褐色,皮膚は乳白色,瞳孔は青色を呈し,羞明のためサングラスを着用.胸部聴診上,両肺背下部を中心にfine crackles を聴取,全肺野で肺胞呼吸音の低下あり.腹部は平坦かつ軟,肝脾触知せず.水平眼振を認める.

⿟検査所見血液検査:白血球数11,700/μL とKL-6 887U/mL の上昇,出血時間の軽度延長(5 分30 秒)を認めた.血小板数および凝固機能は正常であったが,血小板機能検査では,コラーゲンに対する血小板最大凝集率は,低濃度(0.5μg/mL)で2%,高濃度(2.0μg/mL)で49%と二次凝集能の低下を認めた.なお,ADP に対する血小板凝集能に異常は認めなかった.

呼吸機能検査:VC 1.90L,%VC 45.7%,FVC 1.80L,%FVC 43.3%,FEV1 1.61L,%FEV1 89.4%, TLC 3.54L,%TLC 59.9%,RV/TLC 46.3%,DLCO 9.68 mL/min/mmHg,%DLCO 38.5%(S.B.法),%DLCO/VA 56%と高度の拘束性換気障害ならびに肺拡散能低下を認めた.

動脈血ガス分析:室内気吸入下でPaO2 97.4 Torr, PaCO2 40.8 Torr と正常範囲内であったが,6 分間歩行試験では,SpO2 92%まで低下した.

画像所見:胸部X 線では,両肺びまん性に網状,線状陰影を認めたが,明らかな肺容積縮小はなかった(図1).同時期の胸部conventional CT では,両側上葉優位に厚〜薄壁の大きな囊胞性病変を認めた(図2a).また下葉では胸膜直下をspare して,上葉の囊胞よりも小さく比較的大きさの揃った多数の囊胞性病変とすりガラス影が混在していた(図2b).HRCT では,胸膜から離れた肺中間層に多数の壁の厚い囊胞を認め,蜂巣肺を呈していた(図2c).胸腔鏡下肺生検(左S6):ルーペ像では,胸膜下および

小葉全体に膠原線維の増生からなる線維化がみられ,一部に正常肺を介して存在する1〜3mm 大の厚壁囊胞の集合を認めた(図3).胸膜下の線維化内には,肺胞虚脱を伴う膠原線維および平滑筋の増生を認めた(図4a).一方,囊胞壁の線維化内には,肺胞虚脱の弱い膠原線維の増生を認めた(図4b).また,囊胞壁内面に淡い線維芽細胞の集簇(線維芽細胞巣)を認めた(図4c).さらに,肺胞壁に沿ってII型肺胞上皮細胞の顕著な泡沫状腫大と変性を認めた(図4d).線維化内には,褐色調の微細なセロイド様物質を貪食して細胞質が膨化したマクロファージの集簇を認めた(図5a).さらに耐酸性フクシン染色では,赤褐色調に染色されたセロイド様物質を貪食するマクロファージの集簇を認めた(図5b).

骨髄生検:骨髄組織内に少数のセロイド様物質を貪食したマクロファージを認めた.

⿟HPS 合併間質性肺炎の診断の根拠:本症例は,白皮症,血小板機能異常,骨髄・肺におけるセロイド様物質を取り込んだマクロファージの存在に加えて,胸部画像上,気腫合併肺線維症を認めたことから,HPS 症候群に合併した気腫合併肺線維症と診断した. 3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎

症例2骨髄と肺にセロイド様物質を含むマクロファージが確認された急性増悪症例

図1 胸部X 線写真

両肺びまん性に網状,線状陰影を認めるが,明らかな肺容積縮小は認めない.
p.96
⿟臨床経過:その後,無治療のまま3 年間経過を観察したところ,年間約200mL の肺活量低下を認めたが,その後の2 年間はほぼ固定していた.一方,%DLCO は徐々に低下傾向にあった.血清中のKL-6 およびSP-Dは,33 歳を境に上昇し,以後KL-6 は1,400U/mL 前後, SP-D は120ng/mL 前後を推移していた.胸部CT では,両肺の囊胞状病変は中枢側まで広がり,牽引性気管支拡張も顕著になった.36 歳になるころに急激な呼吸困難の悪化と胸部CT 上,両肺にびまん性にすりガラス影が出現したため,急性増悪と診断した(図6).直ちにステロイドパルス療法,好中球エラスターゼ阻害薬(シベレスタット)を投与するも症状,胸部画像所見の改善は得られず,入院1 ヵ月後に呼吸不全のため永眠された(図7).

⿟考察本症例は25 歳に検診で間質性陰影を指摘され,4 年後に咳嗽,労作時呼吸困難などの自覚症状を呈した若年発症例である.13 歳のころからの重喫煙歴(50 本/day×17年間)が気腫合併肺線維症を併発し,HPS 合併間質性肺炎の進行を早めた可能性も考えられるだろう.症例1と

a

b c

図2 胸部CT

a:両側上葉優位に厚〜薄壁の大きな囊胞性病変を認める. b:両側下葉では胸膜直下をspare して,上葉の囊胞よりも小さく比較的大きさの揃った多数の囊胞性病変とすりガラス影が混在する

c:HRCT.胸膜から離れた肺中間層に多数の壁の厚い囊胞を認め,蜂巣肺をみる.

b

a

c

図3 胸腔鏡下肺生検(左S6)

ルーペ像では,胸膜下および小葉全体に膠原線維の増生からなる線維化がみられ,一部に正常肺を介して存在する1〜3mm 大の厚壁囊胞の集合を認める(a〜c の○印).Elastica van Gieson 染色.Scale bar=1mm.
p.97
3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎

a b

c d

図4 病理所見

a:図3a に相当.胸膜下の線維化内には,肺胞虚脱を伴う膠原線維および平滑筋の増生を認める.Elastica van Gieson 染色. Scale bar=200μm. b:図3b に相当.囊胞壁の線維化内には,肺胞虚脱の弱い膠原線維の増生を認める.Elastica van Gieson 染色.Scale bar=200μm.

c:囊胞壁内面に淡い線維芽細胞の集簇を認める(線維芽細胞巣)(○印).HE 染色.Scale bar=100μm. d:図3c に相当.肺胞壁に沿ってII型肺胞上皮細胞の顕著な泡沫状腫大と変性を認める.HE 染色.Scale bar=100μm.

a b

図5 病理所見

a:線維化内には,褐色調の微細なセロイド様物質を貪食して細胞質が膨化したマクロファージの集簇を認める(➜).HE 染色. Scale bar=100μm. b:赤褐色調に染色されたセロイド様物質を貪食するマクロファージの集簇を認める.耐酸性フクシン染色.Scale bar= 50μm.
p.98
2002 年6 月

2005 年12 月

2008 年2 月

急性増悪時

図6 胸部CT 所見の推移

0

2,500

2,000

1,500

1,000

500 200 180

160 140

120 100

80 60

40 20

0

KL-6 SP-D

KL-6

SP-D

2002 年6 月2006 年6 月2008 年2 月

(U/mL) (ng/mL)

VC(L) 1.90 1.69 1.49 1.52 %VC(%) 45.7 40.8 36.1 37.3 %DLco(%) 38.5 30.9 27.8シベレスタット

ステロイドパルス

▼

図7 臨床経過
p.99
同様に急性増悪の発症を認めたが,より急速に呼吸器症状を悪化させている.詳細は文献1 参照. ■文献

1)Sugino K, Gocho K, Kikuchi N, et al. Acute exacerbation of combined pulmonary fibrosis and emphysema associated with Hermansky-Pudlak syndrome. Respirol Case Rep 2016; 4: 13-15

3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎
p.100
⿟症 例:50 歳,女性. ⿟主 訴:呼吸困難. ⿟既往歴・家族歴:両親は血族結婚であったほか特になし.

⿟喫煙歴:なし. ⿟現病歴:幼少時より眼皮膚白皮症と弱視を認めていた.明らかな出血傾向を示唆するようなエピソードはなかった.45 歳ころより労作時呼吸困難と咳嗽が出現し,前医を受診.胸部CT で左上葉を中心とした網状影や気管支拡張性変化を指摘された.労作時呼吸困難が徐々に増強するため,間質性肺炎の精査目的で46 歳時に外科的肺生検を施行されたが,診断確定には至らなかった.対症的にステロイド(プレドニゾロン30mg/day)や免疫抑制薬(シクロホスファミド,シクロスポリン)で加療を開始されたが,治療効果には乏しく,病状が進行.免疫抑制薬は2 年後に中止された.呼吸不全に対して在宅酸素療法が導入され,ピルフェニドン(1,200mg/day)が開始されたが,内科的治療に不応性であり,肺移植の適応検討目的で当院紹介となった1).

⿟検査所見血小板数や凝固能は正常範囲内であったが,出血時間は9 分と延長していた.炎症反応の上昇はなかったが,間質性肺炎マーカーはKL-6 が764U/mL,SP-D が187ng/mL と各々上昇していた.

動脈血ガス分析では,経鼻2.5L/min の酸素吸入下でPaO2 が93.9Torr であった.呼吸機能検査では,VC 1.06L,%VC 39.7%,FEV1 1.07L,%FEV1 95.5%,%DLCO 10.0%,%DLCO/VA 16.0%と著明な拘束性障害と拡散障害を認めた.

胸部CT ではやや非対称性(左>右)に胸膜下の網状影や気管支拡張像,囊胞性変化,蜂巣肺を認め,容積減少を伴っていた.

⿟HPS 合併間質性肺炎の診断の根拠:身体所見や検査所見からHermansky-Pudlak 症候群を疑い,外科的肺生検の標本を再検したところ,UIP パターンの間質性肺炎に加え,泡沫状に腫大したII型肺胞上皮細胞を認めた.

症例3血小板異常を確認されながらもHPS-1/4 遺伝子変異が検出されなかった難治症例

46 歳時50 歳時51 歳時

図1 臨床経過
p.101
また血小板の電顕像では濃染顆粒(dense body)の部分的な欠如を認め,さらに血小板凝集能は軽度低下し,血小板における二次凝集異常が示唆された.遺伝子検査ではHPS-1 やHPS-4 は陰性であったが,臨床像と病理組織学的所見を併せ,Hermansky-Pudlak 症候群と診断した.

⿟臨床経過(図1):ステロイドや免疫抑制薬,抗線維化薬などの内科的治療に不応性であったことから肺移植の適応と判断し,脳死肺移植のレシピエントに登録した.間質性肺炎マーカーはKL-6 が441〜764U/mL,SP-D が137〜300ng/mL とともに軽度高値で推移したが,呼吸困難症状が徐々に悪化し自宅療養が困難となったため,当院初診から9 ヵ月後に再入院となった.画像上,両肺に気管支拡張像や囊胞性変化が拡大し,網状影やすりガラス影が増強していた.対症療法や呼吸リハビリテーションなどで経過をみていたが,1 週間後に院内肺炎を発症.さらに左気胸を併発し,胸腔ドレナージのうえ,人工呼吸器管理となった.気管切開術の際には血小板数は約8万/μL と保たれていたものの,術後,圧迫や縫合処置では止血できず,出血が持続した.血小板機能異常による出血を疑い,血小板輸血を行ったところ,速やかに止血した.人工呼吸器管理下に脳死肺移植の機会を待ったが,その後,左気胸に加えて細菌性肺炎と膿胸を併発し,感染症のコントロールができず,当院受診から12 ヵ月後の51 歳で永眠された.

⿟剖検所見:剖検肺では左肺や右肺下葉に囊胞性変化を認め,右上下葉にはブラが多発していた.病理組織学的には両肺ともに肺線維症を呈し,線維化が軽微な肺胞

上皮には胞体の腫大と泡沫状変化を認め,肺胞腔内にはマクロファージの小集簇が散見された.右下葉の一部には硝子膜の形成を伴うびまん性肺胞傷害(DAD)様の所見を認めた.また,右肺は全体的に肺胞内出血をきたしており,出血傾向が示唆された.S 状結腸や直腸,肝臓,脾臓および骨髄にはセロイド様物質を有する泡沫細胞の集簇を認めた.電顕像では泡沫状に腫大したII型肺胞上皮細胞の胞体内に多数のgiant lamellar body を認め,これらはHermansky-Pudlak 症候群として矛盾しない所見であった.

⿟考察本症例は紹介前の医療施設においてHPS を疑われないままに,外科的肺生検まで含む間質性肺炎に対する精査をされて,おそらくは当時としては最善と思われる治療を受けていた症例である.肺炎を契機に急速に悪化した点も症例12と同様,慢性進行性肺線維症としては,出血傾向を除外して,典型的といえるのかもしれない.詳細は文献1 参照.

■文献1)Harada T, Ishimatsu Y, Nakashima S, et al. An autopsy case of Hermansky-Pudlak syndrome: a case report and review of the literature on treatment. Intern Med 2014; 53: 2705-2709 3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎
p.102
⿟症 例:65 歳,男性. ⿟主 訴:発熱と呼吸困難の増悪. ⿟既往歴:特記すべきことなし. ⿟家族歴:両親は従兄妹婚. ⿟喫煙歴:40 本/day×30 年間(62 歳から禁煙). ⿟職業歴:農業. ⿟現病歴:52 歳時に健診で胸部X 線異常を指摘され,特発性間質性肺炎と診断された.56 歳ころから呼吸器症状が出現,61 歳時に在宅酸素療法が導入された.発熱と

呼吸困難の増悪で当院受診し,肺炎が疑われ入院となった1).

⿟身体所見:入院時39.0°Cの発熱.皮膚頭髪は白色,両眼虹彩の色素低下および水平眼振,両手指趾にばち指を認める.聴診上は両側下肺野を中心にfine crackles を聴取する.

⿟検査所見胸部X 線写真:両肺野にびまん性に網状影と輪状影,左中肺野に腫瘤影を認める(図1).

胸部CT:全肺野に気腫性変化,胸膜直下に輪状陰影,気管支血管束の肥厚,左S6 に胸膜と接する68×50mmの腫瘤,左肺門・縦隔リンパ節の腫大,右肺底部に小結節を認める(図2).

血液検査:KL-6 1,089U/mL,SP-D 157.6ng/mL と間質系マーカーの上昇を認めた.

気管支肺胞洗浄にて緑褐色顆粒(セロイド)を貪食した異常マクロファージを認めた1).

⿟HPS 合併間質性肺炎の診断の根拠:血小板凝集能はコラーゲン刺激で二次凝集低下を認め,血小板の電子顕微鏡像にて濃染顆粒の欠如を認めた.

⿟臨床経過:入院後,抗菌薬の投与を施行するも陰影の改善を認めず,左S6 の陰影に対して気管支鏡検査を施行.陰影からの擦過細胞診では悪性所見を認めなかったが,その後左肋骨に腫瘤が出現し同部位の経皮的吸引細胞診にて腺癌細胞が検出され,左肺腺癌,転移性骨腫瘍と診断された.発熱は腫瘍熱と考えステロイド投与を開始したが,その後,間質性肺炎急性増悪を併発し呼吸不

症例4血小板異常と剖検で典型的な組織が確認されたがHPS-1〜-6 遺伝子変異が検出されなかった肺癌合併症例

図1 胸部X 線写真

a b

図2 胸部CT
p.103
全となり,人工換気のうえステロイドパルス療法を施行したが明らかな改善を認めず第130 病日に永眠された.

⿟剖検所見:胸部画像にて確認されていた左下葉を占める手拳大の白色充実性腫瘍(poorly differentiated adenocarcinoma),右肺底部に左肺腫瘤と異なる組織型(papillary type,well-differentiated adenocarcinoma)の径7mm の小結節を認めた.肺胞,肝臓,骨髄において胞体にセロイド様の顆粒を含有するマクロファージを多数認めた(図3).また,本症例についてHPS-1〜-6 の遺伝子検索を施行したが明らかな変異を認めなかった.

⿟考察本症例は,HPS の診断基準を満たすことから,HPS 合併間質性肺炎には間違いないが,HPS-1〜-6 の遺伝子検索を施行したが明らかな変異を認めなかった.,まだ明らかになっていない遺伝子変異が隠されている可能性を示す症例であるが,肺癌を伴う間質性肺炎で治療は困難であったことが理解される.詳細は文献1 参照. ■文献

1)Takahashi K, Ishida T, Ogura G, et al. Diagnostic usefulness of bronchoalveolar lavage in Hermansky-Pudlak syndrome: a case with double lung cancers. Intern Med 2004; 43: 972-976

3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎

図3 病理解剖肺組織像(400 倍,シュモール染色)
p.104
⿟症 例:58 歳,女性. ⿟主 訴:乾性咳嗽,労作時呼吸困難. ⿟既往歴:先天性白皮症,先天性弱視,53 歳時に胆石症により胆囊摘出術.

⿟家族歴:兄:先天性白皮症(Hermansky-Pudlak 症候群の診断はされていない).47 歳のときに脳出血で死亡.

⿟喫煙歴:なし. ⿟出産歴:なし. ⿟現病歴:受診の半年前から乾性咳嗽と労作時呼吸困

難を認め,近医を受診した.聴診上両側背部を中心にfine crackles を聴取し,胸部X 線写真で両側下肺野にすりガラス影を指摘された.間質性肺炎を疑われ,精査のため当院へ紹介受診となった1).

⿟身体所見:血圧118/70mmHg,脈拍90/min・整,呼吸数20/min.胸部聴診上呼吸音で両側下肺野にfine crackles を聴取した.皮膚は白色で毛髪は茶褐色,四肢には皮下出血斑を多数認めた.神経学的所見として全方向で注視時に水平性眼振を認めた.

⿟検査所見血算,電解質,各種自己抗体を含めた免疫学的検査の異常は認めなかった.プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間,出血時間は正常範囲内であった.生化学検査ではLDH 257IU/L,KL-6 1,130U/mL, SP-D 122ng/mL の上昇を認めた.

胸部X 線写真(図1):両側中下肺野を中心にすりガラス影を認め,下肺野の容積減少を伴っていた.

胸部CT(図2):両側中下葉の気管支血管束周囲に網状影とすりガラス影が広がり,一部に牽引性気管支拡張像を認めた.胸膜下の陰影は乏しく,明らかな蜂窩肺の形成は認めなかった.

呼吸機能検査:VC 1.35L(60.5%),DLCO 11.65 mL/min/mmHg(63.1%)と拘束性換気障害および肺拡散能の低下を認めた.

動脈血ガス分析PaO2 92.4Torr,PaCO2 30.0Torr(室内

症例5 HPS-1 遺伝子変異を持つ5 年間の治療歴のある難治症例

図1 胸部X 線写真

a b

図2 胸部CT
p.105
気).安静時の経皮的動脈血酸素飽和度97%であったが, 6 分間歩行試験では87%までの低下を認めた.

気管支鏡検査:気管支肺胞洗浄液,経気管支肺生検では診断につながる有意な所見は得られなかった.

⿟病理所見:胸腔鏡下外科的肺生検にてS3 とS9 から肺組織を採取した.病変の分布はdiffuse で,正常な肺胞領域は残存しておらず,胞隔には中等度のコラーゲン沈着と軽度の単核球細胞浸潤を認めた.また病変の時相は均一でS3 では肺胞の既存構造は保たれ,蜂巣肺は認めなかったが,S9 では広範囲に蜂巣肺が形成されていた.気腔内には一部茶褐色のマクロファージや器質化滲出物を認め,軽度の細胞浸潤と細気管支周囲の線維化を伴っていた.

⿟HPS 合併間質性肺炎の診断の根拠:身体所見で毛髪や皮膚の色素異常,水平性眼振,出血傾向を疑わせる四肢出血斑を認め,家族歴で兄の出血傾向と白皮症,併存症として間質性肺炎の存在から,Hermansky-Pudlak 症候群を疑った.診断確定のために行った電子顕微鏡検査で血小板濃染顆粒の欠損と遺伝子検査でHPS-1 遺伝子のIVS5+5G>A 変異が判明し,Hermansky-Pudlak 症候群と診断した.

⿟臨床経過:Hermansky-Pudlak 症候群合併間質性肺炎の治療に関して,プレドニゾロン40mg/day とシクロスポリンA 100mg/day を開始した.しかし,その後も

徐々にVC 低下と肺野陰影の悪化を認めた.治療開始から3 年後に上記治療に加え,抗線維化薬ピルフェニドンを追加した.食欲不振の副作用が出現したため,維持量を1,200mg/day とした.ピルフェニドン導入後から数ヵ月間は呼吸器症状の安定化と血清KL-6 値の低下を認めたが,間質性肺炎の進行を抑えることはできず,VC 低下と陰影の悪化はさらに進んだ.呼吸不全の進行に対して在宅酸素療法の導入を行ったが,治療開始から54 ヵ月後に間質性肺炎の急性増悪により永眠された.

⿟考察本症例は症例1の遺伝子変異が一致する(HPS-1 遺伝子のIVS5+5G>A 変異).難治性慢性進行性でありながら5 年近い治療期間が保たれ,胸部CT の画像陰影も近似しているようで興味深い.詳細は文献1 参照.

■文献1)Furuhashi K, Enomoto N, Fujisawa T, et al. Hermansky- Pudlak syndrome with nonspecific interstitial pneumonia. Intern Med 2014; 53: 449-453

3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎
p.106
⿟症 例:58 歳,男性. ⿟主 訴:呼吸困難増悪. ⿟既往歴:生来,白皮症・弱視・光線過敏症を認めていたが,精査加療歴はない.その他の特記既往なし.

⿟家族歴:両親が従妹婚,父が肺疾患(不詳)で死亡の家族歴があるが,同胞に白皮症はいない.

⿟現病歴・身体所見:1 ヵ月前からの呼吸困難増悪を主訴に,当院初診.診察上,両側下肺野優位のfine crackles,安静時SpO2 95%維持に経鼻酸素3L を要するI型呼吸不全を認めた1).

⿟検査所見間質性肺炎の血清マーカーはKL-6 1,550U/mL,SP-D 168ng/mL といずれも高値.

動脈血血液ガス分析(室内気)はPaO2 40.8Torr, PaCO2 35.6Torr と明らかな低酸素血症.

肺機能検査所見はVC 2.28L(62%),FEV1 2.06L, FEV1%(G)93.7%と拘束性障害を示しDLCO は測定不可だった.胸部CT にて,下葉優位の両側すりガラス影を認めた

(図1).

⿟HPS の診断の根拠:追検査にて,血小板二次凝集異常,骨髄マクロファージのセロイド様顆粒の所見のほか,遺伝子検索の結果,HPS-4 遺伝子(c.1858C>T (p.Q620X))のホモ接合を認め,Hermansky-Pudluk 症候群4 型の診断に至った.

⿟臨床経過:間質性肺炎急性増悪の診断のもと,ステロイドパルス施行後,退院時に在宅酸素導入(1〜2L/min)こそ要したが,すりガラス影は次第に軽快を認めた(図2).退院後,ステロイドは漸減し,ピルフェニドンを開始した.以降,約2 年間は急性増悪なく経過したが,線維化や牽引性気管支拡張,左下葉浸潤影は徐々に進行した(図3).診断より2 年9 ヵ月後,感冒症状を契機に呼吸不全増悪(安静時酸素5L/min)を呈し,両側すりガラス影増悪を認めた(図4).急性増悪と診断し,ステロイドパルスとアジスロマイシンを投与した.治療後,呼吸不全の急速進行は回避し得て,在宅酸素量を

症例6 HPS-4 遺伝子変異が確認されて3 年近い治療歴のある急性増悪症例

a b

c d

図1 胸部CT
p.107
5 L/min へ増量および定期ステロイド内服(プレドニゾロン30 mg/day)導入し,退院となった.以降,診断より3年時(図5a),3 年3 ヵ月時(図5b)と,急性増悪を示唆する呼吸状態悪化を認めた.上記同様の対応にて,酸素維持量の増量こそ要したが,不良転帰を回避する経過を経験した.このころ,左下葉浸潤影が明瞭となり,喀痰細胞診より左下葉肺腺癌と診断した.診断から3 年7 ヵ月,原疾患進行により永眠された.

⿟考察HPS-4 の遺伝子変異が示された症例であるが,他の症例同様難治性慢性進行で急性増悪をきたしている.喫煙歴はないが,症例4同様肺腺癌の合併がみられたことも興味深い.詳細は文献1 参照. 3 ⿟ H P S 合 併 間 質 性 肺 炎

a b

図2 胸部CT(退院時)

a b

図3 胸部CT(退院後2 年)

図4 胸部CT(診断より2 年9 ヵ月時点)
p.108
■文献1)Sakata Y, Kawamura K, Ichikado K, et al. Hermansky- Pudlak syndrome type 4 with interstitial pneumonia.

Respir Med Case Rep 2013; 9: 38-41

a b

図5 胸部CT

a:診断より3 年時点. b:診断より3 年3 ヵ月時点.
p.109
欧文

air leakage syndrome 22

black pleural line 4 bronchiolitis obliterans(BO)18 bronchiolitis obliterans organizing pneumonia(BOOP)23 bronchiolitis obliterans syndrome(BOS)19

cellular destructive bronchiolitis(CDB)21, 23 constricitve bronchiolitis 21, 23, 25, 36, 40, 43, 46, 48, 52, 55,

58, 63, 65, 70 cryptogenic organizing pneumonia(COP)23

diffuse panbronchiolitis(DPB)21

endobronchiolitis obliterans 23

graft versus host disease(GVHD)19, 25, 29

Hermansky-Pudlak 症候群(Hermansky-Pudlak syndrome:

HPS)72 HPS 遺伝子 72

mosaic appearance 21 mTOR 阻害薬 19

N-アセチルシステイン薬(NAC)19 noninvasive positve pressure ventilation(NPPV)19

pulmonary alveolar microlithiasis(PAM)2

Sauropus androgynus 63 Sjögren 症候群 47, 50 SLC34A2 4 Stevens-Johnson 症候群 59

tracheal intermittent positive pressure ventilation(TIPPV)

19和文

あ行アザチオプリン 19アジスロマイシン 19アマメシバ 62, 65, 68移植片対宿主病 19, 25, 29疫学(HPS)75疫学(肺胞微石症)2

か行画像所見(閉塞性細気管支炎)21カルシニューリン阻害薬 19間質性肺炎 80関節リウマチ 35, 38, 41, 44眼皮膚白皮症 77急性リンパ球性白血病 29抗胸腺細胞グロブリン療法 19抗菌薬内服 59呼吸不全 12

さ行シクロスポリン 19常染色体劣性遺伝疾患 10少量マクロライド療法 19シロリムス 19診断基準(HPS)77診断基準(肺胞微石症)8ステロイド 19前駆B リンパ芽球性白血病/リンパ腫 25

た行転移性肺石灰化症 4特発性器質化肺炎 23

な行IIb 型ナトリウム依存性リン運搬蛋白質 2, 4ニンテダニブ 82

は行肺胞微石症 2肺胞マクロファージの活性化 73非侵襲的酸素療法 19びまん性汎細気管支炎 21

索 引
p.110
病理所見(閉塞性細気管支炎)23ピルフェニドン 82ブデソニド/ホルモテロール 19閉塞性細気管支炎 18閉塞性細気管支炎症候群 19扁平苔癬 53

ま行マクロファージ 85モザイク様所見 21

ら行臨床像(肺胞微石症)4臨床像(閉塞性細気管支炎)18リンパ腫 56ロイコトリエン受容体拮抗薬 19
p.111
2017 年10 月10日 発行

難治性びまん性肺疾患 診療の手引き

監修者 日本呼吸器学会発行者 小立鉦彦発行所 株式会社 南 江 堂113─8410 東京都文京区本郷三丁目42 番6 号(出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239ホームページ http://www.nankodo.co.jp/

印刷・製本 真興社

定価は表紙に表示してあります.落丁・乱丁の場合はお取り替えいたします.ご意見・お問い合わせはホームページまでお寄せください. Printed and Bound in Japan

ISBN978─4─524─25118─6

本書の無断複写を禁じます.〈(社)出版者著作権管理機構 委託出版物〉

Intractable Diffuse Pulmonary Diseases: Manual for the Diagnosis and Treatment © The Japanese Respiratory Society, 2017

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p.112