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成人肺炎診療ガイドライン2017 日本呼吸器学会・2017・335 ページ · 呼吸器・睡眠 · 感染症・抗菌薬
p.1

        
p.2

        
p.3
iii

肺  炎

市中肺炎(CAP)院内肺炎(HAP)医療・介護関連肺炎(NHCAP)

❶敗血症の有無の判断❷重症度の判断*1

治療の場と治療薬の決定

・誤嚥性肺炎のリスクの判断・疾患終末期や老衰状態の判断

患者背景のアセスメント

・敗血症の有無の判断・重症度の判断*2,*3・耐性菌リスクの判断

治療薬の決定

・軽症~中等症・左記に該当しない・中等症~重症・敗血症・重症~超重症

・重症度が高くない

*2かつ・耐性菌リスク

*4(-)・重症度が高い

*3または・耐性菌リスク

*4(+)

外 来一般病棟

入院ICUまたはこれに準ずる

病室へ入室

外来患者群

治療一般病棟入院

患者群治療ICU 入室患者群治療

escalation

治療de-escalation

単剤治療de-escalation

多剤治療

個人の意思やQOLを考慮した治療・ケア

・易反復性の誤嚥性肺炎のリスク(+)または・疾患末期や老衰の状態

・重症度が高い

*3かつ・耐性菌リスク

*4(+)

*1:市中肺炎の重症度判定:市中肺炎ではA-DROP により重症度を判定する。*2:敗血症の状態ではなく,医療・介護関連肺炎ではA-DROP で中等症以下,院内肺炎ではI-ROAD で軽症。*3:敗血症の状態,または,院内肺炎ではI-ROAD で中等症以上,医療・介護関連肺炎ではA-DROP で重症以上。*4:耐性菌リスクあり:1 過去90 日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴  2過去90 日以内に2 日以上の入院歴 3免疫

抑制状態 4活動性の低下,のうち2 項目を満たす。CQ 15

CQ 13 CQ 16

CQ 1『成人肺炎診療ガイドライン2017』フローチャート
p.4
ivカテゴリーCQ 番号ページ数CQ 本文

CAP の診断CQ1 p.58 CAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ2 p.63 CAP 診断において,問診,身体診察と胸部X 線画像で診断した肺炎に胸部CT を施行することは推奨されるか。

CQ3 p.65 CAP 患者において,CRP 測定を行うことは推奨されるか。

CQ4 p.70重症CAP 患者の原因菌診断において,血液培養を施行することは推奨されるか。

CQ5 p.73「気道症状と発熱」を有する患者群において,胸部単純X 線検査を全

例に施行することは推奨されるか。

CQ6 p.76 CAP 診断において,尿中抗原検査を全例に施行することは推奨されるか。

CAP の治療CQ7 p.79 CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか。

CQ8 p.85 CAP のエンピリック治療において,β– ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか。

CQ9 p.90 CAP 治療において,抗菌薬投与に全身投与ステロイド薬を補助療法として併用することは,抗菌薬のみでの治療よりも推奨されるか。

CQ10 p.95 CAP 治療において,細菌培養検査の結果に基づく抗菌薬のde-escalation は推奨されるか。CQ11 p.98 CAP 治療において,症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)は推奨されるか。

CQ12 p.101 CAP 治療の期間について,1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与は推奨されるか。

HAP/NHCAP の診断CQ13 p.105 HAP/NHCAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ14 p.111 HAP/NHCAP 診断において,CRP 測定は推奨されるか。

CQ15 p.115 NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することは推奨されるか。CQ16 p.118 HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことは推奨されるか。

『成人肺炎診療ガイドライン2017』 CQ 本文と推奨文のまとめ
p.5
v

CQ 推奨文推奨の強さエビデンスの

確実性委員会での賛成割合

CAP 患者の治療に際する入院要否の判定および治療方針の決定においてA-DROP 方式による重症度評価を推奨する。実施することを強く推奨するC 73%(2 回目の投票)胸部X 線検査所見を基にCAP が疑われる患者に対してルーティーンにCT 検査を行わないことを弱く推奨する。実施しないことを弱く推奨するD 100%(2 回目の投票)肺炎診断が未確定な軽症下気道感染患者には,CRP測定結果を基準にした抗菌薬投与(もしくは,治療)を行うことを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するA 73%(1 回目の投票)重症CAP 患者の抗菌薬治療開始前に血液培養を行うことを推奨する。実施することを強く推奨するC 81%(1 回目の投票)急性気道感染症が疑われる患者にルーティーンには胸部X 線検査を行わないことを弱く推奨する。実施しないことを弱く推奨するC 87%(2 回目の投票) CAP 患者の診療において尿中抗原検査を全例に施行することを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するC 75%(1 回目の投票) CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を弱く推奨する。ただし,細菌性肺炎が疑われる場合にはβ– ラクタム系薬単独投与を考慮する。実施することを弱く推奨するA 93%(1 回目の投票) CAP に対するエンピリック治療として,β– ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症例においてはβ– ラクタム系薬単剤治療よりもβ– ラクタム系薬+ マクロライド系薬併用療法を行うことを弱く推奨する。実施しないことを弱く推奨する。ただし,重症例においては実施することを弱く推奨するB 85%(1 回目の投票) CAP に対して,抗菌薬治療に全身投与ステロイド薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症CAP に対しては全身投与ステロイド薬を併用することを弱く推奨する。実施しないことを弱く推奨する。ただし,重症に対しては実施することを弱く推奨するA軽症〜中等症:70% (1回目の投票)

重症:80% (2回目の投票)

CAPに対して,細菌培養検査結果に基づき,抗菌薬治療をde-escalation することを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するC 81%(1 回目の投票) CAP に対して,症状・検査所見の改善が得られれば,注射用抗菌薬から適切な内服抗菌薬への切り替え( スイッチ療法) を行うことを推奨する。実施することを強く推奨するA 77%(1 回目の投票) CAP の軽症~中等症例においては,初期治療が奏効している場合には1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与を弱く推奨する。実施することを弱く推奨するB 88%(1 回目の投票) 1HAP では,I-ROAD で重症度評価することを弱く推奨する。2NHCAP では,A-DROP・CURB-65・PSI のいずれかで重症度評価をすることを弱く推奨する。1HAP:実施することを弱く推奨する2NHCAP:実施することを弱く推奨する1HAP:D 2NHCAP:C 1 HAP:100%(1 回目の投票) 2NHCAP:79%(1 回目の投票) HAP/NHCAP の診断において,CRP の推移 (3 〜5 日目におけるCRP の低下) は生命予後を予測する目安として,科学的根拠に乏しいが,測定することを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するD 87%(1 回目の投票) NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するD 78%(1 回目の投票) HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するD 93%(1 回目の投票)
p.6
viカテゴリーCQ 番号ページ数CQ 本文

HAP/NHCAP の治療CQ17 p.121 NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,ニューキノロン系薬を用いることは推奨されるか。

CQ18 p.124 HAP/NHCAP 治療において,de-escalation は推奨されるか。

CQ19 p.129 HAP/NHCAP 治療において,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は推奨されるか。

CQ20 p.135 HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間は推奨されるか。CQ21 p.141 non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎治療において,ステロイド薬投与は推奨されるか。

肺炎の予防CQ22 p.144高齢者の肺炎予防において,肺炎球菌ワクチンは推奨されるか。

CQ23 p.155高齢者の肺炎予防において,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか。CQ24 p.159成人のインフルエンザ関連肺炎の予防において,早期(2 日以内) 抗インフルエンザ薬投与は推奨されるか。

CQ25 p.164肺炎予防において,口腔ケアは推奨されるか。
p.7
vii

CQ 推奨文推奨の強さエビデンスの

確実性委員会での賛成割合

NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,レスピラトリーキノロンを治療薬の1 つとすることを弱く推奨する。ただし,副作用,耐性化の可能性,および肺結核との鑑別を考慮することが必要である。実施することを弱く推奨するD 100%(1 回目の投票) HAP/NHCAP の治療において,de-escalation 治療を行うことを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するC 88%(1 回目の投票)耐性菌が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療を弱く推奨する。ただし,NHCAP,HAP の患者で,疾患末期や老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者に対しては,個人の意思を十分に確認し,医療チームとしてQOL を優先した抗菌薬投与の有無および種類の選択を決定する。実施することを弱く推奨するC 71%(1 回目の投票) HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間を弱く推奨する。ただし,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌では再燃のリスクがある。実施することを弱く推奨するB 88%(1 回目の投票) non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎に対するステロイド薬投与を弱く推奨する。実施することを弱く推奨するC 75%(2 回目の投票)高齢者の肺炎予防に対して,肺炎球菌ワクチンの接種を推奨する。実施することを強く推奨するB 91%(1 回目の投票)高齢者の肺炎予防に対して,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種を推奨する。実施することを強く推奨するB 100%(1 回目の投票)成人のインフルエンザ関連肺炎の予防に対して,早期(2 日以内)抗インフルエンザ薬投与を推奨する。実施することを強く推奨するB 75%(1 回目の投票)肺炎予防に対して,口腔ケアを行うことを弱く推奨する。実施することを弱く推奨するB 87%(3 回目の投票)
p.8
viii

用語一覧:重要用語の定義

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)

病院外で日常生活をしている人に発症する肺炎であり,医療・介護関連肺炎および院内肺炎を含まない。

医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)

医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎であり,表1の定義項目を1つ以上満たす。

表1 NHCAP の定義1.療養病床に入院している,もしくは介護施設に入所している2.90 日以内に病院を退院した3.介護

*を必要とする高齢者,身体障害者4.通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,化学療法,免疫抑制薬等)を

受けている*:介護の基準: PS3:限られた自分の身の回りのことしかできない,日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす,以上を目安とする1.には精神病床も含む‌ (日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会(編).

医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン.東京:日本呼吸器学会;2011.より改変引用)

参考 医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)

2005 年の米国IDSA/ATS 院内肺炎診療ガイドラインで示された定義で,表2の定義項目を1つ以上満たす肺炎。表2 医療ケア関連肺炎(HCAP)の定義◦90 日以内に2日以上の入院◦ナーシングホームまたは長期療養施設に居住◦在宅輸液療法(抗菌薬を含む) ◦30 日以内の維持透析◦在宅における創傷治療◦家族内の多剤耐性菌感染

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)

入院48 時間以上経過した患者に新たに出現した肺炎。

人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)

気管挿管下人工呼吸を開始して48 時間以降に新たに発生する院内肺炎。

耐性菌

多くの抗菌薬に耐性を獲得した菌のことであり,一般的にはMRSA,緑膿菌,ESBL 産生腸内細菌等を指す。

escalation 治療

狭域抗菌薬を使用し,全身状態の改善がみられない場合に,必要に応じて広域抗菌薬への変更も考慮する治療。
p.9
ix

略語一覧

略 語英 語日本語ACIP Advisory Committee on Immunization Practices米国予防接種諮問委員会ADL activity of dairy living日常生活動作ATS American Thoracic Society米国胸部疾患学会(医学会) AUC area under the blood concentration time curve血中濃度曲線下面積BAL bronchoalveolar lavage気管支肺胞洗浄BTS British Thoracic Society英国胸部学会CAP community-acquired pneumonia市中肺炎Ccr creatinine clearanceクレアチニンクリアランスCDC Centers for Disease Control and Prevention米国疾病予防管理センターCER cost-effectiveness ratio費用対効果比COPD chronic obstructive pulmonary disease慢性閉塞性肺疾患CPG clinical practice guideline診療ガイドラインECOG European Cooperative Oncology Group欧州臨床腫瘍研究グループESBL extended-spectrum β-lactamase基質特異性拡張型β-ラクタマーゼHAP hospital-acquired pneumonia院内肺炎HCAP healthcare-associated pneumonia医療ケア関連肺炎ICU intensive care unit集中治療室IDSA Infectious Diseases Society of America米国感染症学会MA meta analysisメタアナリシスMD mean difference平均差MRSA methicillin-resistant Staphylococcus aureusメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MSSA methicillin sensitive Staphylococcus aureusメチシリン感受性黄色ブドウ球菌NHAP nursing home–acquired pneumonia介護施設関連肺炎NHCAP nursing and healthcare-associated pneumonia医療・介護関連肺炎OR odds ratioオッズ比PBP penicillin binding proteinペニシリン結合蛋白PCP Pneumocystis jirovecii pneumoniaニューモシスチス肺炎PCV13 pneumococcal conjugate vaccine 13 13 価蛋白結合型肺炎球菌ワクチンPPSV23 pneumococcal polysaccharide vaccine 23 23 価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチンPSB protected specimen brush保護的標本擦過PSI pneumonia severity index肺炎重症度分類RR risk ratioリスク比RCT randomized controlled trialランダム化比較試験SR systematic reviewシステマティックレビューTDM therapeutic drug monitoring治療薬(血中薬物)濃度モニタリング

de-escalation 治療

広域抗菌薬で初期治療を開始し,全身状態の改善を確認し,原因菌を同定し感受性を確認した上で可能であれば狭域抗菌薬への変更を考慮する治療。

スイッチ療法

症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬へ切り替える治療戦略。
p.10
x菌名一覧

『成人肺炎診療ガイドライン2017』では、本文中の菌名の記載を原則として日本語表記としている。菌名の英語表記との対応は、下記の通りとする。

英 語本文中の表記(日本語) Achinetobacter spp.アシネトバクタ―属Anaerobes嫌気性菌Bordetella pertussis百日咳菌Chlamydia pneumoniae肺炎クラミジアChlamydia psittaciオウム病クラミジアClostridium spp.クロストリジウム属Corynebacterium spp.コリネバクテリウム属Enterococcus faecalisエンテロコッカス・フェカーリスEscherichia coli大腸菌Fusobacterium spp.フソバクテリウム属Haemophilus influenzaeインフルエンザ菌Klebsiella pneumoniae肺炎桿菌Legionella pneumophilaレジオネラ・ニューモフィラMoraxella catarrhalisモラクセラ・カタラーリスMycobacterium tuberculosis結核菌Mycoplasma pneumoniae肺炎マイコプラズマNeisseria spp.ナイセリア属Pasteurella multocidaパスツレラ・ムルトシダPeptostreptococcus spp.ペプトストレプトコッカス属Pneumocystis spp.ニューモシスチス属Porphyromonas spp.ポルフィロモナス属Prevotella spp.プレボテラ属Pseudomonas aeruginosa緑膿菌Serratia marcescensセラチア・マルセッセンスStaphylococcus aureus黄色ブドウ球菌Stenotrophomonas maltophiliaステノトロフォモナス・マルトフィリアStreptococciレンサ球菌Streptococcus agalactiaeストレプトコッカス・アガラクティエStreptococcus anginosus groupストレプトコッカス・アンギノサス群Streptococcus mitisストレプトコッカス・ミティスStreptococcus pneumoniae肺炎球菌Streptococcus pyogenesストレプトコッカス・ピオゲネスVeillonella spp.ベイロネラ属

略 語英 語日本語TPN total parenteral nutrition高カロリー輸液VAP ventilator-associated pneumonia人工呼吸器関連肺炎
p.11
xi

『成人肺炎診療ガイドライン2017』 作成経過

◦作成方針

本ガイドラインは,肺炎診療の向上をはかり,国民健康を推進することを目的として作成された。本ガイドライン作成に当たっては,現時点で最も質が高くかつ有用性,汎用性の高いガイドラインを作成するため,evidence based medicine(EBM)を真の意味で実践することを目指した。すなわち,質が高いエビデンスの収集のみならず,このエビデンスを実際の臨床で活かすために重要な要素である益と害,患者の好み,コスト等も勘案した上で,クリニカル・クエスチョンに対する推奨を提案した。これらの手順を円滑かつ確実に実行するために,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き』に準拠したガイドライン作成を行った。

◦使用上の注意

本ガイドラインは,あくまで標準的な肺炎診療の指針を示した参考資料である。個々の症例での医療行為は,各医療施設の状況や患者背景等を考慮しながら,医療者と患者が協働して選択されるべきであり,本ガイドラインが医療行為を強制したり医療者の裁量を制限するものではない。

◦COI(利益相反)について

一般社団法人日本呼吸器学会は,COI(利益相反)委員会を設置し,内科系学会とともに策定したCOI(利益相反)に関する共通指針ならびに細則に基づき,COI 状態を適正に管理している。〔COI(利益相反)については,学会ホームページに指針・書式等を掲載している。〕以下に,『成人肺炎診療ガイドライン2017』編集委員のCOI 関連事項を示す。

1) ‌研究助成金等に関する受入状況‌ (企業名)アステラス製薬(株),エーザイ(株),MSD (株),塩野義製薬(株),第一三共(株),大正富山医薬品(株),大日本住

友製薬(株),大鵬薬品(株),帝人在宅医療(株),中外製薬(株),日本ベーリンガー・インゲルハイム(株),ファイザー(株), Meiji Seika ファルマ(株) 2) 講演料・原稿料等の受入状況‌ (企業名)アステラス製薬(株),MSD (株),杏林製薬(株),塩野義製薬(株),第一三共(株),大正富山医薬品(株),大日本住

友製薬(株),(株)南江堂,日本ベーリンガー・インゲルハイム(株),ファイザー(株),Meiji Seika ファルマ(株) 3) 作成委員の個人的収入に関する受け入れ状況本学会の定めた開示基準に該当するものはない。

◦作成資金

本ガイドライン作成に使われた資金は,すべて日本呼吸器学会より拠出された。
p.12
xii

◦組織編成

日本呼吸器学会ガイドライン

施行管理委員会( (日本呼吸器学会肺炎診療ガイドライン委員会

システマティックレビューチーム( (

日本呼吸器学会肺炎診療ガイドライン

作成委員会( (

スコープ作成

推奨作成エビデンス収集

エビデンス評価・統合

改訂

普及・導入・評価肺炎診療ガイドライン草案作成

外部評価

肺炎診療ガイドライン最終決定

公開重要臨床課題からのクリニカルクエスチョンの設定システマティックレビューレポート作成

作成目的の明確化とガイドライン作成体制の決定

肺炎診療ガイドライン統括委員会肺炎診療ガイドライン作成グループシステマティックレビューチーム
p.13
xiii

『成人肺炎診療ガイドライン2017』 作成組織

◦作成主体

一般社団法人 日本呼吸器学会

◦ガイドライン統括委員会

日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会

◦ガイドライン作成グループ

日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会

委員長

河野 茂長崎大学

委 員

青木 洋介佐賀大学医学部附属病院感染制御部

今村 圭文長崎大学医学部第二内科

門田 淳一大分大学医学部呼吸器・感染症内科学

志馬 伸朗広島大学大学院救急集中治療医学

高橋 洋坂総合病院呼吸器科

塚田 弘樹新潟市民病院呼吸器内科・感染症内科

寺本 信嗣東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科

朝野 和典大阪大学医学部附属病院感染制御部

比嘉 太国立病院機構沖縄病院呼吸器内科

松本 哲哉東京医科大学微生物学分野

丸山 貴也国立病院機構三重病院呼吸器内科

三木 誠仙台赤十字病院呼吸器科

宮下 修行川崎医科大学総合内科学1

迎 寛長崎大学医学部第二内科

吉田 雅博日本医療機能評価機構EBM 医療情報部

◦システマティックレビューチーム

日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会

システマティックレビューチーム

青木 信将新潟大学医歯学総合病院集中治療部

井手 昇太郎長崎大学医学部第二内科

上地 隆史北海道社会事業協会余市病院
p.14
xiv大塚 竜也東北労災病院呼吸器内科

片岡 裕貴兵庫県立尼崎総合医療センター呼吸器内科

倉井 大輔杏林大学呼吸器内科

小宮 幸作大分大学医学部呼吸器・感染症内科学

中村 造東京医科大学病院感染制御部

南宮 湖永寿総合病院呼吸器内科/ 慶應義塾大学医学部呼吸器内科

野口 真吾産業医科大学若松病院呼吸器内科

原永 修作琉球大学第一内科

藤倉 雄二防衛医科大学校感染症呼吸器内科

堀田 信之横浜市立大学呼吸器病学

間辺 利江帝京大学医学部衛生学公衆衛生学

茂呂 寛新潟大学医学部呼吸器感染症内科

◦外部評価委員

葛谷 雅文名古屋大学医学部老年内科(高齢者医療)

佐々木 英忠仙台富沢病院(高齢者医療)

中田 紘一郎中田クリニック(開業医)

中浜 力中浜医院(開業医)

渡辺 彰東北大学加齢医学研究所(日本化学療法学会)

◦ガイドライン作成事務局

今村 圭文長崎大学医学部第二内科

鈴木 昭仁日本呼吸器学会事務局

(五十音順)
p.15
xv

『成人肺炎診療ガイドライン2017』 作成工程

診療ガイドラインがカバーする内容に関する事項タイトル成人肺炎診療ガイドライン2017目的◦高い治療効果

◦薬剤耐性菌の蔓延抑止◦医療資源の節約◦終末期肺炎における倫理的配慮

トピック◦市中肺炎の診断

◦市中肺炎の治療◦院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎の診断◦院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎の治療◦肺炎の予防

想定される利用者,利用施設◦利用者

▲専門医(呼吸器,感染症) ▲非専門医(研修医含む) ▲コメディカル(看護師,薬剤師,検査技師,介護士) ◦利用施設

▲肺炎診療に携わるすべての医療施設

既存ガイドラインとの関係これまで作成された市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎を統合し,一つのガイドライ

ンとする。

重要臨床課題重要臨床課題 1:市中肺炎診断における重症度評価

重要臨床課題 2:市中肺炎診断における画像検査重要臨床課題 3:市中肺炎診断におけるバイオマーカー重要臨床課題 4:市中肺炎診断における細菌学的検査重要臨床課題 5:市中肺炎治療における抗菌薬選択重要臨床課題 6:市中肺炎治療における補助療法重要臨床課題 7:市中肺炎治療におけるde-escalation 戦略重要臨床課題 8:市中肺炎治療におけるスイッチ療法重要臨床課題 9:市中肺炎治療における治療期間重要臨床課題10:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎診断における重症度評価重要臨床課題11:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎治療におけるバイオマーカーの有用性重要臨床課題12:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎診断における耐性菌リスクの評価重要臨床課題13:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎診断における誤嚥性肺炎リスクの評価重要臨床課題14:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎治療における抗菌薬選択重要臨床課題15:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎治療におけるde-escalation 戦略重要臨床課題16:院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎治療における治療期間重要臨床課題17:肺炎予防におけるワクチン接種重要臨床課題18:肺炎予防におけるインフルエンザ治療の重要性重要臨床課題19:肺炎予防における口腔ケアの重要性

ガイドラインがカバーする範囲◦本ガイドラインがカバーする範囲

▲

肺炎と診断された成人(18 歳以上,上限なし) ◦本ガイドラインがカバーしない範囲

▲小児▲抗酸菌,真菌,ウイルス感染▲慢性下気道感染症

クリニカルクエスチョン(CQ)リストp. iv『成人肺炎診療ガイドライン2017』CQ 本文と推奨文のまとめ参照
p.16
xvi

システマティックレビューに関する事項実施スケジュール◦文献検索に1ヵ月

◦文献の選出に2ヵ月◦エビデンス総体の評価と統合に2ヵ月

エビデンスの検索◦担当者

▲



日本呼吸器学会会員の中から公募により選出する。▲



一つのCQ に対して,少なくとも2名のシステマティックレビュー(SR)担当者が検討を行う。◦エビデンスタイプ

▲



既存の診療ガイドライン(CPG),SR/ メタアナリシス(MA)論文,個別研究論文を,この順番の優先順位で検索する。優先順位の高いエビデンスタイプで十分なエビデンスが見出された場合は,そこで検索を終了してエビデンスの評価と統合に進む。▲



個別研究論文としては,ランダム化比較試験,非ランダム化比較試験,観察研究を検索の対象とする。▲



症例報告,学会報告,商業雑誌,専門家執筆の総説,書籍は検索対象としない。▲



言語は日本語と英語に限定する(アブストラクトのみ英語でも可) ◦データベース

▲



個別研究論文については,Medline,医中誌▲



SR/MA 論文については,Medline,医中誌,The Cochrane Library ▲



既存の診療ガイドラインについては,Guideline International Network のInternational Guideline Library,米国AHRQ のNational Guideline Clearinghouse,医中誌,Amazon ◦検索の基本方針

▲



介入の検索に関しては,PICO フォーマットを用いる。PとIの組み合わせが基本で,特にCも特定する。Oについては特定しない。◦検索対象期間

▲



すべてのデータベースについて,2015 年4月1日までをSR が実施された保証期間とするが,この期間以降の論文も必要に応じて採用可とする。▲



The Cochrane Library は,2015 issue 8まで

文献の選択基準,除外基準◦採用条件を満たすCPG,SR 論文が存在する場合は,それを第一優先とする。

◦採用条件を満たすCPG,SR 論文がない場合は,個別研究論文を対象としてde novo で

SR を実施する。◦採用条件を満たす観察研究がない場合は,SR を実施しない。◦遺伝子を対象とした研究は除外する。◦動物実験を用いた研究は除外する。

エビデンスの評価と統合の方法◦‌エビデンス総体の強さの評価は,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』の方法

に基づく。◦エビデンス総体の統合は,質的な統合を基本とし,適切な場合は量的な統合も実施する。

推奨作成から最終化,公開までに関する事項推奨作成の基本方針◦推奨の決定は作成委員会の審議と投票に基づき,修正Delphy 法により合意を形成する。

経済的,および学術的COI を有するものを除いた委員により投票を行い,7割以上の賛成をもって決定する。◦推奨の決定には,エビデンスの評価と統合で求められた「エビデンスの確実性」,「益と害

のバランス」の他,「患者の価値観の多様性」,「経済学的な視点」も考慮して,推奨とその強さを決定する。

最終化◦外部評価を実施する。

◦パブリックコメントを募集して結果を最終版に反映させる。◦日本呼吸器学会学術講演会においてガイドライン草案の内容を発表し,聴衆者からのコメ

ントを募り,結果を最終版に反映させる。
p.17
xvii

外部評価の具体的方法◦外部評価委員が個別にコメントを提出する。ガイドライン作成委員会は,各コメントに対

して診療ガイドラインを変更する必要性を討議して,対応を決定する。◦パブリックコメントや日本呼吸器学会学術講演会聴衆者からのコメントに対しても同様

に,ガイドライン作成委員会は,各コメントに対して診療ガイドラインを変更する必要性を討議して,対応を決定する。

公開の予定◦外部評価,パブリックコメント等への対応が終了したら,ガイドライン統括委員会が公開

の最終決定をする。◦公開の方法は,ガイドライン作成委員会とガイドライン統括委員会が協議の上決定する。

普及・導入・評価◦まず実用版を作成し,日本呼吸器学会会員へは無償配布し,非呼吸器学会員へは有償販売

する。◦実用版作成後は,簡易版を作成し,日本呼吸器学会会員へは無償配布し,非呼吸器学会員

へは有償販売する。◦簡易版を基に,英語版を作成し,学会誌へ掲載する。◦実用版の基および簡易版は,一定期間後(作成1年後を目処)に,詳細版とともに学会ホー

ムページに電子版として掲載する。◦詳細版をMinds サイトやMinds オフラインアプリにも同時期に無償提供を開始する。◦Minds にガイドラインの評価を依頼する。

改訂◦本ガイドラインをより最新の状態に保つために,3〜5年ごとに改訂を行う。
p.18
xviii

CONTENTS

◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』フローチャートiii ◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』 CQ 本文と推奨文のまとめiv ◦用語・略語・菌名一覧viii ◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』作成経過xi ◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』作成組織 ◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』作成工程

I SCOPE ─── 肺炎の基本的特徴1

総 論  肺炎総論2各論1  市中肺炎9各論2  院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎34各論3  人工呼吸器関連肺炎49各論4  肺炎予防52

II Clinical Question 57

CAP の診断

CQ 01 CAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。58

CQ 02 CAP 診断において,問診,身体診察と胸部X 線画像で診断した肺炎に胸部CT を施行することは推奨されるか。

63 CQ 03 CAP 患者において,CRP 測定を行うことは推奨されるか。65 CQ 04 重症CAP 患者の原因菌診断において,血液培養を施行することは推奨されるか。70

CQ 05 「気道症状と発熱」を有する患者群において,胸部単純X 線検査を全例に施行する

ことは推奨されるか。

73 CQ 06 CAP 診断において,尿中抗原検査を全例に施行することは推奨されるか。76

CAP の治療

CQ 07 CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか。

CQ 08 CAP のエンピリック治療において,β-ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか。

成人肺炎診療ガイドライン2017成人肺炎診療ガイドライン2017
p.19
xix

CQ 09 CAP 治療において,抗菌薬投与に全身投与ステロイド薬を補助療法として併用することは,抗菌薬のみでの治療よりも推奨されるか。90

CQ 10 CAP 治療において,細菌培養検査の結果に基づく抗菌薬のde-escalation は推奨されるか。95

CQ 11 CAP 治療において,症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)は推奨されるか。

98 CQ 12 CAP 治療の期間について,1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与は推奨されるか。101

HAP/NHCAP の診断

CQ 13 HAP/NHCAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。105 CQ 14 HAP/NHCAP 診断において,CRP 測定は推奨されるか。111 CQ 15 NHCAPおよびCAP患者において,誤嚥のリスク因子を評価することは推奨されるか。115

CQ 16 HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことは推奨されるか。

118 HAP/NHCAP の治療

CQ 17 NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,ニューキノロン系薬を用いることは推奨されるか。

121 CQ 18 HAP/NHCAP 治療において,de-escalation は推奨されるか。124

CQ 19 HAP/NHCAP 治療において,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は推奨されるか。

129 CQ 20 HAP/NHCAP治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間は推奨されるか。135

CQ 21 non-HIV患者のニューモシスチス肺炎治療において,ステロイド薬投与は推奨されるか。

141 肺炎の予防

CQ 22高齢者の肺炎予防において,肺炎球菌ワクチンは推奨されるか。144

CQ 23高齢者の肺炎予防において,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか。155

CQ 24成人のインフルエンザ関連肺炎の予防において,早期(2 日以内)抗インフルエンザ薬投与は推奨されるか。

159 CQ 25 肺炎予防において,口腔ケアは推奨されるか。164

付 録  参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量170
p.20

        
p.21
◦総 論肺炎総論

◦各論1市中肺炎

◦各論2院内肺炎/医療・介護関連肺炎

◦各論3人工呼吸器関連肺炎

◦各論4肺炎予防

SCOPE ─ 肺炎の基本的特徴

I
p.22
臨床的特徴

肺炎は発症頻度,生命予後,生活の質(QOL),社会に与える影響などの点で最も重要な感染症の1 つである。肺炎は「肺実質の,急性の,感染性の,炎症」と定義することができる(本ガイドラインでは感染症以外の肺炎・肺臓炎等は取り扱わない)。したがって,肺炎の診断では,炎症の場が肺実質(肺胞領域)であるか,経過は急性であるか,微生物によって引き起こされた炎症であるかを判断することが重要となる。

肺炎の症状として,咳嗽,喀痰,呼吸困難,胸痛といった呼吸器症状と,発熱,倦怠感,食思不振,意識障害といった全身症状が認められる。診察所見では,胸部聴診でcrackles を聴取し,バイタルサインでは発熱,頻脈,頻呼吸を認め,重症例では意識障害,ショックを来す場合もある。血液検査所見では,好中球優位の白血球増多,炎症反応(CRP・血沈・プロカルシトニンの上昇)が認められ,胸部X 線検査では気管支透亮像を伴う浸潤影が細菌性肺炎を示唆する所見である。

肺炎は原因菌の観点から,細菌性肺炎と非定型肺炎に大別することができる。細菌性肺炎に対してはβ- ラクタム系薬が有効であるのに対し,非定型肺炎ではβ- ラクタム系薬は無効であり,マクロライド系薬,キノロン系薬,テトラサイクリン系薬が有効である。

また,発症の場や病態の観点からは,市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP),院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP),医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia: NHCAP)に大別することができる。一般的に,CAP 患者は基礎疾患を有しておらず(または有しても軽微であり),耐性菌が原因菌となる頻度も少ない。これに対して,HAP は何らかの基礎疾患を有していることに加えて,耐性菌が原因菌となるリスクが高いことから,死亡率がCAP よりも高い。NHCAP は主に医療ケアや介護を

受ける高齢者に発症する肺炎であり,耐性菌リスクや予後の点でCAP とHAP の中間的な位置づけとなり,繰り返す誤嚥性肺炎に代表される予後不良の終末期肺炎の像を呈する例も多い。

疫学的特徴

日本における肺炎の発症頻度に関しては,2014 年の厚生労働省による患者調査の概況では,入院患者の肺炎の受療率(1 日あたりの患者数を人口10 万対で表した数)は34.6,外来患者の肺炎受療率は8.2 であった。入院患者について他の呼吸器疾患と比較すると,喘息4.4,気管支炎および慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)3.8,肺癌18.8 などよりも多い。年齢階級別の受療率では65 歳以上の高齢者に多いことが特徴だが,15 歳未満の小児でも比較的多く,看病する親の労働損失など社会的影響も大きい。

肺炎による死亡率は,戦前までは結核や胃腸炎と並んで上位にあり,特にスペイン風邪が流行した1918 〜1919 年頃には日本人の死因の第一位となっている。その後,ペニシリンをはじめとした抗菌薬の開発,医療サービスの充実,社会的基盤の整備に助けられ,1950 年代頃より死亡率は急速に低下し,一時は肺炎はもはや脅威ではないとされていた時期もあった。しかし,1980 年代より死亡率は増加に転じ,その後も増加の一途をたどっており,2011 年には長い間日本人の死因第3 位であった脳血管疾患に代わり,肺炎が死因の第3 位となった(図1)。

肺炎の年齢階級別死亡者数では,全体の96% 以上を65 歳以上の高齢者が占めており,肺炎死亡者数が増加している主な原因は日本社会の高齢化によるものと推測される(図2)。

前述のとおり,肺炎はCAP,HAP,NHCAP に大別す

肺炎総論総論

SCOPE肺炎の基本的特徴
p.23
ることができるが,死亡率は一般的にHAP,NHCAP, CAP の順に高い。また,HAP の特殊病態である人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)はHAP のなかでも特に死亡率が高い。今回,日本における肺炎群別の死亡率についてシステマティックレビュー(SR)を行ったところ,肺炎の死亡率はそれぞれ

VAP 32.4%,HAP 30.4%,NHCAP(HCAP を含む) 15.5%,CAP 6.3% という結果であった(図3) 1)-16)。

肺炎の原因菌については,CAP では肺炎球菌,インフルエンザ菌,肺炎マイコプラズマ等が原因菌となりやす

図1  日本人の死因の推移結核

脳血管疾患悪性新生物心疾患肺炎胃腸炎

(年)

死亡数(人口10万対)

0 50

100 150

200 250

300 350

(人)

1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2015

0 1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100歳以上

人口10万対(人)

1.5 0.5 0.2 0.2 0.4 0.5 0.9 0.8 1.3 2.3 4.8 8.5 18.8 35.7 82.2189.7 454.5 1,011.2

1,948.7

3,271.7

4,754.9

(歳)

図2  肺炎の年齢階級別死亡率

〔厚生労働省. 人口動態統計〔2015(平成27)〕年より作成〕総論

S C O P E
p.24
く,これに対し,HAP では黄色ブドウ球菌,緑膿菌といった耐性菌が原因菌となりやすい。また,NHCAP は両者の中間とされており,誤嚥性肺炎を来す場合も多いため,口腔内の嫌気性菌やレンサ球菌も原因菌として重要である。

肺炎診療にかかる医療費は,1 日単価が約4 万円,1 入院費用が約56 万円,1 年間の国民医療費が約3,256 億円と試算されており,金銭的にも国民への負担が大きい疾患である。

肺炎診療の全体的な流れ

1.肺炎の診断

肺炎の診断は問診,診察所見,血液検査所見,胸部X線所見より総合的に判断する。問診では咳嗽,喀痰,呼吸困難,胸痛といった呼吸器症状と,発熱,倦怠感,食思不振,意識障害といった全身症状,診察所見では胸部聴診でのcrackles や,発熱,頻脈,頻呼吸を認めた場合に,肺炎を疑い胸部X 線検査,血液検査を施行する。典型的な細菌性肺炎では胸部X 線検査で気管透亮像を伴う浸潤影を認め,血液検査所見で好中球優位の白血球数増加,炎症反応(CRP 上昇・血沈亢進・プロカルシトニン上昇)を認める。

肺炎の診療においては原因菌の同定がきわめて重要であり,喀痰が得られる場合には喀痰のグラム染色,培養検査を行い,血液培養も2 セット提出する。また,迅速診断法として尿中抗原検査(肺炎球菌,レ

ジオネラ・ニューモフィラ),喀痰抗原検査(肺炎球菌),咽頭ぬぐい液抗原検査(肺炎マイコプラズマ)も有用である。

2.本ガイドラインの基本となる肺炎の分類

と診療の流れ

これまで日本呼吸器学会肺炎診療ガイドライン作成委員会は,3 つのカテゴリー(CAP,HAP,NHCAP)に分けてガイドラインを作成してきた17)-19)。しかし,その過程で,海外のガイドラインと比較し,わが国特有の問題が存在することも明らかとなってきた。

その1 つは,医療制度の違いによって対象とする患者群が異なることである。また,もう1 つは,終末期医療における個人の意思の表出の問題である。

まず,医療制度の違いについては,「病院」の定義の違いがある。日本では,急性期のみならず亜急性期,慢性期およびリハビリのための診療も病院に入院して行う。一方,欧米では,急性期の入院診療を行うのが病院であり,亜急性期を含めて,病院外の療養施設,もしくは外来で治療を継続される。したがって,HAP のカテゴリーに含まれる対象となる患者の属性が国によって異なることになる。日本の「HAP」のなかには,欧米であれば, HAP,HCAP の患者が含まれる。また,高齢者の在宅ケアを含める日本のNHCAP には米国の医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)とCAP が含まれる(図4)。このように国の医療制度の違いによ

図3  肺炎群別の死亡率の比較(各研究の平均と95% 信頼区間)

CAP (n=3,077)

2)‒10) 2)‒10) 1)11)‒14) 15)16) (N)HCAP (n=2,493)

HAP (n=1,632) VAP (n=132)

0

50 (%)

患者死亡率45 40

35 30

25 20

15 10

5 6.3 15.5 30.4 32.4
p.25
り,各ガイドラインの対象となる肺炎のカテゴリーに含まれる患者の属性は異なっている。

もう1 つの問題は,終末期の肺炎の問題である。例えば,米国では法律で認められた事前指示書(advance directive)があり,個人の意思に従った医療が行われる。もし,強力な治療を望まない場合には,個人の意思に従って,緩和的なケアが行われる場合が多い。この場合は,肺炎のガイドラインの対象外となる。ガイドラインの対象となる肺炎患者は,重症度や薬剤耐性菌の有無などエビデンスに基づく治療が推奨される。ところが,わが国では個人の意思の確認や表出が行われることはまれであり,診療の方針は多くの場合医師が決定する。個人の意思が明確でない場合には,医師は,例えば,終末期の肺炎であっても重症肺炎として科学的なエビデンスに基づき強力な治療を行う傾向にある。

以上のわが国特有の問題を前提として,診療方針をどのように決定するかの基本となる肺炎の区分について,本ガイドライン作成委員会は最初に議論を行った。その結果,次の2 つの方針を決定した。1疾患末期,老衰などの不可逆的な死の過程にある終末

期の患者が含まれる「HAP」と「NHCAP」を1 つの診療群とし,「CAP」と分けて診療のプロセスを示す2HAP およびNHCAP の患者では,最初に疾患末期あ

るいは老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者を鑑別する本ガイドラインにおける肺炎診療の基本的概念図を図5 に,この概念を臨床で実践する場合のフローチャート

をp. iiiに示す。

CAP では,まず適切な治療の場を決定する。治療の場を決定する際には,全身管理が必要な敗血症の状態でないかをはじめに評価し,敗血症であればICU またはこれに準ずる全身管理が可能な病室へ入室させる。敗血症が否定的でも,重症度評価(A-DROP 等により判断)により重症〜超重症の場合は敗血症と同様の管理とする。重症度が中等症〜重症の場合は一般病棟への入院とし,一般病棟入院患者群治療を行う。重症度が軽症〜中等症の場合は,外来での治療が可能であり,外来患者群治療を行う。抗菌薬の選択にあたっては,年齢や基礎疾患などの患者状態,および症状や所見を基に頻度の高い原因微生物を想定し,また,迅速診断法のある場合にはその結果を参考として適切な抗菌薬を選択する。

HAP もしくはNHCAP では,まずはじめに患者背景のアセスメントを行い,誤嚥性肺炎のリスクを有するかどうか,疾患末期や老衰状態ではないかどうかを判断する。誤嚥性肺炎を反復するリスクがある場合や,疾患末期や老衰の状態である場合は患者本人や家族とよく相談したうえで,個人の意思やQOL を尊重した患者中心の治療,ケアを行う。また,一度治療を始めても,経過中においては,継続的に本人や家族の意思を確認し,状況に応じて診療法の変更がありうることを説明し,その機会を保証する。

このような状況でない場合,あるいは終末期と判断さ

図4  日本人の医療・介護の受療状況に応じた海外の肺炎のカテゴリ-の対比

海外(米国など)

日本における患者の状態急性期一般病床入院亜急性期一般病床

入院療養病床(医療療養型/介護療養型)高齢者施設

に入居最近医療ケア

を受けた在宅介護を受けている健常成人/最近医療ケアを

受けていない

病院

病院

日本院内肺炎(HAP)医療ケア関連肺炎(HCAP)市中肺炎(CAP)

院内肺炎(HAP)医療・介護関連肺炎(NHCAP)市中肺炎(CAP)総論

S C O P E
p.26
れても本人が通常の治療を望む場合や本人の意思が確認できない場合には,治療薬を決定するために敗血症の有無,重症度(HAPではI-ROAD,NHCAPではA-DROP),耐性菌リスクについて評価する。敗血症ではなく,重症度も低い場合はescalation 治療(狭域の薬剤を使用し,全身状態の改善がみられない場合に,必要に応じて広域の薬剤への変更も考慮する治療)を選択する。敗血症や重症度が高い場合,または,耐性菌リスクが高い場合は単剤でのde-escalation治療(広域の薬剤で初期治療を開

始し,全身状態の改善を確認し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮する治療)を行う。敗血症や重症度が高く,かつ,耐性菌リスクが高い場合は多剤併用によるde-escalation 治療を行う。

図5  肺炎診療の基本的概念図肺炎

CAP HAPおよびNHCAP

誤嚥性肺炎のリスク/

終末期状態の判断

抗菌薬の選択個人の意思の尊重薬剤耐性菌および重症度の判定

抗菌薬の選択

1.敗血症の有無の判定2.重症度の判定

治療の場の決定外来/一般病棟/ICU

図6  ガイドラインを利用した抗菌薬選択の基本的考え方

エンピリック治療患者の属性(年齢,基礎疾患)および症状,所見から原因微生物を推定し抗菌薬を選択☞各論1 図4,各論2 図5

標的治療細菌学的な検査によって得られた菌種,菌名,薬剤感受性試の結果を基に抗菌薬を選択

より適正なエンピリック治療グラム染色や尿中抗原,血清学的な検査などの迅速検査法によって原因微生物を推定し抗菌薬を選択☞各論1 表9~20
p.27
3.推奨抗菌薬を参考とした抗菌薬選択の

基本的考え方

抗菌薬の選択は,原因微生物の推定・同定,薬剤感受性結果の判明にあわせて,段階的に行う(図6)。

原因微生物に関する細菌学的検査の結果が不明の場合,患者の年齢や基礎病態などの疫学的なデータ,および症状や検査所見から原因となっている微生物を推定し,地域のアンチバイオグラムを考慮して抗菌薬を選択するエンピリック治療を行う。この段階でグラム染色や尿中抗原などの迅速診断を導入すると,より適切な抗菌薬の選択が可能となる。原因菌が判明し,薬剤感受性試験の結果がわかった場合には,その結果にあわせて抗菌薬を選択する標的治療を行う。

エンピリック治療では,軽症から中等症の患者に対しては疫学的情報と臨床症状や所見から頻度の高い微生物を対象として抗菌薬を選択する。重症例で薬剤耐性菌が想定されるときには,想定される微生物をできるだけ広くカバーするような抗菌薬を選択する〔各論1 図4 (p.18),各論2 図6(p.43)〕。このときにグラム染色や尿中抗原などの迅速診断法で原因微生物が推測できる場合には,より絞り込んだ適正抗菌薬の選択が可能となり,推定された菌種別の推奨役を参考に選択を行う〔各論1表9 〜20(p.20 〜25)〕。細菌培養の結果,薬剤感受性試験の結果が判明した場合には,その結果にあわせてより適切な抗菌薬を選択する標的治療を行う。この場合には,感受性と体内動態,副作用等を考慮して,原則として狭域な抗菌薬を十分量選択する。

迅速診断法にて原因微生物を推定し,同定や薬剤感受性試験が不明の場合,地域や施設のアンチバイオグラムを参考に抗菌薬を選択する。その後,細菌学的検査によって,菌種,菌名が同定され,薬剤感受性試験結果が判明した場合には,感受性試験の結果を参考として,抗菌薬の続行,変更を行う。

肺炎マイコプラズマやレジオネラ・ニューモフィラなどの,迅速診断は可能であるが,培養が困難な微生物に対しては,アレルギーなどがなければ,第一選択薬から選択し,効果が認められない場合には第二,第三選択薬に変更する。

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S C O P E
p.28
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イン作成委員会(編).医療・介護関連肺炎診療ガイドライン.東京:日本呼吸器学会;2011.
p.29
臨床的特徴

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)は基礎疾患を有しない,あるいは有しても軽微な基礎疾患の人に起こる肺炎である。院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)や医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)は何らかの基礎疾患を有し,医療や介護の対象となっている人に起こる肺炎であり,患者背景や原因微生物の種類などがCAP と異なっている。ただし,軽微の基礎疾患といっても疾患の種類や程度によって患者の予後に影響を与えるリスクは異なるため,CAP とHAP/NHCAP の間に明確な線引きをすることが難しい場合もある。なお,通常,入院48 時間以降に発症した肺炎はHAP と判断される。そのため,入院48 時間よりも早く発症した場合はCAP の範疇に入れる。

CAP がHAP やNHCAP と大きく異なる点は,原因微生物の違いで,CAP では非定型病原体(肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ,コクシエラ属)を考慮する必要がある。非定型病原体のなかでは肺炎マイコプラズマの頻度がもっとも高く,外来治療可能な軽症肺炎として診療することが多い。非定型病原体の大きな特徴は細菌感染に頻用されるβ- ラクタム系薬が無効なため,IDSA/ATS の『市中肺炎診療ガイドライン』ではエンピリック治療においては両者に有効な抗菌薬の選択が基本となっている。

CAPはNHCAPと宿主状態が異なることから,重症例を除けば治療によく反応し,肺炎治癒後も日常生活動作が入院前に戻る症例が多い。すなわち,早期の積極的な治療の介入が必要となる。外来治療可能な症例が多く存在するため,治療薬の選択に際しては治療場所の決定が重要となる。CAP の生命予後は,IDSA の提唱したPneumonia Severity Index(PSI)肺炎重症度指数とよく相関する。本予測因子は信頼度が高く予後を正確に反映する

が,項目数が多く煩雑であり,実地医療では不向きとされる。わが国のガイドラインはあらゆる実地臨床医を対象とし,非専門医に広く使われることを基本理念とするためPSI は参考とせず,英国胸部学会のCURB-65 分類に準拠した日本呼吸器学会のA-DROP システム(年齢,脱水,呼吸状態,意識状態,血圧)を2005 年の『成人市中肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)から使用してきた。

CAP のエンピリック治療において最も考慮すべきものは肺炎球菌性肺炎で,『成人市中肺炎診療ガイドライン』初版,改訂第二版ともに細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別して抗菌薬を選択する方法を推奨してきた。2010 年以降のCAP 診療の大きな進歩は,肺炎球菌や肺炎マイコプラズマなどを検出する迅速診断法が開発され普及していることで,実地医療において抗菌薬の選択に際して大きなツールとなっている。

CAP の疫学的特徴

国内の多施設共同研究の結果1)によると,日本の15 歳以上の市中発症肺炎の患者数は年間188 万人と推定される。罹患者の7 割を65 歳以上の高齢者が占め,患者の7割は入院し,年間74,000 人が病院で死亡していると推定される。ただしこの報告によると,肺炎患者の63 万人は誤嚥関連肺炎と記載されていることから,市中発症肺炎の対象はCAP 以外にもNHCAP に該当する患者も相当数含まれていると推測される。

CAPにおける原因微生物の分離頻度については,これまで多数の報告が認められる。しかし,報告によっては対象患者のなかにCAP 以外の肺炎も含まれている可能性があるものも少なくないため,純粋なCAP のデータのみを集計した9 編2)-10)を基に解析を行った。その結

市中肺炎各論1

市中肺炎の基本的特徴

SCOPE肺炎の基本的特徴

各論1

S C O P E
p.30
果,解析対象症例数は約3,000 名となり,図1 に示すように肺炎球菌が最も多く分離され,次にインフルエンザ菌が多く分離されていた。これら上位2 菌種については,これまでの報告のほとんどが同様の結果を示しており,今回の解析でもその事実が確認された。3 番目に多く分離されたのが黄色ブドウ球菌であり,MSSA,MRSAを区別している201 株についてさらに解析を行った結果,MRSA は28.4% を占めていた。腸内細菌科の菌として肺炎桿菌が4 位,大腸菌が9 位であった。非定型肺炎の原因微生物である肺炎クラミジアは5 位,肺炎マイコプラズマが6 位,レジオネラ・ニューモフィラなどのレジオネラ属菌は10 位であった。緑膿菌は7 位,モラク

セラ・カタラーリスは8 位であった。これらの原因微生物の頻度は,診断法や診断基準の変化,ワクチンの普及など各種の要因によって変わっていく可能性がある。

なお,従来の培養・同定,抗原検出,血清診断を主体とした診断法では原因微生物不明の肺炎が多くを占めていたのに対し,BAL 液に対する網羅的細菌叢解析では肺炎球菌,インフルエンザ菌および肺炎マイコプラズマといった主要な3 つのCAP 原因菌に加えて,口腔内菌やプレボテラ属やフソバクテリウム属などの嫌気性菌の関与も多いことが明らかになった(図2)

11)。

*‌1:MSSA,MRSA を区別している201株のメタアナリシスではMRSA は28.4%(95%CI 13.2-43.6)であった。*‌2:Micro-IF 法による診断率(2論文)28/922=3.0%,ELISA 法による診断率(5論文)71/2,022=3.5%

図1  国内9研究(市中肺炎3,077症例),上位10病原微生物(メタアナリシスにより95% 信頼区間を追加)

18.8 18.8

7.6 7.6 4.2 4.2 3.0 3.0 2.8 2.8 2.7 2.7 2.3 2.3 1.9 1.9 1.1 1.1 1.0 1.0

肺炎球菌インフルエンザ菌黄色ブドウ球菌*1

肺炎桿菌肺炎クラミジア*2肺炎マイコプラズマ

緑膿菌

モラクセラ・カタラーリス

大腸菌

レジオネラ・ニューモフィラ

0 5 10 15 20 25(%)

図2  網羅的細菌叢解析によるCAP64症例の第一優占菌種

0 5 10 15 20 25(%)

クロストリジウム属

ベイロネラ属

フソバクテリウム属

プレボテラ属

コリネバクテリウム属

ナイセリア属

口腔レンサ球菌

口腔内菌パスツレラ・ムルトシダ

黄色ブドウ球菌

モラクセラ・カタラーリス

肺炎マイコプラズマ

インフルエンザ菌

肺炎球菌

嫌気性菌1.6 1.6 4.7 7.8

1.6 4.7

9.4 1.6

3.1 9.4 17.2 18.8

18.8
p.31
肺膿瘍の原因微生物は一般的に嫌気性菌が関与する場合が多いと言われているが,網羅的細菌叢解析では,フソバクテリウム属などの嫌気性菌との混合感染が62.7% を占めていたことから,それを裏付ける報告であると思われる12)。さらに,グラム陽性菌のなかでは,ストレプトコッカス・アンギノサス群が15.3% と最も高率に分離されていたことから,肺膿瘍の原因微生物としてこのグループの菌の重要性が認められる。

CAP 診療の全体的な流れ

1.CAP の診断

1)肺炎の診断

CAP患者の診療において,最初に行うべきステップは疾患としての肺炎の診断である。肺炎に伴う症状として咳,痰,発熱,呼吸困難,胸痛などの有無を問診によって確認する必要がある。ただし,高齢者の場合は,典型的な呼吸器症状を示しにくく,食欲低下や活動性の低下など肺炎と直接関連のない症状が前面に出てくる場合がある。鑑別すべき疾患としては,急性上気道炎,気管支炎や慢性気道感染症の急性増悪などがあり,症状の程度や診察所見によってある程度の鑑別が可能である。しかし,肺炎の確定診断は胸部X 線および胸部CT などの画像診断によって行われるため,肺炎が疑われる症例には画像診断を実施すべきである(p.63,CQ2/p.73,CQ5 参照)。

国内で行われた65 歳以上の高齢者を対象としたCAP患者の検討13)では,CT で肺炎と診断された127 例中12例(9.4%)は胸部X 線で肺炎像を確認することができなかったと報告している。また,胸部CT による両側性の陰影の確認は重症度とも相関を認めている。また,マイコプラズマ肺炎,結核,ニューモシスチス肺炎,ウイルス性肺炎では胸部CT によって特徴的な所見を認める場合があるという報告もある14)。そのため,ルーティーンでのCT 検査は不適切だとしても一部の症例においては胸部CT の有用性が認められる。

最近では肺炎の画像診断法として肺の超音波検査の有用性が報告されている。肺炎を疑う所見としては,浸潤影,気管支透亮像,辺縁不整,胸水などがあり,CAP を対象とした欧州の多施設研究では,感度93.4%,特異度97.7% という良好な結果を示している15)。また,メタアナリシスによる解析でも感度は90% 以上を示しており16),胸部X 線検査と組み合わせるなどして肺炎診断の精度を高められると考えられる。

表2  SOFA スコア

0 点1 点2 点3 点4 点

呼吸器PaO2/FiO2(mmHg) ≧400 <400 <300 <200 +呼吸補助<100 +呼吸補助凝固能血小板数(× 10 3/ μ L) ≧150 <150 <100 <50 <20肝臓ビリルビン(mg/dL) <1.2 1.2 〜1.9 2.0 〜5.9 6.0 〜11.9 >12

循環器MAP≧70mmHg MAP<70mmHg DOA <5 or DOB DOA5.1 〜15

or Ad ≦0.1 or NOA ≦0.1 DOA >15 or Ad >0.1 or NOA >0.1

中枢神経Glasgow Coma Scale 15 13 〜14 10 〜12 6 〜9 <6腎クレアチニン(mg/dL)尿量(mL/ 日) <1.2 1.2 〜1.9 2.0 〜3.4 3.5 〜4.9 <500 >5.0 <200 DOA:ドパミン,DOB:ドブタミン,Ad:アドレナリン,NOA:ノルアドレナリン。

表1  qSOFA スコア1)呼吸数22 回/ 分以上2)意識変容* 3)収縮期血圧100mmHg 以下*:厳密にはGlasgow Coma Scale(GCS)<15を指す。各論1

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p.32
2)重症度の評価

肺炎と診断された症例は,治療の場と治療薬を決定するために敗血症の有無の判断と重症度を評価する必要がある。

新しく改定された敗血症の定義は「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」であり17),まず,表1 に示したquick SOFA(qSOFA)スコアが2 点以上であれば敗血症が疑われる。

さらに臓器障害の評価を行って,SOFA スコア(表2)がベースラインから2 点以上増加すれば敗血症と診断される(図3)。

CAP の重症度はA-DROP システム(表3)による評価が推奨される(p.58,CQ1 参照)。

CRP や白血球数は炎症所見として従来から頻用されており,さらにプロカルシトニン(PCT)も用いられるようになってきた。これらのバイオマーカーは,感度・特異度の問題を含めてどのように臨床の現場で用いるべきかについては,議論が分かれる部分も多い(p.65,CQ3参照)。

3)宿主の基礎疾患・感染防御能の評価

CAP の一般的な概念は通常の日常生活を営む健常人に起こる肺炎である。そのため,基礎疾患を有しないことが前提となっているが,ときに感染リスクを高める要因をもっている場合がある。また,NHCAP との鑑別や

図3  敗血症および敗血症性ショックの診断のフローチャート

No

感染症疑い例

臨床状態をモニターし、必要に応じて敗血症リスクを再評価する

臨床状態をモニターし、必要に応じて敗血症リスクを再評価する

qSOFA≧2 ?敗血症が依然として

疑われるか

SOFA≧2 ?

十分な輸液負荷にもかかわらず1平均動脈圧65 mmHg以上の維持に循環作動薬が必要であり、かつ2血清乳酸値18mg/dL(2mmol/L)以上?

臓器障害の評価

Yes No

No No

Yes

敗血症

Yes

敗血症性ショック

Yes

Reproduced with permission from JAMA. 2016;315(8):801-10. Copyright C 2016 American Medical Association. All rights reserved.

表3  A-DROP システムA(Age):男性70 歳以上,女性75 歳以上D(Dehydration):BUN 21mg/dL 以上または脱水ありR(Respiration):SpO2 90 %以下(PaO2 60torr 以下) O(Orientation):意識変容ありP(Blood Pressure):血圧(収縮期)90mmHg 以下軽 症:上記5つの項目のいずれも満たさないもの。中等度:上記項目の1つまたは2つを有するもの。重 症:上記項目の3つを有するもの。超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし,ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。

(文献18 より改変引用) (文献17より引用)
p.33
重症化要因の有無を確認するためにも,患者の基礎疾患を明確にして感染防御能を評価する必要がある。

4)細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別

CAP の症状は発熱,咳嗽,喀痰,息切れなどである。一般的に肺炎球菌などによる細菌性肺炎においては,これらの症状を明確に認める場合が多い。一方,肺炎マイコプラズマなどによる非定型肺炎の場合はほとんど喀痰を認めないなど,症状が典型的でない。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に関する考え方は日米の市中肺炎診療ガイドラインにおいて異なっており,IDSA のガイドラインはこれらの鑑別を重視せず細菌と非定型病原体の両方を広くカバーする治療を実施することを推奨している。一方,日本における『成人市中肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)ではまず,表4 に示した項目を用いて細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別を行い,その結果を基に治療方針を決定することを推奨している。国内の前向き研究では6 項目中4 項目以上合致すれば非定型肺炎が疑われ,3 項目以下の合致であれば細菌性肺炎が疑われるという報告がなされている(感度78%,特異度93%)

18)。また,1 ~5 の5 項目中3 項目以上に合

致した場合,非定型肺炎を疑い,2 項目以下の場合は細菌性肺炎が疑われる(感度84%,特異度87%)。すなわち,上記の判断基準を用いて細菌性肺炎と非定型肺炎のどちらの可能性が高いかという推定が可能である。

また,マイコプラズマ肺炎においては,抗原検出法および遺伝子増幅法(LAMP 法)を用いた迅速診断が可能になった。そこで,非定型肺炎が疑われた症例においては,迅速診断検査を実施することでさらに精度の高い鑑別が可能になるものと期待される。ただし,CAP の一部には肺炎マイコプラズマと肺炎球菌が混合感染を起こしているような症例もあり,注意が必要である。

5)原因微生物の検索

CAP の原因となり得る病原体として,一般細菌,肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ,ウイルスなどが挙げられ,種類が多く臨床的特徴も大きく異なっている。治療に用いる抗菌薬はこれらの病原体に合ったものを選択する必要があるため,原因微生物を明らかにすることは診療上重要である。ただし,実際の臨床においては,CAP の原因微生物が判明した後で抗菌薬が投与されることはまれであり,通常はエンピリック治療が行われる。ただし,最初の治療が必ず

しも成功するとは限らず,また,治療が成功してもよりよい抗菌薬が選択可能な場合がある。そのため,エンピリック治療を行う場合でも原因微生物検索のための検査を適確に実施しておく必要がある。また,病原体の種類に応じて用いられる検査法は異なるため,個々の症例に応じて原因微生物をある程度推定し,診断に有用な検査を選択して実施する必要がある(表5)。

喀痰などの検体を用いる場合は,検体の質が検査の精度を大きく左右する。Miller &Jones の分類は喀痰の肉眼的評価であり,膿性痰は検査に値するが,唾液や完全な粘液性痰は検査に値しない。また,グラム染色も検体の質の評価に有用であり,良質の検体は肺炎の病巣部を反映して多数の好中球を含んでいるが,質が悪く検査に値しない検体は口腔粘膜に由来する上皮細胞を多く認める。Geckler の分類では1 視野(100 倍)当たりの好中球数が25 個より多く,上皮細胞が10 個未満の場合が最も培養に適した検体と判定される。質が悪い検体はさらに検査を進めても原因微生物を診断することは難しいため,改めて検体を採取するか,良質な喀痰が採取できない症例では気管吸引液やBAL 液などの検体採取を検討する必要がある。

1グラム染色

グラム染色は操作が簡便で,迅速性に優れ,細菌の種類の推定が可能である。そのため,CAP における診断において,グラム染色は有用性が高いと評価されている。培養結果を基準とした場合,喀痰のグラム染色の感度は良質の検体を用いた場合,60 ~70%程度とする報告19)-21)が多い。しかし,他の報告では1 種類の菌体が1 視野に10 個以上観察されるような良質の検体を用いると,約90% と高い感度で原因菌が推定されている22)。菌種別では肺炎球菌が検出感度は高く,インフルエンザ菌は低い傾向がみられるが,グラム染色の精度は観察者の技術的

表4  市中肺炎における細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別項目1)年齢60 歳未満2)基礎疾患がない,あるいは軽微3)頑固な咳がある4)胸部聴診上所見が乏しい5)痰がない,あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない6)末梢血白血球数が10,000/ μ L 未満である肺炎マイコプラズマおよびクラミジア属で検討されたもの。

各論1

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p.34
レベルによっても大きく左右される。また,抗菌薬投与後の喀痰は明らかに検出感度が低下するが,治療効果を評価するうえで有用な情報が得られる場合もある。グラム染色を有効に活用するには,熟練の検査技師の意見を参考にしながら,臨床的背景も踏まえて判断することが望ましいと考えられる。

2培養・同定

培養および同定検査は,現在でもCAP 診断のスタンダードな方法として位置付けられている。グラム染色で菌の推定は可能であっても,実際に菌を分離して同定することで原因菌の診断が可能となる。また,薬剤感受性検査を引き続き実施することで,その菌の各薬剤への感受性を評価することが可能となり,耐性の有無を確認することができる。そのため,細菌性肺炎が疑われる症例では,培養・同定は欠かせない検査と位置付けられる。

培養・同定検査は結果が判明するまで数日を要するため,迅速性という点においては劣っている。しかし,最近では自動機器等の改良や質量分析装置(MALDI-TOF MS)の導入に伴い,以前より検査に要する時間はかなり短縮されてきている。ただし,現状は質量分析装置などが利用可能な施設は限られており,個々の施設において検査の流れが異なってくる可能性が高い。

なお,喀痰などの検体の培養には通常,血液寒天培地とチョコレート寒天培地を用いるが,必要に応じて他の培地を加えなければならない。例えばレジオネラ・ニューモフィラの培養を目的とする場合はBCYE-α培地など専用の培地を加え,耐性菌の有無を早めに確認したい場合は目的とする耐性菌の確認用の培地を用いる必要がある。3血液培養

血液培養は菌血症の診断に有用なだけでなく,真の原因菌の決定に有用な検査法と考えられる。ただし,血液培養の検出率は低く,陽性率は10%程度と考えられている23)。しかし,特に重症感染が疑われる症例では血液培養は必要な検査と考えられる。なお,CAP を対象とした血液培養の有用性の検証についてはCQ4(p.70)を参照していただきたい。

4抗原検出

CAP を対象とした抗原検出は,肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ,肺炎マイコプラズマ,ヒトメタニューモウイルス,アデノウイルス,RS ウイルス,インフルエンザウイルスなどが可能である(表6)。イムノクロマト法を用いた抗原検出は検査が簡便で迅速性に優れているため,CAP における原因微生物診断に重用されている。ただし,成人例ではウイルスを対象とした抗原検査は,発症頻度を考慮すると他の原因微生物が否定的で,抗菌薬治療が無効な場合に用いることが多いと考えられる。

臨床の現場では,肺炎球菌およびレジオネラ・ニューモフィラを対象とした尿中抗原検出がすでに広く利用されている(p.76,CQ6 参照)。前医などで抗菌薬が投与されている場合は,培養検査を実施しても検出率が下がる可能性が高い。しかし,肺炎球菌の尿中抗原は抗菌薬による治療開始後においても検出率は低下しないという報告24)もあり,抗菌薬投与後であっても尿中抗原の有用性は保たれていると考えられる。ただし,肺炎発症後,数ヵ月にわたって遷延して尿中抗原が検出される症例が存在する。そのため,肺炎を繰り返す例では,他の菌に

表5  呼吸器感染症の病原体別にみた検査の適応

塗抹・染色培養・

同定血清抗体価抗原検出遺伝子

検査備考

一般細菌○ ◎ × △ ×培養・同定が標準的。抗原検出が可能なのは肺炎球菌のみ。肺炎マイコプラズマ× △ △ ○ ○抗原検出(イムノクロマト法)と遺伝子検査(LAMP 法)が有用。

肺炎クラミジア× × △ × ×抗体価による検査は慎重な判定が必要。レジオネラ・ニューモフィラ△ ○ △ ○ ○塗抹・染色はヒメネス染色が有用。培養にはWYO やBCYE- α培地を用いる。遺伝子検査(LAMP 法)が有用。インフルエンザ

ウイルス× × × ◎ △遺伝子検査は新型インフルエンザが疑われる場合に実施◎:標準的な検査法,○:有用な検査法,△:限定的に用いられる検査法,×:一般的に用いることがない検査法。
p.35
よって肺炎を発症しても,以前の肺炎球菌やレジオネラ・ニューモフィラの感染によって尿中抗原が陽性となる可能性もある。また,肺炎球菌はストレプトコッカス・ミティスと共通の抗原を有しているため,ストレプトコッカス・ミティス感染例においては偽陽性が認められる可能性がある。

肺炎球菌の抗原検出法としては,尿検体以外にも喀痰または上咽頭ぬぐいを検体としたキットも市販されている。成人のCAP 症例を対象に肺炎球菌の検出性能を比較した検討では,尿中抗原が62% であったのに対し,喀痰抗原89%と高く,喀痰抗原が尿中抗原より発症早期の感度が高いという結果が報告されている25)。ただし,喀痰抗原の場合は口腔内に常在する肺炎球菌が検体を汚染することによって疑陽性が出る可能性があるため,唾液の混入がない状態で得られた喀痰を検査に用いることが望ましい。また,保険適用上は尿中抗原検出とあわせて実施しても両方を算定することはできない。

レジオネラ肺炎は急激に進行し,重症化しやすくβ-ラクタム系抗菌薬が無効である。さらに培養検査は特殊な培地が必要で発育に時間を要する。そのため,レジオネラの尿中抗原検査は有用性が高い検査と考えられる。ただしイムノクロマト法を用いた市販のキットはレジオネラ・ニューモフィラ血清型1 以外の血清型の菌は感度が低く,偽陰性となる可能性があるため,尿中抗原陰性でもレジオネラ肺炎を確実には否定できない。

肺炎マイコプラズマはイムノクロマト法による抗原検出法,および後述するLAMP 法による遺伝子検査が可能である。両者を直接比較した臨床データはまだ報告されていないが,感度はLAMP 法のほうが優れていると考えられる。ただし検査の簡便性や所要時間を考慮すると,抗原検出法は外来やベッドサイドでの利用に適して

いる。

5遺伝子検出

PCR やLAMP 法を中心とした遺伝子検出法は感度や迅速性に優れた検査法として評価が高い。ただし現時点においては,CAP に関連して国内で保険適用を受けた遺伝子検出の病原体は,肺炎マイコプラズマ,レジオネラ・ニューモフィラ,百日咳菌がある。いずれもLAMP法を用いた検査法が実用化されている(表7)。

CAPの原因微生物の遺伝子検出法は,研究レベルではすでに多くの検討がなされ,その有用性が報告されている。実用化に向けた検査法の開発も盛んであり,特にマルチプレックスPCR など多種類の病原体を同時に検出する方法が実用段階に入っており,すでに血液培養陽性菌を対象とした検査は保険適用が認められている。今後,呼吸器感染症を対象としたマルチプレックスPCRも承認される可能性が高い。このような検査法を用いると,抗菌薬投与開始時点でかなりの確率で原因微生物が判明することになり,CAP の診療を大きく変える可能性がある。ただし現時点においては,保険適用の問題や実際の臨床における利用のあり方が定まっておらず,さらに検討が必要と思われる。

6血清診断

培養等の検査が困難な病原体である肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,ウイルス等については,血清抗体価による診断が利用されてきた。通常,感染初期と2 週間後のペア血清を用いて,抗体価が4 倍以上上昇していれば陽性と判定され,原因微生物として診断される。ただ

表6  現在市販されているCAP 関連の抗原検出法

病原体検体備考肺炎球菌尿,咽頭ぬぐい,喀痰尿と呼吸器検体とで異なるキットが利用可能レジオネラ・ニューモフィラ尿レジオネラ・ニューモフィラ血清型1 のみ検出可能

インフルエンザウイルス鼻腔ぬぐい治療に反映させるためには,基本的に発症後48 時間以内の実施が望ましい。

肺炎マイコプラズマ咽頭ぬぐいリボソーム蛋白を検出

RS ウイルス咽頭ぬぐい入院中の患者,乳児,パリビズマブ製剤の適用となる患者が適応ヒトメタニューモウイルス咽頭ぬぐい成人の肺炎例はまれ。検出キットの保険適用は6 歳未満。

アデノウイルス咽頭ぬぐいRS ウイルスと同時に検出可能なキットも市販されている。各論1

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p.36
しこの方法を用いて診断しても,結果が判明した時点ではすでに治療によって軽快していることも多い。肺炎マイコプラズマについては,特異的IgM 抗体を検出する方法も利用可能であるが,その陽性率は低いという報告26)があり,IgM 抗体だけの判断では偽陰性が多く出る可能性がある。

肺炎クラミジア感染症は抗クラミドフィラ・ニューモニエ抗体の測定によって診断されている場合が多い。IgM,IgG,IgA の3 種類の抗体価が測定可能であり,カットオフインデックス値あるいはIgG,IgA では抗体価の有意な上昇を参考に感染症の原因菌と判定される。ただし,IgM 抗体は発症2,3 週後に上昇し4,5 週後にピークとなり3 ~5 ヵ月後に陰性化する。IgG 抗体は30日後に上昇し3 ~4 ヵ月後にピークとなるため,この抗体価の推移を踏まえて適切なタイミングで検査を実施しなければならない27)。また,既感染者が多いことやクラミジア・トラコマチスやオウム病クラミジアなどとの交差反応による偽陽性が指摘されているため,抗体価のみの診断は難しく,症状や他の検査結果をもとに総合的な判断が必要となる。

7その他の検査法

その他の検査法として,病理学的検査が挙げられる。通常,CAP の診断に病理学的検査が用いられることはまれであるが,他の検査法を用いても診断が困難で,他の疾患の鑑別も必要な場合などでは,細胞学的あるいは組織学的診断が有用な場合がある。得られた生検組織やBAL 液は通常の病理検査以外に免疫組織学的染色法やin situ ハイブリダイゼーション,PCR などのアプローチを行う場合がある28)。

6)耐性菌の分離状況

CAPにおける重要な耐性菌として,ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae: PRSP),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA),基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase

:ESBL)産生菌,緑膿菌やアシネトバクター属などのブドウ糖非発酵菌,などが挙げられる。

日本化学療法学会,日本感染症学会,日本臨床微生物学会の3 学会合同サーベイランスによる成人の呼吸器感染症例を対象とした集計結果29)では,肺炎球菌189 株に関して,CLSI M7-A8 に基づく分類ではPCG に対するMIC 8 μg/mL 以上の耐性菌は分離されなかったが,2株(1.1%)のみペニシリン中等度耐性肺炎球菌(penicillin-intermediate S.pneumoniae:PISP)が分離されている。ニューキノロン耐性の肺炎球菌も分離頻度はまれであり,レボフロキサシンに中等度耐性(I),耐性(R)と判定された割合は,それぞれ0.5%,1.1% であった。一方,マクロライド耐性の肺炎球菌は90%近くに達していた。

黄色ブドウ球菌に関しては,206 株中,MRSA が50.5%,MSSA が49.5% と半々であった。バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド,アルベカシンの抗MRSA 薬に対して耐性(R)と判定されたMRSA 株は認めなかった。MSSA に関しては,ベンジルペニシリンやアンピシリンに耐性を示す株が約50%を占め,マクロライド耐性も約25% 分離された。

インフルエンザ菌については,182 株中β- ラクタマーゼ産生アモキシシリン・クラブラン酸耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-positive amoxicillin/clavulanate resistant:BLPACR)を20 株(11.0%),β- ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-negative,ampicillin-resistant H. influenzae:BLNAR)を61 株(33.5%)認めた。これらを反映して,インフルエンザ菌全体の約40 ~45% はアンピシリン,スルバクタム・アンピシリン,セファクロルなどのペニシリン系薬や第一世代セフェム系薬に耐性であった。

肺炎桿菌の多くはペニシリナーゼを産生するため,139株中134 株(96.4%)がアンピシリンにR またはI と判定されたが,β- ラクタマーゼ阻害薬を配合したスルバ

表7  現在市販されているCAP 関連の遺伝子検査法

病原体検体備考肺炎マイコプラズマ咽頭ぬぐいLAMP 法が保険適用ありレジオネラ・ニューモフィラ喀痰など呼吸器検体LAMP 法が保険適用あり

百日咳菌鼻咽頭ぬぐいLAMP 法が保険適用あり
p.37
クタム・アンピシリンに対してR またはI を示した株は9 株(6.5%)であった。

緑膿菌は160 株が検討され,セフトリアキソンに対しては135 株(84.4%)がR またはI と判定された。イミペネムやメロペネムなどのカルバペネム耐性株は15%前後,レボフロキサシンやシプロフロキサシンなどのニューキノロン耐性株は20% 前後認められた。

2.CAP の治療

1)エンピリック治療1抗菌薬の選択方法

抗菌薬療法は一般的にエンピリック治療と標的治療に区分される。エンピリック治療は本来,培養結果が出るまでの初期数日間の治療,標的治療は分離菌に対応した治療,という意味合いで用いられる。しかし,実臨床では培養検査で原因菌が判明しない場合が多く,初期治療自体をガイドラインの推奨レジメンに準拠した初期の広域治療(empirical broad spectrum antibiotic treatment)と,個別の情報や迅速検査法結果等をもとに標的をある程度絞った初期治療(pathogen directed antibiotic treatment)に区分して分析が行われる場合もある30)。

ガイドラインにおける推奨レジメンは対象領域における主な原因菌の統計的頻度,予後,宿主背景等の一般的な情報を基に決定される。実臨床においてはそれらの一般的事項に加えてグラム染色や各種迅速検査,先行投薬への反応性,自施設のアンチバイオグラム,その患者の過去の分離菌動向,さらには地域の感染症流行情報や家族内,職場内感染の有無などの個別化された情報が入手可能である。CAP の外来軽症例ではガイドラインに基づいた初期広域治療の成績は個別化した初期治療に劣らないことが示されているが30),副作用や耐性化の問題等を

考慮しつつ個々の症例に応じたより適切な初期投与抗菌薬を選択する努力も重要である。

2抗菌薬選択に際して考慮するポイント

軽症ならびに中等症のCAP のエンピリック治療に際して考慮すべき項目を表8 にまとめた。

CAPにおいては,宿主免疫機能の高度低下あるいは特殊な曝露背景などを有する例外的な症例を除けば,原因菌の範囲はある程度まで限定して考えることが可能である。CAP の治療に際して重要な原因菌は,頻度が高く重症化しやすい肺炎球菌,次いでインフルエンザ菌である。若年者の場合は肺炎マイコプラズマの頻度が比較的高く,軽症例が多い。肺炎クラミジアは軽症例が多いため,胸部X 線画像で判別しにくい。慢性心肺疾患など基礎疾患保有者においては肺炎球菌,インフルエンザ菌に次いでモラクセラ・カタラーリスを考慮する必要があり,また高齢者では口腔内レンサ球菌や嫌気性菌の関与率が高い。その他,頻度的には高くはないが重症化する危険性が高いレジオネラ・ニューモフィラも考慮する必要がある。

3外来患者(軽症~中等症肺炎)での抗菌薬の選択(図4)

外来治療時に選択される比較的頻度の高い抗菌薬は,ペニシリン系薬,マクロライド系薬,レスピラトリーキノロンである。レスピラトリーキノロンはCAP における大部分の原因菌をカバーしており治療効果も高いが,耐性菌の出現を考慮し『成人市中肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)までは第一選択薬から除外していた18)。現時点では市中呼吸器感染症で問題となるニュー

表8  軽〜中等症CAP のエンピリック治療で考慮するポイント1)肺炎球菌を考慮した抗菌薬を選択する2)非定型肺炎(レジオネラ肺炎は除く)は軽症例が多いため,外来または短期入院症例が多い3)非定型肺炎ではβ- ラクタム系薬単剤は選択しない(p.79,CQ 7 参照) 4)抗菌薬の選択に際しては非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を提案する(p.79,CQ 7 参照) 5)細菌性肺炎が疑われる場合にはβ- ラクタム系薬単独投与を考慮する(p.79,CQ 7 参照) 6)レスピラトリーキノロンが最適であるが,使用に際しては結核の有無を考慮する7)β- ラクタム系薬とマクロライド系薬の併用は重症例を除き有効性は証明されていない(p.85,CQ 8 参照) 8)‌マクロライド耐性肺炎マイコプラズマやマクロライド耐性肺炎球菌に対してもマクロライド系抗菌薬の有効性が示されている9)ニューキノロン耐性肺炎球菌,ニューキノロン耐性インフルエンザ菌は増加していない各論1

S C O P E
p.38
キノロン耐性肺炎球菌やニューキノロン耐性インフルエンザ菌は増加していないが,濫用は避けるべきである29)31)-35)。また,肺結核合併例への投与では,診断の遅れを誘発する危険性があること36)-38),予後不良因子となること37)39)40),ニューキノロン耐性のリスクとなること41)-43),などの不利益があるため,本薬剤の使用に際しては本当に必要な状況かどうか,より妥当性が高い他剤の選択肢がないかどうかを考慮する必要がある。なおレスピラトリーキノロンのなかで,トスフロキサシンは抗結核菌作用のないのが特徴である。

外来診療での注射薬使用は1 日1 回投与が現実的である。1 日1 回点滴静注療法の条件に合致する抗菌薬には,半減期の長いセフトリアキソン,レボフロキサシン,アジスロマイシンなどがある。米国ではOPAT (Outpatient Parenteral Antimicrobial Therapy)と呼ばれる外来抗菌薬静注療法ガイドラインが公表され,肺炎のみならずさまざまな疾患に対し実施されている44)。

CAP で最も頻度の高い原因菌は肺炎球菌(図1)であるが,外来で治療可能な肺炎,すなわち軽症肺炎群では肺炎マイコプラズマの頻度も高い45)。このため日本呼吸器学会の『成人市中肺炎診療ガイドライン』初版,改訂第二版では,CAP の原因菌を非定型病原体と細菌の2 つに分けて,両群を鑑別するための項目と基準を設けた

(p.13,1.CAP の診断 4)細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別の項参照)。細菌性肺炎が疑われる場合にはペニシリン系薬を,非定型肺炎が疑われる場合にはマクロライド系薬を選択する手法である。臨床的診断法であるが,ガイドライン公表後の数々の前向き臨床研究でも鑑別は有用とする報告が多い46)-49)。両群を鑑別する大きな理由は菌の耐性化を予防する,また耐性菌の蔓延を防ぐ,さらに医療資源の有効性維持のためで,狭域で有効な抗菌薬を選択する点にある。

実地医療における原因菌迅速診断法としては,臨床的鑑別法以外に肺炎球菌の尿中抗原検査や喀痰抗原検査,肺炎マイコプラズマの咽頭抗原検査,肺炎クラミジアのIgM 抗体検出法などがあり,これらの検査が陽性であれば標的治療が可能となる(p.19,1.CAP の治療 2)原因菌判明時の抗菌薬選択の項参照)。

※鑑別診断基準を用いても,しばしばマイコプラズマ肺炎と細菌性肺炎の鑑別が困難なことがある。一般に高齢者の肺炎は非典型例が多く,若年者に比べて鑑別し難いことが指摘されている。マイコプラズマ肺炎を高齢者群(60 歳以上)と非高齢者群(60 歳未満)に分けて比較し

外来患者群内服薬・β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬

*1

・マクロライド系薬*2・レスピラトリーキノロン*3,*4

注射薬・ セフトリアキソン・ レボフロキサシン*4・ アジスロマイシン一般病棟入院患者群注射薬・スルバクタム・アンピシリン・セフトリアキソン or セフォタキシム・レボフロキサシン

*4

※非定型肺炎が疑われる場合・ミノサイクリン・レボフロキサシン

*4

・アジスロマイシン集中治療室入室患者群注射薬A 法:カルバペネム系薬

*5 orタゾバクタム・ピペラシリン

B 法†:スルバクタム・アンピシリン or

セフトリアキソン orセフォタキシム

C 法:A or B 法+アジスロマイシン

D 法:A or B 法+レボフロキサシン*4,*6

E 法:A or B or C or D 法+抗MRSA 薬*7

*1:‌細菌性肺炎が疑われる場合:スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸(高用量が望ましく具体的な投与量は巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.170)を参照)。*2:非定型肺炎が疑われる場合:クラリスロマイシン,アジスロマイシン*3:慢性の呼吸器疾患がある場合には第一選択薬:ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン*4:結核に対する抗菌力を有しており,使用に際しては結核の有無を慎重に判断する。*5:メロペネム,ドリペネム,ビアぺネム,イミペネム・シラスタチン*6:代替薬:シプロフロキサシン*4 or パズフロキサシン*4 *7:MRSA 肺炎のリスクが高い患者で選択する:リネゾリド,バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン† :緑膿菌を考慮しない場合

図4  CAP のエンピリック治療抗菌薬
p.39
た検討では,疾患重症度や予後は両群間で差はみられなかったが,高齢者群は非高齢者群と比べて基礎疾患保有例や他の病原微生物との合併例が多くみられている49)。また,高齢者群では発熱や咳の程度も非高齢者群と比べて弱く,その臨床像から細菌性肺炎を疑わせる症例が多くみられている49)。鑑別項目の合致率を比較しても高齢者群では非高齢者群と比べて有意に低く,非定型肺炎を疑う感度は年齢が上昇するとともに低下することが判明している49)。これらの傾向は肺炎クラミジア肺炎でも認められており,50 歳以上や慢性の心肺基礎疾患保有者では鑑別を行う必要性が乏しい。また,重症化した症例も鑑別困難であるため鑑別を行う必要はない50)。

4‌一般病棟入院患者(中等症~重症肺炎)での抗菌薬の

選択(図4)入院が必要な患者に対しては初期に静注薬で開始し,可能ならば早期に内服薬へとスイッチする(p.25,4)臨床評価法,スイッチ療法の目安,治療終了時期・退院時期の目安 2スイッチ療法の目安,の項を参照)。肺炎マイコプラズマも肺炎クラミジアも軽症肺炎であることが多く30),重症度分類で中等症に分類される肺炎の多くは細菌性肺炎である。ただし,わが国では入院の正確な基準がなく,外来治療可能な軽症肺炎でも社会的に入院となる症例が多い。この場合は,非定型肺炎も考慮する必要がある。鑑別表を用いて非定型肺炎が疑われる場合にはミノサイクリンやアジスロマイシンの点滴静注を考慮する。

鑑別表の診断基準を用いた場合,合致項目が3,4 点の場合には非定型肺炎と細菌性肺炎の鑑別が困難なことをしばしば経験する。この場合,胸部CT 画像で肺炎マイコプラズマを疑うことが可能である51)-54)。マイコプラズマ肺炎の炎症の主体は免疫反応による間接的な細胞障害である。細胞性免疫の過剰反応は気管支血管周囲間質への炎症細胞浸潤を増強し,細気管支壁での炎症が強くなり,内腔狭窄を来し閉塞性気管支炎を生じる。マイコプラズマ肺炎と肺炎球菌性肺炎のCT 比較検討で有意差を認める所見は,1気管支血管周囲間質肥厚,2小葉中心性あるいは細葉中心性粒状影,3すりガラス影の3 つで,いずれも軽症から中等症のマイコプラズマ肺炎で高頻度である51)52)。本画像所見は,マクロライド耐性菌であっても同じである54)。5‌集中治療室入室患者(重症~超重症肺炎)での抗菌薬

の選択(図4)集中治療室で全身管理が必要となる重症肺炎の代表的な劇症化原因菌は肺炎球菌とレジオネラ・ニューモフィラで,そのほか緑膿菌を含むグラム陰性桿菌,黄色ブドウ球菌,オウム病クラミジア,インフルエンザウイルスなどがある55)。ただし,緑膿菌による重症CAP は頻度が低く,抗菌薬の既投与,免疫不全(免疫抑制薬,ステロイド薬長期投与),好中球減少症の際に本菌による肺炎を疑う。

エンピリック治療としては,A 法:カルバペネム系薬(メロペネム,ドリペネム,ビアペネム,イミペネム・シラスタチン)またはβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(タゾバクタム・ピペラシリン)単剤療法,B法(緑膿菌を考慮しない場合):第三世代セフェム系薬(セフトリアキソン,セフォタキシムなど)またはβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルバクタム・アンピシリン)単剤療法,C 法:A 法またはB 法とマクロライド系薬(アジスロマイシン)併用療法,D 法:A法またはB 法とレスピラトリーキノロン(レボフロキサシン)併用療法,E 法:A 法またはB 法またはC 法またはD 法と抗MRSA 薬(リネゾリド,バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン)併用療法のなかから選択する。

確立された治療法ではないが,超重症肺炎では抗菌薬併用療法を積極的に検討すべきである。非定型病原体(レジオネラ・ニューモフィラ,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジアなど)を考慮するとβ- ラクタム系薬とニューキノロン系薬の併用療法(図4 D 法)が奏効する可能性が高い56)-58)が,これまで菌血症を伴うCAP あるいは重症市中肺炎においてはβ- ラクタム系薬とマクロライド系薬(アジスロマイシン)の併用療法(図4 C法)が予後を改善することが多数報告されてきた59)-75)。マクロライド系薬との併用療法が優れている理由はまだ明確でないが,マクロライド系薬は非定型病原体をカバーすること,抗炎症作用や免疫賦活作用を有しており炎症のコントロールに寄与していること,などが臨床成績を良好にしている可能性がある76)。マクロライド耐性肺炎球菌であっても併用療法の生存率が高いのは,抗菌活性以外の作用機序による可能性と考えられている。ただし,重症でない場合には,β- ラクタム系薬にマクロライド系薬を上乗せする効果を認めない(p.85,CQ8 参各論1

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照)。

2)原因菌判明時の抗菌薬選択

良質の喀痰を用いた細菌学的検査および血液培養検査,尿中抗原検査(肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ),鼻咽頭ぬぐい検体抗原検査(肺炎マイコプラズマ,インフルエンザ),喀痰抗原検査(肺炎球菌),血清IgM 抗体検出法(肺炎クラミジア)等による原因菌同定法に基づき,原因菌が確定された場合には,標的治療へのde-escalation を推奨する(p.95,CQ10 参照)。実際の抗菌薬選択は,原因菌の抗菌薬感受性および地域における薬剤感受性傾向を参考にして行う29)34)35)77)。

抗菌薬の選択は,危険因子がなく,重症度が低い場合には,狭域の抗菌薬を選択することを基本とする。ただし,基礎疾患を合併している場合や,肺炎が中等症以上の場合には,より広域の抗菌薬を最初から選ぶことが適切である場合もあり,最終的には診察医の判断による。

1肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(表9)

CLSI では髄膜炎以外の抗菌薬投与時におけるペニシリン感受性のブレイクポイント判定基準を高めに設定しており,肺炎球菌性肺炎の治療においてはペニシリン系薬の増量が推奨される78)79)。わが国ではマクロライド系薬耐性がきわめて高頻度にみられるが29)34)35),耐性菌に対するアジスロマイシンの臨床的有効性,細菌学的有効性が示されている80)。2005 年以降に発売されたレスピラトリーキノロン(モキシフロキサシン,ガレノキサシン,シタフロキサシン)は優れた抗肺炎球菌活性を有し

ており,こうしたニューキノロン系薬はアモキシシリン高用量と同様の臨床効果が示されている81)。ペニシリン耐性肺炎球菌の頻度は現時点できわめて低いが,その場合の内服薬にはレスピラトリーキノロンを第一選択薬とする。ニューキノロン耐性はDNA gyrase やtopoisomerase 遺伝子の点変異で容易に誘導される可能性があるため82),ニューキノロン系薬の適正な使用が必要とされる。わが国ではニューキノロン耐性肺炎球菌が数% 検出されているが,増加の傾向は認められていない29)34)35)。

2インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(表10)

問題となっているインフルエンザ菌の耐性はBLNARが主であり,BLPACR も認められている。わが国の2010年の全国調査29)では,インフルエンザ菌全体に占めるBLNAR は23/123(18.7%),β- ラクタマーゼ産生株は7/123(5.7%)であるが,今後耐性率の変動が予想される。BLNAR は第一世代セフェム系薬,第二世代セフェム系薬に耐性である。ピペラシリンはBLNAR に抗菌力を示すが,BLPACR には無効である。タゾバクタム・ピペラシリンは両者に有効である。BLNAR にはレスピラトリーキノロンを第一選択薬とする。本邦ではニューキノロン耐性インフルエンザ菌が数% 検出されているが,増加していない29)34)35)。内服セフェム系抗菌薬のセフジトレン ピボキシルは,bioavailability は低いもののBLNAR を含めたインフルエンザ菌に対する薬剤感受性は良好で29),薬理学的データ83)およびCAP に対する有

表9  抗菌薬選択の実際−肺炎球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬アモキシシリン(高用量が望ましい*)

第二選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,

シタフロキサシン,トスフロキサシン)

入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ペニシリン系薬(アンピシリン,ベンジルペニシリン)第二選択薬セフトリアキソン第三選択薬第四世代セフェム系薬(セフォゾプラン,セフェピム,セフピロム)

第四選択薬カルバペネム系薬(パニペネム・ベタミプロン,メロペネム,ドリペネム,

ビアペネム,イミペネム・シラスタチン)

*:巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.170)参照。
p.41
効性の報告84)から,高用量であれば使用可能である。

3‌クレブシエラ属(Klebsiella spp.),他の腸内細菌科(Enterobacteriacae)(表11) Extended spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌の比率は増加傾向にある。わが国の2010 年の全国調査では,呼吸器検体由来クレブシエラのうち,ESBL の割合は1.3% である29)。ESBL 産生株の多くはキノロン耐性を同時に有している85)。外来治療は分離菌の薬剤感受性を確認して薬剤を選択する。本邦ではカルバペネマーゼ産生株はきわめてまれである。

4肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae) (表12)

マクロライド系薬,テトラサイクリン系薬,レスピラトリーキノロンが有効であるが,もっともMIC値が低いのはマクロライド系薬である。マクロライド感性マイコプラズマ感染症で外来治療を行う場合は,マクロライド

系薬を第一選択とし,続いてテトラサイクリン系薬,キノロン系薬が推奨される86)。テトラサイクリン系薬とキノロン系薬の有効性を比較した臨床研究はないが,in vitro において,キノロン系薬は,肺炎マイコプラズマに耐性を誘導することが実験的に証明されている87)。一方で,テトラサイクリン系薬は肺炎マイコプラズマに対する耐性誘導が起こりにくいことが知られており,耐性化抑制の点から,抗マイコプラズマ薬のなかでは優れているが,成人においては臨床研究も少なくエビデンスに乏しい。

2000 年以降にマクロライド系薬とリンコマイシン系薬に耐性を示す株が日本各地で分離されるようになり増加してきたが,2012 年をピークに減少傾向にある。実臨床では,マクロライド系薬投与後,48 ~72 時間で解熱しない場合は,マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎を

表10  抗菌薬選択の実際−インフルエンザ菌外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬*

(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸),セフジトレン ピボキシル*

第二選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン第二選択薬第三世代セフェム系薬(セフトリアキソン,セフォタキシム),タゾバクタム・ピペラシリン第三選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン) *:高用量が望ましい。巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.170)参照。

表11  抗菌薬選択の実際−クレブシエラ属外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬ニューキノロン系薬(シタフロキサシン,レボフロキサシン,シプロフロキサシン,ガレノキサシン,モキシフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬第二,三世代セフェム系薬(セフォチアム,セフトリアキソン,セフォタキシム),スルバクタム・アンピシリン第二選択薬タゾバクタム・ピペラシリン第三選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン)各論1

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疑う。マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎においては,内服薬,注射薬ともにミノサイクリンを代替薬の第一候補とする。テトラサイクリン系薬は(小児における報告ではあるが)治療効果の検討において,マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎における除菌の高さと速さ,解熱までに有する時間もキノロン系薬より短いことが証明されている54)88)89)。さらには,前述のように耐性を誘導しにくいといった背景から,マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎では理想的な治療薬となる。第二選択薬はニューキノロン系抗菌薬である。

5‌レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila) (表13)レジオネラ・ニューモフィラは細胞内増殖菌であるため臨床的にβ- ラクタム系薬が無効である。レジオネラ・ニューモフィラに対する臨床効果はニューキノロン系薬,マクロライド系薬,テトラサイクリン系薬において確認されている。かつてはエリスロマイシンが用いられていたが,今日ではニューキノロン系薬,アジスロマイシンの優越性を示す報告が多い90)91)。また,両薬の併用効果を示唆する報告がある92)。抗菌薬感受性におけるレジオネラ属菌種間の差は少ないが,臨床効果の検証は少ない93)。6‌クラミジア属(Chlamydophila pneumoniae, Chla-

mydophila psittaci)(表14)治療に際し重要なことは,抗菌薬が細胞内に十分移行することである。ペニシリン系薬やセフェム系薬などのβ- ラクタム系薬やアミノグリコシド系薬は細胞内移行が低く,抗クラミジア活性を有さない。細胞内移行が良好で,かつ強いクラミジア増殖抑制を示す薬剤には,テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬,ニューキノロン系薬などがある94)-96)。各種薬剤の最小発育阻止濃度は,クラミジア種間で差はみられず現在までクラミジア・トラコマティスを除いて野生株の耐性化の報告はない。

7黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(表15,16)

わが国における黄色ブドウ球菌について,市中においてもメチシリン耐性の増加が認められるが,特に近年海外ではPanton-Valentine-Leucocidine(PVL)を有する市中発症型MRSA(CA-MRSA)が検出され問題となっている97)。MSSA 感染(菌血症)の場合にはセファゾリンのほうがバンコマイシンよりも臨床効果が高い98)。MRSA では抗菌薬の感受性について分離株間の差が認められるので,薬剤感受性を確認して薬剤を選択すべきである。また,抗MRSA 薬使用に際してはTDM に基づいた治療計画が必要である。

表12  抗菌薬選択の実際−肺炎マイコプラズマ外来治療の場合(内服薬)第一選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン,エリスロマイシン)

第二選択薬ミノサイクリン,レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ミノサイクリン,マクロライド系薬(アジスロマイシン,エリスロマイシン)第二選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン)

表13  抗菌薬選択の実際−レジオネラ・ニューモフィラ入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン),アジスロマイシン

*

*:重症の場合:ニューキノロン系薬+アジスロマイシン
p.43
8レンサ球菌(Streptococci)(表17)

レンサ球菌のなかではストレプトコッカス・アンギノサス群が検出されることが多く,膿瘍形成性が強いのが特徴である99)100)。空洞形成がある場合は複数菌感染を考慮して100)広域抗菌薬の選択も考慮する。複数菌感染を疑う場合にはβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬を推奨する。ストレプトコッカス・ピオゲネスおよびストレプトコッカス・アガラクティエも肺炎の原因菌となりうる。前者はきわめて重篤な肺感染をもたらす可能性がある101)。ペニシリン耐性はほとんど認められないが,マクロライド耐性が低頻度に認められる102)。ニューキノロン系薬は薬剤によって抗レンサ球菌活性に差があり,ニューキノロン系薬のなかではガレノキサシン,モキシフロキサシン,シタフロキサシンが比較的強い抗菌

活性を有する103)。

9モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis) (表18)

ほとんどがβ- ラクタマーゼ産生株である104)。モラクセラの産生するβ- ラクタマーゼはペニシリン系薬を分解する。わが国におけるマクロライド系薬およびニューキノロン系薬に対する耐性化は認められていない29)34)35)。

10嫌気性菌(Anaerobes)(表19)

肺炎の原因菌となる嫌気性菌の多くは口腔内に常在しており,ペプトストレプトコッカス属,プレボテラ属,

表15  抗菌薬選択の実際−メチシリン感受性黄色ブドウ球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン,セファゾリン第二選択薬ミノサイクリン,クリンダマイシン

表14  抗菌薬選択の実際−肺炎クラミジア,オウム病クラミジア外来治療の場合(内服薬)第一選択薬ミノサイクリン第二選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン)

第三選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,

シタフロキサシン,トスフロキサシン)

入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ミノサイクリン第二選択薬アジスロマイシン第三選択薬レボフロキサシン

表16  抗菌薬選択の実際−メチシリン耐性黄色ブドウ球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬リネゾリド入院治療の場合(注射薬)第一選択薬バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド第二選択薬アルベカシン各論1

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フソバクテリウム属,などが関与している。微好気連鎖球菌などとの混合感染も少なくない。嫌気性菌感染の多くは誤嚥と関連するものと推定される。ほとんどの口腔内嫌気性菌(プレボテラ属,フソバクテリウム属,ポルフィロモナス属など)はβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬,クリンダマイシン,メトロニダゾールに対する感受性を有するが105),プレボテラ属ではクリンダマイシン耐性が増加している106)。

11緑膿菌(Pseudomonas aerugionosa)(表20)

緑膿菌は慢性気道感染を有する患者において気道定着が認められ,CAP の原因菌となりうる107)。緑膿菌は抗菌薬の感受性について分離株間の差が認められるので,薬剤感受性を確認して薬剤を選択すべきである。

表18  抗菌薬選択の実際−モラクセラ・カタラーリス外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン)第三選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン第二選択薬第二,三世代セフェム系薬(セフォチアム,セフトリアキソン,セフォタキシム)第三選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン)

表17  抗菌薬選択の実際−レンサ球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬アモキシシリン,アジスロマイシン第二選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)

第三選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,シタフロキサシン,

トスフロキサシン)

入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ペニシリン系薬(アンピシリン,ペニシリンG),アジスロマイシン第二選択薬スルバクタム・アンピシリン,タゾバクタム・ピペラシリン

表19  抗菌薬選択の実際−嫌気性菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬レスピラトリーキノロン(シタフロキサシン,ガレノキサシン,モキシフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン第二選択薬メトロニダゾール,クリンダマイシン※‌空洞形成など他の菌と混合感染を考慮する場合:タゾバクタム・ピペラシリン,カルバペネム系薬(メ

ロペネム,ドリペネム,ビアペネム,イミペネム・シラスタチン)
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3)補助療法

重症肺炎では,過剰な炎症反応(サイトカインストームなど)と好中球および血小板の異常な集積が,凝固異常,肺胞上皮障害,肺毛細血管内皮障害をもたらし,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)を併発しうる。胸部画像検査で両側びまん性に陰影が広がる肺炎症例では,炎症過剰状態となっていることが少なくないため,炎症を調節する薬剤の投与が有用である可能性がある。マクロライド系薬がこれに該当するが,ステロイド薬もこの範疇の薬剤に含まれる(p.90,CQ9 参照)。その他に好中球エラスターゼ阻害薬,免疫グロブリン製剤,血液浄化療法などが候補として挙がるが,これらの治療法はエビデンスが不十分であり,今後の臨床研究の結果が待たれる108)-112)。

1ステロイド薬(p.90,CQ9 参照)

成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会では,メタアナリシスならびにシステマティックレビュー(SR)を行い,有用性に関して検討した。その結果,重症度を考慮しないCAP 患者の全体的な解析では,入院期間が1日短縮すること以外の有用性を認めなかった。しかし,層別のサブ解析で重症例のみに限定すると死亡率を改善することが示唆された。このため,委員会では軽症から中等症の成人CAP に対して抗菌薬治療に全身投与ステロイド薬を併用しないことを弱く推奨し,重症の成人CAP に対して全身投与ステロイド薬を併用することを弱く推奨することを決定した。

ステロイド薬の役割としては,解熱および全身状態の改善,ガス交換能の改善,抗ショック作用,過剰なサイトカインの産生抑制作用,肺の線維化防止などの作用が期待される。ヒドロコルチゾン 200 ~300 mg/ 日,プレ

ドニゾロン20 ~50 mg/ 日,メチルプレドニゾロン1mg/ 体重kg/ 日,デキサメタゾン5mg/ 日のいずれかを3 ~7 日間連日投与する。

ただし,ステロイド薬を投与する際には高血糖を主体とした有害事象の発生を増加させることに留意しなければならない。

2低酸素血症への対応

酸素化が悪く通常の酸素療法では維持できない呼吸不全に対しては,人工呼吸器を装着,さらに重篤な低酸素血症には体外式膜型人工肺(ECMO)使用が考慮される。ECMO は十分な設備と経験,管理体制の整った施設で施行されることが望ましく,適応症例の早期の見極めと,施設によっては転院判断が必要である。NPPV は, COPD 合併症例ではICU 滞在期間短縮,挿管率と死亡率の低下から推奨されるが,その他の基礎疾患では有効性が明らかでなく,肺炎に対して積極的に推奨する根拠がない。

4)臨床評価法,スイッチ療法の目安,治療終了時

期・退院時期の目安1臨床評価法

呼吸器感染症を対象とした新規抗菌薬の臨床試験においては,日本化学療法学会の抗菌薬臨床評価法制定委員会呼吸器系委員会の『呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法』が1997 年に作成され113),2012 年に改訂された114)。本評価法は,新規抗菌薬の臨床現場への早期提供につながることを期待して作成したものであるが,実臨床でも客観的な効果判定として使用できる。

表20  抗菌薬選択の実際−緑膿菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬ニューキノロン系薬(シタフロキサシン,シプロフロキサシン,レボフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ピペラシリン,タゾバクタム・ピペラシリン第二選択薬第三,四世代セフェム系薬(セフタジジム,セフェピム,セフォゾプラン)第三選択薬ニューキノロン系薬(シプロフロキサシン,パズフロキサシン,レボフロキサシン)第四選択薬カルバペネム系薬(メロペネム,ドリペネム,ビアペネム)各論1

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抗菌薬の早期の効果判定は薬剤投与3 日後に判定する。評価判定は,体温(発熱),咳嗽,喀痰量の3 項目として,3 項目中2 項目以上を「改善(改善傾向あり)」とする。炎症所見(WBC,CRP)および胸部X 線陰影については,早期薬効判定では評価しない。なお,EOT (End of Treatment:治療終了時)・TOC(Test of Cure:治癒判定)時の臨床効果判定の臨床症状としては,「咳嗽」「喀痰量」「呼吸困難」「胸痛」「喀痰性状」「胸部ラ音」の6 項目とする。

2スイッチ療法の目安

静注抗菌薬の投与により肺炎患者の状態が改善し,1循環動態が安定し,2臨床症状が改善し,3経口摂取が可能,4消化器機能が健全であれば,内服抗菌薬へのスイッチが可能とされる55)。

スイッチ療法導入の具体的な目安は本邦でいくつかの検討されており,以下の基準で安全にスイッチ療法が実施できると報告されている115)116)。1)1呼吸器症状(咳,呼吸困難,など)の改善,2CRP <15mg/dL,3経口摂取の十分な改善,4体温が少なくとも12 時間以上38 °C未満であること,の4 項目115),2)1咳および呼吸状態の改善,2CRP <10mg/dL(初診時がCRP < 10mg/dL の場合にはCRP の減少を確認),3白血球数が10,000/μL未満,4体温が16 時間以上37 °C未満であること,の4 項目116)。実際にわが国で,1)の基準を用いたCAP でのスイッチ療法の有用性を検討した臨床研究において,スイッチ療法導入基準の妥当性も示唆された117)。

3治療終了時期・退院時期の基準

CAPの治療期間は,軽症から中等症で初期治療が奏効している場合には1 週間以内(5 ~7 日間)が,重症例や,劇症化・難治化を来しうるレジオネラ・ニューモフィラやMRSA,緑膿菌などが原因菌の場合や,肺外にも感染が広がっている場合には7 〜14 日間(以上)が基本であり(p.101,CQ12 参照),表21 に示したような治療期間が推奨される118)。

抗菌薬投与の終了は,“臨床的な軽快状態”すなわちスイッチ療法の導入基準を満たし,さらに1白血球正常化,2CRP が最高値の30% 以下,3胸部X 線の明らかな改善,を加味して総合的に判断するとよい116)。ただし,胸部陰影の改善には時間を要する症例があることや,CRP に関しても感染症以外の因子で軽快しない症例

があることに注意が必要である。

退院時期は,TOC の時点つまり抗菌薬終了後の観察期間を5 ~10 日間程度設けて再発がないことを確認後退院とするのが理想的ではあるものの決して現実的ではなく,患者の状態・ニーズに応じて,EOTの時点からTOCの間で主治医の判断で退院日を決定する。なお,スイッチ治療の場合には,EOT の前に退院となる。

5)抗菌薬無効時の考え方

肺炎の初期治療への反応が不良と判断された場合には,病態の見直しと治療方針の再検討が必要となる。また,場合によっては,検査を追加して情報の収集に努めることが要求される。現場対応としては,抗菌薬の変更や強化がまず検討される場合が多いが,初期治療への反応不良には他にもさまざまな因子が関与しうるため,抗菌薬以外の問題にも注目して初期判断の妥当性を見直してみることが必要である。なお,本項目は主にCAP の成績をもとに作成したものであるが,病態評価や鑑別診断の過程はNHCAP,あるいはHAP であってもほぼ共通するものと考えられる。

1基本的な考え方

CAPにおける初期治療の失敗,あるいは抗菌薬不応肺炎に関した報告は多数存在するが,判定基準や評価時期,治療内容などの背景因子は必ずしも統一されておらず,報告ごとにある程度の相違がある119)-127)。効果判定の時期は治療開始後72 時間後を目安としたものが多く,いくつかの論文では72 時間よりも早期の治療変更例をearly failure,72 時間以降の治療変更例をlate failure と表現している119)-121)。欧米を中心とした主な報告から要約すると,CAPにおける初期治療の不成功率は6 ~

表21  菌種・病態別,市中肺炎における治療期間の目安・肺炎球菌:菌血症がなければ解熱後3(〜5)日間(最低5日間),菌血症併発では10 〜14 日間・ブドウ球菌や嫌気性菌による壊死性肺炎:14 日間以上・レジオネラ・ニューモフィラ:7 〜14 日間・緑膿菌:10 〜14 日間・その他のCAP:最低5 日間かつ2 〜3 日間平熱が続くこと・肺化膿症,胸膜炎,膿胸を併発している場合,基礎疾患によ

る難治化を認める場合には,抗菌薬を上記より長期間投与すべきである
p.47
16% 程度,死亡率は治療不成功時で25 ~27%,成功時は2 ~4% 程度と評価されている119)120)。また,初期治療不成功の原因に関しては感染性因子が40 ~60%,非感染性因子が15 ~25% と感染性因子の頻度が高く,early failure とlate failure では前者は感染性因子が多く関与し,後者では非感染性因子の関与率が高い1)-5)。治療不成功と関連したリスク因子は報告によって一定していない。また,例えばインドからの報告ではlate failure の原因の第一位が結核となっているなど,地域事情で結果が修飾される場合がある128)。

2抗菌薬無効時の鑑別診断

非感染性の病態として最も頻度が高いのは心不全である。感染契機の心不全のような境界領域の症例も多く,肺炎の鑑別診断としても,あるいは肺炎の治癒阻害因子としても重要性が高い(表22)。

感染性の病態はHost,Parasite,Drug の各々の要素に区分するとある程度病態が整理しやすい(表23)。細菌側,宿主側の因子として日常的に遭遇する頻度が高いのは各種の耐性菌,および誤嚥等を含む気道ドレナージの障害である。一方の薬剤側の因子としては,臨床の現場においては抗菌薬の投与量が必ずしも十分ではないケースがまれならず見出される。十分量の抗菌薬を投与することは抗菌薬投与時の原則であるが,国内における抗菌薬の保険適用量は低めに設定されている場合が多く,特に基礎疾患保有者においては可能な限り高用量の投与を心がけることが必要である。

CAP では比較的健康な宿主に病原性の強い限られた菌種が感染するため,病原体に有効な抗菌薬が投与された後の経過はある程度パターンで把握することが可能である。例えば,菌血症を伴わない肺炎球菌性肺炎は一般に改善がすみやかであり,有効抗菌薬が投与されていれば大部分は72 時間以内に改善が期待できる。肺炎球菌

性肺炎が適切な抗菌薬投与にもかかわらず,72 時間の段階で十分な改善が得られない場合には,他因子の存在を慎重に検討する必要がある。一方,レジオネラ・ニューモフィラは適切な治療が開始されても72 時間程度では明らかな改善まで至らないケースも多いため,病勢がある程度安定化していれば安易に抗菌薬を変更するべきではない。

実際に治療反応性に関する指標は必ずしもすべてが揃って改善や悪化を示すとは限らないが,その場合の考え方も基本的には大きく変わるものではない。例えば胸部陰影や呼吸状態が改善しても熱型や炎症反応の反応が不良な場合には,感染性因子としては肺外感染巣の出現や膿胸化など,非感染性因子としては薬剤熱,偽痛風,あるいは背景疾患の急性増悪などの鑑別が必要になる。また熱型や炎症反応の改善に比較して胸部陰影や呼吸状態の改善が乏しい場合には心不全(輸液過剰)や肺胞出血の二次的合併などの可能性も考慮すべきである。

3病態の再評価と追加すべき検査

初期治療への反応が不良と判断された場合には,その時点までに判明している情報をもとに病態を再評価する。また,病歴の再確認も一般論として非常に重要である。

初期治療時に細菌学的検査が適切に行われていない場合には,一般に反応不良時における評価や二次治療の選択が難しくなる。また,培養検査の結果は陽性所見ばかりでなく,陰性所見も参考とすべきである。MRSA など上気道常在型の一般細菌が喀痰培養から検出されても病原性の判断は難しいが,培養が陰性の場合にはその段階で大部分は治療対象から除外して考えることができる。

追加検査としては細菌学的な追加検査に加えて必要に

表22  初期治療不応時の鑑別診断−非感染性の病態(肺炎類似陰影を呈する疾患)

病態具体例

A)CT,エコー等での鑑別が主体となるもの心不全,尿毒症肺,肺塞栓

B)気管支鏡検査などが適宜追加されるもの急性間質性肺炎,ARDS,好酸球性肺炎,器質化肺炎,過敏性肺臓炎,薬剤性肺障害,放射線肺臓炎,肺胞出血,肺癌,リンパ増殖性疾患

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応じてCT,気管支内視鏡検査などの追加検査を施行することになる。CT は全例において施行されるべきではないが(p.63,CQ2 参照),侵襲性は低く,非感染性の病態の鑑別や膿胸,肺膿瘍,中枢気道の異常などの検出に有用な場合がある。気管支内視鏡検査は侵襲的であるが,非感染性の肺病変の関与が示唆される場合には有用性が高い。気管支鏡検査の適応基準は施設により異なるが,少なくともICU 管理の人工呼吸症例などでは比較的容易に施行することが可能である。またCAP における膿胸合併率は0.7 ~1.3% 程度であるが,初期治療失敗例の分析では12 ~22% に関与していたと報告されている120)121)。胸水検査は少なくとも十分量の胸水を伴う初期治療不応例に対しては,積極的に試みるべき検査のひとつである。

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表23  初期治療不応時の鑑別診断:感染性の病態(肺炎として初期治療不応要因)

病態具体例

A)細菌側の要因

1.抗菌薬がカバーしない範囲の病原体の関与ウイルス,真菌,抗酸菌2.一般病原体に由来する肺炎1)非定型病原体(β- ラクタム系薬無効)肺炎マイコプラズマ,レジオネラ・ニューモフィラ,クラミジア属2)抗菌薬耐性菌MRSA,PRSP,BLNAR,緑膿菌,ESBL 産生菌3)改善に時間のかかる病原体ノカルジア属,放線菌3.日和見病原体等による入院後の二次感染4.重症感染症による急速な病状悪化敗血症性ショック,劇症型肺炎(肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ,クレブシエラ属) B)宿主側の要因

1.抗菌薬移行不良な病巣の形成膿胸,肺膿瘍,ブラ内感染2.肺外感染巣の形成心内膜炎,骨関節炎,カテーテル感染,脳髄膜炎3.気道ドレナージの障害中枢型肺癌,気道異物,反復性の誤嚥,去痰不全,慢性呼吸器疾患(気管支拡張症,副鼻腔気管支症候群) 4.基礎疾患による全身免疫機能の低下HIV,免疫抑制薬投与,血液系悪性腫瘍5.医療機関受診の遅れによる重症化C)薬剤側・医療側の要因

1.抗菌薬の不適切投与投与量不足,投与経路や回数が不適切2.治療介入開始の遅れによる重症化3.抗菌薬に由来する有害事象薬剤熱
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S C O P E
p.54
臨床的特徴

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)は入院後48 時間以上経過してから新しく発症した肺炎であり,入院時すでに感染していたものは除かれる。また,気管挿管・人工呼吸器開始後48 時間以降に新たに発症した肺炎を人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)と呼ぶ。医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)の定義は,1長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している(精神科病棟も含む),290 日以内に病院を退院した,3介護(performance status 3 以上)を必要とする高齢者,身障者,4通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,抗癌化学療法,免疫抑制薬などによる治療)を受けている(p. viii,用語一覧参照)

1),である。

HAP/NHCAP とも耐性菌の分離頻度や死亡率はCAPに比べて高い。NHCAP の主な発症機序としては,1誤嚥性肺炎,2インフルエンザ後の二次性細菌性肺炎,3透析などの血管内治療に関連した耐性菌性肺炎〔methicillin-resistant S. aureus(MRSA)肺炎など〕,4免疫抑制薬や抗癌剤などによる治療中に発症した日和見感染症としての肺炎,が挙げられるが,多くは高齢者の誤嚥性肺炎である。

症状は,発熱,咳嗽,喀痰,息切れなどであるが,高齢者肺炎が主体のNHCAP では食欲低下,失禁,日常の活動性低下など典型的な呼吸器症状を呈さない場合があることに注意する。したがって身体所見では,呼吸数の増加や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下などの所見に注意する。

HAP/NHCAP では,予後不良の終末期肺炎の像を呈する例や老衰の経過で発症する例も多く,また誤嚥性肺炎の病態をとることも多いため,適切な抗菌薬治療が生命予後を改善するとは限らないことに留意しておく必要がある2)。したがって,必ずしも耐性菌の保有リスクや

重症度分類が抗菌薬選択の指標となるとはいえず,宿主状態を加味して治療方針を決定する必要がある。すなわち,集中治療や入院治療など積極的な治療の必要性については,患者個人や家族の意思を尊重したうえで,QOLを優先するような生命倫理的側面を考慮することも重要である。

疫学的特徴

HAP は,高度医療の結果としての免疫抑制下の患者に生じることが多い。そのような患者は,院内環境に生息する細菌に曝露されることが多いうえ,抗菌薬の既投与があるために,病院感染で認められる薬剤耐性菌による肺炎の形をとることが多い。VAP は,HAP のなかで挿管下人工呼吸を要する,より重症度の高い患者群に生じることから,その治療にはとりわけ難渋する。NHCAPは,わが国特有の状況を示す独自性の強い肺炎の定義/概念で,療養病床に入院中や高齢者施設に入所中,あるいは在宅介護の高齢者に起こり,多くは嚥下機能低下に関連した誤嚥性肺炎の形をとるが,医療介入の結果としてHAP と同様の薬剤耐性菌性肺炎や日和見感染症が生じうる。人口の高齢化,および医療介入の拡大に伴い, HAP/NHCAP の発生数は当面は増加することが見込まれる。

1.死亡率

本ガイドライン作成グループでは,日本における肺炎疫学研究で死亡率を評価した既報告〔HAP 5 編3)-7),(N) HCAP 9 編8)-16),VAP 2 編〕を対象に,肺炎ごとの死亡率について統合解析を行った。死亡率はVAP 32.4%, HAP 30.4%,(N)HCAP 15.5%であった(p.4,総論図3)。

これら死亡率は,米国におけるVAP で約30%,VAP

院内肺炎/医療・介護関連肺炎各論2

院内肺炎/医療・介護関連肺炎診断の基本的特徴

SCOPE肺炎の基本的特徴
p.55
以外のHAP やHCAP で約20% 程度と報告された数値19)と近似した結果であった。また,同一研究内でCAP と(N)HCAP の死亡率を比較した研究を統合解析したところ,(N)HCAP のほうが有意に死亡率が高く異質性も認められないことから(図1),信頼性が高いと考えられる。

なお,これらの研究は日本のNHCAP と米国において定義された医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)が含まれており,HCAP はNHCAPとは同じ概念ではないこと,また日本のVAP のデータが少ないこと,HAP のデータに関しても報告間において死亡率のばらつきがあることに留意しておく必要がある。

2.検出菌

NHCAP およびHAP 患者における検出菌は,CAP と異なり耐性菌が多い傾向にある。本ガイドライン作成グループでは,日本におけるHAP の疫学研究の既報告5編3)-7)を対象に,HAPの検出菌について統合解析を行った。

あわせて1,632 症例の検出菌が解析され,黄色ブドウ球菌が最も頻度が高く,内訳はMRSA 17.5%,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive S.aureus:MSSA)6.5% であった。次いで緑膿菌が13.9% と多く,この2 菌種が主要検出菌であった(図2)。

HCAP の検出菌に関しては,その多様性からCAP で多いとされる肺炎球菌やインフルエンザ菌,およびHAP で多いとされるMRSA や緑膿菌,グラム陰性桿菌のそれぞれの頻度は,国や地域,施設ごとで分布と頻度が報告によって異なっている。検出菌に関してはCAP

と大きな差はなかったという報告がある20)一方,黄色ブドウ球菌が多いとする米国の報告19)や,CAP に比べて誤嚥性肺炎,インフルエンザ菌,黄色ブドウ球菌,グラム陰性桿菌の頻度が多かったとする,わが国同様高齢化が進行しているイタリアからの報告がある21)。最近のわが国からの報告でも,潜在的に多剤耐性化しやすい菌は, CAP よりHCAP で多く(15.3% vs. 0.8%,p<0.001),黄色ブドウ球菌(11.5% vs. 0.8%,p<0.001),MRSA (6.9% vs. 0%,p=0.003),腸内細菌(7.8% vs. 2.4%, p=0.037),緑膿菌(6.9% vs. 0.8%,p=0.01)の分離率で差がみられている12)。また,HCAP ではPerformance Status(PS)が悪い患者で,より耐性菌が増加していた22)。その結果として耐性菌の割合が増え,不適切な抗菌薬が選択される率が高いと同時に,CAP に比して高い死亡率も示されており,耐性菌の分離頻度と死亡率が関連する可能性を示唆している。

本ガイドライン作成グループでは,日本における(N) HCAP の疫学研究の既報告11 編3)8)-16)23)を対象に,(N) HCAP の検出菌について統合解析を行った。

あわせて2,678 症例が解析され,肺炎球菌が総カウント17.3% と最も頻度高かった(図3)。(N)HCAP とCAPで比較した論文のみ8)-16)を抽出した2,498 例の統合解析の結果では,肺炎球菌が総数16.4%と最も頻度が高く,続いてクレブシエラ属9.6%,MRSA 9.6%,緑膿菌8.0%,MSSA 5.3%,インフルエンザ菌 5.1%,ストレプトコッカス属 5.1% であった。これら9 論文を対象にメ

RR 2.43(95%Cl 2.07-2.85) I

2=0%と,異質性は認めない。

図1  日本におけるCAP と(N)HCAP の死亡率の比較

[1]Shindo 20098) [3]Umeki 201110) [2]Seki 201115) [4]Ishida 201211) [5]Miyashita 20129) [6]Sugisaki 201213) [9]Shindo 201316) [8]Maruyama 201312) [7]Fukuyama 201314)合計(95% Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00;Chi2=3.40, df=8(p=0.91);I2=0%全体的な影響の検定: Z=10.96(p<0.00001)

30 5 3 58 75 29 131 44 21

396

イベント数

141 79 14 442 599 184 526 321 192

2,498

症例数(N)HCAP CAP RRイベント数症例数比重発表年M-H,Random,95%Cl 17 4 2 23 51 17 89 7 4

214 230 123 20 451 786 342 887 124 114

3,077 2009 2011 2011 2012 2012 2012 2013 2013 2013

0.01 0.1 1

RR M-H, Random, 95%CI

CAP優位(N)HCAP優位

10 100

2.88[1.65-5.02] 1.95[0.54-7.03] 2.14[0.41-11.20] 2.57[1.62-4.10] 1.93[1.37-2.71] 3.17[1.79-5.61] 2.48[1.94-3.18] 2.43[1.12-5.24] 3.12[1.10-8.85] 2.43[2.07-2.85]

8.1% 1.5% 0.9% 11.7% 21.9% 7.7% 41.5% 4.3% 2.3% 100.0%

研究またはサブグループ

各論2

S C O P E
p.56
タ解析すると,CAP に比較して(N)HCAP でMRSA(RR 5.24,95%CI 3.82-7.18,I 2=0%),緑膿菌(RR 2.43,95%CI 1.89-3.12,I 2=0%),クレブシエラ属(RR比2.45,95%CI 1.90-3.17,I 2=17%) が有意に高く,さらに多剤耐性菌を一括した場合においても,(N)HCAP で有意に多かった(RR 3.54,95%CI 2.63-4.77,I 2=46%)。一方で異質性が高く信頼性に劣るものの,肺炎球菌 (RR 0.73,95%CI 0.55-0.97,I 2=76%),非定型病原体(RR 0.30,95%CI 0.13-0.68,I 2=84%)についてはCAPで有意に多かった。

NHCAP については,CAP では標的にされない耐性菌が約20% 程度に分離されるが,HAP ほど多くないのがわが国の現状といえる。肺炎球菌をはじめとしてCAPで多くみられる菌に加え,口腔内レンサ球菌,腸内細菌や嫌気性菌の頻度が増していることも報告されている24)。

しかし,誤嚥の関与を背景として,分離菌不明例が約半数の症例を占める事実を念頭に置かなければならない15)。

最近わが国からのHCAP患者の気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)液を用いた,細菌の16S rRNA 遺伝子を標的とした網羅的細菌叢解析法で検討した報告によると,口腔内レンサ球菌が有意に多く,誤嚥リスクがある肺炎ではさらに口腔内レンサ球菌の優位性が高まっていた(図4)

25)。

また,喀痰からMRSA が検出されたとしても,遺伝子レベルでは原因菌である可能性が低い26),など興味深い結果を得ており,分離培養菌では真の原因菌を捉えきれていない可能性を述べている。

いずれにしてもわが国の疫学からは,HAP においては緑膿菌とMRSA が2 大主要検出菌として挙げられ, NHCAP においては上記2 大主要検出菌と肺炎球菌や肺炎桿菌が挙げられており,特に緑膿菌とMRSA は「過去90 日以内の2 日以上の抗菌薬使用歴」と「経管栄養」な

図3  日本の(N)HCAP 検出菌(各研究の平均と95%信頼区間)

0 5 10 15 20 25 30(%)

モラクセラ・カタラーリス

大腸菌

肺炎クラミジア

ストレプトコッカス属

MSSA

ヘモフィルス属

緑膿菌

クレブシエラ属

MRSA

肺炎球菌

2.4 2.4 4.2 5.1

5.5 7.6

8.0 8.8

9.0 17.3国内11研究(2,678症例)

図2  日本のHAP 検出菌(各研究の平均と95%信頼区間)

0 5 10 15 20 25 30(%)

エンテロコッカス・フェカーリス

セラチア・マルセッセンス

アシネトバクター属

ステノトロフォモナス・マルトフィリア

インフルエンザ菌

肺炎桿菌

MSSA

肺炎球菌

緑膿菌

MRSA

1.7 3.0

4.1 4.2

4.5 5.4 6.5 7.7 13.9 17.5

国内5研究(1,632症例)
p.57
どの多剤耐性菌のリスク因子を有する場合に検出されやすく8),治療にあたっては,これらの微生物疫学を考慮する価値はある。なお,従来,HAP/VAP であっても入院初期の患者での検出菌はCAP に近いとする報告があったが,最近の知見では早期発症であっても耐性菌を考慮すべきとするものもあり注意が必要である27)28)。耐性菌リスク因子の有無別に分けたHAP/NHCAP の代表的な原因微生物を表1 に示した。

3.疫学からみる死亡原因としての肺炎

肺炎は日本人の死亡原因の第3 位であり,死亡するのは高齢者の割合が圧倒的に多く,女性より男性が多い疾患である。わが国の高齢化社会の進展とともに,高齢者人口は増加の一途であり,それに相関して肺炎の死亡率も増加傾向にある。しかし,詳細にみてみれば,2011 年をピークとして,肺炎の死亡率は男女ともに減少傾向に転じている。その要因はさまざまであろうが,注目すべき現象として,死亡原因としての「老衰」の死亡率が著明に増加している点である。すでに女性では,老衰が肺炎を抜いている29)。

老衰と肺炎の間には密接な関係があり,老衰の過程で誤嚥が起こり肺炎となる場合や,うっ血や死戦期喘鳴が起こると肺炎との鑑別が困難となる。このような場合,肺炎が死亡原因になるのか,老衰が死亡原因になるのか,厚生労働省の「死亡診断書記入マニュアル」

30)には,

表2 のような記載がある。

このように,老衰の経過中に肺炎を併発し,死亡の直接原因となる場合,がん末期などの疾患末期と同様に,直接死因としての肺炎とその原因としての老衰という病態の捉え方がなされており,臨床医もそのような考え方をしているという報告もみられる31)。

HAP/NHCAP 診療の全体的な流れ

1.HAP/NHCAP の診断

一般的に肺炎の症状は,発熱,咳嗽,膿性喀痰の出現あるいは増加,息切れ,胸痛であるが,高齢者肺炎が主

図4  網羅的細菌解析法によるHCAP の第一優占菌種

0 5 10 15 20 25 30(%)

大腸菌

クレブシエラ属

コリネバクテリウム属

ストレプトコッカス・アンギノサス群

黄色ブドウ球菌

嫌気性菌

緑膿菌

肺炎球菌

インフルエンザ菌

ストレプトコッカス属

1.9 2.9

3.8 3.8 5.7 7.6

7.6 8.6 13.3 18.1 (94症例)

表1  HAP/NHCAP における主な検出菌

耐性菌リスクなし・肺炎球菌・MSSA・グラム陰性腸内細菌科細菌(クレブシエラ属,大腸菌など)・インフルエンザ菌・口腔内レンサ球菌

耐性菌リスクあり(上記の菌種に加え,下記の菌を考慮する)・MRSA・緑膿菌・ESBL 産生菌・AmpC 型β - ラクタマーゼ産生菌表2  平成28年死亡診断書記入マニュアル

死因としての「老衰」は,高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない,いわゆる自然死の場合のみ用います。ただし,老衰から他の病態を併発して死亡した場合は,医学的因果関係に従って記入することになります。

例)(ア)直接死因 誤嚥性肺炎(イ)(ア)の原因 老衰

(文献30 より引用)各論2

S C O P E
p.58
体のNHCAP では食欲低下,失禁,日常の活動性低下など典型的な呼吸器症状を呈さない場合があることに注意する。したがって,身体所見で,呼吸数の増加やSpO2 の低下などに十分注意を払う必要がある。

上記の症状が複数みられ,胸部聴診所見でcoarse crackles が聴取され,肺炎を疑い胸部X 線を撮り,新しいあるいは増大した浸潤陰影が出現していれば,肺炎を疑う。血液検査にて白血球の増加,炎症所見の上昇があれば,より疑わしい。

以上の診療で肺炎を疑った場合には,喀痰や気管内吸引痰などの気道由来検体を採取し,細菌学的な検査に提出し,エンピリックな抗菌薬治療を開始する。抗菌薬の投与前に血液培養も同時に提出するほうが望ましい。

バイオマーカーの有用性については,HAP/NHCAPにおいてCRP 推移(3 ~5 日目におけるCRP 低下)は生命予後を予測する目安として行うことを考慮してよい(p.111,CQ14 参照)が,診断時には補助的な位置づけにとどめるべきであろう。

2.患者背景のアセスメント

HAP/NHCAP と診断したら,患者背景のアセスメントを行い,易反復性の誤嚥性肺炎のリスクがある,または,疾患末期や老衰の状態であると判断した場合は,個人の意志やQOL を考慮した治療・ケアを行う。このような状態でない場合は,「3.HAP/NHCAP における治療薬の決定」に示す項目を参考に,治療薬を決定する。

1)誤嚥性肺炎のリスクの判断

わが国のNHCAP は,米国においてHAP 治療ガイドラインから派生的に登場し,耐性菌肺炎を意識させたHCAP の概念と異なる捉え方が一般的になりつつあり,必ずしも一律に,広域抗菌薬の初期使用で死亡率を下げるべき肺炎とは言い切れなくなっている。HCAP の超過死亡の原因が,耐性菌の頻度が高いことによるものではないことが示唆されつつあり,HCAP の概念は耐性を来しうる原因菌を正確に特定しない,とした系統的レビューおよびメタアナリシスも報告されている32)。その理由は,誤嚥性肺炎で代表される原因菌不明症例の混在にあり,HAP においても無視できない頻度を占めるため,本ガイドラインではHAP/NHCAP 患者アセスメントの冒頭に,誤嚥性肺炎のリスク判断をすることを推奨した。誤嚥性肺炎は,ADL や全身機能の低下,特に脳血管障

害を有する場合に認められやすい嚥下機能障害を背景に起きる肺炎で,高齢者の食事摂取に関連して発症する33)。このような病態は,NHCAP における基礎病態あるいは併存疾患である高齢,中枢神経疾患,ADL 低下,経管栄養管理などと同一であり33)34),CAP に比較してADL の障害度の大きい高齢者肺炎の側面をもち,わが国におけるNHCAP は誤嚥性肺炎とオーバーラップすると考えられる。HAP に関しても,免疫機能低下が背景にある耐性菌リスクの高い肺炎と中枢神経疾患を背景とする誤嚥が関与した肺炎との二面性を併せもつ35)。

誤嚥性肺炎やNHCAPの予後に関しては,患者のPS,低栄養状態,低アルブミン血症,脱水(血清BUN 高値)などが関与するという複数の報告2)15)22)36)がみられる。一方,誤嚥のリスク因子保有は,肺炎による急性期,慢性期死亡率および肺炎の再燃および再入院に関連しており37),またその因子を考慮することで,ICU 収容後の急性期死亡率を減らす可能性が示唆されており(p.115,

CQ15 参照),誤嚥性肺炎を積極的に診断し,適切な治療

戦略を採る意義はある38)と考えられる。

しかし,現在のところ誤嚥性肺炎の明確な定義はなく,日本呼吸器学会の『成人院内肺炎診療ガイドライン』において35),嚥下性肺疾患研究会が提唱した嚥下機能障害を来しやすい病態が示されている程度である(表3)

39)。

このことは嚥下機能障害を来しやすい病態,あるいは誤嚥のリスク因子をもつ宿主が.直接的に誤嚥性肺炎のリスクであるとは言いがたいことに大きな問題点が存在している。すなわち.同程度の誤嚥が生じたとしても,咳反射や気道のクリアランス能が低下している場合は低下していない場合と比べ,肺炎に至る危険性が高いと考えられるため,誤嚥によって引き起こされる肺炎(誤嚥性肺炎)のリスク因子は,単純な誤嚥のリスク因子だけ

表3  嚥下機能障害を来しやすい病態・陳旧性および急性の脳血管障害・神経変性疾患と神経筋疾患,パーキンソン病・意識障害,認知症・胃食道逆流,胃切除後(特に胃全摘),アカラシア,強皮症・寝たきり状態・喉頭・咽頭腫瘍・口腔の異常(歯の噛み合わせ障害,義歯不適合,口内乾燥など)・気管切開,経鼻胃管(経管栄養)・鎮静薬・睡眠薬・抗コリン薬など口内乾燥を来す薬剤

(文献39 より改変引用)
p.59
では測れない。以上より,誤嚥性肺炎を想定した「誤嚥のリスク因子」を明記することの問題点を踏まえたうえで,本ガイドラインでは,予後に関連する「誤嚥のリスク因子」と「誤嚥による肺炎のリスク因子」を過去の報告をもとに列挙するにとどめた(表4)

2)40)-57)。

2)疾患末期,老衰等の終末期状態の判断

がんなどの疾患末期や老衰の末期などのいわゆる終末期における肺炎の治療は,必ずしも患者のQOL を改善するとは限らない。そのため,治療法の選択にあたっては,苦しみをとる緩和療法に加えて,肺炎の治療をどのように行うかの判断が求められる。

終末期は,救急医療等でみられる急性型,がん等の疾患末期の亜急性型,高齢者,認知症,あるいは植物状態等の慢性型に分類される58)。このうち,肺炎の診療において考慮すべきは亜急性型と慢性型の終末期状態の患者に併発した場合である。

亜急性型終末期とは「病状が進行して,生命予後が半年あるいは半年以内と考えられる時期」と定義され,慢性型終末期は「病状が不可逆的かつ進行性で,その時代

に可能な最善の治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避の状態」と定義されている。しかし,いずれの定義もそれを判断する医学的エビデンスが不足していることを理解のうえで,終末期の判断は,複数の専門の知識を有する医師による一致した診断が必要であり,その診断結果はプロセスも含めて診療録に記録するべきである。

3.HAP/NHCAP における治療薬の決定

臨床的特徴でも記述されたように,HAP/NHCAP においては積極的な肺炎治療を考慮することが必ずしも生命予後やQOL を改善するとは限らない。老衰の一環としての肺炎発症と主治医が判断した31),あるいは患者が終末期の段階で誤嚥性肺炎のリスクがある患者である場合,患者個人や家族の意思を尊重したうえで治療方針を判断するような生命倫理的側面を最初に考慮する段階を本ガイドラインでは提唱した。その場合でも,わが国の現状に鑑み,本人・家族の意志が延命や状態の改善を強

表4  誤嚥のリスク因子(上表)と誤嚥による肺炎のリスク因子(下表)

病 態自覚的,他覚的症状疾 患嚥下機能低下むせ頻回の口腔内分泌の吸引45)

※嚥下機能評価にてある一定の予測は可能◎意識障害2)40)-44)46)

◎全身衰弱,長期臥床2)40)47) ◎急性の脳血管障害48)49) ◎慢性神経疾患2)40)44)48)50)51)認知症脳梗塞後遺症パーキンソン病等◎医原性気管切開チューブ留置52)経管栄養(経鼻栄養) 44)53)咽頭にかかわる頭頸部手術54)鎮静薬,睡眠薬40)抗コリン薬など口内乾燥を来す薬剤

胃食道機能不全胸焼け,逆流感◎胃食道逆流55)

◎食道機能不全または狭窄2)40)44) ◎医原性経管栄養(経鼻栄養および経腸管栄養) 44)53)胃切除(全摘,亜全摘) 56)

病 態自覚的,他覚的症状疾 患喀出能低下咳反射低下呼吸筋力低下◎全身衰弱,長期臥床2)40)47)気道クリアランス能低下喀痰の粘稠性上昇◎慢性気道炎症性疾患57)免疫能低下◎全身衰弱,長期臥床◎急性脳血管障害

48)49)

◎低栄養各論2

S C O P E
p.60
く望むことにあったときには,抗菌薬使用はescalationあるいはde-escalation 戦略も選択肢に上がってよい。

ただし,原因菌不明のHCAP については,耐性菌の考慮は必要なくCAP に準じた治療で十分である,とする報告59)60)や,繰り返す誤嚥性肺炎によってADL が徐々に低下し,終末期肺炎の像を呈する場合には耐性菌を想定した治療選択は必要ないという見解もあり,誤嚥あるいは誤嚥性肺炎のリスクがある場合にはescalation 戦略で十分かもしれない。

一方,経管栄養管理が施行されている宿主は,誤嚥の危険因子を保有していると同時に耐性菌のリスク因子もあること9)や院内で起きた誤嚥性肺炎に関しては,救命のために耐性菌も考慮し,広域スペクトラムを有する抗菌薬を積極的に投与し,その後de-escalationするというエンピリック治療を選択してよいこと61)62),また肺炎桿菌や大腸菌など腸内細菌科細菌の関与が考えられる場合はエンピリック治療を慎重に選択する必要がある63),など一部にはde-escalation 戦略も許容される病態があると思われる。その場合でも,誤嚥性肺炎では細菌学的効果判定は困難であることから,全身病態が改善すれば短期間でde-escalation がなされるべきである。一方,急性期病院の入院患者やVAP においては,この段階をスキップして以下の段階を診療していくことを提唱する。

HAP/NHCAP における抗菌薬による治療戦略は大きく2 つに分けられる。すなわち,狭域の薬剤を使用し,全身状態の改善がみられない場合に,必要に応じて広域の薬剤への変更も考慮するescalation 治療と,広域の薬剤で初期治療を開始し,全身状態の改善を確認し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮するde-escalation治療である。de-escalation 治療の適応となるのは敗血症,重症,または耐性菌リスクが高い患者であり,これらに該当しない場合はescalation 治療を選択する。

1)敗血症の評価(下記の項を参照)

各論1 CAP 診療の全体的な流れ 1.CAP の診断2)重症度の評価(p.12)

2)重症化規定因子の考慮

HCAP における重症度評価のメタアナリシスの結果, PSI やCURB-65 が予後を評価する指標として十分な有用性が得られなかったことから,CAP におけるPSI やCURB-65 のような重症度評価がHCAP,HAP にはまだ存在しないのが現状といえよう(p.105,CQ13 参照)。

ただし,後方視的研究ではあるが,従来のCAP スコアが予後判定に有用であった報告も散見されている64)。一方,VAP を含めたHAP に年齢の考慮は治療選択にさほど影響を与えないと考えられるが,意識障害の有無,呼吸不全の合併,ショック状態は患者の予後に大きな影響を及ぼす。新たに提唱された敗血症の定義65)は,感染症によって引き起こされる過剰反応としての制御困難な臓器障害の状態を規定している。臨床的には,1呼吸数が22 回/ 分以上,2意識変容,3収縮期血圧100mmHg 以下,のうち2 つ以上を認めたときに疑うべきとされているが,肺炎においてそれらが認められた場合は明らかに予後不良の徴候である。これらを踏まえて今回のガイドラインでは,上記3 因子についての評価は診断の流れの中で無視できないとする立場を取ることとし,それらの因子が含まれる,わが国独自で使い慣れてきた重症化規定因子を盛り込むこととした。すなわち,HAP ではI- ROAD(図5)

35)で,NHCAP ではA-DROP(p.12,各論

1 表3)(PSI は補助的に使用しても可)で重症度評価をすることを推奨する。

敗血症の状態,重症度が高い場合(HAP はI-ROADでの中等症群(B 群)以上,NHCAP はA-DROP での重症以上),または後述の耐性菌のリスクがある場合には,de-escalation 治療を行う。

ただし,重症度にかかわらず,de-escalation 治療が不可欠な病態も存在することを考慮しておく必要がある。すなわち,HAP/NHCAP は宿主のADL や基礎疾患・免疫能低下が背景にあることが多く,感染防御能は千差万別である。また,必ずしも従来のA-DROP などによる重症度に応じて予後が不良になるとは限らず3),重症度が高ければ耐性菌の分離頻度が増すということもない9)。つまり,好中球が1,000/ μL 未満や後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)発症時や免疫抑制薬使用時の極端な細胞性免疫低下状態ではde-escalation治療を行わざるを得ない場合があり,さらに人工呼吸器管理が施行されていれば誤嚥および耐性菌の可能性も多い66)-68)ため,治療戦略としてはde-escalation が選択されやすいといえる。逆に,よくコントロールされた糖尿病や軽度COPD などでは必ずしもdeescalation 治療が必要ではない。
p.61
3)耐性菌リスク因子の評価

NHCAP, VAP を含むHAP については,分離菌により大きく治療選択が左右されるため,血液・喀痰培養,ときには気管吸引液やBAL 液を含む各種培養検査,迅速尿中抗原検査,病原体に対するペア血清での抗体検査などで極力,病態に関与する菌を明らかにする努力をすべきである。

2011 年発行の『医療・介護関連肺炎診療ガイドライン』においては,耐性菌のリスク因子を,「過去90 日以内の2 日以上の抗菌薬使用歴」と「経管栄養」と規定し治療区分C を設けたが,これは人工呼吸器やICU 管理された重症のNHCAP でも抗菌薬の過去の投与歴がなく良好な日常生活活動がなされていた患者では耐性菌は分離されなかったという報告69)や,経管栄養を受けていると緑膿菌感染の単独のリスク因子(OR 13.9)であるという報告70)が根拠になっている。近年,わが国からの報告では,多剤耐性菌出現の低リスク群と高リスク群の比較により,高リスク群では多剤耐性菌の検出頻度だけではなく,初回治療失敗の頻度,30 日死亡率が有意に高い結果であり,これを評価する有用性が示唆された12)16) (p.118,CQ16 参照)。本ガイドラインでは,わが国からの報告を重要視し,耐性菌のリスク因子を表5 のように4 つに規定して2 項目以上で耐性菌の高リスク群とし,前述する敗血症かどうかの判断,重症度の判断とともに評価することを推奨した。経管栄養については,大多数が同時に活動性の低下が

みられることから,4 の活動性の低下した症例に含ませて,活動性低下の判断基準として,PS ≧3,歩行不能,経管栄養,または中心静脈栄養と規定した。ただし, HAP における耐性菌リスクの検討はなされていないのが現状であることを踏まえるべきである。

4.HAP/NHCAP の治療

1)個人の意志やQOL を考慮した治療・ケア1‌疾患末期あるいは老衰などの終末期における肺炎の考

え方の検討細菌性肺炎は,一般に,抗菌薬によって病因根治的な治療が可能であり,治癒すれば大きな後遺症を残すことなく病前の状態に復帰する良性疾患である。一方,不可逆的な死の過程,すなわちがんなどの疾患末期状態や老

図5  HAP の重症度分類

1.生命予後予測因子(I-ROAD) 1 I(Immunodeficiency):悪性腫瘍または免疫不全状態2 R(Respiration):SpO2>90% を維持するためにFiO2>35% を要する3 O(Orientation):意識レベルの低下4 A(Age):男性70 歳以上,女性75 歳以上5 D(Dehydration):乏尿または脱水

2.肺炎重症度規定因子1CRP≧20mg/dL 2胸部X 線画像陰影の拡がりが一側肺の2/3 以上

該当なし該当あり3 項目以上が該当

該当項目が2 項目以下

軽症群(A 群)中等症群(B 群)重症群(C 群)

表5  耐性菌のリスク因子1.過去90 日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴2.過去90 日以内に2 日以上の入院歴3.免疫抑制状態4.活動性の低下:PS ≧3,バーセル指数*<50,歩行不能,経管栄養または中心静脈栄養法

→  2項目以上で耐性菌の高リスク群*:バーセル指数:1. 食事,2. 移動,3. 整容,4. トイレ動作,5. 入

浴,6. 歩行,7. 階段昇降,8. 着替え,9. 排便,10. 排尿について各々0〜15点で評価し,0〜100点でスコアリングする71)各論2

S C O P E
p.62
衰の過程にある人に起こった肺炎は,死亡の契機となったり,病状が改善したとしても病前の状態に復帰できず,むしろ耐え難い苦痛や不快感が持続する,あるいは繰り返す可能性がある72)。

このため,本ガイドラインでは,治療によって病前の状態に回復する肺炎と,疾患終末期や老衰の過程において死に至る進行を早める肺炎を分けて考えることとした。HAP やNHCAP には,診療の対象として疾患末期や老衰の過程などの終末期にある患者が含まれる。このような患者に対してはわが国でも,近年,学会の指針等で終末期における医療の決定プロセスについて,適切な情報の提供と説明に基づく個人の意思の尊重が示されるようになってきた。そこで,終末期の患者の肺炎の診療に際しては,まず個人の意思の尊重を最優先とする。

2‌わが国において強力な肺炎治療を差し控える根拠とな

るガイドライン等老衰経過中や原疾患末期の終末期に発症する肺炎の診療には,人生の最終段階における医療のプロセス決定についての十分な認知が必要である。

高齢化社会の不可避の医療問題として,厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」

73)を2007(平成19)年(27 年改訂)に出

している。HAP/NHCAP で扱う終末期は,亜急性型と慢性型である(患者背景のアセスメントの項参照)。がん末期などの亜急性型終末期に発症した肺炎の診療では2008(平成20)年に出された日本学術会議の「終末期医療の在り方について」

59)を,老衰などの慢性型終末期の

患者の診療については,日本老年医学会が2012(平成24)年に発表した「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」

74)を参考として,医療ケアに当たるスタッフは個人の意思を十分に尊重し,医療チームとして診療プロセスの決定に当たるべきである。

3個人の意思やQOL を考慮した治療・ケア

最善の治療を行っても死が避けられない,あるいはわずかに延命できたとしても本人の価値観に照らして「よい日々だった」といえるQOL が保持できないと,専門知識を有する複数の医師によって一致して判断される患者に起こった肺炎では,人工呼吸器による管理や広域抗菌薬を用いた強力な肺炎の治療ではなく,苦しみをとる緩和医療を優先して行う選択肢もあることを提示し,本

人の意思を確認し,あるいは本人の意思確認ができない場合には,本人の意思をよく知る家族による推定意思を尊重し,その意思に沿って肺炎治療の開始,不開始,選択する抗菌薬の種類を多職種によって構成された医療チームとして決定する。

診断結果とそれに基づく診療方針はその過程も含めて診療録に記録する。この場合でも,肺炎に伴う不快や苦痛を取り除く緩和的な治療は積極的に優先して行うべきである。さらに,一度決定した診療方針も,本人の希望のあるときには,状況に応じていつでも変更できることを説明する。

終末期にあると判断されても,十分な情報を提示したうえで,患者本人,またはその意思を推定できる家族が肺炎の根治的な治療を望む場合,あるいは本人の意思が確認できない場合には,フローチャートの治療薬の選択の基準に従って,診療を行う。

2)HAP/NHCAP のエンピリック治療(図6,7)

HAP/NHCAP においても,CAP と同様に標的治療を行うことが望ましい。しかし,実際にはHAP/NHCAPでは全身状態が悪く,高齢である場合も多いため,喀痰の排出が困難で,かつ,侵襲的検査ができない症例が多い。したがって,HAP/NHCAP ではCAP 以上にエンピリック治療が重要となる。

HAP/NHCAP 患者では,高齢者や免疫能が低下した患者が多く,結核を発症するリスクが高い患者層である。したがって,CAP 以上に結核感染の有無については十分に注意をはらい,結核に対する抗菌活性を有するニューキノロン系薬の使用は慎重に行う。

1escalation 治療

HAP/NHCAP はCAP と比較して耐性菌リスクが高いものの,全例で耐性菌を標的とした広域抗菌薬を投与する必要はなく,耐性菌リスク,肺炎の重症度などからその適応を判断する。フローチャートではHAP/NHCAP症例で易反復性の誤嚥性肺炎のリスクや疾患終末期や老衰の状態でない場合,次のステップとして重症度と耐性菌リスクを判断する。NHCAP の重症度はA-DROP で判定し,HAP の重症度はI-ROAD で判断し(p.105,

CQ13 参照),NHCAP/HAP の耐性菌リスクは表5 で判

断する。重症度が高くないと判断され注1,かつ,耐性菌
p.63
リスクが低い場合,escalation 治療(まず狭域スペクトラムの抗菌薬を投与し,無効の場合に広域スペクトラムの抗菌薬にescalation させる)による初期治療が推奨される。escalation 治療で標的とするのは肺炎球菌, MSSA,インフルエンザ菌,口腔内レンサ球菌,クレブシエラ属(非ESBL 産生菌),モラクセラ属などの菌である(図2 〜4,表1 を参照)。図6 に示す通り,これらの菌に対するエンピリック治療として推奨されるのは,ペニシリン系薬ではスルバクタム・アンピシリン,セフェム系薬では第三世代のセフトリアキソンまたはセフォタキシム,非定型肺炎の可能性がある場合や,β-ラクタム系薬へのアレルギー歴を有する場合にはニューキノロン系薬のレボフロキサシンが推奨される。外来治

療が可能な場合は,内服薬で細菌性,非定型肺炎の両者をカバーするようにβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(アモキシシリン・クラブラン酸またはスルタミシリン,セフトリアキソンにマクロライド系薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)を併用するか,レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)を選択する。外来で注射薬による治療を行う場合は1 日1 回投与が可能なセフトリアキソンやレボフロキサシンを選択する。レボフロキサシンは嫌気性菌への抗菌活性が不十分であるため,誤嚥性肺炎や

注1:敗血症の状態ではなく,重症度がNHCAP ではA-DROP で中等症以下,HAP ではI-ROAD で軽症の場合。

図6  HAP/NHCAP のエンピリック治療抗菌薬*1 :p.12,各論1 図3参照。*2 :重症度が高い:NHCAP ではA-DROP で重症以上,HAP ではI-ROAD で中等症(B 群)以上。*3 :p.41,表5参照。*4 :‌スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸(いずれも高用量が望ましい。具体的な投与量は巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・

用量」(p.170)を参照)。*5 :クラリスロマイシン,アジスロマイシン。*6 :ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン。*7 :結核に対する抗菌力を有しており,使用に際しては結核の有無を慎重に判断する。*8 :嫌気性菌感染を疑う際には使用を避けるか,クリンダマイシンまたはメトロニダゾールを併用する。*9 :メロペネム,ドリペネム,ビアペネム,イミペネム・シラスタチン。*10:セフォゾプラン,セフェピム,セフピロム。*11:‌レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン(パズフロキサシンは高用量が望ましい。具体的な投与量は巻末「参考資料:代

表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.170)を参照)。*12:アミカシン,トブラマイシン,ゲンタマイシン。*13:腎機能低下時や高齢者には推奨されない。*14:以前にMRSA が分離された既往あり,または,過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴あり。*15:リネゾリド,バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン。

Escalation 治療・敗血症

*1(-)で,重症度が高くない*2かつ・耐性菌リスク*3(-)

内服薬(外来治療が可能な場合)・β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン

系薬*4 +マクロライド系薬*5・レスピラトリーキノロン*6,*7

注射薬・スルバクタム・アンピシリン・セフトリアキソン

*8,セフォタキシム*8

非定型肺炎が疑われる場合・レボフロキサシン

*7,*8 De-escalation 単剤治療・敗血症

*1(+),または,重症度が高い*2または・耐性菌リスク*3(+)

注射薬(単剤投与)・タゾバクタム・ピペラシリン・カルバペネム系薬

*9

・第四世代セフェム系薬*8,*10・ニューキノロン系薬*7,*8,*11 De-escalation 多剤治療・敗血症

*1(+),または,重症度が高い*2かつ・耐性菌リスク*3(+)

注射薬(2 剤併用投与,ただしβ- ラクタム系薬の併用は避ける)・タゾバクタム・ピペラシリン・カルバペネム系薬

*9

・第四世代セフェム系薬*8,*10・ニューキノロン系薬*7,*8,*11・アミノグリコシド系薬*8,*12,*13

MRSA 感染を疑う場合*14 +・抗MRSA 薬

*15各論2

S C O P E
p.64
肺膿瘍/ 肺化膿症といった嫌気性菌感染の可能性が高いとされる病態では,クリンダマイシンやメトロニダゾールの併用を検討する。また,各施設でのアンチバイオグラムが入手できる場合は,抗菌薬選択の判断材料として積極的に活用する。

2de-escalation 治療

(N)HCAP/HAP と診断され,敗血症,重症例,または,耐性菌のリスクが高いと判断された群に対してはde-escalation 治療(広域の薬剤で初期治療を開始し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮する治療)を選択する(p.124,CQ18 参照)。この群の初期治療としてはescalation 治療群の原因微生物に加え,耐性菌(MRSA,緑膿菌,ESBL 産生腸内細菌など)をカバーする必要がある(図2 〜4,表1 を参照)

75)-79)。

重症度が高いと判断される注2,または耐性菌のリスクが高い群に対してはde-escalation 単剤治療が推奨される。抗菌薬は緑膿菌に抗菌活性を有するβ- ラクタム系

抗菌薬としてペニシリン系薬,第四世代セフェム系薬,カルバペネム系薬,ニューキノロン系薬の単剤投与が推奨される。

重症度が高いと判断される注2,かつ耐性菌のリスクが高い群に対してはde-escalation 多剤治療が推奨される。抗菌薬は緑膿菌に抗菌活性を有するβ- ラクタム系抗菌薬としてペニシリン系薬,第四世代セフェム系薬,カルバペネム系薬をベースに,ニューキノロン系薬またはアミノグリコシド系薬を併用する(図6)。わが国のHAP/NHCAP に占める非定型病原体(肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ)の頻度は低いが(図2 〜4 を参照),発生した環境(集団浴場,高齢者施設での集団感染など),画像所見などから非定型病原体の関与が疑われる際にはニューキノロン系薬を選択する。また,MRSA が分離された既往がある場合,または,過去90 日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴が

注2:敗血症の状態,または,重症度がNHCAP ではA-DROP で重症以上,HAP ではI-ROAD で中等症以上の場合。

A 医療・介護関連肺炎(NHCAP):A-DROP で重症(3 項目該当)以上を「重症度が高い」と判定する。

敗血症A-DROP重症度耐性菌リスク治療方針

なし2 項目以下高くないなしescalation 治療

ありde-escalation 単剤治療

なし3 項目以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり2 項目以下高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり3 項目以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

B 院内肺炎(HAP):I-ROAD で中等症群と重症群を「重症度が高い」と判定する。

敗血症I-ROAD重症度耐性菌リスク治療方針

なし軽症群高くないなしescalation 治療

ありde-escalation 単剤治療

なし中等症群以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり軽症群高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり中等症群以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

図7  HAP/NHCAP のエンピリック治療方針
p.65
ある場合はMRSA 感染のリスクが高いと判断され,抗MRSA 薬を併用する(図6)。抗菌薬の有効性は48 〜72時間後に臨床症状,血液データ,画像所見などから総合的に判定する。初期治療は想定される原因微生物をカバーするために広域な抗菌薬を併用するが,漫然と使用することは耐性菌の産生,医療費の高騰の原因となる。また,抗菌薬の副作用によりかえって予後不良となるとの報告もあり,原因微生物が判明した時点でより狭域な標的治療に切り替える(de-escalation 治療)

68)80)。抗菌薬

ごとの投与量は腎機能正常の成人量を巻末(p.170)に示すが,年齢,腎機能(GFR)によって調整する。

3)原因菌判明時の抗菌薬選択

各論1 2.CAP の治療 2)原因菌判明時の抗菌薬選択の項目(p.19)を参照。

4)HAP/NHCAP の抗菌薬投与期間

抗菌薬の投与期間については,Cochrane library で短期間抗菌薬治療(8 日以内)と長期間治療(10 〜15 日)を比較したランダム化比較試験(RCT)6 編のメタアナリシスが実施され,生命予後,初期治療効果,入院期間,再燃のいずれのアウトカムに対しても有意差は認められなかった。なお,原因微生物に応じた層別化を行うと,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌では短期間の抗菌薬治療群で有意に再燃の頻度が高かったことが報告されている12)。これらの報告をもとに当委員会でSR を実施した結果,抗菌薬の投与期間は1 週間以内の比較的短期間の治療期間を提案することとなった。ただし,黄色ブドウ球菌,クレブシエラ属,嫌気性菌などにより膿瘍性病変がある場合は2 週間以上の長期投与が必要である(p.135,CQ20 参照)。

5)抗菌薬無効時の考え方

各論1 2.CAP の治療 5)抗菌薬無効時の考え方の項目を参照(p.26)。

●文 献1)日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドラ

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p.69
臨床的特徴

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は,気管挿管下人工呼吸を開始して48 時間以降に新たに発生するHAP を指す。

VAP 発症のリスク因子は長期人工呼吸管理,再挿管,発症前の抗菌薬投与,原疾患(熱傷,外傷,中枢神経疾患,呼吸器疾患,心疾患),顕性あるいは不顕性誤嚥,筋弛緩剤の使用,低い気管チューブカフ内圧,移送,仰臥位などである1)。

VAP 発症には逆流,誤嚥,定着(コロニゼーション)が関与する。胃内容物の逆流,口腔内や気管チューブへの病原微生物の定着,気管チューブのカフ外側を介した声門下の分泌物の誤嚥,人工呼吸に関連した咳反射や繊毛上皮機能低下などが挙げられる。

疫学的特徴

ICU における主要な感染性合併症であり,報告により異なるが,全挿管患者の9 ~27% に発生するとされる2)。HAP であるため,検出菌として緑膿菌が最も多い(図1)

1)-3)。加えて,エンテロバクター属やステノトロフォモナス属などの治療難渋性グラム陰性桿菌群の割合が高くなる。また,黄色ブドウ球菌,とりわけMRSA の割合も高い。

診断

1.臨床的疑い

臨床的に以下の所見が複数新たに出現した場合,臨床的VAP として,微生物学的検索を行う。1全身性炎症反応:発熱,CRP やプロカルシトニンなど

の上昇2酸素化の低下3画像検査(胸部X 線,CT,エコー)上異常陰影の出

現と持続4膿性気道分泌物があった場合

ただし,VAP は人工呼吸中に生じる肺炎であるために,そもそも原疾患や,人工呼吸の原因となった肺病変,あるいは肺炎以外の人工呼吸中に併発しやすい肺病変(無気肺,胸水など)との鑑別はしばしば困難であり,注意を要する。

2.微生物学的診断

VAP は,挿管中であるがゆえに,他の肺炎と違い病巣に対するアクセスが容易な特徴をもつ。したがって,積極的に微生物診断を行うことが可能であり重要である。

以下の場合,微生物学診断の目安とする。なお,定量培養は必須ではない。1下気道の直接吸引(tracheal aspirate)で病原微生物

が培養され,半定量培養3+ 以上あるいは定量培養

10 6CFU/mL 以上

2気管支肺胞洗浄〔bronchoalveolar lavage:BAL,ある

いはmini-BAL(Mini-BAL サンプリングカテーテルにて施行可能)〕で病原微生物が培養され,半定量培養2+ 以上あるいは定量培養10 4CFU/mL 以上3血液培養あるいは胸水培養が陽性で,下気道からの検

出微生物と一致

3.治療

VAP は致死率の高い病態であり,これに対して適切な経験的抗菌薬が投与されたか否かが死亡率に影響する。

VAP はHAP であるため,抗菌薬選択の原則はHAPのものに従う。抗菌薬選択においては,グラム陰性桿菌群カバーを前提とし,特に長期の入院や抗菌薬治療歴の

人工呼吸器関連肺炎各論3

人工呼吸器関連肺炎の基本的特徴

SCOPE肺炎の基本的特徴

各論3

S C O P E
p.70
ある患者では上述の治療難渋性グラム陰性桿菌群の可能性も考慮する。MRSA の感染歴や保菌,MRSA に無効な抗菌薬の使用歴,下気道検体よりグラム陽性球菌クラスタが検出される場合には,抗MRSA 薬併用の必要性を検討する。

耐性菌の発現を最小限とするためにも,培養結果判明後は,可及的狭域の抗菌薬へ変更したり,感染症が否定的であれば中止する(de-escalation)。

4.予防

VAP 予防策として確立したものは少ないが,下記の予防策のいくつかをまとめて適用するバンドルアプローチを勧める4)。

1)手指衛生

手洗いは普遍的に有益な感染予防策であり,医療スタッフへの認識と徹底が重要である。

2)仰臥位の回避

誤嚥の危険性が高い状況(経管栄養注入中など)では頭部を30 ~45 度挙上した頭高位を選択する。それ以外の状況においても水平仰臥位を長期間保持しないように心がける。

3)人工呼吸器回路を頻回に交換しない

回路交換時期を延長してもVAP 発生率は増加しないとされており,頻回の交換や開放を避ける。

4)過剰な鎮静を避ける

鎮静の中断や鎮静プロトコルにより過鎮静を避ける。

5)人工呼吸からの離脱を促進する

自発呼吸トライアルやこれを組み込んだ呼吸器離脱/抜管プロトコルを適用する。

6)声門下腔吸引孔付きチューブ

挿管に際してカフ上部声門下腔吸引孔付きチューブを選択し,声門下腔分泌物の吸引を行う。本手法はメタアナリシスによりVAP 発生率を有意に低下させることが証明された数少ない介入である5)。

7)口腔ケア

VAP 予防の目的で人工呼吸器中の患者における口腔ケアを勧める根拠は十分でない。

●文 献1)Chastre J, Fagon JY. Ventilator-associated pneumonia. Am J

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図1  VAP 検出菌(各研究の平均と95% 信頼区間)

1.8 2.5

3.6 4.2

4.9 6.3

6.4 7.6 18.9 34.8

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45(%)

エンテロコッカス属

大腸菌

インフルエンザ菌

ステノトロフォモナス・マルトフィリア

セラチア属

エンテロバクター属

クレブシエラ属

MSSA

MRSA

緑膿菌国内3研究6)-8)

(187症例)
p.71
3)厚生労働省.院内感染対策サーベイランス事業.http://www.

nih-janis.jp/report/icu.html 4)日本集中治療医学会ICU 機能評価委員会.人工呼吸器関連肺

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dence of ventilator-associated pneumonia in ICU populations. Intensive Care Med. 2006;32:230-6. 8)Sakaguchi M, Shime N, Iguchi N, et al. Effects of adherence

to ventilator-associated pneumonia treatment guidelines on clinical outcomes. J Infect Chemother. 2013;19:599-606.

各論3

S C O P E
p.72
はじめに

肺炎球菌はグラム陽性双球菌に分類される上気道の常在菌で,莢膜の性質により90 種類以上に分類される。成人の保菌率は5 ~10%とそれほど高くないが,小児では20 ~40% と高率に保菌しており,小児から成人へ伝播することで肺炎を発症することが多い。特に,65 歳以上の高齢者や基礎疾患を有する高リスク群に対しては肺炎球菌ワクチンを接種して肺炎を予防する必要がある。

肺炎球菌ワクチンの種類と特徴

成人に使用できる肺炎球菌ワクチンは2 種類ある。1つは,65 歳以上の高齢者と2 ~64 歳の高リスク群を対象に1988 年から使用されている23 価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン〔pneumococcal polysaccharide vaccine (PPSV)23〕,もう1 つは,2014 年から65 歳以上の高齢者に使用できるようになった13 価蛋白結合型肺炎球菌ワクチン〔pneumococcal conjugate vaccine(PCV)13〕である。PPSV23 は23 種類と広範囲の莢膜型をカバーできる反面,免疫機序はB 細胞依存性であるため,PCV13よりも免疫効果が低い。一方,PCV13 の免疫機序はT 細胞を介するために高い免疫効果が期待できる反面,カバーできる莢膜型が13 種類と,PPSV23 よりも10 種類少ない。なお,両ワクチンともに安全性が確立された不活化ワクチンであり,副反応は同等である(表1)

1)。

PPSV23 とPCV13 の臨床的予防効果

1.PPSV23

日本人を対象とした3 つのランダム化比較試験(RCT)が実施されている。1 つ目は167 例の慢性呼吸器

疾患を有する症例を対象としたRCT で,COPD の急性増悪を抑制するという結果が報告された2)。2 つ目は慢性の基礎疾患を有する高齢者786 例を対象としたRCTで,PPSV23 とインフルエンザワクチンの併用群では,インフルエンザワクチン単独群に比べて75 歳以上の症例と歩行困難な症例に対して肺炎の入院を抑制したことが報告された3)。3 つ目は1,006 例の高齢者施設の入所者を対象としたRCT で,肺炎球菌性肺炎を63.8%,肺炎全体を44.8%抑制し,肺炎球菌性肺炎の死亡率を下げることが報告された(表2)

4)。いずれの研究でも,ほぼ全

例にインフルエンザワクチンが接種されており,これらの結果はインフルエンザワクチンとPPSV23 の併用効果と考えられている。

厚生労働省は,これらの日本人を対象とした臨床試験から医療費削減効果を試算し,2014(平成26)年10 月より,65 歳以上の高齢者に対する定期接種を開始した。

なお,成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会ではインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種の予防効果についてシステマティックレビュー(SR)を実施したところ,上記の日本人を対象とした3 つのRCT が抽出され,メタアナリシスの結果,「すべての肺炎による入院」に対する有意な抑制効果を認めた(p.144,CQ22/p.155,CQ23 参照)。

2.PCV13

現在のところ,日本人を対象とした試験はない。オランダで健常高齢者84,496 例を対象としたRCT が施行され,PCV13 に含まれる莢膜型について,非侵襲性肺炎球菌性肺炎を45%,侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)を75% 抑制し,すべての莢膜型においても肺炎球菌性肺炎全体を30.6%,IPD を51.8% 抑制するという予防効果が報告された(表3) 5)。

肺炎予防各論4

肺炎球菌ワクチン

SCOPE肺炎の基本的特徴
p.73
肺炎球菌の莢膜型の置換

肺炎球菌は濃密な接触により小児から高齢者へ感染する。小児に対してPCV が導入されたことで,小児のIPDが減少し,それに伴い高齢者のIPD も減少している5)。小児のPCV 接種率が向上したことで小児の肺炎球菌感染が強力に予防され,間接的に高齢者の感染も予防する結果となった。その一方で,PCV ではカバーされない莢膜型が増加している(莢膜型の置換)。米国CDC からの報告では,65 歳以上の高齢者のPCV13 とPPSV23 のカバー率は年々低下しており,PCV7 の導入前1998 年にはPCV13 のカバー率 75.5%,PPSV23 84.1% であったのが,2008 年にはPCV13 44%,PPSV23 66% まで減少し, 2010 年にPCV13 が小児に導入されてからは2013 年PCV13 20 ~25%,PPSV23 58 ~63% と,さらにカバー率が下がっていることが報告されている6)-8)。日本では

厚生労働省研究班から2013 〜2015 年度の成人IPD の莢膜型についてPCV13 のカバー率は46%,PPSV23 のカバー率は66% と報告され,PCV7 導入前年の2009 年には,PPSV23 のカバー率は80 %以上であったとの報告があることから,米国と同様に小児のPCV 普及の影響を受けているものと考えられている9)10)。

PCV13 とPPSV23 の連続接種(PCV13/PPSV23)

2014 年,米国予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)は,PCV13の高い免疫原性とPPSV23 の高いカバー率を有効に活かすため,すべての65 歳以上の高齢者に対して両者を組

表1  PPSV23とPCV13の特徴ワクチン名(商品名) PPSV23 (ニューモバックスRNP) PCV13 (プレベナー13 R)ワクチンの種類莢膜多糖体型(ポリサッカライド)ワクチン蛋白結合型(コンジュゲート)ワクチン日本承認時期1988 年2014 年製造販売会社MSD 株式会社ファイザー株式会社接種年齢2 歳以上65 歳未満の高リスク者,65 歳以上の高齢者2 ヵ月以上6 歳未満の小児,65 歳以上の高齢者価格4,666 円(薬価) 7,200 円(希望納入価格)

定期接種2014(平成26)年10 月より,65 歳以上の高齢者と60 歳以上65 歳未満で心臓,腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV による免疫の機能に障害を有する人(ただし,対象者の制限あり

*)なし

接種方法皮下注射または筋肉内注射筋肉内注射

含有莢膜型23 種類1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V,10A, 11A,12F,14,15B,17F,18C,19A,19F, 20,22F,23F,33F 13 種類1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C, 19A,19F,23F日本の成人IPD のカバー率66% (文献9) 46%(文献9)免疫様式B 細胞(免疫記憶:なし) B 細胞+T 細胞(免疫記憶:あり)

免疫原性65 歳以上の高齢者を対象としたPCV13 とPPSV23のRCT 3 血清型で非劣性,9 血清型でOPA の有意な低値。国内第III相試験 (B1851088 試験) 65 歳以上の高齢者を対象としたPCV13 とPPSV23のRCT 12 血清型で非劣性,9 血清型でOPA の有意な上昇国内第III相試験(B1851088 試験)副作用局所反応全般45%,全身反応全般34.7 %国内第III相試験(B1851088 試験)局所反応全般55.8% ,全身反応全般37.9 %国内第III相試験(B1851088 試験) *:2019(平成31)年3月31日までは経過措置として,65歳,70歳,75歳,80歳,85歳,90歳,95歳,100歳の年齢となる日の属する年度の初日か

ら当該年度の末日までの間にある人が対象。2019(平成31)年4月1日以降は65歳の人のみ対象。

(文献1 より改変引用)各論4

S C O P E
p.74
み合わせて接種することを推奨した(PCV13 とPPSV23の連続接種:PCV13/PPSV23)

6)。これを受けて日本呼吸

器学会と日本感染症学会の合同委員会は,「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」を示した11)。

肺炎診療ガイドライン作成委員会ではACIP で推奨されたPCV13/PPSV23 はPPSV23 の単独接種よりも有効かどうかを評価するため,PCV13/PPSV23 とPPSV23 の2 群間比較でSR を実施した。その結果,アウトカムとして臨床的な予防効果を検討したRCT は存在せず,免疫原性の指標としてPCV13 に含まれる莢膜型のオプソニン活性(OPA)を評価した2 編のRCT 12)13)が抽出された。メタアナリシスの結果,3,6A,6B,9V,19F,23Fの6 つのserotype においてPCV13/PPSV23 群で免疫原性が高いという結果が得られた。なお,日本人を対象とした報告は存在しなかった(p.144,CQ22 参照)。

PCV13/PPSV23 については,PCV13 の強力な免疫力とPPSV23 の高いカバー率を生かした強力な予防効果が期待される。接種医としては,定期接種制度によるPPSV23 の接種をまず念頭に置きつつ,PCV13/PPSV23も選択できる。現在のところ,PCV13/PPSV23 の臨床的

な予防効果の報告はなく,日本人を対象とした安全性と免疫原性のデータもないため,今後データを蓄積する必要がある。また,ACIP は施行から4 年後の2018 年には現在の推奨を見直すことを決めており,日本においても引き続き肺炎球菌感染症の原因菌の血清型分布の推移を監視し,有効性や安全性に関するデータとあわせ,最適な接種方法を検証していく必要がある。

●文 献1)日本内科学会成人予防接種検討ワーキンググループ.成人予

防接種のガイダンス2016年改訂版.日本内科学会誌.2016; 105:1472-88. 2)Furumoto A, Ohkusa Y, Chen M, et al. Additive effect of

pneumococcal vaccine and influenza vaccine on acute exacerbation in patients with chronic lung disease. Vaccine. 2008;26:4284-9. 3)Kawakami K, Ohkusa Y, Kuroki R, et al. Effectiveness of

pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumonia and cost analysis for the elderly who receive seasonal influenza vaccine in Japan.Vaccine. 2010;28:7063-9. 4)Maruyama T, Taguchi O, Niederman MS, et al. Efficacy of

表2  PPSV23の予防効果

発症頻度 人(1000 人・年)発症の削減率(95% CI) p 値ワクチン群プラセボ群

肺炎球菌性肺炎12 32 63.8% (32.1 − 80.7) 0.0015肺炎球菌以外の肺炎43 59 29.4% (−4.3 − 52.3) 0.0805すべての原因による肺炎55 91 44.8% (22.4 − 60.8) 0.0006対象: 高齢者施設の入所者: 1,006例(日本),方法: 二重盲験無作為化比較試験。全体の99% がインフルエンザワクチンを接種。Maruyama T, et al. BMJ. 2010;340:c1004. https://creativecommons.org/licenses/by-nc/2.0/legalcode

(文献4 より引用)

表3  PCV13の予防効果

発症数 (人)ワクチン効果(95% CI) p 値ワクチン群プラセボ群

PCV13 含有莢膜型の肺炎球菌性肺炎全体49 90 45.6% (21.8 − 62.5) <0.001 PCV13 含有莢膜型の非侵襲性肺炎球菌性肺炎33 60 45% (14.2 −65.3) 0.007 PCV13 含有莢膜型のIPD 7 28 75% (41.4 −90.8) <0.001すべての莢膜型の肺炎球菌性肺炎全体100 144 30.6% (9.8 −46.7) 0.008すべての莢膜型の非侵襲性肺炎球菌性肺炎66 87 24.1% (−5.7 −45.8) 0.11すべての莢膜型のIPD 27 56 51.8% (22.4 −70.74) 0.004対象:65歳以上の健常高齢者: 84,496例 (オランダ),方法:二重盲検無作為化比較試験。

(文献5 より引用)
p.75
23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine prevents pneumonia and improves survival in nursing home residents. -A double blind, randomized and placebo controlled trial- . BMJ. 2010;340:c1004. 5)Bonten MJ, Huijts SM, Bolkenbaas M, et al. Polysaccharide

conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015;372:1114-25. 6)Tomczyk S, Bennett NM, Stoecker C, et al. Use of 13-valent

pneumococcal conjugate vaccine and 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine among adults aged ≥65 years: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014;63:822-825. 7)Centers for Disease Control and Prevention (CDC);Advi-

sory Committee on Immunization Practices. Updated recommendations for prevention of invasive pneumococcal disease among adults using the 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine (PPSV23). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2010;59:1102-6. 8)Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Licen-

sure of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine for adults aged 50 years and older. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2012;61:394-5. 9)Fukusumi M, Chang B, Tanabe Y, et al. Invasive pneumo-

coccal disease among adults in Japan, April 2013 to March 2015:disease characteristics and serotype distribution. BMC Infect Dis. 2017;17:2. 10)Chiba N, Morozumi M, Sunaoshi K, et al. Serotype and anti-

biotic resistance of isolates from patients with invasive pneumococcal disease in Japan. Epidemiol Infect. 2010;138:61-8. 11)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG 委員会/ 日本感染症

学会ワクチン委員会 合同委員会.65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方.http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/o65haienV_150905.pdf 12)Greenberg RN, Gurtman A, Frenck RW, et al. Sequential ad-

ministration of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine and 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine in pneumococcal vaccine-naive adults 60-64 years of age. Vaccine. 2014;32:2364-74. 13)Jackson LA, Gurtman A, van Cleeff M, et al. Influence of ini-

tial vaccination with 13-valent pneumococcal conjugate vaccine or 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine on anti-pneumococcal responses following subsequent pneumococcal vaccination in adults 50 years and older. Vaccine. 2013;31:3594-602.各論4

S C O P E
p.76

        
p.77
◦CQ 1 ~6 CAPの診断

◦CQ 7 ~12 CAPの治療

◦CQ 13~16 HAP / NHCAPの診断

◦CQ 17~21 HAP / NHCAPの治療

◦CQ 22~25肺炎の予防

Clinical Question

II

エビデンスの確実性と推奨の強さについて

本ガイドラインでは,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』に準拠し,システマティックレビューより判定したエビデンスの確実性と推奨の強さの段階を下記のとおりに設定した。

推奨に対する賛成割合について

推奨の決定は作成委員会の審議と投票に基づき,修正Delphy 法により合意を形成した。投票の際はエビデンスの評価と統合で求められた「エビデンスの確実性」だけでなく,「益と害のバランス」「患者の価値観の多様性」「経済学的な視点」も考慮し,経済的,および学術的COI を有するものを除いた委員により投票を行い,7 割以上の賛成をもって決定した。本章では各推奨における多数決の結果を「賛成割合」として記載した。

エビデンスの確実性

A強:効果の推定値に強く確信があるB中:効果の推定値に中程度の確信があるC弱:効果の推定値に対する確信は限定的であるD  とても弱い:効果の推定値がほとんど確信できない

推奨の強さ

◦実施するよう強く推奨する◦実施するよう弱く推奨する◦実施しないことを弱く推奨する◦実施しないことを強く推奨する
p.78
CQ

01 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)重症度を評価するアウトカムとして,短期死亡・ICU 入室を用いた。ただし,短期死亡は年齢や基礎疾患や延命処置希望などの影響を強く受けるため,必ずしも肺炎の重症度を反映する指標ではないが,他に優れた指標が存在しないため,この指標を採用した。

CAPの重症度判定を用いた診療と,用いない診療での予後を比較したランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)は存在しなかった。そのため,A- DROP 1)と他国のガイドラインで推奨されている重症度評価法(PSI・CURB-65)

2)-5)の比較を行うことにした。

採用論文

成人CAP 患者(日本人)を対象とし,上記重症度評価法が外来(救急外来を含む)で適切に重症度を評価し,治療方針の決定に役立つかを調査した。7 つの観察研究(表1)が存在し,今回の採用論文とした6)-12)。短期死亡,ICU 入室を評価した論文がそれぞれ7 編 ,2 編存在した11)12)。

結 果

1.短期死亡(重要度9 点)

短期死亡を評価した論文が7 編〔30 日死亡(4編6)-9))・28 日(2 編10)11))・入院時死亡(1 編12))〕あり,短期死亡に対するA-DROP のROC(receiver operating characteristic curve)は,0.88-0.672 であった(表1-A, 2)。この値は,PSI(0.89-0.632),CURB-65(0.88- 0.80)のROC と比べて同等と推測され,A-DROP の短期死亡の予測に用いることは適切と考える。  エビデンスの確実性はC  とする。

2.ICU 入室(重要度8 点)

ICU 入室を比較評価した論文は2 編(表1-B)

11)12)あ

るが,前向き研究は単施設での1 編のみであった。さらに,ICU に入室した症例数も少なく,A-DROP のICU入室の適切性を評価することは困難であった。そのため,A-DROP のみを用いてICU 入室を判断することはできない。  エビデンスの確実性はD  とする。

CAP 患者の治療に際する入院要否の判定および治療方針の決定においてA-DROP 方式による重症度評価を推奨する。

実施することを強く推奨する

CAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ1 推奨

推奨の強さ
p.79
システマティックレビューのまとめ

CAP 患者の重症度評価に関して,A-DROP 方式は短期死亡の予測には有用(  エビデンスの確実性はC  )だが,ICU 入室の予測には有用性は確立していない(  エビデンスの確実性はD  )。本システマティックレビューの全体的な  エビデンスの確実性はC  である。医療資源の有効活用のためにCAP 診断時に患者の重

症度を客観的に評価し,それに基づき治療を行うことが適切と考えられる。一般臨床医が使用しやすい点を考慮し簡便な評価法を重視した。日本呼吸器学会が推奨しているA-DROP 1)とPSI(IDSA/ATS)・CURB-65 (BTS)

3)5)を比較し,ICU 入室のみを検討した評価方法(IDSA/ATS minor criteria のMinor criteria,SMART- COP など)

3)13)は検討から外した。

表1-A  A-DROP とPSI・CURB-65との比較(短期死亡)短期死亡

著者発表年N対象年齢試験デザイン国症例の年齢エンドポイント評価ツールROC (95% CI) Shindo Y 2008 年N=329

不明後ろ向き日本平均75 歳30 日死亡率(9.4%) A-DROP 0.846 (0.790-0.903)

CURB-65 0.835 (0.763-0.908)

Usui K 2009 年N=523 18 歳以上後ろ向き日本平均70.5 歳30 日死亡率(5.9%) A-DROP 0.854 (0.799-0.909)

PSI 0.869 (0.815-0.923) CURB-65 0.826 (0.759-0.893)

Kohno S 2011 年N=1,875 16 歳以上前向き日本男性70 歳以上女性75 歳以上

(42.4%) 30 日死亡率(5.6%) A-DROP 0.824 (0.822-0.827)

PSI 0.811 (0.807-0.814)

Kasamatsu Y

2012 年N=226

不明前向き日本平均 67.9 歳30 日死亡率(11.8%) A-DROP 0.88(0.82-0.94)

PSI 0.89(0.85-0.94) CURB65 0.88(0.82-0.94)

Kohno S 2013 年N=482 20 歳以上前向き日本平均 76.3 歳28 日死亡率(12.3%) A-DROP 0.672 (0.548-0.746)

PSI 0.632 (0.559-0.706)

Ugajin M 2014 年N=213 18 歳以上後ろ向き日本年齢中央値

82 歳28 日死亡率(9.4%) A-DROP 0.81(0.74-0.89)

PSI 0.86(0.78-0.94) CURB-65 0.80(0.73-0.88)

Fukuyama H

2011 年N=505

不明前向き日本年齢中央値

76 歳入院死亡(6.5%)感度特異度

A-DROP (3-5) 76.7% 59.7% PSI (IV-V) 93.3% 31.3% CURB65 (3-5) 60.0% 68.7% C A Pの診断

C Q
p.80
A-DROP の日本人CAP 患者の死亡予測能力は,PSI・CURB-65 のそれと比べ同等と考える。しかし,ICU 入室を判断する能力はA-DROP ではデータが乏しく,評価困難であった。なお,過去のSR ではPSI・CURB-65

ともにICU 入室を判定する能力が不十分であることが指摘されている14)。

表1-B  A-DROP とPSI・CURB-65との比較(ICU 入室) ICU 入室

著者発表年N対象年齢試験デザイン国症例の年齢エンドポイント評価ツール感度特異度

Fukuyama H

2011 年N=505前向き日本年齢中央値

76 歳ICU 入室(6.3%) A-DROP (3-5) 71.0% 59.2%

PSI (IV-V) 93.5% 31.5% CURB-65 (3-5) 77.4% 70.8%

Ugajin M 2014 年N=213 18 歳以上後ろ向き日本年齢中央値

82 歳ICU 入室(15%) A-DROP 0.86(0.81-0.92)

PSI 0.87(0.80-0.93) CURB-65 0.86(0.80-0.92)

表3  A-DROP とCURB-65との比較(入院)入院

著者年齢N対象年齢試験デザイン国症例の年齢エンドポイント評価ツールAUC Jones 2014 年N=2,002 18 歳以上後ろ向き米国不明入院(55%) A-DROP ≧2 0.79(0.77-0.80)

CURB-65 ≧2 0.73(0.71-0.75)

表2  A-DROP の点数ごとの短期死亡〔n(%)〕

著者試験デザイン例数エンドポイントShindo後ろ向きn =329 30 日死亡Usui後ろ向きn =523 30 日死亡Kohno

前向きn =1,875 30 日死亡Kohno

前向きn =482 28 日死亡

A-DROP

0 0/50 (0%) 0/119 (0%) (0%) 1/5 (20%)

1 0/74 (0%) 1/149 (0.1%)

(3.1%) 12/234 (5.6%) 2 4/89 (4.5%)

6/131 (4.6%)

3 11/69 (15.9%) 13/90 (14.4%) (9.9%) 28/174 (16.1%)

4-5 16/47 (34.0%) 11/34 (32.4%) (19.6%) 16/59 (27.1%)
p.81
PSI は複雑で評価項目が多く,一般外来での使用が困難である。また,年齢の配分が大きく,高齢者では重症に判定されやすい欠点をもつ。米国での後ろ向きの解析(表3)では,A-DROP(2 ≧)はCURB-65(2 ≧)より救急外来からの入院患者を適切に反映していた15)。また,A-DROP(2 ≧)とCURB-65(2 ≧)の入院基準を順守したときの治療失敗は,それぞれ4.3%,4.9% であった。これらの結果よりA-DROP は CURB-65 と比べ,入院判定の点で同等以上の能力を有している可能性がある。

1.推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの確実

性:弱い重症度判定の有無別にCAP 患者の予後を比較した前向き研究はない。

2)益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実

A-DROP による重症度評価で「益」はあっても,「害」は生じない。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る重症度判定は客観的医療の実践であり患者価値に適っている。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っている:見合っている重症度判定においてコスト負荷はなく,医療資源に影響を与えない。

2.委員会における討論内容と結果

推奨度決定に関し,学術的COI をもつ委員を除くガイドライン委員15 名で投票を行った。初回投票で,7/15名(47%)が「実施することを強く推奨する」に投票し, 8/15 名(53%)が「実施することを弱く推奨する」を選択した。初回投票で70%を超える同意率を得られなかったために,下記の点で討議を行い,「実施することを強く推奨する」を11/15 名(73%)が選択し,採用となった。

治療選択の際の判断材料として何らかの基準は不可欠である。しかし,A-DROP は一部の重症例を見逃してしまう可能性がある。そのため,1 点でも重症となる症例があることを臨床医は認識すべきである。特に,後半の

3 項目(ROP)は1 つでも重視すべきである。点数に重み付けを加えることも議論されたが,従来のA-DROPとは異なるため,判断材料がない。CURB-65 の使用は簡便であるが,高齢化の進んだ日本人のデータが多いことを考慮する必要がある。そのため65 歳がcut-off となるCURB-65 でなく,A-DROP の使用が適切だと判断する。臨床医がA-DROP を使いながら,総合的な評価で重症度判定を使用することを期待する。

●文 献1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員

会(編).成人市中肺炎診療ガイドライン.東京:日本呼吸器学会;2007.p.11. 2)Fine MJ, Auble TE, Yearly DM, et al. A prediction rule to

identify low risk patients with community-acquired pneumonia. N Engl J Med. 1997 ; 336 : 243-50. 3)Mandell LA, Wunderink RG, Anzueto A, et al. Infectious Dis-

eases Society of AmericaAmerican Thoracic Society consensus guidelines on the management of community-acquired pneumonia in adults. Clin Infect Dis. 2007;44:S27-72. 4)Lim WS, van der Eerden MM, Laing R, et al. Defining com-

munity acquired pneumonia severity on presentation to hospital: an international derivation and validation study. Thorax. 2003 ;58:377-82. 5)Lim WS, Baudouin SV, George RC, et al. BTS guidelines for

the management of community acquired pneumonia in adults: update 2009. Thorax. 2009;64: iii1-55. 6)Shindo Y, Sato S, Maruyama E, et al. Comparison of severity

scoring systems A-DROP and CURB-65 for community-acquired pneumonia. Respirology. 2008;13:731-5. 7)Usui K, Tanaka Y, Noda H, et al. Comparison of three pre-

diction rules for prognosis in community acquired pneumonia: Pneumonia Severity Index (PSI), CURB-65, and A- DROP. Nihon Kokyuki Gakkai Zasshi. 2009;47:781-5. Japanese. 8)Kohno S, Seki M, Watanabe A, et al. Evaluation of an assess-

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of a semi-quantitative procalcitonin test and the A-DROP Japanese prognostic scale for predicting mortality among adults hospitalized with community-acquired pneumonia. Respirology. 2012;17:330-6. 10)Kohno S, Seki M, Takehara K, et al. Prediction of require-

ment for mechanical ventilation in community-acquired pneumonia with acute respiratory failure: a multicenter prospective study. Respiration. 2013;85:27-35. 11)Ugajin M, Yamaki K, Hirasawa N, et al. Predictive values of C A Pの診断

C Q
p.82
semi-quantitative procalcitonin test and common biomarkers for the clinical outcomes of community-acquired pneumonia. Respir Care. 2014;59:564-73. 12)Fukuyama H, Ishida T, Tachibana H, et al. Validation of

scoring systems for predicting severe community-acquired pneumonia. Intern Med. 2011;50:1917-22. 13)Charles PG, Wolfe R, Whitby M, et al. SMART-COP: a tool

for predicting the need for intensive respiratory or vasopressor support in community-acquired pneumonia. Clin Infect Dis. 2008;47:375-84.

14)Chalmers JD, Mandal P, Singanayagam A, et al. Severity as-

sessment tools to guide ICU admission in community-acquired pneumonia: systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2011; 37:1409-20. 15)Jones BE, Jones JP, Vines CG, et al. Validating hospital ad-

mission criteria for decision support in pneumonia. BMC Pulm Med. 2014;14:149.
p.83
CQ

02 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

成人患者(免疫正常者)を対象に,胸部CT 検査施行の有無の2 群で,下記のアウトカムについて評価した。アウトカムは,「原因微生物診断(質的診断)」「存在診断(量的診断)」「コスト」とし,CT 検査結果が治療変更をもたらし,症状の軽減,合併症/ 死亡の減少などの臨床的効果を評価している研究のみを対象とした。

採用論文

上記対象とアウトカムに基づくシステマティックレビュー/ ランダム化比較試験/ コホート研究はなく,採用論文はなし。

結 果

胸部CT は日常臨床で行われている検査であり,採用論文はないが,その位置づけを記載することとした。

胸部CT 検査は胸部X 線検査に比べて,肺炎疑い患者の胸腔内異常を検出する能力は優れている1)2)。しかし,

CT 結果が臨床的に意味のある効果(症状の軽減,合併症/ 死亡の減少)に結びつくかは評価されていない。救急外来では,重篤な肺炎患者や他疾患が疑われる患者にCT が施行されやすい3)-5)。CT 検査には,負の要素(被曝に伴う悪性腫瘍発生,医療費の増加)も含まれるため,現時点では胸部X 線画像で診断された肺炎患者にルーティーンでのCT 検査の有用性は不明確である。

システマティックレビューのまとめ

胸部X 線画像で診断された肺炎患者にルーティーンでのCT検査の有用性は不明確である(  エビデンスの確実性はD  )。

CAP患者に胸部CT施行を推奨する病態を下記に記載する。

1.他疾患(悪性腫瘍,肺血栓塞栓症,心不全,結核

など)との鑑別が必要な場合2.侵襲的処置(穿刺,ドレナージ,気管支鏡検査な

ど)のために,正確な病変部位の同定が必要な場合6)-9) 3.既存の肺疾患のため,胸部X 線検査でCAP の評

胸部X 線検査所見を基にCAP が疑われる患者に対してルーティーンにCT 検査を行わないことを弱く推奨する。

実施しないことを弱く推奨する

CAP診断において,問診,身体診察と胸部X 線画像で診断した肺炎に胸部CT を施行することは推奨されるか。

CQ2 推奨

推奨の強さ

C A Pの診断

C Q
p.84
価が困難な場合10)

推奨の強さを決定するための評価項目

1アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

胸部CT を撮影すると,単純画像のみでの見逃し例を拾い上げるが,治療経過アウトカムとした報告がない。

2益と害のバランスが確実(コスト含まず)か:確実ではない

免疫不全のある患者では,結核やニューモシスチス肺炎などの質的診断に貢献するだろうが,健常成人CAPを対象とした胸部CT の有益性を検出した報告はない。

3患者の価値観や好みを反映している:一概には判定できない

4負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分に見合っているか:見合っていない

被曝量が多く,保険点数は800 〜1,000 点とコストもかかる。上記に見合う診療上の利益があるが,明確でない。

委員会における討論内容と結果

推奨度決定に関し,学術的COI を有する委員を除くガイドライン委員15 名で投票を行った。初回投票で,1/15名(6.7%)が「実施することを強く推奨する」に投票し,3/15 名(20%)が「実施することを弱く推奨する」, 9/15 名(60%)が「実施しないことを弱く推奨する」, 2/15 名(13.3%)が「実施しないことを強く推奨する」を選択した。初回投票で70%を超える同意率を得られなかったために,下記の点で討議を行い,再投票を行った。胸部X 線の読影が困難な場合に,胸部CT を否定する

ものではない。また,異常陰影を見逃すリスクもあるが,負の側面(被曝,コスト)を考慮すると,全例に胸部CT を行うのは問題がある。

再投票の結果,「実施しないことを弱く推奨する」,を15/15 名(100%)が選択し,採用となった。

●文 献1)Syrjälä H, Broas M, Suramo I, et al. High-resolution comput-

ed tomography for the diagnosis of community-acquired pneumonia. Clin Infect Dis. 1998;27:358-63. 2)Claessens YE, Debray MP, Tubach F, et al. Early chest com-

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trative lung disease :determination of the diagnostic value of clinical data, chest radiography, and CT and Bayesian analysis. Radiology. 1994;191:383-90.
p.85
CQ

03 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

下気道感染患者を対象とし,「CRP 測定結果に基づく治療」を介入群,「CRP 測定結果に基づかない治療」をコントロール群として,「生存率」「症状改善」「入院期間・率」「抗菌薬投与量」「コスト」をアウトカムとして評価した。

採用論文

当初,市中肺炎(community-acquired pneumonia: CAP)患者を対象に同様の検索を施行したが,システマティックレビュー(SR)・ランダム化比較試験(RCT)・観察研究は存在しなかった。そのため,本CQ では肺炎の可能性が高い患者として下気道感染患者を対象とし,患者全体の75% 以上を下気道感染患者が占める研究をRCT の採用基準とした。全患者にCRP 測定が行われている論文は除外し,RCT 1 編1),クラスターRCT 2 編2)-4)を選択した。選択したRCT の対象はプライマリケアの外来治療患者であり,メインアウトカムは抗菌薬投与であった。なお,CRP 測定には,CAP 補助診断5)6),治療効果判定7)-10),予後/ 合併症予測10)-12)などの点で有用性

を示唆する報告は存在するが,全患者にCRP測定が行われているため採用論文から除外した。Cals 1)は,下気道感染・副鼻腔炎患者が混在した研究であったため,下気道感染患者のデータのみを採用した。コストについてはクラスターRCT 1 編13)を選択し,観察研究1 編14)も選択した。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるMantel-Haenszel method とInverse Variance method (RevMan5.3)を用い,オッズ比(OR)もしくはリスク比(RR を効果の指標とした。本CQ は同様のSR が複数報告されており,SR 4 編(急性気道感染3 編/ 下気道感染1 編)

15)-18)のすべてが抗菌薬使用をメインアウトカムとしていた。RCT の統合解析を行っているSR は2 編あり16)17),いずれも小児を対象として含んでおり,Huang 17)はRCT と観察研究を含めてメタアナリシスを行っている。CRP 測定には,1CAP 診断補助5)14)2治療効果判定6)-9)3予後/ 合併症予測9)-11)などの点で有用性を示唆する報告は存在するが,全患者にCRP測定が行われているこれらの研究は,本CQ から除外した。

肺炎診断が未確定な軽症下気道感染患者には,CRP 測定結果を基準にした抗菌薬投与(もしくは,治療)を行うことを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

CAP 患者において,CRP 測定を行うことは推奨されるか。

CQ3 推奨

推奨の強さ

C A Pの診断

C Q
p.86
結 果

1.生存率(重要度9 点)

3 編のRCT を選択した1)3)4)。両群ともに生存率は100% であり,両群に差を認めなかった。非日本人を対象としているが,十分な症例数(2,507 例 vs. 2,295 例)であり,  エビデンスの確実性はA  とする。なお,『The Cochrane Database of Systematic Reviews』

16)でも28

日以内の死亡は認めず,両群に差を認めなかった。

2.症状改善(重要度8 点)

2 編のRCT を選択した1)4)。症状改善率(7 日以内の症状改善患者割合)

1)・臨床改善期間4)は,それぞれ1 論文

で報告され,症状改善率に対するRR 1.28 (95%CI 0.59-2.77),臨床改善期間に対するaHR 0.93 (95%CI 0.83-1.04)で両群に差を認めなかった。アウトカムの指標が異なるため,メタアナリシスは行っておらず,定性的なSR となるため,  エビデンスの確実性はC  とする。なお,『The Cochrane Database of Systematic Reviews』

16)

でも7 日目の症状改善割合に対するRR 1.03(95%CI 0.93-1.14)で両群に差を認めなかった。

3.入院期間・率(重要度7 点)

3 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)4)。入院症例はLittle 4)論文のみに存在したが,入院期間は記載がなかった。3 編のRCT 1)3)4)によるメタアナリシスでは,入院率に対するOR 2.54(95%CI 1.13-5.71)となり,介入群(CRP 測定群)で増加した。しかし,このメタアナリシスは4,000 人を超える規模のクラスターRCT であるLittle 4)の影響を受けており,Little 4)では交絡を調

整しない場合はOR 2.61(95%CI 1.07-6.35)で介入群(CRP 測定群)の入院が増加したが,交絡因子を調整した場合はOR 2.91(95%CI 0.96-8.85)で両群に差を認めていないことから,ランダム化(ランダム化による交絡因子の調整)に深刻なリスクがあると考えられる。この結果から,介入群(CRP 測定群)で入院が増加する可能性が残されるが,ランダム化に大変深刻なリスクがあるとして,  エビデンスの確実性はC  とする。以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図1)。

Little の内容では,交絡因子を調整しない入院率では有意差があり,交絡因子を調整すると有意差がなくなる。また,Little の症例が多く,メタアナリシスの結果を実質的に左右している。今回のメタアナリシスでは,交絡因子を含む詳細な情報がなく,患者数のみからORを求めているため,それぞれの論文の解析結果と誤差が生じ得る。

4.抗菌薬投与率(重要度7 点)

診断時の抗菌薬使用に関して3 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)4)。診断時の抗菌薬使用に対するRR 0.67(95%CI 0.61-0.74)であり,介入群(CRP 測定群)で減少した。28 日以内の抗菌薬使用に関して2 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)。28 日以内の抗菌薬使用に対するRR 0.77(95%CI 0.66-0.91)であり,介入群(CRP 測定群)で減少した。これらは非日本人を対象としているが,一貫した結果であり,  エビデンスの確実性はいずれもA  とする。なお,SR2 編では16)17),急性気道感染患者に対するCRP 測定は診断時の抗菌薬投与をRR 0.78(95%CI 0.66-0.92)

16),RR 0.75

Cals 2009 Cals 2010 Little 2013合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: 適用外全体的効果に対する検定: Z=2.25 (p=0.02)

0 0 22

22 イベント数227 56 2,224

2,507

症例数CRP測定群CRP非測定群ORイベント数症例数比重発表年M-H,Fixed,95%Cl 0 0 8

8 204 51 2,040

2,295 2009 2010 2013

0.5 0.2 0.1 1

OR M-H, Fixed, 95%Cl

CRP測定群優位CRP非測定群優位

2 5 10

100.0% 100.0%推定不可推定不可2.54[1.13-5.71]

2.54[1.13-5.71]

研究またはサブグループ

図1  入院率に対するメタアナリシス
p.87
(95%CI 0.67-0.83)

17)に減少しており,『The Cochrane

Database of Systematic Reviews』

16)では上気道感染・

下気道感染群でのサブグループ解析も行い,いずれの群でも有用と判定している。また,28 日以内の抗菌薬投与をRR 0.80(95%CI 0.67-0.96)

16),RR 0.85(95%CI 0.70-

1.01) 17)に減少している。以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図2,3)。

5.コスト(重要度7 点)

1 編のクラスターRCT が存在した13)。この研究は海外のCRP 迅速測定法を用いた研究であり,CRP 値を用いることで抗菌薬投与・画像検査減少に結びつくため,総合的には1.62-1.82 ユーロと軽度のコスト増加を認めるのみであった。また,観察研究14)でも,有意でないコスト上昇11.27 ユーロ(95%CI -1.86-24.41)を認めた。これらの研究は日本の医療保険制度や標準的な医療設備と異なるため,わが国でも同等の結果であるかの判断はできないため,  エビデンスの確実性はD  とする。システマティックレビューのまとめ

胸部X 線検査の有無にかかわらず,肺炎の診断が明確でない軽症下気道感染患者には,CRP 測定結果を基準にした抗菌薬投与を行うことについて,生存率,症状改善,入院率では明らかな有用性はなかったが,抗菌薬投与率はCRP 測定群で減少した(  エビデンスの確実性はA  )。また,今回の解析結果は,NICE ガイドライン(2014)の類似のCQ と同じ採用論文となり,同様の結論であった。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いエビデンスは3 編のRCT に基づいており,  エビデンスの確実性はA  である。

図2  診断時の抗菌薬使用に対するメタアナリシス

Cals 2009 Cals 2010 Little 2013合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=2.35, df=2 (p=0.31); l2=15%全体的効果に対する検定: Z=7.61 (p<0.00001)

70 23 734

827 227 56 2,224

2,507 RR M-H,Random,95%Cl 108 26 984

1,118 204 51 2,040

2,295 2009 2010 2013

0.7 0.5 1

RR M-H, Random, 95%Cl

1.5 2

16.7% 5.8% 77.5% 100.0% 0.58[0.46-0.74] 0.81[0.53-1.22] 0.68[0.64-0.74]

0.67[0.61-0.74]

イベント数症例数

CRP測定群CRP非測定群イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

CRP測定群優位CRP非測定群優位

図3  28日以内の抗菌薬使用に対するメタアナリシス

Cals 2009 Cals 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.01, df=1 (p=0.91); l2=0%全体的効果に対する検定: Z=3.04 (p=0.002)

102 26

128 227 56

283 M-H,Random,95%Cl 119 30

149 204 51

255 2009 2010

0.7 0.5 1

M-H, Random, 95%Cl

1.5 2

79.4% 20.6% 100.0% 0.77[0.64-0.93] 0.79[0.55-1.13]

0.77[0.66-0.91]

イベント数症例数

CRP測定群CRP非測定群イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

CRP測定群優位CRP非測定群優位

RR RR

C A Pの診断

C Q
p.88
2)‌益と害のバランス(コストは含まず)は確実か:確

実CRP 値を参照する診療により,入院率が増える可能性はあるが,死亡率に影響せず抗菌薬使用が減少するため,明らかな不利益は認められない。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る抗菌薬使用を減量できることは医療社会全体(患者含む)にとって有益であるが,過度の抗菌薬処方が有害であることを患者に理解してもらう必要がある。

4)‌正味の利益がコストや資源に十分に見合っている

か:不明日本の医療経済評価がないため判断できないが,CRP定量の保険点数は1 回につき16 点である。

委員会における討論内容と結果

推奨度決定に関し,ガイドライン委員15 名で投票を行った。初回投票で,4/15 名(26.7%)が「実施することを強く推奨する」に投票し,11/15 名(73.3%)が「実施することを弱く推奨する」を選択した。初回投票で70% を超える同意率を得られたために,「実施することを弱く推奨する」と決定した。なお,CRP 値は,抗菌薬の投与期間を決定する根拠ではないことを付記する。

補足事項:プロカルシトニン(PCT)について

「CAP の原因菌診断,重症度判定,抗菌薬治療期間の指標としてプロカルシトニン (PCT)は有用か」という課題についても,当初CQ の対象としてSR およびメタアナリシスを行った。

PCT 利用の有無別に「死亡(重要度9 点)」「抗菌薬処方割合(重要度8 点)」「抗菌薬治療期間(重要度7 点)」「抗菌薬の費用対効果(重要度6 点)」「入院期間(重要度7 点)」を評価する目的で6 編のRCT を解析対象とした19)-24)。

この結果,PCT 計測値に基づく治療の死亡に対するRR 0.99 (95%CI 0.70-1.41,p=0.97)で,PCT を利用しない群と比較して差を認めなかった。一方,抗菌薬処方割合に対するRR 0.69(95%CI 0.54-0.88,p=0.003)であり,PCT 群で有意に減少した。また,抗菌薬治療期

間に対する平均差(MD)-2.86 (95%CI -4.49- -1.23, p=0.0006)であり,PCT 群で有意に短縮した。入院日数については,MD -0.17(95%CI -0.74-0.41,p=0.57)であり,PCT 活用の有無別で差は認められなかった。PCT活用が,急性下気道感染症診療の費用対効果について与える影響について16 のRCT に基づくメタアナリシスにおいてcost-impact model が算出され,その結果, PCT 活用は治療効果を阻害することなく不要な抗菌薬使用を減ずる効果をもたらすと報告されている25)。

これらの結果より,PCT アルゴリズムによるCAP の診療は,死亡や入院日数に影響せずに,抗菌薬処方割合と抗菌薬治療期間が減少し,抗菌薬の費用を削減することが示唆された。解析したRCT はいずれも日本人以外が対象となっており,CAP 以外も含まれているため, PCT 有用性全体としての  エビデンスの確実性はB  と判定された。

上記の解析結果を基に,本ガイドライン第14 回の委員会でPCT 測定の有用性について本ガイドラインに含むべきかを検討したが,プライマリケアではPCT 測定値がすぐに判明しないこと,保険診療では月1 回の測定しか算定できず,「肺炎」の保険病名では保険適用がないことなどを総合的に勘案し,今回のガイドラインのCQとしては採用しない方針となった。

●文 献1)Cals JW, Schot MJ, de Jong SA, et al. Point-of-care C-reac-

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p.89
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antibiotic use vs a standard approach for acute respiratory tract infections in primary care. Arch Intern Med. 2008; 168:2000-7. 23)Christ-Crain M, Stolz D, Bingisser R, et al. Procalcitonin

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procalcitonin-guided treatment on antibiotic use and outcome in lower respiratory tract infections: cluster-randomised, single-blinded intervention trial. Lancet. 2004 ; 363:600-7. 25)Schuetz P, Balk R, Briel M, et al. Economic evaluation of

procalcitonin-guided antibiotic therapy in acute respiratory infections:a US health system perspective. Clin Chem Lab Med. 2015;53:583-92. C A Pの診断

C Q
p.90
CQ

04 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

抗菌薬投与前の血液培養実施群と血液培養非実施群の2 群間比較で,アウトカムとして,「死亡率の低減」「抗菌薬使用量の低減」「入院期間の短縮」を評価した。重症市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)のみを対象としてこれらのアウトカムを評価した論文はなかった。また,アウトカムとして「適切な抗菌薬治療(費用対効果)」を評価した論文はなかった。全例血液培養を実施し,血液培養陽性と血液培養陰性でアウトカムを比較している研究は除外した。

採用論文

ランダム化比較試験(RCT)は存在せず,観察研究4編1)-4)を選択した。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるMantel-Haenszel method とInverse Variance method(RevMan5.3)を用い,2 値変数はオッズ比(OR),連続変数は平均差(MD)を効果の指標とした。結 果

1.死亡率の低減(重要度9 点)

4 編(6,706 例)の観察研究によるメタアナリシスを行った1)-4)。死亡率に対するOR 0.79(95%CI 0.64- 0.96)で,血液培養採取は死亡率を減少させた。4 編のうち文献2 を除く3 編1)3)4)では有意性は示されておらず,メタアナリシスの結果が文献2 の結果に影響を受けている(3,233 例,Weight 5c)可能性があるが,4 編の治療効果の推定値には一貫性がみられている(I 2=6%)。また,多変量解析を行っている3 編5)-7)はraw data がないためメタアナリシスに組み込むことはできなかったが,文献5 を除く2 編6)7)では多変量解析で有意性は示されず,文献7 は65 歳以上の高齢者のみを対象としていた。非日本人を対象とした観察研究であるが,一貫した結果であり,症例数も多い(4,016 例 vs. 2,690 例)ため,  エビデンスの確実性はC  とする。

以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図1)。

2.抗菌薬使用量の低減(重要度6 点)

1 編(605 例)の観察のみであるためメタアナリシスは

重症CAP 患者の抗菌薬治療開始前に血液培養を行うことを推奨する。

実施することを強く推奨する

重症CAP 患者の原因菌診断において,血液培養を施行することは推奨されるか。

CQ4 推奨

推奨の強さ
p.91
実施できなかった4)。OR 1.66(95%CI 1.01-2.72)で,血液培養を含めた微生物学的検査の実施は適切な抗菌薬使用(narrowed or focused)と有意に関連した(図2)。非日本人を対象としており,血液培養以外の微生物学的検査も含まれていることから,  エビデンスの確実性はC  とする。

3.入院期間の短縮(重要度7 点)

2 編(2,868 例)の観察研究によるメタアナリシスを行った1)3)。MD 0.04(95%CI -0.25-0.33)で両群に差を認めなかった(図3)。また,raw data がないためメタアナリシスに組み込むことができなかった2 編5)6)でも有意性は示されなかった。非日本人を対象とした観察研究であるが,一貫した結果であり,症例数も比較的多い(1,989 例 vs. 879 例)ため,  エビデンスの確実性はC  とする。システマティックレビューのまとめ

CAP患者の抗菌薬治療開始前の血液培養は,死亡率と抗菌薬使用量の低減に関連するが,入院日数の短縮には関連しなかった(  エビデンスの確実性はC  )。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンス:弱い

観察研究4 編(6,706 例)のメタアナリシスでは,血液培養施行と死亡率低減の間に有意な相関が認められているが,日本人以外を対象としており,年齢,重症度,併存疾患など背景因子の調整ができておらず,血液培養以外の微生物学的検査の影響も考慮されていない。また,血液培養の結果がその後の診療にどのように影響を及ぼすかは個人や医療機関の判断に委ねられるため,エビデンスは十分ではないと思われる。

Lidman 2002 Benenson 2007 Garu 2008 Lee 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=3.18, df=3 (p=0.36); l2=6%全体的な影響の検定: Z=2.30 (p=0.02)

14 32 116 88

250 482 684 1,545 1,305

4,016 IV,Random,95%Cl 8 8 164 53

233 123 122 1,688 757

2,690 2002 2007 2008 2011

0.5 0.2 1

IV, Random, 95%Cl

2 5

5.2% 6.5% 57.3% 30.9% 100.0% 0.43[0.18-1.05] 0.70[0.31-1.56] 0.75[0.59-0.97] 0.96[0.67-1.37]

0.79[0.64-0.96]

イベント数症例数

血液培養実施群血液培養非実施群イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

血液培養実施優位血液培養非実施優位

OR OR

図1  死亡率に対するメタアナリシス

Lidman 2002合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: 適用外全体的な影響の検定: Z=2.00 (p=0.05)

133 133 482 482 M-H,Random,95%Cl 23

23 123

123 2002

0.5 0.2 1

M-H, Random, 95%Cl

2 5

100.0% 100.0% 1.66[1.01-2.72]

1.66[1.01-2.72]

イベント数症例数

血液培養実施群血液培養非実施群イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

血液培養実施優位血液培養非実施優位

OR OR

図2  抗菌薬使用に対する検討C A Pの診断

C Q
p.92
2)‌益と害のバランス(コストは含まず)は確実か:確

実血液培養施行による有害事象は一般採血検査と同等であり,入院日数に影響せずに,死亡率と抗菌薬を減少させることが示されている。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る死亡率低減をアウトカムとしており,死亡率,抗菌薬使用量,入院期間が減少することを患者は好む。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っているコストを評価した論文はないが,血液培養2 セットの保険点数は,培養同定190 点と嫌気性培養120 点で,算定可能(620 点)であり,保険診療で認められている。

委員会における討論内容と結果

エビデンスの確実性は高くはないが,重症肺炎であれば血液培養は必要であり,教育的意味でも血液培養採取が推奨される。

推奨草案に関しては,学術的COI のない委員16 名で投票を行い,12/16 名(81%)が「実施することを強く

推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

●文 献1)Lee JS, Primack BA, Mor MK, et al. Processes of care and

outcomes for community-acquired pneumonia. Am J Med. 2011;124:1175. e9-17. 2)Garau J, Baquero F, Pérez-Trallero E, et al.; NACER Group.

Factors impacting on length of stay and mortality of community-acquired pneumonia. Clin Microbiol Infect. 2008;14: 322-9. 3)Benenson RS, Kepner AM, Pyle DN 2nd, et al. Selective use

of blood cultures in emergency department pneumonia patients. J Emerg Med. 2007;33:1-8. 4)Lidman C, Burman LG, Lagergren A, et al. Limited value of

routine microbiological diagnostics in patients hospitalized for community-acquired pneumonia. Scand J Infect Dis. 2002;34:873-9. 5)Uematsu H, Hashimoto H, Iwamoto T, et al. Impact of guide-

line-concordant microbiological testing on outcomes of pneumonia. Int J Qual Health Care. 2014;26:100-7. 6)Dedier J, Singer DE, Chang Y, et al. Processes of care, illness

severity, and outcomes in the management of communityacquired pneumonia at academic hospitals. Arch Intern Med. 2001;161:2099-104. 7)Meehan TP, Fine MJ, Krumholz HM, et al. Quality of care,

process, and outcomes in elderly patients with pneumonia. JAMA. 1997;278:2080-4.

図3  入院期間に対するメタアナリシス

Benenson 2007 Lee 2011合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.47, df=1 (p=0.49); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.26 (p=0.79)

5.3 5 3.4 2.96

SD

4.3 3.7

SD IV,Random,95%Cl 684 1,305 1,989 122 757

879 5 5 2007 2011

-0.5 -1 0

IV, Random, 95%Cl

0.5 1

12.8% 87.2% 100.0% 0.30[-0.50-1.10] 0.00[-0.31-0.31]

0.04[-0.25-0.33]

平均症例数血液培養実施群血液培養非実施群平均症例数比重研究またはサブグループ発行年

血液培養実施優位血液培養非実施優位

平均差平均差
p.93
CQ

05 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

アウトカムは「適切なケアの遅れ」「コスト」,対象は成人下気道感染疑い患者とした。

採用論文

採用となったシステマティックレビュー(SR)はなし,ランダム化比較試験(RCT)1 報1)であり,採用論文は1 編であった。また,「コスト」を評価した論文はなかった。

結 果

RCT:アウトカムである「適切なケアの遅れ」は,肺炎患者に対する「抗菌薬投与の遅れ」に置き換えて評価した(重要度9 点)。唯一の採用論文である文献1 のRCT では,軽症下気道感染患者全員にX 線検査を行い,検査結果を利用しない群と利用する群の2 群間で診療結果を比較している1)。肺炎像を認めた患者に限った場合,介入群(X 線あ

り)ではコントロール群(X 線なし)に比べ,適切なケア(抗菌薬投与)が高率OR 3.92(95%CI 1.10-13.9)に行われ,症状期間の有意な短縮(X 線なし22.6 日vs. X 線あり16.2 日)も認められた。ただし,症状安静(X線なし2.2 日vs. X 線あり1.3 日),休業(X 線なし0.61日vs. X 線あり0.83 日)などの活動制限期間には2 群間に有意差は認めなかった。

また,成人軽症下気道感染患者全員での比較では,胸部X 線検査の利用の有無で有症状期間を短縮しなかった(X 線なし17.0 日vs. X 線あり16.9 日)。  エビデンスの確実性はC  。

システマティックレビューのまとめ

急性気道感染症が疑われる患者におけるルーティーンの胸部X 線検査は適切な抗菌薬治療の開始をサポートする有用性は認められなかった(  エビデンスの確実性はC  )。

また,本CQ のアウトカムである「適切なケアの遅れ」には,「抗菌薬の投与の遅れ」以外に,「入院の遅れ」が含まれると判断されたが,この点を検討した論文は検索

急性気道感染症が疑われる患者にルーティーンには胸部X 線検査を行わないことを弱く推奨する。

実施しないことを弱く推奨する

「気道症状と発熱」を有する患者群

において,胸部単純X 線検査を全

例に施行することは推奨されるか。

CQ5 推奨

推奨の強さ

C A Pの診断

C Q
p.94
し得なかった。

これまで,症状・所見・病歴などの変数を組み合わせ,肺炎を予測する方法が提唱されてきたが,これらの肺炎診断予測式のROCは0.70-0.82(Derivation),0.49- 0.68(Validation)と普遍的ではなく2)-8),複雑なため臨床応用は困難である。そのため,他疾患を含め重症患者を見逃さない観点から,バイタルサインの異常・SpO2低下を参考に胸部X 線検査を行うことが望ましい9)10)。特に,文献9 では複数のバイタルサインの異常を認めた患者は肺炎の可能性が高いと報告されている。一方,身体所見・症状・既往歴を用いた臨床医の肺炎の診断能力を評価した研究11)では,臨床医の肺炎診断力(陽性的中率57%)は高くないが,除外する能力(陰性的中率は96%)はきわめて高い。上記より,胸部X 線検査の必要性は,バイタルサインとSpO2 を参考に臨床医が総合的に判断することが望ましい。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い1 編のRCT が存在するが,1983 年の報告であり,今日の肺炎診療にそのまま応用できないかもしれない。

2)‌益と害のバランスは確実か(コストは含まず):確実

ではない胸部X 線画像の読影が適正に行われるかが明確ではない。また,軽症例に胸部X 線を試行すると肺炎の診断に至る患者は存在するが,本来軽症であるため,肺炎治療を行っても有症状期間が短縮されることにはならない。

3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:不明保険点数は57 点であり,それに見合う有益性があるか不明である。委員会における討論内容と結果

推奨度決定に関し,学術的COI の存在する1 名を除く,ガイドライン委員15 名で投票を行った。初回投票で,1/15 名(6.7%)が「実施することを強く推奨する」, 2/15 名(13.3%)が「実施することを弱く推奨する」, 10/15 名(33.3%)が「実施しないことを弱く推奨する」,2/15 名「実施しないことを強く推奨する」を選択した。初回投票で70% を超える同意率を得られなかった。そのため本推奨について議論したところ,症状の持続期間や発熱の程度,呼吸数等で胸部X 線検査の必要性が異なることや,胸部X 線検査を施行しないで肺炎や結核を見逃すリスクも考慮すべきとの意見があった。再投票を行った結果,2/15 名(13.3%)が「実施することを弱く推奨する」,13/15 名(86.7%)が「実施しないことを弱く推奨する」としたため,70% を超えた「実施しないことを弱く推奨する」に決定した。

●文 献1)Bushyhead JB, Wood RW, Tompkins RK, et al. The effect of

chest radiographs on the management and clinical course of patients with acute cough. Med Care. 1983;21:661-73. 2)Diehr P, Wood RW, Bushyhead J, et al. Prediction of pneu-

monia in outpatients with acute cough--a statistical approach. J Chronic Dis. 1984;37:215-25. 3)Singal BM, Hedges JR, Radack KL. Decision rules and clini-

cal prediction of pneumonia: evaluation of low-yield criteria. Ann Emerg Med. 1989 ;18:13-20. 4)Heckerling PS, Tape TG, Wigton RS, et al. Clinical prediction

rule for pulmonary infiltrates. Ann Intern Med. 1990;113: 664-70. 5)Melbye H, Straume B, Aasebø U, et al. Diagnosis of pneumo-

nia in adults in general practice. Relative importance of typical symptoms and abnormal chest signs evaluated against a radiographic reference standard. Scand J Prim Health Care. 1992;10:226-33. 6)Hostaken RM, Muris JW, Knottnerus JA, et al. Contributions

of symptoms, signs, erythrocyte sedimentation rate, and Creactive protein to a diagnosis of pneumonia in acute lower respiratory tract infection. Br J Gen Pract. 2003;53:358-64. 7)Graffelman AW, le Cessie S, Knuistingh Neven A, et al. Can

history and exam alone reliably predict pneumonia? J Fam Pract. 2007;56:465-70. 8)van Vugt SF, Broekhuizen BD, Lammens C, et al. Use of se-

rum C reactive protein and procalcitonin concentrations in addition to symptoms and signs to predict pneumonia in pa-
p.95
tients presenting to primary care with acute cough: diagnostic study. BMJ. 2013;346:f2450. 9)Nolt BR, Gonzales R, Maselli J, et al. Vital-sign abnormalities

as predictors of pneumonia in adults with acute cough illness. Am J Emerg Med. 2007 ;25:631-6. 10)Metlay JP, Kapoor WN, Fine MJ. Does this patient have community-acquired pneumonia? Diagnosing pneumonia by

history and physical examination. JAMA. 1997;278:1440-5. 11)van Vugt SF, Verheij TJ, de Jong PA, et al. Diagnosing pneu-

monia in patients with acute cough:clinical judgment compared to chest radiography. Eur Respir J. 2013;42:1076-82.

C A Pの診断

C Q
p.96
CQ

06 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)で入院した患者を対象に,「尿中抗原検査に基づく治療を行う群」を介入群,「尿中抗原を実施せずにエンピリック治療を行う群」をコントロール群として,「予後改善」「費用対効果」をアウトカムとして評価した。なお,「予後改善」は「死亡」「臨床的再燃」「再入院」を評価した。

採用論文

「予後」を検討した論文はランダム化比較試験(RCT) 1 編1),観察研究3 編2)-4)であった。文献2と文献3は全例に尿中抗原検査を実施し,尿中抗原陽性例と尿中抗原陰性例を比較した観察研究であり,文献4は比較群がないため,採用論文から除外し,RCT1 編1)を採用した。「コスト」を検討した論文はRCT1 編1),観察研究1 編5)であり,RCT1 編1)を採用した。なお,採用論文の文献1は,エンピリック治療を数日(2 ~6 日間)実施後,尿中抗原結果に基づく標的治療を行う群と尿中抗原検査を実施せずにエンピリック治療を行う群を比較しており,両群で最初にエンピリック治療を数日実施している

点で本CQ と完全には一致していない。

結 果

1.予後(重要度9 点)

1 編のRCT 1)を選択した。「尿中抗原検査結果に基づく治療を行う群」と「尿中抗原検査未実施でエンピリック治療を行う群」を比較した場合,死亡に対するリスク比(RR)3.0(95%CI 0.13-73.5),臨床的再燃に対するRR 2.0(95%CI 0.38-10.8),再入院に対するRR 2.0(95%CI 0.38-10.7)でいずれも両群に差を認めなかった。しかし,「尿中抗原陽性で標的治療を行う群」と,「尿中抗原陰性もしくは尿中抗原未実施でエンピリック治療を行う群」を比較した場合には,死亡に対するRR 1.96(95%CI 0.08-46.8),臨床的再燃に対するRR 6.08(95%CI 1.30- 28.5),再入院に対するRR 4.56(95%CI 1.08-19.2)となり,「尿中抗原陽性例で標的治療を行う群」で臨床的再燃と再入院が増加した。非日本人を対象とした1 編のRCT のみであり,  エビデンスの確実性はC  とする。

CAP 患者の診療において尿中抗原検査を全例に施行することを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

CAP 診断において,尿中抗原検査を全例に施行することは推奨されるか。

CQ6 推奨

推奨の強さ
p.97
2.コスト(重要度6 点)

1 編のRCT 1)を選択した。「尿中抗原検査結果に基づく治療を行う群」は,「尿中抗原検査未実施でエンピリック治療を行う群」と比較して,わずかにコスト(=入院費用+抗菌薬費用+検査費用)が増加したが有意差はなかった(1,657.00 ユーロvs. 1,617.20 ユーロ,p=0.28)。本研究は日本の医療保険制度や標準的な医療設備と異なり,わが国でも同等の結果であるかの判断はできないため,  エビデンスの確実性はD  とする。

システマティックレビューのまとめ

CAP の診療において尿中抗原検査を全例に実施することの有用性は認められなかった(  エビデンスの確実性はC  )。しかし,血液培養が陽性となる重症例に対しては尿中抗原検査により,重症例やICU 入室例を判断できる可能性が指摘されており3),重症度に応じた適応についての検討が必要であり,気道検体の採取が難しい症例や抗菌薬投与後の症例に対する尿中抗原検査は有用な可能性がある4)。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い非日本人を対象とした1 編のRCT のみであり,両群で最初にエンピリック治療を数日実施している点で本CQ とは完全には一致しておらず,  エビデンスの確実性はC  と判断した。

2)‌益と害のバランスは確実か(コストは含まず):確実

ではない尿検査は侵襲度の低い検査であるが,「尿中抗原検査結果に基づく治療を行う群」と「尿中抗原未実施でエンピリック治療を行う群」の比較では予後(死亡,臨床的再燃,再入院)に差を認めなかった。しかし,「尿中抗原陽性で標的治療を行う群」では再発率と再入院が増加する可能性がある。3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

予後改善をアウトカムとしており,検査に基づく治療により予後が改善することを患者は望む。検査に伴う患者苦痛はない。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っていない日本での医療経済評価がないため判断できないが,保険点数は肺炎球菌尿中抗原146 点,レジオネラ尿中抗原229 点であり,保険診療で認められている。「尿中抗原検査結果に基づく治療を行う群」と「尿中抗原未実施でエンピリック治療を行う群」の比較では,予後に差を認めないが,わずかにコストが増加する傾向があり,全例に実施することはそれに見合う有益性が確実ではない。

委員会における討論内容と結果

推奨度決定に関し,学術的COI の存在する4 名を除く,ガイドライン委員12 名で投票を行った。初回投票で,1/12 名(8.3%)が「実施することを強く推奨する」, 9/12 名(75%)が「実施することを弱く推奨する」,2/12名(16.7%)が「実施しないことを弱く推奨する」,1/12名(8.3%)が「実施しないことを強く推奨する」を選択した。70% を超えた「実施することを弱く推奨する」に決定した。

補 足

このCQ に関してはSR によって「CAP の診療において尿中抗原検査を全例に実施することの有用性は認められなかった」という結果が出たにもかかわらず,委員会において尿中抗原検査の実施を弱く推奨する結果となった。その理由としては,SR による評価は明確に全例への実施を推奨すべきエビデンスが得られなかったことから,コスト等に関する点も踏まえて有用性が認められないという結果であったが,委員会においては,尿中抗原検査そのものの診断的価値を高く評価し,簡便な方法で早期に肺炎球菌やレジオネラ・ニューモフィラの鑑別ができることの有用性を考慮して推奨する意見が多かったためと考えられる。ただし「実施することを弱く推奨する」という結論は,「全例に施行」という部分に対して,そこまで強く推奨するだけのエビデンスはないという考C A Pの診断

C Q
p.98
えが反映されたものと考えられる。

●文 献1)Falguera M, Ruiz-González A, Schoenenberger JA, et al.

Prospective, randomised study to compare empirical treatment versus targeted treatment on the basis of the urine antigen results in hospitalised patients with community-acquired pneumonia. Thorax. 2010;65:101-6. 2)Guchev IA, Yu VL, Sinopalnikov A, et al. Management of

nonsevere pneumonia in military trainees with the urinary antigen test for Streptococcus pneumoniae: an innovative approach to targeted therapy. Clin Infect Dis. 2005;40: 1608-16. 3)Zalacain R, Capelastegui A, Ruiz LA, et al. Streptococcus pneumoniae antigen in urine: diagnostic usefulness and im-

pact on outcome of bacteraemic pneumococcal pneumonia in a large series of adult patients. Respirology. 2014;19:936-

43 4)Kobashi Y, Yoshida K, Miyashita N, et al. Evaluating the use

of a Streptococcus pneumoniae urinary antigen detection kit for the management of community-acquired pneumonia in Japan. Respiration. 2007;74:387-93. 5)Piso RJ, Iven-Koller D, Koller MT, et al. The routine use of

urinary pneumococcal antigen test in hospitalised patients with community acquired pneumonia has limited impact for adjustment of antibiotic treatment. Swiss Med Wkly. 2012; 142:w13679.
p.99
CQ

07 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

非定型病原体をカバーした抗菌薬を使用した群と細菌だけをカバーした抗菌薬を使用した群の2 群間比較で,アウトカムとして,「生命予後(死亡率)」「有効率」「早期治療効果」「副作用」「入院期間」「医療費」を評価した。

採用論文

ランダム化比較試験(RCT)24 編を選択した1)-24)。本CQ は同様のメタアナリシスが先行して複数報告されており,2012 年の『The Cochrane Database of Systematic Reviews』のシステマティックレビュー(SR)

25)の採用論

文およびその後に報告されたRCT を採用した。十分な数のRCT を採用していると考えられるので,観察研究は採用していない。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるinverse-variance method (RevMan 5.3)を用い,効果指標はオッズ比(OR)とした。結 果

1.生命予後(死亡率)(重要度9 点)

20 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)-19)23)24)。死亡率に対するOR 1.08(95%CI 0.86- 1.35)で両群に差を認めなかった。非日本人の報告が多いものの十分な症例数であり(4,503 例vs. 3,151例),  エビデンスの確実性はA  とする。

以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図1)。

2.有効率(重要度9 点)

23 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)-23)。OR 1.15(95%CI 0.95-1.38)で両群に差を認めなかった(図2)。症例数は十分(2,884 例vs. 2,561 例)であるが,報告により「有効」とする診断基準や診断時期にばらつきがみられるため,  エビデンスの確実性はB  とする。

3.早期治療効果(重要度8 点)

早期治療効果は『呼吸器感染症における新規抗菌薬の臨床評価法 第2 版』(日本化学療法学会)に基づき,投与3 日後の臨床効果と定義する。2 編のRCT によるメタ

CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を弱く推奨する。ただし,細菌性肺炎が疑われる場合にはβ- ラクタム系薬単独投与を考慮する。

実施することを弱く推奨する

CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか。

CQ7 推奨

推奨の強さ

C A Pの治療

C Q
p.100
0.1 0.01 10 100 1

Miki 1984 Zeliff 1988 Vanderdonckt 1990 Vogel 1991 Carbon 1992 Lode 1995 Bohte 1995 Rizzato 1997 Genne 1997 Tremolieres 1998 Aubier 1998 Norrby 1998 Karbermatter 2000 Petitpretz 2001 Feldman 2001 Romanelli 2002 Lephonte 2004 Tremolieres 2005 Garin 2014 Postma 2015合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=8.45, df=15 (p=0.90); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.66 (p=0.51)

0 1 0 0 0 28 0 7 2 4 1 21 0 3 1 7 4 4 20 160

263 73 80 82 49 123 609 35 110 56 166 159 314 28 200 35 101 167 200 289 1,627

4,503 IV,Random,95%Cl 0 0 0 3 1 4 0 5 1 3 3 22 0 4 0 7 3 2 24 59

141 72 78 88 51 120 199 29 115 56 169 170 305 56 208 34 103 153 198 291 656

3,151 1984 1988 1990 1991 1992 1995 1995 1997 1997 1998 1998 1998 2000 2001 2001 2002 2004 2005 2014 2015 IV, Random, 95%Cl

0.5% 0.6% 0.5% 4.4% 3.5% 0.8% 2.2% 1.0% 12.8% 2.2% 0.5% 4.2% 2.2% 1.7% 12.9% 50.2% 100.0%推定不可2.96[0.12‒73.83]推定不可0.14[0.01‒2.78] 0.32[0.01‒8.00] 2.35[0.81‒6.78]推定不可1.50[0.46‒4.86] 2.04[0.18‒23.13] 1.37[0.30‒6.20] 0.35[0.04‒3.42] 0.92[0.50‒1.71]推定不可0.78[0.17‒3.51] 3.00[0.12‒76.24] 1.02[0.34‒3.02] 1.23[0.27‒5.57] 2.00[0.36‒11.05] 0.83[0.45‒1.53] 1.10[0.81‒1.51]

1.08[0.86‒1.35]

イベント数症例数

細菌性肺炎非定型肺炎イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

細菌性肺炎優位非定型肺炎優位

OR OR

図1  生命予後(死亡率)に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Miki 1984 Kobayashi 1984 Zeliff 1988 Vanderdonckt 1990 Vogel 1991 Carbon 1992 Bohte 1995 Lode 1995 Genne 1997 Rizzato 1997 Aubier 1998 Tremolieres 1998 Norrby 1998 Karbermatter 2000 Feldman 2001 Petitpretz 2001 Romanelli 2002 Lephonte 2004 Tremolieres 2005 Hong-yun 2007 Hatipoglu 2010 Kohno 2011 Garin 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.06; Chi2=31.94, df=22 (p=0.08); l2=31%全体的な影響の検定: Z=1.42 (p=0.16)

60 37 43 51 36 104 24 404 48 103 133 141 239 27 32 173 78 129 151 31 28 92 192

2,356 71 42 46 69 38 123 35 468 56 110 159 152 314 28 35 200 101 167 189 54 34 104 289

2,884 IV,Random,95%Cl 61 33 44 57 34 96 14 121 47 87 144 142 229 52 31 171 89 121 151 29 25 79 171

2,028 68 34 44 70 37 120 29 152 56 115 170 160 305 56 34 208 103 153 182 53 32 89 291

2,561 1984 1984 1988 1990 1991 1992 1995 1995 1997 1997 1998 1998 1998 2000 2001 2001 2002 2004 2005 2007 2010 2011 2014

IV, Random, 95%Cl 2.8% 0.7% 0.4% 4.0% 1.0% 5.4% 2.8% 8.0% 2.7% 3.6% 6.2% 4.2% 10.0% 0.7% 1.2% 6.9% 4.7% 7.0% 7.1% 4.4% 2.1% 3.5% 10.6% 100.0% 0.63[0.23‒1.72] 0.22[0.02‒2.02] 0.14[0.01‒2.78] 0.65[0.29‒1.45] 1.59[0.25‒10.10] 1.37[0.71‒2.65] 2.34[0.84‒6.48] 1.62[1.01‒2.60] 1.15[0.41‒3.23] 4.74[1.97‒11.37] 0.92[0.51‒1.67] 1.62[0.74‒3.56] 1.06[0.73‒1.53] 2.08[0.22‒19.51] 1.03[0.19‒5.51] 1.39[0.81‒2.38] 0.56[0.26‒1.11] 0.90[0.53‒1.53] 0.82[0.48‒1.38] 1.12[0.52‒2.39] 1.31[0.39‒4.41] 0.97[0.40‒2.37] 1.39[0.99‒1.95]

1.15[0.95‒1.38]

イベント数症例数

細菌性肺炎非定型肺炎イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

細菌性肺炎優位非定型肺炎優位

OR OR

図2  有効率に対するメタアナリシス
p.101
アナリシスを行った4)22)。OR 1.11(95%CI 0.48-2.57)で両群に差を認めなかった(図3)。症例数がやや少ない(173 例 vs. 159 例)ため  エビデンスの確実性はC  とする。

4.副作用(重要度7 点)

17 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)-7)9)12)13)15)-19)22)-24)。OR 1.12(95%CI 0.93-1.34)で両群に差を認めなかった(図4)。症例数は十分(3,740例 vs. 2,734 例)であるが,一部の報告において副作用が全例報告でない可能性があり  エビデンスの確実性はB  とする。5.入院期間(重要度5 点)

3 編のRCT 10)23)24)で評価されているが,アウトカムの指標が平均値・中央値など異なるためメタアナリシスは行っていない。3 つのRCT ではすべて入院期間に差はないとしており,症例数は多い(2,026 例 vs. 1,062 例) (表1)。定性的なSR となるため  エビデンスの確実性はB  とする。

6.医療費(重要度5 点)

2 編のRCT 17)21)で評価されているが,アウトカムが両群間の平均値のみの記載でありメタアナリシスは行っていない。2 つのRCT では統計学的有意差は評価されていないが,いずれも介入群のほうが医療費の平均値は高い(表2)。したがって,介入群にコスト面での優位性はな

0.1 0.01 1 10 100

Vanderdonckt 1990 Kohno 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.24; Chi2=2.74, df=1 (p=0.10); l2=63%全体的な影響の検定: Z=0.25 (p=0.80)

53 47

100 69 104

173 IV,Random,95%Cl 58 30

88 70 89

159 1990 2011

IV, Random, 95%Cl 43.7% 56.3% 100.0% 0.69[0.30‒1.58] 1.62[0.90‒2.91]

1.11[0.48‒2.57]

イベント数症例数

細菌性肺炎非定型肺炎イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

細菌性肺炎優位非定型肺炎優位

OR OR

図3  早期治療効果に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Miki 1984 Zeliff 1988 Vanderdonckt 1990 Vogel 1991 Carbon 1992 Bohte 1995 Genne 1997 Norrby 1998 Tremolieres 1998 Feldman 2001 Petitpretz 2001 Romanelli 2002 Lephonte 2004 Tremolieres 2005 Kohno 2011 Garin 2014 Postma 2015合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.04; Chi2=23.55, df=16 (p=0.10); l2=32%全体的な影響の検定: Z=1.17 (p=0.24)

4 9 13 9 30 7 19 169 29 15 56 7 31 41 73 6 295

813 73 80 82 49 123 35 56 314 173 35 200 101 167 200 136 289 1,627

3,740 IV,Random,95%Cl 3 20 18 14 19 0 12 165 18 14 42 6 35 31 70 4 104

575 72 78 88 51 120 29 56 305 169 34 208 103 153 198 123 291 656

2,734 1984 1988 1990 1991 1992 1995 1997 1998 1998 2001 2001 2002 2004 2005 2011 2014 2015

IV, Random, 95%Cl 1.4% 3.8% 4.4% 3.2% 6.1% 0.4% 3.9% 13.4% 6.2% 3.2% 9.4% 2.4% 7.6% 8.1% 8.6% 1.9% 15.8% 100.0% 1.33[0.29‒6.18] 0.37[0.16‒0.87] 0.73[0.33‒1.61] 0.59[0.23‒1.54] 1.71[0.90‒3.25] 15.53[0.85‒284.62] 1.88[0.81‒4.38] 0.99[0.72‒1.36] 1.69[0.90‒3.17] 1.07[0.41‒2.79] 1.54[0.97‒2.43] 1.20[0.39‒3.71] 0.77[0.45‒1.32] 1.39[0.83‒2.32] 0.88[0.54‒1.43] 1.52[0.42‒5.45] 1.18[0.92‒1.50]

1.12[0.93‒1.34]

イベント数症例数

細菌性肺炎非定型肺炎イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

細菌性肺炎優位非定型肺炎優位

OR OR

図4  副作用に対するメタアナリシスC A Pの治療

C Q
p.102
い。  エビデンスの確実性はD  とする。

システマティックレビューのまとめ

CAP のエンピリック治療において非定型病原体をカバーした抗菌薬治療の明らかな有益性は認められなかった(  エビデンスの確実性はA  )。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いエビデンスは2012 年の『The Cochrane Database of Systematic Reviews』のメタアナリシスで採用された論文をもとに24 編のRCT に基づいており,比較的強いものであると判断される。

2)益と害のバランスは確実か:確実

24 編のRCT で死亡率,有効率,早期治療効果,副作用,入院期間,医療費に差がないことが示されている。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

るこの治療に対する患者(家族)の意向は,非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を望む。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違) 正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っている非定型肺炎に対するβ- ラクタム系薬単剤の臨床効果は有意に劣るため,患者(家族)の負担は増す。

委員会における討論内容と結果

2 つの推奨草案が提出され,SR の結果通りに推奨草案を作成すると以下の推奨草案A となるが,ガイドラインとして記載すると読者に誤解を招くのではないか,という危惧がある。このため,文体を「~することを弱く推奨する」に変更した推奨草案B も作成し,以下の2 案で投票を行なった。推奨草案A:‌成人CAP のエンピリック治療において,

非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を行わないことを弱く推奨する。ただし,非定型肺炎が疑われる場合は非定型病原体をカバーする抗菌薬の使用を考慮する。

推奨草案B:‌成人CAP のエンピリック治療において,

非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を弱く推奨する。ただし,細菌性肺炎が疑われる場合にはβ- ラクタム系薬単独投与を考慮する。

表1  入院期間に関する検討

研究介入群母数対照群母数効果指標介入群の値対照群の値Rizzato ら

1997 年110 115平均値(日)

±標準偏差17.0 ± 8.6 18.6 ± 8.1

Garin ら2014 年289 291中央値(日) (四分位範囲) 8(6 ― 12) 8(6 ― 13) Postma ら

2015 年739 *

888 * 656 中央値(日) (四分位範囲) 6(4 ― 10) 6(4 ― 8) 6(4 ― 8)

*:β- ラクタム系薬+マクロライド系薬併用群が739 例,ニューキノロン系薬群が888 例

表2  医療費に関する検討

研究介入群母数対照群母数効果指標介入群の値対照群の値Romanelli ら

2002 年101 103平均値(ドル) 1,776 1,590 Hatipoglu ら

2010 年34 32平均値(ドル) 1,840 1,480
p.103
ガイドライン委員15/16 名(94%)が推奨草案B を支持し,採用が決定した。推奨草案に関しては,学術的COI のある委員1 名除く15 名で投票を行い,14 名(93%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

なお,肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラは微生物学の定義上「細菌」に分類されるが,臨床上β- ラクタム系薬が無効な一群として,便宜上「非定型病原体」と呼称する。

●文 献1)三木文雄,斎藤 玲,富沢磨須美,他.細菌性肺炎を対象とし

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ty of temefloxacin versus those of amoxicillin in hospitalized adults with community-acquired pneumonia. Antimicrob Agents Chemother. 1992;36:833-9. 7)Bohte R, van’t Wout JW, Lobatto S. Efficacy and safety of

azithromycin versus benzylpenicillin or erythromycin in community-acquired pneumonia. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 1995;14:182-7. 8)Lode H, Garau J, Grassi C, et al. Treatment of community-

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C Q
p.104
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otic coverage of atypical pathogens for community-acquired pneumonia in hospitalized adults. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(9):CD004418.
p.105
CQ

08 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

β- ラクタム系薬とマクロライド系薬の併用群とβ-ラクタム系薬単剤の2 群間比較で,アウトカムとして,「生命予後(生存率)」「肺炎治癒率」「薬剤による副作用」「入院期間」「医療費」「耐性菌発生率」を評価した。

採用論文

ランダム化比較試験(RCT)2 編1)2),観察研究12 編の論文を選択した3)-22)。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるinverse-variance method (RevMan 5.3)を用い,効果指標はオッズ比(OR)とした。

結果ーRCT 論文について(2 編1)2))

1.生命予後(死亡率)(重要度9 点)

2 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)2)。死亡率に対するOR 1.08(95%CI 0.86-1.35)で両群に差を認めなかった。研究間の異質性,研究数が2 と少ないこと,軽症者中心の研究があることより  エビデンスの確

実性はB  とする。

2.肺炎治癒率(重要度8 点)

評価したRCT を検出できなかった。

3.薬剤による副作用(重要度7 点)

2 つの論文で評価法が大きく異なり,発生率が研究間で10 倍異なったため,メタアナリシスを行わなかった1)2)。異質性が大きいため,  エビデンスの確実性はC  とする。

4.入院期間(重要度5 点)

2 つのRCT で評価されていたがmedian による評価であり,メタアナリシスを行うことができなかった1)2)。いずれの論文でも目立った差異を認めなかった。メタアナリシスを行っていないため,  エビデンスの確実性はB  とする。

5.医療費(重要度5 点)

評価したRCT を検出できなかった。

CAP に対するエンピリック治療として,β- ラクタム系薬にマクロライド系薬を併

用しないことを弱く推奨する。ただし,重症例においてはβ- ラクタム系薬単剤治

療よりもβ- ラクタム系薬+マクロライド系薬併用療法を行うことを弱く推奨する。

実施しないことを弱く推奨する。ただし,重症例においては実施することを弱く推奨する

CAP のエンピリック治療において, β- ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか。

CQ8 推奨

推奨の強さ

C A Pの治療

C Q
p.106
6.耐性菌発生率(重要度7 点)

評価したRCT を検出できなかった。

結果ー観察研究について(12 編3)-22))

1.生命予後(死亡率)(重要度9 点)

18 編の観察研究によるメタアナリシスを行った3)-9)11)13-22)。死亡に対する調整後OR 0.69(95%CI 0.67- 0.70)と死亡を中等度減少させることが示された。バイアスリスク,非直接性があるが,効果が中等度に強いため  エビデンスの確実性はC  のままとする。

2.肺炎治癒率(重要度8 点)

評価したRCT を検出できなかった。

3.薬剤による副作用(重要度7 点)

評価したRCT を検出できなかった。4.入院期間(重要度5 点)

1 編の観察研究から入院期間のマクロライド系薬併用での入院期間短縮が示唆された7)。1 本の観察研究のみの評価であり,バイアスリスクも強いため,  エビデンスの確実性はD  とする。

5.医療費(重要度5 点)

評価したRCT を検出できなかった。

6.耐性菌発生率(重要度7 点)

1 編の観察研究で耐性菌発生率は変わらないことが示唆された16)。中規模の観察研究1 つで非調整後OR のみのため,  エビデンスの確実性はD  とする。

システマティックレビューのまとめ

2 つのRCT によると,β- ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは生命予後に大きな影響を与えない(  エビデンスの確実性はB  )。一方,過去15 年間に

0.7 0.5 1.5 2 1

1. 観察研究Aspa 2006 Blasi 2008 Bratzler 2008 Dwyer 2006 Garcia 2005 Gleason 1999 Houck 2001 Marras 2004 Martinez 2002 Paul 2007 Rodrigo 2013 Tessmer 2009小計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=22.72, df=11 (p=0.02); l2=52%全体的な影響の検定: Z=3.89 (p=0.0001) 2. RCTs Garin 2014 Postma 2015小計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=1.36, df=1 (p=0.24); l2=26%全体的な影響の検定: Z=0.51 (p=0.61)合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.03; Chi2=30.72, df=13 (p=0.004); l2=58%全体的な影響の検定: Z=3.11 (p=0.002)サブグループ間の差に対する検定: Chi2=3.27, df=1 (p=0.07), l2=69.4%

-0.022 -0.632 -0.326 0.086 -0.693 -0.187 -0.218 0.993 -0.916 -0.371 -0.329 0.039 -0.19 0.233 SE IV,Random,95%Cl

0.327 0.186 0.068 0.481 0.245 0.092 0.11 0.427 0.431 0.391 0.089 0.231

0.315 0.18 IV, Random, 95%Cl

3.9% 8.1% 14.7% 2.0% 5.8% 13.3% 12.2% 2.5% 2.5% 2.9% 13.5% 6.3% 87.6%

4.1% 8.3% 12.4%

100.0% 0.98[0.52‒1.86] 0.53[0.37‒0.77] 0.72[0.63‒0.82] 1.09[0.42‒2.80] 0.50[0.31‒0.81] 0.83[0.69‒0.99] 0.80[0.65‒1.00] 2.70[1.17‒6.23] 0.40[0.17‒0.93] 0.69[0.32‒1.48] 0.72[0.60‒0.86] 1.04[0.66‒1.64] 0.76[0.66‒0.87]

0.83[0.45‒1.53] 1.26[0.89‒1.80] 1.11[0.75‒1.62]

0.80[0.69‒0.92]

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

β-ラクタム系薬+マクロライド系薬併用優位β-ラクタム系薬単剤優位

図1  β- ラクタム系薬とマクロライド系薬併用に対するメタアナリシス
p.107
合計4 万人強を対象とした12 の観察研究の集積がある。観察研究ではエビデンスレベルに制限があり(  エビデンスの確実性はC  ),ガイドラインの手順としては,エビデンスの高いRCT の結果を尊重すべきではある。しかし,観察研究の,研究数・観察患者総数・中等度の効果量を考慮すると,2 編のRCT の結果をもって観察研究の結果を不問とするのは問題がある。合計14 編のRCTと観察研究(観察研究は共変量調整したもののみを採用)の定量的メタアナリシスではOR 0.8 と生命予後の改善が示唆される(図1)。RCT によるOR と観察研究によるOR で乖離がみられるが,両者では患者の重症度など患者の背景が異なり,また研究数,総患者数もRCT では限られていることに留意すべきである。

多くの研究のサブ解析で,重症例に限局したマクロライド系薬の有用性が指摘されていた。上記メタアナリシスの重症度層別化とメタ回帰分析からも,重症度の高い症例でOR が低い(マクロライド系薬併用の有用度が高い)ことが示されている。今回,重症例でのサブ解析を行ったところ,死亡率に対するOR 0.75(95%CI 0.65- 0.86)であり,同様の傾向を認めた(図2)。

上記を考慮すると,マクロライド系薬併用にて生命予後の改善するエビデンスは現時点で十分に示せないが,

重症例での生命予後改善の可能性は完全には否定できないと思われる。

マクロライド併用で肺炎治癒率(未評価),副作用(  エビデンスの確実性はC  ),入院期間(  エビデンスの確実性はB  ),耐性菌発生率(  エビデンスの確実性はD  )に変化があると判断する根拠はない。

なお,今解析結果を『Respirology』誌に報告したのであわせて参考にされたい23)。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い2 つのRCT ともβ- ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用しても生命予後に大きな影響を与えないことを示しているが,18 の観察研究では相反する結果を示しているため,アウトカム全般に関する全体的なエビデンスは弱い。0.7 0.5 1.5 2 1

1. 重症例中心の試験Aspa 2006 Blasi 2008 Bratzler 2008 Garcia 2005 Gleason 1999 Houck 2001 Marras 2004 Paul 2007 Rodrigo 2013小計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=17.98, df=8 (p=0.02); l2=55%全体的な影響の検定: Z=3.97 (p<0.0001) 2. 軽症/ 中等症例中心の試験Garin 2014 Postma 2015 Tessmer 2009小計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=1.46, df=2 (p=0.48); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.78 (p=0.44)合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.03; Chi2=27.89, df=11 (p=0.003); l2=61%全体的な影響の検定: Z=2.93 (p=0.003)サブグループ間の差に対する検定: Chi2=6.94, df=1 (p=0.008), l2=85.6%

-0.022 -0.632 -0.326 -0.693 -0.187 -0.218 0.993 -0.371 -0.329

-0.19 0.233 0.039 SE IV,Random,95%Cl

0.327 0.186 0.068 0.245 0.092 0.11 0.427 0.391 0.089

0.315 0.18 0.231 IV, Random, 95%Cl

4.0% 8.4% 15.5% 6.1% 14.0% 12.8% 2.6% 3.0% 14.2% 80.5%

4.2% 8.7% 6.6% 19.5%

100.0% 0.98[0.52‒1.86] 0.53[0.37‒0.77] 0.72[0.63‒0.82] 0.50[0.31‒0.81] 0.83[0.69‒0.99] 0.80[0.65‒1.00] 2.70[1.17‒6.23] 0.69[0.32‒1.48] 0.72[0.60‒0.86] 0.75[0.65‒0.86]

0.83[0.45‒1.53] 1.26[0.89‒1.80] 1.04[0.66‒1.64] 1.11[0.86‒1.43]

0.80[0.70‒0.93]

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

β-ラクタム系薬+マクロライド系薬併用優位β-ラクタム系薬単剤優位

図2  β- ラクタム系薬とマクロライド系薬併用に対するメタアナリシスーサブ解析

C A Pの治療

C Q
p.108
2)益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

2 つのRCT ともマクロライド系薬併用で副作用,入院期間,耐性菌発生率に変化があると判断する根拠はない。しかし,18 の観察研究では入院期間を短縮することが示されている。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

るこの治療に対する患者(家族)の意向は,重症例では併用療法を望むことが予測される。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違) 正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っているかどうか不明確正味の利益がコストや資源に十分に見合うものかどうかは不明確である。

委員会における討論内容と結果

討論では,原因菌がレジオネラ・ニューモフィラである場合を考慮すべきとの意見が出たが,レジオネラ肺炎は全体の市中肺炎(community-acquired pneumonia: CAP)の中で少数であり,重症化しやすいが,RCT やメタアナリシスのなかでレジオネラ肺炎が取り上げられていないか,もしくはレジオネラ肺炎に対する効果が消えてしまっている可能性があると判断した。推奨草案に「エンピリック治療」であることを明記し,レジオネラ肺炎等の特定の菌が検出された場合のCAP の治療に関する取扱いに関しては,疾患の基本的特徴のなかで取り上げる方針とした。

推奨草案:‌成人CAP に対するエンピリック治療とし

て,β- ラクタム系薬+ マクロライド系薬併用療法を行わないことを弱く推奨する。ただし,重症例においてはβ- ラクタム系薬単剤治療よりもβ- ラクタム系薬+ マクロライド系薬併用療法を行うことを弱く推奨する。

推奨草案に関しては,学術的COI のあるガイドライン委員3 名を除く13 名で投票を行った。11/13 名(84.6%)が推奨草案を支持し,採用が決定した。なお,投票では,「β- ラクタム系薬+マクロライド系薬併用療

法を行うことを提案する」と「β- ラクタム系薬+マクロライド系薬併用療法を行わないことを強く推奨する」を1 名ずつの委員が支持した。

●文 献1)Postma DF. Antibiotic treatment strategies for community-

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p.109
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C A Pの治療

C Q
p.110
CQ

09 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

ステロイド薬+抗菌薬併用群と抗菌薬単独群の2 群間比較で,アウトカムとして,「生命予後(生存率)」「肺炎治癒率」「薬剤による副作用」「入院期間」「医療費」「耐性菌発生率」を評価した。

採用論文

ランダム化比較試験(RCT)10 編1)-10)と観察研究1編11),計11 編を選択した。しかし,十分数のRCT があり,RCT による評価を優先するべきと判断した。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるinverse-variance method (RevMan 5.3)を用い,効果指標はオッズ比(OR)とした。

結 果

1.生命予後(生存率)(重要度9 点)

10 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)-10)。死亡率に対するOR 0.8 (95%CI 0.53-1.21)であり,ステ

ロイド薬併用による生命予後の改善は示されなかった。ただし,サブ解析では重症例に限るとOR 0.41(95%CI 0.19-0.90)とステロイド薬の併用による生命予後改善の可能性が示唆された。全体の解析結果とサブ解析の結果が異なり,異質性が疑われるため  エビデンスの確実性はB  とする。

以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図1,2)。

2.肺炎治癒率(重要度8 点)

1 編のRCT 5)のみで評価した。OR 0.72 (95%CI 0.35- 1.49)とで両群に差を認めず,肺炎治癒率を変えない。1 本のRCT のみの評価であり,  エビデンスの確実性はC  とする。

3.薬剤による副作用(重要度7 点)

6 編のRCT を選択した。しかし,副作用の記載方法が研究によりまちまちで,メタアナリシスが不可能であった。定性的でないレビューにより,重篤な副作用は増加しないと判断した。メタアナリシスを行わず,定性的でないレビューのため  エビデンスの確実性はC  とする。

CAP に対して,抗菌薬治療に全身投与ステロイド薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症CAP に対しては全身投与ステロイド薬を併用することを弱く推奨する。

実施しないことを弱く推奨する。ただし,重症に対しては実施することを弱く推奨する

CAP 治療において,抗菌薬投与に全身投与ステロイド薬を補助療法として併用することは,抗菌薬のみでの治療よりも推奨されるか。

CQ9 推奨

推奨の強さ
p.111
4.入院期間(重要度5 点)

7 編のRCT 3)-7)9)10)によるメタアナリシスを行った。入院期間に対するOR -0.98 (95%CI -1.26-0.71)と約1日入院期間の短縮が認められた(図3)。非日本人の報告が多いものの7 編のRCT の解析であり,  エビデンスの確実性はA  とする。5.医療費(重要度5 点)

直接評価した論文が存在しなかったが,入院期間が1日短縮すること,ステロイド薬が比較的安価な薬剤であることを考慮すると,医療費を軽度減じる可能性が間接的に示唆される。直接的・客観的でないことから  エビデンスの確実性はD  とする。

0.1 0.01 10 100 1

McHardy 1972 Marik 1993 Confalonieri 2005 Mikami 2007 Snijders 2010 Fernández-Serrano 2011 Sabry 2011 Meijvis 2011 Torres 2015 Blum 2015合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=8.79, df=9 (p=0.46); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.06 (p=0.29)

3 1 0 1 6 1 2 9 6 16

45 40 14 23 15 104 23 40 151 61 392

863 M-H,Random,95%Cl 9 3 8 0 6 1 6 11 9 13

66 86 16 23 16 109 22 40 153 59 393

917 1972 1993 2005 2007 2010 2011 2011 2011 2015 2015

M-H, Random, 95%Cl 9.0% 2.9% 2.0% 1.6% 12.3% 2.1% 6.0% 20.2% 13.8% 30.1% 100.0% 0.69[0.18‒2.71] 0.33[0.03‒3.64] 0.04[0.00‒0.72] 3.41[0.13‒90.49] 1.05[0.33‒3.37] 0.95[0.06‒16.27] 0.30[0.06‒1.58] 0.82[0.33‒2.03] 0.61[0.20‒1.82] 1.24[0.59‒2.62]

0.80[0.53‒1.21]

イベント数症例数

ステロイド薬+抗菌薬併用抗菌薬単独

イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

ステロイド薬+抗菌薬併用優位抗菌薬単独優位

OR OR

図1  生存率に対するメタアナリシス ― 全体の解析

0.1 0.01 10 100 1

1.1.1 重症例に限定していない試験Blum 2015 McHardy 1972 Meijvis 2011 Mikami 2007 Snijders 2010小計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=1.33, df=4 (p=0.86); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.10 (p=0.92) 1.1.2 重症例に限定した試験Confalonieri 2005 Fernández-Serrano 2011 Marik 1993 Sabry 2011 Torres 2015小計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=3.70, df=4 (p=0.45); l2=0%全体的な影響の検定: Z=2.21 (p=0.03)合計(95%Cl)全体のイベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=8.79, df=9 (p=0.46); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.06 (p=0.29)サブグループ間の差に対する検定: Chi2=3.77, df=1 (p=0.05); l2=73.5%

16 3 9 1 6 35 0 1 1 2 6 10 45 392 40 151 15 104 702

23 23 14 40 61 161

863 M-H,Random,95%Cl

13 9 11 0 6 39 8 1 3 6 9 27 66 393 86 153 16 109 757

23 22 16 40 59 160

917 M-H, Random, 95%Cl

30.1% 9.0% 20.2% 1.6% 12.3% 73.2%

2.0% 2.1% 2.9% 6.0% 13.8% 26.8%

100.0% 1.24[0.59‒2.62] 0.69[0.18‒2.71] 0.82[0.33‒2.03] 3.41[0.13‒90.49] 1.05[0.33‒3.37] 1.02[0.63‒1.65]

0.04[0.00‒0.72] 0.95[0.06‒16.27] 0.33[0.03‒3.64] 0.30[0.06‒1.58] 0.61[0.20‒1.82] 0.41[0.19‒0.90]

0.80[0.53‒1.21]

イベント数症例数

ステロイド薬+抗菌薬併用抗菌薬単独

イベント数症例数比重研究またはサブグループOR OR

ステロイド薬+抗菌薬併用優位抗菌薬単独優位

図2  生存率に対するメタアナリシス ― サブ解析C A Pの治療

C Q
p.112
6.耐性菌発生率(重要度7 点)

評価したRCT を検出できなかった。

システマティックレビューのまとめ

全身投与ステロイド薬併用療法は,生命予後に影響せず(  エビデンスの確実性はB  ),肺炎治癒率を変えず(  エビデンスの確実性はC  ),重篤な副作用を増加させず(  エビデンスの確実性はC  ),入院期間を約1 日短縮させる(  エビデンスの確実性はA  )。医療費や耐性菌の発生に関しては評価不能であった。これらのエビデンスはすべてRCT に基づいている。全体としての  エビデンスの確実性はA  である。

評価対象はすべて入院症例であったため,結果を外来CAP 症例に適応すべきかどうかは慎重に判断すべきである。

サブ解析では,重症症例・入院症例に限ると生命予後を有意に改善させる可能性が示唆されている。

入院期間が1 日短縮すること,ステロイド薬が比較的安価な薬剤であることを考慮すると,医療費を軽度減じる可能性が示唆される(  エビデンスの確実性はD  )。

なお,今回ガイドライン委員会で行ったSR 12)と同様の結果が,海外の4 つの研究グループにより同時期に示されている13)-16)。

上記10 編のRCT で使われているステロイド薬の種類・一日投与量・投与期間はさまざまであり最適なレジメンは不明である1)-10)。10 編のRCT で選択されたレジメンを参考にすると,ヒドロコルチゾン 200 ~300 mg/ 日,プレドニゾロン/ メチルプレドニゾロン 20 ~50 mg/ 日,

メチルプレドニゾロン1mg/kg/ 日のいずれかを5 ~7日間連日投与することが候補となりうる12)。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いエビデンスは主に10 件のRCT に基づいており,強いものであると判断される。

2)益と害のバランスは確実か:確実

ステロイド薬併用療法は,血糖を上昇させる可能性があるものの,重篤な副作用を増加させず,入院期間を短縮させ,重症症例・入院症例に限ると生命予後を有意に改善させることが示されている。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

ないこの治療に対する患者(家族)の意向は,ばらつきが大きい。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っているステロイド薬が安価な薬剤であること,入院期間を1日短縮させること,time to clinical stability への期間が約1 日短縮されることを考慮すると,医療費を軽度減じる可能性がある。

Blum 2015 Confalonieri 2005 Fernández-Serrano 2011 Meijvis 2011 Mikami 2007 Snijders 2010 Torres 2015合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=6.28, df=6 (p=0.39); l2=4%全体的な影響の検定: Z=7.02 (p<0.00001)

6 22.25 10 6.5 11.3 10 11

平均

0.740741 10.75 2.962963 2.962963 5.5 12 4.814815

SD

0.740741 17.25 6.666667 4.592593 10.7 12.8 5.185185

SD平均差

症例数平均比重IV,Random,95%Cl 392 23 23 151 15 104 61 769症例数

393 23 22 153 16 109 59

775

7 29.25 12 7.5 15.5 10.6 10.5

-2 -4 0

平均差IV, Random, 95%Cl

2 4

86.8% 0.1% 0.8% 9.1% 0.2% 0.7% 2.3% 100.0% -1.00[-1.10- -0.90]

-7.00[-15.31-1.31] -2.00[-5.04-1.04] -1.00[-1.87- -0.13] -4.20[-10.14-1.74] -0.60[-3.93-2.73] 0.50[-1.29-2.29] -0.98[-1.26- -0.71]

研究またはサブグループステロイド薬+抗菌薬併用抗菌薬単独

ステロイド薬+抗菌薬併用優位抗菌薬単独優位

図3  入院期間に対するメタアナリシス
p.113
委員会における討論内容と結果

当初成人CAP を全体を1 つとして解析を進めていたが,「軽症~中等症」のCAP と「重症」のCAP でステロイド薬投与の効果が異なることが示され,推奨を下記の2 つの推奨文を独立して作成し,それぞれに対して投票を行った。

推奨草案1:‌成人CAP に対して,全身投与ステロイド

薬を使用しないことを推奨する。

推奨草案2:‌ただし,重症の成人CAP に対して,全身投

与ステロイド薬を使用することを推奨する。

1)‌「軽症~中等症」の推奨草案

推奨草案に関しては,学術的COI のあるガイドライン委員6 名を除く10 名で投票を行った。7/10 名(70%)が「実施しないことを弱く推奨する」を支持し,採用が決定した。なお,投票では,「実施しないことを強く推奨する」を3 名の委員が支持した。

2)‌「重症」の推奨草案

推奨草案に関しては,学術的COI のあるガイドライン委員6 名を除く10 名で投票を行った。6/10 名(60%)が「実施することを強く推奨する」を支持し,採用が決定した。なお,投票では,「実施することを弱く推奨する」を3 名の委員が支持した。

同意率が70%以上を超えたものはなく,委員の間でさらなる議論を行った。「重症」の定義が曖昧であること,「ステロイド薬」の使用に関しては,あまりデメリットはない可能性があること,肺炎で死亡するような重症例の高齢者ではステロイド薬を使用しない場合もあること,「医療訴訟」を念頭に置いた場合は「強く推奨する」というのはやや無理があるのではないかということが論じられた。

再度10 名で投票を行った結果,8/10 名(80%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,採用が決定した。なお,投票では,「実施することを強く推奨する」と「実施しないことを強く推奨する」を1 名ずつの委員が支持した。●文 献

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71 12)Horita N, Otsuka T, Haranaga S, et al. Adjunctive Systemic

Corticosteroids for Hospitalized Community-Acquired Pneumonia:Systematic Review and Meta-Analysis 2015 Update. Sci Rep. 2015;5:14061. 13)Siemieniuk RA, Meade MO, Alonso-Coello P, et al. Cortico-

steroid Therapy for Patients Hospitalized With Community- Acquired Pneumonia:A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2015;163:519-28. 14)Wan YD, Sun TW, Liu ZQ. Efficacy and Safety of Corticoste- C A Pの治療

C Q
p.114
roids for Community-Acquired Pneumonia:A Systematic Review and Meta-Analysis. Chest. 2016;149:209-19. 15)Marti C, Grosgurin O, Harbarth S, et al. Adjunctive Cortico-

therapy for Community Acquired Pneumonia:A Systematic Review and Meta-Analysis. PLoS One. 2015;10:e0144032. 16)Chen LP, Chen JH, Chen Y, et al. Efficacy and safety of glu-

cocorticoids in the treatment of community-acquired pneumonia:A meta-analysis of randomized controlled trials. World J Emerg Med. 2015;6:172-8.
p.115
CQ

10 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ についてシステマティックレビュー(SR)を行った。評価項目として,従来治療とde-escalation 群の2 群間で「肺炎治癒率」「副作用」「入院期間」「医療費」「耐性菌発生率」を取り上げた。

採用論文

文献検索は英文では「community acquired pneumonia」&「de-escalation」or 「Streamlining」にて検索をし,日本語では「市中肺炎」と「de-escalation」にて文献検索を行った。38 編の論文が検索されたが,市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)ではないことから37 編が除外となり,2014 年に報告された1 編の後ろ向きコホート研究1)のみが対象となった。

CAP 治療における抗菌薬のde-escalation に関して,ランダム化比較試験の報告は確認されなかった。メタアナリシスの報告も認めなかった。結 果

1.肺炎治癒率(重要度9 点)

1 編の後ろ向きコホート研究1)において,de-escalation群における死亡率(3/33,9.1%)は対照群の死亡率(7/27,25.9%)と比較して有意に低い結果であった(p=0.04)(表1)。ただし,本研究ではde-escalation 群は対照群に比較して感染症専門医による介入頻度が高かった。  エビデンスの確実性はC  とする。

2.副作用(重要度7 点)

検討された論文は確認できなかった。

3.入院期間(重要度8 点)

1 編の後ろ向きコホート研究1)において,de-escalation群における入院期間(10.1 ± 8.4 日)は対照群の入院期間(10.9 ± 10.2 日)と比較して,差が認められなかった(表2)。  エビデンスの確実性はC  とする。

4.医療費(重要度7 点)

1 編の後ろ向きコホート研究1)において,de-escalation群の抗菌薬の費用(26 ± 12 ドル/ 日)は対照群の抗菌

CAP に対して,細菌培養検査結果に基づき,抗菌薬治療をdeescalation することを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

CAP 治療において,細菌培養検査の結果に基づく抗菌薬のdeescalation は推奨されるか。

CQ10 推奨

推奨の強さ

C A Pの治療

C Q
p.116
薬の費用(61.8 ± 89.7 ドル/ 日)と比較して,有意に低かった(p=0.03)(表3)。  エビデンスの確実性はC  とする。

5.耐性菌発生率(重要度7 点)

検討した報告は確認されなかった。

6.その他

2009 年の英国胸部学会のCAP ガイドライン2)はdeescalation を 推奨している(  エビデンスの確実性はD  )。2007 年のIDSA / ATS のガイドライン3)においてもde-escalation を推奨することが述べられているが,エビデンスレベルは呈示されていない。

システマティックレビューのまとめ

CAP 治療において抗菌薬をde-escalation するべきかという臨床疑問に関して,これまでRCT の報告はなく,メタアナリシスの報告も認めなかった。

2014 年に報告された血液培養陽性のCAP を対象としたコホート研究1)ではde-escalation は死亡率を低下させ,医療費を削減する可能性が示唆される結果が報告されたが,検討症例数の少ない後ろ向き研究であった(  エビデンスの確実性はC  )。

他国のガイドライン2)3)および日本呼吸器学会のガイドライン4)ではコンセンサスとして de-escalation の実施が推奨されている。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い確認されたエビデンスは後ろ向きコホート研究の1 件であった。

2)‌益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実で

はないDe-escalation 群において肺炎死亡率は低いが,後ろ向きコホート研究であり,エビデンスが弱い。また,有害事象の増減に関するエビデンスはなく,確実とはいえない。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:不明

患者の価値観や好みはばらつきが大きいと推測される。

表1  肺炎治癒率に関する検討

研究介入群

母数対照群

母数効果指標

転帰介入群の値対照群の値備考

Khasawneh ら

2014 年33 例27 例死亡3 例(9.1%) 7 例(25.9 %)

p =0.04自宅退院24 例12 例

転院6 例8 例

表2  入院期間に関する検討

研究介入群

母数対照群

母数効果指標入院期間介入群の値対照群の値備考

Khasawneh ら

2014 年33 例27 例平均値(日)

±標準偏差10.1 ± 8.4 10.9 ± 10.2 p =0.73

表3  医療費に関する検討

研究介入群

母数対照群

母数効果指標

医療費介入群の値対照群の値備考

Khasawneh ら

2014 年33 例27 例一日あたりの抗菌薬の費用(ドル)

±標準偏差26.0 ± 12.0 61.8 ± 89.7 p =0.03
p.117
4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っているDe-escalation により,患者負担および公的医療費は増大しないものと推測される。抗菌薬適正使用による正味の利益がコストや資源に見合っているものと判断される。

委員会における討論内容と結果

SR の結果より推奨文草案「成人CAP に対して,細菌培養検査結果に基づき,抗菌薬治療をde-escalationすることを弱く推奨する」が提示され,推奨文案を推奨するか否かについて投票が実施された。「実施することを強く推奨する」が3/16 名(18.8%),「実施することを弱く推奨する」が13/16 名(81.3%)となり,同意率が70%以上となったため,「実施することを弱く推奨する」を採

用することが決定された。

●文 献1)Khasawneh FA, Karim A, Mahmood T, et al. Safety and fea-

sibility of antibiotic de-escalation in bacteremic pneumonia. Infect Drug Resist. 2014;7:177-82. 2)Lim WS, Baudouin SV, George RC, et al. BTS guidelines for

the management of community acquired pneumonia in adults:update 2009. Thorax. 2009;64:iii1-55. 3)Mandell LA, Wunderink RG, Anzueto A, et al. Infectious Dis-

eases Society of America /American Thoracic Society consensus guidelines on the management of community- acquired pneumonia in adults. Clin Infect Dis. 2007;44:S27-

72 4)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員

会(編).成人市中肺炎診療ガイドライン.東京:日本呼吸器学会;2007.

C A Pの治療

C Q
p.118
CQ

11 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ について,システマティックレビュー(SR)を行った。従来治療(intravenous)とスイッチ療法の2 群間で「肺炎治癒率」「副作用」「入院期間」「治療費」「耐性菌発生率」を評価した。

採用論文

英文論文では「community acquired pneumonia」と「switch therapy 」または「switch to oral」「 intravenous to oral switch」に「randomized study」「randomized controlled trial」をキーワードとして検索を行い,日本語では「市中肺炎」「スイッチ療法」「スイッチ治療」をキーワードとして検索を行い30 編の論文が該当したが,市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)が対象でない比較検討でないなどの理由で21 編が除外されランダム化比較試験(RCT)の9 編がメタアナリシスの対象となった。結 果

RCT 論文9 編1)-9)を対象としてメタアナリシスを行った。

1.肺炎治癒率(重要度9 点)

9 編のRCT 論文1)-9)による解析で,内服薬へのスイッチ療法は静注薬継続と同等の臨床効果を示した(図1) (  エビデンスの確実性はB  )。

スイッチ療法のRCT に用いられた抗菌薬はアモキシシリン/ クラブラン酸,ガレノキサシン,セファクロルなどであった。用いられた内服薬による臨床効果の差異を検証することはできなかった。

2.副作用発現(重要度7 点)

5 編の論文2)-5)7)による解析で,静注薬と比較しスイッチ療法群で薬剤による副作用を優位に減少した(図2) (  エビデンスの確実性はB  )。

3.入院期間(重要度8 点)

7 編の論文1)-6)9)による解析で,スイッチ療法群で入院期間は有意に短縮した(図3)(  エビデンスの確実性はA  )。

CAP に対して,症状・検査所見の改善が得られれば,注射用抗菌薬から適切な内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)を行うことを推奨する。

実施することを強く推奨する

CAP治療において,症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)は推奨されるか。

CQ11 推奨

推奨の強さ
p.119
4.医療費(重要度7 点)

4 つの論文2)3)5)9)で報告されていた。国や時期などの背景の違いやデータ不足より直接比較できず,メタアナリシスは不可であった。文献5 は米国,文献3 はユーロ圏で,文献9 は日本での比較でスイッチ療法により医療費が低下することを示した。文献2 ではパキスタンでの検討で医療費が削減できることが示された(  エビデンスの確実性はC  )。一般に内服抗菌薬は静注抗菌薬よりも安価であり,ス

イッチ療法で入院期間の短縮が示されていることから,直接および間接的に医療費は削減されると推測された。

5.薬剤耐性率(重要度7 点)

薬剤耐性率をアウトカムとした研究は確認できず,評価できなかった。

0.1 0.005 10 200 1

Siegel Norrby Omidivari Castro-Guariola Uchiyama Yaqub and Khan Oosterheert Yanagihara Kohno合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.09; Chi2=8.36, df=7 (p=0.30); l2=16%全体的な影響の検定: Z=0.22 (p=0.82)

18 105 55 39 16 23 93 38 49

436 20 127 58 48 16 25 108 38 51

491 IV,Random,95%Cl 16 112 36 54 16 22 101 30 49

436 17 139 37 55 16 25 121 31 54

495 1996 1998 1998 2001 2003 2005 2006 2009 2013

IV, Random, 95%Cl 4.1% 36.8% 4.8% 5.6% 6.9% 30.9% 2.5% 8.4% 100.0% 0.56[0.05‒6.81] 1.15[0.62‒2.14] 0.51[0.05‒5.09] 0.08[0.01‒0.66]推定不可1.57[0.24‒10.30] 1.23[0.59‒2.54] 3.79[0.15‒96.28] 2.50[0.46‒13.51]

1.06[0.63‒1.78]

イベント数症例数

スイッチ療法従来治療イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

従来治療優位スイッチ療法優位

OR OR

図1  肺炎治癒率に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Omidivari Norrby Castro-Guariola Yaqub and Khan Kohno合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=3.77, df=4 (p=0.44); l2=0%全体的な影響の検定: Z=2.78 (p=0.006)

9 68 16 3 7

103 58 314 48 25 51

496 M-H,Random,95%Cl 11 79 34 3 8

135 37 305 55 25 54

476 1998 1998 2001 2005 2013

M-H, Random, 95%Cl 8.0% 60.5% 23.9% 2.2% 5.5% 100.0% 0.52[0.24‒1.14] 0.84[0.63‒1.11] 0.54[0.34‒0.85] 1.00[0.22‒4.49] 0.93[0.36‒2.37]

0.73[0.59‒0.91]

イベント数症例数

スイッチ療法従来治療イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

従来治療優位スイッチ療法優位

RR RR

図2  副作用発現に対するメタアナリシス

-5 -10 0 5 10

Siegel Omidivari Norrby Castro-Guariola Uchiyama Yaqub and Khan Oosterheert合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=1.09; Chi2=37.03, df=5 (p<0.00001); l2=86%全体的な影響の検定: Z=6.70 (p<0.00001)

8 7.3 11 6 6.5 4.1 9.6

平均

4 0.8 0 4 1.78 0.92 5

SD

2 0.9 0 3 1.74 1.1 4.9

SD症例数平均比重発表年IV,Random,95%Cl 20 58 314 48 16 25 132 613症例数

17 37 309 55 16 25 133 592

11 9.7 13 11 9.81 8.2 11.5 1996 1998 1998 2001 2003 2005 2006

IV, Random, 95%Cl 11.2% 21.2% 15.0% 16.1% 20.3% 16.3% 100.0% -3.00[-4.99- -1.01] -2.40[-2.76- -2.04]

推定不可-5.00[-6.38- -3.62] -3.31[-4.53- -2.09] -4.10[-4.66- -3.54] -1.90[-3.09- -0.71] -3.27[-4.22- -2.31]

研究またはサブグループ

従来治療優位スイッチ療法優位

スイッチ療法従来治療平均差平均差

図3  入院期間に対するメタアナリシスC A Pの治療

C Q
p.120
システマティックレビューのまとめ

CAP に対する内服薬へのスイッチ療法は静注抗菌薬の継続と比較して,同等の臨床効果を示し(  エビデンスの確実性はB  ),薬剤による副作用を減少させ(  エビデンスの確実性はB  ),入院期間を有意に短縮した(  エビデンスの確実性はA  )。医療費は国や時期など違いやデータ不足より直接比較できず,メタアナリシスは不可であったが,医療費軽減が示唆される結果であった(  エビデンスの確実性はC  )。耐性菌誘導率については評価できなかった。

以上より,CAP における内服薬へのスイッチ療法は安全に施行でき,副作用を減少し,入院期間を短縮して,医療費を縮小させることから有用性が確認された。全体の  エビデンスの確実性はA  と判定された。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強い臨床疑問に関連するRCT 9 編が確認され,  エビデンスの確実性はA  と判定された。

2)‌益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

内服薬へのスイッチ療法群は静注抗菌薬継続群と比較して肺炎治癒率は同等であった。一方で,スイッチ療法群において副作用が減少しており,入院期間の短縮が得られたことにより,益と害のバランスは確実であると判断された。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

るスイッチ療法により入院期間が短縮されるので患者は好むものと推測された。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)や正味の利益がコス

トや資源に十分見合っているか:見合っているスイッチ療法により入院期間が短縮されるので,患者の負担は軽減すると考えられる。正味の利益は損なわず,コスト削減できる可能性がある。

委員会における討論内容と結果

本委員会において学術的COI がある3 名を除いた13名で投票が実施され,10/13 名(77%)が「実施することを強く推奨する」,3/13 名(23%)が「実施することを弱く推奨する」に投票した。同意率が70% 以上となったため,「実施することを強く推奨する」に決定された。

●文 献1)Oosterheert JJ, Bonten MJ, Schneider MM, et al. Effective-

ness of early switch from intravenous to oral antibiotics in severe community acquired pneumonia:multicentre randomized trial. Brit Med J. 2006;333:1193. 2)Yaqub A, Khan Z. Comparison of early intravenous to oral

switch amoxicillin/clavulanate with parenteral ceftriaxone in treatment of hospitalized patients with community acquired pneumonia. Pak J Med Sci. 2005;26:259-61. 3)Castro-Guardio A, Viejo-Rodríguez AL, Soler-Simon S, et al.

Efficacy and safety of oral and early-switch therapy for community-acquired pneumonia:a randomized controlled trial. Am J Med. 2001;111:367-74. 4)Norrby SR, Petermann W, Willcox PA, et al. A comparative

study of levofloxacin and ceftriaxone in the treatment of hospitalized patients with pneumonia. Scand J Infect Dis. 1998; 30:397-404. 5)Omidvari K, de Boisblanc BP, Karam G, et al. Early transi-

tion to oral antibiotic therapy for community-acquired pneumonia:duration of therapy, clinical outcomes, and cost analysis. Respir Med. 1998;92:1032-9. 6)Siegel RE, Halpern NA, Almenoff PL, et al. A prospective

randomized study of inpatient iv. antibiotics for communityacquired pneumonia. The optimal duration of therapy. Chest. 1996;110:965-71. 7)Kohno S, Yanagihara K, Yamamoto Y, et al. Early switch

therapy from intravenous sulbactam/ampicillin to oral garenoxacin in patients with community-acquired pneumonia:a multicenter, randomized study in Japan. J Infect Chemother. 2013;19:1035-41. 8)柳原克紀,森永芳智,山田康一,他.市中肺炎に対するスイッ

チ治療の有用性. 日化療会誌.2009;57:423-9, 9)内山 伸,青島正大,佐藤 匡,他.本邦における市中肺炎入

院例でのSwitch Therapy の有効性.日呼吸会誌.2003;41: 261-7.
p.121
CQ

12 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

「1 週間以上の抗菌薬治療」群と「1 週間以内の抗菌薬治療」群の2 群間比較で,アウトカムとして,「肺炎治癒」「再燃」「副作用」「入院期間」「医療費」「耐性菌発生率」「生命予後」を評価した。

採用論文

システマティックレビュー(SR)で17 編を選択した〔ランダム化比較試験(RCT)17 編〕

1)-17)。血中濃度半減

期の長いアジスロマイシンの短期投与を他薬剤と比較した論文が多い,市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)の第一選択薬であるβ- ラクタム系薬に関する論文が少ない,同一薬剤の短期投与と長期投与での有効性をストレートに比較した論文が少ない,などの点は結果を解釈するうえで考慮する必要がある。アウトカムとして,「肺炎治癒」「再燃」「副作用」「入院期間」「医療費」「耐性菌発生率」について検討した。「再燃」「耐性菌発生率」に関するRCT は存在しなかった。「肺炎治癒」

1)3)-17)「副作用」1)3)-6)9)10)12)-14)に関して,メタアナリシスを行い,「入院期間」

1)7)「医療費」2)7)に関しては,

定性的SR を行った。

なお本CQ は2007 年,2008 年にメタアナリシスが報告されている18)19)。これらのメタアナリシスのなかで採用された論文のなかには,英語以外の文献も存在していたが,本メタアナリシスでは除外した。また,2007 年以降に報告されたRCT を加えて再評価を行ったものの, SRの結果に大きな相違は認めなかった。また,十分な数のRCT を採用していると考えられるので,観察研究は採用していない。

結 果

1.肺炎治癒

肺炎治癒に関して,16 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)-17)。オッズ比(OR)1.18(95%CI 0.99- 1.41)で両群に差を認めなかった(図1)。症例数は十分(1 週間以上の抗菌薬治療1,436 例 vs. 1 週間以内の抗菌薬治療1,671 例)であるが,『呼吸器感染症における新規抗菌薬の臨床評価法』

20)で推奨される,症状・所見・胸

部画像の消失・改善を確認した研究は少なく,論文中の「有効性」の表記に従い,評価を行った。以上より,  エビ

CAP の軽症~中等症例においては,初期治療が奏効している場合には1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与を弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

CAP 治療の期間について,1週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与は推奨されるか。

CQ12 推奨

推奨の強さ

C A Pの治療

C Q
p.122
デンスの確実性はB  とした。

2.副作用

「副作用」に関して,13 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)3)-6)9)10)12)-14)。OR 1.05(95%CI 0.85-1.29)で両群に差を認めなかった(図2)。症例数は十分(1 週間以上の抗菌薬治療群1,288 例 vs. 1 週間以内の抗菌薬治療群1,563 例)であるが,文献により有害事象が全例報告になっていない論文や検査値異常を報告していない論文があり,報告率に差があった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。

3.入院期間

「入院期間」に関しては,2 編のRCT で評価されており,いずれも,1 週間以内の抗菌薬治療群は1 週間以上の抗菌薬治療群に対して,入院期間が短かった1)7)。ただし,評価項目に関してばらつきが大きく,文献数も少ないため,メタアナリシスは行わなかった。以上より,  エビデンスの確実性はC  とした。

4.医療費

「医療費」に関しては,2 編のRCTで評価されており,いずれも,1 週間以内の抗菌薬治療群は1 週間以上の抗菌薬治療群に対して,医療費が低かった2)7)。文献数も少ないため,メタアナリシスは行わなかった。以上よ

り,  エビデンスの確実性はB  とした。

システマティックレビューのまとめ

CAP の軽症~中等症例における1 週間以内の抗菌薬投与と1 週間を超える抗菌薬投与を比較した17 編のRCT の解析では有効性には差がなかった(  エビデンスの確実性はB  )。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強い分析のもととなったRCT が17 編と比較的多数存在している。

2)‌益と害のバランスは確実か:確実

短期間投与により入院期間の短縮や医療費の軽減が期待できる。また有害事象発症率には差がない。再発率は評価できていない。

0.1 0.01 10 100 1

Schönwald 1990 Kinasewitz 1991 Schönwald 1994 Rizatto 1995 Bohte 1995 O'Doherty 1998 Siegal 1999 Leophonte 2002 Dunbar 2003 Sopena 2004 Tellier 2004 Leophonte 2004 Rahav 2004 Shorr 2005 Kuzman 2005 Zhao 2015合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Chi2=14.71, df=15 (p=0.47); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.87 (p=0.06)

39 30 88 19 15 83 21 93 183 28 61 311 129 65 73 102

1,340 57 53 90 20 20 101 27 125 256 34 62 378 167 80 89 112

1,671 M-H,Fixed,95%Cl 32 39 50 17 16 84 20 85 175 28 40 147 121 79 67 98

1,098 44 66 60 20 22 102 25 119 272 36 46 181 153 97 82 111

1,436 1990 1991 1994 1995 1995 1998 1999 2002 2003 2004 2004 2004 2004 2005 2005 2015

M-H, Fixed, 95%Cl 5.0% 6.6% 0.6% 0.4% 1.7% 6.6% 2.0% 9.8% 21.3% 2.1% 0.3% 15.5% 12.7% 5.9% 5.5% 3.9% 100.0% 0.81[0.34‒1.93] 0.90[0.43‒1.88] 8.80[1.85‒41.77] 3.35[0.32‒35.36] 1.13[0.28‒4.47] 0.99[0.48‒2.03] 0.88[0.23‒3.33] 1.16[0.66‒2.05] 1.39[0.96‒2.01] 1.33[0.41‒4.34] 9.15[1.06‒78.88] 1.07[0.68‒1.70] 0.90[0.53‒1.53] 0.99[0.46‒2.11] 1.02[0.47‒2.23] 1.35[0.57‒3.23]

1.18[0.99‒1.41]

イベント数症例数

1週間以内の抗菌薬治療

1週間以上の抗菌薬治療イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

1週間以上の抗菌薬治療優位1週間以内の抗菌薬治療優位

OR OR

図1  肺炎治癒に対するメタアナリシス
p.123
3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る入院期間の短縮および自己負担の軽減は患者の希望に合致するものと考えられる。

4)‌負担の確実さや正味の利益がコストや資源に十分見

合っているか:見合っている比較的低いリスクで患者負担や総医療費を軽減できる可能性がある。

委員会における討論内容と結果

推奨度決定に際し,出席したガイドライン委員16 名で推奨草案に関する投票を行った。初回投票において2/16 名(12.5%)が「実施することを強く推奨する」に投票し,14/16 名(87.5%)が「実施することを弱く推奨する」に投票した。初回投票において同意率が70% 以上になったため,後者の「実施することを弱く推奨する」が推奨決定となった。また討論において病態や原因菌により長期間治療期間が必要にある点が指摘されたことから下記に補足説明する。

肺炎の治療期間は菌側の因子,宿主背景,初期治療への反応性等をもとに総合的に判断されるものであり,肺炎全般に共通する適正抗菌薬投与期間を設定することは困難であるが,CAP では原因菌や宿主背景のばらつきが

比較的少ないことから適切な抗菌薬投与期間を評価するためのRCT が種々の抗菌薬を対象として施行されている。大部分の論文ではCAP のうち外来例のみ,軽症~中等症例限定,高齢者除外などの条件下で症例が選択されていた。ほとんどの論文が後者に対する前者の非劣性を提示したものであり,有効性を指標としたメタアナリシスでも短期投与群と長期投与群とに有意差は認められなかった。ただし,有効性評価に関しては胸部X 線所見,検査結果,自覚症状などの個々のパラメーターの改善に関する情報は乏しく,各論文中の有効性の基準,評価に基づいた評価を行っている。副作用に関してはこのうち13 編の論文をもとにしたメタアナリシスを施行したが,両群において有意差は認められなかった。入院期間,医療費に関しては解析した論文が2 編だったが,いずれも短期投与群において入院期間が短く医療費も低い結果となった。

以上より,少なくともCAP の軽症~中等症例においては,1 週間以内の抗菌薬投与と1 週間を超える抗菌薬投与の有効性は同等であり,少なくとも初期治療が奏効している場合には比較的短期間の抗菌薬投与が推奨される。

ただし原因菌が判明しており,その菌種がレジオネラ・ニューモフィラや緑膿菌など一般的に長期間の抗菌薬投与が推奨されているものであった場合には,個々の

0.1 0.01 10 100 1

Schönwald 1990 Kinasewitz 1991 Schönwald 1994 Bohte 1995 Rizatto 1995 O'Doherty 1998 Leophonte 2002 Dunbar 2003 Leophonte 2004 Tellier 2004 Kuzman 2005 Shorr 2005 Zhao 2015合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=14.09, df=12 (p=0.30); l2=15%全体的な影響の検定: Z=0.43 (p=0.67)

1 10 15 15 7 14 100 148 311 31 51 34 38

775 57 53 90 20 35 101 125 256 378 167 80 89 112

1,563 M-H,Random,95%Cl 6 8 8 15 0 13 85 158 147 35 58 24 28

585 44 39 60 20 29 102 98 272 181 153 97 82 111

1,288 1990 1991 1994 1995 1995 1998 2002 2003 2004 2004 2005 2005 2015

M-H, Random, 95%Cl 0.9% 3.7% 4.5% 2.0% 0.5% 5.8% 6.9% 21.4% 14.7% 11.4% 9.4% 8.7% 10.2% 100.0% 0.11[0.01‒0.98] 0.90[0.32‒2.54] 1.30[0.51‒3.29] 1.00[0.24‒4.18] 15.53[0.85‒284.62] 1.10[0.49‒2.48] 0.61[0.29‒1.27] 0.99[0.70‒1.40] 1.07[0.68‒1.70] 0.77[0.45‒1.32] 1.18[0.64‒2.18] 1.49[0.79‒2.83] 1.52[0.85‒2.72]

1.05[0.85‒1.29]

イベント数症例数

1週間以内の抗菌薬治療

1週間以上の抗菌薬治療イベント数症例数比重研究またはサブグループ発表年

1週間以内の抗菌薬治療優位1週間以上の抗菌薬治療優位

OR OR

図2  副作用に対するメタアナリシス

C A Pの治療

C Q
p.124
菌種に対する推奨が優先されるべきである。また,単純な肺炎ではなく肺膿瘍,膿胸,嚢胞内感染,敗血症性肺塞栓症などの特殊な病態が示唆される場合にも,抗菌薬投与期間の延長が必要となる。

●文 献1)Zhao X, Wu JF, Xiu QY, et al. A randomized controlled clini-

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6 3)Kuzman I, Dakovć-Rode O, Oremus M, et al. Clinical efficacy

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Comparative study of the efficacy and tolerance of azithromycin versus clarithromycin in the treatment of community-acquired pneumonia in adults. J Chemother. 2004;16: 102-3.

9)Dunbar LM, Wunderink RG, Habib MP, et al. High-dose,

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antibiotic regimens for community-acquired pneumonia: a meta-analysis. Am J Med. 2007;120:783-90. 19)Dimopoulos G, Matthaiou DK, Karageorgopoulos DE, et al.

Short- versus long-course antibacterial therapy for community-acquired pneumonia : a meta-analysis. Drugs. 2008; 68:1841-54. 20)呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法見直しの

ための委員会.呼吸器感染症における新規抗菌薬の臨床評価法(第二版).日化療会誌.2012;60:29-45.
p.125
CQ

13 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

「PSI」「CURB-65」「A-DROP」「I-ROAD」を対象とし,また,「生命予後(30 日死亡)」「ICU 入室率」をアウトカムとして評価した。

採用論文

医療・介護関連肺炎または医療ケア関連肺炎〔(nursing and) healthcare-associated pneumonia:(N) HCAP〕に関して,データベース検索の結果から354 編が抽出されたが,本CQ に合致するランダム化比較試験(RCT)は存在せず,最終的に9 編の観察研究論文1)-9)を選択した。一方,I-ROAD に関する報告は1 編1)のみであり,I-ROAD に限定したシステマティックレビュー(SR)は困難であった。院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)に関しては,データベース検索の結果から673 編が抽出されたが,本CQ に合致するRCT は存在せず,対象となる報告はI-ROAD に関する観察研究10)1 編のみであった。結 果

1.(N)HCAP における各重症度評価が「生

命予後(重要度9 点)」に与える影響

1)PSI

7 編1)-5)8)9)を用いて解析を行った。メタアナリシスの結果,中等症以上(vs. 軽症)でリスク比(RR)3.56 (95%CI 2.30-5.50,p ≦0.00001),重症(vs. 中等症以下)でRR 2.82(95%CI 2.21-3.59,p ≦0.00001),中等症以上,重症ともに30 日死亡予測に影響を与える結果であった(図1)。また,統合解析にて算出した感度,特異度,陽性尤度比,陰性尤度比,診断オッズ比をあわせて(表1)に示す。

2)CURB-65

8 編1)-6)8)9)を用いて解析を行った。メタアナリシスの結果,中等症以上(vs. 軽症)でRR 2.41(95%CI 1.80- 3.23,p ≦0.00001),重症(vs. 中等症以下)でRR 2.12 (95%CI 1.70-2.66,p ≦0.00001),中等症以上,重症ともに30 日死亡予測に影響を与える結果であった(図2)。また,統合解析にて算出した感度,特異度,陽性尤度比,陰性尤度比,診断オッズ比をあわせて(表2)に示す。

1HAP では,I-ROAD で重症度評価することを弱く推奨する。2NHCAP では,A-DROP・CURB-65・PSI のいずれかで重症度評価をすることを弱く推奨する。

1HAP:実施することを弱く推奨する2NHCAP:実施することを弱く推奨する

HAP/NHCAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ13 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.126
3)A-DROP

3 編1)7)9)を用いて解析を行った。メタアナリシスの結果,重症(vs. 中等症以下)でRR 2.13(95%CI 1.25- 3.62,p=0.005)であり,重症で30 日死亡予測に影響を与える結果であった(図3)。中等症以上(vs. 軽症)では,データが不十分であり評価できなかった。また,3論文のため,統合解析は行わなかった。

4)I-ROAD

1 編1)のみであり統合解析を行うことはできなかった。この観察研究では,下記に示すように,30 日死亡に対するAUC の比較において,I-ROAD が,A-DROP,

CURB-65,PSI と比較し,より有用な指標である可能性があることを報告している(表3)。

すべての研究が観察研究であること,6 編が非日本人を対象としている報告であることから,  エビデンスの確実性はC  とした。

0.1 0.01 10 100 1

0.1 0.01 10 100 1

Man 2011 Fang 2011 Carrabba 2012 Lee 2013 Jeong 2013 Matsunuma 2014 Ugajin 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=1.82, df=6 (p=0.94); l2=0%全体的な影響の検定: Z=5.70 (p<0.00001)

92 86 72 45 60 14 25

394 662 364 272 187 296 71 134

1,986 IV,Random,95%Cl 3 7 2 1 6 0 0

19 105 80 35 21 123 3 4

371 2011 2011 2012 2013 2013 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 14.9% 35.5% 10.3% 5.1% 28.8% 2.7% 2.7% 100.0% 4.86[1.57-15.08] 2.70[1.30-5.61] 4.63[1.19-18.05] 5.05[0.73-34.80] 4.16[1.84-9.36] 1.61[0.12-22.43] 1.89[0.13-26.81]

3.56[2.30-5.50]

(I):中等症以上,(C):軽症

Fang 2011 Man 2011 Carrabba 2012 Jeong 2013 Lee 2013 Ugajin 2014 Matsunuma 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.04; Chi2=9.47, df=6 (p=0.15); l2=37%全体的な影響の検定: Z=8.37 (p<0.00001)

53 60 45 28 36 17 12

251 159 250 137 95 90 56 36

823 IV,Random,95%Cl 40 35 29 38 10 8 2

162 285 517 170 324 118 82 38

1,534 2011 2011 2012 2013 2013 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 21.6% 20.1% 19.0% 18.0% 10.6% 8.0% 2.7% 100.0% 2.38[1.65-3.41] 3.55[2.40-5.23] 1.93[1.28-2.90] 2.51[1.63-3.87] 4.72[2.48-8.99] 3.11[1.44-6.71] 6.33[1.52-26.36]

2.82[2.21-3.59]

(I):重症,(C):中等症以下

イベント数症例数

中等症以上軽症RR

イベント数症例数比重発表年RR

研究またはサブグループ

イベント数症例数

重症中等症以下RR

イベント数症例数比重発表年RR

研究またはサブグループ軽症優位中等症以上優位

中等症以下優位重症優位

図1  生命予後に対するメタアナリシス(PSI) I:interventions, C:comparisons

表1  生命予後に対するメタアナリシス(PSI)−統合解析の結果

感度特異度陽性尤度比陰性尤度比診断オッズ比

≦IV 0.97(0.93-0.99) 0.13(0.08-0.21) 1.12(1.05-1.19) 0.21(0.10-0.44) 5.28(2.49-11.2) V 0.63(0.54-0.72) 0.69(0.63-0.74) 2.01(1.78-2.28) 0.54(0.44-0.65) 3.76(2.88-4.92)
p.127
2.(N)HCAPにおける各重症度評価が「ICU

入室率(重要度7 点)」に与える影響

1)PSI

2 編4)5)を用いて解析を行った。メタアナリシスの結果,中等症以上(vs. 軽症)でRR 0.92(95%CI 0.09- 9.44,p=0.94),重症(vs. 中等症以下)でRR 2.35 (95%CI 1.77-3.13,p ≦0.00001),重症ではICU 入室率に影響を与える結果であった(図4)。2 編のため,統合解析は行わなかった。2)CURB-65

3 編1)7)9)を用いて解析を行った。メタアナリシスの結果,中等症以上(vs. 軽症)でRR 2.22(95%CI 1.20- 4.10,p=0.01),重症(vs. 中等症以下)でRR 2.34(95 %CI 1.88-2.92,p ≦0.00001),中等症以上,重症ともにICU入室率に影響を与える結果であった(図5)。3 編のため,統合解析は行わなかった。

すべての研究が観察研究であること,また,症例数が少ないことから,  エビデンスの確実性はD  とした。

表2  生命予後に対するメタアナリシス(CURB-65)−統合解析の結果

感度特異度陽性尤度比陰性尤度比診断オッズ比

≦2 0.90(0.80-0.95) 0.28(0.18-0.42) 1.25(1.12-1.38) 0.37(0.25-0.55) 3.35(2.26-4.97) ≧3 0.61(0.45-0.75) 0.63(0.50-0.75) 1.65(1.42-1.91) 0.62(0.50-0.78) 2.65(2.05-3.43)

0.1 0.01 10 100 1

0.1 0.01 10 100 1

El-Solh 2010 Man 2011 Fang 2011 Carrabba 2012 Lee 2013 Jeong 2013 Ugajin 2014 Matsunuma 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.04; Chi2=9.25, df=7 (p=0.24); l2=24%全体的な影響の検定: Z=5.91 (p<0.00001)

93 89 81 60 44 33 25 13

438 357 548 302 217 186 138 119 65

1,932 IV,Random,95%Cl 14 6 12 14 2 33 0 1

82 100 219 142 90 22 281 19 9

882 2010 2011 2011 2012 2013 2013 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 20.2% 10.4% 17.6% 19.6% 4.3% 24.5% 1.1% 2.2% 100.0% 1.86[1.11-3.12] 5.93[2.63-13.35] 3.17[1.79-5.63] 1.78[1.05-3.01] 2.60[0.68-10.00] 2.04[1.31-3.15] 8.50[0.54-134.10] 1.80[0.27-12.16]

2.41[1.80-3.23]

(I):中等症以上,(C):軽症

El-Solh 2010 Man 2011 Fang 2011 Carrabba 2012 Jeong 2013 Lee 2013 Ugajin 2014 Matsunuma 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.04; Chi2=11.34, df=7 (p=0.12); l2=38%全体的な影響の検定: Z=6.55 (p<0.00001)

65 62 47 38 12 38 21 10

293 219 286 149 124 43 118 84 45

1,068 IV,Random,95%Cl 42 33 46 36 54 8 4 4

227 238 481 295 183 376 90 54 29

1,746 2010 2011 2011 2012 2013 2013 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 19.5% 16.9% 18.8% 17.0% 11.7% 7.8% 4.3% 4.0% 100.0% 1.68[1.19-2.37] 3.16[2.13-4.70] 2.02[1.42-2.89] 1.56[1.05-2.31] 1.94[1.13-3.33] 3.62[1.78-7.38] 3.38[1.23-9.30] 1.61[0.56-4.66]

2.12[1.70-2.66]

(I):重症,(C):中等症以下

イベント数症例数

中等症以上軽症RRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

イベント数症例数

重症中等症以下RR

イベント数症例数比重発表年RR

研究またはサブグループ軽症優位中等症以上優位

中等症以下優位重症優位

図2  生命予後に対するメタアナリシス(CURB-65) I:interventions, C:comparisons H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.128
3.HAP におけるI-ROAD が「生命予後(重

要度9 点)」に与える影響

文献10 の国内における1,356 名を対象とした多施設サーベイランスの結果,下記に示すように,I-ROAD における軽症・中等症・重症における死亡率は,それぞれ,12.1%,24.9%,40.8% であったことから,I-ROADは生命予後を予測する有用な指標であることを報告している(表4)。

日本人を対象としており,また,症例数も比較的多い報告であるが,1 編のみの報告であり,  エビデンスの確実性はD  とした。

システマティックレビューのまとめ

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)における重症度評価の報告11)と比較した場合,その有用性は十分とはいえない点に留意する必要があるが, NHCAP においては,A-DROP,CURB-65,PSI は生命予後予測において有用な評価法であると考えられる。3つの評価法では,PSI の生命予後を予測する能力はCURB-65,A-DROP と比較し,やや優れている(  エビデンスの確実性はC  )。

HAP においては,データが不十分でありA-DROP, CURB-65,PSI の有用性については明らかでないが,日本人のHAP 患者を対象とした多施設サーベイランスの結果では,I-ROAD による重症度評価の有益性が示された(  エビデンスの確実性はD  )。推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスが強

さ:弱いNHCAP に関する9 編のうち7 編が後方視的研究である。また,6 編が非日本人を対象とした報告であり,日本の肺炎診療とは必ずしも合致しない。また,HAP に関しては1 編のみの報告である。

2)益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実で

はない通常の診療行為を逸脱することはなく,害が生じることはない。

3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る肺炎診療における客観的指標であり,また,患者に不利益を生じさせることもない。

0.1 0.01 10 100 1

Oshitani 2012 Ugajin 2014 Matsunuma 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.04; Chi2=2.37, df=2 (p=0.31); l2=16%全体的な影響の検定: Z=2.79 (p=0.005)

51 21 12

84 317 82 48

447 IV,Random,95%Cl 16 4 2

22 160 56 26

242 2012 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 63.5% 23.6% 12.9% 100.0% 1.61[0.95-2.73] 3.59[1.30-9.88] 3.25[0.79-13.43]

2.13[1.25-3.62]

(I):重症,(C):中等症以下

イベント数症例数

重症中等症以下RRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

中等症以下優位重症優位

図3  生命予後に対するメタアナリシス(A-DROP) I:interventions, C:comparisons

表3  生命予後に関する検討(I-ROAD)

感度(%)特異度(%) AUC

I-ROAD 85.7 56.7 0.748 A-DROP 57.1 65.0 0.640 CURB-65 71.4 41.7 0.607

PSI 83.3 51.5 0.648

(文献1より引用)
p.129
4)負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っている通常の診療行為を逸脱することはなく,コスト・資源に影響を与えない。委員会における討論内容と結果

本ガイドラインではHAP/NHCAP は1 つのグループ

0.1 0.01 10 100 1

0.1 0.01 10 100 1

Fang 2011 Man 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=2.42; Chi2=6.28, df=1 (p=0.01); l2=84%全体的な影響の検定: Z=0.07 (p=0.94)

119 3

122 364 662

1,026 IV,Random,95%Cl 10 2

12 80 105

185 2011 2011

IV, Random, 95%Cl 56.3% 43.7% 100.0% 2.62[1.44-4.76] 0.24[0.04-1.41]

0.92[0.09-9.44]

(I):中等症以上,(C):軽症

Fang 2011 Man 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.09, df=1 (p=0.76); l2=0%全体的な影響の検定: Z=5.88 (p<0.00001)

73 3

76 159 250

409 IV,Random,95%Cl 56 2

58 285 517

802 2011 2011

IV, Random, 95%Cl 97.4% 2.6% 100.0% 2.34[1.75-3.12] 3.10[0.52-18.45]

2.35[1.77-3.13]

(I):重症,(C):中等症以下

イベント数症例数

中等症以上軽症RRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

イベント数症例数

重症中等症以下RR

イベント数症例数比重発表年RR

研究またはサブグループ軽症優位中等症以上優位

中等症以下優位重症優位

図4  ICU 入室率に対するメタアナリシス(PSI) I:interventions, C:comparisons

0.1 0.01 10 100 1

0.1 0.01 10 100 1

El-Solh 2010 Fang 2011 Man 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.15; Chi2=4.63, df=2 (p=0.10); l2=57%全体的な影響の検定: Z=2.54 (p=0.01)

98 113 3

214 357 302 548

1,207 IV,Random,95%Cl 14 16 2

32 100 142 219

461 2010 2011 2011

IV, Random, 95%Cl 44.2% 45.8% 10.0% 100.0% 1.96[1.17-3.28] 3.32[2.05-5.39] 0.60[0.10-3.56]

2.22[1.20-4.10]

(I):中等症以上,(C):軽症

El-Solh 2010 Fang 2011 Man 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.72, df=2 (p=0.70); l2=0%全体的な影響の検定: Z=7.59 (p<0.00001)

76 71 2

149 219 149 286

654 IV,Random,95%Cl 36 58 3

97 238 295 481

1,014 2010 2011 2011

IV, Random, 95%Cl 39.1% 59.3% 1.5% 100.0% 2.29[1.61-3.26] 2.42[1.82-3.22] 1.12[0.19-6.67]

2.34[1.88-2.92]

(I):重症,(C):中等症以下

イベント数症例数

中等症以上軽症RRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

イベント数症例数

重症中等症以下RR

イベント数症例数比重発表年RR

研究またはサブグループ軽症優位中等症以上優位

中等症以下優位重症優位

図5  ICU 入室率に対するメタアナリシス(CURB-65) I:interventions, C:comparisons H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.130
として扱われているが,実際には多様な疾患群であることから,重症度評価においては,HAP とNHCAP は区別して推奨草案を作成する方針とした。また,特に, I-ROAD に関しては十分なエビデンスに乏しく,「I-ROAD」と明記すべきか,「いずれかの重症度評価指標が必要である」という表記にすべきかについて議論となった。しかし,ガイドラインとして可能な限り明解にする必要があること,国内での多施設サーベイランスの結果が報告されている点も考慮し,HAP においては,前回のガイドライン同様,I-ROAD を重症度評価指標として明記する方針とした。

学術的COI のある委員2 名を除く14 名で投票を行った。

「HAP では,I-ROAD で重症度評価することを推奨する」

ガイドライン委員14/14 名(100%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

「NHCAP では,A-DROP・PSI・CURB-65 のいずれかで重症度評価することを推奨する」

ガイドライン委員11/14 名(78.6%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。●文 献

1)Matsunuma R, Asai N, Ohkuni Y, et al. I-ROAD could be ef-

ficient in predicting severity of community-acquired pneumonia or healthcare-associated pneumonia. Singapore Med J. 2014;55:318-24. 2)Lee JC, Hwang HJ, Park YH, et al. Comparison of severity

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表4  I-ROAD が生命予後に与える影響

症例数死亡率p 値

軽症群838 例12.1%(101/834) ≦0.001中等症群277 例24.9%(69/277)重症群241 例40.8%(98/240) Seki M, et al. Respirology. 2008;13:880-5, ©John Wiley and Sons.

(文献10 より引用)
p.131
CQ

14 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

CRP 測定群と非測定群の2 群間比較で,アウトカムとして,「生命予後(死亡率)」を最も重要なアウトカムとした。「CRP の推移と予後の相関」「診断」についても評価した。

採用論文

これまでメタアナリシスやランダム化比較試験(RCT)は行われておらず,観察研究のみ12 編を選択した1)-12)。

結 果

1.生命予後(死亡率)(重要度9 点)

NHAPを対象とした2 編,人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)例を解析した5 編の計7 編の観察研究で言及されている1)-7)。NHAP を対象とした1 編でのみ,CRP 値が生存群と死亡群で差があり,死亡・PSI 等と相関したとしているが7),他の6 編で

はいずれも予後予測に有用でないとしている。カットオフ値もさまざまで,また両群の平均値の記載にとどまるなど具体的な数値の記載がなく,メタアナリシスは実施できず。症例数も少なく,定性的な評価のみ。  エビデンスの確実性はD  。

2.CRP の推移と予後の相関(重要度8 点)

5 編の観察研究で検討されており,4 編の報告では3)4)8)9),CRP の低下が生存もしくは良好な治療反応と相関ありとし,特にday 0 からday 4 へのCRP の低下が予後良好と関連するとしている (1 編はCRP の推移と予後の関連なしと報告6))。文献3 ではD4/D0 CRP <0.6をカットオフとして有用性に言及している。報告により評価指標が異なっており,メタアナリシスは実施できなかった。症例数も少なく定性的な評価のみ,CRP 推移が予後と関連するとする明確な根拠なし。  エビデンスの確実性はD  。

3.診断(重要度7 点)

5 編の観察研究で検討されており,いずれも診断に有益でないと結論されている1)2)10)-12)。少なくとも診断に有益とする根拠は認められない。多変量解析の結果や両群

HAP/NHCAP の診断において,CRP の推移 (3〜5 日目におけるCRP の低下)は生命予後を予測する目安として,科学的根拠に乏しいが,測定することを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

HAP/NHCAP 診断において, CRP 測定は推奨されるか。

CQ14 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.132
のCRP 値の平均の記載にとどまっておりメタアナリシスは実施できなかった。定量的な評価ができず,対象は1 編を除きすべてVAP例・カットオフもさまざまと,条件の問題も認められる。  エビデンスの確実性はD  。

システマティックレビューのまとめ

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)/ 医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)〔医療ケア関連肺炎(healthcareassociated pneumonia:HCAP)〕診断において,CRP 測定の明らかな有益性は認められなかった(  エビデンスの確実性はD  )。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱いメタアナリシスやRCT は行われておらず,観察研究のみをエビデンスとして採用しており,非常に弱い。

2)益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

CRP 値を参照する診療がもたらす明らかな不利益は証明されていない。CRP 測定に伴うコストが発生するが,通常の診療内の行為である。

3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る通常の診療内の行為であり,患者の不利益にはならない。この検査に対する患者(家族)の意向は,治療において測定することを望む。

4)負担の確実さ(あるいは相違) 正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っている通常の保険診療内の行為であり,検査に伴う苦痛はほとんどない。本邦の医療資源・医療環境を考慮すると,利益は患者(家族)の負担に見合っている。委員会における討論内容と結果

システマティックレビュー(SR)では,HAP/NHCAP (HCAP)診断におけるCRP の有用性に関するエビデンスは乏しい結果であった。市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)と異なり,HAP/NHCAP (HCAP)では,背景がさまざまで診断には使用しづらいと考えられる。しかし,治療効果判定に有用な可能性はあり,推奨の強さの決定に影響する要因を鑑みて推奨草案を決定,投票を行った。

ガイドライン委員13/15 名(86.7%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

補足事項:プロカルシトニン(PCT)について

保険上,測定回数や適応病名の制約もあり,CQ としては取り上げていないが,PCT についても同様にSR を行い,RCT 4 編,メタアナリシス2 編を含む26 編を選択した2)4)6)10)-32)。生命予後・診断についてそれぞれ12編の観察研究が認められた。予後良好群においてPCT値が低い傾向が全般にみられたが,平均値のみの記載に留まりメタアナリシスは施行できなかった。また,文献4 ではday 0 からday 4 のPCT 低下が予後と相関すると報告されている〔オッズ比(OR)4.43,95%CI 1.08- 18.18〕。その後,文献6 や文献31 で同様の報告がなされているが,これらはいずれも多変量解析の結果のみであった。生命予後・診断,いずれにおいても研究ごとのカットオフ値の相違が大きく,また症例数も少なく明確な有用性は指摘できなかった。

PCT を指標としたHAP の治療(治療効果判定・治療期間決定)に関しては,2011 年に『The Cochrane Database of Systematic Reviews』

15)で報告されている。PCT

を指標とした抗菌薬治療では,28 日死亡の増加はなく(OR 0.66,95%CI 0.39-1.14,p=0.13)(図1),有意な抗菌薬使用期間の短縮が認められた〔平均差(MD)- 3.20,95%CI -4.45- -1.95,p <0.00001〕(図2)。RCTであるが,症例数がやや少なく,VAP 例に限定されていることなどから  エビデンスの確実性はB  とした。その後,文献13 で,誤嚥リスクを有する肺炎例 (HAP/ NHCAP,CAP の分類なくメタアナリシスからは除外)でも同様の結果が報告されている。PCT を指標とした抗
p.133
菌薬治療はNHCAP を対象としても有用である可能性が示唆される。

●文 献1)Lin Q, Fu F, Shen L, et al. Pentraxin 3 in the assessment of

ventilator-associated pneumonia:an early marker of severity. Heart Lung. 2013;42:139-45. 2)Porfyridis I, Georgiadis G, Vogazianos P, et al. C-reactive

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0.5 0.1 0.2 2 5 10 1

Bouadma 2010 Pontet 2007 Stolz 2009合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.11, df=2 (p=0.94); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.50 (p=0.13)

8 8 14

30 31 51 75

157 IV,Random,95%Cl 11 12 17

40 35 50 66

151 IV, Random, 95%Cl 25.2% 29.4% 45.4%

100.0% 0.76[0.26-2.22] 0.59[0.22-1.59] 0.66[0.30-1.47]

0.66[0.39-1.14]

イベント数症例数PCT値使用標準治療OR

イベント数症例数比重OR

研究またはサブグループ

PCT値使用優位標準治療優位

図1  PCT を指標とした抗菌薬治療(28日死亡率)

-5 -10 0 5 10

Bouadma 2010 Pontet 2007 Stolz 2009合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.27; Chi2=2.54, df=2 (p=0.28); l2=21%全体的な影響の検定: Z=5.02 (p<0.00001)

7.3 7.9 12.5

平均

5.3 2.4 7.8

SD

5.7 3.6 7.6

SD症例数平均比重IV,Random,95%Cl 75 31 51

157 症例数

66 35 50

151 9.4 11.9 15.7 IV, Random, 95%Cl 35.6% 48.9% 15.5%

100.0% -2.10[-3.92- -0.28] -4.00[-5.46- -2.54] -3.20[-6.20- -0.20]

-3.20[-4.45- -1.95]

研究またはサブグループPCT値使用標準治療平均差平均差

PCT値使用優位標準治療優位

図2  PCT を指標とした抗菌薬治療(抗菌薬使用期間)

H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.134
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p.135
CQ

15 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

誤嚥のリスク因子を保有している群と,保有していない群の比較で,アウトカムとして,主に「肺炎による再入院」「急性期の死亡(30 日死亡を含む入院死亡率)」「慢性期の死亡(90 日死亡率,1 年死亡率)」を評価した。

採用論文

誤嚥の危険因子は,意識障害,脳血管障害,胃食道機能障害などによる患者背景,嚥下機能検査で評価しているものと定義し,誤嚥性肺炎は,それらの誤嚥のリスク因子を保有した宿主に生じた肺炎とした。すなわち,誤嚥性肺炎と診断されたものは,誤嚥のリスク因子を保有しているものとみなした。その結果,システマティックレビュー(SR)全体で10 編の観察研究論文を選択した(前向き研究4 編 後ろ向き研究6 編)。観察研究のメタアナリシスになるために,各論文における多変量解析結果もあわせて検討した。結 果

1.肺炎による再入院率(重要度8 点)

2 編(2,573 例)を採用した1)2)。誤嚥のリスク因子は,メタアナリシスにて再入院率を上昇させた(RR 2.19, 95%CI 1.29-3.70,p = 0.004,I 2 = 48%)(図1)。また,これらの有意差はそれぞれの多変量解析で維持された。報告されている論文数が少なく,  エビデンスの確実性はD  とする。

2.短期生命予後(重要度9 点)

8 編(3,624 例)を採用した2)-9)。誤嚥のリスク因子は,メタアナリシスにて短期死亡率を上昇させた(RR 2.60,95%CI 1.18-5.73,p = 0.02,I 2 = 91%)(図2)。誤嚥のリスク因子が予後良好因子になる結果を示した報告は,ICU における死亡率を算出しているものであった。ICU における患者のみを対象とした報告を省くと,誤嚥のリスク因子はより強く急性期死亡に寄与する結果となった(RR 4.94,95%CI 2.23-10.94,p < 0.001,I

2 = 87%)。多変量解析を行っている報告は7 編であっ

た。そのうち,文献3 では,多変量でも誤嚥のリスク因子は短期の死亡率を有意に低下させる結果が示された。

NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することは推奨されるか。

CQ15 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.136
残りの6 編では,2 編のみが有意差を維持し7)8),他の4編では有意差を失った1)2)6)9)。報告数としては十分であるが,誤嚥のリスク因子の定義にばらつきがあり,  エビデンスの確実性はC  とする。

3.長期生命予後(重要度9 点)

長期生命予後においては,入手可能なraw dataは1 論文のみからであったため,メタアナリシスは施行しなかった。ただし,2 編9)10)が多変量解析を行っており,文献9 では,誤嚥のリスク因子保有が,1 年後の肺炎死亡に有意に関連していること[adjusted HR 1.73(1.15- 2.58)],文献10 では90 日後の肺炎関連死に関連〔adjusted HR 3.09(1.90-5.03)〕することが示された。  エビデンスの確実性はD  とする。システマティックレビューのまとめ

誤嚥のリスク因子の保有は,肺炎による再入院,長期生命予後に関連することが示された。短期生命予後死亡率に関しては,メタアナリシスとしては有意に誤嚥のリスク因子保有が死亡率を上昇した。しかしながら,各々の多変量解析の結果まで考慮すると,ICU 設定では予後良好の因子となる可能性があり,非ICU 設定においては必ずしも関連する結果ではなかった。全体の  エビデンスの確実性はC  とする。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスが強

い:弱いすべての10 編が観察研究であり,そのうち6 編が後

0.1 0.01 10 100 1

Leroy 1995 Leroy 1996 Leroy 1997 Fujiki 2007 Cabre 2010 Komiya 2013 Taylor 2013 Hayashi 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=1.16; Chi2=80.83, df=7 (p<0.0001); l2=91%全体的な影響の検定: Z=2.38 (p=0.02)

4 15 8 13 17 26 32 25

140 47 56 47 22 74 116 186 100

648 IV,Random,95%Cl 81 20 108 10 5 9 89 9

331 252 279 383 205 60 521 1,162 114

2,976 1995 1996 1997 2007 2010 2013 2013 2014

IV, Random, 95%Cl 11.6% 12.9% 12.7% 12.6% 11.7% 12.5% 13.5% 12.5% 100.0% 0.26[0.10-0.69] 3.74[2.04-6.84] 0.60[0.31-1.16] 12.11[6.03-24.33] 2.76[1.08-7.04] 12.98[6.25-26.95] 2.25[1.55-3.26] 3.17[1.55-6.46]

2.60[1.18-5.73]

イベント数症例数

誤嚥リスク保有誤嚥リスク非保有RR

イベント数症例数比重RR

研究またはサブグループ

誤嚥リスク保有優位誤嚥リスク非保有優位

発表年

図2  短期生命予後に対するメタアナリシス0.1 0.01 10 100 1

Cabre 2014 Hayashi 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.08; Chi2=1.92, df=1 (p=0.17); l2=48%全体的な影響の検定: Z=2.92 (p=0.004)

75 25

100 1,121 100

1,221 IV,Random,95%Cl 46 9

55 1,238 114

1,352 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 65.5% 34.5% 100.0% 1.80[1.26-2.58] 3.17[1.55-6.46]

2.19[1.29-3.70]

イベント数症例数

誤嚥リスク保有誤嚥リスク非保有RR

イベント数症例数比重RR

研究またはサブグループ

誤嚥リスク保有優位誤嚥リスク非保有優位

発表年

図1  肺炎による再入院率に対するメタアナリシス
p.137
方視的研究である。また,日本人を対象にした報告は3論文に限られた。

2)益と害のバランスが確実(コスト含まず):確実

通常の診療行為を逸脱することはなく,害が生じることはない。

3)患者の価値観や好みを反映している:反映している

肺炎診療における指標の1 つであり,患者に不利益を生じさせることもない。

4)負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っている:見合っている通常の診療行為を逸脱することはなく,コスト・資源に影響を与えない。

委員会における討論内容と結果

学術的COI のある委員7 名を除く9 名で投票を行い,7/9 名(77.7%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

●文 献1)Cabre M, Serra-Prat M, Force L, et al. Oropharyngeal dys-

phagia is a risk factor for readmission for pneumonia in the very elderly persons:observational prospective study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2014;69:330-7. 2)Hayashi M, Iwasaki T, Yamazaki Y, et al. Clinical features

and outcomes of aspiration pneumonia compared with nonaspiration pneumonia:a retrospective cohort study. J Infect Chemother. 2014;20:436-42. 3)Leroy O, Georges H, Beuscart C, et al. Severe community-

acquired pneumonia in ICUs:prospective validation of a prognostic score. Intensive Care Med. 1996;22:1307-14. 4)Leroy O, Santre C, Beuscart C, et al. A five-year study of

severe community-acquired pneumonia with emphasis on prognosis in patients admitted to an intensive care unit. Intensive Care Med. 1995;21:24-31. 5)Leroy O, Vandenbussche C, Coffinier C, et al. Community-

acquired aspiration pneumonia in intensive care units. Epidemiological and prognosis data. Am J Respir Crit Care Med. 1997;156:1922-9. 6)Cabre M, Serra-Prat M, Palomera E, et al. Prevalence and

prognostic implications of dysphagia in elderly patients with pneumonia. Age Ageing. 2010;39:39-45. 7)Fujiki R, Kawayama T, Ueyama T, et al. The risk factors for

mortality of community-acquired pneumonia in Japan. J Infect Chemother. 2007;13:157-65. 8)Komiya K, Ishii H, Umeki K, et al. Impact of aspiration pneu-

monia in patients with community-acquired pneumonia and healthcare-associated pneumonia:a multicenter retrospective cohort study. Respirology. 2013;18:514-21. 9)Taylor JK, Fleming GB, Singanayagam A, et al. Risk factors

for aspiration in community-acquired pneumonia:analysis of a hospitalized UK cohort. Am J Med. 2013;126:995-1001. 10)Mortensen EM, Coley CM, Singer DE, et al. Causes of death

for patients with community-acquired pneumonia:results from the Pneumonia Patient Outcomes Research Team cohort study. Arch Intern Med. 2002;162:1059-64. H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.138
CQ

16 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

各論文ごとの高リスク群を介入群,低リスク群を対照群とした2 群間比較で,アウトカムとして,「耐性菌出現率」「初期治療失敗率」「入院死亡率」「30 日死亡」を評価した。

採用論文

今回検索した範囲でCQ 内容に合致するランダム化比較試験(RCT)は存在せず,医療ケア関連肺炎(health-

care-associated pneumonia:HCAP)における前向き観察研究3 編1)-3)を対象とし,解析した。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるinverse-variance method (R 3.2.1)を用い,効果指標はリスク比(RR)とした。

結 果

1.耐性菌出現率(重要度7 点)

コホート研究3 編1)-3)を対象にメタアナリシスを行っ

HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことは推奨されるか。

CQ16 推奨

推奨の強さ

2.72 1.00 20.09 54.60 7.39

Shindo 2013 Maruyama 2013 Aliberti 2012 491 151

462 z=7.35 Q=2.55 p=0 p=0.27945 tau2=0.06 I2=25.58

255 170

473 87

46 29 RR[95%Cl]

6.45[3.92-10.61]

5.23[3.59-7.62] 13.62[4.32-42.89] 7.08[2.51-19.98]

RE Model  IV 32

3

4 症例数 症例数

高リスク

多剤耐性菌出現著者・発表年多剤耐性菌出現低リスク

RR

図1  耐性菌出現率に対するメタアナリシス
p.139
た。高リスク群で多剤耐性菌の出現率が有意に高く(RR 6.45,95%CI 3.92-10.61,p <0.01),I 2=25.6)と異質性は軽度であった。前向き観察研究に基づく結果であり,症例数も限られているため,  エビデンスの確実性はD  とする。以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図1)。

2.初回治療失敗率(重要度6 点)

わが国で実施されたコホート研究2 編2)3)を対象にメタアナリシスを行った。高リスク群で初回治療失敗は有意に多く(RR 2.47,95%CI 1.95-3.13,p <0.01,I 2=0と,結果の異質性は認められなかった。前向き観察研究に基づき,症例数も限られているため,  エビデンスの確実性はD  とする。以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図2)。

3.入院死亡率(重要度9 点)

入院死亡率を取り上げている研究は1 編のみ1)であったため,エビデンスの統合は実施していない。低リスク群は10%,高リスク群は22% と,高リスク群で有意(p <0.001)に高かった。4.30 日死亡(重要度8 点)

わが国のコホート研究2 編2)3)を対象に解析した結果,高リスク群30 日死亡は有意に多く(RR 2.14, 95%CI 1.55 - 2.97,p <0.01),I 2=0 と,結果の異質性は認められなかった。前向き観察研究に基づき,症例数も限られているため,  エビデンスの確実性はD  とする。以下,メタアナリシスの結果としてforest plot を示す(図3)。

システマティックレビューのまとめ

HCAP 罹患例を対象に,耐性菌リスク因子の数により低リスク群と高リスク群とに分け,両群をメタアナリシスにより比較した結果,高リスク群では,多剤耐性菌の検出頻度,初回治療失敗の頻度,30 日死亡が有意に多い結果となり,このようなリスク評価法の有用性が示唆された(  エビデンスの確実性はD  )。今回の解析で中心となった,わが国からの報告2 編2)3)における耐性菌リスク因子を表1 に示した。対象とする耐性菌と耐性菌リスク因子の定義が異なる点に留意されたい。

1.00 4.48 2.72 1.65

Maruyama 2013 Shindo 2013 151 491

z=4.57 Q=0 p=0 p=0.9629 tau2=0 I2  =0

170 255 31 47 RR[95%Cl]

2.14[1.55-2.97]

2.12[1.15-3.90] 2.15[1.46-3.18]

RE Model  IV 13 42

症例数症例数

高リスク

30日死亡著者・発表年30日死亡低リスク

RR

図3  30日死亡に対するメタアナリシス1.49 1.22 2.23 4.06 3.32 2.72 1.82

Maruyama 2013 Shindo 2013 151 490

z=7.48 Q=0.02 p=0 p=0.90245 tau2=0 I2=0

170 254 46 93 RR[95%Cl]

2.47[1.95-3.13]

2.40[1.44-4.01] 2.49[1.91-3.26]

RE Model  IV 17 72

症例数症例数

高リスク

初回治療失敗著者・発表年初回治療失敗低リスク

RR

図2  初回治療失敗率に対するメタアナリシス

H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.140
表1  HCAP における耐性菌リスク因子文献2多剤耐性菌の定義MRSA,緑膿菌,アシネトバクター・バウマニ,ESBL 産生菌リスク因子1 免疫抑制状態2 過去90 日以内の入院3 機能障害(バーセル指数<50) 4 過去6ヵ月以内の抗菌薬治療5 ICU または人工呼吸器管理低リスク群:0〜1個,高リスク群: 2個以上文献3多剤耐性菌の定義セフトリアキソン,スルバクタム/ アンピシリン,マクロライド,レスピラトリーキノロンに耐性の病原体リスク因子1 過去90 日以内に2 日以上の入院2 免疫抑制状態3 過去90 日以内の抗菌薬使用歴4 胃酸分泌抑制薬使用5 経管栄養6 歩行不能低リスク群:0〜1個,高リスク群:2個以上

推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い前向き観察研究3 編により症例数が限られ,リスク因子の定義,カットオフが報告により異なることから,エビデンスは弱いものであると判断される。

2)益と害のバランスは確実か:確実

高リスク群では耐性菌出現率,初回治療失敗率,30 日死亡が有意に多い結果から,益と害のバランスは確実であると判断される。3)患者の価値観や好みを反映しているか(コスト含ま

ず):反映しているこの治療に対する患者(家族)の意向は,耐性菌リスクを踏まえた抗菌薬治療を望む。

4)負担の確実さ(あるいは相違) 正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っている低リスク群では耐性菌出現率,初回治療失敗率,30 日死亡が有意に少ない結果から,患者(家族)の負担は減る。

委員会における討論内容と結果

推奨草案に関しては,ガイドライン委員16 名中,学術的COI のある委員1 名を除く15 名で投票を実施し, 14/15 名(93.3%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

●文 献1)Aliberti S, Di Pasquale M, Zanaboni AM, et al. Stratifying

risk factors for multidrug-resistant pathogens in hospitalized patients coming from the community with pneumonia. Clin Infect Dis. 2012;54:470-8. 2)Maruyama T, Fujisawa T, Okuno M, et al. A new strategy

for healthcare-associated pneumonia:a 2-year prospective multicenter cohort study using risk factors for multidrugresistant pathogens to select initial empiric therapy. Clin Infect Dis. 2013;57:1373-83. 3)Shindo Y, Ito R, Kobayashi D, et al. Risk factors for drug-re-

sistant pathogens in community-acquired and healthcareassociated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med. 2013; 188:985-95.
p.141
CQ

17 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ におけるアウトカムとして,「生命予後(死亡率)」「初期治療効果」「副作用」を評価した。

採用論文

MEDLINE,EMBASE,医中誌の検索結果から,対象が医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)もしくは院内肺炎(hospitalacquired pneumonia:HAP)であるもの,介入として内服ニューキノロン系薬単独治療を行っているものを研究デザインによらず採用することとした。その結果,105編が対象となり,そのうち,4 編が基準を満たしていた。ランダム化比較試験(RCT)は1 編1)しか存在せず,効果量を推定可能なコントロールを置いた観察研究は存在しなかった。

RCT は米国で実施されたもので,60 人の施設入所中に肺炎もしくは気管支炎で入院加療が必要となった60歳以上の患者を対象としている。介入群は内服シプロフロキサシン750mg 1 日2 回を14 日間,コントロール群はセファマンドール1g 筋注6 時間ごとを14 日間で治療

された。

観察研究については,わが国からのシングルアーム症例集積研究として3 編2)-4)存在する。NHCAP を対象とし,ガレノキサシン1 編2),モキシフロキサシン2 編3)4)のいずれも内服治療であった。文献2 では,ガレノキサシンで治療されたNHCAP 患者57 例を対象とした。A- DROP システムを用いた重症度分類では,軽症29 例,中等症27 例,重症1 例で,治療効果については53 例が有効,4 例が無効であった(有効率93.0%)。ガレノキサシンとの因果関係が否定できない有害事象は,6 例(肝機能障害2 例,腎機能障害3 例)であったが,いずれも軽度で継続投与が行われており,治療終了後にすみやかに改善した。

文献3 では,経管栄養が実施されているNHCAP 患者16 例を対象とした。モキシフロキサシン投与終了日から7 日後の治癒判定において13/16 例(81.3%)の有効率が認められ,早期薬効評価項目である投与3 日目の有効性評価では全例の16/16 例(100%)が効果ありと診断された。副作用および臨床検査値異常は認められなかった。

文献4 では,NHCAP 患者を対象にモキシフロキサシン内服投与された45 例のうちWBC とCRP の欠測がな

NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,レスピラトリーキノロンを治療薬の1 つとすることを弱く推奨する。ただし,副作用,耐性化の可能性,および肺結核との鑑別を考慮することが必要である。

実施することを弱く推奨する

NHCAP 外来患者のエンピリック

治療において,ニューキノロン系薬を用いることは推奨されるか。

CQ17 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.142
かった40 例が対象となった。有効率は87.5% であった。因果関係が否定できない有害事象は6 例(肝機能障害3 例,腎機能障害2 例,下痢および乳房緊満感1 例)であった。

いずれも,研究期間中に対象医療機関を受診した患者のうちで,どのような除外がなされたかが定量的に評価されておらず,attrition bias の評価が不可能であった。そのため,有効率から,内服ニューキノロン系薬の投与がなくてもよくなった率を引くことで求められる真の効果は不明である。3 編(113 例)の範囲内では,重篤な有害事象は認めなかった。

二次スクリーニングを実施した文献のなかに,注射薬のシプロフロキサシンを使用したRCT 後にMRSA のアウトブレイクが起こった有害事象報告1 編5),ニューキノロン系薬使用と結核リスクについての注意喚起レター1 編6),ニューキノロン系薬使用と,ワルファリンの薬物相互作用7),好中球減少8),耐糖能異常9),けいれん10)の有害事象報告がそれぞれ1 編含まれていた。

結 果

1.生命予後(死亡率)(重要度9 点)

死亡に関してはRR 3.0(95%CI 0.33-27.2,p=0.612)エビデンスの強さ(非常に弱い)と介入群で多い結果となったが,有意差はみられず,用量がシプロフロキサシン750mg を1 日2 回と細菌学的以外の効果も存在した。  エビデンスの確実性はD  。

2.初期治療効果(重要度8 点)

初期治療効果についてはRR 1.1(95%CI 0.81-1.49, p=0.771)と有意差は認められなかった。  エビデンスの確実性はD  。

3.副作用(重要度7 点)

副作用についてもRR 0.67 (95%CI 0.21-2.12, p=0.731)と有意差は認められなかった。  エビデンスの確実性はD  。システマティックレビューのまとめ

NHCAP 外来患者の治療において,ニューキノロン系薬をエンピリック治療として用いることの有用性は認めらなかった(  エビデンスの確実性はD  )。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱いRCTは1 編しか存在せず,効果量を推定可能なコントロールを置いた観察研究は存在しなかったため,エビデンスレベルは非常に弱い(  エビデンスの確実性はD  )。

2)‌益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実で

はないRCTでは有益性を証明できず。観察研究では有効性は高いもののコントロール群がないため有益性の判断ができない。有害事象,MRSA や結核への影響が害となる。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る患者は外来治療がオプションにあることを好む。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違) 正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っている外来治療が可能であることは大きな利益である。

委員会における討論内容と結果

外来治療はHAP ではなく,NHCAP の患者に対して行われる。NHCAP において使用できる抗菌薬の選択肢は少なく,実際の臨床の現場ではニューキノロン系薬を選択することが多いという意見がある一方で,NHCAPにニューキノロン系薬を推奨した場合の問題点として,特に高齢者で頻度が増加する結核感染をマスクしてしまうことや,ニューキノロン耐性肺炎球菌の蔓延を助長させることを懸念する意見もあった。そこで,当初の推奨草案は「NHCAP 外来患者の治療において,ニューキノ
p.143
ロン系薬をエンピリック治療薬として用いることを弱く推奨する」であったが,これを「NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,レスピラトリーキノロンを治療薬の1 つとすることを弱く推奨する」に変更し,投票を行った。学術的COI がある委員7 名を除く9 名で投票を行い,9/9 名(100%)が「実施することを弱く推奨する」を支持し,同意率が70% 以上のため採用が決定した。

弱い推奨となった背景の1 つであるニューキノロン耐性については,ナーシングホームの居住歴,ニューキノロン系薬の使用歴,医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)患者に耐性肺炎球菌の増加の報告11)があるため,NHCAP 患者に対するニューキノロン系薬の使用は抑制的であることが望ましいと考えた。また,肺結核の問題については,NHCAP が対象ではないが,肺炎患者にニューキノロン系薬を用いることにより,結核感染症の発見の遅れや予後の悪化についての報告が複数ある12)-16)。わが国はいまだ結核の中等度まん延国であり,かつ高齢者に結核の発症が多いことから,ニューキノロン系薬を用いる場合には,結核の鑑別は必須である。しかしながら,長引く咳と痰や体重減少などのいくつかの症状に結核を疑う傾向はあるものの,外来初診段階での肺結核と肺炎の特異度の高い鑑別方法は存在しない。結核菌のニューキノロン耐性化を予防するために短期間(5 日間)の使用を推奨している報告16)や,ニューキノロン系抗菌薬でもトスフロキサシンは結核に感受性を有していないとの報告がある。

以上のような委員会の議論から,ニューキノロン系薬の選択においてはリスクとベネフィットを勘案し,投与前には結核の鑑別診断を念頭に置いて行うべきであるという結論に達し,推奨文に「ただし,副作用,耐性化の可能性,および肺結核との鑑別を考慮することが必要である」を付け加えた。

●文 献1)Peterson PK, Stein D, Guay DR, et al. Prospective study of

lower respiratory tract infections in an extended-care nursing home program:potential role of oral ciprofloxacin. Am J Med. 1988;85:164-71. 2)西田千夏,川波敏則,矢寺和博,他.医療・介護関連肺炎にお

けるガレノキサシンの有効性 ・ 安全性に関する検討. 新薬と臨牀 2013;62:701-9.

3)高久千仁勢,日高隆信. 医療・介護関連肺炎に対するモキシフ

ロキサシン錠の有用性 ―簡易懸濁法を用いた前向き臨床試験―. Jpn J Antibiot. 2013;66:59-70. 4)山崎 啓,矢寺和博,川波敏則,他.医療・介護関連肺炎に対

するモキシフロキサシンの 有効性と安全性に関する検討. Jpn J Antibiot. 2013;66:283-92. 5)Manhold C, von Rolbicki U, Brase R, et al. Outbreaks of

Staphylococcus aureus infections during treatment of late onset pneumonia with ciprofloxacin in a prospective, randomized study. Intensive Care Med. 1998;24:1327-30. 6)Leung JA, Caminero JA. Empirical use of fluoroquinolones

for chest infections may mask tuberculosis and jeopardise chances of survival. Int J Tuberc Lung Dis. 2012;16:1137. 7)Elbe DHT, Chang SW. Moxifloxacin-Warfarin interaction:a

series of five case reports. Ann Pharmacother. 2005;39: 361-4. 8)Berk V, Demiraslan H, Berk E, et al. Moxifloxacin-associated

neutropenia. Scand J Infect Dis. 2013;45:415-6. 9)Onyenwenyi AJ, Winterstein AG, Hatton RC. An evaluation

of the effects of gatifloxacin on glucose homeostasis. Pharm World Sci. 2008;30:544-9. 10)Quigley C A, Lederman JR. Possible Gatifloxacin-Induced

Seizure. Ann. Pharmacother. 2003;38:235-7. 11)Kang CI, Song JH, Kim SH, et al. Risk factors for levofloxa-

cin-nonsusceptible Streptococcus pneumoniae in community-acquired pneumococcal pneumonia: a nested case-control study. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2014;33:55-9. 12)Ho PL, Tse WS, Tsang KW, et al. Risk factors for acquisition

of levofloxacin-resistant Streptococcus pneumoniae: a casecontrol study. Clin Infect Dis. 2001;32:701-7. 13)Yoon YS, Lee HJ, Yoon HI, et al. Impact of fluoroquinolones

on the diagnosis of pulmonary tuberculosis initially treated as bacterial pneumonia. Int J Tuberc Lung Dis. 2005:9: 1215-9. 14)Wang JY, Hsueh PR, Jan IS, et al. Empirical treatment with

a fluoroquinolone delays the treatment for tuberculosis and is associated with a poor prognosis in endemic areas. Thorax. 2006;61:903-8. 15)van der Heijden YF, Maruri F, et al. Fluoroquinolone expo-

sure prior to tuberculosis diagnosis is associated with an increased risk of death. Int J Tuberc Lung Dis. 2012;16: 1162-7. 16)Shen GH, Tsao TC, Kao SJ, et al. Does empirical treatment of

community-acquired pneumonia with fluoroquinolones delay tuberculosis treatment and result in fluoroquinolone resistance in Mycobacterium tuberculosis? Controversies and solutions. Int J Antimicrob Agents. 2012;39:201-5. H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.144
CQ

18 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

De-escalation 群とnon de-escalation 群の2 群間比較で,アウトカムとして,「入院中死亡」「28 日以内死亡」「入院日数」「ICU 入院日数」「人工呼吸器管理日数」「肺炎の再燃」を評価した。

採用論文

11 編〔ランダム化比較試験(RCT)1 編,観察研究10編〕を選択した1)-11)。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるInverse-variance method (RevMan 5.3)を用い,効果指標はオッズ比(OR)とした。

結果-RCT 論文について(1 編)

11)

アウトカムとして,ICU 入院日数と,入院中死亡,14日間以内死亡,28 日以内死亡について検討しているが,いずれもde-escalation とnon de-escalation の2 群間での有意差は認められず,de-escalation の有効性のエビデンスは出せなかったと結論付けている。

結果-観察研究について(10 編)

1)-10)

1.入院中死亡(9 点)

全10 編1)-10)を対象としてメタアナリシスを実施した。結果はde-escalation治療のほうがリスクが低い傾向を示したが(OR 0.78,95%CI 0.46-1.17,p=0.19),有意差はなかった(図1)(  エビデンスの確実性はC  )。

2.28 日以内死亡(9 点)

3 編2)5)9)についてはde-escalation のほうがリスクありの傾向であったが,こちらも有意水準には達しなかった(OR 1.12,95%CI 0.58-2.17,p=0.74)(図2)(  エビデンスの確実性はC  )。

3.入院中死亡に対する層別解析

観察研究でもあり,個々の研究の治療内容,患者クライテリア(positive or negative cultures,等),患者のHAP severity,de-escalation の定義などが異なるため,入院中死亡についてはさらに層別解析で検討を加えた。IDSA/ATS (2005 年)等の肺炎診療ガイドラインの導入

HAP/NHCAP の治療において,de-escalation 治療を行うことを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

HAP/NHCAP 治療において, de-escalation は推奨されるか。

CQ18 推奨

推奨の強さ
p.145
前後を比較(ガイドラインはde-escalation を推奨)したbefore and after 研究群とde-escalation とnon de-escalation 治療の直接比較の研究群の入院中死亡の層別解析では,before and after 研究群(5 編)

1)2)4)6)9)は2 群間に

有意差はなかった(図3)(  エビデンスの確実性はC  )。4.治療

治療の直接比較研究群(5 編)

3)5)7)8)10)では,de-escala-

tion がnon de-escalation 治療よりも入院中死亡に対するリスクが有意に低いという結果であった(OR 0.37, 95%CI 0.16,0.85,p=0.02)(図4)(  エビデンスの確

0.1 0.01 10 100 1

Ibraham 2001 Soo Hoo 2005 Kollef 2006 Dellit 2008 Joffe 2008 Lancaster 2008 Eachempati 2009 Shcelueter 2010 Kett 2011 Joung 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.36; Chi2=36.75, df=9 (p<0.0001); l2=76%全体的な影響の検定: Z=1.31 (p=0.19)

27 18 15 46 134 8 26 2 45 1

322 52 61 88 459 550 50 77 55 129 44

1,565 IV,Random,95%Cl 21 25 26 38 48 5 24 7 37 13

244 50 56 61 360 189 50 57 18 174 93

1,108 2001 2005 2006 2008 2008 2008 2009 2010 2011 2011

IV, Random, 95%Cl 10.6% 10.8% 10.9% 13.3% 13.9% 7.6% 11.3% 5.0% 12.9% 3.8% 100.0% 1.49[0.68‒3.26] 0.52[0.24‒1.11] 0.28[0.13‒0.59] 0.94[0.60‒1.49] 0.95[0.65‒1.39] 1.71[0.52‒5.66] 0.70[0.35‒1.42] 0.06[0.01‒0.32] 1.98[1.19‒3.31] 0.14[0.02‒1.13]

0.73[0.46‒1.17]

イベント数症例数

De-escalation治療Non de-escalation

治療ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

図1  入院中死亡に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Soo Hoo 2005 Joffe 2008 Kett 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.25; Chi2=8.25, df=2 (p=0.02); l2=76%全体的な影響の検定: Z=0.33 (p=0.74)

14 106 45

165 61 550 129

740 IV,Random,95%Cl 21 32 37

90 56 189 174

419 2005 2008 2011

IV, Random, 95%Cl 27.0% 37.6% 35.4% 100.0% 0.50[0.22‒1.11] 1.17[0.76‒1.81] 1.98[1.19‒3.31]

1.12[0.58‒2.17]

イベント数症例数

De-escalation治療ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

Non de-escalation治療

図2  28日以内死亡に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Ibraham 2001 Soo Hoo 2005 Lancaster 2008 Dellit 2008 Kett 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.17; Chi2=10.05, df=4 (p=0.04); l2=60%全体的な影響の検定: Z=0.68 (p=0.50)

27 18 8 46 45

144 52 61 50 459 129

751 IV,Random,95%Cl 21 25 5 38 37

126 50 56 50 360 174

690 2001 2005 2008 2008 2011

M-H, Random, 95%Cl 18.2% 18.7% 11.1% 26.8% 25.2% 100.0% 1.49[0.68‒3.26] 0.52[0.24‒1.11] 1.71[0.52‒5.66] 0.94[0.60‒1.49] 1.98[1.19‒3.31]

1.18[0.73‒1.91]

イベント数症例数ガイドライン導入後ガイドライン導入前ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

ガイドライン導入後優位ガイドライン導入前優位

図3  入院中死亡に対する層別解析H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.146
実性はC  )。

5.HAP の重症度による層別解析

その他,HAP の重症度による層別解析〔対象患者が人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia: VAP)でICU 入室であるかどうか〕では,VAP studies群(8 編)

1)-5)7)9)10),less severe HAP studies 群(2 編) 6)8)ともに有意差はなかった(図5)(  エビデンスの確実性はC  )。

6.その他のアウトカム指標

その他のアウトカム指標(入院日数1)2)9),ICU 入院日数1)2)9),人工呼吸器管理日数2)9),肺炎の再燃1)7))についても,いずれも有意差は出なかった(図6)(  エビデンスの確実性はC  )。7.医療費

医療費については,de-escalation のほうがトータルコストが低いという結果の論文が1 編8)あるのみであった。

システマティックレビューのまとめ

本レビューでは,de-escalation 治療は,入院中死亡のリスクを下げるという傾向を示したものの,観察研究での結果であり,各研究の異質性も観察されていることから,  エビデンスの確実性はC  とした。

0.1 0.01 10 100 1

Kollef 2006 Joffe 2008 Eachempati 2009 Shcelueter 2010 Joung 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.59; Chi2=18.40, df=4 (p=0.001); l2=78%全体的な影響の検定: Z=2.34 (p=0.02)

15 134 26 2 1

178 88 550 77 55 44

814 IV,Random,95%Cl 26 48 24 7 13

118 61 189 57 18 93

418 2006 2008 2009 2010 2011

IV, Random, 95%Cl 23.9% 28.1% 24.5% 13.1% 10.4% 100.0% 0.28[0.13‒0.59] 0.95[0.65‒1.39] 0.70[0.35‒1.42] 0.06[0.01‒0.32] 0.14[0.02‒1.13]

0.37[0.16‒0.85]

イベント数症例数

De-escalation治療Non de-escalation治療ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

図4  治療に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Ibraham 2001 Soo Hoo 2005 Kollef 2006 Joffe 2008 Dellit 2008 Eachempati 2009 Kett 2011 Joung 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.13; Chi2=25.26, df=7 (p=0.0007); l2=72%全体的な影響の検定: Z=0.90 (p=0.37)

27 18 15 134 46 26 45 1

312 52 61 88 550 459 77 129 44

1,460 IV,Random,95%Cl 21 25 26 48 38 24 37 13

232 50 56 61 189 360 57 174 93

1,040 2001 2005 2006 2008 2008 2009 2011 2011

IV, Random, 95%Cl 14.0% 12.9% 11.9% 16.3% 14.2% 13.7% 14.9% 2.1% 100.0% 1.24[0.81‒1.88] 0.66[0.41‒1.07] 0.40[0.23‒0.69] 0.96[0.72‒1.28] 0.95[0.63‒1.43] 0.80[0.52‒1.24] 1.64[1.13‒2.38] 0.16[0.02‒1.20]

0.87[0.64‒1.18]

イベント数症例数

De-escalation治療Non de-escalation治療RRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

図5  HAP の重症度による層別解析
p.147
推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い(  エビデンスの確実性はC  ) de-escalation 治療の有効性を評価したRCT は1 編のみであり,生命予後に対する有効性は認められなかった。10 編の観察研究のシステマティックレビュー(SR)

の結果では,生命予後を改善する傾向が認められた(有意差はなし)が,各研究間の異質性も認めた。

2)‌益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実

多剤併用療法に伴う副作用による予後増悪が報告されており,過度な副作用を防ぐため原因微生物が判明次

-50 -100 0 50 100

-50 -100 0 50 100

-50 -100 0 50 100

0.1 0.01 10 100 1

Ibraham 2001 Soo Hoo 2005 Kett 2011合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.49, df=2 (p=0.78); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.82 (p=0.41)

34.2 36.9 16 26.2 30.9 14.2 33.1 30.9 11.9

SD IV,Random,95%Cl 52 61 129

242 50 56 174

280 39.3 36.9 17 2001 2005 2011

IV, Random, 95%Cl 5.9% 6.4% 87.7% 100.0% -5.10[-16.71-6.51] 0.00[-11.21-11.21] -1.00[-4.02-2.02]

-1.18[-4.01-1.65]

■入院日数

Ibraham 2001 Soo Hoo 2005 Kett 2011合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.16, df=2 (p=0.92); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.77 (p=0.44)

21.7 25.4 12 12.9 24.5 11.2

SD

17.4 23.2 12.7

SD IV,Random,95%Cl 52 61 129

242 50 56 174

280 23.1 24.7 13 2001 2005 2011

IV, Random, 95%Cl 15.8% 7.5% 76.8% 100.0% -1.40[-7.36-4.56]

0.70[-7.94-9.34] -1.00[-3.70-1.70] -0.94[-3.30-1.43]

■ICU 入院日数

Soo Hoo 2005 Kett 2011合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.84, df=1 (p=0.36); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.59 (p=0.56)

19 8 22.5 9

SD

19.1 11.9

SD IV,Random,95%Cl 61 129

190 56 174

230 16.3 9 2005 2011

IV, Random, 95%Cl 8.9% 91.1% 100.0% 2.70[-4.84-10.24] -1.00[-3.35-1.35]

-0.67[-2.92-1.57]

■人工呼吸器管理日数

■肺炎の再燃

Ibraham 2001 Eachempati 2009合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=1.05, df=1 (p=0.30); l2=5%全体的な影響の検定: Z=0.55 (p=0.58)

4 21

25 イベント数52 77

129 RR

イベント数症例数IV,Random,95%Cl 2 20

22 50 57

107 2001 2009

RR IV, Random, 95%Cl 10.8% 89.2% 100.0% 1.92[0.37-10.04] 0.78[0.47-1.29]

0.86[0.49-1.49]

SD平均平均症例数症例数

De-escalation治療Non de-escalation治療平均差

発表年平均差

研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

平均平均症例数症例数

De-escalation治療Non de-escalation治療平均差

発表年平均差

研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

比重

比重

平均平均症例数症例数

De-escalation治療Non de-escalation治療平均差

発表年平均差

研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

比重

症例数

De-escalation治療Non de-escalation

治療

発表年研究またはサブグループ

Non de-escalation治療優位De-escalation治療優位

比重

図6  入院日数,ICU 入院日数,人工呼吸器管理日数,肺炎の再燃に対するメタアナリシスH A P / N H C A Pの治療

C Q
p.148
第,狭域な抗菌薬へ変更することが必要である。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

ない患者は必ずしもde-escalation 治療を希望するとはいえない。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っている1 編の観察研究でde-escalation 群のほうが費用は低かったことが報告されており,コストの低下が期待できる。

委員会における討論内容と結果

学術的COI,経済的COI はなく,16 名で投票を行った。投票の結果,「実施することを強く推奨する」が1/16名(6.3%),「実施することを弱く推奨する」が14/16 名(87.5%),「実施しないことを弱く推奨する」が1/16 名(6.3%)となり,同意率が70% 以上になったため,「実施することを弱く推奨する」に決定した。

●文 献1)Ibrahim EH, Ward S, Sherman G, et al. Experience with a

clinical guideline for the treatment of ventilator-associated pneumonia. Crit Care Med. 2001;29:1109-15. 2)Soo Hoo GW, Wen YE, Nguyen TV, et al. Impact of clinical

guidelines in the management of severe hospital-acquired pneumonia. Chest. 2005;128:2778-87. 3)Kollef MH, Morrow LE, Niederman MS, et al. Clinical charac-

teristics and treatment patterns among patients with ventila- tor-associated pneumonia. Chest. 2006;129:1210-8.

4)Dellit TH, Chan JD, Skerrett SJ, et al. Development of a

guideline for the management of ventilator-associated pneumonia based on local microbiologic findings and impact of the guideline on antimicrobial use practices. Infect Control Hosp Epidemiol. 2008;29:525-33. 5)Joffe AR, Muscedere J, Marshall JC, et al;Canadian Critical

Care Trials Group. The safety of targeted antibiotic therapy for ventilator-associated pneumonia:a multicenter observational study. J Crit Care. 2008;23:82-90. 6)Lancaster JW, Lawrence KR, Fong JJ, et al. Impact of an in-

stitution-specific hospital-acquired pneumonia protocol on the appropriateness of antibiotic therapy and patient outcomes. Pharmacotherapy. 2008;28:852-62. 7)Eachempati SR, Hydo LJ, Shou J, et al. Does de-escalation of

antibiotic therapy for ventilator-associated pneumonia affect the likelihood of recurrent pneumonia or mortality in critically ill surgical patients? J Trauma. 2009;66:1343-8. 8)Schlueter M, James C, Dominguez A, et al. Practice patterns

for antibiotic de-escalation in culture-negative healthcareassociated pneumonia. Infection. 2010;38:357-62. 9)Kett DH, Cano E, Quartin AA, et al. Improving Medicine

through Pathway Assessment of Critical Therapy of Hospital-Acquired Pneumonia (IMPACT-HAP) Investigators. Implementation of guidelines for management of possible multidrug-resistant pneumonia in intensive care:an observational, multicentre cohort study. Lancet Infect Dis. 2011; 11:181-9. 10)Joung MK, Lee JA, Moon SY, et al. Impact of de-escalation

therapy on clinical outcomes for intensive care unit-acquired pneumonia. Crit Care. 2011;15:R79. 11)Kim JW, Chung J, Choi SH, et al. Early use of imipenem/

cilastatin and vancomycin followed by de-escalation versus conventional antimicrobials without de-escalation for patients with hospital-acquired pneumonia in a medical ICU:a randomized clinical trial. Crit Care. 2012;16:R28.
p.149
CQ

19 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ におけるアウトカムとして,「生命予後(病院内死亡率)」,「ICU 滞在期間」,「抗菌薬治療期間」を評価した。

採用論文

De-escalation,target,discontinuation therapies にて,耐性菌の関与についての記載があり,広域抗菌薬を初期治療に使用している研究を選択し検討した。全13編〔ランダム化比較試験(RCT)3 編1)2)14),観察研究10編3)-13)〕を選択し,うち2 編はantibiotics discontinuation therapy のRCT であった。耐性菌のアウトカムへの関与については,採用論文のデザイン的にメタアナリシスで統合値を推定することは困難であったため,質的に評価した(表1)。結 果

1.生命予後(病院内死亡率)(重要度9 点)

病院内死亡率をアウトカムとして,メタアナリシスを実施した。評価はRCT3 編1)2)13)〔オッズ比(OR)0.81, 95%CI 0.41-1.62,p=0.55〕,観察研究10 編3)-12)(OR) 0.81,95%CI 0.53-1.13,p=0.31)とRCT に観察研究を加えた全採用13 編1)-13)(OR 0.82,95%CI 0.58-1.15, p=0.24)について実施した。結果のばらつきは異なるものの,各解析の統合OR はほとんど同じ0.8 であり,広域抗菌薬の初期治療で死亡リスクが低くなる傾向を示したが,どの解析も有意差は認められなかった。

また,層別解析として,ガイドライン治療のbefore and after 研究を除くRCT3 編1)2)13)と観察研究5編5)7)9)10)12)をあわせた8 編でのメタアナリシスを行ったところ,広域抗菌薬の初期治療では有意にmortality のリスクが低くなることが確認された(OR 0.40,95%CI 0.20-0.80,p=0.009)(図1)。これはCQ18 で層別解析によるde-escalation vs. non de-escalation 治療の比較

耐性菌が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療を弱く推奨する。ただし,NHCAP,HAP の患者で,疾患末期や老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者に対しては,個人の意思を十分に確認し,医療チームとしてQOL を優先した抗菌薬投与の有無および種類の選択を決定する。

実施することを弱く推奨する

HAP/NHCAP 治療において,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は推奨されるか。

CQ19 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.150
表1  本SR に採用した論文の概略

研究(発表年)研究デザイン比較症例数(例)

(deescalation/ non deescalation)症例平均年齢(歳) APACHE

II/ III ¶ (score mean

± SD)投与した抗菌薬

Singh, 2000 年米国RCT discontinuation

vs. common practice 81 (39/42)推定VAP 69 ± 1.4 * 42.7 ± 2.2 ¶シプロフロキサシン

Micek, 2003 年米国RCT discontinuation

vs. common practice 290 (150/140)推定VAP 59.6 ± 17.2 22.8 ± 9.0 As protocol

Ibraham, 2001 年米国before-

and after- Guideline-

oriented de-escalation vs.

common practice 102 (52/50) VAP 59.4 ± 18.1 25.6 ± 7 § イミペネム,シプロフロキサ シン,パンコマイシン

Soo Hoo, 2005 年米国before-

and after- Guideline-

oriented de-escalation vs.

common practice 117 (61/56) ICU 入室重症VAP 68.0 ± 11.5 ** - As protocol

Kollef, 2006 年米国cohort De-escalation vs.

non deescalation *** 394 (88/306) ICU入室VAP 58.3 ± 17.9 22.8 ± 8.3 As protocol

Dellit, 2008 年カナダbefore-

and after- Guideline-

oriented de-escalation vs.

common practice 384 (216/168) VAP 49 (range, 5-92) ** - As protocol

Joffe, 2008 年カナダcohort * Targeted therapy vs. non targeted

therapy 739 (550/189) VAP 58.8 ± 17.5 † 19.3 ± 6.1 §広域抗菌薬(50.9 %)シプロフロキサシン,メロペネム,セフタジジムなど。

Lancaster,

2008 年米国before-

and after- Guideline-

oriented de-escalation vs.

common practice 100 (50/50) HAP および

VAP 65.8 ± 16.3 * 11.1 ± 4.9 § As protocol

Eachempati,

2009 年米国cohort De-escalation

vs. non deescalation *** 134 (77/57) VAP 62.8 ± 3.3 79.3 ± 3.2 ¶初回治療では,タゾバクタム・ピペラシリンとセフェピム,レボフロキサシン,イミペネム・シラスタチン,メロペネムのいずれかを1ヵ月ごとにローテーションして併用投与。バンコマイシンはエンピリックに投与可能であったが,ローテーションに含めなかった。

Schlueter,

2010 年米国cohort De-escalation

vs. non deescalation *** 102 (77/25) HCAP 59.4 ± 16.9 - モキシフロキサシン

Joung, 2011 年韓国cohort De-escalation

vs. non deescalation *** 137 (44/93) ICU における

肺炎61 ± 16.1 15.0 ± 8.0カルハペネム系薬はピペラシリン・タゾバクタムにdeescalation した。ピペラシリン・タゾバクタムはセフェピムもしくは第三世代セフェム系薬にde-escalationした。

Kett, 2011 年米国before-

and after- Guideline-

oriented de-escalation vs.

common practice 303 (129/174) ICU における

肺炎61 ± 14 21 ± 8 § As protocol

Kim, 2012 年韓国RCT De-escalation

vs.non deescalation

*** 109 (54/55) ICU における

HAP および

VAP 66.4 (IQR, 61-77) ** 23.3 ± 5.6イミペネム・シラスタチンとバンコマイシン

before- and after-:ガイドラインに準拠した治療の実施前後を比較した研究,*:RCT の二次解析,†:VAP 患者の管理に関してその地域で作成された診療ガイドライン,§:ガイドライン治療またはde-escalation 治療群のAPACHEIIスコア,¶:APACHEIII,**:陽性登録培養による標的治療実施症例の平均年齢,***:non de-escalation 治療にはescalation 治療と治療を変更しない例も含まれる。
p.151
研究のmortality についてのメタアナリシス結果と合致する。

対象患者の重症度別のmortality へのリスクをAPACHE II score の記載がある研究間でAPACHE II score ≧21 と≦20 で層別解析を行った(図2,3)。APACHE II score ≧21 では広域抗菌薬の初期治療のmortality リスクが高く(OR 1.13,95%CI 0.68-1.89, p=0.63),score ≦20 では低く (OR 0.86,95%CI 0.35-

2.10,p=0.74)なる傾向が観察されたが,両者ともに有意差はなかった。

耐性菌がアウトカムへ与える影響について質的に評価したが,死亡率へのリスクについて,OR 1.0 以上を示した研究3)5)8)11)13)のうち,experimental 群とcontrol 群の主要病原体を示した4 編3)8)11)13)では,3 編3)11)13)がex-

0.1 0.01 10 100 1

Sigh 2000 Micek 2003 Kollef 2006 Joffe 2008 Eachempati 2009 Schlueter 2010 Joung 2011 Kim 2012合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.71; Chi2=45.93, df=7 (p<0.00001); l2=85%全体的な影響の検定: Z=2.60 (p=0.009)

5 48 15 134 26 2 1 23

254 39 150 88 550 77 77 44 54

1,079 IV,Random,95%Cl 39 52 84 48 24 7 13 18

285 42 140 306 189 57 25 93 55

907 2000 2003 2006 2008 2009 2010 2011 2012

IV, Random, 95%Cl 9.4% 15.7% 15.0% 16.2% 14.4% 8.6% 6.7% 14.0% 100.0% 0.01[0.00‒0.05] 0.80[0.49‒1.29] 0.54[0.30‒1.00] 0.95[0.65‒1.39] 0.70[0.35‒1.42] 0.07[0.01‒0.36] 0.14[0.02‒1.13] 1.53[0.70‒3.33]

0.40[0.20‒0.80]

初期治療実施優位初期治療非実施優位

イベント数症例数

初期治療実施初期治療非実施OR

イベント数症例数比重発表年OR

研究またはサブグループ

図1  生命予後(病院内死亡率)に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Ibraham 2001 Micek 2003 Kollef 2006 Kett 2011 Kim 2012合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.23; Chi2=13.67, df=4 (p=0.008); l2=71%全体的な影響の検定: Z=0.48 (p=0.63)

27 48 15 44 23

157 52 150 88 129 54

473 IV,Random,95%Cl 21 52 84 35 18

210 50 140 306 174 55

725 2001 2003 2006 2011 2012

IV, Random, 95%Cl 17.2% 22.9% 20.4% 22.2% 17.2% 100.0% 1.49[0.68‒3.26] 0.80[0.49‒1.29] 0.54[0.30‒1.00] 2.06[1.22‒3.46] 1.53[0.70‒3.33]

1.13[0.68‒1.89]

初期治療実施優位初期治療非実施優位

イベント数症例数

初期治療実施初期治療非実施OR

イベント数症例数比重発表年OR

研究またはサブグループ

図2  APACHE II score ≧21 の層別解析

0.1 0.01 10 100 1

Lancasater 2008 Joffe 2008 Joung 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.33; Chi2=4.16, df=2 (p=0.13); l2=52%全体的な影響の検定: Z=0.33 (p=0.74)

134 8 1

143 550 50 44

644 IV,Random,95%Cl 48 5 13

66 189 50 93

332 2008 2008 2011

IV, Random, 95%Cl 56.1% 29.5% 14.4% 100.0% 0.95[0.65‒1.39] 1.71[0.52‒5.66] 0.14[0.02‒1.13]

0.86[0.35‒2.10]

初期治療実施優位初期治療非実施優位

イベント数症例数

初期治療実施初期治療非実施ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

図3  APACHE II≦20 の層別解析H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.152
perimental 群の主要病原体に緑膿菌またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant S.aureus: MRSA)やメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillinsensitive S.aureus:MSSA)の割合が多かった。残りの1 編は,両群の主要病原体はほぼ同じと観察された。

OR 1.0 を下回った研究8 編1)2)4)6)7)9)10)12)中,experimental 群とcontrol 群のそれぞれの主要病原体を示した3 編1)4)6)のうち2 編1)4)では,control 群のほうが主要病原体に緑膿菌またはMRSA やMSSA の割合が多く,1 編6)はMRSA やMSSA の割合はほぼ同等であったが,control 群のほうがカルバペネム感受性アシネトバクターおよび カルバペネム耐性アシネトバクターの割合が多かった。Joung ら12)の報告では,全症例での MRSA 割合が37.6%と高値であったが,広域抗菌薬の初期投与のmortality リスクは(OR 0.14,95%CI 0.02-1.13)と低かった。  エビデンスの確実性はC  。

2.ICU 滞在期間(重要度8 点)

RCTs 1)2)13)のみを使用して解析した。結果はOR 1.68 (95%CI -4.08-7.44,p=0.57) とICU stay 期間が延長する傾向が観察されたが,統計的有意差は認められなかった。  エビデンスの確実性はC  。

3.抗菌薬治療期間(重要度7 点)

RCTs 1)2)13)のみを使用して解析した。結果は,OR -0.67(95%CI 2.92-1.57,p=0.56)と抗菌薬投与期間が短縮する傾向が観察されたが,統計的有意差は認められなかった。  エビデンスの確実性はC  。

システマティックレビューのまとめ

以上より,本SR では,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は,耐性菌をターゲットとしない抗菌薬投与群と比較して死亡のリスクを下げるという傾向があることを示した。しかし,耐性菌による治療効果への影響は質的な評価ではあるが,MRSA や緑膿菌の影響は観察されるも,確定的な結論は出せなかった。CQ に全く合致する研究デザインの報告はされておらず,広域抗菌薬での初期治療後の治療方法(deescalation かdiscontinuation か)やガイドライン治療であっても各研究の症例での広域抗菌薬の使用割合が異なると思われ,各研究の異質性も観察されていることか

ら,  エビデンスの確実性はC  とした。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱いCQ に全く合致する研究デザインの報告はされておらず,広域抗菌薬での初期治療後の治療方法(de-escalation かdiscontinuation か)やガイドライン治療であっても各研究の症例での広域抗菌薬の使用割合が異なり,各研究の異質性も観察されていることから,  エビデンスの確実性はC  である。

2)‌益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実で

はない今回のSR では明らかな害はないものの,益となる生命予後の改善,在院日数や抗菌薬投与期間の短縮は認められず,益と害のバランスが確実とはいえない。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る広域抗菌薬の使用を好むと思われる。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違) 正味の利益がコストや

資源に十分に見合っているか:見合っていない益は不確実だが,コストは高くなると思われる。

委員会における討論内容と結果

多剤耐性菌は,具体的にはMRSA,緑膿菌,ESBL 産生菌,アシネトバクター属を念頭に置いた。多剤耐性をカバーした抗菌薬の併用により,有害事象が多くなることをガイドラインのなかで言及すべきとの意見があった。推奨草案は,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療を弱く推奨する,とし,このCQ に対する学術的COI を有する1 名,経済的COI を有する1 名を除いた14 名で投票を行った。

投票の結果,「実施することを弱く推奨する」が10/14名(71.4%),「実施しないことを弱く推奨する」が 3/14
p.153
名(21.4%),「実施しないことを強く推奨する」が1/14名(7.1%), となり,同意率が70% 以上になったため,「実施することを弱く推奨する」に決定とした。

以下に,多剤耐性菌にをカバーする抗菌薬治療について,委員会の意見を補足する。

今回委員会では院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)およびVAP 患者を中心とする解析を行ったが,医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)に関しては,RCT は存在せず後ろ向きの観察研究のみであるが,わが国や韓国のNHCAP 患者のコホート研究からは,分離された耐性菌に有効な抗菌薬の有無は,予後との相関はみられず,誤嚥や低栄養,performance status の低さが予後と相関するという報告もなされている13)-17)。NHCAP および誤嚥を疑う肺炎では,耐性菌を考慮した広域抗菌薬の投与の有効性については不明である。

一方,NHCAP およびHAP の患者において,医療倫理的な側面からは,老衰あるいは疾患末期などの不可逆的な死の局面にある終末期の患者に,併発する疾病の治療を行うか否かについては,単なる延命に終わるのであれば,QOL を優先し,治療を控えるという選択肢もありうるとされている18)。近年,がん末期の患者の死亡直前の病態が明らかになってきている19)20)。また老衰についても研究が進んでおり21),これらの科学的エビデンスに基づき,プライマリケアの主治医や原疾患の主治医の意見を参考に,不可逆的な死の過程にある終末期と判断される場合には,本人の予後を見通して,全体として延命がQOL 保持と両立しない場合には,医学的介入は延命ではなくQOL を優先する選択肢もありうることを説明し,個人の意思,あるいは個人の意思を知る家族の意見を尊重した医療を行う18)。抗菌薬の選択はその目的に沿ったものであることも推奨される。個人の意思が確認できない場合や,十分な治療を望む場合には,フローチャートに従って重症度と薬剤耐性菌の可能性を考慮した抗菌薬選択を行う。いずれの場合も,診療方針の決定に当たっては,本人,あるいは家族の意思を十分尊重し,主治医単独ではなく,医療,介護を行うメディカルスタッフがチームとして判断を行うべきであり22),医療機関にはそのためのサポート体制を整備することを提唱する。

以上のような議論を経て,現在までのエビデンスの集積の状況と,本ガイドラインのフローチャートの基本的考え方から,「ただし,NHCAP,HAP の患者で,疾患

末期や老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者に対しては,個人の意思を十分に確認し,医療チームとしてQOL を優先した抗菌薬投与の有無および種類の選択を決定する」を付け加えて,推奨文とした。

●文 献1)Singh N, Rogers P, Atwood CW, et al. Short-course empiric

antibiotic therapy for patients with pulmonary infiltrates in the intensive care unit. A proposed solution for indiscriminate antibiotic prescription. Am J Respir Crit Care Med. 2000;162:505-11. 2)Micek ST, Ward S, Fraser VJ, et al. A randomized controlled

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through Pathway Assessment of Critical Therapy of Hospital-Acquired Pneumonia(IMPACT-HAP)Investigators. Implementation of guidelines for management of possible multidrug-resistant pneumonia in intensive care: an H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.154
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17)中塚賀也,森本千絵,安田一行,他. 医療・介護関連肺炎ガ

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イドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として. 2012. http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/pdf/jgs_ ahn_gl_2012.pdf 19)聖隷三方原病院.症状緩和ガイドライン.E. 予後の予測.

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りの時期および死期の推定.東京有明医療大学雑誌.2014; 6:13-19. 22)厚生労働省.人生の最終段階における医療の決定プロセスに

関するガイドライン(平成19年発表,27年改訂).http://www. mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000078981.pdf
p.155
CQ

20 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ で最重要視したアウトカムは「生命予後」であり,その他には「初期治療効果」「入院期間」「再燃」「費用」も重要視した。

採用論文

本CQ に対するシステマティックレビュー(SR)については,『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に“Short-course versus prolonged-course antibiotic therapy for hospital-acquired pneumonia in critically ill adults”という本CQ に対応するレビューがすでにあり1),2015 年8 月にアップデートされていることから,新たな系統的レビューは行わず,『The Cochrane Database of Systematic Reviews』の内容をまとめることとした。結 果

1.生命予後(死亡率)(重要度9 点)

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)を含む院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)に対する短期間抗菌薬治療(8 日以内)と長期間治療(10 ~15 日)を比較したRCT を検索したところ,6 編1,088 例2)-7)が該当した。1 編6)にVAP 以外の患者が半数程度(81 例中34 例)含まれている他はほとんどの対象者(92%)がVAP であった。生命予後については,28 日死亡率が短期間群でオッズ比(OR)1.18 (95%CI 0.77-1.8)であった。Imprecision でグレードダウンして  エビデンスの確実性はB  。また,この結果は原因菌に応じた層別化を行った場合も変わらなかった〔ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌:OR 0.95(95%CI 0.39-2.27),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant S.aureus:MRSA):OR 1.28(95%CI 0.32- 5.09)〕。初期治療効果については,短期間群でOR 0.75 (95%CI 0.49-1.15)という結果であった。Imprecisionおよび,risk of bias でグレードダウンして  エビデンスの確実性はD  。以下,forest plot を示す(図1)。

HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間を弱く推奨する。ただし,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌では再燃のリスクがある。

実施することを弱く推奨する

HAP/NHCAP 治療において, 1 週間以内の比較的短期間の治療期間は推奨されるか。

CQ20 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.156
2.初期治療効果(重要度8 点)

初期治療効果については,短期間群でOR 0.75 (95%CI 0.49-1.15)という結果であった(図2)。Impre- cision および,risk of bias でグレードダウンして  エビデ

ンスの確実性はD  。

0.1 1 0.01 100 10

1 NF-GNB Chastre 2003a Kollef 2012小計(95%CI)イベント数: 23 (短期間治療), 22 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.12; Chi2=1.33, df=1 (p=0.25); I2=25%全体的な影響の検定: Z=0.13 (p=0.90)

2 MRSA Chastre 2003a小計(95%CI)イベント数: 6 (短期間治療), 5 (長期間治療)異質性評価: 不適合全体的な影響の検定: Z=0.35 (p=0.73)

3 Non NF-GNB/MRSA Chastre 2003a小計(95%CI)イベント数: 16 (短期間治療), 11 (長期間治療)異質性評価: 不適合全体的な影響の検定: Z=1.21 (p=0.23)

4 原因菌不明Fekih Hassen 2009 Kollef 2012小計 (95%CI)イベント数: 14 (短期間治療), 16 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.0; Chi2=0.19, df=1 (p=0.67); I2=0.0%全体的な影響の検定: Z=0.47 (p=0.64)

合計 (95%CI)総イベント数: 59 (短期間治療), 54 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.0; Chi2=2.85, df=5 (p=0.72); I2=0.0%全体的な影響の検定: Z=0.76 (p=0.45)サブグループ間の差に対する検定: Chi2=0.84, df=3 (p=0.84), I2=0.0% M-H, Random,95%CI

M-H, Random,95%CI n/N n/N

19/63 3/20

83

5/21

21

11/120

120

6/16 10/68

84

308 28.8%

8.4% 37.1%

9.4% 9.4%

27.0% 27.0%

8.1% 18.3% 26.4%

100.0% 0.71[0.32‒1.56]

1.89[0.44‒8.18] 0.95[0.39‒2.27]

1.28[0.32‒5.09] 1.28[0.32‒5.09]

1.65[0.73‒3.73] 1.65[0.73‒3.73]

0.93[0.21‒4.11] 1.37[0.51‒3.69] 1.22[0.53‒2.78]

1.18[0.77‒1.80]

15/64 8/32

96

6/21

21

16/112

112

5/14 9/47

61

290

研究またはサブグループ短期間治療長期間治療比重OR OR

短期間治療優位長期間治療優位

図1  生命予後(死亡率)に対するメタアナリシスPugh R, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(8):CD007577, CJohn Wiley and Sons. (文献1より引用)
p.157
3.入院期間(重要度8 点)

入院期間については,短期間治療群で平均-1 日(95%CI -4.11-2.11)という結果であった(図3)。Im- precision および,risk of bias でグレードダウンして  エ

ビデンスの確実性はD  。

0.1 1 0.01 100 10

1 NF-GNB Kollef 2012小計 (95%CI)イベント数: 13 (短期間治療), 11 (長期間治療)異質性評価: 不適合全体的な影響の検定: Z=1.28 (p=0.20)

2 原因菌不明Capellier 2012 Kollef 2012 Medina 2007小計 (95%CI)イベント数: 149 (短期間治療), 160 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.0; Chi2=1.13, df=2 (p=0.57); I2=0.0%全体的な影響の検定: Z=0.91 (p=0.36)

合計 (95%CI)総イベント数: 162 (短期間治療), 171 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.0; Chi2=1.82, df=3 (p=0.61); I2=0.0%全体的な影響の検定: Z=1.33 (p=0.18)サブグループ間の差に対する検定: Chi2=0.68, df=1 (p=0.41), I2=0.0% M-H, Random,95%CI

M-H, Random,95%CI n/N n/N

11/20

20

92/109 39/68 29/37

214 234 14.8%

14.8%

34.6% 33.0% 17.6% 85.2%

100.0% 0.48[0.16‒1.48]

0.48[0.16‒1.48]

1.08[0.52‒2.23] 0.71[0.34‒1.50] 0.57[0.21‒1.60] 0.81[0.51‒1.28]

0.75[0.49‒1.15]

13/35

35

99/116 23/47 27/40

203 238

研究またはサブグループ短期間治療長期間治療比重OR OR

短期間治療優位長期間治療優位

図2  初期治療効果に対するメタアナリシスPugh R, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(8):CD007577, CJohn Wiley and Sons.

(文献1より引用)

-10 0 -20 20 10

Fekih Hassen 2009合計 (95%CI)異質性評価: 不適合全体的な影響の検定: Z=0.63 (p=0.53)サブグループ間の差に対する検定: 不適合

IV,Fixed,95%CI IV,Fixed,95%CI N N平均(SD)平均(SD)

16 16 33 (4.7) 100.0%

100.0% -1.00[-4.11‒2.11]

-1.00[-4.11‒2.11]

14 14 32 (4)長期間治療

短期間治療優位長期間治療優位

研究またはサブグループ比重平均差平均差短期間治療

図3  入院期間に対するメタアナリシスPugh R, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(8):CD007577, CJohn Wiley and Sons.

(文献1より引用) H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.158
0.1 1 0.002 500 10

1 NF-GNB Chastre 2003a Medina 2007小計 (95%CI)イベント数: 38 (短期間治療), 21 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.0; Chi2=0.16, df=1 (p=0.69); I2=0.0%全体的な影響の検定: Z=2.36 (p=0.018)

2 MRSA Chastre 2003a Medina 2007小計 (95%CI)イベント数: 8 (短期間治療), 10 (長期間治療)異質性評価: Tau2=1.99; Chi2=2.01, df=1 (p=0.16); I2=50%全体的な影響の検定: Z=0.34 (p=0.73)

3 Non NF-GNB/MRSA Chastre 2003a Medina 2007 Capellier 2012小計 (95%CI)イベント数: 36 (短期間治療), 33 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.03; Chi2=2.16, df=2 (p=0.34); I2=8%全体的な影響の検定: Z=0.50 (p=0.61)

4 原因菌不明Fekih Hassen 2009小計 (95%CI)イベント数: 2 (短期間治療), 2 (長期間治療)異質性評価: 不適合全体的な影響の検定: Z=0.14 (p=0.89)

合計 (95%CI)総イベント数: 84 (短期間治療), 66 (長期間治療)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=7.35, df=7 (p=0.39); I2=5%全体的な影響の検定: Z=1.65 (p=0.098)サブグループ間の差に対する検定: Chi2=1.96, df=3 (p=0.58), I2=0.0% M-H, Random,95%CI

M-H, Random,95%CI n/N n/N

16/63 5/22

85

9/21 1/6 27

28/120

2/9 3/109

238

2/16

16

366 25.8%

10.1% 35.9%

10.1% 1.2% 11.3%

36.5% 4.3% 8.4% 49.2%

3.7% 3.7%

100.0% 2.01[0.94‒4.28]

2.72[0.78‒9.52] 2.18[1.14‒4.16]

0.67[0.19‒2.33] 11.00[0.28‒433.80]

1.56[0.12‒19.61]

0.90[0.48‒1.66] 2.50[0.36‒17.50] 2.27[0.57‒9.01] 1.17[0.64‒2.14]

1.17[0.14‒9.59] 1.17[0.14‒9.59]

1.41[0.94‒2.12]

26/64 12/27

91

7/21 1/1 22

24/112

5/12 7/116

240

2/14

14

367

研究またはサブグループ短期間治療長期間治療比重OR OR

短期間治療優位長期間治療優位

図4  再燃に対するメタアナリシスPugh R, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(8):CD007577, CJohn Wiley and Sons.

(文献1より引用)
p.159
4.再燃(重要度8 点)

再燃については,短期間群でOR 1.41(95%CI 0.94- 2.12)であった。Imprecision とheterogeneity でグレードダウンして  エビデンスの確実性はC  (図4)。こちらに対しても,原因菌に応じた層別化を行うと,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌でのみ,OR 2.18(95%CI 1.14- 4.16)と有意に増加した。Imprecision にてグレードダウンして  エビデンスの確実性はB  。

5.費用(重要度5 点)

費用については,報告している研究がなかった。

6.その他

ガイドラインとして定められたアウトカム以外に,28日間での抗菌薬フリー期間については,短期間群で平均

4.02 日(95%CI 2.26-5.78)短縮したこと,また耐性菌

による二次感染が少なかった(OR 0.44,95%CI 0.21- 0.95)ことを付記する。

システマティックレビューのまとめ

VAP を含むHAP に対する短期間抗菌薬治療(8 日以内)と長期間治療(10 〜15 日)の比較では,上記のアウトカムはいずれも有意差がなかった(費用は報告がなかった)。再燃については,原因菌に応じた層別化を行うと,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌でのみ,OR 2.18 (95%CI 1.14-4.16)と有意に増加した。(  エビデンスの確実性はB  )。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いエビデンスは2015 年の『The Cochrane Database of Systematic Reviews』で報告されたメタアナリシスに基づくものであり,  エビデンスの確実性はB  と比較的強い。

2)益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

短期治療でも長期治療と遜色ないアウトカムを示していることから,益と害のバランスは確実といえる。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る患者にとっても短期治療は望ましく,患者の価値観や好みを反映しているといえる。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っている短期治療はコストの面でも有利であり,負担の確実さ(あるいは相違)や正味の利益がコストや資源に十分に見合っているといえる。

委員会における討論内容と結果

2015 年8 月にアップデートされた『The Cochrane Database of Systematic Reviews』を採用したが,多くのデータがVAP に関するもので「非直接性が強い」ため,  エビデンスの確実性はB  に下げるのが妥当と判断した。現在の『成人院内肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)で推奨する治療期間を10 日間としたのは,平均的な抗菌薬使用に関する統計によるものであった。委員会における投票では「実施することを弱く推奨する」が14/16 名(87.5%)で,「実施することを強く推奨する」が2/16 名(12.5%)であった。また,膿瘍化する菌の場合はより長期の治療期間を必要とするという意見があったことを付記する。

●文 献1)Pugh R, Grant C, Cooke RPD, et al. Short-course versus pro-

longed-course antibiotic therapy for hospital-acquired pneumonia in critically ill adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(8):CD007577. 2)Kollef MH, Chastre I, Clavel M, et al. A randomized trial of

7-day doripenem versus 10-day imipenem-cilastatin for ventilator-associated pneumonia. Crit Care. 2012;16:R218. 3)Fekih Hassen M, Ayed S, Ben Sik Ali H, et al. Duration of

antibiotic therapy for ventilator-associated pneumonia:comparison of 7 and 10 days. A pilot study. Ann Fr Anesth Reanim. 2009;28:16-23. 4)Chastre J, Wolff M, Fagon JY, et al. Comparison of 8 vs 15

days of antibiotic therapy for ventilator-associated pneumonia in adults: a randomized trial. JAMA 2003;290:2588-98. 5)Capellier G, Mockly H, Chapentier C, et al. Early-onset venti- H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.160
lator-associated pneumonia in adults randomized clinical trial: comparison of 8 versus 15 days of antibiotic treatment. PLoS One. 2012;7:e41290. 6)Singh N, Rogers P, Atwood CW, et al. Short-course empiric

antibiotic therapy for patients with pulmonary infiltrates in the intensive care unit:a proposed solution for indiscrimi- nate antibiotic prescription. Am J Respir Crit Care Med.

2000;162:505-511. 7)Medina J, Perez Protto S, Paciel D, et al. Antibiotic treat-

ment for the ventilator-associated pneumonia: 8 vs. 12 days randomized trial preliminary data[abstract]. Antimicrob Agents Chemother. 2007;51:361.
p.161
CQ

21 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

補助的ステロイド薬(adjunctive corticosteroid)使用群と非使用群の2 群間比較でアウトカムとして「生命予後(死亡率)」および「挿管・人工呼吸器使用」を評価した。

採用論文

ランダム化比較試験(RCT)やメタアナリシスを行った論文は認められず,観察研究7 編を選択した。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるInverse-variance method(RevMan 5.3)を用い,効果指標はオッズ比(OR)とした。

結 果

1.生命予後(重要度9 点)

7 編の観察研究1)-7)を対象としてメタアナリシスを実施した8)。該当患者はnon-HIV 患者であるが,そのなかには悪性腫瘍(血液悪性疾患含む),膠原病,慢性炎症性疾患など多彩な背景が含まれ,すでにステロイド薬が投

与されている患者など,背景は多彩である。各研究では層別化して詳細な解析が行われておらず,全研究を統合し層別化するのは困難である。また,補助的ステロイド薬の定義も研究ごとに異なっている。すでにステロイド薬が投与されている患者が一定数含まれることを考慮し,一定レベル以上に投与量を増量することを「adjunctive corticosteroids」と定義している研究がある一方,詳細な定義がなされていない研究もあるため,研究自体は不均一である。また,ステロイド薬の種類や投与方法・基準も研究ごとに異なっており,重症患者でより積極的にステロイド薬が併用されている可能性も否定できない。これらを踏まえたうえで「生命予後(死亡率)」をアウトカムとした場合,補助的ステロイド薬使用群でOR 1.26(95%CI 0.60-2.67)であり,有意差は認めなかった(図1)。結果にはやや異質性を認めるが,publication biasもみられないことから  エビデンスの確実性はC  とする。

2.低酸素血症を来した群における生命予後

(重要度9 点)

HIV患者におけるニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii pneumonia:PCP)では低酸素血症を来した群としてPaO2 <70Torr やA-aDO2 >35Torr を定義

non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎に対するステロイド薬投与を弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎治療において,ステロイド薬投与は推奨されるか。

CQ21 推奨

推奨の強さ

H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.162
し,この集団における補助的ステロイド薬使用の有効性が複数のRCT やメタアナリシスで確認されている。今回,non-HIV 患者において同様に低酸素血症を定義した群に対する補助的ステロイド薬使用の是非を検討した観察研究は3 編1)2)5)みられ,これらに対しメタアナリシスを行った。その結果,補助的ステロイド薬使用群においてOR 0.90(95%CI 0.44-1.83)で,有意差は認めなかった(図2)。結果には異質性を認めないが,publication biasの判断は困難であった。  エビデンスの確実性はC  とする。

3.低酸素血症を来した群における挿管・人

工呼吸器使用

その他のアウトカムとしてPaO2 <70Torrの低酸素血症を呈した群に対して「挿管・人工呼吸器使用」を評価した。これに関連する観察研究は2 編1)2)であり,こちらも補助的ステロイド薬使用群でOR 1.34(95%CI 0.44- 4.11)と有意差を認めなかった(図3)。結果には異質性は認めないが,研究,サンプル数が少なく,不精確性は否めないことから,  エビデンスの確実性はD  とする。

システマティックレビューのまとめ

以上より,non-HIV 患者のPCP に対する補助的ステロイド薬使用は,「生命予後(死亡率)」および「挿管・人工呼吸器使用」の点において使用・非使用いずれも推奨されない。ただし,観察研究での結果であり,異質性も高いため,  エビデンスの確実性はC  とした。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:弱い観察研究での結果であり,各研究間の異質性も高い。

0.1 0.01 10 100 1

Pareja 1998 Delclaux 1999 Roblot 2003 Bollee 2007 Moon 2011 Kim 2014 Kofteridis 2014合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.45; Chi2=11.13, df=6 (p=0.08); l2=46%全体的な影響の検定: Z=0.61 (p=0.54)

7 9 15 2 18 62 15

128 16 23 35 21 59 152 50

356 IV,Random,95%Cl 5 4 5 9 10 0 3

36 14 8 25 35 29 21 12

144 1998 1999 2003 2007 2011 2014 2014

IV, Random, 95%Cl 14.4% 12.9% 17.9% 12.7% 21.4% 5.8% 14.8% 100.0% 1.40[0.32-6.11] 0.64[0.13-3.25] 3.00[0.92-9.83] 0.30[0.06-1.57] 0.83[0.32-2.15] 29.70[1.77-499.37] 1.29[0.30-5.43]

1.26[0.60-2.67]

イベント数症例数

補助的ステロイド薬使用補助的ステロイド薬非使用ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

補助的ステロイド薬使用優位補助的ステロイド薬非使用優位

図1  生命予後(死亡率)に対するメタアナリシス

0.1 0.01 10 100 1

Pareja 1998 Delclaux 1999 Moon 2011合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.54, df=2 (p=0.76); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.30 (p=0.76)

7 9 18

34 16 23 59

98 IV,Random,95%Cl 5 4 10

19 14 8 29

51 1998 1999 2011

IV, Random, 95%Cl 23.5% 19.4% 57.1% 100.0% 1.40[0.32-6.11] 0.64[0.13-3.25] 0.83[0.32-2.15]

0.90[0.44-1.83]

イベント数症例数

補助的ステロイド薬使用補助的ステロイド薬非使用OR

イベント数症例数比重発表年OR

研究またはサブグループ

補助的ステロイド薬使用優位補助的ステロイド薬非使用優位

図2  低酸素血症を来した群における生命予後(死亡率)に対するメタアナリシス
p.163
2)益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実で

はない益,害ともに明らかでない。

3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

ない明らかでない。

4)負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っているステロイドのコストは低い。

委員会における討論内容と結果

委員のCOI は学術的COI,経済的COI ともになく, 16 名で投票を実施した。1 度目の投票の結果は,「実施することを弱く推奨する」が7/16 名(44%),「実施しないことを弱く推奨する」が7/16 名(44%),「棄権する」が2/16 名(12%)で,同意率が70% 以上を超えたものはなく,再度,委員の間で議論を行った。議論の内容としては,重症例に関して,「ステロイド薬投与を検討する」という文言を入れてみてはどうか。CAP のステロイド薬の使用とある程度,整合性をもたせるべきではないか。non-HIV のPCP に関しては,関節リウマチの患者で免疫抑制薬であったり,生物学的製剤を使用していたり,担がん患者ですでにステロイド薬を使用していたりということで,病態が複雑であるため,実際にはケースバイケースではないか,といった意見が挙がった。議論後に再投票を行った結果,「実施することを弱く推奨する」が12/16 名(75%),「実施しないことを弱く推奨する」が3/16 名(18.8%),「棄権する」が1/16 名(6.3%)とな

り,同意率が70% 以上になった「実施することを弱く推奨する」に推奨が決定した。

●文 献1)Pareja JG, Garland R, Koziel H. Use of adjunctive corticoste-

roids in severe adult non-HIV Pneumocystis carinii pneumonia. Chest. 1998;113:1215-24. 2)Delclaux C, Zahar JR, Amraoui G, et al. Corticosteroids as

adjunctive therapy for severe Pneumocystis carinii pneumonia in non-human immunodeficiency virus-infected patients:retrospective study of 31 patients. Clin Infect Dis. 1999;29:670-2. 3)Roblot F, Le Moal G, Godet C, et al. Pneumocystis carinii

pneumonia in patients with hematologic malignancies:a descriptive study. J Infect. 2003;47:19-27. 4)Bollee G, Sarfati C, Thiery G, et al. Clinical picture of Pneu-

mocystis jiroveci pneumonia in cancer patients. Chest. 2007; 132:1305-10. 5)Moon SM, Kim T, Sung H, et al. Outcomes of moderate-to-

severe Pneumocystis pneumonia treated with adjunctive steroid in non-HIV-infected patients. Antimicrob Agents Chemother. 2011;55:4613-8. 6)Kim SJ, Lee J, Cho YJ, et al. Prognostic factors of Pneumo-

cystis jirovecii pneumonia in patients without HIV infection. J Infect. 2014;69:88-95. 7)Kofteridis DP, Valachis A, Velegraki M, et al. Predisposing

factors, clinical characteristics and outcome of Pneumonocystis jirovecii pneumonia in HIV-negative patients. J Infect Chemother. 2014;20:412-6. 8)Fujikura Y, Manabe T, Kawana A, et al. Adjunctive cortico-

steroids for Pneumocystis jirovecii pneumonia in non-HIVinfected patients:a systematic review and meta-analysis of observational studies. Arch Bronconeumol. 2016:S0300- 2896(16)30208-3.

0.1 0.01 10 100 1

Pareja 1998 Delclaux 1999合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.88, df=1 (p=0.35); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.52 (p=0.60)

12 10

22 16 23

39 IV,Random,95%Cl 8 4

12 14 8

22 1998 1999

IV, Random, 95%Cl 52.0% 48.0% 100.0% 2.25[0.48-10.60] 0.77[0.15-3.86]

1.34[0.44-4.11]

イベント数症例数

補助的ステロイド薬使用補助的ステロイド薬非使用ORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

補助的ステロイド薬使用優位補助的ステロイド薬非使用優位

図3  低酸素血症を来した群における挿管・人工呼吸器使用に対するメタアナリシス

H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.164
CQ

22 Clinical Question

解 説

本CQ に対する推奨の作成に当たっては「23 価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン(pneumococcal polysaccharide vaccine 23:PPSV23)」「13 価蛋白結合型肺炎球菌ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine 13:PCV13)」「PCV13 とPPSV23 の連続接種(PCV13/PPSV23)」について各々システマティックレビュー(SR)を実施した。

1 PPSV23 について

アウトカム指標

PPSV23 接種群とプラセボ群の2 群間比較で,アウトカムとして,「全死亡」「肺炎死亡」「肺炎発症」「肺炎球菌性肺炎」「有害事象」「免疫原性」「医療費」を評価した。

採用論文

ランダム化比較試験(RCT)5 編と観察研究5 編,10論文を選択した1)-10)。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるInverse-variance method(RevMan 5.3.5)を用い,効果指標はオッズ比(OR)とした。

結果-RCT 論文(5 編)

1)-5)

「有害事象」「免疫原性」に関するRCTは存在しなかったため,「全死亡」

1)-3)5)「肺炎死亡」1)2)5)「肺炎発症」1)-5)

「肺炎球菌性肺炎」

1)2)4)5)に関して,メタアナリシスを行

い,「医療費」についてはRCT が1 編のみ2)であったので,5 編の観察研究6)-10)とあわせて,SR を行った。PPSV23 接種群とプラセボ群と比較したところ,以下の結果が得られた。

1.全死亡(重要度9 点)

4 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)-3)5)。OR 1.07(95%CI 0.86-1.32)で両群に差を認めなかった(図1)。症例数は十分(PPSV23 接種群1,319 例 vs. プラセボ群1,323 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。

2.肺炎による死亡(重要度9 点)

3 編のRCTによるメタアナリシスを行った1)2)5)。OR 0.62 (95%CI 0.38-1.01)で両群に差を認めなかった(図2)。

高齢者の肺炎予防に対して,肺炎球菌ワクチンの接種を推奨する。

実施することを強く推奨する

高齢者の肺炎予防において,肺炎球菌ワクチンは推奨されるか。

CQ22 推奨

推奨の強さ
p.165
症例数は十分(PPSV23 接種群1,232 例 vs. プラセボ群1,243 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。

3.肺炎発症(重要度8 点)

5 編のRCTによるメタアナリシスを行った1)-5)。OR 0.86 (95%CI 0.67-1.10)で両群に差を認めなかった(図3)。症例数は十分(PPSV23 接種群1,617 例 vs. プラセボ群1,621 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性は

B  とした。

4.肺炎球菌性肺炎の発症(重要度8 点)

4 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)2)4)5)。OR 0.45(95%CI 0.16-1.26)で両群に差を認めなかった。症例数は十分(PPSV23 接種群1,226 例 vs. プラセボ群1,234 例)であった(図4)。以上より,  エビデンスの確

0.2 0.05 5 20 1

Ortqvist 1998 Furumoto 2008 Kawakami 2010 Maruyama 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.51, df=3 (p=0.92); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.57 (p=0.57)

29 7 23 89

148 339 87 391 502

1,319 M-H,Random,95%Cl 28 7 25 80

140 352 80 387 504

1,323 1998 2008 2010 2010

M-H, Random, 95%Cl 18.8% 4.6% 15.4% 61.2% 100.0% 1.08[0.65-1.77] 0.92[0.34-2.51] 0.91[0.53-1.58] 1.12[0.85-1.47]

1.07[0.86-1.32]

イベント数症例数

PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図1  RCT によるメタアナリシス―全死亡(PPSV23)

0.2 0.05 5 20 1

Ortqvist 1998 Maruyama 2010 Kawakami 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.97, df=2 (p=0.62); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.91 (p=0.06)

2 13 11

26 339 502 391

1,232 M-H,Random,95%Cl 3 26 13

42 352 504 387

1,243 1998 2010 2010

M-H, Random, 95%Cl 7.4% 55.0% 37.6% 100.0% 0.69[0.12-4.12] 0.50[0.26-0.97] 0.84[0.38-1.85]

0.62[0.38-1.01]

イベント数症例数

PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重発表年

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図2  RCT によるメタアナリシス―肺炎による死亡(PPSV23)

0.5 0.1 0.2 2 5 10 1

Alfageme 2006 Furumoto 2008 Kawakami 2010 Maruyama 2010 Ortqvist 1998合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.04; Chi2=8.93, df=4 (p=0.06); l2=55%全体的な影響の検定: Z=1.22 (p=0.22)

37 13 67 63 63

243 298 87 391 502 339

1,617 M-H,Random,95%Cl 39 12 81 104 57

293 298 80 387 504 352

1,621 M-H, Random, 95%Cl 18.1% 8.9% 24.9% 25.1% 22.9%

100.0% 0.95[0.62-1.44] 1.00[0.48-2.05] 0.82[0.61-1.10] 0.61[0.46-0.81] 1.15[0.83-1.59]

0.86[0.67-1.10]

イベント数症例数PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図3  RCT によるメタアナリシス―肺炎発症(PPSV23)肺炎の予防

C Q
p.166
実性はB  とした。

2013 年の『The Cochrane Database of Systematic Reviews』

11)では,今回のSR と同様の検討を行っており,肺炎発症および肺炎球菌性肺炎の発症で差を認めていたが,今回の結果では差を認めなかった。これは,『The Cochrane Database of Systematic Reviews』では,PPSV 全体を対象研究にしていたことに対し,本メタアナリシスでは,PPSV23 のみを対象としたために,該当症例数が減少したことに起因すると考えられた。

結果-わが国からの報告を対象にしたRCT

1.全死亡(重要度9 点)

3 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)-3)。OR 1.06(95%CI 0.84-1.35)で両群に差を認めなかった(図5)。症例数は十分(PPSV23 接種群980 例 vs. プラセボ群971 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。2.肺炎による死亡(重要度9 点)

2 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)2)。OR 0.62(95%CI 0.37-1.02)で両群に差を認めなかった(図6)。症例数は十分(PPSV23 接種群893 例 vs. プラセボ群891 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。

3.肺炎発症(重要度8 点)

3 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)-3)。OR 0.73(95%CI 0.57-0.94)で肺炎発症の抑制効果を認めた(図7)。症例数は十分(PPSV23 接種群980 例 vs. プラセボ群971 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。

4.肺炎球菌性肺炎の発症(重要度8 点)

2 編のRCT によるメタアナリシスを行った1)2)。OR 0.36(95%CI 0.20-0.64)で肺炎球菌性肺炎の抑制効果を認めた(図8)。症例数は十分(PPSV23 接種群589 例vs. プラセボ群584 例)であった。以上より,  エビデンスの確実性はB  とした。

0.2 0.05 5 20 1

Ortqvist 1998 Alfageme 2006 Furumoto 2008 Maruyama 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.64; Chi2=9.87, df=3 (p=0.02); l2=70%全体的な影響の検定: Z=1.52 (p=0.13)

19 0 1 14

34 339 298 87 502

1,226 M-H,Random,95%Cl 16 5 5 37

63 352 298 80 504

1,234 1998 2006 2008 2010

M-H, Random, 95%Cl 37.0% 10.0% 15.1% 37.9% 100.0% 1.25[0.63-2.47] 0.09[0.00-1.62] 0.17[0.02-1.53] 0.36[0.19-0.68]

0.45[0.16-1.26]

イベント数症例数

PPSV23接種プラセボORイベント数症例数比重発表年

OR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図4  RCT によるメタアナリシス―肺炎球菌性肺炎の発症(PPSV23)

0.05 0.2 5 20 1

Furumoto 2008 Kawakami 2010 Maruyama 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.51, df=2 (p=0.77); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.50 (p=0.62)

7 23 89

119 87 391 502

980 M-H,Random,95%Cl 7 25 80

112 80 387 504

971 M-H, Random, 95%Cl 5.7% 19.0% 75.3%

100.0% 0.92[0.34-2.51] 0.91[0.53-1.58] 1.12[0.85-1.47]

1.06[0.84-1.35]

イベント数症例数PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図5  わが国の報告を対象としたRCT によるメタアナリシス―全死亡(PPSV23)
p.167
わが国からの報告のみを対象にしたRCT に限定した場合にメタアナリシスの結果が異なる理由として,わが国からの臨床研究はより高齢で,老人保健施設入所中や慢性閉塞性肺疾患等の高リスクグループをより多く対象としていることが1 つの要因として考えられた。また,肺炎球菌性肺炎発症に関しては,文献5 が含まれていることにより,肺炎球菌性肺炎に対する予防効果を打ち消していると考えられた。文献5 では,肺炎球菌性の菌の同定を培養検査に加えて,抗肺炎球菌抗体を使用しているため,研究対象が肺炎による入院患者であることを考えると,PPSV23 接種群でも偽陽性が増えている可能性があり解釈に注意が必要であると考えられた。

5.医療費抑制効果(重要度6 点)

Kawakami らの研究のみ3)が該当研究となり医療費抑制効果を認めた。

6.有害事象(重要度7 点)・免疫原性(重要度6 点)

今回,対象とした5 つのRCT のなかには存在せず,新たな検索およびメタアナリシスは行わなかった。

0.05 0.2 5 20 1

Kawakami 2010 Maruyama 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.96, df=1 (p=0.33); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.87 (p=0.06)

11 13

24 391 502

893 M-H,Random,95%Cl 13 26

39 387 504

891 M-H, Random, 95%Cl 40.6% 59.4%

100.0% 0.84[0.38-1.85] 0.50[0.26-0.97]

0.62[0.37-1.02]

イベント数症例数PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図6  わが国の報告を対象としたRCT によるメタアナリシス―肺炎による死亡(PPSV23)

0.05 0.2 5 20 1

Furumoto 2008 Kawakami 2010 Maruyama 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=2.84, df=2 (p=0.24); l2=30%全体的な影響の検定: Z=2.44 (p=0.01)

13 67 63

143 87 391 502

980 M-H,Random,95%Cl 12 81 104

197 80 387 504

971 M-H, Random, 95%Cl 10.9% 44.2% 44.9%

100.0% 1.00[0.48-2.05] 0.82[0.61-1.10] 0.61[0.46-0.81]

0.73[0.57-0.94]

イベント数症例数PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図7  わが国の報告を対象としたRCT によるメタアナリシス―肺炎発症(PPSV23)

0.05 0.2 5 20 1

Furumoto 2008 Maruyama 2010合計(95%Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.42, df=1 (p=0.52); l2=0%全体的な影響の検定: Z=3.46 (p=0.0005)

1 14

15 87 502

589 M-H,Random,95%Cl 5 37

42 80 504

584 M-H, Random, 95%Cl 7.4% 92.6%

100.0% 0.18[0.02-1.54] 0.38[0.21-0.69]

0.36[0.20-0.64]

イベント数症例数PPSV23接種プラセボRRイベント数症例数比重

RR研究またはサブグループ

PPSV23接種優位プラセボ優位

図8  わが国の報告を対象としたRCT によるメタアナリシス―肺炎球菌性肺炎の発症(PPSV23)

肺炎の予防

C Q
p.168
結果-観察研究

「全死亡」「肺炎死亡」「肺炎発症」「肺炎球菌性肺炎」に関しては十分な数のRCT を採用していると考えられるので,観察研究は採用していない。医療費抑制効果に関しては,KawakamiらのRCTとは別に海外からPPSV23の医療費抑制効果を示す5 つの観察研究を認めた6)-10)。

まとめ

以上より,成人におけるCAPの予防において PPSV23は有用である(  エビデンスの確実性はB  )。

2 PCV13 について

PubMed,Cochrane Library,NGC を対象に文献検索を行い38 編を対象に一次スクリーニングを行った。その結果,採用条件を満たす診療ガイドライン(clinical practice guideline:CPG)5 編を確認した。その他,タイトル,アブストラクトからCQ に合致するRCT  5編12)-16),観察研究 1 編17)の計6 編を抽出した。これら6編については,異なる検索式を用いたPCV13/PPSV23の一次スクリーニング結果に,すべて含まれていた。これらの個別研究論文を用い,新規のSR も可能と考えられたが,2014 年に米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)より成人を対象とした肺炎球菌ワクチン接種に関する勧告12)が策定され,最新のRCT 17)の結果を踏まえてPCV13 接種を推奨する内容であることから,今回新たにSR を実施する必要性は少ないものと考えられた。

3 PCV13/PPSV23 について

アウトカム指標

PCV13/PPSV23 群とPPSV23 群の2 群間比較で,アウトカムとして,「全死亡」「肺炎死亡」「肺炎発症」「肺炎球菌性肺炎」「有害事象」「免疫原性」「医療費」を評価した。採用論文

「全死亡」「肺炎死亡」「肺炎発症」「肺炎球菌性肺炎」「有害事象」「医療費」について検討したRCT は存在しなかった。「免疫原性」を評価したRCT2 編18)19)を選択した。メタアナリシスにはランダム効果モデルによるInverse-variance method(RevMan 5.3.5)を用い,効果指標はOR とした。

結果-RCT 論文(2 編)

18)19)

1.免疫反応(重要度6 点)

2 編のRCT はいずれも免疫原性に関してオプソニン活性(opsonophagocytic assay:OPA)を用いてPCV13に含有されるserotype(1,3,4,5,6A,6B,7F,9V, 14,18C,19A,19F, 23F)を比較している。メタアナリシスの結果,3,6A,6B,9V,19F,23F の6 つのserotype において免疫原性が高いという結果が得られた。

1)OPA serotype 1

OPA serotype 1〔OR 1.83(95%CI 0.55-6.07)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図9)。

2)OPA serotype 4

OPA serotype 4〔OR 1.11(95%CI 0.86-1.42)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図10)。

3)OPA serotype 5

OPA serotype 5〔OR 2.09(95%CI 0.93-4.70)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図11)。

4)OPA serotype 7F

OPA serotype 7F〔OR 2.71(95%CI 0.94-7.78)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図12)。

5)OPA serotype 14

OPA serotype 14〔OR 1.08(95%CI 0.59-2.01)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図13)。
p.169
6)OPA serotype 18C

OPA serotype 18C〔OR 1.65(95%CI 0.99-2.76)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図14)。

7)OPA serotype 19A

OPA serotype 19A〔OR 1.75(95%CI 0.82-3.73)〕では免疫原性に有意差は認められなかった(図15)。

8)OPA serotype 3

OPA serotype 3〔OR 1.60(95%CI 1.33-1.92)〕では免疫原性が有意に高かった(図16)。9)OPA serotype 6A

OPA serotype 6A〔OR 3.99(95%CI 2.68-5.92)〕では免疫原性が有意に高かった(図17)。

10)OPA serotype 6B

OPA serotype 6B〔OR 1.99(95%CI 1.37-2.89)〕では免疫原性が有意に高かった(図18)。

11)OPA serotype 9V

OPA serotype 9V〔OR 1.45(95%CI 1.00-2.12)〕では免疫原性が有意に高かった(図19)。

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.72; Chi2=24.34, df=1 (p<0.00001); l2=96%全体的な影響の検定: Z=0.99 (p=0.32)

0 1.22377543 SE IV,Random,95%Cl 0.14613801 0.20043639

IV, Random, 95%Cl 50.6% 49.4% 100.0% 1.00[0.75-1.33] 3.40[2.30-5.04]

1.83[0.55-6.07]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図9  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 1(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.99, df=1 (p=0.32); l2=0%全体的な影響の検定: Z=0.79 (p=0.43)

0 0.26236426 SE IV,Random,95%Cl 0.16446296 0.20686995

IV, Random, 95%Cl 61.3% 38.7% 100.0% 1.00[0.72-1.38] 1.30[0.87-1.95]

1.11[0.86-1.42]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図10  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 4(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.30; Chi2=8.34, df=1 (p=0.04); l2=88%全体的な影響の検定: Z=1.78 (p=0.07)

0.33647224 1.16315081 SE IV,Random,95%Cl 0.17428491 0.22716072

IV, Random, 95%Cl 51.6% 48.4% 100.0% 1.40[0.99-1.97] 3.20[2.05-4.99]

2.09[0.93-4.70]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図11  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 5(PCV13/PPSV23)

肺炎の予防

C Q
p.170
12)OPA serotype 19F

OPA serotype 19F〔OR 1.99(95%CI 1.12-3.53)〕では免疫原性が有意に高かった(図20)。

13)OPA serotype 23F

OPA serotype 23F〔OR 3.04(95%CI 2.16-4.26)〕では免疫原性が有意に高かった(図21)。

PPSV23 とPCV13 の連続接種の順序に関しては,2 本のRCT において,いずれもPCV13 を先行して接種する順序を採用しており,現時点で,PPSV23 の先行接種が大多数を占めるわが国においては,この免疫原性に関する結果は慎重に適応する必要があると考えられた。

現時点で,一般的に成人において感染を予防する免疫原性の閾値はわかっておらず,肺炎予防の効果を評価す

るうえで,本SR に関する免疫原性の結果は慎重に適応されなければいけないとも考えられた。先行研究のなかでPPSV23 とPCV7 の連続接種とPPSV23 の接種を比較したRCT は存在したが,今回のSR からは除外するとともに,PCV7 に関する研究も除外した。

結果-観察研究

今回のSR では,観察研究は採用していない。

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.52; Chi2=9.75, df=1 (p=0.002); l2=90%全体的な影響の検定: Z=1.85 (p=0.06)

0.47000363 1.54756251 SE IV,Random,95%Cl 0.21340804 0.27116329

IV, Random, 95%Cl 51.2% 48.8% 100.0% 1.60[1.05-2.43] 4.70[2.76-8.00]

2.71[0.94-7.78]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図12  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 7F(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.15; Chi2=4.44, df=1 (p=0.04); l2=77%全体的な影響の検定: Z=0.26 (p=0.80)

-0.22314355 0.40546511 SE IV,Random,95%Cl 0.19588539 0.22483258

IV, Random, 95%Cl 51.5% 48.5% 100.0% 0.80[0.54-1.17] 1.50[0.97-2.33]

1.08[0.59-2.01]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図13  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 14(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.09; Chi2=3.04, df=1 (p=0.08); l2=67%全体的な影響の検定: Z=1.92 (p=0.05)

0.26236426 0.78845736 SE IV,Random,95%Cl 0.18351924 0.23927353

IV, Random, 95%Cl 54.3% 45.7% 100.0% 1.30[0.91-1.86] 2.20[1.38-3.52]

1.65[0.99-2.76]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図14  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 18C(PCV13/PPSV23)
p.171
まとめ

以上より,本SR の結果から,成人の肺炎予防に対してPCV13 とPPSV23 の連続接種はPPSV23 の単独接種より有用である(  エビデンスの確実性はC  )。推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いわが国で実施されたPPSV23 のRCT3 編より,  エビデンスの確実性はB  。

2)益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実

有害事象のSR は実施していないが,PCV13,PPSV23ともに不活化ワクチンで重篤な副作用の報告はほとんどない。0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.27; Chi2=11.56, df=1 (p=0.0007); l2=91%全体的な影響の検定: Z=1.44 (p=0.15)

0.18232156 0.95551145 SE IV,Random,95%Cl 0.13190209 0.18528046

IV, Random, 95%Cl 51.4% 48.6% 100.0% 1.20[0.93-1.55] 2.60[1.81-3.74]

1.75[0.82-3.73]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図15  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 19A(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.00, df=1 (p=1.00); l2=0%全体的な影響の検定: Z=5.00 (p<0.00001)

0.47000363 0.47000363 SE IV,Random,95%Cl 0.1141777 0.16527821

IV, Random, 95%Cl 67.7% 32.3% 100.0% 1.60[1.28-2.00] 1.60[1.16-2.21]

1.60[1.33-1.92]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図16  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 3(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=1.22, df=1 (p=0.27); l2=18%全体的な影響の検定: Z=6.85 (p<0.00001)

1.5260563 1.09861229 SE IV,Random,95%Cl 0.21120085 0.32384728

IV, Random, 95%Cl 66.5% 33.5% 100.0% 4.60[3.04-6.96] 3.00[1.59-5.66]

3.99[2.68-5.92]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図17  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 6A(PCV13/PPSV23)

肺炎の予防

C Q
p.172
3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る国の推奨,マスメディアの発信により肺炎球菌ワクチン接種の希望者は増加している。

4)負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っているPPSV23 は65 歳以上の高齢者と60 歳以上65 歳未満で心臓,腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV による免疫の機能に障害を有する人は定期接種の対象であり,国からの費用補助が受けられる。また,日本のRCT 2 編から厚生労働省は良好な医療費削減効果を算出しており,正味の利益がコストや資源に十分に見合っている。

PCV13 については海外のRCT 1 編のみであり,日本人を対象としたデータがないため,現在のところ定期接種ではなく,接種費用は自己負担である。

委員会における討論内容と結果

COI は学術的COI:1 名,経済的COI:4 名のため,全16 名中,11 名の委員で投票となった。その結果,「実施することを強く推奨する」が10/11 名(90.9%),「実施することを弱く推奨する」が1/11 名(9.1%)とな

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.14; Chi2=4.78, df=1 (p=0.03); l2=79%全体的な影響の検定: Z=2.34 (p=0.02)

0.40546511 0.99325177 SE IV,Random,95%Cl 0.16970367 0.20862543

IV, Random, 95%Cl 52.1% 47.9% 100.0% 1.50[1.08-2.09] 2.70[1.79-4.06]

1.99[1.12-3.53]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図20  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 19F(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.02; Chi2=1.49, df=1 (p=0.22); l2=33%全体的な影響の検定: Z=3.63 (p=0.0003)

0.53062825 0.91629073 SE IV,Random,95%Cl 0.19254294 0.25021154

IV, Random, 95%Cl 58.6% 41.4% 100.0% 1.70[1.17-2.48] 2.50[1.53-4.08]

1.99[1.37-2.89]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図18  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 6B(PCV13/PPSV23)

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.48, df=1 (p=0.49); l2=0%全体的な影響の検定: Z=1.95 (p=0.05)

0.26236426 0.53062825 SE IV,Random,95%Cl 0.25182103 0.29620731

IV, Random, 95%Cl 58.0% 42.0% 100.0% 1.30[0.79-2.13] 1.70[0.95-3.04]

1.45[1.00-2.12]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図19  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 9V(PCV13/PPSV23)
p.173
り,同意率が70% 以上となった「実施することを強く推奨する」に推奨が決定した。

●文 献1)Maruyama T, Taguchi O, Niederman MS, et al. Efficacy of

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ministration of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine

0.1 0.2 0.5 5 2 10 1

Greenberg 2014 Jackson 2013合計(95%Cl)異質性評価: Tau2=0.00; Chi2=0.38, df=1 (p=0.53); l2=0%全体的な影響の検定: Z=6.42 (p<0.00001)

1.02961942 1.25276297 SE IV,Random,95%Cl 0.21673453 0.28700513

IV, Random, 95%Cl 63.7% 36.3% 100.0% 2.80[1.83-4.28] 3.50[1.99-6.14]

3.04[2.16-4.26]

PPSV23 優位PCV13/PPSV23 優位

log[OR] OR比重

OR研究またはサブグループ

図21  免疫反応に対するメタアナリシス―OPA serotype 23F(PCV13/PPSV23)

肺炎の予防

C Q
p.174
and 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine in pneumococcal vaccine-naive adults 60-64 years of age. Vaccine. 2014;32:2364-74. 19)Jackson LA, Gurtman A, van Cleeff M, et al. Influence of ini-

tial vaccination with 13-valent pneumococcal conjugate vac- cine or 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine on

anti-pneumococcal responses following subsequent pneumococcal vaccination in adults 50 years and older. Vaccine. 2013;31:3594-602.
p.175
CQ

23 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

「生命予後」(益9 点),「発症予防」(益8 点)の2 つを設定した。

採用論文

インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用することの臨床的有用性を検討するにあたり,ワクチン接種には下記の4 通りの組み合わせが考えられた。

1‌インフルエンザワクチン(TIV)+肺炎球菌ワクチ

ン(PPSV23)の両ワクチン接種群2インフルエンザワクチン単独接種(TIV 単独群) 3肺炎球菌ワクチン単独接種(PPSV23 単独群) 4いずれも接種せず(未接種群)したがって,1の両ワクチン接種群を介入群とし,コホートに応じて文献を整理し,2~4を対照群としてシステマティックレビュー(SR)を実施することとした。

一次スクリーニングで20 編の論文が探査対象となり,二次スクリーニングを経て,最終的には7 編の論文1)-7)を解析対象とし,メタアナリシスを行った。結 果

1.生命予後(重要度9 点)

「生命予後」については「全死亡(all-cause death)」をアウトカムとして含む論文を採用した。

1)両ワクチン接種群vs. 未接種群

スウェーデンと台湾で実施されたコホート研究2編1)2)では,両ワクチン接種群では,全死亡のリスク比(RR)0.59(95%CI 0.47-0.74,p <0.01)と,未接種群よりも有意に低い結果であった。

2)両ワクチン接種群vs. TIV 単独群

わが国で実施されたランダム化比較試験(RCT)が3編3)-5)存在する。両ワクチン接種群で死亡率が低い傾向がみられたが,有意水準には到達していなかった。

一方,海外で実施されたコホート研究2 編1)2)では,同様に両ワクチン接種群で死亡率が低く,全死亡のRR も0.59(95%CI 0.47-0.74,p <0.01)と,TIV 単独群よりも有意に低い結果となった。これらのコホート研究では,65 歳以上の高齢者のみを対象としており,高齢者では,肺炎球菌ワクチンの追加による影響が,より大きい

高齢者の肺炎予防に対して,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種を推奨する。

実施することを強く推奨する

高齢者の肺炎予防において,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか。

CQ23 推奨

推奨の強さ

肺炎の予防

C Q
p.176
可能性が示唆された。

なお,RCT1 編3)で肺炎球菌性肺炎による死亡例を抽出して比較しており,この場合はp =0.0105 と有意な死亡率の低下が認められた。

わが国で実施されたRCT3 編の対象者は,慢性呼吸器疾患,慢性基礎疾患を有する症例,および高齢者施設の患者である。これに基づき,SR による  エビデンスの確実性はB  とする。

2.発症予防(重要度8 点)

「発症予防」については「肺炎(all-cause pneumonia)」をアウトカムとして含む論文を採用した。

1)両ワクチン接種群vs. 未接種群

海外のコホート研究3 編1)2)6)で解析可能であった。これらはいずれも高齢者を対象(65 歳以上2 編,75 歳以上1 編)としていたが,両ワクチン接種群では未接種群と比較して,“すべての肺炎”による入院が有意(p < 0.01)に減少していた。両ワクチン接種群で未接種群に比して肺炎発症例が有意に少ない傾向が認められた

(RR 0.70,95% CI 0.55-0.88,p=0.0024)(図1)。I 2=93.6と,研究間の異質性は大きかった。対象となる研究数は限られているが,Egger およびBegg の検定からは出版バイアスはみられない。  エビデンスの確実性はB  とする。

2)両ワクチン接種群 vs. TIV 単独群

わが国からのRCT3 編3)-5)では,すべての肺炎による入院は,両ワクチン接種群がTIV 単独群より有意(p=0.03)に減少していた。

海外のコホート研究3 編1)6)7)を対象に2 群間を比較したが,結果のばらつきが大きく,肺炎発症の抑制効果は確認されなかった(図2)。PPSV23 を用いた研究1)6)では,両ワクチン接種群でTIV 単独接種群に比して有意に肺炎発症例が少ない傾向が認められたが,文献7 の結果は大きく異なるため,全体としては有意水準に到達せず,I 2=90.6 と,研究間の異質性が大きいものと考えられた。対象となる研究数は限られているが,Egger およ

0.55 0.45 1.00 1.22 0.82 0.67

Christenson 2004 Hung 2010 Chang 2012 134,045

25,393 8,142

z=3.04 Q=21.73 p=0.0024 p=2e-05 tau2=0.04 I2=93.6

72,107 7,292 8,142 1,159

532 171

0.70[0.55‒0.88]

0.70[0.66‒0.75] 0.57[0.52‒0.62] 0.88[0.72‒1.07]

RE Model  IV 3,060

3,250

195 症例数 症例数 未接種 両ワクチン接種

肺炎RR[95%Cl]著者・発表年肺炎

RR

図1  発症予防に対するメタアナリシス―両ワクチン接種群 vs. 未接種群

0.67 0.55 1.49 1.22 1.82 1.00 0.82

Christenson 2004 Hung 2010 Honkanen 1999 29,346

2,076 18,488

z=1.1 Q=12.83 p=0.26929 p=0.00163 tau2=0.06 I2=90.55

72,107 7,792 19,549 1,159

532 145

0.85[0.63‒1.14]

0.75[0.68‒0.83] 0.72[0.62‒0.84] 1.18[0.93‒1.51]

RE Model  IV 628 197

116 症例数 症例数 TIV単独 両ワクチン接種

肺炎RR[95%Cl]著者・発表年肺炎

RR

図2  発症予防に対するメタアナリシス―両ワクチン接種群 vs. TIV 単独群
p.177
びBegg の検定からは出版バイアスはみられない。

わが国で実施されたRCT3 編の対象者は,慢性呼吸器疾患,慢性基礎疾患を有する症例,および高齢者施設の患者である。これに基づき,SR による  エビデンスの確実性はB  とする。

3)両ワクチン接種群 vs. PPSV23 単独群

コホート研究2 編1)6)を対象に解析したところ,両ワクチン接種群では,PPSV23 単独群に比べ,肺炎による入院が有意に少なかった(RR 0.75,95%CI 0.69-0.81, p <0.01)(図3)。両ワクチン接種群でPPSV23 単独群に比して有意に肺炎発症例が少ない傾向が認められた。両ワクチン接種群でPPSV23 単独群に比して有意に肺炎発症例が少ない傾向が有意に認められた。I 2=0 と,研究間の異質性は確認されなかった。対象となる研究数は限られているが,Egger およびBegg の検定からは出版バイアスはみられない。PPSV23 の接種状況等がわが国とは異なる海外でのコホート研究に基づくものであり,  エビデンスの確実性はB  とする。

システマティックレビューのまとめ

わが国で実施されたRCT3 編を中心に解析を行ったが,わが国ではTIV 接種率が高く,比較の対象として両ワクチンをいずれも接種していない群を設けることは困難であり,結果的に,TIV 接種者における肺炎球菌ワクチン接種の上乗せ効果を判定する形となった。この結果,死亡率については,両群間に差はみられなかったが,肺炎による入院については,ワクチン接種群のほうが有意に少ない結果であった。アウトカムの設定にあたり,各研究間で共通の項目として全死亡,肺炎を用いた

が,それぞれ,肺炎による死亡,肺炎球菌性肺炎による入院を設定した場合,より明確な結果が得られていた可能性がある。なお,これらのわが国における臨床研究の対象は慢性呼吸器疾患例,65 歳以上の高齢者,ナーシングホーム入所者など,特殊な背景を有することより結果の判断に留意すべきである。

コホート研究については,スウェーデンで実施された大規模な前向き調査を中心に,両ワクチン未接種群,各ワクチン単独群との細かい比較が可能であった。調査項目によっては,他の相反する研究結果との統合により明確な結果が得られなかったが,おおむね,両ワクチン接種群で死亡,肺炎発症の抑制効果が示唆される結果であった。

全体の  エビデンスの確実性はB  とする。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いわが国で実施されたRCT3 編を含む解析であり,  エビデンスの確実性はB  と判定したが,本ガイドライン記載事項として十分に推奨できるものと考える。

2)益と害のバランスは確実か:確実

良好な生命予後や発症予防効果など有益性が否定されるような害は生じない。

0.67 0.61 0.90 0.82 0.74

Christenson 2004 Hung 2010 29,346

1,875

z=6.85 Q=0.02 p=0 p=0.87778 tau2=0 I2=0

72,107 7,792

TIV単独両ワクチン接種

1,159

532 0.75[0.69‒0.81]

0.75[0.68‒0.83] 0.74[0.63‒0.87]

RE Model  IV 628 173

症例数症例数肺炎RR[95%Cl]著者・発表年肺炎

RR

図3  発症予防に対するメタアナリシス―両ワクチン接種群 vs. PPSV23単独群

肺炎の予防

C Q
p.178
3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る肺炎球菌ワクチンの定期接種導入に伴い,ワクチン接種の希望者は増加傾向にある。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っているPPSV23 とTIV はともに65 歳以上の成人,および60 ~65 歳未満で基礎疾患(心肺疾患,肝腎疾患,免疫機能低下など)を有する成人は定期接種の対象であり,公的費用補助が受けられる。わが国のRCT2 編から厚生労働省は正の医療費削減効果を算出している。

これらより,両ワクチン接種による正味の利益がコストや資源に十分に見合うと考える。

委員会における討論内容と結果

学術的および経済的COI を有する5 名を除く11 名の委員で投票がなされた。この結果,第1 回目の投票で11/11 名(100%)が「実施することを強く推奨」に投票し,この推奨に決定した。●文 献

1)Christenson B, Hedlund J, Lundbergh P, et al. Additive pre-

ventive effect of influenza and pneumococcal vaccines in elderly persons. Eur Respir J. 2004;23:363-8. 2)Chang YC, Chou YJ, Liu JY, et al. Additive benefits of pneu-

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23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents:double blind, randomised and placebo controlled trial. BMJ. 2010; 340:c1004. 4)Furumoto A, Ohkusa Y, Chen M, et al. Additive effect of

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effectiveness of pneumococcal vaccine on simultaneously administered influenza vaccine in preventing pneumonia and pneumococcal pneumonia among persons aged 65 years or older. Vaccine. 1999;17:2493-500.
p.179
CQ

24 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ の推奨度の決定に際しては,「生命予後改善」(重要度9 点),「肺炎発症抑制効果」(重要度8 点),「薬剤による副作用」(重要度7 点),「医療費抑制効果」(重要度6 点)をアウトカムとして重視する方針とした。

採用論文

成人のインフルエンザに対し,早期に抗インフルエンザ薬を投与することによる肺炎の予防効果,肺炎の予後への影響,およびインフルエンザ全体の予後への影響について検討した論文を対象に,スクリーニングを行った。さらに検索で採用した論文中の引用文献を参考にし,複数の論文を別に追加し,最終的に計9 編の論文を採用した1)-9)。

インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬の投与の効果について,近年相次いで複数のメタアナリシスが発表されている。2014 年以降だけでも4 編のメタアナリシス4)-6)8)が出版されているが,著者・結果が共通しているものも含まれることから実質的には2 編と考える。これらメタアナリシスの結果から,本CQ に対し,「肺炎の合

併(肺炎の発症予防)」「有害事象」および「全原因での入院率」がアウトカム指標として可能であり,これらについてSRを行った。肺炎の発症予防に関連して number needed to treat to benefit(NNTB)が計算されていることから,医療費抑制効果についても算出できる可能性はあるものの,肺炎の医療費は一様に算出できないため,アウトカムには加えなかった。

また,早期抗インフルエンザ薬の投与による「インフルエンザ関連肺炎の死亡率」と「インフルエンザ全体の死亡率」のアウトカム指標については先のメタアナリシスには触れられていないため,これらについては別途検索を行い,検討した。いずれもパンデミックインフルエンザ限定であるが,インフルエンザ関連肺炎の死亡率についてオセルタミビルについて観察研究1 編3),インフルエンザ全体の死亡率についてメタアナリシス1 編7)を採用した。

なお,2009 年に流行したインフルエンザ〔H1N1 (2009)〕は,通常の季節性インフルエンザと異なる疫学・臨床経過をとった可能性があり,抗インフルエンザ薬の効果や推奨に差があることが予想される。これについて,パンデミックインフルエンザ単独の研究の場合は区別して結果を示した(表1)。また,H5N1,H7N9 と

成人のインフルエンザ関連肺炎の予防に対して,早期(2 日以内)抗インフルエンザ薬投与を推奨する。

実施することを強く推奨する

成人のインフルエンザ関連肺炎の予防において,早期(2 日以内)抗インフルエンザ薬投与は推奨されるか。

CQ24 推奨

推奨の強さ

肺炎の予防

C Q
p.180
いった特殊なインフルエンザは解析の対象とはしなかった。

なお,本SR はノイラミニダーゼ阻害薬全般の効果を検索したものであるが,論文の大半はオセルタミビルとザナミビルである。ペラミビル,ラニナミビルについては比較試験1)2)や観察研究9)を基に定性的SR を施行した。

結 果

1.肺炎の発症予防(重要度8 点)

4 編(実質2 編) 4)-6)8)のメタアナリシスを対象としてシステマティックレビュー(SR)を実施した。「肺炎の合併」をアウトカムとした場合,オセルタミビル早期投与群ではリスク比(RR)0.55(95%CI:0.33- 0.90) 4)5)でありリスクの低下が確認された。ただし,より詳細なcase report form を用いた5 つの試験を統合するとRR 0.69(95%CI 0.33-1.44)

4)となり,有意差は認

められなかった。また,「下気道感染の合併」をアウトカムとした場合は,RR 0.56(95%CI 0.42-0.75)

8)となり

リスクの低下がみられた。一方,ザナミビル投与群では,RR は0.90(95%CI 0.58-1.40)

4)6)であり,有意差を認めなかった。ペラミビルは1 編の小規模な観察研究か

ら,オセルタミビルと比較した場合,肺炎の発症には有意差はみられなかった(p=1.00)

9)。

本CQ では抗インフルエンザ薬の「早期」投与が求められているが,一般に添付文書で規定されている48 時間以内の投与開始を「早期」とした場合,オセルタミビルについては対象を発症36 時間以内としたメタアナリシス,48 時間以内としたメタアナリシスがあり,いずれも対象としては十分である。一方,ザナミビルについては,時間について記載がない研究が含まれたメタアナリシスとなっている。なお,これらのメタアナリシスでは,インフルエンザウイルスによる肺炎や二次性細菌性肺炎を区別して言及されていない。また,肺炎診断時に胸部X 線など客観的検査が行われていない症例が多く含まれる(胸部X 線まで行っている研究は,ザナミビルに関するメタアナリシス内の研究2 編のみである)点に注意が必要である。以上を総合して,  エビデンスの確実性はB  であると考える。

2.有害事象(重要度8 点)

オセルタミビル,ザナミビルについては先の4 編4)-6)8)のメタアナリシスを参照した。オセルタミビルは「嘔気」についてRR 1.57(95%CI 1.14-2.15)

4)5),1.60

表1  各種インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬の効果に関する採用論文の内訳

パンデミックのみ対象パンデミック以外を含む

肺炎発症予防オセルタミビルN.A. 4)5)8)

ザナミビル4)6)ペラミビル9) *ラニナミビルN.A.

有害事象オセルタミビルN.A. 4)5)8)

ザナミビル4)6)ペラミビル1)2) *ラニナミビルN.A.

肺炎の死亡率オセルタミビル3)

N.A.ザナミビルN.A.ペラミビルラニナミビル

インフルエンザ全体の死亡率オセルタミビル

7) N.A.ザナミビルペラミビル9) *ラニナミビルN.A. N.A.

*:文献2,9はペラミビルとオセルタミビルとの比較。
p.181
(95%CI 1.29-1.99)

8),「嘔吐」についてRR 2.43(95%CI

1.75-3.38) 4)5),2.43(95%CI 1.83-3.23) 8)と複数のメタアナリシスでいずれも有意にリスクが増加した。なお,下痢については,RR 0.67(95%CI 0.46-0.98)

4)5),0.75

(95%CI 0.60-0.95)

8)と,複数のメタアナリシスにおい

てオセルタミビル投与群でリスクが減少した。また,オセルタミビル投与群では,心イベントについてRR 0.49 (95%CI 0.25-0.97)

4)5),0.75(95%CI 0.60-0.95) 8)であ

り,わずかながらリスクが減少した。なお,神経精神系への影響はRR 0.93(95%CI 0.43-2.03)

4)5),0.62(95%CI

0.26-1.45) 8)と有意差はみられず,その他深刻な有害事象でもRR 0.96(95%CI 0.51-1.80)

4)5),0.79(95%CI

0.43-1.47) 8)と有意差を認めなかった。ザナミビルについては,嘔気または嘔吐はRR 0.60(95%CI 0.39- 0.94) 4)6)であり,ザナミビル投与群においてリスク低下を認めた。深刻な有害事象については,RR 0.86(95%CI 0.49-1.50) 4)6)と有意差を認めなかった。ペラミビルについてはプラセボとの比較,オセルタミビルとの比較試験がそれぞれあり,いずれにおいても重篤な有害事象はみられず,対照薬と比較し有意差がみられた項目はなかった。

3.全原因での入院率

1 編のメタアナリシス8)で,オセルタミビル投与群においてRR 0.37(95%CI 0.17-0.81)とリスク減少を認めた。4.インフルエンザ関連肺炎の死亡率(重要度8 点)

パンデミックインフルエンザを対象とした1 編の観察研究3)を参照し,supplement を基に成人に限定し,新たにχ 2 検定を行った。前述のように早期治療を48 時間以内と定義した場合,Cox 回帰分析では治療を早期に開始するほど死亡率が低減する傾向がみられているものの, 48 時間以内の早期治療群と非早期治療群では死亡率について有意差は認めなかった〔RR 0.60(95%CI 0.21- 1.72)〕(表2)。

一方,時期は問わず抗インフルエンザ薬を投与した群としなかった群では,投与群で死亡率の低下を認めた(RR 0.20,95%CI 0.09-0.47,p=0.001)(表3)。

5.インフルエンザ全体の死亡率

パンデミックインフルエンザのみを対象とした1 編のメタアナリシス(meta-analysis of individual patient data)

7)を参照した。ノイラミニダーゼ阻害薬使用群では,非使用群と比較しステロイド薬,抗菌薬で調整したオッズ比(OR)が0.75(95%CI 0.64-0.87)であった。また,早期治療は非早期治療と比較し,同様に調整したOR は0.45(95%CI 0.38-0.54)であった。また,早期治療は非使用群と比較し,同様に調整したOR は0.38 (95%CI 0.27-0.54)であった。

表2  パンデミックインフルエンザへの早期治療介入が死亡回避に及ぼす効果(文献3サブ解析)

RR 95 %CI

Mortality(survived/dead)のOR 0.599 0.209 1.718 Cohort =late に対して0.933 0.830 1.084 Cohort =early に対して1.556 0.609 3.975解析対象の事例数(内訳:early/late)(例) 875(730/145)

(文献3 より引用)

表3  パンデミックインフルエンザへの治療介入が死亡回避に及ぼす効果(文献3サブ解析)

RR 95 %CI

Mortality (survived/dead) のOR 0.204 0.089 0.469 Cohort =治療なしに対して0.238 0.118 0.480 Cohort =治療ありに対して1.165 1.016 1.335解析対象の事例数(治療 なし/ あり)(例) 920(45/875)

(文献3 より引用)

肺炎の予防

C Q
p.182
まとめ

インフルエンザ関連肺炎の予防に関しては,オセルタミビルに限定して早期投与が有効である可能性が示唆される。しかしながら,厳密な定義に基づいた肺炎の診断が行われておらず,詳細なcase report form を用いた研究では有意差が認められなくなること,さらにザナミビルでは有意差を認めないことを考慮すると,断定的な結論を下すことはできず,さらなる知見の蓄積が必要な領域と考えられる。ペラミビルについてはオセルタミビルとの小規模な比較となるため判断は困難である。

有害事象として,オセルタミビルについては嘔気および嘔吐の有害事象のリスクがより高い点に注意が必要である。ザナミビルについてはオセルタミビルのように嘔気・嘔吐のリスクはみられない。

抗インフルエンザ薬の早期投与は,パンデミックインフルエンザにおいてインフルエンザ関連肺炎による死亡率が低下する傾向を認め,非使用と比較すると有意にリスクを低減した。また,パンデミックインフルエンザ全体として,抗インフルエンザ薬の早期投与により死亡率の低下を認めた。

主なアウトカム指標である成人のインフルエンザ関連肺炎の予防については,大規模なメタアナリシスがあるものの,肺炎の定義が明確でなく,結果も不安定なことから  エビデンスの確実性はB  とする。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強いエビデンスの確実性はB  と判定したが,本ガイドラインとして推奨できる範疇にあると考える。

2)‌益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

メタアナリシス2 編の結果より,オセルタミビルは消化器症状の誘発が懸念されるが,下痢および心イベントは有意に減少している。神経系への有害事象の有意差もない。3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

るインフルエンザと診断された患者の大半は特異的治療薬の処方を求める。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っている毎年のインフルエンザ罹患者の数を考えると,インフルエンザ関連肺炎発症の予防は医療費削減効果につながると考える。

委員会における討論内容と結果

学術的および経済的COI を有することが自己申告された4 名を除く12 名の委員で投票がなされた。この結果,第1 回目の投票で「実施することを強く推奨する」が9/12 名(75.0%),「実施することを弱く推奨する」が2/12 名(16.7%),「実施しないことを弱く推奨する」が1/12 名(8.3%)となり,「実施することを強く推奨する」に決定した。

●文 献1)Kohno S, Kida H, Mizuguchi M, et al. Efficacy and safety of

intravenous peramivir for treatment of seasonal influenza virus infection. Antimicrob Agents Chemother 2010;54: 4568-74. 2)Kohno S, Yen MY, Cheong HJ, et al. Phase III randomized,

double-blind study comparing single-dose intravenous peramivir with oral oseltamivir in patients with seasonal influenza virus infection. Antimicrob Agents Chemother. 2011;55: 5267-76. 3)Yang SG, Cao B, Liang LR, et al. Antiviral therapy and out-

comes of patients with pneumonia caused by influenza A pandemic (H1N1) virus. PLoS One. 2012;7:e29652. 4)Jefferson T, Jones MA, Doshi P, et al. Neuraminidase inhibi-

tors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev. 2014;4: CD008965. 5)Jefferson T, Jones M, Doshi P, et al. Oseltamivir for influenza

in adults and children:systematic review of clinical study reports and summary of regulatory comments. BMJ. 2014; 348:g2545. 6)Heneghan CJ, Onakpoya I, Thompson M, et al. Zanamivir for

influenza in adults and children:systematic review of clinical study reports and summary of regulatory comments. BMJ.
p.183
2014;348:g2547. 7)Muthuri SG, Venkatesan S, Myles PR, et al. Effectiveness of

neuraminidase inhibitors in reducing mortality in patients admitted to hospital with influenza A H1N1pdm09 virus infection:a meta-analysis of individual participant data. Lancet Respir Med. 2014;2:395-404. 8)Dobson J, Whitley RJ, Pocock S, et al. Oseltamivir treatment

for influenza in adults:a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. 2015;385:1729-37. 9)Yoshino Y, Seo K, Koga I, et al. Clinical efficacy of peramivir

in adult patients with seasonal influenza during the winter of 2012 in Japan. Clin Respir J 2015;9:228-32.

肺炎の予防

C Q
p.184
CQ

25 Clinical Question

解 説

アウトカム指標

本CQ について,システマティックレビュー(SR)を行った。文献検索の結果,人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)とそれ以外(非VAP)を扱った研究に分け,それぞれ「生命予後」「初回発症予防」「副作用」「再発予防」「医療費抑制」をアウトカムとして検討した。

採用論文

VAP では2013 年に『The Cochrane Database of Systematic Reviews』よりVAP 予防の口腔ケアに関し,35編のRCT(症例数 5,374 例)を対象としたSR が発表されており1),その内容から当CQ の主旨に沿う箇所を抽出した。非VAP ではランダム化比較試験(RCT)7編2)-8),非RCT 2 編9)10)を対象に,新規にSR を行った。結果-VAP

1.生命予後(重要度8 点)

15 編のRCT を解析し,死亡については,クロルヘキシジンによる口腔ケア実施群と非実施群との間に有意な差はみられなかった〔オッズ比(OR)1.10,95%CI 0.87- 1.38,p=0.44〕(  エビデンスの確実性はB  )。

また,クロルヘキシジン・歯磨き併用群とクロルヘキシジン単独群との間にも,差は認められなかった(OR 0.85,95%CI 0.62-1.16,p=0.31;4 件のRCT による) (  エビデンスの確実性はC  )。

2.初回発症予防(重要度8 点)

17 編のRCT によると,クロルヘキシジンを用いた口腔ケアにより,VAP 発症が40% 減少した(OR 0.6, 95%CI 0.47-0.77,p <0.001)(  エビデンスの確実性はB  )。一方,4 件のRCT によると,クロルヘキシジン・歯磨き併用群とクロルヘキシジン単独群との間には,差はなかった(OR 0.69,95%CI 0.36-1.29,p=0.24)(  エビデンスの確実性はC  )。

2 編の研究(高バイアス)でポピヨンヨードによる口腔ケアを生理食塩液使用群と比較しており,弱いエビデ

肺炎予防に対して,口腔ケアを行うことを弱く推奨する。

実施することを弱く推奨する

肺炎予防において,口腔ケアは推奨されるか。

CQ25 推奨

推奨の強さ
p.185
ンスではあるが,VAP 発症が有意に減少していた(OR 0.35,95%CI 0.19-0.65,p <0.001)(  エビデンスの確実性はD  )。

電動歯ブラシと手動歯ブラシの有用性の比較については,十分なエビデンスがなかった。

3.副作用(重要度7 点)

副作用については統計学的な検討はなされていないが,計2 件の報告で,口腔ケア実施群における口腔内の刺激作用,不快な味覚が挙げられていた。

再発予防,医療費抑制,については,扱っている文献は認められなかった。結果-非VAP

1.生命予後(重要度8 点)

RCT 7 編2)-8)を対象に解析を行ったところ,口腔ケア実施群と非実施群との間で死亡の差は認められず(RR 0.67,95%CI 0.41-1.09,p=0.11),I 2=34.3 と,研究間の異質性は軽度であった(図1)(  エビデンスの確実性はB  )。

なお,クロルヘキシジンを用いていない口腔ケアのみを抽出したところ(RCT1 編2),非RCT2 編9)10)),弱いエビデンスではあるが,介入群で有意に死亡が少ない結果であった (RR 0.63,95%CI 0.43-0.93,p=0.019) (図2)。I 2=0 と,研究間の異質性は認められなかった(  エビデンスの確実性はD  )。

0.14 0.02 7.39 1.00

Yoneyama 2002 DeRiso 1996 Fourrier 2000 Houston 2002 Segers 2006 Panchabhai 2009 Cabov 2010 182 180 30 291 469 164 30

z=1.61 Q=9.65 p=0.10674 p=0.14015 tau2=0.14 I2=34.33

184 173 30 270 485 136 30 14 2 3 6 8 14 1 RR[95%Cl]

0.67[0.41‒1.09]

0.46[0.25‒0.84] 0.21[0.05‒0.94] 0.43[0.12‒1.50] 2.16[0.54‒8.53] 1.29[0.45‒3.69] 0.89[0.46‒1.71] 0.33[0.04‒3.03]

RE Model  IV 30 10 7 3 6 19 3

口腔ケア実施口腔ケア非実施症例数死亡数著者・発表年症例数死亡数

RR

図1  生命予後に対するメタアナリシス(非VAP)

0.61 0.37 0.22 1.65 1.00

Yoneyama 2002 Bassim 2008 Adachi 2002 182 65 48

z=2.34 Q=1.8 p=0.01903 p=0.40574 tau2=0 I2=0

184 78 40 14 12 10 RR[95%Cl]

0.63[0.43‒0.93]

0.46[0.25‒0.84] 0.77[0.38‒1.57] 0.80[0.40‒1.58]

RE Model  IV 30 13 15

口腔ケア実施口腔ケア非実施症例数死亡数著者・発表年症例数死亡数

RR

図2  生命予後に対するメタアナリシス―クロルヘキシジン非使用口腔ケア例(非VAP)

肺炎の予防

C Q
p.186
2.初回発症予防(重要度8 点)

RCT7 編2)-8)を対象に解析し,口腔ケア実施群では,非実施群に比して肺炎の発症リスクが有意に少なかった(RR 0.54,95%CI 0.42-0.70,p=0)(図3)。I 2=0 と研究間の異質性は認められなかった(  エビデンスの確実性はB  )。

また,クロルヘキシジン非使用の場合2)9)も,弱いエビデンスではあるが,口腔ケア実施群で肺炎発症が有意に少なく(RR 0.57,95%CI 0.35-0.92,p=0.02),I 2=0 と研究間の異質性は認められなかった(図4)(  エビデンスの確実性はD  )。

再発予防,副作用,医療費抑制については,これらを扱った研究は認められなかった。システマティックレビューのまとめ

口腔ケアにより,常在細菌量の減少,ひいては種々の病態による肺炎の発症抑制効果が期待される。今回は, VAP と非VAP(嚥下障害,寝たきり,意識障害などを背景とした誤嚥性肺炎を含む)のそれぞれについて,個別に解析した。この結果,VAP と非VAP のいずれにおいても,肺炎発症の予防効果が示された。これに伴い,直接的なエビデンスを欠くものの,肺炎の発症抑制により,医療費の抑制効果が期待された。本SR の全体的な  エビデンスの確実性はB  である。

また,副作用を扱った研究はほとんどみられず,口腔ケアの実施にあたり,大きな問題とはなりがたいことがうかがわれた。なお,生命予後については,VAP と非VAPともに,基本的には寄与しないものと考えられた。

ただし「口腔ケア」の内容は報告によりさまざまであ

0.14 0.37 0.05 0.02 2.72 7.39 1.00

Yoneyama 2002 DeRiso 1996 Fourrier 2000 Houston 2002 Segers 2006 Panchabhai 2009 Cabov 2010 182 180 30 291 469 164 30

z=4.76 Q=3.39 p=0 p=0.75851 tau2=0 I2=0

184 173 30 270 485 136 30 21 3 5 4 45 2 1 RR[95%Cl]

0.54[0.42‒0.70]

0.61[0.37‒1.01] 0.35[0.10‒1.26] 0.33[0.14‒0.80] 0.48[0.15‒1.54] 0.59[0.42‒0.83] 0.60[0.11‒3.24] 0.17[0.02‒1.30]

RE Model  IV 34 9 15 9 74 4 6

口腔ケア実施口腔ケア非実施症例数肺炎発症数著者・発表年症例数肺炎発症数

RR

図3  初回発症予防に対するメタアナリシス(非VAP 例)

0.37 0.14 0.05 2.72 1.00

Yoneyama 2002 Adachi 2002 182 48

z=2.32 Q=0.78 p=0.02022 p=0.37596 tau2=0 I2=0

184 40 21 2 RR[95%Cl]

0.57[0.35‒0.92]

0.61[0.37‒1.01] 0.30[0.07‒1.33]

RE Model  IV 34 8

口腔ケア実施口腔ケア非実施症例数肺炎発症数著者・発表年症例数肺炎発症数

RR

図4  初回発症予防に対するメタアナリシス―クロルヘキシジン非使用口腔ケア例(非VAP 例)
p.187
り,わが国の事情に沿ったエビデンスを重視する必要が考えられる。特に,海外ではクロルヘキシジンによる口腔ケアが主流であり,米国医療改善研究所(Institute for Healthcare Improvement:IHI)が提唱する人工呼吸器バンドルでは,すでにクロルヘキシジンによる毎日の口腔ケアが項目の1 つとして挙げられている。一方,わが国ではアナフィラキシーショックへの懸念から,口腔を含む粘膜炎へのクロルヘキシジン使用は禁忌となっている。

文献2 ではわが国のナーシングホームで実施された非VAP 例で,文献9 ではクロルヘキシジンを用いない口腔ケアにより,肺炎予防効果が示されており,これらの報告で用いられたポピヨンヨードによる含嗽や,歯ブラシ,スワブの使用による擦過,歯科衛生士による介入などが,選択肢として考えられる。

推奨の強さを決定するための評価項目

1)‌アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強

さ:強い全体的な  エビデンスの確実性はB  と強い。

2)‌益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

口腔内の刺激作用,不快な味覚が2 件報告されているが,益が上回る。

3)‌患者の価値観や好みを反映しているか:反映してい

る患者は口腔ケアを希望する。

4)‌負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコスト

や資源に十分に見合っているか:見合っている肺炎発症の抑制効果により医療費削減効果が期待される。

委員会における討論内容と結果

口腔ケアの有用性は認められるが,最近はキットの使用が多く,コストもそれなりに高く医療費が上がる可能性もある。また,人件費などのコストも高い。しかし,肺炎が抑制できれば多少コストが上がっても見合うと考

えられる。海外と異なり,日本の口腔ケアは細かいところまで行うため,有用性も高いのではないかと考えられる。

SR の結果および推奨草案「成人の肺炎予防に対して,口腔ケアを推奨する」が提示され,推奨草案を推奨するか否かについて投票が実施された。15 名の委員で投票が行われ,1 回目の投票では「実施することを強く推奨する」が8/15 名(53.3%),「実施することを弱く推奨する」が7/15 名(46.7%)となり,同意率が70% 以上を超えたものはなく,再度,委員の間で議論し,下記のような意見が出た。

口腔ケアを行うことで,肺炎発症が劇的に減るかもしれない期待はある。抗菌薬投与が減らせることができれば効果は大きい。海外データは日本では使いにくい。日本のやり方では現場の負担が増える可能性もある。ガイドラインで強く推奨すると,やらずに肺炎になった場合に問題になるかもしれない。全体としては弱く推奨し, VAP,医療・介護関連肺炎(nursing and healthcareassociated pneumonia:NHCAP)の予防としては強く推奨したい。

これらの議論の後,2 回目の投票を行った。その結果,「実施することを強く推奨する」が5/15 名(33.3%),「実施することを弱く推奨する」が10/15 名(66.7%)となり,同意率が70% 以上を超えたものはなく,再度,委員の間で議論し,下記のような意見が出た。

健康寿命を延伸させるためには,やはり行ったほうがよい。歯磨きさえしておけばよいと誤解する人も出てくる恐れがあり,絶対的なものではないことを示しておく必要がある。複数の要因のうちの1 つだが,予防ができるエビデンスが多くある。成人全体では弱い推奨だが,高齢者であれば強い推奨となるのではないか。

これらの議論の後,3 回目の投票を行った。その結果,「実施することを強く推奨する」が3/15 名(20%),「実施することを弱く推奨する」が12/15 名(80%)となり,同意率が70% 以上となったため,「実施することを弱く推奨する」を採用することが決定された。

補足事項:‌わが国におけるクロルヘキシジング

ルコン酸塩の取り扱いについて11)

クロルヘキシジン製剤が原因と推定される国内のアナフィラキシー症例は,1974 年に初めて報告され,1985 年肺炎の予防

C Q
p.188
の添付文書以降,粘膜面での使用が禁忌となっている。1974 年以降,2013 年8 月時点で84 症例報告があり,粘膜面(口腔・口唇,膣,膀胱,潰瘍,腹腔内)への使用は29 例であった。クロルヘキシジンによるアナフィラキシーはI型アレルギーによるものが推定され,発症時間は曝露後20 分以内が大半であった。日本人で特に発症が多いとする考察があり,一例としてクロルヘキシジンによりコーティング処理された中心静脈カテーテルによるアナフィラキシーショック例の報告は,そのほぼ全例が日本からのものであった。なお,2006 年の医薬品・医療用具等安全性情報によると,歯周ポケットに対し同剤の0.0007 ~0.0010% という低濃度での使用によるアナフィラキシーショック例が報告されているが,歯科領域で同剤を含有する医薬部外品が,2015 年12 月時点でも市販されている。

●文 献1)Shi Z, Xie H, Wang P, et al. Oral hygiene care for critically ill

patients to prevent ventilator-associated pneumonia. Cochrane Database Syst Rev. 2013;8:CD008367. 2)Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces

pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002;50:430-3. 3)DeRiso AJ, 2nd, Ladowski JS, Dillon TA, et al. Chlorhexidine

gluconate 0.12% oral rinse reduces the incidence of total nosocomial respiratory infection and nonprophylactic systemic antibiotic use in patients undergoing heart surgery. Chest. 1996;109:1556-61. 4)Fourrier F, Cau-Pottier E, Boutigny H, et al. Effects of den- tal plaque antiseptic decontamination on bacterial coloniza-

tion and nosocomial infections in critically ill patients. Intensive Care Med. 2000;26:1239-47. 5)Houston S, Hougland P, Anderson JJ, et al. Effectiveness of

0.12% chlorhexidine gluconate oral rinse in reducing prevalence of nosocomial pneumonia in patients undergoing heart surgery. Am J Crit Care. 2002;11:567-70. 6)Segers P, Speekenbrink RG, Ubbink DT, et al. Prevention of

nosocomial infection in cardiac surgery by decontamination of the nasopharynx and oropharynx with chlorhexidine gluconate: a randomized controlled trial. JAMA. 2006;296: 2460-6. 7)Panchabhai TS, Dangayach NS, Krishnan A, et al. Oropha-

ryngeal cleansing with 0.2% chlorhexidine for prevention of nosocomial pneumonia in critically ill patients:an open-label randomized trial with 0.01% potassium permanganate as control. Chest. 2009;135:1150-6. 8)Cabov T, Macan D, Husedzinovic I, et al. The impact of oral

health and 0.2% chlorhexidine oral gel on the prevalence of nosocomial infections in surgical intensive-care patients:a randomized placebo-controlled study. Wien Klin Wochenschr. 2010;122:397-404. 9)Adachi M, Ishihara K, Abe S, et al. Effect of professional oral

health care on the elderly living in nursing homes. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2002;94:191-5. 10)Bassim CW, Gibson G, Ward T, et al. Modification of the risk

of mortality from pneumonia with oral hygiene care. J Am Geriatr Soc. 2008;56:1601-7. 11)刑部 敦, 大久保憲.わが国におけるクロルヘキシジングルコ

ン酸塩によるアナフィラキシー発生についての文献的考察.日本環境感染学会誌.2015;30:127-34.
p.189
参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量

系統剤形薬剤名薬剤名略語代表的な先発品名

ペニシリン系薬経口アモキシシリンAMPCサワシリンR

クラブラン酸/ アモキシシリン* CVA/AMPCオーグメンチンR

スルタミシリン* SBTPCユナシンR

注射ベンジルペニシリンPCGペニシリンG カリウム

アンピシリンABPCビクシリンR

ピペラシリンPIPCペントシリンR

スルバクタム/ アンピシリンSBT/ABPCユナシンR-S

タゾバクタム/ ピペラシリンTAZ/PIPCゾシンR

第一世代セフェム系薬注射セファゾリンCEZセファメジンRα

第二世代セフェム系薬注射セフォチアムCTMパンスポリンR

第三世代セフェム系薬経口セフジトレン ピボキシルCDTR-PIメイアクトMS R

注射セフトリアキソンCTRXロセフィンR

セフォタキシムCTXクラフォランR

セフォタックスR

セフタジジムCAZモダシンR

第四世代セフェム系薬注射セフェピムCFPMマキシピームR

セフォゾプランCZOPファーストシンR

セフピロムCPRケイテンR

プロアクトR

マクロライド系薬経口クラリスロマイシンCAMクラリスR

クラリシッドR

アジスロマイシンAZMジスロマックR

エリスロマイシンEMエリスロシンR

注射アジスロマイシンAZMジスロマックR

エリスロマイシンEMエリスロシンR

*:十分な血中濃度を得るため,AMPC の併用を考慮する。(例)CVA/AMPC 1回1錠(125mg/250mg)1日3〜4回 + AMPC 1回250mg 1日3〜4回
p.190
Ccr(mL/min)

>50 10 ~50 <10血液透析(HD)先発品の添付文書上の

1 日最大用量

1回500mg 1日3〜4回1回250mg 1日3回1回250mg 1日1回1回250mg 1日1回,HD 日はHD 後1,000mg 1回1錠(125mg/250mg) 1日4回1回1錠(125mg/250mg) 1日3回1回1錠(125mg/250mg) 1日2回1回1錠(125mg/250mg) 1日2回,HD 日はHD 後4錠1回375mg 1日4回1回375mg 1日2回1回375mg 1日1回1回375mg 1日1回,HD 日はHD 後1,125mg

1回200 万単位1日4〜6回50 〜75% 量1日2〜5回1回30 〜60 万単位1日2〜6回1回30 〜60 万単位1日2〜7回2,400 万単位(敗血症,感染性心内膜炎,化膿性髄膜炎については,一般に通常用量より大量に使用する)

1回2g 1日3〜4回1回2g 1日2〜3回1回0.5g 1日2回1回0.5g 1日2回,HD 日はHD 後2g(敗血症,感染性心内膜炎,化膿性髄膜炎については,一般に通常用量より大量に使用する) 1回4g 1日3〜4回1回2g 1日3〜4回1回2g 1日2回1回2g 1日2回,HD 日はHD 後16g 1回3g 1日3〜4回1回3g 1日2〜3回1回3g 1日1回1回3g 1日1回,HD 日はHD 後12g 1回4.5g 1日3〜4回1回2.25 〜4.5g 1日2〜3回1回2.25 〜4.5g 1日2回1回2.25 〜4.5g 1日2回13.5g 1回1〜2g 1日3回1回1〜2g 1日2回1回1g 1〜2日に1回1回0.5 〜1g毎HD 後5g 1回1.0g 1日3〜4回1回1.0g 1日1〜2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後2g 1回200mg 1日3回Ccr <30:1回100mg 1日3回1回100mg 1日1〜2回600mg

1回2g 1日1回1回1〜2g 1日1回4g

1回1〜2g 1日3回1回0.5 〜1.0g 1日2回1回0.5g 1日2回4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回1g 1日2回1回1g 1〜2日に1回1回1g毎HD 後4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回1g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回0.5 〜0.75g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回1g 1日2回1回0.5 〜1g 1日1回1回0.25 〜0.5g毎HD 後4g 1回200mg 1日2回1回200mg 1日1〜2回1回200mg 1日1回400mg

錠剤:1回500mg,1日1回SR 成人用ドライシロップ:1回2,000mg,空腹時1回服用500mg(錠剤) 1回200mg 1日4〜6回1回100 〜150mg 1日4回1,200mg

1回0.5g 1日1回0.5g

1回0.5g 1日3回1回0.4g 1日3回1.5g
p.191
参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量【つづき】

系統剤形薬剤名薬剤名略語代表的な先発品名

カルバペネム系薬注射イミペネム/ シラスタチンIPM/CSチエナムR

パニペネム/ ベタミプロンPAPM/BPカルベニンR

メロペネムMEPMメロペンR

ビアペネムBIPMオメガシンR

ドリペネムDRPMフィニバックスR

テトラサイクリン系薬経口ミノサイクリンMINOミノマイシンR

注射ミノサイクリンMINOミノマイシンR

ニューキノロン系薬経口トスフロキサシンTFLXオゼックスR

レボフロキサシンLVFXクラビットR

ガレノキサシンGRNXジェニナックR

モキシフロキサシンMFLXアベロックスR

シタフロキサシンSTFXグレースビットR

シプロフロキサシンCPFXシプロキサンR

注射レボフロキサシンLVFXクラビットR

シプロフロキサシンCPFXシプロキサンR

パズフロキサシンPFZXパシルR

リンコマイシン系薬注射クリンダマイシンCLDMダラシンRS

ニトロイミダゾール系薬注射メトロニダゾールMNZアネメトロR
p.192
Ccr(mL/min)

>50 10 ~50 <10血液透析(HD)先発品の添付文書上の

1 日最大用量

1回0.5 〜1g 1日3回1回0.5g 1日2回1回0.25g 1日1回1回0.25g 1日1回,HD 日はHD 後2g

1回0.5 〜1g 1日3回1回0.5g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後2g

1回0.5 〜1g 1日3回1回0.5g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後3g

1回0.3 〜0.6g 1日3回Ccr >30:1回0.3g 1日2回Ccr <20:1回0.3g 1日1回1回0.3g 1日1回1回0.3g 1日1回,HD 日はHD 後1.2g

70 ≦Ccr:1回0.5 〜1g 1日3回50 ≦Ccr <70: 1回0.25 〜1g 1日2〜3回30 ≦Ccr <50: 1回0.25 〜0.5g 1日2〜3回Ccr <30:1回0.25g 1日2〜3回1回0.25 〜0.5g 1日1回1回0.25 〜0.5g 1日1回,HD 日はHD 後3g

1回100mg 1日2回200mg

1回0.1g 1日2回0.2g

1回150mg 1日3回1回150mg 1日1〜2回1回150mg 1日1回450mg

1回500mg 1日1回初日1回500mg 1日1回2日目以降250mg 1日1回初日1回500mg 1日1回3日目以降250mg 2日に1回500mg

1回400mg 1日1回低体重(40kg 未満)かつCcr <30:1回200mg 1日1回低体重(40kg 未満)かつCcr <30:1回200mg 1日1回1回400mg 1日1回400mg

1回400mg 1日1回400mg

1回100mg 1日1〜2回1回50mg 1〜2日に1回1回50mg 2日に1回1回50mg 2日に1回200mg

1回200mg 1日2〜3回1回400mg 1日に1回1回200mg 1日に1回600mg

1回0.5g 1日1回初日1回0.5g 1日1回2日目以降0.25g 1日1回初日1回0.5g 1日1回3日目以降0.25g 2日に1回0.5g

Ccr >60:1回0.4g 1日2〜3回31 ≦Ccr ≦60:1回0.2g 1日2回Ccr ≦30:1回0.2g 1日1回必要に応じて低用量(0.2g) 1日1回1.2g

1回0.5 〜1g 1日2回1回0.5g 1日1〜2回1回0.5g 1日1回1回0.3 〜0.5g HD 後2g

1回0.6g 1日2〜4回2.4g

1回0.5g 1日3〜4回2g
p.193
参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量【つづき】

系統剤形薬剤名薬剤名略語代表的な先発品名

グリコペプチド系薬注射バンコマイシンVCM塩酸バンコマイシン

テイコプラニンTEICタゴシッドR

オキサゾリジノン系薬経口リネゾリドLZDザイボックスR

注射リネゾリドLZDザイボックスR

アミノグリコシド系薬注射ゲンタマイシンGMゲンタシンR

アミカシンAMKアミカシン

トブラマイシンTOBトブラシンR

アルベカシンABKハベカシンR

・添付文書,抗菌薬TDM ガイドライン(日本化学療法学会・日本TDM 学会),感染症治療ガイドライン(日本感染症学会・日本化学療法学会),CKD・本表はあくまで目安であること,一部には保険未承認の用法・用量が含まれていることに注意する。最終的な用法・用量の決定は主治医の裁量に委ねる。・eGRF(mL/min/1.73m2)ではなく,eGFR(mL/min)やCockcroft-Gault 式による推定Ccr を用いる。
p.194
Ccr(mL/min)

>50 10 ~50 <10血液透析(HD)先発品の添付文書上の

1 日最大用量

eGFR ≧90:初回25mg/kg,その後は1回15 〜20mg/kg 1日2回80 ≦eGFR <90:初回15mg/kg,その後は1回12.5mg/kg 1日2回60 ≦eGFR <80:1回20mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <60:1回15mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回12.5mg/kg 1日1回eGFR <30:適応としない初回20 〜25mg/kgその後は透析後に1回7.5 〜10mg/kg 2g

eGFR ≧60:6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回,3日目以降は1日1回40 ≦eGFR <60:6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回,3日目は1日1回,4日目以降は3.3mg/kg 1日1回10 ≦eGFR <40:6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回,3日目は1日1回,4日目は休薬,5日目以降は5.0mg/kg 2日に1回eGFR <10:6.7mg/kg 1日目は1日2回,2〜3日目は1日1回,4日目は休薬,5日目以降は3.3mg/kg 2日に1回6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回, 3日目は1日1回4日目以降はHD 日にHD 後3.3 〜6.7mg/kg 0.8g(初日) 0.4g(維持量)

1回600mg 1日2回1,200mg

1回0.6g 1日2回1.2g

70 ≦:1回5〜7mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <70: 1回4〜5mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4〜5mg/kg 1〜2日1回<30:1回3〜4mg/kg 2日に1回初回2.5mg/kg維持1.7mg/kg毎HD 後5mg/kg

70 ≦:1回12 〜15mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <70: 1回7.5mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4mg/kg 1日1回<30:1回4〜7.5mg/kg 2日に1回1回5〜7.5mg/kg毎HD 後400mg

70 ≦:1回5〜7mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <70: 1回4〜5mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4〜5mg/kg 1〜2日1回<30:1回3〜4mg/kg 2日に1回初回2.5mg/kg維持1.7mg/kg毎HD 後540mg

1回5.5 〜6mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4〜5mg/kg 1〜2日1回<30:1回3〜4mg/kg 2日に1回初回2.5mg/kg維持1.7mg/kg毎HD 後200mg治療ガイド(日本腎臓学会),薬剤性腎障害診療ガイドライン(日本腎臓学会)等を参考に作成した。
p.195
成人肺炎診療ガイドライン2017

定価 本体4,500 円+(税)

2017 年4月20 日 第1版第1刷発行2017 年10月20 日 第1版第2刷発行2018 年11月30 日 第1版第3刷発行編 集 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会発行者 日本呼吸器学会(代表)橋本 修発 行 一般社団法人日本呼吸器学会〒113-0033東京都文京区本郷3丁目28 番8号 日内会館7階電話 03-5805-3553(代) FAX 03-5805-3554 E-mail:info@jrs.or.jp

制 作 株式会社メディカルレビュー社印刷所 日本印刷株式会社

●本書に掲載された著作物の複写・複製・転載・翻訳・データベースへの取り込み、および送信(送信可能化権を含む)・上映・譲渡に関する許諾権は一般社団法人日本呼吸器学会が保有しています。

C日本呼吸器学会/2017/Printed in Japan
p.196
お詫びと訂正

『成人肺炎診療ガイドライン2017』に下記の誤りがございました。

■p.17 SCOPE―肺炎の基本的特徴 「各論1」

「表8 軽~中等症CAP のエンピリック治療で考慮するポイント」内

【誤】7)β-ラクタム系薬とマクロライド系薬の併用は重症例を除き

有効性は証明されていない(p.79,CQ7 参照)

↓

【正】7)β-ラクタム系薬とマクロライド系薬の併用は重症例を除き

有効性は証明されていない(p.85,CQ8 参照)

会員ならびに関係者の皆様にご迷惑をお掛けいたしましたことを深く

お詫び申し上げますとともに、謹んで訂正申し上げます。

一般社団法人 日本呼吸器学会

日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会
p.197
成人肺炎診療

ガイドライン

編 集  |  日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会

一般

Te JRS Guidelines for the Management of

Pneumonia in Adults2017

ポケット版
p.198
成人肺炎診療

ガイドライン

編 集  |  日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会

一般

Te JRS Guidelines for the Management of

Pneumonia in Adults2017

ポケット版
p.199

        
p.200
iii

肺  炎

市中肺炎(CAP)院内肺炎(HAP)医療・介護関連肺炎(NHCAP)

❶敗血症の有無の判断❷重症度の判断*1

治療の場と治療薬の決定

・誤嚥性肺炎のリスクの判断・疾患終末期や老衰状態の判断

患者背景のアセスメント

・敗血症の有無の判断・重症度の判断*2,*3・耐性菌リスクの判断

治療薬の決定

・軽症~中等症・左記に該当しない・中等症~重症・敗血症・重症~超重症

・重症度が高くない

*2かつ・耐性菌リスク

*4(-)・重症度が高い

*3または・耐性菌リスク

*4(+)

外 来一般病棟

入院ICUまたはこれに準ずる

病室へ入室

外来患者群

治療一般病棟入院

患者群治療ICU 入室患者群治療

escalation

治療de-escalation

単剤治療de-escalation

多剤治療

個人の意思やQOLを考慮した治療・ケア

・易反復性の誤嚥性肺炎のリスク(+)または・疾患末期や老衰の状態

・重症度が高い

*3かつ・耐性菌リスク

*4(+)

*1:市中肺炎の重症度判定:市中肺炎ではA-DROP により重症度を判定する。*2:敗血症の状態ではなく,医療・介護関連肺炎ではA-DROP で中等症以下,院内肺炎ではI-ROAD で軽症。*3:敗血症の状態,または,院内肺炎ではI-ROAD で中等症以上,医療・介護関連肺炎ではA-DROP で重症以上。*4:耐性菌リスクあり:1 過去90 日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴  2過去90 日以内に2 日以上の入院歴 3免疫

抑制状態 4活動性の低下,のうち2 項目を満たす。CQ 15

CQ 13 CQ 16

CQ 1

『成人肺炎診療ガイドライン2017』フローチャート
p.201
iv

カテゴリーCQ 番号ページ数CQ 本文

CAP の

診断CQ1 p.82 CAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ2 p.83 CAP 診断において,問診,身体診察と胸部X線画像で診断した肺炎に胸部CT を施行することは推奨されるか。CQ3 p.84 CAP 患者において,CRP 測定を行うことは推奨されるか。CQ4 p.85重症CAP 患者の原因菌診断において,血液培養を施行することは推奨されるか。

CQ5 p.87「気道症状と発熱」を有する患者群において,胸

部単純X 線検査を全例に施行することは推奨されるか。

CQ6 p.88 CAP 診断において,尿中抗原検査を全例に施行することは推奨されるか。

CAP の

治療CQ7 p.89 CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか。

CQ8 p.91 CAP のエンピリック治療において,β– ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか。

CQ9 p.92 CAP 治療において,抗菌薬投与に全身投与ステロイド薬を補助療法として併用することは,抗菌薬のみでの治療よりも推奨されるか。CQ10 p.94 CAP 治療において,細菌培養検査の結果に基づく抗菌薬のde-escalation は推奨されるか。

CQ11 p.95 CAP 治療において,症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)は推奨されるか。CQ12 p.96 CAP 治療の期間について,1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与は推奨されるか。

『成人肺炎診療ガイドライン2017』 CQ 本文と推奨文のまとめ
p.202
v

CQ 推奨文

CAP 患者の治療に際する入院要否の判定および治療方針の決定においてA-DROP 方式による重症度評価を強く推奨する。

胸部X 線検査所見を基にCAP が疑われる患者に対してルーティーンにCT 検査を行わないことを弱く推奨する。

肺炎診断が未確定な軽症下気道感染患者には,CRP 測定結果を基準にした抗菌薬投与(もしくは,治療)を行うことを弱く推奨する。

重症CAP 患者の抗菌薬治療開始前に血液培養を行うことを強く推奨する。

急性気道感染症が疑われる患者にルーティーンには胸部X 線検査を行わないことを弱く推奨する。

CAP 患者の診療において尿中抗原検査を全例に施行することを弱く推奨する。

CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を弱く推奨する。ただし,細菌性肺炎が疑われる場合にはβ– ラクタム系薬単独投与を考慮する。CAP に対するエンピリック治療として,β– ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症例においてはβ– ラクタム系薬単剤治療よりもβ– ラクタム系薬+ マクロライド系薬併用療法を行うことを弱く推奨する。CAP に対して,抗菌薬治療に全身投与ステロイド薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症CAP に対しては全身投与ステロイド薬を併用することを弱く推奨する。CAP に対して,細菌培養検査結果に基づき,抗菌薬治療をde-escalation することを弱く推奨する。

CAP に対して,症状・検査所見の改善が得られれば,注射用抗菌薬から適切な内服抗菌薬への切り替え( スイッチ療法) を行うことを強く推奨する。

CAP の軽症~中等症例においては,初期治療が奏効している場合には1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与を弱く推奨する。
p.203
vi

カテゴリーCQ 番号ページ数CQ 本文

HAP/ NHCAPの診断CQ13 p.98 HAP/NHCAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ14 p.99 HAP/NHCAP 診断において,CRP 測定は推奨されるか。CQ15 p.100 NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することは推奨されるか。CQ16 p.101 HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことは推奨されるか。

HAP/ NHCAPの治療CQ17 p.103 NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,ニューキノロン系薬を用いることは推奨されるか。

CQ18 p.104 HAP/NHCAP 治療において,de-escalationは推奨されるか。

CQ19 p.105 HAP/NHCAP 治療において,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は推奨されるか。CQ20 p.106 HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間は推奨されるか。CQ21 p.108 non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎治療において,ステロイド薬投与は推奨されるか。

肺炎の予防CQ22 p.109高齢者の肺炎予防において,肺炎球菌ワクチンは推奨されるか。

CQ23 p.111高齢者の肺炎予防において,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか。

CQ24 p.112成人のインフルエンザ関連肺炎の予防において,早期(2 日以内) 抗インフルエンザ薬投与は推奨されるか。

CQ25 p.114肺炎予防において,口腔ケアは推奨されるか。
p.204
vii

CQ 推奨文

1HAP では,I-ROAD で重症度評価することを弱く推奨する。2NHCAP では,A-DROP・CURB-65・PSI のいずれかで重症度評価をすることを弱く推奨する。HAP/NHCAP の診断において,CRP の推移 (3 〜5 日目におけるCRP の低下)は生命予後を予測する目安として,科学的根拠に乏しいが,測定することを弱く推奨する。NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することを弱く推奨する。HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことを弱く推奨する。NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,レスピラトリーキノロンを治療薬の1 つとすることを弱く推奨する。ただし,副作用,耐性化の可能性,および肺結核との鑑別を考慮することが必要である。

HAP/NHCAP の治療において,de-escalation 治療を行うことを弱く推奨する。

耐性菌が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療を弱く推奨する。ただし,NHCAP,HAP の患者で,疾患末期や老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者に対しては,個人の意思を十分に確認し,医療チームとしてQOL を優先した抗菌薬投与の有無および種類の選択を決定する。HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間を弱く推奨する。ただし,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌では再燃のリスクがある。

non-HIV患者のニューモシスチス肺炎に対するステロイド薬投与を弱く推奨する。

高齢者の肺炎予防に対して,肺炎球菌ワクチンの接種を強く推奨する。

高齢者の肺炎予防に対して,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種を強く推奨する。

成人のインフルエンザ関連肺炎の予防に対して,早期(2 日以内) 抗インフルエンザ薬投与を強く推奨する。

肺炎予防に対して,口腔ケアを行うことを弱く推奨する。
p.205
viii

用語一覧:重要用語の定義

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)

病院外で日常生活をしている人に発症する肺炎であり,医療・介護関連肺炎および院内肺炎を含まない。

医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)

医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎であり,表1の定義項目を1つ以上満たす。表1 NHCAP の定義1.療養病床に入院している,もしくは介護施設に入所している2.90 日以内に病院を退院した3.介護

*を必要とする高齢者,身体障害者4.‌通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,化学療法,免

疫抑制薬等)を受けている*:介護の基準: PS3:限られた自分の身の回りのことしかできない,日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす,以上を目安とする1.には精神病床も含む‌ (日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成

委員会(編).医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン.東京:日本呼吸器学会;2011.より改変引用)

参考 医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)

2005 年の米国IDSA/ATS 院内肺炎診療ガイドラインで示された定義で,表2の定義項目を1つ以上満たす肺炎。表2 医療ケア関連肺炎(HCAP)の定義◦90 日以内に2日以上の入院◦ナーシングホームまたは長期療養施設に居住◦在宅輸液療法(抗菌薬を含む) ◦30 日以内の維持透析◦在宅における創傷治療◦家族内の多剤耐性菌感染

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)

入院48 時間以上経過した患者に新たに出現した肺炎。

人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)

気管挿管下人工呼吸を開始して48 時間以降に新たに発生する院内肺炎。
p.206
ix

耐性菌

多くの抗菌薬に耐性を獲得した菌のことであり,一般的にはMRSA,緑膿菌, ESBL 産生腸内細菌等を指す。

escalation 治療

狭域抗菌薬を使用し,全身状態の改善がみられない場合に,必要に応じて広域抗菌薬への変更も考慮する治療。

de-escalation 治療

広域抗菌薬で初期治療を開始し,全身状態の改善を確認し,原因菌を同定し感受性を確認した上で可能であれば狭域抗菌薬への変更を考慮する治療。

スイッチ療法

症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬へ切り替える治療戦略。

略語一覧略 語英 語日本語ACIP Advisory Committee on Immunization Practices米国予防接種諮問委員会ADL activity of dairy living日常生活動作ATS American Thoracic Society米国胸部疾患学会(医学会) AUC area under the blood concentration time curve血中濃度曲線下面積BAL bronchoalveolar lavage気管支肺胞洗浄BTS British Thoracic Society英国胸部学会CAP community-acquired pneumonia市中肺炎Ccr creatinine clearanceクレアチニンクリアランスCDC Centers for Disease Control and Prevention米国疾病予防管理センターCER cost-effectiveness ratio費用対効果比COPD chronic obstructive pulmonary disease慢性閉塞性肺疾患CPG clinical practice guideline診療ガイドラインECOG European Cooperative Oncology Group欧州臨床腫瘍研究グループESBL extended-spectrum β-lactamase基質特異性拡張型β-ラクタマーゼHAP hospital-acquired pneumonia院内肺炎HCAP healthcare-associated pneumonia医療ケア関連肺炎ICU intensive care unit集中治療室
p.207
x略 語英 語日本語

IDSA Infectious Diseases Society of America米国感染症学会MA meta analysisメタアナリシスMD mean difference平均差MRSA methicillin-resistant Staphylococcus aureusメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MSSA methicillin sensitive Staphylococcus aureusメチシリン感受性黄色ブドウ球菌NHAP nursing home–acquired pneumonia介護施設関連肺炎NHCAP nursing and healthcare-associated pneumonia医療・介護関連肺炎OR odds ratioオッズ比PBP penicillin binding proteinペニシリン結合蛋白PCP Pneumocystis jirovecii pneumoniaニューモシスチス肺炎PCV13 pneumococcal conjugate vaccine 13 13 価蛋白結合型肺炎球菌ワクチンPPSV23 pneumococcal polysaccharide vaccine 23 23 価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチンPSB protected specimen brush保護的標本擦過PSI pneumonia severity index肺炎重症度分類RR risk ratioリスク比RCT randomized controlled trialランダム化比較試験SR systematic reviewシステマティックレビューTDM therapeutic drug monitoring治療薬(血中薬物)濃度モニタリングTPN total parenteral nutrition高カロリー輸液VAP ventilator-associated pneumonia人工呼吸器関連肺炎

菌名一覧

『成人肺炎診療ガイドライン2017』では、本文中の菌名の記載を原則として日本語表記としている。菌名の英語表記との対応は、下記の通りとする。英 語本文中の表記(日本語) Achinetobacter spp.アシネトバクタ―属Anaerobes嫌気性菌Bordetella pertussis百日咳菌Chlamydia pneumoniae肺炎クラミジアChlamydia psittaciオウム病クラミジア
p.208
xi

英 語本文中の表記(日本語) Clostridium spp.クロストリジウム属Corynebacterium spp.コリネバクテリウム属Enterococcus faecalisエンテロコッカス・フェカーリスEscherichia coli大腸菌Fusobacterium spp.フソバクテリウム属Haemophilus influenzaeインフルエンザ菌Klebsiella pneumoniae肺炎桿菌Legionella pneumophilaレジオネラ・ニューモフィラMoraxella catarrhalisモラクセラ・カタラーリスMycobacterium tuberculosis結核菌Mycoplasma pneumoniae肺炎マイコプラズマNeisseria spp.ナイセリア属Pasteurella multocidaパスツレラ・ムルトシダPeptostreptococcus spp.ペプトストレプトコッカス属Pneumocystis spp.ニューモシスチス属Porphyromonas spp.ポルフィロモナス属Prevotella spp.プレボテラ属Pseudomonas aeruginosa緑膿菌Serratia marcescensセラチア・マルセッセンスStaphylococcus aureus黄色ブドウ球菌Stenotrophomonas maltophiliaステノトロフォモナス・マルトフィリアStreptococciレンサ球菌Streptococcus agalactiaeストレプトコッカス・アガラクティエStreptococcus anginosus groupストレプトコッカス・アンギノサス群Streptococcus mitisストレプトコッカス・ミティスStreptococcus pneumoniae肺炎球菌Streptococcus pyogenesストレプトコッカス・ピオゲネスVeillonella spp.ベイロネラ属
p.209
xii

『成人肺炎診療ガイドライン2017』 作成組織

◦作成主体

一般社団法人 日本呼吸器学会

◦ガイドライン統括委員会

日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会

◦ガイドライン作成グループ

日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会委員長

河野 茂長崎大学委 員

青木 洋介佐賀大学医学部附属病院感染制御部今村 圭文長崎大学医学部第二内科門田 淳一大分大学医学部呼吸器・感染症内科学志馬 伸朗広島大学大学院救急集中治療医学高橋 洋坂総合病院呼吸器科塚田 弘樹新潟市民病院呼吸器内科・感染症内科寺本 信嗣東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科朝野 和典大阪大学医学部附属病院感染制御部比嘉 太国立病院機構沖縄病院呼吸器内科松本 哲哉東京医科大学微生物学分野丸山 貴也国立病院機構三重病院呼吸器内科三木 誠仙台赤十字病院呼吸器科宮下 修行川崎医科大学総合内科学1迎 寛長崎大学医学部第二内科吉田 雅博日本医療機能評価機構EBM 医療情報部
p.210
xiii

◦システマティックレビューチーム

日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会システマティックレビューチーム

青木 信将新潟大学医歯学総合病院集中治療部井手 昇太郎長崎大学医学部第二内科上地 隆史北海道社会事業協会余市病院大塚 竜也東北労災病院呼吸器内科片岡 裕貴兵庫県立尼崎総合医療センター呼吸器内科倉井 大輔杏林大学呼吸器内科小宮 幸作大分大学医学部呼吸器・感染症内科学中村 造東京医科大学病院感染制御部南宮 湖永寿総合病院呼吸器内科/ 慶應義塾大学医学部呼吸器内科野口 真吾産業医科大学若松病院呼吸器内科原永 修作琉球大学第一内科藤倉 雄二防衛医科大学校感染症呼吸器内科堀田 信之横浜市立大学呼吸器病学間辺 利江帝京大学医学部衛生学公衆衛生学茂呂 寛新潟大学医学部呼吸器感染症内科◦外部評価委員

葛谷 雅文名古屋大学医学部老年内科(高齢者医療)佐々木 英忠仙台富沢病院(高齢者医療)中田 紘一郎中田クリニック(開業医)中浜 力中浜医院(開業医)渡辺 彰東北大学加齢医学研究所(日本化学療法学会) ◦ガイドライン作成事務局

今村 圭文長崎大学医学部第二内科鈴木 昭仁日本呼吸器学会事務局 (五十音順)
p.211
xiv

◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』フローチャートiii ◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』CQ 本文と推奨文のまとめiv ◦用語・略語・菌名一覧viii ◦『成人肺炎診療ガイドライン2017』作成組織xii

I SCOPE ─── 肺炎の基本的特徴1

総 論  肺炎総論2各論1  市中肺炎12各論2  院内肺炎/ 医療・介護関連肺炎49各論3  人工呼吸器関連肺炎71各論4  肺炎予防75

II Clinical Question 81

CAP の診断CQ 01 CAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。82

CQ 02 CAP 診断において,問診,身体診察と胸部X 線画像で診断した肺炎に

胸部CT を施行することは推奨されるか。

83 CQ 03 CAP 患者において,CRP 測定を行うことは推奨されるか。84

CQ 04 重症CAP 患者の原因菌診断において,血液培養を施行することは推奨

されるか。

85 CQ 05  「気道症状と発熱」を有する患者群において,胸部単純X 線検査を全例

に施行することは推奨されるか。

87 CQ 06 CAP診断において,尿中抗原検査を全例に施行することは推奨されるか。88 CAP の治療

CQ 07 CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーした抗菌薬

の使用は推奨されるか。

89 CQ 08 CAP のエンピリック治療において,β-ラクタム系薬にマクロライド系薬

を併用することは推奨されるか。

91 CQ 09 CAP 治療において,抗菌薬投与に全身投与ステロイド薬を補助療法と

して併用することは,抗菌薬のみでの治療よりも推奨されるか。

CONTENTS成人肺炎診療ガイドライン2017成人肺炎診療ガイドライン2017 ポケット版
p.212
xv

る。詳細および引用文献はガイドライン正本を参考としていただきたい。

CQ 10 CAP 治療において,細菌培養検査の結果に基づく抗菌薬のde-

escalation は推奨されるか。

94 CQ 11 CAP 治療において,症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から

内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)は推奨されるか。

95 CQ 12 CAP 治療の期間について,1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与は

推奨されるか。

96 HAP/NHCAP の診断

CQ 13 HAP/NHCAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。98 CQ 14 HAP/NHCAP 診断において,CRP 測定は推奨されるか。99

CQ 15 NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価すること

は推奨されるか。

100 CQ 16 HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うこ

とは推奨されるか。

101 HAP/NHCAP の治療

CQ 17 NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,ニューキノロン系薬

を用いることは推奨されるか。

103 CQ 18 HAP/NHCAP 治療において,de-escalation は推奨されるか。104

CQ 19 HAP/NHCAP 治療において,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌

をカバーする初期治療は推奨されるか。

105 CQ 20 HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間は

推奨されるか。

106 CQ 21 non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎治療において,ステロイド薬投

与は推奨されるか。

108 肺炎の予防

CQ 22 高齢者の肺炎予防において,肺炎球菌ワクチンは推奨されるか。109

CQ 23 高齢者の肺炎予防において,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワク

チンの併用接種は推奨されるか。

111 CQ 24 成人のインフルエンザ関連肺炎の予防において,早期(2 日以内)抗イ

ンフルエンザ薬投与は推奨されるか。

112 CQ 25 肺炎予防において,口腔ケアは推奨されるか。114

付 録 参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量116
p.213
◦総 論肺炎総論◦各論1市中肺炎◦各論2院内肺炎/医療・介護関連肺炎◦各論3人工呼吸器関連肺炎◦各論4肺炎予防

SCOPE ─ 肺炎の基本的特徴

I
p.214
肺炎総論総論

臨床的特徴

肺炎は発症頻度,生命予後,生活の質(QOL),社会に与える影響などの点で最も重要な感染症の1 つである。肺炎は「肺実質の,急性の,感染性の,炎症」と定義することができる(本ガイドラインでは感染症以外の肺炎・肺臓炎等は取り扱わない)。したがって,肺炎の診断では,炎症の場が肺実質(肺胞領域)であるか,経過は急性であるか,微生物によって引き起こされた炎症であるかを判断することが重要となる。

肺炎の症状として,咳嗽,喀痰,呼吸困難,胸痛といった呼吸器症状と,発熱,倦怠感,食思不振,意識障害といった全身症状が認められる。診察所見では,胸部聴診でcrackles を聴取し,バイタルサインでは発熱,頻脈,頻呼吸を認め,重症例では意識障害,ショックを来す場合もある。血液検査所見では,好中球優位の白血球増多,炎症反応(CRP・血沈・プロカルシトニンの上昇)が認められ,胸部X 線検査では気管支透亮像を伴う浸潤影が細菌性肺炎を示唆する所見である。

肺炎は原因菌の観点から,細菌性肺炎と非定型肺炎に大別することができる。細菌性肺炎に対してはβ- ラクタム系薬が有効であるのに対し,非定型肺炎ではβ- ラクタム系薬は無効であり,マクロライド系薬,キノロン系薬,テトラサイクリン系薬が有効である。

SCOPE肺炎の基本的特徴
p.215
また,発症の場や病態の観点からは,市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP),院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP),医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia: NHCAP)に大別することができる。一般的に,CAP 患者は基礎疾患を有しておらず(または有しても軽微であり),耐性菌が原因菌となる頻度も少ない。これに対して,HAP は何らかの基礎疾患を有していることに加えて,耐性菌が原因菌となるリスクが高いことから,死亡率がCAP よりも高い。NHCAP は主に医療ケアや介護を受ける高齢者に発症する肺炎であり,耐性菌リスクや予後の点でCAP とHAP の中間的な位置づけとなり,繰り返す誤嚥性肺炎に代表される予後不良の終末期肺炎の像を呈する例も多い。

疫学的特徴

日本における肺炎の発症頻度に関しては,2014 年の厚生労働省による患者調査の概況では,入院患者の肺炎の受療率(1 日あたりの患者数を人口10 万対で表した数)は34.6,外来患者の肺炎受療率は8.2 であった。入院患者について他の呼吸器疾患と比較すると,喘息4.4,気管支炎および慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)3.8,肺癌18.8 などよりも多い。年齢階級別の受療率では65 歳以上の高齢者に多いことが特徴だが,15 歳未満の小児でも比較的多く,看病する親の労働損失など社会的影響も大きい。

肺炎による死亡率は,戦前までは結核や胃腸炎と並んで上位にあり,特にスペイン風邪が流行した1918 〜1919 年頃には日本人の死因の第一位となっている。その後,ペニシリンをはじめとした抗菌薬の開発,医療サービスの充実,社会的基盤の整備に助けられ,1950 年代頃より死亡率は急速に低下し,一時は肺炎はもはや脅威ではないとされていた時期もあった。しかし,1980 年代より死亡率は増加に転じ,その後も増加の一途をたどっており,2011 年には長い間日本人の死因第3 位であった脳血管疾患に代わ総論

S C O P E
p.216
り,肺炎が死因の第3 位となった(図1)。

肺炎の年齢階級別死亡者数では,全体の96% 以上を65 歳以上の高齢者が占めており,肺炎死亡者数が増加している主な原因は日本社会の高齢化によるものと推測される(図2)。

前述のとおり,肺炎はCAP,HAP,NHCAP に大別することができるが,死亡率は一般的にHAP,NHCAP,CAP の順に高い。また,HAP の特殊病態である人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia: VAP)はHAP のなかでも特に死亡率が高い。今回,日本における肺炎群別の死亡率についてシステマティックレビュー(SR)を行ったところ,肺炎の死亡率はそれぞれVAP 32.4%,HAP 30.4%,NHCAP(HCAP を含む)15.5%,CAP 6.3% という結果であった(図3)。

肺炎の原因菌については,CAP では肺炎球菌,インフルエンザ菌,肺炎マイコプラズマ等が原因菌となりやすく,これに対し,HAP では黄色ブドウ球菌,緑膿菌といった耐性菌が原因菌となりやすい。また,NHCAP は両者の中間とされており,誤嚥性肺炎を来す場合も多いため,口腔内の嫌気性菌やレンサ球菌も原因菌として重要である。

肺炎診療にかかる医療費は,1 日単価が約4 万円,1 入院費用が約56 万円,1 年間の国民医療費が約3,256 億円と試算されており,金銭的にも国民への負担が大きい疾患である。

肺炎診療の全体的な流れ

1.肺炎の診断

肺炎の診断は問診,診察所見,血液検査所見,胸部X 線所見より総合的に判断する。問診では咳嗽,喀痰,呼吸困難,胸痛といった呼吸器症状と,発熱,倦怠感,食思不振,意識障害といった全身症状,診察所見では胸部聴診でのcrackles や,発熱,頻脈,頻呼吸を認めた場合に,肺炎を疑い胸部X 線検査,血液検査を施行する。典型的な細菌性肺炎では胸部X 線検査で気管透亮像を伴う浸潤影を認め,血液検査所見で好中球優位の白血球数
p.217
図1  日本人の死因の推移結核

脳血管疾患悪性新生物心疾患肺炎胃腸炎

(年)

死亡数(人口10万対)

0 50

100 150

200 250

300 350

(人)

1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2015

0 1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100歳以上

人口10万対(人)

1.5 0.5 0.2 0.2 0.4 0.5 0.9 0.8 1.3 2.3 4.8 8.5 18.8 35.7 82.2189.7 454.5 1,011.2

1,948.7

3,271.7

4,754.9

(歳)

図2  肺炎の年齢階級別死亡率

〔厚生労働省. 人口動態統計〔2015(平成27)〕年より作成〕総論

S C O P E
p.218
増加,炎症反応(CRP上昇・血沈亢進・プロカルシトニン上昇)を認める。

肺炎の診療においては原因菌の同定がきわめて重要であり,喀痰が得られる場合には喀痰のグラム染色,培養検査を行い,血液培養も2 セット提出する。

また,迅速診断法として尿中抗原検査(肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ),喀痰抗原検査(肺炎球菌),咽頭ぬぐい液抗原検査(肺炎マイコプラズマ)も有用である。

2.本ガイドラインの基本となる肺炎の分類と診療の流れ

これまで日本呼吸器学会肺炎診療ガイドライン作成委員会は,3 つのカテゴリー(CAP,HAP,NHCAP)に分けてガイドラインを作成してきた。しかし,その過程で,海外のガイドラインと比較し,わが国特有の問題が存在することも明らかとなってきた。

その1 つは,医療制度の違いによって対象とする患者群が異なることである。また,もう1 つは,終末期医療における個人の意思の表出の問題である。

まず,医療制度の違いについては,「病院」の定義の違いがある。日本では,急性期のみならず亜急性期,慢性期およびリハビリのための診療も病

図3  肺炎群別の死亡率の比較(各研究の平均と95%信頼区間)

CAP (n=3,077) (N)HCAP (n=2,493) HAP (n=1,632) VAP (n=132)

0

50 (%)

患者死亡率45 40

35 30

25 20

15 10

5 6.3 15.5 30.4 32.4
p.219
院に入院して行う。一方,欧米では,急性期の入院診療を行うのが病院であり,亜急性期を含めて,病院外の療養施設,もしくは外来で治療を継続される。したがって,HAP のカテゴリーに含まれる対象となる患者の属性が国によって異なることになる。日本の「HAP」のなかには,欧米であれば,HAP,HCAP の患者が含まれる。また,高齢者の在宅ケアを含める日本のNHCAP には米国の医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)とCAP が含まれる(図4)。このように国の医療制度の違いにより,各ガイドラインの対象となる肺炎のカテゴリーに含まれる患者の属性は異なっている。

もう1 つの問題は,終末期の肺炎の問題である。例えば,米国では法律で認められた事前指示書(advance directive)があり,個人の意思に従った医療が行われる。もし,強力な治療を望まない場合には,個人の意思に従って,緩和的なケアが行われる場合が多い。この場合は,肺炎のガイドラインの対象外となる。ガイドラインの対象となる肺炎患者は,重症度や薬剤耐性菌の有無などエビデンスに基づく治療が推奨される。ところが,わが国では個人の意思の確認や表出が行われることはまれであり,診療の方針は多くの場合医師が決定する。個人の意思が明確でない場合には,医師は,例えば,終末期の肺炎であっても重症肺炎として科学的なエビデンスに基づき強力な治療を行う傾向にある。

以上のわが国特有の問題を前提として,診療方針をどのように決定するかの基本となる肺炎の区分について,本ガイドライン作成委員会は最初に議論を行った。その結果,次の2 つの方針を決定した。1疾患末期,老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者が含まれ

る「HAP」と「NHCAP」を1 つの診療群とし,「CAP」と分けて診療のプロセスを示す2HAP およびNHCAP の患者では,最初に疾患末期あるいは老衰などの

不可逆的な死の過程にある終末期の患者を鑑別する本ガイドラインにおける肺炎診療の基本的概念図を図5 に,この概念を臨床で実践する場合のフローチャートをp. iiiに示す。

CAP では,まず適切な治療の場を決定する。治療の場を決定する際に総論

S C O P E
p.220
は,全身管理が必要な敗血症の状態でないかをはじめに評価し,敗血症であればICU またはこれに準ずる全身管理が可能な病室へ入室させる。敗血症が否定的でも,重症度評価(A-DROP 等により判断)により重症〜超重症の場合は敗血症と同様の管理とする。重症度が中等症〜重症の場合は一般病棟への入院とし,一般病棟入院患者群治療を行う。重症度が軽症〜中等症の場合は,外来での治療が可能であり,外来患者群治療を行う。抗菌薬の選択にあたっては,年齢や基礎疾患などの患者状態,および症状や所

図4  日本人の医療・介護の受療状況に応じた海外の肺炎のカテゴリ-の対比

海外(米国など)

日本における患者の状態急性期一般病床入院亜急性期一般病床

入院療養病床(医療療養型/介護療養型)高齢者施設

に入居最近医療ケア

を受けた在宅介護を受けている健常成人/最近医療ケアを

受けていない

病院

病院

日本院内肺炎(HAP)医療ケア関連肺炎(HCAP)市中肺炎(CAP)

院内肺炎(HAP)医療・介護関連肺炎(NHCAP)市中肺炎(CAP)

図5  肺炎診療の基本的概念図肺炎

CAP HAPおよびNHCAP

誤嚥性肺炎のリスク/終末期状態の判断

抗菌薬の選択個人の意思の尊重薬剤耐性菌および重症度の判定

抗菌薬の選択

1.敗血症の有無の判定2.重症度の判定

治療の場の決定外来/一般病棟/ICU
p.221
見を基に頻度の高い原因微生物を想定し,また,迅速診断法のある場合にはその結果を参考として適切な抗菌薬を選択する。

HAP もしくはNHCAP では,まずはじめに患者背景のアセスメントを行い,誤嚥性肺炎のリスクを有するかどうか,疾患末期や老衰状態ではないかどうかを判断する。誤嚥性肺炎を反復するリスクがある場合や,疾患末期や老衰の状態である場合は患者本人や家族とよく相談したうえで,個人の意思やQOL を尊重した患者中心の治療,ケアを行う。また,一度治療を始めても,経過中においては,継続的に本人や家族の意思を確認し,状況に応じて診療法の変更がありうることを説明し,その機会を保証する。

このような状況でない場合,あるいは終末期と判断されても本人が通常の治療を望む場合や本人の意思が確認できない場合には,治療薬を決定するために敗血症の有無,重症度(HAP ではI-ROAD,NHCAP ではA- DROP),耐性菌リスクについて評価する。敗血症ではなく,重症度も低い場合はescalation 治療(狭域の薬剤を使用し,全身状態の改善がみられない場合に,必要に応じて広域の薬剤への変更も考慮する治療)を選択する。敗血症や重症度が高い場合,または,耐性菌リスクが高い場合は単剤でのde-escalation 治療(広域の薬剤で初期治療を開始し,全身状態の改善を確認し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮する治療)を行う。敗血症や重症度が高く,かつ,耐性菌リスクが高い場合は多剤併用によるde-escalation 治療を行う。

3.推奨抗菌薬を参考とした抗菌薬選択の基本的考え方

抗菌薬の選択は,原因微生物の推定・同定,薬剤感受性結果の判明にあわせて,段階的に行う(図6)。

原因微生物に関する細菌学的検査の結果が不明の場合,患者の年齢や基礎病態などの疫学的なデータ,および症状や検査所見から原因となっている微生物を推定し,地域のアンチバイオグラムを考慮して抗菌薬を選択するエンピリック治療を行う。この段階でグラム染色や尿中抗原などの迅速診断を導入すると,より適切な抗菌薬の選択が可能となる。原因菌が判明総論

S C O P E
p.222
し,薬剤感受性試験の結果がわかった場合には,その結果にあわせて抗菌薬を選択する標的治療を行う。

エンピリック治療では,軽症から中等症の患者に対しては疫学的情報と臨床症状や所見から頻度の高い微生物を対象として抗菌薬を選択する。重症例で薬剤耐性菌が想定されるときには,想定される微生物をできるだけ広くカバーするような抗菌薬を選択する〔各論1 図4(p.30),各論2 図6 (p.66)〕。このときにグラム染色や尿中抗原などの迅速診断法で原因微生物が推測できる場合には,より絞り込んだ適正抗菌薬の選択が可能となり,推定された菌種別の推奨役を参考に選択を行う〔各論1 表9 〜20 (p.34 〜42)〕。細菌培養の結果,薬剤感受性試験の結果が判明した場合には,その結果にあわせてより適切な抗菌薬を選択する標的治療を行う。この場合には,感受性と体内動態,副作用等を考慮して,原則として狭域な抗菌薬を十分量選択する。

迅速診断法にて原因微生物を推定し,同定や薬剤感受性試験が不明の場合,地域や施設のアンチバイオグラムを参考に抗菌薬を選択する。その後,細菌学的検査によって,菌種,菌名が同定され,薬剤感受性試験結果

図6  ガイドラインを利用した抗菌薬選択の基本的考え方

エンピリック治療患者の属性(年齢,基礎疾患)および症状,所見から原因微生物を推定し抗菌薬を選択☞各論1 図4,各論2 図5

標的治療細菌学的な検査によって得られた菌種,菌名,薬剤感受性試の結果を基に抗菌薬を選択

より適正なエンピリック治療グラム染色や尿中抗原,血清学的な検査などの迅速検査法によって原因微生物を推定し抗菌薬を選択☞各論1 表9~20
p.223
が判明した場合には,感受性試験の結果を参考として,抗菌薬の続行,変更を行う。

肺炎マイコプラズマやレジオネラ・ニューモフィラなどの,迅速診断は可能であるが,培養が困難な微生物に対しては,アレルギーなどがなければ,第一選択薬から選択し,効果が認められない場合には第二,第三選択薬に変更する。総論

S C O P E
p.224
臨床的特徴

市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)は基礎疾患を有しない,あるいは有しても軽微な基礎疾患の人に起こる肺炎である。院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)や医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)は何らかの基礎疾患を有し,医療や介護の対象となっている人に起こる肺炎であり,患者背景や原因微生物の種類などがCAP と異なっている。ただし,軽微の基礎疾患といっても疾患の種類や程度によって患者の予後に影響を与えるリスクは異なるため,CAP とHAP/NHCAP の間に明確な線引きをすることが難しい場合もある。なお,通常,入院48 時間以降に発症した肺炎はHAP と判断される。そのため,入院48 時間よりも早く発症した場合はCAP の範疇に入れる。

CAP がHAP やNHCAP と大きく異なる点は,原因微生物の違いで, CAP では非定型病原体(肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ,コクシエラ属)を考慮する必要がある。非定型病原体のなかでは肺炎マイコプラズマの頻度がもっとも高く,外来治療可能な軽症肺炎として診療することが多い。非定型病原体の大きな特徴は細菌感染に頻用されるβ- ラクタム系薬が無効なため,IDSA/ATS の『市中肺炎

各論1

市中肺炎の基本的特徴

SCOPE肺炎の基本的特徴

市中肺炎
p.225
診療ガイドライン』ではエンピリック治療においては両者に有効な抗菌薬の選択が基本となっている。

CAPはNHCAPと宿主状態が異なることから,重症例を除けば治療によく反応し,肺炎治癒後も日常生活動作が入院前に戻る症例が多い。すなわち,早期の積極的な治療の介入が必要となる。外来治療可能な症例が多く存在するため,治療薬の選択に際しては治療場所の決定が重要となる。CAP の生命予後は,IDSA の提唱したPneumonia Severity Index(PSI)肺炎重症度指数とよく相関する。本予測因子は信頼度が高く予後を正確に反映するが,項目数が多く煩雑であり,実地医療では不向きとされる。わが国のガイドラインはあらゆる実地臨床医を対象とし,非専門医に広く使われることを基本理念とするためPSI は参考とせず,英国胸部学会のCURB-65 分類に準拠した日本呼吸器学会のA-DROP システム(年齢,脱水,呼吸状態,意識状態,血圧)を2005 年の『成人市中肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)から使用してきた。

CAP のエンピリック治療において最も考慮すべきものは肺炎球菌性肺炎で,『成人市中肺炎診療ガイドライン』初版,改訂第二版ともに細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別して抗菌薬を選択する方法を推奨してきた。2010 年以降のCAP 診療の大きな進歩は,肺炎球菌や肺炎マイコプラズマなどを検出する迅速診断法が開発され普及していることで,実地医療において抗菌薬の選択に際して大きなツールとなっている。

CAP の疫学的特徴

国内の多施設共同研究の結果によると,日本の15 歳以上の市中発症肺炎の患者数は年間188 万人と推定される。罹患者の7 割を65 歳以上の高齢者が占め,患者の7 割は入院し,年間74,000 人が病院で死亡していると推定される。ただしこの報告によると,肺炎患者の63 万人は誤嚥関連肺炎と記載されていることから,市中発症肺炎の対象はCAP以外にもNHCAPに該当する患者も相当数含まれていると推測される。各論1

S C O P E
p.226
CAPにおける原因微生物の分離頻度については,これまで多数の報告が認められる。しかし,報告によっては対象患者のなかにCAP 以外の肺炎も含まれている可能性があるものも少なくないため,純粋なCAP のデータのみを集計した9 編を基に解析を行った。その結果,解析対象症例数は約3,000 名となり,図1 に示すように肺炎球菌が最も多く分離され,次にインフルエンザ菌が多く分離されていた。これら上位2 菌種については,これまでの報告のほとんどが同様の結果を示しており,今回の解析でもその事実が確認された。3 番目に多く分離されたのが黄色ブドウ球菌であり,MSSA,MRSA を区別している201 株についてさらに解析を行った結果,MRSA は28.4% を占めていた。腸内細菌科の菌として肺炎桿菌が4位,大腸菌が9 位であった。非定型肺炎の原因微生物である肺炎クラミジアは5 位,肺炎マイコプラズマが6 位,レジオネラ・ニューモフィラなどのレジオネラ属菌は10 位であった。緑膿菌は7 位,モラクセラ・カタラーリスは8 位であった。これらの原因微生物の頻度は,診断法や診断基準の変化,ワクチンの普及など各種の要因によって変わっていく可能性がある。

なお,従来の培養・同定,抗原検出,血清診断を主体とした診断法では

*‌1:MSSA,MRSA を区別している201株のメタアナリシスではMRSA は28.4%(95%CI 13.2-43.6)であった。*‌2:Micro-IF 法による診断率(2論文)28/922=3.0%,ELISA 法による診断率(5論文)

71/2,022=3.5%

図1  国内9研究(市中肺炎3,077症例),上位10病原微生物(メタアナリシス

により95% 信頼区間を追加) 18.8 18.8

7.6 7.6 4.2 4.2 3.0 3.0 2.8 2.8 2.7 2.7 2.3 2.3 1.9 1.9 1.1 1.1 1.0 1.0

肺炎球菌インフルエンザ菌黄色ブドウ球菌*1

肺炎桿菌肺炎クラミジア*2肺炎マイコプラズマ

緑膿菌

モラクセラ・カタラーリス

大腸菌

レジオネラ・ニューモフィラ

0 5 10 15 20 25(%)
p.227
原因微生物不明の肺炎が多くを占めていたのに対し,BAL 液に対する網羅的細菌叢解析では肺炎球菌,インフルエンザ菌および肺炎マイコプラズマといった主要な3 つのCAP 原因菌に加えて,口腔内菌やプレボテラ属やフソバクテリウム属などの嫌気性菌の関与も多いことが明らかになった(図2)。

肺膿瘍の原因微生物は一般的に嫌気性菌が関与する場合が多いと言われているが,網羅的細菌叢解析では,フソバクテリウム属などの嫌気性菌との混合感染が62.7%を占めていたことから,それを裏付ける報告であると思われる。さらに,グラム陽性菌のなかでは,ストレプトコッカス・アンギノサス群が15.3%と最も高率に分離されていたことから,肺膿瘍の原因微生物としてこのグループの菌の重要性が認められる。

CAP 診療の全体的な流れ

1.CAP の診断

1)肺炎の診断

CAP患者の診療において,最初に行うべきステップは疾患としての肺炎

図2  網羅的細菌叢解析によるCAP64症例の第一優占菌種

0 5 10 15 20 25(%)

クロストリジウム属

ベイロネラ属

フソバクテリウム属

プレボテラ属

コリネバクテリウム属

ナイセリア属

口腔レンサ球菌

口腔内菌パスツレラ・ムルトシダ

黄色ブドウ球菌

モラクセラ・カタラーリス

肺炎マイコプラズマ

インフルエンザ菌

肺炎球菌

嫌気性菌1.6 1.6 4.7 7.8

1.6 4.7

9.4 1.6

3.1 9.4 17.2 18.8

18.8

各論1

S C O P E
p.228
の診断である。肺炎に伴う症状として咳,痰,発熱,呼吸困難,胸痛などの有無を問診によって確認する必要がある。ただし,高齢者の場合は,典型的な呼吸器症状を示しにくく,食欲低下や活動性の低下など肺炎と直接関連のない症状が前面に出てくる場合がある。鑑別すべき疾患としては,急性上気道炎,気管支炎や慢性気道感染症の急性増悪などがあり,症状の程度や診察所見によってある程度の鑑別が可能である。しかし,肺炎の確定診断は胸部X 線および胸部CT などの画像診断によって行われるため,肺炎が疑われる症例には画像診断を実施すべきである(p.83,CQ2/p.87,

CQ5 参照)。

国内で行われた65 歳以上の高齢者を対象としたCAP 患者の検討では, CT で肺炎と診断された127 例中12 例(9.4%)は胸部X 線で肺炎像を確認することができなかったと報告している。また,胸部CT による両側性の陰影の確認は重症度とも相関を認めている。また,マイコプラズマ肺炎,結核,ニューモシスチス肺炎,ウイルス性肺炎では胸部CT によって特徴的な所見を認める場合があるという報告もある。そのため,ルーティーンでのCT 検査は不適切だとしても一部の症例においては胸部CTの有用性が認められる。

最近では肺炎の画像診断法として肺の超音波検査の有用性が報告されている。肺炎を疑う所見としては,浸潤影,気管支透亮像,辺縁不整,胸水などがあり,CAP を対象とした欧州の多施設研究では,感度93.4%,特異度97.7% という良好な結果を示している。また,メタアナリシスによる解析でも感度は90% 以上を示しており,胸部X 線検査と組み合わせるなどして肺炎診断の精度を高められると考えられる。

2)重症度の評価

肺炎と診断された症例は,治療の場と治療薬を決定するために敗血症の有無の判断と重症度を評価する必要がある。

新しく改定された敗血症の定義は「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」であり,まず,表1 に示したquick SOFA(qSOFA)スコアが2 点以上であれば敗血症が疑われる。
p.229
さらに臓器障害の評価を行って,SOFA スコア(表2)がベースラインから2 点以上増加すれば敗血症と診断される(図3)。

CAP の重症度はA-DROP システム(表3)による評価が推奨される(p.82,CQ1 参照)。

CRP や白血球数は炎症所見として従来から頻用されており,さらにプロカルシトニン(PCT)も用いられるようになってきた。これらのバイオマーカーは,感度・特異度の問題を含めてどのように臨床の現場で用いるべきかについては,議論が分かれる部分も多い(p.84,CQ3 参照)。

表2  SOFA スコア

0 点1 点2 点3 点4 点

呼吸器PaO2/FiO2(mmHg) ≧400 <400 <300 <200 +呼吸補助<100 +呼吸補助凝固能血小板数(× 10 3/μL) ≧150 <150 <100 <50 <20肝臓ビリルビン(mg/dL) <1.2 1.2 〜1.9 2.0 〜5.9 6.0 〜11.9 >12

循環器MAP ≧70mmHg MAP <70mmHg DOA <5 or DOB DOA5.1 〜15

or Ad ≦0.1 or NOA ≦0.1 DOA >15

or Ad >0.1 or NOA >0.1

中枢神経Glasgow Coma Scale 15 13 〜14 10 〜12 6 〜9 <6腎クレアチニン(mg/dL)尿量(mL/ 日) <1.2 1.2 〜1.9 2.0 〜3.4 3.5 〜4.9 <500 >5.0 <200 DOA:ドパミン,DOB:ドブタミン,Ad:アドレナリン,NOA:ノルアドレナリン。

表1  qSOFA スコア1)呼吸数22 回/ 分以上2)意識変容* 3)収縮期血圧100mmHg 以下*:厳密にはGlasgow Coma Scale(GCS)<15を指す。

各論1

S C O P E
p.230
3)宿主の基礎疾患・感染防御能の評価

CAP の一般的な概念は通常の日常生活を営む健常人に起こる肺炎であ

表3  A-DROP システムA(Age):男性70 歳以上,女性75 歳以上D(Dehydration):BUN 21mg/dL 以上または脱水ありR(Respiration):SpO2 90 %以下(PaO2 60torr 以下) O(Orientation):意識変容ありP(Blood Pressure):血圧(収縮期)90mmHg 以下軽 症:上記5つの項目のいずれも満たさないもの。中等症:上記項目の1つまたは2つを有するもの。重 症:上記項目の3つを有するもの。超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし,ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。

(日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会(編).

成人市中肺炎診療ガイドライン.2007.より改変引用)

図3  敗血症および敗血症性ショックの診断のフローチャート

感染症疑い例

臨床状態をモニターし、必要に応じて敗血症リスクを再評価する

臨床状態をモニターし、必要に応じて敗血症リスクを再評価する

qSOFA≧2 ?敗血症が依然として

疑われるか

SOFA≧2 ?

十分な輸液負荷にもかかわらず1平均動脈圧65 mmHg以上の維持に循環作動薬が必要であり、かつ2血清乳酸値18mg/dL(2mmol/L)以上?

臓器障害の評価

Yes No

No No

Yes

敗血症

Yes

敗血症性ショック

Yes No

Reproduced with permission from JAMA. 2016;315(8):801-10. Copyright C 2016 American Medical Association. All rights reserved.

(Singer M, et al. JAMA. 2016;315:801-10. より引用)
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る。そのため,基礎疾患を有しないことが前提となっているが,ときに感染リスクを高める要因をもっている場合がある。また,NHCAP との鑑別や重症化要因の有無を確認するためにも,患者の基礎疾患を明確にして感染防御能を評価する必要がある。

4)細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別

CAP の症状は発熱,咳嗽,喀痰,息切れなどである。一般的に肺炎球菌などによる細菌性肺炎においては,これらの症状を明確に認める場合が多い。一方,肺炎マイコプラズマなどによる非定型肺炎の場合はほとんど喀痰を認めないなど,症状が典型的でない。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に関する考え方は日米の市中肺炎診療ガイドラインにおいて異なっており,IDSA のガイドラインはこれらの鑑別を重視せず細菌と非定型病原体の両方を広くカバーする治療を実施することを推奨している。一方,日本における『成人市中肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)ではまず,表4に示した項目を用いて細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別を行い,その結果を基に治療方針を決定することを推奨している。国内の前向き研究では6 項目中4 項目以上合致すれば非定型肺炎が疑われ,3 項目以下の合致であれば細菌性肺炎が疑われるという報告がなされている(感度78%,特異度93%)。また,1 ~5 の5 項目中3 項目以上に合致した場合,非定型肺炎を疑い,2 項目以下の場合は細菌性肺炎が疑われる(感度84%,特異度87%)。すなわち,上記の判断基準を用いて細菌性肺炎と非定型肺炎のどちらの可能性が高いかという推定が可能である。

また,マイコプラズマ肺炎においては,抗原検出法および遺伝子増幅法

表4  市中肺炎における細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別項目1)年齢60 歳未満2)基礎疾患がない,あるいは軽微3)頑固な咳がある4)胸部聴診上所見が乏しい5)痰がない,あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない6)末梢血白血球数が10,000/ μ L 未満である肺炎マイコプラズマおよびクラミジア属で検討されたもの。各論1

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(LAMP 法)を用いた迅速診断が可能になった。そこで,非定型肺炎が疑われた症例においては,迅速診断検査を実施することでさらに精度の高い鑑別が可能になるものと期待される。ただし,CAP の一部には肺炎マイコプラズマと肺炎球菌が混合感染を起こしているような症例もあり,注意が必要である。

5)原因微生物の検索

CAP の原因となり得る病原体として,一般細菌,肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ,ウイルスなどが挙げられ,種類が多く臨床的特徴も大きく異なっている。治療に用いる抗菌薬はこれらの病原体に合ったものを選択する必要があるため,原因微生物を明らかにすることは診療上重要である。ただし,実際の臨床においては,CAP の原因微生物が判明した後で抗菌薬が投与されることはまれであり,通常はエンピリック治療が行われる。ただし,最初の治療が必ずしも成功するとは限らず,また,治療が成功してもよりよい抗菌薬が選択可能な場合がある。そのため,エンピリック治療を行う場合でも原因微生物検索のための検査を適確に実施しておく必要がある。また,病原体の種類に応じて用いられる検査法は異なるため,個々の症例に応じて原因微生物をある程度推定し,診断に有用な検査を選択して実施する必要がある(表5)。

喀痰などの検体を用いる場合は,検体の質が検査の精度を大きく左右する。Miller &Jones の分類は喀痰の肉眼的評価であり,膿性痰は検査に値するが,唾液や完全な粘液性痰は検査に値しない。また,グラム染色も検体の質の評価に有用であり,良質の検体は肺炎の病巣部を反映して多数の好中球を含んでいるが,質が悪く検査に値しない検体は口腔粘膜に由来する上皮細胞を多く認める。Geckler の分類では1 視野(100 倍)当たりの好中球数が25 個より多く,上皮細胞が10 個未満の場合が最も培養に適した検体と判定される。質が悪い検体はさらに検査を進めても原因微生物を診断することは難しいため,改めて検体を採取するか,良質な喀痰が採取できない症例では気管吸引液やBAL 液などの検体採取を検討する必要がある。
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1グラム染色

グラム染色は操作が簡便で,迅速性に優れ,細菌の種類の推定が可能である。そのため,CAP における診断において,グラム染色は有用性が高いと評価されている。培養結果を基準とした場合,喀痰のグラム染色の感度は良質の検体を用いた場合,60 ~70% 程度とする報告が多い。しかし,他の報告では1 種類の菌体が1 視野に10 個以上観察されるような良質の検体を用いると,約90% と高い感度で原因菌が推定されている。菌種別では肺炎球菌が検出感度は高く,インフルエンザ菌は低い傾向がみられるが,グラム染色の精度は観察者の技術的レベルによっても大きく左右される。また,抗菌薬投与後の喀痰は明らかに検出感度が低下するが,治療効果を評価するうえで有用な情報が得られる場合もある。グラム染色を有効に活用するには,熟練の検査技師の意見を参考にしながら,臨床的背景も踏まえて判断することが望ましいと考えられる。

2培養・同定

培養および同定検査は,現在でもCAP 診断のスタンダードな方法として位置付けられている。グラム染色で菌の推定は可能であっても,実際に

表5  呼吸器感染症の病原体別にみた検査の適応

塗抹・染色培養・

同定血清抗体価抗原検出遺伝子

検査備考

一般細菌○ ◎ × △ ×培養・同定が標準的。抗原検出が可能なのは肺炎球菌のみ。肺炎マイコプラズマ× △ △ ○ ○抗原検出(イムノクロマト法)と遺伝子検査(LAMP 法)が有用。肺炎クラミジア× × △ × ×抗体価による検査は慎重な判定が必要。レジオネラ・ニューモフィラ△ ○ △ ○ ○塗抹・染色はヒメネス染色が有用。培養にはWYO やBCYE- α培地を用いる。遺伝子検査(LAMP 法)が有用。インフルエンザ

ウイルス× × × ◎ △遺伝子検査は新型インフルエンザが疑われる場合に実施◎:標準的な検査法,○:有用な検査法,△:限定的に用いられる検査法,×:一般的に用いることがない検査法。各論1

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菌を分離して同定することで原因菌の診断が可能となる。また,薬剤感受性検査を引き続き実施することで,その菌の各薬剤への感受性を評価することが可能となり,耐性の有無を確認することができる。そのため,細菌性肺炎が疑われる症例では,培養・同定は欠かせない検査と位置付けられる。

培養・同定検査は結果が判明するまで数日を要するため,迅速性という点においては劣っている。しかし,最近では自動機器等の改良や質量分析装置(MALDI-TOF  MS)の導入に伴い,以前より検査に要する時間はかなり短縮されてきている。ただし,現状は質量分析装置などが利用可能な施設は限られており,個々の施設において検査の流れが異なってくる可能性が高い。

なお,喀痰などの検体の培養には通常,血液寒天培地とチョコレート寒天培地を用いるが,必要に応じて他の培地を加えなければならない。例えばレジオネラ・ニューモフィラの培養を目的とする場合はBCYE-α培地など専用の培地を加え,耐性菌の有無を早めに確認したい場合は目的とする耐性菌の確認用の培地を用いる必要がある。

3血液培養

血液培養は菌血症の診断に有用なだけでなく,真の原因菌の決定に有用な検査法と考えられる。ただし,血液培養の検出率は低く,陽性率は10%程度と考えられている。しかし,特に重症感染が疑われる症例では血液培養は必要な検査と考えられる。なお,CAP を対象とした血液培養の有用性の検証についてはCQ4(p.85)を参照していただきたい。

4抗原検出

CAP を対象とした抗原検出は,肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ,肺炎マイコプラズマ,ヒトメタニューモウイルス,アデノウイルス,RS ウイルス,インフルエンザウイルスなどが可能である(表6)。イムノクロマト法を用いた抗原検出は検査が簡便で迅速性に優れているため,CAP における原因微生物診断に重用されている。ただし,成人例ではウイルスを対象と
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した抗原検査は,発症頻度を考慮すると他の原因微生物が否定的で,抗菌薬治療が無効な場合に用いることが多いと考えられる。

臨床の現場では,肺炎球菌およびレジオネラ・ニューモフィラを対象とした尿中抗原検出がすでに広く利用されている(p.88,CQ6 参照)。前医などで抗菌薬が投与されている場合は,培養検査を実施しても検出率が下がる可能性が高い。しかし,肺炎球菌の尿中抗原は抗菌薬による治療開始後においても検出率は低下しないという報告もあり,抗菌薬投与後であっても尿中抗原の有用性は保たれていると考えられる。ただし,肺炎発症後,数ヵ月にわたって遷延して尿中抗原が検出される症例が存在する。そのため,肺炎を繰り返す例では,他の菌によって肺炎を発症しても,以前の肺炎球菌やレジオネラ・ニューモフィラの感染によって尿中抗原が陽性となる可能性もある。また,肺炎球菌はストレプトコッカス・ミティスと共通の抗原を有しているため,ストレプトコッカス・ミティス感染例においては偽陽性が認められる可能性がある。

肺炎球菌の抗原検出法としては,尿検体以外にも喀痰または上咽頭ぬぐいを検体としたキットも市販されている。成人のCAP 症例を対象に肺炎球菌の検出性能を比較した検討では,尿中抗原が62%であったのに対し,喀痰抗原89%と高く,喀痰抗原が尿中抗原より発症早期の感度が高いという結果が報告されている。ただし,喀痰抗原の場合は口腔内に常在する肺

表6  現在市販されているCAP 関連の抗原検出法

病原体検体備考肺炎球菌尿,咽頭ぬぐい,喀痰尿と呼吸器検体とで異なるキットが利用可能レジオネラ・ニューモフィラ尿レジオネラ・ニューモフィラ血清型1 のみ検出可能インフルエンザウイルス鼻腔ぬぐい治療に反映させるためには,基本的に発症後48 時間以

内の実施が望ましい。

肺炎マイコプラズマ咽頭ぬぐいリボソーム蛋白を検出

RS ウイルス咽頭ぬぐい入院中の患者,乳児,パリビズマブ製剤の適用となる患者が適応ヒトメタニューモウイルス咽頭ぬぐい成人の肺炎例はまれ。検出キットの保険適用は6 歳未満。

アデノウイルス咽頭ぬぐいRSウイルスと同時に検出可能なキットも市販されている。各論1

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炎球菌が検体を汚染することによって疑陽性が出る可能性があるため,唾液の混入がない状態で得られた喀痰を検査に用いることが望ましい。また,保険適用上は尿中抗原検出とあわせて実施しても両方を算定することはできない。

レジオネラ肺炎は急激に進行し,重症化しやすくβ- ラクタム系抗菌薬が無効である。さらに培養検査は特殊な培地が必要で発育に時間を要する。そのため,レジオネラの尿中抗原検査は有用性が高い検査と考えられる。ただしイムノクロマト法を用いた市販のキットはレジオネラ・ニューモフィラ血清型1 以外の血清型の菌は感度が低く,偽陰性となる可能性があるため,尿中抗原陰性でもレジオネラ肺炎を確実には否定できない。

肺炎マイコプラズマはイムノクロマト法による抗原検出法,および後述するLAMP 法による遺伝子検査が可能である。両者を直接比較した臨床データはまだ報告されていないが,感度はLAMP 法のほうが優れていると考えられる。ただし検査の簡便性や所要時間を考慮すると,抗原検出法は外来やベッドサイドでの利用に適している。

5遺伝子検出

PCR やLAMP 法を中心とした遺伝子検出法は感度や迅速性に優れた検査法として評価が高い。ただし現時点においては,CAP に関連して国内で保険適用を受けた遺伝子検出の病原体は,肺炎マイコプラズマ,レジオネラ・ニューモフィラ,百日咳菌がある。いずれもLAMP 法を用いた検査法が実用化されている(表7)。

CAPの原因微生物の遺伝子検出法は,研究レベルではすでに多くの検討がなされ,その有用性が報告されている。実用化に向けた検査法の開発も

表7  現在市販されているCAP 関連の遺伝子検査法

病原体検体備考肺炎マイコプラズマ咽頭ぬぐいLAMP 法が保険適用ありレジオネラ・ニューモフィラ喀痰など呼吸器検体LAMP 法が保険適用あり

百日咳菌鼻咽頭ぬぐいLAMP 法が保険適用あり
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盛んであり,特にマルチプレックスPCRなど多種類の病原体を同時に検出する方法が実用段階に入っており,すでに血液培養陽性菌を対象とした検査は保険適用が認められている。今後,呼吸器感染症を対象としたマルチプレックスPCR も承認される可能性が高い。このような検査法を用いると,抗菌薬投与開始時点でかなりの確率で原因微生物が判明することになり,CAP の診療を大きく変える可能性がある。ただし現時点においては,保険適用の問題や実際の臨床における利用のあり方が定まっておらず,さらに検討が必要と思われる。

6血清診断

培養等の検査が困難な病原体である肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,ウイルス等については,血清抗体価による診断が利用されてきた。通常,感染初期と2 週間後のペア血清を用いて,抗体価が4 倍以上上昇していれば陽性と判定され,原因微生物として診断される。ただしこの方法を用いて診断しても,結果が判明した時点ではすでに治療によって軽快していることも多い。肺炎マイコプラズマについては,特異的IgM 抗体を検出する方法も利用可能であるが,その陽性率は低いという報告があり,IgM抗体だけの判断では偽陰性が多く出る可能性がある。

肺炎クラミジア感染症は抗クラミドフィラ・ニューモニエ抗体の測定によって診断されている場合が多い。IgM,IgG,IgA の3 種類の抗体価が測定可能であり,カットオフインデックス値あるいはIgG,IgA では抗体価の有意な上昇を参考に感染症の原因菌と判定される。ただし,IgM 抗体は発症2,3 週後に上昇し4,5 週後にピークとなり3 ~5 ヵ月後に陰性化する。IgG 抗体は30 日後に上昇し3 ~4 ヵ月後にピークとなるため,この抗体価の推移を踏まえて適切なタイミングで検査を実施しなければならない。また,既感染者が多いことやクラミジア・トラコマチスやオウム病クラミジアなどとの交差反応による偽陽性が指摘されているため,抗体価のみの診断は難しく,症状や他の検査結果をもとに総合的な判断が必要となる。各論1

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7その他の検査法

その他の検査法として,病理学的検査が挙げられる。通常,CAP の診断に病理学的検査が用いられることはまれであるが,他の検査法を用いても診断が困難で,他の疾患の鑑別も必要な場合などでは,細胞学的あるいは組織学的診断が有用な場合がある。得られた生検組織やBAL 液は通常の病理検査以外に免疫組織学的染色法やin situ ハイブリダイゼーション, PCR などのアプローチを行う場合がある。

6)耐性菌の分離状況

CAPにおける重要な耐性菌として,ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillinresistant Streptococcus pneumoniae:PRSP),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA),基質特異性拡張型β- ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌,緑膿菌やアシネトバクター属などのブドウ糖非発酵菌,などが挙げられる。

日本化学療法学会,日本感染症学会,日本臨床微生物学会の3 学会合同サーベイランスによる成人の呼吸器感染症例を対象とした集計結果では,肺炎球菌189 株に関して,CLSI M7-A8 に基づく分類ではPCG に対するMIC 8 μg/mL 以上の耐性菌は分離されなかったが,2 株(1.1%)のみペニシリン中等度耐性肺炎球菌(penicillin-intermediate S.pneumoniae: PISP)が分離されている。ニューキノロン耐性の肺炎球菌も分離頻度はまれであり,レボフロキサシンに中等度耐性(I),耐性(R)と判定された割合は,それぞれ0.5%,1.1% であった。一方,マクロライド耐性の肺炎球菌は90% 近くに達していた。

黄色ブドウ球菌に関しては,206 株中,MRSA が50.5%,MSSA が49.5%と半々であった。バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド,アルベカシンの抗MRSA 薬に対して耐性(R)と判定されたMRSA 株は認めなかった。MSSA に関しては,ベンジルペニシリンやアンピシリンに耐性を示す株が約50% を占め,マクロライド耐性も約25% 分離された。

インフルエンザ菌については,182 株中β- ラクタマーゼ産生アモキシシ
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リン・クラブラン酸耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-positive amoxicillin/clavulanate resistant:BLPACR)を20 株(11.0%),β- ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-negative, ampicillin-resistant H. influenzae:BLNAR)を61 株(33.5%)認めた。これらを反映して,インフルエンザ菌全体の約40 ~45% はアンピシリン,スルバクタム・アンピシリン,セファクロルなどのペニシリン系薬や第一世代セフェム系薬に耐性であった。

肺炎桿菌の多くはペニシリナーゼを産生するため,139 株中134 株(96.4%)がアンピシリンにR またはI と判定されたが,β- ラクタマーゼ阻害薬を配合したスルバクタム・アンピシリンに対してR またはI を示した株は9 株(6.5%)であった。

緑膿菌は160 株が検討され,セフトリアキソンに対しては135 株(84.4%)がR またはI と判定された。イミペネムやメロペネムなどのカルバペネム耐性株は15%前後,レボフロキサシンやシプロフロキサシンなどのニューキノロン耐性株は20% 前後認められた。

2.CAP の治療

1)エンピリック治療1抗菌薬の選択方法

抗菌薬療法は一般的にエンピリック治療と標的治療に区分される。エンピリック治療は本来,培養結果が出るまでの初期数日間の治療,標的治療は分離菌に対応した治療,という意味合いで用いられる。しかし,実臨床では培養検査で原因菌が判明しない場合が多く,初期治療自体をガイドラインの推奨レジメンに準拠した初期の広域治療(empirical broad spectrum antibiotic treatment)と,個別の情報や迅速検査法結果等をもとに標的をある程度絞った初期治療(pathogen directed antibiotic treatment)に区分して分析が行われる場合もある。

ガイドラインにおける推奨レジメンは対象領域における主な原因菌の統計的頻度,予後,宿主背景等の一般的な情報を基に決定される。実臨床においてはそれらの一般的事項に加えてグラム染色や各種迅速検査,先行投各論1

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薬への反応性,自施設のアンチバイオグラム,その患者の過去の分離菌動向,さらには地域の感染症流行情報や家族内,職場内感染の有無などの個別化された情報が入手可能である。CAP の外来軽症例ではガイドラインに基づいた初期広域治療の成績は個別化した初期治療に劣らないことが示されているが,副作用や耐性化の問題等を考慮しつつ個々の症例に応じたより適切な初期投与抗菌薬を選択する努力も重要である。

2抗菌薬選択に際して考慮するポイント

軽症ならびに中等症のCAP のエンピリック治療に際して考慮すべき項目を表8 にまとめた。

CAPにおいては,宿主免疫機能の高度低下あるいは特殊な曝露背景などを有する例外的な症例を除けば,原因菌の範囲はある程度まで限定して考えることが可能である。CAP の治療に際して重要な原因菌は,頻度が高く重症化しやすい肺炎球菌,次いでインフルエンザ菌である。若年者の場合は肺炎マイコプラズマの頻度が比較的高く,軽症例が多い。肺炎クラミジアは軽症例が多いため,胸部X 線画像で判別しにくい。慢性心肺疾患など基礎疾患保有者においては肺炎球菌,インフルエンザ菌に次いでモラクセラ・カタラーリスを考慮する必要があり,また高齢者では口腔内レンサ球菌や嫌気性菌の関与率が高い。その他,頻度的には高くはないが重症化する危険性が高いレジオネラ・ニューモフィラも考慮する必要がある。

3外来患者(軽症~中等症肺炎)での抗菌薬の選択(図4)

外来治療時に選択される比較的頻度の高い抗菌薬は,ペニシリン系薬,マクロライド系薬,レスピラトリーキノロンである。レスピラトリーキノロンはCAP における大部分の原因菌をカバーしており治療効果も高いが,耐性菌の出現を考慮し『成人市中肺炎診療ガイドライン』(改訂第二版)までは第一選択薬から除外していた。現時点では市中呼吸器感染症で問題となるニューキノロン耐性肺炎球菌やニューキノロン耐性インフルエンザ菌は増加していないが,濫用は避けるべきである。また,肺結核合併例への投与では,診断の遅れを誘発する危険性があること,予後不良因子
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となること,ニューキノロン耐性のリスクとなること,などの不利益があるため,本薬剤の使用に際しては本当に必要な状況かどうか,より妥当性が高い他剤の選択肢がないかどうかを考慮する必要がある。なおレスピラトリーキノロンのなかで,トスフロキサシンは抗結核菌作用のないのが特徴である。

外来診療での注射薬使用は1 日1 回投与が現実的である。1 日1 回点滴静注療法の条件に合致する抗菌薬には,半減期の長いセフトリアキソン,レボフロキサシン,アジスロマイシンなどがある。米国ではOPAT(Outpatient Parenteral Antimicrobial Therapy)と呼ばれる外来抗菌薬静注療法ガイドラインが公表され,肺炎のみならずさまざまな疾患に対し実施されている。

CAP で最も頻度の高い原因菌は肺炎球菌(図1)であるが,外来で治療可能な肺炎,すなわち軽症肺炎群では肺炎マイコプラズマの頻度も高い。このため日本呼吸器学会の『成人市中肺炎診療ガイドライン』初版,改訂第二版では,CAP の原因菌を非定型病原体と細菌の2 つに分けて,両群を鑑別するための項目と基準を設けた(p.19,1.CAP の診断 4)細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別の項参照)。細菌性肺炎が疑われる場合にはペニシリン系薬を,非定型肺炎が疑われる場合にはマクロライド系薬を選択する手法である。臨床的診断法であるが,ガイドライン公表後の数々の前向き臨

表8  軽〜中等症CAP のエンピリック治療で考慮するポイント1)肺炎球菌を考慮した抗菌薬を選択する2)非定型肺炎(レジオネラ肺炎は除く)は軽症例が多いため,外来または短期入院症例が多い3)非定型肺炎ではβ- ラクタム系薬単剤は選択しない(p.89,CQ 7 参照) 4)抗菌薬の選択に際しては非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を提案する(p.89,CQ 7 参照) 5)細菌性肺炎が疑われる場合にはβ- ラクタム系薬単独投与を考慮する(p.89,CQ 7 参照) 6)レスピラトリーキノロンが最適であるが,使用に際しては結核の有無を考慮する7)β- ラクタム系薬とマクロライド系薬の併用は重症例を除き有効性は証明されていない(p.91,CQ 8 参照) 8)‌マクロライド耐性肺炎マイコプラズマやマクロライド耐性肺炎球菌に対してもマクロライド系抗菌薬の有効性が示されている9)ニューキノロン耐性肺炎球菌,ニューキノロン耐性インフルエンザ菌は増加していない各論1

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床研究でも鑑別は有用とする報告が多い。両群を鑑別する大きな理由は菌の耐性化を予防する,また耐性菌の蔓延を防ぐ,さらに医療資源の有効性維持のためで,狭域で有効な抗菌薬を選択する点にある。

実地医療における原因菌迅速診断法としては,臨床的鑑別法以外に肺炎球菌の尿中抗原検査や喀痰抗原検査,肺炎マイコプラズマの咽頭抗原検査,肺炎クラミジアのIgM 抗体検出法などがあり,これらの検査が陽性であれば標的治療が可能となる(p.33,2.CAP の治療 2)原因菌判明時の抗菌薬選択の項参照)。

外来患者群内服薬・β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬

*1

・マクロライド系薬*2・レスピラトリーキノロン*3,*4

注射薬・ セフトリアキソン・ レボフロキサシン*4・ アジスロマイシン一般病棟入院患者群

注射薬・スルバクタム・アンピシリン・‌セフトリアキソン or セフォタキシム・レボフロキサシン*4

※非定型肺炎が疑われる場合・ミノサイクリン・レボフロキサシン

*4

・アジスロマイシン集中治療室入室患者群

注射薬A 法:カルバペネム系薬*5 or

タゾバクタム・ピペラシリン

B 法†:スルバクタム・アンピシリ

ン or セフトリアキソン orセフォタキシム

C 法:A or B 法+アジスロマ

イシン

D 法:A or B 法+レボフロキ

サシン*4,*6

E 法:A or B or C or D 法+抗

MRSA 薬*7

*1:‌細菌性肺炎が疑われる場合:スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸(高用量が望ましく具体的な投与量は巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.116)を参照)。*2:非定型肺炎が疑われる場合:クラリスロマイシン,アジスロマイシン*3:‌慢性の呼吸器疾患がある場合には第一選択薬:ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン*4:結核に対する抗菌力を有しており,使用に際しては結核の有無を慎重に判断する。*5:メロペネム,ドリペネム,ビアぺネム,イミペネム・シラスタチン*6:代替薬:シプロフロキサシン

*4 or パズフロキサシン*4

*7:‌MRSA肺炎のリスクが高い患者で選択する:リネゾリド,バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン† :緑膿菌を考慮しない場合

図4  CAP のエンピリック治療抗菌薬
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※鑑別診断基準を用いても,しばしばマイコプラズマ肺炎と細菌性肺炎の鑑別が困難なことがある。一般に高齢者の肺炎は非典型例が多く,若年者に比べて鑑別し難いことが指摘されている。マイコプラズマ肺炎を高齢者群(60 歳以上)と非高齢者群(60 歳未満)に分けて比較した検討では,疾患重症度や予後は両群間で差はみられなかったが,高齢者群は非高齢者群と比べて基礎疾患保有例や他の病原微生物との合併例が多くみられている。また,高齢者群では発熱や咳の程度も非高齢者群と比べて弱く,その臨床像から細菌性肺炎を疑わせる症例が多くみられている。鑑別項目の合致率を比較しても高齢者群では非高齢者群と比べて有意に低く,非定型肺炎を疑う感度は年齢が上昇するとともに低下することが判明している。これらの傾向は肺炎クラミジア肺炎でも認められており,50 歳以上や慢性の心肺基礎疾患保有者では鑑別を行う必要性が乏しい。また,重症化した症例も鑑別困難であるため鑑別を行う必要はない。

4‌一般病棟入院患者(中等症~重症肺炎)での抗菌薬の選択(図4)

入院が必要な患者に対しては初期に静注薬で開始し,可能ならば早期に内服薬へとスイッチする(p.43,4)臨床評価法,スイッチ療法の目安,治療終了時期・退院時期の目安 2スイッチ療法の目安,の項を参照)。肺炎マイコプラズマも肺炎クラミジアも軽症肺炎であることが多く,重症度分類で中等症に分類される肺炎の多くは細菌性肺炎である。ただし,わが国では入院の正確な基準がなく,外来治療可能な軽症肺炎でも社会的に入院となる症例が多い。この場合は,非定型肺炎も考慮する必要がある。鑑別表を用いて非定型肺炎が疑われる場合にはミノサイクリンやアジスロマイシンの点滴静注を考慮する。

鑑別表の診断基準を用いた場合,合致項目が3,4 点の場合には非定型肺炎と細菌性肺炎の鑑別が困難なことをしばしば経験する。この場合,胸部CT 画像で肺炎マイコプラズマを疑うことが可能である。マイコプラズマ肺炎の炎症の主体は免疫反応による間接的な細胞障害である。細胞性免疫の過剰反応は気管支血管周囲間質への炎症細胞浸潤を増強し,細気管支壁での炎症が強くなり,内腔狭窄を来し閉塞性気管支炎を生じる。マイコプ各論1

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ラズマ肺炎と肺炎球菌性肺炎のCT 比較検討で有意差を認める所見は,1気管支血管周囲間質肥厚,2小葉中心性あるいは細葉中心性粒状影,3すりガラス影の3 つで,いずれも軽症から中等症のマイコプラズマ肺炎で高頻度である。本画像所見は,マクロライド耐性菌であっても同じである。

5‌集中治療室入室患者(重症~超重症肺炎)での抗菌薬の選択(図4)

集中治療室で全身管理が必要となる重症肺炎の代表的な劇症化原因菌は肺炎球菌とレジオネラ・ニューモフィラで,そのほか緑膿菌を含むグラム陰性桿菌,黄色ブドウ球菌,オウム病クラミジア,インフルエンザウイルスなどがある。ただし,緑膿菌による重症CAP は頻度が低く,抗菌薬の既投与,免疫不全(免疫抑制薬,ステロイド薬長期投与),好中球減少症の際に本菌による肺炎を疑う。

エンピリック治療としては,A 法:カルバペネム系薬(メロペネム,ドリペネム,ビアペネム,イミペネム・シラスタチン)またはβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(タゾバクタム・ピペラシリン)単剤療法, B 法(緑膿菌を考慮しない場合):第三世代セフェム系薬(セフトリアキソン,セフォタキシムなど)またはβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルバクタム・アンピシリン)単剤療法,C 法:A 法またはB 法とマクロライド系薬(アジスロマイシン)併用療法,D 法:A 法またはB 法とレスピラトリーキノロン(レボフロキサシン)併用療法,E 法:A 法またはB 法またはC 法またはD 法と抗MRSA 薬(リネゾリド,バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン)併用療法のなかから選択する。

確立された治療法ではないが,超重症肺炎では抗菌薬併用療法を積極的に検討すべきである。非定型病原体(レジオネラ・ニューモフィラ,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジアなど)を考慮するとβ- ラクタム系薬とニューキノロン系薬の併用療法(図4 D 法)が奏効する可能性が高いが,これまで菌血症を伴うCAP あるいは重症市中肺炎においてはβ- ラクタム系薬とマクロライド系薬(アジスロマイシン)の併用療法(図4 C法)が予後を改善することが多数報告されてきた。マクロライド系薬との併用療法が優れている理由はまだ明確でないが,マクロライド系薬は非定
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型病原体をカバーすること,抗炎症作用や免疫賦活作用を有しており炎症のコントロールに寄与していること,などが臨床成績を良好にしている可能性がある。マクロライド耐性肺炎球菌であっても併用療法の生存率が高いのは,抗菌活性以外の作用機序による可能性と考えられている。ただし,重症でない場合には,β- ラクタム系薬にマクロライド系薬を上乗せする効果を認めない(p.91,CQ8 参照)。

2)原因菌判明時の抗菌薬選択

良質の喀痰を用いた細菌学的検査および血液培養検査,尿中抗原検査(肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ),鼻咽頭ぬぐい検体抗原検査(肺炎マイコプラズマ,インフルエンザ),喀痰抗原検査(肺炎球菌),血清IgM 抗体検出法(肺炎クラミジア)等による原因菌同定法に基づき,原因菌が確定された場合には,標的治療へのde-escalation を推奨する(p.94,

CQ10 参照)。実際の抗菌薬選択は,原因菌の抗菌薬感受性および地域にお

ける薬剤感受性傾向を参考にして行う。

抗菌薬の選択は,危険因子がなく,重症度が低い場合には,狭域の抗菌薬を選択することを基本とする。ただし,基礎疾患を合併している場合や,肺炎が中等症以上の場合には,より広域の抗菌薬を最初から選ぶことが適切である場合もあり,最終的には診察医の判断による。

1肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(表9)

CLSI では髄膜炎以外の抗菌薬投与時におけるペニシリン感受性のブレイクポイント判定基準を高めに設定しており,肺炎球菌性肺炎の治療においてはペニシリン系薬の増量が推奨される。わが国ではマクロライド系薬耐性がきわめて高頻度にみられるが,耐性菌に対するアジスロマイシンの臨床的有効性,細菌学的有効性が示されている。2005 年以降に発売されたレスピラトリーキノロン(モキシフロキサシン,ガレノキサシン,シタフロキサシン)は優れた抗肺炎球菌活性を有しており,こうしたニューキノロン系薬はアモキシシリン高用量と同様の臨床効果が示されている。ペニシリン耐性肺炎球菌の頻度は現時点できわめて低いが,その場合の内服薬各論1

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にはレスピラトリーキノロンを第一選択薬とする。ニューキノロン耐性はDNA gyrase やtopoisomerase 遺伝子の点変異で容易に誘導される可能性があるため,ニューキノロン系薬の適正な使用が必要とされる。わが国ではニューキノロン耐性肺炎球菌が数% 検出されているが,増加の傾向は認められていない。

2インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(表10)

問題となっているインフルエンザ菌の耐性はBLNAR が主であり,BLP- ACR も認められている。わが国の2010 年の全国調査では,インフルエンザ菌全体に占めるBLNAR は23/123(18.7%),β- ラクタマーゼ産生株は7/123(5.7%)であるが,今後耐性率の変動が予想される。BLNAR は第一世代セフェム系薬,第二世代セフェム系薬に耐性である。ピペラシリンはBLNAR に抗菌力を示すが,BLPACR には無効である。タゾバクタム・ピペラシリンは両者に有効である。BLNAR にはレスピラトリーキノロンを第一選択薬とする。本邦ではニューキノロン耐性インフルエンザ菌が数% 検出されているが,増加していない。内服セフェム系抗菌薬のセフジト

表9  抗菌薬選択の実際−肺炎球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬アモキシシリン(高用量が望ましい*)第二選択薬レスピラトリーキノロン

(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)

入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ペニシリン系薬(アンピシリン,ベンジルペニシリン)第二選択薬セフトリアキソン第三選択薬第四世代セフェム系薬(セフォゾプラン,セフェピム,セフピロム)

第四選択薬カルバペネム系薬(パニペネム・ベタミプロン,メロペネム,ドリペネム,

ビアペネム,イミペネム・シラスタチン)

*:巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.116)参照。
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レン ピボキシルは,bioavailability は低いもののBLNAR を含めたインフルエンザ菌に対する薬剤感受性は良好で,薬理学的データおよびCAP に対する有効性の報告から,高用量であれば使用可能である。

3‌クレブシエラ属(Klebsiella spp.),他の腸内細菌科 (Enterobacteriacae) (表11) Extended spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌の比率は増加傾向にある。わが国の2010 年の全国調査では,呼吸器検体由来クレブシエラのうち,ESBL の割合は1.3% である。ESBL 産生株の多くはキノロン耐性を同時に有している。外来治療は分離菌の薬剤感受性を確認して薬剤を選択する。本邦ではカルバペネマーゼ産生株はきわめてまれである。

4肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae) (表12)

マクロライド系薬,テトラサイクリン系薬,レスピラトリーキノロンが有効であるが,もっともMIC 値が低いのはマクロライド系薬である。マクロライド感性マイコプラズマ感染症で外来治療を行う場合は,マクロライド系薬を第一選択とし,続いてテトラサイクリン系薬,キノロン系薬が推

表10  抗菌薬選択の実際−インフルエンザ菌外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬*

(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸),セフジトレン ピボキシル*

第二選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン第二選択薬第三世代セフェム系薬(セフトリアキソン,セフォタキシム),タゾバクタム・ピペラシリン第三選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン) *:高用量が望ましい。巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.116)参照。各論1

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奨される。テトラサイクリン系薬とキノロン系薬の有効性を比較した臨床研究はないが,in vitro において,キノロン系薬は,肺炎マイコプラズマに耐性を誘導することが実験的に証明されている。一方で,テトラサイクリン系薬は肺炎マイコプラズマに対する耐性誘導が起こりにくいことが知られており,耐性化抑制の点から,抗マイコプラズマ薬のなかでは優れているが,成人においては臨床研究も少なくエビデンスに乏しい。

2000 年以降にマクロライド系薬とリンコマイシン系薬に耐性を示す株が日本各地で分離されるようになり増加してきたが,2012 年をピークに減

表12  抗菌薬選択の実際−肺炎マイコプラズマ外来治療の場合(内服薬)第一選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン,エリスロマイシン)

第二選択薬ミノサイクリン,レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ミノサイクリン,マクロライド系薬(アジスロマイシン,エリスロマイシン)第二選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン)

表11  抗菌薬選択の実際−クレブシエラ属外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬ニューキノロン系薬(シタフロキサシン,レボフロキサシン,シプロフロキサシン,ガレノキサシン,モキシフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬第二,三世代セフェム系薬(セフォチアム,セフトリアキソン,セフォタキシム),スルバクタム・アンピシリン第二選択薬タゾバクタム・ピペラシリン第三選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン)
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少傾向にある。実臨床では,マクロライド系薬投与後,48 ~72 時間で解熱しない場合は,マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎を疑う。マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎においては,内服薬,注射薬ともにミノサイクリンを代替薬の第一候補とする。テトラサイクリン系薬は(小児における報告ではあるが)治療効果の検討において,マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎における除菌の高さと速さ,解熱までに有する時間もキノロン系薬より短いことが証明されている。さらには,前述のように耐性を誘導しにくいといった背景から,マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎では理想的な治療薬となる。第二選択薬はニューキノロン系抗菌薬である。

5‌レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(表13)

レジオネラ・ニューモフィラは細胞内増殖菌であるため臨床的にβ- ラクタム系薬が無効である。レジオネラ・ニューモフィラに対する臨床効果はニューキノロン系薬,マクロライド系薬,テトラサイクリン系薬において確認されている。かつてはエリスロマイシンが用いられていたが,今日ではニューキノロン系薬,アジスロマイシンの優越性を示す報告が多い。また,両薬の併用効果を示唆する報告がある。抗菌薬感受性におけるレジオネラ属菌種間の差は少ないが,臨床効果の検証は少ない。

6‌クラミジア属(Chlamydophila pneumoniae, Chlamydophila psittaci) (表14)治療に際し重要なことは,抗菌薬が細胞内に十分移行することである。ペニシリン系薬やセフェム系薬などのβ- ラクタム系薬やアミノグリコシド系薬は細胞内移行が低く,抗クラミジア活性を有さない。細胞内移行が良好で,かつ強いクラミジア増殖抑制を示す薬剤には,テトラサイクリン

表13  抗菌薬選択の実際−レジオネラ・ニューモフィラ入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン),アジスロマイシン

*

*:重症の場合:ニューキノロン系薬+アジスロマイシン

各論1

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系薬,マクロライド系薬,ニューキノロン系薬などがある。各種薬剤の最小発育阻止濃度は,クラミジア種間で差はみられず現在までクラミジア・トラコマティスを除いて野生株の耐性化の報告はない。

7黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(表15,16)

わが国における黄色ブドウ球菌について,市中においてもメチシリン耐性の増加が認められるが,特に近年海外ではPanton-Valentine-Leucocidine(PVL)を有する市中発症型MRSA(CA-MRSA)が検出され問題となっている。MSSA 感染(菌血症)の場合にはセファゾリンのほうがバンコマイシンよりも臨床効果が高い。MRSA では抗菌薬の感受性について分離株間の差が認められるので,薬剤感受性を確認して薬剤を選択すべきである。また,抗MRSA 薬使用に際してはTDM に基づいた治療計画が必要である。

8レンサ球菌(Streptococci)(表17)

レンサ球菌のなかではストレプトコッカス・アンギノサス群が検出されることが多く,膿瘍形成性が強いのが特徴である。空洞形成がある場合は複数菌感染を考慮して広域抗菌薬の選択も考慮する。複数菌感染を疑う場

表14  抗菌薬選択の実際−肺炎クラミジア,オウム病クラミジア外来治療の場合(内服薬)第一選択薬ミノサイクリン第二選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン)

第三選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,

シタフロキサシン,トスフロキサシン)

入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ミノサイクリン第二選択薬アジスロマイシン第三選択薬レボフロキサシン
p.251
合にはβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬を推奨する。ストレプトコッカス・ピオゲネスおよびストレプトコッカス・アガラクティエも肺炎の原因菌となりうる。前者はきわめて重篤な肺感染をもたらす可能性がある。ペニシリン耐性はほとんど認められないが,マクロライド耐性が低頻度に認められる。ニューキノロン系薬は薬剤によって抗レンサ球菌活性に差があり,ニューキノロン系薬のなかではガレノキサシン,モキシフロキサシン,シタフロキサシンが比較的強い抗菌活性を有する。

9モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)(表18)

ほとんどがβ-ラクタマーゼ産生株である。モラクセラの産生するβ-ラクタマーゼはペニシリン系薬を分解する。わが国におけるマクロライド系薬およびニューキノロン系薬に対する耐性化は認められていない。

10嫌気性菌(Anaerobes)(表19)

肺炎の原因菌となる嫌気性菌の多くは口腔内に常在しており,ペプトス

表15  抗菌薬選択の実際−メチシリン感受性黄色ブドウ球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン,セファゾリン第二選択薬ミノサイクリン,クリンダマイシン

表16  抗菌薬選択の実際−メチシリン耐性黄色ブドウ球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬リネゾリド入院治療の場合(注射薬)第一選択薬バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド第二選択薬アルベカシン各論1

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トレプトコッカス属,プレボテラ属,フソバクテリウム属,などが関与している。微好気連鎖球菌などとの混合感染も少なくない。嫌気性菌感染の多くは誤嚥と関連するものと推定される。ほとんどの口腔内嫌気性菌(プレボテラ属,フソバクテリウム属,ポルフィロモナス属など)はβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬,クリンダマイシン,メトロニダゾールに対する感受性を有するが,プレボテラ属ではクリンダマイシン耐性が増加している。

表18  抗菌薬選択の実際−モラクセラ・カタラーリス外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬マクロライド系薬(クラリスロマイシン,アジスロマイシン)第三選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン第二選択薬第二,三世代セフェム系薬(セフォチアム,セフトリアキソン,セフォタキシム)第三選択薬ニューキノロン系薬(レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン)

表17  抗菌薬選択の実際−レンサ球菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬アモキシシリン,アジスロマイシン第二選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)

第三選択薬レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,シタフロキサシン,

トスフロキサシン)

入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ペニシリン系薬(アンピシリン,ペニシリンG),アジスロマイシン第二選択薬スルバクタム・アンピシリン,タゾバクタム・ピペラシリン
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11緑膿菌(Pseudomonas aerugionosa)(表20)

緑膿菌は慢性気道感染を有する患者において気道定着が認められ,CAPの原因菌となりうる。緑膿菌は抗菌薬の感受性について分離株間の差が認められるので,薬剤感受性を確認して薬剤を選択すべきである。

3)補助療法

重症肺炎では,過剰な炎症反応(サイトカインストームなど)と好中球および血小板の異常な集積が,凝固異常,肺胞上皮障害,肺毛細血管内皮障害をもたらし,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)を併発しうる。胸部画像検査で両側びまん性に陰影が広がる肺炎症例では,炎症過剰状態となっていることが少なくないため,炎症を調節する薬剤の投与が有用である可能性がある。マクロライド系薬がこれに該当するが,ステロイド薬もこの範疇の薬剤に含まれる(p.92,CQ9参照)。その他に好中球エラスターゼ阻害薬,免疫グロブリン製剤,血液浄化療法などが候補として挙がるが,これらの治療法はエビデンスが不十分であり,今後の臨床研究の結果が待たれる。

1ステロイド薬(p.92,CQ9 参照)

成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会では,メタアナリシスなら

表19  抗菌薬選択の実際−嫌気性菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬β- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸)第二選択薬レスピラトリーキノロン(シタフロキサシン,ガレノキサシン,モキシフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬スルバクタム・アンピシリン第二選択薬メトロニダゾール,クリンダマイシン※‌空洞形成など他の菌と混合感染を考慮する場合:タゾバクタム・ピペラシリン,カルバペネム系

薬(メロペネム,ドリペネム,ビアペネム,イミペネム・シラスタチン)各論1

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びにシステマティックレビュー(SR)を行い,有用性に関して検討した。その結果,重症度を考慮しないCAP 患者の全体的な解析では,入院期間が1 日短縮すること以外の有用性を認めなかった。しかし,層別のサブ解析で重症例のみに限定すると死亡率を改善することが示唆された。このため,委員会では軽症から中等症の成人CAP に対して抗菌薬治療に全身投与ステロイド薬を併用しないことを弱く推奨し,重症の成人CAP に対して全身投与ステロイド薬を併用することを弱く推奨することを決定した。

ステロイド薬の役割としては,解熱および全身状態の改善,ガス交換能の改善,抗ショック作用,過剰なサイトカインの産生抑制作用,肺の線維化防止などの作用が期待される。ヒドロコルチゾン 200 ~300 mg/ 日,プレドニゾロン20 ~50 mg/ 日,メチルプレドニゾロン1mg/ 体重kg/ 日,デキサメタゾン5mg/ 日のいずれかを3 ~7 日間連日投与する。

ただし,ステロイド薬を投与する際には高血糖を主体とした有害事象の発生を増加させることに留意しなければならない。

2低酸素血症への対応

酸素化が悪く通常の酸素療法では維持できない呼吸不全に対しては,人工呼吸器を装着,さらに重篤な低酸素血症には体外式膜型人工肺

表20  抗菌薬選択の実際−緑膿菌外来治療の場合(内服薬)第一選択薬ニューキノロン系薬(シタフロキサシン,シプロフロキサシン,レボフロキサシン)入院治療の場合(注射薬)第一選択薬ピペラシリン,タゾバクタム・ピペラシリン第二選択薬第三,四世代セフェム系薬(セフタジジム,セフェピム,セフォゾプラン)第三選択薬ニューキノロン系薬(シプロフロキサシン,パズフロキサシン,レボフロキサシン)第四選択薬カルバペネム系薬(メロペネム,ドリペネム,ビアペネム)
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(ECMO)使用が考慮される。ECMO は十分な設備と経験,管理体制の整った施設で施行されることが望ましく,適応症例の早期の見極めと,施設によっては転院判断が必要である。NPPV は,COPD 合併症例ではICU 滞在期間短縮,挿管率と死亡率の低下から推奨されるが,その他の基礎疾患では有効性が明らかでなく,肺炎に対して積極的に推奨する根拠がない。

4)‌臨床評価法,スイッチ療法の目安,治療終了時期・退院時期の‌

目安1臨床評価法

呼吸器感染症を対象とした新規抗菌薬の臨床試験においては,日本化学療法学会の抗菌薬臨床評価法制定委員会呼吸器系委員会の『呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法』が1997 年に作成され,2012 年に改訂された。本評価法は,新規抗菌薬の臨床現場への早期提供につながることを期待して作成したものであるが,実臨床でも客観的な効果判定として使用できる。

抗菌薬の早期の効果判定は薬剤投与3 日後に判定する。評価判定は,体温(発熱),咳嗽,喀痰量の3 項目として,3 項目中2 項目以上を「改善(改善傾向あり)」とする。炎症所見(WBC,CRP)および胸部X 線陰影については,早期薬効判定では評価しない。なお,EOT(End of Treatment:治療終了時)・TOC(Test of Cure:治癒判定)時の臨床効果判定の臨床症状としては,「咳嗽」「喀痰量」「呼吸困難」「胸痛」「喀痰性状」「胸部ラ音」の6 項目とする。

2スイッチ療法の目安

静注抗菌薬の投与により肺炎患者の状態が改善し,1循環動態が安定し,2臨床症状が改善し,3経口摂取が可能,4消化器機能が健全であれば,内服抗菌薬へのスイッチが可能とされる。

スイッチ療法導入の具体的な目安は本邦でいくつかの検討されており,以下の基準で安全にスイッチ療法が実施できると報告されている。1)1呼吸器症状(咳,呼吸困難,など)の改善,2CRP <15mg/dL,3経口各論1

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摂取の十分な改善,4体温が少なくとも12 時間以上38 °C未満であること,の4 項目,2)1咳および呼吸状態の改善,2CRP <10mg/dL(初診時がCRP <10mg/dL の場合にはCRP の減少を確認),3白血球数が10,000/μL 未満,4体温が16 時間以上37 °C未満であること,の4 項目。実際にわが国で,1)の基準を用いたCAP でのスイッチ療法の有用性を検討した臨床研究において,スイッチ療法導入基準の妥当性も示唆された。

3治療終了時期・退院時期の基準

CAPの治療期間は,軽症から中等症で初期治療が奏効している場合には1 週間以内(5 ~7 日間)が,重症例や,劇症化・難治化を来しうるレジオネラ・ニューモフィラやMRSA,緑膿菌などが原因菌の場合や,肺外にも感染が広がっている場合には7 〜14 日間(以上)が基本であり(p.96,

CQ12 参照),表21 に示したような治療期間が推奨される。

抗菌薬投与の終了は,“臨床的な軽快状態”すなわちスイッチ療法の導入基準を満たし,さらに1白血球正常化,2CRP が最高値の30% 以下,3胸部X 線の明らかな改善,を加味して総合的に判断するとよい。ただし,胸部陰影の改善には時間を要する症例があることや,CRP に関しても感染症以外の因子で軽快しない症例があることに注意が必要である。

退院時期は,TOC の時点つまり抗菌薬終了後の観察期間を5 ~10 日間程度設けて再発がないことを確認後退院とするのが理想的ではあるものの決して現実的ではなく,患者の状態・ニーズに応じて,EOT の時点からTOC の間で主治医の判断で退院日を決定する。なお,スイッチ治療の場合には,EOT の前に退院となる。

5)抗菌薬無効時の考え方

肺炎の初期治療への反応が不良と判断された場合には,病態の見直しと治療方針の再検討が必要となる。また,場合によっては,検査を追加して情報の収集に努めることが要求される。現場対応としては,抗菌薬の変更や強化がまず検討される場合が多いが,初期治療への反応不良には他にもさまざまな因子が関与しうるため,抗菌薬以外の問題にも注目して初期判
p.257
断の妥当性を見直してみることが必要である。なお,本項目は主にCAPの成績をもとに作成したものであるが,病態評価や鑑別診断の過程はNHCAP,あるいはHAP であってもほぼ共通するものと考えられる。

1基本的な考え方

CAPにおける初期治療の失敗,あるいは抗菌薬不応肺炎に関した報告は多数存在するが,判定基準や評価時期,治療内容などの背景因子は必ずしも統一されておらず,報告ごとにある程度の相違がある。効果判定の時期は治療開始後72 時間後を目安としたものが多く,いくつかの論文では72時間よりも早期の治療変更例をearly failure,72 時間以降の治療変更例をlate failure と表現している。欧米を中心とした主な報告から要約すると, CAP における初期治療の不成功率は6 ~16% 程度,死亡率は治療不成功時で25 ~27%,成功時は2 ~4% 程度と評価されている。また,初期治療不成功の原因に関しては感染性因子が40 ~60%,非感染性因子が15 ~ 25% と感染性因子の頻度が高く,early failure とlate failure では前者は感染性因子が多く関与し,後者では非感染性因子の関与率が高い。治療不成功と関連したリスク因子は報告によって一定していない。また,例えばインドからの報告ではlate failure の原因の第一位が結核となっているなど,地域事情で結果が修飾される場合がある。

2抗菌薬無効時の鑑別診断

非感染性の病態として最も頻度が高いのは心不全である。感染契機の心

表21  菌種・病態別,市中肺炎における治療期間の目安・肺炎球菌:菌血症がなければ解熱後3(〜5)日間(最低5 日間),菌血症併発では10 〜14 日間・ブドウ球菌や嫌気性菌による壊死性肺炎:14 日間以上・レジオネラ・ニューモフィラ:7 〜14 日間・緑膿菌:10 〜14 日間・その他のCAP:最低5 日間かつ2 〜3 日間平熱が続くこと・肺化膿症,胸膜炎,膿胸を併発している場合,基礎疾患による難治化を認める場合には,抗

菌薬を上記より長期間投与すべきである各論1

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p.258
不全のような境界領域の症例も多く,肺炎の鑑別診断としても,あるいは肺炎の治癒阻害因子としても重要性が高い(表22)。

感染性の病態はHost,Parasite,Drug の各々の要素に区分するとある程度病態が整理しやすい(表23)。細菌側,宿主側の因子として日常的に遭遇する頻度が高いのは各種の耐性菌,および誤嚥等を含む気道ドレナージの障害である。一方の薬剤側の因子としては,臨床の現場においては抗菌薬の投与量が必ずしも十分ではないケースがまれならず見出される。十分量の抗菌薬を投与することは抗菌薬投与時の原則であるが,国内における抗菌薬の保険適用量は低めに設定されている場合が多く,特に基礎疾患保有者においては可能な限り高用量の投与を心がけることが必要である。

CAP では比較的健康な宿主に病原性の強い限られた菌種が感染するため,病原体に有効な抗菌薬が投与された後の経過はある程度パターンで把握することが可能である。例えば,菌血症を伴わない肺炎球菌性肺炎は一般に改善がすみやかであり,有効抗菌薬が投与されていれば大部分は72時間以内に改善が期待できる。肺炎球菌性肺炎が適切な抗菌薬投与にもかかわらず,72 時間の段階で十分な改善が得られない場合には,他因子の存在を慎重に検討する必要がある。一方,レジオネラ・ニューモフィラは適切な治療が開始されても72 時間程度では明らかな改善まで至らないケースも多いため,病勢がある程度安定化していれば安易に抗菌薬を変更するべきではない。

実際に治療反応性に関する指標は必ずしもすべてが揃って改善や悪化を示すとは限らないが,その場合の考え方も基本的には大きく変わるもので

表22  初期治療不応時の鑑別診断−非感染性の病態(肺炎類似陰影を呈する疾患)

病態具体例

A)CT,エコー等での鑑別が主体となるもの心不全,尿毒症肺,肺塞栓

B)気管支鏡検査などが適宜追加されるもの急性間質性肺炎,ARDS,好酸球性肺炎,器質化肺炎,過敏性肺臓炎,薬剤性肺障害,放射線肺臓炎,肺胞出血,肺癌,リンパ増殖性疾患
p.259
はない。例えば胸部陰影や呼吸状態が改善しても熱型や炎症反応の反応が不良な場合には,感染性因子としては肺外感染巣の出現や膿胸化など,非感染性因子としては薬剤熱,偽痛風,あるいは背景疾患の急性増悪などの鑑別が必要になる。また熱型や炎症反応の改善に比較して胸部陰影や呼吸状態の改善が乏しい場合には心不全(輸液過剰)や肺胞出血の二次的合併などの可能性も考慮すべきである。

表23  初期治療不応時の鑑別診断:感染性の病態(肺炎として初期治療不応要因)

病態具体例

A)細菌側の要因

1.抗菌薬がカバーしない範囲の病原体の関与ウイルス,真菌,抗酸菌2.一般病原体に由来する肺炎1)非定型病原体(β-ラクタム系薬無効)肺炎マイコプラズマ,レジオネラ・ニューモ

フィラ,クラミジア属

2)抗菌薬耐性菌MRSA,PRSP,BLNAR,緑膿菌,ESBL 産生菌3)改善に時間のかかる病原体ノカルジア属,放線菌3.日和見病原体等による入院後の二次感染4.重症感染症による急速な病状悪化敗血症性ショック,劇症型肺炎(肺炎球菌,レジオネラ・ニューモフィラ,ク

レブシエラ属)

B)宿主側の要因

1.抗菌薬移行不良な病巣の形成膿胸,肺膿瘍,ブラ内感染2.肺外感染巣の形成心内膜炎,骨関節炎,カテーテル感染,脳髄膜炎3.気道ドレナージの障害中枢型肺癌,気道異物,反復性の誤嚥,去痰不全,

慢性呼吸器疾患(気管支拡張症,副鼻腔気管支症候群)

4.基礎疾患による全身免疫機能の低下HIV,免疫抑制薬投与,血液系悪性腫瘍5.医療機関受診の遅れによる重症化C)薬剤側・医療側の要因

1.抗菌薬の不適切投与投与量不足,投与経路や回数が不適切2.治療介入開始の遅れによる重症化3.抗菌薬に由来する有害事象薬剤熱各論1

S C O P E
p.260
3病態の再評価と追加すべき検査

初期治療への反応が不良と判断された場合には,その時点までに判明している情報をもとに病態を再評価する。また,病歴の再確認も一般論として非常に重要である。

初期治療時に細菌学的検査が適切に行われていない場合には,一般に反応不良時における評価や二次治療の選択が難しくなる。また,培養検査の結果は陽性所見ばかりでなく,陰性所見も参考とすべきである。MRSA など上気道常在型の一般細菌が喀痰培養から検出されても病原性の判断は難しいが,培養が陰性の場合にはその段階で大部分は治療対象から除外して考えることができる。

追加検査としては細菌学的な追加検査に加えて必要に応じてCT,気管支内視鏡検査などの追加検査を施行することになる。CT は全例において施行されるべきではないが(p.83,CQ2 参照),侵襲性は低く,非感染性の病態の鑑別や膿胸,肺膿瘍,中枢気道の異常などの検出に有用な場合がある。気管支内視鏡検査は侵襲的であるが,非感染性の肺病変の関与が示唆される場合には有用性が高い。気管支鏡検査の適応基準は施設により異なるが,少なくともICU 管理の人工呼吸症例などでは比較的容易に施行することが可能である。またCAP における膿胸合併率は0.7 ~1.3% 程度であるが,初期治療失敗例の分析では12 ~22% に関与していたと報告されている。胸水検査は少なくとも十分量の胸水を伴う初期治療不応例に対しては,積極的に試みるべき検査のひとつである。
p.261
臨床的特徴

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)は入院後48 時間以上経過してから新しく発症した肺炎であり,入院時すでに感染していたものは除かれる。また,気管挿管・人工呼吸器開始後48 時間以降に新たに発症した肺炎を人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia: VAP)と呼ぶ。医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)の定義は,1長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している(精神科病棟も含む),290 日以内に病院を退院した,3介護(performance status 3 以上)を必要とする高齢者,身障者,4通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,抗癌化学療法,免疫抑制薬などによる治療)を受けている(p. iv,用語一覧参照),である。

HAP/NHCAP とも耐性菌の分離頻度や死亡率はCAP に比べて高い。NHCAP の主な発症機序としては,1誤嚥性肺炎,2インフルエンザ後の二次性細菌性肺炎,3透析などの血管内治療に関連した耐性菌性肺炎〔methicillin-resistant S. aureus(MRSA)肺炎など〕,4免疫抑制薬や抗癌剤などによる治療中に発症した日和見感染症としての肺炎,が挙げられるが,多くは高齢者の誤嚥性肺炎である。

症状は,発熱,咳嗽,喀痰,息切れなどであるが,高齢者肺炎が主体の

院内肺炎/医療・介護関連肺炎各論2

院内肺炎/医療・介護関連肺炎診断の基本的特徴

SCOPE肺炎の基本的特徴

各論2

S C O P E
p.262
NHCAP では食欲低下,失禁,日常の活動性低下など典型的な呼吸器症状を呈さない場合があることに注意する。したがって身体所見では,呼吸数の増加や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下などの所見に注意する。

HAP/NHCAP では,予後不良の終末期肺炎の像を呈する例や老衰の経過で発症する例も多く,また誤嚥性肺炎の病態をとることも多いため,適切な抗菌薬治療が生命予後を改善するとは限らないことに留意しておく必要がある。したがって,必ずしも耐性菌の保有リスクや重症度分類が抗菌薬選択の指標となるとはいえず,宿主状態を加味して治療方針を決定する必要がある。すなわち,集中治療や入院治療など積極的な治療の必要性については,患者個人や家族の意思を尊重したうえで,QOL を優先するような生命倫理的側面を考慮することも重要である。

疫学的特徴

HAP は,高度医療の結果としての免疫抑制下の患者に生じることが多い。そのような患者は,院内環境に生息する細菌に曝露されることが多いうえ,抗菌薬の既投与があるために,病院感染で認められる薬剤耐性菌による肺炎の形をとることが多い。VAP は,HAP のなかで挿管下人工呼吸を要する,より重症度の高い患者群に生じることから,その治療にはとりわけ難渋する。NHCAP は,わが国特有の状況を示す独自性の強い肺炎の定義/ 概念で,療養病床に入院中や高齢者施設に入所中,あるいは在宅介護の高齢者に起こり,多くは嚥下機能低下に関連した誤嚥性肺炎の形をとるが,医療介入の結果としてHAP と同様の薬剤耐性菌性肺炎や日和見感染症が生じうる。人口の高齢化,および医療介入の拡大に伴い,HAP/ NHCAP の発生数は当面は増加することが見込まれる。

1.死亡率

本ガイドライン作成グループでは,日本における肺炎疫学研究で死亡率を評価した既報告〔HAP 5 編,(N)HCAP 9 編,VAP 2 編〕を対象に,肺
p.263
炎ごとの死亡率について統合解析を行った。死亡率はVAP 32.4%,HAP 30.4%,(N)HCAP 15.5% であった(p.6,総論図3)。

これら死亡率は,米国におけるVAP で約30%,VAP 以外のHAP やHCAP で約20% 程度と報告された数値と近似した結果であった。また,同一研究内でCAP と(N)HCAP の死亡率を比較した研究を統合解析したところ,(N)HCAP のほうが有意に死亡率が高く異質性も認められないことから(図1),信頼性が高いと考えられる。

なお,これらの研究は日本のNHCAP と米国において定義された医療ケア関連肺炎(healthcare-associated pneumonia:HCAP)が含まれており,HCAP はNHCAP とは同じ概念ではないこと,また日本のVAP のデータが少ないこと,HAP のデータに関しても報告間において死亡率のばらつきがあることに留意しておく必要がある。

2.検出菌

NHCAP およびHAP 患者における検出菌は,CAP と異なり耐性菌が多い傾向にある。本ガイドライン作成グループでは,日本におけるHAP の疫学研究の既報告5 編を対象に,HAP の検出菌について統合解析を行った。

あわせて1,632 症例の検出菌が解析され,黄色ブドウ球菌が最も頻度が

RR 2.43(95%Cl 2.07-2.85) I

2=0%と,異質性は認めない。

図1  日本におけるCAP と(N)HCAP の死亡率の比較

[1]Shindo 2009 [3]Umeki 2011 [2]Seki 2011 [4]Ishida 2012 [5]Miyashita 2012 [6]Sugisaki 2012 [9]Shindo 2013 [8]Maruyama 2013 [7]Fukuyama 2013合計(95% Cl)総イベント数異質性評価: Tau2=0.00;Chi2=3.40, df=8(p=0.91);I2=0%全体的な影響の検定: Z=10.96(p<0.00001)

30 5 3 58 75 29 131 44 21

396

イベント数

141 79 14 442 599 184 526 321 192

2,498

症例数(N)HCAP CAP RR

イベント数症例数比重発表年M-H,Random,95%Cl

17 4 2 23 51 17 89 7 4

214 230 123 20 451 786 342 887 124 114

3,077 2009 2011 2011 2012 2012 2012 2013 2013 2013

0.01 0.1 1

RR M-H, Random, 95%CI

CAP優位(N)HCAP優位

10 100

2.88[1.65-5.02] 1.95[0.54-7.03] 2.14[0.41-11.20] 2.57[1.62-4.10] 1.93[1.37-2.71] 3.17[1.79-5.61] 2.48[1.94-3.18] 2.43[1.12-5.24] 3.12[1.10-8.85] 2.43[2.07-2.85]

8.1% 1.5% 0.9% 11.7% 21.9% 7.7% 41.5% 4.3% 2.3% 100.0%

研究またはサブグループ

各論2

S C O P E
p.264
高く,内訳はMRSA 17.5%,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive S.aureus:MSSA)6.5% であった。次いで緑膿菌が13.9% と多く,この2 菌種が主要検出菌であった(図2)。

HCAP の検出菌に関しては,その多様性からCAP で多いとされる肺炎球菌やインフルエンザ菌,およびHAP で多いとされるMRSA や緑膿菌,グラム陰性桿菌のそれぞれの頻度は,国や地域,施設ごとで分布と頻度が報告によって異なっている。検出菌に関してはCAP と大きな差はなかったという報告がある一方,黄色ブドウ球菌が多いとする米国の報告や, CAP に比べて誤嚥性肺炎,インフルエンザ菌,黄色ブドウ球菌,グラム陰性桿菌の頻度が多かったとする,わが国同様高齢化が進行しているイタリアからの報告がある。最近のわが国からの報告でも,潜在的に多剤耐性化しやすい菌は,CAP よりHCAP で多く(15.3% vs. 0.8%,p<0.001),黄色ブドウ球菌(11.5% vs. 0.8%,p<0.001),MRSA(6.9% vs. 0%, p=0.003),腸内細菌(7.8% vs. 2.4%,p=0.037),緑膿菌(6.9% vs. 0.8%,p=0.01)の分離率で差がみられている。また,HCAP ではPerformance Status(PS)が悪い患者で,より耐性菌が増加していた。その結果として耐性菌の割合が増え,不適切な抗菌薬が選択される率が高いと同時に,CAP に比して高い死亡率も示されており,耐性菌の分離頻度と死亡率が関連する可能性を示唆している。

図2  日本のHAP 検出菌(各研究の平均と95%信頼区間)

0 5 10 15 20 25 30(%)

エンテロコッカス・フェカーリス

セラチア・マルセッセンス

アシネトバクター属

ステノトロフォモナス・マルトフィリア

インフルエンザ菌

肺炎桿菌

MSSA

肺炎球菌

緑膿菌

MRSA

1.7 3.0

4.1 4.2

4.5 5.4 6.5 7.7 13.9 17.5

国内5研究(1,632症例)
p.265
本ガイドライン作成グループでは,日本における(N)HCAP の疫学研究の既報告11 編を対象に,(N)HCAP の検出菌について統合解析を行った。

あわせて2,678 症例が解析され,肺炎球菌が総カウント17.3%と最も頻度高かった(図3)。(N)HCAP とCAP で比較した論文のみを抽出した2,498 例の統合解析の結果では,肺炎球菌が総数16.4% と最も頻度が高く,続いてクレブシエラ属9.6%,MRSA 9.6%,緑膿菌 8.0%,MSSA 5.3%,インフルエンザ菌 5.1%,ストレプトコッカス属 5.1% であった。これら9 論文を対象にメタ解析すると,CAP に比較して(N)HCAP でMRSA(RR 5.24,95%CI 3.82-7.18,I 2=0%),緑膿菌(RR 2.43,95%CI 1.89-3.12,I 2=0%),クレブシエラ属(RR 比2.45,95%CI 1.90-3.17, I 2=17%) が有意に高く,さらに多剤耐性菌を一括した場合においても,(N) HCAP で有意に多かった(RR 3.54,95%CI 2.63-4.77,I 2=46%)。一方で異質性が高く信頼性に劣るものの,肺炎球菌 (RR 0.73,95%CI 0.55- 0.97,I 2=76%),非定型病原体(RR 0.30,95%CI 0.13-0.68,I 2=84%)についてはCAP で有意に多かった。

NHCAP については,CAP では標的にされない耐性菌が約20% 程度に分離されるが,HAP ほど多くないのがわが国の現状といえる。肺炎球菌をはじめとしてCAP で多くみられる菌に加え,口腔内レンサ球菌,腸内細菌や嫌気性菌の頻度が増していることも報告されている。

図3  日本の(N)HCAP 検出菌(各研究の平均と95%信頼区間)

0 5 10 15 20 25 30(%)

モラクセラ・カタラーリス

大腸菌

肺炎クラミジア

ストレプトコッカス属

MSSA

ヘモフィルス属

緑膿菌

クレブシエラ属

MRSA

肺炎球菌

2.4 2.4 4.2 5.1

5.5 7.6

8.0 8.8 9.0 17.3国内11研究(2,678症例)

各論2

S C O P E
p.266
しかし,誤嚥の関与を背景として,分離菌不明例が約半数の症例を占める事実を念頭に置かなければならない。

最近わが国からのHCAP 患者の気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)液を用いた,細菌の16S rRNA 遺伝子を標的とした網羅的細菌叢解析法で検討した報告によると,口腔内レンサ球菌が有意に多く,誤嚥リスクがある肺炎ではさらに口腔内レンサ球菌の優位性が高まっていた(図4)。

また,喀痰からMRSA が検出されたとしても,遺伝子レベルでは原因菌である可能性が低い,など興味深い結果を得ており,分離培養菌では真の原因菌を捉えきれていない可能性を述べている。

いずれにしてもわが国の疫学からは,HAP においては緑膿菌とMRSAが2 大主要検出菌として挙げられ,NHCAP においては上記2 大主要検出菌と肺炎球菌や肺炎桿菌が挙げられており,特に緑膿菌とMRSA は「過去90 日以内の2 日以上の抗菌薬使用歴」と「経管栄養」などの多剤耐性菌のリスク因子を有する場合に検出されやすく,治療にあたっては,これらの微生物疫学を考慮する価値はある。なお,従来,HAP/VAP であっても入院初期の患者での検出菌はCAP に近いとする報告があったが,最近の知見では早期発症であっても耐性菌を考慮すべきとするものもあり注意が必要である。耐性菌リスク因子の有無別に分けたHAP/NHCAP の代表的な原因微生物を表1 に示した。

図4  網羅的細菌解析法によるHCAP の第一優占菌種

0 5 10 15 20 25 30(%)

大腸菌

クレブシエラ属

コリネバクテリウム属

ストレプトコッカス・アンギノサス群

黄色ブドウ球菌

嫌気性菌

緑膿菌

肺炎球菌

インフルエンザ菌

ストレプトコッカス属

1.9 2.9 3.8 3.8 5.7 7.6

7.6 8.6 13.3 18.1 (94症例)
p.267
3.疫学からみる死亡原因としての肺炎

肺炎は日本人の死亡原因の第3 位であり,死亡するのは高齢者の割合が圧倒的に多く,女性より男性が多い疾患である。わが国の高齢化社会の進展とともに,高齢者人口は増加の一途であり,それに相関して肺炎の死亡率も増加傾向にある。しかし,詳細にみてみれば,2011 年をピークとして,肺炎の死亡率は男女ともに減少傾向に転じている。その要因はさまざまであろうが,注目すべき現象として,死亡原因としての「老衰」の死亡率が著明に増加している点である。すでに女性では,老衰が肺炎を抜いている。

老衰と肺炎の間には密接な関係があり,老衰の過程で誤嚥が起こり肺炎となる場合や,うっ血や死戦期喘鳴が起こると肺炎との鑑別が困難となる。このような場合,肺炎が死亡原因になるのか,老衰が死亡原因になるのか,厚生労働省の「死亡診断書記入マニュアル」には,表2 のような記

表1  HAP/NHCAP における主な検出菌

耐性菌リスクなし・肺炎球菌・MSSA・グラム陰性腸内細菌科細菌(クレブシエラ属,大腸菌など)・インフルエンザ菌・口腔内レンサ球菌

耐性菌リスクあり(上記の菌種に加え,下記の菌を考慮する)・MRSA・緑膿菌・ESBL 産生菌・AmpC 型β - ラクタマーゼ産生菌

表2  平成28年死亡診断書記入マニュアル死因としての「老衰」は,高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない,いわゆる自然死の場合のみ用います。ただし,老衰から他の病態を併発して死亡した場合は,医学的因果関係に従って記入することになります。

例)(ア)直接死因 誤嚥性肺炎(イ)(ア)の原因 老衰

〔厚生労働省.平成28 年死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルより引用〕各論2

S C O P E
p.268
載がある。

このように,老衰の経過中に肺炎を併発し,死亡の直接原因となる場合,がん末期などの疾患末期と同様に,直接死因としての肺炎とその原因としての老衰という病態の捉え方がなされており,臨床医もそのような考え方をしているという報告もみられる。

HAP/NHCAP 診療の全体的な流れ

1.HAP/NHCAP の診断

一般的に肺炎の症状は,発熱,咳嗽,膿性喀痰の出現あるいは増加,息切れ,胸痛であるが,高齢者肺炎が主体のNHCAP では食欲低下,失禁,日常の活動性低下など典型的な呼吸器症状を呈さない場合があることに注意する。したがって,身体所見で,呼吸数の増加やSpO2 の低下などに十分注意を払う必要がある。

上記の症状が複数みられ,胸部聴診所見でcoarse crackles が聴取され,肺炎を疑い胸部X 線を撮り,新しいあるいは増大した浸潤陰影が出現していれば,肺炎を疑う。血液検査にて白血球の増加,炎症所見の上昇があれば,より疑わしい。

以上の診療で肺炎を疑った場合には,喀痰や気管内吸引痰などの気道由来検体を採取し,細菌学的な検査に提出し,エンピリックな抗菌薬治療を開始する。抗菌薬の投与前に血液培養も同時に提出するほうが望ましい。

バイオマーカーの有用性については,HAP/NHCAP においてCRP 推移(3 ~5 日目におけるCRP 低下)は生命予後を予測する目安として行うことを考慮してよい(p.99,CQ14 参照)が,診断時には補助的な位置づけにとどめるべきであろう。

2.患者背景のアセスメント

HAP/NHCAP と診断したら,患者背景のアセスメントを行い,易反復性の誤嚥性肺炎のリスクがある,または,疾患末期や老衰の状態であると
p.269
判断した場合は,個人の意志やQOL を考慮した治療・ケアを行う。このような状態でない場合は,「3.HAP/NHCAP における治療薬の決定」に示す項目を参考に,治療薬を決定する。

1)誤嚥性肺炎のリスクの判断

わが国のNHCAP は,米国においてHAP 治療ガイドラインから派生的に登場し,耐性菌肺炎を意識させたHCAP の概念と異なる捉え方が一般的になりつつあり,必ずしも一律に,広域抗菌薬の初期使用で死亡率を下げるべき肺炎とは言い切れなくなっている。HCAP の超過死亡の原因が,耐性菌の頻度が高いことによるものではないことが示唆されつつあり, HCAP の概念は耐性を来しうる原因菌を正確に特定しない,とした系統的レビューおよびメタアナリシスも報告されている。その理由は,誤嚥性肺炎で代表される原因菌不明症例の混在にあり,HAP においても無視できない頻度を占めるため,本ガイドラインではHAP/NHCAP 患者アセスメントの冒頭に,誤嚥性肺炎のリスク判断をすることを推奨した。

誤嚥性肺炎は,ADL や全身機能の低下,特に脳血管障害を有する場合に認められやすい嚥下機能障害を背景に起きる肺炎で,高齢者の食事摂取に関連して発症する。このような病態は,NHCAP における基礎病態あるいは併存疾患である高齢,中枢神経疾患,ADL 低下,経管栄養管理などと同一であり,CAP に比較してADL の障害度の大きい高齢者肺炎の側面をもち,わが国におけるNHCAP は誤嚥性肺炎とオーバーラップすると考えられる。HAP に関しても,免疫機能低下が背景にある耐性菌リスクの高い肺炎と中枢神経疾患を背景とする誤嚥が関与した肺炎との二面性を併せもつ。

誤嚥性肺炎やNHCAP の予後に関しては,患者のPS,低栄養状態,低アルブミン血症,脱水(血清BUN 高値)などが関与するという複数の報告がみられる。一方,誤嚥のリスク因子保有は,肺炎による急性期,慢性期死亡率および肺炎の再燃および再入院に関連しており,またその因子を考慮することで,ICU 収容後の急性期死亡率を減らす可能性が示唆されており(p.100,CQ15 参照),誤嚥性肺炎を積極的に診断し,適切な治療戦各論2

S C O P E
p.270
略を採る意義はあると考えられる。

しかし,現在のところ誤嚥性肺炎の明確な定義はなく,日本呼吸器学会の『成人院内肺炎診療ガイドライン』において,嚥下性肺疾患研究会が提唱した嚥下機能障害を来しやすい病態が示されている程度である(表3)。

このことは嚥下機能障害を来しやすい病態,あるいは誤嚥のリスク因子をもつ宿主が.直接的に誤嚥性肺炎のリスクであるとは言いがたいことに大きな問題点が存在している。すなわち.同程度の誤嚥が生じたとしても,咳反射や気道のクリアランス能が低下している場合は低下していない場合と比べ,肺炎に至る危険性が高いと考えられるため,誤嚥によって引き起こされる肺炎(誤嚥性肺炎)のリスク因子は,単純な誤嚥のリスク因子だけでは測れない。以上より,誤嚥性肺炎を想定した「誤嚥のリスク因子」を明記することの問題点を踏まえたうえで,本ガイドラインでは,予後に関連する「誤嚥のリスク因子」と「誤嚥による肺炎のリスク因子」を過去の報告をもとに列挙するにとどめた(表4)。

2)疾患末期,老衰等の終末期状態の判断

がんなどの疾患末期や老衰の末期などのいわゆる終末期における肺炎の治療は,必ずしも患者のQOL を改善するとは限らない。そのため,治療法の選択にあたっては,苦しみをとる緩和療法に加えて,肺炎の治療をどのように行うかの判断が求められる。

終末期は,救急医療等でみられる急性型,がん等の疾患末期の亜急性

表3  嚥下機能障害を来しやすい病態・陳旧性および急性の脳血管障害・神経変性疾患と神経筋疾患,パーキンソン病・意識障害,認知症・胃食道逆流,胃切除後(特に胃全摘),アカラシア,強皮症・寝たきり状態・喉頭・咽頭腫瘍・口腔の異常(歯の噛み合わせ障害,義歯不適合,口内乾燥など)・気管切開,経鼻胃管(経管栄養)・鎮静薬・睡眠薬・抗コリン薬など口内乾燥を来す薬剤〔嚥下性肺疾患研究会(編).嚥下性肺疾患の診断と治療.2003 より改変引用〕
p.271
型,高齢者,認知症,あるいは植物状態等の慢性型に分類される。このうち,肺炎の診療において考慮すべきは亜急性型と慢性型の終末期状態の患者に併発した場合である。

亜急性型終末期とは「病状が進行して,生命予後が半年あるいは半年以内と考えられる時期」と定義され,慢性型終末期は「病状が不可逆的かつ進行性で,その時代に可能な最善の治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避の状態」と定義されている。しかし,いずれの定義もそれを判断する医学的エビデンスが不足しているこ

表4  誤嚥のリスク因子(上表)と誤嚥による肺炎のリスク因子(下表)

病 態自覚的,他覚的症状疾 患嚥下機能低下むせ頻回の口腔内分泌の吸引※‌嚥下機能評価にてある一

定の予測は可能◎意識障害◎全身衰弱,長期臥床◎急性の脳血管障害◎慢性神経疾患認知症脳梗塞後遺症パーキンソン病等◎医原性気管切開チューブ留置経管栄養(経鼻栄養)咽頭にかかわる頭頸部手術鎮静薬,睡眠薬抗コリン薬など口内乾燥を来す薬剤

胃食道機能不全胸焼け,逆流感◎胃食道逆流◎食道機能不全または狭窄◎医原性経管栄養(経鼻栄養および経腸管栄養)胃切除(全摘,亜全摘)

病 態自覚的,他覚的症状疾 患喀出能低下咳反射低下呼吸筋力低下◎全身衰弱,長期臥床気道クリアランス能低下喀痰の粘稠性上昇◎慢性気道炎症性疾患免疫能低下◎全身衰弱,長期臥床◎急性脳血管障害◎低栄養各論2

S C O P E
p.272
とを理解のうえで,終末期の判断は,複数の専門の知識を有する医師による一致した診断が必要であり,その診断結果はプロセスも含めて診療録に記録するべきである。

3.HAP/NHCAP における治療薬の決定

臨床的特徴でも記述されたように,HAP/NHCAP においては積極的な肺炎治療を考慮することが必ずしも生命予後やQOL を改善するとは限らない。老衰の一環としての肺炎発症と主治医が判断した,あるいは患者が終末期の段階で誤嚥性肺炎のリスクがある患者である場合,患者個人や家族の意思を尊重したうえで治療方針を判断するような生命倫理的側面を最初に考慮する段階を本ガイドラインでは提唱した。その場合でも,わが国の現状に鑑み,本人・家族の意志が延命や状態の改善を強く望むことにあったときには,抗菌薬使用はescalation あるいはde-escalation 戦略も選択肢に上がってよい。

ただし,原因菌不明のHCAPについては,耐性菌の考慮は必要なくCAPに準じた治療で十分である,とする報告や,繰り返す誤嚥性肺炎によってADL が徐々に低下し,終末期肺炎の像を呈する場合には耐性菌を想定した治療選択は必要ないという見解もあり,誤嚥あるいは誤嚥性肺炎のリスクがある場合にはescalation 戦略で十分かもしれない。

一方,経管栄養管理が施行されている宿主は,誤嚥の危険因子を保有していると同時に耐性菌のリスク因子もあることや院内で起きた誤嚥性肺炎に関しては,救命のために耐性菌も考慮し,広域スペクトラムを有する抗菌薬を積極的に投与し,その後de-escalationするというエンピリック治療を選択してよいこと,また肺炎桿菌や大腸菌など腸内細菌科細菌の関与が考えられる場合はエンピリック治療を慎重に選択する必要がある,など一部にはde-escalation戦略も許容される病態があると思われる。その場合でも,誤嚥性肺炎では細菌学的効果判定は困難であることから,全身病態が改善すれば短期間でde-escalation がなされるべきである。一方,急性期病院の入院患者やVAP においては,この段階をスキップして以下の段階を診療していくことを提唱する。
p.273
HAP/NHCAP における抗菌薬による治療戦略は大きく2 つに分けられる。すなわち,狭域の薬剤を使用し,全身状態の改善がみられない場合に,必要に応じて広域の薬剤への変更も考慮するescalation 治療と,広域の薬剤で初期治療を開始し,全身状態の改善を確認し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮するde-escalation 治療である。de-escalation 治療の適応となるのは敗血症,重症,または耐性菌リスクが高い患者であり,これらに該当しない場合はescalation 治療を選択する。

1)敗血症の評価(下記の項を参照)

各論1 CAP 診療の全体的な流れ 1.CAP の診断 2)重症度の評価(p.16)

2)重症化規定因子の考慮

HCAP における重症度評価のメタアナリシスの結果,PSI やCURB-65が予後を評価する指標として十分な有用性が得られなかったことから, CAP におけるPSI やCURB-65 のような重症度評価がHCAP,HAP にはまだ存在しないのが現状といえよう(p.98,CQ13 参照)。ただし,後方視的研究ではあるが,従来のCAP スコアが予後判定に有用であった報告も散見されている。一方,VAP を含めたHAP に年齢の考慮は治療選択にさほど影響を与えないと考えられるが,意識障害の有無,呼吸不全の合併,ショック状態は患者の予後に大きな影響を及ぼす。新たに提唱された敗血症の定義は,感染症によって引き起こされる過剰反応としての制御困難な臓器障害の状態を規定している。臨床的には,1呼吸数が22 回/ 分以上, 2意識変容,3収縮期血圧100mmHg 以下,のうち2 つ以上を認めたときに疑うべきとされているが,肺炎においてそれらが認められた場合は明らかに予後不良の徴候である。これらを踏まえて今回のガイドラインでは,上記3 因子についての評価は診断の流れの中で無視できないとする立場を取ることとし,それらの因子が含まれる,わが国独自で使い慣れてきた重症化規定因子を盛り込むこととした。すなわち,HAP ではI-ROAD(図5)で,NHCAP ではA-DROP(p.18,各論1 表3)(PSI は補助的に使用各論2

S C O P E
p.274
しても可)で重症度評価をすることを推奨する。

敗血症の状態,重症度が高い場合(HAP はI-ROAD での中等症群(B群)以上,NHCAP はA-DROP での重症以上),または後述の耐性菌のリスクがある場合には,de-escalation 治療を行う。

ただし,重症度にかかわらず,de-escalation 治療が不可欠な病態も存在することを考慮しておく必要がある。すなわち,HAP/NHCAP は宿主のADL や基礎疾患・免疫能低下が背景にあることが多く,感染防御能は千差万別である。また,必ずしも従来のA-DROP などによる重症度に応じて予後が不良になるとは限らず,重症度が高ければ耐性菌の分離頻度が増すということもない。つまり,好中球が1,000/ μL 未満や後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)発症時や免疫抑制薬使用時の極端な細胞性免疫低下状態ではde-escalation 治療を行わざるを得ない場合があり,さらに人工呼吸器管理が施行されていれば誤嚥および耐性菌の可能性も多いため,治療戦略としてはde-escalationが選択されやすいといえる。逆に,よくコントロールされた糖尿病や軽度COPD などでは必ずしもde-escalation 治療が必要ではない。

図5  HAP の重症度分類

1.生命予後予測因子(I-ROAD) 1 I   (Immunodeficiency):悪性腫瘍または免疫不全状態2 R(Respiration):SpO2>90% を維持するためにFiO2>35% を要する3 O(Orientation):意識レベルの低下4 A(Age):男性70 歳以上,女性75 歳以上5 D(Dehydration):乏尿または脱水

2.肺炎重症度規定因子1CRP≧20mg/dL 2胸部X 線画像陰影の拡がりが一側肺の2/3 以上

該当なし該当あり3 項目以上が該当

該当項目が2 項目以下

軽症群(A 群)中等症群(B 群)重症群(C 群)
p.275
3)耐性菌リスク因子の評価

NHCAP, VAP を含むHAP については,分離菌により大きく治療選択が左右されるため,血液・喀痰培養,ときには気管吸引液やBAL 液を含む各種培養検査,迅速尿中抗原検査,病原体に対するペア血清での抗体検査などで極力,病態に関与する菌を明らかにする努力をすべきである。

2011 年発行の『医療・介護関連肺炎診療ガイドライン』においては,耐性菌のリスク因子を,「過去90 日以内の2 日以上の抗菌薬使用歴」と「経管栄養」と規定し治療区分C を設けたが,これは人工呼吸器やICU 管理された重症のNHCAP でも抗菌薬の過去の投与歴がなく良好な日常生活活動がなされていた患者では耐性菌は分離されなかったという報告や,経管栄養を受けていると緑膿菌感染の単独のリスク因子(OR 13.9)であるという報告が根拠になっている。近年,わが国からの報告では,多剤耐性菌出現の低リスク群と高リスク群の比較により,高リスク群では多剤耐性菌の検出頻度だけではなく,初回治療失敗の頻度,30 日死亡率が有意に高い結果であり,これを評価する有用性が示唆された(p.101,CQ16 参照)。本ガイドラインでは,わが国からの報告を重要視し,耐性菌のリスク因子を表5 のように4 つに規定して2 項目以上で耐性菌の高リスク群とし,前述する敗血症かどうかの判断,重症度の判断とともに評価することを推奨した。

経管栄養については,大多数が同時に活動性の低下がみられることから,4 の活動性の低下した症例に含ませて,活動性低下の判断基準として,

表5  耐性菌のリスク因子1.過去90 日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴2.過去90 日以内に2 日以上の入院歴3.免疫抑制状態4.活動性の低下:PS ≧3,バーセル指数*<50,歩行不能,経管栄養または中心静脈栄養法

→  2項目以上で耐性菌の高リスク群*:バーセル指数:1. 食事,2. 移動,3. 整容,4. トイレ動作,5. 入浴,6. 歩行,7. 階

段昇降,8. 着替え,9. 排便,10. 排尿について各々0〜15点で評価し,0〜100点でスコアリングする

各論2

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p.276
PS ≧3,歩行不能,経管栄養,または中心静脈栄養と規定した。ただし, HAP における耐性菌リスクの検討はなされていないのが現状であることを踏まえるべきである。

4.HAP/NHCAP の治療

1)個人の意志やQOL を考慮した治療・ケア1‌疾患末期あるいは老衰などの終末期における肺炎の考え方の検討

細菌性肺炎は,一般に,抗菌薬によって病因根治的な治療が可能であり,治癒すれば大きな後遺症を残すことなく病前の状態に復帰する良性疾患である。一方,不可逆的な死の過程,すなわちがんなどの疾患末期状態や老衰の過程にある人に起こった肺炎は,死亡の契機となったり,病状が改善したとしても病前の状態に復帰できず,むしろ耐え難い苦痛や不快感が持続する,あるいは繰り返す可能性がある。

このため,本ガイドラインでは,治療によって病前の状態に回復する肺炎と,疾患終末期や老衰の過程において死に至る進行を早める肺炎を分けて考えることとした。HAP やNHCAP には,診療の対象として疾患末期や老衰の過程などの終末期にある患者が含まれる。このような患者に対してはわが国でも,近年,学会の指針等で終末期における医療の決定プロセスについて,適切な情報の提供と説明に基づく個人の意思の尊重が示されるようになってきた。そこで,終末期の患者の肺炎の診療に際しては,まず個人の意思の尊重を最優先とする。

2‌わが国において強力な肺炎治療を差し控える根拠となるガイドライン等

老衰経過中や原疾患末期の終末期に発症する肺炎の診療には,人生の最終段階における医療のプロセス決定についての十分な認知が必要である。

高齢化社会の不可避の医療問題として,厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を2007(平成19)年(27 年改訂)に出している。HAP/NHCAP で扱う終末期は,亜急性型と慢性型である(患者背景のアセスメントの項参照)。がん末期などの亜急性型終末期に発症した肺炎の診療では2008(平成20)年に出された日本学術会
p.277
議の「終末期医療の在り方について」を,老衰などの慢性型終末期の患者の診療については,日本老年医学会が2012(平成24)年に発表した「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」を参考として,医療ケアに当たるスタッフは個人の意思を十分に尊重し,医療チームとして診療プロセスの決定に当たるべきである。

3個人の意思やQOL を考慮した治療・ケア

最善の治療を行っても死が避けられない,あるいはわずかに延命できたとしても本人の価値観に照らして「よい日々だった」といえるQOL が保持できないと,専門知識を有する複数の医師によって一致して判断される患者に起こった肺炎では,人工呼吸器による管理や広域抗菌薬を用いた強力な肺炎の治療ではなく,苦しみをとる緩和医療を優先して行う選択肢もあることを提示し,本人の意思を確認し,あるいは本人の意思確認ができない場合には,本人の意思をよく知る家族による推定意思を尊重し,その意思に沿って肺炎治療の開始,不開始,選択する抗菌薬の種類を多職種によって構成された医療チームとして決定する。

診断結果とそれに基づく診療方針はその過程も含めて診療録に記録する。この場合でも,肺炎に伴う不快や苦痛を取り除く緩和的な治療は積極的に優先して行うべきである。さらに,一度決定した診療方針も,本人の希望のあるときには,状況に応じていつでも変更できることを説明する。

終末期にあると判断されても,十分な情報を提示したうえで,患者本人,またはその意思を推定できる家族が肺炎の根治的な治療を望む場合,あるいは本人の意思が確認できない場合には,フローチャートの治療薬の選択の基準に従って,診療を行う。

2)HAP/NHCAP のエンピリック治療(図6,7)

HAP/NHCAP においても,CAP と同様に標的治療を行うことが望ましい。しかし,実際にはHAP/NHCAP では全身状態が悪く,高齢である場合も多いため,喀痰の排出が困難で,かつ,侵襲的検査ができない症例が各論2

S C O P E
p.278
*1 :p.18,各論1 図3参照。*2 :‌重症度が高い:NHCAP ではA-DROP で重症以上,HAP ではI-ROAD で中等症(B 群)以上。*3 :p.63,表5参照。*4 :‌スルタミシリン,アモキシシリン・クラブラン酸(いずれも高用量が望ましい。具体的な投与量は巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.116)を参照)。*5 :クラリスロマイシン,アジスロマイシン。*6 :‌ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン。*7 :結核に対する抗菌力を有しており,使用に際しては結核の有無を慎重に判断する。*8 :‌嫌気性菌感染を疑う際には使用を避けるか,クリンダマイシンまたはメトロニダゾールを併用する。*9 :メロペネム,ドリペネム,ビアペネム,イミペネム・シラスタチン。*10:セフォゾプラン,セフェピム,セフピロム。*11:‌レボフロキサシン,シプロフロキサシン,パズフロキサシン(パズフロキサシンは高用量が望ましい。具体的な投与量は巻末「参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量」(p.116)を参照)。*12:アミカシン,トブラマイシン,ゲンタマイシン。*13:腎機能低下時や高齢者には推奨されない。*14:‌以前にMRSA が分離された既往あり,または,過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴あり。*15:リネゾリド,バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン。

図6  HAP/NHCAP のエンピリック治療抗菌薬

Escalation 治療・‌敗血症

*1(-)で,重症度が高くない

*2

かつ・耐性菌リスク*3(-)

内服薬(外来治療が可能な場合)・β- ラクタマーゼ阻害薬

配合ペニシリン系薬*4 +マクロライド系薬*5・レスピラトリーキノロン*6,*7

注射薬・スルバクタム・アンピシリン・‌セフトリアキソン

*8,セフォタキシム

*8

非定型肺炎が疑われる場合・レボフロキサシン

*7,*8 De-escalation 単剤治療

・‌敗血症

*1(+),または,重症度が高い

*2

または・耐性菌リスク*3(+)

注射薬(単剤投与)・タゾバクタム・ピペラシリン・カルバペネム系薬

*9

・第四世代セフェム系薬*8,*10・ニューキノロン系薬*7,*8,*11 De-escalation 多剤治療

・‌敗血症

*1(+),または,重症度が高い

*2

かつ・耐性菌リスク*3(+)

注射薬(2 剤併用投与,ただしβ-ラクタム系薬の併用は避ける)・タゾバクタム・ピペラシリン・カルバペネム系薬

*9

・第四世代セフェム系薬*8,*10・ニューキノロン系薬*7,*8,*11・アミノグリコシド系薬*8,*12,*13

MRSA 感染を疑う場合*14 +・抗MRSA 薬

*15
p.279
多い。したがって,HAP/NHCAP ではCAP 以上にエンピリック治療が重要となる。

HAP/NHCAP 患者では,高齢者や免疫能が低下した患者が多く,結核を発症するリスクが高い患者層である。したがって,CAP 以上に結核感染の有無については十分に注意をはらい,結核に対する抗菌活性を有するニューキノロン系薬の使用は慎重に行う。

A 医療・介護関連肺炎(NHCAP):A-DROP で重症(3 項目該当)以上を「重症度が高い」と判定する。

敗血症A-DROP重症度耐性菌リスク治療方針

なし2 項目以下高くないなしescalation 治療

ありde-escalation 単剤治療

なし3 項目以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり2 項目以下高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり3 項目以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

B 院内肺炎(HAP):I-ROAD で中等症群と重症群を「重症度が高い」と判定する。

敗血症I-ROAD重症度耐性菌リスク治療方針

なし軽症群高くないなしescalation 治療

ありde-escalation 単剤治療

なし中等症群以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり軽症群高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

あり中等症群以上高いなしde-escalation 単剤治療

ありde-escalation 多剤治療

図7  HAP/NHCAP のエンピリック治療方針各論2

S C O P E
p.280
1escalation 治療

HAP/NHCAP はCAP と比較して耐性菌リスクが高いものの,全例で耐性菌を標的とした広域抗菌薬を投与する必要はなく,耐性菌リスク,肺炎の重症度などからその適応を判断する。フローチャートではHAP/ NHCAP 症例で易反復性の誤嚥性肺炎のリスクや疾患終末期や老衰の状態でない場合,次のステップとして重症度と耐性菌リスクを判断する。NHCAP の重症度はA-DROP で判定し,HAP の重症度はI-ROAD で判断し(p.98,CQ13 参照),NHCAP/HAP の耐性菌リスクは表5 で判断する。重症度が高くないと判断され注1,かつ,耐性菌リスクが低い場合,escalation 治療(まず狭域スペクトラムの抗菌薬を投与し,無効の場合に広域スペクトラムの抗菌薬にescalation させる)による初期治療が推奨される。escalation 治療で標的とするのは肺炎球菌,MSSA,インフルエンザ菌,口腔内レンサ球菌,クレブシエラ属(非ESBL 産生菌),モラクセラ属などの菌である(図2 〜4,表1 を参照)。図6 に示す通り,これらの菌に対するエンピリック治療として推奨されるのは,ペニシリン系薬ではスルバクタム・アンピシリン,セフェム系薬では第三世代のセフトリアキソンまたはセフォタキシム,非定型肺炎の可能性がある場合や,β- ラクタム系薬へのアレルギー歴を有する場合にはニューキノロン系薬のレボフロキサシンが推奨される。外来治療が可能な場合は,内服薬で細菌性,非定型肺炎の両者をカバーするようにβ- ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(アモキシシリン・クラブラン酸またはスルタミシリン,セフトリアキソンにマクロライド系薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)を併用するか,レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)を選択する。外来で注射薬による治療を行う場合は1 日1 回投与が可能なセフトリアキソンやレボフロキサシンを選択する。レボフロキサシンは嫌気性菌への抗菌活性が不十分であるため,誤嚥性肺炎や肺膿瘍/ 肺化膿症といった嫌気性菌感

注1:‌敗血症の状態ではなく,重症度がNHCAP ではA-DROP で中等症以下,HAP ではI-ROAD

で軽症の場合。
p.281
染の可能性が高いとされる病態では,クリンダマイシンやメトロニダゾールの併用を検討する。また,各施設でのアンチバイオグラムが入手できる場合は,抗菌薬選択の判断材料として積極的に活用する。

2de-escalation 治療

(N)HCAP/HAP と診断され,敗血症,重症例,または,耐性菌のリスクが高いと判断された群に対してはde-escalation治療(広域の薬剤で初期治療を開始し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮する治療)を選択する(p.104,CQ18 参照)。この群の初期治療としてはescalation 治療群の原因微生物に加え,耐性菌(MRSA,緑膿菌,ESBL 産生腸内細菌など)をカバーする必要がある(図2 〜4,表1 を参照)。

重症度が高いと判断される注2,または耐性菌のリスクが高い群に対してはde-escalation単剤治療が推奨される。抗菌薬は緑膿菌に抗菌活性を有するβ- ラクタム系抗菌薬としてペニシリン系薬,第四世代セフェム系薬,カルバペネム系薬,ニューキノロン系薬の単剤投与が推奨される。

重症度が高いと判断される注2,かつ耐性菌のリスクが高い群に対してはde-escalation 多剤治療が推奨される。抗菌薬は緑膿菌に抗菌活性を有するβ- ラクタム系抗菌薬としてペニシリン系薬,第四世代セフェム系薬,カルバペネム系薬をベースに,ニューキノロン系薬またはアミノグリコシド系薬を併用する(図6)。わが国のHAP/NHCAP に占める非定型病原体(肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ)の頻度は低いが(図2 〜4 を参照),発生した環境(集団浴場,高齢者施設での集団感染など),画像所見などから非定型病原体の関与が疑われる際にはニューキノロン系薬を選択する。また,MRSA が分離された既往がある場合,または,過去90 日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴がある場合はMRSA 感染のリスクが高いと判断され,抗MRSA 薬を併用する(図6)。抗菌薬の有効性は48 〜72 時間後に臨床症状,血液データ,画像所見など

注2:‌敗血症の状態,または,重症度がNHCAP ではA-DROP で重症以上,HAP ではI-ROAD で

中等症以上の場合。各論2

S C O P E
p.282
から総合的に判定する。初期治療は想定される原因微生物をカバーするために広域な抗菌薬を併用するが,漫然と使用することは耐性菌の産生,医療費の高騰の原因となる。また,抗菌薬の副作用によりかえって予後不良となるとの報告もあり,原因微生物が判明した時点でより狭域な標的治療に切り替える(de-escalation 治療)。抗菌薬ごとの投与量は腎機能正常の成人量を巻末(p.116)に示すが,年齢,腎機能(GFR)によって調整する。

3)原因菌判明時の抗菌薬選択

各論1 2.CAP の治療 2)原因菌判明時の抗菌薬選択の項目(p.33)を参照。

4)HAP/NHCAP の抗菌薬投与期間

抗菌薬の投与期間については,Cochrane library で短期間抗菌薬治療(8日以内)と長期間治療(10 〜15 日)を比較したランダム化比較試験(RCT)6 編のメタアナリシスが実施され,生命予後,初期治療効果,入院期間,再燃のいずれのアウトカムに対しても有意差は認められなかった。なお,原因微生物に応じた層別化を行うと,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌では短期間の抗菌薬治療群で有意に再燃の頻度が高かったことが報告されている。これらの報告をもとに当委員会でSR を実施した結果,抗菌薬の投与期間は1 週間以内の比較的短期間の治療期間を提案することとなった。ただし,黄色ブドウ球菌,クレブシエラ属,嫌気性菌などにより膿瘍性病変がある場合は2 週間以上の長期投与が必要である(p.106,CQ20 参照)。

5)抗菌薬無効時の考え方

各論1 2.CAPの治療 5)抗菌薬無効時の考え方の項目を参照(p.44)。
p.283
臨床的特徴

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は,気管挿管下人工呼吸を開始して48 時間以降に新たに発生するHAPを指す。

VAP 発症のリスク因子は長期人工呼吸管理,再挿管,発症前の抗菌薬投与,原疾患(熱傷,外傷,中枢神経疾患,呼吸器疾患,心疾患),顕性あるいは不顕性誤嚥,筋弛緩剤の使用,低い気管チューブカフ内圧,移送,仰臥位などである。

VAP 発症には逆流,誤嚥,定着(コロニゼーション)が関与する。胃内容物の逆流,口腔内や気管チューブへの病原微生物の定着,気管チューブのカフ外側を介した声門下の分泌物の誤嚥,人工呼吸に関連した咳反射や繊毛上皮機能低下などが挙げられる。

疫学的特徴

ICU における主要な感染性合併症であり,報告により異なるが,全挿管患者の9 ~27% に発生するとされる。HAP であるため,検出菌として緑膿菌が最も多い(図1)。

各論3

人工呼吸器関連肺炎の基本的特徴

SCOPE肺炎の基本的特徴

人工呼吸器関連肺炎

各論3

S C O P E
p.284
加えて,エンテロバクター属やステノトロフォモナス属などの治療難渋性グラム陰性桿菌群の割合が高くなる。また,黄色ブドウ球菌,とりわけMRSA の割合も高い。

診断

1.臨床的疑い

臨床的に以下の所見が複数新たに出現した場合,臨床的VAP として,微生物学的検索を行う。1全身性炎症反応:発熱,CRP やプロカルシトニンなどの上昇2酸素化の低下3画像検査(胸部X 線,CT,エコー)上異常陰影の出現と持続4膿性気道分泌物があった場合

ただし,VAP は人工呼吸中に生じる肺炎であるために,そもそも原疾患や,人工呼吸の原因となった肺病変,あるいは肺炎以外の人工呼吸中に併発しやすい肺病変(無気肺,胸水など)との鑑別はしばしば困難であり,

図1  VAP 検出菌(各研究の平均と95% 信頼区間)

1.8 2.5

3.6 4.2

4.9 6.3

6.4 7.6 18.9 34.8

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45(%)

エンテロコッカス属

大腸菌

インフルエンザ菌

ステノトロフォモナス・マルトフィリア

セラチア属

エンテロバクター属

クレブシエラ属

MSSA

MRSA

緑膿菌国内3研究(187症例)
p.285
注意を要する。

2.微生物学的診断

VAP は,挿管中であるがゆえに,他の肺炎と違い病巣に対するアクセスが容易な特徴をもつ。したがって,積極的に微生物診断を行うことが可能であり重要である。

以下の場合,微生物学診断の目安とする。なお,定量培養は必須ではない。1下気道の直接吸引(tracheal aspirate)で病原微生物が培養され,半定

量培養3+ 以上あるいは定量培養10 6CFU/mL 以上2気管支肺胞洗浄〔bronchoalveolar lavage:BAL,あるいはmini-BAL (Mini-BAL サンプリングカテーテルにて施行可能)〕で病原微生物が培養され,半定量培養2+ 以上あるいは定量培養10 4CFU/mL 以上3血液培養あるいは胸水培養が陽性で,下気道からの検出微生物と一致

3.治療

VAP は致死率の高い病態であり,これに対して適切な経験的抗菌薬が投与されたか否かが死亡率に影響する。

VAP はHAP であるため,抗菌薬選択の原則はHAP のものに従う。抗菌薬選択においては,グラム陰性桿菌群カバーを前提とし,特に長期の入院や抗菌薬治療歴のある患者では上述の治療難渋性グラム陰性桿菌群の可能性も考慮する。MRSA の感染歴や保菌,MRSA に無効な抗菌薬の使用歴,下気道検体よりグラム陽性球菌クラスタが検出される場合には,抗MRSA 薬併用の必要性を検討する。

耐性菌の発現を最小限とするためにも,培養結果判明後は,可及的狭域の抗菌薬へ変更したり,感染症が否定的であれば中止する(de-escalation)。

4.予防

VAP 予防策として確立したものは少ないが,下記の予防策のいくつか各論3

S C O P E
p.286
をまとめて適用するバンドルアプローチを勧める。

1)手指衛生

手洗いは普遍的に有益な感染予防策であり,医療スタッフへの認識と徹底が重要である。

2)仰臥位の回避

誤嚥の危険性が高い状況(経管栄養注入中など)では頭部を30 ~45 度挙上した頭高位を選択する。それ以外の状況においても水平仰臥位を長期間保持しないように心がける。

3)人工呼吸器回路を頻回に交換しない

回路交換時期を延長してもVAP 発生率は増加しないとされており,頻回の交換や開放を避ける。

4)過剰な鎮静を避ける

鎮静の中断や鎮静プロトコルにより過鎮静を避ける。

5)人工呼吸からの離脱を促進する

自発呼吸トライアルやこれを組み込んだ呼吸器離脱/ 抜管プロトコルを適用する。

6)声門下腔吸引孔付きチューブ

挿管に際してカフ上部声門下腔吸引孔付きチューブを選択し,声門下腔分泌物の吸引を行う。本手法はメタアナリシスによりVAP 発生率を有意に低下させることが証明された数少ない介入である。

7)口腔ケア

VAP 予防の目的で人工呼吸器中の患者における口腔ケアを勧める根拠は十分でない。
p.287
はじめに

肺炎球菌はグラム陽性双球菌に分類される上気道の常在菌で,莢膜の性質により90 種類以上に分類される。成人の保菌率は5 ~10% とそれほど高くないが,小児では20 ~40% と高率に保菌しており,小児から成人へ伝播することで肺炎を発症することが多い。特に,65 歳以上の高齢者や基礎疾患を有する高リスク群に対しては肺炎球菌ワクチンを接種して肺炎を予防する必要がある。

肺炎球菌ワクチンの種類と特徴

成人に使用できる肺炎球菌ワクチンは2 種類ある。1 つは,65 歳以上の高齢者と2 ~64 歳の高リスク群を対象に1988 年から使用されている23価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン〔pneumococcal polysaccharide vaccine (PPSV)23〕,もう1 つは,2014 年から65 歳以上の高齢者に使用できるようになった13 価蛋白結合型肺炎球菌ワクチン〔pneumococcal conjugate vaccine(PCV)13〕である。PPSV23 は23 種類と広範囲の莢膜型をカバーできる反面,免疫機序はB 細胞依存性であるため,PCV13 よりも免疫効果

肺炎予防各論4

肺炎球菌ワクチン

SCOPE肺炎の基本的特徴

各論4

S C O P E
p.288
が低い。一方,PCV13 の免疫機序はT 細胞を介するために高い免疫効果が期待できる反面,カバーできる莢膜型が13 種類と,PPSV23 よりも10種類少ない。なお,両ワクチンともに安全性が確立された不活化ワクチンであり,副反応は同等である(表1)。

表1  PPSV23とPCV13の特徴ワクチン名(商品名) PPSV23 (ニューモバックスRNP) PCV13 (プレベナー13 R)ワクチンの種類莢膜多糖体型(ポリサッカライド)ワクチン蛋白結合型(コンジュゲート)ワクチン日本承認時期1988 年2014 年製造販売会社MSD 株式会社ファイザー株式会社接種年齢2 歳以上65 歳未満の高リスク者,65歳以上の高齢者2 ヵ月以上6 歳未満の小児,65 歳以上の高齢者価格4,666 円(薬価) 7,200 円(希望納入価格)

定期接種2014(平成26)年10 月より,65 歳以上の高齢者と60 歳以上65 歳未満で心臓,腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV による免疫の機能に障害を有する人(ただし,対象者の制限あり

*)なし

接種方法皮下注射または筋肉内注射筋肉内注射

含有莢膜型23 種類1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V, 10A,11A,12F,14,15B,17F,18C, 19A,19F,20,22F,23F,33F 13 種類1,3,4,5,6A,6B,7F,9V, 14,18C,19A,19F,23F日本の成人IPDのカバー率66% † 46% †免疫様式B 細胞(免疫記憶:なし) B 細胞+T 細胞(免疫記憶:あり)

免疫原性65 歳以上の高齢者を対象としたPCV13 とPPSV23 のRCT 3 血清型で非劣性,9 血清型でOPA の有意な低値。国内第III相試験 (B1851088 試験) 65 歳以上の高齢者を対象としたPCV13 とPPSV23 のRCT 12 血清型で非劣性,9 血清型でOPAの有意な上昇国内第III相試験(B1851088 試験)副作用局所反応全般45%,全身反応全般34.7 %国内第III相試験(B1851088 試験)局所反応全般55.8% ,全身反応全般37.9 %国内第III相試験(B1851088 試験) *:2019(平成31)年3月31日までは経過措置として,65歳,70歳,75歳,80歳,85歳,90歳,95歳,100歳の年齢となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある人が対象。2019(平成31)年4月1日以降は65歳の人のみ対象。† :Fukusumi M, et al. BMC Infect Dis. 2017;17:2. (日本内科学会成人予防接種検討ワーキンググループ.日本内科学会誌.2016;105:1472-88.より改変引用)
p.289
PPSV23 とPCV13 の臨床的予防効果

1.PPSV23

日本人を対象とした3 つのランダム化比較試験(RCT)が実施されている。1 つ目は167 例の慢性呼吸器疾患を有する症例を対象としたRCT で, COPD の急性増悪を抑制するという結果が報告された。2 つ目は慢性の基礎疾患を有する高齢者786 例を対象としたRCT で,PPSV23 とインフルエンザワクチンの併用群では,インフルエンザワクチン単独群に比べて75歳以上の症例と歩行困難な症例に対して肺炎の入院を抑制したことが報告された。3 つ目は1,006 例の高齢者施設の入所者を対象としたRCT で,肺炎球菌性肺炎を63.8%,肺炎全体を44.8% 抑制し,肺炎球菌性肺炎の死亡率を下げることが報告された(表2)。いずれの研究でも,ほぼ全例にインフルエンザワクチンが接種されており,これらの結果はインフルエンザワクチンとPPSV23 の併用効果と考えられている。

厚生労働省は,これらの日本人を対象とした臨床試験から医療費削減効果を試算し,2014(平成26)年10 月より,65 歳以上の高齢者に対する定期接種を開始した。

なお,成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会ではインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種の予防効果についてシステマティックレビュー(SR)を実施したところ,上記の日本人を対象とした3つのRCT が抽出され,メタアナリシスの結果,「すべての肺炎による入院」に対する有意な抑制効果を認めた(p.109,CQ22/p.111,CQ23 参照)。

2.PCV13

現在のところ,日本人を対象とした試験はない。オランダで健常高齢者84,496 例を対象としたRCT が施行され,PCV13 に含まれる莢膜型について,非侵襲性肺炎球菌性肺炎を45%,侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)を75% 抑制し,すべての莢膜型においても各論4

S C O P E
p.290
肺炎球菌性肺炎全体を30.6%,IPD を51.8% 抑制するという予防効果が報告された(表3)。

表2  PPSV23の予防効果

発症頻度 人(1000 人・年)発症の削減率(95% CI) p 値ワクチン群プラセボ群

肺炎球菌性肺炎12 32 63.8% (32.1 − 80.7)0.0015肺炎球菌以外の肺炎43 59 29.4% (−4.3 − 52.3)0.0805すべての原因による肺炎55 91 44.8% (22.4 − 60.8)0.0006対象: 高齢者施設の入所者: 1,006例(日本),方法: 二重盲験無作為化比較試験。全体の99% がインフルエンザワクチンを接種。Maruyama T, et al. BMJ. 2010;340:c1004. https://creativecommons.org/licenses/bync/2.0/legalcode

(Maruyama T, et al. BMJ. 2010;340:c1004. より引用)

表3  PCV13の予防効果

発症数 (人)ワクチン効果(95% CI) p 値ワクチン群プラセボ群

PCV13 含有莢膜型の肺炎球菌性肺炎全体49 90 45.6% (21.8 − 62.5)<0.001 PCV13 含有莢膜型の非侵襲性肺炎球菌性肺炎33 60 45% (14.2 −65.3) 0.007 PCV13 含有莢膜型のIPD 7 28 75% (41.4 −90.8) <0.001すべての莢膜型の肺炎球菌性肺炎全体100 144 30.6% (9.8 −46.7) 0.008すべての莢膜型の非侵襲性肺炎球菌性肺炎66 87 24.1% (−5.7 −45.8) 0.11すべての莢膜型のIPD 27 56 51.8% (22.4 −70.74)0.004対象:65歳以上の健常高齢者: 84,496例 (オランダ),方法:二重盲検無作為化比較試験。

(Bonten MJ, et al. N Engl J Med. 2015;372:1114-25. より引用)
p.291
肺炎球菌の莢膜型の置換

肺炎球菌は濃密な接触により小児から高齢者へ感染する。小児に対してPCV が導入されたことで,小児のIPD が減少し,それに伴い高齢者のIPDも減少している。小児のPCV 接種率が向上したことで小児の肺炎球菌感染が強力に予防され,間接的に高齢者の感染も予防する結果となった。その一方で,PCV ではカバーされない莢膜型が増加している(莢膜型の置換)。米国CDC からの報告では,65 歳以上の高齢者のPCV13 とPPSV23のカバー率は年々低下しており,PCV7 の導入前1998 年にはPCV13 のカバー率 75.5%,PPSV23 84.1% であったのが,2008 年にはPCV13 44%, PPSV23 66% まで減少し,2010 年にPCV13 が小児に導入されてからは2013 年PCV13 20 ~25%,PPSV23 58 ~63% と,さらにカバー率が下がっていることが報告されている。日本では厚生労働省研究班から2013 〜2015 年度の成人IPDの莢膜型についてPCV13 のカバー率は46%,PPSV23のカバー率は66% と報告され,PCV7 導入前年の2009 年には,PPSV23 のカバー率は80 %以上であったとの報告があることから,米国と同様に小児のPCV 普及の影響を受けているものと考えられている。

2014 年,米国予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)は,PCV13 の高い免疫原性とPPSV23 の高いカバー率を有効に活かすため,すべての65 歳以上の高齢者に対して両者を組み合わせて接種することを推奨した(PCV13 とPPSV23 の連続接種: PCV13/PPSV23)。これを受けて日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会は,「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」を示した。

PCV13 とPPSV23 の連続接種(PCV13/PPSV23)各論4

S C O P E
p.292
肺炎診療ガイドライン作成委員会ではACIP で推奨されたPCV13/ PPSV23 はPPSV23 の単独接種よりも有効かどうかを評価するため, PCV13/PPSV23 とPPSV23 の2 群間比較でSR を実施した。その結果,アウトカムとして臨床的な予防効果を検討したRCT は存在せず,免疫原性の指標としてPCV13 に含まれる莢膜型のオプソニン活性(OPA)を評価した2 編のRCT が抽出された。メタアナリシスの結果,3,6A,6B,9V, 19F,23F の6 つのserotype においてPCV13/PPSV23 群で免疫原性が高いという結果が得られた。なお,日本人を対象とした報告は存在しなかった(p.109,CQ22 参照)。

PCV13/PPSV23 については,PCV13 の強力な免疫力とPPSV23 の高いカバー率を生かした強力な予防効果が期待される。接種医としては,定期接種制度によるPPSV23 の接種をまず念頭に置きつつ,PCV13/PPSV23 も選択できる。現在のところ,PCV13/PPSV23 の臨床的な予防効果の報告はなく,日本人を対象とした安全性と免疫原性のデータもないため,今後データを蓄積する必要がある。また,ACIP は施行から4 年後の2018 年には現在の推奨を見直すことを決めており,日本においても引き続き肺炎球菌感染症の原因菌の血清型分布の推移を監視し,有効性や安全性に関するデータとあわせ,最適な接種方法を検証していく必要がある。
p.293
◦CQ 1 ~6 CAPの診断◦CQ 7 ~12 CAPの治療◦CQ 13~16 HAP / NHCAPの診断◦CQ 17~21 HAP / NHCAPの治療◦CQ 22~25肺炎の予防

Clinical Question

II

エビデンスの確実性と推奨の強さについて

本ガイドラインでは,『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』に準拠し,システマティックレビューより判定したエビデンスの確実性と推奨の強さの段階を下記のとおりに設定した。

エビデンスの確実性

A強:効果の推定値に強く確信があるB中:効果の推定値に中程度の確信があるC弱:効果の推定値に対する確信は限定的であるD  とても弱い:効果の推定値がほとんど確信できない

推奨の強さ◦実施するよう強く推奨する◦実施するよう弱く推奨する◦実施しないことを弱く推奨する◦実施しないことを強く推奨する
p.294
CQ

01 Clinical Question

CAP 患者の治療に際する入院要否の判定および治療方針の決定においてA-DROP 方式による重症度評価を強く推奨する。

CAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ1 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

CAP 患者の重症度評価に関して,A-DROP 方式は短期死亡の予測には有用(  エビデンスの確実性はC  )だが,ICU 入室の予測には有用性は確立していない(  エビデンスの確実性はD  )。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの確実性:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実

A-DROP による重症度評価で「益」はあっても,「害」は生じない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

重症度判定は客観的医療の実践であり患者価値に適っている。

4)	負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている重症度判定においてコスト負荷はなく,医療資源に影響を与えない。
p.295
CQ

02 Clinical Question

胸部X 線検査所見を基にCAP が疑われる患者に対してルーティーンにCT 検査を行わないことを弱く推奨する。

CAP 診断において,問診,身体診察と胸部X 線画像で診断した肺炎に胸部CT を施行することは推奨されるか。

CQ2 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

胸部CT 検査施行の有無の2 群で,委員会で設定した臨床的アウトカムを評価したシステマティックレビュー/ ランダム化比較試験/ コホート研究はなく,胸部X 線画像で診断された肺炎患者にルーティーンでのCT 検査の有用性は不明確である。全体的な  エビデンスの確実性はD  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	システマティックレビューのまとめと,アウトカム全般に関す

る全体的なエビデンスの強さ:弱い上記1 参照。

2)	益と害のバランスが確実(コスト含まず)か:確実ではない

免疫不全のある患者では,結核やニューモシスチス肺炎などの質的診断に貢献するだろうが,健常成人CAP を対象とした胸部CT の有益性を検出した報告はない。

3)	患者の価値観や好みを反映している:一概には判定できないC A Pの診断

C Q
p.296
4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っていない被曝量が多く,保険点数は800 〜1,000 点とコストもかかる。上記に見合う診療上の利益があるが,明確でない。

CQ

03 Clinical Question

肺炎診断が未確定な軽症下気道感染患者には,CRP 測定結果を基準にした抗菌薬投与(もしくは,治療)を行うことを弱く推奨する。

CAP 患者において,CRP 測定を行うことは推奨されるか。

CQ3 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

胸部X 線検査の有無にかかわらず,肺炎の診断が明確でない軽症下気道感染患者には,CRP 測定結果を基準にした抗菌薬投与を行うことについて,生存率(  エビデンスの確実性はA  ),症状改善(  エビデンスの確実性はC  ),入院率(  エビデンスの確実性はC  )では明らかな有用性はないが,抗菌薬投与率はCRP 測定群で減少する(  エビデンスの確実性はA  )。全体的な  エビデンスの確実性はA  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。
p.297
2) 益と害のバランス(コストは含まず)は確実か:確実

CRP 値を参照する診療により,入院率が増える可能性はあるが,死亡率に影響せず抗菌薬使用が減少するため,明らかな不利益は認められない。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

抗菌薬使用を減量できることは医療社会全体(患者含む)にとって有益であるが,過度の抗菌薬処方が有害であることを患者に理解してもらう必要がある。

4) 正味の利益がコストや資源に十分に見合っているか:不明

日本の医療経済評価がないため判断できないが,CRP 定量の保険点数は1 回につき16 点である。

CQ

04 Clinical Question

重症CAP 患者の抗菌薬治療開始前に血液培養を行うことを強く推奨する。

重症CAP 患者の原因菌診断において,血液培養を施行することは推奨されるか。

CQ4 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

CAP患者の抗菌薬治療開始前の血液培養は,死亡率と抗菌薬使用量の低減に関連するが(いずれも  エビデンスの確実性はC  ),入院日数の短縮には関連しない(  エビデンスの確実性はC  )。全体的な  エビデンスの確実性はC  。C A Pの診断

C Q
p.298
2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンス:弱い

上記1 参照。

2) 益と害のバランス(コストは含まず)は確実か:確実

血液培養施行による有害事象は一般採血検査と同等であり,入院日数に影響せずに,死亡率と抗菌薬を減少させることが示されている。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

死亡率低減をアウトカムとしており,死亡率,抗菌薬使用量,入院期間が減少することを患者は好む。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っているコストを評価した論文はないが,血液培養2 セットの保険点数は,培養同定190 点と嫌気性培養120 点で,算定可能(620 点)であり,保険診療で認められている。
p.299
CQ

05 Clinical Question

急性気道感染症が疑われる患者にルーティーンには胸部X線検査を行わないことを弱く推奨する。

「気道症状と発熱」を有する患者群

において,胸部単純X 線検査を全例に施行することは推奨されるか。

CQ5 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

急性気道感染症が疑われる患者におけるルーティーンの胸部X 線検査は適切な抗菌薬治療の開始をサポートする有用性は認められない(  エビデンスの確実性はC  )。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コストは含まず):確実ではない

胸部X 線画像の読影が適正に行われるかが明確ではない。また,軽症例に胸部X 線を試行すると肺炎の診断に至る患者は存在するが,本来軽症であるため,肺炎治療を行っても有症状期間が短縮されることにはならない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

4)	負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:不明保険点数は57 点であり,それに見合う有益性があるか不明である。C A Pの診断

C Q
p.300
CQ

06 Clinical Question

CAP 患者の診療において尿中抗原検査を全例に施行することを弱く推奨する。

CAP 診断において,尿中抗原検査を全例に施行することは推奨されるか。

CQ6 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

CAP の診療において尿中抗原検査を全例に実施することによる予後の改善は認められず(  エビデンスの確実性はC  ),コストの削減も認められない(  エビデンスの確実性はD  )。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コストは含まず):確実ではない

尿検査は侵襲度の低い検査であるが,「尿中抗原検査結果に基づく治療を行う群」と「尿中抗原未実施でエンピリック治療を行う群」の比較では予後(死亡,臨床的再燃,再入院)に差を認めなかった。しかし,「尿中抗原陽性で標的治療を行う群」では再発率と再入院が増加する可能性がある。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

予後改善をアウトカムとしており,検査に基づく治療により予後が改善することを患者は望む。検査に伴う患者苦痛はない。
p.301
4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っていない日本での医療経済評価がないため判断できないが,保険点数は肺炎球菌尿中抗原146 点,レジオネラ尿中抗原229 点であり,保険診療で認められている。「尿中抗原検査結果に基づく治療を行う群」と「尿中抗原未実施でエンピリック治療を行う群」の比較では,予後に差を認めないが,わずかにコストが増加する傾向があり,全例に実施することはそれに見合う有益性が確実ではない。

CQ

07 Clinical Question

CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を弱く推奨する。ただし,細菌性肺炎が疑われる場合にはβ - ラクタム系薬単独投与を考慮する。

CAP のエンピリック治療において,非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか。

CQ7 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

CAP のエンピリック治療において非定型病原体をカバーした抗菌薬治療は,生命予後(  エビデンスの確実性はA  ),有効率(  エビデンスの確実性はB  ),早期治療効果(  エビデンスの確実性はC  ),副作用(  エビデンスの確実性はB  ),入院期間(  エビデンスの確実性はB  ),医療費(  エビデンスの確実性はD  ),の点で明らかな有益性は認められない。全体的な  エビデンスの確実性はA  。C A Pの治療

C Q
p.302
2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2) 益と害のバランスは確実か:確実

24 編のRCT で死亡率,有効率,早期治療効果,副作用,入院期間,医療費に差がないことが示されている。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

この治療に対する患者(家族)の意向は,非定型病原体をカバーする抗菌薬治療を望む。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている非定型肺炎に対するβ- ラクタム系薬単剤の臨床効果は有意に劣るため,患者(家族)の負担は増す。
p.303
CQ

08 Clinical Question

CAP に対するエンピリック治療として,β - ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症例においてはβ - ラクタム系薬単剤治療よりもβ - ラクタム系薬+マクロライド系薬併用療法を行うことを弱く推奨する。

CAP のエンピリック治療において, β - ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか。

CQ8 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

2つのRCT のメタアナリシスではマクロライド系薬併用で生命予後の改善は認めない(  エビデンスの確実性はB  )。しかし,18 の観察研究では生命予後の改善が得られた。さらに,共変量調整された12 の観察研究と前述の2つのRCT の合計14 編での定量的メタアナリシスでは,生命予後の改善が確認された(特に重症例で予後が改善した)(  エビデンスの確実性はC  )。副作用(  エビデンスの確実性はC  ),入院期間(  エビデンスの確実性はB  ),耐性菌発生率(  エビデンスの確実性はD  )に変化があると判断する根拠はない。全体的な  エビデンスの確実性はB  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

2 つのRCT ではマクロライド系薬の併用が生命予後に影響を与えなかったが,18 の観察研究は重症例を中心にマクロライド系薬の併用が予後によい影響を与えることを示唆した。

2)	益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

2 つのRCT ともマクロライド系薬併用で副作用,入院期間,耐性菌発生C A Pの治療

C Q
p.304
率に変化があると判断する根拠はない。しかし,18 の観察研究では入院期間を短縮することが示されている。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

この治療に対する患者(家族)の意向は,重症例では併用療法を望むことが予測される。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っているかどうか不明確正味の利益がコストや資源に十分に見合うものかどうかは不明確である。

CQ

09 Clinical Question

CAP に対して,抗菌薬治療に全身投与ステロイド薬を併用しないことを弱く推奨する。ただし,重症CAP に対しては全身投与ステロイド薬を併用することを弱く推奨する。

CAP 治療において,抗菌薬投与に全身投与ステロイド薬を補助療法として併用することは,抗菌薬のみでの治療よりも推奨されるか。

CQ9 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

全身投与ステロイド薬併用療法は,生命予後に影響せず(  エビデンスの確実性はB  ),肺炎治癒率を変えず(  エビデンスの確実性はC  ),重篤な副作用を増加させず(  エビデンスの確実性はC  ),入院期間を約1 日短縮させる(  エビデンスの確実性はA  )。サブ解析では,重症症例・入院症例に限ると生命予後を有意に改善させる可能性が示唆されている(  エビデンスの確実性はB  )。全体的な  エビデンスの確実性はA  。
p.305
2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2) 益と害のバランスは確実か:確実

ステロイド薬併用療法は,血糖を上昇させる可能性があるものの,重篤な副作用を増加させず,入院期間を短縮させ,重症症例・入院症例に限ると生命予後を有意に改善させることが示されている。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映していない

この治療に対する患者(家族)の意向は,ばらつきが大きい。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っているステロイド薬が安価な薬剤であること,入院期間を1 日短縮させること,臨床的に状態が安定するまでの期間(time to clinical stability)が約1日短縮されることを考慮すると,医療費を軽度減じる可能性がある。C A Pの治療

C Q
p.306
CQ

10 Clinical Question

CAP に対して,細菌培養検査結果に基づき,抗菌薬治療をde-escalation することを弱く推奨する。

CAP 治療において,細菌培養検査の結果に基づく抗菌薬のdeescalation は推奨されるか。

CQ10 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

本CQ に関して,これまでRCT の報告はなく,メタアナリシスの報告も認めなかった。

1 篇のコホート研究ではde-escalation は死亡率を低下させ,医療費を削減する可能性が示唆される(  エビデンスの確実性はC  )。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実ではない

De-escalation 群において肺炎死亡率は低いが,後ろ向きコホート研究であり,エビデンスが弱い。また,有害事象の増減に関するエビデンスはなく,確実とはいえない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:不明

患者の価値観や好みはばらつきが大きいと推測される。
p.307
4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っているDe-escalation により,患者負担および公的医療費は増大しないものと推測される。抗菌薬適正使用による正味の利益がコストや資源に見合っているものと判断される。

CQ

11 Clinical Question

CAP に対して,症状・検査所見の改善が得られれば,注射用抗菌薬から適切な内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)を行うことを強く推奨する。

CAP 治療において,症状・検査所見の改善に伴い,注射用抗菌薬から内服抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)は推奨されるか。

CQ11 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

CAP に対する内服薬へのスイッチ療法は静注抗菌薬の継続と比較して,同等の臨床効果を示し(  エビデンスの確実性はB  ),薬剤による副作用を減少させ(  エビデンスの確実性はB  ),入院期間を有意に短縮し(  エビデンスの確実性はA  )医療費軽減が示唆される(  エビデンスの確実性はC  )。全体的な  エビデンスの確実性はA  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。C A Pの治療

C Q
p.308
2) 益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

内服薬へのスイッチ療法群は静注抗菌薬継続群と比較して肺炎治癒率は同等であった。一方で,スイッチ療法群において副作用が減少しており,入院期間の短縮が得られたことにより,益と害のバランスは確実であると判断された。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

スイッチ療法により入院期間が短縮されるので患者は好むものと推測された。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)や正味の利益がコストや資源に十

分見合っているか:見合っているスイッチ療法により入院期間が短縮されるので,患者の負担は軽減すると考えられる。正味の利益は損なわず,コスト削減できる可能性がある。

CQ

12 Clinical Question

CAP の軽症〜中等症例においては,初期治療が奏効している場合には1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与を弱く推奨する。

CAP 治療の期間について,1 週間以内の比較的短期間の抗菌薬投与は推奨されるか。

CQ12 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

CAP の軽症〜中等症例に対する1 週間以内の抗菌薬投与は1 週間を超える抗菌薬投与と比較して,肺炎治癒(  エビデンスの確実性はB  ),副作用(  エビデンスの確実性はB  )に差はなく,入院期間は短く(  エビデン
p.309
スの確実性はC  ),医療費は低い(  エビデンスの確実性はB  )。全体的な  エビデンスの確実性はB  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か:確実

短期間投与により入院期間の短縮や医療費の軽減が期待できる。また有害事象発症率には差がない。再発率は評価できていない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

入院期間の短縮および自己負担の軽減は患者の希望に合致するものと考えられる。

4)	負担の確実さや正味の利益がコストや資源に十分見合っている

か:見合っている比較的低いリスクで患者負担や総医療費を軽減できる可能性がある。C A Pの治療

C Q
p.310
CQ

13 Clinical Question

1HAP では,I-ROAD で重症度評価することを弱く推奨する。2NHCAP では,A-DROP・CURB-65・PSI のいずれかで重症度評価をすることを弱く推奨する。

HAP/NHCAP 診断において,重症度評価は推奨されるか。

CQ13 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

NHCAP においては,A-DROP,CURB-65,PSI は生命予後予測(  エビデンスの確実性はC  ),ICU 入室率予測(  エビデンスの確実性はD  )において有用な評価法である。NHCAP における全体的な  エビデンスの確実性はC  。

HAP においては,I-ROAD による重症度評価の有益性がある(  エビデンスの確実性はD  )。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実ではない

通常の診療行為を逸脱することはなく,害が生じることはない。

3)患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

肺炎診療における客観的指標であり,また,患者に不利益を生じさせることもない。
p.311
4)負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコストや資源に十

分に見合っているか:見合っている通常の診療行為を逸脱することはなく,コスト・資源に影響を与えない。

CQ

14 Clinical Question

HAP/NHCAP の診断において,CRP の推移(3 〜5 日目におけるCRP の低下)は生命予後を予測する目安として,科学的根拠に乏しいが,測定することを弱く推奨する。

HAP/NHCAP 診断において, CRP 測定は推奨されるか。

CQ14 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

HAP/NHCAP 診断において,CRP 測定は生命予後予測(  エビデンスの確実性はD  ),肺炎診断(  エビデンスの確実性はD  )において明らかな有益性は認められない。全体的な  エビデンスの確実性はD  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

CRP 値を参照する診療がもたらす明らかな不利益は証明されていない。CRP 測定に伴うコストが発生するが,通常の診療内の行為である。H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.312
3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

通常の診療内の行為であり,患者の不利益にはならない。この検査に対する患者(家族)の意向は,治療において測定することを望む。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている通常の保険診療内の行為であり,検査に伴う苦痛はほとんどない。本邦の医療資源・医療環境を考慮すると,利益は患者(家族)の負担に見合っている。

CQ

15 Clinical Question

NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することを弱く推奨する。

NHCAP およびCAP 患者において,誤嚥のリスク因子を評価することは推奨されるか。

CQ15 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

誤嚥のリスク因子の評価は,肺炎による再入院(  エビデンスの確実性はD  ),短期生命予後(  エビデンスの確実性はC  ),長期生命予後(  エビデンスの確実性はD  )に関連する。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスが強い:弱い

上記1参照。
p.313
2) 益と害のバランスが確実(コスト含まず):確実

通常の診療行為を逸脱することはなく,害が生じることはない。

3) 患者の価値観や好みを反映している:反映している

肺炎診療における指標の1 つであり,患者に不利益を生じさせることもない。

4) 負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコストや資源に十

分に見合っている:見合っている通常の診療行為を逸脱することはなく,コスト・資源に影響を与えない。

CQ

16 Clinical Question

HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことを弱く推奨する。

HAP およびNHCAP 患者において,耐性菌のリスク因子評価を行うことは推奨されるか。

CQ16 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

耐性菌リスク因子評価による高リスク群では,耐性菌の出現率(  エビデンスの確実性はD  ),初回治療失敗率(  エビデンスの確実性はD  ),30日死亡(  エビデンスの確実性はD  )で有意な関連性を認める。全体的な  エビデンスの確実性はD  。H A P / N H C A Pの診断

C Q
p.314
2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2) 益と害のバランスは確実か:確実

高リスク群では耐性菌出現率,初回治療失敗率,30 日死亡が有意に多い結果から,益と害のバランスは確実であると判断される。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか(コスト含まず):反映し

ているこの治療に対する患者(家族)の意向は,耐性菌リスクを踏まえた抗菌薬治療を望む。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている低リスク群では耐性菌出現率,初回治療失敗率,30 日死亡が有意に少ない結果から,患者(家族)の負担は減る。
p.315
CQ

17 Clinical Question

NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,レスピラトリーキノロンを治療薬の1 つとすることを弱く推奨する。ただし,副作用,耐性化の可能性,および肺結核との鑑別を考慮することが必要である。

NHCAP 外来患者のエンピリック治療において,ニューキノロン系薬を用いることは推奨されるか。

CQ17 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

NHCAP 外来患者の治療において,ニューキノロン系薬をエンピリック治療として用いることは,生命予後(  エビデンスの確実性はD  ),初期治療効果(  エビデンスの確実性はD  ),副作用(  エビデンスの確実性はD  )の点において有用性は認められない。全体的な  エビデンスの確実性はD  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実ではない

RCTでは有益性を証明できず。観察研究では有効性は高いもののコントロール群がないため有益性の判断ができない。有害事象,MRSA や結核への影響が害となる。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

患者は外来治療がオプションにあることを好む。H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.316
4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている外来治療が可能であることは大きな利益である。

CQ

18 Clinical Question

HAP/NHCAP の治療において,de-escalation 治療を行うことを弱く推奨する。

HAP/NHCAP 治療において, de-escalationは推奨されるか。

CQ18 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

本レビューでは,de-escalation 治療は,入院中死亡(  エビデンスの確実性はC  ),28 日以内死亡(  エビデンスの確実性はC  ),入院日数(  エビデンスの確実性はC  ),ICU 入院日数(  エビデンスの確実性はC  ),人工呼吸器管理日数(  エビデンスの確実性はC  ),肺炎の再燃(  エビデンスの確実性はC  )の点においてnon de-escalation 治療と有意差はなかった。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実

多剤併用療法に伴う副作用による予後増悪が報告されており,過度な副
p.317
作用を防ぐため原因微生物が判明次第,狭域な抗菌薬へ変更することが必要である。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映していない

患者は必ずしもde-escalation 治療を希望するとはいえない。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている1 編の観察研究でde-escalation群のほうが費用は低かったことが報告されており,コストの低下が期待できる。

CQ

19 Clinical Question

耐性菌が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療を弱く推奨する。ただし,NHCAP,HAP の患者で,疾患末期や老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者に対しては,個人の意思を十分に確認し,医療チームとしてQOL を優先した抗菌薬投与の有無および種類の選択を決定する。

HAP/NHCAP 治療において,耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は推奨されるか。

CQ19 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

耐性菌感染が疑われる場合,多剤耐性菌をカバーする初期治療は,耐性菌をターゲットとしない抗菌薬投与群と比較して生命予後(  エビデンスの確実性はC  ),ICU 滞在期間(  エビデンスの確実性はC  ),抗菌薬治療期間(  エビデンスの確実性はC  )の点で有意差はない。全体的な  エビデンスの確実性はC  。H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.318
2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2) 益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実ではない

今回のSR では明らかな害はないものの,益となる生命予後の改善,在院日数や抗菌薬投与期間の短縮は認められず,益と害のバランスが確実とはいえない。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

広域抗菌薬の使用を好むと思われる。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っていない益は不確実だが,コストは高くなると思われる。

CQ

20 Clinical Question

HAP/NHCAP 治療において,1 週間以内の比較的短期間の治療期間を弱く推奨する。ただし,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌では再燃のリスクがある。

HAP/NHCAP 治療において, 1 週間以内の比較的短期間の治療期間は推奨されるか。

CQ20 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

VAP を含むHAP に対する短期間抗菌薬治療(8 日以内)と長期間治療
p.319
(10 〜15 日)の比較では,生命予後(  エビデンスの確実性はB  ),初期治療効果(  エビデンスの確実性はD  ),入院期間,再燃(  エビデンスの確実性はC  )の点で有意差はなかった。全体的な  エビデンスの確実性はB  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

短期治療でも長期治療と遜色ないアウトカムを示していることから,益と害のバランスは確実といえる。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

患者にとっても短期治療は望ましく,患者の価値観や好みを反映しているといえる。

4)	負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている短期治療はコストの面でも有利であり,負担の確実さ(あるいは相違)や正味の利益がコストや資源に十分に見合っているといえる。

H A P / N H C A Pの治療

C Q
p.320
CQ

21 Clinical Question

non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎に対するステロイド薬投与を弱く推奨する。

non-HIV 患者のニューモシスチス肺炎治療において,ステロイド薬投与は推奨されるか。

CQ21 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

Non-HIV 患者のPCP に対する補助的ステロイド薬使用は,生命予後(  エビデンスの確実性はC  )および挿管・人工呼吸器使用(  エビデンスの確実性はD  )の点において有益性は認められない。全体的な  エビデンスの確実性はC  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:弱い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実ではない

益,害ともに明らかでない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映していない

明らかでない。

4)	負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っているステロイドのコストは低い。
p.321
CQ

22 Clinical Question

高齢者の肺炎予防に対して,肺炎球菌ワクチンの接種を強く推奨する。

高齢者の肺炎予防において,肺炎球菌ワクチンは推奨されるか。

CQ22 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

高齢者に使用される肺炎球菌ワクチン1) PPSV23,2) PCV13,3) PCV13とPPSV23 の連続接種(PCV13/PPSV23)に分けてSR を実施した。

1)	PPSV23

わが国からの3編のRCT によるSR では,「肺炎」と「肺炎球菌性肺炎」の発症は,PPSV23 接種群で非接種群より有意に抑制された(  エビデンスの確実性はB  )。生命予後については「全死亡」と,「肺炎による死亡」を評価したが,いずれも抑制効果は認められなかった(  エビデンスの確実性はB  )。

2)	PCV13

下記のPCV13/PPSV23 の対象論文に含まれ,単独のSR は実施しなかった。

3)	PCV13/PPSV23

臨床的な予防効果を報告した報告はなかったため,オプソニン活性を指標とする「免疫原性」を評価した。2編のRCT によるSR の結果,PCV13/ PPSV23 群ではPPSV23 群よりも免疫原性が高かった(  エビデンスの確実性はC  )。

なお,全体的な  エビデンスの確実性はB  。医療費抑制効果の点でも有肺炎の予防

C Q
p.322
益性が示唆される。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2) 益と害のバランスが確実か(コスト含まず):確実

有害事象のSR は実施していないが,PCV13,PPSV23 ともに不活化ワクチンで重篤な副作用の報告はほとんどない。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

国の推奨,マスメディアの発信により肺炎球菌ワクチン接種の希望者は増加している。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っているPPSV23 は65 歳以上の高齢者と60 歳以上65 歳未満で心臓,腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV による免疫の機能に障害を有する人は定期接種の対象であり,国からの費用補助が受けられる。また,日本のRCT 2編から厚生労働省は良好な医療費削減効果を算出しており,正味の利益がコストや資源に十分に見合っている。PCV13 については海外のRCT 1 編のみであり,日本人を対象としたデータがないため,現在のところ定期接種ではなく,接種費用は自己負担である。
p.323
CQ

23 Clinical Question

高齢者の肺炎予防に対して,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種を強く推奨する。

高齢者の肺炎予防において,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか。

CQ23 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

TIV とPPSV23 の両者の接種は,生命予後の点で未接種群と比較して有意に低いが,TIV の単独接種とは有意差がない(  エビデンスの確実性はB  )。肺炎発症予防の点では未接種群との比較ではすべての肺炎による入院と肺炎発症を有意に抑制したが(  エビデンスの確実性はB  ),TIV 単独接種群との比較ではすべての肺炎による入院は有意に抑制したものの,肺炎発症の抑制は認められず(  エビデンスの確実性はB  ),PPSV23 単独接種との比較では肺炎による入院と肺炎発症を有意に抑制した(  エビデンスの確実性はB  )。全体的な  エビデンスの確実性はB  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か:確実

良好な生命予後や発症予防効果など有益性が否定されるような害は生じない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

肺炎球菌ワクチンの定期接種導入に伴い,ワクチン接種の希望者は増加肺炎の予防

C Q
p.324
傾向にある。

4) 負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコストや資源に十

分に見合っているか:見合っているPPSV23 とTIV はともに65 歳以上の成人,および60 〜65 歳未満で基礎疾患(心肺疾患,肝腎疾患,免疫機能低下など)を有する成人は定期接種の対象であり,公的費用補助が受けられる。わが国のRCT 2 編から厚生労働省は正の医療費削減効果を算出している。

これらより,両ワクチン接種による正味の利益がコストや資源に十分に見合うと考える。

CQ

24 Clinical Question

成人のインフルエンザ関連肺炎の予防に対して,早期(2日以内)抗インフルエンザ薬投与を強く推奨する。

成人のインフルエンザ関連肺炎の予防において,早期(2 日以内)抗インフルエンザ薬投与は推奨されるか。

CQ24 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

4編のメタアナリシスによるSR の結果,インフルエンザ関連肺炎の予防において,抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)の早期(2日以内)投与は,「肺炎発症」,「全原因での入院」,「生命予後(インフルエンザ関連肺炎およびインフルエンザ全体)」の点で有益性が認められた(  エビデンスの確実性はB  )。有害事象に関しては,オセルタミビルは嘔吐のリスクが有意に増加するが,下痢は有意にリスクが減少し,心イベントも有意にリスクが減少し,神経精神系への影響,および深刻な有害事象
p.325
は有意差を認めない。ザナミビルは嘔気または嘔吐のリスクが減少し,深刻な有害事象は認めない。ペラミビルは重篤な有害事象は認めない。全体的な  エビデンスの確実性はB  。

2.推奨の強さを決定するための評価項目

1)	アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2)	益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

メタアナリシス2 編の結果より,オセルタミビルは消化器症状の誘発が懸念されるが,下痢および心イベントは有意に減少している。神経系への有害事象の有意差もない。

3)	患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

インフルエンザと診断された患者の大半は特異的治療薬の処方を求める。

4)	負担の確実さ(あるいは相違),正味の利益がコストや資源に十

分に見合っているか:見合っている毎年のインフルエンザ罹患者の数を考えると,インフルエンザ関連肺炎発症の予防は医療費削減効果につながると考える。

肺炎の予防

C Q
p.326
CQ

25 Clinical Question

肺炎予防に対して,口腔ケアを行うことを弱く推奨する。

肺炎予防において,口腔ケアは推奨されるか。

CQ25 推奨

1.システマティックレビューのまとめ

VAP を除く肺炎(非VAP)に関して,7編のRCT によるSR の結果,口腔ケア実施群では非実施群より,「肺炎の初回発症」は有意に抑制された(  エビデンスの確実性はB  )。生命予後については7編のRCT によるSRで評価され,口腔ケア実施群で「死亡」は抑制されなかった(  エビデンスの確実性はB  )。海外ではクロルヘキシジンによる口腔ケアが主流であるが,わが国ではアナフィラキシーショックへの懸念から口腔を含む粘膜への使用は禁忌とされている。そのため,日本人を対象にクロルヘキシジンを使用しない口腔ケアを評価した2編のRCT によるSR を実施したところ,有意な「肺炎の初回発症」の抑制効果が認められた(  エビデンスの確実性はD  )。

VAP に関して,17 編のRCT によるSR の結果,口腔ケア実施群では,非実施群より,「肺炎の初回発症」は有意に抑制された(  エビデンスの確実性はB  )。生命予後は15 編のRCT のSR で評価され,口腔ケア実施群と非実施群で「死亡」の抑制効果は認められなかった(  エビデンスの確実性はB  )。

全体的な  エビデンスの確実性はB  。
p.327
2.推奨の強さを決定するための評価項目

1) アウトカム全般に関する全体的なエビデンスの強さ:強い

上記1 参照。

2) 益と害のバランスは確実か(コスト含まず):確実

口腔内の刺激作用,不快な味覚が2 件報告されているが,益が上回る。

3) 患者の価値観や好みを反映しているか:反映している

患者は口腔ケアを希望する。

4) 負担の確実さ(あるいは相違)正味の利益がコストや資源に十分

に見合っているか:見合っている肺炎発症の抑制効果により医療費削減効果が期待される。

肺炎の予防

C Q
p.328
参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量

系統剤形薬剤名薬剤名略語代表的な先発品名

ペニシリン系薬経口アモキシシリンAMPCサワシリンR

クラブラン酸/ アモキシシリン* CVA/AMPCオーグメンチンR

スルタミシリン* SBTPCユナシンR

注射ベンジルペニシリンPCGペニシリンG カリウム

アンピシリンABPCビクシリンR

ピペラシリンPIPCペントシリンR

スルバクタム/ アンピシリンSBT/ABPCユナシンR-S

タゾバクタム/ ピペラシリンTAZ/PIPCゾシンR

第一世代セフェム系薬注射セファゾリンCEZセファメジンRα第二世代セフェム系薬注射セフォチアムCTMパンスポリンR

第三世代セフェム系薬経口セフジトレン ピボキシルCDTR-PIメイアクトMS R

注射セフトリアキソンCTRXロセフィンR

セフォタキシムCTXクラフォランR

セフォタックスR

セフタジジムCAZモダシンR

第四世代セフェム系薬注射セフェピムCFPMマキシピームR

セフォゾプランCZOPファーストシンRセフピロムCPRケイテンR

プロアクトR

マクロライド系薬経口クラリスロマイシンCAMクラリスR

クラリシッドR

アジスロマイシンAZMジスロマックR

エリスロマイシンEMエリスロシンR

注射アジスロマイシンAZMジスロマックR

エリスロマイシンEMエリスロシンR

*:十分な血中濃度を得るため,AMPC の併用を考慮する。(例)CVA/AMPC 1回1錠(125mg/250mg)1日3〜4回 + AMPC 1回250mg 1日3〜4回
p.329
Ccr(mL/min)

>50 10 ~50 <10血液透析(HD)先発品の添付文書上

の1 日最大用量

1回500mg 1日3〜4回1回250mg 1日3回1回250mg 1日1回1回250mg 1日1回,HD 日はHD 後1,000mg 1回1錠(125mg/250mg) 1日4回1回1錠(125mg/250mg) 1日3回1回1錠(125mg/250mg) 1日2回1回1錠(125mg/250mg) 1日2回,HD 日はHD 後4錠1回375mg 1日4回1回375mg 1日2回1回375mg 1日1回1回375mg 1日1回,HD 日はHD 後1,125mg

1回200 万単位1日4〜6回50 〜75% 量1日2〜5回1回30 〜60 万単位1日2〜6回1回30 〜60 万単位1日2〜7回2,400 万単位(敗血症,感染性心内膜炎,化膿性髄膜炎については,一般に通常用量より大量に使用する)

1回2g 1日3〜4回1回2g 1日2〜3回1回0.5g 1日2回1回0.5g 1日2回,HD 日はHD 後

2g(敗血症,感染性心内膜炎,化膿性髄膜炎については,一般に通常用量より大量に使用する) 1回4g 1日3〜4回

1回2g 1日3〜4回1回2g 1日2回1回2g 1日2回,HD 日はHD 後16g

1回3g 1日3〜4回1回3g 1日2〜3回1回3g 1日1回1回3g 1日1回,HD 日はHD 後12g 1回4.5g 1日3〜4回1回2.25 〜4.5g 1日2〜3回1回2.25 〜4.5g 1日2回1回2.25 〜4.5g 1日2回13.5g 1回1〜2g 1日3回1回1〜2g 1日2回1回1g 1〜2日に1回1回0.5 〜1g毎HD 後5g 1回1.0g 1日3〜4回1回1.0g 1日1〜2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後2g 1回200mg 1日3回Ccr <30:1回100mg 1日3回1回100mg 1日1〜2回600mg

1回2g 1日1回1回1〜2g 1日1回4g

1回1〜2g 1日3回1回0.5 〜1.0g 1日2回1回0.5g 1日2回4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回1g 1日2回1回1g 1〜2日に1回1回1g毎HD 後4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回1g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回0.5 〜0.75g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後4g 1回1〜2g 1日3〜4回1回1g 1日2回1回0.5 〜1g 1日1回1回0.25 〜0.5g毎HD 後4g 1回200mg 1日2回1回200mg 1日1〜2回1回200mg 1日1回400mg

錠剤:1回500mg,1日1回SR 成人用ドライシロップ:1回2,000mg,空腹時1回服用500mg(錠剤) 1回200mg 1日4〜6回1回100 〜150mg 1日4回1,200mg

1回0.5g 1日1回0.5g

1回0.5g 1日3回1回0.4g 1日3回1.5g
p.330
参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量【つづき】

系統剤形薬剤名薬剤名略語代表的な先発品名

カルバペネム系薬注射イミペネム/ シラスタチンIPM/CSチエナムR

パニペネム/ ベタミプロンPAPM/BPカルベニンR

メロペネムMEPMメロペンR

ビアペネムBIPMオメガシンR

ドリペネムDRPMフィニバックスR

テトラサイクリン系薬経口ミノサイクリンMINOミノマイシンR

注射ミノサイクリンMINOミノマイシンR

ニューキノロン系薬経口トスフロキサシンTFLXオゼックスR

レボフロキサシンLVFXクラビットR

ガレノキサシンGRNXジェニナックR

モキシフロキサシンMFLXアベロックスR

シタフロキサシンSTFXグレースビットR

シプロフロキサシンCPFXシプロキサンR

注射レボフロキサシンLVFXクラビットR

シプロフロキサシンCPFXシプロキサンR

パズフロキサシンPFZXパシルR

リンコマイシン系薬注射クリンダマイシンCLDMダラシンRS

ニトロイミダゾール系薬注射メトロニダゾールMNZアネメトロR
p.331
Ccr(mL/min)

>50 10 ~50 <10血液透析(HD)先発品の添付文書上

の1 日最大用量

1回0.5 〜1g 1日3回1回0.5g 1日2回1回0.25g 1日1回1回0.25g 1日1回,HD 日はHD 後2g 1回0.5 〜1g 1日3回1回0.5g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後2g 1回0.5 〜1g 1日3回1回0.5g 1日2回1回0.5g 1日1回1回0.5g 1日1回,HD 日はHD 後3g

1回0.3 〜0.6g 1日3回Ccr >30:1回0.3g 1日2回Ccr <20:1回0.3g 1日1回1回0.3g 1日1回1回0.3g 1日1回,HD 日はHD 後1.2g

70 ≦Ccr:1回0.5 〜1g 1日3回50 ≦Ccr <70: 1回0.25 〜1g 1日2〜3回30 ≦Ccr <50: 1回0.25 〜0.5g 1日2〜3回Ccr <30:1回0.25g 1日2〜3回1回0.25 〜0.5g 1日1回1回0.25 〜0.5g 1日1回,HD 日はHD 後3g

1回100mg 1日2回200mg 1回0.1g 1日2回0.2g

1回150mg 1日3回1回150mg 1日1〜2回1回150mg 1日1回450mg 1回500mg 1日1回初日1回500mg 1日1回2日目以降250mg 1日1回初日1回500mg 1日1回3日目以降250mg 2日に1回500mg

1回400mg 1日1回低体重(40kg 未満)かつCcr <30:1回200mg 1日1回低体重(40kg 未満)かつCcr <30:1回200mg 1日1回1回400mg 1日1回400mg

1回400mg 1日1回400mg

1回100mg 1日1〜2回1回50mg 1〜2日に1回1回50mg 2日に1回1回50mg 2日に1回200mg 1回200mg 1日2〜3回1回400mg 1日に1回1回200mg 1日に1回600mg 1回0.5g 1日1回初日1回0.5g 1日1回2日目以降0.25g 1日1回初日1回0.5g 1日1回3日目以降0.25g 2日に1回0.5g

Ccr >60:1回0.4g 1日2〜3回31 ≦Ccr ≦60:1回0.2g 1日2回Ccr ≦30:1回0.2g 1日1回必要に応じて低用量(0.2g) 1日1回1.2g

1回0.5 〜1g 1日2回1回0.5g 1日1〜2回1回0.5g 1日1回1回0.3 〜0.5g HD 後2g

1回0.6g 1日2〜4回2.4g 1回0.5g 1日3〜4回2g
p.332
参考資料:代表的な抗菌薬名と用法・用量【つづき】

系統剤形薬剤名薬剤名略語代表的な先発品名

グリコペプチド系薬注射バンコマイシンVCM塩酸バンコマイシン

テイコプラニンTEICタゴシッドR

オキサゾリジノン系薬経口リネゾリドLZDザイボックスR

注射リネゾリドLZDザイボックスR

アミノグリコシド系薬注射ゲンタマイシンGMゲンタシンR

アミカシンAMKアミカシン

トブラマイシンTOBトブラシンR

アルベカシンABKハベカシンR

・添付文書,抗菌薬TDM ガイドライン(日本化学療法学会・日本TDM 学会),感染症治療ガイドライン(日本感染症・本表はあくまで目安であること,一部には保険未承認の用法・用量が含まれていることに注意する。最終的な用法・用・eGRF(mL/min/1.73m 2)ではなく,eGFR(mL/min)やCockcroft-Gault 式による推定Ccr を用いる。
p.333
Ccr(mL/min)

>50 10 ~50 <10血液透析(HD)先発品の添付文書上

の1 日最大用量

eGFR ≧90:初回25mg/kg,その後は1回15 〜20mg/kg 1日2回80 ≦eGFR <90:初回15mg/kg,その後は1回12.5mg/kg 1日2回60 ≦eGFR <80:1回20mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <60:1回15mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回12.5mg/kg 1日1回eGFR <30:適応としない初回20 〜25mg/kgその後は透析後に1回7.5 〜10mg/kg 2g eGFR ≧60:6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回,3日目以降は1日1回40 ≦eGFR <60:6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回,3日目は1日1回,4日目以降は3.3mg/kg 1日1回10 ≦eGFR <40:6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回,3日目は1日1回,4日目は休薬,5日目以降は5.0mg/kg 2日に1回eGFR <10:6.7mg/kg 1日目は1日2回,2〜3日目は1日1回,4日目は休薬,5日目以降は3.3mg/kg 2日に1回6.7mg/kg 1〜2日目は1日2回, 3日目は1日1回4日目以降はHD 日にHD 後3.3 〜6.7mg/kg 0.8g(初日) 0.4g(維持量)

1回600mg 1日2回1,200mg 1回0.6g 1日2回1.2g

70 ≦:1回5〜7mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <70: 1回4〜5mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4〜5mg/kg 1〜2日1回<30:1回3〜4mg/kg 2日に1回初回2.5mg/kg維持1.7mg/kg毎HD 後5mg/kg 70 ≦:1回12 〜15mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <70: 1回7.5mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4mg/kg 1日1回<30:1回4〜7.5mg/kg 2日に1回1回5〜7.5mg/kg毎HD 後400mg 70 ≦:1回5〜7mg/kg 1日1回50 ≦eGFR <70: 1回4〜5mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4〜5mg/kg 1〜2日1回<30:1回3〜4mg/kg 2日に1回初回2.5mg/kg維持1.7mg/kg毎HD 後540mg

1回5.5 〜6mg/kg 1日1回30 ≦eGFR <50:1回4〜5mg/kg 1〜2日1回<30:1回3〜4mg/kg 2日に1回初回2.5mg/kg維持1.7mg/kg毎HD 後200mg学会・日本化学療法学会),CKD 治療ガイド(日本腎臓学会),薬剤性腎障害診療ガイドライン(日本腎臓学会)等を参考に作成した。量の決定は主治医の裁量に委ねる。
p.334
成人肺炎診療ガイドライン2017 ポケット版

2018 年6月15 日 第1版発行編 集 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会発行者 日本呼吸器学会(代表)長谷川 好規発 行 一般社団法人日本呼吸器学会〒113-0033東京都文京区本郷3丁目28 番8号 日内会館7階電話 03-5805-3553(代) FAX 03-5805-3554 E-mail:info@jrs.or.jp制 作 株式会社メディカルレビュー社組 版 日本印刷株式会社●本書に掲載された著作物の複写・複製・転載・翻訳・データベースへの取り込み、および送信(送信可能化権を含む)・上映・譲渡に関する許諾権は一般社団法人日本呼吸器学会が保有しています。

C日本呼吸器学会/2018
p.335
Te JRS Guidelines for the Management of Pneumonia in Adults

成人肺炎診療ガイドライン2017ポケット版