GL検索 v0.1.0
この版は旧版です。新版があります: JRS 2021 ARDS診療ガイドライン2021 新版を読む
ARDS診療ガイドライン2016(PDF版) 日本呼吸器学会・2016・293 ページ · 呼吸器・睡眠 · 集中治療・救急・蘇生
p.1
発行  一般社団法人 日本呼吸器学会一般社団法人 日本呼吸療法医学会一般社団法人 日本集中治療医学会

制作  総合医学社日本集中治療医学会/日本呼吸療法医学会/日本呼吸器学会

3 学会、2委員会合同

一般社団法人一般社団法人一般社団法人2016 2016診療ガイドラインARDS

ARDS

・
p.2

        
p.3
ARDS 診療ガイドライン2016 の発刊にあたって

世界50 か国のICU における最新の疫学研究 (LUNG-SAFE)では,ICU 入室患者の10. 4% にacute respiratory distress syndrome (ARDS)が発症し,院内死亡率はおよそ40% という結果であった.さまざまな臨床研究が進み,低容量換気,高PEEP,腹臥位換気など呼吸管理法が確立されてきたものの死亡率はいまだに高い.また,ARDS は,さまざまな基礎疾患の上に発症し急性呼吸不全を呈する症候群であるが,診断基準の特異度は高いものではなく類似病態との鑑別は必ずしも容易でない. ARDS の定義は,1992 年以来約20 年にわたりAmerican-European Consensus Conference (AECC)の定義が日常臨床や臨床研究に広く用いられてきたが様々な問題点が指摘されてきた.より使いやすく,病態や予後を良く反映する定義とするための検討がなされ,2012 年にBerlin 定義が新たに提唱された.結果的には,マイナーチェンジであり,根幹の変更は少ないが,簡潔でありながら必要最低限のポイントを抑えた定義として普及するものと思われる.Berlin 定義の導入に伴い,より病態を明確にするためのツールとしてARDS 診療における心エコーや胸部CT の有用性が再認識されてきた.このようなARDS という診断確定がしにくく,動きの速い,多彩な基礎病態の上に成り立つheterogeneous な疾患においては治療のエビデンスを確立することは難しく,診療における明確な指針を提示するのも容易でないが,臨床医をはじめとするメディカルスタッフが少しでもARDS に対する理解を深めることで,ARDS 診療の質を向上させる目的で日本呼吸器学会では,2005 年にALI/ ARDS 診療ガイドライン第1 版を出版した.単にエビデンスを提示するだけでは,ほとんどの治療法が推奨できないという結果に終わり,実臨床に何の利益をもたらさない味気のないガイドラインになってしまうため,基礎となる病態を理解し,診断や検査から治療法を考えられるテキスト形式のガイドラインとして作成した.その後,5 年ごとの改定をすることとし,2010 年に第2 版を出版した.2015年には,新しいBerlin 定義を踏まえた第3版の改定を予定していたが,各種の診療ガイドラインがMinds の指針に従ったクリニカルクエスチョン(CQ)形式で作成されることが多くなったことと,折しも日本呼吸療法医学会と日本集中治療医学会がガイドライン作成を企画していたことから3 学会で共同ガイドラインを作成することになった.日本呼吸器学会の作成委員がこれまでのテキスト形式の部分をPart 1として作成し,日本呼吸療法医学会と日本集中治療医学会の作成委員がCQ 形式部分をPart 2として分担作成した.Berlin 定義によってALI (acute lung injury)のカテゴリーはARDS に吸収されたためガイドラインの名称も“ARDS 診療ガイドライン2016”となった.診療ガイドラインである以上エビデンスに基づくものでなければならない.しかし,ARDS は,様々な原因によって引き起こされるheterogeneous な病態であるうえ臨床診断は他疾患の混在もみられるため,薬物治療などの効果は一定でない.したがって,各種治療法に対して画一的な有効性の是非の判断は難しい.実臨床では有効性を実感する治療法があっても大規模なrandomized controlled trials (RCT)で生存率に対する有用性が示されなければ無効と判断されてしまう.ARDS のような死亡率の高い疾患においては,対象をその表現型やバイオマーカーなどで均一なクラスターを選択した個別化医療がより重要となってくると思われる.本ガイドラインでは,ARDS 診療のうち治療における重要な選択肢の判断についてはCQ として厳密にエビデンスに基づく記載がPart 2になされている.一方,それにかかわる関連事項はPart 1に記載され,疫学から診断基準,病態生理や病理,診断,治療
p.4
などARDS 診療の全体を包括的に知ることができるようになっている. ARDS は,臨床の場であれば,内科,外科,小児科,救急科,ICU などどこでも発生しうる病態であり,さまざまな診療科のメディカルスタッフが協力して取り組んでいかなければならない疾患である.このような観点から,今回,呼吸器学会,呼吸療法医学会,集中治療医学会の3学会が協力してガイドラインを作成できたことは極めて意義のあることと思われる.ぜひ,ARDS の診療に携わるすべての診療科のメディカルスタッフにこの診療ガイドラインをご活用いただきたい.そして,また,まだまだ不備な点,改善点も多いと思われるので,ぜひ,ご意見ご要望を寄せていただきたい.今後の改訂に反映させることでこの診療ガイドラインをより良いものとし,ARDS 診療の質の向上に少しでも貢献できれば幸いである.

日本呼吸器学会 ARDS 診療ガイドライン2016 作成委員会

委員長 石 井 芳 樹
p.5
日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会診療ガイドライン作成委員会は,今回日本呼吸器学会(JRS)ARDS 診療ガイドライン作成委員会と合同で「ARDS 診療ガイドライン2016」を作成した. 1999 年に日本呼吸療法医学会によって本邦における最初の「ARDS に対するClinical Practice Guideline」1)が刊行された.このガイドラインは同第2 版2)が2004 年に刊行され,その後は改訂されてこなかった.一方,日本呼吸器学会は本疾患を対象とした「ARDS 診療のためのガイドライン」3)を2005 年に発刊し,ついで2010 年に第2 版4)を刊行した.人工呼吸に関する記述については,先の日本呼吸療法医学会版の内容が日本呼吸器学会版に引用されているものの,本邦には同一疾患に対する2つの診療ガイドラインが存在していた.今回も当初は日本呼吸器学会ARDS 診療ガイドライン作成委員会と日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会合同診療ガイドライン作成委員会の2 つの診療ガイドライン委員会が別々に発足し独自の診療ガイドラインを作る形で始まった.しかし作成途中の2014 年末に両診療ガイドライン作成委員長が話し合い,やや変則的ではあるが3 学会合同かつ2 委員会合同という形で,一つの診療ガイドライン作成を目標に協力することとなった.いずれの診療ガイドラインも第2 版まで刊行されていたので,実質的には第3 版となるがタイトルを「ARDS 診療ガイドライン2016」と改めた.一方,これまでのガイドラインは全体像を理解する手引き書として良くできたものであったが,一次研究の質評価や結果要約に系統的な手法を用いることのないnarrative review の形式を踏襲したものであった.しかし,米国国立アカデミー医学研究所(Institute of Medicine;IOM,2016 年にHealth and Medicine Division;HMD に名称変更)の定義5)によれば,診療ガイドラインとは「エビデンスのシステマティックレビュー(systematic review;SR)と複数の治療選択肢の利益と害の評価に基づいて患者ケアを最適化するための推奨を含む文書」とされる.そして,新しい「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」6)によると,「重要臨床的課題としては,患者への介入に関して,患者と医療者が行う意思決定の重要ポイントの中で,患者アウトカムの改善が強く期待できる重要な臨床課題を重点的に取り上げるべき」とある.このような臨床課題(Clinical Questions;CQ)の推奨を呈示する方法としては,SR と診療ガイドライン作成の国際標準様式であるGRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) system 7, 8)が世界的に有名である.今回我々はARDS 治療に関する13 個のCQ を選択し,GRADE system を用いてエビデンスのSR を行い,推奨を決定することとした.とはいえARDS 治療に際し臨床の現場においては,治療法に限らず数多くの疑問が存在し,13 のCQ ではすべてを網羅しきれない.そこで,これまでもARDS 入門の書として評価の高かった日本呼吸器学会作成のARDS 診療のためのガイドラインを骨子とした総論部分をPart 1(日本呼吸器学会ガイドライン作成委員会担当)とし,CQ に対するSR と推奨をPart 2(日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会合同ガイドライン作成委員会)とした二部構成として上梓することとした. Part 1 については呼吸器内科医,集中治療医,救急医,麻酔科医,さらには,放射線科医,病理医など幅広い専門医集団から協力を得た.またPart 2 については,SR を行うにあたって数多くの方々に御協力いただき,さらに推奨を作成するにあたっては臨床現場での判断に関わるあらゆるステーク

発刊にあたって
p.6
ホルダーが参画する必要があることから,集中治療専門医はもちろんこと,集中治療に従事する総合診療医,看護師,薬剤師,臨床工学技士,理学療法士,患者家族などさまざまな方々をパネリストとして迎えて推奨決定に参画していただいた.外部評価についてはGRADE working group メンバーや日本プライマリ・ケア連合学会などからも協力を得て,診療ガイドライン評価の国際標準ツールAGREE II 9, 10)を用いた客観的な評価をいただいた. Part 2 での推奨作成にあたっては,各々の治療法に対して重要なアウトカムについてのエビデンスの質を客観的な指標に基づいて決定し,エビデンスの質,利益と害のバランス,価値観,リソースを勘案して推奨を決定した.そのため網羅的に記述したPart 1 と若干ニュアンスの異なる記述がなされている部分もある.この点については両者のアプローチの相違として理解していただければ幸いである.本診療ガイドラインは,Part 2 の部分で提示する推奨を信頼できるものにするためにGRADE system を採用して推奨を作成したARDS 診療ガイドラインである.海外ではGRADE system を採用した診療ガイドラインが多く出されているが,本邦ではまだまだ多くない.今回我々は本邦で一歩先に進んだ質の高い診療ガイドラインを提示できたものと自負している.臨床疑問に対して推奨を提示するものであるが,実際の診療の場面ではその推奨に従うことが求められているわけではなく,個別の病状を勘案して診療行動を決定するべきである.本診療ガイドラインを通して質の高いARDS 診療に対するさらなる理解と啓発を期待したい.本書は上梓前にパブリックコメントによる評価を経ているが,発行後も内容にご意見がある場合はいつでも御連絡いただければ幸いである.

日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会ARDS 診療ガイドライン2016 作成委員会

委員長 橋 本   悟

■ 文 献1)日本呼吸療法医学会・急性呼吸不全実態調査委員会:急性呼吸窮迫症候群. ARDS に対するClinical Practice

Guideline.人工呼吸 16(2):95-115, 1999 2)日本呼吸療法医学会 多施設共同研究委員会:ARDS に対するClinical Practice Guideline 第2 版.人工呼吸

21(1):44-61, 2004 3)日本呼吸器学会ARDS ガイドライン作成委員会:ALI/ARDS 診療のためのガイドライン.秀潤社,2005 4)日本呼吸器学会ARDS ガイドライン作成委員会:ALI/ARDS 診療のためのガイドライン第2 版.学研メディカル

秀潤社,2010 年5)Graham R,Mancher M,Wolman DM,el al eds:Committee on Standards for Developing Trustworthy Clinical Practice Guidelines,Board on Health Care Services,Institute of Medicine of the National Academies.

Clinical Practice Guidelines we can trust.Washington D.C.: The National Academies Press;2011.Available from:http://www.nap.edu/catalog.php?record_id=13058(2016 年3 月閲覧) 6)森實敏夫,吉田正博,小島原典子:Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院,2014 7)GRADE working group. http://www.gradeworkinggroup.org/ 8)相原守夫:診療ガイドラインのためのGRADE システム ─第2 版─.弘前:凸版メディア株式会社,2015 9)AGREE II. http://www.agreetrust.org/(2016 年3 月閲覧) 10)日本医療機能評価機構EBM 医療情報部:AGREE II日本語訳試行版ver.01. http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/guideline/pdf/AGREE2jpn.pdf(2016 年3 月閲覧)
p.7
目 的

本診療ガイドラインは,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の診療において,患者の予後を改善させるためにこれまでに出された利用可能なエビデンスを解釈し,それに基づいて個々の患者の価値観や嗜好を踏まえた上で適切な臨床上の判断を行うために推奨を提供することを目的とするものである.

対象(本診療ガイドラインの利用者)

本診療ガイドラインの使用者として想定しているのは,成人ARDS の診療に従事する専門医,非専門医(総合診療医,家庭医,一般医,他領域専門医など),看護師,薬剤師,臨床工学技士などの医療従事者である.

利用にあたっての注意

本診療ガイドラインは臨床現場における医療従事者の意思決定を支援するために推奨を提供するものであり,提示された推奨に必ず従うよう強要するものではない.実際の判断には,本診療ガイドラインの推奨のみならず,その元となるエビデンスと推奨が決定される理由となる価値観やコストやリソースなどの他の要因も確認した上で,個々の状況に応じてベストな選択をされたい.本診療ガイドラインの推奨は,それらに従って医療判断を行えば患者の転帰が必ず改善することを保証するものではない.推奨を参考に臨床現場で医療行為に関する判断を行ったことで生じた結果に対して,本診療ガイドライン作成委員会は一切の責任を負うものではない.また本診療ガイドラインは,医療裁判の証拠として利用されることを想定していない.あくまで臨床現場での一般的な診療についての推奨を提示するものである.実際の診療上での判断は,患者の病状,リソースやマンパワーなど周囲を取り巻く環境,患者の価値観や嗜好などといった個別の状況を勘案した上で下されるべきである.したがって,医療事故が起こった際に,本診療ガイドラインに示す推奨の通りに診療が行われなかったという理由で過失があったと判断されるのは不適切である.最後に,本診療ガイドラインの推奨を実現するために必要な資源を用意することが望ましいが,個々の医療機関の状況によってそれが困難な場合もあることを明記しておく.

対象となる患者

本診療ガイドラインの扱う患者は,原則的に集中治療室または一般病床に入院している成人ARDS 患者である.

内 容

本診療ガイドラインは2 つのパートに分かれている.Part 1 ではARDS に関する基本的な情報を提供して

本診療ガイドラインの基本理念・概要
p.8
いる.さらにPart 2 では成人ARDS 患者に対する人工呼吸療法および薬物療法のエビデンスのシステマティックレビュー(Systematic Review;SR)を行って推奨を明示している.両者を参照することで実地におけるARDS 診療の助けになるものとなるようにした.

取り扱う臨床上の課題

Part 1 では,ARDS 患者に関する基礎的事実を明示する.Part 2 では,13 の臨床疑問(Clinical Question; CQ)に対して推奨を明示した.CQ の詳細はPart 2 序文を参照されたい.

診療ガイドライン利用促進の工夫

本診療ガイドラインは,Part 1 とPart 2 として書籍版,詳細版,ダイジェスト版がある.詳細版,ダイジェスト版は各学会サイトとMinds にて公開予定である.また,利用促進のためにリーフレットなども作成予定である.また診療ガイドライン利用促進のための各種講演会や講習会を開催する予定にしている.

診療ガイドライン作成グループの構成

作成者 (順不同 敬称略) Part 1 (総論)日本呼吸器学会 ARDS 診療ガイドライン作成委員会石 井 芳 樹  獨協医科大学 呼吸器・アレルギー内科(委員長)橋 本   悟  京都府立医科大学附属病院 集中治療部(副委員長)一 門 和 哉  済生会熊本病院呼吸器センター 呼吸器内科今 中 秀 光  宝塚市立病院 集中治療救急室小 谷   透  昭和大学医学部 麻酔科学講座志 馬 伸 朗  広島大学大学院 救急集中治療医学田 坂 定 智  弘前大学大学院医学研究科 呼吸器内科学講座津 島 健 司  千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学林   伸 一  国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科藤 島 清太郎  慶應義塾大学医学部 総合診療教育センター山 田 芳 嗣  東京大学大学院医学系研究科 生体管理医学講座福 岡 順 也  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学酒 井 文 和  埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科山 川 一 馬  大阪府立急性期・総合医療センター 高度救命救急センター河 合   伸  杏林大学医学部 総合医療学教室感染症科武 政 聡 浩  獨協医科大学 呼吸器・アレルギー内科
p.9
Part 2(GRADE system による推奨)日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会 ARDS 診療ガイドライン作成委員会橋 本   悟  京都府立医科大学附属病院 集中治療部(委員長)讃 井 將 満  自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部(副委員長)江 木 盛 時  神戸大学医学部附属病院 麻酔科大 下 慎一郎  広島大学大学院 救急集中治療医学塩 塚 潤 二  沖縄県立中部病院 集中治療科瀬 尾 龍太郎  神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター田 中 竜 馬  LDS Hospital 呼吸器内科・集中治療科田 中   優  奈良県立医科大学 麻酔科則 末 泰 博  東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸器内科/ 救急・集中治療科林   淑 朗  亀田総合病院 集中治療科南 郷 栄 秀  東京北医療センター 総合診療科(外部委員)

Part 2 におけるシステマティックレビュー作成委員,パネル会議メンバーなどについてはPart 2 序文を参照されたい.

外部評価委員福 岡 敏 雄  倉敷中央病院 救命救急センター(集中治療専門医)矢 吹   拓  栃木医療センター 内科(日本プライマリ・ケア連合学会推薦,総合診療医)相 原 守 夫  相原内科小児科医院(診療ガイドライン作成方法専門家)中 山 健 夫  京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康管理学講座健康情報学(診療ガイドライン作成方法専門家)

透明性の確保

本診療ガイドライン作成にあたって,2 つの作成委員会を組織した.Part 1 では委員一人一人がそれぞれの専門分野において最新の話題について解説し,ARDS の病態と治療の全体像がつかめるような記述とした.一方Part 2 では診療ガイドライン作成の趣旨を公開しSR 作成委員とパネル会議パネリストを公募した.これにより診療ガイドライン作成を,診療ガイドライン作成委員会(各学会を代表),SR 作成委員,パネル会議パネリストには一部の重複があるものの,独立してそれぞれの作業を進めることで作成過程の透明性を確保した.また,単に推奨を記述するのみならず,推奨決定の過程を診療ガイドライン本文中に開示することも,透明性を確保する上で重視したことである.さらに学会ホームページウェブサイトなどを通じてパブリックコメントを求め,さらに外部委員によるレビューを依頼した.

資金および協力組織

本診療ガイドラインは日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会の資金を得て作成した.公募したSR 作成委員,パネル会議パネリストには日当などは支払われず,必要な場合のみ交通費宿泊費を
p.10
支給した.文献検索についても,図書館司書の方々のボランティア活動によって行われた.なお完成した診療ガイドラインはPDF 版を各学会サイトおよび日本医療機能評価機構Minds 医療情報サービスガイドラインセンター1)(予定)において無償公開することとしている.冊子版も発売予定でありさらにSR の一部をpeer review 英文誌に掲載する予定である.これらすべての資金は上記3 学会にて分担した.推奨の作成にあたっては,資金提供者である上記3 学会やMinds の意向や利益はその内容に影響していない.

利益相反(COI)

本診療ガイドラインは2 つの委員会が合同して作成したため,共通の指針にてCOI 申告を行ったが,その申告先は所属学会に従い下記のような形式とした.

Part 1 についてPart 1 を担当した一般社団法人日本呼吸器学会ではCOI(利益相反)委員会を設置し,内科系学会とともに策定したCOI に関する共通指針ならびに細則に基づき,COI を適正に管理している.以下に,「ARDS 診療ガイドライン2016」作成委員(日本呼吸器学会所属)のCOI 関連事項を示す(COI の詳細については,日本呼吸器学会ホームページに指針・書式等を掲載している). 1) 研究助成金等に関する受入状況(研究費,奨学寄附金,寄付講座等) (企業名)アストラゼネカ(株),アボット・ジャパン(株)(現マイランEPD(合)),MSD(株),杏林製薬(株),第

一三共(株),大正富山医薬品(株),田辺三菱製薬(株),帝人(株) 2)講演料・原稿料等の受入状況(企業名)アステラス製薬(株),アストラゼネカ(株),グラクソスミスクライン(株),ドレーゲル・メディカルジャ

パン(株),日本ベーリンガー・インゲルハイム(株),ファイザー(株) 3)個人的収入に関する受け入れ状況については開示基準に該当するものはなかった.

Part 2 関係者のCOI についてはPart 2 序文を参照されたい.

外部評価

本診療ガイドラインはドラフトを作成した時点で公開に先立ち,集中治療専門医,非専門医の代表として総合診療医,診療ガイドライン作成方法専門家による外部評価を受けた.外部評価には診療ガイドライン評価の国際標準ツールAGREE II 2, 3)を用いた.AGREE IIは6 領域23 項目からなる個別項目と,全体評価からなっている.各項目1 ~7 点で採点し,領域ごとに領域別スコアを算出する.領域別スコアは0 ~100% の値を取り,該当領域で要求されている内容の充足率を意味する.Part 2 序文にその評価結果を示す.また,各学会のサイトを通じてパブリックコメントを募集した.外部評価の結果は可能な限り本診療ガイドラインに反映させた.反映できなかった部分に関しては,次回の改訂時の検討事項とした.また公開後も,学会サイトなどを通じて,広くフィードバックを受け,次回改訂時に活かす予定である.
p.11
改訂予定

本診療ガイドラインは,新しい臨床試験などの結果を受けて,5 年後の2021 年に改訂予定である.ただし,重要な知見が得られた場合には,必要に応じて改訂時期の前倒しや部分改訂を検討する.

文 献

1)医療情報サービスMinds,日本医療機能評価機構.http://minds.jcqhc.or.jp/(2016 年3 月閲覧) 2)AGREE II. http://www.agreetrust.org/(2016 年3 月閲覧) 3)日本医療機能評価機構EBM 医療情報部:AGREE II日本語訳試行版ver.01. http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/guideline/pdf/AGREE2jpn.pdf(2016 年3 月閲覧)
p.12
ARDS 診療ガイドライン2016

□ARDS 診療ガイドライン2016 の発刊にあたって□発刊にあたって□本診療ガイドラインの基本理念・概要

CONTENTS Part1

第1 章 概念と定義... ....................................................................................... 26

1)発症時期の明確化................................................................................................ 27 2)画像所見の明確化................................................................................................ 27 3)肺水腫の成因の明確化.......................................................................................... 28 4)酸素化能の評価条件の改訂.................................................................................... 28 5)重症度分類の改訂................................................................................................ 28

第2 章 疫学... ...................................................................................................... 30

1 海外での検討...................................................................................................... 30 2 本邦での検討...................................................................................................... 31 3 総括.................................................................................................................. 31

第3 章 基礎疾患................................................................................................ 33

1 基礎疾患............................................................................................................ 33 2 敗血症............................................................................................................... 34

第4 章 発症機序と病態生理... .................................................................. 36

1 ARDS の発症機序... .......................................................................................... 36 2 ARDS の病態生理... .......................................................................................... 37

a. シャント形成による低酸素血症... ........................................................................... 37 b. 換気力学の変化... ............................................................................................. 37 c. 拡散障害......................................................................................................... 38 d. 換気血流比不均等分布.......................................................................................... 38 e. 肺血管抵抗の上昇... .......................................................................................... 38
p.13
f. 肺サーファクタント機能不全................................................................................. 38 3 病態の経時的変化................................................................................................ 38

第5 章 病理... ...................................................................................................... 40

1 はじめに............................................................................................................ 40 2 びまん性肺胞傷害(DAD)の病理組織像... ............................................................ 41

a. 滲出期(exudative stage,急性期)... .................................................................. 41 b. 増殖(器質化)期(proliferative stage, 亜急性期)... ................................................ 42 c. 線維化期(fibrotic stage,慢性期)........................................................................ 42 d. 肺血管傷害と血管リモデリング... ........................................................................... 43

第6 章 診断と検査... ....................................................................................... 45

1 臨床所見............................................................................................................ 45 2 生理検査所見...................................................................................................... 46 3 画像診断............................................................................................................ 47

a. 胸部X 線写真................................................................................................... 47 b. 胸部CT 所見... ................................................................................................ 48 4 循環動態の評価................................................................................................... 51 5 肺血管外水分量................................................................................................... 51 6 肺エコー............................................................................................................ 51 7 血液検査............................................................................................................ 51 8 生検と気管支肺胞洗浄.......................................................................................... 52 9 その他の検査...................................................................................................... 53 10 バイオマーカー... ............................................................................................. 53

第7 章 鑑別診断................................................................................................ 61

1 心原性肺水腫(心不全)... .................................................................................... 61 2 慢性経過の間質性肺炎/ 肺線維症の急性増悪............................................................ 62 3 急性間質性肺炎................................................................................................... 62 4 特発性器質化肺炎................................................................................................ 62 5 肺炎.................................................................................................................. 63 6 過敏性肺炎......................................................................................................... 63 7 急性好酸球性肺炎................................................................................................ 63 8 粟粒結核............................................................................................................ 64 9 びまん性肺胞出血................................................................................................ 64 10 癌性リンパ管症... ............................................................................................. 64 11 薬剤性肺障害... ................................................................................................ 64
p.14
12 その他の非心原性肺水腫... ................................................................................. 65

a. 過剰輸液......................................................................................................... 65 b. 再膨張性肺水腫(re-expansion pulmonary edema)... ............................................. 65 c. 褐色細胞種... ................................................................................................... 65 d. 神経原性肺水腫(neurogenic pulmonary edema)... ................................................ 65 e. 高地肺水腫(high altitude pulmonary edema;HAPE)............................................. 65 f.  陰圧性肺水腫 (negative pressure pulmonary edema;NPPE)... .............................. 66

第8 章 随伴する疾患・病態... .................................................................. 69

1 呼吸循環器系...................................................................................................... 69

a. 静脈還流の減少と循環不全... ................................................................................. 69 b. 過剰輸液による肺機能の悪化,ARDS の発生... ............................................................ 69 c. 人工呼吸器関連肺炎............................................................................................. 70 d. エアリーク... ................................................................................................... 71 e. 人工呼吸器関連肺損傷.......................................................................................... 71 f. 肺の線維化... ................................................................................................... 71 g. 肺高血圧症... ................................................................................................... 72 h. 高濃度酸素曝露による肺損傷... .............................................................................. 72 2 その他の全身臓器................................................................................................ 72

a. 播種性血管内凝固症候群... .................................................................................... 72 b. 多臓器不全,敗血症性ショック... ........................................................................... 73 c. ICU-AW(ICU-acquired weakness)... ............................................................... 73

第9 章 治療:呼吸管理療法... .................................................................. 77

1 陽圧人工呼吸における換気モード,様式.................................................................. 77

a. 強制換気様式... ................................................................................................ 78 b. 換気モード... ................................................................................................... 78 2 ARDS に対する換気設定の概念... ........................................................................ 79

a. FIO2 と PEEP の設定... .................................................................................... 79 b. 低容量換気... ................................................................................................... 79 c. Permissive hypercapnia................................................................................. 80 d. リクルートメント手技.......................................................................................... 80 3 換気様式の選択と適正換気条件.............................................................................. 81

a. 自発呼吸がない場合............................................................................................. 81 b. 自発呼吸がある場合............................................................................................. 81 c. その他の換気条件... .......................................................................................... 83 4 上記の方法で酸素化が改善しない場合の対応策......................................................... 83

a. 筋弛緩薬......................................................................................................... 84
p.15
b. 食道内圧......................................................................................................... 84 c. HFOV(high frequency oscillatory ventilation)... ............................................. 84 d. APRV(airway pressure release ventilation)... ................................................ 85 e. IRV(inverse ratio ventilation)... ..................................................................... 85 5 離脱時期(過程)の呼吸管理と抜管の基準............................................................... 85

a. 離脱開始条件... ................................................................................................ 85 b. FIO2 とPEEP の軽減方法... ................................................................................. 85 c. 換気補助の軽減方法および抜管の指標........................................................................ 85 d. 特殊な離脱法;Neurally-Adjusted Ventilatory Assist............................................. 87 e. 再挿管............................................................................................................ 87 6 気道確保と気道管理............................................................................................. 88

a. 気道確保の方法... ............................................................................................. 88 b. 気道管理......................................................................................................... 89 7 人工呼吸器の始業点検と呼吸回路........................................................................... 90

a. 始業点検と動作確認............................................................................................. 90 b. 人工呼吸回路の交換............................................................................................. 90 c. 加温加湿器... ................................................................................................... 91 8 人工呼吸中の鎮静・鎮痛....................................................................................... 91 9 呼吸理学療法...................................................................................................... 93

a. 体位変換......................................................................................................... 93 b. 排痰手技を併用した体位ドレナージ........................................................................... 94 c. 吸入療法(エアロゾル療法).................................................................................... 94 d. 早期モビリゼーション.......................................................................................... 94 10 人工呼吸療法中の安全管理とモニター... ............................................................... 95

第10 章 治療:薬物療法,その他............................................................102

1 薬物療法............................................................................................................102

a. グルココルチコイド療法... ....................................................................................102 b. 好中球エラスターゼ阻害薬... .................................................................................104 c. 抗凝固療法... ...................................................................................................105 d. その他の薬物療法... ..........................................................................................106 2 抗菌療法............................................................................................................112

a. 敗血症性ARDS に対する抗菌療法...........................................................................112 b. 肺炎に伴うARDS に対する抗菌療法... .....................................................................112 c. 誤嚥によるARDS に対する抗菌療法... .....................................................................113 d. 人工呼吸器関連肺炎(VAP)... ..............................................................................113 e. 感染症以外の原因で発症したARDS における抗菌薬使用の考え方... ....................................114 f. 抗菌薬使用に関する考え方(pharmacokinetics/pharmacodynamics;PK/PD を考慮した抗菌薬の投与法).......................................................................................114
p.16
3 栄養治療,水分管理.............................................................................................118

a. 栄養治療.........................................................................................................118 b. 水分管理.........................................................................................................120 4 その他の治療......................................................................................................124

a. ECMO... ......................................................................................................124 b. 血液濾過・浄化療法.............................................................................................125

第11 章 予後... ......................................................................................................127

1 死亡率と死亡原因................................................................................................127 2 予後予測因子......................................................................................................128 3 後遺症...............................................................................................................129

第12 章 医療倫理................................................................................................132

1 重症患者からの同意取得.......................................................................................132 2 lCU における終末期医療... .................................................................................133

a. ARDS における終末期医療の特殊性... .....................................................................133 b. 患者の尊厳を損なわないための方策...........................................................................133 c. 治療の抑制と撤退... ..........................................................................................134 d. 家族へのケア... ................................................................................................134
p.17
□本診療ガイドラインの基本理念・概要□診療ガイドライン作成方法の概略□CQ ─推奨の読み方・使い方□ARDS 診療ガイドライン CQ 一覧ダイジェスト

CONTENTS Part2

CQ1 成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか......167

1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................167 2 解 説... ............................................................................................................167

エビデンスの要約...................................................................................................167 3 パネル会議... ......................................................................................................168

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................168 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................168 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................168 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................168 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................168 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................169 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................169 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................169 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................169 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................169 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................170 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................171 11 フォレストプロット... ..........................................................................................174

CQ2 成人ARDS 患者の初期の呼吸管理として

非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うべきか... ............177 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................177 2 解 説... ............................................................................................................177

エビデンスの要約...................................................................................................177

ARDS 診療ガイドライン2016
p.18
3 パネル会議... ......................................................................................................178

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................178 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................178 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................178 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................178 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................178 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................179 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................179 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................179 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................179 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................179 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................180 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................181 11 フォレストプロット... ..........................................................................................183

CQ3 成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,

一回換気量を低く設定するべきか... .................................186 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................186 2 解 説... ............................................................................................................186

エビデンスの要約...................................................................................................186 3 パネル会議... ......................................................................................................187

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................187 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................187 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................187 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................187 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................187 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................187 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................188 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................188 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................188 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................188 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................189 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................190 11 フォレストプロット... ..........................................................................................192

CQ4 成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,

プラトー圧をどう設定すればよいか.................................194 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................194
p.19
2 解 説... ............................................................................................................194

エビデンスの要約...................................................................................................194 3 パネル会議... ......................................................................................................194

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................194 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................195 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................195 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................195 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................195 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................195 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................195 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................195 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................195 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................196 9 エビデンス・プロファイル... ................................................................................. 196 10 Evidence-to-Decision... ................................................................................. 197 11 フォレストプロット... .......................................................................................... 199

CQ5 成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,

PEEP をどう設定すればよいか... ....................................201 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................201 2 解 説... ............................................................................................................201

エビデンスの要約...................................................................................................201 3 パネル会議... ......................................................................................................202

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................202 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................202 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................202 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................202 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................202 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................202 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................202 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................203 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................203 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................203 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................204 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................205 11 フォレストプロット... ..........................................................................................207
p.20
CQ6 成人ARDS 患者において,プロトコール化

された人工呼吸器離脱を行うべきか.................................210 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................210 2 解 説... ............................................................................................................210

エビデンスの要約...................................................................................................210 3 パネル会議... ......................................................................................................211

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................211 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................211 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................211 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................211 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................211 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................211 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................212 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................212 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................212 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................212 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................213 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................214 11 フォレストプロット... ..........................................................................................216

CQ7 成人ARDS 患者において,腹臥位管理を行うべきか... ......220

1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................220 2 解 説... ............................................................................................................220

エビデンスの要約...................................................................................................220 3 パネル会議... ......................................................................................................220

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................220 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................221 3-3. 患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................221 3-4. 正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?.........................................................221 3-5. 推奨のグレーディング.......................................................................................221 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................221 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................222 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................222 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................222 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................222 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................223 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................224
p.21
11 フォレストプロット... ..........................................................................................226

CQ8 成人ARDS 患者において,高頻度振動換気

(HFO)を行うべきか...............................................................228 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................228 2 解 説... ............................................................................................................228

エビデンスの要約...................................................................................................228 3 パネル会議... ......................................................................................................228

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................228 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................229 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................229 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................229 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................229 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................229 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................229 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................229 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................230 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................230 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................230 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................231 11 フォレストプロット... ..........................................................................................233

CQ9 成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,

筋弛緩薬を使用するべきか... ................................................235 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................235 2 解 説... ............................................................................................................236

エビデンスの要約...................................................................................................236 3 パネル会議... ......................................................................................................236

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................236 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................236 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................236 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................236 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................237 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................237 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................237 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................237 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................237 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................237
p.22
9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................238 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................239 11 フォレストプロット... ..........................................................................................241

CQ10 成人ARDS 患者において,日々の水分バランス

をどのように維持すればよいか... ....................................243 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................243 2 解 説... ............................................................................................................243

エビデンスの要約...................................................................................................243 3 パネル会議... ......................................................................................................243

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................243 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................244 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................244 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................244 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................244 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................244 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................245 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................245 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................245 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................245 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................246 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................247 11 フォレストプロット... ..........................................................................................249

CQ11 成人ARDS 患者において,好中球エラスターゼ

阻害薬を使用するべきか.........................................................251 1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................251 2 解 説... ............................................................................................................251

エビデンスの要約...................................................................................................251 3 パネル会議... ......................................................................................................251

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................251 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................252 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................252 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................252 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................252 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................252 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................252 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................252
p.23
7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................252 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................253 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................253 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................254 11 フォレストプロット... ..........................................................................................255

CQ12 成人ARDS 患者において,ステロイドを投与すべきか... ......257

1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................257 2 解 説... ............................................................................................................257

エビデンスの要約...................................................................................................257 3 パネル会議... ......................................................................................................257

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................257 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................258 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................258 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................258 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................258 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................259 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................259 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................259 7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................259 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................259 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................260 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................261 11 フォレストプロット... ..........................................................................................263

CQ13 成人ARDS 患者において下記の薬剤を使用するべきか... ......265

1 背景,この問題の優先度... ....................................................................................265 2 解 説... ............................................................................................................266

エビデンスの要約...................................................................................................266 3 パネル会議... ......................................................................................................266

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?... ................................................266 3-2.利益と害のバランスはどうか?... ........................................................................268 3-3.患者の価値観や好みはどうか?... ........................................................................268 3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?... ...................................................268 3-5.推奨のグレーディング... .................................................................................268 4 関連する他の診療ガイドラインの記載... ..................................................................269 5 治療のモニタリングと評価... .................................................................................269 6 今後の研究の可能性... ..........................................................................................269
p.24
7 文献検索式と文献選択... .......................................................................................269 8 本CQ で対象としたRCT 論文... ...........................................................................269 9 エビデンス・プロファイル... .................................................................................270 10 Evidence-to-Decision... .................................................................................276 11 フォレストプロット... ..........................................................................................278

パブリックコメント... .............................................................................................286
p.25
2016 2016 診療ガイドライン ARDS

CONTENTS

Part1

2016 2016 診療ガイドライン ARDS

CONTENTS

Part1
p.26
概念と定義

ARDS の本態は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫であり,広範な肺損傷がその特徴とされる.その原因として肺胞領域に生じた好中球主体の非特異的な過剰炎症反応が指摘されている.本症の病態に関し,これまで40 年間余りにわたり数多くの研究がなされてきたが,いまだ不明な点が多い.また,ARDS は,単一の臓器障害として概念化されてきたが,現在では多臓器機能不全症候群(multiple organ dysfunction syndrome:MODS)

の一部分症と位置づけられることもある.本症候群の概念の生い立ちは,心肺疾患の既往のない健常者が,ショックや外傷等に続発する急性の呼吸不全を呈することを1967 年 Ashbaugh らが報告し,その後,共著者のPetty らが成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome;ARDS)〔注1 =次頁〕という疾患概念を提唱したことに始

●ARDS は先行する基礎疾患・外傷をもち,急性に発症した低酸素血症で,胸部X

線写真上では両側性の肺浸潤影を認め,かつその原因が心不全,腎不全,血管内水分過剰のみでは説明できない病態の総称である. ●ARDS の本態は肺微小血管の透過性亢進型肺水腫であり,その原因として肺胞領

域の好中球主体の非特異的な過剰炎症反応および,これらによってもたらされる,広範な肺損傷が指摘されている. ●長らくAECC(1994 年)の定義が用いられてきたが,2012 年に診断の特異性向上

を目指した新たな定義(通称Berlin 定義)が公表され,グローバルに使用されている. ●Berlin 定義では,PEEP 負荷下での酸素化の程度により3段階の重症度に分類さ

れる.従来軽症例を含む用語として用いられてきたALI という分類はなくなり, AECC のARDS 基準を満たさないALI 症例は,Berlin 定義でARDS 軽症例に組み入れられた. ●Berlin 定義は,AECC 定義に比較し,より簡潔で明快になったものの基本的には,

minor change しか行われていないためARDS の病態をスクリーニングする必要最小限要件と捉えたほうがよい.

1
p.27
心原性の肺水腫が否定できるもので,PaO2/FIO2(動脈血酸素分圧/ 吸気酸素分画;以下適宜P/F 比との表現も使用)≦300mmHg であればALI,さらにPaO2/FIO2 ≦200mmHg であればARDS と定義された.先行する基礎疾患をもつことは,本文中に記載されたが,定義には明記されなかった.また小児にも発症し得ることから,一時用いられた成人(adult)呼吸窮迫症候群という呼称を排し,急性(acute)呼吸窮迫症候群に統一することが決められた. AECC 定義では,基礎傷病や発症時期が明記されず,PaO2/FIO2 のみを指標に採用したため,それ以前の定義に比べて,感度は高く,特異度は低くなった.すなわち,本定義により肺損傷の初期病態を検出できた一方で,本来のARDS とは異なる病態まで含まれる可能性があった.また,肺のコンプライアンス変化や他の臓器障害の有無が考慮されていないなどの点も問題とされた.実際,AECC 基準策定後,多くのRCT が実施され,特に呼吸管理や補液管理では有用な治療方針が明らかとなった一方で,本基準に基づいた薬物療法のRCT はいずれも失敗に終わった.前述のさまざまな意見を受け,2011 年10 月にBerlinで開催された欧州集中治療医学会(European Society of Intensive Care Medicine;ESICM)において,診断の特異性向上を目指してARDS の新たな定義が提唱され,検証過程と修正を経て2012 年5 月に論文誌上に公表された(通称:Berlin 定義,表1-1)

5).

Berlin 定義の改訂のポイントは, 1)発症時期の明確化AECC では,発症時期は,急性発症とだけ記載されて具体的な日数はなかったが,大部分の症例が基礎となる危険因子が認識された72 時間以内に発症し,ほとんどすべての症例は1 週間以内に発症するため,発症時期を1 週間以内と明確に定義した. 2)画像所見の明確化AECC では胸部X 線写真正面像で両側肺浸潤影があるものと定義されていたが,新しい定義では,

まる1, 2).当初の定義は,臨床症状や低酸素血症とともに,病理学的に硝子膜形成を伴うdiffuse alveolar damage (DAD)を特徴とする,厳密なものであった. Ashbaugh らの報告以来,ARDS は先行する基礎疾患,きわめて高度の低酸素血症,胸部 X 線写真上の両側びまん性肺浸潤影,低い肺コンプライアンス,そして心不全を伴わないことの5 項目を満たす症候群と認識されていた.しかし,施設間でARDSの基礎疾患の内訳が異なり,測定項目の基準値も同一でないことが,臨床研究の妨げとなっていた.また,病態解析が進むにつれてさまざまな抗炎症薬が開発され,臨床試験への気運が高まったが,前述の5 項目では重症病態しか診断し得ず,治療法の有効性を示す無作為化比較対照試験(randomized controlled trial;RCT)のエントリー基準には適さないことから,単純明快な診断基準への要望が高まった.1988 年にMurray らは肺損傷スコア(lung injury score;LIS)を用いたARDS の拡大定義と,併せて損傷が軽度の病態に対する“ALI (acute lung injury)”という用語の使用を初めて提唱した3).もともとALI は,ARDS の各種動物実験モデルで観察される肺病変を示す用語であったが,この提唱によって臨床病名としても認知されたことになる.このような状況の中,1992 年に米国胸部疾患学会(ATS)と欧州集中治療医学会(ESICM)の合同検討会(American-European Consensus Conference; AECC)が開催された.この席で ARDS の定義,発症機序,予後,臨床研究の進め方が討議され,診断基準および統一表記が1994 年にまとめられた4).本診断基準では,急性に発症した低酸素血症で,胸部X 線写真上では両側性の肺浸潤影を認め,かつ〔注1〕 文献 1) では acute respiratory distress in adult との表記があるだけで,文中にもARDS という略語や adult respiratory distress という表現は使われていない.また彼らの報告した12 例のうち1 例は肺挫傷のl1 歳男児であり,成人例ばかりではない.それが文献 2)でPetty らがadult respiratory distress syndrome という語を採用し,それ以来この表現が主に使用された .しかし,AECC 定義の 後, adult から acute に統一され,いわばオリジナルの呼称に戻ったことになる.後年Petty 自身が成人に限定したことは過ちであったと述べている.
p.28
胸部CT も含めて胸水や無気肺,結節では説明のつかないものと追記した. 3)肺水腫の成因の明確化肺動脈カテーテルは使用されなくなっているし, ARDS であっても心不全や体液過剰の要素が混在するため肺動脈楔入圧が上昇している場合もあるので圧測定の記載は削除した.ただし,リスク因子がない場合は静水圧性肺水腫を除外するために心エコーなどの客観的評価を行うことが勧められている. 4) 酸素化能の評価条件の改訂AECC では,酸素化能の評価の際はPEEP レベルを問わないとなっていた.しかし,PaO2/FIO2 は, PEEP やFIO2 の影響を受けるため,今回PaO2/ FIO2 の評価は,PEEP またはCPAP ≧5cmH20 のもとで判定することになった. 5)重症度分類の改訂AECC におけるALI のカテゴリーを無くし,従来のARDS 基準を満たさないALI をARDS の軽症に分類した.これによって,これまで同じ病態でありながら重症度によって呼称が違うというわかりに

くさが解消された.さらに,従来のARDS を100mmHg< PaO2/FIO2 ≦200mmHg の中等症とPaO2/FIO2 ≦100mmHg の重症に2 分した.結果としてARDS は,軽症,中等症,重症の3つにPaO2/ FIO2 100mmHg ずつで分割された.蓄積されたデータベース症例を用いてその妥当性を検証したところ,死亡率は,各カテゴリーがそれぞれ27, 32, 45%と段階的に増加がみられ,重症度が予後に相関することが確認された.当初,重症度分類に胸部X 線写真上の陰影の拡がり,PEEP ≧10cmH2O,静肺コンプライアンス(CRS) ≦40mL/cmH2O,修正分時換気量(VECORR) ≧10L/min といった補助的なパラメーターを加えることが提案されたが,検証の結果,PaO2/FIO2 だけを用いて定義する場合と死亡率に差が出なかったため除外された.AECC 定義と比較しBerlin 定義のほうが有意に死亡率の予測信頼性が高かったが,その差はわずかであった5). 2013 年以降,新定義の有用性を検証した報告がいくつか出されており,死亡率やDAD 合併率から重症度分類の妥当性が示されているものの,AECC定義を超えるものではない6, 7).

表1-1●ARDS の診断基準と重症度分類

重症度分類Mild軽症Moderate

中等症Severe

重症

PaO2/FIO2 (酸素化能, mmHg) 200< PaO2/FIO2 ≦300 (PEEP, CPAP ≧5cmH2O) 100< PaO2/FIO2 ≦200 (PEEP ≧5cmH2O) PaO2/FIO2<100 (PEEP ≧5cmH2O)

発症時期侵襲や 呼吸器症状(急性/ 増悪)から1 週間以内胸部画像胸水,肺虚脱(肺葉/ 肺全体),結節では全てを説明できない両側性陰影肺水腫の原因(心不全,溢水の除外)心不全,輸液過剰では全て説明できない呼吸不全:危険因子がない場合,静水圧性肺水腫除外のため心エコーなどによる客観的評価が必要

■ 文 献1) Petty TL, Ashbaugh DG:The adult respiratory distress syndrome. Clinical features, factors influencing

prognosis and principles of management. Chest 60(3):233-239, 1971 2) Ashbaugh DG, Bigelow DB, Petty TL, et al:Acute respiratory distress in adults. Lancet 2(7511):

319-323, 1967 3) Murray JF, Matthay MA, Luce JM, et al:An expanded definition of the adult respiratory distress
p.29
syndrome. Am Rev Respir Dis. 138(3):720-723, 1988 4) Bernard GR, Artigas A, Brigham KL, et al:The American-European Consensus Conference on ARDS.

Definitions, mechanisms, relevant outcomes, and clinical trial coordination. Am J Respir Crit Care Med 149(3 Pt 1):818-824, 1994 5)Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al, ARDS Definition Task Force:Acute respiratory

distress syndrome:the Berlin Definition. JAMA 307(23):2526-2533, 2012 6)Thille AW, Esteban A, Fernandez-Segoviano P, et al:Comparison of the Berlin definition for acute

respiratory distress syndrome with autopsy. Am J Respir Crit Care Med 187(7):761-767, 2013 7)Caser EB, Zandonade E, Pereira E, et al:Impact of distinct definitions of acute lung injury on its

incidence and outcomes in Brazilian ICUs:prospective evaluation of 7,133 patients. Crit Care Med 42(3):574-582, 2014
p.30
疫 学

ARDS の発症率は施設の形態や規模,地域によって大きく異なる.AECC 定義に基づく研究では,おおよそ5 ~80 人/10 万人/ 年と報告されており,決してまれな疾患ではないと考えられる.

1 海外での検討

AECC 定義に基づく1) とALI(PaO2/FIO2 ≦ 300)/ARDS(PaO2/FIO2 ≦200)の発生率は, ALI 10. 6 ~78. 9/10 万人/ 年2 ~4),ARDS 4. 9 ~

58 7/10 万人/ 年2, 5, 6)と報告されており,地域によ

り大きな差がみられる.ICU(intensive care unit)では,ALI とARDS の発生頻度は10. 1 ~64/10 万人/ 年,4. 5 ~75/10 万人/ 年とされ7 ~9),入院患者のおよそ7 ~33% を占め7, 10, 11),人工呼吸器患者の16 ~20% がARDS の基準を満たすとされる2, 11 ~15). 2016 年にBerlin 定義を満たすARDS 症例のICUにおける多施設前向きコホート研究が報告された16). 2014 年の冬季4 週間に実施し,5 大陸50 ヵ国の459 ICU 施設から症例が集積された.疾患基準を満

たすARDS 3, 022 症例のうち,2, 377 症例が初めの48 時間でARDS を発症し,軽症ARDS 30. 0%,中等症46. 6%,重症23. 4% だった.ARDS 発症頻度は, 4 週間の期間にICU 1 病床当たり0. 42 症例で, ICU 入院患者の10. 4%,人工換気を必要とする患者の23. 4%に当たる頻度で,前述のAECC 定義に基づく疫学調査に準ずる結果であった.米国ワシントン州のKing 地区で,1999 年4 月から2000 年7 月までのALI/ARDS の発症率,死亡率,原因などに関して行った前向きコホート研究2)では,粗発生率はALI 78. 9/10 万人/ 年とARDS 58. 7/10 万人年で,年齢調整発症率はALI 86. 2/10万人/ 年とARDS 64. 0/10 万人/ 年であった.1 年間の発症数はALI 19. 06 万症例,ARDS 14. 15 万症例と推定された.ALI の発症率は年齢とともに上昇し,15 ~19 歳で16/10 万人/ 年であるのに対し, 75 ~84 歳では306/10 万人/ 年に増加していた.この成績には一般病院での成績も含まれており, ALI/ARDS の日常診療の状態を比較的よく反映し

●ARDS の発症率は,AECC による診断基準(1994 年)による研究でも,おおよ

そ5 ~80 人/10 万人/ 年であり,報告により大きな差がみられる. ●2012 年のARDS 新診断基準(Berlin 定義)に基づく大規模疫学調査はまだ少なく,

今後の報告が待たれる. 2
p.31
ていると思われる. ARDS の発生頻度に関しては減少している可能性がある5, 17).単施設のprospective cohort studyでは,2001 年の82. 4 症例/10 万人/ 年から,2008年には38. 9 症例/10 万人/ 年に減少したと報告されている5).その理由として,院内発症ARDS の減少が挙げられている.院内でのARDS 発症が減少し,院内およびICU 滞在期間も短縮したと報告されている5).これに対し,市中でのARDS 発症は横ばいで,ARDS で入院する症例の発生頻度は変化していない5).ただし,ARDS の発生はインフルエンザpandemic により一時的に増加する可能性がある.2009 年のpandemic influenza により多数のARDS が発症した18).2009 年のインフルエンザは6, 100 万人発症し,27, 400 人が入院,12, 500 人の死亡が報告されている19).入院患者の23 ~34%がICU への入院で,人工呼吸器管理を要する率は65 ~93%,ARDS 発症は49 ~64%,死亡率は7 ~ 41% とされる18, 20 ~23).

2 本邦での検討

本邦では,日本呼吸療法医学会の急性呼吸不全実態調査委員会が全国31 ヵ所のICU を対象に調査を行い,1997 年1 年間のARDS 発症頻度は,ICU 入室患者例のわずか1. 8% であったと報告されており24),海外での2. 2 ~7. 7% に比べて少ない13, 17).ICU に収容されるARDS 患者は人口10 万人当たり年1. 7人と計算される.この調査は,ICU への入退出患

者を対象に推計されているため,一般病棟でのARDS 患者が含まれていないことを考慮すると,その頻度はこの結果より高率である可能性が高い.織田らは,2004 年千葉県における三次救急医療施設および大学附属病院を中心とする12 施設のICUを対象にALI/ARDS の疫学調査を行い,200 以下のARDS 症例は79 例のうち60 例 (75. 9%)で,人口10 万人当たり年間6. 1 人と報告している25).遠藤らは,2005 年東北6 県のICU を有する35施設におけるICU 入室時に全身性炎症性症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)およびPaO2/FIO2 300 以下を満たす158 例を検討し,非ALI,ALI およびARDS の頻度は各々37 例(23. 4%),42 例(26. 6%),および79 例(50. 0%)と報告した26).

3 総 括

Berlin 基準に基づくICU におけるARDS 患者の国際的な疫学調査が,ヨーロッパ集中治療医学会(ESICM)から報告された16).今後は,一般人口当たりの発生率を含めた疫学調査が期待される.また,本邦においても,日本呼吸器学会において,その実態調査が行われている.しかし,呼吸器内科医や救急専門医などが別々に診療にあたることが多い本邦では,その実態調査自体が難しいと思われる.

■ 文 献1)Bernard GR, Artigas A, Brigham KL, et al:The American-European consensus conference on ARDS.

Definitions, mechanisms, relevant outcomes, and clinical trial coordination. Am J Respir Crit Care Med 149:818-824, 1994 2)Rubenfeld GD, Caldwell E, Peabody E, et al:Incidence and outcomes of acute lung injury. N Engl J

Med 353:1685-1693, 2005 3)Bersten AD, Edibam C, Hunt T, et al:Incidence and mortality of acute lung injury and the acute

respiratory distress syndrome in three Australian States. Am J Respir Crit Care Med 165:443-448, 2002 4)Linko R, Okkonen M, Pettila V, et al:Acute respiratory failure in intensive care units. FINNALI:a

prospective cohort study. Intensive Care Med 35:1352-1361, 2009
p.32
5)Li G, Malinchoc M, Cartin-Ceba R, et al:Eight-year trend of acute respiratory distress syndrome:A

population-based study in Olmsted County, Minnesota. Am J Respir Crit Care Med 183:59-66, 2011 6)Sigurdsson MI, Sigvaldason K, Gunnarsson TS, et al:Acute respiratory distress syndrome:Nationwide

changes in incidence, treatment and mortality over 23 years. Acta Anaesthesiol Scand 57:37-45, 2013 7)Wind J, Versteegt J, Twisk J, et al:Epidemiology of acute lung injury and acute respiratory distress

syndrome in the Netherlands:A survey. Respir Med 101:2091-2098, 2007 8)Caser EB, Zandonade E, Pereira E, et al:Impact of distinct definitions of acute lung injury on its

incidence and outcomes in Brazilian ICUs:Prospective evaluation of 7,133 patients*. Crit Care Med 42:574-582, 2014 9)Goss CH, Brower RG, Hudson LD, et al:Incidence of acute lung injury in the United States. Crit Care

Med 31:1607-1611, 2003 10)Acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome in Ireland:A prospective audit of

epidemiology and management. Crit Care 12:R30, 2008 11)Brun-Buisson C, Minelli C, Bertolini G, et al:Epidemiology and outcome of acute lung injury in

European intensive care units. Results from the alive study. Intensive Care Med 30:51-61, 2004 12)Frutos-Vivar F, Nin N, Esteban A:Epidemiology of acute lung injury and acute respiratory distress

syndrome. Curr Opin Crit Care 10:1-6, 2004 13)Estenssoro E, Dubin A, Laffaire E, et al:Incidence, clinical course, and outcome in 217 patients with

acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 30:2450-2456, 2002 14)Esteban A, Anzueto A, Frutos F, et al:Characteristics and outcomes in adult patients receiving

mechanical ventilation:A 28-day international study. JAMA 287:345-355, 2002 15)Zaccardelli DS, Pattishall EN:Clinical diagnostic criteria of the adult respiratory distress syndrome in

the intensive care unit. Crit Care Med 24:247-251, 1996 16)Bellani G, Laffey JG, Pham T, et al:Epidemiology, Patterns of Care, and Mortality for Patients With

Acute Respiratory Distress Syndrome in Intensive Care Units in 50 Countries. JAMA 315:788-800, 2016 17)Villar J, Blanco J, Anon JM, et al:The ALIEN study:Incidence and outcome of acute respiratory

distress syndrome in the era of lung protective ventilation. Intensive Care Med 37:1932-1941, 2011 18)Bramley AM, Dasgupta S, Skarbinski J, et al:Intensive care unit patients with 2009 pandemic

influenza A (H1N1pdm09) virus infection -United States, 2009. Influenza and other respiratory viruses 6:e134-142, 2012 19)Shrestha SS, Swerdlow DL, Borse RH, et al:Estimating the burden of 2009 pandemic influenza a (H1N1)

in the United States (April 2009-April 2010). Clin Infect Dis 52 Suppl 1:S75-82, 2011 20)Miller RR, 3rd, Markewitz BA, Rolfs RT, et al:Clinical findings and demographic factors associated

with ICU admission in Utah due to novel 2009 influenza A(H1H1) infection. Chest 137:752-758, 2010 21)Webb SA, Pettila V, Seppelt I, et al:Critical care services and 2009 H1N1 influenza in Australia and

New Zealand. N Engl J Med 361:1925-1934, 2009 22)Dominguez-Cherit G, Lapinsky SE, Macias AE, et al:Critically ill patients with 2009 influenza A(H1N1)

in Mexico. JAMA 302:1880-1887, 2009 23)Kumar A, Zarychanski R, Pinto R, et al:Critically ill patients with 2009 influenza A(H1N1) infection in

Canada. JAMA 302:1872-1879, 2009 24)多治見公高,武澤 純,氏家良人,他:日本呼吸療法医学会・急性呼吸不全実態調査委員会報告書.人工

呼吸16:33-42, 1999 25)織田成人,平澤博之,北村伸哉,他:千葉県における急性肺障害(ALI)/ 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)

に関する疫学調査─人口当たりの罹患率および転帰に関する多施設前向き研究結果─.日救急医会誌18: 219-228, 2007 26)遠藤重厚,宮手美治,廣田和美,他:ICU 入室患者における急性呼吸不全実態調査.日臨救急医会誌

10:415-421, 2007
p.33
基礎疾患

1 基礎疾患

ARDS は種々の病態を基礎として発症する症候群である.発症原因となる病態(侵襲)は,肺の直接損傷と間接損傷の2つに大別される(表3-1)

1,2).

ARDS の原因となる基礎疾患を直接,間接の2つに分類して考えることは,細胞レベルでの発症機序を理解するうえで重要であり,病態生理や病理像,治療に対する反応にも違いがあることが報告されている3, 4).しかし,臨床の現場では間接損傷と直接損傷をクリアカットに分けられない場合も多い.また,直接損傷と間接損傷で死亡率に差を認めない5).直接損傷のなかで重要なものは重症肺炎と狭義の誤嚥性肺炎であり,より頻度の少ない疾患としては脂肪塞栓,組織傷害性ガスの吸入,肺挫傷などがあげられる(表 3-1).重症肺炎の原因としては,細菌,ウイルス,マイコプラズマ,クラミドフィラ,ニューモシスチスな

どさまざまな微生物があげられる.これらに罹患すると,当然のことながら軽症,重症を問わず肺炎として診断される.そのなかで,ときに両側性の陰影を認め,同時にARDS の診断基準を満たすものが存在すれば,これらは肺炎によるARDS と診断さ

●ARDS は肺炎など肺の直接損傷に起因するものと,敗血症など間接損傷に起因す

るものとに大別される. ●敗血症(sepsis)については2016 年2 月に新しい定義が発表され,「感染症に対

する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」とされている. ●ARDS や敗血症が多臓器機能不全症候群(multiple organ dysfuction syndrome;

MODS)の原因となる一方,MODS の肺病変がARDS として発現することも多い.

3

表 3-1 ●主なARDS の原因疾患

直接損傷間接損傷頻度の多いもの肺炎胃内容物の吸引(誤嚥)頻度の多いもの敗血症外傷,高度の熱傷(特にショッ

クと大量輸血を伴う場合)

頻度の少ないもの脂肪塞栓吸入傷害(有毒ガスなど)再灌流肺水腫(肺移植後など)溺水放射線肺障害肺挫傷頻度の少ないもの心肺バイパス術薬物中毒(パラコート中毒など)急性膵炎自己免疫疾患輸血関連急性肺損傷(TRALI)

注1

注1 TRALI:transfusion-related acute lung injury
p.34
れる(第7 章参照).次に,狭義の誤嚥性肺炎とは,主として胃酸など消化管内容物による直接損傷による化学性肺炎を指し,胃酸や消化酵素による直接的な肺胞・気道炎症が重症化,つまりARDS 移行の原因として考えられている.外傷や骨折などを契機に発症する脂肪塞栓症候群の発症機序について未だ確実な定説はないが, mechanical theory 6),biomechanical theory 7)などが報告されている.大多数が多発外傷後にみられ, 48 時間以内に発生することが多い.臨床的には意識レベルの低下などの中枢神経症状,皮膚の点状出血などがみられることが多く,また気管支肺胞洗浄液の所見として,脂肪滴を含む細胞の増加がみられる.一方,間接損傷として重要なものは敗血症であり,敗血症によるARDS は多臓器不全の一部分症ともいえる8).敗血症に伴う種々の炎症性サイトカインが肺に好中球の集積を招来し,肺でのさらなる炎症を惹起することが,その主たる発症機序であると考えられている.他の間接損傷には,ショックを伴う外傷,大量輸血や急性膵炎,輸血関連急性肺損傷(transfusionrelated acute lung injury;TRALI)などが挙げられる9).敗血症と同様に,肺外の組織で発生した急

性炎症が肺を特異的に傷害することが発症機序であると考えられている.直接損傷,間接損傷にかかわらず,慢性アルコール中毒,COPD をはじめとする慢性肺疾患,アシドーシス,慢性肝疾患や腎不全などの肺以外の臓器不全,高齢などの要因が重なった場合は,予後が悪いとされている.ただし,外傷性ARDS については,酸素化障害が軽度で,予後も比較的良好であるとの報告がある10).これら予後に関する詳細については第11 章を参照されたい.

2 敗血症

敗血症(sepsis)については,2016 年2 月に新しい定義が発表され,「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」とされている11).これは従来の重症敗血症に近い概念である.敗血症の診断基準はICU 患者とそれ以外とで異なっている.ICU 患者では,感染症が疑われ, SOFA スコア(表3-2)が2 点以上増加している状態とされる.非ICU 患者では,1呼吸数22 回/ 分

表 3-2 ●SOFA(sequential organ failure assessment)スコア呼吸器,凝固系,肝機能,心血管系,中枢神経系,腎機能の6 項目について,臓器障害の程度を0 から4 点の5 段階で評価し,合計を算出する

0 1 2 3 4

呼吸器PaO2/FIO2 >400 ≦400 ≦300 ≦200 (呼吸器補助下) ≦100 (呼吸器補助下)凝固系血小板数(×10 3/mm 3) >150 ≦150 ≦100 ≦50 ≦20肝ビリルビン値(mg/dL) <1.2 1.2~1.9 2.0~5.9 6.0~11.9 >12.0

心血管系低血圧なし平均動脈圧<70mmHg DOA≦5γ

あるいはDOB投与DOA>5γ

あるいはAd≦0.1γあるいはNA≦0.1γ DOA>15γ

あるいはAd>0.1あるいはNA>0.1γ

中枢神経系GCS 15 13~14 10~12 6~9 <6腎クレアチニン(mg/dL)または尿量(mL/日) <1.2 1.2~1.9 2.0~3.4 3.5~4.9

<500 >5.0

<200

DOA:ドパミン,DOB:ドブタミン,Ad:エピネフリン,NA:ノルエピネフリン,GCS:Glasgow Coma Scale
p.35
■ 文 献1)Doyle RL, Szaflarski N, Modin GW, et al:Identification of patients with acute lung injury. Predictors of

mortality. Am J Respir Crit Care Med 152:1818-1824, 1995 2)Hudson LD, Milberg JA, Anardi D, et al:Clinical risks for development of the acute respiratory

distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 151:293-301, 1995 3)Gattinoni L, Pelosi P, Suter PM, et al:Acute respiratory distress syndrome caused by pulmonary and

extrapulmonary disease. Different syndromes? Am J Respir Crit Care Med 158:3-11, 1998 4)Thille AW, Esteban A, Fernández-Segoviano P, et al:Chronology of histological lesions in acute

respiratory distress syndrome with diffuse alveolar damage:a prospective cohort study of clinical autopsies. Lancet Respir Med 1:395-401, 2013 5)Agarwal R, Srinivas R, Nath A, et al:Is the mortality higher in the pulmonary vs the extrapulmonary

ARDS? A meta analysis. Chest 133:1463-1473, 2008 6)Pell AC, Hughes D, Keating J, et al:Fulminating fat embolism syndrome caused by paradoxical

embolism through a patent foramen ovale. N Engl J Med 329:926-929, 1993 7)Nixon JR, Brock-Utne JG:Free fatty acid and arterial oxygen changes following major injury:A

correlation between hypoxemia and increased free fatty acid levels. J Trauma 18:23-26, 1978 8)Bone RC, Balk RA, Cerra FB, et al:Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use

of innovative therapies in sepsis. The ACCP/SCCM Consensus Conference Committee. American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine. Chest 101:1644-1655, 1992 9)Gajic O, Rana R, Winters JL, et al:Transfusion-related acute lung injury in the critically ill:

prospective nested case-control study. Am J Respir Crit Care Med 176:886-891, 2007 10)Calfee CS, Eisner MD, Ware LB, et al:Trauma-associated lung injury differs clinically and biologically

from acute lung injury due to other clinical disorders. Crit Care Med 35:2243-2250, 2007 11)Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al:The third international consensus definitions for sepsis

and septic shock (Sepsis-3). JAMA 315:801-810, 2016

以上,2精神状態の変化,3収縮期血圧100 mmHg以下の3 項目から成る迅速SOFA(qSOFA)スコアで2 項目以上となっている.また敗血症性ショックは,「敗血症のうち,実質的に死亡率を増加させるに十分に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有するもの」と定義されている.具体的には,適切な輸液負荷を行ったにもかかわらず平均血圧65 mmHg 以上を維持するために循環作動薬を必要とし,かつ血清乳酸値が2 mmol/L(18mg/dL)を超えている状態とされる11).これらの新しい定義,診断基準に

ついては,今後その妥当性が検証されていくものと考えられる. ARDS や敗血症では複数の臓器の機能不全を引き起こすことがあり,これを多臓器機能不全症候群(multiple organ dysfunction syndrome;MODS)と呼ぶ8).ARDSや敗血症がMODSの原因となる一方, MODS の肺病変がARDS として発現することも多い.
p.36
発症機序と病態生理

1 ARDS の発症機序

ARDS は高度の炎症に伴い肺胞隔壁(血管内皮,肺胞上皮)の透過性が亢進することによって生じる非心原性肺水腫である1)(図4-1).この炎症および組織傷害においては好中球が中心的な役割を果たすと考えられているが,好中球減少状態にある患者でもARDS の発症が報告されており2),好中球以外の炎症細胞の関与も考えられる.基礎病態により,マクロファージや好中球などの炎症細胞が活性化し,サイトカイン(TNF-α, IL-8 など)やアラキドン酸代謝産物などのメディエーターを放出する.活性化した好中球は可塑性が低下しているため肺微小血管網を通過しづらくなり,また同時に血管内皮側にも接着分子(ICAM-1など)の発現亢進などの変化が起きるため,好中球

と血管内皮細胞との接着が亢進し,末梢血好中球の肺血管内への集積が起こる.肺血管内に集積した好中球は肺胞マクロファージ由来の走化性因子などの影響を受けて,肺血管外へと遊走する.肺間質や肺胞腔内に到達した好中球からは,好中球エラスターゼや活性酸素などの組織傷害性物質が放出される.その結果,血管内皮と肺胞上皮の細胞傷害を伴う肺の高度の炎症が生じ,肺微小血管内皮および肺胞上皮の透過性亢進が起こる.血管透過性の調節機構として,細胞膜を構成するスフィンゴ脂質の代謝産物であるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)による細胞骨格の修飾が注目されている3).血管内皮の透過性が亢進すると血管・気管支周囲の間質内に水分が漏出・貯留し,間質性肺水腫の状態になる.さらに肺胞上皮まで傷害されると,

●ARDS は,主に肺内に集積した活性化好中球から放出される活性酸素や蛋白分解

酵素などにより,血管内皮と肺胞上皮の透過性が亢進することで生じる非心原性肺水腫である. ●ARDS の病態形成には,炎症性サイトカインや脂質メディエーター,接着分子

など数多くの分子が複雑に関与しており,その分子機構の解明が急がれている. ●ARDS では,シャント形成や拡散障害のため高度の低酸素血症が生じるほか,

肺コンプライアンスの低下,気道抵抗の上昇,肺血管抵抗の上昇などの生理学的変化を伴う.

4
p.37
血漿成分を含んだ滲出液が肺胞腔内に充満し,肺胞性肺水腫の状態になる.発症機序の詳細については,今日までさまざまな研究が行われているが,依然として不明な点も多く,今後のさらなる検討が待たれる.

2 ARDS の病態生理

ARDS では,通常の酸素投与のみでは改善しない高度な低酸素血症が特徴的である4).酸素化障害の主たる原因は肺内シャントの増加であるが,拡散障害や換気血流比の不均等分布も寄与している.低酸素血症は換気刺激となり,低CO2血症が生じるが,病態がさらに進行すると,換気不全のため高CO2血症を呈する.ARDS を起こした肺で生じる生理学的変化をまとめると以下のようになる. a.シャント形成による低酸素血症肺胞腔内に水腫液が貯留すると表面張力の低下により肺胞は虚脱し,ガス交換が障害される.このような全く換気のない肺領域へも血流は保たれるため,シャント血流が増加し,高度の低酸素血症の原因となる5). b.換気力学の変化

ARDS の換気力学的特徴は,肺コンプライアンスの低下と呼吸抵抗の上昇であり,肺損傷が重症になる程,肺コンプライアンスは減少し,呼吸抵抗は上昇する6).その結果生じる換気障害は二酸化炭素の蓄積の原因となる.人工呼吸器の設定に際しては,こうした肺コンプライアンスの低下に加え,胸郭の硬さや可動性なども考慮することが望ましい.

図 4-2 ●健常者とARDS 患者の圧- 容量曲線5)縦軸は機能的残気量を基準とした肺容量であるが,これは人工呼吸時の一回換気量に置き換えられる.曲線の傾きが呼吸器系コンプライアンス(Crs)に相当し,ARDS 患者ではコンプライアンスの低下が著しいことがわかる.

図 4-1 ●正常肺胞構造と急性肺損傷初期

正常肺胞構造急性肺損傷初期
p.38
1)肺コンプライアンスの低下(肺の硬化)肺間質の浮腫や後述する肺サーファクタント機能不全などのため,肺の伸展性が低下し,膨張が障害され,肺全体としてコンプライアンスが著しく低下する6).肺圧- 容量曲線は正常に比べ右下方に偏移し,全肺気量をはじめ,肺気量分画は一様に減少する. ARDS 患者の肺圧- 容量曲線では,吸気側で2つの変曲点(inflection point)を認めることが多い(図4-2).このうち上変曲点(upper inflection point)以上の圧,容量では肺胞の過伸展(overstretch)が生じ,下変曲点(lower inflection point)以下では肺胞の虚脱が起きやすいことが示唆されている7).人工呼吸器関連肺損傷(ventilator-associated lung injury;VALI)の予防を目的とした陽圧人工呼吸法(肺保護戦略)においては,気道内圧を上変曲点以下に保つことで過伸展を防止し,また気道内圧を常に下変曲点以上に保つことで肺胞の虚脱・再開放の繰り返し(ずり応力,shear stress)を回避することが理論上の目標とされている.この理論に沿って呼気終末陽圧(PEEP)を下変曲点+2 cmH2Oに設定することが提唱されているが8),反論もあり,また圧- 容量曲線の解析が煩雑なため一般的な手法となるには至っていない.

2)気道抵抗の上昇気道抵抗は気道内に水腫液が貯留すると通常上昇する.また小気道周囲の肺間質への水分貯留(間質性肺水腫)または気道粘膜の腫脹によっても気道抵抗は上昇する.一方,呼吸抵抗を機能的残気量で除して肺気量の減少の影響を補正すると,ARDS 患者と健常者との間で差がなかったことから,ARDSにおける呼吸抵抗の上昇は,個々の気道の狭小化を反映したものではなく,換気のある肺領域が減少し,より少数の気道を通して一定の換気量を維持するために起こるとする考え方もある9). c.拡散障害ARDS では肺胞から肺毛細管血に至る経路の拡散能が浮腫状態により低下することから,低酸素血症が生じる10).なお,炭酸ガスの拡散能力は酸素

の20 倍もあるため,拡散障害があっても,低換気がない限り高炭酸ガス血症は生じない. d.換気血流比不均等分布CT スキャンを用いた検討では,ARDS の肺病変はいわゆる「びまん性」ではなく,きわめて不均一に分布していることが知られている11).とくに肺の重さのかかっている荷重部(患者が仰臥位であれば背側部)では非荷重部に比べて肺の換気が著しく低下する.これに対して,血流は非荷重部に多いため,換気血流比(VA/Q)の不均等分布が生じる. e.肺血管抵抗の上昇ARDS では,1肺血管の攣縮,2肺胞領域の組織破壊による器質的狭窄,3肺微小血栓による血管閉塞,4肺梗塞,5肺水腫による血管系の圧排などが関与して肺血管抵抗が上昇し,肺高血圧をきたす12, 13).肺血管攣縮の原因としては,換気血流比の不均等分布を是正しようとするために換気の少ない肺胞領域の血管が収縮する低酸素性肺血管攣縮と,トロンボキサンなどの炎症性脂質メディエーターの影響が考えられる. f.肺サーファクタント機能不全ARDS では,肺サーファクタントの機能不全が存在し,肺胞虚脱から無気肺や肺内シャントが形成される原因となっている14).ARDS におけるサーファクタントの機能異常の機序としては,1好中球エラスターゼなどの組織傷害物質によるサーファクタント成分の分解,2水腫液中のフィブリノーゲンなどの血清蛋白によるサーファクタントの気液界面への吸着の阻害,3高度の炎症や機械換気によるサーファクタントの合成・分泌の減少などが考えられている.

3 病態の経時的変化

発症経過と病期については第5 章に詳述するが,
p.39
急性期(発症から3 ~7 日以内),亜急性期(発症から7 ~21 日),慢性期(発症から21 ~28 日以降)に分類される.急性期の致死的原因は急性呼吸不全による重篤な低酸素血症であり,この時期を初期ARDS(early ARDS)と呼ぶ.急性期は透過性亢進に起因する肺水腫が病態の中心である.亜急性期から慢性期にかけては肺の器質化,線維化の時期であり,後期ARDS(late ARDS)と呼ぶ.亜急性期にはII型肺胞上皮細胞や筋線維芽細胞の増殖,肺動脈内の器質化

血栓の形成などが生じるため,この時期が病状の進行を止め,回復に向かうかどうかの分かれ目と考えられる.慢性期にはリモデリングが進行し,高度の肺線維化や気腫化などの非可逆的変化がみられる.細胞増殖と線維化は,損傷肺の治癒・修復機転とも考えられる.ARDS 患者では末梢血中の骨髄由来内皮前駆細胞が増加し,その数が多い例では予後が良いことから,組織修復との関連が考えられている15).

■ 文 献1)Ware LB, Matthay MA:The acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 342:1334-1349, 2000 2)McWhinney PH, Gillespie SH, Kibbler CC, et al:Streptococcus mitis and ARDS in neutropenic patients.

Lancet 337:429, 1991 3)Natarajan V, Dudek SM, Jacobson JR, et al:Sphingosine-1-phosphate, FTY720, and phingosine-1-

phosphate receptors in the pathobiology of acute lung injury. Am J Respir Cell Mol Biol 49:6-17, 2013 4)Piantadosi CA, Schwartz DA:The acute respiratory distress syndrome. Ann Intern Med 141:460-

470, 2004 5)Laghi F, Siegel JH, Rivkind AI, et al:Respiratory index/pulmonary shunt relationship:quantification

of severity and prognosis in the post-traumatic adult respiratory distress syndrome. Crit Care Med 17:1121-1128, 1989 6)Marini JJ:Lung mechanics in the adult respiratory distress syndrome. Recent conceptual advances

and implications for management. Clin Chest Med 11:673-690, 1990 7)Bigatello LM, Hurford WE, Pesenti A:Ventilatory management of severe acute respiratory failure for

Y2K. Anesthesiology 91:1567-1570, 1999 8)Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al:Effect of a protective-ventilation strategy on mortality in

the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 338:347-354, 1998 9)Pelosi P, Cereda M, Foti G, et al:Alterations of lung and chest wall mechanics in patients with acute

lung injury:effects of positive end-expiratory pressure. Am J Respir Crit Care Med 152:531-537, 1995 10)Barnas GM, Randalls PB, Forrest FC, et al:Effect of pulmonary edema on transfer of gas from acinus

to airways. J Appl Physiol 76:560-564, 1994 11)Gattinoni L, Pelosi P, Crotti S, et al:Effects of positive end-expiratory pressure on regional distribution

of tidal volume and recruitment in adult respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 151:1807-1814, 1995 12)Tomashefski JF Jr, Davies P, Boggis C, et al:The pulmonary vascular lesions of the adult respiratory

distress syndrome. Am J Pathol 112:112-126, 1983 13)Moloney ED, Evans TW:Pathophysiology and pharmacological treatment of pulmonary hypertension

in acute respiratory distress syndrome. Eur Respir J 21:720-727, 2003 14)Hallman M, Spragg R, Harrell JH, et al:Evidence of lung surfactant abnormality in respiratory failure.

Study of bronchoalveolar lavage phospholipids, surface activity, phospholipase activity, and plasma myoinositol. J Clin Invest 70:673-683, 1982 15)Burnham EL, Taylor WR, Quyyumi AA, et al:Increased circulating endothelial progenitor cells are

associated with survival in acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 172:854-860, 2005
p.40
病 理

1 はじめに

ARDS の診断基準は,1994 年に提唱されたAmerican-European Consensus Conference (AECC)の定義が使われていたが,2011 年にBerlin 定義が提唱され,acute lung injury;ALI という名称は使われなくなり,ARDS が mild, moderate,severe の重症度別に細分類された1, 2).これらはいずれも臨床的な定義であり,病理学的には,びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage; DAD)と呼ばれる定型的な肺胞傷害がARDS の主たる病理像であることに変わりは無い.ただし,臨床的にARDS と診断された症例の外科的肺生検もしくは剖検例を後ろ向きに検討した報告では,いずれもDAD 以外の組織像を認めるものが多く含まれることを示している3 ~5).Berlin 定義が提唱されて

以降,外科的肺生検の56% 6),剖検例の45% 5)にDAD を認めたという報告があるが,いずれの診断基準を用いた場合においても相当な割合で感染性肺炎,特にサイトメガロウイルス感染や肺炎球菌などの細菌感染を含んでいることを示している3, 7, 8).感染性肺炎を示すものの中にもDAD 所見を合併するものとそうでないものがあり,DAD 所見を合併する感染性肺炎をDAD と判断すれば,やはりARDS症例の大多数がDAD を示すことになると考えられる.感染性肺炎の剖検例の中にはDAD 所見を合併しないものもそれなりに観察されるが3, 6),それらは特に急性期に死亡した症例に多く認められるとされている3, 5).感染性肺炎以外では,肺胞出血や肺水腫,DAD 以外の間質性肺炎,肺塞栓,悪性腫瘍,結核などが臨床的にARDS と診断されるものの中

●びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage;DAD)と呼ばれる定型的な肺胞傷

害がARDS の主たる病理像である. ●臨床的にARDS と診断された症例には,DAD 以外の組織像を認めるものも多く

含まれる. ●ARDS 診断基準を用いた場合,相当な割合で感染性肺炎が含まれている. ●DAD は滲出期,増殖(器質化)期,線維化期に分類され,病態が進む. ●発症後比較的早期から増殖期や線維化期に相当する変化が観察されることがあ

る.

5
p.41
に含まれうる.また,病理学的にDAD を示す死亡症例においても,臨床的にはARDS の診断基準を満たさない症例も少ないながら存在する5).ARDSにおいて外科的肺生検が施行されることはまれであるが,病因の特定は治療方針に大きく影響するため有用であるとする報告もある9).ARDS における外科的肺生検をどの段階で施行するかの判断は個々の症例により異なり,そのリスクと恩恵のバランスにより慎重に決定されるべきであるが,急性期には出来る限り侵襲性の少ない検査で原因を特定することが重要である.ただし,生検により原因が特定されることで治療方針が変わるという報告も少なくなく7),悪性腫瘍が疑われていてパフォーマンスステータスが保たれた症例では分子標的薬などの使用の可能性が残されるといった,生検を積極的に行うことが推奨される状況も想定される8, 10).

2 びまん性肺胞傷害(DAD)

の病理組織像

一般的に,時間経過から,浮腫・硝子膜形成を主体とする滲出期,増殖(器質化)期,線維化期に分類される(表5-1)

11).DAD の組織学的所見は,リ

スク因子による差は少なく,傷害期間と相関するとされる11).ただし,原因疾患の違いにより,筋線維芽細胞増生など組織学的所見の相違が認められることも報告されている12).ここでは,DAD に共通した各病期の病理学的特徴と血管障害について解説する. a. 滲出期(exudative stage,急性期)

呼吸不全発症から1 〜7 日以内であり,この期間での死亡例の肺所見は重量の増加で,臓側胸膜からみると赤青色である.割面はびまん性に赤灰色で,やや光沢がある.組織学的に,極めて早期の所見は肺毛細血管のうっ血,透過性亢進に伴う間質ならびに肺胞腔内浮腫であり,I 型肺胞上皮の壊死や剥離を高頻度に伴う.また,肺胞嚢の虚脱を伴って肺胞道の拡大が認められ,サイトカインによって動員された好中球が赤血球とともに肺胞隔壁および気腔内に増加する13).最も特徴的な所見は肺胞道を主体とする硝子膜形成であり11, 14)(図5-1a),硝子膜の目立たない症例ではDAD と認識されないことがある.この硝子膜の構成成分は,細胞崩壊物質,表面活性物質のほか,フィブリノーゲン,免疫グロブリン,補体などの血漿成分であり,表面にはフィブロネクチンなどが認められる15).上皮,間質の変化および硝子膜形成に加えて血管内皮細胞の傷害,腫脹ならびに剥離が認められる15).また,時に毛細血管あるいは細動脈内のフィブリン血栓形成を認めることがある11, 14).この時期に慢性の線維化病変を認めることは無い.慢性病変を観察する場合には,肺線維症などの慢性間質性肺炎が急性増悪をきたした状況を想定すべきである16).

表5-1 ●DAD の時相別病理像

滲出期(1 ~ 7 日以内)増殖(器質化)期

(7 ~ 21 日)線維化期(21 日以降)

間質性・肺胞性浮腫硝子膜形成肺胞嚢の虚脱肺胞道の拡大間質・気腔内の筋線維芽細胞増殖硝子膜の器質化慢性炎症細胞浸潤膠原線維による線維化顕微鏡的蜂巣肺様変化牽引性細気管支拡張I型肺胞上皮細胞の壊死と剥離II型肺胞上皮細胞の過形成時に扁平上皮化生血管内皮細胞壊死白血球凝集微小血栓出血肺動脈を閉塞する内皮障害と血栓肺動脈の形状変化内膜の線維化中膜の肥厚
p.42
b. 増殖 (器質化)期(proliferative stage, 亜急性期)呼吸不全発症から1 〜3 週間後には,炎症と器質化が混在し,間葉系細胞をはじめとした細胞増殖が生じる.II型肺胞上皮細胞の増殖は,早い場合にはARDS 発症から3 日後に,また筋線維芽細胞増殖は7 日後以降に認められる5).この時期に死亡した症例では,肺重量は両側で2, 000g 以上に達する例がある.肉眼的に割面は赤灰色でつるつるし,光沢がある.弾力性を持ち,やや硬度が増している.組織学的には,肺胞腔内の硝子膜形成部位や,虚脱した肺胞嚢に一致して筋線維芽細胞の増生,膠原線維などの細胞外基質の沈着が認められる6)(図5-1b).薬剤性肺障害や特発性の急性間質性肺炎によるものでは,肺胞腔内に加えて肺胞壁自体での筋線維芽細胞の増生が顕著である12).硝子膜の周囲では虚脱した肺胞のII型肺胞上皮細胞

が著明に増加し,硝子膜の内側では上皮はみられない.これらの所見を伴って,肥厚した肺胞壁が形成される. c. 線維化期 (fibrotic stage,慢性期) ARDS の発症から3 〜4 週間以降に膠原線維の増生,つまり線維化が始まり,肺構造のリモデリングが進行する.肺胞腔内および壁には膠原線維が沈着し,症例によっては,肺胞道などの内腔が拡張し,顕微鏡的蜂巣肺様所見が確認される.このような部位には,扁平上皮化生を認めることも少なくない17) (図5-1c).特発性肺線維症との鑑別が困難となる場合があるが,鑑別点の一つとして,DAD の線維化期ではその壁に平滑筋の増生をみることはないことがあげられる.なお,ARDS 生存者肺の組織学

図5-1 ●DAD の時相別病理像a)滲出期弱拡大像(左)と中拡大像(右).肺胞嚢の虚脱(星印)に伴う肺胞道の拡大と肺胞道の内腔面に硝子膜の形成(矢印)をみる.一部には剥離したI 型肺胞上皮も観察される(矢頭). b)増殖期肺胞嚢の虚脱した部分や,肺胞道の硝子膜があった部分に,筋線維芽細胞の増生,軽度の膠原線維沈着が認められる.周囲では,II 型肺胞上皮細胞の増生や炎症細胞浸潤が認められる.少量の硝子膜が残ることもある(矢印).左端は胸膜. c)線維化期肺構造のリモデリングを伴う著明な膠原線維の沈着が認められる.扁平上皮化生(矢印)がみられることもある.

a) c)

b)
p.43
的報告はきわめて少ないが,ARDS 発症後9 ヵ月の患者では,中等度間質性線維化,間質へのリンパ球浸潤とともに肺胞マクロファージの増加が認められる18).またII型肺胞上皮細胞増生や扁平上皮化生を伴う肺胞構造の再構築所見も観察される. d. 肺血管傷害と血管リモデリング肺血管傷害と肺高血圧症はARDS に伴う症候として重要である19).肺血管病変は肺胞傷害と密接に関連しており,特にDIC やMODS をきたす病態でより顕著に認められる.ARDS の初期では肺血管攣縮,肺微小血管の内皮の膨化,血管内皮へのフィ

ブリン,血小板および白血球の接着,血栓形成がおこる.引き続き,血栓器質化,血管内腔の狭窄・閉塞,間質性浮腫・線維化が起こり,時に肺高血圧を招く.数週間後には中膜平滑筋は増生,肥大し,平滑筋の乏しい末梢の血管にも平滑筋が認められるようになり筋性動脈化する.これにより肺高血圧症が増悪することもある19).線維化を伴う場合,肺構築のリモデリングにより肺血管床はさらに減少する.DAD の剖検肺の95% 以上で肺血栓が認められるとの報告もある20).

■ 文 献1)Bernard GR, Artigas A, Brigham KL, et al:The American-European Consensus Conference on ARDS.

Definitions, mechanisms, relevant outcomes, and clinical trial coordination. Am J Respir Crit Care Med 149:818-824, 1994 2)Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al:Acute respiratory distress syndrome:the Berlin

Definition. JAMA 307:2526-2533, 2012 3)Sarmiento X, Guardiola JJ, Almirall J, et al:Discrepancy between clinical criteria for diagnosing acute

respiratory distress syndrome secondary to community acquired pneumonia with autopsy findings of diffuse alveolar damage. Respir Med 105:1170-1175, 2011 4)Libby LJ, Gelbman BD, Altorki NK, et al:Surgical lung biopsy in adult respiratory distress syndrome:

a meta-analysis. Ann Thorac Surg 98:1254-1260, 2014 5)Thille AW, Esteban A, Fernandez-Segoviano P, et al:Comparison of the Berlin definition for acute

respiratory distress syndrome with autopsy. Am J Respir Crit Care Med 187:761-767, 2013 6)Kao KC, Hu HC, Chang CH, et al:Diffuse alveolar damage associated mortality in selected acute

respiratory distress syndrome patients with open lung biopsy. Crit Care 19:228, 2015 7)Papazian L, Thomas P, Bregeon F, et al:Open-lung biopsy in patients with acute respiratory distress

syndrome. Anesthesiology 88:935-944, 1998 8)Palakshappa JA, Meyer NJ:Which patients with ARDS benefit from lung biopsy? Chest 148:1073-

1082, 2015 9)Papazian L, Doddoli C, Chetaille B, et al:A contributive result of open-lung biopsy improves survival

in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med  35:755-762, 2007 10)Ahn HK, Jeon K, Yoo H, et al:Successful treatment with crizotinib in mechanically ventilated patients

with ALK positive non-small-cell lung cancer. J Thorac Oncol 8:250-253, 2013 11)Tomashefski JF, Jr:Pulmonary pathology of acute respiratory distress syndrome. Clin Chest Med 21:

435-466, 2000 12)Kang D, Nakayama T, Togashi M, et al:Two forms of diffuse alveolar damage in the lungs of patients

with acute respiratory distress syndrome. Hum Pathol 40:1618-1627, 2009 13)Ware LB, Matthay MA:The acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med  342:1334-1349,

2000 14)Katzenstein AL:Acute Lung Injury Patterns:Diffuse alveolar damage and bronchiolitis obliterans-
p.44
organizing pneumonia. In:Katzenstein AL, Askin FB, eds. Katzenstein and Askin's Surgical Pathology of Non-Neoplastic Lung Disease. 3rd ed. Philadelphia:WB Saunders, 1997 15)Fukuda Y, Ishizaki M, Masuda Y, et al:The role of intraalveolar fibrosis in the process of pulmonary

structural remodeling in patients with diffuse alveolar damage. Am J Pathol 126:171-182, 1987 16)Saito H, Minamiya Y, Nanjo H, et al:Pathological finding of subclinical interstitial pneumonia as a

predictor of postoperative acute respiratory distress syndrome after pulmonary resection. Eur J Cardiothorac Surg 39:190-194, 2011 17)Fukuda Y, Ferrans VJ, Schoenberger CI, et al:Patterns of pulmonary structural remodeling after

experimental paraquat toxicity. The morphogenesis of intraalveolar fibrosis. Am J Pathol 118:452-475,

1985 18)Lakshminarayan S, Stanford RE, Petty TL:Prognosis after recovery from adult respiratory distress

syndrome. Am Rev Respir Dis 113:7-16, 1976 19)Zapol WM, Snider MT:Pulmonary hypertension in severe acute respiratory failure. N Engl J Med

296:476-480, 1977 20)Tomashefski JF Jr, Davies P, Boggis C, et al:The pulmonary vascular lesions of the adult respiratory

distress syndrome. Am J Pathol 112:112-126, 1983
p.45
診断と検査

ARDS は一つの確立された症候群であるが,その診断については問題点が少なからず残されている.第1 章で述べた Berlin 定義1, 2)は簡便であるが,さまざまな呼吸器疾患もこの診断基準に当てはまる場合がある.従って診断と同時に除外診断を注意深く行う必要がある.以下に画像診断のポイントも含めて診断の進め方について解説する. 1 臨床所見

臨床上は,肺胞虚脱とシャント効果によって低酸素血症に陥り呼吸困難を呈する.初期は労作性呼吸困難があるが,進行とともに安静時の呼吸困難となり,頻呼吸,低酸素血症に陥る.基礎疾患による炎症を反映して発熱を認める場合が多い.また多臓器障害を呈した場合は各臓器の障害を反映した所見を呈する.多くは基礎疾患の先行後12 ~48 時間経過

●ARDS は先行する基礎疾患から48 時間以内に発症することが多いが,遅れて低

酸素血症や胸部X 線写真での浸潤影が出現する例も少なくない.したがって時間経過をおいた再評価が必要である. ●Berlin 定義は簡便であるが,非特異的であるため,鑑別診断が重要となる.その

ために可能であれば心エコーやCT 撮影,BAL などを積極的に施行することが望ましい. ●心不全は合併することが多いため,心不全の関与は,理学的所見,胸部X 線写真,

超音波心エコー法や,BNP の測定などから総合的に判断する. ●HRCT 所見は鑑別診断に有用だけでなく,気管支拡張像などはARDS の病期を

反映しており,治療反応性と予後の指標となる. ●ARDS の診断と予後判定に実用性のあるバイオマーカーは確立されていないが,

procalcitonin やpresepsin は,敗血症マーカーとして鑑別診断や予後予測に有用性が示されている.

6
p.46
して発症するが,敗血症に比べて外傷が原疾患の場合は遅れて発症する傾向がある.また遅発性の発症も少なからず存在し,約10%は5 日目以降に発症する3, 4)(図6-1).未だに死亡率の高いARDS に対して,基礎病態や発症のリスク因子をスコア化(Lung Injury Prediction Score)(表6-1)することで,発症高リスク群を同定し,将来の発症予防に繋げる考え方も出てきている4).近年,ARDS に2 つの臨床病型(フェノタイプ)があることがわかってきた5).2 つの大規模臨床試験1, 022 例の解析によって,300 症例にあたる約30% の症例では,過剰炎症状態を示し,有意に死亡率が高く,人工呼吸装着期間が長く,多臓器不全をきたし易いフェノタイプが抽出された.この予後不良病型の特徴として,敗血症を原因病態とすることが多く,ショックや代謝性アシドーシスを伴い易いこと,さらにIL-6,IL-8 などの炎症性バイオマーカーが高値を示す点がある. ARDS の病理像の特徴とされるびまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage;DAD)を呈する頻度は,剖検肺による検討6)や開胸肺生検による報告7)からは,40 ~45% と報告されている.ARDS の病理診断の中で最も予後不良な病態がDAD であり,生検診断が得難い本病態において,如何にDAD と診断することが重要な課題として挙げられている8).

この糸口として,Berlin 定義の重症度が上がるにしたがって,DAD を呈する症例が増えることが報告されており,また,ARDS 診断後72 時間以上Berlin 定義を満たす症例は,DAD である比率が60% に上昇する6).診断7 日目以降Berlin 定義を満たす症例の開胸肺生検でも約60% はDAD であることが確認されている9).

2 生理検査所見

血液ガス分析上,呼気終末陽圧換気(PEEP) 5cmH2O 以上の人工呼吸管理下で,動脈血PaO2/ FIO2 が300 以下で ARDS と診断し,PaO2/FIO2 によって重症度を判定する.200mmHg< 軽症≦ 300mmHg,100mmHg< 中等症≦100mmHg,そして重症≦100mmHg となり,以前のAECC 基準にあったAcute lung injury の概念は無くなった1, 2).呼吸促迫により呼吸仕事量の増加をきたす.そのため初期は呼吸性アルカローシスをきたす.パルスオキシメータで測定される動脈血液中酸素飽和度(SpO2)は血液ガスに代わって連続して評価することができる.100%に近い場合を除いてSpO2 はPaO2 の値と相関しており,SpO2 が97%以

図6-1 ●原因疾患の発症からARDS 発症までの時間敗血症,薬物過剰摂取および誤嚥(OD/Aspiration)では原疾患発症後すみやかにARDS に移行する症例が多い.外傷ではやや発症までに他疾患より時間を要する.いずれにおいても5 日目以降の発症例もみられる

1).

100 90

80 70

60 50

40 30

20 10

0 0 1 2 Days After Risk Identification Sepsis OD/Aspiration Trauma

Cumulative Incidence (%)

3 4 5 6 7
p.47
下の場合に,SpO2/FIO2 =64 +0. 84 ×(PaO2/ FIO2)の近似式が成立し,PaO2/FIO2 の300 と200 は, SpO2/FIO2 のそれぞれ315 と235 に相当する10).入院6 時間以内のSpO2/FIO2 の低下度は,ARDS 進展の独立した予測因子であることが報告されている11).なお,成因にかかわらず単純に PaO2/FIO2 が 300以下の低酸素血症状態をacute hypoxemic respiratory failure(AHRF)と称する. Murray らによる肺損傷スコア12)(表6-1)は,ベッドサイドにて簡便に測定し得るARDS 重症度を含めた指標であり,肺損傷の程度を客観的に示すためには有用であるが,予後を必ずしも反映せず,また心原性肺水腫の除外について見解が述べられていないため臨床現場で用いられることは少ない. 3 画像診断

ARDS の画像所見は,病理像の病期(滲出期,器質化期,線維化期),原因,合併症などにより大きく異なる.画像所見は非特異的なものが多く, ICU などでは胸部CT などの撮影が制限されるために異常所見の検出や解釈に迷うことも多い.

a. 胸部X 線写真1) ARDS の診断ARDS の診断基準のひとつとして,X 線写真での両側性陰影があるが,陰影分布は必ずしもびまん性ではなく,左右非対称であることや,上下肺野で

表6-1 ●肺損傷予測スコア(Lung Injury Prediction Score;LIPS)

LIPS ポイント例

基礎病態

(1)アルコール多飲歴のある患者が肺炎からの敗血症

性ショックで,FIO2 >35%を要する場合ショック +2敗血症  +1肺炎   +1.5アルコール多飲 +1 FIO2 >0.35 +2 LIPS スコア計 +7.5

(2)糖尿病を有する患者が尿路感染敗血症でショック

の場合ショック +2敗血症  +1糖尿病  -2 LIPS スコア計 +2

LIPS スコア>4肺損傷予測感度69%特異度78%

ショック2誤嚥2敗血症1肺炎1.5ハイリスク手術脊椎手術1急性腹症2心臓外科2.5大動脈血管3.5ハイリスク外傷脳損傷2吸入2溺水2肺挫傷1.5多発骨折1.5リスク因子アルコール多飲1肥満(BMI >30) 1低アルブミン血症1化学療法1 FIO2 >0.35(>4L/ 分) 2頻呼吸(呼吸数>30) 1.5 SpO2 <95% 1アシドーシス(pH <7.35) 1.5糖尿病-1

(文献12 より改変引用)
p.48
程度差がみられることもある13).無気肺,胸水,腫瘤などの除外が必要であり,評価が難しい場合には,CT による評価を検討する1, 2).肺損傷が起きてから陰影が出現するまでに12 ~24 時間の時間のずれが存在する.肺の損傷が短時間に起きる場合は,発症時に血液ガスなどの検査所見が急激に悪化しても胸部X 線写真上,肺野の異常所見は認められず,低酸素血症に伴う浅い頻呼吸によって,肺野の容積の減少だけがみられることもある.ARDS の病態が疑われる場合には,時間経過で陰影の出現を再評価する.

2) 病変の進行や改善のモニタリング日々ルーチンに撮影される胸部X 線写真は,病変の進展や改善の評価,さらに合併症(気胸,人工呼吸器関連肺炎など)の検出にも有用である.注意すべき点は,ARDS 症例における臥位での胸部X線写真の透過性は,さまざまの要因によって影響を受けることである.それには,びまん性肺胞傷害(DAD)の病期の進行や,人工呼吸管理下での呼気終末陽圧換気(positive end-expiratory pressure; PEEP),吸気量の違いやX 線撮影のタイミングなど多くの要素が含まれる.人工呼吸管理の際に使用されるPEEP 導入後の速やかな透過性の改善は,必ずしも病態の改善に伴うとは限らない点を考慮する14).従って,経時的な胸部異常陰影の変化の評価は,撮影体位などの撮影条件,換気条件を十分に考慮して行わなければならない

3) 病期の進行に伴う所見の変化急性滲出期では,両側性のすりガラス状陰影や浸潤影を特徴とするが,陰影内部には気管支透亮像(エアブロンコグラム)を伴う.線維増殖期性病変へ進行とともに,すりガラス状陰影内部に網状影が認められ,肺野の容積減少が進行し,気管支透亮像も拡張が目立つようになる14).

4)心原性/高静水圧性肺水腫との鑑別ポイント臨床的に,常に鑑別が重要な心原性(cardiogenic)/高静水圧性 (hydrostatic) 肺水腫との鑑別点は,左房圧上昇に伴う胸部画像上のリンパ管のうっ滞所見

(間質性肺水腫)の有無が重要である.すなわち,肺内リンパ管の局在部位である1)気管支血管周囲間質,2) 小葉間間質,3) 胸膜下間質,のそれぞれうっ滞所見は,(1) cuffing sign (正面写真での左右B3b の正切像の腫大不鮮明化),(2) 小葉間隔壁の肥厚による,上肺の胸壁に至る比較的長いKerley A 線,両側下肺野外套部のKerley B 線,これらの重畳による網状のKerley C 線の出現,(3) 葉間胸水(右minor fissure の肥厚)に現れる.また右優位の胸水貯留所見も鑑別点となり得る.心拡大所見は,急性心不全例や,心拡張障害(高血圧,糖尿病,慢性肺疾患合併例に多い)でも認めないため,必ずしも鑑別点とならない13).年齢,心不全や冠動脈疾患の既往,心電図上のST 変化の有無やARDSのリスク因子などを含めた10 項目をスコア化し,心原性肺水腫との鑑別や合併の有無を評価する指標が報告されている15, 16).

b. 胸部CT 所見1) 原因病態の予測(直接肺損傷か,間接肺損傷か) ARDS の原因として,直接肺損傷(肺炎,誤嚥など)か,間接肺損傷(敗血症,外傷など)かの違いは,CT 所見,PEEP に対する反応性などの生理学的指標に反映されることが報告されている.間接肺損傷では,荷重部に浸潤影が分布し,腹側にはすりガラス状陰影や一見正常に見える領域が認められる(図6-2c)に対し,直接肺損傷では,荷重部以外の浸潤影の分布の傾向(図6-2a)がある14).間接肺損傷において,陰影が背側荷重部優位にみられる機序としては,肺の血管透過性亢進が肺全体に均等に起きたとしても,肺血管内静水圧と組織内静水圧差が背側荷重部よりで大きいために,滲出病変は背側荷重部優位に生じるためと考えられる.

2) 病理学的病期の予測慢性経過の間質性肺炎/ 肺線維症と同様にARDSなどの急性病態においても,肺野濃度上昇内部の拡張した気管支透亮像は,従来“牽引性気管支拡張”
p.49
a. 滲出期右中葉レベルのHRCT 所見右下葉および腹側の中葉に浸潤影を認める.気管支拡張像は伴わない.腹側の中葉には一見スペアされた領域を認める(滲出早期に対応する).直接肺損傷(レジオネラ肺炎によるARDS)の特徴である非荷重部(腹側)にも浸潤影を認める. b. 増殖早期右中間気管支幹レベルのHRCT 所見細気管支拡張像(→)を伴うすりガラス状の濃度上昇域を認める.細気管支拡張像の出現は,増殖早期への進展を画像的に示唆する所見である.〔読影ポイント〕通常胸膜から2cm 以内の末梢肺野に細気管

支は同定できないため,同領域内の濃度上昇域内部に分岐状の透亮像があれば,細気管支拡張と判断する.

c. 増殖後期右下肺静脈レベルのHRCT 所見区域支,亜区域支レベルの中枢側の気管支壁が不整に拡張した気管支拡張像(→)を伴うすりガラス状〜不均一な濃度上昇域を認める.中枢側の気管支拡張像の出現は,増殖後期への進展を示唆する所見である.間接肺損傷(敗血症性ARDS)の病変分布の特徴である荷重部(背側)の浸潤影から,非荷重部(腹側)のすりガラス状陰影への分布を認める.〔読影ポイント〕通常気管支は肺野末梢,胸膜側に向かうに従い,先細りする.濃度上昇域内部に,気管支透亮像が先細りすることなく,走行する場合(壁の不整を伴うこともあり),気管支拡張ありと判断する. d. 線維化期気管分岐部レベルのHRCT 所見区域支,亜区域支レベルの気管支拡張像(→)を伴うすりガラス状〜不均一な濃度上昇域を認める.濃度上昇域内部には小嚢胞や粗大な網状影(矢頭),容積減少が目立つ.

図6-2 ●ARDS の各病期におけるHRCT 所見
p.50
と表現してきたが,“牽引性”は急性病態では当面使用しない取り決めとなった. X 線所見と同様に,高分解能CT (high-resolution CT;HRCT)であっても,ARDS の滲出早期病変は,含気が保持されるために,病変を検出できない. HRCTは,ARDSの滲出早期病変は検出できないが,病態の進行に伴い,びまん性肺胞傷害(DAD)の病理学的病期をよく反映する17).滲出期から線維増殖期へ進行の際にみられる気管支拡張像や容積減少などの構造改変の所見は,HRCT でのみ評価可能である.

a)滲出期から増殖早期病変のHRCT 所見(図6-2a, b)両側肺野に広がるすりガラス状陰影が斑状もしくは,広範に分布し,背側に浸潤影 (consolidation)を伴う.すりガラス状陰影の内部には,小葉間隔壁肥厚像や小葉内網状影を伴うことも多い.小葉間隔壁肥厚像は,滲出液のドレナージによる浮腫性肥厚を反映したものである.増殖早期への移行には,膜性細気管支の拡張像(細気管支拡張)が認められることが画像上の指標となりうる (図6-2b).

b) 増殖後期期のHRCT 所見 (図6-2c)すりガラス状陰影などの濃度上昇域内部に,細気管支拡張像に加え,中枢側の気管支拡張像が出現し,容積減少(葉間や血管・気管支の偏位に表現される)を伴う.

c) 線維化期のHRCT 所見 (図6-2d)気管支拡張像の所見に加え,濃度上昇域内部に,粗大な網状影と小嚢胞性病変の出現がみられ,病理学的には末梢気腔の構造改変と線維化の進行した病変を反映する.

3) 治療反応性・予後の予測びまん性肺胞傷害(DAD)は,肺野全体で必ずしも均一な分布を呈さない特徴があり,CT は領域ごとの違いを反映する.濃度上昇域内部の細気管支拡張像や気管支拡張像の出現は,線維増殖性病変への進展を示唆する.ARDS 診断時のこれらの線維増

殖性病変のHRCT 上の広がりは,予後・治療反応性を示す1つの独立した因子であり,長期人工呼吸の必要性とも関連する18).

4) 呼吸療法の効果判定ARDS で見られる重力依存性の浸潤影は,圧排性無気肺であり,PEEP の調節と段階的なリクルートメント手技は,無気肺領域の肺胞を開大させるが,その効果はCT で評価することができる19).

5) 合併症の検出ARDS では,時間の経過とともにさまざまな合併症を併発する.このような状態では画像所見もより複雑となり,詳細な解析が困難になる.CT で確認される気胸の40%,気縦隔の80% は,単純X 線写真で明らかでないことが報告されている.また,胸水や人工呼吸器関連肺炎の検出においても,CTが優れる14).いわゆるbarotrauma 圧外傷 (気胸,気縦隔,皮下気腫)の出現は,ARDS の初期には高いPEEP が関与し20),後期の発生には,病変に進行に伴う嚢胞性病変や線維増殖性病変の関与が報告されている21).

6) 鑑別補助診断ARDS の診断基準を満たす疾患群の鑑別において,HRCT 所見は有用である. 詳細については,7章の鑑別診断を参照のこと.

7) 病変の広がり分布と病態生理との関係ARDS では,単純X 線写真上両側肺野の均一な透過性低下がみられても,CT では病変分布は一様ではない.病態生理の解析に用いられてきた指標が,肺野病変のCT 値であり,CT 値が肺の組織密度と強い相関関係にあることに基づいている.すなわち, CT 値で,−900 から−500HU の病変は正常に換気された領域に対し,−500 から−100HU のCT値領域は換気が乏しく,−100 から+100HU の領域は含気を有さない領域を示す.肺コンプライアンスは,異常領域の広がりではなく,正常に換気され
p.51
る領域の比率によりさまざまであることが報告されている1). ARDS 症例における酸素化は,PEEP や腹臥位療法などのリクルートメント手技にて改善する.この効果の程度は,肺野全体に均一ではなく,腹側(非荷重部)の一見正常に見える領域や頭側でより大きくなる21, 22).また,HRCT 所見と生理学的指標との関連では,発症14 日目におけるHRCT 上線維増殖性病変を示唆する網状影の広がりや気管支拡張像の程度は,肺の静コンプライアンスの低下と相関しており23), 180 日目における総肺活量,努力肺活量および拡散能の低下や,健康関連QOL の指標の低下にも関連がある24)ことが報告されている.

4 循環動態の評価

Berlin 定義では,肺動脈カテーテルは使用されなくなっていることやARDS であっても心不全や体液過剰の要素が混在するため肺動脈楔入圧が上昇している場合もあるので圧測定の記載は削除された.ただし,リスク因子がない場合は静水圧性肺水腫を除外するために心エコーなどの客観的評価を行うことが勧められていることで心エコーの意義が高まっている.Moderate からsevere ARDS 226 例に経食道心エコーを施行した検討では,中隔のdyskinesiaを伴う右室拡大で定義されるCor pulmonale (CP)が22%に認められた25).28 日目のmortality はCP群で60%, non-CP 群で36%と有意に高かった.このような心エコーによる右心系の評価は,予後が異なるサブグループを見いだすために有用である可能性があり,今後,薬剤や呼吸管理などの臨床試験を行う際の層別化にも必要となってくるものと思われる.

5 肺血管外水分量

肺毛細血管透過性亢進は,ARDS の本態であるためそれに伴う肺血管外水分量(extravascular lung

water;EVLW)の測定はARDS の病態を表す重要な指標である.熱希釈法によってEVLW やpulmonary blood volume が推定でき,pulmonary vascular permeability index(PVPI)やEVLW index (EVLWi)が算出される.EVLWi やPVPI は,P/F比と逆相関を示し,P/F 比によって決定されるARDS の重症度をよく反映することが報告されている26).

6 肺エコー

経胸壁肺エコー像も鑑別の一助となる.ARDSでは胸膜下の肺に炎症性浮腫と虚脱が生じるため,経胸壁的超音波検査で心原性肺浮腫とは異なる所見を呈する.ARDS では胸水,虚脱した肺によるconsolidation,B-line などが描出され(図6-3)

27 ~30),

肺浮腫の検出や,心原性肺浮腫との鑑別をする上で,聴診やベッドサイドの胸部X 線検査より優れている27, 31, 32).ARDS において,病変は両側性に広範囲に斑状に分布し,肺エコーでB-line の不均一な分布として描出され,この検出が有用とされる28, 29, 32).また,ARDS の治療評価や経過を追う上でも肺エコーは有用とされ27, 28, 33),ARDS の重症度と相関することが示されている34).ただし,肺エコー手技には習熟を要する.

7 血液検査

一般に,末梢血液中の白血球は増加し, C-reactive protein(CRP)も増加するが35),敗血症などで白血球数が逆に減少する場合がある.従来からCRP 値は全身の炎症を反映していると考えられており,ICU 管理を必要とする患者においてCRP 高値例は予後不良であるが,ARDS 患者に限って検討すると,発症後48 時間以内でのCRP が

22 6 mg/dL 以上の高値例が低値例に比べて予後が

良いことが報告されている35).その機序として
p.52
CRP が好中球活性を抑制し,肺に対しては保護的に働く可能性が示唆されている.血液中のBNP あるいはその安定代謝産物のNT- ProBNP は非常に有用な心不全のマーカーである.ただしBNP 値の肺動脈楔入圧との相関はそれほど強くはない36).BNP ≦200pg/mL の場合はARDS, BNP ≧1, 200pg/mL の場合は心原性肺水腫の可能性が強い37).しかしその間の場合は判断が難しく,そのほかの所見も併せて判断する必要がある.なお, ARDS に心不全を合併した例でもBNP 値は上昇し,予後不良因子となる37, 38).間質性肺炎のマーカーである血清KL-6 はARDSにおいても上昇する39).血清KL-6 高値例は予後不良であるが,間質性肺炎のように著しく高値を示すことは少ない.DIC 合併のARDS は予後不良であるが,KL-6 の中にセレクチンリガンドを有する分子(SLAK)が存在し,このSLAK は,ARDS に合併するDIC の予測因子であることが報告されている40).

8 生検と気管支肺胞洗浄

ARDS 症例への外科的肺生検についてのメタ解析41)において,外科的肺生検による特異的診断は84% の症例で得られ,73% の症例では,生検結果による治療の変更をもたらしたことが報告されてい

る.臨床的にARDS と診断される症例のなかには非特異的なDAD を示す例だけでなく,肺炎,器質化肺炎,肺胞出血や肺塞栓,そして肺結核や侵襲性アスペルギルス症などの特異な感染症も含まれており,これが開胸肺生検や剖検で初めて診断される場合もある6, 7, 41, 42).外科的肺生検に伴う合併症の発生率は22% でみられるが,死亡例は稀と報告されている41).生検に代わって肺内の病態を把握する手段として気管支肺胞洗浄液(BALF)の解析が有用である.とりわけ感染症の合併あるいは基礎疾患が肺炎である場合には,BALF の微生物検索は治療方針決定のためにも重要であり,患者の免疫力が低下している場合は,ニューモシスチス肺炎や肺真菌症の除外に有用である.ARDS では細胞分画で好中球が有意に増加しており,好中球による肺の炎症を反映しているが,ARDS に特異的な所見ではない.急性,あるいは慢性好酸球性肺炎では著明な好酸球の増多を認め,びまん性肺胞出血ではヘモジデリン貪食マクロファージを認める.組織学的にDAD が証明された症例でBAL 好中球比率は,20 ~70%(平均

46 5%)を示し,血管内皮や肺胞上皮傷害を反映し

て,BAL は血性を呈し,ヘモジデリン貪食マクロファージが20% 以上を示す症例が30% に認められる場合があり,肺胞出血との鑑別が困難な場合がある43).

図6-3 ●肺エコー所見(文献30 より許可を得て引用) a. 胸水を伴い虚脱した肺が描出され,内部にエコー輝度上昇領域としてair bronchogram が認められる. b. B-lines(→)は,comet-tail 状のartifact であり,胸膜から伸び肺の呼吸運動に応じて移動する. c. A-lines(→) は,通常の換気肺でみられる多重反射像. AB:air bronchogram, Alv Cons:alveolar consolidation, CW:chest wall, HD:hemidiaphragm, Pleff:pleural effusion.

a b c
p.53
9 その他の検査

BALF は肺胞腔内の細胞や液性成分を直接回収するものであるが,より中枢の気道上皮被覆液(epithelial lining fluid;ELF)も肺胞腔内環境を反映していると考えられている.実際,ARDS でのELF の総蛋白/ 血清総蛋白は心原性肺水腫液よりも有意に高いことが報告されている44). ELF の採取方法は気管内挿管チューブから気管支鏡を用いずに盲目的に吸引チューブを挿入して採取する方法や,チューブから30mL の生理的食塩水を注入して採取されるmini-BAL などがある.ただし後者の検体は希釈された状態となり,採取の方法により結果が大きく異なる45).マイクロサンプリング法は気管支ファイバーを介して吸水性のあるプローブを肺内に挿入しELF を回収する.BAL に比べて低侵襲であり,気管支鏡を用いて特定の部位のELF を回収可能であり,ARDS の評価にも応用されている39).呼気凝縮液(exhaled breath condensate;EBC)は,呼気を急速冷凍することにより,気道および肺胞由来のエアロゾルを回収したものである.EBC は人工呼吸器回路からも採取可能であり,非侵襲的に肺胞内環境を調べる方法として期待されているが46),回収量が微量であることと,再現性の問題が指摘されている.

10 バイオマーカー

ARDS に関するバイオマーカーは次のようなものが求められる.1)簡便かつ繰り返して測定することができる.2)ARDS 発症例で予後予測の指標となる.3)多発外傷や敗血症などのリスク患者においてARDS の発症を予測できる.4)ARDS と他疾患を鑑別できる.現在まで,これらの条件を満たすようなさまざまなバイオマーカーが検討されているが(表6-2),広く臨床応用されているものはない.気管支肺胞洗浄液(BALF)や気道上皮被覆液(ELF)は,肺局所の病態を評価する観点からは望ましいが,血液や血清の方が簡便性や再現性の点で

優れているため,ARDS 関連のバイオマーカーは血清蛋白質の報告が多い. ARDS そのもののマーカーではないが,ARDSの基礎病態として最も頻度の高い敗血症のマーカーは,敗血症性ARDS の診療に用いられている. Procalcitonin(PCT)は分子量13kDa のペプチドで,カルシウム代謝に重要なホルモンであるcalcitoninの前駆体として,正常人では甲状腺C 細胞で合成される47).全身性感染症,特に重症細菌感染症で血中PCT 濃度が上昇し,ウィルス感染や局所の細菌感染ではほとんど上昇しない48).重篤な感染症においては,菌体や毒素などの作用によりTNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され,その刺激を受けて肺・腎臓・肝臓・脂肪細胞・筋肉といった全身の臓器でPCT が産生され血中に分泌される. PCT が重症細菌感染症の血清マーカーであることが示され49 ~51),本邦でも細菌性敗血症の鑑別診断および重症度判定における補助血清マーカーとして保険適応となっている.27 例のARDS 患者を対象とした検討では49),PCT は敗血症性ARDS 患者で非敗血症性ARDS より有意に高値を示し鑑別に有用だった.22 人の市中肺炎(community-acquired pneumonia;CAP)によるARDS 患者を対象とした研究でも,発症72 時間以内のPCT 値は死亡群で高値を示し52),予後予測因子としての意義が示唆された.100 人のALI/ARDS による検討で, PCT は敗血症性ARDS と非敗血症性ARDS の鑑別能があり,SOFA score や重症MODS に相関する指標となることが示唆された53).Berlin 定義に基づく42 人のARDS 患者の検討でも,生存群より非生存群で有意に高値を示し,死亡予測因子としての有用性が示唆された54).Presepsin は,エンドトキシンの膜貫通型細胞表面受容体であるCD14 の可溶型分子(sCD14)のN 末端断片であり55),本邦で発見された新規敗血症マーカーである. Presepsin はPCT に比較し,感染以外の外傷や手術などの侵襲のみでは陽性にならない,敗血症時にはより早期に上昇する,病態が改善しなくても時間経過で低下してしまうといったことがないといった
p.54
メリットがある.市中肺炎患者を対象とした検討では,入院時の血漿presepsin 値は,ARDS やDICを呈した群でより高値を示し,生存群と比較し非生存群で高値であった56). ARDS では凝固線溶系が亢進しており,血清中のprotein C は低下し,plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)は増加する57).また,von Willebrand因子58),可溶性intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) 59),angiopoietin-2 60)の増加は血管内皮細

胞傷害を反映しており,surfactant protein D(SP- D)

61),receptor for advanced glycation end products (RAGE) 62),KL-6 39, 63)などの増加は,肺胞上皮傷害のためと考えられている.その一方で,SP-D はBALF では逆に減少しており,正常な産生分泌の低下を示唆している64).これらのバイオマーカーは著しく傷害,破壊された細胞から分泌されるため,

表6-2 ●ARDS に関連したバイオマーカー

損傷部位増加する検体予後予測文献減少する検体予後予測文献凝固関連PAI-1血清+ 57) Protein C血清+ 57)

Thrombomodulin血清+ 82, 83)

内皮細胞vWF血清+ 58)

ICAM-1血清/ELF + 59) E-selectin血清+ 83)

VEGF血清+ 84) VEGF ELF + 85) Angiopoietin-2血清+ 60)

上皮細胞SP-A血清− 64) SP-A BALF − 64)

SP-D血清+ 61) SP-D BALF + 64) RAGE血清+ 62) KL-6血清/ELF + 39, 63) Lamininγ2血清/ELF + 86)

CC16血清/ELF + 87)

炎症関連IL-1 β血清/BALF + 66, 67)

TNF-α血清/BALF + 66, 67) sTNF-R血清+ 69)

IL-6血清/BALF + 65 ~67) IL-8血清/BALF + 65 ~67) IL-10血清− 65) IL-18血清+ 88) HMGB-1血清/ELF − 68) GM-CSF BALF + 89) Leptin BALF + 90) Nitric Oxide ELF 91) Nitric Oxide尿+ 91)

アポトーシスsFas/sFas-L BALF + 92)増殖因子TGF-α BALF + 93)

HGF ELF + 94)

細胞外マトリックスPCP I/III血清/BALF + 79)

MMP-9血清/ELF 95)

予後予測について,+:関連あり,-:関連なし,空欄:不明PAI=plasminogen activator inhibitor,vWF =von Willebrand factor,ICAM-1=intercellular adhesion molecule-1, VEGF=vascular endothelial growth factor,SP=surfactant protein,RAGE=receptor for advanced glycation end products, CC16=Clara cell protein,IL=interleukin,TNF=tumor necrosis factor, s TNF-R=soluble TNF receptor,HMGB-1= high mobility group box protein-1,GM-CSF=granulocyte/macrophage colony stimulating factor,TGF=transforming growth factor, HGF=hepatocyte growth factor,PCP=procollagen peptide,MMP=metalloproteinase,BALF= bronchial lavage fluid, bronchoalveolar lavage fluid,ELF=epithelial lining fluid.
p.55
強い肺損傷の結果として増加するが,同時にメディエーターとしての役割も担っており,炎症のマーカーとしても評価できる.血清中の炎症性サイトカインのtumor necrosis factor(TNF)-α,interleukin (IL)-1β,6, 8 65 ~67)やhigh mobility group box protein 1(HMGB1)

68)などの増加は全身性の炎症を

反映している.これらのバイオマーカー高値例が予後不良であるだけでなく,低容量換気によりその値は低下するため61, 62, 65, 69),治療効果の指標としても期待されている.多彩な病態背景をもつARDS を単独のバイオマーカーで評価するのには限界がある.その一方で,複数のバイオマーカーと臨床パラメーターとの組み合わせによる正確な予後判断が試みられている70, 71).外傷などのリスクを持つ患者の入院時のバイオマーカーからARDS 発症を予測できれば,事前の対応も可能となる.血清中のIL-6,IL-8,可溶性IL-2 レセプター72),BALF 中のIL-8 73),血清angiopoietin-2 74)などの高値例でのARDS 発症率が高いとされている.またさまざまなバイオマーカーのメタ解析では,KL-6 高値が最も発症と相関していた75).予後予測と同様に,複数のバイオマーカーを

組み合わせた発症予測が,外傷76)と敗血症患者77)で検討されており,単独のマーカーより正確な予測が可能とされている. ARDS の診断基準を満たす症例のなかに,びまん性肺胞傷害以外のさまざまな病理像を示す疾患が含まれることが知られているが6, 7),ARDS と他の疾患をバイオマーカーで鑑別することは困難である.その一方でバイオマーカーを用いてARDS のフェノタイプを分類する試みがなされている.肺炎や誤嚥などの直接損傷では敗血症などの間接損傷に比べてSP-D などの肺胞上皮由来のバイオマーカーが高値である一方で,angiopoietin-2 などの血管内皮細胞由来のマーカーが低値を示す78).また,複数のサイトカインを組み合わせた炎症の強いフェノタイプの同定5)や,type III procollagen を用いた遷延化する線維化の推測が79)報告されている. ARDS に関するバイオマーカーを含むいくつかの遺伝子多型がARDS 発症,あるいは予後と関連があるとする報告があり59, 80),今後の臨床応用が期待されている.

■ 文 献1)Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al:Acute respiratory distress syndrome:the Berlin

Definition. JAMA 307:2526-2533, 2012 2)Ferguson ND, Fan E, Camporota L, et al:The Berlin definition of ARDS:An expanded rationale,

justification, and supplementary material. Intensive Care Medicine 38: 1573-1582, 2012 3)Hudson LD, Steinberg KP:Epidemiology of acute lung injury and ARDS. Chest 116:74S-82S, 1999 4)Gajic O, Dabbagh O, Park PK, et al:Early identification of patients at risk of acute lung injury.

Evaluation of lung injury prediction score in a multicenter cohort study. Am J Respir Crit Care Med 183:462-470, 2011 5)Calfee CS, Delucchi K, Parsons PE, et al:Subphenotypes in acute respiratory distress syndrome:

latent class analysis of data from two randomised controlled trials. Lancet Respir Med 2:611-620, 2014 6)Thille AW, Esteban A, Fernandez-Segoviano P, et al:Comparison of the Berlin definition for acute

respiratory distress syndrome with autopsy. Am J Respir Crit Care Med 187(7):761-767, 2013 7)Patel SR, Karmpaliotis D, Ayas NT, et al:The open-lung biopsy in ARDS. Chest 125(1):197-202, 2004 8)Cardinal-Fernández P, Esteban A, Thompson TB, et al:ARDS:lessons learned from the heart. Chest

147:7-8, 2015 9)Guerin C, Bayle F, Leray V, et al:Open lung biospy in nonresolving ARDS frequently identifies diffuse
p.56
alveolar damage regardless of the severity stage and may have implications for patient management. Intensive Care Med 41:222-230, 2015 10)Rice TW, Wheeler AP, Bernard GR, et al:Comparison of the SpO2/FIO2 ratio and the PaO2/FIO2

ratio in patients with acute lung injury or ARDS. Chest 132:410-417, 2007 11)Festic E, Bansal V, Kor DJ, et al:SpO2/FiO2 ratio on hospital admission is an indicator of early acute

respiratory distress syndrome development among patients at risk. J Intensive Care Med 30:209-216,

2015 12)Murray JF, Matthay MA, Luce JM, et al:An expanded definition of the adult respiratory distress

syndrome. Am Rev Respir Dis 138:720-723, 1988 13)Ware L, Matthay, M:Clinical practice. Acute pulmonary edema. N Engl J Med 353:2788–2796, 2005 14)Zompatori M, Ciccarese F, Fasano L:Overview of current lung imaging in acute respiratory distress

syndrome. Eur Respir Rev 23:519-530, 2014 15)Schmickl CN, Shahjehan K, Li G, et al:Decision support tool for early differential diagnosis of acute

lung injury and cardiogenic pulmonary edema in medical critically ill patients. Chest 141:43-50, 2012 16)Schmickl CN, Pannu S, Al-Qadi MO, et al:Decision support tool for differential diagnosis of acute

respiratory distress syndrome vs cardiogenic pulmonary edema (CPE):a prospective validation and meta-analysis. Crit Care 18:659, 2014 17)Ichikado, K:High-resolution computed tomography findings of acute respiratory distress syndrome,

acute interstitial pneumonia, and acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis. Semin Ultrasound CT MR 35:39-46, 2014 18)Ichikado K, Muranaka H, Gushima Y, et al:Fibroproliferative changes on high-resolution CT in the

acute respiratory distress syndrome predict mortality and ventilator dependency:a prospective observational cohort study. BMJ Open 2:e000545, 2012 19)Matos GFJ, Stanzani F, Passos RH, et al:How large is the lung recruitability in early acute respiratory

distress syndrome:a prospective case series of patients monitored by computed tomography. Crit Care 16:R4, 2012 20)Eisner MD, Thompson BT, Schoenfeld D, et al:Airway pressures and early barotrauma in patients

with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 165:978- 982, 2002 21)Gattinoni L, Bombino M, Pelosi P, et al:Lung structure and function in different stages of severe adult

respiratory distress syndrome. JAMA 271:1772-1779, 1994 22)Gattinoni L, Caironi P, Cressoni M, et al:Lung recruitment in patients with the acute respiratory

distress syndrome. N Engl J Med 354:1775-1786, 2006 23)Burham EL, Hyzy RC, Paine III R, et al:Detection of fibroproliferation by chest high-resolution CT

scan in resolving ARDS. Chest 146:1196-1204, 2014 24)Burham EL, Hyzy RC, Paine III R, et al:Chest CT features are associated with poorer quality of life in

acute lung injury survivors. Crit Care Med 41:445-456, 2013 25)Boissier F, Katsahian S, Razazi K, et al:Prevalence and prognosis of cor pulmonale during protective

ventilation for acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 39:1725-1733, 2013 26)Kushimoto S, Endo T, Yamanouchi S, et al:Relationship between extravascular lung water and

severity categories of acute respiratory distress syndrome by the Berlin definition. Crit Care 17:R132, 2013 27)Zompatori M, Ciccarese F, Fasano L:Overview of current lung imaging in acute respiratory distress

syndrome. Eur Respir Rev 23:519-530, 2014 28)Volpicelli G, Elbarbary M, Blaivas M, et al:International evidence-based recommendations for point-

of-care lung ultrasound. Intensive Care Med 38:577-591, 2012 29)Chiumello D, Froio S, Bouhemad B, et al:Clinical review:Lung imaging in acute respiratory distress
p.57
syndrome patients--an update. Crit Care 17:243, 2013 30)Koenig SJ, Narasimhan M, Mayo PH:Thoracic ultrasonography for the pulmonary specialist. Chest

140:1332-1341, 2011 31)Lichtenstein D, Goldstein I, Mourgeon E, et al:Comparative diagnostic performances of auscultation,

chest radiography, and lung ultrasonography in acute respiratory distress syndrome. Anesthesiology 100:9-15, 2004 32)Koegelenberg CF, von Groote-Bidlingmaier F, Bolliger CT:Transthoracic ultrasonography for the

respiratory physician. Respiration 84:337-350, 2012 33)Bouhemad B, Brisson H, Le-Guen M, et al:Bedside ultrasound assessment of positive end-expiratory

pressure-induced lung recruitment. Am J Respir Crit Care Med 183:341-347, 2011 34)Zhao Z, Jiang L, Xi X, et al:Prognostic value of extravascular lung water assessed with lung

ultrasound score by chest sonography in patients with acute respiratory distress syndrome. BMC Pulm Med 15:98, 2015 35)Bajwa EK, Khan UA, Januzzi JL, et al:Plasma C-reactive protein levels are associated with improved

outcome in ARDS. Chest 136:471-480, 2009 36)Forfia PR, Watkins SP, Rame JE, et al:Relationship between B-type natriuretic peptides and

pulmonary capillary wedge pressure in the intensive care unit. J Am Coll Cardiol 45:1667-1671, 2005 37)Karmpaliotis D, Kirtane AJ, Ruisi CP, et al:Diagnostic and prognostic utility of brain natriuretic

Peptide in subjects admitted to the ICU with hypoxic respiratory failure due to noncardiogenic and cardiogenic pulmonary edema. Chest 131:964-971, 2007 38)Bajwa EK, Januzzi JL, Gong MN, et al:Prognostic value of plasma N-terminal probrain natriuretic

peptide levels in the acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 36:2322-2327, 2008 39)Ishizaka A, Matsuda T, Albertine KH, et al:Elevation of KL-6, a lung epithelial cell marker, in plasma

and epithelial lining fluid in acute respiratory distress syndrome. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 286:L1088-1094, 2004 40)Nakashima T, Yokoyama A, Inata J, et al:Mucin carrying selectin ligands as predictive biomarkers of

disseminated intravascular coagulation complication in ARDS. Chest 139:296-304, 2011 41)Libby LJ, Gelbman BD, Altorki NK, et al:Surgical lung biopsy in adult respiratory distress syndrome:

a meta-analysis. Ann Thorac Surg 98:1254-1260, 2014 42)Papazian L, Doddoli C, Chetaille B, et al:A contributive result of open-lung biopsy improves survival

in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 35:755-762, 2007 43)Maldonado F, Parambil JG, Yi ES, et al:Haemosiderin-laden macrophages in the broncoalveolar lavage

fluid of patients with diffuse alveolar damage. Eur Respir J 33:1361-1366, 2009 44)Sprung CL, Rackow EC, Fein IA, et al:The spectrum of pulmonary edema:differentiation of

cardiogenic, intermediate, and noncardiogenic forms of pulmonary edema. Am Rev Respir Dis 124: 718-722, 1981 45)Colucci G, Domenighetti G, Della Bruna R, et al:Comparison of two non-bronchoscopic methods for

evaluating inflammation in patients with acute hypoxaemic respiratory failure. Crit Care 13:R134, 2009 46)Roca O, Gomez-Olles S, Cruz MJ, et al:Effects of salbutamol on exhaled breath condensate biomarkers

in acute lung injury:prospective analysis. Crit Care 12:R72, 2008 47)Becker KL, Nylen ES, White JC, et al:Clinical review 167:Procalcitonin and the calcitonin gene

family of peptides in inflammation, infection, and sepsis:a journey from calcitonin back to its precursors. J Clin Endocrinol Metab 89:1512-1525, 2004 48)Assicot M, Gendrel D, Carsin H, et al:High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis

and infection. Lancet 341:515-518, 1993
p.58
49)Brunkhorst FM, Eberhard OK, Brunkhorst R:Discrimination of infectious and noninfectious causes of

early acute respiratory distress syndrome by procalcitonin. Crit Care Med 27:2172-2176, 1999 50)Muller B, Becker KL, Schachinger H, et al:Calcitonin precursors are reliable markers of sepsis in a

medical intensive care unit. Crit Care Med 28:977-983, 2000 51)Harbarth S, Holeckova K, Froidevaux C, et al:Diagnostic value of procalcitonin, interleukin-6, and

interleukin-8 in critically ill patients admitted with suspected sepsis. Am J Respir Crit Care Med 164: 396-402, 2001 52)Tseng JS, Chan MC, Hsu JY, et al:Procalcitonin is a valuable prognostic marker in ARDS caused by

community-acquired pneumonia. Respirology 13:505-509, 2008 53)Tsantes A, Tsangaris I, Kopterides P, et al:The role of procalcitonin and IL-6 in discriminating

between septic and non-septic causes of ALI/ARDS:a prospective observational study. Clin Chem Lab Med 51:1535-1542, 2013 54)Tang L, Zhao Y, Wang D, et al:Endocan levels in peripheral blood predict outcomes of acute

respiratory distress syndrome. Mediators Inflamm 2014:625180, 2014 55)Shirakawa K, Naitou K, Hirose J, et al:Presepsin (sCD14-ST):development and evaluation of one-

step ELISA with a new standard that is similar to the form of presepsin in septic patients. Clin Chem Lab Med 49:937-939, 2011 56)Liu B, Yin Q, Chen YX, et al:Role of Presepsin (sCD14-ST) and the CURB65 scoring system in

predicting severity and outcome of community-acquired pneumonia in an emergency department. Respir Med 108:1204-1213, 2014 57)Ware LB, Matthay MA, Parsons PE, et al:Pathogenetic and prognostic significance of altered

coagulation and fibrinolysis in acute lung injury/acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 35:1821-1828, 2007 58)Ware LB, Eisner MD, Thompson BT, et al:Significance of von Willebrand factor in septic and

nonseptic patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 170:766-772, 2004 59)Calfee CS, Eisner MD, Parsons PE, et al:Soluble intercellular adhesion molecule-1 and clinical

outcomes in patients with acute lung injury. Intensive Care Med 35:248-257, 2009 60)Calfee CS, Gallagher D, Abbott J, et al:Plasma angiopoietin-2 in clinical acute lung injury:Prognostic

and pathogenetic significance. Crit Care Med 40:1731-1737, 2012 61)Eisner MD, Parsons P, Matthay MA, et al:Plasma surfactant protein levels and clinical outcomes in

patients with acute lung injury. Thorax 58:983-988, 2003 62)Calfee CS, Ware LB, Eisner MD, et al:Plasma receptor for advanced glycation end products and

clinical outcomes in acute lung injury. Thorax 63:1083-1089, 2008 63)Sato H, Callister ME, Mumby S, et al:KL-6 levels are elevated in plasma from patients with acute

respiratory distress syndrome. Eur Respir J 23:142-145, 2004 64)Greene KE, Wright JR, Steinberg KP, et al:Serial changes in surfactant-associated proteins in lung

and serum before and after onset of ARDS. Am J Respir Crit Care Med 160:1843-1850, 1999 65)Parsons PE, Eisner MD, Thompson BT, et al:Lower tidal volume ventilation and plasma cytokine

markers of inflammation in patients with acute lung injury. Crit Care Med 33:1-6;discussion 230- 232, 2005 66)Meduri GU, Headley S, Kohler G, et al:Persistent elevation of inflammatory cytokines predicts a poor

outcome in ARDS. Plasma IL-1 beta and IL-6 levels are consistent and efficient predictors of outcome over time. Chest 107:1062-1073, 1995 67)Meduri GU, Kohler G, Headley S, et al:Inflammatory cytokines in the BAL of patients with ARDS.

Persistent elevation over time predicts poor outcome. Chest 108:1303-1314, 1995 68)Ueno H, Matsuda T, Hashimoto S, et al:Contributions of high mobility group box protein in
p.59
experimental and clinical acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 170:1310-1316, 2004 69)Parsons PE, Matthay MA, Ware LB, et al:Elevated plasma levels of soluble TNF receptors are

associated with morbidity and mortality in patients with acute lung injury. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 288:L426-431, 2005 70)Ware LB, Koyama T, Billheimer DD, et al:Prognostic and pathogenetic value of combining clinical and

biochemical indices in patients with acute lung injury. Chest 137:288-296, 2010 71)Calfee CS, Ware LB, Glidden DV, et al:Use of risk reclassification with multiple biomarkers improves

mortality prediction in acute lung injury. Crit Care Med 39:711-717, 2011 72)Takala A, Jousela I, Takkunen O, et al:A prospective study of inflammation markers in patients at

risk of indirect acute lung injury. Shock 17:252-257, 2002 73)Donnelly SC, Strieter RM, Kunkel SL, et al:Interleukin-8 and development of adult respiratory

distress syndrome in at-risk patient groups. Lancet 341:643-647, 1993 74)Agrawal A, Matthay MA, Kangelaris KN, et al:Plasma angiopoietin-2 predicts the onset of acute lung

injury in critically ill patients. Am J Respir Crit Care Med 187:736-742, 2013 75)Terpstra ML, Aman J, van Nieuw Amerongen GP, et al:Plasma biomarkers for acute respiratory

distress syndrome:A systematic review and meta-analysis*. Crit Care Med 42:691-700, 2014 76)Fremont RD, Koyama T, Calfee CS, et al:Acute lung injury in patients with traumatic injuries:

Utility of a panel of biomarkers for diagnosis and pathogenesis. J Trauma 68:1121-1127, 2010 77)Ware LB, Koyama T, Zhao Z, et al:Biomarkers of lung epithelial injury and inflammation distinguish

severe sepsis patients with acute respiratory distress syndrome. Crit Care 17:R253, 2013 78)Calfee CS, Janz DR, Bernard GR, et al:Distinct molecular phenotypes of direct versus indirect ARDS

in single and multi-center studies. Chest 147:1539-1548, 2015 79)Forel JM, Guervilly C, Hraiech S, et al:Type III procollagen is a reliable marker of ARDS-associated

lung fibroproliferation. Intensive Care Med 41:1-11, 2015 80)Meyer NJ:Future clinical applications of genomics for acute respiratory distress syndrome. Lancet

Respir Med 1:793-803, 2013 81)Ware LB, Fang X, Matthay MA:Protein C and thrombomodulin in human acute lung injury. Am J

Physiol Lung Cell Mol Physiol 285:L514-521, 2003 82)Sapru A, Calfee CS, Liu KD, et al:Plasma soluble thrombomodulin levels are associated with mortality

in the acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 41:470-478, 2015 83)Okajima K, Harada N, Sakurai G, et al:Rapid assay for plasma soluble E-selectin predicts the

development of acute respiratory distress syndrome in patients with systemic inflammatory response syndrome. Transl Res 148:295-300, 2006 84)Thickett DR, Armstrong L, Christie SJ, et al:Vascular endothelial growth factor may contribute to

increased vascular permeability in acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 164:1601-1605, 2001 85)Thickett DR, Armstrong L, Millar AB:A role for vascular endothelial growth factor in acute and

resolving lung injury. Am J Respir Crit Care Med 166:1332-1337, 2002 86)Katayama M, Ishizaka A, Sakamoto M, et al:Laminin gamma2 fragments are increased in the

circulation of patients with early phase acute lung injury. Intensive Care Med 36:479-486, 2010 87)Kropski JA, Fremont RD, Calfee CS, et al:Clara cell protein (CC16), a marker of lung epithelial injury,

is decreased in plasma and pulmonary edema fluid from patients with acute lung injury. Chest 135: 1440-1447, 2009 88)Dolinay T, Kim YS, Howrylak J, et al:Inflammasome-regulated cytokines are critical mediators of

acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 185:1225-1234, 2012 89)Matute-Bello G, Liles WC, Radella F 2nd, et al:Modulation of neutrophil apoptosis by granulocyte
p.60
colony-stimulating factor and granulocyte/macrophage colony-stimulating factor during the course of acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 28:1-7, 2000 90)Jain M, Budinger GR, Lo A, et al:Leptin promotes fibroproliferative acute respiratory distress

syndrome by inhibiting peroxisome proliferator-activated receptor-γ. Am J Respir Crit Care Med 183: 1490-1498, 2011 91)McClintock DE, Ware LB, Eisner MD, et al:Higher urine nitric oxide is associated with improved

outcomes in patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 175:256-262, 2007 92)Albertine KH, Soulier MF, Wang Z, et al:Fas and fas ligand are up-regulated in pulmonary edema

fluid and lung tissue of patients with acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. Am J Pathol 161:1783-1796, 2002 93)Madtes DK, Rubenfeld G, Klima LD, et al:Elevated transforming growth factor-alpha levels in

bronchoalveolar lavage fluid of patients with acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 158:424-430, 1998 94)Verghese GM, McCormick-Shannon K, Mason RJ, et al:Hepatocyte growth factor and keratinocyte

growth factor in the pulmonary edema fluid of patients with acute lung injury. Biologic and clinical significance. Am J Respir Crit Care Med 158:386-394, 1998 95)Pugin J, Verghese G, Widmer MC, et al:The alveolar space is the site of intense inflammatory and

profibrotic reactions in the early phase of acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 27:304- 312, 1999
p.61
鑑別診断

1994 年に発表されたAECC の診断基準で指摘されたと同様に,Berlin 定義においても,鑑別すべき病態は少なくない1 ~3).すなわち臨床の場において非心原性で急性の低酸素血症があり胸部X 線上両側性陰影を呈す疾患はすべてARDS として差し支えないわけであるが,治療反応性や予後の違いから臨床上は区別すべき症例がある.そこで本項ではARDS 診療においてその鑑別が必要な疾患についてその要点を述べる.

1 心原性肺水腫(心不全)

両側の浸潤陰影をきたす呼吸不全患者において,心不全はARDS と鑑別すべき最も重要な疾患である3).ただ,重症敗血症や敗血症性ショックでは心筋傷害をきたす(septic myocardial dysfunction)ことから,心不全の合併は常に考慮する必要がある.

報告によっては,60% 以上の頻度で左心収縮・拡張障害や右心障害を合併する4).Berlin 定義では,心不全や輸液負荷で説明し得ない点を挙げ,臨床医の判断が求められている1, 2).従来ARDS と心原性肺水腫との鑑別として肺動脈楔入圧測定が重要視されてきたが,右心カテーテル挿入は,その予後に悪影響を与えるとの報告もあり5),安全性を考慮すると理学的所見や非侵襲的検査で心不全の有無を確認するのが現実的である.超音波心エコー法(UCG)は左室収縮能の評価に用いられる.虚血性心疾患や拡張型心筋症に伴う心不全では収縮能が低下している.その一方で,高齢者を中心に収縮能正常な拡張不全による心不全例が少なくないため,UCG での駆出率だけで心不全は除外できない6).特に拡張不全は,肺水腫を合併しやすいため注意が必要である.BNP は収縮不全と拡

●心原性肺水腫は,ARDS に併発する場合も少なくない.定型例は比較的容易に鑑

別できる場合も多いが,合併例では臨床医の判断が求められる. ●特発性間質性肺炎の中で,病理学的にはARDS と同等であるが基礎疾患を有し

ない急性間質性肺炎および特発性器質化肺炎との鑑別に注意する. ●鑑別にあげたこれらの疾患でも,Berlin 定義を満たす場合はARDS として対処し

て差し支えないが,鑑別を行った上で個々の治療に努めるべきである. ●高分解能CT 所見は,各病態の鑑別に有用であろう.

7
p.62
張不全どちらの心不全でも上昇しているため,鑑別には非常に有用である(第6 章参照).胸部X線では,左房圧上昇の初期には両側上肺野の血管影の増強(アントラーズサイン),右優位の胸水貯留が認められ,進行とともに間質浮腫の所見であるKerley ラインや左右B3b 気管支壁の腫大像であるcuffing サインなどの所見がみられる.さらに肺胞水腫に至ると,両側肺門を中心とした浸潤陰影(butterfly shadow)を呈する7).胸部CT像は,いずれも初期から両側背側の荷重部領域に浸潤陰影がみられるが心原性の方が肺門を中心とした陰影がみられることが多い.また,心原性では,間質浮腫の所見として,小葉間隔壁肥厚像や気管支血管束の腫大像,葉間肥厚像に加え,右優位の胸水貯留が確認されることが多い8, 9).高分解能CT 上,ARDS での増殖期にみられる気管支拡張像などの構造改変の所見を伴うことはない.気管支肺胞洗浄液(BALF)は,ARDS では,好中球の増加が著明であるのに比し(特に敗血症に起因するARDS) 10, 11),心不全では好中球の増加が少ないことが鑑別となる.通常,肺における水分移動能が保たれているので心不全の治療が奏効すれば速やかに肺水腫は軽快しうる.

2 慢性経過の間質性肺炎/

肺線維症の急性増悪

特発性や膠原病などに伴う慢性間質性肺炎や肺線維症の経過観察中の急性増悪は,病理学的にARDSと同じびまん性肺胞傷害(DAD)を呈するため鑑別が問題となる.間質性肺炎の急性増悪や後述するAIP をARDS と同じ病態と捉える考え方もあるが,現状では別な疾患として考えたほうが良いと思われる.急性増悪の場合,既存の間質性病変を示唆する所見があれば,その鑑別は容易であるが,既存の間質性肺炎が軽度で急性増悪をきたした場合,鑑別が困難な場合がある3).両側肺底部の蜂巣肺所見があれば,急性増悪が示唆される12).これに関して,肺癌外科手術後のARDS は,術前に無症状であっても術前CT で,間質性肺炎の所見がみられる例で有意に高いとの報告があり,術後ARDS がsub-

clinical な間質性肺炎の急性増悪である可能性がある13).

3 急性間質性肺炎

急性間質性肺炎 (acute interstitial pneumonia; AIP)は1986 年にKatzenstein により提唱された疾患であり,急性の呼吸不全で発症し,病理学的にはDAD を呈する原因不明の疾患であり,特発性間質性肺炎の一つである14).特発性間質性肺炎の新たな国際ガイドラインでは,特発性器質化肺炎とともに,急性/ 亜急性のカテゴリーに分類されている15).基礎疾患のない比較的健康人に発症し,原因が特定できない.臨床所見はARDS よりは緩徐な経過が多い.胸部X線,CTによる鑑別は通常できないが,急性間質性肺炎では,気管支拡張や蜂巣肺所見がみられることが多く,下肺優位で左右対称性のことが多いとされる16).BALF では,淡血性から血性で,好中球増加が多いが,ときにリンパ球の増加が観察される.

4 特発性器質化肺炎

特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia;COP)は,2013 年の国際ガイドラインでは,特発性間質性肺炎の主たる6 型に分類されるものの1型であり,急性間質性肺炎と同様に,急性/亜急性のカテゴリーに分類される15).本症は,亜急性に経過することが多く,この点でARDS と異なるが,ときに急速に進行し高度の呼吸不全を呈すことがあること,またステロイド剤が有効であることよりARDS との鑑別を要する.胸部X 線像について前章でも述べたが,その他の所見として,容積減少を伴う浸潤影を特徴とし,その分布は気管支血管影や外側胸膜に沿って認められる15).BALF 所見では,リンパ球比の増加,好中球比率の軽度増加,CD4/CD8 の低下がみられる17).
p.63
COP の診断は,二次性に器質化肺炎をきたす病態の除外と,最終的には肺生検所見による.

5 肺 炎

細菌性肺炎,非定型肺炎を問わず両側肺に浸潤陰影を伴い,Berlin 定義を満たす場合には,ARDS と診断する.しかしながらこの定義に当てはまらない場合は単なる肺炎と診断する.このように定義自体が曖昧な故に,しばしば混乱をきたす原因となっている.日本呼吸器学会の重症度基準に基づく市中肺炎起炎病原体の中で,重症・超重症に分類されるものとして頻度の多い順に,肺炎球菌,インフルエンザウイルス,レジオネラ菌が報告されている18).非定型肺炎としては,マイコプラズマ肺炎,オーム病,日和見感染病原体としてのニューモシスチス肺炎などがあげられる.マイコプラズマ肺炎は比較的若年者の健常者にみられることが多く,白血球は正常のことが多い.オウム病では,鳥の飼育歴および白血球増加が乏しいことが診断上重要である.ウイルス性疾患の中で,インフルエンザウイルス肺炎は,ウイルスそのものによる原発性肺炎と二次感染(肺炎球菌,黄色ブドウ球菌が多い)に伴うもの,さらにその混合型がある.H1N1 型インフルエンザは,慢性肺疾患や糖尿病など基礎疾患を有する30 ~40歳代に原発性ウイルス性肺炎からのARDS を起こし易いことが報告されている19).この点は,季節性インフルエンザが,高齢者で重症化し易く,二次感染に伴う肺炎が多いことと対照的である.サイトメガロウイルス肺炎の多くは,細胞性免疫低下例に発症する.ニューモシスチス肺炎も細胞性免疫低下例に発症するが,早期から呼吸困難が強く,人工呼吸管理となる例が多く,ARDS の中でステロイドがある程度有効ではないかとされているのも本疾患の特徴である20).またBAL による病原体の検出による診断上の有用性が高い.レジオネラ肺炎は,呼吸器症状のほか,頭痛,意識障害など神経症状を伴うことが多いのが特徴であり,尿中抗原による迅速診断が可能である. 6 過敏性肺炎

本邦の厚労省研究班での165 症例の全国疫学調査では,鳥関連52%,夏型20%,夏型以外の住宅関連16%,加湿器肺1% と鳥関連が最多であった21).本症の鑑別には,まず鳥への接触環境歴(鶏糞肥料や羽毛布団の使用を含めて),農夫などの職歴,住宅環境,空調,加湿器,有機粉塵抗原曝露などの病歴聴取と,これら環境離脱後の症状改善が診断上重要である.胸部X 線では,中・下肺野を中心とするびまん性小粒状陰影,軽症ではすりガラス状陰影であり,高分解能CT では,小葉中心性の淡い小粒状陰影が特徴的である.抗原との隔離により自然軽快することがあるのも鑑別点となる.BALF 中の活性化リンパ球が増加し,夏型過敏性肺臓炎では,CD8 リンパ球の増加が特徴であるが鳥飼病,農夫肺では一定の傾向がみられない22).

7 急性好酸球性肺炎

急性好酸球性肺炎は,急激に進行する好酸球浸潤を伴った肺胞炎を呈する疾患である23).しばしば急速進行性の呼吸不全を呈するため,ARDS との鑑別が必要になる.画像上は,両側性のすりガラス状陰影と浸潤影をすることが多いが,心不全でみられるようなリンパうっ滞所見(小葉間隔壁肥厚像,気管支血管束の腫大像)や両側胸水所見を高率に認めるのが特徴である.喫煙との関連が示唆されており24).特に喫煙を開始してから1 ヵ月以内の発症が多い.その他にも粉塵の吸入やミノサイクリンなどの薬剤によるものが報告されている.血液中の好酸球数増加を伴わないため診断困難な場合が多いが,ARDS に進展するような基礎疾患を持たず,前述のような病歴がある場合に,BALF を採取して好酸球数の増加(25%以上)を確認することで診断される.ステロイドが著効することも特徴の一つである.
p.64
8 粟粒結核

原因不明のARDS では,粟粒結核を鑑別診断に入れなければならない25).一般に粟粒結核で胸部X 線上,全肺野に直径3mm 以下の小結節がみられ,診断は比較的容易である.しかし重症例では,胸部X 線の陰影が癒合し粟粒影が指摘できにくくARDSとの鑑別が困難となる.喀痰や尿中に抗酸菌を認めることは少なく,組織検査で診断されることも多い. BAL は,抗酸菌の検出およびそれに伴う治療方針決定に有用である.

9 びまん性肺胞出血

両側肺のびまん性浸潤陰影を示す急性疾患として肺胞出血が挙げられる.多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangitis;GPA)/ ウェゲナー肉芽腫症(WG),SLE, 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis;EGPA),顕微鏡的多発動脈炎(microscopic polyangiitis;MPA)などに伴う肺疾患を含めたANCA 関連肺疾患,Goodpasture 症候群,薬剤などがその原因として重要である26).高分解能CT画像上は,最外層の胸膜下がスペアされ,すりガラス状陰影や浸潤影の所見がみられる.病変の初期や吸収過程では小葉中心性の濃度上昇域がみられる27).肺胞出血の診断には,発症早期のBAL が有用である.BALF の性状が血性であること,細胞診でヘモジデリンを貪食したマクロファージの存在を確認することが診断の根拠となる.GPA では30 ~70%にPR3-ANCA 陽性であり,EGPA では,先行する気管支喘息,末梢神経症状,末梢血好酸球増多, MPO-ANCA 陽性などが鑑別のポイントである.また,MPA ではMPO-ANCA, Goodpasture 症候群では抗基底膜抗体が診断の助けとなる.また薬剤性ではアミオダロン,ピロピルチオウラシルなどの服用歴が参考となる. 10 癌性リンパ管症

癌性リンパ管症は,胃癌,肺癌,乳癌,膵臓癌,前立腺癌などの原発巣からの肺転移の一形態であり,胸部X 線上びまん性間質性陰影を呈すことがあり,ARDS との鑑別を要す.癌の原発巣が明らかな場合には,本症を疑う根拠となるが,癌性リンパ管症を初発症状として来院する場合もあるため, ARDS 様症状がある場合には,常に本症を考慮にいれ,速やかに癌原発巣の検索を行う必要がある.胸部X 線では,肺門から末梢に広がる索状陰影,びまん性網状・線状陰影,Kerley B line,胸膜浮腫,肺門や縦隔リンパ節腫脹,胸水貯留など多彩であるが22),進行例ではARDS との鑑別は困難である.高分解能CT で,気管支血管束の腫大や小葉間隔壁肥厚像など,リンパ管の存在する広義間質の肥厚所見が手がかりとなり,確定診断には組織学的アプローチが必要で,経気管気管支肺生検(TBLB)やBAL が有用な診断法となる.

11 薬剤性肺障害

薬剤性肺障害は,さまざまな病理像を呈して発症するが,非心原性肺水腫もしくは組織学的にDADを呈しARDS 様の病態を示すと報告されている薬剤について表7-1 にまとめた28, 29).発生機序については,免疫賦活化による作用と細胞障害性の機序が考えられる.診断は,除外診断であり,心不全,肺胞出血,重症感染症などとの鑑別が必要である.再投与で同様の症状が惹起される.早期の段階では薬物の中止により軽快するが, gefitinib のように急速にARDS と同様の病態を呈する場合は致死的となりうる.抗癌剤を主とする薬剤性によるARDS とそれ以外の原因によるARDSの予後比較では,薬剤性の場合,予後が不良との報告もある28).Gefitinib に伴う肺障害について,本邦での大規模コホート研究から,肺障害のリスク因子として,高齢者で,既存の間質性肺疾患を有する
p.65
喫煙者もしくは,performance status の低下例であることが報告されており,肺障害は投与開始後4 週以内に多い30).治療薬として副腎皮質ステロイド薬を用いることが多いが効果についての評価は定まっていない.

12 その他の

非心原性肺水腫31, 32)

毛細血管壁を介する液体の移動は,Starling の式により規定される. Qf=Kf〔(Pmv-Ppmv)-σ(πmv-πpmv)〕Qf:血管外へ流出する液体量Kf:濾過係数σ:反撥係数P およびπ:それぞれ静水圧および膠質浸透圧mv およびpmv:それぞれ血管内および血管外肺水腫の発生機序は,Pmv の上昇およびπmv の低下によるhigh pressure edema(HP)と,肺血管透過性の亢進,すなわちKf の増加およびσの減少によるincreased permeability edema(IP)とに分類される.心原性肺水腫は,Pmv(肺静脈圧)の上昇によるHP である.一方,非心原性肺水腫の発生機序は複雑である.一般的には,IP による肺水腫のことが多いが,HP によるものあるいは両者によることもある. a. 過剰輸液Pmv の上昇およびπmv の減少があり,HP に基づく肺水腫が惹起される.しかし,肺リンパの搬出能を凌駕し肺水腫を引き起こすには4 ~5 L/hr の大量の輸液が必要であり,日常臨床ではまず起こりえない.しかし,基礎に心不全や腎不全が存在すると,十分に起こりえる. b. 再膨張性肺水腫(re-expansion pulmonary edema)気胸あるいは胸水貯留時の胸腔穿刺による脱気あるいは胸水除去の際に主として病側肺に発生する肺水腫である.肺虚脱の程度,その持続期間および吸

引圧の大なるほどその発生頻度は増加する.本症の発生機序として,吸引時の胸腔内圧の低下,肺虚脱に伴う肺surfactant の減少,リンパ管および肺静脈のうっ滞,血管透過性物質の出現等の種々の因子が考えられている. c. 褐色細胞種Norepinephrine の静脈内投与により肺水腫を惹起する.褐色細胞腫における肺水腫の発生秩序として,カテコラミンの過剰分泌による機序が考えられている. d. 神経原性肺水腫(neurogenic pulmonary edema)くも膜下出血,痙攣発作後など急性で重症の中枢神経系障害に伴う肺水腫である.主な発生機序としては,脳室圧の上昇が交感神経系の興奮あるいは血中norepinephrine およびepinephrine の増加を惹起し,左室機能不全あるいは肺静脈収縮によりPmv が上昇しHP タイプの肺水腫が発生するものと考えられている.水腫液と血清との膠質浸透圧比がほぼ等しいことにより本症の発生機序としてIPの関与を推定する報告もある.その他の発生要因として,肺微小血栓および交感神経系の興奮による肺リンパ管の収縮なども考えられている. e. 高地肺水腫(high altitude pulmonary edema;HAPE)心肺疾患のない健常人が海抜約2, 600m 以上の高地に急速に到達した際に発症する.その発生機序は未だ十分解明されていない.肺動脈楔入圧や心拍量は正常で著明な肺高血圧がみられる.本症の特徴は,低地移送によりすみやかに軽快すること,個体の感受性が存在することである.発症には,低酸素に対する著明な肺高血圧が関係しているが十分に解明されていない.脳浮腫の合併も示唆され,神経原性肺水腫の関与も指摘されている.
p.66
f. 陰圧性肺水腫(negative pressure pulmonary edema;NPPE)

上部気道閉塞による過度の吸気努力に伴って,胸腔内が高度の陰圧状態となって発症する.約半数は上部気道手術症例であり,上部気道閉塞症例の約10% の症例に多くは数分以内で発症し,若年成人

男性に多い傾向がある.肥満や睡眠時無呼吸症候群など,術前の上部気道狭窄との関連も挙げられている.急性喉頭蓋炎なども原因となる.陽圧換気により12 ~24 時間以内での改善が得られ,予後は良好である.

表7-1 ●肺水腫, ARDS をきたしうる薬剤1)抗癌薬および免疫抑制薬Cytarabine arabinoside * Gefitinib

* Gemcitabine Immune globulin Infliximab

*

Interleukin Leflunomide * Lymphocyte immune globulin * Methotrexate Mitomycin Muromonab-CD3 Pentostatin Recombinant granulocyte-macrophage colony stimulating factor

*

Tretinoin Vinca alkaloids * 2)心血管系薬Amiodarone * Ca channel blockers Amlodine Nifedipine Nisoldipine Verapamil Epinephrine Phenylephrine Propranolol 3)呼吸器病薬Epoprostenol Nitric Oxide 4)生物学的製剤Infliximab Etanercept Adalimumab 5)腎臓病薬Acetazolamide Chlorothiazide/Hydrochlorothiazide 6)向神経薬,向精神薬Ethchlorvynol Phenothiazines Tricyclic antidepressants 7)鎮痛薬Aspirin Methadone Morphine Propoxyphene 8)分娩薬Ergonovine Oxytocin Tocolytic agents 9)造影剤10) その他Nitrofurantoin Heroin Protamine Talc

* Granulocyte-macrophage colony stimulating factor防水スプレー

*:病理学的にDAD の所見が報告されているもの(文献33 を参照して作成)

■ 文 献1)Ferguson ND, Fan E, Camporota L, et al:The Berlin definition of ARDS:an expanded rationale,

justification, and supplementary material. Intensive Care Med 38:1573-1582, 2012 2)Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al:Acute respiratory distress syndrome:the Berlin

Definition. JAMA 307:2526-2533, 2012 3)Guerin C, Thompson T, Brower R:The ten diseases that look like ARDS. Intensive Care Med 41:

1099-1102, 2015 4)Pulido JN, Afessa B, Masaki M, et al:Clinical spectrum, frequency, and significance of myocardial
p.67
dysfunction in severe sepsis and septic shock. Mayo Clin Proc 87:620-628, 2012 5)Connors AF Jr, Speroff T, Dawson NV, et al:The effectiveness of right heart catheterization in the

initial care of critically ill patients. SUPPORT Investigators. JAMA 276:889-897, 1996 6)急性心不全治療ガイドライン(2011 年改訂版):循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010 年度合

同研究班報告),2011 http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_izumi_h.pdf 2011 7)Ware LB, Matthay MA:Clinical practice. Acute pulmonary edema. N Engl J Med 353:2788-2796, 2005 8)Pelosi P, Crotti S, Brazzi L, et al:Computed tomography in adult respiratory distress syndrome:what

has it taught us? Eur Respir J 9:1055-1062, 1996 9)Komiya K, Ishii H, Murakami J, et al:Comparison of chest computed tomography features in the acute

phase of cardiogenic pulmonary edema and acute respiratory distress syndrome on arrival at the emergency department. J Thorac Imaging 28:322-328, 2013 10)Steinberg KP, Milberg JA, Martin TR, et al:Evolution of bronchoalveolar cell populations in the adult

respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 150:113-122, 1994 11)Modig J, Hallgren R:Pathophysiologic significance of lung granulocytes in human adult respiratory

distress syndrome induced by septic or traumatic shock. Acta Chir Scand 153:267-271, 1987 12)Akira M, Kozuka T, Yamamoto S, et al:Computed tomography findings in acute exacerbation of

idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med  178:372-378, 2008 13)Fujimoto K, Taniguchi H, Johkoh T, et al:Acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis:high-

resolution CT scores predict mortality. Eur Radiol 22:83-92, 2012 14)Chida M, Ono S, Hoshikawa Y, et al:Subclinical idiopathic pulmonary fibrosis is also a risk factor of

postoperative acute respiratory distress syndrome following thoracic surgery. Eur J Cardiothorac Surg 34:878-881, 2008 15)Travis WD, Costabel U, Hansell DM, et al:An official American Thoracic Society/European

Respiratory Society statement:Update of the international multidisciplinary classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 188:733-748, 2013 16)Tomiyama N, Muller NL, Johkoh T, et al:Acute respiratory distress syndrome and acute interstitial

pneumonia:comparison of thin-section CT findings. J Comput Assist Tomogr 25:28-33, 2001 17)Izumi T, Kitaichi M, Nishimura K, et al:Bronchiolitis obliterans organizing pneumonia. Clinical

features and differential diagnosis. Chest 102:715-719, 1992 18)高柳 昇, 原 健, 徳永 大,他:市中肺炎入院症例の年齢別・重症度別原因微生物と予後. 日呼吸会誌

44:906-915, 2006 19)Kumar A, Zarychanski R, Pinto R, et al:Critically ill patients with 2009 influenza A(H1N1) infection in

Canada. JAMA 302:1872-1879, 2009 20)Bozzette SA, Sattler FR, Chiu J, et al:A controlled trial of early adjunctive treatment with

corticosteroids for Pneumocystis carinii pneumonia in the acquired immunodeficiency syndrome. California Collaborative Treatment Group. N Engl J Med 323:1451-1457, 1990 21)厚生労働省科学研究:びまん性肺疾患に関する調査研究班 平成21 年度研究報告書.  pp47-48, 2009 22)Ando M, Konishi K, Yoneda R, et al:Difference in the phenotypes of bronchoalveolar lavage

lymphocytes in patients with summer-type hypersensitivity pneumonitis, farmer's lung, ventilation pneumonitis, and bird fancier's lung:report of a nationwide epidemiologic study in Japan. J Allergy Clin Immunol 87:1002-1009, 1991 23)Cottin V, Cordier JF:Eosinophilic pneumonias. Allergy 60:841-857, 2005 24)Janz DR, O'Neal HR Jr, Ely EW:Acute eosinophilic pneumonia:A case report and review of the

literature. Crit Care Med 37:1470-1474, 2009 25)Kim JY, Park YB, Kim YS, et al:Miliary tuberculosis and acute respiratory distress syndrome. Int J

Tuberc Lung Dis 7:359-364, 2003
p.68
26)Lara AR, Schwarz MI:Diffuse alveolar hemorrhage. Chest 137:1164-1171, 2010 27)Primack SL, Miller RR, Muller NL:Diffuse pulmonary hemorrhage:clinical, pathologic, and imaging

features. AJR Am J Roentgenol 164:295-300, 1995 28)Dhokarh R, Li G, Schmickl CN, et al:Drug-associated acute lung injury:a population-based cohort

study. Chest 142:845-850, 2012 29)Kubo K, Azuma A, Kanazawa M, et al:Consensus statement for the diagnosis and treatment of drug-

induced lung injuries. Respir Investig 51:260-277, 2013 30)Kudoh S, Kato H, Nishiwaki Y, et al:Interstitial lung disease in Japanese patients with lung cancer:a

cohort and nested case-control study. Am J Respir Crit Care Med 177:1348-1357, 2008 31)Fishman A, Renkin E (eds):Pulmonary edema. Bethesda:America Physiological Society, 1979 32)Fraser R, Peter J (eds):Synopsis of Diseases of the Chest. Philadelphia:W. B. Saunders Co., 1994 33)Lee-Chiong T Jr, Matthay RA:Drug-induced pulmonary edema and acute respiratory distress

syndrome. Clin Chest Med 25:95-104, 2004
p.69
随伴する疾患・病態

ARDS は臨床症候群であり,それ自体が本来の疾患の合併症とも考えられるので,合併症という表現は避け,随伴疾患・病態とした.これらの病態の一部は,たとえば肺炎や敗血症のように,先行基礎疾患としてARDS の原因ともなり得るし,またARDS に続発することもあり得る.

1 呼吸循環器系

a. 静脈還流の減少と循環不全陽圧人工呼吸換気は胸腔内圧を上昇させ,静脈還流を減少させる.加えて低酸素血症を改善させることを目的に輸液量を制限した場合は,さらなる循環血液量の不足が静脈還流および心拍出量の減少をもたらす可能性がある. PEEP の付加は,さらに静脈還流減少を招く可能性が懸念されるが,ARDS に対する大規模治験に

おいて,高いPEEP を用いることでの循環動態に対する悪影響は明確に指摘されていない1 ~3).

b. 過剰輸液による肺機能の悪化,ARDSの発生米国ARDS network が行った大規模臨床試験: fluid and catheter treatment trial/pulmonary artery catheter(FACTT/PAC)では,ARDS 患者の水分出納をプラスマイナスゼロとして水分制限した群が,水分制限を行わなかった群に比して人工呼吸日数が少なく,また肺以外の臓器の悪化もなく肺機能は改善した4).ただし,本研究は敗血症患者を対象とした研究であり,初期24 時間の輸液量は+1, 000mL を超えていたことに注目したい.敗血症時の初期輸液は循環の安定化から患者予後改善に繫がる重要な介入であり,ARDS(あるいは酸素化不良)を恐れるあまりに初期輸液を過度に制限する

●VAP,VALI,DIC,敗血症などの病態はしばしばARDS に随伴するが,それ自

体がARDS 発症の原因にもなり得る. ● ARDS 患者においては耐性菌による晩期VAP が発生しやすいが,その生命予後

に及ぼす影響は明らかではない. ●肺血管機能不全≒肺高血圧症の合併は,予後不良因子であるが,その対策は確立

していない.

8
p.70
ことは適切ではない.一方で,敗血症患者における輸液量がARDS の発生に及ぼす影響に関しては,無関係とする報告もある5).

c. 人工呼吸器関連肺炎(第10 章 治療:薬物療法,その他 参照)

人工呼吸開始48 時間以上経過してから人工呼吸中に発生する細菌性肺炎を,一般的に人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)と呼ぶ.VAP による寄与死亡率は10%にも及ぶとされ,人工呼吸患者における最重要合併症の一つである6). ARDS 患者では,ARDS でない人工呼吸患者に比べ,有意にVAP の発生率が高いとされる7, 8).その理由として,ARDS において肺胞マクロファージや流血中の単球の貪食能が低下するとの報告や9),周期的な肺胞の過進展により,細菌増殖が促進するとの報告があり10),これらがVAP の発症に寄与する可能性がある.加えて,人工呼吸期間の延長の影響が危険因子となる.ARDS 症例の臨床経過における肺炎発症率を検討した報告では,ARDS患者の60% にVAP が発症し(人工呼吸100 日あたり4. 2 件),また多くの症例でVAP の起炎菌と同一の先行する下気道への細菌定着を認めた11). Markowicz ら7)の報告では,ARDS 患者のVAP発症率は37% であり,全体の35% が早期VAP, 65% が晩期VAP であった.一方,VAP をはじめとする院内肺炎は,直接的な肺への過剰な炎症反応から肺損傷を引き起こす結果,ARDS の原因ともなる.このように,ARDSとVAP の病態は相互に原因とも結果ともなり得る状況で複雑に影響し合いながら,かなりの部分で重複した病態を形成していることが示唆される.換言すれば,ARDS の治療経過中には,つねにVAP の発症を念頭においた管理が必要となる.ただし, ARDS において肺炎未発症者に対する抗菌薬の予防投与は推奨されない12). ARDS であることでVAP に対する抗菌療法が大きく変わるわけではない.VAP に対する一般的治療戦略に関しては, ATS(American Thoracic

Society)によるガイドライン6)あるいは,日本呼吸器学会による成人院内肺炎診療ガイドライン13)などに詳しく,それらおよび「第10 章 治療:薬物療法,その他」を参照されたい.基本的には患者重症度の適切な評価と,起炎菌の正確な絞り込みによる適切な経験的抗菌薬の投与が予後改善のポイントといえる. ARDS 患者におけるVAP の診断は実際に困難なことが多い.ARDS 症例では胸部X 線上の両側肺浸潤影を認めることから,新たな肺浸潤影の出現を読影することは容易ではない14).またVAP の臨床診断に使用される,発熱,異常白血球数,気管内膿性分泌物の増加などの指標は,いずれも非特異的でありARDS 患者ではしばしば認められる.Chastreら8)の報告では,ARDS 群においてVAP 合併の有無で,体温,白血球数,PaO2/FIO2,および胸部X線像に有意な違いを認めなかった.このためATSガイドラインでは,ARDS では上記のVAP の臨床指標に加え,他に理由のない血行動態の悪化や酸素化能の悪化のいずれかが認められれば,微生物学的検査方法による肺炎診断を実施するよう推奨している6).一方で,定期監視のための細菌学的評価は,その効果が限定されており15),不適切な抗菌薬の使用を促すため行うべきではない.侵襲的手法を用いるか否かに関しては一致した見解は得られていないものの,VAP 疑診時に気管支鏡による下気道検体の評価(グラム染色と定量培養)を積極的に行うことで,より正確な除外診断が行える可能性はある16, 17). VAP を合併したARDS 症例の臨床的アウトカムに関する多施設前向き臨床試験の報告7)によれば, ARDS 患者においてVAP の合併は有意に人工呼吸器装着期間の延長を引き起こしたが,死亡率に関してはVAPの合併の有無で違いは認められなかった.単一施設における臨床研究においても同様に, VAP の合併はARDS 死亡率には影響しないとの結論が得られている8, 11).最近の検討でも,肺保護換気を行った上でのVAP 合併率は29% で,多変量解析の結果,VAP の合併は生命予後に関連しなかった18).ARDS 患者の予後規定因子は肺損傷の程度
p.71
だけではなく,基礎疾患の重症度と多臓器不全の合併であると考えられることや,VAP が適切に治療されていることが,VAP に伴う生命予後への影響を相対的に小さくしている可能性もある.

d. エアリークARDS では肺のサーファクタントは激減し19),肺コンプライアンスは著しく低下しているため,気胸をはじめとするエアリーク(狭義にbarotrauma とも呼称され,気胸,縦隔気腫,気腫性肺嚢胞,皮下気腫などを含む)の危険性は増加する.PEEP 及び高い換気圧の双方がエアリーク発生に影響しうる.特にプラトー圧が35cmH2O を超える場合にその発生頻度は高くなるとされる20).また,27 名を対象とした小規模研究ではあるが,リクルートメント手技(9 章 p. 80 参照)によりエアリークが4 名(15%)に発生したとする報告もあり21),注意が必要である. ARDS network 低容量換気法の検討対象となった718 名のALI/ARDS 患者において,発症から4日以内の早期のエアリークは高いPEEP と有意な関係があった22).一方,その後に行われた高PEEPを用いた大規模治験では,エアリークの発生は有意に増加していない1 ~3).他の報告では725 名の敗血症に起因するARDS のうち,6. 9% が気胸を合併し,

10 6% が気胸を含む何らかのエアリークを生じた

が,気胸の発生は予後には有意な影響を与えなかった23).なお,ARDS 患者では緊張性気胸を発症した場合,診断が遅れると急激に致死的低酸素症に陥る危険性があることを認識する必要である.

e. 人工呼吸器関連肺損傷(第4 章・9 章参照)

1980 年以降,陽圧人工呼吸における肺胞腔への過大な容量負荷や膨張・虚脱の繰り返しにより,肺損傷を引き起こすことが動物実験で明らかとなっている.このような障害を人工呼吸器関連肺損傷(ventilator induced lung injury;VILI)と総称する.しかし,臨床においては陽圧人工呼吸だけに

よって肺に傷害が起きるわけではないので,VALI (ventilator associated lung injury)という呼称が適切ともされる.VILI のメカニズムは,barotrauma(圧肺損傷),volutrauma(容量損傷),atelectrauma(無気肺損傷)のような物理的損傷ばかりではなく,大量に産生されるサイトカインなどのメディエーターによる肺損傷であるbiotrauma も関与している24, 25). ARDS network による低容量換気に関する大規模臨床試験では26),12mL/kg といった過大な一回換気量やプラトー圧が35cmH2O を超える状態においてはおそらくVALI が発生し,死亡率の増大につながることが示唆されている.したがって,「第9 章 治療:呼吸管理療法」でもその詳細を説明するが,過大な一回換気量や圧負荷は極力避けることが好ましい.

f. 肺の線維化大部分の症例では発症後5 ~7 日には肺損傷は急速に修復されて,後遺症を残さずに回復するが,重症例や原疾患の治療が不十分で繰り返し感染が加わった難治例などでは肺の線維化が問題となる. ARDS 発症後5 〜7 日頃より肺胞および肺の間質に線維化が始まるとされている27).このような重症例では肺胞腔内は間葉細胞によって置き換えられ,コラーゲンとフィブロネクチンの蓄積を認め,いわゆるfibrosing alveolitis の病像を呈してくる28).この病態はきわめて重症で致死的な結果をもたらすことが多く予後不良である.ただし,肺の線維化をきたしたものの,幸いにも救命し得た症例では,線維化は恒久的なものではなく,数ヵ月かけて吸収され,6 〜12 ヵ月でほぼ正常に戻ることも多い29).しかし,まれに高度の線維化を後遺症として残して慢性呼吸不全に至る.一般的な肺線維症の病勢評価に用いられる血清KL-6,SP-A,SP-D などの血清マーカーは, ARDS の重症度と相関するとの報告はあるが, ARDS における線維化評価に使えるかは不明であ
p.72
る30 ~33).治療に関して,線維化予防目的でのステロイド持続投与の有用性は否定的である34).

g. 肺高血圧症肺の線維化が進み,これが慢性化すると高い頻度で肺高血圧症を合併する.また,初期のARDS でも病像が重篤であると,間質の浮腫によって肺高血圧を生じる.後者は病状の改善とともにすみやかに肺高血圧自体も改善するが,前者は難治性で,右心不全に至る35).肺高血圧の指標である経肺圧(transpulmonary pressure gradient(TPG)= 肺動脈圧−肺動脈楔入圧)で評価すると,ARDS 患者の73% でTPG ≧12mmHg の肺血管病変を認め, TPG=12 ~24mmHg および≧24mmHg での死亡率は27% および49% で,TPG<12mmHg の際の19% に比べて有意に高いとされる36).この観点から,ARDS に続発した慢性の肺高血圧自体に対して,肺血管拡張薬が試みられてきた. 20 名の肺高血圧症(安静時平均圧25mmHg 以上,収縮期圧35mmHg 以上)を伴うARDS 患者に対して,肺血管拡張薬であるイロプロスト(吸入用プロスタサイクリン)をネブライザー投与すると,明らかな呼吸循環系への有害事象無く,P/F 比が177 ± 60 から213 ± 67,212 ± 70 に改善した37).一方,ホスホジエステラーゼ阻害薬シルデナフィルの経管投与(50mg)は肺血管を拡張させるが,結果として肺内シャントを増大させ酸素化を悪化する38).このように,肺血管拡張療法はその薬剤選択および投与方法も含め,今後の検討が必要である.

h. 高濃度酸素曝露による肺損傷動物実験では高濃度酸素曝露による肺損傷が数多く発表されている.しかしながらヒトを対象とした臨床研究は見あたらず,高濃度酸素曝露がARDSを悪化させるかどうかについての確証はない39).実際問題として,重症例では酸素濃度100% 管理を行わざるを得ない場合もあるが,一般には長時間にわたる高濃度酸素は避ける(通常は酸素濃度60%

以下を目標)ことが推奨される.

2 その他の全身臓器

a. 播種性血管内凝固症候群ARDS における播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併は,ARDS の病態の増悪につながると考えられる.ARDS 症例におけるDIC 合併率は25 〜70% であり40),逆にDIC 症例にも高い頻度でARDS が合併することが報告されている40, 41).DICがARDS を悪化させる機序として,DIC における肺循環障害によって肺コンプライアンスの低下とガス交換障害が惹起されることが重要と考えられている.さらに,DIC の診断基準を満たさないARDS症例でもその約半分に経過中に血小板減少が認められており,DIC の有無にかかわらず多くの症例で剖検により肺に微小血栓が認められる40).DIC の基礎病態に感染症が関与する場合は,急性呼吸不全を合併する頻度が増加し,死亡率も高くなる. ARDS における凝固線溶異常の詳細な解析42) によると,ARDS 症例においてはプロテインC 活性の低下とプラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)-1 の上昇が認められる.すなわち,ARDS症例では総じて凝固活性の亢進と線溶活性の抑制が起きていると考えられる.さらには,プロテインCの低下およびPAI-1 の上昇に伴い,死亡リスクも高まることが示唆され,凝固線溶異常がARDS の生命予後に影響を与える可能性がある.DIC で観察される微小循環障害は,肺胞局所においても,フィブリン析出,線維化の進展ならびに低酸素血症の原因となるため,ARDS に対する抗凝固療法の可能性が考えられる.これまで動物実験レベルでは,組織因子経路インヒビター,ヘパリン,アンチトロンビン,リコンビナント活性化プロテインC,リコンビナントトロンボモジュリンなどの抗凝固薬がARDS に有効であることが報告されている43).一方で,ARDS 患者
p.73
を対象とした抗凝固療法の有効性を検証するランダム化比較試験がいくつか報告されているが,現時点ではいずれにおいても有効性は証明されていない44, 45).凝固線溶異常と炎症は密接に関係していることからも,ARDS とDIC は互いに増悪させる病態であると考えられ,凝固線溶異常のコントロールはARDS 治療としての可能性を秘めている.しかしながら,質の高い臨床研究においてその有効性が証明された治療薬はなく,ARDS そのものに対する抗凝固療法は推奨されない(第10 章 治療:薬物療法,その他参照).

b. 多臓器不全,敗血症性ショックARDS に合併する臓器不全の発生頻度としては,腎不全が40 〜55%,肝不全12 〜95%,意識障害7 〜30%,消化管出血7 〜30%,凝固異常0 〜26%,ショックなどの心血管系機能不全10 〜23% との報告や, ARDS 全症例が多臓器不全を併発し,不全臓器数は平均4 臓器であったなどの報告がみられる41, 46).また,ARDS 症例では多臓器障害が進行するにつれて段階的にその生命予後が悪化することが複数の疫学研究によって証明されている47, 48). ARDS 症例の死亡原因は,呼吸不全そのものよりも敗血症性ショックや多臓器不全によるものが多い49).そのため,ARDS 症例の治療にあたっては,厳密な呼吸管理とともに,多臓器不全・敗血症性ショックに移行しないためのsurviving sepsis campaign guidelines(SSCG)に準拠した適切な初期蘇生および全身管理が重要である.

c. ICU-AW(ICU-acquired weakness) ARDS を含む集中治療症例では,急性期治療が完了した後に神経機能,筋機能など身体機能に重篤

な障害を残す場合がある.これらを総括してICU- AW(ICU-acquired weakness)といい,近位筋優位の四肢麻痺を呈するcritical illness polyneuropathy(CIP)と,遠位筋や下肢に優位にポリニューロパチーを生じるcritical illness myopathy(CIM)からなる.ICU-AW は多臓器不全,SIRS,敗血症性ショックに起因する末梢運動および知覚神経の障害および筋機能の障害と規定され,末梢神経における微小循環不全が原因とも考えられているが50),その詳細なメカニズムは不明である. ICU-AW 発症のリスク因子としては,敗血症,高血糖,長期の人工呼吸管理,ステロイド使用など,さまざまな因子が報告されている51).ARDS 症例に限定して1 年後の身体機能の予後因子を検討した報告によると,ステロイド投与量が有意に関連すると報告されており52),ARDS 治療においてはICU- AW 回避の観点からもステロイドの投与については慎重であるべきである(第10 章 治療:薬物療法,その他参照).コクランレビューでは,厳密な血糖管理がICU- AW の発症を約35% 低下させると報告されているが53),重症患者に対する厳密な血糖管理は患者生命予後を悪化させる危険性も指摘されていることから,ARDS 管理においては少なくとも持続する高血糖状態を回避することがICU-AW 発症予防観点からは有益かもしれない.また,急性期リハビリテーション介入によるICU-AW 予防効果を検討したRCT では,リハビリ介入より退院時の身体機能障害を38% 有意に減少させることができると報告されている54).ARDS 症例を含むICU 症例に対する急性期リハビリテーションは,各施設の特性に応じて積極的に考慮すべきである.
p.74
■ 文 献1)Mercat A, Richard JC, Vielle B, et al:Positive end-expiratory pressure setting in adults with acute

lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 299:646- 655, 2008 2)Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al:Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment

maneuvers, and high positive end-expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 299:637-645, 2008 3)Brower RG, Lanken PN, MacIntyre N, et al:Higher versus lower positive end-expiratory pressures in

patients with the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 351:327-336, 2004 4)National Heart, Lung, and Blood Institute Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS) Clinical Trials

Network, Wiedemann HP, Wheeler AP, Bernard GR, et al:Comparison of two fluid-management strategies in acute lung injury. N Engl J Med 354:2564-2575, 2006 5)Chang DW, Huynh R, Sandoval E, et al:Volume of fluids  administered during resuscitation for severe

sepsis and septic shock and the development of the acute respiratory distress syndrome. J Crit Care 29:1011-1015, 2014 6)American Thoracic Society;Infectious Diseases Society of America:Guidelines for the management

of adults with hospital-acquired, ventilator-associated, and healthcare-associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 171:388-416, 2005 7)Markowicz P, Wolff M, Djedaini K, et al:Multicenter prospective study of ventilator-associated

pneumonia during acute respiratory distress syndrome. Incidence, prognosis, and risk factors. ARDS Study Group. Am J Respir Crit Care Med 161:1942-1948, 2000 8)Chastre J, Trouillet JL, Vuagnat A, et al:Nosocomial pneumonia in patients with acute respiratory

distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 157:1165-1172, 1998 9)Mokart D, Guery BP, Bouabdallah R, et al:Deactivation of alveolar macrophages in septic neutropenic

ARDS. Chest 124:644-652, 2003 10)Pugin J, Dunn-Siegrist I, Dufour J, et al:Cyclic stretch of human lung cells induces an acidification

and promotes bacterial growth. Am J Respir Cell Mol Biol 38:362-370, 2008 11)Delclaux C, Roupie E, Blot F, et al:Lower respiratory tract colonization and infection during severe

acute respiratory distress syndrome:incidence and diagnosis. Am J Respir Crit Care Med 156:1092- 1098, 1997 12)Hoth JJ, Franklin GA, Stassen NA, et al:Prophylactic antibiotics adversely affect nosocomial

pneumonia in trauma patients. J Trauma 55:249-254, 2003 13)日本呼吸器学会:成人院内肺炎診療ガイドライン,日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」.

2008 14)Wunderink RG, Woldenberg LS, Zeiss J, et al:The radiologic diagnosis of autopsy-proven ventilator-

associated pneumonia. Chest 101:458-463, 1992 15)Hayon J, Figliolini C, Combes A, et al:Role of serial routine microbiologic culture results in the initial

management of ventilator-associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 165:41-46, 2002 16)Papazian L, Autillo-Touati A, Thomas P, et al:Diagnosis of ventilator-associated pneumonia:an

evaluation of direct examination and presence of intracellular organisms. Anesthesiology 87:268-276,

1997 17)Matsushima A, Tasaki O, Shimizu K, et al:Preemptive antibiotic treatment based on gram staining

reduced the incidence of ARDS in mechanically ventilated patients. J Trauma 65:309-315;discussion 315, 2008 18)Forel JM, Voillet F, Pulina D, et al:Ventilator-associated pneumonia and ICU mortality in severe

ARDS patients ventilated according to a lung-protective strategy. Crit Care 16:R65, 2012
p.75
19)Greene KE, Wright JR, Steinberg KP, et al:Serial changes in surfactant-associated proteins in lung

and serum before and after onset of ARDS. Am J Respir Crit Care Med 160:1843-1850, 1999 20)Boussarsar M, Thierry G, Jaber S, et al:Relationship between ventilatory settings and barotrauma in

the acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 28:406-413, 2002 21)Meade MO, Cook DJ, Griffith LE, et al:A study of the physiologic responses to a lung recruitment

maneuver in acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Respir Care 53:1441-1449,

2008 22)Eisner MD, Thompson BT, Schoenfeld D, et al:Airway pressures and early barotrauma in patients

with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 165:978- 982, 2002 23)Weg JG, Anzueto A, Balk RA, et al:The relation of pneumothorax and other air leaks to mortality in

the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 338:341-346, 1998 24)Uhlig S:Ventilation-induced lung injury and mechanotransduction:stretching it too far? Am J

Physiol Lung Cell Mol Physiol 282:L892-896, 2002 25)Tremblay LN, Slutsky AS:Ventilator-induced injury:from barotrauma to biotrauma. Proc Assoc Am

Physicians 110:482-488, 1998 26)Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute lung injury

and the acute respiratory distress syndrome. The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 342:1301-1308, 2000 27)Ware LB, Matthay MA:The acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 342:1334-1349, 2000 28)Fukuda Y, Ishizaki M, Masuda Y, et al:The role of intraalveolar fibrosis in the process of pulmonary

structural remodeling in patients with diffuse alveolar damage. Am J Pathol 126:171-182, 1987 29)McHugh LG, Milberg JA, Whitcomb ME, et al:Recovery of function in survivors of the acute

respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 150:90-94, 1994 30)Ishizaka A, Matsuda T, Albertine KH, et al:Elevation of KL-6, a lung epithelial cell marker, in plasma

and epithelial lining fluid in acute respiratory distress syndrome. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 286:L1088-1094, 2004 31)Eisner MD, Parsons P, Matthay MA, et al:Plasma surfactant protein levels and clinical outcomes in

patients with acute lung injury. Thorax 58:983-988, 2003 32)Cheng IW, Ware LB, Greene KE, et al:Prognostic value of surfactant proteins A and D in patients

with acute lung injury. Crit Care Med 31:20-27, 2003 33)Sato H, Callister ME, Mumby S, et al:KL-6 levels are elevated in plasma from patients with acute

respiratory distress syndrome. Eur Respir J 23:142-145, 2004 34)Tang BM, Craig JC, Eslick GD, et al:Use of corticosteroids in acute lung injury and acute respiratory

distress syndrome:a systematic review and meta-analysis. Crit Care Med 37:1594-1603, 2009 35)Bellingan GJ:The pulmonary physician in critical care * 6:The pathogenesis of ALI/ARDS. Thorax

57:540-546, 2002 36)Bull TM, Clark B, McFann K, et al:National Institutes of Health/National Heart, Lung, and Blood

Institute ARDS Network. Pulmonary vascular dysfunction is associated with poor outcomes in patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 182:1123-1128, 2010 37)Sawheny E, Ellis AL, Kinasewitz GT:Iloprost improves gas exchange in patients with pulmonary

hypertension and ARDS. Chest 144:55-62, 2013 38)Cornet AD, Hofstra JJ, Swart EL, et al:Sildenafil attenuates pulmonary arterial pressure but does not

improve oxygenation during ARDS. Intensive Care Med 36:758-764, 2010 39)Ingbar DH:Mechanisms of repair and remodeling following acute lung injury. Clin Chest Med 21:

589-616, 2000
p.76
40)Bone RC, Francis PB, Pierce AK:Intravascular coagulation associated with the adult respiratory

distress syndrome. Am J Med 61:585-589, 1976 41)Gando S, Kameue T, Matsuda N, et al:Systemic inflammation and disseminated intravascular

coagulation in early stage of ALI and ARDS:role of neutrophil and endothelial activation. Inflammation 28:237-244, 2004 42)Ware LB, Matthay MA, Parsons PE, et al:Pathogenetic and prognostic significance of altered

coagulation and fibrinolysis in acute lung injury/acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 35:1821-1828, 2007 43)Laterre PF, Wittebole X, Dhainaut JF:Anticoagulant therapy in acute lung injury. Crit Care Med 31:

S329-336, 2003 44)Liu KD, Levitt J, Zhuo H, et al:Randomized clinical trial of activated protein C for the treatment of

acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 178:618-623, 2008 45)Cornet AD, Groeneveld AB, Hofstra JJ, et al:Recombinant human activated protein C in the treatment

of acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. PLoS One 9:e90983, 2014 46)Dorinsky PM, Gadek JE:Mechanisms of multiple nonpulmonary organ failure in ARDS. Chest 96:

885-892, 1989 47)Irish Critical Care Trials Group:Acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome in

Ireland:a prospective audit of epidemiology and management. Crit Care 12:R30, 2008 48)López-Fernández Y, Azagra AM, de la Oliva P, et al:Pediatric Acute Lung Injury Epidemiology and

Natural History study:Incidence and outcome of the acute respiratory distress syndrome in children. Crit Care Med 40:3238-3245, 2012 49)Estenssoro E, Dubin A, Laffaire E, et al:Incidence, clinical course, and outcome in 217 patients with

acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 30:2450-2456, 2002 50)Hermans G, De Jonghe B, Bruyninckx F, et al:Clinical review:Critical illness polyneuropathy and

myopathy. Crit Care 12:238, 2008 51)Kress JP, Hall JB:ICU-acquired weakness and recovery from critical illness. N Engl J Med 370:1626-

1635, 2014 52)Needham DM, Wozniak AW, Hough CL, et al:Risk factors for physical impairment after acute lung

injury in a national, multicenter study. Am J Respir Crit Care Med 189:1214-1224, 2014 53)Hermans G, De Jonghe B, Bruyninckx F, et al:Interventions for preventing critical illness

polyneuropathy and critical illness myopathy. Cochrane Database Syst Rev 1:CD006832, 2014 54)Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al:Early physical and occupational therapy in

mechanically ventilated, critically ill patients:a randomised controlled trial. Lancet 373:1874-1882, 2009
p.77
治療:呼吸管理療法

本章は,本書第1 版(2005 年)ならびに第2 版(2010年)における「呼吸管理療法」に,その後の臨床研究の集積と新たに発表された諸専門分野のガイドラインを参照し改訂を加えたものである.第1 版ならびに第2 版は,日本呼吸療法医学会・多施設共同研究委員会が2004 年に作成した「ARDS に対するClinical Practice Guideline 第2 版」1)に準拠し作成された.

1 陽圧人工呼吸における

換気モード,様式

陽圧人工呼吸における換気モードは,assist con- trol ventilation(ACV),synchronized intermittent

mandatory ventilation(SIMV),およびpressure support ventilation(PSV)の3 つに大別される.前二者のモードではvolume control ventilation(VCV)もしくはpressure control ventilation(PCV)のいずれかの強制換気様式が使用される.最新の人工呼吸器ではほぼ全機種でこれらのモードと様式が任意に選択可能であるが,ARDS に対して特定のモードや様式が生命予後の改善に寄与するという強い根拠はない.以下にこれらの様式,モードについて概説する.

●ARDS において一回換気量とプラトー圧を制限する肺保護換気戦略として,低容

量換気が勧められる. ●ARDS と最初に診断する時点と初期の呼吸管理の手段として,非侵襲的換気法で

あるNPPV の使用を検討してよい. ●低容量換気を行う際にはマニュアルやプロトコルに沿った一元的管理を行い,低

容量換気の方針を継続すること,そして人工呼吸に関連した事故を防止することが重要である. ●長期人工呼吸管理からの離脱にあたっては,1 日1 回の鎮静中止,自発呼吸テス

トなどを経てから抜管を試みる.また,訓練されたスタッフがプロトコルに従い行うと人工呼吸期間ならびに離脱のための期間を短縮する.

9
p.78
a. 強制換気様式1) VCV VCV では一回換気量と吸気流量ならびに換気回数を設定する.一回換気量を規定するため換気量の維持に優れるが,吸気圧は規定できず最高気道内圧アラームにより監視しなければならない.プラトー圧は,吸気終末ポーズを設定するか(図9-1 参照),吸気終末ホールドを実施して適時測定する.吸気流量パターンとして矩形波や漸減波などが選択できる.

2) PCV PCV では吸気時の気道内圧と吸気時間ならびに換気回数を設定する.一回換気量は肺のコンプライアンスにより変動するためモニタリングしなければならないが,気道内圧は設定以上には上昇しない2, 3).吸気終末に吸気流量がゼロとなるように吸気時間を設定すれば(図9-2 参照),設定吸気圧がプラトー圧となる.

b. 換気モード1) ACV(assist/control ventilation) ACV は,自発呼吸の有無に関わらず,常に設定された一回換気量あるいは吸気圧による強制換気を行う換気モードである.通常,吸気は一定の設定で行われ変化しない〔注1〕.患者の自発吸気運動が感知されれば強制換気はそれに同期される.自発吸気運動に同期するためにはフロートリガーあるいは圧トリガーを適切に設定しなければならない.もしも換気回数設定で規定される呼吸サイクルの間に吸気がトリガーされなければ,人工呼吸器による強制換気が行われる〔注2〕.すなわち,吸気のリズムは患者が決定することが可能であり,正しく同期できれば,呼吸仕事量はすべて人工呼吸器が負う換気モードである.換気様式はPCV あるいはVCV で行われる. 2) SIMV

SIMV はACV と異なり設定された換気回数しか強制換気を行わない換気モードである〔注3〕.すなわち,設定換気回数以上の自発呼吸が出現している場合は,強制換気で同期される自発呼吸と,同期されない自発呼吸とが混在する.強制換気は PCVあるいは VCV で行われる.SIMV に PSV を併用することで,強制換気で同期されない自発呼吸の呼吸仕事量を軽減できる.

3) PSV感知されたすべての自発吸気を一定の気道内圧で補助する.補助圧のみ設定する.設定サポート圧を維持するのに必要な吸気流量が規定された値〔注4〕より低下すると自動的に送気が終了する.吸気時間設定がない点がPCV と異なる.吸気終末ポーズ

プラトー圧

流  量

PEEP気道内圧

a) b)

図9-1 ●VCV でのプラトー圧の求め方一定の吸気流量を用いたVCV(a) に吸気終末ポーズを加え(b),流量波形で吸気終末流量がゼロであることを確認できれば,その時点の気道内圧をプラトー圧とする.

〔注1〕 ただし,PCV によるACV で自発吸気が非常に強い場合は,自発呼吸により強制換気設定を上回る吸気流量や一回換気量が発生する可能性があり,吸気が一定の設定にならない場合がありえる.〔注2〕 たとえば,毎分10 回に換気回数を設定していると,患者が10 回以上の呼吸をしていなければ,6 秒に1 回の強制換気が時間サイクルで行われる.患者が15 回の呼吸をしていると,換気回数設定が10 回であっても,患者吸気に同期して15 回の強制換気が設定どおり行われる.換気回数設定が多すぎると,呼吸中枢の自発吸気ドライブが抑制された結果,器械換気だけになってしまう.逆に換気回数設定が少なすぎると,自発吸気運動がなければ(例;頭部外傷,過鎮静や全身麻酔効果の残存など),CO2 蓄積を起こす可能性もある.〔注3〕 設定換気回数が自発呼吸回数より多いと,すべての自発呼吸に対し強制換気が同期して行われるため見た目はACV と変わらなくなる.〔注4〕 通常最大吸気流量の25% で送気が終了する.規定値をユーザーが変更できる機種とできない機種がある.
p.79
2 ARDS に対する換気設定の概念a. FIO2 と PEEP の設定ARDS では低酸素血症から速やかに脱するために,まずFIO2 を1. 0 で開始する.しかし,長時間の高濃度酸素吸入も生体には有害であるため,PaO2が55 〜80mmHg に維持できれば,FIO2 は0. 6 を目標に漸減する.FIO2 漸減は0. 05 〜0. 1 刻みで行う.新しいARDS の定義(Berlin 定義)では,酸素化能(PaO2/FIO2)による重症度評価をPEEP 5cmH2O 以上の陽圧換気下に行うことが定められた4)ため,PEEP は5cmH2O 以上で開始する.陽圧換気は必ずしも気管挿管下に行わず,非侵襲的陽圧換気法(NPPV)でもよい(p. 82,NPPV の項参照).調節換気時のPaO2 は平均気道内圧に相関するため,PEEP を初期設定値から2 〜5cmH2O ずつ上げて平均気道内圧を上昇させ,PaO2 の改善を図ることもできる.PEEP 上昇に伴いFIO2 を低下させることも可能である.FIO2 とPEEP の設定についてARDS network の大規模臨床試験5)では,FIO2 に応じたPEEP 設定の目安を提示した〔注5〕.肺胸郭系の圧– 容量曲線を測定し,lower inflection point(図4-2 参照)を超える値にPEEP を設定するとよいとの小規模RCT 報告があった6).lower inflection point を超えるPEEP 値と低容量換気を組み合わせると,低いPEEP と大きい一回換気量の組み合わせに比べ,生命予後が改善したとの小規模RCT 報告もある7).循環系の抑制が出現する場合はPEEP 上昇を中断し循環動態の安定を優先する.脳圧の上昇が問題となる症例ではPEEP によって得られる肺容量改善の効果と,中心静脈圧上昇を含む循環動態の変化とのバランスによって,適切なPEEP の設定を考えることになる. b. 低容量換気

人工呼吸器関連肺損傷(ventilator associated lung injury;VALI)の発生を回避するために一回換気量とプラトー圧を制限する肺保護換気戦略として低容量換気が勧められる(CQ3,CQ4 参照).なお,プラトー圧とは,吸気終末に回路内の気流が一時的に停止した状態における気道内圧を指す(図9-1).測定にあたり,グラフィックモニターを用いガス流量が完全に停止していること,自発呼吸努力がないこと,人工呼吸回路にリークがないことを確認する.低容量換気では,一回換気量は6 〜8mL/kg(予測体重)に制限する.予測体重は〔注6〕と付録の換算表を参照のこと.一回換気量は12mL/kg 以上としてはならない.プラトー圧は30cmH2O 以下に制限する8).全肺気量(total lung capacity;TLC)における肺胞内外の圧格差は30cmH2O であること,また多くの動物実験のデータから,プラトー圧は35cmH2Oを超えないことが望ましいとされている9). ARDS network による大規模RCT では,一回換気量12mL/kg,プラトー圧50cmH2O 以下とする

〔注5〕 ARDS network 研究5)ではPaO2 目標値を55 〜80mmHg とし,下記の表を用いてFIO2 とPEEP を設定した.

FIO2 0. 3 0. 4 0. 4 0. 5 0. 5 0. 6 0. 7 0. 7 0. 7 0. 8 0. 9 0. 9 0. 9 1. 0 1. 0 1. 0 1. 0 PEEP 5 5 8 8 10 10 10 12 14 14 14 16 18 18 20 22 24

〔注6〕 文献

5)では一回換気量を決める場合の体重は,実測体重ではなく予測体重を用いている.この算出法は以下の通り.男性(kg):50 + 0. 91 ×(身長(cm)−152. 4),女性(kg):45. 5 + 0. 91 ×(身長(cm)−152. 4).付録:Predicted body weight の換算表身長cm男性女性身長cm男性女性

134 136 138 140 142 144 146 148 150 152 154 156 158 33. 3 35. 1

36. 9 38. 7 40. 5 42. 4 44. 2 46. 0 47. 8 49. 6 51. 5 53. 3 55. 1 28. 8

30. 6 32. 4 34. 2 36. 0 37. 9 39. 7 41. 5 43. 3 45. 1 47. 0 48. 8 50. 6 160 162

164 166 168 170 172 174 176 178 180 182 184 56. 9

58. 7 60. 6 62. 4 64. 2 66. 0 67. 8 69. 7 71. 5 73. 3 75. 1 76. 9 78. 8 52. 4 54. 2

56. 1 57. 9 59. 7 61. 5 63. 3 65. 2 67. 0 68. 8 70. 6 72. 4 74. 3

男女とも,身長1 cm の増減に応じて,体重は0. 91kg 増減する.女性は同じ身長の男性に比べ4. 5 kg 少ない.
p.80
呼吸管理のほうが,一回換気量を6mL/kg,プラトー圧30cmH2O 以下とする呼吸管理よりも28 日死亡率が高かった(39. 8% 対 31. 0%) 5).ただし,異なる換気量制限を用いたRCT では,ARDS 患者の生存率を改善させる小規模RCT 報告6)と改善させない小規模RCT 報告10 ~12)がある.この点に関し, 6mL/kg の一回換気量の優位性を示した結果ではなくあくまでも12mL/kg の一回換気量の害を示したものであるというメタ解析13)もある.しかし, ARDS に対する腹臥位療法に関するメタ解析14) では,低容量換気を用いた場合の死亡危険率は有意に減少したと報告されている(RR 0. 66;95% CI 0. 50 ~ 0. 86;P = 0. 002). ARDS network は,上記のRCT で採用した低容量換気の設定と,PEEP のみさらに高く設定〔注 7〕した換気設定を比較する大規模RCT を実施した.この結果によれば,一回換気量を6mL/kg に保つ限り,PEEP を対照群の8. 3 ± 3. 2cmH2O から治療群の13. 2 ± 3. 5cmH2O へ上げても生命予後,人工呼吸日数に有意差は認められなかった15).低容量換気を基本に,FIO2 と高いPEEP の設定表を利用し,リクルートメント手技を組み合わせたカナダの大規模RCT でも死亡率に有意差は認められなかった16).同様に,PCV を用い吸気終末のプラトー圧が28 〜30cmH2O となるようPEEP を漸増していく設定と,通常のPEEP 設定(5 〜9cmH2O)を比較したフランスの大規模RCT でも,死亡率に有意差は認められなかった17).最近のメタ解析によると,高いPEEP 設定は,ARDS 患者や重症スコアの高い患者の死亡率を減少させる可能性があると報告された18 ~20).これらの研究から,高めのPEEP 設定がARDS の予後を改善する可能性が期待される.

ヨーロッパ集中治療医学会はmoderate 〜severe ARDS に対しては比較的高いPEEP の使用を推奨している21)(CQ5 参照).

c. Permissive hypercapnia ARDS network の研究では低容量換気を実施しても,同時に換気回数を増やすことでPaCO2 はほぼ正常レベルに維持できていた5)が,低容量換気によりPaCO2 が蓄積する症例はある.これに対し,腎の代償機能によりpH がある程度(一般的には

7 25 以上とされる)補正されれば高PaCO2 を許容

し,VALI 発生につながる過剰な換気設定の回避を優先する概念が提唱され(permissive hypercapnia)臨床現場で実施されている.しかし,permissive hypercapnia を行ったARDS 患者の死亡率はAPACHE II スコアから予測される死亡率より低かったとする報告はある22)ものの,その有効性を証明した十分な臨床データはない.許容すべきPaCO2 の上限値,許容すべきpH の下限値とそれらの根拠も明確でない.なお,頭蓋内圧亢進がある場合は禁忌である.

d. リクルートメント手技リクルートメント手技は一時的に高い気道内圧をかけ,肺胞・末梢気道の再開放をねらう呼吸療法である.35 〜40cmH2O の気道内圧を40 秒間維持する方法6, 23)や,40cmH2O の圧で40 秒間維持する方法16),PEEP を5cmH2O ずつ段階的に上昇させる

〔注7〕 ARDS network 研究15)ではPaO2 目標値を55 〜80mmHg とし,下記の表を用いてFIO2 とPEEP を設定した.

低いPEEP 群

FIO2 0. 3 0. 4 0. 4 0. 5 0. 5 0. 6 0. 7 0. 7 0. 7 0. 8 0. 9 0. 9 0. 9 1. 0 1. 0 1. 0 1. 0 PEEP 5 5 8 8 10 10 10 12 14 14 14 16 18 18 20 22 24高いPEEP 群(プロトコル修正前)

FIO2 0. 3 0. 3 0. 3 0. 3 0. 3 0. 4 0. 4 0. 5 0. 5 0. 5~0. 8 0. 8 0. 9 1. 0 PEEP 5 8 10 12 14 14 16 16 18 20 22 22 22 ~24高いPEEP 群(プロトコル修正後)

FIO2 0. 3 0. 3 0. 4 0. 4 0. 5 0. 5 0. 5~0. 8 0. 8 0. 9 1. 0 PEEP 12 14 14 16 16 18 20 22 22 22 ~24
p.81
方法24)などが報告されている.しかし,リクルートメント手技の有無に関し生存率を比較した研究はなく,実施方法,効果の評価法もいまだ確立していない.したがって,現時点ではARDS 患者にリクルートメント手技の実施を推奨する十分な臨床データはない25, 26).

3 換気様式の選択と

適正換気条件

a. 自発呼吸がない場合調節換気を行う.換気様式としてVCV とPCVがある(図9-2).換気量を設定する VCV では一回換気量が規定されるので,換気量の維持に優れるが,コンプライアンスの低下によって最高気道内圧の上昇が起こるなど,気道内圧は規定できない. PCV がVCV に比較して合併症予防の点から優れていることを示唆する小規模RCT がある27)が,生命予後に関する優位性を示したものはない.システマティックレビューでも低容量換気を行う方法としてはPCV とVCV のどちらでもよいと報告されている28).むしろ肝要なのは,マニュアルやプロトコルに沿った一元的管理を行い29),低容量換気の方針を継続すること,そして人工呼吸に関連した事故を防止することである. 1) PCV(図9-2)

初期設定として最高気道内圧は15 〜25cmH2Oとし,一回換気量が6 〜8mL/kg 予測体重であることをモニター上で確認する.吸気終末に流量がゼロとなるように吸気時間を設定すれば,設定吸気圧がプラトー圧となる(図9-1).換気回数は10 〜30 回/分に設定する.

2) VCV(図9-2 )初期設定として,一回換気量は6 〜8mL/kg 予測体重,吸気流量は30 〜50L/分で設定する.プラトー圧は定期的に測定し,30cmH2O を超えないよう一回換気量を調整する.プラトー圧測定では吸気終末ポーズを設定し,グラフィック上の流量波形でポーズ中に流量がゼロとなっていることを確認する(図9-1).換気回数は10 〜30 回/分とする.

b. 自発呼吸がある場合(図9-3)自発呼吸がない場合の対応に加え,ARDS と最初に診断する時点と初期の呼吸管理の手段として,非侵襲的換気法であるNPPV の使用を検討してよ

吸気時間

流  量

気道内圧吸気時間

a) VCV b) PCV

図9-2 ●VCV とPCV a) VCV では,吸気流量と流量パターンが規定される.ここでは一定の吸気流量を用いており,流量は矩形パターン,気道内圧は右上がりのパターンとなる. b) PCV では設定した吸気時間の間気道内圧が一定に保た

れ,吸気流量は右下がりの漸減波となる. SIMV

SIMV+PSV

ACV

PSV

図9-3 ●各種モードでの気道内圧波形20 回/分の自発呼吸に対し,SIMV とACV では強制換気回数を10 回/分と設定している.強制換気としてVCV を用いている.この図で自発呼吸努力(↓)が5 回認められる. PSV では自発呼吸に同期して一定の気道内圧で換気補助が行われる. SIMV では自発呼吸に同期して強制換気が3 回行われ,残りの2 回の自発呼吸には補助はなされていない. SIMV +PSV では,自発呼吸に同期して強制換気が3 回, PSV が2 回行われている. ACV では自発呼吸に同期して5 回すべてが強制換気となっている.
p.82
い(CQ2 参照).ただし,NPPV 使用にあたり,禁忌事項を確認する(NPPV の項参照).換気モードは,侵襲的換気法では補助換気ができるACV,あるいは部分的換気補助を行うSIMV やPSV を選択する.患者の吸気を感知するために,感度設定は流量トリガーでは2〜3L/分,圧トリガーでは(−1)~(−2)cmH2O とする.NPPV ではCPAP やBilevel PAP を選択する.自発呼吸運動の存在によりプラトー圧測定が妨げられる場合がある.このような時は,一時的な換気回数増加により自発呼吸運動を消失させる,鎮痛鎮静レベルを一時的に深める,筋弛緩薬を使用する,などで対処する.部分的換気補助を用いた場合,患者−人工呼吸器の不同調が問題となる.頻呼吸(40 回/分以上),不規則な呼吸,強い吸気努力などにより,患者– 人工呼吸器の同調性が悪い場合は,鎮痛鎮静薬の増量や筋弛緩薬投与により患者の呼吸努力を抑制し調節換気に変更する.強すぎる自発吸気努力により肺胞内外圧格差(経肺圧)が増加すれば,自発呼吸であっても肺傷害の発生要因となる(p. 84,b. 食道内圧の項参照).

1) ACV ACV では自発呼吸が感知されない場合,設定された換気回数に従い時間サイクルで強制換気が行われ,自発呼吸が感知された場合は,すべての自発呼吸に同調した強制換気が行われる.強制換気の回数は10 〜20 回/分で設定する.強制換気は PCV あるいは VCV で行う.

2) SIMV SIMV は強制換気と自発呼吸が混在する換気様式である.強制換気と自発呼吸を合計した呼吸数が30 回/分以下になるように,強制換気の回数は10 〜20 回/分で設定する.強制換気はPCV あるいはVCV で行う.強制換気の回数あるいは一回換気量の増加に伴い患者の呼吸仕事量は低下する.強制換気で同期されない自発呼吸の呼吸仕事量を軽減させるために,SIMV とPSV の併用は有用である. 3) PSV

PSV は,感知されたすべての自発吸気を一定の気道内圧で補助する.PSV レベルは呼吸数が30 回/分以下になるよう15 〜25cmH2O とする.気管チューブや加湿装置(人工鼻を含む)によって生じる呼吸仕事量の増加分を代償するために,回路構成により5 〜10cmH2O 程度のPSV が必要となる.コンプライアンスの低い肺では,圧補助が患者の吸気時間より早く終了しすぎる(premature termination)ため,十分な一回換気量や呼吸仕事量の軽減が得られない場合がある.

4) NPPV Berlin 定義では,酸素化能評価のために必ず5cmH2O 以上のPEEP を使用することになった.この評価の際,NPPV を使用してよい.また,ARDSに対する初期の呼吸管理の手段としてNPPV は試みてよい方法である(CQ2 参照).しかし,ARDSにおけるNPPV 管理では,1約半数が気管挿管を必要とする点30, 31),2気管挿管のタイミングが遅れると患者に不利益となる可能性がある点に十分留意し,すみやかに気管挿管に移行できる体制のもとで行う.また,NPPV の成功には技術や手技が影響するため,それぞれの施設の経験や体制に十分配慮して適応を決定する.NPPV に慣れていない施設では,ARDS に対する人工呼吸としては気管挿管下の管理を選択すべきである. NPPV の適応禁忌は,1自発呼吸がない,2マスク装着困難(患者の拒否・非協力,顔面の損傷), 3肺以外の臓器に重篤な機能不全がある(例;意識障害,ショックなど)4誤嚥や気道クリアランスに問題がある(例;活動性の消化管出血,イレウス,多量の気道分泌物など),である. NPPV に熟練した施設では,NPPV を第一選択の呼吸療法として行った結果,54% のARDS 患者で気管挿管を回避できたとの小規模RCT の報告がある31).この研究では,1ICU 入室24 時間後のSimplified Acute Physiological Score II >34 点, 2NPPV 開始後1 時間のPaO2/FIO2 <175,の場合はNPPV 失敗の予測因子であった.
p.83
またARDS への早期のNPPV 導入により,ベンチュリマスク使用群と比較し,挿管回避と肺以外の不全臓器数の減少が得られたとの小規模RCT 報告がある32).しかし,気管挿管に代わる手段としてARDS に対しNPPV を行うことについての有効性は十分に証明されていない.また,抜管後に発症した呼吸不全に対しNPPV を行っても再挿管率は変わらず,予後は変わらないか,むしろ悪化すると報告されている33, 34).

c. その他の換気条件1) 吸気酸素分画(FIO2)初期設定では1. 0 とする.15 〜30 分後に血液ガス分析を行い,PaO2 を55 〜80mmHg に維持しながら,まずFIO2 ≦0. 6 以下を目標に0. 05 〜0. 1 刻みに下げる.臨床現場ではこのPaO2 値を踏まえSpO2 ≧90 を目安として管理し必要に応じ適宜PaO2 を確認する.この間PEEP は増加することがある.FIO2 ≦0. 6 が達成できれば,次にFIO2 あるいはPEEP を,離脱可能性を評価できるレベルまで徐々に低下させる.

2) 一回換気量(VT)一回換気量(tidal volume;VT)は 6 〜8mL/kg予測体重とする.PCV などの圧規定型換気の場合,一回換気量は二次的に決定されるので,モニターされる一回換気量を参考に換気圧を設定する.

3) 換気回数pH が維持できるよう設定する.通常10 〜30 回/分の範囲となる.

4) PEEP PEEP の初期設定値は5cmH2O 以上とする. PaO2,プラトー圧,循環抑制の程度などを参考に5 ~20cmH2O の範囲で調節する.一般に,循環管理は呼吸管理よりも優先される. 5) その他のパラメーター

a)driving pressure;ΔP ARDS 患者を対象としたRCT のpooling data を再解析した最近の研究35)では,プラトー圧とPEEP の差である換気圧(driving pressure;ΔP)が7cmH2O 上昇すると,死亡率は1. 41 倍になると報告している.低容量換気中でもrelative risk は

1 36 と高かった.ΔP はリスクを層別化するための

良い換気変数であるが,予後の悪い重症例でΔP が上昇する傾向を示した可能性もあり,今後,ΔP を積極的に制御することが生存率の改善につながるかを大規模RCT にて検討すべきことが示唆される. b)その他FIO2 やPEEP を調整しても十分なPaO2 が得られない場合は吸気時間を延長させることを考えるが,通常,吸気呼気比が1:1 を超えることはない. VCV では,必要に応じて吸気流量,吸気流量パターン(矩形波,漸減波など)や吸気終末ポーズなどを, PCV では吸気立ち上がりの速さを設定できるが,どれが優れているかは不明である.

4 上記の方法で酸素化が

改善しない場合の対応策

ACV による低容量換気はARDS の重症度によらず施行すべき呼吸療法と位置づけられている21).しかし,FIO2 を1. 0 として低容量換気を実施しPEEP を高く設定しても酸素化が改善しない症例は存在する.このような症例では,低容量換気の制限を維持して管理することは困難であり,特殊な対応策が必要となる.その例として,筋弛緩薬を用いた深い鎮静36)や胸腔内圧を推定した高いPEEP による管理37)が報告されているが,特殊な医療材料や薬剤を必要とするため,すべての施設で実施可能な方法ではない.また,緊急的手段としての人工呼吸療法も提唱されているが,成人を対象としたRCTが行われていないか,RCT は行われたが生存率改善が示されていない.人工肺を用いた体外循環による管理(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)も実施可能であるが,スタッフの熟練度
p.84
が必要で,適応にも制限がある.ECMO が実施できる施設への病院間搬送も考慮すべき選択肢となるが,通常の人工呼吸で酸素化が維持できない患者を他院へ搬送するためには解決すべきさまざまな問題がある.以上より,これらの対策のどれを実施するか,施設ごとに日頃より決定し準備しておくよう勧めたい.

a. 筋弛緩薬筋弛緩薬は,人工呼吸中患者への一般的な処置としてはその安易な使用は戒められている.しかし, ARDS 治療開始48 時間においてベンジルイソキノリニウム系筋弛緩薬であるcisatracurium の持続投与群177 名とプラセボ対照群162 名を二重盲検法で比較したところ,90 日粗死亡率では有意差はなかったが,重症度調整後はハザード率0. 68(95%信頼区間0. 48 〜0. 98,P=0. 04)であり,P/F 比<120の症例では30. 8% と従来群44. 6% に比べ有意差を認めた36).ただし研究で用いられた筋弛緩薬は本邦では使用できず,本邦で使用可能なアミノステロイド系筋弛緩薬で副作用を増やさず同等の効果が得られるかは明らかでない(CQ 9参照).

b. 食道内圧広範な荷重側肺虚脱を有する症例や胸膜圧(pleural pressure;Ppl)が著しく上昇した症例では,リクルートメントやPpl への対抗圧として30cmH2O 以上のプラトー圧を使用しなければならない38).強い吸気努力のある患者にVCV により吸気流量が一定の換気モードを用いれば,過剰な経肺圧が発生する可能性がある.Ppl を推定する方法として食道内圧測定がある.経肺圧(Ppl) = 気道内圧(Paw)− 食道内圧(Pes)で求める.Pes 測定は, 1胸郭コンプライアンスの評価,2人工呼吸器との同調性評価,3WOB 測定による呼吸器離脱補助, 4経肺圧を参考としたPEEP 値の決定,5経肺圧推定による肺障害評価,などに利用できる39).臨床研究では,経肺圧に応じた換気設定の有用性を示

唆する結果が小規模RCT で報告されている37).しかし,食道内圧測定では,再現性の問題や,専用のバルーン付きカテーテルと計測用のトランスデューサーなどが必要であり,ARDS 管理において測定すべき時期や症状も明らかでないために,ルーチンの測定項目となりにくい.

c. HFOV (high frequency oscillatory ventilation) 2 〜3mL/kg(理想体重)という小さな一回換気量を用い高頻度(10Hz 程度)で換気する手法で,低容量換気よりも高い平均気道内圧が得られる.小児・新生児領域では確立された手法で,施行には専用の人工呼吸器が必要である.成人ARDS を対象とし北米で行われた最初の小規模RCT ではHFOV 開始直後から酸素化能の改善がみられた.30 日後の死亡率に統計学的な有意差はなかった40)が,安全性は示された.2013 年には, P/F 比≦200mmHg の成人ARDS 患者を対象に,異なる2 機種を用いて,それぞれ低容量換気を行う通常治療群との比較研究が行われた.英国29 施設で行った大規模RCT では,死亡率はHFOV 群41. 7%に対し通常治療群41. 1%と有意差は認められなかった41).一方,カナダの施設を中心に5 ヵ国39 施設が参加した大規模RCT では,HFOV 群47% に対し通常治療群35%(HFOV 群の死亡危険率1. 33, 95% 信頼区間1. 09 ~1. 64,P=0. 005)となり,中間評価の時点で打ち切られた42).HFOV が成人ARDS 患者の生存率や,長期的な予後を改善するかはいまだ不明であるが,装着によって酸素化能が改善することは過去の研究でも示されている40, 43).高度の低酸素血症あるいは高二酸化炭素血症のためにプラトー圧制限が困難な患者においては使用を検討してもよい.ただし,気流制限の著しい症例,明らかな頭蓋内圧亢進症例,循環動態が不安定な症例では使用しない(CQ8 参照).
p.85
d. APRV (airway pressure release ventilation) APRV は,高いPEEP による長いCPAP 相に,非常に短い(0. 4 〜0. 7 秒)大気への圧解放相を時間サイクルにより加えた換気モードである44).圧解放相には高PEEP による静脈還流低下とCO2 蓄積の欠点を相殺する役割がある.ACV のようにPEEP に換気圧を上乗せするのではないので, PEEP はプラトー圧の上限である30cmH2O まで上昇させることが可能で,平均気道内圧は設定PEEPより1 〜2cmH2O 程度低いレベルに維持される.自発呼吸を温存するため,従来の換気様式に比べ荷重領域の換気分布,ガス交換が改善し45),循環動態の変動が少ないと報告されている.APRV に関するRCT は発表されているが,APRV の設定が総説44)で紹介される以前のもので,上記の説明に該当しないものがほとんどである.特に圧解放相について総説の設定に準じたRCT は行われていない〔注8〕.

e. IRV (inverse ratio ventilation) PEEP を高く設定しても酸素化が改善しない場合,理論上,平均気道内圧を上昇させる他の手段として吸気時間の延長がある.IRV は吸気時間が呼気時間よりも長い設定である.呼気を早期に終了させることで肺内にガスを捉え込み,設定したPEEP以外に内因性PEEP を発生させる.内因性PEEP は,循環抑制や圧外傷を発生させる危険があり,注意して用いる.IRV を用いるときは深い鎮静を必要とし,VCV よりもPCV の方が管理しやすい.従来の換気様式と比較して,IRV が酸素化に有効であるという確証はない46 ~48).

5 離脱時期(過程)の

呼吸管理と抜管の基準

a. 離脱開始条件人工呼吸器からの離脱(weaning)とは,人工呼吸の補助を段階的に減らし抜管へと向かう一連の過

程を意味する.離脱が遅れると肺炎などの合併症が増える一方,抜管の判断を誤り再挿管となれば人工呼吸期間が延長するばかりではなく,患者の予後も悪化する.したがって,離脱は安全かつ最短で行わなければならない. 下記の条件がすべて満たされれば離脱を開始する49).

離脱開始条件(補助換気レベル低下を開始する条件) (1)ARDS の背景病態が改善傾向にあること. (2)酸素化能が十分であること.(FIO2 ≦0.6 で

PaO2/FIO2 ≧200mmHg 27, 50),経皮的酸素飽和度(SpO2)≧90% 51, 52),FIO2 ≦0.4 かつPEEP ≦5cmH2O でPaO2 ≧60 〜100mmHg 53)など) (3)吸気を行う能力があること(4)循環動態の安定(昇圧薬が持続投与されてい

ても高用量でなく投与量が安定していればよい)

b. FIO2 とPEEP の軽減方法SpO2 ≧90% あるいはPaO2 ≧60mmHg が維持できれば,まず FIO2 ≦0. 6 を目標に0. 05 〜0. 1 刻みに下げる.この間PEEP は増加することがある. FIO2 ≦0. 6 が達成できれば,次にFIO2 ≦0. 4 かつPEEP ≦8mmH2O を目標に漸減させる.病態や状況に応じ,より高い,あるいは低いFIO2 やPEEPでの抜管もあり得る.

c. 換気補助の軽減方法および抜管の指標離脱過程で使用される方法に SIMV,PSV,T-ピースがある.特定のモードや方法が挿管期間短縮や再挿管率の低下をもたらすという証拠はない.ま

〔注8〕 HFOV とAPRV は,2009 〜2010 年のH1N1- インフルエンザA 肺炎によるARDS が発生したときに, American Thoracic Society から低容量換気が奏効しない場合のalternative method として紹介された. http://www.jsicm.org/pdf/kokyuki_ridatsu1503b.pdf
p.86
た,ARDS に限定した検討はなされていない.したがって,その施設で慣れている方法で離脱を行えばよい.抜管前には自発呼吸トライアル(spontaneous breathing trial;SBT,後述)を行う.SBT を行う前に,自発覚醒トライアル(spontaneous awakening trial;SAT,後述)を行い,鎮静薬の残存効果がないことを確認しておく.これらの手順については,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会,日本クリティカルケア看護学会の3 学会合同による離脱プロトコル〔注8〕が作成されているので参照されたい.要約すると,SAT 開始安全基準により鎮静薬剤中断や覚醒できない病態がないことを確認した後,鎮静薬投与を中止する.Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)により覚醒度を評価し,鎮静薬中止による有害事象がないことを確認する.SAT に合格したら,SBT 開始安全基準によりSBT を開始できる状態にあるかどうか,呼吸循環動態と全身状態を確認後,SBT を行う.呼吸不全患者で24 時間以上人工呼吸を受け急性期を脱した後,2 時間のT−ピースによる自発呼吸に耐えられない患者を対象に,T−ピース,SIMV, PSV を比較した小規模RCT では,PSV による離脱が他の2 法に比べて失敗率が低く,離脱に必要な期間,ICU 在室日数ともに短かった51).しかし,同様に24 時間以上人工呼吸を受けている,急性呼吸不全から改善し初めてのT−ピースによる自発呼吸に耐えられなかった患者で,SIMV,PSV,1 日1 回のT−ピース・トライアル,1 日2 回以上のT−ピース・トライアルの4 法を比較したRCT では,1 日1 回の T−ピースによる自発呼吸の試行が SIMV, PSV と比較してそれぞれ3 倍および2 倍早く抜管可能であった50).また,2 時間の自発呼吸トライアルを行う場合,T−ピースによるものも7cmH2O のPSV によるものも同様の抜管成功率を示した53).以上を勘案して換気補助の軽減および抜管前のSBT の具体的な手順を以下に示す. 1PSV ではサポート圧を2 〜3cmH2O ずつ下げ

る.PSV でSBT を行う場合は,サポート圧5 〜7cmH2O 以下で行う. 2T−ピースでSBT を行う場合は,人工呼吸回

路からT−ピース回路に変更する. 3SIMV では設定換気回数を2 〜3 回/分ずつ下

げる.換気回数が5 回/分以下で2 時間耐えることができれば抜管を考慮してよいが,本法は積極的に推奨しない(1あるいは2 の方法に移行して評価することを推奨する). 4いずれの方法でも,SBT は最短30 分観察し,

下記のSBT 成功基準を満たせば抜管後上気道狭窄や再挿管のリスクを評価した上で抜管する.SBT は1 日1 回のみとし最長120 分とする. 5SBT 成功基準は,・呼吸数<30 〜35 回/分・開始前と比べ明らかな低下がない(たとえば

SpO2 ≧94%,PaO2 ≧70mmHg)・心拍数<140bpm,新たな不整脈や心筋虚血

の徴候を認めない・過度の血圧上昇を認めない・以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT 前

の状態と比較する) 1.呼吸補助筋の過剰な使用がない2.シーソー呼吸(奇異性呼吸) 3.冷汗4.重度の呼吸困難感,不安感,不穏状態この条件を満たさなければ,SBT 失敗の原因を究明するとともに,離脱を中止し,SBT 開始前の設定に戻し,翌日,再度離脱を試みる.抜管時の指標となりえるパラメーターとして,呼吸数(f)≦30 ~35 回/ 分,一回換気量(VT)> 5 〜10mL/kg,最大吸気陰圧(maximum inspiratory pressure;MIP)< −20cmH2O(あるいは−25cmH2O),分時換気量(VE)<10 〜15L/ 分,P0. 1 ≦4. 5cmH2O, rapid shallow breathing index 51, 53)(f/VT)<100 回/分/L 54)(<80 55),<105 56))〔注9 =次頁〕などが報告されている.いずれも感度は高いが特異度が低く,単一で離脱成功の指標となるものはない.人工呼吸器からの離脱においては,訓練されたスタッフがプロトコルに従い行うと,死亡率に差はないが,人工呼吸期間ならびに離脱のための期間を短縮することがメタ解析で報告されている57).プロ
p.87
トコル使用では,スタッフが流れ図に従って行う方法だけでなく,人工呼吸器に附属した自動離脱プログラムを使用する場合も含めている(CQ6 参照).参考までにSurviving Sepsis Campaign 2008 8)で用いられた人工呼吸器離脱プロトコルを示す〔注10〕.なお,このプロトコルでは換気補助の軽減を行わず,Step 1 で自発呼吸を確認できれば,直ちにStep 2 に移行しSBT を行っている.

d. 特殊な離脱法; Neurally-Adjusted Ventilatory Assist重症ARDS では,部分的換気補助における自発呼吸との不同調により,離脱できない症例が報告されている.不同調は吸気の開始ならびに終了のいずれでも生じる.このような症例で,電極を配した特殊な胃管を留置し,横隔膜の電気活動を捉えて補助換気の開始・終了に利用するNeurally-Adjusted

Ventilatory Assist(NAVA)が同調性を改善させ,離脱を進めることができたとの観察研究がある62). NAVA を行うためには,特定の人工呼吸器と横隔膜電位測定用の食道センサーが必要となる.

e. 再挿管抜管の指標をすべて満たしていても抜管が成功するとは限らない.抜管に失敗し再挿管となった患者のICU 滞在日数,入院日数,院内死亡率は増加するとされている63).抜管後は,呼吸パターン,バイタルサイン,聴診触診所見,血液ガスを厳重に監視する.抜管後の気道閉塞は予測しにくく,いったん起こると急激に状態が悪化する.したがって抜管する前に,再挿管や非侵襲的換気補助の準備をしておくことが必須である.さらに,人手のある時間帯を選んで抜管することを推奨する.長期挿管,女性,大口径のチューブ使用,挿管困難例,外傷症例は,抜管後上気道狭窄の危険因子とされる.危険因子に応じ,抜管前ならびに抜管後の対応を決定しておく.上気道に問題があり抜管直後の再挿管を想定する場合(例;頸部や上気道の術後・外傷,両側反回神経麻痺,開口困難や頸部伸展困難など挿管困難,など)は,喉頭鏡やファイバースコープによる声帯の可動性,浮腫の有無の直接観察,頭部挙上や利尿薬投与,緊急気管切開のための器具と人員の準備,などが必要となる.長期挿管症例に対し抜管前にステロイド薬を予防投与すると,抜管後の喉頭浮腫,再挿管の頻度が減少したとのRCT 試験が報告されている64).この報告では,抜管の12 時間前から4 時間ごとにメチルプレドニゾロン20mg を静脈内投与していた.メタ解析においても,ステロイド薬の予防投与は抜管後の気道合併症を予防すると報告されている65).とはいえ,現状ではこのようなステロイド薬の予防投与を積極的に支持しない施設も多数存在すると考えられる.

〔注9〕 Rapid shallow breathing index は,呼吸数f(回/分)を一回換気量 VT(L)で割った値である.この数値が大きいほど早く浅い呼吸(rapid shallow breathing) であることを意味する.1 分間のT-ピース・トライアルでの値が105 回/分/L を超えるか否かで抜管の成否が決まるとされるが

55),その有用性に関しては異論も多い58 ~60).Rapid shallow breathing index のカットオフ値が80,100,120の人工呼吸器離脱成功に関する感度と特異度はそれぞれ81% と89%,97% と68%,97% と50% といわれ61),感度が高くても特異度は低い.〔注10〕 Surviving Sepsis Campaign 2008 における人工呼吸器離脱プロトコルStep 1 毎日2 分間の自発呼吸テスト◆原疾患は改善したのか? ◆循環動態は安定したか? カテコールアミンや持続鎮静は中止したか? ◆痰の吸引にて咳反射は十分か? ◆ PaO2/FIO2>200mmHg ◆ PEEP ≦5cmH2O ◆分時換気量<15L/分◆ 2 分間の自発呼吸トライアル(T−ピース,CPAP)中に f/VT<105 Step 2 30 〜120 分の自発呼吸トライアル以下を認めれば離脱失敗とし翌日まで待つ◆呼吸回数>35/ 分◆ SpO2<90% ◆心拍数>140/ 分,または変動≧20% ◆収縮期血圧>180mmHg または<90mmHg ◆興奮,冷汗,不安◆ f/VT>105
p.88
6 気道確保と気道管理

a. 気道確保の方法1) 気管挿管ARDS での気道確保としては,経口気管挿管を推奨するが,以下に述べるような特別な状況では,経口挿管以外の気道確保法を選択してよい. a)経鼻挿管適応:頸椎の安静確保や可動性不足,アクセス制限など,経口挿管が困難である場合.注意点:鼻孔・鼻翼の壊死,副鼻腔炎などの合併症を起こしやすい.経口挿管時に比べ口径の小さいチューブが選択されるため,チューブの閉塞や屈曲,狭窄などが起こりやすく,気管支ファイバースコープ検査が行いにくい. b) 気管切開適応:経口,経鼻での気管挿管が不能であるか禁忌である場合,また,気管挿管が長期にわたる場合に実施する.長所・短所:長所は,患者の安楽さが増し鎮静薬投与を減量できる,気道抵抗を軽減する,食事・会話・リハビリテーションを促進できることである66).しかしこれらはRCT で証明されたわけではない.一方,短所は処置に伴う合併症,コストの高いことである.時期:いつ気管切開を行うかについて一定の基準はない67).2005 年のシステマティックレビューとメタ解析によると,気管切開のタイミングによる死亡率(相対危険度0. 79,95% 信頼区間0. 45 〜1. 39, P=0. 42)と院内肺炎発生率(相対危険度0. 90,95%信頼区間0. 66 〜1. 21,P=0. 48)には差は認められなかったが,人工呼吸期間(加重平均の差-8. 5 日, 95% 信頼区間-15. 3 日から-1. 7 日,P=0. 03)ならびにICU 滞在期間(加重平均の差-15. 3 日,95%信頼区間-24. 6 日から-6. 1 日,P=0. 001)は早期気管切開の方が短縮した68).しかし,早期気管切開を全ての患者で行うと,不必要な気管切開を行う可能性が高まり,医療コストが増加する.以上より,人工呼吸管理の長期化が予測され,気管切開の長所が短

所を上回ったと判断されたときに実施する(CQ1参照).実施手技:従来の外科的な気管切開のほかに,経皮的気管切開が広く実施されるようになってきている.経皮的気管切開は,気管を穿刺してガイドワイヤーを気管内に挿入し,そのワイヤーを通して気管切開孔を拡張させた後,気管切開チューブを挿入する方法である.この手技は,ベッドサイドで迅速,簡便に実施することができ,通常の気管切開に比べ合併症が少ないと報告されているが69),それでも気胸や出血などの重篤な合併症を生じうるので,十分な習熟と注意が必要である. c) ラリンジアルマスク確実な気道確保の方法ではなく,ARDS には推奨できない.

2) 気管チューブの固定経口挿管では24 時間ごとに固定し直し,固定部位の長さを記載する.経鼻挿管では鼻翼,鼻孔の圧迫・壊死に注意する.

3) カフ圧の管理気管チューブのカフの目的は,挿管人工呼吸の際,空気が気道から漏れないようにすること,口腔内分泌物や嘔吐物の誤嚥を防止することである.カフ圧が低すぎるとカフ上部に貯留した分泌物がカフ周囲から気管内に漏れてVAP 発生率が増加する.一方,カフ圧が高すぎると気管粘膜の血流が障害される.気管チューブのカフ圧は,カフ圧計にて通常20 〜25cmH2O に設定する.1 日に2 〜3 回の測定が必要である.ただし,測定手技によってカフ圧が下がってしまう可能性に注意する.最近では,持続的にカフ圧を測定し設定値に自動調整する機器が市販されている.頸部の聴診を実施すれば,カフ漏れの有無を簡単に確認できる.大量の空気を入れてもカフ圧が上昇しない場合は,カフのやぶれかカフの咽頭での膨張を考える.定期的にカフを虚脱させる必要はない.
p.89
4) 気管チューブの交換定期的な気管チューブの交換が,肺合併症の発生頻度を低下させたという証拠はないため,気管チューブの入れ替えを定期的に行う必要性はない.入れ替えは気管チューブの狭窄・閉塞の場合にのみ適応となる.気管チューブの閉塞や狭窄が疑われる場合,気管支ファイバースコープを用いれば確実に診断することができる.

5) 説明と同意気管挿管および人工呼吸開始にあたっては,緊急の場合以外,その理由,状況などを患者や家族に説明し,理解と同意を得る.特に,気管挿管や人工呼吸に伴う苦痛を和らげるため薬物による鎮静が必要となり,発声・会話がしばらくできなくなることを説明する.また抜管できた後も,声帯浮腫・麻痺による嗄声,披裂軟骨脱臼などの合併症がまれに起こり,回復に時間を要することがある,長期になれば気管切開を行うことも説明しておく.

b. 気道管理1) 気管吸引の手順70) 1適応となる状態:侵襲的な苦痛を伴う処置で

あるため,次の所見が表われたとき必要に応じて行う.すなわち,努力性呼吸が強くなっている,気管チューブ内に分泌物が見える,胸部聴診で分泌物の存在を示唆する副雑音が聴取されるか呼吸音の低下が認められる,ガス交換障害が認められる,気道内圧の上昇や一回換気量の減少が認められる,人工呼吸器グラフィックモニターの気道内圧や流量波形に特徴的な振動が認められる場合である. 2吸引は1 回ごとにディスポーザブル手袋,滅

菌カテーテルを使用し,無菌的に施行する(鑷子でカテーテルを操作してはならない.また,チューブを薬液に浸漬して再使用してはいけない).吸引前および吸引後には,必ず適切に手洗いをするか,擦り込み式アルコール製剤で手指を消毒する.ビニールエプロン,ゴーグル,マスクを着用する.手袋は滅菌された

ものでなくてもよい. 3吸引カテーテルの太さは気管チューブの2 分

の1 以下とする. 4吸引はECG モニターとパルスオキシメーター

による監視下で行う. 5吸引操作により低酸素血症の発生が予測され

る場合には,100% 酸素で十分に換気した後に行う. 6吸引操作は愛護的に行い,1 回10 秒以内とす

る. 7吸引カテーテルを無理に深く入れない. 8カテーテルの入り具合,咳嗽反射の程度,吸

引物の性状・量を観察する. 9吸引終了後,肺を十分に拡張させる.一時的

にPEEP を増やしたり,バッグ加圧する方法がある. 10吸引圧は成人で120 〜150mmHg,小児で

80 〜120mmHg に設定する(吸引圧上限が設定できる吸引装置を使用する). 11通常の気管吸引で喀痰が除去しきれない場合,

気管支ファイバースコープを用いた喀痰の除去は,無気肺の解除に有効である.ただし,気管支ファイバースコープの取り扱い・感染防止には十分留意する必要がある.

2) 閉鎖式吸引カテーテルキット吸引中の低酸素血症が予測される患者では,閉鎖式吸引カテーテルキットが推奨されている.このカテーテルキットを使用すると,PEEP が維持された状態で,あるいは換気を続けながら気管吸引できる利点があるが,閉鎖式吸引システムと開放的吸引システムの間にVAP 発症率の差はないとのRCT も報告されている71).このキットは同一の吸引カテーテルをくり返し使うことになるので,細菌の繁殖が危惧されるが,従来のカテーテルを毎回交換する方法と比較しても細菌繁殖は変わらないとの報告もあり72),毎日交換しなくてもVAP の頻度は変わらなかった73, 74)とも報告されている.ただし,この一方の研究74)の
p.90
VAP 発症頻度は1. 9/1000 人工呼吸日数と低い.肺炎が高頻度でみられる現場での使用期間の延長には注意が必要である.

3) トイレッティング生理食塩水を使用する.喀痰が粘稠な場合に行ってよい.ただし,低酸素血症などの合併症が起こることがあり,ルーチンの施行は奨励されない.なお, 72 時間以上の長期挿管患者を対象として,気管吸引ごとに8mL の生理食塩水注入を行うと,VAP 発生率が25% から11% へ有意に低下するという報告がある75).

4) 気管吸引施行時の合併症低酸素血症,血圧変動,頻脈,徐脈,不整脈,脳圧上昇,気道損傷と気道出血などがある.したがって,気管吸引はバイタルサインに注意しながら短時間で行う.

5) 口腔ケア気管挿管患者では口腔内の自浄作用が低下し,常在細菌叢が変化し,さまざまな病原菌が定着しバイオフィルムを形成する.歯垢に付着したバイオフィルムや口腔内分泌物が剥がれ落ち,気管に流入し人工呼吸関連肺炎(VAP)の原因となる.予防策として口腔ケアで歯垢をコントロールすることが大切である.定期的に歯や舌をブラッシング・洗浄することは歯垢コントロールに有用である.8 〜12 時間ごとに,ポビドンヨード液(30 倍希釈)や塩化ベンザルコニウム液(0. 025%)を用いた口腔内清拭も行われている.消毒薬として,クロルヘキシジンを用いた口腔内殺菌(selective oral decontamination;SOD)がVAP 発生率を有意に減少させる76).しかし,本邦ではアナフィラキシーショックへの懸念から,高濃度クロルヘキシジンの粘膜面への使用は認められていない.

6) 声門下カフ上部吸引声門下カフ上に貯留した分泌物は病原菌に汚染されやすい.声門下カフ上部を吸引できる側孔がついた気管チューブが発売されている.持続的に声門下

カフ上部を吸引することにより,VAP の発症率が減少し,VAP 発生までの期間も延長する.持続的声門下カフ上部吸引群を対照群と比較した小規模RCTでは,1, 000 人工呼吸日数に対する肺炎発症数は

19 9 と39. 6 であった(相対リスク1. 98[95%信頼

区間1. 03 〜3. 82]) 77).このあとに行われた心臓外科術後患者を対象にしたRCT では早期のVAP が減少し78),挿管患者を対象にしたものでは肺炎の発生率を下げる結果が示されている79).ただし,死亡率や在院日数などには有意な差が認められていない.その後のメタ解析で,声門下カフ上部吸引によりVAP 発症率が半減することが示された.この効果は特に72 時間以上の長期挿管を要する患者群で明確であった80).一般の気管チューブよりコストが高い点,過剰な吸引によって粘膜損傷を引き起こし得るなどの不利益に留意が必要だが,使用を考慮する価値がある.

7 人工呼吸器の

始業点検と呼吸回路

a. 始業点検と動作確認回路の組み立て後,患者に接続する前に,リークテスト,テスト肺を用いて動作確認をする.使用にあたっては最高気道内圧と最低分時換気量(最低一回換気量)のアラームを設定する.分時換気量の測定ができない機種では低圧アラームを設定する.バックアップ換気が設定できる人工呼吸器では,その設定を必ず行う.また,無停電電源のない病棟ではバッテリー駆動ができる人工呼吸器を使用する.また,圧縮空気配管のない病室で人工呼吸を実施する場合,コンプレッサーを用意するか,圧縮空気を要しない人工呼吸器機種を選択する.

b. 人工呼吸回路の交換人工呼吸回路は患者ごとに交換する.VAP の発
p.91
症頻度は,人工呼吸回路交換の間隔を1 週間ごとより頻回に行っても減少しないとの観察研究が報告されている81).したがって,定期的な回路交換を行っても構わないが,7 日以内に人工呼吸回路を交換する必要はなさそうである.汚染や破損が認められた場合だけ人工呼吸回路を交換する,いわゆる「1 患者1 回路」の方針としている施設も多い.回路内に溜まった水滴は,発見時あるいは,体位変換前に無菌的な手技で除去する.

c. 加温加湿器加温加湿器の水分供給能力について,米国標準協会(American National Standards Institute;ANSI)の規格では絶対湿度33mg/L 以上としている.実際には気管チューブ内に結露がある程度に,加温加湿器の温度を調節する.

1) カスケード加温加湿器Bubble diffusion 型の改良されたもので,ガスを水中に導き,細かい泡状にしてガスと水との接触面積を増やしている.ガスが水中に入るため気流抵抗が高くなり,吸気トリガーの遅れの原因になる.水温はヒーター調節用ダイアルで設定する.実際の吸入気の温度は口元の温度計でモニターする.

2) Pass-over 型加温加湿器使い捨ての加温加湿チャンバーを使用する.気流抵抗は小さいが,高流量ガスに対して加湿効率は低下する82).したがって,高流量で使用する際には口元の温度を高めに設定する.ホースヒーター(熱線)付きのタイプは,吸気回路内に電熱線を入れることにより,吸気ガス冷却による回路内結露を防ぐ.喀痰が粘稠でないこと,気管チューブ内および吸気回路終末部分にうっすらと結露していることを確認する.

3) 人工鼻人工鼻(heat and moisture exchanger;HME)はY ピースと気管チューブの間に装着する.内部は繊維,紙,スポンジなどでできており,呼気中の

熱や水分を貯え,次の吸気時に放出するものである.機種によって加湿効率や気流抵抗,死腔量,さらには除菌フィルター機能の有無などの違いがある83). HME の加湿性能は絶対湿度30mg/L 前後である. ARDS 患者では吸気流量が速いためにHME の加湿効率は低下し,加湿が十分であるかどうかは明らかでない.また,長期人工呼吸が予測される場合,分泌物の除去は重要な問題である.人工呼吸器離脱が困難な症例の場合,HME の気道抵抗増加による呼吸仕事量の増加,死腔の増加は問題となる.使用にあたっては慎重に判断する.なお,HME と加温加湿器の併用は,HME が急速に閉塞してしまうので絶対避けるべきである. HME の交換頻度に関しては,1 週間までであれば回路内の細菌発生頻度の上昇などはみられず,合併症の増加もないことが示されている84).ただし製品にもよるが,メーカーは24 時間ごと,あるいは48 時間ごとの交換を推奨している.

8 人工呼吸中の鎮静・鎮痛

ARDS に限らず人工呼吸中の患者の8 割以上が痛みを体験しており,鎮痛薬の投与は重要である.しかし,過剰な鎮静は必ずしも有益でないばかりか,人工呼吸期間ならびにICU 滞在・入院期間の延長やせん妄の発生をもたらし,長期予後を悪化させ,退院後ADL を低下させる.浅い鎮静深度を維持することにより,人工呼吸期間やICU 滞在期間の短縮など,患者アウトカムが改善する.今日では,人工呼吸管理中の成人患者では,鎮痛を優先に行う鎮静法(analgesia-first sedation)と,浅い鎮静を行うことが重要と考えられている.詳しくは日本集中治療医学会のガイドライン85)を参照していただきたい.鎮痛鎮静薬の使用においては,スケールを用いた客観的評価を行う.鎮痛評価としては,Behavioral Pain Scale(BPS)あるいはCritical Care Pain Ob-
p.92
servation Tool(CPOT)を,鎮静評価ではRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)(表9-1)

86)あるいは

Sedation-Agitation Scale(SAS)

87)を使用する.

人工呼吸患者を含め重症患者においてICU 滞在中のせん妄発症は,単独で6 ヵ月後の生存率を2 割低下させる (せん妄あり34% vs なし15%,P =0. 03) 90).せん妄を防止する鎮静法として,1自発覚醒と自発呼吸の使用,2せん妄の原因に応じた鎮静薬の選択,3せん妄の評価とモニタリング,4早期離床とリハビリテーション,を行う.1のためには人工呼吸管理中は「毎日鎮静を中断する」あるいは「浅い鎮静深度を目標とする」プロトコルのいずれかをルーチンに用い,浅い鎮静を行う.2ではアルコール・ベンゾジアゼピン系薬離脱の治療を除き,ベンゾジアゼピン系鎮静薬よりも非ベンゾジアゼピン系鎮静薬を優先的に使用する.3では,せん妄評価にConfusion Assessment Method for the ICU(CAM- ICU)

88, 89)(図9-4)あるいはICU Delirium Screening Checklist(ICDSC)を用いる.4の早期離床(early表9-1 ●RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)とその利用法

ステップ1: 30 秒間,患者を観察する.  これ(視診のみ)によりスコア0 〜+4 を判定する.ステップ2: 1) 大声で名前を呼ぶか,開眼するように言う. 2) 10 秒以上アイ・コンタクトができなければ繰り返す.  以上2 項目(呼びかけ刺激)によりスコア−1 〜−3 を判定する. 3) 動きが見られなければ,肩を揺するか,胸骨を摩擦する.  こ

れ(身体刺激)によりスコア−4,−5 を判定する.スコア用語説明+4好戦的な明らかに好戦的な,暴力的な,スタッフに対する差し迫った危険+3非常に興奮した

チューブ類またはカテーテル類を自己抜去+2興奮した頻繁な非意図的な運動・人工呼吸器ファイティング+1落ち着きのない

不安で絶えずそわそわしている,しかし動きは攻撃的でも活発でもない0意識清明・落ち着いている-1傾眠状態完全に清明ではない.呼びかけに10 秒以上のアイ・コンタクトで応答-2軽い鎮静状態

呼びかけに10 秒未満のアイ・コンタクトで応答-3中等度鎮静呼びかけに動きまたは開眼で応答する.アイ・コンタクトなし-4深い鎮静状態

呼びかけに無反応,身体刺激で動きまたは開眼-5昏睡呼びかけにも身体刺激にも無反応

Step1 としてRASS による興奮・鎮静度評価を行いRASS -3以上に覚醒していることを確認する.RASS -4 以下の場合は,時間を空けて再評価する.RASS -3 以上の場合は,Step 2 として所見1 ~4 を評価し,所見ごとの結果により矢印に沿ってせん妄判定を進める.「せん妄ではない」の場合は,評価を終了できる.「せん妄である」場合は,RASS の結果と併せて活発型せん妄または不活発型せん妄の判定を行う.

図9-4 ●日本語版CAM-ICU フローシート
p.93
mobilization)とリハビリテーションについては「9呼吸理学療法,d.早期モビリゼーション」を参照のこと.

9 呼吸理学療法

呼吸理学療法とは,呼吸障害の予防および治療を目的とした徒手的治療手技,体位操作などで構成される呼吸管理の一手段である.貯留した気道分泌物の誘導・排除,末梢気道の開存,肺胞換気の維持・改善,酸素化の改善が主たる目的で,人工呼吸器からの早期離脱,早期離床と入院期間短縮,ADL (activities of daily living)の改善など,患者の最終転帰の改善を目標として行われている. ARDS に対する呼吸理学療法は,体位変換と体位ドレナージによって構成される.前者は新たな肺合併症の予防が目的であり,後者は排痰手技を併用して貯留分泌物の排出を促進することが目的である.

a. 体位変換1) 通常の体位変換通常の体位変換としては,左右側臥位を1 〜2 時間ごとに繰り返す方法が行われる.

2) 頭高位人工呼吸患者を対象に,45 度の角度で頭を起こす半坐位と仰臥位を比較した小規模 RCT によれば,臨床所見からの肺炎の頻度が 3/39 対16/47 であった91).相対リスクでみると 0. 26(95% 信頼区間0. 10 〜0. 42)と効果は大きい.死亡率 7/39 対13/47 と半坐位を保ったほうの死亡率が低かったが,統計学的な有意差はなかった(P=0. 29).一方,人工呼吸患者の頭高位角度の目標を45 度とする群と,10 度とする群に分けて比較した 比較的大規模なRCT では,VAP 発生率に差はなかった92).したがって,VAP 予防に有効な頭高位の角度については,結論が出ていないとするのが妥当である.しかし,人工呼吸患者を仰臥位で管理しないことの重要性は広く受け入れられている(日本集中治療医学

会ICU 機能評価委員会作成 人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010 年改訂版http://www.jsicm.org/ pdf/2010VAP.pdf を参照).

3) 持続的体位変換持続的体位変換とは,左右の側臥位を自動的に繰り返すものである.持続的体位変換に関するメタ解析93)では,肺合併症を減少,挿管およびICU 在室期間を短縮させたが,死亡率,入院日数には影響を及ぼさず,ARDS や敗血症の患者には無効であるとしている.ARDS 患者に対する持続的体位変換と 2 時間ごとの通常の体位変換を比較すると,ガス交換,その他の転帰に関して同等であった94).したがって,持続的体位変換は行わなくてよい.

4) 腹臥位療法腹臥位がARDS 患者の酸素化能を改善するという数多くの報告がある95, 96).死亡率改善効果を確かめるためにALI/ARDS を対象に行われた大規模RCT では,平均7 時間の腹臥位が行われ,一時的な酸素化能の改善がみられたが,死亡率や在院日数などの予後に関する効果は示されなかった97).ただし,post-hoc のサブグループ分析によると,著明な低酸素血症を呈する患者や重症度の高い患者では,腹臥位群で予後の改善傾向がみられた.1 日20時間を目標に腹臥位管理の効果を検討した小規模RCT では,ARDS 重症度は概ね中等症-重症であったがばらつきがあり,画像上びまん性浸潤陰影を示す症例に限られた.腹臥位開始までの時間は1. 04 ± 1. 30 日,腹臥位時間は開始初日が14 時間,その後は18 〜20 時間で,酸素化能は改善するものの生命予後の改善は有意ではなかった98).同じく1 日20 時間の腹臥位管理の効果を検討した 大規模RCTでは,現在のBerlin 定義に基づいた中等度-重症ARDS を対象とし,診断から72 時間以内に実際された.しかし,重症度によるサブグループで検討しても生命予後の改善は有意ではなかった99). 2013 年に発表された大規模RCT 100)では,P/F 比<150mmHg の症例に対し人工呼吸開始36 時間以内
p.94
に1 日16 時間以上の腹臥位を開始したところ,90 日死亡率は腹臥位群で24% と腹臥位を行わない群の41% に比べ有意に低下し(HR 0. 44,95% 信頼区間

0 29 ~0. 67,P=0. 001),腹臥位による合併症発生

率も有意差を認めずその有用性が示された.ただし, ICU スタッフの熟練度が合併症の低さに寄与しており,研究結果は経験のない施設にあてはまるものではないと説明している.腹臥位では皮膚障害(褥瘡など)やチューブ・ライン抜去という合併症が想定されるため,あらゆる施設においてルーチンに行う処置ではないかもしれない(CQ7 参照).

b. 排痰手技を併用した体位ドレナージ体位ドレナージは,貯留した気道内分泌物を肺区域から排出させる治療手段である.体位ドレナージが有効であるとする科学的根拠があるのは無気肺,分泌物(もしくは血液)の貯留など,ごくわずかの場合に限られる.したがって,ARDS でもそのような場合でのみ適応となる.体位ドレナージは治療体位(ドレナージ体位),気道内分泌物の移動を促すための手技(排痰手技),咳嗽と強制呼出法または気管吸引によって構成される.正しいドレナージ体位をとり,気道内分泌物の移動促進を目的に,徒手的もしくは機械的な軽打法,あるいは振動法といった排痰手技を併用するのが従来からの標準的な方法であった.しかし,急性呼吸不全における体位ドレナージは,低酸素血症を改善せず101, 102),むしろ低酸素血症の増悪,心負荷の増大,酸素消費量の増加などの有害性が示唆されている103~107).したがって,頭低位などの極端なドレナージ体位は推奨できない.気道内分泌物に流動性があれば,側臥位,腹臥位などのドレナージ体位のみでも分泌物を排出し得る.軽打法を併用した体位ドレナージが有効かどうかは不明であり,軽打法の施行に伴う疼痛や重症不整脈108)などの合併症が高率に発生することから,ARDS では軽打法の併用は推奨できない.近年,分泌物貯留部位に相当する胸壁上を呼気にあわせて呼気終末まで圧迫を加える手技が報告されている109).呼気にあわせ胸壁を圧迫することで呼

気流速を増加させ,気道内分泌物の移動促進や,その後の吸気時のエアエントリーを改善させようとするものであるが,ARDS での有効性は証明されていない.排痰手技や体位ドレナージに,高いPEEPやリクルートメント手技を併用することで無気肺の改善が得られる場合もあるが,循環抑制,肺損傷,脳圧への影響に配慮しながら実施する必要がある. ARDS の場合,分泌物は末梢気道に存在することが多いため,体位ドレナージ実施15 〜30 分後に気管吸引を試みる.本法の実施時間や頻度に関する一定の基準はないため,分泌物の量や性状,手技への反応により決定する.

c. 吸入療法(エアロゾル療法)人工呼吸管理中のエアロゾル療法では,ネブライザーを用いて,気管支拡張薬,喀痰溶解薬,抗菌薬が投与されることがある.しかし,ARDS におけるこれら薬剤の有効性は証明されておらず,感染の機会となることが指摘されているので,投与しないほうがよい.なお,ネブライザーと人工鼻の併用は,人工鼻が急速に閉塞してしまうので,絶対避けるべきである.さらに人工呼吸管理中にネブライザーを実施すると,人工呼吸器の呼気フィルターが閉塞することがあり,避けるべきである.

d. 早期モビリゼーション呼吸不全に対しICU で人工呼吸療法を受けた患者が,ICU 退室後に認知機能低下,筋萎縮110),神経筋機能低下,ADL の低下,呼吸困難感,疲労などを呈し,長期リハビリテーションを要することが報告された.これらはICU-acquired weakness (ICU-AW)として,人工呼吸を受けた患者の長期予後を悪化させる原因と考えられている.ICU- AW の発生原因は,人工呼吸中の長期ベッド上安静といわれる.これらの研究から,早期モビリゼーションの重要性が認識されるようになった.早期モビリゼーションとして,浅鎮静によりコン
p.95
タクトがとれるようになれば,人工呼吸中から坐位,端坐位,車いす移乗,立位,歩行と段階的にリハビリテーションを進めていく.72 時間以上の人工呼吸を行った患者104 名を対象に,早期モビリゼーションの安全性と有用性がRCT で検討された111).早期モビリゼーションは安全に行われ,従来型ケアに比べ,退院後のADL 自立は有意に多く,ICU 滞在中・入院中のせん妄の減少,人工呼吸期間短縮が確認された.

10 人工呼吸療法中の

安全管理とモニター

人工呼吸療法を安全に実施するには,さまざまな注意が必要である.

1) 一般病室で人工呼吸療法を施行する場合まず,人工呼吸療法を施行する部署は,看護師による連続的な患者の生体情報監視が可能で,かつ急変事態にただちに対処できる集中治療施設,あるいはそれに準じる施設が望ましい.やむを得ず一般病室で人工呼吸療法を施行する場合には,以下の要件を満たすことが必要である112, 113). 1適切な警報装置を備えている人工呼吸器を使

用すること. 2心電図,呼吸数,パルスオキシメーターによ

る経皮的酸素飽和度(SpO2),カプノメーターによる呼気二酸化炭素濃度(PETCO2)が連続的にモニターできること. 3当該病室と担当看護師間に即応できる緊急連

絡の手段が講じられていること. 4当該病室には即座に使用できる状態で蘇生用

具一式(用手人工呼吸用器材,気管挿管用器材,蘇生用薬剤など)が常備されていること. 5人工呼吸器の電源として,無停電電源が使用

できること.無停電電源のない病棟ではバッテリー駆動ができる人工呼吸器を使用すること. 6送電停止時でも酸素および空気が供給できること.

2) 人工呼吸療法中のモニター次に,人工呼吸療法中は患者の呼吸に関するモニターが不可欠である.各モニターには警報装置を適切に作動させることが必須である. 1パルスオキシメーター:SpO2 を連続的にモニ

ターする.酸素化の簡便なモニターとして必須である. 2カプノメーター:PETCO2 を連続的にモニター

する.回路外れや無呼吸などの異常事態に対応する迅速なモニターである.値だけでなく波形も表示することが望ましい. 3心電図および呼吸数の連続的モニター:人工

呼吸中は必須のモニターである.心電図により心拍数の変化,不整脈,心筋虚血の早期診断を図る.呼吸数の変化は呼吸状態の悪化や,人工呼吸器のトラブルの早期発見に役立つ. 4人工呼吸器のモニター:人工呼吸器の一回換

気量(VT),分時換気量(MV),気道内圧(最高気道内圧,プラトー圧,PEEP)を連続的にモニターする必要がある.最低分時換気量,最低気道内圧,無呼吸の警報は救命的警報であり,適切に設定する.最高気道内圧,最高分時換気量,頻呼吸の警報は合併症予防のための警報である.吸引など処置に伴い一時的に警報解除を行った場合,その場で必ず警報を復旧させる.

3) 呼吸パターンやバイタルサイン機械だけに頼らず,呼吸パターンやバイタルサインを継続的にモニターする必要がある. 1呼吸パターン:奇異呼吸,陥没呼吸,シーソー

呼吸は,呼吸努力の増加,患者-人工呼吸器の同調性悪化の徴候である. 2基本的バイタルサイン:意識レベル,血圧,

脈拍,尿量などを継続的にモニターする.
p.96
■ 文 献1)日本呼吸療法医学会・急性呼吸不全実態調査委員会:ARDS に対するClinical Practice Guideline 第2 版.

人工呼吸 21:44-61, 2004 2)Rappaport SH, Shpiner R, Yoshihara G, et al:Randomized, prospective trial of pressure-limited versus

volume-controlled ventilation in severe respiratory failure. Crit Care Med 22:22-32, 1994 3)Lessard MR, Guerot E, Lorino H, et al:Effects of pressure-controlled with different I:E ratios versus

volume-controlled ventilation on respiratory mechanics, gas exchange, and hemodynamics in patients with adult respiratory distress syndrome. Anesthesiology 80:983-991, 1994 4)Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al:Acute respiratory distress syndrome:the Berlin

Definition. JAMA 307:2526-2533, 2012 5)Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute lung injury

and the acute respiratory distress syndrome. The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 342:1301-1308, 2000 6)Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al:Beneficial effects of the "open lung approach" with low

distending pressures in acute respiratory distress syndrome. A prospective randomized study on mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 152:1835-1846, 1995 7)Villar J, Kacmarek RM, Perez-Mendez L, et al:A high positive end-expiratory pressure, low tidal

volume ventilatory strategy improves outcome in persistent acute respiratory distress syndrome:a randomized, controlled trial. Crit Care Med 34:1311-1318, 2006 8)Dellinger RP, Levy MM, Carlet JM, et al:Surviving Sepsis Campaign:International guidelines for

management of severe sepsis and septic shock:2008. Intensive Care Med 34:17-60, 2008 9)Slutsky AS:Consensus conference on mechanical ventilation--January 28-30, 1993 at Northbrook,

Illinois, USA. Part I. European Society of Intensive Care Medicine, the ACCP and the SCCM. Intensive Care Med 20:64-79, 1994 10)Stewart TE, Meade MO, Cook DJ, et al:Evaluation of a ventilation strategy to prevent barotrauma in

patients at high risk for acute respiratory distress syndrome. Pressure- and Volume-Limited Ventilation Strategy Group. N Engl J Med 338:355-361, 1998 11)Brochard L, Roudot-Thoraval F, Roupie E, et al:Tidal volume reduction for prevention of ventilator-

induced lung injury in acute respiratory distress syndrome. The Multicenter Trail Group on Tidal Volume reduction in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 158:1831-1838, 1998 12)Brower RG, Shanholtz CB, Fessler HE, et al:Prospective, randomized, controlled clinical trial

comparing traditional versus reduced tidal volume ventilation in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 27:1492-1498, 1999 13)Eichacker PQ, Gerstenberger EP, Banks SM, et al:Meta-analysis of acute lung injury and acute

respiratory distress syndrome trials testing low tidal volumes. Am J Respir Crit Care Med 166:1510- 1514, 2002 14)Beitler JR, Shaefi S, Montesi SB, et al:Prone positioning reduces mortality from acute respiratory

distress syndrome in the low tidal volume era:a meta-analysis. Intensive Care Med 40:332-341, 2014 15)Brower RG, Lanken PN, MacIntyre N, et al:Higher versus lower positive end-expiratory pressures in

patients with the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 351:327-336, 2004 16)Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al:Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment

maneuvers, and high positive end-expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 299:637-645, 2008 17)Mercat A, Richard JC, Vielle B, et al:Positive end-expiratory pressure setting in adults with acute

lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 299:646- 655, 2008
p.97
18)Phoenix SI, Paravastu S, Columb M, et al:Does a higher positive end expiratory pressure decrease

mortality in acute respiratory distress syndrome? A systematic review and meta-analysis. Anesthesiology  110:1098-1105, 2009 19)Oba Y, Thameem DM, Zaza T:High levels of PEEP may improve survival in acute respiratory

distress syndrome:A meta-analysis. Respir Med 103:1174-1181, 2009 20)Briel M, Meade M, Mercat A, et al:Higher vs lower positive end-expiratory pressure in patients with

acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:systematic review and meta-analysis. JAMA 303:865-873, 2010 21)Ferguson ND, Fan E, Camporota L, et al:The Berlin definition of ARDS:an expanded rationale,

justification, and supplementary material. Intensive Care Med 38:1573-1582, 2012 22)Hickling KG, Henderson SJ, Jackson R:Low mortality associated with low volume pressure limited

ventilation with permissive hypercapnia in severe adult respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 16:372-377, 1990 23)Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al:Effect of a protective-ventilation strategy on mortality in

the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 338:347-354, 1998 24)Borges JB, Okamoto VN, Matos GF, et al:Reversibility of lung collapse and hypoxemia in early acute

respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 174:268-278, 2006 25)Hodgson C, Keating JL, Holland AE, et al:Recruitment manoeuvres for adults with acute lung injury

receiving mechanical ventilation. Cochrane Database Syst Rev CD006667, 2009 26)Fan E, Wilcox ME, Brower RG, et al:Recruitment maneuvers for acute lung injury:a systematic

review. Am J Respir Crit Care Med 178:1156-1163, 2008 27)Esteban A, Alia I, Gordo F, et al:Prospective randomized trial comparing pressure-controlled

ventilation and volume-controlled ventilation in ARDS. For the Spanish Lung Failure Collaborative Group. Chest 117:1690-1696, 2000 28)Rittayamai N, Katsios CM, Beloncle F, et al:Pressure-Controlled vs Volume-Controlled Ventilation in

Acute Respiratory Failure:A Physiology-Based Narrative and Systematic Review. Chest 148:340- 355, 2015 29)Kollef MH, Shapiro SD, Silver P, et al:A randomized, controlled trial of protocol-directed versus

physician-directed weaning from mechanical ventilation. Crit Care Med 25:567-574, 1997 30)Antonelli M, Conti G, Moro ML, et al:Predictors of failure of noninvasive positive pressure ventilation

in patients with acute hypoxemic respiratory failure:a multi-center study. Intensive Care Med 27: 1718-1728, 2001 31)Antonelli M, Conti G, Esquinas A, et al:A multiple-center survey on the use in clinical practice of

noninvasive ventilation as a first-line intervention for acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 35:18-25, 2007 32)Zhan Q, Sun B, Liang L, et al:Early use of noninvasive positive pressure ventilation for acute lung

injury:a multicenter randomized controlled trial. Crit Care Med 40:455-460, 2012 33)Keenan SP, Powers C, McCormack DG, et al:Noninvasive positive-pressure ventilation for

postextubation respiratory distress:a randomized controlled trial. JAMA 287:3238-3244, 2002 34)Esteban A, Frutos-Vivar F, Ferguson ND, et al:Noninvasive positive-pressure ventilation for

respiratory failure after extubation. N Engl J Med 350:2452-2460, 2004 35)Amato MB, Meade MO, Slutsky AS, et al:Driving pressure and survival in the acute respiratory

distress syndrome. N Engl J Med 372:747-755, 2015 36)Papazian L, Forel JM, Gacouin A, et al:Neuromuscular blockers in early acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 363:1107-1116, 2010 37)Talmor D, Sarge T, Malhotra A, et al:Mechanical ventilation guided by esophageal pressure in acute
p.98
lung injury. N Engl J Med 359:2095-2104, 2008 38)Slutsky AS, Ranieri VM:Ventilator-induced lung injury. N Engl J Med 369:2126-2136, 2013 39)Akoumianaki E, Maggiore SM, Valenza F, et al:The application of esophageal pressure measurement

in patients with respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med 189:520-531, 2014 40)Derdak S, Mehta S, Stewart TE, et al:High-frequency oscillatory ventilation for acute respiratory

distress syndrome in adults:a randomized, controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 166:801-808, 2002 41)Young D, Lamb SE, Shah S, et al:High-frequency oscillation for acute respiratory distress syndrome.

N Engl J Med 368:806-813, 2013 42)Ferguson ND, Cook DJ, Guyatt GH, et al:High-frequency oscillation in early acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 368:795-805, 2013 43)Mehta S, Lapinsky SE, Hallett DC, et al:Prospective trial of high-frequency oscillation in adults with

acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 29:1360-1369, 2001 44)Habashi NM:Other approaches to open-lung ventilation:airway pressure release ventilation. Crit

Care Med 33:S228-240, 2005 45)Putensen C, Zech S, Wrigge H, et al:Long-term effects of spontaneous breathing during ventilatory

support in patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 164:43-49, 2001 46)Mercat A, Graini L, Teboul JL, et al:Cardiorespiratory effects of pressure-controlled ventilation with

and without inverse ratio in the adult respiratory distress syndrome. Chest 104:871-875, 1993 47)Mercat A, Titiriga M, Anguel N, et al:Inverse ratio ventilation (I/E = 2/1) in acute respiratory

distress syndrome:a six-hour controlled study. Am J Respir Crit Care Med 155:1637-1642, 1997 48)Zavala E, Ferrer M, Polese G, et al:Effect of inverse I:E ratio ventilation on pulmonary gas exchange

in acute respiratory distress syndrome. Anesthesiology 88:35-42, 1998 49)MacIntyre NR, Cook DJ, Ely EW Jr, et al:Evidence-Based Guidelines for Weaning and Discontinuing

Ventilatory Support :A Collective Task Force Facilitated by the American College of Chest Physicians;the American Association for Respiratory Care;and the American College of Critical Care Medicine. Chest 120:375S-395, 2001 50)Esteban A, Frutos F, Tobin MJ, et al:A comparison of four methods of weaning patients from

mechanical ventilation. Spanish Lung Failure Collaborative Group. N Engl J Med 332:345-350, 1995 51)Brochard L, Rauss A, Benito S, et al:Comparison of three methods of gradual withdrawal from

ventilatory support during weaning from mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 150:896- 903, 1994 52)Vallverdu I, Calaf N, Subirana M, et al:Clinical characteristics, respiratory functional parameters, and

outcome of a two-hour T-piece trial in patients weaning from mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 158:1855-1862, 1998 53)Esteban A, Alia I, Gordo F, et al:Extubation outcome after spontaneous breathing trials with T-tube

or pressure support ventilation. The Spanish Lung Failure Collaborative Group. Am J Respir Crit Care Med 156:459-465, 1997 54)Yang KL, Tobin MJ:A prospective study of indexes predicting the outcome of trials of weaning from

mechanical ventilation. N Engl J Med 324:1445-1450, 1991 55)Dries DJ:Weaning from mechanical ventilation. J Trauma 43:372-384, 1997 56)Leitch EA, Moran JL, Grealy B:Weaning and extubation in the intensive care unit. Clinical or index-

driven approach? Intensive Care Med 22:752-759, 1996 57)Blackwood B, Alderdice F, Burns K, et al:Use of weaning protocols for reducing duration of

mechanical ventilation in critically ill adult patients:Cochrane systematic review and meta-analysis. BMJ 342:c7237, 2011
p.99
58)Lee KH, Hui KP, Chan TB, et al:Rapid shallow breathing (frequency-tidal volume ratio) did not

predict extubation outcome. Chest 105:540-543, 1994 59)Epstein SK:Etiology of extubation failure and the predictive value of the rapid shallow breathing

index. Am J Respir Crit Care Med 152:545-549, 1995 60)Epstein SK, Ciubotaru RL:Influence of gender and endotracheal tube size on preextubation breathing

pattern. Am J Respir Crit Care Med 154:1647-1652, 1996 61)Jaeschke RZ, Meade MO, Guyatt GH, et al:How to use diagnostic test articles in the intensive care

unit:diagnosing weanability using f/Vt. Crit Care Med 25:1514-1521, 1997 62)Mauri T, Bellani G, Grasselli G, et al:Patient-ventilator interaction in ARDS patients with extremely

low compliance undergoing ECMO:a novel approach based on diaphragm electrical activity. Intensive Care Med 39:282-291, 2013 63)Epstein SK, Ciubotaru RL, Wong JB:Effect of failed extubation on the outcome of mechanical

ventilation. Chest 112:186-192, 1997 64)Francois B, Bellissant E, Gissot V, et al:12-h pretreatment with methylprednisolone versus placebo

for prevention of postextubation laryngeal oedema:a randomised double-blind trial. Lancet 369:1083- 1089, 2007 65)Fan T, Wang G, Mao B, et al:Prophylactic administration of parenteral steroids for preventing airway

complications after extubation in adults:meta-analysis of randomised placebo controlled trials. BMJ 337:a1841, 2008 66)Heffner JE:The role of tracheotomy in weaning. Chest 120:477S-481S, 2001 67)Maziak DE, Meade MO, Todd TR:The timing of tracheotomy:a systematic review. Chest 114:605-

609, 1998 68)Griffiths J, Barber VS, Morgan L, et al:Systematic review and meta-analysis of studies of the timing

of tracheostomy in adult patients undergoing artificial ventilation. BMJ 330:1243, 2005 69)Dulguerov P, Gysin C, Perneger TV, et al:Percutaneous or surgical tracheostomy:a meta-analysis.

Crit Care Med 27:1617-1625, 1999 70)日本呼吸療法医学会・コメディカル推進委員会・気管吸引ガイドライン作成ワーキンググループ:気管吸

引のガイドライン(成人で人工気道を有する患者のための).人工呼吸 25:48-59, 2008 71)Siempos, II, Vardakas KZ, Falagas ME:Closed tracheal suction systems for prevention of ventilator-

associated pneumonia. Br J Anaesth 100:299-306, 2008 72)DePew CL, Noll ML:Inline closed-system suctioning:a research analysis. Dimens Crit Care Nurs 13:

73-83, 1994 73)Kollef MH, Prentice D, Shapiro SD, et al:Mechanical ventilation with or without daily changes of in-

line suction catheters. Am J Respir Crit Care Med 156:466-472, 1997 74)Stoller JK, Orens DK, Fatica C, et al:Weekly versus daily changes of in-line suction catheters:impact

on rates of ventilator-associated pneumonia and associated costs. Respir Care 48:494-499, 2003 75)Caruso P, Denari S, Ruiz SA, et al:Saline instillation before tracheal suctioning decreases the incidence

of ventilator-associated pneumonia. Crit Care Med 37:32-38, 2009 76)Chan EY, Ruest A, Meade MO, et al:Oral decontamination for prevention of pneumonia in

mechanically ventilated adults:systematic review and meta-analysis. BMJ 334:889, 2007 77)Valles J, Artigas A, Rello J, et al:Continuous aspiration of subglottic secretions in preventing

ventilator-associated pneumonia. Ann Intern Med 122:179-186, 1995 78)Kollef MH, Skubas NJ, Sundt TM:A randomized clinical trial of continuous aspiration of subglottic

secretions in cardiac surgery patients. Chest  116:1339-1346, 1999 79)Smulders K, van der Hoeven H, Weers-Pothoff I, et al:A randomized clinical trial of intermittent

subglottic secretion drainage in patients receiving mechanical ventilation. Chest 121:858-862, 2002
p.100
80)Dezfulian C, Shojania K, Collard HR, et al:Subglottic secretion drainage for preventing ventilator-

associated pneumonia:a meta-analysis. Am J Med 118:11-18, 2005 81)Hess D, Burns E, Romagnoli D, et al:Weekly ventilator circuit changes. A strategy to reduce costs

without affecting pneumonia rates. Anesthesiology 82:903-911, 1995 82)Harrison DA, Breen DP, Harris ND, et al:The performance of two intensive care humidifiers at high

gas flows. Anaesthesia 48:902-905, 1993 83)Vanderbroucke-Grauls CM, Teeuw KB, Ballemans K, et al:Bacterial and viral removal efficiency, heat

and moisture exchange properties of four filtration devices. J Hosp Infect 29:45-56, 1995 84)Thomachot L, Leone M, Razzouk K, et al:Randomized clinical trial of extended use of a hydrophobic

condenser humidifier:1 vs. 7 days. Crit Care Med 30:232-237, 2002 85)布宮 伸, 西 信一, 吹田奈津子, 他:日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・

せん妄管理のための臨床ガイドライン. 日集中医誌 21:539-579, 2014 86)Sessler CN, Gosnell MS, Grap MJ, et al:The Richmond Agitation-Sedation Scale:validity and

reliability in adult intensive care unit patients. Am J Respir Crit Care Med 166:1338-1344, 2002 87)Riker RR, Picard JT, Fraser GL:Prospective evaluation of the Sedation-Agitation Scale for adult

critically ill patients. Crit Care Med 27:1325-1329, 1999 88)Guenther U, Popp J, Koecher L, et al:Validity and reliability of the CAM-ICU Flowsheet to diagnose

delirium in surgical ICU patients. J Crit Care 25:144-151, 2010 89)古賀雄二, 村田洋章, 山勢博彰:日本語版CAM-ICU フローシートの妥当性と信頼性の検証. 山口医学

63:93-101, 2014 90)Ely EW, Shintani A, Truman B, et al:Delirium as a predictor of mortality in mechanically ventilated

patients in the intensive care unit. JAMA  291:1753-1762, 2004 91)Drakulovic MB, Torres A, Bauer TT, et al:Supine body position as a risk factor for nosocomial

pneumonia in mechanically ventilated patients:a randomised trial. Lancet 354:1851-1858, 1999 92)van Nieuwenhoven CA, Vandenbroucke-Grauls C, van Tiel FH, et al:Feasibility and effects of the

semirecumbent position to prevent ventilator-associated pneumonia:a randomized study. Crit Care Med 34:396-402, 2006 93)Choi SC, Nelson LD:Kinetic therapy in critically ill trauma patients:combined results based on meta-

analysis. J Crit Care 7:57-62, 1992 94)Traver GA, Tyler ML, Hudson LD, et al:Continuous oscillation:outcome in critically ill patients. J

Crit Care 10:97-103, 1995 95)Langer M, Mascheroni D, Marcolin R, et al:The prone position in ARDS patients. A clinical study.

Chest 94:103-107, 1988 96)Chatte G, Sab JM, Dubois JM, et al:Prone position in mechanically ventilated patients with severe

acute respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med 155:473-478, 1997 97)Gattinoni L, Tognoni G, Pesenti A, et al:Effect of prone positioning on the survival of patients with

acute respiratory failure. N Engl J Med 345:568-573, 2001 98)Mancebo J, Fernandez R, Blanch L, et al:A multicenter trial of prolonged prone ventilation in severe

acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 173:1233-1239, 2006 99)Taccone P, Pesenti A, Latini R, et al:Prone positioning in patients with moderate and severe acute

respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 302:1977-1984, 2009 100)	 Guerin C, Reignier J, Richard JC, et al:Prone positioning in severe acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 368:2159-2168, 2013 101)	 Connors AF Jr., Hammon WE, Martin RJ, et al:Chest physical therapy. The immediate effect on

oxygenation in acutely ill patients. Chest 78:559-564, 1980 102)	 Poelaert J, Lannoy B, Vogelaers D, et al:Influence of chest physiotherapy on arterial oxygen
p.101
saturation. Acta Anaesthesiol Belg 42:165-170, 1991 103)	 Harding J, Kemper M, Weissman C:Midazolam attenuates the metabolic and cardiopulmonary

responses to an acute increase in oxygen demand. Chest 106:194-200, 1994 104)	 Weissman C, Kemper M, Damask MC, et al:Effect of routine intensive care interactions on metabolic

rate. Chest 86:815-818, 1984 105)	 Klein P, Kemper M, Weissman C, et al:Attenuation of the hemodynamic responses to chest physical

therapy. Chest 93:38-42, 1988 106)	 Swinamer DL, Phang PT, Jones RL, et al:Twenty-four hour energy expenditure in critically ill

patients. Crit Care Med 15:637-643, 1987 107)	 Horiuchi K, Jordan D, Cohen D, et al:Insights into the increased oxygen demand during chest

physiotherapy. Crit Care Med 25:1347-1351, 1997 108)	 Hammon WE, Connors AF Jr, McCaffree DR:Cardiac arrhythmias during postural drainage and chest

percussion of critically ill patients. Chest 102:1836-1841, 1992 109)	 立石彰男,鶴田良介,井上 健,他:人工換気中のMOF 患者における肺理学療法の効果と安全性. 日集

中医誌 1(Suppl):S-136, 1994 110)	 Herridge MS, Cheung AM, Tansey CM, et al:One-year outcomes in survivors of the acute respiratory

distress syndrome. N Engl J Med 348:683-693, 2003 111)	 Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al:Early physical and occupational therapy in

mechanically ventilated, critically ill patients:a randomised controlled trial. Lancet 373:1874-1882, 2009 112)	 日本呼吸療法医学会・人工呼吸安全管理対策委員会:人工呼吸器安全使用のための指針. 人工呼吸 18:

39-52, 2001 113)	 Guidelines for standards of care for patients with acute respiratory failure on mechanical ventilatory

support. Task Force on Guidelines;Society of Critical Care Medicine. Crit Care Med 19:275-278, 1991
p.102
治療:薬物療法,その他

現状では,生存率の改善をエンドポイントとした無作為臨床試験(RCT)によって有効性が確立した薬剤はない.しかし,ARDS の予後が不良であることに鑑みると,酸素化能改善や人工呼吸器装着期間の短縮などの有用性が期待できる薬剤は,使用を考慮してもよいものであると考えられる.また, AECC 基準でもBerlin 基準でも臨床的にARDS と診断した症例が病理学的にDAD を呈する正診率は必ずしも高くなく,しばしばステロイドに反応しうる他の病態も含まれているため,すべてのARDSを一律に捉えて治療を論じるのは危険である.さらに,ARDS の治療反応性は基礎疾患によっても異なるために症例ごとの個別化医療を模索する必要がある.

a. グルココルチコイド療法グルココルチコイド(GC)がARDS の病態に有益な作用をもつ可能性は十分に考えられるが, ARDS に対する死亡率低下についての有用性が確立したエビデンスはない.しかし,急性期短期大量投与の効果は完全に否定された一方,急性期,後期を問わず発症2 週間以内に少量を一定期間使用し漸減する方法は,人工換気日数の減少など一定の有用性を示す可能性が示されている.米国救急医学会の勧告でも投与を考慮すべき治療法とされている1).

●現状で生存率の改善に寄与できる確立した薬物療法はない. ●急性期のメチルプレドニゾロン短期大量療法は行うべきでない. ●急性期のメチルプレドニゾロンパルス療法(1g 3 日間)の有用性は不明である. ●発症後2 週間以内の症例に対するグルココルチコイド少量療法(メチルプレドニ

ゾロン1mg/kg/日)は使用を考慮してもよい治療法である. ●発症2 週間以降に新規にグルココルチコイドを開始すべきではない. ●好中球エラスターゼ阻害薬は,使用を考慮してもよい薬剤であるが,使用する場

合は,発症早期の使用が有用である.

10 10

■1 薬物療法
p.103
使用する場合は,感染のコントロールを十分に行うことが重要である.

1)急性期ARDS に対するGC 大量療法〔*〕1980 年代に行われたいくつかのRCT 2 ~5)では,いずれもメチルプレドニゾロン(MP) 30mg/kg 1日4 回を1 〜2 日のみ使用するという大量短期投与であり,敗血症症例のARDS への進行率やARDS症例の生存率には,有用性を認めず,むしろ感染症を悪化させる可能性が示された.これらの結果から急性期におけるGC の大量療法は無効とされた6).本邦で多く用いられているMP 1g を3 日間使用するパルス療法についても有用性を示す根拠はない.メタ解析の結果でも,初期の急性期大量短期投与成績を含む解析では,有用性を認めていない7, 8).したがって,ARDS に対する急性期GC 大量療法は推奨できない.

2)急性期ARDS に対する少量GC 療法〔*〕敗血症性ショック症例では,相対的副腎機能不全を呈する場合が多く,適切な輸液蘇生と昇圧剤治療でも血行動態が安定しない場合は,ハイドロコーチゾン200mg/ 日程度のGC を急性期に使用してもよいことになっている9).一方,敗血症性ショック症例の約60% にARDS が合併しており,敗血症性ショック症例に対するGC の効果は,ARDS を合併した症例において生存率が有意に延長したことが示されている10).直接ARDS を対象にした急性期からの少量GC の有用性についてのRCT は, MP 1mg/kg を2 週間使用した後,2 週間以内に減量中止する投与法で行われ,Lung injury score の減少,人工換気日数の減少,ICU 在室期間の減少, ICU 死亡率の減少が認められた.しかし,死亡率の有意な減少は認められなかった11).MP 0. 5 ~

2 5mg/kg/ 日相当の少量GC を使用したコホート

研究とRCT についてのメタ解析12)では,死亡率の低下のほか,人工換気日数の減少,ICU 在室日数の減少,多臓器不全症候群スコアの改善,Lung injury score の改善,PaO2/FIO2 の改善という点で有用性が示されている.一方で,感染の増悪,神経筋障害などの合併症の増加は認めていない.さらに

有用性を確認するため症例数を増やしたRCT が必要であるが,現時点ではALI/ARDS の急性期から少量のGC を使用することは考慮してもよい治療法であると考えられる(CQ12 参照).

3) 後期ARDS におけるGC 療法発症後1週間以上経過しても改善のみられない後期ARDS に対してMP を2mg/kg/ 日より2 週間使用し,その後漸減しさらに2 週間使用するRCTの結果では,プラセボ群と比較し死亡率減少効果は見られなかったが,人工換気離脱日数とショック離脱日数は有意に改善した13).前述のように急性期より少量GC を使用することが同様の臨床効果を認める結果が得られているので,敢えて後期から開始する意義はなくなったと思われる.この試験では,発症2 週間以降に新規にGC を開始した症例では,死亡率が増加しており,行うべきでない.

4)個別の病態に対するGC 療法ARDS の原因疾患によっては,個別にGC の有用性が認められているものもある. 1ニューモシスチス肺炎AIDS 合併ニューモシスチス肺炎では,急性期

にGC を併用することが呼吸不全の改善や死亡率の低下に有用であることがいくつかのRCTによって示されている14 ~16).日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインでは,ニューモシスチス肺炎に伴う呼吸不全に対してプレドニン1mg/kg/日を5 日間,0. 5mg/kg/ 日を5 日間,0. 25mg/kg/日を11 日間使用することを推奨している17, 18). 2脂肪塞栓症外傷骨折に伴う脂肪塞栓症はARDS の原因と

なる.MP の予防投与が脂肪塞栓症の発症とそれに伴う呼吸不全を有意に抑制することが小規模な

〔*〕 GC の大量,少量とは相対的な呼び方であり,ALI/ ARDS の治療に関しては,1980 年代のRCT で用いられたMP 30mg/kg × 4/day を大量と呼び,最近の試験で用いられるMP 1〜2mg/kg/day を少量または中等量と呼ぶ場合が多い.
p.104
がらいくつかのRCT で示されている19 ~21).メタ解析でもARDS 発症予防効果を認めた22). ARDS 発症後の治療としてのGC の有用性は明らかでない. 3重症肺炎重症肺炎はARDS の原因として頻度の高いも

のの1つであり,重症肺炎の多くはARDS の診断基準を満たす.また,敗血症性ショックを伴うことも多い.このような病態においては,適切な抗菌薬治療に加えてGC の使用が有効な症例も経験される.重症肺炎を対象に行われたRCT では23),初回ハイドロコーチゾン200mg 単回静注投与後,240mg / 日を7 日間持続点滴した群でプラセボ群と比較し,死亡率の改善,ICU 入室日数,人工換気日数の短縮がみられた.その後,重症肺炎を含む市中肺炎に対するいくつかのRCT で臨床的に安定な状態になるまでの期間短縮24),治療失敗例の減少25),入院期間の短縮26)などの効果が確認された.9つのRCT と6つのコホートを対象にした最近のメタ解析の結果では,重症肺炎の死亡率改善は認めないものの,ARDS の発症を軽減し,入院期間やICU 入室期間,抗菌薬使用期間,症状安定までの期間を減少しうることが示された27).一方で,副作用の増加は示されなかった.薬剤は,平均するとメチルプレドニゾロンで30mg/日7 日間使用された.RCT によって結果が異なるため,現状では,確立した治療法とはいえない.敗血症ショックを呈する症例であれば使用する根拠はある.また,陰影が遷延し酸素化の改善が悪い場合,気質化肺炎の改善目的でGC が使用され有効な場合もある.

4)敗血症性ショック前述したとおり,septic shock 症例では,相対的副腎機能不全を呈する場合が多く,適切な輸液蘇生と昇圧剤治療でも血行動態が安定しない場合は,ハイドロコーチゾン200mg/ 日程度のステロイドを急性期に使用することが循環動態の改善に有用である9).さらにseptic shock 症例のなかでもARDSを合併した症例においてより有効であるという解析が出ており10),使用を考慮してもよいと考えられる.

b. 好中球エラスターゼ阻害薬好中球エラスターゼ阻害薬は肺傷害軽減と線維化への進行抑制効果が期待できる.好中球エラスターゼ阻害薬のシベレスタットは全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)に伴う急性肺損傷症例230 例を対象としたRCT にて,生存期間には影響を与えなかったものの,FIO2,肺胞動脈血酸素分圧較差(A-aDO2), PEEP,胸部X 線写真スコアなど所見の有意な改善のほか,人工呼吸器装着期間や集中治療室在室期間の短縮も認められ有用性が示されている28).一方,海外での臨床試験(STRIVE)では有用性が示されなかった29).この2 つの試験結果の差異の原因として,海外の試験では重症例が多く含まれていたことが考えられている.日本での試験と重症度が同程度の患者集団に限って解析すると,日本の試験と同程度の有効性が認められている.また,日本の試験での層別解析からも,発症早期で肺以外の臓器障害が少ない症例において有効であることが示されており,肺損傷発症のより早期からの使用が有効であると考えられる.海外臨床試験の結果を受け,4 臓器以上の多臓器障害を合併する患者および熱傷,外傷に伴う急性肺障害患者には投与しないことが望ましいと添付文書が改訂されている.その後,2011 年に施設ごとにシベレスタット使用施設と使用しない施設を分けて行った581 例の非盲検非ランダム化臨床試験の結果が報告され,非人工呼吸器使用日数と退院率,180 日生存率においてシベレスタット群が有意に改善を示した30).レトロスペクティブな検討では,ARDS とDICを併発した敗血症症例に対してシベレスタットは,生存の延長に寄与すること31),敗血症によるALIに対して,人工呼吸器非装着日数やP/F 比を改善させ,ALI 診断時に血清プロカルシトニン値が0. 5 ng/mL 以上であることが有効性を示すマーカーとなりうる可能性が示されている32).臨床使用可能な数少ない薬剤の一つであり,広く
p.105
使用されており,早期症例では有効性が期待されるものの,現時点では,積極的に推奨するエビデンスに乏しい.今後,有効症例の選別やそのためのマーカーの開発を含め良質なRCT の施行が求められる(CQ11 参照).

c. 抗凝固療法ARDS には,DIC や血小板減少など全身の凝固線溶異常がしばしば合併する.ARDS発症早期には,傷害を受けた血管内皮細胞などから凝固系の活性化物質である組織因子が放出されることや,肺局所の微小血栓や肺胞間質および肺胞内のフィブリン沈着が認められることなどが示されている.このような全身および肺局所の凝固線溶異常は炎症を助長し, ARDS の病態の増悪に寄与すると考えられる.そのため抗凝固療法がARDS の治療に有効である可能性が示されている33).ただし現時点では,合併するDIC の治療目的以外で使用を推奨できる薬剤はない.

1)アンチトロンビン重症敗血症を対象とした十分な症例数のRCT (KyberSept 試験)によると,アンチトロンビン投与による28 日死亡率の改善効果は証明されなかった34).一方で,アンチトロンビンの抗炎症効果を阻害するとされるヘパリンを併用していない症例のみに限定したサブ解析によると,アンチトロンビン投与は死亡率を有意に改善した35).また,敗血症性DIC に限定したサブ解析においても同様に,アンチトロンビン投与は死亡率を有意に改善した36).本邦で実施されたRCT として,日本救急医学会DIC 特別委員会主導の多施設共同RCT がある37).アンチトロンビン活性値が50 〜80% の敗血症性DIC症例を対象としたところ,アンチトロンビン群では非投与群と比較してDIC 離脱率が有意に改善した. ARDS 症例を対象としたアンチトロンビンの有効性を検討した質の高い臨床研究は報告されておらず,アンチトロンビンのARDS そのものに対する投与は推奨する根拠は乏しい.一方,DIC を合併したARDS 症例に対してはその投与を考慮しても

よい.

2)遺伝子組換えトロンボモジュリントロンボモジュリンに関しては,敗血症性DICを対象としたRCT が2 編これまでに報告されている.本邦で実施された第III 相試験は,感染症あるいは造血器悪性腫瘍を基礎疾患とするDIC 症例を対象として実施された38).未分画ヘパリン投与群と比較して,トロンボモジュリン群ではDIC 離脱率が有意に高かった.28 日死亡率は副次的評価項目に設定されたが,小規模な検討であり死亡率改善効果は証明されなかった.敗血症DIC を対象とした多国間第II 相RCT によると,28 日死亡率はプラセボ群と比較して有意ではないものの低い傾向にあった39).また,凝固関連マーカー(D-dimer, F1 +2,TAT)はトロンボモジュリン投与によって有意に改善した.死亡率改善効果が事前規定を満たしたため,現在第III 相試験が進行中である. ARDS 症例に対するトロンボモジュリンの効果を検討した報告はないが,敗血症性DIC 症例における呼吸機能障害に対するトロンボモジュリンの効果が報告されている40).人工呼吸管理を要した敗血症性DIC 症例に対するトロンボモジュリン投与の効果を前後比較研究で検討したところ,SOFA呼吸スコアおよび肺障害スコアがトロンボモジュリン投与によって早期から有意に低下した.現時点のエビデンスからは,アンチトロンビン同様にトロンボモジュリンもARDS そのものに対する投与は推奨する根拠に乏しい.ただし,DIC を合併したARDS 症例に対してはその投与を考慮してもよい.

3)遺伝子組換え活性化プロテインC (未発売)活性化プロテインC の有効性を検討した大規模RCT は複数存在する.2001 年に報告されたPROWESS 試験において,活性化プロテインC は敗血症治療薬として初めてその転帰改善効果を証明した41).しかしながら,PROWESS 試験以降の全てのRCT で活性化プロテインC は死亡率を改善す
p.106
る効果が否定され,さらには重篤な合併症として出血のリスクが増加することが問題視されるようになった.そのような背景を受け実施されたPROWESS-SHOCK 試験では,28 日死亡率は活性化プロテインC 投与群およびプラセボ群で差はなく,さまざまなサブグループ解析を行ってもその有効性は認められなかった42).この結果を受け, 2011 年10 月発売元のイーライリリー社は,活性化プロテインC 製剤の世界中の市場からの撤退を決定した.一方,ARDS 患者を対象とした活性化プロテインC のRCT も報告されている.ARDS 75 症例を対象としたRCT によると,活性化プロテインC 投与により人工呼吸期間・死亡率などは改善せず,有効性は証明されなかった43).また,ARDS 71 症例を対象とした別のRCT においても,肺透過性指標・人工呼吸期間・死亡率などいずれも改善しなかった44).現時点ではARDS に対する活性化プロテインC の有効性は否定的である(CQ13 参照).

4)ヘパリン敗血症に対する未分画ヘパリンの有効性についてはHETRASE 試験において検討されている45).敗血症390 症例を対象としたRCT の結果,未分画ヘパリンによる在院日数,臓器障害スコア,死亡率に対する効果は証明されなかった.一方で,ARDSに対するヘパリン類(未分画ヘパリン,低分子ヘパリン,ダナパロイドなど)の効果を検証した質の高い研究は報告されていない.現時点ではARDS に対するヘパリン類の投与は推奨されない.

d. その他の薬物療法その他ARDS の病態に関与する因子をターゲットにしたさまざまな薬剤が開発検討されてきたが,有用性が確立し使用が推奨される薬剤はない.

1)各種プロテアーゼ阻害薬ARDS で生じた蛋白分解酵素を阻害する目的で,メシル酸ナファモスタット,メシル酸ガベキサート,ウリナスタチンなど各種プロテアーゼ阻害薬が本邦

では使用されることがあるが大規模なRCT が行われていない.ウリナスタチンに関してはARDS に対するメタ解析が報告されており,酸素化改善, ICU 死亡率の改善,ICU 滞在期間短縮など有効性を示唆する報告もあるが,メタ解析で28 日死亡率に改善がなく46),エビデンスレベルが高い研究が含まれてない.

2)Nitric oxide (NO)吸入療法換気肺領域の血流改善により酸素化を改善し, ventilation/perfusion(V/Q)ミスマッチの軽減と肺高血圧軽減が期待される.酸素化は改善するが,死亡率減少に関する有効性を認めないとsystematic review などで報告されている47 ~49).通常治療で改善が難しい重篤な低酸素血症で考慮される治療であるが50),酸素化能改善も全例に認めたわけではなく51, 52),日常的な使用を勧めるに至っていない(CQ13 参照).

3)サーファクタント無気肺領域の改善による酸素化能改善,人工呼吸器管理による気道傷害軽減が期待されるが, recombinant surfactant protein C をエアロゾルで経気道投与した試験では,メタ解析で有効性を認めていない53).重症度別のメタ解析では酸素化や死亡率低下の可能性を示唆する報告があり54),小児に対して死亡率低下や人工呼吸管理期間低下など有効性を示唆する小規模RCT 報告もあるが55),一貫した結論が得られておらず有効性を積極的に示唆していない(CQ13 参照).

4) 抗酸化薬活性酸素種の負荷を低下させ肺傷害を軽減する目的でさまざまな抗酸化薬が試みられてきたが確立された治療はない.lisophylline,N-acetylcysteine, procysteine は,十分な症例数のRCT や小規模RCTなどが行われたものの有効性を認めなかった56 ~59).グルタミン,β - カロテン,亜鉛,セレン,ビタミンE・C も十分な症例数のRCT で効果を認めなかっ
p.107
た60, 61)(CQ13 参照).

5) β刺激薬β刺激薬は肺胞上皮内のNa+ 輸送を亢進し肺胞滲出液除去を促進するが,ARDS に直接的な効果を認めなかった.ARDS 40 症例に7 日間albuterolを経静脈投与(15μg/kg/hr)し,肺水分量減少と気道圧軽減効果を認めたが62), その後の十分な症例数のRCT では有効性を証明できなかった63 ~65) (CQ13 参照).

6) GM-CSF顆粒球単球コロニー刺激因子(Granulocyte/ macrophage-colony stimulating factor;GM-CSF)は,サーファクタント機能維持,肺胞上皮apoptosis抑制作用を持ち,気道上皮細胞傷害の軽減効果が期待されたが,有効性に関する結果が一貫せず,日常的な使用は勧められない66, 67)(CQ13 参照).

7) スタチンさまざまな疾患でスタチンの持つ抗炎症作用による有用性が検討されてきたが,ARDS においてもIrish Critical Care Trials Group (ICCTG)の観察研究68)の結果,スタチン内服が死亡率を低下させる傾向を示したため,3つのRCT が施行された.シンバスタチン80mg とプラセボを比較した60 例のRCT では,主要評価項目の肺血管外水分量指数

etravascular lung water index(EVLWI)に改善はみられなかった69).ARDSnet で行われたロスバスタチンを用いた745 例のRCT 70)では,死亡率の改善は認めず,ICCTG によるシンバスタチンを用いた524 例のRCT でも非人工呼吸器使用日数に改善を認めなかった71).以上の結果からARDS 治療としてのスタチンの有効性はほぼ否定的となっている(CQ13 参照).

8) その他の薬剤効果が期待され大規模RCT が行われた薬剤には,抗炎症薬としてプロスタグランジンE1 72)やシクロオキシゲナーゼ阻害薬のイブプロフェン73),トロンボキサンA2 阻害作用をもつケトコナゾール74)などがあるが,いずれも有用性は示されなかった(CQ13 参照).いくつかの薬剤がARDS の治療薬として研究中である.Keratinocyte Growth Factor(KGF)は, II 型肺胞上皮細胞増殖,サーファクタント産生亢進,肺胞水クリアランス亢進などの効果があり,経静脈投与で酸素化改善が得られるか検証中である75).ビタミンD3 は,免疫機能調整作用があり,過剰な炎症サイトカイン発現を抑制する.食道切除術前ビタミンD3 投与によるARDS 発症予防効果を検証中である76).

■ 文 献1)Marik PE, Pastores SM, Annane D, et al:Recommendations for the diagnosis and management of

corticosteroid insufficiency in critically ill adult patients:consensus statements from an international task force by the American College of Critical Care Medicine. Crit Care Med 36:1937-1949, 2008 2)Bone RC, Fisher CJ Jr, Clemmer TP, et al:Early methylprednisolne treatment for septic syndrome and

the adult respiratory distress syndrome. Chest 92:1032-1036, 1987 3)Luce JM, Montgomery AB, Marks JD, et al:Ineffectiveness of high-dose methylprednisolone in

preventing parenchymal lung injury and improving mortality in patients with sepsis. Am Rev Respir Dis 138:62-68, 1988 4)Bernard GR, Luce JM, Sprung CL, et al:High-dose corticosteroids in patients with the adult respiratory

distress syndrome. N Engl J Med 317:1565-1570, 1987 5)Weigelt JA, Norcross JF, Borman KR, et al:Early steroid therapy for respiratory failure. Arch Surg

120:536-540, 1985
p.108
6)Artigas A, Bernard GR, Carlet J, et al:The American-European Consensus Conference on ARDS, part 2:

Ventilatory, pharmacologic, supportive therapy, study design strategies, and issues related to recovery and remodeling. Acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 157(4 Pt 1):1332- 1347, 1998 7)Agarwal R, Nath A, Aggarwal AN, et al:Do glucocorticoids decrease mortality in acute respiratory

distress syndrome? A meta-analysis. Respirology 12:585-590, 2007 8)Peter JV, John P, Graham PL, et al:Corticosteroids in the prevention and treatment of acute

respiratory distress syndrome (ARDS) in adults:meta-analysis. BMJ 336:1006-1009, 2008 9)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving sepsis campaign:international guidelines for

management of severe sepsis and septic shock:2012. Crit Care Med 41:580-637, 2013 10)Annane D, Sébille V, Bellissant E, et al:Effect of low doses of corticosteroids in septic shock patients

with or without early acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 34:22-30, 2006 11)Meduri GU, Golden E, Freire AX, et al:Methylprednisolone infusion in early severe ARDS:results of

a randomized controlled trial. Chest 131:954-963, 2007 12)Tang BM, Craig JC, Eslick GD, et al:Use of corticosteroids in acute lung injury and acute respiratory

distress syndrome:a systematic review and meta-analysis. Crit Care Med 37:1594-1603, 2009 13)Steinberg KP, Hudson LD, Goodman RB, et al:Efficacy and safety of corticosteroids for persistent

acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 354:1671-1684, 2006 14)Gagnon S, Boota AM, Fischl MA, et al:Corticosteroids as adjunctive therapy for severe Pneumocystis

carinii pneumonia in the acquired immunodeficiency syndrome. A double-blind, placebo-controlled trial. N Engl J Med 323:1444-1450, 1990 15)Bozzette SA, Sattler FR, Chiu J, et al:A controlled trial of early adjunctive treatment with

corticosteroids for Pneumocystis carinii pneumonia in the acquired immunodeficiency syndrome. N Engl J Med 323:1451-1457, 1990 16)Montaner JS, Lawson LM, Levitt N, et al:Corticosteroids prevent early deterioration in patients with

moderately severe Pneumocystis carinii pneumonia and the acquired immunodeficiency syndrome (AIDS). Ann Intern Med 113:14-20, 1990 17)Wachter RM, Russi MB, Bloch DA, et al:Pneumocystis carinii pneumonia and respiratory failure in

AIDS. Improved outcomes and increased use of intensive care units. Am Rev Respir Dis 143:251-256,

1991 18)日本呼吸器学会:成人市中肺炎診療ガイドライン.杏林社,2005

19)Schonfeld SA, Ploysongsang Y, DiLisio R, et al:Fat embolism prophylaxis with corticosteroids-A

prospective study in high-risk patients. Ann Intern Med 99:438-443, 1983 20)Lindeque BG, Schoeman HS, Dommisse GF, et al:Fat embolism and the fat embolism syndrome. J

Bone Joint Surg Br 69:128-131, 1987 21)Kallenbach J, Lewis M, Zaltzman M, et al:'Low-dose' corticosteroid prophylaxis against fat embolism.

J Trauma 27:1173-1176, 1987 22)Bederman SS, Bhandari M, McKee MD, et al:Do corticosteroids reduce the risk of fat embolism

syndrome in patients with long-bone fractures? A meta-analysis. Can J Surg 52:386-393, 2009 23)Confalonieri M, Urbino R, Potena A, et al:Hydrocortisone infusion for severe community-acquired

pneumonia:a preliminary randomized study. Am J Respir Crit Care Med 171:242-248, 2005 24)Blum CA, Nigro N, Briel M, et al:Adjunct prednisone therapy for patients with community-acquired

pneumonia:a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial. Lancet 16:62447-62448, 2015 25)Torres A, Sibila O, Ferrer M, et al:Effect of corticosteroids on treatment failure among hospitalized

patients with severe community-acquired pneumonia and high inflammatory response:a randomized
p.109
clinical trial. JAMA 313:677-686, 2015 26)Meijvis SC, Hardeman H, Remmelts HH, et al:Dexamethasone and length of hospital stay in patients

with community-acquired pneumonia:a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 377:2023-2030, 2011 27)Wan YD, Sun TW, Liu ZQ, et al:Efficacy and safety of corticosteroids for community-acquired

pneumonia. A systematic review and meta-analysis. Chest 149:209-219, 1016 28)玉熊正悦,柴 忠明,平澤博之,他:好中球エラスターゼ阻害剤;ONO-5046・Na の全身炎症反応症候

群に伴う肺障害に対する有効性と安全性の検討―第III 相二重盲検比較試験.臨床医薬14:289-318, 1998 29)Zeiher BG, Artigas A, Vincent JL, et al:Neutrophil elastase inhibition in acute lung injury:results of

the STRIVE study. Crit Care Med 32:1695-1702, 2004 30)Aikawa N, Ishizaka A, Hirasawa H, et al:Reevaluation of the efficacy and safety of the neutrophil

elastase inhibitor, Sivelestat, for the treatment of acute lung injury associated with systemic inflammatory response syndrome;a phase IV study. Pulm Pharmacol Ther 24:549-554, 2011 31)Hayakawa M, Katabami K, Wada T, et al:Sivelestat (selective neutrophil elastase inhibitor) improves

the mortality rate of sepsis associated with both acute respiratory distress syndrome and disseminated intravascular coagulation patients. Shock 33:14-18, 2010 32)Miyoshi S, Hamada H, Ito R, et al:Usefulness of a selective neutrophil elastase inhibitor, sivelestat, in

acute lung injury patients with sepsis. Drug Des Devel Ther 7:305-316, 2013 33)Laterre PF, Wittebole X, Dhainaut JF:Anticoagulant therapy in acute lung injury. Crit Care Med 31:

S329-336, 2003 34)Warren BL, Eid A, Singer P, et al:Caring for the critically ill patient. High-dose antithrombin III in

severe sepsis:a randomized controlled trial. JAMA 286:1869-1878, 2001 35)Hoffmann JN, Wiedermann CJ, Juers M, et al:Benefit/risk profile of high-dose antithrombin in

patients with severe sepsis treated with and without concomitant heparin. Thromb Haemost 95:850- 856, 2006 36)Kienast J, Juers M, Wiedermann CJ, et al:Treatment effects of high-dose antithrombin without

concomitant heparin in patients with severe sepsis with or without disseminated intravascular coagulation. J Thromb Haemost 4:90-97, 2006 37)Gando S, Saitoh D, Ishikura H, et al:A randomized, controlled, multicenter trial of the effects of

antithrombin on disseminated intravascular coagulation in patients with sepsis. Crit Care 17:R297,

2013 38)Saito H, Maruyama I, Shimazaki S, et al:Efficacy and safety of recombinant human soluble

thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravascular coagulation:results of a phase III, randomized, double-blind clinical trial. J Thromb Haemost 5:31-41, 2007 39)Vincent JL, Ramesh MK, Ernest D, et al:A randomized, double-blind, placebo-controlled, Phase 2b

study to evaluate the safety and efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin, ART-123, in patients with sepsis and suspected disseminated intravascular coagulation. Crit Care Med 41:2069- 2079, 2013 40)Ogawa Y, Yamakawa K, Ogura H, et al:Recombinant human soluble thrombomodulin improves

mortality and respiratory dysfunction in patients with severe sepsis. J Trauma Acute Care Surg 72: 1150-1157, 2012 41)Bernard GR, Vincent JL, Laterre PF, et al:Efficacy and safety of recombinant human activated protein

C for severe sepsis. N Engl J Med 344:699-709, 2001 42)Ranieri VM, Thompson BT, Barie PS, et al:Drotrecogin alfa (activated) in adults with septic shock. N

Engl J Med 366:2055-2064, 2012 43)Liu KD, Levitt J, Zhuo H, et al:Randomized clinical trial of activated protein C for the treatment of
p.110
acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 178:618-623, 2008 44)Cornet AD, Groeneveld AB, Hofstra JJ, et al:Recombinant human activated protein C in the treatment

of acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. PLoS One 9:e90983, 2014 45)Jaimes F, De La Rosa G, Morales C, et al:Unfractioned heparin for treatment of sepsis:A randomized

clinical trial (The HETRASE Study). Crit Care Med 37:1185-1196, 2009 46)Leng YX, Yang SG, Song YH, et al:Ulinastatin for acute lung injury and acute respiratory distress

syndrome:A systematic review and meta-analysis. World J Crit Care Med 3:34-41, 2014 47)Afshari A, Brok J, Moller AM, et al:Inhaled nitric oxide for acute respiratory distress syndrome

(ARDS) and acute lung injury in children and adults. Cochrane Database Syst Rev 7:CD002787, 2010 48)Adhikari NK, Burns KE, Friedrich JO, et al:Effect of nitric oxide on oxygenation and mortality in

acute lung injury:systematic review and meta-analysis. BMJ 334:779, 2007 49)Afshari A, Brok J, Moller AM, et al:Inhaled nitric oxide for acute respiratory distress syndrome and

acute lung injury in adults and children:a systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. Anesth Analg 112:1411-1421, 2011 50)Pipeling MR, Fan E:Therapies for refractory hypoxemia in acute respiratory distress syndrome.

JAMA 304:2521-2527, 2010 51)Rossaint R, Falke KJ, Lopez F, et al:Inhaled nitric oxide for the adult respiratory distress syndrome.

N Engl J Med 328:399-405, 1993 52)Rossaint R, Gerlach H, Schmidt-Ruhnke H, et al:Efficacy of inhaled nitric oxide in patients with severe

ARDS. Chest 107:1107-1115, 1995 53)Davidson WJ, Dorscheid D, Spragg R, et al:Exogenous pulmonary surfactant for the treatment of

adult patients with acute respiratory distress syndrome:results of a meta-analysis. Crit Care 10:R41, 2006 54)Taut FJ, Rippin G, Schenk P, et al:A Search for subgroups of patients with ARDS who may benefit

from surfactant replacement therapy:a pooled analysis of five studies with recombinant surfactant protein-C surfactant (Venticute). Chest 134:724-732, 2008 55)Willson DF, Thomas NJ, Markovitz BP, et al:Effect of exogenous surfactant (calfactant) in pediatric

acute lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 293:470-476, 2005 56)Wiedemann HP, Arroliga AC, Komara J, et al:Randomized, placebo-controlled trial of lisofylline for

early treatment of acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 30:1-6, 2002 57)Laurent T, Markert M, Feihl F, et al:Oxidant-antioxidant balance in granulocytes during ARDS.

Effect of N-acetylcysteine. Chest 109:163-166, 1996 58)Bernard GR, Wheeler AP, Arons MM, et al:A trial of antioxidants N-acetylcysteine and procysteine

in ARDS. The Antioxidant in ARDS Study Group. Chest 112:164-172, 1997 59)Jepsen S, Herlevsen P, Knudsen P, et al:Antioxidant treatment with N-acetylcysteine during adult

respiratory distress syndrome:a prospective, randomized, placebo-controlled study. Crit Care Med 20:918-923, 1992 60)Andrews PJ, Avenell A, Noble DW, et al:Randomised trial of glutamine, selenium, or both, to

supplement parenteral nutrition for critically ill patients. BMJ 342:d1542, 2011 61)Heyland D, Muscedere J, Wischmeyer PE, et al:A randomized trial of glutamine and antioxidants in

critically ill patients. N Engl J Med 368:1489-1497, 2013 62)Perkins GD, McAuley DF, Thickett DR, et al:The beta-agonist lung injury trial (BALTI):a

randomized placebo-controlled clinical trial. Am J Respir Crit Care Med 173:281-287, 2006 63)Matthay MA, Brower RG, Carson S, et al:Randomized, placebo-controlled clinical trial of an aerosolized

beta (2)-agonist for treatment of acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 184:561-568, 2011 64)Gao Smith F, Perkins GD, Gates S, et al:Effect of intravenous beta-2 agonist treatment on clinical

outcomes in acute respiratory distress syndrome (BALTI-2):a multicentre, randomised controlled
p.111
trial. Lancet 379:229-235, 2012 65)Perkins GD, Gates S, Park D, et al:The beta agonist lung injury trial prevention. A randomized

controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 189:674-683, 2014 66)Paine R, 3rd, Standiford TJ, Dechert RE, et al:A randomized trial of recombinant human granulocyte-

macrophage colony stimulating factor for patients with acute lung injury. Crit Care Med 40:90-97,

2012 67)Herold S, Hoegner K, Vadasz I, et al:Inhaled granulocyte/macrophage colony-stimulating factor as

treatment of pneumonia-associated acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 189:609-611, 2014 68)Irish Critical Care Trials Group:Acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome in

Ireland:a prospective audit of epidemiology and management. Crit Care 12:R30, 2008 69)Craig TR, Duffy MJ, Shyamsundar M, et al:A randomized clinical trial of hydroxymethylglutaryl-

coenzyme a reductase inhibition for acute lung injury (The HARP Study). Am J Respir Crit Care Med 183:620-626, 2011 70)Truwit JD, Bernard GR, Steingrub J, et al:Rosuvastatin for sepsis-associated acute respiratory

distress syndrome. N Engl J Med 370:2191-2200, 2014 71)McAuley DF, Laffey JG, O'Kane CM, et al:Simvastatin in the acute respiratory distress syndrome. N

Engl J Med 371:1695-1703, 2014 72)Abraham, E, Baughman, R, Fletcher, E, et al:Liposomal prostaglandin E1 (TLC C-53) in acute

respiratory distress syndrome:A controlled, randomized, double-blind, multicenter clinical trial. Crit Care Med 27:1478-1485, 1999 73)Bernard GR, Wheeler AP, Russell JA, et al:The effects of ibuprofen on the physiology and survival of

patients with sepsis. N Engl J Med 336:912-918, 1997 74)Ketoconazole for early treatment of acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a

randomized controlled trial. The ARDS Network. JAMA 283:1995-2002, 2000 75)Cross LJ, O'Kane CM, McDowell C, et al:Keratinocyte growth factor in acute lung injury to reduce

pulmonary dysfunction - a randomised placebo-controlled trial (KARE):study protocol. Trials 14:51,

2013 76)Parekh D, Dancer RC, Lax S, et al:Vitamin D to prevent acute lung injury following oesophagectomy

(VINDALOO):study protocol for a randomised placebo controlled trial. Trials 14:100, 2013
p.112
a. 敗血症性ARDS に対する抗菌療法敗血症は,間接的に肺損傷を起こす疾患として最も頻度の高い原因で,敗血症患者の約43% がARDS へ進展するとの報告もあり77),ARDS の原因としてきわめて重要である.敗血症の原因菌はこの20 年間で大きく変化し, 1987 年以前は大腸菌,緑膿菌,クレブシエラなどグラム陰性桿菌が主な原因菌であったが,1988 年以降は黄色ブドウ球菌や腸球菌などグラム陽性球菌が増加し,2000 年の成績ではグラム陰性菌38% に対し,グラム陽性球菌が52%と逆転している78). 2007 年に日本国内で行われた疫学調査では,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が最頻で

15 4%,大腸菌13. 5%,クレブシエラおよび緑膿菌

がそれぞれ10. 5% となっている79).抗菌薬の選択は,一般の細菌感染症と同様に,薬剤感受性,組織移行性,副作用などを考慮したうえで使用すべきであるが,敗血症性ARDS のように急性かつ重篤な疾患においては,薬剤感受性の検査結果を待つことなく経静脈的に経験的治療(empiric therapy)を開始する.また,治療開始前に血液培養検体を異なる経路で複数セット採取する.経験的治療の適切性は敗血症患者の生命予後を左右する因子であるために,考え得る原因菌を広くカ

バーする抗菌薬を経験的に使用する80).すなわち,第3・4 世代セフェム系薬,カルバペネム系を主体に, MRSA の感染危険性が高いと判断される場合には,バンコマイシン,リネゾリドなどの抗MRSA 薬の追加を考慮する80).抗菌薬としては殺菌的作用を有する静脈内注射薬を選択し十分量を投与する.原因菌が同定され薬剤感受性が判明した時点で可及的速やかに狭域の薬剤へと変更し(de-escalation)治療を継続する.投与期間としては7 〜10 日間が推奨されている80).個々の敗血症原因菌同定後の抗菌薬選択の詳細は,本ガイドラインのカバーすべき範囲を超えているので他書も参考にされたい.

b. 肺炎に伴うARDS に対する抗菌療法肺炎は,細菌,マイコプラズマ,クラミドフィラ,ウイルスあるいはニューモシスチス・イロヴェチなどさまざまな原因微生物により惹起され,ARDSの原因となる.診断手法として,肺炎球菌尿中抗原,レジオネラ尿中抗原,インフルエンザウイルス抗原,下気道分泌物(喀痰,気管チューブ吸引痰あるいは気管支肺

●敗血症性ARDS のように急性かつ重篤な病態では薬剤感受性の検査結果を待つ

ことなく経静脈的に原因菌を広くカバーする抗菌薬を経験的治療(empiric therapy)を開始する. ●原因菌が同定され薬剤感受性が判明した時点で可及的に狭域の薬剤へと変更し(de-escalation)治療を継続する. ●ARDS 患者では,ARDS でない人工呼吸器装着患者に比し,VAP の発生率が高

いとされている.VAP が疑われた場合には,経験的治療を開始し,原因菌,薬剤感受性判明後にde-escalation する. ●VAP の予防としての抗菌療法は,耐性菌出現の問題があるため行わない.

■2 抗菌療法
p.113
胞洗浄液)のグラム染色と培養検査,血液培養(複数セット)がある.未知の病原体への対処として血清をストックしておく.日本呼吸器学会による市中肺炎ガイドライン81),院内肺炎ガイドライン82)は,肺炎患者の重症度をそれぞれの重症度分類(A-DROP システムあるいはI-ROAD)に基づいて分類し,初期治療のレジメンを決定することとしている. ARDS を伴う肺炎の場合,市中肺炎ガイドライン81)では超重症(ICU 治療)肺炎に分類される.院内肺炎の場合も多くがC 群(重症群)に分類される82).いずれも,救命を第一義的に考え経験的治療を失敗しないことが重要である.原因微生物が明らかでない初期段階での経験的治療として,市中肺炎では肺炎球菌,マイコプラズマ,レジオネラ,クラミドフィラ(ニューモニエ,シッタシ)を広くカバーする目的で,第3 世代セフェム薬に加えて,ニューキノロン系注射薬あるいはマクロライド系の併用投与を考慮する81).院内肺炎では,初期治療で緑膿菌までを広くカバーするため,タゾバクタム/ ピペラシリン,イミペネム/ シラスタチン,メロペネムなどを選択する.アミノ配糖体またはニューキノロン系注射薬の併用効果については明確なエビデンスが無く,近年の報告では却って患者予後を悪化させるとの知見もあり83),慎重な選択が望まれる. 2 週間を超える長期の抗菌薬投与,長期入院, MRSA 感染やコロニゼーションの既往などがある場合,MRSA の保有リスクが高まるため,気道分泌物のグラム染色所見(グラム陽性球菌の貪食像など)を参考に,抗MRSA 薬の追加併用を考慮する82).ただし,抗MRSA 薬の中でダプトマイシンは肺胞サーファクタントにより不活化されるため肺炎には使用できない.さらに,基礎疾患に免疫不全を有しサイトメガロウイルス,ニューモシスチス・イロヴェチ,アスペルギルスによる肺炎を疑う場合には,ガンシクロビル,ST 合剤,抗真菌薬の投与あるいは併用投与もそれぞれ考慮する82).治療開始3 日後には気道分泌物および血液培養の結果が得られるとともに,臨床効果がある程度判定

可能となるので,これらを総合的に評価し,原因微生物が特定できた場合には,その菌の薬剤感受性に基づいて抗菌薬治療を可及的に狭域のものにdeescalation し治療を継続する.治療期間は一般的に7 〜8 日間が推奨されるが,ブドウ糖非発酵系グラム陰性桿菌群(緑膿菌,アシネトバクターなど)に対しては,より長期(10〜14 日程度)が推奨される84, 85).個々の呼吸器感染症が同定された後の治療の詳細については,日本呼吸器学会ガイドライン81, 82)を参照されたい.

c.誤嚥によるARDS に対する抗菌療法誤嚥性肺炎の原因には,胃液吸引による化学的肺損傷(aspiration pneumonitis)および消化管内,口腔内細菌による細菌性肺炎(aspiration pneumonia)がある.一般に化学的肺損傷における予防的抗菌療法は不要であるが,誤嚥性細菌性肺炎の併発を予測させる場合には経験的治療が考慮されても良い86).誤嚥性細菌性肺炎の原因菌は,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌,腸内細菌属,Streptococcus anginosus グループや嫌気性菌など口腔内常在菌の関与が指摘されている81, 86, 87).ARDS を併発している場合,重症例と判断されるのでβ-ラクタマーゼ配合ペニシリン,カルバペネム系薬,第3 世代セフェム系薬あるいはニューキノロン注射剤とクリンダマイシンの2 剤併用等が推奨される86, 87).

d. 人工呼吸器関連肺炎(VAP)人工呼吸器関連肺炎(VAP)は人工呼吸器装着に発生する肺炎であり,人工呼吸管理の頻度が高いARDS 症例においてその制御は重要である.またARDS 患者では,ARDS でない人工呼吸器装着患者に比し,VAP の発生率が高いとされている88) (「第8章 随伴する疾患・病態」(p. 69)参照). VAP が疑われた場合には,採取した気道分泌物が明らかに下気道由来であることを塗抹標本で確認したうえで,培養結果を待たずグラム染色などで原
p.114
因菌を予測して,できるだけ早期に経験的治療を開始する.早期VAP に対する経験的抗菌療法としては,抗緑膿菌活性を有しない第3 世代セフェム薬あるいはβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンが選択されるが,晩期VAP では,抗緑膿菌活性を有する第3・4 世代セフェムあるいはカルバペネム系薬を,さらにMRSA が考えられる場合には,抗MRSA 薬の併用も考慮する.原因菌,薬剤感受性判明後には狭域の薬剤にde-escalation する82, 89).なお,気管挿管されている患者では気道への微生物定着(コロニゼーション)の存在が普通なので,炎症所見がなければ細菌が検出されても治療の必要はない90).72時間以内に抗菌薬を変更していないにもかかわらず培養結果が陰性であれば,VAP を否定する強い予測因子である91).一方,VAP の予防としての抗菌療法については,耐性菌出現の問題があるため推奨しない82, 86).

e.感染症以外の原因で発症したARDS における抗菌薬使用の考え方感染症を原因としないARDS として,外傷,ショック,脂肪塞栓,放射線性肺傷害,再還流肺水腫,急性膵炎などがある.これら非感染性炎症反応に伴うARDS に対しては,原則的に抗菌療法は推奨しない.安易な抗菌薬使用は,VAP 予防の抗菌療法と同様に,耐性菌の出現を招き,病態を複雑化する原因となる.しかし,ARDS のような重篤な病態においては,原因疾患に伴う嘔吐物の誤嚥や副腎皮質ステロイドの大量使用,人工呼吸管理による易感染性あるいは中心静脈カテーテル留置などさまざまな感染促進要因が存在することも事実であるため,感染に対する観察を十分に行い,感染の兆候がみられた場合には,推測される原因微生物に対して早期に十分な抗菌療法を行う必要がある. f.抗菌薬使用に関する考え方

(pharmacokinetics/pharmacodynamics;

PK/PD を考慮した抗菌薬の投与法) 1)耐性菌防止対策耐性菌増加の防止は,抗菌薬治療上極めて重要な問題である.なかでもARDS に至るような重症感染症の場合,免疫力低下や人工呼吸器装着など感染を長期化,難治化させる数多くの要因が存在するため薬剤耐性化の可能性は高くなる.なかでもグラム陰性菌の耐性化は深刻であり,多剤耐性緑膿菌(MDRP)などでは,有効な薬剤がないことからコリスリンなど本邦の標準的治療の枠組みに入らない薬剤に依存しなければならない状況である.従って,重症感染症において抗菌療法を行う場合には務めて慎重な対応が求められる.初期抗菌治療は十分量の抗菌薬を使用することにより,mutant selective window レベルでの抗菌薬濃度を避け,十分な血中濃度を得ることが大切であるが(図10-1),当然ながらできる限り短期間の使用を目指し92),原因菌が同定された場合には,感受性に基づき可及的狭域なスペクトルの抗菌薬へde-escalation すべきである93).また呼吸器学会市中肺炎ガイドラインでは,キノロン耐性の肺炎球菌の増加が懸念されていること94, 95)からニューキノロン薬を第一選択としないという基本的理念を提唱しており81),ARDS 合併重症感染症においても同様に扱うべきと考える.

2)抗菌薬の特性に基づいた投与法(図10-2) PK/PD 理論は,抗菌作用の有効性を高め,耐性菌出現や副作用を解決すべく考案された理論である.PK とは,薬物動態(吸収,分布,代謝,排泄など)のことで,PD とは,生体内における薬物の作用を指すものである.従ってPK/PD 理論は薬剤が生体内でいかに有効に利用され,作用しているかを考えた概念で,このパラメーターから抗菌薬の効果や副作用を予測することができる.抗菌薬はそれぞれの特性から,大きく分けてニューキノロン系薬やアミノ配糖体系薬など濃度依存性殺菌作用と長い持続効果(area under
p.115
図10-1 ●薬物動態と種々のパラメーターの位置づけ

耐性菌を残さないためには,必要十分量の抗菌薬が必要

MPC(minimum mutant prevention concentration:最大変異予防濃度MIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度

図10-2a ●PK/PD 理論に基づく薬剤の投与法 Peak or AUC/MIC

μg/mL

1 回投与量の増加によりAUC, Cmax が大きくなるように設定:アミノグリコシド,フルオロキノロン,マクロライド,テトラサイクリン

図10-2b ●PK/PD 理論に基づく薬剤の投与法 %T >MIC(Time above MIC)

mg/mL

投与回数を増やすことによりTime above MIC が長くなるように設定:β-ラクタム薬
p.116
concentration curve;AUC/MIC, Cmax/MIC)を有す薬剤,β-ラクタム系薬などの時間依存性殺菌効果と短い持続効果(Time above MIC)を有すもの,およびマクロライド系薬やテトラサイクリン系薬などの時間依存性効果と長い持続時間(AUC/ MIC)の3 つに分類される.従ってAUC/MIC, Cmax/MIC を特性とするニューキノロン系薬,アミノ配糖体,AUC/MIC を特性とするマクロライドなどの薬剤では1 日1 回の投与によって,高い血中

濃度と広いAUC が得られ,一方でペニシリン系薬,セフェム系薬,カルバペネム系薬などTime above MIC を特徴とする薬剤は投与回数を増やすことによりMIC を超える時間を延長することができる96).これら薬剤の特性に基づく投与により,副作用の発現を軽減し,効果的な抗菌療法を行うことが期待される.

■ 文 献77)Hudson LD, Milberg JA, Anardi D, et al:Clinical risks for development of the acute respiratory

distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 151:293-301, 1995 78)Martin GS, Mannino DM, Eaton S, et al:The epidemiology of sepsis in the United States from 1979

through 2000. N Engl J Med 348:1546-1554, 2003 79)松田直之, 織田成人, 相引眞幸, 他:日本集中治療医学会第1 回Sepsis Registry 調査 2007 年の重症敗血

症および敗血症性ショックの診療結果報告. 日集中医誌 20:329-334, 2013 80)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign Guidelines Committee including

the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of severe sepsis and septic shock:2012. Crit Care Med 41:580-637, 2013 81)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会:成人市中肺炎診療ガイドライン,日本呼

吸器学会,2007 82)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会:成人院内肺炎ガイドライン,日本呼吸器

学会,2008 83)Kett DH, Cano E, Quartin AA, et al:Improving Medicine through Pathway Assessment of Critical

Therapy of Hospital-Acquired Pneumonia (IMPACT-HAP) Investigators. Implementation of guidelines for management of possible multidrug-resistant pneumonia in intensive care:an observational, multicentre cohort study. Lancet Infect Dis 11:181-189, 2011 84)Chastre J, Wolff M, Fagon JY , et al:PneumA Trial Group. Comparison of 8 vs 15 days of antibiotic

therapy for ventilatorassociated pneumonia in adults:a randomized trial. JAMA 290:2588-2598, 2003 85)Capellier G, Mockly H, Charpentier C, et al:Early-onset ventilator-associated pneumonia in adults

randomized clinical trial:comparison of 8 versus 15 days of antibiotic treatment. PLoS One 7:e41290,

2012 86)Marik PE:Aspiration pneumonitis and aspiration pneumonia. N Engl J Med  344:665-671, 2001

87)三笠桂一, 青木信樹, 青木洋介, 他:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 呼吸器感染症. 感染症誌 88:

1-109, 2014 88)Chastre J, Trouillet JL, Vuagnat A, et al:Nosocomial pneumonia in patients with acute respiratory

distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 157:1165-1172, 1998 89)American Thoracic Society;Infectious Diseases Society of America:Guidelines for the management

of adults with hospital-acquired, ventilator-associated, and healthcare-associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 171:388-416, 2005 90)Niederman MS:Gram-negative colonization of the respiratory tract:pathogenesis and clinical

consequences. Semin Respir Infect 5:173-184, 1990
p.117
91)Blot F, Raynard B, Chachaty E, et al:Value of gram stain examination of lower respiratory tract

secretions for early diagnosis of nosocomial pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 162:1731-1737, 2000 92)Dong Y, Zhao X, Domagala J, et al:Effect of fluoroquinolone concentration on selection of resistant

mutants of Mycobacterium bovis BCG and Staphylococcus aureus. Antimicrob Agents Chemother 43: 1756-1758, 1999 93)Eachempati SR, Hydo LJ, Shou J, et al:Does de-escalation of antibiotic therapy for ventilator-

associated pneumonia affect the likelihood of recurrent pneumonia or mortality in critically ill surgical patients? J Trauma 66:1343-1348, 2009 94)Yokota S, Sato K, Kuwahara O, et al:Fluoroquinolone-resistant Streptococcus pneumoniae strains

occur frequently in elderly patients in Japan. Antimicrob Agents Chemother 46:3311-3315, 2002 95)横田伸一, 佐藤 清, 吉田 繁, 他:フルオロキノロン耐性Streptococcus pneumoniae の検出状況と分子

疫学的検討. 感染症誌 78:428-434, 2004 96)Craig WA:Pharmacokinetic/pharmacodynamic parameters:rationale for antibacterial dosing of mice

and men. Clin Infect Dis 26:1-10, 1998
p.118
a. 栄養治療ARDS をはじめとする全身性炎症や多臓器不全を有する患者では異化が亢進しており,相対的に栄養が不足する傾向にある97).重症患者において栄養障害は免疫機能の低下や死亡率の増加と関連する98).このため積極的な栄養療法を行うことが望ましいとされ,近年では免疫修飾作用が期待される特殊な栄養剤も開発されている.ただし本稿においては強いエビデンスをもつRCT は見当たらないとして今回のガイドラインでもCQ としては取り上げなかった.

1)炭水化物量を抑えた高脂肪組成栄養剤(プルモ

ケア®)高脂肪組成栄養剤(プルモケア®)は,既存の経腸栄養剤に比べ,炭水化物含量が少なく脂質含量が多い.脂質代謝の呼吸商は低いため動脈血二酸化炭素分圧の上昇を防ぎ,1. 5kcal/mL と高カロリーで水分負荷を回避できる.人工呼吸を要する急性呼吸不全患者20 名を対象として高脂肪製剤の効果を評価した古い小規模研究は,人工呼吸時間を約2. 5 日短縮できたと報告している99).しかし,その臨床効果は十分検討されてきたとはいえず,米国ガイドラインでもその使用は推奨されていない100).さらに,プルモケア® は,炎症惹起性のω-6 系脂肪酸

を多く含むことから,これを対照とした比較試験では,害になる可能性が指摘されている101).

2) 早期の経腸栄養の投与エネルギー量2012年のTrophic vs. Full-Energy Enteral Nutrition in Mechanically Ventilated Patients with Acute Lung Injury;EDEN 研究は,48 時間以内に経腸栄養を開始する1, 000 名のALI 患者を対象に,経腸栄養開始6 日目まで少量経腸栄養 (trophic feeding;目標10 〜20 cal/hr[500kcal/d])を行った群と開始日から積極的にフルエネルギー(目標25 〜30kcal/kg/day[1, 300kcal/d])経腸栄養を行った群を比較した102).実際の投与エネルギーは約5kcal/kg/day と16kcal/kg/day で,両群間で感染症発生率,人工呼吸フリー日数(ventilator free days;VFD),60 日死亡率は同等であった.少量栄養群で嘔吐,胃内容物の残存量増加,便秘,血糖値,インスリン投与量が少なかった.ただし,本研究は, 1 年後のフォローアップ検討が報告されており,有意差は無いもののフルエネルギーを投与した群が1年後の機能予後が高い傾向にあった. 2014 年のIntensive Nutrition in Acute Lung Injury : A Clinical Trial (INTACT)研究では,78 名のALI 患者を推定エネルギー所要量の75%を投与する積極的

●経静脈栄養より可及的速やかな経腸栄養の開始が勧められる.ただし,適切な栄

養剤の種類やカロリー量など,未だに明確となっていない点が多い. ●魚油組成呼吸不全用栄養剤は,肺酸素化能の改善から人工呼吸日数の短縮と死亡

率の改善をもたらし,早期投与が支持される可能性があるが,現時点で一定した有効性は示されていない. ●ARDS では循環が安定しショックサインのない症例においては水分制限を行い,

水分バランスをドライサイドに保つ. ●肺動脈カテーテルを用いて水分管理を行う必要はない.

■3 栄養治療,水分管理
p.119
栄養療法(intensive medical nutrition therapy; IMNT)群と,標準ケアを行う群とに分け,比較検討した103).平均22 ~27 日の在院期間中,IMNT群で25kcal/kg/day および蛋白量80g /day,標準ケア群で16. 6kcal/kg/day および60g/day が投与された.IMNT 群で有意に死亡率が高く(HR=2. 65 [1. 03 ~6. 84]),そのため研究は中途で中止となった.ただし,これらの研究は海外で行われており,対象患者のBMI が約30 と高く,日本のARDS 患者群とは異なる.BMI が低いと栄養療法により予後が改善する可能性は否定できない104).以上を考慮すれば,ARDS 患者では治療早期に25kcal/kg/day を超えるエネルギー量の投与を強く奨める根拠はなく,500kcal/day(≒10kcal/kg/ hr)程度の少量経腸栄養を行うことに対する強い反対根拠はない.

3) ω-3 系脂肪酸(EPA),γリノレン酸,抗酸化

物質を強化した栄養剤大豆油やコーン油の多価不飽和脂肪酸はω-6 系脂肪酸であり,魚油のそれはω-3 脂肪酸(主としてエイコサペンタエン酸;EPA)である.これらはシクロオキシゲナーゼと5-リポキシゲナーゼによって代謝されるが,最終的代謝産物がそれぞれ異なる.ω-6 系脂肪酸からPGE2,TXA2,LTB4 などの炎症性メディエーターが産生される.一方,ω-3系脂肪酸からはPGE3,TXA3,LTB5 などが産生され,これらは炎症惹起性が低く抗血小板凝集作用を持つために,結果として炎症反応の制御が可能である.同様にγリノレン酸(GLA)も,より炎症惹起性の低いPGE1 に変換される.脂質成分を55%(EPA とGLA をそれぞれ20%づつ)含み,γリノレン酸,抗酸化物質(βカロテン,ビタミンC,ビタミンE,亜鉛,セレン)を強化し,抗酸化物質を添加した経腸栄養剤がオキシーパ® である.日本では2007 年より販売開始され,臨床使用されてきた.本製剤のALI/ARDS に対する臨床効果に関しては,以下の3 つのRCT 105 ~107)が報告されている. 1999 年Gadek らは,146 名のARDS 患者(P/F比100 ~250mmHg)に対するオキシーパ® の効果

を検証する多施設RCT を行った105).ARDS 治療早期(24 時間以内)に投与を開始し,最低投与エネルギー量(基礎代謝量の1. 3 倍の75%)を4 ~7日間持続的に経管投与した.オキシーパ投与はコントロール群(プルモケア®)に比べて血漿リン脂質中のDGLA,EPA の含有量,EPA/ アラキドン酸比が有意に増加していた.また,気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞数ならびに好中球数の有意な低下と肺毛細血管内皮透過性亢進の抑制,肺酸素化能の改善,人工呼吸日数の短縮(11 日対13 日),ICU 在室日数の短縮(11 日対15 日),新たな臓器不全の発生率低下(10%対25%)を認めた.2006 年Singer らは, 95 名のALI 患者を対象に,単施設RCT によりオキシーパ® の効果を検証した106).この試験でもオキシーパ® 投与後早期(4 〜7 日目)に肺酸素化能,コンプライアンスが改善し,人工呼吸期間も有意に短かった.2006 年Pontes-Arruda は165 名のPaO2/FIO2<200 の低酸素症で人工呼吸管理を受ける重症敗血症および敗血症性ショック患者に対するオキシーパ® の有用性を単施設RCT により検討した107).ICU 入室から6 時間以内に投与を開始し,最低投与エネルギー量(基礎代謝量× 1. 3 の75%)として,最低4 日間投与した.本研究ではオキシーパ® 投与により死亡率が52% から33%へと有意に減少した(RR=0. 63[0. 39 ~1. 00]).Pontes- Arruda らはこれら3 つのRCT(総患者数296 名)をメタ解析し108),オキシーパ® 群で,肺酸素化能の改善,新たな臓器不全発生率の低下(オッズ比

0 17[0. 08 ~0. 34]),人工呼吸器装着日数の短縮

(standard median difference(SMD)0. 56+/−0. 12 [0. 32 ~0. 79]),ICU 在室日数の短縮(SMD 0. 51+/ −0. 12[0. 27 ~0. 74]),28 日間死亡率の有意な軽減(オッズ比0. 40[0. 24 ~0. 68])を認めた.松田らは,日本の多施設ICU においてオキシーパ® とプルモケア® の比較を行い,28 日累積生存率はプルモケア® 群90. 5% に対しオキシーパ® 群

91 9%と差はないもののオキシーパ® 群でICU 滞

在フリー日数が有意に長いことを示した109). Pontes-Arruda らは,臓器不全を伴わない早期敗
p.120
血症患者(感染症の>60%は肺炎)に対してオキシーパ® を早期投与(診断後約8 時間で開始)し110),重症敗血症/ 敗血症性ショックへの進展率が低く,心不全,呼吸不全の新規発生率が低いことを示した. Shirai らは,敗血症性ARDS 患者を対象にオキシーパ® と通常の経腸栄養を比較する前向き無作為化比較試験を実施した111).人工呼吸器装着期間やSOFA スコアには改善がなかったものの,ICU 在室期間が短縮された111).一方,米国ARDS network は,ALI 患者を対象に, EPA,γリノレン酸,抗酸化物質を強化したサプリメント追加の是非を検討する大規模な二重盲検RCT (Omega-3 Fatty Acid/Antioxidant Supplementation for Treating People With Acute Lung Injury or Acute Respiratory Distress Syndrome;The Omega Study)を行った.介入群にはオキシーパ® 成分と類似のEPA,DHA,GLA,抗酸化物質サプリメントが1 日2 回ボーラス投与された.結果として,測定可能患者での血中EPA 濃度は有意に上昇していたものの,血中サイトカイン濃度に有意差はなく,酸素化能も同等であった.また,VFD は介入群で

14 0 日と,コントロール群17. 2 日に比べ有意に少

なかった.中間解析で,EPA,γリノレン酸,抗酸化物質が含まれているグループでの死亡率が高いことが判明し,1, 000 名の予定のところ272 名の時点で中断になった112).本研究では,強化した栄養素を12 時間ごとにボーラス投与していることや,栄養剤の開始時期において,早期と晩期双方が混在していることが問題として指摘されている. 2011 年にスペインのGrau-Carmona らは,ALIあるいはARDS 基準を満たす多施設の敗血症132患者を対象に,コントロール群として標準経腸栄養剤(アイソカル®)を使用し,オキシーパ® の有用性を評価した(前者で炭水化物が多く,後者で脂質が多い).群間で酸素化能や臓器障害程度に差はなく,死亡率もコントロール16%に対しオキシーパ®群18%と同等であった.本研究もまた,無益性により中止となった113). 2014 年Zhu らは,これら7 つのRCT,955 名の患者データをメタ解析した101).EPA,DHA, GLA,抗酸化物質投与群で,治療開始4 日目の酸

素化(P/F 比)は有意に改善したが,VFD と28 日死亡率[相対リスク0. 90[0. 68 ~1. 18]]には有意性を認めなかった.対照群にプルモケア® が用いられた研究において,死亡率が12. 5 〜54. 0 % と比較的高かった.以上を考慮すれば,ARDS 患者あるいはその発生が危惧される敗血症患者に対して,とりわけ早期よりオキシーパ® を投与することは弱いながらも支持される可能性があるものの,一定した有効性は示されておらず,今後の検討が期待される.

b. 水分管理肺動脈圧の増加はARDS において換気血流比の不均衡を最小限にとどめる生体防御反応の一つである.しかし,ARDS において血管透過性亢進は肺浮腫の主要因となり,静水圧の上昇は浮腫の増悪をもたらす.このため,ARDS の酸素化を改善するためには,血行動態に影響を及ぼさない範囲で輸液を制限し,肺毛細血管圧を低めに保つことが必要で,肺浮腫軽減に有効と考えられる. ARDS の水分管理には2 つの考え方があった. 1ARDS が肺毛細血管透過性亢進による非心原性肺水腫であるため,水分制限と利尿薬により水分バランスをマイナスに保つ(肺をドライサイドにおく)水分制限管理(conservative strategy)と,2 ARDS の直接原因が多臓器不全であるため,十分な補液による循環維持と臓器保護を考えた自由水分管理(liberal strategy)である.敗血症性ショックなどで循環不全がある場合は,十分な補液とドブタミンなどの昇圧薬による循環維持が必要とされた(liberal strategy)

114).一方,循

環が安定し平均動脈圧が60mmHg 以上のショックまたはショックサインのない症例においては,水分制限と利尿薬(フロセミドなど)により中心静脈圧を4mmHg 未満,または肺動脈閉塞圧(楔入圧)を8mmHg 未満に目標管理したconservative strategy の方が,liberal strategy よりも酸素化改善と人工呼吸使用日数の短縮をもたらすことが大
p.121
規模RCT で示された(ARDS Clinical Trials Network Fluid and Catheter Treatment Trial; FACTT) 115, 116).なお,conservative strategy によるショックの発生・腎傷害による透析導入率は, liberal strategy と有意差はなかった.2, 124 人の観察研究でも,conservative strategy の方が人工呼吸器離脱期間の有意な延長をもたらした117).このため循環動態が安定している限り,ARDS 患者では水分制限や利尿薬の投与を基本とした水分管理法が適しているとされた.しかし同試験に登録された患者に退院1 年後に電話による認知機能テストを行ったところ,厳格な水分管理を受けた患者で認知機能障害を認める割合が高く,低酸素血症と並んで水分管理の影響が考えられた118).ARDS 患者に対する至適水分管理については,長期的な機能予後も含めてさらなる検討が必要と考えられる.ほかにも,ARDS 発症初期(4 日間)で水分バランスがほぼプラスマイナスゼロであった症例で死亡

率が有意に低いという観察研究や119),生存群では非生存者に比し補液量が負のin-out balance を示し,体重減少も有意であったとの報告がある120 ~124).よって酸塩基平衡および腎血流量の保持がなされ,全身臓器への最低限の酸素運搬能が維持可能な輸液量以上の過剰輸液は避けるべきであろう125).なお,3, 147 人の観察研究の結果からは,腎血流量の保持目的の低用量カテコラミン製剤は,有効性が証明されておらず126),その使用は推奨されない.アルブミンとフロセミドによる治療は水分バランス,酸素化および循環動態改善に有効かもしれない127). 1, 000 人のRCT で検証した報告では,水分管理のためのカテーテルとしては,肺動脈カテーテル留置は不整脈などの合併症が多く128),また死亡率を上昇させたとする症例対象試験の報告129)があるので,使用は支持されない.

■ 文 献97)Stapleton RD, Suratt BT:Obesity and nutrition in acute respiratory distress syndrome. Clin Chest

Med 35:655-671, 2014 98)Correia MI, Waitzberg DL:The impact of malnutrition on morbidity, mortality, length of hospital stay

and costs evaluated through a multivariate model analysis. Clin Nutr 22:235-239, 2003 99)al-Saady NM, Blackmore CM, Bennett ED:High fat, low carbohydrate, enteral feeding lowers PaCO2

and reduces the period of ventilation in artificially ventilated patients. Intensive Care Med 15:290-295, 1989 100)McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al:Guidelines for the provision and assessment of nutrition

support therapy in the adult critically ill patient:Society of Critical Care Medcine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A. S. P. E. N. ). JPEN J Parenter Enteral Nutr 40(2):159-211, 2016 101)Zhu D, Zhang Y, Li S, et al:Enteral omega-3 fatty acid supplementation in adult patients with acute

respiratory distress syndrome:a systematic review of randomized controlled trials with meta-analysis and trial sequential analysis. Intensive Care Med 40:504-512, 2014 102)Rice TW, Wheeler AP, Thompson BT, et al:Initial trophic vs full enteral feeding in patients with

acute lung injury:the EDEN randomized trial. JAMA 307:795-803, 2012 103)Braunschweig CA, Sheean PM, Peterson SJ, et al:Intensive nutrition in acute lung injury:a clinical

trial (INTACT). JPEN J Parenter Enteral Nutr 39:13-20, 2015 104)Needham DM, Dinglas VD, Morris PE, et al:Physical and cognitive performance of patients with acute

lung injury 1 year after initial trophic versus full enteral feeding. EDEN trial follow-up. Am J Respir Crit Care Med 188:567-576, 2013 105)Gadek JE, DeMichele SJ, Karlstad MD, et al:Effect of enteral feeding with eicosapentaenoic acid,
p.122
gamma-linolenic acid, and antioxidants in patients with acute respiratory distress syndrome. Enteral Nutrition in ARDS Study Group. Crit Care Med 27:1409-1420, 1999 106)Singer P, Theilla M, Fisher H, et al:Benefit of an enteral diet enriched with eicosapentaenoic acid and

gamma-linolenic acid in ventilated patients with acute lung injury. Crit Care Med 34:1033-1038, 2006 107)Pontes-Arruda A, Aragao AM, Albuquerque JD:Effects of enteral feeding with eicosapentaenoic acid,

gamma-linolenic acid, and antioxidants in mechanically ventilated patients with severe sepsis and septic shock. Crit Care Med 34:2325-2333, 2006 108)Pontes-Arruda A, Demichele S, Seth A, et al:The use of an inflammation-modulating diet in patients

with acute lung injury or acute respiratory distress syndrome:a meta-analysis of outcome data. JPEN J Parenter Enteral Nutr 32:596-605, 2008 109)松田兼一, 平澤博之, 織田成人, 他:重症敗血症/ 敗血症性ショック症例に対する免疫調節経腸栄養剤の

有用性. 日集中医誌 21:155-163, 2014 110)Pontes-Arruda A, Martins LF, de Lima SM, et al:Enteral nutrition with eicosapentaenoic acid,

gamma-linolenic acid and antioxidants in the early treatment of sepsis:results from a multicenter, prospective, randomized, double-blinded, controlled study:the INTERSEPT study. Crit Care 15: R144, 2011 111)Shirai K, Yoshida S, Matsumaru N, et al:Effect of enteral diet enriched with eicosapentaenoic acid,

gamma-linolenic acid, and antioxidants in patients with sepsis-induced acute respiratory distress syndrome. J Intensive Care 3:24, 2015 112)Rice TW, Wheeler AP, Thompson BT, et al:Enteral omega-3 fatty acid, gamma-linolenic acid, and

antioxidant supplementation in acute lung injury. JAMA 306:1574-1581, 2011 113)Grau-Carmona T, Moran-Garcia V, Garcia-de-Lorenzo A, et al:Effect of an enteral diet enriched with

eicosapentaenoic acid, gamma-linolenic acid and anti-oxidants on the outcome of mechanically ventilated, critically ill, septic patients. Clin Nutr 30:578-584, 2011 114)Rivers E, Nguyen B, Havstad S, et al:Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis

and septic shock. N Engl J Med 345:1368-1377, 2001 115)Wiedemann HP, Wheeler AP, Bernard GR, et al:Comparison of two fluid-management strategies in

acute lung injury. N Engl J Med 354:2564-2575, 2006 116)Stewart RM, Park PK, Hunt JP, et al:Less is more:improved outcomes in surgical patients with

conservative fluid administration and central venous catheter monitoring. J Am Coll Surg 208:725- 735;discussion 735-727, 2009 117)Grissom CK, Hirshberg EL, Dickerson JB, et al:Fluid management with a simplified conservative

protocol for the acute respiratory distress syndrome*. Crit Care Med 43:288-295, 2015 118)Mikkelsen ME, Christie JD, Lanken PN, et al:The adult respiratory distress syndrome cognitive

outcomes study. Long-term neuropsychological function in survivors of acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 185:1307-1315, 2012 119)Rosenberg AL, Dechert RE, Park PK, et al:Review of a large clinical series:association of cumulative

fluid balance on outcome in acute lung injury:a retrospective review of the ARDSnet tidal volume study cohort. J Intensive Care Med 24:35-46, 2009 120)Simmons RS, Berdine GG, Seidenfeld JJ, et al:Fluid balance and the adult respiratory distress

syndrome. Am Rev Respir Dis 135:924-929, 1987 121)Lowell JA, Schifferdecker C, Driscoll DF, et al:Postoperative fluid overload:not a benign problem.

Crit Care Med 18:728-733, 1990 122)Schuller D, Mitchell JP, Calandrino FS, et al:Fluid balance during pulmonary edema. Is fluid gain a

marker or a cause of poor outcome? Chest 100:1068-1075, 1991 123)Davey-Quinn A, Gedney JA, Whiteley SM, et al:Extravascular lung water and acute respiratory
p.123
distress syndrome--oxygenation and outcome. Anaesth Intensive Care 27:357-362, 1999 124)Sakr Y, Vincent JL, Reinhart K, et al:High tidal volume and positive fluid balance are associated with

worse outcome in acute lung injury. Chest  128:3098-3108, 2005 125)Calfee CS, Matthay MA:Nonventilatory treatments for acute lung injury and ARDS. Chest 131:913-

920, 2007 126)Bellomo R, Chapman M, Finfer S, et al:Low-dose dopamine in patients with early renal dysfunction:

a placebo-controlled randomised trial. Australian and New Zealand Intensive Care Society (ANZICS) Clinical Trials Group. Lancet 356:2139-2143, 2000 127)Martin GS, Mangialardi RJ, Wheeler AP, et al:Albumin and furosemide therapy in hypoproteinemic

patients with acute lung injury. Crit Care Med  30:2175-2182, 2002 128)Wheeler AP, Bernard GR, Thompson BT, et al:Pulmonary-artery versus central venous catheter to

guide treatment of acute lung injury. N Engl J Med  354:2213-2224, 2006 129)Connors AF, Jr., Speroff T, Dawson NV, et al:The effectiveness of right heart catheterization in the

initial care of critically ill patients. SUPPORT Investigators. JAMA 276:889-897, 1996
p.124
a.ECMO体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation;ECMO)は,ポンプを用いて患者の血液を脱血し,ガス透過膜を介して酸素化とCO2除去を行った後に患者へ返血する生命維持法であり,重症呼吸不全と重症循環不全において適応となる.重症呼吸不全に使用するECMO を呼吸ECMO (respiratory ECMO)と呼び,肺のガス交換機能の代行を目的としている.呼吸ECMO 導入後は,肺組織が回復するまで肺の安静を保つことが可能となる.重症ARDS に対するECMO の使用は1970 年代より試みられた.当初のECMO は静脈から脱血して動脈に戻すveno-arterial (VA) ECMO が一般的であった.VA-ECMO は動脈血流を維持し,循環不全を改善させる効果があるが,出血や塞栓症など合併症の発生率が高く,ARDS 救命率は改善しなかった130).近年,循環不全のない重症呼吸不全では,静脈から脱血して静脈に戻すveno-venous (VV) ECMO が一般的である.この方法では循環動態の改善は得られないが,VA-ECMO よりも合併症(出血,塞栓症,下肢阻血など)のリスクが少ない.2009 年に重症ARDS に対して従来の呼吸管理とECMO を比較したRCT (conventional ventilatory support versus ECMO for severe adult respiratory failure[CESAR] trial)が報告された.

結果は,6 ヵ月後の重篤な機能不全のない生存率が,従来の呼吸管理群では47%のところ,ECMO 治療を考慮してECMO 可能な施設で管理をした群(後述)の生存率では63%と有意に予後を改善していた131).この結果を受けて,重症ARDS に対するECMOの効果が期待されるようになった.また2009 年にはH1N1 インフルエンザのパンデミックが発生し, H1N1 インフルエンザに関連した重症ARDS において,ECMO の有効性を報告した記事が散見されたが132, 133),予後の改善に至らなかったという報告もある134).ECMO の治療成績は施設による差が大きく,設備も含めた治療法の標準化が望まれる135). ECMO は保護的人工呼吸を含めた通常の呼吸管理で対応できない重症ARDS のみが適応となり, Murray score >3. 0 かつP/F 比 < 80,あるいはpH < 7. 2 の呼吸性アシドーシスが6 時間以上続く場合などに考慮される.ただし不可逆性の病態には適応されない136).管理面では,ECMO にて酸素化を含め完全に生体肺を代行するには,高い血流量が必要である.脱血カニューレのサイズがECMO の最大血流量を規定する最大の要因であるため,高流量が可能な十分なサイズの脱血カニューレを挿入することが重要で

●	ECMO は保護的人工呼吸を含めた通常の呼吸管理で対応できない重症ARDS の

みが適応となる.ただし,ECMO 管理には,熟練した医師,看護師,臨床工学技士などのチーム医療が必要である. ●ARDS 患者に対するPMX-F 使用は,敗血症患者の経過におけるARDS 発症率や,

生存期間に対する有用性を立証したRCT の報告はなく,いまのところ推奨されない. ●腎不全を合併したARDS 患者を対象とする以外に,持続的血液濾過透析

(continuous hemodiafiltration;CHDF) を積極的に推奨する根拠は乏しい.

■4 その他の治療
p.125
ある.また回路内血栓と出血合併症をコントロールするために,適切な抗凝固療法と回路のモニタリングを行い,トラブル発生時に迅速に対応するための技術も必要となる.そのためECMO 管理には,熟練した医師,看護師,臨床工学技士などのチーム医療が必要であり,治療実施はトレーニングされたスタッフが充実しているECMO センターに集約することが望ましい.そのためには,患者の移送を的確に行う必要がある137).酸素化には高流量のECMO が必要であるが, CO2 の除去だけであれば,低流量で可能である.酸素化は人工呼吸器による生体肺で行い,CO2 除去のみを目的とした低流量体外循環のextracorporeal CO2 removal(ECCO2R) 138)や,動静脈圧差を利用したポンプ不要の pumpless extracorporeal interventional lung assist 139)などが開発されており,今後のARDS 管理において,ECMO も含めたextracorporeal life support (ECLS)の重要性は増していくと考えられる.今回本ガイドラインではARDS に対するECMOの適応に関するCQ は設定しなかった.まず検討に値するRCT が少ないことが最大の理由であった130, 131, 138).またその中で唯一ECMO が有効であったとするすでに述べたPeek らの報告も131),実際にはECMO 群に割り当てられた85 名中17 名にECMO が適応されなかったこと,肺保護的人工呼吸が全例に施されたECMO 群に対して,コントロール群では70% に施されたに過ぎなかったことなどから,ECMO そのものではなくECMO センターにすみやかに搬送することが救命率を高めたとの意見も根強い.翻って本邦では現在,未だECMO センターとして機能するような施設はなく,多くの施設が少ない経験の中で試行錯誤を繰り返している状況である.以上より本ガイドラインでは,推奨度を示す以前に,respiratory ECMO 導入のため現在日本呼吸療法医学会が中心となって取り組んでいるECMO プロジェクトを理解いただき,適切なECMO 治療のための基本をまず学んでいただくことを推奨したい. b.血液濾過・浄化療法

流血中に存在しARDS の増悪因子となる液性因子やサイトカインなどを除去する目的で,血液浄化療法が行われることがある.本邦では,血液中エンドトキシンの除去を目的としたPMX-F (polymyxin B-immobilized fiber)を用いたエンドトキシン吸着と,体内の水分除去を主な目的とする持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration;CHDF)が臨床応用されている.腹腔内感染症由来の敗血症性ショック患者に対してPMX-F を早期導入するRCT 試験が行われた.その結果PMX-F 群で有意に体血圧および酸素化の上昇が認められ,院内死亡率の低下も報告された.また,PMX-F はARDS 患者において酸素化および循環動態を改善することが示唆されているが140, 141),敗血症患者の経過におけるARDS 発症率や,生存期間に対する有用性を立証したRCT の報告はなく,いまのところARDS 患者に対するPMX-F 使用は推奨されない.輸液管理上CHDF は,水分・代謝産物の除去,電解質,酸・塩基平衡等の全身管理に有用である.PMMA(polymethyl methacrylate)膜によるCHDF が流血中の炎症性サイトカインを除去可能で,酸素化能改善率と相関する報告がある一方,敗血症患者のサイトカイン濃度はCHDF によって変化せず,臓器不全数も変わらないとのRCT の報告もある142).また,ARDS 患者の生存期間等に対する効果を検証した報告はない.今のところ腎不全を合併したARDS 患者を対象とする以外に,CHDFを積極的に推奨する根拠は乏しい.その他にβ 2 ミクログロブリン吸着であるリクセルがある.親水性多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化したリクセルはリガンドとβ 2 ミクログロブリンの疎水的相互作用により吸着する.吸着表面の穴の大きさを調整し,アルブミンなどの分子量2万以上の蛋白質は侵入できないようになっており,分子量2万以下のβ 2 ミクログロブリンや各種サイトカインを吸着するのが特徴である.現在では透析アミロイド症治療に使用されているが,今後サ
p.126
イトカイン除去を目的とした炎症疾患,敗血症に応用することが期待されている.ARDS 患者に対して使用した報告もあるが143),症例報告のレベルである.以上,今後の血液濾過・浄化療法におけるRCT

施行が期待されるが,本ガイドラインでは本分野に関するCQ は設定しなかった.

■ 文 献130)Zapol WM, Snider MT, Hill JD, et al:Extracorporeal membrane oxygenation in severe acute

respiratory failure. A randomized prospective study. JAMA 242:2193-2196, 1979 131)Peek GJ, Mugford M, Tiruvoipati R, et al:Efficacy and economic assessment of conventional

ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure (CESAR):a multicentre randomised controlled trial. Lancet 374:1351-1363, 2009 132)Davies A, Jones D, Bailey M, et al:Extracorporeal Membrane Oxygenation for 2009 Influenza

A(H1N1) Acute Respiratory Distress Syndrome. JAMA 302:1888-1895, 2009 133)Munshi L, Telesnicki T, Walkey A, et al:Extracorporeal life support for acute respiratory failure. A

systematic review and metaanalysis. Ann Am Thorac Soc 11:802-810, 2014 134)Pham T, Combes A, Roze H, et al:Extracorporeal membrane oxygenation for pandemic influenza

A(H1N1)-induced acute respiratory distress syndrome:a cohort study and propensity-matched analysis. Am J Respir Crit Care Med 187:276-285, 2013 135)Takeda S, Kotani T, Nakagawa S, et al:Extracorporeal membrane oxygenation for 2009 influenza

A(H1N1) severe respiratory failure in Japan. J Anesth 26:650-657, 2012 136)Richard C, Argaud L, Blet A, et al:Extracorporeal life support for patients with acute respiratory

distress syndrome:report of a Consensus Conference. Ann Intensive Care 4:15, 2014 137)Combes A, Brodie D, Bartlett R, et al:Position paper for the organization of extracorporeal

membrane oxygenation programs for acute respiratory failure in adult patients. Am J Respir Crit Care Med 190:488-496, 2014 138)Morris AH, Wallace CJ, Menlove RL, et al:Randomized clinical trial of pressure-controlled inverse

ratio ventilation and extracorporeal CO2 removal for adult respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 149:295-305, 1994 139)Florchinger B, Philipp A, Klose A, et al:Pumpless extracorporeal lung assist:a 10-year institutional

experience. Ann Thorac Surg 86:410-417;discussion 417, 2008 140)Nakamura T, Suzuki Y, Shimada N, et al:Hemoperfusion with polymyxin B-immobilized fiber

attenuates the increased plasma levels of thrombomodulin and von Willebrand factor from patients with septic shock. Blood Purif 16:179-186, 1998 141)Tsushima K, Kubo K, Koizumi T et al:Direct hemoperfusion using a polymyxin B immobilized

column improves acute respiratory distress syndrome. J Clin Apher 17:97-102, 2002 142)Cole L, Bellomo R, Hart G, et al:A phase II randomized, controlled trial of continuous hemofiltration

in sepsis. Crit Care Med 30:100-106, 2002 143)Kono K, Toda S, Hora K, et al:Direct hemoperfusion with a beta2-microglobulin-selective adsorbent

column eliminates inflammatory cytokines and improves pulmonary oxygenation. Ther Apher Dial 13: 27-33, 2009
p.127
予 後

1 死亡率と死亡原因

AECC 定義以降の研究では,ARDS のICU 死亡率が,30 〜49%,病院死亡率が37 〜58% と報告されている1 〜6).Berlin 定義を満たすARDS 症例の2014 年の冬季4 週間にわたるICU における多施設前向きコホート研究では7),ARDS の院内死亡率は,軽症ARDS 34. 9%,中等症40. 3%,重症46. 1% で,全体として40. 0%だった.過去101 件の原著論文をまとめた結果,施設によるばらつきが大きく死亡率は平均50%程度で変化はみられないという報告もみられるが8),近年,死亡率が減少したとする報告が多い.単独施設の報告ではあるが,1980 年代には60 〜70%であったARDS の死亡率が,1990 年代には40 〜50%程度に低下している9).1994 年から2006 年までに出版され,30 例以上が登録された72の試験におけるARDS 死亡率を解析した結果では,平均43%であったが,年間1. 1% の割合で減少している10).一方,1984 年から2006 年までに報告され

た50 例以上が登録された試験におけるARDS 死亡率を観察的試験53 報とRCT36 報に分けて解析した結果では,経年的に死亡率の減少がみられたのは1983 年から1993 年までの観察的報告においてのみであり,1994 年以降は死亡率の減少がみられていないという.この理由としては,1994 年にALI/ ARDS の定義が変更となり,より幅広い原因の異なる集団を含むことに起因する可能性も考えられている.また,RCT における死亡率は36% で,観察的報告での44% より低かったが11),これは,RCTが専門施設で行われ,呼吸管理などが優れていることや,予後不良の症例を除外していることが理由と考えられるという.ARDSnet は保護的人工換気の有用性を示したacute respiratory distress syndrome management with lower versus higher tidal volume (ARMA)研究以降,さまざまなRCT を行ってきたが,どの報告も有意差を認めていない.しかしながら年次ごとに死亡率を比較すると1990 年代に

●ARDS の死亡率は,近年改善傾向にあるものの,30 ~58% と依然として高い. ●直接死因は,呼吸不全より敗血症などの感染症や,多臓器不全によることが多い. ●予後を予測しうる適切なバイオマーカーは確立していない. ●後遺症として,呼吸機能障害だけでなく,神経筋障害,精神認知機能障害や,健

康関連 QOL の低下がみられることがある.

11 11
p.128
40%前後だった60 日後死亡率は2008 年には25%前後まで低下している12, 13).保護的人工換気以外に有効な治療法を示したRCT が数少ないなかで,これだけ予後が改善されたのは,集学的治療の積み重ねであると推測される.これらの報告を総合すると,少なくとも適切な呼吸管理を施行している専門施設ではARDS の死亡率は低下してきたと考えてよいと思われる. Berlin 定義を満たすARDS 症例の2014 年の冬季4 週間にわたるintensive care unit(ICU)における多施設前向きコホート研究では7),ARDS の認識が軽症ARDS 51. 3%,中等症65. 3%,重症78. 5% で,全体として60. 2%と,過小診断されていた症例が少なくなかった.このため,ARDS の院内死亡率の高さは,ARDS の過小診断から不十分な治療につながることも関連する可能性が指摘された.本邦において,多施設のICU でのARDS の死亡率が集計されており,全国における1997 年の集計14)では,ICU 内死亡率は48. 6%,病院内死亡率は61. 3%であり,東北地区の2005 年の集計15)では30 日後の死亡率は23. 0%と報告されており,評価方法が異なるものの,国内の死亡率も低下していると推測される. ARDS による直接的死亡原因として,呼吸不全によるものは比較的少ない.多くの場合,直接死因はARDS の基礎疾患であり,敗血症に伴う多臓器不全が最も多く,また院内肺炎も問題となる. ARDS の死因で呼吸不全が占める割合は13 〜19%と報告されており16, 17),本邦の集計でも17. 6%であった15). ARDS の救命率の向上に伴い,長期生存例が増加している.2006 年から2010 年の集計では,院内死亡率が24%であったものが1年後では41%となっている.退院後の死亡率はBerlin 定義による重症度と相関はなく,高齢者,COPD や悪性腫瘍などの基礎疾患を有する例,そして退院後に施設に入所した患者の死亡率が高い18). 2 予後予測因子

ARDS において,呼吸不全自体による死亡の頻度は少ないため,発症時の呼吸状態の重症度,すなわち低酸素血症,肺コンプライアンス,胸部X 線写真スコア,PEEP などは一般に予後の指標にならないといわれる19 ~21).これに対して発症後数日の酸素化能の改善程度は,予後の指標となり得る可能性が示唆されている22, 23).今回の新しいBerlin 定義の策定においても,肺野における浸潤影の範囲, PEEP,静肺コンプライアンス(CRS),修正分時換気量(VECORR)といった肺傷害の重症度の変数が予後判定に有用であるか否かが検討されたが,有意な結果は得られず除外された24).Berlin 定義では, P/F 比で示される酸素化能の程度に応じて重症度が3 分類され,重症度が予後に反映することが確認された.死亡率の予測信頼性は,AUROC(area under the receiver operating curve)0. 577 (95%CI; 0. 561 ~0. 593)vs 0. 536(95%CI;0. 520 ~0. 553), P>0. 001)とAECC 定義と比較すると有意に改善された.しかし,その差はわずかであり,予後予測における有用性は高いものではないという意見もある25). Berlin 基準を満たすARDS 症例の2014 年の冬季4 週間にわたるintensive care unit(ICU)における多施設前向きコホート研究では7),重症度と人工呼吸器中止率,および院内生存率は相関しており予後予測因子となっていた.また,driving pressure(プラトー圧とPEEP の差である換気圧;9 章 p. 83 参照)も院内生存率と有意に相関していた.基礎疾患では,敗血症に伴うARDS の死亡率が高く13, 16, 26),敗血症群の死亡率が38. 2%と非敗血症群の22. 6%より有意に高いとされているが26),有意差はないとする報告もある27). ARDS は多臓器不全による死亡が多く,その評価と予後予測のためのスコアリングシステムとして, APACHE(acute physiologic and chronic health evaluation)III 28),SAPS(simplified acute physiology score) III 29),MPM(mortality probability model)III 30)などが提唱されている.これらは統
p.129
計学的手法として有用であるが,煩雑であるため一般の臨床での使用には適切とはいいがたい.予後予測のバイオマーカーとして 炎症性サイトカインであるIL-6,IL-8,TNF 受容体,血漿中SP-D,von Willebrand 因子,KL-6,HMGB-1 の高値など,さまざまな報告(第6 章,表6-2)がされているが31 ~37),実地臨床での有用性についての確証はない(「第6 章 診断と検査」参照).これらのバイオマーカーを単独ではなく,複数のバイオマーカーと臨床パラメーターを複合的に組み合わせて,より正確に予後を推定する試みや32),炎症の強さでフェノタイプを分けて評価する方法も検討されている38).その他,予後不良因子として,65 歳以上の高齢者,臓器移植者,慢性肝疾患,HIV 感染者,悪性腫瘍合併者などが挙げられている19). ARDS をICU 入室後 48 時間以内に発症したearly-onset 症例と比べて,48 時間以降に発症したlate-onset 症例のほうが予後不良であるという報告39) がある一方,生存率に差はみられないとする報告もある40).

3 後遺症

ARDS の長期生存例の後遺症としては,呼吸機能障害,神経筋障害,精神認知機能障害,健康関連quality of life(QOL)低下などがある(「第 8 章

随伴する疾患・病態」参照).肺機能は1 年後には改善し,症状も残らないことが多い41, 42).しかし,軽度の拡散能障害は残存することも多く42).不可逆性の線維化に伴う呼吸不全が改善しない例も少なくない.集中治療室(ICU)重症患者に生ずる四肢筋力低下はICU-acquired weakness(ICU-AW)と呼ばれ,末梢神経筋障害が複合したcritical illness polyneuropathy/myopathy(CIP/CIM)が病態と考えられている43).ARDS の後遺症としてもICU-AWが高頻度に認められる44).身体的障害だけでなく,心的外傷後ストレス障害45)やうつ46)を併発すること,記憶障害や注意集中障害などの認知機能障害の合併が報告されており47),急性期の低酸素との関連が指摘されている48).健康関連QOL の指標であるSF-36(medical outcomes study 36 item short form general health survey)の低下も長期に認められ,特に高齢者で問題となる41).身体活動性の低下については,ICU 在室期間とステロイドの使用量と関係があり,配慮が必要である49).これまで多くのRCT において短期の救命率がエンドポイントとなっているが,長期予後や合併症についても配慮した治療が今後は求められるであろう.

■ 文 献1)Brun-Buisson C, Minelli C, Bertolini G, et al:Epidemiology and outcome of acute lung injury in

European intensive care units;Results from the ALIVE study. Intensive Care Med 30:51-61, 2004 2)Bersten AD, Edibam C, Hunt T, et al:Incidence and mortality of acute lung injury and the acute

respiratory distress syndrome in three Australian States. Am J Respir Crit Care Med 165:443-448,

2002 3)Villar J, Blanco J, Añón JM, et al:The ALIEN study:incidence and outcome of acute respiratory

distress syndrome in the era of lung protective ventilation. Intensive Care Med 37:1932-1941, 2011 4)Sigurdsson MI, Sigvaldason K, Gunnarsson TS, et al:Acute respiratory distress syndrome:nationwide

changes in incidence, treatment and mortality over 23 years. Acta Anaesthesiol Scand 57:37-45, 2013 5)Li G, Malinchoc M, Cartin-Ceba R, et al:Eight-year trend of acute respiratory distress syndrome:a

population-based study in Olmsted County, Minnesota. Am J Respir Crit Care Med 183:59-66, 2011
p.130
6)Rubenfeld GD, Caldwell E, Peabody E, et al:Incidence and outcomes of acute lung injury. N Engl J

Med 353:1685-1693, 2005 7)Bellani G, Laffey JG, Pham T, et al:Epidemiology, Patterns of Care, and Mortality for Patients With

Acute Respiratory Distress Syndrome in Intensive Care Units in 50 Countries. JAMA 315:788-800, 2016 8)Krafft P, Fridrich P, Pernerstorfer T, et al:The acute respiratory distress syndrome:definitions,

severity and clinical outcome. An analysis of 101 clinical investigations. Intensive Care Med 22:519- 529, 1996 9)Milberg JA, Davis DR, Steinberg KP, et al:Improved survival of patients with acute respiratory

distress syndrome (ARDS):1983-1993. JAMA 273:306-309, 1995 10)Zambon M, Vincent JL:Mortality rates for patients with acute lung injury/ARDS have decreased

over time. Chest. 133:1120-1127, 2008 11)Phua J, Badia JR, Adhikari NK, et al:Has mortality from acute respiratory distress syndrome

decreased over time?:A systematic review. Am J Respir Crit Care Med 179:220-227, 2009 12)Spragg RG, Bernard GR, Checkley W, et al:Beyond mortality:future clinical research in acute lung

injury. Am J Respir Crit Care Med 181:1121-1127, 2010 13)Erickson SE, Martin GS, Davis JL, et al:Recent trends in acute lung injury mortality:1996-2005. Crit

Care Med 37:1574-1579, 2009 14)多治見公高, 武澤 純, 氏家良人, 他:日本呼吸療法医学会 急性呼吸不全実態調査委員会報告書. 人工

呼吸 16:33-42, 1999 15)遠藤重厚, 宮手美治, 廣田和美,  他:ICU 入室患者における急性呼吸不全実態調査. 日臨救急医会誌 10:

415-421, 2007 16)Stapleton RD, Wang BM, Hudson LD, et al:Causes and timing of death in patients with ARDS. Chest

128:525-532, 2005 17)Montgomery AB, Stager MA, Carrico CJ, et al:Causes of mortality in patients with the adult

respiratory distress syndrome. Am Rev Respir Dis 132:485-489, 1985 18)Wang CY, Calfee CS, Paul DW, et al:One-year mortality and predictors of death among hospital

survivors of acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 40:388-396, 2014 19)Zilberberg MD, Epstein SK. Acute lung injury in the medical ICU:comorbid conditions, age, etiology,

and hospital outcome. Am J Respir Crit Care Med 157:1159-1164, 1998 20)Doyle RL, Szaflarski N, Modin GW, et al.:Identification of patients with acute lung injury. Predictors

of mortality. Am J Respir Crit Care Med 152:1818-1824, 1995 21)Murray JF, Matthay MA, Luce JM, et al.:An expanded definition of the adult respiratory distress

syndrome. Am Rev Respir Dis 138:720-723, 1988 22)Bone RC, Maunder R, Slotman G, et al:An early test of survival in patients with the adult respiratory

distress syndrome. The PaO2/FiO2 ratio and its differential response to conventional therapy. Prostaglandin E1 Study Group. Chest 96:849-851, 1989 23)Heffner JE, Brown LK, Barbieri CA, et al:Prospective validation of an acute respiratory distress

syndrome predictive score. Am J Respir Crit Care Med 152:1518-1526, 1995 24)Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, et al:Acute respiratory distress syndrome:the Berlin

Definition. JAMA 307:2526-2533, 2012 25)Phillips CR:The Berlin definition:real change or the emperor's new clothes? Crit Care 17:174, 2013 26)Sheu CC, Gong MN, Zhai R, et al:Clinical characteristics and outcomes of sepsis-related vs non-

sepsis-related ARDS. Chest 138:559-567, 2010 27)Eggimann P, Harbarth S, Ricou B, et al:Acute respiratory distress syndrome after bacteremic sepsis

does not increase mortality. Am J Respir Crit Care Med 167:1210-1214, 2003 28)Knaus WA, Wagner DP, Draper EA, et al:The APACHE III prognostic system. Risk prediction of

hospital mortality for critically ill hospitalized adults. Chest 100:1619-1636, 1991 29)Nassar AP, Malbouisson LM, Moreno R:Evaluation of Simplified Acute Physiology Score 3
p.131
performance:a systematic review of external validation studies. Crit Care 18:R117, 2014 30)Vasilevskis EE, Kuzniewicz MW, Cason BA, et al:Mortality probability model III and simplified acute

physiology score II:assessing their value in predicting length of stay and comparison to APACHE IV. Chest 136:89-101, 2009 31)Parsons PE, Eisner MD, Thompson BT, et al:Lower tidal volume ventilation and plasma cytokine

markers of inflammation in patients with acute lung injury. Crit Care Med 33:1-6;discussion 230- 232, 2005 32)Ware LB, Koyama T, Billheimer DD, et al:Prognostic and pathogenetic value of combining clinical and

biochemical indices in patients with acute lung injury. Chest 137:288-296, 2010 33)Parsons PE, Matthay MA, Ware LB, et al:Elevated plasma levels of soluble TNF receptors are

associated with morbidity and mortality in patients with acute lung injury. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 288:L426-431, 2005 34)Eisner MD, Parsons P, Matthay MA, et al:Plasma surfactant protein levels and clinical outcomes in

patients with acute lung injury. Thorax 58:983-988, 2003 35)Ware LB, Eisner MD, Thompson BT, et al:Significance of von Willebrand factor in septic and

nonseptic patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 170:766-772, 2004 36)Ishizaka A, Matsuda T, Albertine KH, et al:Elevation of KL-6, a lung epithelial cell marker, in plasma

and epithelial lining fluid in acute respiratory distress syndrome. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 286:L1088-1094, 2004 37)Ueno H, Matsuda T, Hashimoto S, et al:Contributions of high mobility group box protein in

experimental and clinical acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 170:1310-1316, 2004 38)Calfee CS, Delucchi K, Parsons PE, et al:Subphenotypes in acute respiratory distress syndrome:

latent class analysis of data from two randomised controlled trials. Lancet Respir Med 2:611-620, 2014 39)Liao KM, Chen CW, Hsiue TR, et al:Timing of acute respiratory distress syndrome onset is related to

patient outcome. J Formos Med Assoc 108:694-703, 2009 40)Vincent JL, Sakr Y, Groeneveld J, et al:ARDS of early or late onset:does it make a difference? Chest

137:81-87, 2010 41)Neff TA, Stocker R, Frey HR, et al:Long-term assessment of lung function in survivors of severe

ARDS. Chest 123:845-853, 2003 42)Herridge MS, Tansey CM, Matte A, et al:Functional disability 5 years after acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 364:1293-1304, 2011 43)Latronico N, Bolton CF:Critical illness polyneuropathy and myopathy:a major cause of muscle

weakness and paralysis. Lancet Neurol 10:931-941, 2011 44)Bercker S, Weber-Carstens S, Deja M, et al:Critical illness polyneuropathy and myopathy in patients

with acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 33:711-715, 2005 45)Kapfhammer HP, Rothenhausler HB, Krauseneck T, et al:Posttraumatic stress disorder and health-

related quality of life in long-term survivors of acute respiratory distress syndrome. Am J Psychiatry 161:45-52, 2004 46)Hopkins RO, Weaver LK, Collingridge D, et al:Two-year cognitive, emotional, and quality-of-life

outcomes in acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 171:340-347, 2005 47)Hopkins RO, Weaver LK, Pope D, et al:Neuropsychological sequelae and impaired health status in

survivors of severe acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 160:50-56, 1999 48)Mikkelsen ME, Christie JD, Lanken PN, et al:The adult respiratory distress syndrome cognitive

outcomes study:long-term neuropsychological function in survivors of acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 185:1307-1315, 2012 49)Needham DM, Wozniak AW, Hough CL, et al:Risk Factors for Physical Impairment after Acute Lung

Injury in a National, Multi-Center Study. Am J Respir Crit Care Med 189:1214-1224, 2014
p.132
医療倫理

1 重症患者からの同意取得

インフォームド ・コンセント(informed consent; IC)とは,医療行為に対し医療従事者が十分な説明を行い,それに対し患者側が十分に理解,納得のうえで医療行為の選択・同意を行うことである.すなわち IC とは,ただ説明するだけではなく,説明された側が十分に理解したときにはじめて完了する.当初IC は主にがん告知や蘇生処置拒否(do not resuscitate;DNR)〔注1〕など,きわめて限定的な状況下でのみ取得されていたが,患者の知る権利が尊重されるにつれて,その適用範囲が拡大され,現在では医療行為全般に関してIC を得ることが一

般化している. IC の考え方はARDS のような一刻を争う重症疾患においても例外ではなく,患者やその家族・関係者(以下,家族)が疾患・病態を正しく理解し,判断できるよう努めることが重要である.ARDS におけるIC の特徴の一つとして,患者本人が呼吸困難や意識障害などの症状や,気管挿管,鎮静などの処置により,医療者の説明を理解し,意思表示できる状況にないことが多く,結果的に家族がIC 取得の主対象となる.患者または家族への具体的な説明事項としては, 1現在の病状と緊急度 ・重症度,2必要な検査,処置の意義,方法と合併症,3治療の選択肢,各々の合併症,4予想される経過・予後,などが必須と

●ARDS は予後の不良な重篤疾患であり,侵襲的処置,医学的管理,回復が見込ま

れない状況に陥った場合など,さまざまな場面で倫理的な配慮が求められる. ●ARDS の診療では,呼吸困難,意識障害などの症状や,気管挿管,鎮静などの処

置により,患者からのインフォームド・コンセント取得が困難な状況や,緊急処置のように,時間的猶予がない場合も多いが,医療者は患者や家族・関係者からインフォームド・コンセントを得るべく,最大限の努力をすべきである. ●不幸にして患者の回復が望めない状況に至った場合は,終末期医療に関する提言

などを参考に,延命に繋がる治療や処置の中止を医療チームの総意として慎重に判断し,インフォームド・コンセントを得る.

12 12

〔注1〕  DNAR (do not attempt resuscitation) と表記されることもある.
p.133
考えられる .重症例でのIC に際しては,時々刻々と変化する病態を十分考慮したうえで,治療の見通しと危険性をわかりやすく説明し,予後に関して客観的なデータを使用して説明することが望ましい.また,主説明者以外の医療者が同席し,IC の取得状況を客観的に把握・記載することや,説明を行う環境や雰囲気に配慮することも重要である.療養中の心理的・社会的問題の解決や調整援助が必要な場合には,医療ソーシャルワーカーの介入も考慮すべきである.治験をはじめとする臨床研究に関しては,厚生労働省から「臨床研究に関する倫理指針」が示されている.これによれば,臨床研究への参加が任意であることや,参加に同意しないことをもって不利益な対応を受けないこと,いつでも同意を撤回できること,研究の意義・目的・方法など,患者側に説明すべきことが規定されているので,これらに準じて説明および同意取得を行う.説明にあたっては,平易な表現で説明し,同意や承諾はいつでも拒否や変更が可能であることを述べ,守秘義務を守ることを旨とする.

2 lCU における終末期医療

終末期医療はデリケートな問題であり,社会全体のコンセンサスも得られていないので,ここでは一般論の記述にとどめる. 2014 年に日本救急医学会/ 日本集中治療医学会/日本循環器学会の3 学会から「救急・集中医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)」が出されている.延命処置の中止などを考慮する場合には,これらの提言を参考にしつつ,医療チーム内で十分な協議を行い,また適宜院内の倫理委員会,リーガル・アドバイザーなどに諮って,判断する必要がある.また,前述の提言は法的には必ずしも担保されていないことに注意が必要である. ARDS は悪性疾患ではないものの,患者が死に至る確率は低くない.患者が回復不能と判断される場合には,患者の尊厳を損ねないよう配慮することも医療者の重要な責務である.集中治療には複数の

医師や看護師などの医療チームであたることが主であるため,救命不可能という判断には医療チームとしての合意が必要である.そして救命治療から緩和ケア中心の医療への方針変更などの際には,これを医療チーム全体に周知し意思統一を図る.重要なのは,チーム内で常に情報を共有し,医師,医療スタッフなど全員が統一した治療方針をもつことである.

a.  ARDS における終末期医療の特殊性悪性腫瘍のように緩徐に進行する病態では,患者が心肺停止に至っても心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation;CPR)を行わないことを前もって指示しておくDNRオーダーなどの事前指示 (advance directives) を出すことも可能であるが,ARDS では,概ね健康であったヒトが,基礎傷病を契機に急速に呼吸不全状態に陥るので,事前指示がないことが普通であり,また症状や処置により,患者本人の意思確認が困難なことが多い.さらに,ARDS では,1回復困難の判断をするタイミングが難しい点や,2家族に予期悲嘆期間がなく,家族への十分なケアを行う余裕がない点,3看取りの環境作りが離しい点,なども問題となる.

b. 患者の尊厳を損なわないための方策いたずらに集中治療を継続した場合,かえって患者に苦痛を与え,全身浮腫や皮下出血などによる容姿の変化をもたらし,患者の尊厳を脅かす事態に陥りかねない.従って,回復困難と判断される場合は,延命に繋がる処置・治療の中止を検討する必要がある.実際の判断は,以下のそれぞれの状況に合わせて慎重に行う.(1)患者が意思決定能力を有している場合や,本人の有効な事前指示がある場合,それを尊重することを原則とする.この場合,医療チームは患者の意思決定能力の評価を慎重に検討する.(2)患者に意思決定能力がない,あるいは意思確認が可能でない場合,家族らが本人の意思や希望を忖度する.医療チームは家族らに総意としての意思を確認
p.134
し,対応する.(3)本人の意思が不明で,身元不詳などの理由により家族らと接触できない場合は,延命措置中止の是非,時期や方法について,医療チームが判断する.なお,医療チームによる判断や対応は患者にとって最善であることが前提である.

c.   治療の抑制と撤退新たな治療の抑制(withhold)と,実施中の治療からの撤退(withdraw)については,明確な判断基準がない.治療抑制は家族にも受け入れやすいが,撤退は心情的に受け入れにくく,医療倫理に加え法的な制限もある.また治療の抑制や撤退に関しては,個人の死生観や宗教,文化により考え方が異なるため,担当医個人の判断ではなく,複数の医師,医療スタッフも含めた医療チームとして家族と十分に協

議をしたうえで決定する必要がある.

d.   家族へのケアARDS では患者の状態の変化が急速であり,またICU では面会が制限されることも多いため,家族にとっては病状を受容しにくく,情報も不足しがちである.このため,医療担当者との面接の時間を定期的に設けるなど,家族と十分なコミュニケーションをとるよう心がける必要がある.とくに治療の抑制や撤退を考慮する場合には,あらかじめ家族に予後の見通しを伝え,家族内で意見が統一できているかを確認するなどの配慮が必要である.

■ 文 献1)厚生労働省:終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン. http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/zaitaku/dl/h260425-03.pdf 2)日本集中治療医学会倫理委員会, 日本循環器学会医療倫理委員会, 日本救急医学会救急医療における終末

期医療のあり方に関する委員会:救急・集中治療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)(2014.

4 29 案). http://www.jaam.jp/html/info/2014/pdf/info-20140526_01_02.pdf

3)厚生労働省:臨床研究に関する倫理指針. http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf 4)福地義之助,斉藤有紀子,寺本信嗣:呼吸器疾患における老・病・死を考える.呼吸34(11):1043-1055,

2015
p.135
2016 2016 診療ガイドライン ARDS

CONTENTS

Part2

2016 2016 診療ガイドライン ARDS

CONTENTS

Part2
p.136
目 的

本診療ガイドラインは,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の診療において,患者の予後を改善させるためにこれまでに出された利用可能なエビデンスを解釈し,それに基づいて個々の患者の価値観や嗜好を踏まえた上で適切な臨床上の判断を行うために推奨を提供することを目的とするものである.

対象(本診療ガイドラインの利用者)

本診療ガイドラインの使用者として想定しているのは,成人ARDS の診療に従事する専門医,非専門医(総合診療医,家庭医,一般医,他領域専門医など),看護師,薬剤師,臨床工学技士などの医療従事者である.

利用にあたっての注意

本診療ガイドラインは臨床現場における医療従事者の意思決定を支援するために推奨を提供するものであり,提示された推奨に必ず従うよう強要するものではない.実際の判断には,本診療ガイドラインの推奨のみならず,その元となるエビデンスと推奨が決定される理由となる価値観やコストやリソースなどの他の要因も確認した上で,個々の状況に応じてベストな選択をされたい.本診療ガイドラインの推奨は,それらに従って医療判断を行えば患者の転帰が必ず改善することを保証するものではない.推奨を参考に臨床現場で医療行為に関する判断を行ったことで生じた結果に対して,本診療ガイドライン作成委員会は一切の責任を負うものではない.また本診療ガイドラインは,医療裁判の証拠として利用されることを想定していない.あくまで臨床現場での一般的な診療についての推奨を提示するものである.実際の診療上での判断は,患者の病状,リソースやマンパワーなど周囲を取り巻く環境,患者の価値観や嗜好などといった個別の状況を勘案した上で下されるべきである.したがって,医療事故が起こった際に,本診療ガイドラインに示す推奨の通りに診療が行われなかったという理由で過失があったと判断されるのは不適切である.本診療ガイドライン作成委員会は,本診療ガイドラインを裁判の証拠として利用することを認めない.最後に,本診療ガイドラインの推奨を実現するために必要な資源を用意することが望ましいが,個々の医療機関の状況によってそれが困難な場合もあることを明記しておく.

対象となる患者

本診療ガイドラインの扱う患者は,原則的に集中治療室または一般病床に入院している成人ARDS 患者である.

本診療ガイドラインの基本理念・概要
p.137
内 容

本診療ガイドラインは2 つのパートに分かれている.Part 1 ではARDS に関する基本的な情報を提供している.さらにPart 2 では成人ARDS 患者に対する人工呼吸療法および薬物療法のエビデンスのシステマティックレビュー(Systematic Review;SR)を行って推奨を明示している.両者を参照することで実地におけるARDS 診療の助けになるものとなるようにした.

取り扱う臨床上の課題

Part 1 では,ARDS 患者に関する基礎的事実を明示する.Part 2 では,以下の13 の臨床疑問(Clinical Question;CQ)に対して推奨を明示した.

CQ 1 .成人患者において,早期気管切開を行うべきか

CQ 2 .成人ARDS 患者の初期の呼吸管理として非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うべきか

CQ 3 .成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,一回換気量を低く設定するべきか

CQ 4 .成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧をどう設定すればよいか

CQ 5 .成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEP をどう設定すればよいか

CQ 6 .成人ARDS 患者において,プロトコール化された人工呼吸器離脱を行うべきか

CQ 7 .成人ARDS 患者において,腹臥位管理を行うべきか

CQ 8 .成人ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFO)を行うべきか

CQ 9 .成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,筋弛緩薬を使用するべきか

CQ10.成人ARDS 患者において,日々の水分バランスをどのように維持すればよいか

CQ11.成人ARDS 患者において,好中球エラスターゼ阻害薬を使用するべきか

CQ12.成人ARDS 患者において,ステロイドを使用するべきか

CQ13.成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用するべきか

 (吸入一酸化窒素,吸入β 2 刺激薬,静注β 2 刺激薬,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),

プロスタグランジンE1,スタチン,サーファクタント,活性化プロテインC,N- アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリン)

患者の価値観や嗜好

GRADE system では,推奨の決定に際して患者の価値観や嗜好を考慮することが求められている.このため, Part 2 では,本診療ガイドラインパネル会議のパネリストとして患者代表に入ってもらい患者の価値観や嗜好など患者の立場での意見を表明し,推奨決定に寄与していただいた.

診療ガイドライン利用促進の工夫

本診療ガイドラインは,Part 1 とPart 2 として書籍版,詳細版,ダイジェスト版がある.詳細版,ダイジェスト版は各学会サイトとMinds にて公開予定である.また,利用促進のためにリーフレットなども作成予定である.また診療ガイドライン利用促進のための各種講演会や講習会を開催する予定にしている.
p.138
推奨の適用モニタリングのための指標

各CQ の推奨がどれくらい適用されているか,またアウトカム改善が達成されているかのモニタリングのための基準を,各CQ に付した.

診療ガイドライン作成グループの構成

作成者 (順不同 敬称略) Part 1 (総論)日本呼吸器学会 ARDS 診療ガイドライン作成委員会石 井 芳 樹  獨協医科大学 呼吸器・アレルギー内科(委員長)橋 本   悟  京都府立医科大学附属病院 集中治療部(副委員長)一 門 和 哉  済生会熊本病院呼吸器センター 呼吸器内科今 中 秀 光  宝塚市立病院 集中治療救急室小 谷   透  昭和大学医学部 麻酔科学講座志 馬 伸 朗  広島大学大学院 救急集中治療医学田 坂 定 智  弘前大学大学院医学研究科 呼吸器内科学講座津 島 健 司  千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学林   伸 一  国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科藤 島 清太郎  慶應義塾大学医学部 総合診療教育センター山 田 芳 嗣  東京大学大学院医学系研究科 生体管理医学講座福 岡 順 也  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学酒 井 文 和  埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科山 川 一 馬  大阪府立急性期・総合医療センター 高度救命救急センター河 合   伸  杏林大学 総合医療学教室 感染症科武 政 聡 浩  獨協医科大学 呼吸器・アレルギー内科

Part 2(GRADE system による推奨)日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会 ARDS 診療ガイドライン作成委員会橋 本   悟  京都府立医科大学附属病院 集中治療部(委員長)讃 井 將 満  自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部(副委員長)江 木 盛 時  神戸大学医学部附属病院 麻酔科大 下 慎一郎  広島大学大学院 救急集中治療医学塩 塚 潤 二  沖縄県立中部病院 集中治療科瀬 尾 龍太郎  神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター田 中 竜 馬  LDS Hospital 呼吸器内科・集中治療科田 中   優  奈良県立医科大学 麻酔科則 末 泰 博  東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸器内科/ 救急・集中治療科林   淑 朗  亀田総合病院 集中治療科南 郷 栄 秀  東京北医療センター 総合診療科(外部委員)
p.139
システマティックレビュー(SR)作成委員青 木 善 孝  静岡県立総合病院 麻酔科・集中治療科安 藤 幸 吉  仙台市立病院 救命救急部・集中治療科・麻酔科飯 塚 悠 祐  自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部今 泉   均  東京医科大学 麻酔科学分野・集中治療部岡 森   慧  慶應義塾大学医学部 呼吸器内科貝 沼 関 志  名古屋大学医学部附属病院 外科系集中治療部片 岡   惇  東京ベイ・浦安市川医療センター 集中治療科加 茂 徹 郎  慶應義塾大学医学部 呼吸器内科川 口   敦  カナダ,アルバータ大学 PICU,公衆衛生大学院熊 澤 淳 史  堺市立総合医療センター 集中治療科倉 橋 清 泰  横浜市立大学附属市民総合医療センター 集中治療部小尾口 邦 彦  大津市民病院 救急診療科・集中治療部近 藤   豊  琉球大学大学院医学研究科 救急医学講座櫻 谷 正 明  JA 広島総合病院 救急・集中治療科下 山   哲  自治医科大学附属さいたま医療センター 救命救急センター鈴 木   聡  国家公務員共済組合連合会虎の門病院 集中治療科鈴 木 裕 之  前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科関 野 元 裕  長崎大学病院 集中治療部・麻酔科中 島 幹 男  都立広尾病院 救命救急センター/ 杏林大学 救急医学教室西 村 哲 郎  大阪市立大学医学研究科 救急医学福 田 龍 将  東京大学大学院医学系研究科 救急医学牧 野   淳  ニューヨーク・マウントサイナイ病院 集中治療医学宮 下 亮 一  東京医科大学 麻酔科学分野・集中治療部森 脇 龍太郎  独立行政法人労働者健康福祉機構千葉労災病院 救急・集中治療部安 田 英 人  亀田総合病院 集中治療科吉 武 重 徳  九州保健福祉大学 保健科学部山 下 ユ ミ  京都府立医科大学 附属図書館中 川 好 子  京都府立医科大学 附属図書館鈴 木 孝 明  奈良県立医科大学 附属図書館

パネル会議パネリスト(氏名 施設名 業務内容)讃 井 將 満  自治医科大学附属さいたま医療センター(集中治療医)今 中 秀 光  宝塚市立病院(救急医/ 集中治療医)大 下 慎一郎  広島大学大学院(救急医/ 集中治療医)瀬 尾 龍太郎  神戸市立医療センター中央市民病院(内科医/ 集中治療医)櫻 谷 正 明  JA 広島総合病院(救急医/ 集中治療医)安 田 英 人  亀田総合病院(救急医/ 集中治療医)一 門 和 哉  済生会熊本病院(呼吸器内科医)
p.140
南 郷 栄 秀  東京北医療センター(総合診療医)野 﨑   歩  京都桂病院(薬剤師)神 津   玲  長崎大学病院(理学療法士)卯野木   健  筑波大学附属病院 (看護師)高 橋 由 典  杏林大学医学部付属病院(臨床工学技士)芹 田 晃 道  大同病院(看護師/ 臨床工学技士)武 澤 恵理子  患者家族

診療ガイドライン作成方法専門家南 郷 栄 秀  東京北医療センター 総合診療科

診療ガイドライン作成協力委員青 景 聡 之  かわぐち心臓呼吸器病院 循環器科・集中治療科多治見 公 高  秋田労災病院 院長湯 浅 秀 道  豊橋医療センター 歯科口腔外科

外部評価委員福 岡 敏 雄  倉敷中央病院 救命救急センター(集中治療専門医)矢 吹   拓  栃木医療センター 内科(日本プライマリ・ケア連合学会推薦,総合診療医)相 原 守 夫  相原内科小児科医院(診療ガイドライン作成方法専門家)中 山 健 夫  京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康管理学講座健康情報学(診療ガイドライン作成方法専門家)

透明性の確保

本診療ガイドライン作成にあたって,2 つの作成委員会を組織した.Part 1 では委員一人一人がそれぞれの専門分野において最新の話題について解説し,ARDS の病態と治療の全体像がつかめるような記述とした.一方Part 2 では診療ガイドライン作成の趣旨を公開しSR 作成委員とパネル会議パネリストを公募した.これにより診療ガイドライン作成を,診療ガイドライン作成委員会(各学会を代表),SR 作成委員,パネル会議パネリストには一部の重複があるものの,独立してそれぞれの作業を進めることで作成過程の透明性を確保した.また,単に推奨を記述するのみならず,推奨決定の過程を診療ガイドライン本文中に開示することも,透明性を確保する上で重視したことである.さらに学会ホームページウェブサイトなどを通じてパブリックコメントを求め,さらに外部委員によるレビューを依頼した.

資金および協力組織

本診療ガイドラインは日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会の資金を得て作成した.公募したSR 作成委員,パネル会議パネリストには日当などは支払われず,必要な場合のみ交通費宿泊費を
p.141
支給した.文献検索についても,図書館司書の方々のボランティア活動によって行われた.なお完成した診療ガイドラインはPDF 版を各学会サイトおよび日本医療機能評価機構Minds 医療情報サービスガイドラインセンター1)(予定)において無償公開することとしている.冊子版も発売予定でありさらにSR の一部をpeer review 英文誌に掲載する予定である.これらすべての資金は上記3 学会にて分担した.推奨の作成にあたっては,資金提供者である上記3 学会やMinds の意向や利益はその内容に影響していない.

利益相反(COI)

本診療ガイドラインは2 つの委員会が合同して作成したため,共通の指針にてCOI 申告を行ったが,その申告先は所属学会に従い下記のような形式とした.

Part 1 についてはPart 1 序文を参照されたい.

Part 2 についてPart 2 を担当した一般社団法人日本呼吸療法医学会/ 日本集中治療医学会では,上記と同様のCOI に関する共通指針および細則に基づいて(申告対象は2015 年における研究費等について100 万円以上,講演料等について50 万円以上のもの),日本呼吸療法医学会事務局へCOI 申告を求め,開示基準に該当する場合は個人名と企業名を明記することとした.またこれに各CQ に関連する学術活動である学術的COI もあわせた, ARDS 診療ガイドライン作成委員およびSR 作成委員,さらにパネル会議パネリスト(一部の構成員は上記日本呼吸器学会ガイドライン作成委員を兼ねている)からの申告の内容は以下に示す通りであり,開示基準に該当するものはなかった.

委 員 名SR 作成パネリスト経済的

COI学術的COI (アカデミックCOI)

橋本  悟- -なしJRS ALI/ARDS CPG *1

作成委員

讃井 將満- CQ1 〜CQ13なしなし

江木 盛時CQ1, CQ12 -なしJSICM 敗血症 CPG *3

作成ワーキンググループJSICM 栄養管理GL

*4

作成委員

大下慎一郎CQ9, CQ11, CQ13 CQ1 〜CQ8, CQ10, CQ12なしなし塩塚 潤二CQ3 -なしなし瀬尾龍太郎CQ2, CQ4 CQ1, CQ3, CQ5 ~CQ13なしなし田中 竜馬CQ8 -なしなし田中  優CQ4, CQ10 -なしなし則末 泰博CQ5, CQ6 -なしなし林  淑朗CQ7 -なしなし

南郷 栄秀- CQ1 〜CQ13なし日本医療機能評価機構EBM 医療情報事業

*7診療ガイドライン作成支援専門部会部員GRADE working group メンバー

青木 善孝CQ1, CQ10 -なしなし
p.142
委 員 名SR 作成パネリスト経済的

COI学術的COI (アカデミックCOI)

安藤 幸吉CQ8 -なしなし飯塚 悠祐CQ3, CQ9 -なしなし今泉  均CQ7 -なしJSICM 敗血症 CPG *3

作成委員

岡森  慧CQ5 -なしなし貝沼 関志CQ1 -なしなし片岡  惇CQ6 -なしなし加茂 徹郎CQ4 -なしなし川口  敦CQ2, CQ3, CQ5, CQ8 -なしなし熊澤 淳史CQ2 -なしなし倉橋 清泰CQ5, CQ7 -なしなし小尾口邦彦CQ3 -なしなし近藤  豊CQ2 -なしなし櫻谷 正明CQ10, CQ11, CQ13 CQ4, CQ9なしなし下山  哲CQ12 -なしなし鈴木  聡CQ12 -なしなし鈴木 裕之CQ6 -なしなし関野 元裕CQ6, CQ11, CQ13 -なしなし中島 幹男CQ9 -なしなし西村 哲郎CQ4 -なしなし福田 龍将CQ1, CQ7 -なしなし牧野  淳CQ3, CQ9 -なしなし宮下 亮一CQ11, CQ13 -なしなし森脇龍太郎CQ12 -なしなし安田 英人CQ4, CQ8 CQ2, CQ11なしなし吉武 重徳CQ5 -なしなし山下 ユミCQ1 〜CQ13 -なしなし中川 好子CQ1 〜CQ13 -なしなし鈴木 孝明CQ1 〜CQ13 -なしなし一門 和哉- CQ1 〜CQ13なしJRS ALI/ARDS CPG *1

作成委員

今中 秀光- CQ1 〜CQ13なしJRS ALI/ARDS CPG *1

作成委員JRS NPPV CPG *6作成委員

野﨑  歩- CQ1 〜CQ13なしなし神津  玲- CQ1 〜CQ13なしJSICM J-PAD CPG *5

ガイドライン作成委員

卯野木 健- CQ1 〜CQ13なしなし高橋 由典- CQ1 〜CQ13なしなし芹田 晃道- CQ1 〜CQ13なしなし武澤恵理子- CQ1 〜CQ13なしなし青景 聡之- -なしなし多治見公高- -なしJSRCM ARDS CPG

*2多施設共同研究委員会委員

湯浅 秀道- -なしなし
p.143
委 員 名SR 作成パネリスト経済的

COI学術的COI (アカデミックCOI)

相原 守夫- -なしGRADE working group メンバー矢吹  拓- -なしなし中山 健夫- -なしなし福岡 敏雄- -なしなし

*1 日本呼吸器学会.ALI/ARDS 診療のためのガイドライン 第1版,第2 版*2 日本呼吸療法医学会.ARDS に対するClinical Practice Guideline 第1版,第2 版*3 日本集中治療医学会. 日本版敗血症診療ガイドライン第1版*4 日本集中治療医学会 重症患者の栄養管理ガイドライン*5 日本集中治療医学会 J-PAD ガイドライン作成委員会委員*6 日本呼吸器学会.NPPV ガイドライン 第2 版*7 日本医療機能評価機構 EBM 医療情報事業 診療ガイドライン作成支援

外部評価

本診療ガイドラインはドラフトを作成した時点で公開に先立ち,集中治療専門医,非専門医の代表として総合診療医,診療ガイドライン作成方法専門家による外部評価を受けた.外部評価には診療ガイドライン評価の国際標準ツールAGREE II 2, 3)を用いた.AGREE IIは6 領域23 項目からなる個別項目と,全体評価からなっている.各項目1 ~7 点で採点し,領域ごとに領域別スコアを算出する.領域別スコアは0 ~100% の値を取り,該当領域で要求されている内容の充足率を意味する.表にその評価結果を示す.また,各学会のサイトを通じてパブリックコメントを募集した.これら外部評価の結果は可能な限り本診療ガイドラインに反映させた.反映できなかった部分に関しては,次回の改訂時の検討事項とした.また公開後も,学会サイトなどを通じて,広くフィードバックを受け,次回改訂時に活かす予定である.

表:公開前の草案に対するAGREE II による外部評価の結果の概要(各領域の領域別スコアと全体評価)

領域1. 対象と目的領域4. 呈示の明確さ

1. ガイドライン全体の目的が具体的に記載されている.

100% 15. 推奨が具体的であり,暖昧でない.

92% 2. ガイドラインが取り扱う健康上の課題が具体的に記載されている.

16. 患者の状態や健康上の問題に応じて,他の選択肢が明確に示されている.

3. ガイドラインの適用が想定される対象集団(患者,一般など)が具体的に記載されている. 17. どれが重要な推奨か容易にわかる.

領域2. 利害関係者の参加領域5. 適用可能性

4. ガイドライン作成グループには,関係するすべての専門家グループの代表者が加わっている.

90% 18. ガイドラインの適用にあたっての促進要因と阻害要因が記載されている. 84%

5. 対象集団(患者・一般など)の価値観や希望が探し求められたか. 19. どのように推奨を適用するかについての助言・ツールを提供している. 6. ガイドラインの利用者が明確に定義されている. 20. 推奨の適用にあたり,潜在的に資源に関して意味する事柄が考臆されている.

21. ガイドラインにモニタリング・監査のための基準が示されている.
p.144
領域3. 作成の厳密さ領域6. 編集の独立性

7. エビデンスを検索するために系統的な方法が用いられている.

97%

22. 資金源によりガイドラインの内容が影響されていない. 85% 8. エビデンスの選択基準が明確に記載されている. 23. ガイドライン作成グループメンバーの利益相反が記載され,適切な対応がなされている. 9. エビデンス総体の強固さと限界が明確に記載されている. 10. 推奨を作成する方法が明確に記載されている. 11. 推奨の作成にあたって,健康上の利益,副作用,リスクが考慮されている. 12. 推奨とそれを支持するエビデンスとの対応関係が明確である. 13. ガイドラインの公表に先立って,専門家による外部評価がなされている. 14. ガイドラインの改訂手続きが示されている.ガイドライン全体の評価

1 このガイドライン全体の質の評価(4 名の評価者の平均点,7 点満点)

6.5 2. このガイドラインの使用を推奨するか. 推奨する : 4 名(ただし1 名はPart 2 のみの評価) 推奨する(条件付き) :0 名 推薦しない: 0 名

以下に外部評価委員からのAGREE II評価に付されたコメントを掲載する.修正可能なものに関しては修正した.

コメント

観点項目評価者1評価者2評価者3評価者4

ドメイン1対象と目的1.目的の具体的な記載冒頭に記載されている. 目的は項目立てて明示されている.具体的に,「患者の予後を改善させ

るためにこれまでに出された利用可能なエビデンスを解釈し,それに基づいて個々の患者の価値観や施行を踏まえた上で適切な臨床上の判断を行うために推奨を提供することを目的とする」と示されている.急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の予後を

改善するための治療ガイドラインである.

2.取り扱う健康問題の具体的な記載冒頭に記載されている. 対象となる患者の部分

で「原則的に集中治療室または一般病床に入院している成人ARDS患者」と明示されている.また,特にPart 2 の方では,CQ がそれぞれ「取り扱う臨床上の課題」と項目立てて具体的に記載されており,その対象集団・介入・比較対照・アウトカムが明示されている.

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の予後を改善するための治療ガイドラインである.
p.145
ドメイン1対象と目的3.対象集団(患者,公衆など)の具体的な記載冒頭に記載されている. 適用の想定される対象

集団についても,「成人ARDS の診療に従事する専門医,非専門医(総合診療医,家庭医,一般医,他領域専門医など),看護師,薬剤師,臨床工学技士などの医療従事者」と明示されている.集中治療室または一般病床に入院している成人ARDS 患者である.

ドメイン2利害関係者の参加4.専門家代表者の作成への参加Part 2 のパネル会議のメンバーには患者代表も含まれている. Part1, 2 ともに呼吸器内科医・集中治療医・救急医・麻酔科医が含まれており,氏名や所属の記載も適切である.また,方法論の専門家として,診療ガイドライン作製方法専門家が含まれている.システマティックレビュー作成医院に図書館司書が含まれ,パネル会議のパネリストには,専門職のみならず,薬剤師・理学療法士・看護師・臨床工学技士・患者家族が含まれている.この方々の代表性がどの程度担保されているかは本文からは読み取ることは難しい.グループ構成として,各学会の専門家,臨床医,薬剤師,看護師,利害関係者,診療ガイドライン作成方法専門家などが参加している.

5.対象集団(患者,公衆など)の価値観や好みへの考慮会議メンバーには患者代表が含まれているが,対象集団の考えや嗜好がどのように反映されたかが明示されるとなおよい.対象集団の考えや嗜好についても「患者の価値観や嗜好」と項目立てて,「本診療ガイドラインパネル会議のパネリストとして患者代表にはいってもらい患者の価値観や嗜好など患者の立場での意見を表明し,推奨決定に寄与していただいた」と記載されている.基本理念・概要に記載されている.パネルに患者家族が含められているが,リクルートの方法,選定基準などがより明確に記載されていればベター.実際にパネル会議で,患者委員からどのような発言があったのか記録にあれば状況をより理解できると思われる. 6.利用者の明確な定義冒頭に記載されている. 「成人ARDS の診療に従事する専門医,非専門医(総合診療医,家庭医,一般医,他領域専門医など),看護師,薬剤師,臨床工学技士などの医療従事者」と明示されている.基本理念・概要に記載されている.
p.146
ドメイン3作成の厳格さ7.エビデンスの系統的な検索複数のデータベースが検索され,詳細版には網羅的な検索式が提示されている. Part 2 の方に「文献検索」と項目立てて記載があり,「検索データベース:MEDLINE, EMBASE,Cochrane CENTRAL,医学中央雑誌」と明示されている検索対象期間も2015年2 月までと明示文献検索語については,各CQ に日本語で明示されているが,英語での文献検索式は全てのデータの方に記載あり基本的にはどのCQ も同様な検索方法がとられている.診療ガイドラインのためのシステマティックレビューチームが構成され,エビデンスの情報源を含めて,その方法が記載されている.

8.エビデンスの選択基準の記載基準,選択手順が明示されている.ランダム化比較試験を選択したと本文には記載があり,実際の文献選択基準は,「文献検索フローダイアグラム(PRISMA 2009 改変)」

に記載されているスクリーニング・適格性・組み入れの順番が明確である.詳細版に記載されている.

9.Body of evidence(総体エビデンス)の強さと限界の記載選択された個々の研究のバイアスリスク,その全体の評価まで明示的に提示されている. SoF table を用いたアウトカムごとのエビデンス相対が明示され,バイアスリスクも同時に併記されている研究ごとの異質性も記載されており,強固さ・限界ともに明確である. body of evidence の質は,GRADE アプローチを使って,アウトカム中心に評価され, GRADE エビデンスプロファイルが表示されている.

非直接性を判断したのはシステマティックレビュー担当者か,パネル委員か不明.  パネル委員は個々の文献を読んでいないため,非直接性の評価は難しいのではないか. 10.推奨決定方法の記載

手順が明示され,その手順の内容も提示されている.推奨文の作成については「エビデンスから推奨の作成」という項目が有り,推奨決定4要因として,エビデンスの質・利益と害のバランス・患者の価値観や好みのばらつき・資源を元にしたと明確に記載されている.また,「推奨の方向」「推奨の強さ」「エビデンスの確信性」

の3つを盛り込むことも明記されており,実際のCQ の推奨文もそれに基づいている.エビデンスから推奨作成のプロセス(GRADE/ DECIDE のEvidenceto-Decision テーブル)や,パネル会議における合意形成手法(RAND)が記載されて

いる.

11.健康上の利益・副作用・リスクの考慮手順の中に組み入れられ,その評価内容も記録されている.各CQ の中にパネル会議の「利益と害のバランスはどうか?」という項目が含まれており,健康上の利益と副作用・リスクが考慮されている.

推奨の強さと方向の決定において,利益と不利益(害,副作用,リスク)のバランスが考慮されている(GRADE).推奨作成に当たってステロイドの副作用は重要と思われるので,観察研究も十分参照することが必要と思われる.
p.147
ドメイン3作成の厳格さ12.推奨とエビデンスの明確な対応関係明示的に示されている. CQ 11 において,診療報酬への記載や5 年以上前の現場へのアンケート調査結果などが「付帯事項」の中に含まれている. どのような経緯で,エビデンスとしてこれらが組み入れられたのか,これらは評価テーブルの方に含めるべきではないか. このCQ の記載形式は他の記載内容と比べて違和感を感じる不適切な対応関係と思われる.推奨文には,GRADE標記でエビデンスの確信性や推奨の強さが明示されている.また, CQ のパネル会議の「推奨のグレーディング」の部分でどう推奨したかの会議内容が参照できる.

各CQ について,最初に分かりやすく推奨の強さとエビデンスの確信性が記載されている(GRADE).

13.公表前の外部審査実施している.外部評価は今回は4名で行われ,集中治療専門医,総合診療医,診療ガイドライン作成方法専門家が含まれ, AGREE-II を用いて評価が行われている.また,外部評価から得られた結果も公示予定となっている各学会のサイトを通じてパブリックコメントも公募されている. 4 人の委員による外部評価(AGREE-II)が実施されている.外部委員のコメントへの対応も可能な範囲で掲載されることを期待する. 14.改訂手続きの予定明示されている重要な知見に対する対応も記載されている.こちらも「改訂予定」と項目立てて,5 年後の2021 年に改訂予定であると明記し,さらに重要な知見が得られた場合の前倒しや部分改訂についても言及している.原則として5 年後の2021 年に改訂予定である.

ドメイン4明確さと提示の仕方15.推奨の具体性分かりやすい. ただ, CQ 1 の記載内容は,結局長期挿管を要する患者に対する対応はどうすればよいのかという疑問に答え切れていないことが惜しまれる. CQ1 〜13 のそれぞれの推奨文は非常に具体的であり,かつ推奨度が明示されている.推奨は具体的で,治療の違いによって異なった推奨・エビデンスの質が提示されている.

16.患者の状態や健康問題に応じた選択肢の明示ARDS 自体が様々な背景や合併症を伴う事が多く,多様な患者に対する細かな対応の修正・選択についての記述は困難であったと思われる.推奨文の付帯事項部分に注意すべき患者の状態や健康上の問題についての記載がある.一部他の選択肢の提示もあるが,他選択肢の推奨度などは不明確である.たとえば,人工呼吸における筋弛緩薬について,さまざまな治療薬について記載されている. 17.重要な推奨の明確さそれぞれのCQ において優先度が検討され示されている.CQ 一覧ダイジェストのGRADEの記述が,うすい青色で視認性が不十分である.できれば彩度が高く背景との濃淡が明確な色を選択して頂きたい.要約が太字になっており,色調を変えたりして分かりやすく表示されている一方で,CQ13個の中でどれが重要な推奨かというまとめが一目ではやや分かりにくい.推奨の要約が記載されており,各CQ に関連する推奨を容易にみつけることができる.
p.148
ドメイン5適用可能性18.推奨を診療に取り入れる方法のアドバイスやツールの提供Evidence-to-Decision のところで検討されている.明確に促進要因と阻害要因についての記載があるわけではないが, ARDS がheterogeneousな病態であること,薬物治療濃度も一定ではないことなどの,ガイドライン適応の難しさについて言及しているCQ では資源のバランスについて言及しており,ガイドラインを適用するにあたって資源がどうかを検討している.関連する他の診療ガイドラインや今後の研究の可能性が記載されている.

19.推奨の適用に際する促進や阻害要因作成予定とある.CQ サマリーなどをそのままハンドカードなどにするとよい.適用促進については,「診療ガイドライン利用

促進の工夫」という項目が有り,書籍版,詳細版,ダイジェスト版を作成すること,学会サイトとMinds で公開予定であること,リーフレット作成予定があること,講演会の開催予定があることなどが記載されている.チェックリストやアルゴリズムなどの作成はない. Evidence-to-Decisionテーブルによく記載されている.

20.推奨適用に伴うリソースの考慮Evidence-to-Decision のところで検討されている.推奨の適応にあたって各CQ に「関連する他の診療ガイドラインの記載」とあり,他の関係するリソースへの影響が考慮されているこの部分の対象が国際ガイドラインまで言及しているものから,一部国内のガイドラインのみにとどまるものまで質のばらつきが見られた. 13 件の臨床疑問のすべてにおいて,コスト・リソースが考慮されていている. 21.モニタリング・監査の存在CQ 2 については効果判定の時間などが具体的に記載されている.その他のCQ においても,それぞれの治療介入の効果判定の時間や基準などが明記されているとなおよい. CQ 内にモニタリングと評価という項目があり,各CQ の推奨がどのくらい適用されているか,アウトカム改善が達成されているかのモニタリングのための基準を付したとある一方,実際のモニタリング内容は,治療そのものの患者パラメータのモニタリング内容がメイン推奨内容の遵守率や達成度については今回は記載されていない.モニタリングと評価が記載され,Evidence-to- Decision テーブルにおいては,公平さ,利害関係者への受け入れ,実現可能性が表示されている.
p.149
ドメイン6編集の独立性22.ガイドライン編集の資金源からの独立性学会の負担によると明記されている. Part 1 部分では資金源は明示されていたが,それが内容に影響を与えていないかどうかは明記されていなかった.日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会の資金により作成された診療ガイドラインであるが,資金提供者の意向や利益が最終的な推奨に影響していないという明確な記載はない.

23.ガイドライン作成グループメンバーの利害関係の記載記載されている担当領域も明記されている. COI がPart 1 とPart 2に分かれて記載されている.基本的には開示されているが,Part 1ではどの委員がどのCOI と関連したかが不明確であり,本来であれば明示すべきと考える.また,これに伴い適切な対応がなされたかが不明である.Part 2に関してはそれぞれの経済的・学術的COI が開示されており,適切な対応がなされている.経済的COI と学術的COI が記載されている.

全体評価以上の評価はPart 2 に基づくものであるPart 1 の推奨内容と,Part 2との推奨内容にカバーされる治療内容の違いや,推奨と取れる文章表現の齟齬があり,そのどちらが優先されるのかが明記されていない点が惜しまれる. Part 1 の病態生理の解説や具体的な人工呼吸の設定方法などは利用者の理解を深めるという効果が期待できる.しかし薬物治療に関してはPart 1 の記述内容があることが,ガイドライン全体の構成をわかりにくくしている. Part 2 の明示性がPart 1 にも保証されているかのような印象を与えているこの問題は小さくない. Part 1 については,COIのある委員が影響を受けかねない項目を担当していたかどうかについての情報提供はない. Part 2 のみであれば,修正なく利用可能と思われる.上記の評価が,Part 1も含めた評価であると解釈されないように注意されたい. GRADE を用いて作成された素晴らしいガイドラインだと感じた.是非ガイドラインの使用を推奨したい.一方, COI 開示の不十分さやガイドラインの適用にあたっての記載や遵守率などのモニタリングや監査についての記載は不十分だと感じている. GRADE を適切に活用した,治療に関する診療ガイドラインであるエビデンスから推奨作成,さらに推奨の普及・実行可能性をGRADE Pro GDT によるEvidence-to-Decisionテーブルで表示した国内初のGRADE ガイドラインと言える.今後の国内の診療ガイドライン作成において模範となる内容であろう.多くの方々のご尽力で立派なガイドラインが作られたことに敬意を表します.
p.150
改訂予定

本診療ガイドラインは,新しい臨床試験などの結果を受けて,5 年後の2021 年に改訂予定である.ただし,重要な知見が得られた場合には,必要に応じて改訂時期の前倒しや部分改訂を検討する.

文 献

1)医療情報サービスMinds,日本医療機能評価機構.http://minds.jcqhc.or.jp/(2016 年3 月閲覧) 2)AGREE II. http://www.agreetrust.org/(2016 年3 月閲覧) 3)日本医療機能評価機構EBM 医療情報部:AGREE II日本語訳試行版ver.01. http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/guideline/pdf/AGREE2jpn.pdf(2016 年3 月閲覧)
p.151
Part 2 は13 の臨床疑問(Clinical question;CQ)に対してシステマティックレビュー(Systematic review; SR)を行って推奨を提示している.ARDS 診療に関わるCQ は数多く存在するが,今回はその一部だけを取り扱った.そのため現場でのニーズに十分応えきれていない面もあるかと考えられる.Part 1 ではその点をカバーするものと捉えていただきたい.推奨の作成にあたっては,SR と診療ガイドライン作成の国際標準様式であるGRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) system 1, 2)を採用することを診療ガイドライン作成委員会が提案し,パネル会議パネリストの賛同を得た.GRADE system ではCQ についてアウトカムごとにSR を行い,その結果に基づいて推奨を作成するという2 段階の方法を取る(図1).

臨床疑問(Clinical question;CQ)の設定

CQ はARDS 診療の臨床現場において判断に迷うようなもので,推奨を示すことでARDS 診療の質を高めることが期待できるものを診療ガイドライン作成委員会で決定した.ARDS 診療に関わるCQ は数多く存在するが,そのうち今回は人工呼吸療法と薬物療法についてのCQ を取り扱った. CQ は患者Patient,介入Intervention,比較Comparison,アウトカムOutcome,略してPICO の形式で定式化された.各CQ において,アウトカムはその介入治療を受ける患者にとって重要と考えられるアウトカムを診療ガイドライン作成委員会で決定し,パネル会議パネリストの承認を得た.その重要度は9(最も重要)~ 1(最も重要でない)に相対的にランクづけられ,最終的に重大(9 ~7),重要(6 ~4),重要でない(3 ~1)に分類された.この内,重大なアウトカムと重要なアウトカムについてSR を行った.

文献検索

SR 作成委員である集中治療専門医がPICO から検索語を抽出し,情報検索専門家(図書館司書)と協力して検索式を作成し,MEDLINE(PubMed),EMBASE,Cochrane CENTRAL,医学中央雑誌(医中誌)を用いて検索した.採用した論文はランダム化比較試験(Randomized controlled trial;RCT)のみであり,原則として2015年2 月までの文献を検索した.CQ によっては,これとは別にCochrane review やその他のSR も検索し,それに含まれる論文も採用した.検索で同定された研究は重複した研究と除外基準に該当したものを除き,最終的にメタアナリシスに組み入れた論文として,アウトカムごとに分けた.文献検索の流れは,フローダイアグラムにまとめた.

エビデンスデータの統合

各CQ の各アウトカムに分けられた論文のデータのメタアナリシスは,Cochrane Review Manager (RevMan5) software ver.5.3(http://tech.cochrane.org/revman)を用いて統合して行った.二値変数のアウ

診療ガイドライン作成方法の概略
p.152
トカムについては,ランダム効果モデル(Random-effects model,Mantel-Haenszel 法)を用いて統合し,リスク比とその95% 信頼区間を計算した.連続変数のアウトカムに関しても,ランダム効果モデル(Randomeffects model,Inverse Variance 法)平均差(Mean difference)と標準偏差(Standard deviation;SD)を計算した.

エビデンスの質の評価

各CQ の各アウトカムにメタアナリシスに組み入れた論文に対して,それぞれ2 名のSR 作成委員がそのエビデンスの質を評価した.2 名の評価が食い違った場合は議論して結論を出した.エビデンスの質の評価においては,GRADE working group の提唱する方法に従い,最終的にhigh(高),moderate(中),low(低), very low(非常に低)の4 段階にグレーディングした.本診療ガイドラインではRCT のみを採用したため,エビデンスの質はhigh(高)から開始し,グレードを下げる5 要因を評価して,グレードの調整を行った.なお,本来GRADE アプローチではグレードを上げる3 要因も評価するが,本診療ガイドラインではRCT のみを採用したのでグレードを下げる5 要因のみを検討した.グレードを下げる5 要因は,バイアスのリスク(risk of bias),非一貫性(inconsistency),非直接性(indirectness),不精確さ(imprecision),出版バイアス(publication bias)である(表1).バイアスのリスクとは,個々の研究の結果を歪めるバイアスが含まれる可能性が研究方法にどのくらい存在しうるかをlow(低),high(高),unclear(不明)の3 段階で評価するものである.RCT についてのバイアスのリスクの評価項目は,Cochrane handbook for systematic reviews of interventions version 5.1.0 3)にある表2 に示すものを用いた.バイアスのリスクが低い(low risk of bias)とは,結果にバイアスが含まれる可能性が低いことを意味する.集まった研究のバイアスのリスクの評価結果は,risk of bias summary とrisk of bias graph にまとめた.そして,全体として評価し,バイアスのリスクが高い場合にはメタアナリシスにより統合された結果の効果推定値の確信性が損なわれると判断し,グレードを1 段階または2 段階下げた.非一貫性は,研究間の治療効果の推定値のばらつきのことであり,異質性(heterogeneity)で評価する.異質性は,RevMan5 によりI 2 統計量で示され,GRADE Handbook に示されている通り,40% 未満は異質性が低く,30 ~60% は中程度,50 ~90% は高く,75 ~100% は相当高いと判定して,効果推定値の確信性が損なわれると判断された場合はグレードを1 段階または2 段階下げた.非直接性(indirectness)は外的妥当性と同義で,集められた研究のPICO が推奨を作成するCQ の想定しているPICO とどれだけ乖離しているかを評価した.効果推定値の確信性が損なわれると判断された場合はグレードを1 段階または2 段階下げた.不精確さ(imprecision)は,研究に含まれる患者数(サンプルサイズ)やイベント数が少ないためにランダム誤差が大きくなって効果推定値の確信性が損なう程度を示すものである.不精確さのグレーディングは,治療効果の信頼区間の幅の広さと最適情報量(optimal information size;OIS)で判定される.集められた研究の統合した効果推定値とその95% 信頼区間はRevMan5 により算出される.効果推定値の95% 信頼区間が臨床決断閾値(治療に踏み切ろうと決断する効果の最低値,または治療をやめようと決断する害の最大許容値)をまたぐか,臨床決断閾値をまたがなくても95% 信頼区間が広い場合には効果推定値の確信性が損なわれると判断され,グレードを1 段階または2 段階下げた.出版バイアス(publication bias)は,すべての研究結果が発表されていないために真の治療効果が示されないことである.集まった研究数が10 件以上の場合にはFunnel plot を用いて出版バイアスの有無を判定した.出版バイアスがあることで効果推定値の確信性が損なわれると判断された場合には,グレードを1 段階または
p.153
2 段階下げた.このようにしてhigh(高),moderate(中),low(低),very low(非常に低)のいずれかに決められたエビデンスの質の意味するところは表3 に示すとおりである.グレードダウンする5 要因により最終的なエビデンスの質が決定した後,SR の結果をSummary of finding table(SoF table)とGRADE Evidence Profile の表を作成した.両表の作成には,GRADEpro GDT(http:// gdt.guidelinedevelopment.org/)を用いた.

アウトカム全般に関するエビデンスの質の決定

パネル会議は,各CQ に対して,アウトカムごとに評価されたSummary of finding table(SoF table)とGRADE Evidence Profile の表を検討して,アウトカム全般に関するエビデンスの質を決定した.各CQ で検討されたアウトカムのうち重大なアウトカムの効果がいずれも患者にとって利益となる(あるいは不利益となる)方向であれば最も高いエビデンスの質を,アウトカムによって方向が異なる場合は最も低いエビデンスの質をアウトカム全般に関するエビデンスの質とした.このエビデンスの質(quality)は,メタアナリシスした効果推定値の確信性(confidence),確実性(certainty)と同義である.

エビデンスから推奨の作成

推奨は,表4 に示すように,エビデンスの質と利益と害のバランスに加え,患者の価値観とコストやリソースを検討して決定した.具体的にはSummary of finding table(SoF table)とGRADE Evidence Profile を元にEvidence-to-Decision Framework 1, 2)と呼ばれる表を作成した上で,推奨文案を作成した. Evidence-to-Decision Framework には,エビデンスの確信性,利益と害の大きさとバランス,患者の価値観や好みのばらつき,コストやリソースといった資源についての検討事項を記載し,それを包括的に考えて推奨を決定する.エビデンスの確信性は,SR で評価したアウトカムごとのエビデンスの質である.利益と害の大きさのバランスは,利益が害を凌駕するならば推奨できるが,害のほうが大きいようならば推奨できない.コストやリソースは現在の本邦の状況を鑑み,それを費やすのに見合うほどの利益があるかを検討した.更に推奨の決定にあたっては,現在の本邦の診療の現状と既存の診療ガイドラインの推奨も勘案した.推奨には,「推奨の方向」,「推奨の強さ」,「エビデンスの確信性」の3 つの要素があり,その組み合わせで表現される.「推奨の方向」はその推奨を行うか否かであり,「推奨の強さ」は強い(1)か弱い(2)か,「エビデンスの確信性」はhigh(高),moderate(中),low(低),very low(非常に低)のいずれかである.「推奨の方向」と「推奨の強さ」はその組み合わせによって機械的に4 つに分かれるが,これは4 種類の推奨があるのではなく,推奨の方向と強さについての確信性の程度は連続体であることに注意されたい(図2).また「推奨の強さ」の意味するところの表記を表5 に,「エビデンスの総体の質(確信性)のグレード」の表記を表6に示す.

パネル会議

パネル会議パネリストには,集中治療専門医,集中治療に従事する総合診療医,看護師,薬剤師,臨床工学技士,理学療法士,患者家族などあらゆるステークホルダーが参加した.また,6 名の委員を公募した.さらにSR 作成委員および2つの診療ガイドライン作成委員の中から,申告すべきCOI がなく,かつ当該のCQ の
p.154
SR に関与していない6 名を選んで合計12 名とした.そのためCQ ごとに異なるパネリストで構成されている.具体的には瀬尾と大下がCQ2, CQ4 およびCQ9, CQ11 の会議参加を辞退し,代わりにそれぞれ安田と櫻谷が当該CQ のパネル委員に加わった.推奨の決定は全会一致で推奨文案を採択することを原則としたが,合意形成のために修正デルファイ法を用いた.予めパネリストには会議前に資料を送付し,パネル会議前に推奨決定のための各要素に対しての投票を行った(RAND 1 回目).パネル会議の当日の進行役は委員長の橋本が務め,2015 年9 月22 日朝から23 日夕刻まで合計約14 時間にわたる会議を開催した.パネル会議では,まずGRADE アプローチを採用することに同意するか確認した後, Summary of finding table(SoF table),GRADE Evidence Profile,Evidence-to-Decision Framework,推奨文草案の資料を元にディスカッションを行った.CQ ごとにアウトカムの重要性の評価を行い,利益と害のバランスの評価,価値観のバラつきの評価,コストやリソースの評価を行った後,推奨の強さを検討し,推奨を決定した.パネル会議でのディスカッションで,予め決めた時間内に合意が得られなかった場合には,投票を行った. 2 つのCQ についてはまたサブ解析を行うことが提案されたりした結果,会議で推奨が決定しなかったため,メーリングリストによる議論を経て最終決定を行った(RAND 2 回目).

診療ガイドラインの執筆

パネル会議で決定した推奨を元に,各種資料をまとめて診療ガイドラインを作成した.作成したドラフトは外部評価を受けたのち,最終化した.

文 献

1)GRADE working group. http://www.gradeworkinggroup.org/ 2)相原守夫:診療ガイドラインのためのGRADE システム ─第2 版─.弘前:凸版メディア株式会社,

2015 3)Higgins JPT and Green S:Cochrane handbook for systematic reviews of interventions version 5.1.0.

http://handbook.cochrane.org/
p.155
表1 グレードダウン5 要因

要  因説  明

バイアスのリスク(risk of bias)個々の研究の結果を歪めるバイアスが含まれる可能性が研究方法にどのくらい存在しうるか非一貫性(inconsistency)研究間の治療効果の推定値のばらつき非直接性(indirectness)集められた研究のPICO が推奨を作成するCQ の想定しているPICO とどれだけ乖離しているか(外的妥当性)不精確さ(imprecision)研究に含まれる患者数(サンプルサイズ)やイベント数が少ないためにランダム誤差が大きくなって効果推定値の確信性が損なう程度出版バイアス(publication bias)出版されていない研究結果が存在するために効果推定値が正しい値を示さないこと

システマティックレビュー作成

P

I C Oアウトカム

アウトカムアウトカムアウトカム重大

重要

重大Evidence Profile

全体的なエビデンスの確信性の評価(overall quality of evidence across outcomes)重大(critical) なアウトカムのみを検討原則として,重大なアウトカムに関するエビデンスの確信性の中で最も低いものとする(各アウトカムが同じ方向ならば最も高いもの)

A 「高」/B 「中」/C 「低」/D 「非常に低」

RCTは「高」から,観察研究は「低」から開始し,エビデンスの確信性を評価する

1.研究の限界(risk of bias) 2.非一貫性(inconsistency) 3.非直接性(indirectness) 4.不精確さ(imprecision) 5.出版バイアス(publication bias)

グレードを下げる5要因グレードを上げる3要因

1.大きな効果(large magnitude) 2.用量反応(dose response gradient) 3.交絡因子(confounders)

アウトカムごとに集めた研究の

risk of biasを評価

効果推定値の大きさとアウトカムごとのエビデンスの確信性

高(High)/中(Moderate)/低(Low)/非常に低(Very low)

推奨の作成:以下を考慮して判断エビデンスの質利益と害のバランス価値観と好み資源の利用(コスト)パネル会議前に1回目投票パネル会議でディスカッション必要に応じてもう1回投票診療ガイドライン完成

アウトカムごとのエビデンス(body of evidence)の質を評価

Risk of bias summary Risk of bias graph

各アウトカムに関する効果推定値と結果の要約=メタアナリシス(Forest plot作成)

推奨度と推奨文の決定推奨:抗凝固療法の適応がない癌患者に対して,非経口的抗凝固療法を行うことを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

Summary of Findings(SoF)

様々な介入に対する推奨を盛り込む

診療ガイドライン作成

Clinical Question(CQ) →Analytic Frameworks →Key Questions SRの結果の評価

1.ランダム割り付け順番の生成2.割り付けの隠蔽化3.研究参加者と治療提供者の盲検化4.アウトカム評価者の盲検化5.不完全なアウトカムデータ6.選択されたアウトカムの報告7.その他のバイアス

Evidence-to-Decisionテーブル

診療ガイドラインパネル会議あらゆるステークホルダーが参加する

推奨の方向と強さ・・・することを推奨する(Grade 1)・・・することを提案する(Grade 2)・・・しないことを提案する(Grade 2)・・・しないことを推奨する(Grade 1)

図1 GRADE system を用いた診療ガイドライン作成の全体像
p.156
表2 バイアスのリスク(risk of bias)評価項目

要  因説  明

ランダム割り付け順番の生成random sequence generation(選択バイアスselection bias)介入の有無以外のoutcome に影響しうる因子(=交絡因子)を群間で揃えるために行う.割り付けの隠蔽化allocation concealment(選択バイアスselection bias)研究に患者などの研究参加者を組み入れる際に,その研究参加者がどちらの群に割り付けられる可能性が高いかを隠しておく.研究参加者と治療提供者のマスキングblinding of participants and personnel (施行バイアスperformance bias)介入内容を知っていることによって患者などの研究参加者と治療提供者の行動が変わり,アウトカムの発生に影響を及ぼしてしまうのを防ぐ.アウトカム評価者のマスキングblinding of outcome assessment(検出バイアスdetection bias)アウトカム評価者についても介入内容を知っていると結果の判定に影響が生じるのを防ぐ.不完全なアウトカムデータincomplete outcome data(症例減少バイアスAttrition bias)ランダム割り付けされた人が脱落したり,解析の際に除外されたりすると,ランダム割り付けで各群の背景因子が揃ったにもかかわらず,群間に差がでてしまう.選択されたアウトカムの報告selective outcome reporting(報告バイアスreporting bias)研究計画で決められたものと異なるアウトカムを報告している場合は,バイアスとなりうる.その他のバイアスother sources of biasその他,研究における効果推定値の確信性を揺るがす他のあらゆるバイアスの可能性を検討する.

表3 アウトカムごとのエビデンスの質(確信性)

用語シンボル説明High(高) ⨁⨁⨁⨁真の効果が効果推定値に近いことに大きな確信があるModerate(中) ⨁⨁⨁◦効果推定値に対し中等度の確信がある.つまり,真の効果は効果推定値に近いと考えられるが,大きく異なる可能性も否めないLow(低) ⨁⨁◦◦効果推定値に対する確信には限界がある.真の効果は効果推定値とは大きく異なるかもしれないVery low(非常に低) ⨁◦◦◦効果推定値に対し,ほとんど確信が持てない.真の効果は,効果推定値とは大きく異なるものと考えられる

表4 推奨決定の4 要因

要  因説  明

アウトカム全般に渡る全体的なエビデンスの質エビデンスの質が高いほど,推奨に確信が持てる.利益と害のバランス利益が害を凌駕するならば強く推奨できる.患者の価値観や好みのばらつき価値観や好みのばらつきが少ないほど強く推奨できる.資源(コストやリソース)必要とするコストが低く,リソースが少ないほど強く推奨できる.
p.157
表6 エビデンス総体の質(確信性)のグレード

質(確信性)のグレード記号High(高) A Moderate(中) B Low(低) C Very low(非常に低) D

図2 推奨の強さと方向

1 行わないことを

強く推奨する2 行わないことを

弱く推奨する2 行うことを 弱く推奨する1 行うことを 強く推奨する

連続体

表5 推奨の強さのグレード

推奨の強さ表 現数  字定   義説   明強い推奨~する/しないことを推奨する1介入による望ましい効果(利益)が望ましくない効果(害・負担・コスト)を上回る,または下回る確信が強い.明確な根拠が無い限り,ほとんどの環境でほぼ全員の患者が行うべき治療である.弱い推奨~する/しないことを提案する2介入による望ましい効果(利益)が望ましくない効果(害・負担・コスト)を上回る,または下回る確信が弱い.推奨の内容に従うことが提案されるが,実際の判断は現場の状況や患者の価値観に応じて決めるべきであり,推奨に反する判断をすることも許容される.
p.158
157 総体の質
p.159
質の評価患者数効果

質重要

度

研究数研究デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他の

要因早期気管

切開晩期気管

切開相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1(10 日基準)

11 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻深刻 1なし307/1270

(24.2%) 350/1272

(27.5%)

RR 0.86 (0.73~1.01) 39 少ない/1000 (3 多い~74 少ない) ⨁⨁◯◯低 1 15.6% 22 少ない/1000 (2 多い~42 少ない) 30.8% 43 少ない/1000 (3 多い~83 少ない)

死亡(短期)(注1(7 日基準)

10 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 2深刻深刻 1なし224/879

(25.5%) 258/883

(29.2%)

RR 0.83 (0.60~1.13) 50 少ない/1000 (38 多い~117 少ない) ⨁◯◯◯非常に低 1 2 15.6% 27 少ない/1000 (20 多い~62 少ない) 30.8% 52 少ない/1000 (40 多い~123 少ない)

死亡(短期)(注1(4 日基準)

7 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 3深刻深刻 1なし195/731

(26.7%) 230/734

(31.3%)

RR 0.74 (0.52~1.06) 81 少ない/1000 (19 多い~150 少ない) ⨁◯◯◯非常に低 1 3 15.6% 41 少ない/1000 (9 多い~75 少ない) 30.8% 80 少ない/1000 (18 多い~148 少ない)

VAP(注2(10 日基準)

CQ1:成人ARDS 患者に対する早期気管切開と晩期気管切開の比較
p.160
GRADE 2C  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 低

ARDS 診療ガイドライン

CQ 一覧ダイジェスト

上気道閉塞の遷延が予想される患者,挿管を維持するために要する鎮静・鎮痛薬による循環動態不安定やリハビリの遅延などが生じている患者など,一部症例では早期気管切開に利がある可能性は捨てきれないが,全ての症例で早期気管切開を行うことは勧められない.

NPPV 開始後1 〜2 時間で改善傾向があるか,さらに開始後4 〜6 時間でNPPV施行前に設定した目標に達したかを確認する.いずれの基準も満たさなければ挿管管理へ移行する.多くのRCT において,除外基準として意識障害や循環不全が挙げられており,そのような患者への適応には注意を要する.

成人ARDS 患者において,早期気管切開を行わないことを提案する

成人ARDS 患者の初期の呼吸管理として非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うことを提案する

CQ1

CQ2成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか

成人ARDS 患者の初期の呼吸管理として非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うべきか

GRADE 2C  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 低

付帯事項

推 奨

推 奨

付帯事項
p.161
成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧は30 cmH2O 以下となるように設定することを提案する

CQ4成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧をどう設定すればよいか

GRADE 2B  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性  中

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,一回換気量を6 〜8mL/kg(予測体重)に設定することを推奨する

CQ3成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,一回換気量を低く設定するべきか

GRADE 1B  推奨の強さ 強い推奨   エビデンスの確信性 中

・一回換気量の計算に関しては,実測体重ではなく,身長から計算される予測体重

を用いる(男性:50 +0. 91(身長(cm)−152. 4),女性:45. 5 +0. 91(身長(cm) −152. 4)).・10mL/kg 以下の低容量一回換気量が有益であると考えるが,実際にどの程度の

換気量が最も良いのかは明らかでない.本CQ で採用されたRCT では低容量一回換気群は約6. 2 ~7. 6mL/kg 程度で換気されていたため,一回換気量としては6 〜8mL/kg(予測体重)を推奨する.過大な自発呼吸により目標値と実測値に差異が生じることもあり,注意を要する.駆動圧・経肺圧などを考慮した一回換気量の設定も考慮される.

付帯事項

推 奨

推 奨

最適なプラトー圧は不明であり今後の検討を要する.

付帯事項
p.162
PEEP の上昇によってプラトー圧の上昇,血圧の低下,一回換気量の低下などが起こりうる.高めのPEEP を用いるときは各呼吸パラメーターおよび循環動態に十分に注意を払うべきである.

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEP 値はプラトー圧が30cmH2O 以下となる範囲内および循環動態に影響を与えない範囲内で設定することを提案する

また中等度以上のARDS には高めのPEEP を用いることを提案する

成人ARDS 患者において,プロトコール化された人工呼吸器離脱を行うことを提案する

CQ5

CQ6成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEPをどう設定すればよいか

成人ARDS 患者において,プロトコール化された人工呼吸器離脱を行うべきか

GRADE 2D  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 非常に低

GRADE 2B  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性  中

GRADE 2B  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性  中

付帯事項

プロトコールの作成に当たって,各施設のマンパワーやスタッフの知識に応じたプロトコールを作成する必要がある.特に,プロトコール導入によって,ナースなどのコメディカルが新たに呼吸器設定の変更を行う場合,医師以外の医療従事者の教育が重要であり,患者のモニターにおいて細心の注意が必要である.

過去に行われたメタアナリシスにおけるサブ解析では,内科ICU,外科ICU,外科・内科ICU でプロトコール化された離脱による人工呼吸器使用期間の短縮が認められたが,神経外科ICU では認められなかった.

付帯事項

推 奨

推 奨
p.163
成人ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFO)を行わないことを提案する

CQ8成人ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFO)を行うべきか

GRADE 2C  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 低

推 奨成人ARDS 患者(特に中等症・重症例)において,腹臥位管理を施行することを提案する

CQ7成人ARDS 患者において,腹臥位管理を行うべきか

GRADE 2C  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 低

実施には複数名の熟練したスタッフが必要である.十分なスタッフが確保できる時間帯のみの短時間の腹臥位管理では,十分な効果が得られない可能性があり,実施に際しては自施設の実情を確認する必要がある.

本推奨はあくまで成人に対するHFO の適応に関するものである.成人に対するHFO は一般的に浸透しているとは言えず,設定および合併症管理方法に長けていない施設においては有害性が高い可能性があると考えられるが,設定および合併症管理に長けている施設においては合併症が少ない可能性があり,考慮に価するかもしれない.

付帯事項

付帯事項

推 奨
p.164
日常的に使用することを避ける.中等症以上のARDS 患者(PEEP ≧5cmH2OでP/F 比≦200)で,発症早期に投与期間を48 時間以内に限定して使用すべきである.本邦で使用できる筋弛緩薬ではICU 関連筋力低下のリスクが増す可能性がある.特にステロイドとの併用には留意すべきである.

一般的に,筋弛緩薬は作用機序により脱分極性と非脱分極性に大別されるが,脱分極性筋弛緩薬は,筋肉痛,高カリウム血症,脳圧上昇などの副作用が多いことから,非脱分極性筋弛緩薬が使用されることが多い.さらに,非脱分極性筋弛緩薬は化学構造によりアミノステロイド系(ロクロニウム,ベクロニウム,パンクロニウム)とベンジルイソキノリン系(アトラクリウム,シスアトラクリウム,ミバクリウム)に分類される.推奨の根拠となるRCT で用いていたシスアトラクリウムは本邦では販売されていないため使用できない.代替薬としては,ロクロニウム,ベクロニウムがあげられる.ただし,シスアトラクリウムを含むベンジルイソキノリン系は,肝・腎機能の影響を受けないのに対し,ロクロニウム,ベクロニウムを含むアミノステロイド系は肝・腎障害で代謝が遷延することや,アミノステロイド系筋弛緩薬による筋萎縮作用に注意する.

パネリストから本邦で使用できる筋弛緩薬を日常的に投与することは,ICU 関連筋力低下の懸念が強く,弱い推奨もすべきでないという意見が出されたが,最終的に限定的に使用するようにコメントを付加することで「弱い推奨」とした.

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,限定的に筋弛緩薬の使用を提案する

CQ9成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,筋弛緩薬を使用するべきか

GRADE 2B  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 中

付帯事項

推 奨
p.165
成人ARDS 患者において,好中球エラスターゼ阻害薬を使用しないことを提案する

成人ARDS 患者において,ステロイド(メチルプレドニゾロン1 ~2mg/kg/day 相当)の使用を提案する

CQ11

CQ12成人ARDS 患者において,好中球エラスターゼ阻害薬を使用するべきか

成人ARDS 患者において,ステロイドを投与すべきか

GRADE 2D  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 非常に低

GRADE 2B  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 中

好中球エラスターゼ阻害薬は,“4 臓器以上の多臓器障害を合併する患者,熱傷,外傷に伴う急性肺障害患者には投与しないことが望ましい”との注釈付きで,日本においてARDS の治療薬として保険収載されている.日本呼吸器学会が2010 年に行った国内アンケート調査でも,国内の多くの施設においてARDS に対して好中球エラスターゼ阻害薬が使用されていることは付記しておく.

付帯事項

1つのRCT でハイドロコーチゾン(200mg/day),残り3つのRCT でメチルプレドニゾロン(1 ~2mg/kg)が使用されており,その結果「メチルプレドニゾロン1 ~2mg/kg/day 相当」という推奨文とすることとした.

付帯事項

推 奨

推 奨成人ARDS 患者において,水分を制限した管理を行うことを提案する

CQ10成人ARDS 患者において,日々の水分バランスをどのように維持すればよいか

GRADE 2B  推奨の強さ 弱い推奨   エビデンスの確信性 中

成人ARDS 患者における水分管理の指標については,肺血管外水分量をPAWPやCVP と比較したRCT があるが,両研究ともに死亡率の改善はなく,前者では人工呼吸期間を短縮したが,後者では特に有用性を示すことができなかった.現時点では日々の水分バランスをできるだけオーバーバランスにしない管理が勧められる.

付帯事項

推 奨
p.166
成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用しないことを推奨する

吸入β2 刺激薬,静注β2 刺激薬,プロスタグランジンE1,

活性化プロテインC,ケトコナゾール,リゾフィリン

顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),

N-アセチルシステイン

スタチン

成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用しないことを提案する

吸入一酸化窒素

サーファクタント

CQ13成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用するべきか

(吸入一酸化窒素,吸入β2 刺激薬,静注β2 刺激薬,顆粒球・マクロファージ

コロニー刺激因子(GM-CSF),プロスタグランジンE 1,スタチン,サーファクタント,活性化プロテインC,N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリン)

推奨の強さ 弱い推奨エビデンスの確信性 非常に低

エビデンスの確信性  低

エビデンスの確信性  低

エビデンスの確信性  中

エビデンスの確信性  中

推奨の強さ 強い推奨

GRADE 1B

GRADE 1C

GRADE 1D

GRADE 2B

GRADE 2C

すべて保険適応外使用となるため注意を要する.

付帯事項

推 奨

推 奨
p.167
成人ARDS患者において,早期気管切開を行うべきか

1 背景,この問題の優先度

人工呼吸を要する患者では,気管挿管による気道確保が一般的である.これに対して気管切開による気道確保では気管挿管に比して鎮痛鎮静薬の減量が可能であり,挿管チューブによる声帯損傷を回避できる等の利点がある1, 2).しかし気管切開はそれ自体が侵襲的であり,気管切開創からの出血や気管狭窄による抜去困難などの合併症も存在する3, 4).そのため気管挿管が14 日間以上継続し,さらに長期の人工呼吸管理が必要と予想される場合に気管切開を行うことが一般的とされる.一方,早期気管切開によりこれらの利点が最大限に発揮され,人工呼吸期間や人工呼吸器関連肺炎 (ventilator associated pneumonia;以下VAP)が減少し,予後が改善する可能性が指摘されている.すなわち人工呼吸期間が長期にわたる可能性が高いARDS 患者において,気管切開をより早期に行うことで患者の予後が改善する可能性を検討することは重要な課題と言える.現時点では成人ARDS 患者のみを対象として,

気管切開の適切な施行時期を検討した研究は存在しない.そのため本CQ ではARDS 患者を含む長期人工呼吸が予想される患者を対象とした報告を検討し,早期の気管切開が患者予後の改善に有効かを検討した.

2 解 説

エビデンスの要約

成人ARDS 患者を対象とした研究はなかった.長期の人工呼吸期間が予想される患者を対象としたシステマティックレビューの結果,19 件のRCT が見つかった.本邦の人工呼吸開始から気管切開までの日数は一般的に14 日とされるので14 日以前でいくつかの研究で採用されている4 日・7 日・10 日を閾値として早期と晩期に分けて検討した.

人工呼吸期間4 日・7 日・10 日以内の早期気管切

成人ARDS 患者において,早期気管切開を行わないことを提案する(GRADE 2C,推奨の強さ「弱い推奨」/ エビデンスの確信性「低」)

上気道閉塞の遷延が予想される患者,挿管を維持するために要する鎮静・鎮痛薬による循環動態不安定やリハビリの遅延などが生じている患者など,一部症例では早期気管切開に利がある可能性は捨てきれないが,全ての症例で早期気管切開を行うことは勧められない.

CQ1 CQ1

推  奨

付帯事項
p.168
確に予想する方法はいまだ開発されておらず,早期気管切開によって不要な気管切開を施行している可能性は否定できない5).今回の検討でも早期気管切開患者群では約4 割の患者で不要な気管切開が行われた可能性がある.従って,ARDS 患者に対しルーチンに早期気管切開を施行することの利益がその害を上回るとはいえない.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

推奨内容「早期気管切開を実施しないことを提案する」はパネル会議において全会一致で決定したため,患者の嗜好に偏りはないと考えられる.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

死亡率やVAP 発生率は減少しないため,早期気管切開を全ての患者で行うと,不必要な気管切開を行う可能性が高まり,医療コストが増加する.早期気管切開の判断を行うと91%の患者で気管切開が施行され,晩期気管切開の判断を行うと54%の患者で気管切開が施行されることが報告されている6).すなわち,早期気管切開の判断により気管切開された患者の約40%は晩期気管切開の方針では気管切開しないでも良いと言える.気管切開による有益性が明らかあるいは十分に予想される患者を除いた場合,そのコストは多分大きい.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議での話し合いでは,早期の気管切開が予後を悪化させる可能性は低いものの,死亡や人工呼吸関連肺炎を減らせるとも言えず,気管切開施行が増えることによるコストの増加を考えるとルーチンで早期に行うべきではないと考えた.しかし,気管切開による有益性が期待できる患者では早期に行うほうが良い場合もあることから,「早期気管切開を実施しないことを提案する」ことを全会一致で決定した.

開を行うことは,各4 日・7 日・10 日以降に気管切開を行う方法と比較して,死亡率・人工呼吸関連肺炎の発生率を有意に減少させなかった.いずれの人工呼吸期間の閾値においても,相対危険度は1 未満であり,早期の気管切開が予後を悪化させる可能性は低いと考えられる.

Ventilator free days;VFD は重大なアウトカムと考えたが,今回対象とした論文では非直接性の大きさが深刻であったため推奨の尺度として採用しなかった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

集まった研究はバイアスのリスクが全体的に低く,死亡に関しては深刻でないとしたが,VAP については1 段階グレードダウンし深刻とした.結果の非一貫性は,死亡(10 日基準)ではI 2=19% と異質性は低く深刻でないとしたが,その他ではI 2 が50% 以上であり異質性が高かったため1 段階グレードダウンし深刻とした.本CQ はARDS 患者が対象であるが,集積されたRCT はいずれも長期の人工呼吸期間が予想される患者を対象とした研究であったため,非直接性はいずれも深刻とした.不精確さは全てのアウトカムにおいて,信頼区間が臨床決断の閾値をまたぐため,1 段階グレードダウンすることにした.出版バイアスについては,VAP に関してはfunnel plot での検討で非対称と判定されたため1 段階グレードダウンし深刻とした.また効果は害より大きいかも不明であることなどから,エビデンスの全体的な質は「非常に低」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

高濃度酸素,高い気道内圧あるいは高いPEEPを要しているARDS 患者では,今回のシステマティックレビューで集積された研究群が対象とした患者群よりも,気管切開そのものの危険性が高い可能性もある.また長期人工呼吸を要するか否かを正
p.169
4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

ARDS 患者における気管切開について記載しているガイドラインはない.

5 治療のモニタリングと評価

ICU で通常行われる呼吸・循環モニタリングで良い.

6 今後の研究の可能性

ARDS 患者を対象とした最適な気管切開のタイミングを検討する研究が必要である.

長期人工呼吸を要する患者を正確に予測することができれば不要な気管切開が減少し,結果として早期気管切開に対する評価が変わる可能性があり,そのような予測法の開発が望まれる.

気管切開には大きく外科的気管切開と経皮的気管切開の2 通りがあるが,ARDS 患者ではいずれの方法がより安全に施行できるかも検討する研究が必要である. 7 文献検索式と文献選択

「気管切開」,「人工呼吸」をキーワードとしてPubMed(2015 年2 月2 日まで),EMBASE(2015年2 月2 日まで),Cochrane CENTRAL(2015 年2 月3 日まで)および医中誌(2015 年1 月26 日まで)の文献を検索したところ2, 249 件の研究が同定され,スクリーニングの結果19 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Barquist 2006 7),Blot 2008 8),Bosel 2013 9), Bouderka 2004 10),Bylappa 2011 11),Diaz-Prieto

2014 12),Dunham 1984 13),Dunham 2014 14),Fayed

2012 15),Koch 2012 16),Mohamed 2014 17), Rodriguez 1990 18),Rumbak 2004 19),Saffle 2002 20), Sugerman 1997 21),Terragni 2010 22),Trouillet

2011 23),Young 2013 24),Zheng 2012 25)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf
p.170
9 エビデンス・プロファイル

CQ1:成人ARDS 患者に対する早期気管切開と晩期気管切開の比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他の

要因早期気管

切開晩期気管

切開相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1(10 日基準)

11 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻深刻 1なし307/1270

(24.2%) 350/1272

(27.5%)

RR 0.86 (0.73~1.01) 39 少ない/1000 (3 多い~74 少ない) ⨁⨁◯◯

低 1重

大

15.6% 22 少ない/1000 (2 多い~42 少ない) 30.8% 43 少ない/1000 (3 多い~83 少ない)

死亡(短期)(注1(7 日基準)

10 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 2深刻深刻 1なし224/879

(25.5%) 258/883

(29.2%)

RR 0.83 (0.60~1.13) 50 少ない/1000 (38 多い~117 少ない) ⨁◯◯◯

非常に低 1 2重

大

15.6% 27 少ない/1000 (20 多い~62 少ない) 30.8% 52 少ない/1000 (40 多い~123 少ない)

死亡(短期)(注1(4日基準)

7 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 3深刻深刻 1なし195/731

(26.7%) 230/734

(31.3%)

RR 0.74 (0.52~1.06) 81 少ない/1000 (19 多い~150 少ない) ⨁◯◯◯

非常に低 1 3重

大

15.6% 41 少ない/1000 (9 多い~75 少ない) 30.8% 80 少ない/1000 (18 多い~148 少ない)

VAP(注2(10 日基準)

11 ランダ

ム化比較試験深刻 4深刻 5深刻深刻 1出版バイ

アスが疑われる 6 239/853

(28.0%) 273/861

(31.7%)

RR 0.93 (0.77~1.11) 22 少ない/1000 (35 多い~73 少ない) ⨁◯◯◯

非常に低 1 4 5 6重

大

13.4% 9 少ない/1000 (15 多い~31 少ない) 45.9% 32 少ない/1000 (50 多い~106 少ない)

VAP(注2(7 日基準)

10 ランダ

ム化比較試験深刻 4深刻 7深刻深刻 1出版バイ

アスが疑われる 6 205/454

(45.2%) 255/464

(55.0%)

RR 0.85 (0.70~1.05) 82 少ない/1000 (27 多い~165 少ない) ⨁◯◯◯

非常に低 1 4 6 7重

大

13.4% 20 少ない/1000 (7 多い~40 少ない) 45.9% 69 少ない/1000 (23 多い~138 少ない)

VAP(注2(4 日基準)

6 ランダ

ム化比較試験深刻 4深刻 8深刻深刻1なし110/284

(38.7%) 150/296

(50.7%)

RR 0.76 (0.51~1.15) 122 少ない/1000 (76 多い~248 少ない) ⨁◯◯◯

非常に低 1 4 6 8重

大

13.4% 32 少ない/1000 (20 多い~66 少ない) 45.9% 110 少ない/1000 (69 多い~225 少ない)

RR:相対リスク

1.効果推定値の信頼区間の上限と下限が「臨床決断の閾値」をまたぐため,1 段階グレードダウンすることにした.また対象患者は「人工呼吸器に依存している重症患者」であり,必ずしもARDS 患者のみではない. 2.信頼区間は一部重なり,I2=58%, P=0.02 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. 3.信頼区間は一部重なり,I2=58%, P=0.03 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. 4.深刻な限界があり1 段階グレードダウンすることにした. 5.信頼区間は一部重なり,I2=67%, P=0.0007 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. 6.ファンネルプロットが非対称であり出版バイアスが示唆されたが統計学的検討は行っていない. 7.信頼区間は一部重なり,I2=71%, P=0.0002 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした. 8.信頼区間は一部重なり,I2=86%, P<0.00001 と大きな異質性があるため,1 段階グレードダウンすることにした.
p.171
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ1:成人ARDS 患者において,早期気管切開を行うべきか

集団:長期の人工呼吸期間が予想される成人患者介入:早期気管切開

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えない人工呼吸を要する患者では,気管挿管による気道確保が一般的である.

これに対して気管切開による気道確保では気管挿管に比して鎮痛鎮静薬の減量が可能であり,挿管チューブによる声帯損傷を回避できるなどの利点がある.しかし気管切開はそれ自体が侵襲的であり,気管切開創からの出血や気管狭窄による抜去困難などの合併症も存在する.そのため気管挿管が14 日間以上継続し,さらに長期の人工呼吸管理が必要と予想される場合に気管切開を行うことが一般的とされる.一方,早期気管切開によりこれらの利点が最大限に発揮され,人工呼吸期間やVAP が減少し,予後が改善する可能性が指摘されている.すなわち人工呼吸期間が長期にわたる可能性が高いARDS 患者において,気管切開をより早期に行うことで患者の予後が改善する可能性を検討することは重要な課題と言える.現時点では成人ARDS 患者のみを対象として,気管切開の適切な施行時期を検討した研究は存在しない.そのため本CQ ではARDS 患者を含む長期人工呼吸が予想される患者を対象とした報告を検討し,早期の気管切開が患者予後の改善に有効かを検討した.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中◯低●非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性

(GRADE)

死亡(短期)(注1

(10 日基準)重大⨁⨁◯◯

低

死亡(短期)(注1

(7 日基準)重大⨁◯◯◯

非常に低

死亡(短期)(注1

(4 日基準)重大⨁◯◯◯

非常に低

VAP(注2

(10 日基準)重大⨁◯◯◯

非常に低

VAP(注2

(7 日基準)重大⨁◯◯◯

非常に低

VAP(注2

(4 日基準)重大⨁◯◯◯

非常に低

VFD(注3重大研究なし(追加事項参照)

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ●ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは小

さい◯ばらつきは大きいかどうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい人工呼吸開始から4, 7, 10 日を基準としてその期日までに気管切開した報告を集めて解析を行い,その結果をそれぞれ4, 7, 10 日基準としてまとめた.

予想される効果は大きいですか? ◯大きい◯中程度◯小さい●わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない本CQ の対象とした「長期の人工呼吸を要すると予想される患者」には多くのARDS 患者が含まれるが,「頭部外傷後の遷延性意識障害患者」など背景の異なる患者も含まれており,特にVFDに関しては非直接性の大きさが深刻と判断した.対象とした報告からARDS患者のみのデータを抽出することは困難であり,今回はVFD をアウトカムとしてデータを呈示できず推奨の尺度として採用しなかった.
p.172
予想される害は小さいですか? ◯わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない●わからない結果のまとめ

アウトカム晩期早期絶対差 (95% CI)相対効果(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 (10 日基準) 275/1000 237/1000 (201~278) 39 少ない/1000 (3 多い~74 少ない)

RR 0.86 (0.73~1.01) 156/1000 134/1000 (114~158)

22 少ない/1000 (2 多い~42 少ない)

308/1000 265/1000 (225~311) 43 少ない/1000 (3 多い~83 少ない)

死亡(短期)(注1 (7 日基準) 292/1000 243/1000 (175~330) 50 少ない/1000 (38 多い~117 少ない)

RR 0.83 (0.60~1.13) 156/1000 129/1000 (94~176)

27 少ない/1000 (20 多い~62 少ない)

308/1000 256/1000 (185~348) 52 少ない/1000 (40 多い~123 少ない)

死亡(短期)(注1 (4 日基準) 313/1000 232/1000 (163~332) 81 少ない/1000 (19 多い~150 少ない)

RR 0.74 (0.52~1.06) 156/1000 115/1000 (81~165)

41 少ない/1000 (9 多い~75 少ない)

308/1000 228 /1000 (160~326) 80 少ない/1000 (18 多い~148 少ない)

VAP(注2 (10 日基準) 317/1000 295/1000 (244~352) 22 少ない/1000 (35 多い~73 少ない)

RR 0.93 (0.77~1.11) 134/1000 125/1000 (103~149)

9 少ない/1000 (15 多い~31 少ない)

459/1000 427/1000 (353~509) 32 少ない/1000 (50 多い~106 少ない)

VAP(注2 (7 日基準) 550/1000 467/1000 (385~577) 82 少ない/1000 (27 多い~165 少ない)

RR 0.85 (0.70~1.05) 134/1000 114/1000 (94~141)

20 少ない/1000 (7 多い~40 少ない)

459/1000 390/1000 (321~482) 69 少ない/1000 (23 多い~138 少ない)

VAP(注2 (4 日基準) 507/1000 385/1000 (258~583) 122 少ない/1000 (76 多い~248 少ない)

RR 0.76 (0.51~1.15) 134/1000 102/1000 (68~154)

32 少ない/1000 (20 多い~66 少ない)

459/1000 349/1000 (234~528) 110 少ない/1000 (69 多い~225 少ない)

要約:長期人工呼吸が予想される人工呼吸患者に対して4 日以内,7 日以内,

10 日以内に早期気管切開を施行しても,短期死亡,VAP 発生も有意に減少しなかった.

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい◯たぶん効果は

大きい●わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない
p.173
資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない●たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要と

する◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない本邦における気管切開の医療費は約25,000 円である.気管切開は多くの病院で日

常的に行われている医療行為であり,気管切開を行うために特別な装置の購入は必要ないと思われる.気管切開に必要とするコストやリソースはたぶん少ない.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい◯たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない●たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない死亡率やVAP 発生率は減少しないため,早期気管切開を全ての患者で行うと,不

必要な気管切開を行う可能性が高まり,医療コストが増加する.早期気管切開の判断を行うと91%の患者で気管切開を施行され,晩期気管切開の判断を行うと54%の患者で気管切開を施行されることが報告されている6).すなわち,早期気管切開の判断により気管切開された患者の約40%は晩期気管切開の方針では気管切開しないでも良いと言える.気管切開による有益性が明らかあるいは十分に予想される患者を除いた場合,そのコストは多分大きい.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる●公平になる------------------ ◯一概には言えない本治療の施行には,特別な医療施設・医療資器材を必要としない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる◯たぶん受け入れら

れる◯わからない◯たぶん受け入れられない◯受け入れられない------------------ ●一概には言えない気管切開の時期がかわることでステークホルダーに与える影響は様々でその立場

により変わるため一概には言えない.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない本治療の施行には,特別な医療施設・医療資器材を必要としない.注1:90 日以内の死亡の内,各研究内で主たるアウトカムとして扱われたもの.注2:VAP: ventilator associated pneumonia(人工呼吸関連肺炎; VAP),VAP の定義は各研究により差がある.注3:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数.ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする.
p.174
バイアスのリスクS1`P
MCX ab).'Ag).'AgkM-H, Random, 95%CI

-#!T M-H, Random, 95%CI -#!T NPU;cOPU;c

OPU;c

8 NPU;c 8

Agn	
o Ag).' \iH 94>QRF CQ01-06 Forest plot A B C D E F G

S1`PMCX

ab).'Ag).'AgkM-H, Random, 95%CI

-#!T M-H, Random, 95%CI -#!T NPU;cOPU;c

OPU;c

8 NPU;c 8

Agn	
o Ag).' \iH 94>QRF CQ01-06 Forest plotバイアスのリスクA B C D E F G

11 フォレストプロット

S1`PMCX

ab).'Ag).'AgkM-H, Random, 95%CI

-#!T M-H, Random, 95%CI -#!T NPU;cOPU;c

_ZY  CX OPU;c

8 NPU;c 8

Agn	
o Ag).' \iH 94>QRF CQ01-06 Forest plotバイアスのリスクA B C D E F G

VAP_ZYMCX

OPU;c

8 NPU;c 8

ab).'Ag).'AgkM-H, Random, 95%CI

-#!T M-H, Random, 95%CI -#!T NPU;cOPU;c

Agn	
o Ag).' \iH 94>QRFバイアスのリスク

A B C D E F G
p.175
OPU;c

8 NPU;c 8

VAP_ZYMCX

ab).'Ag).'AgkM-H, Random, 95%CI

-#!T M-H, Random, 95%CI -#!T NPU;cOPU;c

Agn	
o Ag).' \iH 94>QRF A B C D E F G

バイアスのリスク

ab).'Ag).'AgkM-H, Random, 95%CI

-#!T M-H, Random, 95%CI -#!T NPU;cOPU;c

VAP_ZY
MCX

OPU;c

8 NPU;c 8

Agn	
o Ag).' \iH 94>QRFバイアスのリスク

A B C D E F G

■ 文 献1)Cheung NH, Napolitano LM:Tracheostomy:epidemiology, indications, timing, technique, and out-

comes. Respir Care 59(6):895-915;discussion 6-9, 2014, PMID 24891198 2)Freeman BD, Morris PE:Tracheostomy practice in adults with acute respiratory failure. Crit Care

Med 40(10):2890-2896, 2012, PMID 22824938 3)Epstein SK:Late complications of tracheostomy. Respir Care 50(4):542-549, 2005, PMID 15807919 4)Stauffer JL, Olson DE, Petty TL:Complications and consequences of endotracheal intubation and

tracheotomy. A prospective study of 150 critically ill adult patients. Am J Med 70(1):65-76, 1981, PMID

7457492 5)Figueroa-Casas JB, Dwivedi AK, Connery SM, et al:Predictive models of prolonged mechanical

ventilation yield moderate accuracy. J Crit Care 30(3):502-505, 2015, PMID 25682346 6)Siempos I, Ntaidou TK, Filippidis FT, et al:Effect of early versus late or no tracheostomy on mortality

and pneumonia of critically ill patients receiving mechanical ventilation:a systematic review and metaanalysis. Lancet Respir Med 3(2):150-158, 2015, PMID 25680911 7)Barquist ES, Amortegui J, Hallal A, et al:Tracheostomy in ventilator dependent trauma patients:a

prospective, randomized intention-to-treat study. J Trauma 60(1):91-97, 2006, PMID 16456441 8)Blot F, Similowski T, Trouillet JL, et al:Early tracheotomy versus prolonged endotracheal intubation

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)
p.176
in unselected severely ill ICU patients. Intensive Care Med 34(10):1779-1787, 2008, PMID 18592210 9)Bösel J, Schiller P, Hook Y, et al:Stroke-related Early Tracheostomy versus Prolonged Orotracheal

Intubation in Neurocritical Care Trial (SETPOINT):a randomized pilot trial. Stroke 44(1):21-28, 2013, PMID 23204058 10)Bouderka MA, Fakhir B, Bouaggad A, et al:Early tracheostomy versus prolonged endotracheal

intubation in severe head injury. J Trauma 57(2):251-254, 2004, PMID 15345969 11)Bylappa K, Mohiyudin A, Silvia W, et al:A comparative study of early and late tracheostomy in

patients requiring prolonged tracheal intubation. World Articles in Ear, Nose and Throat 2011, PMIDなし12)Diaz-Prieto A, Mateu A, Gorriz M, et al:A randomized clinical trial for the timing of tracheotomy in

critically ill patients:factors precluding inclusion in a single center study. Crit Care 18(5):585, 2014, PMID 25358451 13)Dunham CM, LaMonica C:Prolonged tracheal intubation in the trauma patient. J Trauma 24(2):120-

124, 1984, PMID 6694236 14)Dunham CM, Cutrona AF, Gruber BS, et al:Early tracheostomy in severe traumatic brain injury:

evidence for decreased mechanical ventilation and increased hospital mortality. Int J Burns Trauma 4(1):14-24, 2014, PMID 24624310 15)Fayed A, Elbadaw T, Gamal M, et al:Early gastrostomy and tracheostomy prevent ventilator

associated pneumonia in traumatic brain injured patients (Abstracts of the ESICM (European Society of Intensive Care Medicine) 25th Annual Congress. Lisbon, Portugal. October 13-17, 2012). Intensive Care Med 38 Suppl 1:S8-327, 2012, PMID 23064528 16)Koch T, Hecker B, Hecker A, et al:Early tracheostomy decreases ventilation time but has no impact

on mortality of intensive care patients:a randomized study. Langenbecks Arch Surg 397(6):1001- 1008, 2012, PMID 22322214 17)Mohamed K, Mousa A, ElSawy A, et al:Early versus late percutaneous tracheostomy in critically ill

adult mechanically ventilated patients. Egyptian Journal of Chest Diseases and Tuberculosis 63:443- 448, 2014, PMID なし18)Rodriguez JL, Steinberg SM, Luchetti FA, et al:Early tracheostomy for primary airway management

in the surgical critical care setting. Surgery 108(4):655-659, 1990, PMID 2218876 19)Rumbak MJ, Newton M, Truncale T, et al:A prospective, randomized, study comparing early

percutaneous dilational tracheotomy to prolonged translaryngeal intubation (delayed tracheotomy) in critically ill medical patients. Crit Care Med 32(8):1689-1694, 2004, PMID 15286545 20)Saffle JR, Morris SE, Edelman L:Early tracheostomy does not improve outcome in burn patients. J

Burn Care Rehabil 23(6):431-438, 2002, PMID 12432320 21)Sugerman HJ, Wolfe L, Pasquale MD, et al:Multicenter, randomized, prospective trial of early

tracheostomy. J Trauma 43(5):741-747, 1997, PMID 9390483 22)Terragni PP, Antonelli M, Fumagalli R, et al:Early vs late tracheotomy for prevention of pneumonia

in mechanically ventilated adult ICU patients:a randomized controlled trial. JAMA 303(15):1483-1489, 2010, PMID 20407057 23)Trouillet JL, Luyt CE, Guiguet M, et al:Early percutaneous tracheotomy versus prolonged intubation

of mechanically ventilated patients after cardiac surgery:a randomized trial. Ann Intern Med 154(6): 373-383, 2011, PMID 21403073 24)Young D, Harrison DA, Cuthbertson BH, et al:Effect of early vs late tracheostomy placement on

survival in patients receiving mechanical ventilation:the TracMan randomized trial. JAMA 309(20): 2121-2129, 2013, PMID 23695482 25)Zheng Y, Sui F, Chen XK, et al:Early versus late percutaneous dilational tracheostomy in critically ill

patients anticipated requiring prolonged mechanical ventilation. Chin Med J (Engl) 125(11):1925-1930, 2012, PMID 22884055
p.177
成人ARDS患者の初期の呼吸管理として非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うべきか

1 背景,この問題の優先度

低酸素血症に対する非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV)は世界中で広く適用されているが,ARDS 患者における有効性は十分にわかっていない.NPPV によって挿管を回避できたり,死亡率が低下する可能性が示唆されており,優先順位は高い.

2 解 説

エビデンスの要約ARDS 患者を対象としてNPPV の有効性を検討した研究は非常に少ないことが予想されたため,低酸素血症を有する患者を対象として,初期管理におけるNPPV の有効性を比較検討したRCT を検索した.重症度により,酸素投与と挿管管理のいずれが必要かは決まるので,システマティックレビューで

はNPPV と酸素投与の比較,およびNPPV と挿管管理の比較を行った.なお,NPPV の効果が強く期待されるCOPD やうっ血性心不全を有する患者のみを対象にしている研究は除外した.最終的に酸素投与と比較した17 件と挿管管理と比較した4 件の,併せて21 件のRCT が見つかった.

NPPV と酸素投与を比較した17 件の研究では,死亡は全件で検討されており(RR 0. 71, 95%CI 0. 54 〜

0 92),酸素投与に比してNPPVで有意に低値であっ

た.挿管は16 件で検討されており(RR 0. 58, 95%CI 0. 46 〜0. 74),酸素投与に比してNPPV で有意に低値だった.

NPPV と挿管管理を比較した4 件の研究では,死亡は全件で検討されており(RR 0. 65, 95%CI 0. 46 〜

0 93),挿管管理に比してNPPV で有意に低値だっ

た.

成人ARDS 患者の初期の呼吸管理として非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うことを提案する(GRADE 2C,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「低」)

NPPV 開始後1 〜2 時間で改善傾向があるか,さらに開始後4 〜6 時間でNPPV 施行前に設定した目標に達したかを確認する.いずれの基準も満たさなければ挿管管理へ移行する.多くのRCT において,除外基準として意識障害や循環不全が挙げられており,そのような患者への適応には注意を要する1).

CQ2 CQ2

推  奨

付帯事項
p.178
3-3.患者の価値観や好みはどうか?

NPPV は挿管に比べれば患者の苦痛は小さいとされるが,マスクを常に装着することの不快感を訴えるケースも多く長期間の装着が困難で酸素投与を行わざるを得ないこともある.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

NPPV は,現時点では本邦における多くの施設で可能な医療行為であるが,NPPV のための機器やより多い酸素量,トレーニング,人員など,酸素投与や挿管管理と比べてより高いコストが発生すると予想される.ただし,挿管が回避できると挿管管理に関わるコストが低下する可能性があり,現時点ではコストと効果の比較は困難である.なお,ディスポーザブルマスクのコストは現時点では高価と言わざるを得ない.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議での話し合いで,酸素投与よりも短期死亡を減らすことができ,ただちに挿管するよりも短期死亡を減らすことができることから,上乗せされるコストを考慮してもNPPV について試みることが支持された.ただし得られたエビデンスは非直接性が深刻であった(必ずしもARDS 患者を対象としていなかった)ことから「NPPV を試みることを提案する」とすることが全会一致で決定した.

ただし全身状態が不良な症例で効果の改善がみられない場合には,すみやかに挿管人工呼吸管理をすべきとの意見が大勢を占めた.パネル会議でCQ および推奨文の文言について,NIV とするかNPPVとするか,「軽症」の使用の有無,等について議論された.その結果NPPV に統一し,軽症ではなく「初期の呼吸管理」との表現を採用した.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

NPPV と酸素投与を比較した17 件の研究において,バイアスのリスクは死亡については深刻でないとしたが,挿管については盲検化されていないことがバイアスのリスクと考えられたため1 段階グレードダウンし深刻とした.結果の非一貫性は,死亡については点推定値のばらつきを認め,中等度の異質性があり(I 2 = 44%),検討したが異質性が説明できなかったので深刻とした.挿管については,点推定値のばらつきが少なく,異質性も軽度であったため(I 2 = 25%),深刻でないとした.非直接性は,厳密なARDS の基準を満たした対象を集めた研究のみを検討していないのでグレードダウンを行った.不精確さは,死亡,挿管ともにoptimal information size(OIS)基準を満たしており深刻でないとした.その他の要因に特に懸念すべき事項はなく深刻でないとした.

NPPV と挿管管理を比較した4 件の研究において,バイアスのリスクに問題はなく深刻でないとした.結果の非一貫性は点推定値のばらつきが少なく異質性も軽度であったため(I 2 = 0%)深刻でないとした.非直接性は,厳密なARDS の基準を満たした対象を集めた研究のみを検討したわけではないが,グレードダウンは行わなかった.不精確さは, RR 0. 65 (95%CI 0. 46 ~0. 93)と狭かったが,OIS基準は満たさず,深刻とした.以上より,エビデンスの全体的な質は「低」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

NPPV を適用することでマスクによる皮膚障害が発生する可能性がある.また,酸素投与と比較すると,陽圧換気による静脈還流量減少や肺障害発生などの危険性はあるが,今回の検討の結果からNPPVによって得られる利益は害と比較的すると小さいと考えられる.
p.179
4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

関連する他の診療ガイドラインとして一般社団法人日本呼吸器学会から「NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン(改訂第2 版)」(以下NPPVガイドライン)が2015 年2 月に発刊されている. NPPV ガイドラインでの推奨は,「1ARDS 症例でのNPPV 施行は慎重であるべきである,2他臓器障害が少ない軽症ARDS に対しては,NPPV の使用が推奨される」とされており,当ガイドラインとの大きな齟齬は認めていない2).

5 治療のモニタリングと評価

NPPV 施行後は,呼吸状態,循環動態,意識状態の評価と動脈血液ガス分析を繰り返し施行し,開始後1 〜2 時間で改善傾向があるか,さらに開始後4 〜6 時間でNPPV 施行前に設定した目標に達したかを確認する.いずれの基準も満たさなければ挿管管理へ移行する.挿管のタイミングが遅れると死亡率が上昇する可能性が示唆されている3).

6 今後の研究の可能性

ARDS 患者に限定したRCT が必要である. High-flow therapy といった他の非侵襲的な呼吸管

理デバイスの効果に関して,NPPV,酸素投与などの管理方法との比較が必要である.

7 文献検索式と文献選択

「急性呼吸不全」,「非侵襲的陽圧換気」をキーワードとしてPubMed,EMBASE,Cochrane CENTRAL,および医中誌で検索したところ3, 985 件の研究が同定され,スクリーニングの結果21 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Antonelli 2000 4),Antonelli 1998 5),Brambilla 2014 6),Confalonieri 1999 7),Cosentini 2010 8), Delclaux 2000 9),Ferrer 2003 10),Gunduz 2005 11), Gupta 2010 12),Hernandez 2010 13),Hilbert 2001 14), Honrubia 2005 15),Kramer 1995 16),Matic 2007 17), Martin 2000 18),Nava 2013 19),Squadrone 2010 20), Wermke 2012 21),Wood 1998 22),Wysocki 1995 23), Zhan 2012 24)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf
p.180
9 エビデンス・プロファイル

CQ2:成人ARDS 患者に対する非侵襲的陽圧換気と酸素療法の比較

質の評価患者数効果

質重要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因NPPV酸素投与相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

17 ランダ

ム化比較試験深刻で

ない 1深刻 2深刻3深刻でない 4なし156/566

(27.6%) 207/567

(36.5%)

RR 0.71 (0.54~0.92) 106 少ない/1000

(29 少ない~168 少ない)

⨁⨁◯◯

低1 2 3 4重

大13.3% 39 少ない/1000

(11 少ない~61 少ない)

75.0% 218 少ない/1000

(60 少ない〜345 少ない)

挿管

16 ランダ

ム化比較試験深刻5深刻でない 6深刻3深刻でない 7なし106/467

(22.7%) 181/465

(38.9%)

RR 0.58 (0.46~0.74) 163 少ない/1000

(101 少ない~210 少ない)

⨁⨁◯◯

低 3 5 6 7重

要21.1% 89 少ない/1000

(55 少ない~114 少ない)

73.3% 308 少ない/1000

(191 少ない~396 少ない)

RR:相対リスク

1.患者や医療スタッフに対して盲検化は不可能であるが,アウトカムの性質上大きなリスクにはならないと考える.また,ランダム割り付けや,

選択されたアウトカムの報告についてほとんどがUnclear risk であるが,これも大きなリスクとは考えず,グレードダウンせず. 2.点推定値のばらつきがあり,中等度の異質性がある(I2 = 44%). 3.ARDS 患者の検討ではなく,低酸素性呼吸不全患者の検討である. 4.RR 0.71 [0.54〜0.92]であり,さらに対照群のイベント発生率からOIS 基準を満たしている. 5.組み入れられた21 の論文のうちの6 つに関して,比較的大きなサンプルサイズでありながら盲検化において高リスクを有している.さらに,

それら以外のほとんども盲検化において「low risk」ではなく「unclear」となっている.加えて,挿管の判断はベッドサイドの診療医の判断に非常に強く依存しており,今回の検討において盲検化は重大な点であると考える. 6.点推定値のばらつきが少なく,異質性は低い(I2 = 25%). 7.RR 0.58 [0.46〜0.74]であり,さらに対照群のイベント発生率からOIS 基準を満たす.

CQ2:成人ARDS 患者に対する非侵襲的陽圧換気と挿管管理の比較

質の評価患者数効果

質重要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因NPPV挿管管理相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

4 ランダ

ム化比較試験深刻でない 1深刻でない 2深刻3深刻4なし37/280

(13.2%) 58/278

(20.9%) RR 0.65

(0.46~0.93) 73 少ない/1000

(15 少ない〜113 少ない) ⨁⨁◯◯

低1 2 3 4重

大37.9% 133 少ない/1000

(27 少ない〜205 少ない)

RR:相対リスク

1.患者や医療スタッフに対して盲検化は不可能であるが,アウトカムの性質上大きなリスクにはならないと考える.また,ランダム割り付けや,選択されたアウトカムの報告についてほとんどがUnclear risk であるが,これも大きなリスクとは考えず,グレードダウンせず. 2.点推定値のばらつきは少なく,異質性も低い(I2 = 0%). 3.ARDS 患者の検討ではなく,低酸素性呼吸不全患者の検討である. 4.RR 0.65 [0.46〜0.93]であるが,OIS 基準は満たさない.

CQ2:成人ARDS 患者に対する非侵襲的陽圧換気と挿管管理の比較
p.181
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ2:成人ARDS 患者の初期の呼吸管理として非侵襲的陽圧換気(NPPV)を行うべきか

集団:低酸素血症を有する成人患者介入:非侵襲的陽圧換気(NPPV)

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?

より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる●高い◯おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えない低酸素血症に対する非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive pressure ventilation; NPPV)は世

界中で広く適用されているが,ARDS 患者における有効性は十分にわかっていない.NPPV によって挿管を回避できたり,死亡率が低下する可能性が示唆されており,優先順位は高い.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中●低◯非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性(GRADE)

死亡(短期)(注1重大⨁⨁◯◯

低

挿管重要⨁⨁◯◯

低

酸素療法 vs NPPV結果のまとめ

アウトカム酸素療法NPPV絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 365/1000 259/1000 (197〜336) 106 少ない/1000 (29 少ない〜168 少ない)

RR 0.71 (0.54~0.92) 133/1000 94/1000 (72〜122)

39 少ない/1000 (11 少ない〜61 少ない)

750/1000 533/1000 (405〜690) 218 少ない/1000 (60 少ない〜345 少ない)

挿管389/1000 226/1000 (179〜288) 163 少ない/1000 (101 少ない〜210 少ない)

RR 0.58 (0.46~0.74) 211/1000 122/1000 (97〜156)

89 少ない/1000 (55 少ない〜114 少ない)

733/1000 425/1000 (337〜542) 308 少ない/1000 (191 少ない〜396 少ない)要約:低酸素血症を有する患者に対して, 酸素投与のみと比較して, NPPV 管理では有意に死亡

(RR 0.71, 95%CI 0.54〜0.92),挿管(RR 0.58, 95%CI 0.46〜0.74)に減少がみられた.

挿管 vs NPPV結果のまとめ

アウトカム挿管NPPV絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 209/1000 136/1000 (96〜194)

73 少ない/1000 (15 少ない〜113 少ない) RR 0.65 (0.46~0.93) 379/1000 246/1000 (174〜352)

133 少ない/1000 (27 少ない〜205 少ない)

要約:死亡はRR 0.65, 95%CI 0.46〜0.93 であり,挿管管理に比してNPPV で有意に低値で

あった.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ●ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは

小さい◯ばらつきは大きいかどうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか●小さい◯中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない
p.182
資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない◯たぶん少ない◯わからない●たぶん多くを必要とする◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えないNPPV 施行が可能な人工呼吸器やインターフェイスが必要である.また通常の酸素投与と比較し,

より多い酸素が必要となる.さらに,医療スタッフのトレーニングのためにコストが発生する可能性がある.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい◯たぶんコストは利益よりも小さい●わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えないNPPV に関して,増加するコストと利益の比較は困難である.ディスポーザブルマスクのコストは現

時点では高価と言わざるを得ない.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?

健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平に

なる●わからない◯たぶん公平になる◯公平になる------------------ ◯一概には言えないNPPV 管理の経験が多い施設の方が,よりNPPV を使用できる環境にあると考えられるが,公平性

に関するデータはない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れら

れない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えないNPPV 自体は本邦で広く使用されており,受け入れられると考えられる.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない実際に,現在でもNPPV は本邦で広く使用されている.注1:院内死亡もしくはICU 死亡.
p.183
?ck	
l ?c',% VeE 83<NOC

Z[

',%?c
',%?c
h
M-H, Random, 95%CI

+!Q +!Q M-H, Random, 95%CI

NPPV^

7 g]G/^

7

NPPV^


g]G/^

J C . `

J C . `

P0YMNPPVg]G/

バイアスのリスクA B C D E F G

Z[

',%?c
',%?c
h
M-H, Random, 95%CI

+!Q +!Q M-H, Random, 95%CI

NPPV^

7

NPPV^


g]G/^

J C . `

g]G/^

7

I\NPPV vsg]G/

?ck	
l ?c',% VeE 83<NOC A B C D E F G

バイアスのリスク

11 フォレストプロット
p.184
■ 文 献1)Esteban A, Frutos-Vivar F, Ferguson ND, et al:Noninvasive positive-pressure ventilation for

respiratory failure after extubation. N Engl J Med 350(24):2452-2460, 2004, PMID 15190137 2)一般社団法人日本呼吸器学会:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン(改訂第2 版).南江堂,

2015 3)Epstein SK, Ciubotaru RL:Independent effects of etiology of failure and time to reintubation on

outcome for patients failing extubation. Am J Respir Crit Care Med 158(2):489-493, 1998, PMID 9700126 4)Antonelli M, Conti G, Bufi M, et al:Noninvasive ventilation for treatment of acute respiratory failure

in patients undergoing solid organ transplantation:a randomized trial. JAMA 283(2):235-241, 2000, PMID 10634340 5)Antonelli M, Conti G, Rocco M, et al:A comparison of noninvasive positive-pressure ventilation and

conventional mechanical ventilation in patients with acute respiratory failure. N Engl J Med 339(7): 429-435, 1998, PMID 9700176 6)Brambilla AM, Aliberti S, Prina E, et al. Helmet CPAP vs. oxygen therapy in severe hypoxemic

respiratory failure due to pneumonia. Intensive Care Med 40(7):942-949, 2014, PMID 24817030 7)Confalonieri M, Potena A, Carbone G, et al:Acute respiratory failure in patients with severe

community-acquired pneumonia. A prospective randomized evaluation of noninvasive ventilation. Am J Respir Crit Care Med 160(5 Pt 1):1585-1591, 1999, PMID 10556125 8)Cosentini R, Brambilla AM, Aliberti S, et al:Helmet continuous positive airway pressure vs oxygen

therapy to improve oxygenation in community-acquired pneumonia:a randomized, controlled trial. Chest 138(1):114-120, 2010, PMID 20154071 9)Delclaux C, L'Her E, Alberti C, et al:Treatment of acute hypoxemic nonhypercapnic respiratory

insufficiency with continuous positive airway pressure delivered by a face mask:A randomized controlled trial. JAMA 284(18):2352-2360, 2000, PMID 11066186

P0YMNPPVI\

Z[

',%?c
',%?c
h
M-H, Random, 95%CI

+!Q +!Q M-H, Random, 95%CI NPPV^


I\^

?ck	
l ?c',% VeE 83<NOC NPPV^

7 I\^

7

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス) A B C D E F G

バイアスのリスク
p.185
10)Ferrer M, Esquinas A, Leon M, et al:Noninvasive ventilation in severe hypoxemic respiratory failure:

a randomized clinical trial. Am J Respir Crit Care Med 168(12):1438-1444, 2003, PMID 14500259 11)Gunduz M, Unlugenc H, Ozalevli M, et al:A comparative study of continuous positive airway pressure

(CPAP) and intermittent positive pressure ventilation (IPPV) in patients with flail chest. Emerg Med J:EMJ 22(5):325-329, 2005, PMID 15843697 12)Gupta D, Nath A, Agarwal R, et al:A prospective randomized controlled trial on the efficacy of

noninvasive ventilation in severe acute asthma. Respir Care 55(5):536-543, 2010, PMID 20420722 13)Hernandez G, Fernandez R, Lopez-Reina P, et al:Noninvasive ventilation reduces intubation in chest

trauma-related hypoxemia:a randomized clinical trial. Chest 137(1):74-80, 2010, PMID 19749006 14)Hilbert G, Gruson D, Vargas F, et al:Noninvasive ventilation in immunosuppressed patients with

pulmonary infiltrates, fever, and acute respiratory failure. N Engl J Med 344(7):481-487, 2001, PMID 11172189 15)Honrubia T, Garcia Lopez FJ, Franco N, et al:Noninvasive vs conventional mechanical ventilation in

acute respiratory failure:a multicenter, randomized controlled trial. Chest 128(6):3916-3924, 2005, PMID 16354864 16)Kramer N, Meyer TJ, Meharg J, et al:Randomized, prospective trial of noninvasive positive pressure

ventilation in acute respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med 151(6):1799-1806, 1995, PMID

7767523 17)Matic I, Pavicic F, Sakic-Zdravcevic K, et al:Pulmonary compliance values provide prognosis in

mechanically ventilated patients-a randomized prospective study. Coll Antropol 31(3):829-836, 2007, PMID 18041396 18)Martin TJ, Hovis JD, Costantino JP, et al:A randomized, prospective evaluation of noninvasive

ventilation for acute respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med 161(3 Pt 1):807-813, 2000, PMID 10712326 19)Nava S, Ferrer M, Esquinas A, et al:Palliative use of non-invasive ventilation in end-of-life patients

with solid tumours:a randomised feasibility trial. Lancet Oncol 14(3):219-227, 2013, PMID 23406914 20)Squadrone V, Massaia M, Bruno B, et al:Early CPAP prevents evolution of acute lung injury in

patients with hematologic malignancy. Intensive Care Med 36(10):1666-1674, 2010, PMID 20533022 21)Wermke M, Schiemanck S, Hoffken G, et al:Respiratory failure in patients undergoing allogeneic

hematopoietic SCT-a randomized trial on early non-invasive ventilation based on standard care hematology wards. Bone Marrow Transplant 47(4):574-580, 2012, PMID 21927036 22)Wood KA, Lewis L, Von Harz B, et al:The use of noninvasive positive pressure ventilation in the

emergency department:results of a randomized clinical trial. Chest 113(5):1339-1346, 1998, PMID 9596317 23)Wysocki M, Tric L, Wolff MA, et al:Noninvasive pressure support ventilation in patients with acute

respiratory failure. A randomized comparison with conventional therapy. Chest 107(3):761-768, 1995, PMID 7874950 24)Zhan Q, Sun B, Liang L, et al:Early use of noninvasive positive pressure ventilation for acute lung

injury:a multicenter randomized controlled trial. Crit Care Med 40(2):455-460, 2012, PMID 22020236
p.186
成人ARDS患者において人工呼吸を実施

する際,一回換気量を低く設定するべきか

1 背景,この問題の優先度

ARDS 患者における人工呼吸器の換気戦略は原疾患の治療と共に非常に重要である.特に人工呼吸の設定は,ARDS 患者にとっては最も優先順位が高い.具体的には,ARDS 患者のさらなる肺傷害を軽減するための肺保護換気として一回換気量を制限し,気道内圧を制限するような換気戦略に関して研究が進められてきた. 2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,これまでに低容量一回換気量を中心とした肺保護換気を成人ARDS 患者に使用したRCT は,2013 年のコクランレビューに採用された6 件のみが見つかり,それ以外に追加されたRCT はなかった1).死亡に関しては6 件全てで報告されており(n=1, 305),フォローアップ期間に差はあったが,低容量一回換気量群で減少する傾向がみられた(RR 0. 84, 95%CI 0. 67 ~

1 07).圧損傷(気道内圧上昇による気胸など)に

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,一回換気量を6 ~8mL/kg(予測体重)に設定することを推奨する(GRADE 1B,推奨の強さ「強い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

・一回換気量の計算に関しては,実測体重ではなく,身長から計算される予測体重

を用いる〔男性:50+0. 91(身長(cm)−152. 4),女性:45. 5+0. 91(身長(cm) −152. 4)〕.・10mL/kg 以下の低容量一回換気量が有益であると考えるが,実際にどの程度の換気

量が最も良いのかは明らかでない.本CQ で採用されたRCT では低容量一回換気群は約6. 2 ~7. 6mL/kg 程度で換気されていたため,一回換気量としては6 〜8mL/kg(予測体重)を推奨する.過大な自発呼吸により目標値と実測値に差異が生じることもあり,注意を要する.駆動圧・経肺圧などを考慮した一回換気量の設定も考慮される.

CQ3 CQ3

推  奨

付帯事項
p.187
関しても6 件全てで報告されていたが,有意な減少はみられなかった(RR 0. 82, 95%CI 0. 48 ~1. 41). Ventilator free days;VFD については3 件のRCTを統合したが,平均差2. 52 日(95%CI 0. 53 ~4. 51)有意に増加した.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

死亡に関しては,集まった研究間でフォローアップ期間に差があること(28 日死亡,60 日死亡,院内死亡),I 2 =50%と中等度の異質性があること,信頼区間が広いことから2段階グレードダウンし,エビデンスの確信性を「低」と評価した.圧損傷に関しては,エビデンスの確信性は「非常に低」, VFD についてはエビデンスの確信性は「中」と評価した.低容量一回換気が全てのアウトカムで有利に働く傾向があるため,エビデンスの全体的な質は「中」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

一回換気量を減らすことにより,VFD が増加する.害は高二酸化炭素血症,呼吸性アシドーシスが挙げられるが,いずれも利益が害を上回ると考える.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

低容量一回換気は,通常換気と比較し鎮痛薬や鎮静薬は増量しないとされ2),患者の苦痛を増加させない.パネル会議では,全会一致で低容量一回換気の導入を推奨する案に賛成したため,患者の価値観や好みのばらつきは小さいものと考えられる.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

一般的な人工呼吸管理の設定の違いであり,全ての人工呼吸器で実践できる基本的な設定であるため,新たな資源は必要とせず,コストも増加しない.また低容量一回換気を行うことで,死亡及び圧損傷

を減少させる傾向があり,VFD は有意に増加する.その一方で低容量一回換気による高二酸化炭素血症の不利益は比較的小さいことから,コストと資源のバランスという点では利益が正味の利益となる.

3-5.推奨のグレーディング「一回換気量を6 ~8mL/kg(予測体重)に設定することを推奨する」ことにパネル会議で,全会一致で決定した.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

敗血症治療の国際的なガイドラインである, Surviving Sepsis Campaign 2012 3)では,「敗血症性ARDS では一回換気量を6mL/kg(予測体重)にする(Grade1A)」と低容量一回換気を推奨している.また日本版敗血症診療ガイドラインでも「プラトー圧30cmH2O 以上としない条件で6mL/kg(予測体重)前後の一回換気量を設定する(1A)」と推奨されている4).6mL/kg(予測体重)の設定に関しては,最も症例数の大きいRCT であるARDS network 2000 の研究から設定されているが,我々は他の症例数の少ないRCT も総合して(計6 文献) 6 ~8mL/kg(予測体重)と推奨文を作成した.低容量一回換気を推奨するコンセプトに相違はない.

最近のコクランレビューでは本CQ と同様の6 件のRCT が解析され,28 日死亡,院内死亡およびフォローアップ終了時の死亡のいずれもが減少したと報告されている1).彼らは固定効果モデル(fixed effect model)を用いたforest plot でこのことを示しているが,我々は本CQ における各RCT 間での異質性は比較的高いと考え,ランダム効果モデル(random effect model)を採用した.さらに今回の解析で我々は死亡を短期死亡というカテゴリーで統一したが有意な減少を認めなかった.ちなみに前記コクランレビューのデータをランダム効果モデルで解析するとフォローアップ終了時の死亡の減少は有
p.188
スで検討されており,そこで2012 年9 月までは文献検索がなされている1).そこで2012 年9 月以降の文献を検索する方針とした.具体的には1 年遡って2011 年9 月から2015 年5 月までの文献を検索した.「急性呼吸不全」「低容量一回換気量」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CEN- TRAL, および医中誌で検索したところ,既に検索されていた6 件のRCT と合わせて,581 件の研究が同定された.スクリーニングの結果,新規に追加すべきRCT が見つからなかったため,当初の6 件のRCT を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Amato 1998 5),Brochard 1998 6), Stewart 1998 7), Brower 1999 8), ARDS Network 2000 9),Villar

2006 10)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

意ではなくなる.なお本CQ で解析した圧損傷やVFD は前記コクランレビューでは検討されていない.

5 治療のモニタリングと評価

人工呼吸管理上の設定変更であり,人工呼吸管理の目的である酸素化,換気に関するモニタリングが必要である.

6 今後の研究の可能性

低容量一回換気量による肺保護戦略は一般に受け入れられる通常治療となっており2006 年以降,低容量一回換気量と通常の換気量を比較したRCT は発表されていない.ただ目標換気量を6mL/kg(予測体重)と8mL/kg(予測体重)のどちらにするべきかについては考慮の余地があり,将来的に研究が必要である.駆動圧・経肺圧などを考慮した一回換気量設定についての研究の可能性もある.

7 文献検索式と文献選択

本CQ はPetrucci らによってコクランデータベー
p.189
9 エビデンス・プロファイル

CQ3:成人ARDS 患者に対する低容量一回換気と通常量一回換気の比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因低容量

換気通常

換気相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

6 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 1 2深刻でない深刻5なし212/658

(32.2%) 257/647

(39.7%)

RR 0.84 (0.67〜1.07) 64 少ない/1000

(28 多い~131 少ない)

⨁⨁◯◯

低1 2 5重

大

38.0% 61 少ない/1000

(27 多い~125 少ない)

56.0% 90 少ない/1000

(39 多い~185 少ない)

圧損傷

6 ランダ

ム化比較試験深刻 3深刻 2 4深刻でない深刻5なし63/655

(9.6%) 73/642

(11.4%)

RR 0.82 (0.48〜1.41) 20 少ない/1000

(47 多い~59 少ない)

⨁◯◯◯

非常に低 2 3 4 5重

大

3.8% 7 少ない/1000

(16 多い~20 少ない)

12.0% 22 少ない/1000

(49 多い~62 少ない)

VFD(注2

3 ランダ

ム化比較試験深刻 3深刻でない深刻でない深刻でないなし508 500 ‐平均2.52 日多い

(0.53 日多い~

4.51 日多い) ⨁⨁⨁◯

中 3重

大

RR:相対リスク1.中等度の異質性がある(I2 = 30〜60%). 2.フォローアップ期間が異なる. 3.moderate risk of bias の研究が多い. 4.圧損傷の定義が一定でない. 5.信頼区間が広い.
p.190
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ3:成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,一回換気量を低く設定するべきか

集団:成人ARDS 患者介入:低容量一回換気量

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる●高い◯おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えないARDS 患者における人工呼吸器の換気戦略は原疾患の治療と共に非常に重要で

ある.特に人工呼吸の設定は,ARDS 患者にとっては最も優先順位が高い.具体的には,ARDS 患者のさらなる肺傷害を軽減するための肺保護換気として一回換気量を制限し,気道内圧を制限するような換気戦略に関して研究が進められてきた.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高●中◯低◯非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性 (GRADE)死亡(短期)(注1重大⨁⨁◯◯

低

圧損傷重大⨁◯◯◯

非常に低

VFD(注2重大⨁⨁⨁◯

中

結果のまとめ

アウトカム通常換気低容量換気絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 397/1000 334/1000 (266~425) 64 少ない/1000 (28 多い~131 少ない)

RR 0.84 (0.67-1.07) 380/1000 319/1000 (255~407)

61 少ない/1000 (27 多い~125 少ない)

560/1000 470/1000 (375~599) 90 少ない/1000 (39 多い~185 少ない)

圧損傷114/1000 93/1000 (55~160) 20 少ない/1000 (47 多い~59 少ない)

RR 0.82 (0.48-1.41) 38/1000 31/1000 (18~54)

7 少ない/1000 (16 多い~20 少ない)

120/1000 98/1000 (58~169) 22 少ない/1000 (49 多い~62 少ない)

VFD(注2平均8.9 日平均11.4 日平均2.52 日多い

(0.53 日多い~

4.51 日多い) -

要約:ARDS 患者において,低容量一回換気は,通常一回換気と比較して,死亡が減少する傾向がみられたが有意でなかった.圧損傷に関しては有意な減少はみられなかった.VFD は有意に増加した.低容量換気/通常換気群での換気設定を列挙するとAmato 1998: 6 vs 12mL/kg(実測体重),Brochard 1998: 6~10 vs 10~15mL/kg(実測体重), Stewart 1998: 8 vs 10~ 15mL/kg(予測体重),Brower 1999: 5~8 vs 10~12mL/kg(予測体重),ARDS network 2000: 6 vs 12mL/kg(予測体重),Villar 2006: 5~8 vs 9~11mL/kg(予測体重)となっており低容量換気群では5~10mL/kg と幅がある.しかしながら実際の研究結果では,低容量換気群は約6.2~7.6mL/kg 程度で換気されていた.対照群の通常換気群は,研究結果をまとめると約10~11.8mL/kg 程度で換気されていた.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは小さい●たぶんばらつきは小さい◯ばらつきは大きいか

どうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない
p.191
予想される害は小さいですか? ◯わずか●小さい◯中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない◯わからない一回換気量を低容量にすることで高二酸化炭素血症を引き起こしかねないが,換気回数の増加などである程度対応可能である.人工呼吸器患者においては一般に人工呼吸器装着の苦痛を軽減,呼吸器との呼吸の同調を促すために鎮静・鎮痛薬が必要とされるが,低容量一回換気量で必要となる鎮痛・鎮静薬の量は増加しないとされる2).

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ●少ない◯たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要と

する◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない一般的な人工呼吸管理の設定の違いであり,全ての人工呼吸器で実践できる基

本的な設定であるため,新たな資源は必要としない.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ●コストは利益よりも小さい◯たぶんコストは

利益よりも小さい◯わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない新たな資源を必要としないため,コストは増加しない.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる●公平になる------------------ ◯一概には言えない人工呼吸管理が可能な施設であればどこでも可能な治療である.不公平さは生じ

ない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れられ

ない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない十分現実的に実現可能である.注1:フォローアップ期間終了時の死亡.ただしARDS network 2000 に関しては,文献中の生存曲線より28 日死亡を読み取り,28 日死亡を使用した.注2:28 日間のうち,人工呼吸器に依存していない日数を指す.ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする.
p.192
V-aR bc%*#?h%*#?hmM-H, Random, 95%CI )W M-H, Random, 95%CI

0FnOXdkIOXd )W

0FnOXd7 kIOXd7

?hq	
r ?h%*# ^jK 81<STE

CQ03-06 Forest plot V-aR

バイアスのリスクA B C D E F G

: b , l

bc%*#?h%*#?hmM-H, Random, 95%CI )W M-H, Random, 95%CI

0FnOXdkIOXd )W

0FnOXd7 kIOXd7

?hq	
r ?h%*# ^jK 81<STE

AP6

VFD A B C D E F G

バイアスのリスク: b  , l 

0FnOXd7 kIOXd7

?hq	
r ^jK 81<STE

bcJBU[5H?hJBU[5H?hmM-H, Random, 95%CI

)W M-H, Random, 95%CI )W VFD A B C D E F G

バイアスのリスク低容量換気群     通常換気群

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.193
■ 文 献1)Petrucci N, De Feo C:Lung protective ventilation strategy for the acute respiratory distress

syndrome. Cochrane Database Syst Rev 2:CD003844, 2013, PMID 23450544 2)Kahn JM, Andersson L, Karir V, et al:Low tidal volume ventilation does not increase sedation use in

patients with acute lung injury. Crit Care Med 33(4):766-771, 2005, PMID 15818103 3)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for

Management of Severe Sepsis and Septic Shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID

23353941 4)日本集中治療医学会敗血症レジストリ委員会:日本版敗血症診療ガイドライン The Japanese Guidelines

for the Management of Sepsis. 日集中医誌 20:124-173, 2013, PMID なし5)Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al:Effect of a protective-ventilation strategy on mortality in

the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 338(6):347-354, 1998, PMID 9449727 6)Brochard L, Roudot-Thoraval F, Roupie E, et al:Tidal volume reduction for prevention of ventilator-

induced lung injury in acute respiratory distress syndrome. The Multicenter Trail Group on Tidal Volume reduction in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 158(6):1831-1838, 1998, PMID 9847275 7)Stewart TE, Meade MO, Cook DJ, et al:Evaluation of a ventilation strategy to prevent barotrauma in

patients at high risk for acute respiratory distress syndrome. Pressure- and Volume-Limited Ventilation Strategy Group. N Engl J Med 338(6):355-361, 1998, PMID 9449728 8)Brower RG, Shanholtz CB, Fessler HE, et al:Prospective, randomized, controlled clinical trial

comparing traditional versus reduced tidal volume ventilation in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 27(8):1492-1498, 1999, PMID 10470755 9)ARDS Network:Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for

acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 342(18):1301-1308, 2000, PMID 10793162 10)Villar J, Kacmarek RM, Perez-Mendez L, et al:A high positive end-expiratory pressure, low tidal

volume ventilatory strategy improves outcome in persistent acute respiratory distress syndrome:a randomized, controlled trial. Crit Care Med 34(5):1311-1318, 2006, PMID 16557151
p.194
成人ARDS患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧をどう設定すればよいか

1 背景,この問題の優先度

成人ARDS 患者における人工呼吸管理では,肺コンプライアンス低下に伴い人工呼吸関連肺傷害をきたしやすい.人工呼吸関連肺傷害は人工呼吸装着期間の延長のみならず死亡率上昇につながることが危惧される1).人工呼吸関連肺傷害をきたす要因として人工呼吸管理中の一回換気量の増加と気道内圧上昇があげられ,プラトー圧を制限することにより両者を抑制することが期待される2).一方でプラトー圧を制限することは有益性ばかりでなく高二酸化炭素血症などの有害事象を招くこともある3).よって,人工呼吸関連肺傷害をきたさず,有益性を示す最適なプラトー圧は定かではなくその検証が必要であり,その優先順位は高い. 2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,4 つのRCT(患者1, 132 人)が見つかった.人工呼吸管理開始後5 ~ 7 日間はプラトー圧を30cmH2O 以下に設定することによりVFD の延長(平均2. 5 日, 95% CI 0. 51 ~

4 49)を認めたが,死亡(RR 0. 84, 95%CI 0. 62 ~

1 15)と圧損傷(RR 0. 92, 95%CI 0. 65 ~1. 31)は

減少する傾向を示したが統計学的に有意ではなかった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

人工呼吸器設定による目標値を比較する研究はたとえRCT と言えども患者および医療担当者の盲検化を行うことはできず,今回取り上げた4 つの

CQ4 CQ4

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧は30cmH2O 以下

となるように設定することを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

最適なプラトー圧は不明であり今後の検討を要する.

推  奨

付帯事項
p.195
VFD 延長には寄与し,有意差は認めなかったものの圧外傷のリスクも懸念されることから,「実施することを提案する」とすることが全会一致で決定した.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

2014 年に報告されたScandinavian clinical practice guideline では4),2013 年のPetrucci らのコクランレビューを引用し5),「ARDS 患者において気道内圧,一回換気量を抑えることを強く推奨する」としている.なお,このガイドラインではプラトー圧の上限を定めていないことに注意を要する.また,Surviving Sepsis Campaign Guideline 2012では「ARDS においてはプラトー圧を測定し,受動的肺拡張時の初期のプラトー圧の目標を30cmH2O 以下とすることを推奨する(1B)」と記載されている6).

5 治療のモニタリングと評価

人工呼吸管理上の設定変更であり,人工呼吸管理の目的である酸素化,換気に関するモニタリングが必要である.

6 今後の研究の可能性

最適なプラトー圧は不明確であり,さまざまなプラトー圧をカットオフとした研究が必要である.また,近年は経肺圧が注目されており,自発呼吸による陰圧呼吸が加わった場合を考慮したプラトー圧の比較を検討する必要がある.

7 文献検索式と文献選択

「ARDS」,「肺保護換気」,「RCT」をキーワードとしてPubMed,EMBASE,Cochrane CENTRAL,および医中誌で検索したところ3, 324 件の研究が同定され,スクリーニングの結果4 件のランダム化比

RCT も同様でありその他のバイアスには明らかな問題点はないが,全体としてはバイアスのリスクを1 段階グレードダウンした.非一貫性や非直接性は認めなかったが,不精確性については,イベント(死亡)発生総数は1, 132 人中,381 人であり十分であったが,統計的な有意差は認めず,かつ,95% 信頼区間が広く,不精確と判断した.よって上記をまとめると全体的なエビデンスの質は「中」とするのが妥当であると思われた.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

人工呼吸設定変更による予想される害は低酸素血症・高二酸化炭素血症・呼吸仕事量増加であると思われるが,どれも許容範囲が広く,介入による害は低いと考えられる.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

プラトー圧が上昇することによる人工呼吸関連肺傷害は重大な合併症であり,プラトー圧上昇でそのリスクは大きくなることは容易に想像でき,プラトー圧を制限することによる人工呼吸管理が可能であればその管理方法の方が受け入れられることに懸念される要素はない.よって,患者の価値観や好みに差は生じず,プラトー圧を制限する人工呼吸管理を選択する患者がほとんどであると予想される.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

人工呼吸管理の設定変更のみであり,必要とする資源に変わりはない.よって,必要資源の増分はないと思われるので,コストも最小限で利益のほうが勝ると思われる.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議での話し合いで,プラトー圧上限を30cmH2O に制限する人工呼吸管理は通常の呼吸管理方法に比べて有意に死亡率改善は認めないが
p.196
9 エビデンス・プロファイル

CQ4:成人ARDS 患者に対するプラトー圧を30cmH2O 以下に制限する群とプラトー圧を

30cmH2O 以下に制限しない群の比較

較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Brochard 1998 7), Brower 1999 8), ARDS Network 2000 9), Villar 2006 10)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアス

のリスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因プラトー

圧を30 cm H2O 以下に制限する群プラトー圧を

30 cm H2O 以下に制限しな

い群相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

4 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない深刻 2なし169/569

(29.7%) 212/563

(37.7%)

RR 0.84 (0.62~1.15) 60 少ない/1000

(56 多い~143 少ない)

⨁⨁◯◯

低 1 2重

大38.0% 61 少ない/1000

(57 多い~144 少ない)

56.0% 90 少ない/1000

(84 多い~213 少ない)

VFD(注2

3 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない深刻でないなし508 500 -平均2.5 日多い

(0.51 日多い~4.49 日多い) ⨁⨁⨁◯

中1重

大

圧損傷

4 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない非常に

深刻 2 3なし55/566

(9.7%) 59/558

(10.6%)

RR 0.92 (0.65~1.31) 8 少ない/1000

(33 多い~37 少ない)

⨁◯◯◯非常に低 1 2 3重

大3.8% 3 少ない/1000

(12 多い~13 少ない)

12.0% 10 少ない/1000

(37 多い~42 少ない)

RR:相対リスク

1.盲検化されていない. 2.信頼区間が広い. 3.サンプルサイズが小さい.
p.197
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ4:成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,プラトー圧をどう設定すればよいか

集団:成人ARDS 患者介入:プラトー圧を30 cm H2O 以下に制限

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題はより優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えない成人ARDS 患者における人工呼吸管理では,肺コンプライアンス低下に伴い人工呼吸

関連肺傷害をきたしやすい.人工呼吸関連肺傷害は人工呼吸装着期間の延長のみならず死亡率上昇につながることが危惧され1).人工呼吸関連肺傷害をきたす要因として人工呼吸管理中の一回換気量の増加と気道内圧上昇があげられ,プラトー圧を制限することにより両者を抑制することが期待される2).一方でプラトー圧を制限することは有益性ばかりでなく高二酸化炭素血症などの有害事象を招くこともある3).よって,人工呼吸関連肺傷害をきたさず,有益性を示す最適なプラトー圧は定かではなく,その検証が必要であり,その優先順位は高い.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高●中◯低◯非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性

(GRADE)

死亡(短期)(注1重大⨁⨁◯◯

低

VFD(注2重大⨁⨁⨁◯

中

圧損傷重大⨁◯◯◯

非常に低

結果のまとめ

アウトカムプラトー圧>30cmH2Oプラトー圧≦30cmH2O絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 377/1000 316/1000

(233~433) 60 少ない/1000

(56多い〜143少ない)

RR 0.84

(0.62~1.15) 380/1000 319/1000

(236~437) 61 少ない/1000

(57多い〜144少ない)

560/1000 470/1000

(347~644) 90 少ない/1000

(84多い〜213少ない)

VFD(注2平均 9.0 日平均 11.5 日平均2.5 日多い

(0.51 日多い~4.49 日多い) -

圧損傷106/1000 97/1000

(69~139) 8 少ない/1000

(33 多い〜37 少ない)

RR 0.92

(0.65~1.31) 38/1000 35/1000

(25~50) 3 少ない/1000

(12 多い〜13 少ない)

120/1000 110/1000

(78~157) 10 少ない/1000

(37 多い〜42 少ない)

要約:人工呼吸開始後5〜7 日間はプラトー圧を30 cm H2O 以下に設定することによ

りVFD の延長(絶対差2.5, 95% CI 0.51〜4.49)を認めたが,死亡が減少する傾向を示した(RR 0.84, 95% CI 0.62〜1.15)が統計学的に有意ではなかった.圧損傷に関してもプラトー圧を30cmH2O に設定することにより減少する傾向(RR 0.92, 95% CI 0.65〜1.31)を示したが,統計学的に有意ではなかった.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ●ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは小さい◯ばらつきは大きいかどうか

不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ●わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ●効果は大きい◯たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない
p.198
注1:ARDS 2000 は28 日死亡(カプランマイヤー曲線から読み取った),その他は研究期間終了時死亡.注2:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数.ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする.

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ●少ない◯たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要とする◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない人工呼吸管理の設定変更のみであり,必要とする資源に変わりはない.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ●コストは利益よりも小さい◯たぶんコストは利益よりも小

さい◯わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない上記により必要資源の増分はないと思われるので,コストも最小限で利益のほうが勝る

と思われる.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる●公平になる------------------ ◯一概には言えない人工呼吸が可能な施設であればどこでも可能な治療である.不公平さは生じない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れられない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない人工呼吸器の設定変更のみであり,可能である.
p.199
3(&] gh"/4,Hm"/4,HmqM-H, Random, 95%CI

3(&] M-H, Random, 95%CI .2,5J0i.2,5Ji

Hmt
	
u Hm"/4, coR A:EYZN

\7fX

.2,5Ji

@ .2,5J0i

@ A B C D E F G

バイアスのリスク

Hmt
	
u coR A:EYZN

VFD

ghQK[`>PHmQK[`>PHmqM-H, Random, 95%CI

3(&] M-H, Random, 95%CI .2,5J0i.2,5Ji 3(&]

.2,5Ji

@ .2,5J0i

@ A B C D E F G

バイアスのリスク

Hmt
	
u coR A:EYZN

VFD

ghQK[`>PHmQK[`>PHmqM-H, Random, 95%CI

3(&] M-H, Random, 95%CI .2,5J0i.2,5Ji 3(&]

.2,5Ji

@ .2,5J0i

@

Hmt
	
u Hm"/4, coR A:EYZN

JV?

gh"/4,Hm"/4,HmqM-H, Random, 95%CI

3(&] M-H, Random, 95%CI .2,5J0i.2,5Ji 3(&]

.2,5J≦i

@ .2,5Ji

@ A B C D E F G

バイアスのリスク

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.200
■ 文 献1)Esteban A, Ferguson ND, Meade MO, et al:Evolution of mechanical ventilation in response to clinical

research. Am J Respir Crit Care Med 177(2):170-177, 2008, PMID 17962636 2)Artigas A, Bernard GR, Carlet J, et al:The American-European Consensus Conference on ARDS, part 2.

Ventilatory, pharmacologic, supportive therapy, study design strategies and issues related to recovery and remodeling. Intensive Care Med 24(4):378-398, 1998, PMID 9609420 3)Feihl F, Perret C:Permissive hypercapnia. How permissive should we be? Am J Respir Crit Care Med

150(6 Pt 1):1722-1737, 1994, PMID 7952641 4)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical

ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286- 297, 2015, PMID 25524779 5)Petrucci N, De Feo C:Lung protective ventilation strategy for the acute respiratory distress

syndrome. Cochrane Database Syst Rev 2:CD003844, 2013, PMID 23450544 6)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for

Management of Severe Sepsis and Septic Shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID 23353941 7)Brochard L, Roudot-Thoraval F, Roupie E, et al:Tidal volume reduction for prevention of ventilator-

induced lung injury in acute respiratory distress syndrome. The Multicenter Trail Group on Tidal Volume reduction in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 158(6):1831-1838, 1998, PMID 9847275 8)Brower RG, Shanholtz CB, Fessler HE, et al:Prospective, randomized, controlled clinical trial

comparing traditional versus reduced tidal volume ventilation in acute respiratory distress syndrome patients. Crit Care Med 27(8):1492-1498, 1999, PMID 10470755 9)ARDS Network:Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for

acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 342(18):1301-1308, 2000, PMID 10793162 10)Villar J, Kacmarek RM, Perez-Mendez L, et al:A high positive end-expiratory pressure, low tidal

volume ventilatory strategy improves outcome in persistent acute respiratory distress syndrome:a randomized, controlled trial. Crit Care Med 34(5):1311-1318, 2006, PMID 16557151
p.201
成人ARDS患者において人工呼吸を実施する際,

PEEPをどう設定すればよいか

1 背景,この問題の優先度

人工呼吸管理をされている患者において,呼気終末陽圧(PEEP)を用いることで無気肺を防ぎ,酸素化が改善されることが広く知られている.特にARDS 患者に対するPEEP は,低酸素血症の是正だけではなく,炎症および滲出液などで虚脱した肺胞をリクルートすることにより,さらなる人工呼吸器関連肺傷害の進行を防ぐ可能性が示唆されている1, 2).ARDS 患者に対する至適PEEP 値は不明であるが,優先順位は高いと考えられる.

2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,7 つのランダム化比較試験が採用され,院内死亡,圧損傷,人工

呼吸器に依存していない日数は,高PEEP 群と低PEEP 群の間に有意差は認められなかった.なお,院内死亡の解析には,介入群においてPEEP の値以外にアウトカムに影響を与え得る介入を行っている研究を除外したため,Brower 2004,Meade 2008,Mercat 2008 の3つの論文のみが用いられた3 ~5).

PEEP 以外の介入の影響が無視できない研究を含めたメタアナリシスを行った結果,高PEEP 群は低PEEP 群と比較して死亡率に有意差が認められなかった(RR 0. 87, 95%CI 0. 74 ~1. 02).また中等度以上 (P/F 比≦200)のARDS のみを対象とした場合,PEEP 以外の介入の影響が無視できない研究を含めたサブ解析および,それらの研究を除外したサブ解析の両方で高PEEP 群は低PEEP 群と比較して有意に死亡率が低かった(それぞれRR 0. 82,

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEP 値はプラトー圧が30cmH2O 以下となる範囲内および循環動態に影響を与えない範囲内で設定することを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/ エビデンスの確信性「中」)また中等度以上のARDS には高めのPEEP を用いることを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

PEEP の上昇によってプラトー圧の上昇,血圧の低下,一回換気量の低下などが起こりうる.高めのPEEP を用いるときは各呼吸パラメーターおよび循環動態に十分に注意を払うべきである.

CQ5 CQ5

推  奨

付帯事項
p.202
ビューの結果,高めのPEEP で死亡率などが変わらないことを受けて,推奨文前半で「高めのPEEPをルーチンに用いない」という文言が草案として提出された.しかしながらBrower 2004, Meade 2008,Mercat 2008 の研究においてコントロール群に用いられたPEEP は決して低いものでないことから,この表現では誤解を招きかねないとの意見が出され,さらに推奨文案の練り直しを行った.その結果表記の表現が草案として提出され,メーリングリストにて再度開催したパネル会議で,全員一致で承認が得られた.その後,解析にRandom effect model を全CQ で用いることが決定されたため,それまでCQ5 で用いられていたFixed effect model をRandom effect model に変更して再解析が行われた.その結果,中等度以上 (P/F 比≦200)のARDS のみを対象とした場合,PEEP 以外の介入の影響が無視できない研究を含めたサブ解析および,それらの研究を除外したサブ解析の両方で高PEEP 群は低PEEP 群と比較して有意に死亡率が低かった.再度メーリングリストでパネル会議が開催され,決定されていた草案が再解析の結果と矛盾しないため,推奨の草案を変更しないことが全員一致で決定された.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

Surviving sepsis campaign 2012 およびScandinavian clinical practice guideline on mechanical ventilation in ARDS 2014 では,PEEP をゼロに設定するのではなく,少なくとも最小限のPEEP(一般的には5cmH2O 以上)を使用することが推奨または提案されている9, 10).

5 治療のモニタリングと評価

人工呼吸管理上の設定変更であり,人工呼吸管理の目的である酸素化,換気に関するモニタリングが必要である.高PEEP の使用については,循環動態の変化に注意する.

95%CI 0. 73 〜0. 92,RR 0. 85, 95%CI 0. 75 〜0. 96).

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

本システマティックレビューに用いられた7 つのランダム化比較試験の内,5 つの研究(Amato 1998,Brower 2004,Mercat 2008,Talmor 2008, Villar 2006)が途中で中止され3, 5 ~8),そのうちAmato 1998,Talmor 2008,Villar 2006 はサンプルサイズが不十分であった.そのため,バイアスのリスクがあると判断しグレードダウンした.その結果,全体的なエビデンスの確信性は「中」となった.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

明確な利益も害も明らかではない.人工呼吸器の設定の変更のみなので,付加的なコストは節制しない.高PEEP による循環動態の変化に注意する.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,患者によるばらつきは小さいと思われる.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

高PEEP が低PEEP と比較してVFD が有意に大きければ,コスト削減に繋がるが,有意差は無いため,コストに差があるとは言えない.そのため,正味の利益とコストや資源のバランスについて,一概に言うことはできない.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議では,高めのPEEP の推奨に関する議論がなされ,中等度以上のARDS に対するサブ解析も追加した上で,再度パネル会議にかけるべきとの意見が出された.再度のシステマティックレ
p.203
6 今後の研究の可能性

現時点においてARMA study (他CQ ではARDS network 2000 と表記) 11)やBrower 2004 (ALVEOLI study)で使用されたFIO2 とPEEP の設定表よりも最適なPEEP を決定する方法は見当たらず,通常はARMA study で有用性が認められた対応表(ALVEOLI では低PEEP 群で採用)を参照,さらに中等度以上のARDS には高PEEP 群の対応表を参照することが良いとの意見がパネル会議で出された(p.206,注3 参照).したがってどのようなサブグループが高いPEEP または低いPEEPによってアウトカムの改善が認められるかをさらに明らかにする研究が必要である.また,高PEEP または低PEEP という分類ではなく,「各患者にとって最も適したPEEP 値の決定法」を比較する研究が今後必要になってくると思われる. 7 文献検索式と文献選択

2012 年3 月までの文献は,先行するCochrane のシステマティックレビュー12)にて同定された7 件の研究を用いた.「ARDS 」「PEEP」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRALで2012 年4 月1 日から2015 年6 月30 日までの文献を検索したところ871 件の研究が同定された.これら計878 件のスクリーニングの結果,6 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Amato 1998 6), Brower 2004 3), Huh 2009 13), Mercat 2008 5), Villar 2006 8), Meade 2008 4)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf
p.204
9 エビデンス・プロファイル

CQ5:成人ARDS 患者に対する高PEEP と低PEEP の比較

質の評価患者数効果

質重要度

研究数研究

デザインバイアス

のリスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因高PEEP低PEEP相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

3 ランダム

化比較試

験深刻1深刻でない深刻でない深刻でないなし385/1136

(33.9%) 422/1163

(36.3%)

RR 0.93 (0.83~1.04) 25 少ない/1000

(15 多い~62 少ない)

⨁⨁⨁◯

中重

大

38.0% 27 少ない/1000

(15 多い~65 少ない)

56.0% 39 少ない/1000

(22 多い~95 少ない)

VFD(注2

2 ランダム

化比較試

験深刻でない深刻2深刻でない深刻でないなし10.56 12.46 -平均1.89 日多い

(3.58 日少ない~7.36 日多い) ⨁⨁⨁◯

中重

大

圧損傷

6 ランダム

化比較試

験深刻1深刻でない深刻でない深刻でないなし116/1245

(9.3%) 113/1259

(9.0%)

RR 0.97 (0.66~1.42) 3 少ない/1000

(38 多い~31 少ない)

⨁⨁⨁◯

中重

要

3.8% 1 少ない/1000

(16 多い~13 少ない)

12.0% 4 少ない/1000

(50 多い~41 少ない)

RR:相対リスク

1.3 件の研究で利益が得られたために試験が中途中断されている2.I2=87% p=0.005 と異質性が高い. .
p.205
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ5:成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,PEEP をどう設定すればよいか

集団:成人ARDS 患者介入:高PEEP

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えない人工呼吸管理をされている患者に対し,呼気終末陽圧(PEEP)を用いることで無気肺を防

ぎ,酸素化が改善されることが広く知られている.特にARDS 患者に対するPEEP は,低酸素血症の是正だけではなく,炎症および滲出液などで虚脱した肺胞をリクルートすることにより,さらなる人工呼吸器関連肺傷害の進行を防ぐ可能性が示唆されている1, 2).ARDS 患者に対する至適PEEP 値は不明であるが,優先順位は高いと考えられる.低PEEP

および高PEEPの定義は注3参照

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高●中◯低◯非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性

(GRADE)

死亡(短期)(注1重大⨁⨁⨁◯

中

VFD(注2重大⨁⨁⨁◯

中

圧損傷重要⨁⨁⨁◯

中

結果のまとめ

アウトカム低PEEP高PEEP絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 363/1000 337/1000 (301〜377) 25 少ない/1000 (15 多い〜62 少ない)

RR 0.93 (0.83〜1.04) 380/1000 353/1000 (315〜395)

27 少ない/1000 (15 多い〜65 少ない)

560/1000 521/1000 (465〜582) 39 少ない/1000 (22 多い〜95 少ない)

VFD(注2平均10.56 日平均12.46 日平均1.89 日多い(3.58 日少ない〜

7.36 日多い) -

圧損傷90/1000 87/1000 (59〜128) 3 少ない/1000 (38 多い〜31 少ない)

RR 0.97 (0.66〜1.42) 38/1000 37/1000 (25〜54)

1 少ない/1000 (16 多い〜13 少ない)

120/1000 116/1000 (79〜170) 4 少ない/1000 (50 多い〜41 少ない)

要約:高PEEP および低PEEP で院内死亡,圧損傷,人工呼吸器を装着していない日数に

有意な違いを認めなかった.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ●ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは

小さい◯ばらつきは大きかどうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい◯中程度◯小さい◯わずか------------------ ●一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------ ●一概には言えない◯わからない
p.206
効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい◯たぶん効果は

大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ●一概には言えない

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ●少ない◯たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要

とする◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない人工呼吸器の設定変更だけであり,必要とされる資源が増加することはない.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい◯たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ●一概には言えない高PEEP が低PEEP と比較してVFD が有意に大きければ,コスト削減に繋がるが,有意差

は無いため,コストに差があるとは言えない.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平に

なる◯わからない◯たぶん公平になる●公平になる------------------ ◯一概には言えない人工呼吸器設定の変更のみなので,格差は生じない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れら

れない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない人工呼吸器設定の変更のみなので,実現可能.注1:院内死亡として院内死亡の記載がない場合は28 日死亡あるいはICU 死亡を採用した.注2:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数.ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとした.注3:低PEEP および高PEEP の定義

各ランダム化比較試験において,低PEEP および高PEEP の定義は独自に設定されている.以下に,本解析で用いたランダム化試験における低 PEEP および高 PEEP の定義を示す. Brower 2004(ALVEOLI):必要とされる吸入酸素濃度(FIO2)に対して対応するPEEP 値があらかじめ決められており,高PEEP 群に用いるPEEP 値は,低PEEP 群に用いるPEEP 値に比べ,同一のFIO2 に対して高く設定されている. ○低PEEP 群に採用された対応表

FIO2 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.6 0.7 0.7 0.7 0.8 0.9 0.9 0.9 1.0 1.0 1.0 1.0 PEEP 5 5 8 8 10 10 10 12 14 14 14 16 18 18 20 22 24
p.207
e8p`

qr-3)Mz-3)Mz~M-H, Random, 95%CI

1%"f M-H, Random, 95%CI 1%"f ƒPEEP t=PEEP t

ƒPEEPtD =PEEPtD

Mz„ Mz-3) m|Z F>JbcT

CQ05-06 Forest plot e8p`

A B C D E F G

バイアスのリスク

ƒPEEPtD =PEEPtD

O^C

Mz„ Mz-3) m|Z F>JbcT

qr-3)Mz-3)Mz~M-H, Random, 95%CI

1%"f M-H, Random, 95%CI 1%"f ƒPEEP t=PEEP t A B C D E F G

バイアスのリスク

ƒPEEPtD =PEEPtD

VFD

Mz„ m|Z F>JbcT 1%"f M-H, Random, 95%CI 1%"f ƒPEEP t=PEEP t

qrWPdiBVMzWPdiBVMz~M-H, Random, 95%CI

A B C D E F G

バイアスのリスク

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット

○高PEEP 群に採用された対応表

FIO2 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5-0.8 0.8 0.9 1.0 PEEP 12 14 14 16 16 18 20 22 22 22-24

Meade 2008:必要とされるFIO2 に対して対応するPEEP 値があらかじめ決められており,高PEEP 群に用いるPEEP 値は,低PEEP群に用いるPEEP 値に比べ,同一のFIO2 に対して高く設定されている.この対応表はBrower 2004 同様にARMA study で用いられた表を元に作成されている11). Mercat 2008:低PEEP 群はPPEP を5~9 cmH2O になるように設定し,高PEEP 群はプラトー圧が28~30cmH2O となるようにPEEP を設定している.
p.208
■ 文 献1)Gattinoni L, Caironi P:Refining ventilatory treatment for acute lung injury and acute respiratory

distress syndrome. JAMA 299(6):691-693, 2008, PMID 18270359 2)Dreyfuss D, Saumon G:Ventilator-induced lung injury:lessons from experimental studies. Am J

Respir Crit Care Med 157(1):294-323, 1998, PMID 9445314 3)Brower RG, Lanken PN, MacIntyre N, et al:Higher versus lower positive end-expiratory pressures in

patients with the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 351(4):327-336, 2004, PMID

15269312 4)Meade MO, Cook DJ, Guyatt GH, et al:Ventilation strategy using low tidal volumes, recruitment

maneuvers, and high positive end-expiratory pressure for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 299(6):637-645, 2008, PMID 18270352 5)Mercat A, Richard JC, Vielle B, et al:Positive end-expiratory pressure setting in adults with acute

lung injury and acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 299(6):646- 655, 2008, PMID 18270353 6)Amato MB, Barbas CS, Medeiros DM, et al:Effect of a protective-ventilation strategy on mortality in

the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 338(6):347-354, 1998, PMID 9449727

$+#24,ya e8p`„FRCT

qr-3)Mz-3)Mz~M-H, Random, 95%CI

1%"f M-H, Random, 95%CI 1%"f ƒPEEP t=PEEP t

Mz„ Mz-3) m|Z F>JbcT

ƒPEEPtD =PEEPtD

CQ05 06 Forest plot

e8p`

サブグループ解析死亡短期(全RCT) PF比200以下の中等度,重症ARDSのみを対象

研究                イベント 合計 イベント 合計  重み     M-H, Random, 95%CI

リスク比M-H, Random, 95%CIリスク比高PEEP 群  低PEEP 群

合計(95%CI)合計イベント異質性.全体の効果の検定:

高PEEP群が優れる低PEEP群が優れる

死亡(短期)

サブグループ解析死亡短期(PEEP以外の介入の影響が無視できないRCTを除外) PF比200以下の中等度,重症ARDSのみを対象

研究                イベント 合計 イベント 合計  重み     M-H, Random, 95%CI

リスク比M-H, Random, 95%CIリスク比高PEEP 群  低PEEP 群

合計(95%CI)合計イベント異質性.全体の効果の検定:

高PEEP群が優れる低PEEP群が優れる

死亡(短期)
p.209
7)Talmor D, Sarge T, Malhotra A, et al:Mechanical ventilation guided by esophageal pressure in acute

lung injury. N Engl J Med 359(20):2095-2104, 2008, PMID 19001507 8)Villar J, Kacmarek RM, Perez-Mendez L, et al:A high positive end-expiratory pressure, low tidal

volume ventilatory strategy improves outcome in persistent acute respiratory distress syndrome:a randomized, controlled trial. Crit Care Med 34(5):1311-1318, 2006, PMID 16557151 9)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for

Management of Severe Sepsis and Septic Shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID 23353941 10)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical

ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286- 297, 2015, PMID 25524779 11)ARDS Network:Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for

acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 342(18):1301-1308, 2000, PMID 10793162 12)Santa Cruz R, Rojas JI, Nervi R, et al:High versus low positive end-expiratory pressure (PEEP) levels

for mechanically ventilated adult patients with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Cochrane Database Syst Rev 6:CD009098, 2013, PMID 23740697 13)Huh JW, Jung H, Choi HS, et al:Efficacy of positive end-expiratory pressure titration after the alveolar

recruitment manoeuvre in patients with acute respiratory distress syndrome. Crit Care 13(1):R22, 2009, PMID 19239703
p.210
成人ARDS患者において,プロトコール化

された人工呼吸器離脱を行うべきか

1 背景,この問題の優先度

集中治療室で人工呼吸器を必要としている患者が,人工呼吸器から離脱する過程は標準化されていない.そのため,本来であれば人工呼吸器から離脱できているはずの患者に対し,不必要に人工呼吸器が使用されている可能性がある.人工呼吸器離脱までの過程をプロトコール化することで,人工呼吸器使用の不必要な遷延を防ぎ,人工呼吸器使用期間が短縮する可能性が示唆される2, 3).ARDS 患者の多くは長期の人工呼吸が必要であり,もしプロトコール化された人工呼吸器離脱法が有効であれば利するところは大きいと考えられる.

現時点では成人ARDS 患者のみを対象として,プロトコール化された人工呼吸器離脱の有用性を検討した研究は存在しない.そのため本CQ では人工

呼吸器に依存した重症患者を対象とした報告を検討し,プロトコール化された人工呼吸器離脱を行うべきかを検討した.

2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果ARDS の診断基準を満たした患者のみを対象としたランダム化比較試験は過去に施行されていなかったため,本CQでは人工呼吸管理をされている重症患者を対象とした12 件のランダム化比較試験を採用した.12 論文を用いたメタアナリシスの結果,プロトコール群

成人ARDS 患者において,プロトコール化された人工呼吸器離脱を行うことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「非常に低」)

プロトコールの作成に当たって,各施設のマンパワーやスタッフの知識に応じたプロトコールを作成する必要がある.特に,プロトコール導入によって,ナースなどのコメディカルが新たに呼吸器設定の変更を行う場合,医師以外の医療従事者の教育が重要であり,患者のモニターにおいて細心の注意が必要である.過去に行われたメタアナリシス1)におけるサブ解析では,内科ICU,外科ICU,外科・内科ICU でプロトコール化された離脱による人工呼吸器使用期間の短縮が認められたが,神経外科ICU では認められなかった.

CQ6 CQ6

推  奨

付帯事項
p.211
において有意に人工呼吸器使用時間の短縮が認められた(平均差 −21. 51 時間 95%CI −38. 45 時間〜−4. 56 時間).また,プロトコール化した離脱法は有意に気管切開を減少させた(RR 0. 72, 95%CI 0. 52 〜

0 99).両群間で有害事象に有意差は認められなかっ

た(再挿管:RR 0. 79, 95%CI 0. 50 〜1. 26, 院内死亡:RR 1. 04, 95%CI 0. 88 〜1. 23).

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

ARDS の基準を満たす患者のみを対象としたランダム化比較試験が無いため,今回のクリニカルクエスチョンに最も近いと思われる人工呼吸器に依存した重症患者(ICU 入室患者)を対象としたランダム化比較試験を用いた.そのため,内科集中治療,外科集中治療,神経集中治療などの多彩な患者が含まれており,ARDS 患者に本分析の結果を適応することには慎重になる必要がある.また,患者の背景が多彩であることより,異質性が大きい(p=0. 01, I 2=55%)(グレードダウン).さらに,デザインの性質上,全ての研究で盲検化がされていないため,アウトカムに影響を及ぼした可能性を否定できず,バイアスのリスクは高い.以上より,エビデンスの全体的な確信性は「非常に低」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

プロトコール導入によって患者への負担や合併症は増加しないため,利益が害を上回ると考えられる.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

プロトコール導入によって患者への負担や合併症は増加しないため,患者の価値観や好みは考慮しなくてよいと考える. 3-4.正味の利益とコストや資源のバランス

はどうか?

特別な機械を必要とする場合を除いて,導入のコストもほとんどかからない.プロトコールの作成,人材の育成にコストがかかる可能性がある.

医師以外の医療従事者が行った場合のコストや害は予測できない.特別な人工呼吸器を用いるのでなければ,利益の方が大きいと思われる.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議において,プライマリアウトカムが死亡率ではなく,人工呼吸時間であることに疑問が呈された.SR 委員より,人工呼吸器離脱の方法に対して期待する主なアウトカムは人工呼吸時間であることが説明され,再度投票が行われた.その結果,人工呼吸時間というアウトカムは「重大」なプライマリアウトカムとして承認された.推奨文については,メタアナリシスの結果を踏まえて,「成人ARDS 患者に対し,プロトコール化された人工呼吸器離脱法を用いることを提案する」ことに全会一致で決定した.研究に用いられた離脱のプロトコールは,段階的に人工呼吸器による補助を低下させていくプロトコールと,定期的に自発呼吸試験を行うプロトコールの2 つに大別され,さらに,プロトコールによる離脱は医師,看護師,呼吸療法士などの医療従事者がプロトコールに従って離脱する場合と,人工呼吸器の自動離脱機能を用いる場合がある.パネル会議ではこれらの方法別にサブグループ解析を行った後に再度推奨文を検討することが決定された.サブグループ解析が行われた結果,決定された推奨文の変更は行われなかった.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

ARDS 患者において,プロトコール化された人工呼吸器離脱法を具体的に推奨する他の診療ガイドラインは存在しない.NIH-NHLBI ARDS Networkはホームページ上にVentilator Protocol card を掲
p.212
7 文献検索式と文献選択

2012 年3 月までの文献は,先行するCochrane のシステマティックレビュー1)にて同定された17 件の研究を用いた.2012 年4 月1 日から2015 年6 月30 日までの文献を「人工呼吸器離脱」,「プロトコール」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL, および医中誌で検索したところ1, 660 件の研究が同定され,スクリーニングの結果12 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Chaiwat 2010 4),Kollef 1997 5),Ely 1996 6), Krishnan 2004 7),Marelich 2000 8),Namen 2001 9), Navalesi 2008 10),Piotto 2011 11),Roh 2012 12),Rose

2008 13), Simeone 2002 14),Stahl 2009 15)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

載しており(http://www.ardsnet.org/files/ventilator_ protocol_2008-07.pdf),その中にはSBT を用いての離脱プロトコールが組み込まれている.また本邦では,日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会,日本クリティカルケア看護学会が3 学会合同で「人工呼吸器離脱に関する3 学会合同プロトコール」を発表している(http://www.jsicm.org/pdf/kokyuki_ ridatsu1503b.pdf) .その目的として,“持続鎮静薬の中断や安全な人工呼吸器からの早期離脱を推進するためには,ベッドサイドでチーム内の情報共有を行うための共通言語となる,簡便で利用しやすいプロトコールの存在が必須である”としている.

5 治療のモニタリングと評価

呼吸・循環モニターに加え,患者の呼吸様式や表情などをモニターする.

6 今後の研究の可能性

ARDS患者を対象とした研究が必要である.また,離脱のプロトコールが適さないサブグループをさらに明らかにしていく必要がある.
p.213
9 エビデンス・プロファイル

CQ6:成人ARDS 患者に対してプロトコール化された人工呼吸器離脱を行う群とプロトコール

化されていない人工呼吸器離脱を行う群の比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他の

要因プロト

コール化非プロト

コール化相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

人工呼吸器使用時間

12 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻 2深刻深刻でないなし1054 1041 ‐平均21.51時間少ない

(38.45時間少ない〜4.56時間少ない) ⨁◯◯◯

極めて低1 2 3重

大

院内死亡

7 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻深刻でないなし203/788

(25.8%) 192/785

(24.5%)

RR 1.04 (0.88〜1.23) 10多い/1000

(29少ない〜56多い)

⨁⨁⨁◯

中3重

大17.0% 7多い/1000

(20少ない〜38多い)

33.0% 13多い/1000

(40少ない〜76多い)

再挿管

9 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻深刻でないなし66/712

(9.3%) 81/702

(11.5%)

RR 0.79 (0.50〜1.26) 24少ない/1000

(30多い〜58少ない)

⨁⨁◯◯

低 1 3重

大6.1% 13少ない/1000

(16多い〜31少ない)

23.0% 48少ない/1000

(60多い〜115少ない)

気管切開

6 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻深刻でないなし56/641

(8.7%) 80/636

(12.6%)

RR 0.72 (0.52〜0.99) 35少ない/1000

(60少ない〜1少ない)

⨁⨁◯◯

低1 3重

要7.2% 20少ない/1000

(35少ない〜1少ない)

15.7% 44 少ない/1000

(75少ない〜2少ない)

RR:相対リスク

1.研究の性質上,盲検化が不可能であり,アウトカムに影響した可能性を否定できない. 2.I2=55%,  p=0.001. 3.対象患者が「人工呼吸器に依存している重症患者」であり,必ずしもARDS 患者のみではない.非常に低
p.214
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ6:成人ARDS 患者において,プロトコール化された人工呼吸器離脱を行うべきか

集団:人工呼吸器使用中の重症成人患者介入:プロトコール化された人工呼吸器離脱法

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない集中治療室で人工呼吸器を必要としている患者が,人工呼吸器から離脱する過程は標準化されていな

い.その為,本来であれば人工呼吸器から離脱できているはずの患者に対し,不必要に人工呼吸器が使用されている可能性がある.人工呼吸器離脱までの過程をプロトコール化することで,人工呼吸器使用の不必要な遷延を防ぎ,人工呼吸器使用時間が短縮する可能性が示唆される2, 3).ARDS患者の多くは長期の人工呼吸が必要であり,もしプロトコール化された人工呼吸器離脱法が有効であれば利するところは大きいと考えられる.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中◯低●非常に低- - - - - - - - - - - - - ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性

(GRADE)

人工呼吸器使用時間重大⨁◯◯◯

極めて低

院内死亡重大⨁⨁⨁◯

中

再挿管重大⨁⨁◯◯

低

気管切開重要⨁⨁◯◯

低

結果のまとめアウトカムプロトコール化されていない離脱プロトコール化

された離脱絶対差 (95% CI)相対効果(RR) (95% CI)

人工呼吸器使用時間平均99.34 時間平均77.62 時間平均21.51 時間少ない

(38.45 時間少ない~

4.56 時間少ない) -

院内死亡245/1000 254/1000 (215〜301) 10 多い/1000 (29 少ない〜56 多い)

RR 1.04 (0.88~1.23) 166/1000 173/1000 (146〜204)

7 多い/1000 (20 少ない〜38 多い)

331/1000 344/1000 (291〜407) 13 多い/1000 (40 少ない〜76 多い)

再挿管115/1000 91/1000 (58〜145) 24 少ない/1000 (30 多い〜58 少ない)

RR 0.79 (0.50~1.26) 61/1000 48/1000 (31〜77)

13 少ない/1000 (16 多い〜31 少ない)

230/1000 182/1000 (115〜290) 48 少ない/1000 (60 多い〜115 少ない)

気管切開126/1000 91/1000 (65〜125) 35 少ない/1000 (60 少ない〜1 少ない)

RR 0.72 (0.52~0.99) 72/1000 52/1000 (37〜71)

20 少ない/1000 (35 少ない〜1 少ない)

157/1000 113/1000 (82〜155) 44 少ない/1000 (75 少ない〜2 少ない)

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ●ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは

小さい◯ばらつきは大きいかどうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか●小さい◯中程度◯大きい- - - - - - - - - - - ◯一概には言えない◯わからない非常に低
p.215
効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない要約:人工呼吸器からの離脱をプロトコール化した群は,プロトコール化していない群に比べて有意に

人工呼吸器使用時間が短く,気管切開に移行する率も低かった.

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない◯たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要

とする◯多くを必要とする- - - - - - - - - - - - - ●一概には言えない人工呼吸器離脱のための呼吸器設定の変更と抜管の基準をプロトコールに従って行うこと自体は特別

な資源を必要としない.呼吸器設定の変更をプロトコールに従って自動的に行うモードが組み込まれた特別な人工呼吸器を用いるのであれば,必要とされる資源は大きい.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい◯たぶんコストは利益よりも小さい●わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない医師以外の医療従事者が行った場合のコストや害は予測できない.特別な人工呼吸器を用いるので

なければ,利益の方が大きいと思われる.

公平さ医療上の不公

平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる●たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる◯公平になる- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない施設の状況により,離脱プロトコールの作成・教育が困難な場合がある.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れら

れない◯受け入れられない- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない患者にとっての負担や合併症が有意に増加せず,人工呼吸器につながれている時間を短縮できる

可能性があるため,受け入れられると思われる.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ◯可能●たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難- - - - - - - - - - - - - ◯一概には言えない人工呼吸器からの離脱をプロトコール化すること,さらにシステムとして確立することは実現可能であ

る.
p.216
=^WUXBvg‘

07-'96R •„G 07-'96R •„G

TŠ˜	
™ xa HAPjk\ 5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p 07-'96R •„

07-'96R •„

~`YltF_TŠ`YltF_TŠM-H, Random, 95%CI 5)%p M-H, Random, 95%CI A B C D E F G

バイアスのリスク

n<}h

~!18-TŠ!18-TŠM-H, Random, 95%CI

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p 07-'96R •„

07-'96R •„

07-'96R •„G 07-'96R •„G

TŠ˜	
™ TŠ!18xa HAPjk\

’In<

A B C D E F G

バイアスのリスク

A B C D E F G ~!18-TŠ!18-TŠM-H, Random, 95%CI

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p 07-'96R •„

07-'96R •„ Jd€

07-'96R •„G 07-'96R •„G

TŠ˜	
™ TŠ!18xa HAPjk\バイアスのリスク

11 フォレストプロット
p.217
~!18-TŠ!18-TŠM-H, Random, 95%CI

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p 07-'96R •„

07-'96R •„ q€L

07-'96R •„G 07-'96R •„G

TŠ˜	
™ TŠ!18xa HAPjk\ A B C D E F Gバイアスのリスク

(/&690‰i =^WUXBvg‘ $')&%*($ !を対象

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p

\h|…{WUŒ— ‡
07-'96•„ 07-'96R •„

~`YltF_TŠ`YltF_TŠM-H, Random, 95%CI

TŠ˜	
™ xa HAPjk\ \h|…{WUŒ—‡ 07-'96•„G 07-'96R •„G (/&690‰i =^WUXBvg‘ $#')&%*($ !を対象

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p ~`YltF_TŠ`YltF_TŠM-H, Random, 95%CI

o“|ˆO@: 07-'96•„ 07-'96R •„

o“|ˆO@: 07-'96•„G 07-'96R •„G

TŠ˜	
™ xa HAPjk\ CQ06-06 Forest plot

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)
p.218
■ 文 献1)Blackwood B, Burns KE, Cardwell CR, et al:Protocolized versus non-protocolized weaning for

reducing the duration of mechanical ventilation in critically ill adult patients. Cochrane Database Syst Rev 11:CD006904, 2014, PMID 25375085 2)MacIntyre N:Discontinuing mechanical ventilatory support. Chest 132(3):1049-1056, 2007, PMID

17873200 3)MacIntyre NR, Cook DJ, Ely EW Jr, et al:Evidence-based guidelines for weaning and discontinuing

ventilatory support:a collective task force facilitated by the American College of Chest Physicians;the American Association for Respiratory Care;and the American College of Critical Care Medicine. Chest 120(6 Suppl):375S-395S, 2001, PMID 11742959 4)Chaiwat O, Sarima N, Niyompanitpattana K, et al:Protocol-directed vs. physician-directed weaning

from ventilator in intra-abdominal surgical patients. J Med Assoc Thai 93(8):930-936, 2010, PMID

20718169 5)Kollef MH, Shapiro SD, Silver P, et al:A randomized, controlled trial of protocol-directed versus

physician-directed weaning from mechanical ventilation. Crit Care Med 25(4):567-574, 1997, PMID 9142019 6)Ely EW, Baker AM, Dunagan DP, et al:Effect on the duration of mechanical ventilation of identifying

(/&690‰i =^WUXBvg‘ "#')&%*($ !を対象

(/&690‰i =^WUXBvg‘ 
 $ !を対象

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p ~`YltF_TŠ`YltF_TŠM-H, Random, 95%CI

=07-'96

v•„ 07-'96R •„

5)%p M-H, Random, 95%CI 5)%p ~`YltF_TŠ`YltF_TŠM-H, Random, 95%CI

07-'96R •„ =^WUX…Q•„mƒ

v•„ =07-'96

v•„G 07-'96R •„G

=^WUX…Q•„mƒ

v•„G 07-'96R •„G

TŠ˜	
™ xa HAPjk\

TŠ˜	
™ xa HAPjk\ CQ06 06 Forest plot
p.219
patients capable of breathing spontaneously. N Engl J Med 335(25):1864-1869, 1996, PMID 8948561 7)Krishnan JA, Moore D, Robeson C, et al:A prospective, controlled trial of a protocol-based strategy to

discontinue mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 169(6):673-678, 2004, PMID 14726421 8)Marelich GP, Murin S, Battistella F, et al:Protocol weaning of mechanical ventilation in medical and

surgical patients by respiratory care practitioners and nurses:effect on weaning time and incidence of ventilator-associated pneumonia. Chest 118(2):459-467, 2000, PMID 10936141 9)Namen AM, Ely EW, Tatter SB, et al:Predictors of successful extubation in neurosurgical patients.

Am J Respir Crit Care Med 163(3 Pt 1):658-664, 2001, PMID 11254520 10)Navalesi P, Frigerio P, Moretti MP, et al. Rate of reintubation in mechanically ventilated neurosurgical

and neurologic patients:evaluation of a systematic approach to weaning and extubation. Crit Care Med 36(11):2986-2992, 2008, PMID 18824909 11)Piotto RF, Maia LN, Machado MN, et al:Effects of the use of mechanical ventilation weaning protocol

in the Coronary Care Unit:randomized study. Rev Bras Cir Cardiovasc 26(2):213-221, 2011, PMID

21894411 12)Roh JH, Synn A, Lim CM, et al:A weaning protocol administered by critical care nurses for the

weaning of patients from mechanical ventilation. J Crit Care 27(6):549-555, 2012, PMID 22227086 13)Rose L, Presneill JJ, Johnston L, et al:A randomised, controlled trial of conventional versus automated

weaning from mechanical ventilation using SmartCare/PS. Intensive Care Med 34(10):1788-1795, 2008, PMID 18575843 14)Simeone F, Biagioli B, Scolletta S, et al:Optimization of mechanical ventilation support following

cardiac surgery. J Cardiovasc Surg (Torino) 43(5):633-641, 2002, PMID 12386574 15)Stahl C, Dahmen G, Ziegler A, et al:Comparison of automated protocol-based versus non-protocol-

based physician-directed weaning from mechanical ventilation. . Intensivmedizin und Notfallmedizin 46(6):441-446, 2009, PMID なし
p.220
成人ARDS患者において,

腹臥位管理を行うべきか

1 背景,この問題の優先度

腹臥位管理は,病態生理学的には,呼吸メカニクス,酸素化,血行動態の改善,また,人工呼吸関連肺傷害の防止などの効果が期待され1, 2),ARDS に対する治療として有効な可能性がある.しかしながら,過去に多くのRCT とそれらのメタ分析が行われてきたが3 ~7),結果は一貫しておらず,臨床的な効果については議論の余地がある.腹臥位管理は,特別な設備を要さず実施可能な治療法であり,その有効性について検討することは優先度が高いと考えられる.

2 解 説

エビデンスの要約成人ARDS 患者に対する腹臥位管理についてのシステマティックレビューを行った.8 つのRCTのメタアナリシスにおいて,腹臥位管理は成人

ARDS 患者の死亡を有意に減少させた(RR

0 77, 95%CI 0. 62 〜0. 96).中等症・重症ARDS (P/

F 比≦200)のみを対象とした4 RCT での検討では死亡は有意に減少し(RR 0. 71, 95%CI 0. 52 〜0. 97),腹臥位を長時間施行した(8 時間以上) 6 RCT での検討では同様の傾向がみられたが有意差はなかった(RR 0. 77, 95%CI 0. 58 〜1. 02).また,気管チューブトラブルのような重大な合併症の有意な増加はみられなかったが,褥瘡は有意に増加した(気管チューブトラブル: (RR 1. 29, 95%CI 0. 87 〜1. 91),褥瘡: (RR 1. 36, 95%CI 1. 06 〜1. 75)).

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

メタアナリシスで対象とした論文はすべてRCTであった.死亡を扱ったRCT は,研究内のバイア

成人ARDS 患者(特に中等症・重症例)において,腹臥位管理を施行することを提案する(GRADE 2C,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「低」)

実施には複数名の熟練したスタッフが必要である.十分なスタッフが確保できる時間帯のみの短時間の腹臥位管理では,十分な効果が得られない可能性があり,実施に際しては自施設の実情を確認する必要がある.

CQ7 CQ7

推  奨

付帯事項
p.221
症を増加させることなく有意に死亡を減少させる効果があることから,コストや資源の負担よりも腹臥位管理の正味の利益は大きいと考えられる.

3-5. 推奨のグレーディング

パネル会議において,成人ARDS 患者に対する腹臥位管理は,重大な合併症を増加させることなく死亡を減少させることから,実施することは好意的に考えられた.パネリストの中には,死亡減少効果を重視するならば,「強い推奨」にした方が良いという意見もあったが,エビデンスの確信性が低く,また,実施には熟練を要し,現状では施設間での実施率にも大きな違いがあることを考慮し,「弱い推奨」とすることで決定した.ただし,実施に熟練を要すことから,実施可能な施設だけに推奨するということではなく,今後実施可能な施設が増えるように,マンパワーの確保やスタッフの教育など,実施に向けた体制を整えていくことが重要であるということが確認された.またサブ解析では長時間(8 時間以上)腹臥位管理に限った検討では効果推定値は同等であったが,有意差はみられなかった.一方,中等症・重症例(P/F 比≦200)に限った検討では,効果はさらに大きく期待できることが示された.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

スカンジナヴィアにおける成人ARDS 診療ガイドラインでは,腹臥位管理は,「弱い推奨」(エビデンスの確信性:低)で,我々の結果と一致している8).このガイドラインでは,1 日12 時間以上の腹臥位管理が実施されたARDS 患者のみが対象で,腹臥位管理により,28 日死亡(3 RCT のメタアナリシス: RR 0. 85, 95%CI 0. 73 〜0. 99),90 日死亡(3 RCTのメタアナリシス:RR 0. 86, 95%CI 0. 74 〜0. 98)とも有意に減少した.なお,このガイドラインでは気管チューブトラブルや褥瘡についての検討は行われなかった.

スのリスクは概して高くはなかったが,全体として結果に非一貫性がみられた.深刻な非直接性やデータの不精確さはみられなかった.出版バイアスは評価ができなかった.エビデンスの確信性は「中」とした.ただし,中等症・重症のみを対象とした検討ではサンプル数が少なく,長時間の腹臥位施行を対象とした検討では信頼区間が臨床決断閾値を超え,いずれも不精確さのためエビデンスの確信性は「低」とした.気管チューブトラブルを扱ったRCT では,研究内のバイアスのリスクの低いものばかりではなく,データの不精確さもみられたため,エビデンスの確信性は「低」とした.褥瘡を検討したRCT では,研究内のバイアスのリスクは低く,深刻な非一貫性や非直接性はみられなかったが,サンプル数が少なくデータの不精確さのため,エビデンスの確信性は「中」とした.全アウトカムを通した全体的なエビデンスの確信性は「低」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

腹臥位管理によって,褥瘡は有意に増加するが,気管チューブトラブルのような重大な合併症を有意に増加させず死亡を減少させることから,利益は害より大きいと考えられる.

3-3. 患者の価値観や好みはどうか?

腹臥位自体は一般的に誰もが取りうる体位であるが,治療目的に長時間の腹臥位を強いられることに対しては拒否的な意見もあるかもしれない.

3-4. 正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

腹臥位への体位変換には通常以上のマンパワーが必要である.マンパワーの負担を減らすための特殊なベッド(RotoProne bed ® など)もあるが,コストがかかる上に,本邦では認可されていない医療機器である.また,腹臥位管理中は通常以上に厳重なモニタリングが必要となる.しかしながら,マンパワーやコストの負担を考慮に入れても,重大な合併
p.222
5 治療のモニタリングと評価

刺激による血圧や心拍数の上昇,体液のシフトによる血圧の低下,不整脈,肺胸郭のコンプライアンスの低下に伴う換気量の変化や気道内圧の変化,気管チューブの閉塞や位置異常や予定外抜去,口腔内分泌物の誤嚥,重要なチューブやライン類の屈曲や予定外抜去,眼球や外性器等の圧迫による損傷,褥瘡,末梢神経障害,皮膚血流障害などをモニタリングする必要がある.

6 今後の研究の可能性

短期死亡だけでなく長期死亡や機能予後についての検討も必要である.

また,腹臥位管理の最適な対象(重症度),最適な方法(1 回の持続時間や反復の有無など)についての研究も必要である. 7 文献検索式と文献選択

「ARDS」「腹臥位」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL, および医中誌を検索したところ,592 件の研究が同定され,スクリーニングの結果8 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Beuret 2002 9),Fernandez 2008 10),Gattinoni

2001 11),Guerin 2004 12),Guerin 2013 13), Mancebo

2006 14),Taccone 2009 15), Voggenreiter 2005 16)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf
p.223
9 エビデンス・プロファイル

CQ7:成人ARDS 患者に対する腹臥位管理と仰臥位管理の比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアス

のリスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因腹臥位仰臥位相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

8 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 1深刻でない深刻でないなし305/1113

(27.4%) 349/1057

(33.0%)

RR 0.77 (0.62~0.96) 76 少ない/1000

(13 少ない~125 少ない)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大

25.0% 57 少ない/1000

(10 少ない~95 少ない)

52.6% 121 少ない/1000

(21 少ない~200 少ない)

死亡(短期)(注1中等症・重症(注2

4 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 2深刻でない深刻 3なし131/502

(26.1%) 177/482

(36.7%)

RR 0.71 (0.52~0.97) 106 少ない/1000

(11 少ない~176 少ない)

⨁⨁◯◯

低 2 3重

大

32.8% 95 少ない/1000

(10 少ない~157 少ない)

52.6% 153 少ない/1000

(16 少ない~252 少ない)

死亡(短期)(注1長時間腹臥位(注3

6 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 4深刻でない深刻 5なし266/936

(28.4%) 299/879

(34.0%)

RR 0.77 (0.58~1.02) 78 少ない/1000

(7 多い~143 少ない)

⨁⨁◯◯

低 4 5重

大

31.5% 72 少ない/1000

(6 多い~132 少ない)

52.6% 121 少ない/1000

(11 多い~221 少ない)

気管チューブトラブル(計画外抜管,位置異常)

6 ランダ

ム化比較試験深刻 6深刻でない深刻でない深刻 7なし69/675

(10.2%) 51/653

(7.8%)

RR 1.29 (0.87~1.91) 23 多い/1000

(10 少ない~71 多い)

⨁⨁◯◯

低 6 7重

大

4.6% 13 多い/1000

(6 少ない~42 多い)

9.9% 29 多い/1000

(13 少ない~90 多い)

褥瘡

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 3なし74/173

(42.8%) 54/171

(31.6%)

RR 1.36 (1.06~1.75) 114 多い/1000

(19 多い~237 多い)

⨁⨁⨁◯

中 3重

要

27.6% 99 多い/1000

(17 多い~207 多い)

63.2% 228 多い/1000

(38 多い~474 多い)

RR:相対リスク

1.I2=56%であり,中等度の異質性. 2.I2=62%であり,大きな異質性. 3.サンプルサイズが小さい. 4.I2=68%であり,大きな異質性. 5.サンプルサイズが小さく,RR の95%信頼区間が臨床決断閾値を超える. 6.大きなweight を占める2 つの論文で,当該アウトカムは当初の測定項目ではなかった. 7.サンプルサイズが小さく,RR の95%信頼区間が広く臨床決断閾値を超える.
p.224
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ7:成人ARDS 患者において,腹臥位管理を行うべきか

集団:成人ARDS 患者介入:腹臥位管理

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく

低い◯低い------------------- ◯一概には言

えない腹臥位管理は,病態生理学的には,呼吸メカニクス,酸素化,血行動態の改善,また,人工呼吸関連肺

傷害の防止などの効果が期待され1, 2),ARDS に対する治療として有効な可能性がある.しかしながら,過去に多くのRCT とそれらのメタ分析が行われてきたが,結果は一貫しておらず3-7),臨床的な効果については議論の余地がある.腹臥位管理は,特別な設備を要さず実施可能な治療法であり,その有効性について検討することは優先度が高いと考えられる.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中●低◯非常に低------------------- ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性 (GRADE)死亡(短期)(注1重大⨁⨁⨁◯

中

死亡(短期)(注1,中等症・重症(注2重大⨁⨁◯◯

低

死亡(短期)(注1,長時間腹臥位(注3重大⨁⨁◯◯

低気管チューブトラブル(計画外抜管,位置異常)重大⨁⨁◯◯

低

褥瘡重要⨁⨁◯◯

中

結果のまとめ

アウトカム仰臥位腹臥位絶対差 (95% CI)相対効果 (RR)

(95% CI)

死亡(短期)(注1 330/1000 254/1000 (205~317) 76 少ない/1000 (13少ない~125少ない)

RR 0.77 (0.62~0.96) 250/1000 193/1000 (155~240)

57 少ない/1000 (10少ない~95少ない)

526/1000 405/1000 (326~505) 121 少ない/1000 (21少ない~200少ない)

死亡(短期)(注1中等症・重症(注2 367/1000 261/1000 (191~356) 106 少ない/1000 (11少ない~176少ない)

RR 0.71 (0.52~0.97) 328/1000 233/1000 (171~318)

95 少ない/1000 (10少ない~157少ない)

526/1000 373/1000 (274~510) 153 少ない/1000 (16少ない~252少ない)

死亡(短期)(注1長時間腹臥位(注3 340/1000 262/1000 (197~347) 78 少ない/1000 (7多い~143少ない)

RR 0.77 (0.58~1.02) 315/1000 243/1000 (183~321)

72 少ない/1000 (6多い~132少ない)

526/1000 405/1000 (305~537) 121 少ない/1000 (11多い~221少ない)

気管チューブトラブル(計画外抜管,

位置異常) 78/1000 101/1000 (68~149) 23 多い/1000 (10少ない~71多い)

RR 1.29 (0.87~1.91) 46/1000 59/1000 (40~88)

13 多い/1000 (6少ない~42多い)

99/1000 128/1000 (86~189) 29 多い/1000 (13少ない~90多い)

褥瘡316/1000 429/1000 (335~553) 114 多い/1000 (19多い~237多い)

RR 1.36 (1.06~1.75) 276/1000 375/1000 (293~483)

99 多い/1000 (17多い~207多い)

632/1000 860/1000 (670~1000) 228 多い/1000 (38 多い~474 多い)

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは小

さい◯たぶんばらつきは小さい◯ばらつきは大きいかどうか不明●たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは小

さい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか------------------- ◯一概には言

えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------- ●一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は

大きい◯害は大きい------------------- ◯一概には言

えない⨁⨁⨁◯

中
p.225
要約:腹臥位管理は成人ARDS 患者の死亡を有意に減少させた.腹臥位を長時間施行した(8 時間以

上)場合に限った検討でも同様の傾向がみられたが有意差はなかった.中等症・重症ARDS(P/F 比≦200)のみの検討ではより大きな効果がみられた.気管チューブトラブルのような重大な合併症の有意な増加はみられなかったが,褥瘡は有意に増加した.

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない◯たぶん少ない◯わからない●たぶん多くを必要とする◯多くを必要と

する------------------- ◯一概には言

えない腹臥位に体位変換するためには通常以上のマンパワーが必要である.マンパワーの負担を減らすため,

特殊なベッドがあるが,コストがかかる(例:最初の10 日間は1295 ドル/日,以後は395 ドル/日).なお,日本では認可されていない機器である.また,腹臥位中は厳重なモニタリングが必要となる.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益

よりも小さい●たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------- ◯一概には言

えない死亡率の減少の有益性と比べると,コストやマンパワーの増加は許容範囲内と思われる.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる●たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平

になる◯公平になる------------------- ◯一概には言

えない腹臥位自体は標準的な病院,とりわけARDS に対応できる集中治療を提供する施設であれば可能.

ただしマンパワーの多少により,安全性に差が生じる可能性は否定できない.患者の体格や基礎疾患によって効果は一様でない可能性がある.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け

入れられない◯受け入れられない------------------- ◯一概には言

えない腹臥位自体は一般的に誰もが取りうる体位であるが,治療目的に長時間の腹臥位を強制することに対し

ては,拒否的な意見もあるかもしれない.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ◯可能●たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------- ◯一概には言

えない体位変換時,また体位変換後のモニタリングに複数名のスタッフが確保できる限りにおいては実行可能

である.

注1:10 日,28 日,60 日,90 日,ICU 死亡を短期死亡とした.注2:P/F 比200 以下を中等症・重症とした.注3:8 時間/日以上の腹臥位管理を長時間とした.
p.226
^8iZ

jk,3(Jw,3(Jw|M-H, Random, 95%CI

1# _ M-H, Random, 95%CI 1# _ qr<o;r<o

Jw	
‚ Jw,3( fzS B=G\]O

qr<o A ;r<o A A B C D E F G

バイアスのリスク

qr<o A ;r<o A

Jw	
‚ Jw,3( fzS B=G\]O

	 	


jk,3(Jw,3(Jw|M-H, Random, 95%CI

1# _ M-H, Random, 95%CI 1# _ qr<o;r<o A B C D E F G

バイアスのリスク

qr<o A ;r<o A

 jk,3(Jw,3(Jw|M-H, Random, 95%CI

1# _ M-H, Random, 95%CI 1# _ qr<o;r<o

Jw	
‚ Jw,3( fzS B=G\]O CQ07 06 Forest plot A B C D E F G

バイアスのリスク

"*!25+v[^8iZ7lg4|gg>Py

Jw	
‚ Jw,3( fzS B=G\]O

qr<o A ;r<o A

jk,3(Jw,3(Jw|M-H, Random, 95%CI

1# _ M-H, Random, 95%CI 1# _ qr<o;r<o

"*!25+v[^8iZ}Y~qr<Py

jk,3(Jw,3(Jw|M-H, Random, 95%CI

1# _ M-H, Random, 95%CI 1# _ qr<o;r<o

Jw	
‚ Jw,3( fzS B=G\]O qr<o A ;r<o A

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.227
■ 文 献1)Guerin C, Baboi L, Richard JC:Mechanisms of the effects of prone positioning in acute respiratory

distress syndrome. Intensive Care Med 40(11):1634-1642, 2014, PMID 25266133 2)Gattinoni L, Taccone P, Carlesso E, et al:Prone position in acute respiratory distress syndrome.

Rationale, indications, and limits. Am J Respir Crit Care Med 188(11):1286-1293, 2013, PMID 24134414 3)Bloomfield R, Noble DW, Sudlow A:Prone position for acute respiratory failure in adults. Cochrane

Database Syst Rev 11:CD008095, 2015, PMID 26561745 4)Sud S, Friedrich JO, Adhikari NK, et al:Effect of prone positioning during mechanical ventilation on

mortality among patients with acute respiratory distress syndrome:a systematic review and metaanalysis. CMAJ 186(10):E381-390, 2014, PMID 24863923 5)Beitler JR, Shaefi S, Montesi SB, et al:Prone positioning reduces mortality from acute respiratory

distress syndrome in the low tidal volume era:a meta-analysis. Intensive Care Med 40(3):332-341, 2014, PMID 24435203 6)Lee JM, Bae W, Lee YJ, et al:The efficacy and safety of prone positional ventilation in acute

respiratory distress syndrome:updated study-level meta-analysis of 11 randomized controlled trials. Crit Care Med 42(5):1252-1262, 2014, PMID 24368348 7)Hu SL, He HL, Pan C, et al:The effect of prone positioning on mortality in patients with acute

respiratory distress syndrome:a meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 18(3):R109, 2014, PMID 24887034 8)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical

ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286- 297, 2015, PMID 25524779 9)Beuret P, Carton MJ, Nourdine K, et al:Prone position as prevention of lung injury in comatose

patients:a prospective, randomized, controlled study. Intensive Care Med 28(5):564-569, 2002, PMID 12029403 10)Fernandez R, Trenchs X, Klamburg J, et al:Prone positioning in acute respiratory distress syndrome:

a multicenter randomized clinical trial. Intensive Care Med 34(8):1487-1491, 2008, PMID 18427774 11)Gattinoni L, Tognoni G, Pesenti A, et al:Effect of prone positioning on the survival of patients with

acute respiratory failure. N Engl J Med 345(8):568-573, 2001, PMID 11529210 12)Guerin C, Gaillard S, Lemasson S, et al:Effects of systematic prone positioning in hypoxemic acute

respiratory failure:a randomized controlled trial. JAMA 292(19):2379-2387, 2004, PMID 15547166 13)Guerin C, Reignier J, Richard JC, et al:Prone positioning in severe acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 368(23):2159-2168, 2013, PMID 23688302 14)Mancebo J, Fernandez R, Blanch L, et al:A multicenter trial of prolonged prone ventilation in severe

acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 173(11):1233-1239, 2006, PMID 16556697 15)Taccone P, Pesenti A, Latini R, et al:Prone positioning in patients with moderate and severe acute

respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 302(18):1977-1984, 2009, PMID

19903918 16)Voggenreiter G, Aufmkolk M, Stiletto RJ, et al:Prone positioning improves oxygenation in post-

traumatic lung injury--a prospective randomized trial. J Trauma 59(2):333-341; discussion 341-343, 2005, PMID 16294072
p.228
成人ARDS患者において,高頻度振動換気(HFO)を行うべきか

1 背景,この問題の優先度

成人ARDS 患者における人工呼吸管理方法はさまざまであるが,どのような方法でも人工呼吸装着期間の延長や死亡率上昇をもたらす人工呼吸関連肺傷害を予防することが重要である1).肺保護換気による呼吸管理が重要とされ死亡率低下を検証した研究もなされているが2),依然として死亡率は高い3). HFO は一回換気量を制限し肺リクルートメントが可能な人工呼吸モードであり4),肺保護換気の一種と考えられているが成人診療では一般的な人工呼吸管理方法ではないため5),その有効性と安全性を検証する必要があるが,現段階では先の理由により優先順位はおそらく低いと考えられる. 2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果4 件のRCT が見つかった.HFO による人工呼吸管理によって,死亡率(RR 1. 05,95% CI 0. 82 〜1. 36)およびVFD(平均差 −0. 30 日, 95% CI −1. 23 〜0. 64)に統計学的有意差は認めなかった.圧損傷に関しては統計学的有意差を認めないもののHFO により増加する傾向を示した(RR 1. 21, 95% CI 0. 83 〜1. 76).

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

人工呼吸器設定による目標値を比較する研究は,患者および医療担当者の盲検化を行うことはでき

CQ8 CQ8

成人ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFO)を行わないことを提案する

(GRADE 2C,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「低」)

本推奨はあくまで成人に対するHFO の適応に関するものである.成人に対するHFOは一般的に浸透しているとは言えず,設定および合併症管理方法に長けていない施設においては有害性が高い可能性があると考えられるが,設定および合併症管理に長けている施設においては合併症が少ない可能性があり,考慮に価するかもしれない.

推  奨

付帯事項
p.229
ず,今回取り上げた4 つのRCT も同様である.また, ITT 解析ではあるがクロスオーバー試験が1 つ,患者フローダイアグラムの記載がない研究が1 つ,選択基準に該当しているが,理由が明記されず除外されている,患者数が半数以上である研究が2 つ,と選択バイアスが大いに疑われる研究が多く,結果としてバイアスのリスクが高いと判断せざるを得なかった.非一貫性については死亡でI 2 統計値が69% と高かった.非直接性は他の要因と比較したときにグレードダウンする程ではなかった.不精確さについては,症例数は十分であったが,95% 信頼区間が広かった.出版バイアスは評価不能であった.以上より,各アウトカムのエビデンスの質は,死亡が「非常に低」,VFD は「低」,圧損傷が「非常に低」となり,全体的なエビデンスの確信性は「低」と判断された.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

HFO を施行するためには専用の人工呼吸器が必要であり,新たに導入を検討する施設にとってはコスト増加となる.システマティックレビューの結果からコスト増加に見合う利益は小さいと考えられる.しかし専用の人工呼吸器を所有している施設では新たなコスト増大はないと考えられる.HFO による圧損傷については増加傾向にあるものの有意差はなく介入による弊害性は高くないと判定した.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

HFO は一般的な人工呼吸管理方法ではなく,かつ限られた施設でしか施行できない.また,多くの場合において深い鎮静が必要となることもあり,患者受け入れにおいてはばらつきが大きいと思われる.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

システマティックレビューの結果から,HFO 導入による患者への利益は多くない.その上,コストを考慮すれば,すでに導入している施設以外では増分コストは高いと判断される.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議前の投票では全員一致して実施しないことを提案する(弱い推奨)を支持していたが,パネル会議での話し合いで,HFO による成人ARDS患者の人工呼吸管理は通常の呼吸管理方法に比べて死亡率改善・VFD 延長には寄与せず,むしろ圧外傷のリスクが懸念されること,さらに専用人工呼吸器導入に伴うコスト増大も懸念されることなどが指摘されたため再度投票を行った.その結果,実施しないことを推奨する(強い推奨)が4 人,実施しないことを提案する(弱い推奨)8 人であったため,「実施しないことを提案する(弱い推奨)」という結論に至った.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

2014 年に報告されたScandinavian clinical practice guideline では6),2013 年のSud らのCochrane Database Syst Rev を引用し7),「HFO を行わないことを強く推奨する」としている.

5 治療のモニタリングと評価

人工呼吸管理上のモード変更であり,人工呼吸管理の目的である酸素化,換気,呼吸仕事量に関するモニタリングが必要である.また,HFO では分時換気量・ETCO2・呼吸音などによる換気評価が不可能なので,経皮二酸化炭素モニター等の代替による評価が必要となる.

6 今後の研究の可能性

Young 2013, Ferguson 2013 では P/F 比≦ 200を導入基準としたため, 中等度ARDS が対象に含まれ通常の肺保護換気戦略で十分対応可能でHFOV の有用性が示されなかった可能性がある.
p.230
採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Derdak 2002 8),Bollen 2005 9),Young 2013 10), Ferguson 2013 11)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

通常の肺保護換気戦略で改善しない重症の酸素化障害に対する,レスキュー治療としての位置づけを評価する必要性がある.

7 文献検索式と文献選択

「ARDS」,「HFO」,「RCT」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL, および医中誌で検索したところ304 件の研究が同定され,スクリーニングの結果4 件のランダム化比較試験を

9 エビデンス・プロファイル

CQ8:成人ARDS 患者に対する高頻度振動換気(HFO)と通常の人工呼吸管理 (CMV) の比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアス

のリスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因高頻度振動

換気(HFO)通常の人工

呼吸管理(CMV)相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

4 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻 2深刻でない深刻 3なし339/785

(43.2%) 305/767

(39.8%)

RR 1.05 (0.82~1.36) 20 多い/1000

(72 少ない~143 多い)

⨁◯◯◯非常に低 1 2 3重

大35.2% 18 多い/1000

(63 少ない~127 多い)

41.2% 21 多い/1000

(74 少ない~148 多い)

VFD(注2

2 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない深刻 3なし673 670 ‐平均0.3 日少ない

(0.64 日多い~1.23 日

少ない) ⨁⨁◯◯

低1 3重

大

圧損傷

3 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない非常に

深刻 3 4なし54/387

(14.0%) 44/370

(11.9%)

RR 1.21 (0.83~1.76) 25 多い/1000

(20 少ない~90 多い)

⨁◯◯◯非常に低 1 3 4重

大

4.2% 9 多い/1000

(7 少ない~32 多い)

12.5% 26 多い/1000

(21 少ない~95 多い)

RR:相対リスク1.盲検化されていない. 2.I2 統計量が69%と異質性が高い. 3.95% CI が広く,臨床決断の閾値をまたぐ. 4.サンプルサイズが小さい.
p.231
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ8:成人ARDS 患者において,高頻度振動換気(HFO)を行うべきか

集団:人工呼吸管理が必要な成人ARDS 患者介入:高頻度振動換気(HFO)

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い◯おそらく高い◯わからない●おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えない成人ARDS 患者における人工呼吸管理方法は様々であるが,どのような方法でも人

工呼吸装着期間の延長や死亡率上昇をもたらす人工呼吸関連肺障害を予防することが重要である1).肺保護換気による呼吸管理が重要とされ,死亡率低下を検証した研究2)もなされているが,依然として死亡率は高い3).HFO は一回換気量を制限し肺リクルートメントが可能な人工呼吸モードであり4),肺保護換気の一種と考えられているが成人診療では一般的な人工呼吸管理方法ではないため5),その有効性と安全性を検証する必要があるが,現段階では先の理由により優先順位はおそらく低いと考えられる.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中◯低●非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの信頼性

(GRADE)

死亡(短期) (注1重大⨁◯◯◯

非常に低

VFD(注2重大⨁⨁◯◯

低

圧損傷重大⨁◯◯◯

非常に低

結果のまとめ

アウトカム対照HFO絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期) (注1 398/1000 418/1000 (326〜541) 20 多い/1000 (72 少ない〜143 多い)

RR 1.05 (0.82~1.36) 352/1000 370/1000 (289〜479)

18 多い/1000 (63 少ない〜127 多い)

412/1000 433/1000 (338〜560) 21 多い/1000 (74 少ない〜148 多い)

VFD(注2平均17.6 日平均17.3 日平均0.3 日少ない

(0.64 日多い〜1.23 日少ない) ‐

圧損傷119/1000 144/1000 (99〜209) 25 多い/1000 (20 少ない〜90 多い)

RR 1.21 (0.83~1.76) 42/1000 51/1000 (35〜74)

9 多い/1000 (7 少ない〜32 多い)

125/1000 151/1000 (104〜220) 26 多い/1000 (21 少ない〜95 多い)

要約:HFO による人工呼吸管理により,死亡(RR 1.05, 95%CI 0.82〜1.36)と VFD に

統計学的有意差は認めなかった.また圧損傷に関しては統計学的有意差を認めなかったもののHFO により増加する傾向を示した(RR 1.21, 95%CI 0.83〜1.76).

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは大きい●ばらつきは大きいと思われる◯ばらつきは小さい

と思われる◯ばらつきは小さい◯ばらつきは大きい

かどうか不明

予想される効果は大きいですか? ◯大きい◯中程度●小さい◯わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか◯小さい●中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい◯たぶん効果は大きい◯わからない●たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない
p.232
資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない◯たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要

とする●多くを必要とする------------------ ◯一概には言えないHFO を施行するためには専用の人工呼吸器(1 台に付きおよそ1 千万円程度)

が必要であり,すでに施設に導入している場合の追加コストはないが,成人に対するHFO は本邦では一般的ではないため,施設に導入しているところはそうは多くないと考えられる.よって,導入のためのコストは高いと判断される.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい◯たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない●たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えないシステマティックレビューの結果から,HFO 導入による患者への利益は多くない.その

上,コストを考慮すれば,すでに導入している施設以外では増分コストは高いと判断される.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる●たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる◯公平になる------------------ ◯一概には言えないHFO 専用の人工呼吸器を導入できる施設かどうかで不公平が生じる可能性がある.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる◯たぶん受け入れら

れる◯わからない●たぶん受け入れられない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない高額なHFO 専用の人工呼吸器を導入しなければならない施設では,明らかな有益性

が示されない限り,施設側の受け入れは困難が予想され,かつ,適切な使用方法を各部署へ教育することにおいても労力を要し,総合的に受け入れが困難であることが予想される.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ◯可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ●一概には言えない本CQ の介入は人工呼吸モードであり,患者への適応は実現可能であるが,HFO を

施行するためには高額な専用の人工呼吸器が必要となる.

注1:死亡は研究期間終了時.注2:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数.ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする.
p.233
W-aS bc%*#?h%*#?hmM-H, Random, 95%CI

)X M-H, Random, 95%CI )X HFOdkK.IB@d

HFOd7

?hp	
q ?h%*# ^jM 81<TUG kK.IB@d7 A B C D E F G

バイアスのリスク

VFD

kK.IB@d7 HFOd7

?hp	
q ^jM 81<TUG

bcLDV[5J?hLDV[5J?hmM-H, Random, 95%CI

)X M-H, Random, 95%CI )X HFOdkK.IB@d A B C D E F G

バイアスのリスク

bc%*#?h%*#?hmM-H, Random, 95%CI

)X M-H, Random, 95%CI )X HFOdkK.IB@d CQ6

?hp	
q ?h%*# ^jM 81<TUG HFOd7 kK.IB@d7 A B C D E F G

バイアスのリスク

■ 文 献1)Esteban A, Ferguson ND, Meade MO, et al:Evolution of mechanical ventilation in response to clinical

research. Am J Respir Crit Care Med 177(2):170-177, 2008, PMID 17962636 2)ARDS Network:Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for

acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. The Acute Respiratory Distress Syndrome Network. N Engl J Med 342(18):1301-1308, 2000, PMID 10793162 3)Phua J, Badia JR, Adhikari NK, et al:Has mortality from acute respiratory distress syndrome

decreased over time?:A systematic review. Am J Respir Crit Care Med 179(3):220-227, 2009, PMID

19011152 4)Rimensberger PC:ICU cornerstone:high frequency ventilation is here to stay. Crit Care 7(5):342-

344, 2003, PMID 12974963 5)Ferguson ND, Slutsky AS:Point:High-frequency ventilation is the optimal physiological approach to

ventilate ARDS patients. J Appl Physiol (1985) 104(4):1230-1231, 2008, PMID 18048584

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.234
6)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical

ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286- 297, 2015, PMID 25524779 7)Sud S, Sud M, Friedrich JO, et al:High-frequency ventilation versus conventional ventilation for

treatment of acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Cochrane Database Syst Rev 2:CD004085, 2013, PMID 23450549 8)Derdak S, Mehta S, Stewart TE, et al:High-frequency oscillatory ventilation for acute respiratory

distress syndrome in adults:a randomized, controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 166(6):801- 808, 2002, PMID 12231488 9)Bollen CW, van Well GT, Sherry T, et al:High frequency oscillatory ventilation compared with

conventional mechanical ventilation in adult respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial [ISRCTN24242669]. Crit Care 9(4):R430-439, 2005, PMID 16137357 10)Young D, Lamb SE, Shah S, et al:High-frequency oscillation for acute respiratory distress syndrome.

N Engl J Med 368(9):806-813, 2013, PMID 23339638 11)Ferguson ND, Cook DJ, Guyatt GH, et al:High-frequency oscillation in early acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 368(9):795-805, 2013, PMID 23339639
p.235
成人ARDS患者において人工呼吸を実施する際,筋弛緩薬を使用するべきか

1 背景,この問題の優先度

ARDS では,自発呼吸を温存した治療を行うことで,換気血流不均等・ICU 関連筋力低下等を防ぐ利点が示唆されている4).しかし一方で,自発呼

吸に伴う肺胞領域への過剰なストレスは,肺胞上皮の安定性を保つ上で有害に働き,ARDS の予後改善に悪影響を与える可能性も示唆されている5).自

成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,限定的に筋弛緩薬の使用を提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

日常的に使用することを避ける.中等症以上のARDS 患者(PEEP ≧5cmH2O でP/F比≦200)で,発症早期に投与期間を48 時間以内に限定して使用すべきである.本邦で使用できる筋弛緩薬ではICU 関連筋力低下のリスクが増す可能性がある.特にステロイドとの併用には留意すべきである1 ~3).一般的に,筋弛緩薬は作用機序により脱分極性と非脱分極性に大別されるが,脱分極性筋弛緩薬は,筋肉痛,高カリウム血症,脳圧上昇などの副作用が多いことから,非脱分極性筋弛緩薬が使用されることが多い.さらに,非脱分極性筋弛緩薬は化学構造によりアミノステロイド系(ロクロニウム,ベクロニウム,パンクロニウム)とベンジルイソキノリン系(アトラクリウム,シスアトラクリウム,ミバクリウム)に分類される.推奨の根拠となるRCT で用いていたシスアトラクリウムは本邦では販売されていないため使用できない.代替薬としては,ロクロニウム,ベクロニウムがあげられる.ただし,シスアトラクリウムを含むベンジルイソキノリン系は,肝・腎機能の影響を受けないのに対し,ロクロニウム,ベクロニウムを含むアミノステロイド系は肝・腎障害で代謝が遷延することや,アミノステロイド系筋弛緩薬による筋萎縮作用に注意する.パネリストから本邦で使用できる筋弛緩薬を日常的に投与することは,ICU 関連筋力低下の懸念が強く,弱い推奨もすべきでないという意見が出されたが,最終的に限定的に使用するようにコメントを付加することで「弱い推奨」とした.

CQ9 CQ9

推  奨

付帯事項
p.236
発生数は,死亡(ICU 内) 38%(163 名/431 名),死亡(28 日) 31%(123 名/395 名)とほぼ最適情報量を満たしており,効果推定値へ与える不精確さは低いと考えられた.しかし,メタアナリシスに組み込まれたRCT はいずれも同一グループからの報告であり,Papazian 2000 のみが他の2 件のRCTに比べ極端に登録症例数が多く,全体の結果を大きく牽引していた.圧損傷,ICU 関連筋力低下については,2 件のRCT で発生数が著しく少ないか未評価であるため,ほぼ,Papazian 2000 単独と同様の結果となっている.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

利益にはある程度の確信が期待され,明らかな合併症もないため,多くの患者は筋弛緩薬による治療を受け入れるであろう.ただし,RCT で使用された薬剤が本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

推奨内容「成人ARDS の治療において,限定的に筋弛緩薬の使用を提案する」は,パネル会議において患者代表を含む全会一致で決定したものであり,患者の嗜好に大きな偏りはないと考えられる.ただし,付帯事項の項にも記載したとおり,エビデンスの根拠となっている論文に使用された筋弛緩薬は,本邦で一般的に使用されている筋弛緩薬と異なる薬剤であるため,患者の価値観や好みにばらつきが生じる可能性はある.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

システマティックレビューでは,筋弛緩薬の使用は,死亡(ICU 内),死亡(28 日),圧損傷のリスクを低下させたが,ICU 関連筋力低下には影響を与えなかった.入手・使用は容易な薬剤であり,必要機材も僅かである.得られる正味の利益は,コストを上回ると考える.ただし,RCT で使用された

発呼吸を温存すべきか,筋弛緩薬を用いて自発呼吸を減少・消失させるべきかは,ARDS の予後改善において正反対に作用する可能性があるため,この問題の優先度はおそらく高い.

2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,これまでに,フランスを中心とした研究グループから3 件のRCT が発表されており,その中でARDS 治療における筋弛緩薬の有用性が評価されていた.対象はいずれも,PEEP 5cmH2O 以上の条件下でP/F 比200 以下の,Berlin 定義における中等症以上のARDS 患者であり,筋弛緩薬は発症から48 時間に限定して使用された.3 件のRCT のメタアナリシス(患者431 名)の結果では,死亡(ICU 内),死亡(28 日),圧損傷において,いずれも筋弛緩薬を使用した方が有用性が高いという結果が得られた(死亡(ICU 内):RR 0. 70,95%CI 0. 55 ~0. 89;死亡(28 日):RR 0. 68,95%CI 0. 50 ~0. 91;圧損傷:RR 0. 43,95%CI 0. 20 ~0. 90).合併症として懸念される筋弛緩薬使用に伴う筋傷害については統計学的有意差を認めなかった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

3 つのRCT はほぼ一貫して死亡改善効果を示しており,メタアナリシスの結果,統計学的有意差が認められた(いずれのアウトカムもI 2=0%).薬剤の特性上完全には盲検化試験が行えなかったが,いずれの研究もそれ以外に大きな問題はなく,バイアスのリスクは低かった.研究の対象集団・アウトカム測定に大きな問題はない.しかし,3 つのRCTで使用されていた筋弛緩薬(シスアトラクリウム)は,本邦では使用できない薬剤であるため,研究の非直接性が高かった(グレードダウン).イベント
p.237
薬剤が本邦では販売されていない薬剤である点に留意を要する. 3-5.推奨のグレーディング

本薬剤は死亡(ICU 内),死亡(28 日),圧損傷のリスクを低下させたが,ICU 関連筋力低下には影響を与えなかった.このためパネル会議では「使用することを推奨する」という推奨文が提案された.しかし,本邦でおもに使用されている筋弛緩薬は,ステロイド環を有するアミノステロイド系筋弛緩薬であり,長期使用により筋萎縮を惹起する危険性がある.さらに,ステロイドと併用することで,筋萎縮の出現はさらに高度となりうる.この危険性を回避するため,日常的に使用することを避ける,発症早期に48 時間限定で使用する,ステロイドの併用に注意を要する,というコメントを追記した上で,「限定的に筋弛緩薬の使用を提案する」という推奨文が提案され,全会一致で最終決定された.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

スカンジナビアの成人ARDS における人工呼吸管理ガイドライン(2015 年) 6),日本版敗血症診療ガイドライン(2012 年) 7)には,筋弛緩薬に関する記載がない.SSCG 2012 8)では,PaO2/FIO2 <150の敗血症関連早期ARDS 患者において,48 時間以内の筋弛緩薬使用を弱く推奨している(Grade 2C).システマティックレビューに使用されている論文は,本ガイドラインのシステマティックレビューで用いたものと同じ3 文献であり,解析結果・推奨度に大きな相違はない.

5 治療のモニタリングと評価

筋弛緩薬使用開始後は,呼吸・循環モニター,筋弛緩モニター(四連反応比刺激, Train-of-four (TOF) stimulation),鎮静モニター(BIS ®; Bispectral Index, 二波長指数)などを用いて,適切

な筋弛緩強度が得られているかを確認する.

6 今後の研究の可能性

Berlin 定義に基づく軽症ARDS における筋弛緩薬の有用性評価については,新たな臨床試験を要する.また,本邦で使用されている薬剤(ベクロニウム,パンクロニウム,ロクロニウム)の安全性・有効性評価のためにも,新たな臨床試験を要する.

7 文献検索式と文献選択

「neuromuscular blockade」「neuromuscular b l o c k i n g a g e n t s 」「m u s c l e r e l a x a n t s 」「neuromuscular blocke」「neuromuscular blockade」「neuromuscular blocking agent」「muscle relaxant」「paralytics」「respiratory paralysis」「vecuronium」「pancuronium」「rocuronium」「atracurium」「cisatracurium」「succinylcholine」「curare」「rapacuronium」「mivacurium」「mivacron」「tracrium」「doxacurium」「nuromax」「nimbex」「norcuron」「zemuron」「pavulo」「tubocurarine」「gallamine」「flaxedil」「pipecuronium」「alcuronium」「toxiferine」「suxamethonium」「raplon」「jexin」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL, および医中誌で検索したところ1, 692件の研究が同定され,スクリーニングの結果3 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Forel 2006 9), Gainnier M 2004 10), Papazian

2010 11)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf
p.238
9 エビデンス・プロファイル

CQ9:成人ARDS 患者に対する筋弛緩薬とプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因筋弛緩薬プラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(ICU 内)

3 ランダ

ム化比較試験深刻でない 1深刻でない深刻 2深刻でないなし70/223

(31.4%) 93/208

(44.7%)

RR 0.70 (0.55〜0.89) 134 少ない/1000

( 49 少ない〜201 少ない)

⨁⨁⨁◯

中 1 2 31.3% 94 少ない/1000

( 34 少ない〜141 少ない)

38.9% 117 少ない/1000

( 43 少ない〜175 少ない)

死亡(28 日)

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない 1深刻でない深刻 2深刻でないなし52/205

(25.4%) 71/190

(37.4%)

RR 0.68 (0.50〜0.91) 120 少ない/1000

( 34 少ない〜187 少ない)

⨁⨁⨁◯

中 1 2 25.4% 81 少ない/1000

( 23 少ない〜127 少ない)

32.0% 102 少ない/1000

( 29 少ない〜160 少ない)

圧損傷

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない 1深刻でない深刻2深刻でないなし9/205

(4.4%) 20/190

(10.5%) RR 0.43

(0.20〜0.90) 60 少ない/1000

( 11 少ない〜84 少ない) ⨁⨁⨁◯

中 1 2 3.3% 19 少ない/1000

( 3 少ない〜26 少ない)

ICU 関連筋力低下

3 ランダ

ム化比較試験深刻でない 1深刻でない深刻 2深刻でないなし41/158

(25.9%) 29/135

(21.5%) RR 1.13

(0.77〜1.67) 28 多い/1000

( 49 少ない〜144 多い) ⨁⨁⨁◯

中 1 2 6.3% 8 多い/1000

( 14 少ない〜42 多い)

RR:相対リスク

1.看護師が盲検化されていないので結果に影響が及ぶ可能性があるが,深刻に下げるほどではないと判断した. 2.シスアトラクリウムは本邦で未販売であるため,非直接性は深刻であると判断した.
p.239
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ9:成人ARDS 患者において人工呼吸を実施する際,筋弛緩薬を使用するべきか

集団:中等症以上の成人ARDS 患者,発症から48 時間以内介入:筋弛緩薬(シスアトラクリウム)48 時間持続静注

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えないARDS では,自発呼吸を温存した治療を行うことで,換気血流不均等・ICU 関連筋力低下

等を防ぐ利点が示唆されている4).しかし一方で,自発呼吸に伴う肺胞領域への過剰なストレスは,肺胞上皮の安定性を保つ上で有害に働き,ARDS の予後改善に悪影響を与える可能性も示唆されている5).自発呼吸を温存すべきか,筋弛緩薬を用いて自発呼吸を減少・消失させるべきかは,ARDS の予後改善において正反対に作用する可能性があるため,この問題の優先度はおそらく高い.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高●中◯低◯非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性(GRADE)

死亡

(ICU 内)重大⨁⨁⨁◯

中

死亡

(28 日)重大⨁⨁⨁◯

中

圧損傷重要⨁⨁⨁◯

中

ICU 関連

筋力低下重要⨁⨁⨁◯

中

結果のまとめ

アウトカムプラセボ筋弛緩薬絶対差(95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(ICU 内) 447/1000 313/1000 (246〜398) 134 少ない/1000 (49 少ない〜201 少ない)

RR 0.70 (0.55〜0.89) 313/1000 219/1000 (172〜279)

94 少ない/1000 (34 少ない〜141 少ない)

389/1000 272/1000 (214〜346) 117 少ない/1000 (43 少ない〜175 少ない)

死亡(28 日) 374/1000 254/1000 (187〜340) 120 少ない/1000 (34 少ない〜187 少ない)

RR 0.68 (0.50〜0.91) 254/1000 173/1000 (127〜231)

81 少ない/1000 (23 少ない〜127 少ない)

320/1000 218/1000 (160〜291) 102 少ない/1000 (29 少ない〜160 少ない)

圧損傷105/1000 45/1000 (21〜95)

60 少ない/1000 (11 少ない〜84 少ない) RR 0.43 (0.20〜0.90) 33/1000 14/1000 (7〜30)

19 少ない/1000 (3 少ない〜26 少ない)

ICU 関連筋力低下215/1000 243/1000 (165〜359)

28 多い/1000 (49 少ない〜144 多い) RR 1.13 (0.77〜1.67) 63/1000 71/1000 (49〜105)

8 多い/1000 (14 少ない〜42 多い)

要約:筋弛緩薬の使用は,死亡(ICU 内),死亡(28 日),圧損傷のリスクを低下させたが,

ICU 関連筋力低下には影響を与えなかった.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは小さい●たぶんばらつきは小さい◯ばらつきは大きいか

どうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか●小さい◯中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない
p.240
筋弛緩薬の合併症には,ICU 関連筋力低下があり,多発神経症・筋症,神経筋症の3 病型が含まれる.この他,深部静脈血栓,角膜損傷,アナフィラキシーも起こりうる.

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない●たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要と

する◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない薬剤は末梢静脈路から持続静脈注射で投与が可能である.必要な資器材はわずかであ

り,薬剤の価格も1 日当たり数千円以内である.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい●たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない必要な資器材および薬剤にかかる費用は,他の類似薬(鎮静薬等)と比較して大差ない.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平になる◯わからない●たぶん公平になる◯公平になる------------------ ◯一概には言えない本薬剤の使用には,特別な医療施設・医療資器材を必要としないため,現状と比べて,医

療上の不公平へ与える影響は不変であると推測される.ただしシスアトラクリウムは本邦で入手できないため,それを考慮する必要がある.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れられ

ない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない主要なステークホルダーに明らかな不利益はないため,本選択肢は容易に受け入れられる

と予測される.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない本薬剤の使用には,特別な医療施設・医療資器材を必要としないため,現実的に実現可能

である.
p.241
ab*0'Gj*0'GjoM-H, Random, 95%CI

/" Y M-H, Random, 95%CI /" Y cNdhe).#+e X4
?

Gjs	t Gj*0' ^lO >8DVWL cNdhe

= ).#+e

= A B C D E F G

バイアスのリスク

X4sUt

ab*0'Gj*0'GjoM-H, Random, 95%CI

/" Y M-H, Random, 95%CI /" Y cNdhe).#+e

Gjs	t Gj*0' ^lO >8DVWL cNdhe

= ).#+e

= A B C D E F G

バイアスのリスク

cNdhe = ).#+e

=

ab*0'Gj*0'GjoM-H, Random, 95%CI

/" Y M-H, Random, 95%CI /" Y cNdhe).#+e

Gjs	t Gj*0' ^lO >8DVWL

IS<

A B C D E F G

バイアスのリスク

ICUpmcB72

cNdhe = ).#+e

=

ab*0'Gj*0'GjoM-H, Random, 95%CI

/" Y M-H, Random, 95%CI /" Y cNdhe).#+e

Gjs	t Gj*0' ^lO >8DVWL A B C D E F G

バイアスのリスク

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.242
■ 文 献1)Adnet F, Dhissi G, Borron SW, et al:Complication profiles of adult asthmatics requiring paralysis

during mechanical ventilation. Intensive Care Med 27(11):1729-1736, 2001, PMID 11810115 2)Behbehani NA, Al-Mane F, D'Yachkova Y, et al:Myopathy following mechanical ventilation for acute

severe asthma:the role of muscle relaxants and corticosteroids. Chest 115(6):1627-1631, 1999, PMID

10378560 3)Leatherman JW, Fluegel WL, David WS, et al:Muscle weakness in mechanically ventilated patients

with severe asthma. Am J Respir Crit Care Med 153(5):1686-1690, 1996, PMID 8630621 4)Girard TD, Bernard GR:Mechanical ventilation in ARDS:a state-of-the-art review. Chest 131(3):921-

929, 2007, PMID 17356115 5)Rittayamai N, Brochard L:Recent advances in mechanical ventilation in patients with acute

respiratory distress syndrome. Eur Respir Rev 24(135):132-140, 2015, PMID 25726563 6)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical

ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286- 297, 2015, PMID 25524779 7)日本集中治療医学会敗血症レジストリ委員会:日本版敗血症診療ガイドライン The Japanese Guidelines

for the Management of Sepsis. 日集中医誌 20:124-173, 2013, PMID なし8)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving sepsis campaign:international guidelines for

management of severe sepsis and septic shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID

23353941 9)Forel JM, Roch A, Marin V, et al:Neuromuscular blocking agents decrease inflammatory response in

patients presenting with acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 34(11):2749-2757, 2006, PMID 16932229 10)Gainnier M, Roch A, Forel JM, et al:Effect of neuromuscular blocking agents on gas exchange in

patients presenting with acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 32(1):113-119, 2004, PMID 14707568 11)Papazian L, Forel JM, Gacouin A, et al:Neuromuscular blockers in early acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 363(12):1107-1116, 2010, PMID 20843245
p.243
成人ARDS患者において,日々の水分バランスをどのように維持すればよいか

1 背景,この問題の優先度

ARDS における肺水腫は,血管内皮障害や血管透過性亢進によって起こるとされる3).ARDS 患者のプラスバランスは死亡率を上昇させ4),肺血管外水分量は重症度や死亡率と関係している5).

しかしながら,ARDS の水分管理に対する介入が死亡率を改善したRCT は報告されていない.体液量の適正化を図ることが重要であり,日常診療において試みられているにも関わらず,ARDS 患者の管理において水分バランスをどのように維持すれば良いかについてはよくわかっていない.したがってこの問題の優先度は高い.

2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,成人ARDSを対象として,なんらかの水分制限する管理を受け

た患者と特に制限しない管理とを比較したRCT が3 件見つかった.ARDS に加え,ショックに対する患者に輸液負荷を調整した研究は除いた.FACTT 2006 の症例数が多かったが,その他2 つの研究の症例数は少なかった.短期死亡には有意差はなく, 28 日間におけるVFD は有意に延長した(+2. 5 日間).60 日間における腎代替療法についても差がなかった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

大規模多施設研究であるFACTT 2006 以外にこのCQ に合致する大規模研究はなく,死亡はRCT 2 件でのメタアナリシス,その他のアウトカムはFACTT 2006 のみでのメタアナリシスになった. FACTT 2006 は盲検化が不十分であるが,それ以

成人ARDS 患者において,水分を制限した管理を行うことを提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

成人ARDS 患者における水分管理の指標については,肺血管外水分量をPAWP やCVP と比較したRCT があるが,両研究ともに死亡率の改善はなく,前者では人工呼吸期間を短縮したが1),後者では特に有用性を示すことができなかった2).現時点では日々の水分バランスをできるだけオーバーバランスにしない管理が勧められる.

CQ10 CQ10

推  奨

付帯事項
p.244
外のバイアスのリスクは低く症例数も十分にあるRCT である.死亡の非一貫性は低いが(I 2=0%), FACTT 2006 が1, 000 症例に対し,Martin 2002 は37 症例と非常に少なかった.非直接性は,FACTT 2006 がこのCQ のPICO とよく合致していることから深刻ではない,不精確さは,臨床決断の閾値をまたぐことなどから深刻と判断した.以上より,エビデンスの全体的な質は「中」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

水分制限によって,腎代替療法の増加は認めなかった.死亡の減少は認めなかったが,人工呼吸器使用日数の短縮が期待でき,得られる利益の方が大きいと考える.フロセミドを使用する場合は,電解質異常のリスクがある.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

利尿薬を用いた水分制限管理は一般的に施行されており,施設間の差も少ないと思われる.死亡率の改善は示すことができなかったが,VFD を延長させ,腎代替療法も増えないことから,ほとんどの患者に受け入れられる介入であると思われる.これらのアウトカムについての価値観も,患者間のばらつきは少ないと思われる.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

利尿薬などの水分管理は多くの医療機関でされているが,利尿薬にはさまざまな薬がある.今回採用された研究では,主にフロセミドが使用されている.フロセミドは安価な薬であり,人工呼吸器使用日数の短縮が期待でき,腎代替療法の増加も認めなかったため,得られる利益のほうが大きいと考える.

3-5.推奨のグレーディング

パネル会議での話し合いでは,メタ解析の結果からも死亡率は改善しないものの,VFD を延長し,腎代替療法の増加もなかったことから,水分制限管

理が支持された.しかしながら,FACTT 2006 以外に質の高い研究がなく,短期死亡率を改善しなかったことから,「水分を制限した管理を行うことを提案する」ことに全会一致で決定した.

なお本検討ではショック患者に対しての研究は除外し,ARDS で循環動態が落ち着いている人を対象に行った研究で検討している.ショックの場合は,適切な輸液負荷を行うべきである.

今回選択した3 件すべてでフロセミドが用いられているが,どの利尿薬を用いるべきについては根拠はない.実際の水分管理についてFACTT 2006 を参照すると,初日の水分管理は水分制限でin 約4, 200mL,out 約3, 000mL,フロセミド使用量約150mg であり,非水分制限ではin 約5, 000mL, out 約2, 500mL,フロセミド使用量は約75mg であった.2 日目以降水分制限では水分バランス-150 から-400mL/day 程度で管理できているのに対して,非水分制限では+500mL/day 前後を推移していた.フロセミドの使用は非水分制限で50 〜80mg/day,水分制限で130 〜160mg/day 程度であった.これらを勘案しても至適な水分管理の指標や目標値,水分制限の方法については,推奨できる根拠はないと考えた.水分管理の指標については,比較的最近の研究で,肺血管外水分量とPAWP やCVP と比較したRCT があるが,両研究ともに死亡率の改善はなく,前者では人工呼吸期間を短縮したが1),後者では特に有用性を示すことができなかった2).

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

SSCG 2012 に「組織低灌流所見のない,敗血症に伴うARDS 患者に対しては,保守的な輸液戦略を推奨する」と記載されている6).本ガイドラインにおいては,FACTT 2006 以外に大規模研究はなく,システマティックレビューの結果も死亡率を改善しなかったため,「提案する」とすることで決定した.
p.245
のリスクになることが示唆されており7),長期アウトカムへの影響についての検討が必要である.

7 文献検索式と文献選択

「急性呼吸窮迫症候群」「輸液療法」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL,および医中誌で2015 年5 月17 日までの文献を検索したところ3, 160 件の研究が同定され,スクリーニングの結果2 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

FACTT 2006 8),Martin 2002 9),Mojtahedzadeh

2005 10)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

5 治療のモニタリングと評価

FACTT 2006 のサブ解析では,中心静脈カテーテルと肺動脈カテーテルについては,明らかな差がないため,肺動脈カテーテルを用いたモニタリングは必ずしも必要ない.その他の指標として,肺血管外水分量,脳性利尿ペプチド,体重測定などがあるが,いずれが有用か,また項目ごとの目標値についてもはっきりとした答えはない.

フロセミドを用いる場合は,低カリウム血症など電解質異常に注意する必要がある.

6 今後の研究の可能性

どの測定項目を用い,目標値をいずれに設定するかについては,さらなる検討が必要である.

また利尿薬や輸液製剤の種類についても検討が必要であるかもしれない.

またFACTT 2006 の患者を12 ヵ月までフォローした研究では,水分を制限した管理が認知機能障害
p.246
9 エビデンス・プロファイル

CQ10:成人ARDS 患者に対する水分制限と非水分制限の比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因水分

制限非水分

制群相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

2 ランダ

ム化比較試験深刻ではない深刻ではない深刻ではない深刻1なし131/522

(25.1%) 144/515

(28.0%)

RR 0.90 (0.73~1.10) 28 少ない/1000

(28 多い~75 少ない)

⨁⨁⨁◯

中1重

大

25.0% 25 少ない/1000

(25 多い~68 少ない)

45.0% 45 少ない/1000

(45 多い~122 少ない)

VFD(注2

1 ランダ

ム化比較試験深刻ではない深刻ではない深刻ではない深刻ではないなし503 497 -平均2.5 日多い

(1.12 日多い~3.88 日多い) ⨁⨁⨁⨁

高重

大

腎代替療法(注3

1 ランダ

ム化比較試験深刻ではない深刻ではない深刻ではない深刻2なし51/503

(10.1%) 70/497

(14.1%) RR 0.72

(0.51~1.01) 39 少ない/1000

(1 多い~69 少ない) ⨁⨁⨁◯

中2重

要

15.0% 42 少ない/1000

(2 多い~74 少ない)

RR:相対リスク

1.絶対効果 -2.8%で,95%信頼区間が -7.5% ~ +2.8%であり,臨床決断の閾値を3%として考えたが,境界に近い値となり,深刻な不精確と判断した. 2.絶対効果 -3.9%で,95%信頼区間が -6.9% ~ +0.1%であったが,サンプル数は十分ではなく,深刻な不精確とした.
p.247
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ10:成人ARDS 患者において,日々の水分バランスをどのように維持すればよいか

集団:成人ARDS 患者介入:水分制限

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?

より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------------ ◯一概には言えないARDS における肺水腫は,血管内皮障害や血管透過性亢進によって起こるとされる3).

ARDS 患者のプラスバランスは死亡率を上昇させ4),肺血管外水分量は重症度や死亡率と関係している5).しかしながら,ARDS の水分管理に対する介入が死亡率を改善したRCT は報告されていない.体液量の適正化を図ることが重要であり,日常診療において試みられているにも関わらず,ARDS 患者の管理において水分バランスをどのように維持すれば良いかについてはよくわかっていない.したがってこの問題の優先度は高い.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高●中◯低◯非常に低------------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性 (GRADE)

死亡(短期)(注1重大⨁⨁⨁◯

中

VFD (注2重大⨁⨁⨁⨁

高

腎代替療法(注3重要⨁⨁⨁◯

中

結果のまとめ

アウトカム非水分制限水分制限絶対差(95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 280/1000 252/1000 (204〜308) 28 少ない/1000 (28 多い〜75 少ない)

RR 0.90 (0.73~1.10) 250/1000 225/1000 (183〜275)

25 少ない/1000 (25 多い〜68 少ない)

450/1000 405/1000 (329〜495) 45 少ない/1000 (45 多い〜122 少ない) VFD(注2平均12.1 日平均14.6 日平均2.5 日多い(1.12 日多い〜3.88 日多い) ‐

腎代替療法(注3 141/1000 101/1000 (72〜142)

39 少ない/1000 (1 多い〜69 少ない) RR 0.72 (0.51~1.01) 150/1000 108/1000 (77〜152)

42 少ない/1000 (2 多い〜74 少ない)

要約:ARDS 患者に水分を制限した管理を行うことによって短期死亡は改善しないが,VFD

を2.5 日間延長させた.腎代替療法に有意差はなかった.

FACTT 2006 では腎不全free days に両群間で差がなかった.post hoc 解析で,最初の2 日間でAKI(Acute Kidney Injury)になった患者は,水分制限群169/503 vs. 非水分制限群 137/497, p=0.04 と多かったが11),体液量の変化を加味すると非水分制限群でむしろ多かった12).臓器うっ血にも注意する必要があり,水分制限が腎障害に直結すると言うわけではない.FACTT2006 では,60 日死亡,Martin 2002 では30 日死亡だったが,短期死亡として統合して評価した.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは大きい◯ばらつきは大きいと思われる●ばらつきは小さいと思われる◯ばらつきは小さい◯ばらつきは大きいかどうか

不明

予想される効果は大きいですか? ◯大きい●中程度◯小さい◯わずか------------------------ ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか●小さい◯中程度◯大きい------------------------ ◯一概には言えない◯わからない
p.248
効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------------ ◯一概には言えない

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない●たぶん少ない◯わからない◯たぶん多くを必要とする◯多くを必要とする------------------------ ◯一概には言えないFACTT 2006 では肺動脈楔入圧や中心静脈圧を用いていたが,他の研究では別の指標を

用いていたり,特に指標がない研究もあり,決まった指標はない.おそらく多くの施設で循環動態を評価する何らかの指標を用いており普段のプラクティスで達成でき,水分制限の介入において新たなものを追加する可能性は低いと考える.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは大きい◯コストはたぶん大きい◯わからない●コストはたぶん小さい◯コストは小さい------------------------ ◯一概には言えないFACTT 2006 は7日間の介入であるが,その間介入群においておよそフロセミド600mg の

使用量増加があった.対照群が我々の標準的医療とは異なる可能性もあるが,FACTT 2006 の結果とフロセミド20mg 60 円程度であることを考えると,1,800 円程度の増額になる.これは,人工呼吸日数が2 日間程度短縮するという結果を踏まえると得られる利益の方が大きいと考える.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?

健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる●公平になる------------------------ ◯一概には言えない本治療の施行には,特別な医療施設・医療資器材を必要としない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れられない◯受け入れられない------------------------ ◯一概には言えない水分管理を目的とする治療は一般的であり,おそらく受け入れられる.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------------ ◯一概には言えない本治療の施行には,特別な医療施設・医療資器材を必要としない.

注1:30 日もしくは60 日死亡注2:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数 ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする。注3:60 日間における腎代替療法

.

.

.
p.249
Q-\M

]^%*#?c%*#?cgM-H, Random, 95%CI

)R M-H, Random, 95%CI )R S89h_jS89h_

S89h_ 5 jS89h_

5

?cl	
m ?c%*# YeH 60<NOD A B C D E F G

バイアスのリスク

VFD

S89h_

5 jS89h_

5

]^GAPV4F?cGAPV4F?cgM-H, Random, 95%CI

)R M-H, Random, 95%CI )R S89h_jS89h_

YeH 60<NOD

?cl	
m A B C D E F G

バイアスのリスク

腎代替療法

S89h_ 5 jS89h_

5

]^%*#?c%*#?cgM-H, Random, 95%CI

)R M-H, Random, 95%CI )R S89h_jS89h_

?cl	
m ?c%*# YeH 60<NOD A B C D E F G

バイアスのリスク

■ 文 献1)Hu W, Lin CW, Liu BW, et al:Extravascular lung water and pulmonary arterial wedge pressure for

fluid management in patients with acute respiratory distress syndrome. Multidiscip Respir Med 9(1):3, 2014, PMID 24428957 2)Zhang Z, Ni H, Qian Z:Effectiveness of treatment based on PiCCO parameters in critically ill patients

with septic shock and/or acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. Intensive Care Med 41(3):444-451, 2015, PMID 25605469 3)Ware LB, Matthay MA:Medical Progress:The Acute Respiratory Distress Syndrome. N Engl J Med

342(18):1334-1349, 2000, PMID 10793167 4)Rosenberg AL, Dechert RE, Park PK, et al:Review of a large clinical series:association of cumulative

fluid balance on outcome in acute lung injury:a retrospective review of the ARDSnet tidal volume study cohort. J Intensive Care Med 24(1):35-46, 2009, PMID 19103612

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.250
5)Martin GS, Eaton S, Mealer M, et al:Extravascular lung water in patients with severe sepsis:a

prospective cohort study. Crit Care 9(2):R74-82, 2005, PMID 15774053 6)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for

Management of Severe Sepsis and Septic Shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID

23353941 7)Mikkelsen ME, Christie JD, Lanken PN, et al:The adult respiratory distress syndrome cognitive

outcomes study:long-term neuropsychological function in survivors of acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 185(12):1307-1315, 2012, PMID 22492988 8)Wiedemann HP, Wheeler AP, Bernard GR, et al:Comparison of two fluid-management strategies in

acute lung injury. N Engl J Med 354(24):2564-2575, 2006, PMID 16714767 9)Martin GS, Mangialardi RJ, Wheeler AP, et al:Albumin and furosemide therapy in hypoproteinemic

patients with acute lung injury. Crit Care Med 30(10):2175-2182, 2002, PMID 12394941 10)Mojtahedzadeh M, Vazin A, Najafi A, et al:The effect of furosemide infusion on serum epidermal

growth factor concentration after acute lung injury. J Infus Nurs 28(3):188-193, 2005, PMID 15912074 11)Grams ME, Estrella MM, Coresh J, et al:Fluid balance, diuretic use, and mortality in acute kidney

injury. Clin J Am Soc Nephrol 6(5):966-973, 2011, PMID 21393482 12)Liu KD, Thompson BT, Ancukiewicz M, et al:Acute kidney injury in patients with acute lung injury:

impact of fluid accumulation on classification of acute kidney injury and associated outcomes. Crit Care Med 39(12):2665-2671, 2011, PMID 21785346
p.251
成人ARDS患者において, 好中球エラスターゼ阻害薬を使用するべきか

1 背景,この問題の優先度

ARDS の本態は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫であり,その発症には好中球エラスターゼが重要なメディエーターの一つであると考えられている1, 2).本邦においては,好中球エラスターゼ阻害薬が臨床使用可能であり,予後改善効果についてこれまでさまざまな検討がされてきた.死亡率改善効果はないとするメタ解析結果3)がある一方,潜在的な有効性を期待する報告もあり4),重要度は依然高いと考えられる.本邦では保険適応があり,比較的多くの医療施設で使用されているであろう現状も踏まえると,この問題の優先度は高い. 2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,6 件(患者815 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 0. 92, 95%CI 0. 64 〜1. 32),重篤合併症(RR 0. 79, 95%CI 0. 47 〜1. 34),VFD(平均1. 58 日延長,95%CI −2. 72 日~+5. 89 日)のいずれにおいても,好中球エラスターゼ阻害薬の有用性は認めなかった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

盲検化においてバイアスのリスクが高い研究が多

成人ARDS 患者において,好中球エラスターゼ阻害薬を使用しないことを提案する(GRADE 2D,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「非常に低」)

好中球エラスターゼ阻害薬は,“4 臓器以上の多臓器障害を合併する患者,熱傷,外傷に伴う急性肺障害患者には投与しないことが望ましい”との注釈付きで,日本においてARDS の治療薬として保険収載されている.日本呼吸器学会が2010 年に行った国内アンケート調査でも,国内の多くの施設においてARDS に対して好中球エラスターゼ阻害薬が使用されていることは付記しておく.

CQ11 CQ11

推  奨

付帯事項
p.252
ため,追加で解析を行った.その結果,VFD においても有意な改善は認めなかった.これらの結果を合わせて,2 回目の投票がメール上で行われ,全会一致で「使用しないことを提案する」とした推奨文が最終決定された.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

スカンジナビアの成人ARDS における人工呼吸管理ガイドライン,SSCG 2012 のARDS の項には記載がない5, 6).日本版敗血症診療ガイドラインでは,「ARDS に対し考慮してもよい(2C)」としているが7),推奨内容はシステマティックレビューに基づくものではない.

5 治療のモニタリングと評価

本薬剤使用開始後は,呼吸・循環モニター,血液学的検査などを用いて,有害事象の有無を確認する.

6 今後の研究の可能性

質の良いRCT が少ないため,本薬剤の有効性を示すためには,良質な大規模臨床試験が必要である.

7 文献検索式と文献選択

ステロイドと筋弛緩薬以外のARDS治療薬剤として,「surfactant」「prostaglandin」「prostacyclin」「acetylcysteine」「neutrophil elastase」「colony stimulating factor」「nitric oxide」「protein c」「antithrombin」「ulinastatin」「macrolide」「beta agonist」「mesenchymal stem cell」「ketoconazole」「statin」「thrombomodulin」「ibuprofen」「nafamostat」「gabexate」「lisofylline」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL, および医中誌で検索した.その結果,7, 687 件の研究が同定され,薬剤ごとに行ったスクリーニングの結果,6 件のランダム化比較試験を採用した.

く認められた.研究の非一貫性は中等度~高度であった(死亡(短期) (I 2=31%),重篤合併症(I 2=66%), VFD(I 2=86%)).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

システマティックレビューの結果,有効性も重篤合併症も認められなかった.コスト増加に見合う利益は小さいと考えられる.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

推奨内容「好中球エラスターゼ阻害薬を使用しないことを提案する」は,パネル会議において患者代表を含む全会一致で決定したものであり,患者の嗜好に大きな偏りはないと考えられる.ただし,本邦において,好中球エラスターゼ阻害薬は保険適応となっている薬剤であり,解析結果からは明らかな重篤合併症増加も認められなかったため,患者の価値観や好みにばらつきが生じる可能性はある.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

システマティックレビューでは,死亡率・重篤合併症・VFD のいずれにも影響を認めなかった.入手・使用は容易な薬剤であるが,高額である.得られる正味の利益よりもコストや資源の方が大きい.

3-5.推奨のグレーディング

本薬剤は死亡率・重篤合併症のいずれにも影響を認めなかったが,本邦では保険適応があり,非常に多くの施設で使用されている現状を踏まえ,パネル会議では「使用しないことを提案する」という推奨文が全会一致で決定された.しかしその後,VFDも主要アウトカムに加えて検討する意見が出された
p.253
9 エビデンス・プロファイル

CQ11:成人ARDS 患者に対する好中球エラスターゼ阻害薬とプラセボの比較

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Endo 2006 8),Kadoi 2004 9),Nakayama 2013 10), Shirai 2006 11),Tamakuma 1998 12),Zeiher 2004 13)採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(ア

ブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアス

のリスク非一貫性非直接性不精確さその他の

要因好中球エ

ラスターゼ阻害薬プラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

6 ランダム化

比較試験深刻1深刻2深刻でない深刻3なし119/412

(28.9%) 115/403

(28.5%)

RR 0.92 (0.64~1.32) 23 少ない/1000

(91 多い~103 少ない)

⨁◯◯◯

非常に低重

大

19.0% 15 少ない/1000

( 61 多い~68 少ない)

45.0% 36 少ない/1000

( 144 多い~162 少ない)

重篤合併症

2 ランダム化

比較試験深刻1深刻2深刻でない深刻3なし62/354

(17.5%) 75/355

(21.1%)

RR 0.79 (0.47~1.34) 44 少ない/1000

( 72 多い~112 少ない)

⨁◯◯◯

非常に低重

大

2.0% 4 少ない/1000

( 7 多い~11 少ない)

24.0% 50 少ない/1000

( 82 多い~127 少ない)

VFD(注2

3 ランダム化

比較試験深刻1深刻 2深刻でない深刻 3なし373 370 ‐平均1.77 日多い

(0.99 日少ない~4.52 日多い) ⨁◯◯◯

非常に低重

大

RR:相対リスク1.Blind に high risk of bias 多い. 2.I2 高値. 3.症例数が少なく95%CI が広い.
p.254
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ11:成人ARDS 患者において,好中球エラスターゼ阻害薬を使用するべきか

集団:成人ARDS 患者介入:好中球エラスターゼ阻害薬使用

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる●高い◯おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えないARDS の本態は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫であり,その発症には好中

球エラスターゼが重要なメディエーターの一つであると考えられている1, 2).本邦においては,好中球エラスターゼ阻害薬が臨床使用可能であり,予後改善効果についてこれまでさまざまな検討がされてきた.死亡率改善効果はないとするメタ解析結果3)がある一方,潜在的な有効性を期待する報告もあり4),重要度は依然高いと考えられる.本邦では保険適応があり,比較的多くの医療施設で使用されているであろう現状も踏まえると,この問題の優先度は高い.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中◯低●非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性(GRADE)

死亡(短期)(注1重大⨁◯◯◯

非常に低

重篤合併症重大⨁◯◯◯

非常に低

VFD(注2重大⨁◯◯◯

非常に低

結果のまとめアウトカム対照好中球エラスタ

ーゼ阻害薬絶対差(95% CI)相対効果(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 285/1000 263/1000 (183~377) 23 少ない/1000 ( 91 多い~103 少ない)

RR 0.92 (0.64~1.32) 190/1000 175/1000 (122~251)

15 少ない/1000 ( 61 多い~68 少ない)

450/1000 414/1000 (288~594) 36 少ない/1000 ( 144 多い~162 少ない)

重篤合併症211/1000 167/1000 (99~283) 44 少ない/1000 ( 72 多い~112 少ない)

RR 0.79 (0.47~1.34) 20/1000 16/1000 (9~27)

4 少ない/1000 ( 7 多い~11 少ない)

240/1000 190/1000 (113~322) 50 少ない/1000 ( 82 多い~127 少ない)

VFD(注2平均12.0 日平均13.8 日平均1.77 日多い(0.99 日少ない~4.52 日多い) ‐要約:好中球エラスターゼ阻害薬は,死亡(短期),重篤合併症,VFD に影響を与えなかった.エビデンスの確信性は「非常に低」.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは

小さい◯ばらつきは大きかどうか不明●たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい◯中程度◯小さい◯わずか------------------ ●一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------ ●一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい◯たぶん効果は

大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ●一概には言えない
p.255
T0_P

`a'-%Ag'-%AgkM-H, Random, 95%CI

+ U M-H, Random, 95%CI + U

', !#%c

9 GYc 9

', !#%cGYc

Agn	
o Ag'-% \iK :3>QRF CQ11 06 Forest plot A B C D E F G

バイアスのリスク11 フォレストプロット

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない◯たぶん少ない◯わからない●たぶん多くを必要とする◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない薬剤は末梢静脈路から静脈注射で投与が可能であるため,必要な資器材はわずかである.しか

し,薬剤価格分の追加費用が必要である.

好中球エラスターゼ阻害薬 6,216~13,551 円/日(含後発品)

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい◯たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない●たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない有効性が示されていないので,薬剤にかかる費用の分だけコストが大きくなる.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる◯たぶん不公平に

なる◯わからない●たぶん公平になる◯公平になる------------------ ◯一概には言えない特別な医療施設・医療資器材を必要としないため,医療上の不公平へ与える影響はおそらく公平に

なると推測される.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる◯たぶん受け入れら

れる●わからない◯たぶん受け入れられない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない比較的高価な薬剤であるため,主要なステークホルダーに受け入れられるかどうかは不明である.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ◯可能●たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない静脈注射によって使用可能な薬剤であり,特別な医療施設・医療資器材を必要としないため,現実

的に実現可能である.

注1:90 日以内の死亡の内,各研究内で主たるアウトカムとして扱われたもの.注2:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数 ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする.
p.256
kbA4]

`a'-%Ag'-%AgkM-H, Random, 95%CI + U M-H, Random, 95%CI

', !#%c

9 GYc 9

Agn	
o Ag'-% \iK :3>QRF ', !#%cGYc A B C D E F G

バイアスのリスク

VFD

+ U M-H, Random, 95%CI + U `aJCSX8IAgJCSX8IAgkM-H, Random, 95%CI

', !#%c

9 GYc 9

Agn	
o \iK :3>QRF ', !#%cGYc A B C D E F G

バイアスのリスク

■ 文 献1)Donnelly SC, MacGregor I, Zamani A, et al:Plasma elastase levels and the development of the adult respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 151(5):1428-1433, 1995, PMID 7735596 2)Moraes TJ, Chow CW, Downey GP:Proteases and lung injury. Crit Care Med 31(4 Suppl):S189-194, 2003, PMID 12682439 3)Iwata K, Doi A, Ohji G, et al:Effect of neutrophil elastase inhibitor (sivelestat sodium) in the treatment of acute lung injury (ALI) and acute respiratory distress syndrome (ARDS):a systematic review and meta-analysis. Intern Med 49(22):2423-2432, 2010, PMID 21088343 4)Aikawa N, Kawasaki Y:Clinical utility of the neutrophil elastase inhibitor sivelestat for the treatment of acute respiratory distress syndrome. Ther Clin Risk Manag 10:621-629, 2014, PMID 25120368 5)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286- 297, 2015, PMID 25524779 6)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID 23353941 7)日本集中治療医学会敗血症レジストリ委員会:日本版敗血症診療ガイドライン The Japanese Guidelines for the Management of Sepsis. 日集中医誌 20:124-173, 2013, PMID なし8)Endo S, Sato N, Yaegashi Y, et al:Sivelestat sodium hydrate improves septic acute lung injury by reducing alveolar dysfunction. Res Commun Mol Pathol Pharmacol 119(1-6):53-65, 2006, PMID 17974096 9)Kadoi Y, Hinohara H, Kunimoto F, et al:Pilot study of the effects of ONO-5046 in patients with acute respiratory distress syndrome. Anesth Analg 99(3):872-877, table of contents, 2004, PMID 15333424 10)中山秀章, 大嶋康義, 渡辺健雄,他:NPPV 下のALI/ARDS 症例におけるシベレスタットナトリウムの有用性の検討. Progress in Medicine 33(10):2223-2227, 2013, PMID なし11)白井邦博, 吉田省浩, 小倉真治,他:ALI/ARDS を合併した重症急性膵炎に対するシベレスタットナトリウムの有効性に関する検討. 日救急医学誌 17(11):793-802, 2006, PMID なし12)玉熊正悦, 柴 忠明, 平澤博之,他:好中球エラスターゼ阻害剤;ONO-5046・Na の重症感染症に対する有効性と安全性の検討―前期第II 相試験―. 臨医薬 142(2):241-261, 1998, PMID なし13)Zeiher BG, Artigas A, Vincent JL, et al:Neutrophil elastase inhibition in acute lung injury:results of the STRIVE study. Crit Care Med 32(8):1695-1702, 2004, PMID 15286546

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)
p.257
成人ARDS患者において,

ステロイドを投与すべきか

1 背景,この問題の優先度

ARDS は,肺間質における過剰な炎症反応の発生により血管透過性が亢進し,血漿成分の漏出が生じる非心原性肺水腫と考えられている1, 2).ステロイド療法による強力な抗炎症作用は,ARDS の病態を改善する可能性があるとされこれまでさまざまな投与方法が検討されてきている3).しかし,ステロイドの使用はその免疫抑制作用により患者を易感染状態にする可能性があり,感染の併発の可能性も懸念される.以上より優先順位は高いと考えられる.

2 解 説

エビデンスの要約ARDS 患者に対するステロイド療法の無作為化比較試験は,メチルプレドニゾロン1 ~2mg/kg/ day 投与あるいはハイドロコーチゾン200mg/day投与の低−中等量投与法とメチルプレドニゾロン

120mg/kg/day の大量投与法の研究が存在した.ステロイド投与は,ステロイドを使用しない選択肢と比較して,死亡を有意に減少させなかったがVFDを有意に増加させた.また,感染発生率を有意に増加させなかった.

推奨の根拠となるVFD を検討した無作為化比較試験はメチルプレドニゾロン1 ~2mg/kg/day の効果を検討した研究であった.高用量ステロイド投与を行ったBernard の研究ではリスク比が1. 57 と感染症発生率が増加する傾向にあった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

推奨を提言するための研究はいずれもRCT であった.バイアスのリスクは死亡,感染,VFD のいずれにおいても深刻でないとした.結果の非一貫

成人ARDS 患者において,ステロイド(メチルプレドニゾロン1 ~2mg/kg/ day 相当)の使用を提案する(GRADE 2B,推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの確信性「中」)

1つのRCT でハイドロコーチゾン(200mg/day),残り3つのRCT でメチルプレドニゾロン(1 ~2mg/kg)が使用されており,その結果「メチルプレドニゾロン1 ~ 2mg/kg/day 相当」という推奨文とすることとした.

CQ12 CQ12

推  奨

付帯事項
p.258
性に関しては,死亡については点推定値のばらつきを認め,中等度の異質性があった(I2 =44%).この異質性を説明できる明確な理由がなかったため深刻とした.非直接性は,いずれのアウトカムでも深刻でないとした.不精確さは,死亡および感染のアウトカムでリスク比の95%信頼区間が臨床決断閾値を超えるため深刻であるとした.出版バイアスは研究数が少なく不明である.以上より,1段階グレードダウンしてエビデンスの全体的な質は,「中」とした.

3-2.利益と害のバランスはどうか?

本邦におけるほぼ全ての施設で可能な医療である.各研究では評価されていないが,ステロイド投与により感染症の診断の機会が奪われる可能性がある.また,一般的なステロイドの副作用(高血糖,感染など)のリスクも懸念される.加えて,ステロイドの使用でICU 関連筋力低下の発生が懸念される.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

患者の価値観や好みにばらつきは存在しないと考えられる.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

本邦におけるほぼ全ての施設で可能な医療である.死亡率に有意な有効性は認めないものの,感染

の発生率の増加は確認されず,VFD の増加が期待される.しかしながら,各研究では評価されていないが,ステロイド投与により感染症の診断の機会が奪われる可能性がある.また,一般的なステロイドの副作用(高血糖,感染など)のリスクも懸念される.加えて,ステロイドの使用でICU 関連筋力低下の発生が懸念される.

3-5.推奨のグレーディング

第1回のパネル会議では,VFD をアウトカムの対象として評価せず,死亡率・感染発生率のみの評価を行ったSR が報告された.SR 委員からは,ステロイド投与を行わないことを提案すべきとの意見が出された.第1回パネル会議において事前投票では満場一致でなく,再度投票を行ったところ,パネリスト12 名中,11 名がステロイド投与を支持せず, 1 名のみが投与を支持するという結果となった.しかしながら投与を支持しないとしたパネリストの1人からVFD に対する考慮がなされていないという指摘があった.このため,VFD をアウトカムとして加えたSR が再度報告された.この報告書では, SR 委員からは,ステロイド投与を弱いながらも支持すべきとの意見が出された.その結果を受けて,第2回目のパネル会議を開催したところ,ステロイド投与支持が10 名,不支持が2 名となった.ただし投与を支持する10 名から,VFD の重要度はさほ

診療ガイドラインパネルの投票結果パネル会議で全会一致の合議が得られなかったため,投票を行った.

推奨の強さ強い弱い弱い強い

推奨「ステロイドを使用する」

ことを推奨する「ステロイドを使用する」

ことを提案する「ステロイドを使用しない」

ことを提案する「ステロイドを使用しない」

ことを推奨する

1 回目投票VFD の情報なし0 票1 票11 票0 票2 回目投票VFD の情報あり0 票10 票2 票0 票VFD の情報も考慮した2 回目の投票で「ステロイドを使用する」ことを提案するが10 票で,合計83% になり50% を超えた.一方「ステロイドを使用しない」ことを提案するは2 票で20% 未満だった.「ステロイドを使用しない」ことを推奨するが70% 未満であるため,パネル会議の結論としては,「ステロイドを使用する」ことを提案することに決まった.ただし投与を支持する10 名からも,VFD の重要度はさほど高くないのではとの疑義や,投与にあたっては副作用などに十分留意すべきとの意見が出された.
p.259
6 今後の研究の可能性

ARDS に対するステロイドの投与は,その開始時期,投与期間,漸減方法により効果が違う可能性があるため,これらの点を考慮した大規模研究が必要である.

7 文献検索式と文献選択

「副腎皮質ホルモン」,「呼吸窮迫症候群─急性, ARDS,急性肺損傷,肺炎,肺水腫」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL,および医中誌で2105 年4 月24 日までの文献を検索したところ1, 132 件の研究が同定され,スクリーニングの結果5 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Annane 2006 5),Steinberg 2006 6),Bernard 1987 7), Meduri 1998 8),Meduri 2007 9)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf

ど高くないのではとの疑義や,投与にあたっては副作用などに十分留意すべきとの意見が出された.

今回取り上げたRCT においてステロイド投与が有利としたグループもARDS 発症後14 日以降のステロイド投与開始は死亡率を悪化させる可能性があるとして早期の投与を示唆している4).一方,日本呼吸器学会が2010 年に行った国内アンケート調査では,多くの医師がARDS に対してメチルプレドニゾロン500 〜1, 000mg を連日投与する方法(パルス療法)を行うと回答している.しかし,ARDSに対するパルス療法の有効性・有害性を検討したRCT は存在せず,今回の検討対象となり得なかった.以上より投与時期や投与量方法などについては今後の研究結果を期待したい.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

他の診療ガイドラインに本CQ に関する記載は存在しない.

5 治療のモニタリングと評価

ICU で行う通常モニタリングで良い.感染症の併発に注意する.
p.260
9 エビデンス・プロファイル

CQ12:成人ARDS 患者に対するステロイド投与

質の評価患者数効果

質重要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因ステロイドプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

5 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻1深刻でない深刻2なし127/303

(41.9%) 141/268

(52.6%)

RR 0.83 (0.65〜1.07) 89 少ない/1000

( 37 多い〜184 少ない)

⨁⨁⨁◯

中重

大

23.8% 40 少ない/1000

( 17 多い〜83 少ない)

63.5% 108 少ない/1000

( 44 多い〜222 少ない)

感染

5 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻2なし79/303

(26.1%) 70/268

(26.1%)

RR 0.83 (0.65〜1.06) 44 少ない/1000

( 16 多い〜91 少ない)

⨁⨁⨁◯

中重

大

14.1% 24 少ない/1000

( 8 多い〜49 少ない)

42.6% 72 少ない/1000

( 26 多い〜149 少ない)

VFD(注2

3 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻でないなし127 168 ‐平均5.67 日多い

( 3.49 日多い〜7.68 日多い) ⨁⨁⨁⨁

高重

大

RR:相対リスク1点推定値のばらつきがあり、中等度の異質性がある(I2 = 44%)。

2 RR の95%信頼区間が臨床決断閾値を超える

, .

.
p.261
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ12:成人ARDS 患者において,ステロイドを投与すべきか

集団:成人ARDS 患者介入:ステロイド使用

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる●高い◯おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えないARDS は,肺間質における過剰な炎症反応の発生により血管透過性が亢進し,血漿成分の漏

出が生じる非心原性肺水腫と考えられている1, 2).ステロイド療法による強力な抗炎症作用は,ARDS の病態を改善する可能性があるとされこれまで様々な投与方法が検討されてきている3).しかし,ステロイドの使用はその免疫抑制作用により患者を易感染状態にする可能性があり,感染の併発の可能性も懸念される.以上より優先順位は高いと考えられる.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高●中◯低◯非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値

アウトカム相対的な重要性エビデンスの確信性 (GRADE)

死亡(短期)(注1重大⨁⨁⨁◯

中

感染重大⨁⨁⨁◯

中

VFD(注2重大⨁⨁⨁⨁

高

結果のまとめ

アウトカムプラセボステロイド絶対差 (95% CI)相対効果

(RR) (95% CI)

死亡(短期)(注1 526/1000 437/1000 (342〜563) 89 少ない/1000 ( 37 多い〜184 少ない)

RR 0.83 (0.65~1.07) 238/1000 198/1000 (155〜255)

40 少ない/1000 ( 17 多い〜83 少ない)

635/1000 527/1000 (413〜679) 108 少ない/1000 ( 44 多い〜222 少ない)

感染261/1000 217/1000 (170〜277) 44 少ない/1000 ( 16 多い〜91 少ない)

RR 0.83 (0.65~1.06) 141/1000 117/1000 (92〜149)

24 少ない/1000 ( 8 多い〜49 少ない)

426/1000 354/1000 (277〜452) 72 少ない/1000 ( 26 多い〜149 少ない)

VFD(注2平均6.7 日平均12.3 日平均5.67 日多い(3.49 日多い〜7.68 日多い) ‐

要約:ARDS 患者において,ステロイドを使用すると死亡率は減少しなかったが,VFD が増加した.感染は増加しなかった.VFD の検討はメチルプレドニゾロン1~2mg/kg/dayの効果を検討した研究のみで評価されていた.高用量ステロイド投与を行ったBernard の研究ではリスク比が1.57 と感染症発生率が増加する傾向にあった.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ●ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは

小さい◯ばらつきは大きいかどうか不明◯たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい◯中程度●小さい◯わずか------------------ ◯一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ●わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------ ◯一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい●たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ◯一概には言えない
p.262
各RCT の内容Studyステロイドの種類対象患者投与期間テーパ

リング

Annane

2006 ハイドロコーチゾン

200mg/day (メチルプレドニゾロン

換算40mg/day)敗血症性ショックにARDS を合併した患者7 日間なしBernard

1987 メチルプレドニゾロン

120mg/kg/day ARDS 患者1 日間なし

Meduri

1998 メチルプレドニゾロン

2mg/kg/day ARDS 発症後7~21 日間経過しても改善が見られず,かつ,治療できていない感染の存在が否定できている成人患者32 日間あり

Meduri

2007 メチルプレドニゾロン

1mg/kg/day人工呼吸開始72 時間以内のARDS 患者28 日間あり

ARDS network

2006 メチルプレドニゾロン

2mg/kg/day ARDS 発症から7~28 日経過しても人工呼吸を要する患者25 日間あり

資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない●たぶん少ない◯わからない◯たぶん多い◯多い------------------ ◯一概には言えないステロイドは,安価な薬品であり,ARDS の治療で検証されているステロイドの量で検討する

と,先発品で1日約1,000 円,ジェネリックを使用すると約400 円である.おおよそ4 週間の使用期間を考慮すると,先発品で約30,000 円,ジェネリック薬品を使用すると12,000 円となる.ステロイドは多くの病院で常備されている.

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも

小さい●たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない◯たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない安価な治療であり,VFD の増加を考慮すれば,たぶんコストは利益よりも小さい.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先 される◯不公平になる◯たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる●公平になる------------------ ◯一概には言えない本治療の施行には,特別な医療施設・医療資器材を必要としない.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる●たぶん受け入れられる◯わからない◯たぶん受け入れられ

ない◯受け入れられない------------------ ◯一概には言えない

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ●可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ◯一概には言えない本治療の施行には,特別な医療施設・医療資器材を必要としない.注1:死亡(90 日以内の死亡の内,各研究内で主たるoutcome として扱われたもの)注2:28 日間のうち人工呼吸器に依存していない日数.ただし対象患者が28 日以内に死亡した場合はゼロとする.
p.263
ab'-$@g'-$@gkM-H, Random, 95%CI

+V M-H, Random, 95%CI +V ",%cFZc

",%c8 FZc8

@gn	
o @g'-$ ]iJ 93=QSE

CQ12 06 Forest plo U0`P

A B C D E F G

バイアスのリスク

KR

",%c8 FZc8

ab'-$@g'-$@gkM-H, Random, 95%CI

+V M-H, Random, 95%CI +V ",%cFZc

@gn	
o @g'-$ ]iJ 93=QSE A B C D E F G

バイアスのリスク

VFD

FZc8 ",%c8

+V M-H, Random, 95%CI +V abIBTY7H@gIBTY7H@gkM-H, Random, 95%CI

",%cFZc

@gn	
o ]iJ 93=QSE A B C D E F G

バイアスのリスク

■ 文 献1)Kollef MH, Schuster DP:The acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 332(1):27-37, 1995,

PMID 7646623 2)Force ADT, Ranieri VM, Rubenfeld GD, et al:Acute respiratory distress syndrome:the Berlin

Definition. JAMA 307(23):2526-2533, 2012, PMID 22797452 3)Thompson BT:Glucocorticoids and acute lung injury. Crit Care Med 31(4 Suppl):S253-257, 2003,

PMID 12682449 4)Meduri GU, Marik PE, Chrousos GP, et al:Steroid treatment in ARDS:a critical appraisal of the

ARDS network trial and the recent literature. Intensive Care Med 34(1):61-69, 2008, PMID 18000649 5)Annane D, Sebille V, Bellissant E:Effect of low doses of corticosteroids in septic shock patients with

or without early acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 34(1):22-30, 2006, PMID 16374152 6)Steinberg KP, Hudson LD, Goodman RB, et al:Efficacy and safety of corticosteroids for persistent

acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 354(16):1671-1684, 2006, PMID 16625008

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)

11 フォレストプロット
p.264
7)Bernard GR, Luce JM, Sprung CL, et al:High-dose corticosteroids in patients with the adult

respiratory distress syndrome. N Engl J Med 317(25):1565-1570, 1987, PMID 3317054 8)Meduri GU, Headley AS, Golden E, et al:Effect of prolonged methylprednisolone therapy in

unresolving acute respiratory distress syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 280(2):159-165, 1998, PMID 9669790 9)Meduri GU, Golden E, Freire AX, et al:Methylprednisolone infusion in early severe ARDS:results of

a randomized controlled trial. Chest 131(4):954-963, 2007, PMID 17426195
p.265
成人ARDS患者において下記の薬剤を使用するべきか

(吸入一酸化窒素,吸入β2 刺激薬,静注β2 刺激薬,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),プロスタグランジンE1,スタチン,サーファクタント,活性化プロテインC,N-ア

セチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリン)

1 背景,この問題の優先度

ARDS の本態は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫である1).その病態には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全などさまざまな因子が関与している.このため,肺血管拡張作用を有する吸入一酸化窒素2),肺水腫軽減作用を有する吸入・静注β 2 刺激薬3 ~6),肺胞マクロファージ・肺胞上皮細胞成長作用を有する顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF) 7, 8),抗炎症作用を有するプロスタグランジンE1 9, 10), HMG-CoA 還元酵素阻害薬スタチン11, 12)・抗真菌薬

ケトコナゾール13, 14)・リゾフィリン15, 16),抗凝固作用と抗炎症作用を併せ持つ活性化プロテインC 17, 18),抗酸化作用を有するN-アセチルシステイン,肺胞サーファクタント機能不全を改善させるサーファクタント補充など,さまざまな治療法が検討されてきた.これらの薬剤は,本邦で容易に入手可能なもの・入手困難なもの,安価なもの・高価なもの,安全性が確立しているもの・していないものとさまざまであるが,基本的にすべて保険適応外使用となるため一つのCQ にまとめた.とはいえ有効な治療法が極めて限られているARDS 治療の現状を考えると,

CQ13 CQ13

すべて保険適応外使用となるため注意を要する.

付帯事項成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用しないことを推奨する推奨の強さ「強い推奨」GRADE 1B  吸入β2 刺激薬,静注β2 刺激薬,プロスタグランジンE1,活性

化プロテインC,  ケトコナゾール,リゾフィリン(エビデンスの確信性「中」) GRADE 1C  吸入一酸化窒素(エビデンスの確信性「低」) GRADE 1D  サーファクタント(エビデンスの確信性「非常に低」)

成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用しないことを提案する推奨の強さ「弱い推奨」GRADE 2B  顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),N-アセチルシステイン(エビデンスの確信性「中」) GRADE 2C  スタチン(エビデンスの確信性「低」)

推  奨
p.266
サーファクタントでは10 件(患者2, 894 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 0. 98, 95%CI 0. 88 〜1. 09),重篤合併症(RR

1 44, 95%CI 0. 99 〜2. 09)のいずれにおいても,サー

ファクタントの有用性は認めなかった.

活性化プロテインC では2 件(患者146 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 0. 64, 95%CI 0. 21 〜1. 95),重篤合併症(RR

0 78, 95%CI 0. 43 〜1. 40)のいずれにおいても,活

性化プロテインC の有用性は認めなかった.

N-アセチルシステインでは4 件(患者180 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 0. 89, 95%CI 0. 63 〜1. 25)において, N-アセチルシステインの有用性は認めなかった.重篤合併症について検討されたRCT は存在しなかったため,評価不能であった.

ケトコナゾールでは1 件(患者234 名)のRCTが抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期) (RR 1. 02, 95%CI 0. 72 〜1. 46),重篤合併症(RR

1 25, 95%CI 0. 74 〜2. 12)のいずれにおいても,ケ

トコナゾールの有用性は認めなかった.

リゾフィリンでは1 件(患者235 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期) (RR

1 31, 95%CI 0. 87 〜1. 98)において,リゾフィリン

の有用性は認めなかった.重篤合併症について検討されたRCT は存在しなかったため,評価不能であった.

3 パネル会議

3-1.アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか?

吸入一酸化窒素では,死亡(短期)の盲検化においてバイアスのリスクが高い研究が多く認められた.重篤合併症のバイアスリスクは高くなかった.研究の非一貫性は認められなかった(死亡(短期) (I 2=0%),重篤合併症(I 2=0%)).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バ

この問題自体の優先度はおそらく高い.

2 解 説

エビデンスの要約システマティックレビューの結果,吸入一酸化窒素では7 件(患者699 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 1. 18, 95%CI 0. 91 〜1. 52),重篤合併症(RR 1. 90, 95%CI

0 78 〜4. 66)のいずれにおいても,吸入一酸化窒

素の有用性は認めなかった.

吸入β2 刺激薬では1 件(患者282 名)のRCTが抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期) (RR 1. 32, 95%CI 0. 83 〜2. 08),重篤合併症(RR

2 57, 95%CI 0. 85 〜7. 76)のいずれにおいても,吸

入β2 刺激薬の有用性は認めなかった.

静注β2 刺激薬では2 件(患者365 名)のRCTが抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期) (RR 1. 16, 95%CI 0. 68 〜1. 96)において静注β2 刺激薬の有用性は認めなかったが,重篤合併症(RR 5. 78, 95%CI 1. 34 〜24. 92)を有意に増加させた.

顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM- CSF)では2 件(患者148 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 0. 76, 95%CI 0. 40 〜1. 46),重篤合併症(RR 0. 87, 95%CI

0 42 〜1. 80)のいずれにおいても,顆粒球・マク

ロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の有用性は認めなかった.

プロスタグランジンE1 では8 件(患者786 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 1. 07, 95%CI 0. 90 〜1. 27)においてプロスタグランジンE1 の有用性は認めなかった.重篤合併症(RR 2. 07, 95%CI 1. 12 〜3. 83)を有意に増加させた.

スタチンでは2 件(患者1, 284 名)のRCT が抽出された.メタアナリシスの結果,死亡(短期)(RR 0. 98, 95%CI 0. 71 〜1. 36),重篤合併症(RR 1. 36, 95%CI 0. 69 〜2. 67)のいずれにおいても,スタチンの有用性は認めなかった.
p.267
イアスについては不明だった.

吸入β2 刺激薬ではバイアスのリスクは認められなかった.RCT が1 つしかなかったため,研究の非一貫性は評価不能であった.非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず, 95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

静注β2 刺激薬ではバイアスのリスクは認められなかった.中等度~高度の研究の非一貫性が認められた(死亡(短期)I 2=68%,重篤合併症 I 2=49%).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM- CSF)ではバイアスのリスクは認められなかった.死亡(短期)において,研究の非一貫性は認められなかった(I 2=0%).重篤合併症に関するRCT は1件のみであったため,研究の非一貫性は評価不能であった.非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

プロスタグランジンE1 ではバイアスのリスクは認められなかった.死亡(短期)において,研究の非一貫性は認められなかった(I 2=0%)が,重篤合併症では中等度の研究の非一貫性が認められた(I 2=45%).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

スタチンではバイアスのリスクは認められなかった.研究の非一貫性は中等度~高度に認められた(死亡(短期) I 2=65%,重篤合併症 I 2=35%).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

サーファクタントでは死亡(短期)の盲検化の点でバイアスのリスクが認められた.重篤合併症では,大きなバイアスのリスクは認められなかった.研究の非一貫性は,死亡(短期)では認められなかったが(I 2=0%),重篤合併症では高度に認められた(I 2=71%).非直接性は認められなかった.95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

活性化プロテインC では死亡(短期)に大きなバイアスのリスクは認められなかった.重篤合併症では,おもに盲検化と隠蔽化において高いバイアスのリスクが認められた.研究の非一貫性は軽度であった(死亡(短期) I 2=29%,重篤合併症 I 2=1%).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

N-アセチルシステインでは大きなバイアスのリスクは認められなかった.研究の非一貫性は認められなかった(死亡(短期) I 2=0%).非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

ケトコナゾールでは大きなバイアスのリスクは認められなかった.抽出されたRCT が1 件のみであったため,研究の非一貫性は評価不能であった.非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.

リゾフィリンでは大きなバイアスのリスクは認められなかった.抽出されたRCT が1 件のみであったため,研究の非一貫性は評価不能であった.非直接性は認められなかった.患者数は最適情報量を満たしておらず,95% 信頼区間は広かったため,不精確性は高かった.報告されている研究の数が少ないため,出版バイアスについては不明だった.
p.268
粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),静注N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンの4 薬剤は本邦で販売されていない入手困難な薬剤であるため,得られる正味の利益よりもコストや資源の方が大きい.

静注β2 刺激薬,プロスタグランジンE1 の2 薬剤は,システマティックレビューの結果,死亡率の改善を認めなかったが,重篤合併症が増加することが認められた.得られる正味の利益よりもコストや資源の方が明らかに大きい.

3-5.推奨のグレーディング

吸入一酸化窒素は死亡率・重篤合併症のいずれにも影響を認めなかったが,一部の施設で使用されている状況も踏まえ,パネル会議では「使用しないことを提案する」という推奨文が提案された.しかし,高額かつ特殊な装置を必要とするのに対し,本邦において成人ARDS に対する吸入一酸化窒素は一般的に行われていると言えず,かつ保険適応もないことから,最終的に「使用しないことを推奨する」という推奨文が全会一致で決定された.

吸入β2 刺激薬,サーファクタント,活性化プロテインC の3 薬剤は,死亡率・重篤合併症のいずれにも影響を認めず,一般的に行われている治療法でない,保険適応がないといった点から,パネル会議では,「使用しないことを推奨する」という推奨文が全会一致で決定された.

ケトコナゾール,リゾフィリンの2 薬剤は,死亡率・重篤合併症のいずれにも影響を認めず,本邦で販売されていない点から,パネル会議では,「使用しないことを推奨する」という推奨文が全会一致で決定された.

静注β2 刺激薬,プロスタグランジンE1 の2 薬剤は死亡率を改善させなかったが,重篤合併症の発生率を増加させた点から,パネル会議では,「使用しないことを推奨する」という推奨文が全会一致で決定された.

顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM- CSF),スタチン,静注N-アセチルシステインの3薬剤は,死亡率・重篤合併症のいずれにも影響を認

3-2.利益と害のバランスはどうか?

システマティックレビューの結果,静注β2 刺激薬とプロスタグランジンE1 を除くいずれの薬剤においても有効性・重篤合併症のいずれも認められなかった.コスト増加に見合う利益は小さいと考えられる.しかし,静注β2 刺激薬とプロスタグランジンE1 では,重篤合併症が増加することが認められた.コスト増加に見合う利益は小さいと考えられる.

3-3.患者の価値観や好みはどうか?

いずれの薬剤も,推奨内容はパネル会議において患者代表を含む全会一致で決定したものであり,患者の嗜好に大きな偏りはないと考えられる.ただし,いずれの薬剤も成人ARDS には保険適応がなく,一般的に行われている治療ではない.さらに,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),静注N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンの4 薬剤は本邦では販売されていないため,入手困難な薬剤である.しかし,明らかな重篤合併症の増加も認められないため,患者の価値観や好みにばらつきが生じる可能性はある.

静注β2 刺激薬とプロスタグランジンE1 の2 薬剤については,死亡率改善に影響はなく,重篤合併症を有意に増加させた薬剤であるため,これらの薬剤を使用するか否かについて,患者の価値観や好みにばらつきが生じる可能性は低い.

3-4.正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?

静注β2 刺激薬,プロスタグランジンE1 の2 薬剤を除く薬剤はいずれも,システマティックレビューの結果,死亡率・重篤合併症のいずれにも影響を認めなかった.吸入β2 刺激薬,スタチンの2 薬剤は比較的安価で入手可能な薬剤ではあるが,得られる正味の利益よりもコストや資源の方がおそらく大きい.吸入一酸化窒素,サーファクタント,活性化プロテインC の3 薬剤は高額な薬剤であり,得られる正味の利益よりもコストや資源の方が大きい.顆
p.269
めなかったが,サンプルサイズが小さく95% 信頼区間が広かったため,不精確性は高かった.このため,パネル会議では,「使用しないことを提案する」という推奨文が全会一致で決定された.

4 関連する他の診療ガイドラ

インの記載

吸入一酸化窒素,静注β2 刺激薬,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),プロスタグランジンE1,スタチン,サーファクタント, N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンの9 薬剤については,スカンジナビアの成人ARDS における人工呼吸管理ガイドライン(2015年) 19),日本版敗血症診療ガイドライン(2012 年) 20), Surviving Sepsis Campaign Guidelines (SSCG) 2012 21)のいずれにも記載がない.

吸入β2 刺激薬は,SSCG 2012 21)のARDS の項に「気管支攣縮などの特別な適応がない限り使用しないことを推奨する」と記載されており,見解が一致している.活性化プロテインC は,SSCG 2012 21)に記載があるものの推奨度評価の記載はない.いずれの薬剤も,スカンジナビアの成人ARDS における人工呼吸管理ガイドライン(2015 年) 19),日本版敗血症診療ガイドライン(2012 年) 20)には記載がない.

5 治療のモニタリングと評価

これらの薬剤使用開始後は,呼吸・循環モニター,血液学的検査などを用いて,有害事象の有無を確認する.

6 今後の研究の可能性

質の良いRCT が少ないため,これらの薬剤の有効性を示すためには,良質な大規模臨床試験が必要である.

7 文献検索式と文献選択

ステロイドと筋弛緩薬以外のARDS 治療薬剤として,「surfactant」「prostaglandin」「prostacyclin」

「acetylcysteine」「neutrophil elastase」「colony stimulating factor」「nitric oxide」「protein c」「antithrombin」「ulinastatin」「macrolide」「beta agonist」「mesenchymal stem cell」「ketoconazole」「statin」「thrombomodulin」「ibuprofen」「nafamostat」「gabexate」「lisofylline」をキーワードとしてPubMed, EMBASE, Cochrane CENTRAL, および医中誌で検索した.その結果,7, 687 件の研究が同定され,薬剤ごとに行ったスクリーニングの結果,

CQ13-01(吸入一酸化窒素)では7 件,CQ13-02(吸

入β2 刺激薬)では1 件,CQ13-03(静注β2 刺激薬)では2 件,CQ13-04(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))では2 件,CQ13-05(プロスタグランジンE1)では7 件,CQ13-06(スタチン)では3 件,CQ13-07(サーファクタント)では10 件,

CQ13-08(活性化プロテインC)では2 件,CQ13-09(N-

アセチルシステイン)では4 件,CQ13-10(ケトコナゾール)では1 件,CQ13-11(リゾフィリン)では1 件のランダム化比較試験を採用した.

8 本CQ で対象としたRCT 論文

Dellinger 1998 22),Gerlach 2003 23),Mehta 2001 24), Michael 1998 25),Park 2003 26),Taylor 2004 27), Troncy 1998 28),Matthay 2011 29),Gao 2012 30), Perkins 2006 31),Paine 2012 32),Presneill 2002 33), Abraham 1996 34),Abraham 1999 35),Bone 1989 36), Holcroft 1986 37),Rossignon 1990 38),Slotman

1992 39),Vincent 2001 40),Craig 2011 41),McAuley

2014 42),Truwit 2014 43),Anzueto 1996 44),Gregory

1997 45),Kesecioglu 2009 46),Markart 2007 47), Spragg 2003 48),Spragg 2004 49),Spragg 2011 50), Tsangaris 2007 51),Weg 1994 52),Willson 2015 53), Cornet 2014 54),Liu 2008 55),Bernard 1997 56), Jepsen 1992 57),Ortolani 2000 58),Suter 1994 59), ARDS Network 2000 60),ARDS Network 2002 61)

採用論文の詳細については詳細版の資料2 〜7(アブストラクトテーブル等)を参照されたい. http://www.jsicm.org/ARDSGL/ARDSGL_part2ALL.pdf
p.270
CQ13-02:成人 ARDS 患者に対する吸入β2 刺激薬とプラセボの比較

9 エビデンス・プロファイル

CQ13-01:成人 ARDS 患者に対する吸入一酸化窒素とプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因吸入一酸

化窒素プラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

7 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない深刻 2なし99/384

(25.8%) 71/315

(22.5%)

RR 1.18 (0.91~1.52) 41 多い/1000

(20 少ない~117 多い)

⨁⨁◯◯

低重

大19.0% 34 多い/1000

(17 少ない~99 多い)

45.0% 81 多い/1000

(40 少ない~234 多い)

重篤合併症

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 2なし17/312

(5.4%) 7/250

(2.8%)

RR 1.90 (0.78~4.66) 25 多い/1000

(6 少ない~102 多い)

⨁⨁⨁◯

中重

大2.0% 18 多い/1000

(4 少ない~73 多い)

24.0% 216 多い/1000

(53 少ない~878 多い)

RR:相対リスク

1.Blind にhigh risk of bias 多い. 2.症例数が少なく95%CI が広い.

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因吸入β2

刺激薬プラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

1 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし37/152

(24.3%) 24/130

(18.5%)

RR 1.32 (0.83~2.08) 59 多い/1000

(31 少ない~199 多い)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大19.0% 61 多い/1000

(32 少ない~205 多い)

45.0% 144 多い/1000

(77 少ない~486 多い)

重篤合併症

1 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし12/152

(7.9%) 4/130

(3.1%)

RR 2.57 (0.85~7.76) 48 多い/1000

(5 少ない~208 多い)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大2.0% 31 多い/1000

(3 少ない~135 多い)

24.0% 377 多い/1000

(36 少ない~100 多い)

RR:相対リスク

1.症例数が少なく95%CI が広い.
p.271
CQ13-03:成人 ARDS 患者に対する静注β2 刺激薬とプラセボの比較

CQ13-04:成人 ARDS 患者に対する顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要

度研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因静注β2

刺激薬プラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻 1深刻でない深刻 2なし66/180

(36.7%) 52/184

(28.3%)

RR 1.16 (0.68~1.96) 45 多い/1000

(90 少ない~271 多い)

⨁⨁◯◯

低重

大19.0% 30 多い/1000

(61 少ない~182 多い)

45.0% 72 多い/1000

(144 少ない~432 多い)

重篤合併症

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 3なし28/181

(15.5%) 4/184

(2.2%)

RR 5.78 (1.34~24.92) 104 多い/1000

(7 多い~520 多い)

⨁⨁⨁◯

中重

大2.0% 96 多い/1000

(7 多い~478 多い)

24.0% 1000 多い/1000 4

(82 多い~1000 多い)

RR:相対リスク

1.I2 高値. 2.95%CI が1.0 を含む. 3.最適情報量を満たしていない. 4.RR が大きく計算上1000 を越えたため1000 を採用した。

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因GM-CSFプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし13/74

(17.6%) 17/74

(23.0%)

RR 0.76 (0.40~1.46) 55 少ない/1000

(106 多い~138 少ない)

⨁⨁⨁◯

中1重

大19.0% 46 少ない/1000

(87 多い~114 少ない)

45.0% 108 少ない/1000

(207 多い~270 少ない)

重篤合併症

1 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし11/64

(17.2%) 13/66

(19.7%)

RR 0.87 (0.42~1.80) 26 少ない/1000

(158 多い~114 少ない)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大2.0% 3 少ない/1000

(16 多い~12 少ない)

24.0% 31 少ない/1000

(192 多い~139 少ない)

RR:相対リスク

1.症例数が少なく95%CI が広い. .
p.272
CQ13-05:成人 ARDS 患者に対するプロスタグランジンE1(PGE1)とプラセボの比較

CQ13-06:成人 ARDS 患者に対するスタチンとプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因PGE1プラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

7 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻1なし162/418

(38.8%) 140/368

(38.0%)

RR 1.07 (0.90~1.27) 27 多い/1000

(38 少ない~103 多い)

⨁⨁⨁◯

中重

大19.0% 13 多い/1000

(19 少ない~51 多い)

45.0% 32 多い/1000

(45 少ない~122 多い)

重篤合併症

4 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻1なし112/256

(43.8%) 39/242

(16.1%)

RR 2.07 (1.12~3.83) 172 多い/1000

(19 多い~456 多い)

⨁⨁⨁◯

中重

大2.0% 21 多い/1000

(2 多い~57 多い)

24.0% 257 多い/1000

(29 多い~679 多い)

RR:相対リスク

1.95%CI が広い.

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因スタチンプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻1深刻でない深刻 2なし165/638

(25.9%) 166/646

(25.7%)

RR 0.98 (0.71~1.36) 5 少ない/1000

(93 多い~75 少ない)

⨁⨁◯◯

低1 2重

大19.0% 4 少ない/1000

(68 多い~55 少ない)

45.0% 9 少ない/1000

(162 多い~131 少ない)

重篤合併症

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 2なし32/289

(11.1%) 23/310

(7.4%)

RR 1.36 (0.69~2.67) 27 多い/1000

(23 少ない~124 多い)

⨁⨁⨁◯

中 2重

大2.0% 7 多い/1000

(6 少ない~33 多い)

24.0% 86 多い/1000

(74 少ない~401 多い)

RR:相対リスク

1.I2 高値. 2.症例数が少なく95%CI が広い.
p.273
CQ13-07:成人 ARDS 患者に対するサーファクタントとプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因サーファク

タントプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

9 ランダ

ム化比較試験深刻 1深刻でない深刻でない深刻 2なし436/1455

(30.0%) 438/1439

(30.4%)

RR 0.98 (0.88~1.09) 6 少ない/1000

(27 多い~37 少ない)

⨁⨁◯◯

低 1 2重

大19.0% 4 少ない/1000

(17 多い~23 少ない)

45.0% 9 少ない/1000

(41 多い~54 少ない)

重篤合併症

6 ランダ

ム化比較試験深刻でない非常に深刻3深刻でない深刻 2なし333/1409

(23.6%) 271/1392

(19.5%)

RR 1.44 (0.99~2.09) 86 多い/1000

(2 少ない~212 多い)

⨁◯◯◯非常に低 2 3重

大2.0% 9 多い/1000

(0 少ない~22 多い)

24.0% 106 多い/1000

(2 少ない~262 多い)

RR:相対リスク

1.Blind に high risk of bias 多い. 2.症例数が少なく95%CI が広い. 3.I2 高値.
p.274
CQ13-08:成人 ARDS 患者に対する活性化プロテインC とプラセボの比較

CQ13-09:成人 ARDS 患者に対するN-アセチルシステインとプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精

確さその他

の要因活性化プロ

テインCプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

2 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし7/70

(10.0%) 12/76

(15.8%)

RR 0.64 (0.21~1.95) 57 少ない/1000

(150 多い~125 少ない)

⨁⨁⨁◯

中1重

大19.0% 68 少ない/1000

(181 多い~150 少ない)

45.0% 162 少ない/1000

(428 多い~356 少ない)

重篤合併症

2 ランダ

ム化比較試験深刻 2深刻でない深刻でない深刻1なし14/70

(20.0%) 20/76

(26.3%)

RR 0.78 (0.43~1.40) 58 少ない/1000

(105 多い~150 少ない)

⨁⨁◯◯

低1 2重

大2.0% 4 少ない/1000

(8 多い~11 少ない)

24.0% 53 少ない/1000

(96 多い~137 少ない)

RR:相対リスク

1.症例数が少なく95%CI が広い. 2.Selection, blind にバイアスを多く含む.

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその他

の要因N-アセチ

ルシステ

インプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

4 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし34/90

(37.8%) 40/90

(44.4%)

RR 0.89 (0.63~1.25) 49 少ない/1000

(111 多い~164 少ない)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大19.0% 21 少ない/1000

(48 多い~70 少ない)

45.0% 49 少ない/1000

(113 多い~167 少ない)

RR:相対リスク1.症例数が少なく95%CI が広い.
p.275
CQ13-10:成人 ARDS 患者に対するケトコナゾールとプラセボの比較

CQ13-11:成人 ARDS 患者に対するリゾフィリンとプラセボの比較

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因ケトコナ

ゾールプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

1 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻1なし41/117

(35.0%) 40/117

(34.2%)

RR 1.02 (0.72~1.46) 7 多い/1000

(96 少ない~157 多い)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大19.0% 4 多い/1000

(53 少ない~87 多い)

45.0% 9 多い/1000

(126 少ない~207 多い)

重篤合併症

1 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻1なし25/117

(21.4%) 20/117

(17.1%)

RR 1.25 (0.74~2.12) 43 多い/1000

(44 少ない~191 多い)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大2.0% 5 多い/1000

(5 少ない~22 多い)

24.0% 60 多い/1000

(62 少ない~269 多い)

RR:相対リスク

1.症例数が少なく95%CI が広い.

質の評価患者数効果

質重

要度

研究数研究

デザインバイアスの

リスク非一貫性非直接性不精確さその

他の要因リゾフィ

リンプラセボ相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

死亡(短期)(注1

1 ランダ

ム化比較試験深刻でない深刻でない深刻でない深刻 1なし37/116

(31.9%) 29/119

(24.4%)

RR 1.31 (0.87~1.98) 76 多い/1000

(32 少ない~239 多い)

⨁⨁⨁◯

中 1重

大19.0% 59 多い/1000

(25 少ない~186 多い)

45.0% 140 多い/1000

(59 少ない~441 多い)

RR:相対リスク

1.症例数が少なく95%CI が広い. 2.データなし.
p.276
10 Evidence-to-Decision

推奨判断基準の評価テーブル

CQ13:成人ARDS 患者において,下記の薬剤を使用するべきか

(吸入一酸化窒素,吸入β2 刺激薬,静注β2 刺激薬,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),プロスタグランジンE1,スタチン,サーファクタント,活性化プロテインC,N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリン)集団:成人ARDS 患者介入:吸入一酸化窒素,吸入β2 刺激薬,静注β2 刺激薬,顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),プロスタグランジンE1,スタチン,サーファクタント,活性化プロテインC,N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンのいずれかを使用

基準判定リサーチエビデンス追加事項

問

題その問題は優先順位が高いですか?より重篤な問題や緊急性のある問題は,より優先順位が高くなる◯高い●おそらく高い◯わからない◯おそらく低い◯低い------------------ ◯一概には言えないARDS の本態は肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫である1).その病態には,肺胞上皮傷害,低酸素性肺血管攣縮による肺血管抵抗上昇,換気・血流比不均衡,肺胞サーファクタント機能不全など様々な因子が関与しているため,肺血管拡張作用を有する吸入一酸化窒素2),肺水腫軽減作用を有する吸入および静注β2 刺激薬3-6),肺胞マクロファージ・肺胞上皮細胞成長作用を有する顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)7, 8), 抗炎症作用を有するプロスタグランジンE1

9, 10) ,HMG-CoA 還元酵素阻害薬スタチン11, 12) ,抗真菌薬ケトコナゾール13, 14) ,リゾフィリン15, 16),抗凝固作用と抗炎症作用を併せ持つ活性化プロテインC17, 18),抗酸化作用を有するN-アセチルシステイン,肺胞サーファクタント機能不全を改善させるサーファクタント補充など,様々な治療法が検討されてきた.これらの薬剤は,本邦で容易に入手可能なもの,入手困難なもの,安価なもの,高価なもの,安全性が確立しているもの,していないものと様々であるが,有効な治療法が極めて限られているARDS 治療の現状を考えると,この問題の優先度はおそらく高い.

その治療の利益と害全体的なエビデンスの確信性はどれですか? ◯高◯中◯低●非常に低------------------ ◯研究なし関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値および結果のまとめについては前項の9.エビ

デンス・プロファイルを参照されたい.

主要なアウトカムに置く価値の大きさは,人によってばらつきますか? ◯ばらつきは小さい◯たぶんばらつきは

小さい◯ばらつきは大きいかどうか不明●たぶんばらつきは大きい◯ばらつきは大きい

予想される効果は大きいですか? ◯大きい◯中程度◯小さい◯わずか------------------ ●一概には言えない◯わからない

予想される害は小さいですか? ◯わずか◯小さい◯中程度◯大きい------------------ ●一概には言えない◯わからない

効果は害よりも大きいですか? ◯効果は大きい◯たぶん効果は大きい◯わからない◯たぶん害は大きい◯害は大きい------------------ ●一概には言えない
p.277
資源利用コストやリソースなどの必要とされる資源は少ないですか? ◯少ない◯たぶん少ない◯わからない●たぶん多くを必要とする◯多くを必要とする------------------ ◯一概には言えない吸入一酸化窒素,吸入β2 刺激薬は吸入により使用するため,特別な資器材が必要である.静注β2刺激薬,プロスタグランジンE1,活性化プロテインC,N-アセチルシステイン,リゾフィリンは静脈注射で投与が可能であるため,必要な資器材はわずかである.顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は皮下・静脈注射で投与が可能であるため,必要な資器材はわずかである.スタチンは内服で使用が可能であるため,必要な資器材はほとんどない.サーファクタントは気管内投与で使用が可能であるため,必要な資器材はほとんどない.ケトコナゾールは経胃,経十二指腸,経空腸的に投与が必要であるため,特別な資器材が必要である.さらに,いずれの薬剤も以下の薬剤価格分の追加費用が必要である.吸入一酸化窒素(本邦では保険適応外)吸入β2 刺激薬(本邦では保険適応外)30 円/日静注β2 刺激薬(本邦では保険適応外)160 円/日GM-CSF (本邦では未発売)プロスタグランジンE1 (本邦では保険適応外)約10,000 円/日スタチン(本邦では保険適応外)110 円/日サーファクタント(本邦では保険適応外)92,000 円/日活性化プロテインC (本邦では保険適応外)1,280,000 円/日N-アセチルシステイン(本邦では静注用製剤は未発売)ケトコナゾール(本邦では未発売)リゾフィリン(本邦では未発売)

増加するコストは効果から害を引いた正味の利益に比べて小さいですか? ◯コストは利益よりも小

さい◯たぶんコストは利益よりも小さい◯わからない●たぶんコストは利益よりも大きい◯コストは利益よりも大きい------------------ ◯一概には言えない有効性が示されていないので,薬剤にかかる費用の分だけコストが大きくなる.

公平さ医療上の不公平への影響はどうでしょうか?健康格差を減らす政策やプログラムはより優先される◯不公平になる●たぶん不公平になる◯わからない◯たぶん公平になる◯公平になる------------------ ◯一概には言えない吸入一酸化窒素は特別な医療施設・医療資器材を必要とする.吸入β2 刺激薬は特に人工呼吸中においては特別な医療資器材を必要とする.顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンの4 薬剤は本邦で販売されていない特殊な薬剤である.サーファクタントは成人領域では通常使用しない薬剤である.活性化プロテインC は汎用されていない特殊な薬剤である.以上の理由により,これら8 薬剤が医療上の不公平へ与える影響はおそらく不公平になると推測される.

静注β2 刺激薬,プロスタグランジンE1,スタチンの3 薬剤は特別な医療施設・医療資器材を必要としないため,医療上の不公平へ与える影響はおそらく公平になると推測される.

受け入れその選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? ◯受け入れられる◯たぶん受け入れら

れる◯わからない◯たぶん受け入れられない◯受け入れられない------------------ ●一概には言えない吸入一酸化窒素は保険適応外であり,かつ特殊な資器材を要する.顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),静注N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンの4 薬剤は本邦で販売されていない特殊な薬剤である.サーファクタント,活性化プロテインC の2 薬剤は極めて高価で汎用されていない薬剤である.以上の理由により,これら7 薬剤は主要なステークホルダーにおそらく受け入れられないであろう.

吸入β2 刺激薬は一般的に広く使用されている薬剤であるが,特に人工呼吸中においては特別な医療資器材を必要とするため,主要なステークホルダーに受け入れられると一概には言えない.静注β2刺激薬は集中治療領域では汎用性の高い薬剤であるが,厳重な循環モニタリングを必要とするため一般病棟では使用を避けられる可能性がある.主要なステークホルダーへの受け入れは不明である.プロスタグランジンE1,スタチンの2 薬剤は一般的に広く使用されている薬剤であるため,主要なステークホルダーにおそらく受け入れられるだろう.

実現可能性その選択肢をとることは現実的に可能ですか? ◯可能◯たぶん可能◯わからない◯たぶん困難◯困難------------------ ●一概には言えないプロスタグランジンE1,活性化プロテインC は静脈注射で使用可能な薬剤である.スタチンは内服で使用可能な薬剤である.これら3 薬剤は,いずれも特別な医療施設・医療資器材を必要としないため,現実的に実現可能である.

静注β2 刺激薬は静脈注射で使用可能な薬剤であるが,シリンジポンプ等を必要とする可能性もある.このため,すべての一般病床で使用可能か否かは不明である.吸入一酸化窒素は特殊器具によって吸入使用可能な薬剤である.吸入β2 刺激薬は特に人工呼吸中においては特別な医療資器材を必要とする.このため,これら2 薬剤はすべての施設で可能な治療法ではない.サーファクタントは気管内投与が必要な薬剤であるため,十分な呼吸管理・呼吸モニタリングを行うことができる施設に使用は限られる.すべての施設でサーファクタントを選択することはおそらく実現困難である.顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),N-アセチルシステイン,ケトコナゾール,リゾフィリンの4 薬剤は本邦で販売されていない特殊な薬剤であるため,実現はおそらく困難である.

注1:死亡(90 日以内の死亡の内,各研究内で主たるアウトカムとして扱われたもの).
p.278
P0YM

B9NO]&+ (]

Z['-$Aa'-$AaeM-H, Random, 95%CI

,Q M-H, Random, 95%CI ,Q

B9NO] 8 &+ (]

8

Aah	
i Aa'-$ VcH :3>NOF A B C D E F G

バイアスのリスク

e\A4W

B9NO] 8 &+ (]

8

Aah	
i Aa'-$ VcH :3>NOF B9NO]&+ (]

Z['-$Aa'-$AaeM-H, Random, 95%CI

,Q M-H, Random, 95%CI ,Q A B C D E F Gバイアスのリスク

C9β2<Ub_&+ (_

\]'-$Bd'-$BdhM-H, Random, 95%CI

,R M-H, Random, 95%CI ,R

Bdk	
l Bd'-$ XfI :3?OPG

C9β2<Ub_

8 &+ (_

8

Q0[N

A B C D E F Gバイアスのリスク

C9β2<Ub_&+ (_

\]'-$Bd'-$BdhM-H, Random, 95%CI

,R M-H, Random, 95%CI ,R

Bdk	
l Bd'-$ XfI :3?OPG

C9β2<Ub_

8 &+ (_

8

h^B4Y

A B C D E F G

バイアスのリスク

iRβ2;Ta^&+ (^

[\'-$Ac'-$AcgM-H, Random, 95%CI

,P M-H, Random, 95%CI ,P

iRβ2;Ta^

8 &+ (^

8

Ack	
l Ac'-$ WeG 93>MNE

O0ZL

A B C D E F G

バイアスのリスク

11 フォレストプロット
p.279
g]A4X

iRβ2;Ta^&+ (^

[\'-$Ac'-$AcgM-H, Random, 95%CI

,P M-H, Random, 95%CI ,P

iRβ2;Ta^

8 &+ (^

8

Ack	
l Ac'-$ WeG 93>MNE A B C D E F Gバイアスのリスク

GM-CSF[&+ ([

XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O

GM-CSF[ 8 &+ ([

8

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD

N0WK

A B C D E F G

バイアスのリスク

cZ@4U

GM-CSF[&+ ([

XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O

GM-CSF[ 8 &+ ([

8

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD A B C D E F Gバイアスのリスク

PGE1[ 8 &+ ([

8

PGE1[&+ ([

XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD

N0WK

A B C D E F G

バイアスのリスク

PGE1[ 8 &+ ([

8

PGE1[&+ ([ XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O cZ@4U

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD A B C D E F Gバイアスのリスク
p.280
スタチン[ 8 &+ ([

8

スタチン[&+ ([

XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD

N0WK

A B C D E F Gバイアスのリスク

cZ@4U

スタチン[&+ ([ XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMDスタチン[

8 &+ ([

8 A B C D E F G

バイアスのリスク

サーファクタント^)."+^ [\*0&Cb*0&CbfM-H, Random, 95%CI

/!R M-H, Random, 95%CI /!R

)."+^

; 1(#0&^

;

Cbi	
j Cb*0& WdI <6@OPG

CQ13_07 06 Forest pl Q3ZN

A B C D E F G

バイアスのリスク

f]C7X

サーファクタント^)."+^ [\*0&Cb*0&CbfM-H, Random, 95%CI

/!R M-H, Random, 95%CI /!R

)."+^

; 1(#0&^

;

Cbi	
j Cb*0& WdI <6@OPG A B C D E F G

バイアスのリスク

APC[&+ ([

XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O

&+ ([

8 APC[ 8

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD

N0WK

A B C D E F G

バイアスのリスク
p.281
APC[&+ ([

XY'-$@_'-$@_cM-H, Random, 95%CI

,O M-H, Random, 95%CI ,O cZ@4U

&+ ([

8 APC[ 8

@_f	
g @_'-$ TaF 93=LMD A B C D E F G

バイアスのリスク

NACY&+ (Y WX'-$?]'-$?]aM-H, Random, 95%CI

,N M-H, Random, 95%CI ,N

?]d	
e ?]'-$ S_E 83<KLC &+ (Y

7 NACY 7

M0VJ

A B C D E F G

バイアスのリスク

ケトコナゾール`*/",`

]^+2'Ed+2'EdhM-H, Random, 95%CI

0!T M-H, Random, 95%CI 0!T

*/",` = ' (#31`

=

Edk	
l Ed+2' YfK >8BQRI

S5\P

A B C D E F G

バイアスのリスク

ケトコナゾール`*/",`

]^+2'Ed+2'EdhM-H, Random, 95%CI

0!T M-H, Random, 95%CI 0!T

*/",` = ' (#31`

=

Edk	
l Ed+2' YfK >8BQRI

h_E9Z

A B C D E F Gバイアスのリスク

リゾフィリン\).!+\

Z[*0&B`*0&B`dM-H, Random, 95%CI

/ Q M-H, Random, 95%CI / Q

).!+\

: /"(/0\

:

B`g	
h B`*0& VbH ;6?NOF

P3YM

A B C D E F Gバイアスのリスク

A:ランダム割り付け順番の生成(選択バイアス) B: 割り付けの隠蔽化(選択バイアス) C: 研究参加者と治療提供者のマスキング(施行バイアス) D: アウトカム評価者のマスキング(検出バイアス) E: 不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス) F: 選択されたアウトカムの報告(報告バイアス) G: その他のバイアス)
p.282
■ 文 献1)Matthay MA, Ware LB, Zimmerman GA:The acute respiratory distress syndrome. J Clin Invest

122(8):2731-2740, 2012, PMID 22850883 2)Adhikari NK, Burns KE, Friedrich JO, et al:Effect of nitric oxide on oxygenation and mortality in

acute lung injury:systematic review and meta-analysis. BMJ 334(7597):779, 2007, PMID 17383982 3)Sakuma T, Okaniwa G, Nakada T, et al:Alveolar fluid clearance in the resected human lung. Am J

Respir Crit Care Med 150(2):305-310, 1994, PMID 8049807 4)Basran GS, Hardy JG, Woo SP, et al:Beta-2-adrenoceptor agonists as inhibitors of lung vascular

permeability to radiolabelled transferrin in the adult respiratory distress syndrome in man. Eur J Nucl Med 12(8):381-384, 1986, PMID 2878809 5)Sartori C, Allemann Y, Duplain H, et al:Salmeterol for the prevention of high-altitude pulmonary

edema. N Engl J Med 346(21):1631-1636, 2002, PMID 12023995 6)Atabai K, Ware LB, Snider ME, et al:Aerosolized beta(2)-adrenergic agonists achieve therapeutic

levels in the pulmonary edema fluid of ventilated patients with acute respiratory failure. Intensive Care Med 28(6):705-711, 2002, PMID 12107675 7)Trapnell BC, Whitsett JA:Gm-CSF regulates pulmonary surfactant homeostasis and alveolar

macrophage-mediated innate host defense. Annu Rev Physiol 64:775-802, 2002, PMID 11826288 8)Huffman Reed JA, Rice WR, Zsengeller ZK, et al:GM-CSF enhances lung growth and causes alveolar

type II epithelial cell hyperplasia in transgenic mice. Am J Physiol 273(4 Pt 1):L715-725, 1997, PMID

9357845 9)Eierman DF, Yagami M, Erme SM, et al:Endogenously opsonized particles divert prostanoid action

from lethal to protective in models of experimental endotoxemia. Proc Natl Acad Sci U S A 92(7):2815- 2819, 1995, PMID 7708730 10)Rossetti RG, Brathwaite K, Zurier RB:Suppression of acute inflammation with liposome associated

prostaglandin E1. Prostaglandins 48(3):187-195, 1994, PMID 7809384 11)Terblanche M, Almog Y, Rosenson RS, et al:Statins:panacea for sepsis? Lancet Infect Dis 6(4):242-

248, 2006, PMID 16554249 12)Jacobson JR, Barnard JW, Grigoryev DN, et al:Simvastatin attenuates vascular leak and inflammation

in murine inflammatory lung injury. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 288(6):L1026-1032, 2005, PMID 15665042 13)Lelcuk S, Huval WV, Valeri CR, et al:Inhibition of ischemia-induced thromboxane synthesis in man. J

Trauma 24(5):393-396, 1984, PMID 6325720 14)Williams JG, Maier RV:Ketoconazole inhibits alveolar macrophage production of inflammatory

mediators involved in acute lung injury (adult respiratory distress syndrome). Surgery 112(2):270-277, 1992, PMID 1322565 15)Bursten SL, Federighi D, Wald J, et al:Lisofylline causes rapid and prolonged suppression of serum

levels of free fatty acids. J Pharmacol Exp Ther 284(1):337-345, 1998, PMID 9435196 16)Rice GC, Rosen J, Weeks R, et al:CT-1501R selectively inhibits induced inflammatory monokines in

human whole blood ex vivo. Shock 1(4):254-266, 1994, PMID 7735959 17)Cornet AD, van Nieuw Amerongen GP, Beishuizen A, et al:Activated protein C in the treatment of

acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Expert Opin Drug Discov 4(3):219-227, 2009, PMID 23489122 18)Bernard GR, Vincent JL, Laterre PF, et al:Efficacy and safety of recombinant human activated protein

C for severe sepsis. N Engl J Med 344(10):699-709, 2001, PMID 11236773 19)Claesson J, Freundlich M, Gunnarsson I, et al:Scandinavian clinical practice guideline on mechanical

ventilation in adults with the acute respiratory distress syndrome. Acta Anaesthesiol Scand 59(3):286-
p.283
297, 2015, PMID 25524779 20)日本集中治療医学会敗血症レジストリ委員会:日本版敗血症診療ガイドライン The Japanese Guidelines

for the Management of Sepsis. 日集中医誌 20:124-173, 2013, PMID なし21)Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al:Surviving Sepsis Campaign:International Guidelines for

Management of Severe Sepsis and Septic Shock:2012. Crit Care Med 41(2):580-637, 2013, PMID 23353941 22)Dellinger RP, Zimmerman JL, Taylor RW, et al:Effects of inhaled nitric oxide in patients with acute

respiratory distress syndrome:results of a randomized phase II trial. Inhaled Nitric Oxide in ARDS Study Group. Crit Care Med 26(1):15-23, 1998, PMID 9428538 23)Gerlach H, Keh D, Semmerow A, et al:Dose-response characteristics during long-term inhalation of

nitric oxide in patients with severe acute respiratory distress syndrome:a prospective, randomized, controlled study. Am J Respir Crit Care Med 167(7):1008-1015, 2003, PMID 12663340 24)Mehta S, Simms HH, Levy MM, et al:Inhaled Nitric Oxide Improves Oxygenation Acutely But Not

Chronically in Acute Respiratory Distress Syndrome:A Randomized, Controlled Trial. J Appl Res 1(2), 2001, PMID なし25)Michael JR, Barton RG, Saffle JR, et al:Inhaled nitric oxide versus conventional therapy:effect on

oxygenation in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 157(5 Pt 1):1372-1380, 1998, PMID 9603111 26)Park KJ, Lee YJ, Oh YJ, et al:Combined effects of inhaled nitric oxide and a recruitment maneuver in

patients with acute respiratory distress syndrome. Yonsei Med J 44(2):219-226, 2003, PMID 12728461 27)Taylor RW, Zimmerman JL, Dellinger RP, et al:Low-dose inhaled nitric oxide in patients with acute

lung injury:a randomized controlled trial. JAMA 291(13):1603-1609, 2004, PMID 15069048 28)Troncy E, Collet JP, Shapiro S, et al:Inhaled nitric oxide in acute respiratory distress syndrome:a

pilot randomized controlled study. Am J Respir Crit Care Med 157(5 Pt 1):1483-1488, 1998, PMID

9603127 29)Matthay MA, Brower RG, Carson S, et al:Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial of an

Aerosolized Beta-2 Agonist for Treatment of Acute Lung Injury. Am J Respir Crit Care Med 184(5): 561-568, 2011, PMID 21562125 30)Gao Smith F, Perkins GD, Gates S, et al:Effect of intravenous beta-2 agonist treatment on clinical

outcomes in acute respiratory distress syndrome (BALTI-2):a multicentre, randomised controlled trial. Lancet 379(9812):229-235, 2012, PMID 22166903 31)Perkins GD, McAuley DF, Thickett DR, et al:The beta-agonist lung injury trial (BALTI):a

randomized placebo-controlled clinical trial. Am J Respir Crit Care Med 173(3):281-287, 2006, PMID 16254268 32)Paine R, 3rd, Standiford TJ, Dechert RE, et al:A randomized trial of recombinant human granulocyte-

macrophage colony stimulating factor for patients with acute lung injury. Crit Care Med 40(1):90-97, 2012, PMID 21926600 33)Presneill JJ, Harris T, Stewart AG, et al:A randomized phase II trial of granulocyte-macrophage

colony-stimulating factor therapy in severe sepsis with respiratory dysfunction. Am J Respir Crit Care Med 166(2):138-143, 2002, PMID 12119223 34)Abraham E, Park YC, Covington P, et al:Liposomal prostaglandin E1 in acute respiratory distress

syndrome:a placebo-controlled, randomized, double-blind, multicenter clinical trial. Crit Care Med 24(1):10-15, 1996, PMID 8565513 35)Abraham E, Baughman R, Fletcher E, et al:Liposomal prostaglandin E1 (TLC C-53) in acute

respiratory distress syndrome:a controlled, randomized, double-blind, multicenter clinical trial. TLC C-53 ARDS Study Group. Crit Care Med 27(8):1478-1485, 1999, PMID 10470753 36)Bone RC, Slotman G, Maunder R, et al. Randomized double-blind, multicenter study of prostaglandin E1
p.284
in patients with the adult respiratory distress syndrome. Prostaglandin E1 Study Group. Chest 96(1): 114-119, 1989, PMID 2661155 37)Holcroft JW, Vassar MJ, Weber CJ:Prostaglandin E1 and survival in patients with the adult

respiratory distress syndrome. A prospective trial. Ann Surg 203(4):371-378, 1986, PMID 3516085 38)Rossignon MD, Khayat D, Royer C, et al:Functional and metabolic activity of polymorphonuclear

leukocytes from patients with adult respiratory distress syndrome:results of a randomized doubleblind placebo-controlled study on the activity of prostaglandin E1. Anesthesiology 72(2):276-281, 1990, PMID 2405741 39)Slotman GJ, Kerstein MD, Bone RC, et al:The effects of prostaglandin E1 on non-pulmonary organ

function during clinical acute respiratory failure. The Prostaglandin E1 Study Group. J Trauma 32(4): 480-488; discussion 488-489, 1992, PMID 1569622 40)Vincent JL, Brase R, Santman F, et al:A multi-centre, double-blind, placebo-controlled study of

liposomal prostaglandin E1 (TLC C-53) in patients with acute respiratory distress syndrome. Intensive Care Med 27(10):1578-1583, 2001, PMID 11685297 41)Craig TR, Duffy MJ, Shyamsundar M, et al:A randomized clinical trial of hydroxymethylglutaryl-

coenzyme a reductase inhibition for acute lung injury (The HARP Study). Am J Respir Crit Care Med 183(5):620-626, 2011, PMID 20870757 42)McAuley DF, Laffey JG, O'Kane CM, et al:Simvastatin in the acute respiratory distress syndrome. N

Engl J Med 371(18):1695-1703, 2014, PMID 25268516 43)Truwit JD, Bernard GR, Steingrub J, et al:Rosuvastatin for sepsis-associated acute respiratory distress

syndrome. N Engl J Med 370(23):2191-2200, 2014, PMID 24835849 44)Anzueto A, Baughman RP, Guntupalli KK, et al:Aerosolized surfactant in adults with sepsis-induced

acute respiratory distress syndrome. Exosurf Acute Respiratory Distress Syndrome Sepsis Study Group. N Engl J Med 334(22):1417-1421, 1996, PMID 8618579 45)Gregory TJ, Steinberg KP, Spragg R, et al:Bovine surfactant therapy for patients with acute

respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 155(4):1309-1315, 1997, PMID 9105072 46)Kesecioglu J, Beale R, Stewart TE, et al:Exogenous natural surfactant for treatment of acute lung

injury and the acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med 180(10):989-994, 2009, PMID 19713451 47)Markart P, Ruppert C, Wygrecka M, et al:Patients with ARDS show improvement but not

normalisation of alveolar surface activity with surfactant treatment:putative role of neutral lipids. Thorax 62(7):588-594, 2007, PMID 17287298 48)Spragg RG, Lewis JF, Wurst W, et al:Treatment of acute respiratory distress syndrome with

recombinant surfactant protein C surfactant. Am J Respir Crit Care Med 167(11):1562-1566, 2003, PMID 12649125 49)Spragg RG, Lewis JF, Walmrath HD, et al:Effect of recombinant surfactant protein C-based surfactant

on the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med 351(9):884-892, 2004, PMID 15329426 50)Spragg RG, Taut FJ, Lewis JF, et al:Recombinant surfactant protein C-based surfactant for patients

with severe direct lung injury. Am J Respir Crit Care Med 183(8):1055-1061, 2011, PMID 21148720 51)Tsangaris I, Galiatsou E, Kostanti E, et al:The effect of exogenous surfactant in patients with lung

contusions and acute lung injury. Intensive Care Med 33(5):851-855, 2007, PMID 17377767 52)Weg JG, Balk RA, Tharratt RS, et al:Safety and potential efficacy of an aerosolized surfactant in

human sepsis-induced adult respiratory distress syndrome. JAMA 272(18):1433-1438, 1994, PMID

7933425 53)Willson DF, Truwit JD, Conaway MR, et al:The Adult Calfactant in Acute Respiratory Distress

Syndrome Trial. Chest 148(2):356-364, 2015, PMID 25855884
p.285
54)Cornet AD, Groeneveld AB, Hofstra JJ, et al:Recombinant human activated protein C in the treatment

of acute respiratory distress syndrome:a randomized clinical trial. PLoS One 9(3):e90983, 2014, PMID 24632673 55)Liu KD, Levitt J, Zhuo H, et al:Randomized clinical trial of activated protein C for the treatment of

acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 178(6):618-623, 2008, PMID 18565951 56)Bernard GR, Wheeler AP, Arons MM, et al:A trial of antioxidants N-acetylcysteine and procysteine in

ARDS. The Antioxidant in ARDS Study Group. Chest 112(1):164-172, 1997, PMID 9228372 57)Jepsen S, Herlevsen P, Knudsen P, et al:Antioxidant treatment with N-acetylcysteine during adult

respiratory distress syndrome:a prospective, randomized, placebo-controlled study. Crit Care Med 20(7):918-923, 1992, PMID 1617983 58)Ortolani O, Conti A, De Gaudio AR, et al:Protective effects of N-acetylcysteine and rutin on the lipid

peroxidation of the lung epithelium during the adult respiratory distress syndrome. Shock 13(1):14-18, 2000, PMID 10638663 59)Suter PM, Domenighetti G, Schaller MD, et al:N-acetylcysteine enhances recovery from acute lung

injury in man. A randomized, double-blind, placebo-controlled clinical study. Chest 105(1):190-194, 1994, PMID 8275731 60)ARDS Network:Ketoconazole for early treatment of acute lung injury and acute respiratory distress

syndrome:a randomized controlled trial. JAMA 283(15):1995-2002, 2000 PMID 10789668 61)ARDS Network:Randomized, placebo-controlled trial of lisofylline for early treatment of acute lung

injury and acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 30(1):1-6, 2002, PMID 11902249
p.286
●2016 年4 月18 日から5 月13 日までの期間,日本呼吸器学会/日本集中治療医学会/日本呼吸療法医学会の各ホームページにてパブリックコメントを募集した.その結果,21 名の方からパブリックコメントの投稿があった.うち回答が不完全なもの,語句の間違いなどの指摘を除き,重要と思われるコメントとそれに対する回答を以下に記載した.掲載は投稿順ではなく,Part 1 からPart 2 そして全般にわたるコメントの順に記載した.

パブリックコメント

1.第3 章「基礎疾患」

2.第3 章「基礎疾患」

3.第3 章「基礎疾患」

SIRS はAPACHE DB から作り出した,リサーチエントリークライテリアです.臨床での判断に使うクライテリアではないと思います.その点を日本人の多くが勘違いしています.

sepsis は,新定義の記載がありますが,要約部分には記載がなく,むしろ要約部分に新定義の記載をした方が良いのではないでしょうか.

「狭義の誤嚥性肺炎」は,感染が原因であって,化学性肺炎は「誤嚥性肺臓炎」ではないでしょうか.重要なご指摘ありがとうございます.この点については日本人ばかりではなく世界的

にもその傾向があると考えます.その点を勘案し内容に修正を加えさせていただきました.SIRSに関する記述については多くを修正しました.

新しい定義は2016 年になって報告されたものであり,今回は出版の時期も勘案して

紹介するにとどめました.次期改訂までにその評価が定まるかと存じます.上記1 の指摘にも繫がるものと考えております.要約に新しい定義を記載しました.

ご指摘の考え方もあるかも知れませんが,胃内容物が下気道に入るためには必ず上気

道を通る訳ですから,多かれ少なかれ上気道に存在する微生物が下気道に入ると考えます.

回答

回答

回答
p.287
4.第4 章「発症機序と病態生理」  2 ARDS の病態生理 b. 換気力学の変化

肺コンプライアンスの低下のみならず,胸壁コンプライアンスの低下も出うる点を言及するのが良いと思います. 肺コンプライアンスの低下のみに言及しているのは,pulmonary ARDS を主に想定しているためと思われますが,extra pulmonary ARDS の症例もあり,その病態では,胸壁を広げることにより肺容量を改善させるために,高めの気道内圧を使用する可能性があります.こういった病態があることにも,言及していただければありがたく存じます.

「呼吸器の設定に際しては,胸郭の硬さや可動性なども考慮する」という文言を加え

させていただきました.

回答

5.第9 章「治療:呼吸管理療法」  2 ARDS に対する換気設定の概念 a. FIO2 とPEEP の設定

「調節換気時のPaO2 は平均気道内圧に相関するため」との記載がありますが,これは断定できないと思います.多発する局所的な無気肺をもつ病変では,平均気道内圧を上昇させても,含気のある肺容量が得られないこともあり,その際には,気道内圧を上昇させても,PaO2 が改善しないことも多々あります. それから, 「脳圧の上昇が問題となる症例では,PEEP 上限を低く設定する」という表現も断定的なような気がします.高い気道内圧を用いないと肺容量が得られない肺では,気道内圧を高くしても中心静脈圧の上昇に結び付かないことがよくあります.ARDS 症例では, PEEP を上昇させても,それによって脳圧が上昇するという1 対1 の関係ではないはずです. 「脳圧の上昇が問題となる症例では,PEEP によって得られる肺容量改善の効果と中心静脈圧上昇を含む循環動態の変化とのバランスによって,適切なPEEP の設定を考えることになる」といった表現が良いように思います.

非常にレベルの高いご指摘と存じます.2 つの指摘のうち前者ですが,現在でも

ARMA study のFIO2/PEEP table などが臨床現場では使われています.この観点から,「調節換気時のPaO2 は平均気道内圧に相関するため」は必ずしも間違いではないと我々は考えます.もちろんご指摘のような要素が例外的にあることは承知していますが,ここではシンプルに述べさせていただきたいと考えます.脳圧とPEEP の関係を指摘される後者については非常に示唆に富むご意見ですので,ほぼご提案通りに書き改めました.

回答
p.288
6.第9 章 「治療:呼吸管理療法」

7.第9 章 「治療:呼吸管理療法」

細かい点ですが,「陽圧人工呼吸」は「機械的換気」あるいは「人工換気」,陽圧換気でも陰圧換気でも,経壁圧が同じなら損傷は同じでしょうから,「陽圧」はいらないのではないでしょうか.また「換気様式」と「換気モード」という言葉が混在していますが,モードと様式は同じ意味ではないでしょうか.

ARDS 診療ガイドライン,興味深く拝見させていただきました.構成から細部に至るプロセスまで記載され,客観性に優れるもので,大変勉強になりました.Part 1 のp. 83 『c. その他の換気条件』の中で,『1)吸気酸素分画』です.PaO2 55 ~80mmHg を維持しながら血液ガス分析を行うとあります.FIO2 を0. 05 ~0. 1 刻みに下げるためには,頻回の血液ガス分析を行わなければならないと誤解を招きませんでしょうか? 頻回採血によるスタッフの作業負荷や医療資源,血液損失という点を考慮すると,SpO2 も指標として併記するのが,より現実的な管理方法を思います.海外のガイドラインでもSpO2 88 ~92% を目標としFIO2 を規定するという表現を見かけます.日々,ARDS診療に携わるスタッフであればFIO2 調整の意図は理解できるのですが,そうでない方には15 ~30分ごとに血液ガスを提出しなければならない(must),FIO2 変更には血液ガスが必須と感じられます.より適正にFIO2 を設定するのは,適正PEEP 模索の速度にも影響を及ぼすかと思います.

言葉の使い方については混乱があることを認めます.ただし様式,モードという2 つ

の言葉が国内では別のものとして扱われていることが多く,それに今回は従っております.今後の改訂で用語についても議論を重ねてまいります.

しっかりとしたエビデンスには欠けるのですが,Part 1 の記載はあくまでもnarrative

review (expert opinion) であるという前提で「臨床現場ではこのPaO2 値を踏まえSpO2 ≧90 を目安として管理し,必要に応じて適宜PaO2 を確認する」という文言に変更させていただきました.

回答

回答
p.289
8.第10 章「治療:薬物療法,その他」

Part 1 の10 治療:薬物療法における好中球エラスターゼ阻害薬のsummary が“......使用を考慮してもよい.......発症早期の使用が有用である.”と記載され,Part 2 のCQ11 の同推奨文“使用しないことを提案する.”と明らかに乖離しています.Part 2 はSR に基づいた根拠ある推奨文ですので,Part 1 の文章をPart 2 に合わせる必要があると思われます.薬物療法(ステロイド,好中球エラスターゼ阻害薬)など同じ事柄の評価がPart 1 とPart 2 の両方で異なるメンバーで行われているため,記載されている内容のニュアンスも多少異なります.1 つのガイドラインの中でなぜ同じ事柄をPart 1 とPart 2 の両方で,しかも異なるメンバーで評価されたのか,読者の立場からはわかりにくく感じました.

この部分については,3 名の方から同様のご意見が寄せられました.今回は初めての

試みも多かったのですが,国内で2 つのガイドラインが存在することを避けるため2 つの診療ガイドライン作成委員会が途中から合流しました.その結果,Part 1 はnarrative review (expert opinion) という従来の形を踏襲しております.ここで述べられた意見は国内での多くの施設が現在採用している実態をお示しするものです.一方,Part 2 はGRADE を採用した厳密なsystematic review の結果に基づいたものです.特に後者は観察研究をも排除してRCT だけを取りあげております.その結果,好中球エラスターゼ阻害薬について現在まで積み重ねられたRCT の結果では,使用すべきとの推奨はできないという結論がパネル会議で採用されております.しかしながらこれはあくまでも指針であって使うなという強圧的なものではありません.一方ステロイドに関しては, Part 2 においてもその推奨が二転三転しております.しかし協議の結果,少量投与に関しては効果があると結論せざるを得ない結果が得られ,最終的に使用することを提案するという結論になっております.これも今後のRCT の結果によって大きく変化する可能性を秘めております.たしかに今回は2つのグループが寄り合ってnarrative review とsystematic review を別々に記載したため読者にとってはわかりにくい結果となったことは否めません.しかしながら今回はこのような記載を訂正せず,お互いの意見を掲載することをお認めいただければ幸いです.実態として本邦では,使用派と非使用派に分かれていることもご勘案ください.

回答
p.290
9.第10 章- 4 その他の治療 a. ECMO

10.CQ5

11.CQ7

「結果は,6 ヵ月後の重篤な機能不全のない生存率が,従来の呼吸管理群では,47%のところ, ECMO 群の生存率では,63%と優位に予後を改善していた」との記載がありますが,この後に,「実際にECMO 群に割り当てられた85 名中17 名にECMO が適応されなかったこと」との記載があるように,「ECMO 群」と呼ぶと,誤解を招くと思います.本文中でも, patients allocated to consideration for treatment by ECMO とあるように,彼らもECMO 群とは呼んでいません.「ECMO 治療を考慮してECMO 可能な施設で管理をした群」とするのが良いと思います.「ECMO そのものではなくECMO センターに速やかに搬送することが救命率を高めたという意見も根強い」という記載は,その通りだと思います.それらを文章中,分割しないで述べるのが良いと思います.

「中等度以上のARDS には高めのPEEP を用いることを提案する」 とありますが,これを基礎知識なしに読む人にとって,「低め」と「高め」がどの程度のレベルを示すのかがわからないと思います.「低め」と「高め」がどの程度のレベルなのかを示す必要があると思います.

腹臥位について,サブグループ分析の結果は取り入れるべきではないと思います.

ご指摘ありがとうございます.分割は校正の都合上困難でしたので,群名については

ご指摘通りに変更し,2 つの分かれた文章はお互いに参照するように記述を改めました.

ご指摘に従い,ARMA study のFIO2/PEEP table をCQ5 の記載中に取り入れました.

今回,サブグループ解析をするかどうかパネル会議で議論した結果サブグループ解析

を行っております.PROSEVA 研究もサブグループ解析から得られたヒントを用いて重症者を対象としたRCT を施行しており,必ずしも「べきではない」と断言できるものではないと考えます.

回答

回答

回答
p.291
12.CQ10

13.CQ12

14.全般について

「水分を制限した管理を行うことを提案する」 とありますが,「水分を制限した管理」とは具体的に何なのかが示されていません.これも,このガイドラインを使用する人にとっては,「水分を制限する」とは何なのかが明示されないと,「水分を制限した管理」が意図するところが見えないと思います.

ステロイド投与に関して開始時期が大きく異なる研究をまとめて評価しています.現在の推奨ではどのタイミングで使用すべきか迷うのではないでしょうか.

一言で言えば,このガイドラインを臨床医がどれほど利用するかは疑問である.ガイドラインはいかに厳密に作っても,診療の場で活用されなければ,意味がない.ガイドライン作成の正当性/正統性がいかに手続き的に担保されようとも,臨床医が気軽に読んで,内容が間違いなく理解され,即戦力になるものでなければ,作った価値がない.

現時点では推奨できる具体的な管理方法はないと言えます.したがって付帯事項に「現

時点では日々の水分バランスをできるだけオーバーバランスにしない管理が勧められる」という文言を付けさせていただきました.

ご指摘通りです.ただ解説中にもMeduri らも14 日以降にステロイドを開始した場

合死亡率を悪化させる可能性があるとして早期の投与を示唆していると紹介しておりますが,現時点において開始時期を明示することは困難と考えます.

ご指摘の点,我々も十分認識しております.しかしながらこのような試みすらこれま

で本邦医科系ではほとんどなされておらず,まずは形から入らせていただいた次第です.多くの反省点もありますが,次へ繫がるよう努力してまいります.

回答

回答

回答
p.292
15.全般について

16.その他

SR における膨大な調査・解析とともに,CPG におけるGRADE の採用というすばらしい業績と思いました.

パート2中に頻出する確信性(confidence)という文言は,最近,確実性(certainly)という言葉に置き換えられることとなりました.今回はこの改訂に間に合わなかったため確信性という文言をそのまま使用することとしました.

ありがとうございます.今回は多くの皆様の惜しみない協力によりなんとか完成にこ

ぎつけております.参加したメンバーの多くは全くの素人であったため,多くの失敗も経験しております.いずれにしろ次の改訂ではさらに役立つガイドラインを目指すべく参加メンバー全員が心を一にしておりますので,どうか暖かく見守っていただきますようお願い申し上げます.

回答
p.293
ARDS 診療ガイドライン 2016 Clinical practical guideline for acute respiratory distress syndrome

2016 年 7 月9 日 第1版第1刷 発行2017 年 2 月10日 第1版第2刷 発行(CQ10, CQ12の推奨度に関する小修正)

編集3 学会合同ARDS 診療ガイドライン2016 作成委員会©発行一般社団法人 日本呼吸器学会〒113-0033 東京都文京区本郷3 丁目28 番8 号 日内会館7 階TEL:03-5805-3553 FAX:03-5805-3554

一般社団法人 日本集中治療医学会〒113-0033 東京都文京区本郷3丁目32番7号 東京ビル8F TEL:03-3815-0589 FAX:03-3815-0585

一般社団法人 日本呼吸療法医学会〒532-8588 大阪市淀川区宮原3 丁目4 番30 号ニッセイ新大阪ビル16 階 メディカ出版内TEL/FAX:06-6398-5099

制作株式会社 総合医学社〒101-0061 東京都千代田区三崎町1 丁目1 番4 号

TEL:03-3219-2920 FAX:03-3219-0410

本書に収載された著作物の複製権・翻訳権・上映権・譲渡権・公衆送信権(送信可能化権を含む)等の著作権のすべては,上記3 学会が保有します. したがって,上記3 学会の許諾を得ないで,上記の権利を侵害する行為の一切を禁じます.