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短時間作用型β1遮断薬の適正使用に関するステートメント 日本心不全学会・2013・3 ページ · 心不全・心筋症
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日本循環器学会・日本心不全学会合同ステートメント

短時間作用型β1遮断薬の適正使用に関するステートメント

策定委員

◆小室 一成 東京大学 循環器内科学

◆増山  理 兵庫医科大学 循環器内科

◆百村 伸一 自治医科大学さいたま医療センター 循環器科

◆北風 政史 国立循環器病研究センター 臨床研究部・心臓血管内科

◆山本 一博 鳥取大学 病態情報内科学

◆竹石 恭知 福島県立医科大学 循環器・血液内科学

外部評価委員

◆和泉  徹 医療法人恒仁会新潟南病院

◆磯部 光章 東京医科歯科大学 循環制御内科学

◆朔 啓二郎 福岡大学 心臓・血管内科学

◆吉村 道博 東京慈恵会医科大学 循環器内科
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はじめに

心房細動・心房粗動などの頻脈性上室不整脈は心不全を増悪させることから、脈拍数を低下させたい場面は多い。日本循環器学会においては、「急性心不全治療ガイドライン(2011 年改訂版)」および「慢性心不全治療ガイドライン(2010 年改訂版)」のなかでジギタリス薬を中心とした治療法を明記している。最近、短時間作用型β1遮断薬であるランジオロールの適用が心機能低下例における頻脈性不整脈に拡大され、心不全を合併した心房細動・粗動のレートコントロールの治療薬の選択肢が広がった。このような状況にあって、一般医家を含め循環器診療にあたる医師に対して、この短時間作用型β1遮断薬の正しい位置づけ、使用上の注意、従来のレートコントロール薬であるジギタリス薬との使い分けなどを周知することは日本循環器学会の極めて重要な使命である。本来、ガイドラインを改訂のうえ対処すべきであるが、今回はこのステートメントをもって必要な情報を提供することとした。

ランジオロール

ランジオロールは、ヒトでの血中薬物濃度半減期が約4分の短時間作用型β1遮断薬であり、従来、周術期の頻脈性不整脈に対する緊急処置薬として使われてきた。2013 年11 月に『心機能低下例における頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動)』の効能・効果が追加され、心不全増悪急性期などにおける頻脈性不整脈(心房細動・粗動)のレートコントロールに使えるようになった。適応拡大となった根拠のひとつが、急性期のレートコントロールにおいて、短時間作用型β1遮断薬ランジオロールが左室駆出率をさらに低下させることなく、ジゴキシンより速やかに心拍数を低下させると報告したJ-Land 試験である1)。本試験において、ジゴキシンとの比較試験で、投与開始2時間後に心拍数が110 回/分未満かつ20%以上の徐拍化を達成した患者の割合はジゴキシン群が13.9%、ランジオロール群が48.0%と、ランジオロール群で有意に高値であった。したがって、急速なレートコントロールが必要な症例での効果が期待されている。またJ-Land 試験ではランジオロール群において低血圧、嘔吐・吐気、クレアチニン値の上昇、尿素窒素値の上昇が3%以上の症例にみられた。

「低左心機能例への投与」時の留意点

J-Land 試験でのランジオロールの使用は100 例に満たない。また、対象症例の左室駆出率は25-50 %であり、25%未満の重度心機能低下例に対する本薬剤の投与経験は現在のところほとんどない。したがって、低心機能症例に使用する場合には特に血圧・心拍数などの血行動態、副症状への注意が必要である。特に、心拍数・血圧はジギタリス薬に比べて急速に低下するので、連続モニターが必要である。ICU、CCU およびそれに準じた全身管理が可能な施設において、心不全治療の経験が十分にある医師のもとでランジオロールの適応が真にあるのかを十分に検討した上で慎重に使用しなければならない。投与に際しては、ランジオロール塩酸塩として、1μg/kg/min の速度で静脈内持続投与を開始する。投与中は心拍数、血圧を連続的にモニターする。効果が不十分な場合にはランジオロールは1~10μg/kg/min の範囲内で増量してもよい。
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「低血圧」と「徐脈」発生時の対処

J-Land 試験でのランジオロール投与前の血圧は平均125mmHg であり、投与後113mmHg まで低下した。同試験では投与前の血圧が90mmHg を下回る症例は対象から除外しており、現状では、そのような低血圧症例での使用は推奨されない。投与中、過度に血圧が低下した場合には、直ちに本薬剤の投与を中止する。必要に応じて、輸液量を増量したり昇圧剤を投与したりするが、交感神経刺激薬を用いる場合はα刺激作用が優位に発現することによる過度の昇圧に注意して投与しなければならない。過度の徐脈をきたした場合も、直ちに本剤の投与を中止する。更に必要に応じてアトロピン、また場合によってはβ1刺激薬(ドブタミンなど)を投与する.

ジゴキシンとの使い分け

ランジオロールはジゴキシンに比し速やかに脈を減じるが、同時に血圧も下げる。有害事象の発現、左室機能・予後に関する優越性についても未だ不明である。したがって、現状では急速なレートコントロールが必要な症例やジギタリス投与が困難な慢性透析・高度腎機能障害例などを中心にランジオロールを使うことが推奨される。J-Land 試験の結果を見ると、ランジオロールによる速やかな脈拍低下が必ずしも自覚症状の改善に結びついておらず、ランジオロールの急性心不全治療における位置づけについては、今後の検討が必要である。

おわりに

今回、短時間作用型β1遮断薬が急性心不全患者に対しても使えるようになり、心不全に合併する頻脈性不整脈(心房細動・心房粗動)を以前より効果的に治療することが可能となった。従来薬に加え短時間作用型β1遮断薬であるランジオロールを有効に使うことにより、心不全のよりよい治療が我が国に広く行き届くことを願う。

文献1) Nagai R., Kinugawa K., Inoue H., Atarashi H., Seino Y., Yamashita T, Shimizu W., Aiba T.,

Kitakaze M., Sakamoto A., Ikeda T., Imai Y., Daimon T., Fujino K., Nagano T., Okamura T., Hori M., the J-Land Investigators. Urgent Management of Rapid Heart Rate in Patients With Atrial Fibrillation/Flutter and Left Ventricular Dysfunction - Comparison of the Ultra-Short- Acting β1-Selective Blocker Landiolol With Digoxin (J-Land Study) ‒ Circ J 2013;77: 908‒

16 以上