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杉山 篤東邦大学医学部薬理学
青沼 和隆筑波大学医学医療系循環器内科学
(日本循環器学会)
合同研究班参加学会日本循環器学会 日本TDM 学会
(五十音順,構成員の所属は2015 年9 月現在)
鈴木 敦東京女子医科大学循環器内科住友 直方埼玉医科大学国際医療センター
小児心臓科
篠原 徳子東京女子医科大学
循環器小児科
笠井 英史サターラ合同会社班長
班員
協力員
外部評価委員
日本循環器学会/ 日本TDM 学会合同ガイドライン(2013‒2014 年度合同研究班報告)
2015 年版
循環器薬の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン
Guidelines for Therapeutic Drug Monitoring of Cardiovascular Drugs ― Clinical Use of Blood Drug Concentration Monitoring ― (JCS 2015)
志賀 剛東京女子医科大学循環器内科
(日本TDM 学会)
市田 蕗子富山大学大学院医学薬学研究部上野 和行新潟薬科大学薬学部
越前 宏俊明治薬科大学薬物治療学池田 隆徳東邦大学医学部循環器内科学新 博次日本医科大学多摩永山病院
菅原 満北海道大学大学院薬学研究院
薬物動態解析学土下 喜正舞鶴共済病院薬剤科
土岐 浩介筑波大学医学医療系臨床薬剤学清水 渉日本医科大学循環器内科学栄田 敏之京都薬科大学薬物動態学分野
長谷川 純一鳥取大学医学部薬物治療学林 秀晴浜松医科大学第三内科平尾 見三東京医科歯科大学医学部附属病院不整脈センター
萩原 誠久東京女子医科大学循環器内科戸塚 恭一
北多摩病院渡邉 英一藤田保健衛生大学循環器内科松本 直樹聖マリアンナ医科大学薬理学前田 頼伸中国労災病院薬剤部
野上 昭彦筑波大学医学医療系
循環器不整脈学橋口 正行慶應義塾大学薬学部
医薬品情報学
平田 純生熊本大学薬学部臨床薬理学分野髙橋 尚彦大分大学医学部循環器内科・
臨床検査診断学講座
関口 幸夫筑波大学医学医療系
循環器内科学湯川 栄二ケミスト アンド ファーマシスト松本 宜明日本大学薬学部臨床薬物動態学
大江 透心臓病センター榊原病院篠崎 公一北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター
臨床薬学薬物動態学田中 一彦
白鷺病院井上 博富山県済生会富山病院伊藤 宏秋田大学大学院循環器内科学・
呼吸器内科学
三浦 崇則安城更生病院教育研修・臨床研究支援センター
堀江 稔滋賀医科大学内科学講座
(循環器・呼吸器)
本間 真人筑波大学医学医療系臨床薬剤学
p.2
目次
CQ & HTU 一覧 ....................................4 I. ガイドラインの概要 ..............................6
1. ガイドラインの目的 ............................6 2. 本ガイドラインの使用上の注意 ..................7 3. Clinical Question の選定と推奨グレード ..........7 4. 外部評価 ......................................7 5. 今後の予定 ....................................7 6. 利益相反 ......................................8 II. 薬物血中濃度モニタリング ........................8
1. 薬物血中濃度モニタリングの歴史 ................8 2. 薬物血中濃度モニタリングに必要な薬物動態学 ....8 3. 血中濃度測定法 .............................. 10 4. 薬物動態解析の方法 .......................... 11 5. 保険収載 .................................... 12 III. 各論 .......................................... 13
1. 抗不整脈薬 .................................. 13
1.1 I 群抗不整脈薬 ........................ 16 1.2 II 群抗不整脈薬 ........................ 17 1.3 III 群抗不整脈薬 ........................ 18
1.4 IV 群抗不整脈薬(ベプリジル)............ 20 1.5 強心薬(ジゴキシン) .................... 21 2. 感染性心内膜炎時の抗菌薬 .................... 27 3. 特殊病態での変化 ............................ 29
3.1 腎障害患者・血液透析患者 .............. 29 3.2 肝硬変 ................................ 33 3.3 甲状腺機能障害 ........................ 34 3.4 高齢者 ................................ 35 3.5 小児 .................................. 36 3.6 妊婦・授乳婦 .......................... 40 4. 各薬の薬物動態一覧 .......................... 42 5. 各薬の薬物相互作用一覧 ...................... 45付表.............................................. 47文献.............................................. 49
(無断転載を禁ずる)
CQ & HTU 一覧
1. 抗不整脈薬CQ1 抗不整脈薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 13 CQ2 抗不整脈薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことにより副作用は減少しますか? ... 15 CQ3 抗不整脈薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことにより至適な用量・用法が得られるまでの時間は短縮しますか? ... 15 HTU1 抗不整脈薬の血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 16 HTU2 服薬後の経過時間と血中濃度値からピーク値とトラフ値の予測は可能でしょうか? ... 16 HTU3 どのようなときに血中濃度を測定すればよいので
しょうか? ... 16 1.1 I 群抗不整脈薬HTU4 I 群抗不整脈薬の中毒(副作用)域を教えてください. ... 16 HTU5 抗不整脈薬の血中濃度依存性の副作用にはどのようなものがありますか? ... 17 HTU6 活性代謝物はどのように考えたらよいのでしょうか? ... 17 1.2 II 群抗不整脈薬CQ4 b 遮断薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 17 1.3 III 群抗不整脈薬CQ5 アミオダロンを使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 18
p.3
CQ6 アミオダロンを使用している不整脈患者に対し,
血中濃度モニタリングを行うことにより心外性副作用は減少しますか? ... 19 HTU7 アミオダロンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 19 HTU8 アミオダロン持続静注時に血中濃度モニタリングは必要でしょうか? ... 19 HTU9 デスエチルアミオダロン濃度は効果や安全性の指標になるのでしょうか? ... 19
CQ7 ソタロールを使用している不整脈患者に対し,血
中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?... 20 HTU10 ソタロールの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 20
1.4 IV 群抗不整脈薬(ベプリジル)
CQ8 ベプリジルを使用している不整脈患者に対し,血
中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 20 HTU11 ベプリジルの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 21
1.5 強心薬(ジゴキシン)
CQ9 ジゴキシンを使用している不整脈患者に対し,血
中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 21
CQ10 ジゴキシンを使用している心不全患者に対し,血
中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 22 HTU12 ジゴキシンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 23 HTU13 長期ジゴキシン治療中に血中濃度モニタリングを行う際には,どのくらいの間隔で採血をすればよいでしょうか? ... 24 HTU14 血中ジゴキシン濃度の治療域はどのように設定すべきでしょうか? ... 24 HTU15 メチルジゴキシンの血中濃度モニタリングはジゴキシン濃度でよいのでしょうか? ... 25 HTU16 ジゴキシンの血中濃度モニタリングを実施する際には,内因性のジゴキシン様免疫反応陽性物質やジゴキシン様の化学構造を有する薬物に注意する必要はあるのでしょうか? ... 26 HTU17 ジギタリス中毒は血中ジゴキシン濃度に依存するのでしょうか? ... 26 2 感染性心内膜炎時の抗菌薬
CQ11 バンコマイシンを使用している感染性心内膜炎患
者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 27
CQ12 アミノグリコシド系抗菌薬を使用している感染性
心内膜炎患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか? ... 27 HTU18 バンコマイシンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ...28 HTU19 アミノグリコシド系抗菌薬の血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 28 HTU20 テイコプラニンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? ... 29
3 特殊病態での変化
3.1 腎障害患者・血液透析患者
HTU21 腎障害患者・血液透析患者に抗不整脈薬を使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 29 HTU22 腎障害患者・血液透析患者にジゴキシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 30 HTU23 感染性心内膜炎を合併した腎障害患者・血液透析患者にバンコマイシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ...32
3.2 肝硬変
HTU24 肝硬変患者に抗不整脈薬を使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 33
3.3 甲状腺機能障害
HTU25 甲状腺機能障害患者にジゴキシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 34
3.4 高齢者
HTU26 高齢者に抗不整脈薬を使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 35 HTU27 高齢者にピルシカイニドを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 35 HTU28 高齢者にジゴキシンを使用する際には,血中濃
p.4
度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか? ... 36
3.5 小児
HTU29 抗不整脈薬を小児に使用する場合,血中濃度治療域は成人と同じでしょうか? ... 36 HTU30 ジゴキシンを小児に使用する場合,血中濃度治療域は成人と同じでしょうか? ... 37 HTU31 小児の感染性心内膜炎に対しグリコペプチド系
あるいはアミノグリコシド系抗菌薬を使用する場合,血中濃度治療域は成人と同じでしょうか? ... 38
3.6 妊婦・授乳婦
CQ13 抗不整脈薬の妊婦および授乳婦への適応と注意
点について教えてください.... 40
I.ガイドラインの概要
1 ガイドラインの目的
薬物治療の原則は有害反応を防ぎながら最大の薬理効果を上げることである.従来,臨床では「薬のさじ加減」ということばがある.これは医師が薬の用量―反応関係を経験的に取得し,個々の患者に対し適切な薬物選択と用量設定を行うことである.しかし,この方法は普遍性に乏しく,リスクも潜んでいる.TDM(therapeutic drug monitoring:治療薬物モニタリング)とは,治療効果や副作用に関するさまざまな因子をモニタリングしながらそれぞれの患者に個別化した薬物投与を行うことである.TDM は一般に薬物血中濃度を利用した方法と捉えられているが,広義にはバイオマーカーをはじめとする薬物の効果指標などを含めたものであり,至適な個別化治療を目標とする.
抗不整脈薬は強力な薬理作用を有している反面,重篤な副作用もあり安全域が狭い.このため,抗不整脈薬の分野では古くから薬物の体内動態とその抗不整脈効果に関する検討が行われ,薬物血中濃度モニタリングを治療に応用してきた歴史がある.しかし,その血中濃度値の解釈は薬物動態学,薬力学,薬物相互作用の知識のみならず,服薬アドヒアランス(服薬遵守)も考慮したものでなければならない.わが国では多くの抗不整脈薬やジゴキシンなどの血中濃度測定が保険適応となっているが,日常臨床ではその役割や判断が不確かなことから,十分には活用されていな
い.さらに現在まで,わが国をはじめ海外でも循環器薬の薬物血中濃度を用いたTDM に関するガイドラインは作成されていない.このような背景から今回,日本循環器学会と日本TDM 学会が合同で『循環器薬の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン』を作成することになった.
本ガイドラインの目的は,循環器薬を治療に用いる医師が薬物血中濃度を用いたTDM を行うことで安全かつ有効な薬物治療を行うことにある.従来の薬物治療効果指標に加え薬物血中濃度モニタリングを行うことで,至適な投与設計が早期に行えるようになり,循環器薬使用の適正化と治療の個別化が達成されることを目標とする.近年,とくに循環器薬領域での薬物血中濃度モニタリングには,薬物治療の安全性の指標としての役割も求められている.本ガイドラインの対象は循環器薬を治療に用いる医師とそれにかかわる薬剤師,看護師,臨床検査技師である.
薬物血中濃度値のみで薬物の効果を予測することは困難である.さらに対象とする疾患や不整脈,また患者背景や治療目的によっても目標とする薬物血中濃度値のレベルは異なる.本ガイドラインでは,実臨床における薬物血中濃度モニタリングの適切な使用法(採血時期,採血時間など)と血中濃度値の解釈(限界を含めて)についての指針を示す.なお,本ガイドラインで対象とした循環器薬は,保険適応としてコマーシャルベースで血中濃度モニタリングが行えるものに限った.
I .ガイドラインの概要
1 ガイドラインの目的
p.5
2 本ガイドラインの使用上の注意
本ガイドラインは,現在の保険診療に基づいて記載されている.本ガイドラインは,医師が実地診療で薬物血中濃度を用いたTDM を行う場合の指針であり,普遍的な血中濃度値の指標を示すものではない.薬物の反応は薬物動態のみに規定されるものではなく,薬物治療は患者の臨床背景や病態,併存疾患など,さまざまな要因を考慮して総合的に評価されるものである.循環器薬の薬物血中濃度モニタリングについてはいまだ高いエビデンスを有する使用方法は確立しておらず,それが一方で実臨床での混乱を招いているのも事実である.本ガイドラインの内容に沿わない薬物血中濃度モニタリングの使用や判断が行われても,個別化治療のうえで特別な事情を勘案した医師の判断が優先されるものである.よって,本ガイドラインは追訴されるべき法的根拠を提供するものではけっしてない.
3 Clinical Questionの選定と 推奨グレード
診療ガイドラインの作成は,Minds(Medical Information Network Distribution Service:日本医療機能評価機構)が推奨する手順に沿った.日本循環器学会および日本TDM 学会のガイドライン作成班で,おもに保険適応としてコマーシャルベースで血中濃度モニタリングを行える各循環器薬についてClinical Question(CQ)を決定した.そして,各CQ に対して,1960~2013 年までの期間の論文を,文献データベースとしてMEDLINE,EMBASE,医学中央雑誌を使用して検索・抽出し,エビデンスとして採用した.また,エビデンスは乏しいが臨床医が薬物血中濃度モニタリングを活用するうえで疑問点となる項目について,日本循環器学会ガイドライン作成班からHow to Use (HTU)としてあげてもらい,TDM の専門家のなかである程度コンセンサスが得られている内容について日本TDM学会ガイドライン作成班が回答を作成した.これらのCQとHTU の回答について再度両学会ガイドライン作成班で検討を行い,確定した.
CQ に対する回答には,以下に示すエビデンスレベルと推奨グレードを記載した. ● エビデンスレベル
レベルI:システマティックレビュー/ランダム化
比較試験のメタ解析
レベルII: 1 つ以上のランダム化比較試験レベルIII:非ランダム化比較試験レベルIVa: コホート研究レベルIVb: 症例対照研究,横断研究レベルV:症例報告,ケースシリーズレベルVI:患者データに基づかない,専門委員会や
専門家個人の意見
● 推奨グレード
グレードA: 強い科学的根拠があり,行うように強く
勧められる
グレードB: 科学的根拠があり,行うように勧められ
る
グレードC1: 科学的根拠はないが,行うように勧めら
れる
グレードC2: 科学的根拠はなく,行うように勧められ
ない
グレードD: 無効性あるいは害を示す科学的根拠があ
り,行わないように勧められる
4 外部評価
外部評価委員として,日本循環器学会と日本TDM 学会から4 名ずつを選出していただき,評価を受けた.
5 今後の予定
本ガイドラインは和文にて日本循環器学会公式ガイドライン誌に掲載し,また各学会のホームページに公開する予定である.ダイジェスト版も出版する.ダイジェスト版は英訳版も作成し,日本循環器学会の英文誌に掲載する予定である.また,Minds での公開も行う予定である.このガイドラインは5 年を目途に改訂を予定しており,各学会からの作成班員を新たに選定して,公明性を保つことを目指す.
2 本ガイドラインの使用上の注意
3 Clinical Questionの選定と 推奨グレード
4 外部評価
5 今後の予定
p.6
6 利益相反
本ガイドラインの作成にあたっては,日本循環器学会と日本TDM 学会の資金でガイドライン作成班会議を開催した.交通費に関しては日本循環器学会と日本TDM 学会が
負担した.作成にかかわった班構成員からは利益相反に関する申告書を提出していただき,各学会で管理することとした.
II.薬物血中濃度モニタリング
1 薬物血中濃度モニタリングの 歴史
治療における投与量設定に際し,薬物反応の個人差が大きい薬物や治療域と中毒(副作用)域が近い薬物は,固定投与量で治療に用いることが難しい.このような薬物を用いて,より安全かつ有効な薬物治療を行うためには,薬物の体内動態を定量的に評価し,予測するための手段が必要である.このアプローチは個々の患者における至適な薬物投与設計に役立つものであり,その手段として薬物速度論的解析に基づき薬物血中濃度を治療域に維持できるように投与設計を行う考えが出てきた.
1960 年代に薬物の微量測定法の開発とともに抗てんかん薬のフェニトインや炭酸リチウムについて血中濃度と薬理効果に関する研究が報告され,新しい学問領域として臨床薬理学が生まれた.それとともに臨床薬物動態学(clinical pharmacokinetics)の概念が1960 年代から1970 年代初めに提唱され,1970 年代より日常臨床で薬物血中濃度を用いた薬物投与設計が実践されるようになったが,この臨床応用には臨床薬物動態学の発展が大きく寄与してきた.本来,TDM(therapeutic drug monitoring:治療薬物モニタリング)とは,治療効果や副作用にかかわるさまざまな因子をモニタリングしながらそれぞれの患者に適した薬物投与を行うことである.歴史的に薬物血中濃度を利用した手法を治療に応用してきたことから,TDM は薬物血中濃度を利用した治療モニタリングと捉えられることが多い.
わが国では1970 年代初めより薬物血中濃度によるTDMが行われるようになった.また1970~1980 年代には薬物の簡易測定法が開発され,TDM が広く臨床で展開されるようになった.このような臨床実績により,医療におけるTDM の必要性が認められ,診療報酬上においても特定薬剤治療管理料として保険請求できるようになった.1980年に炭酸リチウムの発売と同時にその血中濃度測定が保険点数化され,翌年には抗てんかん薬やジギタリス薬も対象となり,現在では多くの薬物が対象となっている.一方,分子生物学の進歩に伴い,さまざまな蛋白質や遺伝子の働きなどが明らかになり,薬物の体内動態がより詳細に解析できるようになった.TDM の実施に際しても,これら蛋白質や遺伝子の情報を考慮した投与計画が立案できるようになり,いわゆるテーラーメイド薬物療法が現実のものとなってきた.
2 薬物血中濃度モニタリングに 必要な薬物動態学
薬物血中濃度モニタリングと基本的な薬物動態(pharmacokinetics; PK)の知識を利用すれば,問題となる薬物がその時点で標的臓器・組織(分子)に到達している濃度(量)と前後の時間経過を予測することができる.薬物投与量(D)は患者の薬物動態パラメータを介して薬物血中濃度(C)に変換される.薬物動態には本来の個人差に病態の
6 利益相反
II .薬物血中濃度モニタリング
1 薬物血中濃度モニタリングの 歴史
2 薬物血中濃度モニタリングに 必要な薬物動態学
p.7
影響が加わるので患者間差が大きく,標準的な投与量を処方しても,実際に作用部位に到達するC と時間経過には患者間で大きな差異が生じる.C を測定すれば,薬物動態の個人差要因のために生じた薬物反応の変動を考慮に入れて正味の感受性(薬力学[pharmacodynamics; PD])を評価しつつ薬物治療を遂行できる.薬物の治療域や中毒(副作用)域のエビデンスが確立していれば,C を指標とした投与量の個別化も可能である.
単回静脈内投与(静注)で目標とするC を得るための負荷投与量(loading dose; DL)は,C と薬物固有の分布容積(Vd)の積として求められる(DL=C×Vd).ここで, C は投与直後に得られる最高薬物血中濃度(Cmax)に等しい.体内の薬物濃度は全身的な薬物除去能力(全身クリアランス:CL,単位はL/hr など)により時間依存的に低下する.静脈内投与量と薬物血中濃度―時間曲線下面積(area under the plasma concentration-time curve; AUC)とのあいだにはCL=静脈内投与量/AUC の関係が成り立つ.また,あるC がその半分になるまでに要する時間(消失半減期:t1/2)で消失速度を評価する(図1).たとえば,t1/2
が短い薬物(6 時間など)を1 日1 回投与すると次回投与直前の最低薬物血中濃度(Cmin または谷を意味するトラフ[trough]濃度ともいう)が低くなり過ぎるので,1 日2~ 3 回投与する必要がある.
C を治療域に維持するためには薬物を持続または繰り返し投与する必要がある.持続静注で薬物投与を開始すると当初C は急速に上昇する(蓄積)が,経時的に上昇幅は小さくなり,t1/2 の5 倍経過するとC は一定となる(定常状態).ここでは薬物の投与速度と消失速度が釣り合っている.維持投与量(maintenance dose; DM,単位はmg/minなど)は,定常状態のC とCL の積として求められる(DM=C×CL).繰り返し静脈内投与の場合は,投与間隔(t)での平均薬物血中濃度(Cav)を用いて,DM はCav ×CL で求められる(図1).
薬物を経口投与する場合には,消化管吸収率と肝臓での代謝除去(初回通過効果)を考慮する必要がある.経口投与量のうち除去されずに全身循環に到達する割合を,バイ
図1 薬物を静脈内あるいは経口的に投与した場合の体内動態CL:クリアランス,F:バイオアベイラビリティ,Cav:平均薬物血中濃度,AUC:薬物血中濃度―時間曲線下面積,fu:遊離形分率
3 回目投与n 回目投与(連続投与)
代謝物肝代謝極性基
親水性腎排泄
尿中未変化体排泄率(Ae%)
血液
組織
遊離形薬物
遊離形薬物
蛋白結合形
薬物
作用部位
時間
薬理作用
半減期: t1/2
薬物血中濃度モニタリング定常状態
Cmax (最高濃度)
Cmin (トラフ濃度)
血漿蛋白
分布容積Vd
薬理活性
低下
初回投与2 回目投与
AUC
静脈内投与投与量(D)肝初回通過効果
fu
CL (浄化能力) Cav (平均濃度)
血中総薬物濃度(C)
消化管吸収
代謝除去
Log 薬物血中濃度
経口投与投与量(Dpo)
静脈内維持投与量(DM)= Cav ×CL経口維持投与量(DM,po)= Cav ×CL/F
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オアベイラビリティ(F)と定義する.単回経口投与のDLは,C×Vd/F で求められる.同様に,繰り返し経口投与でのDM はCav×CL/F で求められる(図1).薬物は血中で遊離形と蛋白結合形(アルブミンなど)の動的平衡状態にあり,作用部位に到達するのは遊離形のみである.薬物血中濃度モニタリングで測定される薬物濃度は総(遊離形+蛋白結合形)濃度なので,遊離形分率(fu)が低い(<20%,つまり血漿蛋白結合率が高い)薬物では,低蛋白血症や血漿蛋白の結合部位における併用薬との相互作用によりfu が上昇することがある.このため,薬物血中濃度モニタリング測定値と効果や副作用との関係を解釈する場合にはfu の変化を考慮に入れる必要がある.
腎障害患者では,腎消失型薬物の投与量を減量する必要があることが多い.尿中未変化体排泄率(Ae%)が>70% である薬物はとくに腎消失依存性が高い.投与量減量の定量的指標にはCockcroft-Gault 式によるクレアチニンクリアランス(mL/min)または日本人の推算式で求めた推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR[mL/1.73 m2])を用いる.
肝障害患者では,肝消失型薬物(とくにAe% <10%)の投与量減量が必要となることがある.とくに,劇症化した急性肝炎または非代償性肝硬変(Child-Pugh 分類のクラスC)では減量の必要性が大きい.また,肝硬変患者で門脈外シャント形成を有する患者では,肝初回通過効果を大きく受ける薬物の経口投与後のAUC が数倍に増加することがあるので,注意が必要である.
小児の薬用量を成人薬用量から換算する場合に体重を指標とすると,必要量を下回ることが多い.これは,新生児から思春期頃までは体重あたりの薬物消失に関係する臓器(肝臓,腎臓)重量が成人より大きいためである.したがって,成人薬用量からの換算には体表面積(body surface area; BSA)を用いる.ただし,新生児から2 歳前後までは薬物代謝酵素と腎機能が未発達なので,この期間の小児薬用量を体重あるいはBSA で予測することは困難である.その場合には薬物血中濃度モニタリングが有用である.
妊婦における薬物治療は効果がリスクを上回る場合に限り行う.とくに,妊娠3~9 週の胎児は器官形成期で薬物催奇形性の絶対敏感期である.妊婦の糸球体濾過量(GFR)は妊娠前の1.5 倍程度に上昇するので,腎消失型薬物の全身クリアランスも上昇する.また,妊娠中にはチトクロームP450(CYP)3A をはじめ多くの肝薬物代謝酵素活性も妊娠前の1.5 倍程度に上昇する.これらの変化には個人差があるので,妊婦の薬物治療の際には可能な限り薬物血中濃度モニタリングを行い,投与量の適切性を確認する.
高齢者の薬物治療では,加齢に伴うクリアランスの低下と薬力学(感受性)の変化を考慮する必要がある.加齢に
伴う薬物腎クリアランスの低下は肝のそれより大きい.また,高齢者では中枢神経作用薬の感受性が亢進するので,薬物血中濃度が若年者と同様でも副作用が生じることがある.
臨床薬物動態学の詳細については成書1)を参照されたい.
3 血中濃度測定法
薬物の血中濃度測定に使用される代表的な方法を表1に示す.測定法は免疫学的測定法と分離分析法,その他の方法に大別される.免疫学的測定法は各薬物に対する抗体を利用する方法である.簡便で迅速に測定できる方法として広く用いられており,多くの測定キットが市販されている.近年では,臨床検査用の汎用機器を用いて薬物の血中濃度を測定することも多く,なかでも循環器薬の測定にはホモジニアス酵素免疫測定法(enzyme multiplied immunoassay technique; EMIT)や連続飽和法(affinity column mediated immunoassay; ACMIA)が汎用されている.しかし,免疫学的測定法においては,生体内物質や代謝物,併用薬などが測定する薬物と抗体との反応に影響を与えることや抗体との交差反応性を有することがあるため,注意を要する.一方,抗不整脈薬についてはTDM 対象薬であっても測定キットが市販されていないものも多く,それらの薬物は分離分析法を用いて測定する必要がある.分離分析法の1 つである高速液体クロマトグラフィー法(high perfor-
3 血中濃度測定法
表1 薬物の血中濃度測定法
1.免疫学的測定法
1) 放射性免疫測定法(RIA) 2) 非放射性免疫測定法酵素免疫測定法(EIA)蛍光偏光免疫測定法(FPIA)ホモジニアス酵素免疫測定法(EMIT)競合蛍光免疫測定法(CFIA)化学発光免疫測定法(CLIA)ヘテロジニアス酵素免疫測定法(ELISA)免疫クロマト法ラテックス免疫凝集阻害法(PENTINIA) 2.分離分析法
1) ガスクロマトグラフィー法(GC) 2) 高速液体クロマトグラフィー法(HPLC) 3.その他の方法
1) 原子吸光分析法2) 炎光法3) 電極法4) 比色法
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mance liquid chromatography; HPLC)は特異性の高い分析法であり,多くの薬物の測定に用いられているが,前処理など煩雑な操作が必要である.液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)はHPLC と質量分析法(mass spectrometry; MS)を連結して分析精度を高めた方法であり,検査受託会社ではHPLC やLC/MS/MS を利用している場合が多い.
4 薬物動態解析の方法
ある特定の患者の薬物血中濃度推移を予測(シミュレーション)するためには,その患者自身の薬物動態パラメータ(クリアランス,分布容積,吸収速度定数など)の値が必要である.ここで,添付文書あるいは論文などに記載されている薬物動態パラメータ値は患者全体での平均値であることに注意しなければならない.たとえば,クリアランスは年齢,体格,腎機能・肝機能などによって大きな個人差があり,その結果として薬物血中濃度にも個人差が生じる(図2).したがって,ある特定の患者の薬物血中濃度を予測するためには,当該患者の薬物動態パラメータをなんらかの方法で算出する必要がある.薬物血中濃度実測値を用いてパラメータを算出するには,パラメータの個数の2 倍以上の数の濃度データが必要である.たとえば静注製剤で,クリアランス,分布容積の2 つを求めたいなら,薬物血中濃度データは4 つ以上必要である.ところが,通常の薬物血中濃度モニタリングで得られるデータは多くの場合1 つか2 つであり,このデータのみでは通常の解析方法によって当該患者のパラメータを算出することは不可能である.しかし,その薬物に関して母集団薬物動態(popula- tion pharmacokinetics; PPK)解析の報告があるならば,そ
のパラメータ(PPK パラメータ)および薬物血中濃度データ(最低1 つあればよい)を用いて,ベイズ(Bayes)解析と呼ばれる統計手法によって当該患者の薬物動態パラメータを算出でき,薬物動態のシミュレーションも可能となる.ただし,薬物血中濃度モニタリングを実施している患者がPPK 解析に用いられた患者集団に属しうるかどうかは,十分検討しなければならない.たとえば,PPK 解析に用いたデータが外国人患者のものだけである場合も多く,そのパラメータを日本人患者に適用することが可能かどうかは慎重に検討すべきである.
また,ベイズ解析による患者個別パラメータの算出も万能ではない.つまり,ベイズ解析に用いる薬物血中濃度データの採血時間によって,求めるパラメータの推定精度が異なるからである.たとえば,トラフ値を用いれば当該患者のクリアランス値を精度よく推定できる.しかし,トラフ値には分布容積あるいは吸収速度の情報が十分含まれていないため,それらのパラメータは母集団平均値に近い値としてしか求められないことが多い.したがって,このベイズ解析によって求められた分布容積を当該患者の値とみなすことは誤りである.
一方,TDM ではピーク付近の時間に採血することもあり,そこで得られる薬物血中濃度は分布容積の情報を含む.このように,ベイズ解析によって個別患者の濃度によくあてはまる薬物動態パラメータを求めることは可能であるが,それらはあくまでも濃度予測およびそれに基づく個別投与設計の目的のみに使用すべきである.なお,ピーク付近においては,時間経過による薬物血中濃度の変動幅が比較的大きいため濃度測定値の誤差も大きく,ピーク濃度を指標にモニタリングを行う場合は注意が必要である.一方,トラフ付近では濃度の変動幅は相対的に小さい(図3).
4 薬物動態解析の方法
図2 薬物血中濃度の個人差平均的な患者に対して,クリアランスが小さいと薬物消失は遅く,逆に,大きいと消失が速い.分布容積が小さいとピーク濃度が高くなる.
0
1,400 1,200 1,000
800 600
400 200
0 4 8 12 16 20 24
クリアランスが大きい患者
投与後時間(hr)
薬物血中濃度(ng/mL)分布容積が小さい患者
クリアランスが小さい患者
平均的な患者
図3 薬物血中濃度の経時的変動の大きさの違いピーク付近( 2 時間前後)では濃度の変動(上昇・低下)幅が大きいが,トラフ付近(24 時間前後)では濃度の変動幅は小さい.
0 4 8 12 16 20 24 投与後時間(hr)
600 500
400 300
200 100
0
薬物血中濃度(ng/mL)
p.10
5 保険収載
本ガイドラインで扱っている薬剤については,一部を除き,薬物血中濃度を測定すると「特定薬剤治療管理料」が診療報酬として算定できる.その条件は以下のとおりである.(平成24 年厚生労働省告示第76 号,平成24 年3 月5日保医発0305 第1 号)
• 投与薬剤の血中濃度を測定し,その結果に基づき当該
薬剤の投与量を精密に管理した場合,月に1 回に限り算定し,保険請求できる.特定薬剤治療管理料470点.(1 回目の特定薬剤治療管理料を算定すべき月に限り,所定点数に280 点を加算する.) • 本管理料には,薬剤の血中濃度測定,当該血中濃度測
定に係る採血及び測定結果に基づく投与量の管理に係る費用が含まれる. • 同一の患者につき特定薬剤治療管理料を算定すべき測
定及び計画的な治療管理を月2 回以上行った場合においては,特定薬剤治療管理料は1 回に限り算定することとし,第1 回の測定及び計画的な治療管理を行ったときに算定する. • 薬剤の血中濃度,治療計画の要点を診療録に記載す
る. • 管理料は,抗不整脈薬については患者に薬剤を継続的
に投与した場合,アミノ配糖体抗生物質については数日間以上投与している入院患者の場合に算定できる. • 心疾患患者であってジギタリス製剤*1 を投与してい
るもの. • ジギタリス製剤の急速飽和を行った場合,所定点数に
かかわらず,1 回に限り740 点を特定薬剤治療管理料として算定する(当該算定を行った月においては,別に特定薬剤治療管理料は算定できない).なお,急速飽和とは,重症うっ血性心不全の患者に対して2
日間程度のうちに数回にわたりジギタリス製剤を投与し,治療効果が得られる濃度にまで到達させることをいう. • 不整脈の患者に対して不整脈用剤を継続的に投与して
いるもの. • 特定薬剤治療管理料を算定できる不整脈用剤はプロカ
インアミド,N-アセチルプロカインアミド,ジソピラミド,キニジン,アプリンジン,リドカイン,ピルシカイニド塩酸塩,プロパフェノン,メキシレチン,フレカイニド,シベンゾリンコハク酸塩,ピルメノール,アミオダロン,ソタロール塩酸塩及びベプリジル塩酸塩である. • アミノ配糖体抗生物質*2,グリコペプチド系抗生物
質等を数日間以上投与している入院中の患者について,投与薬剤の血中濃度を測定し,その測定結果をもとに投与量を精密に管理した場合,月1 回に限り算定する. • 特定薬剤治療管理料を算定できるグリコペプチド系抗
生物質は,バンコマイシン及びテイコプラニンである. *1 ジゴキシン*2 アミカシン,アルベカシン,ゲンタマイシン,トブラマイシン
5 保険収載
p.11
III.各論
1 抗不整脈薬
CQ1抗不整脈薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?回答各患者に応じた適切な血中濃度治療域を確認する
ことは,至適用量の設定と副作用回避の助けになる.とくに服薬アドヒアランスの確認,効果が不十分な場合の用量再検討,血中濃度依存性の副作用の回避,薬物動態学的相互作用の確認と対応,患者の病態変化時や剤形変更時の治療評価に有用である.エビデンスレベルV 推奨グレードC1背景:抗不整脈薬は強力な薬理作用を有している反面,重篤な副作用もあり,安全域が狭い.腎排泄率の高い薬物は腎障害例や高齢者では血中濃度が上昇し,副作用が起こりやすい.薬物代謝酵素活性には個人差があり,肝代謝型薬物は同じ用量でも血中濃度に個人間変動が生じる.また,チトクロームP450(CYP)3A4 あるいはP-糖蛋白が吸収,代謝や排泄に関与する薬物はこれらの阻害薬あるいは誘導薬と併用すると血中濃度が変化する.解説:抗不整脈薬の血中濃度モニタリングを行うことには,抗不整脈薬治療の安全性を高める利点がある2).しかし,抗不整脈薬の血中濃度モニタリングを行うことで不整脈患者の臨床転帰が改善するか否かは不明である.抗不整脈薬の有効性評価のため,ルーチンに血中濃度を測定する必要はないかもしれない.また,対象となる不整脈やその臨床背景が異なれば同じ抗不整脈薬でも治療域は異なってくる.抗不整脈薬の血中濃度モニタリングの役割は,服薬アドヒアランスの確認,用量を増減する際のリスク・ベネフィットの評価,血中濃度依存性の副作用の回避,薬物動態学的相互作用の確認と対応,剤形や用量・用法の変更時,あるいは患者の病態変化時の治療評価などにある3, 4 ).日本の5 施設で行った調査では,4 施設でジゴキシンの血中濃度モニタリングが行われ(使用患者の17~35%),抗
不整脈薬の血中濃度モニタリングの頻度は1 施設を除いて低かった.最も測定頻度の高い抗不整脈薬はアミオダロンであった.血中濃度モニタリングを行っている施設と行っていない施設では,抗不整脈薬の平均用量が有意に異なっていた5).
薬物反応には年齢,性別,遺伝的差異,環境因子,食事,生活習慣,基礎疾患,併用薬との薬物相互作用など,さまざまな因子が影響する(図4)
6).この機序として薬物動
態の変化は無視できない.尿中未変化体排泄率の高い(腎排泄型)薬物は,腎機能の変化で容易に血中濃度が変わる.ピルシカイニド,ソタロール,ジゴキシン,シベンゾリンなどは腎排泄型薬物といえる.一方,肝消失型(肝代謝型)薬物は薬物代謝酵素活性の個人差に左右される.薬物によりその代謝様式は異なる.CYP にはいくつかの分子種があり,各薬物がどの酵素により代謝を受けるのかわかっている.また,併用する薬物によっては特定の代謝酵素の活性が低下したり(酵素阻害),高まったり(酵素誘導)することがあり,相互作用の原因ともなる(表2).b 遮断薬,アプリンジン,フレカイニド,メキシレチン,プロパフェノン,ベプリジルはおもにCYP2D6 で代謝を受け,アミオダロン,カルシウム拮抗薬,リドカイン,ジソピラミ
III .各論
1 抗不整脈薬
CQ1
心不全肝疾患炎症腎疾患その他の疾患人種差遺伝的差異
環境因子食事薬物相互作用
妊娠肥満年齢性別
薬物動態薬力学
薬物反応の個体間・個体内変動
アドヒアランスプラセボ効果
図4 薬物反応の個人差と影響する因子(Boobis AR, et al. 2003 6)より改変引用)
p.12
ドなどはおもにCYP3A4 で代謝される.CYP2D6 で代謝されるアプリンジンやプロパフェノン,ベプリジルは代謝能の飽和現象により,用量と血中濃度は非線形の関係にある. ● 各抗不整脈薬の薬物動態学的特徴
1 リドカイン
肝での初回通過効果が大きく消失半減期が短いこと
により,抗不整脈薬としては静注で用いる.ほとんどが肝で代謝を受け,肝血流量に大きく依存する.とくに心不全など刻々と病態が変化する際にはクリアランスが大きく変化する.また,蛋白結合率は70% でアルブミンやα1- 酸性糖蛋白に結合する.急性心筋梗塞時にはα1- 酸性糖蛋白が上昇し,蛋白結合が増加するためリドカインの遊離形が減少してその薬理効果が減弱し,より多くの用量を必要とすることがある.
2 メキシレチン
リドカイン類似物でありながら肝での初回通過効果
が小さいため,バイオアベイラビリティが83% と高く,経口投与が可能である.おもに肝臓で代謝を受けるが肝クリアランスは肝血流量には依存せず,肝固有クリアランスにより著しく影響を受ける(代謝能依存性薬物).
3 プロカインアミド
消失半減期が2~3 時間で,約60% は未変化体と
して腎から排泄され,約40% が肝でアセチル化を受け活性代謝物であるN-アセチルプロカインアミド(NAPA)となる.NAPA はプロカインアミドと同等の薬理活性を有し,腎から排泄される.消失半減期がプロカインアミドより長いため(6~10 時
間),薬物血中濃度モニタリングを行う際には両者を測定する必要がある.消失半減期が短いため,1日3~4 回の投与を必要とする.
4 ジソピラミド
約50% が未変化体として腎から排泄され,残りは
肝で代謝される.よって腎障害時には減量する必要がある.また,血中濃度が高くなるほど蛋白結合率が低くなる(濃度依存性)特徴を有する.このことから総濃度の上昇は小さくても遊離形の濃度が大きく上昇し,薬理効果が強く発現する可能性がある.
5 キニジン
吸収がよく,蛋白結合率が80~90% と高い.ほと
んどが肝代謝を受け,数種の代謝物になる.そのうち3 位水酸化(3-OH)キニジンはキニジンとほぼ同等の薬理活性を有している.腎機能障害時や心不全時にはキニジンのクリアランスが低下するため減量が必要となる.
6 プロパフェノン
おもに肝(CYP2D6)で代謝され,初回通過効果を
受ける.主要代謝物である5 位水酸化(5-OH)プロパフェノンは活性代謝物でプロパフェノンとほぼ同等なNa チャネル遮断作用(b 遮断作用は弱い)を有する.また,プロパフェノンの代謝には飽和現象があり,ある投与量以上ではプロパフェノン/ 5-OH プロパフェノンの比が1 を超える.
7 アプリンジン
バイオアベイラビリティは40% で,大部分が肝
表2 おもな抗不整脈薬の薬物代謝に関与するチトクロームP450(CYP) :代表的な基質,阻害薬,誘導薬
分子種基質阻害薬誘導薬CYP1A2プロプラノロール,メキシレチンメキシレチン,フルボキサミン喫煙
CYP2C9 S-ワルファリンアミオダロンリファンピシン,フェニトイン,フェノバルビタール,カルバマゼピン
CYP2D6アプリンジン,フレカイニド,メキシレチン,リドカイン,プロパフェノン,ベプリジル,プロプラノロール,メトプロロール,カルベジロールアミオダロン,キニジン,プロパフェノン,パロキセチンシメチジン,デュロキセチン
CYP3A4ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬,アミオダロン,キニジン,ジソピラミド,リドカイン,ベプリジル,ジルチアゼム,ベラパミルアミオダロン,ジルチアゼム,エリスロマイシン,クラリスロマイシン,アゾール系抗真菌薬,シメチジン,グレープフルーツジュースリファンピシン,フェニトイン,フェノバルビタール,カルバマゼピン赤字は抗不整脈薬.
p.13
(CYP2D6)で代謝される.主要代謝物はハイドロ
キシアプリンジンとデスエチルアプリンジンであり,後者は薬理活性を有するが,血中ではほとんど検出されない.
8 シベンゾリン
バイオアベイラビリティは83~92% と消化管吸収
がよく,尿中未変化体排泄率は約60% と高い.
9 ピルメノール
バイオアベイラビリティが82% とよく,尿中未変
化体排泄率は20~30% で残りは肝代謝を受ける.主要代謝物はM-2 であり,ピルメノールと同等の薬理活性を有しているが,消失半減期が短く,M-2 の血中濃度はピルメノールの10 分の1 以下であり,薬理効果に影響はない.
10 フレカイニド
尿中未変化体排泄率は約40% であり,残りが肝代
謝を受け不活性化する.おもにCYP2D6 で代謝される.
11 ピルシカイニド
尿中未変化体排泄率が75~86% とそのほとんどが
腎排泄であり,おもに糸球体濾過と尿細管(カチオン輸送系)分泌を介している.消失半減期は4~5時間と短く,作用時間も短い.
12 ソタロール
ラセミ体でl-ソタロールはd-ソタロールよりb 遮
断作用(非選択的)が強い.しかし,K チャネル遮断作用はl-ソタロールおよびd-ソタロールとも同等である.ソタロールのK チャネル遮断作用は用量・血中濃度依存性に認められるが,b 遮断作用はKチャネル遮断作用と異なり低血中濃度でも認められる.
13 アミオダロン
バイオアベイラビリティが31~65% と低い.さら
に脂肪への分布が著明で分布容積が106 L/kg と大きく,消失半減期が14~107 日と長い特徴がある.この薬物動態の特性から定常状態により速く達するため,臨床効果の早期発現を期待する目的からアミオダロンでは初期負荷投与を行うとの考え方がある.活性代謝物であるデスエチルアミオダロンもアミオダロンと同等の薬理活性を有する.
14 ベプリジル
肝での初回通過効果を受け,バイオアベイラビリ
ティは約60% である.蛋白結合率が99% と高く,完全に肝代謝(CYP2D6,CYP3A4)を受け消失半減期(b 相)が長い.定常状態に達するのに約3 週
間を要する.また,連続投与後の消失半減期は約80 時間まで延長する.
15 ジゴキシン
治療域と中毒(副作用)域が接しており,血中濃度
あるいは生体・病態の変化で副作用(ジギタリス中毒)が発現する.尿中未変化体排泄率が70% と高く,消失半減期が36~48 時間と長い特徴がある.また,骨格筋に分布し分布容積が4~7 L/kg と大きいことから,血液透析では除去されない.
CQ2抗不整脈薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことにより副作用は減少しますか?回答血中濃度モニタリングを行うことで催不整脈作用
を含めた副作用が減少するかどうかは不明である.ただし,治療域を超える血中濃度になると副作用の頻度が高まるため,血中濃度モニタリングは安全性の面から有用である.エビデンスレベルIVb 推奨グレードC1背景:ジゴキシンをはじめ,いくつかの抗不整脈薬では心外性副作用が高血中濃度で発現することが知られている.病態の変化で急激に血中濃度が変化する.解説:血中濃度値の情報は,薬物が副作用の原因となっているのか,あるいは副作用発現のリスクに注意しなければならないレベルにあるのか,といった臨床判断の助けになる.血中濃度依存性の副作用については,血中濃度モニタリングを行うことで発現を予防できる可能性がある.ジゴキシンの用量設定を血中濃度に基づいて行うことでジギタリス中毒が減少すると報告されている7, 8).I 群抗不整脈薬およびアミオダロンについては,血中濃度が高くなると副作用の発現頻度が高いこと3)から,血中濃度モニタリングは副作用回避に役立つ. CQ3抗不整脈薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことにより至適な用量・用法が得られるまでの時間は短縮しますか?回答血中濃度値に基づいて抗不整脈薬の用量設定を行
うことは,目標とする治療域に血中濃度を維持するのに役立つかもしれないが,血中濃度値のみでは効果を評価できない.このため,より早く適切な用量・用法を得られるかどうかは不明である.
CQ2
CQ3
p.14
エビデンスレベルVI 推奨グレードC2背景:患者の薬物血中濃度値を用い,薬物動態学的解析からある濃度域に入るよう用量・用法を推定(投与設計)することは可能である.解説:抗不整脈薬の効果は,血中濃度値のみで予測できるものではない4).抗不整脈薬の用量や用法は患者の自他覚症状,心電図所見,運動負荷試験などの情報を含めた抗不整脈薬への反応から総合的に判断すべきである.単に血中濃度が治療域に入るよう用量を設定することは勧められない.これは,血中濃度モニタリングをTDM に用いている免疫抑制薬や抗菌薬など,他の薬物と異なる点である. HTU1抗不整脈薬の血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか? HTU2服薬後の経過時間と血中濃度値からピーク値とトラフ値の予測は可能でしょうか?回答一般に,血中濃度推移が定常状態に達している段
階で採血を行う.また,効果と副作用を確認するために通常はトラフ(次回投与の直前)に採血する.ピークの血中濃度が副作用に関係している薬物の場合には,ピーク付近の濃度も測定することがある.
母集団薬物動態(PPK)解析を用いたシミュレーションが可能な場合,一時点の血中濃度から濃度推定はできるが,実際に採血された時点以外の濃度予測には限界がある.解説:定常状態とは1 日における薬物投与量と消失量が釣り合った状態であり,この状態において,薬物濃度は一定に保たれる.薬物の初回投与後あるいは用法・用量変更後,薬物投与を繰り返すことによって血中濃度は定常状態に達するようになる.定常状態に達するまでの時間は薬物消失半減期によって決まる.すなわち,消失半減期の3 倍の時間が経過すれば血中濃度は定常状態の約88% まで,消失半減期の5 倍ならば定常状態の約97% までに達する.
また,「II. 4. 薬物動態解析の方法」(11ページを参照)に記したように,トラフ値はクリアランスに影響されやすい.定常状態における投与設計に用いる薬物動態パラメータはクリアランスであることから,それを精度よく推定するためにトラフでの採血が重要となる.
同じく「II. 4. 薬物動態解析の方法」に記したように, PPK パラメータおよび最低一時点の濃度データを用ると,ベイズ解析によって当該患者の薬物動態パラメータを算出でき,濃度のシミュレーションも可能となる.すなわち,この手法を用いれば,原理的にはトラフの濃度データ1 点からピーク値を予測(あるいはその逆)することが可能となる.ただし,実際に測定された時点以外の予測(トラフ
値のみを用いてピーク値を予測する,など)は精度がよくないことを忘れてはならない.
なお,定常状態で採血を行うことの利点は濃度予測の精度がよいことである.定常状態に達する前の時点で採血した濃度を用いてもベイズ解析の手法で予測することは可能であるが,精度は定常状態の場合に比して劣る.もちろん,効果もしくは副作用のモニタリングのため早期に薬物濃度を確認する必要がある場合には,定常状態に達する前に採血を行うこともある. HTU3どのようなときに血中濃度を測定すればよいのでしょうか?回答血中濃度測定の目的は,個々の患者に副作用を未
然に防ぎながら最大の効果が得られる投与量・投与間隔・投与方法を設定することにある.よって,以下のような臨床背景が存在する場合に有効で意義は大きいと考えられる. 1) 薬物の投与量が適切であるか否かの判断が必要なとき
a. 十分な投与量であるはずなのに治療効果がみられな
い場合b. 投与量と効果とのあいだに良好な関係がみられない
場合2) 服薬不履行が疑われるとき3) 中毒や副作用が疑われるとき
a. 多剤併用治療時において,過剰投与により中毒症状
が起こり原因薬物の追究が必要になった場合b. 薬物による中毒あるいは副作用なのか,病気による
症状なのか判断が困難な場合4) 投与量を変更していないにもかかわらず,血中濃度が
大きく変動するときa. 生理学的あるいは病気による体内動態の変化が予
想される場合b. 薬物相互作用が予想される場合5) 投与剤形や投与方法を変更したときなどがあげられる.
1.1 I 群抗不整脈薬
HTU4 I 群抗不整脈薬の中毒(副作用)域を教えてください.回答血中濃度依存性の中毒(副作用)域は副作用の種類により大きく異なるため,一律に決めることは
HTU1
HTU2 HTU3
HTU4
p.15
難しい.解説:I 群抗不整脈薬の治療域濃度は治験データにより設定される場合が多く,市販後の臨床調査に基づくものは少ない.中毒(副作用)域においても同様である.
I 群抗不整脈薬の中毒(副作用)域に関する臨床報告はいくつかあるが,副作用の種類によりその中毒(副作用)域は異なる.また,エビデンスレベルはすべて高いとはいえない.一方,中毒(副作用)域に関して,心電図異常や催不整脈作用などには,電解質や遺伝的要因など抗不整脈薬の濃度以外の要素も関連するため,血中濃度だけでは決められない.ただし心外性副作用は組織中濃度と相関性があると考えられ,血中濃度との関係を検討した研究もある.たとえばシベンゾリンによる低血糖は,シベンゾリンの血中濃度に依存して発現する9–11)が,トラフ値が400 ng/mL以下であれば空腹時血糖値が70 mg/mL 以下となる可能性は低いとされる12, 13).また,ジソピラミドの抗コリン作用による排尿困難などの副作用は,ジソピラミドの代謝物であるN-デアルキルジソピラミド(NMD)に起因するところが大きく,NMD 濃度依存的に発現する14).抗不整脈薬の体内動態については「4. 各薬の薬物動態一覧」(42ページ)を参照されたい. HTU5抗不整脈薬の血中濃度依存性の副作用にはどのようなものがありますか?回答血中濃度が高いほうが副作用の発現頻度が高いと
いうことはいえるが,心電図異常,催不整脈作用,陰性変力作用などは血中濃度だけで評価できない.心外性副作用は,比較的血中濃度依存性である.解説:抗不整脈薬による副作用は,心臓への影響と心臓以外への影響に大別される.前者には心電図異常,催不整脈作用,陰性変力作用などがあり,必ずしも血中濃度に依存しない.抗不整脈薬の作用機序により心臓に及ぼす副作用は異なるが,電解質濃度や遺伝子変異などの要素も加わるため,抗不整脈薬の血中濃度だけでは評価できない.たとえばVaughan Williams 分類のIa 群,Ic 群の薬物では血中濃度が高い場合,過度のNa チャネル抑制による心機能低下を引き起こす場合がある.一方,心外性副作用は比較的血中濃度に依存する.アプリンジン,シベンゾリン,ジソピラミドなどによる心外性副作用と血中濃度の関係を検討した報告がある.たとえばアプリンジンによる中枢系の副作用の発現頻度は血中濃度依存的に上昇し,1~1.25 μg/mL では約40% に発現するとされる.1 μg/ mL 以下では頻度は非常に低く,0.75 μg/mL ではほとんど発現しない15). HTU6
活性代謝物はどのように考えたらよいのでしょうか?回答代謝消失型薬物では,肝代謝により薬理学的に活
性のある代謝物が生じることがある.その場合,効果と副作用は親薬物のみでなく活性代謝物にも関係する.とくに,活性代謝物の血中濃度が高い場合には注意が必要で,親薬物のみでなく活性代謝物も薬物血中濃度モニタリングの対象となることがある.解説:投与された抗不整脈薬プロカインアミドの20% は, N-アセチル化転移酵素(NAT)により代謝されて抗不整脈作用をもつN-アセチルプロカインアミド(NAPA,活性代謝物)に変換される.NAT には遺伝子多形による個人差があり,NAPA 自体は腎消失型薬物なので,NAT 活性が高くかつ腎障害を有する患者ではNAPA 血中濃度がプロカインアミドより高くなることもある.プロカインアミドの血中濃度が低いにもかかわらず副作用がある場合などに,NAPA を測定する意義がある.プロカインアミドの治療域は4~10 μg/mL と考え,NAPA の治療域は7~15 μg/mL とされている.また,かつては両者の合計濃度5~ 30 μg/mL を治療域とする意見もあった16).しかし,最近では,電気生理学的作用において前者がクラスIc,後者はクラスIII と異なるので,患者の抗不整脈効果を単純に両者の合計濃度で評価することは困難であるとする意見が強い16a).また,プロパフェノンの活性代謝物である5-OHプロパフェノンにはプロパフェノンとほぼ同等な抗不整脈作用があるが,b 受容体遮断作用はプロパフェノンより弱いことが知られている.5-OH プロパフェノンの測定意義については確立していない16a).
1.2 II 群抗不整脈薬
CQ4 β 遮断薬を使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?
回答b 遮断薬の抗不整脈効果をその血中濃度値から予
測することは困難である.心臓における反応性および抗不整脈効果を評価するには,不整脈の有無や心拍数を含めた心電図によるモニタリングが有用である.血中濃度モニタリングがそれを上回るというエビデンスはない.エビデンスレベルVI 推奨グレードC2背景:現在,コマーシャルベースで血中濃度の測定が可能なb遮断薬はプロプラノロールのみである.プロプラノロールは脂溶性が高く,ほぼすべてが肝代謝を受ける
HTU5 HTU6
CQ4
p.16
(CYP1A2, CYP2D6).その処理速度は非常に速く,クリアランスは16 mL/min/kg に達する17).さらに初回通過効果が大きく,バイオアベイラビリティは約30% と低い18).このため,静脈内投与量と経口投与量との差が大きく,経口投与時には血中濃度の個人差も大きい.b遮断薬のほとんどは光学異性体を有しており,b遮断作用(b受容体への結合性)や代謝過程は異性体によって異なる.プロプラノロールは異性体としてS 体とR 体を有し(活性はS体がR 体の100 倍以上高い),代謝酵素の選択性が異なる19).しかし,異性体の血中濃度測定は一般に行われていない.一方,b遮断薬の抗不整脈作用には標的となる不整脈の種類や機序,不整脈基質,基礎疾患,交感神経活性の違い,b受容体への選択性や親和性などが関与する.血中濃度値で抗不整脈薬効果や副作用を予測することは困難である.b1 受容体の反応性を総合的に評価するのであれば,心拍数をモニタリングすることが適している.解説:心臓の刺激伝導系細胞や心筋細胞に対する交感神経刺激はおもにb1 受容体を介しているため,その作用はb1受容体による心拍数上昇として最も敏感に現れることが多い.洞結節の機能が障害されている場合は,さらに下位の刺激伝導系や固有心筋からの自動能亢進所見として観察される情報(接合部調律の増加や心室起源の調律の増加など)が参考になるので,心電図所見が役に立つ.ただし,洞不全症候群や房室ブロックなど刺激伝導系に異常を有する患者では,b 遮断薬に対する反応が異なるため除外する必要がある.
b 遮断薬の抗不整脈効果を予測する指標として,血中濃度が臨床的に有用であるという十分なエビデンスはない. b 遮断薬の作用は用量依存性であることが多いが,ごく少量でも有効な患者がいる一方で,副作用が発生しても薬物反応は不十分な患者もいることから考えて,血中濃度測定の意義は小さいと考えられる.実際,プロプラノロールは多くが蛋白結合し,分布容積は大きく(4 L/kg),かつその分布・代謝・活性のそれぞれにおいて異性体特異性による違いが大きく,複雑である19, 20).
プロプラノロールは非選択性b 遮断薬に分類され,心筋に多く分布するb1 受容体以外に,血管平滑筋や気管支平滑筋に多く分布するb 2 受容体なども遮断するので,閉塞性動脈硬化症などの患者での末梢血管収縮による血流障害や,気管支喘息患者での気管支攣縮に伴う換気不全(気管支喘息発作の悪化)などの副作用が危惧される.そのため,近年ではb1 選択性の高いb 遮断薬であるビソプロロールが好んで使用される.ビソプロロールは,バイオアベイラビリティが80% 程度と高く,血中濃度が用量依存性であることから,効果あるいは副作用の指標としての血中濃度測定の意義は小さい.
副作用予防のためにb 遮断薬の血中濃度を測定する意義についての十分なエビデンスはない.最も多い副作用として徐脈があるが,心電図や脈拍数の観察で十分である.心抑制については,心不全症状や徴候の有無,胸部X 線や血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)値,心臓超音波検査などの情報から判断できる.b遮断薬の血中濃度を測定することでこれらの指標に比して副作用の予測性が高くなるというエビデンスはない.
ランジオロールのように消失半減期がきわめて短い薬物の場合は持続静注での使用となるが,心拍数や血圧などの臨床指標に応じた用量調節を行う.心臓への薬物の分布や親和性を考慮しても,血中濃度測定の有用性がそれらを上回るとは考えにくい.
1.3 III 群抗不整脈薬
CQ5アミオダロンを使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?回答血中濃度値から抗不整脈効果の予測はできない
が,用量や剤形の変更,服薬アドヒアランスの確認には有用である.また,個人内では効果と血中濃度に関係が得られることがある.エビデンスレベルV 推奨グレードC1背景:アミオダロンの経口薬はバイオアベイラビリティが31~65% と低く,消化管吸収が不完全である.アミオダロンは脂溶性が高く,脂肪への分布が著明で分布容積が106 L/kg と大きく,消失半減期が14~107 日と長い特徴がある21–23).このため,用量が同じでも血中濃度の個人差が大きい.また,血中濃度から心臓への分布を予測することは難しい.解説:アミオダロンの血中濃度値と抗不整脈効果との関係を示したデータはない.また,アミオダロンを使用する対象不整脈は上室性から心室性不整脈までと広く,その背景となる基礎心疾患もさまざまで,心機能も正常から低心機能まで幅広い.さらにb 遮断薬などとの併用例も多く,抗不整脈効果は単純にアミオダロンだけが寄与しているわけではない.
1980 年代の米国からの報告では,その薬理効果を得るには少なくとも1~2 μg/mL の血中濃度が必要とされていた24).しかし,近年欧米でもアミオダロン経口薬は低用量化しており,治療域濃度も低くなっていると考えられる.日本での報告によると,長期治療中の血中濃度(平
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均±標準偏差)はアミオダロンが0.64 ± 0.38 μg/mL,デスエチルアミオダロンが0.53 ± 0.28 μg/mL であった25).不整脈発現時あるいは再発時,新たな症状や徴候あるいは検査値の異常がみられたとき,投与法あるいは剤形を変更したとき(静注薬⇌経口薬,先発品⇌ジェネリックなど),服薬アドヒアランスの確認をするために血中濃度値を知ることは投与設計の助けとなる. CQ6アミオダロンを使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことにより心外性副作用は減少しますか?回答血中濃度モニタリングを行うことで心外性副作用
が減少するかどうかは不明である.ただし,濃度依存性の副作用(神経系,消化器系,肺)の判断あるいは予防には役立つかもしれない.エビデンスレベルV 推奨グレードC1背景:アミオダロンの用量が多いと心外性副作用の頻度が高まるとされる.しかし,心外性副作用のなかでも甲状腺機能障害や肺毒性には必ずしも用量依存性の関係はなく,薬物の組織蓄積性やアレルギー機序も指摘されている.解説:血中濃度が2.5~4 μg/mL 以上になると神経系や消化器系の副作用が発現してくるという報告がある26–28).肺毒性については慢性期の高用量や高血中濃度との関連を示唆する報告もあるが,その詳細な臨床データはない24).日本では欧米に比し低用量で用いられており,通常の治療中に血中濃度が2.0 μg/mL を超えることはまずない.このため,濃度依存性とされる肝,神経,皮膚に関する副作用の頻度は欧米に比し低い.ただし,低用量治療であっても,甲状腺機能障害や肺毒性は発現する.日本人でのアミオダロン肺毒性発現の要因を検討した報告では,年齢,維持量,デスエチルアミオダロン血中濃度が有意であり,低用量であってもデスエチルアミオダロン血中濃度が0.6 μg/mL 以上になると,肺毒性のリスクが高まる29). HTU7アミオダロンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答経口薬導入開始初期はトラフ値が望ましい.しか
し,長期投与例の外来診療における採血のタイミングはトラフ値でなくてもよい.解説:経口薬導入開始初期はアミオダロン濃度が服薬後経時的に変化するため,トラフ値が望ましい.しかし,長期投与になるとその変動幅が小さくなるため,外来診療における採血のタイミングはトラフ値にこだわらなくてもよい.経口投与開始後には,脂肪組織に分布して,徐々に蓄積さ
れていくため,用量が一定でも血中濃度は徐々に上昇してくる.定常状態になるまでには6~9 か月を要する.一方,長期治療中に用量を変えると定常状態になるまで3 か月程度を要する.このような薬物動態の特徴を参考に採血時期を考慮する.なお,半減期が長いため,投与中止後もアミオダロンの効果(相互作用や副作用も含め)が残存する場合,血中濃度の確認が治療の助けになることもある. HTU8アミオダロン持続静注時に血中濃度モニタリングは必要でしょうか?回答必ずしも必要ではない.ただし,静注から経口薬
への切り替え時には,血中濃度 の確認が有用なこともある.解説:静注時には血管内に直接薬物が入るため,用量依存性に血中濃度は高値となる.単回静注後の消失半減期(α相)は短く,血中濃度は速やかに低下する.持続静注開始直後には,循環血液中に入ったアミオダロンが血管外組織,とくに脂肪へ取り込まれるため,用量が一定でも血中濃度は低下し,安定するまで半日ほどかかる.この時期は血中濃度が高値でも十分心臓へ分布しているとは限らない30, 31).静注は緊急治療が目的であり,効果をみながら用量を設定する.効果が安定し,経口薬に変更すると,用量やバイオアベイラビリティが低下するため,血中濃度も低下する30).静注の総投与量(期間)が体内の蓄積にとくに影響するため,経口薬移行後に血中濃度が治療域にあるのかどうかを確認することは,抗不整脈効果の維持と投与設計に有用かもしれない. HTU9デスエチルアミオダロン濃度は効果や安全性の指標になるのでしょうか?
回答デスエチルアミオダロンは活性代謝物であるた
め,アミオダロンと同様に血中濃度は効果や安全性の指標となる可能性がある.解説:活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはアミオダロンと同等の薬理活性を有し32),消失半減期はアミオダロンよりやや長い23, 24).アミオダロンの臨床効果にはデスエチルアミオダロンも影響するといわれ,その動態を知ることはアミオダロンの効果を判断する情報の一つになるかもしれない.一方,肺毒性はデスエチルアミオダロンのほうがアミオダロンより強いという実験結果があり33),肺毒性の発現と血中デスエチルアミオダロン濃度に関係があるという報告もある29).なお,アミオダロン治療(持続静注
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あるいは経口薬連続投与)開始後には,数日を経てデスエチルアミオダロンが血中で検出されるようになる.さらにアミオダロンおよびデスエチルアミオダロンの濃度が血中と組織(心臓)のあいだで平衡になるには時間を要する34).脂肪の多い器官や組織ではアミオダロンのほうがデスエチルアミオダロンより組織内濃度が高く,脂肪の少ない心臓などではアミオダロンよりデスエチルアミオダロンのほうが組織内濃度が高い35–38). CQ7ソタロールを使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?
回答血中濃度値から抗不整脈効果を推定することは困
難と考えられる.ソタロールはb 遮断作用とKチャネル遮断作用を有することから,心電図による心拍数とQT 間隔が薬物反応・副作用防止を評価するための指標となる.血中濃度モニタリングがそれを上回るというエビデンスはない.エビデンスレベルVI 推奨グレードC2背景:b 遮断薬として開発が始まったソタロールはIII 群薬としての特徴を併せ持つことから,抗不整脈薬としての地位が確立した39).ソタロールは水溶性で,b 遮断薬としては非選択性,b1,b2 などの受容体遮断作用を有する.また,ソタロールはラセミ体で,鏡像異性体であるl-ソタロールはd-ソタロールよりb 遮断作用(非選択的)が強いが,K チャネル遮断作用(IKr 遮断作用)は同等である. d -ソタロールは純粋なK チャネル遮断作用によるQT 延長のリスクが高いため,異性体としての開発は中止となった.解説:基本的特徴はb 遮断薬としての作用と,III 群薬(Kチャネル遮断薬)としての作用を併せ持っている.薬物反応を血中濃度測定で予想できるとするエビデンスは乏しく,臨床的印象からも,患者によって有効な用量が大きく異なるとする意見が多い(「1.2 II 群抗不整脈薬」[17ページ]も参照).ソタロールのK チャネル遮断作用は用量・血中濃度依存性に認められるが,b 遮断作用はK チャネル遮断作用と異なり低用量・低血中濃度でも認められる40).
b 遮断薬としての評価に際しては「1.2 II 群抗不整脈薬」で述べたとおり,心拍数が参考となる.
III 群薬としての評価に際してはQT 時間の測定が参考となる.よって,いずれにせよ心電図によるモニタリングが有用である.血中濃度と効果の関連を検討した報告は少ない.17 例の頻発性心室期外収縮患者を対象とした検討では,ソタロールの抑制効果(70~100% 抑制)が認められた治療域濃度は0.34~3.44 μg/mL と広く,2.55 μg/mL 以上で有意なQTc 延長が認められたと報告されている40).し
かし,ソタロールの適応とされている心室頻拍・細動,あるいは心房細動(適応外)に対する治療域濃度は定まっていない.
鏡像異性体(d -ソタロール,l -ソタロール)は薬物動態学的に異なる特徴を示すことが多く,その意味では薬物血中濃度を別々に測定することに意義が見いだされる可能性は否定できない.しかし,ソタロールにおいて心電図による評価に比べ(ラセミ体として)血中濃度測定の有用性のほうが高いという臨床的意義は認められていない.なお, b 遮断作用(心拍数減少)やIII 群薬作用(QT 延長)といった薬力学的作用(薬物反応)が異なることには留意しておく必要がある.異性体(d-ソタロール)の血中濃度モニタリングの有用性の検討は,今後の課題である41). HTU10ソタロールの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答ソタロールは3 時間程度で最高血中濃度に達し, 7~11 時間の消失半減期を有する経口薬で,1 日2 回投与が原則である42).ソタロールは蛋白結合率が低く,分布容積が小さく,腎排泄率が高いことから,その薬物動態はシンプルである.そのためトラフでの採血が望ましいが,消失相での採血であっても服薬時間と採血時間との関係を考慮すれば,参考になると思われる.
1.4 IV 群抗不整脈薬(ベプリジル)
CQ8ベプリジルを使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?回答ベプリジルは高血中濃度になるとQT 延長に伴う
多形性心室頻拍(torsades de pointes)のリスクが生じる.血中濃度値から抗不整脈効果の予測はできないが,用量の変更や服薬アドヒアランスの確認には有用である.また,個人内では効果と血中濃度値に関連が得られることがある.エビデンスレベルV 推奨グレードC1背景:ベプリジルは薬物動態が複雑で消失半減期が長く,同じ用量でも血中濃度の個人差が大きい.べプリジルは日本でのみ抗不整脈薬として使用されているが,QT 延長に伴う多形性心室頻拍(torsades de pointes)のリスクが高い.解説:ベプリジルは肝での初回通過効果を受け,バイオアベイラビリティは約60% である.蛋白結合率が99% と高
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HTU10
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く,完全に肝代謝(CYP2D6,CYP3A4)を受け消失半減期(b 相)が長い43, 44).200 mg/日 分2 で定常状態に達するのに約3 週間を要する.また,連続投与後の消失半減期は約80 時間まで延長する44).CYP2D6 の代謝能の飽和現象により,用量と血中濃度には非線形の関係が認められる.
日本人における血中濃度と抗不整脈効果や安全性に関する報告がされている.とくにベプリジル使用においてQT延長に伴う多形性心室頻拍(torsades de pointes)出現は致死性となるため,QT 延長と血中濃度の関係について多くの検討が行われ,高血中濃度がリスクとなることが示された45–49).ベプリジルの治療域濃度は250~800 ng/mLとされ,800 ng/mL を超えるとQT 延長のリスクが生じる48).また,そのクリアランスは低体重や加齢とともに低下する50, 51).
このため,ベプリジルは,同じ用量であっても個人あるいは投与期間により血中濃度は異なることから,安全性の評価を目的とした血中濃度測定には意義がある. HTU11ベプリジルの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答基本的に定常状態で測定を行う.投与開始から定
常状態に達するまでの期間の目安は3 週間程度であるため,採血のタイミングは,その時点でのトラフ値が望ましい.しかし血中濃度の推移は非線形性を示すため,定常状態に達するには,より長い時間がかかる場合もある.リスクの高い患者の場合や副作用が疑われる場合などには,定常状態に達していなくても血中濃度を測定することが勧められる.背景:ベプリジルの体内動態は分布容積が大きく,消失半減期が非常に長く,非線形性を示す.かつ個体間変動が大きいため,採血のタイミングが非常に難しい薬物の一つである.過度なQT 延長やtorsades de pointes などの重篤な副作用は,血中濃度が高いと発現しやすくなる.したがって,安全性の面から血中濃度のモニタリングは重要である.解説:ベプリジルは,腎からの未変化体での排泄がほとんどなく,体内からの消失は肝での代謝(CYP2D6,CYP3A4)による.代謝における個人差が大きいだけでなく,代謝速度が遅く,かつCYP2D6 代謝における過程に飽和現象がみられる(非線形性).また,分布容積が非常に大きく,血中から組織中への移行には長時間かかることなどから,採血の時期・時間には十分な考慮が必要である52).連続投与時の血中濃度が治療域にあるかどうかを判断するためには,基本的に定常状態での測定を行う必要があるが,ベプリジルの場合,投与開始から定常状態に達するまでの期間は非常に長い.その目安は3 週間程度であるが,投与量と
血中濃度に非線形の関係があることから,より長い時間がかかる場合もある.このため,長期使用では初回のみならず複数回で評価することが勧められる.採血は消失相で行うことが推奨されるが,ベプリジルは消失相に至るまでの所要時間が長いため,投与直前(トラフ)に採血を行うことが望ましい.ただし,連続投与(定常状態)ではトラフ値とピーク値の差が小さく,安全性評価という意義が大きいため,必ずしもトラフ値にこだわる必要はない.治療域濃度は250~800 ng/mL が指標となる45, 47, 48).一方,副作用の発現リスクが高い場合や副作用が疑われる場合などには,定常状態に達していなくても血中濃度を測定することが勧められる.その際はトラフ値にこだわる必要はない.血中濃度が800 ng/mL 以上になった場合は,QT 間隔を含めた心電図所見も考慮し,投与量について減量の可能性を含めて慎重に判断する.ベプリジルの母集団解析に基づく血中濃度の考え方も参考になる50, 51).
1.5 強心薬(ジゴキシン)
CQ9ジゴキシンを使用している不整脈患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?
回答ジギタリス中毒の発現を減少させる可能性があ
り,有用である.ただし,血中濃度値の解釈には服薬した時間と採血した時間が重要で,適切なタイミングで採血を行うことが求められる.エビデンスレベルIVb 推奨グレードB背景:ジゴキシンでは,心外性副作用が高血中濃度で発現することが知られている.ジゴキシンは分布容積が大きく,腎排泄率が高いことから,腎機能を含めた病態の変化により血中濃度が変化する.さらに不整脈治療のうえで併用する機会があるベラパミル,アミオダロン,キニジンとは薬物動態学的相互作用があることが知られている.解説:ジゴキシン治療での問題はジギタリス中毒である(表3)
53, 54).高血中濃度はジギタリス中毒の危険因子になることが報告されている54–56).確かに,ジギタリス中毒発現には高血中濃度のみならずさまざまな因子(年齢,腎機能,電解質など)が影響し,必ずしも血中濃度のみで規定されるものではない57).さらにジゴキシンの血中濃度は治療域と中毒(副作用)域が重なることも知られている57).しかし,高血中濃度はジギタリス中毒の重要な危険因子の一つであることは事実であり,ジゴキシン治療において血中濃度を測定し用量調整を行えばジギタリス中毒を減少さ
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せることが示されてきた7, 8, 58–60).ジゴキシンは腎排泄率が高いことから,腎機能が低下すると血中濃度が上昇する.また,抗不整脈薬であるキニジン,アミオダロン,ベラパミルとジゴキシンを併用すると,尿細管からのP- 糖蛋白を介したジゴキシンの排泄が障害され,血中濃度が上昇する61).他方,治療効果が十分得られない場合には,血中濃度値を確認することで,増量の必要性あるいは服薬アドヒアランスの問題などを検討するための情報となる.
なお,血中濃度値の評価にあたっては,適切なタイミングで採血を行う必要がある.臨床で実際に行われたジゴキシン血中濃度測定の半数が不適切な条件(血中濃度測定の目的が明確でない,定常状態に達していない,服薬後6時間以内,など)で行われており,血中濃度値が治療域から外れていても評価ができないという実態が報告されている62–64).この問題はとくに入院患者やルーチンで行われた採血時に多いということも指摘されている63, 64).
不整脈治療としてジゴキシンが用いられるのは,心房細動の心拍数コントロールを目的とした場合が最も多い.心房細動での心拍数が安定し,ジギタリス中毒を示唆する症状もない患者に対して,ルーチンで血中濃度をモニタリングする妥当性はない65).また,ジゴキシン使用中の心房細動患者に対する血中濃度モニタリングの費用対効果に関する報告はない66). CQ10ジゴキシンを使用している心不全患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?回答ジゴキシン治療に伴う副作用を減少させる可能性
があり,有用である.ただし,血中濃度値の解釈には服薬した時間と採血した時間が重要で,適切な時期に適切なタイミングで採血を行うことが求められる.エビデンスレベルIVb 推奨グレードB背景:心不全に対するジゴキシンの役割は心不全症状や徴候を改善し,心不全入院を減らすことにある67).ジゴキシンの心外性副作用(ジギタリス中毒)は高血中濃度で発現することが知られている.また,心外性副作用(ジギタリス中毒)には心室性あるいは上室性不整脈,洞ブロックや房室ブロックなどのさまざまな不整脈があり,高血中濃度のみならず治療域の血中濃度でも出現することがある68).ジゴキシンは分布容積が大きく,腎排泄率が高いことから,腎機能を含めた病態の変化により血中濃度が変化する.解説:ジゴキシンには血中濃度依存性の副作用があり,血中濃度値がジギタリス中毒の予知因子になると報告されている55, 56).洞調律で低心機能(左室駆出率45% 以下)の慢性心不全患者を対象にジゴキシンの有用性を検討したDIG (Digitalis Investigation Group)trial 69)のpost-hoc 解析において,男性では血中濃度と死亡率に関連があり, 0.5~0.8 ng/mL 群でのみプラセボ群と比較して死亡率が有意に低く,1.2 ng/mL 以上の群では死亡率が有意に高かったことが報告された70).しかし,本研究ではジゴキシンの効果に性差が認められ,女性では総死亡が増加し71),血中濃度と死亡率について一定の関係はあるものの,男性のように低濃度域(0.5~0.9 ng/mL)での死亡に関する優位性は示されなかった72).ただし,複合エンドポイント(死亡および心不全入院)については女性でも低濃度域(0.5~
0.9 ng/mL)での優位性が示された72).一方,低心機能
(左室駆出率35% 以下)の心不全患者を対象としたPROVED(Prospective Randomized study Of Ventricular failure and Efficacy of Digoxin)
73)とRADIANCE(Random-
ized Assessment of Digoxin on Inhibitors of ANgioten-
CQ10
表3 ジギタリス中毒の症状と徴候
1.心臓障害(心毒性)
自動能亢進,遅延後脱分極による不整脈心室期外収縮促進接合部調律単源性あるいは多源性の心室二段脈心室頻拍二方向性心室頻拍伝導遅延あるいは不応期延長による不整脈心静止洞房ブロック1 度あるいは2 度(Wenckebach 型)房室ブロック,高度房室ブロックあるいは完全房室ブロックWPW 症候群の副伝導路を介した伝導亢進ブロックを伴った多源性あるいは発作性心房頻拍心室固有調律,房室解離2.消化器症状
食欲不振嘔気嘔吐下痢腹痛腸管虚血/ 梗塞3.中枢神経系
視覚障害(霧視,黄視)頭痛脱力(浮動性)めまい無気力錯乱精神障害(不安,うつ,せん妄,幻覚) 4.その他
女性化乳房血小板減少重度高カリウム血症WPW:Wolff-Parkinson-White (Eichhorn EJ, et al. 2002 54)より改変引用)
p.21
sin-Converting Enzyme)
74)のデータを後ろ向きに検討した
結果,ジゴキシン継続例ではジゴキシン中断例に比して有意に心不全増悪が少なく,その効果はどの血中濃度域(0.5~0.9 ng/mL,0.9~1.2 ng/mL,>1.2 ng/mL)でも差がなかった75).さらにDIG trial のなかでニューヨーク心臓協会(New York Heart Association; NYHA)心機能分類III~IV 度,左室駆出率25% 未満あるいは心胸比55%を超える高リスクの心不全患者に限ってみると,低血中濃度(0.5~0.9 ng/mL)および高血中濃度(≧1.0 ng/mL)においてもジゴキシンは心不全死と心不全入院を減少させた76).
現在,収縮不全の心不全患者の生命予後改善においては,b 遮断薬を中心とした基礎治療の有用性が確立している.DIG trial やPROVED,RADIANCE はb 遮断薬療法が確立する以前の試験であり,対象者のほとんどはb 遮断薬を併用しておらず,血中濃度の検討はすべてpost-hoc 解析であるという限界がある.ジゴキシン治療はb 遮断薬が使用できないか,それらの基礎治療を行っても症状の改善が乏しい中等度~重度心不全患者に限られるであろう77).また,その目的は生命予後の改善ではなく,心不全症状の改善および心不全入院の減少である.このため,心不全患者ではジゴキシン治療に伴う副作用を極力回避すべきであり,低血中濃度域に管理することが望まれる78).ジゴキシンの血中濃度モニタリングを行うことは,安全性確保のうえで有用であると考えられる. HTU12ジゴキシンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答定常状態のトラフ(服薬後12~24 時間)での採
血が勧められる.トラフでの採血が困難な場合は,消失相にあたる服薬後6 時間以降での採血が望ましい.なお,服薬後6 時間未満の場合は,その値の解釈には限界が
あり,評価できるのは濃度依存性の副作用あるいは服薬アドヒアランスに限られるかもしれない.解説:ジゴキシンは血中濃度と組織中濃度とが平衡に達するまでに時間がかかること,すなわち分布相(α 相)の時間が長いことが知られており,効果の指標となる血中濃度は消失相(b 相)で採血したものが適している.また,経口投与では最終服薬後6~8 時間程度経過しないとジゴキシンが十分心臓に分布せず,血中濃度は作用部位である心筋での薬物濃度を反映しないとされる.したがって,採血時期は次の服用直前(トラフ)が最も勧められ,日常診療でそれが困難な場合は服薬後6~8 時間以降が望ましい(図5)
79).採血時期は血中濃度が定常状態に達し
た時点(腎機能正常例の場合は服薬開始7 日以後,または用量変更後7 日以上経過した時点.腎機能障害がある場合は最低でも消失半減期×4 を超えた時点)が望ましい(図6)
79–83).なお,血中濃度依存性の副作用や効果増強が疑われる場合はこの限りでなく,その時点で採血して血中濃度値の評価を行う.
以上のように,血中濃度値の評価を行うためには適切なタイミングで採血を行う必要がある.採血のタイミングが不適切であると,血中濃度値の評価を誤ってしまうおそれがある62–64).日常診療で血中濃度を測定する際には,最終服薬時間と採血時間について確認しておくことが勧められる. ● ジゴキシン血中濃度採血の実際
1 定常状態での採血が望ましい.経口薬の新規導入時
または用量変更時には,腎機能正常例で開始7 日以後,腎機能低下例では最低でも消失半減期× 4 を超えた時点で行う.経口投与が困難で静注薬を用いて維持治療を継続する場合もこれに準じる.なお,静注薬で急速飽和を行った際は翌日にトラフ採血を行う.
HTU12
0
2.5
2 1.5
1 0.5
0 4 6 2 8 12 24
N.S. 有意差なし, *p<0.01 vs 24 時間値
mean±SE
投与後時間(hr)
血中ジゴキシン濃度(ng/mL)投与N.S.
図5 定常状態における血中ジゴキシン濃度の経時的変動(Miyashita H, et al. 1986 79)より改変引用)
p.22
2 入院患者では,原則として服薬前(トラフ)あるい
は最終服薬8 時間以降に採血を行う.
3 外来患者では,採血時間帯を考慮して採血を指示す
る.血中濃度モニタリングの事前説明を行い,採血当日のジゴキシンは採血後に服用するよう指導する.なお,当日の採血予定時間が服薬から6 時間以降という設定であれば,服薬前(トラフ)でなくてもよい.
4 副作用や効果増強が疑われる場合は,上記推奨時間
にとらわれることなく随時採血を行う.
5 血中濃度値を用いた薬物動態解析を行う場合は,用
量・用法とともに最終服薬時間と採血時間が情報として必要である.
HTU13長期ジゴキシン治療中に血中濃度モニタリングを行う際には,どのくらいの間隔で採血をすればよいでしょうか?回答長期ジゴキシン治療中の患者(とくに外来患者)
に対する血中濃度モニタリングの頻度や間隔に関する明確な指標はない.効果の変化,副作用,薬物相互作用が疑われる場合,病態の変化がある場合などにはその状況に応じて採血を行う.なお,目的とする効果が維持され,病態が安定し,治療内容にも変更がない患者に対しては,ルーチンに血中濃度を測定する必要はないが,年1 回の血中濃度モニタリングを行うことは受け入れられる.解説:ジゴキシン使用患者に血中濃度モニタリングを行う
ことが副作用軽減に役立つことは知られている7, 8)が,ルーチンにジゴキシンの血中濃度を測定することが治療効果を高め,副作用を軽減するというエビデンスはない.
対象患者によって血中濃度測定の目的は異なるため,血中濃度モニタリングの間隔は一概には決められない.長期治療中に心電図所見が変化した場合,あるいは副作用が疑われる場合には随時血中濃度を確認することが必要である.また,腎機能障害を有する患者,血清電解質が変動する患者,甲状腺障害を有する患者などでは病態の変化がジゴキシンの薬物動態や効果に影響するため,状況の変化に応じて採血を行い,血中濃度を確認する.一方,服薬アドヒアランスに問題がある患者では,外来受診を利用して採血による確認を行うのも一法である.薬物動態学的相互作用が考えられる併用薬の開始時や中止時,あるいは用量の変更時(相互作用が疑われるとき)にはその状況に応じて採血を行う.現行の保険医療制度では,月1 回の血中濃度モニタリングが認められている.
心不全患者を対象としたDIG trial のプロトコルでは,無作為化後1 か月目と12 か月目に採血(最終服薬から6 時間後)を行っている69).ジゴキシン治療の目的としている効果が維持され,病態が安定し,治療内容に変更がない患者であっても加齢による生理機能(腎機能を含めた)の変化があるため,年1 回血中濃度モニタリングを行うことは受け入れられる.なお,ジゴキシンの血中濃度を測定するときには血清クレアチニン値,血清カリウム値も一緒に測定しておくことが望ましい. HTU14血中ジゴキシン濃度の治療域はどのように設定すべきでしょうか?回答効果が得られれば低濃度が望ましい.安全性を加
味した血中ジゴキシン濃度の治療域は,(0.5)~
1.5 ng/mL が妥当と考えられる.なお,収縮不全による心
不全患者では,0.9 ng/mL 以下を目安にすることが望ましい.解説:血中ジゴキシン濃度の治療域は,一般に0.5~2.0 ng/mL といわれてきた2, 53).この背景には血中ジゴキシン濃度が2.0 ng/mL 以上になると副作用(ジギタリス中毒)の発現が増加するとされてきたことがある60, 84).しかし,実際は治療域と中毒(副作用)域はオーバーラップするといわれ,1.5~3.0 ng/mL の血中濃度では,ジギタリス中毒を認める患者と認めない患者が混在する60, 79, 84–88).日本人を対象とした研究では,ジギタリス中毒のなかでも,とくに消化器系の副作用が血中ジゴキシン濃度1.5 ng/mL
HTU13 HTU14
血中ジゴキシン濃度(ng/mL)
0 48 72 24 96 120 144 168
開始後時間(hr)
2.0 1.5
1.0 0.5
0.0 図6 ジゴキシン連続投与時の血中濃度推移と定常状態
矢印は服薬時. (Kramer WG, et al. 1979 83) より)
p.23
以上で出現しやすいという報告がある88).また,ジゴキシン治療を受けている日本人(心不全,心房細動)899 例を対象にした研究では,ジゴキシン濃度が1.4 ng/mL 未満では心外性副作用は認められず,さらに腎機能とは独立して加齢がジギタリス中毒に関係するとされ,70 歳以上では0.5~1.4 ng/mL が妥当ではないかという報告がある86).
ジゴキシン使用の対象となる不整脈としては心房細動が多く,その使用目的は心拍数コントロールである.血中濃度モニタリングの目的は副作用(とくに心外性副作用)の予防であり,効果が得られれば低濃度が望ましい.これまでの報告からまとめると,血中ジゴキシン濃度の治療域は(0.5)~1.5 ng/mL が妥当と考えられる68).
一方,低心機能の心不全患者に対するジゴキシンの強心作用については,血中ジゴキシン濃度が1.4 ng/mL 以上になると心筋収縮力が増すことが報告されてきた89–92).しかし,左室機能への影響には直接作用のみならず神経体液性因子の修飾も関係していることが明らかになってきたため,低血中濃度でも効果は期待できる68).低心機能(左室駆出率45% 以下)の慢性心不全患者を対象としたDIG trial のpost-hoc 解析においては,無作為化後1 か月目の血中濃度値と死亡率に関連がみられ,男性では低濃度域(0.5~0.8 ng/mL)にあったジゴキシン使用群でプラセボ群と比較して死亡率が低く,1.2 ng/mL 以上の場合は死亡率が高かったことが報告された70).また,女性でも低濃度域(0.5~0.9 ng/mL)が効果および安全性のうえで望ましいことが示された72).一方,低心機能(左室駆出率35% 以下)の心不全患者を対象としたPROVED とRADIANCE では血中濃度(トラフ)が0.9~2.0 ng/mL になるようジゴキシンの用量が設定されていたが,後ろ向き検討により低濃度域(0.5~0.9 ng/mL)であっても心不全増悪に対する効果は得られていたことが示された75).しかし,これまでの検討はあくまでpost-hoc解析あるいはサブ解析による結果で,血中濃度をどのレベルを目標として管理すれば生命予後を悪化させないのかに関するエビデンスはない.さらに,これらの試験は収縮不全の心不全患者に対するb 遮断薬療法が確立する以前の時代に行われたもので,b 遮断薬による心不全基礎治療が確立している現在,この結果がどこまであてはまるのかは不明である.現時点では収縮不全の慢性心不全患者に対してジゴキシンを使用する際には,0.9 ng/mL 以下の低濃度域を目安に管理することが望ましい.
なお,血中ジゴキシン濃度が0.5 ng/mL 未満の患者における有効性や長期予後の改善は確認されていない.ただし,高齢患者や電解質異常(低カリウム血症,低マグネシウム血症,高カルシウム血症)を有する患者では,0.5 ng/mL未満の血中ジゴキシン濃度においても十分な効果を得られ
る可能性があるため,個々の症例の状態を考慮した血中濃度設定を推奨する. HTU15メチルジゴキシンの血中濃度モニタリングはジゴキシン濃度でよいのでしょうか?回答メチルジゴキシンは免疫法では交差反応性がある
ため,ジゴキシン濃度として測定される.免疫法により測定されるジゴキシン濃度はメチルジゴキシンと代謝物であるジゴキシンの総和と考えられるため,臨床的には代用可能である.また,メチルジゴキシンとジゴキシンの薬剤切り替え時には血中濃度を確認することが勧められる.解説:ジゴキシンのバイオアベイラビリティは約70% であり,この不十分な消化管吸収が薬物動態の個人差に一部関係するといわれる93).このため,ジゴキシンの末端にある水酸基をメチル化し,脂溶性を増すことで消化管吸収を改善したのがbメチルジゴキシンである(バイオアベイラビリティは約100%)
94, 95).メチルジゴキシンはおもに脱メ
チル化され,ジゴキシンになる.メチルジゴキシンは約60% が腎から排泄され,その約40% が未変化体,約45%がジゴキシンとして尿中に排泄される96).メチルジゴキシンとジゴキシンの薬理活性は同等とされている95, 97, 98).現在,ジゴキシンの血中濃度は酵素免疫測定法(enzyme immunoassay; EIA)で測定されることが多く,この方法はメチルジゴキシンにも交差反応性があるため,両者ともジゴキシン濃度として測定される.分子量はメチルジゴキシンがジゴキシンに比しやや大きい(824.00,780.94).したがって,メチルジゴキシンの正確な濃度を測定するには別の方法(HPLC 法など)が必要であるが,メチルジゴキシンとジゴキシンのあいだで分子量および抗体(交差)反応性に大差がないことを考慮すると,EIA で測定されるジゴキシン濃度(メチルジゴキシンとジゴキシンの総和として)で臨床的には十分代用可能と考える.メチルジゴキシンの消失速度(消失半減期)はジゴキシンのそれと大差なく,腎障害患者では血中濃度が上昇する99–101).このため,ジゴキシンと同様に血中濃度モニタリングを行うことでジギタリス中毒が減る可能性があり,有用である.
一方,メチルジゴキシンからジゴキシン,あるいはジゴキシンからメチルジゴキシンへの切り替え時の用量設定には注意が必要である.ジゴキシンの分子量はメチルジゴキシンを1 とすると0.948 であるが,消化管吸収を考えればメチルジゴキシンはジゴキシンの1.25~1.4 倍となる.用量の換算比はメチルジゴキシンがジゴキシンの1.4~1.8
HTU15
p.24
倍と報告されている102–104).しかし,実際の薬物動態には個体間および個体内変動があるため,ある一定の比で用量を決定するのは困難である.このため薬剤の切り替え時にはその前後で血中濃度を測定し,その値が大きく変化していないか確認することが勧められる. HTU16ジゴキシンの血中濃度モニタリングを実施する際には,内因性のジゴキシン様免疫反応陽性物質やジゴキシン様の化学構造を有する薬物に注意する必要はあるのでしょうか?回答予想以上の血中濃度高値が得られた場合,ジゴキ
シン様免疫反応陽性物質(digoxin-like immunoreactive substance; DLIS)の存在を考える.ジゴキシン中毒症状の有無や患者背景(腎障害患者,肝障害患者,新生児,妊婦など),併用薬(ジゴキシン様の化学構造を有する物質を含有する薬物など)の確認を行う.解説:内因性のDLIS は,新生児,妊婦,腎障害患者および肝障害患者の検体中で検出されることがある.このような因子がEIA によるジゴキシン濃度値を上昇させることが,複数の研究で明らかにされている105–107).
センソ(救心® などに含有)や薬用人参の成分などが抗ジゴキシン抗体と交差反応することによって,血中ジゴキシン濃度測定結果が実際より高くなることが報告されている107–109).また,薬用人参による血中ジゴキシン濃度測定結果への影響は,薬用人参の産地によって異なることが知られており,さらに蛍光偏光免疫測定法(fluorescence polarization immuno assay; FPIA 法)においてその影響が現れやすいことも知られている108, 109).
カンレノ酸カリウムやスピロノラクトンなどにより,一部の測定法で血中ジゴキシン濃度測定結果が実際より高くなることが知られているが,その影響は臨床上無視できる程度であるとの報告が多い107, 110, 111).一方で,微粒子を用いた酵素免疫測定法(microparticle enzyme immunoassay; MEIA 法)では,これらの薬物により血中ジゴキシン濃度測定結果が逆に実際より低くなる場合があることが報告されている107–111).
内因性または外因性のDLIS が血中ジゴキシン濃度測定結果に及ぼす影響は,測定法によって異なるため,測定試薬の添付文書や文献情報におけるDLIS の情報を確認して測定を行うことが推奨される106, 109, 111).
一般に,測定法による血中ジゴキシン濃度測定結果の差異は,臨床上問題にならない程度である.しかし,内因性および外因性のDLIS に対する交差反応性は測定法によって異なるため,測定法間で血中ジゴキシン濃度に差がみら
れることがある112–114). HTU17ジギタリス中毒は血中ジゴキシン濃度に依存するのでしょうか?
回答ジギタリス中毒は必ずしも血中ジゴキシン濃度の
みに依存するものではないが,高血中濃度はその危険因子の一つである.1.5 ng/mL 以上になると,心外性のジギタリス中毒発現のおそれがある.解説:ジギタリス中毒の症状には,心毒性(心性)のものと心外性(消化器症状,神経症状,視覚異常など)のものがある(表3[22ページ参照])
54).しかし,ジギタリス中毒の
症状や徴候は非特異的であり,その診断確定は難しいことがある.血中ジゴキシン濃度とジギタリス中毒には関連があり,高血中濃度ではジギタリス中毒の発現が多いことが古くから報告されている56, 57).その報告のほとんどが, 2.0 ng/mL 未満の例ではジギタリス中毒は認められず,
2.0 ng/mL 以上の例ではジギタリス中毒が認められるとい
う結果であった115, 116).しかし,実際には2.0 ng/mL で区切れるものではなく,1.5~3.0 ng/mL の濃度域にはジゴキシン中毒を認める患者と認めない患者が混在する60, 79, 84, 86–88).
ジギタリス中毒は,その症状や徴候によって出現する血中濃度域(閾値)が異なるといわれ,自動能亢進や遅延後脱分極による不整脈は消化器症状や他の不整脈(徐脈など)に比し,低血中濃度で出現するという報告がある117).このことは以前から指摘されており,消化器症状は
2.0 ng/mL 以上の血中濃度で認められるが,自動能亢進に
よる不整脈は治療域でも認められるという報告がある118).また,二方向性心室頻拍も血中濃度治療域で起こることが報告されている119).心性のジギタリス中毒の要因には患者側の問題(加齢による生理機能低下・腎機能低下,基礎心疾患,潜在する洞機能障害や房室伝導障害など)と,増悪因子(低酸素血症,低カリウム血症,低マグネシウム血症,高カルシウム血症など)が絡むため,単純に血中濃度だけでは説明できない.なお,ジギタリス中毒と血中濃度の関係において人種差があるかどうかは不明である.日本人を対象とした報告では,血中ジゴキシン濃度が1.5 ng/mL以上になると消化器症状など心外性のジギタリス中毒症状が出現するという結果が多い(図7)
86–88).
血中ジゴキシン濃度がジギタリス中毒(とくに心外性)の危険因子として最も重要であることに変わりはなく117),血中濃度によるTDM は必要である.
HTU16 HTU17
p.25
2 感染性心内膜炎時の抗菌薬
CQ11バンコマイシンを使用している感染性心内膜炎患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?回答各患者に応じた適切な血中濃度治療域を確認する
ことは,至適用量の設定や副作用回避の助けになる.とくに効果が不十分なときの用量再検討,血中濃度依存性の副作用の回避,患者の病態変化時の治療評価に有用である.エビデンスレベルI, III推奨グレードA背景:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA)感染の治療において,バンコマイシントラフ値10 μg/mL 未満への曝露は,治療に難渋する最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration; MIC)の高い低感受性株が選択されてしまうというリスクが知られている120–122).また,感染性心内膜炎においては血中濃度―時間曲線下面積(area under the plasma concentration-time curve; AUC)/ MIC に関連した有効性と治療不成功例が報告されている123).濃度依存的な腎機能障害も報告され124),腎排泄型薬物であることから,心機能・腎機能が変動しやすい感染性心内膜炎では,とくに血中濃度モニタリングが治療に有効となる.実臨床ではトラフ値をAUC の代替指標とする.解説:血中濃度をパラメータとしたAUC/MIC 低値の患者
では死亡率が高いことが報告されており123),疣腫によりMRSA へのバンコマイシンの浸透が低下する可能性があることから125, 126),感染性心内膜炎ではトラフの血中濃度を高く保つことが必要であると考えられている126).バンコマイシンによるMRSA 菌血症の治療不成功の予測因子として,AUC/MIC 421 未満,トラフ値15 μg/mL 未満, MIC 1 μg/mL 超の場合があげられている127).英国の感染性心内膜炎抗菌薬治療ガイドラインではバンコマイシンの血中濃度(トラフ値)を15~20 μg/mL に調整することが推奨され128),米国感染症学会を中心とした米国の4 学会におけるバンコマイシンのTDM コンセンサスレビューにおいても同様の治療域濃度が推奨されている129).一方でvan Hal らは240 の論文から15 の研究を採用したシステマティックレビューを行い,血中濃度(トラフ値)と腎機能障害の関連性を報告している124).その結果,腎毒性イベント発生に対しては初期のトラフ値>15 μg/mL が危険因子であり,バンコマイシンの長期投与も腎毒性のリスクを上昇させることが示された124).Nakayama らも感染性心内膜炎に対する4 週間以上のバンコマイシン治療において,バンコマイシンのクリアランス低下を報告している130).
これらのことから,日本化学療法学会/ 日本TDM 学会合同による『抗菌薬TDM ガイドライン』では,「最初から15~20 μg/mLを狙った投与設計が必要なこともあるが,患者状態を十分把握し,腎毒性のリスクをふまえて投与量を決定する」としている131). CQ12アミノグリコシド系抗菌薬を使用している感染性心内膜炎患者に対し,血中濃度モニタリングを行うことは治療に有効ですか?回答各患者に応じた適切な血中濃度治療域を確認する
ことは,至適用量の設定や副作用回避の助けになる.とくに血中濃度(トラフ値)依存性の腎機能障害の回避,患者の病態変化時の治療評価に有用である.エビデンスレベルII推奨グレードB背景:アミノグリコシド系抗菌薬については,トラフ値の上昇に伴う腎機能障害が知られている132).聴覚障害に関する血中濃度との関連性は明確になっていない.腎排泄型薬物であり,腎機能低下によりトラフ値が上昇するため,心機能・腎機能が変動しやすい感染性心内膜炎では,とくに血中濃度モニタリングが治療に有効となる.解説:アミノグリコシド系抗菌薬による腎機能障害はトラフ値の上昇や累積投与量の増大などと関連があり,血中濃度を用いたTDM の実施により副作用が減少することが
2 感染性心内膜炎時の抗菌薬
CQ11
CQ12
図7 日本人における血中ジゴキシン濃度と副作用の内容(割合) 1988~1993 年に単施設で行われたジゴキシンの TDM 約2,500件のうち,ジゴキシンの副作用を呈した例における検討. (上野和行,他.1995 88)より改変引用)
循環器系消化器系循環器系
+消化器系
0%
血中ジゴキシン濃度(ng/mL)
50% 100%
3.0~
2.0~2.9
1.5~1.9
p.26
報告されている132).日本化学療法学会/ 日本TDM 学会合同学会による『抗菌薬TDM ガイドライン』では,5 日以上投与する可能性がある場合,TDM を行うことを推奨する症例として,感染性心内膜炎患者をあげている131). Nicolau らは腎機能正常患者で,腎毒性のある薬物との併用などの危険因子がない場合,5 日以上の使用例に対してTDM を実施したところ腎機能障害の発現率が1.3% と低かったと報告している133).耳毒性と血中濃度上昇との因果関係は明確になっておらず,総投与量との関連134)や遺伝的素因の一つとしてのミトコンドリア遺伝子1555A →G変異との関連が指摘されている135).
グラム陽性菌感染に対する治療においては,トラフ値<1 μg/mL,ピーク値3~5 μg/mL が推奨されている128).ただし,これは1 日1 回大量投与ではなく,分割投与を行う場合の目安である. HTU18バンコマイシンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答原則として投与前30 分以内のトラフ値を測定し,
ルーチンでのピーク値(Cpeak)測定は推奨しない.腎機能正常例の場合,投与3 日目に採血を行い,以降,1週間に1 回採血を行うTDM 実施を推奨する.ただし,腎機能が不安定な時期にはより頻回の測定が必要となる.解説:バンコマイシンについてはAUC/MIC が有効性ならびに細菌学的な効果の指標として有用であるが,AUC の算出には少なくとも時期が異なる2 回以上の採血が必要である.一方,トラフ値とAUC には相関性が認められることから,原則として定常状態におけるトラフ値を測定する129, 136).トラフ値の評価は,腎機能正常例における1 日2回投与が基準となる.1 日3~4 回投与では,AUC が変わらなくてもトラフ値が上昇することに留意しておく.
ピーク値(Cpeak)は,組織分布が完了した時点における血中濃度とする.バンコマイシンの分布相(α 相)の消失半減期(t1/2α)は0.4~0.5 時間であり137),分布が完了して血液―組織間濃度が平衡状態となるのは,1 時間点滴の場合,点滴終了1~2 時間後であり,その時点で採血を行う138).感染性心内膜炎では15~20 μg/mL と高いトラフ値を目標とするが,血行動態が不安定な例や腎機能が低下している例では,腎毒性の懸念から1 日1 回低用量投与とするとピーク値の低下に伴いAUC も低くなる可能性がある。そのため必要に応じてピーク値(Cpeak)を測定し,AUCを算出することも必要である.
腎機能正常例では,投与3 日目にはバンコマイシンの血中濃度は定常状態に達している139)が,腎機能低下時には
消失半減期が延長することから定常状態に達するまでの時間は延長する137, 140).この場合,投与開始後早期に採血するとトラフ値が過小評価される可能性があるため,のちに再評価が必要となる.また,TDM にて投与計画を変更した場合,血行動態が不安定な例,高用量の投与を行っている例,腎機能が不安定な例,腎障害高リスク例においては,頻回の測定が必要となる131).感染性心内膜炎ではバンコマイシン投与が長期にわたるため,投与中の腎機能低下およびトラフ値上昇に十分注意する必要がある. HTU19アミノグリコシド系抗菌薬の血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答原則として投与前30 分以内のトラフ値と点滴開
始1 時間後のピーク値(Cpeak)を測定する.腎機能正常例の場合,投与2 日目または3 日目に採血を行い,以降,1 週間に1 回採血を行うTDM 実施を推奨する.ただし,腎機能が不安定な時期にはより頻回の測定が必要となる.解説:アミノグリコシド系抗菌薬はCpeak/MIC が有効性ならびに細菌学的な効果の指標として有用であり141),またトラフ値の上昇と腎毒性が関連する142)ことから,トラフ値とピーク値の2 つが得られるタイミングでの採血を行う.トラフ値は投与前30 分以内に採血を行う.ピーク値は組織分布が完了した時点における血中濃度とし,点滴開始1 時間後に採血を行う131).点滴時間が30 分(許容範囲: 20~40 分)の場合には,点滴終了後のさらに30 分後に採血を行う.点滴終了直後は最高血中濃度(Cmax)として扱われるが,厳密な時間管理が必要であること,組織分布が終了していないことから臨床的にはピーク値が効果判定指標に用いられる.
採血時期は原則としていずれも定常状態とする131).投与設計における採血が時期の異なる2 回でよいことと,腎毒性も含めた臨床効果の予測性が向上するためである.アミノグリコシド系抗菌薬の消失半減期は腎機能正常例の場合,約2 時間であり,2 日目には消失半減期の4~5 倍以上経過しているため定常状態に達しており,初回の採血は2 日目でも可能であるが,腎機能が低下している場合も多く3 日目が実際的である.腎機能低下例においては定常状態への到達が遅延するため,データ解釈には注意が必要となる.腎機能低下が著しく,早期に正確な投与設計を行う場合には上記2 回の採血に,さらに消失相での採血を加えた3 つのデータがあれば投与設計が可能である143).
HTU18 HTU19
p.27
HTU20テイコプラニンの血中濃度モニタリングを行う際に,採血のタイミングはどのようにすればよいでしょうか?回答負荷投与後の血中濃度を評価するために,腎機能
の程度にかかわらず3 日投与後の4 日目のトラフ値を測定する.早期に血中濃度を確認するために2 日投与後の3 日目のトラフ値を測定する場合には,最終投与から18 時間以上経過してから行う.以降,1 週間に1 回のTDM 実施を推奨する.ただし,腎機能が不安定な時期にはより頻回の測定が必要となる.解説:テイコプラニンの副作用発現域は通常投与で得られる血中濃度よりも高く144),日常診療で使用される治療域濃度では,血中濃度依存性の副作用発現はまれである.したがってTDM は効果発現の確認を目的として行う.重度感染症や複雑性感染症(感染性心内膜炎,骨関節感染症など)では目標トラフ値を20 μg/mL 以上に設定することが推奨される145–147).
健常成人におけるテイコプラニンの消失半減期は40.5時間と報告されており148),定常状態に達するには1 週間程度を要する.したがって維持投与量のみでは治療域濃度に達するまでに時間を要するため,負荷投与を行う.テイコプラニンの尿中未変化体排泄率は約80% であるが,投与開始から3 日間は腎機能の程度にかかわらず一定のプロトコルに従う.日本化学療法学会/ 日本TDM 学会合同による『抗菌薬TDM ガイドライン』では,400 mg (6 mg/kg),1 日2 回の2 日間連続投与で,初回TDM でのトラフ値10~15 μg/mL が期待できるとしている131)が,目標値15 μg/mL 以上を達成できるレジメンに関しては明確な結論は出されていない.投与開始4 日目から腎機能に合わせて用量調整を行う.したがって3 日目と4 日目の血中濃度の評価はおもに負荷投与に対する血中濃度の評価となる.TDM の方法は確立していないが,これまでの報告では4 日目のトラフ値が中心となっている.
テイコプラニン投与後はα-,b-,γ- の三相性の血中薬物動態を示し,分布相が完了していない時点での採血は血中濃度値が高くなるため,最終投与から18 時間以上経過した時点で採血を行う131).維持投与は24 時間ごとが基本であるが,負荷投与では1 日2 回投与されることが多い. 1 日2 回投与した場合には,翌日のトラフ値は最終投与から18 時間を経過していない点に留意する131).
負荷投与後の維持投与による血中濃度は腎機能に応じた変動を示すため,3 日目または4 日目の血中濃度よりも次第に低下あるいは上昇する可能性があることを念頭に置いて,次回採血日の決定と評価を行うことが必要である.
テイコプラニンのピーク濃度測定の意義は確立していない131).
3 特殊病態での変化
3.1 腎障害患者・血液透析患者
HTU21腎障害患者・血液透析患者に抗不整脈薬を使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答ジソピラミド,シベンゾリン,プロカインアミド,
ピルシカイニド,ソタロールは腎排泄型薬物であるため,腎機能に応じた投与設計が必要である.肝腎消失型であるフレカイニドは,重度の腎障害患者で考慮が必要である.一般に,血中濃度推移が定常状態に達している段階で採血を行う.また,効果と副作用を確認するために通常はトラフ(次回投与の直前)に採血する.腎排泄型薬物では消失半減期が腎機能の低下とともに延長するため,定常状態に達する時間が延長することを考慮する.ピーク濃度が副作用に関係している可能性がある場合には,ピーク付近の濃度を測定する.解説:腎排泄型薬物は,腎機能の低下に応じて用量を減らすか投与間隔を延長する必要がある.抗不整脈薬のなかで腎排泄型薬物(尿中未変化体排泄率の高い薬物)にはピルシカイニド(約90%),ソタロール(約80%),シベンゾリン(約65%),プロカインアミド(約60%),ジソピラミド(約50%)がある.肝腎消失型薬物としてフレカイニド(40%)がある.
腎障害患者に腎排泄型の抗不整脈薬を投与する際には,薬物の体内動態に及ぼす腎機能の影響を考慮しなければならない.さらに,血液透析(hemodialysis; HD)患者ではHD による(未変化体のみならず活性代謝物も含めた)薬物除去率に関する情報や,α1- 酸性糖蛋白との結合率の変化も考慮する必要がある.ただし,通常示される薬物血中濃度は総濃度であり,非蛋白結合形(遊離形)薬物の動態まで知ることは困難である.
一般に,血中濃度が定常状態に達している時期に採血を行う.消失半減期の4~5 倍でほぼ定常状態に達するといわれる.効果と副作用を確認するためには,トラフ(次回
HTU20
3 特殊病態での変化
HTU21
p.28
投与の直前)に採血するのが望ましい.腎排泄型薬物では消失半減期が腎機能の低下とともに延長するため,定常状態に到達する時間が延長することを考慮する.ピーク濃度が副作用に関係している薬物の場合には,ピーク付近の濃度も測定することがある.
一般に蛋白結合率が低く(<80%)かつ分布容積が小さい(<1 L/kg)薬物はHD で除去されるが149),シベンゾリンは分布容積が5~7 L/kg と大きくHD では除去されないため,初期投与設計を誤ってはならない.一方, HD 患者に腎排泄型薬物を使用すると,非HD 時には薬物消失が遅延するため血中濃度が高く維持される.基本的にHD 患者においてHD で除去される薬物はHD 後に投与するが,HD で除去される薬物をHD 前に投与する場合は, HD による薬物除去を考慮してHD 中あるいはHD 後に採血して濃度を確認する場合もある(図8)
150).
HTU22腎障害患者・血液透析患者にジゴキシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答定常状態のトラフ(服薬後12~24 時間)での採
血が勧められる.トラフでの採血が困難な場合は,消失相にあたる服薬後6 時間以降での採血が望ましい.ジゴキシンは腎排泄型薬物であるため,腎機能に応じた投与設計が必要である.一般に,血中濃度推移が定常状態に達している段階で採血を行う.ジゴキシンの消失半減期は腎機能の低下とともに延長するため,定常状態に達する時間が延長することを考慮する.末期腎障害患者・HD 患者では,2~3 週間以降の採血が適切である.解説:ジゴキシンは腎排泄型薬物(尿中未変化体排泄率
70%)であり,全身クリアランスのうち70% が腎クリアランスであるため,腎障害患者では腎機能に応じた減量が必要である.さらに腎障害患者では消失半減期が延長するため,定常状態に達するのに時間を要する.ジゴキシンの血中濃度が定常状態に達するのは腎機能正常例で6~7日なのに対し,末期腎障害患者では16~20 日と延長するため,腎障害患者での採血時期は投与開始後1 週間以降,末期腎障害患者・HD 患者では2~3 週間以降が適切である.
ジゴキシンの分布容積は腎機能正常例で4~8 L/kg と大きく,主要分布組織は骨格筋である.腎機能の低下に伴いジゴキシンの分布容積は小さくなるため,血管内分布が増え血中濃度が高くなりやすい151).ただし末期腎障害患者でも分布容積は4~5 L/kg と大きく151),いかなる血液浄化法でも効率よく除去することはできない152, 153).このため,初期投与設計および血中濃度測定が重要となる.HD患者における血中ジゴキシン濃度測定のための採血は, HD 開始時が推奨される.ただし,ジゴキシンの服薬時間がHD 日である場合,午前HD の患者ではα相での採血になる場合がある.そのため,血中濃度測定日には服用を採血後(HD 後など)にするよう患者に指導する.
腎障害患者ではDLIS の干渉を受けやすく,免疫測定法の種類によっては偽性高値を示すことがある(HTU16 [26ページ]参照)
154).また,HD 患者ではジゴキシンのP- 糖蛋白
阻害薬および誘導薬による影響は腎機能正常例と同等であり155),尿細管よりむしろ消化管や肝臓の毛細胆管における排泄過程でのP- 糖蛋白阻害あるいは誘導が寄与していると考えられる155–157).
HTU22
図8 血液透析患者へのソタロール投与(山田雄一郎,他.2005 150)より)血液透析(HD)直後の血中濃度はHD による除去率を反映しない. HD 直後には必ずリバウンド(再上昇)がみられる.
血中濃度 (μg/ mL) 2.0 1.0
0.8 0.6
0am 12am 0am 0am 12am
8am 60 mg 経口摂取
透析中• t1/2(透析間) 178 時間
• t1/2 (透析中) 7 時間ソタロール
時刻
p.29
● 腎障害患者の投与量設定腎障害患者では,「未変化体もしくは活性代謝物の尿中排泄率が高い薬物」を減量することが原則である.腎機能低下例での投与量・投与間隔の簡便な調整法としては,Giusti-Hayton の方法がある(図9)
158).たと
えば,クレアチニンクリアランス(CCr)30 mL/min の患者において腎機能正常例(CCr 120 mL/min)にジゴキシン(尿中未変化体排泄率[fe]:0.7) 0.125 mg を1 日1 回投与する場合と同じ効果を得るためには,G= 1-0.7×(1-30/120)≒0.48 で,1 日1 回投与で投与量を変更する場合には0.125 mg× 0.48 =0.060 mg となる.投与量を0.125 mg にして投与間隔を変更する場合には24 時間/0.48=50 時間となり,投与間隔は2 日に1回となる.もちろんこれはあくまでも初期投与量設定の目安であり,血中濃度を測定して確認する必要がある.腎障害患者における参考投与量については,「4. 各薬の薬物動態一覧」(42ページ)を参照されたい.これらはあくまでも薬物動態からみた減量の目安であり,腎機能正常例と治療域濃度が同じであれば効果も同じということにはならない.腎障害患者がもつ臨床背景と抗不整脈効果および安全性を総合的に評価しながら,至適投与量を設定しなければならない.
● 薬物投与設計における腎機能の評価方法薬物投与設計では古くからCCr が用いられてきた.クレアチニン(Cr)はわずかに尿細管から分泌されるため, CCr の正常値は120~130 mL/min である.CCr 推算式のCockcroft-Gault 式159)は血清Cr 値,年齢と体重が必要であるが,身長が考慮されていないため,肥満者では理想体重を用いること,若年者でやや高値に,後期高齢者ではやや低値に推算されることに留意する必要がある.
• Cockcroft-Gault 式
推算CCr = {(140 -年齢)×体重(kg)× 0.85(女性)} / {72 × 血清Cr(mg/dL)} Cockcroft-Gault 式による推算CCr は糸球体濾過量(GFR)より高値になるので0.789 倍しGFR として評価する160).肥満患者の体重には理想体重を用いる(身長152.4 cm 以下は適応しない).
理想体重(男性)= 50 +{2.3 ×(身長-152.4)}/2.54理想体重(女性)= 45 +{2.3 ×(身長-152.4)}/2.54日本腎臓学会の作成した推算糸球体濾過量(eGFR [mL/min/1.73 m2]:正常値は100 mL/min)は慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)の診断指標として用いられる161).eGFR は血清Cr 値と年齢だけで腎機能を推算できるが,薬物投与設計に際してはDu Boisの式162)を用いて体表面積(body surface area; BSA)を算出し,BSA 補正を外す必要がある.BSA 補正を外したeGFR は血清Cr 値,年齢,体重と身長が加味されているため,薬物投与設計には最も正確な推算値と考えられるが,栄養状態の不良な長期臥床高齢者などでは筋肉量の減少に伴い血清Cr 値が低値になるため,高齢者であってもCockcroft-Gault 式にも増してeGFR が正常値以上に推算される場合があることに注意が必要である163). • 日本人向けGFR 推算式:
eGFR(mL/min/1.73m2)= 194 × Cr -1.094 × Age -0.287× 0.739(女性)ただし薬物投与設計に際してはBSA を求めるためのDu Bois の式を用いてBSA 補正を外す必要がある. • 体表面積補正をしないGFR 推算式:
eGFR(mL/min)= eGFR(mL/min/1.73 m2)×(BSA/1.73 m2) BSA(m2)=体重(kg)0.425 ×身長(cm)0.725 × 0.007184 (Du Bois の式)血清Cr 値0.6 mg/mL 未満の患者では,これらの腎機能推算式では過大評価されるため適していない.そのため臨床現場ではこれらの症例に推算式を用いる場合,血清Cr 値が0.6 mg/dL 未満の患者では0.6 を代入する方法が汎用されているが,科学的ではない.このような症例では腎機能が高度に悪化しているわけでは
G =1-fe ×(1-CCr/CCr) fe:尿中未変化体排泄率CCr:患者のクレアチニンクリアランス(mL/min) CCr:腎機能正常例のクレアチニンクリアランス
(=120~130 mL/min *Jaffe 法測定なら100 mL/min)
1 投与間隔を一定にして投与量(D)を変更する場合
D’ =D × G
2 投与量を一定にして投与間隔(T)を変更する場合
T’ =T/G
図9 腎障害時の投与設計:Giusti-Hayton の方法
p.30
ないため,シスタチンC を用いたeGFRcys(mL/ min/1.73m2) 164)を上記と同様に,Du Bois の式162)を用いてBSA を算出し,薬物投与設計にはBSA 補正を外したBSA 未補正eGFRcys(mL/min)を算出することが推奨される.あるいは1 日蓄尿または短時間蓄尿による実測CCr の測定が推奨されるが,eGFR と同様にBSA 未補正値を用いる.実測CCr は0.715 倍してGFR として評価する159). • 日本人のGFRcys 推算式:
GFRcys(mL/min/1.73m2) ={104×シスタチンC -1.019 ×0.996年齢×0.929(女性)}-8ただし薬物投与設計に際してはBSA を求めるためのDu Bois の式を用いてBSA 補正を外す必要がある.
eGFRcys(mL/min) =eGFRcys(mL/min/1.73 m2)×(BSA/1.73 m2)腎排泄型薬物の投与設計に用いられる腎機能パラメータの特徴について表4 にまとめた. HTU23
感染性心内膜炎を合併した腎障害患者・血液透析患者にバンコマイシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答非HD 患者では,原則として投与前30 分以内の
トラフ値を測定する.HD 患者ではHD 開始前に採血し,HD 終了後にバンコマイシンを追加投与することが推奨される.ルーチンでのピーク値測定は推奨されない.腎機能の低下とともに定常状態に達する時間が延長し, HD 患者では2~3 週間を要する.非HD 患者・HD 患者のいずれの場合も早期に治療域濃度に到達させるために,初回負荷投与15~20 mg/kg(重度腎障害患者およびHD患者では25~30 mg/kg)を行う.解説:腎障害患者では免疫能が低下し,HD 患者では人工血管や留置カテーテルなどのブラッドアクセスが感染源になって発症する感染性心内膜炎の頻度は非HD 患者の17倍高いことが報告されている165).HD 患者の感染性心内膜炎ではおもに僧帽弁が侵され,起炎菌は黄色ブドウ球菌が
HTU23
表4 各種腎機能パラメータの正確性と特徴
腎機能パラメータ正確性特徴
イヌリン投与による実測GFR(mL/min)最も正確.準備・手技が煩雑なため実際的でなく,あまり利用されていない. 1 日または短時間蓄尿による実測CCr (mL/min)正確な蓄尿ができていれば正確であるが実測GFR の1.2~1.3 倍高めになるので,0.715倍してGFR(mL/min)として評価する.正確な蓄尿ができない症例,外来患者では利用できない.
Cockcroft-Gault 式による体表面積未補正推算CCr(mL/min)血清Cr 値0.6 未満の患者では過大評価しやすいが,一般的にeGFR(mL/min/1.73m2)より正確であり,未補正eGFR(mL/min)に比し,血清Cr 低値による腎機能過大評価は少ない.肥満患者では過大評価するため理想体重を用いる.加齢による低下が顕著なため,長期臥床高齢者が罹患しやすい院内感染時の薬物投与設計では,eGFR に比し正確性が高くなることがある.それでも過大評価が懸念される場合,臨床現場では血清Cr 値0.6 未満の症例には0.6 を代入することがある.血清Cr 値によるeGFR(mL/min/1.73m2)体格を考慮していないため平均的な体格の患者以外では不正確.慢性腎臓病の診断指標に用いる値であり,薬物投与設計では用いない.
血清Cr 値による体表面積未補正eGFR (mL/min)一般的な患者では正確性が高い.痩せた高齢者では過大評価されやすいのが欠点で,臨床現場ではこのような症例に対して血清Cr 値0.6 未満の場合には0.6 を代入することがある.
血清Cr 値(mg/dL)軽度~中等度腎障害ではほとんど変動せず判断しにくいため,血清Cr 値をもとにした推算式で用いられることが多い.慢性腎臓病ステージ4~5(重度腎障害~末期腎不全)では明らかに上昇するため有用で,血清Cr 値2 mg/dL 以上の高齢者は重度腎障害と判断してよい.
血清シスタチンC 値による体表面積未補正eGFR(mL/min)軽度~中等度腎障害では血清Cr 値よりも速く上昇するため有用であり,痩せた高齢者でも正確に腎機能を反映する.体表面積未補正値を用いる.保険適応の関係で3 か月に1 回しか測定できない.末期腎不全になると4 mg/L 程度で頭打ちになるため,末期腎不全では血清Cr値のほうが使いやすい.測定キットにより測定誤差があるという問題は標準物質ができたため解消されつつある. GFR:糸球体濾過量,eGFR:推定糸球体濾過量,CCr:クレアチニンクリアランス,Cr:クレアチニン
p.31
最も多く,予後は不良である.
バンコマイシンは尿中未変化体排泄率が約90% の腎排泄型薬物であるため,腎機能の低下に応じた減量を必要とする.一方で,感染性心内膜炎の場合,高いトラフ値(15~20 μg/mL)が必要とされ,血中バンコマイシン濃度上昇に伴うさらなる腎機能悪化が懸念される.長期投与を要することから,治療継続のためにも血中濃度の確認が必要である.
腎機能正常例では投与3 日後に定常状態に達するが,腎機能の低下とともに定常状態に到達する時間が延長する. HD日・非HD日をあわせるとHD 患者の半減期は約100 時間であるため,定常状態に達するまでに2~3 週間を要する.早期に 治療域濃度に到達させるために,15~20 mg/kg (重度腎障害患者およびHD 患者では25~30 mg/kg)の初回負荷投与は必須である.
腎障害患者・HD 患者の初回採血のタイミングに関するコンセンサスはない.初回負荷投与の影響を考慮し,また,定常状態に達する時間が延長するため,血中濃度が過小評価されることも認識しておかなければならない.トラフ値が上昇するリスクを考慮し,より頻回の血中濃度モニタリングの実施が必要になることがある.
非HD 患者では,トラフ値として投与前30 分以内に採血を実施する.HD 患者ではHD 開始前に採血し,HD 終了後に追加投与することが推奨される.血中濃度の適正性を評価するため,1 週間以内の早期に血中濃度モニタリングを実施する.HD 後には顕著なリバウンド現象が認められるため,HD 終了直後の血中濃度は,体内薬物濃度を正確には反映しない166–169).HD 患者において副作用が高率となる血中濃度に関しては,コンセンサスが得られていない.
ルーチンでのピーク値測定は推奨されないが,ピーク値を測定する場合には,組織分布が完了した時点における血中濃度とし,点滴終了後1~2 時間で採血を行う.
3.2 肝硬変
HTU24肝硬変患者に抗不整脈薬を使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答肝代謝の寄与が大きい抗不整脈薬は,肝硬変の進
行に伴って体内からの消失が遅延するため,肝障害の重症度に応じて投与量を減量し,血中濃度を確認することが望ましい.とくにChild-Pugh 分類クラスC の肝硬変患者では,減量の検討が必要である.背景:薬物の肝代謝に及ぼす肝障害の影響は,薬物代謝酵
素および肝障害の重症度によって異なる170).一般的に, CYP2C19 やCYP1A2 による肝代謝は,肝硬変の比較的早期の段階(Child-Pugh 分類クラスA およびB)から低下する.一方で,多くの肝代謝型抗不整脈薬の主要代謝経路となるCYP2D6 による肝代謝は,重度の肝硬変(Child- Pugh 分類クラスC)から低下が現れる170).CYP3A4 による肝代謝は,Child-Pugh 分類クラスB の肝硬変から低下する171).解説:多くの肝代謝型抗不整脈薬は,肝硬変患者においては体内からの消失が遅延する可能性があるため,投与量の調節を検討する必要がある(表5).フレカイニドは,肝硬変患者において消失クリアランスが健常者と比較して42% 低下し,半減期も5 倍に延長するため,肝硬変患者では投与量を少なくとも2~3 分の1 に減量して定期的に血中濃度モニタリングを実施することが望ましい172).プロパフェノンは,肝障害患者においては消失クリアランスの低下率は低い(約25%)が,半減期は健常者と比較して2.5 倍に延長し,バイオアベイラビリティも3.6 倍に上昇するため,肝硬変患者では投与量を少なくとも2~3 分の1 に減量して定期的に血中濃度モニタリングを実施することが望ましい173).リドカインは,重度の肝硬変患者(Child-Pugh 分類クラスC)において消失クリアランスが健常者と比較して28~56% 低下し,半減期も2.6~4.2 倍に延長するため,重度の肝硬変患者では投与量を少なくとも2~3 分の1 に減量して定期的に血中濃度モニタリングを実施することが望ましい174–176).メキシレチンは,進行したアルコール性肝硬変患者において消失クリアランスが健常者と比較して28% 低下し,半減期が約3 倍に延長するため,重度の肝硬変患者では投与量を少なくとも3 分の1 に減量して定期的に血中濃度モニタリングを実施することが望ましい177).アプリンジン,アミオダロン,ベプリジルは,肝代謝の寄与が大きい薬物であり,肝硬変患者における薬物動態に関する報告はないが,肝硬変の進行に伴い体内からの消失が遅延する可能性があるため,定期的に血中濃度モニタリングを行うことは受け入れられる.
肝代謝のみで体内から消失する薬物の肝硬変患者への投与は,予想外に血中濃度が上昇する可能性があるため避けることが望ましい.肝代謝と腎排泄の両者によって消失する薬物であっても,肝硬変患者に腎機能の低下を伴う場合には血中濃度が急激に上昇するおそれがあるため,定期的に血中濃度モニタリングを行うことは受け入れられる.
肝硬変患者に血中濃度モニタリングを行うに際には,消失半減期の延長により定常状態に達するまでの時間が延長していることを考慮する必要がある.
HTU24
p.32
3.3 甲状腺機能障害
HTU25甲状腺機能障害患者にジゴキシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答甲状腺機能亢進状態では血中ジゴキシン濃度が低
下し,甲状腺機能低下状態では上昇する.甲状腺機能が悪化した場合や甲状腺機能が改善した場合には,ジゴキシンの効果を評価するとともに血中濃度を測定し,投与設計を再検討する.背景:甲状腺機能障害により,薬物の消化管吸収や代謝,蛋白結合や腎排泄などが変化することが知られている181).ジゴキシンはおもに腎で排泄されるが,甲状腺機能亢進症患者ではCCr が26% 上昇し,甲状腺機能低下症患者では25% 低下していると報告されており,ジゴキシンの腎クリアランスもそれに伴い変化する182).解説:甲状腺機能亢進状態では血中ジゴキシン濃度が低下
し,甲状腺機能低下状態では上昇することを報告した論文が複数ある181–183).血中ジゴキシン濃度は,甲状腺機能亢進症患者においては14% 低下し,甲状腺機能低下症患者においては35% 上昇している182).甲状腺機能障害に伴う血中ジゴキシン濃度の変動は,主としてジゴキシンの腎クリアランス変動によって説明されている.また,甲状腺機能低下症患者において,薬物治療により甲状腺機能が正常化すると,末梢血単核細胞のP- 糖蛋白mRNA 発現が1.8倍に増加し,輸送活性も26% 上昇することが報告されている182).甲状腺機能障害によるP- 糖蛋白活性の変動が,その基質となるジゴキシンの体内動態に影響している可能性がある.
一方,甲状腺機能が正常化することにより,甲状腺機能障害に伴う血中ジゴキシン濃度の変化も改善することが報告されている182, 183).このため,甲状腺機能が悪化した場合だけでなく,薬物治療などにより甲状腺機能が改善した場合にも,臨床効果を評価するとともに血中ジゴキシン濃度の測定を行い,投与設計を再検討することが望ましい.
HTU25
表5 肝硬変患者における肝代謝型抗不整脈薬の消失遅延と投与量調節
薬物主要代謝酵素肝硬変患者における
消失クリアランス望ましい投与量
キニジンCYP3A4変化なし178, 179)
(半減期は延長)推奨なし
プロカインアミドN-アセチル化転移酵素十分なデータなし推奨なしジソピラミドCYP3A4十分なデータなし推奨なしアプリンジンCYP2D6データなし推奨なしメキシレチンCYP2D6, 1A2低下177) 3 分の1リドカインCYP3A4低下174–176) 2~3 分の1フレカイニドCYP2D6, 1A2低下172) 2~3 分の1プロパフェノンCYP2D6低下173) 2~3 分の1アミオダロンCYP3A4データなし推奨なしベプリジルCYP2D6データなし推奨なし参考 肝障害の重症度に関するChild-Pugh 分類180)
スコア1 2 3
肝性脳症なし軽度(I~II 度)昏睡(III 度以上)腹水なし少量中等量血清ビリルビン(mg/dL) <2.0 2.0~3.0 >3.0血清アルブミン(g/dL) >3.5 2.8~3.5 <2.8プロトロンビン時間の延長(sec) 1~4 4~6 >6 Child-Pugh 分類 クラスA:合計スコア 5~6 点クラスB:合計スコア 7~9 点クラスC:合計スコア 10~15 点(Pugh RN, et al.1973 180)より)
p.33
3.4 高齢者
HTU26高齢者に抗不整脈薬を使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答高齢者では生理機能が低下している.とくに腎機
能(GFR)が低下しており,腎排泄率が高い薬物は腎クリアランスが低下し,消失半減期が延長する.一般的には,定常状態での採血による血中濃度モニタリングが勧められる.可能ならトラフ,あるいは消失相での血中濃度が望ましい.高齢者では定常状態に達する前に効果(副作用を含む)が認められることがあり,その時点での確認も有益である.また,初期投与量は慎重に設定することが望ましい.解説:高齢者では若年者と比較して,生理機能が低下している.とくにGFR や腎血流量が低下しており(図10)
184),
腎排泄率が高い(尿中未変化体排泄率50% 以上)薬物の全身クリアランスは大きく低下する.血中濃度が定常状態に達するには消失半減期の4~5 倍の時間が必要であるが,腎排泄率の高い薬物ではクリアランスが低下し,消失半減期が延長する.このため血中濃度が定常状態に達するまでに時間を要し,さらに高血中濃度になる可能性もある.よって,定常状態に達する前に副作用が出現したり,効果の増強が認められたりすることもある.この場合は定常状態でなくても血中濃度の測定を行い,確認することが望ましい.高齢者においては,腎排泄率の高い抗不整脈薬を投与する際には,初回投与量を慎重に設定することが肝要である.腎機能と年齢を考慮した初期投与ノモグラムなどは,初期用量設定の参考となる.また,高齢者では体重の減少もあり,CCr が低下することがあるため,初期投与量設定時には注意が必要である.一方,高齢者では薬物代謝能も低下しているが,クリアランスへの影響は腎機能の低下ほど大きくない.また,肝代謝型薬物は脂溶性が高いため,分布容積が大きいものもある.したがって,高齢者に肝代謝型抗不整脈薬を投与する場合,腎排泄率の高い薬物ほど細かい調整は必要ない.
高齢者ではアルブミンなどの血液中の蛋白量の低下から,蛋白非結合形分画(遊離形濃度)が増加することが考えられる.したがって,蛋白結合率が高い(90% 以上)抗不整脈薬では遊離形の増加による薬理効果の増強に注意しなければならない.ただし,遊離形が増加することで全身クリアランスが大きくなり(血中総濃度が低下する),臨床的には大きな問題とならない場合もある.高齢者では急激な病態変化,生理機能の変化,蛋白量の
低下,脱水などを生じやすく,薬物のクリアランスおよび血中非結合形分画が変化する.このため,全身状態の変化に応じた血中濃度モニタリングが勧められる.必ずしも非結合形分画のモニタリングでなくても総濃度のモニタリングから評価可能であるが,非結合形分画の変化から遊離形濃度が上昇すると,総濃度が治療域内でも効果(副作用も含む)が強く出ることがある.なお,ジソピラミドやピルシカイニドなどはα1-酸性糖蛋白(AAG)に結合する. AAG は炎症反応に伴って増加するため,これらの薬物では蛋白非結合形分画が減少し,全身クリアランスが低下することから血中濃度が上昇する場合があるので注意する必要がある.炎症反応の評価の一つとしてC 反応性蛋白(C-reactive protein; CRP)が用いられるが,CRP 上昇時にはAAG が上昇している場合が多いため,ジソピラミドやピルシカイニドなどのAAG に結合する薬物については副作用の発現などに注意することが望ましい. HTU27高齢者にピルシカイニドを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答定常状態となる投与開始後4~5 日目以降での採
血(トラフあるいは排泄相)が勧められる.ただし,それまでに効果の増強や副作用などが疑われる場合は,その時点での確認が有益である.また,投与量を変更した場合も,変更後4~5 日目以降に採血を行い,血中濃度を確認することが望まれる.なお,腎機能に変動がない場合
HTU26
HTU27
0
100 90
80 70
60 50
40 30
20 30 40 50 60 70 80 90 年齢(歳)
生理機能低下率(%)
房室伝導速度基礎代謝率心拍出量係数肺活量標準腎血漿流量(diodrast)標準腎血漿流量(PAH)最大呼吸容量0標準糸球体濾過量(イヌリン投与
による実測)
図10 加齢に伴うさまざまな生理機能の低下(Shock NW. 1960 184)より)
p.34
は投与量に依存して血中濃度が変動する.解説:ピルシカイニドの約90% は未変化体で腎から排泄されるため,全身クリアランスは腎機能に大きく影響を受ける.高齢者では腎機能が低下していることから,慎重な投与設計が必要である.ピルシカイニドは消失半減期が短い(健常成人では4~5 時間)ため,通常,投与2~ 3 日後に血中濃度は定常状態に達する.しかし,CCr が50 mL/min では消失半減期が約8~10 時間,さらにCCrが30 mL/min では半減期が約20 時間に延長する.このため,高齢者では定常状態に達するまでに時間を要し,さらには高血中濃度になる可能性がある.ピルシカイニド投与後,最高血中濃度(ピーク値)に達するまでの時間は2~3時間である.
高齢者にピルシカイニドを使用する場合には,初期投与量の慎重な設定と投与初期の血中濃度のモニタリングが重要である.初期投与量は腎機能と年齢を評価した設定が勧められる.母集団解析に基づく初期投与ノモグラムの報告があり,これらを参考にして初期用量を設定することが勧められる(図11)
185, 186).
HTU28高齢者にジゴキシンを使用する際には,血中濃度モニタリングはどのようにすればよいでしょうか?回答定常状態のトラフ(服薬後12~24 時間)での採血が勧められる.トラフでの採血が困難な場合は,消失相にあたる服薬後6 時間以降での採血が望ましい.高齢者では腎機能が低下しており,ジゴキシンの消失半減期は延長するため,定常状態に達する時間が延長する.したがって,採血時期も十分考慮する.また,低体重や筋肉量の少ない高齢患者では血中濃度が高値となりやすい.初期投与量に関しては,年齢や腎機能などを評価して設定することが望まれる.解説:高齢者におけるジゴキシン至適用量の個人差にかかわる因子としては,腎機能,体重,筋肉量,併用薬(ベラパミルなどのP- 糖蛋白阻害薬およびリファンピシンのような誘導薬),年齢,うっ血性心不全の有無などがある187).ジゴキシンは腎排泄型薬物(尿中未変化体排泄率70%)で,総クリアランスのうち70% が腎クリアランスであるため,生理的に腎機能の低下をきたす高齢者では血中濃度が高値になる.また,ジゴキシンはおもに骨格筋に分布するため,筋肉量の減少した高齢者では血中濃度が高値になりやすい.ただし,加齢に伴う腎機能低下や筋肉量の減少は画一的ではないため,個別に腎機能(CCr,eGFR など)を算出してジゴキシンの投与設計を行い(腎機能別至適用量は前項を参照),血中濃度モニタリングを実施して用量・投与間隔を調整する.嘔気,食欲不振,下痢,錯乱,見当
識障害,視覚異常,高度徐脈などの副作用が現れたらジゴキシン中毒が疑われるため,来院するよう指導する.
3.5 小児
HTU29抗不整脈薬を小児に使用する場合,血中濃度治療域は成人と同じでしょうか?回答小児に関する抗不整脈薬の血中濃度モニタリング
を検討した報告はないが,目標とする血中濃度(治療域)は成人とほぼ同じと考えてよい.解説:小児期には理想的な臨床試験の結果がある薬物は少なく,専門家の意見,学会のガイドライン,医学雑誌などでの有用性の報告をもとに,リスク・ベネフィットや日本人の特性を考慮し,成長発育・発達にも影響を及ぼす確率の低い薬物を選択するように心がけ,十分な説明のうえで使用する,という流れが基本となる.また,小児においては体水分量や腎機能の発達が関係するために,抗不整脈薬の初期投与量,維持投与量ともに成人と比較して幅が生じやすい.したがって,より頻繁な血中濃度の測定が必要とされ,その値を参考に投与量を調節していくことが重要となる.成人では分1~2 経口投与で安定した血中濃度が維持できる薬物でも,小児では分3 経口投与が一般的である場合や,小児でも年齢により消失半減期の差がある場合には,経口投与回数を調整することもある.成人での投与量を単に体重換算して小児に投与する場合には,過剰あるいは不足のリスクに対する慎重な配慮が必要である.重症例では小児循環器専門医のいる施設との連携が勧められる.
HTU28
HTU29
体重(kg) CCr (mL/min) ~50 50~70 70~
0~19 (25 mg/2 日) 20~29 25 50 30~39 50 50 75
40~59 75 100 60~79 80~99 75 100 150 100~図11 腎機能を指標としたピルシカイニド初期投与ノモグ
ラム(mg/日)男性=(140-年齢) ×体重/(72×SCr)女性=男性値 ×0.85 CCr:クレアチニンクリアランス,SCr:血清クレアチニン値
p.35
● 小児における抗不整脈薬の用法・用量と参考血中濃度治療域• リドカイン適応疾患:おもに心室頻拍(心房筋に対しては作用が
弱い)静注薬:1~2 mg/kg,緩徐に静注持続静注:1~3 mg/kg/hr(15~50 μg/kg/min)参考血中濃度治療域:1~5 μg/mL肝臓で代謝後に70% が尿中に排泄され,消失半減
期は健常成人で2 時間以下と短い. • メキシレチン適応疾患:おもに心室頻拍(心房筋に対しては作用が
弱い),またQT 延長症候群(とくにLQT3)静注薬:2~3 mg/kg,緩徐に静注持続静注:0.4~0.6 mg/kg/hr経口薬:5~10 mg/kg/ 日 投与回数は分3 が一般的参考血中濃度治療域:0.5~2 μg/mL肝臓で代謝後に尿中に排泄され,消失半減期は健常
成人で10 時間と長い. • ジソピラミド適応疾患:心房不整脈,心室不整脈,上室頻拍静注薬:1~2 mg/kg,5~20 分かけて静注経口薬:5~10 mg/kg/ 日参考血中濃度治療域:2~4 μg/mL一部は肝臓で代謝され,遊離形とともに尿中に排泄
される.小児において有効な血中濃度を得るためには,成人に比して体重あたりでより多くの経口投与量を要する188).抗コリン作用による心房頻拍時の心室レートの上昇や緑内障の悪化,排尿困難,便秘,他に低血糖や無顆粒球症もみられることがある. • ピルシカイニド適応疾患: 頻脈性不整脈(上室性および心室性)静注薬:1~1.5 mg/kg,10 分かけて静注経口薬:2 mg/kg/ 日参考血中濃度治療域:0.2~0.9 μg/mLほとんどが未変化体のままで尿中に排泄され,消失
半減期は成人で約4 時間. • フレカイニド適応疾患:頻脈性不整脈(発作性心房細動・粗動,発作性上室性,心室性)静注薬:1~2 mg/kg,100~150 mg/m2,緩徐に静注経口薬:3~5 mg/kg/ 日 1 歳未満と12 歳以上では
分2 投与が行われることもある.一般的には分3 投与が行われている.小児への適応が承認されている.
参考血中濃度治療域:0.2~1 μg/mL約3 分の1 が肝臓で代謝後,約3 分の2 が未変化
体のまま尿中に排泄される. 小児における経口投与での消失半減期は1~12 歳が約8 時間,1 歳未満と12歳以上では11 時間となっている189). • プロプラノロール静注薬:0.05~0.1 mg/kg,緩徐に静注経口薬:1~4 mg/kg/ 日 投与回数は分3 が一般的参考血中濃度治療域:0.05~0.1 μg/mL • アミオダロン静注薬:初期投与量5 mg/kg(30 分以上かけて)ま
たは1 mg/kg ボーラスを5 回まで(5 分以上間隔をあけて),維持量10 mg/kg/ 日経口薬:初期投与量は10~20 mg/kg(分1~2)を
1~2 週間,維持量は5~10 mg/kg(分1~2)参考血中濃度治療域:0.5~1.0 μg/mL • ソタロール経口薬:1~2 mg/kg から開始,6 mg/kg まで増量(分2),または2 歳以上の小児に対しては体表面積換算で90~100 mg/m2/ 日(分2)で開始,最大250 mg/m2/ 日参考血中濃度治療域:? • ベプリジル適応疾患:持続性心房細動,頻脈性不整脈(心室性).
他の抗不整脈薬が使用できない,または無効の場合経口薬:1~2 mg/kg/ 日,分2参考血中濃度治療域:血中濃度が感度以下でも有効な
場合があるため,患者の状態にあわせて少量から開始することが好ましい.乳児での投与報告はほとんどない.Ca チャネル抑
制作用があるため,ベラパミルと同様に新生児,乳児早期では投与禁忌と考えたほうがよい.
HTU30ジゴキシンを小児に使用する場合,血中濃度治療域は成人と同じでしょうか?回答成人とほぼ同じと考えてよいが,早産児や腎不全
例では投与量を減量する必要があり,より頻回の血中濃度モニタリングを必要とする.解説:房室伝導抑制目的で使用され,上室不整脈すなわち房室回帰頻拍,房室結節リエントリ頻拍などに適応がある.房室ブロック,Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群,心室頻拍には不適.心不全における有用性はかなり限定的で,
HTU30
p.36
第一選択薬として用いられることはまれである.
静注薬:乳幼児0.04 mg/kg を急速飽和,学童0.03 mg/kgを急速飽和(いずれもはじめに半量,続いて残り半量を2~ 3 回に分けて6~8 時間ごとに緩徐に静注).
経口薬:乳幼児0.0075~0.01 mg/kg/ 日(維持量),学童0.005~0.0075 mg/kg/ 日(維持量),分1~2.消失半減期は乳児で20 時間,小児で40 時間(成人で36~48 時間).
血中濃度治療域:0.5~2.0 ng/mL安全域と中毒(副作用)域が接しており,治療域が狭いため,血中濃度モニタリングを行うことにより,ジギタリス中毒(悪心,嘔吐,めまい,色覚異常,筋力低下,食思不振,倦怠感)を減らすことができる.小児(とくに新生児)では中毒(副作用)域濃度が成人より高めである.急速飽和が不要のときは維持量から開始すると安全である.低カリウム血症に注意が必要である. HTU31小児の感染性心内膜炎に対しグリコペプチド系あるいはアミノグリコシド系抗菌薬を使用する場合,血中濃度治療域は成人と同じでしょうか?回答小児の場合,成人で推奨されている抗菌薬投与法
に準じるが,目標とする血中濃度(治療域)は成人と同じと考えてよい.解説:小児の感染性心内膜炎は,予防法や抗菌薬の発達にもかかわらず,罹病率,死亡率ともに高く,新生児例や乳児例も増加している.生命予後の規定因子は,乳児,大きな疣腫(>20 mm),心不全,ブドウ球菌感染である.基礎疾患の多くは先天性心疾患であるが,左心系よりも右心系の感染性心内膜炎の頻度が高く,右室流出路形成術や欠
損孔閉鎖術などに用いる人工材料感染が多いのが特徴である.心臓外科手術に起因する場合はブドウ球菌感染が多く,表6 の薬物が選択される.小児では採血が困難で,血液培養回数が少なく,原因菌が不明なことが多いため,培養陰性例には表7 のような初期治療が選択される.小児の感染性心内膜炎に対する抗菌薬治療は副作用が少なく,おおむね良好な結果を示す190–192).
新生児・小児は成人よりも体水分量が多いので,水溶性薬物の分布容積(L/kg)が大きくなる.すなわち,体重あたりの投与量を成人と同じにすると,血中濃度は上昇しない.一般に,薬物の分布容積で初期投与量が決まり,クリアランスで維持投与量が決まる.これは,小児と新生児を比較したときに,初期投与量は新生児が多く,維持投与量は小児が多い理由でもある.また,抗菌薬の多くは腎排泄によって体内から除去されるため,腎機能の発達による変動がある小児期では,消失半減期に幅がある193).このため,グリコペプチド系あるいはアミノグリコシド系抗菌薬に関しては,定期的に血中濃度を測定し,投与量と投与方法を計画することが望ましい194). ● 小児における抗菌薬の薬物動態と投与設計• バンコマイシン投与量:30~40 mg/kg/ 日,分2~4一般的には,小児15 mg/kg を8 時間ごと,新生児
10~15 mg/kg を12 時間ごと(<1 週),8 時間ごと(1 週~1 か月).バンコマイシンの血中濃度モニタリングは投与開始3 日後と7 日後に行い,以降1 週ご
HTU31
表6 感染性心内膜炎に対する抗菌薬療法
起炎菌抗菌薬投与期間
レンサ球菌1.ペニシリンG +ゲンタマイシン
2.アンピシリン+ゲンタマイシン3.セフトリアキソン+ゲンタマイシン4.バンコマイシン±ゲンタマイシンペニシリンG:4 週間
アンピシリン:4 週間セフトリアキソン:4 週間ゲンタマイシン:2 週間バンコマイシン:4 週間
ブドウ球菌(メチシリン感受性) 1,セファゾリン±ゲンタマイシン
2,バンコマイシン±ゲンタマイシンセファゾリン:4~6 週間
ゲンタマイシン:2 週間バンコマイシン:4~6 週間
ブドウ球菌(メチシリン耐性)バンコマイシン(またはテイコプラニン)
±ゲンタマイシンバンコマイシン:4~6 週間
ゲンタマイシン:2 週間
腸球菌1.アンピシリン+ゲンタマイシン
2.バンコマイシン+ゲンタマイシンアンピシリン:6 週間
ゲンタマイシン:4~6 週間バンコマイシン:4~6 週間
グラム陰性菌(HACEK)セフトリアキソン±ゲンタマイシンセフトリアキソン:4 週間
ゲンタマイシン:2 週間
(日本循環器学会.「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008 年改訂版)」192)より引用改変)
p.37
とに行って投与計画を立てる194–200).血中濃度:ピーク値25~40 μg/mL,トラフ値<10~
15 μg/mL小児のトラフ値10~15 μg/mL は,過去の小児髄膜
炎治療量(60 mg/kg/ 日)を投与した場合の血中濃度である.前向きに検討したデータはないが,小児における効果的かつ安全な血中濃度であると考えられる.小児で,成人のトラフ値である15~20 mg/mL と
した場合の有効性および安全性の検討は今後の課題である199).消失半減期:約2 時間クリアランスは腎機能に依存するため,発達に伴う
腎機能の変動が大きい小児期では,消失半減期に幅がある.新生児:6~10 時間,3 か月~3 歳:4 時間, 3 歳以上:2~3 時間副作用:ピーク値(聴覚障害と関連)60~80 μg/mL,
トラフ値(腎毒性と関連)30 mg/mL が継続すると副作用が発現すると報告されている. • テイコプラニン投与量:10 mg/kg を12 時間間隔で3 回,以後10
mg/kg/ 日を30 分以上かけて点滴静注し,以降は血中濃度により調節する.この標準投与量ではトラフ値15 μg/mL 以上を維持できない可能性があるが,小児における高用量投与についてはエビデンスがなく,今後の検討課題である201–208).新生児は初回のみ16 mg/kg,以後8 mg/kg/ 日を30 分以上かけて点滴静注する.消失半減期:50 時間以上と長く,血中濃度モニタリ
ングは投与7 日後に行う.トラフ値は20 mg/mL(できれば25 mg/mL)を目安とする.ピーク値の測定は一般的ではないが40 mg/mL 程度.とくに発達に伴う腎機能の変動が大きい小児期には,消失半減期の幅が大きい.
副作用:バンコマイシンより,比較的副作用が少ない. • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン)投与量:3~7.5 mg/kg/ 日,分3薬物の蓄積の程度が毒性と相関し,蓄積の程度はト
ラフ値から予測できるので,治療早期からピーク値とトラフ値をモニターすることが望ましい194, 209–212).血中濃度:ピーク(投与後1 時間)値3~5 μg/mL,
トラフ(投与前)値<1 mg/mL と通常の血中濃度よりも低めでよい.消失半減期:小児では約2 時間.新生児(<1 週):
3~11.5 時間,新生児(1 週~1 か月):3~6 時間,乳児:3~5 時間と長く,このため新生児期には,5~
7.5 mg/kg を24 時間ごとに投与するのが一般的であ
る.投与数日後から,潜在的な腎障害がないかをみるた
め,血中尿素窒素(blood nitrogen urea; BUN)と血中クレアチニンを定期的に測定する.通常,投与
0.5 ~1 時間後にピークの血中濃度(5~10 mg/mL)
を測定し,治療域に収まるようにする.また,投与直前にトラフの血中濃度(<2 mg/mL)を測定し, >2 mg/mL であれば薬物の蓄積を意味するため,たとえピーク値が上昇していなくとも投与量を減らすべきである. 1 日1 回の投与法は成人と限られた小児で行われて
おり,ピーク値は2~3 倍高くなるが,通常,トラフ値はきわめて低い.アミノグリコシド系抗菌薬は濃度依存性殺菌を示し,1 日1 回投与により高血中濃度を達成したほうが効果的である.また,成人では1 日1回投与のほうが3 回投与に比べて腎毒性の発現はまれであるが,小児では1 日1 回投与の経験は限られている213).
表7 感染性心内膜炎に対する抗菌薬療法(原因菌不明の場合)
原因菌抗菌薬投与期間血液培養陰性(術後例)バンコマイシン±ゲンタマイシンバンコマイシン:6~8 週間ゲンタマイシン:2 週間
血液培養陰性(非術後例)セファゾリン+ゲンタマイシン±ペニシリンGセファゾリン:6~8 週間ゲンタマイシン:2 週間ペニシリンG: 6~8 週間• 小児の1 日投与量(腎機能が正常な場合)ペニシリンG: 20 万~ 30 万U/kg/ 日,分4~6ゲンタマイシン: 3 mg/kg/ 日,分3バンコマイシン: 30~40 mg/kg/ 日,分2~4セファゾリン: 100 mg/kg/ 日,分4セフトリアキソン: 75~100 mg/kg/ 日,分2アンピシリン: 200~ 300 mg/kg/ 日,分4
p.38
3.6 妊婦・授乳婦
CQ13抗不整脈薬の妊婦および授乳婦への適応と注意点について教えてください.回答妊婦・授乳婦に対する抗不整脈薬の血中濃度モニ
タリングを検討した報告はきわめて少ない.血中濃度を測定し,一般的な成人の血中濃度治療域を参考としながら,注意深く観察する必要がある.各抗不整脈薬について,現在(2015 年)の総合的見解を表8 にまとめる.エビデンスレベルV 推奨グレードC1背景:妊婦・授乳婦に対するランダム化比較試験により血
中濃度治療域を決定することは困難である.動物モデルの結果とヒトでの使用経験の歴史から,総合的に結論づけられているのが現状である.解説:薬物動態学的背景,妊娠による循環血液量増大,血管抵抗および血管透過性の変化,心拍数増加などを含めた心血行動態の変化,そして各臓器の機能変化を考慮し,妊婦では通常よりも頻回に血中濃度を測定しておくことが望ましい.
胎児への副作用や有害事象のみならず,胎児治療を考慮する場合も含め,薬物の胎盤通過性は重要である.
授乳婦においては,乳汁/ 血漿薬物濃度比(M/P 比),相対的乳児投与量(RID)
*1,消失半減期,血中最高濃度到
CQ13
薬剤名分類妊婦投与授乳婦投与
Briggs胎盤通過性Briggs Hale母乳通過性
プロカインアミドI Limited human data No relevant animal data ○ Limited human data Probably compatible L3 ○ジソピラミドI Human data suggest risk
in 3rd trimester ○ Limited human data Probably compatible L2 ○
キニジンI Compatible ○ Limited human data Probably compatible L2 ○アプリンジンI No data No data No data No data No dataリドカインI Compatible ○ Limited human data Probably compatible L2 ○ピルシカイニド塩酸塩I No data No data No data No data No data
プロパフェノンI Limited human data Animal data suggest
moderate risk ○ Limited human data Probably compatible L2 ○
メキシレチンI Limited human data Animal data suggest low risk ○ Limited human data Probably compatible L2 ○
フレカイニドI Limited human data Animal data suggest
moderate risk ○ Limited human data Probably compatible L3 ○
シベンゾリンコハク酸I No data No data No data No data No dataピルメノールI No data No data No data No data No dataプロプラノロールII Human data suggest risk in 2nd and 3rd trimesters ○ Limited human data
Potential toxicity L2 ○
アミオダロンIII Human and animal data
suggest risk ○ Contraindicated L5 ○
ソタロールIII Human data suggest risk in 2nd and 3rd trimesters ○ Limited human data
Potential toxicity L4 ○
ベプリジル* IV No human data Animal data suggest low risk No human data No human data Probably compatible L4 ○ジゴキシン(メチルジゴキシン)強心薬Compatible ○ Compatible L2 ○ジギトキシン強心薬Compatible ○ Compatible L3 ○ *2014 年時点で米国内での流通がなくなったため,2012 年時点での記載に基づく.日本では使用されている.
表8 妊婦・授乳婦に対する抗不整脈薬投与についての総合的見解(2015 年現在)
p.39
達時間,分子量(MW,200 未満では容易に母乳に移行する)などの薬物動態学的指標を利用し,さらに児の条件・状態(早産かどうか,体重,心臓血管形態・機能,腎・肝などの多臓器および神経・代謝・血液凝固系の機能成熟度と安定度,児が固有の疾患を有する場合の特性など)を総合的に評価して,薬物使用の可否を判断する.また,妊婦・授乳婦に対して,抗不整脈薬を使用した場合に予測されるリスク・ベネフィット,そして使用しなかった場合に予測されるリスク・ベネフィットについて,母体側と胎児・児側の両者に対する説明がなされ,妊婦・授乳婦とその家族の納得のうえで使用される必要がある.
薬物は使用経験が蓄積されることでより信頼のおける情報がつくられていくため,最新情報が正しく発信・共有されなくてはならない.種々の教科書でも見解の差があるため,そのなかではBriggs 214)とHale 215)の情報を吟味し(表9,10),さらにわが国特有の条件(人種特異性, 産科循
環器科医療の日本における特異性など)が加味されたガイドライン191, 216, 217)や情報センター*2 の利用を含めて総合的に判断することが望ましい.新しい薬物でも使用経験が長くなると,情報が十分に蓄積された結果として使用可能という評価に変わってくるものもある.
*1 RID(relative infant dose):相対的乳児投与量.母乳から投与
される乳児側の薬物量(摂取量)mg/kg/日を,母体投与量(内服量)mg/kg/日で除したもの.10% 未満で授乳可, 1% 未満ではまず問題にならないとされる. *2 国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター:授乳とお薬http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/med_index.html米国医学図書館授乳支援情報,アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health; NIH): Drugs and Lactation Database (Lactmed) http://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/lactmed.htm
表9 Briggs による授乳リスク分類 (Definitions of
Breastfeeding Recommendations) Compatible母乳中に臨床的に問題となる量の薬物の排泄がない,あるいはその薬物の使用が児に薬害をもたらさない.あるいは害をもたらすとは考えられない. Hold breastfeeding薬物が母乳に移行する・しないにかかわらず,母体における薬物治療のベネフィットがきわめて重要であり,児の母乳栄養のベネフィットよりも優ると判断され,その薬物治療が完了し薬物が母体組織から消える(あるいは低濃度に達する)までのあいだ授乳は止めておく. No (limited) human data-probably compatibleヒトでのデータがないか,あるいは限られている.入手可能なデータからは児に有意なリスクがあるとは考えられない. No (limited) human data-potential toxicityヒトでのデータがないか,あるいは限られている.薬物の特性から児に対して臨床的に有意なリスクがありうると示唆される.授乳は勧められない. Human data suggest potential toxicityヒトでのデータから,児へのリスクがあり,授乳を避けるのが最善である.薬物の種類によっては,母体への短期使用は可能であるかもしれないが,乳児に対してはその副作用に対して厳密な観察を必要とする. No (limited) human data-potential toxicity (mother)ヒトでのデータがないか,あるいは限られている.薬物の特性から母体に対して臨床的に有意なリスクがありうると示唆される(必須ビタミンや栄養素の喪失など).授乳は勧められない. Contraindicatedヒトあるいはヒト以外(動物)のデータの統合により,児に高度な薬害をもたらすかもしれないと判断されるもの.また,そのような薬物が適用されること自体,母体の状態は授乳に適さないことを示唆していると考えられる.分類およびその定義は原文214)を参照し,明確な認識のもとで使用することを勧める.表10 Hale による授乳リスク分類(Dr. Hale’s Lactation
Risk Category) L1: Compatible多数の授乳中の母体が内服した薬物で,児への副作用がみられないもの.コントロールスタディで,児へのリスクが証明されない薬物,有害となる可能性がない,すなわち児に母乳を介して経口投与されることのない薬物(母乳移行なし). L2: Probably compatible (多数ではない)限られた人数の授乳中の母体が内服し,児への副作用がみられない薬物.また,母体が内服した薬物によるリスクと考えられる証拠がないもの. L3: Probably compatibleコントロールスタディはないが児に悪影響を与える可能性があるもの,あるいはコントロールスタディがあり生命に危険が及ばない最小限の副作用のみ認められたもの.この薬物は,利益が児におけるリスクよりも優ると判断される場合のみ使用されるべきである.新しい薬物は文献データがないため,いかに安全であろうとこのカテゴリーに含まれる. L4: Possibly hazardous児あるいは母乳そのもののリスクが証明されているが,母体におけるベネフィットが児のリスクにかかわらず受け入れられるもの.(母体の)生命にかかわるためにその薬物が必要である場合や,他の薬物で代用不可能である重篤な疾患の場合など. L5: Hazardous授乳中の母体においては経験的に児への有意なリスクが認められているもの,あるいは児に有意な障害を与えるリスクが高いもの.その薬物を母体が内服することによる児へのリスクは母乳栄養のベネフィットよりも明らかに重大である.授乳禁忌.分類およびその定義は原文215)を参照し,明確な認識のもとで使用することを勧める.
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4 各薬の薬物動態一覧
● 抗不整脈薬の薬物動態抗不整脈薬の消失経路と体内動態のパラメータについて表11 に示す. ● 腎障害時の抗不整脈薬参考投与量
腎障害患者における抗不整脈薬の参考投与量を表12 に示す.ただし,抗不整脈薬効果および安全性を総合的に評価しながら,至適投与量を設定しなければならない. ● 腎排泄型抗不整脈薬の薬物動態と腎障害時の変化
各種腎排泄型抗不整脈薬の採血時間,定常状態到達時間(連続投与時に採血が推奨される最低時間),薬物血中濃度モニタリング実施時の注意点,薬物動態パラメータについて表13 に示す.
• ジソピラミド尿中未変化体排泄率は50% 程度,CYP3A4 によって代謝された活性代謝物モノ-N-デアルキルジソピラミド(MND)の尿中排泄率も17~30% であわせて約80%となり,完全な腎排泄型と考えるべきである.MND は親化合物の24 倍という強力な抗コリン作用があるため218),MND 濃度が1 μg/mL 以上で抗コリン作用によ
る副作用が発現しやすい.蛋白結合率の高い薬物は血液透析(HD)によって除去されないが,ジソピラミドは蛋白結合率が変動しやすいためか,HD による除去率は明確になっていない.クレアチニンクリアランス(CCr) 50 mL/min 以上の患者での消失半減期は6~8 時間であるが,HD 患者では消失半減期は10~20 時間に延長する. • シベンゾリン腎排泄型であり,腎障害患者では急激な血中濃度上昇により意識障害を伴う低血糖などの重篤な副作用を起こしやすい219).また,尿中未変化体排泄率は約60% であるが,分布容積(Vd)が5~8 L/kg と非常に大きいため,通常の血液浄化法によって除去されない220).腎機能正常例の消失半減期は5~8 時間であるが,重度腎障害患者(CCr:10~16 mL/min)では約3~10 倍に延長する.116~198 時間と10~20 倍以上に延長したという報告もある221).腎不全患者で血中濃度が上昇し, CYP2D6 の代謝能が飽和し非線形性の薬物動態を示すことが,消失半減期の異常な延長をもたらしたと推測される221).至適用量を投与した場合の末期腎不全患者の消失半減期は約20 時間であるため,定常状態に達する時間は3~4 日以内と考えられる.
4 各薬の薬物動態一覧
表11 抗不整脈薬のおもな消失経路と体内動態パラメータ
一般名分布容積(L/kg)蛋白結合率
(%)主要消失経路代謝の比率
(%)主代謝酵素
CYP尿中未変化体排泄
率(%)消失半減期
(hr)参考血中濃度
治療域(μg/mL)
アミオダロン*1 *2 106 96肝100 3A4, 2C8 <1 14~107 日*4 0.5~2(?)ニフェカラント0.14 90肝90~抱合28~31 1~2 - *5リドカイン*1 *2 1~2 70肝95~ 3A4 <10 1~3 2~5キニジン3 80~90肝70~90 3A4 20 6~8 2~5アプリンジン*2 3 95~98肝100 2D6 <1 1~2 日0.25~1プロパフェノン*1 *2 3.7 75~88肝90~ 2D6 3 3~5 0.05~1(?)ベプリジル*2 8 99肝95~ 2D6 <1 80 0.2~0.8メキシレチン5~12 70肝90~ 2D6,1A2 6 10 0.5~2.0ジソピラミド0.6 20~75肝/ 腎40~50 3A4 48 5~9 2~5フレカイニド7~10 60肝/ 腎60 2D6 40 11~15 0.2~1プロカインアミド*2 1.7~2.4 15肝/ 腎40~50 NAT *3 60 2~3 4~10ピルメノール1~1.5 80肝/ 腎35 3A4(?) 20~30 7~10 0.4~(?)シベンゾリン7 70腎35 2D6 55~62 5~6 0.2~0.8ピルシカイニド1.5 35腎10ー75~86 4~5 0.2~0.9ソタロール1.2~2.4 10腎0ー75 7~11 ? *6 *1 活性代謝物あり, *2 非線形, *3 N-アセチル化転移酵素, *4 単回投与時は約13 時間,
*5 コマーシャルベースでは測定されていない, *6 日本人(成人)用量での定まった値はまだない.ニフェカラント以外の上記薬物はすべて特定薬剤治療管理料を算定できる. CYP:チトクロームP450
p.41
薬剤名主要消失経路透析性通常用量10 ≦CCr <50 mL/minでの用量
透析患者または10 mL/min <CCrでの用量一般名商品名キニジン硫酸塩硫酸キニジン錠・末肝-維持量:1 日200~
600 mg を分1~3常用量常用量
ジソピラミドリスモダンカプセル
肝/ 腎± 300 mg を分 3 150~200 mg を分 1~2 (20 ≦CCr <50 mL/min)
100 mg を分 1 (CCr <20 mL/min) 1 日100~150 mg を分1~3
ジソピラミドリスモダンR 1 日300 mg を分 2禁忌ジソピラミドリン酸塩リスモダンP 静注50~100 mg/ 回100 mg/ 回
シベンゾリンコハク酸塩シベノール錠腎- 1 日300 mg より投与を開始し,効果が不十分な場合には450 mg まで増量し,1 日3 回に分けて経口投与50 mg を1 日1~2 回1 日25 mg を分 1 ,透析患者は禁忌
シベノール静注1 回1.4 mg/kg適宜減量適宜減量,透析患者は禁忌
ピルメノール塩酸塩ピメノールカプセル肝/ 腎- 200 mg を分2 1 日100~150 mg を分2~3
プロカインアミド塩酸塩アミサリン錠肝/ 腎(活性代謝物:
腎80%) + 1 回0.25~0.5 g 3~6hr 毎1 回0.25~0.5 g 12hr 毎1 回0.25~0.5 g を12~24hr 毎
アミサリン注100~200 mg を1 分間に50~100 mg の速度で静注(注入総量1,000 mg まで) 1 回200~400 mg を12hr 毎1 回200~400 mg を12~24hr 毎
アプリンジンアスペノンカプセル肝- 1 日40~60 mg を分2~3常用量
アスペノン静注用1 回100 mg まで常用量
メキシレチン塩酸塩メキシチ-ルカプセル肝± 1 日300~450 mg を分 3半減期が延長し血中濃度も
上昇するため3 分の2 に
減量メキシチ-ル点滴静注添付文書参照
リドカイン塩酸塩静注用キシロカイン肝- 1 回50~100 mg, 300 mg/hr まで腎機能正常者と同じ.ただし連続投与時には腎機能低下により定常状態の活性代謝物(親化合物よりも活性は弱い)の血中濃度は,腎機能正常時に比べ2 倍高値になるため,要注意
ピルシカイニド塩酸塩サンリズムカプセル腎± 1 日150~225 mg を分3 1 日25~50 mg を分 1~2 1 日25 mg を分1
サンリズム注射液最大用量1.0 mg/kg適宜減量
フレカイニドタンボコール錠肝/ 腎- 1 日100~200 mg を分 2 1 日50~100 mg を分 1
タンボコール静注1.0~2.0 mg/kg を10 分間かけて静注(1 日150 mg まで) 50 mg/ 日から開始し,最高100 mg/ 日
プロパフェノン塩酸塩プロノン錠肝- 1 回150 mg を1 日3 回常用量
アミオダロン塩酸塩アンカロン錠肝-維持量として1 日200 mg を分 1~2常用量を慎重投与
アンカロン注添付文書参照常用量を慎重投与
ソタロール塩酸塩ソタコール錠腎+ 1 日80~320 mg を分2 3 分の1~2 に減量禁忌ベプリジル塩酸塩水和物ベプリコール錠肝- 1 日100~200 mg を分1~2常用量
表12 抗不整脈薬の消失経路,透析性,腎障害時の参考投与量(2014 年8 月現在)
本表に示したデータは編集時点の添付文書や文献調査によって得られた情報を簡潔に収載している.そのため本データが普遍的ではない可能性があることに留意し,詳細は最新の添付文書や最新の文献情報を確認されたい.ただし上記の用量設定は使用目的,病態の重症度などによって症例ごとに定めるべきものであり,普遍的でないことに留意されたい.アプリンジン,シベンゾリン,フレカイニド,プロカインアミド,プロパフェノン,メキシレチンなどはCYP2D6 によって代謝されるため,強力なCYP2D6 阻害薬であるシナカルセト,パロキセチン,キニジンなどによって,血中濃度が急上昇する可能性がある.また,アプリンジン,プロパフェノン,ベプリジルは代謝酵素が飽和して非線形の薬物動態をとる.
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分類成分名採血時間定常状態到達時間参考血中濃度
治療域(μg/mL)体内動態
t1/2β (hr) CL (mL/min) Vd (L/kg) BA (%) fe (%) PBR (%)
Ia 群プロカインアミド投与直前,透析患者では透析前2 日,透析患者では
7 ~8 日4 ~10 2 ~3 400 ~ 700 1.7 ~2.4,透析患者0.76 85 60 15
N-アセチルプロカインアミド6 ~20 6 ~10 80 ~165 1.3,透析患者
0.63 83 ~85 7 ~24 NAPA として投
与すると80% 11 ~15
ジソピラミド投与直前,透析患者では透析前2 日,透析患者では
3 ~4 日2 ~5 5 ~9 60 ~90 0.6 70 ~90約50活性代謝物
MND 17 ~30 (単独投与するとジソピラミド
より高い) 20 ~75 MND: 5 ~71, α1 酸性糖蛋白
に結合
シベンゾリンコハク酸塩投与直前,透析患者は禁忌1 ~2 日,非線形薬物動
態をとるため,血中濃度上昇時には延
長する0.2 ~0.8 5 ~6 700 ~ 900 7 83 ~92約60 70
Ic 群ピルシカイニド塩酸塩投与直前,透析患者では透析前24 時間,透析患者では
2 週間0.2 ~0.9 4 ~5 280 1.5 90 ~93 75 ~86 35 α1 酸性糖蛋白
に結合
フレカイニド投与直前,透析患者では透析前3 日,透析患者では
5 日0.2 ~1.0 11 ~15 380 ~ 600 7 ~10 70 ~95 40 60 α1 酸性糖蛋白
に結合
III 群ソタロール塩酸塩投与直前,透析患者は禁忌4 日? 7 ~11 123.4 1.2 ~2.4 90 ~100,ただし食物と同時摂取すると
20% 低下75 10%,1% 未満 と報告により異
なる
各社インタビューフォーム・添付文書をはじめ多くの文献を参考に作成した. t1/2: 消失半減期,CL:クリアランス,Vd:分布容積,BA:バイオアベイラビリティ,fe:尿中未変化体排泄率,PBR:蛋白結合率
表13 腎排泄型抗不整脈薬の薬物動態パラメータと腎障害時の変化(次ページに続く)
• プロカインアミド,N-アセチルプロカインアミドプロカインアミドの一部は肝でN-アセチル化転移酵素によりアセチル化され,未変化体として50~60% が尿中に排泄される.アセチル化された主要代謝産物N-アセチルプロカインアミド(NAPA)は7~24%(NAPAを単独投与した場合の尿中排泄率は80%)が尿中に排泄されるため,あわせると完全に腎排泄型である.腎機能正常例のNAPA の消失半減期は6.2 時間であるが, HD 患者では42 時間程度に延長するため222),腎障害患
者ではNAPA が蓄積して心室頻拍,QT 延長などの致死性の副作用を起こすことが報告されている223). • ピルシカイニド尿中未変化体排泄率は約90% と高いため,腎機能に応じた用量調節が必須である.腎機能障害患者における消失半減期が腎機能正常例に比べ,CCr 20~50 mL/ min の場合は約2 倍に,CCr 20 mL/min 未満の場合は
p.43
約5 倍に延長するため,腎機能低下に伴い減量もしくは投与間隔の延長が必要である224).α1- 酸性糖蛋白(AAG)と結合するとされているが,蛋白結合率は低いものの,炎症蛋白であるAAG も上昇しやすく,遊離形分率の低下からクリアランスが低下し血中総濃度も上昇しやすい186).腎不全患者ではAAG 濃度が上昇しやすいため,注意が必要である.HD による除去については,ピルシカイニドの蛋白結合率は35% 程度と高くないものの,高い除去率は望めず,平均32% にとどまっている225). • ソタロール
ほとんど代謝を受けず80% が未変化体として尿中に排泄され226),全身クリアランスは糸球体濾過量(GFR)と相関するため腎機能低下に伴って減量する必要がある227).腎機能正常例の消失半減期は7~18 時間であるが228),CCr 8~38 mL/min/1.73 m2 では24.2 時間, HD 患者では34 時間と,腎機能の悪化に伴い消失半減期が延長するため229),腎機能低下例では定常状態に達するには約7 日間を要する.CCr 10mL/min 未満の患者に投与すると,血中濃度がきわめて高くなる. • フレカイニド尿中未変化体排泄率は40% であり,分類としては肝腎消失型不整脈薬になる.しかし,中等度腎機能低下患者ではフレカイニドの排泄が遅延し,より重篤な腎障害患者では減量が必要である230).Vd が7~10 L/kg と大きいためHD によっても投与量の1% 以下しか除去できない231).腎機能正常例の消失半減期11.5 ± 4.2 時間に対し,軽度~中等度腎障害患者では19.9 ± 9.9 時間に延長する232).単回投与後の腎機能正常例の消失半減期約11 時間に対し中等度~末期腎障害患者(CCr 4~41 mL/min/m2),末期腎障害患者(末期腎不全,CCr <4 mL/min/m2)ではそれぞれ,平均16.8 時間,平均25.8時間に延長するため233),定常状態に達するには3~5日間を要する.
5 各薬の薬物相互作用一覧
不整脈治療中に注意すべき薬物相互作用は,以下の3 つに大別される. 1 QT 延長作用を有する薬剤との併用
抗不整脈薬の併用の有無にかかわらず,病態としても注意が必要なもの.バルデナフィル,モキシフロキサシン,トレミフェン,フィンゴリモドなど. 2 薬力学的な相互作用
QT 延長とも関連するが,b 遮断薬など心機能を抑制する薬物との併用にも注意が必要である. 3 薬物動態学的な相互作用
血中濃度の上昇による副作用発現,もしくは血中濃度の低下による効果減弱が認められる.抗不整脈薬の主要代謝酵素,およびTDM 対象薬の血中濃度に対して顕著な影響が認められている薬物の一覧を示す(表2[14ページ参照],表14).
5 各薬の薬物相互作用一覧
薬物血中濃度モニタリング実施時の注意点
• 親化合物プロカインアミドと活性代謝物N-アセチルプロカインアミド(NAPA)の活性比は等しく,プロカインアミドの治療域は4 ~10 μg/mL と考え,NAPA の治療域は7 ~15 μg/mL とされている.約25% が活性代謝物のNAPA になる.肝のアセチル化酵素に遺伝子多型があり,SLE はslow acetylatorで高頻度に発生.Rapid acetylators は40%がNAPAに代謝される. • 尿中未変化体排泄率は50% 程度であるが活性代謝物NAPA の尿中排泄率は80% と高いため,腎不全ではNAPA の蓄積に要注意. • 重篤な中毒性副作用としてQT 延長に伴うtosades de pointes,不整脈,全身性エリテマトーデス様症状などがある. • CYP3A4 によって生じる活性代謝物モノ-N-デアルキルジソピラミド(MND)にも抗不整脈作用があり,かつ強力な抗コリン作用(親化合物の24 倍)をもつためMND 濃度が1μg/mL 以上で抗コリン作用の副作用が発現しやすい. α1- 酸性糖蛋白と結合するため,蛋白結合率が変動しやすく,蛋白結合の飽和により非線形薬物動態を示す. • 透析患者ではt1/2 が10 ~20hr に延長し,活性代謝物のt1/2 はさらに延長する.腎障害患者では低血糖を起こすことがあり,時として遊離形薬物濃度の測定が必要である.また可能であればHPLC 法により代謝物も同時測定する. • 重篤な中毒性副作用としてQT 延長に伴うtosades de pointes,強力な抗コリン作用,低血糖などがある. • 尿中未変化体排泄率が約60% であるため血清クレアチニン(Cr)1.3 ~2.9 mg/dL で半減期が2 倍,血清Cr >3 mg/dL で半減期が3 倍に延長する. • Vd が5 L/kg と大きいため,いかなる血液浄化法でも効率的に浄化することは不可能であり,透析患者では意識障害を伴う低血糖を起こすおそれがあるため禁忌になっている. • CYP2D6 によって代謝され,代謝能が飽和し非線形性の体内動態をとるため,非腎クリアランスの個人差が大きい. • 腎障害患者には腎機能に応じた投与設計が必須で,透析患者では25 mg/ 日から開始する. • 炎症蛋白であるα1-酸性糖蛋白も上昇しやすいため,遊離形分率の低下からクリアランスが低下し血中濃度も上昇しやすい. • 安全性を考慮して血中濃度治療域0.5 μg/mL 以下を目安とすることがある.重篤な中毒性副作用として不整脈,心不全悪化などがある. • CYP2D6 で代謝されM-1(脱アルキル化体)になる.M-1 には未変化体の2分の1 の活性があるが,血中では大部分が抱合体として存在するため,薬物反応への寄与は少ない.CYP2D6 によって代謝されるため,用量と血中濃度の個体間変動が大きく,常用量の投与でも中毒(副作用)域に達した報告がある. • b 受容体遮断作用(クラス II 作用)とK チャネル遮断作用(クラス III 作用)を併せもつ. • 重篤な中毒性副作用としてQT 延長に伴うtosades de pointes,心不全などがある.
p.44
表14 抗不整脈薬の血中濃度に影響を及ぼす薬物
抗不整脈薬併用薬影響相互作用の要因
ジソピラミドカルバマゼピン約50% の血中濃度低下234–236)代謝酵素誘導
リファンピシン血中濃度低下代謝酵素誘導フェニトイン血中濃度低下代謝酵素誘導エリスロマイシンQT 延長を伴う重篤な副作用発現237)代謝酵素阻害クラリスロマイシンQT 延長を伴う重篤な副作用発現238)代謝酵素阻害インジナビル約3 倍の血中濃度上昇239)代謝酵素阻害サキナビル血中濃度上昇代謝酵素阻害リトナビル血中濃度上昇代謝酵素阻害ネルフィナビル血中濃度上昇代謝酵素阻害
メキシレチンリファンピシン約50% の血中濃度低下240, 241)代謝酵素誘導
フェニトイン血中濃度低下代謝酵素誘導フェノバルビタール血中濃度低下代謝酵素誘導
アプリンジンアミオダロン約1.5 倍の血中濃度上昇242)代謝酵素阻害
ベラパミル約2 倍の血中濃度上昇243)代謝酵素阻害ジルチアゼム約2 倍の血中濃度上昇244)代謝酵素阻害
ピルシカイニドセチリジン腎クリアランスが約40% 低下245)腎排泄阻害
フレカイニドシメチジン約1.3 倍のAUC 上昇246)代謝酵素阻害
アミオダロン約1.5 倍の血中濃度上昇247)代謝酵素阻害
プロカインアミドアミオダロンプロカインアミドを約20% 減量248, 249)腎排泄阻害
トリメトプリム約1.5 倍の血中濃度上昇250, 251)腎排泄阻害オフロキサシン約1.2 倍の血中濃度上昇252, 253)腎排泄阻害レボフロキサシン血中濃度上昇腎排泄阻害シメチジン約1.3 倍の血中濃度上昇254–256)腎排泄阻害
プロパフェノンシメチジン約1.5 倍の血中濃度上昇239)代謝酵素阻害
リファンピシン血中濃度低下257, 258)代謝酵素誘導アミオダロン血中濃度上昇の可能性あり239)代謝酵素阻害キニジン血中濃度上昇代謝酵素阻害
アミオダロングレープフルーツジュース約2 倍の濃度上昇259)代謝酵素阻害(消化管)ソタロールマグネシウム・アルミニウム同時服用で約30% の血中濃度低下2 時間空けて服用260)消化管吸収阻害
ベプリジルインジナビル約3 倍の血中濃度上昇239)代謝酵素阻害
サキナビル血中濃度上昇代謝酵素阻害リトナビル血中濃度上昇代謝酵素阻害ネルフィナビル血中濃度上昇代謝酵素阻害
キニジンアミオダロンキニジンを約40% 減量249, 261–265)代謝酵素阻害
イトラコナゾール1.6 倍の血中濃度上昇266)代謝酵素阻害ケトコナゾール血中濃度上昇263)代謝酵素阻害エリスロマイシン血中濃度上昇に伴うQT 延長264)代謝酵素阻害フェニトイン約50% の血中濃度低下265, 267)代謝酵素誘導フェノバルビタール約50% の血中濃度低下268, 269)代謝酵素誘導リファンピシン約50% の血中濃度低下270–272)代謝酵素誘導カルバマゼピン約30% の血中濃度低下273)代謝酵素誘導シメチジン約1.2 倍の血中濃度上昇274, 275)代謝酵素阻害フルボキサミン肝クリアランスが29~44% 低下276)代謝酵素阻害
AUC:血中濃度-時間曲線下面積
p.45
著者雇用または指導的地位(民間企業)株主特許権使用料謝金原稿料研究資金提供奨学(奨励)寄附金/
寄附講座その他の報酬配偶者・一親等内の親族,または収入・財産を共有する者についての申告
班長:青沼 和隆MSDアクテリオンファーマシューティカルズジャパンアステックアステラス製薬大塚製薬セント・ジュード・メディカル第一三共武田薬品工業田辺三菱製薬帝人ファーマディーブイエックス日本ベーリンガーインゲルハイムバイエル薬品ブリストル・マイヤーズボストン・サイエンティフィック・ジャパン筑波記念病院
班長:志賀 剛第一三共ブリストル・マイヤーズトーアエイヨーテルモエーザイ第一三共班員:新 博次第一三共ブリストル・マイヤーズ
班員:池田 隆徳田辺三菱製薬第一三共小野薬品工業バイエル薬品ブリストル・マイヤーズファイザー第一三共ブリストル・マイヤーズ田辺三菱製薬日本ベーリンガーインゲルハイム班員:越前 宏俊科研製薬班員:栄田 敏之大正富山医薬品東和薬品
班員:清水 渉スズケンダイヤメディカルネット第一三共日本ベーリンガーインゲルハイムブリストル・マイヤーズファイザーバイエル薬品田辺三菱製薬小野薬品工業日本電信電話第一三共日本ベーリンガーインゲルハイムバイエル薬品MSD小野薬品工業大塚製薬アストラゼネカ田辺三菱製薬エーザイ班員:戸塚 恭一富山化学工業
班員:萩原 誠久日本ベーリンガーインゲルハイムブリストル・マイヤーズトーアエイヨーアステラス製薬日本ベーリンガーインゲルハイム塩野義製薬エーザイ田辺三菱製薬武田薬品工業大塚製薬第一三共班員:林 秀晴ジェンザイム・ジャパン第一三共班員:平尾 見三バイエル薬品ブリストル・マイヤーズ第一三共
付表 循環器薬の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン:班構成員の利益相反(COI)に関する開示
p.46
著者雇用または指導的地位(民間企業)株主特許権使用料謝金原稿料研究資金提供奨学(奨励)寄附金/
寄附講座その他の報酬配偶者・一親等内の親族,または収入・財産を共有する者についての申告
班員:松本 直樹第一三共バイエル薬品ファイザーブリストル・マイヤーズ
班員:渡邉 英一バイオトロニックジャパン日本ベーリンガーインゲルハイムファイザー武田薬品工業日本ライフライン日本メドトロニックボストン・サイエンティフィック ジャパンバイオトロニックジャパンセント・ジュード・メディカル第一三共日本ベーリンガーインゲルハイム協力員:杉山 篤大塚製薬富士マイクラ協力員:関口 幸夫ディーブイエックスセント・ジュード・メディカル
協力員:髙橋 尚彦ブリストル・マイヤーズファイザー日本メドトロニックバイエル薬品第一三共日本ベーリンガーインゲルハイム田辺三菱製薬武田薬品工業武田薬品工業大日本住友製薬第一三共日本ベーリンガーインゲルハイムバイエル薬品アステラス製薬田辺三菱製薬
協力員:野上 昭彦日本メドトロニックセント・ジュード・メディカルジョンソン・エンド・ジョンソン日本メドトロニック協力員:松本 宜明中外製薬法人表記は省略.上記以外の班員・協力員については特に申告なし.申告なし班員:市田 蕗子なし班員:上野 和行なし班員:菅原 満なし班員:土下 喜正なし班員:土岐 浩介なし班員:長谷川 純一なし班員:前田 頼伸なし協力員:笠井 英史なし協力員:篠原 徳子なし協力員:鈴木 敦なし協力員:住友 直方なし協力員:橋口 正行なし協力員:平田 純生なし協力員:湯川 栄二なし
p.47
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