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IgG4関連心血管・後腹膜疾患 診断基準(2023年改訂) 日本循環器学会・2023・6 ページ · 循環器(その他・小児・妊娠・リハ)
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2023 年改訂 IgG4 関連心血管/後腹膜疾患 診断の指針

Validation of the Diagnostic Criteria for IgG4-related periaortitis/periarteritis and retroperitoneal fibrosis(IgG4-PA/RPF) 2018, and Revised 2023 Version for IgG4-Related

cardiovascular/Retroperitoneal Disease

(Japanese Circulation Society・厚生労働科学研究班 共同ワーキンググループ)
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1 IgG4 関連疾患とは

Immunoglobulin G4 (IgG4) 関連疾患は、血清IgG4 値高値と組織への IgG4 陽性形質細胞の浸潤による腫瘤あるいは隆起性病変の形成で特徴づけられる疾患であり、浜野らが 2001年に自己免疫膵炎の症例で報告したことが最初である。その後、同様の病態が全身諸臓器で発生することが明らかになり、IgG4 関連疾患 (IgG4-related disease) という疾患概念が提唱された。

IgG4 関連疾患は、一般的に、ステロイド治療が奏効するが、中には治療抵抗性のものや、再発を繰り返すものが存在し、罹患臓器における線維化の進行により重篤な機能障害を遺すこともある。もっとも、臓器障害や自覚症状がない場合には、必ずしも薬物治療の適応にならないケースも存在する。このことから、IgG4 関連疾患は、2017 年に指定難病 (指定難病 300) に指定された。本疾患の診断を適正に行い、治療適応について判断することが、以前にもまして求められている。

2 IgG4 関連疾患の診断

2011 年に報告された包括診断基準では、画像を含む臨床所見、血IgG4 値高値(135mg/dL 以上)、組織学的所見(著明なリンパ球、IgG4 陽性形質細胞浸潤と線維化) の 3 要素を満たした場合に、IgG4 関連疾患と確定診断をすることとされている。一方、IgG4 関連疾患は、発生する臓器によって、臨床的ないしは画像的に特徴を有することがあるため、そのことを勘案した、臓器特異的な診断基準がさまざまな臓器で設定されている。

3 IgG4 関連心血管および後腹膜線維症に対する臓器特異的な診断基準改定の必要性

包括的診断基準では病理組織診断が必須であったが、IgG4 関連大動脈周囲炎および動脈周囲炎では現実的に生検が困難である場合が多い。そのため、2018 年にIgG4 関連大動脈周囲炎/動脈周囲炎に対して、病理組織診断を得られなくても診断が可能となる臓器特異的診断基準が設定された。その際に腹部大動脈周囲炎は、臨床的に後腹膜線維症との境が明らかでないことから、診断基準の対象を、IgG4 関連大動脈周囲炎/動脈周囲炎および後腹膜線維症と設定した。その後、症例の蓄積が進み、前回診断基準の適切性を見直す時期に際し、心膜発生のIgG4関連疾患の報告など、診断基準の対象を広げる必要性があった。今回、最新知見を反映し、2023年改訂 IgG4 関連心血管(大動脈周囲炎/動脈周囲炎、心膜炎)および後腹膜線維症として改訂版を作成した。適用対象は、大動脈・中~大動脈分枝・冠動脈・腎盂・尿管周囲・骨盤/傍脊椎後腹膜組織、および心膜を含む心血管/後腹膜領域病変である。この作業は、「IgG4 関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究」班 (中村

班) 並びに 「オールジャパン体制によるIgG4 関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究」班(川野班)の循環器分科会メンバーらが策定に従事した。
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4 2018 年版からの主な改訂点

画像所見の拡張:新たに心膜肥厚/心嚢液貯留を陽性所見として明記した。病理所見の補強:従来の花筵状線維化(storiform fibrosis: SF)・閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis: OP)に加え、好酸球浸潤(>5/HPF)とリンパ濾胞を特徴所見として追加した。他臓器所見の扱い:包括診断(CD)基準/臓器別基準に基づく「確診」だけでなく「準確診(probable)」診断も「他臓器病変あり」として認めた。適用臓器の明確化:冠動脈、後腹膜狭義病変(腎盂・尿管・骨盤後腹膜)などのサブグループで性能を提示した。

5 診断項目(A:診断因子)

A1. 画像所見(以下のいずれか) a) 大動脈および主分枝の周囲に低吸収性の肥厚/軟部陰影(※1–4) b) 腎盂壁/尿管周囲の軟部陰影(※5) c) 骨盤・傍脊椎の後腹膜軟部陰影d) 心膜肥厚または心嚢液貯留(※6) A2. 血清学的所見血清IgG4 高値(≥135 mg/dL) (※研究段階ではIgG4/IgG 比>8%の情報も参考所見となりうるが、本指針の必須代替とはしない) A3. 病理組織所見(心血管/後腹膜病変より) a: (i)+(ii)+ (iii/iv) a’: (i)+(ii)+ (v/vi) b: (i)+(ii) (i) リンパ球・形質細胞浸潤と線維化(※7–9) (ii) IgG4 陽性形質細胞浸潤:・手術標本:>30/HPF かつ IgG4/IgG 比 >40%・生検標本:>10/HPF かつ IgG4/IgG 比 >40% (iii) 花筵状線維化(Storiform fibrosis: SF) (iv) 閉塞性静脈炎(Obliterative phlebitis: OP) (v) 好酸球浸潤:>5/HPF (vi) リンパ濾胞形成

A4. 他臓器病変眼病変、唾液腺、膵、胆道、腎、肺等において、包括的診断(CD)基準または臓器別基準に基づく「確診」または「準確診(probable)」の診断が得られている場合。

6 診断区分(B)
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確診(Definite): A1(a/b/c/d)+A3a  / A1(a/b/c/d)+A3a’  / A1(a/b/c/d)+A2+A4準確診(Probable): A1(a/b/c/d)+A3b  / A1(a/b/c/d)+A4  / A3a  / A3a’疑診(Possible): A1(a/b/c/d)+A2  / A3b非該当(Unlikely):上記に該当しない、または除外項目に合致運用上の要点:臨床意思決定では「確診・準確診」をIgG4-RD 相当として扱うことで感度と安全性のバランスが向上する。一方、「疑診」症例の解釈は今後の検証を要する。

7 付記(C:補足・除外)

(画像・病理の補足) ※1 大動脈本幹では内腔狭窄は通常みられないが、中等度血管では狭窄を伴い得る。※2 動脈瘤様拡張を伴うことがある。※3 以下の病態の除外が必要である:動脈硬化、解離、感染(細菌・結核・梅毒等)、他の血管炎、悪性腫瘍(悪性リンパ腫を含む)、Erdheim-Chester 病。※4 病変は一般に中~大血管を主体とする。※5 腎盂~上部尿管に好発する。尿路閉塞の評価を行う。※6 心膜所見では、感染性・自己免疫性・腫瘍性疾患の厳密な除外が必要である。※7 動脈周囲領域や動脈外膜でリンパ球・形質細胞浸潤を認める。胸部大動脈では中膜血管炎を伴うことがある。※8 OP はEVG 染色が鑑別に有用である。※9 壊死・肉芽腫・好中球優位浸潤は通常乏しい。これらを認める場合は鑑別を再検討する必要がある。

(パフォーマンス概略)

改訂版は、感度 77.2%/特異度 94.7%(検証群;確診+準確診を陽性と定義)を示し、2018年版より感度が改善した。

心膜病変の追加、好酸球浸潤・リンパ濾胞の追加、他臓器「準確診(probable)」承認が主に診断性能の向上に寄与した。

まれにMimicker(慢性大動脈解離、濾胞性リンパ腫など)が陽性判定となる可能性があり、各所見を総合的に俯瞰した上での除外診断が重要である。

(サブグループの注意)

狭義の後腹膜病変(血管病変を除く)では感度・特異度がやや低下し得るため、臨床経過(尿路閉塞、腎機能)、介入方針(グルココルチコイド(GC)治療+泌尿器的対応)を含めて、本基準とは
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別に基準を検討する余地があるかもしれない。

冠動脈病変では、狭窄・瘤化・びまん性壁肥厚が知られ、GC 反応性であっても瘤内径増大のリスクがあり、適時の経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous coronary intervention: PCI)/外科治療の併用を考慮する。

令和5 年 12 月 18 日「IgG4 関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究」班 (中村班)「オールジャパン体制によるIgG4 関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究」班(川野班)循環器分科会長 笠島 里美
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Japanese Circulation Society・厚生労働科学研究班

「IgG4 関連疾患の診断基準ならびに診療指針の確立を目指す研究」班

共同ワーキンググループにおけるメンバーリスト

網谷 英介 (東京大学医学部 循環器内科)石坂 信和 (社会福祉法人 同愛記念病院 健診センター)伊藤 栄作 (東京慈恵会医科大学附属柏病院 血管外科)伊澤 淳   (信州大学 医学部保健学科)小澤 真希子 (⻑野県立木曽病院 内科)小櫃 由樹生 (国際医療福祉大学三田病院 血管外科)笠島 里美 (金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 病態検査学)笠島 史成 (金沢医療センター 心臓血管外科)勝間田 敬弘(大阪医科薬科大学 医学部 外科学講座 胸部外科学教室大阪医科薬科大学病院 心臓血管外科)川野 充弘 (金沢大学 リウマチ・膠原病内科)嶋田 正吾 (東京大学 心臓外科)須原 正光 (国際医療福祉大学三田病院血管外科)高橋 正明  (信州大学 画像医学教室)高山 利夫 (東京大学 血管外科)堂本 由佳子(日本医科大学付属病院 病理診断科)藤永 康成  (信州大学 画像医学教室)松本 康    (金沢医療センター 心臓血管外科)真鍋 徳子 (自治医科大学 総合医学第一講座放射線科)水島 伊知郎(金沢大学 リウマチ・膠原病内科)森景 則保 (山口大学 器官病態外科学)

オブザーバー菅野 祐幸 (信州大学学術研究院医学系 医学部 病理組織学教室)

(五十音順,敬称略)