p.1
1 / 4平成 28 年 11 月 14 日 制定
平成 30 年 12 月 1 日 改訂令和 4 年 6 月 1 日 改訂令和 7 年 11 月 19 日 改訂
FFR-CT の適正使用指針
はじめにFFR-CT は、冠動脈 CTA 画像に数値流体力学を適用して FFR 値を算出するため、CT による冠動脈の解剖学的評価に加えて、非侵襲的に機能的虚血評価も可能となった検査法である。ハートフローFFR-CT は 2011 年 7 月に CE マークを取得し欧州で承認、2014 年 11 月にDeNovo 510k でFDA の承認を受けている。本邦においても、2016 年 11 月 14 日付で薬事承認され、2018年 12 月より保険償還されている。
FFR-CT のエビデンスNXT 試験において、侵襲的 FFR で示された虚血を標準として、冠動脈 CTA と FFR-CT の比較をすると、254 例の解析で中等度狭窄病変に対して特異度を著しく上昇させることができ(32% vs 79%)、陽性的中率を向上させることができた(37% vs 63%)(1)。中央値 4.7 年のフォローを行った 206 例のサブ解析では、FFR-CT が陰性の場合、心臓死又は心筋梗塞は認められなかった。FFR-CT は、主要評価項目の予測因子として冠動脈 CTA よりも優れていた(C 統計量:FFR-CT 0.76 vs CTA 0.54; p<0.001)(2)。PLATFORM 試験では、冠動脈疾患の診断において、非侵襲的検査で始める群をFFR-CT と従来法で比較し、侵襲的検査を行う予定の群を FFR-CT と従来法で比較した試験である。侵襲的検査の前に FFR-CT を行うことで 61%の侵襲的冠動脈造影が不要となった(3)。1 年後のフォローでは、FFR-CT の導入で心血管イベントを増加させなかった(4)。ADVANCE 試験は、冠動脈 CTA で決定された治療方針が、FFR-CT を追加することでどう変化したかを調べるレジストリー試験で 5,083 例が登録された。コアラボ解析で、冠動脈 CTA の段階で内科治療 14%、追加検査必要 53%であったが、FFR-CT を追加することで、内科治療 53%、追加検査必要 0%となった。実際には内科治療が 75%の症例で行われた。全体ではFFR-CT を追加することで、66.9%の症例に治療方針変更が行われた。また FFR-CT による FFR 値が 0.8 超であった症例は 90 日の心血管イベントはゼロであったが、0.8 以下の症例では 0.6%に主要心血管イベントが発生した(5)。1 年フォローのデータでは、FFR-CT による FFR 値が 0.8 以下の症例では心血管死亡+心筋梗塞が有意に高かった(6)。PACIFIC 試験では、侵襲的 FFR で示された虚血を標準として、冠動脈 CTA、SPECT, PET, FFR- CT を比較し診断の精度を検討した。病変枝あたりの AUC は、FFR-CT 0.94, PET 0.86、冠動脈CTA0.83、SPECT 0.70 であり、FFR-CT が最も精度が高かった(7)。またFFR-CT の病変枝あたりの診断精度、感度、特異度は、87%, 90%, 86%であった。
p.2
2 / 4
ガイドラインの位置づけ2021 AHA/ACC/ASE/CHEST/SAEM/SCCT/SCMR ガイドライン(以下、2021 Chest Pain ガイドライン)では(8)、「安定した胸痛を有し、CAD が既知ではない中高リスク患者にとって、冠動脈 CTA はエビデンスレベル A の Class I として推奨されている。FFR-CT については、「急性の胸痛がある中等度リスクの例で冠動脈 CTA 上冠動脈近位部から中部に 40%から 90%の狭窄を認める場合」および「安定した胸痛がある中等度リスクの症例で、冠動脈 CTA 上冠動脈近位から中部に 40%から 90%の狭窄を認める場合」に Class2a のエビデンスレベル B-NR で推奨されている。2022 年 JCS ガイドラインフォーカスアップデート版「安定冠動脈疾患の診断と治療」において(9)、FFR-CT は「冠動脈 CTA の所見で結論が得られない場合は,補完的な機能的検査(機能的イメージングや FFR-CT)を考慮する」とクラス IIa, エビデンスレベル B で推奨されている。日本医学放射線学会画像診断ガイドライン 2021 年版(第3版)(10)では、労作性狭心症の精査で行った冠動脈 CTA で intermediate stenosis を認めた場合、機能検査として FFR-CT を行うことを弱く推奨する(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:強(A )、合意率:80%)とされている。
適応と除外基準【適応基準】国内外の最新のガイドラインに従うこと。2021 Chest Pain ガイドラインおよび 2022 年 JCS ガイドラインにおいて、症状、年齢、性別などによる事前確率に基づいて診断の方法を選択することが推奨されている。冠動脈 CTA の推奨は中等度リスクの安定冠動脈疾患と急性の胸痛症例であり、その所見のみで結論が得られない時にFFR-CT が推奨されている。
【除外基準】1)冠動脈 CTA が不適切な病態では除外
*事前確率が著しく低い、または著しく高い場合*急性冠症候群で時間的に冠血行再建が優先される場合*血行動態が不安定で CT を施行するのが不適切な場合2)FFR-CT が技術的に解析できない場合は除外
*CT 画像の質が低い*ステントが冠動脈 2 枝以上に植え込まれている*ステントが左主幹部に植え込まれている*冠動脈バイパスグラフトが開存している*複雑先天性心疾患の合併*過去 30 日以内の心筋梗塞
p.3
3 / 4
【FFR-CT 解析結果に信頼性を欠く可能性のある病態】
*ペースメーカー又は体内除細動リードを有する患者*人工心臓弁置換後の患者*CT データの取得を妨げる不整脈又は頻脈を有する患者*高度石灰化病変を有する患者*ボディマス指数(BMI)>35 の患者*硝酸薬が禁忌の患者これらの病態では、有益性を考慮し適応を判断する。
留意点1)医療機関にて管理しているDICOM データには個人情報も含まれているため、FFR-CT の解
析施設へ冠動脈 CTA の DICOM データを送信する際には、個人情報を削除すること。ただし、医療機関が個人情報を削除した場合、患者を特定することができるのは医療機関のみであることから、患者データの取り違いに留意すること。2)冠動脈 CTA の同意書の他に、FFR-CT の同意書を取得すること。3)FFR-CT は、冠動脈 CTA よりも診断精度が向上したが、100%になったわけではない。臨床
的に疑いのある症例に対しては、総合的な診断を行うよう心掛ける。4)本適正使用指針は、少なくとも2年に一度、或いは必要に応じて、適時改訂を行う。
p.4
4 / 4
文献
1 Norgaard BLet al. Diagnostic performance of noninvasive fractional flow reserve derived from
coronary computed tomography angiography in suspected coronary artery disease: the NXT trial (Analysis of Coronary Blood Flow Using CT Angiography: Next Steps). J Am Coll Cardiol 2014;63:1145-1155.
2 Ihdayhid ARet al. Prognostic Value and Risk Continuum of Noninvasive Fractional Flow Reserve
Derived from Coronary CT Angiography. Radiology 2019;292:343-351.
3 Douglas PSet al. Clinical outcomes of fractional flow reserve by computed tomographic
angiography-guided diagnostic strategies vs. usual care in patients with suspected coronary artery disease: the prospective longitudinal trial of FFR(CT): outcome and resource impacts study. Eur Heart J 2015;36:3359-67.
4 Douglas PSet al. 1-Year Outcomes of FFRCT-Guided Care in Patients With Suspected Coronary
Disease: The PLATFORM Study. J Am Coll Cardiol 2016;68:435-445.
5 Fairbairn TAet al. Real-world clinical utility and impact on clinical decision-making of coronary
computed tomography angiography-derived fractional flow reserve: lessons from the ADVANCE Registry. Eur Heart J 2018;39:3701-3711.
6 Patel MRet al. 1-Year Impact on Medical Practice and Clinical Outcomes of FFRCT: The
ADVANCE Registry. JACC Cardiovasc Imaging 2020;13:97-105.
7 Driessen RSet al. Comparison of Coronary Computed Tomography Angiography, Fractional
Flow Reserve, and Perfusion Imaging for Ischemia Diagnosis. J Am Coll Cardiol 2019;73:161-
173 8. Gulati Met al. 2021 AHA/ACC/ASE/CHEST/SAEM/SCCT/SCMR Guideline for the
Evaluation and Diagnosis of Chest Pain: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines. Circulation 2021;144:e368-e454.
9 Nakano Set al. JCS 2022 Guideline Focused Update on Diagnosis and Treatment in Patients
With Stable Coronary Artery Disease. Circ J 2022.
10 日本医学放射線学会 画像診断ガイドライン 2021 年版(第 3 版)金原出版株式会社