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循環器病におけるデジタル技術を活用した ヘルスケアサービスに関する指針 編集 「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する指針」作成班 発行 日本循環器学会
循環器病におけるデジタル技術を活用した ヘルスケアサービスに関する指針 編集 「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する指針」作成班 発行 日本循環器学会
序 文 スマートフォンの普及をはじめ,ウェアラブルデバイスやIoT(internet of things)の利用拡大,さらに機械学習や生成AI(artificial intelligence)に代表される先端技術の進歩により,デジタル技術の革新が人々の生活様式に抜本的な変化をもたらしている。これらのデジタル技術は,ヘルスケア・医療領域にも活用されていくことが強く期待されている。新しい技術をヘルスケア領域に,サービスとして提供・利用する際にはさまざまな法的・社会的課題も考慮する必要があり,そのための多くの方針・指針などが公表されている。特に国民皆保険制度を有するわが国において,このようなデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの開発・利用を行う際には,医療と社会制度との関わりについて慎重に判断することが求められる。しかしながら,実際の医療現場においては既にデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを活用する循環器病患者が少なからず存在しており,喫緊の課題として,それらのヘルスケアサービスが循環器病患者に対して実際に有効かどうかというエビデンスの整理が必要とされている。 また,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスのさらなる開発や利用促進は,既にエビデンスに基づく診療がなされている循環器病患者においても,予後改善や生活の質(quality of life:QOL)の向上につながることが期待されている。これを実現するためには,サービス利用者(市民,保険者,企業,自治体など)がエビデンスに基づいてサービスを利用し,サービス提供者(開発・提供する事業者,研究機関など)がエビデンス構築を通じてサービスの質を高めることが重要である。そのために,サービス利用者には,適切にヘルスケアサービスを選択するうえで必要な専門的・科学的な情報を整理して提供すること,サービス提供者には,ヘルスケアサービスのエビデンスを構築するための,現状のエビデンスとその評価指標や研究デザインの例を示すことが必要と考えられた。このような背景の下,令和4年度より,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)による「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備事業)」が開始された。本事業の目的の一つは,科学的エビデンスに基づくヘルスケアサービスの社会実装を推進するための基盤的な指針を整備することである。その一環として,日本循環器学会学術委員会で,令和5年度には研究班「循環器疾患におけるヘルスケアサービスの有効性に関するエビデンスの整理と指針作成」が開始された。本研究班では,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」に従い,システマティックレビューを含む評価を経て,修正型Delphi法を用い,エビデンスの確実性と介入のリスクおよびベネフィットを考慮して指針の推奨を決定した。実際には,エビデンスが十分に蓄積されていない領域も多く,推奨として明確に示せたものは一部に限られたが,多くの期待される領域や介入方法については本文中に記載し,今後の研究課題としてFuture Research Question(FRQ)の形で提示した。 最後に,作成にあたり関連学会・団体,行政,産業界,患者・市民の皆様からの知見と助言に深謝する。今後もパブリックコメントなどを通じて改善を重ね,循環器をはじめとする疾患領域を対象としたヘルスケアサービスの適正な社会実装とアウトカム向上に資する指針として,継続的に更新していく予定である。 2026年3月 「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する指針」作成班 班長 水野 篤
刊行に寄せて わが国において,脳卒中や心臓病などの循環器病は,悪性新生物に次ぐ主要な死因であると同時に,介護が必要となる最大の要因の一つでもあります。超高齢社会を迎えた現在,循環器病の克服は,国民の健康寿命の延伸と社会保障制度の持続可能性を担保する上で,喫緊の課題となっています。2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(循環器病対策基本法)」が施行され,国を挙げて予防から治療,社会復帰支援に至る体制整備が進められてきました。 しかしながら,循環器病の予防や再発予防,そして長期にわたる療養支援は,医療機関の中だけで完結するものではありません。患者さんや市民の方々の日々の生活習慣,すなわち食事,運動,睡眠,服薬管理などが予後を大きく左右します。近年,スマートフォンの普及やウェアラブルデバイスの進化,そしてAI(人工知能)技術の飛躍的な発展により,これら日常生活のデータを活用した「デジタル技術を活用したヘルスケアサービス」が急速に拡大しています。これらは,従来の医療がカバーしきれなかった「生活の場」における介入を可能にし,循環器病対策の新たな切り札として大きな期待が寄せられています。 一方で,市場には多種多様なサービスが溢れ,その品質や科学的根拠(エビデンス)は玉石混交の状態にあります。公的医療保険の下で厳格に審査される「医療機器」とは異なり,ヘルスケアサービスは開発の自由度が高い反面,利用者がその有効性や安全性を判断することは容易ではありません。また,開発を行う企業側にとっても,医学的に妥当なサービスを設計するための指針が不足しているという課題がありました。 こうした背景の下,日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け,日本循環器学会を中心に関連学会や多職種の専門家が結集し,本指針「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する指針」を策定いたしました。本指針は,心血管疾患,心不全,脳卒中,不整脈,成人先天性心疾患といった主要な循環器病を対象に,現時点での科学的エビデンスを体系的に整理したものです。特に,医療保険外のサービス領域(いわゆるヘルスケア産業)に焦点を当て,利用者が適切なサービスを選択するための「ものさし」を提供するとともに,開発者が目指すべき方向性を示しています。 本指針が,自治体や企業,保険者の方々にとっては,住民や従業員の健康を守るための良質なサービスを選定する一助となり,開発企業の方々にとっては,医学的エビデンスに基づいた価値あるイノベーションを創出するための羅針盤となることを強く願っております。そして何より,デジタル技術と医療が適切に連携・共生することで,循環器病に悩む患者さんや市民の皆様のQOL向上と,健康長寿社会の実現に寄与することを期待してやみません。 最後に,本指針の策定にご尽力いただきました作成班の皆様,査読委員の皆様,ならびに関係各位に深く感謝申し上げます。 2026年3月 一般社団法人日本循環器学会 代表理事 小林 欣夫
目 次 序文 2刊行に寄せて 3略語一覧 5 序 章本指針について 7 第1 章HQ とFRQ 13 ⃝HQ と推奨文一覧 13 ⃝FRQ 一覧 14 ⃝HQ1 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者の心血管イベントを抑制するか? 16 ⃝HQ2 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者の入院イベントを抑制するか? 16 ⃝HQ3 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者の心不全イベントを抑制するか? 21 ⃝HQ4 ロボットなどを活用したヘルスケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? 26 ⃝HQ5 バーチャルリアリティ(VR)を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? 27 第2 章利用・開発のための基礎知識 29 ⃝1 循環器病に関わる基礎知識 29 ⃝2 ヘルスケアサービスに関わる基礎知識 31 ⃝3 利用者の視点から 39 ⃝4 開発者の視点から 41 第3 章各疾患におけるヘルスケアサービス 44 ⃝1 心血管疾患 44 ⃝2 心不全 46 ⃝3 脳卒中 48 ⃝4 不整脈 51 ⃝5 先天性心疾患,その他の循環器病 53 作成班 56班構成員の利益相反(COI)に関する開示 58文献 62
略語一覧 ACC American College of Cardiology米国心臓病学会AHA American Heart Association米国心臓協会AI artificial intelligence人工知能AMED Japan Agency for Medical Research and Development日本医療研究開発機構AMSTAR A MeaSurement Tool to Assess systematic Reviews AT anaerobic threshold嫌気性代謝閾値BMI body mass index BNP brain natriuretic peptide脳性(B 型)ナトリウム利尿ペプチドCDS clinical decision support臨床意思決定支援CI confidence interval信頼区間CNN convolutional neural network畳み込みニューラルネットワークCOPD chronic obstructive pulmonary (lung) disease慢性閉塞性肺疾患CRT cardiac resynchronization therapy心臓再同期療法CT computed tomographyコンピュータ断層撮影CVIT CardioVascular Intervention and Therapeutics日本心血管インターベンション治療学会DHI digital health interventionsデジタルヘルス介入DTx digital therapeuticsデジタル治療ELSI ethical, legal, and social issues倫理的・法的・社会的観点ePRO electronic patient-reported outcome電子的患者報告アウトカムESC European Society of Cardiology欧州心臓病学会FRQ Future Research Question HQ Healthcare Question ICD implantable cardioverter-defibrillator植込み型除細動器ICER incremental cost-effectiveness ratio増分費用効果比ICT information and communication technology情報通信技術IoT Internet of Things MACCE major adverse cardiac and cerebrovascular event複合心血管イベントMETs metabolic equivalents
mHealth mobile healthモバイルヘルスNT-proBNP N-terminal prohormone of brain natriuretic peptide N末端プロ脳性(B 型)ナトリウム利尿ペプチドNYHA New York Heart Associationニューヨーク心臓協会OECD Organisation for Economic Cooperation and Development経済協力開発機構PMDA Pharmaceuticals and Medical Devices Agency医薬品医療機器総合機構PRO patient-reported outcome患者報告アウトカムQALY quality-adjusted life year質調整生存年QOL quality of life生活の質RCT randomized controlled trialランダム化比較試験RNN recurrent neural network回帰型ニューラルネットワークROI return on investment投資利益率RR risk ratioリスク比RWD real-world dataリアルワールドデータSaMD software as medical device SMD standardized mean difference標準化平均差SMS short message serviceショートメッセージサービスUI user interfaceユーザーインターフェースUX user experienceユーザーエクスペリエンスVOI value on investment投資価値VR virtual realityバーチャルリアリティWHO World Health Organization世界保健機関
序章 本指針について序 章 本指針について 循環器病は国際的にも主要な死亡原因であり,要介護状態を引き起こす最大の要因の一つでもある。わが国では,死亡全体の約4分の1が循環器病によるものであり,いずれも高齢化の進展に伴い増加傾向にある。また,急性期治療後の再発予防やリハビリテーション,慢性期の生活支援など,長期にわたる医療・介護・生活支援の連携が求められる分野である。 こうした状況を踏まえ,2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(通称:循環器病対策基本法)」が制定され,国として体系的な循環器病対策が推進されてきた1)。同法を受けて政府は「循環器病対策推進基本計画」(第1期:2020 ~2022年,第2期:2023〜2028年)を策定し,都道府県単位での施策展開を進めている2)。さらに,学術界においても,日本循環器学会および日本脳卒中学会を中心に「脳卒中と循環器病克服第二次5 ヵ年計画」が策定され,発症予防や重症化予防などを重点課題として多面的な取り組みが展開されている3)。 これらの政策・学術的動向に加えて,国際的な技術革新に伴い,循環器病の予防・管理支援にヘルスケアサービス,特にデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを活用することが注目されている。ウェアラブルデバイスで血圧や体重,心拍数などの生体データを継続的に収集・分析することや,アプリケーションソフトウェア(以下,アプリ)を用いた行動変容支援や身体活動支援によって,循環器病の発症予防・重症化予防に寄与することが期待されている。また,社会保障費の抑制や医療資源の効率的活用の観点からも,データ駆動型かつ個別化された支援の実現に対する期待が高まっており,ヘルスケア産業としての市場成長も見込まれている4)。一方で,こうしたデジタル技術 1 策定の背景と目的を活用したヘルスケアサービスに対する科学的エビデ ンス(根拠)の蓄積は十分ではない。介入手法や評価指標は多様化しているものの,標準化された評価枠組みの整備や学術的合意形成は道半ばにある。循環器病領域におけるヘルスケアサービス,特にデジタル技術を活用したサービスの学術的基盤の整備は,国民の健康寿命の延伸と社会保障費の適正化の両面から,喫緊の課題である。 本指針「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する指針」(以下,「本指針」)は,次の2点を目的として策定する。1.ヘルスケアサービスの利用者(市民・患者・家族, 企業,自治体,保険者,ヘルスケアプロバイダー[臨床現場の医療従事者,健康増進に関わる保健医療職を含む]など)が,循環器疾患の管理・予防・再発予防に関連する適切なヘルスケアサービス(特にデジタル技術を活用したもの)を選択する際の参考とすること2.ヘルスケアサービスの開発者(企業・研究機関な ど)に対し,新たな技術開発や既存技術の改良における方向性を提示すること循環器病を対象としたヘルスケアサービスは,いまだ発展途上にあり,公的医療保険制度の下で提供される医療との関係も複雑である。ヘルスケアサービスの開発・利用は医療と共生していく必要があり,技術革新のメリットを享受しながら,さまざまな状況を鑑みたよりよい社会的整備が行われ,医療現場の専門家と協働していく必要がある。本指針は,こうした現状を踏まえ,循環器病領域における実効的かつ持続可能なヘルスケアサービスの普及と発展を支援することを意図している。 なお,本指針は作成時点でのエビデンスに基づいており,すべての最新情報を反映するものではない。実際の開発・利用にあたっては,循環器専門医(循環器内科専門医),日本脳卒中学会専門医,など専門的な保
厚生労働省の「循環器病対策推進基本計画」では、「脳卒中,心臓病その他の循環器病(以下「循環器病」という)は,わが国の主要な死亡原因である。循環器病には,虚血性脳卒中(脳梗塞),出血性脳卒中(脳出血,くも膜下出血等),一過性脳虚血発作,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞等),心不全,不整脈,弁膜症(大動脈弁狭窄症,僧帽弁逆流症等),大動脈疾患(大動脈解離,大動脈瘤等),末梢血管疾患,肺血栓塞栓症,肺高血圧症,心筋症,先天性心・脳血管疾患,遺伝性疾患等,多くの疾患が含まれる」6)とされているが,図1のように,主に心臓・血管・脳に関わる疾患,心血管疾患と脳卒中の総称と考えていただくと理解しやすいであろう。本指針においては,心血管疾患,心不全,脳卒中の3つに,不整脈と,その他の循環器病として主に成人先天性心疾患を加えた5疾患を中心に取り扱う。 循環器病とは 健医療職(循環器病予防療養指導士,脳卒中療養相談士,心不全療養指導士などの医師以外の多職種も含む)の助言を適宜受けることが望ましい。 前述の目的のとおり,想定している「本指針」自体の利用者は,1ヘルスケアサービスの利用者:市民・患者・患者家族,企業,自治体,保険者,ヘルスケアプロバイダー(具体的には医師,保健師,看護師,薬剤師,管理栄養士,理学療法士など臨床現場の医療従事者,健康増進に関わる保健医療職を含む),2ヘルスケアサービスの開発者(企業・研究機関)である。 利用場面としては,市民・循環器病患者などが自身 2 想定される利用者,利用場面の健康管理のための適切なデジタル技術を選択する 際,または企業・自治体・保険者などにおける保健指導の際,および医療・診療の場において適切なデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを選択する際に利用・参考にしていただくことを想定している。また,企業・研究機関がデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを開発・設計する際に,どのような科学的エビデンス(以下,エビデンス)があるのか,あるいは利用者と開発者の視点にどのような違いがあるのか認識してもらうために利用・参照することも想定している。 さらに,学術的なエビデンスを利用すること・参考にすることに加えて,ヘルスケアサービス自体が医療に与える影響と,逆に医療がヘルスケアサービスに与える影響,すなわち双方向の社会的な影響を合わせて考えることの重要性が認識されることも期待する。 図1 循環器病の概念(文献7 より)循環器病 心臓弁膜症など 心臓病 心血管疾患 血管病脳卒中 心筋梗塞など 大動脈瘤など 脳梗塞など心臓 血管 脳
図2 ヘルスケア産業の枠組みヘルスケア産業の全体像を視覚的に分かりやすく「卵」にたとえることがある。全体のヘルスケアのうち,公的医療保険・介護保険などを黄身,保険適用外の多様なサービス(ウェルネスや予防など)を白身とよぶこともある。(文献5)より改変) 本指針で言及する「ヘルスケアサービス」は,医療機関での医療補助にとどまらず,個人の日常生活における「ライフスタイル・ウェルネス」の領域から,疾患の一次・二次予防,疾病管理に至るまで,健康に資する技術・プラットフォーム・システムを含む広い概念である。米国連邦法のように「診断・予防・治療や健康評価に関連する医療提供者によるサービス」と比較的狭く定義されることもあるが,世界的に画一的な定義があるわけではなく,「ヘルス=健康」に関わるサービス一般を指す。世界的には公的保険サービスも含むことがあるが,前述のとおり,日本の文脈においては「公 3 ヘルスケアサービスの定義, 本指針がカバーする範囲・ しない範囲的医療保険制度の下で提供される医療」以外でのサー ビスを指すことが多い。 本指針においては,日本医療研究開発機構(AMED)における「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業」の一貫として作成することを鑑み,基本的に「ヘルスケアサービス全体のうち,公的医療保険の対象外」の部分を主な対象とする(図2参照:黄色以外の枠組み,通称「たまごの白身部分」を指すことが多い)。ただし,HQ,FRQなどのエビデンス評価プロセスにおいては,公的医療保険適用の有無を分けることは困難を極める(同じサービスであったとしても,認証・承認などのタイミングによって変化しうるため)。ヘルスケアサービス全体としてエビデンスの評価を行い,第3章以降の解説部分で日本の文脈におけるヘルスケアサービスとその法的根拠および背景情報を整理する。 ヘルスケア産業 公的医療保険・介護保険(地域包括ケアシステム)健康経営 関連 遊・学運動食癒 住 衣予防睡眠民間保険 機能補完日常生活・社会参加支援 生活機能維持・療養支援 介護関連機器 患者向け商品・ サービス周辺サービス(例) 医療機関の運営を支えるサービス 介護施設の運営を支えるサービス ヘルスケアの研究開発を支えるサービス 終活看取り知 測 サービスの視点からの分類 公的医療保険 自由診療として実施される医療 医師の助言・指導の下で 実施されるサービス 医療従事者の関与のないサービス提供者の視点 医療機関 民間事業者医師の助言・指導の下で 実施されるサービス医療従事者の関与のないサービス 診療報酬 保険外併用療養 自由診療,研究医療本体医療の補完医療周辺自己啓発 医療との関係性からの分類 境界領域は区別が難しいことも多い
【本指針がカバーする範囲】 i.18歳以上の成人,かつ,循環器病患者(危険因 子を有する者を含む)を対象としたサービスii.デジタル技術を活用したヘルスケアサービス(以 下の内容を含むもの)・有効性が示されている既存の支援・サービス においてデジタル技術を活用したもの・新規性が高いデジタル技術を用いることで実 装が可能となったヘルスケアサービス 【本指針がカバーしない範囲】 i.18歳未満を対象としたサービスii.妊産婦など,循環器病に関わる疾患以外に特別 な配慮が必要な母集団を対象としたサービスiii.他のヘルスケアサービスの指針でカバーされて いる内容 重要なヘルスケア課題を「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの活用」と設定した。これについて検討するため,日本循環器学会学術委員会の下,日本脳卒中学会,日本心不全学会,日本心血管インターベンション治療学会,日本不整脈心電学会,日本成人先天性心疾患学会の各代表に分担研究者として参画していただき,各疾患領域におけるHealthcare Question(HQ)を検討していただいた。デジタル技術を活用したヘルスケアサービスの一部は公的医療保険に基づく医療の一部になっている(たとえば,プログラム医療機器として承認されており,実際に診療現場で利用可能となっている)が,文献検索の時点ではそれらを除外しないこととして,介入試験の内容を確認した時点(主に二次スクリーニングの時点)で除外項目を調整した。 当初は7つのHQを作成していたが,評価対象となる研究の不足および推奨に至るまでの過程での検討により,最終的に以下の5つのHQと20のFuture Research Question(FRQ)を設定した。 HQ1 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心血管疾患患者の心血管イベントを抑制するか? 4 重要なヘルスケア課題の抽出HQ2 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心血管疾患患者の入院イベントを抑制するか? HQ3 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心不全患者の心不全イベントを抑制するか? HQ4 ロボットなどを活用したヘルスケアサービス は,脳卒中患者の運動機能を改善するか? HQ5 バーチャルリアリティ(VR)を活用したヘルス ケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? FRQ1 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス による健康行動・生活習慣の改善は,循環器病の発症予防・重症化予防に有効か? FRQ2 行動変容理論に基づくデジタル技術を活用し たヘルスケアサービスは,循環器病の発症・重症化予防に有効か? FRQ3 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心血管疾患の自覚症状をはじめとした患者報告アウトカムを改善するか? FRQ4 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心血管疾患患者のQOLを改善するか? FRQ5 どのような種類のデジタル技術を活用したヘ ルスケアサービスが心血管疾患患者の予後(心血管イベント,再入院など)を改善するか? FRQ6 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心不全症状/所見(体重など)を改善するか? FRQ7 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心不全患者のQOL/ADL(身体活動など)を改善するか? FRQ8 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心不全患者の行動変容を促すか? FRQ9 モバイルアプリを活用したヘルスケアサービ スは,脳卒中後の運動機能を回復させるか? FRQ10 遠隔リハビリテーションは脳卒中後の運動機 能を回復させるか? FRQ11 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,脳卒中後の嚥下機能を回復させるか? FRQ12 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,脳卒中後の失語症状を改善するか? FRQ13 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,脳卒中後の構音障害を改善するか?
FRQ14 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,脳卒中後の高次脳機能障害を改善するか? FRQ15 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,院外心肺停止患者における予後改善に有効か? FRQ16 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,心房細動発症予防に有効か? FRQ17 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,成人先天性心疾患患者の心血管イベントを減少させるか? FRQ18 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,成人先天性心疾患患者のセルフケアを改善するか? FRQ19 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス は,成人先天性心疾患患者のQOLを改善するか? FRQ20 血栓塞栓症や肺高血圧など本指針で取り上げ られなかった循環器疾患の患者において,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは予後やQOLを改善するか? 1.エビデンスの検索 各HQについて,各疾患領域におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの有効性を評価した文献を検索した。構成要素を Participant(P:参加者), Intervention(I:介入),Control(C:比較対照)として表現し,PICOフォーマットに基づくシステマティック・レビューのためスコーピング・レビューを実施した。ただし,心血管疾患領域のデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関しては,介入の用語について確固たる統一・分類がなされていないため,まずは包括的に検索を行い(各検索式などは第2章に記載),介入試験の種類については一次スクリーニングおよび二次スクリーニングの際に再分類を行った。検索プロトコルは各HQの研究班で検討した。2.実施期間・検索対象 2024年9月に検索式を作成し,2024年9月から12月にかけて検索を実施した。検索データベースにはPubMed,Embase(心不全においてはこれら2つに加 5 システマティック・レビューえて,Cochrane Central Register of Controlled Trials [CENTRAL])を用いた。3.文献の選択基準・除外基準 各疾患領域の定義に基づき選択を行い,ランダム化比較試験(RCT)のみを対象とした。4.エビデンスの評価と統合の方法・推奨文の作成「Minds診療ガイドライン作成マニュアル 2020 Ver. 3.0」8)に基づいて行った。 本指針のHealthcare Question(HQ)では,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 Ver. 3.0.」8)に基づき,GRADEアプローチの考え方に準じて「エビデンスの確実性」と「推奨の強さ」を明確に区別して記載した。 エビデンスの確実性(強さ)については,効果の推定値に対する確信度に応じて,「強い(A)」「中程度(B)」「弱い(C)」「非常に弱い(D)」の4段階に分類した。 推奨文における動詞は,推奨の強さを反映して以下の5通りを使い分けた。令和4年度事業で作成された指針との整合性を図り,臨床現場で柔軟な選択が行われるよう,Minds診療ガイドライン作成マニュアルの「弱く推奨する(条件付き推奨)」に代えて「提案する」という表現を用いている。 ・行うことを強く推奨する・行うことを提案する・行わないことを提案する・行わないことを強く推奨する・エビデンス不十分のため推奨・提案を保留する推奨の決定にあたっては,Delphi(デルファイ)法を用いて投票で意見集約を行った。最多票を得た推奨項目の得票率が70%以上であれば決定とし,決定するまで投票を最大3回行った。 以上の方法で2025年11月に「エビデンスの確実性」と「推奨の強さ」を一度決定したものの,2026年1月からの解説動画作成時に,推奨の強さが読者の誤解を招くのではないかという懸念から,研究班内で慎重な姿勢で再度検討する必要があるとの総意が形成された。特に「強く推奨する」という表現自体に疑義が呈された。そこで,2026年3月7日の班会議後,「推奨する」「提案する」とした推奨文の表現についてDelphi法を用 6 推奨グレードと決定の方法
いて再度評価した。最終的な推奨文に関しても,9段階評価における7以上を総意として変更,確認を行い,その合意率に関しても再度評価を行った。 本指針は,AMEDの支援を受けて作成した。 AMED事業名:予防・健康づくりの社会実装に向けた 研究開発基盤整備事業 採択課題:循環器疾患におけるヘルスケアサービスの 有効性に関するエビデンスの整理と指針作成 課題管理番号:23rea522009h0001研究期間:令和5 ~7年度(2023 ~2025年度) 本指針の作成班員の過去3年間(2023 ~2025年)の利益相反(COI)について,日本循環器学会の規定に基づき,巻末に掲載した。 本指針は,日本国内の医療制度や社会環境に基づく, 7 作成資金 8 COIの管理規定と公開 9 利用上の注意点デジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する 指針であるが,あくまで作成時点での情報に基づく指針であることに注意されたい。また,本指針は進歩を続けるデジタル技術の活用を規制するものではなく,デジタル技術は環境や利用者の個別性に応じて柔軟に使用されるべきものである。本指針の記載については作成組織が責任を負うが,デジタル技術を活用した結果そのものについての責任は,本指針の作成組織が負うものではない。 ヘルスケア分野におけるデジタル技術の活用は広がり続けており,次々に健康づくりに役立つ新しいデジタル機器が創出されている。同時に,それらを取り巻く国内の法規制(「医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律[薬機法]」など)やガイドラインも,状況に応じて頻繁に改正,改訂されるため,今後,本指針も随時アップデートしていく予定であるが,本指針が最新の状況を反映していない場合もあることに注意されたい。 本指針で推奨しているデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを開発・利用するにあたっては,前述のとおり,より専門的ヘルスケアプロバイダーの指導の下で利用することが望ましい。特に,サービス利用時に健康への影響を受ける可能性がある場合などは,利用者はヘルスケアプロバイダーへ相談し,必要に応じて医療機関で受診することが望ましい。なお,ヘルスケアプロバイダーと医療情報を共有する場合には,個人情報を保護する対策が取られているかなどの確認を要する。
本章では,Healthcare Qustion(HQ)とFuture Research Question(FRQ)を整理する。実際に循環器病および循環器病に関するデジタル技術を活用したヘルスケアサービスについての知見を求める読者には,第2章を参照してからこちらを確認していただくことを強く推奨する。 第1 章 HQとFRQ HQと推奨文一覧 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者の心血管イベントを抑制するか? ▶心血管疾患の既往のある患者に対して,心血管イベント抑制を目的として, デジタル技術によるヘルスケアサービスを用いることを提案する。 HQ 1 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B) デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者の入院イベントを抑制するか? ▶心血管疾患の既往のある患者に対して,再入院抑制を目的として, デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いることを提案する。 HQ 2 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B) デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者の心不全イベントを抑制するか? ▶心不全患者に対して,心不全増悪による再入院予防を目的に デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた介入を行うことを提案する。 HQ 3 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性非常に弱い(D)
ロボットなどを活用したヘルスケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? ▶脳卒中患者に対して,自立歩行を目的に ロボットなどを活用したデジタルヘルスケアサービスを用いた介入を行うことを提案する。 HQ 4 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B) バーチャルリアリティ(VR)を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? ▶脳卒中患者に対して,上肢機能改善などの運動機能改善を目的に VRなどを活用したデジタルヘルスケアサービスを用いた介入を行うことを提案する。 HQ 5 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B)~非常に弱い(D) デジタル技術を活用したヘルスケアサービスによる健康行動・生活習慣の改善は,循環器病の発症予防・重症化予防に有効か? 行動変容理論に基づくデジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,循環器病の発症・重症化予防に有効か? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患の自覚症状をはじめとした患者報告アウトカムを改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者のQOLを改善するか? どのような種類のデジタル技術を活用したヘルスケアサービスが心血管疾患患者の予後(心血管イベント,再入院など)を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全症状/所見(体重など)を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者のQOL/ADL(身体活動など)を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者の行動変容を促すか? FRQ 1 FRQ 2 FRQ 3 FRQ 4 FRQ 5 FRQ 6 FRQ 7 FRQ 8 FRQ一覧
モバイルアプリを活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の運動機能を回復させるか? 遠隔リハビリテーションは脳卒中後の運動機能を回復させるか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の嚥下機能を回復させるか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の失語症状を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の構音障害を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の高次脳機能障害を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,院外心肺停止患者における予後改善に有効か? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心房細動発症予防に有効か? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,成人先天性心疾患患者の心血管イベントを減少させるか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,成人先天性心疾患患者のセルフケアを改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,成人先天性心疾患患者のQOLを改善するか? 血栓塞栓症や肺高血圧など本指針で取り上げられなかった循環器病の患者において,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは予後やQOLを改善するか? FRQ 9 FRQ 10 FRQ 11 FRQ 12 FRQ 13 FRQ 14 FRQ 15 FRQ 16 FRQ 17 FRQ 18 FRQ 19 FRQ 20
デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者の心血管イベントを抑制するか? ▶心血管疾患の既往のある患者に対して,心血管イベント抑制を目的として, デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いることを提案する。 Healthcare Question 1 HQ 1 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B) デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者の入院イベントを抑制するか? ▶心血管疾患の既往のある患者に対して,再入院抑制を目的として, デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いることを提案する。 Healthcare Question 2 HQ 2 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B) まず,3, 603件の論文が抽出された(Embase:2, 083件,PubMed:1, 520 件)。タイトルとアブストラクトによる一次スクリーニングにより2, 035 件が除外され,48件の論文に絞り込まれた。ハンドリサーチによる2件を加えた50 件(Embase:22件,PubMed:28件)の論文が全文による二次スクリーニングに進められた。最終的に14件の心血管疾患患者の再発予防に関連するランダム化比較試験(RCT)の論文が採択された(図3)9-12, 14-23)。 対象者は心血管疾患の既往のある患者とし,心筋梗塞を含む急性冠症候群に対して経皮的冠動脈形成術,冠動脈バイパス術を受けた患者を中心としたが,一部に弁膜症や心不全などの患者も含まれていた。 介入方法には,モバイルアプリでの運動指導,携帯電話のテキストメッセージとE-mail(両者を併用)の通知,インターネットを用いた疾病対応プログラム,スマートフォンを用いたビデオコンサルテーション,ウェアラブルデバイスの使用などが含まれていた。介入期間は1 ヵ月から5年まで広範であった。 エビデンス評価主要アウトカムとしては複合心血管イベント(major adverse cardiac and cerebrovascular event:MACCE)を評価し,副次アウトカムとして,再入院,心血管死亡,冠動脈疾患イベント,全死亡,再灌流,有害事象について検証を行った。 MACCEに関わる論文には8件が該当し,すべての研究で結果は同じ方向を向いていた10, 12, 14, 15, 17, 19, 21, 22)。メタ解析の結果,心血管疾患の既往のある患者のうちデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群で,有意にMACCEのリスクが抑制されていた(リスク比[RR]0. 595,95%信頼区間[CI]0.471- 0.752) (図4)。 副次アウトカムとしては,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群で,再入院(RR 0.676,95% CI 0.496-0.923) (図5)9, 11, 14-21, 23),冠動脈疾患イベント(RR 0.594,95%CI 0.354-0.996)(図6)10, 12, 15, 17, 20)が有意に抑制されていたが,心血管死亡(図7)12, 15, 17, 18),全死亡(図8)11, 15, 17-20, 23),再灌流(図9)12, 20)については有意差を認めなかった。また,有害事象についても,両群間で有意差は認められなかった(図10)14, 15, 20)。
図4 複合心血管イベント* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,MACCE:複合心血管イベント,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%) 図3 システマティック・レビューの各過程における論文数MACCE:複合心血管イベント Embase, PubMed を検索(2025 年3 月) Embase 2,083 件, PubMed 1,520 件 50 件(Embase 22 件, PubMed 28 件) MACCE 8 件,再入院11 件,心血管死亡4 件,冠動脈疾患イベント5 件,全死亡7 件,再灌流2 件,有害事象3 件 一次スクリーニング 二次スクリーニング 各アウトカムの評価 14 件
図5 再入院* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%) 図6 冠動脈疾患イベント* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%)
図8 全死亡* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%) 図7 心血管死亡* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%)
本レビューでは,心血管疾患既往患者に対するデジタル技術を用いたヘルスケア介入は,MACCEを有意に抑制し,再入院や冠動脈疾患イベントの減少にも寄与した。一方で,全死亡や心血管死亡,再灌流,有害 まとめ事象については有意な改善効果は認められなかった。 デジタル介入の種類にかかわらず,主要イベント抑制には一定の効果が示唆されるものの,死亡関連指標への影響は限定的であり,介入の種類や期間,患者背景に応じた今後の検討が求められる。 図9 再灌流* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%) 図10 有害事象* 介入群:デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた群95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比,IV:逆分散,REML:制限付き最尤推定量 著者,発行年対照群イベント数介入群*イベント数下限上限重み(%)
デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者の心不全イベントを抑制するか? ▶心不全患者に対して,心不全増悪による再入院予防を目的に デジタル技術を活用したヘルスケアサービスを用いた介入を行うことを提案する。 Healthcare Question 3 HQ 3 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性非常に弱い(D) まず12,133件の論文が抽出された(CENTRAL:3,446件,Embase:4,321件,PubMed:4,366件)。重複を除外した9,666件のうち,一次スクリーニングにより9,420件,二次スクリーニングにより93件が除外され,最終的に153件が採択された(図11)。 エビデンス評価対象者は心不全患者で,在宅患者や外来患者,入院 患者などが含まれていた。 介入内容には,心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT),植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)などの植込み型心臓電気デバイス(cardiac implantable electronic devices),肺動脈圧モニタリング(埋め込み型遠隔血行動態モニタリング 図11 システマティック・レビューの各過程における論文数CIED:植込み型心臓電気デバイス スクリーニング(n=9,666)除外:重複(n=9,420) 採用(n=246)不採用(n=0) レビュー対象となった新規研究(n=60)対象となった新規研究の報告(n=93) 適格性評価(n=246)除外された報告: 電話(n=43) CIED(n=26)デジタル以外の介入(n=4)両群に介入(n=4)不適切なアウトカム(n=56)非AF 患者(n=7)非RCT(n=6)学会抄録(n=6)重複(n=1) データベース,レジストリから新規研究を同定 同定採用スクリーニング同定された報告: データベース(n=12,133) PubMed(n=4,366) CENTRAL(n=3,446) Embase(n=4,321)除外:重複(n=2,467)
[implantable pulmonary artery pressure monitoring]),アプリ(smartphone/tablet application),テレモニタリング(telemonitoring,wearable vest),メッセージサービス(short message service・weekly electronic messages),電話(telephone),ビデオ会議(videoconference),遠隔リハビリテーション(telehabilitation)などが含まれていた。 このうち,CRT,ICDなどの植込み型心臓電気デバイス,肺動脈圧モニタリング(埋め込み型遠隔血行動態モニタリング)は医療機器のため,解析から除外した。介入期間は1 ヵ月から27年間(中央値6 ヵ月)と広範であった。アウトカムとして,全死亡ならびに心不全による再入院について検証を行った。デジタル技術を活用したヘルスケアサービスについ ての41件の研究がメタ解析に包含された。このうちアプリ(mobile app,tablet application,smartphone app)は3件,テレモニタリング(telemonitoring,wearable vest)は30件であった。 全死亡について,デジタル技術を活用したすべてのヘルスケアサービスでみると有意な効果はもたらされなかったが(RR 0.94,95%CI 0.85-1.02),アプリ(RR 0.27,95%CI 0.14-0.55)は有意な効果を示し,テレモニタリング(RR 0.92,95%CI 0.82-1.04)は有意な効果をもたらさなかった。 全死亡(図12-14) 1 図12 全死亡(デジタル技術を活用したすべてのヘルスケアサービス) 95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比 Random effects model Heterogeneity: I2 = 2.5%, p = 0.4258 Alvarez−Garcia_2024 Saleh_2022 Weintraub_2010 Scherr_2009 Dendale_2012 Romero_2023 Johnson_2022 Yanicelli_2020 Jerant_2001 Bekelman_2015 Comin−Colet_2016 Villani_2014 Lynga_2012 Soran_2008 Schonhofen_2023 Koehler_2018 Kotooka_2018 Voller_2022 Mizukawa_2019 Ong_2016 Asch_2022 Cleland_2005 Rohde_2024 Galinier_2020 Krzesinski_2022 Koehler_2011 Kashem_2008 Smolis−Bak_2015 Sahlin_2022 Piotrowicz_2020 Kalter−Leibovici_2017 Chen_2019 Wagenaar_2019 Olivari_2018 Kraai_2015 Boyne_2012 Upshaw_2023 Rahimi_2020 Vetrovsky_2024 Dar_2009 Seto_2012 0 0 1 0 4 0 0 0 0 8 5 5 5 11 2 61 10 20 3 100 23 28 46 91 28 54 1 3 5 54 232 26 8 55 14 18 2 13 1 14 3 7641 50 76 95 66 80 32 16 20 13 187 81 40 179 160 30 796 90 302 20 715 272 168 352 507 300 354 24 26 58 425 682 252 150 229 94 198 159 101 101 91 50 2 2 4 1 14 1 1 1 2 19 12 9 8 17 3 89 13 26 7 114 26 47 49 89 29 55 1 3 5 52 218 50 15 24 10 12 0 6 0 4 0 7900 50 76 93 54 80 28 15 20 24 197 97 40 165 155 30 775 91 319 39 722 280 258 347 483 305 356 24 26 60 425 678 515 300 110 83 184 53 101 101 91 50 0.01 0.1 1 10 100 0.94 0.20 0.20 0.24 0.27 0.29 0.29 0.31 0.33 0.36 0.44 0.50 0.56 0.58 0.63 0.67 0.67 0.78 0.81 0.84 0.89 0.91 0.91 0.93 0.97 0.98 0.99 1.00 1.00 1.03 1.04 1.06 1.06 1.07 1.10 1.24 1.39 1.68 2.17 3.00 3.50 7.00 [0.85; 1.02] [0.01; 4.06] [0.01; 4.10] [0.03; 2.15] [0.01; 6.57] [0.10; 0.83] [0.01; 6.90] [0.01; 7.12] [0.01; 7.71] [0.02; 7.02] [0.20; 0.99] [0.18; 1.36] [0.20; 1.51] [0.19; 1.73] [0.30; 1.29] [0.12; 3.71] [0.49; 0.91] [0.36; 1.68] [0.46; 1.42] [0.24; 2.89] [0.69; 1.13] [0.53; 1.56] [0.60; 1.40] [0.64; 1.35] [0.75; 1.27] [0.60; 1.61] [0.70; 1.39] [0.07; 15.08] [0.22; 4.50] [0.32; 3.39] [0.73; 1.48] [0.91; 1.23] [0.68; 1.67] [0.46; 2.46] [0.72; 1.68] [0.58; 2.63] [0.69; 2.81] [0.08; 34.38] [0.86; 5.48] [0.12; 72.78] [1.20; 10.23] [0.37; 132.07] 100.0% 0.1% 0.1% 0.2% 0.1% 0.7% 0.1% 0.1% 0.1% 0.1% 1.2% 0.8% 0.8% 0.7% 1.5% 0.3% 7.1% 1.3% 2.4% 0.5% 10.4% 2.6% 4.1% 5.1% 9.4% 3.1% 5.9% 0.1% 0.3% 0.6% 5.6% 21.2% 3.7% 1.1% 4.1% 1.4% 1.6% 0.1% 0.9% 0.1% 0.7% 0.1% 著者,発行年対照群イベント数 N介入群イベント数 N RR RR 95%CI重み ランダム効果モデル RR(95%CI) 異質性
図13 全死亡(アプリ) 95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比 Random effects model Heterogeneity: I2 = 0.0%, p = 0.9686 Saleh_2022 Johnson_2022 Yanicelli_2020 0 0 0 112 76 16 20 2 1 1 111 76 15 20 0.01 0.1 1 10 100 0.27 0.20 0.31 0.33 [0.14; 0.55] [0.01; 4.10] [0.01; 7.12] [0.01; 7.71] 100.0% 35.0% 32.7% 32.3% 著者,年対照群イベント数 N介入群イベント数 N RR RR 95%CI重み ランダム効果モデル RR(95%CI) 異質性 図14 全死亡(テレモニタリング) 95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比 Random effects model Heterogeneity: I2 = 23.4%, p = 0.1258 Alvarez−Garcia_2024 Weintraub_2010 Scherr_2009 Dendale_2012 Romero_2023 Bekelman_2015 Comin−Colet_2016 Villani_2014 Lynga_2012 Soran_2008 Koehler_2018 Kotooka_2018 Voller_2022 Mizukawa_2019 Ong_2016 Asch_2022 Cleland_2005 Galinier_2020 Krzesinski_2022 Koehler_2011 Sahlin_2022 Kalter−Leibovici_2017 Wagenaar_2019 Olivari_2018 Kraai_2015 Boyne_2012 Rahimi_2020 Vetrovsky_2024 Dar_2009 Seto_2012 0 1 0 4 0 8 5 5 5 11 61 10 20 3 100 23 28 91 28 54 5 232 8 55 14 18 13 1 14 3 6248 50 95 66 80 32 187 81 40 179 160 796 90 302 20 715 272 168 507 300 354 58 682 150 229 94 198 101 101 91 50 2 4 1 14 1 19 12 9 8 17 89 13 26 7 114 26 47 89 29 55 5 218 15 24 10 12 6 0 4 0 6345 50 93 54 80 28 197 97 40 165 155 775 91 319 39 722 280 258 483 305 356 60 678 300 110 83 184 101 101 91 50 0.01 0.1 1 10 100 0.92 0.20 0.24 0.27 0.29 0.29 0.44 0.50 0.56 0.58 0.63 0.67 0.78 0.81 0.84 0.89 0.91 0.91 0.97 0.98 0.99 1.03 1.06 1.07 1.10 1.24 1.39 2.17 3.00 3.50 7.00 [0.82; 1.04] [0.01; 4.06] [0.03; 2.15] [0.01; 6.57] [0.10; 0.83] [0.01; 6.90] [0.20; 0.99] [0.18; 1.36] [0.20; 1.51] [0.19; 1.73] [0.30; 1.29] [0.49; 0.91] [0.36; 1.68] [0.46; 1.42] [0.24; 2.89] [0.69; 1.13] [0.53; 1.56] [0.60; 1.40] [0.75; 1.27] [0.60; 1.61] [0.70; 1.39] [0.32; 3.39] [0.91; 1.23] [0.46; 2.46] [0.72; 1.68] [0.58; 2.63] [0.69; 2.81] [0.86; 5.48] [0.12; 72.78] [1.20; 10.23] [0.37; 132.07] 100.0% 0.1% 0.2% 0.1% 0.9% 0.1% 1.6% 1.1% 1.1% 0.9% 2.0% 8.7% 1.8% 3.2% 0.7% 12.0% 3.5% 5.2% 11.0% 4.0% 7.4% 0.8% 20.5% 1.5% 5.3% 1.8% 2.1% 1.2% 0.1% 0.9% 0.1% 著者,年対照群イベント数 N介入群イベント数 N RR RR 95%CI重み ランダム効果モデル RR(95%CI) 異質性
デジタル技術を活用したヘルスケアサービスについての36件の研究がメタ解析に包含された。このうちアプリ(mobile app,tablet application,smartphone app)は3件,テレモニタリング(telemonitoring,wearable vest)は28件であった。 心不全再入院(図15-17) 2心不全再入院について,デジタル技術を活用したす べてのヘルスケアサービスでみると有意に心不全再入院を予防した(RR 0.88,95%CI 0.81-0.96)。アプリ(RR 0.61,95%CI 0.04-9.79)は心不全再入院を予防できなかったが,テレモニタリング(RR 0.87,95%CI 0.80-0.96)は有意に心不全再入院を予防した。 図15 心不全再入院(デジタル技術を活用したすべてのヘルスケアサービス) 95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比 Random effects model Heterogeneity: I2 = 32.3%, p = 0.0344 Alvarez−Garcia_2024 Kashem_2008 Achury−Saldana_2024 Hale_2016 Vetrovsky_2024 Jerant_2001 Comin−Colet_2016 Mizukawa_2019 Weintraub_2010 Villani_2014 Krzesinski_2022 Hägglund_2015 Boyne_2012 Sahlin_2022 Wagenaar_2019 Pekmezaris_2019 Galinier_2020 Koehler_2011 Olivari_2018 Dorsch_2021 Kalter−Leibovici_2017 Voller_2022 Chen_2019 Kraai_2015 Kotooka_2018 Mortara_2009 Piotrowicz_2020 Cleland_2005 Nouryan_2019 Brahmbhatt_2024 Romero_2023 Schonhofen_2023 Gallagher_2016 Dar_2009 Ding_2020 Kitsiou_2025 1 2 3 1 1 1 11 4 10 12 41 7 18 11 7 5 141 64 79 11 302 39 54 25 19 53 104 40 14 14 7 5 5 17 15 1 5160 50 24 70 11 101 13 81 20 95 40 300 82 198 58 150 46 507 354 229 42 682 302 252 94 90 301 425 168 42 56 32 30 20 91 91 13 9 10 14 4 3 5 32 16 19 23 66 11 25 17 20 8 160 74 43 12 326 44 115 23 20 28 103 58 13 9 4 3 3 10 8 0 5435 50 24 70 14 101 24 97 39 93 40 305 82 184 60 300 58 483 356 110 41 678 319 515 83 91 160 425 258 47 52 28 30 20 91 93 14 0.1 0.5 1 2 10 0.88 0.11 0.20 0.21 0.32 0.33 0.37 0.41 0.49 0.52 0.52 0.63 0.64 0.67 0.67 0.70 0.79 0.84 0.87 0.88 0.89 0.92 0.94 0.96 0.96 0.96 1.01 1.01 1.06 1.21 1.44 1.53 1.67 1.67 1.70 1.92 3.22 [0.81; 0.96] [0.01; 0.84] [0.05; 0.82] [0.06; 0.71] [0.04; 2.46] [0.04; 3.15] [0.05; 2.83] [0.22; 0.76] [0.19; 1.27] [0.25; 1.05] [0.30; 0.90] [0.44; 0.90] [0.26; 1.56] [0.38; 1.19] [0.34; 1.30] [0.30; 1.62] [0.28; 2.25] [0.69; 1.01] [0.64; 1.17] [0.66; 1.18] [0.45; 1.79] [0.82; 1.03] [0.63; 1.40] [0.72; 1.28] [0.59; 1.56] [0.55; 1.68] [0.66; 1.52] [0.80; 1.28] [0.74; 1.51] [0.64; 2.26] [0.68; 3.05] [0.50; 4.69] [0.44; 6.36] [0.46; 6.06] [0.82; 3.51] [0.85; 4.30] [0.14; 72.51] 100.0% 0.1% 0.2% 0.3% 0.1% 0.1% 0.1% 1.2% 0.5% 0.9% 1.5% 3.5% 0.6% 1.4% 1.0% 0.6% 0.4% 12.5% 5.0% 5.2% 0.9% 33.8% 2.8% 5.5% 1.9% 1.4% 2.6% 8.0% 3.6% 1.1% 0.8% 0.4% 0.2% 0.3% 0.9% 0.7% 0.0% ランダム効果モデル RR(95%CI) 異質性 著者,発行年対照群イベント数 N介入群イベント数 N RR RR 95%CI重み
デジタル技術を活用したヘルスケアサービス全般でみると,介入は全死亡に対しては有意な効果をもたらさなかったが,心不全再入院に対しては有意な効果を認めた。また,デジタル技術を活用したヘルスケアサー まとめビスのうち,アプリについては,全死亡に対する有意 な効果を認めたが,心不全再入院に対しては有意な効果を認めなかった。一方,テレモニタリングについては,全死亡に対する有意な効果を認めなかったが,心不全再入院に対する有意な効果を認めた。 図16 心不全再入院(アプリ) 95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比 Random effects model Heterogeneity: I2 = 60.7%, p = 0.0783 Achury−Saldana_2024 Dorsch_2021 Kitsiou_2025 3 11 1 125 70 42 13 14 12 0 125 70 41 14 0.1 0.5 1 2 10 0.61 0.21 0.89 3.22 [0.04; 9.79] [0.06; 0.71] [0.45; 1.79] [0.14; 72.51] 100.0% 37.9% 49.7% 12.4% 著者,発行年対照群イベント数 N介入群イベント数 N RR RR 95%CI重み ランダム効果モデル RR(95%CI) 異質性 図17 心不全再入院(テレモニタリング) 95%CI:95%信頼区間,RR:リスク比 Random effects model Heterogeneity: I2 = 29.4%, p = 0.0742 Alvarez−Garcia_2024 Hale_2016 Vetrovsky_2024 Comin−Colet_2016 Mizukawa_2019 Weintraub_2010 Villani_2014 Krzesinski_2022 Hägglund_2015 Boyne_2012 Sahlin_2022 Wagenaar_2019 Pekmezaris_2019 Galinier_2020 Koehler_2011 Olivari_2018 Kalter−Leibovici_2017 Voller_2022 Kraai_2015 Kotooka_2018 Mortara_2009 Cleland_2005 Nouryan_2019 Brahmbhatt_2024 Romero_2023 Gallagher_2016 Dar_2009 Ding_2020 1 1 1 11 4 10 12 41 7 18 11 7 5 141 64 79 302 39 25 19 53 40 14 14 7 5 17 15 4291 50 11 101 81 20 95 40 300 82 198 58 150 46 507 354 229 682 302 94 90 301 168 42 56 32 20 91 91 9 4 3 32 16 19 23 66 11 25 17 20 8 160 74 43 326 44 23 20 28 58 13 9 4 3 10 8 4292 50 14 101 97 39 93 40 305 82 184 60 300 58 483 356 110 678 319 83 91 160 258 47 52 28 20 91 93 0.1 0.5 1 2 10 0.87 0.11 0.32 0.33 0.41 0.49 0.52 0.52 0.63 0.64 0.67 0.67 0.70 0.79 0.84 0.87 0.88 0.92 0.94 0.96 0.96 1.01 1.06 1.21 1.44 1.53 1.67 1.70 1.92 [0.80; 0.96] [0.01; 0.84] [0.04; 2.46] [0.04; 3.15] [0.22; 0.76] [0.19; 1.27] [0.25; 1.05] [0.30; 0.90] [0.44; 0.90] [0.26; 1.56] [0.38; 1.19] [0.34; 1.30] [0.30; 1.62] [0.28; 2.25] [0.69; 1.01] [0.64; 1.17] [0.66; 1.18] [0.82; 1.03] [0.63; 1.40] [0.59; 1.56] [0.55; 1.68] [0.66; 1.52] [0.74; 1.51] [0.64; 2.26] [0.68; 3.05] [0.50; 4.69] [0.46; 6.06] [0.82; 3.51] [0.85; 4.30] 100.0% 0.1% 0.1% 0.1% 1.5% 0.6% 1.1% 1.9% 4.4% 0.7% 1.7% 1.3% 0.8% 0.5% 15.0% 6.1% 6.4% 37.1% 3.5% 2.4% 1.8% 3.2% 4.5% 1.4% 1.0% 0.5% 0.3% 1.1% 0.9% ランダム効果モデル RR(95%CI) 異質性 著者,発行年対照群イベント数 N介入群イベント数 N RR RR 95%CI重み
ロボットなどを活用したヘルスケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? ▶脳卒中患者に対して,自立歩行を目的にロボットなどを活用した デジタルヘルスケアサービスを用いた介入を行うことを提案する。 Healthcare Question 4 HQ 4 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B) Mehrholzらによるシステマティック・レビュー(“Electromechanical-assisted training for walking after stroke.”)24)が本HQに回答するものと考え, AMSTAR 2を用いて評価を行った結果,本システマティック・レビューは2023年12月に実施され,2025年5月に発行されており,それ以降に新しい知見が得られてないため,本研究をもって推奨を作成することは妥当と考えた。 本研究では,データベース検索(CENTRAL,MEDLINE, Embaseなど10件)により39,738件,その他の情報源(学会議事録,試験登録簿など)から36件の論文が抽出された。重複を除外した25,660件のうち,一次スクリーニング(タイトル・抄録)により25,239件が除外された。二次スクリーニング(全文評価)に進んだ421件のうち320件が除外され,最終的に101件のRCTが採択された。 対象者は,脳卒中と診断された18歳以上の成人(合計4,224例)であった。参加者の平均年齢は47 ~76歳の範囲であり,脳卒中発症からの時期は急性期(7日)から慢性期(8年超)まで広範であった。 介入内容は,歩行などの特定の動きを自動的に行うようにプログラムされたロボットやコンピュータ制御された(電気機械的な)機器による歩行トレーニング(理学療法と併用,以下,歩行トレーニング機器)であった。比較対照は,理学療法(または通常ケア)とされた。介入期間は最短10日から最長8週間で,多くは3 ~4週間であった。アウトカムは,主要(批判的)アウトカムとして自立歩行能力(Functional Ambulation Category [FAC]スコアで評価),重要アウトカムとして歩行速度(m/秒),歩行能力(6分間歩行距離),および安全性 エビデンス評価(脱落,死亡)について検証を行っている。 介入終了時点での自立歩行能力について,51件の研究(2,148例)がメタ解析に包含された。歩行トレーニング機器群では,理学療法(通常ケア)のみの群と比較して,自立歩行を達成するオッズが有意に高かった(オッズ比1.65,95%CI 1.21–2.25)。このエビデンスの確実性は「中程度(B)」と評価された。一方,介入終了後の追跡調査(平均3 ヵ月以上後)では,8件の研究(569例)が解析され,自立歩行を達成するオッズに2群間の有意な差は認められなかった(オッズ比1.64,95% CI 0.77–3.48)。このエビデンスの確実性は「弱い(C)」と評価された。われわれはその要因が統計的検出力不足である可能性を考えている。 介入終了時点での歩行速度について,73件の研究(3,043例)がメタ解析に包含された。歩行トレーニング機器群において平均歩行速度の増加は認められなかった(平均差0.05 m/秒,95%CI 0.02–0.08)。エビデンスの確実性は「中程度(B)」であった。 介入終了時点での歩行能力(6分間歩行距離)については,42件の研究(1,966例)がメタ解析に包含された。歩行トレーニング機器群において6分間歩行距離の増加は認められなかった(平均差11 m,95 %CI 1.8– 20.3)。エビデンスの確実性は「強い(A)」であった。 本システマティック・レビューでは,中程度の確実性をもって,脳卒中患者に対する電気機械支援トレー 自立歩行能力1 歩行速度および歩行能力2 まとめ
ニング(理学療法と併用)は,介入終了時点において,従来の理学療法単独よりも自立歩行を達成できる可能性が高いことが示されている。著者らは,この介入によって9例の患者を治療するごとに,1例の歩行の依存状態を防げると結論付けている。この有益な効果は,介入終了後の追跡調査時点では維持されなかったが, これについてエビデンスの確実性は低い。また,この介入は,歩行速度や歩行能力(6分間歩行距離)を増加させないことが,中程度から強い確実性をもって示されている。 バーチャルリアリティ(VR)を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中患者の運動機能を改善するか? ▶脳卒中患者に対して,上肢機能改善などの運動機能改善を目的に VRなどを活用したデジタルヘルスケアサービスを用いた介入を行うことを提案する。 Healthcare Question 5 HQ 5 推奨の強さ弱いエビデンスの確実性中程度(B)~非常に弱い(D) Laverらによるシステマティック・レビュー(“Virtual reality for stroke rehabilitation.”)25)は本HQに回答するものと考え,AMSTAR 2の基準に準じて評価を行った結果,すべての評価項目でYesであった。本システマティック・レビューは2023年9月に実施され,2025年6月に発行されているおり,それ以降に新しい知見が得られてないため,本研究をもって推奨を作成することは妥当と考えた。 本研究では,CENTRAL,MEDLINE,Embaseなど7つのデータベースおよび2つの試験登録簿の検索(2023年9月時点)により,合計15,473件の記録がスクリーニングされた。最終的に,脳卒中後の成人を対象としたRCT 190件(7,188例)が解析に含まれた。参加者の多くは小規模な研究(50例未満が81%)の対象であり,発症からの時期は急性期から慢性期まで多岐にわたっている。 介入内容は,没入型または非没入型のバーチャルリアリティ(virtual reality:VR)および双方向性のビデオゲーム(WiiTMやKinectTMなどの市販コンソールを含む)であった。比較対照は,代替介入(同等の治療時間)または通常ケア(治療なし,またはVRを追加介入とする場合)とされた。評価項目としては,主要(批判的) エビデンス評価アウトカムとして上肢機能・活動,重要アウトカムと して歩行速度,バランス,活動制限,参加制約・QOL,有害事象について検証を行っている。 従来の代替療法(同等の治療時間)と比較したVRの効果について検証された。各アウトカムについてのメタ解析の結果を以下に示す。上肢機能・活動:67件の研究(2,830例)がメタ解析に含まれた。VR群は代替療法群と比較して,上肢機能においてわずかではあるが有意な改善を認めた(標準化平均差 [standardized mean difference:SMD]0.20, 95%CI 0.12–0.28)。このエビデンスの確実性は「弱い(C)」と評価された。歩行速度:10件の研究(3,043例)が解析され,VR群と代替療法群の間で歩行速度に有意な差は認められなかった(平均差 0.05m/秒)。エビデンスの確実性は「非常に弱い(D)」であった。バランス:24件の研究(871例)が解析され,VR群では代替療法群と比較してバランス機能の改善におけるわずかな有益性が示された(SMD 0.26,95 %CI 0.12– 0.40)。エビデンスの確実性は「弱い(C)」であった。活動制限:33件の研究(1,495例)が解析され,VR群では活動制限が軽減される可能性が示された(SMD VRと代替療法(同等の治療量)の比較1
0.21,95%CI 0.11–0.32)。エビデンスの確実性は「中程度(B)」であった。参加制約およびQOL:16件の研究(963例)が解析され,参加制約およびQOLにおいて両群間にほとんど差は認められなかった(SMD 0.11)。エビデンスの確実性は「弱い(C)」であった。 VRを通常ケアに追加し,治療時間の総量を増加させた場合の効果について検証された。各アウトカムについてのメタ解析の結果を以下に示す。上肢機能・活動:21件の研究(689例)が解析に含まれた。VRを追加介入として実施した群では,通常ケア単独群と比較して,上肢機能の中等度の改善を認めた(SMD 0.42,95%CI 0.26–0.58)。エビデンスの確実性は「中程度(B)」と評価された。バランス:12件の研究(321例)が解析され,VRの追加介入はバランス機能に対して有益である可能性が示された(SMD 0.68,95%CI 0.46–0.91)。エビデンスの確実性は「弱い(C)」であった。活動制限:15件の研究(513例)において,VRの追加介 VR+通常ケアと,通常ケア単独の比較(VR上乗せ効果) 2入は活動制限に対して有益である可能性が高いことが 示された(SMD 0.22,95%CI 0.04–0.41)。エビデンスの確実性は「中程度(B)」であった。 59件の研究において有害事象がモニタリングされた。報告された有害事象は少なく,一過性のめまい,頭痛,疼痛など,比較的軽度なものであった。 弱い(C)~中程度(B)の確実性をもって,脳卒中患者に対するVRおよび双方向性のビデオゲームの使用は,従来の代替療法と比較して,上肢機能,バランス,活動制限においてわずかに有益であることが示されている。特に,通常ケアにVRを上乗せして治療時間を増加させた場合,上肢機能に対してより大きな有益性が認められている。一方で,歩行速度などの移動能力に対する効果についてはエビデンスが混在しており,参加制約やQOLへの効果については結論を導くのに十分なエビデンスはなかった。有害事象は軽微であり,臨床的に安全に使用できる可能性が示唆される。 安全性3 まとめ
本章では,循環器病に関わるヘルスケアサービス事業の背景や学術的な基本知識のうち,利用者・開発者が基本的に理解しておくべき点を整理する。 第2 章 利用・開発のための基礎知識 本指針で取り扱う範囲としては,循環器病における二次予防,主に発症後の重症化予防を中心とするが,公衆衛生・疫学領域と循環器病領域では一次予防・二次予防の定義が異なるため,本章以降は,ガイドラインの名称などで止むを得ない場合を除き,一次予防・二次予防の用語は用いない。 前提として,わが国で行われている循環器病対策には,健康日本21(二十一世紀における第三次国民健康づくり運動)のようなヘルスプランでの循環器病発症予防(特定健診・特定保健指導などを含む)と,診療所,病院で医療として提供される重症化予防および心血管疾患イベント(循環器病イベント)発症抑制があることを理解しておく必要がある。したがって,健康日本21 (第三次)26)に加え,発症予防・重症化予防に関して多くの個別疾患に関するガイドライン(日本循環器学会の循環器病ガイドラインシリーズ27),日本脳卒中学会の「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」28))を参照することは,必須である。循環器病患者を対象としたヘルスケアサービスの利用・開発の際には,これらのガイドラインに従った発症予防・医療提供がすでに最大限行われていることが前提であり,それらの提供自体に問題がないように設計された環境下でヘルスケアサービスが利用され,有効な発症予防・重症化予防に資することが望ましい。 循環器病は生活習慣病の一つとされており,栄養・食生活,身体活動・運動,休養・睡眠,飲酒,喫煙お 1 循環器病に関わる基礎知識 循環器病対策の基本的背景1よび歯・口腔の健康に関する生活習慣の改善は,発症 予防においても重症化予防においても効果が認められており,エビデンスが明らかであると認識されている29)。個別の望ましい食事習慣や身体活動量の詳細(たとえば,冠動脈疾患予防のため,有酸素運動を中心に中等度以上の強度を目標に,30分以上[少なくとも週に3日]の運動を行うなど)については,健康日本21(第三次)26)のほか,特に冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン30)や脳卒中治療ガイドライン28)などの疾患特異的ガイドラインを参照されたい。 生活習慣の改善・行動変容に関わるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの多くは,禁煙や運動といった,科学的エビデンスに基づいて有効とされている行動を支援する目的で設計されている。ただし,その効果を解釈する場合には注意が必要である。たとえば,禁煙(生活習慣改善の一つ)が循環器病を予防することには明確なエビデンスがあるが,仮に,あるヘルスケアサービスにより利用者が禁煙を達成でき,その結果として循環器病の予防が期待されるとしても,ヘルスケアサービスそのものが循環器病の予防という最終的な健康アウトカムに直接有効であったと証明されたわけではない(図18)。特に,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスによる健康行動・生活習慣の改善が循環器病の発症予防・重症化予防に有効かどうかは,今後解決すべき重要なFRQとしておきたい。 循環器病に関わるエビデンスの示す範囲についての注意2
デジタル技術を活用したヘルスケアサービスによる健康行動・生活習慣の 改善は,循環器病の発症予防・重症化予防に有効か? FRQ 1 高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病などは,循環器病と同じく,生活習慣に関わる疾患である。さらに,高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病は循環器病の発症に関わるだけでなく,循環器病患者がこれらの併存疾患を発症・合併することで,重症化にも関連するとされている。したがって,高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病などの予防に有効なヘルスケアサービスは,循環器病患者にも有効である可能性があるため,それぞれの目的の範囲においてデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの指針を開発・利用することを推奨する(E-LIFEヘルスケアナビ31)にその他の疾患に関する指針も掲載されているが,これらの指針においては循環器病そのものの発症予防や重症化予防に関しては言及されていないため,循環器病に関しては本指針で十分事足りる。脂質異常症といった,循環器病に関わるすべての危険因子について,E-LIFEヘルスケアナビに指針があるわけではないことにも注意されたい)。 【E-LIFEヘルスケアナビに掲載されている高血圧,糖 尿病,慢性腎臓病に関する指針】・「デジタル技術を活用した高血圧管理に関する指針」32)・「2型糖尿病発症予防を目的としたデジタル技術によ 循環器病に関わる他疾患の予防に有効なヘルスケアサービス3るヘルスケアサービスに関する指針」33) ・「慢性腎臓病の発症・進展に関するヘルスケアサービ スやデジタル技術介入に関する指針」34) ヘルスケアサービスの有効性を示すために必要なサンプルサイズの観点からは,循環器病患者では死亡・心血管イベント・入院といった何らかの健康アウトカムが発生しやすいため,健康な市民を対象とした研究よりも,ヘルスケアサービスが死亡や入院といった心血管イベントを含む健康アウトカムにもたらす有効性を示しやすい面もある。これは,患者が高リスクであることを反映するものでもある。ヘルスケアサービスが不適切であった場合に,医療サービスに影響を与えたり,患者自身に安全ではない効果(健康被害)をもたらしたりする可能性が健康な市民よりも格段に高くなることも,認識しなければならない。 一方で,サービス開発者・提供者がこの点を理解していない可能性がある。たとえば,自治体・企業などで地域や職域全体で身体活動を増加させるヘルスケアサービスの提供を行った場合に,循環器病患者で盲目的に身体活動を増加させると過剰運動になるリスク(Harmfulness)があるという点を考えることも重要である。本指針のHQに対するシステマティック・レビューで安全性アウトカムの問題は認められなかったことも含め,2026年3月時点において,デジタル技術を活用したヘルスケアサービス,特にプログラムなどによる介入の多くは安全であることが想定されているが,今後,この点も変化する可能性があることに注意 循環器病患者に対するヘルスケアサービスの有効性とリスク4 図18 生活習慣改善などのエビデンスが示す範囲と理解 デジタル技術を活用した ヘルスケアサービス ガイドラインに基づく 適切な生活習慣循環器病の発症・重症化予防 ガイドラインに基づく 適切な生活習慣循環器病の発症・重症化予防 「ヘルスケアサービスで生活習慣改善した」としても完全に循環器病の発症・重症化予防は示されたわけではない エビデンスが明らか
されたい。また,繰り返しになるが,安全性を考慮する際にも医療機関や専門家との連携や対応を念頭に置く必要がある。(例:「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」35)において,過剰な活動や低活動は避けて,個別性の高い適切な活動を指導することが求められている。また,肺高血圧症においては症状を伴う過剰な身体活動は行うべきではないとされている。) 心血管疾患患者に対する心臓リハビリテーションでは,生活活動を含めた身体活動の指導を行う35)。運動療法によって同一労作時の心不全症状の軽減,最大下同一負荷強度での換気量・心拍数・心仕事量の減少,左室リモデリングの抑制,冠動脈病変の進展抑制,冠血管イベントの減少,交感神経緊張の低下が起こり36),一酸化窒素産生能の増加,感受性の亢進による血管内皮機能の改善37),血管リモデリングによる酸素運搬能の向上,筋肉の質の改善,心肺機能の上昇が期待される38, 39)。また,運動療法には降圧作用,HDLコレステロール上昇作用,トリグリセライド低下作用もある。 運動は大きく,有酸素運動,ダイナミック(等張性・動的)レジスタンス運動,アイソメトリック(等尺性・静的)レジスタンス運動,それらを組み合わせた複合運動の4つに分けられる。心血管疾患患者に対する運動療法は長らく有酸素運動が中心であったが,レジスタンス運動や複合運動による効果も報告されている。水泳や散歩など,基本的には持久的運動の種類に制限はなく,患者が長く続けられそうな好みの運動を行っていく。 しかし,心血管疾患患者に対して再発予防目的に運動療法を行う場合には,運動強度に注意する必要がある。心肺運動負荷試験にて呼気ガス分析器などで測定する嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)は,好気性代謝主体から嫌気性代謝に変わる転換点であり, ATを超えた強度では乳酸産生による代謝性アシドーシスの進行,交感神経の活性化を来し,狭心症発作,不整脈,心不全増悪などの心血管イベントリスクが高まる。そのため,心血管疾患患者ではAT時の運動強度を基に至適運動強度が設定され,生活活動でも,運動時も,その運動強度をなるべく超えないように指導される。 心血管疾患患者における身体活動(専門的知見から) 5運動強度の設定には代謝当量(metabolic equivalents; METs)がよく用いられる。安静座位での消費カロリーを1 METsとしたときのそれぞれの生活活動や運動時にかかる消費カロリーからMETsが計算されている。心血管疾患患者では至適運動強度のMETsを目安に,日々の生活や運動療法を行っていく。運動強度に関して,近年では高強度インターバルトレーニング(high intensity interval training:HIIT)が有用であるとする報告も増えている。ATを超える高強度の運動を,インターバルを挟みながら短時間繰り返す運動方法であるが,できる患者が限られており,安全を確保しながら行う必要がある。また,長期効果などのエビデンスが確立されておらず,今後の展開がまたれる。 ヘルスケアサービスでは,ウェアラブルデバイスを用いて心拍数を計測したり,ジャイロセンサー,加速度センサーなどを用いて運動強度を測定したりすることで健康管理を促すアプリケーションがあるが,特に心血管疾患患者では信頼性の高いものを使用する必要がある。身体活動の名称と種類,活動強度としてのMETsについて,図19 40-42)に示す。 わが国のヘルスケアサービス推進の基盤は,2013年に閣議決定された「日本再興戦略」における戦略市場創造プランに端を発する43)。同戦略では,「国民の健康寿命の延伸」を経済成長の柱と位置づけ,医療研究開発の司令塔組織として「健康・医療戦略推進本部」を設置することが決定された。翌2014年には「健康・医療戦略推進法」(平成二十六年法律第四十八号)が成立し,推進本部は法定の国家本部として位置づけられた44)。この法に基づき,政府は「健康・医療戦略」を策定し,医療分野の研究開発推進計画や予算の資源配分を総合的に調整する体制を整備した。 これを受けて2014年7月に閣議決定された「健康・医療戦略」では,「疾病予防や慢性期の生活支援等を念頭に置いた公的保険外の新しいヘルスケアサービス市場の創出」が,初めて戦略文書に明記された45)。ここでは,公的保険に依存しない多様なサービスを育成し, 2 ヘルスケアサービスに関わる 基礎知識 背景1
国民の健康寿命延伸に資するとともに,海外展開を視野に新たな産業を興す方針が示されている。その後の「日本再興戦略」改訂201546)や「日本再興戦略2016」47)では,IoTやAIを活用した予防・遠隔健康管理サービス,ロボット介護機器,ICTを活用した見守りサービスなど,デジタル技術とヘルスケアサービスの融合が政策的に後押しされた。さらに2018年には,経済産業省に「ヘルスケア産業課」が新設され,予防・健康づくりサービス産業の支援が本格化した。こうした制度的枠組みの下,循環器病をはじめとする国民病に対して,公的保険外のヘルスケアサービスの活用が政策的に検討されてきた。推進本部や経済産業省は「公的保険外の新しいヘルスケアサービス市場の創出」を成長戦略の一環と位置づけ,2019年には「ヘルスケアサービスガイドラインのあり方」を策定し(2021年・2025年に改訂),サービスの質の確保と事業者の自主認証制度を整備している48)。 背景にあるのは,超高齢社会と生活習慣病・循環器病患者の増加であり,それに伴う社会保障費の増大も一つの要因となり,社会としての喫緊の課題となっている。循環器病としての背景については本章1.「循環器病に関わる基礎知識」のとおりである。発症予防はもちろん,発症後の重症化予防は,従来の医療機関内のケアだけでは十分でなく,日常生活に寄り添う行動変容支援や継続的モニタリングが不可欠である。デジタ ル技術(ウェアラブルデバイス,アプリ,遠隔モニタリング,AIなど)は,この課題を克服する手段として急速に普及しつつあるが,エビデンスの確立,安全性,費用対効果,公平性,プライバシー・セキュリティ,倫理的側面など多面的な検討が求められるため,本指針においては,国家戦略(健康・医療戦略推進法/健康・医療戦略)の枠組みとAMEDの研究開発基盤を背景に,循環器病を中心とするデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの適正な評価・利用と開発を推進する共通土台を提示することを目的とする。 本指針でのヘルスケアサービスの定義は序章3.に記載したとおりであるが,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスのうち,一般的に,疾病の診断・治療・予防を目的とする「単体プログラム」は薬機法(医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制対象となる可能性があることを知っておく必要がある。規制対象となる「プログラム医療機器」のなかの「医療機器プログラム」とされるものは,通称SaMD(software as medical device)と表現されることもある(図20 49)参照)。医療機器かどうかについては,開発者および利用者のいずれにとっても 法的・社会的整備2 図19 身体活動の種類と活動の強度の例(左図:文献40 より改変,右表:文献41, 42 より作表) 身体活動Physical activity 生活活動Daily activity家事,階段昇降,犬の散歩などの生活上の活動,運動,農作業,漁業活動などの仕事上の活動など 座位,臥位の状態で行われる覚醒行動:デスクワーク,テレビを見る,電車やバスで座っている時など 運動Exercise・有酸素運動・レジスタンス運動・複合運動 座位行動Sedentary behaviour 活動の種類活動の強度(METs) 生活活動運動 1.5 食事,入浴2.0 ゆっくりした歩行 1.8 立ち話,皿洗い2.3 ストレッチ 2.0 歯磨き,シャワー2.5 ヨガ,水中歩行 2.3 ガーデニング3.0 太極拳,社交ダンス 2.5 着替え3.5 ウェイトトレーニング,ゴルフ(カート使用) 3.0 歩行,犬の散歩4.0 ラジオ体操第一,卓球 3.3 掃除機をかける4.5 ラジオ体操第二 3.5 草むしり,風呂掃除,床拭き5.0 サーフィン 4.0 自転車に乗る6.0 クロスカントリー 5.8 子供と活発に遊ぶ7.0 ジョギング 6.8 自転車通勤7.5 ロッククライミング 7.0 ジョギング8.0 テニス 8.3 荷物を上へ運ぶ13.3 マラソン 安静座位を1 とした時の目安
重要な基準であるため,「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」および医療機器該当性に係るフローチャートを確認する50)。具体例を参考にすること(プログラムの医療機器該当性判断事例51)も参考になる),またはSaMD一元的相談窓口(医療機器プログラム総合相談)を活用することが望ましい52)。医療機器と非医療機器で,開発するコストおよびその上市プロセス,従うべき法令・指針が異なるため,開発者・利用者ともに理解しておく必要がある。 一方,健康増進などを主目的とし,医療目的ではないものは,原則として薬機法の対象外である。ただし,個人情報保護やセキュリティなど他の法令・指針に従う必要がある。デジタル技術を活用したヘルスケアサービスはまだ発展途上で,医療機器として取り扱われるか,非医療機器として取り扱われるかは主にその用途・目的により決定されるため,研究・開発段階やサービスとしての収益性を検討する段階において途中で移り変わる場合があることにも理解が必要である。臨床現場の医療従事者や,健康増進に関わる保健医療職は,医療保険外のデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを患者や市民に紹介する際は,自身の専門 職としての職務規定に抵触しないよう,次のような点を開発者や利用者と慎重に議論し,その位置づけを明確に把握しておく必要がある。たとえば,1そのサービスはどのようなエビデンスに基づいて提供されているか,2どのような法的枠組みの下で使用可能か,3費用負担の枠組み(誰が支払うのか),4保険診療との関係(いわゆる混合診療とみなされないか),5それは「研究」としての位置づけか,正式な「サービス」なのか, 6関係者の利益相反,などがあげられる。開発者・利用者としては,本指針で取り扱うサービスは健康寿命延伸産業分野に該当する可能性を考慮し,開発時・事業として展開する前に「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」を参照することが望ましい53)。また,必要時には産業競争力強化法第9条54)に基づくグレーゾーン解消制度を活用することで,事業活動に関する規制法の解釈および事業活動に対する当該規制法の適用の有無について確認することができる55)。 また,もう一つ重要な点として,本指針の取り扱うヘルスケアサービス自体は医療以外の枠組みで実践さ 図20 医療機器・プログラム・プログラム医療機器などの位置づけ(文献49 などの資料より改変) 医療機器でもプログラムでもないヘルスケアサービスは無数に存在しうる 広義のヘルスケアサービス注:本指針ヘルスケアサービスは ここから公的医療保険の対象を除く 治療アプリ+IoT などCureApp SCTMなど治療アプリ CureApp HTTMなど デジタル治療Digital therapeutics 薬機法の規制対象となる医療機器 プログラム医療機器医療機器プログラムプログラム 国際分類クラスI一般医療機器(相当) プログラム グルコースモニタリングシステム(高度管理医療機器) 測定器附属自力運動訓練装置 有効性を示し,医療機器認証 など 医療機器プログラムを記録した記録媒体 ・画像診断支援ソフトウェア・疾病リスク予測プログラム・行動変容を促すプログラム・服薬管理支援ソフトウェア・疾病治療を目的としたプログラム など プログラム医療機器でも一般医療機器でもないプログラム
れているが,ヘルスケアサービスの医療提供体制全体へ与える社会的影響を忘れてはならない。開発者・利用者がガイドラインなどを参照することが望ましいことはすでに言及したが,サービスの利用と普及が社会的影響をもたらすことも理解する必要がある。たとえばApple WatchTMの家庭用心電計プログラムは, SaMD・家庭用医療機器として承認された56)。原則として心房細動の兆候(心房細動を示唆する波形)の検出を補助的に行うものであり,従来の医師による診断に代わるものではないため,兆候が検出されるとユーザーは医療機関で受診し,診断を求めるようになる。病院側としても,スマートウォッチ外来などの整備を行うこともある。ヘルスケアサービスが社会的に医療と関わる点を開発者・利用者・医療従事者ともに理解する必要があり,より専門的な医療従事者との協働が求められる一つの理由となる。 整理すると,注意するべきポイントは以下の通りである。・市場に展開するためには医療機器か非医療機器かが 明確である必要であり,それぞれのガイダンス・指針に従う・利用者が実際にそれぞれのヘルスケアサービスを活 用したときに,サービスが医療および医療機器でなかったとしても,医療・医療提供体制に与える影響を考えておく必要があるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスのなかで医療機器に該当しないソフトウェア自体(SaMDに該当しない場合)は,Non-SaMDと表現されることがあるが57),公的な用語として記載されていない。法的整備においては,その位置づけや求められる事項が国際的な状況や国内の状況により刻々と変化するため,常にアップデートが必要となる。機微な医療・健康に関する個人情報については,「次世代医療基盤法」に基づく匿名加工事業の活用が重要とされている。一般的に,経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」,厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(通称:3省2ガイドライン)は確認しておく必要がある58, 59)。ウェアラブル端末から得られた情報を診断用データとして定義するのか,個人が自己活用するのか,あるいは医療提供者の参考情報として定義するのかについては,保険収載上の位置づけも含めて慎重に議論する必要がある。新規参入者(スタートアップ,製薬企業,IT企業な ど)の増加に伴い,規制のあるべき姿としては,より明確で透明性の高い規制が求められている。開発推進の観点からは,使用される環境とプログラムのリスクに応じた連続性のある制度であるべきであり,また,使用目的に応じて規制要件が明確にされるべきであるとされている。医療機器データの帰属については,いまだ議論の途上にある。 本指針は今後のヘルスケアサービスの開発・利用がより前向きに進むために,各種の枠組みを多くの方に理解してもらうことが重要であると考えている。 デジタル技術,とりわけインターネットおよびスマートフォンの普及は,社会構造と行動様式を抜本的に変容させ,既存のヘルスケアサービスの質向上と介入対象の拡大をもたらしている。これに加え,ロボティクスやIoTなどの新規手段が臨床・予防・リハビリテーション各段階の実装可能性を押し広げている。循環器病領域においても,オンライン診療,オンライン服薬指導,オンライン受診勧奨,遠隔健康医療相談,ウェアラブル機器による遠隔モニタリングなどを通じ,医療・ヘルスケアへのアクセスを地理的・時間的に拡張しうることは,重要な利点である60)。さらに近年では,人工知能(AI)や機械学習を基盤としたデータ解析,自然言語処理や生成AIによる対話支援ボット,リハビリ支援や介護補助を担うロボットなど,デジタルインテリジェンス技術がヘルスケア領域全体に浸透しつつあり,診断支援,行動変容促進,患者エンゲージメントの向上,ヘルスケアプロバイダーの業務効率化といった多面的な価値を生み出している。 一方で,長時間のスクリーン使用に伴う視覚疲労・姿勢悪化・運動不足などの生活習慣への新たな影響,ならびにデジタル依存や情報過多による心理的負担といった新たな健康課題が懸念されている。身体活動量の減少や睡眠の質の低下は,血圧,血糖,自律神経に影響し,リハビリの継続や循環器病の予後に悪影響を及ぼす可能性がある61)。また,年齢,所得,インターネット環境やデバイスアクセス,デジタルリテラシーの格差によって生じるデジタル・ディバイド(デジタル格差)は,医療機関情報や健康知識といった情報へのアクセス,疾病管理支援アプリや遠隔モニタリング機 デジタル技術を活用したヘルスケアサービス3
器の利用機会の偏在をもたらし,新たな健康格差の一因として循環器病にも影響を及ぼしている62)。さらに, AIやアルゴリズムを活用した解析・支援システムの普及に伴い,説明可能性,バイアス管理,個人情報保護およびサイバーセキュリティ確保への配慮に加え,学習データソースの適格性を見極めることが不可欠である。汎用情報に含まれる不正確な情報や,追跡調査を欠く不十分な臨床データは判断の誤りを招くため,どのような教師データを用いたかの明示が本来必須となる。とりわけ循環器病領域では,予後予測や診断支援モデルの不透明性,学習データの偏りが臨床判断や患者集団間の公平性に影響しうることから,国際的なコンセンサスガイドラインであるFUTURE-AI(Fairness, Universality, Traceability, Usability, Robustness, and Explainability–AI)や米国心臓協会(American Heart Association:AHA)のステートメントが提示する「説明可能で公正なAI」の原則を踏まえた運用体制の確立が求められている63, 64)。既述のとおり,日本の法制度においては適切な指針・ガイダンスに基づき,医療情報の適正管理と利活用の両立が求められている。 以上の利点と限界を踏まえ,本節では,デジタル技術を活用した循環器病に対するヘルスケアサービスの主要な構成要素として,1アプリケーション,2デバイス・ロボット関連技術,3AI・機械学習を用いた診療支援,4対話型医療・患者支援,5医療提供体制支援の5つについて,それぞれの特徴・適用領域・制度的留意点を概観する。 1.アプリケーション(Webアプリケーションを含む) ここでいうアプリケーション(以下,アプリ)とは,スマートフォンやタブレット,パーソナルコンピューターなどの端末を通じて提供されるソフトウェアベースのデジタル技術であり,健康・医療に関する行動支援や情報管理,診療補助などを目的として設計されたものを指す。世界保健機関(WHO)および経済協力開発機構(OECD)の分類では「デジタル介入の技術形態(technological form)」の一つに位置づけられ,モバイルアプリやWebアプリ,クラウド接続型プログラムなどが含まれる65)。 前述のとおり,疾患の治療,服薬管理,健康維持を目的としたアプリが開発されている。循環器病領域における医療機器に該当するものとして,ニコチン依存症治療アプリ「CureApp SCTM」,高血圧治療補助アプリ「CureApp HTTM」,長時間心電図解析ソフトウェア 「SmartRobin AITM」などがあり,いずれも独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)における承認を取得している。また,診断や治療行為を直接目的としないプログラム,アプリも多く存在し,製薬企業が提供する服薬管理や健康支援アプリの多くもこれに含まれる。これらは,医薬品による治療を補完する「around the pill」型,または生活習慣改善を主眼とする「beyond the pill」型デジタル治療(digital therapeutics:DTx)として位置づけられることもあるが,これらの用語は学術領域では必ずしも定着していない66)。 ヘルスケアサービスの発展に伴い,概念や適用範囲が拡大し,ビジネス領域における差別化のために多様な用語が生まれていることから,共通言語の整備が今後の課題である。既に言及したが,行動変容支援,服薬アドヒアランスの向上,患者教育の個別化などを通じて,循環器病の疾病管理状況の向上,発症予防,重症化予防に寄与する可能性が高い一方,現時点では科学的エビデンスは依然として限定的である。 2.デバイス・ロボット関連技術(主に医療機器とは 別の位置づけのもの)ヘルスケアデバイスには,病院内で用いられるデバイスのみでなく,一般医療機器・家庭用医療機器,ウェアラブルデバイスなどの汎用機器,そして病院内外で用いられるロボット技術なども含まれる。これらはWHOの定義する「デジタルヘルス技術(digital health technologies)」に含まれ,これらにおいて各種センサーや端末がインターネットを介してデータを収集・共有し,解析や制御に活用する技術基盤が,IoTである67)。これらはモバイルヘルス(mobile health:mHealth)やテレヘルス(telehealth)とともに,医療・健康管理の新たな基盤を構成する。 リハビリ支援ロボットや介助ロボットは,運動訓練や移動支援を通じて身体機能の維持および介護予防を支援するデバイスであり,医療機器としての承認対象外であっても,社会的支援技術の一部として位置づけられる68)。支援技術とは,WHOおよび各国の制度において「身体的・認知的・感覚的機能を維持・改善し,自立および社会参加を促進するための製品・装置・ソフトウェアおよび関連サービス」を包括的に指す概念であり,医療と福祉の橋渡しとなる領域である69)。
このような技術は,非侵襲的・連続モニタリングを通じて,個別化医療と疾病管理を進化させる可能性を有する。特に,これまで捉えられなかった行動・環境・生体情報を収集でき,個別化モニタリングやタイムリーな介入の新たな基盤を提供する可能性もある70)。現時点ではあくまで診断・治療支援(非医療機器としては診療支援)であるが,今後,デジタルデバイスが取得した情報から介入プログラムが自動で挙動する可能性もあり(たとえば,糖尿病領域での自動血糖測定に基づくインスリンポンプからのインスリン投与など),これらは治療そのものとなる。ただし,循環器病領域では,植込み型除細動器のように医療機器自体に附属するプログラム(心室頻拍・心室細動を自動で診断し,除細動を実施するなど)以外では行われておらず,本格的な開発や整備はこれからである。 3.AI・機械学習を用いた診療支援 AIは,人間の知的機能を模倣または拡張するシステムの総称である。そのなかで機械学習は,膨大なデータから特徴やパターンを学習し,予測や分類を行う技術であり,医療分野では画像診断,リスク予測,予後推定,自然言語処理によるカルテ解析など,多様な応用が進んでいる。AIおよび機械学習は,電子化された医療・ヘルスケアデータ(電子カルテ,心電図,コンピュータ断層撮影[computed tomography:CT]などの画像データなど)を解析し,データから高度な予測を可能とする。主に,手間のかかる作業を自動化することによるヘルスケアプロバイダーの負担軽減システムと,高度な予測による疾患の早期発見や重症化予測のシステムが,この領域を形成している。 疾病の診断や予測に関してもきわめて多くの研究が行われており,たとえば心不全領域では,心音を用いて左室駆出率の低下を検出するAI聴診器や71),心電図波形から左室機能不全を予測するAI-ECGモデルが報告されている72)。虚血性心疾患では,冠動脈CT画像を解析して血流動態を推定するハートフローFFRCTTMが保険診療で活用されている73)。不整脈領域では,ウェアラブル機器による長時間心電図解析を通じて,心房細動の早期発見が可能となっており,洞調律時の心電図から発作性心房細動のリスクを予測するAIを活用した医療機器(プログラム),CardioMax 9 AIがPMDAの承認を得ている74, 75)。また,弁膜症においては,AIによる心音・エコー解析を用いた大動脈弁狭窄症のスクリーニングや,外科治療リスク予測モデルの開発が 進んでいる。前述のとおり,これらのプログラムなどが医療機器かどうかや承認などのプロセスを開発者・利用者が理解したうえで開発・使用することが重要である。 AIのモデルとしては,ディープラーニング(畳み込みニューラルネットワーク[CNN],回帰型ニューラルネットワーク[RNN]など),勾配ブースティング(XGBoost,LightGBMなど),自然言語処理技術を基盤としており,高精度な判定を実現している。有用性が高まるほど,どのデータに基づき,どのような経緯で結果が導かれたのかという透明性・説明可能性の確保が重要となり76),AIの出力のみを判断に用いるのではなく,最終的な診断・治療判断の責任は医師が負うという前提を明確にし,モデルの限界や前提条件を理解して利用する姿勢が求められる77)。また,AIはデータバイアスや予測の偏りを避けられないため,リアルワールドデータによる前向き検証,適正利用のためのガバナンス整備,関係者におけるAIリテラシーの向上が欠かせない。 4.対話型医療・患者支援 ボット(bot)とは,特定のタスクを自動的に実行するプログラムの総称であり,医療分野では主に「チャットボット」として,患者との対話,質問応答,セルフケア支援などに用いられている。これらは,古くは定型のルールベースのものが使用されていたが,近年ではAIを応用した自然言語処理技術に基づき,ユーザーの入力を解析して適切な応答を返すシステムが発展している。生成AIは,学習データに基づいて新たなテキスト・画像・音声などを生成するAIの一分野であり,従来のルールベース型ボットと異なり,より柔軟で文脈依存的な情報提供を可能にする。 医療領域では,生成AIが医療情報の翻訳・要約・対話型提供を通じて,医療者,患者双方の医療情報へのアクセスを支援するのみでなく,医療者と患者の双方向コミュニケーションを促進する役割も期待されている。特に,臨床ガイドラインや学術情報を集約・要約して医療を支援するだけでなく,それらの情報を市民にも理解しやすい形に再構成することが可能である。また,患者向け疾患教育や服薬リマインダー,健康行動促進メッセージの自動生成といった応用研究が,チャットボットやメッセージングツールと組み合わせ
て増加している78)。このような機能により,患者参画(エンゲージメント)の向上やセルフケア支援の高度化が期待される一方で,そのエビデンスは構築され始めたばかりである79)。近年では自立型として患者の初期トリアージ,鑑別診断支援などの機能も期待されている。 生成AIには「幻覚(hallucination)」や誤情報生成のリスク,学習データに依存するバイアス,出力内容に対する責任の所在など,倫理的・法的課題が存在する80)。これらの課題に対処するためには,人間中心設計(human-centered AI)に基づく設計原則と,AIから出力された内容の検証・説明責任を担保する明確なガバナンス体制が不可欠である。WHOは,医療分野でのAI活用には透明性・説明責任・公平性を軸とする倫理的枠組みの構築が必要であるとしており,国内でも厚生労働省や日本医師会が同様の方針を提示している81)。また,厚生労働科学特別研究「医療・ヘルスケア分野における生成AI適用の可能性と課題の検討,及び利活用ガイドライン策定のための研究(23CA2044),研究代表者:宇賀神 敦(医療AIプラットフォーム技術研究組合 理事会)」による「医療・ヘルスケア分野における 生成AI利用ガイドライン(第2版)」も参考になる82)。 5 医療提供体制支援 デジタル技術は,医療そのものだけでなく,それを提供するための体制支援として,医療従事者(To Doctor,To Nurse)および医療機関(To Hospital,To Network)に向けても急速に拡大している。データ管理,リモートモニタリング,オンライン診療支援,ワークフロー最適化など,多様なソリューションが,臨床現場の業務効率化,医療従事者の働き方改革,医療安全の向上に寄与する可能性を示している。医療業務に関わる会計,医療資源の最適化などにも多くのサービスが開発されている。 電子カルテ内で臨床意思決定支援(clinical decision support:CDS)を実装する取り組みは欧米諸国で広く普及しており,多くの場合,電子カルテベンダーにより標準機能またはオプションサービスとして提供されている。これに対し,日本ではCDSの提供体制自体が限定的であり,実装・運用の両面で大きな遅れがみられる。さらに,電子カルテ外でデータを共有し,診療情報を横断的に活用するためには,データ構造の標準化,個人情報保護および利活用ルールに関する法的整備など,多くの課題が残されている。全国的な医療およびヘルスケアサービスの質改善を推進するために は,共通のデータモデルと評価指標を備えた標準化基盤の整備が急務である。 地域レベルでも,診療データが医療機関ごとに分散しており,医療の質向上を阻む要因となっている。これらのデータを統合的に集約・分析可能とする共通インフラの構築が求められる。さらに,医療データ連携のプラットフォームは医療分野にとどまらず,健康,介護,生活,行政など他分野との相互運用性を確保した形で設計されることが望ましい。また,医療職および医療機関に関する情報公開は依然として限定的であり,医療従事者間はもとより,患者・医療従事者・医療機関・サービス提供者の間での情報共有の在り方は,今後のデジタルヘルスサービスの発展に大きな影響を及ぼすと考えられる。透明で信頼性の高い情報流通体制の構築は,次世代の医療エコシステムの形成に不可欠である。 循環器病の予防,進行抑制に生活習慣改善が有効であることは既に言及したが,生活習慣改善のためには行動変容が重要であり,特に,長期的に支援する仕組みが不可欠である。この支援の枠組みとして,これまでにも多くの研究がなされてきており,以下に一部の例を示すが,理論的背景を含めてヘルスケアサービスの開発・利用の際に理解しておくことが望ましい。 行動変容理論には多様な枠組みが存在するが,それぞれが異なる心理的・社会的メカニズムを説明する。たとえば,まず行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)では,個人の行動の変化を「無関心期 → 関心期 → 準備期 → 実行期 → 維持期」という段階で捉え,各ステージに応じた介入(情報提供・動機づけ・行動計画)が効果的であると示す83, 84)。循環器病領域では禁煙支援や運動療法プログラム,さらには特定保健指導の動機づけ支援・積極的支援に活用されている85)。社会的認知理論(Social Cognitive Theory)では,「観察学習」,「自己効力感」,「結果期待」といった概念を通じて,行動が社会的文脈のなかで形成されることを示す。特に,自己効力感(self-efficacy)は循環器病の再発予防における重要因子であり,患者が「できる」という確信をもつことが服薬遵守率や運動継続に直結するとしている86)。計画的行動理論(Theory of 循環器病に関わる行動変容に関連する背景理論4
Planned Behavior)87)や健康信念モデル(Health Belief Model)88)は,「リスク認知」,「行動意図」,「社会的規範」の影響を定量的に説明する理論として,動機形成フェーズの理解に用いられてきた。特に,心筋梗塞患者や心不全患者では,「自覚症状の軽快=治癒」という誤解が再発リスクを高めるため,リスクに関して理解を支援する教育的介入が重要となる。 一方,近年注目される自己決定理論(Self-Determination Theory)89)やCOM-Bモデル(能力[Capability],機会[Opportunity],モチベーション[Motivation]の3要素で健康行動[Behavior]を説明するモデル) 90)は,従来の「外的動機づけ」中心の介入を超えて,「自律性(autonomy)」,「有能感(competence)」,「関係性(relatedness)」を育む介入設計を重視する。デジタルヘルスやリモートモニタリングでは,こうした内発的動機を支える設計が,アドヒアランス維持の鍵とされる。 さらに,行動経済学(behavioral economics)の知見も,近年の循環器病予防介入に積極的に取り入れられている。人は必ずしも合理的に行動しないという前提に立ち,「ナッジ(nudge)」や「損失回避」,「社会的比較」などの心理バイアスを活用することで,より自然な行動変化を導くアプローチである。たとえば,歩数計やスマートフォンアプリにおける“バッジ獲得”や“ランキング表示”は,社会的承認(デジタル空間のコミュニティでの承認も含む)を介して継続的行動を誘発する仕組みとして機能する91)。 これらの理論は,健康日本21において,特に発症予防の文脈,特定健診・特定保健指導の歴史のなかでも繰り返し検討されてきており,比較的日本のヘルスケア領域にも親和性が高い。しかし,期待がある一方,デジタル技術を活用した際にどの程度有効かについては知見が不足している。繰り返しになるが,注意すべきは,これらの理論を用いたからといってヘルスケアサービスが有効であるということにはならないということである。あくまで開発や利用時に活用する一つの理論的基盤として理解しておくことが望ましい。ヘルスケア社会実装基盤整備事業においても,大平班や野口班でこれらの行動変容の理論背景について言及されているので参照されたい92, 93)。これらの理論が循環器病のヘルスケアサービスにおいても有効かどうかということも重要なHQの一つであるが,先行する野口班などの研究においても完全な整理はしきれていないため,われわれの研究班としてもFRQの一つとして残す。行動変容理論に基づくデジタル技術を 活用したヘルスケアサービスは,循環 器病の発症・重症化予防に有効か? FRQ 2 【参考】大平班:生活習慣病予防のための行動変容を評価する包括的な社会心理行動指標に関する研究92),野口班:生活習慣病予防のための行動変容継続を実現するための指標に関する研究93) 本指針のエビデンス評価においては,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0」やCochraneの評価体系を踏まえ,次の3点を基本とする。第一に, RCTおよびそのメタ解析(システマティック・レビュー)を基盤となるエビデンスとして位置づけ, GRADEに基づく総合評価をエビデンス総体として理解することが大切である。第二に,そのうえで,RCTが実施困難な領域・場面において,コホート研究,ケースコントロール研究,実装研究,市販後調査を含むリアルワールドデータ(real-world data:RWD)解析,準実験的デザイン(quasi-experimental design)などを組み合わせて,妥当性と再現性の高い推論を補完的に行うことも可能となる。第三に,循環器病領域では死亡,再入院などのハードエンドポイントを用いた評価が望ましいが,短期的な試行導入やパイロット段階では,血圧,体重,身体活動量,服薬アドヒアランスなど代替指標や,患者報告アウトカム(patient reported outcome; PRO)あるいは電子的PRO(elecctoronic PRO:ePRO)を主要評価項目とすることが現実的である。これらの中間指標は,短期間で介入効果を可視化し,将来的な長期アウトカム研究への橋渡しとなることもあるため,何をアウトカムにした研究であるのかということを理解することが何より重要である。 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,行動変容支援や遠隔モニタリング,診断支援,デジタル技術と言いながら,実際には医療従事者などの非デジタルな要素が強く関わっているなど,複数の要素を組み合わせた複合的・複雑な介入であることが多い。さらに,サービスに要する費用の問題や,デジタル技術の進化に伴って研究期間中の介入内容にプラットフォームが影響を受ける可能性などから短期間での介入が求められる場面もある。これらに加えて,既存の サービスとエビデンスの関係5
医薬品・医療機器などの影響が大きいこともあり,長期のRCTの研究計画が立てにくい。コストが見合わないなどの理由により,RCT以外の手法を検討することもある。RCT以外を評価に用いる場合にはエビデンス総体の作成方法も異なるため,前述のように注意が必要である。実際のエビデンスの評価では,開発者・利用者が開発・利用しようとしているヘルスケアサービスについて,より慎重な立場で,今確認しているエビデンスや研究成果が当てはまるものかを評価する必要がある。これらの評価方法には,本指針と同じAMEDによるヘルスケア社会実装基盤整備事業「ヘルスケアの特色を踏まえた研究デザインの開発」の成果物である「安全で効果のある予防・健康づくりサービスって何?予防・健康づくりサービスの品質チェックリスト利用の手引き」,「予防・健康づくりサービスの品質チェックリスト(開発側)β版」,「予防・健康づくりプログラムの統計的評価デザイン~理解・実践のための手引き~」,「社会実装を目指すヘルスケアサービスの 研究デザイン&ガイド」なども参考にされたい94)。さらに国際的にも,デジタルヘルス介入(digital health interventions: DHI)の評価法としては,RCTのみならず,リアリスト評価(realist evaluation)や実装研究(implementation research)を組み合わせた多面的なアプローチが推奨されている。特にCochraneやMindsの枠組みにおいては,エビデンスの「内的妥当性(internal validity)」に加え,実環境での「外的妥当性(external validity)」や「適用可能性(applicability)」の評価を重視しており,介入の効果がどのような条件下で再現されうるかという視点が不可欠とされている。 また,介入研究に限らず,診断・モニタリング・リスク予測を目的とするAI・アルゴリズム系技術の開発では,診断精度研究(diagnostic accuracy study)の枠組みが重要であり,感度・特異度などの性能指標を中心に,既存検査や医療判断との比較を通じて臨床的有用性を検証することが求められる。これらの研究では,バイアス評価(QUADAS-2ツールなどによる)を用いて,データセットの代表性や結果の一般化可能性を明確にすることが推奨されている95)。さらに,サービスの有効性評価に加えて,アルゴリズムの透明性,データの代表性,利用環境の多様性など,実装段階での外的妥当性の検証が求められる。特に自治体・企業・医療機関など,利用主体ごとに異なる文脈での適用可能性を確保することが,社会実装における信頼性確保の前提となる。 最後に繰り返しになるが,こうしたヘルスケアサービスは健康に関わる以上,公的医療保険制度などに基づく医療・介護など既存の診療ガイドラインに基づく標準的な診断・治療を前提として活用されるべきものである。ヘルスケアサービスの導入や利用が,医師による診療判断やガイドラインに準拠した治療を異なるものに置き換える形となることは,ときに本来の目的を損なうおそれがある。標準医療を補完し,患者の生活の質(QOL)やセルフマネジメントを支援する仕組みとして位置づけることが,医療の質と安全を両立させるうえで不可欠である。この観点からも,社会的影響を十分に認識し,臨床・倫理・法制度の観点を踏まえた慎重な意思決定が求められる。 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスの導入にあたっては,導入目的・評価指標の明確化から多面的な評価・見直しに至るまで,段階的なプロセスを経て意思決定が行われることが望ましい。ここでいう「利用者」は,市民・患者といった最終的な利用者だけでなく,自治体・企業・保険者など,導入主体としてサービスを購入・契約する立場も含む広い概念である。本節では,主に導入主体の視点から意思決定プロセスを整理するが,ここで示す枠組みは,市民・患者が個人としてサービスを選択・利用する場合にも応用可能である。一般的には以下の4ステップで構成される。1目的・評価指標の明確化(導入前) サービス導入の目的を設定し,成果を測定する評価指標を定める。ヘルスケアサービスのアウトカム設定は非常に難しい。どのレベルのアウトカム(例:行動変容か,臨床検査値の改善か,再入院抑制か)への効果をもって「効果のあるヘルスケアサービス」とみなすか,販売側(開発者)と購入側(導入者)の間で明確に議論し,目的に合致するかを意思決定者が判断する必要がある。2契約・責任範囲の確認(導入時) サービス提供者(ベンダー)との利用規約・契約を締結し,データ管理責任の所在やサービス提供者のトラブル対応範囲を明確化する。必要に応じて小規模なパ 3 利用者の視点から 利用・契約における意思決定プロセス1
イロット導入を行い,実装上の課題を抽出する。3運用中のモニタリング(運用時) サービス開始後は,有効性・安全性・公平性を定期的にモニタリングする。利用率や離脱率,不適切利用などのデータを収集し,必要に応じて運用プロセスを改善する。この際,「公平性」については,たとえば高齢者や特定の集団が経済的格差や,デジタルリテラシーの格差によってサービスから取り残されていないか,といった視点での確認も重要である。4多面的な評価と見直し(評価時) 導入目的の達成度を確認するとともに,医療経済的効果,業務効率,コスト,アウトカムへの影響などを多角的に評価し,利用の継続と中止の判断を含めた意思決定を行う。また,期待した効果が得られなかった場合のサービス中止(出口戦略)については,利用者のデータをどう扱うかを含め,あらかじめ検討しておくことが望ましい。 このようなプロセスを踏むことで,単発的な導入にとどまらず,PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act cycle)に基づいた持続的なサービス活用が可能となる。さらに,利用者のそれぞれの立場によって評価軸が異なる点にも留意が必要である。たとえば,自治体では住民全体の健康増進や医療費の適正化といった公的効果が重視され,企業では従業員の運動習慣の定着や生産性向上など,健康経営の成果に結びつく効果が評価される。保険者では医療費削減や特定健康診査実施率の向上など医療経済的側面が,医療機関では診療・リハビリ支援を通じた業務効率化が重視される。一方で,個人の利用者では運動・食事・栄養管理といった生活習慣の行動変容や健康への直接的影響が中心的なアウトカムとなる。このように,導入効果は「支払者側の制度的・経済的成果」と「利用者側の健康行動変化」の両面で捉える必要がある。利用者にとって安全かつ有用であると同時に,倫理的・法的・社会的観点(Ethical, Legal, and Social Issues:ELSI)からの適切な判断が求められる。 実際に,自治体と健康経営企業(企業・保険者など)で意思決定の構造や重視する点が大きく異なることを示す調査もある。AMEDによる「デジタル技術を活用したヘルスケアサービスの社会実装に関する調査」(2024年)では,サービス導入時に意思決定者が重視する条件として,自治体・企業ともに「科学的根拠や指針に基づく信頼性」と回答した割合が最も大きく,自治体の83%,企業の80%がこれを重要視していた96)。一 方,自治体では「国や行政の方針との整合性」(約75%)や「住民への説明責任」(約68%)を重視する傾向があり,企業では「従業員の健康データ活用の有効性」(約72%)や「コストに対する効果」(約69%)が上位を占めた。導入上の課題としては,自治体が「費用対効果の不明確さ」(65%)や「運用・管理体制の負担」(48%)をあげ,企業では「比較検討に必要な情報が得られない」(60%),「サービス間の差が分かりにくい」(52%)といった情報面の課題が中心であった。また,意思決定の流れにも差があり,自治体では「複数部局による検討」(約70%)や「上位機関の承認」(55%)が必須とされ,プロセスの透明性と合意形成を重視しているのに対し,企業では「経営層または人事・健康経営部門の主導」(78%)が多く,スピードと実効性を優先する傾向が明らかとなった96)。われわれが行っているインターネット調査では,サービスの最終利用者である市民・患者自身の支払意欲(Willingness to Pay)は必ずしも高くない(たとえば,月額数百円程度が限界であるとの調査報告もある)という現実も存在する。したがって,開発者側は(個人課金[B to C]だけでなく)自治体(B to G)や企業・保険者(B to B)を支払者とするビジネスモデルを慎重に検討しておくことが重要となる。 医療とヘルスケア領域での費用対効果は大きく異なる。費用効果分析では,支払意思決定者の立場によって考慮すべき費用の範囲が異なるため,分析の立場を明確にする必要がある。たとえば,公的医療保険制度の範囲内のサービスでは,国を通じて国民全体で負担する「公的医療の立場」がとられる一方,市町村や民間事業者のサービスでは,限定された集団や組織が負担する立場となる97)。世界的にもヘルスケア領域での費用効果分析は医療サービスを中心に行われてきたが,その基本的な概念を理解することは保険外サービスを評価する上でも有用である。 ヘルスケアサービスの費用対効果を評価する際には,従来の保険診療の枠組みにとどまらない広範な視点が必要である。ヘルスケア産業を「卵」に見立てたモデル(序章 図2)において,黄身にあたる公的医療保険の領域では,国民全体の健康最大化を目指す「配分効率性」が重視され,増分費用効果比(incremental costeffectiveness ratio:ICER)や,QOLを加味した生存年で 費用対効果の観点2
ある質調整生存年(quality-adjusted life year:QALY)を用いて厳密に評価される。これに対して,本指針が主対象とする白身にあたる保険外サービスの領域では,サービスへの対価を支払う主体の視点に立った投資利益率(return on investment:ROI)や,金銭換算しにくい価値を含めた投資価値(value on investment:VOI)を評価指標とすることがある。VOIには,従業員の健康増進による生産性向上,離職率の低下,企業ブランド価値の向上,環境・社会・ガバナンス(Environmental, Social, and Governance:ESG)への貢献といった,直接的な医療費削減では測定できない非財務的価値が含まれる。海外では企業の健康経営プログラムやウェルビーイング施策の評価にVOIを用いた事例があり,日本でも徐々に導入が進みつつある。もっとも,企業や自治体がサービスを導入する際には,まず費用対効果やROIに基づく定量的分析が基本となるが,実際にはこうした社会的価値・企業価値(corporate value)の向上を含めた意思決定が行われるケースも少なくない。 具体的な評価指標の算出方法は以下のとおりである。公的医療保険の領域(卵の黄身)で標準的に用いられるICERは,既存の治療と比較して効果を1単位増やすために追加でいくら費用がかかるかを示す指標であり,以下の式で算出される。 ICER= Cnew−Ccomparator = ΔC Enew−Ecomparator ΔE ここで,Cnewは新規介入の総費用,Ccomperatorは比較対照の総費用,Enewは新規介入の効果,Ecomparatorは比較対照の効果を表す。また,この効果(E)の指標として用いられるQALYは,単なる生存期間だけでなくQOLを反映させたものであり,以下の式で算出される。 QALYs= 生存年数×効用値(Utility Value) 効用値は完全な健康状態を1.0,死亡を0.0としてその間の健康状態を数値化したものである。日本では1 QALYを獲得するために要する追加費用(ICER)が500万円程度であることが,効率的な医療技術か否かの判断目安の一つとされている。 一方,医療保険外サービス(卵の白身)において重視されるROIは,投資に対するリターンの大きさを示す指標であり,以下の式で算出される。ROI= (得られた利益[金銭的価値]−投資コスト) ×100(%)投資コスト ICERが低いほど(コストが低く効果が高い)費用対効果が良いとされるのに対し,ROIは数値が高いほど投資価値が高いと判断される。ヘルスケアサービスにおいては,医療費の削減額や生産性向上により得られた金額などを「得られた利益」として金銭換算し,評価を行う。従業員満足度や企業イメージ向上などのVOIで金銭的価値に換算できない場面や,健康としてのQOLや効用としての将来価値をどのように考えるかの仮定によって計算結果に幅が生じる点には留意が必要である。 サービスは個別契約により価格が変動する場合があるが,支払い主体ごとに以下の視点をもって基本的な考え方を理解できるようにすることが重要である。・企業・保険者(B to B)の視点:医療費や病欠コスト の削減といった「損失の回避」に加え,プレゼンティーイズム(生産性)の改善や組織活性化といった「利益の創出(攻めの健康投資)」を評価する。・自治体(B to G)の視点:将来的な介護給付費の適正 化や住民の健康寿命延伸といった財政的・社会的インパクトに加え,サービスが公平に行き渡るかという公平性も重視される。・個人(B to C)の視点:自費で利用する場合,「その サービスにいくら払ってもよいか」という支払い意思額が基準となり,体験価値や満足度が費用対効果の実感を左右する。利用者は,導入しようとするサービスの目的を見極め,目的に応じた適切な指標として費用対効果を検討する必要がある。短期的にはコスト増に見えても,継続的な利用(エンゲージメント)と規模の拡大(スケーラビリティ)によって,長期的には費用対効果が劇的に改善する可能性がある点にも,留意が必要である。 ヘルスケアサービスの開発者・提供者は,ビジネスとしての迅速性と,医療・ヘルスケア領域で求められる科学的妥当性の間で,高度なバランス感覚を求められる。医療機器などの該当性については既に,本章2. 4 開発者の視点から エビデンスの作成1
「2)法的・社会的整備」の節で述べた。同「5)サービスとエビデンスの関係」の節においても言及したが,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは複合的な介入であることが多く,リリース後も継続的に改善する必要があることや,外的要因として技術革新のスピードがサービスに影響を与えうる可能性が他の医薬品や医療機器よりも高いことが特徴である。薬機法に基づく場合は高度な承認プロセスが必要となるが,今後,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関してもなんらかの基準やエビデンスの整備,もしくは認証制度ができてくる可能性はあるため,社会的な動向を確認しておくことが重要である。本章2.「5)サービスとエビデンスの関係」でも紹介した「予防・健康づくりサービスの品質チェックリスト(開発側)β版」も参照されたい。また,繰り返しになるが,開発者は法的・倫理的枠組みにより,提供を検討しているサービスに制約を受けることもあるため,サービス開発・アイデア構想時点から,ヘルスケアの専門家やPMDAの「SaMD一元的相談窓口(医療機器プログラム総合相談)」52)など,確かな知見をもつ窓口に相談することを強く推奨する。 本章2.「5)サービスとエビデンスの関係」では, MindsやCochraneの評価体系に基づき,3つの点(RCTとそのメタ解析を基盤となるエビデンスとすること, RCTが実施不可能な環境での補完法,中間指標の評価)を示した。RCTによってエビデンスを構築することを想定してサービスを開発していただく必要はあるが,実際は3段階目の「中間指標の評価」からの開発となる。小規模のパイロット試験を行う際にも,どの現場で一般化可能性があるのかなど,場所の設定から慎重に実施し,統計家などと,より綿密な検討を行うことを推奨する。 実際には,一定の効果が見込まれた時点でサービスの販売を開始する可能性があるが,その際にも過大広告や,医療などに与える副次的な影響に配慮することを忘れてはならない。 ヘルスケアサービスが社会インフラの一部として医療と連携するためには,データの「質」と「安全性」が生命線となる。 1.データの標準化と相互運用性(interoperability) 汎用性のない独自のデータ形式で蓄積されたデータ データ形式・データマネジメント2は,医療機関との連携や大規模な解析(エビデンス構 築)において障壁となる。厚生労働省が推進する「医療DX」の動向を踏まえ,国際標準規格であるHL7 FHIR (Health Level Seven Fast Healthcare Interoperability Resources)およびその日本実装ガイドであるJP Coreに準拠したデータ設計を行うことが強く求められる。標準コード(ICD-10,HOTコードなど)を採用することで,将来的に電子カルテ(Electronic Health Record: EHR)やPHR(Personal Health Record),全国医療情報プラットフォームとの円滑な連携が可能となる。 2.セキュリティと2段階認証の実装 医療・健康情報は要配慮個人情報を含む機微なデータであるため,以下のガイドラインへの準拠は必須条件である。・「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供 事業者における安全管理ガイドライン」58)(経済産業省・総務省):サービス事業者が直接遵守すべきセキュリティ要件。・技術的セキュリティの実装:ガイドラインで求めら れるアクセス制御として,ID/パスワードに加え,ショートメッセージサービス(SMS)や生体認証などを組み合わせた「2段階認証(多要素認証)」の実装が,不正アクセス防止の観点から推奨される。 3.ELSI(倫理的・法的・社会的課題)への配慮 配慮すべき項目を以下にあげる。デジタル・ディバイド(デジタル格差)とアクセシビリティへの配慮:高齢者や低所得者層などにおいて,デジタルリテラシーや通信環境の格差が健康格差につながらないようにすることが必要である。・デザインの工夫:ユーザーインターフェース(user interface:UI)やユーザーエクスペリエンス(user experience:UX)の設計において,高齢者の視認性(大きなフォント,明瞭な配色)や操作の単純化を徹底する。・アクセス手段の多様化:患者本人の操作が困難な場 合を想定し,家族や介護者がデータを代理入力・閲覧できる機能の実装や,デジタル完結ではなく紙媒体(レポート出力)での情報共有を可能にするハイブリッドな運用モデルも検討すべきである。健康的な利用:健康のためのアプリ利用が,長時間のスクリーン注視による視覚疲労や座位時間の増加を
招き,逆説的に健康を害することがないよう,利用時間の制限機能や通知の制御などに配慮する。 情報の非対称性と不安の管理:ウェアラブルデバイスなどで心拍や不整脈のアラートを出す際,利用者に過度な不安(Nocebo効果)を与え,不必要な受診行動を誘発しないよう,データの解釈や「直ちに危険ではない」といったコンテキスト(文脈)を併せて提供する設計・デザインが求められる。 AIの透明性と公平性:AIによるリスク予測などを行う場合,学習データのバイアス(人種,性別,年齢の偏り)がないか確認し,判断根拠がブラックボックス化しないよう「説明可能性」を担保することは,開発者の社会的責務である。
本章は各論として,各疾患でHQに掲載できていない各サービスの概要,FRQ,および今後の展望について記載する。疾患ごとに参照すべきガイドラインなどを列挙するが,以下のウェブサイトにも循環器病に関わる多くの情報が提供されているため,全体像を理解するためにも参照されたい。 ⃝厚生労働省.循環器病対策(施策に加えて,自治体や一般の方向けの資材も豊富に掲載されている)98) ⃝日本脳卒中学会(ガイドラインなどに加えて,委員会等の活動など)99) ⃝日本脳卒中協会(疾患の説明,ヘルスケアプロバイダー・患者が利用可能な啓発動画や体験者の声,市民 公開講座,患者会,サロンの情報,活動など)100) ⃝日本循環器学会(ガイドラインなどに加えて,委員会等の活動など)101) ⃝日本循環器協会(疾患の説明,各取り組み,機関紙などの情報など)102) 上記以外で今回の提言に関わる循環器関連学会(日本心血管インターベンション治療学会,日本心不全学会,日本不整脈心電学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本成人先天性心疾患学会,日本循環器病予防学会,日本高血圧学会,日本産業衛生学会,日本動脈硬化学会,日本腎臓学会)の多くは日本循環器連合(2020年発足)に参画しており,日本循環器学会のウェブページでも紹介している。 第3 章 各疾患におけるヘルスケアサービス 心血管疾患においては,米国心臓協会(AHA)が, “Life’s Essential 8TM”として,心血管健康(cardiovascular 1 心血管疾患 参考にすべき疾患ガイドライン・手引き▶「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関す る診療ガイドライン」28) ▶「2022年JCSガイドラインフォーカスアップ デート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」103) ▶「急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)」 104) ▶「2023年JCS/CVIT/JCCガイドラインフォーカ スアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療」105) ▶「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリ テーションに関するガイドライン」36) health)を改善するための健康行動と健康因子をわか りやすく解説している106)。健康行動として,野菜,フルーツなどを含めた健康な食事,身体活動量の増加,禁煙,健康的な睡眠があげられており,また,健康因子として体重,コレステロール,血糖,血圧のコントロールが重要であることを紹介している。第2章1.「2)循環器病に関わるエビデンスの示す範囲についての注意」で述べたとおり,発症予防と重症化予防において生活習慣改善が全く同じように効果があるというと正確ではないが,心血管疾患,特に冠動脈疾患患者や末梢動脈疾患患者においては,発症予防と重症化予防のいずれにおいても,Life’s Essential 8を代表とする生活習慣改善などのアプローチが同様に重要であると考えられている。 心血管疾患発症予防におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの実用的な応用例としては,リ 発症予防1
スクスクリーニングと評価,生活習慣改善の支援,患者教育などがあげられる。リスクを評価し,予防情報を提供するツールには,学会が公式に無料で提供しているものも多い。例として,欧州心臓病学会(ESC)のCVD Risk Calculation107),米国心臓病学会(ACC)のASCVD Risk Estimator Plus108),日本動脈硬化学会が一般向けに提供している「これりすくん」109)や,動脈硬化性疾患発症予測・脂質管理目標設定アプリ(医師・医療従事者向け)110)などがあげられる。また,実際にこれらのリスク管理や生活習慣改善のために,各市町村向け(例:スポーツタウンWALKERTM 111),ALKOOTM 112)など),あるいは健康保険組合向けなど(例:Pep UpTM 113), MY HEALTH WEBTM 114),みんなの家庭の医学TM 115), kencomTM 116)など)の個別のアプリが開発され,特定健診・特定保健指導などの保健・医療サービスと連携したサービスが提供されている。 さらに,実際にモバイルアプリおよびウェアラブルデバイスを活用した介入例として,海外で個別に有効性を示しているヘルスケアアプリサービスもある。例として,トルコでのLIGHT試験では,心血管疾患リスクが高い(10年でのイベントリスクスコア>7.5 %以上)の母集団にウェアラブルデバイスとスマートフォンアプリを活用してもらうことで,リスクスコアが低下し(2.7%),脂質,血圧などの健康因子の改善も認められた117)。また,中国の汎用アプリであるWeChatTMなどを活用し,医療従事者を含めた複合的な教育・生活習慣改善プログラムで血圧低下効果を示した例もある118)。前述のとおり,発症予防に関しては高血圧・糖尿病・慢性腎不全などのサービスの指針を参考にしていただく必要があるが,これらのアプリが有効かどうかについてのエビデンスはまだ十分ではない。 重症化予防の領域においても,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,発症予防と同様に,生活習慣・健康因子の改善に加えて,遠隔リハビリテーションの支援,服薬アドヒアランスの向上,セルフケア支援などを通じた有効性が期待されている。 たとえば,心血管疾患における自宅での遠隔リハビリテーションなどは,身体活動・運動機能・QOLに効果があるというレビューも散見される119, 200)。遠隔リハビリテーションに関する一例として,「心血管疾患における遠隔リハビリテーションに関するステートメン 重症化予防2ト」が日本心臓リハビリテーション学会を中心に作成 されているので,参考にされたい121)。遠隔リハビリテーションに関しては,2025年11月現在,医療機器プログラム「リモハブ CR UTM」が製造販売承認(薬事承認)され122),診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会での議論が行われるところである123)。心大血管疾患に対してのリハビリテーションは公的医療保険の下で行われる可能性があり,今後,身体活動・運動・リハビリテーションに関わるヘルスケアサービスの開発および利用時の,どのような枠組みのサービスであるかを考える際によい比較対象となるだろう。 汎用されている携帯電話でのテキストメッセージやmHealthアプリは,心血管疾患患者の服薬アドヒアランス向上に有効であるという報告も散見されるが124),近年のレビューの結果では携帯電話でのテキストメッセージの研究は介入方法がさまざまで,研究の質が低いことなどを含めて有効性には疑問が残っているのが事実である125)。特に,テキストメッセージ単独のプログラムなどは低コストで設定できるが126),多くのサービスは医療従事者などのヘルスケア専門家が加わることもあり,より統合的かつ慎重な費用対効果の評価が必要となる。 セルフケア支援に関するエビデンスとしては,冠動脈疾患患者300例を対象とした中国のRCTにおいて,モバイルアプリ併用群で12ヵ月時点のガイドライン推奨薬物治療の遵守率が通常ケア群よりも34%高く(RR 1.34,95%CI 1.12-1.61),さらにLDLコレステロール管理達成率が40%高い(RR 1.40,95%CI 1.11-1.75)など,顕著な改善が示された127)。多疾患併存(糖尿病・心不全・虚血性心疾患・慢性腎臓病・慢性閉塞性肺疾患[COPD]のうち2疾患以上)患者230例を対象としたLearらの2年間のRCTでは,インターネット自己管理群で通常ケア群にくらべ入院件数が30.9%減少し(56件 vs 81件),入院または死亡の複合アウトカムも31.9% vs 45.1% と低下(オッズ比 0.57)するなど,自己管理支援の有効性が示唆された11)。また,急性心筋梗塞患者に対しては,Spauldingらが開発したCorrie Healthプラットフォーム(MiCORE研究)は,薬剤管理・バイタル記録・教育支援を一体化した自己管理ツールとして病棟への導入が100%可能であることが確認され,退院直後の二次予防行動を支える重要なデジタル基盤となることが期待されている128)。 退院後の支援において,医療チームのサポートも含
めることで有効性が示された例もある。Bluetooth対応デバイスを使用してスマートフォンと中央サーバーにデータを送信し,設定された閾値を超えると医療チームに通知を届けるTeleClinical Careを検討したパイロットRCTでは,30日以内の再入院は通常ケア群と同等であったが,TeleClinical Care群では6 ヵ月での再入院回数の減少,服薬アドヒアランスの改善,心臓リハビリテーション完了率の上昇など長期的な有効性が認められた17)。 HQ1,2(第1章参照)のとおり,心血管疾患におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスを活用することで,心血管イベントや再入院の減少が期待される。しかし,臨床的な疑問として,FRQ1にあげたとおり,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスによる健康行動・生活習慣の改善は循環器病の発症予防・重症化予防に有効かという疑問が残る。特に現段階では,多くのデジタル技術が複合的に活用されていることもあり,個別のモバイルアプリやモニタリングそのものがどのように効果を示しているのか明らかではない。また,従来の保健指導や健康支援との比較や併用の効果などのエビデンスも不足している。ヘルスケアサービスの利用者はこの点に注意を払う必要がある。 今回のシステマティック・レビューに含まれた研究のなかには,虚血性心疾患の自覚症状,QOLに関するものが少なく,今後の研究がまたれる。また,サービスの利用開始時期および利用期間などに関しても明確なデータは不足しており,より適切なサービスの介入期間などを含めたさらなるサービスの開発や研究が期待される。 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスによる健康行動・生活習慣の 改善は,循環器病の発症予防・重症化予防に有効か? 行動変容理論に基づくデジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,循環 器病の発症・重症化予防に有効か? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患の自覚症状を Future Research Question 3 FRQ 1 FRQ 2 FRQ 3はじめとした患者報告アウトカムを改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心血管疾患患者のQOLを 改善するか? どのような種類のデジタル技術を活用したヘルスケアサービスが心血管疾 患患者の予後(心血管イベント,再入院など)を改善するか? 1.病みの軌跡の特徴 心不全は「心臓の構造・機能的な異常により,うっ血や心内圧上昇,およびあるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし,呼吸困難,浮腫,倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群」と定義される129)。心不全の病期の進行については,以下の心不全ステージ分類が用いられることが多く,本項では心不全ステージC(症候性心不全)以降について述べる。 ステージA(心不全リスク):心不全の危険因子を有するが,症状や構造的・機能的異常を伴う心疾患,心筋障害のバイオマーカーの上昇がない状態である。ステージB(前心不全):心不全の症状はないが,心不全の定義の1つ以上を有する状態である。ステージC(症候性心不全):構造的あるいは機能的な心臓の異常を原因とする症状や徴候を呈し,心原性の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)/N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)高値あるいは心原性の肺または全身性のうっ血の客観的証拠が,現在または過去に認められる状態である。ステージCは新規発症心不全,心不全症状の改善,心 FRQ 4 FRQ 5 2 心不全 参考にすべき疾患ガイドライン・手引き▶「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」129) ▶「心不全診療における遠隔診療」130) ▶「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリ テーションに関するガイドライン」35) 病みの軌跡の特徴とヘルスケアサービス1
不全症状の持続,心不全増悪の4つの状態と定義される。ステージD(治療抵抗性心不全):有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療された,ないしは治療が考慮されたにもかかわらず,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類III度(平地歩行でも息切れ)より改善せず,日常生活に支障をきたす重度の心不全症状を有する状態と定義される。このステージでは,診療ガイドラインに基づいた標準治療の最適化を図っても心不全入院を繰り返す。以上のような軌跡を踏まえると,心不全管理には増悪予防と日常生活のセルフケアの支援において,ヘルスケアサービスが必要となる。2.ヘルスケアサービスの構造と意義 心不全領域におけるヘルスケアサービスは,大きく次のような機能を担う。i.増悪リスクの高い脆弱期の再入院予防 退院直後は心不全が悪化しやすく脆弱で,注意深い管理・支援が必要なことから,この時期を脆弱期とよぶ129)。この時期は心不全患者の再入院を予防することがきわめて重要で,遠隔モニタリングシステム,ウェアラブルデバイス,治療アプリが活用されつつある。近年のメタ解析では,遠隔モニタリングが全死亡や心不全入院を減少させる可能性が示唆されているが,研究により介入の閾値やその種類,結果にばらつきがあり,これらをいかに個人に最適化するかに関して,今後のさらなる研究が望まれている131-133)。ii.慢性期セルフケア 症状が安定している慢性期であっても,塩分や水分の管理,服薬の遵守,定期的な運動,感染症予防などのセルフケアが不十分であると心不全増悪のリスクが高まる134-136)。一方で,QOLの向上も重要であり,特にウェアラブルデバイスから得られる情報に関しては,利用者本人が自らの行動を客観的に確認することで運動量が増え,体重・ウエスト周囲長・BMIが減少し,有酸素運動時間が増加し,QOLも向上する可能性が報告されている137)。 現在のウェアラブルデバイスの心不全を含む医療応用に向けたアプローチには,まずは遠隔モニタリングとしての使用と,取得データの機械学習などを介した解析,ならびにその解析結果の可視化を充実させる動きがある。身体活動が少ないことは心不全の発症と心不全の予後不良に関連することから,ウェアラブルデバイスによる自身の身体活動の客観的把握と運動量増 加は,心不全の予防・管理に役立つ可能性がある。 さらには,近年では,デジタル治療(DTx)とよばれる分野が台頭してきている。DTxとは,デジタル機器を介して病気の治療を提供するプログラムによる新しい治療法を指す。特にスマートフォンなどのアプリを用いて疾患の治療を目的とするものを「治療用アプリ」とよび,内服治療,外科的治療に続く第3の治療法として注目されている138)。 日常生活において,心不全患者とその家族が安心して過ごし,増悪を予防し,再入院や合併症のリスクを減らすためには,次のようなサービスが重要である。1.セルフケア支援 心不全患者に必要なセルフケアは,セルフケアメンテナンス,セルフケアモニタリング,セルフケアマネジメントの3つの概念に分類される139, 140)。i.セルフケアメンテナンス 身体や精神の健康を維持するために必要な行動で,栄養管理,服薬管理,運動,感染予防,心理的ケア,睡眠,節酒,禁煙,適切な休暇や余暇の調整などが含まれる。ii.セルフケアモニタリング 心不全増悪に伴う自身の症状や徴候を観察することである。これにより心不全増悪の早期発見と,速やかな受診,早期の治療開始が可能となる。遠隔モニタリング技術を活用することで,心不全増悪の早期発見,心不全入院のリスク低下が期待される。iii.セルフケアマネジメント 症状や徴候の出現時の対処行動を指す。対処方法には,利尿薬の調整(追加内服),安静,塩分・水分の制限,家族や介護者に支援を求めること,医療機関への相談・受診がある。2.モニタリング,心不全予防・管理i.遠隔モニタリング 体重,心拍数,血圧,酸素飽和度,活動量,浮腫など家庭で測定した情報をモニタリングする。遠隔モニタリングにより増悪の兆候が認められた場合,医療従事者は適切に患者に連絡を取り,適切な治療につなげることが重要であるが,どの患者にも画一的な増悪の兆候や適切な対応があるわけではなく,個人に最適化 心不全患者の日常生活に必要なヘルスケアサービス2
された対応が必要となる。非侵襲的な体重やバイタルサインの遠隔モニタリングを用いた研究のメタ解析やCochran reviewでは,死亡を減らすという結果が得られているが,その効果は研究ごとに異なり一貫していなかった141)。これらのデバイスによって得られる単一指標の変化は,心不全に非特異的であり,また心不全増悪の直前まで変化しないことが,この一貫性のなさの一因として考えられている。ii.電話,Webケア,教育支援 退院直後の支援として,看護師による定期的な電話フォロー,オンライン相談,教育プログラムがある。主な内容として,医学的モニタリング,生活指導,心理・社会サポートの3領域がある。特に,退院後の体重の推移・症状変化のモニタリング,服薬アドヒアランス支援などにより,脆弱期の再入院を予防することを目的としている。 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関しては,効果検証のための研究の必要性はもちろんのこと,介入方法の洗練化と,より高い効果が得られるサービスの開発が求められる。心不全の診療には疾患特異的な課題,医療アクセスの地域格差,エビデンスに基づく治療の実装未達といった多くの課題が存在する130)。デジタル技術を活用したヘルスケアサービスはこれらの課題解決に寄与し得るものであり,技術の進展によりその有用性はさらに高まる。 Future Research Questionとして,以下の3つを挙げる。これらに関しては,今回のシステマティック・レビューではエビデンスが整理しきれない状況であり,今後の研究開発が期待される。 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全症状/所見(体重な ど)を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者のQOL/ADL (身体活動など)を改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心不全患者の行動変容を 促すか? Future Research Question 3 FRQ 6 FRQ 7 FRQ 8今後はさらなるエビデンスの蓄積とともに,新しい デジタル技術を活用したヘルスケアサービスの導入を推進し,心不全診療の質の向上を目指す必要がある。 脳卒中は心血管疾患と同じく,動脈硬化性疾患として扱われることも多いため,アテローム血栓性脳梗塞においては,発症予防のためのヘルスケアサービスに心血管疾患と同様の考え方が適用され得る。しかし,脳卒中には,発症機序の異なる,心房細動に伴う脳塞栓症や脳出血も含まれ,異なるアプローチが必要となることもあるため,これらの区別には注意が必要である。また,心筋梗塞などの心血管疾患と異なり,脳卒中では心肺機能の低下によって生活が制限されるのではなく,特に亜急性期にも継続する運動・感覚障害に伴う機能障害によって日常生活に制限が生じるという特徴がある。これらの機能障害を改善するためのヘルスケアサービスの開発・利用が進むことに,期待が集まっている。 脳卒中における亜急性期以後のリハビリテーション診療では,対象となる障害はきわめて多岐にわたる。主要な身体機能の課題としては,運動障害や歩行障害,上肢機能障害に加え,痙縮や疼痛といった症状への対応があげられている。また,生命維持やQOLに直結する摂食嚥下障害も,重要なアプローチ領域である。さらに,身体的な運動機能だけでなく,コミュニケーションや認知に関わる失語症・構音障害,高次脳機能障害,そして心理面への影響としての脳卒中後うつなども包括的に扱われている。ヘルスケアサービスにおいても,これら個別の機能障害に対し,デジタル技術を活用した実証研究(RCT)に基づいたソリューション開発が求められている。 3 脳卒中 参考にすべき疾患ガイドライン・手引き▶「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」28) ▶「外見からの判別が困難な脳卒中後遺症の制圧 に向けた提言」142) ▶「作業療法ガイドライン 脳卒中」143) 機能障害とヘルスケアサービス1
1.運動・歩行障害 運動機能障害に関してのロボット技術やVRを活用したヘルスケアサービスについてはHQとして取り上げたとおりである。ロボット技術やVRを活用したヘルスケアサービスについては有効性のエビデンスも認められることから期待されるが,現時点では保険診療下で行われるものではなく,各施設での取り組みのなかで行われる形となっている。さらに,スマートフォンやウェアラブルデバイスに内蔵の加速度センサー,ジャイロスコープ,モーショントラッキング機能を使用して手足の動きと姿勢を評価するヘルスケアサービスも開発されており,自宅でのリハビリテーションへの効果が期待されているが,検証が必要である。特に,スマートフォンやウェアラブルデバイスなどの汎用機器を活用することによる拡張可能性がある一方,介入効果を比較するための介入・アウトカムの評価法が均質化されておらず,この領域における知見の整理が必要である144)。 実際,脳卒中領域における遠隔リハビリテーションのエビデンス構築は,心不全などの領域に比べて複雑な経過をたどっている。2020年のCochrane Review (RCT 22件,対象1,937例)145)では,遠隔リハビリテーション群で対面療法群と比較してADL(日常生活動作)やQOLにおける有意差は認められず,あくまで「非劣性(遠隔リハビリテーションは対面療法に劣らない)」という評価に留まっている。さらに,Pitliyaらによる2025年の最新のメタ解析146)では,遠隔リハビリテーションによる体幹機能(Trunk Impairment Scale)の改善傾向は示されたものの,移動能力(Timed Up and Go test)やADL指標(Barthel Index)においては対面療法よりわずかに劣る可能性も示唆されており,アウトカムによって効果にばらつきがみられる。これらの背景には,介入手段が電話支援からウェアラブルセンサーまで多岐にわたり,実施強度も統一されていないという異質性(heterogeneity)の問題がある。そのため,今後は単なる機器の導入だけでなく,トレーニング強度やプロトコルを標準化したうえでの検証,および費用対効果の評価を含めたエビデンスの蓄積が不可欠である。 運動機能障害は脳卒中の本幹となる合併症であるため,今後のさらなる開発が期待されているが,介入をどのタイミングで行うと最も効率的なのかについても知見は乏しい。たとえば,脳卒中急性期においても同様に効果があるかどうかについては,まだ確実なエビ デンスが認められない。2.摂食嚥下障害 摂食嚥下障害に対するヘルスケアサービスとして,われわれのレビューからは4件のRCTが同定された。介入方法はデジタル技術を活用したトレーニングが中心であり,Zhangら(2025)は,顔認識技術を用いて患者の「口唇・舌・顎」の動きを捉え,画面上のキャラクターを操作するAIベースのビデオゲームシステム(AI-VG/FR-VG)の効果を,パイロット試験(n=26)147)および比較的大規模な試験(n=84) 148)で検証した。Parkら(2019)は,タブレットPCと抵抗バーを連動させ,顎引き運動(chin tuck against resistance: CTAR)をゲーム化して行うgbCTARの効果を37例の対象者で検証した149)。また,Moonら(2019)は,スマートフォンの動画を見ながら口腔顔面筋の訓練を行うビデオモデリング介入を 16例の対象者で検証した150)。これらの研究では,嚥下機能の客観的指標としてGugging Swallowing Screen (GUSS),Videofluoroscopic Dysphagia Scale(VDS), Penetration-Aspiration Scale(PAS)などが用いられ,経口摂取機能の指標としてFunctional Oral Intake Scale (FOIS),さらにQOL(Swallowing Quality of Life:SWAL- QOL)や患者満足度,アドヒアランスも検証された。 効果検証の結果,AIを用いたビデオゲーム介入(AI- VG)を行ったZhangらのRCTでは,主要評価項目のGUSS(嚥下機能)において介入群は対照群(通常ケア)と比較して統計的に有意な改善(平均差4.02,95%信頼区間-6.16--1.89)を示し,FOIS(経口摂取レベル)やSWAL-QOL(QOL)においても有意な改善が確認された148)。また,同グループによるパイロット試験においても,介入群でGUSSおよびFOISの有意な改善が示されている147)。しかしながら,ParkやMoonらの研究では,嚥下機能(VDS,PAS,FDS)において対照群(従来の訓練法や小冊子)との間に統計的な有意差は認められなかった149, 150)。Parkらの研究では,ゲーム群で「動機づけ」や「楽しさ」のスコアが有意に高く,身体的疲労が有意に低いことが示され,Moonらの研究でもスマホ動画群で満足度(Visual analogue satisfaction scale:VASS)が有意に高いことが報告されている。これらの結果は,デジタル技術の導入が,機能改善の上乗せ効果だけでなく,リハビリテーションへのコンプライアンスや満足度の向上にも寄与する可能性を示唆しているが,介入方法自体のさらなる洗練化が求めら
れる。3.構音障害 構音障害に対するヘルスケアサービスとして,われわれのレビューからは2件のRCTが同定された。介入方法はそれぞれ異なり,Kimら(2024)は,音声解析技術により自身の発話に対して「声の大きさ」や「ピッチ」などの聴覚・視覚的なリアルタイムフィードバックを即座に提供する自立訓練アプリ(D-ST01)を用いた151)。一方,Mitchellら(2018)は,セラピストが個々の患者に合わせて課題を選択・管理するオンラインプログラム(ReaDySpeech)を用いたが,こちらは実施ログの記録が主であり,発話の質に対する自動フィードバック機能は有していない152)。これらの研究では,構音障害の客観的指標としてSpeech Intelligibility(発話明瞭度),Frenchay Dysarthria Assessment II(FDA-II), National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS) (構音障害重症度),および子音正答率などが用いられている。さらに,活動・参加レベルやQOLを包括的に捉えるため,Therapy Outcome Measures(TOMs),Communication Outcomes After Stroke Scale(COAST),EuroQol 5 Dimensions(EQ-5D)といった指標も検証された。 効果検証の結果,リアルタイムフィードバックを用いたKimらの研究では,主要評価項目のSpeech Intelligibilityにおいて,介入群は対照群と比較して統計的に有意な改善効果(時間×群の交互作用:F1,30=6.91,P=0.01)を示し,NIHSS(重症度)においても有意な改善(F1,30 =5.29,P=0.03)が確認された151)。一方,Mitchellらの研究は実行可能性試験であったため統計的な有意差検定は行われていないが,FDA-IIスコアにおいて介入群で平均24点,対照群で平均14点の改善という記述的な成果が報告されている152)。なお,QOL(EQ-5D)については,両研究とも記述的な改善や時間経過に伴う有意な変化はみられたものの,アプリの使用による統計的に明確な上乗せ効果(交互作用)を示すには至っていない。4.失語症 失語症に対するヘルスケアサービスとして,われわれのレビューからは11件のRCTが同定された。介入方法は多岐にわたり,Palmerら(2019) 153)やBraleyら(2021) 154)は PCやタブレットを用いた自立訓練型アプリ(StepByStep, Constant Therapy)による介入を行い,Dipperら(2024) 155)やWoolfら(2016) 156)は遠隔会議システムを用いた言語療法(LUNA,など)を検証した。また,Roseら(2022) 157)は対面での集中療法(constraint-induced aphasia therapy plus[CIAT-Plus],multi-modality aphasia therapy [M-MAT])の効果を検証している。これらの研究では,言語機能の客観的指標としてWestern Aphasia Battery- Revised Aphasia Quotient(WAB-R-AQ)(失語症重症度)や呼称テスト(naming ability),機能的コミュニケーション指標としてCommunicative Effectiveness Index (CETI)やTOMs,さらにQOL指標としてStroke and Aphasia Quality of Life Scale-39(SAQOL-39)などが用いられている。 効果検証の結果,大規模RCTであるPalmerらの研究(Big CACTUS)では,主要評価項目の単語呼称能力において,介入群が対照群と比較して有意な改善(16.2%の上乗せ効果)を示したが,機能的会話やQOLへの波及効果は確認されなかった153)。一方,Braleyらの研究(Constant Therapy)では,標準ケアと比較してWAB-R AQにおいて有意な改善(6.43ポイント差)が報告されている154)。しかしながら,活動・参加レベルへの効果は限定的であり,Roseらの研究(COMPARE)157)でも,集中療法は通常ケアと比較してWAB-R AQでの有意差を示さなかった。 実際に,上記の試験のなかでWAB-R AQを共通アウトカムとして評価した4つの介入(LUNA,CIAT-Plus/ M-MAT,Constant Therapy)のRCTデータを用いてメタ解析を行った結果,統合効果量は平均差-0.50 (95%信頼区間-2.01-1.01)となり,介入による統計的に有意な上乗せ効果は示されなかった。これは,失語症のリハビリテーションにおいて,単一の指標(特に重症度)だけで介入効果を測ることの難しさや,介入方法の多様性が影響している可能性を示唆している。 これまで言及したとおり,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関しては,効果検証の研究はもちろんのこと,介入方法の洗練化と,より高い効果が得られるサービスの開発が求められる。特に脳卒中のように機能回復が社会的な課題となる領域でのデジタル技術開発においては,それらの課題に適したアウトカムの評価方法が求められ,その洗練化も期待される。 Future Research Qustionとして,以下の6つを挙げる。これらに関しては,今回のシステマティック・レビューではエビデンスが整理しきれない状況であり,今後の研究開発が期待される。 Future Research Question 2
モバイルアプリを活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の運動機能を回 復させるか? 遠隔リハビリテーションは脳卒中後の運動機能を回復させるか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の嚥下機能を回 復させるか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の失語症状を改 善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の構音障害を改 善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,脳卒中後の高次脳機能障 害を改善するか? 今回,HQ4,5に関してはロボットとVRを介入として,運動機能障害をアウトカムとして整理を行ったが,当然のことながら,新しい介入方法が提示された場合には,追加して評価を行う必要がある。 FRQ 9 FRQ 10 FRQ 11 FRQ 12 FRQ 13 FRQ 14 4 不整脈 参考にすべき疾患ガイドライン・手引き▶「2025年日本不整脈心電学会 /日本循環器学 会 携帯型 /装着型心電計の適切使用に関するコンセンサスステートメント」158) ▶「2024年JCS/JHRS ガイドライン フォーカス アップデート版 不整脈治療」159) ▶「2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に 関するガイドライン」160) ▶「2021年 JCS/JHRS ガイドライン フォーカ スアップデート版 不整脈非薬物治療」161) ▶「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改 訂版)」162) ▶「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン (2017年改訂版)」163) ▶「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリ テーションに関するガイドライン」35) 不整脈領域では汎用機器(Apple WatchTMなどのウェアラブルデバイス)を用いた心房細動の同定に関する研究が有名であるが,不整脈には心房細動以外にも心室頻拍・心室細動といった致死性不整脈から,期外収縮などの自覚症状が軽微な不整脈まで,さまざまな種類がある。今回のデジタル技術を活用したヘルスケアサービスのシステマティック・レビューでは,植込み型除細動器やペースメーカといった治療用の医療機器自体に含まれるプログラムを活用した不整脈発症予防や,適切なタイミングでの治療介入による重症化予防などの研究が多く抽出されている。治療用デバイスを用いたデジタル技術を活用したヘルスケアサービスについては,上記の各疾患ガイドラインを参照されたい。 院外心肺停止は,発症から処置開始までの時間が分単位で生命予後および機能予後に影響を及ぼす,重大な局面である。近年のデジタル技術の進歩により,救急要請者の位置情報を活用した市民救助者(バイスタンダー)の確保や,質の高い心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation;CPR)の支援が可能となってきている。 モバイルアプリ(テキストメッセージやスマートフォンアプリケーションの位置情報など)を用いて市民ボランティアを動員する効果については,1件のRCTと12件のコホート研究を含む13のアプリケーションを対象とした2025年のシステマティック・レビュー,メタ解析で,従来の救急医療サービス単独と比較して,モバイルアプリによる介入が不整脈患者の予後を有意に改善することが示された。具体的には,生存退院率または30日生存率,入院時の自己心拍再開率のリスク比はそれぞれ1.34(95%CI 1.24-1.44),1.23 (95%CI 1.09-1.40)であった。プロセス指標においても,バイスタンダーによるCPR実施率,バイスタンダーによる除細動実施率がそれぞれリスク比1.25(95%CI 心肺停止患者や救急患者1
1.13-1.37),1.23(95%CI 1.00-1.51)と向上しており,有効性が期待される146)。 また,ドローン(無人航空機システム[unmanned aircraft systems:UAS])などの新たなデジタル技術を用いた捜索が,従来の地上部隊による捜索と比較して,遭難者や傷病者の捜索範囲を有意に広げ,接触までの時間を短縮し,発見率を向上する可能性を示唆する報告も散見される165)。しかし,市民ボランティアによる捜索協力の有無や地理的状況,文化的背景などの複合的要因の影響を受ける複雑な介入であり,一般化可能性は低い。費用対効果を含めて考察が不足しており,より適切な介入のためにはさらなる研究が必要と考えられる。 さらに,デジタル技術に関して新しいアプローチも検討されている。たとえば,消防本部の指令員を支援する試みとして,AIを活用して救急通報中の音声を解析することにより心停止を自動検出する機械学習モデルを評価したRCTでは,指令員による心停止認識率の有意な改善にはつながらなかった166)。蘇生領域におけるヘルスケアサービスをどのような枠組みで行うかについては,循環器病を超えた学術領域の専門家との協働のもと,考慮していく必要がある。 心房細動は不整脈のなかでも特に割合が大きく,高齢化の進展とともに患者数が増加している。心不全や脳塞栓症などの重篤な心血管イベントの原因となることから,その発症予防および早期診断はきわめて重要である167)。心房細動の早期発見に関しては,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスの使用により期待される結果が得られてきているものの,これまでのデジタル技術を活用したヘルスケアサービスやアプリを用いた心房細動に関連する研究の多くは,心房細動の検出率やスクリーニング精度に関するものであり,発症そのものを抑制したという介入研究はみられない。 デジタル技術を活用した心房細動のスクリーニングは,心電計を用いるものと,脈波など心電計以外の方法を用いるものに大きく分けられる。近年広く普及しているのは,光電式容積脈波法を利用したスマートウォッチやスマートフォンアプリであり,大規模研究で約80~90%の陽性的中率を示した報告もある168, 169)。しかし,市民を対象とした場合は偽陽性も少なくない。さらに診断の確定には医療機関での心電図検査が必須 心房細動2である。これらのデバイスは消費者が自ら購入し,任 意に使用することが多いため,スクリーニング対象が無症候・低リスクの人を含む点に注意を要する。地域を限定して住民単位で行った研究や,植込み型ループレコーダーのように侵襲度の高い介入方法を用いてより正確な診断を行った研究でも,心房細動の検出率が上昇することが示されているが,早期発見が可能となったとして,どのような予防・治療介入を行えば脳塞栓症の予防などの臨床的アウトカムの改善につながるかについては,まだ結論が得られていない170, 171)。 Wahabらのシステマティック・レビュー(32件の研究,対象約735,000人)では,非侵襲的デバイスを用いたスクリーニングにより,心房細動の検出率が通常診療の約2.2倍に上昇した。しかし一方で,肝心の予後に関しては,脳卒中,死亡,心血管入院のいずれにおいても,スクリーニングによるリスク減少効果は認められず,心房細動の発見数は増えたが,脳卒中や死亡の予防には繋がらなかったという厳しい結果が報告されている172)。特に,スクリーニングで陽性となった場合には,偽陽性かつ無症状であっても,結果への不安から不必要な受診につながる可能性が指摘されており,医療機関での検査や介入とその効果を含めて,費用対効果の評価が求められる173)。 また,動悸症状のある高齢者や高血圧・肥満などの心血管リスクを有する高リスク母集団では,医療機器として承認された心電計を用いたスクリーニングを行い,その結果から診断や治療を行うこともできる。ただし,最も重要な点として,わが国では,スマートフォンの心電図アプリによる診断は認められておらず,保険適用された医療機器を用いて記録した心電図で心房細動を捕捉する必要がある。さまざまな携帯型心電計の詳細については前述の学会の提言に記述されているため,参照されたい158)。これらの結果を踏まえると,適切なスクリーニング対象,使用機器の種類,検査後の診療フローもあらためて検討していく必要がある。 前述のとおり,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスやアプリを活用した介入が心房細動の発症予防に有効かという観点では,明確なエビデンスはない。心房細動の危険因子として知られる肥満,運動不足,過度の飲酒,喫煙などの生活習慣,糖尿病,高血圧症,睡眠時無呼吸症候群などの併存疾患を適切に管理することは,心房細動の発症率低下と関連している174)。これらの危険因子に対する行動変容を支援するデジタル
サービスやアプリ(体重管理アプリ,遠隔血圧モニタリング,禁酒支援アプリなど)により,血圧や体重の改善が得られたという報告がある62)。こうした介入は心房細動の発症予防につながる可能性があり,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスによる行動変容支援は有望な介入方法の一つである。さらに,カテーテルアブレーション後の心房細動再発抑制や,併存する心血管リスクの包括的管理にもデジタル技術が応用されつつある。これらの取り組みは,患者自身の健康管理能力を高めるとともに,医療者との継続的なデータ共有を可能にする点で有用であるが,その有効性や安全性,費用対効果については今後の検証が必要である。 今後,デジタルデバイスのさらなる進歩と普及により,多様な生体データがリアルタイムに取得・解析されるようになることが予想される。これらのデータを医療で活用するためには,個人情報の保護や倫理的配慮とともにデータ管理体制の確立も必要不可欠である175)。さらに,膨大なデータの解析にAIが活用され始めており,心電図解析による心房細動発症リスク予測モデルや自動診断支援アルゴリズムの開発が進んでいる。AIを組み込んだシステムは,リスク評価の精度向上や早期介入の最適化に寄与する可能性があり,今後はAIを含むデジタル技術の臨床的有効性や安全性,倫理的妥当性の評価が求められる。 総じて,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスやアプリは,心房細動の早期発見と危険因子管理において有用な補助的ツールであるが,現時点では発症予防効果を示す十分なエビデンスはない。今後は,スクリーニングや診断だけでなく,包括的な危険因子管理においてもデジタル技術の位置づけを明確にし,AIの導入も含めてその有効性や費用対効果を検証することが重要である。 上述のとおり,不整脈領域では,代表的なイベントである院外心肺停止での支援や心房細動の早期検出においてデジタル技術を活用したヘルスケアサービスの有効性が期待されており,その効果も示されてはいるものの,実際に循環器病としての予後にどのような影響を与えるのかについては,知見が不足している。さらなる大規模な研究と,より適切な,介入すべき高リスク母集団の同定などの知見が求められている。 Future Research Question 3デジタル技術を活用したヘルスケア サービスは,院外心肺停止患者におけ る予後改善に有効か? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,心房細動発症予防に有効 か? 成人先天性心疾患(adult congenital heart disease: ACHD)患者に対するヘルスケアサービスには,生涯にわたる包括的かつ多職種連携による管理体制が求められる。小児期の手術成績の向上によって多くの患者が成人期を迎える一方,再手術,心不全,不整脈,肺高血圧などの合併症を呈する例が増加している。そのため,疾患特異的なフォローアップを専門医が継続的に行う体制が必要である。また,思春期から成人期への医療の円滑な移行(transition care)も重要である。さらに,妊娠・出産,就労,運動,心理社会的問題などの課題に対して,ライフステージに応じた支援が求められる。一般的な予防医療(感染予防,ワクチン接種,生活習慣病管理)やがん検診も不可欠であり,地域のプライマリケア医との連携体制を築くことが望ましい。患者教育を通じて疾患理解とセルフマネジメント能力を高めることも,長期予後の改善に寄与する。米国,欧州のガイドラインはいずれも,生涯にわたる全人的・構造的・心理社会的支援を統合したライフロン FRQ 15 FRQ 16 5 先天性心疾患, その他の循環器病 参考にすべき疾患ガイドライン・手引き▶「2025年改訂版 成人先天性心疾患診療ガイド ライン」176) ▶ 小児循環器学会ガイドライン177) ▶「心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に関す るガイドライン(2018年改訂版)」178)また,その他の循環器病のガイドライン・手引きとして,前述の日本循環器学会の循環器病ガイドラインシリーズを参照されたい27)。 成人先天性心疾患の特徴1
グ・ケアモデルの構築を提唱している179, 180)。 ACHDにおいて求められる管理,支援内容を以下に整理する。1.専門的・継続的な循環器管理 ・疾患特異的フォローアップ:心内修復後の残存病 変,弁疾患,心不全,肺高血圧,不整脈などの長期評価・専門施設による管理:重症例や複雑心疾患には, ACHD専門センターや多職種チームによる診療が推奨される・小児期から成人期までの切れ目のない移行医療体 制の確立2.ライフステージに応じた全人的ケア ・妊娠・出産:リスク評価,妊娠前カウンセリング, 周産期の多職種管理・就労・教育支援:職業選択,就業制限,社会保障 制度の活用支援・運動・スポーツ指導:基礎心疾患の状態に応じた 安全な身体活動の推奨・心理社会的サポート:不安,抑うつ,社会的孤立 などへの対応3.予防的ヘルスケアと一般医療の統合 ・感染性心内膜炎予防,予防接種の推奨・生活習慣病の管理:肥満,糖尿病,脂質異常症な どの一般的リスク管理・成人期における健康診断の重要性の啓発4.長期フォローアップ体制と地域連携 ・居住地域における継続した診療体制の確立:地域 医療施設と専門施設との連携・ (デジタル媒体を用いた)情報共有システムの確立・救急・非専門医が対応できる支援システム:診療 ガイドライン,医師会における講演会5.患者教育とセルフマネジメント支援 ・疾患理解の促進:自己の心疾患の理解・手術歴・ 合併症リスクを把握・服薬・通院のアドヒアランス向上・デジタル支援ツールの活用:アプリや遠隔モニタ リング ACHD領域におけるデジタル技術の活用は,専門医療へのアクセス性の向上,移行医療支援,およびライフイベント支援において重要な役割を果たすことが期待されている181-183)。1.専門医療へのアクセスと連携体制の強化 ACHD専門医は都市部に偏在しているため,遠隔診療や遠隔モニタリングは,地理的制約のある患者に専門的なアドバイスを提供するための有効な手段となる。専門施設と地域のプライマリケア医,そして患者をつなぐクラウド型情報共有システムの構築は,緊急時の迅速な対応や,妊娠・出産・手術時などの多職種連携を円滑にするために不可欠である。2.移行医療とセルフマネジメント支援 若年患者が自身の疾患,手術歴,合併症リスクを正しく理解し,服薬や受診を継続するための教育ツールとして,デジタルアプリの活用が進んでいる。服薬リマインダーや通院スケジュール管理,疾患特異的な教育コンテンツを提供するアプリは,アドヒアランスの向上と自立支援に寄与する。3.ライフステージと社会制度活用の支援 就労,結婚,妊娠・出産などのライフイベントにおいて,個々の心機能やリスクに応じた支援が必要となる(表)。遠隔モニタリングによる妊娠中の母体管理や,就労時の産業医との連携など,医療・福祉・就労をつなぐハ 成人先天性心疾患における役割2 ライフイベント主な課題デジタル支援の例進学・教育体力差・運動制限・学校理解不足オンライン学習支援/ 学校との情報共有ポータル就職・職業選択労働負荷・運動制限・産業医連携不足就労支援アプリ/ 電子健康記録の共有結婚・家庭生活遺伝リスク・家族理解・心理的負担リプロダクティブヘルス教育アプリ/ ピアサポートSNS妊娠・出産母体循環リスク・周産期管理・専門医紹介遠隔モニタリング/ 妊娠支援アプリ・リスク通知就労継続・老年期慢性合併症管理・社会参加・支援制度利用クラウド健康記録/AI 予測・オンライン相談表 ACHD 患者のライフイベントに対するデジタル支援の可能性
ブとしてデジタル技術が機能する。また,複雑な医療費助成や就労支援制度の利用申請を支援するデジタルサービスの開発も,患者の社会参加とQOL向上に寄与する新たな視点として期待されている。 ACHD患者に対するヘルスケアサービスの有効性については,専門施設での診療や計画的な移行を支援するプログラムの利用により予後やQOLが改善することを示唆するエビデンスが蓄積されつつある。デジタルヘルス(遠隔診療・モニタリング)に関しても,その実行可能性や有用性を示す報告が出始めているが,心血管イベント抑制などのハードアウトカムに対する長期的な有効性については,さらなる検証が必要である184)。 成人先天性心疾患やその他の循環器病においては,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスの開発や利用可能性の向上はまだこれからという段階であり, Future Research Question 3以下のようなFRQを今後の更新時のために提示する。 デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,成人先天性心疾患患者の 心血管イベントを減少させるか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,成人先天性心疾患患者の セルフケアを改善するか? デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは,成人先天性心疾患患者の QOLを改善するか? 血栓塞栓症や肺高血圧など本指針で取り上げられなかった循環器病の患者 において,デジタル技術を活用したヘルスケアサービスは予後やQOLを改善するか? FRQ 17 FRQ 18 FRQ 19 FRQ 20
作成班 (50 音順) ⃝班長 水野 篤学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 循環器内科 ⃝班員 阿部真紀子学校法人福岡大学 医学部 医学科 衛生・公衆衛生学赤木 禎治社会医療法人社団十全会心臓病センター榊原病院 循環器内科有馬 久富学校法人福岡大学 医学部 医学科 衛生・公衆衛生学石田晋太郎学校法人福岡大学 医学部 医学科 衛生・公衆衛生学今村 輝彦国立大学法人富山大学 学術研究部 医学系大島 司国立大学法人東京大学 医学部附属病院 循環器内科大田えりか学校法人聖路加国際大学 大学院 看護学研究科岡田 敬史国立研究開発法人国立循環器病研究センター 脳血管内科岡村 智教学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部貝原 俊樹学校法人聖マリアンナ医科大学 循環器内科学加藤 有花国立研究開発法人国立循環器病研究センター 健診部鍵山 暢之学校法人順天堂 順天堂大学 医学部循環器内科 / データサイエンスコース / AIインキュベーションファーム 金子 英弘国立大学法人東京大学 医学部附属病院 先進循環器病学講座蟹江 崇芳学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 循環器内科/ Division of Cardiology, Sunnybrook Health Sciences Centre, University of Toronto 桑原 政成学校法人自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学 兼 循環器内科学川添 美紀学校法人福岡大学 医学部 医学科 衛生・公衆衛生学北岡 裕章国立大学法人高知大学 教育研究部 医療学系臨床医学部門木田 圭亮学校法人聖マリアンナ医科大学 薬理学絹川弘一郎国立大学法人富山大学 学術研究部 医学系黒田 俊介学校法人順天堂 順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学古賀 政利国立研究開発法人国立循環器病研究センター 脳血管内科小久保喜弘国立研究開発法人国立循環器病研究センター 健診部児玉 隆秀国家公務員共済組合連合会虎の門病院 循環器センター 内科小宮山知夏国家公務員共済組合連合会虎の門病院 循環器センター 内科香坂 俊学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部高麗 謙吾一般財団法人平成紫川会小倉記念病院 循環器内科朔 啓太国立研究開発法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部柴田由紀子国立大学法人富山大学 学術研究部 医学系清水 渉医療法人社団誠馨会 新東京病院清水 悠国立大学法人東京大学 医学部附属病院 循環器内科末松 保憲学校法人福岡大学 福岡大学病院 循環器内科
関 知嗣医療法人啓信会京都きづ川病院 循環器内科 / 京都府公立大学法人京都府立医科大学 大学院医学研究科 循環器内科学 田川 里砂学校法人福岡大学 医学部 心臓・血管内科学講座寺本佳楠子国立研究開発法人国立循環器病研究センター 医学統計研究部土井 駿一学校法人聖マリアンナ医科大学 循環器内科学西 真宏京都府公立大学法人京都府立医科大学 大学院医学研究科 循環器内科学西崎 公貴医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 循環器内科西山 成国立大学法人香川大学 医学部 薬理学野村 章洋国立大学法人金沢大学 融合研究域 融合科学系 / 附属病院 循環器内科播磨 綾子国家公務員共済組合連合会虎の門病院 循環器センター 内科平田 あや学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部平田 健一国立大学法人神戸大学 大学院 医学研究科藤居 貴子学校法人福岡大学 医学部 医学科 衛生・公衆衛生学藤野 善久学校法人産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室藤牧須美枝学校法人聖路加国際大学 大学院 看護学研究科前田 俊樹学校法人福岡大学 医学部 医学科 衛生・公衆衛生学的場 聖明京都府公立大学法人京都府立医科大学 大学院 医学研究科 循環器内科学山形研一郎国立大学法人東京大学 医学部附属病院 循環器内科山口 徹雄国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 循環器センター 内科矢野裕一朗学校法人順天堂 順天堂大学大学院 医学研究科 総合診療科学 / AIインキュベーションファーム和田 晋一国立研究開発法人国立循環器病研究センター 情報利用促進部AUGUSTIN GESSICA 学校法人聖路加国際大学 大学院 看護学研究科 ⃝外部評価委員 桐山 瑶子株式会社MICIN パブリックアフェアーズ室楠瀬 賢也国立大学法人琉球大学 大学院 医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学講座小西 竜太医療法人社団高翔会 北星記念病院田村 雄一学校法人国際医療福祉大学 医学部 循環器内科/医学教育統括センター橋本 悠生独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター 診療情報分析部原田 睦生一般社団法人日本循環器協会比良野圭太国立大学法人京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 臨床研究開発学福間 真悟国立大学法人広島大学 医系科学研究科 疫学・疾病制御学
班構成員の利益相反(COI)に関する開示 氏名個人COI申告者の配偶者,一親等内の親族等COI 申告組織COI 役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料講演料原稿料研究費奨学(奨励) 寄附金寄附講座その他役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料研究費奨学(奨励) 寄附金 班員:赤木 禎治アボットメディカルジャパン日本ライフラインヤンセンファーマ班員:今村 輝彦アストラゼネカ班員:鍵山 暢之*日本イーライリリー ノバルティス ファーマ大塚製薬日本ベーリンガーインゲルハイムブリストルマイヤーズスクイブアストラゼネカアボットメディカルジャパンAMI EchoNous Inc.アストラゼネカブリストルマイヤーズスクイブフクダ電子 フィリップス・ジャパン京セラインターリハAMIパラマウントベッド 班員:金子 英弘*日本メドトロニック ボストン・サイエンティフィックジャパンバイオトロニックジャパンシンプレクスクオンタムUT-Heart研究所 班員:木田 圭亮アストラゼネカ 日本ベーリンガーインゲルハイムバイエル薬品ツムラリモハブ(2023 年1 月1 日~2025 年12 月31 日)
氏名個人COI申告者の配偶者,一親等内の親族等COI 申告組織COI 役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料講演料原稿料研究費奨学(奨励) 寄附金寄附講座その他役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料研究費奨学(奨励) 寄附金 班員:北岡 裕章*アストラゼネカファイザーブリストルマイヤーズスクイブアルナイラムアレクシオンファーマ班員:絹川 弘一郎*大塚製薬ノバルティス ファーマ第一三共 アストラゼネカニプロ日本メドトロニックアボットメディカルジャパンバイエル薬品ノボ ノルディスク ファーマ日本アビオメッド大塚製薬 班員:黒田 俊介日本メドトロニックアボットメディカルジャパン 日本メドトロニック住友ファーマジョンソン・エンド・ジョンソン 班員:香坂 俊ブリストルマイヤーズスクイブノバルティス ファーマファイザー Bayer HealthCare Pharmaceuticals Inc. 班員:古賀 政利第一三共第一三共ボストン・サイエンティフィックジャパン班員:小久保 喜弘*エドワーズライフサイエンス 明治安田総合研究所日本イーライリリーソニー
氏名個人COI申告者の配偶者,一親等内の親族等COI 申告組織COI 役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料講演料原稿料研究費奨学(奨励) 寄附金寄附講座その他役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料研究費奨学(奨励) 寄附金 班員:朔 啓太* ABIOMEDマリンクロット ファーマNTT Research JT 医薬総合研究所ABIOMEDニューロシューティカルズZ E O N MEDICAL INC.班員:清水 悠シンプレクスクオンタム班員:清水 渉第一三共 日本ベーリンガーインゲルハイムバイオセンス旭化成ゾールメディカル 班員:西 真宏興和班員:西崎 公貴日本メドトロニック班員:西山 成*バイエル薬品 第一三共ノバルティス ファーマ大塚製薬田辺三菱製薬日本ベーリンガーインゲルハイムアストラゼネカ持田製薬バイエル薬品 班員:野村 章洋CureApp バイオニクスNAIA 班員:平田 健一*ノバルティス ファーマ興和シスメックス理化学研究所神戸薬科大学第一三共apan PH Registryアボットメディカルジャパン大塚製薬バイオトロニックジャパンアボットメディカルジャパン 日本メドトロニックバイオトロニックジャパンシスメックス 班員:藤野 善久*ツムラSOMPO ヘルスサポートツムラ
氏名個人COI申告者の配偶者,一親等内の親族等COI 申告組織COI 役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料講演料原稿料研究費奨学(奨励) 寄附金寄附講座その他役員,顧問の報酬額株保有・利益特許使用料研究費奨学(奨励) 寄附金 班員:的場 聖明*日本ベーリンガーインゲルハイム日本イーライリリーアストラゼネカMizkanアボットメディカルジャパン日本ライフラインボストン・サイエンティフィックジャパンコネクトフリー班員:山形 研一郎日本メドトロニックバイオトロニックジャパン外部評価委員:桐山 瑶子* MICIN外部評価委員:楠瀬 賢也*第一三共 小野薬品工業エドワーズライフサイエンスバイオトロニックジャパン 外部評価委員:小西 竜太*木月医療デザイン 三菱商事エム・シー・ヘルスケアホールディングス木月医療デザイン外部評価委員:田村 雄一カルディオインテリジェンス第一三共 日本新薬ヤンセンファーマバイエル薬品MSD日本新薬 バイエル薬品 外部評価委員:比良野 圭太大阪ガス外部評価委員:原田 睦生アンジェス※法人表記は省略※以下の構成員については申告事項無し班長:水野 篤班員:阿部 真紀子班員:有馬 久富班員:石田 晋太郎班員:大島 司班員:大田 えりか班員:岡田 敬史班員:岡村 智教班員:貝原 俊樹班員:加藤 有花班員:蟹江 崇芳班員:川添 美紀班員:桑原 政成班員:高麗 謙吾班員:児玉 隆秀班員:小宮山 知夏班員:柴田 由紀子班員:末松 保憲班員:関 知嗣班員:田川 里砂班員:寺本 佳楠子班員:土井 駿一班員:播磨 綾子班員:平田 あや班員:藤居 貴子班員:藤牧 須美枝班員:前田 俊樹班員:矢野 裕一朗班員:山口 徹雄班員:和田 晋一班員:AUGUSTIN GESSICA外部評価委員:橋本 悠生 外部評価委員:福間 真悟※本ガイドライン作成に掛かるすべての費用は日本医療研究開発機構,日本循環器学会が負担しており,民間企業からの資金提供は受けていない. *ガイドライン作成に必要不可欠な人材であり,班員/ 協力員として参画したが,過去3 年間のCOI に「金額区分3/寄附講座所属」に該当する自己申 告が含まれることから,ガイドラインの公正性および透明性を担保するため,ガイドライン策定に関する議決権は有しない.
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循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに関する指針 2026 年3月発行編集日本循環器学会「循環器病におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスに 関する指針」作成班発行一般社団法人日本循環器学会〒101-0047 東京都千代田区内神田1 丁目18 番地13 号内神田中央ビル6F代表電話番号:03-6775-9111制作ライフサイエンス出版株式会社 無断転載を禁じます