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令和3年3月 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班) 令和2年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和2年度 改訂版 (令和3年3月31日)
令和3年3月 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班) 令和2年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和2年度 改訂版 (令和3年3月31日)
目 次 潰瘍性大腸炎 1. 潰瘍性大腸炎診断基準(2021年1月改訂) ....................................................................... 1 2. 潰瘍性大腸炎治療指針(2021年3月改訂) ....................................................................... 5 3. 潰瘍性大腸炎外科治療指針(2021年1月改訂) .......................................................... 17 4. 回腸嚢炎治療指針(2017年1月改訂) ........................................................................... 20 5. 小児潰瘍性大腸炎治療指針(2021年1月改訂) .......................................................... 21 クローン病 6. クローン病診断基準(2021年1月改訂) ........................................................................ 27 7. クローン病治療指針(2021年3月改訂) ........................................................................ 30 8. クローン病外科治療指針(2021年1月改訂) ............................................................... 37 9. クローン病肛門部病変に対する治療指針(2018年1月改訂) ................................. 40 10. クローン病術後管理治療指針(2015年3月作成) ....................................................... 42 11. 小児クローン病治療指針(2021年1月改訂) ............................................................... 43 12. 炎症性腸疾患の腸管外合併症治療指針(2021年3月改訂) ...................................... 48 13. 関係者一覧 ......................................................................................................................... 58
潰瘍性大腸炎診断基準(2021年1月改訂) 1 1 定義 主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。WHOのCouncil for International Organization of Medical Science(CIOMS)医科学国際組織委員会で定められた名称と概念は、つぎの通りである。(1973)特発性大腸炎 idiopathic proctocolitis An idiopathic, non-specific inflammatory disorder involving primarily the mucosa and submucosa of the colon, especially the rectum. It appears mainly in adults under the age of 30, but may affect children and adults over the age of 50. Its aetiology remains unknown, but immunopathological mechanisms and predisposing psychological factors are believed to be involved. It usually produces a bloody diarrhoea and various degrees of systemic involvement, liability to malignant degeneration, if of long duration and affecting the entire colon. (訳)主として粘膜と粘膜下層をおかす、大腸、とくに直腸 の特発性、非特異性の炎症性疾患。30歳以下の成人に多いが、小児や50歳以上の年齢層にもみられる。原因は不明で、免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている。通常血性下痢と種々の程度の全身症状を示す。長期にわたり、かつ大腸全体をおかす場合には悪性化の傾向がある。 2 診断の手順 持続性または反復性の粘血便・血性下痢などがあり本症が疑われるときには、理学的検査や血液検査を行い、さらに放射線照射歴、抗菌薬服用歴、海外渡航歴などを聴取する。次に大腸内視鏡検査や生検を行い、必要に応じ注腸X線検査を行って本症に特徴的な腸病変を確認する。また、典型的な血便を伴わず内視鏡所見で本疾患を疑う症例も存在するため、細菌学的・寄生虫学的検査を行うとともに、上部消化管検査や小腸検査などを行い感染性腸炎や他の炎症性腸疾患などを除外する。こうした検査で多くは2週間から1ヶ月の期間で診断は可能であるが、診断が確定しない場合は inflammatory bowel disease unclassifiedとして経過観察を行う。3 診断の基準 A. 臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある。B. 1内視鏡検査:i)粘膜はびまん性におかされ、血管透見像は消失し、粗ぞうまたは細顆粒状を呈する。さらに、もろくて易出血性(接触出血)を伴い、粘血膿性の分泌物が付着しているか、ii)多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。iii)原則として病変は直腸から連続して認める。2注腸X線検査:i)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化、ii)多発性のびらん、潰瘍、iii)偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる。C. 生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん 性炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が認められる。いずれも非特異的所見であるので、総合的に判断する。寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐)、萎縮が残存する。上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる。 確診例: [1] AのほかBの1または2、およびCを満たすもの。[2] Bの1または2、およびCを複数回にわたって満たすもの。[3] 切除手術または剖検により、肉眼的および組織学的 に本症に特徴的な所見を認めるもの。 〈注1〉 確診例は下記の疾患が除外できたものとする。 細菌性赤痢、クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎、アメーバ性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクタ腸炎、大腸結核、クラミジア腸炎などの感染性腸炎が主体で、その他にクローン病、放射線大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸管型ベーチェット病、など 〈注2〉 所見が軽度で診断が確実でないものは「疑診」と して取り扱い、後日再燃時などに明確な所見が得られた時に本症と「確診」する。 〈注3〉 鑑別困難例 クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別困難例に対しては経過観察を行う。その際、内視鏡や生検所見を含めた臨床像で確定診断が得られない症例はinflammatory bowel disease unclassified(IBDU)とする。また、切除術後標本の病理組織学的な検索を行っても確定診断が得られない症例はindeterminate colitis(IC)とする。経過観察により、いずれかの疾患のより特徴的な所見が出現する場合がある。 診断の手順フローチャート持続性または反復性の粘血便・血性下痢 大腸内視鏡検査(生検) 上部消化管内視鏡検査、小腸検査、CT、MRI 経過観察 確診 確診疑診 疑診Inflammatory bowel disease unclassified + 理学的所見、病歴(放射線照射歴、抗菌薬服用歴、海外渡航歴)血液検査(血算、炎症所見など)、細菌培養検査、寄生虫学的検査
〈注4〉家族性地中海熱では潰瘍性大腸炎に類似した 大腸病変を認めることがあり、臨床経過などを考慮し、鑑別を要する場合がある。 4 病態(病型・病期・重症度) A. 病変の拡がりによる病型分類 全大腸炎total colitis左側大腸炎left-sided colitis直腸炎proctitis右側あるいはright-sided or segmental colitis区域性大腸炎 〈注1〉 左側大腸炎は、病変の範囲が脾彎曲部を越えて いないもの。 〈注2〉 直腸炎は、前述の診断基準を満たしているが、内視 鏡検査により直腸S状部(RS)の口側に正常粘膜を認めるもの。 〈注3〉 右側あるいは区域性大腸炎は、クローン病や 大腸結核との鑑別が困難で、診断は経過観察や切除手術または剖検の結果を待たねばならないこともある。 〈注4〉 虫垂開口部近傍に非連続性病変を認めることが ある。 〈注5〉 胃十二指腸にびまん性炎症が出現することがある。 B. 病期の分類 活動期 active stage寛解期 remission stage 〈注6〉 活動期は血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の 消失、易出血性、びらん、または潰瘍などを認める状態。 〈注7〉 寛解期は血便が消失し、内視鏡的には活動期の 所見が消失し、血管透見像が出現した状態。C. 臨床的重症度による分類 軽 症 mild中等症 moderate重 症 severe 診断基準は下記の如くである。 重症中等症軽症 1)排便回数2)顕血便3)発熱4)頻脈5)貧血6)赤沈またはCRP 6回以上(+++) 37.5度以上90/分以上Hb10g/dL以下30mm/h以上3.0mg/dL以上重症と軽症との中間4回以下(+)〜(-) (-) (-) (-)正常正常 〈注8〉 顕血便の判定 (−)血便なし(+)排便の半数以下でわずかに血液が付着(++)ほとんどの排便時に明らかな血液の混入(+++)大部分が血液 〈注9〉 軽症の3)、4)、5)の(−)とは37.5°C以上の発熱が ない。90/分以上の頻脈がない、Hb10g/dL以下の貧血がない、ことを示す。 〈注10〉 CRPの正常値は施設の基準値とする。 〈注11〉 重症とは1)および2)の他に全身症状である3) または4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすものとする。軽症は6項目すべて満たすものとする。 〈注12〉 中等症は重症と軽症の中間にあたるものとする。 〈注13〉 潰瘍性大腸炎による臨床症状(排便回数,顕血便) を伴わない赤沈やCRPの高値のみで中等症とは判定しない。 〈注14〉 重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを 劇症とし、発症の経過により、急性劇症型と再燃劇症型に分ける。劇症の診断基準は以下の5項目をすべて満たすものとする。1重症基準を満たしている。215回/日以上の血性下痢が続いている。338°C以上の持続する高熱がある。410,000/mm 3以上の白血球増多がある。5強い腹痛がある。
D. バイオマーカーによる活動性・重症度判定 定量的免疫学的便潜血法や便中カルプロテクチンなどのバイオマーカーは活動性・重症度の判定に参考となる。 E. 活動期内視鏡所見による分類 軽 度 mild中等度 moderate強 度 severe 診断基準は下表の如くである。炎症内視鏡所見軽度血管透見像消失粘膜細顆粒状発赤、アフタ、小黄色点中等度粘膜粗ぞう、びらん、小潰瘍易出血性(接触出血)粘血膿性分泌物付着その他の活動性炎症所見強度広汎な潰瘍著明な自然出血 〈注15〉 内視鏡的に観察した範囲で最も所見の強いと ころで診断する。内視鏡検査は前処置なしで短時間に施行し、必ずしも全大腸を観察する必要はない。 F. 臨床経過による分類 再燃寛解型 relapse-remitting type慢性持続型 chronic continuous type急性劇症型(急性電撃型) acute fulminating type初回発作型 first attack type 〈注16〉 慢性持続型は初回発作より6ヶ月以上活動期に あるもの。 〈注17〉 急性劇症型(急性電撃型)はきわめて激烈な症状 で発症し、中毒性巨大結腸症、穿孔、敗血症などの合併症を伴うことが多い。 〈注18〉 初回発作型は発作が1回だけのもの、しかし将来 再燃をきたし、再燃寛解型となる可能性が大きい。 G. 病変の肉眼所見による特殊型分類 偽ポリポーシス型萎縮性大腸炎型H. 治療反応性に基づく難治性潰瘍性大腸炎の定義1. 厳密なステロイド療法にありながら、次のいずれかの条件を満たすもの。 1ステロイド抵抗例(プレドニゾロン1~1.5mg/kg/日の1~2週間投与で効果がない) 2ステロイド依存例(ステロイド漸減中の再燃) 2. ステロイド以外の厳密な内科的治療下にありながら、頻回に再燃をくりかえすあるいは慢性持続型を呈するもの。 I. 回腸嚢炎の診断基準I. 概念 回腸嚢炎(pouchitis)は、自然肛門を温存する大腸(亜)全摘術を受けた患者の回腸嚢に発生する非特異的炎症である。原因は不明であるが、多くは潰瘍性大腸炎術後に発生し、家族性大腸腺腫症術後の発生は少ないことより、潰瘍性大腸炎の発症機序との関連が推定されている。 II. 回腸嚢炎の診断 1 項目a)臨床症状 1)排便回数の増加2)血便3)便意切迫または腹痛4)発熱(37.8度以上) b)内視鏡検査所見 軽 度:浮腫、顆粒状粘膜、血管透見像消失、軽度の発赤中等度:アフタ、びらん、小潰瘍 *、易出血性、膿性粘液重 度:広範な潰瘍、多発性潰瘍 *、びまん性発赤、自然出血*:staple line ulcerのみの場合は、回腸嚢炎の 内視鏡所見とは区別して所見を記載する。 2. 診断基準少なくとも1つの臨床症状を伴い中等度以上の内視鏡所見を認める場合。また、臨床症状にかかわらず内視鏡的に重症の所見を認める場合は回腸嚢炎と診断する。除外すべき疾患は、感染性腸炎(サルモネラ腸炎、キャンピロバクタ腸炎、腸結核などの細菌性腸炎、サイトメガロウイルス腸炎などのウイルス腸炎、寄生虫疾患)、縫合不全、骨盤内感染症、術後肛門機能不全、クローン病などがある。抗菌剤をはじめとする治療に反応しない、治療薬剤の休薬が困難、年3回以上の回腸嚢炎による臨床症状の増悪がある症例は「難治例」と定義する。
J.潰瘍性大腸炎術後症例の重症度基準I.概念と診断基準 潰瘍性大腸炎手術例のうち、以下の症例は術後生活の質(QOL)の低下がみられることから、通常の術後治療に加えて新たな治療、または経過観察が必要であり、難治例としての積極的な治療の継続を必要とする症例である。 1)回腸嚢機能不全頻回の排便、生活に支障を来す漏便や排便困難〈注19〉、持続する肛門周囲瘻孔、骨盤内膿瘍の合併など。2)難治性回腸嚢炎慢性回腸嚢炎、頻回の回腸嚢炎、長期の治療継続例など〈注20〉。3)難治性腸管外合併症〈注21〉難治性壊疽性膿皮症、難治性ぶどう膜炎、治療継続が必要な末梢関節炎(関節リウマチ合併例を除く)など。4)大腸以外の高度消化管病変高度の十二指腸炎、小腸炎など。5)その他頻回の脱水などの代謝性合併症など。 〈注19〉 常時おむつの使用が必要で肛門周囲のびらんを 伴う症例、狭窄などにより自然排便が困難な症例など。 〈注20〉 I.回腸嚢炎の診断基準の項、II-2診断基準に おける「難治例」に相当する症例。 〈注21〉 強直性脊椎炎、仙腸関節炎は指定難病271として 追加申請 *する。また、術後改善しない成長障害は除く*:人工肛門関連合併症、術後排尿障害は「ぼう こう又は直腸機能障害」で身体障害者の申請を行う。
潰瘍性大腸炎治療指針(2021年3月改訂) 2本治療指針の対象と位置づけこの治療指針は、一般の医師が潰瘍性大腸炎患者を治療する際の標準的に推奨されるものとして、文献的なエビデンス、日本における治療の現況、保険適応などをもとに、本研究班に参加する専門家のコンセンサスを得て作成された。また、患者の状態やそれまでの治療内容・治療への反応性などを考慮して、治療法を選択(本治療指針記載外のものを含めて)する必要がある。本治療指針に従った治療で改善しない特殊な症例については、専門家の意見を聞くあるいは紹介するなどの適切な対応が推奨される。本治療指針は、毎年必要な改訂を行う。 令和2年度改訂の要点と解説 1 重症例・難治例に対するウステキヌマブ 2020年にウステキヌマブが潰瘍性大腸炎に対して保険適応となった。適応は既存治療に効果不十分の中等症から重症の潰瘍性大腸炎に限定される。経口タクロリムス、抗TNF-α製剤がすでに難治性潰瘍性大腸炎の治療薬として使用されており、さらに2018年以降に潰瘍性大腸炎の治療薬としてトファシチニブ(ゼルヤンツ®)、ベドリズマブ(エンタイビオ®)、ウステキヌマブ(ステラーラ®)が新たに承認されたことにより選択肢が増えたことでどのような患者に投与するべきか実地医家において薬剤選択に苦慮することが予想される。そのため本年度の改訂では保険適応となったウステキヌマブに関する大規模臨床試験を含めた文献を検索し、それに基づいて治療指針案を作成した。ウステキヌマブは炎症性腸疾患の病態に関与しているIL-12、IL-23の共通構成タンパクであるp40に対する抗体製剤であり、IL-12、IL-23の作用を阻害することにより炎症を抑制する。 寛解導入効果日本人症例を含めた海外の大規模研究において(UNIFI試験)、中等症から重症の活動期の潰瘍性大腸炎患者を対象とし、プラセボ、ウステキヌマブ130mg又は6mg/kg体重を0週目に単回静脈内投与した導入試験を実施した1)。生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤又はベドリズマブ)又は既存治療(コルチコステロイド又は免疫調節薬)で効果不十分又は忍容性がなかった患者を対象とした。8週目にclinical remissionが得られた患者の割合は、プラセボ群の5.3%に対して、ウステキヌマブ130mg群で15.6%、ウステキヌマブ6mg/kg体重群で15.5%であった。また8週目に組織学的および内視鏡的治癒(Histo-Endoscopic mucsal healing)が得られた患者の割合はプラセボ群で8.9%、ウステキヌマブ130mg群で20.3%、ウステキヌマブ6mg/kg体重群で18.4%であった。本結果(UNIFI試験)において、日本と韓国のみの症例を集積した解析でも、ウステキヌマブの有効性が確認された2)。なおUNIFI試験のウステキヌマブ6mg/kg体重群のプラセボ群に対する優越性を検討したサブ解析では、年齢・性別・罹患範囲・腸管外合併症の有無で短期的有効性に差は認められなかった。同様にチオプリン製剤不応・不耐、抗TNFα抗体製剤不応の有無にかかわらず、短期的有効性はウステキヌマブ6mg/kg体重群はプラセボ群より有意に寛解率が高かった。リアルワールドのデータでは3)、フランス20施設における、UST使用例(103例)を解析し、70%の症例はウステキヌマブが投与される前に抗TNFα抗体製剤2剤以上の使用歴があり、85%はベドリズマブ使用歴を有していた。ウステキヌマブ開始12–16週目のステロイドフリー寛解は35.0%であった。多変量解析では有効性に負の影響を及ぼす因子として治療前のpartial Mayoスコアが6点以上、抗TNFα抗体製剤およびベドリズマブ使用歴が挙げられた。 寛解維持効果寛解導入試験から移行した患者を対象に、プラセボ又は本剤90mg(8週間隔又は12週間隔)を皮下投与した維持試験を実施した1)。44週目にclinical remissionが得られた患者の割合は、プラセボ群の24.0%に対して、本剤90mgの8週間隔投与群で43.8%、本剤90mgの12週間隔投与群で38.4%であった。また維持試験44週目における寛解維持率は抗TNFα抗体製剤非不応症例ではウステキヌマブ8週間隔又は12週間隔で寛解率に差は認められなかったが(それぞれ48.2%、49.0%)、抗TNFα抗体製剤不応症例では、8週間隔、12週間隔の寛解率はそれぞれ39.6%、22.9%であり、8週間隔の方が寛解率が高かった。また44週目の寛解率は、内視鏡的寛解および組織学的寛解の双方を達成していた症例の方が、内視鏡寛解のみ、または組織学的寛解のみを達成した症例より高かった4)。UNIFI試験に登録された症例を長期観察した研究では、ランダム化患者のうち、12週毎および8週毎にUSTを投与された患者のそれぞれ78.7%および83.2%が92週目に臨床的寛解を達成していた5)。 安全性UNIFI試験における主な有害事象は上気道感染、発疹、痤瘡、頭痛、注射部位反応などであった。安全性に関するメタ解析では6)、炎症性腸疾患を含めた免疫疾患に対してウステキヌマブを使用した13のRCT(対象患者16,068名)を集積したところ、短期的ウステキヌマブ使用は有害事象の発症を増加させることはないという報告もなされている。
UNIFI試験に登録された症例を長期観察した研究では、UST投与開始後44週から96週までの、100患者年当たりの有害事象はウステキヌマブ群とプラセボ群で同等であった。また重篤な有害事象(9.34対12.69)、悪性腫瘍(0.93対1.49)および重篤な感染症(2.33対2.99)の発生頻度にもUST8週毎投与群と12週毎投与群で差は認められなかった5)。 2 中等症に対するイムノピュア(Immunopure®) 2020年6月に新しい血球成分吸着療法であるイムノピュアが保険承認された。本治療法の適応は中等症の難治性潰瘍性大腸炎である。吸着剤はポリエステル樹脂の一種であるポリアリレートが用いられ、カラム構造は、アダカラムと同様にビーズ型の吸着剤が充填されており、活性化した顆粒球・単球・血小板を選択的に吸着し、リンパ球は吸着しない。これまで欧州で2つの臨床研究が行われている 7,8)。Ramlowらは10名のプレドニゾロン30mg/日以上にて寛解導入されない潰瘍性大腸炎(RachmilewitzによるCAI 6~10)の患者を対象とし、イムノピュアを1回/週の計5回使用し、有効性及び安全性の評価を行った 7)。臨床的寛解率は80%、内視鏡的寛解率は44%であった。Kruisらは5-ASAに対する反応が不十分な潰瘍性大腸炎患者をイムノピュア群とプレドニゾロン群に無作為に割り付け、イムノピュア群は、イムノピュアを1回/週の頻度で計5回使用、プレドニゾロン群は40mgで開始し7週目で離脱する治療が行われた8)。その結果治療開始6週目までのDisease activity index(DAI)はプレドニゾロン群が有意に低値を示していたが、12週目ではイムノピュア群とプレドニゾロン群のDAI値は差が認められず、プレドニゾロンに対するイムノピュアの非劣勢が確認された。本邦において13名の中等症の難治例(ステロイド依存例、抵抗例)の潰瘍性大腸炎患者にイムノピュアを2回/週、合計10回の治療がなされ、寛解率が63.6%であった。なお重篤な有害事象は認められなかった。 3 寛解判定において「組織学的寛解」の概念を記載 近年臨床試験の寛解の判定に、内視鏡的寛解以外に組織学的寛解が設定されていること 1)、組織学的寛解例で長期予後が良好であること 9)を踏まえて、治療効果判定について、内視鏡的評価に加えて組織学的評価を行うことを考慮することを記載した。 4. 5-ASA不耐について記載安全性の高い治療薬である5-ASA製剤服用患者の一部において、服用早期に下痢、腹痛、発熱などの症状を認めることがあり、その場合5-ASA不耐を疑い服用の中止を行うことを記載した。5. 重症例を中心とした入院症例に対する管理について踏み込んだ表現で記載重症例に対する治療については、これまで主に薬物療法に関する記載があるのみで、重症患者の安全管理に対する具体的な記載は存在していなかった。今年度の改訂では、血栓塞栓症に対する検査や便培養(クロストリディオイデス・ディフィシルを含む)、βーDグルカン検査に関する記載を行い、さらに重症例に対するステロイドの効果判定に関してより早期に行った方が良いことより、効果判定を1–2週間から1週間とした。また外科専門医が存在しない施設に対する配慮として、重症例・劇症例では緊急手術の可能性があることより、必要に応じて専門施設への転院も考慮に入れることについても明記した。 6 劇症例に対する記載 これまでの治療指針では、劇症例に対する治療法として、ステロイド大量静注療法が第一選択肢であり、ステロイドで症状が悪化する場合、あるいは早期に症状の明らかな改善が得られない場合は、セカンドラインの治療を行っても良い旨記載されている。しかし、過去に複数回ステロイド使用の既往がある例では、最初からシクロスポリン持続静注療法、タクロリムス経口投与、インフリキシマブ点滴静注投与を行う方法もあることを記載した。また劇症例において、少なくとも症状の改善がない場合には、外科治療が望ましいことを記載した。 7 抗TNF-α抗体製剤と免疫調節薬との併用効果 抗TNF-α抗体製剤における二次無効について、抗薬物抗体産生抑制を意図した免疫調節薬併用の意義を追記した 10)。 8. 維持療法におけるベドリズマブとウステキヌマブの記載両治療とも維持療法の有効性が確認されていることより 1,11,12) 追記した。 9. ステロイド抵抗例・依存例以外の難治例に対する治療法を記載診断基準の難治例には、ステロイド以外の厳密な内科的治療下にありながら、頻回に再燃をくりかえすあるいは慢性持続型を呈するものが含まれているが、これまでの治療指針には上記に対する治療法の記載がなかったことより、今年度の治療指針に明記した。 10.悪性疾患を併発した場合の免疫抑制的治療について治療中止による潰瘍性大腸炎の悪化の可能性も考慮し、継続の可否について適切に判断するよう、記載を改訂した 13)。
11 免疫抑制的治療中の生ワクチン接種について 日常臨床の参考となるよう、記載を具体的に充実した。免疫抑制的治療中の生ワクチンの接種は原則禁忌となるため、必要に応じて免疫抑制的治療開始前に接種を検討することとした。ステロイドについてはRed Book 14)によれば、高用量(プレドニゾロン換算で20mg/日以上、体重10kg未満では2mg/kg/日以上)では生ワクチン接種を控え、ステロイド終了後、少なくとも1ヶ月以上は間隔をあけるとされている。しかし、裏付けとなる高いレベルのエビデンスは存在せず、20mg以下の投与量であってもステロイドの全身・局所投与を受けている場合には接種に慎重であるべきで、症例ごとにリスクベネフィットのバランスを考慮すべきである。なお、プレドニンの添付文書 15)には、「本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヶ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと」と記載されている。さらに、生ワクチン接種後の免疫抑制的治療の開始時期や生ワクチン接種のために必要な免疫抑制的治療中断の時期についても目安を記載した 16)。 〈参考文献〉1. Sands BE et al. N Engl J Med. 2019; 381: 1201-1214 2. Hisamatsu T et al. Intest Res. 2020 Dec 1. Online ahead of print 3. Amiot A et al. Aliment Pharmacol Ther. 2020; 51: 1039-1046. 4. Li K et al. Gastroenterology. 2020; 159: 2052-2064 5. Panaccione R et al. Aliment Pharmacol Ther. 2020; 52: 1658-1675 6. Rolston VS et al. Dig Dis Sci. 2020 May 22. Online ahead of print 7. Ramlow W et al. Ther Apher Dial. 2013; 17: 339-347. 8. Kruis W et al. J Crohns Colitis. 2019; 13: 949-953 9. Bryant RV et al. Gut 2016; 65: 408-414 10. Panaccione R et al. Gastroenterology. 2014; 146: 392- 400 11. Feagan BG et al. N Engl J Med.2013; 369: 699-710 12. Motoya S et al. Plos One 2019; 14: e2122989 13. Kimmel J, et al. Curr Gastroenterol Rep. 2020 Feb 13. doi: 10.1007/s11894-020-0747-9. 14. Kimberlin DW, et al. Red Book 2018-2021 Report of the Committee on Infectious Diseases, 31st Edition, American Academy of Pediatrics; 2018. 8-85 15. プレドニン®錠5mg添付文章、シオノギ製薬株式会社、2020年7月改訂16. 日本小児感染症学会(2014). 小児の臓器移植および免疫不全状態における予防接種ガイドライン2014. 協和企画I 治療原則重症度や罹患範囲・QOL(生活の質)の状態などを考慮して治療を行う。活動期には寛解導入治療を行い、寛解導入後は寛解維持治療を長期にわたり継続する。なお、寛解の判定は臨床症状や内視鏡を用いる。また治療効果判定は、内視鏡的評価に加えて組織学的評価を行うことも考慮する。慢性疾患において、治療目標を設定しその達成の有無により治療を強化していくという考え方、Treat to Target ストラテジーが提唱されている。潰瘍性大腸炎治療には臨床的寛解の維持、全大腸摘出術の回避、大腸癌発生のリスク軽減などの長期的予後改善が望まれている。実際の診療では、内視鏡的寛解が治療目標に設定され、それにむけてモニタリング、治療の評価が行われなければならない。重症例や全身障害を伴う中等症例に対しては、入院のうえ、脱水、電解質異常(特に低カリウム血症)、貧血、低蛋白血症、栄養障害などに対する対策が必要である。また感染症や血栓症の合併に留意して、D-ダイマー、サイトメガロウイルス、β-Dグルカン、便培養検査(クロストリディオイデス・ディフィシルを含む)などの検査を施行する。内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにする。劇症型は急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、内科と外科の協力のもとに強力な治療を行い、短期間の間に手術の要、不要を決定する。小児例では、短期間に全大腸炎型に進展しやすい、重症化しやすいなどの特徴があり、成長障害にも配慮した治療が必要である。薬用量等については、小児治療指針を参照のこと。特に高齢者や免疫力の低下が疑われる患者では、強く免疫を抑制する治療に伴う副作用(ニューモシスチス肺炎などの日和見感染など)により致死的となることがあるため、ST合剤の予防投与などを考慮し、治療効果判定など早期に行い必要に応じて他の治療法や外科治療を選択する必要がある。また、高齢者では併存疾患を有する場合が多く、それらを考慮した治療計画の立案が必要である(高齢者潰瘍性大腸炎編参照)。中等症以上の症例では、ステロイド治療が必要となることが多い。ステロイドは重症度や治療歴などをもとに適正な用量で治療を開始し、漫然とした長期投与や減量中止後短期間における繰り返し投与は副作用や合併症につながることがあるので注意が必要である。通常、ステロイド使用時の初期効果判定は1~2週間以内に行い、効果不十分な場合は他の治療法の追加や切り替えを検討する。 腸管外合併症(壊疽性膿皮症など)の難治例も手術適応となることがあるので専門家に相談することが望ましい。
また、ステロイド抵抗例などの難治例や重症例では、血球成分除去療法やシクロスポリン点滴静注・タクロリムス経口投与・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・ベドリズマブ点滴静注・トファシチニブ経口投与、ウステキヌマブ点滴静注などの選択肢があるが、必要に応じて専門家の意見を聞くことが望ましい。特に強い免疫抑制を伴う治療の重複使用においては、感染症などのリスクを考慮し慎重に行う。B型肝炎ウイルス感染者(キャリアおよび既往感染者)に対し各種の免疫を抑制する治療を行う場合、HBVの再活性化によるB型肝炎を発症する可能性が考慮される。このため抗TNF-α抗体療法など免疫抑制的治療の導入に際しても、「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」の示す『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(第3.3版)』に基づいた医療対応が必要である。※免疫を抑制する治療としては、副腎皮質ステロイド(中等量以上)、アザチオプリン、6-MP、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ・ゴリムマブ)、抗IL-12/23抗体製剤(ウステキヌマブ)、抗α4 β7インテグリン抗体製剤(ベドリズマブ)、Janus kinase(JAK)阻害剤(ゼルヤンツ)が該当する。抗TNF-α抗体製剤治療や抗IL-12/23抗体製剤、抗α4 β7インテグリン抗体製剤、JAK阻害剤では結核併発のリスクが報告されており、本剤の投与に際しては十分な問診および胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験またはツベルクリン反応検査を行い、疑わしい場合には積極的に胸部CT検査も併用する必要がある。これらスクリーニング検査で陽性所見が一つでもあれば潜在性結核感染を疑い本剤開始3週間前からINH(原則300mg/日)を6~9ヶ月間投与する。ツベルクリン反応等の検査陰性例や、抗結核薬による予防投与例からも導入後に活動性結核が認められた報告が有り、本剤治療期間中には肺および肺外結核の発現に留意し、経過観察を行う。 免疫を抑制する治療を受けていた患者が悪性疾患を併発した場合、治療の継続により腫瘍免疫を抑制する可能性がある一方で、治療中止による潰瘍性大腸炎の悪化の可能性も考慮する必要がある。そのため、腫瘍専門医とリスクベネフィットについて協議するなど、適切に継続の可否について判断する。また、これらの薬剤を悪性疾患の治療後あるいは既往歴を有する患者に使用する場合には、その薬剤の必要性と悪性疾患再発への影響を十分に検討し適応を判断する。 感染罹患歴および予防接種の接種歴を確認し、定期接種あるいは任意接種のワクチンを適宜接種すべきである。高用量のステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤(ベドリズマブを除く)等の投与中は、生ワクチンの 接種は原則禁忌となるため、問診や抗体価の測定結果に基づき、投与開始前の接種を検討する。なお、薬剤の半減期や患者の免疫の状態なども考慮する必要があるが、免疫抑制的治療は生ワクチン接種の4週間後より開始すること、免疫抑制的治療中断後3ヶ月以降に生ワクチンを接種することが推奨されている。 手術法など外科治療の詳細については、外科治療指針を参照のこと。 II 薬物療法薬物療法は、主として重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択する。寛解導入後も、再燃を予防するため寛解維持療法を行う。治療継続中に急性増悪を起こした場合や寛解維持療法中に再燃を起こした場合には、前回の活動期と同一の治療法が奏効しないことや、より重症化することもあるので、これらの点を参考にして治療法を選択する。重症例、難治例は専門家に相談するのが望ましい。 1 寛解導入療法1-1. 直腸炎型5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤の経口剤(ペンタサ®顆粒/錠・サラゾピリン®錠・アサコール®錠・リアルダ®錠)または坐剤(ペンタサ®坐剤・サラゾピリン ®坐剤)あるいは注腸剤(ペンタサ ®注腸)による治療を行う。これで改善がなければ、製剤(経口剤、坐剤、注腸剤)の変更や追加、あるいは成分の異なる局所製剤への変更または追加を行う。局所製剤:5-ASA製剤では、坐剤としてはペンタサ ®坐剤1日1g〈注1〉、あるいは注腸剤としてはペンタサ ®注腸1日1gを使用する。ステロイドを含む製剤ではリンデロン ®坐剤1日0.5~2mgまたはステロイド注腸[プレドネマ ®注腸1日20~40mg、ステロネマ ®注腸1日3~6mg、レクタブル®注腸フォーム1回1プッシュ(ブデソニドとして2mg)1日2回〈注2〉]を使用する。経 口 剤:ペンタサ ®顆粒/錠1日1.5~4.0g〈注3〉、サラゾピリン ®錠1日3~4g〈注4〉、アサコール®錠1日 2.4~3.6g、リアルダ ®錠1日2.4~4.8gいずれかを使用する〈注3〉。 上記の治療法が奏効した場合にはリンデロン ®坐剤、ステロイド注腸、ブデソニド注腸フォーム剤は中止または漸減離脱し、寛解維持療法に移行する。
※ステロイドを含む製剤は、長期投与で副作用の可能性 があるので、症状が改善すれば(漸減)中止が望ましい。 ※以上の治療を最大限行ったにもかかわらず、寛解 導入に至らない場合には、左側大腸炎・全大腸炎の中等症に準じるが、ステロイドの全身投与(特に大量投与)は安易に行うべきではない。また、軽度の症状が残る場合、追加治療のメリットとデメリットを考慮し、経過観察するという選択肢もある。 ※小児では短期間に全大腸炎型に進展しやすい。 1-2. 左側大腸炎型・全大腸炎型A. 軽症(1)ペンタサ ®顆粒/錠1日1.5~4.0g〈注3〉、サラゾピリン®錠1日3~4g〈注4〉、アサコール ®錠1日2.4~3.6g、リアルダ ®錠1日2.4~4.8g〈注3〉いずれかを経口投与する。ペンタサ ®注腸を併用すると効果の増強が期待できる〈注5〉。左側大腸の炎症が強い場合はステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤の併用が有効な場合がある。2週間以内に明らかな改善があれば引き続きこの治療を続け、可能ならステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤は中止または漸減離脱する。寛解導入後は後述の寛解維持療法を行う。(2)服薬遵守がなされているにもかかわらず、改善がなければ以上に加えて中等症の(1)【プレドニゾロン経口投与】の治療を行う。(3)ペンタサ ®顆粒/錠、サラゾピリン®錠、アサコール®錠、リアルダ ®錠を開始後早期に(多くは2週間以内)発熱、腹部症状の悪化などが認められたら、5-ASA製剤による症状の悪化を考慮し上記製剤の中止を検討する。 ※左側大腸炎型は罹患範囲が脾彎曲を超えないものと 定義されている。 B. 中等症基本的には軽症に準じてよいが、 (1)炎症や症状が強い場合は、軽症の治療に加えてプレ ドニゾロン1日30~40mgの経口投与を初期より行ってもよい。また軽症に準じた治療で2週間以内に明らかな効果がない場合や途中で増悪する場合もプレドニゾロン1日30~40mgの経口投与を併用する。これで明らかな効果が得られたら、20mgまで漸次減量し、以後は2週間毎に5mg程度ずつ減量する。原則として投与後3ヶ月をめどにプレドニゾロンから離脱するようにする。その後は軽症に準じて治療継続を原則とする。(2)プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が 起こり離脱も困難な場合(ステロイド依存例)は、難治例の(2)の【ステロイド依存例】の治療を行う。 (3)プレドニゾロンの経口投与を行っても、1~2週間以 内に明らかな効果が認められない時は、原則として入院とし重症の(1)、(2)または難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行う。 C. 重症(1)入院のうえ全身状態の改善に対する治療を行う。 常に外科治療の適応に注意し、必要に応じて外科医と連携して治療に当たる。緊急手術へ移行する可能性もあるので、必要に応じて専門施設への転院も考慮に入れる。 (2)薬物療法としては、当初よりプレドニゾロン1日 40~80mg(成人においては1~1.5mg/kgを目安とし、最大で1日80mg程度とする。)の点滴静注を追加する(ステロイド大量静注療法)。これで明らかな効果が得られたら、プレドニゾロンを40mgまで漸次減量し、その後は1–2週間毎を目安とし30mg、20mgと病態に応じて減量し、以後は中等症の(1)【プレドニゾロン経口投与】、(2)【ステロイド依存例】に準じた治療を行う。原則として投与後3ヶ月をめどに離脱するようにする。必要と思われる症例には、当初より難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行ってもよい。 (3)前項の治療を行っても1週間程度で明らかな改善が 得られない場合(ステロイド抵抗例)は、難治例の(1)に従い血球成分除去療法〈注6〉、シクロスポリン(サンディミュン ®)持続静注療法〈注7〉、タクロリムス(プログラフ ®)経口投与〈注8〉、インフリキシマブ(レミケード ®)点滴静注〈注9〉、アダリムマブ(ヒュミラ ®)皮下注射〈注10〉、ゴリムマブ(シンポニー ®)皮下注射〈注11〉、トファシチニブ(ゼルヤンツ ®)経口投与〈注12〉、ベドリズマブ(エンタイビオ ®)点滴静注〈注13〉、ウステキヌマブ(ステラーラ ®)点滴静注〈注14〉のいずれかの治療法を行う。なお、これらの選択肢のうち一つの治療法で効果が不十分な場合に安易に次々と別の治療法を試すことは慎重であるべきで、外科治療の考慮も重要である。 (4)以上の治療でも明らかな改善が得られない、または 改善が期待できない時は、すみやかに手術を考慮する。 (5)重症例には血栓症を発症するリスクがあり、積極的な スクリーニングを考慮する(腸管外合併症の項参照)。
D. 劇症型(急性劇症型または再燃劇症型)劇症型は、急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、外科医との密接な協力のもと、緊急手術の適応を考慮しつつ、次のように取り扱う。緊急手術へ移行する可能性もあるので、必要に応じて専門施設への転院も考慮に入れる。 (1)ステロイド大量静注療法を行う〈注15〉。また過去に ステロイドを複数回使用している場合やステロイド依存例が劇症型になった場合には、シクロスポリン持続静注療法〈注7〉、タクロリムス経口投与〈注8〉、インフリキシマブ点滴静注投与〈注9〉を行う方法もある。経口摂取を禁じ、経静脈的栄養療法を行う。大量静注療法の効果判定は、外科医等と連携の上、手術時機を失することの無いよう早期に行う。 (2)以上の治療で激烈な症状のほとんどが消失した 場合は、この時点から重症型のステロイド大量静注療法に準ずる。 (3) (1)の治療を行っても症状の改善が不十分な例は、 シクロスポリン持続静注療法〈注7〉、タクロリムス経口投与〈注8〉、インフリキシマブ点滴静注投与〈注9〉を試みてもよいが、症状が悪化する場合または改善が期待できない例では時機を失することなく緊急手術を行う。 ※重症例、特に劇症型では中毒性巨大結腸症や穿孔を 起こしやすいので、腹部所見(膨隆、腸雑音、腹膜刺激症状など)に留意し、腹部単純X線撮影、腹部骨盤CTなどによる観察を行う。 E. 難治例適正なステロイド使用にもかかわらず、効果が不十分な場合(ステロイド抵抗例)と、ステロイド投与中は安定しているがステロイドの減量に伴い再燃増悪するステロイド依存例等よりなる。難治例の治療に当たっては、これまで投与した薬物による副作用、病態や治療による患者QOLの状態などによる手術適応を考慮し、それぞれのメリット・デメリットなどを患者と相談の上で治療法を選択する。 (1)ステロイド抵抗例ステロイドによる適正な治療にもかかわらず、1~2週間以内に明らかな改善が得られない場合である。重症度が中等症以上では血球成分除去療法〈注6〉、シクロスポリン持続静注〈注7〉、タクロリムス経口投与〈注8〉、インフリキシマブ点滴静注〈注 9〉、アダリムマブ皮下注射〈注10〉、ゴリムマブ皮下注射〈注11〉、トファシチニブ経口投与〈注12〉、ベドリズマブ点滴静注〈注13〉、ウステキヌマブ点滴静注〈注14〉が選択可能である。重症例で経口摂取が不可能な劇症に近い症例ではインフリキシマブ点滴静注またはシクロスポリン持続静注の選択が考慮される。白血球除去療法やシクロスポリンで寛解導入された場合は寛解維持療法の項に示すようにアザチオプリンや6-MPによる寛解維持療法〈注16〉に移行する。なお、インフリキシマブ点滴静注で寛解導入された場合は8週毎の投与、アダリムマブ皮下注射で寛解に導入された場合は2週毎の投与、ゴリムマブ皮下注射で寛解に導入された場合は4週毎の投与、トファシチニブ経口投与で寛解に導入された場合は継続 (原則8週以降に10mg/日へ減量)、ベドリズマブで寛解に導入された場合は8週毎の投与、ウステキヌマブで寛解に導入された場合には8–12週毎の皮下注射による寛解維持療法が選択可能である。ステロイド抵抗例のなかに、クロストリディオイデス・ディフィシル感染やサイトメガロウイルス感染の合併による増悪例が存在する。クロストリディオイデス・デクロストリディオイデス・ディフィシルンの経口投与またはメトロニダゾールの経口投与を検討する。サイトメガロウイルス腸炎の合併症例に対しては抗ウイルス剤の併用が有効な場合がある。 ※サイトメガロウイルス感染合併例の典型的内視鏡所 見として円形の打ち抜き潰瘍を形成するが、非典型的所見を呈する場合もある。診断には末梢血による再活性化の診断(アンチゲネミア:C7-HRP等によるウイルス感染細胞数の測定)、生検病理所見による核内封入体の証明や免疫染色による粘膜組織中のウイルス抗原の同定、あるいは生検検体を用いたPCRによるウイルスの検出が行われるが判断基準は議論がある。 (2)ステロイド依存例プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合である。通常、免疫調節薬であるアザチオプリン(イムラン ®・アザニン ®など)50~ 100mg/日または6-MP(ロイケリン®)30~50mg/日を併用する〈注16〉。これらの効果発現は比較的緩徐で、1~3ヶ月を要することがある。これが有効で副作用がない時は、上記の免疫調節薬を開始して1~2ヶ月後に経口プレドニゾロンを徐々に減量、中止する。寛解導入後は副作用に注意し適宜血液検査などを行いながら寛解維持療法としての投与を続ける。上記で効果不十分あるいは免疫調節薬不耐例で活動期には、血球成分除去療法〈注6〉やタクロリムス経口投与〈注8〉やインフリキシマブ点滴静注〈注9〉、アダリムマブ皮下注射〈注10〉、ゴリムマブ皮下注射〈注11〉、トファシチニブ経口投与〈注12〉、ベドリズマブ点滴静注〈注13〉、ウステキヌマブ点滴静注〈注14〉も考慮する。なおトファシチニブ経口投与を選択した場合は原則としてチオプ
リン製剤の併用は禁忌である。 (3)なおステロイド以外の厳密な内科的治療下にあり ながら頻回に再燃を繰り返す、あるいは慢性持続型を呈する難治例については、過去にステロイドを使用したことがない例では、中等症のプレドニゾロンもしくは重症例のステロイド大量静注療法に準じた治療を行う。過去にステロイド使用歴がある症例ではステロイド依存例に準じた治療を行う。 (4)これらの治療で効果が不十分、あるいはQOL(生活 の質)の低下した例では手術を考慮する。 (5)小児では成長障害がみられる例においても手術を 考慮する。 F. 中毒性巨大結腸症発熱、頻脈、低タンパク血症などを伴って、結腸、特に横行結腸の著明な拡張を起こした状態である。直ちに緊急手術を行うか、外科医の協力のもとに、短期間劇症の強力な治療を行い、所見の著明な改善が得られない場合は緊急手術を行う(外科療法の項参照)。 ※仰臥位腹部単純X線撮影で、横行結腸中央部の直径が 6cm以上の場合は本症が考えられる。 2 寛解維持療法以下の5-ASA製剤の経口剤投与または局所治療の単独または併用を行う。直腸炎型の寛解維持では局所治療の単独あるいは併用も有用である。 経 口 剤:ペンタサ ®顆粒/錠1日1.5~2.25g〈注17〉、サラゾピリン ®錠1日2g、アサコール ®錠1日2.4g〈注18〉、リアルダ ®錠1日2.4gいずれかを投与する。局所治療:ペンタサ ®注腸1日1g〈注17〉またはサラゾピリン ®坐剤1日0.5~1gやペンタサ ®坐剤1日1g〈注1〉を使用する。 なお、ステロイド抵抗例や依存例などの難治例では原則として免疫調節薬による寛解維持治療を行う。タクロリムスやシクロスポリンで寛解導入された例も免疫調節薬による維持療法を検討する。また、インフリキシマブで寛解導入を行った例では8週毎のインフリキシマブ投与、アダリムマブで寛解導入を行った例では2週毎のアダリムマブ投与、ゴリムマブで寛解導入を行った例では4週毎のゴリムマブ投与、ベドリズマブで寛解導入を行った例では8週毎のベドリズマブ投与による寛解維持療法を行ってもよい。ウステキヌマブで寛解導入を行った例では点滴静注製剤を投与8週後にウステキヌマブ90mgの皮下投与による治療を行い、その後12週間隔で90mgを皮下投与してもよい。トファシチニブで寛解導入を行った例では投与を継続するが、8週以降に原則として10mg/日へ減量する。 ※ステロイドには長期の寛解維持効果が乏しいことが 知られており、寛解維持の目的には使用しない。 〈注1〉 ペンタサ ®坐剤は罹患範囲によらず直腸部の炎症性病変に対し有用である。 〈注2〉 レクタブル ®注腸フォームの腸内で到達する範囲は概ねS状結腸までであり、直腸及びS状結腸に活動性の病変を有する軽症から中等症例に対して使用する。 〈注3〉 寛解導入療法として5-ASA製剤は国内外の報告 より高用量の効果が高いことから、ペンタサ ®顆粒/錠は1日4g、アサコール ®錠では1日3.6g、リアルダ ®錠では1日1回4.8gが望ましい。小児でも高用量の効果が高いことが知られている。 〈注4〉 サラゾピリン ®錠の用量については、症状により初回毎日16錠(8g)を3週間程度は用いても差し支えない。サラゾピリン ®錠は発疹のほか溶血や無顆粒球症、肝機能障害なども起こり得るので、定期的に血液検査や肝機能検査を行う。また、男性の場合には精子数の減少や運動能の低下も報告されている。 〈注5〉 経口5-ASA製剤を最大用量併用した上で、ペン タサ®注腸を併用することが望ましい。 〈注6〉 血球成分除去療法 アダカラム ®を用いて顆粒球・単球を吸着除去する顆粒球除去療法(GMA)は、原則1クール計10回とし、劇症では計11回まで保険適応である。通常週1回行うが、症状の強い症例などでは週2回行ったほうが効果が高い。治療中に増悪する症例や無効と判断した症例は、手術や他の治療法へ変更する。重症例に行う場合には、比較的早い時期から併用すべきであり、有効性の判定も早期(2週間程度)に行うべきである。なお、本治療は専門施設で行うのが望ましい。また令和2年より保険適応となったイムノピュアは白血球・血小板を選択的に吸着する治療法であり、中等症の難治例に対して使用可能である。
〈注7〉シクロスポリン持続静注療法(*) シクロスポリン1日量2~4mg/kgを24時間持続静注投与で開始し、血中濃度を頻回に測定しながら、200~400ng/mL程度を目安として維持するよう投与量を調節する。改善が見られないときや病状が増悪したり、重篤な副作用(感染症、腎不全)が出現したりする際は、手術や他の治療法へ変更する。投与後1週間以内に明らかな改善効果を認めた場合は、最大14日間まで静注を継続する。静注中止後は、原則としてアザチオプリンあるいは6-MP(*)の経口投与を直ちに開始し寛解維持療法に移行する。本治療は、血中濃度の厳密な管理が必要であること、重篤な感染症や腎不全の副作用がありうることから、専門施設で行うのが望ましい。 〈注8〉 タクロリムス経口投与 タクロリムスを用いる際は当初は高トラフを目指す(10~15ng/mL)がその後は低トラフ(5~ 10ng/mL)にする。なお血中濃度が高トラフに到達するまでは、頻回に採血を行い、高トラフに到達したあともトラフ濃度が不安定にならないように、定期的に採血を施行する。寛解導入後は、アザチオプリンや6-MP(*)による寛解維持治療に移行する。腎障害・手指振戦などの副作用に注意する。3ヶ月を越える長期投与では、腎機能障害の危険が増加し、時に不可逆性となる場合もあるため慎重な経過観察が必要である。なお、本治療は血中濃度が迅速に測定可能な環境の施設で行うのが望ましい。 〈注9〉 インフリキシマブ点滴静注 インフリキシマブは初回投与後さらに第2週、第6週に投与し、有効な場合は維持療法として以後8週間の間隔で投与が可能である。事前に感染症のチェック等を十分行い、投与時反応に対する処置が可能な状態で5mg/kgを2時間以上かけて点滴静注する。なお、投与時反応が無ければ3回目以後は、点滴速度を最大で1時間当たり5mg/kgまで短縮することができるが、副作用の発現に注意する。投与時反応とは、投与中あるいは投与終了後2時間以内に出現する症状で、アナフィラキシー様の重篤な時は投与を中止し、全身管理を行う。インフリキシマブの副作用として、免疫抑制作用による結核菌感染の顕性化、敗血症や肺炎などの感染症、肝障害、発疹、白血球減少などが報告されている。免疫調節薬の併用により中和抗体産生の減少および治療開始16週における治療効果の向上が期待できる。〈注10〉 アダリムマブは初回160mgの皮下注射を行い、 2週間後に80mgの皮下注射を行う。その後は40mgの皮下注射を2週間毎に寛解維持療法として行う。患者自身による自己注射も可能である。 〈注11〉 ゴリムマブは初回200mgの皮下注射を行い、 2週間後に100mgの皮下注射を行う。その後は100mgの皮下注射を4週間毎に寛解維持療法として行う。患者自身による自己注射も可能である。 〈注12〉 トファシチニブとして1回10mgを1日2回8週間 経口投与する。なお、効果不十分な場合はさらに8週間投与することができる。維持療法では、通常、成人にトファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、維持療法中に効果が減弱した患者では、1回10mgの1日2回投与に増量することができる。また、過去の薬物治療において難治性の患者(TNF阻害剤無効例等)では、1回10mgを1日2回投与することができる。なお、トファシチニブ投与時にはチオプリン製剤の併用は原則禁忌である。 〈注13〉 ベドリズマブは1回300mgを点滴静注する。初回 投与後2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注する。3回投与しても治療反応が得られない場合は治療法を再考する。 〈注14〉 ウステキヌマブは、初回のみ体重に応じた用量 (55kg以下260mg、55~85kg以下390mg、85kg超520mg)で点滴静注により投与する。その8週後に90mgを皮下投与し、以降は12週間隔で90mgを皮下投与する。効果が減弱した場合、投与間隔を8週間に短縮できる。 〈注15〉 ステロイド大量静注療法 1全身状態の管理。2水溶性プレドニゾロン40~80mg(成人では1~1.5mg/kgを目安とし、最大で1日80mg程度とする)。小児では水溶性プレドニゾロン1日1.0~2.0mg/kgを目安とし、最大で1日60~80mg程度とする。3小児ではメチルプレドニゾロンのパルス療法が選択されることもある。4ステロイド大量静注療法の効果判定は、手術 時機を失することのないように速やかに行う。
〈注16〉 アザチオプリンや6-MP(*)の副作用として、 白血球減少、貧血、胃腸症状、膵炎、肝機能障害、脱毛などが起こり得る。また欧米では抗TNF-α抗体製剤との長期併用や高齢者への投与によりリンパ腫や日和見感染のリスクが増すとの報告がある。EBウイルス未感染患者では、投与開始後に初感染した場合、血球貪食症候群やリンパ腫などのリスクが増加するため、感染兆候があった場合は投与中止を検討する。また、投与前の血清抗体検査施行と未感染者に対する投与を慎重に検討する。通常アザチオプリンでは50mg/日程度、6-MP(*)では30mg/日程度より開始し、副作用や効果をみながら適宜増減する。 上記のような副作用は投与開始後早期に起こることがあるため、投与開始早期は頻回に血液検査を行い(投与開始後1~2週間を目安にし、その後は数週間おき)、白血球数減少やその他の異常が発現した場合、程度に応じて減量、または一時中止する。チオプリン製剤(アザチオプリン・6-MP(*))の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされている。平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となっており、初めてチオプリン製剤の投与を考慮する患者に対しては、チオプリン製剤による治療を開始する前に本検査を施行し、NUDT15遺伝子型を確認の上でチオプリン製剤の適応を判断することが推奨される。現在は保険承認後の移行期であるため各施設において検査体制の整備が必要である。日本人の約1%に存在するCys/Cys型の場合は、重篤な副作用(高度白血球減少、全脱毛)のリスクが非常に高いためチオプリン製剤の使用を原則として回避し、Arg/Cys, Cys/His型の場合は低用量(通常量の半分程度を目安とする)からの開始を考慮する。これらの副作用のリスクが低いArg/Arg, Arg/His型の場合であっても、チオプリン製剤の副作用のすべてがNUDT15遺伝子多型に起因するものでないため、使用に際しては定期的な副作用モニタリングを実施する。NUDT15 遺伝子検査結果日本人での頻度通常量で開始した場合の 副作用頻度チオプリン製剤の開始方法急性高度白血球減少全脱毛 Arg/Arg 81.1%稀(<0.1%)稀(<0.1%)通常量で開始Arg/His Arg/Cys 17.8%低(<5%)低(<5%)減量して開始Cys/His <0.05%高(>50%) Cys/Cys 1.1%必発必発服用を回避 〈注17〉 ペンタサ ®顆粒/錠1日1.5~2.25gによる寛解維持の場合、アドヒアランスを改善するために1日1回投与が望ましい。2g1日1回投与は1g1日2回投与よりも有用という海外のエビデンスがある。また、ペンタサ ®顆粒/錠とペンタサ® 注腸1日1gの2~3日に1回の間欠投与や週末2日間の併用投与も有用である。 〈注18〉 寛解期には、必要に応じて1日1回2.4g食後経口 投与とすることができる。 (*)現在保険適応には含まれていない
令和2年度潰瘍性大腸炎治療指針(内科) * :現在保険適応には含まれていない、**:それぞれ同じ薬剤で寛解導入した場合に維持療法として継続投与する5-ASA経口剤(ペンタサ®顆粒/錠、アサコール®錠、サラゾピリン®錠、リアルダ®錠)、5-ASA注腸剤(ペンタサ®注腸)、5-ASA坐剤(ペンタサ®坐剤、サラゾピリン®坐剤)ステロイド注腸剤(プレドネマ®注腸、ステロネマ®注腸)、ブデソニド注腸フォーム剤(レクタブル®注腸フォーム)、ステロイド坐剤(リンデロン®坐剤) ※(治療原則)内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイ ミングなどを誤らないようにする。薬用量や治療の使い分け、小児や外科治療など詳細は本文を参照のこと。 寛解導入療法 軽 症中等症重 症劇 症 全大腸炎型左側大腸炎型経口剤:5-ASA製剤注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸フォーム剤:ブデソニド注腸フォーム剤 ※中等症で炎症反応が強い場合や上 記で改善ない場合はプレドニゾロン経口投与※さらに改善なければ重症またはステ ロイド抵抗例への治療を行う※直腸部に炎症を有する場合はペンタ サ坐剤が有用ステロイド大量静注療法 ※改善なければ劇症またはステロイド 抵抗例の治療を行う※状態により手術適応の検討緊急手術の適応を検討 ※外科医と連携のもと、状況が許せ ば以下の治療を試みてもよい。・ステロイド大量静注療法・タクロリムス経口・シクロスポリン持続静注療法*・インフリキシマブ点滴静注※上記で改善なければ手術 直腸炎型経口剤:5-ASA製剤坐 剤:5-ASA坐剤、ステロイド坐剤注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸フォーム剤:ブデソニド注腸フォーム剤 ※安易なステロイド全身投与は避ける 難治例ステロイド依存例ステロイド抵抗例 免疫調節薬:アザチオプリン・6-MP* ※ 上記で改善しない場合:血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・トファシチニブ経口・ベドリズマブ点滴静注・ウステキヌマブ点滴静注(初回のみ)を考慮してもよい※ トファシチニブ経口はチオプリン 製剤との併用は禁忌中等症:血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダ リムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・トファシチニブ経口・ベドリズマブ点滴静注・ウステキヌマブ点滴静注(初回のみ)重 症:血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリ ムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・トファシチニブ経口・ベドリズマブ点滴静注・ウステキヌマブ点滴静注(初回のみ)・シクロスポリン持続静注療法* ※アザチオプリン・6-MP*の併用を考慮する(トファシチニブ以外) ※改善がなければ手術を考慮 寛解維持療法 非難治例難治例 5-ASA製剤(経口剤・注腸剤・坐剤) 5-ASA製剤(経口剤・注腸剤・坐剤)免疫調節薬(アザチオプリン、6-MP *)、インフリキシマブ点滴静注 **、アダリムマブ皮下注射 **・ゴリムマブ皮下注射 **、トファシチニブ経口 **、ベドリズマブ点滴静注**・ウステキヌマブ皮下注射**
潰瘍性大腸炎 フローチャート 寛解導入(活動期治療)寛解維持 寛解維持療法1 ( 5 - A S A ) 直腸炎型5-ASA製剤経口剤 and/or 注腸剤、坐剤 プレドニゾロン経口30~40mgプレドニゾロン漸減・中止 ステロイド大量静注(プレドニゾロン40~ 80mg点滴静注)難治例の治療へ 難治例の治療へ 難治例の治療内容は本文参照詳細は本文参照 手術適応判断 ※左側の炎症強の時はステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤併用 (1~2週間) (1週間以内)プレドニゾロン漸減・中止 全身管理手術適応判断 全身管理手術適応判断 軽症中等症 重症 劇症ステロイド大量静注・シクロスポリン持続静注・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注 5-ASA経口剤 and/or 5-ASA注腸剤、坐剤(十分量) ステロイド局所製剤(ブデソニド注腸フォーム剤含)へ切換/追加 中等症の治療に準ずる(大量のステロイドは慎重に) (頻回再燃例) 左側大腸炎型全大腸炎型 寛解維持療法2 ( 5 - A S A +アザチオプリン/ 6 - M P ) 実線は治療効果があった場合点線は無効・効果不十分な場合
潰瘍性大腸炎 難治例の治療 ステロイド漸減中止 血球成分除去療法タクロリムス経口投与 寛解維持療法※トファシチニブとチオプリン 製剤との併用は原則禁忌のためトファシチニブ投与時にはチオプリン製剤を中止するインフリキシマブ点滴アダリムマブ皮下注射 ゴリムマブ皮下注射インフリキシマブ点滴アダリムマブ皮下注射 ゴリムマブ皮下注射 トファシチニブ経口投与トファシチニブ経口投与 ベドリズマブ点滴静注ベドリズマブ点滴静注ウステキヌマブ点滴静注 #/皮下注射ウステキヌマブ皮下注射 ステロイド漸減中止寛解維持療法アザチオプリン/6-MP ステロイド抵抗例 ステロイド依存例・血球成分除去療法(週2回法がより高い有効性) ・タクロリムス経口投与・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・トファシチニブ経口・べドリズマブ点滴静注・ウステキヌマブ点滴静注(初回のみ点滴静注・2回目以降皮下注射)・シクロスポリン点滴静注(保険未承認) ※これらのオプションの複数使用は、感染症や合併症を慎重に判断し(専門家の意見を聞く)、外科治療も考慮する 1〜2ヶ月 # 初回のみ 実線は治療効果があった場合点線は無効・効果不十分な場合(活動期例) アザチオプリン /6-MP経口
潰瘍性大腸炎外科治療指針(2021年1月改訂) 3 1 手術適応(1)絶対的手術適応 1大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症2重症型、劇症型で以下の強力な内科治療が 無効な例ステロイド大量静注療法血球成分除去療法カルシニューリン阻害剤(シクロスポリン、タクロリムス)生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリブマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブ) JAK阻害剤(トファシチニブ) 3大腸癌およびhigh grade dysplasia(UC-IV) (2)相対的手術適応 1難治例:内科的治療(ステロイド、血球成分除去療法、アザチオプリン、6-MP、カルシニューリン阻害剤、生物学的製剤、JAK阻害剤)などで十分な効果がなく、日常生活、社会生活が困難なQOL低下例(便意切迫を含む)、内科的治療で重大な副作用が発現、または発現する可能性が高い例。2腸管外合併症:保存的治療に抵抗する壊疽性膿皮症など。3小児の成長障害4大腸合併症:狭窄、瘻孔、low-grade dysplasia (UC-III)のうち癌合併の可能性が高いと考えられる例など。 2 手術時期 1大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、強力な 内科治療(前記)が無効な重症型、劇症型に対しては緊急、準緊急手術を行う。2難治例に対しては患者の全身状態、術前内科治療を考慮し、時期の遅れがなく手術を行う。特に高齢者や重症合併症を有する患者では早期に外科医と相談し、手術の判断を行う。3発育期の小児では適正な内科治療で改善しない 成長障害は術後のcatch upを考慮して思春期発来前、または骨端線閉鎖前の手術が推奨される。成長障害の評価として成長曲線の作成や手根骨のX線撮影などによる骨年齢の評価が重要であり、小児科医と協力して評価することが望ましい。 3 手術術式の選択 主な手術術式は下記の5種類で、現在の標準術式は大腸全摘、回腸嚢による再建術である(1、2)。手術術式は患者の全身状態、年齢、腸管合併症、治療薬剤の副作用などを考慮して選択することが原則である。1大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術(IAA:Ileoanal anastomosis)直腸粘膜抜去を行って病変をすべて切除し、回腸で貯留嚢を作成して肛門(歯状線)と吻合する術式で、根治性が高い。通常は一時的回腸人工肛門を造設する。2大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術(IACA: Ileoanal canal anastomosis)回腸嚢を肛門管と器械吻合して肛門管粘膜を温存する術式である。回腸嚢肛門吻合術に比べて漏便が少ないが、肛門管粘膜の炎症再燃、癌化の可能性がある。術後は定期的内視鏡検査を行う。3結腸全摘、回腸直腸吻合術直腸の炎症が軽度の症例が対象で、高齢者などに行うことがある。手術時合併症が少なく、術後排便機能が良好であるが、残存直腸の再燃、癌化の可能性があり、残存直腸に対する術後治療や術後の定期的内視鏡検査を行う。4大腸全摘、永久回腸人工肛門造設術肛門温存が不可能な進行下部直腸癌例、肛門機能不良例、ADLの低下している高齢者などに行う。5結腸亜全摘、回腸人工肛門造設術、S状結腸粘液瘻 またはHartmann手術侵襲の少ないことが利点であり、全身状態不良例に対して肛門温存術を行う前の分割手術の一期目として行う。重症例に対して緊急手術として本手術を専門施設以外で行う場合はその後の再建手術を専門施設で行うことを考慮する。また、クローン病やindeterminate colitis(IC)が疑われる症例には本法を施行し、切除術後標本の病理組織学的な検索を行った後にニ期目の手術術式を検討する。 〈注1〉 分割手術としてHartmann手術を選択する場合は 直腸閉鎖部の縫合不全による骨盤腹膜炎併発の危険性に留意する。次回の直腸切除の際の直腸処理が困難とならないようにするため、腹膜翻転部からある程度の距離をもって口側で直腸を切離、閉鎖することが望ましい。 〈注2〉 小児の手術術式は術後経過が良好なことから、 可能であれば成人同様に回腸嚢肛門吻合術、または回腸嚢肛門管吻合術を考慮する。 〈注3〉 高齢者の手術適応は若年者と同様で、重症、または 劇症の頻度が高い。高齢者は予備力が低く、免疫抑制作用の強い治療の継続投与によって感染性
合併症(日和見感染による肺炎など)を併発して重篤な状態になることが少なくない。安全な手術、手術前後の合併症の予防のためには治療効果判定を早期に行い、効果が認められない症例に対する他の内科治療の選択は十分慎重であるべきで、時期の遅れがなく、外科治療を選択することが重要である。生活機能(ADL)の低下する前の手術が推奨され、術後は肺炎、血栓塞栓症、ADLの低下、認知機能低下、嚥下障害などに留意し、早期離床、リハビリテーションの介入を図る。手術術式は安全性と生活の質(QOL)の観点から選択することが必要であり、肛門機能、ADLが低下している症例では大腸全摘、回腸人工肛門造設術、これらが保たれている症例では標準術式である回腸嚢肛門吻合術、または回腸嚢肛門管吻合術を考慮する。 〈注4〉 本症に対する腹腔鏡下手術や小開腹による手術は 通常の開腹術に比べて整容性の点で優れているが、重症で腸管の脆弱な症例や全身状態が不良で短時間での手術が必要な症例などではこれらの手術術式の適応を慎重に考慮する。これらの手術は専門施設で行うことが望ましい。 〈注5〉 回腸嚢肛門吻合、回腸嚢肛門管吻合術は回腸嚢 関連合併症の発生率が専門施設で低いとする報告があり、専門施設で行うことが望ましい。穿孔や内科治療が奏効せず緊急手術を要する重症例に対しては専門施設以外での対応が必要な場合があり、この際には分割手術の一期目として結腸亜全摘、回腸人工肛門S状結腸粘液瘻またはHartmann手術を施行し、全身状態の改善後に専門施設での回腸嚢手術を考慮する。 〈注6〉 症例の全身状態、病態、施行された内科治療は 様々であり、各施設の状況に応じて分割手術を検討することが重要である。 4 周術期管理 1免疫抑制効果の強い治療の継続によって手術前 後に感染性合併症(日和見感染による肺炎など)を併発することがあるため、これらに対する的確な診断、治療を行う。術前ステロイド投与例では感染性合併症の増加だけでなく、吻合術例での縫合不全の危険性などがあり、可能であれば術前にステロイドを減量する。また術後はステロイドカバーを行い、副腎機能不全に留意しながらステロイドを減量する。2血栓塞栓症 本症手術例は周術期に血栓塞栓症の合併率が高いことから、術前診断、術中、術後管理の際に十分、留意することが必要である。3回腸人工肛門造設例では排液量が多いことから 術後の水分、電解質管理を適正に行う。 〈注〉術後ステロイドカバー ステロイドを長期投与された患者では手術後のステロイド分泌が十分でなく、急性副腎機能不全を起こす可能性があり、ステロイドカバーが必要と考えられている。しかし明確なエビデンスに基づいた方法はなく、従来の報告と経験に基づいた投与法が行われている。プレドニゾロン5mg/日以下の投与例では通常の維持投与量以上の投与は不要とされている。またステロイド坐剤、注腸製剤を長期使用した症例も副腎機能が低下していることがある。使用されるステロイド製剤は術直後には代謝の早いハイドロコーチゾンが用いられることが多く、術後当日と術後1日は200~300mg、術後2日は100~200mg、その後徐々に減量して、術後約7日で通常、経口プレドニゾロン15mg/日前後に変更し、急性副腎機能不全の発生に留意しながら速やかに減量、中止を試みる。
19 出典:「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成29年度総括・分担研究報告書 p61~p63 潰瘍性大腸炎に対する主な術式 大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術<注>大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術<注> 大腸全摘、回腸人工肛門造設術結腸全摘、回腸直腸吻合術結腸(亜)全摘、回腸人工肛門造設術 歯状線 Hartmann手術 <注>図はJ型回腸嚢 S状結腸粘液瘻
回腸嚢炎治療指針(2017年1月改訂) 4回腸嚢炎の診断はアトラスを参考にする。 1. メトロニダゾール(500mg/日)またはシプロフロキサシン(400〜600mg/日)の2週間投与を行う。効果が不十分な場合はメトロニダゾールまたはシプロフロキサシン、あるいは2剤を使用して4週間を目安として投与する。さらに効果が乏しい場合はほかの抗菌剤の使用を考慮する。難治例のなかには抗菌剤の長期投与を要する例があるが、副作用の出現に留意し、薬剤の減量を図る。 2. 抗菌剤治療抵抗例に対しては、可能であれば5-ASA注腸/坐剤、ステロイド注腸、ベタメタゾン坐薬などを加える。脱水を認める症例では補液を行う。これらの治療により効果が得られないか再燃寛解を繰り返す場合は、専門家に相談し治療を進めることが望ましい。 3. 免疫調節薬、インフリキシマブ、血球成分除去療法が有効な場合がある。 4. 治療不応例は、感染性腸炎合併の可能性を再度考慮する。 出典:「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成29年度総括・分担研究報告書 p64
小児潰瘍性大腸炎治療指針(2021年1月改訂) 5小児期潰瘍性大腸炎の治療原則1)治療方針は、臨床的評価(重症度、病変の拡がりなど)と小児用の活動性指標(pediatric ulcerative colitis activity index: PUCAI)に基づいて、フローチャートを参考に決定する。2)潰瘍性大腸炎においては、腸管炎症に伴う消化器症状を改善して、活動期には早期に寛解へ導入し、さらに長期間にわたり寛解を維持することが治療の目標となる。そのためには、臨床症状の消失(臨床的寛解)とともに、内視鏡的に腸管粘膜の炎症所見が改善した状態(内視鏡的寛解)すなわち粘膜治癒を目指した治療が求められる。同時に小児では、二次性徴を含めた正常な身体的発育と精神面での発達を達成することも重要な目標である。3)治療の効果は、臨床症状(血便、便通異常など)の消失と、内視鏡所見の改善をもって判定する。小児ではPUCAI 10未満を臨床的寛解とする。また内視鏡所見では、Mayo内視鏡サブスコア1点以下を内視鏡的寛解とすることが多い。なお、生検組織所見および便中カルプロテクチンなどのバイオマーカーは潰瘍性大腸炎の活動性を知る上で有用であるが、寛解の判定においては補助的な位置づけとなっており、参考に留める。4)発症後、直腸炎型が全大腸炎型に進展しやすいなど、成人に比して病変範囲の拡大、重症化が見られやすい。そのため小児では、急性期には成人よりも積極的な治療が望ましく、かつ輸液を含めた適切な全身管理を必要とする。中等症で炎症反応のある場合(PUCAI 50以上)は重症例と同じ扱いとし、重症例のうち全身状態不良の場合は、劇症に準じた扱いとする。5)重症例で十分量のステロイド薬投与でも効果不十分の場合は、早期に次の内科的治療(second line therapy)や外科治療を検討すべきである。難治例(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の治療は経験豊富な施設で行うことが望ましく、外科治療の判断を誤らないようにする。6)身長・体重・二次性徴・骨年齢などの成長の指標を定期的に確認する必要がある。身長・体重の評価には成長曲線が有用である。成長障害の原因となるステロイド薬の使用は極力短期間とし、寛解維持の目的には使用しない。7)薬用量は原則として体重もしくは体表面積をもとに換算し、重症度も加味して調整する。8)寛解導入および維持に使用する薬物の一部は、小児に対する適用が承認されていない。したがって、それらの薬剤の使用にあたっては、本人・家族に薬効と副作用について詳しく説明して、十分な同意を得ることが望ましい。9)生物学的製剤や免疫調節薬、高用量のステロイド薬を含む免疫抑制療法を開始する際には、日本小児科学会が推奨するすべての予防接種を、同学会が推奨する接種スケジュールを参考とし、実施しておくことが望まれる。特に、麻疹・風疹・ムンプス・水痘に未罹患・未接種の場合や、十分な抗体が獲得されていない場合には、免疫抑制療法を開始する4週間以上前に、該当する生ワクチンの接種を完了しておくことが望ましい。ただし、すでに免疫抑制療法を開始している場合には、生ワクチンは、ワクチン株による感染症発現の可能性が否定できないため、原則として行わない。免疫抑制療法を終了して生ワクチンを接種する場合には、終了3ヶ月後から接種を行うことができる。一方、不活化ワクチンは、効果が減弱する可能性はあるが接種可能であり、積極的な接種が勧められる。10)思春期に特徴的な心理社会的側面に対して、専門的カウンセリングを含めた心理的サポートを考慮する必要がある。さらに、成人診療科へのトランジションを見据えて、移行プログラムを計画・実施していくことが望ましい。11)6歳未満に発症する超早期発症型炎症性腸疾患(very early onset inflammatory bowel disease: VEO- IBD)、非典型的な内視鏡所見や経過を示す症例、標準的治療に抵抗性を示す症例、感染症を反復する症例、家族発症例などでは、単一遺伝子異常に伴う腸炎(monogenic IBD)の可能性があり、原発性免疫不全症候群の遺伝子解析を考慮する。 小児薬用量(1)5-ASA製剤 寛解導入療法:50~100mg/kg/日*低用量で効果不十分な例では高用量に増量する。寛解維持療法:30~60mg/kg/日*小児の寛解維持療法においては寛解導入療法で有効だった5-ASA製剤の投与量をそのまま継続するべきであるとされており、実際は添付文書に記載されている投与量より多くなることもある。1メサラジン徐放剤(ペンタサ ®顆粒/錠など)寛解導入療法:最大量4.0g/日、分2(成人の活動期)寛解維持療法:最大量2.25g/日、分3 2メサラジン錠(アサコール ®錠)寛解導入療法:最大量3.6g/日、分3寛解維持療法:最大量2.4g/日、分3 3メサラジン・フィルムコーティング錠(リアルダ® 錠)寛解導入療法:最大量4.8g/日、分1寛解維持療法:最大量2.4g/日、分1 4サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®錠など)
寛解導入療法:40~70mg/kg/日、最大量4.0g/日、分4~6寛解維持療法:最大量2.0g/日、分4~6 (2~4は小児への適用は承認されていない) (2)局所製剤 1ペンタサ ®注腸:20mg/kg/日(最大量1.0g/日)、1日1回2ペンタサ ®坐剤:20mg/kg/日(最大量1.0g/日)、1日1回3サラゾピリン ®坐剤:1~2個/日4レクタブル ®注腸フォーム:1回1プッシュ(ブデソニドとして2mg)1日2回5プレドネマ ®注腸:10~20kg:5~10mg/日、20~ 40kg:10~20mg/日、40kg以上:20mg/日6ステロネマ ®注腸:10~20kg:0.5~1.0mg/日、20~40kg:1~2mg/日、40kg以上:2mg/日7リンデロン ®坐剤:10~20kg:0.5mg/日、20~40kg: 1mg/日、40kg以上:1~2mg/日(1~4は小児への適用は承認されていない) (3)経口・静注プレドニゾロン 軽症~中等症 0.5~1mg/kg/日、最大量40mg/日中等症~重症 1~2mg/kg/日、最大量60~80mg/日*ステロイド薬が奏効する例では、初回投与量を2週間程度継続し、寛解導入後8~10週で漸減して、トータルの投与期間を10~12週間にする。病状により適宜設定する。*重症ではステロイドパルス療法が選択される こともある。メチルプレドニゾロン(30mg/kg/日、最大量1,000mg/日)を1日1回1~2時間かけて点滴静注することを3日連続で行い、続く4日間を休薬する。 (4)免疫調節薬 1アザチオプリン(イムラン®・アザニン ®など): 0.5mg/kg/日程度で開始し、副作用や効果をみながら通常、1~2.5mg/kg/日(最大1日100mg)まで増量する。26-MP(ロイケリン ®):アザチオプリンの概ね半量を目安とし、0.5~1.5mg/ kg/日(最大1日50mg)で用いる。(潰瘍性大腸炎に対する使用は承認されていない) *チオプリン製剤の使用によりリンパ増殖性疾患を 発症するリスクが高くなる可能性が海外から報告されている。さらに、このようなリンパ増殖性疾患ではEpstein-Barrウイルス(EBV)感染が高率にみられることから両者の関連性が指摘されており、EBV未感染例におけるチオプリン製剤の導入は注意を要する。日本人では同様のデータは確認されておらず、予後が極めて不良である肝脾T細胞リンパ腫を合併したという報告もないが、今後も検討が必要である。チオプリン製剤の使用は、このようなリスクとベネフィットの両者を考慮して決定する。*チオプリン製剤の副作用の中で、服用開始後 早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされており、平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となった。検査の意義や位置づけは、成人の潰瘍性大腸炎治療指針の注16 (13ページ)を参照する。 (5)免疫抑制薬 1タクロリムス(プログラフ ®):0.05~0.3mg/kg/日(1日2回投与)を経口投与し、血中トラフ濃度10~15ng/mLを目標として調節する。寛解が得られた場合、投与開始2週目以降は血中トラフ濃度5~10ng/mLを目標とし投与量を調節する。(小児への適用は承認されていない) 2シクロスポリン(サンディミュン ®)持続静注: 2mg/kg/日の24時間持続静注で開始し、血中濃度を200~400ng/mL程度に維持するよう調節する。寛解が得られた場合、同血中濃度で最大14日間まで投与を継続する。(潰瘍性大腸炎に対する使用は承認されていない) (6)生物学的製剤 1インフリキシマブ(レミケード ®):用法、用量は成人と同様で、寛解導入療法では5mg/kgを0、2、6週で投与し、以後8週毎に同量を維持投与する。6歳以上の小児患者に対する適用が承認されている。2アダリムマブ(ヒュミラ ®):40kgを超える小児では初回160mgの皮下注射を行い、2週間後に80mgの皮下注射を行う。初回投与4週後以降は40mgの皮下注射を2週間毎に寛解維持療法として行う。40kg以下の小児では初回92mg/m 2 (最大160mg)の皮下注射を行い、2週間後に 46mg/m 2(最大80mg)の皮下注射を行う。初回投与4週後以降は23mg/m 2(最大40mg)の皮下注射を2週間毎に寛解維持療法として行う。小児への適用は承認されておらず、現時点ではインフリキシマブ二次無効例もしくは不耐例に対して考慮される。2019年6月に小児に対するグローバル第III相治験が終了し、現在承認申請中である。3ゴリムマブ(シンポニー ®):45kg以上の小児では初回200mgの皮下注を行い、2週間後に100mgの皮下注を行う。初回投与6週後以降は100mgの皮下注を4週間毎に寛解維持療法として行う。45kg未満の小児では初回115mg/m 2(最大200mg)
の皮下注を行い、2週間後に60mg/m 2(最大100mg)の皮下注を行う。初回投与6週後以降は60mg/m 2 (最大100mg)の皮下注を4週間毎に寛解維持 療法として行う。小児への適用は承認されておらず、現時点ではインフリキシマブ二次無効例もしくは不耐例に対して考慮される。4ベドリズマブ(エンタイビオ ®):小児における用量はまだ確立されていないが、小児を対象とした海外の臨床研究およびガイドラインでは、年長児(概ね30kg以上)に対しては成人と同様に1回300mgを点滴静注とされている。低体重の症例においては、体重当たり(5~10mg/kg)もしくは体表面積当たり(177mg/m 2)で計算し、より高用量(最大300mg)を選択することが望ましいとされている。用法については、成人における標準的な用法(初回投与後2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注)が適用される。3回投与しても治療反応が得られない場合は治療法を再考する。国内外とも小児への適用は承認されておらず、小児ではおもに抗TNF-α抗体製剤一次無効例に対して選択される。インフリキシマブ二次無効例もしくは不耐例に対しても考慮される。5ウステキヌマブ(ステラーラ ®):国内外とも小児への適用は承認されておらず、小児に対する使用経験や報告は国内外とも少ない。小児への用法・用量については、経験豊富な医師へのコンサルトが勧められる。*2~4の小児薬用量はECCO/ESPGHANガイド ライン(2018)および海外データを参照した。 (7)低分子化合物 1トファシチニブ(ゼルヤンツ ®):国内外とも小児への適用は承認されておらず、小児に対する使用経験や報告は国内外とも少ない。小児への用法・用量については、経験豊富な医師へのコンサルトが勧められる。 小児潰瘍性大腸炎の外科療法手術適応と術式の概要は、成人潰瘍性大腸炎と同様である。小児は成人と比較して重症例の割合が多いため(準)緊急手術となることも多く、適切な手術時期の判断が求められる。相対的手術適応を検討する際には、内科治療への反応性はもちろんのこと、成長障害や学校生活などへの影響、患児・ 家族の疾患の受け入れ状況までを十分に考慮することが望まれる。成長障害に関しては、術後の成長のcatch upを考慮して思春期発来前または骨端線閉鎖前の手術が推奨される。また、術前に単一遺伝子異常に伴う腸炎の鑑別も含め潰瘍性大腸炎の診断が確定できない症例では大腸全摘の施行は慎重に判断し、結腸亜全摘にとどめるかdiversion目的で人工肛門造設術のみを行うことを考慮する。回腸人工肛門を造設した症例では人工肛門からの排液量が多く、特に幼少児では容易に脱水や電解質異常に陥るため注意が必要である。成人同様、周術期のステロイドカバーの方法はエビデンスがないのが現状だが、特に小児患者では症例に応じて小児内分泌疾患の診療に精通した医師に相談することを推奨する。 小児期潰瘍性大腸炎の移行期医療「トランジション(移行期治療)」は、小児診療科から成人診療科への移り変わりに伴う意図的かつ計画的な一連の取り組み(プロセス)である。「トランスファー(転科)」は成人診療科への引き渡しポイントであり、トランジションの一部である。患者が自分の身体やIBDを理解して自分で説明したり決定したりする能力、いわゆるヘルスリテラシーを獲得することが重要である。こうした患者は、その後もアドヒアランスが良好で合併症が少ないことが報告されている。一方、患者、保護者、小児診療科および成人診療科スタッフの間で、トランジションに対する認識や態度が異なり、トランジションの妨げになることがある。トランジションのプロセスにおいては、こうした相違点を明らかにして、時間をかけて調整を図っていくことが大切である。そのため、トランジションへの取り組みは、小学校高学年~中学生のうちに開始し、それぞれの段階で患者の年齢にふさわしい教育がなされる必要がある。そのなかでは、患者のヘルスリテラシーの到達度を評価しつつ、トランジションにかかる取り組みの有効性を適宜見直していくことが必要であり、チェックリストなどの各種ツールが、関連学会や団体で用意されつつある。一方、保護者に対しては、疾病の管理責任を徐々に子どもにシフトしていくような教育が求められる。トランジションに関わる職種としては、医師や看護師のほか、必要に応じて児童精神科医、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー等も加わる。スムーズなトランスファー(転科)のためには、まず小児診療科で適切な診療情報提供書を作成する必要がある。患者は寛解期であるほうが好ましい。また、トランジション専門外来を設置する、小児診療科と成人診療科の共同外来を設ける、あるいは小児診療科と成人診療科を交互に受診する期間を作るといった工夫が推奨される。
小児潰瘍性大腸炎 治療フローチャート 寛解導入(活動期治療)寛解維持 寛解維持療法1 ( 5 - A S A ) 直腸炎型5-ASA局所製剤 プレドニゾロン漸減・中止 プレドニゾロン静注1 ~2mg/kg/日最大80mg/日(+5-ASA) 難治例の治療へ 難治例の治療へ手術適応を考慮 ※左側の炎症が強いときはステロイド注腸併用(1~2週間) (1~2週間) (2週間) (概ね1週間)プレドニゾロン漸減・中止 シクロスポリン持続静注・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注 全身管理手術適応判断 全身管理手術適応を常に考慮 軽症中等症(炎症反応なし) (目安としてPUCAI≦45) 中等症重症(目安としてPUCAI≧50) 劇症ステロイド大量静注緊急手術または ステロイド局所製剤へ切換/追加 軽症・中等症(炎症反応なし)の治療に準ずる (頻回再燃例) 左側大腸炎型全大腸炎型 寛解維持療法2 ( 5 - A S A +アザチオプリン/ 6 - M P ) プレドニゾロン経口/静注1~2mg/kg/日最大60mg/日 5-ASA経口剤 and/or 5-ASA局所(十分量)
小児潰瘍性大腸炎 難治例の治療 Pediatric Ulcerative Colitis Activity Index (PUCAI)項 目スコア 腹痛痛みなし□:0 我慢できる痛み□:5我慢できない痛み□:10 直腸出血なし□:0 少量のみの出血が排便回数の50%未満にみられる□:10少量の出血がほぼ毎回の排便にみられる□:20多量の出血(便量の50%以上) □:30 便の性状有形□:0 部分的に有形□:5完全に無形□:10 1日の排便回数0~2回□:0 3~5回□:5 6~8回□:10 9回以上□:15 夜間の排便(夜間覚醒)なし□:0 あり□:10 活動度活動制限なし□:0 ときに活動に制限あり□:5著しい活動制限あり□:10 Total Score <10 寛解10 – 30 軽症35 – 60 中等症65 – 85 重症 ・血球成分除去療法・タクロリムス経口投与・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・べドリズマブ点滴静注・シクロスポリン持続静注(ウステキヌマブ点滴静注/皮下注射) (トファシチニブ経口) ステロイド抵抗例※難治例の治療は経験豊富な施設が推奨される ※これらのオプションの複数使用は、感染症や合併症を 慎重に判断し、外科治療も考慮する※( )で記した薬剤は小児に対する使用経験や報告が 少ないため、経験豊富な医師へのコンサルトが勧められる 実線は治療効果があった場合点線は無効・効果不十分な場合アザチオプリン /6-MP経口 血球成分除去療法タクロリムス経口投与寛解維持療法インフリキシマブ点滴静注インフリキシマブアダリムマブ皮下注射ゴリムマブ皮下注射アダリムマブゴリムマブベドリズマブ点滴静注ベドリズマブ(ウステキヌマブ点滴静注/皮下注射) (ウステキヌマブ) (トファシチニブ経口) (トファシチニブ) ステロイド漸減中止寛解維持療法アザチオプリン/6-MPへ 3〜4ヶ月 (活動期例) ステロイド依存例 ※ステロイド漸減中止が困難な場合は外科治療も考慮する ステロイド漸減中止
IBDトランジションチェックリスト患者について・ 氏名 ID 生年月日 性別・ 発症年齢(時期): 歳 か月( 年 月)・ 診断年齢(時期): 歳 か月( 年 月)・ 現在の年齢:歳 か月診断について潰瘍性大腸炎:全大腸炎型 ・ 左側大腸炎型 ・ 直腸炎型クローン病:小腸型 ・ 小腸大腸型 ・ 大腸型肛門病変 なし ・ あり(痔瘻、 肛門周囲膿瘍、 皮垂、 その他) IBD-U:罹患範囲: 胃十二指腸 ・ 小腸 ・ 大腸 ・ 肛門病変( )現在の病状について・ 症状:腹痛 あり ・ なし 夜間排便: あり ・ なし・ 排便:日に 回 ・ 硬 / 普通 / 軟 / 泥 / 水様・ 血便:なし ・ あり ( 少量 / 多量 )・ 重症度 (UC): 軽症 ・ 中等症 ・ 重症・ IOIBD (CD): 点・ 血液検査: WBC /μL、 CRP mg/dL、 ESR mm/h・ 便検査:便潜血 ng/mL、 便中カルプロテクチン μg/g・ 最終内視鏡:日付:所見:現在の治療について・ 経口5-ASAなし ・ あり(ペンタサ・アサコール・リアルダ) mg/日・ 注腸・座薬5-ASAなし ・ あり( mg/日)・ 注腸PSLなし ・ あり( mg/日)・ 経口PSLなし ・ あり( mg/日)・ PSL投与総量mg・ 免疫調整薬なし ・ ありAZA mg/日 または 6-MP mg/日・ 生化学的製剤 なし ・ ありIFX ・ ADA ・ GLM ・UST ・その他( ) mg × 週毎・ 栄養療法なし ・ ありエレンタール ・ その他( ) kcal/日・ 手術歴 なし ・ あり( ) 経過について・ 再燃回数: 回(直近の再燃: 年 月)・ その他:( )合併症 (例:発達障害、 PSC など)トランスファーの理由・ 理由: 進学(就職) ・ 転居 ・ 本人の希望 ・ 年齢 ・ 加療目的その他( )トランスファーについてのIC内容とその受け入れ状態・ IC内容:・ 受け入れ状態: 良い ・ 概ね良い ・ 少し悪い ・ 悪い(良くない理由: )家族背景(例:父親医師、 2回に1回は母親のみの来院など)・ 特記すべき事項:その他申し送り事項チェック項目□ 患者が自身の疾患名、 疾患概要について理解している。□ 合併症(消化管合併症、 腸管外合併症、 癌化リスク)について理解している。□ 自分の疾患経過、 手術歴などを把握できている。□ 治療薬の名前、 作用、 副作用、 必要性について理解できている。□ 内服薬などを自己管理できる。□ 栄養や食事内容、 規則正しい生活について理解できている。□ 外来診療を一人で受けることができる。□ 自分の腹痛、 下痢、 血便などの腹部症状についての質問に答えられる。□ 不安、 恐怖、 心配事などについてスタッフに相談できる。□ 医療費の経済支援、 公的助成や医療保険について理解できている。
クローン病診断基準(2021年1月改訂) 6 1 概念 本疾患は原因不明であるが、免疫異常などの関与が考えられる肉芽腫性炎症性疾患である。主として若年者に発症し、小腸・大腸を中心に浮腫や潰瘍を認め、腸管狭窄や瘻孔など特徴的な病態が生じる。原著では回腸末端炎と記載されているが、現在では口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位におこりうることが判明している。消化管以外にも種々の合併症を伴うため、全身性疾患としての対応が必要である。臨床像は病変の部位や範囲によるが、下痢や腹痛などの消化管症状と発熱や体重減少・栄養障害などの全身症状を認め、貧血、関節炎、虹彩炎、皮膚病変などの合併症に由来する症状も呈する。病状・病変は再発・再燃を繰り返しながら進行し、治療に抵抗して社会生活が損なわれることも少なくない。 2 主要事項 (1)好発年齢:10代後半から20代 (2)好発部位:大多数は小腸や大腸、またはその両者に 縦走潰瘍や敷石像などの病変を有する。 (3)臨床症状:腹痛、下痢、体重減少、発熱などがよくみら れる症状である。ときに腸閉塞、腸瘻孔(内瘻、外瘻)、腸穿孔、大出血で発症する。腹部不定愁訴も少なからず認められるが、腹部症状を欠き、肛門病変に伴う症状、不明熱、関節痛などで発症することもある。 (4)臨床所見 A. 消化管病変 [1]腸病変 :縦走潰瘍〈注1〉、敷石像〈注2〉、非連続性または区域性病変(skip lesion)、不整形~類円形潰瘍、多発アフタ〈注3〉[2]肛門病変: 裂肛、cavitating ulcer〈注4〉、難治性痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫状皮垂(edematous skin tag)、肛門狭窄など[3]胃・十二指腸病変:多発アフタ、不整形潰瘍、竹の節状外観、ノッチ様陥凹、敷石像など[4]合併症: 腸管狭窄、腸閉塞、内瘻(腸-腸瘻、 腸-膀胱瘻、腸-膣瘻など)、外瘻(腸-皮膚瘻)、悪性腫瘍(腸癌、痔瘻癌) B. 消化管外病変(二次的な合併症を含む) [1]血液:貧血、凝固能亢進など[2]関節:腸性関節炎、強直性脊椎炎など[3]皮膚:口内アフタ、結節性紅斑、壊疽性膿皮 症、多形滲出性紅斑など[4]眼 :虹彩炎、ブドウ膜炎など[5]栄養代謝:成長障害、低蛋白血症、微量元素欠乏、ビタミン欠乏、骨障害など[6]その他:原発性硬化性胆管炎、血管炎、膵炎、 胆石症、尿路結石症、肝障害、アミロイドーシスなど (5)開腹時所見 腸間膜付着側に認められる縦走する硬結、脂肪組織の著明な増生(creeping fat)、腸壁の全周性硬化、腸管短縮、腸管狭窄、瘻孔形成(内瘻、外瘻)、腸管塊状癒着、腸間膜リンパ節腫脹などが観察される。 (6)病理学的所見 A. 切除標本肉眼所見 [1]縦走潰瘍〈注1〉[2]敷石像〈注2〉[3]瘻孔[4]狭窄[5]不整形~類円形潰瘍またはアフタ〈注3〉 B. 切除標本組織所見 [1]非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(局所リンパ節にもみられることがある)〈注5〉[2]全層性炎症〈注6〉[3]局所性~不均衡炎症[4]裂溝[5]潰瘍 C. 生検組織所見 [1]非乾酪性類上皮細胞肉芽腫〈注5〉[2]不均衡炎症 〈注1〉 基本的に4~5cm以上の長さを有する腸管の長軸 に沿った潰瘍。虚血性腸病変や感染性腸炎で縦走潰瘍を認めることがあるが、発症や臨床経過が異なり、炎症性ポリポーシスや敷石像を伴うことは稀である。潰瘍性大腸炎でも縦走潰瘍を認めることがあるが、その周辺粘膜は潰瘍性大腸炎に特徴的な所見を呈する。 〈注2〉 縦走潰瘍とその周辺小潰瘍間の大小不同の密集 した粘膜隆起。虚血性腸病変で稀に敷石像類似の所見を呈することがあるが、隆起部分の高さは低く、発赤調が強い。 〈注3〉 本症では縦列することがある。また、アフタの
肛門側に縦走潰瘍が存在することが少なくない。 〈注4〉 肛門管から下部直腸に生じる深く幅の広い有痛 性潰瘍。 〈注5〉 腸結核などでも認められることがある。 〈注6〉 主にリンパ球集簇からなる炎症が消化管壁全層 に及ぶもの。 3 診断の手順 若年者に慢性的に続く腹痛や下痢、発熱、体重減少、肛門病変などがあり本症が疑われるときには、理学的検査や血液検査を行うとともに、抗菌薬服用歴、海外渡航歴などを聴取する。腸管外合併症が診断の契機となる症例もあり既往歴についても詳細に聴取する。肛門病変の評価についてはクローン病に精通した大腸肛門病専門医による診断が望まれる。次に上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査、バルーン小腸内視鏡検査、小腸・大腸X線造影などにより全消化管検査を行って本症に特徴的な腸病変を確認する。またMRIやCT所見は診断の参考となる。典型的な画像所見を欠く場合にも非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の証明で確診されるために積極的に生検を行う。さらに細菌学的・寄生虫学的検査を行って他疾患を除外する。除外すべき疾患として潰瘍性大腸炎、腸結核、腸管型ベーチェット病、リンパ濾胞増殖症、薬剤性大腸炎、エルシニア腸炎、などがある。また、家族性地中海熱や非特異性多発性小腸潰瘍症ではクローン病に類似した消化管病変を認めることがあり、臨床経過などを考慮し、鑑別を要する場合がある。こうした検査で多くは2週間から1ヶ月の期間で診断は可能であるが、診断が確定しない場合はinflammatory bowel disease unclassifiedとして経過観察を行う。 確診診断の手順フローチャート 若年者に慢性的に続く腹痛、下痢、発熱、体重減少、肛門病変 上部・小腸・大腸内視鏡検査(生検)小腸・注腸X線造影検査、CT、MRI 経過観察 疑診Inflammatory bowel disease unclassified + 理学的所見(肛門所見など)、病歴(抗菌薬服用歴、海外渡航歴)血液検査(血算、炎症所見、栄養状態など)、細菌培養検査、寄生虫学的検査 4 診断の基準 (1)主要所見 A. 縦走潰瘍〈注7〉B. 敷石像C. 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫〈注8〉(2)副所見 a. 消化管の広範囲に認める不整形~類円形潰瘍またはアフタ〈注9〉b. 特徴的な肛門病変〈注10〉c. 特徴的な胃・十二指腸病変〈注11〉 確診例: [1]主要所見のAまたはBを有するもの。〈注12〉[2]主要所見のCと副所見のaまたはbを有するもの。[3]副所見のa、b、cすべてを有するもの。 疑診例: [1]主要所見のCと副所見のcを有するもの。[2]主要所見のAまたはBを有するが潰瘍性大腸炎や腸管型ベーチェット病、単純性潰瘍、虚血性腸病変と鑑別ができないもの。[3]主要所見のCのみを有するもの。〈注13〉[4]副所見のいずれか2つまたは1つのみを有するもの。 〈注7〉腸管の長軸方向に沿った潰瘍で、小腸の場合は、 腸間膜付着側に好発する。典型的には4~5cm以上の長さを有するが、長さは必須ではない。 〈注8〉連続切片作成により診断率が向上する。消化管 に精通した病理医の判定が望ましい。 〈注9〉消化管の広範囲とは病変の分布が解剖学的に 複数の臓器すなわち上部消化管(食道、胃、十二指腸)、小腸および大腸のうち2臓器以上にわたる場合を意味する。典型的には縦列するが、縦列しない場合もある。また、3ヶ月以上恒存することが必要である。なお、カプセル内視鏡所見では、十二指腸・小腸においてKerckring襞上に輪状に多発する場合もある。腸結核、腸管型ベーチェット病、単純性潰瘍、NSAIDs潰瘍、感染性腸炎の除外が必要である。 〈注10〉裂肛、cavitating ulcer、痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫 状皮垂など。Crohn病肛門病変肉眼所見アトラスを参照し、クローン病に精通した肛門病専門医による診断が望ましい。 〈注11〉竹の節状外観、ノッチ様陥凹など。クローン病 に精通した専門医の診断が望ましい。 〈注12〉縦走潰瘍のみの場合、虚血性腸病変や潰瘍性大 腸炎を除外することが必要である。敷石像のみの場合、虚血性腸病変や4型大腸癌を除外することが必要である。
〈注13〉腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外 することが必要である。 5 病型分類 本症の病型は縦走潰瘍、敷石像または狭窄の存在部位(Location)により、小腸型(L1)、大腸型(L2)、小腸大腸型(L3)、上部病変(L4)に分類する(L4は上部病変が併存する場合に併記する)。これらの所見を欠く場合やこれらの所見が稀な部位にのみ存在する場合は、特殊型とする。特殊型には、多発アフタ型、盲腸虫垂限局型、直腸型、胃・十二指腸型などがある。疾患の病態(behavior、B)として合併症のない非狭窄非穿通型(炎症型、B1)、狭窄性病変を有する狭窄型(B2)、瘻孔形成を有する穿通型(B3)とに分類する。また、肛門病変(p)を有する場合にはpをB1~B3に付記する。 〈注14〉 モントリオール分類におけるL1とはileal type であり、直訳すると回腸型である。同様にL3はileocolitis typeであり回腸大腸型である。しかし、本邦では罹患範囲を小腸型、小腸大腸型、大腸型に分類することが慣例となっているため、ここではあえて従来通りの表記とした。 〈注15〉 モントリオール分類におけるL4とは、isolated upper diseaseであり、直訳すると上部病変限局型である。一般に欧米では空腸病変が上部病変に含まれているため、空腸のみに病変を認める場合はL4、空腸と回腸に病変を認める場合はL1+L4の表記となる。 〈注16〉 本邦における病型分類の表記とモントリオール 分類との間には上記のような相違があることを留意する必要がある。 〈参考文献〉Satsangi J, et al. The Montreal classification of inflammatory bowel disease: controversies, consensus, and implications. Gut. 2006; 55(6): 749-753. 【付記】鑑別困難例クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別困難例に対しては経過観察を行う。その際、内視鏡や生検所見を含めた臨床像で確定診断が得られない症例はinflammatory bowel disease unclassified(IBDU)とする。また、切除術後標本の病理組織学的な検索を行っても確定診断が得られない症例はindeterminate colitis(IC)とする。経過観察により、いずれかの疾患のより特徴的な所見が出現する場合がある。6 重症度分類 治療に際し、重症度分類を下記の項目を参考に行う。 CDAI*合併症炎症(CRP値)治療反応 軽 症150–220なしわずかな 上昇 中等症220–450明らかな腸閉塞など なし明らかな 上昇軽症治療に 反応しない 重 症450<腸閉塞、膿瘍など高度上昇治療反応 不良 *:CDAI(Crohn's disease activity index)
クローン病治療指針(2021年3月改訂) 7本治療指針の対象と位置づけこの治療指針は、一般の医師がクローン病患者を治療する際の標準的に推奨されるものとして、文献的なエビデンス、日本における治療の現況などをもとに、研究班に参加する専門家のコンセンサスを得て作成された。また、患者の状態やそれまでの治療内容・治療への反応性などを考慮して、治療法を選択(本治療指針記載外のものを含めて)する必要がある。本治療指針に従った治療で改善しない特殊な症例については、専門家の意見を聞くあるいは紹介するなどの適切な対応が推奨される。本治療指針は、毎年必要な改訂を行う。 令和2年度改訂の要点と解説 1. 治療原則のTreat to Targetストラテジーに関する記載の充実2015年にInternational Organization for the Study of Inflammatory Bowel Diseases (IOIBD)のSelecting Therapeutic Targets in Inflammatory Bowel Disease (STRIDE)プログラムによって提唱されたTreat to Targetストラテジー 1)は、国内においても認識されるようになってきている 2)。2020年末にはSTRIDE-IIも発表され、治療目標として従来の臨床的寛解と内視鏡的治癒に加え、長期的な目標として腸管の構造的破壊や機能障害の回避、身体的機能の改善、生活の質の回復が提唱されている 3)。クローン病では予後向上の観点から、小腸病変や肛門病変などの病変、狭窄や瘻孔などの合併症に注意を払いながらTreat to Targetストラテジーを臨床現場で実践する必要があり、今回の改訂では治療原則の項をより具体的に記載した。客観的な血液検査や画像診断による計画的な評価の重要性について述べるとともに、小腸病変など画像診断による評価が困難な場合には 4)、狭窄や瘻孔などの合併症が進行する前に専門家への紹介を検討することを追記した。 ●外科手術後の再燃予防におけるTreat to Targetストラテジー外科手術後の再燃予防においてもTreat to Targetストラテジーに基づいた診療を行うことを明記した。症状による再燃の前に画像診断で認識される再燃が起こること 5)、術後6~12ヶ月を目処に吻合部や口側腸管など他部位を内視鏡検査などの画像診断で客観的に評価して治療内容を変更や強化すること 6)、術後再燃の高リスク例では術後に再燃予防的な治療の追加を検討すること、などを追記した 7)。また治療指針の図に術後再燃予防の治療法として確立している抗TNF-α抗体製剤を追記した 8)。2 肛門部病変に対する治療の追記 肛門周囲膿瘍に対するドレナージの方法を明記するとともに、その有効性を局所所見や画像診断で確認すること 9)、難治例では癌化の可能性を念頭に置くことを追記した 6)。 3. 狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術に関する記載の充実狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術について、適応の正確な判断、拡張後の定期的なモニタリングの必要性とともに、適応外狭窄や施行困難例に対する外科手術に関して追記した 10,11)。 4 免疫調節薬に関する追記 NUDT15遺伝子多型検査の保険承認に伴い、免疫調節薬がより安全に投与開始することができるようになった。この状況を鑑み、追記を行った。 ●抗TNF-α抗体製剤との併用効果抗TNF-α抗体製剤治療における二次無効について、抗薬物抗体産生抑制を意図した免疫調節薬併用の意義を追記した 12,13)。 ●術後再燃予防効果免疫調節薬による術後再燃予防効果をより明確な記載とした 14,15)。 ●長期安全性抗TNF-α抗体製剤との長期併用、高齢患者やEBウイルス未感染患者への投与に関する注意喚起を追記した 16-20)。 5. 悪性疾患を併発した場合の免疫抑制的治療について治療中止によるクローン病の悪化の可能性も考慮し、継続の可否について適切に判断するよう、記載を改訂した 21)。 6 免疫抑制的治療中の生ワクチン接種について 日常臨床の参考となるよう、記載を具体的に充実した。免疫抑制的治療中の生ワクチンの接種は原則禁忌となるため、必要に応じて免疫抑制的治療開始前に接種を検討することとした。ステロイドについてはRed Book 22)によれば、高用量(プレドニゾロン換算で20mg/日以上、体重10kg未満では2mg/kg/日以上)では生ワクチン接種を控え、ステロイド終了後、少なくとも1ヶ月以上は間隔をあけるとされている。しかし、裏付けとなる高いレベルのエビデンスは存在せず、20mg以下の投与量であってもステロ
イドの全身・局所投与を受けている場合には接種に慎重であるべきで、症例ごとにリスクベネフィットのバランスを考慮すべきである。なお、プレドニンの添付文書 23)には、「本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヶ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと」と記載されている。さらに、生ワクチン接種後の免疫抑制的治療の開始時期や生ワクチン接種のために必要な免疫抑制的治療中断の時期についても目安を記載した 24)。 〈参考文献〉1)Peyrin-Biroulet L, et al. Am J Gastroenterol. 2015; 110: 1324-1338. 2)Takenaka K, et al. J Gastroenterol. 2020; 55: 579-587. 3)Turner D, et al. Gastroenterology. 2020 Dec 21. doi:10.1053/ j.gastro.2020.12.031. [Online ahead of print] 4)Watanabe K. Intest Res. 2020; 18: 347-354. 5)Rutgeerts P, et al. Gastroenterology. 1990; 99: 956-963. 6)Gionchetti P, et al. J Crohns Colitis. 2017; 11: 135-149. 7)Shinagawa T, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2020; 18: 898-907. 8)Uchino M, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2020 Oct 1. doi:10.1111/jgh.15288. [Online ahead of print] 9)Kotze PG, et al. Gut. 2018; 67: 1181-1194. 10) Yamamoto H, et al. Dig Endosc. 2017; 29: 519-546. 11) Hirai F, et al. J Crohns Colitis. 2018; 12: 394-401. 12)日本小児感染症学会 (2016).慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン 2016. 診断と治療社. 13)Nakase H, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2017; 46: 873-882. 14)Lichtenstein GR, et al. Am J Gastroenterol. 2018; 113: 481-517. 15)Peyrin-Biroulet L, et al. Am J Gastroenterol. 2009; 104: 2089-2096. 16)van Loo ES, et al. J Crohns Colitis. 2012; 6: 637-646. 17)Chalhoub JM, et al. Inflamm Bowel Dis. 2017; 23: 1316-1327. 18)Gomollón F, et al. J Crohns Colitis. 2017; 11: 3-25. 19)Martinelli M, et al. Inflamm Bowel Dis. 2020; 26:e21. 20)Gordon J, et al. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2016; 62: 711-714. 21)Kimmel J, et al. Curr Gastroenterol Rep. 2020 Feb 13. doi:10.1007/s11894-020-0747-9. 22)Kimberlin DW, et al. Red Book 2018-2021 Report of the Committee on Infectious Diseases, 31st Edition, American Academy of Pediatrics; 2018. pp84-85. 23)プレドニン®錠5mg添付文書、シオノギ製薬株式会社、2020年7月改訂24)日本小児感染症学会(2014). 小児の臓器移植および免疫不全状態における予防接種ガイドライン2014. 協和企画. I. 治療原則クローン病は原因不明であり、いまだこれを完治させる治療法はない。本疾患は再燃と寛解を繰り返しながら、その経過中に高度な狭窄や瘻孔、膿瘍といった腸管合併症の形成を通じて、高率に腸管切除の適応となる。特にクローン病では、術後も吻合部を中心に高率な再燃傾向を示し、再手術の適応となる場合も多いため、進行性に消化管機能の低下傾向を示すことが広く知られている。本症のこの様な臨床経過の特徴から治療目標としては、疾患活動性のコントロールや患者のQOLの改善のみでは十分でなく、腸管切除回避などの長期予後改善と相関する粘膜治癒を、発症早期から達成することの重要性が示されている。治療にあたっては患者個々の社会的背景や環境を十分に考慮した上で、医師が治療目標の設定とそれに必要となる適正な治療を判断し、エビデンスも含めた患者への十分な説明と話し合いを通じて、その目標を共有し治療方針を決定する。治療内容は、長期予後の改善を念頭に、病期、病型(小腸型、小腸大腸型、大腸型、および肛門病変、上部消化管病変の有無)、病悩期間、疾患パターン(炎症型、狭窄型、瘻孔型)、重症度、予後不良因子(広範な小腸病変、重篤な上部消化管病変、重篤な直腸病変、複雑痔瘻、発症早期の狭窄や瘻孔形成、大腸の深い潰瘍性病変)などを総合的に評価し決定する。そして、Treat to Targetストラテジーに準じ治療開始後も、漫然と治療は継続せず、設定した治療目標や治療内容に応じた適切な経過観察を行う。具体的には半年から1年を目処に、臨床症状の評価だけでなく、客観的な血液検査や画像検査などでも有効性の評価を行い、効果が不十分な場合には積極的に治療の強化を検討する。さらに、寛解期であっても客観的な血液検査や画像検査などによる評価を計画的に行い、維持療法の有効性の確認と、狭窄や瘻孔など合併症の確認を行う。小腸病変や肛門病変を含め、症例に応じて適切に経過観察を継続することが重要である。こうした画像診断による評価が困難な場合や、最適化した治療の有効性が乏しい場合には、狭窄や瘻孔などの合併症が進行する前に、専門家への紹介を検討する。 主な内科治療法としては、栄養療法と薬物療法がある。栄養療法は副作用が少ないという特徴があるが、一定量以上を継続するためには患者の受容性が重要である。薬物療法との併用も有用とされている。薬物療法では、免疫抑制を伴うものが多いので、感染などの合併症などに注意して治療を行う。なお、狭窄、膿瘍、瘻孔などの合併症では外科治療を検討することが重要である。クローン病においても、長期経過により大腸癌(痔瘻癌を含む)・小腸癌が報告されているので注意する。小児例では、成長障害や薬物の影響などに配慮した治療が必要である(詳細については、小児治療原則を参照のこと)。なお、合併症が複雑になる前に適切なタイミングで外科治療を行うことが有用であるが、手術
法など外科治療の詳細については、外科治療指針を参照のこと。また、強い免疫抑制的治療を行う場合や免疫抑制作用のある薬剤を複数投与する場合には、ニューモシスチス肺炎をはじめとする日和見感染症のリスクを考慮し、ST合剤の予防投与などの検討も含め慎重に行う(特に高齢者や免疫抑制状態が強い患者)。 B型肝炎ウイルス感染者(キャリアおよび既往感染者)に対し各種の免疫を抑制する治療を行う場合、HBVの再活性化によるB型肝炎を発症する可能性が考慮される。このため抗TNF-α抗体療法など免疫抑制的治療の導入に際しても、「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」の示す『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(第3.3版)』に基づいた医療対応が必要である。※免疫を抑制する治療としては、副腎皮質ステロイド(中等量以上)、アザチオプリン、6-MP、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ)、抗IL- 12/23抗体製剤(ウステキヌマブ)、抗α4β7インテグリン抗体製剤(ベドリズマブ)が該当する。抗TNF-α抗体製剤治療や抗IL-12/23抗体製剤、抗α 4β7インテグリン抗体製剤では結核併発のリスクが報告されており、本剤の投与に際しては十分な問診および胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験またはツベルクリン反応検査を行い、疑わしい場合には積極的に胸部CT検査も併用する必要がある。これらのスクリーニング検査で陽性所見が一つでもあれば潜在性結核感染を疑い本剤開始3週間前からINH (原則300mg/日)を6~9ヶ月間投与する。ツベルクリン反応等の検査陰性例や、抗結核薬による予防投与例からも導入後に活動性結核が認められた報告が有り、本剤治療期間中には肺および肺外結核の発現に留意し、経過観察を行う。 免疫を抑制する治療を受けていた患者が悪性疾患を併発した場合、治療の継続により腫瘍免疫を抑制する可能性がある一方で、治療中止によるクローン病の悪化の可能性も考慮する必要がある。そのため、腫瘍専門医とリスクベネフィットについて協議する等、適切に継続の可否について判断する。また、これらの薬剤を悪性疾患の治療後あるいは既往歴を有する患者に使用する場合には、その薬剤の必要性と悪性疾患再発への影響を十分に検討し適応を判断する。 感染罹患歴および予防接種の接種歴を確認し、定期接種あるいは任意接種のワクチンを適宜接種すべきである。高用量のステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤(ベドリズマブを除く)等の投与中は、生ワクチンの接種は原則禁忌となるため、問診や抗体価の測定結果に基づき、可能な限り投与開始前の接種を検討する。なお、薬剤の半減期や患者の免疫の状態なども考慮する必要があるが、免疫抑制的治療は生ワクチン接種の4週間後より開始すること、免疫抑制的治療中断後3ヶ月以降に生ワクチンを接種することが推奨されている。 II. 初発・診断時および活動期の治療初発・診断時や活動期には寛解導入を目的とした治療を行い、いったん寛解が導入されたら長期に寛解を維持する治療を行う。治療法には薬物療法、栄養療法などの内科的治療法と外科的治療法があり、単独であるいは組み合わせて治療法が選択される。小児では原則として、最初に栄養療法を中心に治療法を選択する(詳細については小児治療原則を参照)。多くの患者では外来治療により日常生活や就学・就労が可能であるが、重症あるいは頻回に再燃し、外来治療で症状の改善が得られない場合には入院や外科的治療を考慮する。 1 活動期の治療(1)軽症~中等症 薬物療法としてはブデソニド(ゼンタコート ®)[1日朝1回9mg]、または5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤(ペンタサ ®顆粒/錠[3gまで保険適応]、大腸型ではサラゾピリン ®錠[4gまで保険適応]でも良い)が用いられる。ブデソニドは病変局所で効果を発現し、吸収後速やかに不活化され全身性の副作用が軽減されるステロイドで、臨床症状の改善により有用であるが、病変の主座が回腸から上行結腸の場合に選択し、開始8週間を目安に継続投与が必要か検討を行い、中止を前提に漸減する。また、患者の受容性がある場合には、栄養療法も有用で通常900kcal/日程度が使用される。これらで効果が不十分な場合は、(2)中等症~重症に準じて治療するが、治療法の選択に際しては病状と治療効果・副作用のバランスに注意し、場合によっては従来の治療による経過観察という選択肢もある。 (2)中等症~重症 ●薬物療法を中心とする場合上記(1)の軽症~中等症の治療の他、経口ステロイド(プレドニゾロン40mg/日程度(重症例では40〜60mg/日)を投与する。また、メトロニダゾール(フラジール ®) (*)1日750mgやシプロフロキサシン(シプロキサン ®)(*)1日400~800mgを試みる方法もある。ステロイドは強力な抗炎症作用を有し寛解導入効果に優れるが特に長期投与で副作用が問題となるため、寛解導入を目的として投与したのち漸減中止する。ステロイド(ブデソニド含む)の減量・離脱が困難なときには、アザチオプリン(イムラン ®・アザニン ®)を1日50~100mg(1~2mg/kg)程度併用するのも一つの方法である。効果発現までに3~4ヶ月を要することもある。副作用の発現には十分注意する。
アザチオプリンの代わりに6-MP(ロイケリン ®) (*)を用いることもできる。ステロイド(ブデソニド含む)や栄養療法(詳細は後記)等の寛解導入療法が無効な場合はインフリキシマブ(レミケード ®)またはアダリムマブ(ヒュミラ ®)あるいはウステキヌマブ(ステラーラ ®)やベドリズマブ(エンタイビオ ®)の投与を考慮する。インフリキシマブやアダリムマブあるいはウステキヌマブにはステロイド(ブデソニド含む)の減量・離脱効果もある。インフリキシマブは初回投与後2週、6週に投与し、寛解維持療法として以後8週間の間隔で投与を行う。効果発現は迅速で、2週間後に炎症所見の軽減や症状の改善がみられ、数週間持続する。投与時反応に対する処置が可能な状態で5mg/kgを2時間以上かけて点滴静注する。なお、投与時反応が無ければ3回目以後は、点滴速度を最大で1時間当たり5mg/kgまで短縮することができるが、副作用の発現に注意する。一方、アダリムマブは初回160mgの皮下注射を行い、2週間後に80mgの皮下注射を行う。その後は40mgの皮下注射を2週間毎に寛解維持療法として行う。条件が満たされれば、患者自身による自己注射も可能である。ウステキヌマブは、初回のみ体重に応じた用量(55kg以下260mg、55~85kg以下 390mg、85kg超 520mg)で点滴静注により投与する。その8週後に90mgを皮下投与し、以降は12週間隔で90mgを皮下投与する。ベドリズマブは、1回300mgを初回点滴静注投与後2週、6週に投与し、寛解維持療法として以後8週間の間隔で投与を行う。インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブいずれも投与中に効果が減弱することがある(次回注射時までに症状が悪化すること)。効果が減弱した場合、インフリキシマブでは10mg/kgへの増量または投与期間の短縮(5mg/kgで最短4週間隔まで)が可能である。アダリムマブでは1回80mgへの増量が可能である。ウステキヌマブでは投与間隔を8週間に短縮できる。また、他の生物学的製剤へ変更することも一つの方法である。抗TNF-α抗体製剤における効果減弱(二次無効)は抗薬物抗体産生による濃度の低下が主な原因とされており、その予防には免疫調節薬併用により抗TNF-α抗体製剤に対する抗薬物抗体産生の低下を図ることが有用で、特に抗TNF-α抗体製剤投与初期に併用することが重要とされている。また二次無効例に対する免疫調節薬の追加や最適化も対処法の一つである。 ●栄養療法を中心とする場合経腸栄養療法を行う場合は、成分栄養剤(エレンタール ®)あるいは消化態栄養剤(ツインライン®等)を第一選択として用いる。但し、受容性が低い場合には半消化態栄養剤(ラコール ®等)を用いてもよい。経鼻チューブを用いて胃~空腸に投与するが経口法でもよい。濃度が高すぎる場合や速度が速すぎると下痢をおこすことがある。当初は低濃度少量から開始し、注意しながら投与量と濃度を漸増し、数日以上かけて維持量に移行する。1日の維持投与量として理想体重1kg当たり30kcal以上を目標として投与する。病状と患者の受容性やQOLに配慮して適宜投与量の増減や経口法の併用、調理の工夫などを行ってもよい。成分栄養剤のみで栄養管理を行う場合には10~ 20%脂肪乳剤200~500mLを週1~2回点滴静注する。また亜鉛や銅、ビタミンB12、セレンなどの微量元素欠乏にも注意する。小児では原則として、栄養療法を先行して行い、治療効果が不十分な症例においてステロイド、免疫調節薬などの投与を検討することが望ましい。 ●血球成分除去療法の併用栄養療法及び既存の薬物療法が無効または適用できない場合で、大腸の病変に起因する明らかな臨床症状が残る中等症から重症の症例に対しては、寛解導入を目的としてアダカラム ®による顆粒球吸着療法(GMA)を、一連 の治療につき10回を限度に施行できる。 (3)重症(病勢が重篤、高度な合併症を有する場合)外科的治療の適応の有無を検討した上で下記の内科治療を行う。 ●薬物療法を中心とする場合感染症の合併がないことを確認したのちにステロイドの経口投与または経静脈投与(プレドニゾロン40~60mg/日)を行う。ステロイド抵抗例ではインフリキシマブやアダリムマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブの投与を考慮する。 ●栄養療法を中心とする場合著しい栄養低下、頻回の下痢、広範な小腸病変の病勢が重篤な場合、腸管の高度狭窄、瘻孔、膿瘍形成、大量出血、高度の肛門部病変などを有する場合や通常の経腸栄養療法が困難あるいは効果不十分な場合は、絶食の上、完全静脈栄養療法を行う。通過障害や膿瘍などがない場合は、インフリキシマブやアダリムマブあるいはウステキヌマブやベドリズマブを併用してもよい。 (4)瘻孔の治療内瘻と外瘻(痔瘻を含む)がある。まず、外科治療の適応を検討する。必要に応じて外科医や専門医の意見・
協力を求める。薬物治療としては、インフリキシマブやアダリムマブが使用される。アザチオプリンも外瘻に有効な場合がある。なお、内瘻への効果は弱いという意見が多い。 III. 寛解維持療法活動期に対する治療によりいったん寛解が導入されたら、長期に寛解を維持する治療を行う。穿孔型あるいは肛門部病変を合併した患者、腸管切除を受けた患者、寛解導入時にステロイド投与が必要であった患者は再燃しやすいので注意が必要である。寛解維持療法としては、在宅経腸栄養療法、薬物療法(5-ASA製剤、アザチオプリン等)が用いられる。アザチオプリンは、腸管病変のほか肛門部病変の寛解維持にも有効である。またインフリキシマブやアダリムマブあるいはウステキヌマブやベドリズマブにより寛解導入された後は、それぞれの定期的投与が寛解維持に有効である。在宅栄養療法では、1日摂取カロリーの半分量以上に相当する成分栄養剤や消化態栄養剤の投与も寛解維持に有用であるが、栄養剤の投与や選択にあたっては患者個々のQOLやADL・受容性などを考慮すべきであり、受容性が低い場合には半消化態栄養剤を用いてもよい。抗TNF-α抗体製剤と1日600~900kcal以上の経腸栄養剤の併用は、抗TNF-α抗体製剤の寛解導入効果増強や寛解維持効果延長を示すとの報告もある。短腸症候群など、在宅経腸栄養法でも栄養管理が困難な症例では、在宅中心静脈栄養法を考慮する。在宅中心静脈栄養法を行う際にはカテーテル関連血流感染症、血栓症、肝機能障害、微量元素欠乏症・過剰症の発生などに留意する。在宅経腸栄養療法は、小児の寛解維持にも有用である。 IV. 肛門部病変に対する治療内科的治療により腸管病変の活動性を鎮め寛解導入に努めるとともに、肛門病変については外科医・肛門外科との連携の下に病態を把握し治療法を選択する。痔瘻・肛門周囲膿瘍に対しては、必要に応じシートン法や切開排膿などを行い、メトロニダゾール(*)などの抗菌剤や抗生物質等で治療する。インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブによる治療を考慮する場合は、上記により膿瘍がドレナージされていることを局所所見や画像検査などで確認したうえで開始する。裂肛、肛門潰瘍に対しては腸管病変に準じた内科的治療を選択する。肛門狭窄については、経肛門的拡張術を考慮する。難治例に関しては、癌化の可能性も念頭に、専門の外科医・肛門医などとの連携が望ましい。 V. 狭窄の治療内視鏡が到達可能な箇所に通過障害に伴う症状の原因となる狭窄を認める場合は、内科的治療で炎症を鎮静化し、潰瘍が消失・縮小した時点で、内視鏡的バルーン拡張術を試みてもよい。施行にあたっては、狭窄の形状や長さ、個数、潰瘍や瘻孔、膿瘍、口側拡張の有無などを正確に把握し、適応を判断する必要がある。適応外の狭窄は手術を検討する。拡張術施行に当たっては穿孔や出血などの偶発症に十分注意し、手技的に施行困難な場合や拡張術が無効な場合にも外科手術を考慮する。拡張術が成功したら、術後も自覚症状に加え、狭窄の程度を内視鏡検査などで定期的に確認する。 VI. 外科手術後の再燃予防III.の寛解維持療法に準じて行われる。5-ASA製剤、免疫調節薬(アザチオプリン・6-MP(*))、メトロニダゾール(*)は術後再燃を予防する可能性が考慮され、免疫調節薬(アザチオプリン・6-MP(*))、栄養療法などは術後再燃予防効果があるとする報告もある。一方、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ)は術後1~2年の内視鏡的再燃を有意に抑制する再燃予防効果がある。症状による再燃の前に画像診断で認識される再燃が起こるため、術後6~12ヶ月を目処に、吻合部や他の小腸大腸に対して、内視鏡検査やX線造影検査を施行し、病変再燃が確認された場合には、術前治療の内容や有効性評価に基づき、治療の変更や強化を適切に行う。また複数回手術例や残存小腸長が短い症例など術後再燃を回避する必要性がより高い場合や、術後再燃のリスクが高い場合には、再燃予防を意図した治療を術後に追加することを検討する。 〈注1〉 寛解状態とは、CDAIスコアが150未満(IOIBD スコアが0または1)、CRP 陰性、血沈正常の状態をいう。 〈注2〉 サラゾピリン®に比較してペンタサ ®の安全性は高いが、発疹、発熱、下痢、白血球減少、腎機能障害、肝機能障害などの副作用が報告されている。 〈注3〉 プレドニゾロンの長期投与は、骨粗鬆症などの 副作用を発症させることがあるので、極力避けなければならない。 〈注4〉 アザチオプリンや6-MP(*)の副作用として、白血 球減少、貧血、胃腸症状、膵炎、肝機能障害、脱毛などが起こり得る。また欧米では抗TNF-α抗体製剤との長期併用や高齢者への投与によりリンパ腫や日和見感染のリスクが増すとの報告がある。EBウイルス未感染患者では、投与開始後に初感染した場合、血球貪食症候群やリンパ腫などのリスクが増加するため、感染兆候があった場合は投与中止を検討する。通常アザチオプリンでは50mg/日程度、6-MP(*)では30mg/日程度より開始し、副作用や効果をみながら適宜増減する。上記のような副作用は投与開始後早期に起こる
ことがあるため、投与開始早期は頻回に血液検査を行い(投与開始後1~2週間を目安にし、その後は数週間おき)、白血球数減少やその他の異常が発現した場合程度に応じて減量、または一時中止する。チオプリン製剤(アザチオプリン・6-MP(*))の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされている。平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となっており、初めてチオプリン製剤の投与を考慮する患者に対しては、チオプリン製剤による治療を開始する前に本検査を施行し、NUDT15遺伝子型を確認の上でチオプリン製剤の適応を判断することが推奨される。現在は保険承認後の移行期であるため各施設において検査体制の整備が必要である。日本人の約1%に存在するCys/Cys型の場合は、重篤な副作用(高度白血球減少、全脱毛)のリスクが非常に高いためチオプリン製剤の使用を原則として回避し、Arg/Cys、Cys/His型の場合は低用量(通常量の半分程度を目安とする)からの開始を考慮する。これらの副作用のリスクが低いArg/Arg、Arg/His型の場合であっても、チオプリン製剤の副作用のすべてがNUDT15遺伝子多型に起因するものでないため、使用に際しては定期的な副作用モニタリングを実施する。 NUDT15遺伝子検査結果日本人での頻度通常量で開始した場合の 副作用頻度チオプリン製剤の開始方法急性高度白血球減少全脱毛 Arg/Arg 81.1%稀(<0.1%)稀(<0.1%)通常量で 開始Arg/His Arg/Cys 17.8%低(<5%)低(<5%)減量して開始Cys/His <0.05%高(>50%) Cys/Cys 1.1%必発必発服用を回避 〈注5〉 投与時反応とは、投与中あるいは投与終了後 2時間以内に出現する症状で、アナフィラキシー様の重篤な時は投与を中止し、全身管理を行う。インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブの副作用として、免疫抑制作用による結核菌感染の顕性化、敗血症や肺炎などの感染症、肝障害、発疹、白血球減少などが報告されている。 〈注6〉 メトロニダゾール(*)の副作用として、末梢神経 障害、味覚障害、中枢神経障害(めまい、ふらつき)などがある。(*)現在保険適応には含まれていない。
令和2年度クローン病治療指針(内科) 活動期の治療(病状や受容性により、栄養療法・薬物療法・あるいは両者の組み合わせを行う)軽症〜中等症中等症〜重症重症(病勢が重篤、高度な合併症を有する場合) 薬物療法・ブデソニド・5-ASA製剤 ペンタサ®顆粒/錠、サラゾピリン®錠(大腸病変)栄養療法(経腸栄養療法)許容性があれば栄養療法経腸栄養剤としては、・成分栄養剤(エレンタール®)・消化態栄養剤(ツインライン®など)を第一選択として用いる。※受容性が低い場合は半消化態栄養剤を用い てもよい※効果不十分の場合は中等症~重症に準じる薬物療法・経口ステロイド(プレドニゾロン)・抗菌薬(メトロニダゾール*、シプロフロキサ シン*など) ※ステロイド減量・離脱が困難な場合: アザチオプリン、6-MP* ※ステロイド・栄養療法などの通常治療が無効/不耐な場合:インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブ栄養療法(経腸栄養療法)・成分栄養剤(エレンタール®)・消化態栄養剤(ツインライン®など)を第一選択として用いる。※受容性が低い場合は半消化態栄養剤を用いて もよい血球成分除去療法の併用・顆粒球吸着療法(アダカラム®) ※通常治療で効果不十分・不耐で大腸病変に起因する症状が残る症例に適応外科治療の適応を検討した上で以下の内科治療を行う 薬物療法・ステロイド経口または静注・インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブ(通常治療抵抗例)栄養療法・経腸栄養療法・絶食の上、完全静脈栄養療法(合併症や重症度が特に高い場合) ※合併症が改善すれば経腸栄養療法へ※通過障害や膿瘍がない場合はインフリキシマブ・ アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブを併用してもよい 寛解維持療法肛門病変の治療狭窄/瘻孔の治療術後の再発予防薬物療法・5-ASA製剤ペンタサ®顆粒/錠サラゾピリン®錠(大腸病変)・アザチオプリン・6-MP*・インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブ(インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブにより寛解導入例では選択可)在宅経腸栄養療法・エレンタール®、ツインライン®等を第一選択として用いる。※受容性が低い場合は半消化態栄 養剤を用いてもよい※短腸症候群など、栄養管理困難 例では在宅中心静脈栄養法を考慮するまず外科治療の適応を検討する。ドレナージやシートン法など 内科的治療を行う場合・痔瘻・肛門周囲膿瘍 メトロニダゾール*、抗菌剤・抗生物質インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・裂肛、肛門潰瘍: 腸管病変に準じた内科的治療・肛門狭窄:経肛門的拡張術【狭窄】 ・まず外科治療の適応を検討する。・内科的治療により炎症を沈静化 し、潰瘍が消失・縮小した時点で、内視鏡的バルーン拡張術【瘻孔】・まず外科治療の適応を検討する。・内科的治療(外瘻)としては インフリキシマブアダリムマブアザチオプリン寛解維持療法に準ずる薬物治療・5-ASA製剤 ペンタサ®顆粒/錠サラゾピリン®錠(大腸病変)・アザチオプリン・6-MP*・インフリキシマブ・アダリムマブ栄養療法・経腸栄養療法※薬物療法との併用も可 ※(治療原則)内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイ ミングなどを誤らないようにする。薬用量や治療の使い分け、小児や外科治療など詳細は本文を参照のこと。 *:現在保険適応には含まれていない
クローン病外科治療指針(2021年1月改訂) 8 1 手術適応(1)絶対的手術適応 1穿孔、大量出血、内科治療で改善しない腸閉塞、膿瘍(腹腔内膿瘍、後腹膜膿瘍) 2小腸癌、大腸肛門管癌(痔瘻癌を含む) (2)相対的手術適応内科治療で改善が困難、または生活の質(QOL)の低下を伴う病変である。 1難治性腸管狭窄2内瘻(腸管腸管瘻、腸管膀胱瘻など)、内科治療が無効な難治性外瘻(腸管皮膚瘻) 3小児の成長障害4狭窄や瘻孔を伴わない活動性腸管病変(上皮化のない縦走潰瘍など) 5難治性肛門部病変(複雑痔瘻、直腸膣瘻、肛門狭窄 など)、直腸肛門病変による排便障害(頻便、失禁などQOL低下例) 〈注1〉 出血性ショックなどはなく全身状態が良好で、 IVR、内視鏡による止血、インフリキシマブ投与などが可能な施設ではこれらによる止血を試みてもよいが、止血が困難な場合は外科治療を行う。 〈注2〉 本邦では直腸肛門管癌が多い。小腸癌、結腸癌 の合併にも留意する。術中に癌が疑われた場合は積極的に術中病理迅速診断を行う。 〈注3〉 内瘻は基本的には手術適応で、特に複数の腸管や 多臓器を巻き込む複雑瘻孔や通過障害を伴う内瘻例には手術を行う。内瘻例で経過を観察する場合は症状の出現に留意し、病変の進行の有無を定期的な画像検査で確認する。 2.手術時期1穿孔、大量出血、内科的治療で改善しない腸閉塞、 膿瘍(腹腔内膿瘍、後腹膜膿瘍) *は緊急、または準緊急手術の適応である。*:可能であれば経皮的膿瘍ドレナージ術後に待機手術を行う。2難治性腸管狭窄、内瘻、難治性外瘻、活動性腸管病変、難治性肛門病変はQOLの低下がないように時期の遅れがなく、手術を行う。3発育期の小児では適正な内科治療で改善しない 成長障害は術後のcatch upを考慮して思春期発来前、または骨端線閉鎖前の手術が推奨される。3 手術術式の選択 外科治療の目的は内科治療に抵抗する合併症の除去であり、手術術式は短腸症候群の回避など長期的なQOLの向上を考慮して選択する。全身状態不良例では二期的吻合も考慮する。 1小腸病変腸管温存を原則とし、合併症の原因となっている主病変部のみを対象とした小範囲切除術や限局性の線維性狭窄に対しては狭窄形成術を行う。狭窄形成術施行時にはできるだけ病変部の生検を行う。手術時には可能な限り、残存小腸長を測定する。2大腸病変病変部の小範囲切除術を原則とする。病変が広範囲、または多発し、直腸病変が比較的軽度で肛門機能が保たれている例には大腸(亜)全摘、吻合による自然肛門温存術を行う。直腸の著しい狭窄、瘻孔合併例には人工肛門造設術(直腸切断術を含む)を考慮する。3胃十二指腸病変内視鏡的拡張術が無効な十二指腸第1部から第2部にかけての線維性狭窄例には胃空腸吻合、または狭窄形成術を行う。狭窄形成術は手技上困難なことが多く、あまり行われない。4肛門部病変(詳細は「クローン病肛門部病変に 対する治療指針」を参照)直腸肛門病変には「クローン病特有原発巣」(primary lesion:クローン病自体による深い潰瘍性病変)、「続発性難治性病変」(secondary lesion:原発巣から感染などによって生じた痔瘻などの2次的病変)、「通常型病変」(incidental lesion:クローン病と関連のない通常の病変)があり、クローン病特有原発巣の有無などで病変を的確に診断して病態に適した治療法を選択する。最も多い難治性痔瘻には腸管病変に対し内科的、外科的治療を行い、局所治療としては肛門機能の保持も考慮してseton法によるドレナージを行う。難治性肛門病変、保存的治療で改善しない直腸肛門狭窄、直腸からの瘻孔、QOLを低下させる直腸膣瘻、尿道瘻には人工肛門造設術(直腸切断術を含む)を考慮する。難治性肛門部病変には経験のある専門医による治療が望ましい。 〈注1〉 腸管腸管瘻ではクローン病主病変の腸管切除と、 炎症の波及により瘻孔を形成した腸管の瘻孔部楔状切除術、または部分切除術を行う。 〈注2〉 本症に対する腹腔鏡下手術や小開腹手術は通常 の開腹術に比べて整容性の点で優れているが、腸管が脆弱な症例、高度の腹腔内癒着例、複雑な
腸管瘻症例などでは適応を慎重に考慮する。本治療は専門施設で行うことが望ましい。 〈注3〉 小児の成長障害の評価として成長曲線の作成や 手根骨のX線撮影などによる骨年齢の評価が重要であり、小児科医と協力し評価することが望ましい。 4 周術期管理 1腸管病変により術前に貧血や低アルブミン血症 などの栄養障害を合併することが多く、なるべく術前に補正する。必要があれば術前にイレウス管による減圧、経皮的膿瘍ドレナージ、外瘻部の皮膚管理などを行う。2術前ステロイド投与例では感染性合併症の増加だけでなく、吻合術例での縫合不全の危険性などがあり、可能であれば、術前にステロイドを減量する。また術後はステロイドカバーを行い、副腎機能不全に留意しながらステロイドを減量する。3本症の病変部腸管や腸管切除のために栄養障害や 排液量増加による脱水を併発する症例には輸液、経腸栄養剤による治療を適正に行う。また、小腸人工肛門症例で排液が多い場合は輸液を行う。在宅中心静脈栄養法を行う際にはカテーテル関連血流感染症、血栓塞栓症、肝機能障害、微量元素欠乏症・過剰症の発生などに留意する。 〈注1〉 術後ステロイドカバー ステロイドを長期投与された患者では手術後のステロイド分泌が十分でなく、 急性副腎機能不全を起こす可能性があり、ステロイドカバーが必要と考えられている。しかし明確なエビデンスに基づいた方法はなく、従来の報告と経験に基づいた投与法が行われている。プレドニゾロン5mg/日以下の投与例では通常の維持投与量以上の投与は不要とされている。使用されるステロイド製剤は術直後には代謝の早いハイドロコーチゾンが用いられることが多く、術後当日と術後1日は200~300mg、 術後2日は100~200mg、その後徐々に減量して、術後約7日で通常、経口プレドニゾロン15mg/日前後に変更し、急性副腎機能不全の発生に留意しながら速やかに減量、中止を試みる。
出典:「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成29度総括・分担研究報告書 p70〜p71 クローン病に対する狭窄形成術 strictureplasty Heineke-Mikulicz strictureplasty Finney strictureplasty Jaboulay strictureplasty Double Heineke-Mikulicz strictureplasty Side-to-side isoperistaltic strictureplasty
I. 一般的事項クローン病において、肛門部は回盲部と同様に罹患頻度の高い部位であり、その病変は再発を繰り返し、難治化することから、長期的にQOLを維持するためにも管理が重要となる。治療に際しては、局所の病態を的確に診断するだけでなく、腸病変とくに大腸病変の活動性を評価して治療法を決定し、局所の外科治療の選択には病変の制御とともに肛門機能にも配慮する。肛門部は癌合併頻度の高い部位であり、長期経過例に対しては臨床症状の変化に留意し、癌を疑う場合には積極的に組織学的検索(生検・細胞診)を行い早期発見に努める。 II. 診断的事項肛門周囲、肛門管を含めた局所の病態の評価は、経験ある外科医、肛門科医との連携の下、必要に応じて麻酔下での検索を行う(EUA:Examination under anesthesia)。画像検査としては、内視鏡検査、瘻孔造影、CT、MRI、経肛門的超音波検査を用いて肛門管から直腸周辺の炎症性変化を評価する。腸病変については、罹患部位、活動性を把握する。肛門機能についても、用手的診察、肛門内圧検査を用いて肛門括約筋機能を評価する。 III. 病態別治療指針1. 痔瘻・膿瘍軽症例(日常生活に支障のない程度の自覚症状)に対しては、切開排膿とともにメトロニダゾール(*)や抗菌剤(ニューキノロン系、セフェム系など)を投与する。中等症(持続性の疼痛、排膿)以上の症状がある場合には、seton法によるドレナージを第1選択とする。下部大腸に活動性病変がなく単純な痔瘻であれば、痔瘻根治術も選択肢の一つとなるが、術後創治癒に時間がかかること、および再発率の高いことを考慮して適応を決定する。複雑多発例や再発を繰り返す場合には、痔瘻根治術の適応は控え、seton法ドレナージを継続する。薬物治療(免疫調節薬、生物学的製剤)を導入する場合は、ドレナージによって局所の感染巣を制御した後に開始する。日常生活を制限する程の高度症状(重症例)を諸治療によっても制御できない場合には人工肛門造設術を考慮する。 2 直腸(肛門管)-膣瘻 効果的な内科的治療法はなく、膣からの便・ガスの排出が多い場合には外科治療を考慮する。局所的には経肛門的あるいは経膣的にadvancement flap法を行うが、人工肛門の併用を必要とする。3 裂肛・肛門潰瘍 中等度以上の症状があれば、併存する痔瘻・膿瘍の外科的処置に加えて、腸病変に準じて内科的治療を選択する。 4 皮垂 腫張、緊満、疼痛により排便にも支障を来す場合には、外科治療を考慮してもよい。痔瘻を誘発することもあり、切除範囲は最小限にとどめる。 5 肛門部狭窄 肛門狭窄と直腸肛門狭窄を見極めて治療法を選択する。肛門狭窄(肛門管に限局した輪状狭窄)に対してはブジーを用いた拡張あるいは経肛門的拡張術の適応となる。下部直腸病変に関連した直腸肛門狭窄については、拡張術の効果は乏しく日常生活が困難な場合には人工肛門造設も考慮する。 6 補足 重症度の評価には、自覚症状に客観的所見も加味されたPDAI(Perianal Crohn’s Disease Activity Index)も参考にする。ただし、Sexual activityの評価が難しい場合には、社会生活評価項目(Social activity)に代えて、概ね5点を目途に外科医、肛門科医と外科治療について協議する。 生物学的製剤の使用に際しては、短期的な有用性は示されているが、長期的な効果についてはevidenceが十分でなく、直腸肛門狭窄にも留意する。 IV. 人工肛門の適応(直腸切断術を含む)直腸肛門部癌の合併および著しいQOLの低下を来す重症の肛門部病変に対して人工肛門造設の適応となる。重症の肛門部病変とは、seton法ドレナージや薬物療法の併用でも制御できない痔瘻、膣瘻、尿道瘻、線維性の強い直腸肛門狭窄、および肛門機能の低下により便失禁を来たした場合などが相当する。重症の肛門部病変に対する一時的人工肛門、永久的人工肛門(直腸切断術)の選択は個々の背景を考慮し、患者との協議の下に決定する。一時的人工肛門造設を行っても直腸肛門部病変は再燃ばかりでなく癌合併のリスクがあり、継続的な観察が必要である。また、肛門病変増悪のリスクから、一時的人工肛門の閉鎖は難しいことが多い。人工肛門造設例では傍人工肛門瘻孔、人工肛門の狭窄、直腸切断術例では会陰創治癒遅延などの合併症に留意する。 (*)現在保険適応には含まれていない。 クローン病肛門部病変に対する治療指針(2018年1月改訂) 9
41 出典:「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成29年度総括・分担研究報告書 p72〜p73 Seton法(drainage seton)の基本的な手技 Perianal Crohn's Disease Activity Index(PDAI) Discharge Pain / stricture Restriction of sexual activity 0. no discharge 0. no activity restriction 0. no restriction 1. minimal mucous discharge 1. mild discomfort, no limited 1. slight restriction 2. mod.mucous / purulent discharge 2. mod.discomfort, limited 2. mod.limitation 3. substantial discharge 3. marked discomfort, limited 3. marked limitation 4. gross fecal soiling 4. severe pain, severe limitation 4. unable to engage Type of perianal disease Degree of induration ※Restriction of social activity 0. no perianal disease / tag 0. no induration 0. no restriction 1. anal fissure or mucosal tear 1. minimal induration 1. slight restriction 2. <3 perianal fistula 2. mod.induration 2. mod.limitation 3. ≧3 perianal fistula 3. substantial induration 3. marked limitation 4 anal sphinter ulceration or fistula with significant undermining 4. gross fluctuance / abscess 4. unable to school or social work ※:modified PDAI Irvine EJ:1995 J. Clin Gastroentrology a:肛門管内にprimary lesion(原発巣)をもつ低位筋間、坐骨直腸窩瘻孔b:瘻管、膿瘍腔を掻爬後にprimary lesionと2次口間、及び2次口と2次口間にsetonをゆるく 挿入する。 〈注〉primary lesion(原発巣)が明らかでない痔瘻症例では2次口間のみにsetonを挿入する。 a b
序文クローン病は術後の再発リスクが高く、さらには再手術に至る場合も少なくないため、適切な術後管理を必要とする。残存病変が存在する場合には、それに対する治療が必要である。長期成績は明らかではないが、術後の再発予防あるいは術後再発に対する早期の適切な治療が、予後を改善する可能性が指摘されている。画一的な術後管理の方法は確立されていないため、症例ごとの計画的な管理が重要となる。そのためには以下の点に留意する。 1 再発危険度の評価 欧米を中心に、喫煙、腸切除術の既往、広範な小腸病変、瘻孔型の症例などが再発の危険性を高める因子として挙げられている。 2 再発の診断 臨床症状の評価では、術後の腸管癒着や腸管切除による影響の可能性を考慮する。術後の再発では、内視鏡的な病変の再発が臨床的な再発に先行し、その再発病変は吻合部付近に好発するため、再発リスクのある症例ではとくにこれらの点に留意する。術後再発の早期診断には、内視鏡検査や消化管造影検査を用いた病変評価が必須となるが、微小病変も多いため内視鏡検査を優先する。病変再発所見が認められた場合にはそれまでの寛解維持療法を再検討し治療の変更を考慮する。術後半年から1年を目安とした内視鏡検査は、それまでの術後管理の評価と以後の計画的な内科的治療に有用と考えられる。 3 術後寛解維持療法 術後の再発予防あるいは寛解維持に対する治療は、通常の寛解維持療法に準じて行う。再発や短腸症候群への移行のリスクが高いと考えられる症例では、生物学的製剤を含めた積極的な治療を考慮する。4. その他術式は、腸管切除長、切除部位、吻合法、狭窄形成術を施行した個所の数や様式、残存病変の有無、ストーマの有無など症例ごとに異なる。また、肛門病変や術式により空置した消化管にも注意を払う必要がある。以上の点から、術後も内科と外科の連携が不可欠である。 クローン病術後管理治療指針(2015年3月作成) 10 出典:「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成29年度総括・分担研究報告書 p74
小児クローン病治療指針(2021年1月改訂) 11小児期クローン病の治療原則1)治療方針は、下記の治療フローチャートを参考に決定する。2)小児クローン病の治療目標は、腸管炎症に伴う消化 器症状を改善し、腸管内外の合併症や外科手術を回避するとともに、二次性徴を含めた正常な身体的発育と精神面での発達を達成することである。腸管粘膜の炎症所見が改善して潰瘍を認めない状態(粘膜治癒)は、長期予後の改善や外科手術の必要性の低下に寄与する可能性があり、粘膜治癒を目指した治療も考慮されるべきである。3)小児クローン病の寛解導入療法の第一選択は完全経腸栄養療法で、寛解維持療法においても、部分経腸栄養療法を続けることが望ましい。4)ステロイド薬は寛解維持には有用ではなく、ステロイド薬の長期投与は成長障害の原因となる。ステロイド依存の小児では、免疫調節薬や生物学的製剤を用いた薬物療法が必要となる。5)小児クローン病の治療に際しては安全性への配慮が必要である。とくに生物学的製剤の適応は慎重に判断すべきであり、経験豊富な医師へのコンサルトが勧められる。6)薬用量は原則として体重もしくは体表面積をもとに換算し、重症度も加味して調整する。7)寛解導入および維持に使用する薬物の一部は、小児に対する適用が承認されていない。したがってその使用にあたっては、本人・家族に効果と副作用について詳しく説明して、十分な同意を得ることが望ましい。8)内科的治療に抵抗する腸炎症状や合併症のある患者では外科治療の適応とタイミングを十分に検討し、時期を逸することがないように留意する。9)治療効果の判定には、症状や血液検査所見の改善にとどまらず、炎症腸管の画像診断による評価が不可欠で、小児クローン病診療に精通した医師による内視鏡検査を含む診療が行われることが望ましい。10)生物学的製剤や免疫調節薬、高用量のステロイド薬を含む免疫抑制療法を開始する際には、日本小児科学会が推奨するすべての予防接種を、学会が推奨する接種スケジュールを参考とし、実施しておくことが望まれる。特に、麻疹・風疹・ムンプス・水痘に未罹患・未接種の場合や、十分な抗体が獲得されていない場合には、免疫抑制療法を開始する4週間以上前に、該当する生ワクチンの接種を完了しておくことが望ましい。ただし、すでに免疫抑制療法を開始している場合は、生ワクチンは、ワクチン株ウイルスによる感染症発現の可能性が否定できないため、原則として行わない。免疫抑制療法を終了して生ワクチンを接種する場合には、終了3ヶ月後から接種を行うことができる。一方、不活化ワクチンは、効果が減弱する可能性はあるが接種可能であり、積極的な接種が勧められる。11)思春期に特徴的な心理社会的問題に対して、専門的カウンセリングを含めた心理的サポートを考慮する必要がある。さらに、成人診療科へのトランジションを見据えて、移行プログラムを計画・実施していくことが望ましい。12)6歳未満で発症する超早期発症型炎症性腸疾患(very early onset inflammatory bowel disease:VEO-IBD)、非典型的な内視鏡所見や経過を示す症例、標準的治療に抵抗性を示す症例、感染症を反復する症例、家族内発症例などでは、単一遺伝子異常に伴うIBD (monogenic IBD)の可能性があり、原発性免疫不全 症候群の遺伝子解析を考慮する。 小児における栄養療法の原則寛解導入療法は、経腸栄養剤による栄養療法が中心であり、1日の全必要エネルギー量を投与する(学童では50~60kcal/kg/日)。完全経腸栄養療法の期間は、欧米では6~8週間が主流となっているが、本邦では 2~4週間とされていることが多い。寛解期の経腸栄養療法としては、全摂取カロリーの30~70%を経腸栄養剤で摂取する。長期にわたり経腸栄養療法を行う場合には、使用する栄養剤によっては必須脂肪酸やビタミン類(カルニチン等)・微量元素(セレン等)が欠乏しうることに留意し、経静脈的な脂肪乳剤の補充(1~2g/kg/日、週1~2回)や、ビタミン類・微量元素の評価や補充を検討する。栄養療法の継続に対する患者の受容性には差があることから、適量の摂取継続が困難な時には、併用療法を含めた治療の適正化を検討する。 小児薬用量(1)5-ASA製剤 1メサラジン徐放剤(ペンタサ ®顆粒/錠など) (50~ 100mg/kg/日:最大量3g/日) 2サラゾスルファピリジン(サラゾピリン ®錠など) (40~100mg/kg/日:最大量4g/日)(小児等への適用は承認されていない。新生児、低出生体重児では高ビリルビン血症をおこすことがあり、使用しないこと。) (2)経口・静注プレドニゾロン 1プレドニゾロン(プレドニン ®など) (1~2mg/kg/日:最大量40~60mg/日) 2ブデソニド(ゼンタコート ®) (1日朝1回9mg、年齢と体重により適宜調整) (米国では、8歳以上で体重25kg以上の小児において成人と同量が投与可能とされているが、国内では現時点で小児等への
適用は承認されていない) (3)免疫調節薬 1アザチオプリン(イムラン®・アザニン ®など): 0.5mg/kg/日程度で開始し、副作用や効果をみながら通常、1~2.5mg/kg/日(最大1日100mg)まで増量する。26-MP(ロイケリン ®):アザチオプリンの概ね半量を目安とし、0.5~1.5mg/kg/日(最大1日50mg)で用いる。(クローン病に対する使用は承認されていない) *チオプリン製剤の使用によりリンパ増殖性疾患 を発症するリスクが高くなる可能性が海外から報告されている。さらに、このようなリンパ増殖性疾患ではEpstein-Barrウイルス(EBV)感染が高率にみられることから両者の関連性が指摘されており、EBV未感染例におけるチオプリン製剤の導入は注意を要する。日本人では同様のデータは確認されておらず、予後が極めて不良である肝脾T細胞リンパ腫を合併したという報告もないが、今後も検討が必要である。チオプリン製剤の使用は、このようなリスクとベネフィットの両者を考慮して決定する。 *チオプリン製剤の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされており、平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となった。検査の意義や位置づけは、成人のクローン病治療指針の〈注4〉(34ページ)を参照する。 3メトトレキサート(メソトレキセート ®など) (10mg/ m 2週1回皮下注:最大量15mg/m 2、寛解後は週1回内服)。アザチオプリン・6-MPが無効あるいは禁忌の患者に対して使用を検討する。(クローン病に対する使用は承認されていない) (4)抗菌薬 1メトロニダゾール(フラジール ®など)(15mg/ kg/日:分2経口)(適応症に偽膜性腸炎を含む細菌性腸炎が含まれる。小児等に対する安全性は確立されていない(使用経験がない)) 2シプロフロキサシン(シプロキサン ®など) (20mg/ kg/日:分2経口か点滴静注、最大量400mg/日) (15歳未満の小児では禁忌とされるため、治療上の有益性を十分に考慮する必要がある) (5)生物学的製剤 1インフリキシマブ(レミケード®):用法、用量は成人と同様で、寛解導入療法では5mg/kgを0、2、6週で投与し、以後8週毎に同量を維持投与する。効果減弱症例では、10mg/kgまでの増量投与や、5mg/kgを最短で4週間隔の短縮投与が行われることもある。6歳以上の小児患者に対する適用が承認されている。2アダリムマブ(ヒュミラ ®): 本邦では小児等への適用が承認されていないが、欧米では6歳以上の小児患者に承認されている。寛解導入療法では、初回2.4mg/kg(最大160mg)、2週後に1.2mg/kg (最大80mg)、それ以降は2週毎に0.6mg/kg(最大40mg)で維持投与する。その他に、40kg未満では80mg→40mg→20mgで、40kg以上では、成人同様160mg→80mg→40mgで寛解導入ならびに維持療法を行う方法もある。3ウステキヌマブ(ステラーラ ®):海外を含め、小児クローン病患者への適用は承認されていないが、抗TNF-α製剤による寛解導入もしくは維持が困難であった中等症・重症の小児クローン病患者に対する、寛解導入・維持目的の使用が提案されている。小児への用法・用量については、経験豊富な医師へのコンサルトが勧められる。4ベドリズマブ(エンタイビオ ®):海外を含め、小児クローン病患者への適用は承認されておらず、その位置づけは今後検討されていくものと思われる。小児への用法・用量については、経験豊富な医師へのコンサルトが勧められる。 小児クローン病の外科療法手術適応と術式の概要は、成人クローン病領域と同様である。相対的手術適応を検討する際には、内科治療への反応性はもちろんのこと、成長障害や学校生活などへの影響、患児・ 家族の疾患の受け入れ状況までを十分に考慮することが望まれる。6歳未満で発症した超早期発症型炎症性腸疾患や、乳幼児期に難治性肛門病変を反復する症例に対する手術は、病態を複雑にすることがあり、専門施設へのコンサルトを推奨する。成人同様、周術期のステロイドカバーの方法はエビデンスがないのが現状だが、特に小児例では小児内分泌疾患の診療に精通した医師の助言に基づき施行すべきである。術後の病変評価には内視鏡検査が有用だが、小児では検査に鎮静や麻酔を要することが多く、その施行時期を一概には決めにくい。 小児期クローン病の移行期医療「トランジション(移行期治療)」は、小児診療科から成人診療科への移り変わりに伴う意図的かつ計画的な一連の取り組み(プロセス)である。「トランスファー(転科)」は成人診療科への引き渡しポイントであり、トランジションの一部である。患者が自分の身体やIBDを理解して自分で説明したり
決定したりする能力、いわゆるヘルスリテラシーを獲得することが重要である。こうした患者は、その後もアドヒアランスが良好で合併症が少ないことが報告されている。一方、患者、保護者、小児診療科および成人診療科スタッフの間で、トランジションに対する認識や態度が異なり、トランジションの妨げになることがある。トランジションのプロセスにおいては、こうした相違点を明らかにして、時間をかけて調整を図っていくことが大切である。そのため、トランジションへの取り組みは、小学校高学年~中学生のうちに開始し、それぞれの段階で患者の年齢にふさわしい教育がなされる必要がある。そのなかでは、患者のヘルスリテラシーの到達度を評価しつつ、トランジションにかかる取り組みの有効性を適宜見直していくことが必要であり、チェックリストなどの各種ツールが、関連学会や団体で用意されつつある。一方、保護者に対しては、疾病の管理責任を徐々に子どもにシフトしていくような教育が求められる。トランジションに関わる職種としては、医師や看護師のほか、必要に応じて児童精神科医、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー等も加わる。スムーズなトランスファー(転科)のためには、まず小児診療科で適切な診療情報提供書を作成する必要がある。患者は寛解期であるほうが好ましい。また、トランジション専門外来を設置する、小児診療科と成人診療科の共同外来を設ける、あるいは小児診療科と成人診療科を交互に受診する期間を作るといった工夫が推奨される。
a. 重篤な場合とは下記1~7のいずれかの場合である1. 頻回(6回/日以上)の激しい下痢、下血、腹痛を伴い経腸栄養が困難2. 高度の腸管狭窄や腸閉塞が存在し経腸栄養が困難3. 高度の肛門病変、瘻孔、膿瘍形成があり経腸栄養が困難4. 消化管出血が持続5. 38°C以上の高熱、腸管外症状(関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、口内炎など)により衰弱が強く、安静の上、全身管理を要する6. 著しい栄養障害がある7. PCDAIが70(またはCDAIが450)以上b. 5-ASA製剤は、軽症例の寛解導入・寛解維持薬として選択されるが、クローン病に対する有効性を示す根拠はないc. ブデソニドは、完全経腸栄養療法が困難な回盲部病変に対して使われることがあるd. 肛門病変、瘻孔にメトロニダゾールやシプロフロキサシンの併用が有用な場合があるe. 小児でのウステキヌマブ・ベドリズマブの使用経験は少なく、インフリキシマブ・アダリムマブの不応例・不耐例に対して使用を検討するf.ハイリスク患者は、以下のような患者で、早期の生物学的製剤導入を検討する。・ 広範におよぶ小腸病変を有する症例・ 重度の潰瘍を有する大腸病変を有する症例・ Tanner stage 2~3(思春期初期~中期)で、有意な成長障害を有する症例・ 重度の肛門病変を有する症例・ ステロイド抵抗性/依存性の症例・ 重篤な腸管外合併症(重篤な関節炎、壊疽性膿皮症など)を有する症例g. 免疫調節薬(チオプリン製剤)の安全性について、患者・家族に十分説明した上で使用されるべきである (注1) どの段階でも経験のある医師や施設に治療方針を相談することが望ましい。(注2) どの段階でも外科治療の適応を十分に検討した上で内科治療を行う。なお肛門病変・狭窄の治療、術後の再発予防の詳細に ついては本文参照。(注3) 治療を開始する前に予防接種歴・感染罹患歴を確認し、定期・任意接種とも、積極的に行うことが望ましいが、詳細については 本文参照。小児クローン病 治療フローチャート 完全経腸栄養療法(2〜8週) ± 5-ASA製剤(b) ブデソニド(c)部分経腸栄養療法± 5-ASA製剤(b) インフリキシマブ アダリムマブインフリキシマブ アダリムマブ (ウステキヌマブ)(e) (ベドリズマブ)(e) (ウステキヌマブ)(e) (ベドリズマブ)(e) 寛解導入(活動期治療)寛解期 免疫調節薬(g) ± 完全経腸または完全経静脈栄養療法 ± 5-ASA製剤・抗菌薬(d) ステロイド(経口、静注) 顆粒球吸着療法 経験のある医師や施設にコンサルト・紹介を行う 効果不十分 効果不十分 不応・不耐不応・不耐 ハイリスク患者(f) 重篤ではない場合 重篤な場合 (a)
IBDトランジションチェックリスト患者について・ 氏名 ID 生年月日 性別・ 発症年齢(時期): 歳 か月( 年 月)・ 診断年齢(時期): 歳 か月( 年 月)・ 現在の年齢:歳 か月診断について潰瘍性大腸炎:全大腸炎型 ・ 左側大腸炎型 ・ 直腸炎型クローン病:小腸型 ・ 小腸大腸型 ・ 大腸型肛門病変 なし ・ あり(痔瘻、 肛門周囲膿瘍、 皮垂、 その他) IBD-U:罹患範囲: 胃十二指腸 ・ 小腸 ・ 大腸 ・ 肛門病変( )現在の病状について・ 症状:腹痛 あり ・ なし 夜間排便: あり ・ なし・ 排便:日に 回 ・ 硬 / 普通 / 軟 / 泥 / 水様・ 血便:なし ・ あり ( 少量 / 多量 )・ 重症度 (UC): 軽症 ・ 中等症 ・ 重症・ IOIBD (CD): 点・ 血液検査: WBC /μL、 CRP mg/dL、 ESR mm/h・ 便検査:便潜血 ng/mL、 便中カルプロテクチン μg/g・ 最終内視鏡:日付:所見:現在の治療について・ 経口5-ASAなし ・ あり(ペンタサ・アサコール・リアルダ) mg/日・ 注腸・座薬5-ASAなし ・ あり( mg/日)・ 注腸PSLなし ・ あり( mg/日)・ 経口PSLなし ・ あり( mg/日)・ PSL投与総量mg・ 免疫調整薬なし ・ ありAZA mg/日 または 6-MP mg/日・ 生化学的製剤 なし ・ ありIFX ・ ADA ・ GLM ・UST ・その他( ) mg × 週毎・ 栄養療法なし ・ ありエレンタール ・ その他( ) kcal/日・ 手術歴 なし ・ あり( ) 経過について・ 再燃回数: 回(直近の再燃: 年 月)・ その他:( )合併症 (例:発達障害、 PSC など)トランスファーの理由・ 理由: 進学(就職) ・ 転居 ・ 本人の希望 ・ 年齢 ・ 加療目的その他( )トランスファーについてのIC内容とその受け入れ状態・ IC内容:・ 受け入れ状態: 良い ・ 概ね良い ・ 少し悪い ・ 悪い(良くない理由: )家族背景(例:父親医師、 2回に1回は母親のみの来院など)・ 特記すべき事項:その他申し送り事項チェック項目□ 患者が自身の疾患名、 疾患概要について理解している。□ 合併症(消化管合併症、 腸管外合併症、 癌化リスク)について理解している。□ 自分の疾患経過、 手術歴などを把握できている。□ 治療薬の名前、 作用、 副作用、 必要性について理解できている。□ 内服薬などを自己管理できる。□ 栄養や食事内容、 規則正しい生活について理解できている。□ 外来診療を一人で受けることができる。□ 自分の腹痛、 下痢、 血便などの腹部症状についての質問に答えられる。□ 不安、 恐怖、 心配事などについてスタッフに相談できる。□ 医療費の経済支援、 公的助成や医療保険について理解できている。
炎症性腸疾患の腸管外合併症治療指針(2021年3月改訂) 12 I. 関節痛・関節炎・関節障害は最も高頻度に認められるIBDの腸管外合併症であり、関節痛は約40–50%、関節炎は約10–20%に発生する。・IBDに伴う関節障害は、脊椎や仙腸関節などの体軸関節を主とする脊椎関節炎(体軸関節炎)と、膝・足関節などの末梢関節を主とする脊椎関節炎(末梢関節炎)がある。・ただし、脊椎関節炎の専門領域からの分類基準では、IBDに伴う全ての関節炎は「末梢性脊椎関節炎(peripheral SpA: pSpA)」に分類され、混同しないように注意する。・体軸関節炎では時に著しい可動域制限や強直性脊 椎炎のような脊椎靭帯の竹状骨化(Bamboo sign)を認める場合があり、リウマチ専門医と共同で管理する必要がある。 IBDに生じる関節障害は、炎症のない痛みの「関節痛」と炎症を伴う痛みの「関節炎」に分けられ、関節痛はIBDの約40~50%に、関節炎はUCの約10%、CDの約15~20%に発生する 1)。関節痛と関節炎の鑑別においては、関節の腫脹や圧痛の有無を確認することが大切であるが、症状の増悪や遷延する場合には、X線検査やMRI検査により精査を行うことが望ましい。国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)基準 2)により「3ヶ月以上持続する腰背部痛があり、発症時の年齢が45歳未満の患者」で、体軸関節である仙腸関節や脊椎の靭帯付着部に炎症を来す症候群を「体軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis: axSpA)」と診断する。強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis: AS)の改訂New York診断基準(表1) 3)のX線基準を満たすaxSpAは、ASと同義とされ、axSpAの90%以上が該当する。一方で同基準を満たさないものを「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axSpA: nr-axSpA)」と分類する 4)。ただし、現在の国際的な脊椎学会の分類基準では、IBDに伴う体軸関節炎は、上記のaxSpAとは扱わず、あくまで体軸の炎症が主の末梢性脊椎関節炎(pSpA)に分類されている 5)。一方、膝関節や足関節などの末梢関節に関節炎が生じるもののうち、関節炎数が5関節未満のものをType1、5関節以上の多関節にわたるものをType2に分類する 6)。表1 強直性脊椎炎の改定New York診断基準 (1984年) I.臨床基準 ・運動によって改善するが安静では軽快しない、3か月以上持続する腰背部の疼痛およびこわばり・前後屈および側屈における腰椎の可動域制限・ (年齢および性別と比較して)胸郭の拡張制限II.仙腸関節のX線基準 仙腸関節炎所見が「両側性のgrade 2以上」または「片側性のgrade 3~4」・grade 0:正常・grade 1:疑い(骨縁の不鮮明化)・grade 2:軽度(小さな局限性の骨びらん、硬化。関節裂隙は正常)・grade 3:明らかな変化(骨びらん・硬化の進展と関節裂隙の拡大、狭小化または部分的な強直)・grade 4:関節裂隙全体の強直III.診断基準 確実例:臨床基準のうちの1項目以上 + X線基準を満たす疑い例:a)臨床基準3項目b)臨床基準なし + X線基準を満たす1) 診断のポイント診断のフローチャート(図1)のように、まずは関節痛と関節炎の判別が大切で、診察時に関節の腫脹や圧痛の有無を確認した後、適宜、画像検査を行う。pSpAの診断は「関節炎または付着部炎または指趾炎」に加え、次のSpA徴候(ぶどう膜炎、乾癬、IBD、先行する感染症、HLA-B27、画像上の仙腸関節炎)のうち1項目以上、または、その他のSpA徴候(関節炎、付着部炎、指趾炎、炎症性腰背部痛の既往、SpAの家族歴)のうち2項目以上で、確定診断となる 3)。さらに四肢等に生じる末梢関節炎はType1とType2に分類され、Type1はIBDの活動性に関連して、急性、非対称性、移動性に発症し、関節破壊なく自然軽快する。単関節炎が多く、複数でも5関節未満で、膝や足関節に起こりやすい。Type2は、5関節以上の多関節に炎症を認め、手指関節を含めた上肢の関節に左右対称に生じ、関節破壊を伴うことがあるため、関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)との鑑別が難しい場合がある。IBDの活動性と関連せず、腸炎症状と同時に発現あるいは先行することもある 7)。
図1 IBDに合併する関節障害の診断フローチャート 腰背部痛・関節痛 機械性腰背部痛・関節痛 Type1 Type2 ・ 関節に炎症を伴わない 痛み ・ 単純X線・MRIなどの画像上の仙腸関節炎・ 男性>女性・ IBD活動性と相関しない時に、 無症候性に仙腸関節破壊が進行する例もあり ・ 5関節未満で下肢に多い・ 急性発症、左右非対称、移動性・ IBD活動性と相関する・ 5関節以上で上肢に多い・ 左右対称・ IBD活動性と相関しない ・ 炎症と伴う痛み・ 炎症性腰背部痛(IBP)以下5項目中4項目合致すればIBPと診断・ 発症時の年齢<40歳・ 潜在性発症・ 運動により改善する・ 安静では改善しない・ 夜間の疼痛 (起き上がると改善する)末梢性脊椎関節炎(pSpA) 関節炎・付着部炎・指趾炎・ 炎症性腰背部痛(IBP) 体軸関節炎が主体 付着部炎・指趾炎末梢関節炎 末梢関節炎・指趾炎・付着部炎が主体 表2 脊椎性関節炎(SpA)の徴候 1)炎症性腰背部痛(Inflammatory Back Pain:IBP)を 認める。(以下の5項目のうち、4項目以上該当) 140歳未満に発症する2潜在性に(緩徐に)発症する3運動で軽快する4安静で軽快しない5夜間痛があるが起き上がると軽快する2)関節炎を認める3)付着部炎(踵部)を認める4)ぶどう膜炎を認める5)指趾炎を認める6)乾癬を認める7)IBDを認める8)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に良好な反応する9)SpAの家族歴がある10)ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen : HLA)-B27が陽性である11)急性期反応物質(CRP)が上昇している 2) 疫学IBDに伴う関節障害についての詳細な検討は少なく、わが国では2013年の櫻井らの九州地区アンケート調査 8) では、UC 3,499人の5.5%、CD 2,227人の6.3%に関節炎の合併を認めた。2018年の当研究班で行った全国主要IBD診療施設49施設の専門医に対するアンケート調査では、UC 23,503人の6.8%、CD 14,474人の5.8%に関節炎を認めた 9)。体軸関節炎に関して、欧米ではIBD関連の体軸関節炎は1–10%に合併し、HLA-B27が25–75%と高い陽性率である 10)。しかし、わが国ではまずHLA-B27保有率が一般人口において約0.3%と低く、その陽性者の10%未満が体軸関節炎を発症すると想定され、発症率は10万人当たり0.48人と非常に稀である 11)。2018年の当研究班アンケート調査ではIBD総数37,977名の55名(0.14%)に体軸関節炎を認めた 9)。一方、末梢関節炎に関して、我が国の既報ではUCの合併頻度は4-35%で、特に全大腸炎型で多いとされたが 12)、上述アンケート調査では5.3%に留まった9)。 3) 臨床症状・臨床検査1臨床症状関節炎の発症メカニズムや病因論は不明であるが、一般的に腸管病変と同時に悪化することが多い(末梢関節炎 Type2を除く)。X線基準を満たす体軸関節炎は、3ヶ月以上と緩徐に発症し、運動で改善するが、安静では改善しない腰痛や臀部痛が特徴的である。慢性炎症により、脊椎の靭帯に石灰が沈着して固まり、腰の前屈や後屈などの動作ができなくなり、生活の質を著しく低下させる。一方、膝や足関節の少数(5関節未満)に急性、非対称性、移動性に炎症を認める場合はType1、手指関節を含めた上肢関節の多数(5関節以上)に左右対称の炎症を認める場合はType2の末梢関節炎を疑う。 2検査所見IBDに伴う関節障害では血液検査にて白血球数の増加、CRP陽性、赤血球沈降速度(ESR)亢進を認めることが多い。ただし、これらの炎症所見はIBD自体の病勢でも認められるので、血液検査だけで活動度を評価するのは難しい。またRFや抗CCP抗体は通常陰性である。画像検査に関して、リウマチ・整形外科専門医はX線検査およびMRI検査で評価することを推奨するが、IBD日常診療では腹部評価のためにこれらの画像検査以外にCT検査を行うことがあり、同様に所見を認めることが多い。IBDに伴う二次性の体軸関節炎では、X線検査で肋椎関節には癒合、体軸関節には仙腸関節に片側性あるいは両側性に関節裂隙狭小化、開大、関節面の不整像、骨硬化像、癒合、脊椎には前縦靱帯、後縦靱帯の骨化により脊柱が竹状に変化したBamboo signを認めることがある 7)。造影MRI検査ではこれらの所見に加えて、仙腸関節の片側性あるいは両側性に軟骨下骨の信号変化(浮腫・脂肪変性・硬化)と、関節間隙や軟骨下骨の一部に造影効果を認める 13)。CT検査でも他の検査と同様、仙腸関節や肋椎関節に癒合、椎間板周囲靭帯の骨化を認める。なお、X線検査で明らかな変化が認められない段階でも、MRI検査では仙腸関節や椎体に骨髄浮腫像を認めることがあるので 5)、慎重に経過観察することが望ましい 7)。末梢関節炎のType1は単関節炎が多く、複数でも5関節未満で膝や足関節に起こり、関節の破壊やびらんを伴わないのがRAや乾癬性関節炎とは異なる特徴である。また、造影MRI検査では腱鞘の腫脹や、造影剤による増殖滑膜の増強効果などを認め、全身ガリウムシンチ
では帯状の高集積を認める。末梢関節炎のType2は、手指関節を含めた上肢関節の5関節以上に、関節裂隙狭小化、骨びらんなどRA様の関節破壊像を認める。 4) 治療の現状と問題点2016年のEuropean Crohn’ s and Colitis Organization (ECCO)ガイドラインでは、体軸関節炎に対しては、1リウマチ専門医と共同で管理する必要がある、2集中的な理学療法が効果的である、3短期のNSAIDsは効果的だが長期治療は推奨されない、4スルファサラジンおよびメトトレキサートは効果が限定的である、5抗TNF-α抗体はNSAIDsに不耐性または難治性の症例に有効である、と記載している 10)。末梢関節炎に対しては、1根本である腸炎の治療が末梢性関節炎治療にも十分である、2症状を緩和するために短期NSAIDsまたは局所ステロイド注射が使用可能である、3短期経口ステロイドは効果的ではあるが可能な限り速やかに中止する、4持続性関節炎ではスルファサラジンとメトトレキサートは有効性があるかもしれない、5抗TNF-α抗体は治療抵抗性の症例には適切かつ有効である、と記載している。わが国ではこれまで、IBD合併症としての関節障害の治療についての検討は行われておらず、実際にどの薬がよく効くのかはわかっていない。しかし、体軸関節炎では、NSAIDsなど鎮痛薬や理学療法に加え、抗TNF-α抗体も有効であることからIBDの病勢も鑑みて投与すると良い。末梢関節炎も初期治療としてNSAIDsが効果的だが、漫然とした長期使用はIBDの腸管病変の再燃や増悪を誘発する可能性があり、最低限の期間に留めるべきである。さらに、Type1はIBDの病勢に関連しているので原疾患の治療のみで改善する場合も多いが、Type2はIBDの病勢とは関連しないので関節炎としての治療を行う必要がある。 II. 皮膚病変・IBDに合併する主な皮膚病変として、結節性紅斑(EN)や壊疽性膿皮症(PG)が挙げられる。・ENは予後良好で、多くは原病の改善とともに自然消退する。一方、PGはしばしば急性増悪や治療に難渋する場合があり、早期から皮膚科専門医との連携が必要である。・抗TNF-α抗体投与例の約10%に乾癬様皮疹が 生じ、その診断および治療に当たっては皮膚科専門医と連携して行う。 皮膚はIBDの腸管外病変が高頻度に認められる臓器の一つであり、IBD患者の約15%に皮膚病変が合併する 14,15)。IBDに合併する主な皮膚病変としては結節性紅斑、壊疽性膿皮症、Sweet病、アフタ性口内炎などが挙げられる。これらの皮膚病変はUC、CDのいずれでも共通して認められることが多いが、疾患別における合併率や腸管病変の病勢との相関など皮膚病変によって異なる特徴もみられる。また抗TNF-α抗体投与中に生じる乾癬様皮疹など、通常の薬疹とは異なる免疫学的機序により生じる薬剤関連性の皮膚病変にも留意する必要がある。 1) 結節性紅斑(erythema nodosum:EN) ENは皮下脂肪組織に生じる脂肪織炎の一病型であり、病理組織学的にはリンパ球、組織球、好中球の浸潤を伴う隔壁性脂肪織炎を呈する。ENの多くは特発性(約55%)であるが、感染症(上気道感染、特に溶連菌など)、サルコイドーシス、薬剤性(サルファ剤、経口避妊薬、抗菌薬など)、妊娠、免疫関連疾患(IBD、ベーチェット病など)など様々な疾患や病態に伴い、症候性に出現する 16)。ENはIBD患者に合併する皮膚病変の中では最も多く(1.2%~6.2%)、疾患別ではCD、性別では女性に多い 14,17)。また眼や関節病変、大腸に限局した腸管病変、壊疽性膿皮症を有するIBD患者に多い 17)。 1診断のポイント典型像は下腿伸側に好発する発赤を伴う有痛性の皮下結節であり、左右対称性に多発することが多い。時に大腿、足関節やその近傍、上肢などにも生じるが、顔面や体幹部は稀である。下腿伸側や足関節周囲に局所の熱感と圧痛を伴う膨隆した紅斑を認める場合には本症を疑う。ENの診断は通常、臨床所見に基づいて行われ、典型例では皮膚生検を行わなくても診断は可能である。 2治療およびコンサルテーションのタイミングENはIBDの病勢と相関することが多く、治療は原病のコントロールが基本となる。ENの予後は良好で、その多くは瘢痕を残すことなく自然消褪する。対症療法としては安静、冷却、下肢拳上、鎮痛剤(NSAIDs)などが挙げられる。しかし、NSAIDsはIBDの増悪を招くリスクがあり、漫然とした使用は避け、最低限の使用に留めるべきである。症状が強い場合、治療抵抗例あるいは再発を繰り返す例では、ステロイド、免疫調節薬、抗TNF-α抗体製剤などが有効な場合があり、皮膚科専門医と連携した上で治療法を決定することが望ましい。 2) 壊疽性膿皮症(Pyoderma Gangrenosum:PG) PGは強い疼痛を伴い皮膚の壊疽性潰瘍を特徴とする慢性および再発性疾患で、臨床病型としては潰瘍型(最も多い)、膿疱型、増殖型、水疱型の4つがある。PG患者の約50%に何らかの基礎疾患を合併し、なかでもIBDが最も多い。一方、IBDにPGを合併する頻度は0.3~2.2%とENに比べ低く、一般に大腸病変を有するIBD症例に認められ、疾患別ではUC、性別では女性に多い 14,17,18)。またPG合併とIBDの疾患活動性と相関しないとされているものの、重症例に多い傾向がある。
1診断のポイントPGの多くは小外傷(静脈穿刺、生検も含む)などを契機として、はじめは紅斑や膿疱、結節、小丘疹などで発症する。その後、皮疹は急速に拡大し、時に多発融合して、穿掘性の潰瘍を形成する。潰瘍辺縁は周堤様に隆起し、潰瘍底は深く、しばしば穿掘性を呈する。好発部位は下肢、体幹、臀部であるが、全身いずれの部位にも生じ得る。しばしば人工肛門(stoma)周囲にも出現する。PGの診断は潰瘍の形態的特徴や特有の臨床経過から臨床的に行われる。病理組織学的には真皮に著明な好中球浸潤を認めるが特異的所見はなく、感染症や血管炎による皮膚病変との鑑別のため生検や培養検査が行われる。 2治療およびコンサルテーションのタイミング治療は、ENと同様、IBDに対する治療が基本であり、軽症例では外用薬(ステロイド、タクロリムスなど)による治療が併せて行われる。これらの治療で改善しない場合、PGの急速な症状悪化を認める場合にはステロイド内服が第一選択薬となる。ステロイドが奏功しない場合にはカルシニューリン阻害剤、抗TNF-α抗体製剤、血球成分除去療法などの有効性が報告されており、治療選択肢となる。潰瘍の形態的特徴や臨床経過からPGを疑った場合には、早期の段階で皮膚科専門医にコンサルトすることが望ましい。 3) Sweet病(Sweet’ s syndrome:SS) SSは1発熱、2多核好中球を中心とした末梢血好中球増多、3顔面・頸部、四肢に好発する有痛性隆起性紅斑、4真皮への稠密な好中球浸潤の4つを特徴とする疾患で、急性発熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)、好中球性皮膚症(neutrophilic dermatosis)とも呼ばれる。IBDに合併する皮膚病変としてはEN、PGに次いで多いと考えられているが稀である(正確な頻度は不明)。またIBD以外にもSSの約20%に悪性腫瘍、特に白血病や骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍を伴う 19)。加えて、薬剤(アザチオプリン、解熱鎮痛剤、カルバマゼピンなど)を誘因に発症する薬剤性Sweet病もあり、IBD患者でチオプリン製剤を投与する場合には注意を要する。 1診断のポイント既報では女性に多く、通常、IBDの疾患活動性と相関する 20)。疾患別の合併率については不明であるが、UC、CDとも大腸病変を有する場合が多い 20)。約半数で咽頭痛などの上気道炎症状が先行し、特徴的な症状として38°C以上の発熱を突発的に生じ、その後急速に皮疹が出現する。典型的には1~3cm大の境界明瞭な皮疹で、やや隆起した有痛性の浮腫性紅斑を呈し、圧痛を伴い多発する。好発部位としてはENやPGと異なり、顔面、背部、上肢などの上半身を中心に出現する。SSの診断は病理組織所見で好中球浸潤の証明が必要であり、皮膚生検が必須である。 2治療およびコンサルテーションのタイミングSSの治療は基礎疾患となるIBDの病勢コントロールが優先される。しかし、SSでは関節痛や発熱など強い全身症状を伴うことが多く、治療に難渋する場合にはステロイド(外用、内服)や免疫調節薬なども使用される 20)。本疾患を疑った場合には、早期から皮膚科専門医と連携して診断および治療に当たる必要がある。 4) 抗TNF-α製剤投与に伴う皮膚病変抗TNF-α製剤投与例の約30%に皮膚病変が合併する 21,22,23)。なかでも乾癬様皮疹と皮膚感染症が最も多く(約10%)、その他にはinfusion reaction(約5–10%)、湿疹(約2%)、皮膚癌(1%未満)、ループス様症候群(1%未満)などがある。乾癬様皮疹と皮膚感染症の発生率は経年的に上昇するが 19)、特に乾癬様皮疹では抗TNF-α製剤の中止に至る場合が多い(乾癬様皮疹;20~30%、皮膚感染症;3%) 21,23)。抗TNF-α製剤投与中に生じる乾癬様皮疹は、同薬剤が乾癬治療に用いられるにもかかわらず類似した皮膚病変を誘発することから、逆説的反応(paradoxical reaction)とも呼ばれる。 1診断のポイント抗TNF-α製剤投与に伴う皮膚病変は、乾癬、関節リウマチなど他の基礎疾患でも認められる。また抗TNF-α製剤の種類や投与期間、IBDの病勢にかかわらず発症する。IBDではCDでの報告が多く、リスク因子としては女性、喫煙(過去の喫煙歴も含む)などが挙げられている。発生部位は四肢、体幹、頭皮、手掌などに多いが、時に掌蹠にも認められ、掌蹠膿疱症に類似した皮膚病変を呈する。 2治療およびコンサルテーションのタイミング乾癬様皮疹の多くは外用薬(ステロイド、ビタミンD3製剤など)で改善し、早急な抗TNF-α製剤の中止は不要である。しかし、外用薬で改善しない場合は抗TNF-α製剤の中止をせざるを得ない場合が多い。また他の抗TNF-α製剤への変更では皮膚症状が高率に再燃する 21,23)。抗TNF-α製剤以外の治療としてはウステキヌマブ(抗IL-12/23 p40抗体)の有用性も報告されている 24,25)。抗TNF-α製剤投与中に生じる皮膚病変の診断に迷う場合も少なくなく、これらの皮膚病変を疑った場合には、皮膚科専門医と連携しながら治療に当たることが望ましい。
III. 血栓塞栓症・血栓塞栓症はIBD患者の生命予後に関わる重要な合併症の1つであり、そのリスク因子は高齢、手術例、カテーテル留置、低アルブミン血症、CRP高値、Dダイマー高値、下肢静脈瘤、血管炎などである。・診断にはまず血栓塞栓症を疑うことが重要で、各種画像診断や専門家へのコンサルテーションが重要である。・周術期のIBD患者では血栓塞栓症の発症率は高く、 個々の患者に応じた診断・治療が重要である。 血栓塞栓症はIBD患者の重要な合併症の一つである。多くは静脈に発生するが、頻度は少ないものの動脈にも発生することがある 26)。頻度の多い静脈血栓症(venous thromboembolism)には、肺動脈が血栓塞栓で閉塞する肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism)と深部静脈に血栓が生じる深部静脈血栓症 (deep venous thrombosis)がある。肺血栓塞栓症は深部静脈血栓症が原因として起きることが多い。欧米およびアジアからの報告では、IBD患者では健常人や非IBD患者の2~3倍の静脈血栓症の発症率である27,28)。活動期のIBD患者の静脈血栓症合併率は高く、入院、再燃症例などの疾患活動性の高い状態および静脈血栓症の既往例のある場合には静脈血栓症の合併リスクが高くなる 29,30)。本邦における後ろ向き研究での報告では、IBD入院患者の静脈血栓症合併のリスク因子として、50歳以上、手術例、中心静脈カテーテル留置、ステロイド使用例、低アルブミン血症、CRP・Dダイマー高値、下肢静脈瘤、血管炎が報告されている 31)。また、静脈血栓症の合併を起因とする血栓塞栓症は、IBDの主な死因の一つであり、その死亡率は10.7~25%と高く、早期の静脈血栓症の診断・治療はIBD患者の予後改善のために重要である 32,33.34)。 1) 診断のポイント静脈血栓症の多くは下肢の静脈に発生し、下肢以外の上肢や頸静脈等に発生するものはカテーテル関連のものが多い。肺血栓塞栓症は呼吸困難、胸痛、発熱、欠神発作が特徴的な所見であるが、深部静脈血栓症は無症状のことが多いため、その診断には前述で示したリスク因子を参考にしながら深部静脈血栓症の存在を疑うことが重要である。入院後、長期臥床になりそうな可能性のある高齢者も血栓症の発症を常に疑って診療する。IBD患者における静脈血栓症のスクリーニング検査には確立されたプロトコールはなく、臨床の現場で役に立つ血液検査所見としてはD-ダイマーの高値で、IBD入院患者の入院後の静脈血栓症発生に関して独立した予測因子として報告されている 35)。IBD患者では従来の肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症の好発部位のみならず、門脈、腸間膜静脈、脳血管などにも生じることがあり、特にリスク因子を有する入院患者ではD-ダイマーの測定や下肢を含む超音波検査・造影CT検査等を用いて血栓症の診断・スクリーニングを行う必要がある 35,36.37)。 2) コンサルテーションのタイミングIBD患者に血栓塞栓症を合併した場合には、IBDの病状と血栓のリスクに応じて抗凝固療法の適応を検討する必要がある。治療に関しては本邦では「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」 36)が出されているが、IBD患者における血栓塞栓症の治療に関しては統一された指針は無く、血管外科や肺塞栓チームなどの専門医と連携しながら治療に当たることが望ましい。周術期の血栓塞栓症に関して、本邦における手術症例の前向き検討(大腸癌173例、潰瘍性大腸炎144例)では、30歳以上の手術症例で大腸癌5.2%、潰瘍性大腸炎13.9%と潰瘍性大腸炎における血栓塞栓症の合併率が有意に高い。また血栓塞栓症の合併は術前が多いものの、術後2週間以内の発症例もみられることから術前後を含む周術期のスクリーニング検査(D-ダイマーの測定、超音波検査など)も重要である 38,39.40)。緊急手術になる可能性が高い症例には血栓塞栓症の加療を先行すべき場合があり、早めのスクリーニングを考慮する。また、血栓塞栓症には門脈系血栓の合併にも留意する必要がある 41)。周術期の血栓塞栓症の予防に関しては「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」 36)に準じ、症例のリスクに応じて弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法などの理学的予防策や抗凝固薬を用いた血栓予防療法を検討する。しかし、IBD患者に対する血栓症予防については、上述したリスク因子や血栓予防介入に伴う出血リスクの増加を考慮した上で、その適応を判断する必要がある。 IV. 原発性硬化性胆管炎・原発性硬化性胆管炎(PSC)はIBDを高率に合併することが知られており、本邦での全国調査ではPSCにおけるIBD合併率は約40%、IBDにおけるPSC合併率は2.4〜7.5%である。・PSC合併IBDの特徴としてRectal sparing、右側大腸優位な炎症、大腸癌の発生リスクが高いことが挙げられる。・PSCは肝移植が唯一の根本的治療であり、肝臓専門 医と連携しながら診療を進めていく必要がある。 原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis, PSC)は肝内・肝外胆管に原因不明の多発性・びまん性の狭窄を認めることにより胆汁うっ滞をきたし、進行すると肝硬変、肝不全に陥る予後不良な疾患である。PSC患者ではIBDを高率に合併することが知られており、PSC診断基準の小項目にもIBDの合併が含まれ
ている。本邦で行われた最近の全国調査では、PSCにおけるIBDの合併率は約40% 42)、IBDからみたPSCの合併率は2.4〜7.5%と報告されている 43)。また小児のPSCでは76%ときわめて高率にIBDを合併するが 44)、小児IBDにおけるPSCの合併率は1.2〜1.5%と報告されている 45,46)。PSCとIBDが合併する原因は不明であるが、遺伝的要因や細菌学的要因などが考えられている。 1) 診断のポイントPSCに特徴的な症状はないが、胆道閉塞・胆管炎による黄疸、発熱などの症状を呈する。無症状のことも多く,その際の診断は容易ではないが、経過中にALP、γ-GTPなどの胆道系酵素が上昇した場合にはPSCを念頭において、胆管狭窄、拡張などの特徴的な胆管像を、腹部超音波検査、CT、MRCPなどにて診断する。PSCに合併する潰瘍性大腸炎の特徴として、直腸に炎症が無いか軽度であるrectal sparingの所見を認めることが特徴である。また右側大腸優位な炎症、backwash ileitisを呈することも多い。小児においては生理的にALP値が高いため、年齢に沿った値の評価が必要である。 2) 鑑別診断潰瘍性大腸炎に画像上胆管の拡張が確認された場合には、悪性腫瘍や胆石症を除外する必要がある。また同じ慢性胆汁うっ滞を呈する原発性胆汁性胆管炎(PBC)とは抗ミトコンドリア抗体が検出されないこと、PBCでは肝内の小胆管が障害されるのに対して、PSCは通常肝内・肝外の大胆管が障害を来す点などで鑑別される。またIgG4関連胆管炎の一部は血清IgG4が正常値を示すこともあり、診断に際して肝生検が必要な場合もある。小児期発症のPSCでは自己抗体陽性、血清IgG高値、慢性肝炎様の肝組織所見がみられることがあり、自己免疫性肝炎(AIH)との鑑別が問題となる。 3) 治療法とフォローアップPSCに対して高いエビデンスレベルで推奨される薬剤は存在しない。ウルソデオキシコール酸が胆道系酵素改善を目的として使用されるが、長期的な予後改善効果については一定の結論が得られていない。潰瘍性大腸炎を改善させる目的でサラゾスルファピリジンを用いることもある。定期的な採血と腹部超音波検査、CT・MRCPなどにより画像検査が必要である。肝硬変、肝不全まで進行した症例については肝移植が唯一の根本的治療であることより、肝硬変を来した場合には早期に肝臓専門医にコンサルテーションする必要がある。また肝硬変に至らない場合でも、肝機能が不安定な場合には肝臓専門医にコンサルテーションすることが望ましい。またPSCを合併した潰瘍性大腸炎では大腸癌の発生リスクが高いことが報告されており、定期的なサーベイランスが必要である。V. 膵炎 · IBD患者ではしばしば膵酵素異常を認めるが、その病態や病因には胆石、十二指腸病変、自己免疫性膵炎、薬剤などさまざまなものが含まれる。· IBD治療薬で膵酵素異常や膵炎を生じる場合があり、特にチオプリン製剤、メサラジン製剤が知られている。· 膵炎に対する治療は非IBD患者と同様であり、重症膵炎など集学的治療を要する場合には専門施設への紹介も検討すべきである。 IBD患者ではしばしば膵酵素異常を合併し、非IBD患者よりもその発症率は高いとされている。しかし、その病態や病因は単一ではなく、正確な頻度は不明である 47)。病態としては急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎に加え、無症候性膵酵素異常も認められる 48,49)。IBDに合併する急性膵炎の原因としては、胆石、アルコール、薬剤、十二指腸CDなどが多い。その内、胆石の罹患リスクは非IBD患者と比べCDで約2倍高いがUCでは変わらないことから 50)、胆石性膵炎や十二指腸CDに伴う膵炎はCDの腸管外合併症(EIM)と考えられる。一方で、IBDに合併する慢性膵炎のほとんどは特発性で、男性およびUCに多い 51)。自己免疫性膵炎(AIP)はリンパ球や形質細胞浸潤による硬化性膵炎を来たしIgG4関連疾患として位置づけられるType1と、好中球による膵管上皮破壊を来すType2に分類される。欧米の報告ではAIP患者の6〜27%にIBD合併が認められ、UCに多く、Type1(1%)と比べType2(17%)に多い 51)。しかし、本邦ではAIPのほとんどがType1であることから、IBD合併の頻度は3%以下とされる 52)。無症候性膵酵素異常についてはまだ不明な点が多いが、IBD患者では明らかな膵炎の合併の有無にかかわらず膵酵素上昇を示すことが知られており、無症状IBDの11〜14%に正常上限2倍以上の膵酵素上昇が見られるとの報告や 53)、腸炎に伴う腸管上皮の透過性亢進によって血中に膵酵素が吸収されるという報告がある 54)。またIBDに対して使用する薬剤で膵酵素異常や膵炎を発症することがあり注意を要する。膵炎との関連が確実な薬剤として、アザチオプリン、メルカプトプリン(6-MP)、メサラジン(5-ASA)、メトロニダゾールなどがあり、発症機序として薬剤に対する患者側のアレルギー反応が想定されている 55)。投与から膵炎発症までの期間は30日以内のことが多い 56)。小児IBDにおけるEIMとしての膵炎の頻度は0.9%と報告されているが 57)、これには薬剤性膵炎が含まれていない可能性が高く、実臨床ではより高頻度に膵炎の合併を経験する。 1) 診断のポイント急性膵炎の診断基準は非IBDと同様で、1上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある、2血中、尿中あるいは腹水
中に膵酵素の上昇がある、3画像検査で膵に急性膵炎に伴う異常所見がある、これら3項目のうち2項目以上を満たし、他の膵疾患や急性腹症の原因を除外した際に診断される 58)。膵炎を疑う場合には、血中アミラーゼ以外に膵型アミラーゼ(p-Amy)、尿中アミラーゼ、リパーゼなどを同時に測定することにより診断が確実になる場合がある。また腹部CTにより炎症の広がりや重症度を評価することも重要である。慢性膵炎やAIPも非IBDと同様の診断基準によって診断するが、急性膵炎より自覚症状の発現に乏しく、画像所見が重要である。慢性膵炎では膵管内結石や膵石灰化、主膵管の不整な拡張などが見られ 59)、AIPでは膵腫大や主膵管の不整狭細像等が認められるとともに、Type1では高IgG4血症を認める 60)。最近では超音波内視鏡下穿刺細胞診(EUS-FNA)による組織学的診断が有用な場合もある。しかしながら、膵炎による腹痛はしばしばIBDによる腸管症状との鑑別が困難なことがあり、加えてIBD患者においてしばしば無症候性膵酵素上昇が認められることから、注意深く診断する必要がある。 2) 鑑別診断急性膵炎との鑑別には、上腹部痛を来す急性腹症、例えば消化管穿孔、急性胆嚢炎、腸閉塞、腸間膜動脈閉塞症や急性大動脈解離といった疾患に留意する必要がある。加えて慢性膵炎やAIPでは、膵癌や上部消化管疾患等も鑑別対象となり得る。また前述の通りIBDでも上腹部痛や無症候性膵酵素上昇があることから、腹部超音波検査やCT等の画像検査が診断確定および鑑別診断に有用である。 3) 治療法とフォローアップ膵炎に対する治療は非IBDと同様に行うが、重症膵炎では死亡例もあることより、全身管理ができない施設では専門施設への紹介も検討されるべきである。薬剤性を疑う場合は、被疑薬の中止を行う。AIPと診断された場合にはステロイド使用も考慮される。また活動性十二指腸CDが原因と考えられる場合は、IBDに対する治療も考慮される 61)。VI. 血管炎 · IBDには高安動脈炎をはじめとした血管炎症候群を合併することがあり、臨床症状から血管炎の存在を疑うことが重要である。· IBDに合併する大型血管炎(高安動脈炎)では腸管病変の活動性では説明できない炎症所見を伴うものの、病初期には腸管病変以外には明らかな臓器障害が認められない点が診断に重要である。· IBDに合併するANCA関連血管炎では、腸管以外の臓器(上気道、咽頭、眼、耳、鼻、副鼻腔、肺、腎など)にも血管炎に関連する病変が認められる点が診断に重要である。 血管炎は全身の様々な血管壁に炎症を来す疾患であり、血管炎を主病変とする「原発性血管炎」と他疾患に血管炎を伴う「二次性(続発性)血管炎」があり、前者を「血管炎症候群」と呼称している。血管炎症候群は罹患血管の口径により大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎に分類される。大型血管炎は大動脈とその主要分枝動脈が侵され,高安動脈炎と巨細胞性動脈炎が含まれる。中型血管炎には主幹分岐動脈と臓器を結ぶ動脈が傷害される結節性多発動脈炎と川崎病が含まれる。小型血管炎には臓器実質内の小動脈、細動静脈、毛細血管が侵される抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、免疫複合体性小型血管炎(IgA血管炎など)が含まれる 62)。ANCA関連血管炎やIgA血管炎ではIBDと関連しない多彩な消化管病変を高頻度に併発することが知られているが、IBDとの関連では高安動脈炎の合併頻度が高い 63,64,65)。また、頻度は明らかではないものの巨細胞性動脈炎やANCA関連血管炎(多発血管炎性肉芽腫症や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)との合併も報告されており 64,66)、IBD診療においては血管炎症候群の合併に留意する必要がある。そのためIBD患者に血管炎の合併が疑われた際には、速やかな膠原病内科専門医、循環器内科専門医との連携が必要である。 1) 診断のポイントIBDを合併する原発性血管炎としては高安動脈炎の頻度が比較的高いことが報告されており、高安動脈炎の約6〜9%にIBDを合併するとされている 65,67)。しかしながら、高安動脈炎合併例の内視鏡像はUCやCDに非典型的なものが多いとされ、正確な頻度は不明である 63)。血管炎症候群の発症時期との関連では、IBDの発症が先行することが多いとする報告や 63,64)、高安動脈炎が先行するとの報告もあり 65)、一定の見解は得られていない。また、IBDの疾患活動性と高安動脈炎との関連性についても一定した見解は得られていない 64,65)。本邦で行われた検討では、高安動脈炎を合併するUC患者
は非合併UC患者よりも若年発症であり、疾患感受性遺伝子HLA-B*52:01を有する割合が高く 65)、さらにHLA以外の遺伝因子も両疾患で共有されることが知られており、UCと高安動脈炎に共通の病態がある可能性が示唆されている。実際の診療では、臨床症状から血管炎の存在を疑うことが重要である。大型血管炎の高安動脈炎では発熱、全身倦怠感、頸部痛、背部痛、めまい、血圧の左右差などの症状からその存在を疑い、腸管病変の活動性では説明できない炎症所見を伴うものの、病初期には腸管病変以外には明らかな臓器障害を認めない点が重要である。一方、多発血管炎性肉芽腫症などのANCA関連血管炎では、腸管以外の臓器(上気道、咽頭、眼、耳、鼻、副鼻腔、肺、腎など)にも血管炎に関連する病変(臓器障害)を認めることが診断の手がかりとなる 68)。 2) 鑑別診断血管炎を来す疾患は多岐にわたることから様々な病態を念頭に鑑別診断を行うことが重要であり、膠原病内科専門医、循環器内科専門医との早期からの連携が必要である。IBDに合併する血管炎としては高安動脈炎の頻度が最も高いが、巨細胞性動脈炎や血管型ベーチェット病、IgG4関連大動脈周囲炎、感染性動脈瘤など、大型血管炎を来す他の疾患との鑑別に注意を要する 68)。一方、小型血管炎であるANCA関連血管炎では好中球細胞質蛋白に対する自己抗体(ANCA)が陽性を示すが、その主な標的抗原としてproteinase3(PR3)やmyeloper-oxidase (MPO)が知られている。特にPR3-ANCAやMPO- ANCAは疾患特異性が高く、PR3-ANCA陽性を呈するANCA関連血管炎として多発血管炎性肉芽腫症が、MPO-ANCA陽性を呈するANCA関連血管炎としては顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症が挙げられる。一方、IBDにおけるANCA陽性率も比較的高く、UCでは約30%、CDでは約3%の症例にPR3- ANCA陽性が認められることが報告されている 69)。また、5-ASA製剤不耐症例においてもPR3-ANCA陽性を示すことがあり、特に5-ASA製剤による肺障害症例での報告が散見されており注意を要する 70)。 3) 治療法とフォローアップ高安動脈炎を合併したIBD患者では、5-ASA製剤に加えて、ステロイド、免疫調節薬(アザチオプリン)、さらには生物学的製剤(抗TNF-α抗体製剤)、JAK阻害剤などが用いられているが 64)、実際の治療においては膠原病内科専門医、循環器内科専門医との連携が不可欠である。高安動脈炎の一般的な治療アルゴリズムとしては、ステロイド製剤を基本に免疫調節剤(メトトレキサート(保険適用外)、アザチオプリン)、免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン(いずれも保険適用外))、シクロホスファミド、Mycophenolate mofetil(保険適用外)、や生物学的製剤(トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)、抗TNF-α抗体製剤(保険適用 外))、抗血小板剤などの内科治療が行われる。しかし大動脈主要分枝の閉塞性病変や大動脈弁閉鎖不全、大動脈瘤などの拡張性病変を生じた際には外科的血行再建術や血管内治療(endovascular treatment; EVT)が考慮される 68)。 〈参考文献〉*関節痛・関節炎1. Orchard TR. Management of arthritis in patients with inflammatory bowel disease. Gastroenterol Hepatol (NY). 8(5):327-9, 2012. 2. Rudwaleit M, van der Heijde D, Landewé R, et al. The development of Assessment of SpondyloArthritis international Society classification criteria for axial spondyloarthritis (part II): validation and final selection. Ann Rheum Dis. 68(6): 777-83, 2009. 3. van der Linden S, Valkenburg HA, Cats A. Evaluation of diagnostic criteria for ankylosing spondylitis. A proposal for modification of the New York criteria. Arthritis Rheum. 27(4): 361-8, 1984. 4. 日本脊椎関節炎学会編集.B.体軸性脊椎性関節炎.1.体軸性脊椎性関節炎の概念.脊椎関節炎診療の手引き2020. p17-18, 2020. 5. 日本脊椎関節炎学会編集.A.総論.2.分類基準.脊椎関節炎診療の手引き2020. p5-12, 2020. 6. Rudwaleit M, van der Heijde D, Landewé R, et al. The Assessment of SpondyloArthritis international Society classification criteria for peripheral spondyloarthritis and for spondyloarthritis in general. Ann Rheum Dis. 70(1): 25-31, 2011. 7. 猿田雅之、冨田哲也.炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎.脊椎関節炎診療の手引き2020. p104-107, 2020. 8. 櫻井俊博、松井敏幸、青柳邦彦、他.炎症性腸疾患の腸管外合併症.胃と腸. 48(5): 591-600, 2013. 9. 猿田雅之.総括:合併症・副作用への対策プロジェクト「炎症性腸疾患と合併症としての関節症状の実態調査(一次調査)」 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究平成30年度 総括・分担研究報告書 2019年3月. 10. Harbord M, Annese V, Vavricka SR, et al. The First European Evidence-based Consensus on Extraintestinal Manifestations in Inflammatory Bowel Disease. J Crohn’s Colitis 10: 239–254, 2016. 11. Hukuda S, Minami M, Saito T, et al. Spondyloarthropathies in Japan: nationwide questionnaire survey performed by the Japan Ankylosing Spondylitis Society. J Rheumatol. 28(3): 554-9, 2001. 12. 福西成男:IBDに合併する関節症状とその対策. IBD Research 3: 33-36, 2009. 13. Rudwaleit M, Jurik AG, Hermann KG, et al. Defining active sacroiliitis on magnetic resonance imaging (MRI) for classification of axial spondyloarthritis: a
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研究代表者: 久松 理一 (杏林大学医学部 消化器内科学)【診断基準】 責 任 者: 平井 郁仁 (福岡大学医学部 消化器内科)共同研究者: 芦塚 伸也 (宮崎大学医学部附属病院 消化器内科 内科学講座循環体液制御学分野)新井 勝大 (国立成育医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)飯島 英樹 (大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学)石毛 崇 (群馬大学大学院医学系研究科 小児科学)江﨑 幹宏 (佐賀大学医学部附属病院 消化器内科)小金井 一隆 (横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科)田邉 寛 (福岡大学筑紫病院 病理部)長沼 誠 (関西医科大学 内科学第三講座)馬場 重樹 (滋賀医科大学医学部附属病院 消化器内科 栄養治療部)東 大二郎 (福岡大学筑紫病院 外科)久部 高司 (福岡大学筑紫病院 消化器内科)平岡 佐規子 (岡山大学病院 炎症性腸疾患センター)藤井 俊光 (東京医科歯科大学 消化器内科)松本 主之 (岩手医科大学医学部 内科学講座消化器内科 消化管分野)渡辺 憲治 (兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科) 関係者一覧13
【治療指針】 統括責任者(内科): 中村 志郎 (大阪医科大学 第二内科)統括責任者(外科): 杉田 昭 (横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科)令和2年度潰瘍性大腸炎治療指針作成委員責 任 者: 長沼 誠 (関西医科大学 内科学第三講座)共同研究者: 中村 志郎 (大阪医科大学 第二内科)松岡 克善 (東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科)小林 拓 (北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター)松浦 稔 (杏林大学医学部 消化器内科学)猿田 雅之 (東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科)加藤 真吾 (埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)加藤 順 (千葉大学大学院医学研究院 消化器内科)横山 薫 (北里大学医学部 消化器内科)石原 俊治 (島根大学医学部 内科学講座(内科学第二))小金井 一隆 (横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科)内野 基 (兵庫医科大学 消化器外科学講座 炎症性腸疾患外科)水落 建輝 (久留米大学医学部 小児科)虻川 大樹 (宮城県立こども病院 総合診療科・消化器科)仲瀬 裕志 (札幌医科大学医学部 消化器内科学講座)令和2元年度クローン病治療指針作成委員責 任 者: 渡辺 憲治 (兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科)共同研究者: 中村 志郎 (大阪医科大学 第二内科)江﨑 幹宏 (佐賀大学医学部附属病院 消化器内科)柿本 一城 (大阪医科大学 第二内科)竹内 健 (辻仲病院柏の葉 消化器内科・IBD センター)長堀 正和 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床試験管理センター)馬場 重樹 (滋賀医科大学医学部附属病院 消化器内科 栄養治療部)平井 郁仁 (福岡大学医学部 消化器内科学)平岡 佐規子 (岡山大学病院 炎症性腸疾患センター)穂苅 量太 (防衛医科大学校 消化器内科)三上 洋平 (慶應義塾大学医学部 消化器内科)内野 基 (兵庫医科大学 消化器外科学講座 炎症性腸疾患外科)小金井 一隆 (横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科)東 大二郎 (福岡大学筑紫病院 外科)新井 勝大 (国立成育医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)清水 泰岳 (国立成育医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)仲瀬 裕志 (札幌医科大学医学部 消化器内科学講座)
令和2年度潰瘍性大腸炎、クローン病外科治療指針作成委員責 任 者: 杉田 昭 (横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科)共同研究者: 小金井 一隆 (横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科)二見 喜太郞 (福岡大学筑紫病院 外科)池内 浩基 (兵庫医科大学 消化器外科学講座 炎症性腸疾患外科)高橋 賢一 (東北労災病院 大腸肛門外科)石原 聡一郎 (東京大学医学部 腫瘍外科)篠崎 大 (東京大学医科学研究所病院 腫瘍外科)板橋 道朗 (東京女子医科大学 消化器・一般外科)東 大二郎 (福岡大学筑紫病院 外科)小山 文一 (奈良県立医科大学 中央内視鏡部)木村 英明 (横浜市大市民総合医療センター 炎症性腸疾患センター)水島 恒和 (大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科)内野 基 (兵庫医科大学 消化器外科学講座 炎症性腸疾患外科)渡辺 和宏 (東北大学医学部 消化器外科)大北 喜基 (三重大学医学部 消化管・小児外科)根津 理一郎 (大阪中央病院 外科)舟山 裕士 (仙台赤十字病院 外科)藤井 久雄 (吉田病院)福島 浩平 (東北大学 分子病態外科)新井 勝大 (国立育成医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)中村 志郎 (大阪医科大学 第二内科)平井 郁仁 (福岡大学医学部 消化器内科) 小児IBD治療指針2020改訂ワーキンググループ総括責任者(小児):清水 俊明 (順天堂大学医学部 小児科) UC班責任者:虻川 大樹 (宮城県立こども病院 総合診療科・消化器科) CD班責任者:新井 勝大 (国立成育医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)水落 建輝 (久留米大学医学部 小児科)清水 泰岳 (国立成育医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)熊谷 秀規 (自治医科大学 小児科)井上 幹大 (三重大学大学院 消化管・小児外科)内田 恵一 (三重大学大学院 消化管・小児外科)工藤 孝広 (順天堂大学医学部 小児科)石毛 崇 (群馬大学大学院医学系研究科 小児科学)岩間 達 (埼玉県立小児医療センター 消化器・肝臓科)国崎 玲子 (横浜市立大学附属市民総合医療センター 炎症性腸疾患センター)渡辺 憲治 (兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科)長沼 誠 (関西医科大学 内科学第三講座)中村 志郎 (大阪医科大学 第二内科)
炎症性腸疾患の腸管外合併症治療指針作成委員総括責任者: 松浦 稔 (杏林大学医学部 消化器内科学)関節痛・関節炎責 任 者: 猿田 雅之 (東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科)小林 拓 (北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター)新井 勝大 (国立成育医療研究センター 消化器科/小児炎症性腸疾患センター)皮膚責 任 者: 松浦 稔 (杏林大学医学部 消化器内科学)平井 郁仁 (福岡大学医学部 消化器内科学)松岡 克善 (東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科)樋口 哲也 (東邦大学医療センター佐倉病院 皮膚科)血栓塞栓症責 任 者: 加藤 真吾 (埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)渡辺 憲治 (兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科)内野 基 (兵庫医科大学 消化器外科学講座 炎症性腸疾患外科) 原発性硬化性胆管炎・膵炎責 任 者: 新﨑 信一郎 (大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学)長沼 誠 (関西医科大学 内科学第三講座)虻川 大樹 (宮城県立こども病院 総合診療科・消化器科) 血管炎責 任 者: 髙木 智久 (京都府立医科大学医学研究科 消化器内科学教室)加藤 順 (千葉大学大学院医学研究院 消化器内科学)藤井 俊光 (東京医科歯科大学 消化器内科)溝口 史高 (東京医科歯科大学 膠原病・リウマチ内科学) ※診断基準・治療指針作成にあたり、多大なご協力をいただきました内科・外科・小児科の多くの先生方に あらためて御礼申し上げます。
潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班) 令和2年度分担研究報告書 令和3年3月作成