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PCI 合併症に対するベイルアウトアルゴリズム エキスパートコンセンサス(2024・和文) 日本心血管インターベンション治療学会・2024・32 ページ · 冠動脈・インターベンション
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Clinical expert consensus document on bailout algorithms for complications in percutaneous coronary intervention from the Japanese Association of Cardiovascular Intervention and Therapeutics

小川 崇之1・坂倉 建一2・角辻 暁3・兵頭 真4・山口 淳一5・平瀬 裕章6山下 武廣7・門田 一繁8・小林 欣夫9・上妻 謙10

1  東京慈恵会医科大学 循環器内科2  自治医科大学附属さいたま医療センター

循環器内科3  フリーランス,大阪大学循環器内科 未来医療学4  小倉記念病院 循環器内科5  東京女子医科大学 循環器内科6  高岡みなみハートセンター7  札幌孝仁会記念病院8  倉敷中央病院 循環器内科9  千葉大学大学院医学研究院 循環器内科学10  帝京大学医学部内科学講座 循環器内科

抄録冠動脈疾患に対する経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention: PCI)治療の有効性と安全性が確立され,本邦でも年間約25 万程度のPCI 治療が施行されている.しかし,低侵襲であるPCI においても,ある一定の確率で合併症が生じる.軽症であるものから,ときには重篤な事象に進展するものまで様々な合併症が存在する.そして,その対処法についても多くの方法や意見,対応が存在する.正しい判断のもと,対処法を知っているか,それを正確に実践できるかというのは,緊急事態において,いかなる術者にも問われる問題である.特別な手技だけでなく,普遍的で安全かつ有用な対処法を整理して,経験の未熟な術者のみならず熟練者においても共有すべきである.そこで日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)のPCI 合併症におけるベイルアウトに関するタスクフォースは,様々な合併症のベイルアウトに関して推奨すべき手技をまとめ,専門家によるコンセンサス文書として提案する. 1.背景

本邦では年間約25 万程度のPCI 治療が施行されている1.PCI は冠動脈バイパス術(CABG)に比し,手術侵襲度が低いことは明らかであり,患者の負担軽減効果は大きい.さらに薬剤溶出性ステント(DES)による長期治療成績の改善効果もあり,PCI の適応も拡大した2.しかし,低侵襲であるPCI においても,ある一定の確率で合併症が生じる.合併症によっては生命の危険を脅かす重篤な問題に発展するおそれもあるため,それぞれの症例におけるリスクを予測し,合併症を予防することが不可欠である.また早期に合併症を発見することも重要であり,状況の早期把握と的確な判断で対処法を選択し正確に実践する能力が求められる.さらに,適切なデバイスを常備し,その使い方や多くの手順に関する幅広い知識を備えていなければならない.しかし,いざ知識や準備ができていても,特殊な事態であるがゆえの精神的な動揺もあり,冷静な判断は難しいことが予想される.ベイルアウト手技のみに集中するあまり全体を見誤り,さらに事態を深刻にしてしまう可能性も否定できない.また術者だけでなく,カテ室のスタッフ間でも,進む方向性が共有できているかという点も重要であり,ここでもチーム医療が必要とされる.これまでに合併症のアルゴリズムに関する論文はいくつかあるが,本邦からの発信は未だない3 4.今回のexpert consensus document では,各合併症に対するアルゴリズムを概説し,その方法をフローチャートとして提示した.検査・治療にかかわる術者およびスタッフの力強いサポートとなることを期待する.

2.総論

Figure 1 に合併症対策の総論的フローチャートを提示する.まず正確に現状を確認・把握する.血行動態を評価したうえで,有効かつ施行可能な対応策を迅速に行う.スタッフ・専門医を招集する.合併症対
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確保などを確認のうえ,それぞれに必要な対策を講じなくてはならない.このため,各自が分担してその役割を担う必要がある.合併症の対応だけでなく,デバイスの準備や手配,血行動態の管理,患者に対する様々なサポート,メカニカルサポート(MCS)の準備,患者家族への説明,後方ベッドの確保など,多様な対応が必要となる.また,カテ室には各種ベイルアウト用のデバイスや機材として,各種コイル,カバードステント,対応可能なガイドエクステンションカテーテル(GEC),マイクロカテーテル(MC)などを常にセットとして準備しておくとよい.そしてカテ業務にかかわるスタッフ全員が各デバイスの使用用途および設置場所を共有していることも重要である.多職種がかかわる事案でもあり,ときにはシミュレーションなど緊急対応の予行練習も必要となるため,明確なプロトコルを定めておくとよい.なお,状況によってはカテーテル治療に固執することなく,外科的な対応も含めて最善策を選択すべきである.ときに,軽度の合併症としてカテーテル治療で十分対応可能と判断していても,状況が一変し深刻な事案へと悪化する場合もありうる.このような状況では,外科へのコンサルトや外科手術への移行も重要となる.そのためにも常日頃から緊密な情報・意見交換ができる関係を築き,緊急時にも情報共有を迅速に行う必要がある.ただし,外科手術は手術開始までに一定の時間を要するため,その間にカテーテル治療として可能な対応を行い,最終的に最も有効な対応をハートチームとして達成することとなる.ときに,経験豊富なスタッフは,術者よりも早く合併症に気づくことができ,それを指摘することで早期発見につながる事案も少なくない.また管理について補助的な視点を提供することもできる.これは,外科医,非侵襲的心臓専門医,臨床工学技士,放射線技師,看護師にもいえることである. 時間的余裕があれば,同じような合併症を経験したことのある外部の医師や,製品に関連する企業のスタッフにも相談のうえ,対処法を確認するなど,多くの意見を参考にすることも必要である.重篤な合併症が発生した場合は,関連する全てのスタッフに第3 者もまじえ,原因や対処法についてなどを総括する検討会を行い,今後の予防につとめる必要がある.最終的に成功したか否かにかかわらず,合併症例においては可能なかぎりチームでの報グは,医師とスタッフが様々な問題について話し合

う場所となる.合併症から学ぶ努力は,結果的にチームを強化し,将来の手技のパフォーマンスを向上させると考える.

Figure 1:PCI 合併症に対するフローチャート→成功(YES) →不成功(NO) →進行

3.カテーテルによる重症冠動脈解離

【発生機序】重症冠動脈解離は,冠動脈解離によって真腔の血流量が低下し,致死性の虚血が発生することである.医原性の重症冠動脈解離の機序は,診断カテーテル・ガイディングカテーテル(GC)にかかわらず,カテーテル先端部で解離が形成され,その解離腔が拡大し,真腔の圧排・血流量低下が生じることである.特にカテーテル先端部で解離が形成されたあと,カテーテル先端圧がウェッジした状態での造影剤注入が解離腔のさらなる進展をきたす5.真腔内にすでにガイドワイヤ(GW)が進められている状況では,一般的に真腔を拡大し血流を確保することが可能であり,冠動脈解離が形成されても致死
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られていない状況での冠動脈解離形成・解離腔拡大は,真腔血流確保が困難となり非常に危険である.真腔内にGW が進められている状況でも,高度な狭窄や石灰化などにより真腔の拡張ができない場合には重篤な状況に進展することもある.【発生頻度】カテーテルによる重症冠動脈解離は右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)でほぼ同じ頻度で発生すると報告されている.Eshtehardi らによると,診断カテの0.06%,PCI の0.1%で左主幹部(LMT)解離が生じており,そのLMT 解離のうち42.1%は解離がMajor branch に,2.6%は上行大動脈まで進展したという報告がある5 6.2 つの後ろ向き研究による医原性上行大動脈解離の発生率は,診断カテで0.006~ 0.01%,PCI 治療で0.098~0.12%に発生したという報告がある7 8.重症冠動脈解離の対応は,「全身の循環,特に脳血

流の確保」と「真腔の血流確保」の2 要素からなる.対応フローチャートをFigure 2 に示す.循環動態が破綻する前にステントを真腔に留置し血流を確保できれば,ほとんどの場合それ以上の対応は不要となり,予後も良好である.しかし,冠動脈解離発生後,血行動態が破綻するまでの時間や真腔へのワイヤリングに要する時間の予測は困難であり,メカニカルサポートの準備・対応にも一定のマンパワーおよび時間が必要であるため,真腔の血流確保とメカニカルサポートのどちらを優先するかの判断は容易ではない.

Figure 2:カテーテルによる重症冠動脈解離に対するフローチャート→成功(YES)→不成功(NO)→進行● 推奨 ● 推奨はしないが他に方法がない,成功の報告あり ● 推奨しないGW:guide wire,PCPS : percutaneous cardiopulmonary support GC:guiding catheter,IABP : intra aortic balloon pumping IVUS : intravascular ultrasound,  ADR: antegrade dissection reentry
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では,GC 先端方向を調整し (解離が生じた状況と同じ状況でワイヤリングしても解離腔にGW が進むため)ごく短時間のワイヤリングをすることは妥当な対応と考えられる.しかし,GC の変更や,解離腔の血管内超音波(IVUS)を用いた真腔へのワイヤリング手技は,その成功や手技に必要な時間を予測することによって,行うべきか,メカニカルサポートを優先すべきかを判断しなければならない.さらに診断カテで重症冠動脈解離を作成した場合には,通常シースの交換から始まる一連の手技を行う必要があり,より時間を要することが予測できる.その場合にはメカニカルサポートを優先すべきである.メカニカルサポートの準備・対応では,システムのプライミングと並行して,穿刺部の消毒やシース挿入が行われる.もしマンパワーが充足していれば,1 つのチームがメカニカルサポートの準備・対応を行いつつ,もう1 つのチームが真腔確保の手技を行うことが理想的である.メカニカルサポート下,もしくは血行動態が維持されている状況での真腔確保は下記の手順が考慮される. GC の先端方向調整および別形状のGC 選択【推奨】GC での解離であれば,上記の通りGC の先端方向を調整しGW を進める.GC の先端方向調整後のワイヤリングでGW が偽腔にしか進まない場合には, GC を異なる先端形状のGC に変更する.診断カテでの解離であれば,シースの入れ替え後に,診断カテの先端形状と異なるGC 形状を選択しGW を進める.解離腔が拡大している場合には,GW の先端カーブを通常より大きくするなど,先端カーブの形状を変更することで真腔の選択に成功することがある.上記の手技は真腔確保を保証するものではなく,しばしばGW は偽腔にしか進まない場合もあることは十分に理解しておく必要がある.通常,GW が真腔に進んだ場合はGW を進める際の抵抗が明らかに小さくなることで判断できるが,トラブルが生じた際の術者の心理には「うまくいってほしい」という正常性バイアスが発生しがちであり,多少の抵抗を無視してGW を進め偽腔を拡大してしまうことがある.GWを進める際に多少でも抵抗が残っている場合は,本当に真腔内かどうか,慎重に判断する必要があり,最終的に造影剤注入ではなく,IVUS を用いて真腔かどうかを判断することが重要である.偽腔にしかGW が進まない場合に真腔ワイヤリン

グをする最適の方法は「IVUS ガイド」である.偽腔に挿入したGW にIVUS を進め,偽腔の開始位置で残存真腔の位置を確認する.分枝方向,近位真腔およびGC 内のIVUS カテーテルの位置,GW とIVUS の位置関係などの情報を用いて,透視上での残存真腔の位置と方向を決定することにより,短時間で効率のいい真腔ワイヤリングが可能である.なお,近年,光干渉断層法(OCT)ガイドのPCI も増加傾向にあるが, OCT では血球除去のためのフラッシュで偽腔拡大のおそれがあるため,使用は禁忌であり,すでにOCT が清潔台の上にでている場合でもIVUS を新たに準備すべきである.主要側枝ワイヤリング解離の発生位置が主要側枝に近い場合には,主要側枝へのワイヤリングも行うべき手技の1つである.ただ,解離発生部位が主要側枝の分枝部より近位にある場合や,解剖学的・病変的状況により側枝真腔へのワイヤリングが困難な場合がある.ワイヤリングで最も重要なことは,目的とする血管の真腔確保であるため,側枝ワイヤリングにいたずらに長い時間をかけるべきでない.なお,本幹のGW がIVUS で真腔にあることを確認できている場合は,側枝を取る際にはDouble lumen catheter を用いて操作を行うのが安全である.造影剤注入【禁忌】造影剤の注入は,解離腔を拡大させ真腔ワイヤリングをより困難にするため,原則的に禁忌である. IVUS を使って造影を回避するなどの努力を行い,造影剤注入は真に必要最小限にしなくてはならない.特にGC の先端圧がWedge の状態で造影剤注入をすると,解離の進展,上行大動脈への逆行性解離などをきたす可能性があるため,絶対的禁忌であることに注意されたい5.

上記の通常行われる真腔ワイヤリングが不成功のときのオプションは下記の通りである.偽腔ナックルGWどうしても偽腔にしかGW が進まない際には,ナックルGW を偽腔に進め,冠動脈中間部・遠位部で真腔との交通を作ることは1つのオプションである.解離腔にリエントリーが作成されると,解離腔内圧が減少し,真腔血流が増加して,血行動態・症状が改
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れる可能性がある.今回のタスクフォースメンバーの経験によれば,偽腔ナックルGW の経験の多くは重症冠動脈解離ではなく,慢性完全閉塞(CTO)のPCIでのナックルGW の経験ではあるが,外膜に傷害を作らずに真腔に交通をつくるという観点から,滑りの良いインターメディエイトGW が望ましいのではないかと考えられる.ただし,この方法ではリエントリーする場所をコントロールすることはできず,単に偽腔を拡大させてしまうおそれがある.さらに,ナックルGW が側枝に進入すると,大きな冠動脈破裂を作るリスクもある.偽腔ナックルGW を行う際には,本幹に進んでいること,ならびに,強く押さないことに留意されたい. ADR: Antegrade Dissection Reentry時間的に余裕があり,どうしても解離発生位置で真腔にGW を進めることができない場合には,IVUSもしくは専用デバイスを用いて偽腔から直接真腔へのワイヤリングを行うことで真腔ワイヤリングを行える可能性がある.ただし,手技は複雑であり,穿通力の高いGW を使うと冠穿孔を起こすリスクは避けられない. IVUS や専用デバイスを用いない穿通GW【禁忌】CTO-PCI 用のGW のように穿通力の高いGW で真腔ワイヤリングを行う方法は,上記の通り冠穿孔を発生させるリスクがあり,予想される成功率も十分高いとは言えないことが多いため,原則的には禁忌と考える.偽腔バルーン拡張【禁忌】偽腔でバルーン拡張を行うことは,CTO-PCI によるサブ腔でのバルーン拡張と同様に「偽腔を拡張するが真腔へのエントリーは作れない」.いたずらに大きいバルーンを選択したり,スコアリングバルーンを使用したりすると,外膜損傷,つまり冠動脈破裂が発生するリスクがあり,基本的に禁忌と考える.

上記の「真腔ワイヤリング」が不成功,もしくは「真腔へのステント留置」が不成功であった場合には,外科治療を選択すべきである.重症冠動脈解離が発生した段階で,心臓外科チームと情報共有を開始し,患者に重篤・不可逆的なダメージを作る前に外科治療を含めた集学的治療を行う.今回のタスクフォースメンバーのうちの1 名は,冠動脈解離が大動脈および大動脈弁に進展した合併検討をした際に教わったのが「大動脈解離の手術で

最も重要なのは解離入口部の閉鎖である」ということであった.つまり,冠動脈解離が大動脈に進展した場合には「冠動脈内で解離腔を閉鎖する必要」があり,それは外科的治療ではなく血管内治療により達成されるべきということになる.同メンバーは「解離腔をカバードステントで閉鎖して良好な経過となった例」と「カバードステントステント留置を躊躇して重篤な経過となった例」の両方を経験している.冠動脈解離が大動脈に進展した症例に対し心臓外科を含めた集学的治療を行う場合には,上記情報を含め心臓外科と協議のうえ,最高のハートチーム治療を行うことが重要である.

4.冠動脈穿孔

【発生機序】今回,冠動脈穿孔として扱う事象は,冠動脈末梢でGW が血管外に進んだために発生したGW による穿孔である.GW 先端が接触している部位で血管構造を破壊する力がGW 先端部に作用した際に,GW 穿孔が発生する.【発生頻度】GW穿孔の発生頻度は0.5~1.0%との報告があるが9 10,最近はPCI 手技の内容の複雑化によって発生頻度が増加している可能性がある.【好発状況】GW 先端部での血管壁に対する力の大きさに影響するGW の要素として「滑り性能」と「変形耐性」がある.「滑るGW」や「変形しづらいGW」では摩擦抵抗による力の減弱が少なく,GW 先端部に大きな力が作用しやすくなる.「変形しづらいGW」には,「先端荷重が大きなGW」以外に「シャフトのサポート性が高いGW」もあり注意が必要である.GW 先端部での血管壁に作用する力はGW 先端と血管壁の角度にも関係する.より直角に近い角度でGW が血管壁に接触している場合は,より強い力が血管壁に作用するため「蛇行した冠動脈」では冠動脈穿孔に注意が必要である.
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Figure 3a:冠動脈穿孔に対するフローチャートMC: micro catheter

Figure 3b:カール型コイル使用時に推奨されるコイル留置手技
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対応フローチャートをFigure 3a に示す.早期発見最初に重要なのは「早期発見」である.GW 穿孔は冠動脈破裂と異なり,GW 穿孔発生から血行動態の悪化に至るまでに時間の余裕がある.したがって, GW 穿孔後早期にGW 穿孔を発見すれば,重篤な合併症である心タンポナーデを発生させることなく対応することが可能である.これは,GW 穿孔による血液漏出は,ある一定量まで血管周囲組織に限局するためと推定される.早期発見が遅れやすい状況として「GW の先端位置を確認していない場合」や「GWを進める際の抵抗に対する評価が不十分な場合」などが挙げられる.手技中にはGW の先端位置について注意し,GW を進める際の抵抗感の評価やGW の先端形状の評価を行うことで「もしかして穿孔したのでは」と気づき,GC もしくはMC からの造影でGW 穿孔の早期発見が可能となる.孔部位の同定GW 穿孔の確認方法として「GC からの造影」と「MC からの造影」がある.GC からの造影でGW 穿孔を確認する際には「冠動脈末梢部の観察」と「静脈相が終わるまでの長い造影」が重要である.モニターに写っていない部位でトラブルが発生している可能性や,静脈内の造影剤でGW 穿孔による血腫がマスクされてしまう可能性に留意する.この注意深い観察は,GW 穿孔を起こしていないと思われる通常の手技終了時の造影でも行われるべきである.最終造影では「十分な造影剤の使用」「末梢部までの観察」「静脈相終了までの長い撮影」を行い,GW 穿孔を見逃さないようにする. MC を用いた穿孔部位同定では,穿孔を疑う部位の近傍までMC を進めて先端造影をすることで,GW 穿孔の有無とともにGW 穿孔部位を特定することができる.MC からの先端造影をする際には,空気塞栓を避けるために造影剤を滴下しつつGW を抜去し,血腫を増大させないように低圧かつ少量の造影剤を注入する.心タンポナーデリスク評価GW 穿孔は発見された時点で,その多くは「限局した血腫」である.この血腫は冠動脈周囲組織((線維芽細胞と脂肪細胞)の中に存在し,この時点では心嚢腔とは交通していないと考えられる.この段階で判断すべきことは「心タンポナーデ発生リスク」である.序は,血腫内圧による心嚢腔への穿破である.穿破の

前は血腫が増大するため,「血腫増大」が認められない血腫は心タンポナーデの発生リスクは小さいと判断できる.「血腫増大」の判断は容易ではないが,「血腫増大なし」の場合は血腫内に貯留した造影剤がそのままの形状・大きさを保っていることで判断が可能である.経時変化として数分間程度血腫のサイズや形状に変化が認められなければ,心タンポナーデのリスクは低いと判断し,経過観察とすることが妥当である.逆に血腫が経時的に増大する場合は,心タンポナーデの発生リスクが大きいと考えるべきである.最初に血腫を確認した際に血腫サイズが大きい(5mm 以上の)場合も,血腫が増大しやすい状況の可能性があり,注意深い観察・評価が必要である.まれではあるが,GW 穿孔時にすでに心嚢腔と交通している場合もある.このような状況下では,心タンポナーデ発生リスクが高いため,何らかの対応を直ちに行う必要がある.心嚢腔内に血液が貯留する通常の心タンポナーデ以外にも,心筋内に血腫が拡がり心タンポナーデ状態になることがある ((ドライタンポナーデと称される状況) .この血腫が心筋内に限局している場合でも上記の「血腫の経時的拡大・血腫の初期サイズ」による評価で血行動態悪化の予測が可能である.塞栓と血流遮断心タンポナーデ発生のリスクがある場合の対応は大きく分けると2 種類ある.1 つは塞栓子を用いて血腫への流入血流を阻害し血腫内圧を減圧する方法,もう1 つはMC(・バルーン(BC)(・カバードステントを用いて血腫への流入血流を遮断する方法である.塞栓術を行う際には穿孔部位を正しく特定する必要がある.GC からの造影による末梢血管穿孔部の正しい同定は難しいため,MC による先端造影が必要である.MC を進めてGC からの造影を行い造影剤のリークが認められないことで穿孔部位を同定する方法もあるが,この方法ではMC 先端位置が穿孔部から離れていても,MC による血流が遮断される場合があり推奨されない.MC の先端造影でも造影剤量が多いと逆流した造影剤で穿孔が確認されてしまい,穿孔部位の特定ができない場合がある.先端造影では「ごく少量」「低圧」の造影を行う.塞栓子として「コイル・血栓・脂肪・スポンゼル」
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用されている.いずれにしても穿孔部から離れた部位で塞栓を行うと,血管内腔が広いため「より大量」の塞栓子が必要となり,塞栓による虚血領域が広くなる.したがって,穿孔部位のごく近傍に塞栓子を留置することが重要である.さらに,コイルでは血流阻害効果の高いカール形状のコイルがより有効である. GW 穿孔部位は屈曲性の高い冠動脈末梢であるため,カール形状により血管が変形し血腫内圧の減少が得られやすい.さらに,カール型コイルは「血管構造内では直線形状・血管構造外ではカール形状」となるため,血管内に留置されたかどうかの判断や,直線部とカール部の移行部の位置から穿孔部位の確認が可能というメリットを持つ.カール型コイル使用時に推奨されるコイル留置手技をFigure 3b に示す.正しい穿孔部位の特定が困難,もしくは何らかの理由で塞栓子を使えない状況では,MC(・バルーン・カバードステントによる血流遮断がオプションとなる. MC 使用時は陰圧をかけることで末梢血管内腔を虚脱させ,効果的な血流遮断が可能である.MC(・バルーンでの血流遮断では穿孔部位に血栓を作ることで心タンポナーデを回避するため,血栓を作るには十分な時間が必要となる.穿孔している枝をJail させるようにカバードステントを用いれば確実な血流遮断が可能であるが,虚血領域の拡大や,慢性期の再狭窄・再閉塞リスクを伴う.通常のステント留置は,血流遮断が不確実であること,そして血流遮断不成功時の対応が難しくなることから推奨されない.ヘパリンリバース主に血栓化を期待する対応方法ではヘパリンリバースが必要となる.つまり,MC(・バルーンでの対応ではヘパリンをヘパリンリバースすることを考える.コイル・カバードステントを用いた対応では基本的にヘパリンリバースは不要である.その他の対応方法では状況に応じて必要時にヘパリンリバースを行う.対応後評価血腫はあるが心嚢腔との交通がない場合には,極少量のMC 先端造影で血腫が増大しないことを確認する.血腫が造影されてもその大きさが経時的に変化しない場合には,血腫内圧が周囲組織の抵抗以下にコントロールされているため,それ以上の対応は不要である.血腫内の造影剤が造影直後に薄くなる・広がる場合は,造影剤を含まない血流の流入があるたを考慮する.

すでに心嚢腔との交通が形成されている場合には,心嚢腔への流出血流の途絶が必要である.血腫に血液が流入するルートが複数存在する場合もある.元々側副血行路で交通がある場合に加え,血腫が大きくなることで近傍の血管と交通ができる場合がある.発見が遅れた場合,もしくは血腫内圧の減少が不十分で血腫が大きくなってしまった場合には, GW を進めていない冠動脈に対して造影を行い,血腫への血流を確認し,必要に応じて対応を行う.【まとめ】GW 穿孔が発生した際には,まず心タンポナーデリスク評価を行う.心タンポナーデリスクが大きい場合には,コイル塞栓などの対応および対応後の詳細な評価を行うことにより心タンポナーデを回避する.心タンポナーデリスクを減らすための早期発見・早期対応も重要である.

5.冠動脈破裂

【発生機序】冠動脈破裂はガイドワイヤ ((GW)による冠動脈穿孔とは異なり,冠動脈外膜および血管周囲組織の重大な損傷によって発生する.その原因は主として「バルーンおよびステント拡張による冠動脈外膜および血管周囲組織の過伸展」もしくは「回転式アテレクトミー(RA)・Orbital Atherectomy(OAS)・方向性冠動脈粥腫切除術((DCA)などのAtherectomy デバイスによる冠動脈外膜・血管周囲組織の損傷」である.CTO- PCI においては,GW が血管外に進んだことを認識せず,MC・バルーン・IVUS などを進めてしまったときにも冠動脈外膜や血管周囲組織に大きな損傷が発生し冠動脈破裂となる.冠動脈破裂では血管周囲組織の損傷が大きく心嚢腔と交通ができる場合と,血管周囲組織の損傷が部分的で心嚢腔との交通がない場合があり,前者が Ellis 分類の Type 3 Blow Out 型冠動脈破裂,後者はEllis 分類では Type 2 となる11.後者の場合でも,血管周囲組織内の血腫内圧が周囲の組織抵抗より高い状況が続けば,血腫が増大し,最終的に心嚢腔に穿破して心タンポナーデになる場合がある.さらに心タンポナーデに至らない場合でも冠動脈外膜欠損部位があるため仮性動脈瘤になる場合があり,慎重な経過観察が必要である.
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【発生頻度・好発状況】発生頻度については0.2~0.5%との報告が多く9 10 12,網羅的なデータは存在しないが発生頻度はきわめて低い.バルーン拡張やステント拡張による冠動脈破裂は外膜が過伸展する状況で発生しやすい.具体的にはFigure 4 のような偏心性病変が冠動脈破裂の好発状況である.Atherectomy デバイスでは,屈曲部・石灰化部・血管径に差がある部位で冠動脈破裂が発生しやすい.【IVUS 画像による発生予測・発生確認】上記の冠動脈破裂機序の中で「バルーン拡張およびステント拡張による冠動脈外膜の過伸展」はIVUS 画像で発生予測が可能であり,「血管外ワイヤリング」はIVUS 画像でその発生を確認できる.冠動脈外膜の伸展性についてはブタ冠動脈外膜を用いた実験において高度の伸展性(150 mmHg で1.8 倍長)があることが報告されている13.通常は対象血管径の1.8 倍の大きさのバルーンやステントを使用しないため,冠動脈外膜が全体的に伸展される状況では冠動脈破裂の発生するリスクは低い.しかし,偏心性病変で冠動脈外膜の一部分のみが伸展される場合には冠動脈外膜の過伸展による冠動脈破裂が発生しうる.つまり,バルーン拡張やステント拡張前のIVUS で冠動脈外膜の過伸展リスクを評価・判断することにより,冠動脈破裂の予測が可能である.血管外にGW およびMC を進めてしまった状況でのIVUS 画像をFigure 5A に示す.その特徴は,3 層構造が認められないこと,ならびに,血管外血腫が認められることである.この状況では,すでに冠動脈外膜にはIVUS 外径もしくはそれ以上の損傷が発生した

冠動脈破裂の状態であり,IVUS カテーテルを抜去すると血管外への血液漏出が発生し,心タンポナーデを起こしうる危険な状況である.血管外に進んだIVUS 画像を見る機会は少ないため,Figure 5A の画像をしっかり認識し,このような画像が得られたときには適切な対応をしていただきたい.IVUS 画像での血管外血腫のイメージ(Figure 5B)も重要である.血管外血腫の存在は,すでに冠動脈外膜に損傷が発生していることを示す重要な画像である.血管損傷が疑われる場合には,血管外血腫についても注意してIVUS を観察していただきたい.

Figure 5:血管外ワイヤリングのIVUS 像(A)血管外ワイヤリングのIVUS 像(B)右の白い点線部分は血管の外側にできた空間であり,赤で示した部分は正常血管周囲組織と比較して明らかに低エコーであり,血管外血腫を強く示唆する.黄色の点線部分が元の冠動脈

Figure 4:冠動脈破裂ハイリスク病変のIVUS 画像冠動脈破裂病変のIVUS 像を示す (上は石灰化病変,下は線維化病変)すべての病変は高度偏心性病変であり,対側にはプラークは認めない
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ここからはBlow Out 型冠動脈破裂の対応について述べる.フローチャートをFigure 6a に示す.初期対応初期対応として「人員確保」「外科チーム連絡」「出血コントロール」に加えて「脳血流確保」が重要である.周知のことだが,脳は心臓に比し虚血耐性が低い.心拍出量が乏しく脳血流が不足している状況では「心臓マッサージ」から「メカニカルサポート」の対応を最大限に優先して行う必要がある.冠動脈破裂部位同定脳血流の確保後,冠動脈破裂部位の同定について評価を行う.冠動脈破裂の際には心嚢腔に交通するルート以外に血管周囲組織にも造影剤が流出するため,しばしば冠動脈破裂位置の同定が困難である.そのような場合には,止血に使用しているバルーンやパーフュージョンバルーンの場所を少しずつ移動させて造影を行うなどの方法で冠動脈破裂部位を同定する.その際,可能であればダブルガイドカテーテルシステムとすれば止血をコントロールしながら冠動脈破裂部位の同定が可能となる.冠動脈破裂部位が同定され,最初に使っていたGC

を用いて止血バルーンと同時にカバードステントを確実に病変に進めることが可能であれば,最初に使っていたGC を用いて,冠動脈内での止血バルーンからカバードステントへの交換を行うことにより,心タンポナーデを回避した止血手技が可能である.止血バルーンとカバードステントの同時挿入が困難でも,止血バルーンとパーフュージョンバルーンの同時挿入が可能であれば,冠動脈内で止血バルーンからパーフュージョンバルーンに交換することで,心タンポナーデを回避しつつダブルガイドカテーテルシステムを構築することが可能であり, ダブルガイドカテーテルシステムが構築されれば心タンポナーデを回避しつつカバードステント留置が可能である14.止血システムと,パーフュージョンバルーンもしくはカバードステントの同時挿入可能性について簡易テストの結果をTable 1 に示す.この結果はGC内でのデバイス同時挿入性を,大きめだが限定したサイズで,ドライの環境にて確認したものである.デバイスのサイズ,GC の状況,冠動脈病変の状況は考慮されていないため,あくまで「参考資料」として取り扱う必要がある.

Figure 6a:冠動脈破裂に対するフローチャート
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Figure 6b(:(ダブルガイドカテーテル手技・手順+心嚢穿刺後注意点

Table 1:(パーフュージョンバルーン・カバードステント同時挿入システムテスト結果
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ンもしくはカバードステントの同時挿入においては,止血バルーンのGW がパーフュージョンバルーンもしくはカバードステントの進入を妨げる場合がある.パーフュージョンバルーンやカバードステントを進めるためのGW が冠動脈末梢真腔に確実に挿入されている場合には,止血バルーンのGW の抜去が有効となりうる. CTO-PCI など,止血バルーンの持続拡張による虚血が問題にならない場合には,止血手技を継続しつつダブルガイドカテーテルシステムを構築することが有効である.ダブルガイドカテーテルシステム構築後もしくは最初のシングルGC システムで止血バルーンとパーフュージョンバルーンもしくはカバードステントの同時挿入が可能な場合,冠動脈内で止血バルーンからパーフュージョンバルーンやカバードステントへの交換を行う.その際,心タンポナーデを回避するためには,可能な限り短時間の止血解除が必要となる.止血バルーンを拡張しながら,パーフュージョンバルーンもしくはカバードステント用のワイヤを止血部近傍まで進め,ごく短時間の止血解除の間に冠動脈破裂部を通過させ,冠動脈末梢の真腔にワイヤを進める.出血をコントロールしながらワイヤ通過を行うためにMC のサポートが有効な場合がある.さらに冠動脈破裂部のワイヤ通過が困難な際には,MC を冠動脈破裂部のすぐ近位まで進め,止血バルーンをMC の外側で拡張することにより止血を継続しつつワイヤ操作を行う方法が有効である(Figure 6b).止血デバイスとパーフュージョンバルーンもしくはカバードステントの同時挿入ができないシステムでダブルガイドカテーテルシステムに移行できない場合には,止血バルーンを抜去しカバードステント(冠動脈破裂部位同定が確実) もしくはパーフュージョンバルーン ( (冠動脈破裂部位同定が不確実) に交換するが,いずれの場合でもデバイス交換にはある程度の時間が必要であり,いくら急いでも多量の出血を伴うため心タンポナーデのリスクがある.このような状況では,止血バルーン抜去前に昇圧剤や心嚢穿刺などの準備を行う.カバードステント冠動脈破裂は冠動脈外膜が破綻した状態であるため,バルーンやパーフュージョンバルーンで一時的に止血されても,その止血は血管周囲組織内の血栓が避けられないことに留意する.血栓溶解が原因と

考えられる遅発性タンポナーデの報告もある15 16.このため,冠動脈破裂後の対応として,バルーンやパーフュージョンバルーンによる止血が得られてもカバードステントを留置することが勧められる.カバードステントの留置に関しては,通過性やステント脱落リスク,カバー層の損傷リスクについて通常のステント留置と異なる注意が必要である.通過性については,特にステントストラットが2 層となっているカバードステント(Graftmaster(:Abott medical 社製)使用の際に問題となることがある.ステント脱落リスクやカバー層の損傷リスクについては,ステントストラットが1 層のカバードステント(PK Papyrus(:Biotronik 社製)で注意が必要である. 通過性や脱落リスク,損傷リスクに対してはGEC の使用が有効な対応方法であるが17,カバードステントは通常ステントに比べプロファイルが大きいため,各カバードステントに対応可能なGECを知っておかなければならない.止血バルーンとGECの同時挿入は,今回確認した範囲では「8Fr GC (0.090 インチ) とGuidePlus 5Fr(ニプロ社製)」でのみ挿入可能であったが,GuidePlus 5Fr は内腔が小さく現存のカバードステントの通過は困難であるため,シングルガイドカテーテルの状況で止血バルーンとガイドエクステンションカテーテルサポートでのカバードステント留置は現実的な方法とはいえない.ヘパリンリバースカバードステント留置を行う際には,基本的に「ヘパリンリバースは行わない」.これは,ヘパリンリバースによる「血栓形成・冠閉塞」がより重篤な状況を発生するためである.何らかの理由でヘパリンリバースを行う際にはACT を150~200 程度にコンロトールし,冠動脈内・カテーテル内の血栓形成を防ぐための定期的なフラッシュが必要となる.外科対応冠動脈破裂部位が特定でき,大きな冠動脈閉塞などの虚血問題を発生させずカバードステント留置ができた場合には,外科対応は不要である.逆に,冠動脈破裂部位が特定できない場合や,バルーンやパーフュージョンバルーン,カバードステントで出血をコントロールできない状況,あるいはカバードステント留置で大きな虚血問題が発生するという状況では外科的治療が必要となる.そのような場合は,緊急
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との情報共有」は非常に重要である.重篤な状況であればこそ「外科治療と血管内治療のすべてのオプションを用いた集学的治療」が必須といえる.【対処方法:非Blow Out 型冠動脈破裂】冠動脈破裂でもBlow Out 型でない場合は血行動態が保たれ,時間的余裕があることが多い.ただし,非Blow Out 型冠動脈破裂も経時的にBlow Out 型冠動脈破裂に移行する場合があり,可及的かつ速やかにカバードステント留置やパーフュージョンバルーン拡張 ( (虚血がなければ通常バルーン拡張も可) を行う必要がある.さらに,非Blow Out 型であっても冠動脈破裂は冠動脈外膜が破綻していることを認識する必要がある.パーフュージョンバルーンなどによって止血が得られても,血栓溶解による遅発性再出血のリスクがあり,状況によってはカバードステント留置を考慮すべきである.【対処方法:CTO-PCI におけるワイヤ手技での冠動脈破裂】CTO-PCI におけるワイヤ手技での冠動脈破裂では,まずはプラークシーリングを試みる.アンテグレードまたはレトログレードのいずれかの方法で,冠動脈破裂部位と異なるプラーク内,もしくは冠動脈破裂部位とは反対側のサブインティマにワイヤを進め,バルーン拡張もしくはステント留置することでプラークによる冠動脈破裂部のシーリングが可能である.この際,シーリングするプラークに解離を形成して内腔と冠動脈破裂部位に交通ができると止血困難となるため,小さめのバルーンやステントを低圧から徐々に拡張する.冠動脈破裂部位を含めたサブインティマのルートでワイヤが通過し,バルーン拡張やステント留置を行った際には,プラークシーリングができずに出血が持続する場合がある.この状況ではパーフュージョンバルーンでの長時間拡張による血栓止血もしくはカバードステント留置が選択肢となる.プラークシーリングもワイヤ通過もできない場合にはサブインティマ腔にコイルを留置することで出血をコントロールできる可能性がある.この状況は,冠穿孔に対するコイル手技とは異なり,ある程度大きな内腔に対するコイル手技であり「より長いコイル」「より多くのコイル」が必要となることが多い.【心嚢穿刺後の持続性出血】まれな事象であるが,冠動脈破裂部に対し適切な対刺ドレナージからの出血が持続する場合がある.そ

の際は「RCA 造影」を行うべきである.心嚢穿刺の針が心臓表面にあるRCA 領域の血管を損傷している場合があることがその理由である (Figure 6b).【まとめ】冠動脈破裂の際に重要なのは,いかに患者の生命・高次脳機能を保つかである.そのためには,まず「脳血流を維持」し,その状況下において血管内治療医と心臓外科医が患者にとっての治療を行うことが重要である.

6.GW スタック・断裂

【発生機序】GW は,PCI において必要不可欠のデバイスであり,病変に応じた種々のタイプのGW が使用可能である.各種デバイスやPCI 技術の進歩に伴い,CTO- PCI や,高度石灰化・高度屈曲病変,分岐部病変などの複雑な病変に対してPCI が施行される機会が増えている.これに伴いデバイスのスタックなどの合併症が増加している.なかでもGW のスタックは,CTO,ステント内再狭窄(ISR),分岐部病変,Stent jail などで生じ18,体内に遺残すると非常に血栓形成性が高いことが知られている.【発生頻度】PCI 全体では0.1~0.2% 19,CTO-PCI では0.5%程度20 と報告されており,その頻度は決して高くはないが,いったん生じると生命にかかわる事態を引き起こす可能性のある合併症である.【GW のスタック・断裂の原因】GW のスタック・断裂の原因としては,CTO,石灰化病変,屈曲病変,分岐部病変,ISR 病変へのwiring, Stent jail,ポリマージャケットワイヤの使用などが挙げられる.GW 先端の小血管内への迷入や攣縮もスタックの原因となりうる.手技的な要因は,CTO や高度屈曲病変におけるGW の過度の回転操作である.またCTO 内部をポリマージャケットワイヤのknuckle 形状で進める場合にもスタックは生じやすい.先端がスタックした状態に気づかず,さらなる回転操作を加えるとGW は容易に断裂する.また, entrap したGW を引き抜く際,一定以上の力が加わると断裂を生じる21 22.また,RA,OAS,DCA のように,GW 上を高速回転するデバイスを使用した手
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パー部までburr やCrown が進んでしまった場合や,何らかの原因でGW 先端が冠動脈内でトラップした状態でデバイスをactivation した場合に容易にGW は断裂する. GW は,コアと呼ばれる棒状の金属に素線 (アウターコイル) が密に巻きつけられて形成される.先端約3 cm 程度の放射線不透過チップは,コアを細径化することで柔軟性を担保している.一言に断裂といっても先端の柔軟なチップの離断,コアの離断,コイルの伸延を伴う場合など様々である.柔軟なチップの離断であれば,冠動脈損傷の可能性は低いが,シャフトの断裂であれば,断裂したコアの近位端で不整脈や血管解離,穿孔,裂傷を生じる場合がある4 23.また,コイルの伸延であれば,コイルは細く柔軟なためnidus を形成し高い血栓形成性を示す.冠動脈内に遺残すると冠動脈血栓閉塞を生じ,大動脈に遺残した場合は全身性生血栓症を生じうる24.【予防】GW を過度に回転させず,時計回転,反時計回転をそれぞれ180°程度に留める.また,先端がトラップした状態で回転操作を行わないようにする.特にRA, OAS,DCA 施行中はGW の先端の可動性を確認してに側枝保護のために挿入したGW がスタックするこ

ともしばしば経験する.放射線不透過部分をステントによりjail しないことや,高圧後拡張を行う前に抜去すること,特に長区間のステント使用時の石灰化病変に注意することなどが留意点となる.また,最近では,このような症例の側枝保護目的にjailed corsair technique 25 や jailed balloon technique 26 などの手技が行われる場合がある.これらの手技は側枝保護目的ではあるものの,ある意味GW の保護も同時に行っており,分岐部病変のGW のスタック予防にもなると考えられる.【対処方法】GW のスタックや断裂が生じた場合の対処法として,経皮的除去,外科的除去,保存療法の3 つが考えられる.まずは経皮的な除去が試されるが,その成功は,術者の経験や技術に依存しているのが現状である.本稿ではGW のスタックや断裂が生じた場合の,状況に応じた段階的なアプローチ法を記載する。これは,すべてのInterventional cardiologist が共有,使用できるものである.ワイヤスタックの際のフローチャートをFigure 7 に示す.

Figure 7:GW のスタック・離断に対するフローチャートCTO: chronic total occlusion , GEC: Guide-extension catheter
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マイクロカテーテル(MC)法entrap したGW に沿ってMC をできるだけ進める.それだけで「接触部位」が変わりentrap が解除される場合がある4, 27.MC を挿入することでGW を引く力を集中させることができる.回転可能なMC (Corsair/Tornus:Asahi Intecc 社製)は,ステントと血管壁に挟まれた部分に進めてGW を開放できる可能性がある.また,後述するがMC でGW がカバーされている状況であれば,スネアの使用も選択肢となる.なお,GW を引き抜く際,GC の予期しない引き込みにより冠動脈解離を発生する可能性も留意しなければならない.

プラークモディフィケーション (plaque modification) 法entrap したGW に沿ってできるだけバルーンを進め,拡張することによって病変とワイヤの抵抗の減弱を試みる方法である.また,GW の追加が可能な場合,entrap した部位にGW を追加し,entrap 部をバルーン拡張する.entrap した組織に力を加えることでGW を開放し,病変の抵抗を減弱できる可能性がある18.またstent jail の場合,小径バルーンをentrap したGW に沿わせて進め,ステントと血管壁で挟まれた部位を拡張することでGW を開放し,病変の抵抗を減弱してワイヤ抜去の可能性が生じる.

GC・GEC トラッピング法GW がentrap された状態でGC やGEC を冠動脈内にできるだけ深く進め,GC 先端付近でバルーンを拡張し,一塊にして引き抜く方法である19.GW 断裂を生じている場合は,トラップする位置がコアの部分でなくてはならない.解けたアウターコイルをトラップしてもアウターコイルはさらに解けて伸延するだけである.

GW ツイスト法主にGW 断裂を生じた場合の回収方法である.2本以上のGW を追加で挿入し,トルクデバイスで束ねて同じ方法に同時に回転することにより,遺残したGW を巻き付けて回収する 28.末梢に枝の分岐がある場合,それぞれのGW 挿入部位を(LAD であれば1 本目は中隔枝,2 本目は対角枝という具合に)分けた方が巻き付け効果は高い. GW ツイスト法と同様に,GW 断裂を生じた場合

の回収方法である29.先端がテーパーしたポリマージャケットワイヤー((原著ではXT-A(:Asahi Intecc 社製を推奨)を使用する.先端3~6 cm をナックルに形成し (Figure 8A),遺残したGWよりわずかに末梢まで進め (Figure 8B),回転操作により巻き付けて (Figure 8C),回収あるいは切断する方法である(Figures 8D およびE).GW ツイスト法と比較し,強く巻き付けることができるため,伸延したアウターコイルの回収もしくは遠位部での切断が可能である.

Figure 8 :(ナックルツイスター法ポリマージャケットワイヤの先端3~6 cm をナックルに形成し(A),遺残したGW よりわずかに末梢まで進め(B),回転操作により巻き付けて(C),回収あるいは切断する方法である(D,E)このFigure は許可を得て転載 (Leibundgut, et al29)

スネア法GW スタック時にスネアで把持することで強い力で引き抜くことができる一方,断裂を生じる可能性や,GW を損傷し,その後の手技を困難にする可能性がある.冠動脈内の遺残デバイスの回収には,2~4 mm ループのグースネックスネア(メドトロニック社製)を使用する30.3 本のループを有するENSNARE (MERITMEDICAL 社製)を使用すると回収の可能性は高まる.一般的にスネアを冠動脈末梢まで進めることは困難であり,末梢部に遺残したGW の回収にはSoutenir(Asahi Intecc 社製)が有効である.スタックしたGW の近位端がMC 内に残っている場合(GW がMC でカバーされている状況)は,MCのハブを切断したうえでスネアをスタック部位まで持ち込み,把持,切断・回収を試みることは推奨される.この場合,4mmのスネア+小径MC であれば6 Fr でも同時挿入可能であり,スタック部位まで容易
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たGW が把持可能である.この場合,スネアシステムではなくスネア+小径MC を推奨する.その後,引き戻す作業においてはかなりの引力を必要とする可能性があるが,把持部位での切断,あるいはそのまま回収に成功することも実験的検討では可能であった(その際は,4 mm ループのグースネックスネア+ Finecross GT(:テルモ社製を使用した).マルチワイヤー,ナックルツイスター法ではカバーしているMC を抜く必要があるため,まずこのスネア+ MC 法が優先すべき回収方法と考える.【フローチャートの解説:Figure 7】ワイヤスタックが発生した際にまず行うことは「ワイヤ離断の確認」である.まずは透視でGW のコアワイヤの連続性を確認し,透視での判断が難しい場合にはIVUS での確認を行う.血栓トラブルを予防するためにACT が 250~300 秒以上となるように,必要に応じて追加のヘパリン投与を行う.透視上コアワイヤの連続性が確認できる場合には,チャートにあるように,MC を進めてGW 単体で引く,バルーンを進めて拡張する,追加のGW を進めて追加バルーンにより病変拡張を行う,スネア把持してG Wを引く,GC やGEC 内でバルーントラップして引くなどの方法を試みる.最終的にはMC を進めてGWと一塊にして引くことになる.スタックしたGW が(1) 冠動脈末梢,(2) stent jail,(3) CTO 病変という状況によって最初に試みる方法を緑色,次に行うべき方法を黄色とし,実施する際にリスクが伴う方法を赤色で示しているので参考にされたい.元々GW が離断している,もしくは上記回収手技によってGW が離断した場合には,離断GW の回収が次に行うべき対応となる.通常GW 離断は,コアの離断とアウターコイルの伸延を伴う.コアの断裂は,引き抜く抵抗が急に消失することで知ることができる.コアの切断部は透視で確認する.しかし,アウターコイルが伸延しているか否かは透視では判断できないため,IVUS により確認する.アウターコイルの伸延を認めた場合は,直ちにACT を測定し,適正な抗凝固療法下(ACT 250~300 秒)で経皮的除去を試みる.チャートには,離断した「コアワイヤ」の近位端が「GC もしくはGEC 内」「大動脈内」「冠動脈内」のいずれかによって,対応方法を上記の通り「緑色・黄色・赤色」で示している.また,上記離断したコアの回収が困難である場合,「アウターコイル」の位置によって対処方法を示した.

離断したコアがGC 内にある場合は,GC(・GEC トラッピング法を試す.冠動脈内にある場合は,GC(・GECを冠動脈内に進めてコア断端がGC・GEC 内に入ったところでバルーントラッピングを試す.GC(・GECを冠動脈内に進める際には,冠動脈解離の発生に注意が必要である.離断したコアが冠動脈近位にある場合,スネア法や生検鉗子を試してもよい.冠動脈末梢にある場合は,Souvenir を試みる.回収時,把持したGW 近位端により冠動脈損傷をきたす可能性があるため,GEC を併用することでそのリスクを減じる.また,回収時に冠動脈内で抵抗を認めた際は,無理に引き抜かず,ステントによる血管壁固定(ステント固定)を考慮すべきである23, 27.コアが大動脈内に浮遊する場合,大きなループのグースネックスネアやハンドメイドスネアによる回収を試みる.大動脈損傷を予防するため,スネアで把持する部位は,遺残したコアのできるだけ近位端とする. 柔軟なチップやボールチップの完全離断は, CTO 内や小血管内で可動性がなければそのまま放置してもよい.冠動脈内で断裂部分に可動性があれば, GW ツイスト法かナックルツイスター法を試す.アウターコイルの遺残の場合,より対処が難しい.これは,アウターコイルはナイダスを形成し,血栓形成を生じること,また,非常に細く柔軟でスネアやバルーントラップ法が無効であることが要因である.加えて,さらなる伸延をきたす可能性もあるため,本稿では推奨しないとした(前述したがスタックしたGW の近位端がMC 内に残っている場合は,MC のハブを切断しスネアをスタック部位まで持ち込み,把持,切断・回収を試みることは推奨される).アウターコイル遺残に対する処置では,アウターコイルをできるだけ短く切断し,冠動脈内に限局させることを目標とし,ナックルツイスター法を試みる.冠動脈内に限局されたらステント固定を行う.なお,冠動脈内に長く遺残したアウターコイルをロータブレーターにより冠動脈入口部で切断する方法が報告されている31.これは,術者の技量に依存するため「選択してもよい」(黄色)とした.種々の試みを行っても回収できず,大動脈内にアウターコイルが遺残した場合は外科的除去を考慮する.
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GW のスタック・断裂は,まれであるが命に関わる可能性のある合併症である.その原因やGW 遺残後のリスク,予防法,対処方法を知ることは重要である.Interventional cardiologist として,遺残した異物を取り除きたいと考えるのはごく自然なことである.しかし,経皮的な回収を繰り返し試みることで,冠動脈解離,冠動脈穿孔,冠動脈血栓症など,さらなる合併症に発展する可能性があることを忘れてはならない.完全回収を追求し過ぎず,患者の状態や背景を考慮しつつ,冠動脈壁へのステント固定,外科的除去,保存治療なども考慮すべきである.一方,外科的除去においても,緊急手術であることや,合併してバイパス手術を行うことから,その死亡率も決して低くないことを忘れてはならない.したがって,患者ごと,断裂形態ごとの適切な対処が望まれる.本稿では基本的な方法に関して,チャートを用いて概説した.

7.イメージングスタック

【発生機序】IVUS カテーテルのスタックには,ステントストラットのエグジットポートへの嵌頓(Figure 9A)や,高度狭窄にIVUS カテを押し込みすぎてのスタック,GWのたわみ・キンクに伴うスタックが存在する.当然ながら,IVUS カテーテルだけでなくOCT(・OFDI でも起こる合併症であり,Short monorail type だけでなくSecond ガイドワイヤルーメンを持つWR type でも起こりうる.スタックの原因により,その対処法は異なる.フローチャートをFigure 10 に示す.高度狭窄でのスタックであれば,病変部の拡張や,可能であればスネアでなるべくスタック近くで把持し引き抜くことにより抜去を試みる.GW の問題であれば,IVUSを先に進めGW のたわみを修正し,GW ごとにゆっくり抜去するという方法でIVUS カテーテルの抜去を試みることになる.本稿ではIVUS スタックで最も問題となるステントストラットのエグジットポートへの嵌頓を中心に概説する. Figure 9A : IVUS スタック発生のメカニズム

ステント留置後のIVUS スタックの実験画像 (A)ステントストラットがIVUS カテーテルのエグジットポートに嵌頓している

【好発状況】ステントストラットのエグジットポートへの嵌頓について,Hiraya らはvery tortuous lesion, severe calcified lesion,3rd generation DES,stent diameter 2.5 mm の症例で発生頻度が高いと報告している32.エグジットポート嵌頓の特徴や他の原因との鑑別点は, IVUS カテーテルのスタック発生後にIVUS カテーテルの遠位部への押し込みは容易であるが,引き戻す際に同じ場所でスタックすることである.【対処方法】IVUS カテーテルを強く引くとスタックが強固となり,IVUS カテーテルの遠位部への押込みができなくなり,スタックの解決が困難となる.スタックを強固にしないためには,IVUS の引き戻しを透視下で行い,スタックが発生した場合は強く引かないようにすることである.スタックの機序がエグジットポート嵌頓の場合,ステントストラットが嵌頓するエグジットポートを塞ぐこと,もしくはIVUS カテーテル引き戻し時にステントストラットがエグジットポートに嵌頓しないようにエグジットポートとステントストラットの位置をずらすことによってスタックを回避することができる.
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Figure 10:イメージングスタックに対するフローチャート

IVUS カテーテルが遠位に進む状況であれば,まずIVUS カテーテルを回転させて再度引き抜くことによりスタックを解除できる場合がある.ただし,この方法は確実ではないため,無理に固執しないことが重要である.エグジットポート塞ぎIVUS カテーテルを回転させてもスタックが解除できない場合,もしくは最初の手技として,エグジットポートを塞ぐ手技を行う.エグジットポートを塞ぐためには,まずIVUS を遠位まで進め,IVUS を進めたGW にMC やBC を挿入し,それらの先端がエグジットポートに接するまで進める (Figure 9B).その後IVUS とエグジットポートを塞ぐために進めたデバイスを一緒に引き戻すことでIVUS カテーテルを抜去することができる.この際,エグジットポートを塞ぐためのMC やBC が先に引き戻されるとエグジットポートの塞ぎが不十分となり,再びステントストラットが嵌頓する場合がある.確実にエグジットポートを塞ぐ状況を保ちつつIVUS カテーテルとデバイスを引き抜くことが重要である.このエグジットポート塞ぎは非常に確実性が高い方法であるが,施行するには条件がある. Figure 9B : IVUS スタック発生のメカニズム

小径バルーンもしくはマイクロカテーテル進入時の実験画像 (B)デバイス先端がエグジットポートを塞ぐ状況になっているため,ステントストラットが嵌頓する空間がなくなっている
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MC(・BC を選択すれば,MC(・BC をスタックしたIVUSカテーテルに沿ってガイドカテーテル内に進めることができるが,ガイドカテーテルが6 Fr 以下の場合には,使用したIVUS カテーテルによって併用可能なデバイスが限られる.IVUS カテーテルと併用可能デバイスの適合性については事前に情報を得ておく必要がある.6 Fr GC 使用時のイメージングカテーテルとMC やBC の同時挿入可能条件は下記の通りである.IVUS カテーテルのシャフト外径が3.0~3.2 Frであれば,1.9 Fr のMC の挿入は可能である.しかし,シャフト外径が3.6 Fr の場合は,1.6 Fr であっても強い抵抗や挿入困難もあり,現状では推奨されない.参考情報として簡易テストの結果を追記する.6 Fr GC で「先端2.4 Fr+エグジットポート3.15 Fr+基部3.0 Fr (OptiCross:Boston 社製)」「先端2.6 Fr+基部3.0 Fr (AltaView(:テルモ社製)」「先端2.6 Fr+基部3.1 Fr (AnteOwl:テルモ社製)」と「1.9 Fr (Carnelian Marvel Micro Catheter non Taper:東海メディカルプロダクツ社製)」の同時挿入は可能であった. 6Fr GC で「先端2.4 Fr+エグジットポート3.2 Fr+基部3.6 Fr(6Fr GC ID:0.070 および0.071)(Dualpro: Infraredx 社製)」と「Carnelian Marvel Micro Catheter (Model S MXNS155X 1.6/1.8 Fr,155 cm single marker(:東海メディカルプロダクツ社製)」の場合は,条件によってはエグジットポートまで到達可能であったが,強い抵抗を感じるなど到達不可の場合もあり,推奨には至らないと判断した.Dualpro 使用時は7 Fr GCを選択することも一考である.なお,BC の挿入はどのIVUS であっても6 Fr では困難である.スタックしたIVUS カテーテルの遠位挿入エグジットポートの嵌頓が強固となり,IVUS カテーテルが遠位に進まない場合は,イメージングコアを抜いて,太めの親水性GWに交換する.IVUS(・OCT(・OFDI カテーテルとイメージングコア交換可能GWは,AltaView ((テルモ社製) 0.021 GW,FastView((テルモ社製) 0.018 GW(これのみドライ,水通しなしであることが必須),Dragonfly (Abott medical 社製) 0.018 GW ,OptiCross (Boston 社製) 0.025 GW, Dualpro (Infraredx 社製) 0.025 GW である.太めのGW を交換するためには,IVUS カテーテル近位部のハブを緩めて外す,もしくはIVUS カテーテルの伸縮部遠位端を切断する.この交換によってIVUS カテーテルを遠位に押し込む力が増すため,IVUS カテーテルが遠IVUS カテーテルが遠位部に移動し,上記のエグジッ

トポート塞ぎが可能な状況であればエグジットポートを塞いでIVUS カテーテルを抜去する.GC がある状況でエグジットポート塞ぎの手技ができない状況,もしくはエグジットポート塞ぎが不成功であった場合は下記の手技を行う. IVUS カテーテルの横にナックル形状にした柔らかい0.014 GW を進めるナックルGW でIVUS 抜去ルートがストラットから外れるとIVUS カテーテルを抜去することができる.ナックルGW は複数挿入することで成功率が増す可能性もあるが,結果をコントロールすることは困難である.ダブルガイドカテーテルにしてスタック部位をバルーンで拡張+必要時にはGEC を併用するシングルシステムで治療していた場合にはもう1つの穿刺が必要となり,さらに同じ冠動脈にGC を2 本進めることになるが,ダブルガイドカテーテルシステムを構築できれば,2 本目のGC を用いてスタック部を拡張することによりエグジットポートとスタックしていたストラットの位置関係を変えられる可能性は高く,顕著な成功率の向上が見込まれる.さらに2 本目のGC からのバルーン拡張と下記のIVUS カテーテルを切断しGECを進める方法を併用することも可能である. IVUS カテーテルを切断しイメージングコアを太いGW と交換+必要に応じてIVUS カテーテルを回転させる太いGW が入ることで, IVUS 引き抜きのルートがずれ, IVUS カテーテルが抜去できる可能性がある.太いGW の挿入により回転性能が向上するとみられ, IVUS カテーテルの回転も併用できる. IVUS カテーテルを切断しGEC・子カテを進めるGEC(・子カテの先端を,スタック部を越えた位置まで進めることができれば,エグジットポートにストラットが嵌頓しなくなり,確実にIVUS カテーテルを抜去することができる.GEC(・子カテの先端がスタック部に到達しなくても,その近傍まで進めばエグジットポートとストラットの位置関係が変わり嵌頓しなくなる可能性がある.ただし,IVUS カテーテルのスタックの原因としてステントの不完全拡張があり,GEC(・子カテの挿入によりステント変形をきたすリスクがある.IVUS スタックにステント変形が合併
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を行うべきか,慎重な判断が求められる. IVUS カテーテル切断・GC 抜去とエグジットポート塞ぎ+必要に応じてダブルガイドカテーテルによるアンカートラップ6 Fr 以下のGC を使用していて上記のエグジットポート塞ぎができない場合,IVUS カテーテルを切断後にGC を抜去し,IVUS ワイヤにバルーン・MC を進めることでエグジットポート塞ぎを行う方法がある. GC 抜去時の意図しないIVUS カテーテル・ワイヤの動きを予防するために,エクステンションワイヤの使用に加え,IVUS カテーテルのイメージングコア内腔に0.014 インチのワイヤと小径バルーンを進め,バルーンを拡張する.この方法でGC 抜去中にも常にIVUS カテーテル・ワイヤを保持することが可能となり,意図しないIVUS カテーテル・ワイヤの動きを防ぐことができる.GC 抜去後のバルーン・MC 挿入が困難な場合には,ダブルガイドカテーテルシステムを構築し,スタック部より遠位でIVUS カテーテルとワイヤをアンカートラップする方法がある.これによりIVUS ワイヤに引きテンションを加えつつバルーン・MC を挿入することができ,バルーン・MCの挿入が成功する可能性が高くなる.ただし,あくまで冠動脈内でのアンカートラップであるため,意図せずIVUS カテーテル・ワイヤが引き抜かれることがある点には注意が必要である. IVUS GW の抜去他の方法が不成功,もしくは他の方法が適応できない場合の最後の方法として,IVUS カテーテルのGWの抜去がある.IVUS カテーテルのGW を抜去することでエグジットポートとストラットの位置関係が変わり,IVUS カテーテルが抜去できることがある.ただし,IVUS のGW を抜去するとエグジットポート塞ぎ法ができなくなるため,その適応には注意が必要である. IVUS カテーテル抜去成功後の対応IVUS カテーテルの抜去後には,ステントの拡張と冠動脈血流を確認する必要がある.通常,この時点での血管内イメージングによるステント変形の確認は行われないため,バルーンによるステント再拡張が望ましいと考えられる.外科対応上記の全ての手技が不成功になった場合には,血行動態が悪化する前に外科的回収を考慮すべきである.ている.

8.Rotablator スタック

【発生機序・発生頻度】ロータブレーターは現代のPCI においても高度石灰化病変への治療では中心的役割を担っている33 34.ロータブレーターには様々な合併症が生じるが,中でもバーのスタックはロータブレーターに特有の合併症である.複数の単施設研究の結果によると,バーのスタック頻度は0.4% から0.8% と報告されている35 36.バーのスタックには複数のメカニズムが提唱されている.こけし現象はメカニズムの1 つとされている.これは,回転の影響で狭窄部を通過し,回転が止まると抜去困難になる現象であり,動摩擦力よりも静摩擦力の方が小さいという原理のために1度スタックしてしまうとバーは動くことができないと考えられる36.こけし現象によるバーのスタックは小さ目のバーを力一杯押すことで生じる可能性がある.血管の屈曲はバーのスタックにおけるもう1つの主要なメカニズムである.ロータバーが楕円形であること,および,バーの後ろ半分にはダイヤモンドコーティングが施されていないことから,それほど重度ではない石灰化においても屈曲部でバーがスタックする場合もある.また既存のステント部位をバーが通過する際にステントにスタックするケースもあり,ステント内あるいはステント末梢のバー通過に際しては注意を要する.バーのスタックを予防するために,術者はロータブレーターにおける回転数の変化や音の変化,そして手元の抵抗に注意を払うべきである.術者はバーのスタックが生じた際にまずは冷静になることが何よりも重要である.次に術者は順行性血流の有無,心電図変化,胸部症状の程度を評価するべきである.順行性血流が全くない場合は経皮的なベイルアウトはかなり難しいため,心臓外科医に連絡し,外科的ベイルアウトについて相談すべきである.また,バイタルサインが不安定な場合にはメカニカルサポートデバイスを使用することを躊躇すべきではない.一方,ST上昇がなく,順行性血流が保たれていれば,術者には経皮的ベイルアウトを試みる余裕が生じる.実際のベイルアウト手技を試みる前に,術者はメカニカルサポートやダブルガイドシステム用に大腿動静脈へ
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タックしたバーを引き抜いた直後に重篤な血管破裂が生じるおそれがあるため,速やかにメカニカルサポートデバイスを確立するうえで大腿動静脈シースを準備することは有用であると考えられる.【対処方法】ロータブレーターのスタックに対するベイルアウトの方法についてはいくつかの文献に記載されているが,もっとも重要な選択は,ダブルガイドカテーテルシステムを確立するか,シングルガイドカテーテルシステムのままで行うかということである37 38 39 40 41 42 43 44 45.術者がダブルガイドシステムを選択した場合には,2 つ目のガイドから通常のPCI-GW をバー越しに通過させてスタックしたバーの近位部を拡張する38.ダブルガイドカテーテルシステムの有利な点は,大きな冠動脈破裂がバーの抜去に際して生じた場合にピンポンテクニックを使用できることにある46. ただし,こけし現象によるスタックではGW のスタック部位通過に難渋することが予想される.このため親水性コーティングGW もしくはポリマージャケットGW の使用が通常は有用である.ときにCTO に使用する硬いGW が必要となる場合もある40.なお,GW を通過させるためマイクロカテーテルが必要となることもあるが,シングルガイドを選択した場合,6 Fr もしくは7 Fr のシステムではドライブシャフトシース (4.3 Fr) とマイクロカテーテルが共存できないため注意が必要である.次に術者がシングルガイドカテーテルシステムを選択した場合について記述する.このような場合でも,まずGW をバー越しに通過させることを推奨する.この新たに通過させたGW は,バーの抜去に際して大きな冠動脈破裂が生じたときの命綱となる.シングルガイドカテーテルシステムの場合,次のステップはGW の口径(8 Fr か7 Fr 以下か)によって異なる.8 Fr のガイドカテを使用していた場合,術者がGW を病変越しに通した後で,そのGW に沿ってバルーンを持ち込み,近位部を拡張させることが可能である.しかし,7 Fr 以下のガイドカテを使用していた場合には,7 Fr ガイドはドライブシャフトシース,GW,バルーンを同時に収納することができないため,術者はドライブシャフトとドライブシャフトシースを切断して,ドライブシャフトシースを引き出す必要がある((Figure 11) 37.ドライブシャフトシースが引き出されれば,術者はバルーンを病変近位部まで持シースが引き出されていれば,ドライブシャフト越

しにGECを挿入することもできる39 42 43.その場合, GEC をバーの後方近傍まで進め,引き抜く方法も可能となる.また,GEC 内で同時にスネアを用いてドライブシャフトを捕捉,あるいはBC にてドライブシャフトをトラッピングすることで引く力をサポートする方法もある.なお,引く力によってはドライブシャフトの離断のリスクがあることも追記しておく.各種サイズ別のGC およびGEC と,ドライブシャフトとMC,スネア,BC の同時挿入の可能性について簡易テストの結果をTable 2 に示す.この結果は,GCおよびGEC 内でのデバイスの同時挿入性を,限定したサイズ で確認したものである.デバイスのサイズ, GC の状況,冠動脈内の状況は加味されていないため,あくまで「参考資料」として扱う必要がある.特に6 Fr のGEC 内へのデバイスの同時挿入については,複数回の施行において挿入可能であっても,強い抵抗を伴い断念したものはあえて不可としている.特にスネアの同時挿入などは,条件によって異なる結果になったことから,可能であれば常に余裕のあるGCサイズを選択すべきである.バースタックからのベイルアウトのプロセスでは,術者は常にバー抜去に際して大きな冠動脈破裂や重篤な冠動脈解離が生じる可能性を念頭に置く必要がある47.また,バー抜去後も,そういった重篤な合併症に対して準備しておくことが必須といえる.シングルガイドカテーテルシステム,ダブルガイドカテーテルシステムのいずれにおいても,通常のPCI-GWをスタックしたバーを越えて,病変奥にまで挿入しておくことが重要である.大きな冠動脈破裂がバー抜去に際して生じても,術者はパーフュージョンバルーンやカバードステントをそのGW 越しに持ち込むことができる.バースタックに対する予防およびベイルアウトをTable 3 にまとめた34.シングルガイドシステムとダブルガイドシステムの違いをTable 4にまとめた.フローチャートをFigure 12 に示す.
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Figure 11:ドライブシャフトシースの切断と抜去方法

1.25 mm Burr を,Y コネクターを介して6 Fr ガイドカテーテルに挿入 (A)

ドライブシャフト,ドライブシャフトシース,GW はアドヴァンサーの近くで一緒に切断 (B,C)ドライブシャフトシースを引き抜く(D,E)ドライブシャフトシース抜去後も,ドライブシャフトは同じ位置にある (F) GW (0.014 インチ) をインサーター,Y コネクターを介してGC に挿入 (G,H) 2.5×15 mm のBC は,ガイドカテーテルを容易に通過(I)このFigure は許可を得て転載 (Sakakura, et al 37)

Figure 12:Burr スタックに対するフローチャートDS=drive shaft, DSS=drive shaft sheath
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Table 2:(Rotablator burr stuck:ドライブシャフトシースの抜去・非抜去別デバイス同時挿入テスト結果

Table 3: Burr のスタックに対する予防とベイルアウトこのTable は許可を得て転載(Sakakura, et al 34)

Table4: バースタックのベイルアウトにおけるシングルガイドとダブルガイドの違い
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9.ステント脱落

【発生機序・発生頻度】ステントがマウントバルーンから脱落するという事象は,現在使用されているステントにおいて,マウントバルーンへのクリンプ力やステントのデリバリー性能の向上,加えてステントデリバリー手技の向上もあり,比較的まれな合併症となっている3 48 49.しかしながら,この状況は,冠動脈の高度な石灰化や屈曲により,ステントが通過しない,あるいはスタックなどが生じた際に,ステントを回収しようとして生じることが多い.ステント脱落の予防策としては,標的病変の十分な拡張によるLesion preparation のみならず,標的病変までの中等度の狭窄や石灰化,屈曲の程度をしっかり把握して,慎重にステントをデリじてGEC を使用すること,ステントを留置部位にデ

リバリーするまではマウントバルーンに陰圧をかけないことなどが挙げられる.これらの注意を十分に行っても,ステント脱落は生じる可能性がある.その場合の対処法は,ステントが大きく変形しているか否か,GW がステント内に残っているか否かで異なる.したがって,まずはこの2 点を確認することが第1 ステップとなり,可能な限り速やかに,かつ2 次合併症を生じることがないように対処することが求められる.また,冠動脈内にトラップされたステントを回収するためには,さまざまなインターベンションの技術を応用することが求められる50.同時に対処に際しては,脱落したステントが回収可能であるか否かを適宜想定しながら進めることも大切なポイントである.

Figure 13:ステント脱落に対するフローチャートステント留置:脱落した位置にステントを留置することに大きなデメリットがなく,かつ血管径と脱落ステントのサイズの著しい不適合がなければ,小径バルーンを脱落したステント内まで挿入し拡張,その後留置部位の血管径に合わせたバルーンにサイズアップをして留置する.ステント回収小径バルーンによる回収:小径バルーンを脱落したステント内まで挿入し,ステント近位部で低圧で拡張し,回収する方法.スネアカテーテルを使用する方法:ステント内を通っているGW にMedtronic 社製(Goose Neck Snares を通して脱落したステントを回収する.スネアのデリバリーに難渋する場合はスモールバルーンにマウントしてステント部位に到達する方法.マルチワイヤーを用いる方法:ステントの外側に2 本のGW を追加し,3 本のGW を1 つのトルカーに入れて,同じ方向に回し続け,ステントが回転し始めたら回転を維持しながらステントを回収する方法.ステントがマルチワイヤーから外れてしまう可能性や,成功率の観点からは推奨できない方法である.
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大前提として,脱落したステントの回収は大腿動脈から行うことを推奨する.これは,大腿動脈からのアプローチのほうが大口径のガイドカテーテルを用いて回収することができ,また下行大動脈での回収のほうが頭頸部動脈へのステントのmigration を回避できるためである51.撓骨動脈からのアプローチによる手技でステント脱落が生じた場合は,以下に推奨されるいずれかの方法でスムーズに回収できそうな場合にのみ試みるべきである.GC 内に脱落ステントを回収できていない状態での撓骨動脈からの回収は,血管損傷などのリスクが高いことを考慮して推奨しない.また,ステント脱落が発生した最初の段階で,ステント脱落に血栓が生じて血行動態が不安定となるような場合や,ステントの変形が著しく経カテーテル的な回収が困難となる可能性が考えられた場合には,あらゆる状況を鑑みて,外科的対応の可能性も考慮する必要がある.フローチャートをFigure 13 に示す.ステントが明らかに変形しており回収が困難であ

ると判断された場合は,新たなGW を挿入して変形したステントの外側を通過させ,脱落した部位でバルーンを拡張,その後新たなステントを留置して,脱落ステントをカバーする.ステントの明らかな変形がなくGW がステント内にある場合は,脱落した位置にステントを留置することに大きなデメリットはなく,かつ血管径と脱落ステントのサイズの著しい不適合がなければ,小径バルーン(バルーンのサイズは1.5 mm×10 mm)を脱落したステント内まで挿入して拡張し,その後留置部位の血管径に合わせたバルーンにサイズアップをして留置する.バルーンをステント内に挿入する際にステントが遠位部に進むことがあり,最終的なステント留置部位が脱落部位よりも遠位となってしまう可能性があることは留意すべき点である.なお,小径バルーンを挿入する際にステントを移動させることができる場合は,適合する位置にステントを留置することも考慮する.

Figure 14:小径バルーンとスネアの併用通常GW にgoose neck snare を組み合わせるが,この場合はGW だけでなく小径バルーンに組み合わせる
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小径バルーンを脱落したステント内まで挿入し,ステント近位部で拡張して回収する.小径バルーンのサイズは1.5 mm×10~15mm,低圧での拡張を推奨する.遠位部ではなく,近位部のバルーン拡張を推奨するのは,適切にデザインされたベンチテストにおいて遠位部拡張よりも近位部拡張の方が有効であることが示されたためである52.近位部拡張においては,バルーンの半分程度がステントカバーする,ステントのproximal edge がバルーン中央に位置する部位が望ましい.なお,GC 内に引き込む際には,多方向からの透視でバルーンとGC の同軸性を確認し,GCの位置(高さおよび方向)を微調整する必要がある.スネアカテーテルを使用する方法としては,ステント内を通っているGW にMedtronic 社製 Goose Neck Snares を通して脱落したステントを回収する.ステントの近位を掴み,ゆっくりと冠動脈近位部まで引き戻す.GC 内に引き込む際には,多方向からの透視で同軸性を確認し,GC の位置(高さおよび方向)を微調整して,スネアで掴んだステントとの同軸性を保ちながら回収することが重要である.スネアでステント近位部を掴むことが困難で,ステントの中央部を掴まざるを得ない状況となった場合,GC をエンゲージした状態でステントを回収することは容易ではない.このため,ステントをGC の近くまで引き戻した段階で,システムを冠動脈から上行大動脈まで引き上げ,GW を抜去し,GC とステントがT 字型となる形で,スネアをやや強く引き,ステントを2 つ折りにしてGC 内に回収する (( 鯖折り法 ) .この方法は6 Fr 以上のGC で可能な手技であるが,一部の6 Fr GC では回収困難な場合もあるので注意を要する.なお,GC 内に引き込む段階で把持が外れてしまった場合には,ステントが頭頸部血管にmigrationするリスクがあることを念頭においておく必要がある.スネアのデリバリーに難渋する場合は,小径バルーンにマウントしてステント部位に到達する方法(Figure 14)がある.小径バルーンとスネアシステムの同時挿入は6Fr のGC でも可能である.撓骨動脈からの手技において,スネアでステントを掴むことに成功した後でGC 内にステントを回収できなかった場合は,Femoral からの回収に切り替える.ステントが剥き出しの状態でラディアールシースから回収をする方法は,血管を損傷するリスクが高いため推0.025 GW をGC に挿入して,右腕頭あるいは左鎖骨

下動脈起始部まで引き上げたうえで,0.025 インチGW を下行大動脈に進め,それに沿ってGC と掴んだステントを下行大動脈に誘導する.これが難しい場合は,0.025 インチのGW をスネアで把持して引くことにより誘導する.なお,この手技の最中に把持したステントを離してしまうと,頭頚部の動脈にステントがmigration するリスクがあるため,十分に注意されたい.大腿動脈から挿入した8 Fr のGC からMERIT MEDICAL 社製 EN Snare を使用し回収する. Femoral から回収する際にEN Snare でステントとスネアGW のみを掴めた場合は,ステントと一緒にスネアGWをFemoralから回収する. Goose Neck SnaresのMC も一緒に掴んでしまった場合は,MC のハブを切り,スネアのMC と一緒にFemoral から回収する.EN Snare が無い場合は,角辻スネア(ホームメイドスネア: Figure 15)を作成し回収を試みる53.

Figure 15:Homemade snare ( Sumitsuji snare ) GEC と2 mm 以上のバルーンを使用して作成するA)通常のモノレールバルーンの先端から通常使用ワイヤを20 mm ほど出して,リバースワイヤのように折りたたむ.バルーン径は,ガイドエクステンションカテーテル内で拡張した際に十分ガイドエクステンションカテーテルに圧着するサイズを選択する. B)先端を折りたたんだワイヤとバルーンを,ガイドエクステンションカテーテルの先端近くまで進める. C)ワイヤのリバース部が固定され,かつバルーン内のワイヤが動く圧でバルーンを拡張する.バルーン拡張後,バルーン内のワイヤを押し進めることでスネアループを作ることができるマルチGW を用いる方法:ステントの外側に2 本のGW を追加する.いずれのGW もステント末梢側で別の枝に進めたうえで,3 本のGW を1 つのトル
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し始めたら回転を維持しながらステントを近位部まで移動させる.GC 内に引き込む際には,多方向からの透視で同軸性を確認して,GC の位置(高さおよび方向)を微調整することが重要である.GC 内に入った後もステントがカテーテル内に完全に入るまで回転を維持し,その後GC からステントが飛び出さないよう注意してGC ごとシステムを全抜去する.なお,この方法に関しては,手前のステントなどすべてを巻き込むリスクがあり,ステント内に通っていたオリジナルのGW を失う可能性がある,GC 内に引き込む際にも回転を維持する必要があり,引き込む段階の上行大動脈において,ステントがマルチGWから外れてしまう可能性もあり,成功率およびMigration 等のリスクの観点から推奨できない方法である.ステントの明らかな変形がなく,GW がステント内にない場合には,脱落したステント内にGW の挿る場合などは容易に通過することがある.GW がス

テント内を通過したら,上述の方法を検討する.脱落したステント内にGW を挿入するのが難しい場合は,脱落したステントの横で新しいGW を通過させ,ステントを脱落した場所に別のステントを留置して脱落したステントをカバーする.脱落したステントを新しいステントでカバーすることが許容されない部位にある場合は,ステントの回収を試みる必要がある.この場合は,新しいGW を脱落ステントの先まで通過させ,そのGW を介してスネアを進め,前述の方法でのステント回収を試みる.

10.バルーンデフレーション不全

バルーンデフレーション困難となることはまれである.しかし,起こった場合には冠血流が阻害され血行動態が破綻することもあり,急な対応を要する.

Figure 16:バルーンデフレーション不全に対するフローチャートHeartrailII 5 Fr ST01 カテーテル(テルモ社製)の先端を切断し,子カテとしてガイディングカテに挿入,バルーンまで近づけ断端をバルーンに押し当てることでバルーンを破裂させるバルーンが遠位部にある場合は,子カテが届かないことがあるためあらかじめY コネクターをショートタイプの止血弁に交換しておく.押し当てるだけでバルーンが破裂できない場合は少し回転させてみる.
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原因としては,機械的閉塞,シャフトのキンク,バルーン収縮のための液体を供給する管腔の閉鎖,異物や結晶化した造影剤などの固形物による管腔の閉塞などが考えられる 54.特に,BC が収縮する前に強く引いたり,保護シースを抜いたりするときの力加減でバルーンシャフトが延伸し,インフレーションルーメンが狭くなることがある.またリラップ操作時に保護シースを回しながら入れたり,無理やり入れたりすることでねじれや座屈が生じ,インフレーションルーメンが狭くなることがある.これらによりチェックバルブのような状態に陥り,デフレーション困難となる.【対処方法】フローチャートをFigure 16 に示す.インデフレーター,3 方活栓の破損,リークがないか確認する.あれば新しい回路に交換する.そして強い陰圧をかける.2 本のインデフレーターを連結させて陰圧をかけることを検討する.30 cc バックロックシリンジの使用等も検討する.バックロックシリンジが利用できない場合は,10 cc シリンジを 30 cc シリンジのプッシュピースに挿入して陰圧を維持する.インデフレーター内の造影剤を生理食塩水に変更する.生理食塩水をゆっくりとバルーンに注入する.生理食塩水で希釈して流体の粘度を下げると,粘性の低い流体を吸引するのに必要な陰圧が,粘性の高い流体を吸引するのに必要な陰圧よりも小さいため,バルーンの収縮に有効な場合がある.この際,圧力をかけすぎないように注意する必要がある.シャフト部ラプチャーを引き起こす可能性があるためである.次に,バルーンシャフトのできるだけ近位端で切断すると,造影剤がゆっくりと自然排出される場合がある.ただし,この後の加圧手技はできなくなるため注意が必要である.バルーン回収を試みる近位部であればGC による損傷に注意しながらGCを深く挿入して牽引してみる.遠位部であればバルーンのハブを切断後,GEC をバルーンに沿わせて冠動脈内に挿入し,バルーンと共に抜去する.この際,過度に牽引すると,冠動脈損傷やバルーンシャフトの更なる延伸・断裂を引き起こすため注意する.バルーンを冠状動脈から取り外すことに成功した場合は,バルーンをできるだけ末梢血管側に引く.冠動脈内よりも末梢血管で次の処置を続ける方が安全である.子カテを使用してバルーンを破裂させる方法があ

る55.子カテの先端を5 mm 程度の部分で直線的にカットする.カットの目的はカテ先を鋭利にすることではなく,カテーテル内のブレードを露出してあてることでバルーンを破裂させる.このため,ブレードの露出面積が多いほど有効である.またブレードが編み込んであるカテーテルとなることから Heartrail II 5 Fr ST01((テルモ社製)が推奨される.バルーンシャフト,GW に子カテをアンカーしながら親カテの中に挿入していく.この際バルーンが遠位部にあると子カテが届かない場合があるため,あらかじめYコネクターをショートタイプの止血弁に交換しておく.押し当てるだけでバルーンを破裂できない場合は,少し回転させてみる.GEC では十分なプッシュフォースを得られず,回転操作ができないため,有効でないことが多い.なお,先端をカットした子カテを血管内に持ち込むことで,血管が損傷するリスクも高まる.バルーンの位置が中枢側であれば可能な限りGC を深く挿入した状態で施行できるが,末梢側の場合はGC で子カテの先端を保護することができないため血管損傷に十分注意する. CTO で使用するStiff wire やGW の反対側でバルーンを穿通する方法もある.いくつかの成功症例報告はあるが54 56 57 58,この方法は成功率も低く血管損傷の可能性もあり推奨しない.Stiff wire は透視下において視認性は良好であるが,閉塞バルーンに当たってもスリップして割れないことが多い.また,GW の反対側は透視下では見えない.そのためどちらも血管損傷のリスクが高く推奨しない.バルーンを超高圧で加圧し破裂させる方法もある.この方法は,血管損傷の可能性や,バルーン部分ではなく閉塞近位部のシャフトが予期せず破裂し断裂する可能性もあるため推奨しない.末梢血管までバルーンを引くことができたが,バルーン回収が困難な場合は,経皮的に23G の注射針で突いて破ることができたという報告もある59.経皮穿刺は,バルーンを触診したり,透視検査をガイドとして使用したりすることにより,簡単に行うことができる.シースを通して回収するには,BC の穿刺のみで十分な場合もあるが,シリンジによる造影剤の吸引はバルーンの収縮を促進し有益である.このようなバルーンを破裂させる手技は常に血管損傷リスクを伴うため,カバードステントは常に準備してお
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やかに外科的除去を依頼する60.

11 ベイルアウトアルゴリズム作成に

あたり

今回のコンセンサスドキュメントに記載されている各種合併症における対処法は,タスクフォースメンバーの経験・症例報告を含む論文3 4 32 33 48 59 61・実験的検討等に基づき,より十分な議論を重ねたうえで作成した.推奨する対処法の選択においては,数多くの方法論が存在する.このため,有効性や可能性を考慮したうえで,それらをすべて推奨するのは極めて困難な作業である.そこで,あえて熟練者の匠の技ではなく,比較的経験の浅い術者でも理解しやすく,安全かつ成功率が高く,単純にして確実性の高い対処法を推奨するものとした.なお,実際の緊急状況下では紙面の内容と決して一致するものではない.それぞれの状況に応じて本対処法を参考にしてもらいたい.当然ながら,通常手技とは異なる緊急事態であり,リスクは必ずしもゼロではなく,推奨する対処法が有効とならないこともある.また,カテーテル手技の一般的な理論に反する方法や,適応外のデバイスの使用・使用法があることもご理解いただきたい.

12 結語

PCI は比較的合併症の少ない低侵襲的手技である.しかし,合併症が発生した場合,術者はそれをしっかりと管理しなくてはならない.合併症管理には,準備,早期の発見と全体を見据えた対応,効果的な手技の知識,チームベースのコミュニケーション,多職種連携が必要である.合併症に対するアルゴリズム的なアプローチは手技の成績を改善し,術者をサポートするものと期待する. 1. Yamaji K, Kohsaka S, Inohara T, Numasawa Y,

Ando H, Wada H, Ishii H, Amano T, Miyata H and Ikari Y. Percutaneous coronary intervention during the COVID-19 pandemic in Japan: Insights from the nationwide registration data. Lancet Reg Health West Pac. 2022;22:100434. 2. Nakamura M, Yaku H, Ako J, Arai H, Asai T, Chikamori T, Daida H, Doi K, Fukui T, Ito T, Kadota K, Kobayashi J, Komiya T, Kozuma K, Nakagawa Y, Nakao K, Niinami H, Ohno T, Ozaki Y, Sata M, Takanashi S, Takemura H, Ueno T, Yasuda S, Yokoyama H, Fujita T, Kasai T, Kohsaka S, Kubo T, Manabe S, Matsumoto N, Miyagawa S, Mizuno T, Motomura N, Numata S, Nakajima H, Oda H, Otake H, Otsuka F, Sasaki KI, Shimada K, Shimokawa T, Shinke T, Suzuki T, Takahashi M, Tanaka N, Tsuneyoshi H, Tojo T, Une D, Wakasa S, Yamaguchi K, Akasaka T, Hirayama A, Kimura K, Kimura T, Matsui Y, Miyazaki S, Okamura Y, Ono M, Shiomi H and Tanemoto K. JCS/JSCVS 2018 Guideline on Revascularization of Stable Coronary Artery Disease. Circ J. 2022;86:477-588. 3. Giannini F, Candilio L, Mitomo S, Ruparelia N, Chieffo A, Baldetti L, Ponticelli F, Latib A and Colombo A. A Practical Approach to the Management of Complications During Percutaneous Coronary Intervention. JACC Cardiovasc Interv. 2018;11:1797- 1810. 4. Doll JA, Hira RS, Kearney KE, Kandzari DE, Riley RF, Marso SP, Grantham JA, Thompson CA, McCabe JM, Karmpaliotis D, Kirtane AJ and Lombardi W. Management of Percutaneous Coronary Intervention Complications: Algorithms From the 2018 and 2019 Seattle Percutaneous Coronary Intervention Complications Conference. Circ Cardiovasc Interv. 2020;13:e008962. 5. Klaudel J, Glaza M, Klaudel B, Trenkner W, Pawłowski K and Szołkiewicz M. Catheter-induced coronary artery and aortic dissections. A study of the mechanisms, risk factors, and propagation causes. Cardiol J. 2022. 6. Eshtehardi P, Adorjan P, Togni M, Tevaearai H, Vogel R, Seiler C, Meier B, Windecker S, Carrel T, Wenaweser P and Cook S. Iatrogenic left main coronary
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