p.9 抽出テキスト
PBM は、患者中心の多面的かつ集学的なアプローチであり、患者自身の血液を管理・温存することで、同種血輸血の必要性を最小限に抑え、患者のアウトカム向上を目指す戦略である2,3)。輸血が感染症や免疫学的副反応といった潜在的なリスクを伴い、輸血医療の進歩が輸血そのものの有効性や意思決定の適切性を必ずしも向上させていないという問題意識から提唱されるに至ったものである。 PBM の推進は、世界保健機関を含む国際的な公衆衛生機関によって強く推奨されており、2025 年3 月、世界保健機関からPBM 政策を国および医療機関レベルで実施するための新しいガイダンスが発表された。このガイダンスでは、PBM の重要性を訴える過去の警鐘から一歩進んで、具体的な実装を支援する段階へと移行すべきことが示されており、政策立案者、医療関係のリーダー、および現場の専門家に対し、貧血の検出と治療、失血の最小化・凝固の最適化、輸血閾値の適正化に関する具体的な戦略とツールを提供すべきとしている。同時に、PBM を鉄欠乏や貧血、出血に伴う世界的な疾病負荷を軽減するための実践的な指針として活用し、単なる輸血医療の最適化にとどまらず、すべての地域における医療の公平性を改善し、社会全体の健康を向上させるという公衆衛生的な役割も担っていることが示唆されている。つまりは医療システムが輸血依存から脱却し、限られた資金をより必要とされる分野に再配分することを可能にし、社会的な持続可能性への貢献を期待するものである。 b) PBM を支える「三本柱」 図1 PBM の概念図 i) 第一の柱:術前貧血の改善 術前貧血は、術後合併症や入院期間の延長、さらには院内死亡率の増加と関連することが指摘されており、患者の予後を改善する上でも極めて重要である4)。術前の貧血患者のうち、約70%が絶対的または機能的鉄欠乏を伴うことが示されており、貧血ではない患者でも約40%が鉄欠乏を抱えているという指摘もあ