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I 輸血療法の実施 1 輸血療法の考え方:過去、現代、未来における在り方 1) 輸血療法の歴史的変遷と現代的課題a) 輸血療法の歴史-科学から安全性へ 近代的な輸血療法の最初は、1667 年にフランスのドニが子羊の血液を患者に輸血したこととされている。これは4 人目の患者が死亡したことからいったん禁止されたが、その後1827 年にイギリスの産婦人科医ブランデルによりヒトからヒトへの輸血が試みられるようになった。もちろん、この時代は血液型が未発見で、抗凝固剤や消毒法もなかったため、成功率は極めて低かった。 1900 年にオーストリアの病理学者カール・ランドスタイナーがABO 血液型を発見し、1914 年から1915 年にかけてクエン酸ナトリウムが抗凝固剤として開発されたことで、血液の保存が可能となり、第一次世界大戦で負傷兵の治療に用いられた。1937 年には世界初の血液銀行が設立され、現代的な輸血システムにより第二次世界大戦で多くの命を救うなど、皮肉にも輸血学の発展は戦争とともにあったと言える。 日本においては1964 年のライシャワー駐日米国大使襲撃事件において、大使が輸血後に肝炎を発症したことを契機に、それまで主流だった売血制度から、日本赤十字社を中心とする献血制度への移行が国策として推進された。以降、HBV、HCV、HIV などのスクリーニング検査が次々と導入され、輸血の安全性は格段に高まった。歴史を振り返ると、近年までの輸血学の歴史はまさに感染症との戦いにあったと言える。 b) 現代の輸血療法が抱える課題 輸血副反応とそれへの対応は輸血のインフォームド・コンセントにおける重要なポイントでもあるが、社会全体としては、近年の献血者数、特に若年層の献血者減少が顕著である一方で、出血リスクを抱えた高齢患者の増加により、血液製剤の需要は横ばいかやや高まる傾向にある1)ことが課題となっている。また、輸血にかかる費用は医療費増大の要因の一つとなっている。