p.28 抽出テキスト
血を必要とする予定手術が対象となり、特に整形外科(人工関節置換術、脊椎手術)、産婦人科、心臓血管外科などで広く適応されている23-25)。具体的な採血基準は、Hb 値は11.0 g/dL 以上、1 回の採血量は最大400 mL(産科領域はHb10 ~11g/dL の場合は200~300mL、1 回の採血量は200~400mL)、採血間隔は原則1 週間以上であり、初回採血の1 週間前から鉄剤を投与することが推奨されている26)。 貯血式では、採血時の気分不良や血圧低下、徐脈を伴うVVR が生じる可能性があり、若年者や低体重者は特に注意が必要である。また、採血時の不適切な消毒による細菌汚染や、保管中の細菌増殖、そして返血時の致死的な取り違え事故のリスクも指摘されている。 貯血された自己血は、冷蔵全血保存(有効期間は21~35 日間)あるいはMAP添加赤血球液(同42 日間)として保存する。赤血球を凍結すると長期間保存できるが、特殊な設備や、冷凍・解凍の複雑な操作を必要とするため行うことのできる施設は限られる。 採血した血液は、感染症の有無に関わらず他の患者への転用は禁止であり、使用しない場合、感染性医療廃棄物としての処理が必要である。 一方で貯血式自己血輸血は、まれな血液型患者にとっては有効な輸血手段となりうる。この場合、不規則抗体を産生している患者にとってのメリットはさらに大きい。 2) 希釈式自己血輸血 全身麻酔導入後、手術室で患者の血液を採取し、採取した量と同量の代用血漿剤などを投与して血液を希釈した状態で手術を行う。手術の進行に伴い出血が増加した際に、あらかじめ採取しておいた自己血を返血する手法である。 血液が希釈された状態で手術を行うため、実質的な出血量を減少させることができ、新鮮な自己血を使用でき、採血に際しては、血液バッグ、ローラーペンチ、チューブシーラー以外の特別な器具を必要とせず、また高度な貧血がない限り、緊急手術にも対応可能である。 ただし、採血量に制限があり、麻酔および手術時間が延長する可能性がある。また、心筋障害や弁膜症などの心臓予備力がない患者、腎機能障害や出血傾向のある患者、高度の貧血患者、重度の脳血管狭窄患者には禁忌とされており、臨床的有用性については現在も議論が続いている24,27)。