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p.10 抽出テキスト

る5)。すなわち、鉄欠乏を早期にスクリーニングし是正することが、より広範な患者の術後アウトカムを改善するために重要であることが示唆される。ii) 第二の柱:周術期および治療中の出血の最小化

手術や処置中の出血量を最小限に抑えることにより当然輸血の必要性は低下する。出血は、それ自体が合併症や死亡率の独立した予測因子であり、出血量を制限することは患者の予後を改善するために不可欠である3)。また、低侵襲手術やロボット支援手術、トラネキサム酸などの抗線溶薬の術前投与、同種血の回避という点では貯血式、回収式および希釈式の自己血輸血も出血を最小化する技術にあたるであろう。iii) 第三の柱:貧血耐性の最大化と輸血閾値の適正化

赤血球輸血のメリットとデメリットを慎重に比較検討し、個別の患者に最適な「制限的輸血」戦略が推奨されるべきであるという立場を各国はじめ日本のガイドラインもとっている。一方で、虚血性心疾患などの合併症を持つ患者では、より高いHb 値(8-10 g/dL)での輸血を提案するデータも示される6)など、臨床医学の進歩にともない、今後は個別の病態に応じた柔軟な判断が求められるだろう。

5) 宗教的無輸血の法的・倫理的側面a) 成人患者の自己決定権と日本の裁判事例

宗教的輸血拒否の問題は、日本において過去に複数の訴訟に発展、中でも、平成12 年の最高裁判決は、大きな影響を与えた。この事件は、輸血拒否の意思を明確に示したエホバの証人の信者である患者に対し、主治医らが「輸血以外に救命手段がない事態になれば輸血する(相対的無輸血)」という方針を採用しながら、それを説明しないまま手術を行い、結果的に輸血を行った事案であり、医師が「輸血以外に救命手段がない事態になれば輸血する」という方針を事前に患者に説明しなかったことが、「患者が輸血を伴う可能性のある手術を受けるか否かについて意思決定する権利を奪った」と認定された 7)ものである。

b) 宗教的輸血拒否に関するガイドラインと医療機関における対応

日本輸血・細胞治療学会を中心とする関連学会等は「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」を2008 年にすでに発表しており8)、多くの医療機関による宗教的理由による輸血拒否患者に対する対応方針の拠り所の一つとなっている。本