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p.302 抽出テキスト

ヒネ経口投与換算600 mg 以上を使用した群,240~599 mg を使用した群,240 mg未満を使用した群の3 群で比較しても,生存期間に有意差はなかった。オピオイドの投与量を生命予後の予測式に追加してもオピオイドの投与量は生命予後に影響を与えなかった。Portenoy らは,米国の在宅ホスピスプログラムのケアを受けオピオイドを使用した患者(がん患者は42%)を対象に,ホスピスプログラムに紹介されてから亡くなるまでのオピオイドの最大使用量および最終のオピオイドの増加率と,生存期間との相関を検討した。モルヒネ静脈内投与換算200 mg/日以上を使用した群と200 mg/日以下を使用した群では,モルヒネを大量に使用しているほうが生存期間は長かった。生存期間を目的変数として,モルヒネ投与量を説明変数とした回帰分析を行うと,モルヒネ投与量は,原疾患の診断,意識水準,痛みの強さなどと同様に生命予後の有意な説明要因であったが,どのモデルも説明率は10%未満であった。以上から,モルヒネの投与量は生命予後に相関したが,説明率は小さく,オピオイドを必要とした背景の要因(例えば呼吸困難など)の影響を受けている可能性があるため,「オピオイドが生命予後を短縮するかもしれない」との懸念はオピオイドによる鎮痛を差し控える理由にはならないと示唆される。したがって,オピオイドの使用が生命予後を短縮するという根拠はない。「オピオイドを使用すると寿命が縮まる」懸念のために,鎮痛のためのオピオイドを差し控えることは妥当ではないと考えられる。

3 オピオイドに関する誤った認識への対応(表2)オピオイドの使用にあたり,患者は「麻薬中毒になるのではないか」「寿命が縮まるのではないか」といった真実ではない誤解を抱いていることが少なくない。また,副作用の出現を恐れて,オピオイドの使用を躊躇し,服用しないあるいは不適切に使用するといったことも起こり得る。オピオイドの導入時には,オピオイドの薬効や副作用の説明のみならず,オピオイドに対するイメージを確認していくことが必要である。患者がオピオイドの使用や増量を躊躇するときには,なぜオピオイドを使用したくないのか,その背景にある思いや理由を理解する姿勢で関わることも重要である。がん患者がもつオピオイドの認識として,医学的事実と一致しない「誤解」が生じている場合には,その認識に至った患者の思いや背景を十分に把握したうえで,がん疼痛やオピオイドについての正しい情報を提供していく必要がある。オピオイドが最後の手段や死を連想させることによる不安に対しては,「いったん始めても具合が悪ければ相談してやめてもよいこと」「痛みが軽減すれば用量を減らし終了す

表2 オピオイドに関する誤った認識への対応・オピオイドの薬効,副作用を説明する・ 患者のオピオイドに対するイメージを確認し,オピオイドを躊躇する背景や理由を理解する・ オピオイドに関する誤解がある場合には,その認識に至った思いや背景に配慮しながら,正しい情報を提供する・鎮痛の目標について話し合い,オピオイドの使用の意義を共有する・副作用への配慮や対策を行うII章背景知識