p.300 抽出テキスト
1 患者はオピオイドをどうとらえているか がん疼痛のコントロールを妨げる要因の一つに患者のオピオイドの認識による使用の躊躇が挙げられる。一般市民のオピオイドの認識について,本邦の一般市民を対象とした調査では,オピオイドに関して,約30%が「モルヒネは中毒になる」「モルヒネは寿命を縮める」といった印象をもっているという報告がある。また,がん対策に関する世論調査では,オピオイドに対する印象を約30%が「最後の手段だと思う」「だんだん効かなくなると思う」,約10%が「寿命を縮めると思う」「精神的におかしくなると思う」と誤解していた。一方で,約50%からは「正しく使用すればがんの痛みに効果的だと思う」「正しく使用すれば安全だと思う」という理解を得られている。がん患者のオピオイドの認識について,米国の終末期がん患者を対象とした調査では,約半数が中等度以上の強い痛みを体験していたが,痛みの治療をさらに求めていたのは約30%にすぎなかった。その理由は,「麻薬中毒の心配」が約40%,「オピオイドの副作用の心配」が約30%であった。本邦においては,転移・再発後の外来通院中のがん患者を対象とした調査では,約70%が「ほとんどのがんの痛みはオピオイドで和らげることができる」と認識していた。一方で,患者の約30%が「オピオイドは中毒性がある」「寿命を縮める」と認識しており,男性患者のほうがオピオイドに対する誤解をもっていた。緩和ケア病棟の入院中にオピオイドを開始した終末期がん患者では,オピオイドに関して,約40%に「精神症状の副作用がある」「寿命を縮める」「麻薬中毒になる」という心配があり,オピオイドを開始するかどうかの意思決定には心配の数が関係するといわれている。Ward らは,患者がオピオイド使用やオピオイド使用につながる痛みの報告を躊躇する8 つの要因(barrier)を明らかにし(表1),これらを定量的に測定するための尺度としてBarriers Questionnaire(BQ)を開発した。がん疼痛でオピオイドを経口投与している外来通院患者を対象としたBQ を用いた調査では,オピオイドに関する心配として,「病気の進行への心配(「痛みがあるのは病気が重くなっている 7 患者のオピオイドについての認識 表1 Barriers Questionnaire の8 項目1 )精神依存(「麻薬中毒」)になる2 )徐々に効果がなくなる3 )副作用が強い4 )痛みは病気の進行を示す5 )注射がこわい6 )痛みを治療しても和らげることができない7 )痛みを訴えない患者は「良い患者」であり,良い患者でいたい8 )医療者は痛みの話をすることを好まないII章背景知識