p.236 抽出テキスト
消化管閉塞による痛みのあるがん患者に対して、消化管分泌抑制薬(オクトレオチド、ブチルスコポラミン臭化物)は、プラセボに比較して痛みを緩和するか? 消化管閉塞による痛みのあるがん患者に対して、消化管分泌抑制薬(オクトレオチド、ブチルスコポラミン臭化物)は、痛みを緩和する可能性がある。消化管閉塞による痛みのあるがん患者に対して、オクトレオチドまたはブチルスコポラミン臭化物のいずれかを使用する。2B (弱い推奨、低いエビデンスレベル) 解 説本臨床疑問に関連する臨床研究としては無作為化比較試験が3件ある。いずれの研究もオクトレオチドとブチルスコポラミン臭化物の効果を比較したものであり、オピオイドの単独治療と、消化管分泌抑制薬とオピオイドとの併用治療の効果を比較したものではない。Mystakidouら1)による、外科治療不能のがんによる消化管閉塞のある患者68 例を対象に、痛みを含む腹部症状に対するブチルスコポラミン臭化物60 〜80mg/日とオクトレオチド 0.6 〜0.8mg/日の効果を比較した無作為化比較試験では、いずれも痛みのVAS 値(0−10) が3日後に改善し、両群に有意差はなかった(5.4→1.3 vs 5.1→1.1,p>0.05)。両群ともオピオイドやクロルプロマジンなどが併用されていた。重篤な副作用はなかった。Ripamontiら(2000) 2)による、外科治療不能の胃管が挿入されたがんによる消化管閉塞のある患者17例を対象に、持続痛・蠕動痛を含む腹部症状に対するブチルスコポラミン臭化物60mg/日とオクトレオチド0.3mg/日の効果を比較した無作為化比較試験では、いずれも痛みのVRS 値(4 段階)が3日後に改善し(持続痛:1.4→0.4 vs 1.4→0.3,p>0.05;蠕動痛: 0.9 →0.1 vs 0.7→0.1,p>0.05)、両群に有意差はなかった。副作用について記載がない。Mercadanteら3)による、外科治療不能のがんによる消化管閉塞患者18 例を対象に、持続痛・蠕動痛を含む腹部症状に対するブチルスコポラミン臭化物60mg/日とオクトレオチド0.3mg/日の効果を比較した無作為化比較試験では、いずれも、痛みのVRS 値(4 段階)が2日後により改善傾向であり(持続痛:1.8→1.2 vs 0.6 →0.3;蠕動痛:0.4→0.2 vs 0.4→0.1, p>0.05)、両群に有意差はなかった。患者死亡およびデータ欠損による脱落症例が17%あった。副作用については記載がない。 ** 以上より、痛みを評価項目としてプラセボとの比較による無作為化比較試験がないため十分な根拠ではないものの、消化管閉塞による痛みのある患者に対して、消化管分泌抑制薬(オクトレオチド、ブチルスコポラミン臭化物)は、痛みを緩和する可能性があると考えられる。したがって、本ガイドラインでは、専門家の合意により、鎮痛効果が期待され、重篤な副作用が少ないという理由で、消化管閉塞の痛みに対して、オクトレオチドまたはブチルスコポラミン臭化物のいずれかを使用することを推奨する。特に、蠕動痛に対しては、抗コリン作用の強いブチルスコポラミン臭化物の使用を検討する。 臨床疑問64 推 奨