p.194 抽出テキスト
精神病薬はオピオイドによるせん妄を改善する可能性があると考えられる。 2)ベンゾジアゼピン系薬剤Breitbartら2)による無作為化比較試験では、せん妄が出現したAIDS 患者30 例を対象とし、ハロペリドール、クロルプロマジンと比較して、ロラゼパムの単独投与では、せん妄の症状が改善しなかった。Lonerganら(2004) 5)によるせん妄に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用に関する系統的レビューでは、せん妄に対するベンゾジアゼピン系薬剤の単独投与の効果を示した臨床研究は、アルコール離脱性せん妄以外のせん妄にはないと結論している。したがって、ベンゾジアゼピン系薬剤は、単独投与でせん妄は改善せず、悪化させる可能性もある。 ** 以上より、オピオイドが投与され、せん妄が発現し患者に対して、抗精神病薬は、せん妄を改善する可能性があると考えられる。したがって、本ガイドラインでは、オピオイドが投与され、せん妄が発現し患者に対して、抗精神病薬の投与を推奨する。投与薬物は、がん患者に対するエビデンスはないが、非がん患者に対するエビデンスから、定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬を選択する。投与量に関しては、錐体外路症状や眠気など副作用を防ぐために、必要最少量にとどめる。抗精神病薬は少量から開始し、症状に合わせて増量する。投与時間については、眠気を来す作用もあることから、定期投与を行う場合には夕または就寝前の投与が望ましいが、症状に合わせて分割投与を検討する。1種類の抗精神病薬によってもせん妄が改善しない場合には、専門家の合意から、他の抗精神病薬へ変更するか、または、焦燥感・不眠などの症状が緩和されない場合は抗精神病薬とベンゾジアゼピン系薬剤を併用する。 既存のガイドラインとの整合性NCCNのガイドラインでは、ハロペリドール(0.5 〜2mg、4〜6 時間ごとに経口投与)もしくは他の抗精神病薬の投与を検討することを推奨している。EAPCのガイドライン(2001b)では、他の原因の鑑別、オピオイドの減量を検討した後に、抗精神病薬(具体的にはハロペリドール、焦燥が著しい時にはベンゾジアゼピン系薬剤の併用)の使用を推奨している。日本総合病院精神医学会が作成した「せん妄の治療指針(2005 年)」では、薬物療法としてハロペリドールの使用が推奨されている。