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p.193 抽出テキスト

III章推奨

*1:Delirium Rating Scaleせん妄の診断を目的として開発された評価尺度。10項目からなり、13点以上(最大32 点)でせん妄と診断される。

解 説オピオイドによるせん妄に対する薬物療法に関しては、McNicolらによる系統的レビューが行われているが、無作為化比較試験はない(McNicolら) 1)。原因をオピオイドと限定しないせん妄については、抗精神病薬投与に関する系統的レビューが2件、ベンゾジアゼピン系薬剤投与に関する系統的レビューが1件ある。

1)抗精神病薬(1)定型抗精神病薬定型抗精神病薬とは、ドパミンD2受容体に対して高い親和性をもつ拮抗薬であり、ハロペリドールやクロルプロマジンなどに代表される抗精神病薬のことを指す。Breitbartら2)による無作為化比較試験では、せん妄が出現したAIDS 患者30 例を対象とし、ハロペリドール2.8mgとクロルプロマジン50mgとロラゼパム3mgの効果を比較したところ、せん妄の重症度の評価指標であるDelirium Rating Scale*1が、ハロペリドール群、クロルプロマジン群では改善したが、ロラゼパム群では改善しなかった〔20 →12(p <0.001) vs 21→12 (p <0.001) vs 18→17(p <0.63)〕。ハロペリドール群とクロルプロマジン群においては副作用を認めなかったが、ロラゼパム群には過鎮静やせん妄が悪化するなどの有害事象がみられた。クロルプロマジン群では長期的には認知機能を悪化させた。Jacksonら3)による、終末期患者に生じたせん妄に対する系統的レビューでは、1件の無作為化比較試験の結果から、せん妄の治療薬としてハロペリドールが最も適切であり、クロルプロマジンは軽度の認知機能障害が許容できるのであれば使用可能と結論した。

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以上より、オピオイドによるせん妄に限定した知見ではないが、定型抗精神病薬はオピオイドによるせん妄を改善する可能性があると考えられる。

(2)非定型抗精神病薬非定型抗精神病薬とは、1980 年代後半より導入された新規抗精神病薬を指す。従来の抗精神病薬と比較して、ドパミンD2受容体以外の神経伝達物質受容体に対しても選択的に作用し、錐体外路症状を中心とした中枢神経に対する副作用が少ない。Lonerganら(2007) 4)による、非定型抗精神病薬のせん妄に対する効果と副作用をみた系統的レビューでは、無作為化比較試験3件を検討し、3mg/日以下のハロペリドールとリスペリドン、オランザピンは効果と副作用の点で同等であり、4.5mg/日以上のハロペリドールはオランザピンと比較して、錐体外路症状が多いと結論した。例えば、ハロペリドール1.7mg/日とリスペリドン1.0mg/日とでは、せん妄の重症度の評価指標であるMemorial Delirium Assessment Scale(MDAS)*2の低下には顕著な差はなく(75% vs 42%  good response, p=0.11)、ハロペリドール7.1mg/日とオランザピン4.5mg/日とでは、Delirium Rating Scaleの低下率はいずれも同等であり、プラセボと比較して有意に改善した(ハロペリドール70% vs オランザピン72% vs プラセボ30%,p <0.01)。

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以上より、非定型抗精神病薬であるリスペリドンとオランザピンは、せん妄に対してハロペリドールと同等の効果があることが示唆される。また、クエチアピンやペロスピロンに関しては臨床研究がないが、薬理学的に他の非定型抗精神病薬と同種の薬剤として効果が期待できると考えられる。すなわち、オピオイドによるせん妄に限定した知見ではないが、非定型抗*2:MDASせん妄の重症度を測定するために開発された評価尺度。10 項目からなり、MDAS日本語版では10点以上(最大30点)でせん妄と診断される。