p.203 抽出テキスト
3 AMN ならびに女性発症者に対する治療戦略:海外の動向を中心に Adrenomyeloneuropathy(AMN)は思春期から成人期以降に発症し,痙性対麻痺による歩行障害を主症状とし,感覚障害,末梢神経や膀胱直腸障害,副腎皮質機能不全など多彩な症状を示す.AMN の約30~60% は発症10 年の経過で成人大脳型の病態を示す.女性保因者では60 歳代頃よりAMN に類似した脊髄症で下肢の痙縮や疼痛がみられる. AMN の治療戦略としては,AMN から大脳型への移行を防ぐことが課題である.大脳や小脳・脳幹に早期の病変を認める患者において,造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)が施行されている.海外例では非生着や感染症などによる死亡例が見られるが1),国内で非破壊的前処置や骨髄由来細胞を移植することにより好成績が得られている2).一方,適切な移植時期を判断するために,病態の進行を予測するバイオマーカーの検索が行われている.血漿中のneurofilament light chain(NfL)の増加は病態の進行と有意な相関があり3),AMN の大脳型への移行に伴い脳脊髄液中のNfL 値が上昇することも報告されている4).拡散強調MRI による頸髄や脳皮質脊髄路の長期的な観察も有用と思われる5).病態の進行を迅速に判断することによる効果的なHSCT の施行が期待される. 一方,HSCT はAMN 患者の脊髄症は改善しないことが報告されていることから,症状を軽減する治療薬の開発が必要である.治療薬に関しては,ELOVL1,ミトコンドリアの酸化ストレス,脳内の炎症などをターゲットとした治療薬の開発が行われている6, 7).中でも脳への移行性を示すpioglitazone の代謝産物leriglitazone は,Abcd1 欠損マウスの脊髄症状を回復させることが報告された8).さらにAMN 患者においてPhase 2/3 の臨床試験が実施され,姿勢制御の改善や歩行能力低下の抑制が見られた.その後の治験を含め,leriglitazone にはAMNから大脳型への進行を遅らせる可能性がある9, 10).なおAMN では患者数が少なく,治療薬開発のために高感度で定量的な評価法の開発が行われている11, 12).ロレンツォオイルの投与がいくつかの施設で実施されているが,MRI を含めて多くの検査項目で改善は見られず投与は推奨されない(本ガイドライン「CQ3:ロレンツォオイルはALD の治療・予防に有効か?」参照). AMN ならびに女性発症者の脊髄症に対しては,理学療法やホルモン補充療法などの対症療法が行われている.神経内科医による継時的な評価と泌尿器科医との連携,痙性運動障害や神経障害性疼痛に対する処置が重要である.理学療法においては,Repetitive transcranial magnetic stimulation(rTMS)が四肢の近位・遠位筋の強化に13),Functional electrical stimulation(FES)が歩行の改善に有効であるとの報告がある14).最近,Hybrid Assistive Limb(HAL)と呼ばれる医療用ロボットが脳神経,神経筋疾患の機能改善を促進するサイバニクス治療として活用されている15).AMN 患者にも適用できるかもしれない.また,女性発症者を対象にSmart-ALD という臨床試験が実施された16).複数の専門家が情報・通信技術を活