p.198 抽出テキスト
1 新生児スクリーニングの諸外国の動向と国内の状況 副腎白質ジストロフィー(ALD)男性患者における大脳型の予後は厳しく,特に小児大脳型では適切な治療が行われなければ発症後数年で寝たきりになることが多い.またALD 男性患者の80% に副腎機能障害を有し,67%では診断時には副腎不全症状を認めていたとの報告もあり1),感染やストレス時には生命予後に関わることより,発症前診断が推奨されている.(本ガイドライン「CQ4:男性患者の発症前診断は有効か?」参照). さらに男性患者の35~40% は18 歳までに大脳型を発症するとされており2),海外では2013 年の米国ニューヨーク州を皮切りに新生児スクリーニングが行われている.本項ではALD の新生児スクリーニングの国内外の現状について解説する. 1) 米国における取組み 米国では2004 年にHugo Moser 博士が全米におけるRecommended Uniform Screening Panel(RUSP)にALD を新生児スクリーニング対象疾患に加える必要性を提言し,2006 年にはC26:0-lysophosphatidylcholine(C26:0-LPC)を診断マーカーに(本ガイドライン「BQ4:極長鎖脂肪酸リゾリン脂質の診断的意義は?」参照)ろ紙血によるスクリーニング方法が開発され3),2013 年12 月よりニューヨーク州において開始,2016 年2 月にはRUSP にも追加掲載され,全米各州に広がりつつある4).男女を対象にした理由として女性患者もスクリーニングで診断されることより家系内により多くの男性患者が見つかることや,女児においてもALD以外の極長鎖脂肪酸が増加するペルオキシソーム病の早期診断に繋がることなどが挙げられているが,引き続き,検討されている.全米各州におけるスクリーニングが広がることにより,Aicardi-Goutieres 症候群患者の新生児期における極長鎖脂肪酸の増加や5),スクリーニングにて診断された男女の患者からの家系解析によりさらに多くの患者が診断された6)などのエビデンスが報告されている.一方で,女児が診断されたことにより父親が発症前患者と診断され,うつ症状をきたした報告もあり,検査前には十分な説明,同意とともに精神面でのサポートを含めた遺伝カウンセリング体制の整備も課題として挙げられている7).さらにスクリーニングの広がりとともに極長鎖脂肪酸代謝には影響を与えるものの,発症患者の報告がなく病原性との関連が不明なABCD1 遺伝子におけるVariant of uncertain significance(VUS)の存在が課題として挙げられている8).基本的には発症前患者に準じたフォローを行うが,国際的なABCD1 遺伝子のバリアントデータベースの充実に血中の極長鎖脂肪酸値による個々のバリアントに対する病原性評価の共有,さらには新たなバイオマーカーの開発やトランスポーターとしてのABCD1 の機能を直接評価する検査法の開発も望まれる.