p.14 抽出テキスト
1.ガイドライン改訂の目的 ヨード造影剤を使用した画像診断は,日常臨床において必須の検査項目であり,多くの有益な情報をもたらす.しかしながら,腎機能が低下した患者に対して造影剤を使用することは,造影剤腎症を起こすリスクがあり,その使用法についての指針が必要である.そこで,造影剤を使用する側の専門家である日本医学放射線学会と日本循環器学会,腎障害を診療する専門家である日本腎臓学会の3 学会共同で「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012」(以下ガイドライン)が2012 年4 月に刊行された.このガイドラインの目標は,造影剤を使用することによって起こる腎機能障害の発症を予防することである.そのため,造影剤を使用する患者に対する腎機能評価法の標準化と,造影剤使用の適正化を目的としている.またガイドラインの対象は造影剤を使用する医師,造影検査を依頼する医師のみならず,造影検査に携わる診療放射線技師や看護師などの医療関係者である.ガイドラインは,1960~2011 年8 月末までの期間に報告された論文などのエビデンスに基づき,Minds の推奨する手順によって作成された.このためガイドライン発行時には,いまだ急性腎障害(AKI)の診断基準が統一されず,REIFLE とAKIN を併せて紹介しており,KDIGO のAKI 診断基準に準拠していなかった.ガイドライン発行より5 年が経過し,多くの研究成果が報告され,欧州泌尿生殖器放射線学会(European Society of Urogenital Radiology:ESUR)は2014年第3 版を,米国放射線科医学会(American College of Radiology:ACR)は2016 年にv10.2 のガイドラインを出版した.そこで,3 学会共同で「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン」改訂を行うこととした.この間,2016 年にKDIGO のAKI 診断基準に準拠して「急性腎障害診療ガイドライン2016」が上梓されたが,造影剤腎症に関する多くの論文は必ずしもKDIGO のAKI 診断基準に準拠していない.そこで改訂ガイドラインでは「造影剤腎症(contrast induced nephropathy:CIN)はどのように診断するか?」というCQ に変更し,前回 のガイドラインを踏襲して「ヨード造影剤投与後,72 時間以内に血清クレアチニン(SCr)値が前値より0.5 mg/dL 以上または25%以上増加した場合をCIN と診断する.」と記載するとともに, KDIGO のAKI 診断基準を併記することとした.CIN の診断にAKI 診断基準が適用可能かについては,今後の研究を待ちたい.なお,2 月18 日の本ガイドライン改訂委員会開催後に,ESURガイドライン2018 が入手できたため,当委員会の改訂との整合性についても確認を行った. 2.本ガイドラインの使用上の注意 本ガイドラインは基本的には現在の保険診療に基づいて記載されている.本ガイドラインは,医師が実地診療で造影剤を使用する場合の指針であり,最終的に造影剤の使用および造影剤腎症の予防的措置を講ずるかどうかは個別の症例で病態を把握し,患者への利益を考えたうえでの判断に委ねられる.本ガイドラインの内容に従わない造影剤の使用が行われても,個々の症例での特別な事情を勘案した主治医の判断が優先されるものであり,追訴されるべき法的論拠を本ガイドラインが提供するものでは決してない. 腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドラインの概要1