p.66 抽出テキスト
わたることに加えて,薬剤耐性の世界的な脅威,抗菌薬の開発・供給制限に関する課題,感受性試験の検査基準の近年の度重なる改訂など,抗菌薬治療を取り巻く専門的知見は複雑さを増す一方である。また,しかるべき培養検査を行っても3~5 割は培養陰性となり“culture-negative sepsis”と称されるように(CQ4-4),限界もある。限られた抗菌薬を有効に利用して敗血症 に対応していくためには,「疑われる感染巣ごとに,患者背景,疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し,臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する」という感染症診療の原則を,忠実に実践していくことが重要である。 Table 4-1-1 各感染症別の経験的治療薬 【利用にあたって】 本表は,各種感染症に関するガイドラインおよび日本感染症学会 / 日本化学療法学会感染症治療ガイドを参照し,下記の考え方を加味して,敗血症に関係するものを一覧にまとめたものである。実践的にするために,代表的な選択肢を提示した。経験的治療薬は,その性格上,唯一絶対的な選択肢として提示することはむずかしく,各種ガイドラインにおいてもエビデンスと専門家の意見による提案として提示されるが,作成された年代および地域のアンチバイオグラムや,各施設で利用可能な採用抗菌薬の種類によっても左右される。本表は,各施設の敗血症および抗菌薬適性使用支援チームの専門家が,施設ごとの抗菌薬ガイドラインを作成する際の参考にできる。 感染巣患者背景・病態主に想定される原因菌薬剤の例 (VCM の用量は注釈k)を参照)備考肺炎 a) 市中下記以外肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,クレブシエラ,マイコプラズマ,レジオネラCTRX 2g 24 時間毎 38) ± AZM 500mg 24 時間毎 38)レジオネラリスクはCQ4-3 を参照。 インフルエンザ後,壊死性肺炎上記+黄色ブドウ球菌(市中型MRSA を含む) CTRX 2g 24 時間毎 38, 39) ± VCM 38, 39)k) MRSA リスクはCQ4-3 を参照。 医療関連・人工呼吸器関連肺炎球菌,大腸菌,緑膿菌,黄色ブドウ球菌「CFPM 2g 8 時間毎or TAZ / PIPC 4.5g 8 時間毎」± VCM 38)k)早期あるいは耐性菌リスクがない場合には市中肺炎の選択肢が適用可能。MRSA リスクはCQ4-3 を参照。 細胞性免疫低下+ニューモシスチス予防なし+両側陰影ニューモシスチスST:トリメトプリムとして240~320mg 8 時間毎or ペンタミジン4mg / kg 24 時間毎 38) ST:トリメトプリムとして15mg / kg / 日≒本邦のST 合剤(1錠または1g 中のトリメトプリムは80mg)で1 回3~4 錠または3~4g 8 時間毎。 尿路感染症 b)市中(ESBL 産生菌リスク低い)大腸菌CTRX 1~2g 24 時間毎 38) ESBL 産生菌リスクはCQ4-2 参照。 市中(ESBL 産生菌リスク高い) CMZ 1~2g 8 時間毎 40, 41) or TAZ / PIPC 4.5g 8 時間毎 42)or MEPM 1g 8 時間毎 38)医療関連大腸菌,クレブシエラ,エンテロバクター,緑膿菌,腸球菌「TAZ / PIPC 4.5g 8 時間毎 or MEPM 1g 8 時間毎」± VCM 38)k) VCM はグラム染色で連鎖状グラム陽性球菌を認める場合などに追加。 胆道・腹腔内感染症 c)市中(ESBL 産生菌リスク低い)大腸菌,バクテロイデス等の嫌気性菌SBT / ABPC 3g 6 時間毎 43) or「CTRX 2g 24時間毎+MNZ 500mg 8時間毎」 43) ESBL 産生菌リスクはCQ4-2 参照。SBT / ABPC を選択肢にしてよいか,施設・地域のアンチバイオグラムを確認する。 市中(ESBL 産生菌リスク高い) CMZ 1~2g 8 時間毎 43) or TAZ / PIPC 4.5g 8 時間毎 38) 医療関連大腸菌,バクテロイデス等の嫌気性菌,エンテロバクター,緑膿菌,腸球菌±カンジダ「TAZ / PIPC 4.5g 8 時間毎 or (CFPM 2g 8 時間毎+MNZ 500mg 8 時間毎) or MEPM 1g 8 時間毎」 38, 43) ± MCFG 100mg 24 時間毎 38)カンジダリスクはCQ4-3 を参照。 壊死性軟部組織感染症 d)単一菌疑い(グラム陽性球菌ある いはグラム陽性桿菌) β溶血性レンサ球菌,クロストリジウム,稀に黄色ブドウ球菌(市中型MRSA を含む)「CTRX 2g 24 時間毎or SBT / ABPC 3g 6 時間毎」± VCM 38)k) ± CLDM 600mg 8 時間毎 38) MRSA リスクはCQ4-3 を参照。CLDM は,トキシックショック症候群におけるトキシン産生の抑制目的。 複数菌疑い(糖尿病性,フルニエ壊疽)黄色ブドウ球菌,大腸菌,嫌気性菌TAZ / PIPC 4.5g 8 時間毎 38) ± VCM 38)k) 海水・淡水への曝露エロモナス,ビブリオCTRX 2g 24 時間毎+MINO 100mg 12 時間毎 38) -S 64-