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この版は旧版です。新版があります: JSICM 2024 日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)本編 新版を読む
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p.65 抽出テキスト

敗血症を鑑別に含める 25)。また,宿主である患者の要因として年齢は重要であり,髄膜炎の原因菌は50歳以上か否かで異なる 10)。肺炎の原因としてのレジオネラ症の約90% は50 歳以上で発生している 26)。糖尿病患者では,尿路感染症,軟部組織感染症が多い 27)。好中球減少患者の敗血症では,緑膿菌や,状況によってMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)などを想定する 11)。細胞性免疫不全患者[HIV(human immunodeficiency virus)を含む]の肺炎ではニューモシスチスを鑑別に含める 12)。

感染巣と患者背景に関連する疫学情報から原因微生物を想定した後,可能であれば迅速微生物診断法を実施する。迅速微生物診断法としてグラム染色は,採取検体の白血球の有無により局所炎症があるかどうか,有意な微生物が存在するかを確認できる。グラム染色を実施した場合,検体の質を踏まえたうえで経験的抗菌薬によるカバーの過不足がないかを検討することが重要である 13)。

原因微生物の想定・確認ができれば,臓器移行性やスペクトラム(耐性菌の可能性を含む),および臨床的なエビデンスを踏まえて抗菌薬を選択する。抗菌薬の臓器移行性と到達部位での活性に関して注意すべきものを以下に示す。髄膜炎に対するβラクタム系薬としてセフトリアキソン,セフェピム,メロペネムは使用できるが,髄液移行性の観点からセファゾリンは避けるべきである。心内膜炎に頭蓋内への播種として脳膿瘍を合併した場合は,同様に髄液移行性に注意を要する。肺炎に対してのダプトマイシンは,肺胞のサーファクタントで不活化されるため避ける 14)。

世界的に薬剤耐性の問題が大きくなってきており,敗血症診療においても耐性菌の増加は脅威である 28-32)。抗菌薬の感受性率は,時と場所(国,地域,施設,病棟)によって変化するため,各地域・施設のローカル・データ(アンチバイオグラムを含む)の把握が重要である 4, 5)。なお,アンチバイオグラムは様々な目的で提出された検体の集計のため,抗菌薬開始前の検体のみを集めた実際の感受性率よりも耐性度が高く示されることが報告されており,注意して使用する 33)。また,患者自身の細菌検査歴も重要である。過去の保菌(定着菌)や感染症の検出菌は,必ずしも敗血症の原因微生物になるとは限らないが,耐性菌の検出歴がある場合には危険因子であり,カバーすることを考慮する。

経験的抗菌薬は,想定される原因微生物のカバー漏れを少なくするように選択するが,原因微生物が確定すれば標的抗菌薬に移行することが前提の治療である。もしカバーができていないことが判明した場合

は,速やかな変更を要する。標的抗菌薬は,治療効果を最大限引き出し,副作用および菌交代に伴うコラテラルダメージ(常在微生物叢に対する悪影響)を最小限にするものがよい 34)。例えば,頭蓋内播種のないメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症に対する第1 選択薬は本邦ではセファゾリンであり,メチシリン耐性が判明していない段階で頻用されるバンコマイシンよりもMSSA 菌血症に対する治療成績が優れている 35, 36)。これを踏まえると,MRSA カバー目的で経験的抗菌薬としてバンコマイシンを使用する際に,MSSA の可能性が高いと判断した場合は,バンコマイシンとセファゾリンの併用も考慮される。このように,経験的抗菌薬の選択に際しては,後に移行する予定の標的抗菌薬の選択肢を事前に把握しておくことが有用である。Table 4-1-2(原因微生物別の標的治療薬)には,敗血症診療で遭遇する可能性が高い標的抗菌薬リストを感受性パターン別に示した。なお,経験的抗菌薬から標的抗菌薬に移行する際にスペクトラムのみに焦点をあてた考え方として,広域抗菌薬を狭域抗菌薬に変更する場合はデエスカレーションと表現し,その反対はエスカレーションと表現する 23, 37)。敗血症においてデエスカレーションが有効な戦略かについてはCQ4-8 を参照する。

敗血症に対する抗菌薬選択を最適化することで予後を改善しようとする種々の検討がなされてきた。2016年のJ-SSCG では,経験的抗菌薬治療におけるルーチンの併用療法は,予後を改善せず腎障害を含む治療の害が問題になるため,行わないことが推奨された(1B) 3)。また,敗血症診療ではカルバペネムが比較的よく選択されるが,薬剤耐性の脅威が世界的な課題となるなかで,カルバペネムの過剰使用を控えるレジメン(carbapenem-sparing regimen)を戦略的に採用する取り組みがなされてきた。本邦では,2018 年からは抗菌薬適正使用支援加算が新設され,感染症専門家や抗菌薬適正使用支援チームへの相談体制の整備が推進されている。これらを踏まえて,経験的抗菌薬を選択する際には,CQ4-2(経験的抗菌薬にカルバペネム系抗菌薬を含めるのはどのような場合か?),CQ4-3 [どのような場合に,MRSA や一般細菌以外(カンジダ,ウイルス,レジオネラ,リケッチア,クロストリジオイデス ディフィシルなど)に対する経験的抗微生物薬を選択するか],CQ4-5(感染症専門家あるいは抗菌薬適正使用支援チームに相談するのはどのような場合か?)も参考になる。

最後に,敗血症の原因となる感染症の種類が多岐に

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