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CQ4:抗菌薬治療 はじめに 本項では,抗菌薬投与の開始から中止に関する臨床課題の中で,特に敗血症診療において重要と思われる11CQ を取り上げた。内容はエビデンスの有無により, GRADE 評価を導入したもの,GRADE 評価を試みるも叶わずエキスパートコンセンサスとしたもの,BQ として情報提供にとどめたものがあり,留意のうえうまく活用していただきたい。研究の乏しい領域では,今後の知見集積に伴い考え方が変化する可能性がある。 抗菌薬治療は,敗血症診療における原疾患に対する必須の根本治療である。抗菌薬治療のむずかしさは,その介入が直接転帰に関わることだけでなく,世界的に深刻化する抗菌薬耐性(antimicrobial resistance: AMR)の問題とも関係しており,過剰な治療が将来の有効な治療薬を失うリスクと関係している点にある。敗血症に対する不十分な治療は避ける必要があるが,同時に過剰な治療も慎む必要がある。いわゆるantimicrobial stewardship (AS)の考え 1)を十分に取り入れた分別のある抗菌薬治療が求められる。 本ガイドラインは,敗血症診療に特化したガイドラインであるため,抗菌薬選択の各論には言及しない。敗血症における抗菌薬選択の原則は,一般的な感染症診療と同様である。すなわち,患者背景,疑わしい感染臓器,地域や施設の疫学情報,最近の抗菌薬使用歴などから,可能な限り具体的な微生物や薬剤耐性を想定したうえで投与すべき抗菌薬を選択する。ただし,敗血症患者では,非重症患者の場合に比べて,原因微生物に対して有効な抗菌薬を速やかに投与することが重要である。また,可能な施設においては,感染症専門医へのコンサルテーションも重要である。以下,各CQ ごとに概説する。 CQ4-1:経験的抗菌薬はどのようにして選択するか? 適切な経験的抗菌薬治療の選択は,適切な外科的感染巣コントロールと並ぶ敗血症の根本治療であり,患者予後に関連する重要な治療介入である 2)。抗菌薬選択に関する原則は敗血症においても一般的な感染症診療と同様であるが,一刻を争う敗血症診療では抗菌薬選択に必要な情報収集に割ける時間に制約があり,しばしば困難を伴う。個別の状況を考慮せずに画一的な第一選択薬を決めておくと迅速な投与はしやすくなるが,個々の患者にとっては不十分なもしくは過剰な治療になるリスクを伴う。 敗血症患者に対する経験的抗菌薬の選択の方法について,CQ として設定し,各感染症別の選択肢一覧と 共に示すことは,臨床現場の意思決定にとって重要と考えた。経験的抗菌薬は原因微生物の想定のもとに選択し,原因微生物が確定した後には標的抗菌薬へ最適化されることが前提の治療であり,最初の段階でいかに原因微生物を想定するかが重要である 3-5)。疑わしい感染巣ごとに,患者背景,疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し,臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する方法がある(詳細は本文参照)。選択薬リスト作成にあたっては,2012 年日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)(初版)に示された表と,各感染症のガイドラインおよび抗菌薬感受性試験のための標準検査法を参照して作成した(Table 4-1-1,4-1-2 参照) 6-8)。 CQ4-2:経験的抗菌薬にカルバペネム系抗菌薬を含め るのはどのような場合か? 広域抗菌薬の中で,カルバペネム系薬剤(以下,カルバペネム)は最も広域のスペクトラムを有する薬剤であり,治療の適切性を高める目的で,敗血症の経験的抗菌薬として比較的よく選択されうる。しかし,カルバペネムの過剰使用は,カルバペネム耐性菌の増加のほか,抗菌薬関連の副作用やコストを高める危険性を伴っている 9)。カルバペネムを遍く使用するのではなく,適切な症例に対して選択的に使用することは,抗菌薬スチュワードシップの観点から望ましいと考えられる。よって,臨床現場においてカルバペネムを使用したほうがよい適応病態をまとめておくことには意義があると考え,具体的な情報提供を行うこととした。 CQ4-3:どのような場合に, MRSA や一般細菌以外 (カンジダ,ウイルス,レジオネラ,リケッチア,クロストリジオイデス ディフィシルなど)に対する経験的抗微生物薬を選択するか? 敗血症に対する経験的抗微生物薬を適切に選択することは,患者予後に関連し,非常に重要である 2)。通常用いられる広域βラクタム系抗菌薬以外の抗微生物薬が必要な病原体について,どのような場合に想起すべきかを知っておくことは,迅速な対応が求められる敗血症診療における臨床現場の意思決定に有用であると考え,CQ として設定した。 経験的抗微生物薬は原因微生物の想定のもとに選択し,原因微生物が確定した後には標的抗微生物薬へ最適化されることが前提の治療であり,最初の段階でいかに原因微生物を想定するかが重要である 3)。患者背 -S 58-