p.34 抽出テキスト
連尿路感染症の場合,尿のグラム染色が原因菌の推定に役立つことが示されている。成人肺炎患者において,入院患者の下気道から分離される菌は定着菌であることも多いため,好中球貪食像の有無による起炎菌の判定にグラム染色が有用である。グラム染色所見に基づく抗菌薬選択は適切なempiric therapy につながり,definitive therapy につながる場合も多い。✓ 細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014 5)では,グ ラム染色が簡易で,速やかに結果が得られる検査であり,感度50~90%,特異度60~90%,最小検出感度10 5cfu / mL であることが報告されている。また,菌株により検出感度が高いものもある(肺炎球菌90%,インフルエンザ菌86%,髄膜炎菌75% など)。望ましくない効果: 本検査結果のみで抗菌薬を選択すると,重症病態にもかかわらず不適切な狭域抗微生物薬が選択されるリスクがある。また,検査施行者により感度・特異度が影響され,不適切な抗菌薬選択のリスクがある(検者の不適切な検査手技,不十分な検鏡経験などによる偽陽性・偽陰性の可能性がある)。また,ATS/IDSA の市中肺炎のガイドライン2019 3)では,抗菌薬投与により菌株が変化する可能性があるため,治療後に得られた喀痰におけるグラム染色は推奨しないことになっている。益と害のバランス: PICO に合致するRCT は存在せず不明であるが,患者の状態によってそのバランスは異なると考えられる。グラム染色は簡便で迅速に施行することができ, しかも安価であることから,その有用性と限界を理解したうえで行うことは,おそらく益が害を上回るものと考えられる。 (5)アウトカム全般に関するエビデンスの確実性 システマティックレビューを行ったが,PICO に合致するRCT は存在しなかった。 (6)価値観 死亡率が低下することについて患者・家族は一般的に重視すると考えられ,不確実性やばらつきはないと考える。 (7)容認性 グラム染色は簡便で迅速に施行することができ,しかも安価であることから,容認性はおそらく妥当なものといえる。 (8)実行可能性 多くの集中治療室では,グラム染色が行えると考える。 (9)判断の要約(Table 2-3-1) (10)推奨グレーディング決定の工程 修正RAND 法を用いた投票によって,中央値8,見解不一致指数0.015 の結果となり,委員会で採択された(7 点以上:91.7%)。 Table 2-3-1 判断の要約 -S 32-