p.32 抽出テキスト
CQ2-2:血液培養 以外の培養検体は,いつ採取 するか? Answer:抗菌薬投与前に必要に応じて血液培養以外の各種培養検体を採取する(Good Practice Statement)。 (1)背景および本CQ の重要度 敗血症・敗血症性ショックの診療において,感染臓器および原因微生物の同定は極めて重要である。日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)2016 においても,臨床像より感染源となっている可能性が否定できない部位からの検体を抗菌薬開始前に採取しておくことは,感染臓器および原因微生物の同定に極めて重要であることが述べられており 1, 2),本CQ の重要度は高い。 (2)解説 血液培養は血流感染や菌血症を診断する標準的検査法とみなされている。敗血症性ショック患者では血液培養検査の陽性率は69% との報告があるが,発熱があるからといって血液培養検査を行っても陽性率は高くないため,血液培養には限界がある 3)。特に,尿路感染,肺炎,髄膜炎といった感染症によって生じた敗血症の場合,血液培養だけで感染臓器および原因微生物を同定することは極めてむずかしい。多くのガイドラインでは,臨床像より感染源となっている可能性が否定できない部位から,検体をできる限り抗菌薬開始前に採取することについて,予後を改善するというエビデンスはないものの推奨されている 4-6)。 肺炎に関しては,肺炎の病態によって診断や治療は異なるが,喀痰培養が診断の手助けになる。しかしながら,喀痰は上気道のコンタミネーションのリスクを伴っているため,胸水や血液培養の結果と一致していない場合には解釈に注意が必要である。患者が重症で,人工呼吸管理のために気管挿管されている場合,気管吸引痰を採取して定量培養を行い,菌数が10 4 CFU / mL 以上であれば原因菌の可能性が高いと報告されている(抗菌薬投与前の吸引痰で,感度90%,特異度77%) 7)。また,人工呼吸器関連肺炎の診断においては,気管吸引痰で菌が分離されない場合には原因菌ではない確率が94% であるとの報告がある 8)。さらに,肺炎が原因または合併しているARDS の場合にも,気管支肺胞洗浄液の微生物検索は治療方針決定のためにも重要であり,患者の免疫力が低下している場合は,ニューモシスチス肺炎や肺真菌症の除外のためにも有用である 9)。尿路感染症の多くは,大腸常在菌による上行性尿路 感染であり,原因菌の証明と薬剤感受性を調べるために抗菌薬投与前に尿培養検査を施行する。再発性または難治性の場合には抗菌薬投与が行われているため, 2~3 日間の休薬を挟んで尿培養検査を施行する 5, 10)。 細菌性髄膜炎に関しては,血液培養・髄液培養の有用性を確認したランダム化比較試験(RCT)はないが,頭部CT や臨床所見より脳ヘルニアが疑われず,腰椎穿刺が禁忌でない限り,頭痛,意識障害などにより髄膜炎を疑うすべての患者に抗菌薬投与前に髄液を採取することが望ましい 6)。しかしながら,髄液採取に時間がかかる場合には抗菌薬投与を優先すべきである。髄液培養の陽性率は未治療では70~80%,抗菌薬治療後では50% 以下といわれている 11)。細菌性髄膜炎において,髄液培養の陽性率は採取量が多いほど,また遠心(1,500~2,500×g,15 分)を行うほど検出率は高くなる 12)。 なお,本CQ に関して,担当班から「抗菌薬投与前に必要に応じて血液培養以外の各種培養検体を採取する」という意見文が提案され,委員の全会一致により,「good practice statement (GPS)」として可決された。 文 献 1) 西田修, 小倉裕司, 井上茂亮, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2016 作成特別委員会. 日本版敗血症診療ガイドライン2016. 日集中医誌. 2017; 24: S1-232. 2) 西田修, 小倉裕司, 井上茂亮, 他: 日本版敗血症診療ガイドライン2016 作成特別委員会. 日本版敗血症診療ガイドライン2016. 日救急医会誌. 2017; 28: S1-232. 3) Coburn B, Morris AM, Tomlinson G, et al: Does this adult patient with suspected bacteremia require blood cultures? JAMA. 2012; 308: 502-11. 4) 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017 作成委員会: 成人肺炎診療ガイドライン2017. 日本呼吸器学会, 東京, 2017. 5) 山本新吾, 石川清仁, 速見浩士, 他: JAID / JSC 感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―. 日化療会誌. 2015; 64: 1-30. 6) 細菌性髄膜炎診療ガイドライン作成委員会: 細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014. 南江堂, 東京, 2014. 7) El Solh AA, Akinnusi ME, Pineda LA, et al: Diagnostic yield of quantitative endotracheal aspirates in patients with severe nursing home-acquired pneumonia. Crit Care. 2007; 11: R57. 8) Blot F, Raynard B, Chachaty E, et al: Value of gram stain examination of lower respiratory tract secretions for early diagnosis of nosocomial pneumonia. Am J Respir Crit Care Med. 2000; 162: 1731-7. 9) 日本集中治療医学会/日本呼吸療法医学会ARDS 診療ガイドライン作成委員会: ARDS 診療ガイドライン2016. 日集中医誌. 2017; 24: 57-63. 10) Ishikawa K, Matsumoto T, Yasuda M, et al: The nationwide study of bacterial pathogens associated with urinary tract infections conducted by the Japanese Society of Chemotherapy. J Infect Chemother. 2011; 17: 126-38. -S 30-