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p.23 抽出テキスト

CQ1:敗血症の定義と診断

CQ1-1:敗血症の定義

要約:敗血症は,「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される。敗血症は,感染症に伴う生体反応が生体内で調節不能な状態となった病態であり,生命を脅かす臓器障害を引き起こす。また,敗血症性ショックは,敗血症の中に含まれる1 区分であり,「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり,ショックを伴わない敗血症と比べて死亡の危険性が高まる状態」と定義する。これらは,2016 年2 月に発表された敗血症の定義「The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock(Sepsis-3) 1)」に準じる。解説:日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)2020では,J-SSCG 2016 2-5)と同様に,2016 年2 月に公表されたSepsis-3 1)に準じて敗血症を定義する。

まず,本邦では2012 年に公表されたJ-SSCG  5-7)の策定において,敗血症と菌血症の区分を明確にした経緯がある。1914 年にSchottmüller ら 8)は,「敗血症は微生物が局所から血流に侵入した病気」として「菌血症」の概念を広め,本邦においても,血液での微生物の検出が敗血症の確定診断と考えられていた。しかし,敗血症に類似する病態は血液中に微生物が存在しない場合でも生じることが明らかにされ,1989 年にはBone ら 9)によりsepsis syndrome(セプシス症候群)という概念が提唱された。結果として,1992 年に, Sepsis-1 10)の定義が米国集中治療医学会と米国胸部疾患学会により報告され,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)(Table 1-1-1)の概念が紹介された。Sepsis-1 により,「敗血症は感染症によるSIRS」と定義され,菌血症と敗血症は異なる定義として区分されるようになった。

一方,Sepsis-1 10)による敗血症の定義が広く用いられるようになった後,Sepsis-1 の定義と診断では,臓器障害の進展や生命予後における診断特異性が低いことが問題とされた。2001 年に,米国集中治療医学会,欧州集中治療医学会などの5 学会によりInternational Sepsis Definition Conference が開催され,SIRS を有用な概念としたものの,SIRS に基づく敗血症診断を高める方策が検討された。そして,2003 年にSepsis-2 11)として,敗血症における診断特異度を高めるための24項目の補助診断が提案された(Table 1-1-2)。しかし, Sepsis-2 の補助診断はSepsis-1 と比較して敗血症の診断特異度を高めるものではなかった 12-14)。

このようななかで敗血症は,集中治療のターゲットとなる臓器障害の進展として討議されるようになった。Kaukonen ら 15)の豪州・ニュージーランドの報告では,感染症による新たな臓器障害として管理した集中治療症例において,8 例に1 例はSIRS の診断基準を満たしていないという結果が示された。これらの結果をもとに,臓器障害に基づいて敗血症を診断する基準としてSepsis-3 1)が誕生した。そして,Sepsis-1 10)におけるSIRS 診断および重症敗血症の重症度区分が敗血症の定義と診断から削除された。

Sepsis-3 1)の定義は,感染症における臓器障害の進行に注目したものである。一方で,Sepsis-1 の定義に

Table 1-1-1 SIRSとSepsis-1の定義 10)体  温>38°Cあるいは<36°C心 拍 数>90 回 / 分呼 吸 数>20 回 / 分あるいはPaCO2 <32mmHg白血球数>12,000 / mm3 あるいは<4,000/mm3 あるいは幼若球>10%

【解説】上記4 項目のうち,2 項目以上を満たす場合に,全身性炎症反応症候群(systematic inflammatory response syndrome: SIRS)と定義する。感染症が疑われる状態において,SIRS を満たす場合に,敗血症と診断する。

Table 1-1-2 Sepsis-2の定義 11)

感染症の確定もしくは疑いがあり,かつ以下のいくつかを満たす(項目数規定なし) (1)全身所見・ 発熱:核温>38.3°C・ 低体温:核温<36°C・ 頻脈:心拍数>90 回 / 分,もしくは>年齢平均の2SD・ 頻呼吸・ 精神状態の変容・ 著明な浮腫または体液過剰:24 時間で輸液バランス20mL / kg 以上・ 高血糖:糖尿病の既往のない状態で血糖値>120mg / dL (2)炎症所見・ 白血球上昇>12,000 / μL・ 白血球低下<4,000 / μL・ 白血球正常で10% を超える幼若白血球・ CRP >基準値の2SD・プロカルシトニン>基準値の2SD (3)循環変動・ 血圧低下:収縮期血圧<90mmHg,平均血圧<70mmHg,もしくは成人では正常値より40mmHg を超える低下,もしくは年齢に対する正常値の2SD 未満・ 混合静脈血酸素飽和度(SvO2)>70%・ 心係数(CI)>3.5L / 分/m 2 (4)臓器障害所見・ 低酸素血症:PaO2 / FIO2 <300mmHg・ 急性乏尿:尿量<0.5mL / kg / 時が少なくとも2 時間持続・ 血中クレアチニン値の増加:>0.5mg / dL・ 凝固異常:PT-INR >1.5,もしくはAPTT >60 秒・ イレウス:腸蠕動音の消失・ 血小板減少:<10 万 / μL・ 高ビリルビン血症:>4mg / dL (5)組織灌流所見・ 高乳酸血症>1mmol/L・ 毛細血管の再灌流減少,もしくは斑状皮膚所見

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