p.13 抽出テキスト
本ガイドラインの基本理念・概要 1 名称 日本版敗血症診療ガイドライン2020 とした。英語名称は,The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2020 とし,略称は国際版との対比を重んじ,J-SSCG 2020 とした。 2 ガイドライン全体の目的 世界で数秒に1 人が敗血症で命を落としている。あらゆる年齢層が罹患する重篤な疾患であり,その診療支援を目的とした質の高いガイドラインを作成することの社会的意義は非常に高い。本ガイドラインは,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が,患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことを目的とする。 3 対象とする患者集団 小児から成人に至るまでの敗血症・敗血症性ショック患者およびその疑いのある患者を対象とする。集中治療室に限らず,一般病棟や救急外来で,診断・治療を受ける患者を包括するが,敗血症患者は高度な全身管理を必要とすることから,敗血症およびその疑いの強い患者では,状況が許す限り,速やかに集中治療室へ移送しての管理が望ましいことを強調する。 4 対象とする利用者(本ガイドラインの使用者) 敗血症診療に従事または関与する専門医,一般臨床医,看護師,薬剤師,理学療法士,臨床工学技士,管理栄養士などのすべての医療従事者である。 5 利用にあたっての注意 ガイドライン作成とその使用が目指すのは,患者全体における治療成績の向上である。したがって,個別の患者の状況や特殊性に応じて,ガイドラインを必ずしも遵守しない治療方法が医師の裁量によって選択されることも必要である。また,ガイドラインは,その作成時点でのエビデンスブックとしての側面もあり,刻々と積みあがるエビデンスや社会情勢の変化に応じて,改訂を重ねていくべきものである。ガイドラインは決して法律ではなく,その領域の専門家が標準より優れた治療成績を達成しているのであれば,ガイドラインをすべて遵守する必要はない。「ガイドラインは三流を二流にするが,一流を二流にする」ともいわれる。ただし,一流であってもガイドラインを参照し,日々の診療の見直しを図りながら,治療成績の向上を目指すべきであることは当然である。 このような観点から,一般臨床家,多職種を含む医療従事者にも理解しやすい内容とし,CQ に取り上げる重要臨床課題も,高度に専門的な内容は避けた。全22 領域の中には,「PADIS ガイドライン(日本語訳)」,「集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~」,「AKI(急性腎障害)診療ガイドライン」,「ARDS 診療ガイドライン」,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」など,敗血症に特化はしていないが,より専門的な臨床課題を扱っているガイドラインが本邦に既に存在するので,必要に応じてそれらも参照されたい。 ガイドラインは,医療従事者の治療方針決定を支援するために何らかの推奨を提供することが原則とされているが,明確な推奨を示し得なかったものもある。また,「ガイドラインにおける推奨の強さの解釈の注意点」に詳しく述べているが,推奨の強さは連続体であり,弱い推奨・弱い非推奨の間にはほとんど差がない場合もある。敗血症は,その病原微生物や感染巣,さらには病態,病期も多様である。1 つのアルゴリズムや推奨を単純に当てはめることで功を奏する疾患ではない。さらには,患者の病状のみならず医療者のマンパワーやリソース,患者・家族の意向などを勘案して,臨床家の判断が下されるべきものである。ガイドラインの内容を理解し遵守していただくことは重要であるが,ガイドラインにとらわれ過ぎず,状況に応じて賢明に利用していただければ幸いである。 上記の本ガイドラインの使用にあたっての注意点を鑑み,本委員会は,本ガイドラインを裁判における根拠として利用することを認めない。また,本邦で保険適用となり日常的に使用されている治療法が本ガイドラインにおいて“弱い非推奨”であることは,その存在価値やすべての患者に対する有益性を否定するものではない。弱い非推奨の治療法は,洗練された集中治療管理において,益となる患者を賢明に選択して施行することで患者予後改善に寄与しうる治療法であるため,本委員会は,本ガイドラインを保険適用の是非の根拠として利用することを認めない。 また,前述のように,エビデンスは常に蓄積し,更新されていくものであるため,本邦において保険適用外であっても,日常的に敗血症診療で行われている治療法に関しては,CQ として取り上げて評価した。 6 本ガイドライン作成における組織編成 日本医療機能評価機構内に設置されているEBM 医療情報部による医療情報サービス事業(Medical -S 11-