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この版は旧版です。新版があります: JSICM 2024 日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)本編 新版を読む
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p.12 抽出テキスト

はじめに

世界で数秒に1 人が敗血症で命を落としている。敗血症は,あらゆる年齢層が罹患する重篤な疾患であり,その診療支援を行うことを目的とした質の高いガイドラインを作成することの社会的意義は非常に高い。国際的な敗血症診療ガイドラインとして,2004 年から4年ごとに改訂を重ねているSSCG 1)があるが,2012年,本邦の臨床の実情を考慮した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)が日本集中治療医学会によって初めて発表された 2)。2016 年の改訂(J-SSCG 2016) 3, 4)に際し,日本集中治療医学会と日本救急医学会による両学会合同の特別委員会が組織され,単なる改訂版の位置づけではなく,一般臨床家にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインを作成し,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 では,19 名の委員を含む総勢73 名の医師が作成に携わり,19 領域89 に及ぶ重要臨床課題(clinical question: CQ)を網羅した。日本医療機能評価機構によるAGREE II を用いたJ-SSCG 2016 の評価は高く,特に作成の厳密さ,推奨提示の明確さ,編集の独立性などが評価された。J-SSCG 2016 では,SSCG 2016 では取り扱いのない画像診断,体温管理,ICU-acquired weakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS)など斬新な領域も積極的に取り上げ,診療指針を示した。また, SSCG 2016 と同様のCQ であっても,エビデンスだけでなく医療水準,医療環境,医療経済,保険制度,日本人の価値観や希望,文化など種々の要因が考慮され,両ガイドラインで推奨が異なるケースもみられた。このことは,世界標準をターゲットとしたガイドラインが,諸事情が異なる各国において必ずしも使いやすいとは限らないことを意味している。

今回の改訂(J-SSCG 2020)において,多職種の医療従事者が敗血症患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことを目的とし,両学会合同の委員会が結成された。ガイドラインは非常に幅広い領域をカバーする必要があり,内容も規模もJ-SSCG 2016 を上回る本邦最大級のガイドラインとなった。委員と担当理事の26 名に加えて,多職種(看護師9 名,理学療法士4 名,臨床工学技士2 名,薬剤師2 名)および患者経験者(2 名,うち1 名は看護師)も含めたワーキンググループメンバー85 名と両学会の公募によるシステマティックレビューメンバー115 名による総勢226 名の参加協力を得た。特に,多職種および患者経験者がワーキンググループメンバーとして参加することで視点が広くなり,より柔軟な評価ができたことは,J-SSCG 2016 からの大きな進化である。また,シ

ステマティックレビューは,ワーキンググループメンバー,システマティックレビューメンバーで行い,推奨を策定する委員とは一定の独立性を保つ点でも理想の形に近づいた。

J-SSCG 2020 では,前述のJ-SSCG 2016 で取り上げた領域に加え,新たな項目として,神経集中治療, Patient-and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,ストレス潰瘍の4 領域を注目すべきテーマとして収載した。さらに,本邦では,小児集中治療室が少なく,主に成人敗血症患者の治療にあたる医療従事者が小児敗血症患者を診療せざるを得ない状況があることを鑑み,J-SSCG 2020 においても小児の項目を含めた。これにより,合計22 領域,CQ118 題のガイドラインとなった。推奨作成にはGRADE 方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに時間軸に沿った視覚的情報を診療フローとして取り入れ,各CQ の臨床的位置づけを行い,アプリケーションとしても配信することにした。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。

J-SSCG 2020 の作成工程において,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。また,質の担保と作業過程の透明化を図るため,相互査読制度,各班内の討議のオープン化などの工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。本ガイドライン作成の意義の1 つに,作成過程を通じ,学会や施設の垣根を越えて若手を含むメンバー間の有機的なネットワーク構築が進んだことが挙げられる。これを基盤に,ガイドラインとは独立して多施設研究や独自のシステマティックレビューを行い論文化するなどの動きが活発に行われている。本ガイドラインが基盤となり,本邦の急性期領域からのエビデンス発信のプラットフォームが今後も形成されることを願う。

なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。また,同内容は英訳され,「Journal of Intensive Care」と「Acute Medicine and Surgery」の両学会英文誌に同時掲載される。

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