p.31 抽出テキスト
−31−表7.基本的な病態を理解しておくべき心疾患[8] 急性冠症候群/急性心筋梗塞急性心筋梗塞の機械的合併症急性大動脈解離急性肺塞栓症急性心不全/心原性ショック急性心膜炎心タンポナーデ急性心筋炎心筋症大動脈弁狭窄症大動脈弁閉鎖不全症左室肥大気胸感染性心内膜炎心原性脳梗塞(腫瘍,血栓)心外傷 表8.読影を経験すべき症例とその必要症例数[8] 左室拡大/左室収縮不全右室拡大/右室収縮不全心膜液貯留心タンポナーデ循環血液量減少心停止胸水肺B-line 4 4 4 3 3 3 2 2 表9.FoCUSを修得するために必要な経験症例数[8] 左室拡大/左室収縮不全右室拡大/右室収縮不全心膜液貯留/心タンポナーデ循環血液量減少心停止胸水肺B-line 5 5 3 5 2 2 3 えるようになってきている.さらに経カテーテル大動脈弁置換術の手術室における術中経食道心エコー図という迅速な判断が求められる場面においても,高画質映像伝送システムを用いて,手術室外にいる心エコー専門医がリアルタイムで画像をみて,手術室にコメントや指示を行った例も報告されており,より専門性の高い領域で経験の高い専門医による遠隔心エコー診断が可能である.さらに近年では5G 高速通信技術によりロボットアームによるFoCUS/ 肺POCUS により新型コロナ感染症治療中の心膜液,胸水,肺炎の検出に用いることができたと報告されており,ロボットを操作することによる遠隔エコーも始まっている.今後ますます遠隔心エコー図診断に対するニーズは高まると想定される.ただ現時点では,通常の医療に比べて遠隔心エコー診断が優れているというエビデンスはなく,今後の検証が必要である. 10.FoCUS の教育,トレーニング 厚生労働省が定める初期研修医の到達目標において,超音波検査は“ 経験すべき診察法・検査・手技” として経験目標に含まれているが,超音波検査を行う領域や疾患などは特に決められていない.現状では,救急科や循環器内科,麻酔科などのローテーションでFoCUS を経験する機会があり,施設によってはトレーニングを受けることができるかもしれないが,まったくFoCUS に接する機会がないまま研修を終える研修医も少なくない.欧州心臓病学会では,FoCUS の教育シラバスが作成されている[8].本邦においても,初期研修医の必修カリキュラムにFoCUS や肺POCUS を含めることが必要と思われる.また,さらなる普及を目指すためには,卒前教育にもこれらを取り入れるべきであろう.これはFoCUSに限ったことではなく,卒前教育における各種超音波検査のカリキュラムが世界的にも確立されつつある[100]. FoCUS を使用する医療者は,循環器専門医と比較すると心血管疾患に関する知識が限定されている可能性があり,各種疾患の病態について学習する必要がある.欧州心血管画像学会が,FoCUS を修得しようとする非循環器内科医が知っておくべきと推奨している病態について表7 に示す[8].また,同学会が推奨するFoCUS を修得するために必要とされる読影および経験症例の最低例数を表8,9 に示す[8].日本救急医学会,日本集中治療医学会,日本循環器学会,日本超音波医学会などの関連学会では,FoCUS をテーマにしたセッションやハンズオン実習が企画されている.日本循環器学会において,心エコー図学会が開催している研修医向け心エコーハンズオンセミナーのプログラムを表10 に示す.コロナ禍の影響もあり,IT を用いた遠隔教育などさらなる工夫が求められている[101]. FoCUS は,系統的な心エコー図検査と異なり,心疾患の確定診断を行う手技ではない.したがって,FoCUSの教育,トレーニングを行う際,FoCUS の限界についての理解が必須である[7].FoCUS を適切に活用して医療の質を向上させるためには,系統的心エコー図検査を専門とする日本心エコー図学会がサポートすることも重要と思われ,本手引き書がその一助となることを願う.