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p.30 抽出テキスト

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9.8 COVID-19 陽性,疑い例

2020 年6 月に米国心エコー図学会から「COVID-19流行時におけるPOCUS についての提言」がなされ,同年12 月にはCOVID-19 診療におけるPOCUS 関連論文を集計し,9 つの分野(診断,トリアージツール,肺炎の診断,心血管合併症の診断,血栓塞栓合併症のスクリーニングと診断,呼吸補助戦略,適正輸液量の評価,呼吸器を含めたモリタリング,感染コントロールなど)におけるエキスパートコンセンサスが発表された.全体を通しでまず注意すべき事項は,COVID-19 のPOCUS に使用するエコー機器は,専用エコーにし,周囲への感染伝播を未然に防止することである.

ARDS において適正輸液量の評価は必須である.評価の方法としては,FoCUS による左室拡張末期容積や下大静脈径といった静的指標,下大静脈径の呼吸変動率や,下肢挙上や輸液負荷に伴う左室流出路血流速波形の速度時間積分値の変化率といった動的指標など様々な指標が報告されている.ただし,どの方法も一長一短がある.特に,吸気努力の強いCOVID-19 においては,下大静脈径の呼吸変動率などの信頼性が低下することは注意が必要である.

COVID-19 における左室機能低下は23.7%と報告されている.稀に併発する心筋炎の早期検出にFoCUS が役立つ.また,右室の評価は,肺血栓塞栓症の診断に有用である.また,Patient self-induced lung injury(P-SILI)の制御を目的に深鎮静,さらには筋弛緩薬の持続静注投与を行うと,腹臥位によるコンプライアンス低下から高CO2 血症を惹起し,その結果,肺血管収縮による右心系の後負荷上昇により右心機能不全を呈することが報告されている.特に,VV-ECMO 装着時の右心不全の合併は治療撤収を余儀なくされる一つの指標となっており,連日FoCUS を施行することが重要である.

COVID-19 の典型的な肺エコー所見は,多彩なB-lines,胸膜病変と言われており,肺エコーのみで診断が可能と報告されており,吸気努力が著明な時には胸膜の引き込みも確認できる.重症COVID-19 でCT が使えない状況で有用性がある.また,重症COVID-19 では,人工呼吸器管理を行うにあたり,深鎮静,筋弛緩の投与の影響から無気肺形成,人工呼吸器関連肺炎のリスクが高いと報告されている.ただ,無気肺の場合は体位ドレナージにより改善が認められるが,肺炎の場合は改善しないため,無気肺か肺炎かの鑑別は非常に重要である.

COVID-19 は,血栓塞栓の合併症が多いと報告されている.また,治療においても予防用量あるいは,治療用量での抗凝固薬導入が生命予後の改善に寄与すると報告されている.下肢静脈領域のPOCUS として,2 領域(3 領域)圧迫法が推奨されており,治療介入に必要なDVT の有無の評価を行うことができる[58].また,内

頚静脈に中心静脈カテーテルが挿入されている場合,その周囲から血栓形成を認めることがあるため,合わせて評価することが重要である.

9.9 災害時

地震等の被災地で,その超急性期にはFAST などの超音波検査を用いた負傷者のトリアージが有用である[96].その際に循環器系の異常を疑えば,FoCUS を活用する場面もあるだろう.一方で,避難所や車中泊といった亜急性期の環境では,深部静脈血栓症が問題となる.有症状例ではFoCUS を用いた右室拡大の判定が肺血栓塞栓症の早期発見に有用であり,下肢静脈POCUS が深部静脈血栓症のスクリーニング,診断に有用である.日本超音波医学会が災害時の対応をマニュアル化し,ポータブルエコーを被災地へ届けるシステムを構築している[97].

9.10 遠隔医療

FoCUS は遠隔医療の分野でも活用され始めている.近年のデジタル技術の進歩,医療画像保存形式の標準化,インターネットによる画像伝送が可能になったことにより,心エコー図領域では,医師-医師間(DtoD)の遠隔相談や遠隔画像診断が可能となった.遠隔心エコー診断は離れた場所から心エコー専門医による診断や治療方針の相談が受けられ,長距離の移動による時間や費用を節約出来るため,医療資源の限られた地方の恵まれない人々に恩恵がある.そもそも遠隔心エコー診断は,小児を対象とした先天性心疾患のスクリーニング検査として開始された歴史がある[98].ブラジル循環器学会による2019 年の遠隔循環器診療のガイドラインでは,遠隔心エコー診断は新生児の先天性心疾患の早期診断と小児のリウマチ性心疾患の早期診断に有用と記されている(クラスIIa,エビデンスレベルB) [99].

本邦でも専門の技師や心エコー医がいない地方にとっては,遠隔で専門医による診断を受けられることは有益である.徳島大学など複数の大学病院や医療機関で,光インターネット回線を用いたビデオシステムを用いることにより,超音波専門医や技師がいる大学病院へ離れた病院で行っている心エコー画像をリアルタイムに送信し,双方向の音声画像通信を行うことにより,遠隔診断支援,さらには非専門医や超音波検査技師の教育が行われている.最新のポケットサイズエコーでは,スマートフォンやタブレット端末のアプリを用いて画像を表示させるため,そのままリアルタイムにオンラインで画像を共有できる機種も出現しており,FoCUS のように非専門医が心エコー図を行う場面でも容易に遠隔相談が行な