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p.3 抽出テキスト

−3− 1.はじめに

心エコー図検査は,循環器疾患の日常診療において各種心疾患の診断と病態の把握に欠かすことができない検査である.加えて,救急救命の診療現場においてしばしば患者の生命を左右する重要な情報が得られる画像診断でもある.一方,携帯型の超音波診断装置が開発され,高性能で小型かつ安価な装置が,救急救命施設はもちろん,集中治療,一般内科診療,在宅診療など多くの医療現場に超音波診断装置が配備されるようになった.心エコー図検査は,循環器を専門とする医師の多く,そして心エコー図検査の訓練を行ったソノグラファーが施行しているが,患者診療の場に心エコー図検査に精通した医師や技師が常にいるとは限らない.心エコー図検査の専門家がいない状況においては,最初に患者に接する医師が心エコー図検査を行って治療方針を決定する必要が生じる.そのような状況に置かれた医師は,救急医,麻酔科医,内科医,研修医など自分のバックグラウンドに関わらず,心エコー図検査によって致死的な心疾患の有無を評価し,患者の生命予後を改善する責任がある.

近年,循環器領域に限らず,多くの診療領域においてベッドサイドで行う超音波検査が活用されており, Point-of-Care 超音波検査(point of care ultrasound: POCUS)と呼ばれている.心臓領域のPOCUS において,欧米ではFocus (focused) cardiac ultrasound (FoCUS)と呼ばれるプロトコールが開発され,臨床で活用されており,教育シラバスが作成されている.それらによると,FoCUS は,標準化された限られた断面とプロトコールを用いて行うPoint-of-Care の心臓超音波検査であると定義されている.FoCUS は主に非循環器医が施行することを前提とした診療手技であり,判断を誤らないためにはその限界を熟知し,従来の包括的心エコー図検査(comprehensive echocardiography)でなければ診断できない病態を理解することが必要である.一般社団法人日本心エコー図学会は,本邦においてもこのFoCUS が有効かつ適切に運用されるべきであり,本邦でFoCUSを普及させるには適切な教育が不可欠であると考え,本手引きを作成することとした.

本来のFoCUS では,断層法​で​観察​をして​定性的​な​判断​を行う​.したがって,包括的心エコー図検査で施行されている計測は行わず,肉眼的な評価が原則である.しかしながら,経験者であっても肉眼的評価の判断に迷うことがあり,また,特に経験の少ない初学者にとっては判断ができないことがある.そのようなとき,例えば,左室拡大があるかどうか悩ましい場合,左室拡張末期径を計測し基準値と照らし合わせることはその判断に大いに役立つ.このような観点から,本手引きでは,FoCUSであってもキャリパー機能を用いた単純な距離計測を

略語一覧

ACS acute coronary syndrome AR aortic regurgitation ARDS acute respiratory distress syndrome AS aortic stenosis ASD atrial septal defect CCU coronary care unit CT computed tomography DVT deep vein thrombosis ECMO extracorporeal membrane oxygenation EFAST extended FAST EPSS E point-septal separation FAST Focused Assessment with Sonography for Trauma FoCUS focus/focused cardiac ultrasound HFmrEF heart failure with mildly reduced ejection fraction HFpEF heart failure with preserved ejection fraction HFrEF heart failure with reduced ejection fraction IABP intra-aortic balloon pumping ICU intensive care unit JATEC Japan Advanced Trauma Evaluation and Care MAPSE mitral annular plane systolic excursion MR mitral regurgitation MRI magnetic resonance imaging MS mitral stenosis POCUS point of care ultrasound P-SILI Patient self-induced lung injury ROI region of interest SAM systolic anterior motion TAPSE tricuspid annular plane systolic excursion TR tricuspid regurgitation VSD ventricular septal defect