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p.29 抽出テキスト

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ストレスが最小限になってきている.さらにICT 機能を有し,エコー機器から直接オンライン通話や医療用SNS へ動画像をアップロードすることが可能な機種もあり,遠隔地の同僚や上司に所見相談をすることも容易になった.このようにエコーはいかなる環境においてもベッドサイドで非侵襲的かつリアルタイムに病態を把握することができる点で在宅医療において欠かせない医療機器である.

心疾患を疑う有症状者には,通常の診療の如く問診+身体所見を行ったのち,速やかにエコーを行う(+安静時12 誘導心電図検査,採血検査).胸部X 線画像の評価ができない在宅においては FoCUS に加えて肺POCUSはセットで行うことが望ましい.また,FoCUS/ 肺POUCS に加えて,その他の鑑別疾患のチェックのために別領域(腹部,下肢静脈など)のPOCUS を組み合わせることも可能である.

在宅の現場で遭遇することが多く,かつエコーが有用なシチュエーションを以下に挙げる. 1) 呼吸不全・息切れ:高齢者の多い在宅現場では心不全と肺炎は頻度が多いが,発熱など典型的な症状を示さないこともありしばしば鑑別が困難となる. 2) 呼気性喘鳴:気管支喘息発作を考えβ2刺激薬吸入をまず試みたいところであるが,心不全(いわゆる心臓喘息)を除外することは非常に重要である. 3) 乏尿:夏場の尿量低下はついつい脱水を考えがちであるが,尿閉(などの排尿障害)や心不全の鑑別は必ず行っておきたい. 4) 浮腫:全身性浮腫の場合はまず心不全の除外が,局所性浮腫の場合はまず深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)の除外が必要である. 5) 上腹部痛:上腹部痛の鑑別疾患は腹腔内だけではなく,心血管疾患も忘れてはいけない.エコーだけで心血管疾患の否定はできないが異常所見を得た場合には大きな方針転換に繋がる.

在宅医療においてはこれまでエコーの主な担い手であった医師だけでなく訪問看護師への普及が注目されている.現場における排泄ケアのニーズの高さや,エコー手技の簡便さから,現在訪問看護師に最も用いられているのは膀胱エコーである.さらに,訪問看護師の調査において体液管理を目的とした下大静脈の観察のニーズが高いことが報告されている[95].下大静脈の観察と評価の難易度は膀胱に比べると高く,教育方法を含め現場への普及には課題が残されているが,高齢化の進行に伴い在宅現場においてもますます心不全患者が増加していくことから,エコーを活用した医師と訪問看護師の連携はより重要になっていくと考えられる.

9.6 看護領域

心エコー図検査は循環器を専門とする医師,そして訓練を行ったソノグラファーが施行している.しかし患者の診療の場,ベッドサイドに一番近くにいるのは看護師であり,症状やバイタルサインの変化に伴い初期対応を求められる存在である.昨今,認定看護師や特定行為看護師精度の整備により看護師に求められる高度な医療行為が増えてきており,看護師が心エコー図検査も行うことは法律上の問題もない.心エコー図検査の経験が少なくても最低限の評価ができるFoCUS はフィジカルアセスメント,身体所見と組み合わせることでより具体的に,かつ客観的に病状の変化を可視化することができる.下大静脈の観察による循環血液量の評価,心膜液貯留の評価による出血性合併症の有無,壁運動の変化による心収縮力の観察など得られた画像は客観的に判断でき,医師への報告や指示を仰ぐべきかの判断に有用である.患者との距離が一番近い看護師が積極的にFoCUS をすばやく行い情報を可視化することは,患者にとっての恩恵も大きい.

一方で,看護教育の基礎科目には超音波検査は組み込まれておらず,現在FoCUS を行うことができる看護師はごくわずかであり,手技を実践するまでのハードルは高い.操作が簡便で持ち運びの便利なポケットサイズのエコー機を病棟に配備するなどの環境整備,そして教育システムの確立と日々の看護業務の中でのトレーニングが課題である.

9.7 在宅医療

近年,高齢化の進行に伴う需要の変化に加え,団塊世代が75 歳以上となる2025 年に近づく中,厚労省の推進する政策によっても在宅医療の需要は増大している.厚労省の公表する社会医療診療行為別統計によると2019年時点で在宅患者数は約90 万人,その内訳はほぼ9 割近くが75 歳以上の高齢者である[94].在宅医療対象者の中心となる後期高齢者は,心血管疾患,代謝疾患,運動器疾患,悪性疾患など複数の慢性疾患を併せ持つ多疾患併存状態(マルチモビディティー)であることが少なくない.さらに認知機能低下や高度難聴などにより本人からの正確な病歴聴取が困難な場合も多く経験する.また,在宅医療においては使用できる検査機器そのものの制限に加え,訪問現場に持参する医療機器は適切に選択しなければならない.このような在宅医療特有のセッティングから生じる問題点の多くを携帯型エコーは解決してくれる.

携帯型エコーは小型化が進み,サイズだけでなく,通常のスマートフォンにワイヤレス接続可能な機種や,複数の機能を有するプローブの登場などもあり,携帯時の