p.24 抽出テキスト
−24− うになる.したがって,FoCUS の基本的断面に含まれる心尖部四腔断面で僧帽弁の早期開放が認められた場合には,左室充満圧の上昇が示唆される[73].左室収縮機能が正常の場合,拡張早期に僧帽弁前尖が前壁中隔に接するように開くが,左室収縮障害があると,この時相の僧帽弁前尖と前壁中隔との距離(EPSS)が大きくなる.EPSS はM モード法で計測され,正常は7 mm 未満とされている[74]. 8.7 非虚血性心筋症 循環器救急診療でFoCUS を行うと,心臓の形態的異常が見つかる場合があり,このうち虚血性心疾患によらない代表的な疾患として,拡張型心筋症と肥大型心筋症がある.特発性心筋症の診断は二次性心筋症の除外によるところが大きく,FoCUS で診断できるものではないが,典型像をみた場合に,心筋症を疑い精査に進む必要がある. 8.7.1 エコー所見 1左室拡大,収縮障害拡張型心筋症は,左室内腔の拡大と収縮障害を特徴とし,傍胸骨長軸断面・短軸断面と,心尖部あるいは心窩部四腔断面で,左室収縮機能を視覚的に判定する.必要に応じて,傍胸骨長軸断面で左室拡張末期径を計測し,左室拡大の有無を判定する[75].拡張型心筋症の典型例では,びまん性の左室壁運動低下が認められるが,局所壁運動異常をきたす例もあるため,壁運動低下の様式だけで臨床診断に結びつけることは困難である.頻脈が持続したり,心室期外収縮が長期に渡って頻発したりすると,左室収縮障害をきたすことがあり,この病態は頻脈誘発性心筋症と呼ばれる.心拍数のコントロール後の左室収縮機能の改善がみられた場合に確定診断されるが,頻脈誘発性心筋症は拡張型心筋症よりも左室拡大の程度が軽いことが特徴とされている[76]. 2左室肥大肥大型心筋症の特徴的な肥大様式は,左室のいずれかの部位における15mm 以上(家族歴がある場合は13mm以上)の非均等型の肥大とされている[75].典型例では非対称性心室中隔肥大が認められるが(図22),左室自由壁のみの肥大や心尖部肥大が認められる場合も多いので,傍胸骨アプローチだけでなく心尖部四腔断面も用いて局所的肥大の有無を観察する必要がある(図23) 3左房拡大左房サイズの拡大は,左室充満圧が高い状態が続いていたことを示唆し,左房拡大がみられたら心不全の状態であることが疑われる.心エコー図検査では,左房サイズはディスク加算法やarea length 法による左房容積で評価されるが,左房容積の計測はFoCUS には含まれていないので,傍胸骨左室長軸断面でバルサルバ洞径よりも左房径が大きいときや,四腔断面で左室とのバランスを肉眼的に判断して左房拡大の判定を行う[72].左房拡大がみられた場合には,感度58%,特異度78% で何らかの心エコー図検査上の異常所見を検出可能であったと報告されている[72]. 4左室肥大左室肥大は,肺うっ血の原因となる左室拡張障害をきたす代表的な病態であり,心不全を疑う重要な間接所見となる.左室肥大は,左室心筋重量係数をもとに定義されているが,FoCUS でこれを算出することは現実的ではなく,壁厚が12 mm 以上の場合には左室肥大と診断する. 5Multiple B-lines 一肋間に3 本以上のB-line がみられる場合をmultiple B-lines といい,両肺野にその所見があれば(diffuse multiple B-lines)肺水腫である可能性が高い[14].ただし,B-line は心不全以外の原因による肺水腫や,びまん性肺疾患でも認められるため,FoCUS による心臓の評価と併せて心不全診断を行う必要がある.心原性肺水腫では静水圧の上昇に伴い肺内水分量が増加することが病態であり,肺全体に影響が出る.救急外来における心原性肺水腫の診断については,臨床所見や胸部X 線よりも肺POCUS が有用と報告され,7 つの前向き臨床研究を用いたメタ解析では,両側性のmultiple B-lines の感度は94%,特異度は 92% とであった[16]. 8.6.3 FoCUS を少し超えた評価法 FoCUS では下大静脈を長軸断面で観察するが,これに直行する短軸断面で,通常は楕円形の下大静脈の形態が円形に近くみえる場合,中心静脈圧の上昇が示唆され, advanced FoCUS の観察断面に加えた[10].長軸断面で下大静脈の拡大がみられた場合には,プローブを直角に回転して短軸断面で形態も観察すると,より正確な診断につながる. 左房圧が上昇すると等容弛緩時間が短縮するので,拡張早期の僧帽弁開放が早く起こり,これに後毛細管性肺高血圧に伴う右室収縮障害が加わると三尖弁開放の遅延も起こるため,僧帽弁が三尖弁よりも早期に開放するよ