p.23 抽出テキスト
−23− 能を視覚的に判定する(図21).急性心不全の救急外来診療を取り扱った研究のメタ解析では,左室駆出率の低下による心不全診断の成績は,感度80.6%(95% 信頼区間72.9 ~86.9%),特異度80.6%(95% 信頼区間74.3 ~ 86.0%)であったと報告されている[17].左室駆出率の低下が心不全状態を意味するわけではないが,息切れのある症例で左室収縮障害がみられたら,うっ血性心不全である可能性が高いので,次の診断ステップへ進む必要がある.また,左室駆出率が保たれていても心不全は生じ得るので,左室収縮機能が正常であっても他の項目を省略することはできない. 2循環血液量心窩部下大静脈断面で,下大静脈の径と呼吸性変動を評価する.米国心エコー図学会のガイドラインでは,下大静脈の径が21 mm よりも大きく,sniffing(鼻すすり)による径の縮小率が50% 以下の場合に中心静脈圧の上昇(15 mmHg)と判断すると記載されている.救急の場面では,径の計測や鼻すすりの誘導は診断時間の延長につながるので,スケールを基準にして目視で拡大の有無を評価し,通常呼吸下で呼吸性変動を確認することもある[72].すでに人工呼吸管理による陽圧換気が行われている症例では,下大静脈径の拡大は中心静脈圧の上昇を正確に予測できない[72].なお,中心静脈圧上昇を伴わずに肺うっ血をきたす場合もあり得るので,下大静脈が張っていなくても心不全を否定するこことはできない. ら,外科的治療を緊急に準備する必要がある.その早期発見に聴診とFoCUS は非常に重要である. 8.6 心不全 8.6.1 FoCUS と肺POCUS を用いた心不全診断 心エコー図検査による心不全診断は,左室充満圧や中心静脈圧の上昇の有無の評価により行われる.左室充満圧の推定に主に用いられるドプラ法はFoCUS の評価項目に含まれないため,FoCUS では,下大静脈拡張の有無により循環血漿量を評価し,左室充満圧上昇をきたし得る病態を検出することで,間接的に心不全を診断する.さらに,肺POCUS を用いて胸水や肺うっ血有無の評価を加味して最終的に心不全の可能性を判定し,心不全が疑わしい場合には,通常の心エコー図検査など,さらなる検査の必要性を検討する. 8.6.2 エコー所見 1左室拡大・収縮障害の有無傍胸骨左室長軸断面で左室拡張末期径の計測を行い, 55 mm 以上であれば左室拡大と診断する.心尖部四腔断面で,左室は縦長の楕円形にみえるのが普通であるが,円形に近くみえる場合には,左室が拡大していると捉えることができる.左室収縮能は,傍胸骨長軸断面・短軸断面と,心尖部あるいは心窩部四腔断面で,左室収縮機図21 左室拡大と収縮不全 拡張型心筋症の症例.上段が傍胸骨左縁長軸断面,下段が傍胸骨左縁短軸断面.左室の拡大とびまん性壁運動低下を認める. 図20 心室中隔穿孔(カラードプラ法) 急性心筋梗塞の合併症としての心室中隔穿孔がある.外科的治療を緊急に準備する必要があるため,早期発見に聴診とFoCUSが非常に重要である.