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p.21 抽出テキスト

−21− 8.4.2 僧帽弁閉鎖不全症(MR) およ

びその他の弁閉鎖不全症

慢性MR には,逸脱症を主とする器質性(一次性) MR と機能性(二次性)MR とがある.機能性MR は心室性と心房性に大別される.器質性MR は心不全の原因とはなるが結果ではない.一方,機能性MR は心不全が悪化した結果として劇的に悪化し,心不全がさらに進行する原因ともなり得る.すなわち,心不全の病勢を表す指標でもあるとともに治療のターゲットでもあると考えるべきである.

急性MR には急性心筋梗塞に伴う乳頭筋断裂や特発性の腱索断裂,感染性心内膜炎によるものがあり,緊急で確定診断する必要がある.乳頭筋断裂は,ST 上昇型心筋梗塞の約1%において発症2 週以内に合併する.好発時期は心筋梗塞発症後4 日以内である.右冠動脈一枝に支配されている後乳頭筋に生じやすい.すなわち下壁梗塞に合併しやすい.断層図では,僧帽弁弁尖が過剰に運動して弁尖先端が収縮期に左房に落ち込み(flail),同

しいにもかかわらず左室局所壁運動異常がある際には,陳旧性心筋梗塞を疑う.心筋梗塞の既往や,陳旧性心筋梗塞を示す心電図所見(異常Q 波など),FoCUS で局所壁運動異常部の輝度上昇や壁厚菲薄化の所見を伴えば,さらに陳旧性と考える根拠となる.

また,心筋梗塞の合併症の検出においてもFoCUS は有用である.左室自由壁破裂による心タンポナーデ,乳頭筋断裂に伴う急性MR,心室中隔穿孔については心タンポナーデ,弁膜症,シャント疾患の項にそれぞれ記載する.

8.4 弁膜症

成人の心臓弁膜症ではAS とMR が多く,いずれも心不全の重要な基礎疾患である[66, 67].

8.4.1 大動脈弁狭窄症(AS)

現代のAS は加齢性の硬化によるものが多い.胸痛や失神,心不全の原因となるため,それらの症状のある患者を診た時にはFoCUS によってAS の有無を診断することが必要である.傍胸骨長軸断面と短軸断面で開放の程度と肥厚や石灰化の程度を観察する.FoCUS による中等症以上のAS に対する定性的な診断能を調べた2つの研究における診断感度は63-76%,特異度は88-100%だった[63, 68].一方,大動脈弁三尖の開放をFoCUS の大動脈弁短軸断面を用いて簡便に半定量するvisual AS score(0-6 点の7 段階スコア)という指標も提唱されている(表5,図17).同スコアが3 点以上であることは,中等症以上のAS を感度84%,特異度90%,重症ASを感度100%,特異度73%で診断できると報告されている[69].駆出性収縮期雑音を聴取するだけで心エコー図検査(full study)を依頼するのではなく,AS が有意であることを示唆する他の身体所見異常(雑音の頚部への伝達や雑音のピークの遅れ,2 音の減弱,頸動脈の遅脈,頸動脈のshudder)を少なくとも一つ伴った際にFoCUS を行い,visual AS score が3 点以上であれば精査心エコー図検査に進むというプロトコールも提唱されている.このプロトコールによれば重症AS を見逃すことがなく(感度100%),58% の不要な心エコー図検査(full study)を避けることができると試算された[70].また, visual AS score を用いたFoCUS は救急医による救急室でのAS の検出にも有用であると報告されている[71].図17 Visual AS scoreの算出例

左図の症例は0点でASを認めない.右図の症例は4点であり重症のASが疑われるが,少なくとも中等症以上であることは間違いない.

表5.大動脈弁狭窄症の視覚的スコア(visual AS score)[69]点数のつけ方三尖のそれぞれで,弁尖全体が交連部を結んだ仮想直線より開く場合を開放制限なし=0 点同線より開かない部分がある場合を開放制限あり=1 点弁尖の動きがないか,わずかな場合を開放制限高度=2 点三尖の点数を合計した0-6 点の7 段階スコアがvisual AS score visual AS score の解釈2 点以下でAS は軽症以下である可能性が高い,少なくとも重症ではない3 点以上でAS は中等症以上である可能性が高くさらなる評価が必要である3 点以上でさらなる評価へ進めば重症AS を見逃さない....... 4 点以上でAS は重症である可能性が高くさらなる評価を急ぐ必要がある