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p.20 抽出テキスト

−20−下大静脈は右心系圧の上昇のため拡張し呼吸性変動

は乏しくなる.まれに,下大静脈から右房,右室,肺動脈のいずれかに浮遊血栓が見られることがある.

8.3 虚血性心疾患(急性冠症候群,陳旧

性心筋梗塞)

急性の胸痛を訴える患者では,鑑別診断のひとつである急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)であるかどうかを診断するため,心電図検査とともにadvanced FoCUS を行って左室局所壁運動異常の有無を評価する必要がある.低収縮(hypokinesis)あるいは無収縮(akinesis),収縮期外方運動(dyskinesis)のいずれかについての厳密な診断は不要で,有無についてのみ診断できればよい.FoCUS における左室局所壁運動異常の視覚的評価には傍胸骨長軸断面・短軸断面と心尖部あるいは心窩部四腔断面が用いられる(図16).

FoCUS による局所壁運動異常の見落としを疑われなければいけない.心電図所見が心筋虚血の疑いにとどまり, FoCUS で局所壁運動異常が検出されない場合には,血液検査によるトロポニン値等,他の検査結果も併せて慎重にACS かどうかの診断を進める.また,多枝病変の際には左室壁運動異常がびまん性である場合があるので,びまん性だからACS でないとは決して言えない.一方,心筋症による左室収縮能低下はびまん性であることが多いが,心筋障害が不均一な際には心筋症においても局所壁運動異常も生じうることを知っておく必要がある.

心不全の可能性がある呼吸困難例においても,その原因がACS である可能性があり,胸痛例と同様に心電図検査とFoCUS による左室局所壁運動異常評価を行うべきである.心電図で現在の心筋虚血を疑わせる所見が乏

肺塞栓症の急性期に認められるMcConnell 徴候(右室心尖部の壁運動は保たれているが,右室中部~基部の壁運動が低下する)は特徴的な心エコー図所見として良く知られている.

熟練者が施行したFoCUS による左室局所壁運動異常の検出感度と特異度は患者単位で97% と99%[63],分画単位ではいずれも99%であり[64],非常に高い.しかし,FoCUS では画質が低くて評価できない分画が多いことと,FoCUS を非熟練者が施行した場合には正診率が低下し得ることに注意が必要である[65].

心電図でST の上昇や低下といった心筋虚血所見があった際にFoCUS を施行し,左室局所壁運動異常が伴えばACS と即時に確定診断をできるとともに,心筋虚血の局在診断や責任冠動脈の推測もできる.診断後は緊急心臓カテーテル検査・治療を急がなければならない.心電図所見で心筋虚血所見があるのにFoCUS で局所壁運動異常が検出されない場合に,急性冠症候群でないと即断してはいけない.心電図所見が明らかな場合には

図16 Basic FoCUSの基本断面における冠動脈支配

黄色が左前下行枝領域,青が左回旋枝領域,赤が右冠動脈領域,紫で示した下側壁は左回旋枝と右冠動脈のオーバーラップ領域でいずれの支配領域にもなり得る.

図15 急性肺血栓塞栓症:傍胸骨左縁短軸断面の時間経過

入院初日は右室拡大および左室扁平化が強かったが,第3病日目にはその傾向が弱まり左室はD型に改善した.第10病日にはほぼ円形に回復し,ほぼ正常形態に戻った.