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p.19 抽出テキスト

−19−は,Stanford A 型大動脈解離の可能性を考え,上行

大動脈拡大やフラップ(血管内の線状エコー)および大動脈弁逆流の存在を確認する.

心タンポナーデを呈する場合や,細菌感染性・癌性・あるいは全身炎症性疾患に伴う心膜液貯留が疑われ心膜液の性状評価が必要な場合は,心エコー法ガイド下(および透視化)で心膜穿刺によるドレナージを行う.一方で心膜の肥厚や炎症の評価には,心臓造影CT や心臓磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging: MRI)が優れているため,これらの画像診断を組み合わせて診療を行う.

8.1.3 心膜炎

心膜液貯留が観察された際,その原因として考えるべき疾患の一つに心膜炎がある,心膜液貯留に加えて,心膜の肥厚やエコー輝度上昇が観察される場合があるが,心膜の肥厚や炎症の評価には心臓造影CT や心臓MRI が優れているため,これらの画像診断を組み合わせて診療を行うべの合併症である心筋炎を示唆することがある.

8.2 肺塞栓・肺高血圧

8.2.1 閉塞性ショック

FoCUS はショックを呈した重症肺血栓塞栓症例の右室の急性拡大に高い検出力を有している.まれに右室あるいは右房内に血栓像を認めることもある.血行動態が安定した右室拡大のない症例においては,FoCUS だけで肺血栓塞栓症の否定はできない.しかし,ショックを呈する血行動態不安定症例において右室拡大がなければ,急性肺血栓塞栓症はまず考えられない.

肺POCUS では,急性肺血栓塞栓症においてdry lungを示唆する顕著なA ラインおよび肺梗塞に伴う浸潤影とともに,下肢静脈エコー検査で深部静脈血栓症が観察されることがある.

8.2.2 超音波所見

重度の肺高血圧症においては,圧負荷のため右室が拡大し,心尖部四腔断面において心尖部の位置を右室腔が占め,左室が圧排される.傍胸骨左縁短軸断面では心室中隔が平坦化し左室が扁平化するためアルファベットのD 形(D shape)にみえる.これらの異常は収縮期に観察されることが多い.(図15)

8.1.2 心タンポナーデ

心膜液貯留が観察された際には,心タンポナーデの有無を判断する必要がある.線維性心膜は強靭ですぐには伸展できないため,少量の液体でも急速に貯留すれば心タンポナーデを生じる.一方,長い経過を経て心膜液が増加した場合には心膜が伸展されるため,ある程度貯留するまでは心タンポナーデを生じない[62].心タンポナーデでは,呼吸困難や胸部不快感,末梢性浮腫,倦怠感などの非特異的な症状がみられる.その他,洞性頻脈や奇脈(吸気時に収縮期血圧が10 mmHg 以上低下)なども見られるが,いずれも特異的な徴候ではなく,臨床症状のみから診断を下すことは難しい.心タンポナーデは,病歴,身体所見,超音波所見を組み合わせて診断することが重要である.

Basic FoCUS において,“ 心膜液貯留”,“ 下大静脈の拡大”,“ 左室内腔の狭小化” が観察された際には,心タンポナーデを呈しているか否かの診断が求められる.心膜液貯留を認めた場合は,観察ポイント( 図13) で心膜液の量や分布の他に下記の項目の有無を確認し,心タンポナーデの有無を判断する.

1心窩部下大静脈長軸断面:下大静脈の拡大,呼吸性変動の減弱2心窩部四腔断面:右房・右室の虚脱,振り子様運動3胸骨左縁左室長軸断面:右室の虚脱4胸骨左縁左室短軸断面:振り子様運動5心尖部四腔断面:心膜液の量や分布,右房・右室の虚脱,振り子様運動Advanced FoCUS では,心膜液の量や分布に加えて,下記の項目の有無を確認する.

1 一回拍出量の低下と吸気時のさらなる低下(パルスドプラ法)

2 左室流入血流速波形の呼吸性変動(パルスドプラ法)拡張早期波が吸気時に減高し,呼気時に増高する. 3 上行大動脈拡大や大動脈弁逆流

突然の胸背部痛に加えて心膜液貯留を認める場合に

図14 心膜液と胸水

大動脈(●)と心臓の間にエコーフリースペースが見られる場合は心膜駅貯留(*)である.胸水貯留(▲)との鑑別が重要である.