p.17 抽出テキスト
−17− 臓外傷には鈍的外傷と穿通性外傷がある.鈍的外傷の場合は血行動態が安定していれば保存的加療となるが,血行動態が不安定の場合や超音波にて異常所見を認めた場合には手術での治療が考慮される.穿通性外傷の場合にはバイタルが安定しているようであれば手術室での治療が考慮されるが,バイタルが不安定な場合には蘇生あるいは緊急開胸が考慮される[52]. 胸部外傷ではPOCUS を用いて気道,肺,横隔膜,血管,心臓の観察を行う[53].気道の評価では,輪状甲状間膜の確認や,挿管時の位置の確認を行う.肺POCUS では, lung sliding の消失とlung point が観察された場合には気胸を疑う.鈍的胸部外傷では,胸部外傷に対するPOCUS の外傷性気胸に対する感度75%,特異度100% とされ[54],胸部レントゲンよりも超音波での評価の方が気胸の診断精度が高いと報告されている[55].また血胸に対しては感度67%,特異度99% と報告されている[56]. 7.6 浮腫 浮腫は組織間質への過剰な体液の貯留のことであり,多様な原因によって生じるとされる.問診,血液・尿検査,画像検査等を複合的に用いて診断することが必要である.浮腫のアプローチでまず大事なのは片側性(局所性)浮腫または両側性(全身性)浮腫かという点である. 7.6.1 片側性(局所性)浮腫 急性に生じた片側性の下腿浮腫であればまずは深部静脈血栓症の存在を確認することが先決である.この場合,Wells criteria [57] を用いてリスクの層別化を行った上で,下肢静脈エコーを行う.外来で実施可能な下肢静脈エコーのプロトコールとしては2 領域(3 領域)圧迫法 [58] がある.総大腿静脈と膝窩静脈の2領域,あるいはそれらに加えて代替静脈の3 領域についてプローブで静脈の圧縮性の有無を確認し血栓の有無を評価する方法である. また局所の浮腫に発赤腫脹を生じているようであれば蜂窩織炎などの軟部組織感染症を疑う.この際同部位を高周波リニアプローブで観察しておくことは緊急疾患の除外となる.すなわち流動内容を伴う低エコー域を認めた場合は皮下膿瘍を疑い排膿を考慮し,ガスを疑う高エコー所見が見られる場合には壊死性筋膜炎を疑い緊急対応が必要となる[58]. 7.6.2 両側性(全身性)浮腫 全身性浮腫の鑑別として多いのは.うっ血性心不全,慢性下肢静脈不全,肺高血圧症,蛋白尿を伴う腎炎,薬剤性などである[59, 60]. 続するかどうかの判断に影響を与える可能性があるが,超音波所見のみで予後の判断はすべきではないとされている.外傷患者の評価時に心臓の動きが観察できない場合には,生存の可能性は極めて低いと報告されている[41].また,蘇生時に心腔内血栓を認めた場合には,蘇生の中止を検討される状況の可能性が高いと報告されている[42].PEA の時に,超音波による評価において心臓の動きを認めるものをpseudo PEA とし,心臓の動きを認めないものをtrue PEA する報告もあり,pseudo PEA はtrue PEA に比べて予後が良いと報告されている[5, 43]. 7.5 外傷 2002 年に導入されたJapan Advanced Trauma Evaluation and Care (JATEC) の普及により日本では外傷初期診療の標準化が進み,超音波を使用して心膜液,血胸,出血を外傷の初期診療にて検索するFAST が広く認知されるようになった.さらに気胸の評価を加えたextended FAST (EFAST) が現在では推奨されている[44]. EFAST を行うことで適切な外傷初期対応につながることが報告されている[45].EFAST の精度については,気胸については感度69%,特異度99%,心膜液については感度91%,特異度94% と報告されている[46].また2019 年のシステマティックレビューでは,POCUS による気胸の診断について,感度98.6%,特異度85.5% と報告されている[47].EFAST では感度に限界があることに注意が必要であり,結果が陰性であっても完全に外傷が否定できないため,臨床的に疑われる場合には繰り返し評価を行うことが重要である[48].心膜液の評価は心窩部より行い,プローブを上から握るように保持し,心臓の四腔を描出し,心臓周囲の液体貯留の有無を観察する.腹腔内出血の評価では,右上腹部では肝臓周囲,モリソン窩,右腎臓周囲,右胸腔内に,左上腹部では脾臓周囲,左腎臓周囲,左胸腔内に,恥骨上では膀胱周囲,膀胱直腸窩に液体貯留の有無を確認し,出血があるかどうかを観察する.肺の評価では,左右鎖骨中線第3 ~4肋間からlung sliding を確認することで気胸の有無を観察する[49]. 心臓外傷が疑われる場合,その評価でも超音波が広く使用されており,その際には局所壁運動異常,右室のサイズや機能,弁異常,心腔内シャントや血栓の有無,心膜液の有無を評価する.しかし肺や胸壁の外傷を伴うことが多く,画像描出が困難となることがある.外傷患者において心電図変化を伴う場合,トロポニンの上昇を認める場合,あるいは不整脈が出現し血行動態が不安定な場合には,心臓外傷を疑い評価する必要がある[50].心臓の評価は,EFAST に加えてFoCUS を行う[51].心